(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】リサージュ図形を投影するための投影システム及び連成振動子を有するマイクロスキャナ
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240221BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240221BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G02B26/10 101
G02B26/10 C
G02B26/08 E
B81B3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555614
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022062086
(87)【国際公開番号】W WO2022268392
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116151.7
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500487
【氏名又は名称】オクメンテッド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レオン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ファン・ヴァントーホ
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・ブリチャルスキー
(72)【発明者】
【氏名】オレク・ペトラーク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヤニッケ
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
3C081
【Fターム(参考)】
2H045AB00
2H045AB81
2H045BA12
2H141MA12
2H141MB23
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD17
2H141MD20
2H141MD24
2H141MG06
2H141MZ06
2H141MZ13
2H141MZ30
3C081AA13
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA29
3C081BA32
3C081BA33
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA48
3C081BA55
3C081CA32
3C081DA06
3C081DA24
3C081EA08
(57)【要約】
リサージュ図形を観察野上に投影するための投影システムは、マイクロスキャナを備える。これは、入射電磁ビームを偏向するための偏向要素と、支持構造体と、バネデバイスとを有する偏向ユニットを有し、これを用いて、偏向要素は、支持構造体に関して、第1の振動軸の周りの第1の回転振動及びそれに直交する第2の振動軸の周りの第2の回転振動とを同時に実行し、同時振動中に偏向要素に入射する電磁ビームを偏向させることによって観察野内に非線形リサージュ投影を引き起こすことができるように、支持構造体上にジンバルレス方式で吊り下げられる。マイクロスキャナは、偏向要素の振動の少なくとも1つに関するそれぞれの、特に共振する駆動効果が個別に設定可能であるように、偏向ユニットを駆動するための駆動デバイスを作動させるように構成されている制御デバイスも有する。さらに、バネデバイスは、振動の間の振幅依存相互カップリングを媒介するように設計される。制御デバイスはまた、第1の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として駆動デバイスを作動させて、第2の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって第2の振動に対する駆動効果を誘発するように構成されており、これは、第1の振動及び第2の振動のそれぞれの瞬時振動周波数の間の所定の最小周波数距離を下回ることを打ち消す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサージュ図形を観察野上に投影する投影システム(200)のためのマイクロスキャナ(100)であって、前記マイクロスキャナ(100)は、
入射電磁ビーム(L
1)を偏向するための偏向要素(130、140)と、支持構造体(125)と、バネデバイス(135、135a、135b)とを有する偏向ユニット(101)であって、前記偏向要素(130、140)は、前記支持構造体(125)上に前記バネデバイス(135、135a、135b)を用いてジンバルレス方式で、前記支持構造体(125)に関して、振動の第1の軸(A
1)の周りの第1の回転振動及びそれに直交する振動の第2の軸(A
2)の周りの第2の回転振動とを同時に実行し、同時振動中に前記偏向要素(130、140)上に入射する電磁ビーム(L
1)を偏向させることによって観察野(220)内に非線形リサージュ投影を引き起こすことができるように、吊り下げられる、偏向ユニット(101)と、
前記偏向要素(130、140)の前記第1及び第2の回転振動の少なくとも1つに関するそれぞれの駆動効果(F
1、F
2)が個別に設定可能であるように前記偏向ユニット(101)を駆動するための駆動デバイス(105)を作動させるように構成されている、制御デバイス(195)と、
を備え、
前記バネデバイス(135、135a、135b)は、前記振動の間の振幅依存相互カップリング(K
1、K
2)を媒介するようにさらに設計され、
前記制御デバイス(195)はまた、前記第1の回転振動の少なくとも1つの検出された状態変数
【数1】
の関数として前記駆動デバイス(105)を作動させて、前記第2の回転振動の少なくとも1つの状態変数
【数2】
に影響を及ぼすことによって前記第2の回転振動に対する少なくとも1つの検出された状態変数の関数として駆動効果(F
2)を誘発するように構成され、それにより前記駆動効果(F
2)は、前記第1の回転振動及び前記第2の回転振動のそれぞれの瞬時振動周波数(f
1,i、 f
2,i)の間の所定の最小周波数距離(f
TH)を下回ることを打ち消す、マイクロスキャナ(100)。
【請求項2】
前記制御デバイス(195)は、前記第2の回転振動の少なくとも1つの検出された状態変数
【数3】
の関数として前記駆動デバイス(105)を作動させて、前記第1の回転振動の少なくとも1つの状態変数
【数4】
に影響を及ぼすことによって前記第1の回転振動に対する駆動効果(F
1)を誘発するようにも構成され、これは前記第1の回転振動及び前記第2の回転振動の前記瞬時振動周波数(f
1,i、f
2,i)それぞれの間の所定の最小周波数距離(f
TH)を下回ることを打ち消す、請求項1に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項3】
前記制御デバイス(195)は、前記第2の回転振動の状態変数
【数5】
から独立して前記駆動デバイス(105)を作動させて、前記第1の回転振動の少なくとも1つの状態変数
【数6】
に影響を及ぼすことによって前記第1の回転振動に駆動効果を誘発するように構成される、請求項1に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項4】
それぞれの振動の前記少なくとも1つの状態変数それぞれは、その振幅(θ
1,i;θ
2,i)、周波数(f
1,i,f
2,i)、もしくは位相
【数7】
によって、またはこれらの変数のうちの少なくとも1つの変数の関数として決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項5】
前記制御デバイス(195)は、前記駆動デバイス(105)を作動させて、それぞれの他の振動の状態変数
【数8】
であるか、またはその関数として定義されている少なくとも1つの繰り返し検出される被制御変数の関数として閉ループ制御の意味でそれによって駆動される少なくとも1つの振動に対して前記駆動効果それぞれを誘発するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項6】
駆動される回転振動それぞれの駆動制御のための前記被制御変数が、他の振動それぞれの周波数(f
1,i;f
2,i)もしくは位相
【数9】
の関数として、または、これらの状態変数のうちの少なくとも1つの状態変数の関数として、定義される場合に、この被制御変数の前記検出は、前記他の振動それぞれの同じ振幅(θ
1,i;θ
2,i)で常に行われる請求項5に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項7】
前記制御デバイス(195)は、前記他の振動それぞれの状態変数(θ
1,i;θ
2,i)であるか、またはその関数として定義されている少なくとも1つの繰り返し検出される被制御変数の関数として閉ループ制御の意味で前記第1の回転振動及び前記第2の回転振動の両方を実行するように構成され、
前記第1及び第2の回転振動に対するこれらの閉ループ制御それぞれは、各々、そのそれぞれの勾配及び制御速度に関して他方の閉ループ制御それぞれの前記勾配及び制御速度の関数として動的に構成可能であるように設計される請求項5または6に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項8】
前記制御デバイス(195)は、他の振動それぞれの検出された前記少なくとも1つの状態変数(θ
1,i;θ
2,i)の関数として開ループ制御の意味でそれによって駆動される前記振動それぞれに対してそれぞれの前記駆動効果(F
1,F
2)を誘発するように前記駆動デバイス(105)を作動させるように構成される請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項9】
前記制御デバイス(195)は、前記駆動デバイス(105)が前記第1の回転振動及び前記第2の回転振動に関して、交互する、これらの振動の振幅(θ
1,i;θ
2,i)それぞれ、または、周波数のステップバイステップの増大を達成するようにそれによって駆動される前記振動それぞれに対して前記駆動効果それぞれを誘発するように前記駆動デバイス(105)を制御するように構成される請求項8に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項10】
前記制御デバイス(195)は、前記振動のうちの少なくとも1つの振動の周波数それぞれがこの振動の電流共振周波数(f
1R,f
2R)を囲む所定の限定された共振範囲内に保持されるように前記駆動デバイス(105)を作動させるようにさらに構成される請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項11】
共振周波数に対する前記共振範囲の限界は、前記共振周波数の周波数値f
Rの値f
R±70%、好ましくはf
R±40%、より好ましくはf
R±20%、さらに好ましくはf
R±10%によって定義される請求項10に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項12】
前記最小周波数距離(f
TH)は、一定の寸法として固定される請求項1から11のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項13】
前記最小周波数距離(f
TH(t))は、前記第1の回転振動もしくは前記第2の回転振動の電流振幅(θ
