(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】臓器における非侵襲的脂肪組成測定のためのオープンNMR装置を使用するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 376
A61B5/055 331
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555155
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022019817
(87)【国際公開番号】W WO2022192581
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523340683
【氏名又は名称】リヴィヴォス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】プラド パブロ ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ブッサンドリ アレハンドロ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA07
4C096AC05
4C096BA05
4C096BA07
4C096CA16
4C096DA30
(57)【要約】
非侵襲的健康測定システムを使用して関心臓器の脂肪組成を決定するためのシステム及び方法が提供される。非侵襲的健康測定システムは、オープンマグネットNMR装置を含み得る。NMR装置は、患者の感受性体積内のNMR信号を測定し得る。感受性体積は、肝臓などの関心臓器と一致し得る。本明細書に開示されるシステム及び方法は、測定されたNMR信号に対する水寄与及び脂肪寄与の分離を提供し得る。拡散ベースの分離、T
2ベースの分離、及びT
1ベースの分離は、それぞれ、信号への水及び脂肪の寄与を分離するための異なる方法として役立ち得る。単一への水及び脂肪の寄与を分離することは、関心臓器の脂肪組成を反映し得るプロトン密度脂肪分率の計算を可能にし得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非侵襲的健康測定システムであって、
臓器を含む物質の原子核によって生成されたNMR応答信号を取得するためのオープンマグネット核磁気共鳴(「NMR」)装置であって、前記NMR応答信号が脂肪寄与信号及び水寄与信号を含む、オープンマグネット核磁気共鳴装置と、
プロセッサと、
前記プロセッサに通信可能に結合され、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記オープンマグネットNMR装置を用いて、磁場勾配の存在下で高周波(「RF」)パルスを前記臓器に送信させ、
前記NMR応答信号を取得させ、
水及び脂肪の拡散係数の差に基づいて、前記NMR応答信号に対する水及び脂肪の寄与を分離させて、前記臓器の水及び脂肪の組成を決定させる、命令を記憶するメモリと、を備える、システム。
【請求項2】
前記水及び脂肪の拡散係数に基づいて前記水及び脂肪信号の寄与を分離することが、
拡散時間によるNMR信号振幅依存性を測定することと、
拡散時間による測定されたNMR信号振幅依存性を使用して、脂肪及び水の寄与の振幅及び拡散係数を決定することと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水及び脂肪の拡散係数に基づいて前記水及び脂肪信号の寄与を分離することが、前記決定された振幅に基づいてプロトン密度脂肪分率(「PDFF」)を計算することをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記脂肪の拡散係数が既知であり、前記水及び脂肪の拡散係数に基づいて前記水及び脂肪信号の寄与を分離することが、前記既知の脂肪の拡散係数に基づいて前記脂肪の振幅を計算するために高いb値を使用して前記水の振幅を抑制することによってPDFFを計算することをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
脂肪プロトン緩和時間(T
2f)を測定することをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
脂肪プロトン緩和時間(T
2f)を測定することが、
前記水の寄与を抑制するために高いb値において拡散符号化NMR測定を実行することと、
前記拡散符号化NMR測定の単一指数フィットに基づいて脂肪緩和時間(T
2f)を計算することと、を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
拡散時間によって前記NMR信号振幅依存性を測定することが、
様々なb値において拡散符号化NMR測定を実行することと、
各b値において前記NMR信号に二重指数フィットを実行することと、
前記二重指数フィットに基づいて各b値における前記NMR信号の振幅を計算することと、を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記脂肪及び水の振幅及び拡散係数を決定することが、
拡散時間による総測定信号振幅依存性に二重指数フィットを実行することと、
前記二重指数フィットに基づいて前記水及び脂肪の寄与の前記振幅を計算することと、
前記二重指数フィットに基づいて前記水及び脂肪の拡散係数を計算することと、を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記臓器が肝臓である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記臓器がヒト患者の肝臓である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記NMR装置が、前記ヒト患者が横たわっている間に前記ヒト患者に適用される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記NMR装置が患者に適用され、前記NMR装置が前記患者の位置決めをガイドするためのバンドを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記バンドがエラストマーバンドを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記NMR装置によって実行される前記NMR信号測定の精度が、
前記NMR装置を患者に適用することと、
前記NMR装置の配置に対して前記患者を横方向に移動させることと、
前記NMR装置によってNMR信号測定を実行することと、
前記患者位置の前記精度を決定するために前記信号測定の振幅を評価することとによって評価される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
非侵襲的健康測定システムであって、
