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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電気光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240221BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20240221BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240221BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1339 500
G02F1/1335
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555407
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022055880
(87)【国際公開番号】W WO2022189426
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21162105.7
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(71)【出願人】
【識別番号】500454769
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・ヘント
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】フェルプランケ,リック
(72)【発明者】
【氏名】デ スメット,ヘルベルト
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H189
2H291
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2H088EA42
2H088FA02
2H088HA02
2H088JA03
2H088MA17
2H189DA07
2H189DA31
2H189DA38
2H189DA43
2H189EA06X
2H189FA16
2H189HA14
2H189LA03
2H189LA06
2H189LA18
2H189MA15
2H291FA22X
2H291FA57Y
2H291FB04
2H291FC10
2H291GA05
2H291GA10
2H291GA11
2H291LA21
2H291LA40
2H291MA07
(57)【要約】
適応型視覚補正用の電気光学部品(100)は、第1の透明基板(102a);第2の透明基板(102b);前記第1の透明基板(102a)上に配置された光学構造(106);前記光学構造(106)と前記第2の透明基板(102b)との間に位置する液晶ギャップ(108);前記液晶ギャップ(108)の反対側に位置する第1の透明電極(104a)および第2の透明電極(104b);および、前記第2の透明基板(102b)と前記光学構造(106)との間の前記液晶ギャップ(108)内に位置する複数のスペーサ(112、112a、112b、112c、312b);を含み、前記複数のスペーサ(112、112a、112b、112c、312b)は、前記複数のスペーサの他のスペーサとは異なる高さを有する少なくとも1つのスペーサを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応型視覚補正用の電気光学部品(100)であって、
第1の透明基板(102a);
第2の透明基板(102b);
前記第1の透明基板(102a)の上に配置された光学構造(106);
前記光学構造(106)と前記第2の透明基板(102b)との間に位置する液晶ギャップ(108);
前記液晶ギャップ(108)の反対側に位置する、第1の透明電極(104a)および第2の透明電極(104b);および、
前記第2の透明基板(102b)と前記光学構造(106)との間の前記液晶ギャップ(108)内に位置する複数のスペーサ(112、112a、112b、112c、312b);を含み、
前記複数のスペーサ(112、112a、112b、112c、312b)は、前記複数のスペーサのうちの他のスペーサとは異なる高さを有する少なくとも1つのスペーサを含む電気光学部品(100)。
