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特表2024-509383アトピー性皮膚炎及びその他の皮膚状態の治療のためのJAK1/3阻害剤の局所製剤及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】アトピー性皮膚炎及びその他の皮膚状態の治療のためのJAK1/3阻害剤の局所製剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20240222BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P17/00
A61K9/06
A61K9/08
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61P37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550031
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 US2022070734
(87)【国際公開番号】W WO2022178540
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,610
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/197,463
(32)【優先日】2021-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/197,888
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/221,706
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518293228
【氏名又は名称】アクラリス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】チャンジェリアン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】イグナティウス フランシス
(72)【発明者】
【氏名】スミス ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】タッカー スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー ニール スチュアート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076BB31
4C076CC03
4C076CC18
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA27
4C084MA28
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB13
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物I)又はその薬学的に許容される誘導体を含む局所製剤を用いて、免疫不全によって引き起こされる皮膚障害を治療する方法に関する。特に、本明細書に記載の前記局所製剤を、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、又は白斑の治療に使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫不全によって引き起こされる皮膚状態を、それを必要とするヒト対象において治療するための方法であり、前記方法は:前記皮膚状態を罹患した前記対象の部位に、以下の化合物I、
の構造を有する化合物又はその薬学的に許容される誘導体を約0.5%~約4%含む組成物を、局所投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記皮膚状態が、アトピー性皮膚炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、前記対象の治験責任医師による全体的評価(IGA)スコア、湿疹面積及び重症度指数(EASI)スコア、ピーク時掻痒数値評価スケール(PP-NRS)スコア、又は体表面積(BSA)測定値のうち1つ以上を減少させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物を、対象の皮膚状態に起因する皮膚病変に局所投与する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物を、1日1回投与する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物を、1日2回投与する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
2%w/wの化合物Iを含む組成物を、1日2回投与する、請求項1~4及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
約2%w/wの化合物Iを含む約0.25mL~約8mLの組成物を、前記対象に局所投与する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、クリーム、ジェル、ジェルクリーム、フォーム、又は溶液である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、溶液である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記投与が、2%w/wの化合物Iを含む溶液の1日2回の局所適用を含む、請求項1~4及び6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、デュピルマブ、及びインターロイキン(IL)-4/IL-13のシグナル伝達を遮断するヒト化モノクロナール抗体のうち1つ以上を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
免疫不全によって引き起こされる皮膚病変の重症度及び範囲を軽減する方法であり、前記方法は:前記免疫不全を有するヒト対象に、以下の化合物I、
の構造を有する化合物又はその薬学的に許容される誘導体を約0.5%~約4%含む組成物を、局所投与することを含む、方法。
【請求項14】
対象が、アトピー性皮膚炎と診断されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物を、1日1回投与する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物を、1日2回投与する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、前記対象のIGAスコア、EASIスコア、PP-NRSスコア、又はBSA測定値のうちの1つ以上を減少させる、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
2%w/wの化合物Iを含む組成物を、1日2回投与する、請求項13~14又は16~17のいずれか1項に記載方法。
【請求項19】
前記組成物が、クリーム、ジェル、ジェルクリーム、フォーム、又は溶液である、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、溶液である、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記投与が、2%w/wの化合物Iを含む溶液の1日2回の局所適用を含む、請求項13~14及び16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
約2%w/wの化合物Iを含む約0.25mL~約8mLの組成物を、前記対象に局所投与する、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2021年2月18日に出願された米国仮特許出願第63/150,610号、2021年6月6日に出願された米国仮特許出願第63/197,463号、2021年6月7日に出願された米国仮特許出願第63/197,888号、及び2021年7月14日に出願された米国仮特許出願第63/221,706号の優先権の利益を主張し、これらは参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本開示は、JAK阻害剤を含む局所製剤の調整及び使用、並びに皮膚状態、特にアトピー性皮膚炎を処置するためのそれらの製剤の使用に向けられている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様は、それを必要とする対象における免疫不全によって引き起こされる皮膚状態を処置するための方法に向けられている。この方法は、皮膚状態に影響を受ける対象の部位に、化合物I:
の構造を有するエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート又はその塩を約0.5%~約4%含む組成物を局所投与することを含む。
【0004】
本開示の別の態様は、免疫不全によって引き起こされる皮膚病変の重症度及び範囲を軽減するための方法に向けられている。この方法は、免疫不全を有する対象に、化合物I(上記)の構造を有するエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート又はその塩を約0.5%~約4%含む組成物を局所的に投与することを含む。
【0005】
本開示の別の態様は、約0.1w/w%~約4w/w%のエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物I)、その塩、又はその溶媒和物を含む局所医薬製剤に向けられている。前記製剤は、約100g/mol~約400g/molの平均分子量を持つポリエチレングリコール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの一方又は両方を含む1次溶媒;ベンジルアルコール、エタノール、及びフェノキシエタノールの1つ以上を含む共溶媒、ジメチルイソソルビド:プロピレングリコール:グリセロール:並びに酸化防止剤をさらに含む。本開示の局所医薬製剤は、約10mPa・S~約100mPa・Sの見かけ粘度を有する。
【0006】