1,i;θ
2,i)それぞれ、またはこれら2つの振動の電流振幅(θ
1,i;θ
2,i)それぞれに依存する可変の寸法として定義される請求項1から11のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項14】
前記バネデバイス(135、135a、135b)は、前記第1の回転振動と前記第2の回転振動との間の前記振幅依存相互カップリング(K
1、K
2)の強さが、これら2つの振動のうちの少なくとも一方の振動の振幅(θ
1,i;θ
2,i)の増大とともに間断なく増大するように設計される請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項15】
前記マイクロスキャナ(100)は、二軸マイクロスキャナとして設計され、前記偏向ユニット(101)は、3つの回転対称配置構成されたバネ要素(135)を用いて、支持フレームとして使用され、それを取り囲む、フレーム(125)上で吊り下げられる偏向要素(130、140)を備える請求項1から14のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項16】
二軸ジンバルレスマイクロスキャナ(100)として設計され、
前記偏向ユニット(101)は、支持フレームとして使用されるフレーム(125)上で、可撓性バネ(135a、135b)を用いて各場合において2つの対向する側部上にしっかりクランプされて、吊り下げられる偏向要素(130、140)を備え、
前記可撓性バネ(135a、135b)は、各々、端面で互いに接続され、それ以外は互いに隣接して相隔てて延在し、前記偏向要素(130、140)の周りに延在する2つの湾曲したセクションを有し、前記偏向要素(130、140)に隣接する各可撓性バネ(135a、135b)の前記セクションそれぞれは前記偏向要素(130、140)に接続され、前記フレーム(125)に隣接する各可撓性バネ(135a、135b)の前記セクションそれぞれは前記フレーム(125)に接続される請求項1から14のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項17】
前記制御デバイス(195)は、振幅調整、周波数調整、または位相調整の意味で前記偏向ユニット(101)を駆動するために前記駆動デバイス(105)を作動させる状況において、前記第1の回転振動、前記第2の回転振動、またはこれら2つの振動の各々の少なくとも1つの対応する状態変数を個別に特定の設定点値に設定するように構成される請求項1から16のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項18】
前記第1及び第2の軸に対して各場合において直交する第3の軸に関して前記支持構造体(125)に関して第3の回転振動を同時に追加的に実行することができるように前記バネデバイス(135、135a、135b)を用いることで前記支持構造体(125)にジンバルレス方式で吊り下げられ、これにより、前記偏向要素(130、140)は、前記第1、第2及び第3の回転振動の同時振動の間に前記偏向要素(130、140)に入射する電磁ビーム(L
1)を偏向させることによって、前記観察野(220)内に非線形リサージュ投影を生じさせ、前記バネデバイス(135、135a、135b)はさらに、前記第3の回転振動と前記第1の回転振動、前記第2の回転振動、またはその両方の間の振幅依存相互カップリングを媒介するように設計される請求項1から17のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項19】
前記制御デバイス(195)は、前記第1または第2の回転振動の少なくとも1つの検出された状態変数(θ
1,i;θ
2,i)の関数として前記駆動デバイス(105)を作動させて、前記第3の回転振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって前記第3の回転振動に対する駆動効果を誘発するようにさらに構成され、これは一方では前記第1及び第2の回転振動、また他方では前記第3の回転振動の前記瞬時振動周波数(f
1,i;f
2,i)それぞれの間の所定の最小周波数距離(f
TH)を下回ることを打ち消す請求項18に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項20】
カプセル封入体をさらに含み、これを用いて、少なくとも前記偏向要素(130、140)及び前記バネデバイス(135、135a、135b)は、密閉方式でカプセル封入され、これにより前記カプセル封入体内の前記偏向要素(130、140)は振動を実行することができ、前記バネデバイス上に振動できるように吊り下げられ、
前記カプセル封入体は、前記偏向要素(130、140)をブリッジするカプセル封入セクション(145)を有し、これを通して、偏向されるべき放射線は前記カプセル封入体によってカプセル封入された空間領域内に放射され、前記偏向要素(130、140)のところで偏向された後にそこから再び放射され得る請求項1から19のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項21】
前記カプセル封入セクション(145)は、断面がドーム形状、平面形状、または直角U字形状の形成を有する請求項20に記載のマイクロスキャナ(100)。
【請求項22】
リサージュ図形を観察野(220)上に投影する投影システム(200)であって、前記投影システム(200)は、請求項1から21のいずれか一項に記載のマイクロスキャナ(100)を備える、投影システム(200)。
【請求項23】
前記制御デバイスは、少なくとも1つの変調信号を放射線源に供給するようにさらに構成され、その信号に応じて前記入射電磁ビーム(L
1)が変調される請求項22に記載の投影システム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサージュ図形を観察野(observation field)上に投影するための投影システム(projection system)、及びそのような投影システムのためのマイクロスキャナ(microscanner)に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロスキャナの場合、これらは特に技術用語では「MEMSスキャナ」、「MEMSミラー」、「マイクロミラー」とも称され、英語では特に「マイクロスキャナ」、「マイクロスキャニングミラー」、「MEMSミラー」とも称され、電磁放射、特に可視光の動的変調のためのマイクロミラーアクチュエータのクラスからの、微小電気機械システム(MEMS)、より正確には微小光電気機械システム(MOEMS)である。設計に応じて、単一のミラーの変調運動は、並進または少なくとも1つの軸の周りの回転であってよい。第1の場合には、位相シフト効果が達成され、第2の場合には、入射電磁放射線の偏向が達成される。以下では、単一のミラーの変調運動が回転であるマイクロスキャナが考察される。マイクロスキャナの場合、複数のミラーの相互作用を介して入射光の変調が行われるミラーアレイとは対照的に、単一のミラーを介して変調が生成される。
【0003】
マイクロスキャナは、特に、電磁放射線を偏向するために使用され、偏向素子(「ミラー」)を使用してその偏向方向に対して入射する電磁ビームを変調することができる。特に、これは、視野内でビームのリサージュ投影を引き起こすために使用することができる。たとえば、撮像感覚タスクが解決されるか、または表示機能が実装され得る。それに加えて、そのようなマイクロスキャナは、有利に材料に放射線を照射し、材料を加工するのにも使用され得る。他の可能な用途は、たとえばヘッドライト用途の状況において電磁放射を使用していくつかの開放もしくは閉鎖空間または空間領域を照らす、または照明する分野にある。
【0004】
撮像センサーの場合及びディスプレイ機能の場合の両方において、ビーム偏向システム、特にマイクロスキャナが、レーザービームまたは他の電磁放射源からの整形ビームなどの電磁放射を、少なくとも2次元的に、たとえば水平方向及び垂直方向に、偏向させるために使用され、これにより観察野内の物体表面をスキャンするか、または照明する。
【0005】
リサージュ図形を観察野上に投影する投影システムのための偏向デバイスは、欧州特許第EP2514211B1号から知られており、これは、リサージュ図形を生成するために少なくとも1つの第1の及び第2の偏向軸の周りで光ビームを偏向するように設計されている。この偏向デバイスは、偏向軸の周りに振動を発生させるための偏向ユニットと、偏向ユニットの共振周波数に対応する、第1及び第2の活性化周波数で偏向ユニットに対する活性化信号を発生するための活性化デバイスとを含む。偏向ユニットは、3,000を超える品質係数を有する。活性化デバイスは、第1の制御ループを備え、これは、振動の最大振幅が偏向ユニットの共振範囲内に留まるように、偏向ユニットの振動の測定された位相位置に応じて、第1及び/または第2の活性化周波数を制御するように設計されており、活性化周波数は固定整数比を有していない。活性化デバイスはさらに、第2の制御ループを備え、これは、活性化周波数によって予め決定されたリサージュ図形の線密度に応じて、第1の及び/または第2の偏向軸の共振周波数に影響を及ぼすように設計されており、それにより線密度は所定の許容範囲内にある。2つの偏向軸は、カルダンサスペンション(ジンバル)を用いてデカップリングされており、それにより2つの軸の周りの関連する振動は、互いから完全にデカップリングされ、また2つの軸の各々を共振状態に保つことを目指して互いに完全に独立して位相制御される。
【0006】
欧州特許第EP2514211B1号からの偏向デバイスには、次の関係式が適用される。
f1R≠f2R、 (1)
ここで、f1Rは第1の軸の共振周波数を示し、f2Rは第2の軸の共振周波数を示す。第1または第2の軸の湾曲したバネによってそれぞれ発生する機械的トルクT1またはT2に対して、次の式が適用される:
T1=k1*θ1 及び T2=k2*θ2 (2)
ここで、θ1及びθ2は、それぞれ、第1の軸及び第2の軸におけるミラーのそれぞれの機械的振幅(偏向角度)を示し、k1及びk2は、それぞれ、第1の軸及び第2の軸のバネのそれぞれのバネ定数を示す。振動軸のデカップリングに起因して、そのようなジンバルベースのマイクロスキャナを用いることで、リサージュ図形による観察野の少なくともおおよそ長方形の照明を達成することが特に容易である。
【0007】
しかしながら、完全にデカップリングされた軸を有するジンバルベースのマイクロスキャナに加えて、ジンバルを有しないタイプのマイクロスキャナ(いわゆる「ジンバルレスミラー」または「ジンバルレス」マイクロスキャナまたはミラー)も知られており、これはミラーのカルダンサスペンションなしで2つまたはそれ以上の振動軸を実装し、個別の振動軸間の無視できない、特に強いカップリングが発生し得る。そのようなカップリングの強さは、特に振幅に依存するものとしてよい。
【0008】
マイクロスキャナタイプは、ここでは一例として言及されており、これは3つの回転対称に配置構成されたバネ要素を用いて周囲のフレームに吊り下げられているミラープレートを有する偏向ユニットを有し、それにより二軸マイクロスキャナが結果として得られるように製作されている。
図3に例示されている、マイクロスキャナのそのようなタイプの変更形態は、「MiniFaros」ミラーという名称で知られており、特にHofmannら、Resonant biaxial 7-mm MEMS mirror for omnidirectional scanning、J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS, 3-11 Jan-Mar 2014/Vol. 13(1)において説明されている。