【請求項2】
湾曲した形状を有する請求項1に記載の電気光学部品(100)。
【請求項3】
前記光学構造(106)は、中央膨出部(116)またはくぼみ部(416)と、前記中央膨出部(116)またはくぼみ部(416)の半径方向外側に位置する複数のリッジ部(118)とを含み、
前記複数のスペーサは、
前記中央膨出部(116)またはくぼみ部(416)に位置する複数の異なる高さのスペーサ(112a);および、
複数の一定高さのスペーサ(112b)であって、前記複数の一定高さのスペーサのうちの1つのスペーサが、前記リッジ部(118)の各々に配置されている、複数の一定高さのスペーサ(112b);を含む請求項1または2に記載の電気光学部品(100)。
【請求項4】
前記光学構造(106)は、中央膨出部(116)またはくぼみ部(416)と、前記中央膨出部(116)またはくぼみ部(416)の半径方向外側に位置する複数のリッジ部(118)と、を含み、
前記複数のスペーサは、
前記中央膨出部(116)またはくぼみ部(416)に位置する複数の異なる高さのスペーサ(112a);および、
第2の複数のスペーサ(312b)であって、前記第2の複数のスペーサの各スペーサは、前記複数のリッジ部のそれぞれのリッジ部に位置し、前記第2の複数のスペーサの各スペーサは、それぞれのリッジ部のそれぞれの頂点から同じ半径方向距離に位置する、第2の複数のスペーサ(312b);を含む請求項1または2に記載の電気光学部品(100)。
【請求項5】
前記複数のスペーサのスペーサは、丸みを帯びた断面を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の電気光学部品(100)。
【請求項6】
前記光学構造は、フレネルレンズ構造である請求項1~5のいずれか1項に記載の電気光学部品。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気光学部品を含むコンタクトレンズ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の適応型視覚補正用の電気光学部品を製造する方法であって、前記方法は、複数の連続するフォトリソグラフィ層を基板に適用することを含み、前記少なくとも1つのスペーサは、前記複数の層の少なくとも1つから製造される方法。
【請求項9】
各層は、SU-8層のような光像形成可能なスピンオン層である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基板は、前記第2の透明基板である請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板はマスターモールドであり、前記方法は、前記マスターモールドに基づいて前記第2の透明基板の少なくとも一部を成形することをさらに含む請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記マスターモールドは、ポジ型マスターモールド(504)である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マスターモールドは、ネガ型マスターモールド(502)である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の適応型視覚補正用の電気光学部品を製造する方法であって、
複数のスペーサを含む基板を作製すること;
前記基板上の少なくとも1つのスペーサから材料を除去することにより、前記第2の透明基板を作製すること;を含む方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気光学部品を製造する方法であって、
前記第1の透明基板および前記第2の透明基板の材料特性に基づいて、前記液晶ギャップ内の任意の点から前記複数のスペーサ内の最も近いスペーサまでの距離の最大値を計算すること;および、
前記各距離が前記最大距離以下となるように、前記複数のスペーサを前記液晶ギャップ全体にわたって2次元に配置すること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視力補正用の電気光学部品、それを含むコンタクトレンズ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老眼は、眼の収容能力に影響を及ぼす加齢に関連した障害である。老眼の1つの可能な治療法は、適応的な視覚補正のための電気光学部品を含むスマートコンタクトレンズの使用にある。このような電気光学部品は、典型的には液晶を含む。液晶を含むこのような部品は、小さなギャップによって隔てられた2枚の基板を含んでも良い。ギャップ内の液晶の活性化により、電気光学部品の視覚補正が適応され、収容を助けることができる。
