(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】微生物含有量を制御する装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20240221BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20240221BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
C12M1/12
C12M1/34 A
C12Q1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572043
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 AT2021060047
(87)【国際公開番号】W WO2022165541
(87)【国際公開日】2022-08-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523302164
【氏名又は名称】シー-スクエア バイオサイエンス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】クレチュマー,ゲラルト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029CC01
4B029DF06
4B029DF10
4B029DG04
4B029FA11
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QS10
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、液体(2)中の微生物(M)の含有量(X)を制御する装置(1)および方法(15)であって:微生物含有量(X)を測定するための測定部(6)と、所定の微生物含有量(X*)を達成するために、少なくとも1つのパラメータ(k;k1,k2;n)を含むモデルを用いて、測定された微生物含有量(X)に基づく殺生物剤(B)の投与量(D)を決定する制御部(7)と、制御部(7)によって決定された投与量(D)で殺生物剤(B)を液体(2)に供給する供給部(8)と、少なくとも1つのパラメータ(k;k1,k2;n)を、少なくとも1つの過去の時間間隔(Δt)にわたって測定部(6)によって測定された微生物含有量(X)と、この時間間隔に供給された殺生物剤(B)の量(P)と、の記録から計算する計算部(9)、とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(2)中の微生物(M)の含有量(X)を制御する装置であって:
前記微生物含有量(X)を測定するための測定部(6)と、
前記測定部(6)に接続され、所定の微生物含有量(X*)を達成するために、前記測定された微生物含有量(X)に基づく殺生物剤(B)の投与量(D)を決定するように構成される制御部(7)と、
前記制御部(7)に接続され、前記制御部(7)によって決定された前記投与量(D)で前記殺生物剤(B)を前記液体(2)に供給するように構成される供給部(8)と、を含み、
前記測定部(6)および前記制御部(7)に接続された計算部(9)を含むことを特徴とする装置であって、
前記制御部(7)は、時間間隔(Δt)に供給される殺生物剤(B)の量(P)とこの時間間隔(Δt)にそれによって引き起こされる前記微生物含有量(X)の変化との間の関係を示す少なくとも1つのパラメータ(k;k
1,k
2;n)を含むモデルを用いて前記投与量(D)を決定するように構成され、
前記計算部(9)は、少なくとも1つのより後の時間間隔(Δt)における前記制御部(7)による使用に供される、前記少なくとも1つのパラメータ(k;k
1,k
2;n)を、少なくとも1つの過去の時間間隔(Δt)にわたって前記測定部(6)によって測定された前記微生物含有量(X)と、この時間間隔に供給された前記殺生物剤(B)の量(P)と、の記録から計算するように構成される、装置。
【請求項2】
前記モデルは、以下の数式によって与えられることを特徴とする、請求項1に記載の装置:
【数1】
ここで、
dX/dtは、時間間隔(Δt)における微生物含有量(X)の変化、
kは、前記モデルのパラメータ(k)、
Bは、この時間間隔(Δt)で供給される殺生物剤(B)の量(P)、
nは、前記殺生物剤(B)の希釈係数(n)、および
Xは、測定された微生物含有量(X)、
である。
【請求項3】
前記モデルは、以下の数式によって与えられることを特徴とする、請求項1に記載の装置:
【数2】
ここで、
dX/dtは、時間間隔(Δt)における微生物含有量(X)の変化、
k
1,k
2は、前記モデルのパラメータ(k
1,k
2)、
B
0は、この時間間隔(Δt)で供給される、供給時点の殺生物剤(B)の量(P)、
nは、前記殺生物剤(B)の希釈係数(n)、および
Xは、測定された微生物含有量(X)、
である。
【請求項4】
前記測定部(6)は、規定のタイプ(A)の前記微生物(M)の含有量(X)を測定するように構成されるフローサイトメータであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記計算部(9)は、一連の時間間隔(Δt)における各時間間隔(Δt)の後の、前記少なくとも1つのパラメータ(k;k
