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特表2024-509279カプセルならびにその製造および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】カプセルならびにその製造および使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240221BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240221BHJP
   A23F 5/00 20060101ALI20240221BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A23L2/00 W
A23F5/00
A23F5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555326
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2022054031
(87)【国際公開番号】W WO2022189120
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161558.8
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521391335
【氏名又は名称】デリカ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DELICA AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バウマン,リア
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ティラ,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ジーファース,カロリーネ
(72)【発明者】
【氏名】アフォルター,ローランド
【テーマコード(参考)】
4B027
4B035
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC10
4B027FE04
4B027FK01
4B027FK02
4B027FK04
4B027FK05
4B027FP85
4B027FP90
4B027FQ19
4B027FQ20
4B035LC16
4B035LE12
4B035LE20
4B035LG02
4B035LG04
4B035LG15
4B035LG19
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4B035LG32
4B035LG33
4B035LK13
4B035LP24
4B035LP26
4B035LP59
4B117LE02
4B117LG11
4B117LG17
4B117LK01
4B117LK13
4B117LK15
4B117LK18
4B117LP03
4B117LP20
(57)【要約】
飲料、特には高温飲料を調製するためのカプセルであって、
- 飲料物質である、成形体またはバルク材料の形態のコア材料と、
- コア材料を包み、タンパク質を含むシェルと
を備えるカプセル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料、特には高温飲料を調製するためのカプセルであって、
- 特にはコーヒー粉末、茶、ココア、飲用チョコレート、粉乳、ヴィーガンミルク代用粉末、インスタントコーヒー、コーヒー代用製品、およびドライスープ、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される飲料物質である、成形体またはバルク材料の形態のコア材料と、
- 前記コア材料を包み、タンパク質を含むシェルと
を備えるカプセル。
【請求項2】
前記シェルは、少なくとも10w/w%のタンパク質含有量を有する、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記シェルの前記タンパク質は、動物タンパク質、植物タンパク質、および酵母由来タンパク質、ならびに異なる動物および/または植物タンパク質の組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記シェルは、堆肥化可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項5】
前記シェルは、1~20の層、好ましくは2~10の層、より好ましくは2~5の層から構成され、前記層は、同じタンパク質を同じ含有量または異なる含有量で含み、あるいは異なるタンパク質を同じ含有量または異なる含有量で含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項6】
