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特表2024-509247MRIセンサノードの位相コヒーレントな読み出し
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】MRIセンサノードの位相コヒーレントな読み出し
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/033 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H04L7/033
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554861
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2022055330
(87)【国際公開番号】W WO2022189233
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161983.8
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン リエル フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】エルディン カムフール
(72)【発明者】
【氏名】オウゾウノフ ソティル フィリポフ
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA01
5K047AA13
5K047GG02
5K047MM45
5K047MM46
5K047MM49
(57)【要約】
本発明は、デジタルシリアル通信ネットワーク2を有する磁気共鳴画像化システム1のセンサノード3の位相コヒーレントな読み出しに関する。本発明によれば、ネットワーク2は、磁気共鳴画像化システム1による検査を受けている患者からの無線周波数信号を検出するための複数のセンサノード3と、ネットワークリンク5を介してセンサノード3に接続されている、センサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するためのホストノード4とを備え、ホストノード4は、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを受信するための受信機6と、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを送信するための送信機7とを備え、センサノード3は各々が、検出された無線周波数信号をデジタルセンサデータに変換するためのアナログ-デジタル変換器8と、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを受信するための受信機9と、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを送信するための送信機10と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するように構成されているクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニット11とを備え、ネットワークリンク5を介したデータ送信の周波数は、クロックデバイスの予め設定されたフリーラン周波数に対して固定された周波数に設定されており、クロック及びデータ復元ユニット11は、それらのセンサノードのアナログ-デジタル変換器8を、それらのセンサノードのクロックデバイスの周波数がネットワークリンクを介したデータ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成するように構成されている。このようにして、磁気共鳴画像化システム1による位相コヒーレントなセンサデータ取得が、ロバストでコスト効率の高い手法で実現可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルシリアル通信ネットワークを有する磁気共鳴画像化システムであって、前記ネットワークは、
前記磁気共鳴画像化システムによる検査を受けている患者からの無線周波数信号を検出するための複数のセンサノードと、
ネットワークリンクを介して前記センサノードに接続され、前記センサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するためのホストノードであって、前記ネットワークリンクがノード間の一方向通信を利用するリングネットワークトポロジを用いて形成されている、前記ホストノードとを備え、
前記ホストノードは、前記ネットワークリンクに接続されている、前記ネットワークリンクを介してデータを受信するための受信機と、前記ネットワークリンクに接続されている、前記ネットワークリンクを介してデータを送信するための送信機とを備え、
前記センサノード各々が、前記検出された無線周波数信号を前記デジタルセンサデータに変換するためのアナログ-デジタル変換器と、前記ネットワークリンクに接続されて、前記ネットワークリンクを介してデータを受信するための受信機と、前記ネットワークリンクに接続されて、前記ネットワークリンクを介してデータを送信するための送信機と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニットとを備え、
前記ネットワークリンクを介した前記データ送信の周波数は、前記クロックデバイスの前記予め設定されたフリーラン周波数に対して固定された周波数に設定されており、
前記クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードの前記アナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードの前記クロックデバイスの周波数が前記ネットワークリンクを介した前記データ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成し、
