(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】パーキンソン病の進行を減速させるためのメビダレン及び他のD1ポジティブアロステリック調節因子の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240221BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/16
A61K31/472
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555299
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 US2022019339
(87)【国際公開番号】W WO2022192255
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ビグラン,ケビン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スベンソン,チェル アンダース アイバン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、パーキンソン病の進行を減速させるための、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンとしても記載されるメビダレン、及び/又はその医薬組成物を使用する方法及び投薬レジメンに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病の進行の減速における使用のための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶。
【請求項2】
患者が前駆段階のパーキンソン病を有する、請求項1に記載の使用のための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶。
【請求項3】
前記患者が初期段階のパーキンソン病を有する、請求項1に記載の使用のための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶。
【請求項4】
前記患者が、パーキンソン病と診断されているが、以前にパーキンソン病の治療を受けていない、請求項1に記載の使用のための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶。
【請求項5】
前記D1ポジティブアロステリック調節因子がメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶。
【請求項6】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり5~60mgの用量で毎日経口投与される、請求項5に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項7】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10~50mgの用量で毎日経口投与される、請求項6に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項8】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、及び50mgからなる群から選択される用量で毎日経口投与される、請求項7に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項9】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり50mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項10】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり45mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項11】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり40mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項12】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり35mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項13】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり30mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項14】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり25mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項15】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり20mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項16】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり15mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項17】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mgの用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項18】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、レボドパと組み合わせて、同時に、別々に、又は連続して投与される、請求項5に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項19】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、脳深部刺激と組み合わせて投与される、請求項18に記載の使用のための、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶。
【請求項20】
パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者において、それを実行する方法であって、前記患者にドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその塩若しくは共結晶を投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記患者が前駆段階のパーキンソン病を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が初期段階のパーキンソン病を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が進行段階のパーキンソン病を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が以前にパーキンソン病の治療を受けていない、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記D1ポジティブアロステリック調節因子が、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり5~60mgの用量で毎日経口投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10~50mgの用量で毎日経口投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、及び50mgからなる群から選択される用量で毎日経口投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり50mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり45mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり40mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり35mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり30mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり25mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり20mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり15mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mgの用量で毎日経口投与される、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月9日に出願された米国仮特許出願第63/158,460号に対する優先権の利益を主張し、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、パーキンソン病の進行を減速させるために、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンとしても記載されるメビダレン、及び/若しくはその共結晶及び医薬組成物、並びに/又は他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病は、黒質として知られる、脳の領域におけるドーパミン生成細胞の喪失を特徴とする。しかしながら、パーキンソン病におけるドーパミン作動性細胞喪失の原因となるメカニズムは知られていない。パーキンソン病は、ブラーク分類による6つの神経病理学的段階を経るが、最初に、迷走神経の前嗅核及び背側運動核における神経内封入体の沈着(段階1)を含むが、これは、黒質におけるメラノニューロンの変性(段階3)に進行するのに先立つものである。この中間段階において、患者は、顕著な運動症状を有し始める。最も初期の臨床症状が出た時点で診察を求める患者は、実際には、病理学的にそれらの障害の中間段階にあり、おそらく50%以上のドーパミン作動性ニューロンが黒質において既に変性している。
【0004】
パーキンソン病の治療は、脳内のドーパミンレベルを増加させることに焦点を当てており、治療に使用される様々なドーパミン作動薬は、ドーパミンを置換するか、又はその分解を防止することを目的としている(Treatment for the progression of Parkinson’s disease.Calne,Donald,et al.,The Lancet.Neurology (2005),4(4),206を参照)。多くのパーキンソン病の症状は、ドーパミンレベルの低下から生じ、運動症状及び非運動症状に分類することができる。運動症状の群には、i)例えば腕、脚及び顎に影響を及ぼす静止時振戦;ii)運動の緩慢さ又は運動緩徐、及びiii)運動の欠如/硬直又は運動不能が含まれる。更に、パーキンソン病患者が経験する運動症状には、姿勢に関する問題(姿勢の不安定性)及び歩行に関する問題も含まれる。パーキンソン病患者の非運動症状には、神経精神症状、睡眠障害及び覚醒状態、並びに自律神経症状が含まれる。パーキンソン病は、患者ごとに実質的に異なる臨床症状を有する異質性障害である。現在の臨床ガイドライン(EMA2012ガイドライン(EMA/CHMP/330418/2012 rev.2)は、パーキンソン病であると臨床診断されるには、運動緩徐とともに、静止時振戦、筋硬直、及び姿勢反射障害(中核症状)のうちの少なくとも1つを要件とすると規定している。
【0005】
パーキンソン病は、特徴的に進行性神経変性障害であり、患者は、周知の疾患の臨床段階が後に続く長い前駆段階を有し得る。パーキンソン病の疾病原因の理解により、病気の進行を変えるためのアプローチとして、早期における(おそらく前駆段階においてさえ)介入を目的とした神経保護戦略が生み出されている(Jankovic J,Tan EK.J Neurol Neurosurg Psychiatry 2020;91:795-808)。パーキンソン病の進行は、経時的なドーパミン作動性療法に対する患者の応答から明らかである。疾患の初期段階において、振戦、運動緩徐、及び硬直などの主な症状は、通常、例えば、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、又はレボドパなどの、ドーパミン作動性療法によって改善することができる。これらの従来の治療のいずれも、パーキンソン病の進行を減速させるとは考えられないが、患者が少なくともいくつかの運動症状を抑制するのを助けとなり得る。パーキンソン病患者は、上記の症状がないか又はほとんどない場合には、オン状態にあると言われる。対照的に、パーキンソン病患者は、オン状態でない場合、例えばパーキンソン病の症状を示す場合には、オフ状態であると言われる。
