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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】最小ネフリンプロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240221BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240221BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240221BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
A61P13/12
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/12
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555709
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 GB2022050649
(87)【国際公開番号】W WO2022189811
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2103470.7
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2021/050633
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2021/051668
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300002942
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリストル
(71)【出願人】
【識別番号】523345725
【氏名又は名称】シンコナ アイピー ホールドコ (3) リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サレーム-ウッディン,モイン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ,ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】クズムク,ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,アラン ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA41
4C086NA14
4C086ZA81
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA81
(57)【要約】
(i)配列番号4又は17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプロモーターであって、約1.1kb以下の長さを有する、プロモーター。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号4~17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプロモーターであって、約1.1kb以下の長さを有する、前記プロモーター。
【請求項2】
配列番号1に記載されるが、
(i)配列番号1の1位~n1位が欠失しており、n1が100~430の整数であり、及び/又は
(ii)配列番号1のn2位~n3位が欠失しており、n3≧n2であり、n2が508~1061の整数であり、n3が508~1061の整数である、
ヌクレオチド配列、又は
前記ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むか又はからなる、プロモーター。
【請求項3】
(iii)配列番号1の493位に対応する位置がGであり、配列番号1の1080位に対応する位置がTであり、配列番号1の1169位に対応する位置がCであり、かつ配列番号1の1249位に対応する位置がGである、請求項2に記載のプロモーター。
【請求項4】
(i)配列番号4又は17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、及び/又は約1.1kb以下の長さを有する、請求項2又は3に記載のプロモーター。
【請求項5】
腎臓特異的プロモーターである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項6】
(ii)配列番号5又は18に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6又は19に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、及び/又は配列番号7又は20に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項7】
(iii)配列番号8に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、又はその1つ以上の断片をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項8】
5'から3'へと(i)配列番号4又は17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、(iii)場合により配列番号8に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその1つ以上の断片、及び(ii)配列番号5又は18に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6又は19に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、及び/又は配列番号7又は20に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項9】
約1.0kb以下、約0.9kb以下、約0.8kb以下、約0.7kb以下、約0.6kb以下、約0.5kb以下、約0.4kb以下、又は約0.3kb以下の長さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項10】
0.265kb~1.0kb、0.265kb~0.9kb、0.265kb~0.8kb、0.265kb~0.7kb、0.265kb~0.6kb、0.265kb~0.5kb、0.265kb~0.4kb、又は0.265kb~0.3kbの長さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項11】
(a)レチノイン酸受容体結合部位、
(b)WT1結合部位、
(c)エンハンサーボックス、
(d)転写因子結合領域、及び/又は
(e)転写開始部位
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項12】
レチノイン酸受容体結合部位が、配列番号10として示されるヌクレオチド配列、又は配列番号10と比較して1つ又は2つの置換、欠失又は挿入を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項11に記載のプロモーター。
【請求項13】
WT1結合部位が、配列番号11として示されるヌクレオチド配列、又は配列番号11と比較して1つ、2つ又は3つの置換、欠失又は挿入を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項11又は12に記載のプロモーター。
【請求項14】
エンハンサーボックスが、配列番号12として示されるヌクレオチド配列、又は配列番号12と比較して1つ又は2つの置換、欠失又は挿入を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項11から13のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項15】
(i)配列番号4又は17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列が、(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位、及び(c)エンハンサーボックスのうちの1つ以上を含む、請求項1又は4から14のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項16】
以下のヌクレオチド配列:
(a)配列番号4又は17の7位~13位に対応する位置におけるGGGGTCA、
(b)配列番号4又は17の14位~30位に対応する位置におけるCGGAGGCTGGGGAGGCA、
(c)配列番号4又は17の49位~53位に対応する位置におけるATGTG
のうちの1つ以上が、(i)配列番号4又は17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列中に存在する、請求項1又は4から15のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項17】
転写因子結合領域が、配列番号13又は43として示されるヌクレオチド配列又は配列番号13又は43と比較して1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの置換、欠失又は挿入を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項11から16のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項18】
転写開始部位が、「AG」ジヌクレオチドを含むか又はからなる、請求項11から17のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項19】
転写因子結合部位が、転写開始部位に作動可能に連結されており、場合により該転写因子結合部位が、該転写開始部位の直接上流にある、請求項11から18のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項20】
配列番号2又は配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項21】
配列番号47に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項22】
配列番号47に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項23】
配列番号47に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項24】
配列番号47に対して少なくとも98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項25】
配列番号47に対して少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又はからなる、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項26】
配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるプロモーター。
【請求項27】
配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるプロモーター。
【請求項28】
配列番号15又は59に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるプロモーター。
【請求項29】
配列番号47に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるプロモーター。
【請求項30】
配列番号47に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、請求項29に記載のプロモーター。
【請求項31】
配列番号47に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、請求項29又は30に記載のプロモーター。
【請求項32】
配列番号47に対して少なくとも98%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、請求項29から31のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項33】
配列番号47に対して少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、請求項29から32のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項34】
配列番号47のヌクレオチド配列からなる、請求項29から32のいずれか一項に記載のプロモーター。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項に記載のプロモーターを含むポリヌクレオチド。
【請求項36】
プロモーターが、タンパク質コード配列に作動可能に連結されている、請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
プロモーターが、NPHS2又はその断片及び/又はバリアント;COL4A3、COL4A4又はCOL4A5ポリペプチド又はそれらの断片又は誘導体;又はCFI、CFH又はFHL-1又はそれらの断片及び/又はバリアントをコードするタンパク質コード配列に作動可能に連結されている、請求項35又は36に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
プロモーターが、NPHS2又はその断片及び/又はバリアントをコードするタンパク質コード配列に作動可能に連結されており、好ましくは該タンパク質コード配列が、配列番号55に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列又はその断片をコードする、請求項35から37のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
プロモーターが、COL4A3、COL4A4又はCOL4A5ポリペプチド又はそれらの断片又は誘導体をコードするタンパク質コード配列に作動可能に連結されており、好ましくは該タンパク質コード配列が、配列番号21~23のうちの1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列又はその断片をコードする、請求項35から37のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
プロモーターが、CFI、CFH又はFHL-1又はそれらの断片及び/又はバリアントをコードするタンパク質コード配列に作動可能に連結されており、好ましくは該タンパク質コード配列が、配列番号49、51又は53のうちの1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列又はその断片をコードする、請求項35から37のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
タンパク質コード配列が、1つ以上のさらなる調節エレメント、例えば転写後調節エレメント及び/又はポリアデニル化配列に作動可能に連結されている、請求項35から40のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
請求項35から41のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項43】
足細胞を形質導入することが可能であり、場合により足細胞を特異的に形質導入することが可能である、請求項42に記載のベクター。
【請求項44】
ウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ニューカッスル病ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター及びピコルナウイルスベクターであり、好ましくはAAVベクターである、請求項42または43に記載のベクター。
【請求項45】
ウイルスベクターが、ウイルスベクター粒子の形態であり、好ましくは該ウイルスベクターが、AAVベクター粒子の形態である、請求項44に記載のベクター。
【請求項46】
AAV3B、LK03又はAAV9キャプシドタンパク質によりキャプシド形成されたAAVベクター粒子の形態である、請求項42から45のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項47】
請求項35から41のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項42から46のいずれか一項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項48】
請求項35から41のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項42から46のいずれか一項に記載のベクター、又は請求項47に記載の細胞を含む、医薬組成物。
【請求項49】
医薬における使用のための、請求項35から41のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項42から46のいずれか一項に記載のベクター、又は請求項47に記載の細胞。
【請求項50】
コード配列の発現を駆動するための、請求項1から34のいずれか一項に記載のプロモーターの使用。
【請求項51】
発現が腎臓特異的である、請求項50に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足細胞における導入遺伝子の発現を駆動することができるプロモーターに関する。本発明はまた、前記プロモーターを含むポリヌクレオチドおよびベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
糸球体を攻撃することによって腎機能に影響を与える多くの疾患が存在する。糸球体は毎日およそ180リットルの血漿を濾過し、また健常な糸球体濾過障壁は、アルブミンを含む巨大タンパク質の約99.9%を我々の生涯にわたり閉塞することなく保持する、驚くべき能力を有する。該糸球体濾過障壁(GFB)は3つの主要な層、すなわち、糸球体内皮細胞、糸球体基底膜(GBM)および足細胞を含む。
【0003】
GBMは、IV型コラーゲン、プロテオグリカンおよびラミニンの高度に架橋された巨大分子の網目構造から作製される。糸球体疾患の遺伝型は、これらの分子構造の遺伝的欠陥によって引き起こされうる。例えば、アルポート症候群は、COL4A3、COL4A4およびCOL4A5遺伝子の病原性バリアントによって引き起こされ、その結果、基底膜のコラーゲンIV α345ネットワークの異常を引き起こす。アルポート症候群は、欧州大陸および米国の全ての個体のおよそ5,000~10,000人に1人が罹患している。この状態は通常、小児期の間に発症し、進行性の腎機能喪失を含む様々な表現型に関連しており、難聴および眼の異常も含みうる。他のGBM関連疾患には、ピアソン症候群および爪膝蓋骨症候群が含まれる(Chiang, C.K.およびInagi, R., 2010. Nature Reviews Nephrology, 6(9), p.539)。
【0004】
足細胞は、糸球体疾患の進行における重要な細胞としても関与している。足細胞は、高度に分化されている中胚葉に由来する細胞であり、腎糸球体においてのみ見出される。それらは、糸球体濾過に重要である固有の特徴、例えば、足突起およびスリット隔膜を示す。足細胞に関連する遺伝性糸球体疾患には、ネフローゼ症候群、フレイザー症候群およびデニス・ドラッシュ症候群、シムケ免疫性骨形成不全、ならびにエプスタインおよびフェクトナー症候群が含まれる(Chiang, C.K.およびInagi, R., 2010. Nature Reviews Nephrology, 6(9), p.539)。
【0005】
したがって、糸球体細胞、例えば足細胞は、遺伝子治療アプローチの潜在的な標的となる。
【0006】
遺伝子治療の可能性を最大化するために、糸球体細胞、例えば足細胞において導入遺伝子の発現を駆動できるプロモーター配列が必要とされる。Wongら(American Journal of Physiology Renal Physiology; 2000; 279(6); F1027-32)は、足細胞特異的発現を誘導することができるヒトネフリンプロモーターおよび5'隣接領域からの1.25kbのDNA断片を記載した。このプロモーターは、AAV9ベクターを使用してGFPの腎臓特異的発現を達成するために使用されている(Picconiら; 2014; Molecular Therapy - Methods & Clinical Development; 1, 14014)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、ベクターのカーゴ容量(例えば、AAVカーゴ容量)のかなりの量が、非コードエレメント、例えば、ネフリンまたはポドシンプロモーター、WPREエレメントおよびポリアデニル化配列によって占められている。したがって、糸球体疾患に対する遺伝子治療アプローチに最大限の柔軟性を提供するために、糸球体細胞、例えば足細胞において導入遺伝子の発現を駆動できる最小プロモーターが当分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、腎臓細胞、特に糸球体細胞、例えば、足細胞において導入遺伝子の発現を駆動することができる最小プロモーターの本発明者らの驚くべき提供に基づく。
【0009】
一態様では、本発明は、(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプロモーターであって、約1.1kb以下の長さを有する、プロモーターを提供する。
【0010】
幾つかの実施形態では、本発明は、配列番号1に記載されるが、
(i)配列番号1の1位~n1位が欠失しており、n1が1~430の整数であり、および/もしくは
(ii)配列番号1のn2位~n3位が欠失しており、n3≧n2であり、n2が508~1061の整数であり、n3が508~1061の整数である、
ヌクレオチド配列、
または該ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される、プロモーターを提供する。
【0011】
幾つかの実施形態では、(iii)配列番号1の493位に対応する位置がGであり、配列番号1の1080位に対応する位置がTであり、配列番号1の1169位に対応する位置がCであり、配列番号1の1249位に対応する位置がGである。
【0012】
一態様では、本発明は、配列番号1に記載されるが、
(i)配列番号1の1位~n1位が欠失しており、n1が100~430の整数であり、および/または
(ii)配列番号1のn2位~n3位が欠失しており、n3≧n2であり、n2が508~1061の整数であり、n3が508~1061の整数である、
ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチドを含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される、プロモーターを提供する。
【0013】
幾つかの実施形態では、(iii)配列番号1の493位がGで置換されており、配列番号1の1080位がTで置換されており、配列番号1の1169位がCで置換されており、配列番号1の1249位がGで置換されている。
【0014】
プロモーターは、(i)配列番号4もしくは17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、および/または該プロモーターは、約1.1kb以下の長さを有していてもよい。
【0015】
プロモーターは、腎臓細胞において機能しうる。該プロモーターは、腎臓において導入遺伝子の発現を駆動することが可能でありうる。該プロモーターは、腎臓特異的プロモーターであってもよい。該プロモーターは、足細胞において機能しうる。該プロモーターは、足細胞において導入遺伝子の発現を駆動することが可能でありうる。該プロモーターは、足細胞特異的プロモーターであってもよい。
【0016】
好適には、プロモーターは、(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、(ii)配列番号6または19に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む。
【0017】
好適には、プロモーターは、(iii)配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む。
【0018】
好適には、該プロモーターが、5'から3'へと(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、(iii)場合により配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、いずれかの先行する請求項に記載のプロモーター。
【0019】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、5'から3'へと(i)配列番号4に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、および(ii)配列番号7に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、5'から3'へと(i)配列番号4に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、および(ii)配列番号7に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成され、プロモーターは、約1.1kb以下の長さを有する。
【0020】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、5'から3'へと(i)配列番号17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、および(ii)配列番号20に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成される。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、5'から3'へと(i)配列番号17のヌクレオチド配列、および(ii)配列番号20のヌクレオチド配列から構成される。
【0021】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、5'から3'へと(i)配列番号17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、および(ii)配列番号20に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、プロモーターは、約1.1kb以下の長さを有する。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、5'から3'へと(i)配列番号17のヌクレオチド配列、および(ii)配列番号20のヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは、約1.1kb以下の長さを有する。
【0022】
プロモーターは、約1.0kb以下、約0.9kb以下、約0.8kb以下、約0.7kb以下、約0.6kb以下、約0.5kb以下、約0.4kb以下または約0.3kb以下の長さを有していてもよい。該プロモーターは、0.265kb~1.0kb、0.265kb~0.9kb、0.265kb~0.8kb、0.265kb~0.7kb、0.265kb~0.6kb、0.265kb~0.5kb、0.265kb~0.4kbまたは0.265kb~0.3kbの長さを有していてもよい。
【0023】
プロモーターは、(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位、(c)エンハンサーボックス、(d)転写因子結合領域、および/または(e)転写開始部位を含んでいてもよい。好適には、該レチノイン酸受容体結合部位は、配列番号10として示されるヌクレオチド配列または配列番号10と比較して1つもしくは2つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。好適には、該WT1結合部位は、配列番号11として示されるヌクレオチド配列または配列番号11と比較して1つ、2つもしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。好適には、該エンハンサーボックスは、配列番号12として示されるヌクレオチド配列または配列番号12と比較して1つもしくは2つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。好適には、該転写因子結合領域は、配列番号13もしくは43として示されるヌクレオチド配列または配列番号13もしくは43と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。好適には、該転写開始部位は、「AG」ジヌクレオチドを含むかまたは「AG」ジヌクレオチドから構成される。好適には、該転写因子結合部位は、該転写開始部位に機能しうる形で連結されており、場合により該転写因子結合部位は、該転写開始部位のすぐ(直接)上流にある。
【0024】
配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列は、(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位、および(c)エンハンサーボックスのうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。以下のヌクレオチド配列:(a)配列番号4または17の7位から13位に対応する位置におけるGGGGTCA、(b)配列番号4または17の14位から30位に対応する位置におけるCGGAGGCTGGGGAGGCA、および(c)配列番号4または17の49位から53位に対応する位置におけるATGTGのうちの1つ以上は、配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列に存在していてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、配列番号2または配列番号3に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0026】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、配列番号15、配列番号59または配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0027】
好ましい実施形態では、プロモーターは、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。より好ましい実施形態では、該プロモーターは、配列番号47のヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0028】
一態様では、本発明は、配列番号2に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーターを提供する。