1,k
2;n)を、少なくとも1つの直前の時間間隔(Δt)にわたって前記測定部(6)によって測定された前記微生物含有量(X)と、この少なくとも1つの直前の時間間隔(Δt)に供給された前記殺生物剤(B)の量(P)と、の前記記録から計算するように構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記供給部(8)は、前記殺生物剤(B)を規定の組成(Z)に従って1または複数の成分から選択するように構成され、装置(1)は、前記供給部(8)に接続され、前記供給部(8)における前記組成(Z)を予め決定するように構成される制御部(11)をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(1)は、前記液体(2)のpH(W)、温度(T)、圧力および導電率によって構成される測定量のうちの少なくとも1つを測定するための少なくとも1つのセンサ(13,14)を含み、前記制御部(11)は、前記少なくとも1つのセンサ(13,14)に接続され、前記組成(Z)を少なくともこの/これらの測定量(W,T)に応じて予め決定するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御部(11)は、前記供給部(8)における組成(Z)を一定の時間間隔で予め決定するように構成されることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
液体(2)中の微生物(M)の含有量(X)を制御する方法であって、
制御処理(R)において:
測定部(6)を用いて前記微生物含有量(X)を測定すること(19)と、
前記測定された微生物含有量(X)に基づく、所定の微生物含有量(X*)を達成することを目的とする殺生物剤(B)の投与量(D)と、時間間隔(Δt)に供給される殺生物剤(B)の量(P)とその時間間隔(Δt)にそれによって引き起こされる微生物含有量(X)の変化との間の関係を示す少なくとも1つのパラメータ(k;k
1,k
2;n)を含むモデルと、を決定すること(17)と、
前記決定された投与量(D)で前記殺生物剤(B)を前記液体(2)に供給すること(18);および
前記制御処理(R)と並列または断続的な追跡処理(F)において:
前記少なくとも1つのパラメータ(k;k
1,k
2;n)を、少なくとも1つの過去の時間間隔(Δt)にわたって前記測定部(6)によって測定された前記微生物含有量(X)と、その時間間隔(Δt)に供給された、少なくとも1つのより後の時間間隔(Δt)における前記制御処理(R)での使用に供される、前記殺生物剤(B)の量(P)と、の記録から計算すること(21)と、を含む、方法。
【請求項10】
前記モデルは、以下の数式によって与えられることを特徴とする、請求項9に記載の方法:
【数3】
ここで、
dX/dtは、時間間隔(Δt)における微生物含有量(X)の変化、
kは、前記モデルのパラメータ(k)、
Bは、この時間間隔(Δt)で供給される殺生物剤(B)の量(P)、
nは、前記殺生物剤(B)の希釈係数(n)、および
Xは、測定された微生物含有量(X)、
である。
【請求項11】
前記モデルは、以下の数式によって与えられることを特徴とする、請求項9に記載の方法:
【数4】
ここで、
dX/dtは、時間間隔(Δt)における微生物含有量(X)の変化、
k
1,k
2は、前記モデルのパラメータ(k
1,k
2)、
B
0は、この時間間隔(Δt)で供給される、供給時点の殺生物剤(B)の量(P)、
nは、前記殺生物剤(B)の希釈係数(n)、および
Xは、測定された微生物含有量(X)、
である。
【請求項12】
前記測定部(6)は、規定のタイプ(A)の前記微生物(M)の含有量(X)を測定することを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記追跡処理(F)は、一連の時間間隔(Δt)における各時間間隔(Δt)の後に実行され、前記少なくとも1つのパラメータ(k;k
1,k
2;n)は、少なくとも1つの直前の時間間隔(Δt)にわたって前記測定部(6)によって測定された前記微生物含有量(X)と、この少なくとも1つの直前の時間間隔(Δt)に供給された前記殺生物剤(B)の量(P)と、の前記記録から計算されることを特徴とする、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記殺生物剤(B)は規定の組成(Z)に従って1または複数の成分から選択されることを特徴とする、請求項9から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのセンサ(13,14)は、前記液体(2)のpH(W)、温度(T)、圧力および導電率によって構成される測定量のうちの少なくとも1つを測定し、前記組成(Z)は少なくともこの/これらの測定量(W,T)に応じて予め決定されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組成(Z)は一定の時間間隔で予め決定されることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の微生物の含有量を制御する装置であって、微生物含有量を測定するための測定部と、測定部に接続され、所定の微生物含有量を得るために、測定された微生物含有量に基づく殺生物剤の投与量を決定するように構成される制御部と、制御部に接続され、制御部によって決定された投与量で殺生物剤を液体に供給するように構成される供給部と、を含む装置に関する。