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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ヘッドホンのセット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240221BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H04R1/10 101Z
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555705
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2022056124
(87)【国際公開番号】W WO2022189543
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】BE2021/5179
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523345677
【氏名又は名称】アリール・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ドムス,ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】フォートマン,アルノ
【テーマコード(参考)】
5D005
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BA02
5D005BA03
5D005BA04
5D005BA12
5D220AA14
(57)【要約】
本発明は、2個のイヤカップを備えるヘッドホンのセットに関し、各イヤカップは別個の給送部にそれぞれ接続された可変サイズのドライバを備える。本発明は、ヘッドホンのセットを処理するための方法にも関する。本発明は、ヘッドホンのセットの使用にも関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのイヤカップ(101、102)を備えるヘッドホンのセット(100)であって、各イヤカップ(101、102)は別個の給送部にそれぞれ接続された可変サイズのドライバを備え、各イヤカップは、
- 少なくとも1つの主ドライバ(111)と、
- 前記主ドライバ(111)の直径よりも小さい直径を有する少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)とを備え、
前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)は、前記少なくとも1つの主ドライバ(111)によって規定される平面と比較して或る角度で位置決めされ、
前記主ドライバ(111)は、下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備え、
前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)は、前記下限カットオフ周波数fと前記上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える、ヘッドホンのセット(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの主ドライバ(111)はセンター位置に位置決めされ、前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)は、前記少なくとも1つの主ドライバ(111)の周りに位置決めされる、請求項1に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項3】
前記ヘッドホンは、耳覆い型ヘッドホンである、請求項1または2に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項4】
各イヤカップ(101、102)は、前記主ドライバ(111)の前記直径よりも小さい直径を有する、少なくとも3つの、好ましくは少なくとも4つの補助ドライバ(121、122、123、124)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの主ドライバ(111)の前記直径は、少なくとも25mmで最大60mm、好ましくは少なくとも30mmで最大55mm、好ましくは少なくとも35mmで最大50mm、例えば少なくとも40mmで最大45mmである、請求項1から4のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項6】
前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)の前記直径は、少なくとも8mmで最大24mm、好ましくは少なくとも12mmで最大20mm、例えば少なくとも14mmで最大18mm、例えば約16mmである、請求項1から5のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項7】
前記補助ドライバ(121、122、123、124)のうちの1つまたは複数は、センターイヤレベルに沿って観察される前記主ドライバ(111)に対して角度αで位置決めされ、αは、少なくとも5°~最大30°、好ましくは少なくとも10°~最大25°、好ましくは少なくとも12°~最大20°、好ましくは約15°である、請求項1から6のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項8】
前記補助ドライバ(121、122、123、124)のうちの1つまたは複数は、センターイヤ位置に沿って観察される前記主ドライバ(111)に対して角度βで位置決めされ、βは、少なくとも2°~最大25°、好ましくは少なくとも5°~最大20°、好ましくは少なくとも7°~最大15°、好ましくは約10°である、請求項1から7のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項9】
は、少なくとも300Hzで最大1000Hz、好ましくは少なくとも350Hzで最大800Hz、好ましくは少なくとも400Hzで最大700Hz、好ましくは少なくとも450Hzで最大600Hz、例えば、約500Hzである、請求項1から8のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項10】
は、少なくとも5.0kHzで最大12.0kHz、好ましくは少なくとも6.0kHzで最大11.0kHz、好ましくは少なくとも7.0kHzで最大10.0kHz、好ましくは少なくとも8.0kHzで最大9.5kHz、好ましくは約9.0kHzである、請求項1から9のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの主ドライバ(111)はハイパスフィルタ(151)およびローパスフィルタ(152)を並列に備える、ならびに/または、前記補助ドライバ(121、122、123、124)はハイパスフィルタ(151)およびローパスフィルタ(152)を直列に備える、請求項1から10のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項12】
前記主ドライバ(111)および前記補助ドライバ(121、122、123、124)の前記フィルタ(151、152)のうちの、1つまたは複数、好ましくは全ては、線形位相フィルタを備える、請求項1から11のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)を処理するための方法であって、
- 下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、前記音信号を前記主ドライバ(111)に送信するステップと、
- 前記下限カットオフ周波数fと前記上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、前記音信号を補助ドライバ(121、122、123、124)に送信するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記主ドライバ(111)に送信される前記音信号は、前記補助ドライバ(121、122、123、124)に送信される前記音信号と比較して遅延を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ゲーミングもしくはVRのための、排他的オーディオ体験のための、および/または、オーディオ/ビデオ体験の組み合わせのための、請求項1~12のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)または請求項13または14に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンのセットに関する。本発明は、ヘッドホンのセットを処理するための方法にも関する。本発明は、ヘッドホンのセットの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、没入および/またはサラウンドヘッドホンの市場は、2つの主要なセグメントを基本的に含む。
【0003】