【0006】
疾患の初期段階において、パーキンソン病の症状は、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤又はレボドパでの治療によって改善され得る。これらの従来の治療はいずれも疾患の進行を減速させるとは考えられていないが、少なくとも一部の患者が振戦などの疾患の症状を抑制するのに役立ち得る。この初期疾患段階の後、ドーパミン作動性療法の有効性は低下し、ほとんどの患者において、「ウェアリングオフ」又は「薬の切れ目の」悪化(運動症状の日内変動など)、並びにジスキネジア(舞踏病及びジストニア(筋緊張異常)を含む薬物誘導性不随意運動の現象)が生じる。運動症状の日内変動とは、患者がオン状態とオフ状態との間で変動する状況を指し、パーキンソン病が進行するにつれて、オフ状態にある時間(「オフ時間」)が増加し、オン状態にある時間(「オン時間」)が減少する傾向がある。これらは、用量依存的かつより予測可能であり得るか、又は非用量依存的であり得る。レボドパの有効性は、より長い期間を見ればその期間にわたって減少するように見える可能性があり、一部の医師は、ドーパミン作動薬及び/又はモノアミンを用いたパーキンソン病の治療を開始することを好み、一連の治療の後の時期までレボドパを用いた治療を留保する。レボドパは、通常、その末梢段階での代謝を低下させて必要とされる用量を減らすために、カルビドパ又はベンセラジドなどのAADC阻害剤と一緒に使用される。レボドパはまた、エンタカポンなどのCOMT阻害剤と一緒に使用されて、その末梢段階での代謝を更に低減して、必要とされるレボドパの用量を更に減らしてもよい。これらのアプローチは限定的であり、パーキンソン病の進行を減速させるための代替的かつ改善された療法が依然として必要とされている。最近発見されたドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子は、パーキンソン病の進行を減速させる新規なアプローチを代表するものであり得る。
【0007】
ドーパミン受容体D1サブタイプ(D1)は、中枢神経系において最も豊富に存在するドーパミン受容体であり、多くのCNS機能において重要な役割を果たしている。長年にわたり、ドーパミン作動性CNS障害におけるドーパミンシグナル伝達の調節は、直接D1受容体アゴニストで試みられてきたが、様々なD1アゴニスト剤の成功は、有効性、安全性、特に許容できない悪影響を含む忍容性の欠如のため非常に制限されたものであり、それらの薬剤の有用性は制限されていた。更に、D1アゴニストは、認知エンドポイントにベル型の用量応答曲線を示し、臨床使用を複雑にし、混乱させる。したがって、臨床的に有用な直接D1受容体アゴニストを開発する従来の試みは、受容体脱感作、貧弱なADME/PK特性、及び低血圧などの用量制限副作用のために、ほとんど成功してこなかった。直接作用のドーパミン療法も、高用量に関連する認知機能障害、発作リスク、及び耐性発現に一部起因して、その有効性が限定的なものとなっている。
【0008】
メビダレンは、ドーパミンD1受容体ポジティブアロステリック調節因子(D1 PAM)であり、パーキンソン病の進行を減速させるための潜在的なファーストインクラスの薬剤を代表している。メビダレン(CAS登録番号1638667-79-4)は、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンとして化学的に記載され得るが、構造的には以下のように表し得る:
【0009】
【0010】
メビダレンの有用な形態としては、結晶形態(国際公開第2017/070068号を参照)と、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノン及び4-ヒドロキシ安息香酸(CAS登録番号1638669-32-5)を含む共結晶形態(国際公開第2014/193781号を参照)が挙げられる。ポジティブアロステリック調節因子として、ドーパミンD1受容体サブタイプの「増強剤」とも呼ばれるメビダレンは、D1に対して非常に選択的である。メビダレンは、D1受容体の非常に弱い直接アゴニズムを示し、ドーパミンの存在下でのみ活性があり、内因性の身体の常態に依存し、通常のフィードバック制御に従うと考えられている。したがって、メビダレンは、D1シグナル伝達が不十分であり、神経細胞機能障害及び/又は細胞死をもたらす可能性があるパーキンソン病の進行を減速させるために、D1シグナル伝達経路を調節する革新的な薬剤及びアプローチを代表する。
【0011】
メビダレンは、直接D1受容体アゴニストなどの他のドーパミン作動薬とは異なる作用機序を有している。メビダレンは、D1受容体の細胞内ループ2上の新たに発見されたアロステリック結合部位に結合し、その部位で、D1受容体のドーパミンの親和性を高める。正常な生理学的状態及び臨床的疾患状態におけるドーパミン作動性シグナル伝達の複雑さのため、及びD1オルソステリックアゴニストからの臨床薬理学的ガイダンスの欠如のため、メビダレン及び他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子を使用してパーキンソン病の進行を減速させる新しい方法に対する、重要な満たされていないニーズが残っている。特に、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子(例えば、メビダレン)を用いてパーキンソン病の進行を減速させる方法であって、有効で、安全で、かつ臨床的に許容可能な薬理学的効果の組み合わせプロファイルを提供する方法に対する満たされていないニーズが残っている。
【発明の概要】
【0012】
D1 PAMメビダレンは、現在、軽度から中等度のレビー小体型認知症(パーキンソン病認知症(PDD)又はレビー小体型認知症(DLB))を有する患者における安全及び効力を、プラセボと比較して評価するために、患者における第2相臨床試験(PRESENCE(NCT03305809)と呼ばれる)において評価がなされている。運動症状及び非運動症状の様々な程度にわたる、予め指定された転帰について、メビダレンは、12週間にわたる試験で、統計的に有意で臨床的に有意義な利益を示した。例えば、メビダレンによる治療は、全般的な機能(全般的臨床症状評価(ADCS-CGIC)による)における有意な改善をもたらした。D1 PAMへの曝露に対する特定のニューロン応答とともに、上記の観察により、初期のパーキンソン病患者の治療が、疾患の進行を減速させ得るという考えに至った。特に、ドーパミンD1受容体は、シナプス可塑性に関与し、ニューロンシナプスの能力に影響を与え、時間の経過とともにそれを強化又は弱化する。本開示のD1 PAMによりドーパミンD1受容体の活性化を強化すると、神経突起の伸長の強化と、樹状突起のスパイン及びシナプスの数の増加を介して、可塑性(神経発生)が促進されると考えられる。この応答は、初期パーキンソン病患者におけるニューロン機能障害及び/又はニューロン細胞死を遅らせる可能性を有すると考えられている。総合すると、これらのデータは、長期にわたるD1 PAM治療が、パーキンソン病の進行の過程に、正の影響を及ぼし得る長期疾患修飾効果を有する可能性を支持している。
【0013】
本開示は、メビダレン及び/若しくはその医薬組成物、並びに/又は他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子を、パーキンソン病の進行を減速させるのに使用する方法を提供する。本明細書で使用される場合、パーキンソン病の進行を減速させるということは、進行を一定の期間遅延させる効果を指す。
【0014】
本開示は、パーキンソン病の進行を減速させるための手段を提供する。本明細書で使用される場合、「パーキンソン病の進行を減速させる」とは、当業者に公知であり、かつ/又は本明細書に記載されているパーキンソン病の徴候及び症状についての1つ以上のエンドポイントによって裏付けられる、パーキンソン病の進行の徴候及び症状のうちに任意のものを、なんらかの有意な程度まで阻害し、遅延させ、停止させることを意味する。これらのエンドポイント及びその変化を測定する方法は、同様に当業者に公知であり、かつ/又は本明細書に記載されており、これらのエンドポイントが改善したという場合、その改善は、疾患の過程の所与の時点で5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、又はそれ以上の程度であり得るか、かつ/又は数週間、数ヶ月、若しくは数年の進行の遅延によって裏付けられ得る。本発明の実施形態の方法に従って治療される患者について、パーキンソン病の進行は、本発明の治療を受けていない患者と比較して、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、又は少なくとも4ヶ月、又は少なくとも5ヶ月、又は少なくとも6ヶ月、又は少なくとも7ヶ月、又は少なくとも9ヶ月、又は少なくとも1年の期間遅延され得る。
【0015】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速又は遅延させる必要があるが、以前にパーキンソン病の治療を受けていない患者において、パーキンソン病の進行を減速させる又は遅延させる方法であって、有効量のメビダレンを当該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病と診断されたが、以前にパーキンソン病の治療を受けていない患者において、パーキンソン病の進行を減速させる又は遅延させるためのメビダレン又は本明細書に記載のD1 PAMの使用であって、有効量のメビダレン又は本明細書に記載のD1 PAMを当該患者に投与することを含む使用を提供する。
【0017】
一実施形態において、本開示は、特発性パーキンソン病の進行を減速させるための、レボドパとの併用治療を伴って又は伴わずに、本疾患の経過にわたる、すなわちレボドパの効果が銷失するか又は一貫性がなくなり、治療効果の変動(投与終了又はオン-オフ変動)が生じる後期までを含む経過にわたる、メビダレン又は本明細書に記載されるD1 PAMの使用を提供する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、以前にパーキンソン病の治療を受けていない患者は、以前にパーキンソン病の治療のための薬物を服用したことがないパーキンソン病患者を含む。パーキンソン病の治療のための薬剤には、ドーパミン作動薬、レボドパなどのドーパミン前駆体、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤、及び抗コリン作動薬が含まれる。本開示の実施形態による治療を開始する前に、そのような患者は、1日あたり最大6時間、例えば、最大1時間、最大2時間、最大3時間、最大4時間、又は最大5時間の、毎日の平均オフ時間を経験し得る。
【0019】
本開示の実施形態による治療を開始する前に、そのような患者は、パーキンソン病との診断を受けてから、最大9年間、例えば、最大1ヶ月間、最大2ヶ月間、最大3ヶ月間、最大4ヶ月間、最大6ヶ月間、最大12ヶ月間、最大2年間、最大3年間、最大4年間、最大5年間、最大6年間、最大7年間、又は最大8年間経過していてよい。
【0020】
本開示の実施形態による治療を開始する前に、患者は、最大4年間、例えば、最大1ヶ月間、最大2ヶ月間、最大3ヶ月間、最大4ヶ月間、最大6ヶ月間、最大12ヶ月間、最大2年間、又は最大3年間にわたって、ジスキネジアを伴う又は伴わない運動症状の日内変動などの運動症状及び/又は運動合併症を経験し得る。
【0021】
運動障害疾患学会のパーキンソン病(Movement Disorder Society、MDSのパーキンソン病)基準によれば、パーキンソン病の臨床診断は、運動緩徐、硬直、及び静止時振戦などの3つの主要な運動症状(MS)に基づく、定義された運動症候群(パーキンソニズム)を中心として行われる。しかしながら、不眠症、うつ病、不安、認知低下、感情鈍麻、神経精神障害、及び自律神経機能障害を含む非運動症状(NMS)が、発症時及び疾患進行時に存在し得る。したがって、パーキンソン病は、生活の質及び日常生活の活動を次第に危うくするが、臨床症状及び疾患進行における高い変動性が、罹患した人々の間で観察され得る。
【0022】
したがって、ホーン・ヤールスケールが、一般的に使用されて、患者群を比較し、ステージI(片側性の関与のみ)からステージV(車椅子束縛又は寝たきり)までの範囲の、疾患進行を指す評価を提供する。初期段階では、症状は通常軽度で片側性であり、治療に対して完全な応答を示す。症状は進行する傾向があり、運動症状は反対側に影響を及ぼすが、最初の薬物に対する応答は一般に効果的である。疾患の進行過程中、治療応答は低下し、抗パーキンソン薬は、副作用を誘発する可能性がある。長期にわたる疾患期間の後、患者は、現在の治療が制限されているいくつかのNMSを発症し得る。これまでの研究は、疾患の平均持続期間が6.9~14.3年の範囲であり、認知症の発症が、死亡率上昇の最も高い予測因子であることを報告している。
【0023】
パーキンソン病の両方の臨床的特徴(運動及び非運動)は、疾患進行と関連して本明細書に記載される。初期段階は、運動症状、レム睡眠行動障害(RBD)、便秘、不安、うつ病、衝動制御障害を含み得る。進行段階は、運動症状、認知障害、無気力症、精神病性障害、起立性低血圧、尿機能不全を含み得る。合併段階は、運動症状の日内変動、ジスキネジア、スーパーオフを含み得る。(例えば、C.Carrrini et al.,A Stage-Based Approach to Therapy in Parkinson's Disease,Biomolecules 2019,9,388を参照)。
【0024】
