(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】着陸ゾーンまたはデッキ着陸ゾーンの上方の空圧状態を制御するためのシステム
(51)【国際特許分類】
B63B 15/00 20060101AFI20240221BHJP
G01M 9/06 20060101ALI20240221BHJP
B64F 1/00 20240101ALI20240221BHJP
B63B 35/50 20060101ALI20240221BHJP
B63B 79/15 20200101ALI20240221BHJP
【FI】
B63B15/00 B
G01M9/06
B64F1/00 A
B63B35/50
B63B79/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555323
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 FR2022050350
(87)【国際公開番号】W WO2022189723
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ギャラス,カンタン
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィーナ,デリーユ
【テーマコード(参考)】
2G023
【Fターム(参考)】
2G023AB02
2G023AB15
2G023AD01
(57)【要約】
航空到着ゾーン(Z)の上方に存在する空圧状態を制御するためのシステムは、風況測定手段と、空圧手段と、を含む。前記風況測定手段は、前記航空到着ゾーンおよび当該航空到着ゾーンの近くに位置する上部構造(1)に対する相対風速を特徴付ける、速さおよび方位角の値を提供する。前記空圧手段は、前記航空到着ゾーンの上方の空気の運動を修正することができ、風の前記速さおよび前記方位角の値に従って制御される。かかるシステムは、ヘリコプタ(20)を運ぶことができる船舶(10)における使用に、特に、その後部デッキ上における使用に、特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の着陸またはデッキ着陸のための面(航空到着ゾーン(Z)と称される)の上方に存在する空圧状態を制御するためのシステムであって、
前記システムは、前記航空到着ゾーンから上部構造(1)へ方向付けられた整列軸(DA)に沿って、前記航空到着ゾーンが前記上部構造の近くに位置するときの使用に適合されており、
前記上部構造は、前記航空到着ゾーンに対して垂直方向に高く延在し、かつ、前記航空到着ゾーンの上方の風の流れを変更することができ、
前記システムは、
-前記航空到着ゾーン(Z)および前記上部構造(1)に対する風の相対速さを特徴付ける速さ(V)および方位角(G)の値を提供するように適合された、風況測定手段
を含み、
前記システムは、
-前記航空到着ゾーン(Z)の近くに配置された空圧手段であって、当該航空到着ゾーンの上方の空気の運動を修正することができる、空圧手段と、
-以下の2つの条件:
(i)前記風況測定手段によって供給される前記速さ(V)の値が、第1非ゼロ閾値よりも大きい;および、
(ii)前記風況測定手段によって供給される前記方位角(G)の値の絶対値が、第2非ゼロ閾値よりも小さい
のうちの少なくとも一方の条件が満たされたときに、前記空圧手段を作動させるように適合された、コントローラ(7)と、
をさらに含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記第1閾値(VS
1)は、5m・s
-1~20m・s
-1であり、
前記第2閾値(VS
2)は、0°~90°である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記風況測定手段は、前記航空到着ゾーン(Z)および前記上部構造(1)に対する風の前記相対速さを特徴付ける前記速さ(V)および前記方位角(G)の値を測定するように適合されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記空圧手段は、継続的または間欠的な送風手段、継続的または間欠的な吸気手段、および気流偏向手段のうちの少なくとも一部を含み、
これらは、前記航空到着ゾーン(Z)の方を向いた前記上部構造(1)の面(F)の周縁部上における少なくとも1つの位置に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記空圧手段は、前記航空到着ゾーン(Z)の方を向いた前記上部構造(1)の前記面(F)の実質的に水平方向の上縁部(11)に沿って配置された送風手段および/または吸気手段を含み、
前記コントローラ(7)は、前記風況測定手段によって供給される前記速さ(V)の値が、前記第1閾値(VS
1)よりも大きく、かつ、前記風況測定手段によって供給される前記方位角(G)の絶対値が、第3閾値よりも小さいときに、前記航空到着ゾーンの上方の風が発生させる空気再循環泡(RC)の上側境界(L
11)を下げるように、または、前記上部構造の前記面の前記上縁部から生じる前記空気再循環泡の前記上側境界の下向き傾斜(α
