(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】角度及びスペクトル選択性のシェーディングシート
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240222BHJP
C03C 17/38 20060101ALI20240222BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240222BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20240222BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240222BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240222BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240222BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240222BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240222BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240222BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240222BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G02B5/22
C03C17/38
G02B5/26
B32B3/14
B32B27/06
B32B7/023
B32B7/12
B32B27/36
B32B27/30 D
B32B15/08 N
B32B7/025
B32B17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544654
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022054406
(87)【国際公開番号】W WO2022175551
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523279741
【氏名又は名称】マイクロシェード アーエス
【氏名又は名称原語表記】MICROSHADE A/S
【住所又は居所原語表記】Ejby Industrivej 70 2600 Glostrup (DK)
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】ベゼル、エイク
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
2H148CA05
2H148CA12
2H148FA05
2H148FA12
4F100AA12D
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4G059AA01
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4G059FB08
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA15
(57)【要約】
本発明は、単一のフォイル又はフィルム内に、シェーディング及びスペクトル選択性の両方の機能を有する、ガラス表面をコーティングするためのシートに関する。本発明はまた、単一のフォイル又はフィルム内に、シェーディング及びスペクトル選択性の両方の機能を有する、シートを含むガラス表面を有する断熱グレージングユニットにも関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス表面へ適用されるシートであって、
少なくとも1つの高分子フィルム基材と、
スペクトル選択性のシェーディング手段であって、前記スペクトル選択性のシェーディング手段は、前記少なくとも1つの高分子フィルム基材の第1の面上にコーティングされた1つ又は複数の光学選択層を備え、前記1つ又は複数の光学選択層は、740nm~2500nmの波長で60%未満の平均T%を有する、スペクトル選択性のシェーディング手段と、
角度選択性のシェーディング手段であって、前記角度選択性のシェーディング手段はシェーディング要素を備え、前記角度選択性のシェーディング手段は前記シェーディング要素を含む微細構造システムを備え、前記シェーディング要素は、長さt及び厚さa、並びに少なくとも1のアスペクト比t/aを有する細長い要素である、角度選択性のシェーディング手段と、
を備えることを特徴とするシート。
【請求項2】
前記シェーディング要素を少なくとも1つの高分子フィルム基材の第2の面に結合する結合手段を更に備え、
前記結合手段は、前記少なくとも1つの高分子フィルム基材の前記第2の面と前記シェーディング要素との間の1つ又は複数の接着層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項3】
前記結合手段は、前記シェーディング要素を埋め込む1つ又は複数の接着層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項4】
前記1つ又は複数の接着層は、不連続層を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項5】
前記1つ又は複数の接着層は、連続層を含む、
ことを特徴とする請求項3~4のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項6】
前記シェーディング要素の1つ又は複数の表面を覆う、少なくとも1つの低反射光学層などの、少なくとも1つの光学層を更に含む、
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項7】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nmから740nmの間の波長において70%を超える平均透過率(T%)を有する、
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項8】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ベースのフィルム基材などのポリエステルベースのフィルム基材を含む、
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)フィルム基材などのフッ素化高分子フィルム基材を含む、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、ポリウレタンベースのフィルム基材、又はセルロースベースのフィルム基材、又はポリエチレン若しくはポリプロピレンベースのフィルム基材を含む、
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、10μmから100μmの間の厚さを有する、
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項12】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、IRを吸収又は反射するナノ粒子の層でコーティングされる、
ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項13】
前記IRを吸収又は反射するナノ粒子の層は、LaB
6を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項14】
前記IRを吸収又は反射するナノ粒子の層は、TiNを含む、
ことを特徴とする請求項12~13のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項15】
前記IRを吸収又は反射するナノ粒子の層は、Cs
0.32WO
3を含む、
ことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項16】
前記1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の金属層、又は、1つ又は複数の金属層と金属酸化物及び金属窒化物などの半導体層との組み合わせを含む、
ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項17】
前記1つ又は複数の金属層は、Agを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項18】
前記1つ又は複数の金属層は、Tiを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項19】
前記1つ又は複数の金属層は、Auを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項20】
前記1つ又は複数の半導体層は、ZnO、Zn
2SnO
4、TiO
x、又はTiNなどの金属酸化物を含む、
ことを特徴とする請求項16~19のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項21】
前記1つ又は複数の光学選択層は、前記1つ又は複数の金属層を保護するための1つ又は複数のバリア層を含む、
ことを特徴とする、請求項1~20のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項22】
前記1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の接着促進剤層を含む、
ことを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項23】
前記1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の化学拡散バリア層を含む、
ことを特徴とする、請求項1~22のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項24】
前記1つ又は複数の光学選択層によって前記第1の面上にコーティングされた前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nm~740nmの間の波長において40%を超える平均T%を有する、
ことを特徴とする、請求項1~23のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項25】
前記細長い要素は、少なくとも2のアスペクト比t/aを有する、
ことを特徴とする、請求項1~24のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項26】
前記細長い要素は、少なくとも4のアスペクト比t/aを有する、
ことを特徴とする、請求項1~25のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項27】
前記細長い要素は、所定の延長tを有し、所定の値lだけ互いに離間しており、これにより、コーティングされたガラス表面への入射太陽放射のカットオフ角は、70°以下となる、
ことを特徴とする、請求項1~26のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項28】
前記細長い要素は、150μm以下の所定の厚さaを有する、
ことを特徴とする、請求項1~27のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項29】
前記細長い要素は、250μm以上の所定の値lだけ互いに間隔をあけて配置されている、
ことを特徴とする、請求項1~28のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項30】
前記細長い要素は、380~700nmの範囲で15%未満の平均光反射を示す、前記少なくとも1つの低反射光学層などの、少なくとも1つの光学層によってコーティングされている、
ことを特徴とする請求項6~29のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項31】
前記少なくとも1つの低反射光学層などの、少なくとも1つの光学層は、少なくとも導電性材料の層と誘電性材料の層を含む、
ことを特徴とする請求項6~30のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項32】
1つ又は複数のガラスと、
請求項1~31のいずれか1項に記載のシートと、
を備えることを特徴とする断熱グレージングユニット(IGU)。
【請求項33】
前記シートは、前記1つ又は複数のガラスのうちの1つの外面上に配置される、
ことを特徴とする請求項32に記載のIGU。
【請求項34】
前記シートは、前記1つ又は複数のガラスのうちの2つの間に位置する、
ことを特徴とする請求項32に記載のIGU。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度及びスペクトル選択性の両方の日射シェーディング機能を有する、ガラス表面に適用するための視覚的に透明なシートに関する。
【0002】
本発明は、また、角度及びスペクトル選択性の両方の日射シェーディング機能を有する、視覚的に透明なシートを含むガラス表面を有する断熱グレージングユニットにも関する。
【背景技術】
【0003】
太陽放射と、ガラスパネルなどの透明な表面要素を通る光の角度及びスペクトル選択性は、自動車、電車、船舶などの建築及びモビリティ用途においてますます重要になってきている。
【0004】
ガラス表面は、可視波長範囲内の波長を有する放射線に対して部分的に透過性であり、UVやIR帯などの他の波長では吸収性又は反射性である、領域のコーティングを作成することによって、スペクトル選択性を提供するために物理的及び化学的に処理されることができる。
【0005】
ガラス表面は、入射角に応じて入射光の反射や散乱を生じるように機械的又は化学的に処理されてもよい。前記効果は、反射放射線の少なくとも一部がガラスパネル内でガラスパネルに沿って方向が再指向される(re-directed)ように、受光面に対して傾斜した反射部分と吸収部分を作成することによって達成することができる。
【0006】
ガラスパネルは、所定の傾斜角で光を透過させる光学プリズム素子と、デイライトフィルムの表面に入射する可視光の一部を反射する光反射フィルムとを含むデイライトフィルムなどのフィルムで覆うこともできる。このようにして、反射光は室内を照らすために内部で再指向されることができる。
【0007】
実際、ガラスへの入射照射の角度及びスペクトル選択性は、通常、これらの機能を個別に提供するさまざまな装置の組み合わせによって実現される。
【0008】
太陽放射照度の一部を再指向する目的でガラス表面に角度選択性の光学素子を適用すると、光の再指向部分が画像をディゾルブ(dissolve)するため、ガラスを通して見る能力が妨げられることがよくある。これは、ガラスを通しての視界を制限するため、望ましくない特性である。
【0009】
従って、ガラスの視覚的な透明性を大幅に損なうことなく、単一の装置で太陽放射の角度選択性のスクリーニングとスペクトル選択性のスクリーニングの両方を組み合わせる統合ソリューションが必要である。
【0010】
従って、これらの機能を単一の装置で提供する改良された装置が有利であり、特に、これらの機能を単一の装置で効率的に組み合わせることができる、より効率的で信頼性の高い角度及びスペクトル選択的シェーディング装置が有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、これらの機能をガラス表面への適用に適した単一のシート又はフィルムに組み合わせた、角度及びスペクトル選択性であり視覚的に透明である日射シェーディング装置を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、従来技術に代わるものを提供することであるとみなすこともできる。
【0013】
特に、単一のフィルムに両方の機能を組み合わせることによって従来技術の上述の問題を解決する、角度及びスペクトル選択性を提供する、ガラス表面上にコーティング又は適用するためのシートを提供することが、本発明の更なる目的と見なしてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、上記の目的及び他の幾つかの目的は、少なくとも1つの高分子フィルム基材、スペクトル選択性又はスペクトル選択性のシェーディング手段、及び角度又は角度選択性のシェーディング手段を備える、ガラス表面上にコーティング又は適用するためのシートを提供することにより、本発明の第1の態様によって達成されることが意図される。
【0015】