本発明はさらに、液体中の微生物含有量を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の工業プロセスおよび手順において、例えば、化学工業、建築材料または食品工業における、洗浄もしくは冷却中、または、例えば、飲料、糖、デンプン、紙、セルロース、木材材料、冷却剤もしくは潤滑剤、塗料、建築材料の製造もしくは処理中、または、飲料の瓶詰め、水および廃水の処理における、例えば、アミノ酸、抗生物質、酵母、クエン酸、バイオエタノールの発酵中などにおいて、望ましくないことにそれらの使用中に微生物で汚染された液体が使用される。処理は、例えば、液体が、開放または閉鎖容器の中に、例えば、処理タンクの中にあり、撹拌されるか、またはほぼ静止したままで、バッチで実行される。他の処理では、液体が、チャネルまたはパイプを通って、例えば、入口と出口の間、または流路内を、連続的に流れる。いずれにしても、その組成、および/または、工業プロセス、およびその中で容器が使用される結果として、望ましくない微生物、例えば、藻類、細菌、真菌、特に酵母などが、液体中で連続的に形成され、液体を汚染し、かつ/または、強固な堆積物、いわゆる「バイオフィルム」、または腐食を、容器中に生じさせる。
【0003】
液体中の過剰な微生物含有量を防止するために、殺生物剤、すなわち、抗菌効果を有する薬剤が、液体に添加される。一般に、殺生物剤は連続的に添加される;任意で、殺生物剤は個々の用量で添加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の工業プロセスでは、一方では、液体中の微生物の含有量が、また、他方では、微生物含有量に対して液体に供給される殺生物剤の効果が、ゆっくりとしか変化しないので、多くの場合、今日では、例えば、1日1回または数回、液体のサンプルを採取して、それらの微生物含有量について分析し、次いで、対応する量の殺生物剤を手動で添加するか、または少なくとも供給量を、例えばポンプを、手動で調整するかして、次のサンプルが採取されるまで維持することが一般的に行われている。この手順は、少なくともとりわけ、しばしば遅い分析方法で使用されるものに関して、条件付きである。この理由のため、殺生物剤は一般に高いレベルで投与されるが、投与量が低すぎる場合には、微生物の通常の指数関数的増殖が、過剰な微生物含有量を迅速にもたらす可能性があるからである。しかしながら、過剰投与は、例えば、殺生物剤で汚染された液体の結果としての環境に対して、および/または、高用量の殺生物剤投入、または、例えば生物学的廃水処理において、その後の殺生物剤からの液体の必要な精製の結果としての処理コストに対して、負の影響を及ぼす。
【0005】
例えば、定量PCR(「qPCR」)、アデノシン三リン酸(ATP)試験、次世代シーケンシング(「NGS」)、ラマン分光法またはフローサイトメトリの原理に従って、微生物含有量測定の、新しいより迅速な方法を考慮すると、現在、測定された微生物含有量に応じて殺生物剤の供給を自動的に制御することが可能である。例えば、EP1350431A1号から、分析システムが液体に含まれる微生物を決定し、下流の殺生物剤選択システムが決定された微生物をデータベースから選択することによって、決定された微生物に基づいて適切な殺生物剤およびそれらの濃度を決定し、コントローラにそれらを指定し、制御された方法で、決定された濃度の殺生物剤を液体に供給する方法が知られている。
【0006】
そのような自動制御は、殺生物剤供給の結果としての、微生物含有量の増加または微生物含有量の減少に対するより速い反応を可能にし、したがって、手動供給と比較して、より標的化された、すなわち、より低用量の殺生物剤使用に対しても、より速い反応を可能にするが、使用される方法またはデータベースは、特定の工業プロセスにおいて使用または発生する、液体および微生物に適合されなければならず、すなわち、当該方法はその適用において柔軟ではない。さらに、データベースに保存された殺生物剤および濃度は、手動供給の場合に使用されるものに対応し、したがって、これらのプロセスにおいて供給される殺生物剤も、いずれにせよ、過剰な微生物含有量を防止するために、通常、過剰投与される。
【0007】
本発明は、殺生物剤の過剰投与を回避しながら、異なる工業プロセス、異なる液体、および異なる微生物のために、簡単に、柔軟に、かつ確実に使用することができる、液体中の微生物の含有量を制御する装置および方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、冒頭に述べたタイプの装置によって達成され、当該装置は、測定部および制御部に接続された計算部によって区別され、制御部は、時間間隔に供給される殺生物剤の量と、この時間間隔に引き起こされる微生物含有量の変化と、の間の関係を示す少なくとも1つのパラメータを含むモデルを用いて投与量を決定するように構成され、計算部は、少なくとも1つの過去の時間間隔にわたって測定部によって測定された微生物含有量と、その時間間隔に供給された殺生物剤の量と、の記録から、少なくとも1つの後続の時間間隔における制御部による使用に供される、少なくとも1つのパラメータを計算するように構成される。
【0009】