11)を増大させるように、前記空圧手段を作動させるよう適合されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第3閾値は、0°~10°である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記空圧手段は、前記航空到着ゾーン(Z)の方を向いた前記上部構造(1)の前記面(F)の実質的に垂直方向の複数の側縁部(12、13)に沿って配置された送風手段および/または吸気手段を含み、
前記コントローラ(7)は、前記風況測定手段によって供給される前記速さ(V)の値が、第4非ゼロ閾値よりも大きく、かつ、前記風況測定手段によって供給される前記方位角(G)の絶対値が、第5非ゼロ閾値よりも大きく90°よりも小さいときに、前記航空到着ゾーン(Z)の方を向いた前記上部構造の前記面と前記航空到着ゾーンの一部分の上方の風が発生させる空気再循環泡の境界との間の角度(α
12)を低減させるように、前記空圧手段のうちの少なくとも一部を作動させるよう適合されており、
前記空気再循環泡は、前記角度の範囲内に込められ、
当該角度は、前記整列軸(DA)に関して風が吹いて来る方向と同じ側にある、実質的に垂直方向の複数の前記側縁部のうちの一方において測定されたものである、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記第4閾値は、5m・s
-1~20m・s
-1であり、
前記第5閾値は、10°~90°である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記空圧手段は、前記航空到着ゾーン(Z)の方を向いた前記上部構造(1)の前記面(F)の複数の上側側方角部に配置された送風手段および/または吸気手段を含み、
前記コントローラ(7)は、前記風況測定手段によって供給される前記速さ(V)の値が、第6非ゼロ閾値よりも大きく、かつ、前記風況測定手段によって供給される前記方位角(G)の絶対値が、5°未満であるときに、風が発生させる渦(VX)であって、前記上部構造の前記面の複数の前記上側側方角部から生じる渦(VX)を乱すように、前記空圧手段を作動させるよう適合されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラ(7)は、前記航空到着ゾーン(Z)の近くに位置する気圧測定手段によって繰り返し測定される圧力値に従って、前記空圧手段の動作をリアルタイムに調整するように適合されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
-航空到着ゾーン(Z)であって、航空機、特にヘリコプタ(20)または垂直ロータ軸を有するドローンが前記航空到着ゾーンに着陸するように適合された、航空到着ゾーン(Z)と、
-前記航空到着ゾーン(Z)の近くに位置する上部構造(1)であって、前記航空到着ゾーンに対して垂直方向に高く延在し、かつ、前記航空到着ゾーンの上方の風の流れを変更することができる、上部構造(1)と、
-前記航空到着ゾーン(Z)の上方に存在する空圧状態を制御するためのシステムであって、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステムと、
を備える、ランドスケープト構造物。
【請求項12】
-船舶(10)の一部、特に、船舶の後部デッキの一部;
-離着陸のための航空母艦のフライトデッキの一部;
-海上プラットフォームの一部;
-特に前記構造物が塔上または病院の建物上に位置する、建物の一部;および、
-空港、飛行場またはヘリポートの一部
のうちの1つを構成する、請求項11に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、着陸ゾーンまたはデッキ着陸ゾーンの上方に存在する空圧状態(aeraulic conditions)を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタまたはマルチコプタ型ドローン等の航空機の着陸は、空気渦(air vortices)および/または再循環(recirculations)を発生させる気流状態によって妨害され、または困難なものとなり得る。かかる状態は、特に、風の流れに対して障害物として作用する上部構造の近くに、着陸ゾーンが位置している場合に生じる。上部構造が着陸ゾーンに関して風が吹いて来る側に位置しており、かつ風速が十分であるとき、空気再循環泡が着陸ゾーンの上方に発生する。このとき、気流の方向および速さが、かかる空気再循環泡の内部における非常に短い距離で変化するため、着陸の終末フェーズは困難または危険なものとなる。知られているように、上部構造の複数の上側角部に由来する継続的または間欠的な空気渦も発生し、さらなる妨害が着陸に対してもたらされ得る。
【0003】
これらの困難は、船舶(例えば、ヘリ空母フリゲート(ヘリコプタキャリアフリゲート(helicopter-carrier frigate)))に航空機を着陸させる場合に、特に重大なものとなり得る。実際、船舶は、デッキ着陸ゾーンの近くに上部構造を有する場合があり、特に、当該船舶が外洋を移動している場合に、デッキ着陸ゾーンに対する相対風速が大きなものとなり得る。後部デッキがある従来のフリゲート構成では、ヘリコプタのためのデッキ着陸ゾーンは、フリゲートの後部デッキ上に位置し、デッキ着陸ゾーンの高さに対して上部構造を成すハンガーの後方にある。しかしながら、航空機が到着できるように意図された他の多くの構成が、同様の形態(構成)を有しており、これらの形態(構成)には、航空機の到着の終末フェーズに関して、同じ困難および危険が伴う。