【0003】
電気光学部品の光学特性に悪影響を及ぼす可能性のある基板のたるみを防止することが課題である。従来、液晶ギャップには、長さの等しいいわゆる「スペーサ」が使用されており、典型的には、光学構造のリッジ部に配置されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概念の目的は、液晶ギャップ距離のより良い制御を提供する適応型視覚補正用の電気光学部品を提供することである。
【0005】
本発明の概念の一態様によれば、第1の透明基板;第2の透明基板;前記第1の透明基板上に配置された光学構造;前記光学構造と前記第2の透明基板との間に位置する液晶ギャップ;前記液晶ギャップの反対側に位置する第1の透明電極および第2の透明電極;および前記第2の透明基板と前記光学構造との間の前記液晶ギャップ内に位置する複数のスペーサを含み、前記複数のスペーサは、前記複数のスペーサの他のスペーサとは異なる高さを有する少なくとも1つのスペーサを含む、適応型視覚補正用の電気光学部品が提供される。
【0006】
液晶ギャップは、液晶で満たされたギャップ、または液晶で満たされるギャップと理解すべきである。
【0007】
液晶ギャップが光学構造と第2の透明基板との間に位置する結果として、光学構造は、液晶ギャップの液晶と接触し、および/または接触するように構成される。さらなる結果として、光学構造は、液晶ギャップに隣接して配置される。
【0008】
少なくとも1つのスペーサは他のスペーサとは異なる高さを有する、すなわち、異なる高さのスペーサを含む複数のスペーサは、液晶ギャップ全体にスペーサをより自由に配置することを可能にする。例えば、従来のように、リッジ部、膨らみ部等の光学構造の頂点に一定の高さのスペーサを配置する選択肢を有するだけでなく、スペーサの配置は、特に、基板が非常に薄いおよび/またはフレキシブルな材料で作られている等の理由で剛性でない場合に、第2の透明基板または第1の透明基板のたるみを防止するように最適化することができる。さらに、または追加的に、これは、レンズの中心付近の頂点の距離が比較的大きいためにたるみが問題となる定高フレネルレンズにとって特に有用である。たるみを防止するためにスペーサを配置する場所では、スペーサの高さは、両基板間の所望の距離とその結果生じるギャップを保つのに十分な長さになるように選択することができる。この結果、セルギャップをよりよく制御することができ、非常に薄い(例えば厚さ50μm)および/またはフレキシブルな基板を使用する場合には特に有用である。従って、他の方法で可能な場合よりも薄いおよび/またはフレキシブルな基板を使用することが可能になり、例えば、より薄いおよび/またはより軽いコンタクトレンズが可能になる。
【0009】
一実施形態によれば、前記電気光学部品は、湾曲した形状を有する。湾曲した形状として、電気光学の層が、平行な平面を形成する代わりに、それぞれ凸状の形状を有し、なおかつ局所的に平行であるか、または本質的に局所的に平行であることを理解すべきである。例えば、湾曲した形状は、球状に湾曲した形状であってもよい。
【0010】
湾曲形状を有する電気光学部品は、強膜コンタクトレンズに組み込むのに特に有用であり、眼球の湾曲形状への追従性が良くなるため、強膜コンタクトレンズの厚さを薄くすることができる。湾曲した形状を有する電気光学部品は、湾曲した形状におけるたるみを防止するという特別な課題のために、本発明の概念の特に有用な応用である。
【0011】
一実施形態によれば、前記光学構造は、中央膨出部またはくぼみ部と、前記中央膨出部またはくぼみ部の半径方向外側に位置する複数のリッジ部とを含み、前記複数のスペーサは、前記中央膨出部またはくぼみ部に位置する複数の異なる高さのスペーサと、複数の一定の高さのスペーサとを含み、前記複数の一定の高さのスペーサのうちの1つのスペーサは、前記リッジ部の各々に位置する。
【0012】
中央膨出部またはくぼみ部は、例えば、フレネルレンズ構造の典型的なものである。リッジ部に位置するスペーサとは、リッジ部上の任意の場所、例えば、必ずしもそうではないが、リッジ部の頂点で終端するスペーサとして理解されるべきである。
【0013】