【0009】
振動軸と、これらの振動軸の各1つの周りのミラーの関連するそれぞれの振動との間のカップリングに起因して、ジンバルレスミラーは、振動するときに様々な振動軸に関する共振周波数を互いに素早く近似させる傾向があり、その結果、観察野の本質的に楕円(したがって、線形、非平面)のみのリサージュ照明が生じる。特に、観察野の少なくともおおよそ平面的な、特に少なくともおおよそ長方形の照明は、したがって、より困難になるか、あるいは不可能にすらなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hofmannら、Resonant biaxial 7-mm MEMS mirror for omnidirectional scanning、J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS, 3-11 Jan-Mar 2014/Vol. 13(1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、カップリングされた振動軸を有する改善されたジンバルレスマイクロスキャナ、及びそれを装備した投影システムを提供することを目的とし、それを使用して観察野の平面的リサージュ照明が可能である。特に、そのようなマイクロスキャナによって少なくともおおよそ長方形の照明を達成する可能性を生み出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立請求項の教示に従って達成される。本発明の様々な実施形態及び改良は、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明の第1の態様は、リサージュ図形を観察野上に投影する投影システムのためのマイクロスキャナに関する。マイクロスキャナは、(i)特に反射を用いて、入射電磁ビームを偏向させるための偏向要素、(ii)支持構造体、及び(iii)バネデバイスを有する偏向ユニットを備える。バネデバイスは、1つまたは複数のバネ要素を備えることができる。偏向要素は、支持構造体に関して、第1の振動軸の周りの第1の回転振動及びそれに直交する第2の振動軸の周りの第2の回転振動を同時に実行し、同時振動中に偏向要素に入射する電磁ビームを偏向させることによって観察野内に非線形リサージュ投影を引き起こすように、支持構造体上のバネデバイスを用いてジンバルレス方式で吊り下げられる。
【0015】
マイクロスキャナは、偏向要素の振動の少なくとも1つに関するそれぞれの、特に共振する駆動効果が個別に設定可能であるように、偏向ユニットを駆動するための駆動デバイスを作動させるように構成されている制御デバイスも備える。
【0016】
さらに、バネデバイスは、振動の間の振幅依存相互カップリングを媒介するように設計される。
【0017】
制御デバイスはまた、第1の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として駆動デバイスを作動させて、第2の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって第2の振動に対する駆動効果を誘発するように構成されており、それにより駆動効果は、第1の振動及び第2の振動のそれぞれの瞬時振動周波数の間の所定の最小周波数距離を下回ることを打ち消す。
【0018】
本発明の意味における「リサージュ投影」とは、特に、電磁放射の助けを借りた観察野のスキャニングとして理解されるべきであり、これは、放射を観察野に偏向させる偏向要素の少なくとも2つの相互に直交する調和振動によって引き起こされる。
【0019】
本発明の意味における「非線形リサージュ投影」は、電磁放射の助けを借りた観察野のスキャニングまたは照明である、リサージュ投影の特別な場合として理解されるべきであり、これは、放射を観察野に偏向させる偏向要素の関連する振動軸の周りの少なくとも2つの相互に直交する、厳密には調和でない、振動によって引き起こされる。特に、これらの振動のうちの少なくとも第1の振動の振幅は、少なくとも1つの他の振動軸に関する振動の瞬時振幅の関数として第1の振動軸に関して変調されるものとしてよく、それにより、少なくとも第1の振動は、線形振動を表さない、すなわち、振幅独立振動バネ定数を有するフックの法則に従わない。
【0020】
本発明の意味における「軸」または同義語の「振動軸」は、回転運動の回転の軸(回転軸)として理解されるべきである。これは、回転またはターンを定義するか、または記述する直線である。
【0021】
本発明の意味における「駆動デバイス」は、偏向ユニットを駆動するための、すなわち、支持構造体に関する、また少なくとも第1及び第2、場合によっては第3の振動軸に関する、偏向要素の同時回転振動のための、1つまたは複数のアクチュエータを備えるデバイスとして理解されるべきである。
【0022】
本明細書において場合によっては使用されているように、「備える」、「含んでいる」、「伴う」、「含む」、「有する」、「有している」、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を対象とすることを意図されている。たとえば、要素のリストを備える、または含む方法またはデバイスは、必ずしもこれらの要素に限定されないが、明示的にリストされていない、またはそのような方法もしくはデバイスに固有の、他の要素を伴い得る。
【0023】
さらに、特に断りのない限り、「または」は、包含を意味し、または及び排他的論理和を意味しない。たとえば、条件AまたはBは、次の条件のうちの1つによって満たされる。Aは真であり(または存在し)、Bは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、Bは真である(または存在する)、ならびにA及びBの両方が真である(または存在する)。
【0024】
本明細書において使用されている英語原文中の語「a」または「an」は、英語原文中で「a/one or more」の意味で定義され、日本語文中では「1つまたは複数」を意味する。言い回し「別の」、及び「さらなる」及びそれらの任意の他の変形は、「少なくとも1つの他の」を意味すると理解されるべきである。
【0025】
本明細書において使用されるような語「複数」は、「2つまたはそれ以上」を意味すると理解されるべきである。
【0026】
特に、次に示す利点の1つまたは複数が、上述のマイクロスキャナの助けを借りて達成され、その結果、上述の目的が達成され得る。
【0027】
上述のマイクロスキャナにおける駆動デバイスの特別な作動に起因して、様々な振動または振動軸の間の既存のカップリングがあるにもかかわらず、個別の振動のそれぞれの振動周波数、特に共振周波数が互いから最小の周波数距離を維持することが達成されるものとしてよく、結果としてもしあれば最終的に楕円リサージュ図形をもたらすことになるであろう、異なる軸に対するこれらの周波数の周波数同期はない。これは、次いで、特にジンバルレスミラーの場合も、投影のフレームワーク内の観察野の一定の、平面的な、特に1つの、少なくとも本質的に長方形の照明を可能にする。他にもあるがとりわけ、偏向要素(ミラー)のリサージュ類似励起は、多くのジンバルレスミラーを用いたとしても、このような状況にもかかわらず、異なる軸の共振周波数が接近している場合であっても、マイクロスキャナにより達成することができ、これは上述のタイプの制御がなければ不可能である。
【0028】
同じミラーサイズのジンバルレスミラーは、一般的に、ジンバルベースのミラーよりも小さな構造的形態を有するので、必要な設置スペースの縮小も、同等の投影結果とともに達成され得る。
【0029】
振動子の少なくとも1つ(特定の振動軸の周りの振動に対応する)は非線形特性を有する、すなわち、その振幅範囲全体にわたって振幅独立バネ定数を伴うフックの法則に対応しないので、特にジンバルベースのミラーとの関係において、特に高い品質で、一般的により広い同調範囲(周波数帯域幅)が達成され得る。
【0030】
マイクロスキャナはまた、広い温度範囲にわたって定義済み周波数比を維持する可能性を広げるが、それは、振動子特性の温度関係変動も、また、様々な振動軸の周波数の間の最小周波数距離を維持することに関して補償され得るからである。ジンバルレスミラーの場合、振動子特性の温度関係変動は、典型的には、ジンバル付きミラーとは対照的に、両方の振動子軸に対して等しい強さで、同じ方向に、同時に生じ、これは典型的には順次、異なる程度で生じる。
【0031】
強くカップリングされた軸、したがって明白に非線形であるマイクロスキャナの場合であっても、上述の制御は、一般的に、少なくとも2次元で、様々な軸に対して異なる共振周波数で振動することを可能にすることができる。
【0032】
第1の態様によるマイクロスキャナの好ましい実施形態が以下で説明されるが、各場合において、明示的に除外されるか、または技術的に不可能でない限り、互いと、また本発明のさらに説明される他の態様と望む通りに組み合わされ得る。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスは、それに加えて第2の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として駆動デバイスを作動させて、第1の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって第1の振動に対する駆動効果を誘発するようにさらに構成され、これは第1の振動及び第2の振動のそれぞれの瞬時振動周波数の間の所定の最小周波数距離を下回ることを打ち消す。マイクロスキャナの上述の基本形態は、特に、振動の一方(二次振動)のみが、他方の振動(一次振動)の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として影響を受けるという意味で「一次-二次」動作も可能にするが、ここで述べた実施形態では、第1及び第2の振動は両方とも、各々、それぞれの他方の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として、特に等しい方式で影響を受ける。このようにして、他にもあるがとりわけ、より多様な制御オプションが実装され、関わる振動の特に効果的な、特に高速な、自動動的制御が、振幅依存動作周波数、特に共振周波数の周波数同期を回避しながら、達成され得る。
【0034】