前記シェルは、1~20の層、好ましくは2~10の層、特に好ましくは2~5の層から構成され、少なくとも1つ以上の層は、タンパク質を有さずに構成され、特には、少なくとも1つの多糖、好ましくはアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウムを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項7】
タンパク質を含む層が、タンパク質を有さない2つの層の間に配置される、請求項6に記載のカプセル。
【請求項8】
前記カプセルは、立方体、直方体、角柱、角錐、角錐台、円柱、円錐、円錐台、環状体、球、楕円体、コーヒー豆、を含む群から選択される形状を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項9】
前記コア材料を包む前記シェルは、継ぎ目を有さず、あるいは1つ以上の継ぎ目を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項10】
前記コア材料を包む前記シェルは、前記カプセルの開放を容易にする脆弱線を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項11】
特には先行する請求項のいずれか1項に記載のカプセルを製造する方法であって、
a)コーヒー粉末、茶、ココア、飲用チョコレート、粉乳、ヴィーガンミルク代用粉末、インスタントコーヒー、コーヒー代用製品、およびドライスープ、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるコア材料を用意するステップと、
b)前記コア材料を成形体へと圧縮するステップと、
c)特には動物タンパク質、植物タンパク質、および酵母由来タンパク質、ならびに異なる動物タンパク質および/または植物タンパク質および/または酵母由来タンパク質の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を含む系、特には水溶液系を用意するステップと、
d)前記系を前記成形体の表面に、特には浸漬、コーティング、または噴霧によって塗布するステップと、
e)前記覆われた成形体を乾燥させるステップと
を含む方法。
【請求項12】
ステップd)、および特にはステップe)が、同じ系または異なる系、特には水溶液系で繰り返し実行され、前記成形体の前記表面上に1~20の層、好ましくは2~10の層、より好ましくは2~5の層を製造する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップd)、および特にはステップe)が、タンパク質を有さない異なる系、特には水溶液系で繰り返し実行される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記コア材料の圧縮は、1~100MPa、好ましくは5~50MPaの範囲内の圧縮圧力で行われる、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液系は、可塑剤、特にはグリセロールおよび/またはソルビトールおよび/またはポリエチレングリコールをさらに含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップe)は、気流中で、対流乾燥および/または接触乾燥によって実行される、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記水溶液系は、アルギン酸塩を有し、タンパク質の濃度が前記水溶液系の総重量に基づいて、0.1w/w%~5.0w/w%の間、好ましくは0.5w/w%~4.0w/w%の間、より好ましくは1.0w/w%~3.0w/w%の間である、水溶液の形態で用意される、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる飲料を調製するためのカプセル。
【請求項19】
コーヒー、茶、ココア、飲用チョコレート、ミルク、またはスープ、あるいはそれらの組み合わせから選択される飲料、特には高温飲料を調製するための請求項1~10のいずれか1項または請求項18に記載のカプセルの使用。
【請求項20】
前記飲料の調製は、水、ミルク、コーヒー抽出物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される液体、特には高温液体での前記カプセルの抽出によって行われる、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、特には高温飲料の調製に適した成分を含むカプセル、ならびにその製造および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーなどの高級食品をカプセルの形態で提供することが周知である。しかしながら、シェルの材料として一般的に用いられるプラスチックまたはアルミニウムなどの材料(例えば、欧州特許出願公開第2106375号明細書を参照)は、サステイナブルではないという欠点を有する。