本発明のシートは、単一のガラスに適用するため、又は2枚以上のガラスシートからなる断熱グレージングユニットに統合するための、太陽光照射の角度及びスペクトル選択性のシェーディングを達成する単一のフィルムである。
【0016】
本発明のシートは、透明な接着剤によってガラスの表面に貼り付けることができる、又は、例えば、透明なラミネート材料と技術を使用して、2枚のガラスの間にラミネートされる、透明なフィルムの外観を有する。
【0017】
本発明のガラス表面貼付用シートは、ガラス表面をコーティングするのに適したシートである。
【0018】
幾つかの実施形態では、スペクトル選択性のシェーディング手段は、少なくとも1つの高分子フィルム基材の第1の面上にコーティングされた1つ又は複数の光学選択層であるか、又は、それを含む。スペクトル選択性のシェーディング手段は、少なくとも1つの高分子フィルム基材の第1の側にコーティングされた1つ又は複数のIR反射又は吸収光学選択層であってもよく、又は、それを含んでもよい。
【0019】
他の実施形態では、スペクトル選択性のシェーディング手段は、高分子フィルム基材又はその上に適用された光学的に透明なコーティング中に懸濁されたナノ粒子又は微細粒子であるか、又は、それらを含む。
【0020】
幾つかの他の実施形態では、角度選択性のシェーディング手段は、微小(microscopic)シェーディング要素などのシェーディング要素であるか、又は、それを含む。
【0021】
これらのシェーディング要素は、一定の距離から見ると視覚的に透明になる。
【0022】
シェーディング要素は、本明細書では角度選択性のシェーディング要素とも称されてもよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、本発明の第1の態様によるガラス表面に貼付するためのシートは、シェーディング要素を少なくとも1つの高分子フィルム基材の第2の面に結合する結合手段を更に含む。
【0024】
第2の面は、第1の面の反対側であってもよい。
【0025】
従って、一態様では、本発明は、少なくとも1つの高分子フィルム基材と、前記少なくとも1つの高分子フィルム基材の第1の面をコーティングする1つ又は複数の光学的又はスペクトル選択層と、シェーディング要素と、前記シェーディング要素を少なくとも1つの高分子フィルム基材の第2の面に結合する結合手段と、を含む、ガラス表面に適用するためのシートに関する。
【0026】
1つ又は複数の光学選択層は、本明細書ではスペクトル選択層とも呼ばれる。
【0027】
幾つかの実施形態では、結合手段は、前記少なくとも1つの高分子フィルム基材の第2の面とシェーディング要素との間の1つ又は複数の接着層であるか、又は、それを含む。
【0028】
幾つかの更なる実施形態では、前記1つ又は複数の接着層は、不連続層であるか、又は、それを含む。
【0029】
不連続層は、高分子フィルム基材の第2の面と接触するシェーディング要素の表面のみを覆う層であってもよい。
【0030】
幾つかの更なる実施形態では、前記1つ又は複数の接着層は、連続層であるか、又は、それを含む。
【0031】
幾つかの好ましい実施形態では、前記結合手段は、シェーディング要素を埋め込む1つ又は複数の接着層であるか、又は、それを含む。
【0032】
従って、結合手段又は結合要素は、高分子フィルム基材の第2の面の全表面にわたって延在してもよく、シェーディング要素と高分子フィルム基材との間の接触領域のみに延在してもよく、又は、シェーディング要素を埋め込んでもよい。
【0033】
位置に応じて、つまり、高分子フィルム基材の片面全面に延在するとき、結合手段は光学的に透明でなければならず、又は、シェーディング要素と高分子フィルム基材の間の接触領域にのみ延在するとき、光学的に透明であってはならない。
【0034】
幾つかの実施形態では、角度選択性のシェーディング手段は、シェーディング要素を含む微細構造(micro structured)システムであるか、又はそれを含む。
【0035】
シェーディング要素は、本明細書では不透明要素とも呼ばれる。
【0036】
角度選択性のシェーディング手段は、本質的に不透明な効果を提供する、空間的に成形された微細構造システム又は不透明要素の本体から構成されてもよく、これは、本発明のシートに当たる太陽光線の可視部分が反射又は吸収されるが、微細構造体を透過しないことを意味する。
【0037】
不透明要素の微細構造体は、微細構造体の開口部又は穿孔が、本発明のシートの法線に対して特定の傾斜角内で太陽放射の透過を可能にするように形作られる。
【0038】
これは、少なくとも1つの高分子フィルム基材の表面に対して本質的に垂直に取り付けられたマイクロラメラ(micro lamellas)又は延長として不透明要素を形成することによって達成される。不透明要素の微細構造体の効果は、少なくとも1つの高分子フィルム基材への法線に対して高い入射角での太陽光照射を吸収又は反射し、より低い角度での照射に対する透過率の増加を可能にすることである。
【0039】
特定の角度、つまりカットオフ角を超えると、不透明要素の微細構造体に当たるすべての照射が部分的に吸収され、反射される。
【0040】
幾つかの実施形態では、本発明の第1の態様によるガラス表面に貼付するためのシートは、シェーディング要素の1つ又は複数の表面を覆う少なくとも1つの光学層を更に含む。
【0041】
シェーディング要素の1つ又は複数の表面を覆う少なくとも1つの光学層は、光吸収コーティング又は反射コーティングであってもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、シェーディング要素が自然に光学的に不透明な材料から作られる場合、少なくとも1つの光学層は存在しなくてもよい。
【0043】
従って、角度選択性のシェーディング手段は、1つ又は複数の表面上に少なくとも1つの光学層によってコーティングされたシェーディング要素を含む微細構造システム又は本体を備えてもよい。
【0044】
従って、角度選択性のシェーディング手段は、半透明又は不透明要素であるシェーディング要素の空間的に成形された構造体と、これらの半透明又は不透明要素の表面に適用される少なくとも1つの光学層と、から構成されてもよい。不透明要素又は構造要素に適用される少なくとも1つの光学層は、それらの光学特性を変更する。
【0045】
半透明又は不透明要素の微細構造体と、不透明又は微細構造要素の表面をコーティングする少なくとも1つの光学層と、の組み合わせは、本質的に不透明な光学効果を提供し、これは、微細構造体に当たる太陽光線の可視部分が反射又は吸収されるが、不透明要素を透過しないことを意味する。
【0046】
本発明のシートは、太陽放射をシェーディング及びシェーディングする2つの根本的に異なる方法を統合する。第1に、放射スペクトルの特定の波長をシェーディングすることによって太陽光放射を低減し、第2に、特定の角度からの照射をシェーディングすることによって更に低減する。
【0047】
これら2つのシェーディング原理の組み合わせと不透明要素の微細構造体の使用により、シートを透過する太陽放射を非常に効果的かつ段階的に低減することができる。シートの特定のプロパティを調整することにより、以下の利点が得られる。
【0048】
見通し線(line of sight)が装置を通るカットオフ角より下にある限り、シートは透明であり、外部から見ることができ、シートの不透明部分が目の解像度よりも小さい場合には、装置は一定の距離からは均一に透明に見える。これにより、シートは、不透明で動作中に見えることを特徴とする既知の外装シェード、ラメラ、及びスクリーンと区別される。
【0049】
本発明のシートは、カットオフ角よりも低い角度からの日光の透過も可能にする。昼光は、空に散乱し、周囲で反射した太陽光線から発生するため、直接照射される太陽光線よりも均一に分布する性質を持っている。入射角がカットオフ点から微細構造体の不透明要素の延長方向に平行に移動するときにシートの透過率が増加するにつれて、このシートは、シートの外側における昼光レベルに比例する昼光の合計の高い透過率を可能にする。利点は、透過した昼光レベルが通常の太陽周期に従い、昼と夜の概日性を維持して居住者の利益と幸福に役立つことである。
【0050】
シェーディング効率を損なうことなく、シートの演色性を最適化できる。スペクトル選択性のコーティングのみを使用して色のニュートラルシェーディングを試みる場合、シェーディング効率は太陽スペクトルの構成によって制限される。
【0051】
ニュートラルなカラーシェーディングを実現するには、可視(VIS)範囲のコーティングの透過率が高く均一である必要があるが、スペクトルの紫外(UV)及び赤外(IR)部分の透過率はできるだけ低くなければならない。
【0052】