これとは対照的に、いくつかの代替的実施形態によれば、制御デバイスは、第1の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼしながら第1の振動に駆動効果を誘発するために第2の振動の状態変数から独立して駆動デバイスを作動させるように構成される。したがって、これらの実施形態は、特に上述の「マスター-スレーブ」動作を可能にする。振動の一方のみ(特に第2の振動)が、他方の(第1の)振動の少なくとも1つの状態変数の関数として制御デバイスによって制御されなければならないので、ここでは制御デバイスの特に単純な実装形態が可能にされ得る。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、それぞれの振動のそれぞれ少なくとも1つの状態変数は、その振幅、周波数、もしくは位相によって、またはこれらの変数のうちの少なくとも1つの変数の関数として決定される。特に、検出された状態変数の少なくとも1つは、振動の振幅によって決定され得る。これは、非線形振動の場合には、バネ剛性k(θ)、したがって1つの軸に関する周波数f(θ)が、各々、この軸に関する振幅θの関数であり、したがって、この軸の検出された振幅θの関数としてのそれぞれの他の振動の変調は、最小周波数距離が即座に、特に動的方式で確実にされることを可能にするという点で特に有利である。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスは、駆動デバイスの作動を実行して、それぞれの他の振動の状態変数であるか、またはその関数として定義されている、少なくとも1つの繰り返し、特に連続的に、検出される被制御変数の関数としての閉ループ制御の意味でそれによって駆動される少なくとも1つの振動に対してそれぞれの駆動効果を誘発するように構成される。そのような閉ループ制御の助けを借りることで、駆動デバイスの動的作動は、最小周波数距離を確実にすることを目的として特に効果的で最適化された方式で達成され、特に、予見できない外乱に反応することも可能であり、これはフィードバックなしの単純な制御では原則として同じ程度に達成され得ないであろう。それに加えて、これは、少なくとも1つの軸に関するバネデバイスの振幅依存バネ剛性の特に周期的な変化、特にマイクロスキャナによって照明される観察野の平面領域の狭窄などの、他の方法では歪みを引き起こす可能性もある、非線形カップリング効果のターゲットとなる補償の可能性を広げる。しかしながら、他方で、そのような非線形カップリング効果は、照明される平面領域の特定の形状、特に楕円形もしくは長方形から逸脱する形状を達成するために、特に用途に依存して増幅されるか、または故意に変調され得る。ヘッドライトの用途では、これは、特に、マイクロスキャナに基づきヘッドライトシステムによって生成される(断面が平坦な)照明領域の静的または動的整形に使用され得る。ここで、たとえば、自動車用のグレアフリーハイビームを考えるが、この場合、ヘッドライトの光円錐は、眼が眩む恐れのある交通領域(それと同時に観察野)内にいる道路使用者がハイビーム分布から自動的に隠されるように動的に整形される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、この被制御変数の検出は、特に、それぞれの駆動振動の駆動制御のための被制御変数が、それぞれの他の振動の周波数もしくは位相として、またはこれらの状態変数のうちの少なくとも1つの状態変数の関数として、定義されるときに、このそれぞれの他の振動の同じ振幅で、たとえば振動の振幅プロファイルのゼロ交差において常に行われ得る。このように、外乱に関して特にロバストな閉ループ制御が達成されるものとしてよく、これは、典型的には、振幅に関して常に同じである測定条件に起因してより低い測定誤差を有する。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスはさらに、それぞれの他の振動の状態変数であるか、またはその関数として定義されている、少なくとも1つの繰り返し、特に連続的に、検出される被制御変数の関数として、閉ループ制御の意味で、第1の振動及び第2の振動の両方を実行するように構成することができる。この場合、第1及び第2の振動に対するこれらのそれぞれの閉ループ制御は、各々、そのそれぞれの勾配及び制御速度に関してそれぞれの他方の閉ループ制御の勾配及び制御速度の関数として動的に構成可能であるように設計される。このチューニングは、これがアクスルがおおよそ同じ速度で振動し、したがってアクスルの元の共振周波数がおおよそ同じ速度で、特にバネ剛性が振幅の増大とともに高くなるときに高い周波数に向かってシフトされることを可能にするという点で有利である(英語:「spring stiffening」)。周波数シフトのおおよその同期により、シフトする周波数の間の差に対する最小周波数距離は、特に単純で信頼性の高い方式で確実にされ得る。制御ループのそのような調整された構成は、したがって、特に、制御ループの一方が他方よりも著しく速く制御すること、したがって共振範囲、特に振動の共振周波数の望ましくない重なりがある危険性を回避することができ、それにより望ましくない形で最小周波数距離に到達することがなく、その結果、物体に応じて望ましい平面、特に長方形の照明の代わりに直線の、特に楕円の、リサージュ投影のみが生じる。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスは、それぞれの他の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として閉ループ制御の意味でそれによって駆動されるそれぞれの振動にそれぞれの駆動効果を誘発するように駆動デバイスを作動させるように構成される。したがって、制御技術という意味では、駆動デバイスの純粋な「制御」(「開ループ制御」)がここで使用され得る。そのような開ループ制御は、有利には、上述の調節と比較してより少ない実装労力で実装され得る。しかしながら、特に、そのような開ループ制御を上述の閉ループ制御のうちの少なくとも1つと組み合わせることも企図され得る。特に、1つの振動が開ループ制御を有し、別の振動が閉ループ制御を有することも可能である。
【0040】
これらの制御ベースの実施形態のいくつかによれば、制御デバイスは、駆動デバイスが第1の振動及び第2の振動に関して、交互する、これらの振動のそれぞれの振幅または周波数のステップバイステップの増大を達成するようにそれによって駆動されるそれぞれの振動に対してそれぞれの駆動効果を誘発するように駆動デバイスを制御するように構成される。たとえば、マイクロスキャナ、より正確にはその偏向要素は、最初に、第1の振動の周波数f1がインクリメントされ(すなわち、定義された周波数ステップだけ増やされ)、次いで第1の振動の周波数f2がインクリメントされ、次いでf1が再びインクリメントされ、次いでf2がさらに再びインクリメントされる、ということを、所望の駆動周波数に達するまで続けるように振動することが可能である。このようにして、マイクロスキャナの振動は、単なる開ループ制御を使用して達成することもでき、この場合、共振範囲、特に発振の共振周波数の望ましくない重なりがなく、したがって、最小周波数距離が維持され、その結果、物体に応じた望ましい平面、特に長方形の、照明の代わりに、純粋に楕円形のリサージュ投影が回避され得る。インクリメントのシーケンスは、特に、メモリ内に回復不可能に記憶されてよく、特に、先行するキャリブレーションプロセスに基づき決定されていてもよい。キャリブレーションに加えて、または代替的に、これは、振動がインクリメントの望ましいシーケンスを定義し、記憶することによって構成されることを可能にする。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスは、振動のうちの少なくとも1つの振動のそれぞれの周波数、特にこの作動によって主に駆動される振動が、この振動の現在の共振周波数を囲む所定の限定された共振範囲内にあるように駆動デバイスを作動させる(すなわち、これを制御するかまたは調節する)ようにも構成されている。通常、共振周波数は最大振幅が生じる周波数fRによって与えられる。共振周波数fRに対する共振範囲の限界は、特に、共振周波数の周波数値fRの値fR±70%、好ましくはfR±40%、より好ましくはfR±20%、さらに好ましくはfR±10%によって決定され得る。(ここでのパーセンテージは、各々の場合において、値fRに関係する)。これは特に、最大振幅、したがって観察野の照明された領域の可能な最大の拡張が、共振範囲内で、特に大面積照明に対して特に関連する値fにおいて、達成され得るという利点を有する。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、最小周波数距離は、一定の寸法として固定される。特に、これは単純な実装形態を可能にするが、それは、この変数が一旦定義されれば、この変数を、特に動的にではなく、決定するためにいかなる種類の依存関係も考慮されなくてよいからである。
【0043】
他方では、いくつかの代替的実施形態によれば、最小周波数距離は、第1の振動もしくは第2の振動のそれぞれの電流振幅、またはこれら2つの振動のそれぞれの電流振幅に依存する可変の寸法として定義される。このようにして、異なるシステム状態に対するより良い適応性が可能にされる。特に、マイクロスキャナの振動は、この方法でより正確に制御され、これらの軸の周波数変化が振動増大とともに同じ速度で進まないときに、異なる軸上の共振範囲の望ましくない重なりも効果的に回避され得る。
【0044】
いくつかの代替的実施形態によれば、バネデバイスは、第1の振動と第2の振動との間の振幅依存相互カップリングの強さが、これら2つの振動のうちの少なくとも一方の振動の振幅の増大とともに間断なく増大するように設計されている。これは、特に、バネデバイスが全体としてまたは場合によってはその個別のバネが、そのそれぞれのバネ剛性kが振幅の増大とともに増大するように設計されているという点で達成され得る。すなわち次の式が成り立つ。
k=k(θ)、ただし、θa>θbに対してk(θa)>k(θb) (3)
【0045】
これは、「スプリングスティフニング(spring stiffening)」または「ストレススティフニング(stress stiffening)」としても知られている。このようにして、特に次の利点が提供され得る。周波数帯域幅または共振の幅は、この意図的に誘発されたスティフニングを介して所望の方式で大きくされ得る。この効果が顕著であればあるほど、二軸「スプリングスティフニング」挙動を有するそのような二軸マイクロスキャナは、非常に実装が容易な無調節開ループ動作(単に開ループ制御)に適している。1つの振動のみがこの顕著なスプリングスティフニングを示し、第2の振動がそうでない場合、少なくとも1つの振動を閉ループ制御で提供する必要があり得るが、それは帯域幅がその後場合によっては安定した開ループ制御に十分でないことがあり得るからである。この状態は、顕著なスプリングスティフニングを示す2つの振動子サスペンションを有する状態ほど有利ではない。より高い共振周波数を有する振動が「スプリングスティフニング」を示し、他方が「スプリングロワーリング」挙動を示すようにサスペンションが、設計されている場合、振動と振動とが互いに近づき純粋な開ループ制御さらには閉ループ制御またはその組合せと同期することが行われないことが保証され得る。より低い共振周波数を有する振動子のサスペンションが「スプリングスティフニング」挙動で設計され、より高い共振周波数を有するサスペンションが「スプリングロワーリング」挙動で設計されている場合、振幅の増大は、振動周波数を接近させることによってのみ達成され得る。原則として、この場合を回避することが望ましいが、それは少数の使用可能な特性を伴うからである。両方の振動子が、設計の観点から達成するのが比較的困難であり、したがって滅多に起こらない場合である、「スプリングロワーリング」挙動を示す場合、純粋な開ループ制御に基づく有利には単純な実装形態は、延いては、それに対応して強力な式で達成することができるが、それはそれぞれの共振の周波数帯域幅が状態の十分な安定性を可能にするからである。本発明によれば、コントローラは、依然として、所望の周波数距離が保持されるように設計されなければならない。この状態は、適切な制御ループによって再び安定に保たれ得る。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、マイクロスキャナは、二軸マイクロスキャナとして設計され、偏向ユニットは、3つの回転対称配置構成されたバネ要素を用いて支持フレームとして働き、それを取り囲むフレーム上で吊り下げられた偏向要素を備える。この場合、マイクロスキャナは、特に、「MiniFarosミラー」タイプの偏向ユニットを備えることができる。これらの実施形態によるマイクロスキャナは、通常は、様々な軸の振動の間に非常に強いカップリングを有し、したがって強い非線形共振を有する。これは、次いで、偏向要素が共振して振動することができる、広いチューニング範囲、すなわち大きな帯域幅(たとえば、いくつかのMiniFarosミラーの変更形態では約200Hz)(共振範囲)を使用可能にする。
【0047】
