(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 317/54 20060101AFI20240222BHJP
B01J 38/60 20060101ALI20240222BHJP
B01J 38/48 20060101ALI20240222BHJP
B01J 31/10 20060101ALI20240222BHJP
B01J 31/26 20060101ALI20240222BHJP
B01J 31/40 20060101ALI20240222BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
C07D317/54
B01J38/60
B01J38/48 B
B01J31/10 Z
B01J31/26 Z
B01J31/40 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023545873
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022052218
(87)【国際公開番号】W WO2022162223
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/052187
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500182839
【氏名又は名称】エンデュラ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ENDURA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルカレッリ、カルロ
(72)【発明者】
【氏名】タバネッリ、トマソ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッカーリ、アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】エバリー、マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】マルキオーロ、カルラ
(72)【発明者】
【氏名】カンパナティ、マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ビッリ、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ゲリーニ、アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】スキアローリ、ニコラ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA24A
4G169BA24B
4G169BB04A
4G169BC17A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169BE22A
4G169BE22B
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169BE37A
4G169CB25
4G169CB72
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169ED10
4G169GA11
4G169GA14
4H039CA62
4H039CD10
(57)【要約】
本発明は、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法であって、バルク又は担持触媒の存在下で、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程を含み、当該触媒が、スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択され、当該触媒が、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法に関する。方法は、有利には、試薬間の化学量論比で、連続方法で実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法であって、バルク又は担持触媒の存在下で、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程を含み、前記触媒が、スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択され、前記触媒が、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法。
【請求項2】
前記バルク又は担持触媒が、バルクとして使用されるか又はシリカに担持されたスルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂であり、前記スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂が、2~6、好ましくは2.5~5.5、より好ましくは約5の範囲の材料1g当たりの基-SO
3Hのmmolとして表される酸負荷量を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バルク又は担持触媒が、バルクとして使用されるか又はシリカに担持された過フッ素化スルホン酸樹脂であり、前記過フッ素化スルホン酸樹脂が、0.2~2、好ましくは0.7~1.6の範囲の材料1g当たりの基-SO
3Hのmmolとして表される酸負荷量、より好ましくは約1.2の酸負荷量を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂が、製品Amberlystである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記過フッ素化スルホン酸樹脂が、製品Aquivion又は製品Nafionである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記バルク又は担持触媒が、鉄又は亜鉛又はガリウムで部分的に交換されたスルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂又は過フッ素化スルホン酸樹脂であり、前記部分交換が、Fe、Zn及びGaから選択される金属イオンで交換された5~80%の水素原子のパーセンテージであり、好ましくは前記交換パーセンテージが10~50%であり、より好ましくは約30%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、好適な無機酸化物、好ましくはジルコニア、アルミナ、チタニア及びシリカ、より好ましくはシリカ上に担持されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、前記無機酸化物に、前記担持触媒の総重量に対して1~60重量パーセント(%)、より好ましくは5~30重量%、更により好ましくは10~15重量%で担持されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる前記工程が、50~200℃、好ましくは60~150℃、より好ましくは約80℃の温度範囲で行われる、請求項1、3、5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応時間が、5~240分、好ましくは5~120分、より好ましくは約60分である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる前記工程が、50~150℃、好ましくは60~130℃、より好ましくは約80℃又は約120℃の温度範囲で行われる、請求項1、2、4、6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応時間が、5~240分、好ましくは5~120分、より好ましくは約60分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
限定試薬1モル当たりのH+又は活性部位のモル間の比として表される前記触媒の量が、0.0001~1、好ましくは0.001~0.04、より好ましくは約0.007である、請求項1、3、5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
限定試薬1モル当たりのH+又は活性部位のモル間の比として表される前記触媒の量が、0.002~1、より好ましくは0.01~0.08、更により好ましくは約0.03である、請求項1、2、4、6~8、11~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる前記工程が、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンと無水プロピオン酸との間のモル比が2~1対1~2の範囲、好ましくは1:1の化学量論比で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が回収され、再生され、リサイクルされる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が、好ましくは2重量%~60重量%、より好ましくは10~40%、更により好ましくは20重量%の範囲の濃度で、前記反応媒体及び硝酸の希釈酸水溶液中の懸濁液から濾過によって回収される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、好ましくは2重量%~30重量%、より好ましくは20重量%の範囲の濃度で、前記反応媒体及び塩酸の希釈酸水溶液中の懸濁液から濾過によって回収される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒の前記回収が、室温~還流の範囲の温度で、数分~4時間、好ましくは1時間の範囲の時間にわたって行われる、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒の前記回収、前記再生及び前記リサイクルが、H
2O