一般に、たとえ先進的な多層コーティングスタックを使用したとしても、演色性を高く維持したい場合、0.25~0.30を大幅に下回る総太陽エネルギー透過率を得るのは難しいことが証明されている。このレベルを超える日射シェーディング効率を備えた日射シェーディングコーティングは、透過光の可視部分の組成に影響を及ぼし、通常、それらは青、茶色、又は灰色に着色されて見える。
【0053】
本発明のシートの更なる利点は、高い演色性を有するスペクトル選択性のコーティングを使用して、0.30~0.40の範囲の中程度の全日射透過率を得ることができることである。不透明な要素を含む微細構造体による入射太陽光の角度シェーディングによって、更なるシェーディングが得られ、そして、2つのシェーディング機構を組み合わせた効果は、当然、ニュートラルコーティング単独の効果よりも高くなる。これによりシートの実効日射透過率は0.05~0.15の範囲で得られ、優れた演色性を維持することができる。
【0054】
このシートは、傾斜角が高いほどシェーディングが強くなり、太陽が空に低い位置にある冬よりも、太陽の角度が高い夏の方がシェーディングが強くなるという利点がある。本発明のシートは、夏よりも冬の間、より自然な太陽熱を建物にもたらす進歩的な性質を示す。利点は、シェーディング効果が、冬よりも夏に多くのシェーディングを求める一般的なニーズに対応していることである。
【0055】
このシートは、不透明要素を含む微細構造体の構造および形状によって決まる特定の角度からの直射太陽光線を完全にシェーディングする。カットオフ角を超える角度での入射照射は完全にブロックされるが、それより低い角度からの照射の強度は徐々に減少する。オフィスビル、自動車、電車、船舶などでよく見られる、ガラス張りのファサードの近くで働いたり休憩したりする人々にとって、直射日光からの保護は重要である。太陽に直接さらされると、皮膚に局所的な熱が直接発生し、非常に不快になる。
【0056】
直射日光のシェーディングによるもう1つの効果は、光学的グレア保護の向上である。ガラス張り又は透明な領域を通る直射日光によって引き起こされるコンピュータ画面やその他の部分反射面へのグレア効果は、ユーザーにとって非常に不快なものとなる可能性がある。ユーザーに対する眩しさの影響は即座に現れるため、これを回避する唯一の方法は、物理的手段で直接太陽の照度を効果的に遮断することである。本発明のシートでは、不透明要素を含む微細構造体が、カットオフ角より高い角度からの放射線の物理的な遮断を行う。
【0057】
本発明のシートは、シートを通した外部からの視認が妨げられるように作製することができる。これは、フィルムの片側の選択層として部分反射コーティングを使用することによって、又は、外側に面する不透明要素を含む微細構造体の側に反射コーティングを使用することによって行うことができる。いずれの方法を使用しても、外側からの光がシートの前面で反射され、微細構造体を通した内側の視界が効果的に減少するという効果がある。
【0058】
本発明のシートは、内側からの見通し線(line of sight)を低減し、従って特定の角度での視野を制限するように構成することができる。この効果は、適切なカットオフ角が得られるように不透明要素を含む微細構造体を設計することによって達成される。
【0059】
不透明要素を含む微細構造体上の少なくとも1つの光学層又は表面コーティングを選択することによって、構造体は反射性、吸収性、又はその間のいずれかになりえる。コーティングはスペクトル選択性であってもよい。この効果は、太陽の放射照度が不透明な要素を含む微細構造体で反射されることであり、適切に方向付けられていれば、これを使用して太陽の照明を建物内にさらに導入することができる。
【0060】
代わりに、不透明要素を含む微細構造本体上の可視スペクトルを吸収する表面コーティングを使用すると、表面からの反射が減少し、その結果、たとえ照明されていても本体が暗く見えることになる。この利点は、たとえ微細構造体が外部で直接太陽光にさらされても、不透明要素を含む微細構造体を通して内部から外部への眺めが優れていることである。
【0061】
本発明のシートはフィルムの形態をとり、透明感圧接着剤によってガラス表面に適用することができ、又は、ラミネート技術及びEVA、PVB、アイオノマーなどの材料を使用して2枚のガラスの間に挟むことができる。適用は、フィルムとプレートのニップロールラミネート(nip roll laminating)、真空ラミネートプレスでの加熱、又はオートクレーブでのベーキングなどの装置の使用を含んでもよい。
【0062】
本発明のシートがガラスに適用されるか、又は2つのガラスライト間に形成されると、太陽に面する外層としてシェーディング装置を含むこの得られたガラスを使用して断熱グレージングユニット(IGU)を形成することができる。
【0063】
IGUに統合されると、シートを含むIGUは、他の従来のIGUと同様に、同じ技術とツールを使用して自動車又は建築用途に取り付けることができる。
【0064】
高分子フィルム基材
少なくとも1つの高分子フィルム基材は、シェーディング要素を含む微細構造システムの機械的バックボーンとして機能し、また、以下に説明する1つ又は複数の光学選択層のための光学表面も提供する。
【0065】
前記高分子フィルム基材を特徴づける2つの重要なパラメータは、1)光学的歪みなくシートを取り扱うことができるように機械的に剛性がなければならないこと、2)太陽スペクトルの少なくとも一部で光学的に平坦な表面と高い光透過性を示さなければならないこと、である。
【0066】
少なくとも1つの高分子フィルム基材は、多種多様なベース高分子、厚さ、官能化表面及び表面定義で製造されてもよい。
【0067】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ベースのフィルム基材などのポリエステルベースのフィルム基材であるか、又は、それを含む。
【0068】
幾つかの他の実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)フィルム基材などのフッ素化高分子フィルム基材であるか、又は、それを含む。
【0069】
幾つかの更なる実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、ポリウレタンベースのフィルム基材、又はセルロースベースのフィルム基材、又はポリエチレン若しくはポリプロピレンベースのフィルム基材であるか、又は、それらを含む。
【0070】
透明な高分子フィルム基材を製造する方法は、押出成形又はカレンダー加工とその後の押出フィルムの二方向延伸によるものである。シートに使用される少なくとも1つの高分子フィルム基材の厚さは、選択された特定の材料にある程度依存して、比較的自由に選択することができる。
【0071】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、10μmから100μmの間の厚さを有する。
【0072】
別の実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、23℃で500MPaより高い、好ましくは23℃で1000MPaより高い弾性率を有する。フィルムの引張強度は最低40MPa、好ましくは50MPaより高くてよい。
【0073】
シート用の好ましい高分子フィルム基材には、厚さ10μm~100μmのUV露光に対して安定化された高透明度のPETフィルムが含まれる。
【0074】
この範囲外の厚さの高分子フィルム基材も使用できるが、あまり理想的ではない。高分子フィルム基材の厚みが厚くなると、フィルムの光透過率と透明度が低下し、光学ヘイズが増加する。一方、厚みが薄いフィルムは取り扱いが難しく、機械的に安定性が低くなる。
【0075】
透明フィルムの重要な特性は、スペクトルの可視領域における光透過率である。一般的な透明PETフィルムは、330nm~380nmの波長で80%以上の透過率、380~740nmの波長で90%以上の透過率を示す。UV露光用に安定化されたPETフィルムは通常、UV範囲を吸収し、これは可視範囲の透過率にもわずかに影響する。典型的なUV安定化フィルムは、360nm付近で透過率が急激に増加し、380nmでは透過率が50%近くになる。380nmから420nmの範囲では、透過率は更に約90%まで増加し、740nmまでこのレベルに留まる。可視スペクトルの大部分で透過率が90%のPETフィルムがシェーディング装置に適しているが、スペクトルの同じ部分で70~90%の範囲の透過率を示すフィルムも許容される。
【0076】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nmから740nmの間の波長で70%を超える平均透過率(T%)を有する。