【0003】
独国特許第102014000187号明細書において、例えばコーヒーの製造のための成形体を生分解性の層からなるコーティング材料でコーティングすることが提案されており、この層は、多糖類またはその誘導体とポリオールスペーサーおよび関連の架橋剤との組み合わせである。
【0004】
欧州特許第3115316号明細書が、例えばコーヒーの製造のための同様のカプセルであって、シェルの材料中の架橋多糖類をポリオールスペーサーを使用することなく得たカプセルを記載している。具体的には、アルギン酸カルシウムがシェルの材料として挙げられている。
【0005】
米国特許出願公開第2013/0136843号明細書において、コーヒー粉末のコアを、圧縮されたコーヒーのシェルでコーティングすることが提案されている。
【0006】
しかしながら、前述の先行技術の解決策は、最大の経済性、環境適合性、および製造の理由の下で、高温飲料を調製するためのカプセルを提供することに関して、いまだ最適ではない。さらに、多くの場合に、カプセルの安定性および/またはカプセルシェルの酸素バリアが、不充分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、飲料、とりわけ高温飲料を調製するためのカプセルであって、先行技術の欠点を克服するカプセルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本出願の独立請求項の主題によって解決される。
より具体的には、本発明は、飲料、特には高温飲料を調製するためのカプセルであって、
- 特にはコーヒー粉末、茶、ココア、飲用チョコレート、粉乳、ヴィーガンミルク代用粉末、インスタントコーヒー、コーヒー代用製品、およびドライスープ、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される飲料物質である、成形体またはバルク材料の形態のコア材料と、
- コア材料を包み、タンパク質を含むシェルと
を備えるカプセルに関する。
【0009】
本発明によれば、コア材料は、コーヒー粉末、茶、ココア、飲用チョコレート、粉乳、ヴィーガンミルク代用粉末、インスタントコーヒー、コーヒー代用製品、およびドライスープ、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。このようなコア材料は周知であり、ここで詳細に説明する必要はない。固体および/または膨潤性材料は、材料が飲料の調製中に溶解せず、飲料の調製が完了するまでカプセルがその形状を実質的に保持するという点で、可溶性材料よりも有利であることが分かっている。
【0010】
コア材料は、成形体またはバルク材料の形態であってよい。バルク材料の形態のコア材料は、実質的に剛体であるシェルの従来からの充てんに適する。しかしながら、同様に、バルク材料は、例えば管状のバッグと同様の可撓性シェルに包装されてもよい。このように、バルク材料は、シェルによって一体に保持される。
【0011】
本発明によれば、「成形体」は、圧力のもとで圧縮されたコア材料であると理解される。カプセルのコア材料を成形体として用意することは、コア材料がシェルの材料で浸漬、コーティング、または噴霧によって被覆される場合に、コア材料が被覆プロセスの最中にばらばらになることがないため、きわめて好都合である。したがって、コア材料は、好ましくは一定の強度を有する。これは、好ましくは、1~100MPa、好ましくは5~50MPaの範囲の圧縮圧力でコア材料を圧縮することによって達成することができる。このようにして得られたシェル付きの成形体は、好ましくは10~300N、好ましくは50~250N、特に好ましくは75~225Nの範囲の強度を有する。
【0012】
成形体を製造するために加えられる圧縮圧力は、コア材料の特性に依存し、コーヒー粉末の場合には、例えば粉末の挽き具合、焙煎の程度、および水分含有量に依存する。特にはコーヒー粉末の場合、脂肪または油の含有量がより少ない粉末、例えば脱カフェインコーヒー粉末が、安定した成形体を達成するために、より高い圧縮圧力を必要とすることを観察することができる。
【0013】
成形体の強度は、成形体を2つのプレートの間で締め付け、成形体を押しつぶすために必要な力を明らかにすることによって決定される。この方法は、国際公開第2008/123775号の第3ページにも記載されている。
【0014】
カプセルを、従来からのやり方で、特には浸漬、コーティング、または噴霧によって、所望のコア材料の成形体をシェルの材料でコーティングすることによって、通常のやり方で製造することができる。
【0015】
本発明に従って使用されるシェルの材料は、タンパク質を含む。タンパク質で作られたシェルは、酸素に対して高い天然バリアを示す。したがって、コア材料の永続性を高めることができる。さらに、タンパク質を含むシェルの材料によって、シェルの機械的特性を、要件に応じて広い範囲で変更することができる。例えば、カプセルの破壊強度を調整することができる。さらに、視覚的外観、特には表面の色、光沢、均一性を、使用されるタンパク質の選択に応じて調整することができる。同様に、タンパク質を、抗菌剤などの活性物質の担体として使用することができる。