臓器を含む物質の原子核によって生成されたNMR応答信号を取得するためのオープンマグネット核磁気共鳴(「NMR」)装置であって、前記NMR応答信号が脂肪寄与信号及び水寄与信号を含む、オープンマグネット核磁気共鳴装置と、
プロセッサと、
前記プロセッサに通信可能に結合され、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記オープンマグネットNMR装置を用いて、磁場勾配の存在下で高周波(「RF」)パルスを前記臓器に送信させ、
前記NMR応答信号を取得させ、
それらのスピン-スピン(「T
2」)緩和時間に基づいて前記水及び脂肪信号の寄与を分離させる、命令を記憶するメモリと、を備える、システム。
【請求項16】
前記水及び脂肪信号の寄与をそれらのT
2緩和時間に基づいて分離することが、
Carr-Purcell-Meiboom-Gill(「CPMG」)時系列を収集することと、
前記CPMG時系列に二重指数最小二乗フィットを実行することと、
前記フィットに基づいて、前記脂肪信号の寄与及び前記水信号の寄与の振幅を計算することと、を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
拡散効果を最小限に抑えるために短いエコー時間が使用される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記水及び脂肪信号の寄与をそれらのT
2緩和時間に基づいて分離することが、T
1に基づいて前記水信号を抑制することによって前記脂肪プロトンについての前記T
2緩和時間を測定することを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記水及び脂肪信号の寄与をそれらのT
2緩和時間に基づいて分離することが、拡散係数を抑制することによって前記脂肪プロトンについての前記T
2緩和時間を測定することを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
非侵襲的健康測定システムであって、
臓器を含む物質の原子核によって生成されたNMR応答信号を取得するためのオープンマグネット核磁気共鳴(「NMR」)装置であって、前記NMR応答信号が脂肪寄与信号及び水寄与信号を含む、オープンマグネット核磁気共鳴装置と、
プロセッサと、
前記プロセッサに通信可能に結合され、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記オープンマグネットNMR装置を用いて、磁場勾配の存在下で高周波(「RF」)パルスを前記臓器に送信させ、
前記NMR応答信号を取得させ、
それらのスピン格子(「T
1」)緩和時間に基づいて前記水及び脂肪信号の寄与を分離させる、命令を記憶するメモリと、を備える、システム。
【請求項21】
前記水及び脂肪信号の寄与をそれらのT
1緩和時間に基づいて分離することが、
様々なリサイクル遅延(「rd」)を使用してエコー列を収集することであって、前記エコー列が最短T
2値よりもはるかに短い、収集することと、
rdの値の範囲にわたってNMR信号振幅を測定することと、
前記測定された信号振幅の二重指数フィットを実行することと、
前記二重指数フィットに基づいて、T
2値とは無関係に、水及び脂肪についての信号振幅値を決定することと、
前記二重指数フィットに基づいて、T
2値とは無関係に、水及び脂肪についてのT
1緩和時間を決定することと、を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項22】
前記T
1緩和時間に基づいて前記水及び脂肪信号の寄与を分離することが、
T
1fを計算することであって、
様々なrd値においてNMR信号測定を行い、エコーを加算することと、
NMR拡散符号化シーケンスを適用して前記水寄与を抑制することと、
前記測定値に対して単一指数フィットを実行することと、
前記単一指数フィットに基づいてT
1fを計算することと、を含む、計算することと、
T
1wを別個に計算することであって、
様々なrd値において拡散符号化を用いて単一のエコーを収集することと、
T
1wがT
1fよりもはるかに大きくなるにつれて前記脂肪の寄与が効果的に一定になるように、T
1fよりもはるかに大きいrd値を設定することと、
前記測定値に対して単一指数フィットを実行することと、
前記単一指数フィットに基づいてT
1wを計算することと、を含む、計算することと、を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月10日に出願された米国仮出願第63/159,346号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、非侵襲的診断システム及び方法に関し、特に、いくつかの実装は、脂肪及び水の濃度並びに肝臓などの内臓における脂肪及び水の拡散係数を決定するための非侵襲的診断システム及び方法に関し得る。
【背景技術】
【0003】
臓器中の脂肪の量を決定することは、疾患及び他の健康状態の診断及び処置に重要である。特に、肝臓の脂肪組成の有害な変化を検出することが、より良好な健康転帰につながる疾患の早期診断及び処置を可能にし得るため、肝臓は、そのような情報が有益な臓器である。肝臓の脂肪含有量を評価することは、脂肪肝、肝硬変、がん、及び他の健康状態のような疾患の進行を含む特定の健康リスクを診断及び決定するのを助けることができる。また、疾患の検出がなくても、肝臓の脂肪組成は、全体的な健康状態を示すことができ、したがって重要な測定値である。
【0004】
MRIなどの肝臓の脂肪含有量を評価するための従来の方法は、高価であり、多くの空間を必要とし、患者にとって非常に不快である可能性がある。他の方法は、低い精度をもたらすことがある。これらの理由から、肝臓の脂肪組成のモニタリングは、通常の予防医療の一部ではなく、肝臓の脂肪含有量に関連する健康状態の診断は、進行した疾患進行まで行われないことが多い。肝臓脂肪組成の変化の早期モニタリングは、患者の早期の介入及び処置、並びにより良好な転帰を可能にする。脂肪含有量の正確な測定は、経時的な処置有効性の決定を可能にする。
【発明の概要】
【0005】
非侵襲的健康測定システムのためのシステム及び方法が開示される。非侵襲的健康測定システムは、オープンマグネット核磁気共鳴(「NMR」)装置を含み得る。NMR装置は、臓器を含む物質の原子核によって生成されたNMR応答信号を取得し得る。NMR応答信号は、脂肪寄与信号及び水寄与信号を含み得る。システムは、プロセッサと、プロセッサに通信可能に結合されたメモリとを含み得る。メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、磁場勾配の存在下で無線周波数(「RF」)パルスをオープンマグネットNMR装置によって臓器に送信させる命令を記憶し得る。命令は、さらに、プロセッサに、NMR応答信号を取得させ得る。命令は、さらに、プロセッサに、水及び脂肪の拡散係数の差に基づいてNMR応答信号への水及び脂肪の寄与を分離させて、臓器の水及び脂肪の組成を決定させ得る。
【0006】