いくつかの代替的実施形態によれば、マイクロスキャナは、二軸ジンバルレスマイクロスキャナとして設計されており、(i)偏向ユニットは、支持フレームとして使用される剛体フレーム、特に半導体材料から作られるチップフレーム上の可撓性バネを用いて2つの対向する側でしっかりとクランプされて吊り下げられる偏向要素を備え、(ii)可撓性バネは、各々、端面で互いに接続され、それ以外は互いに間隔を空けて延在し、偏向要素の周囲に延在する2つのアーチ形セクションを有し、偏向要素に隣接する各可撓性バネのそれぞれのセクションは偏向要素に接続され、フレームに隣接する各可撓性バネのそれぞれのセクションはフレームに接続される。偏向要素及び可撓性バネは、それに加えて任意選択でフレームも、特に、一体形成され得る、すなわち単一の基板から製造され得る。そのようなマイクロスキャナでは、軸の各々に関するそれぞれのバネ剛性は、それ自体に関する偏向要素の瞬時振幅及び他の軸に関する偏向要素の瞬時振幅の両方に依存する。したがって、マイクロスキャナの動作中に、第1の振動は、第2の振動を周期的に変調し、逆もまた同様である。それに加えて、2つの振動は、継続的に振動エネルギーを交換し、その間にエネルギーを一時的に蓄える。そのようなミラーにより、特に、変形された、特に狭窄した長方形の形状を有する、観察野の平面照明が達成されるものとしてよく、駆動デバイスを適切に作動させて相互変調を補償することで、少なくともおおよそ長方形の平面照明も達成され得る。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスは、振幅調整、周波数調整、または位相調整の意味で偏向ユニットを駆動するために駆動デバイスを作動させる状況において、第1の振動、第2の振動、またはこれら2つの振動の各々の少なくとも1つの対応する状態変数を個別に特定の設定点値に設定するように構成される。特に、位相調整、特に位相調節は、様々な振動の相互変調の作動ベースの、部分的な、または完全な、補償を引き起こし、またマイクロスキャナの共振動作を維持するのに適している。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、偏向要素は、3つの同時振動の間に偏向要素に入射する電磁ビームを偏向させることによって、観察野内に非線形リサージュ投影を生じさせるために第1及び第2の振動軸に対して各場合において直交する第3の振動軸に関して支持構造体に関して第3の回転振動を同時に追加的に実行することができるようにバネデバイスを用いることで支持構造体にジンバルレス方式で吊り下げられる。バネデバイスは、第3の振動と第1の振動または第2の振動またはその両方の間の振幅依存相互カップリングを媒介するようにも設計される。したがって、第3の振動軸または第3の振動を使用して、特に、たとえば、偏向された放射線の強度または位相が、たとえば、反射面の反射率もしくは構造の対応する不均一設計によって、第3の振動軸の周りの移動によって(追加的に)変調され得る、なおいっそう複雑な投影像が形成され得る。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスは、第1または第2の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として駆動デバイスを作動させて、第3の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって第3の振動に対する駆動効果を誘発するようにさらに構成され、これは一方では第1及び第2の振動、または他方では第3の振動のそれぞれの瞬時振動周波数の間の所定の最小周波数距離を下回ることを打ち消す。したがって、様々な軸の周波数デカップリングは、第3の軸にも拡張され、したがって、そのようなカップリングは、投影中にさもなければ発生するであろう望ましくない撮像外乱を補償するかまたは回避するために使用され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、マイクロスキャナは、カプセル封入体をさらに含み、これを用いて、少なくとも偏向要素及びバネデバイスは、密閉方式でカプセル封入され、これによりカプセル封入体内の偏向要素は振動を実行することができ、バネデバイス上に振動できるように吊り下げられる。カプセル封入体は、偏向要素をブリッジするカプセル封入セクションを有し、これを通して、偏向されるべき放射線はカプセル封入体によってカプセル封入された空間領域内に放射され、偏向要素のところで偏向された後にそこから再び放射され得る。カプセル封入体またはカプセルセクションは、特に、ガラス材料からなるか、またはマイクロスキャナの使用に関連するスペクトル範囲内の電磁放射線に対して少なくとも主に、好ましくは大体は、透過的であるものを含むことができる。
【0052】
そのようなカプセル封入体の使用は、特に、気体摩擦損失、特に空気摩擦損失、または偏向要素の振動の他の外乱を低減するか、または大幅に排除することすらするために密閉され、カプセル封入された空間領域内の圧力を低下させて、特にこの空間領域から気体を抜くことを可能にする。これは、偏向要素及びそのスプリングサスペンションが周囲空気中で作動せず、減圧下、特に真空中で作動するときにリサージュ表示用途にマイクロスキャナを使用するときに特に有利であるが、それは空気制動に起因する摩擦損失はこの方法で非常に効率よく回避され、その結果、マイクロスキャナは、たとえば、大気圧の空気の場合に比べて最大100倍の高い振動振幅を達成することができるからである。したがって、達成可能な光学分解能も、第1及び第2の振動軸の一方または各々において、たとえば100倍まで、それに対応して増大させられ得る。
【0053】
これらの実施形態のいくつかにおいて、カプセルセクションは、断面がドーム形状(キューポラ形状)、平面形状、または直角U字形状の形成を有する。ドーム形状の形成は、入射及び出射電磁ビーム、特にレーザービームが配線によってほとんど偏向されないという特定の利点を有する。入射ビームがドーム形状カプセルセクション上で反射される限り、これは、通常、偏向要素で反射される出射ビームの方向と異なる方向に生じ、したがって望ましくない相互作用またはビームの重ね合わせが効果的に回避され得る。他方では、平面形成及び断面内で直角のU字形状形成は、マイクロスキャナの製造時の特に単純な生産性及び取り扱いによって各場合において区別される。断面内で直角のU字形状形成は、偏向要素の移動のために十分に大きいカプセル封入体によって囲まれている空間領域を形成するためにカプセル封入体の下部構造において他の何らかの形で必要とされるであろう任意の中間層(スペーサ層)が回避されるか、または数もしくは厚さが減らされ得るという利点も提供することができる。
【0054】
本発明の第2の態様は、リサージュ図形を観察野上に投影するための投影システムに関係し、投影システムは、本発明の第1の態様による、特に、本明細書において説明されている実施形態及びその変更形態のうちの1つによるマイクロスキャナを含む。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、投影システムは、特に、マイクロスキャナによって偏向されるべき(したがって「入射」する)電磁ビームを生成するための放射源を備えることができる。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、制御デバイスはさらに、少なくとも1つの変調信号を放射源に供給するように構成され、それに応じて入射電磁ビームは変調され得る。変調は、特に、その時間的または空間的強度プロファイルに関係するものとしてよい。しかしながら、放射線源の種類に応じて、他の種類の変調も企図可能であり、特に放射線源によって放射される放射線の波長(たとえば色)または波長分布の変調も企図可能である。像が投影されるときに、変調は瞬時偏向方向に応じてしかるべく実行され、それにより対応するピクセルは、変調によって表示されるべき像の対応するピクセルの関連付けられているピクセル値で、投影表面上に生成される。
【0057】
本発明の第1の態様に関して説明されている特徴及び利点は、本発明の第2の態様による上述の投影システムに対応して適用される。
【0058】
本発明のさらなる利点、特徴、及び可能な用途は、図と併せて次のより詳細な説明からの結果として得られる。
【0059】
図の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態によるマイクロスキャナの例示的な構造を示す概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態によりリサージュ図形を観察野上に投影するための投影システムの例示的な構造を示す概略図である。
【
図3】特に
図1からのマイクロスキャナにおいて使用可能である、ジンバルレスMiniFarosミラーを備える偏向ユニットを示す概略頂面図である。
【
図4】
図3からのジンバルレスMiniFarosミラーの例示的な周波数応答を示す図である。
【
図5】特に
図1からのマイクロスキャナにおいて使用され得る、バネデバイスとしてアーチ形可撓性バネを使用する例示的なさらなるジンバルレスミラーの変更形態(「KOLA」)の偏向ユニットの概略頂面図である。
【
図6】
図5による偏向ユニットを有するマイクロスキャナにおける長方形に関して狭窄し、変形した非補償平面照明領域の断面の例示的な記録を示す図である。
【
図7】振幅が増大するにつれて自己同期が生じること、それにより剛性位相及び周波数カップリングが生じるのを回避するために、本発明によるマイクロスキャナの振動中に必要な最小周波数距離を維持する一例を例示する周波数応答図である。
【
図8(A)】本発明のいくつかの実施形態による、
図1のマイクロスキャナの例示的な組み合わされた開ループ/閉ループ制御(一方の軸に対して開ループ、他方の軸に対する閉ループ)のブロック図である。
【
図8(B)】
図8(A)からのマイクロスキャナが振動するときの2つの振動に対する例示的な周波数曲線を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態による、
図1からのマイクロスキャナの例示的な二重閉ループ制御(両方の軸に対する閉ループ)のブロック図であるが、しかしながら、2つの閉ループ制御の間の信号ベースのフィードバックは、一方向にのみ行われる。
【
図10】本発明の実施形態による、
図1からのマイクロスキャナの例示的な二重閉ループ制御(両方の軸に対する閉ループ)のブロック図であるが、信号ベースの双方向フィードバックは2つの閉ループ制御の間で行われる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図全体を通して、同じ参照記号が本発明の同じまたは対応する要素に対して使用される。
【0062】
図1は、マイクロスキャナ100を駆動するための駆動デバイス105を有する本発明の例示的な一実施形態によるマイクロスキャナの例示的な実施形態100を側断面図内で概略的として例示している。
【0063】
マイクロスキャナ100は、駆動デバイスとしての圧電アクチュエータ105を含み、これは、それと同時に、次々に積み重ねられる様々な基板から作られる積層多層構造が配置構成される底板を形成し、これは全体としてマイクロスキャナの偏向ユニット101を形成する。この多層構造のコアは、半導体材料から作られる第1の基板120(チップ)によって形成され、これは異なるコヒーレントな部分に構造化されている。これらの部分は、フレーム部分125と、偏向要素として使用されるミラー部分(「ミラー」)130と、ミラー部分130をフレーム部分に各々接続し、接続ウェブとして形成される複数のバネ要素135とを含む。
【0064】
