(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】金属粒子、その調製方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
B22F 1/0655 20220101AFI20240221BHJP
B22F 9/24 20060101ALI20240221BHJP
B22F 1/07 20220101ALI20240221BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240221BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20240221BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B22F1/0655
B22F9/24 E
B22F9/24 B
B22F9/24 C
B22F1/07
B22F1/00 M
B22F1/00 K
B22F1/00 L
H01B5/00 F
H01B13/00 501Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555244
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2022143759
(87)【国際公開番号】W WO2023134469
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210024080.9
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523342735
【氏名又は名称】蘇州艾美特企業管理有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 強
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G307
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA05
4K017CA01
4K017CA09
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4K017FB07
4K018BA01
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4K018BA04
4K018BB03
4K018BB04
4K018BB06
4K018BB10
4K018BD04
4K018KA33
5G307AA08
(57)【要約】
内部の中心に孔が分布しており、球形度が高く、収縮比が小さく、粒子内部の結晶粒が小さい金属粒子を提供する。金属粒子の調製方法は、球形又は略球形の金属種結晶を導入して、ポリオール-種結晶系を調製することによって、還元過程にわかって金属粒子の粒子径や球形度を制御可能にし、種結晶中の金属源を含む金属酸化物又は金属塩溶液中の金属粒子を素早くかつ安定的に還元し、形成される金属粒子の形態が球形又は略球形であることを確保し、金属粒子の粒子径は導入される球形のナノ金属種結晶の数及び大きさによって調整される。上記金属粒子を太陽電池又は半導体の導電性接着剤に用いられる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子であって、
前記金属粒子の内部の中心に孔が分布しており、前記金属粒子の内部の中心における前記孔の分布形態は、
前記金属粒子中心に均一に分布している複数の孔である形態a、
前記金属粒子中心に集中して分布している複数の孔である形態b、
前記金属粒子中心に分散して分布している複数の孔である形態c、及び、
前記金属粒子中心を取り囲む環状孔である形態dのうちの1種である
ことを特徴とする金属粒子。
【請求項2】
前記孔の孔径は、
前記金属粒子中心に均一に分布している前記孔の孔径が0.1nm~50nmである種類a、
前記金属粒子中心に集中して分布している前記孔の孔径が0.1nm~80nmである種類b、
前記前記金属粒子中心に分散して分布している孔の孔径が1nm~60nmである種類c、及び、
前記環状孔の直径が金属粒子直径の半分以下である種類dのうちの少なくとも1種である
請求項1に記載の金属粒子。
【請求項3】
前記金属は、金、銀、銅、ニッケルのうちの少なくとも1種である
請求項1に記載の金属粒子。
【請求項4】
前記金属粒子の結晶粒の大きさは10nm~80nmであり、前記金属粒子の球形度は0.6~1である
請求項1に記載の金属粒子。
【請求項5】
金属粒子の調製方法であって、
球形又は略球形のナノ金属種結晶をポリオール混合液に分散させ、ポリオール-種結晶系を調製するステップ(1)と、
前記ポリオール-種結晶系を分散液に加え、次に、前記種結晶中の金属源を含有する金属酸化物又は金属塩を含む酸化液及び還元液を加え、撹拌して反応させるステップ(2)と、
凝集剤を加えて、沈殿させて分離し、金属粒子を得るステップ(3)と、を含む
ことを特徴とする金属粒子の調製方法。
【請求項6】
前記金属は、金、銀、銅、ニッケルのうちの少なくとも1種である
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)では、前記種結晶の粒子径は1nm~100nmである
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項8】
前記ステップ(1)では、ポリオールは前記ポリオール混合液の15体積%~95体積%を占める
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項9】
前記ステップ(1)では、前記ポリオールは、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジロピレングリコール、グリセリンのうちの少なくとも1種である
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項10】
前記ステップ(2)では、前記金属種結晶の含有量は、前記酸化液中の金属の0.0001質量%~0.01質量%である
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項11】
前記ステップ(2)では、前記還元液は、ヒドラジン類、アミン類、有機酸類、アルコール類、アルデヒド類、水素化物類、遷移金属塩類、ピロリドン類、ヒドロキシルアミン類の還元剤のうちの少なくとも1種を含む
