(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240221BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20240221BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H9/145 C
H03H9/25 C
H03H9/17 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555612
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 CN2022080450
(87)【国際公開番号】W WO2022194060
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202120532330.0
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110276005.7
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523301008
【氏名又は名称】偲百創(深▲せん▼)科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 頌斌
(72)【発明者】
【氏名】呂 若辰
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097AA16
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5J108FF02
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5J108KK02
5J108KK03
(57)【要約】
本願は、厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器に関する。当該音響共振器は、音響ミラー、ボトム電極層、圧電層、電極ユニット及び横方向反射器を含む。音響ミラーは、少なくとも1層の第1音響反射層及び少なくとも1層の第2音響反射層を含み、各第1音響反射層の音響インピーダンスは、各第2音響反射層の音響インピーダンスよりも小さい。ボトム電極層は、音響ミラーに位置する。圧電層は、ボトム電極層に設けられ、単結晶材料のニオブ酸リチウムと単結晶材料のタンタル酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む。電極ユニットは、圧電層に設けられる。横方向反射器は、圧電層に設けられ、電極ユニットの第1側に位置する第1反射器及び電極ユニットの第2側に位置する第2反射器を含み、音波を横方向に反射するために用いられる。ボトム電極層と電極ユニットは、電界を形成するために用いられる。本願によれば、3GHz以上の周波数で高い電気機械結合係数と高いQ値を有することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器であって、
少なくとも1層の第1音響反射層及び少なくとも1層の第2音響反射層を含み、各前記第1音響反射層の音響インピーダンスが各前記第2音響反射層の音響インピーダンスよりも小さい音響ミラーと、
前記音響ミラーに位置するボトム電極層と、
前記ボトム電極層に設けられ、単結晶材料のニオブ酸リチウムと単結晶材料のタンタル酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む圧電層と、
前記圧電層に設けられた電極ユニットと、
前記圧電層に設けられ、前記電極ユニットの第1側に位置する第1反射器及び前記電極ユニットの前記第1側に対向する第2側に位置する第2反射器を含み、音波を横方向に反射するために用いられる横方向反射器と、を含み、
前記ボトム電極層と前記電極ユニットは、電界を形成するために用いられる、ことを特徴とする厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項2】
前記ボトム電極層と前記電極ユニットが形成する電界方向は、主に前記圧電層の厚さ方向であり、前記ボトム電極層と前記電極ユニットは、さらに、全体の圧電層の厚さにせん断モードの機械波を生成するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項3】
前記第1音響反射層は、前記ボトム電極層から離れるほど、厚さが厚くなり、前記第2音響反射層は、前記ボトム電極層から離れるほど、厚さが厚くなる、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項4】