【0004】
文献DE 10 2015 004086 A1は、風速および風向を測定するための手段を備えた、デッキ着陸面上においてヘリコプタを移動させるための装置に関する。
【0005】
文献FR 2 912 159 A1は、船舶上における、折り畳み式のヘリコプタ着陸プラットフォームに関する。
【0006】
文献RU 2 088 487 C1には、航空機が船舶のプラットフォームに着陸した後の当該船舶の前方における風を測定するための風況測定システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、着陸ゾーンまたはデッキ着陸ゾーンのかかる環境的構成に関して、航空機の着陸またはデッキ着陸の安全性を促進および/または向上させることである。
【0008】
本発明の副次的な一目的は、着陸またはデッキ着陸の条件におけるかかる改善を、この目的のために使用されるエネルギーの消費を最小限に抑えつつ、提供することである。
【0009】
別の副次的な一目的は、航空機の着陸またはデッキ着陸における安全性を向上させるためのシステムを提供することである。当該システムは、ロバストで、実装が簡単であり、船舶、特にヘリ空母フリゲートに容易に搭載することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的またはその他の目的のうちの少なくとも1つの目的を達成するために、本発明の第1態様では、航空機の着陸またはデッキ着陸のための面(航空到着ゾーンと称される)の上方に存在する空圧状態を制御するためのシステムが提案される。当該システムは、前記航空到着ゾーンから上部構造へ方向付けられた整列軸(DA)に沿って、前記航空到着ゾーンが前記上部構造(1)の近くに位置するときの使用に適合されている。前記上部構造は、前記航空到着ゾーンに対して垂直方向に高く延在し、かつ、前記航空到着ゾーンの上方の風の流れを変更することができる。当該システムは、
-前記航空到着ゾーンおよび前記上部構造に対する風の相対速さを特徴付ける速さおよび方位角(bearing angle)の値を提供するように適合された、風況測定手段(anemometric means)と、
-前記航空到着ゾーンの近くに配置された空圧手段(aeraulic means)であって、当該航空到着ゾーンの上方の空気の運動を修正することができる、空圧手段と、
-(i)前記風況測定手段によって供給される前記速さの値が、第1非ゼロ閾値よりも大きく、かつ/または、(ii)前記風況測定手段によって供給される前記方位角の値の絶対値が、第2非ゼロ閾値よりも小さいときに、前記空圧手段を作動させるように適合された、コントローラと、
を含む。
【0011】
これにより、本発明に係るシステムは、航空到着ゾーンに対する相対風速が大きいとき、または、その方位角が小さくもしくは大きすぎないときに、当該ゾーンにおける航空機の着陸条件またはデッキ着陸条件を改善することができる。言い換えれば、空圧手段は、不利な着陸条件またはデッキ着陸条件の選択肢(選択された不利な着陸条件またはデッキ着陸条件)に関して作動され、風および風と航空到着ゾーンとに対する上部構造の位置から生じる空圧状態がこの選択肢の範囲内に入らない場合には、非作動に保つことができる。したがって、本発明に係るシステムによるエネルギー消費は、当該システムが有用かつ効果的なものとなる風の諸状態(風の強さおよび方向)に限られることとなる。
【0012】
前記空圧手段の可能な作動に関して、前記風速値の比較対象となる前記第1閾値は、5m・s-1(メートル毎秒)~20m・s-1であり得る。また、前記方位角の値に関する前記第2閾値は、0°(度)~90°であり得る。
【0013】
前記風況測定手段は、前記航空到着ゾーンおよび前記上部構造に対する風の前記相対速さを特徴付ける前記速さおよび前記方位角の値を測定するように適合されてもよい。言い換えれば、前記風況測定手段は、リアルタイムに、または所定の瞬間に、風の速さおよび方位角を最初に測定するセンサであってもよい。本発明の文脈において、風の方位角は、水平面において整列軸となす角度を指す。これは、上部構造がない場合に存在する風の流れに対して平行な方向であり、この風の流れの上流の方を向く方向である。
【0014】
あるいは、前記風況測定手段は、他の場所で受信された気象データに基づいて、場合によっては前記上部構造と前記航空到着ゾーンとを組み込んだアセンブリに関する位置、向きおよび運動データとこの気象データとを組み合わせて、風の速さおよび方位角の値を提供するように適合されてもよい。
【0015】
概して本発明に関して、別段の定めの無い限り、風の速さおよび方位角は、前記上部構造と前記航空到着ゾーンとに結び付けられた基準系内に現れる風に関するものである。この上部構造と航空到着ゾーンとをまとめたアセンブリが地球上に静止している場合にあっては、本発明に使用される風の速さおよび方位角は、地上基準系に対するものである。また、上部構造と航空到着ゾーンとのアセンブリが地球上で移動している他の場合にあっては、本発明に使用される風の速さおよび方位角は、このアセンブリに結び付けられた基準系内に存在するものであり、この場合におけるそれらの値は、地上基準系に対するものとは異なっている。
【0016】