初期段階では、パーキンソン病のいくつかの非運動症状及び徴候が、疾患の非常に早い段階に観察され得る。Braakの病期分類システムによれば、パーキンソン病の病理学的プロセスは、黒質緻密部では開始しない可能性がある。シヌクレイン沈着は、最初に、迷走神経の前嗅核及び背側運動核に関与するようである。更なるその後の知見は、末梢自律神経節及び無髄ラミナ-1脊髄ニューロンもまた、初期病理学的段階に関与し得ることを示唆している。これらの知見は、嗅覚障害、急速眼球運動(REM)睡眠行動障害(RBD)、便秘、不安、及びうつ病などのパーキンソン病の典型的な初期非運動性特徴と一致する。臨床症状及び過程の進行の定量的評価は、パーキンソン病におけるいかなる治療試験においても必須要素である。パーキンソン病は、疾患の可変性を有することが知られており、したがって、症状の重症度の分類は、神経学的検査と、症状が日々の機能及び生活の質にどのように影響しているかの詳細な評価を含む、全体論的評価に基づいて行い得る。好ましくは、本明細書中に開示される実施形態について、初期パーキンソン病患者は、ホーン・ヤールIIと診断され、投薬をされていない患者である。
【0025】
パーキンソン病の進行中、進行段階では、ドーパミン作動性進行性ニューロン喪失のために、初期療法の有益な効果が低下する可能性があり、MSの管理はより複雑になる。この進行した状態の身体障害の発現としては、バランスの悪化、転倒、歩行の危殆化の増加、及び言語障害が挙げられる。進行したパーキンソン病における別の一般的な症状は、ジストニアによって代表される。ジストニアは、通常、l-ドーパ療法の投与の後に続き、それは、ウェアリングオフの間、ピーク用量時、又は二相性タイミングといったいくつかの発症パターンを示し得る。l-ドーパで治療されたパーキンソン病患者の約30%は、特に最初のl-ドーパ投与前の朝に、「オフジストニア」を示す傾向がある。他のパターンとは異なり、オフジストニアは一般に痛みを伴い、足部が痛みの主な部位であるようである。対照的に、ピークドーズジストニアは、首、顔、及び上肢に関与する傾向があり、一方、二相性ジスキネジアの一部として生じるジストニアは、主に下肢に関与するようである。典型的には疾患の数年後に現れるジストニアは、初期段階ではめったに起こらず、通常、若年発症パーキンソン病及び常染色体上劣性遺伝的パーキンソニズム形態(PARK-PARKIN(PARK2)突然変異及びPARK-SNCA(PARK1)突然変異など)に関連する。それにもかかわらず、いくつかの非運動性の特徴(例えば、幻覚、精神病、自律神経失調症、気分障害、及び痴呆症)は、進行段階で現れ得る。いくつかのNMSは、典型的には、MSの数年前に発症する。しかしながら、パーキンソン病の後期段階は、付随的なNMSによって特徴付けられるが、これは、初期段階においてより軽度であるか又はあまり一般的ではない。
【0026】
合併段階は、一般に4-6年の治療後に発症し、パーキンソン病患者の約50%に影響を及ぼす運動症状の日内変動を含み得る。ウェアリングオフが最も一般的なタイプであるが、他の運動合併症、例えば、投与による機能不全、投与開始時の悪化、薬の効果の切れ目におけるリバウンド、すくみ足歩行、及びレボドパ誘発性ジスキネジー(LID)などもまた、病気の進行中に発症し得る。いわゆるオフ期間(症状の再発によって又はl-ドーパ効果の欠如によって定義される)の頻度及び持続時間を減少させるために、いくつかの治療戦略が採用されているが、これらの薬物のいずれも運動症状の日内変動を完全には抑制することができず、それらの副作用が、最適用量を制限し得る。
【0027】
パーキンソン病の進行並びにその徴候及び症状を評価する方法は、当業者には周知であり、例えば、DSM-5及び他の周知の診断用参考文献、例えば本明細書に記載されているものに記載されている。更に、パーキンソン病の進行に対する治療の有効性を評価する場合、治療を受けている患者は、オン状態又はオフ状態にあると称され得る。したがって、治療効果は、オン時間の増加及び/又はオフ時間の減少によって立証される。オン時間の増加が意味するのは、症状が軽減されている状態の持続時間の増加である。オフ時間の減少が意味するのは、治療を受けているパーキンソン病患者がパーキンソン病の症状を示す期間の減少である。オン時間及びオフ時間は、従来、観察によって確定され、患者及び/又は医師は、症状及び症状の出たタイミングを日誌につける。治療群において観察されたオン時間及びオフ時間は、臨床状況に応じて、代替治療群又はプラセボ治療群におけるものと比較することができる。
【0028】
オン時間及びOFF時間並びに他の症状の評価に使用される方法としては、統一パーキンソン病評価スケール又はUPDRS(Fahn S.Unified Parkinson's disease rating scale.In Fahn S,Marsden CD,Goldstein M,and Calne DB (eds)Recent Developments in Parkinson’s Disease.McMillan,1987,New Yorkを参照)(パーキンソン病の長期の経過を追跡する目的で使用)及びMDS(運動障害疾患学会)のUPDRS(Goetz,et al (1 Jan.2007).「Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS):Process,format,and clinimetric testing plan」.Movement Disorders 22 (1):41-47を参照)が挙げられる。当業者に公知であるように、様々な他のアプローチが、臨床応答を立証するために適切とみなされるように使用されてよく、かつ/又は本明細書中に記載される。適用可能であり得るアプローチの非限定的な例は、PDQ-39(Jenkinson et al,The Parkinson’s disease questionnaire.User manual for the PDQ-39,PDQ-8 and PDQ Summary Index.Oxford:Health Services Research Unit,Department of Public Health,University of Oxford,1998)、NMSS(Chaudhuri et al.,「The metric properties of a novel non-motor symptoms scale for Parkinson’s disease:results from an international pilot study,」Movement Disorders,vol.22,no.13,pp.1901-1911,2007)、PDSS (Chaudhuri et al.The Parkinson’s disease sleep scale:A new instrument for assessing sleep and nocturnal disability in Parkinson’s disease.J Neurol Neurosurg Psychiatry 2002;73:629-35)、ホーン・ヤール分類スケール、及びシュワブ・イングランド日常生活活動(ADL)スケール(http://neurosurgery.mgh.harvard.edu/functional/pdstages.htm)である。安全性評価、例えばmMIDI(Grant JE.Impulse control disorders:A clinician’s guide to understanding and treating behavioral addictions.New York:W.W.Norton & Company;2008)及びC-SSR(Posner et al.Columbia-Suicide Severity Rating Scale.Am J Psychiatry,2011 168(12)1266-1277)も、臨床エンドポイントを確立するために使用することができる。
【0029】
パーキンソン病患者はまた、その治療の過程でジスキネジア(薬物誘発性の不随意筋肉運動が起こる状態を指す)を経験する。ジスキネジアは、パーキンソン病自体の症状ではなく、症状の治療に使用される薬物の副作用であると考えられている。ジスキネジア(例えば高レベルのレボドパから生じる)は、通常のパーキンソン病の症状が、そうでなければ抑制された状態にあるオン状態の間に起こり得る。レボドパ誘発性ジスキネジアは、レボドパを長期間服用した患者に現れ、一般にオン状態の間に起こるが、疾患後期では、ジスキネジアはオフ状態で起こり得る。
【0030】
ジスキネジアは、3つの主要なタイプに分類することができる。最も一般的な形態は、ピークドーズジスキネジアであり、レボドパのピークレベルで起こり、レボドパの用量を減少させることによって改善することができる。第2の形態は、レボドパレベルが上昇又は下降しているときに起こる二相性ジスキネジアであり、これもレボドパの用量を減少させることによって改善することができる。ジスキネジアの第3の形態は、オフタイムジストニアであり、これらは、例えば、ねじれ及び反復運動又は異常な姿勢を引き起こす持続性筋収縮である。これらのオフタイムジストニアは、レボドパレベルが低い場合の、無動(運動を開始できないこと)と相関し、レボドパで治療可能である。パーキンソン病の治療における主要な課題は、治療に伴うジスキネジアを増加させることなく、患者のオン時間を改善する(及び/又は逆にオフ時間を減少させる)ことである。後期パーキンソン病患者に分類されるのは、レボドパ療法の開始後に、i)レボドパによる治療にもかかわらず症状の抑制が不十分である可能性がある患者、及び/又はii)運動症状の日内変動(用量依存的又は非用量依存的であり得る)及びジスキネジアなどの運動合併症に罹患する可能性がある患者である。遅延-オンとは、抗パーキンソン病薬の効果が現れるのに必要な時間が長くなることである。用量依存的(又は予測可能な)運動合併症は、投与の時間に関連するものであり、例えばピークドーズジスキネジア、薬の効果の切れ目における(又はウェアリングオフによる)悪化及び二相性ジスキネジアなどである。予測可能性の低い運動合併症(例えば、発作性オンオフ現象、すくみ)については、治療は、オフ状態の継続時間及び/又は強度を低減することを意図する。したがって、主な有効性変数は、オフ状態の回数、継続時間、及び/又は強度の減少であり得る。ジスキネジアを伴うオン時間及びジスキネジアを伴わないオン時間がどの程度増加するかも明らかであるはずである。高度に進行したパーキンソン病において、患者は、重度で高度に予測不可能な急速な運動症状の日内変動に罹患し得る。
【0031】
疾患の進行を減速させるための療法により、後期運動合併症若しくは後期の運動症状の日内変動を予防若しくは先延ばしにすることができ、かつ/又は疾患の進行を遅延させることができるであろう。好ましくは、治療は、更なる神経変性を減速させ、停止させ、又は実質的に減少させ、疾患進行を遅延させる。薬物療法で、それに関連する疾患の進行の遅延を示したものは、今のところ存在しない。初期の未治療のパーキンソン病(デノボ)患者について、達成されるべき臨床的目標は、UPDRSの変化によって評価される運動症状の進行を減速させることである。治療を受けている安定した状態のパーキンソン病患者について、達成されるべき臨床的目標は、運動障害の更なる低下を減速させ、障害の進行を予防し、そして運動合併症及び非運動合併症を予防することである。このステージについてのキーとなる結果のスケールは、いわゆる主軸症状の出現であり得る:例えば、すくみ足、バランスの喪失又はホーン・ヤールステージIII(「両側性疾患:姿勢反射障害を伴う軽度から中等度の障害;身体的には独立」又は「軽度から中程度の両側性疾患;なんらかの姿勢の不安定性;身体的には独立」)であり得る。
【0032】
進行したパーキンソン病の患者について、達成されるべき臨床的目標は、障害の予防である。この患者群における臨床エンドポイントは広範囲であり、自律神経障害又は転倒の減少、認知症状の減少、並びにおそらくは、痴呆「までの時間」及び老人ホームに入る「までの時間」を含む。本開示は、メビダレン又は本明細書に記載される他のD1 PAMが、それを必要とする患者に投与されて、本明細書に記載されるように、数週間、数ヶ月間、又は数年間を含む任意の有意な期間にわたって、パーキンソン病の上記ステージのいずれかを患者が発症するのを減速させる又は遅延させる実施形態を提供する。
【0033】
メビダレン及び他のD1 PAM:
本開示の治療方法では、また本明細書で使用される場合には、メビダレンは、任意の形態の、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンであり、その結晶性及び共結晶性形態、特に安息香酸共結晶性形態を含み、かつ/又はそれらの薬剤を含む医薬組成物を含む。本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行するためのメビダレンの使用方法を提供し、1日あたり60mgの最大総用量まで、約5mg~約60mgの用量のメビダレン、又はその医薬組成物を当該患者に投与することを含む。好ましくは、患者は、パーキンソン病の前駆段階又は初期段階にある患者である。本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行するためのメビダレンの使用方法を更に提供し、1日あたり50mgの最大総用量まで、約10mg~約50mgの用量のメビダレン、又はその医薬組成物を当該患者に投与することを含む。メビダレン及び/又は本明細書に記載の他のD1 PAM剤を使用する治療方法は、他のパーキンソン治療に関連する副作用を伴わずに、パーキンソン疾患の進行を減速させる新規なアプローチを提供する。