前記ホストノードのリングに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号の位相の各ローカルクロック位相を調整することによって、動作条件に起因するクロック位相の変動が補償される、磁気共鳴画像化システム。
【請求項2】
前記各データ復元ユニットの前記クロックデバイスは、前記予め設定されたフリーラン周波数で動作する電圧制御発振器を有する位相ロックループ回路を備え、
前記クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードの前記アナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードの前記電圧制御発振器の前記周波数が前記ネットワークリンクを介した前記データ送信の前記周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、前記復元されたクロック信号を生成する、請求項1に記載の磁気共鳴画像化システム。
【請求項3】
前記センサノードの前記送信機は、前記ネットワークリンクを介して前記リングネットワーク内のそれぞれの次のノードに前記復元されたクロック信号を送信する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴画像化システム。
【請求項4】
前記ネットワークリンクを介した前記データ送信の前記周波数は、前記位相ロックループ回路の前記予め設定されたフリーラン周波数よりも高くなるように設定されている、請求項2又は3に記載の磁気共鳴画像化システム。
【請求項5】
前記ホストノードは前記ネットワークにクロック基準を提供するためのクロック基準ユニットを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気共鳴画像化システム。
【請求項6】
前記ホストノード及び前記センサノードは前記リングネットワークトポロジで配置されており、各センサノードはそれぞれの一方向デジタルシリアルサブリンクを介して他の2つのセンサノードに又は1つのセンサノード及び1つの前記ホストノードにリンクされている、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気共鳴画像化システム。
【請求項7】
ノード間の一方向通信を利用するリングネットワークトポロジを用いて形成されているデジタルシリアル通信ネットワークを備える磁気共鳴画像化システムを制御するための方法であって、前記方法は、
前記磁気共鳴システムによる検査を受けている患者からの無線周波数信号を複数のセンサノードで検出するステップと、
前記検出された無線周波数信号を、各センサノード内のそれぞれのアナログ-デジタル変換器でデジタルセンサデータに変換するステップと、
前記デジタルセンサデータを前記センサノードからホストノードに送信するステップと、
各センサノード内に、予め設定されたフリーラン周波数で動作するクロックデバイスを備えるそれぞれのクロック及びデータ復元ユニットを設けるステップと、
各センサノードにおいて、それぞれの前記クロックデバイスの周波数を前記データ送信の周波数にロックされるように調節することによってそれぞれの前記センサノードの前記アナログ-デジタル変換器を制御するための、復元されたクロック信号を生成するステップであって、前記データ送信の前記周波数は、前記クロックデバイスの前記予め設定された前記フリーラン周波数に対して固定された周波数に設定される、前記生成するステップと、
前記ホストノードのリングに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号の位相の各ローカルクロック位相を調整することによって、動作条件に起因するクロック位相の変動を補償するステップとを有する、方法。
【請求項8】
各データ復元ユニットの前記クロックデバイスは、前記予め設定されたフリーラン周波数で動作する電圧制御発振器を有する位相ロックループ回路を備え、前記方法は、
各電圧制御発振器の周波数を前記データ送信の周波数にロックされるように調節することによって、それぞれの前記アナログ-デジタル変換器を制御するための、前記復元されたクロック信号を生成するステップを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記復元されたクロック信号をセンサノードから前記ネットワーク内のそれぞれの次のノードに送信するステップを更に有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記データ送信の周波数は、前記位相ロックループ回路の前記予め設定されたフリーラン周波数よりも高くなるように設定されている、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホストノードから前記センサノードに前記ネットワーク用のクロック基準を提供するステップを更に有する、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ホストノード及び前記センサノードはリングネットワークトポロジで配置されており、各センサノードは他の2つのセンサノードに又は1つのセンサノード及び1つの前記ホストノードにリンクされている、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プロセッサ上で実行されると請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気共鳴画像化システムに請求項7から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令が保存されている、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