実施形態では、水及び脂肪の拡散係数に基づいて水及び脂肪信号の寄与を分離することは、拡散時間によるNMR信号振幅依存性を測定することを含み得る。水及び脂肪の拡散係数に基づいて水及び脂肪信号の寄与を分離することはまた、拡散時間による測定されたNMR信号振幅依存性を使用して、脂肪及び水の寄与の振幅及び拡散係数を決定することを含み得る。実施形態では、臓器の水及び脂肪組成を決定することは、決定された振幅に基づいてプロトン密度脂肪分率(「PDFF」)を計算することを含み得る。
【0007】
実施形態では、脂肪の拡散係数は、既知であり得る。臓器の水及び脂肪組成を決定することは、既知の脂肪の拡散係数に基づいて脂肪の振幅を計算するために高いb値を使用して水の振幅を抑制することによってPDFFを計算することを含み得る。
【0008】
実施形態では、非侵襲的健康測定システムのための命令は、さらに、プロセッサに、脂肪プロトン緩和時間(T2f)を測定させ得る。脂肪プロトン緩和時間(T2f)を測定することは、水の寄与を抑制するために高いb値において拡散符号化NMR測定を実行することと、拡散符号化NMR測定の単一指数フィットに基づいて脂肪緩和時間(T2f)を計算することと、を含み得る。
【0009】
実施形態では、拡散時間によってNMR信号振幅依存性を測定することは、様々なb値において拡散符号化NMR測定を実行することと、各b値においてNMR信号に二重指数フィットを実行することと、二重指数フィットに基づいて各b値においてNMR信号の振幅を計算することと、を含み得る。
【0010】
実施形態では、脂肪及び水の振幅係数及び拡散係数を決定することは、経時的に総測定信号振幅依存性に対して二重指数フィットを実行することと、二重指数フィットに基づいて水及び脂肪の寄与の振幅を計算することと、二重指数フィットに基づいて水及び脂肪の寄与の拡散係数を計算することと、を含み得る。
【0011】
非侵襲的健康測定システムの実施形態では、臓器は、肝臓であり得る。臓器は、ヒト患者の肝臓であり得る。本システムの実施形態では、NMR装置は、ヒト患者が横になっている間にヒト患者に適用され得る。システムの実施形態では、NMR装置は、患者に対する装置の位置決めをガイドするためのバンドを含み得る。バンドは、エラストマーバンドであってもよい。
【0012】
システムの実施形態では、NMR装置を患者に適用し、NMR装置の配置に対して患者を横方向に移動させ、NMR装置を用いてNMR信号測定を実行し、信号測定の振幅を評価して患者の位置の精度を決定することによって、NMR装置によって実行されるNMR信号測定の精度が評価され得る。
【0013】
実施形態では、非侵襲的健康測定システムは、オープンマグネット核磁気共鳴(「NMR」)装置を含み得る。NMR装置は、臓器を含む物質の原子核によって生成されたNMR応答信号を取得し得る。NMR応答信号は、脂肪寄与信号及び水寄与信号を含み得る。システムは、プロセッサと、プロセッサに通信可能に結合されたメモリとを含み得る。メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、磁場勾配の存在下で無線周波数(「RF」)パルスをオープンマグネットNMR装置によって臓器に送信させる命令を記憶し得る。命令は、さらに、プロセッサに、NMR応答信号を取得させ得る。命令は、さらに、プロセッサに、それらのスピン-スピン(「T2」)緩和時間に基づいてNMR応答信号への水及び脂肪の寄与を分離させて、臓器の水及び脂肪の組成を決定させ得る。
【0014】
水及び脂肪信号の寄与をそれらのT2緩和時間に基づいて分離する非侵襲的健康測定システムの実施形態では、Carr-Purcell-Meiboom-Gill(「CPMG」)時系列を収集することと、CPMG時系列に二重指数最小二乗フィットを実行することと、フィットに基づいて脂肪信号の寄与及び水信号の寄与の振幅を計算することと、を含み得る。実施形態では、拡散効果を最小限に抑えるために短いエコー時間が使用され得る。
【0015】
非侵襲的健康測定システムの実施形態では、水及び脂肪信号の寄与をそれらのT2緩和時間に基づいて分離することは、T1に基づいて水信号を抑制することによって脂肪プロトンについてのT2緩和時間を測定することを含み得る。別の実施形態では、水及び脂肪信号の寄与をそれらのT2緩和時間に基づいて分離することは、拡散係数を抑制することによって脂肪プロトンについてのT2緩和時間を測定することを含み得る。
【0016】
実施形態では、非侵襲的健康測定システムは、オープンマグネット核磁気共鳴(「NMR」)装置を含み得る。NMR装置は、臓器を含む物質の原子核によって生成されたNMR応答信号を取得し得る。NMR応答信号は、脂肪寄与信号及び水寄与信号を含み得る。システムは、プロセッサと、プロセッサに通信可能に結合されたメモリとを含み得る。メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、磁場勾配の存在下で無線周波数(「RF」)パルスをオープンマグネットNMR装置によって臓器に送信させる命令を記憶し得る。命令は、さらに、プロセッサに、NMR応答信号を取得させ得る。命令は、さらに、プロセッサに、それらのスピン格子(「T1」)緩和時間に基づいてNMR応答信号への水及び脂肪の寄与を分離させ得る。
【0017】
非侵襲的健康測定システムの実施形態では、水及び脂肪信号の寄与をそれらのT1緩和時間に基づいて分離することは、様々なリサイクル遅延(「rd」)を使用してエコー列を収集することであって、エコー列が最短T2値よりもはるかに短い、収集することと、rd値の範囲にわたってNMR信号振幅を測定することと、測定された信号振幅の二重指数フィットを実行することと、二重指数フィットに基づいて、T2値とは無関係に、水及び脂肪についての信号振幅値を決定することと、二重指数フィットに基づいて、T2値とは無関係に、水及び脂肪についてのT1緩和時間を決定することと、を含み得る。
【0018】
非侵襲的健康測定システムの実施形態では、水及び脂肪信号の寄与をそれらのT1緩和時間に基づいて分離することは、T1fを計算し、T1wを別個に計算することを含み得る。T1fを計算することは、様々なrd値においてNMR信号測定を実行し、エコーを加算することと、NMR拡散符号化シーケンスを適用して水の寄与を抑制することと、測定値に単一指数フィットを実行することと、単一指数フィットに基づいてT1fを計算することと、を含み得る。T1wを別個に計算することは、様々なrd値において拡散符号化を用いて単一のエコーを収集することと、T1wがT1fよりもはるかに大きくなるにつれて脂肪の寄与が効果的に一定になるようにT1fよりもはるかに大きいrd値を設定することと、測定値に対して単一指数フィットを実行することと、単一指数フィットに基づいてT1wを計算することと、を含み得る。
【0019】