2を使用して行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒が、40μm~100μmの平均粒径を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が連続方法である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下に表される1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンとしても知られる3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンを調製するための新規かつ発明的な方法に関する。
【化1】
【0002】
このような方法は、無溶媒条件下で不均一触媒を用いて機能する改善された商業的に実行可能な方法である。
【背景技術】
【0003】
アルキレンジオキシベンゼン誘導体は、最終生成物又は所望の最終生成物の中間体としてのそれらの適用により、医薬、農薬、殺生物剤、パフォーマー(performer)及び食品分野において非常に重要である。
【0004】
例えば、ベンゾ[1,3]ジオキソール基を含有する殺虫活性を有する化合物は、多数の刊行物に記載されている。サフロール及びイソサフロールはパフォーマリー(performary)で使用され、具体的には、イソサフロールは、香料及び芳香剤を製造するために使用されるピペロン(ベンゾ[1、3]ジオキソール-5-カルボキシアルデヒド)の合成に使用される。
【0005】
アリールケトンの中でも、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンとしても知られる3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンは、上記分野において重要な化合物及び中間体である。
【0006】
欧州特許第1140894号明細書には、アシル誘導体の調製工程を提供する、5-(α-ヒドロキシアルキル)ベンゾ[1,3]ジオキソールの調製のための方法が記載されている。具体的には、記載された方法は、適切な溶媒中で1,2-ジヒドロキシベンゼン及び塩化メチレンから反応させることによってベンゾ[1,3]ジオキソールを調製する第1の工程a)、続いてそのようにして得られたベンゾ[1,3]ジオキソールを、アシル化触媒としての過塩素酸の存在下で無水プロピオン酸と反応させる工程b)を含んでいた。この明細書において、提案されるアシル化触媒は、ZnO、ZnCl2、FeCl2、FeCl3、FeSO4、Fe2(SO4)3、FeO、Fe2O3、H3PO4及びHClO4であった。
【0007】
この種の触媒に関連する欠点は、国際公開第2020/174271号に報告されている。この国際出願では、これらの触媒の全てが毒性及び腐食性であり、一般に大量の塩酸を流出液中に生成し、その結果、大量のスラッジを生成し、したがってプロセスの汚染度が高く、環境に有害なものとなることが強調される。
【0008】
したがって、この同じ文献は、再使用することができる未反応カルボン酸と未反応基質とを容易に分離するためのアルキルスルホン酸の使用を提案している。
【0009】
国際公開第2020/174271号の例14において、3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンは、最初にメタンスルホン酸及び無水プロピオン酸を投入し、冷却後に3,4-メチレンジオキシベンゼンを添加することによって調製される。反応を0℃~5℃で4時間維持し、反応終了後、反応塊を水で希釈し、得られた3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン及び未反応の3,4-メチレンジオキシベンゼンをトルエンで抽出した。トルエン層を蒸留し、未反応の3,4-メチレンジオキシベンゼンを回収し、ガス純度98%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンを得た。それらはまた、水相に63gのプロピオン酸を回収する。
【0010】
そこに記載されている方法は、回収する必要がある過剰の均一な触媒、すなわちメタンスルホン酸の使用を教示している。実際、この方法は、所望の生成物(トルエン中)だけでなく触媒も回収するために、水/トルエン中での抽出を提供する。本発明者らは、この方法を研究し、国際公開第2020/174271号の先行技術の方法が、過剰の触媒の使用及び非常に厳しい反応条件(0~5℃で4時間)を考慮して、より高い3,4-メチレンジオキシベンゼン転化率を得ることができ、標的生成物に生じたことに注目した。更に、メチルスルホン酸は金属に対して腐食性であり、工業的に使用されても操作が困難であることは周知である。
【0011】
芳香族環状エーテルである3,4-ジメチレンジオキシベンゼンは、2個の酸素原子に対する架橋位置の基-CH2-の屈曲による環の部分的な不活性化を特徴とすることも知られている(FT-IR Investigation of Methoxy Substituted Benzenes Adsorbed on Solid Acid Catalysts”.J.Phys.Chem.C 2012,116,21308-21317.dx.doi.org/10.1021/jp3023056.“Anomeric Effect in 1,3-Dioxole:A Theoretical Study”.J.Am.Chem.Soc.1996,118,9850-9854.)。したがって、国際公開第2020/174271号に報告されているようなアシル化反応のための厳密で劇的な条件が通常必要である。
【0012】
更に、国際公開第2018/150230号の段落[0016]に報告されているように、従来の方法を用いたアルキレンジオキシベンゼン化合物のアシル化は、反応物及び生成物の-O-(CH2)m-O-環が酸性条件下で開裂を非常に受けやすいため、低収率及び低純度で最終生成物の合成をもたらす。
【0013】
したがって、本発明の目的は、第1に、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンとしても知られている3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンを調製するための経済的で効率的で環境に優しい方法を提供することであって、そのため従来技術の方法の欠点を克服することであり、第2に、それを良好な収率及び純度でアシル化することである。
【発明の概要】
【0014】
不均一触媒、特にスルホン化樹脂に基づく不均一触媒は、開環複素環であっても、基質のアシル化を触媒する活性が非常に低いことが知られているという事実にもかかわらず、例えば、アニソールのアシル化における多くの困難が報告される、“Perfluorinated nafion-modified SBA-15 material for catalytic acylation of anisole”,Applied Catalyst A:General F.Martinez,G.Morales,A.Martin,R van Griekenに報告されているように、本発明者らは、特定の粒径の不均一触媒が、出発物質、すなわち3,4-ジメチレンジオキシベンゼンからの転化率を増加させるだけでなく、その選択性も増加させることができることを見出した。
【0015】
本発明者らは、実際に、特定のスルホン化不均一触媒の顆粒/粒子の特定のサイズが、驚くべきことに、不均一触媒の粒子/顆粒の活性表面の増加と共にだけでなく、標的生成物にわたる連続反応の促進による芳香族基質変換の増加と共に通常減少する選択性を増加させることを見出した。
【0016】
したがって、本出願人は、驚くべきことに、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンのアシル化に効率的に使用することができる特定の粒径を有する革新的なファミリーの不均一触媒を見出した。これらの微粒子化触媒は、転化を高めることができただけでなく、閉じた複素環である基質3,4-ジメチレンジオキシベンゼン上のアシル化反応の選択性も高めることができた。
【0017】
したがって、本発明は、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法であって、バルク又は担持触媒の存在下で、無水プロピオン酸と反応させる工程を含み、当該触媒が、スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂からなる群から選択され、当該触媒が、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法に関する。
【0018】
本発明において「粒径」という定義が使用される場合、最終触媒の単一粒子/顆粒の平均直径を意味する。
【0019】
本発明の方法の有利な実施形態では、触媒は40μm~100μmの平均粒径を有する。
【0020】
好ましい実施形態では、触媒は、酸化物、好ましくはシリカ、ジルコニア、チタニア又はアルミナに担持された、より好ましくはシリカに担持された担持触媒である。
【0021】
したがって、本発明者らは、驚くべきことに、スルホン酸官能基の存在を特徴とするバルク又は担持樹脂の使用が、無水プロピオン酸による3,4-ジメチレンジオキシベンゼンのアシル化において特異的な触媒活性を示したことに注目した。更に、本発明者らは、触媒が粉末の形態であり、バルク触媒及び担持触媒の両方として使用された場合、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンのアシル化プロセスが極めて効率的であったことに注目した。
【0022】
有利には、本発明の方法の触媒は、反応を再び開始するために回収、再生及びリサイクルすることができる。
【0023】
本明細書で使用される触媒は、バッチ及び連続流装置の両方で適用するのに適しており、3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンの選択的形成をもたらす。
【0024】
有利な実施形態では、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法は連続方法である。
【0025】