デジタルシリアル通信ネットワークを有する複数のセンサノードを備える無線周波数受信機アレイであって、前記ネットワークは、
磁気共鳴画像化システムによる検査を受けている患者からの無線周波数信号を検出するための複数のセンサノードと、
前記センサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するためのホストノードを前記センサノードに接続するためのネットワークリンクであって、ノード間の一方向通信を利用するリングネットワークトポロジで形成されている、前記ネットワークリンクとを備え、
前記ホストノードは、前記ネットワークリンクに接続されて、前記ネットワークリンクを介してデータを受信するための受信機と、前記ネットワークリンクに接続されて、前記ネットワークリンクを介してデータを送信するための送信機とを備え、
前記センサノード各々が、前記検出された無線周波数信号を前記デジタルセンサデータに変換するためのアナログ-デジタル変換器と、前記ネットワークリンクに接続されて、前記ネットワークリンクを介してデータを受信するための受信機と、前記ネットワークリンクに接続されて、前記ネットワークリンクを介してデータを送信するための送信機と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニットとを備え、
前記ネットワークリンクを介した前記データ送信の周波数は、前記クロックデバイスの前記予め設定されたフリーラン周波数に対して固定された周波数に設定されており、
前記クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードの前記アナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードの前記クロックデバイスの前記周波数が前記ネットワークリンクを介した前記データ送信の前記周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成し、
前記ホストノードのリングに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号の位相の各ローカルクロック位相を調整することによって、動作条件に起因するクロック位相の変動が補償される、無線周波数受信機アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像化(MRI)システム及び方法の分野に関し、特に、デジタルシリアル通信ネットワークを有する磁気共鳴画像化システム及びかかるシステムを制御するための対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRシステムはMR画像化システムと同様に、患者からの無線周波数(RF)信号を検出するための、センサノードとも呼ばれる複数の磁気ループアンテナ又はコイル要素を使用する。最新のMRシステムでは、受信されたRF信号は各センサノードで即座にデジタル化される。センサノードはデジタルデータをホストに送信し、そこでセンサデータはその後の処理及び画像再構成のために統合される。
【0003】
アーチファクトのない画像再構成のためには位相コヒーレントなMR信号取得が必要である。コイル要素の数が増えるにつれて位相コヒーレントな信号取得を維持することはますます困難になる。
【0004】
符号化されたシリアルビットストリームからクロック及びデータを復元するプロセスは、クロック及びデータ復元(CDR)と呼ばれる。従来のCDR回路は、入来クロックを捕捉するための初期周波数を提供するためにクロック基準を利用する。例えば、センサノードのローカルクロックを入来ビットストリームからのクロックにロックするために、CDR回路の位相ロックループ(PLL)が使用される。
【0005】
アーチファクトのない画像再構成を確実にするためには、個々のコイル要素によって取得される信号の相対位相を一定に維持しなければならないが、この状態は位相コヒーレンスと呼ばれる。これが、各センサノードのアナログ-デジタル変換器(ADC)のサンプリングクロックと、CDRが入来データから復元したクロックと高速読み出しで使用されるクロックとの間の制御された位相オフセットと、に関する、位相コヒーレンス要件へと解釈される。
【0006】
国際特許出願第WO2013/061272A1号から、カテーテル又はガイドワイヤなどの医療器具から高速リンクを介してデータを通信するために特に適用可能な、データ通信システム及び方法が知られている。このシステムは、制御可能なスレーブクロックを有するスレーブ構成要素と、スレーブクロック信号によってクロックされるデータ信号を送信するための送信機と、を備える。また更に、このシステムは、マスタークロック信号及びデータ信号を受信するとともにスレーブクロックをマスタークロックに合わせて調整するためのクロック制御信号を生成するクロック制御装置を有する、マスター構成要素を備える。その場合スレーブクロックは、例えば電圧制御発振器によって、少ないスペースとエネルギー要件で実現される。また更に、データ信号とクロック制御信号を交換するリンクは、2本の信号線だけで実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁気共鳴画像化システムによる位相コヒーレントなセンサデータ取得をロバストでコスト効率の高い手法で実現可能にすることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は独立請求項の主題によって対処される。従属請求項には本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【0009】
