(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】WS12を放出するコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023557804
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 GB2022051077
(87)【国際公開番号】W WO2022229641
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】シ アーウィン シー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ケイアー ナンシー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バストカール サンダー ラオ スバム
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB08
2H006BC07
2H006DA08
(57)【要約】
WS12放出コンタクトレンズ、及び、その製造方法、が開示される。WS12放出コンタクトレンズは、ポリマーレンズ本体と、ポリマーレンズ本体に放出可能に付着されたWS12と、を含み、放出媒体内での1時間後、または、人による着用の1時間後に、0.05μg~0.5μgのWS12を放出する。WS12放出コンタクトレンズは、症候性のコンタクトレンズ着用者によって快適に着用され得て快適なレンズ着用時間の持続時間を増大し得て、及び/または、レンズ意識イベントを低減させ得て、及び/または、症候性のコンタクトレンズ着用者のコンタクトレンズ乾燥を低減させ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封された、未着用の滅菌されたヒドロゲルコンタクトレンズであって、
(a)ポリマーレンズ本体と、
(b)前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12と、
を備えたことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
PBS中25体積%エタノールからなる放出媒体中において、1時間で0.05μg~0.5μgのWS12のインビトロ放出プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記ポリマーレンズ本体は、少なくとも1つのシロキサンモノマー、並びに、少なくとも1つの親水性モノマー、または少なくとも1つの親水性ポリマー、または少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つの親水性ポリマーの両方、を含む重合性組成物の反応生成物である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された前記所定量のWS12は、約0.25μg~約10.0μgである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された前記所定量のWS12は、約0.50μg~約5.0μgである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
当該コンタクトレンズは、前記放出媒体中において、少なくとも6時間、WS12の放出を持続する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記放出プロファイルは、最長6時間に亘って、1時間あたり、0.05μg~0.5μgのWS12の放出を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記放出プロファイルは、最長6時間に亘って、1時間あたり、0.1μg~0.3μgのWS12の放出を有する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記パッケージは、オートクレーブ処理されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記パッケージは、
(a)前記パッケージング溶液を保持するキャビティを有するベース部材と、
(b)前記ベース部材と液密シールを形成するカバーと、
を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封された、コンタクトレンズであって、
当該コンタクトレンズは、未着用の滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
(a)ポリマーレンズ本体と、
(b)前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12と、
を備え、
当該コンタクトレンズは、人による1時間の着用後に、0.05μg~0.50μgのWS12を放出する
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項12】
人による3時間の着用後に、0.10μg~1.5μgのWS12を放出する
ことを特徴とする請求項11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
人による6時間の着用後に、0.25μg~2.0μgのWS12を放出する
ことを特徴とする請求項11または12に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正するための、請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズの使用。
【請求項15】
前記コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減するための、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大するための、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大するための、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記レンズ着用者のCLDEQ-8スコアを低下させるための、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正する際の使用のための、
コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減する際の使用のための、
コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大する際の使用のための、
コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大する際の使用のための、及び/または、
コンタクトレンズ着用中のCLDEQ-8スコアを低下させる際の使用のための、
組成物であって、
当該組成物は、ポリマーシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12を有する
ことを特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズの形態の、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
所定量のWS12をシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーレンズ本体に放出可能に付着させて請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズを形成することによって、及び/または、請求項1乃至13のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを症候性のコンタクトレンズ着用者に提供することによって、快適なコンタクトレンズ着用時間の持続時間を増大し、及び/または、症候性のコンタクトレンズ着用者のコンタクトレンズの乾燥を低減する、方法。
【請求項22】
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合化して前記ポリマーレンズ本体を得る工程と、
(b)前記ポリマーレンズ本体を前記コンタクトレンズ型から取り出す工程と、
(c)約5ppm~約50ppmのWS12を含む有機溶媒中で前記ポリマーレンズ本体を抽出する工程と、
(d)水和液中で前記ポリマーレンズ本体を水和して、ヒドロゲルコンタクトレンズを得る工程と、
(e)前記ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージング溶液と共にパッケージ内で密封する工程と、