【0029】
一態様では、本発明は、配列番号3に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーターを提供する。
【0030】
一態様では、本発明は、配列番号15に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーターを提供する。
【0031】
一態様では、本発明は、配列番号59に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーターを提供する。
【0032】
一態様では、本発明は、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーターを提供する。
【0033】
一態様では、本発明は、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターを提供する。
【0034】
一態様では、本発明は、本発明によるプロモーターを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0035】
プロモーターは、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、NPHS2またはその断片および/もしくはバリアント、COL4A3、COL4A4もしくはCOL4A5ポリペプチドまたはそれらの断片もしくは誘導体、またはCFI、CFHもしくはFHL-1またはそれらの断片および/もしくはバリアントをコードする。
【0036】
幾つかの実施形態では、タンパク質コード配列は、NPHS2またはその断片および/もしくはバリアントをコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号55またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号56またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号57またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0037】
幾つかの実施形態では、タンパク質コード配列は、COL4A3、COL4A4もしくはCOL4A5ポリペプチドまたはそれらの断片もしくは誘導体をコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号21~23またはそれらの断片のうちの1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号24~26またはそれらの断片のうちの1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0038】
幾つかの実施形態では、タンパク質コード配列は、CFIまたはその断片および/もしくはバリアントをコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号49またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号50またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0039】
幾つかの実施形態では、タンパク質コード配列は、CFHまたはその断片および/もしくはバリアントをコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号51またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号52またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0040】
幾つかの実施形態では、タンパク質コード配列は、FHL-1またはその断片および/もしくはバリアントをコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号53またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする。幾つかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、配列番号54またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、該タンパク質コード配列は、1つ以上のさらなる調節エレメント、例えば、転写後調節エレメントおよび/またはポリアデニル化配列に機能しうる形で連結されている。
【0042】
一態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好適には、該ベクターは足細胞に形質導入することができ、場合により該ベクターは足細胞に特異的に形質導入することができる。
【0043】
好適には、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ニューカッスル病ウイルスベクター、ポックスウイルスベクターおよびピコルナウイルスベクターであり、好ましくは、ベクターはAAVベクターである。好適には、該ウイルスベクターはウイルスベクター粒子の形態であり、好ましくは、該ウイルスベクターはAAVベクター粒子の形態である。
【0044】
幾つかの実施形態では、ベクターは、AAV3B、LK03またはAAV9キャプシドタンパク質によってキャプシドが形成された(キャプシド化された)AAVベクター粒子の形態である。
【0045】
一態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドまたは本発明によるベクターを含む細胞を提供する。
【0046】
一態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクターまたは本発明による細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
一態様では、本発明は、医薬で使用するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクターまたは本発明による細胞を提供する。
【0048】
一態様では、本発明は、コード配列の発現を駆動するための本発明によるプロモーターの使用を提供する。該発現は腎臓特異的であってもよい。好適には、該発現は足細胞特異的である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】最小ネフリンプロモーターの概略図である。(A)例示的な全長ネフリンプロモーターは、1249bpの長さ(開始コドンを除く)であってもよく、本明細書以下で、「FL」ネフリンプロモーターと称される。(B)5'領域が欠失した例示的な最小ネフリンプロモーターは、819bpの長さ(開始コドンを除く)であってもよく、本明細書以下で、「midi」ネフリンプロモーターと称される。(C)5'領域が欠失し、中央領域が欠失している例示的な最小ネフリンプロモーターは、265bpの長さ(開始コドンを除く)であってもよく、本明細書以下で、「mini」ネフリンプロモーターと称される。(D)ネフリンプロモーターの以下の領域が示される:(i)ヒトマウス相同領域、(ii)レチノイン酸受容体(RAR)結合部位、(iii)WT1結合部位、(iv)エンハンサーボックス、(v)転写因子結合領域、および(vi)転写開始部位。
図2A】midiネフリンプロモーターに機能しうる形で結合したGFPを含むレンチウイルスベクターの概略図である。(A)pACE_hNPHS1プロモーターを鋳型として使用して、BamH1およびCla1制限部位を導入した。(B)は、midiネフリンプロモーターに機能しうる形で結合したGFPを含む最終構築ベクターを示す図である。
図2B図2Aの続きである。
図3A】miniネフリンプロモーターに機能しうる形で結合したGFPを含むレンチウイルスベクターの概略図である。(A)pACE_hNPHS1プロモーターをPCRのための鋳型として使用し、プロモーターの2つのセクションをゲル抽出した。(B)miniネフリンプロモーターに機能しうる形で結合したGFPを含む最終構築ベクターを示す図である。
図3B図3Aの続きである。
図4】レンチウイルスベクターによる形質導入後のCiPodocytesにおけるGFPの発現を示す図である。GFPタグ付きネフリンプロモーターを安定して発現するヒトCiPodocytesは、レンチウイルスアプローチを使用して生成した。GFP発現は蛍光顕微鏡により観察した。(A)は、非形質導入CiPodocytesを示す図である。(B)は、GFPタグ付きminiネフリンプロモーターを安定して発現するCiPodocytesを示す図である。(C)は、GFPタグ付きFLネフリンプロモーターを安定して発現するCiPodocytesを示す図である。
図5】レンチウイルスベクターによる形質導入後の分化したciPodocytesにおけるGFPの発現を示す図である。ネフリンプロモーターに機能しうる形で連結されたGFPを含むレンチウイルスベクターを、分化した条件付き不死化足細胞(ciPodocytes)に形質導入した。免疫沈降(IP)を使用してGFP発現を検出した。
図6】レンチウイルス-GFP.ネフリンプロモーター(FLまたは265)を形質導入したヒト糸球体細胞を示す図である。Novocyteアナライザーを使用した、条件付き不死化ヒト足細胞(LY)および糸球体内皮細胞(GEnC)の全ての生存している一重項のGFP蛍光中央値(AFU)を示すFACS解析が示されている。非形質導入細胞(細胞対照)を、全長ヒトネフリンプロモーター(hNPHS1.GFP)またはminiヒトネフリンプロモーター(265.GFP)によって制御されるGFP発現カセットを保有するレンチウイルス構築物を形質導入した細胞と比較した。全ての細胞を10日間分化させ、トリプシン処理し(100uL)、PBS、2%FBS、1:1000のDRAQ7(150uL)で希釈した。データおよびエラーバーは、3回の技術的反復(100uL、>2500細胞)±SEMを表す。
図7-1】miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A3、COL4A4およびCOL4A5を含むAAV転移プラスミドを示す図である。(A)は、miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A3を含むAAVプラスミドである、pAAV.265.Col4a3.3flag.sv40の概略図である。SmaI部位が示されており、SmaIによる制限後に以下の断片が予想される:1.6238bp、2.2753bp、3.56bp、4.11bp、5.11bp。(B)は、miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A4を含むAAVプラスミドである、pAAV.265.Col4a4.3flag.sv40の概略図である。SmaI部位が示されており、SmaIによる制限後に以下の断片が予想される:1.4052bp、2.2753bp、3.2224bp、4.56bp、5.11bp、6.11bp。(C)は、miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A5を含むAAVプラスミドである、pAAV.265.Col4a5.3flag.sv40の概略図である。SmaI部位が示されており、SmaIによる制限後に以下の断片が予想される:1.4272bp、2.2753bp、3.2032bp、4.56bp、5.11bp、6.11bp。(D)は、SmaIによる制限消化を示す図である。MW=1KbのDNAラダー、レーン1、2および3は、それぞれ、(A)、(B)および(C)に示されるプラスミドの消化に対応する。(E)は、制限消化を示す概略図である。
図7-2】図7-1の続きである。
図8-1】AAV.COL4.ネフリン265.Sv40ウイルスを形質導入した足細胞を示す図である。(A)は、抗FLAG抗体でプルダウンされたヒト分化CiPodocytes(条件付き不死化)における全長FLAGタグ付きCol4a3(LK03)またはCol4a5(LK03)の免疫沈降実験を示す図である。抗FLAG抗体はCol4a3およびCol4a5の両方を沈殿させた。ヒトFLAG IgGを対照として使用した。(B)は、ヒトまたはマウスの分化したCiPodocytesにおけるCol4a3(LK03キャプシド血清型)、Col4a5(LK03)およびCol4a5(2/9キャプシド血清型)の発現レベルを示すタンパク質溶解物のウェスタンブロットを示す図である。非感染のヒトおよびマウスのCiPodocytesを対照として使用した。(C)は、F-アクチンによるヒト野生型CiPodocytes/Col4a5 3xFlag AAV CiPodocytesにおける形質導入Col4a5の免疫蛍光染色を示す共焦点画像である。Col4a5は、野生型対応物と比較して、Col4a5 3xFlag AAVウイルスに感染したヒト分化足細胞においてサイトゾルレベルで存在する。
図8-2】図8-1の続きである。
図9図9は、HEK細胞におけるCFH、CFIおよびCFHL1の発現を示す図である。293Tヒト胎児腎臓細胞におけるウェスタンブロットによるタンパク質発現解析が示されている。細胞はpAAV-265-CFH、pAAV-FL-CFIまたはpAAV-FL-CFHL1をトランスフェクトした。NT(非トランスフェクト293T HEK細胞)。導入遺伝子の各々の発現は、タンパク質特異的抗体、または抗FLAGタグもしくは抗MYCタグ抗体を使用して、細胞溶解物および/または培地中で実証される。265bp最小ネフリンプロモーターの制御下でCFH導入遺伝子を発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞は、ヒトH因子を発現し、分泌した。
図10-1】AAV2/9 265-CFHによるH因子変異足細胞(「ヒト病早期(ED)足細胞」)の形質導入またはCFHをコードするプラスミドによるトランスフェクションを示す図である。(A)ELISAアッセイを使用したヒトH因子濃度の解析。CFH導入遺伝子を含有するAAV2/9ウイルスを用いて形質導入した足細胞は、培養培地において非形質導入対照より高い濃度のヒトH因子を示した。(B)は、(A)から得た平均ヒトH因子濃度を示す図である。(C)は、ELISAアッセイを使用したヒトH因子濃度の解析を示す図である。265bp最小ネフリンプロモーターの制御下でCFH導入遺伝子を発現するプラスミドをトランスフェクトした足細胞は、非トランスフェクト対照より高い濃度のヒトH因子を示した。
図10-2】図10-1の続きである。
図11-1】図11は、WTマウスの腎臓におけるCFHの発現を示す図である。生理食塩水対照を注射したマウスと比較した、pAAV.NPHS1(265).hCFH.WPRE.bGHを注射した野生型マウスにおける(A)ウイルスITR、(B)ヒトCFH cDNA、および(C)ウイルス粒子の増加を示す遺伝子発現プロフィールが示されている。(D)は、生理食塩水対照(m1)またはAAV遺伝子治療製品(pAAV.NPHS1(265).hCFH.WPRE.bGH、n=3)(m2/m3/m4)を注射した野生型C57BL6マウスから得た腎臓切片の免疫蛍光イメージングを示す図である。矢印はマウス糸球体へのネフリンおよびCFHの共局在化を示している。ズーム=20xである。
図11-2】図11-1の続きである。
図12】腎臓細胞における265bp v 818bp v FL最小ネフリンプロモーター(プラスミドトランスフェクション)を使用したGFPの発現を示す図である。eGFPを駆動する、全長(PS0281)、818bp(PS0301)および265bp(PS0282)の最小ネフリンプロモーターを含有するプラスミドをトランスフェクトした細胞におけるeGFPの発現が示されている。(A)は、HEK293T細胞におけるトランスフェクション結果を示す図である。(B)は、近位管上皮細胞(PTEC)におけるトランスフェクション結果を示す図である。(C)は、ヒト足細胞におけるトランスフェクション結果を示す図である。(D)は、糸球体内皮細胞(GENC)におけるトランスフェクション結果を示す図である。
図13】腎臓細胞における265bp v FL最小プロモーター(AAV形質導入)を使用したGFPの発現を示す図である。eGFPを駆動する、全長(PS0281)および265bp(PS0282)の最小ネフリンプロモーターを含有する導入遺伝子カセットを組み込んだAAV粒子を形質導入した細胞におけるeGFPの発現が示されている。(A)は、ヒト足細胞における形質導入結果を示す図である。(B)は、近位管上皮細胞(PTEC)における形質導入結果を示す図である。(C)は、糸球体内皮細胞(GENC)における形質導入結果を示す図である。(D)は、メサンギウム細胞における形質導入結果を示す図である。
図14】265bp v FL最小ネフリンプロモーターを使用したヒトポドシンの発現を示す図である。(A)は、Lenti-X293Tヒト胎児腎臓細胞におけるFACによるタンパク質発現解析を示す図である。1:3の比でPEIを含む3ugのプラスミドを細胞にトランスフェクトした。各プラスミドは、全長(FL.NPSH1-ポドシン-HA)または265bp(265.hNPSH1-ポドシン-HA)の最小ネフリンプロモーターのいずれかによって駆動されるヒトポドシン-HAを発現する。ヒトポドシンの発現は、トランスフェクション後2日目に抗HA抗体によって実証される。N=3のデータは平均値±SDとして表される。(B)は、ヒト足細胞におけるFACによるタンパク質発現解析を示す図である。全長(FL.NPSH1-ポドシン-HA)または265bp(265.hNPSH1-ポドシン-HA)の最小ネフリンプロモーターのいずれかによって駆動されるヒトポドシン-HA導入遺伝子カセットを組み込んだAAV粒子を細胞に形質導入した。ヒトポドシンの発現は、形質導入および分化後9日目に抗HA抗体によって実証される。
図15】AAV形質導入による265bp v FL最小ネフリンプロモーターを使用したGFPのin vivo発現を示す図である。WTマウス(C57/Bl6)におけるin vivoでの265-およびFL-ネフリンプロモーターの評価が示されている。全長(FL-GFP)または265bp(265-GFP)最小ネフリンプロモーターのいずれかの制御下でGFPを発現するAAV2/9粒子を生成した。マウス当たり約1×10e13のAAV2/9の尾静脈注射(処置群当たり2×マウスおよび1×未処置マウス)。腎臓の組織採取は注射の4週間後に行った。qPCR解析を実施し、GFPコピー数を18S(ハウスキーピング遺伝子)に対して正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
本発明の種々の好適な特徴および実施形態を、非限定的な例として以下に記載する。
【0051】
本明細書中および添付の特許請求の範囲内で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈において別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。
【0052】
本明細書中で使用する用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「構成される(comprised of)」は、場合、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、また包括的または非限定的(open-ended)であって、追加の、記載されていないメンバー、要素または方法ステップを除外するものではない。該用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「構成される(comprised of)」には、「からなる/から構成される(consisting of)」という用語も含まれる。
【0053】
本明細書中で考察した刊行物は、本願の出願日に先立つその開示のためだけに提供される。本明細書中のいずれも、そのような刊行物が本明細書に添付した特許請求の範囲に対する先行技術を構成することの承認と解釈すべきではない。
【0054】
本開示は本明細書中に開示した例示的な方法および材料により制限されるものではなく、また本明細書中に記載したそれらのものと類似または等価の方法および材料はいずれも、本開示の実施形態の実践または検討に使用することができる。数値範囲は、該範囲を定義する数値を含む。他に指示しない限り、それぞれ、全ての核酸配列は左から右へ5'から3'方向に記載し、アミノ酸配列は左から右へアミノ末端からカルボキシ末端方向に記載する。
【0055】
本発明の実施は、他に指示しない限り、当業者の能力の範囲内である、化学、生化学、分子生物学、微生物学および免疫学の従来の技術を利用する。そのような技術は文献で説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F.およびManiatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M.ら(1995および定期的な補遺) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13および16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J.およびKahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M.およびMcGee, J.O'D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press;ならびにLilley, D.M.およびDahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般的な文書の各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
プロモーター
本発明は糸球体遺伝子治療のためのプロモーターを提供する。
【0057】
「プロモーター」は、DNA配列からのRNAの転写を調節および/または開始するDNAの配列を指すためにその典型的な意味に従って本明細書中で使用される。
【0058】
好適には、プロモーターは、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞において機能しうる。該プロモーターは、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞において導入遺伝子の発現を駆動することが可能でありうる。該プロモーターは、哺乳動物プロモーター、例えば、ヒトプロモーターであってもよい。
【0059】
プロモーターは、腎臓細胞において機能しうる。本発明のプロモーターは、腎臓において導入遺伝子の発現を駆動することが可能でありうる。該プロモーターが機能しうる腎細胞の例としては、糸球体細胞が挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
プロモーターは、糸球体細胞において機能しうる。本発明のプロモーターは、糸球体において導入遺伝子の発現を駆動することが可能でありうる。成熟糸球体は、4種類の細胞型、すなわち、ボーマン嚢を形成する壁側上皮細胞、糸球体濾過障壁の最外層を覆う足細胞、血液と直接接触する糖衣で覆われた有窓内皮細胞、および毛細血管ループの間に位置するメサンギウム細胞を含有する(Vaughan, M.R.およびQuaggin, S.E., 2008. Journal of the American Society of Nephrology, 19(1), pp.24-33)。
【0061】
プロモーターは、足細胞(podocyte)において機能しうる。本発明のプロモーターは、足細胞において導入遺伝子の発現を駆動することが可能でありうる。
【0062】
本発明のプロモーターは、組織特異的プロモーターであってもよい。本明細書中で使用する場合、「組織特異的プロモーター」は、特定の型の細胞または組織において導入遺伝子の発現を優先的に促進するプロモーターである。好適には、組織特異的プロモーターは、他の細胞型と比較して、ある細胞型において導入遺伝子のより高い発現を促進することができる。例えば、組織特異的プロモーターは、他の細胞型における発現レベルと比較して、ある細胞型において少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも100%高い、少なくとも200%高い、少なくとも300%高い、少なくとも400%高い、少なくとも500%高い、または少なくとも1000%高い、導入遺伝子の発現レベルを促進するプロモーターであってもよい。
【0063】
好適には、プロモーターは、腎臓特異的プロモーターである。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、糸球体特異的プロモーターである。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、足細胞特異的プロモーターである。
【0064】
導入遺伝子の発現は、当分野で公知の任意の適切な方法によって測定することができる。例えば、プロモーターに機能しうる形で連結されたレポーター導入遺伝子、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を測定することにより、該レポーター導入遺伝子の発現は、遺伝子の発現を促進する該プロモーターの能力と相関する。該レポーター導入遺伝子、例えば、GFPの発現は、任意の適切な方法、例えば、FACSによって決定することができる。例えば、腎臓特異的プロモーターは、他の細胞型(例えば、CNS、網膜、肺、膵臓、心臓または筋肉細胞)と比較して、腎臓細胞においてレポーター導入遺伝子のより高い発現を促進することができる。例えば、足細胞特異的プロモーターは、他の細胞型と比較して、条件付き不死化足細胞においてレポーター導入遺伝子のより高い発現を促進することができる。適切な足細胞株、例えば、CIHP-1は当業者に周知である。不死化足細胞を生成する方法は当業者に周知である。適切な方法は、Ni, L.ら、2012. Nephrology, 17(6), pp.525-531に記載されている。
【0065】
好適には、プロモーターは、最小腎臓特異的プロモーターである。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、最小糸球体特異的プロモーターである。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、最小足細胞特異的プロモーターである。
【0066】
プロモーターは、約1.2kb以下の長さを有していてもよい。好適には、該プロモーターは、約1.18kb以下、約1.17kb以下、約1.16kb以下、約1.15kb以下、約1.14kb以下、約1.13kb以下、約1.12kb以下、約1.11kb以下、または約1.10kb以下の長さを有する。好適には、該プロモーターは、約1.15kb以下の長さを有する。
【0067】
プロモーターは、約1.1kb以下の長さを有していてもよい。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、約1.1kb以下、1.0kb以下、約0.9kb以下、約0.8kb以下、約0.7kb以下、約0.6kb以下、約0.5kb以下、約0.4kb以下、または約0.3kb以下の長さを有する。
【0068】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、約0.8kb以下、約0.7kb以下、約0.6kb以下、約0.5kb以下、約0.4kb以下、または約0.3kb以下の長さを有する。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、818bp以下の長さを有する。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、800bp以下の長さを有する。
【0069】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、約0.5kb以下、約0.4kb以下、または約0.3kb以下の長さを有する。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、約0.3kb以下の長さを有する。
【0070】
プロモーターは、約250bp以上の長さを有していてもよい。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、約250~1100bp、250~1000bp、250~900bp、250~800bp、250~700bp、250~600bp、250~500bp、250~400bp、250~300bpの長さを有する。
【0071】
プロモーターは、約265bp以上の長さを有していてもよい。幾つかの実施形態では、該プロモーターは、約265~1100bp、265~1000bp、265~900bp、265~800bp、265~700bp、265~600bp、265~500bp、265~400bp、265~300bpの長さを有する。
【0072】
一実施形態では、プロモーターは、250~300bp、250~280bp、255~275bp、260~270bp、または約265bpの長さを有する。一実施形態では、該プロモーターは、800~850bp、800~840bp、810~830bp、815~825bp、約819bp、または約818bpの長さを有する。
【0073】
ネフリンプロモーター
プロモーターは、合成プロモーターであってもよい。本明細書中で使用する場合、「合成プロモーター」は、天然に存在しないプロモーターである。典型的には、合成プロモーターは、既存のプロモーターの遺伝子改変によって生成される。したがって、合成プロモーターは、既存のプロモーターに由来していてもよく、すなわち、1つ以上の遺伝子改変(例えば、置換、欠失または挿入)を含むことを除いて、既存のプロモーターと同一であってもよい。
【0074】
好適には、プロモーターは、ネフリン(NPHS1)プロモーターに由来していてもよい。好適には、該プロモーターは、最小ネフリンプロモーターであってもよい。該NPHS1遺伝子は、ネフリンをコードし、これは足細胞において選択的に発現される。
【0075】
ヒトNPHS1プロモーターは、Moellerら 2002 J Am Soc Nephrol, 13(6):1561-7およびWong MAら 2000 Am J Physiol Renal Physiol, 279(6):F1027-32に記載されている。このNPHS1プロモーターは、1.2kbの断片であり、足細胞特異的であるように見える。1.2kbのプロモーター領域は、TATAボックスを欠くが、他の転写因子、例えば、PAX-2結合エレメント、E-ボックスおよびGATAコンセンサス配列についての認識モチーフを有する。
【0076】
例示的なネフリンプロモーターは、配列番号1、配列番号14、配列番号44および配列番号45として示される。
【0077】
例示的なネフリンプロモーター - 1,249bp(配列番号1)
【化1】
【0078】
例示的なバリアントネフリンプロモーター - 1,192bp(配列番号14)
【化2-1】
【化2-2】
【0079】
例示的なバリアントネフリンプロモーター - 1,192bp(配列番号44)
【化3】
【0080】
例示的なバリアントネフリンプロモーター - 1,192bp(配列番号45)
【化4-1】
【化4-2】
【0081】
好適には、本発明のプロモーターは、配列番号1または配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するバリアントに由来する。好適には、本発明のプロモーターは、配列番号1または配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するバリアントと比較して1つ以上の欠失を有する。好適には、該バリアントは、配列番号1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。例示的なバリアントは、配列番号14、配列番号44または配列番号45である。