前記空圧手段は、限定するものではないが、継続的または間欠的な送風手段(シャッタ、およびエアジェットを方向付けるための手段が含まれる)、継続的または間欠的な吸気手段、気流偏向(逸らし)手段、等を含んでもよい。これらは、前記航空到着ゾーンの方を向いた前記上部構造の面の周縁部上における少なくとも1つの位置に配置されていることが有利である。送風手段を使用する本発明の実施形態では、これらが生み出す送風速さは、風況測定手段によって供給される風速の0.4倍~3倍とすることができる。この送風速さは、特に、当該システムの前記コントローラによって調整されてもよい。
【0017】
本発明の第1実施形態は、より具体的には、前記航空到着ゾーンの上方の風が発生させる空気再循環泡が垂直方向に延在することの制限を図るものであってもよい。この目的のために、前記空圧手段は、前記航空到着ゾーンの方を向いた前記上部構造の前記面の実質的に水平方向の上縁部に沿って配置された送風手段および/または吸気手段、さらに場合によっては、実質的に垂直方向の複数の側縁部に沿って配置された送風手段および/または吸気手段を含んでもよい。このとき、前記コントローラは、前記風況測定手段によって供給される前記速さの値が、前記第1閾値よりも大きく、かつ、前記風況測定手段によって供給される前記方位角の絶対値が、第3閾値よりも小さいときに、前記空気再循環泡の上側境界を下げるように、または前記上部構造の前記面の前記上縁部を始まりとする当該上側境界の下向き傾斜を増大させるように、前記空圧手段を作動させるよう適合される。これにより、前記上部構造から最も遠くにある前記航空到着ゾーンの一部分から、前記空気再循環泡が除去される。このようにして、前記航空到着ゾーンの当該部分における着陸条件またはデッキ着陸条件が改善される。本発明のかかる第1実施形態に関して、前記第3閾値は、0°~10°であってもよい。
【0018】
本発明の第2実施形態は、より具体的には、前記航空到着ゾーンの上方の風が発生させる前記空気再循環泡の横方向への押し戻しを図るものであってもよい。この目的のために、前記空圧手段は、前記航空到着ゾーンの方を向いた前記上部構造の前記面の実質的に垂直方向の複数の側縁部に沿って配置された送風手段および/または吸気手段を含んでもよい。このとき、前記コントローラは、前記風況測定手段によって供給される前記速さの値が、第4非ゼロ閾値よりも大きく、かつ、前記風況測定手段によって供給される前記方位角の絶対値が、第5非ゼロ閾値よりも大きく90°よりも小さいときに、前記空圧手段のうちの少なくとも一部を作動させるように適合される。このようにして、前記航空到着ゾーンの方を向いた前記上部構造の前記面と前記空気再循環泡の境界との間に存在する角度が低減される。このとき、前記空気再循環泡は、前記角度の範囲内に込められる(制限される:contained)。当該角度は、前記整列軸に関して風が吹いて来る方向と同じ側にある、実質的に垂直方向の複数の前記側縁部のうちの一方において測定されたものである。これにより、風が吹いて来る方向と同じ整列軸の側に位置する(風上に位置すると表現される)前記航空到着ゾーンの側方角セクタから、前記空気再循環泡が除去される。その結果、本発明の第1実施形態の様態とは異なるものの、着陸条件またはデッキ着陸条件がやはり改善される。本発明のかかる第2実施形態に関して、前記第4閾値は、5m・s-1~20m・s-1であってもよく、前記第5閾値は、10°~90°であってもよい。任意選択的に、前記コントローラは、実質的に垂直方向の複数の前記側縁部に沿って配置された前記送風手段および/または前記吸気手段ののうちの一部のみを作動させるように適合されてもよく、作動される前記送風手段および/または前記吸気手段の当該一部は、風の前記方位角に従って、前記コントローラによって決定される。
【0019】
最後に、本発明の第3実施形態は、より具体的には、前記上部構造の前記面の複数の上側側方角部に由来する、風が発生させる渦の妨害を図るものであってもよい。この目的のために、前記空圧手段は、前記航空到着ゾーンの方を向いた前記上部構造の前記面の複数の上側側方角部に配置された送風手段および/または吸気手段を含んでもよい。この場合において、前記コントローラは、前記風況測定手段によって供給される前記速さの値が、第6非ゼロ閾値よりも大きく、かつ、前記風況測定手段によって供給される前記方位角の絶対値が、5°未満であるときに、前記渦を乱すように、前記空圧手段を作動させるよう適合されている。本発明のかかる第3実施形態に関して、前記第6閾値は、5m・s-1~20m・s-1であってもよい。
【0020】
概して本発明に関して、前記コントローラは、前記航空到着ゾーンの近くに位置する気圧測定手段によって繰り返し測定される圧力値に従って、前記空圧手段の動作をリアルタイムに調整するように適合されてもよい。
【0021】
別の可能性によれば、前記コントローラは、前記風況測定手段によって最初に供給された値に基づいて、さらに場合によっては前記気圧測定手段による値に基づいて、前記空圧手段の前記動作を決定し、次いで、開ループにおいてこの動作の実行を命じる。
【0022】
本発明が船舶に搭載されて使用される場合、前記空圧手段の前記動作を決定または調整する際に、海洋状態の特徴付け(特性評価、特徴測定:characterization)等の追加のパラメータも考慮に入れられてもよい。
【0023】
最後に、本発明の第2態様では、