モデルは、添加された殺生物剤の量に対する液体の反応、すなわち、その微生物含有量の変化の動力学的モデルである;したがって、殺生物剤の添加に対する、微生物で汚染された全ての液体の反応をモデル化してもよい。計算部を用いて、モデルは、様々な液体に、とりわけ、中に含まれる微生物による液体の動的変化に、またはパラメータの単純な計算による殺生物剤供給へのそれらの反応に、適合される、すなわち、追跡される。このパラメータ化された反応のモデルを使用することによって、装置またはその制御部は、それぞれの処理、およびその中で使用されまたは発生する液体、およびその中に含まれる微生物に同時に適合し、制御は追跡される。したがって、本発明の装置は、使用時に特に単純かつ柔軟であり、液体の微生物含有量を特に効果的に制御し、したがってかなりの量の殺生物剤を節約する。
【0010】
有利な実施形態では、前記モデルは、以下の数式によって与えられる。
【数1】
ここで、
dX/dtは、時間間隔における微生物含有量の変化、
kは、モデルのパラメータ、
Bは、この時間間隔で供給される殺生物剤の量、
nは、殺生物剤の希釈係数、および
Xは、測定された微生物含有量、
である。
【0011】
これは特に単純で普遍的に適用可能なモデルを表し、そのパラメータはほとんど労力をかけずに決定してもよい。殺生物剤の希釈係数は、例えば、使用される殺生物剤、および液体またはその中に含まれる微生物が十分な精度で知られている場合、またはモデルの更なるパラメータとして計算部によって計算される場合、予め知られていてもよい;計算部は、例えば、少なくとも対応する多数の更なる過去の時間間隔にわたる記録から、そのような更なるパラメータを計算する。
【0012】
同じことが、他の実施形態にも当てはまり、それによれば、前記モデルは、以下の数式によって与えられる。
【数2】
ここで、
dX/dtは、時間間隔における微生物含有量の変化、
k
1,k
2は、前記モデルのパラメータ、
B
0は、この時間間隔で供給される、供給時点の殺生物剤の量、
nは、殺生物剤の希釈係数、および
Xは、測定された微生物含有量、
をである。
【0013】
この拡張動力学的モデルは、液体に供給された後に経時的に分解または不活性化される殺生物剤のあり得る特性を考慮に入れている。
【0014】
測定部は、例えば、定量PCR(「qPCR」)、アデノシン三リン酸(ATP)試験、次世代シーケンシング(「NGS」)またはラマン分光法の原理に従って、様々な方法で液体中の微生物の含有量を測定してもよい。測定部は、規定のタイプの微生物の含有量を測定するように構成されるフローサイトメータである場合、特に有利である。フローサイトメータは、高速で、すなわち、リアルタイムでも、いくつもの測定チャネルの並列評価を可能にし、また同時に、異なる蛍光色素を任意で用いて、異なる蛍光、構造、色、電気的特性などに基づく微生物の区別を可能にする。フローサイトメータでは、微生物が、高電圧に沿って、および/または、レーザ光線を通して、高速で連続して個々に誘導され、電場(例えば、偏向)および/またはレーザ光線(例えば、反射、色、蛍光など)に対する、それらのそれぞれの特異的反応が検出され、評価される。ほとんどの場合、多次元データフィールドが生成され、そのもとで、検出された微生物は、例えば(多次元)クラスタ形成によって自動的に分類され、したがって区別される。このようにして、規定のタイプの微生物を発見し、選択的に計数してもよい。EP3617691A1号から知られているように、分類のために、学習システムを任意で使用してもよい。
【0015】
計算部は、一連の時間間隔における各時間間隔の後の、少なくとも1つのパラメータを、少なくとも1つの直前の時間間隔にわたって測定部によって測定された微生物含有量と、この少なくとも1つの直前の時間間隔に供給された殺生物剤の量と、の記録から計算するように構成される場合、特に好ましい。モデルの少なくとも1つのパラメータが連続的に追跡され、その結果、制御は、微生物で汚染された液体の特性における任意の変化に即座に適合され、それによって、特に良好な効果を達成する。一連の時間間隔は、ここではそれぞれの要件に適合させてもよく、特に、液体がその特性をいかに迅速に変化させるかに依存する。
【0016】
装置の好ましい実施形態では、供給部は、殺生物剤を規定の組成に従って1または複数の成分から選択するように構成され、装置は、供給部に接続され、供給部における組成を予め決定するように構成される制御部をさらに含む。これにより、微生物の測定された含有量および測定されたタイプに特に有効である1または複数の構成要素から形成される殺生物剤を使用するために、投与量を超える最適化が可能になる。
【0017】
装置は、液体のpH、温度、圧力および導電率によって構成される測定量のうちの少なくとも1つを測定するための少なくとも1つのセンサを含み、制御部は、少なくとも1つのセンサに接続され、組成を少なくともこの/これらの測定量に応じて予め決定するように構成される場合、特に好ましい。殺生物剤は、それによって、具体的に測定された液体特性に基づいて最適化され、この特性は、例えば、経験則によって、液体中の微生物の含有量に影響を及ぼす。例えば、殺生物剤は、一方では、少なくとも1つの抗菌成分に加えて、例えば、液体のpH値または導電率に影響を及ぼす、異なる効果を有する少なくとも1つの成分を含有してもよく、その結果、殺生物剤の抗菌成分は特に有効である;他方では、異なる抗菌成分を組み合わせてもよい。組成は、測定されたパラメータに従って、または他の態様、例えば、液体中の微生物含有量、成分の環境との親和性および/またはそれらのコストに従って、予め決定され、選択されてもよい。言及された選択は、成分が2つ以上の場合、それらを混合するか、または一方の成分を他方に溶解することを含む;または選択された成分は液体に別々に供給される。