【0082】
好適には、配列番号1のバリアントは、以下の置換:A493G、C1080T、G1169CおよびC1249Gのうちの1つ以上を含む。好適には、配列番号1のバリアントは、置換A493G、C1080T、G1169CおよびC1249Gの各々を含む(配列番号14を参照されたい)。
【0083】
好適には、本発明のプロモーターは、配列番号14、配列番号44もしくは配列番号45、または配列番号14、配列番号44もしくは配列番号45に対して少なくとも70%の同一性を有するバリアントに由来する。好適には、本発明のプロモーターは、配列番号14、配列番号44もしくは配列番号45、または配列番号14、配列番号44もしくは配列番号45に対して少なくとも70%の同一性を有するバリアントと比較して1つ以上の欠失を有する。好適には、該バリアントは、配列番号14、配列番号44または配列番号45に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0084】
好適には、本発明のプロモーターは、配列番号14または配列番号14に対して少なくとも70%の同一性を有するバリアントに由来する。好適には、本発明のプロモーターは、配列番号14または配列番号14に対して少なくとも70%の同一性を有するバリアントと比較して1つ以上の欠失を有する。好適には、該バリアントは、配列番号14に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0085】
好適には、本発明のプロモーターは、配列番号1に記載され、1つ以上の欠失、例えば、1つもしくは2つの欠失を有するヌクレオチド配列、または該ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。好適には、本発明のプロモーターは、配列番号1に記載され、2つ以上の欠失を有するヌクレオチド配列、または該ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。該欠失は任意のサイズであってもよい。好適には、該欠失は、各々、少なくとも50bp、少なくとも100bp、少なくとも150bp、少なくとも200bp、少なくとも250bp、少なくとも300bp、少なくとも350bpまたは少なくとも400bpのサイズである。好適には、欠失は、各々、50~500bp、100~500bp、150~500bp、200~500bp、250~500bp、300~500bp、350~500bpまたは400~500bpのサイズである。
【0086】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号1に記載されるが、
(i)配列番号1の1位~n1位が欠失しており、n1が1~430の整数であり、および/もしくは
(ii)配列番号1のn2位~n3位が欠失しており、n3≧n2であり、n2が508~1061の整数であり、n3が508~1061の整数である、
ヌクレオチド配列、
または該ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0087】
幾つかの実施形態では、
(iii)配列番号1の493位に対応する位置がGであり、配列番号1の1080位に対応する位置がTであり、配列番号1の1169位に対応する位置がCであり、および/または配列番号1の1249位に対応する位置がGである。
【0088】
好ましい実施形態では、
(iii)配列番号1の493位に対応する位置がGであり、配列番号1の1080位に対応する位置がTであり、配列番号1の1169位に対応する位置がCであり、配列番号1の1249位に対応する位置がGである。
【0089】
上記のヌクレオチド位置は、配列番号1における位置を参照することによって言及されているが、当業者は、例えば、配列番号1およびバリアント配列を整列させることによって、そのバリアントにおける対応するヌクレオチド位置を容易に特定することができるであろう。例えば、配列番号1の493位は配列番号14の436位に対応し、配列番号1の1080位は配列番号14の1023位に対応し、配列番号1の1169位は配列番号14の1112位に対応し、配列番号1の1249位は配列番号14の1192位に対応する。
【0090】
例えば、本発明のプロモーターは、配列番号1に記載されるが、
(i)配列番号1の1位~n1位が欠失しており、n1が1~430の整数であり、および/または
(ii)配列番号1のn2位~n3位が欠失しており、n3≧n2であり、n2が508~1061の整数であり、n3が508~1061の整数である、
ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0091】
幾つかの実施形態では、
(iii)配列番号1の493位がGで置換されており、配列番号1の1080位がTで置換されており、配列番号1の1169位がCで置換されており、および/または配列番号1の1249位がGで置換されている。
【0092】
好ましい実施形態では、
(iii)配列番号1の493位がGで置換されており、配列番号1の1080位がTで置換されており、配列番号1の1169位がCで置換されており、配列番号1の1249位がGで置換されている。
【0093】
好適には、n1は、50~430、100~430、150~430、200~430、250~430、300~430、350~430、または400~430の整数である。幾つかの実施形態では、n1は、100~430の整数である。幾つかの実施形態では、n1=430、すなわち、配列番号1の1位~430位は、本発明のプロモーターにおいて欠失している。
【0094】
n3とn2の相違は、欠失のサイズを明示する。好適には、n3≧n2+49、n3≧n2+99、n3≧n2+149、n3≧n2+199、n3≧n2+249、n3≧n2+299、n3≧n2+349、n3≧n2+399、n3≧n2+449、n3≧n2+499、またはn3≧n2+549である。幾つかの実施形態では、n3≧n2+49である。
【0095】
n2およびn3が取る値によって、欠失がある場所が決定される。好適には、n2およびn3は各々550~1050の整数であり、n2およびn3は各々600~1000の整数であり、n2およびn3は各々650~950の整数であり、n2およびn3は各々700~900の整数であり、n2およびn3は750~850の整数である。
【0096】
幾つかの実施形態では、n2=508およびn3=1061、すなわち、配列番号1の508~1061位は、本発明のプロモーターにおいて欠失している。
【0097】
プロモーター領域
本発明者らは、導入遺伝子の発現を駆動するネフリンプロモーターの領域を決定した。
【0098】
プロモーターは、典型的には、「コア」領域および「近位」領域を含む。「コアプロモーター領域」は、転写開始部位、RNAポリメラーゼ結合部位および一般的な転写因子結合部位を含んでいてもよい。「近位プロモーター領域」は、例えば、効果的および制御可能な転写を促進するために必要とされる一次調節エレメントおよび特異的転写因子結合部位を含んでいてもよい。該コアプロモーター領域および該近位プロモーター領域の両方のサイズおよび成分は、典型的には、遺伝子特異的に変化する。プロモーターはまた、該コアプロモーター領域の下流および該開始コドンから上流に5'非翻訳領域(5'UTR)(リーダー配列としても知られている)を含んでいてもよい。(例えば、図1を参照されたい)。
【0099】
プロモーターはハイブリッドプロモーターであってもよい。本明細書中で使用する場合、「ハイブリッドプロモーター」は、異なるプロモーターに由来するエレメントの組合せを含む。例えば、該ハイブリッドプロモーターは、所望の導入遺伝子発現を達成するために、1つの既存のプロモーターに由来する近位プロモーター領域および別の既存のプロモーター由来のコアプロモーターを含んでいてもよい。筋肉ハイブリッドプロモーターは、Piekarowicz, K.ら(2019). Methods & clinical development, 15, 157-169に記載されている。
【0100】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(i)配列番号4、または配列番号4に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号4に対して少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列は、近位プロモーター領域を提供することができると考えられる。
【0101】
例示的な近位プロモーター領域(配列番号4)
【化5】
【0102】
好適には、バリアントは、配列番号4に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であってもよい。プロモーターは、配列番号17として示される配列番号4のバリアントを含んでいてもよい。好適には、配列番号4のバリアントは、置換A63Gを含む(配列番号17を参照されたい)。
【0103】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(i)配列番号17、または配列番号17に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。好適には、該バリアントは、配列番号17に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であってもよい。
【0104】
例示的なバリアント近位プロモーター領域(配列番号17)
【化6】
【0105】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号5もしくは18、または配列番号5もしくは18に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19、または配列番号6もしくは19に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20、または配列番号7もしくは20に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。
【0106】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号5、または配列番号5に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号5に対して少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列は、コアプロモーター領域を提供することができると考えられる。
【0107】
例示的なコアプロモーター領域(配列番号5)
【化7】
【0108】
好適には、バリアントは、配列番号5に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。プロモーターは、配列番号18として示される配列番号5のバリアントを含んでいてもよい。好適には、配列番号5のバリアントは、置換C19Tを含む(配列番号18を参照されたい)。
【0109】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号18、または配列番号18に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。好適には、該バリアントは、配列番号18に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0110】
例示的なバリアントコアプロモーター領域(配列番号18)
【化8】
【0111】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号6、または配列番号6に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号6に対して少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列は、5'UTRを提供することができると考えられる。
【0112】
例示的な5'UTR(配列番号6)
【化9】
【0113】
好適には、バリアントは、配列番号6に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。プロモーターは、配列番号19として示される配列番号6のバリアントを含んでいてもよい。好適には、配列番号6のバリアントは、置換G76Cおよび/またはC156Gを含む(配列番号19を参照されたい)。
【0114】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号19、または配列番号19に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。好適には、該バリアントは、配列番号19に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0115】
例示的なバリアント5'UTR(配列番号19)
【化10】
【0116】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号7、または配列番7に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号7に対して少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列は、コアプロモーター領域および5'UTRを提供することができると考えられる。
【0117】
例示的なコアプロモーター領域および5'UTR(配列番号7)
【化11】
【0118】
好適には、バリアントは、配列番号7に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。プロモーターは、配列番号20として示される配列番号7のバリアントを含んでいてもよい。好適には、配列番号7のバリアントは、置換C19T、G108Cおよび/またはC188Gを含む(配列番号20を参照されたい)。好適には、配列番号7のバリアントは、置換C19T、G108CおよびC188Gを含む(配列番号20を参照されたい)。
【0119】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(ii)配列番号20、または配列番20に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含む。好適には、該バリアントは、配列番号20に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0120】
例示的なバリアントコアプロモーター領域および5'UTR(配列番号20)
【化12】
【0121】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、(iii)配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。好適には、プロモーターは、近位プロモーター領域のすぐ下流および/またはコアプロモーター領域のすぐ上流に配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0122】
プロモーターは、配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。該プロモーターは、配列番号8またはその1つ以上の断片のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0123】
例示的な任意選択的なプロモーター領域(配列番号8)
【化13】
【0124】
好適には、1つ以上の断片は、(a)5'末端断片および/または(b)3'末端断片である。好適には、該5'末端断片は近位プロモーター領域のすぐ下流にあってもよい。好適には、該3'末端断片はコアプロモーター領域のすぐ上流にあってもよい。例えば、本発明のプロモーターは、
(a)配列番号8の1~x位に対して少なくとも70%を有するヌクレオチド配列、および/または
(b)配列番号8のy~554位に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含んでいてもよく、ここでxおよびyは整数であり、y>xである。
【0125】
配列番号8の断片は任意の長さであってもよい。好適には、該断片は、約500bp以下、450bp以下、400bp以下、350bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、150bp以下、100bp以下、50bp以下、40bp以下、30bp以下、20bp以下または10bp以下の長さを有していてもよい。
【0126】
幾つかの実施形態では、プロモーターは配列番号8を含まない。
【0127】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号9またはその断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。好適には、該プロモーターは、近位プロモーター領域のすぐ上流に、配列番号9またはその断片に対して少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0128】
プロモーターは、配列番号9またはその断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。該プロモーターは、配列番号9またはその1つ以上の断片のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0129】
例示的な任意選択的な上流プロモーター領域(配列番号9)
【化14】
【0130】
好適には、断片は3'末端断片である。例えば、本発明のプロモーターは、配列番号9のz~430位に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、ここでzは整数である。
【0131】
配列番号9の断片は任意の長さであってもよい。好適には、該断片は、約400bp以下、350bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、150bp以下、100bp以下、50bp以下、40bp以下、30bp以下、20bp以下または10bp以下の長さを有していてもよい。
【0132】
幾つかの実施形態では、プロモーターは配列番号9を含まない。
【0133】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、5'から3'へと
(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列、
(iii)場合により、配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0134】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、5'から3'へと
(i)配列番号4または17に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、
(iii)場合により、配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0135】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、5'から3'へと
(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列、
(iii)場合により、(a)配列番号8の5'末端断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または(b)配列番号8の3'末端断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0136】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、5'から3'へと
(i)配列番号4または17に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、
(iii)場合により、(a)配列番号8の5'末端断片に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列および/または(b)配列番号8の3'末端断片に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号7もしくは20に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0137】
プロモーターエレメント
本発明者らは、導入遺伝子の発現を駆動するネフリンプロモーターの機能的エレメントを決定した。
【0138】
本発明のプロモーターは、以下のエレメント:(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位、(c)エンハンサーボックス、(d)転写因子結合領域、および(e)転写開始部位のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0139】
好適には、本発明のプロモーターは、以下のエレメント:(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位、(c)エンハンサーボックス、(d)転写因子結合領域、および(e)転写開始部位の全てを含む。
【0140】
レチノイン酸受容体(RAR)結合部位は、RARアルファ、RARベータおよび/またはRARガンマに結合可能なポリヌクレオチド配列を指す。RAR結合部位は、配列番号10として示されるヌクレオチド配列または配列番号10と比較して1つもしくは2つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成されていてもよい。該置換、欠失または挿入は、RAR結合部位がその内因性機能の少なくとも1つを保持するような単一ヌクレオチドの任意の置換、欠失または挿入であってもよい。
【0141】
例示的なRAR結合部位(配列番号10)
【化15】
【0142】
WT1結合部位は、ウィルムス腫瘍抑制遺伝子であるWT1によってコードされるジンクフィンガーポリペプチドに結合可能なポリヌクレオチド配列を指す。該WT1結合部位は、配列番号11として示されるヌクレオチド配列または配列番号11と比較して1つ、2つもしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成されていてもよい。該置換、欠失または挿入は、該WT1結合領域がその内因性機能の少なくとも1つを保持するような単一ヌクレオチドの任意の置換、欠失または挿入であってもよい。
【0143】
例示的なWT1結合部位(配列番号11)
【化16】
【0144】
エンハンサーボックスは、タンパク質結合部位として機能する一部の真核生物に見出されるDNA応答エレメントを指す。該エンハンサーボックスは、配列番号12として示されるヌクレオチド配列または配列番号12と比較して1つもしくは2つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成されていてもよい。該置換、欠失または挿入は、エンハンサーボックスがその内因性機能の少なくとも1つを保持するような単一ヌクレオチドの任意の置換、欠失または挿入であってもよい。
【0145】
例示的なエンハンサーボックス(配列番号12)
【化17】
【0146】
(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位および(c)エンハンサーボックスのうちの1つ以上が近位プロモーター領域に存在していてもよい。好適には、(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位および(c)エンハンサーボックスの各々が近位プロモーター領域に存在する。
【0147】
幾つかの実施形態では、以下のエレメントのうちの1つ以上が(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列に存在する:(a)配列番号4または17の7位~13位にほぼ対応する位置におけるRAR結合部位、(b)配列番号4または17の14位~30位にほぼ対応する位置におけるWT1結合部位、および(c)配列番号4または17の49位~53位にほぼ対応する位置におけるエンハンサーボックス。幾つかの実施形態では、該エレメントの各々は、(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列に存在する。
【0148】
幾つかの実施形態では、以下のヌクレオチド配列のうちの1つ以上が(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列に存在する:(a)配列番号4または17の7位~13位に対応する位置におけるGGGGTCA、(b)配列番号4または17の14位~30位に対応する位置におけるCGGAGGCTGGGGAGGCA、および(c)配列番号4または17の49位~53位に対応する位置におけるATGTG。幾つかの実施形態では、該ヌクレオチド配列の各々は、(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列に存在する。
【0149】
好適には、プロモーターは、配列番号13として示されるヌクレオチド配列または配列番号13と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される転写因子結合領域を含んでいてもよい。該置換、欠失または挿入は、転写因子結合領域がその内因性機能の少なくとも1つを保持するような単一ヌクレオチドの任意の置換、欠失または挿入であってもよい。例示的なバリアントは配列番号43に示される。好適には、配列番号13のバリアントは置換C19Tを含む(配列番号43を参照されたい)。
【0150】
例示的な転写因子結合領域(配列番号13)
【化18】
【0151】
好適には、プロモーターは、配列番号43として示されるヌクレオチド配列または配列番号43と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される転写因子結合領域を含んでいてもよい。該置換、欠失または挿入は、転写因子結合領域がその内因性機能の少なくとも1つを保持するような単一ヌクレオチドの任意の置換、欠失または挿入であってもよい。
【0152】
例示的な転写因子結合領域(配列番号43)
【化19】
【0153】
他の適切な転写因子結合領域は当業者に周知であろう。例えば、他の適切な転写因子結合領域には、TACGAT(配列番号37)、TATAAT(配列番号38)、GATACT(配列番号39)、TATGAT(配列番号40)およびTATGTT(配列番号41)が含まれる。
【0154】
好適には、プロモーターは、「AG」ジヌクレオチドを含むかまたはそれから構成される転写開始部位を含んでいてもよい。
【0155】
好適には、転写因子結合部位は、転写開始部位に機能しうる形で連結されている。好適には、該転写因子結合部位は、該転写開始部位のすぐ上流にあってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、該転写因子結合部位および該転写開始部位はコアプロモーター領域を提供することができると考えられる。
【0156】
好適には、プロモーターは5'非翻訳領域を含んでいてもよい。該5'非翻訳領域は、配列番号6または19に対して少なくとも約70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。該5'非翻訳領域は配列番号6または19を含むかまたはそれらから構成されていてもよい。
【0157】
好適には、5'非翻訳領域は、転写開始部位に機能しうる形で連結されている。好適には、該5'非翻訳領域は転写開始部位の直接下流にあってもよい。
【0158】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、5'から3'へと
(i)配列番号4または17に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、以下のエレメント:(a)配列番号4または17の7位~13位にほぼ対応する位置におけるRAR結合部位、(b)配列番号4または17の14位~30位にほぼ対応する位置におけるWT1結合部位、および(c)配列番号4または17の49位~53位にほぼ対応する位置におけるエンハンサーボックスの各々が存在する、ヌクレオチド配列、
(iii)場合により、配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7もしくは20に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0159】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、5'から3'へと
(i)配列番号4または17に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、以下のエレメント:(a)配列番号4または17の7位~13位にほぼ対応する位置におけるRAR結合部位、(b)配列番号4または17の14位~30位にほぼ対応する位置におけるWT1結合部位、および(c)配列番号4または17の49位~53位にほぼ対応する位置におけるエンハンサーボックスの各々が存在する、ヌクレオチド配列、
(iii)場合により、配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
(ii)配列番号5もしくは18に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6もしくは19に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7もしくは20に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列
を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される。
【0160】
例示的なプロモーター
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号2、または配列番号2に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0161】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号2、または配列番号2に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0162】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号2、または配列番号2に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0163】
例示的な最小ネフリンプロモーター - 819bp(配列番号2)
【化20-1】
【化20-2】
【0164】
好適には、バリアントは、配列番号2に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。プロモーターは、配列番号15または配列番号46として示される配列番号2のバリアントを含むかまたは該バリアントから構成されていてもよい。
【0165】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号15、または配列番号15に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0166】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号15、または配列番号15に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0167】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号15、または配列番号15に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0168】