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項12】
前記ステップ(2)では、前記分散液は、有機酸類、エステル類、エーテル類、ケトン類、エーテルエステル類、アルコール類、炭化水素類、アミン類、ピロリドン類の分散剤及び/又は界面活性剤のうちの少なくとも1種を含む
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項13】
前記分散剤は、脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸トリエタノール、脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジンクロリド、アルキルカルボキシベタイン、スルホベタイン、レシチン、ナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸類モノマーとのコポリマー塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸部分アルキルエステル及び/又はポリアルキレンポリアミン、ポリエチレンイミン及び/又はアミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、1-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリドン、メチルピロリドンのうちの少なくとも1種である
請求項12に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項14】
前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、オクチルアミン、エタノール、ポリエチレングリコール、トウェイン、グリセロール、マレイン酸のうちの少なくとも1種である
請求項12に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項15】
前記ステップ(3)では、前記凝集剤は、脂肪酸類及び/又はカルボン酸類化合物であり、
前記脂肪酸類は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸のうちの少なくとも1種の飽和脂肪酸であり、又は、
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸のうちの少なくとも1種の不飽和脂肪酸及びその塩類であり、
前記カルボン酸類化合物は、炭素-炭素二重結合を有する化合物、ジヒドロキシ化合物、ジカルボキシ化合物のうちの少なくとも1種である
請求項5に記載の金属粒子の調製方法。
【請求項16】
太陽電池及び/又は半導体の導電性接着剤における請求項1ないし4のいずれかに記載の金属粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の技術分野に関し、具体的には、金属粒子、その調製方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微小金属粒子を含む組成物又はその分散液は、フラットパネルディスプレイ(FPD)、太陽電池、無線周波数識別技術(RFID)の配線形成、微細なチャネルやビアなどへの埋め込み配線、車や船の塗装用色材、医療、診断、バイオテクノロジー分野における生化学物質吸着担体、触媒、フレキシブルプリント回路、コンデンサなどの分野で有用である。そして、現在及び将来の光電技術産業の発展に伴い、電子素子が微細化、高性能化しており、これにより、微小金属ナノ粒子の球形度、分散性、粒子径の大きさなどの性能指標に対してより高い要求が求められている。
【0003】
従来技術において、金属粒子の調製方法は物理的方法と化学的方法を含み、物理的方法は霧化法、気相蒸発法、研削法などを含み、化学的方法は主にゾルゲル法、液相還元法、物理蒸着法(PVD)、水熱法、化学蒸着法(CVD)、沈殿法、プラズマ法などを含む。物理的方法には高コスト、低収率という問題があるので、現在、特許文献1:中国特許CN104128616Aに金属粒子の調製方法のような、化学液相還元法、すなわち、金属を含む塩溶液又は酸化物を化学反応により金属に還元する方法が広く使用されている。
【0004】
しかし、現在生産上必要な金属粒子は一般的に球形であるが、そのサンプルのうち所望の形状の粒子が粒子総数に占める割合は非常に小さく、金属粒子中には、シート、六角形、三角形、立方体の形状など他の形状の粒子が多く含まれており、その中に存在する問題は多く、また、粒子のサイズが大きく、サイズの分布が広いサンプルもあり、マイクロエレクトロニクス分野での応用は制限されている。
【0005】
従来技術の特許文献2:中国特許CN105436517Bは、ナノ種結晶を利用して金属粉末を誘導生産する調製方法を開示しているが、金属種結晶を添加しても、金属粉末の表面粗さが大きく、不規則性が大きく、角のある多角形の外観の金属粉末が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許CN104128616A
【特許文献2】中国特許CN105436517B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の欠点を克服して金属粒子、その製造方法及び応用を提供することを目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
第1態様では、本発明は、
金属粒子であって、
前記金属粒子の内部の中心に孔が分布しており、前記金属粒子の内部の中心における前記孔の分布形態は、
前記金属粒子中心に均一に分布している複数の孔である形態a、
前記金属粒子中心に集中して分布している複数の孔である形態b、
前記金属粒子中心に分散して分布している複数の孔である形態c、及び
前記金属粒子中心を取り囲む環状孔である形態dのうちの1種である金属粒子を提供する。
【0010】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記孔の孔径は以下の種類のうちの少なくとも1種であり、
種類a:前記金属粒子中心に均一に分布している前記孔の孔径が0.1nm~50nmであり、好ましくは、孔径が5nm~50nmであり、さらに好ましくは、孔径が9nm~30nmであり、
種類b:前記金属粒子中心に集中して分布している前記孔の孔径が0.1nm~80nmであり、好ましくは、孔径が2nm~80nmであり、さらに好ましくは、孔径が2.5nm~60nmであり、