上記から、本発明の方法は、先行技術の方法と比較して、操作条件がそれほど厳しくなく、環境に優しいだけでなく、連続的にも作用する可能性を有する1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの製造にとって極めて効率的であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって、本発明は、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法であって、バルク又は担持触媒の存在下で、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程を含み、当該触媒が、スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択され、当該触媒が、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法に関する。
【0028】
本発明において「粒径」という定義が使用される場合、最終触媒の単一粒子/顆粒の平均直径を意味する。
【0029】
本発明の方法の有利な実施形態では、触媒は40μm~100μmの平均粒径を有する。
【0030】
本発明は、スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択されるバルク又は担持触媒の存在下での3,4-ジメチレンジオキシベンゼンのアシル化反応の工程を含み、当該触媒は、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する。
【0031】
これらの触媒は全て、不均一触媒として定義される。
【0032】
実験部分からより明らかになるように、本発明者らは、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンをアシル化する際に市場で入手可能な不均一触媒を直接使用しようと試みたが、この試みは、特に低温では非常に悪い結果をもたらす。本発明者らは、触媒が、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する場合、驚くべき結果で、MDBのアシル化が可能であることを見出した。
【0033】
触媒は、バルクとして使用されるか、又はシリカに担持されたスルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂であり得る。好ましくは、スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂は、2~6、より好ましくは2.5~5.5、更により好ましくは約5の範囲の材料1g当たりの基-SO3Hのmmolとして表される酸負荷量を特徴とする。
【0034】
触媒は、バルクとして使用されるか又はシリカに担持された過フッ素化スルホン酸樹脂であり得る。好ましくは、過フッ素化スルホン酸樹脂は、0.2~2、より好ましくは0.7~1.6の範囲の材料1g当たりの基-SO3Hのmmolとして表される酸負荷量を特徴とし、更により好ましくは触媒は約1.2の酸負荷量を有する。
【0035】
好ましい実施形態では、上記の触媒は、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲の粒径を有するために微粒子化工程に供される市販の触媒である。
【0036】
スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂は、製品Amberlystであり、Rohm and Haas Companyから入手可能な交換イオン樹脂であり得る。これらの樹脂は、以下のように命名された生成物であり得る。
-4.7の酸負荷量(材料1g当たりの基-SO3Hのmmolとして表される)を有するAmberlyst15(https://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/aldrich/216399)、
-5.4の酸負荷量(材料1g当たり基-SO3Hのmmolとして表される)を有するAmberlyst36、(Sibao Liu and others,’Renewable Lubricants with Tailored Molecular Architecture’,Science Advances,5.2(2019)(https://doi.org/10.1126/sciadv.aav5487))
-5の酸負荷量(材料1g当たり基-SO3Hのmmolとして表される)を有するAmberlyst39(Tomasz Komon and others,’Esterification of Acrylic Acid with 2-Ethylhexan-1-Ol:Thermodynamic and Kinetic Study’,Applied Catalysis A:General,451(2013),127-36(https://doi.org/10.1016/j.apcata.2012.11.018))、又は
-2.55の酸負荷量(材料1g当たり基-SO3Hのmmolとして表される)を有するAmberlyst70(Tomasz Komon and others,’Esterification of Acrylic Acid with 2-Ethylhexan-1-Ol:Thermodynamic and Kinetic Study’,Applied Catalysis A:General,451(2013),127-36(https://doi.org/10.1016/j.apcata.2012.11.018))。
【0037】
過フッ素化スルホン酸樹脂は、以下の構造を有する全フッ素化樹脂である製品Aquivionであり得る。
【化2】
【0038】
末端-CF2CF2SO3H基の存在は、過フッ素化樹脂を強酸性にする。
【0039】
樹脂Aquivionは、Aquivion(登録商標)PW79Sと命名された市販品とすることができ、これは、テトラフルオロエチレンとスルホニルフルオリドビニルエーテル(SFVE)の短鎖(SSC)コポリマー CF2=CF-O-(CF2)2-SO2Fに基づく粗酸性過フッ素化樹脂粉末であり、Solvayによって製造され、1.27の酸負荷量を有する。
【0040】
樹脂Aquivionは、Aquivion(登録商標)P98-Sと命名された市販品とすることができ、これは980g/eqの当量(EW)を示すスルホニルフルオリド(-SO2F)形態の過フッ素化ペレットである。この過フッ素化樹脂は、テトラフルオロエチレン(TFE)とスルホニルフッ化ビニルエーテル(SFVE)のユニークな短側鎖コポリマーCF2=CF-O-(CF2)2-SO2Fに基づいており、Solvayによって製造され、材料1g当たり1.02の基-SO3Hのmmolとして表される酸負荷量を有する。
【0041】
樹脂Aquivionは、Aquivion(登録商標)PW87-Sと命名された市販品であってもよく、粉末の形態の過フッ素化樹脂である。この過フッ素化樹脂は、テトラフルオロエチレン(TFE)とスルホニルフッ化ビニルエーテル(SFVE)の特有の短側鎖コポリマーCF2=CF-O-(CF2)2-SO2Fに基づいており、Solvayによって製造され、材料1g当たりの基-SO3Hのmmolとして表される酸負荷量が1.15である。
【0042】
市場で入手可能な又は本実験部分実験部のような他の樹脂Aquivionの使用が、本発明に従って企図される。
【0043】
過フッ素化スルホン酸樹脂は、以下の構造を有する全フッ素化樹脂である製品Nafionであり得る。
【化3】
【0044】
Nafionの固有のイオン特性は、スルホナート基で末端化されたパーフルオロビニルエーテル基をテトラフルオロエチレン(PTFE)骨格に組み込んだ結果である。樹脂Nafionは、ペレット形態の高い熱安定性及び耐薬品性を有するパーフルオロスルホン酸ナフィオン樹脂である、Nafion(商標)NR50と命名された市販品であり得る。この過フッ素化樹脂は、DuPontによって製造され、材料1g当たり0.8の基-SO3Hのmmolとして表される酸負荷量を有する。
【0045】
市場で入手可能な又は本実験部分のような他の樹脂Nafionの使用が、本発明に従って企図される。
【0046】
したがって、本発明の不均一触媒は、スルホン酸基の存在を特徴とし、鉄又は亜鉛又はガリウムと部分的又は完全に交換することもできる。
【0047】
実際、本明細書で報告される触媒材料(酸樹脂)は、酸性プロトンを鉄(Fe)、亜鉛(Zn)及びガリウム(Ga)から選択される金属イオンと交換することによって修飾することができる。スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂又は過フッ素化スルホン酸樹脂上で水素イオンを交換するために使用される手順は、文献、例えばJournal of Molecular Catalysis A:Chemical 411(2016)257-263)に報告されている。
【0048】
驚くべきことに、金属イオンFe、Zn又はGaの存在に起因する酸点密度、強度及び接近可能性の観点からの触媒の修飾は、生成物に対する転化率及び選択性の観点からMDBの反応性に強く影響する。
【0049】
本発明において、スルホン化樹脂触媒が交換される場合、それは部分的に交換される。
【0050】
本発明によれば、部分交換は、Fe、Zn及びGaから選択される金属イオンとの5~80%の水素原子のパーセンテージを意味する。好ましくは、交換パーセンテージは10~50%であり、より好ましくは約30%である。
【0051】
Feで部分的に交換された樹脂の例は、上記文献に従い、Aquivion PW87-Sを粉末の形態で使用することによって調製することができる。
【0052】
したがって、最終的な交換スルホン化触媒は、微粒子化工程に供され、したがって、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲の粒径を有する。上述の材料は、適切な無機酸化物上に供給又は担持される本発明の方法における触媒として使用することができる。
【0053】
適切な無機酸化物は、シリカ、ジルコニア、チタニア及びアルミナであり得、好ましくはシリカである。特に、担持された材料は、市販の製品であってもよく、又は文献に記載されているように、例えばイタリア特許第102018000006967号に記載されているように調製されてもよい。