最大のセグメントは、8Dまたはバイノーラルシステムに基づく。バイノーラルシステムは、現実をシミュレートすることを目指す。ボリューム、時間、および/またはカラーの差を両耳内のシミュレートされた音に付加するデジタルモデルを使用することによって、方向感覚が生成される。最も使用されるモデルは、Kemarモデルであり、平均サイズおよび形状を有する人工頭部に基づく。しかしながら、各頭部および/または耳の対が人ごとに特有である(特有な聴覚方向感覚をもたらす)ため、平均頭部に基づく結果は、決して100%満足できないことになる。この問題は、人の頭部/耳の特有なデジタルモデルを提供する頭部伝達関数(HRTFs:Head Related Transfer Functions)を使用することによって解決され得る。適合したソフトウェアを適用することによって、より個人化されたシミュレーションが提供され得る。しかしながら、バイノーラルレンダーが行われると、それを、別の計算モデルに変更することができない。HRTFを構築するために耳を測定し、それを7.1サラウンドフォーマットからバイノーラル体験に変換するために使用するシステムが存在する。しかしながら、そのようなシステムは、テレビジョン/ムービーに限定され、計算するための外部デバイスを必要とする。さらに、聴覚体験が多くの聴取者の間で共有される場合、各人について特定のレンダリングを提供することは、単に実行可能でない。したがって、任意の大規模バイノーラルシステムは、常に平均に基づくことになる。
【0004】
第2のセグメントは、サラウンドフォーマットを演奏するために、1つのイヤカップ内の複数のドライバおよびチャネルベースシステムを使用する。そのようなヘッドホンは、7.1規格が定位のために通常使用されるゲーミング業界で主に使用される。現在存在するシステムは、典型的には、イヤカップ内の1つまたは複数のドライバに起因する8つのチャネルを使用する。これらの8つのチャネルは、聴取フィールドにおける特定の角度に基づき、耳に対して異なる位置で演奏されるため、その結果は正確でない。さらに、そのようなシステムは、典型的には、種々のサイズの異なるドライバを備え、それは、周波数スペクトルが異なるセグメントにわたって均一に提供されることができないことを意味する。典型的には、全てのドライバも、耳に対して同じ角度を有し、それは、現実的に正確な音体験に対応しない。
【0005】
米国特許第3984885号は、前および後チャネルドライバユニットの間に遮音手段および前チャネルトーンのためのみのトーン制御手段を有する4チャネルヘッドホンの構造を記載し、上記遮音手段は、ローピッチトーンを伝達し、ハイピッチトーンを吸収する発泡材料で形成される。
【0006】
米国特許出願公開第2006/193481号は、アクティブクロスオーバーネットワークを有するヘッドセットを記載する。ヘッドセットは、有線接続または無線接続の一方を使用してオーディオ源に結合される。
【0007】
米国特許出願公開第2017/332186号は、イヤホンを較正する方法を記載し、方法は、ユーザの解剖学的構造の異なる部分(例えば、聴取者の耳介の一方または両方)に対応する頭部伝達関数(HRTF)を決定することを含む。
【0008】
米国特許第9918154号は、ヘッドホンで使用するための触覚振動ドライバを記載し、触覚振動ドライバは、支持構造と、支持構造に対して少なくとも1つの剛性部材を懸垂保持する少なくとも1つの懸垂保持部材と、複数の磁気部材とを含み、複数の磁気部材は、少なくとも1つの剛性部材に取り付けられ、少なくとも1つの剛性部材および少なくとも1つの懸垂保持部材の振動運動を駆動して、触覚振動ドライバの動作中に触覚振動を生成するように構成される。
【0009】
したがって、より現実的な聴覚体験を可能にするヘッドホンについての必要性が存在する。歪みの少ない信号を可能にするヘッドホンについての必要性が存在する。ボリュームを低減することを可能にするヘッドホンについての必要性が存在する。聴取するのに疲れが少ないヘッドホンについての必要性が存在する。聴覚損傷のリスクを下げるヘッドホンについての必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記必要性のうちの1つまたは複数を満たすために、本発明者等は、ヘッドホンのセットおよびヘッドホンのセットを処理するための方法を開発した。このヘッドホンのセットおよび本発明による方法ならびにその実施形態の利点は、本明細書で説明される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特に、本発明は、2つのイヤカップを備えるヘッドホンのセットに関し、各イヤカップは別個の給送部にそれぞれ接続された可変サイズのドライバを備え、各イヤカップは、
- 少なくとも1つの主ドライバと、
- 主ドライバの直径よりも小さい直径を有する少なくとも2つの補助ドライバとを備える。最も好ましくは、少なくとも2つの補助ドライバは、少なくとも1つの主ドライバによって規定される平面と比較して或る角度で位置決めされる。最も好ましくは、主ドライバは、下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える。最も好ましくは、少なくとも2つの補助ドライバは、下限カットオフ周波数fと上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える。
【0012】
幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの主ドライバはセンター位置に位置決めされ、少なくとも2つの補助ドライバは、少なくとも1つの主ドライバの周りに位置決めされる。
【0013】
幾つかの好ましい実施形態において、ヘッドホンは、耳覆い型ヘッドホンである。
【0014】
幾つかの好ましい実施形態において、各イヤカップは、主ドライバの直径よりも小さい直径を有する、少なくとも3つの、好ましくは少なくとも4つの補助ドライバを備える。
【0015】
幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの主ドライバの直径は、少なくとも25mmで最大60mm、好ましくは少なくとも30mmで最大55mm、好ましくは少なくとも35mmで最大50mm、例えば少なくとも40mmで最大45mmである。
【0016】
幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも2つの補助ドライバの直径は、少なくとも8mmで最大24mm、好ましくは少なくとも12mmで最大20mm、例えば少なくとも14mmで最大18mm、例えば約16mmである。
【0017】
幾つかの好ましい実施形態において、補助ドライバのうちの1つまたは複数は、センターイヤレベル(前後軸)に沿って観察される主ドライバに対して角度αで位置決めされ、αは、少なくとも5°~最大30°、好ましくは少なくとも10°~最大25°、好ましくは少なくとも12°~最大20°、好ましくは約15°である。
【0018】
幾つかの好ましい実施形態において、補助ドライバのうちの1つまたは複数は、センターイヤ位置(下部上部軸)に沿って観察される主ドライバに対して角度βで位置決めされ、βは、少なくとも2°~最大25°、好ましくは少なくとも5°~最大20°、好ましくは少なくとも7°~最大15°、好ましくは約10°である。
【0019】
幾つかの好ましい実施形態において、fは、少なくとも300Hzで最大1000Hz、好ましくは少なくとも350Hzで最大800Hz、好ましくは少なくとも400Hzで最大700Hz、好ましくは少なくとも450Hzで最大600Hz、例えば、約500Hzである。
【0020】
幾つかの好ましい実施形態において、fは、少なくとも5.0kHzで最大12.0kHz、好ましくは少なくとも6.0kHzで最大11.0kHz、好ましくは少なくとも7.0kHzで最大10.0kHz、好ましくは少なくとも8.0kHzで最大9.5kHz、好ましくは約9.0kHzである。
【0021】
幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの主ドライバはハイパスフィルタおよびローパスフィルタを並列に備える。幾つかの好ましい実施形態において、補助ドライバはハイパスフィルタおよびローパスフィルタを直列に備える。幾つかの好ましい実施形態において、主ドライバおよび補助ドライバのフィルタのうちの、1つまたは複数、好ましくは全ては、線形位相フィルタを備える。
【0022】
本発明は、本明細書で説明したヘッドホンのセットを処理するための方法およびその実施形態にも関する。方法は、最も好ましくは、
- 下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、音信号を主ドライバに送信するステップと、
- 下限カットオフ周波数fと上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、音信号を補助ドライバに送信するステップと
を含む。
【0023】
幾つかの好ましい実施形態において、主ドライバに送信される音信号は、補助ドライバに送信される音信号と比較して遅延を含む。
【0024】
本発明は、好ましくはゲーミングもしくはVRのための、排他的オーディオ体験のための、および/または、オーディオ/ビデオ体験の組み合わせのための、本明細書で説明するヘッドホンのセットおよびその実施形態の使用、または、本明細書で説明する方法およびその実施形態の使用にも関する。
【0025】
本発明の実施形態は、右方向から耳を励起することによって正しい定位が得られるという利点を有する。本発明の実施形態は、実施形態がより現実的な聴覚体験を可能にするという利点を有する。本発明の実施形態は、実施形態が歪みの少ない信号を可能にするという利点を有する。本発明の実施形態は、実施形態がボリュームを低減することを可能にするという利点を有する。本発明の実施形態は、実施形態が聴取するのに疲れが少ないという利点を有する。本発明の実施形態は、実施形態が聴覚損傷のリスクを下げるという利点を有する。