さらに別の態様において、本開示は、噴霧可能な局所医薬製剤に向けられている。前記噴霧可能な局所医薬製剤は、約0.5w/w%~約2w/w%の化合物Iの構造の化合物、その塩、又はその溶媒和物;約100g/mol~約400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの一方又は両方を含む、約65w/w%~約70w/w%の1次溶媒;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール:約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;並びに約0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含み、前記局所用医薬製剤が、約10mPa・S~約100mPa・Sの見かけ粘度を有する。
【0007】
局所送達は、特に本明細書に記載されるADなどの皮膚状態の治療に、多くの利点:医薬物質を特定の部位によりより選択的に送達する能力、薬物レベルの変動の回避、患者間及び患者内の変化、コンプライアンスの改善、並びにセルフメディケーションへの適正の向上を、有する。しかしながら、AD及びその他の炎症性皮膚状態(例えば、円形脱毛症、白斑)についての現在の局所療法の多くは、不完全な有効性、適用の困難性、長期間の局所使用による副作用(特にステロイド治療)、及び局所部位の反応などの課題に直面している。局所療法に関して、皮膚及び有効成分とのビヒクルの相互作用は、有効成分の効果を変え得るため、ビヒクルの製剤は、活性薬剤そのものと同様に重要である。炎症性皮膚状態を治療するJAK阻害剤の治療効果に十分な研究を実施することに加え、前記JAK阻害分子を、適切な表的部位(例えば、表皮/真皮、全身への導入を避ける)に送達し、投与量の完全性、薬物輸送、及び活性持続時間、並びに少なくとも患者の受容性及びコンプライアンスが維持されていることを確実にするために、十分な製剤開発も、行わなければならい。
【0008】
本明細書に記載されるように、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物I)は、皮膚において局所的に作用し、及び代謝的に不安定であるように設計され、
それによって、有効性を提供し、及び全身毒性のリスクを最小化する血漿中で、短期間の循環する薬物濃度をもたらす。中程度から重度のアトピー性皮膚炎に苦しむ対象に4週間投与した場合、治療群における薬物動態の血漿サンプルの解析は、86%を超える血漿サンプルが、1ng/ml未満である活性化合物の濃度を有し、及び平均薬物濃度はエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートのIC50の5%を超えなかったことを示した。エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートを処理された対象は、主要な有効性エンドポイントである、4週目の修正された湿疹面積及び重症度指数(mEASI)スコアにおいて74.4%の減少を報告した。さらに、重要な二次有効性エンドポイントにおいても良好な傾向が、観察された。
【0009】
本発明の性質及び利点をより完全に理解するために、添付の図面と関連して理解される以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、8日目、15日目、及び28日目における、化合物I及びビヒクルを処置された対象についてのベースラインからの湿疹面積及び重症度指数(EASI)における変化率を示す。
図2図2は、化合物I及びビヒクルを処置された対象の試験の28日目におけるEASI50、EASI75、及びEASI90の応答データを示す。
図3図3は、試験の8日目、15日目、及び28日目における、化合物I及びビヒクルを処置された対象の両方におけるベースラインからのピーク時掻痒数値評価スケール(Peak Pruritus Numerical Rating Score)(PP-NRS)スコアにおける変化を示す。
図4図4は、試験中に2ポイント以上の改善を示し、治験責任医師による全体的評価(Investigator’s Global Assesment)(IGA)の治療反応が0又は1を有する対象の割合(化合物I及びビヒクル治療)を示す。
図5図5は、8日目、15日目、及び28日目のそれぞれにおける、化合物I及びビヒクルを処理された対象における、ベースラインからの疾患に影響を受けた体表面積(BSA)の変化を示す。
図6図6は、試験の8日目、15日目、及び28日目の湿疹面積及び重症度指数(EASI)スコアにおける50%の改善を達成した患者の数を要約した表である。
図7図7は、試験の8日目、15日目、及び28日目のEASIスコアにおける75%の改善を達成した患者の数を要約した表である。
図8図8は、試験の8日目、15日目、及び28日目のEASIスコアにおける90%の改善を達成した患者の数を要約した表である。
図9図9は、試験の期間中に化合物I及びビヒクルを処理された対象について、ピーク時掻痒数値評価スケール(PP-NRS)における実際の値及びベースラインからの変化を要約した表である。
図10図10A~10Bは、本明細書に記載されるように、ex vivo/in vitro透過性アッセイにおける、本明細書に記載される様々な製剤の真皮及び表皮への透過を示すグラフである。
図11図11A~11Bは、本明細書に記載される前記ex vivo/in vitro透過性アッセイにおいて測定された、本開示の製剤を含む化合物Iの透過を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
定義
本発明の組成物及び方法を説明する前に、本発明の範囲は、特定のプロセス、組成物、又は方法論が変化し得るので、説明されるこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書において使用される専門用語は、特定のバージョン又は実施態様を説明する目的のみのためであり、及び添付の特許請求の範囲のみによって限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法又は物質を、本発明の実施態様の実践又は試験に使用し得るが、より好ましい方法、装置、及び物質を、これから説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、記載されていると特定される態様に関して、参照により組み込まれる。本明細書のいかなる開示内容も、先行発明が存在するとして本発明がそのような開示に先行する権利が無いという承認として解釈されるべきではない。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形“a”、“an”、及び“the”は、文脈上そうでないことを明らかに指示しない限り、複数形の言及を含むことにもまた注意しなければならない。従って、例えば、“JAK阻害剤”についての言及は、当業者に公知の1つ以上のJAK阻害剤及びその同等物などについての言及である。
【0013】
“含む(including)”、“含有する(containing)”、又は“特徴づけられる(characterized by)”と同義である転換語“含む(comprising)”は、包括的又はオープンエンドであり、及び追加の、列挙されない(unrecited)要素又は方法ステップを排除するものではない。対照的に、転換語“からなる(consisting of)”は、特許請求の範囲で特定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分を除外する。転換語“から本質的になる(consisting essentially of)”は、特許請求の範囲の及ぶ範囲を、特許請求の範囲に記載された発明の“基本的な及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの”と特定された物質又はステップに限定する。用語“含む(comprising)”を、転換語として使用する実施態様又は特許請求の範囲において、そのような実施態様は、用語“含む(comprising)”を用語“からなる(consisting of)”又は“から本質的になる(consisting essentially of)”に置き換えることも想定され得る。本開示の組成物及び方法は、開示された成分を含み、開示された成分から本質的になる、又は開示された成分からなり得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語“約(about)”は、それが使用される数値のプラスマイナス10%を意味する。従って、約50%は、45%~55%の範囲を意味する。
【0015】
治療薬と共に使用される場合、“投与する(administering)”は、前記治療薬を患者に投与することを意味し、当該治療薬は、標的とされている組織に良い影響を与える。従って、本明細書で使用される場合、用語“投与する(administering)”は、本明細書に記載されるJAK阻害剤化合物と共に使用される場合、JAK阻害剤化合物を標的組織内又は標的組織上に供給することを含むが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語“その誘導体(a derivative thereof)”は、その塩、その薬学的に許容される塩、そのエステル、その遊離塩基形態、その溶媒和物、その重水素化誘導体、その水和物、そのN-オキシド、そのクラスレート、そのプロドラッグ、その多形体、その立体異性体、その幾何学異性体、その互変異性体、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、そのラセミ体、その立体異性体の混合物、その同位体(例えば、トリチウム、重水素)、又はそれらの組み合わせである。
【0017】