【0054】
したがって、触媒を、当技術分野で公知の一般的な手順に従って担持することができる。本発明による担持触媒を調製するための好ましい手順は、例として実験部分に報告されている。
【0055】
Amberlyst、Aquivion及びNafionと命名された上述の樹脂を、適切な無機酸化物上に担持することができる。例えば、Aquivion D79をジルコニア又はシリカ上に担持することができ、Aquivion PW98-Sをアルミナ上に担持することができる。シリカに担持されたNafionは、Dupont又はMerkによって市場でも入手可能である。
【0056】
本発明において触媒として使用される樹脂は、無機酸化物、好ましくはシリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアに、担持触媒の総重量に対して1~60重量パーセント(%)、より好ましくは5~30重量%、更により好ましくは10~15%で担持され得る。
【0057】
合成工程中の最終的な担持スルホン化触媒は、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲の粒径が得られるように成形される。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明で使用される触媒は、
-鉄、亜鉛又はガリウムで部分的に交換され、無機酸化物に担持されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、又は
-鉄、亜鉛又はガリウムで部分的に交換され、無機酸化物に担持された過フッ素化スルホン樹脂。
【0059】
合成工程中の最終的な担持交換スルホン化触媒は、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲の粒径が得られるように成形される。
【0060】
本発明の方法の一実施形態では、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムで部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択される、予め微粒子化工程に供されるか、又は本発明による正確な範囲の粒径(DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲の粒径)で製造された、バルク又は担持触媒の存在下で、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程を、50~200℃、より好ましくは60~150℃、更により好ましくは約80℃の温度範囲で行う。本発明のこの実施形態では、反応時間は5~240分、より好ましくは5~120分、更により好ましくは約60分である。
【0061】
本発明の方法の一実施形態では、スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムで部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂の群から選択される、予め微粒子化工程に供されるか、又は本発明による正確な範囲の粒径(DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲の粒径)で製造された、バルク又は担持触媒の存在下で、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程を、50~150℃、より好ましくは60~130℃、更により好ましくは約80℃又は120℃の温度範囲で行う。本発明のこの実施形態では、反応時間は5~240分、より好ましくは5~120分、更により好ましくは約60分である。
【0062】
好ましい実施形態では、方法はバッチ反応器で、より好ましくは無溶媒条件下で、純粋な触媒量の触媒を添加して実施される。
【0063】
触媒の量は、一般に3,4-ジメチレンジオキシベンゼンである限定試薬1モル当たりのH+又は活性部位のモル比として表される。
【0064】
過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムで部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択されるバルク又は担持触媒の場合、比は、好ましくは0.0001~1、より好ましくは0.001~0.04、更により好ましくは約0.007である。
【0065】
スルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂の群から選択されるバルク又は担持触媒の場合、鉄、亜鉛又はガリウムで部分的に交換されたスルホン化架橋ジビニルベンゼン樹脂の比は、0.002~1、より好ましくは0.01~0.08、更により好ましくは約0.03である。
【0066】
有利には、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程は、好ましくは2~1~1~2の範囲の3,4-ジメチレンジオキシベンゼンと無水プロピオン酸との間のモル比で、より好ましくは1:1の化学量論比で行われる。
【0067】
化学量論比がより好ましく、したがって、2つの試薬のうちの1つを一貫して過剰にする必要はない。
【0068】
有利な態様では、本方法の触媒を回収し、再生し、リサイクルすることができる。
【0069】
好ましい実施形態では、触媒は、好ましくは2重量%~60重量%、より好ましくは10~40%、更により好ましくは20重量%の範囲の濃度で、反応媒体及び硝酸の希釈酸水溶液中の懸濁液から濾過によって回収され得る。
【0070】
別の好ましい実施形態では、触媒は、好ましくは2重量%~30重量%、より好ましくは20重量%の範囲の濃度で、反応媒体及び塩酸の希釈酸水溶液中の懸濁液から濾過によって回収され得る。
【0071】
触媒の回収は、好ましくは室温~還流の範囲の温度で、数分~4時間、より好ましくは1時間の範囲の時間にわたって行われる。
【0072】
したがって、触媒の回収は再生処理である。再生処理後、濾過によって触媒を回収し、母液の中性pHになるまで水洗し、約120℃で約1時間乾燥させることができる。そのようにして得られた材料、すなわち本発明の触媒は、別の反応のためにリサイクルすることができる。
【0073】
更に、本明細書に報告される触媒材料は、バッチ及び連続フロー装置の両方で適用するのに適しており、3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンの選択的形成をもたらす。
【0074】
したがって、本発明者らは、驚くべきことに、特定のサイズ範囲の顆粒/粒子を有し、スルホン酸官能基の存在を特徴とするバルク又は担持樹脂の使用が、無水プロピオン酸による3,4-メチレンジオキシベンゼンのアシル化において特異的な触媒活性を示すことに注目した。更に、本発明者らは、触媒が、バルク触媒及び担持触媒の両方として使用され、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの粒径範囲を有する粉末の形態である場合、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンとしての非常に少量の反応性出発物質であっても、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンのアシル化の方法が極めて効率的であったことに注目した。
【0075】
有利には、本発明の方法の触媒は、反応を再び開始するために回収、再生及びリサイクルすることができる。
【0076】
有利な実施形態では、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法は連続方法である。
【0077】
上記から、本発明の方法は、先行技術の方法である無溶媒条件と比較して、操作条件がそれほど厳しくなく、環境に優しいだけでなく、連続的にも作用する可能性を有する1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの製造にとって極めて効率的であることが明らかである。驚くべきことに、本発明の方法は、2つの試薬のうちの1つを一貫して過剰にする必要がなく、短い反応時間及び比較的低い反応温度を示した。この方法は、触媒の容易な回収、再生及びリサイクルを更に特徴とする。
【0078】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明者らは、高い細孔容積及び/又は高い表面積を有する適切な支持体上に本不均一触媒を担持する可能性を包含することが基本的に重要であると考えている。
【0079】
本発明の特徴及び利点はまた、以下の非限定的な例からより明確に明らかになるであろう。
【0080】
実験部分
実験部分における成分/生成物/効果を示すために以下の頭字語を使用した:
MBD=3,4-メチレンジオキシベンゼン
AP=無水プロピオン酸
MDP1P=3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン
X=転化率
Y=収率
S=選択性
【0081】
例1 市販のAquivion PW87を用いたMDBのアシル化
2.126グラムの3,4-メチレンジオキシベンゼン(MBD)及び2.2924グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して0.6mm~1.1mmの範囲の粒径を有する市販の0.0988グラムの触媒(Aquivion PW87-S、活性酸部位と0.007に等しいMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:40%のMDB転化率、64%のプロピオン酸無水物変換、26%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び64%の選択性。
【0082】
例2
本発明による80℃、1時間での触媒Aquivion PW87-Sを有する3,4-メチレンジオキシプロピオフェノンの調製