(f)前記パッケージをオートクレーブする工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項23】
少なくとも2つのWS12放出コンタクトレンズを含むキットであって、
第1コンタクトレンズが、第1ポリマーレンズ本体と、当該第1ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第1量のWS12と、を含み、
第2コンタクトレンズが、第2ポリマーレンズ本体と、当該第2ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第2量のWS12と、を含み、
前記第2量は、前記第1量より大きく、
前記第1ポリマーレンズ本体と前記第2ポリマーレンズ本体とは、同一の材料を含む
ことを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、コンタクトレンズに関しており、特には、症候性のコンタクトレンズ着用者にとってより快適なコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
全てのコンタクトレンズ着用者の推定50%が、レンズ着用中に不快感を経験し、コンタクトレンズ着用者の約25%が、レンズ着用を永久に中止している。眼の乾燥の症状は、コンタクトレンズの不満の主要な理由である。コンタクトレンズ材料の進歩にもかかわらず、現在市販されているコンタクトレンズを着用している間には眼の乾燥の症状を経験してしまうようなコンタクトレンズ着用者が、快適に着用することができる改良されたコンタクトレンズのニーズが存在する。
【0003】
WS12として知られる、N-(4-メトキシフェニル)-5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキサンカルボキサミド(CAS No.68489-09-8)は、チューインガムやキャンディーに清涼剤及び香味剤として使用されている合成メントール誘導体である。それは、一過性受容体電位型メラスタチン-8(TRPM8)イオンチャネルを選択的に活性化する。ドライアイの治療のためのTRPM8受容体アゴニストを含む治療組成物が、提案されている(Belmonte等、米国特許第10,028,920号)。
【発明の概要】
【0004】
本発明の特徴は、レンズ着用中にWS12を放出し得るヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。
【0005】
本発明の更なる特徴は、症候性の(有症状の)コンタクトレンズ着用者によって快適に着用され得るコンタクトレンズを提供することである。
【0006】
本発明の更なる特徴は、症候性のコンタクトレンズ着用者において、快適なレンズ着用時間の持続時間を増大させる、及び/または、コンタクトレンズの乾燥を低減させる、ことである。
【0007】
本発明の更なる特徴及び利点が、以下の説明において部分的に記載され、当該説明から部分的に明らかになる、あるいは、本発明の実践によって学習され得る。本発明の目的及び他の利点は、明細書及び添付の特許請求の範囲で特に指摘される要素及び組み合わせによって、実現及び達成される。
【0008】
これら及び他の利点を達成するために、本発明の目的に従って、本明細書で具体化されて且つ広く説明されるように、本発明は、部分的に、当該レンズに放出可能に付着された所定量のWS12を含むヒドロゲルコンタクトレンズであって、症候性のコンタクトレンズ着用者におけるコンタクトレンズの快適性を向上させ、及び/または、症候性のコンタクトレンズ着用者におけるコンタクトレンズの乾燥を低減させる、ヒドロゲルコンタクトレンズに関する。一実施例において、ヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。
【0009】
一実施例において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中25体積%エタノールからなるインビトロ放出媒体中において、1時間で0.05μg~0.5μgのWS12を放出することができる。
【0010】
更に、本発明は、本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの製造方法に関する。当該方法は、(a)(本明細書に記載されるような)重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合化してポリマーレンズ本体を得る工程と、(b)前記ポリマーレンズ本体を前記コンタクトレンズ型から取り出す工程と、(c)約5ppm~約50ppmのWS12を含む有機溶媒中で前記ポリマーレンズ本体を抽出する工程と、(d)水和液中で前記ポリマーレンズ本体を水和して、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得る工程と、(e)前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージング溶液と共にパッケージ内で密封する工程と、(f)前記パッケージをオートクレーブする工程と、を備える。
【0011】
更に、本発明は、症候性のコンタクトレンズ着用者の視力矯正方法であって、症候性のコンタクトレンズ着用者にWS12を放出するヒドロゲルコンタクトレンズを提供する工程を含み、前記WS12を放出するヒドロゲルコンタクトレンズは、WS12を含まない対照レンズと比較して、快適なコンタクトレンズ着用時間の持続時間を増大し、及び/または、症候性のコンタクトレンズ着用者のコンタクトレンズの乾燥を低減する、という方法に関する。本発明は、更に、所定量のWS12をコンタクトレンズのポリマーレンズ本体に放出可能に付着させることによって、及び/または、本発明のWS12を放出するヒドロゲルコンタクトレンズをコンタクトレンズ着用者に提供することによって、快適なコンタクトレンズ着用時間の持続時間を増大し、及び/または、コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減する、という方法に関する。WS12を放出するヒドロゲルコンタクトレンズは、有利なことに、WS12を含まない対照レンズと比較して、快適なコンタクトレンズ着用時間の持続時間を増大し、及び/または、症候性のコンタクトレンズ着用者のコンタクトレンズの乾燥を低減する。コンタクトレンズ着用者は、有利には、症候性の(有症状の)コンタクトレンズ着用者である。本発明は、また、コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減する際の、コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大する際の、コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大する際の、及び/または、コンタクトレンズ着用中のCLDEQ-8スコアを低下させる際の、ヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12の使用に関する。ここで、コンタクトレンズ着用者は、有利には、症候性のコンタクトレンズ着用者であり、及び/または、ヒドロゲルコンタクトレンズは、有利には、本明細書に記載される本発明のコンタクトレンズである。本発明は、また、症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正する、コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減する、コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大する、コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大する、及び/または、コンタクトレンズ着用中のCLDEQ-8スコアを低下させる、ためのコンタクトレンズを選択する方法に関し、当該方法は、本発明のレンズ着用中にWS12を放出できるヒドロゲルコンタクトレンズを選択する工程と、それを症候性のコンタクトレンズ装用者に提供する工程と、を含む。本発明は、また、症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正する際の使用のための、コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減する際の使用のための、コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大する際の使用のための、コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大する際の使用のための、及び/または、コンタクトレンズ着用中のCLDEQ-8スコアを低下させる際の使用のための、WS12に放出可能に付着されるヒドロゲルを含む組成物に関し、当該組成物は、有利には、本発明のコンタクトレンズの形態である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、症候性及び無症候性のコンタクトレンズ着用者の、30日間のレンズ着用後の、WS12放出コンタクトレンズまたは対照レンズのいずれかの選好を示す箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