前記音響ミラーは、3層の前記第1音響反射層及び2層の前記第2音響反射層を含み、且つ前記音響ミラーにおける前記第1音響反射層及び前記第2音響反射層は、交互に設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項5】
前記第1音響反射層の材質は、シリカ、アルミニウム、ベンゾシクロブテン、ポリイミド及びスピングラスのうちの少なくとも1つを含み、前記第2音響反射層の材質は、モリブデン、タングステン、チタン、白金、窒化アルミニウム、酸化タングステン及び窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項6】
前記電極ユニットは、第1共通電極、第2共通電極、複数の第1インターデジタル電極及び複数の第2インターデジタル電極を含み、各前記第1インターデジタル電極は、前記第1共通電極に電気的に接続され、各前記第2インターデジタル電極は、前記第2共通電極に電気的に接続され、且つ各前記第1インターデジタル電極は、各前記第2インターデジタル電極と絶縁的に設置され、前記第1共通電極は、入力電圧を取り込むために用いられ、前記第2共通電極は、接地するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項7】
前記圧電層上に設けられたパッシベーション層をさらに含み、前記パッシベーション層は、各前記第1インターデジタル電極及び各前記第2インターデジタル電極を覆う、ことを特徴とする請求項6に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項8】
前記電極ユニットの両側の横方向反射器間の接続線方向は、前記音波の伝播方向であり、前記ボトム電極層の幅は、前記第1共通電極と前記第2共通電極との間の間隔よりも小さいことにより、前記ボトム電極層の前記電極ユニットの位置する平面における正投影は、前記第1共通電極と前記第2共通電極との間に位置し、各前記第1音響反射層及び各前記第2音響反射層の前記平面における正投影は、前記接続線方向において前記第1反射器及び前記第2反射器を超える、ことを特徴とする請求項6に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項9】
前記第1反射器及び前記第2反射器は、いずれも少なくとも1つの電極バーを含み、前記第1反射器における前記電極ユニットに最も近い電極バーの中心と前記電極ユニットの第1側の縁部におけるインターデジタル電極の中心との距離は、前記音波の波長の1/8~2倍であり、前記第2反射器における前記電極ユニットに最も近い電極バーの中心と前記電極ユニットの第2側の縁部におけるインターデジタル電極の中心との距離は、音波の波長の1/8~2倍である、ことを特徴とする請求項6に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項10】
前記第1共通電極に設けられた第1金属部材及び前記第2共通電極に設けられた第2金属部材をさらに含み、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の厚さは、前記電極ユニットの厚さよりも大きく、前記第1金属部材及び前記第2金属部材は、第2方向に音響反射するために用いられ、前記第2方向は、前記音波の伝播方向に垂直である、ことを特徴とする請求項6に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項11】
各前記第2音響反射層の前記ボトム電極層の位置する平面における正投影は、第1方向において前記ボトム電極層の両側を超え、あるいは、各前記第1音響反射層及び各前記第2音響反射層の前記ボトム電極層の位置する平面における正投影は、前記ボトム電極層によって覆われており、
前記第1方向は、前記音波の伝播方向に平行である、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項12】
前記電極ユニット及び前記横方向反射器の材質は、同じであり、且つ金属と合金のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項13】
すべての前記第2音響反射層よりも前記ボトム電極層に近い1つの前記第1音響反射層が存在する、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項14】
支持ウェハをさらに含み、前記音響ミラーは、前記支持ウェハに設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【請求項15】