2.126グラムの3,4-メチレンジオキシベンゼン(MBD)及び2.2924グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.0988グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAquivion PW87-S)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:50%のMDB転化率、77%のプロピオン酸無水物変換、41%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び82%の選択性。
【0083】
したがって、本発明者らは、触媒が特定の本発明の顆粒/粒径である場合、初期生成物のより高い転化率だけでなく、触媒の粒径を減少させることによって予想されなかったより高い選択性も可能にしたことに注目した。
【0084】
例3
Aquivion PW87の触媒活性に対する粒径の影響
触媒の粒径のみを変更することによって、例2に記載されるように、MDBのアシル化の触媒活性に対する触媒の粒径の影響を調べた。結果を以下の表Xに報告する。
【表X】
【0085】
触媒粒径は、反応において基本的な役割を果たす。粒径の減少は、触媒活性表面に主に依存する(粒径が小さくなるにつれて増加する)MDB転化率の改善をもたらした。驚くべきことに、触媒粒径を小さくすると、MDP1Pに対する反応選択性も非常に改善された。
【0086】
例4
触媒Aquivion PW87-Sの存在下での温度効果の評価
他の4つの反応は、反応温度のみ、すなわち60℃、80℃、100℃及び120℃を変更することによって例2に記載されるように行った。結果を表1に報告する。
【表1】
【0087】
例2と同様に、反応条件は以下の通りであった:0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比;MDB:AP=1:1;反応時間1時間。
【0088】
反応温度の上昇は、(反応速度論の促進から予想されるように)両方の試薬の転化率の増加をもたらしたが、MDP1P収率の増加は直線的ではなく、したがって選択性のわずかな低下が観察され、副生成物(ポリアルキル化など)の形成を促進したことに留意されたい。
【0089】
いずれにしても、全ての温度は、達成された選択性と釣り合った高い収率を有するのに効率的であった。
【0090】
例5
40mlへのスケールアップ試験
20.21グラムのMDB及び21.74グラムの無水プロピオン酸を250mLの三口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。試薬混合物を80℃の油浴中で加熱し、その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.9363グラムの触媒(Aquivion PW87-S、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を、2つのコンデンサ及び温度計を備えたフラスコの内部に挿入した。反応を磁気撹拌(720rpm)下で1時間行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を500mLのアセトンHPLCグレードで回収する。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより行った。結果は以下の通りであった:53%のMDB転化率、82%のプロピオン酸無水物変換、43%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び81%の選択性。
【0091】
(例1と比較して)x10係数の増加は、転化率にも収率にも影響しないことを示した。
【0092】
例6
400mLにスケールアップ
202.16グラムのMDB及び217.22グラムの無水プロピオン酸を、メカニカルスターラー、還流コンデンサ及び温度計を備えた1Lのジャケット付き反応器の内部に入れた。試薬混合物を80℃まで加熱し、その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した9.3586グラムの触媒(Aquivion PW87-S、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を内部に挿入した。反応を機械的撹拌(250rpm)下で1時間行った。反応後、2mLの反応混合物をサンプリングし、濾過により触媒から分離した。50μLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより行った。結果は以下の通りであった:46%のMDB転化率、71%のプロピオン酸無水物変換、38%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び82%の選択性。
【0093】
例7
例6に記載の反応におけるPW87-Sの反応時間効果の評価。
より大規模な反応器での反応時間の影響を調べる目的で、例5に記載されるように反応を繰り返した。そうするために、例5に報告されているように、反応混合物を異なる時間にサンプリングした。結果を以下の表2に報告し、
図1に示す。
【表2】
【0094】
異なる時間に反応混合物をサンプリングすることにより、反応中に所望の生成物に対する選択性が変化しなかったことを確認することができた。転化は、所望の生成物における収率として反応時間と共に増加した。収率と反応時間との間の最良の妥協点は1時間であったが、30分後に反応を停止させるのとほぼ同じ結果を得ることが可能であった。後者の場合、MDBの転化率及び生成物中の収率は数%低かったが、1日当たりの触媒サイクル数を2倍にして全体の収率を高めることが可能であった。反応時間を2時間まで増加させると、リサイクルしなければならない反応物の量を減らすために、選択性を低下させることなく転化率及び収率を増加させることが可能であった。
【0095】
例8
Aquivion PW79が触媒である場合の好ましい条件の評価
2.1305グラムのMDB及び2.2879グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.0900グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAquivion PW79)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより行った。結果は以下の通りであった:64%のMDB転化率、92%のプロピオン酸無水物変換、47%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び73%の選択性。
【0096】
例9
市販の触媒Aquivion PW98によるMDBのアシル化
2.1307グラムのMDB及び2.2879グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、粒度計で測定して1.4mm~2.4mmの範囲の粒径を有する市販の0.1117グラムの触媒(Aquivion PW98、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を100℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより行った。結果は以下の通りであった:11%のMDB転化率、18%のプロピオン酸無水物変換、7%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び55%の選択性。
【0097】
例10
本発明による触媒Aquivion PW98によるMDBのアシル化
2.1307グラムのMDB及び2.2879グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.1117グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAquivion PW98)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を100℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより行った。結果は以下の通りであった:40%のMDB転化率、64%のプロピオン酸無水物変換、29%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び72%の選択性。
【0098】
例11
シリカ上に担持された触媒Aquivion D79を用いる本発明の方法
2.1282グラムのMDB及び2.2860グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径を特徴とする0.2999グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する、シリカに対して30%のAquivion D79)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより行った。結果は以下の通りであった:65%のMDB転化率、95%のプロピオン酸無水物変換、47%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び72%の選択性。
【0099】
例12
本発明の方法における触媒の実験室規模の再生の一般的手順
まず、濾過助剤を取り付けたブフナー漏斗で濾過することによって、触媒を反応溶液から分離した。0.1gの排気触媒を考慮して、これをアセトンHPLC(25mL)で洗浄して、弱く吸着した反応物及び反応後に残った生成物を全て除去し、乳鉢で細かく粉砕した。その後、2つのコンデンサを備えたフラスコの内部に触媒を挿入した。次いで、5mLの20重量%HNO3(又はHCl)溶液を使用して、還流下で1時間触媒を再生した。次いで、得られた懸濁液を冷却し、濾過助剤を取り付けたブフナー漏斗で濾過することによって溶液から分離した。触媒を中性pHまで水で洗浄し、その後アセトンHPLCで再度洗浄した。触媒試験の前に、触媒を120℃のオーブン中で1時間乾燥させた。
【0100】
例13
触媒PW87-Sによるリサイクル試験、硝酸による再生