【0034】
メビダレンは、パーキンソン病認知症に関する第2相臨床研究(PRESENCE、NCT03305809)において研究されており、運動症状及び非運動症状に対して統計的に有意かつ有意義な利益を有することが判明している。上記のPRESENCE研究(その概要を実施例1に示す)は、メビダレンが、本開示の方法及び投薬レジメンに従って使用される場合、パーキンソン病の進行の、驚くべきかつ顕著な減速又は遅延を誘導し得るという発見をもたらした。したがって、メビダレンが本発明の治療方法及び投薬レジメンに従って使用される場合には、メビダレンは、好ましくは初期段階の患者において、パーキンソン病の進行を減速させる、有効、安全、かつ臨床的に許容可能な治療レジメンを提供するように、ドーパミンD1シグナル伝達を改善する手段を提供する。
【0035】
本開示は、初期段階のパーキンソン病に罹患している患者が、パーキンソン病の進行の徴候及び症状の軽減を有する一方で、これらの臨床上の利益を妨げる他のD1 PAMの副作用を回避するように、メビダレンの長期間にわたる毎日の投与のための特定の臨床投薬レジメンを提供する。更に、本開示は、望ましくない効果を回避しながら、個々の患者に対して効果的な疾患の進行の減速が達成されるよう、パーキンソン病の前駆段階又は初期段階にある患者が、本開示のレジメン内で、より低い用量又はより高い用量のメビダレンを採用することが更に可能になるように、メビダレンの長期間にわたる毎日の投与法を提供する。概して、本開示の投薬レジメンは、臨床的に観察された特定の望ましくない有害な心臓血管活動を回避しながら、患者がD1 PAM活性から利益を得る手段を提供し、クラスとしてD1 PAMの的確な薬理を代表し得る。したがって、本開示は、以下に詳細に説明される特定の用量のメビダレンを使用して、パーキンソン病初期段階の患者に、メビダレンを毎日経口投与するための投薬レジメンを提供する。
【0036】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行することにおけるメビダレンの使用方法であって、1日あたり60mgの最大総用量まで、約5mg~約60mgの用量のメビダレン、又はその医薬組成物を、当該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0037】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行することにおけるメビダレンの使用方法であって、1日あたり60mgの最大総用量まで、約5mg~約60mgの用量のメビダレン、又はその医薬組成物を、当該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0038】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0039】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0040】
一実施形態において、本開示は、以前にパーキンソン病の治療を受けていない患者の、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0041】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病と診断されているが、以前にパーキンソン病の治療を受けていない患者の、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0042】
一実施形態において、本開示は、前駆段階にあるパーキンソン病の患者の、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0043】
一実施形態において、本開示は、初期段階にあるパーキンソン病の患者の、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0044】
一実施形態において、本開示は、進行段階にあるパーキンソン病の患者の、パーキンソン病の進行の減速において使用するための、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を提供する。
【0045】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり5~60mgの用量で毎日経口投与される。
【0046】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり10~50mgの用量で毎日経口投与される。
【0047】
一実施形態において、本開示は、上記実施形態のいずれかに従って使用するためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、及び50mgからなる群から選択される用量で毎日経口投与される。
【0048】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり50mgの用量で毎日経口投与される。
【0049】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり45mgの用量で毎日経口投与される。
【0050】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり40mgの用量で毎日経口投与される。
【0051】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり35mgの用量で毎日経口投与される。
【0052】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり30mgの用量で毎日経口投与される。
【0053】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり25mgの用量で毎日経口投与される。
【0054】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり20mgの用量で毎日経口投与される。
【0055】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり15mgの用量で毎日経口投与される。
【0056】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、1回当たり10mgの用量で毎日経口投与される。
【0057】
一実施形態において、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる使用のためのメビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶を提供し、ここで、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶は、レボドパ及び/又は脳深部刺激と組み合わせて、同時に、別々に、又は連続して投与される。
【0058】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行する方法であって、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその塩若しくは共結晶を当該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0059】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行する方法であって、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその塩若しくは共結晶を当該患者に投与することを含み、ここで、患者がパーキンソン病の前駆段階にある方法を提供する。
【0060】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行する方法であって、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその塩若しくは共結晶を当該患者に投与することを含み、ここで、患者がパーキンソン病の初期段階にある方法を提供する。
【0061】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者における、それを実行する方法であって、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその塩若しくは共結晶を当該患者に投与することを含み、ここで、患者がパーキンソン病の進行段階にある方法を提供する。
【0062】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり5~60mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0063】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10~50mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0064】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、及び50mgからなる群から選択される用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0065】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり50mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0066】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり45mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0067】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり40mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0068】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり35mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0069】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり30mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0070】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり25mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0071】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり20mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0072】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり15mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法に関する実施形態のいずれかによる方法を提供する。
【0073】
一実施形態において、本開示は、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mgの用量で毎日経口投与される、上記の方法のうちのいずれかによる方法を提供する。
【0074】
一実施形態において、本開示は、パーキンソン病の進行を減速又は遅延させることを必要とする患者における、それを実行する方法であって、当該患者に、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子又はその塩若しくは共結晶を、脳深部刺激と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0075】
上記及び本発明の説明全体を通して使用される場合、以下の用語は、別段示されない限り、以下の意味を有すると理解するものとする。
【0076】
「薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤」は、哺乳動物、例えばヒトへの生物学的に活性な薬剤の送達のために当該技術分野において概して許容されている媒体である。
【0077】
「用量」は、患者において所望の治療効果をもたらすように計算されたメビダレンの所定の量又は単位用量を指す。本明細書で使用される場合、「mg」は、ミリグラムを指す。本明細書で使用される場合、メビダレンの用量範囲及び提供される用量は、遊離塩基、共結晶形態、又は任意の他の組成物若しくは形態など提供される形態に関係なく、医薬品活性成分2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンの重量を表す。好ましくは、単位用量は、共結晶形態の2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノン及び4-ヒドロキシ安息香酸で構成される。「約」という用語は、本明細書で使用される場合、記載される数値に十分近接していること、例えば、記載される数値の±10%を意味する。