ミラー部分130は、ミラー部分130がフレーム部125に関して2次元の、特に二軸の、振動運動を実行することができるようにねじれることができるバネ要素135を介してフレーム部125内に移動可能に装着される。したがって、接続ウェブ135は、ミラー部分130のスプリングサスペンションを表している。接続ウェブまたはバネ要素135は、一緒に、偏向ユニット101のバネデバイスを形成する。このバネデバイスは、個別の振動軸への振動の間の振幅依存相互カップリングを媒介するように設計される。この結果、全体としてバネデバイスの非線形バネ特性が得られる。
【0065】
ミラー部分130は、その主表面の一方に金属コーティング140を備え、それによりこの金属層140は、入射電磁放射線、特に、たとえば電磁スペクトルの可視または赤外領域内のレーザービームを偏向するためのミラー化反射表面を形成する。したがって、コーティング140を有するミラー部分130は、偏向ユニット101の偏向要素を形成する。
【0066】
金属層140は、特に、Al、Ti/Au、Ti/Pt/Au、Ta/Pt/Au、Cr/Au、Ta/Au、Ti/Ag、Ta/Ag、Ta/Pt/Ag、Ti/Pt/Ag、Ti/TiW/Au、Ti/W/Au、Ti/W/Ag、Ti/TiW/Agなどの材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。特に、追加の誘電体層が、層の品質を改善するために、または金属層を腐食から保護するために、金属層より上または下に使用され得る。他の場合には、このようにして、特定の波長範囲に対して特に高い反射率を達成するために、ミラー層は、全体的に、誘電体層スタックから形成され得る。上述の材料は、高い長期耐久性及び良好なミラー特性の両方を有することができる。ミラー化反射表面140の形状は、円形である、特に、
図3及び
図5の各場合において示されているような円形とすることができるが、これは制限とは理解されない。特に、長方形または他の多角形の形状も企図可能である。そのような偏向要素または特に第1の基板120の様々な例示的な実装形態が、
図3及び
図5を参照しつつ以下で詳細に説明される。
【0067】
さらに、偏向ユニット101は、任意選択で、ガラス材料から作られる第2の基板145を備える。第2のガラス基板は、キューポラ形状を有し、ミラー部分130を両側で囲むキャビティ175の第1の(
図1では「上側」)部分175aを形成するために、基板接合材料150、たとえばガラスフリット材料を用いて、第1の基板120のフレーム部分125に密閉して接続される。
【0068】
多層基板101内の、第2の基板145の反対側の、第1の基板120の側では、底板として、第1の基板と第3の基板との間で使用される、第3の基板110、スペーサまたは(それと同等の)スペーサ層として設計されている、さらなる、第4の基板115が配置される。第3及び第4の基板は、各々、特に半導体材料から製造され得る。
【0069】
第4の基板115は、底板110によって提供されるその底部境界とともに、キャビティ175の第2の(
図1(a)では「下側」)部分175bを形成するように、ミラー部分130より下に配置構成されているキャビティを含む形で構造化される。
【0070】
それぞれの隣接する個別の基板は、たとえば再び基板接合材150または155を用いて密閉方式で互いに接続され、キャビティ175は、第2の基板145が使用されるときに全体として密閉されるように設計される。これはその中に残留ガス圧が存在するように好ましくは気体を抜かれ、これは好ましくは通常状態(101.325kPa=1013.25mbar)を著しく下回り、それは好ましくは10kPa/10+1kPa(10-1mbar)未満、特に好ましくは10-1kPa(10-3mbar)未満である。典型的には、第1から第4の基板110、115、120、145は、各々、同じ基本形状、特に長方形の形状を有するが、他の形状も可能である。
【0071】
圧電アクチュエータ105は、電気的に作動されたときに振動運動を発生し、それを偏向ユニット101、特にミラー部分130に伝達するように構成される。これの変更形態では、振動運動は、多次元的であり、振動周波数(周波数)がそれぞれの振動の共振範囲に入ったときに、複数の振動が異なる直交する振動軸に対して同時に励起され得る。代替的に、駆動デバイス、特にこの例では、圧電アクチュエータ105は、振動の各々が対応する特別な運動成分、特に対応する振動軸に平行に延在する軸の周りのアクチュエータの傾きを介して、意図的に別々に励起可能となるように構成され得る。
【0072】
この方法及び他の方法では、ミラー部分130は、そのミラー面140により励起されて、振動運動、特にフレーム部分125に関する二軸リサージュ運動などの共振運動または強制多次元振動運動を実行することができる。以下では、振動軸のうちの対応する1つの軸の周りの一軸振動成分は、各々、振動と称される。これらの振動において、ミラー部分130は、振動のそれぞれの軸の周りで傾く(回転する)ことによって第1の基板120の平面から外へ移動することができ、それによって両側のキャビティ175の部分175a及び175bに突入することができる。キャビティ175から気体を抜くことに起因して、ガス中の残っている摩擦は非常に小さく、したがって、ほんのわずかな、特に、無視できるくらいに小さい減衰が生じる。
【0073】
さらに、マイクロスキャナ100は、容量性位置決定デバイスを含む。この位置決定デバイスは、ミラー部分130のそれぞれの電流振幅位置、特に向きを決定することを目的として電気容量測定が実行される2つの電極を含む。2つの電極のうちの第1の電極は、金属ミラー表面140によって形成され、これはしたがって二重機能(入射電磁放射線の偏向、電極)を実行することを意図されている。2つの電極のうちの第2の電極は、キャビティ領域175内の底板110の内側に、底板110の対応する金属コーティング180として具現化される。本発明の例では、この底部電極180は、多部構造金属層として設計されている。この底部電極180の形状は、本質的に、ミラー部分130の、またはその反射層もしくはミラー表面140の、非偏向アイドル状態でこれに平行に横たわるミラー部分130の形状に、種類に関して、また好ましくは少なくとも近似的にサイズに関して、対応する。
【0074】
底部電極180は、底部電極180から底板110を通って圧電アクチュエータ105上の対応する接続パッド190まで延在する、1つまたは複数のいわゆるビア、すなわち電気的に高導電性(導電率>106 S/m)の、通常は金属材料を充填された接続トンネルを介して、電気的に接触する。ミラー電極140は、次いで、再配線層を介して、第2の(ガラス)基板によって形成されたキューポラの外側の第1の基板120上に配置構成された接続パッド165に電気的に接続され、そこからボンディングワイヤ160を用いて圧電アクチュエータ105上のさらなる接続パッド170に電気的に接続される。したがって、ミラー電極140は、接続パッド170を介して全体的に電気的に接触される。その結果、ミラー部分130の位置を決定するために使用される静電容量測定は、接続パッド190と170の間で実行され得る。
【0075】
マイクロスキャナ100はまた、制御デバイス195を備え、これは、特に、偏向要素130、140の振動のうちの少なくとも1つの振動に関するそれぞれの、特に共振の、駆動効果が個別に設定可能であるように対応する電気制御信号198を用いて(制御または調節の意味で)偏向ユニットを駆動するための圧電アクチュエータ105を制御するように構成される。特に、制御デバイスは、第1の振動軸A1に沿った振動(「第1の振動」)の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として圧電アクチュエータ105を制御するように構成され、特にプログラムされ、それにより、第2の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって、第1の振動軸に直交する第2の振動軸A2に対する振動(「第2の振動」)の駆動効果を誘発し、これは第1の振動の瞬時振動周波数f1,iと第2の振動の瞬時振動周波数f2,iとの間の所定の最小周波数距離fTHを下回ることを打ち消す。それに加えて、制御デバイス195は、上述の静電容量測定に基づく偏向ユニットからの測定信号199、特に軸A1及びA2に関する偏向ユニットの瞬時位置を指示する測定信号を受信するように構成される。特に、それぞれの振動の振幅、周波数、及び位相は、ここでは状態変数として考慮される。
【0076】
任意選択で、制御デバイス195は、反対方向の追加制御を実行する、すなわち、第2の振動の少なくとも1つの検出された状態変数の関数として圧電アクチュエータ105を作動させ、第1の振動の少なくとも1つの状態変数に影響を及ぼすことによって第1の振動の駆動効果を誘発するように構成されるものとしてよく、これは第1の振動の瞬時振動周波数f
1,iと第2の振動の瞬時振動周波数f
2,iとの間の所定の最小周波数距離を下回ることを打ち消す。制御デバイス195を用いてこの状況において実行され得る振動の開ループ及び閉ループ制御の詳細については、以下で、特に
図7から
図10を参照しつつ説明される。
【0077】
図2は、リサージュ図形を観察野220上に投影するための投影システム200の例示的な構造の概略を示す。特に、
図1からのマイクロスキャナ100は、この目的のために使用され得る。電磁放射線源、特に可視光の光源として使用されるレーザー210を用いて、反射表面として使用される、ミラー化表面140上で、入射光のビームL
1が生成されて、反射表面140上に向けられ、そこで反射され、観察野220上に検出されたビームL
2として結像され、これを少なくともセクションにわけて照明する。観察野は、投影表面によって、たとえば、投影スクリーンまたは床もしくは道路表面などの滑らかな表面によって画成され得る。
図2に示されている純粋な反射の最も単純な場合に加えて、偏向要素またはミラー130/140に加えて、1つまたは複数のさらなる光学素子が、特にミラーまたは光学レンズの形態で、像を定めるために設けられてよい。
【0078】
図3は、特に
図1からのマイクロスキャナ100において、または
図2からの投影システム200において使用され得る、ジンバルレスMiniFarosミラーを有する偏向ユニット300の概略頂面図を示している。
図4は、これを目的とする振動軸に関する励起した後の偏向要素の振幅の関連する周波数応答を示している。
【0079】
この特定の実施形態において、マイクロスキャナは、特に二軸マイクロスキャナ300として設計され得る。その偏向ユニット101は、ここではミラープレートとして設計された偏向要素130、140を備える。これは、それを囲む基板120のフレームセクション125から吊り下げられ、3つの回転対称に配置構成されたバネ要素135を用いて支持構造として使用され、これは一緒にバネデバイスを形成する。サスペンションは、偏向要素130、140(ミラー)が、ジンバルレス方式でフレームセクション125上に、それに関して第1の振動軸A1に関する第1の回転振動及びそれに直交する第2の振動軸A2の周りの第2の回転振動を同時に実行することができるように吊り下げられ、同時振動の間に偏向要素に入射する電磁ビームL1を偏向させることによって観察野220内に非線形リサージュ投影を生じさせる。2つの相互に直交する振動軸A1及びA2のこのコースは、ミラー外周に沿って各々120度隔たる3つのサスペンションに関する回転対称性に起因する励起のコースに依存する。
【0080】
バネデバイスの特別な構成に起因して、2つの軸A1及びA2の周りの振動は、ここでは強くカップリングされ、したがってもはや独立していない。実際、この場合、調和振動子とは異なり、有効バネ剛性k1及びk2は、各々、2つの振動軸A1及びA2に関する実際の機械的振幅(偏向)θ1,i(t)及びθ2,i(t)の時間依存関数であり、次の通りである。
k1=k1(θ1,i(t),θ2,i(t))及びk2=k2(θ1,i(t),θ2,i(t)) (3)
【0081】