例5からの触媒を、例12と同様に、50mLのHNO3 20%w/w溶液を用いて100℃で1時間再生した。
【0101】
13.61グラムのMDB及び14.57グラムの無水プロピオン酸を250mLの三口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。試薬混合物を80℃の油浴中で加熱し、その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.6299グラムの再生触媒(Aquivion PW87-S、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を、2つのコンデンサ及び温度計を備えたフラスコの内部に挿入した。反応を磁気撹拌(720rpm)下で1時間行った。反応後、2mLの反応混合物をサンプリングし、濾過により触媒から分離した。50μLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。
【0102】
数回の触媒運転で材料のリサイクル性を試験するために、例12に記載の触媒の回収及び再生を5回行った。結果を以下の表3に報告する。
【表3】
【0103】
プロセス効率に関して明らかな利点を有する硝酸を使用することによって、触媒を回収し、数回リサイクルした。
【0104】
例14
触媒Aquivion PW87-Sによるリサイクル試験、塩酸による再生
2.1284グラムのMDB及び2.2935グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.0990グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAquivion PW87-S)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。その後、触媒を例12と同様に20%w/wのHCl溶液5mLを用いて100℃で1時間再生し、回収し、洗浄し、以前に報告されたように乾燥させ、アシル化反応のための同じ条件で試験した。結果を以下の表4に報告した。
【表4】
【0105】
プロセス効率に関して明らかな利点を有する塩酸を使用することによって、触媒を回収し、リサイクルした。
【0106】
例15
本発明に従って微粒子化された触媒Aquivion PW87-Sに対する試薬間のモル比の効果
1:1、1.4:1、2:1及び1:2の範囲の試薬間のモル比mol MDB/mol APのみを変更することによって、例2に記載されるように他の4つの反応を行った。結果を以下の表5に報告した。
【表5】
【0107】
APの過剰の増加は、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンに対するより高い変換値をもたらしたが、選択性に有害な影響を及ぼし、一方、わずかに過剰のMDBでの作業は、標的生成物に対するAPのより選択的な転化をもたらした。いずれの場合も、MDB転化率とMDP1P生成物に対する選択性との間の最良の妥協点は、化学量論量の試薬であった。
【0108】
例16
活性酸部位と限定試薬との間のモル比の関数としてのAquivion PW87-Sによる触媒担持量の効果。
他の3つの反応を、活性酸部位と限定試薬との間モル比、すなわち、0.003、0.007及び0.014のみを変更することによって、例2に記載されるように行った。触媒を微粒子化プロセスに供し、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径にした。結果を下記表6に示す。
【表6】
【0109】
触媒担持量の増加は、本発明者らの試薬の転化を促進し、生成物選択性のわずかな低下のみであった。
【0110】
例17
シリカ上に担持されたZn交換Aquivion D79。
DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径を特徴とする担持Aquivion D79を、Zn、具体的にはZn
2+と100%交換することによって例9に記載のように反応を行った。
結果を下記表7に示す。
【表7】
【0111】
100%のパーセンテージのZnとの交換が反応に好ましくない影響を及ぼすことが明らかであった。
【0112】
したがって、本発明者らは、部分交換を有する触媒のみで、以下の例18に示すように、MDBをアシル化することが可能であることを見出した。本発明による触媒の部分交換は、Fe、Zn及びGaから選択される金属イオンと交換された5~80%の水素原子のパーセンテージであり、好ましくは交換パーセンテージは10~50%、より好ましくは約30%であった。
【0113】
例18
Fe交換Aquivion PW87-S
他の反応は、Aquivion PW87-SをFe:Fe
3+と50%交換し、Fe
3+と100%交換することによって、例2に記載されるように80℃又は120℃で行った。最終触媒は、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径によって特徴付けた。反応の最初のサイクルの後、触媒を回収し、2-プロパノンで洗浄し、再サイクルした。
結果を以下の表8に報告する。
【表8】
【0114】
AquivionがFe又はZnとしてイオンと部分的に交換されると、MDBの転化率は強く減少するが、選択性は増加する。
【0115】
例19
触媒形状の効果
触媒形態:粉末(Aquivion PW98)及びペレット(8-14メッシュ、Aquivion P98)のみを変更して、120℃で例9に記載されるように他の反応を実施し、唯一の形成剤を、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径まで微粒子化プロセスに供した。結果を以下の表9に報告する。
【表9】
【0116】
驚くべきことに、本発明による粒径を有する触媒は、8~14メッシュのペレットに使用した場合、同じ触媒に対して収率、転化率及び選択性に関してより良好な結果を示した。
【0117】
例20
Aquivion PW79によるリサイクル試験、硝酸による再生
2.1303グラムのMDB及び2.2947グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.0903グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAquivion PW79)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。
【0118】
最初の実行後、触媒を例12と同様に20%w/wのHNO
3溶液5mLを用いて100℃で1時間再生し、回収し、洗浄し、乾燥させ、最後に上記と同じ条件で試験した。結果を以下の表10に報告した。
【表10】
【0119】
プロセス効率に関して明らかな利点を有する硝酸を使用することによって、触媒を回収し、数回リサイクルした。
【0120】
例21
Aquivion PW79によるリサイクル試験、塩酸による再生
2.1288グラムのMDB及び2.2972グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.0902グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAquivion PW79)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。
【0121】
最初の実行後、触媒を例12と同様に20%w/wのHCl溶液5mLを用いて100℃で1時間再生し、回収し、洗浄し、乾燥させ、最後に上記と同じ条件で試験した。結果を以下の表11に報告する。
【表11】
【0122】
プロセス効率に関して明らかな利点を有する硝酸を使用することによって、触媒を回収し、リサイクルした。
【0123】
例22
200~300μmの粒径を有する市販のAmberlyst39触媒を用いたMDBのアシル化
2.1284グラムのMDB及び2.2822グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して200μm~300μmの範囲の粒径を有する市販の0.1003グラムの触媒(0.029に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAmberlyst39)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:42%のMDB転化率、65%のプロピオン酸無水物変換、3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率29%及び69%の選択性。
【0124】
例23
微粒子化されたAmberlyst30触媒によるMDBのアシル化及びリサイクル試験、硝酸による再生
2.1284グラムのMDB及び2.2822グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.1003グラムの触媒(0.029に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAmberlyst39)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。最初の実行後、触媒を例12と同様に20%w/wのHNO
3溶液5mLを用いて100℃で1時間再生し、回収し、洗浄し、乾燥させ、最後に上記と同じ条件で試験した。結果を以下の表12に報告し、
図2に表す。
【表12】
【0125】
プロセス効率に関して明らかな利点を有する塩酸を使用することによって、触媒を回収し、数回リサイクルした。
【0126】
粒径の好ましい範囲で触媒を使用することにより、より高い転化及びより良好な選択性を得ることができた。
【0127】
例24
400~600μmの粒径を有する市販のNafion NR50触媒を用いたMDBのアシル化