【0018】
制御部は、供給部における組成を一定の時間間隔で予め決定するように構成される場合、特に有利である。組成の変化が必要とされない場合、制御部はまた、連続して数回、同じ組成を予め決定してもよい。さらに、少なくとも時折、殺生物剤のランダムな組成が予め決定されてもよく、それにより、制御部は異なる組成の有効性を試験してもよく、-例えば制御部が自己学習システムである場合-学習した内容に基づいて最適な組成物を事前に決定することができるように学習してもよい。
【0019】
第2の態様では、本発明は、液体中の微生物のレベルを制御する方法であって、
制御処理において:
測定部を用いて微生物含有量を測定することと、
測定された微生物含有量に基づく、所定の微生物含有量を達成することを目的とする殺生物剤の投与量と、時間間隔に供給される殺生物剤の量とその時間間隔にそれによって引き起こされる微生物含有量の変化との間の関係を示す少なくとも1つのパラメータを含むモデルと、を決定することと、
決定された投与量で殺生物剤を液体に供給すること;および
制御処理と並列または断続的な追跡処理で:
少なくとも1つのパラメータを、少なくとも1つの過去の時間間隔にわたって測定部によって測定された微生物含有量と、その時間間隔に供給された、少なくとも1つのより後の時間間隔における制御処理での使用に供される、殺生物剤の量と、の記録から計算することと、を含む。
【0020】
本方法およびさらなる変形例の利点に関しては、装置に関する先述の説明を参照されたい。
【0021】
本発明は、添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による、液体中の微生物の含有量を制御するための装置を示すブロック図である。
【
図2】
図1における装置の測定部で検出された微生物の蛍光特性を示す図である。
【
図3】
図1の装置を用いて、液体中の殺生物剤の供給および微生物含有量を経時的に示すグラフである。
【
図4】
図1における装置によって液体中の微生物含有量を制御するために実行される例示的方法を示すフローチャートである。
【0023】
図1における装置1は、所定の微生物含有量X*を達成するために、液体2中の微生物Mの含有量Xを制御する。微生物Mは、例えば、藻類、細菌、真菌、特に酵母などである。液体2は、例えば、物体または物質の、製造、処理、冷却、洗浄等のための工業プロセスにおいて使用され、または、例えば充填プラントにおける飲料の形態で、実際の処理対象となる物体である。工業プロセスは、ここでは液体2が製造またはバッチで使用されるバッチプロセスであってもよく、または液体2も連続的に使用される連続プロセスであってもよい。
【0024】
液体2は、容器(ここでは開放タンク)3内にあり、微生物Mは、-この実施例では-それらの増殖の結果として、タンク3のコーナ5内に望ましくない堆積物4を形成している。あるいは、微生物Mは、堆積物4を形成することなく液体中で増殖し、液体2を汚染するか、または、他の理由で望ましくない状態となっている。
【0025】
測定部6は、液体2中の微生物含有量Xを測定する。含有量Xは、液体2の基準量あたり、すなわち、液体2の体積あたり(例えば、ミリリットル)、質量あたり(例えば、グラム)、または量あたり(例えば、モル)の微生物Mの数を示す。微生物含有量Xを測定するために、測定部6は、異なる方法を使用してもよく、例えば、定量PCR(「qPCR」)、アデノシン三リン酸(ATP)試験、次世代シーケンシング(「NGS」)、またはラマン分光法を使用してもよい。示されている事例では、測定部6は、
図2の例を用いて以下でより詳細に説明するように、規定のタイプAの微生物Mの含有量Xを測定するフローサイトメータである。
【0026】
フローサイトメータでは、粒子が高電圧および/またはレーザ光線を高速で連続して通過し、電場(例えば、偏向)および/またはレーザ光線(例えば、反射、色、蛍光など)に対する、粒子のそれぞれの特異的反応が検出され、評価される。フローサイトメータは、高速で、すなわち、リアルタイムでも、いくつもの測定チャネルの並列評価を可能にし、粒子の特性または反応に従って粒子を区別する;任意で、補助物質が、例えば蛍光色素が、ここでは使用される。ほとんどの場合、多次元データフィールドが生成され、検出された粒子は、例えば(多次元)クラスタ形成によって自動的に分類され、次いで、例えば、クラスによって任意でカウントされてもよい。このように、液体2中の含有量Xを(選択的に)測定する微生物MのタイプAは、任意で予め決定されていてもよい。
【0027】
図2の例示的二次元図は、フローサイトメトリによって検出され、特性(この場合、2つの特性、すなわち赤色および緑色蛍光)に従って区別され、記録された微生物Mを示す。図において、緑色蛍光は水平方向にプロットされ、赤色蛍光は垂直方向にプロットされる(ここでは各々の場合において対数目盛である)。さらなる物理的または化学的特性(例えば、他の蛍光など)が、さらなる測定チャネル上で検出されてもよく、例えば、さらなる次元で評価されてもよい。類似の特性(ここでは2つの波長域)をもつ微生物Mは、図において、それぞれクラスタC
1、C
2、…、一般にC