広範な実験を通じて、本発明者らは、評価された他のTRPM8受容体アゴニストとは異なり、メントール誘導体WS12(CAS No.68489-09-8)がヒドロゲルコンタクトレンズ材料内に組み込まれ得て、標準的なコンタクトレンズの滅菌及び保管状態中において劣化や浸出無し当該レンズ材料内に留まり得る、ということを知見した。コンタクトレンズが眼上に配置(着用)される時、WS12は、数時間に亘って継続的にレンズから放出され、症候性のコンタクトレンズ着用者の改善された快適性を提供する。従って、着用中にWS12を放出するヒドロゲルコンタクトレンズ及びその製造方法が本明細書に記載される。当該コンタクトレンズは、本明細書では、WS12放出コンタクトレンズと呼ばれ得る。WS12は、症候性のコンタクトレンズ着用者のコンタクトレンズ着用の快適性を改善する量で、着用中のレンズから放出される。
【0014】
選択肢(オプション)として、コンタクトレンズには、他のTRPM8受容体アゴニストが存在しない。
【0015】
選択肢(オプション)として、コンタクトレンズには、眼の乾燥用の他の薬剤が存在しない。
【0016】
WS12放出コンタクトレンズは、ポリマーレンズ本体と、当該ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12と、を含む。一実施例として、コンタクトレンズは、非シリコーンヒドロゲル用の重合性組成物の反応生成物である。非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、典型的には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはビニルアルコールなどの、1または複数の親水性モノマーの重合から形成され、必要に応じて、他のモノマーと組み合わされ得るが、シロキサン分子は含まない。
【0017】
一実施例として、コンタクトレンズは、少なくとも1つのシロキサンモノマー、並びに、少なくとも1つの親水性モノマー及び/または少なくとも1つの親水性ポリマー、を含む重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ本体を含む。好都合なことに、以下でより詳細に説明されるように、シリコーンヒドロゲル用の硬化ポリマーレンズ本体がWS12を含む抽出溶媒内で抽出され得て、これは、所望の量のWS12がポリマーレンズ本体に付着することに帰結する。代替的または付加的に、WS12は、重合性組成物に添加され得る。WS12は、疎水性の相互作用によってポリマーレンズ本体に付着され得て、及び/または、ポリマーレンズ本体のポリマーネットワークによって物理的に捕捉され得る。
【0018】
ポリマーレンズ本体に「放出可能に付着された」所定量のWS12は、以下の実施例1に記載されたエタノール(EtOH)抽出法によってコンタクトレンズから抽出され得るWS12の総量を指す。一実施例では、ポリマーレンズ本体に放出可能に付着されたWS12の所定量は、少なくとも約0.25μgまたは0.50μgから、最大で約2.5μg、5.0μg、または10.0μgであり得て、例えば約0.30μg~約3.0μgであり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、WS12放出コンタクトレンズのインビトロ放出プロファイルへの言及は、インビトロ放出媒体(PBS中25体積%のEtOH)及び以下の実施例4に記載された方法を用いて測定される、所定時間に亘っての、レンズから放出されるWS12の量を指す。エタノールを含みタンパク質を含まない放出媒体を採用するインビトロ放出方法は、人工涙液膜組成物(ATF)が放出媒体として使用される場合よりも変動の少ない放出プロファイルを提供し、特定のレンズ材料がWS12放出に与える影響を判定するのに役立つ。例えば、ある材料で製造され、ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された一定量のWS12を有するポリマーレンズ本体は、異なる材料で製造され、それに放出可能に付着された同一量のWS12を有するポリマーレンズ本体とは、異なるWS12放出プロファイルを有する可能性がある。WS12の放出プロファイルに影響を与え得るポリマーレンズ本体の幾つかの特性は、材料の疎水性、含水量、及び、ポリマーレンズ本体の架橋度、を含む。付加的に、リポソームや浸食性ナノ粒子などのカプセル化技術が、ポリマーレンズ本体に組み込む前にWS12の一部または全部をカプセル化するために使用され得て、レンズからのWS12の放出を遅延させたり延長したりすることもできる。例えば、コンタクトレンズに組み込まれる10重量%~80重量%以上のWS12は、このような遅延放出プロファイルを有し得る。WS12放出コンタクトレンズは、放出媒体としてPBS中25体積%のEtOHを使用して以下の実施例4のインビトロ放出方法を用いて測定される時において、x時間後に放出されるWS12の量が(x-1)時間後に放出されるWS12の量よりも大きい時、所定のx時間、WS12の放出を持続していると考えられる。一実施例では、WS12放出レンズは、少なくとも6時間、WS12の放出を持続する。一実施例では、WS12放出レンズは、実施例4のインビトロ放出方法を用いて測定される時、少なくとも6時間に亘って1時間当たり0.05μg~0.5μgのWS12が放出される、または、少なくとも6時間に亘って1時間当たり0.1μg~0.4μgのWS12が放出される、または、少なくとも6時間に亘って1時間当たり0.1μg~0.3μgのWS12が放出される、というインビトロ放出プロファイルを有し得る。幾つかの例では、コンタクトレンズは、少なくとも8時間、または、少なくとも10時間、WS12の放出を持続する。
【0020】
着用時にWS12放出コンタクトレンズから放出されるWS12の量を測定するために、人間の被験者(n=3)が、指定された期間、両眼にWS12放出レンズを着用する。指定された時点でのレンズからのWS12放出量は、未着用のWS12放出レンズ(n=3)内のWS12の平均量と、当該試験時点における着用されたレンズ内に残存するWS12の平均量と、の差である。一例では、WS12放出レンズは、1時間の着用後、0.05μg~0.75μgのWS12、または、0.05μg~0.50μg、のWS12を放出する。更なる例では、WS12放出レンズは、3時間の着用後、0.10μg~1.5μ、または、0.25μg~1.0μg、のWS12を放出する。更に別の例では、WS12放出レンズは、6時間の着用後、0.25μg~2.0μg、または、0.5μg~1.5μg、のWS12を放出する。
【0021】
ポリマーレンズ本体は、コンタクトレンズ材料としての使用に適した任意のヒドロゲル材料を含み得る。コンタクトレンズ用のシリコーンヒドロゲル材料は、典型的には、少なくとも1つのシロキサンモノマー及び少なくとも1つの親水性モノマー、または少なくとも1つの親水性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む重合性組成物(すなわち、モノマー混合物)を硬化することによって形成される。本明細書で使用される場合、「シロキサンモノマー」という用語は、少なくとも1つのSi-O基、及び、少なくとも1つの重合性基を含む分子である。コンタクトレンズ組成物において使用されるシロキサンモノマーは、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,658,747号及び米国特許第6,867,245号を参照)。(本明細書において言及される全ての特許及び刊行物は、当該参照によりその全体の内容が本明細書の一部に組み込まれる(incorporated by reference)。)幾つかの実施例では、重合性組成物は、少なくとも、10重量%、20重量%または30重量%から、約40重量%、50重量%、60重量%または70重量%までの、シロキサンモノマーの総量を含む。別段の指定が無い限り、本明細書で使用される場合、重合性組成物のある成分の所与の重量パーセント(重量%)は、当該重合性組成物中の全ての重合性成分及びIPNポリマー(以下で更に説明する)の総重量に対するものである。最終的なコンタクトレンズ製品には取り込まれない成分、例えば希釈剤など、が寄与する重合性組成物の重量は、重量%の計算には含まれない。