【0077】
平均透過率は、例えば、可視スペクトル(つまり380nm~740nmの範囲)などの、定義された対象スペクトル領域内の透過率値の算術平均として定義される。
【0078】
光学的品質を決定するもう1つの重要な特性は、高分子フィルム基材のヘイズと透明度である。ヘイズは低く、透明度はできるだけ高くなければならない。これらのパラメータは両方とも、フィルム表面の光学的品質と、フィルム材料自体の組成と構造によって決まる。
【0079】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は3%未満のヘイズを有し、好ましい実施形態では、ヘイズは1%未満である。
【0080】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は98%より高い透明度を有し、好ましい実施形態では、透明度は99%より高い。
【0081】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、太陽からの赤外線放射を反射又は吸収する光学選択層でコーティングされる。
【0082】
例えば、少なくとも1つの高分子フィルム基材は、CWO(登録商標)というブランドのナノ粒子など、LaB6、TiN、又はCs0.32WO3などのIR吸収又は反射のナノ粒子の層でコーティングされてもよい。
【0083】
光学選択層
1つ又は複数の光学選択層のスペクトル選択性は、コーティングがスペクトルの特定の部分にわたって変化する透過率および反射率を有することを示す。記載されているシートの用途には、スペクトルのVIS部分(波長380~740nm)の光透過率が高く、スペクトルのIR部分(740~2500nm)の光透過率が低いコーティングが適している。この用途では、740nm付近の透過率のシフトとVIS範囲での透過率の安定性が重要である。シートの1つ又は複数の光学選択層は、VIS範囲で一定の高い透過率を有し、740nmでの透過率の急激な減少を有してもよい。1つ又は複数の光学選択層は、IR及びVIS範囲で勾配変化を示してもよい。
【0084】
1つ又は複数の光学選択層は、十分に制御された厚さ及び順序で成膜された金属及び半導体材料の多層光学スタックを含んでもよい。
【0085】
多層の厚さは、コーティングの正確なパラメータを調整するために変更できる。
【0086】
従って、幾つかの実施形態では、1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の金属層、又は、1つ又は複数の金属層と金属酸化物及び金属窒化物などの半導体層との組み合わせであるか、又は、それを含む。
【0087】
金属層は、金属元素を含む層として定義することができる。
【0088】
幾つかの更なる実施形態では、1つ又は複数の金属層は、Ag、Ti、又はAuを含む。
【0089】
幾つかの他の実施形態では、1つ又は複数の半導体層は、ZnO、Zn2SnO4、TiOx、又はTiNを含む。
【0090】
更に、多層光学スタックなどの1つ又は複数の光選択層は、通常、接着促進剤層、金属層を酸化から保護する表面バリア、及び光学スタック内の基材材料からの汚染を防ぐ化学拡散バリアも含む。
【0091】
従って、幾つかの実施形態では、1つ又は複数の光学選択層は、前記1つ又は複数の金属層を保護するための1つ又は複数のバリア層を含む。
【0092】
幾つかの他の実施形態では、1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の接着促進剤層を含む。
【0093】
幾つかの更なる実施形態では、1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の化学拡散バリア層を含む。
【0094】
1つ又は複数の光学選択層は、真空中でのスパッタリング又は反応性スパッタリングプロセスによって調製することができる。反応性スパッタリングでは、酸素を含む雰囲気中で純粋な金属をスパッタリングすることによって金属酸化物層が形成される。
【0095】
多層銀コーティング及び同様の選択的コーティングをPETフィルム上にスパッタリングすることも使用できる。透明フィルム上に堆積された単層、二重層、若しくは三重層の銀コーティング又は同様の効果を達成する他のコーティングを含むそのような選択的コーティングは、シェーディング装置の好ましい実施形態である。このような選択的コーティングを含む透明フィルムは、通常、450~550nmの範囲で約75%の透過率を示し、400~740nmの可視スペクトルの主要部分で40%を超える透過率を示す。
【0096】
光選択性コーティングを製造する別の方法は、高分子フィルム又はフィルム上のコーティング中にナノ粒子を分散させることである。このようなナノ粒子は、TiN、LaB6、又はCs0.32WO3などの材料を使用して調製できる。粒子はアクリル(MMA)コーティングに分散され、次に高分子ベースフィルムに塗布される。ナノ粒子の効果は、可視領域では最小限の吸収のみを示しながら、照射のIR部分を吸収及び反射することである。
【0097】
幾つかの実施形態では、1つ又は複数の光学選択層によって第1面上にコーティングされた少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nm~740nmの間、例えば400nm~740nmの間の波長において40%を超える平均T%を有する。
【0098】
幾つかの好ましい実施形態では、1つ又は複数の光学選択層によって第1の面上にコーティングされた少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nm~740nmの間、例えば400nm~740nmの間の波長において60%を超える平均T%を有する。
【0099】
幾つかの他の実施形態では、1つ又は複数の光学選択層は、740nmから2500nmの間、すなわち近赤外(NIR)領域の波長において60%未満の平均T%を有する。
【0100】
シェーディング要素を含む微細構造体
シェーディング要素又は不透明要素を含む微細構造体又はシステムは、シートの重要な機能要素であり、主にシェーディング効果の角度選択部分、直接照度及び透明度の物理的シェーディングに関与する。不透明要素を含む微細構造体の幾何学的形状は、所望の特定の特性を達成するために重要である。不透明要素の幾何学的形状は、2つの単純な幾何学的関係によって記述及び説明できる。最初のパラメータはアスペクト比t/aであり、これは、不透明要素の延長tと不透明要素の厚さaから計算される。
【0101】
2番目のパラメータは、フィルム表面に垂直な不透明要素の延長、表面に平行に測定された、不透明要素を含む微細構造体の開口部又は穿孔のサイズ、及び不透明な延長の間の空間を埋める材料の屈折率によって定義される、カットオフ角である。以下の
図4で説明されているカットオフ角θ
1は、式[1]で表すことができる。ここで、n
1とn
2は第1材料と第2材料の屈折率を示し、lは2番目の材料の透明な開口部のサイズに等しく、tはフィルムの表面に垂直な不透明要素の延長である。
【0102】
【0103】
シェーディング要素は、細長い要素と呼ばれてもよい。
【0104】
幾つかの実施形態では、シェーディング要素は、長さt、厚さa、及び、平均して少なくとも1、すなわち1以上、のアスペクト比t/aを有する細長い要素である。
【0105】
幾つかの更なる実施形態では、細長い要素は、平均して少なくとも2、すなわち2以上、のアスペクト比t/aを有する。
【0106】
幾つかの他の実施形態では、細長い要素は、平均して少なくとも4、すなわち4以上、のアスペクト比t/aを有する。
【0107】
一般に、シェーディング要素、不透明要素、又は細長い要素のシェーディング効率は、カットオフ角θ1が減少するにつれて増加する。ヨーロッパのような穏やかな気候帯での用途の場合、一般的でよく適したカットオフ角は60°近くである。これは、その地域の最大太陽高度に対応するからである。より高いパフォーマンスが必要な場合は、カットオフ角を55°以下に下げることができる。同様に、不透明な要素を含む微小構造体の性能は、アスペクト比が増加するにつれて増加する。不透明要素を含む微細構造体の前面領域が減少するにつれて、不透明要素により、不透明な延長に平行な透過率が高くなり、外の景色や日光の取り込みに有利になる。
【0108】
高性能の不透明要素のアスペクト比は約4以上であるが、アスペクト比1~4の不透明要素は、要素の性能が低から中程度になる。アスペクト比が1未満の場合は推奨されない。
【0109】