好適には、バリアントは、配列番号15に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0169】
例示的な最小ネフリンプロモーターバリアント - 819bp(配列番号15)
【化21】
【0170】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号46、または配列番号46に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0171】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号46、または配列番号46に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0172】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号46、または配列番号46に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0173】
好適には、バリアントは、配列番号46に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0174】
例示的な最小ネフリンプロモーターバリアント - 819bp(配列番号46)
【化22】
【0175】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号58、または配列番号58に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0176】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号58、または配列番号58に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0177】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号58、または配列番号58に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0178】
例示的な最小ネフリンプロモーター - 818bp(配列番号58)
【化23-1】
【化23-2】
【0179】
好適には、バリアントは、配列番号58に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。プロモーターは、配列番号59または配列番号60として示される配列番号58のバリアントを含むかまたは該バリアントから構成されていてもよい。
【0180】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号59、または配列番号59に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0181】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号59、または配列番号59に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0182】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号59、または配列番号59に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0183】
好適には、バリアントは、配列番号59に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0184】
例示的な最小ネフリンプロモーターバリアント - 818bp(配列番号59)
【化24】
【0185】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号60、または配列番号60に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0186】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号60、または配列番号60に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0187】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号60、または配列番号60に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0188】
好適には、バリアントは、配列番号60に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0189】
例示的な最小ネフリンプロモーターバリアント - 818bp(配列番号60)
【化25】
【0190】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号3、または配列番号3に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0191】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号3、または配列番号3に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0192】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号3、または配列番号3に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0193】
例示的な最小ネフリンプロモーター - 265bp(配列番号3)
【化26】
【0194】
好適には、バリアントは、配列番号3に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。好適には、配列番号3のバリアントは、置換A63G、C96T、G185CおよびC265Gのうちの1つ以上を含む。好適には、配列番号3のバリアントは、置換A63G、C96T、G185CおよびC265Gを含む(配列番号17~20を参照されたい)。プロモーターは、配列番号16または配列番号47として示される配列番号3のバリアントを含むかまたは該バリアントから構成されていてもよい。
【0195】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号16、または配列番号16に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0196】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号16、または配列番号16に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0197】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号16、または配列番号16に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0198】
好適には、バリアントは、配列番号16に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0199】
例示的な最小ネフリンプロモーターバリアント - 265bp(配列番号16)
【化27】
【0200】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号47、または配列番号47に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0201】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号47、または配列番号47に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含み、該プロモーターは約1.1kb以下の長さを有する。
【0202】
幾つかの実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号47、または配列番号47に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列から構成される。
【0203】
好適には、バリアントは、配列番号47に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0204】
例示的な最小ネフリンプロモーターバリアント - 265bp(配列番号47)
【化28】
【0205】
ポリヌクレオチド
本発明は、本発明のプロモーターを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0206】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA、好ましくはDNAを含んでいてもよい。それらは一本鎖であってもよいかまたは二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチド、例えば、DNAポリヌクレオチドは、組換え、合成、または当業者に利用可能な任意の手段によって生成されていてもよい。それらはまた、標準的な技術によってクローニングされていてもよい。該ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドであってもよい。
【0207】
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を使用して、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を使用して生成される。これは、クローニングすることが望まれる標的配列に隣接する一対のプライマー(例えば、約15~30ヌクレオチド)を作製し、プライマーを動物またはヒトの細胞から得たmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅された断片を単離し(例えば、アガロースゲルにより反応混合物を精製することによって)、増幅されたDNAを回収することを含む。プライマーは、増幅されたDNAを適切なベクターにクローニングできるように、適切な制限酵素認識部位を含有するように設計されていてもよい。
【0208】
ポリヌクレオチドは、当分野で利用可能な任意の方法によって改変されていてもよい。そのような改変は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強するために実行されていてもよい。
【0209】
タンパク質コード配列
プロモーターは、1つ以上のタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。
【0210】
タンパク質コード配列は、任意の目的のポリペプチドをコードしていてもよい。例えば、該タンパク質コード配列は、糸球体疾患に関連する任意のポリペプチドをコードすることができる。該タンパク質コード配列は、GBM関連遺伝性糸球体疾患、例えば、アルポート症候群に関与するポリペプチドをコードしていてもよい。該タンパク質コード配列は、足細胞関連の遺伝性糸球体疾患に関与するポリペプチドをコードしていてもよい。
【0211】
好適には、タンパク質コード配列は、COL4A3、COL4A4、COL4A5、NPHS2、CFH、CFL、CFHL1、C1INH、C4BP、MASP2、C3、C5aR1、C5、C5a、CD55、CD35、CD46、CD59、ビトロネクチン、クラスタリン、ADCK4、ALG1、ARHGAP24、ARGHDIA、CD151、CD2AP、COQ2、COQ6、DGKE、E2F3、EMP2、KANK2、LAGE3、LMNA、LMX1B、MAF B、NUP85、NUP93、NXF5、OSGEP、PAX2、PDSS2、PMM2、PODXL、SCARB2、SGPL1、Smad7、TP53RK、TPRKB、VDR、WDR73、WT1、ZMPSTE24、APOL1、NPHS1、TRPC6、NUP107、NUP133、NUP160、ACTN4、INF2、ANKFY1、ANLN、CRB2、ITGA3、KANK1、KANK4、MAGI2、MYO1E、OCRL、PTPRO、SMARCAL1、SYNPO、TBC1D8B、XPO5、TNS2、NLRP3またはVEGFCポリペプチドをコードしていてもよい。
【0212】
好適には、タンパク質コード配列は、1450アミノ酸以上、1500アミノ酸以上、1550アミノ酸以上、1600アミノ酸以上または1650アミノ酸以上の長さを有するポリペプチドをコードする。
【0213】
タンパク質コードポリヌクレオチドについては、遺伝暗号の縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードすることができることが当業者によって理解されるであろう。加えて、当業者は、本発明のポリペプチドが発現されるべき任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映させるために、日常的な技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行うことができることを理解されたい。
【0214】
タンパク質コード配列はコドン最適化されていてもよい。異なる細胞は、その特定のコドンの使用頻度が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量の偏りに相当する。配列中のコドンを、それらを対応するtRNAの相対的存在量と一致するよう調整するために変更することで、発現を増大させることが可能である。同じ理由で、対応するtRNAが特定の細胞型では稀であることが知られているコドンを意図的に選択することにより、発現を減少させることが可能である。従って、さらなる翻訳調節が利用可能となる。コドン使用頻度表は、哺乳動物細胞(例えばヒト)に関して、ならびに様々な他の生物に関して当分野で公知である。
【0215】
本明細書中に開示したタンパク質コードヌクレオチド配列は、それらの3'末端に終止コドンを含んでいてもよいかまたは欠いていてもよい。したがって、本開示は、終止コドンが存在するかまたは存在しない、本明細書中に開示した配列番号を包含する。
【0216】
COL4A3、COL4A4およびCOL4A5ポリペプチド
タンパク質コード配列は、COL4A3、COL4A4もしくはCOL4A5ポリペプチドまたはそれらの断片もしくは誘導体をコードすることができる。
【0217】
COL4A3、COL4A4およびCOL4A5タンパク質は、非コラーゲン性配列によって頻繁に中断され、三重らせんリピートを形成するコラーゲン性Gly-X-Yリピート配列を含有する約170~185kDaの相同ポリペプチドである。各ポリペプチドはカルボキシル末端に大きな球状の非コラーゲン性ドメインも含有する。
【0218】
アルポート症候群(AS)は、COL4A3、COL4A4およびCOL4A5遺伝子の病原性バリアントによって引き起こされ、その結果として基底膜のコラーゲンIV α345ネットワークの異常が生じる。
【0219】
COL4A3、COL4A4もしくはCOL4A5ポリペプチドまたはそれらの断片もしくは誘導体は、コラーゲンIV α345ネットワークを形成することが可能でありうる。
【0220】
およそ200~300個のアミノ酸が、ミニ遺伝子アプローチに適したトランケート型導入遺伝子を生成するために、COL4A3、COL4A4およびCOL4A5ポリペプチドの各々から除去されていてもよい。該アミノ酸は三重らせんリピートから除去されていてもよい。好ましくは、アミノ酸は非コラーゲン性領域から除去されていない。
【0221】
幾つかの実施形態では、COL4A3、COL4A4およびCOL4A5ポリペプチドは全長ポリペプチドである。
【0222】
好ましくは、COL4A3、COL4A4またはCOL4A5ポリペプチドはヒトである。ヒトCOL4A3の例は、UniProtKBアクセス番号Q01955を有するCOL4A3である。ヒトCOL4A4の例は、UniProtKBアクセス番号P53420を有するCOL4A3である。ヒトCOL4A5の例は、UniProtKBアクセス番号P29400を有するCOL4A5である。
【0223】
好適には、COL4A3ペプチドは、配列番号21、または配列番号21に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリペプチド配列を含むかまたは該ポリペプチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号21に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0224】
好適には、COL4A4ペプチドは、配列番号22、または配列番号22に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリペプチド配列を含むかまたは該ポリペプチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号22に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0225】
好適には、COL4A5ペプチドは、配列番号23、または配列番号23に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリペプチド配列を含むかまたは該ポリペプチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号23に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0226】
例示的なCOL4A3アミノ酸配列 - Uniprot参照Q01955(配列番号21)
【化29-1】
【化29-2】
【0227】
例示的なCOL4A4アミノ酸配列 - Uniprot参照P53420(配列番号22)
【化30】
【0228】
例示的なCOL4A5アミノ酸配列 - Uniprot参照P29400(配列番号23)
【化31-1】
【化31-2】
【0229】
タンパク質コード配列は、COL4A3、COL4A4またはCOL4A5導入遺伝子を含むかまたはそれらから構成されていてもよい。
【0230】
COL4A3をコードする導入遺伝子の例は、NM_000091.5に提供されている。COL4A4をコードする導入遺伝子の例は、NM_000092.5に提供されている。COL4A5をコードする導入遺伝子の例は、NM_000495.5に提供されている。
【0231】
好適には、COL4A3導入遺伝子は、配列番号24、または配列番号24に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリペプチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号24に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0232】
好適には、COL4A4導入遺伝子は、配列番号25、または配列番号25に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまた該ポリペプチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号25に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0233】
好適には、COL4A5導入遺伝子は、配列番号26、または配列番号26に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリペプチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号26に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0234】
例示的なCOL4A3導入遺伝子配列(配列番号24)
【化32-1】
【化32-2】
【化32-3】
【0235】
例示的なCOL4A4導入遺伝子配列(配列番号25)
【化33-1】
【化33-2】
【0236】
例示的なCOL4A5導入遺伝子配列(配列番号26)
【化34-1】
【化34-2】
【化34-3】
【0237】
COL4A3、COL4A4またはCOL4A5導入遺伝子は、遺伝子発現を改善するために使用することができるイントロンまたはイントロン配列を含んでいてもよい。該COL4A3、COL4A4またはCOL4A5導入遺伝子は、タンパク質タグ、例えば、血球凝集素(HA)タグを含んでいてもよい。HAはエピトープタグとして使用することができ、それが付加されたタンパク質の生物活性または生体内分布を妨げないことが示されている。該タンパク質タグは、導入遺伝子の検出、単離および精製を容易にすることができる。他の適切なタンパク質タグとして、Mycタグ、ポリヒスチジンタグおよびフラグタグを挙げることができる。
【0238】
幾つかの実施形態では、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、COL4A3、COL4A4もしくはCOL4A5ポリペプチドまたはそれらの断片もしくは誘導体をコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結している。
【0239】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、COL4A3、COL4A4もしくはCOL4A5ポリペプチドまたはそれらの断片もしくは誘導体をコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結している。
【0240】
ネフローゼ症候群(NS)関連導入遺伝子
タンパク質コード配列は、NS関連導入遺伝子を含むかまたは該NS関連導入遺伝子から構成されていてもよい。
【0241】
ネフローゼ症候群(NS)は、重度のタンパク尿、低アルブミン血症、浮腫および高脂血症を特徴とする慢性腎疾患である。NS関連導入遺伝子は、単一遺伝子型のNSに関連し、足細胞で発現される遺伝子でありうる。
【0242】
適切なNS関連導入遺伝子としては、NPHS2、ADCK4、ALG1、ARHGAP24、ARGHDIA、CD151、CD2AP、COQ2、COQ6、DGKE、E2F3、EMP2、KANK2、LAGE3、LMNA、LMX1B、MAFB、NUP85、NUP93、NXF5、OSGEP、PAX2、PDSS2、PMM2、PODXL、SCARB2、SGPL1、Smad7、TP53RK、TPRKB、VDR、WDR73、WT1、ZMPSTE24、APOL1、NPHS1、TRPC6、NUP107、NUP133、NUP160、ACTN4、INF2、ANKFY1、ANLN、CRB2、ITGA3、KANK1、KANK4、MAGI2、MYO1E、OCRL、PTPRO、SMARCAL1、SYNPO、TBC1D8B、XPO5、TNS2およびNLRP3が挙げられる。
【0243】
幾つかの実施形態では、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、NS関連導入遺伝子に機能しうる形で連結している。
【0244】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、NS関連導入遺伝子に機能しうる形で連結している。
【0245】
NPHS2
タンパク質コード配列は、NPHS2またはその断片および/もしくはバリアントをコードすることができる。
【0246】
「NPHS2」は、NPHS2遺伝子によってコードされるポリペプチドの略称であり、ポドシンとしても知られている。NPHS2は、42kDaのヘアピン状の膜結合足細胞特異的タンパク質であり、スリット隔膜;隣接する足細胞の足突起間の細胞間結合部におけるタンパク質複合体の重要な成分である。それは脂質ラフトに局在し、ネフリン、CD2APおよびTRPC6のような他の重要なスリット隔膜タンパク質と相互作用する。それは、スリット隔膜の維持、したがって糸球体濾過障壁の完全性に不可欠である。
【0247】
NPHS2の断片および/またはバリアントはNPHS2活性を保持することができる。例えば、ポドシンの断片および/またはバリアントは、糸球体透過性を調節することができる。好適には、NPHS2の断片および/またはバリアントは、NPHS2と同じまたは類似の活性を有することができ、例えば、NPHS2の活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%を有することができる。
【0248】
当業者は、NPHS2の既知の構造的および機能的特徴に基づいて(例えば、Tabassum, A.,ら、2014. Interdisciplinary Sciences: Computational Life Sciences, 6(1), pp.32-39を参照されたい)、ならびに/または既知のバリアントに基づいて(例えば、NCBI Gene ID: 7827およびNCBI HomoloGene: 22826を参照されたい)、保存的置換を使用して断片および/またはバリアントを生成することができるであろう。好適には、NPHS2の断片および/またはバリアントは、N末端およびC末端に2つの細胞質ドメインを有する膜貫通ドメインを含む。
【0249】
NPHS2遺伝子は、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウスおよびラットにおいて保存されている。該NPHS2はヒトNPHS2であってもよい。好適には、該NPHS2は、UniProtKBアクセスQ9NP85のポリペプチド配列またはその断片および/もしくはバリアントを含むかまたはそれらから構成されていてもよい。
【0250】
幾つかの実施形態では、NPHS2は、配列番号55またはその断片に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列から構成される。好適には、該NPHS2は、配列番号55またはその断片に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列から構成される。
【0251】
幾つかの実施形態では、NPHS2は、配列番号55またはその断片を含むかまたはそれらから構成される。
【化35】
例示的なNPHS2アミノ酸配列(配列番号55)
【0252】
幾つかの実施形態では、NPHS2導入遺伝子は、配列番号56またはその断片に対して少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。好適には、該NPHS2導入遺伝子は、配列番号56またはその断片に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0253】
幾つかの実施形態では、NPHS2導入遺伝子は、配列番号56またはその断片のヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【化36】
例示的なNPHS2導入遺伝子配列(配列番号56)
【0254】
幾つかの実施形態では、NPHS2導入遺伝子は、配列番号57またはその断片に対して少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。好適には、該NPHS2導入遺伝子は、配列番号57またはその断片に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【0255】
幾つかの実施形態では、NPHS2導入遺伝子は、配列番号57またはその断片のヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される。
【化37】
例示的なNPHS2導入遺伝子配列(配列番号57)
【0256】
幾つかの実施形態では、プロモーターは、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成され、NPHS2またはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0257】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、NPHS2またはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0258】
血管内皮増殖因子(VEGF)C導入遺伝子
タンパク質コード配列は、血管内皮増殖因子(VEGF)C導入遺伝子を含むかまたは該VEGFC導入遺伝子から構成されていてもよい。
【0259】
VEGFCはリンパ管新生(lymphangiogenic)増殖因子であり、VEGFR-3(Flt4)およびVEGFR-2(Flk4)という2つの受容体を介してシグナル伝達することが知られている。VEGFCはプレプロペプチド形態で細胞によって産生され、四量体に切断される前に二量体化する。
【0260】
VEGFC導入遺伝子は、任意の形態のVEGFC、例えば、プレプロペプチド形態、四量体形態、中間形態または完全にプロセシングされた成熟VEGFCをコードするポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0261】
必要に応じて、異なる形態のVEGFCポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、任意の組合せで使用することができる。好ましくは、該VEGFC導入遺伝子は、VEGFC生物活性を有する1つ以上のポリペプチド、すなわち、VEGFR-2および/またはVEGRF-3に結合して活性化することができるペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。より好ましくは、該VEGFC導入遺伝子は、VEGFC相同ドメインを含み、VEGFC生物活性を有するポリペプチド、すなわち、VEGFR-2および/またはVEGRF-3に結合して活性化することができるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。適切なVEGFCポリヌクレオチドおよびポリペプチドのさらなる詳細には、WO2015/022447およびUS2014/0087002に記載されているものが含まれる。
【0262】
VEGFCポリヌクレオチドは、配列番号36のVEGFCオープンリーディングフレーム(ORF)配列を含んでいてもよい。該VEGFCポリヌクレオチドは、配列番号36のVEGFC ORF配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含んでいてもよい。バリアント配列は、VEGFR-2およびVEGFR-3に結合して活性化する能力を保持しているVEGFCポリペプチドをコードすることができる。
【0263】
例示的なVEGFCポリヌクレオチド(配列番号36)
【化38】
【0264】
幾つかの実施形態では、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、VEGF(C)導入遺伝子に機能しうる形で連結されている。
【0265】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、VEGF(C)導入遺伝子に機能しうる形で連結されている。
【0266】
補体タンパク質および補体阻害因子
タンパク質コード配列は、補体タンパク質またはその断片および/もしくはバリアントをコードすることができる。