-航空到着ゾーンであって、航空機、特にヘリコプタまたは垂直ロータ軸(vertical rotor axes)を有するドローンが前記航空到着ゾーンに着陸するように適合された、航空到着ゾーンと、
-前記航空到着ゾーンの近くに位置する上部構造であって、前記航空到着ゾーンに対して垂直方向に高く延在し、かつ、前記航空到着ゾーンの上方の風の流れを変更することができる、上部構造と、
-前記航空到着ゾーンの上方に存在する前記空圧状態を制御するためのシステムであって、本発明の前記第1態様に係るシステムと、
を備える、ランドスケープト構造物(整備構造物:landscaped structure)が提案される。
【0024】
かかるランドスケープト構造物は、船舶の一部、特に、船舶の後部デッキの一部であってもよく、離着陸のための航空母艦のフライトデッキの一部であってもよく、石油プラットフォームとも称される海上プラットフォームの一部であってもよく、特に前記構造物が塔上または病院の建物上に位置する場合における、建物の一部であってもよく、空港、飛行場またはヘリポートの一部であってもよい。
【0025】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ、いくつかの非限定的な実施形態の以下の詳細な説明をもとにすることで、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1a】ヘリ空母における本発明の一適用例を示す。
【
図1b】本発明に関して有用な複数の方向を示す平面図である。
【
図2】上部構造の後方の風が発生させる空気再循環泡および空気渦、ならびに、本発明に関して有用な風況測定センサおよび気圧測定センサの配置を示す斜視図である。
【
図3a】可能な第1動作についての本発明に係るシステムの効果を示す側面図である。
【
図3b】可能な第2動作についての本発明に係るシステムの効果を示す平面図である。
【
図3c】可能な第3動作についての
図3bに対応する図である。
【
図4】本発明に係るシステムに関する動作工程のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
明確さのため、図面に表された要素の寸法は、実際の寸法にも実際の寸法比にも対応するものではない。さらに、これらの要素のうちの一部の要素は、記号的に表現されたものであるにすぎず、種々の図面に示された同一の参照符号は、同一の要素または同一の機能を有する要素を示す。
【0028】
後部デッキタイプのヘリ空母フリゲートにおける一用途の場合において、本発明を例示的に説明する。かかる船舶は、
図1aおよび
図1bにおいて、参照符号10で示されている。当該船舶は、ヘリコプタ20が着陸可能な航空到着ゾーンZを含む。航空到着ゾーンZは、船舶10の後部に位置する水平デッキ面から構成されている。船舶10は、航空到着ゾーンZが船舶10の軸に関して上部構造1のすぐ後方に位置するように、上部構造1をその中央部分にさらに含んでいる。DAは、上部構造1の航空到着ゾーンZに対する整列(アラインメント:alignment)の軸を示し、航空到着ゾーンZから上部構造1の方へと方向付けられている。上部構造1は、航空到着ゾーンZの方を向いた、実質的に垂直方向の面Fを有する。参照符号11、参照符号12、および参照符号13はそれぞれ、面Fの実質的に水平方向の上縁部、および、面Fの実質的に垂直方向の2つの側縁部を示す。船舶10の場合、方向DAは、その船尾から前部への長手方向に対応するものであり得、側縁部12は左舷側にあり、側縁部13は右舷側にある。上部構造1は、船上ハンガーであってもよい。
【0029】
図1bによれば、Wは、船舶10が位置する場所における風の流れの方向を示す。このため、この風の流れの方向は、船舶10が存在しない場合にも存在する。言い換えれば、Wは、船舶10、特にその上部構造1が発生させ得る気流の乱れを考慮に入れたものではない。Gは、船舶10の位置における風の方位角を示す:風の方位角は、水平面内において、整列軸DAに関して風が吹いて来る方向を特定する。例えば、右舷側では正、左舷側では負として計算される。風は、その方位角Gに加えて、風の流れ上にある船舶10が発生させる乱れを考慮に入れないときの、当該風が存在するときのその速さVの値によって特徴付けられる。概して本発明に関して、風の速さVおよび方位角Gは、上部構造1と航空到着ゾーンZとに結び付けられた基準系内で決定される。上部構造1と航空到着ゾーンZとは、互いに一定の相対位置を有する。言い換えれば、船舶10に想定される用途の場合、風の速さVおよび方位角Gは、船舶10の基準系内で決定される。風の速さVおよび方位角Gについて本発明に関して考慮される値は、船舶10が地上基準系に対してなし得る運動に応じて、船舶10の速さを風の速さからベクトル減算することによって得られる。これらの2つの速さは、地上基準系において、ベクトルとして存在するからである。
【0030】
図2は、航空到着ゾーンZの上方における、上部構造1が引き起す風の流れの乱れを示している。この図には、これらの乱れが、方位角Gがゼロである場合について示されている。これらの乱れは、十分な風速Vがあるときに現れる。
【0031】