【0026】
本発明の特定の実施形態の図の以下の説明は、本質の単なる例示であり、本教示、それらのアプリケーション、または使用を制限することを意図されない。図面全体を通して、対応する参照数字は、以下の部分および特徴を示す:
100-ヘッドホンのセット;101-第1のイヤカップ;102-第2のイヤカップ;111-主ドライバ;121、122、123、124-補助ドライバ;150-マルチチャネル入力;151-ハイパスフィルタ;152-ローパスフィルタ;153-増幅器;X-前;X’-後;Y-下部;Y’-上部;X-X’-センターイヤレベル(前後軸);Y-Y’-センターイヤ位置(下部上部軸);α-X-X’軸に沿って観察される主ドライバと比較したドライバ(複数可)の角度;β-Y-Y’軸に沿って観察される主ドライバと比較したドライバ(複数可)の角度。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】2つのイヤカップを備えるヘッドホンのセットを示す図である。
図1B】本発明の或る実施形態によるヘッドホンのセットの1つのイヤカップのレイアウトを示す図である。
図1C】各補助ドライバが耳の中心にどのように向けられるかを示す図であり、それは、方向感覚を改善する。
図2】イヤカップの各主方向(上、下、前、および後)について1つのドライバが存在する4つの補助ドライバを備える代替の構成を示す図である。
図3A】イヤカップの前用に1つのドライバおよび後用に1つのドライバが存在する2つの補助ドライバを備えるさらなる代替の構成を示す図である。
図3B】イヤカップの前用に1つのドライバおよび後用に1つのドライバが存在する2つの補助ドライバを備えるさらなる代替の構成を示す図である。
図4A】イヤカップの上部用に2つのドライバおよび下部用に1つのドライバが存在する3つの補助ドライバを備えるさらなる代替の構成を示す図である。
図4B】イヤカップの上部用に2つのドライバおよび下部用に1つのドライバが存在する3つの補助ドライバを備えるさらなる代替の構成を示す図である。
図5】本発明の或る実施形態によるヘッドホンのセットで使用されるハードウェアの電子ブロックダイヤグラムである。
図6A】補助ドライバが本発明の或る実施形態において動作する周波数範囲を示す図である。
図6B】主ドライバが図6Aと同じ実施形態について動作する周波数範囲を示す図である。
図7】本発明の或る実施形態による、両方のドライバタイプがそこで動作する必要がある範囲を作成するフィルタの設計のブロックダイヤグラムである。
図8】並列ドライバと角度ドライバとの差を示す図である。
図9】ローパスフィルタのマグニチュード応答および位相応答を示す図である。
図10】位相応答の整列なしでフィルタが結合されるときに起こり得るコムフィルタリングを示す図である。
図11】主ドライバがそこでアクティブであるとすることができる3つのレンジ全てを示す、主ドライバの空間的中範囲のさらなる使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、特定の実施形態に関して説明されることになるが、本発明は、それに限定されるのではなく、クレームによってのみ限定される。クレーム中の任意の参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されないものとする。
【0029】
本明細書で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、別段に文脈が明確に指示しない限り、単数と複数の両方の参照物を含む。
【0030】
本明細書で使用される用語「備えている(comprising)」、「備える(comprises)」、「で構成される(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包含的またはオープンエンドであり、さらなる未記載の部材、要素、または方法ステップを排除しない。記載した部材、要素、または方法ステップを参照するとき、用語「備えている」、「備える」、「で構成される」は、上記記載した部材、要素、または方法ステップ「からなる(consist of)」実施形態も含む。
【0031】
さらに、説明およびクレームにおける、第1、第2、第3、および同様な用語は、指定されない限り、同様の要素を区別するために使用され、必ずしもシーケンシャルまたは時間的順序を説明するために使用されない。そのように使用される用語が適切な状況下で交換可能であること、および、本明細書で説明する本発明の実施形態が、本明細書で説明されるか示される以外のシーケンスで動作することが可能であることが理解される。
【0032】
パラメータ、量、時間的継続期間、および同様なもの等の測定可能な値を参照するときに本明細書で使用される用語「約(about)」は、指定値のおよび指定値からの、+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、そしてなおより好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含することを意味される。そのような変動は、開示される本発明において実施するのに適切である限りである。修飾子「約」が指す値は、それ自体も具体的に、また好ましくは開示されることが理解される。
【0033】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、全ての数字およびそれぞれの範囲内で部分合計された部分ならびに挙げたエンドポイントを含む。
【0034】
別段に規定しない限り、技術的および科学的用語を含む、本発明を開示するときに使用される全ての用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針によって、説明において使用される用語についての規定は、本発明の教示をよりよく認識するために含まれる。本明細書で使用される用語または規定は、本発明の理解を補助するためにのみ提供される。
【0035】
「1つの実施形態(one embodiment)」または「或る実施形態(an embodiment)」に対する本明細書全体を通した参照は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、本明細書全体を通して種々の場所におけるフレーズ「1つの実施形態において(in one embodiment)」または「或る実施形態において(in an embodiment)」の出現は、全てが同じ実施形態を必ずしも参照するわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかになるように、任意の適切な方法で組み合わされ得る。さらに、本明細書で説明する幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれる幾つかの特徴を含むが他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されることになるように、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味される。例えば、添付クレームおよび説明において、特許請求されるかまたは説明される実施形態のうちの任意の実施形態は、任意の組み合わせで使用され得る。
【0036】
特に、本発明は、2つのイヤカップを備えるヘッドホンのセットに関し、各イヤカップは別個の給送部にそれぞれ接続された可変サイズのドライバを備え、各イヤカップは、
- 少なくとも1つの主ドライバと、
- 主ドライバの直径よりも小さい直径を有する少なくとも2つの補助ドライバとを備える。最も好ましくは、少なくとも2つの補助ドライバは、少なくとも1つの主ドライバによって規定される平面と比較して或る角度で位置決めされる。最も好ましくは、主ドライバは、下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える。最も好ましくは、少なくとも2つの補助ドライバは、下限カットオフ周波数fと上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える。
【0037】
周波数スペクトルが2つ以上のセット(低周波数および高周波数)に分割されるヘッドホンは、典型的には、高周波数範囲用の空間ドライバを備える。しかしながら、そのような高周波数空間ドライバが(鋭)角で位置決めされると、より高い周波数がより低い周波数よりも屈折性が小さいため、高周波数は鼓膜に不適切に達する。これは、最適でない空間体験およびアーチファクトの生成をもたらす。本発明において、高周波数は主ドライバによって提供されるが、中範囲周波数は、依然として、空間体験が得られることを可能にする。これは、最大音品質と組み合わせた定位の最適効果をもたらす。
【0038】
本発明は、本明細書でヘッドセットまたはイヤホンのセットとも呼ばれるヘッドホンのセットに関する。
【0039】
幾つかの好ましい実施形態において、ヘッドホンは耳覆い型ヘッドホンである。
【0040】
耳覆い型ヘッドホンは、オーバーイヤヘッドホンとしても知られ得る。ヘッドホンの外側は、ヘッドホンの共有対と同一とすることができる。耳覆い型ヘッドホンのセットは、典型的には、2つのイヤカップを備える。幾つかの実施形態において、両方のイヤカップは同一である。幾つかの実施形態において、両方のイヤカップ内のドライバの構成は同一である。幾つかの実施形態において、一方のイヤカップ内のドライバの構成は他のイヤカップの鏡像である。
【0041】
幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットは、入力ユニットを備える、好ましくは、例えば、USB-C、RJ45、S/PDIF、光コネクタ、またはHDMI(登録商標)から選択されるマルチチャネル入力を扱うように構成される。幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットはUSB-C入力を備える。幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットは、無線システム、好ましくは、マルチチャネル入力、例えばBluetooth(登録商標)、WiFi、またはRFを扱うように構成される無線システムを備える。
【0042】
幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットは、電池、好ましくは充電式電池を備える。
【0043】
幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットは、1つまたは複数のマイクロフォンを備える。幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットは、ノイズ打ち消しユニットを備える。
【0044】
幾つかの実施形態において、ヘッドホンのセットは、頭部追跡ユニットを備える、例えば、ジャイロスコープを備える。
【0045】
各イヤカップは、主ドライバおよび複数の補助ドライバを備える。主ドライバは、大きいドライバ、センタードライバ、またはその組み合わせとも呼ばれ得る。補助ドライバは、小さいドライバ、空間ドライバ、角度ドライバ、サラウンディングドライバ、またはその組み合わせとも呼ばれ得る。
【0046】
幾つかの実施形態において、主ドライバはダイヤフラムドライバである。幾つかの実施形態において、補助ドライバはダイヤフラムドライバである。幾つかの実施形態において、主ドライバは、可動コイルドライバ、ダイナミックドライバ、骨伝導ドライバ、および/または平面ドライバである。幾つかの実施形態において、補助ドライバは、可動コイルドライバ、ダイナミックドライバ、および/またはMEMSドライバ、あるいはその組み合わせである。
【0047】
主ドライバは、低周波数ならびに高周波数を共に扱うことができる必要があるため、好ましくは、全範囲ドライバ、例えば、20Hzと20kHzとの間の範囲を有するドライバである。補助ドライバは、中間周波数を適切に扱うことができるだけである必要があるため、例えば、500Hzと10kHzとの間の、より制限された周波数応答を有するドライバが使用され得る。
【0048】
好ましくは、上記ドライバのそれぞれは、空間体験を改善する別個の給送部を有する。したがって、好ましくは、各(主および補助)ドライバは、それ自身の増幅器を有する。例えば、各カップについて1つの大きいドライバおよび4つの小さいドライバが存在する場合、これは、各イヤカップについて5つのチャネル(したがって、5つの増幅器)、または、ヘッドホンの全体のセットについて10のチャネル(したがって、10の増幅器)をもたらす。
【0049】
本発明が、マルチチャネルオーディオおよび複数のドライバを使用し、それが、シミュレーション、例えばバイノーラルシミュレーションと比較して、より現実的な聴覚体験を提供することは、本発明およびその実施形態の利点である。
【0050】
全体周波数範囲の複数のセグメントについて複数のドライバを使用することによって、全体周波数スペクトルが1つのドライバによって提供される従来のヘッドホンと特に比較して、ドライバが少ない充電負荷を受けることは、本発明およびその実施形態の利点である。これは、歪みが少ない信号をもたらす。
【0051】
幾つかの好ましい実施形態において、各イヤカップは、主ドライバの直径よりも小さい直径を有する、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの補助ドライバを備える。幾つかの実施形態において、各イヤカップは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは4つの補助ドライバを備える。幾つかの実施形態において、各イヤカップは、最大24、好ましくは最大20、好ましくは最大16、好ましくは最大12、好ましくは最大10、好ましくは最大8、好ましくは最大6、好ましくは最大5、好ましくは4つの補助ドライバを備える。幾つかの実施形態において、各イヤカップは、少なくとも2~最大24、好ましくは少なくとも2~最大20、好ましくは少なくとも2~最大16、好ましくは少なくとも2~最大12、好ましくは少なくとも3~最大10、好ましくは少なくとも3~最大8、好ましくは少なくとも3~最大6、好ましくは少なくとも3~最大5、好ましくは4つの補助ドライバを備える。
【0052】
幾つかの実施形態において、各イヤカップは、正確に1つの主ドライバを備える。
【0053】
幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの主ドライバはセンター位置に位置決めされ、少なくとも2つの補助ドライバは少なくとも1つの主ドライバの周りに位置決めされる。
【0054】
幾つかの実施形態において、補助ドライバのうちの2つの補助ドライバ間の水平距離は、少なくとも20mm~最大60mm、好ましくは少なくとも30mm~最大50mm、例えば約40mmである。幾つかの実施形態において、補助ドライバのうちの2つの補助ドライバ間の垂直距離は、少なくとも20mm~最大50mm、好ましくは少なくとも25mm~最大40mm、例えば約30mmである。幾つかの実施形態において、補助ドライバのうちの2つの補助ドライバ間の絶対距離は、少なくとも20mm~最大60mm、好ましくは少なくとも25mm~最大50mm、例えば少なくとも30mm~最大40mmである。
【0055】
幾つかの実施形態において、補助ドライバのミッドポイントと主ドライバのミッドポイントとの間の水平距離は、少なくとも0mm~最大30mm、好ましくは少なくとも5mm~最大25mm、好ましくは少なくとも10mm~最大20mm、例えば約15mmである。幾つかの実施形態において、補助ドライバのミッドポイントと主ドライバのミッドポイントとの間の垂直距離は、少なくとも0mm~最大40mm、好ましくは少なくとも5mm~最大35mm、好ましくは少なくとも10mm~最大30mm、好ましくは少なくとも15mm~最大25mm、例えば約20mmである。幾つかの実施形態において、補助ドライバのミッドポイントと主ドライバのミッドポイントとの間の絶対距離は、少なくとも5mm~最大50mm、好ましくは少なくとも10mm~最大40mm、好ましくは少なくとも15mm~最大30mm、例えば少なくとも20mm~最大25mmである。
【0056】
補助ドライバの配置は、図に示すように、本明細書で前後軸とも呼ばれるセンターイヤレベルに関して対称であるとすることができる。配置は、図に示すように、本明細書で下部上部軸とも呼ばれるセンターイヤ位置に関して対称であるとすることができる。配置は、センターイヤレベルに関して非対称であるとすることができる。配置は、センターイヤ位置に関して非対称であるとすることができる。
【0057】
補助ドライバの数に応じて、補助ドライバの配置は、三角形(例えば、二等辺三角形または正三角形)、四角形(例えば、長方形、ダイヤモンド、または正方形)、(正)五角形、または(正)六角形を形成することができる。本明細書で使用されるように、用語「小さい(smaller)」および「大きい(larger)」は、ドライバの相対的サイズを指す。補助ドライバが主ドライバの直径よりも小さい直径を有すること、および、逆に、主ドライバの直径が補助ドライバの直径よりも大きいことが理解される。さらに、ドライバの直径は、好ましくは、所望の周波数を適切に放出するのに適する。主ドライバの直径は、好ましくは、低周波数を適切に放出するがイヤカップの内部にやはり嵌合するのに十分に大きい。
【0058】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの主ドライバの直径は、少なくとも25mm、好ましくは少なくとも30mm、好ましくは少なくとも35mm、例えば少なくとも40mmである。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの主ドライバの直径は、最大60mm、好ましくは最大55mm、好ましくは最大50mm、例えば最大45mmである。幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの主ドライバの直径は、少なくとも25mmで最大60mm、好ましくは少なくとも30mmで最大55mm、好ましくは少なくとも35mmで最大50mm、例えば少なくとも40mmで最大45mmである。
【0059】
補助ドライバの直径は、好ましくは、中間周波数を適切に放出するがイヤカップの内部にやはり嵌合するのに十分に大きい。補助ドライバは全て、同じ直径を有することができる、または、サイズが異なる場合がある。好ましくは、補助ドライバは同じ直径を有する。
【0060】
幾つかの実施形態において、少なくとも2つの補助ドライバの直径は、少なくとも8mm、好ましくは少なくとも12mm、例えば少なくとも14mmである。幾つかの実施形態において、少なくとも2つの補助ドライバの直径は、最大24mm、好ましくは最大20mm、例えば最大18mmである。幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも2つの補助ドライバの直径は、少なくとも8mmで最大24mm、好ましくは少なくとも12mmで最大20mm、例えば少なくとも14mmで最大18mm、例えば約16mmである。