kを形成する。既知のクラスタC
k、またはクラスタ評価の学習を用いて決定されたクラスタによって、様々な微生物Mを互いに区別してもよい;例えば、
図2の図において、藻類は、破線の長方形E
1によってマークされ、細菌と区別される(一点鎖線の長方形E
2)。したがって、藻類または(この場合)細菌などのいずれかが、上述のタイプAとして予め決定されてもよい。あるいは、ある種の藻類、例えば藍藻、またはある種の細菌、例えば乳酸菌など、または特別な特性を有する微生物MのタイプAが、上述のタイプAとして予め決定されてもよく、これらがフローサイトメトリにおいて区別され得る限り、例えば、微生物Mが生存可能であるか否かが、予め決定されたタイプAによって区別可能となり、また生存可能な微生物Mのみが、タイプAとして予め決定されることが可能となる。最後に、異なる微生物Mは、例えば、藻類および細菌は、タイプAとして一緒に予め決定されてもよい。
【0028】
図2の場合において、例えば、上述の細菌がタイプAとして予め決定されている場合、測定部6は、液体2中のそれらの含有量Xを測定し、すなわち、本実施例では、微生物含有量Xを測定する際に、測定部6によって、他の微生物Mや全くもって微生物Mに該当しない粒子が追加で考慮されることはない。連続する時間間隔Δtの図から、時間の経過に伴う液体2中の微生物Mの変化を、特にそれらの含有量Xの変化を、決定してもよい。
【0029】
測定部6は、一般に容器3から採取された液体2のサンプルから、微生物含有量Xを測定するものと理解される。
【0030】
図1の装置1に戻って、制御部7は、それぞれの場合において測定部6によって測定された微生物含有量Xにアクセスできるように、測定部6に接続される。制御部6は、例えば、微生物含有量Xを制御する、比例積分(PI)、比例積分微分(PID)コントローラ等を有する。この目的のため、制御部7は、所定の微生物含有量X*を達成するために液体2に添加される殺生物剤Bの投与量Dを決定する。所定の微生物含有量X*は、ここでは、一方では一定であるように、また他方では経時的に変化するように、予め定義されてもよい。所定の微生物含有量X*の時間的変動は、例えば、既に計画されたコースへの適合および/または工業プロセスの測定された状態に基づく。例えば、液体2を連続的に供給する、いわゆる「流加」プロセスの文脈において-例えば発酵プロセスにおいて-、液体2の量は、プロセスの進行に依存するだけでなく、すなわち、経時的に変化するだけでなく、通常、所定の微生物含有量X*にも依存する;特に、液体の量は少なくてもよく、例えば、高めの所定の微生物含有量X*はプロセスの初期段階において所望されてもよいが、プロセスの後期段階において、液体の量はより多くなり、所定の微生物含有量X*は低減されるべきである。
【0031】
装置1は、例えば、制御可能なポンプまたは制御弁によって、殺生物剤Bを液体2に供給する1または複数のリザーバを有する供給部8をさらに備える。供給部8は、制御部7に接続され、制御部7によって決定された投与量Dで液体2に殺生物剤Bを供給する。
【0032】
投与量Dを決定するために、制御部7は、少なくとも1つのパラメータkを有するモデルを使用する。モデルは、時間間隔Δtに供給される殺生物剤Bの量Pと、この時間間隔Δtにそれによって引き起こされる微生物含有量Xの変化との間の関係を表し、すなわち、液体2の反応の、したがってその微生物含有量Xの供給される殺生物剤Bへの、動力学的モデルである。時間間隔Δtに供給される殺生物剤Bの量Pは、同じ時間間隔Δtについて決定された場合、液体2に供給される殺生物剤Bの投与量Dと一致するものと理解される。制御部7は、モデルを使用して、そのコントローラの1または複数の時定数および/または利得を、殺生物剤供給への液体2の反応に、すなわち、その微生物含有量Xの変化に、適合させる。
【0033】
モデルは様々なタイプのものであってもよく、特に、殺生物剤添加による微生物含有量Xの、線形、二次、または指数関数的減少を仮定するモデルであってもよい。一実施形態では、モデルは、以下の数式によって与えられる:
【数3】
ここで、
dX/dtは、時間間隔Δt(ここでは「無限小」時間間隔dt)における微生物含有量Xの変化、
kは、微生物Mの非活性化に関するモデルのパラメータ、
Bは、この時間間隔Δtで供給される殺生物剤Bの量P、
nは、殺生物剤Bの希釈係数n、および
Xは、測定された微生物含有量X、
である。
【0034】
他の実施形態では、モデルは、以下の数式によって与えられる:
【数4】
ここで、
dX/dtは、時間間隔Δt(ここでは「無限小」時間間隔dt)における微生物含有量Xの変化、
k
1は、微生物Mの非活性化に関するモデルのパラメータ、
k
2は、液体2への供給後の殺生物剤Bの不活性化に関するモデルのパラメータ、
B
0は、この時間間隔Δtで供給される、供給時点の殺生物剤Bの量P、
nは、殺生物剤Bの希釈係数n、および
Xは、測定された微生物含有量X、
である。
【0035】
数式(2)の拡張モデルにより、パラメータk2を通して、殺生物剤Bが液体2に供給された後の殺生物剤Bの不活性化を考慮に入れることができる。
【0036】
上述のモデルの両方において、使用される殺生物剤Bおよび液体2およびその中に含まれる微生物Mが既知である場合、殺生物剤Bの希釈係数nは予め知られているか;そうでない場合、希釈係数nはモデルの別のパラメータであり、したがって、数式(1)によって与えられるモデルは、2つのパラメータkおよびnを有し、数式(2)によって与えられるモデルは、3つのパラメータk1、k2、およびnを有する。