本明細書に記載される化合物は、不正中心を含むことができ、及び従って、エナンチオマーとして存在し得る。本明細書の実施態様による化合物が、2つ以上の不正中心を有する場合、それらはジアステレオマーとして存在し得る。本発明は、d-異性体及びl-異性体に加えて、ジアステレオマー、エナンチオマー、及びエピマー形態、並びにそれらの混合物を含む全ての立体化学異性体形態を包含することを理解されたい。化合物の個々の立体異性体を、キラル中心を含む市販の出発物質から合成的に、又はエナンチオマー生成物の混合物を調製した後に、ジアステレオマーの混合物に変換した後、分離若しくは再結晶、クロマトグラフィー技術、キラルクロマトグラフィーカラムでのエナンチオマーの直接分離、あるいは当技術分野で既知の任意の他の適切な方法などによって調製し得る。特定の立体化学の出発物質は、市販であるか、又は当技術分野で既知の技術によって製造及び分離することができる。さらに、本明細書に開示される化合物は、幾何学異性体として存在し得る。本発明は、全てのシス(cis)、トランス(trans)、シン(syn)、アンチ(anti)、エントゲーゲン(entgegen)(E)、及びツザメン(zusammen)(Z)異性体、並びにそれらの適切な混合物を含む。さらに、化合物は、互変異性体として存在することができ、全ての互変異性体は本発明により提供される。さらに、本明細書に開示される化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態だけでなく、非溶媒和形態で存在し得る。一般的に、前記溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0018】
個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いるラセミ化合物の分離が含まれる。あるいは、前記ラセミ化合物(又はラセミ前駆体)を、適切な光学活性化合物、例えば、アルコール、又は前記化合物が酸性若しくは塩基性部位を含む場合には、酒石酸若しくは1-フェニルエチルアミンなどの酸若しくは塩基と反応し得る。前記得られたジアステレオマー混合物を、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶によって分離し、並びにジアステレオマー異性体の一方又は両方を、当業者に周知な方法で対応する純粋なエナンチオマーに変換した。本明細書の実施態様のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)を、0~50%のイソプロパノール、典型的には2~20%、及び0~5%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含む炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなる移動相を有する不斉樹脂上でのクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを用いて、エナンチオマー的に豊富化された(enantiomerically enriched)形態で得た。溶出液を濃縮すると、濃縮された混合物が得られる。立体異性体集合体を、当業者に既知の従来技術によって分離し得る。例えば、Ernest L. Elielによる“Stereochemistry of Organic Compounds”(Wiley, New York, 1994)を参照する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語“実質的に含まない(substantially free)”は、単独又は組み合わせて、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GG/MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又は液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)などの分析法の検出限界内に異性体が存在しないことを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語“状態(condition)”は、正常な機能を損ない、典型的には、特徴的な兆候若しくは症状によって示され、及びヒト若しくは動物の生命の期間あるいは質の低下を引き起こす、ヒト若しくは動物の身体又はその部分の異常な状態を反映する点において、用語“障害(disorder)”、“症候群(syndrome)”、及び“疾患(disease)”と一般的に同義であることを意図され、並びに互換的に使用される。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語“薬学的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salt)”は、哺乳類などの患者への投与に許容される塩基又は酸から調製される塩を指す。用語“薬学的に許容される塩”は、アルカリ金属塩、及び遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために通常使用される塩を含む。前記塩の性質は、薬学的に許容されるものであるならば、重要ではない。そのような塩を、薬学的に許容される無機又は有機塩基、及び薬学的に許容される無機又は有機酸から得ることができる。
【0022】
本明細書の実施態様の化合物の適切な薬学的に許容される酸付加塩を、無機酸又は有機酸化から調製し得る。これらの塩の全てを、例えば、化合物を適切な酸又は塩基で処理することにより、本明細書の実施態様の対応する化合物から従来の手段によって調製し得る。
【0023】
薬学的に許容される酸には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸、及び二リン酸;並びに有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ガラクト酸(galactic acid)、ガラクツロン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、粘液酸、アスコルビン酸、シュウ酸、パントテン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、キシナホ酸(1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、ナパジシル酸(1,5-ナフタレン二スルホン酸)などを含む。
【0024】
本明細書の実施態様による他の好ましい塩は、第4級のアンモニウム化合物であり、対応するアニオン(X-)は、N原子の正電荷と関連している。X-は、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの多様な無機酸の陰イオン、又は例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩のような有機酸の陰イオンであり得る。X-は、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、又はトリフルオロ酢酸塩から選択されるアニオンである。より好ましくは、X-は、塩化物、臭化物、トリフルオロ酢酸塩、又はメタンスルホン酸塩である。
【0025】
本明細書の実施態様の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態の両方で存在し得る。溶媒和物(solvate)という用語を、本明細書の実施態様の化合物及び一定の1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子を含む分子複合体を記載するために本明細書で使用する。水和物(hydrate)という用語は、前記溶媒が水である場合に用いられる。溶媒和物の形態の例は、水、アセトン、ジクロロメタン、2-プロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、又はそれらの混合物と会合している本明細書の実施態様の化合物を含むが、これらに限定されない。本明細書の実施態様において、1つの溶媒和分子が、水和物などの本明細書の実施態様の化合物の1つの分子と会合できることが特に考えられる。
【0026】
本明細書のいくつかの実施態様において、1つの溶媒分子が、水和物などの本明細書に記載された化合物の1つの分子と会合し得る。いくつかの実施態様において、二水和物などの1つより多い溶媒分子が、本明細書に記載される化合物の1つの分子と会合し得る。さらに、本明細書のいくつかの実施態様において、半水和物などの1つより少ない溶媒分子が、本明細書に記載される化合物の1つの分子と会合し得る。さらに、本明細書の実施態様の溶媒は、化合物の非溶媒和形態の生物学的有効性を保持する、本明細書に記載の化合物の溶媒和物として考えられる。
【0027】
本明細書で使用される用語“対象(subject)”は、ヒト、並びに野生動物、家畜動物、及び農業用動物などのヒト以外の脊椎動物を含むが、これらに限定されない。特定の実施態様において、本明細書に記載される前記対象は、動物である。特定の実施態様において、前記対象は、哺乳類である。特定の実施態様において、前記対象は、ヒトである。特定の実施態様において、前記対象は、ヒト以外の動物である。特定の実施態様において、前記対象は、ヒト以外の哺乳類である。特定の実施態様において、前記対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、又はヤギなどの家畜化された動物である。特定の実施態様において、前記対象は、イヌ又はネコなどのコンパニオンアニマルである。特定の実施態様において、前記対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、又はヤギなどの家畜動物である。特定の実施態様において、前記対象は、げっ歯類、イヌ、又はヒト以外の霊長類などの研究動物である。特定の実施態様において、前記対象は、トランスジェニックマウス又はトランスジェニックブタなどのヒト以外のトランスジェニック動物である。
【0028】
組成物の“治療的に有効な(therapeutically effective)”若しくは“治療的に有効な量(therapeutically effective amount)”又は“有効量(effective amount)”という語句は、所望の効果(例えば、不快感及び/又は皮膚の異常の外観を軽減する)を達成するために計算された所定量である。本発明の方法により考えられた前記活性は、必要に応じて、医療的治療及び/又は予防的治療の両方を含む。治療的及び/又は予防的効果を得るために本発明に従って投与される化合物の特定の容量は、もちろん、例えば、投与される化合物、投与の経路、及び治療される状態を含む、症例を取り囲む特定の状況によって決定される。本発明の化合物の治療的に有効な量は、典型的に、生理学的に許容される賦形剤の組成物中に投与された場合、組織において、有効な局所濃度を達成するのに十分であるような量である。
【0029】
別段の指示がない限り、用語“皮膚(skin)”は、角質層、表皮及び真皮からなり、並びに皮下組織の上にある、身体の外側の外皮又は被層を意味する。
【0030】