そこで本発明によれば、デジタルシリアル通信ネットワークを有する磁気共鳴画像化システムが提供され、ネットワークは、磁気共鳴画像化システムによる検査を受けている患者からの無線周波数信号を検出するための複数のセンサノードと、ネットワークリンクを介してセンサノードに接続され、センサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するためのホストノードとを備え、ホストノードは、ネットワークリンクに接続されて、ネットワークリンクを介してデータを受信するための受信機と、ネットワークリンクに接続されて、ネットワークリンクを介してデータを送信するための送信機とを備え、センサノード各々が、検出された無線周波数信号をデジタルセンサデータに変換するためのアナログ-デジタル変換器と、ネットワークリンクに接続されて、ネットワークリンクを介してデータを受信するための受信機と、ネットワークリンクに接続されて、ネットワークリンクを介してデータを送信するための送信機と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するように構成されているクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニットとを備え、ネットワークリンクを介したデータ送信の周波数は、クロックデバイスの予め設定されたフリーラン周波数に対して固定された周波数に設定され、クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードのアナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードのクロックデバイスの周波数がネットワークリンクを介したデータ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成するように構成されている。
【0010】
ここで、「クロック及びデータ復元ユニット」という用語に関する「それらのセンサノード」という用語は、それぞれのクロック及びデータ復元ユニットが属するセンサノードを意味する。したがって、クロック復元は、センサノードごとにそれぞれのセンサノード自体によって個別に実行される。クロック復元のための従来の解決法は、一般に水晶発振器の形態であるローカルクロック基準を必要とする。水晶発振器の使用はMR環境ではコストがかかり信頼性も低い。本発明によれば、各センサノードで入来データからクロックが復元されれば、ローカルクロック基準の使用を回避できる。したがって、本発明によれば、基準クロックを必要とせずに入力データストリームからクロックを直接復元できる、すなわち、各センサノードにおいて水晶発振器基準に頼ることなくローカルクロックをシステムクロックにロックできる、クロック及びデータ復元ユニットの使用が提案される。この場合、本発明に係るセンサネットワークはローカル又は外部クロック基準を使用しない。
【0011】
本発明の磁気共鳴画像化システムは、ノード間の一方向通信を利用する、センサノードとセンサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するホストノードとを有するリングネットワークトポロジで形成された、デジタルシリアル通信ネットワークを備えている。センサノードは各々がとりわけ、アナログ-デジタル変換器と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するように構成されているクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニットとを備える。クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードのアナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードのクロックデバイスの周波数がネットワークリンクを介したデータ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成するように構成されており、ホストノードのリングに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号の位相の各ローカルクロック位相を調整することによって、動作条件に起因するクロック位相の変動が補償される。
【0012】
この手法ではセンサノードは互いに同期していない場合があるが、全てのセンサノードが同じレートで動作するのを保証することが可能である。言い換えれば、センサノードが動作するときの位相差は、互いに対して固定されているが1つに定まってはいない。したがって、本発明によれば、プロセス、電圧、及び温度(PVT)の変動に起因する周波数の変動に対して、クロック復元が確実に動作することが保証される。ネットワークリンク上の送信遅延は一般にPVTの変動に伴って変動するため、これらの変動を補償することは、取得されるMR画像のアーチファクトを低減又は更には回避するのに役立つ。この点で本発明は、動作条件に起因するクロック位相の何らかの変動を、ホストノードのネットワークに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号位相の各ローカルクロック位相を調整することによって補償することを可能にする。
【0013】
本発明に係るデジタルシリアルリンクは、データの伝送に使用されるクロックの復元を可能にするための符号化スキームの使用を可能にする。復元されたクロックはその後、送信されたデータを確実に取り出すために使用される。そのようなデータ符号化を使用することで、クロック及びデータの両方を単一のシリアルビットストリームにおいて同じシリアルリンクを介して送信することが可能になる。
【0014】