【0078】
メビダレン及び/又は2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-((1S,3R)-5-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンを作製及び製剤化する方法は、当技術分野で既知であり、例えば、国際公開第2014/193781号及び/又は国際公開第2017/070068号に記載されている。メビダレン、及びその共結晶並びにそれらの特定の製剤及び剤形を調製する方法は、当業者に既知であり、国際公開第2014/193781号及び/又は国際公開第2017/070068号に記載されている。国際公開第2014/193781号は、ドーパミン1受容体(D1)のポジティブアロステリック調節因子(PAM)として特定の3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル化合物を開示し、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノン、及び2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンと4-ヒドロキシ安息香酸とを含む共結晶形態並びにそれらの組成物を含む。国際公開第2017/070068号は、結晶性2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]エタノンを開示している。メビダレンは、好ましくは、経口、静脈内、及び経皮経路を含む、当該化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤される。より好ましくは、そのような組成物は、経口投与用である。メビダレンは、単独で、又は薬学的に許容される担体、希釈剤、若しくは賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与され得る。本明細書全体を通して、組成物が特定の成分を有する、含む(including)、又は含む(comprising)と記載されている場合、組成物はまた、列挙された成分から本質的になる、又はその成分からなることが想定される。そのような医薬組成物及びそれを作製するためのプロセスは、当該技術分野で既知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照)。製剤において、メビダレンは通常、賦形剤と混合されるか、賦形剤によって希釈されるか、又はカプセル、サシェ、紙、若しくは他の容器の形態であり得るそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤としての機能を果たす場合、この賦形剤は、活性成分のためのビヒクル、担体、又は媒体として作用する固体、半固体、又は液体材料であり得る。したがって、製剤は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体として又は液体媒質中にある)、例えば、最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏剤、軟質及び硬質ゼラチンカプセル剤、ゲル剤、坐剤、滅菌注射用液剤、並びに滅菌包装粉末の形態であることができる。好適な賦形剤のいくつかの例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースが含まれる。製剤は追加的に、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などの滑沢剤;湿潤剤;乳化剤及び懸濁化剤;例えばメチルヒドロキシベンゾエート及びプロピルヒドロキシベンゾエートのような保存剤;甘味剤;並びに香味剤を含むことができる。本発明の化合物は、当該技術分野において既知の手順を採用することによって患者への投与後に有効成分の迅速な、持続的な、又は遅延した放出を提供するように製剤化することができる。製剤を調製する当業者は、化合物及び/又は選択された形態の特定の特性、治療される障害又は状態、障害又は状態の段階、及び他の関連する状況に応じて、適切な形態及び投与様式を容易に選択し得る。以下の表は、本発明の投薬レジメンに従って経口投与用の錠剤として提供される選択された単位剤形の例を提供する。当業者は、容易に既知である製剤化方法とともにこれらの実施例を使用して、追加の配合物及び/又は単位剤形を提供し得る。
【0079】
【0080】
本発明の単位用量は、化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化され、好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。本明細書で使用される「投与」又は「投与する」は、患者がメビダレンを自己投与する、及び/又はメビダレンが別の人によって投与される、並びに/又は患者が、特定のレジメンに従ってメビダレンを消費するように指示及び/若しくは管理されることを含む。好ましくは、メビダレンは朝に投与される。好ましくは、メビダレンは毎日服用される。好ましくは、メビダレンの示された単位用量は、毎日、すなわち、「1日あたり」という用語の使用によって示されるように、1日1回服用される。本明細書で使用される場合、「毎日の投与」は、指定された用量でのメビダレンの長期及び定期的な投与から有益な効果を提供することを意図した特定の治療レジメンとしてのメビダレンの投与を含む。特に、「毎日の投与」は、21日以上連続して、又はドーパミン作動性CNS障害の患者の徴候及び症状を予防するために必要とされる限り、毎日連続して投与することを含む。患者が時折1日逃した場合、患者は、投与が指定された翌日に単に投与を再開してよく、そのような事例も、「毎日の投与」を意味し続けるものとする。本明細書で使用される場合、「毎日」は、メビダレンが24時間ごとに1回、又は暦日ごとに1回投与されることを意味する。本明細書で使用される場合、「毎日」は、メビダレンが継続的に連続して投与されることを意味し、本明細書で使用される投与は、患者が用量を投与する、かつ/又は患者が治療レジメンの一部として用量を投与するように指示されることを含む。方法が特定のプロセスステップを有する、含む(including)、又は含む(comprising)と記載されている場合、プロセスはまた、記載された処理ステップから本質的になるか、又はそれらからなる。更に、本発明が実施可能のままである限り、ステップの順序又はある特定の作用を実行するための順序は重要ではないことが、理解されるべきである。また、2つ以上のステップ又は動作を同時に実施することができる。
【0081】
本開示の実施形態は、他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、例えば、国際公開第2014193781号及び/又は国際公開第2017/070068号、並びに国際公開第2019/204419号及び国際公開第2016/055479号に記載及び/又は例示されているものを含み、それらの任意の塩及び/又は共結晶を含む。例えば、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-((1S,3R)-5-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである、DPTQと呼ばれる1つの上記の他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子を、以下に示す。
【0082】
【0083】
本開示の実施形態は、他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、例えば、以下に列挙されるもの、例えば、式Ib:
【0084】
【化3】
(Ib)
の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を含み、これは、遊離塩基の形態では、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンという名前でもあり得る。
【0085】
本開示の実施形態は、他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、例えば、本明細書に開示されるもの、又はその薬学的に許容される塩若しくはその共結晶、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0086】
本開示の実施形態は、他のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、例えば、以下に列挙するものを含む:
本発明は、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-((1S,3R)-5-(1-エチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0087】
本発明は、1-((1S,3R)-5-(1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)-2-(2,6-ジクロロフェニル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0088】
本発明は、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0089】
本発明は、1-((1S,3R)-5-(1-(2-(l1-オキシダネイル)エチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)-2-(2-クロロフェニル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0090】
本発明は、2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0091】
本発明は、2-(2-クロロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0092】
本発明は、2-(2,6-ジクロロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0093】
本発明は、2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0094】
本発明は、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0095】
本発明は、2-(2-クロロ-5-フルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0096】
本発明は、2-(2-クロロ-4-フルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0097】
本発明は、2-(2-フルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0098】
本発明は、2-(2,3-ジフルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0099】
本発明は、2-(2,5-ジフルオロフェニル)-1-((1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)エタン-1-オンである化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0100】
本開示の実施形態は、上記のドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子及び/又はその塩若しくは共結晶、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0101】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語はヒトを指し、本投薬レジメンによって治療される患者は、初期パーキンソン患者、好ましくは診断されているがまだ治療されていないパーキンソン患者であり、したがって、ドーパミンシグナル伝達の障害がパーキンソン疾患の進行に寄与するという点で疫学病理学的側面を共有する患者である。初期パーキンソン病を有する患者の同定は、当業者に公知であり、本明細書において、例えば実施例1において説明される確立された方法によって達成され得る。
【0102】
本発明の実施形態において、患者は、パーキンソン病の医学的リスクを有すると、又は前駆パーキンソン病若しくは初期パーキンソン病を有すると診断されたヒトであって、メビダレンなどのD1 PAMによる、本明細書に記載される投与レジメンを使用した治療を必要とするヒトである。本開示の方法によってその障害についての疾患の進行が減速され得るということが、確立され受け入れられている分類(例えばパーキンソン病前駆段階、新規に診断されたパーキンソン病、又はパーキンソン病初期段階などの)によって既知である事例において、それらの分類は、様々な周知の医学書に見出され得る。例えば、現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第5版(DSM-5)は、本明細書に記載の障害の多くを同定するための診断ツールを提供する。また、International Classification of Diseasesの第10版(ICD-10)は、本明細書に記載の障害の多くに対する分類を提供する。当業者は、DSM-5及びICD-10に記載のものを含む、本明細書に記載の障害についての代替の命名法、疾病分類学、及び分類システムがあり、用語及び分類システムが医科学の進歩とともに進化するということを認識するであろう。パーキンソン病の病期は十分に記載されており、当業者に公知であり、本明細書及び医学文献に記載されている診断方法を用いて、本発明の治療及び予防方法を必要とする患者を同定する。