本明細書で使用される用語“治療する(treat)”、“治療される(treatエd)”、又は“治療している(treating)”は、医療的治療及び予防的又は防止手段の両方を指し、目的は、望ましくない生理学的状態、障害、又は疾患を予防又は遅くする(軽減する)こと、又は有益な若しくは所望の臨床結果を得ることである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果は、症状の緩和;状態、障害若しくは疾患の程度の減少;状態、障害若しくは疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);状態、障害若しくは疾患の発症の遅延又は進行の遅延;状態、障害若しくは疾患の改善;及び検出可能であるか若しくは検出不可能であるかかかわらず、状態、障害若しくは疾患の回復(部分的であるか全体的であるかにかかわらず)、又は増強若しくは改善を含むが、これらに限定されない。治療は、過度の副作用を伴わず、臨床的に重要な反応を引き出すことを含む。
【0031】
本明細書の実施態様は、JAK1及び/又はJAK3活性を阻害する、化合物及び医薬組成物、並びに前記化合物を使用する方法に向けられている。いくつかの実施態様は、本明細書に記載の前記JAK1及び/又はJAK3阻害化合物を局所投与することによる、患者の疾患の治療方法を含む。
【0032】
治療の方法
一態様において、本開示は、ヒト対象における免疫不全に起因する皮膚状態を治療する方法を提供する。前記方法は、化合物Iの構造を有するエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(以下、“化合物I”と呼ぶ)又はその薬学的に許容される誘導体を約0.5%~約4%含む組成物を、皮膚状態により冒された対象の部位に局所投与することを含む。
【0033】
化合物Iの組成物の局所投与は、所望の効果を達成するために治療上有効である。治療上所望の効果は、皮膚状態に関連する皮膚病変のサイズ、罹患した身体全体の面積、重症度、赤み、薄片状(flakiness)、不快感、かゆみ、痛みのうち1つ以上の改善を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本開示の別の態様は、ヒト対象における免疫不全に起因する皮膚病変の重症度及び範囲を軽減する方法を提供する。前記方法は、化合物I又はその薬学的に許容される誘導体、塩、若しくは溶媒和物を約0.5%~4%含む組成物を、免疫不全を有するヒト対象に局所投与することを含む。化合物Iの組成物の局所投与は、所望の効果、例えば、皮膚病変形成の予防又は軽減、皮膚病変形成の重症度の予防又は軽減を達成するために治療上有効である。
【0035】
本開示のこれらの態様に従って、本明細書に開示される方法及び製剤に従って治療される皮膚状態は、アトピー性皮膚炎、白斑、又は円形脱毛症から選択される。
アトピー性皮膚炎(AD)は、複雑な遺伝学的、免疫学的、及び環境的相互作用に起因する、一般的で慢性的な皮膚障害である。ADは、環境刺激に関連した炎症及び皮膚バリア障害を伴う、慢性的で再発性の掻痒性炎症性皮膚疾患である。ADにおいて、通常、バクテリア、ウイルス、及びアレルゲンなどの異物が体内に侵入するのを防ぐように作用する皮膚の外層(角膜層)が、弱く、及び体内の免疫細胞がこれらの異物に反応することにより引き起こされる炎症をより受けやすくなる。ADを、症状の皮膚の範囲及び重症度に基づき、軽度、中程度、又は重度として特徴づけ得る。軽度のADは、皮膚の狭い範囲に発症し、及びたまにかゆみ及び赤みを伴い得る。しかしながら、中程度及び重度のADは、皮膚の広い範囲を覆い、及びかゆみを伴うことが多く、強いかゆみを伴う期間もある。
【0036】
ADの患者の病変皮膚は、高レベルの炎症誘発性のサイトカイン及び疾患の病態生理を伝搬するCD4+ T細胞の細胞浸潤を含む。ADにおける前記サイトカインの微小環境は、複雑であり、患者は、疾患の異なる段階において異なるサイトカインシグネチャーを示す。
【0037】
本明細書に記載される場合、シグナル伝達物質の前記ヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーは、様々なサイトカインが、JAKシグナル伝達物質及び転写活性化因子(STAT)経路を介して生物学的効果を発揮するので、有利な治療標的である。前記JAKファミリーは、4つの細胞質チロシンキナーゼ:JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2を含み;7つのSTATタンパク質:STAT 1、2、3、4、5a、5b、及び6である。前記JAK-STATシグナリング分子は、自己免疫反応及び炎症反応に関与する多数のサイトカインの下流で相互作用する。ADは、特にIL-4、IL-13、IL-15、及びインターフェロンガンマなどのサイトカインによって引き起こされる。これらのサイトカインの全ては、JAK1及びJAK3により主に制限されている。そのため、本明細書に記載のJAK1/3阻害剤、すなわち化合物Iの投与は、ADに見られる関連する炎症を制御し、及び皮膚バリア機能を回復させることに特に価値がある。本明細書に記載の前記JAK1/3阻害剤は、免疫系が毛包を攻撃して脱毛を引き起こす脱毛症、並びにメラノサイトの消失及び皮膚色素沈着を伴う白斑などの他の慢性的な皮膚状態の治療にも有用である。
【0038】
以下の開示及び説明は、ヤヌスキナーゼ1(JAK1)及びヤヌスキナーゼ3(JAK3)の強力な阻害剤である化合物Iを含む組成物の治療的に有効量の皮膚への局所投与が、アトピー性皮膚炎、白斑、及び円形脱毛症の治療に有効であるという臨床観察に少なくとも部分的に基づいて提供される。化合物Iは、キナーゼドメイン内の結合部位でアデノシン三リン酸と競合し、その結果、JAKのリン酸化反応及び活性化、STATのリクルートメント、並びに遺伝子発現の下流効果(downstream effect)を阻害する。並行して、化合物Iが適切な標的部位に確実に送達され、並びに投与量の完全性、薬物輸送、及び活性持続時間が維持され、及び患者の症状を改善するのに十分である、様々な製剤を開発した。追加の研究では、物理的及び化学的安定性を確保し、並びに潜在的なエンドユーザーに対する美的魅力(aesthetic appeal)を評価するために行われた。
【0039】
化合物Iは、米国特許出願第20190135808号(実施例117)に開示されており、その全体が参照により、本明細書に組み込まれる。化合物Iは、C182153の化学式及び335.40g/molの分子量を有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、“化合物I”は、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートを指し、及びエチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレートの遊離塩基形態及びいくらかの薬学的に許容される塩の両方を含む。例えば、化合物Iを、対象に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの酸付加塩、又はギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、若しくはサリチル酸などの有機酸として投与し得る。本明細書で使用される場合、“化合物I”は、結晶性、半結晶性、又は非晶性の化合物Iを含む。結晶性又は半結晶性の化合物Iは、化合物Iの薬学的に許容される多形又は化合物Iの多形の混合物の形態であり得る。
【0041】
記載される化合物Iの組成物の治療上有効な量又は治療適用は、EASI(湿疹面積及び重症度指数)又はその修正版(例えば、頭部(首、顔、頭皮)、手のひら、足の裏、鼠径部、及び生殖器などの特定の身体の部位の評価を除く)に従う、AD関連症状の重症度及び範囲を軽減するのに有効な化合物Iの量を含む。EASIの修正版は、例えば、胴体、上肢(腕)、及び下肢(足)の評価を含み得る。症状の程度を、評価された体の各部位に、その部位の病変の割合に基づいて、0~6のスコアを与えることによって測定し得る。例えば、面積スコア(Area Score)は、以下:(0):0%;(1):1%~9%;(2):10%~29%;(3):30%~49%;(4):50%~69%;(5):70%~89%;(6):90%~100%が与えられ得る。前記重症度を、4つの特定の症状:紅斑(Serythema)、浮腫/丘疹(Sedema/papulation)、剥脱(Sexcoriation)、及び苔癬化(Slichenification)のそれぞれの重症度を提供することにより、0(最小)~3(最大)のスケールで測定し得る。
【0042】
EASIスコアを、例えば、胴体(trunk)、上肢(upper extremities)、及び下肢(lower extremities)を評価する場合、以下の式で算出することができる:
【0043】
従って、本明細書に開示の方法に従い、ADなどの皮膚状態を罹患した対象の部位への約0.5%~約4%の化合物Iを含む組成物の局所投与は、ベースラインスコア、すなわち、治療を始める前のスコアからの対象のEASIスコアにおける、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または75%を超える改善をもたらす。
【0044】
別の実施態様において、化合物Iの治療上有効な量は、自己報告のPP-NRS(ピーク時掻痒数値評価スケール)に応じた、かゆみによって引き起こされる皮膚状態の不快感を軽減するのに有効な量である。前記PP-NRSは、0(かゆみなし)~10(最悪のかゆみ)の尺度に基づき、24時間にわたるピーク時の掻痒症又は最悪のかゆみを測定するように設計される。いくつかの実施態様において、ADなどの皮膚状態を罹患した対象の部位への約0.5%~約4%の化合物Iを含む組成物の局所投与は、PP-NRSスケールにおいて、少なくとも1ポイントの減少、少なくとも2ポイントの減少、少なくとも3ポイントの減少、又は3ポイントを超える減少をもたらす。
【0045】
別の実施態様において、治療上有効な量の化合物Iは、皮膚状態により影響を受ける体表面積(BSA)の全体量を減少させるのに有効な量である。皮膚状態、例えば、ADによる影響を受けるBSAは、臨床医若しくは臨床研究者、医師、又は他の医療専門家によって、患者の全手形(指と親指をあわせたもの)の面積が全BSAの1%を構成すると推定する、ハンドプリント法(handprint method)を使用して推定される。いくつかの実施態様において、ADなどの皮膚状態を罹患した対象の部位への約0.5%~約4%の化合物Iを含む組成物の局所投与は、前記状態に罹患される対象の全BSAの顕著な減少をもたらす。
【0046】