第1の乱れは、空気再循環泡(air recirculation bubble)(図中、RCで示される)の出現からなる。この空気再循環泡RCは、航空到着ゾーンZが航空到着ゾーンZの方を向いた面Fとなす凹角部(re-entrant angle)に現れる。空気再循環泡RCは、ヘリコプタ20にとって着陸時に特に危険であり得る下降垂直気流を、航空到着ゾーンZの上方に、局所的に発生させる。空気再循環泡RCは、その上部では流線LCと境界を接している。流線LCは、上部構造1の上方に存在する風に由来し、航空到着ゾーンZの上方において、船舶10の船尾に向かって、徐々に下降する。空気再循環泡RCのこの上側境界は、面Fの上縁部11から始まり、
図3aにおいて参照符号L
11で示されている。同様に、空気再循環泡RCは、左舷側および右舷側の2つの側方境界を有し、当該左舷側および右舷側の2つの側方境界はそれぞれ、面Fの側縁部12および側縁部13から始まる。
【0032】
第2の乱れは、面Fの複数の上側角部から起こる渦VXの出現からなる。面Fの複数の上側角部とは、縁部11と縁部12とが交わる左舷側の場所、および、縁部11と縁部13とが交わる右舷側の場所である。これらの渦VXは、風の流れにおいて風下に延びるコアを有するため、縦渦(longitudinal vortices)と称される。
【0033】
図2には、本発明を実施するために船舶10に備え付けられた、風の速さVおよび方位角Gを測定するための風況測定手段がさらに示されている。既知の態様では、かかる風況測定手段には、ウィンドベーン(wind vane)およびウィンドカップ(wind cup)(併せて参照符号2で示される)が含まれ得る。1または複数のレーザドップラー風況測定装置を含む、既知の種類の他の風況測定装置を、代わりに使用することができる。有利には、これらの風況測定手段は、その特徴付け(特性評価、特徴測定)の結果が船舶10それ自体の存在によって著しく変更されることがないように船舶10の基準系内における風が特徴付けられるよう、上部構造1上に配置され得る。
【0034】
任意選択的に、気圧測定プローブ3を、特に、航空到着ゾーンZの近傍における気圧を測定するために、船舶10に搭載することができる。かかる気圧測定プローブは、空気再循環泡RCの境界の位置を特徴付けるために、航空到着ゾーンZの左舷側部および右舷側部に配置することができるが、さらに上部構造1上にも配置することができる。
【0035】
本発明に関して、船舶10は、航空到着ゾーンZの上方の風による気流を修正(変更)することができる空圧手段をさらに備える。これらの空圧手段には、特に、送風および/または吸気システム(図示せず)、ならびに、空気を送風または吸気することができる開口部またはスロットが含まれてもよい。
図2において、参照符号4は、面Fの上縁部11に沿って配置された送風および/または吸気スロットを示し、参照符号5は、面Fの側縁部12および側縁部13に沿ってそれぞれ配置された、2つの送風および/または吸気スロットを示す。参照符号6は、それぞれ面Fの上側角部に配置された、2つの送風ノズルを示す。当該上側角部は、縁部11と縁部12とが交わる場所、および、縁部11と縁部13とが交わる場所のことである。場合によっては、空圧手段は、スロット4およびスロット5を通じて送風もしくは吸気される気流の方向、またはノズル6によって放出される気流の方向を修正(変更)するように、さらに適合され得る。
【0036】
概して本発明に関して、空圧手段は、パルスジェット、シンセティックジェット、スイーピングジェット(sweeping jet)、ポンピングシステム、またはバッフル等の、任意の種類の流体アクチュエータから構成することができる。バルブまたはフラッパ機構を用い得るパルスジェット、および電磁膜(electromagnetic membrane)を有するシンセティックジェットは、5Hz(ヘルツ)~500Hzの周波数で動作するように適合されてもよい。あるいは、圧電膜(piezoelectric membrane)を有するシンセティックジェット、およびスイーピングジェットは、500Hz~3000Hzの動作周波数で使用することができる。可能なポンピングシステムは、真空ポンプタイプのシステムであり、可能なバッフルは、特に、調整可能な傾斜フラップ(tilting flap)、ベーン、および/またはハニカムを有するものである。船舶10における本発明の適用に関しては、空圧手段へのエネルギーの供給は、船舶の電子パワーコントロール(electronic power control)(EPCで示す)によって制御することができる。これには、専用の電力供給網によってエネルギーが供給され、例えば、12~14V(ボルト)の電圧で、バッテリから、あるいは、船舶の内部電力供給グリッドに接続されることによって、エネルギーが供給される。
【0037】
コントローラ(controller)7(CTRLと示される)は、風況測定手段2によって供給される値に従って、および場合によっては気圧測定プローブ3によって供給される値に従って、空圧手段を制御するように構成されている。空圧手段を制御するためにコントローラ7が考慮し得るその他の追加データは、船舶10に対して外部供給源によって送信される気象データ、船舶10の運動に関するデータ、海洋状態を特徴付けるデータ、特に船舶10のピッチ(縦揺れ)運動、ロール(横揺れ)運動およびヨー(片揺れ)運動を特徴付けるデータ、ヘリコプタ20の進入路およびその瞬時位置に関するデータ、ヘリコプタ20の大きさおよび重量を特徴付けるデータ、等々である。コントローラ7は、スロット4およびスロット5の各々によって、および複数のノズル6の各々によって、送風または吸気される気流を制御するように、設計および接続される。船舶10の場合、コントローラ7は、船舶に搭載された電子制御ユニット(electronic control unit)(または、ECU)のモジュールから構成されてもよい。