幾つかの実施形態では、細長い要素は、所定の延長tを有し、所定の値lだけ互いに離間しており、従って、コーティングされたガラス表面への入射太陽放射のカットオフ角は、70°以下、例えば60°以下、例えば55°以下である。
【0110】
不透明要素を含む微細構造体のサイズ及び寸法は、各不透明要素のサイズが、不透明要素から一定の距離において人間の目の解像度よりも小さいサイズを有するように形成されるべきである。人間の目の空間分解能角度θは、以下の式[2]で近似される。ここで、λは光の波長、Dは瞳孔の直径である。
【0111】
【0112】
最大感度は波長550nm付近であり、昼間の瞳孔の直径が4mmであると仮定すると、空間分解能角度は1.68×10-4rad又は9.6×10-3°に等しくなる。従って、観察距離1mでは、人間の目の解像度は0.167mmに等しく、これは不透明要素の、各厚さaの最大サイズと寸法のガイドラインとして役立つ。ほとんどの用途では、150μmである最大の厚さサイズaが許容できることがわかっている。
【0113】
幾つかの実施形態では、細長い要素は、150μm以下の所定の厚さaを持っている。
【0114】
他の好ましい実施形態では、細長い要素は、75μm以下の所定の厚さaを持っている。
【0115】
拡張l間の分離も、不透明要素の性能に影響する。拡張は、同様のサイズと形状の拡張が要素内で何度も繰り返される規則的な構造パターンとして発生することが多いため、光学グリッドを形成し、透過光の回折の形成につながる。回折は単色光源で最もよく観察されるが、特定の観察条件下では広帯域の太陽光でも観察できる。回折の影響を完全に排除することは困難であるが、光学グリッド構造を変化させ、不透明要素間の分離の幾何学形状を変化させる構造を使用することで抑制できる。通常の構造の場合、lの絶対次元が重要である。距離が短くなるほど、回折は強く現れる。一般的な用途では、間隔lは250μm未満であってはならず、300μmを超える間隔で良好な回折抑制が得られる。間隔lの上限は、不透明要素の延長とシェーディング装置の合計の厚さによって決まる。
【0116】
幾つかの実施形態では、細長い要素は、250μm以上の所定の値lだけ互いに間隔をあけて配置される。
【0117】
細長い要素は、380~700nmの範囲で15%未満の平均光反射を示す少なくとも1つの光学層でコーティングされる。
【0118】
少なくとも1つの光学層は、少なくとも金属の層及び金属酸化物の層を含むことができる。
【0119】
シェーディング要素を含む微細構造体は、金属シートのケミカルミリング(chemical milling)やレーザーアブレーション(laser ablation)、感光性高分子のフォトリソグラフィー構造化、又はUV硬化樹脂を使用したインプリントなど、複数の異なる技術を使用して製造できる。
【0120】
微細構造シェーディング要素の低反射コーティング
少なくとも1つの光学層又は表面コーティング、例えばアルミニウム又は銀などの金属コーティングを使用して、低反射表面を作成することができる。
【0121】
このような暗い吸収コーティングは、導電性材料と誘電性材料の二重層スタックを作成することによって実現できる。このようなコーティングの例としては、NbN-SiN、NiCr-TiOx、NiCr-SiN、Ti-TiOx、TiN-TiOx、及びTiN-SiNが挙げられる。
【0122】
あるいは、導電性材料でコーティングされた誘電体材料の三層スタックを使用し、更に誘電体材料でコーティングして、低反射コーティングを得ることができる。例には、SiN-NiCr-SiN、TiN-NbN-SiN、及びNbN-TiN-SiNなどのコーティングスタックが含まれる。
【0123】
高い可視吸収を示すその他の材料や光学スタック構成は無限にあり、そのような材料はすべてシェーディング装置で使用できる。
【0124】
幾つかの実施形態では、380nm~700nmのVIS範囲における平均光反射は15%未満である。
【0125】
他の好ましい実施形態では、380nm~700nmのVIS範囲における平均光反射は10%未満である。
【0126】
1つ又は複数の光学的に低反射の層は、真空中でのスパッタリング又は反応性スパッタリングプロセスによって構造化要素上に堆積されることができる。
【0127】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によるシートが適用されるガラス表面を有する断熱グレージングユニット(IGU)に関する。
【0128】
本発明の第2の態様によるIGUは、単一のフィルムであり、1枚のガラス上で角度及びスペクトル選択的に太陽光照射をシェーディングするか、2枚以上のガラスで構成されるIGUの内部に統合される、本発明の第1の態様によるシートを備える。幾つかの実施形態では、IGUは、1つ又は複数のガラスと、本発明の第1の態様によるシートと、を含む。
【0129】
IGUの幾つかの更なる実施形態では、シートは、1つ又は複数のガラスのうちの1つの外面上に位置する。
【0130】
IGUの幾つかの実施形態では、シートは、1つ又は複数のガラスのうちの2つの間に位置する。
【0131】
第2の態様によるIGUは、1つ又は複数のガラスと、本発明の第1の態様によるシートとを含んでもよく、本発明の第1の態様によるシートは、その1つの1つ又はガラスの外面、つまり、使用中に光照射や外部環境にさらされる表面、に適用されるか、又は、IGUの1つ又は複数のガラスのうちの2つの間に塗布される、すなわち、1つ又は複数のガラスのうちの1つの内面に適用される。
【0132】
本発明の第1、第2、並びに他の態様及び実施形態はそれぞれ、他の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせることができる。本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態を参照して明らかとなり、説明されるであろう。
【0133】
以下、本発明のガラス表面をコーティングするためのシートについて、図面を参照して更に詳細に説明する。図面は、本発明を実施する一方法を示すものであり、添付の特許請求の範囲に含まれる他の可能な実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1】
図1は、高分子フィルム基材の片面の全面を覆う結合手段を有する本発明の幾つかの実施形態によるシートの概略図である。
【
図2】
図2は、シェーディング要素と高分子フィルム基材との間の接触領域のみを覆う結合手段を有する本発明の幾つかの実施形態によるシートの概略図を示す。
【
図3】
図3は、高分子フィルム基材の片面の全表面を覆い、シェーディング要素を埋め込む結合手段を有する本発明の幾つかの実施形態によるシートの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の幾つかの実施形態によるシートの概略図であり、カットオフ角及びそれに関連するパラメータが示されている。
【
図5】
図5は、実際のスペクトル選択性のコーティングスタックと、理想的なスペクトル選択性のコーティングスタックとを比較する概略図である。
【
図6】
図6は、微細構造体上にコーティングされた光学層を形成する金属―金属酸化物積層体の一例の光反射率を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の幾つかの実施形態による、シートのシェーディング要素の最適な設計パラメータの計算の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の幾つかの実施形態による、シートのシェーディング要素の最適な設計パラメータの計算の概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0135】
図1は、高分子フィルム基材1の片面の全面を覆う接着層4などの結合手段を有する本発明の幾つかの実施形態によるシート24の概略図を示す。
【0136】
本発明の幾つかの実施形態によれば、シート24は、高分子フィルム基材1と、高分子フィルム基材1をコーティングする透明な光学選択層2と、空間的に画定された構造を有するシェーディング要素6を含む微細構造体3と、シェーディング要素の表面の少なくとも一部をコーティングする光学層5と、を含み、光学層5は、シェーディング要素と、微細構造体3を高分子フィルム基材1に結合する接着層4などの結合手段の光学特性を定義する。
【0137】
図2は、シェーディング要素12と高分子フィルム基材7との間の接触領域のみを覆う接着層10などの結合手段を有する、本発明の幾つかの実施形態によるシート25の概略図を示す。
【0138】