別の実施態様において、化合物I治療上有効な量は、臨床医若しくは臨床研究者、医師、又は他の医療専門家などの独立した人(例えば、治験責任医師による全体的評価又はIGA)によって、評価される病変の全体的な外観を改善する量である。IGAスコアリングは、例えば、以下の基準に基づき、外観の数値表現を提供し得る。
【0047】
0-クリア:アトピー性皮膚炎の炎症の兆候がない(紅斑なし、浮腫/丘疹なし、苔癬化なし、滲出(oozing)/痂皮形成(crusting)なし)。炎症後の色素過剰及び/又は色素沈着減少が存在し得る。
1-ほとんどクリア:ほとんど知覚できない紅斑、ほとんど知覚できない浮腫/丘疹、及び/又は最小限の苔癬化。滲出又は痂皮形成はなし。
2-軽度:軽度だが明確な紅斑(ピンク色)、軽度だが明確な浮腫/丘疹、及び/又は軽度だが明確な苔癬化。滲出又は痂皮形成はなし。
3-中程度:明確に知覚できる紅斑(暗赤色)、明確に知覚できる浮腫/丘疹、及び/又は明確に知覚できる苔癬化。滲出又は痂皮形成は、存在し得る。
4-重度:顕著な紅斑(深紅又は真っ赤)、顕著な浮腫/丘疹、及び/又は顕著な苔癬化。疾患は、広範囲に及ぶ。滲出又は痂皮形成は、存在し得る。
【0048】
いくつかの実施態様において、ADなどの皮膚状態を罹患した対象の部位への約0.5%~約4%の化合物Iを含む組成物の局所投与は、対象の前記IGAスコアの減少をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の化合物Iの組成物による治療は、対象のIGAスコアの少なくとも1ポイントの減少をもたらす。
【0049】
さらに、又は別に、化合物Iの治療上有効な量は、病変の発生の頻度又は重症度を減少させ、例えば、病変がより小さく、病変がより少なく、又は病変のかゆみ若しくは目立ちがより減少させるのに十分な量である。
【0050】
化合物Iの治療上有効な量は、局所製剤で投与された場合、皮膚組織における有効な局所濃度を達成するのに十分であるような量である。任意の実施態様において、化合物Iの治療上有効な量は、投与部位又はその近くにおいて、炎症誘発性のサイトカインのレベル及びCD4+T細胞の細胞浸潤物を減少させる。任意の実施態様において、化合物Iの治療上有効な量は、投与部位又はその近くにおいて、1つ以上のIL-4、IL-13、IL-15、及びインターフェロンガンマのレベルを減少させる。任意の実施態様において、化合物Iの治療上有効な量は、投与部位又はその近くにおいて、フィラグリン発現を増加させる。
【0051】
特定の投与量及び投与計画は、病変の重症度、不活性成分に対する感受性、化合物Iに対する感受性、病変の発生の頻度、有害事象の頻度及び/又は重症度、体重、年齢、性別、他の疾患又は状態との併存症、ADを治療するようなアジュバント療法の使用、他のADに関連しない薬剤の使用などの、これらに限定されない変数に応じて対象ごとに異なり得る。
【0052】
例えば、化合物Iを、それを必要とする対象に約20mg/日~約320mg/日を投与することができ、約40mg/日~約280mg/日、約80mg/日~約240mg/日、約120mg/日~約200mg/日、約40mg/日~約160mg/日、約80mg/日~約160mg/日、又は約160mg/日~約320mg/日を含み得る。化合物Iの投与を、1日1回、1日2回、1日3回、又はそれ以上の頻度で行い得る。任意の実施態様において、上記のような1日当たりの投与量を、1日の投与の回数で割り、1回の投与当たりの投与量を得ることができる。例えば、約40mg/日~約320mg/日の投与量は、1日2回適用された場合、約20mg/投与~約160mg/投与の投与量に相当する。
【0053】
代わりに、投与指示は、投与毎に提供され得る。従って、さらに別の実施態様において、本開示は、化合物I又はその薬学的に許容される誘導体、塩、若しくは溶媒和物を、1回の投与当たり約10mg~約160mgを対象に局所投与することを含む、それを必要とする対象におけるアトピー性皮膚炎、白斑、又は円形脱毛症を治療する方法を提供する。局所投与による化合物Iの投与を、1日1回、1日2回、1日3回、又はそれ以上の頻度で行い得る。投与間のそれぞれの間隔は、他の間隔と同様でもよく、異なってもよい。例えば、1日2回投与する場合、2回目の投与は、1回目の投与の約12時間後に行い得る。代わりに、前記投与を、午前6時~午後10時などの起きている時間のみに等間隔に実施し得る。適切な投与量は、1回の投与当たり約10mg~約180mgを含み、約20mg/投与、約60mg/投与、約80mg/投与、約100mg/投与、約120mg/投与、及び約140mg/投与を含む。当業者は、化合物Iが投与される対象にとって好ましい治療を達成するために、投与量及び投与間隔を最適化することができるであろう。
【0054】
化合物Iを、局所用溶液、軟膏、クリーム、ゲル、ゲルクリーム、フォームなどの局所製剤の形態で対象に投与し得るが、これらに限定されない。例えば、前記局所製剤は、局所用溶液であり得る。前記局所製剤を、例えば、皮膚の病変又は病変が通常現れる場所の皮膚に直接適用し得る。局所製剤を、例えば、スポイトを用いることを通じて、皮膚に適用し得る。任意に、及び必要に応じて、ポンピング機構は、プラスチックボトル/キャップをさらに供給し、前記キャップを除去し、及びスプレーとして局所製剤を供給するポンピング機構と確実に取り換え得る。投与において、前記局所製剤を、皮膚にすりこみ、化合物Iの患部及び皮膚層への吸収を促進し得る。皮膚に局所投与する局所製剤の量を、製剤における化合部Iの所望の投与量及び化合物Iの濃度に基づき計算し得る。一般的に、化合物Iを含む局所製剤の1回の投与当たり約0.25mL~約8mLを、対象へ局所投与し得る。
【0055】
化合物Iは、約0.01%w/wから選択されたビヒクル又はビヒルク中の室温で最大の平衡飽和溶解度を表す最大の濃度までの濃度で局所製剤中に存在し得る。当業者は、任意に選択された溶媒又は溶媒の混合物における、化合物Iの最大の平衡飽和溶解度を容易に決定し得る。特に有用な実施態様において、化合物Iは、その最大の平衡飽和溶解度の約85%を表す濃度で、又はそれ以下で存在し得る。特に、化合物Iは、約0.01%w/w~約10%w/w、例えば、約1%w/w、約2%w/w、約3%w/w、約4%w/w、約5%w/w、約6%w/w、約7%w/w、約8%w/w、約9%w/w、約10%w/wの濃度で局所製剤中に存在し得る。化合物Iは、約0.01%w/w~約4%w/w、例えば、約0.5%w/w~約4%w/w、約0.5%w/w~約3.5%w/w、約0.5%w/w~約2%w/w、約1.5%w/w~約2.5%w/w、又は約1%w/w~約2%w/wの濃度で局所製剤中に存在し得る。任意の実施態様において、化合物Iは、約0.5%w/w、約0.6%w/w、約0.7%w/w、約0.8%w/w、約0.9%w/w、約1.0%w/w、約1.1%w/w、約1.2%w/w、約1.3%w/w、約1.4%w/w、約1.5%w/w、約1.6%w/w、約1.7%w/w約1.8%w/w、約1.9%w/w、約2.0%w/w、約2.1%w/w、約2.2%w/w、約2.3%w/w、約2.4%w/w、約2.5%w/w、約2.6%w/w、約2.7%w/w、約2.8%w/w、約2.9%w/w、約3.0%w/w、約3.1%w/w、約3.2%w/w、約3.3%w/w、約3.4%w/w、約3.5%w/w、約3.6%w/w、約3.7%w/w、約3.8%w/w、約3.9%w/w、約4.0%w/w、約4.1%w/w、約4.2%w/w、約4.3%w/w、約4.4%w/w、約4.5%w/w、約4.6%w/w、約4.7%w/w、約4.8%w/w、約4.9%w/w、又は約5.0%w/wの濃度で局所製剤中に存在し得る。本明細書で使用される場合、及び他に特に指定がない限り、%w/wは、製剤の総質量を100%w/wとした場合、指定された成分が一部である製剤の総質量と比較した場合の、指定された成分の質量%を指す。化合物Iは、遊離塩基若しくは塩として局所製剤中に、溶媒和形態、非溶媒和形態、又は複合形態を含むが、これらに限定されない任意の物理的形態で局所製剤中に存在し得る。
【0056】
一態様において、局所化合物Iによる、治療を必要とする対象におけるアトピー性皮膚炎、白斑、及び円形脱毛症のうちの1つ以上の治療を、例えば、未治療の病変と比較した場合、病変の形成を予防するか、又は形成する病変の重症度を軽減するなどの皮膚状態の症状の継続中の治療及び予防のために、長期的に実施し得る。別の態様において、投与は、症状が生じるか又は生じると予測される場合、必要に応じて実施し得る。任意の実施態様において、化合物Iを、症状の発生時に追加の投与及び/又は投与の増加を伴い、長期的に投与し得る。症状の例は、皮膚の乾燥及び/又は鱗状の皮膚、かゆみ、皮膚の発赤、皮膚感染、及び皮膚の出血又は皮膚の滲出を含むが、これらに限定されない。任意の実施態様において、投与量は、症状の重症度に基づいて増加又は減少し得る。
【0057】
アトピー性皮膚炎の治療のための1つの例示的な投与計画は、アトピー性皮膚炎に罹患した対象の領域への1日2回の2%の化合物I製剤の約1mL~約8mLの局所投与を含み、a)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約1mL;b)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約2mL;c)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約3mL;d)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約4mL;e)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約5mL;f)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約6mL;g)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約7mL;及びh)1日2回の2%w/wの化合物I製剤の約8mLの適用を含む。
【0058】
別の例示的な投与計画は、アトピー性皮膚炎を罹患した対象の領域への1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約1mL~約6mLの局所投与を含み、a)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約1mL;b)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約2mL;c)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約3mL;d)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約4mL;e)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約5mL;及びd)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約6mLの適用を含む。