種類c:前記前記金属粒子中心に分散して分布している孔の孔径が1nm~60nmであり、好ましくは、孔径が10nm~60nmであり、さらに好ましくは、孔径が14nm~45nmであり、
種類d:前記環状孔の直径が金属粒子直径の半分以下であり、好ましくは、孔径が0.1μm~1μmであり、さらに好ましくは、孔径が0.2μm~0.5μmである。
【0011】
本発明の前記金属粒子の好ましい実施形態として、前記金属は、金、銀、銅、ニッケルのうちの少なくとも1種である。
本発明の前記金属粒子の好ましい実施形態として、前記金属粒子の結晶粒の大きさは10nm~80nmであり、前記金属粒子の球形度は0.6~1であり、好ましくは、球形度は0.8~0.95である。
【0012】
第2態様では、本発明は、
球形又は略球形のナノ金属種結晶をポリオール混合液に分散させ、ポリオール-種結晶系を調製するステップ(1)と、
前記ポリオール-種結晶系を分散液に加え、次に、前記種結晶中の金属源を含有する金属酸化物又は金属塩を含む酸化液及び還元液を加え、撹拌して反応させるステップ(2)と、
凝集剤を加えて、沈殿させて分離し、金属粒子を得るステップ(3)と、を含む、金属粒子の調製方法を提供する。
【0013】
本発明は、球形又は略球形のナノ金属粒子を種結晶とし、球形又は略球形のナノ金属種結晶をポリオール中に分散させる、すなわち種結晶をポリオールで被覆し、種結晶を分散させるポリオール-種結晶系を採用しており、前記ポリオール-種結晶系を分散液に加えた後、アルコール水置換が発生し、種結晶の表面に球形及び/又は楕円形のナノバブルからなる均一なナノバブル被覆層が形成され、酸化液及び還元液を加えて反応させると、種結晶の誘導により結晶粒が表面に還元沈殿し、ナノバブルを圧迫してナノバブルを破裂させ、極めて強い衝撃波を発生させて、金属結晶の成長過程で格子破裂を起こして、キャビティを形成し、種結晶の大きさが異なるため、被覆されたナノバブルの大きさと数も異なるため、金属結晶の成長過程でその中央領域に大きさと形状が異なるキャビティが形成され、異なるタイプのキャビティを有する金属粒子の割合は球形ナノ金属種結晶の粒度分布と関係がある。
【0014】
また、本発明では、球形又は略球形のナノ金属粒子を種結晶とし、結晶化することにより、微細な結晶粒が種結晶の周囲を取り囲むように形成され、結晶粒成長を誘導する過程で、生成される結晶界面の二次元効果がより均一になり、結晶粒がより小さく球形度がより高い金属粒子が形成される。球形又は略球形の種結晶は、粒界結合力が均一であるため、反応が急激に速められ、反応時に形成されるキャビテーション効果が促進され、反応時に金属粒子の内部の中央領域に孔が形成され、金属粒子の結晶粒の収縮率がより均一になり、収縮率が大きくなる。また、本発明のポリオール-種結晶系は、反応中の気泡の発生を促進し、ポリオールと分散液との間に同種溶媒の親和作用があるので、種結晶の分散がさらに促進される。分散液は、生成した金属粒子を分散させ、反応中の金属粒子の凝集を防止する。
【0015】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記金属は、金、銀、銅、ニッケルのうちの少なくとも1種である。
【0016】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(1)では、前記種結晶の粒子径は1nm~100nmである。好ましくは、前記種結晶の粒子径は1nm~70nmである。さらに好ましくは、前記種結晶の粒子径は、5nm~40nmである。
【0017】
このような粒子径の種結晶を使用すると、反応溶液中に空気バルブが多く存在するため、反応における金属粒子の結晶化工程でキャビテーション効果が起こり、金属粒子の内部に孔が形成され、また、反応過程におけるキャビテーション効果により、種結晶の粒子径の限られた範囲内の増大に伴い、反応溶液内の空気のバルブにより金属粒子の内部で大きな空気バルブが形成され、孔が形成される。
【0018】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(1)では、ポリオールは、前記ポリオール混合液の15体積%~95体積%を占める。好ましくは、前記ポリオールは、50体積%~85体積%を占め、残部は、エステル類、エーテル類、ケトン類、エーテルエステル類、炭化水素類、アミン類、ピロリドン類の分散剤及び/又は界面活性剤のうちの少なくとも1種、好ましくは、ポリビニルピロリドン、オクチルアミン、トウェインのうちの少なくとも1種である。
【0019】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(1)では、前記ポリオールは、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジロピレングリコール、グリセリンのうちの少なくとも1種である。
【0020】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記撹拌速度は5rpm~1000rpmである。好ましくは、前記撹拌速度は50rpm~500rpmである。
【0021】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記金属種結晶の含有量は、前記酸化液中の金属の0.0001質量%~0.01質量%である。好ましくは、前記金属種結晶の含有量は、前記酸化液中の金属の0.0002質量%~0.001質量%である。
【0022】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記反応の温度は10~90℃である。好ましくは、前記反応の温度は20~40℃である。
【0023】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記酸化液のpH値は2.5~8.5である。好ましくは、前記酸化液のpH値は5~7.5である。
【0024】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記還元液は、ヒドラジン類、アミン類、有機酸類、アルコール類、アルデヒド類、水素化物類、遷移金属塩類、ピロリドン類、ヒドロキシルアミン類の還元剤のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