前記支持ウェハと前記音響ミラーとの間にはボンディング補助層がさらに設けられている、ことを特徴とする請求項14に記載の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、共振器の技術分野に関し、特に厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数音響共振器は、フィルタリングの合成機能に用いられるか、又は周波数源としての小型マイクロ合成構造である。音響共振器は、より小さい体積及びより高い品質係数(Q値)を有するため、携帯電話、小型基地局及びモノのインターネット機器に使用される他のタイプの共振器に代えて、低損失(低電力消費)、高抑圧及び高信号対雑音比及びより超薄いパッケージを実現することができる。
【0003】
新しい通信標準(即ち、第5世代モバイルネットワーク)の発表に伴い、共振器の動作範囲をより高い周波数に拡大するとともに、高い電気機械結合係数と高いQ値を維持する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の各実施例は、厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記音響共振器は、少なくとも1層の第1音響反射層及び少なくとも1層の第2音響反射層を含み、各前記第1音響反射層の音響インピーダンスが各前記第2音響反射層の音響インピーダンスよりも小さい音響ミラーと、前記音響ミラーに位置するボトム電極層と、前記ボトム電極層に設けられ、単結晶材料のニオブ酸リチウムと単結晶材料のタンタル酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む圧電層と、前記圧電層に設けられた電極ユニットと、前記圧電層に設けられ、前記電極ユニットの第1側に位置する第1反射器及び前記電極ユニットの前記第1側に対向する第2側に位置する第2反射器を含み、音波を横方向に反射するために用いられる横方向反射器と、を含み、前記ボトム電極層と前記電極ユニットは、電界を形成するために用いられる。
【0006】
一実施例では、前記ボトム電極層と前記電極ユニットが形成する電界方向は、主に前記圧電層の厚さ方向であり、前記ボトム電極層と前記電極ユニットは、さらに、全体の圧電層の厚さにせん断モードの機械波を生成するために用いられる。
【0007】
一実施例では、前記第1音響反射層は、前記ボトム電極層から離れるほど、厚さが厚くなり、前記第2音響反射層は、前記ボトム電極層から離れるほど、厚さが厚くなる。
【0008】
一実施例では、前記音響ミラーは、3層の前記第1音響反射層及び2層の前記第2音響反射層を含み、且つ前記音響ミラーにおける前記第1音響反射層及び前記第2音響反射層は、交互に設置されている。
【0009】
一実施例では、前記第1音響反射層の材質は、シリカ、アルミニウム、ベンゾシクロブテン、ポリイミド及びスピングラスのうちの少なくとも1つを含み、前記第2音響反射層の材質は、モリブデン、タングステン、チタン、白金、窒化アルミニウム、酸化タングステン及び窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
一実施例では、前記電極ユニットは、第1共通電極、第2共通電極、複数の第1インターデジタル電極及び複数の第2インターデジタル電極を含み、各前記第1インターデジタル電極は、前記第1共通電極に電気的に接続され、各前記第2インターデジタル電極は、前記第2共通電極に電気的に接続され、且つ各前記第1インターデジタル電極は、各前記第2インターデジタル電極と絶縁的に設置され、前記第1共通電極は、入力電圧を取り込むために用いられ、前記第2共通電極は、接地するために用いられる。
【0011】
一実施例では、前記音響共振器は、前記圧電層上に設けられたパッシベーション層をさらに含み、前記パッシベーション層は、各前記第1インターデジタル電極及び各前記第2インターデジタル電極を覆う。
【0012】
一実施例では、前記電極ユニットの両側の横方向反射器間の接続線方向は、前記音波の伝播方向であり、前記ボトム電極層の幅は、前記第1共通電極と前記第2共通電極との間の間隔よりも小さいことにより、前記ボトム電極層の前記電極ユニットの位置する平面における正投影は、前記第1共通電極と前記第2共通電極との間に位置し、各前記第1音響反射層及び各前記第2音響反射層の前記平面における正投影は、前記接続線方向において前記第1反射器及び前記第2反射器を超える。
【0013】
一実施例では、前記第1反射器及び前記第2反射器は、いずれも少なくとも1つの電極バーを含み、前記第1反射器における前記電極ユニットに最も近い電極バーの中心と前記電極ユニットの第1側の縁部におけるインターデジタル電極の中心との距離は、前記音波の波長の1/8~2倍であり、前記第2反射器における前記電極ユニットに最も近い電極バーの中心と前記電極ユニットの第2側の縁部におけるインターデジタル電極の中心との距離は、音波の波長の1/8~2倍である。