【0037】
モデルがまた、供給される殺生物剤Bの量Pと、それによって引き起こされる微生物含有量Xの変化との間の関係に対する工業プロセスのあらゆる副反応の影響を表すものである場合、モデルは、例えば、それぞれの場合において工業プロセス自体またはその副反応の影響を説明する、連成微分方程式のシステムによって任意で与えられてもよい。
【0038】
モデルまたはその少なくとも1つのパラメータk、k
1、k
2、n、したがって制御部7を、殺生物剤の供給に対する液体2の反応に適合させ、また、この反応における動的変化の場合にそれを追跡するために、装置1は、測定部6および制御部7に接続され、制御経路10を介して制御部7を追跡する、計算部9を有する。計算部9は、各モデルのパラメータ、k
1、k
2等(および、必要に応じて、更なるパラメータとしての希釈係数n)を計算し、このために、少なくとも1つの過去の時間間隔Δtにわたって測定部6によって測定された微生物含有量Xと、この時間間隔Δtに液体2に供給された殺生物剤Bの量Pと、の記録を使用するが、これはパラメータkを有するモデルに関連する、
図3の実施例を参照して以下でより詳しく説明する。2つ以上のパラメータk
1、k
2、n、…を有するモデルのケースでは、計算部9は少なくとも対応する個数の以前の時間間隔Δtの記録からそれらを計算してもよいものと理解される。
【0039】
図3は、一連の時間区間Δt
1、Δt
2、…、一般にΔt
nを示し、それぞれ2つの時間t
1、t
2、…、一般にt
nの間にある。少なくとも各時間t
nにおいて、測定部6は、微生物含有量X
1、X
2、…、一般にX
n(ここでは、微生物含有量Xの連続的に計測された進行度)を計測する。一連の各時間間隔Δt
nには、それぞれの場合において(ここでは各時間間隔Δt
n中に連続的に)殺生物剤Bの量P
1、P
2、…、一般にP
nが供給される。例えば、時間t
4と時間t
5との間の時間間隔Δt
4において、液体2に殺生物剤Bの量P
4が添加されると、時間t
4における値X
4から時間t
5における値X
5に微生物含有量Xが変化する。
【0040】
モデルの前記パラメータkは、一連の時間間隔Δt
nの、いずれかの後またはそれぞれの後に、計算部9によって計算されてもよい。例えば、時間区間Δt
4についてパラメータkを計算する場合、計算部9は、この時間区間Δt
4が経過した後、この時間区間Δt
4にわたって測定部6により測定された微生物含有量X
4を記録から取り込み(
図3)、この時間区間Δt
4の間に供給された殺生物剤Bの量P
4を取り込む。パラメータkは、この量P
4と、それによって引き起こされる微生物含有量Xの変化ΔX(または無限小:dX)とに基づいて(例えばΔX=X
5-X
4に従って)計算され、1または複数の後の時間間隔Δt
n(ここでは例えばΔt
5および/またはΔt
6)での使用に供されるために制御部7に送信される。
【0041】
任意で、計算部9は、制御部7に転送する前に、前の時間間隔Δtについて計算されたパラメータkの値を用いて、計算されたパラメータkを-例えば重み付けて-平均することによって、平均または調整する調整装置を含んでもよい。調整装置は、例えば、計算部9の追加の計算モジュールまたはニューラルネットワークであって、特に、調整中に以前の時間間隔Δtにおいて引き起こされた微生物含有量Xの変化を任意で追加的に考慮に入れる長短期メモリ(LSTM:Long Short-Term Memory)である。この場合、制御部7は、モデルの調整されたパラメータkを使用してそのコントローラを調整し、それによって過去のパラメータ変更が考慮され、コントローラの突然の調整が防止される。
【0042】
図1に戻って参照すると、任意の実施形態では、供給部8は、殺生物剤Bの規定の組成Zを達成するために、1または複数の構成要素をリザーバ内に保持し、1または複数の構成要素から、殺生物剤Bを選択するように構成される。この実施形態では、装置は、供給部8に接続され、供給部8のための前記組成Zを予め決定する、制御部11を含む。したがって、制御部11は、例えば制御経路12を介して殺生物剤Bの組成Zを予め決定または変更することによって、殺生物剤Bの供給に介在する。
【0043】
組成Zは、任意で、ここではランダムに(少なくとも時折)予め決定されてもよい;あるいは、組成Zの構成は、例えば、以下でより詳細に説明されるように、経験則的に選択される。任意で、装置1は、この目的のために、少なくとも1つの測定量(通常はセンサ13、14あたり1つの測定量)を、例えば、液体2の、pH W、温度T、圧力および/または導電率を、測定する、1または複数の(
図1の例では2つの)センサ13、14を含む。
図1の実施例では、前記センサ13、14の一方のセンサ13が液体2のpH Wを測定し、他方のセンサ14が液体2の温度Tを測定する。この場合、制御部11は、少なくとも前記測定量W、Tに応じて、組成Zを予め決定する。
【0044】
殺生物剤Bの組成Zを予め決定する場合、制御部11は、微生物含有量Xにも依存して組成Zを予め決定するために、測定部6にさらに任意に接続される。さらに、制御部11は、任意に制御部7に接続され、後者によって決定された投与量Dを取得するので、制御部11は、投与量Dまたは投与間隔Δtに供給された殺生物剤Bの量P、そこから計算されるパラメータk、k1、k2、n、および/または、殺生物剤の供給の結果としての微生物量Xの変化にも応じて、組成Zを予め決定してもよい。また、制御部11は、他の情報、例えば、各構成要素の環境適合性および/またはコストを考慮してもよく、それに応じて組成Zを予め決定してもよい。