本開示の他の特徴及び態様は、様々な実施形態にかかる特徴を例として示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。概要は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書に開示される技術は、1つ又は複数の様々な実施形態にしたがって、以下の図を参照して詳細に説明される。図面は、例示のみを目的として提供されており、単に開示された技術の典型的又は例示的な実施形態を示す。これらの図面は、開示された技術の読者の理解を容易にするために提供され、その広がり、範囲、又は適用性を限定すると見なされるべきではない。説明を明確かつ容易にするために、これらの図面は、必ずしも縮尺通りに作成されていないことに留意されたい。
【0021】
【
図1】本明細書に開示されるシステム及び方法にかかる非侵襲的健康測定システムの一部としての核磁気共鳴(「NMR」)装置の例である。
【0022】
【
図2】本明細書に開示されるシステム及び方法にかかるスタンドアロンNMR装置の例である。
【0023】
【
図3】本明細書に開示されたシステム及び方法の実施形態にしたがってPDFF及び拡散係数がどのように計算され得るかを示すフロー図の例である。
【0024】
【
図4】本明細書に開示されるシステム及び方法の実施形態にしたがって水及び脂肪信号がどのように分離され得るかを示すフロー図の例である。
【0025】
【
図5】本明細書に開示されるシステム及び方法の実施形態にしたがって水及び脂肪信号がどのように分離され得て、水及び脂肪のT
1がどのように測定され得るかを示すフロー図の例である。
【0026】
【
図6A】本明細書に開示されるシステム及び方法の実施形態にかかる、NMR拡散符号化シーケンスを使用してT
1fが計算されて水信号を抑制し、脂肪信号のみを測定し得る実施形態を示すフロー図の例である。
【0027】
【
図6B】T
1wが計算され得る実施形態を示すフロー図の例を示している。
【0028】
【
図7】本開示に記載された実施形態の様々な特徴を実装するために使用され得る例示的なコンピューティング構成要素である。
【0029】
図面は、網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。本発明は、変更及び代替によって実施されることができ、開示された技術は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書に記載のシステム及び方法は、臓器中の脂肪の濃度を測定するための非侵襲的診断技術に関する。関心臓器は、肝臓であり得る。システム及び方法は、非侵襲的であり、携帯可能であり、比較的安価であり、既存の診断技術を超える利点を正確に提供し得る。
【0031】
非侵襲的健康測定システムは、NMR装置を含み得る。NMR装置は、オープンマグネットNMR装置であり得る。実施形態では、NMR装置は、スタンドアロン医療機器であってもよい。NMR装置は、患者に対して位置決めされてもよい。NMR装置は、患者内の感受性体積からNMR信号を収集することによって、関心臓器の脂肪組成を測定し得る。感受性体積は、肝臓などの患者の関心臓器内への所望の深さに対応し得る。スタンドアロンNMR装置は、他のデバイスに通信可能に結合されて、医療結果の処理及び送信を可能にし得る。例えば、NMR装置は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、遠隔制御デバイス、又は他のインターフェースなどのユーザインターフェースに通信可能に結合され得る。
【0032】
オープンマグネットNMR装置は、プローブが片側性又はオープンであることを意味し得る。プローブは、MRI測定の場合のように、患者を完全に取り囲む必要はない。むしろ、オープンマグネットNMRプローブは、患者の関心領域に近接して及び/又はそれに当接して配置されてもよい。オープンマグネットNMRプローブは、プローブの境界の外側又は内側のいずれかの関心領域内の患者内に感受性体積を生成し得る。
【0033】
NMR装置は、以下のように測定を実行し得る。感受性体積内のプロトン及び/又は水素のプロトン、スピン軸などの他の原子核は、磁場と整列し得る。原子核のスピン整列は、無線周波数(「RF」)パルス又は一連のRFパルスによって原子核を励起することによって変更され得る。RFパルスは、感受性体積内の組織に存在する水素プロトンを励起するために感受性体積内で送達され得る。スピンする核酸は、RFパルスが送達されるときに磁場に対するそれらの好ましい整列からノックアウトされ得る。次いで、励起された原子核は、磁場に再整列し得る。励起された原子核が再整列すると、それらは、RF信号を放射し得る。この放射されたRF信号は、NMR応答信号である。NMR応答信号は、NMR装置内のRF受信機によって検出され得る。NMR応答信号は、感受性体積内の組織及び物質の特性及び/又は組成に関する情報を提供し得る。
【0034】
具体的には、感受性体積が肝臓のような脂肪組織から構成された臓器である場合、肝臓の脂肪含有量は、NMR応答信号に基づいて決定され得る。肝臓中の脂肪中のプロトンからの信号は、プロトンNMRスペクトル、拡散係数、T1又はT2に基づいて、肝臓中の水からの信号から分離され得る。したがって、総NMR信号が測定され得て、脂肪中のプロトン及び肝臓中の水中のプロトンからの信号からの寄与を含み得る。プロトンは、水及び脂肪に豊富である。
【0035】
図1は、非侵襲的健康測定システムの一部としてのNMR装置100の例を示している。
図1に示すように、NMR装置100は、ガーニー106に載置されている。ヒト患者104は、それらの右側のガーニー106に横たわっている。NMR装置100は、患者の腹部領域の下方に配置される。NMR装置100は、患者の胸骨と位置合わせされてもよい。NMR装置100は、NMR装置上での患者の位置決めをガイドするために患者104に取り付けられ得るバンド又はストラップを含み得る。NMR装置100は、他の医療器具102及び/又はユーザインターフェースに通信可能に結合され得る。NMR装置100は、患者104内の感受性体積108からNMR信号を収集することによって、関心のある患者104内の臓器の脂肪組成を測定するように構成され得る。感受性体積108は、患者の肝臓などの患者104の関心臓器内への所望の深さに対応し得る。
図2は、スタンドアロンNMR装置100の例を示している。実施形態では、NMR装置は、病院のベッドに組み込まれてもよい。
【0036】
実施形態では、NMR装置の信号の精度は、患者配置を変更することによって評価され得る。患者は、NMR装置に対して横方向に移動するように求められ得る。例えば、患者は、患者の頭部が位置するガーニーの上部に向かって約2インチ移動するか及び/又は移動されるように求められ得る。次いで、NMR装置は、感受性体積中のNMR信号の試験測定を実行し得る。患者が正しく配置されていない場合、信号の振幅は、脂肪プロトンと一致する拡散駆動応答にしたがい得るが、信号振幅は、肝脂肪モデル予測よりも高くなり得る。したがって、予想よりも高い信号振幅は、患者がNMR装置に対して正確に配置されていないことを示し得る。
【0037】
プロトン密度脂肪分率(「PDFF」)は、臓器の脂肪含有量測定のパラメータであり得る。実施形態では、臓器は、肝臓であり得る。PDFFは、総NMR信号振幅に対する脂肪プロトンNMR信号の振幅の比であり得る。脂肪プロトンNMR信号振幅は、単位体積当たりの脂肪プロトンの数に比例し得る。総NMR信号振幅は、単位体積当たりの水及び脂肪プロトンに比例し得る。PDFFは、以下のように表され得る:
【数1】
【0038】
水及び脂肪信号の識別は、異なるパラメータに基づいて信号応答を分離することによって達成され得る。例えば、異なるパラメータは、プロトン緩和時間、分光応答、緩和時間、及び拡散を含み得る。
【0039】
実施形態では、PDFFに加えて拡散係数及び緩和時間が測定され得る。拡散及び緩和時間情報は、液滴サイズ及び線維症と相関し得る。本明細書に記載のシステム及び方法にかかる収集されたデータへのフィッティングは、拡散定数及び緩和時間の新たな値を提供し得て、拡散定数とT1との間に線維症と相関し得る剛性及び/又は腫脹との相関があり得るため、ひいては他の肝臓診断用途に使用され得る。したがって、本明細書に開示される方法及びデバイスを使用して拡散定数を得ることは、さらなる臨床的価値を提供し得る。
【0040】
拡散ベースの分離の実施形態
水及び脂肪信号は、それらの拡散係数に基づいて分離され得る。水及び脂肪の拡散係数は、大幅に異なる場合があり、この方法は、水及び脂肪信号を分離するのに有効であり得る。脂肪信号を観察しながら水信号を抑制することができる場合がある。水の拡散係数は、脂肪の拡散係数よりも10倍程度高くあり得る。したがって、水プロトン及び脂肪プロトンからのNMR信号の明確な分離が達成され得る。信号は、磁場勾配の存在下で測定を実行することによって区別され得る。例えば、異なるパルス間間隔を有するCarr-Purcell-Meiboom-Gill(「CPMG」)パルスシーケンスが使用され得る。拡散符号化準備段階を有するCPMGシーケンスも使用され得る。RFパルス及び信号チャネルの位相サイクルが実行されて、不要なスプリアス信号を除去し得る。
【0041】
様々な拡散符号化時間に対する信号振幅は、水及び脂肪プロトンに対する拡散係数を考慮してモデル化されることができる。磁場勾配の存在下でのHahnエコー又はCPMGシーケンスにおける信号減衰は、エコー間間隔に依存し得る。より高い拡散係数は、より速い減衰と正に相関し得る。エコー間間隔を変化させることは、総信号に対する水及び脂肪のそれぞれの寄与の計算を可能にし得る。拡散符号化はまた、準備パルスを適用し、続いてマルチエコーシーケンスを適用することによって達成され得る。マルチエコーシーケンスは、CPMGシーケンスであってもよい。準備パルスの後にCPMGシーケンスが使用される場合、感度が高められ得る。
【0042】
NMR信号振幅は、符号化時間の関数として減少し得る。b値が使用されて、静磁場勾配Gによって時系列をスケーリングし得る。b値は、以下のように表され得る:
b=γ2G2τ3/12
ここで、γは、267,520,000rad/(sT)の値を有するプロトンスピンのジャイロ磁気比であり、本明細書に開示されるシステム及び方法にかかるデバイスの実施形態では、G=1.875T/mである。
【0043】
パルスシーケンスの場合、第1のエコーの信号振幅は、初期パルス分離の関数であり得る。次いで、CPMGセクション内の各エコーは、指数関数的に減衰し得る。脂肪及び水のプロトン信号によって生成される信号の場合、減衰は、二重指数関数的減衰によって表され得る。
【0044】
信号対雑音比(「SNR」)を増加させるために、拡散符号化シーケンスが反復されてもよく、信号が追加されてもよい。白色ガウス雑音の場合、スピンが完全に分極された後に反復が実行されると、SNRは、反復回数の平方根として増加する。
【0045】
リサイクル遅延、又はシーケンス間の時間rdの場合、CPMG時系列に沿った時間tにおけるNMR信号振幅は、拡散符号化時間τに対して表され得る。上述したb値(b=γ
2G
2τ3/12)は、拡散符号化時間τに依存する。NMR信号振幅は、以下のように表され得る:
【数2】
A水(b=0,t=0)は、拡散符号化(t=0)がない場合の水プロトンからの第1のエコー(b=0)の信号振幅である。信号振幅は、水中のプロトンの濃度に比例する。脂肪プロトン信号振幅も同様に表されることができる。そして、PDFFは、以下のように与えられ得る:
【数3】
【0046】
パルスシーケンスを反復する前の完全偏波の場合、振幅は、rdがT
1f及びT
1wよりもはるかに大きいと仮定して、以下の式によって与えられ得る:
【数4】
【0047】
振幅は、この実施形態では水又は脂肪プロトンについてのT1値に依存しないため、長い反復遅延が使用される場合、T1補正は必要ない場合がある。t=0における振幅は、エコー列の振幅時系列におけるゼロ交差点を識別することによって決定され得る。t=0における振幅を決定することは、T2f及びT2wに依存し得る。t=0における振幅を計算することは、T2f及びT2wよりもはるかに短いエコー列持続時間を使用し、次いで全てのエコーを加算又は平均化して感度を高めることによって簡略化され得る。このようにして、t=0における振幅は、T2f及びT2wから独立して決定され得る。さらに、上述したように、rdがT1f及びT1wよりもはるかに大きいと仮定される場合、拡散符号化信号はまた、T1f及びT1wとは無関係に得られ得る。したがって、信号取得中に適切な時間パラメータが使用される場合、拡散符号化信号は、T2f及びT2w並びにT1f及びT1wの両方とは無関係に決定され得る。
【0048】
拡散符号化時間が長い場合、脂肪信号のみが観察され得る。拡散符号化時間が長いために高いb値が与えられた脂肪信号のみに依存する振幅は、以下の式によって与えられ得る:
【数5】
完全偏波では、b値が高く、rdがT
1fよりもはるかに大きいと仮定される場合、振幅は、以下の式によって与えられ得る:
【数6】
したがって、上記のように、脂肪信号から単一の指数関数的減衰が観察され得る。この信号指数関数的減衰関数は、T
2fの容易な測定を容易にし得る。CPMG時系列への単一指数フィットは、拡散符号化された脂肪信号のT
2f及び振幅の両方の決定を容易にし得る。
【0049】
拡散符号化されたNMR信号は、様々な符号化時間τにおいて収集され得て、これはb値の変化をもたらす。これは、上述したPDFF、並びに水及び脂肪の拡散係数の計算を可能にし得る。CPMG時系列は、b値ごとに、T2f及びT2wによって駆動される二重指数関数として表され得る。水及び脂肪プロトンについてのT1値は、知られていなくてもよい。しかしながら、上述したように、長いrdを仮定及び/又は設定することは、T1補正を実行する必要性を回避し得る。
【0050】
PDFF及び拡散係数は、上述した実施形態と一致して、以下の方法を使用して計算され得る。
図3は、拡散コントラストに基づいてPDFF及び拡散係数がどのように計算され得るかを示すフロー図の例を示している。第1の動作300として、T
2fが測定され得る。第1の動作300に対する第1の副動作302として、T
2fを測定するために、拡散符号化NMR測定が、高いb値において実行され得る。第1の動作300に対する第2の副動作304として、この構成は、上述したように、脂肪信号のみの観察を可能にし得る。第1の動作300に対する第3の副動作306として、データに対する単一指数フィットが実行され得る。第1の動作300に対する第4の副動作308として、脂肪プロトン緩和時間(T