【0014】
一実施例では、前記第1共通電極に設けられた第1金属部材及び前記第2共通電極に設けられた第2金属部材をさらに含み、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の厚さは、前記電極ユニットの厚さよりも大きく、前記第1金属部材及び前記第2金属部材は、第2方向に音響反射するために用いられ、前記第2方向は、前記音波の伝播方向に垂直である。
【0015】
一実施例では、各前記第2音響反射層の前記ボトム電極層の位置する平面における正投影は、第1方向において前記ボトム電極層の両側を超え、あるいは、各前記第1音響反射層及び各前記第2音響反射層の前記ボトム電極層の位置する平面における正投影は、前記ボトム電極層によって覆われており、前記第1方向は、前記音波の伝播方向に平行である。
【0016】
一実施例では、前記電極ユニット及び前記横方向反射器の材質は、同じであり、且つ金属と合金のうちの少なくとも1つである。
【0017】
一実施例では、すべての前記第2音響反射層よりも前記ボトム電極層に近い1つの前記第1音響反射層が存在する。
【0018】
一実施例では、前記音響共振器は、支持ウェハをさらに含み、前記音響ミラーは、前記支持ウェハに設けられている。
【0019】
一実施例では、前記支持ウェハと前記音響ミラーとの間にはボンディング補助層がさらに設けられている。
【0020】
本願の一つ又は複数の実施例の詳細は以下の図面及び説明によって示される。本願のその他の特徴や、目的及び長所は本明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0021】
ここに開示される本出願の実施例及び/又は例をよりよく記述及び説明するために、1つ又は複数の図面を参照することができる。図面を説明するための追加の詳細又は例は、開示される本出願で説明されている実施例及び/又は例、ならびに理解されている本出願の最良の形態のいずれかの範囲に対する制限とみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施例における厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器の一部の構成の平面図である。
【
図3】圧電層における電界と機械波の伝播方向の模式図である。
【
図4】一実施例における反射鏡の各反射層の厚さの模式図である。
【
図5】一実施例における第1反射器の構成模式図である。
【
図8】一実施例の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器の特性アドミッタンスのシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願を理解しやすくするために、関連する添付図面を参照して本願に対してより全面的な説明を行う。添付図面では本願の実施例が示されている。しかし、本願は多くの異なる態様で実現することができ、本明細書で説明した実施例に限定されない。逆に、これらの実施例を提供する目的は本願の開示内容をより徹底的で全面的にすることである。
【0024】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本願に属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本願の明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明する目的のためだけであり、本願を限定することを意図しない。
【0025】
素子又は層が他の素子又は層「…上にある」、「…に隣接する」、「に接続される」又は「に結合される」と呼ばれる場合、他の素子又は層の上に直接にあっても、それに隣接しても、他の素子又は層に接続又は結合されてもよく、又は介在する素子又は層が存在してもよいことを理解すべきである。逆に、素子が他の素子又は層「…上に直接ある」、「…に直接隣接する」、「に直接接続される」又は「に直接結合される」と呼ばれる場合、介在する素子又は層が存在しないことを理解すべきである。第1、第2、第3などの用語を使用して各種の素子、部材、領域、層、ドープタイプ及び/又は部分を説明できるが、これらの素子、部材、領域、層、ドープタイプ及び/又は部分は、これらの用語に制限されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語はただ1つの素子、部材、領域、層、ドープタイプ又は部分を他の素子、部材、領域、層、ドープタイプ又は部分と区別するためだけである。そのため、本願の教示を逸脱しない前提で、以下に検討する第1素子、部材、領域、層、ドープタイプ又は部分は、第2素子、部材、領域、層又は部分と表すことができ、例えば、第1ドープタイプを第2ドープタイプにすることができ、且つ類似して、第2ドープタイプを第1ドープタイプにすることができ、第1ドープタイプと第2ドープタイプは、異なるドープタイプであり、例えば、第1ドープタイプは、P型であり、且つ第2ドープタイプは、N型であってもよく、或いは、第1ドープタイプは、N型であり、且つ第2ドープタイプは、P型であってもよい。