【0267】
本明細書中で使用する場合、「補体タンパク質」は補体系の一部であるタンパク質である。補体系は、補体カスケードとしても知られており、外来および変性宿主細胞に対する防御の最前線としての役割を果たす先天免疫の中心的部分である。該補体系は、肝臓により主に産生される血漿タンパク質または細胞表面上に発現される膜タンパク質からなる。補体は血漿中、組織中、または細胞内で機能する。補体タンパク質はカスケードとして協同することにより、病原体をオプソニン化して一連の炎症反応を誘発し、免疫細胞が感染と戦って恒常性を維持するのを助ける(Merle, N.S.,ら、2015. Frontiers in immunology, 6, 262)。
【0268】
補体活性化の3つの経路、すなわち古典、第二、およびレクチン経路が存在する。これら3つの補体経路はその標的認識の機構が異なるものの、中心的成分C3の活性化に収束する。この活性化の後に、C5が切断され、膜侵襲複合体(MAC)の組立てが開始される。C3およびC5の酵素的切断はアナフィラトキシンC3aおよびC5aの産生および遊離をもたらす。
【0269】
好適には、補体タンパク質は、CFI、CFH、FHL-1、C1INH、C4BP、MASP2、C3、C5aR1、C5、C5a、CD55、CD35、CD46、CD59、ビトロネクチンおよびクラスタリンまたはそれらの断片および/もしくはバリアントから構成されるリストから選択される。
【0270】
タンパク質コード配列は、補体系の阻害因子またはその断片および/もしくはバリアントをコードすることができる。
【0271】
本明細書中で使用する場合、「補体系の阻害因子」または「補体阻害因子」は、補体系の活性化を阻止するタンパク質である。補体はこれらの阻害因子により厳密に制御されており、該阻害因子は本来、望ましくない補体活性化から自己細胞および組織を保護している。補体阻害因子は古典、レクチン、および第二経路の種々の段階で補体活性化を調節することができる。好適には、補体阻害因子は、天然に存在する補体阻害因子またはその断片および/もしくはバリアントである。好ましくは、補体系の阻害因子は、ヒトにおける補体系の阻害因子である。
【0272】
補体阻害因子は2つのカテゴリー、すなわち、可溶性阻害因子および膜結合型阻害因子に分類される。好ましくは、補体系の阻害因子は可溶性補体阻害因子である。可溶性補体阻害因子としては、C1阻害因子(C1INH)、補体I因子(CFI)、補体H因子(CFH)、補体H因子様タンパク質1(FHL-1)、C4結合タンパク質(C4BP)、クラステリンおよびビトロネクチンが挙げられる。膜結合型調節因子としては、CD46、CD55、CD59、CD35ならびにCUBおよびSushi多重ドメイン1(CSMD1)が挙げられる。
【0273】
補体系の阻害因子は、CFI、CFH、FHL-1、C1INH、C4BP、CD46、CD55、CD59、CD35、ビトロネクチン、クラスタリンおよびCSMD1またはそれらの断片および/もしくはバリアントから選択されてもよい。
【0274】
好ましくは、補体系の阻害因子は、CFI、CFHおよびFHL-1またはそれらの断片および/もしくはバリアントから選択される。
【0275】
CFI
タンパク質コード配列は、CFIまたはその断片および/もしくはバリアントをコードすることができる。
【0276】
補体I因子(CFI)は、C3bのアルファ鎖中の3つのペプチド結合とC4bのアルファ鎖中の2つの結合を切断し、それによってこれらのタンパク質を不活性化することにより補体系を阻害する、トリプシン様セリンプロテアーゼである。
【0277】
CFIは、ジスルフィド結合した重鎖と軽鎖からなる糖タンパク質ヘテロ二量体である。該重鎖は4つのドメイン、すなわちFI膜侵襲複合体(FIMAC)ドメイン、CD5ドメイン、ならびに低密度リポタンパク質受容体1および2(LDLr1およびLDLr2)ドメインを有する。該重鎖は、酵素が基質(C3bまたはC4b)と補助因子タンパク質(H因子、C4b結合タンパク質、補体受容体1、およびメンブレンコファクタープロテイン)により形成される複合体と出会うまで該酵素を不活性に保つ上で阻害的役割を果たす。該酵素が該基質:補助因子複合体に結合すると、重鎖:軽鎖接合部分が破壊され、該酵素がアロステリック効果により活性化される。該軽鎖はセリンプロテアーゼドメインのみを含有する。このドメインは触媒三残基His-362、Asp-411、およびSer-507を含有しており、C3bおよびC4bの特異的切断に関与している。
【0278】
CFIまたはその断片および/もしくはバリアントは、C3bをiC3bに切断することが可能であり得、および/またはiC3bをC3d,gに切断することが可能でありうる。
【0279】
CFIの断片および/またはバリアントは、天然CFIのC3b不活化活性およびiC3b分解活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%を保持していてもよい。該CFIの断片および/またはバリアントならびに天然CFIの該C3b不活化活性およびiC3b分解活性は、当業者に公知の任意の適切な方法を使用して、例えば、タンパク質分解アッセイを使用して測定してもよい。
【0280】
好ましくは、CFIはヒトCFIである。ヒトCFIの1例は、UniProtKBアクセス番号P05156を有するCFIである。
【0281】
好適には、CFIは、配列番号49、または配列番号49に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0282】
例示的なCFIポリペプチド配列(配列番号49):
【化39】
【0283】
好適には、バリアントは、配列番号49に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0284】
CFIをコードするヌクレオチド配列の例は、NM_000204.5である。好適には、CFIをコードするタンパク質コード配列は、配列番号50、または配列番号50に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0285】
例示的なCFIポリヌクレオチド配列(配列番号50):
【化40】
【0286】
好適には、バリアントは、配列番号50に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0287】
幾つかの実施形態では、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、CFIまたはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0288】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、CFIまたはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0289】
CFH
タンパク質コード配列は、CFHまたはその断片および/もしくはバリアントをコードすることができる。
【0290】
補体H因子(CFH)は、自己細胞および表面における補体活性化を調節する。CFHは補体B因子(CFB)のC3bへの結合と競合し、CFIが触媒するC3bのタンパク質分解的切断のための補助因子として作用し、さらにC3bBbおよびC3b2Bbのそれらの別個の成分への不可逆的解離を促進する。従って、CFHは転換酵素の形成を阻害するだけでなく、形成される任意の転換酵素複合体の寿命も短縮する。
【0291】
CFHは大きい(155kDa)可溶性糖タンパク質である。CFHは合計20個のドメインから構成され、その各々はおよそ60個のアミノ酸残基を含有しており、3~8個の残基からなる短いリンカーにより結び付いた補体制御タンパク質モジュール(CCP)またはショートコンセンサスリピートと称される。該CCPモジュールは(該タンパク質のN末端から)1~20の番号が付けられており、CCP 1~4およびCCP 19~20がC3bと関わる一方で、CCP 7およびCCP 19~20はGAGおよびシアル酸と結合する。
【0292】
CFHまたはその断片および/もしくはバリアントは、C3bおよび/もしくはC3dに結合する能力、ならびに/またはCFIが触媒するC3bのタンパク質分解的切断のための補助因子として作用する能力、ならびに/またはC3bBbおよびC3b2Bbのそれらの別個の成分への不可逆的解離を増大させる能力を有していてもよい。CFHの断片および/またはバリアントは、天然のCFHの活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%を保持していてもよい。CFHの断片および/またはバリアントならびに天然のCFHの活性は、当業者に公知の任意の適切な方法を使用して測定してもよい。
【0293】
好ましくは、CFHはヒトCFHである。ヒトCFHの1例は、UniProtKBアクセッション番号P08603を有するCFHである。
【0294】
好適には、CFHは、配列番号51、または配列番号51に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
例示的なCFHポリペプチド配列(配列番号51):
【化41】
【0295】
好適には、バリアントは、配列番号51に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0296】
CFHをコードするヌクレオチド配列の例は、NM_000186.4である。好適には、CFHをコードするタンパク質コード配列は、配列番号52、または配列番号52に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0297】
例示的なCFHポリヌクレオチド配列(配列番号52):
【化42-1】
【化42-2】
【0298】
好適には、バリアントは、配列番号52に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0299】
CFH断片はスプライスバリアントであってもよい。例えば、補体H因子様タンパク質1(FHL-1)はCFH遺伝子スプライスバリアントであり、これはCFHのN末端の7ドメイン(CCP 1~7)とほぼ同一である。
【0300】
幾つかの実施形態では、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、CFHまたはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0301】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、CFHまたはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0302】
FHL-1
タンパク質コード配列は、FHL-1またはその断片および/もしくはバリアントをコードすることができる。
【0303】
FHL-1またはその断片および/もしくはバリアントは、C3bおよび/またはC3dに結合する能力を有していてもよい。FHL-1の断片および/またはバリアントは、天然のFHL-1の活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%を保持していてもよい。FHL-1の断片および/またはバリアントならびに天然のFHL-1の活性は、当業者に公知の任意の適切な方法を使用して測定してもよい。
【0304】
好ましくは、FHL-1はヒトFHL-1である。ヒトFHL-1の1例は、NCBI Reference Sequence:NP_001014975.1を有するFHL-1である。
【0305】
好適には、FHL-1は、配列番号53、または配列番号53に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリペプチド配列を含むかまたは該ポリヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0306】
例示的なFHL-1ポリペプチド配列(配列番号53):
【化43】
【0307】
好適には、バリアントは、配列番号53に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0308】
FHL-1をコードするヌクレオチド配列の例は、NM_001014975.2である。好適には、FHL-1をコードするタンパク質コード配列は、配列番号54、または配列番号54に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるポリヌクレオチド配列を含むかまたは該ポリヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0309】
例示的なFHL-1ポリヌクレオチド配列(配列番号54):
【化44-1】
【化44-2】
【0310】
好適には、バリアントは、配列番号54に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0311】
幾つかの実施形態では、配列番号47に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、FHL-1またはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0312】
幾つかの実施形態では、配列番号47のヌクレオチド配列から構成されるプロモーターは、FHL-1またはその断片および/もしくはバリアントをコードするタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている。
【0313】
他の調節エレメント
本発明のプロモーターに加えて、ポリヌクレオチドは、転写前または転写後に作用することができる1つ以上のさらなる調節配列を含んでいてもよい。好適には、タンパク質コード配列は、1つ以上のさらなる調節配列に機能しうる形で連結されていてもよい。該1つ以上のさらなる調節配列は、糸球体細胞(例えば、足細胞)におけるタンパク質の発現を促進することができる。
【0314】
「調節配列」は、ポリペプチドの発現を促進する、例えば転写産物の発現を増大させるため、またはmRNAの安定性を向上させるために作用する任意の配列である。適切なさらなる調節配列としては、例えば、エンハンサーエレメント、転写後調節エレメントおよびポリアデニル化部位が挙げられる。
【0315】
好適には、本発明のポリヌクレオチドは、いずれのさらなる調節配列(本発明のプロモーターを除いて)も含まない。
【0316】
エンハンサー
本発明のポリヌクレオチドはエンハンサーを含んでいてもよい。好適には、該エンハンサーは、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。該エンハンサーは、糸球体細胞(例えば、足細胞)におけるタンパク質の発現を促進することができる。好適には、該エンハンサーは、哺乳動物エンハンサー、例えば、ヒトエンハンサーである。
【0317】
「エンハンサー」は、タンパク質(活性化因子)が結合することで特定の遺伝子の転写が生じる可能性を増大させうるDNAの領域である。エンハンサーはcis作用性である。それらは該遺伝子から最大で1Mbp(1,000,000bp)離して、その開始部位の上流または下流に配置することができる。任意の適切なエンハンサーを使用してもよく、その選択は当業者であれば容易に行うことができる。
【0318】
本発明のポリヌクレオチドは、組織特異的エンハンサーを含んでいてもよい。本明細書中で使用する場合、「組織特異的エンハンサー」は、特定の細胞または組織における遺伝子の発現を優先的に促進するエンハンサーである。好適には、組織特異的エンハンサーは、他の細胞型と比較して、特定の細胞型における遺伝子のより高い発現を促進することができる。より高い発現は、例えば、該エンハンサーに機能しうる形で連結された導入遺伝子、例えば、GFPの発現を測定することによって測定してもよく、該導入遺伝子の発現は、遺伝子の発現を促進する該エンハンサーの能力と相関する。例えば、組織特異的エンハンサーは、他の細胞型における発現レベルと比較して特定の細胞型において、少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも100%高い、少なくとも200%高い、少なくとも300%高い、少なくとも400%高い、少なくとも500%高い、または少なくとも1000%高い遺伝子発現レベルを促進するエンハンサーであってもよい。
【0319】
適切な組織特異的エンハンサーは当業者には周知であろう。該エンハンサーは、腎臓特異的エンハンサー、好ましくは糸球体特異的エンハンサー、より好ましくは足細胞特異的エンハンサーであってもよい。好適には、該エンハンサーは、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。
【0320】
好適には、エンハンサーは、ヒト腎臓、糸球体細胞および/または足細胞において選択的に発現する遺伝子に関連するエンハンサーであってもよいかまたはそれに由来していてもよい。遺伝子に関連するエンハンサー領域を同定するための方法は、当業者には周知であろう。
【0321】
好適には、足細胞特異的エンハンサーは、NPHS1もしくはNPHS2エンハンサーまたはそれらの断片もしくは誘導体である。好適には、該足細胞特異的エンハンサーは、NPHS1エンハンサーまたはその断片もしくは誘導体である。
【0322】
NPHS1エンハンサーは、Guo, G.,ら、2004. Journal of the American Society of Nephrology, 15(11), pp.2851-2856に記載されている。ヒトNPHS1プロモーターからの186bpの断片は、トランスジェニックマウスにおいて異種最小プロモーターの前に配置した場合に、β-ガラクトシダーゼ導入遺伝子の足細胞特異的発現を誘導する能力を有していた。
【0323】
好適には、NPHS1エンハンサーは、配列番号27、または配列番号27に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたはヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0324】
例示的なNPHS1エンハンサー(配列番号27):
【化45】
【0325】
好適には、バリアントは、配列番号27に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であってもよい。
【0326】
好適には、本発明のポリヌクレオチドはエンハンサーを含まない。
【0327】
コザック配列
本発明のポリヌクレオチドはコザック配列を含んでいてもよい。好適には、該コザック配列は、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。コザック配列をタンパク質の開始コドンの前に挿入することにより、翻訳の開始を改善してもよい。
【0328】
適切なコザック配列は当業者に周知であろう。
【0329】
好適には、コザック配列は、配列番号28、または配列番号28に対して少なくとも65%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0330】
例示的なコザック配列(配列番号28):
【化46】
【0331】
好適には、バリアントは、配列番号28に対して少なくとも75%、少なくとも85%または少なくとも90%同一であってもよい。
【0332】
好適には、本発明のポリヌクレオチドはコザック配列を含まない。
【0333】
転写後調節エレメント
本発明のポリヌクレオチドは転写後調節エレメントを含んでいてもよい。好適には、該転写後調節エレメントは、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。該転写後調節エレメントは、遺伝子発現を改善しうる。
【0334】
ポリヌクレオチドは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含んでいてもよい。好適には、該WPREはタンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。
【0335】
WPRE配列は、X抗原プロモーターおよび/またはX抗原の開始コドン内に置換、欠失または挿入を有していてもよい。これにより機能的X抗原の産生を阻止してもよい。
【0336】
好適には、WPREは、配列番号29、または配列番号29に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。
【0337】
例示的なWPRE(配列番号29):
【化47】
【0338】
好適には、バリアントは、配列番号29に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0339】
好適には、本発明のポリヌクレオチドは、転写後調節エレメントを含まない。
【0340】
ポリアデニル化シグナル
本発明のポリヌクレオチドは、ポリアデニル化シグナルを含んでいてもよい。好適には、該ポリアデニル化シグナルは、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されていてもよい。該ポリアデニル化シグナルは、遺伝子発現を改善しうる。
【0341】
適切なポリアデニル化シグナルとしては、初期SV40ポリアデニル化シグナル(SV40pA)、ニワトリベータ-グロビンポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGH)または可溶性ニューロピリン-1ポリアデニル化シグナルが挙げられる。幾つかの実施形態では、該ポリアデニル化シグナルは、初期SV40ポリアデニル化シグナル(SV40pA)またはニワトリベータ-グロビンポリアデニル化シグナルである。好ましくは、該ポリアデニル化シグナルは、初期SV40ポリアデニル化シグナル(SV40pA)である。
【0342】
好適には、ポリアデニル化シグナルは、配列番号30、または配列番号30に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号30に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0343】
例示的なSV40pAシグナル配列(配列番号30):
【化48】
【0344】
好適には、ポリアデニル化シグナルは、配列番号31、または配列番号31に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号31に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0345】
例示的なbGHポリ(A)シグナル配列(配列番号31):
【化49】
【0346】
好適には、ポリアデニル化シグナルは、配列番号32、または配列番号32に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号33に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0347】
例示的な可溶性ニューロピリン-1ポリアデニル化シグナル(配列番号32):
【化50】
【0348】
好適には、ポリアデニル化シグナルは、配列番号42、または配列番号42に対して少なくとも70%同一であるバリアントとして示されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成されていてもよい。好適には、該バリアントは、配列番号42に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であってもよい。
【0349】
例示的なニワトリベータ-グロビンポリアデニル化シグナル(配列番号42)
【化51】
【0350】
ベクター
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0351】
ベクターは、ある環境から別の環境への実体の移動を可能にするまたは促進するツールである。ベクターの4つの主な種類は、プラスミド、ウイルスベクター、コスミドおよび人工染色体である。
【0352】
好ましくは、本発明のベクターはウイルスベクターである。本発明のベクターは好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであるが、他のウイルスベクターを使用しうると考えられる。
【0353】
本発明のベクターは、ウイルスベクター粒子の形態であってもよい。好ましくは、本発明のウイルスベクターは、AAVベクター粒子の形態である。
【0354】
ウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子、例えばAAVに由来するものを調製および改変する方法は、当分野で周知である。適切な方法は、Ayuso, E.,ら、2010. Current gene therapy, 10(6), pp.423-436, Merten, O.W.,ら、2016. Molecular Therapy-Methods & Clinical Development, 3, p.16017、ならびにNadeau, I.およびKamen, A., 2003. Biotechnology advances, 20(7-8), pp.475-489に記載されている。
【0355】
本発明のベクターは、腎臓細胞に形質導入することが可能でありうる。幾つかの実施形態では、本発明のベクターは腎臓細胞に特異的に形質導入すること可能である。
【0356】
本発明のベクターは、好ましくは、糸球体細胞(例えば、足細胞)に形質導入することが可能である。幾つかの実施形態では、本発明のベクターは、糸球体細胞(例えば、足細胞)に特異的に形質導入することが可能である。本発明のベクターは、好ましくは、足細胞に形質導入することが可能である。幾つかの実施形態では、本発明のベクターは、足細胞に特異的に形質導入することが可能である。
【0357】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
本発明のベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであってもよい。本発明のベクターは、AAVベクター粒子の形態であってもよい。
【0358】
AAVゲノム
AAVベクターまたはAAVベクター粒子は、AAVゲノムまたはその断片もしくは誘導体を含んでいてもよい。
【0359】
AAVゲノムはポリヌクレオチド配列であり、該配列はAAV粒子の産生に必要とされる機能をコードしていてもよい。これらの機能としては、AAV粒子への該AAVゲノムのキャプシド形成を含む、宿主細胞におけるAAVの複製およびパッケージング周期において働く機能が挙げられる。天然に存在するAAVは複製欠損性であり、また複製およびパッケージング周期の完了をトランスでのヘルパー機能の供給に依存している。従って、本発明のAAVベクターのAAVゲノムは、典型的には複製欠損性である。
【0360】
AAVゲノムはプラスもしくはマイナス鎖のいずれかの一本鎖形態(ssAAV)であってもよいし、またはその代わりに二本鎖形態(dsAAV)であってもよい。二本鎖形態の使用により、標的細胞でのDNA複製ステップの回避が可能となり、そのため導入遺伝子の発現を加速することができる。一本鎖形態の最大パッケージング容量は二本鎖形態よりも大きい。好適には、AAVゲノムは一本鎖形態である。
【0361】
天然に存在するAAVは、様々な生物学的系に従って分類しうる。AAVゲノムは、AAVの任意の天然由来の血清型、分離株またはクレードからのものであってもよい。
【0362】
AAVは、その血清型の観点から言及しうる。血清型はAAVのバリアント亜種に相当し、該バリアント亜種は、そのキャプシド表面抗原の発現のプロフィールのために、他のバリアント亜種と区別するために使用できる特徴的な反応性を有する。典型的には、特定のAAV血清型を有するAAVベクター粒子は、任意の他のAAV血清型に特異的な中和抗体と効率的に交差反応することはない。AAV血清型には、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11が含まれる。幾つかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、AAV3B、LK03、AAV9またはAAV8血清型であってもよい。幾つかの実施形態では、本発明のAAVベクターは、AAV3B、LK03またはAAV9血清型であってもよい。
【0363】
AAVは、クレードまたはクローンの観点からも言及しうる。これは天然由来のAAVの系統関係、および典型的には、共通の祖先まで遡ることが可能でありかつその全ての子孫を含むAAVの系統群を指す。さらに、AAVは、特定の分離株、すなわち自然界に見出される特定のAAVの遺伝的分離株の観点からも言及しうる。遺伝的分離株という用語は、他の天然に存在するAAVとの限定的な遺伝的混合を経たAAVの集団を表しており、従って遺伝子レベルで認識できるほど異なる集団を定義するものである。
【0364】
典型的には、AAVの天然由来の血清型、分離株またはクレードのAAVゲノムは、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)を含む。ITR配列はcisで作用することにより機能的な複製起点を提供し、かつ細胞のゲノムからのベクターの組込みおよび切除を可能にする。ITRは、治療遺伝子の隣にcisで必要とされる唯一の配列でありうる。
【0365】
AAVゲノムは同様に、パッケージング遺伝子、例えばAAV粒子のためのパッケージング機能をコードするrepおよび/またはcap遺伝子を含んでいてもよい。プロモーターが該パッケージング遺伝子の各々に機能しうる形で連結されていてもよい。そのようなプロモーターの具体例としては、p5、p19およびp40プロモーターが挙げられる。例えば、該p5およびp19プロモーターは一般に該rep遺伝子を発現させるために使用され、該p40プロモーターは一般に該cap遺伝子を発現させるために使用される。該rep遺伝子は、タンパク質Rep78、Rep68、Rep52およびRep40またはそのバリアントのうちの1つ以上をコードする。該cap遺伝子は、1つ以上のキャプシドタンパク質、例えばVP1、VP2およびVP3またはそのバリアントをコードする。これらのタンパク質は、AAV血清型を決定する、AAV粒子のキャプシドを構成している。VP1、VP2、およびVP3は選択的mRNAスプライシングにより産生されうる(Trempe, J.P.およびCarter, B.J., 1988. Journal of virology, 62(9), pp.3356-3363)。従って、VP1、VP2およびVP3は同一配列を有する場合があるが、その際VP2はVP1と比較してN末端でトランケートされており、またVP3はVP2と比較してN末端でトランケートされている。
【0366】
AAVゲノムは、天然に存在するAAVの全ゲノムであってもよい。例えば、全AAVゲノムを含むベクターを使用することにより、AAVベクターまたはベクター粒子を調製してもよい。
【0367】
好ましくは、AAVゲノムは、患者への投与を目的として誘導体化されている。そのような誘導体化は当分野では標準的であり、また本発明は、AAVゲノムの任意の公知誘導体、および当分野で公知の技術を応用することにより作製しうる誘導体の使用を包含する。該AAVゲノムは任意の天然に存在するAAVの誘導体であってもよい。好適には、該AAVゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはAAV11の誘導体である。好適には、該AAVゲノムはAAV2の誘導体である。
【0368】
AAVゲノムの誘導体としては、in vivoで本発明のAAVベクターからの導入遺伝子の発現を可能にする、任意のトランケート型または改変型のAAVゲノムが挙げられる。典型的には、最小ウイルス配列を含むが上記機能は保持するように該AAVゲノムを大幅にトランケートすることが可能である。これは、該ベクターの野生型ウイルスとの組換えのリスクを低減し、さらに標的細胞中のウイルス遺伝子タンパク質の存在による細胞性免疫応答の誘発を回避する、安全上の理由から好ましい。
【0369】