2f)が単一指数フィットに基づいて計算され得る。実施形態では、SNRは高くてもよく、脂肪及び水からの信号は、符号化時間ごとのCPMG時系列について既に効果的に選び出されていてもよい。したがって、SNRが高い場合、この動作は、必要でなくてもよい。
【0051】
第2の動作310として、拡散時間による信号振幅依存性が測定され得る。第2の動作310に対する第1の副動作312として、NMR測定が様々なb値において実行され得る。第2の動作310に対する第2の副動作314として、信号の二重指数フィットが各b値において実行され得る。第2の動作310に対する第3の副動作316として、第1の動作300に対する第4の副動作308から計算されたT2fが使用されて、フィットを統計的に信頼できるものにし得る。第2の動作310に対する第4の副動作318として、各b値(t=0)における信号の振幅が計算され得る。
【0052】
第3の動作320として、脂肪プロトン及び水プロトンの振幅係数及び拡散係数が決定され得る。第3の動作320に対する第1の副動作322として、全信号振幅への二重指数フィットが実行され得る。第3の動作320に対する第2の副動作324として、水及び脂肪プロトンの振幅及び拡散係数が二重指数フィットに基づいて計算され得る。第3の動作320に対する第3の副動作326として、振幅及び係数が使用されてPDFFを計算し得る。
【0053】
実施形態では、NMR装置の動作中に、NMR装置が患者の感受性体積内のNMR信号を測定している間に、オペレータが患者に吸気、呼気、及び息止めを指示し得る。患者は、NMR測定が望まれる各b値に対して5から15秒間息を止め得る。
【0054】
実施形態では、脂肪の拡散係数が既知である場合、PDFFは、拡散符号化信号内の高いb値を有する水信号を抑制して、以下を使用してA脂肪(b,t=0)を得ることによって評価され得る。
【数7】
【0055】
エコーがT
2fよりもはるかに短い時間にわたって加えられる場合、
【数8】
【0056】
これは、脂肪信号応答の測定を簡略化し、したがって高速PDFF読み取りが実行され得る。総信号が患者ごとに一定であると仮定される場合、脂肪信号及び既知の総信号応答を決定するために、高いb値における単一測定を使用してPDFFが測定され得る。
【0057】
T
2ベースの分離の実施形態
水及び脂肪信号はまた、それらのスピン-スピン緩和時間(T
2)、又はマルチエコーパルスシーケンスにおける時定数であるT
2effに基づいて分離され得る。
図4は、水及び脂肪信号がそれらのT
2に基づいてどのように分離され得るかを示すフロー図の例を示している。第1の動作400として、CPMG時系列が収集され得る。拡散ベースの分離の実施形態について上述したように、RFパルス及び信号チャネルの位相サイクルが実行されて、不要なスプリアス信号を除去し得る。
【0058】
第1の動作400に対する副動作402として、エコー列中の拡散効果を最小限に抑えるために短いエコー時間が使用され得る。より長いエコー間隔は、脂肪からの信号よりも水の信号を減少させることがあり、不正確なPDFF計算をもたらすことがある。第3の動作404として、NMR信号が反復遅延rdにおいて測定され得る。反復遅延rdを使用するNMR信号は、以下の式によって与えられ得る:
【数9】
【0059】
第4の動作406として、二重指数最小二乗フィットが実行されて、脂肪及び水からの信号寄与を選び出し得る。第5の動作412として、脂肪及び水からの信号の振幅は、CPMG時系列におけるエコー振幅への二重指数フィットを使用して計算され得る。二重指数フィットによって得られたA水及びA脂肪は、PDFFを計算するために使用され得る。rdがT
1w及びT
1fよりもはるかに大きくなると、式は、以下のように簡略化され得る:
【数10】
【0060】
この方法は、NMR信号への水及び脂肪プロトンの寄与を定量し得る。2つの信号の分離を達成するのを支援するために、第4の動作406に対する第1の副動作408として、T2fは、T1に基づいて、高速反復を使用して、又は拡散係数に基づいて、拡散符号化シーケンス又は大きなエコー間隔を使用して、水信号を抑制することによって測定され得る。次いで、第4の動作406に対する第2の副動作410として、T2fは、水及び脂肪信号が観察されるときに固定パラメータとして使用され得る。
【0061】
T
1ベースの分離の実施形態
水及び脂肪信号はまた、スピン格子緩和時間(T
1)の差に基づいて分離され得る。水(T
1w)の長さT
1は、脂肪(T
1f)の長さT
1の約4倍であり得て、これは、この基準での分離を実現可能にし得る。しかしながら、T
1試験は、時間がかかることがある。
図5は、T
1に基づいて水及び脂肪信号がどのように分離され得るかを示すフロー図の例である。第1の動作500として、脂肪及び水のプロトン信号の区別は、信号飽和によって達成され得る。第1の動作500では、NMR信号は、様々なリサイクル遅延を使用して収集され得る。代替の第1の動作502では、脂肪及び水のプロトン信号の区別も逆回復法を使用して達成され得る。代替の第1の動作502では、NMR信号は、初期RFパルスの位相を反転させ、パルス後に可変遅延を印加することによって収集されてもよい。
【0062】
脂肪信号及び水信号の分極時間は異なるため、応答の二重指数分析が使用されて、信号に対する水及び脂肪の寄与を分離し得る。実施形態では、単一のエコーシーケンスが反復されてもよい。反復時間rdを有するNMR信号は、第1のエコーが廃棄される場合、以下のように表され得る:
【数11】
第2の動作506として、信号振幅は、一連のrd値にわたって測定され得る。次に、第3の動作508として、データの二重指数フィットが使用されて、脂肪及び水信号の振幅を生成し得る。第4の動作510として、二重指数フィットがまた使用されて、T
1w及びT
1fの両方を決定し得る。そして、計算されたA水及びA脂肪が使用されて、PDFFを計算し得る。上記の段落0037を参照されたい。
【0063】
感度を高めるために、第1の動作500又は代替の第1の動作502に対する副動作504として、単一のエコーの代わりにエコー列が収集されてもよい。この場合の信号処理は、エコー列中の時系列が水及び脂肪プロトンのT2によって駆動されると考え得る。エコー列が最短T2値よりもはるかに短い場合、最小限のT2バイアスで感度を高めるためにエコーが加算され得る。このようにして、マルチエコー時系列へのフィッティングを実行する必要なく、単一のエコー検査にわたって感度が高められ得る。
【0064】
他の実施形態では、水及び脂肪についてのT
1値はまた、別々に測定されてもよい。
図6Aは、NMR拡散符号化シーケンスを使用してT
1fが計算されて水信号を抑制し、脂肪信号のみを測定し得る実施形態を示すフロー図の例を示している。これは、単一指数時系列のみが存在するため、分析を簡略化し得る。この読み取りを実行し、データを処理するための効果的な方法は、第1の動作600として、NMR拡散符号化シーケンスが適用されて水信号を抑制することであり得る。第2の動作602として、全てのエコーを加算して、様々なrd値によって測定を実行する。第3の動作604として、得られたデータへの単一指数フィッティングが実行され得る。第4の動作606として、T