【0103】
本明細書で使用される「進行を減速させる」という用語は、本明細書に記載されるように、又は当業者に知られているように、パーキンソン病進行の有意な徴候及び症状の有意な低減、及び/又はより好ましくはそれらからの解放が存在し得る全てのプロセスを指す。既存の障害及び/又はその症状の「進行を減速させる」という用語は、必ずしも全ての症状の完全な排除を示すわけではない。
【0104】
担当の診断医は、当業者として、治療から得られた結果を観察することにより、本明細書で提供する投薬レジメンから選択された用量を容易に決定し得る。本発明の投与計画からメビダレンの具体的な用量を決定する際に、多数の因子が考慮される。これらの因子としては、以下に限定されないが、患者の体重、年齢、及び一般的な健康状態;障害の困難さの程度又は重症度;個々の患者の応答;併用薬の使用;並びに他の関連する状況が挙げられる。
【0105】
本発明の用量レジメンは、パーキンソン病の治療/予防/抑制又は改善に使用される他の薬物と組み合わせて使用され得る。そのような他の薬物(複数可)は、その目的で一般的に使用される経路及び量によって、メビダレンと同時に又は連続して投与され得る。例えば、メビダレンと組み合わせることができるパーキンソン病の治療に有効な他の活性成分としては、ドーパミン作動薬、レボドパなどのドーパミン前駆体、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤、及び抗コリン作用薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】全体的な機能の有意な改善をもたらした(ADCS-CGIC)メビダレン治療を示す図である。上記のPRESENCE研究において、LBDを有し、40~85歳の、ホーン・ヤールスコアが0~4であり、モントリオール認知度表かスコアが10~23である参加者を、1日1回12週間、メビダレン10mg、30mg、若しくは75mg、又はプラセボをそれぞれ投与する群に、1:1:1:1で無作為化した(実施例1を参照)。CGICは、介入の臨床的意義を評価するための一般的な方法である。12週までの、ベースラインからメビダレンLS平均変化は、30mgの群で-0.7、75mgの群で-0.9であった(なお、両方ともp<0.001である)。これらの結果は、メビダレンの多次元的利益を反映している可能性がある。
【実施例】
【0107】
実施例1:パーキンソン病認知症のための第2相臨床試験
(PRESENCE、NCT03305809と称する)
この研究の目的は、MDS-UPDRSによって測定されるようなレビー小体型認知症(LBD)を有する患者におけるメビダレンの運動効果及び非運動効果を評価することであった。メビダレンは、D1受容体のポジティブアロステリック調節因子(D1PAM)である。D1受容体の活性化は、前臨床及び臨床モデルにおいて、認知機能及び運動機能を改善し、覚醒状態を高める。第2相の12週間にわたるPRESENCE研究は、認知領域と、運動機能、睡眠、気分、及び感情鈍麻を含む、LBDに関連する他の領域との治療のための、各種症状へのメビダレンの効果を評価するために設計された。
【0108】
LBDを有し、40~85歳の、ホーン・ヤールスコアが0~4であり、モントリオール認知度評価スコアが10~23である参加者を、メビダレン10mg、30mg、若しくは75mg、又はプラセボをそれぞれ投与する群に、1:1:1:1で無作為化した。主要認知結果は、CDR-CoAであった。副次的結果は、MDS-UPDRSの総スコア(パートI~IIIの合計)における、ベースラインから12週目までの変化と、MDS-UPDRSパートII(日常生活の運動経験)スコア及びパートIII(運動試験)スコアの両方における変化とを含んでいた。また、疲労、日中の眠気、幻覚、抑鬱気分及び無気力のパートI項目と、運動症状の日内変動及びジスキネジアのパートIV項目とについても分析を事前に指定した。
【0109】
以下に、本明細書に記載の治療方法及び投薬レジメンの、特定の用量を用いたパーキンソン病におけるメビダレンの研究のためのプロトコルを提供する。当業者は、この実施例1の教示及び本明細書で提供される他の開示を適用し得るが、本発明の追加の用量及び投薬レジメンで、同様の研究を実施し得るであろう。
【0110】
十分に許容される、パーキンソン病の進行を減速させるための治療法への医学的ニーズは、未だに満たされてはいない。本明細書に記載されるように、メビダレンを、比較的短期間のしかし長期間(12週間)にわたり毎日投薬することで、パーキンソン病の徴候及び症状が改善されるということが初めて観察された。PRESENCE研究は、12週間にわたる治療で、メビダレンの3つの用量(毎日10mg、30mg、及び/又は75mg(又は中間分析に基づく50mg)(QD)経口での投与)対プラセボを評価している。主要な結果は、認知の程度であったが、本明細書に記載される追加的なエンドポイントも評価した。PRESENCEは、パーキンソン病認知症の患者を対象としたランダム化プラセボ対照試験であり、軽度から中等度のパーキンソン病認知症の参加者を対象に、メビダレン(3用量の治験薬)の安全性及び有効性を12週間評価した。
【0111】
HBEH研究は、PDについての改訂されたMDS基準(Postuma et al.2015)を満たし、認知機能の低下によって定義される軽度から中等度の認知症を有する対象を含んでいたが、治験責任医師の見解では、機能障害及び10~23のMoCAスコアをもたらした(Trzepacz et al.2015)。改訂されたMDS基準によって、PD診断に対する認知症発症の相対的タイミングに関係なく、認知症の存在下でPDDが診断され得る。レビー小体型認知症(DLB)と診断された対象は、彼らがMDS PD基準を満たしている場合、PDも有していると考えられるべきである。したがって、対象は、PDと診断される前、診断された時点、又は診断された後に認知症を有する可能性がある。PDDにおける症候性療法の登録試験(Emre et al.2004)とは異なり、現在の研究は、彼らの認知症のタイミングに基づけばDLBの従来の基準(運動発症前又は発症から1年以内の認知症)を満たしていたであろう対象を含み得る(Mckeith et al.2005)。この基準は、認知症が、パーキンソン病の症状の出る前又はパーキンソン病の症状が出て1年以内に発生するというものであった。1年ルールは任意であり、パーキンソン病が認知症と関連していないという過去の信念に基づくものである。しかしながら、診断を分割するこの従来のアプローチの有効性についての議論が増えている(Berg et al.2014)。提案されているアプローチを支持するものとして、両方の障害は、様々な臨床的、遺伝的、及び病理学的特徴を共有している(Lippa et al.2007、Postuma et al.2009、Johansen et al.2010)。DLB及びPDDの両方は、主な視覚知覚異常、手がかりによる記憶の改善などを伴う、認知力における同様の機能障害に関連している。両方とも、顕著な精神病、神経弛緩薬感受性、及び覚醒の変化に関連している。前駆の特徴(例えば、急速眼球運動[REM]睡眠行動障害、嗅覚喪失)は両方の状態において同じである。うつ病、不安神経症、自律神経機能障害、睡眠障害を有する非運動症状は、両方において同様の相対頻度で発生する。同じ遺伝子変異(アルファ-シヌクレインの重複、グルコセレブロシダーゼ変異)は、どちらの状態の発症にも関連している。最後に、それらは脳幹及び皮質におけるアルファ-シヌクレイン及びレビー小体形成を有する共通の病理を有している。したがって、HBEH研究は、認知機能障害のタイミングは別々で、それらは臨床的及び病理学的に区別がつかず、同様の治療アプローチに応答するであろうというPDD及びDLBについての現在の考え方を満たしている(Aarsland et al.2004、Ballard et al.2006)。プラセボは、治験責任医師及び現場スタッフ及び対象に対して盲検法で対照として含まれ、生成された安全性データの偏りのない評価を可能にし、メビダレン及びプラセボデータ間のより堅牢な比較を可能にする。安全性及び有効性について投与量曝露応答を評価するために、メビダレンの3つの投与量レベルの比較が選択された。当初の訪問(訪問3~訪問7)は、最初の治療中のメビダレンの有効性及び安全性の詳細な評価を提供するために、週間隔で行われるように選択された。認知への有益な効果が観察される可能性がある最小期間であると推定される、12週間の投与期間が選択された。
【0112】
主な目的は、12週間、毎日10mg、30mg、及び/又は75mg(又は中間分析に基づいて50mg)(QD)の経口投薬で投与されたメビダレンが、プラセボと比較して、軽度から中等度のPDDを有する対象における認知機能を大幅に改善するという仮説を試験することであった。主要エンドポイントは、ベースラインから12週目までのCDR-CCBのCoA複合スコアの変化である。副次的な目的は以下に記載される。
【0113】
【0114】
略語:ADAS-Cog13=13項目アルツハイマー病評価スケール-認知サブスケール;ADCS-CGIC=アルツハイマー病共同研究-臨床医の全体的な変化の印象;CDR-CCB=認知薬物研究-コンピュータ化された認知バッテリー;CoA=注意の継続;D-KEFS=デリス・カプラン実行機能システム;ESS=エプワース眠気スケール;MDS-UPDRS=運動障害疾患学会の統一パーキンソン病評価スケール;MoCA=モントリオール認知度評価;NPI=神経精神医学的インベントリー;PD=パーキンソン病;PDD=パーキンソン病認知症;PDAQ-15=Pennパーキンソン病の日常活動アンケート-15;PK=薬物動態;PoA=注意力;QD=1日1回;SBP=収縮期血圧。
【0115】
参照:
Postuma RB,Berg D,Stern M,Poewe W,Olanow CW,Oertel W,Obeso J,Marek K,Litvan I,Lang AE,Halliday G,Goetz CG,Gasser T,Dubois B,Chan P,Bloem BR,Adler CH,Deuschl G.MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease.Mov Disord.
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Trzepacz PT,Hochstetler H,Wang S,Walker B,Saykin AJ;Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative.Relationship between the Montreal Cognitive Assessment and Mini-mental State Examination for assessment of mild cognitive impairment in older adults.
BMC Geriatr.2015;15:107.
Emre M,Aarsland D,Albanese A,Byrne EJ,Deuschl G,De Deyn PP,Durif F,Kulisevsky J,van Laar T,Lees A,Poewe W,Robillard A,Rosa MM,Wolters E,Quarg P,Tekin S,Lane R.Rivastigmine for dementia associated with Parkinson’s disease.N Engl J Med.
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Lippa CF,Duda JE,Grossman M,Hurtig HI,Aarsland D,Boeve BF,Brooks DJ,Dickson DW,Dubois B,Emre M,Fahn S,Farmer JM,Galasko D,Galvin JE,Goetz CG,Growdon JH,Gwinn-Hardy KA,Hardy J,Heutink P,Iwatsubo T,Kosaka K,Lee VM,Leverenz JB,Masliah E,McKeith IG,Nussbaum RL,Olanow CW,Ravina BM,Singleton AB,Tanner CM,Trojanowski JQ,Wszolek ZK;DLB/PDD Working Group.DLB and PDD boundary issues:diagnosis,treatment,molecular pathology,and biomarkers.Neurology.
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Sheikh JI,Yesavage JA.Geriatric Depression Scale (GDS):Recent evidence and development of a shorter version.Clin Gerontologist.1986;5:165-173.