【0061】
従来技術において、ドライバは、通常、耳に垂直な、同じ方向に音波を提供するために位置決めされるが、本角度位置は、方向感覚を改善する。これらの特定の角度が、音体験も改善しより自然な音も提供することを、本発明者等は意外にも見出した。別個の給送部を特定の方法でフィルタリングすることが、角度位置決めによって引き起こされる任意の不快なアーチファクトも除去することを、本発明者等は意外にも見出した。
【0062】
したがって、音波が、正しい角度から外耳道に近づくことを、イヤカップ内のドライバが可能にし、それが、より現実的かつ快適な聴覚体験を提供することは、本発明およびその実施形態の利点である。
【0063】
ドライバを或る角度に位置決めすることは、不快なアーチファクトをもたらす場合がある。しかしながら、補助ドライバが中間周波数音波を含みながら、主ドライバが、低周波数および高周波数音波を結合する場合、そのような不快なアーチファクトを回避でき、全体音品質が改善されることを、本発明者等は意外にも見出した。
【0064】
本明細書で使用されるように、角度αおよびβは、主ドライバまたはイヤカップに対する補助ドライバの角度として規定される。主ドライバは、典型的には、耳に垂直な、イヤカップと同じ平面内に位置決めされることになる。
【0065】
角度αは、図において立証されるように、センターイヤレベル(前後軸)に沿って観察されるときに見られる角度として規定される。角度αは、典型的には、イヤカップの下部または上部に位置決めされた補助ドライバを規定する。
【0066】
角度αは、図1Cおよび4Bに示される。角度αの正の値は、主ドライバの方向を指す補助ドライバの角度を指し、一方、角度αの負値は、主ドライバから外方を指す補助ドライバの角度を指すことになる。好ましくは、角度αは正であり、補助ドライバは、図1Cおよび4Bに示すように、主ドライバの方向に角度付けされる。
【0067】
角度βは、図において立証されるように、センターイヤ位置(下部上部軸)に沿って観察されるときに見られる角度として規定される。角度βは、典型的には、イヤカップの前または後に位置決めされた補助ドライバを規定する。
【0068】
角度βは、図1C、3B、および4Bに示される。角度βの正の値は、主ドライバの方向を指す補助ドライバの角度を指し、一方、角度βの負値は、主ドライバから外方を指す補助ドライバの角度を指すことになる。好ましくは、角度βは正であり、補助ドライバは、図1C、3B、および4Bに示すように、主ドライバの方向に角度付けされる。
【0069】
角度αおよび/またはβは、補助ドライバのミッドポイントと主ドライバのミッドポイントとの間の距離に依存するとすることができる。補助ドライバが、離れて位置決めされればされるほど、角度αおよびβは、好ましくはより大きい。
【0070】
幾つかの実施形態において、補助ドライバ、好ましくは、イヤカップの上部または下部に位置決めされた補助ドライバのうちの1つまたは複数は、センターイヤレベル(前後軸)に沿って観察される主ドライバに対して角度αに位置決めされ、αは、少なくとも5°、好ましくは少なくとも10°、好ましくは少なくとも12°、好ましくは約15°である。幾つかの実施形態において、αは、最大30°、好ましくは最大25°、好ましくは最大20°、好ましくは約15°である。幾つかの好ましい実施形態において、αは、少なくとも5°~最大30°、好ましくは少なくとも10°~最大25°、好ましくは少なくとも12°~最大20°、好ましくは約15°である。
【0071】
幾つかの実施形態において、補助ドライバ、好ましくは、イヤカップの前または後に位置決めされた補助ドライバのうちの1つまたは複数は、センターイヤ位置(下部上部軸)に沿って観察される主ドライバに対して角度βに位置決めされ、βは、少なくとも2°、好ましくは少なくとも5°、好ましくは少なくとも7°、好ましくは約10°である。幾つかの実施形態において、βは、最大25°、好ましくは最大20°、好ましくは最大15°、好ましくは約10°である。幾つかの好ましい実施形態において、βは、少なくとも2°~最大25°、好ましくは少なくとも5°~最大20°、好ましくは少なくとも7°~最大15°、好ましくは約10°である。
【0072】
幾つかの実施形態において、角度αは、角度βについて上記で説明したように制限される。幾つかの実施形態において、角度βは、角度αについて上記で説明したように制限される。
【0073】
幾つかの実施形態において、角度αは角度βよりも大きい。幾つかの実施形態において、角度αは、角度βよりも、少なくとも2°大きい、好ましくは少なくとも4°大きい、好ましくは少なくとも6°大きい、好ましくは少なくとも8°大きい、例えば約10°大きい。幾つかの実施形態において、角度αは、角度βよりも、最大20°大きい、好ましくは最大16°大きい、好ましくは最大14°大きい、好ましくは最大12°大きい、例えば約10°大きい。幾つかの実施形態において、角度αは、角度βよりも、少なくとも2°~最大20°大きい、好ましくは少なくとも4°~最大16°大きい、好ましくは少なくとも6°~最大14°大きい、好ましくは少なくとも8°~最大12°大きい、例えば約10°大きい。
【0074】
幾つかの実施形態において、角度βは、上記で説明したように角度αよりも大きい。
【0075】
幾つかの実施形態において、角度αは角度βに等しい。
【0076】
特定の処理が、周波数スペクトルの種々のセグメントを区別するために使用されることは本発明およびその実施形態の利点である。
【0077】
本明細書で使用されるように、用語、低周波数、中間周波数、および高周波数音波は、相対的用語である。高周波数音波が中間周波数音波よりも高い周波数を有すること、および、中間周波数音波が低周波数音波よりも高い周波数を有することが理解される。
【0078】
低周波数範囲、例えば、20Hz~500Hzは、人間の脳が定位することが難しいとわかる周波数範囲に対応する。そのため、この周波数範囲は、好ましくはセンター位置で構成される主ドライバによってカバーされ得る。主ドライバは、補助ドライバよりも大きい直径も有し、それは、主ドライバが、低周波数を最適に提供することを可能にする。
【0079】
中間周波数範囲、例えば、500Hz~9000Hzは、人間の脳が音を定位するために使用する周波数範囲に対応する。これらの周波数を放出する角度付き補助ドライバは、ユーザが、音を最適に定位することを可能にする。
【0080】
高周波数範囲、例えば、9000Hz~20000Hzは、「オープンな(open)」または「新鮮な(fresh)」音体験を提供するために重要である。短い波長および対応する低いエネルギーのせいで、これらの周波数は、イヤキャビティに入るように曲がることが難しいため、或る角度下で捕捉することが難しい。主ドライバは、これらの周波数が完全に認識されるための直接エントリーポイントを提供する。
【0081】
本明細書で使用されるように、用語「カットオフ周波数(cut-off frequency)」は、コーナー周波数または折点周波数とも呼ばれ得る。本明細書で使用されるように、カットオフ周波数は、3dBポイントとして規定される。
【0082】
幾つかの実施形態において、カットオフ周波数の傾斜は、少なくとも6dB/オクターブ、好ましくは少なくとも12dB/オクターブ、例えば約24dB/オクターブである。幾つかの実施形態において、カットオフ周波数の傾斜は、最大48dB/オクターブ、好ましくは最大36dB/オクターブ、例えば約24dB/オクターブである。幾つかの実施形態において、カットオフ周波数の傾斜は、少なくとも6dB/オクターブで最大48dB/オクターブ、好ましくは少なくとも12dB/オクターブで最大36dB/オクターブ、例えば約24dB/オクターブである。本明細書で使用されるように、用語「下限カットオフ周波数」またはfは、低周波数と中間周波数との間のカットオフ周波数を指す。本明細書で使用されるように、用語「上限カットオフ周波数」またはfは、中間周波数と高周波数との間のカットオフ周波数を指す。
【0083】
主ドライバが下限カットオフ周波数fよりも下で上限カットオフ周波数fよりも上で動作し、一方、補助ドライバが、下限カットオフ周波数fと上限カットオフ周波数fとの間で動作することが理解される。
【0084】
主ドライバが低周波数および高周波数音波を結合し、一方、補助ドライバが中間周波数音波を含む場合、不快なアーチファクトを回避でき、全体音品質が改善されることを、本発明者等は意外にも見出した。
【0085】
幾つかの実施形態において、fは、少なくとも300Hz、好ましくは少なくとも350Hz、好ましくは少なくとも400Hz、好ましくは少なくとも450Hz、例えば約500Hzである。幾つかの実施形態において、fは、最大1000Hz、好ましくは最大800Hz、好ましくは最大700Hz、好ましくは最大600Hz、例えば約500Hzである。幾つかの好ましい実施形態において、fは、少なくとも300Hzで最大1000Hz、好ましくは少なくとも350Hzで最大800Hz、好ましくは少なくとも400Hzで最大700Hz、好ましくは少なくとも450Hzで最大600Hz、例えば約500Hzである。
【0086】
幾つかの実施形態において、fは、少なくとも5.0kHz、好ましくは少なくとも6.0kHz、好ましくは少なくとも7.0kHz、好ましくは少なくとも8.0kHz、好ましくは約9.0kHzである。幾つかの実施形態において、fは、最大12.0kHz、好ましくは最大11.0kHz、好ましくは最大10.0kHz、好ましくは最大9.5kHz、好ましくは約9.0kHzである。幾つかの好ましい実施形態において、fは、少なくとも5.0kHzで最大12.0kHz、好ましくは少なくとも6.0kHzで最大11.0kHz、好ましくは少なくとも7.0kHzで最大10.0kHz、好ましくは少なくとも8.0kHzで最大9.5kHz、好ましくは約9.0kHzである。