【0022】
特定の実施例では、重合性組成物は、親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、「親水性ビニルモノマー」という用語は、アクリル基の一部では無いその分子構造中に重合性の(重合可能な)炭素-炭素二重結合(すなわち、ビニル基)を有する、シロキサンを含まない(すなわち、Si-O基を含まない)親水性モノマーである。当該ビニル基の炭素-炭素二重結合は、フリーラジカル重合下で重合可能なメタクリレート基に存在する炭素-炭素二重結合よりも反応性が低い。本明細書で使用される場合、「アクリル基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、等に存在する重合性基である。従って、炭素-炭素二重結合は、アクリレート基及びメタクリレート基にも存在するが、本明細書で使用される場合、そのような重合性基はビニル基とはみなされない。更に、本明細書で使用されるように、標準的な振とうフラスコ法を使用して視覚的に判定されるように、少なくとも50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に完全に溶解する場合(すなわち、水に約5%溶解する場合)、当該モノマーは「親水性」である。様々な実施例において、親水性ビニルモノマーは、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、1,4-ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、または、それらの任意の組み合わせ、である。一実施例では、重合性組成物は、少なくとも、10重量%、15重量%、20重量%または25重量%から、約45重量%、60重量%または75重量%までの、親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、重合性組成物中の特定のクラスの成分(例えば、親水性ビニルモノマー、シロキサンモノマー、等)の所与の重量パーセントは、当該クラスに該当する当該組成物中の各成分の重量%の合計に等しい。従って、例えば、5重量%のBVEと25重量%のNVPとを含み他の親水性ビニルモノマーを含まない重合性組成物は、30重量%の親水性ビニルモノマーを含むと称される。一実施例では、親水性ビニルモノマーは、ビニルアミドモノマーである。例示的な親水性ビニルアミドモノマーは、VMA及びNVPである。特定の実施例では、重合性組成物は、少なくとも25重量%のビニルアミドモノマーを含む。別の特定の実施例では、重合性組成物は、約25重量%から約75重量%までの、VMA、NVP、またはそれらの組み合わせ、を含む。重合性組成物に含まれ得る追加の親水性モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、及び、それらの組み合わせ、である。
【0023】
親水性モノマーに対して付加的または代替的に、重合性組成物は、非重合性親水性ポリマーを含み得て、これは、非重合性親水性ポリマーがシリコーンヒドロゲルポリマーマトリックスと相互貫入した相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含むポリマーレンズ本体に帰結する。この実施例では、非重合性親水性ポリマーは、IPNポリマーと呼ばれ、これは、コンタクトレンズの内部湿潤剤として作用する。対照的に、重合性組成物中に存在するモノマーの重合によって形成されるシリコーンヒドロゲルネットワーク内のポリマー鎖は、IPNポリマーとはみなされない。IPNポリマーは、例えば約50,000~約500,000ダルトンの高分子量親水性ポリマーであり得る。特定の実施例では、IPNポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。他の実施例では、重合性組成物は、ポリビニルピロリドンまたは他のIPNポリマーを実質的に含まない。
【0024】
選択肢(オプション)として、1または複数の非シリコン含有疎水性モノマーが、重合性組成物の一部として存在し得る。疎水性モノマーとは、標準的な振盪フラスコ法を用いて、50グラムの当該モノマーが20℃で1リットルの水に視覚的に完全に溶解できないという、任意のモノマーであると理解され得る。好適な疎水性モノマーの例は、メチルアクリレート、またはエチルアクリレート、またはプロピルアクリレート、またはイソプロピルアクリレート、またはシクロヘキシルアクリレート、または2-エチルヘキシルアクリレート、またはメチルメタクリレート(MMA)、またはエチルメタクリレート、またはプロピルメタクリレート、またはブチルアクリレート、または2-ヒドロキシブチルメタクリレート、または酢酸ビニル、またはプロピオン酸ビニル、または酪酸ビニル、または吉草酸ビニル、またはスチレン、またはクロロプレン、または塩化ビニル、または塩化ビニリデン、またはアクリロニトリル、または1-ブテン、またはブタジエン、またはメタクリロニトリル、またはビニルトルエン、またはビニルエチルエーテル、またはパーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、またはイソボルニルメタクリレート(IBM)、またはトリフルオロエチルメタクリレート、またはヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、またはテトラフルオロプロピルメタクリレート、またはヘキサフルオロブチルメタクリレート、またはそれらの任意の組み合わせ、を含む。
【0025】
使用される場合、疎水性モノマーは、重合性組成物の反応生成物中において、重合性組成物の総重量に基づいて、1重量%~約30重量%の量、例えば、1重量%~25重量%の量、1重量%~20重量%の量、1重量%~15重量%の量、2重量%~20重量%の量、3重量%~20重量%の量、5重量%~20重量%の量、5重量%~15重量%の量、1重量%~10重量%の量、で存在し得る。
【0026】
当業者に理解されるように、重合性組成物は、重合開始剤、UV吸収剤、着色剤、脱酸素剤、連鎖移動剤、等のうちの1または複数など、コンタクトレンズ配合に従来から使用されている追加の重合性または非重合性の成分を含み得る。幾つかの実施例では、重合性組成物は、光学的に透明なレンズが得られるように、当該重合性組成物の親水性成分と疎水性成分との間の相分離を防止または最小化する量で有機希釈剤を含み得る。コンタクトレンズ配合に一般的に使用される希釈剤は、ヘキサノール、エタノール、及び/または、他のアルコール、を含む。他の実施例では、重合性組成物は、有機希釈剤を含まないか、または、実質的に含まない(例えば、500ppm未満)。このような実施例では、ポリエチレンオキシド基、ペンダントヒドロキシル基、または他の親水性基、等の親水性部分を含むシロキサンモノマーの使用が、重合性組成物に希釈剤を含めることを不要にし得る。重合性組成物に含まれ得るこれらの成分及び追加の成分の非限定的な例が、米国特許第8,231,218号に提供されている。
【0027】
使用され得るシリコーンヒドロゲルの非限定的な例は、コンフィルコンA、ファンフィルコンA、ステンフィルコンA、セノフィルコンA、セノフィルコンC、ソモフィルコンA、ナラフィルコンA、デレフィルコンA、ナラフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、バラフィルコンA、サムフィルコンA、ガリフィルコンA、アスモフィルコンA、を含む。
【0028】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの具体的な一実施例は、25重量%~55重量%のシロキサンモノマーと、30重量%~55重量%の、NVP、VMA、またはそれらの組み合わせ、から選択されるビニルモノマーと、任意選択的に約1重量%~約20重量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、または、それらの任意の組み合わせ、から選択される親水性モノマーと、任意選択的に約1重量%~約20重量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)、2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、またはそれらの任意の組み合わせ、から選択される疎水性モノマーと、を含む重合性組成物に基づくものである。重合性組成物の当該具体的実施形態から製造されるシリコーンヒドロゲル材料は、ステンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、ファンフィコンA、及び、エンフィルコンAを含む。
【0029】