典型的には、誘導体は、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)、好ましくは2つ以上のITR、例えば2つのITRまたはそれ以上を含むこととなるであろう。該ITRのうちの1つ以上が、異なる血清型を有するAAVゲノムに由来していてもよいし、またはキメラもしくは変異ITRであってもよい。好適な変異ITRは、trs(末端分離部位(terminal resolution site))の欠失を有するものである。この欠失により該ゲノムの連続複製を可能にすることで、コード配列および相補配列を共に含有する一本鎖ゲノム、すなわち自己相補的AAV(scAAV)ゲノムを作製する。これにより、標的細胞におけるDNA複製の回避が可能となり、そのため導入遺伝子の発現を加速させることができる。しかしながら、scAAVの最大パッケージング容量は減少する。好適には、AAVゲノムはscAAVゲノムではない。
【0370】
AAVゲノムは、AAVの任意の天然由来の血清型、分離株もしくはクレードからの1つ以上のITR配列またはそのバリアントを含んでいてもよい。該AAVゲノムは、少なくとも1つ、例えば2つの、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、もしくはAAV11のITR、またはそのバリアントを含んでいてもよい。好適には、該AAVゲノムは、少なくとも1つ、例えば2つの、AAV2 ITRを含んでいてもよい。
【0371】
1つ以上のITRを含めることは、例えば宿主細胞のDNAポリメラーゼの作用による一本鎖ベクターDNAの二本鎖DNAへの変換後に、宿主細胞の核におけるAAVベクターのコンカテマー形成を補助するために好ましい。そのようなエピソームコンカテマーの形成は、該宿主細胞の寿命期間中は該AAVベクターを保護し、それによりin vivoでの導入遺伝子の長期発現を可能にする。
【0372】
好適には、ITRエレメントのみが、誘導体において天然AAVゲノムから保持されている配列ということになるであろう。誘導体は、好ましくは、該天然ゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子ならびに該天然ゲノムの任意の他の配列を含まないこととなるであろう。これは、上記の理由から、また宿主細胞ゲノム中にベクターが組み込まれる可能性を低下させるためにも、好ましい。さらに、AAVゲノムのサイズを縮小することで、ベクター内に導入遺伝子だけでなく他の配列要素(例えば、調節エレメント)を組み入れる際の柔軟性を高めることができる。
【0373】
従って、本発明の誘導体では次の部分、すなわち、1つの逆方向末端反復(ITR)配列、複製(rep)およびキャプシド(cap)遺伝子を除去しうる。しかしながら、誘導体は、1つ以上のrepおよび/もしくはcap遺伝子またはAAVゲノムの他のウイルス配列をさらに含んでいてもよい。天然に存在するAAVはヒト第19染色体上の特定の部位に高頻度で組み込まれ、無視できる頻度のランダムな組込みを示し、従ってAAVベクターにおける組込み能力の保持は治療環境において許容されうる。
【0374】
本発明はさらに、天然のAAVゲノムの配列とは異なる順序および配置でのAAVゲノムの配列の提供を包含する。また本発明は、1つ以上のAAV配列もしくは遺伝子と、別のウイルスからの配列または2つ以上のウイルスからの配列で構成されるキメラ遺伝子との置換も包含する。そのようなキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2つ以上の関連ウイルスタンパク質からの配列で構成されていてもよい。
【0375】
AAV血清型およびキャプシドタンパク質
AAVベクター粒子は、キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。血清型は、糸球体細胞(例えば、足細胞)の形質導入、例えば、糸球体細胞(例えば、足細胞)の特異的な形質導入を容易にすることができる。
【0376】
AAVベクター粒子は腎臓特異的ベクター粒子であってもよい。好ましくは、該AAVベクター粒子は、糸球体特異的(例えば、足細胞特異的)ベクター粒子である。該AAVベクター粒子は、糸球体特異的(例えば、足細胞特異的)キャプシドによってキャプシドが形成されていてもよい。該AAVベクター粒子は、糸球体特異的(例えば、足細胞特異的)キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。
【0377】
好適には、AAVベクター粒子は、ある血清型のITRを有するAAVゲノムまたは誘導体が、異なる血清型のキャプシド中にパッケージングされている、トランスキャプシド化(transcapsidated)形態であってもよい。該AAVベクター粒子はまた、2つ以上の異なる血清型からの非改変キャプシドタンパク質の混合物がウイルスキャプシドを構成している、モザイク形態も含む。該AAVベクター粒子はまた、そのキャプシド表面に吸着されたリガンドを持つ化学修飾形態も含む。例えば、そのようなリガンドとして、特定の細胞表面受容体を標的化するための抗体を挙げることができる。
【0378】
誘導体がキャプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2および/またはVP3を含む場合、該誘導体は、1つ以上の天然に存在するAAVのキメラ、シャッフルまたはキャプシド改変誘導体であってもよい。特に、本発明は、同一ベクター内へのAAVの異なる血清型、クレード、クローン、または分離株からのキャプシドタンパク質配列の提供(すなわち偽型ベクター(シュードタイプベクター))を包含する。該AAVベクターは、偽型AAVベクター粒子(シュードタイプAAVベクター粒子)の形態であってもよい。
【0379】
キメラ、シャッフルまたはキャプシド改変誘導体は、典型的には、AAVベクターに1つ以上の所望の機能性を提供するよう選択されるであろう。従って、これらの誘導体は、天然に存在するAAVゲノムを含むAAVベクターと比較して、遺伝子送達の効率の増大、(液性もしくは細胞性の)免疫原性の低下、向性範囲の変化および/または足細胞の標的化の改善を示しうる。遺伝子送達の効率の増大は、細胞表面における受容体または共受容体結合の改善、内在化の改善、細胞内および核内への輸送の改善、ウイルス粒子の脱殻の改善ならびに一本鎖ゲノムの二本鎖形態への変換の改善により達成されうる。効率の増大は同様に、ベクター用量がそれを必要としない組織への投与により希釈されないような、向性範囲の変化または足細胞の標的化に関連しうる。
【0380】
キメラキャプシドタンパク質には、天然に存在するAAV血清型の2つ以上のキャプシドコード配列間の組換えにより作製されるものが含まれる。これは例えば、ある血清型の非感染性キャプシド配列を異なる血清型のキャプシド配列と共にコトランスフェクトし、指向性選択(directed selection)を使用して所望の特性を有するキャプシド配列について選択する、マーカーレスキュー法により実施してもよい。この異なる血清型のキャプシド配列は、新規キメラキャプシドタンパク質を産生させるために、細胞内で相同組換えにより変更することができる。
【0381】
またキメラキャプシドタンパク質には、特定のキャプシドタンパク質ドメイン、表面ループまたは特定のアミノ酸残基を2つ以上のキャプシドタンパク質間、例えば異なる血清型の2つ以上のキャプシドタンパク質間で移行させるためのキャプシドタンパク質配列の操作により作製されるものも含まれる。
【0382】
シャッフルまたはキメラキャプシドタンパク質はまた、DNAシャッフリングにより、またはエラープローンPCRにより作製してもよい。ハイブリッドAAVキャプシド遺伝子は、関連のあるAAV遺伝子、例えば複数の異なる血清型のキャプシドタンパク質をコードするAAV遺伝子の配列をランダムに断片化し、その後続いて、配列相同性を持つ領域間の交差も引き起こしうるセルフプライミングポリメラーゼ反応において断片を再構成させることにより、作製可能である。このように幾つかの血清型のキャプシド遺伝子をシャッフルすることにより作製したハイブリッドAAV遺伝子のライブラリーをスクリーニングすることで、所望の機能性を有するウイルスクローンを同定することができる。同様に、エラープローンPCRを使用してAAVキャプシド遺伝子をランダムに変異させることにより、後に所望の特性について選択しうる、バリアントの多様なライブラリーを作製してもよい。
【0383】
キャプシド遺伝子の配列はまた、天然の野生型配列に対して特定の欠失、置換または挿入を導入するために遺伝的に改変してもよい。特に、キャプシド遺伝子は、キャプシドコード配列のオープンリーディングフレーム内、またはキャプシドコード配列のN末端および/もしくはC末端への、非関連タンパク質またはペプチドの配列の挿入により改変してもよい。該非関連タンパク質またはペプチドは、有利なことに、特定の細胞型に対するリガンドとして機能し、それによって標的細胞への改善された結合を与えるかまたは特定の細胞集団へのベクターの標的化の特異性を改善するものであってもよい。該非関連タンパク質はまた、産生プロセスの一環としてのウイルス粒子の精製を補助するもの、すなわちエピトープまたはアフィニティータグであってもよい。挿入の部位は、典型的には、該ウイルス粒子の他の機能、例えば該ウイルス粒子の内在化、輸送に干渉しないように選択されるであろう。
【0384】
キャプシドタンパク質は、人工または変異キャプシドタンパク質であってもよい。本明細書中で使用する用語「人工キャプシド」は、キャプシド粒子が、天然には存在しないアミノ酸配列を含むか、または天然に存在するキャプシドアミノ酸配列から操作されている(例えば改変されている)アミノ酸配列を含むことを意味する。言い換えると、該人工キャプシドタンパク質は、該人工キャプシドアミノ酸配列と該親キャプシドアミノ酸配列をアラインメントした場合に、該人工キャプシドアミノ酸配列が由来する該親キャプシドの配列と比較して、アミノ酸配列中に突然変異または変異を含む。
【0385】
キャプシドタンパク質は、野生型キャプシドタンパク質と比較して、非改変または野生型ウイルス粒子と比較して足細胞に形質導入する能力を改善する変異または改変を含んでいてもよい。足細胞に形質導入する能力の改善は、例えば、AAVベクター粒子により運搬される導入遺伝子、例えばGFPの発現を測定することにより測定してもよく、足細胞における該導入遺伝子の発現は、該AAVベクター粒子が足細胞に形質導入する能力と相関している。
【0386】
AAVベクター粒子はAAV3B、LK03、AAV9、またはAAV8ベクター粒子であってもよい。本発明者らは、AAV3B、LK03、AAV9およびAAV8血清型を有するAAVベクター粒子は足細胞に形質導入できることを示した。好ましくは、該AAVベクター粒子はAAV3Bベクター粒子またはLK03ベクター粒子である。より好ましくは、該AAVベクター粒子はAAV3Bベクター粒子である。
【0387】
AAVベクター粒子は、AAV3B、LK03、AAV9、またはAAV8キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好ましくは、該AAVベクター粒子は、AAV3Bキャプシドタンパク質またはLK03キャプシドタンパク質を含む。より好ましくは、該AAVベクター粒子はAAV3Bキャプシドタンパク質を含む。
【0388】
AAVベクター粒子は、AAV3B、LK03、AAV9、またはAAV8キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3を含んでいてもよい。好ましくは、該AAVベクター粒子は、AAV3BまたはLK03キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3を含む。より好ましくは、該AAVベクター粒子はAAV3Bキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3を含む。
【0389】
AAVベクター粒子は、1つ以上のAAV2 ITR配列、およびAAV3Bキャプシドタンパク質、LK03キャプシドタンパク質、AAV9キャプシドタンパク質、またはAAV8キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好ましくは、該AAVベクター粒子は、1つ以上のAAV2 ITR配列、およびAAV3BまたはLK03キャプシドタンパク質を含む。より好ましくは、該AAVベクター粒子は、1つ以上のAAV2 ITR配列およびAAV3Bキャプシドタンパク質を含む。
【0390】
AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV3Bキャプシドタンパク質(AAV2/3B)、AAV2ゲノムおよびLK03キャプシドタンパク質、AAV2ゲノムおよびAAV9キャプシドタンパク質(AAV2/9)、またはAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質(AAV2/8)を有していてもよい。好ましくは、該AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV3BまたはLK03キャプシドタンパク質を含む。より好ましくは、該AAVベクター粒子はAAV2ゲノムおよびAAV3Bキャプシドタンパク質を含む。
【0391】
AAVX/Yという命名法は、例えば、ITR配列がAAVX由来であり、血清型AAVYにキャプシドが形成されている(すなわち、AAVYキャプシドタンパク質を有する)ペイロードを保有するカセットに隣接する場合、偽型(シュードタイプ)AAVを示しうる。
【0392】
AAV3B血清型
AAVベクター粒子は、AAV3Bキャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好適には、該AAVベクター粒子はAAV3Bキャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。
【0393】
2つの別個のAAV3分離株(AAV3AおよびAAV3B)がクローン化されている。他のAAV血清型をベースとするベクターと比較すると、AAV3ベクターは大抵の細胞型に非効率的に形質導入すると考えられている。しかしながら、AAV3Bは足細胞に効率的に形質導入しうる。AAV3BはRutledge, E.A.,ら、1998. Journal of virology, 72(1), pp.309-319に記載されている。
【0394】
AAVベクター粒子は、AAV3B VP1キャプシドタンパク質、AAV3B VP2キャプシドタンパク質、および/またはAAV3B VP3キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、AAV3B VP1キャプシドタンパク質、AAV3B VP2キャプシドタンパク質、および/またはAAV3B VP3キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、AAV3B VP1、VP2、およびVP3キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。
【0395】
好適には、AAV3B VP1キャプシドタンパク質は、配列番号33、または配列番号33と少なくとも90%同一であるバリアントとして示されるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列から構成されていてもよい。
【0396】
例示的AAV3B VP1キャプシドタンパク質(配列番号33):
【化52】
【0397】
好適には、バリアントは、配列番号33と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であってもよい。
【0398】
好適には、AAV3B VP2およびVP3キャプシドタンパク質は、配列番号33のN末端欠損型(N末端トランケート型;N-terminal truncations)、または配列番号33と少なくとも90%同一、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるバリアントのN末端欠損型(N末端トランケート型)であってもよい。
【0399】
LK03血清型
AAVベクター粒子は、LK03キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、LK03キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。
【0400】
AAV-LK03cap配列は、7つの異なる野生型の血清型(AAV1、2、3B、4、6、8、9)からの断片から構成されており、またLisowski, L.,ら、2014. Nature, 506(7488), pp.382-386に記載されている。本発明者らは、AAV-LK03ベクターが、in vitroでヒト足細胞において100%近くの高い形質導入を達成できることを示した。
【0401】
AAVベクター粒子は、LK03 VP1キャプシドタンパク質、LK03 VP2キャプシドタンパク質、および/またはLK03 VP3キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、LK03 VP1キャプシドタンパク質、LK03 VP2キャプシドタンパク質、および/またはLK03 VP3キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、LK03 VP1、VP2、およびVP3キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。
【0402】
好適には、LK03 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号34、または配列番号34と少なくとも90%同一であるバリアントとして示されるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列から構成されていてもよい。
【0403】
例示的LK03 VP1キャプシドタンパク質(配列番号34):
【化53】
【0404】
好適には、バリアントは、配列番号34と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であってもよい。
【0405】
好適には、LK03 VP2およびVP3キャプシドタンパク質は、配列番号34のN末端欠損型(N末端トランケート型)、または配列番号34と少なくとも90%同一、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるバリアントのN末端欠損型(N末端トランケート型)であってもよい。
【0406】
AAV9血清型
AAVベクター粒子は、AAV9キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、AAV9キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。
【0407】
本発明者らは、AAV9ベクターが、in vitroでヒト足細胞において高い形質導入を達成できることを示した。
【0408】
AAVベクター粒子は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質、AAV9 VP2キャプシドタンパク質、および/またはAAV9 VP3キャプシドタンパク質を含んでいてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質、AAV9 VP2キャプシドタンパク質、および/またはAAV9 VP3キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。好適には、該AAVベクター粒子は、AAV9 VP1、VP2、およびVP3キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されていてもよい。
【0409】
好適には、AAV9 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号35、または配列番号35と少なくとも90%同一であるバリアントとして示されるアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列から構成されていてもよい。
【0410】
例示的AAV9 VP1キャプシドタンパク質(配列番号35):
【化54-1】
【化54-2】
【0411】
好適には、バリアントは、配列番号35と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であってもよい。
【0412】
好適には、AAV9 VP2およびVP3キャプシドタンパク質は、配列番号35のN末端欠損型(N末端トランケート型)、または配列番号35と少なくとも90%同一、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるバリアントのN末端欠損型(N末端トランケート型)であってもよい。
【0413】
他のウイルスベクター
レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
本発明のベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、レトロウイルスベクター粒子またはレンチウイルスベクター粒子であってもよい。
【0414】
レトロウイルスベクターは、任意の適切なレトロウイルスから誘導されるものでも、または誘導可能なものであってもよい。多数の異なるレトロウイルスが同定されている。例としては、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニ-マウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニ-マウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス-29(MC29)およびニワトリ赤芽球症ウイルス(AEV)が挙げられる。
【0415】
レトロウイルスは大きく2つのカテゴリー、「単純型」と「複雑型」に分類されうる。レトロウイルスは7つの群にさらに分類されうる。これらの群のうちの5つは、発がん能を有するレトロウイルスである。残り2つの群はレンチウイルスおよびスプーマウイルスである。
【0416】
レトロウイルスおよびレンチウイルスゲノムの基本構造は、多くの共通の特徴、例えば、5'LTRおよび3'LTRを共有する。これらの間または内部に、該ゲノムのパッケージングを可能にするためのパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノム内への組込みを可能にするための組込み部位、ならびにパッケージング成分(これらはウイルス粒子の構築に必要なポリペプチドである)をコードするgag、polおよびenv遺伝子が位置している。レンチウイルスは追加的な特徴、例えば、HIVではrev遺伝子およびRRE配列を有し、これらは感染標的細胞の核から細胞質への、組込まれたプロウイルスのRNA転写物の効率的な輸送を可能にする。
【0417】
プロウイルスでは、これらの遺伝子は両端に、長い末端反復配列(LTR)と称される領域が隣接している。該LTRはプロウイルスの組込みおよび転写に関与している。またLTRはエンハンサー-プロモーター配列としても働き、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。
【0418】
LTRはそれら自体が、3つの要素、すなわちU3、RおよびU5に区分されうる同一の配列である。U3はRNAの3'末端に特有の配列に由来する。RはRNAの両末端において反復する配列に由来する。U5はRNAの5'末端に特有の配列に由来する。この3要素のサイズは、異なるレトロウイルス間ではかなり異なる可能性がある。
【0419】
欠損性レトロウイルスベクターゲノムでは、gag、polおよびenvは存在しないかまたは機能的ではない場合がある。
【0420】
典型的なレトロウイルスベクターでは、複製に必須の1つ以上のタンパク質コード領域のうちの少なくとも一部が該ウイルスから除去されていてもよい。これにより該ウイルスベクターが複製欠損性となる。またウイルスゲノムの一部を、標的宿主細胞に形質導入し、および/またはそのゲノムを宿主ゲノム内に組み込む能力を有する候補モジュレート部分(candidate modulating moieties)を含むベクターを作製するために、ベクターゲノム内の調節制御領域およびレポーター部分に機能しうる形で連結された候補モジュレート部分をコードするライブラリーで置き換えてもよい。
【0421】
レンチウイルスベクターは、レトロウイルスベクターのより大きな群の一部である。簡潔に説明すると、レンチウイルスは霊長類群と非霊長類群に分類することができる。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるが、これらに限定されない。非霊長類レンチウイルスの例としては、原型の「スローウイルス」であるビスナ・マエディウイルス(VMV)、ならびに関連のあるヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、およびより最近になって記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
【0422】
レンチウイルスファミリーは、レンチウイルスが分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染する能力を有するという点で、レトロウイルスとは異なる。対照的に、他のレトロウイルス、例えばMLVは、非分裂細胞または分裂が遅い細胞、例えば、筋肉、脳、肺および肝組織を構成する細胞などには感染できない。
【0423】
レンチウイルスベクターは、本明細書中で使用する場合、レンチウイルスから誘導可能な少なくとも1つの成分部分を含むベクターである。好ましくは、その成分部分は、該ベクターが細胞に感染し、遺伝子を発現するかまたは複製されるその生物学的メカニズムに関与する。
【0424】
レンチウイルスベクターは、「霊長類」ベクターであってもよい。該レンチウイルスベクターは、「非霊長類」ベクターであってもよい(すなわち、本来は霊長類、特にヒトに感染しないウイルスに由来していてもよい)。非霊長類レンチウイルスの例は、霊長類に自然には感染しないレンチウイルス科のファミリーの任意のメンバーであってもよい。
【0425】
レンチウイルスベースのベクターの例として、HIV-1およびHIV-2ベースのベクターを以下に記載する。
【0426】
HIV-1ベクターは、単純レトロウイルスにも見出されるシス作用エレメントを含有している。gagオープンリーディングフレームに及ぶ配列はHIV-1のパッケージングにとって重要であることが示されている。従って、HIV-1ベクターは、翻訳開始コドンが変異しているgagの関連部分を含有していることが多い。さらに、大抵のHIV-1ベクターは、RREを含むenv遺伝子の一部も含有している。RevはRREに結合し、これにより核から細胞質への全長または1回スプライシングされた(singly spliced)mRNAの輸送が可能となる。Revおよび/またはRREの非存在下では、全長HIV-1 RNAは核に蓄積する。あるいは、ある特定の単純レトロウイルス、例えばメーソン・ファイザー・サルウイルスから得た構成的輸送エレメントを使用することで、RevおよびRREの必要条件を緩和することができる。HIV-1 LTRプロモーターからの効率的な転写にはウイルスタンパク質Tatが必要である。
【0427】
大抵のHIV-2ベースのベクターは、HIV-1ベクターと構造的に非常に類似している。HIV-1ベースのベクターと同様に、HIV-2ベクターもまた、全長または1回スプライシングされたウイルスRNAの効率的な輸送のためにRREを必要とする。
【0428】
好ましくは、本発明において使用するウイルスベクターは、最小ウイルスゲノムを有する。
【0429】
「最小ウイルスゲノム」とは、ウイルスベクターが、標的宿主細胞に関心のあるヌクレオチド配列を感染させる、形質導入する、および送達するための必要な機能性を付与するために、非必須エレメントを除去しかつ必須エレメントを保持するように操作されていることと理解すべきである。この方法のさらなる詳細は、WO 1998/017815中に見出すことができる。
【0430】
好ましくは、ウイルスゲノムを宿主細胞/パッケージング細胞内で産生させるために使用するプラスミドベクターは、標的細胞に感染する能力を有するが、最終標的細胞内で感染性ウイルス粒子を産生するための非依存的複製の能力は有しないウイルス粒子への、パッケージング成分の存在下でのRNAゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なレンチウイルスの遺伝情報を有するであろう。好ましくは、該ベクターは、機能的gag-polおよび/もしくはenv遺伝子ならびに/または複製に必須の他の遺伝子を欠損している。
【0431】
しかしながら、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生させるために使用するプラスミドベクターは、宿主細胞/パッケージング細胞における該ゲノムの転写を誘導するために、レンチウイルスゲノムに機能しうる形で連結された転写調節制御配列も含むであろう。これらの調節配列は、転写されるウイルス配列に関連した天然配列(すなわち、5'U3領域)であってもよいし、またはそれらは異種プロモーター、例えば別のウイルスプロモーター(例えばCMVプロモーター)であってもよい。
【0432】
ベクターは、ウイルスのエンハンサーおよびプロモーター配列が欠失した自己不活性化(SIN)ベクターであってもよい。SINベクターを作製し、野生型ベクターの有効性と同様の有効性で、in vivoで非分裂細胞に形質導入することができる。SINプロウイルス中の長い末端反復配列(LTR)の転写不活性化は、複製能を持つウイルスによる動員を阻止するはずである。これは同様に、LTRのあらゆるシス作用性効果を排除することにより内部プロモーターからの遺伝子の調節された発現を可能にするはずである。
【0433】
ベクターは組込み欠損性(integration-defective)であってもよい。組込み欠損性レンチウイルスベクター(IDLV)は、例えば、ベクターを触媒不活性型インテグラーゼ(例えば、触媒部位にD64V変異を持つHIVインテグラーゼ)を用いてパッケージングすることにより、またはベクターのLTRから必須att配列を改変するかもしくは欠失させることにより、または前述のものの組合せにより、作製することができる。
【0434】
アデノウイルスベクター
本発明のベクターはアデノウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターはアデノウイルスベクター粒子であってもよい。
【0435】
アデノウイルスは、RNA中間体を経ない二本鎖の線状DNAウイルスである。遺伝子配列の相同性に基づいて6つの亜群に分類される、50種を超える異なるヒトアデノウイルス血清型が存在する。アデノウイルスの天然の標的は呼吸器および消化器の上皮であり、一般的には軽度の症状のみを引き起こす。血清型2および5(95%の配列相同性を有する)はアデノウイルスベクター系で最もよく使用されており、またこれらは通常、若年層の上気道感染と関連がある。
【0436】
アデノウイルスは遺伝子治療用および異種遺伝子の発現用のベクターとして使用されている。大きい(36kb)ゲノムは最大8kbの外来インサートDNAを収容可能であり、相補細胞系において効率的に複製されることで、最大で1012という非常に高い力価を生じうる。従って、アデノウイルスは、初代非複製細胞における遺伝子の発現を研究するための最良の系の1つである。
【0437】
アデノウイルスゲノムからのウイルス遺伝子または外来遺伝子の発現は、複製細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは、受容体依存性エンドサイトーシスにより細胞に侵入する。細胞内に入ると、アデノウイルスベクターが宿主染色体内に組込まれることは滅多にない。それよりむしろ、それらは宿主核内で線状ゲノムとしてエピソーム的に(宿主ゲノムから独立して)機能する。従って、組換えアデノウイルスの使用は、宿主ゲノムへのランダムな組込みに伴う問題を軽減する。