【0038】
概して、コントローラ7は、風速Vが第1閾値よりも大きく、かつ/または風の方位角Gが第2閾値を下回る場合に、航空到着ゾーンZの上方に存在する空気の運動が修正されるように、空圧手段を作動させるだけである。第1閾値は、5m・s-1~20m・s-1であってもよく、例えば、10m・s-1に等しくてもよい。第1閾値よりも小さな速さVの値は、風がヘリコプタ20の着陸を著しく妨害するには不十分であると考えられる。また、場合によっては、コントローラ7は、速さVの値が大きすぎる場合において、かかる大きな値に対してシステムが十分に効果的でないと考えられるときには、空圧手段を抑制する。例えば、風速Vが20m・s-1よりも大きいとき、空圧手段が抑制され得る。方位角Gに関する第2閾値は、0°~90°であり、例えば、45°に等しい。言い換えれば、風が吹いて来る方向が船舶10の船首側にあるときにのみ、空圧手段が作動される。風速および風の方位角についての、空圧手段の作動に関するこれら2つの条件は、選言的(択一的:alternative)または連言的(累積的:cumulative)であり得る。
【0039】
また、概して、コントローラ7は、航空機が航空到着ゾーンZにデッキ着陸しようとしているときにのみ、そのデッキ着陸の終了まで、空圧手段を作動させるように設計さすることができる。さらに、航空到着ゾーンZに当初着陸した航空機の離陸が差し迫ったときにこれらの空圧手段を作動させ、この航空機が船舶10に対して1または複数の距離閾値および/または高度閾値を超えるまでその動作を継続するように、コントローラ7を設計することができる。
【0040】
ここで説明される3つの動作の各々は、上に示した第1閾値よりも風速Vが大きいか、そうでなければ、これらの動作のうちの少なくとも一部の動作に関しては、その動作に専用される追加的閾値よりも風速Vが大きい場合にのみ、作動され得る。後者の場合において、その動作に専用される速さの当該追加的閾値Vは、第1閾値以上である。
【0041】
システムの第1動作は、方位角値Gが小さい状態、例えば方位角値Gが8°未満である状態に適合される。この方位閾値は、本明細書の概略部分で導入された第3閾値に対応する。言い換えれば、この第1動作は、整列軸DAに関して風向Wが互いに逆方向に重なり合っている場合、または、ほぼ重なり合っている場合に適している。この場合において、上述した空圧手段をコントローラ7によって制御して、スロット4を通じて送風することができる。スロット4を通じたかかる送風は、空気再循環泡RCの上側境界L
11が面Fの上縁部11からのその傾斜を増大させることによって下がるように、当該空気再循環泡RCの大きさを低減させる効果を有する。
図3aは、空気再循環泡RCの上側境界L
11の傾斜における、かかる増大を示す。上側境界L
11の傾斜はα
11で示され、航空到着ゾーンZの面に対して平行な面に関して測定される。この図において、参照符号Sは、送風を示す。結果として、風の流れの流線LCは、より大きな航空到着ゾーンZの後部部分において、実質的に水平となる。好ましくは、この第1動作に関して、空気再循環泡RCの大きさがさらに低減されるように、スロット4と同時に、2つのスロット5によっても、空気が送風され得る。
【0042】
システムの第2動作は、方位角Gの値が第1動作に関する方位角Gの値よりも大きい状態に適応される。例えば、この第2動作は、方位角Gが20°より大きい場合に適している。この別の方位角閾値は、本明細書の概略部分で導入された第5閾値に対応する。この場合において、コントローラ7は、上述した空圧手段を制御して、風が吹いて来る方向と同じ面Fの側にある、複数のスロット5のうちの一方を通じて、送風することができる。この場合も、かかる送風は、空気再循環泡RCの大きさを減少させる効果を有するが、これは、送風が行われる面Fの垂直方向縁部の周りにおいて、当該空気再循環泡RCの側方境界を面Fの方向に回転させることによる。任意選択的に、風が吹いて来る側とは反対側にあるもう一方のスロット5が行う同時的な吸気によって、空気再循環泡RCをさらに減少させ得る。
図3bは、かかる第2動作を示し、空気再循環泡RCの側方境界L
12の回転が示されている。α
12は、側方境界L
12と面Fとの間の角度を示す。参照符号Sは、送風を示し、参照符号Aは、吸気を示す。側部スロット5の各々は、いくつかの連続するセグメントに分割することができる。この第2動作に関する送風Sに使用されるセグメントの数、および場合によっては、吸気Aに使用されるセグメントの数は、コントローラ7によって、方位角Gの値に従って選択され得る。
【0043】
これらの初めの2つの動作に関しては、気圧測定プローブ3を使用して、空気再循環泡RCの大きさを特徴付けることができ、この大きさが所定の寸法未満に低減されるように、送風Sまたは吸気Aの流量を調整することができる。このようにして、本発明に係るシステムによって、ヘリコプタ20が安全に着陸できるように、航空到着ゾーンZの十分な部分が再循環泡RCの影響下にないことを保証することができる。
【0044】