【0026】
空間に関連する用語、例えば「…の下に」、「…の下方に」、「下方の」、「…下に」、「…上に」、「上方の」などは、ここでは、図面に示された1つの要素又は特徴と他の要素又は特徴との関係を説明するために使用することができる。図面に示された向きに加えて、空間に関連する用語は、使用中及び動作中のデバイスの異なる向きを含むことを理解されたい。例えば、図面中のデバイスが反転した場合、「他の素子の下に」又は「その下に」又は「その下方に」ある素子又は特徴は、他の素子又は特徴「の上に」あると向きを取ることになる。そのため、例示的な用語「…の下に」、「…の下方に」は、上と下の2つの向きを含むことができる。なお、デバイスは、別の向き(例えば、90度回転した向き又は他の向き)を含むこともでき、且つ、ここで使用される空間に対する説明用語はそれに応じて解釈される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、単数形「1つ」、「1個」及び「前記/当該」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含むことができる。用語「含む/包含」又は「有する」などは、説明される特徴、全体、ステップ、操作、コンポーネント、部分又はそれらの組み合わせの存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、操作、コンポーネント、部分又はそれらの組み合わせの存在又は追加の可能性を排除しないことも理解されるべきである。なお、本明細書では、用語「及び/又は」は、関連して列挙された項目の任意及びすべての組合せを含む。
【0028】
ここでは、本願の理想的な実施例(及び中間構造)の模式図としての横断面図を参照して、本願の実施例を説明し、これにより、例えば製造方法及び/又は許容誤差による図示された形状の変化を予期することができる。そのため、本願の実施例はここで示された領域の特定形状に限定されるべきではなく、例えば製造方法による形状偏差を含む。例えば、矩形として図示される注入領域はその辺縁に通常に円形又は湾曲特徴及び/又は注入濃度勾配を有し、注入領域から非注入領域への2次元変化ではない。同様に、注入によって形成される埋設領域は前記埋設領域と注入が進行する時に通過する面の間の領域中のいくつかの注入を引き起こすことができる。そのため、図示される領域は実質的には模式的なものであり、それらの形状はデバイスの領域の実際の形状を示すものではなく、かつ本願の範囲を限定するものではない。
【0029】
バルク弾性波(BAW)及び表面弾性波(SAW)共振器は、0.6GHzと3GHzの間でフィルタ及び共振器を合成するために最もよく用いられるデバイスである。これらの音響デバイスは商業的に成功しており、携帯電話のフロントエンドモジュールに広く応用され、又は無線フロントエンドのディスクリート素子とされている。従来のバルク弾性波及び表面弾性波デバイスは、3GHz以下の周波数で1000を超えるQ値及び約7%~10%の電気機械結合係数を示すことができる。しかし、その周波数の動作範囲を3GHzを超えるように拡張すると、いくつかの技術的な不確実性及び物理的限界に直面することがある。新しい5G標準は、電気機械結合係数が10%を超えることを要求しているため、構成材料又は動作モードを変更しなければ、このような要求は、バルク弾性波及び表面弾性波デバイスによって達成できないものである。同様に、材料損失は、3GHzを超える従来のバルク弾性波及び表面弾性波デバイスによって達成可能な最大Q値に根本的な制限を与える。
【0030】
以上より、3GHz以上の周波数で高電気機械結合係数及び高い品質係数を有する新型デバイスは、市場から求められている。
【0031】
本願は、3GHzを超える周波数で高いQ値と高い電気機械結合係数を有する新型のウェハレベル機械/音響共振器を開発することを目的とする。当該共振器は、高性能のバンドパスフィルタの合成をサポートし、さらに5G通信標準の新たな需要及び将来の更新の需要を満たすことができる。
【0032】
図1は、一実施例における厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器の一部の構成の平面図であり、
図2は、
図1に示すA-A´線に沿う断面図である。
図1及び
図2を参照すると、厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器は、音響ミラー120、ボトム電極層170、圧電層130、電極ユニット及び横方向反射器を含む。