【0016】
シェルの材料は、好ましくは、飲料の調製の最中、とりわけ高温飲料の調製の最中に溶解しないように設計される。したがって、100°Cまでの水および3分までの抽出時間での抽出において、シェルは安定した形状を保持し、したがって、飲料の調製後にカプセルを困難なく飲料調製機から排出または除去することができる。
【0017】
シェルは、乾燥物質に基づいて少なくとも10w/w%のタンパク質含有量を有することができる。特には、随意により可塑剤が添加された本質的に純粋なタンパク質フィルムからなるシェルの場合、タンパク質含有量は、好ましくは30w/w%~100w/w%の間、特に好ましくは50w/w%~80w/w%の間であってよい。したがって、きわめて高い酸素バリアを達成することができる。さらに、機械的および視覚的特性を容易に変えることが可能である。随意により可塑剤および/またはセルロースが添加された本質的にアルギン酸塩タンパク質フィルムからなるシェルの場合、タンパク質含有量は、好ましくは10w/w%~60w/w%の間、特に好ましくは10w/w%~40w/w%の間であってよい。そのようなシェルは、本質的に純粋なタンパク質フィルムよりも適用がはるかに容易である。
【0018】
シェルのタンパク質は、乳清タンパク質カゼイン、ゼラチン、ケラチン、卵タンパク質(卵白アルブミン)、絹フィブロインなどの動物タンパク質、酵母由来タンパク質、およびジャガイモタンパク質、トウモロコシタンパク質、エンドウ豆タンパク質、米タンパク質、大豆タンパク質、ルピナスタンパク質、小麦タンパク質、キャノーラタンパク質、カボチャタンパク質、ピーナッツ、アーモンド、ナッツタンパク質(例えば、ペカン、クルミ、ヘーゼルナッツ、マカダミア、カシュー)、レンズ豆タンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、豆タンパク質、キヌアタンパク質、アマランスタンパク質、ヒマワリ種子タンパク質、エンバクタンパク質、麻タンパク質などの植物タンパク質、ならびに異なる動物および/または植物タンパク質の組み合わせからなる群から選択され得る。使用されるタンパク質に応じて、処理は異なり、シェル、したがってカプセルの特性も異なってよい。
【0019】
例えば、エンドウ豆タンパク質は、すでにいくつかの食品で使用されているため、処理がきわめて容易であり、容易に入手可能である。さらに、エンドウ豆タンパク質は、比較的安価であり、遺伝子組み換えがほとんど行われていない。エンドウ豆タンパク質は、アレルゲンでないと考えられ、ベジタリアンおよびヴィーガンの両方の食事に関して承認されている。
【0020】
乳清タンパク質は、容易に入手可能であり、価格において興味深く、産業副産物である。乳清タンパク質を使用して、魅力的な外観を有するケーシングを得ることができる。この処理における用量は、少量で可能である。欠点は、乳清タンパク質のアレルゲン性である。これは、動物性製品であり、したがってヴィーガンの食事には適さない。
【0021】
トウモロコシタンパク質の利点は、これを用いて得られるシェルの優れた安定性である。トウモロコシは、コア材料、とりわけコーヒーと結合する可能性がある。加えて、トウモロコシタンパク質は、水に溶けないため、適用が困難である。トウモロコシタンパク質は、植物起源であるが、遺伝子組み換えが行われ得る。
【0022】
シェルのタンパク質を架橋させることができる。架橋は、シェルの機械的特性に影響を及ぼす。特に、シェルの安定性が向上する。しかしながら、架橋していないタンパク質または非架橋のタンパク質を使用することも考えられる。
【0023】
カプセルのシェルは、堆肥化可能であってよい。これは、飲料の抽出後に、カプセルを家庭ごみと一緒に処分する必要がなく、堆肥化可能であることを意味する。使用済みの飲料基質およびカプセルシェルの両方が生物学的サイクルに戻される。
【0024】
「堆肥化可能」は、認証スキームNF T51-800:2015-11-14(プラスチック-家庭での堆肥化に適したプラスチックの仕様)およびAS 5810:2010(生分解性プラスチック-家庭での堆肥化に適した生分解性プラスチック)に従って、材料が少なくとも家庭で堆肥化可能であることを意味すると理解される。これは、25±5°Cの温度で12ヶ月以内にCOの放出を伴って材料の少なくとも90%が生分解され、25±5°Cの温度で6ヶ月以内に材料の少なくとも90%が断片化する(分解される)ことを意味する。
【0025】
シェルは、1~20の層、好ましくは2~10の層、特に好ましくは2~5の層から構成することができ、層は、同じタンパク質を同じ含有量または異なる含有量で有することができ、あるいは異なるタンパク質を同じ含有量または異なる含有量で有することができる。多層構造により、シェルの特性、特には機械的特性(例えば、不透過性、膨潤能、変形能)を、広い範囲で修正および調整することができる。
【0026】