【0045】
これらの依存性の全ては、例えば、経験則に基づいて適切な組成Zを予め決定することができるように、制御部11に属する、経験則としてのデータベースに記憶される。あるいは、制御部11は、任意で、自己学習システム、例えばニューラルネットワーク、特に長短期メモリ(LSTM)を有し、これは、過去に予め決定された組成Zから、添加された殺生物剤Bの得られる量P、またはそれによって引き起こされる微生物含有量Xの変化を学習する。センサ13、14または測定部6のそれぞれの計測値、および/またはさらなる前記情報および経験則に基づいて、制御部11は、次いで、それぞれの場合において、殺生物剤Bの特に適切な-例えば、特に効果的で、環境に優しく、費用面で効果的な-組成Zを予め決定する。この目的のために、システムは、少なくとも任意で、ランダムな組成Zを予め決定してもよい。
【0046】
図4に示された例を参照して、液体2中の微生物含有量Xを制御する装置1によって実行される方法15の様々な例が、以下でより詳細に説明される。
【0047】
初期化ステップ16では、希釈率n、および達成される微生物含有量X*を含むモデルのパラメータkまたはk1、k2が予め定義され、液体2の微生物含有量Xが測定される。次いで、方法15の制御処理Rは、連続的に、例えば、アナログコントローラ構成要素を用いて実行されるか、または、周期的に、とりわけ定期的に-提示例のように-デジタル制御処理Rとして、実行される。上述のように、制御処理Rは、制御部7が殺生物剤Bの投与量Dを決定するステップ17、供給部8がステップ17において決定された投与量Dで液体2に殺生物剤Bを供給し、任意で組成Zを選択するステップ18、測定部6が液体2中の微生物含有量Xを測定するステップ19、のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
制御処理Rが周期的に実行される場合-図示のように-、供給部8は、ステップ18において、制御部7によって決定された殺生物剤Bの投与量Dの全投与量を液体2に直ちに供給してもよいし、または、決定された投与量Dで、例えばポンプを用いて、殺生物剤Bを液体2に連続的に添加してもよい。
【0049】
殺生物剤Bが供給された後の微生物含有量Xの単なる遅い変化18を考慮するために、制御処理Rは、任意で待機ステップ20を含み、その結果、変化した微生物含有量Xは、次の測定19の間に既に予想されていてもよい。
【0050】
追跡処理Fにおいて、計算部9は、先述したように、ステップ21において、モデルのパラメータk、k1、k2、nを計算する。計算されたモデルのパラメータk、k1、k2、nは、経路22を介して制御部7またはそのコントローラを追跡するために使用される(ステップ17へ)。追跡処理Fは、制御処理Rと並行して実行されてもよく、または-図示のように-断続的に、すなわち、それぞれの場合に制御処理Rを中断してもよい。図示の変形例では、追跡処理Fは、制御処理Rの直後に続き、すなわち、分岐23において肯定側のチェックが行われる場合は(分岐23の分岐「Y」)、制御処理Rを中断する;否定側のチェックが行われる場合は(分岐23の分岐「N」)、制御処理Rは実行され続ける。分岐23で使用される試験基準は、例えば、追跡処理Fの最後の実行からの制御処理Rの実行回数、期間の満了、例えば時間間隔Δt、または、例えば、制御部7によって決定された投与量Dまたは測定部6によって測定された微生物含有量Xの、特に高い値である。あるいは、追跡処理Fは各周期の制御処理Rの直後に続いてもよく、すなわち、処理15は分岐23を有しなくてもよい。
【0051】
この文脈において、時間間隔Δtは、必要に応じて、例えば、制御処理Rが、定期的に、またはより長く、特にその倍数で実行される場合、制御処理Rの期間に等しいように選択されてもよいことに留意されたい。
【0052】
制御処理Rおよび追跡処理Fと並行して、またはそれに対して断続的に実行される-図示のように-、任意のステップ24において、制御部11は、上述のように殺生物剤Bの組成Zを決定し、これを、経路25を介して供給部8に規定する。図示の変形例では、分岐26において肯定側のチェックが行われる場合は(分岐26の分岐「Y」)、事前決定24が追跡処理Fの直後に続く;チェックが否定側である場合は(分岐26の分岐「N」)、制御処理Rが継続する。一般に、組成Zは、一定の時間間隔で予め決定され、すなわち、予め決定された最後の時点24からの時間間隔に達することが、分岐26における試験基準として使用される。これらの時間間隔は、通常、制御処理Rおよび追跡処理Fにおいて考慮される時間間隔Δtよりもかなり大きい-例えば、10倍または100倍大きい-。代替的または補足的な試験基準として、例えば、高用量Dにもかかわらず閾値未満となる-したがって、予想よりも少ない-微生物含有量Xの減少幅、または微生物含有量Xの閾値の超過または微生物含有量Xの増加が使用されてもよい。
【0053】
本発明は、示された実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲内に入る全ての変形、修正、およびそれらの組み合わせを包含する。
【国際調査報告】