【0087】
好ましくは、fおよびfは、主ドライバおよび補助ドライバのそれぞれについて正確に同じであるが、ドライバ間にある程度の誤差マージンが存在する場合がある。好ましくは、差は、0Hzまたはそれに近い。
【0088】
幾つかの実施形態において、各ドライバについてのf間の差は、最大20.0%、好ましくは最大10.0%、好ましくは最大5.0%、好ましくは最大2.0%、好ましくは最大1.0%、例えば最大0.5%、例えば最大0.2%、例えば最大0.1%である。幾つかの実施形態において、各ドライバについてのf間の差は、最大100Hz、好ましくは最大50Hz、好ましくは最大20Hz、好ましくは最大10Hz、好ましくは最大5Hz、例えば最大2Hz、例えば最大1Hzである。
【0089】
幾つかの実施形態において、各ドライバについてのf間の差は、最大20.0%、好ましくは最大10.0%、好ましくは最大5.0%、好ましくは最大2.0%、好ましくは最大1.0%、例えば最大0.5%、例えば最大0.2%、例えば最大0.1%である。幾つかの実施形態において、各ドライバについてのf間の差は、最大1000Hz、好ましくは最大500Hz、好ましくは最大200Hz、好ましくは最大100Hz、好ましくは最大50Hz、例えば最大20Hz、例えば最大10Hzである。
【0090】
幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの主ドライバは、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタを並列に備える。幾つかの好ましい実施形態において、補助ドライバは、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタを直列に備える。
【0091】
好ましくは、主ドライバがイヤカップ内でセンター位置を有する幾つかの実施形態において、主ドライバは、下限カットオフ周波数fと上限カットオフ周波数fとの間で中間周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える別個の(さらなる)チャネルを備える。これは、主ドライバが、さらなる空間ドライバとして働くことを可能にし、音品質および知覚を改善する。
【0092】
本ヘッドホンのセットは、耳に向かう方向感覚を改善するために角度ドライバを使用する。角度ドライバは、特定の距離にわたって整列することが不可能であるため、ヘッドホンで使用されるハイパスフィルタおよびローパスフィルタの位相応答を整列させる可能性は存在しない。しかしながら、ドライバの位相応答を整列させないことは、図10に示すように、コムフィルタリングとして知られる副作用をもたらす場合がある。コムフィルタリングの可聴効果は、不快として説明され得る。
【0093】
幾つかの好ましい実施形態において、主ドライバおよび補助ドライバのフィルタのうちの1つまたは複数、好ましくは全ては、線形位相フィルタを備える。これは、角度設定によって引き起こされる不快なアーチファクトのさらなる低減を可能にするために、以外にも見出された。
【0094】
線形位相クロスオーバーフィルタを使用することによって、種々のドライバ間に位相差が存在しないことは、本発明の実施形態の利点である。これは、コムフィルタ効果を回避することを可能にし、改善された聴覚を提供する。
【0095】
線形位相フィルタの使用は、ドライバ間の時間差を使用することも可能にする。これは、より小さい空間ドライバからやって来る音が、耳に最初に到達することになるように主ドライバを遅延させることを可能にする。したがって、人間の脳は、それらのドライバに集中することになり、よりよい空間体験をもたらす。
【0096】
種々のドライバにわたって標準的なステレオ信号を分割する処理アルゴリズムを使用することによって、より空間的な聴覚体験が送出され得ることは、本発明および本発明の実施形態の利点である。さらに、より空間的であるミュージックが、聴取するのがより疲れない、および/または、より低いボリュームで演奏され得ることが見出された。これは、一時的または永久的聴覚損傷のリスクを低減することもできる。
【0097】
本発明は、本明細書で説明したヘッドホンのセットを処理するための方法およびその実施形態にも関する。方法は、最も好ましくは、
- 下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、音信号を主ドライバに送信するステップと、
- 下限カットオフ周波数fと上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、音信号を補助ドライバに送信するステップと
を含む。
【0098】
幾つかの好ましい実施形態において、主ドライバに送信される音信号は、補助ドライバに送信される音信号と比較して(小さい)遅延を含む。この遅延は、ユーザの脳がより小さい空間ドライバに集中することを可能にし、方向感覚を改善する。小さい遅延を導入することによって、脳に最初に到達する或る角度からやって来る聴覚信号、これらの音は、1次と考えられることになり、定位の改善された知覚をもたらす。少し遅れて到達する2次信号は、人間の脳によって1次信号とマージされることになり、それは、制限されたマージン内で音をマージすることを完全に可能にし、ハース効果(Haas effect)としても知られる。
【0099】
遅延は、好ましくは少なくとも0.01ms、好ましくは少なくとも0.02ms、好ましくは少なくとも0.05ms、好ましくは少なくとも0.10ms、例えば少なくとも0.20msである。遅延は、好ましくは最大20.0ms、好ましくは最大10.0ms、好ましくは最大5.0ms、好ましくは最大2.0ms、好ましくは最大1.0ms、例えば最大0.50ms、例えば最大0.30msである。
【0100】
幾つかの実施形態において、1つまたは複数、例えば全ての補助ドライバの極性は、主ドライバと比較して反転される。幾つかの実施形態において、1つまたは複数の補助ドライバの極性は、1つまたは複数の他の補助ドライバと比較して反転される。本発明の方法およびその実施形態は、それが、チャネルベース方法である代わりに、オブジェクトベース方法として好ましくは実施されるという利点を有する。
【0101】
チャネルベースオーディオにおいて、複数のチャネルは、1つの特定の音源に直接割り当てられる。仮想音源と音源との比は、ミックス(mix)が生成されるときに固定される。これは、音がそこで演奏されるシステムが、ミックスがそれについて生成されたシステムに正確に一致する必要があることを意味する。これは、標準未満の音体験をもたらし得る。
【0102】
オブジェクトベースオーディオにおいて、固定チャネルおよび固定位置に対して参照が行われるのではなく、個々の空間情報を有する仮想音源が使用される。仮想音源と音源との比は、エンドユーザの側で計算されるだけである。この計算は、エンドユーザのシステムに依存する。そのような技法を使用することによって、生成されたミックスは、エンドユーザに最適に提供される。
【0103】
幾つかの実施形態において、チャネルが特定の角度からやって来ることを可能にするために計算モデルが使用される。例えば、サラウンドムービーのセンターチャネルは、少なくとも2つのドライバによってブロードキャストされ得る。しかしながら、ドライバのボリュームの比は、到来する音を人間の脳がセンターとして知覚するように適合され得る。
【0104】
幾つかの実施形態において、方法は、コンピュータ実装式方法である。幾つかの実施形態において、コンピュータ実装式方法は、パニング、例えば、ベクトルベース振幅パニング(VBAP:vector base amplitude panning)またはベクトルベース強度パニング(VBIP:vector base intensity panning)を使用する。
【0105】
異なる音源を定位する可能性を最適化するために、計算モデルは、ITD(:interaural time difference、両耳間時間差)と組み合わせてILD(:interaural level difference、両耳間強度差)を使用する。これは、パニングがボリュームの比によって達成されるだけでなく、時間の比によっても達成されることを意味する。
【0106】
本発明は、好ましくはゲーミングもしくはVRのための、排他的オーディオ体験のための、および/または、オーディオ/ビデオ体験の組み合わせのための、本明細書で説明するヘッドホンのセットおよびその実施形態の使用、または、本明細書で説明する方法およびその実施形態の使用にも関する。
【0107】
本発明は、ゲーミングまたはVR(:virtual reality、仮想現実)のための本明細書で説明するヘッドホンまたは方法の使用にも関する。
【0108】
本発明は、ミュージックまたは音を聴取すること等、排他的オーディオ体験のための本明細書で説明するヘッドホンまたは方法の使用にも関する。
【0109】
本発明は、ムービーまたはコンサートを視聴すること等、オーディオ/ビデオ体験の組み合わせのための本明細書で説明するヘッドホンまたは方法の使用にも関する。

本発明の特性、利点、および特徴をよりよく示すために、幾つかの好ましい実施形態が、添付図を参照して例として開示される。しかしながら、本発明の範囲は、以下で説明する例証的な例に決して限定されない。
例1:考えられる構成
図1Aは、2つのイヤカップ(101、102)を備えるヘッドホンのセット(100)を示す。
【0110】