本発明の幾つかの実施形態によれば、シート25は、高分子フィルム基材7と、高分子フィルム基材7をコーティングする透明な光学選択層8と、空間的に画定された構造を有するシェーディング要素12を含む微細構造体9と、シェーディング要素の表面の少なくとも一部をコーティングしシェーディング要素の光学特性を定義する光学層11と、を含む。微細構造体9を高分子フィルム基材7に結合する接着層10などの結合手段は、シェーディング要素12と高分子フィルム基材7との間の接触領域にのみ配置される。
【0139】
図3は、高分子フィルム基材13の片面の全表面を覆い、シェーディング要素18を埋め込む、高分子マトリックス複合材16などの結合手段を有する、本発明の幾つかの実施形態によるシート26の概略図である。
【0140】
本発明の幾つかの実施形態によれば、シート26は、高分子フィルム基材13と、高分子フィルム基材13の一方の表面をコーティングする透明な光学選択層14と、空間的に画定された構造を有するシェーディング要素18を含む微細構造体15と、シェーディング要素の表面の少なくとも一部をコーティングしシェーディング要素の光学特性を規定する光学層17と、を含む。高分子マトリックス複合材料16などの結合手段は、シェーディング要素18を完全に埋め込み、微細構造体15を高分子フィルム基材13に結合する。
【0141】
図4はシート27の概略図であり、カットオフ角θ
1とそれに関連するパラメータが示されている。
【0142】
上で述べたように、カットオフ角は式[1]で定義される。ここで、n1とn2は材料19と20の屈折率を示し、lは材料20の透明な開口部のサイズに等しく、tは高分子フィルム基材の表面に垂直なシェーディング要素の延長であり、aはシェーディング要素の厚さである。
【0143】
図4に示すように、シートの外面に当たる入射光ビーム21は、部分的に透過し、つまり光ビーム22となり、部分的に反射され、つまり光ビーム23となり、カットオフ角θ
1を定義する。
【0144】
図5は、実際のスペクトル選択性のコーティングスタックと、理想的なスペクトル選択性のコーティングスタックとを比較する概略図である。
【0145】
図5の概略図は、LaB
6からなるPMMAマトリックスコーティングに分散されたIR吸収ナノ粒子に基づく2つの選択性のコーティングの透過率曲線を示す。両方の例は、本発明のシートについて説明した要件を満たしている。コーティング30はLaB
6ナノ粒子をベースにしており、コーティング29はCs
0.32WO
3ナノ粒子で調製されている。コーティング30は、コーティング29よりもVISスペクトルでの透過率が高く、演色性が優れている。対照的に、コーティング29は、IRスペクトルの最も強いシェーディング効果を示す。本発明のシートでの使用には、両方のコーティングタイプを使用することができる。線28は、VISスペクトルで100%の透過率、UV及びNIR領域で0%の透過率を持つ、理想的な動作を示す。
【0146】
図5に示すような選択性のコーティングは、複数の方法で製造できる。No.29のようなIR吸収コーティングの例は、次のアプローチを使用して準備できる。
1.Cs
0.32WO
3(CWO(登録商標)というブランド)ナノ粒子は、高分子との混合に適した幾つかの標準配合で市販されている。
2.12.3wt.%のCWO粒子を54.3wt.%のメチルイソブチルケトン(Methyl isobutyl ketone(MIBK))及び33.4wt.%のUV硬化樹脂と混合することによって、適切なコーティングを実現できる。
3.ナノ粒子を含む溶液を、スロットダイ(slot die)コーティング又は同様のウェットコーティング技術を使用して、厚さ6μmの均一な層でPETフィルムに塗布する。
4.コーティングを70℃で60~80秒間乾燥し、水銀灯から250~260mJ/cm
2のUV線量でUV硬化する。
【0147】
図6には、
図1の光学層5、
図2の11、又は
図3の17のスペクトラム反射率曲線の例が含まれている。低反射構造は、金属と金属酸化物の光学スタックを使用して作成される。ベース層には、スパッタプロセスで成膜された厚さ40~200nmのTi層が含まれる。金属酸化物層には、厚さ42nm及び45nmで成膜されたTiOxが含まれる。
図6に示される光反射率曲線31及び32は、それぞれ42nm及び45nmのTiOxでコーティングされた40~200nmのTiの積層を表す。
【0148】
図7は、カットオフ角60°、屈折率n
2が1、アスペクト比が4のシェーディング要素の最適な設計パラメータを計算するための概略図である。
【0149】
図8は、カットオフ角57°、屈折率n
2が1.5、アスペクト比4のシェーディング要素の最適な設計パラメータを計算するための概略図である。
【0150】
シェーディング要素の設計パラメータの延長t33及び35とラメラ(lamella)の厚さa34及び36の間の関係を、それぞれ
図6及び
図7に示す。グラフから、屈折率が1より高いスペーサー充填材を使用したソリューションでは、シェーディング要素をより大きく拡張する必要があることがわかる。これは、特定のアスペクト比では、0.150μmという可視性基準がすぐに制限になることを意味する。また、膜厚も厚くなる。
【0151】
高アスペクト比及び特定の形状の不透明要素を含む微細構造体の製造は、金属基材のケミカルミリング(chemical milling)、UVリソグラフィー、光活性高分子のロールフォーミング(roll forming)などの方法を含む幾つかの方法で行うことができる。金属基材のケミカルミリングでは、通常、達成可能なアスペクト比が約2又は3に制限されるが、UV構造化による高分子材料の成形を伴う方法では、3~10の範囲のアスペクト比に到達できる。
【0152】
構造化基材を製造する具体的な方法には、ラメラの所望の延長tに対応する厚さを有する固体フィルムのUVリソグラフィーが含まれる。
1.UV硬化フィルムは、エポキシド、アクリレート、又はその2つのコポリマーをベースにした材料から作成できる。溶解した高分子を柔軟なキャリアフィルム(通常はPETフィルム)上にスロットダイ(slot die)コーティングすることによって、フィルムが調製される。構造化基材の好ましい実施形態には、150~200μmの範囲の厚さを有するエポキシ-アクリル共重合体フィルムが含まれる。
2.コーティングされ乾燥したフィルムの構造化は、UV硬化樹脂に添加されたUV活性剤を励起する波長のUV放射によるUV照射を使用して行うことができる。構造化は、高分子の一部が影になり、他の部分が照らされるときに発生する。これは、直接描画プロセスで構造を作成するレーザーからのフォーカスされたUV光のビームを使用して行うことができ、又は、所望の構造のネガ画像を特徴とするフォトマスクでフィルムの表面をマスクし、マスクされたフィルムをフラッドUV光源で照明することによっても行うことができる。
3.フィルム内の目的の構造を硬化した後、未硬化部分は適切な現像液に溶解して除去される。現像液には、有機溶媒と、HCO3
-及びCO3
2-などのアルカリを含む水溶液系の両方が含まれる。
4.最後の処理ステップには、開発したシステムの洗浄と乾燥に続いて、UV硬化樹脂の完全な架橋を確保するためのUV後処理が含まれる。
【0153】
本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、提示された例に決して限定されるものとして解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。特許請求の範囲の文脈において、「含む」(「comprising」又は「comprises」)という用語は、他の可能な要素又はステップを排除するものではない。更に、「a」または「an」などの参照の言及は、複数を排除するものとして解釈されるべきではない。図面に示された要素に関する特許請求の範囲における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、異なる請求項で言及される個々の特徴は有利に組み合わせることができる可能性があり、異なる請求項でのこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせが可能で有利ではないことを排除するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス表面へ適用されるシートであって、
少なくとも1つの高分子フィルム基材と、
スペクトル選択性のシェーディング手段であって、前記スペクトル選択性のシェーディング手段は、前記少なくとも1つの高分子フィルム基材の第1の面上にコーティングされた1つ又は複数の光学選択層を備え、前記1つ又は複数の光学選択層は、740nm~2500nmの波長で60%未満の平均