好ましくは、前記ヒドラジン類は、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、フェニルヒドラジン、硫酸ヒドラジンのうちの少なくとも1種であり、前記アミン類は、ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミノボランのうちの少なくとも1種であり、前記有機酸類は、クエン酸塩、アスコルビン酸及びその塩、酒石酸塩、没食子酸及びその塩、リンゴ酸塩、マロン酸及びその塩、ギ酸のうちの少なくとも1種であり、前記アルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールのうちの少なくとも1種であり、前記水素化物類は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、トリエチル水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチルスズ、トリ-sec-ブチル水素化ホウ素リチウム、トリ-sec-ブチル水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのうちの少なくとも1種であり、前記遷移金属塩類は、硫酸鉄及び/又は硫酸スズであり、前記ピロリドン類は、ポリビニルピロリドン、1-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリドン、メチルピロリドンのうちの少なくとも1種であり、前記ヒドロキシルアミン類は、硫酸ヒドロキシルアミン及び/又は硝酸ヒドロキシルアミンである。
【0026】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記酸化液中の金属質量を1当量として、前記還元剤の添加量は0.1~7当量である。好ましくは、前記還元剤の添加量は1~5当量である。
【0027】
前記還元剤の添加量が0.1未満である場合、還元されていない金属が残存する恐れがあり、7を超える場合、反応が速すぎ、凝集粒子が増加し、その結果として、粒子径が不均一になる。
【0028】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記分散剤の添加量は、前記酸化液中の金属酸化物又は金属塩の質量の0.1~5倍である。
【0029】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記分散液は、有機酸類、エステル類、エーテル類、ケトン類、エーテルエステル類、アルコール類、炭化水素類、アミン類、ピロリドン類の分散剤及び/又は界面活性剤のうちの少なくとも1種を含む。
【0030】
好ましくは、前記分散剤は、脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸トリエタノール、脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジンクロリド、アルキルカルボキシベタイン、スルホベタイン、レシチン、ナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸類モノマーとのコポリマー塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸部分アルキルエステル及び/又はポリアルキレンポリアミン、ポリエチレンイミン及び/又はアミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、1-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリドン、メチルピロリドンのうちの少なくとも1種である。
【0031】
前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、オクチルアミン、エタノール、ポリエチレングリコール、トウェイン、グリセロール、マレイン酸のうちの少なくとも1種である。
【0032】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、前記酸化液及び/又は還元液は、ポンプによる圧送、圧縮空気による圧送や注入により分散液に加えられてもよく、酸化液及び/又は還元液の添加流量は、1mL/min~1500L/minであり、撹拌速度は、50rpm~500rpmである。
【0033】
従来技術と比べて、流量の範囲が大幅に広がり、撹拌反応速度が速く、反応条件も幅広くなり、産量が増加し、量産が可能とされる。
【0034】
本発明の前記金属粒子の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(3)では、前記凝集剤は、脂肪酸類及び/又はカルボン酸類化合物である。
【0035】
好ましくは、前記脂肪酸類は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸のうちの少なくとも1種の飽和脂肪酸であり、又は、
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸のうちの少なくとも1種の不飽和脂肪酸及びその塩類であり、
前記カルボン酸類化合物は、炭素-炭素二重結合を有する化合物(例えばソルビン酸)、ジヒドロキシ化合物(例えばアジピン酸)、ジカルボキシ化合物のうちの少なくとも1種である。
【0036】
反応後に凝集剤を加えてナノ粒子を凝集させることで、粒子及び粒子同士の結合面での電荷電位(ζ-電位)を変え、次に、沈殿させて分離し、ナノ金属粒子を得る。
【0037】
第3態様では、本発明は、太陽電池及び/又は半導体の導電性接着剤における上記金属粒子の使用である。
【発明の効果】
【0038】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明の金属粒子は、球形度が高く、粒子内部の中心に孔が分布しており、収縮率が小さく、粒子内部の結晶粒が小さい(10nm~80nm)ので、HJT(ヘテロ接合電池)銀ペーストに適用され、perc SP、段階的印刷などの分野に応用できる。例えば、収縮比の高い金属粒子を太陽電池パネルのスクリーン印刷に応用すると、太陽電池パネル表面の電極を高温焼結した場合、線幅が狭くなり、変換効率が0.05%~0.1%向上する。
【0039】
本発明の金属粒子の調製方法は、球形又は略球形の金属種結晶を導入して、ポリオール-種結晶系を調製することによって、還元過程にわかって金属粒子の粒子径や球形度を制御可能にし、前記種結晶中の金属源を含む金属酸化物又は金属塩溶液中の金属粒子を素早くかつ安定的に還元し、形成される金属粒子の形態が球形又は略球形であることを確保し、金属粒子の粒子径は導入される球形のナノ金属種結晶の数及び大きさによって調整される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施例で使用される球形銀種結晶の電子顕微鏡像(200K×)である。