1fは、単一指数フィッティングに基づいて計算され得る。このT1値は、拡散符号化がない場合の二重指数関数的減衰の固定パラメータとして使用され得て、水及び脂肪信号の分離を支援する。
【0065】
図6Bは、T
1wが計算され得る実施形態を示すフロー図の例を示している。第1の動作608として、様々なrd値を有する拡散符号化、例えばCPMGを有する単一エコー又はマルチエコー列パルスシーケンスが収集され得る。第2の動作610として、T
1wがT
1fよりもはるかに大きくなり、T
1fよりもはるかに大きいrdを使用して、脂肪信号は、効果的に一定になり得て、信号回復が水信号によって支配されるようになり得る。したがって、第3の動作612として、rdがT
1fよりもはるかに大きい場合、単一指数関数が適用されて信号回復を近似し得る。第4の動作614として、T
1wは、単一指数フィットに基づいて計算され得る。
【0066】
J結合ベースの分離の実施形態
J結合がまた使用されて信号を分離し得る。脂肪信号がリフォーカスしている間に水信号の位相をずらすパルス分離が適用され得る。
【0067】
コンピューティング構成要素との統合の例
構成要素がソフトウェアを使用して全体的又は部分的に実装される場合、これらのソフトウェア要素は、それに関して説明した機能を実行することができるコンピューティング又は処理構成要素とともに動作するように実装されることができる。そのような例示的なコンピューティング構成要素の1つが
図7に示されている。この例示的なコンピューティング構成要素700に関して、様々な実施形態が説明される。この説明を読んだ後、他のコンピューティング構成要素又はアーキテクチャを使用してアプリケーションを実装する方法が当業者にとって明らかになるであろう。
【0068】
ここで
図7を参照すると、コンピューティング構成要素700は、例えば、自動調整ディスプレイ、デスクトップ、ラップトップ、ノートブック、及びタブレットコンピュータ内に見られるコンピューティング又は処理能力を表し得る。それらは、ハンドヘルドコンピューティングデバイス(タブレット、PDA、スマートフォン、携帯電話、パームトップなど)に見られ得る。それらは、ディスプレイ、サーバ、又は所与のアプリケーション若しくは環境に望ましいか又は適切であり得る任意の他の種類の専用又は汎用コンピューティングデバイスを備えたワークステーション又は他のデバイスに見られ得る。それらは、スマート医療機器に見られ得る。コンピューティング構成要素700はまた、所与のデバイスに組み込まれた又はそうでなければ利用可能なコンピューティング能力を表し得る。例えば、コンピューティング構成要素は、例えばポータブルコンピューティングデバイス、スマート医療機器、及び何らかの形態の処理能力を含み得る他の電子デバイスなどの他の電子デバイスに見られ得る。
【0069】
コンピューティング構成要素700は、例えば、1つ又は複数のプロセッサ、コントローラ、制御構成要素、又は他の処理デバイスを含み得る。これは、プロセッサ、及び/又はユーザデバイス、ユーザシステム、及び/又は非復号クラウドサービスを構成する構成要素のうちの任意の1つ又は複数を含むことができる。プロセッサ704は、例えば、マイクロプロセッサ、コントローラ、又は他の制御ロジックなどの汎用又は専用処理エンジンを使用して実装され得る。プロセッサ704は、バス702に接続され得る。しかしながら、コンピューティング構成要素700の他の構成要素との対話を容易にするために、又は外部と通信するために、任意の通信媒体が使用されることができる。
【0070】
コンピューティング構成要素700はまた、本明細書では単にメインメモリ708と呼ばれる、1つ又は複数のメモリ構成要素を含み得る。例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他のダイナミックメモリが、プロセッサ704によって実行されるべき情報及び命令を記憶するために使用され得る。メインメモリ708はまた、プロセッサ704によって実行されるべき命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を記憶するために使用され得る。同様に、コンピューティング構成要素700は、プロセッサ704のための静的情報及び命令を記憶するためにバス702に結合された読み出し専用メモリ(「ROM」)又は他の静的記憶デバイスを含み得る。
【0071】
コンピューティング構成要素700はまた、例えば、媒体ドライブ712及び記憶ユニットインターフェース720を含み得る、1つ又は複数の様々な形態の情報記憶機構710を含み得る。媒体ドライブ712は、固定又は取り外し可能な記憶媒体714を支持するためのドライブ又は他の機構を含み得る。例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、磁気テープドライブ、光学ドライブ、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオディスク(DVD)ドライブ(R又はRW)、又は他のリムーバブル若しくは固定媒体ドライブが提供され得る。記憶媒体714は、例えば、ハードディスク、集積回路アセンブリ、磁気テープ、カートリッジ、光ディスク、CD又はDVDを含み得る。記憶媒体714は、媒体ドライブ712によって読み取られ、書き込まれ、又はアクセスされる任意の他の固定又は取り外し可能な媒体であってもよい。これらの例が示すように、記憶媒体714は、コンピュータソフトウェア又はデータを記憶したコンピュータ使用可能記憶媒体を含むことができる。
【0072】
代替の実施形態では、情報記憶機構710は、コンピュータプログラム又は他の命令若しくはデータをコンピューティング構成要素700にロードすることを可能にするための他の同様の手段を含み得る。そのような手段は、例えば、固定又は取り外し可能な記憶ユニット722及びインターフェース720を含み得る。そのような記憶ユニット722及びインターフェース720の例は、プログラムカートリッジ及びカートリッジインターフェース、リムーバブルメモリ(例えば、フラッシュメモリ又は他のリムーバブルメモリ構成要素)及びメモリスロットを含むことができる。他の例は、PCMCIAスロット及びカード、並びにソフトウェア及びデータを記憶ユニット722からコンピューティング構成要素700に転送することを可能にする他の固定又は取り外し可能な記憶ユニット722及びインターフェース720を含み得る。
【0073】