図1は、主に対応する実施例における電極ユニット及び横方向反射器の形状を示すためのものであるため、圧電層130における他の構造が省略されている。
【0033】
電極ユニットは、圧電層130に設けられている。電極ユニットは、インターデジタル電極を含むことができる。
図1及び
図2に示す実施例では、電極ユニットは、1組の第1インターデジタル電極141及び1組の第2インターデジタル電極143を含み、第1インターデジタル電極141と第2インターデジタル電極143は、
図1に示すY方向に延在するため、互いに平行であり、各第1インターデジタル電極141は、各第2インターデジタル電極143と絶縁的に設置され、第1インターデジタル電極141は、入力電圧を取り込むために用いられ、第2インターデジタル電極143は、接地するために用いられる。電極ユニットは、第1共通電極142及び第2共通電極144をさらに含み、各第1インターデジタル電極141の一端は、第1共通電極142に接続され、各第2インターデジタル電極143の一端は、第2共通電極144に接続され、共通電極は、バスバーとも呼ばれる。
【0034】
横方向反射器は、同様に圧電層130に設けられ、電極ユニットと同一の層に設置されてもよく、電極ユニットの第1側(
図1における左側)に位置する第1反射器152及び電極ユニットの第2側(
図1における右側)に位置する第2反射器154を含む。横方向反射器は、電極ユニットと絶縁し、音波を横方向に反射するために用いられる。
【0035】
圧電層130は、ボトム電極層170に設けられている。圧電層130は、単結晶材料のニオブ酸リチウム及び単結晶材料のタンタル酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
ボトム電極層170は、音響ミラー120上に設けられている。ボトム電極層170と電極ユニットは、電界を形成するために用いられる。
【0037】
音響ミラー120は、少なくとも1層の第1音響反射層及び少なくとも1層の第2音響反射層を含み、各第1音響反射層の音響インピーダンスは、各第2音響反射層の音響インピーダンスよりも小さい。本願の一実施例において、音響ミラー120におけるボトム電極層170に最も近い層は、第1音響反射層であり、即ち、すべての第2音響反射層よりもボトム電極層170に近い1つの第1音響反射層が存在する。
図2に示す実施例では、音響ミラー120は、3層の第1音響反射層(即ち、第1音響反射層121、第1音響反射層123、第1音響反射層125)及び2層の第2音響反射層(即ち、第2音響反射層122及び第2音響反射層124)を含み、各第1音響反射層と各第2音響反射層は、交互に設置されている。
【0038】
上記厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器によれば、電極ユニットとボトム電極層によって電界を生じるとともに、横方向反射器によって音波を横方向に反射することにより、音響共振器は、厚さ方向におけるせん断振動モードに励起されることが可能である。また、圧電層は単結晶材料のニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムが採用されるため、3GHz以上の周波数で高い電気機械結合係数と高いQ値を実現することができる。
【0039】
図3を参照すると、図において大きい矢印は、電界方向であり、小さい矢印は、せん断振動モードの機械波の伝播方向であり、電界方向は、主に圧電層130の厚さ方向である。ボトム電極層170と電極ユニットは、さらに、全体の圧電層130の厚さにせん断モードの機械波を生成するために用いられる。単結晶材料のニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムと本願の電極ユニット構造及び横方向反射器の構造との組み合わせにより、最適化されたせん断振動モードを得ることができ、このせん断振動モードは、より大きな音波速度を有し、デバイスの重要な寸法(例えば、インターデジタル電極のピッチ)が変化しない場合、従来の商用のフィルタよりも高い周波数に達することができる。
【0040】
本願の一実施例において、電極ユニットと横方向反射器との材質は、同じであり、且つ金属と合金のうちの少なくとも1つであってもよい。本願の一実施例において、電極ユニットは、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、アルミニウム銅(AlCu)、アルミニウムシリコン銅(AlSiCu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銀(Ag)又は任意の他の導電金属で製造されてもよい。