本発明のコンタクトレンズを製造するために、従来の方法が利用され得る。一実施例として、シリコーンヒドロゲル組成物のための重合可能な成分が、コンタクトレンズの前面を画定する凹面を有する雌型部材内に分配される。コンタクトレンズの後面、すなわち角膜接触面、を画定する凸面を有する雄型部材が、前記雌型部材と組み合わされて、コンタクトレンズ型アセンブリが形成され、これがUVまたは熱硬化条件などの硬化条件にさらされる。当該硬化条件下で、硬化性組成物が、ポリマーレンズ本体に形成される。雌型部材及び雄型部材は、非極性型または極性型であり得る。型アセンブリは、分解され(すなわち脱型され)、高分子レンズ本体が、当該型から取り出されて、溶媒、例えば、エタノールなどの有機溶媒、と接触させられて、当該レンズ本体から未反応成分が抽出される。当該抽出後、レンズ本体は、水や水溶液のような1または複数の水和液中で水和されてパッケージ化される。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する例示的な方法は、米国特許第8,865,789号に記載されている。
【0030】
WS12は、抽出工程中にポリマーレンズ内にロード(装填)され得る。一般に、硬化後に、WS12を含むエタノールなどの抽出溶媒中で、ポリマーレンズ本体が膨潤される。続いて、抽出されたポリマーレンズ本体が脱イオン水のような水和溶液内に入れられ、抽出溶媒が除去されるが、WS12はポリマーレンズ本体に付着されたままである。
【0031】
抽出プロセス及び水和プロセスで使用される抽出溶媒及び水和液体の例は、変性エタノール、変性エタノールと脱イオン水の50/50(体積による)混合物、及び、脱イオン水、からなり得る。一実施例として、抽出プロセス及び水和プロセスは、変性エタノール中及びこれに続くエタノールと水との50:50混合物中での少なくとも1回の抽出工程と、これに続く脱イオン水中での少なくとも1回の水和工程と、を含み得て、抽出工程及び水和工程の各々は、約20℃~約30℃までの温度で、約15分~約3時間、継続し得る。抽出溶媒は、ポリマーレンズ本体へのWS12のアップロードを達成するようにWS12を含有し得る。
【0032】
WS12のためのアップロード液として使用される抽出溶媒は、少なくとも1.0μg/mlの濃度のWS12を含み得る。この濃度は、少なくとも2.5μg/ml、少なくとも5.0μg/ml、または、少なくとも10.0μg/ml、のWS12であり得る。一実施例では、抽出溶媒中のWS12の濃度は、約5.0μg/ml~約50.0μg/mlである(すなわち、約5pp~約50ppm)。
【0033】
幾つかの実施例では、WS12は、一度ポリマーレンズ本体に付着されると安定であり、パッケージング溶液中に未着用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む密封されたコンタクトレンズパッケージのオートクレーブ中、または、そのパッケージング溶液内での保管中、実質的にポリマーレンズ本体から放出されたり分解したりしないが、レンズ着用中には放出される。従って、オートクレーブ前、オートクレーブ直後、その1日後、その30日後、その60日後、または、その120日後に、コンタクトレンズが浸漬されたパッケージング溶液は、0.1μg/ml未満または0.05μg/ml未満であるWS12の濃度、あるいは、HPLCによって判定される検出レベル未満のWS12の濃度、を有し得る。
【0034】
本発明の一部として、コンタクトレンズは、コンタクトレンズパッケージ内に密封され得る。コンタクトレンズパッケージ内に密封されるパッケージング溶液は、任意の従来のコンタクトレンズ適合溶液であり得る。一実施例では、パッケージング溶液は、緩衝剤及び/または等張化剤の水溶液を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。別の実施例では、パッケージング溶液は、1または複数の追加の抗菌剤、及び/または快適剤、及び/または親水性ポリマー、及び/または界面活性剤、及び/または他の有用剤、などの追加の助剤を含む。幾つかの実施例では、パッケージング溶液は、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、または、ポリビニルピロリドンなどの他の高分子量ポリマー、を含み得る。それらは、眼科用溶液及びコンタクトレンズパッケージング溶液において快適ポリマーまたは増粘剤として、一般的に使用されている。他の実施例では、パッケージング溶液は、眼科用薬剤(点眼薬)を含み得る。パッケージング溶液は、約6.8または7.0から約7.8または8.0までの範囲のpHを有し得る。一実施例では、パッケージング溶液は、リン酸緩衝液またはホウ酸緩衝液を含む。別の実施例では、パッケージング溶液は、塩化ナトリウムまたはソルビトールから選択される等張化剤を、約200~400mOsm/kg、典型的には約270mOsm/kg~約310mOsm/kg、の範囲に浸透圧を維持する量で含む。
【0035】
コンタクトレンズパッケージに関して、このパッケージは、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成されたキャビティと、当該キャビティの周りに外向きに延在するフランジ領域と、を含むプラスチックベース部材を備え得る。密封されたコンタクトレンズパッケージを提供するために、取り外し可能なホイルがフランジ領域に取り付けられる。そのようなコンタクトレンズパッケージは、一般に「ブリスターパック」と呼ばれ、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第7,426,993号)。
【0036】
当該密封されたコンタクトレンズパッケージを製造するために従来の製造方法が利用され得ることが理解されるであろう。コンタクトレンズパッケージを製造する方法において、当該方法は、レセプタクル(容器)内に未着用のコンタクトレンズとコンタクトレンズパッケージング溶液とを入れる工程と、レセプタクル上にカバーを置く工程と、レセプタクル上でカバーを密封する工程と、を含み得る。一般に、レセプタクルは、単一のコンタクトレンズと、当該コンタクトレンズを完全に覆うのに十分な量、典型的には約0.5~1.5ml、のパッケージング溶液と、を受容するように構成される。レセプタクルは、ガラスやプラスチックなどの、任意の適切な材料から製造され得る。一実施例では、レセプタクルは、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成されたキャビティと、当該キャビティの周りに外向きに延在するフランジ領域と、を含むプラスチックベース部材を備え、カバーは、密封されたコンタクトレンズパッケージを提供するためにフランジ領域に取り付けられる取り外し可能なホイルを有する。取り外し可能なホイルは、ヒートシールまたは接着などの、任意の従来の手段によって密封(シール)され得る。別の実施例では、レセプタクルは、複数のネジ部を含むプラスチックベース部材の形態であり、カバーは、当該ベース部材のネジ部と係合するための適合性のあるネジ部のセットを含むプラスチックキャップ部材を含み、それによって再密封可能なカバーを提供する。再密封可能なパッケージを提供するために、他のタイプのパッケージングも利用され得ることを理解されたい。例えば、コンタクトレンズパッケージは、レセプタクルの適合する特徴部と係合して締まり嵌めを形成する特徴部を含むプラスチックカバーを含み得る。密封されたコンタクトレンズパッケージを製造する方法は、密封されたコンタクトレンズパッケージをオートクレーブすることによって未着用のコンタクトレンズを滅菌する工程を更に含み得る。オートクレーブ処理工程は、一般に、密封されたコンタクトレンズパッケージを少なくとも121℃の温度に少なくとも20分間さらす工程を含む。
【0037】
当該コンタクトレンズは、未使用で提供され得て(すなわち、患者によって以前に使用されていない、新しいコンタクトレンズ)、パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封される。パッケージは、ブリスターパッケージ、ガラスバイアル、または、他の適切な容器、であり得る。パッケージは、パッケージング溶液と、未着用のコンタクトレンズと、を収容するためのキャビティを有するベース部材を備える。密封されたパッケージは、オートクレービング、ガンマ線放射、電子ビーム放射、紫外線放射、等のような、熱または蒸気を含む所定量の放射線滅菌によって、滅菌され得る。
【0038】
特定の実施例では、パッケージング(包装)されたコンタクトレンズは、オートクレーブによって滅菌される。
【0039】
最終製品は、眼科的に許容可能な表面湿潤性を有する、滅菌されてパッケージング(包装)されたコンタクトレンズ(例えばシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)であり得る。
【0040】