【0059】
別の例示的な投与計画は、より頻繁により少量の化合物Iの投与を含み、例えば、アトピー性皮膚炎を罹患している対象の領域に、1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約1mL~約6mLの局所投与を含み、a)1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約1mL;b)1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約2mL;c)1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約3mL;d)1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約4mL;e)1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約5mL;f)1日3回の0.5%w/wの化合物I製剤の約6mL;g)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約7mL;及びh)1日3回の2%w/wの化合物I製剤の約8mLの適用を含む。
【0060】
さらに別の例示的な投与計画は、アトピー性皮膚炎を罹患した対象の領域への1日4回の0.5%w/wの化合物I製剤の約1mL~約8mLの局所投与を含み、a)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約1mL;b)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約2mL;c)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約3mL;d)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約4mL;e)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約5mL;f)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約6mL;g)1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約7mL;及び1日2回の0.5%w/wの化合物I製剤の約8mLの適用を含む。
【0061】
任意の実施態様において、化合物Iを、別のAD関連療法の併用療法又はアジュバント療法として使用し得る。例えば、治療上有効な量の化合物I又はその医薬的に許容される誘導体、塩、若しくは溶媒和物を、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4阻害剤、デュピルマブ、抗菌剤、及びインターロイキン(IL)-4/IL-13のシグナル伝達を遮断するヒト化モノクロナール抗体の1つ以上と組み合わせて、対象に局所投与することを含み、それを必要とする対象におけるアトピー性皮膚炎、白斑、又は円形脱毛症の治療方法である。
【0062】
医薬製剤
本開示の別の態様は、エチル(R)-4-((1-(2-シアノアセチル)ピペリジン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(化合物I)又はその薬学的に許容される誘導体、塩、若しくは溶媒和物、並びに1次溶媒及び1つ以上の共溶媒を含むビヒクルを含む局所製剤に向けられている。前記製剤は、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の抗菌剤、又は希釈剤、界面活性剤、乳化剤、エモリエント剤、安定剤、粘度調整剤、着色剤、香料、若しくはこれらの任意の組み合わせなどの、これらに限定されない任意の他の所望の賦形剤をさらに含み得る。特に有用な実施態様において、前記局所製剤は、エモリエント剤を含む。
【0063】
化合物Iは、約0.01%w/wの濃度から選択されたビヒクル又はビヒルク中の室温で最大の平衡飽和溶解度を表す最大の濃度までの濃度で局所製剤中に存在し得る。当業者は、任意に選択された溶媒又は溶媒の混合物における、化合物Iの最大の平衡飽和溶解度を容易に決定し得る。特に有用な実施態様において、化合物Iは、その最大の平衡飽和溶解度の約85%を表す濃度で、又はそれ以下で存在し得る。特に、化合物Iは、約0.01%w/w~約10%w/w、例えば、約1%w/w、約2%w/w、約3%w/w、約4%w/w、約5%w/w、約6%w/w、約7%w/w、約8%w/w、約9%w/w、約10%w/wの濃度で局所製剤中に存在し得る。化合物Iは、約0.01%w/w~約4%w/w、例えば、約0.5%w/w~約4%w/w、約0.5%w/w~約3.5%w/w、約0.5%w/w~約2%w/w、約1.5%w/w~約2.5%w/w、又は約1%w/w~約2%w/wの濃度で局所製剤中に存在し得る。任意の実施態様において、化合物Iは、約0.5%w/w、約0.6%w/w、約0.7%w/w、約0.8%w/w、約0.9%w/w、約1.0%w/w、約1.1%w/w、約1.2%w/w、約1.3%w/w、約1.4%w/w、約1.5%w/w、約1.6%w/w、約1.7%w/w約1.8%w/w、約1.9%w/w、約2.0%w/w、約2.1w/w、約2.2%w/w、約2.3%w/w、約2.4%w/w、約2.5%w/w、約2.6%w/w、約2.7%w/w、約2.8%w/w、約2.9%w/w、約3.0w/w、約3.1%w/w、約3.2%w/w、約3.3%w/w、約3.4%w/w、約3.5%w/w、約3.6%w/w、約3.7%w/w、約3.8%w/w、約3.9w/w、約4.0%w/w、約4.1%w/w、約4.2%w/w、約4.3%w/w、約4.4%w/w、約4.5%w/w、約4.6%w/w、約4.7%w/w、約4.8w/w、約4.9%w/w、又は約5.0%w/wの濃度で局所製剤中に存在し得る。本明細書で使用される場合、及び他に特に指定がない限り、%w/wは、製剤の総質量を100%w/wとした場合、指定された成分が一部である製剤の総質量と比較したときの、指定された成分の質量%を指す。化合物Iは、遊離塩基若しくは塩として局所製剤中に、溶媒和形態、非溶媒和形態、又は複合形態を含むが、これらに限定されない任意の物理的形態で局所製剤中に存在し得る。
【0064】
当業者に理解されるように、いくつかの賦形剤は、複数の機能を果たし得る。例えば、PEG-400は、溶媒及びエモリエント剤として機能し得る。本明細書に開示される製剤成分の組み合わせは、噴霧性及び従って展延性の必要性のバランスを取りながら、溶解度、保湿/エモリエント効果を最大にするように選択される。
【0065】
本明細書に記載の前記局所製剤は、1次溶媒を含み得る。適切な一次溶媒の例は、1つ以上のポリエチレングリコール(例えば、PEG-400、PEG-300)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えば、TRANSCUTOLTMP若しくはHP)、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0066】
特に有用な実施態様において、前記1次溶媒は、ポリエチレングリコールを含む。本明細書で使用する場合、前記用語“ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)”は、式-O-CH2-CH2-のエチレングリコールモノマーユニットを含むポリマーを指す。適切なポリエチレングリコールは、ポリマー分子の各末端に遊離ヒドロキシ基を有してもよく、又は低級アルキル(例えば、メチル基)でエーテル化された1つ以上のヒドロキシ基を有し得る。適切なポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール-200(PEG-200)、ポリエチレングリコール-300(PEG-300)、及びポリエチレングリコール-400(PEG-400)を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、前記ポリエチレングリコール溶媒は、主にPEG-400であるか、又はPEG-400及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物を含む。名称中のダッシュに続く数字は、ポリマーの平均分子量を指す(すなわち、PEG-400は、約400g/molの平均分子量を持つ)。いくつかの実施態様において、Croda(米国ニュージャージー州エジソン)のポリエチレングリコールのSUPER REFINEDTMグレードを、使用する。
【0067】
前記1次溶媒は、局所製剤の少なくとも約50w/w%を構成し得る。例えば、前記局所製剤の1次溶媒は、約50w/w%~約90w/w%、約65w/w%~約90w/w%、約60w/w%~約80w/w%、又は約65w/w%~約70w/w%を含むことができ、その中の任意の濃度又は濃度範囲を含み得る。前記1次溶媒が、ポリエチレングリコール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物を含む場合、前記1次溶媒は、約40質量%~約50質量%のポリエチレングリコール(例えば、約40w/w%、約42w/w%、約44w/w%、約46w/w%、約48w/w%、又は約50w/w%、並びに約40w/w%~42w/w%、約42w/w%~約44w/w%、約44w/w%~約46w/w%、及び約46w/w%~約48w/w%、及び約48w/w%~約50w/w%などのこれらの間の任意の範囲)を含み得る。さらに、又は別に、ポリエチレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの前記比率は、約0.7:1~約1:1であり得る。
【0068】