コンピューティング構成要素700はまた、通信インターフェース724を含み得る。通信インターフェース724は、ソフトウェア及びデータがコンピューティング構成要素700と外部デバイスとの間で転送されることを可能にするために使用され得る。通信インターフェース724の例は、モデム又はソフトモデム、ネットワークインターフェース(イーサネット、ネットワークインターフェースカード、IEEE802.XX、又は他のインターフェースなど)を含み得る。他の例は、通信ポート(例えば、USBポート、IRポート、RS232ポートBluetooth(登録商標)インターフェース、又は他のポート)又は他の通信インターフェースを含む。通信インターフェース724を介して転送されるソフトウェア/データは、電子、電磁(光を含む)、又は所与の通信インターフェース724によって交換されることが可能な他の信号とすることができる信号上で搬送され得る。これらの信号は、チャネル728を介して通信インターフェース724に提供され得る。チャネル728は、信号を搬送し得て、有線又は無線通信媒体を使用して実装され得る。チャネルのいくつかの例は、電話回線、セルラーリンク、RFリンク、光リンク、ネットワークインターフェース、ローカル又はワイドエリアネットワーク、及び他の有線又は無線通信チャネルを含み得る。
【0074】
本明細書では、「コンピュータプログラム媒体」及び「コンピュータ使用可能媒体」という用語は、一般に、一時的又は非一時的媒体を指すために使用される。そのような媒体は、例えば、メモリ708、記憶ユニット720、媒体714、及びチャネル728であり得る。これら及び他の様々な形態のコンピュータプログラム媒体又はコンピュータ使用可能媒体は、実行のために1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを処理デバイスに搬送することに関与し得る。媒体上で具現化されるそのような命令は、一般に、「コンピュータプログラムコード」又は「コンピュータプログラム製品」(コンピュータプログラム又は他のグループの形態でグループ化され得る)と呼ばれる。実行されると、そのような命令は、コンピューティング構成要素700が本明細書で説明するような本出願の特徴又は機能を実行することを可能にし得る。
【0075】
実施形態では、コンピューティング構成要素は、検査室システムと統合されてもよく、検査室システムに通信可能に結合されてもよく、そうでなければ検査室システムの一部を形成してもよい。例えば、コンピューティング構成要素は、医療及び/又は検査機器に通信可能に結合されてもよい。別の例では、コンピューティング構成要素は、医療ワークステーションの一部であってもよい。医療ワークステーションは、モバイルカートとして設定されてもよい。医療ワークステーションはまた、静止していてもよい。スタンドアロンNMR装置は、医療ワークステーションに通信可能に結合されてもよい。患者ベッドに組み込まれたNMR装置はまた、医療ワークステーションに通信可能に結合されてもよい。
【0076】
本発明の様々な実施形態について上述したが、それらは例として提示されたものであり、限定するものではないことを理解されたい。同様に、様々な図は、本発明に含まれることができる特徴及び機能の理解を助けるために行われる、本発明についての例示的なアーキテクチャ又は他の構成を示し得る。本発明は、図示された例示的なアーキテクチャ又は構成に限定されず、所望の特徴は、様々な代替的なアーキテクチャ及び構成を使用して実装されることができる。実際に、本発明の所望の特徴を実装するために、代替の機能的、論理的又は物理的な区分及び構成がどのように実装されることができるかは、当業者にとって明らかであろう。また、本明細書に示されているもの以外の多数の異なる構成モジュール名は、様々な区分に適用されることができる。さらに、フロー図、動作説明、及び方法の特許請求の範囲に関して、本明細書においてステップが提示される順序は、文脈上別段の指示がない限り、列挙された機能を同じ順序で実行するために様々な実施形態が実装されることを要求するものではない。
【0077】
本発明は、様々な例示的な実施形態及び実装に関して上述されているが、個々の実施形態のうちの1つ又は複数に記載されている様々な特徴、態様及び機能は、それらが記載されている特定の実施形態への適用性において限定されるものではなく、そのような実施形態が記載されているか否か、及びそのような特徴が記載されている実施形態の一部として提示されているか否かにかかわらず、単独で、又は様々な組合せで、本発明の他の実施形態のうちの1つ又は複数に適用されることができることを理解されたい。したがって、本発明の広がり及び範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0078】
本明細書で使用される用語及び語句、並びにそれらの変形は、特に明示的に述べられていない限り、限定ではなくオープンエンドとして解釈されるべきである。前述の例として、「含む(including)」という用語は、「限定されないが含む(including,without limitation)」などの意味として読まれるべきである。「例(example)」という用語は、その網羅的又は限定的なリストではなく、議論中の項目の例示的な例を提供するために使用される。「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、「少なくとも1つの(at least one)」、「1つ又は複数の(one or more)」などを意味すると読まれるべきである。「従来の(conventional)」、「伝統的な(traditional)」、「通常の(normal)」、「標準的な(standard)」、「既知の(known)」などの形容詞及び同様の意味の用語は、記載された項目を所与の期間又は所与の時点で利用可能な項目に限定するものとして解釈されるべきではなく、代わりに、現在又は将来のいつでも利用可能又は既知であり得る従来の、伝統的な、通常の、又は標準的な技術を包含するように読まれるべきである。同様に、本明細書が当業者にとって明らかであるか又は知られている技術を指す場合、そのような技術は、現在又は将来の任意の時点で当業者にとって明らかであるか又は知られている技術を包含する。
【0079】
場合によっては、「1つ又は複数」、「少なくとも」、「しかしながらこれに限定されない」、又は他の同様の語句などの拡大する単語及び語句の存在は、そのような拡大する語句が存在しないことがある場合に、より狭い場合が意図されるか又は必要とされることを意味すると解釈されるべきではない。「モジュール」という用語の使用は、モジュールの一部として記載又は主張される構成要素又は機能が全て共通のパッケージ内に構成されることを意味しない。実際に、モジュールの様々な構成要素のいずれか又は全ては、制御論理又は他の構成要素にかかわらず、単一のパッケージに組み合わせられることができ、又は別々に維持されることができ、さらに複数のグループ若しくはパッケージに又は複数の場所に分散されることができる。
【0080】
さらに、本明細書に記載の様々な実施形態は、例示的なブロック図、フローチャート及び他の図に関して記載される。本明細書を読んだ後に当業者にとって明らかになるように、図示された実施形態及びそれらの様々な代替形態は、図示された例に限定されることなく実装されることができる。例えば、ブロック図及びそれらに付随する説明は、特定のアーキテクチャ又は構成を要求するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】