一般に、センサノードのクロックユニットは様々な様式で設計され得る。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、各データ復元ユニットのクロックデバイスは、予め設定されたフリーラン周波数で動作する電圧制御発振器を有する位相ロックループ回路を備え、クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードのアナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードの電圧制御発振器の周波数がネットワークリンクを介したデータ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成するように構成される。本発明の好ましい実施形態によれば、位相ロックループ回路は、電圧制御発振器の下流に配置されたクロック分周器を備える。このことにより、位相ノイズを低減又は実装上の課題を軽減するために、高周波電圧制御発振器を使用することが可能になる。本発明のこの好ましい実施形態では、データ周波数は電圧制御発振器の周波数の何分の1かになる。
【0015】
更に、本発明の好ましい実施形態によれば、センサノードの送信機は、復元されたクロック信号を、ネットワークリンクを介してネットワーク内のそれぞれの次のノードに送信するように構成される。この点で、本発明の好ましい実施形態によれば、データをネットワーク内の次のノードに更に送信するために、「復元されたクロック」とも呼ばれる、入力クロックの正確に位相合わせされたバージョンが使用される。
【0016】
ネットワークリンクを介したデータ送信の周波数は様々な値に設定され得るが、本発明の好ましい実施形態によれば、ネットワークリンクを介したデータ送信の周波数は、位相ロックループ回路の予め設定されたフリーラン周波数よりも高くなるように設定される。更に、本発明の好ましい実施形態によれば、ホストノードは、ネットワーク用のクロック基準を提供するためのクロック基準ユニットを備える。
【0017】
本発明は、ノード間の一方向通信を利用する、センサノードとセンサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するホストノードとを有するリングネットワークトポロジを用いて形成されたデジタルシリアル通信ネットワークを有する、磁気共鳴画像化システムに関する。センサノードは各々がとりわけ、アナログ-デジタル変換器と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するように構成されているクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニットとを備える。クロック及びデータ復元ユニットは、それらのセンサノードのアナログ-デジタル変換器を、それらのセンサノードのクロックデバイスの周波数がネットワークリンクを介したデータ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成するように構成されており、ホストノードのリングに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号の位相の各ローカルクロック位相を調整することによって、動作条件に起因するクロック位相の変動が補償される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、ホストノード及びセンサノードはリングネットワークトポロジで配置されており、各センサノードは、それぞれの一方向デジタルシリアルサブリンクを介して、他の2つのセンサノードに、又は1つのセンサノード及び1つのホストノードにリンクされる。MRIスキャナのボアにおける配線は安全性及び信頼性を実現する観点からは非常に困難であるが、その理由は、ガルバニックケーブルの場合、MRIスキャナ内の強い磁場に適合する特別な設計手法が必要となるからである。ガルバニック配線に関連する問題は光接続を使用することで回避されるが、このことにより、消費電力、物理的サイズ、及びMR対応光送受信機の信頼性に起因するそれ自体の問題が生じる。典型的な従来のネットワークトポロジは、ネットワークノード間で双方向通信を行うスターネットワークである。一般には本発明にこの種のスターネットワークトポロジを用いてもよいが、ネットワーク配線の量が大幅に削減される、ノード間の一方向通信を利用するリングネットワークトポロジを用いるのがより好ましい。リングネットワークトポロジは、最小限のデータ及び電力配線の量でセンサネットワークを構築するための効率的な手法である。リングネットワークはまた更に、信号伝搬遅延の変動の検出及び補償を容易にする。
【0019】
本発明は、請求項14で規定するような、デジタルシリアル通信ネットワークを有する複数のセンサノードを備える無線周波数(RF)受信機アレイに更に関する。RF受信機アレイは磁気共鳴画像化システムにおいて、MR画像に基づいて検査されることになる患者から磁気共鳴信号を受信するために採用される場合がある。本発明のRF受信機アレイは、磁気共鳴画像化システムの構成要素であってもよく、又は磁気共鳴画像化システムを保守又はアップグレードする際の交換構成要素として採用されてもよい。本発明のRF受信機アレイはまたRF送信機能を備えて、RF送信機/受信機アレイを形成してもよい。
【0020】
更に、本発明によれば、デジタルシリアル通信ネットワークを備える磁気共鳴画像化システムを制御するための方法であって、以下の方法のステップ、すなわち:
磁気共鳴システムによる検査を受けている患者からの無線周波数信号を複数のセンサノードで検出するステップと、
検出された無線周波数信号を、各センサノード内のそれぞれのアナログ-デジタル変換器でデジタルセンサデータに変換するステップと、
デジタルセンサデータをセンサノードからホストノードに送信するステップと、
各センサノード内に、予め設定されたフリーラン周波数で動作するクロックデバイスを備えるクロック及びデータ復元ユニットを設けるステップと、
各センサノードにおいて、それぞれのクロックデバイスの周波数を前記データ送信の周波数にロックされるように調節することによってそれぞれのセンサノードのアナログ-デジタル変換器を制御するための、復元されたクロック信号を生成するステップであって、データ送信の周波数は、クロックデバイスの予め設定されたフリーラン周波数に対して固定された周波数に設定される、生成するステップとを有する方法が提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、各データ復元ユニットのクロックデバイスは、予め設定されたフリーラン周波数で動作する電圧制御発振器を有する位相ロックループ回路を備え、方法は以下の方法のステップ、すなわち:
各電圧制御発振器の周波数をデータ送信の周波数にロックされるように調節することによってそれぞれのアナログ-デジタル変換器を制御するための、復元されたクロック信号を生成するステップを有する。
【0022】
更に、方法は以下の方法のステップ、すなわち:
復元されたクロック信号をセンサノードからネットワーク内のそれぞれの次のノードに送信するステップを更に有することが好ましい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、データ送信の周波数は、位相ロックループ回路の予め設定されたフリーラン周波数よりも高くなるように設定される。
【0024】
更に、本発明の好ましい実施形態によれば、方法は以下の方法のステップ、すなわち:
ホストノードからセンサノードにネットワーク用のクロック基準を提供するステップを有する。
【0025】
本発明はまた、プロセッサ上で実行されると上記したような磁気共鳴画像化システムに上記したような方法を実行させる命令が保存されている、非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【0026】
本発明のこれらの及び他の態様は以下に記載する実施形態から明らかになり、これらを参照して説明されることになる。ただしそのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表しているとは限らず、したがって本発明の範囲を解釈するために、特許請求の範囲に対して及び本明細書において、参照を行う。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る磁気共鳴画像化システムのデジタルシリアル通信ネットワークの概略図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る磁気共鳴画像化システムのデジタルシリアル通信ネットワークのセンサノードのクロック及びデータ復元ユニットの概略図である。
図3】プロセスの変動を克服するための本発明の好ましい実施形態に係る周波数ロックスキームを示す図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係る磁気共鳴画像化システムのデジタルシリアル通信ネットワークのホストノードの概略図である。
図5】本発明の別の好ましい実施形態に係る磁気共鳴画像化システムのデジタルシリアル通信ネットワークのセンサノードのクロック及びデータ復元ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、リングネットワークトポロジを有するデジタルシリアル通信ネットワーク2を有する本発明の好ましい実施形態に係る磁気共鳴画像化システム1が描かれている。ネットワーク2は、磁気共鳴画像化システム1による検査を受けている患者(図示せず)からの無線周波数信号を検出するための複数のセンサノード3を備える。更に、ネットワーク2は、ネットワークリンク5を介してセンサノード3に接続されている、センサノードから受信したデジタルセンサデータを統合し処理するためのホストノード4を備える。本明細書に記載されている本発明の好ましい実施形態によれば、各センサノード3は、ネットワークリンク5のそれぞれの一方向デジタルシリアルサブリンク20を介して、他の2つのセンサノード3に、又は1つのセンサノード3及び1つのホストノード4にリンクされる。このようなリングネットワークトポロジでは、センサノード3のアレイを接続するのに必要なケーブルの数及び長さが大幅に削減される。各センサノード3は、他の2つのセンサノード3に、又は1つのセンサノード3及び1つのホストノード4にリンクされている。ネットワークリンク5は、リング内の全てのセンサノード3のセンサデータを同時にホストノード4へ伝送するのに十分な帯域幅を有し、データはホストノード4において更に処理される。
【0029】
図4に描かれているように、ホストノード4は、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを受信するための受信機6と、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを送信するための送信機7とを備える。更に、ホストノード4は、センサノード3から受信したデータを統合し処理するための処理ユニット17と、ネットワーク2用のクロック基準を提供するためのクロック基準ユニット18とを備える。
【0030】
図1から見て取れるように、センサノード3は各々が、検出された無線周波数信号をデジタルセンサデータに変換するためのアナログ-デジタル変換器8と、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを受信するための受信機9と、ネットワークリンク5に接続されて、ネットワークリンク5を介してデータを送信するための送信機10と、予め設定されたフリーラン周波数で動作するように構成されているクロックデバイスを有するクロック及びデータ復元ユニット11とを備える。
【0031】
本明細書に記載する本発明の好ましい実施形態の適用には、サンプリングプロセスが全てのセンサノード3にわたって同期していること、すなわち、患者から取得した無線周波数信号が位相コヒーレントであることが必要である。このことは本明細書に記載する本発明の好ましい実施形態によれば、全てのアナログ-デジタル変換器8のクロックが位相ロックされることを保証することによって実現される。動作条件に起因するクロック位相の何らかの変動が、ホストノード4のリングに沿った伝搬遅延の変動を検出し、取得した信号位相の各ローカルクロック位相を調整することによって補償される。