【0438】
単純ヘルペスウイルスベクター
本発明のベクターは単純ヘルペスウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは単純ヘルペスウイルスベクター粒子であってもよい。
【0439】
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、遺伝子送達ベクターとして有利な特性を有する神経向性DNAウイルスである。HSVは感染力が強く、そのためHSVベクターは細胞への外来性遺伝物質の送達用の効率的なビヒクルである。ウイルスの複製は、in vitroでトランスに補完されうる前初期遺伝子でのヌル変異により容易に阻止され、このことが非病原性ベクターの高力価で純粋な調製物の簡単な産生を可能にする。そのゲノムは大きく(152Kb)、またウイルス遺伝子の多くはin vitroでの複製に不要であるため、それらの大きいかまたは複数の導入遺伝子との置換が可能になる。野生型ウイルスによる潜伏感染は、宿主の寿命の期間中の感覚ニューロン核におけるエピソームウイルスの存続をもたらす。ベクターは非病原性であり、再活性化して長期的に存続することはできない。潜伏中に活性を示す(latency active)プロモーター複合体をベクター設計に活用することで、神経系において長期にわたる安定した導入遺伝子発現を得ることができる。ウイルスにより認識される細胞受容体の発現パターンが広いため、HSVベクターは多岐にわたる組織に形質導入する。細胞侵入に関与する過程の理解を深めることで、HSVベクターの指向性(tropism)の標的化が可能となった。
【0440】
他のウイルスベクター
他の適切なウイルスベクターとしては、Lundstrom, K., 2018. Diseases, 6(2), p.42に記載されているものが挙げられる。
【0441】
本発明のベクターは、アルファウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、アルファウイルスベクター粒子であってもよい。本発明のベクターは、フラビウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、フラビウイルスベクター粒子であってもよい。
【0442】
自己増幅型ssRNAウイルスは、正極性のゲノムを有するアルファウイルス(例えば、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスおよびM1)およびフラビウイルス(例えば、クンジンウイルス、西ナイルウイルスおよびデングウイルス)から構成される。アルファウイルスは、主にがん処置のための前臨床遺伝子治療研究に応用されてきた。アルファウイルスベクターは、裸のRNA、層状プラスミドDNAベクターおよび組換え複製欠損または複製能力のある粒子の形態で送達することができる。
【0443】
本発明のベクターは、ラブドウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、ラブドウイルスベクター粒子であってもよい。本発明のベクターは、麻疹ウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、麻疹ウイルスベクター粒子であってもよい。
【0444】
ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)および麻疹ウイルスはマイナス鎖ゲノムを有している。ラブドウイルスの中でも、組換え水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、前臨床遺伝子治療研究に応用されている。麻疹ウイルス(例えば、MV-Edm)は、多くの遺伝子治療への応用が見出されている。
【0445】
本発明のベクターは、ニューカッスル病ウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、ニューカッスル病ウイルスベクター粒子であってもよい。
【0446】
ssRNAパラミクソウイルスニューカッスル病ウイルス(NDV)は、腫瘍細胞内で特異的に複製するため、がん遺伝子治療に頻繁に適用されている。
【0447】
本発明のベクターは、ポックスウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、ポックスウイルスベクター粒子であってもよい。
【0448】
ポックスウイルスの特性的特徴は、それらのdsDNAゲノムであり、30kbを超える外来DNAを十分に収容することができる。ポックスウイルスは、遺伝子治療ベクターとして幾つかの用途が見出されている。例えば、ワクシニアウイルスベクターは、がんの処置の可能性を実証している。ワクシニアウイルスは、およそ190kbの線状二本鎖DNAゲノムを有する大きなエンベロープウイルスである。ワクシニアウイルスは最大でおよそ25kbの外来DNAを収容可能であり、またこのことが、該ウイルスを大きい遺伝子の送達に有用なものとしている。遺伝子治療用途に適した数多くの弱毒化ワクシニアウイルス株、例えばMVAおよびNYVAC株が当分野で公知である。
【0449】
本発明のベクターは、ピコルナウイルスベクターであってもよい。本発明のベクターは、ピコルナウイルスベクター粒子であってもよい。
【0450】
ピコルノウイルスは、非エンベロープssRNAウイルスである。ピコルナウイルス科に属するコクサッキーウイルスは、腫瘍溶解性ベクターとして応用されている。
【0451】
バリアント、誘導体、類似体、相同体および断片
本明細書中で記述した具体的なタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はそのバリアント、誘導体、相同体および断片もまた包含する。
【0452】
本発明の文脈において、任意の所与の配列の「バリアント」とは、特定配列の残基(アミノ酸残基か核酸残基かにかかわらず)が、当該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドがその内因性機能のうちの少なくとも1つを保持するような様式で改変されている配列である。バリアント配列は、天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、改変、交換および/または変異により得ることができる。例えば、バリアントプロモーター配列は、それが得られるプロモーター配列の活性および特異性の少なくともある程度のレベルを保持する。
【0453】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して本明細書中で使用する用語「誘導体」は、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドがその内因性機能のうちの少なくとも1つを保持する場合に限り、その配列からの、またはその配列に対する1つ(またはそれ以上)のアミノ酸残基の任意の置換、変異、改変、交換、欠失および/または付加を含む。
【0454】
典型的には、アミノ酸置換は、改変された配列が所要の活性または能力を保持する場合に限り、例えば1、2または3個から10または20個の置換を行ってもよい。アミノ酸置換は、天然に存在しない類似体の使用を含んでいてもよい。
【0455】
本発明において使用するタンパク質もまた、サイレント変化を生じかつ機能的に同等のタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有していてもよい。計画的なアミノ酸置換を、内因性機能が保持される限りは、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質の類似度に基づいて行ってもよい。例えば、負荷電アミノ酸としてアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正荷電アミノ酸としてリジンおよびアルギニンが挙げられ、また同様の親水性値を有する非荷電極性頭部基を持つアミノ酸としてアスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンおよびチロシンが挙げられる。
【0456】
保存的置換は、例えば下記表に従って行ってもよい。2列目の同じ欄、および好ましくは3列目の同じ行に記載のアミノ酸は、互いに置換しうる:
【0457】
【表1】
【0458】
本明細書中で使用する用語「相同体(ホモログ)」は、野生型アミノ酸配列または野生型ヌクレオチド配列との一定の相同性を有するバリアントを意味する。該用語「相同性」は、「同一性」と同一視することができる。
【0459】
この文脈において、相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%または97%または98%または99%同一でありうるアミノ酸配列を含むものとみなされる。典型的には、相同体は、対象アミノ酸配列と同じ活性部位などを含む。相同性は類似性(すなわち、類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考えることもできるが、本発明の文脈においては配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
【0460】
この文脈において、相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%または97%または98%または99%同一でありうるヌクレオチド配列を含むものとみなされる。相同性は類似性の観点から考えることもできるが、本発明の文脈においては配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
【0461】
好ましくは、本明細書中に詳述した配列番号のうちの任意の1つに対して同一性パーセントを示す配列に言及する場合は、言及された該配列番号の完全長にわたってその記載された同一性パーセントを示す配列を指す。
【0462】
相同性比較は、目測で、またはより通常には、容易に入手可能な配列比較プログラムを採用して実行することができる。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同性または同一性パーセントを算出することができる。
【0463】
相同性パーセントを連続した配列にわたり算出してもよく、すなわち、一方の配列を他方の配列と整列させてから、一方の配列中の各アミノ酸またはヌクレオチドを、他方の配列中の対応するアミノ酸またはヌクレオチドと、一度に1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップなし」アラインメントと称される。典型的には、そのようなギャップなしアラインメントは、比較的少数の残基に対してのみ実施される。
【0464】
これは非常に簡便でありかつ一貫する方法であるが、該方法は、例えば、その他の点で同一の配列ペアにおいて、アミノ酸またはヌクレオチド配列における1つの挿入または欠失がそれ以降の残基またはコドンをアラインメントから締め出し、ひいては大域的アラインメントを実施した場合に相同性パーセントの大幅な減少をもたらす可能性がありうることを考慮していない。その結果として、大抵の配列比較法は、総合的な相同性スコアに過度にペナルティを課すことなく可能性のある挿入および欠失を考慮した最適なアラインメントを生成するように設計される。これは、局所的相同性を最大化しようと試みる目的で、配列アラインメント中に「ギャップ」を挿入することにより達成される。
【0465】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸またはヌクレオチドに関して、2つの比較した配列間のより高い関連性を反映する、できる限り少ないギャップを含む配列アラインメントが、多数のギャップを含むものより高いスコアを獲得するように、アラインメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。典型的には、ギャップの存在に比較的高いコストを設定しかつ該ギャップ中のその後の各残基により小さいペナルティを設定する「アフィンギャップコスト」を使用する。これは最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは当然ながら、より少ないギャップを含む最適化されたアラインメントを生じる。大抵のアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを変更できる。しかしながら、配列比較のためにそのようなソフトウェアを使用する場合には、デフォルト値を使用することが好ましい。例えばGCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列に対するデフォルトのギャップペナルティは、ギャップに対しては-12、各伸長に対しては-4である。
【0466】
最大相同性パーセントの算出は、従って、ギャップペナルティを考慮した最適なアラインメントの作成を最初に必要とする。そのようなアラインメントを実行するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, USA;Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12: 387)である。配列比較を実施できる他のソフトウェアの例としては、限定するものではないが、BLASTパッケージ(Ausubelら(1999) ibid - Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschulら(1990) J. Mol. Biol. 403-410)、EMBOSS Needle(Madeira, F.,ら、2019. Nucleic acids research, 47(W1), pp.W636-W641)およびGENEWORKSスイートの比較ツールが挙げられる。BLASTおよびFASTAは共に、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubelら(1999) ibid, pages 7-58 to 7-60を参照されたい)。しかしながら、一部のアプリケーションに関しては、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。別のツールであるBLAST 2 Sequencesもまた、タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol. Lett.(1999) 174(2):247-50;FEMS Microbiol. Lett.(1999) 177(1):187-8)。
【0467】
最終的な相同性パーセントは同一性の観点から測定できるが、そのアラインメントプロセスそれ自体は、典型的には全か無かの(all-or-nothing)ペア比較に基づくものではない。代わりに、化学的類似性または進化距離に基づいて各ペアワイズ比較に対しスコアを割り当てる、スケールを用いる(scaled)類似性スコアマトリックスを通常は使用する。一般的に用いられるそのようなマトリックスの1例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTスイートのプログラム用のデフォルトマトリックス)である。GCG Wisconsinプログラムは、通常はパブリックデフォルト値または提供されていればカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照されたい)。一部のアプリケーションに関しては、GCGパッケージ用のパブリックデフォルト値を使用することが好ましく、または他のソフトウェアの場合は、デフォルトマトリックス、例えばBLOSUM62を使用することが好ましい。
【0468】
ソフトウェアにより最適なアラインメントが生成されれば、相同性パーセント、好ましくは配列同一性パーセントを算出することができる。該ソフトウェアは、典型的には配列比較の一環としてこれを行い、数値結果を作成する。配列同一性パーセントは、言及した配列番号中の総残基に占める割合としての、同一残基の数として算出してもよい。
【0469】
「断片」はバリアントでもあり、またこの用語は典型的には、機能的に、または、例えばアッセイにおいて関心のあるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。「断片」は従って、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列を指す。
【0470】
そのようなバリアント、誘導体、相同体および断片は、標準的な組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発を使用して調製してもよい。挿入物を作製する場合、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5'および3'隣接領域と共に該挿入物をコードする合成DNAを作製してもよい。該隣接領域は、天然に存在する配列が適当な酵素(複数可)により切断されかつ該合成DNAが切断部に連結されるように、該配列中の部位に対応する好都合な制限部位を含有するであろう。該DNAはその後、コードされるタンパク質を作製するために本発明に従って発現される。これらの方法は、DNA配列の操作のための当分野で公知の数多くの標準技術の例示に過ぎず、他の公知技術を使用することもできる。
【0471】
細胞
一態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞を提供する。該細胞は単離された細胞であってもよい。該細胞はヒト細胞、好適には単離されたヒト細胞であってもよい。
【0472】
本発明で使用するポリヌクレオチドを含むベクターは、当分野で公知の様々な技術、例えばトランスフェクション、形質導入および形質転換を使用して細胞に導入してもよい。好適には、本発明のベクターを、トランスフェクションまたは形質導入により細胞に導入する。
【0473】
細胞は、先行技術において公知である任意の細胞型でありうる。
【0474】
好適には、細胞はプロデューサー細胞であってもよい。用語「プロデューサー細胞」は、ウイルス粒子を産生するのに必要な全ての要素の一過性トランスフェクション、安定したトランスフェクションもしくはベクター形質導入後に該ウイルス粒子を産生する細胞、またはウイルス粒子を産生するのに必要な要素を安定して含むよう操作された任意の細胞を含む。適切なプロデューサー細胞は当業者に周知であろう。適切なプロデューサー細胞系としては、HEK293(例えばHEK293T)、HeLa、およびA549細胞株が挙げられる。
【0475】
好適には、細胞はパッケージング細胞であってもよい。用語「パッケージング細胞」は、感染性組換えウイルスをパッケージングするために必要な要素の一部または全てを含有する細胞を含む。該パッケージング細胞は、組換えウイルスベクターゲノムが欠損していてもよい。典型的には、そのようなパッケージング細胞は、ウイルスの構造タンパク質を発現する能力を有する1つ以上のベクターを含有する。エンベロープウイルス粒子の産生に必要とされる要素の一部のみを含む細胞は、その後のさらなる所要の要素それぞれの一過性トランスフェクション、形質導入または安定した組込みのステップを通して、ウイルス粒子プロデューサー細胞系の作製における中間反応物として有用である。これらの中間反応物は、用語「パッケージング細胞」に包含される。適切なパッケージング細胞は当業者に周知であろう。
【0476】
好適には、細胞は、腎臓細胞または糸球体細胞、例えば、足細胞であってもよい。好適には、該細胞は、不死化腎臓細胞または糸球体細胞、例えば、不死化足細胞であってもよい。適切な足細胞株、例えば、CIHP-1は当業者に周知である。不死化足細胞を生成する方法は当業者に周知である。適切な方法は、Ni, L.,ら、 2012. Nephrology, 17(6), pp.525-531に記載されている。
【0477】
医薬組成物
一態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドもしくはベクターまたは本発明の細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0478】
医薬組成物とは、治療上有効な量の薬学的に活性な物質、すなわちベクターを含むかまたは該ベクターから構成される組成物である。医薬組成物は好ましくは、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤(それらの組合せを含む)を含む。
【0479】
「製薬上許容される」には、その製剤が無菌かつ発熱物質を含まないことが含まれる。担体、希釈剤、および/または賦形剤は、ベクターに適合しかつその受容者にとって有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。典型的には、該担体、希釈剤、および賦形剤は、無菌かつ発熱物質を含まないであろう生理食塩水または注入媒体であろうが、他の許容される担体、希釈剤、および賦形剤を使用してもよい。
【0480】
治療用途のための許容される担体、希釈剤、および賦形剤は、製薬技術分野では周知である。製薬上の担体、賦形剤または希釈剤の選択肢は、意図する投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。医薬組成物は、該担体、賦形剤または希釈剤として、またはそれに加えて、任意の適切な結合剤(複数可)、滑沢剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)または可溶化剤(複数可)を含んでいてもよい。
【0481】
製薬上許容される担体の例としては、例えば、水、塩類溶液、アルコール、シリコーン、ワックス、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖類、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペトロエトラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル-セルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0482】
本発明によるベクター、細胞または医薬組成物は、本明細書中に記載した疾患の処置および/または予防に適した様式で投与してもよい。適当な投与量は臨床試験により決定しうるが、投与の量および頻度は対象の健康状態、ならびに対象の疾患の種類および重症度などの因子により決定されるであろう。該医薬組成物は適宜製剤化されていてもよい。
【0483】
本発明によるベクター、細胞または医薬組成物は、非経口的に、例えば、静脈内に、または注入技術により投与してもよい。該ベクター、細胞または医薬組成物は、他の物質、例えば、血液と等張の溶液を作製するのに十分な塩類またはグルコースを含有しうる滅菌水溶液の形で投与してもよい。該水溶液は、好適には、(好ましくはpH3~9に)緩衝されていてもよい。該医薬組成物は適宜製剤化されていてもよい。無菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術により容易に達成される。
【0484】
本発明によるベクター、細胞または医薬組成物は全身的に、例えば静脈内注射により投与してもよい。
【0485】
本発明によるベクター、細胞または医薬組成物は局所的に、例えば投与を腎臓に標的化することにより、投与してもよい。好適には、該ベクター、細胞または医薬組成物は、腎動脈内への注射により、または尿管注入もしくは被膜下注射により投与してもよい。
【0486】
医薬組成物は、注入媒体、例えば無菌等張液中に本発明のベクターまたは細胞を含んでいてもよい。該医薬組成物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入されていてもよい。
【0487】
ベクター、細胞または医薬組成物は、単回または複数回用量として投与してもよい。特に、該ベクター、細胞または医薬組成物は、単回、1回限りの用量として投与してもよい。該医薬組成物は適宜製剤化されていてもよい。
【0488】
ベクター、細胞または医薬組成物は、様々な用量(例えばベクターゲノム(vg)/kgで測定)で投与してもよい。いずれにせよ、医師が任意の個々の対象にとって最も適切であろう実際の投与量を決定するであろうし、該投与量はその特定の対象の年齢、体重、および反応によって異なるであろう。しかしながら、典型的には、本発明のAAVベクターの場合、1010~1014vg/kg、または1011~1013vg/kgの用量を投与してもよい。
【0489】
医薬組成物は、1つ以上の他の治療薬をさらに含んでいてもよい。
【0490】
本発明は、本発明のベクター、細胞および/または医薬組成物を含むキットの使用をさらに含む。好ましくは、前記キットは方法で使用するためのものであって、本明細書中に記載した通りに使用され、例えば、本明細書中に記載の治療方法で使用される。好ましくは、前記キットは該キットの成分の使用説明書を含む。
【0491】
疾患を処置および/または予防するための方法
一態様では、本発明は、医薬としての使用のための本発明によるベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0492】
一態様では、本発明は、医薬の製造における本発明によるベクター、細胞または医薬組成物の使用を提供する。
【0493】
一態様では、本発明は、本発明によるベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する方法を提供する。
【0494】
糸球体疾患
本発明によるベクター、細胞または医薬組成物は、対象における糸球体疾患を処置するために使用することができる。好適には、対象はヒト対象である。
【0495】
一態様では、本発明は、糸球体疾患の予防または処置における使用のための、本発明によるベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0496】
関連する一態様では、本発明は、糸球体疾患を予防または処置するための薬剤の製造のための、本発明によるベクター、細胞または医薬組成物の使用を提供する。
【0497】
関連する一態様では、本発明は、本発明によるベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、糸球体疾患を予防または処置する方法を提供する。
【0498】
糸球体疾患は、ネフローゼまたは腎炎性のいずれかに分類することができる。ネフローゼ症候群は、多くの場合、足細胞と足細胞または足細胞とGBMの相互作用の完全性に影響を与える因子に関与している。対照的に、腎炎症候群の病因に関与する因子は様々でありうるが、循環血小板および白血球、GBM、常在糸球体内皮細胞ならびにメサンギウム細胞を挙げることができる。(Chiang, C.K.およびInagi, R., 2010. Nature Reviews Nephrology, 6(9), p.539)。
【0499】
好適には、糸球体疾患は、遺伝性糸球体疾患、すなわち遺伝性の糸球体疾患である。遺伝性糸球体疾患としては、足細胞関連遺伝性糸球体疾患、例えば、ネフローゼ症候群、およびGBM関連糸球体疾患、例えば、アルポート症候群が挙げられる。
【0500】
好適には、糸球体疾患は、足細胞関連遺伝性糸球体疾患である。足細胞関連遺伝性糸球体疾患としては、フィンランド型の先天性ネフローゼ症候群、先天性ネフローゼ症候群2型、家族性ネフローゼ症候群3型、フレイザー症候群およびデニス・ドラッシュ症候群、シムケ免疫性骨形成不全、CD2APの変異によって引き起こされるネフローゼ症候群、アクチニン-4の変異によって引き起こされるネフローゼ症候群、TRPC6の変異によって引き起こされるネフローゼ症候群、ならびにエプスタインおよびフェクトナー症候群が挙げられる。好適には、糸球体疾患はネフローゼ症候群である。
【0501】
好適には、糸球体疾患は、GBM関連遺伝性糸球体疾患である。足細胞関連遺伝性糸球体疾患としては、X連鎖型アルポート症候群、常染色体劣性アルポート症候群、常染色体優性アルポート症候群、菲薄基底膜病、ピアソン症候群および爪膝蓋骨症候群が挙げられる。好適には、糸球体疾患はアルポート症候群(AS)である。ASは、家族性腎炎、遺伝性腎炎、菲薄基底膜病および菲薄基底膜腎症としても知られている。
【0502】
[実施例]
本発明をここで実施例を用いてさらに説明するが、これは当業者が本発明を実施するのを手助けするために役立つことを意味しており、決して本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0503】
[実施例1]
最小ネフリンプロモーターの設計、構築および試験
最小ネフリンプロモーターの設計
ヒトNPHS1プロモーターは、Moellerら 2002 J Am Soc Nephrol, 13(6):1561-7およびWong MAら 2000 Am J Physiol Renal Physiol, 279(6):F1027-32に記載されている。このNPHS1プロモーターは1.2kbの断片であり、足細胞特異的であるように見える。これは本明細書以下で「FL」ネフリンプロモーターと称され、図1Aに示されている。
【0504】
FLネフリンプロモーターを、N末端配列を欠失させることによって最初に822bp(開始コドンを除く819bp)に切断した。これは本明細書以下で「midi」ネフリンプロモーターと称され、図1Bに示されている。
【0505】
midiネフリンプロモーターを、中央領域から推定一般転写ドメインを除去することによって、さらに268bp(開始コドンを除く265bp)に切断した。これは本明細書以下で「mini」ネフリンプロモーターと称され、図1Cに示されている。
【0506】
ベクター構築物の構築
Midiネフリンプロモーター
図2Aに示されているように、pACE_hNPHS1プロモーターを鋳型として使用して、BamHIおよびClaI制限部位を導入した。次いで断片をゲル抽出し、ClaIおよびBamHIにより37℃で1時間消化した後、pLenti GFP Blastベクターにライゲーションした。ライゲーションをさらに安定なコンピテント大腸菌細胞に形質転換し、DNAを抽出し、配列決定した(Midiプロモーター)。最終的なレンチウイルスベクターを図2Bに示す。
【0507】
Miniネフリンプロモーター
図3Aに示されているように、pACE_hNPHS1プロモーターを使用してオーバーハング(OH)をPCRした。OHを含有するプロモーターの2つの切片を、pLenti GFP BlastベクターへのNEBuilder HiFiアセンブリ反応のためにゲル抽出した。次いでDNAクリーンアップキットを使用してライゲーション反応を洗浄した後、安定なコンピテント大腸菌細胞に形質転換した。DNAを抽出し、配列決定した。最終的なレンチウイルスベクターを図3Bに示す。
【0508】
ベクター構築物の試験
最小ネフリンプロモーターを使用して、in vitro細胞モデルにおいてGFPを発現させて、有効性および足細胞特異性を確認した。
【0509】
pLenti GFP Blastネフリンプロモーター構築物(全長、MidiおよびMini)を使用し、HEK293T細胞を48時間トランスフェクトしてウイルスを作製し、これをさらに使用して、GFPタグ付きFL NPHS1、midiまたはminiプロモーターのいずれかを安定的に発現するヒト条件付き不死化足細胞を作製した。
【0510】
条件付き不死化ヒト足細胞(ciPodocytes)にレンチウイルスベクターをトランスフェクトして、最小プロモーターがGFP発現を駆動できるかどうかを判定した。midiおよびminiネフリンプロモーターの両方がGFP発現を駆動することが示された。図4は、miniネフリンプロモーターからのGFP発現を示す代表的な蛍光顕微鏡画像を示す。図5は、miniネフリンプロモーターからのGFP発現を示す代表的なウェスタンブロットを示す。これらの結果は、miniネフリンプロモーターが足細胞における導入遺伝子の発現を駆動できることを示す。