本明細書に記載されたWS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正するために使用され得る。例えば、WS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、症候性のコンタクトレンズ着用者における快適なコンタクトレンズ着用時間の持続を増大させ得る。本明細書における「症候性のコンタクトレンズ着用者」または「症候性の被験者」という言及は、Young等(Young等、UKソフトレンズ着用者の断面におけるコンタクトレンズ関連の乾燥症状の特徴付け(Characterizing contact lens-related dryness symptoms in a cross-section of UK soft lens wearers.)、Contact Lens & Anterior Eye 34(2011)64-70を参照)から採用された実施例6に記述される方法を使用して症候性と分類されるレンズ着用者を指す。
【0041】
本明細書に記載されたWS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、症候性のコンタクトレンズ着用者によって着用され得て、対照レンズまたは症候性の着用者の常用レンズと比較して、特に一日の終わりの「乾燥」の感覚を低減し得る。本明細書における「対照レンズ」という言及は、WS12を含まないがそれ以外は比較対象のWS12放出レンズと同一である、というコンタクトレンズを指す。コンタクトレンズ着用中のレンズの乾燥の低減は、実施例6に記述される特性評価方法を使用して判定され得る。症候性のコンタクトレンズ着用者におけるWS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズに対する全体的なレンズの選好は、コンタクトレンズの不快感/乾燥に対する有益な影響を測定/確認するもう1つの方法である。
【0042】
本明細書に記載されたWS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、対照レンズと比較して、レンズ意識を低下させ、及び/または、日中の「レンズ意識イベント」をより少なくし得る。コンタクトレンズ着用中のレンズ意識、及び/または、レンズ意識イベントの低減は、Readらによって記述された「レンズ意識ロガー」を用いて判定され得る(Read等、手首取り付け電子ロガーを用いた眼の不快感のモニタリング(Monitoring ocular discomfort using a wrist-mounted electronic logger)、Contact Lens and Anterior Eye Vol.43(2020)476-485を参照)。
【0043】
本明細書に記載されたWS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、当該レンズを1時間、2時間、4時間、またはそれ以上、着用した後において、対照レンズと比較して、涙液膜メニスカス高さの増大をもたらし得る。涙液膜メニスカスの高さは、光干渉断層撮影法(OCT)または他の適切な方法によって測定され得る。
【0044】
本明細書に記載されたWS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、症候性のレンズ着用者のCLDEQ-8スコアを改善(すなわち、低下)させ得る(Chalmers等、コンタクトレンズドライアイ質問事項-8(Contact Lens Dry Eye Questionnaire-8)(CLDEQ-8)及びコンタクトレンズ性能の意見(opinion of contact lens performance)、Optom Vis Sci 2012;89(10):1435-1442を参照)。CLDEQ-8スコアの改善は、WS12放出ヒドロゲルコンタクトレンズを着用してから、1週間後、または2週間後、または4週間後、に確認され得る。
【0045】
一部の被験者は、WS12放出レンズを挿入した後、最初、ヒリヒリ感や冷感を経験し得る。しかしながら、これらは、一定期間に亘って毎日当該レンズを装着した後は減少し、すなわち、WS12への適応を示唆する。最初の不快な感覚は、より低いWS12放出速度を有するWS12放出コンタクトレンズの使用を患者に開始させることによって、低減または回避され得る。低用量のWS12放出コンタクトレンズを数日間着用した後、当該患者はWS12に適応し、最初の挿入に不快感を経験することなく、より高いWS12放出速度を有するコンタクトレンズに切り替えることができる。低用量のWS12放出コンタクトレンズは、「スターター」WS12放出レンズとみなされ得る。幾つかの例では、患者は、症候性のコンタクトレンズ着用者におけるコンタクトレンズ着用の快適さを改善するためにより高いWS12放出速度を有するWS12放出コンタクトレンズに切り替える前に、スターターWS12放出レンズを毎日、例えば3日間、5日間、7日間、または10日間、着用し得る。スターターWS12放出レンズは、実施例4の方法に従うインビトロ放出媒体中で、1時間後に約0.05μg~最大約0.2μgのWS12を放出し得る。
【0046】
少なくとも2つのWS12放出コンタクトレンズを備えた「スタータートライアルパック」またはキットが提供され得て、第1コンタクトレンズが、第1ポリマーレンズ本体と、当該第1ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第1量のWS12と、を含み得て、第2コンタクトレンズが、第2ポリマーレンズ本体と、当該第2ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第2量のWS12と、を含み得て、前記第2量は、前記第1量より大きく、前記第1ポリマーレンズ本体と前記第2ポリマーレンズ本体とは、同一の材料を含み得る。幾つかの例では、スタータートライアルパックは、第3ポリマーレンズ本体と、当該第3ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第3量のWS12と、を含む第3のWS12放出コンタクトレンズを備え得て、前記第3量は、前記第2量より大きく、前記第1ポリマーレンズ本体と前記第2ポリマーレンズ本体と前記第3ポリマーレンズ本体とは、同一の材料を含み得る。スタータートライアルパックの個々のWS12放出コンタクトレンズが、パッケージング溶液内に浸漬され得て、ブリスターパッケージなどのパッケージ内に密封され得て、滅菌され得て、カートンなどの二次パッケージ内に包装され得る。二次パッケージ内には、より多量のWS12を含むレンズを着用する前に、より低量のWS12を含むレンズを着用するように、レンズ着用者に指示(案内)するパッケージ挿入物(添付文書)が含まれ得る。スターターWS12放出レンズの一次パッケージは、より高いWS12放出速度を有するレンズとは、例えば色によって、外観が異なり得る。
【0047】
以下の実施例は、本発明の特定の態様及び利点を説明するものであるが、それによって限定されるものではないと理解されるべきである。
【0048】
[実施例1.WS12放出コンタクトレンズの調整]
【0049】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、コンタクトレンズ型の中で、ステンフィルコンA用の配合物を硬化させることによって、調製された。硬化されたステンフィルコンAは、型から取り出され、表1に示す装填濃度でWS12(Tocris Bioscience)を含有するエタノール(EtOH)に215分間浸漬させることによって、抽出された。レンズがEtOHから取り出され、脱イオン(DI)水で約6分間洗浄され、その後、2回の脱イオン水の交換が、それぞれ30分間続いた。レンズは、本明細書でPBSと称される、pH7.5の3mLのリン酸緩衝生理食塩水(0.78重量%NaCl、0.05重量%一塩基性リン酸ナトリウム、0.36重量%二塩基性リン酸ナトリウム)を含む、6mLのガラスバイラルに移された。当該バイラルは、密封され、オートクレーブされた。
【0050】
オートクレーブされた各レンズが、3mlのEtOHを含むバイアルに移され、150rpmのシェーカー上で室温で一晩保管されて、レンズからWS12が抽出された。
当該EtOH抽出物と、当該レンズがその中でオートクレーブされたPBSとが、キャリブレーション標準に対するHPLC(検出波長=250nm)による分析に供され、各々に装填(ロード)されたWS12の平均量(n=5)と、WS12がオートクレーブ中にレンズから浸出するか否か、が判定された。結果が表1に示されている。
【0051】