【0032】
図2に描かれているように、各データ復元ユニット11のクロックデバイスは、予め設定されたフリーラン周波数で動作するように構成されている電圧制御発振器13、位相検出器14、チャージポンプ15、及びループフィルタ16を有する位相ロックループ回路12と、データ再クロックユニット19とから構成されている。更に、ネットワークリンク5を介したデータ送信の周波数は、電圧制御発振器13のこの予め設定されたフリーラン周波数に対して固定された周波数に設定されている。また更に、クロック及びデータ復元ユニット11は、それらのセンサノード3のアナログ-デジタル変換器8を、それらのセンサノード3のクロックデバイスの周波数がネットワークリンク5を介したデータ送信の周波数へとロックされるように調節することによって制御するための、復元されたクロック信号を生成するように構成されている。この点で、入来データストリームは、位相検出器14に位相及び周波数の情報を提供する。位相検出器14は、これを電圧制御発振器13の分周された出力信号と比較する。閉ループ制御により入来クロックへの位相及び周波数のロックが保証される。復元されたクロックはその後、再クロックデータブロックにおいて受信されたデータストリームを確実にサンプリングするために使用される。本明細書に記載する本発明の好ましい実施形態によれば、このことは、位相ロックループ回路12の電圧制御発振器13のデフォルトのフリーラン周波数に対して固定された既知の周波数で動作するようにネットワークリンク5を動作させることによって達成される。
【0033】
したがって、各センサノード3は、それらのそれぞれのクロック及びデータ復元ユニット11による、ローカルのクロック及びデータ復元機能を備える。クロック及びデータ復元ユニット11は、水晶発振器又は基準発振器の形態のローカル基準なしに、ネットワークリンク5からクロックを復元することができる。この点でネットワークリンク速度は、フリーランモードにおける電圧制御発振器13のローカル周波数よりも高くなるように選択される。クロック及びデータ復元ユニット11において、電圧制御発振器13のローカル周波数が入来データの周波数にロックされるように調節され、その場合、各センサノード3では、アナログ-デジタル変換器8を及び任意選択的に追加のデジタルロジックをクロックするために、復元されたクロックがローカルで使用される。更に、データ再クロックユニット19によってリング内の次のセンサノード3にデータを更に送信するために、入力クロックの正確に位相合わせされたバージョン、いわゆる復元されたクロックが使用される。
【0034】
図3は、位相ロックループ回路12の電圧制御発振器13のフリーラン周波数を、プロセス、電圧、及び温度(PVT)の変動に起因する位相ロックループ回路12の電圧制御発振器13の周波数の変動に対して、クロック復元が確実に動作することを保証するように構成するための技術を示す。線形位相検出器は本質的に片側ロック特性を有することが知られている。位相ロックループ回路12の電圧制御発振器13の初期周波数(fvco(0))が入力データ周波数(fdata)よりも低い場合、閉ループのクロック及びデータ復元ユニット11は、あらゆる条件下で周波数及び位相のロックを得ることができる。電圧制御発振器13の初期フリーラン周波数は、この条件に適合するように設計によって設定することができる。この技術を使うことで、信頼性の高い動作、つまり設計による周波数及び位相のロックが可能になる。この特徴に加えて、この技術とアーキテクチャは、周波数と位相のロックを得るために単一のループを使用し、周波数ロックのための追加のループを必要としない。周波数ロックのためのそのような追加のループが必要ないためこの設計は単純なものになる。
【0035】
図5には、位相ロックループ回路12が電圧制御発振器13の下流に配置されているクロック分周器21を備える、本発明の別の好ましい実施形態が示されている。このことにより、位相ノイズを低減又は実装上の課題を軽減するために、電圧制御発振器13により高い周波数を使用することが可能になる。本発明のこの好ましい実施形態では、データ周波数は電圧制御発振器13の周波数の何分の1かになる。
【0036】
本発明について図面及び前述の説明において詳しく図示し説明してきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であって制限的ではないと見なすべきであり、本発明は開示されている実施形態に限定されない。特許請求される本発明の実施に際して、当業者は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、開示されている実施形態の他の変形形態を理解及び実現することができる。請求項において、単語「備える、含む、有する」は他の要素又はステップを除外せず、単数形の要素は複数を除外しない。特定の手法が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手法の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、明確さのために、図面中の全ての要素に参照符号を付してあるとは限らない場合がある。
【符号の説明】
【0037】
1 磁気共鳴画像化システム
2 デジタルシリアル通信ネットワーク
3 センサノード
4 ホストノード
5 ネットワークリンク
6 ホストノードの受信機
7 ホストノードの送信機
8 アナログ-デジタル変換器
9 センサノードの受信機
10 センサの送信機
11 クロック及びデータ復元ユニット
12 位相ロックループ回路
13 電圧制御発振器
14 位相検出器
15 チャージポンプ
16 ループフィルタ
17 処理ユニット
18 クロック基準ユニット
19 データ再クロックユニット
20 サブリンク
21 クロック分周器
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】