2.1274グラムのMDB及び2.2815グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、粒度計で測定して400μm~600μmの範囲の粒径を有する市販の0.1419グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するNafion NR50)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:20%のMDB転化率、29%のプロピオン酸無水物変換、3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率11%及び56%の選択性。
【0128】
例25
本発明による粒径を有するNafion NR50触媒によるMDBのアシル化
一般的な手順として、2.1274グラムのMDB及び2.2815グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、粒度計で測定して150μm~300μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.1419グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するNafion NR50)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を120℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。最初の実行後、触媒を例12と同様に20%w/wのHNO
3溶液5mLを用いて100℃で1時間再生し、回収し、洗浄し、乾燥させ、最後に上記と同じ条件で試験した。結果を以下の表13に報告する。
【表13】
【0129】
本発明者らは、本発明による触媒が、本発明の範囲で微粒子化されていない同じ触媒に対して、より良好な転化率、収率及び選択性を可能にすることに注目した。
【0130】
例26
連続流動条件下での触媒試験
触媒試験は、大気圧で連続流下で動作する固定床実験室規模の反応器で行った。最初に、カーボランダム(総体積0.6mL)と混合した、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.1799グラム(0.4ml)の触媒(Aquivion PW79)を、ステンレス鋼管1/4インチからなる反応器の内部に挿入した(反応器の最初と最後に石英ウールを備える)。反応器を加熱バンドで包み、最後に絶縁セラミック布包帯で覆った。システムが150℃の温度に達したら、試薬混合物(26.007グラムのMDB及び28.631グラムの無水プロピオン酸によって構成される)(1/1mol/mol)を高精度HPLCポンプを通して0.05mL/分で供給した。反応時間は、システムの出口ラインから混合物の最初の液滴が出てから開始した。試料を10分ごとに採取した。各サンプリングから、50μLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10.00℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。関連する時点に対応する結果を以下の表14に報告する。
【表14】
【0131】
流動中で行われたこの触媒試験は、固体酸樹脂の適用のためのこの技術的解決策も網羅するという主な目的を有していた。試験は、本発明の方法が連続的に有利に実施され得ることを実証した。
【0132】
例27
H2O2によるPW87触媒の再生
2.1417グラムのMDB及び2.2994グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して40μm~100μmの範囲の粒径に予め微粒子化プロセスに供した0.1004グラムの触媒(0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応するAQUIVION PW87-S)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに2つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。その後、鉱酸の代わりにH2O2 30%w/w溶液5mLを使用して例9に記載されるように触媒を100℃で20分間再生し、回収し、洗浄し、乾燥させ、アシル化反応について同じ条件で試験した。結果を以下の表15に報告する。
【0133】
【表15】
触媒活性は、プロセス効率の点で明らかな利点を伴って回復した。
【0134】
例28
Aquivion(D72若しくはD79、又はD82、又はD98)を用いた担持触媒の一般的調製手順
それぞれ68:11:1の重量比を有するSi(MeO)4、蒸留水、及び0.04M HClの混合物を45分間撹拌して、透明な溶液を得た。Aquivion分散液(D72若しくはD79、又はD82、又はD98)(例えば、水又は水とアルコールの混合物中に25%w/wの樹脂を含有し得る)を水又は水とアルコールで希釈した。樹脂含有溶液に、撹拌しながら0.4M NaOH水溶液を添加した。撹拌した樹脂/NaOH溶液に、上記のようにして調製したシリコン含有溶液を速やかに添加し、混合数秒後に固体ゲルを形成した。固体を95℃のオーブンで一晩乾燥させた。粉砕後、得られた粉末を適量の3.5M HCl水溶液で撹拌して再酸性化し、次いで脱イオン水で洗浄した。このプロセスを4回繰り返した。次いで、触媒を75℃で一晩25%w/wのHNO3で処理し、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させた。
【0135】
例29
シリカに担持された13重量%のAquivionを含有する触媒の合成。
12.6706gのSi(MeO)4、2.0497gの蒸留水、及び0.1863gの0.04M HClの混合物を45分間撹拌して、透明な溶液を得た。Aquivion D72(又はD79、又はD82、又はD98)樹脂溶液(25%w/wの樹脂を含む)2.9712g、蒸留水8g、1-プロパノール9.96gの混合物を用意した。樹脂含有溶液に、撹拌しながら0.4M NaOH水溶液10.3mLを添加した。撹拌した樹脂/NaOH溶液に、上記のようにして調製したシリコン含有溶液を速やかに添加し、混合数秒後に固体ゲルを形成した。固体を95℃のオーブンで一晩乾燥させた。粉砕後、得られた粒径40μm~100μmの粉末を、50mLの3.5M HCl水溶液で撹拌して再酸性化した後、脱イオン水で洗浄した。このプロセスを4回繰り返した。次いで、触媒を75℃で一晩25%w/wのHNO3で処理し、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させた。
【0136】
例30
シリカに担持された13重量%のNafionを含有する触媒の合成。
7.6003gのSi(MeO)4、1.2306gの蒸留水、及び0.1112gの0.04M HClの混合物を45分間撹拌して、透明な溶液を得た。Nafion樹脂溶液(20%w/wの樹脂を含む)2.2284gと、蒸留水3.34gと、1-プロパノール4.16gとの混合物を用意した。樹脂含有溶液に、撹拌しながら0.4M NaOH水溶液5.52mLを添加した。撹拌した樹脂/NaOH溶液に、上記のようにして調製したシリコン含有溶液を速やかに添加し、混合数秒後に固体ゲルを形成した。固体を95℃のオーブンで一晩乾燥させた。粉砕後、得られた粒径40μm~100μmの粉末を、50mLの3.5M HCl水溶液で撹拌して再酸性化した後、脱イオン水で洗浄した。このプロセスを4回繰り返した。次いで、触媒を75℃で一晩25%w/wのHNO3で処理し、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させた。
【0137】
例31
シリカ中に担持された触媒Aquivion D72を用いる本発明のプロセス。
2.1458グラムのMDB及び2.3081グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、0.6726グラムの触媒(シリカに対してAquivion D72 13%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:59%のMDB転化率、90%のプロピオン酸無水物変換、50%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び85%の選択性、9%の副生成物収率。
【0138】
例32
シリカに担持された触媒Aquivion D79を用いた本発明のアシル化。
2.1354グラムのMDB及び2.2956グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、0.7448グラムの触媒(シリカに対してAquivion D79 13%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:50%のMDB転化率、85%のプロピオン酸無水物変換、43%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び86%の選択性、7%の副生成物収率。
【0139】
例33
シリカに担持された触媒Aquivion D83を用いた本発明のアシル化。
2.1402グラムのMDB及び2.3039グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、0.7754グラムの触媒(シリカに対してAquivion D83 13%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:51%のMDB転化率、86%のプロピオン酸無水物変換、42%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び83%の選択性、7%の副生成物収率。
【0140】
例34
シリカ中に担持された触媒Aquivion D98を用いる本発明のプロセス。
一般的な手順として、1.0673グラムのMDB及び1.1502グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、0.4589グラムの触媒(シリカに対してAquivion D98 13%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:49%のMDB転化率、86%のプロピオン酸無水物変換、3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率42%及び85%の選択性、副生成物