システムの第3動作は、方位角Gの値が非常に低く、例えば5°未満である状態に適している。この第3動作は、第1動作と同時に作動することができる。当該第3動作は、風によって形成される渦VXであって、縁部11と縁部12とが交わる面Fの上側角部および縁部11と縁部13とが交わる面Fの上側角部から始まる渦VXを乱すように、ノズル6を通じて空気を送風することからなる。かかる送風は、空気渦VXを乱すのに効果的である。送風は継続的であってもよいが、例えば、丸みを帯びた障害物の後流に関するフォンカルマン定数に従って調整することができる周波数において間欠的であることが好ましい。
図3cは、かかる第3動作を示す。このように、本発明に係るシステムによって、空気渦がヘリコプタ20のデッキ着陸を妨害しそうにないことを保証することができる。
【0045】
これら全ての動作について、コントローラ7に関して、複数のモード、すなわち、所定制御モードまたは適応制御モードが可能である。
【0046】
所定制御モードの場合、コントローラ7は最初に、空圧手段に動作命令を送信する。当該空圧手段は、この初期命令に従う一定の動作を生み出す。この命令には、作動対象となる空圧手段の選択、送風速さおよび周波数の値、1もしくは複数の吸気速さの値、ならびに/または、ジェットおよびバッフルに関する1もしくは複数の向きの値が含まれてもよい。当該命令は、一定であって、コントローラ7によって受信された値とは独立であってもよく、あるいは、可変であって、受信されたこれらの値のうちのいくつかの値の関数として(受信されたこれらの値のうちのいくつかの値に応じて)決定されてもよい。例えば、空圧手段のいくつかの動作パラメータに関係し得る命令は、テーブルまたはマップにおけるエントリが受信された値から構成された当該テーブルまたはマップを読み取ることによって決定され得る。これらは、場合によっては、上に列挙された全てのデータに関係し、またはこれらのデータのうちの一部のみに関係する。気圧測定プローブ3からの測定結果を用いることは、特に空気再循環泡RCの初期の大きさの特徴付けに、特に関連し得る。
図4は、所定制御モードの可能な一例を示す。航空機がデッキ着陸しようとしていることが宣言されたときに、航空到着ゾーンZの上方に存在する空圧状態を制御するプロセスを開始することができる。基準S0に対応する初期状態では、空圧手段はオフになっている。工程S1は、ヘリコプタ20のデッキ着陸の進捗を確認することからなり得、当該プロセスは、着陸がまだ行われていない場合にのみ継続される。工程S2は、風況測定手段によって送信された、風を特徴付ける速さVおよび方位角Gの値を収集することからなる。この工程S2では、場合によっては、追加の値が収集されてもよく、特に、気圧測定プローブ3によって供給される圧力値、および、すでに列挙したデータ等の他のデータが収集されてもよい。工程S3は、風の速さVおよび方位角Gの値に関する、空圧手段の作動に必要な条件を確認するテストである。このとき、当該プロセスは、速さVの値が第1閾値(図中にVS
1と表示)よりも大きく、かつ/または、方位角Gの値が第2閾値(VS
2と表示)よりも小さい場合にのみ、継続する。工程S4において、空圧手段に対する動作命令が決定され、次いで、工程S5において、これらの命令に従って、空圧手段が作動される。例えば、空圧手段が送風手段を含む場合、工程S4は、送風速さが風況測定手段2によって測定される風速の0.4倍~3倍である動作力を、送風手段に関して設定する工程を含むことができる。同様に、吸気手段に関する動作力を、例えば、同じく風速の0.4倍~3倍の吸気速さに設定することができる。そして、当該プロセスが工程S1から開始して繰り返され得る。
【0047】
適応制御モードでは、空圧手段の動作は、閉ループで制御される。この目的に関して、コントローラ7は、例えばARMarkovタイプの適応コントローラである。気圧測定プローブ3によってリアルタイムに測定される圧力値によって、ARMarkovアルゴリズムの入力データが構成され得る。そして、当該アルゴリズムからの出力データは、どの空圧手段が作動されるべきかの特定、その送風速さおよび周波数の値、または場合によっては、吸気速さの値、ならびに/もしくは、エアジェットおよび/もしくはバッフルの向きであってもよい。このようにして生成された航空到着ゾーンZの上方の空圧状態と、標的として用いられる基準状態との間の差の測定値が、当該アルゴリズムへの入力として、停止基準に達するまで再投入される。かかる停止基準は、例えば、気圧測定プローブ3によって検出される圧力値の変動の減少、または航空到着ゾーンZの周辺に存在する静圧値の増加に関するものであり得る。
【0048】
所定制御モードは、船舶10における本発明の適用に関して、穏やかな気象のときに好ましいものであり得る。一方、適応制御モードは、荒海のとき、激しい気象のとき、または突風があるときに好ましいものであり得る。
【0049】
本発明は、上に詳細に説明した複数の実施形態の二次的態様を修正することによって、挙げられた利点のうちの少なくとも一部の利点を保持しつつ再現できることがわかる。特に、本発明に係るシステムは、船舶へのデッキ着陸以外の用途に用いることができる。かかる他の用途は、地球上(陸上:terrestrial)における用途であり得、これは、航空到着ゾーンに近接する上部構造の性質とは無関係である。また、挙げられた任意の値は、例示を目的とするものであるにすぎず、特定の用途に応じて変更されてもよい。
【国際調査報告】