【
図2】実施例で使用される球形銀種結晶の電子顕微鏡像(40K×)である。
【
図3】実施例1で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(20K×)である。
【
図4】実施例1で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(30K×)である。
【
図5】実施例1で調製された銀粒子のXRD検出チャートである。
【
図6】実施例2で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(10K×)である。
【
図7】実施例2で調製された銀粒子をクロスカットしたときの電子顕微鏡像である。
【
図8】実施例3で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(10K×)である。
【
図9】実施例3で調製された銀粒子をクロスカットしたときの電子顕微鏡像である。
【
図10】実施例4で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(10K×)である。
【
図11】実施例4で調製された銀粒子をクロスカットしたときの電子顕微鏡像である。
【
図12】実施例5で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(20K×)である。
【
図13】実施例5で調製された銀粒子をクロスカットしたときの電子顕微鏡像である。
【
図14】実施例1~5で調製された銀粒子のTMA検出チャートであり、aは、実施例1で調製された銀粒子の検出曲線、bは、実施例3で調製された銀粒子の検出曲線、cは、実施例4で調製された銀粒子の検出曲線、dは、実施例2で調製された銀粒子の検出曲線、eは、実施例5で調製された銀粒子の検出曲線である。
【
図15】実施例6で使用される銅種結晶の電子顕微鏡像(150K×)である。
【
図16】実施例8で使用される金種結晶の電子顕微鏡像(100K×)である。
【
図17】比較例1及び比較例2で使用される銀種結晶の電子顕微鏡像である。
【
図18】比較例1で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(10K×)である。
【
図19】比較例1で調製された銀粒子のTMA検出チャートである。
【
図20】比較例2で調製された銀粒子の電子顕微鏡像(10K×)である。
【
図21】比較例3で調製された銀粒子のXRD検出チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の目的、技術的手段及び利点をよりうまく説明するために、以下に具体的な実施例に参照して本発明をさらに説明する。当業者であれは、本明細書に記載された具体的な実施例は、本発明を説明するためだけに使用され、本発明を限定するものではないことを理解するべきである。
実施例で使用される試験方法は、特に断らない限り、いずれも通常の方法である。使用する材料、試薬等は、特に断らない限り、市販品として入手可能である。前記金属粒子は単に「粒子」とも呼ばれ、一般的に粉末状態で取り扱われ、「金属粒子粉末」又は単に「粉末」とも呼ばれる。前記D50は、1サンプルの累積粒度分布率が50%に達したときの粒子径である。
実施例1
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体100g又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水250mLに溶解し、pHを5に調整し、溶液を20℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水250mLにビタミンC 50gを加えて、還元液を調製し、溶液を20℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水300mLにPVP 20gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を20℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ銀種結晶を80体積%のグリセリン(残量はPVP)に分散させ、球形ナノ銀種結晶の粒子径は5nm~40nmであり、球形ナノ銀種結晶の質量は、硝酸銀含有溶液中の銀の質量の0.001%である。溶液を20℃で保温し、電子顕微鏡で拡大された種結晶を
図1(200K×)及び
図2(40K×)に示す。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に同時に送り(流量:38mL/Min)、50rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてステアリン酸0.031gを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
図3に示すように、電子顕微鏡下で銀粒子を20K×倍拡大して観察した結果、得られた銀粒子の球形度が高かった。
図4に示すように、電子顕微鏡下で銀粒子を30K×倍拡大して観察した結果、銀粒子は、D50が約400nmであり、かつ、球形度が高かった。GB/T37406-2019方法の原理に準じて計算したところ、球形度の平均値は0.89であった。
得られた銀粒子サンプルについて、XRD(X線回折分析計モデル:日本島津XRD-6100)により検出した結果、
図5に示すように、測定値が20561であり、ピーク値が高く、得られた銀粒子は、結晶形が一致しており、ピークがシャープであることを示し、得られた銀粒の粒子径が均一で、分布が集中していることを示した。
実施例2
【0042】
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体100g又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水250mLに溶解し、pHを6.5に調整し、溶液を30℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水250mLにヒドラジン水和物20gを加えて、還元液を調製し、溶液を30℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水300mLにオクチルアミン20gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を30℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ銀種結晶を65体積%のグリセリン(残量はPVP)に分散させ、球形ナノ銀種結晶の粒子径は5nm~40nmであり、球形ナノ銀種結晶の質量は硝酸銀含有溶液中の銀の質量の0.0005%である。溶液を30℃で保温し、電子顕微鏡で拡大された種結晶を