透過率T%を有する、スペクトル選択性のシェーディング手段と、
角度選択性のシェーディング手段であって、前記角度選択性のシェーディング手段はシェーディング要素を備え、前記角度選択性のシェーディング手段は前記シェーディング要素を含む微細構造システムを備え、前記シェーディング要素は、長さt及び厚さa、並びに少なくとも1のアスペクト比t/aを有する細長い要素である、角度選択性のシェーディング手段と、
を備えることを特徴とするシート。
【請求項2】
前記シェーディング要素を少なくとも1つの高分子フィルム基材の第2の面に結合する結合手段を更に備え、
前記結合手段は、前記少なくとも1つの高分子フィルム基材の前記第2の面と前記シェーディング要素との間の1つ又は複数の接着層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項3】
前記結合手段は、前記シェーディング要素を埋め込む1つ又は複数の接着層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項4】
前記1つ又は複数の接着層は、不連続層を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項5】
前記1つ又は複数の接着層は、連続層を含む、
ことを特徴とする請求項3~4のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項6】
前記シェーディング要素の1つ又は複数の表面を覆う
、少なくとも1つの光学層を更に含む、
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項7】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nmから740nmの間の波長において70%を超える平均透過率(T%)を有する、
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項8】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は
、ポリエステルベースのフィルム基材を含む、
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は
、フッ素化高分子フィルム基材を含む、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、ポリウレタンベースのフィルム基材、又はセルロースベースのフィルム基材、又はポリエチレン若しくはポリプロピレンベースのフィルム基材を含む、
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、10μmから100μmの間の厚さを有する、
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項12】
前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、
赤外線を吸収又は反射するナノ粒子の層でコーティングされる、
ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項13】
前記
赤外線を吸収又は反射するナノ粒子の層は、LaB
6を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項14】
前記
赤外線を吸収又は反射するナノ粒子の層は、TiNを含む、
ことを特徴とする請求項12~13のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項15】
前記
赤外線を吸収又は反射するナノ粒子の層は、Cs
0.32WO
3を含む、
ことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項16】
前記1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の金属層、又は、1つ又は複数の金属層
と半導体層との組み合わせを含む、
ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項17】
前記1つ又は複数の金属層は、Agを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項18】
前記1つ又は複数の金属層は、Tiを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項19】
前記1つ又は複数の金属層は、Auを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項20】
前記1つ又は複数の光学選択層が含む前記1つ又は複数の半導体層は
、金属酸化物を含む、
ことを特徴とする請求項16~19のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項21】
前記1つ又は複数の光学選択層は、前記1つ又は複数の金属層を保護するための1つ又は複数のバリア層を含む、
ことを特徴とする、請求項1
6~20のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項22】
前記1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の接着促進剤層を含む、
ことを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項23】
前記1つ又は複数の光学選択層は、1つ又は複数の化学拡散バリア層を含む、
ことを特徴とする、請求項1~22のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項24】
前記1つ又は複数の光学選択層によって前記第1の面上にコーティングされた前記少なくとも1つの高分子フィルム基材は、380nm~740nmの間の波長において40%を超える平均
透過率T%を有する、
ことを特徴とする、請求項1~23のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項25】
前記細長い要素は、少なくとも2のアスペクト比t/aを有する、
ことを特徴とする、請求項1~24のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項26】
前記細長い要素は、少なくとも4のアスペクト比t/aを有する、
ことを特徴とする、請求項1~25のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項27】
前記細長い要素は、所定の延長tを有し、所定の値lだけ互いに離間しており、これにより、コーティングされたガラス表面への入射太陽放射のカットオフ角は、70°以下となる、
ことを特徴とする、請求項1~26のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項28】
前記細長い要素は、150μm以下の所定の厚さaを有する、
ことを特徴とする、請求項1~27のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項29】
前記細長い要素は、250μm以上の所定の値lだけ互いに間隔をあけて配置されている、
ことを特徴とする、請求項1~28のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項30】
前記細長い要素は、380~700nmの範囲で15%未満の平均光反射を示す、前
記少なくとも1つの光学層によってコーティングされている、
ことを特徴とする請求項
6に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項31】
前
記少なくとも1つの光学層は、少なくとも導電性材料の層と誘電性材料の層を含む、
ことを特徴とする請求項6
又は30のいずれか1項に記載のガラス表面へ適用されるシート。
【請求項32】
1つ又は複数のガラスと、
請求項1~31のいずれか1項に記載のシートと、
を備えることを特徴とする断熱グレージングユニット(IGU)。
【請求項33】
前記シートは、前記1つ又は複数のガラスのうちの1つの外面上に配置される、
ことを特徴とする請求項32に記載のIGU。
【請求項34】
前記シートは、前記1つ又は複数のガラスのうちの2つの間に位置する、
ことを特徴とする請求項32に記載のIGU。
【国際調査報告】