1つ以上の共溶媒は、局所製剤にも含まれ得る。適切な共溶媒の例は、ジメチルイソソルビド、ベンジルアルコール、エタノール、フェノキシエタノール、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド、水、及びこれらの任意の混合物を含むが、これらに限定されるものではない。特に有用な実施態様において、局所製剤は、約10w/w%~約20w/w%(例えば、約10w/w%、約11w/w%、約12w/w%、約13w/w%、約14w/w%、約15w/w%、約16w/w%、約17w/w%、約18w/w%、約19w/w%、又は約20w/w%)のジメチルイソソルビド;約3w/w%~約6w/w%(例えば、約3w/w%、約4w/w%、約5w/w%、又は約6w/w%)のプロピレングリコール;及び約1w/w%~約3w/w%(例えば、約1w/w%、約2w/w%、又は約3w/w%)のベンジルアルコールを含み得る。合計で、前記1つ以上の共溶媒は、前記局所製剤の約20w/w%~約30w/w%を含み得る。
【0069】
適切な局所製剤は、1つ以上のエモリエント剤を含み得る。一実施態様において、前記エモリエント剤は、グリセロールである。他の適切なエモリエント剤は、モノステアリン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、ダイマー酸ジイソプロピル、マレイン酸変性ダイズ油(maleated soybean oil)、パルミチン酸オクチル、乳酸セチル、リシノール酸セチル、酢酸トコフェロール、酢酸セチル、リノール酸トコフェロール、小麦麦芽油脂肪酸グリセリズ(wheat germ glycerides)、プロピオン酸アラキジル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、プロピレングリコール、リシノール酸プロピレングリコール、ラノリン酸イソプロピル、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル、ジカプリル酸/ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、カプリリルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ドデカノールオクチル、ショ糖脂肪酸エステル、及びヒドロキシステアリン酸オクチルを含むが、限定されない。前記1つ以上のエモリエント剤を、約6w/w%~約10w/w%(例えば、約6w/w%、約7w/w%、約w/w%、約9w/w%、又は約10w/w%)で前記局所製剤に含み得る。
【0070】
酸化防止剤を、約0.01w/w%~約1w/w%、例えば約0.1w/w%~約0.5w/w%の濃度で局所製剤中に含み得る。適切な酸化防止剤の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、並びに没食子酸プロピル(propyl gallate)を含むがこれらに限定されない。特に有用な実施態様において、前記酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエンを含む。
【0071】
任意に、抗菌性保存剤が、存在し得る。適切な抗菌性保存剤の例は、ベンジルアルコール(これも溶媒と考えられ得る)、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、セトリミド、クロロクレゾール、クロロブタノール、グリセリン、プロピレングリコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0072】
本明細書に記載の局所製剤は、好ましくは約100mPa・秒以下、より好ましくは80mPa・秒以下の見かけ粘度を有する。例えば、本明細書に記載の局所製剤は、約1mPa・秒~約100mPa・秒、約1mPa・秒~約80mPa・秒、約5mPa・秒~約60mPa・秒、約10mPa・秒~約80mPa・秒、約10mPa・秒~約40mPa・秒、又は約15mPa・秒~約50mPa・秒の見かけ粘度を持ち得る。
【0073】
治療上有効な種々の局所製剤は、本発明の範囲内として考えられる。一実施態様において、適切な局所製剤は、治療上有効な量の化合物I、その塩、又はその溶媒和物;約200g/mol~約400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物の一方又は両方を含む1次溶媒;ベンジルアルコール、エタノール、及びフェノキシエタノールのうち1つ以上を含む共溶媒;ジメチルイソソルビド;プロピレングリコール;グリセロール;並びに酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約1mPa・秒~約100mPa・秒の見かけ粘度を持ち得る。
【0074】
任意の実施態様において、本開示の適切な局所製剤は、約0.5w/w%~約3.5w/w%の化合物I又は薬学的に許容されるその誘導体;約200g/mol~約400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物の一方又は両方を含む、約68w/w%~約70w/w%の1次溶媒;約2w/w%のベンジルアルコール;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール;約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;並びに約0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約10mPa・秒~約100mPa・秒の見かけの粘度を持ち得る。
【0075】
任意の実施態様において、本開示の適切な局所製剤は、約0.5w/w%~約3.5w/w%の化合物I又は薬学的に許容されるその誘導体;約300g/mol~約400g/molの平均分子量を有する約28w/w%~約34w/w%のポリエチレングリコールの混合物;約35w/w%~約40w/w%のジエチレングリコールモノエチルエーテル;約2w/w%のベンジルアルコール;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール;約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;及びブチル化ヒドロキシトルエンなどの0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約1mPa・秒~約40mPa・秒の見かけの粘度を持ち得る。
【0076】
任意の実施態様において、本開示の適切な局所製剤は、約0.5w/w%~約3.5w/w%の化合物I又は薬学的に許容されるその誘導体;約300g/mol~約400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールからなる約68w/w%~約70w/w%の1次溶媒;約2w/w%のベンジルアルコール;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール;約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;及びブチル化ヒドロキシトルエンなどの約0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約1mPa・秒~約100mPa・秒の見かけの粘度を持ち得る。
【0077】
本開示の追加の例示的な局所製剤は、本明細書の実施例の表1に提供される。
前記局所製剤は、プラスチックキャップ(例えば、ポリプロピレン、HDPE)で閉じられたプラスチックボトル(例えば、HDPE)又はガラスボトルで供給される。前記局所製剤を、例えば、スポイトを用いて肌に適応し得る。任意に、及び必要に応じて、ポンピング機構を、プラスチックボトル/キャップにさらに供給し、前記キャップを除去し、及びスプレーとして局所製剤を供給するポンピング機構と確実に交換し得る。そのため、噴霧可能な製剤は、上記のように、利用されるポンピング/噴霧機構と適合する粘度を示すべきである。当業者は、本明細書に開示される製剤の局所送達のために使用され得る様々な市販のポンプ/スプレーのアクチュエータに精通しているであろう。局所製剤の適応を、連続的な又は定量された噴霧を提供するバルブを介して制御し得る。
【0078】
本明細書に開示される前記局所製剤は、様々な保存条件下で長期間の化学的及び物理的安定性を示した。例えば、本明細書に開示される種々の局所製剤は、HPLCで測定したとき、25℃で60%の相対湿度(RH)及び40℃で75%のRHで保存した場合、最大6ヵ月間安定であることが見出された。特に、本明細書に記載の1つ以上の製剤中の化合物Iの回収率は、25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方で6か月間保存した後で、約95%~約100%に達し得る。これらの条件下で保存した後の肉眼的外観及び顕微鏡像は、依然として変わらないままであり得る。
【0079】
本明細書に開示される前記局所製剤の調製方法は、当業者に既知の任意の適切なものであり得る。例えば、本明細書に開示されるような局所製剤を、アルコール及びグリコール含有溶媒/共溶媒(例えば、ベンジルアルコール、エタノール、フェノキシエタノール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)と追加の任意の酸化防止剤(例えば、BHT)及び/又は抗菌剤と共に秤量することによって調製し得る。これらの成分を、一般に任意の順番で混合し、実質的に同質の混合物を形成し得る。必要であれば、前記混合物を加熱し、溶解を促進し得る。
【0080】
本明細書に開示される局所製剤は、ヤヌスキナーゼシグナル伝達、特にヤヌスキナーゼ1(JAK1)及びヤヌスキナーゼ3(JAK3)のシグナル伝達経路が関与する状態の治療に有用であり得る。そのような状態の例としては、アトピー性皮膚炎、白斑、及び円形脱毛症を含むが、これらに限定されない。適切な製剤は、治療上有効な量の化合物Iを含み得る。
【0081】
有利なことに、前記局所製剤を、複雑な基準のセットを満たすように開発している。最初に、本明細書に記載の前記局所製剤は、製剤及び製剤中の化合物Iの両方において、保存の間中も効力を維持するための優れた物理的及び化学的安定性を示す。さらに、前記製剤は、組織への導入を最小限に抑えつつ、化合物Iの皮膚への十分な浸透を効果的にするために有効量の浸透剤(例えば、ジメチルイソソルビド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコール)を用いて開発されている。さらにまた、前記製剤を、患者のコンプライアンス及び快適性を考慮して、開発している。エモリエント剤の包含は、使用しやすく、化合物Iで治療される基礎疾患の症状を緩和し、及びその結果、患者が製品を使用する可能性が高い製剤を提供する。これらの態様の各々が、組み合わされた場合、現在利用可能でない化合物Iを用いて、種々の皮膚障害及び皮膚状態の治療のための有用な局所製剤を提供する。