図1(200K×)及び
図2(40K×)に示す。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に同時に送り(流量:38mL/Min)、50rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてオレイン酸0.05gを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
電子顕微鏡下で銀粒子サンプルを10K×倍拡大して観察した結果、
図6に示すように、得られた銀粒子は、球形度が高く、丸みを帯びたエッジを有し、GB/T37406-2019方法の原理に準じて計算した結果、球形度は0.92であった。内部の結晶粒の大きさは10~80ナノであった。実施例1と比べて、添加される種結晶の量が減少し、得られた銀粒子の粒子径も増大し、D50が約600nmであった。
ガリウムイオンで銀粒子をカットする方法を採用し、得られた銀粒子の横断面を電子顕微鏡で観察し、3つの銀粒子をランダムに選択して、その横断面を観察した。サンプルを炭素ペースト上に分散させ、超高真空で測定を行ったところ、
図7に示すように、銀粒子の内部に孔が多く存在し、孔は銀粒子の中心に均一に分布しており、孔の大きさが9~29nmである。球形又は略球形の種結晶が均一な粒界結合力を持つので、触媒反応が急激に速められ、その結果、反応過程でキャビテーション効果が起こり、金属粒子中の孔が形成される。孔が数多く、銀粒子の中心に均一に分布している銀粒子のTMA金属の収縮比が高く、この銀粒子は、HIT銀ペースト、perc SP、段階的印刷等の多くの技術分野に有用であった。
実施例3
【0043】
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体100g又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水250mLに溶解し、pHを6.8に調整して、溶液を40℃で保温した。
(2)還元液の調製
pH値が10よりも大きい脱イオン水200mLに水素化ホウ素ナトリウム12gを加えて、還元液を調製し、溶液を40℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水300mLにトウェイン20gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を30℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ銀種結晶を65体積%のエチレングリコール(残量はPVP)に分散させ、球形ナノ銀種結晶の粒子径は10nm~40nmであり、球形ナノ銀種結晶の質量は硝酸銀含有溶液中の銀の質量の0.00025%である。溶液を40℃で保温し、種結晶はACS1044球形ナノ銀粒子である。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に送り(流量:38mL/Min)、350rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてアジピン酸0.03gを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
電子顕微鏡下で銀粒子サンプルを10K×倍拡大して観察した結果、
図8に示すように、得られた銀粒子の球形度が高く、GB/T37406-2019方法の原理に準じて計算したところ、球形度は0.88であった。
実施例2と比べて、添加される種結晶の数が半分減少し、得られた銀粒子の粒子径が増大し、D50が約1.2μmであった。
ガリウムイオンで銀粒子をカットする方法を採用し、得られた銀粒子の横断面を電子顕微鏡で観察し、3つの銀粒子をランダムに選択して、その横断面を観察した。サンプルを炭素ペースト上に分散させ、超高真空で測定を行ったところ、
図9に示すように、銀粒子の内部に孔が少量存在し、孔は銀粒子の中心に集中して分布しており、孔の大きさは2.5~60nmである。このような銀粒子のTMA金属収縮比が実施例2の孔の場合よりも僅かに大きく、しかも、粒子の中心に均一に分布している銀粒子よりも低いである。
実施例4
【0044】
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体250kg又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水650Lに溶解し、pHを6.5に調整し、溶液を20℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水250Lにアスコルビン酸150kgを加えて、還元液を調製し、溶液を20℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水700Lにポリエチレングリコール60kgを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を20℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ銀種結晶を50体積%の1,2-プロピレングリコール(残量はPVP)に分散させ、球形ナノ銀種結晶の粒子径は10nm~40nmであり、球形ナノ銀種結晶の質量は硝酸銀含有溶液中の銀の質量の0.0002%である。溶液を20℃で保温し、種結晶はACS1044球形ナノ銀粒子である。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に送り(流量:40L/Min~60L/Min)、100rpm~200rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてカプリル酸0.08kgを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
電子顕微鏡下で銀粒子サンプルを10K×倍拡大して観察した結果、