中央膨出部またはくぼみ部に配置された複数の異なる高さのスペーサによって、そのような、典型的にはより大きな領域におけるたるみが防止され得る一方で、製造がより容易な一定の高さのスペーサが、典型的には間隔がより近く、従ってたるみが生じにくいリッジ部に使用され得る。
【0014】
一実施形態によれば、前記光学構造は、中央膨出部またはくぼみ部と、前記中央膨出部またはくぼみ部の半径方向外側に位置する複数のリッジ部とを含み、前記複数のスペーサは、前記中央膨出部またはくぼみ部に位置する複数の異なる高さのスペーサ;および第2の複数のスペーサであって、前記第2の複数のスペーサの各スペーサは、前記複数のリッジ部のそれぞれのリッジ部に位置する前記第2の複数のスペーサ;を含み、前記第2の複数のスペーサの各スペーサは、それぞれのリッジ部のそれぞれの頂点から同じ半径方向距離に位置する。
【0015】
複数の異なる高さのスペーサが中央膨出部またはくぼみ部に配置されることを通して、そのような典型的に大きい領域におけるたるみが防止され得る一方で、第2の複数のスペーサのスペーサをそれぞれのリッジ部の頂点から同じ半径方向距離に配置することは、第2の複数のスペーサの、スペーサの配置をより容易にし、従ってより複雑でない設計を可能にする。
【0016】
一実施形態によれば、前記複数のスペーサのスペーサは、丸みを帯びた断面を有する。例えば、丸みを帯びた断面は円形であってもよい。これにより、液晶との接触面積が最小化され、液晶分子の配列が妨げられにくくなり、より良好に機能する電気光学部品を得ることができる。
【0017】
一実施形態によれば、前記光学構造はフレネルレンズ構造である。このような構造は、典型的には、膨出部、くぼみ部、および/またはリッジ部からなる構造を有し、本発明の概念の適用が特に有用である。
【0018】
他の態様によれば、本開示の電気光学構成要素を含むコンタクトレンズが提供される。コンタクトレンズは、例えば、強膜コンタクトレンズであってもよい。
【0019】
さらに、この態様は、一般に、前者の態様と同じまたは対応する利点を提示し得る。
【0020】
他の態様によれば、上記お適応型視覚補正のための電気光学部品を製造する方法が提供され、この方法は、複数の連続するフォトリソグラフィ層を基板に適用することを含み、前記少なくとも1つのスペーサは、前記複数の層の少なくとも1つから製造される。
【0021】
さらに、この態様は、一般に、前者の態様と同じまたは対応する利点を提示し得る。
【0022】
一実施形態によれば、各層は、SU-8層のような光像形成可能なスピンオン層である。これは、層を製造する特に有利な方法である。
【0023】
一実施形態によれば、前記基板は、前記第2の透明基板である。これは、製造工程の数を減らし、特に少量の製造を容易にできるという利点を有する。
【0024】
一実施形態によれば、前記基板はマスターモールドであり、前記方法は、前記マスターモールドに基づいて前記第2の透明基板の少なくとも一部を成形することをさらに含む。マスターモールドに基づく第2の透明基板の少なくとも一部の成形は、直接的であってもよいし、1つ以上の中間モールドを介した間接的であってもよい。
【0025】
第2の透明基材の少なくとも一部が成形されるマスターモールドを作製することにより、例えば、複数のマスターモールドを作製することができ、製造のスケールアップを容易に行える。
【0026】
一実施形態によれば、前記マスターモールドはポジ型マスターモールドである。ポジ型としては、最終的なスペーサの特徴に直接対応する特徴、すなわちスペーサの凸状の特徴に対応する凸状の特徴を有するモールドと理解すべきである。ポジ型マスターモールドを使用すると、マスターモールドの製造が容易になるという利点がある。
【0027】
一実施形態によれば、前記マスターモールドはネガ型である。ネガ型とは、最終的なスペーサの特徴に対して反転した特徴、すなわちスペーサの凹状の特徴に対応する凸状の特徴を有するモールドと理解すべきである。
【0028】
他の態様によれば、複数のスペーサを含む基板を製造すること;および前記基板上の少なくとも1つのスペーサから材料を除去することによって前記第2の透明基板を作製することと;を含む、上記による適応型視覚補正用の電気光学部品の製造方法が提供される。
【0029】
これにより、スペーサの高さを大きく、ほぼ連続した範囲とすることができ、フレキシビリティが向上する。
【0030】
さらに、この態様は、一般に、前者の態様と同じまたは対応する利点を提示し得る。