少なくとも1つ以上の層は、タンパク質を有さずに構成され、特には、少なくとも1つの多糖、好ましくはアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウムを含むことが考えられる。この場合、タンパク質を含む層が、タンパク質を有さない2つの層の間に配置され得る。タンパク質を有さない層の使用およびそれらの並びにより、シェルの特性のさらなる改変も可能である。
【0027】
本発明によるカプセルは、さまざまな形状を有することができる。そのような種々の形状は、関連の技術分野における対応するカプセルに関して、先行技術においてすでに知られている。例えば、カプセルは、立方体、直方体、角柱、角錐、角錐台、円柱、円錐、円錐台、環状体、球、楕円体、コーヒー豆、を含む群から選択される形状を有してよい。好ましくは、カプセルは球形である。カプセルを、飲料を調製するための機械または対応する調製プロセスに最適に適合させることができる。
【0028】
本発明によるカプセルは、コア-シェル構造を有し、すなわち或る材料(コア材料)のコアが別の材料(シェルの材料)のシェルによって取り囲まれている。シェルは、複数のピース(硬質カプセルなど)から組み立てられるのではない場合、継ぎ目を持たずに形成されてよい。しかしながら、シェルは、2つ以上の部分から形成されてもよい。シェルは、1つ以上の継ぎ目を有してもよい。
【0029】
シェルは、コア材料に接着していても、コア材料を緩く取り囲んでもよい。
シェルは、脆弱線を有することができ、脆弱線においてシェルをより容易に開くことができる。このような脆弱線は、飲料調製機において、シェルが液体の導入のために一方側において穿孔され、その内圧によって液体の排出のために別の地点において開放される場合に好都合である。脆弱線は、継ぎ目によって形成されてよい。
【0030】
本発明の別の態様は、特には先行の説明によるカプセルを製造する方法であって、
a)コーヒー粉末、茶、ココア、飲用チョコレート、粉乳、ヴィーガンミルク代用粉末、インスタントコーヒー、コーヒー代用製品、およびドライスープ、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるコア材料を用意するステップと、
b)コア材料を成形体へと圧縮するステップと、
c)カプセルに関して上記で説明したとおり、特には植物タンパク質、動物タンパク質、および酵母由来タンパク質、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を含む系、特には水溶液系を用意するステップと、
d)系を成形体の表面に、特には浸漬、コーティング、または噴霧によって塗布するステップと、
e)覆われた成形体を乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【0031】
タンパク質を含む系、特には水溶液系を用意するステップを、溶液、特には水溶液を対応するタンパク質粉末と混合することによって、慣習的な様相で行うことができる。混合を、撹拌、加熱、例えば酸または塩基を添加することによってタンパク質粉末の溶解度を高めるようにpH範囲を調整する、あるいはこのような手段の組み合わせなど、慣習的な手段によって補助し、あるいは可能にすることができる。さらに、水溶液系を、少なくとも1つの多糖で濃縮することができる。
【0032】
これに関連して、系は、水溶液系(すなわち、溶媒として水のみを含む系)だけを意味するものではないと理解される。系が、水と、例えばエタノールなどの短鎖(例えば、C1~8)の生理学的に許容されるアルコールからなる水混和性溶液との溶媒混合物であることも、同様に考えられる。同様に、水溶液系を生成するために、溶媒としての水の代わりに、例えばブリュードコーヒーまたはインスタントコーヒーからのコーヒー抽出物を使用することが考えられる。
【0033】
このようにして、系は、タンパク質の濃度が、系の総重量に基づいて、1w/w%~40w/w%の間、好ましくは1w/w%~35w/w%の間、より好ましくは1w/w%~30w/w%の間である、溶液、特には水溶液の形態で用意される。
【0034】
本発明によれば、好ましくは、系は、エンドウ豆タンパク質の濃度が、系の総重量に基づいて、1w/w%~20w/w%の間、好ましくは5w/w%~15w/w%の間、特に好ましくは8w/w%~11w/w%の間である、溶液、特には水溶液の形態で用意される。
【0035】
あるいは、系は、トウモロコシタンパク質の濃度が、系の総重量に基づいて、1w/w%~30w/w%の間、好ましくは10w/w%~30w/w%の間、より好ましくは20w/w%~30w/w%の間である、溶液、特には水溶液の形態で用意される。
【0036】
さらにあるいは、系は、乳清タンパク質の濃度が、系の総重量に基づいて、1w/w%~20w/w%の間、好ましくは5w/w%~15w/w%の間、より好ましくは8w/w%~11w/w%の間である、溶液、特には水溶液の形態で用意される。
【0037】