図10に示すように、得られた銀粒子の球形度が高く、GB/T37406-2019方法の原理に準じて計算したところ、球形度は0.87であった。得られた銀粒子のD50は約1.45μmであった。
ガリウムイオンで銀粒子をカットする方法を採用し、得られた銀粒子の横断面を電子顕微鏡で観察し、3つの銀粒子をランダムに選択して、その横断面を観察した。サンプルを炭素ペースト上に分散させ、超高真空で測定を行ったところ、
図11に示すように、銀粒子の内部に少量の大きな孔と微細な孔が分散して分布しており、孔は銀粒子の中心に集中して分布しており、孔の大きさは14~45nmであった。
実施例5
【0045】
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体150g又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水500mLに溶解し、pHを7.0に調整し、溶液を40℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水500mLに没食子酸85gを加えて、還元液を調製し、溶液を40℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水350mLにグリセロール35gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を40℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ銀種結晶を65体積%のエチレングリコール(残量はPVP)に分散させ、球形ナノ銀種結晶の粒子径は5nm~50nmであり、球形ナノ銀種結晶の質量は硝酸銀含有溶液中の銀の質量の0.0004%である。溶液を40℃で保温した。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に注入し、150rpm~350rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてオレイン酸0.015gを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
電子顕微鏡下で銀粒子サンプルを20K×倍拡大して観察した結果、
図12に示すように、得られた銀粒子の球形度が高く、GB/T37406-2019方法の原理に準じて計算したところ、球形度は0.86であった。得られた銀粒子のD50は約800nmであった。
ガリウムイオンで銀粒子をカットする方法を採用し、得られた銀粒子の横断面を電子顕微鏡で観察し、3つの銀粒子をランダムに選択して、その横断面を観察した。サンプルを炭素ペースト上に分散させ、超高真空で測定を行ったところ、
図13に示すように、銀粒子内部の中心に環状孔が存在し、孔の大きさについては、その直径が金属粒子の直径の半分以下であり、本実施例では、環状孔の直径が0.39μmであった。
反応溶液中に多くの空気バルブが存在するため、反応過程における金属粒子の結晶化工程においてキャビテーション効果が起こり、金属粒子の内部に孔が形成され、また、反応過程におけるキャビテーション効果により、種結晶の粒子径が増大するに伴い、反応溶液の空気バルブにより金属粒子の内部に大きな空気バルブが形成される。
本実施例では、粒子径が5nm~50nmの球形ナノ銀種結晶が使用され、反応過程においては、形成されている小さな金属粒子の表面では、金属粒子の一部が二段反応を行い、一段反応が完了した金属粒子の界面と二段反応で形成された結晶粒との間に環状孔が形成される。
試験例
【0046】
実施例1~5で調製された銀粒子粉末を銀シートにプレスし、熱機械分析装置TMA(米国TA モデル: Q400)を用いて、焼結収縮率を検出し、結果を
図14に示す。
図14は、実施例1~5で調製された銀粒子のTMA検出チャートであり、aは、実施例1で調製された銀粒子の検出曲線であり、bは、実施例3で調製された銀粒子の検出曲線であり、cは、実施例4で調製された銀粒子の検出曲線であり、dは、実施例2で調製された銀粒子の検出曲線であり、eは、実施例5で調製された銀粒子の検出曲線である。
以上より、実施例2及び5で調製された銀粒子は、収縮率が約13.7%であり、実施例5では、粒子の中央領域に環状孔のような特殊な構造が形成されているので、形成された環状孔により粉体の焼結活性が向上し、また、細線印刷デザインによる各処方の製品への要件の多様化改善に有利であることが分かった。
実施例1で調製された銀粒子は、収縮率が約9%であり、実施例3で調製された銀粒子は、収縮率が約10%であり、実施例4で調製された銀粒子は、収縮率が約10.6%である。
実施例6
【0047】
(1)酸化液の調製
酸化銅80gを塩化アンモニウム600mLに溶解し、pHを7.2に調整し、溶液を20℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水600mLにヒドラジン水和物30gを加えて、還元液を調製し、溶液を20℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水500mLにPVP 45gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を20℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ銅種結晶を85体積%のグリセリン(残量はオクチルアミン)に分散させ、球形ナノ銅種結晶の粒子径は5nm~10nmであり、球形ナノ銅種結晶の質量は、銅含有溶液中の銅の質量の0.0005%である。溶液を20℃で保温し、種結晶は、
図15に示すように、粒子径5nmの球形ナノ銅粒子である。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に同時に送り(流量:50m L/Min)、200rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤として0.03gカプリル酸を加えて、沈殿させて分離し、銅粒子粉末を得た。
実施例7
【0048】
(1)酸化液の調製