MiniFarosミラー型の場合、2つの振動の間のカップリングまたは相互作用は、通常、非常に明瞭に見ることができる。両方の振動軸は、3つすべてのバネ135によって画成される。これは、3つすべてのバネ135がジンバルミラーとは対照的にA1及びA2の両方の軸にも関わることを意味している。後者では、各振動軸はそれぞれ一対のトーションサスペンションを有する。
【0082】
MiniFarosミラーが従来通り、つまり本発明による特別な制御を使用せずに、内力または外力によって駆動される場合、まず最初に、軸A1またはA2において線形振動し始める。次いで、周波数fを高くし、第2の軸の共振周波数に近づいた場合、軸A1の周りの第1の振動から軸A2の周りの第2の振動へ振動エネルギーがますます移行し、ミラー130/140は、もはや線形振動のみを行うことをせず、楕円振動する。この楕円は次第に直径が大きくなり、それと同時に楕円はますます円形に近づく。これは、2つの軸の間の強い相互作用に起因して供給される振動エネルギーが一方の軸から他方の軸へ次第に大きく伝達されることを意味する。
【0083】
第2の軸は、位相位置に関して自己同期するが、それは、そのときに、軸と軸との間にいかなる位相関係があろうと振動はなく、楕円または円形があり、これは、2つの軸A1及びA2の同期した位相位置と同等であるが、エネルギーは一方の軸を介してのみ供給されたからである。
【0084】
強く相互作用する軸の興味深い重要な特徴は、非線形動作するスプリングサスペンション135である。この結果、顕著な非線形共振が生じ、MiniFarosミラーの場合には、これはたとえば軸A
1に対する振動振幅の周波数応答として
図4に示されているように、より高い周波数に向かって「傾斜した先の尖ったキャップ」を有するいわゆる「ストレススティフニング」または「スプリングスティフニング」の問題である。
【0085】
上述の式(3)によるバネ剛性k1及びk2は、ここでは、第1の振幅θ1の関数として、また第2の振幅θ2の関数として、それぞれの振幅が大きくなるにつれて大きくなる。したがってこの結果は、マイクロスキャナ100が、共振点において発生する最大振幅を達成するために、ここでより低い周波数からより高い周波数へと共振させられ得るのみであることである。それに加えて、両方の軸A1及びA2に対して振動を励起させるために2つの共振周波数のうち低い方の周波数から開始しなければならない。2つの共振周波数のうち高い方の周波数から開始した場合、振動は一軸のままである。
【0086】
図4は、駆動デバイス105に対する40V、80V、及び120Vのレベルにおける3つの異なる起動電圧に対する対応する周波数応答のファミリーを示しており、より高い作動電圧は、さもなければ同一である動作モードでより大きな最大振幅に対応する。高くなる周波数曲線(「アップ」)で振動するときに、上述のピーク形状振幅曲線は結果として、同期した軸(f
1,i~~f
2,iまたはf
1R~~f
2R~~f
R)に起因する、1つの顕著な最大値のみをもたらすことが明確にわかる。
【0087】
ほとんど垂直で狭い共振ピークの代わりに、振動振幅が大きくなるにつれ振動時に共振曲線がより高い周波に向かう明らかな広がりがある。振動振幅が大きければ大きいほど、サスペンションの剛性は増す、すなわちバネ剛性kは大きくなり、共振周波数fRはより強く変化する。これは、帯域幅(周波数調整範囲)を広げることになる。
【0088】
その代わりに、振動が励起周波数を下げて(「ダウン」)実行されたとすると、著しく異なる周波数応答が結果として生じ、2つの軸A1及びA2の、そのときに分離したままである、共振周波数f1R及びf2Rに対する別個の、あまり顕著でない最大値が得られるであろう。
【0089】
ジンバルのない非線形2Dマイクロスキャナは、ほとんど常に、非常に強いカップリングを有する。非線形性の強い共振は、結果として、大きなチューニング範囲、すなわちマイクロスキャナが共振振動できる広い帯域幅をもたらす。実施形態に応じて、これは、MiniFarosミラーに対して200Hzであってよく、これはたとえば、高品質のジンバルスキャナに対して典型的である1Hz未満の帯域幅に関して非常に高い。
【0090】
これらの非線形カップリング2Dミラーは、もはや2つの調和振動子の組合せではないが、それは、式(3)によれば、「バネ定数」に基づき振幅とともに線形に増大するバネ力がもはやない、すなわち、高調波動作がないからである。むしろ、これは振幅に強く非線形依存するバネ力であり、いわゆる「ダフィング振動子」として記述され得る。
【0091】
MiniFarosミラーは、結果として生じるリサージュ像が円形路/楕円形状である可能性があるにもかかわらず、通常、同一の共振周波数を有しないが、2つの異なる共振周波数を有し、基底状態(低振動振幅)では約100Hz隔たり得ることに留意されたい。しかしながら、より低い共振周波数を有する軸が振動したときに、振動子は、より高い周波数に向かって減衰するので、2つの軸の周波数は最終的に重なり合う(f1R~~f2R)までますます同じになり、エネルギー交換が完全に可能にする。したがって、偏向ユニット300は、所望の平面照明の代わりに楕円、特に円形の線の結像を超えるリサージュ投影を用いることによる観察野の平面照明に実際には容易には適さない。
【0092】
他方では、本発明による制御デバイスがマイクロスキャナ100の駆動デバイスを制御するために使用される場合、広い、特にまた少なくともおおよそ長方形の形状の、照明が振幅をチューニングすることにより可能である。2つの振動または軸に対する周波数最大値は、高い周波数で振動するときであっても維持され得るが、それは、これらの周波数が、所定の最小周波数距離fTHを下回ることができないようにその周波数距離に関して常に設定され、この結果、楕円形状から逸脱した照明が得られるからである。
【0093】
図5は、偏向ユニット101、特に基板120の別の実施形態によるジンバルレスミラー(ここではタイプ「KOLA」として指定される)を有する偏向ユニット500の概略頂面図である。この実施形態は、ここでもまた、特に
図1からのマイクロスキャナ100または
図2からの投影システム200において使用され得る。
【0094】
KOLAマイクロスキャナは、二軸ジンバルレスマイクロスキャナであり、偏向ユニット500は、偏向要素(ミラー)130、140を備え、これは、(剛性の)フレームセクション125、特にチップ上にしっかりとクランプされた可撓性バネ135a、135bを用いて2つの対向する側の各々で吊り下げられている。可撓性バネ135a、135bは、各々、端面で互いに接続され、それ以外は互いに隣接して相隔てて延在し、偏向要素130、140の周りに延在する2つのアーチ形セクションを有する。偏向要素130、140に隣接する各可撓性バネのそれぞれのセクションは、内側接続ウェブ136aまたは136bによって偏向要素130、140に接続されている。フレームセクション125に隣接する各可撓性バネ135a、135bのそれぞれのセクションは、外側接続ウェブ137aまたは137bを用いてフレームセクション125に接続される。
【0095】
可撓性バネ135a、135bの長さは、偏向要素の外側輪郭に沿って可能な限り長く広く延在し、好ましくは回転の振動軸A1から垂直に一旦離れ(各側へ約1/4円)、次いで再びこの軸A1に戻るように設計されるものとしてよい。可撓性バネのこのコースは、偏向要素130、140が両方の相互に直交する振動軸A1及びA2において移動可能であることを可能にし、そのそれぞれのベアリングは説明されているサスペンションを有するバネデバイスの構造によって定められる。
【0096】
2つの軸または関連する振動は、振動振幅が非常に大きいときに強いカップリングを示し、したがって顕著な相互作用を示す。特に、第1の軸A1の周りの偏向要素130、140の各振幅は、直ちに結果として可撓性バネ135aまたは125b全体のスティフニングをもたらすが、これは両方の振動軸A1及びA2に影響を及ぼす。その結果、関連するバネ定数または振幅依存バネ関数k1は、第1の軸A1の振動に対して周期的にデチューンされるだけでなく、それと同時にそれに垂直な第2の軸A2に対して関連するバネ関数k2もデチューンされ、その逆も同様である。したがって、両方のバネ関数は、式(3)に従う時間依存関数である。
【0097】
この周期的スティフニングの結果、2つの振動のそれぞれの共振周波数f1R及びf2Rが軸A1及びA2に周期的にシフトする。これは、次のことを意味する。第1の軸A1の振動は、第2の軸A2の共振周波数f2Rを周期的にデチューンし、第2の軸A2の振動は、逆に第1の軸A1の共振周波数f1Rを周期的にデチューンする。それに加えて、2つの軸A1及びA2は、振動エネルギーを永久的に伝達し、互いに交換し、蓄える。
【0098】
KOLAマイクロスキャナでは、この結果、変調されたミラー振動振幅θ
1(t)及びθ
2(t)が得られる。本発明によるコントローラがいっさい使用されない場合、観察野220内の投影の際にここで結果として得られるスキャンパターンは、したがって、断面が完全に長方形である形状を有さず、むしろ、特に1つの軸において明確な狭窄を示す。これは、
図6に概略として例示されている。
【0099】
他方では、本発明による制御デバイスがマイクロスキャナ100の駆動デバイスを制御するために使用される場合、広い、特にまた少なくともおおよそ長方形の形状の、照明が振幅をチューニングすることにより可能である。次いで、2つの振動または軸に対する周波数最大値も、高い周波数で振動するときに維持され得るが、それはこれらの周波数がその周波数距離f1,i-f2,iまたは|f1,i-f2,i|に関して常に設定され、これらは所定の最小周波数距離fTHを下回らないからである。
【0100】
図7は、振幅が増大するにつれて自己同期が生じること、それにより剛性位相及び周波数カップリングが生じるのを回避するために、本発明によるマイクロスキャナの振動中に必要な最小周波数距離を維持する一例を例示する周波数応答図である。
【0101】
3つの下側曲線プロファイルは、振動プロセスの時刻t
1、t
2、及びt
3の異なる連続時点において(2つの軸のいずれか1つの軸に関する)偏向要素の振動振幅の実際の周波数応答を示している。
図7に破線で示されている一番上の曲線は、より低い共振周波数を有する振動子の振幅が、一方の軸の共振が他方の軸(より高い共振周波数を有する)の共振に重ね合わされるような程度まで大きくなったときの状態を表している。この状態で、第1の振動子は、第2の振動子と同期することを試みる。この「融合すること」は、2つの共振器が同時に振動することとそれによって同じ方向にストレススティフニングを示すことの両方によってその分離を維持する場合にのみ防止され得る。f
1(f
1Rの略)は、第1の振動軸A
1に対する瞬時(振幅依存)共振周波数を指定し、したがってf
2(f
2Rの略)は、第2の振動軸A
2に対するそれぞれの瞬時(振幅依存)共振周波数を指定する。本発明によるマイクロスキャナを使用するときに、一方では使用されるジンバルレス偏向ユニットに起因して様々な振動または関連する振動軸A
1及びA
2の間の強いカップリングが発生する。しかしながら、他方では、制御ユニット195は、最小周波数距離f
THを維持し、したがって2つの共振周波数f
1及びf
2(またはf
1R及びf
2R)が融合するのを防ぐためにこれらの振動または短い振動軸の同期をアクティブに妨げる。その結果、得られるリサージュ図形もまた、f
1=f
2(またはf
1R=f
2R)の場合のように、単なる楕円を表すのではなく、むしろ、駆動ユニット105による励起の適切な選択により、観察野220において、異なる形状の、平面的な、特に直角ですらある、照明領域を誘発することができる。
【0102】
図8(A)は、組み合わされた開ループ/閉ループ制御(一方の軸については開ループ、他方の軸については閉ループ)を備える
図1からのマイクロスキャナの例示的な一実施形態800のブロック図を示している。