【0141】
例35
シリカ中に担持された触媒Aquivion D72(5%w/w)を用いる本発明のプロセス。
一般的な手順として、2.146グラムのMDB及び2.3044グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、樹脂担持量を変更した例29に記載されているように得られた1.762グラムの触媒(シリカに対してAquivion D72 5%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:39%のMDB転化率、96%のプロピオン酸無水物変換、33%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び86%の選択性、3%の副生成物収率。
【0142】
例36
シリカ中に担持された触媒Aquivion D72(30%w/w)を用いる本発明のプロセス。
一般的な手順として、2.152グラムのMDB及び2.3269グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、樹脂担持量を変更した例29に記載されているように得られた0.2941グラムの触媒(シリカに対してAquivion D72 30%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:47%のMDB転化率、78%のプロピオン酸無水物変換、42%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び88%の選択性、8%の副生成物収率。
【0143】
例37
シリカ中に担持された触媒Nafion(13%w/w)を用いる本発明の方法。
一般的な手順として、1.4281グラムのMDB及び1.5415グラムの無水プロピオン酸を25mLの二口丸底フラスコの内部に入れ、撹拌して均一な溶液を得た。その後、40μm~100μmの範囲の粒径で製造された、例29に記載の通りに得られた0.630グラムの触媒(シリカに対してNafion 13%w/wであり、0.007に等しい活性酸部位とMDBとの間のモル比に対応する)を液体混合物の内部に挿入し、フラスコに二つのコンデンサを取り付けた。次いで、反応混合物を80℃の予熱油浴に入れ、磁気撹拌(500rpm)下で1時間反応を行った。反応後、混合物を氷浴中で急速冷却し、反応混合物を50mLのアセトンHPLCグレードで回収した。0.8mLの混合物を10mLのアセトンHPLCグレードに希釈し、20μLのオクタンをガスクロマトグラフ定量のための内部標準として使用した。反応終了時の生成物の分析は、HP-5(Agilent)キャピラリーカラム(使用した温度勾配は、35℃で6分間の後、10℃/分の速度で280℃まで加熱することからなった)及び水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCによって行った。結果は以下の通りであった:49%のMDB転化率、85%のプロピオン酸無水物変換、41%の3,4-メチレンジオキシプロピオフェノン収率及び85%の選択性、6%の副生成物収率。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法であって、バルク又は担持触媒の存在下で、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる工程を含み、前記触媒が、スルホン化架橋
ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂、鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換されたスルホン化架橋
ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂、過フッ素化スルホン樹脂、及び鉄、亜鉛又はガリウムと部分的に交換された過フッ素化スルホン樹脂の群から選択され、前記触媒が、DLS(動的光散乱)又は粒度計で測定して、1μm~300μm、好ましくは1μm~180μm、より好ましくは1μm~100μmの平均粒径を有する、1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-プロパノンの調製方法。
【請求項2】
前記バルク又は担持触媒が、バルクとして使用されるか又はシリカに担持されたスルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂であり、前記スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂が、2~6、好ましくは2.5~5.5、より好ましくは約5の範囲の材料1g当たりの基-SO
3Hのmmolとして表される酸負荷量を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バルク又は担持触媒が、バルクとして使用されるか又はシリカに担持された過フッ素化スルホン酸樹脂であり、前記過フッ素化スルホン酸樹脂が、0.2~2、好ましくは0.7~1.6の範囲の材料1g当たりの基-SO
3Hのmmolとして表される酸負荷量、より好ましくは約1.2の酸負荷量を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂が、製品Amberlystである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記過フッ素化スルホン酸樹脂が、製品Aquivion又は製品Nafionである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記バルク又は担持触媒が、鉄又は亜鉛又はガリウムで部分的に交換されたスルホン化架橋ポリスチレン-ジビニルベンゼン樹脂又は過フッ素化スルホン酸樹脂であり、前記部分交換が、Fe、Zn及びGaから選択される金属イオンで交換された5~80%の水素原子のパーセンテージであり、好ましくは前記交換パーセンテージが10~50%であり、より好ましくは約30%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、好適な無機酸化物、好ましくはジルコニア、アルミナ、チタニア及びシリカ、より好ましくはシリカ上に担持されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、前記無機酸化物に、前記担持触媒の総重量に対して1~60重量パーセント(%)、より好ましくは5~30重量%、更により好ましくは10~15重量%で担持されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる前記工程が、50~200℃、好ましくは60~150℃、より好ましくは約80℃の温度範囲で行われる、請求項1、3、5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応時間が、5~240分、好ましくは5~120分、より好ましくは約60分である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる前記工程が、50~150℃、好ましくは60~130℃、より好ましくは約80℃又は約120℃の温度範囲で行われる、請求項1、2、4、6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応時間が、5~240分、好ましくは5~120分、より好ましくは約60分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
限定試薬1モル当たりのH+又は活性部位のモル間の比として表される前記触媒の量が、0.0001~1、好ましくは0.001~0.04、より好ましくは約0.007である、請求項1、3、5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
限定試薬1モル当たりのH+又は活性部位のモル間の比として表される前記触媒の量が、0.002~1、より好ましくは0.01~0.08、更により好ましくは約0.03である、請求項1、2、4、6~8、11~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
3,4-ジメチレンジオキシベンゼンを無水プロピオン酸と反応させる前記工程が、3,4-ジメチレンジオキシベンゼンと無水プロピオン酸との間のモル比が2~1対1~2の範囲、好ましくは1:1の化学量論比で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が回収され、再生され、リサイクルされる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が、好ましくは2重量%~60重量%、より好ましくは10~40%、更により好ましくは20重量%の範囲の濃度で、前記反応媒体及び硝酸の希釈酸水溶液中の懸濁液から濾過によって回収される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、好ましくは2重量%~30重量%、より好ましくは20重量%の範囲の濃度で、前記反応媒体及び塩酸の希釈酸水溶液中の懸濁液から濾過によって回収される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒の前記回収が、室温~還流の範囲の温度で、数分~4時間、好ましくは1時間の範囲の時間にわたって行われる、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒の前記回収、前記再生及び前記リサイクルが、H
2O
2を使用して行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒が、40μm~100μmの平均粒径を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が連続方法である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】