【0052】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、コンフィルコンAの配合物をコンタクトレンズ型内で硬化させ、当該レンズをステンフィルコンAで製造されるレンズについて前述されたのと同一の抽出手順、水和手順、及びオートクレーブ手順にかける(さらす)ことによって、調製された(但し、単一の15μg/mLのWS12濃度がエタノール抽出工程で用いられた)。当該レンズ(レンズD)は、WS12含有量についてのHPLC分析に供され、平均で1.04μg/レンズのWS12の取り込みを有することが示された。
【0053】
[実施例2.WS12放出コンタクトレンズの5体積%EtOH内のインビトロ放出]
【0054】
実施例1のレンズB及びレンズDが、それらのバイアルから取り出され、余剰のパッケージング溶液が各レンズから振り落とされた。各レンズ(各時点でn=3)が、35℃のPBS中5体積%エタノールの3mlを含む6mlガラスバイアルに移された。当該バイアルが、35℃のインキュベーター内で125rpmのシェーカー上に置かれた。30分及び1時間の時点で、2.5mlのEtOH放出媒体が(それぞれ30分及び1時間の時点のバイアルから)取り出されて、HPLC分析に供された。1時間の時点で、及び、その後の時点で(すなわち、2時間、3時間、及び、4時間)、2.5mlのEtOH放出媒体が残りのバイアルの各々から取り出され、2.5mlの新鮮なEtOH放出媒体が各バイアルに添加された。以下の表2は、各レンズ材料の累積のWS12放出(量)を示す。例えば、3時間の時点(の値)は、1時間、2時間及び3時間の(各)時点で採取された放出媒体中で検出されたWS12の量の合計である。
【0055】
【0056】
[実施例3.レンズ着用中のコンタクトレンズからのWS12放出]
【0057】
レンズBが、人間の被験者によって、1時間、3時間、及び、6時間、着用された(各時点でn=2)。各レンズ着用期間の終わりに、実施例1に記載された方法を使用して、レンズがEtOH中で抽出された。レンズ内に残存していたWS12残留量を判定するために、抽出物がHPLC分析に供されて、着用中に放出されたWS12量が計算された。レンズ着用中に放出されたWS12の平均量とパーセントとが表3に示されている。
【0058】
【0059】
[実施例4.WS12放出コンタクトレンズの25体積%EtOH内のインビトロ放出]
【0060】
レンズ着用中のWS12の放出をより厳密に近似するインビトロ放出方法を実現するために、レンズBからのWS12の放出が、15%、20%、25%、または、30%、というより高濃度のEtOHが放出媒体に使用されたことを除いて、実施例2の方法を使用して試験された。25体積%EtOH/75体積%PBSからなる放出媒体が、6時間の着用時のレンズからのWS12の放出を最も近く近似した。結果が、表4に示されている。
【0061】
【0062】
[実施例5.WS12放出コンタクトレンズの用量漸増1日臨床研究]
【0063】
2人の被験者を研究に参加させ、実施例1の3つの装填濃度の全てが評価された。各被験者は、実施例1のレンズA、B及びCに対して、対側の着用で、片目にそれぞれ30分間さらされた。最初の研究の日に、被験者は、レンズBとレンズCを対側に着用し、続いて別の日に、レンズBとレンズAを対側に着用した。レンズCを使用すると、1人の被験者は、ヒリヒリした(刺すような)感覚を経験したが、もう1人の被験者は、冷感を経験した。レンズBを使用すると、被験者は2人とも軽度の冷感/ヒリヒリ感を経験し、それは約1時間続いた。レンズAは、被験者に短時間の冷感/湿潤感を引き起こした。レンズBが、更なる評価のために選択された。
【0064】
[実施例6.WS12放出コンタクトレンズの30日臨床研究]
【0065】
33人の被験者が、1ヶ月間の、両側性の、ランダム化された、クロスオーバーダブルマスク研究(crossover double-masked study)に登録され、実施例1のレンズB(試験)またはMyDay(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ(対照)を着用した。被験者は、表5に概要が示された分類システムを使用して、症候性の(S)コンタクトレンズ着用者または無症候性の(A)のコンタクトレンズ着用者に分類された。これは、Young等によって提案された分類から適合されている(前記)。
【0066】
【0067】
被験者のうち16人が、症候性コンタクトレンズ着用者として分類され、コンタクトレンズの乾燥/不快感の強度については、5段階中の2以上の評価を報告し、コンタクトレンズの乾燥/不快感の頻度については、「時々、頻繁、または、常時」の評価を報告した。被験者のうち17人が、無症候性コンタクトレンズ着用者として分類され、コンタクトレンズの乾燥/不快感の強度については、5段階中の0または1の評価を報告し、コンタクトレンズの乾燥/不快感の頻度については、「稀、または、無」の評価を報告した。
【0068】
被験者が常用レンズを着用した3~7日間の休薬期間の後、ランダム化された順序から2番目のレンズタイプ(すなわち、実施例1(試験)またはMyDay(登録商標)ブランドの(対照の)コンタクトレンズのいずれか)が、1か月間着用された。快適さ、乾燥、冷感、心地よさ、及び、CLDEQ-8スコア、の評価がモニタリングされた(Chalmers等、前記参照)。
【0069】
1週間の時点では、試験レンズは、対照レンズよりも、挿入時の心地よさが顕著に低いと評価されたが、この差は、1か月の着用後に、減少した。この変化は、おそらく試験レンズを着用した被験者の感覚順応による、冷感の低下に起因すると考えられる。1週間または1か月の時点で、試験レンズと対照レンズとの間の全体的な快適さの評価には、有意な差は無かった。但し、1か月の着用後、対照レンズと比較して、試験レンズの快適さの増大を報告した被験者は2倍であった。1週間後と1ヶ月後の両方で、対照レンズと比較して、試験レンズについての全体的な乾燥評価が顕著に良好(すなわち、より低い)であった。涙液メニスカスの高さが、Visante OCT(Carl Zeiss Meditec Inc.、ダブリン、カリフォルニア州)を使用して測定され、試験レンズ着用の1か月後、対照レンズと比較して有顕著に増大された。CLDEQ-8スコアは、試験レンズ着用の1か月後、対照レンズと比較して顕著に低かった。この差は、症候性の被験者の間では、統計的に顕著であった。1ヶ月のレンズ着用後、33人の被験者のうち、19人(58%)が試験レンズを好み、11人(33%)が対照レンズを好み、3人(9%)が好みがないと報告した。16人の症候性の被験者のうち、11人(69%)が試験レンズを好み、5人(31%)が対照レンズを好んだ。結果が
図1に示されている。
【0070】
本明細書の開示は、特定の図示された実施例に言及しているが、これらの実施例は、限定ではなく例示として提示されていることが理解されるべきである。前述の詳細な説明の意図は、例示的な実施例について論じているが、当該実施例の全ての修正、代替、均等物、を包含すると解釈されるべきである。それらは、本発明の精神及び範囲内に入り得て、付加的な開示として定義され得る。
【0071】
本明細書において、「実施例」、「特定の実施例」、「態様」、「実施形態」、または、それらと同様の語句への言及は、WS12放出シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、その構成要素、密封されたコンタクトレンズパッケージ、その構成要素、または、WS12放出シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法、の1または複数の特徴を紹介することが意図されている(文脈に応じて)。それらは、特定の特徴の組み合わせが相互に排他的でない限り、あるいは、文脈がそうでないことを示さない限り、前述されるまたは後述される、実施例、態様、実施形態(すなわち、特徴)の任意の組み合わせと組み合わされ得る。更に、本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的にそうでないことを示さない限り、複数の指示対象(例えば、少なくとも1または複数)を含む。従って、例えば、「a」「コンタクトレンズ」という言及は、単一のレンズ、及び、同一または異なる2以上のレンズ、を含む。
【0072】
本開示における全ての引用文献の全内容が、本開示と矛盾しない限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。
【0073】
本発明は、文章及び/または段落で説明されたように、前述された及び/または後述される特許請求の範囲で説明される様々な特徴または実施形態の任意の組み合わせを含み得る。本明細書に開示された特徴の任意の組み合わせが、本発明の一部とみなされる。組み合わせ可能な特徴に関して、限定は全く意図されていない。
【0074】