【0031】
他の態様によれば、上記による適応型視覚補正用の電気光学部品の製造方法であって、前記第1の透明基板および前記第2の透明基板の材料特性に基づいて、前記液晶ギャップ内の任意の点から前記複数のスペーサ内の最も近いスペーサまでの距離の最大値を計算すること:および、そのような各距離が前記最大距離以下となるように、前記液晶ギャップ全体に前記複数のスペーサを2次元に分布させること;、を含む方法が提供される。
【0032】
このような材料特性は、例えば、材料の種類、厚さ、ヤング率および/または最大熱成形温度である。
【0033】
例えば、形状のみではなく、材料特性に基づいて最大距離を計算することにより、スペーサ配置は、手元の形状と材料の特定の組み合わせに対して最適化され得る。これにより、液晶ギャップのより良い制御が達成される可能性があり、これにより、他の可能性よりも薄いおよび/またはよりフレキシブルな基板を使用することが可能になり、例えば、より薄いおよび/またはより軽いコンタクトレンズが可能になる。
【0034】
さらに、この態様は、一般に、前者の態様と同じまたは対応する利点を提示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
上記ならびに本発明の概念の付加的な目的、特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を通じて、よりよく理解されるであろう。図面では、特に断らない限り、同様の参照数字は同様の要素に使用される。
【0036】
図1A】電気光学部品を示す。
図1B】湾曲形状を有する電気光学部品を示す。
図2A】第1のスペーサ構成を示す。
図2B】第1のスペーサ構成を示す。
図2C】第1のスペーサ構成を示す。
図3A】第2のスペーサ構成を示す。
図3B】第2のスペーサ構成を示す。
図4】中央くぼみ部を含む光学構造を示す。
図5A】電気光学部品のスペーサを形成するためのモールドを示す。
図5B】電気光学部品のスペーサを形成するためのモールドを示す。
図6】ポジ型マスターモールドからスペーサを成形する工程を示す。
図7】レーザアブレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1Aは、適応型視覚補正用の電気光学部品100を示す。
【0038】
電気光学部品100は、例えば、コンタクトレンズに組み込まれてもよく、このコンタクトレンズは、例えば、いわゆるスマートコンタクトレンズであってもよい。コンタクトレンズは、加齢に伴う目の収容能力の低下である老眼の治療に対処することができる。人が視力を収容する(すなわち、観察されるシーンまでの距離に応じて眼の焦点を変える)ことを再び可能にするために、電気光学部品100は、例えば、2つ以上の焦点度数の間で切り替えることを可能にするコンタクトレンズに統合されてもよい。例えば、コンタクトレンズは、2つの焦点度数、例えば、プラノとマイナス2ディオプタ(-2D)との間で切り替えることができる。
【0039】
例えば、電気光学部品の厚さは約120μm、直径は7mmである。
【0040】
電気光学部品100は、図示したように、軸110を中心に回転対称であってもよく、図1Aは、そこを通る断面を示す。
【0041】
挟まれた層構成において、電気光学部品100は、順に、第1の透明基板102a、第1の透明電極104a、光学構造106、液晶で満たされてもよい液晶ギャップ108、第2の透明電極104b、および第2の透明基板102bから構成される。
【0042】
第1の透明基板102aおよび第2の透明基板102bは、比較的薄いおよび/またはフレキシブルな材料で作られてもよい。例えば、第1の透明基板102aおよび第2の透明基板102bは、プラスチックフィルム、例えば、PET、PMMA、またはTACで作られてもよい。
【0043】
簡単かつ明瞭にするために、図1Aの電気光学部品100は、直線的な構成、すなわち、挟まれた層が平行な平面に横たわる構成で示されている。しかしながら、図1Bと併せて以下に例示するように、湾曲した構成も同様に可能である。本開示を通しての全ての構成および実施形態は、そのような湾曲した構成に適用可能であると理解されるべきである。
【0044】
光学構造106は、微小光学構造と考えられる。
【0045】
図示するように、光学構造106は、フレネルレンズ構造であってよく、中央膨出部116(示されるように)または中央くぼみ部(以下の別の場所で例示されるように)、および中央膨出部116の半径方向外側に位置する複数の同心円状のリッジ部118を含んでも良い。