【0511】
レンチウイルスベクターも使用してヒト糸球体細胞を形質導入した。ciPodocytesおよび糸球体内皮細胞に、miniネフリンレポーターに結合したGFPを含むレンチウイルスを形質導入した。図6A~Cは、Novocyteアナライザーを使用した、条件付き不死化ヒト足細胞(LY)および糸球体内皮細胞(GEnC)の全ての生存している一重項のGFP蛍光中央値(AFU)を示すFACS解析を示す。非形質導入細胞(細胞対照)を、全長ヒトネフリンプロモーター(hNPHS1.GFP)またはminiヒトネフリンプロモーター(265.GFP)によって制御されるGFP発現カセットを保有するレンチウイルス構築物を形質導入した細胞と比較した。全ての細胞を10日間分化させ、トリプシン処理し(100uL)、PBS、2%FBS、1:1000のDRAQ7(150uL)で希釈した。データおよびエラーバーは、3回の技術的反復(100uL、>2500細胞)±SEMを表す。これらの結果は、糸球体内皮細胞と比較した場合の最小ネフリンプロモーターに対する足細胞の特異性を示す。
【0512】
[実施例2]
COL4A3、COL4A4およびCOL4A5に結合した最小ネフリンプロモーターの設計、構築および試験
AAV構築物の設計および構築
miniネフリンプロモーター(「265」)に結合したCOL4A3、COL4A4およびCOL4A5を含む以下のAAV転移プラスミドを設計および構築した。
・ miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A3を含むAAVプラスミドである、pAAV.265.Col4a3.3flag.sv40(図7Aを参照されたい)。
・ miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A4を含むAAVプラスミドである、pAAV.265.Col4a4.3flag.sv40(図7Bを参照されたい)
・ miniネフリンプロモーターに結合したCOL4A5を含むAAVプラスミドである、pAAV.265.Col4a5.3flag.sv40(図7Cを参照されたい)
【0513】
SmaI消化を実施して、プラスミドの同一性を確認した(図7D~Eを参照されたい)。これは、265bpのminiネフリンプロモーターおよびSV40ポリAテールを有するCOL4 a3、a4およびa5のAAVへのクローニングに成功したことを示す。
【0514】
AAV構築物の試験
以下のAAVウイルスベクターを、標準的な方法を使用して調製した。
・ LK03血清型を有するAAV.COL4A3.ネフリン265.Sv40
・ LK03血清型を有するAAV.COL4A5.ネフリン265.Sv40
・ 2/9血清型を有するAAV.COL4A5.ネフリン265.Sv40
【0515】
図8Aは、抗FLAG抗体でプルダウンされたヒト分化ciPodocytesにおける全長FLAGタグ付きCol4a3(LK03)またはCol4a5(LK03)の免疫沈降実験を示す。抗FLAG抗体はCol4a3およびCol4a5の両方を沈殿させた。ヒトFLAG IgGを対照として使用した。
【0516】
図8Bは、ヒトまたはマウスの分化したciPodocytesにおけるCol4a3(LK03キャプシド血清型)、Col4a5(LK03)およびCol4a5(2/9キャプシド血清型)の発現レベルを示すタンパク質溶解物のウェスタンブロットを示す。非感染のヒトおよびマウスのcipodocytesを対照として使用した。
【0517】
図8Cは、F-アクチンによるヒト野生型CiPodocytes/Col4a5 3xFlag AAV CiPodocytesにおける形質導入Col4a5の免疫蛍光染色を示す共焦点画像を示す。Col4a5は、野生型対応物と比較して、Col4a5 3xFlag AAVウイルスに感染したヒト分化足細胞においてサイトゾルレベルで存在する。
【0518】
これらの結果は、本発明者らが、miniネフリンプロモーターに結合したCOL4a3およびCOL4a5の全長をヒト足細胞に形質導入することに成功したこと、ならびにminiネフリンプロモーターが、ヒト足細胞における全長COL4a3またはCOL4a5の発現を駆動することを示す。
【0519】
[実施例3]
HEK細胞におけるCFH、CFIおよびCFHL1の発現
材料および方法
10%FBSを添加したDMEM中で増殖させた60~80%コンフルエントの293Tヒト胎児腎臓細胞に、pHelper(HGTI1)、2つのpAAV Rep-Cap(LK03またはAAV9)のうちの1つおよび1)配列番号47の265bp最小ネフリンプロモーター下のCFH(pAAV-265-CFH)、2)配列番号14の全長最小ネフリンプロモーター下のCFI(pAAV-FL-CFI)または3)配列番号14の全長最小ネフリンプロモーター下のCFHL1(pAAV-FL-CFHL1)を含有する3つのITR発現プラスミドのうちの1つをトリプルトランスフェクトした。全ての構築物をMYCおよびFLAGでタグ付けした。
【0520】
トランスフェクションは150mm培養皿で無血清培地中、ポリエチレンイミン(PEI)の存在下で実施した。培地は、トランスフェクションの翌日にFBSを含むDMEMに変更した。トランスフェクション後4日目に、培地および細胞を回収し、別々に処理した。培地は凍結してから-80℃で保存した。細胞は、プロテイナーゼ阻害因子を添加したRIPAバッファーを用いて溶解してから-80℃で保存した。
【0521】
細胞溶解物中のタンパク質濃度はPierce BCAタンパク質アッセイを使用して測定し、各試料から得た10ugの総タンパク質を4~15%ポリアクリルアミドトリス-グリシンゲルにロードした。各試料から得た合計2.6uLの培地を該ゲルにロードした。タンパク質をiBlot2ドライ式ブロッティングシステムを使用してニトロセルロース膜に転写した。次の一次抗体、すなわち抗H因子(Abcam, cat. ab124769)、抗I因子(Abcam, ab278524)、抗MYCタグ(CST, cat.2276S)、抗FLAGタグ(CST, cat. 14793S)および抗GAPDH(Millipore, cat. MAB374)をタンパク質検出のために使用した。
【0522】
結果
H因子は、CFH発現プラスミドをトランスフェクトした293T HEK細胞から得た細胞溶解物および培地の両方で発現された(図9、レーン2、3、8、9)。発現はH因子特異的抗体を使用して検出した。H因子は、トランスフェクトしていない細胞またはCFIもしくはCFHL1発現プラスミドをトランスフェクトした細胞の細胞溶解物または培地では検出されなかった(図9、レーン1、4~7、10~13)。これらの結果は、265bpの最小ネフリンプロモーターが、標的細胞での導入遺伝子の発現を可能にすることを実証している。
【0523】
[実施例4]
AAV2/9 265-CFHによるH因子変異足細胞の形質導入またはCFHをコードするプラスミドによるトランスフェクション
AAV2/9 265-CFHによるH因子変異足細胞の形質導入
10%FBSおよび1%ITSを添加したRPMIで増殖させた、内因性H因子に変異を有する条件的不死化ヒト足細胞(Muehligら、2020)を、6ウェル培養皿に播種してから、33℃で70~80%コンフルエンシーまで増殖させた。細胞は、265bp最小ネフリンプロモーター(配列番号47)の制御下でCFH導入遺伝子を含有するAAV2/9と共にインキュベートした。このウイルスを使用せずにインキュベートした細胞を非形質導入(NT)対照として使用した。ウイルス形質導入後の同日に、細胞を非許容温度である37℃に移すことにより細胞分化および導入遺伝子発現を可能にした。培地は、形質導入の後日に2回交換した。形質導入後10日目に、細胞培地を回収し、ヒトH因子の濃度を抗H因子抗体(Abcam, cat. ab252359)を使用したELISAにより測定した。
【0524】
H因子に変異を有するヒト足細胞に、265bpの最小ネフリンプロモーターの制御下のCFH導入遺伝子を含有するAAV2/9ウイルスを形質導入すると、非形質導入細胞よりも培養培地中の高い濃度のヒトH因子が実証された(図10Aおよび10B)。これは、AAVによって送達され、265bpの最小ネフリンプロモーターの制御下のH因子導入遺伝子が、ヒト足細胞において発現されうることを実証している。
【0525】
CFHをコードするプラスミドによるH因子変異足細胞のトランスフェクション
10%FBSおよび1%ITSを添加したRPMIで増殖させた、内因性H因子に変異を有する条件的不死化ヒト足細胞(Muehligら、2020)を6ウェル培養皿に播種してから、33℃で70~80%コンフルエンシーまで増殖させた。プラスミドトランスフェクションのために、細胞を、ポリエチレンイミンの存在下で無血清培地中1.5ugの発現プラスミドと共にインキュベートした。プラスミドを添加しなかった細胞を非トランスフェクト(NT)対照として使用した。該培地を翌日FBSを含有する培地に交換した。トランスフェクション後3日目に、培地を回収し、ELISA(Abcam, cat. ab252359)により分析した。
【0526】
265bp最小ネフリンプロモーターの制御下でCFH導入遺伝子を発現するプラスミドをトランスフェクトした足細胞は、非トランスフェクト対照より高い濃度のヒトH因子を示した(図10C)。
【0527】
[実施例5]
WTマウスの腎臓におけるCFHの発現
材料および方法
100μLのAAV2/9遺伝子治療用産物(pAAV.NPHS1(265).hCFH.WPRE.bGH)または生理食塩水を、野生型C57BL6マウスにIV尾静脈注射により投与した。AAVで発現されたタグ付き野生型ヒトCFH導入遺伝子は、265bpの最小ネフリンプロモーター(配列番号47)の制御下にあった。AAVを3日後に回収し、超遠心分離により精製し、PBS中で力価測定した(約1.5x10e13/ml)。全ての動物について21日目の研究を完了し、殺処分した。腎臓を液体窒素で瞬間凍結してから、RNeasy Micro Kit(Qiagenカタログ番号/ID:74004)によるRNA抽出のために製造業者のプロトコル通りに使用した。RNAを次に、qPCR解析に先立ってHigh-Capacity RNA-to-cDNA(商標)Kit(4387406)を使用してcDNAに変換した。
【0528】
定量的qPCRを、pAAV_CFH注射マウスの腎臓から得たDNA試料に対して実施した。SYBR緑色試薬を用いる標準曲線qPCRおよび受動的(passive)ROX法を使用することにより、該腎臓DNA試料中のITRの存在を検出した。DNA 1pg当たりのウイルスゲノムは、既知量のITRアンプリコンの標準曲線を使用して算出した。最後に、2倍体マウス細胞は6pgのDNAを有するという仮定に基づいて、ウイルスゲノム/細胞を算出した。
【0529】
免疫蛍光染色は、抗ネフリン抗体(PROGEN)および抗CFH抗体(ab124767)を使用し、厚さ5ミクロンの凍結腎臓切片に対して実施した。
【0530】
組織をOCTコンパウンド(VWR, カタログ番号361603E)に包埋し、液体窒素で瞬間凍結した。10uM切片をクリオスタット(Thermo, Cryostar NX270)を使用して切断した。組織切片を4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で20分間固定し、0.3%トリトン-Xを用いて室温で15分間透過処理してから、5%BSAを用いて室温で30分間ブロッキングした。
【0531】
一次抗体(H因子に対するウサギモノクローナル[EPR6226]、Abcamカタログ番号ab124769およびネフリン(NPHS1)(1243-1256)モルモットポリクローナル抗体、Origeneカタログ番号BP5030)を5%BSAで希釈した。(抗H因子については1:100とし、また抗ネフリンについては1:300とした)。インキュベーションは室温で1時間行った。
【0532】
二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体、Alexa Fluor Plus 488, Invitrogen, カタログ番号A32731およびヤギ抗モルモットIgG(H+L)Alexa Fluor 568, Invitrogen, カタログ番号A-11075)をPBSで1:500に希釈してから、インキュベーションを室温で30分間行った。
【0533】
スライドを、スライド封入剤であるFluoromount-G(Southern Biotech, カタログ番号0100-01)で固定し、ライカDM750蛍光顕微鏡で倍率20Xにて画像化した。
【0534】
結果
265bpの最小ネフリンプロモーターの下でヒトCFHを含有するAAVを野生型マウスに注射すると、AAVによる腎臓の感染が起こり、生理食塩水対照を注射した野生型マウスと比較して、腎臓におけるウイルスおよびヒトCFHの発現が増加する(図11A~C)。免疫蛍光染色は、マウス糸球体におけるネフリンおよびCFHの共局在を実証する(図11D)。
【0535】
[実施例7]
腎臓細胞における265bp v 818bp v FL最小ネフリンプロモーターを使用したGFPの発現(プラスミドトランスフェクション)
(i)配列番号14の全長(FL)最小ネフリンプロモーター(PS0281)、(ii)配列番号59の818bpの最小ネフリンプロモーター(PS0301)または(iii)配列番号47の265bpの最小ネフリンプロモーター(P20282)の制御下のeGFPを含むプラスミドを構築した。
【0536】
足細胞、糸球体内皮細胞(GENC)および近位管上皮細胞(PTEC)を6ウェルプレートのウェル当たり1.5e5細胞の密度で播種し、一晩接着させた。HEK293T細胞の場合、ウェル当たり5e5細胞を使用した。翌日、150ulのDMEM中の3ugのプラスミドDNAを9ulのPEI(同様に150ulのDMEM中)と混合し、室温で15分間インキュベートし、48時間後にフローサイトメトリーによってeGFP発現について解析した。トランスフェクトしていない細胞を、陰性および陽性集団のゲーティングのための陰性対照として使用した。
【0537】
図12の結果は、3つ全てのプロモーターが、試験した全ての細胞型においてeGFP発現を駆動することが可能であったことを示す。これらの結果は、ネフリンプロモーター配列の大きな領域を除去したにもかかわらず、全長ネフリンプロモーターを818bpまたは265bpに最小化しても、標的細胞での導入遺伝子の発現が可能であることを実証する。
【0538】
[実施例8]
腎臓細胞における265bp v FL最小ネフリンプロモーターを使用したGFPの発現(AAV形質導入)
材料および方法
AAV産生:10%FBSを添加したDMEM中で増殖させた60~80%コンフルエントの293Tヒト胎児腎臓細胞に、pHelper(HGTI1、PS0150)、Rep-Capプラスミド(LK03、PS0240)およびeGFP発現を駆動する全長(FL)最小ネフリンプロモーターまたは265bpの最小ネフリンプロモーターを含有する2つのITR発現プラスミド(それぞれPS0281およびPS0282)のうちの1つをトリプルトランスフェクトした。トランスフェクションは、ポリエチレンイミン(PEI)の存在下で150mmの培養皿上で実施した。トランスフェクション後の翌日、培地を、FBSを含むDMEMに交換した。トランスフェクション後4日目に、培地および細胞を収集し、別々に処理した。PEGを濾過した上清に添加してウイルス粒子を沈殿させ、続いてこれを1500gで20分間遠心分離した。細胞ペレットをTDバッファーに再懸濁し、-80度で凍結し、続いて37度で解凍し、ボルテックスした。凍結融解サイクルを5回繰り返した。次いでPEG処理した上清からのペレットを溶解細胞に添加し、ベンゾナーゼおよびデオキシコール酸ナトリウムをさらに添加し、37度で30分間インキュベートした。次いで試料を遠心分離し、上清を濾過し、続いてイオジキサノール勾配超遠心分離によって精製した。
【0539】
AAV QC:AAV試料をqPCRによって滴定して、1mlのウイルス上清当たりのウイルスゲノムの数を決定した。eGFP配列を標的とするように設計したプライマーを使用した。SDS-PAGE解析を試料に対して実施して純度を決定した。アルカリゲル電気泳動を使用して、ウイルス粒子への完全な導入遺伝子カセットの組み込みを実証した。
【0540】
AAV形質導入:細胞を6ウェルプレートのウェルに1.5e5細胞/ウェルの密度で播種し、一晩接着させた。翌日、ウイルス粒子を細胞当たり5e5粒子の感染多重度(MOI)で添加した。細胞を37度に置いて分化を開始し、10日間培養した。10日後、細胞をフローサイトメトリーによってeGFP発現について解析した。
【0541】
結果
図13の結果は、両方のプロモーターが、試験した全ての細胞型においてeGFP発現を駆動することが可能であったことを示す。265bpの最小ネフリンプロモーターは、試験した細胞の各々においてより高いeGFP発現レベルを示した。
【0542】
これらのデータは、265bpの最小ネフリンプロモーターが、標的細胞内でeGFP発現を駆動することが可能であることを再度実証している。さらに、このプロモーターは、遺伝子治療における使用のためにAAVベクターに組み込まれてもよい。全長の最小ネフリンプロモーターの代わりに、265bpの最小ネフリンプロモーターを使用すると、AAVの目的のためにより多くの遺伝物質を導入遺伝子カセットに組み込むことが可能になりうる。
【0543】
[実施例9]
HEKにおける265bp v FL最小ネフリンプロモーターを使用したヒトポドシンの発現(プラスミドトランスフェクション)
(i)配列番号14の全長(FL)最小ネフリンプロモーター(FL.NPSH1-ポドシン-HA)または(ii)配列番号47の265bpの最小ネフリンプロモーター(265.hNPSH1-ポドシン-HA)の制御下でHAタグ付きポドシンを含むプラスミドを構築した。
【0544】
10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM中で増殖させた293Tヒト胎児腎臓細胞を、6ウェル培養プレートに5e5の密度で播種した。翌日、細胞が70~80%コンフルエンシーに達したときにトランスフェクションを実施した。トランスフェクション試薬混合物を、無血清培地中で3ugの発現プラスミドをポリエチレンイミン(PEI)と1:3の比で複合体化することによって調製した。非トランスフェクト対照には、発現プラスミドを含まずに同じ比でPEIを含有するトランスフェクション混合物を与えた。培地を完全培地に交換する翌日まで、細胞を、トランスフェクション混合物とともに37℃、5%CO2でインキュベートした。トランスフェクション後2日目に細胞を回収し、抗HA抗体でHAタグを染色することによってポドシンの発現についてFACによって解析した。
【0545】
図14Aの結果は、両方のプロモーターがHEK細胞においてヒトポドシン-HA発現を駆動することが可能であったことを示す。これは、全長の最小ネフリンプロモーターを265bpに最小化しても、プロモーター配列の大部分を除去したにもかかわらず、標的細胞内での導入遺伝子の発現が可能であることを実証する。
【0546】
[実施例10]
ヒト足細胞における265bp v FL最小ネフリンプロモーターを使用したヒトポドシンの発現(AAV形質導入)
材料および方法
AAV産生:10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM中で増殖させた60~80%コンフルエントの293Tヒト胎児腎臓細胞に、pHelper(HGTI1、PS0150)、pAAV Rep-Cap(LK03、PS0240)およびポドシンHA発現を駆動する全長(FL)最小ネフリンプロモーターまたは265bpの最小ネフリンプロモーターを含有する2つのITR発現プラスミド(それぞれFL.NPSH1-ポドシン-HAおよび265.hNPSH1-ポドシン-HA)のうちの1つをトリプルトランスフェクトした。トランスフェクションは、1:2の比のポリエチレンイミン(PEI)の存在下で150mmの培養皿上で実施した。トランスフェクション後の翌日、培地を、FBSを含むDMEMに交換した。トランスフェクション後4日目に、培地および細胞を収集し、別々に処理した。PEGを濾過した上清に添加してウイルス粒子を沈殿させ、続いてこれを1500gで20分間遠心分離した。細胞ペレットをTDバッファーに再懸濁し、-80度で凍結し、続いて37度で解凍し、ボルテックスした。凍結融解サイクルを5回繰り返した。次いでPEG処理した上清からのペレットを溶解細胞に添加した。さらにベンゾナーゼおよびデオキシコール酸ナトリウムを添加し、37度で30分間インキュベートした。次いで試料を遠心分離し、上清を濾過し、続いてイオジキサノール勾配超遠心分離によって精製した。
【0547】
AAV QC:AAV試料をqPCRによって滴定して、1mlのウイルス上清当たりのウイルスゲノムの数を決定した。ポドシン配列を標的とするように設計したプライマーを使用した。
【0548】
AAV形質導入:細胞を12ウェルプレートのウェルに0.5e5細胞/ウェルの密度で播種し、一晩接着させた。翌日、細胞当たり5e5粒子の感染多重度(MOI)でウイルス粒子を添加した。細胞を37度に置いて分化を開始し、9日間培養した。9日後、細胞を回収し、ポドシン発現の尺度としてフローサイトメトリーによってHA発現について抗HA抗体で染色した。
【0549】
結果
HEK細胞におけるプラスミドトランスフェクションデータ(図11A)で実証されるように、図14Bに示される結果は、両方のプロモーターがヒト足細胞における導入遺伝子の発現を駆動することが可能であることをさらに裏付ける。265bpの最小ネフリンプロモーターは、ヒト足細胞においてより高いポドシン発現レベルを示した。
【0550】
[実施例11]
AAV形質導入による265bp v FLプロモーターを使用したGFPのin vivo発現
265-ネフリンプロモーターおよびFL-ネフリンプロモーターをWTマウス(C57/Bl6)においてin vivoで評価した。LK03の代わりにAAV9(PS0241)を使用したことを除いて、実施例8に記載されるAAV粒子を、マウス当たり約1×10e13のAAV2/9(処置群あたり2×マウスおよび1×未処置マウス)の尾静脈注射によって投与した。腎臓の組織採取は注射の4週間後に行った。腎臓に対してqPCR解析を実施し、GFPコピー数を18S(ハウスキーピング遺伝子)に正規化した。18S rRNAは、リアルタイムPCRについての信頼できる正規化遺伝子である。
【0551】
図15の結果は、265bpおよび全長の最小ネフリンプロモーターの両方を使用して、腎臓において検出可能なGFP発現が存在したことを示している。腎臓における発現は、265bpの最小ネフリンプロモーターを使用するとより高くなった。
【0552】
上記明細書中で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書中に組み込まれるものとする。開示した本発明の方法、細胞、組成物および使用の様々な改変および変更は、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を具体的で好適な実施形態と関連付けて開示してきたが、特許請求の範囲に記載されている本発明をそのような特定の実施形態に過度に限定すべきではないことを理解されたい。実際には、本発明を実施するための開示された様式の様々な改変は、当業者には明白であり、添付の特許請求の範囲内にあるものと見なされる。
【0553】
実施形態
ここで、本発明の様々な好ましい特徴および実施形態を以下の番号付けしたパラグラフ(項目)を参照して記載する。
1. (i)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプロモーターであって、約1.1kb以下の長さを有する、プロモーター。
2. 配列番号1に記載されるが、
(i)配列番号1の1位~n1位が欠失しており、n1が100~430の整数であり、および/または
(ii)配列番号1のn2位~n3位が欠失しており、n3≧n2であり、n2が508~1061の整数であり、n3が508~1061の整数である、
ヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される、プロモーター。
3. (i)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、約1.1kb以下の長さを有する、項目2に記載のプロモーター。
4. 足細胞特異的プロモーターである、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
5. (ii)配列番号5に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列および/または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
6. (iii)配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
7. 5'から3'へと(i)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、(iii)場合により、配列番号8またはその1つ以上の断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに(ii)配列番号5に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列および/または配列番号7に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
8. 約1.0kb以下、約0.9kb以下、約0.8kb以下、約0.7kb以下、約0.6kb以下、約0.5kb以下、約0.4kb以下、または約0.3kb以下の長さを有する、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
9. 0.265kb~1.0kb、0.265kb~0.9kb、0.265kb~0.8kb、0.265kb~0.7kb、0.265kb~0.6kb、0.265kb~0.5kb、0.265kb~0.4kb、または0.265kb~0.3kbの長さを有する、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
10. (a)レチノイン酸受容体結合部位、
(b)WT1結合部位、
(c)エンハンサーボックス、
(d)転写因子結合領域、および/または
(e)転写開始部位
を含む、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
11. レチノイン酸受容体結合部位が、配列番号10として示されるヌクレオチド配列または配列番号10と比較して1つもしくは2つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される、項目10に記載のプロモーター。
12. WT1結合部位が、配列番号11として示されるヌクレオチド配列または配列番号11と比較して1つ、2つもしくは3つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される、項目10または11に記載のプロモーター。
13. エンハンサーボックスが、配列番号12として示されるヌクレオチド配列または配列番号12と比較して1つもしくは2つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される、項目10から12のいずれか1つに記載のプロモーター。
14. (i)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列が、(a)レチノイン酸受容体結合部位、(b)WT1結合部位、および(c)エンハンサーボックスのうちの1つ以上を含む、項目1または3から13のいずれか1つに記載のプロモーター。
15. 以下のヌクレオチド配列:
(a)配列番号4の7位~13位に対応する位置におけるGGGGTCA、
(b)配列番号4の14位~30位に対応する位置におけるCGGAGGCTGGGGAGGCA、
(c)配列番号4の49位~53位に対応する位置におけるATGTG
のうちの1つ以上が、(i)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列に存在する、
項目1または3から14のいずれか1つに記載のプロモーター。
16. 転写因子結合領域が、配列番号13として示されるヌクレオチド配列または配列番号13と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの置換、欠失もしくは挿入を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれらのヌクレオチド配列から構成される、項目10から15のいずれか1つに記載のプロモーター。
17. 転写開始部位が、「AG」ジヌクレオチドを含むかまたはそれから構成される、項目10から16のいずれか1つに記載のプロモーター。
18. 転写因子結合部位が、転写開始部位に機能しうる形で連結されており、場合により転写因子結合部位が、転写開始部位の直接上流にある、項目10から17のいずれか1つに記載のプロモーター。
19. 配列番号2または配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列から構成される、先行する項目のいずれかに記載のプロモーター。
20. 配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーター。
21. 配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成されるプロモーター。
22. 項目1から21のいずれか1つに記載のプロモーターを含むポリヌクレオチド。
23. プロモーターが、タンパク質コード配列に機能しうる形で連結されている、項目22に記載のポリヌクレオチド。
24. タンパク質コード配列が、1つ以上のさらなる調節エレメント、例えば転写後調節エレメントおよび/またはポリアデニル化配列に機能しうる形で連結されている、項目23に記載のポリヌクレオチド。
25. 項目22から24のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
26. 足細胞を形質導入することが可能であり、場合により足細胞を特異的に形質導入することが可能である、項目25に記載のベクター。
27. ウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ニューカッスル病ウイルスベクター、ポックスウイルスベクターおよびピコルナウイルスベクターであり、好ましくはAAVベクターである、項目25または26に記載のベクター。
28. ウイルスベクターが、ウイルスベクター粒子の形態であり、好ましくはウイルスベクターが、AAVベクター粒子の形態である、項目27に記載のベクター。
29. AAV3B、LK03またはAAV9キャプシドタンパク質によりキャプシドが形成されたAAVベクター粒子の形態である、項目25から28のいずれか1つに記載のベクター。
30. 項目22から24のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたは項目25から29のいずれか1つに記載のベクターを含む、細胞。
31. 項目22から24のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、項目25から29のいずれか1つに記載のベクターまたは項目30に記載の細胞を含む、医薬組成物。
32. 薬剤における使用のための、項目22から24のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、項目25から29のいずれか1つに記載のベクターまたは項目30に記載の細胞。
33. コード配列の発現を駆動するための、項目1から21のいずれか1つに記載のプロモーターの使用。
34. 発現が足細胞特異的である、項目32に記載の使用。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2024509316000001.app
【国際調査報告】