図1Bは、本発明の或る実施形態によるヘッドホンのセットの1つのイヤカップ(101、102)のレイアウトを示す。図1Bは、空間ドライバとして働く4つの補助ドライバ(121、122、123、124)の好ましい位置を示す。カップのセンターは、主ドライバ(111)として大きいダイヤフラムドライバを備える。各ドライバは、特有信号によって給送される。オブジェクトベースオーディオ処理を使用して、異なる音源が、空間内に仮想的に位置決めされる。ソフトウェアは、正しい空間体験をもたらすために、各ドライバに送信される各信号を計算する。
【0111】
図1Cは、各補助ドライバ(121、123、124)が耳の中心にどのように向けられるかを示し、それは方向感覚を改善する。大きい主ドライバは、好ましくは0°で、耳を直接狙う。センターイヤレベルに沿って観察されるように、上部および下部ドライバ(123、124)は、好ましくは、15°よりも大きい角度αで設けられる。センターイヤ位置に沿って観察されるように、後および前ドライバ(121、124)は、好ましくは、10°よりも大きい角度βで設けられる。
【0112】
図2は、イヤカップの各主方向(上、下、前、および後)について1つのドライバが存在する4つの補助ドライバ(121、122、123、124)を備える好ましい代替の構成を示す。センターイヤレベルに沿って観察されるように、上部および下部ドライバ(122、124)は、好ましくは、15°よりも大きい角度αで設けられる。センターイヤ位置に沿って観察されるように、後および前ドライバ(121、123)は、好ましくは、10°よりも大きい角度βで設けられる。
【0113】
図3Aおよび3Bは、イヤカップ(101、102)の前用に1つのドライバおよび後用に1つのドライバが存在する2つの補助ドライバ(121、122)を備えるさらなる代替の構成を示す。センターイヤレベルに沿って観察されるように、後および前ドライバ(121、122)は、好ましくは、主ドライバと同じ平面内にある、すなわち、0°に等しい角度αで設けられる。センターイヤ位置に沿って観察されるように、後および前ドライバ(121、122)は、好ましくは、18°よりも大きい角度βで設けられる。
【0114】
図4Aおよび4Bは、イヤカップ(101、102)の上部用に2つのドライバおよび下部用に1つのドライバが存在する3つの補助ドライバ(121、122、123)を備えるさらなる代替の構成を示す。センターイヤレベルに沿って観察されるように、イヤカップの上部に位置する後および前ドライバ(121、123)は、15°よりも大きい角度αで設けられ、一方、下部ドライバ(122)は、20°よりも大きい角度αで設けられる。センターイヤ位置に沿って観察されるように、イヤカップの上部に位置する後および前ドライバ(121、123)は、好ましくは、10°よりも大きい角度βで設けられ、一方、下部ドライバ(122)は、主ドライバと同じ平面内にある、すなわち、0°に等しい角度βで設けられる。
例2:ブロック図
図5は、本発明の或る実施形態によるヘッドホンのセットで使用されるハードウェアの電子ブロックダイヤグラムである。図は、選択される可能性がある考えられる入力および所望の処理を示す。
【0115】
この例において、考えられるマルチチャネル入力のみがUSB-C入力に専用である。なぜなら、Bluetooth(登録商標)および3,5mmジャックが共にステレオ入力であるからである。そのように所望される場合、ステレオ入力は、マルチチャネル音源にアップミックスされる可能性がある。
【0116】
図は、電力源である電池の存在も示す。この例において、これは、USB-Cコネクタによって充電される充電式電池である。
【0117】
任意選択で、マイクロフォンが付加され得る。これらは、スピーチ(例えば、ゲーム中の通信)のために、または、望ましくない背景ノイズを打ち消すために使用される可能性がある。
例3:処理
図6Aは、補助ドライバが本発明の或る実施形態において動作する周波数範囲を示し、一方、図6Bは、主ドライバが同じ実施形態について動作する周波数範囲を示す。
【0118】
空間体験は、約500Hzと約9kHzと間の周波数範囲内で顕著であるだけであるため、これは、空間ドライバに給送される範囲であることになる。約500Hzよりも小さく約9kHzよりも大きい周波数は、より大きいセンタードライバに給送される。
【0119】
空間ドライバは、500Hzから9kHzまで動作するだけである。使用されるフィルタは、24dB/オクターブフィルタである。急峻フィルタの使用は、ドライバ間の位相シフトを生成する可能性があるため、フィルタは、線形位相フィルタであるように設計される。
【0120】
図7は、本発明の或る実施形態による、両方のドライバタイプがそこで動作する必要がある範囲を作成するフィルタの設計のブロックダイヤグラムを示す。マルチチャネル入力(150)は、ハイパスフィルタ(151)およびローパスフィルタ(152)を通して増幅器(153)に送信される。ハイパスフィルタ(151)およびローパスフィルタ(152)は、補助ドライバのために直列に配置され、主ドライバのために並列に配置される。
例4:線形位相フィルタ
図8は、並列ドライバと角度ドライバとの差を示す。特定の距離にわたって、並列ドライバは、それら自身の間のタイミングを等しく維持することになる。角度ドライバ、すなわち、補助ドライバ(121)と主ドライバ(111)との間の角度および/または2つの補助ドライバの間の角度を有する角度ドライバの場合、ドライバ間のタイミングは距離にわたって変動する。したがって、整列は達成するのが難しい可能性がある。
【0121】
図9は、ローパスフィルタのマグニチュード応答および位相応答を示す。通常フィルタが生じる位相シフトのせいで、結合されたドライバにおいて使用される異なるフィルタを整列させることが好ましい。フィルタが、整列なしで結合されると、位相応答コムフィルタリングが、図10で立証されるように起こる場合がある。
【0122】
位相応答の不良の整列の結果を回避するために、線形位相フィルタが好ましくは使用される。これらのフィルタは、位相応答を損なうことなく、振幅の変化を生成するように設計される。両方のドライバの位相応答が理論的に同一であるとき、両方のドライバ間の角度位置は、望ましくないコムフィルタ効果をもはやもたらすことはなく、したがって、改善された音をもたらす。
例5:ユーザ体験
人AおよびBは、以下で説明するように、種々のタイプのヘッドホンの影響下にあった。
例5A
本発明の或る実施形態によるヘッドホンは、伝統的なステレオヘッドホンと比較された。
【0123】
ステレオヘッドホンは、2つの独立したチャネル(左および右チャネル)に起因する、2つのスピーカ(左および右スピーカ)から別個の音を再生して、各スピーカを出る別個の音を提供するヘッドホンである。ステレオヘッドホンを装着すると、各耳は、それ自身のイヤピースから音を聞くことができるだけである-左イヤピースからの音が右耳に達することができる自然な方法は存在しない。結果として、左チャネルと右チャネルとの間の記録された振幅差は、必要とされる到達時間差を生成しない。その結果、ほとんどの人々は、耳から耳に延びるライン上で大雑把に離間する、自分の頭部の内部からやって来る音を知覚する。人AおよびBの反応は、同様であり、明確さに賛辞を与え、起こる場合があるニュアンスを探していた。試験中、被験者は、レベルがゆっくりではあるが確実に増加したことに気づいた。ヘッドホンドライバが、ラウドスピーカより低い歪み(すなわち、中/高範囲におけるより詳細および明確さ)を立証するという事実にもかかわらず、聴取レベルは高かった。
【0124】
人AおよびBは、より肉厚のケーブル以外の本発明の或る実施形態によるヘッドホンの物理的寸法に対する差に気づかなかった(ベータ試験目的)。プログラム素材が演奏されると、AおよびBは共に、ミックスにおいて何が「エア(air)」として記述されたか、ならびに、機器および音のよりよい位置決めに気づいた。「分解能(resolution)」、「規定(definition)」、「ぬくもり(warmth)」のような語は、受信されるより高い品質の音を記述するために使用された。余剰として、両方の場合に、全体のレベル(マスターボリューム)は、約-6dB低下した。知覚された音は、水平(左から右としても知られている)として記述されるだけでなく、ディメンション高さもまた、説明に導入された。
例5B
本発明の或る実施形態によるヘッドホンは、伝統的なバイノーラルヘッドホンと比較された。
【0125】
ヘッドホンを通して聴取する困難な部分は、従来のパン-ポット振幅差技法の使用を仮定した、ステレオ位置決めの印象である。到達時間差およびHRTF関数を伴うより複雑なパニングシステムのうちの1つのシステムも使用される場合、イメージングは、より容易に理解することができる。一般に、しかし、ヘッドホンを介して聴取するとき、空間イメージは、典型的には、耳どうしの間に延びるラインに沿って、そしてほとんど確実に頭部の内部で広がることになる。さらに、パニング特性の線形性は、ラウドスピーカに関して体験された線形性とむしろ異なる。大きい研究所によって試験され、大多数の人々に適する一般的なHRTFプロファイルが使用された。人AおよびBが、ステレオプログラム素材とバイノーラルとの差を確実に聞く可能性があったことを試験が明らかにした。バイノーラルは、空間的体験に関してステレオミックスのアップグレードとして知覚された。残念ながら、バイノーラルミックスについて必要とされる処理技法および心理音響学は、ミュージックの全体の音品質に影響を及ぼした。被験者AおよびBは共に、オリジナルのステレオミックスがよりぬくもりを感じ、聴取するのがより容易であったことに合意した。
【0126】
バイノーラルミックスを本発明の或る実施形態によるヘッドホンと比較すると、被験者AおよびBは共に、完全な結合が行われたことに喜んで合意した。オープンなミックスが知覚され、オリジナルのミュージックのぬくもりが維持され、バイノーラル処理と共に起こる不快なアーチファクトが排除された。