【0046】
第1の透明電極104aと第2の透明電極104bとは、液晶ギャップ108の反対側に位置している。図示されるように、第1の透明電極104aおよび第2の透明電極104bは、それぞれ、第1の透明基板102aおよび第2の透明基板102bに一体化されてもよく、および/または、第1の透明基板102aおよび第2の透明基板102bの上に一体化されてもよい。第1の透明電極104aおよび/または第2の透明電極104bの一方または両方がそれぞれの基板102a、102bから分離されている他の構成(図示せず)も同様に可能である。例えば、第1の透明電極104aは光学構造106に一体化され、および/または光学構造106の上に配置され得る。
【0047】
さらに図示したように、光学構造106は第1の透明基板102aの上に配置される。
【0048】
液晶ギャップ108は、光学構造106と第2の透明基板102bとの間に形成され、使用中のデバイスでは、それ自体知られているように、液晶で満たされ得る。
【0049】
電気光学部品100は、電気光学部品100の一部を形成しない、偏光子114に結合されてもよい。
【0050】
このように、電気光学部品100は、2枚の透明基板102a、102bを含む液晶デバイスであり、間に薄い液晶ギャップ108を有し、そのうちの一方の基板102aは、微小光学構造106で覆われている。電気光学部品を使用する場合、液晶ギャップ108は液晶で満たされ、薄い液晶層を形成することができる。両基板上の透明電極104a、104bは、液晶ギャップ108に存在する液晶内部に電界を発生させることができる。
【0051】
光学構造106は、このように液晶ギャップ108に隣接して配置される。液晶ギャップ108が液晶で満たされると、その結果、光学構造106は液晶ギャップ108の液晶と接触する。このように、光学構造106は、液晶ギャップ108の液晶と接触するように構成されている。
【0052】
それ自体知られているように、微小光学構造106は、液晶ギャップ108の液晶の複屈折性と組み合わせて、図1Aに破線で示すように、電気光学部品100がそこを透過する光の1つの偏光状態に対して調整可能なレンズ機能を有するように設計され得る。液晶素子を「オン」(=電圧オン、図1AのB部分)または「オフ」(=電圧オフ、図1AのA部分)に切り替えることにより、セルは、2つの焦点度数、例えば、プラノとマイナス2ディオプタ(-2D)の間で切り替えることができる。
【0053】
オプションとして(図示せず)、偏光状態に関係なく、透過するすべての光に対して調整可能なレンズ機能を有する構成要素を作製するために、2つのこのような電気光学素子100を互いに直交して積層することができる。
【0054】
図1Aに模式的に示すように、複数のスペーサ112は、液晶ギャップ108内に、したがって第2の透明基板102bと光学構造106との間に配置される。複数のスペーサ112は、以下で詳しく説明するように、複数のスペーサ112の他のスペーサとは異なる高さを有する少なくとも1つのスペーサを含む。
【0055】
図1Bは、湾曲形状を有する電気光学部品200を示す。湾曲した形状は、典型的には回転対称であり、典型的には球状に湾曲した形状でもよい。湾曲形状を除けば、電気光学部品200は、図1Aの電気光学部品100について上述したのと同じ特徴を有する。
【0056】
湾曲した形状を有するこのような電気光学部品200の製造は、例えば、熱成形による、平坦な状態から球状に湾曲した状態への移行:平坦なディスクは、例えば、平坦なディスクを所望の球状に湾曲した形状に変形させるために使用される一組の加熱されたモールドに挿入される、を含んでも良い。
【0057】
図2Aおよび図2Bは、光学構造106と第2の透明基板102bとの間の液晶ギャップ108における第1のスペーサ構成を示し、これは、図1Aおよび図1Bと関連して上記に開示された電気光学部品100、200の一部を形成することができる。上述したように、光学構造は、フレネルレンズ構造について典型的なように、中央膨出部116と、中央膨出部の半径方向外側に位置する複数の同心円状のリッジ部118を含んでもよい。図2Aはスペーサの半径方向の配置を示し、一方、図2Bは上方からの構造を示す。
【0058】