本発明の他の実施形態が、本明細書の考察及び本明細書に開示された本発明の実践から、当業者には明らかである。本明細書及び実施例は、例示的であると見なされることが意図されている。本発明の真の範囲及び精神は、特許請求の範囲及びその均等物によって示される。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封された、未着用の滅菌されたヒドロゲルコンタクトレンズであって、
(a)ポリマーレンズ本体と、
(b)前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された所定量のN-(4-メトキシフェニル)-5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキサンカルボキサミド(WS12)と、
を備え、
前記パッケージング溶液は、0.1μg/ml未満であるWS12の濃度を有している
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記パッケージング溶液は、0.05μg/ml未満であるWS12の濃度を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記パッケージング溶液は、HPLCによって判定される検出レベル未満であるWS12の濃度を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
PBS中25体積%エタノールからなる放出媒体中において、1時間で0.05μg~0.5μgのWS12のインビトロ放出プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記ポリマーレンズ本体は、少なくとも1つのシロキサンモノマー、並びに、少なくとも1つの親水性モノマー、または少なくとも1つの親水性ポリマー、または少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つの親水性ポリマーの両方、を含む重合性組成物の反応生成物である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された前記所定量のWS12は、約0.25μg~約10.0μgである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された前記所定量のWS12は、約0.50μg~約5.0μgである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
当該コンタクトレンズは、前記放出媒体中において、少なくとも6時間、WS12の放出を持続する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記放出プロファイルは、最長6時間に亘って、1時間あたり、0.05μg~0.5μgのWS12の放出を有する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記放出プロファイルは、最長6時間に亘って、1時間あたり、0.1μg~0.3μgのWS12の放出を有する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記パッケージは、オートクレーブ処理されている
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記パッケージは、
(a)前記パッケージング溶液を保持するキャビティを有するベース部材と、
(b)前記ベース部材と液密シールを形成するカバーと、
を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封された、コンタクトレンズであって、
当該コンタクトレンズは、未着用の滅菌されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
(a)ポリマーレンズ本体と、
(b)前記ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12と、
を備え、
当該コンタクトレンズは、人による1時間の着用後に、0.05μg~0.50μgのWS12を放出し、
(c)前記パッケージング溶液は、0.1μg/ml未満であるWS12の濃度を有している
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項14】
人による3時間の着用後に、0.10μg~1.5μgのWS12を放出する
ことを特徴とする請求項13に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
人による6時間の着用後に、0.25μg~2.0μgのWS12を放出する
ことを特徴とする請求項13または14に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正するための、請求項1乃至15のいずれかに記載のコンタクトレンズの使用。
【請求項17】
前記コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減するための、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大するための、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大するための、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記レンズ着用者のCLDEQ-8スコアを低下させるための、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
症候性のコンタクトレンズ着用者の視力を矯正する際の使用のための、
コンタクトレンズ着用者の乾燥の症状を低減する際の使用のための、
コンタクトレンズ着用者による快適なレンズ着用時間を増大する際の使用のための、
コンタクトレンズ着用者の涙液メニスカスの高さを増大する際の使用のための、及び/または、
コンタクトレンズ着用中のCLDEQ-8スコアを低下させる際の使用のための、
組成物であって、
当該組成物は、ポリマーシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体に放出可能に付着された所定量のWS12を有し、
当該組成物は、請求項1乃至15のいずれかに記載のパッケージング溶液内に浸漬された未着用の滅菌されたヒドロゲルコンタクトレンズの形態である
ことを特徴とする組成物。
【請求項22】
所定量のWS12をシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーレンズ本体に放出可能に付着させて請求項1乃至15のいずれかに記載のコンタクトレンズを形成することによって、及び/または、請求項1乃至15のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを症候性のコンタクトレンズ着用者に提供することによって、快適なコンタクトレンズ着用時間の持続時間を増大し、及び/または、症候性のコンタクトレンズ着用者のコンタクトレンズの乾燥を低減する、方法。
【請求項23】
請求項1乃至15のいずれかに記載のコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合化して前記ポリマーレンズ本体を得る工程と、
(b)前記ポリマーレンズ本体を前記コンタクトレンズ型から取り出す工程と、
(c)少なくとも1.0μg/mlのWS12を含む抽出溶媒中で前記ポリマーレンズ本体を抽出する工程と、
(d)水和液中で前記ポリマーレンズ本体を水和して、ヒドロゲルコンタクトレンズを得る工程と、
(e)前記ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージング溶液と共にパッケージ内で密封する工程と、
(f)前記パッケージをオートクレーブする工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項24】
少なくとも2つのWS12放出コンタクトレンズを含むキットであって、
各々のコンタクトレンズは、パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封され、滅菌され、二次パッケージ内に包装されており、
第1コンタクトレンズが、第1ポリマーレンズ本体と、当該第1ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第1量のWS12と、を含み、
第2コンタクトレンズが、第2ポリマーレンズ本体と、当該第2ポリマーレンズ本体に放出可能に付着された第2量のWS12と、を含み、
前記第2量は、前記第1量より大きく、
前記第1ポリマーレンズ本体と前記第2ポリマーレンズ本体とは、同一の材料を含み、
前記パッケージング溶液は、0.1μg/ml未満であるWS12の濃度を有している
ことを特徴とするキット。
【国際調査報告】