【0041】
本願の一実施例において、ボトム電極層170の材料は、モリブデン、タングステン、ルテニウム、白金、チタン、アルミニウム、アルミニウム銅、アルミニウムシリコン銅、クロムのうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0042】
図2に示す実施例では、厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器は、支持ウェハ110をさらに含む。音響ミラー120は、支持ウェハ110に設けられている。
【0043】
本願の一実施例において、支持ウェハ110と音響ミラー120との間には、支持ウェハ110と音響ミラー120とのボンディングを補助するためのボンディング補助層がさらに設けられる。本願の一実施例において、ボンディング補助層は、1層の薄いシリカである。
【0044】
本願の一実施例において、各第1音響反射層に低音響インピーダンス材料が採用され、各第2音響反射層に高音響インピーダンス材料が採用される。なお、低音響インピーダンス材料は、シリカ、アルミニウム、ベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene、BCB)、ポリイミド及びスピングラス(spin glass)のうちの少なくとも1つであり、高音響インピーダンス材料は、モリブデン、タングステン、チタン、白金、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化タングステン及び窒化ケイ素のうちの少なくとも1つであってもよい。理解できるように、他の実施例において、低音響インピーダンス材料及び高音響インピーダンス材料は、大きいインピーダンス比を有する他の材料の組み合わせを使用してもよい。
【0045】
音響ミラー120の各第1音響反射層及び第2音響反射層は、等しい又は等しくない厚さを有することができる。本願の一実施例において、第1音響反射層は、ボトム電極層170から離れるほど、厚さが厚くなり、第2音響反射層は、ボトム電極層170から離れるほど、厚さが厚くなり、このような設計により、より大きいQ値を得ることができる。
図4を参照すると、
図4に示す実施例では、第1音響反射層121の厚さTl1<第1音響反射層123の厚さTl2<第1音響反射層125の厚さTl3であり、第2音響反射層122の厚さTh1<第2音響反射層124の厚さTh2である。理解できるように、他の実施例において、各第1音響反射層と第2音響反射層との厚さの関係は、他の規則によって設置することができ、例えばTl1=Tl2=Tl3、Th1=Th2、又はTl1>Tl2>Tl3、Th1>Th2、又はTl1<Tl2、Tl3<Tl2、Th1<Th2である。
【0046】
図1は、音響ミラー120の平面視での視角の位置をさらに示す。
図1に示すX方向は、音波の伝播方向である。ボトム電極層170は、パターン化(patterned)により形成され、Y方向における幅が、音響ミラー120のY方向における幅と同じであってもよく、異なってもよい(より大きくても小さくてもよい)。ボトム電極層170の幅(即ち、
図1に示すY方向の寸法)は、第1共通電極142と第2共通電極144との間の間隔よりも小さいため、ボトム電極層170の電極ユニットの位置する平面における正投影は、Y方向において第1共通電極142と第2共通電極144との間に位置する。
図1に示す実施例では、当該正投影において、ボトム電極層170の第1共通電極142に近い側は、各第2インターデジタル電極143の第1共通電極142に近い一端を超え、第2共通電極144に近い側は、各第1インターデジタル電極141の第2共通電極144に近い一端を超え、即ち、ボトム電極層170は十分に広いため、その正投影の両側は、それぞれ第2インターデジタル電極143の外に位置し、又は第1インターデジタル電極141の外に位置する。
【0047】
図1に示す実施例では、音響ミラー120に比べて、ボトム電極層170は、長さと幅がいずれも大きいため、X方向及びY方向において音響ミラー120を覆う。
【0048】
第1音響反射層及び第2音響反射層は、X方向における寸法が、同じでもよく、異なってもよい。
図1に示す実施例では、各第1音響反射層及び各第2音響反射層の電極ユニットの位置する平面における正投影は、X方向において第1反射器152及び第2反射器154を超え、即ち、当該正投影の左側の縁部は、第1反射器152の左側の縁部よりも左側に位置し、右側の縁部は、第2反射器154の右側の縁部よりも右側に位置する。
【0049】