【0116】
研究デザインの概要:研究I7S-MC-HBEH(HBEH)は、 軽度から中等度のPDDを有する対象において12週間にわたって、メビダレンの3つの投与量(1日1回[QD]経口投与された10又は30又は75mg[又は中間分析に基づいて50mg])をプラセボと比較する、多施設、ランダム化、二重盲検、並行群間、プラセボ対照、固定投与量、第2a相研究である。この研究には、最低7日から最大14日のスクリーニング期間(訪問1~2)、最低11日から最大17日の前治療期間(訪問2~3)、12週間の治療期間(訪問3~11)、及び14日間の安全性フォローアップ期間(訪問11~801又は早期終了[ET]/中止[DC]訪問から訪問801)。エントリー基準を満たす対象は、メビダレン(10又は30又は75mgQD)又はプラセボに対して1:1:1:1の比率でランダム化される。この研究の主な目的は、12週間のメビダレン投与が、軽度から中等度のPDDを有する対象において、プラセボと比較して、認知薬物研究-コンピュータ化認知バッテリー(CDR-CCB)の注意の継続性(CoA)複合スコアのベースラインから12週目までの変化によって測定される認知の顕著な改善をもたらすという仮説を試験することである。CoAは、PDDを有する対象において以前の治験で顕著な治療効果を示した(Wesnes et al.2005;Rowan et al.2007)。
【0117】
治療アーム及び期間:研究HBEHは、12週間にわたって、QDで経口投与されたメビダレンの10mg、30mg、及び75mg(又は中間分析では50mg)とプラセボとの比較を含む。対象数:ランダム化された340人、及び治療群ごとに推定総計85人の評価可能な対象を達成するために約400人の対象がスクリーニングされる。
【0118】
統計分析
有効性分析:評価可能な患者集団(EPP)の全ての対象が有効性分析の対象となる。CoAに関する一次分析は、全ての対象が12週間の治療を完了したときに行われる。CoAの分析では、ベイジアンMMRMモデルを利用する。ベイジアン分析では、モデル内の全ての項に情報のない事前分布を使用し得る。これらは、ゼロを中心とする拡散正規分布に広がる。分散の事前分布は、逆ガンマ分布に従う。ベイジアン分析の詳細は、SAPで提供される。MMRMモデルは、投薬の1、2、4、6、8、10、及び12週間後、研究全体を通して評価された長期データを説明する。ベースラインから12週目までのCoAの変化が従属変数である。モデルは、固定(ベースライン値、治療、訪問)及び確率効果(対象)と交互作用項(訪問ごとの治療、訪問ごとのベースライン値)を含む。非構造化分散構造がモデルに適用されるが、収束に失敗した場合は、他の適切な構造が調査される。主要な比較は、ベースラインからの12週目の変化についての治療及びプラセボ間のコントラスト(最小二乗平均の差)である。副次的効力結果:アルツハイマー病共同研究-臨床医包括的変化印象(ADCS-CGIC)、CDR-CCB注意力(PoA)、13項目アルツハイマー病評価スケール-認知サブスケール(ADAS-Cog13)、
モントリオール認知度評価(MoCA)、神経精神医学的インベントリー(NPI)、エプワース
眠気スケール(ESS)、運動障害疾患学会の統一パーキンソン病評価スケール(MDS-UPDRS)、Pennパーキンソン病の日常活動アンケート15(PDAQ-15)、及びデリス・カプラン実行機能システム(D-KEFS)のスコア合計(又は複合値)の12週時点でのベースラインからの変化は、上記と同じ分析方法に従う。いくつかのスケール(例えばADAS-Cog)において欠落している記録は、統計分析計画に詳述されているように補完される。補完が行われないスケールの場合、任意の項目が欠落していると、その項目を含む総計又は合計が欠落しているとみなされる。多重比較の調整は行われない。
【0119】
安全性分析:安全性分析は安全性集団に基づいており、分析は以下のリスト及び/又は要約を含む:有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、治療に起因する有害事象(TEAE)、検査室測定、バイタルサイン、心電図読み取り、訪問3(1日目の停止規則)での3つの連続した時点で、潜在的に臨床的に重要なバイタルサイン基準を満たした対象の数。治験薬投薬の初日(訪問3)に測定された前治療から、投薬後最大8時間までのインクリニック血圧(BP)及び脈拍数の変化を比較するために、混合モデルの反復測定分析が使用される。ベースライン分析からの変化において2つのベースラインが考慮される:訪問3の前治療値及び訪問2からの時間一致ベースライン(時間値0~6時間)。2番目のベースラインについては、訪問3の7時間、及び8時間の時点が、訪問2の6時間の時点をベースライン値として使用する。ベースライン分析からの個別の変化は、ベースラインアプローチごとに完了される。混合モデルの反復測定分析は、訪問2(1日平均0~6時間)から6週目/訪問8及び12週目/訪問11(1日平均0~6時間)までのインクリニックBP及び脈拍数の変化を比較し、投薬の12週間にわたってBP及び脈拍数の変化を評価するためにも使用される。
【0120】
薬物動態(PK):薬物動態分析は、少なくとも1用量の試験薬物を受け取り、1つの測定可能な濃度を有する対象に対して実施される。モデルベースの手法は、非線形混合効果モデリング(NONMEM)又はPKパラメータを推定するための他の適切なソフトウェアを使用して実装され得る。研究中に収集された追加のエンドポイント及びバイオマーカーデータは、探索的な方法で評価され得る。
【0121】
中間分析:安全性の中間分析は、来院3(1日目の停止規則)の3つの連続した時点で潜在的に臨床的に有意なバイタルサイン基準を満たした人数の、各治療の対象に対して行われる。これは、50、100、及び150人の対象が訪問3を完了した後に行われる。プラセボと比較した75mgのメビダレンの1日目の停止規則を満たす対象の割合の差が0.3超である確率が60%を超える場合、75mgの用量レベルはその後登録される対象について50mgに置き換えられる。既に75mgの用量であり、1日目の停止規則をパスしたものは75mgのままになる。他の用量で1日目の停止規則を満たす対象の許容できない割合の事象においては、内部評価委員会(IAC)の裁量で、その後ランダム化された対象について用量の調整が行われ得る。これらの安全性の中間分析時に、追加の有効性分析が実施され得る。安全性及び有効性の中間分析は、170人のランダム化された対象が訪問11(第12週)の評価を完了したときに実施される。全ての潜在的な有効性分析は、内部の意思決定に使用され得るが、研究を停止するために計画されない。
【0122】
研究HBEHは、軽度から中等度のPDDを有する40~85歳の男性及び女性を含む。対象は、登録時(訪問1)に次の全ての基準を満たしている場合にのみ、研究に含まれる資格がある(包摂基準[6]~[10]は満たす必要があるか、又は追加の訪問(複数可が必要となる)ということに注意されたい)。
【0123】
対象のタイプ及び疾患の特徴:[1]40~85歳の男性及び女性の対象(包括的)。[2]PD症状が少なくとも2年間であり、MDS基準(Postuma et al.2015)による特発性PDを有する。[3]治験責任医師の見解では機能障害をもたらす、認知機能の低下によって定義される認知症を有する。[4]スクリーニング時に10~23のMoCAスコアを有する。[5]修正版ホーン・ヤールステージ1~4である。[6]着席姿勢における3回の連続BP/脈拍数測定によって決定される訪問1及び訪問3でのBP又は脈拍数を有する:
60歳未満の対象について:140mmHg以下の平均収縮期血圧(SBP)、90mmHg以下の平均拡張期BP、着席姿勢における90拍/分以下の平均脈拍数であり、3つのSBP測定値それぞれが180mmHg未満である必要がある。
【0124】
60歳以上の対象について:150mmHg以下の平均SBP、90mmHg以下の平均拡張期BP、及び着席姿勢における90拍/分以下の平均脈拍数であり、3つのSBP測定値それぞれは180mmHg未満である必要がある。
【0125】
以下のPD重症度及び認知評価、それと同様にコロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)は、対象の適格性評価の一部として、訪問1で行われる:パーキンソン病の運動障害疾患学会(MDS)臨床診断基準登録された個人は、臨床的に可能性のあるPDのMDS基準を満たす(Postuma et al.2015)。対象は、安静時振戦及び/又は硬直を伴う運動緩徐を有する必要がある。対象は、付録5に記載されているいずれの絶対的な除外基準も有してはならない。対象は、2つを超えるレッドフラッグの存在を有してはならず、1つのレッドフラッグが存在する場合は、1つの支持基準によって相殺される必要があり、2つのレッドフラッグが存在する場合は、2つの支持基準によって相殺される必要がある。
【0126】
PDについての基準を満たすことに加えて、対象は以下に説明する認知症についての基準を満たす必要がある(モントリオール認知度評価[MoCA]スケール)。MDS基準は、認知症をPDの除外基準とはみなしておらず、したがってPDの運動特徴の発達に関連する認知症のタイミングに制限はない。
【0127】
修正版ホーン・ヤールスケール:登録された個人は、スクリーニング時にホーン・ヤールスケールステージ1~ステージ4である必要がある。ホーン・ヤールスケール(Hoehn and Yahr 1967)は、PDの症状の進行を説明するために使用される。そのスケールはもともと1967年に記述され、ステージ1~5が含まれていた。その後、PDの中間段階を記述するために、ステージ1.5及び2.5が追加されて修正された。修正版ホーン・ヤールスケールは次のとおりである:ステージ0:疾患の兆候なし、ステージ1:片側性疾患;ステージ1.5:片側性に加えて軸性の困難;ステージ2:バランスの機能障害のない両側性疾患;ステージ2.5:軽度の両側性疾患、プルテストで回復;ステージ3:軽度から中等度の両側性疾患、なんらかの姿勢の不安定性、身体的に独立;ステージ4:重度の障害、まだ補助なしで歩けるか又は立てる;ステージ5:補助がない限り、車椅子に縛られているか寝たきり。
【0128】
モントリオール認知度評価スケール:登録された個人は、スクリーニングで10~23のMoCAスコアを有している必要がある。
【0129】
老人性うつ病スケール:登録された個人は、スクリーニングで老人性うつ病スケールのショートフォーム(GDS-S)のスコアが6以下である必要がある。GDSは、高齢者のうつ病に関するサイト管理の質問票である(Yesavage et al.1983)。ユーザーは「はい/いいえ」の形式で応答する。もともとは30項目スケール(ロングフォーム)として開発されたが、その後15項目スケール(ショートフォーム)に短縮され、約5~7分で完了することが可能である(Sheikh and Yesavage 1986)。15項目のうち、10項目は「はい」と回答した場合にうつ病を示し、5項目は「いいえ」と回答した場合にうつ病を示す。
【0130】
コロンビア-自殺重症度評価スケール-子供バージョン:C-SSRSは、対応する評価期間中の自殺関連の考え及び行動の発生、重症度、頻度を把握するスケールである。スクリーニング評価としてここに含まれるC-SSRSは、セクション9.4.4で詳細に説明されている。C-SSRSの「ベースライン」バージョンはスクリーニングで使用され、調査結果はベースライン評価を構成する。C-SSRSは、認知及び機能評価の後に対象に施される。対象からの応答は、スケールを施す際のものであると考えられる。このベースライン評価で対象が自殺観念又は行動を有していると判断された場合、対象はランダム化されず、その後の研究からは外される。
【0131】
PRRESENCEにおいて観察された運動エンドポイント及び非運動エンドポイントに対するメビダレンの用量依存性効果。