複数のスペーサ112が液晶ギャップ内に配置されている。特に、複数のスペーサは、中央膨出部116(またはくぼみ部、図4参照)に位置する複数の異なる高さのスペーサ112aと、複数の一定高さのスペーサ112bとを含み、複数の一定高さのスペーサのうちの1つのスペーサ112bは、複数の同心円状のリッジ部118の各リッジ部に位置する。
【0059】
簡単のため、図2Aでは全てのスペーサが同じ半径方向断面図で示されている。しかしながら、図2Bから明らかなように、各径方向位置において、スペーサは、例えば周方向に均等になるように、異なる周方向位置に配置されてもよい。
【0060】
図2Aの例では、中央膨出部における複数の異なる高さのスペーサは、中央膨出部116の輪郭に沿って、9、9.25、10、12マイクロメートルのそれぞれの長さを有する4つのスペーサを含む。当然のことながら、異なる高さのスペーサ112aの他の特定の配置も、本開示の教示の範囲内で可能である。
【0061】
さらに、やはり図2Aの例を参照すると、複数のリッジ部118における複数の一定高さのスペーサ112bは、長さ10マイクロメートルのスペーサを含んでもよい。当然、他の長さも可能である。
【0062】
典型的には、半径方向に最も内側のリッジ部の1つ以上が、複数の一定長さのスペーサ112bとは別に、さらなるスペーサを含むことが有益である。図2Aの例では、半径方向最も内側のリッジ部は、長さ12マイクロメートルの1つのさらなるスペーサ112cを有する。
【0063】
図2Cは、図2Aおよび図2Bと同様の配置を模式的に示しており、複数のスペーサを含み、この複数のスペーサは、中央膨出部116(またはくぼみ部、図4参照)に位置する複数の異なる高さのスペーサ112a;および複数の一定高さのスペーサ112bを含み、複数の一定高さのスペーサのうちの1つのスペーサ112bは、複数の同心状のリッジ部118の各リッジ部に位置する。この例では、複数の一定高さスペーサの各スペーサ112bは、それぞれのリッジ部の頂点に位置している。
【0064】
図3Aおよび図3Bは、第2のスペーサ構成を示し、上述した図2Aおよび図2Bと同様に、図3Aはスペーサの半径方向の配置を示し、図3Bは上方からの構造を示す。
【0065】
上記と同様に、第2のスペーサ構成は、光学構造106と第2の透明基板102bとの間の液晶ギャップ108に形成され、これは、図1Aおよび図1Bと併せて上記で開示した電気光学部品100、200の一部を形成してもよい。上述のように、光学構造は、フレネルレンズ構造に典型的なように、中央膨出部116と、中央膨出部の半径方向外側に位置する複数の同心リッジ部118とを含んでもよい。
【0066】
複数のスペーサ112が液晶ギャップ内に配置されている。複数のスペーサは、中央膨出部116に位置する複数の異なる高さのスペーサ112a-この概念は中央くぼみ部にも同様に適用可能である-と、第2の複数のスペーサ312bとを含み、第2の複数のスペーサのうちの1つのスペーサ312bは、複数の同心円状のリッジ部118の各リッジに位置する。さらに、第2の複数のスペーサの各スペーサ312bは、それぞれのリッジ部の頂点から同じ半径方向距離Δrに位置している。
【0067】
簡単のため、図3Aでは全てのスペーサが同じ半径方向断面図で示されている。しかしながら、図3Bから明らかなように、各径方向位置において、スペーサは、例えば周方向に均等になるように、異なる周方向位置に配置されてもよい。
【0068】
図3Aの例では、中央膨出部における複数の異なる高さのスペーサは、中央膨出部116の輪郭に沿った、長さの異なる3つのスペーサを含む。当然ながら、異なる高さのスペーサ112aの他の特定の配置も、本開示の教示の範囲内で可能である。
【0069】
典型的には、第2の複数のスペーサ312bとは別に、半径方向に最も内側のリッジ部の1つ以上が、さらなるスペーサを含むことは有益である。図3Aの例では、半径方向最も内側のリッジ部は、1つの更なるスペーサ112cを有する。
【0070】
図4は、中央膨出部116の代わりに中央くぼみ部416からなる光学構造106を示す(図1A~3B参照)。他の特徴は、図2A図3Bと関連して上記に開示された通りである。
【0071】
図1A図4に関連して上記に開示されたようなスペーサは、それぞれ丸みを帯びた断面、例えば円形の断面を有してもよく、それにより各スペーサは円筒形である。
【0072】
以下では、上記で開示した電気光学部品の製造方法を例示する。
【0073】
スペーサは、1つ以上のステップで、成形工程を経て製造することができる。
【0074】
例えば、スペーサは、図5aに示されるように、成形されるスペーサに対応する凹部508を有するネガ型マスターモールド502から成形されてもよい。