例5C
長方形パターンで4つの空間ドライバを備えるヘッドホンの対(図1B)は、定位の差を規定するために、ダイヤモンドパターンで4つの空間ドライバを備えるヘッドホンの対(図2)と比較された。各1次方向(上、下、前、後)に空間ドライバが存在するため、結果はダイヤモンドレイアウトに有利であった。長方形レイアウトで聴取者の前に音を配置すると、2つのドライバは、音を生成し、それにより、2つのドライバの間に音を仮想的に配置する。ダイヤモンド形構成において、聴取者の前に音を生成する1つのドライバのみが存在することになり、それは、より規定された結果を生成する。長方形構成で5.1または7.1サラウンド音源(両方とも、高さ情報がないため2Dサラウンド音である)を使用すると、4つ全てのドライバが、それらの間に2D音フィールドをシミュレートするために音を生成する必要がある。ダイヤモンド形構成で同じファイルを使用すると、前および後ドライバのみが、音を生成する。これは、曖昧でない聴取体験およびより規定された定位をもたらす。
例6:センター空間チャネル
ヘッドホン内の空間ドライバの量を増加させるために、主ドライバの中範囲が、さらなる空間チャネルとして使用され得る。センタードライバは、元々、低周波数(例えば、20Hz~500Hz)および非常に高い周波数(例えば、9kHz~20kHz)、すなわち空間エリアの外側の周波数を送出するだけである。しかしながら、センタードライバの未使用周波数スペクトル(例えば500Hz~9kHz)は、イヤカップのセンターにおいてさらなる空間チャネルとして使用される可能性があり、3D音イメージの高い分解能をもたらす。
【0127】
空間ドライバにわたる音の分布を規定する計算モデルは、音における方向感覚を生成するために利用可能なより多くの空間ドライバを有するときにより正確であることになる。空間センターチャネルを付加する別の利益は、空間ドライバ間の相互距離が低減され(典型的には、半減され)、それがより高い分解能音イメージをもたらすことである。
【0128】
図11は、主ドライバの空間中範囲のさらなる使用を示し、主ドライバがアクティブであるとすることができる3つ全ての範囲を示す。空間範囲(例えば500Hz~9kHz)は複数の空間ドライバによって示されるため、生成されるレベルは、上限および下限周波数領域より低い。設計が、主ドライバ用の増幅器を既に有するため、空間センターチャネルの付加は、純粋にソフトウェア/DSPベースであり、ハードウェア調整は必要とされない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのイヤカップ(101、102)を備えるヘッドホンのセット(100)であって、各イヤカップ(101、102)は別個の給送部にそれぞれ接続された可変サイズのドライバを備え、各イヤカップは、
- 少なくとも1つの主ドライバ(111)と、
- 前記主ドライバ(111)の直径よりも小さい直径を有する少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)とを備え、
前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)は、前記少なくとも1つの主ドライバ(111)によって規定される平面と比較して或る角度で位置決めされ、
前記主ドライバ(111)は、下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備え、
前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)は、前記下限カットオフ周波数fと前記上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するように構成されるフィルタを備える、ヘッドホンのセット(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの主ドライバ(111)はセンター位置に位置決めされ、前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)は、前記少なくとも1つの主ドライバ(111)の周りに位置決めされる、請求項1に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項3】
前記ヘッドホンは、耳覆い型ヘッドホンである、請求項1または2に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項4】
各イヤカップ(101、102)は、前記主ドライバ(111)の前記直径よりも小さい直径を有する、少なくとも3つの、好ましくは少なくとも4つの補助ドライバ(121、122、123、124)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの主ドライバ(111)の前記直径は、少なくとも25mmで最大60mm、好ましくは少なくとも30mmで最大55mm、好ましくは少なくとも35mmで最大50mm、例えば少なくとも40mmで最大45mmである、請求項1から4のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項6】
前記少なくとも2つの補助ドライバ(121、122、123、124)の前記直径は、少なくとも8mmで最大24mm、好ましくは少なくとも12mmで最大20mm、例えば少なくとも14mmで最大18mm、例えば約16mmである、請求項1から5のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項7】
前記補助ドライバ(121、122、123、124)のうちの1つまたは複数は、センターイヤレベルに沿って観察される前記主ドライバ(111)に対して角度αで位置決めされ、αは、少なくとも5°~最大30°、好ましくは少なくとも10°~最大25°、好ましくは少なくとも12°~最大20°、好ましくは約15°であり、前記角度αの正の値は、前記主ドライバの方向を指す前記補助ドライバの角度を指す、請求項1から6のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項8】
前記補助ドライバ(121、122、123、124)のうちの1つまたは複数は、センターイヤ位置に沿って観察される前記主ドライバ(111)に対して角度βで位置決めされ、βは、少なくとも2°~最大25°、好ましくは少なくとも5°~最大20°、好ましくは少なくとも7°~最大15°、好ましくは約10°であり、前記角度βの正の値は、前記主ドライバの方向を指す前記補助ドライバの角度を指す、請求項1から7のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項9】
は、少なくとも300Hzで最大1000Hz、好ましくは少なくとも350Hzで最大800Hz、好ましくは少なくとも400Hzで最大700Hz、好ましくは少なくとも450Hzで最大600Hz、例えば、約500Hzである、請求項1から8のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項10】
は、少なくとも5.0kHzで最大12.0kHz、好ましくは少なくとも6.0kHzで最大11.0kHz、好ましくは少なくとも7.0kHzで最大10.0kHz、好ましくは少なくとも8.0kHzで最大9.5kHz、好ましくは約9.0kHzである、請求項1から9のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの主ドライバ(111)はハイパスフィルタ(151)およびローパスフィルタ(152)を並列に備える、ならびに/または、前記補助ドライバ(121、122、123、124)はハイパスフィルタ(151)およびローパスフィルタ(152)を直列に備える、請求項1から10のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項12】
前記主ドライバ(111)および前記補助ドライバ(121、122、123、124)の前記フィルタ(151、152)のうちの、1つまたは複数、好ましくは全ては、線形位相フィルタを備える、請求項1から11のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)を処理するための方法であって、
- 下限カットオフ周波数fよりも小さい低周波数音波の範囲および上限カットオフ周波数fよりも大きい高周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、前記音信号を前記主ドライバ(111)に送信するステップと、
- 前記下限カットオフ周波数fと前記上限カットオフ周波数fとの間の中間周波数音波の範囲を選択するために音信号をフィルタリングし、前記音信号を補助ドライバ(121、122、123、124)に送信するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記主ドライバ(111)に送信される前記音信号は、前記補助ドライバ(121、122、123、124)に送信される前記音信号と比較して遅延を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ゲーミングもしくはVRのための、排他的オーディオ体験のための、および/または、オーディオ/ビデオ体験の組み合わせのための、請求項1~12のいずれか1項に記載のヘッドホンのセット(100)または請求項13または14に記載の方法の使用。
【国際調査報告】