第2相の12週間にわたるPRESENCE研究は、認知領域と、運動機能、睡眠、気分、及び感情鈍麻を含む、LBDに関連する他の領域との治療のための、各種症状へのメビダレンの効果を評価するために設計された。LBDを有し、40~85歳の、ホーン・ヤールスコアが0~4であり、モントリオール認知度評価スコアが10~23である参加者を、メビダレン10mg、30mg、若しくは75mg、又はプラセボをそれぞれ投与する群に、1:1:1:1で無作為化した。主要認知結果は、CDR-CoAであった。副次的結果は、MDS-UPDRSの総スコア(パートI~IIIの合計)における、ベースラインから12週目までの変化と、MDS-UPDRSパートII(日常生活の運動経験)スコア及びパートIII(運動試験)スコアの両方における変化とを含んでいた。また、疲労、日中の眠気、幻覚、抑鬱気分及び無気力のパートI項目と、運動症状の日内変動及びジスキネジアのパートIV項目とについても分析を事前に指定した。
【0132】
メビダレンは主要認知結果を改善しなかったが、MDS-UPDRS総スコアにおいて有意な用量依存的改善があった。プラセボと比較して、10、30、及び75mgの用量について、メビダレンにおけるLS平均変化はそれぞれ、-6.58(p=0.026)、-7.56(p=0.014)、及び-10.77(p<0.001)であった。MDS-UPDRSのパートIIにおいて、30及び75mgの用量について有意な用量依存的改善があり(それぞれp=0.014及びp<0.001である)、かつパートIIIにおいて75mgの用量で有意な用量依存的改善があった(p=0.032)。個々の項目の分析は、パートIの項目、疲労及び日中の眠気において、全ての用量で有意な改善を示し、パートIIの複数の項目において有意な改善を示し、パートIIIの運動緩徐項目において(全ての用量で)及び硬直項目(メビダレン30mgで有意)において有意な改善を示し;パートIVにおけるジスキネジア項目において用量依存的悪化(メビダレン75mgで有意)を示した。注目すべきことに、メビダレンによる治療は、全体的な機能(ADCS-CGIC)の有意な改善をもたらした(
図1を参照)。
【0133】
新規な作用機序(D1 PAM)を利用するメビダレンは、LBDに関連するパーキンソニズムの運動症状及び選択された非運動症状の症状改善をもたらし、従来のドーパミン作動性療法に関連する非運動症状の悪化を回避した。メビダレンは、好ましくは特に前駆段階又は初期段階の患者に使用された場合に、病気の進行を減速させる又は遅延させる可能性を有し得る新規な作用機序(D1 PAM)を利用している。
【0134】
PRESENCE治験はまた、血圧及び心拍数の急激な上昇を反映する心血管への作用が観察され、10及び30mgの低用量でこれらの作用に適応するという証拠を提供した。しかし、75mgの用量での有害事象プロフィール及び心血管への作用は、より高い用量の臨床的有用性を制限し得る。ここで、パーキンソン病の進行を減速又は遅延させるための、本発明の好ましい投与レジメンは、1日あたり10mg~50mgである。
【0135】
Neurology (Hacker ML,Turchan M,Heusinkveld LE,et al.Deep brain stimulation in early-stage Parkinson disease:five year outcomes.Neurol.July 28,2020;95 (4))において発表された研究結果によれば、初期パーキンソン病(PD)に埋め込まれた脳深部刺激(DBS)は、病気の進行のリスクを減少させ、複数の同時処方薬の必要性を減少させるということが判明した。上記の著者らは、結果が、初期におけるDBSが、パーキンソン病用に投与される薬剤の必要性及び複雑性を低減する一方で、標準的な薬物療法を上回る長期的運動利益を提供することを示唆していると結論付けている。米国食品医薬品局(The Food and Drug Administration)は、初期段階のパーキンソン病におけるDBSの、前向き多施設のピボタル臨床試験(IDEG050016)の実施を承認した。脳深部刺激(DBS)は、パーキンソン病において十分に確立された治療である。臨床試験は、薬物療法単独と比較して、DBSが運動症状、運動症状の日内変動、及び生活の質を改善するということを示している。標的は、通常、視床下核(STN-DBS)又は淡蒼球内節(STN-GPi)にあり、同様の運動利益を有するが、視床DBSも振戦を治療するための選択肢である。運動の特徴がl-ドーパに応答し続けるにもかかわらず、運動症状の日内変動及びジスキネジアが手足の障害をもたらす場合には、外科的治療が考慮される傾向がある。かつては、外科的戦略は、パーキンソン病と診断されてから10-13年後に評価された。多施設無作為化治験は、DBSが疾患の初期段階で実施された場合、最適な薬物療法と比較して、STN-DBS後に生活の質が改善され得るということを示した。DBSの有効性にもかかわらず、この技術にあまり応答しないドーパミン作動薬耐性症状(すなわち、軸性症状)が存在し得る。したがって、新しい標的(例えば、脚橋核、黒質、及び視床)が、運動機能の治療として出現している。
【0136】
本開示は、好ましくはパーキンソン病の初期段階における、本明細書に記載されるメビダレン及び/又はD1 PAM剤による治療が、ドーパミン作動性シグナルを薬理学的に増強する手段を提供することができ、DBSと同様に、外科的介入なしにDBSの利益の少なくとも一部を達成する手段を提供することができ、初期段階で適用された場合、一部の患者におけるパーキンソン病進行の少なくとも一部の局面を減速又は阻害又は緩和することができるという概念を提供する。メビダレン及びD1 PAMは、本明細書に記載の方法及び実施形態によれば、パーキンソン病の進行を減速させるためにDBSと組み合わせて使用することもできる。
【0137】
本明細書に記載されるメビダレンの投与は、パーキンソン病の進行の1つ以上の局面において、病気の進行を減速又は予防するための新規なアプローチを提供する。メビダレンを使用する本発明の治療方法は、好ましくは本明細書に記載され、当業者に知られている、前駆段階の患者における病気の進行の1つ以上の態様において、パーキンソン病の発症及び/又は進行を減速又は予防し、初期段階の症状への進行を減速させると考えられる。メビダレンを使用する本発明の治療方法は、好ましくは本明細書に記載されている、初期段階の患者における病気の進行の1つ以上の態様において、パーキンソン病の進行を減速又は予防し、進行段階の症状への進行を減速させると考えられる。メビダレンを使用する本発明の治療方法は、好ましくは本明細書に記載されている、進行段階の患者における病気の進行の1つ以上の態様において、パーキンソン病の進行を減速又は予防し、合併段階の症状への進行を減速させると考えられる。本明細書に記載の方法は、パーキンソン病のリスクがある、及び/又は前述の病期を有すると特定及び/又は診断された患者であって、パーキンソン病リスク又はパーキンソン病症状の1つ以上の徴候及び症状を経験していると更に診断されている患者に特に有用である。本明細書に開示されるメビダレン及びD1 PAM剤を使用してパーキンソン病の進行を減速させる手段は、介護者の負担の減少、生活の質の向上、及び老人ホームでのケアへの移行又は重度の痴呆症への進行の遅延させる可能性を含む、罹患した患者のケアのための様々な可能性のある現実世界の臨床的利益を提供することが期待される。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病の進行を減速させることを必要とする患者において、それを実行するための薬剤であって、前記薬剤が、ドーパミンD1ポジティブアロステリック調節因子、又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶を含む、薬剤。
【請求項2】
前記患者が前駆段階のパーキンソン病を有する、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記患者が初期段階のパーキンソン病を有する、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
前記患者が進行段階のパーキンソン病を有する、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
前記患者が以前にパーキンソン病の治療を受けていない、請求項1に記載の薬剤。
【請求項6】
前記D1ポジティブアロステリック調節因子が、メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶である、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項7】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり5mg~60mgの用量で毎日経口投与される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mg~50mgの用量で毎日経口投与される、請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、及び50mgからなる群から選択される用量で毎日経口投与される、請求項8に記載の薬剤。
【請求項10】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり50mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり45mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項12】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり40mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項13】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり35mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項14】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり30mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項15】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり25mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項16】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり20mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項17】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり15mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項18】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、1回当たり10mgの用量で毎日経口投与される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項19】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、レボドパと組み合わせて、同時に、別々に、又は連続して投与される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項20】
前記メビダレン、又はその薬学的に許容される共結晶が、脳深部刺激と組み合わせて投与される、請求項19に記載の薬剤。
【国際調査報告】