硫酸ニッケル50gを水1600mLに溶解し、pHを6.5に調整し、溶液を35℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水1300mLに硫酸ヒドロキシルアミン60gを加えて、還元液を調製し、溶液を35℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水300mLにアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム50gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、溶液を35℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノニッケル種結晶を80体積%のジエチレングリコール(残量はオクチルアミン)に分散させ、球形ナノニッケル種結晶の粒子径は5nm~20nmであり、球形ナノニッケル種結晶の質量は、ニッケル含有溶液中のニッケルの質量の0.0001%である。溶液を35℃で保温し、種結晶は球形ナノニッケル粒子である。
(5)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、ポリオール-種結晶系を反応釜に入れて、その後、酸化液と還元液を反応釜に送り(流量:30m L/Min)、500rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてリノール酸0.095gを加えて、沈殿させて分離し、ニッケル粒子粉末を得た。
実施例8
【0049】
(1)酸化液の調製
濃度が24mmol/LのHAuCl
4テトラクロロ金酸溶液を調製し、溶液を110~130℃で保温した。
(2)還元液の調製
エチレングリコール15mlを還元液とし、溶液を110~130℃で保温した。
(3)分散液の調製
ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールを二重分散剤系とし、PVPとPEGの質量比を1:9~3:7とした。溶液を110~130℃で保温した。
(4)ポリオール-種結晶系の調製
球形ナノ金種結晶を85体積%のグリセリン(残量はPVP)に分散させ、球形ナノ金種結晶の粒子径は5nm~50nmであり、球形ナノ金種結晶の質量はテトラクロロ金酸含有溶液中の金の質量の0.0001%である。種結晶を
図16に示す。
(5)金属粒子の調製
恒温反応の温度、油浴鍋の温度を110~130℃に設定し、分散液を反応容器に加え、次に、ポリオール-種結晶系を加えながら撹拌し、その後、エチレングリコール15mlを加え、スポイトを用いて濃度が24mmol/LのHAuCl
4酸化液10mlを反応容器にバッチ式で滴下し、恒温反応を十分に行い、室温に冷却し、凝集剤0.0003gを加えて、沈殿させて分離し、金粒子粉末を得た。
比較例1
【0050】
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体100g又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水250mLに溶解し、pHを7.5に調整し、溶液を30℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水250mLにビタミンC 50gを加えて、還元液を調製し、溶液を29℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水250mLにPVP 20gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、規則的な形状を有する銀ナノ粒子の種結晶(40nm~50nm)を加え、加えられたナノ銀種結晶の質量は硝酸銀溶液中の銀の質量の0.001%である。溶液を30℃で保温した。
図17に示すように、種結晶はG5ナノ銀粒子である。
(4)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、その後、酸化液と還元液を反応釜に送り(流量:50mL/Min)、300rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてオレイン酸0.30gを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
電子顕微鏡下で銀粒子を10K×倍拡大して観察した結果、
図18に示すように、得られた銀粒子のD50は1.2μm~1.5μmである。
調製された銀粒子粉末を銀シートにプレスし、熱機械分析装置TMA(米国TA モデル: Q400)により焼結収縮率を検出し、この粒子は、中央が中実構造であり、熱損失が少ないので、
図19に示すように、収縮比は4.694%であった。
比較例2
【0051】
(1)酸化液の調製
硝酸銀固体100g又は等当量の硝酸銀液体を脱イオン水250mLに溶解し、pHを7.0に調整し、溶液を30℃で保温した。
(2)還元液の調製
脱イオン水250mLにビタミンC 50gを加えて、還元液を調製し、溶液を30℃で保温した。
(3)分散液の調製
脱イオン水300mLにPVP 20gを加えて溶解させ、分散液を調製し、十分に撹拌し、不規則的な形状を有する銀ナノ粒子の種結晶(40nm~50nm)を加え、加えられたナノ銀種結晶の質量は硝酸銀溶液中の銀の質量の0.0005%である。溶液を30℃で保温した。
図17に示すように、種結晶はナノ銀種結晶粒子であり、かつ、球形度が劣り、エッジが鋭く、形状が不規則的である。
(4)金属粒子の調製
定量ポンプを利用して分散液を反応釜に送っておき、その後、酸化液と還元液を反応釜に送り(流量:50mL/Min)、300rpmの撹拌速度で、還元反応を行い、反応完了後、凝集剤としてリノール酸0.033gを加えて、沈殿させて分離し、銀粒子粉末を得た。
電子顕微鏡下で銀粒子サンプルを10K×倍拡大して観察した結果、
図20に示すように、得られた銀粒子は、D50が2.0μm~2.5μmで、球形度が劣り、エッジが鋭く、形状が不規則的である。
比較例3
【0052】
特許文献2:中国特許CN105436517Bにおける方法を用いてに銀粒子を調製し、調製した銀粒子について、XRD(X線回折分析計モデル:日本島津XRD-6100)により検出を行ったところ、
図21に示すように、測定値は15046であり、ピーク値が低く、得られた銀粒子は、結晶形が一致していないことを示し、また、ピークトップがシャープではなく、得られた銀粒子の粒子径が不均一であることを示した。
【0053】
なお、上述した実施例は、単に本発明の技術的手段を説明するために使用されるが、本発明の保護範囲の限定ものではなく、好ましい実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の技術的手段の本質と範囲を逸脱することなく、本発明の技術的手段を修正または均等に置き換えることができる。
【国際調査報告】