【0075】
あるいは、図5bに示すように、モールド504の特徴506が成形されるスペーサに直接対応する形状のポジ型マスターモールド504からスペーサを成形することもできる。
【0076】
これは、成形手順の一例を示す図6にさらに示されている。まず、例えば以下に説明する1つ以上の方法を用いて、ポジ型のマスターモールド602を成形する。次に、ポジ型マスターモールド602からネガ型中間モールド604を形成する。最後に、ネガ型中間モールド604から最終スペーサ606を成形し、これにより、例えばスペーサを第2の透明基板102b上にエンボス加工することができる。
【0077】
マスターモールド602は、例えば、SU-8特徴を含むシリコンウエハとすることができる。ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたレプリカ成形により、ネガ型中間モールド604を作製することができる。このレプリカは、電気光学部品に使用される基板上に他の(透明な)材料をエンボスするために使用することができる。
【0078】
言い換えれば、マスターモールドは反転型または「ネガ型」にすることができ、この場合スペーサは反転型(すなわち凹部)になる(図5a参照)。この場合、エンボス加工は2段階の手順となり、まず中間的なネガ型がオリジナルのポジ型マスターモールドから成形され、その後、電気光学部品に使用される実際の基板をエンボス加工するために使用される。これにより、第2の透明基板の少なくとも一部がマスターモールドに基づいて成形される。
【0079】
異なる高さの配置スペーサを製造する1つの方法は、光画像形成可能なスピンオン層(SU-8など)を使用する複数のフォトリソグラフィ工程を連続して使用することであり、これにより、連続する工程に異なる層厚が使用される。各工程で、スピンコート層の厚さに対応するある所望の高さのスペーサが製造される。
【0080】
従って、この製造方法は、複数の連続するフォトリソグラフィ層を基板に適用することを含み、前記少なくとも1つのスペーサは、前記複数の層の少なくとも1つから製造される。
【0081】
この方法は、スペーサが作製される第2の透明基板102bに直接適用することができる。あるいは、この方法は、他の基板に適用することもでき、他の基板は、それによって、上述したように、マスターモールド、特にポジ型マスターモールドとなる。
【0082】
異なる高さの配置されたスペーサを製造する他の方法が図7に示されており、これには、例えば、必要とされる最大高さが等しい複数のスペーサ702を最初に製造し、その後、特定のスペーサの上部から材料を除去する技術704を用いて、それらのうちの1つ以上を短くすること706が含まれる。このような技術の例としては、レーザアブレーションがある。これによって、スペーサの高さを大きく、ほぼ連続した範囲にすることができ、フレキシビリティが増す。
【0083】
また、この方法は、スペーサが作製される基板に直接適用することができ、例えば、第2の透明基板102b上に余分な層をスピンコートすることができる。あるいは、上述したように、この方法をポジ型マスターモールドの作製に適用することもできる。また、電気光学部品に使用される実際の基板をエンボス加工するために使用される均一な層に異なる深さの凹部を形成することにより、ネガ型マスターモールドを作製するために使用することもできる。
【0084】
液晶ギャップ内へのスペーサの配置は、それ自体既知の方法を用いて、前記第1の透明基板および前記第2の透明基板の材料特性に基づいて、前記液晶ギャップ内の任意の点から前記複数のスペーサ内の最も近いスペーサまでの距離の最大値を計算し、次いで、そのような各距離が前記最大距離以下となるように、前記液晶ギャップ全体にわたって前記複数のスペーサを二次元的に配置することに基づいてもよい。このような材料特性は、例えば、材料の種類、厚さ、ヤング率および/または最大熱成形温度であり得る。
【0085】
上記において、本発明の概念は、主に限られた数の実施例を参照して説明されてきた。しかしながら、当業者には容易に理解されるように、上記に開示された実施例以外の実施例も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲内で同様に可能である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5a
図5b
図6
図7
【国際調査報告】