さらにあるいは、系は、ジャガイモタンパク質の濃度が、系の総重量に基づいて、1w/w%~20w/w%の間、好ましくは2w/w%~18w/w%の間、より好ましくは4w/w%~17w/w%の間である、溶液、特には水溶液の形態で用意される。
【0038】
系は、アルギン酸塩を含み、タンパク質の濃度が、系の総重量に基づいて、0.1w/w%~5w/w%の間、好ましくは0.5w/w%~4w/w%の間、より好ましくは1w/w%~3w/w%の間である、溶液、特には水溶液の形態で用意することができる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、軟水または脱塩水が、タンパク質を含む水溶液系を用意するステップに使用される。
【0040】
系は、適用されるシェルの材料の特性を変更するための追加の添加剤を含むことができる。例えば、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、またはこれらの可塑剤の組み合わせなどの可塑剤を挙げることができる。このような添加剤は、通常は、系の総重量に基づいて、0.1~15w/w%、好ましくは0.2~15w/w%、特に好ましくは0.5~15w/w%の量で水溶液系に添加される。
【0041】
このようにして用意される系を、従来からのやり方で、特には浸漬、コーティング、または噴霧によって、成形体の表面に塗布することができる。
【0042】
シェルの材料による所望のコア材料のコーティングを、成形体を上述の系に浸すことによって達成することができる。例えば、成形体を、適切なサスペンションによって系へと導入し、例えば1~60秒、好ましくは2~30秒、特に好ましくは3~10秒である所望の時間にわたって留めることができる。例えば浸漬槽内の固定位置または浸漬槽を通る転がり運動など、浸漬槽における他のコーティング方法も考えられる。
【0043】
成形体の表面に水溶液系を塗布するステップを、同じ系または異なる系、特には水溶液系で、繰り返し行うことができる。このようにして、1~20の層、好ましくは2~10の層、特に好ましくは2~5の層を、成形体の表面上に製造することができる。
【0044】
成形体の表面に水溶液系を塗布するステップを、タンパク質を有さない異なる系、特には水溶液系で、繰り返し行うこともできる。このようにして、シェルの特性をさらに変更することができる。
【0045】
覆われた成形体を乾燥させるステップを、各々の個別の水溶液系の塗布後または一定数の水溶液系の塗布後に繰り返すことができる。
【0046】
複数の層を適用する場合、コーティングプロセスの種類は、各々の場合で同じであってよく、あるいは異なるコーティングプロセスが使用されてもよい。
【0047】
覆われた成形体は、最後のコーティングステップの後および/または1つ以上の個別のコーティングステップの間に乾燥工程に供される。この乾燥を、従来からのやり方で行うことができる。本発明によれば、乾燥は、好ましくは気流中で、対流乾燥および/または接触乾燥によって行われる。例えば、高温の空気によるトレイ乾燥、IR乾燥(IR線の照射による乾燥)、およびマイクロ波乾燥(マイクロ波の照射による乾燥)などが挙げられる。この目的のために使用される温度は、通常は、標準圧力で10~40°Cの範囲内、好ましくは15~25°C、通常は50°C未満である。
【0048】
コーティングおよび乾燥の処理ステップは、合わせて、通常は、1層当たり2分~20分、好ましくは5分~10分の持続時間を必要とする。しかしながら、適用される層の種類およびそれらの数に応じて、20分~240分、好ましくは40分~80分の持続時間が必要とされてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、成形体のコーティングおよびその後の乾燥を、コーティングが流動床プロセスにおける噴霧コーティングによって既知のやり方で行われる場合、1つの処理ステップで行うことができる。この目的のために適用される温度は、通常は、25~80°Cの範囲である。
【0050】
コア材料の圧縮を、1~100MPa、好ましくは5~50MPaの範囲の圧縮圧力で実行することができる。
【0051】
本発明の別の態様は、前述の方法によって得ることができる飲料を調製するためのカプセルに関する。
【0052】
本発明によるカプセルを、コーヒー、代用コーヒー、茶、ココア、飲用チョコレート、ミルク、ヴィーガンミルク、またはスープ、あるいはそれらの組み合わせを含む群から選択される飲料、特には高温飲料を調製するために使用することができる。
【0053】
本発明によれば、飲料は、カプセルを水、ミルク、コーヒー抽出物、または組み合わせからなる群から選択されるきわめて高温の液体で抽出することによって調製されることが好ましい。
【0054】
この目的のための対応する調製プロセスおよび装置は、先行技術から知られている。