【0103】
制御デバイス195は、一方では、第1の軸A
1に関する第1の振動に対する開ループ制御ユニット196(開ループ)を有し、他方では、第2の軸A
2に関する第2の振動に対する閉ループ制御ユニット197(閉ループ)を有する。開ループコントローラ196は、第1の振動に関して圧電アクチュエータ105を制御するために、時間依存電圧V
1(t)の形態で第1の作動信号を供給する。対照的に、閉ループコントローラ197は、第2の振動に関して圧電アクチュエータ105を制御するために時間依存電圧V
2(t)の形態の第2の作動信号(より正確には、制御された可変信号)を供給する。2つの電圧V
1(t)及びV
2(t)は、
図1または
図2からの制御信号または制御された可変信号199に対応する。この作動に起因して、圧電アクチュエータ105は、第1及び第2の振動軸A
1及びA
2に作用する動作を実行し、偏向ユニット101へのその機械的カップリングにより、対応する機械力F
1(t)及びF
2(t)を印加し、第1の振動及び第2の振動を、特に各々共振するように、すなわちそれぞれの瞬時共振周波数f
1Rまたはf
2Rに従って駆動する。偏向ユニット101はジンバルレスタイプであるので、2つの振動軸A
1及びA
2の間に、第1の振動に関する無視できない機械的カップリングK
1(θ
1,i(t);θ
2,i(t))及び第2の振動に関するK
2(θ
1,i(t);θ
2,i(t))があり、これらは各々実際の振幅θ
1,i(t)及びθ
2,i(t)に依存し、したがって時間依存でもある。
【0104】
制御ユニット196は、第1の振動に対する制御コントローラ196aを有し、これは、マイクロスキャナ800の振動時の第1の振動の振幅の時間設定点曲線θ1,s(t)を表す制御データが記憶されているルックアップテーブル196dにアクセスすることができる。この制御データにより、制御コントローラ196aは、第1の振動に関して圧電アクチュエータ105を制御するための時間依存電圧V1(t)を生成し、これを圧電アクチュエータ105に出力して作動させる。
【0105】
第1の振動の上述の制御は開ループ制御であるが、第2の振動の制御は閉ループであり、これを使用することで、偏向ユニット101の底部電極180によって検出され、瞬時の実際の振幅θ
1,i(t)及びθ
2,i(t)によって与えられる、偏向要素(ミラー)130、140の瞬時位置は、入力信号として制御ユニット197にフィードバックされる。返された振幅θ
1,i(t)は、制御ユニット197の制御コントローラ197aに送られ、これは、任意選択で時間依存する最小周波数距離f
THを考慮して、第2の振動の振幅に対するターゲット値θ
2,s(t)を決定する。振幅は、
図7の例を用いて示されているように、第2の振動の周波数に相互依存するので、第2の振動に対する瞬時周波数の設定点も定められる。
【0106】
設定点θ
2,s(t)は、第2の振動に対する差分検出器197bに送られ、これは、特に、設定点θ
2,s(t)と第2の振動の振幅の返された実際の値θ
2,i(t)との間の位相差
【数1】
を検出し、下流のコントローラまたはループフィルタを介して、位相同期に関して決定された制御された可変信号V
2(t)を生成し、それを圧電アクチュエータ105に出力するように構成され得る。代替的またはそれに加えて、振幅制御または直接周波数制御も、類似の方式で提供され得る。
【0107】
図8(B)は、
図8(A)からのマイクロスキャナが振動するときの2つの振動に対する例示的な周波数曲線を示す図である。この例により、制御された第1の振動が、その実際の周波数f
1,iが連続特性曲線によって示されているような段階的コースを辿るように実行される場合、第2の振動に対する閉ループ制御は、最小周波数距離f
THが常に維持される破線の特性曲線によって示されるような段階的コースを辿るように設計され得る。したがって、マイクロスキャナの振動は、2つの振動に関して時間的に交互に行われる。カップリングK
2(θ
1,i(t);θ
2,i(t))を介して第1の振動に依存している、第2の振動に対する閉ループ制御を使用することで、最小周波数距離f
THを維持しながら二軸振動が達成され得る。
【0108】
図9は、本発明のさらなる実施形態900による、
図1からのマイクロスキャナの例示的な二重閉ループ制御(両方の軸に対する閉ループ)のブロック図であるが、しかしながら、2つの閉ループ制御の間の信号ベースのフィードバックは、一方向にのみ行われる。
【0109】
このマイクロスキャナスキャナ900は、第1の振動に対する開ループ制御の代わりに閉ループ制御、特に閉ループ位相制御もそこで提供されるという点で
図8(A)からのマイクロスキャナスキャナ800に基づく。したがって、開ループ制御ユニットは、閉ループ制御ユニット196で置き換えられ、第1の振動の実際の振幅θ
1,i(t)も、偏向要素のところで測定され、閉ループ制御ユニット196にフィードバックされ、さらに第1の振動に対する制御ループを閉じる。
【0110】
その結果、現在、2つの振動の各々に対して別個の閉ループ制御があり、第1の振動に対する閉ループ制御は、第2の振動の閉ループ制御を考慮せず、したがって第2の振動の返された実際の振幅θ2,i(t)も受け取らないという意味で、マスター閉ループ制御として機能する。対照的に、第2の振動に対する閉ループ制御は、スレーブ閉ループ制御として機能し、その設定点決定は、第1の振動の返された実際の振幅θ1,i(t)及びさらなる入力変数として使用される最小周波数差fTHに依存する。最小周波数距離が維持されることを確実にすることは、したがって、第2の振動に対する閉ループ制御に依存するが、2つの閉ループ制御の各々は、それぞれの駆動信号V1(t)及びV2(t)が各々、それぞれの振動の実際のコースと同位相で働き、したがって偏向ユニット101の対応する共振動作を補助することも確実にする。
【0111】
図10は、本発明1000のなおも別の実施形態による、
図1からのマイクロスキャナの例示的な二重閉ループ制御(両方の軸に対する閉ループ)のブロック図であるが、信号ベースの双方向フィードバックは2つの閉ループ制御の間で行われる。
【0112】
マイクロスキャナ1000は、第1の振動に対する閉ループ制御はまた第2の振動の実際の振幅θ
2,i(t)及び最小周波数距離f
THのフィードバックを入力信号として受け取るという点で、
図9からのマイクロスキャナ900に基づく。この結果、第1の振動に対する閉ループ制御が第2の振動による影響を受け、その逆もある対称的構造が得られる。最小周波数距離が維持されることを確実にすることは、したがって、両方の振動に対する閉ループ制御に依存するが、2つの閉ループ制御の各々は、それぞれの駆動信号V
1(t)及びV
2(t)が各々、それぞれの振動の実際のコースと同位相で働き、したがって偏向ユニット101の対応する共振動作を補助することも確実にする。
【0113】
この場合、第1及び第2の振動に対するこれらのそれぞれの閉ループ制御は、各々、そのそれぞれの勾配及び制御速度に関してそれぞれの他方の閉ループ制御の勾配及び制御速度の関数として動的に構成されるまたは構成可能であるように設計される。このチューニングは、これがアクスルがおおよそ同じ速度で振動し、したがってアクスルの元の共振周波数がおおよそ同じ速度で、特にバネ剛性が振幅の増大とともに高くなるときに高い周波数に向かってシフトされることを可能にするという点で有利である。
【0114】
最初から制御不安定性を生じるリスクを減らすか、または理想的には完全に排除するために、特に周波数または振幅が変化し得る最大速度は、制御ループ内で、場合によってはキャリブレーションプロセスの結果得られるキャリブレーションの一部としても、制限され得る。周波数は、通常、非常に高く、たとえば数キロヘルツであるので、非常によく制御された、安全な手順は、この目的のためにごく短い時間の間に行うこともできる。
【0115】
少なくとも1つの例示的な実施形態が上で説明されているが、多数の変更形態が存在することに留意されたい。また、説明されている例示的な実施形態は、非限定的な例を示すに過ぎず、本明細書において説明されているデバイス及び方法の範囲、適用可能性、または構成を制限することを意図されていないことにも留意されたい。むしろ、前の説明は、少なくとも1つの例示的な実施形態を実装するための指針を当業者に提供するものであり、例示的な実施形態において説明されている要素の動作及び配置構成における様々な変更が、付属の特許請求の範囲及びその法的等価物において定義される主題の範囲から逸脱することなく行われ得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0116】
100 マイクロスキャナ
101 偏向ユニット
105 駆動デバイス、特に圧電アクチュエータ
110 第3の基板、底板
115 第4の基板、スペーサ層
120 第1の基板
125 フレーム部分
130 ミラー部分
135 バネ要素
135a,b 可撓性バネ
136a,b 内側接続ウェブ
137a,b 外側接続ウェブ
140 金属ミラーコーティング、ミラー電極
145 第2の基板、キューポラ形状
150 基板接合材料
155 さらなる基板接合材料
160 ボンドワイヤ
165 上側電極(頂部電極)140を接続するための第1の基板120上の接続パッド
170 上側電極140を接続するための圧電アクチュエータ105上の接続パッド
175a キャビティ175の上側領域
175b キャビティ175の下側領域
180 構造化された、場合によっては多部底部電極
185 圧電アクチュエータと接触するためのハンダバンプを有するビア
190 底部電極を接続するための圧電アクチュエータ105上の接続パッド
195 制御デバイス
196 第1の振動に対する開ループ制御ユニットまたは閉ループ制御ユニット
196a 第1の振動に対する制御コントローラ
196b 第1の振動に対する差分検出器
196c 最初に第1の振動に対する閉ループコントローラまたはループフィルタ(位相ロックループ内の)
196d ルックアップテーブル
197 第2の振動に対する閉ループ制御ユニット
197a 第2の振動に対する制御コントローラ
197b 第2の振動に対する差分検出器
197c 第2の振動に対する閉ループコントローラまたはループフィルタ(位相ロックループ内の)
198 制御ループ及び位置測定におけるフィードバックに対する測定信号
199 制御信号または制御された可変信号
200 投影システム
210 光源、特にレーザー
220 観察野、特に投影表面
300 ジンバルレスMiniFarosミラーを有する偏向ユニット
400 ジンバルレスMiniFarosミラーの周波数応答
500 ジンバルレスKOLAミラーを有する偏向ユニット
600 狭窄し変形した平面照明領域
700 周波数応答
800 混合開ループ制御(開ループ)/閉ループ制御(閉ループ)のブロック図
900 一方向カップリング2軸制御(閉ループ)のブロック図
1000 双方向カップリング制御(閉ループ)のブロック図
A
1 第1の振動軸
A
2 第2の振動軸
F
1,F
2 駆動デバイスから偏向要素への軸固有の駆動力
K
1(...) 第1の軸にカップリングする機械軸
K
2(...) 第2の軸にカップリングする機械軸
L
1 入射光ビーム
L
2 ミラーのところで反射される光ビーム
V
1,V
2 駆動デバイスを作動させるための制御電圧
f 周波数
f
1 第1の振動の設定点周波数
f
2 第2の振動の設定点周波数
Δf 周波数差
f
TH 最小周波数距離
θ
1,i 第1の振動軸A
1への第1の振動の実際の振幅
θ
1,s 第1の振動軸A
1への第1の振動の設定点振幅
θ
2,i 第1の振動軸A
2への第2の振動の実際の振幅
θ
2,s 第1の振動軸A
2への第2の振動の設定点振幅
Δθ 振幅差
【数2】
【数3】
t 時間
【国際調査報告】