図1に示す実施例では、各第1音響反射層及び各第2音響反射層のボトム電極層170の位置する平面における正投影は、X方向においてボトム電極層170によって覆われている(即ち、第1音響反射層及び第2音響反射層のX方向における長さは、ボトム電極層170のX方向における長さよりも小さい)。本願の別の実施例において、各第2音響反射層のボトム電極層170の位置する平面における正投影は、X方向においてボトム電極層170の両側を超え、即ち、第2音響反射層のX方向における長さは、ボトム電極層170のX方向における長さよりも大きい。
【0050】
図5に示すように、横方向反射器の電極バーの間は、互いに切断されてもよく、
図1に示すように、横方向構造によって相互に接続されてもよい。横方向反射器の電極バーは、電極ユニットの各インターデジタル電極と平行に設置することができる。
【0051】
図6は、
図1に示すB―B´線に沿う断面図である。当該実施例では、音響ミラー120及びボトム電極層170の面積は、圧電層130及び支持ウェハ110の面積よりも小さいため、音響ミラー120及びボトム電極層170の周りに充填層がさらに設けられている。本願の一実施例において、充填層の材質は、シリカ、モリブデン、タングステン、酸化タングステン又は窒化ケイ素のうちの1種又は複数種を含んでもよい。本願の一実施例において、充填層の材料は、各第1音響反射層の材料と同じであることにより、音響共振器の品質係数を高める。
【0052】
図6に示す実施例では、厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器は、第1共通電極141に設けられた第1金属部材145及び第2共通電極143に設けられた第2金属部材147をさらに含む。第1金属部材145及び第2金属部材147の厚さは、電極ユニットの厚さよりも大きい。第1金属部材145と第2金属部材147は、
図1に示すY方向において音響反射するために用いられる。
【0053】
本願の一実施例において、第1反射器152における電極ユニットに最も近い電極バーの中心と電極ユニットの第1側の縁部におけるインターデジタル電極の中心との距離Wg(
図7を参照)は、前記音波の波長の1/8~2倍であり、第2反射器154における電極ユニットに最も近い電極バーの中心と電極ユニットの第2側の縁部におけるインターデジタル電極の中心との距離は、音波の波長の1/8~2倍である。
【0054】
圧電層130に形成されたせん断振動モードの機械波の振動周波数は、各膜層の厚さ及び電極ユニットにおける隣接するインターデジタル電極の間隔に依存し、応力は、主に第1インターデジタル電極141と第2インターデジタル電極143との間の金属被覆がない領域に限られている。
【0055】
図6に示す実施例では、厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器は、パッシベーション層160をさらに含む。パッシベーション層160は、圧電層130に設けられ、且つ第1インターデジタル電極141及び第2インターデジタル電極143を覆う。パッシベーション層160により、共振器の周波数温度係数を低下させることができるとともに、金属電極をパッシベーションさせることができる。
【0056】
図8は、一実施例の厚さ方向にせん断モードを励起する音響共振器の特性アドミッタンス(Characteristic Admittance)のシミュレーション結果である。ここで、(b)は、(a)の局部曲線であり、ktは、電気機械結合係数である。特性周波数シミュレーションは、4.07GHz共振周波数の最適化スタック反射器の厚さを得るために用いられる。同じ特性周波数分析は、最適平面内の反射層位置及び反射層スタックのインターデジタル電極に対する相対位置を特定するために用いられる。
【0057】
本明細書の説明において、「ある実施例」、「他の実施例」、「理想的な実施例」などの用語を参照する説明は、前記実施例又は例を参照して説明した具体的な特徴、構造、材料又は特徴が本願の少なくとも一つの実施例又は例の中に含まれることを意味する。本明細書において、前記用語に対する説明は必ずしも同じ実施例又は例を指すとは限らない。
【0058】
上記実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施例の各技術的特徴のすべての可能な組み合わせを説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾が存在しない限り、本明細書に記載する範囲にあると考えるべきである。
【0059】
上記実施例は本願のいくつかの実施形態のみを表し、その説明は比較的具体的かつ詳細であるが、これによって特許請求の範囲に対する制限と理解することはできない。なお、本分野の当業者にとって、本願の構想から逸脱しない前提の下で、さらに若干の変形と改良を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲に属する。そのため、本願の特許の保護範囲は添付の請求項を基準とする。
【国際調査報告】