飲料を調製するためのシステムが、上述のようなカプセルと、カプセルを受け入れ、水、ミルク、コーヒー抽出物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される液体、特には高温液体で抽出するための機械とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に示す各々の実施例について、挽いて焙煎したコーヒー粉末6.2gをプレスにおいて30MPaで圧縮することにより、コーヒー調製用の球状の成形体を作成した。コーヒー粉末の水分含有量は、3.5%であった。コーヒー粉末の平均粒径は、400μm±100μmであった。すべての実施例において、シェルのOTRは、5cm/(m*d*1.0bar)未満であると測定された。表面調整酸素透過率(OTR)は、単位面積および単位時間当たりにシェルを通って拡散する酸素の量を表す。水溶液の調製および成形体のコーティングは、それぞれの実施例において説明される。
【実施例1】
【0056】
実施例1(タンパク質+グリセロールのみ):トウモロコシ
脱塩水23.8w/w%、エタノール58.8w/w%、およびトウモロコシタンパク質(CPI)(FloZein F4400Cシリーズ、FloZein Products USA)17.5w/w%の溶液を調製した。CPI溶液を50rpmで混合しながら30分間にわたって40°Cに加熱した。次いで、溶液を66%のグリセロール(CPI1グラム当たりに基づく)と室温まで混合した。
【0057】
ペレットをCPI水溶液に6秒間浸漬し、気流中で25°Cで約6分間にわたって乾燥させた。続いて、成形体をCPI溶液に2度目に6秒間浸漬し、次いで25°Cで15分間にわたって乾燥させた。
【0058】
乾燥後に、覆われたボールの破壊強度は103Nであった。
【実施例2】
【0059】
実施例2(タンパク質+グリセロールのみ):エンドウ豆
脱塩水および10w/w%のエンドウ豆タンパク質単離物(PPI)濃度(PDS Empro E 86 HV、Emsland Group、ドイツ)の水溶液を調製した。PPI溶液を50rpmで混合しながら30分間にわたって90°Cに加熱した。次いで、溶液を室温で60%のグリセロール(PPI1グラム当たりに基づく)と混合した。
【0060】
成形体をPPI水溶液に6秒間浸漬し、気流中で25°Cで約6分間にわたって乾燥させた。続いて、成形体をPPI溶液に2度目に6秒間浸漬し、次いで25°Cで15分間にわたって乾燥させた。
【0061】
乾燥後に、覆われたボールの破壊強度は50Nであった。
【実施例3】
【0062】
実施例3(タンパク質+アルギン酸塩+グリセロール):乳清
脱塩水および10w/w%の乳清タンパク質単離体(WPI)BiPro 9500(Agropure Ingredients Inc,USA)の濃度の水溶液を調製した。WPI溶液を50rpmで混合しながら20分間にわたって90°Cに加熱した。
【0063】
続いて、脱塩水およびアルギン酸ナトリウム(VIVAPURアルギン酸ナトリウム、中粘度、JRS、ドイツ)の水溶液を調製した。水溶液の総重量に基づいて、1.7w/w%のアルギン酸ナトリウム濃度を有する水溶液の形態の系を調製した。
【0064】
次いで、WPI溶液とアルギン酸塩溶液とを1/9の割合で混合し、1%のタンパク質を含む溶液を得た。
【0065】
次いで、溶液を2%グリセロール(水溶液の総重量に基づく)と混合した。
成形体をWPIアルギン酸塩水溶液に6秒間浸漬し、次いで5w/w%の濃度の塩化カルシウム溶液に10秒間浸漬した。次いで、コーヒー成形体を気流中で25°Cで乾燥させた。続いて、成形体をWPIアルギン酸塩溶液に2度目に6秒間浸漬し、次いで5w/w%の濃度を有する塩化カルシウム溶液に10秒間浸漬した。次いで、コーヒー成形体を25°Cで15分間乾燥させた。
【0066】
乾燥後に、覆われたボールの破壊強度は179Nであった。
【実施例4】
【0067】
実施例4(タンパク質+アルギン酸塩+ソルビトール):エンドウ豆
脱塩水および10w/w%のエンドウ豆タンパク質単離物(PPI)濃度の水溶液を調製した。タンパク質溶液(PDS Empro E 86 F 30、Emsland Group、ドイツ)を50rpmで混合しながら90°Cで20分間加熱した。
【0068】
続いて、水溶液を脱塩水、アルギン酸ナトリウム(VIVAPURアルギン酸ナトリウム、中粘度、JRS、ドイツ)、およびタンパク質溶液から調製した。水溶液の総重量に基づいて、1.7w/w%のアルギン酸ナトリウム濃度を有する水溶液の形態の系を調製した。
【0069】
次いで、PPI溶液とアルギン酸塩溶液とを3/7の割合にて混合し、3%のタンパク質を含む溶液を得た。
【0070】
次いで、溶液を3.5%ソルビトール(水溶液の総重量に基づく)と混合した。
成形体をPPI-アルギン酸塩水溶液に6秒間浸漬し、次いで5w/w%の濃度の塩化カルシウム水溶液に10秒間浸漬した。次いで、コーヒー成形体を気流中で25°Cで乾燥させた。続いて、成形体をPPIアルギン酸塩溶液に2度目に6秒間浸漬し、次いで5w/w%の濃度を有する塩化カルシウム溶液に10秒間浸漬した。次いで、コーヒー成形体を25°Cで15分間乾燥させた。
【0071】
乾燥後に、覆われたボールの破壊強度は168Nであった。
【国際調査報告】