【0082】
先に述べたように、本明細書に開示される製剤成分の組み合わせは、噴霧性及び従って展延性の必要性のバランスを取りながら、溶解度、保湿/エモリエント効果を最大にするように選択される。特定の実施態様において、化合物Iの非存在下での製剤の適用により、ヒト対象における免疫不全に起因する皮膚病変の重症度及び範囲の減少がもたらされる。特定の実施態様において、前記製剤は、化合物Iを含むことができ、並びに1次溶媒及び1つ以上の共溶媒を含むことができるビヒクルをさらに含み得る。前記製剤は、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の抗菌剤、抗真菌剤、又は希釈剤、充填剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、エモリエント剤、安定剤、粘度調整剤、着色剤、香料、若しくはそれらの任意の組み合わせなどの、これらに限定されない任意の他の所望の賦形剤をさらに含み得る。特に有用な実施態様において、前記局所製剤は、エモリエント剤を含む。
【0083】
別の実施態様において、化合物Iを欠く前記製剤は、約200g/mol~約400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物の一方又は両方を含む約68w/w%~約70w/w%の1次溶媒;約2w/w%のベンジルアルコール;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール;約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;及び約0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約10mPa・秒~約100mPa・秒の見かけの粘度を持ち得る。
【0084】
別の実施態様において、化合物Iを欠く前記製剤は、約300g/mol~約400g/molの平均分子量を有する約28w/w%~約34w/w%のポリエチレングリコールの混合物;約35w/w%~約40w/w%のジエチレングリコールモノエチルエーテル;約2w/w%のベンジルアルコール;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール;約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;及びブチル化ヒドロキシトルエンなどの約0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約1mPa・秒~約40mPa・秒の見かけの粘度を持ち得る。
【0085】
さらに別の実施態様において、化合物Iを欠く製剤は、約300g/mol~約400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールからなる約68w/w%~約70w/w%の1次溶媒;約2w/w%のベンジルアルコール;約15w/w%のジメチルイソソルビド;約5w/w%のプロピレングリコール;約8w/w%~約10w/w%のグリセロール;及びブチル化ヒドロキシトルエンなどの約0.05w/w%~約0.5w/w%の酸化防止剤を含む。そのような製剤は、約1mPa・秒~約100mPa・秒の見かけの粘度を持ち得る。本明細書の実施態様をより理解しやすくするために、以下に好ましい実施例又は代表的な実施態様を、提示する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定したり、又は定義したりするために決して読まれるべきではない。
【0086】
本発明を、その特定の好ましい実施態様を参照してかなり詳細に説明したが、他のバージョンも可能である。従って、添付の特許請求の範囲の要旨及び範囲は、本明細書内に含まれる説明及び好ましいバージョンに限定されるべきではない。
【実施例
【0087】
実施例1~3の製剤特性評価方法
表面張力を、Malvern InstrumentsのKinexus Ultra + Rheometer S/N MAL1102043(DeNouy Ring geometry)を用いて、25℃で測定した。
粘度を、Rheocalc T.1.2.19ソフトウェアを用いて、Brookfield model DV 2T/LV粘度計で25℃±1.0で測定した。
保存安定性を、ポリプロピレンキャップで閉じた琥珀色のガラス瓶にガラスバイアルを入れ、最大24カ月間で、25℃/60%RHで24カ月まで、及び40℃/75%RHで6カ月まで保存した各種局所製剤について測定した。化合物Iの含有量とピーク純度をHPLCで測定し(後述の方法)、顕微鏡像及び肉眼的外観を評価し、ベンジルアルコール及びブチル化ヒドロキシトルエン含有ベンジルを測定した。
【0088】
透過性試験:Ex Vivo/In Vitro透過性試験を、ヒトの皮膚をフロースルー拡散セル(MEDFLUX-HT(登録商標))に取り付けることにより実施した。試験製剤を、皮膚の上面に置き、レセプター溶液(クエン酸/リン酸緩衝液pH4.0+0.1%ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(BRIJ(登録商標)))を、皮膚の下に灌流し、皮膚を透過した化合物Iを捕捉した。前記フローセルから除去した後、前記皮膚そのものを、抽出処置(10:90v/vアセトニトリル:水)に供し、皮膚に残存する化合物Iの量を定量した。レセプター溶液及び抽出溶液中の化合物I含有量を、HPLCで定量した(後述の方法)
【0089】
HPLC方法:WatersTM XBRIDGE(登録商標) BEH C18、35μm、150x4.6mmカラムを備えたHPLC Water Allianceを、利用した。化合物Iを、235nmの波長においてUVで検出した。カラム温度を、40±5℃に維持した。移動相Aは、水中0.1%TFAであり、移動相Bは、100%メタノールであり、及びサンプルを、1.0mL/minの流速で、グラジエント溶出で分析した。
【0090】
(実施例1)製剤例
以下の表1は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、又は白斑などの免疫不全疾患によって引き起こされる皮膚状態を治療するために対象に投与され得る、局所製剤の様々な具体例を報告しており、そのいくつかは、上記のような局所製剤の例示的な実施態様を表す。
【0091】
【表1-1】
【表1-2】
【0092】
(実施例2)製剤4の調製
23.62kgのCrodaのSUPER REFINEDTM PEG-400及び1.75kgのSUPER REFINEDTMプロピレングリコール(Croda)をミキサーで混合した。700gのベンジルアルコール及び35gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、ミキサーに加えた。得られた混合物を、全てのBHTが溶解し、及び透明な溶液になるまで撹拌した。前記内容物を、混合した。別に、707.07gの化合物I及び3.25kgのSUPER REFINEDTM ARLASOLVETMジメチルイソソルビド(Croda)を、容器に入れ、及び均一な分散液が得られるまで混合した。前記分散液を、容器をすすぐために2000gの追加のジメチルイソソルビドを用いて、ミキサー中の前記透明溶液に加えた。前記合わせた混合物を、化合物Iが溶解するまで加熱しながら混合した。次に、2.94kgのグリセロールを、均一な溶液を得るために混ぜ続けながら、前記混合した混合物に添加した。前記溶液を、最終的な局所製剤を得るために同じ速度で撹拌し続けながら、冷却した。
【0093】
(実施例3)Ex Vivo/In Vitro透過性試験
Ex Vivo透過性試験のために、10mgの製剤1~12を、上記のように皮膚の試験層に適用した。以下の表2は、本明細書に開示された製剤の種々の実施態様(上記の製剤1~3、4及び8)の試験から収集されたデータを表す。皮膚に適用された量は、mg単位で報告され、及び皮膚に適用された製剤中の化合物Iの量を表す。図10A及び図10Bは、製剤1(SOL01)、製剤2(SOL02)、及び製剤3(SOL03)の製剤の真皮及び表皮への浸透を、投与量の割合として、製剤を含む種々の他の化合物Iと比較している。図10a及び10bに含まれる特定の製剤は、軟膏製剤(PO3)、非水性ゲル(NA10、11、12、13、及び14)、水性ゲル(AG07、08、及び09)、クリーム(CR12、CR14、CR16)、及びフォーム(F09、10、11、12、及び13)である。図11A及び11Bは、製剤1(SOL01)、製剤2(SOL02)、製剤3(SOL03)、製剤4(SOL04)、及び製剤8(SOL14)のレセプター溶液中の化合物Iの濃度を、種々の水性及び非水性ゲル、クリーム、並びにフォーム製剤と比較している。
【0094】
【表2】
【0095】
(実施例4)中程度又は重度のアトピー性皮膚炎の治療に対する局所的なJAK阻害剤の安全性、忍容性、薬物動態及び有効性を決定するためのフェーズ2a試験。
化合物Iは、JAK1/3酵素の阻害剤であり、及び皮膚炎症モデルにおいて局所活性を示した。化合物Iは、皮膚において薬学的に活性であり、全身への暴露制限するために迅速な全身クリアランスとなるように設計された。
【0096】
簡単な方法
中程度又は重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する成人対象を、化合物I局所溶液2.0%又はビヒクル治療に無作為に選び、1日2回(BID)投与した。前記主要エンドポイントは、28日目のmEASIスコアの変化率(%)とした。他の有効性エンドポイントは、IGA、BSA、PP-NRSを含む。安全性評価は、Adverse Event(AE)評価、バイタルサイン、心電図(ECG)及び実験室評価が含まれた。PK採血は、全身暴露を評価した、
【0097】
詳細な方法
18~65歳の男女の50人の対象を、2%w/wの化合物Iを含む局所製剤又は偽薬のいずれかを使用するように選択した。本研究についての適切な封入基準は:(i)Hanifin及びRajkaの特定の診断基準(Hanifin JM、Rajka G.アトピー性皮膚炎の診断特徴。参照により、その全体が本明細書に組み込まれる、Acta Derm Venereol. Suppl 1980; 92: 44-7)を満たすアトピー性皮膚炎(AD)の診断;(ii)ADの6月間の過程;(iii)4週間前からの顕著なAD炎症がないこと;(iv)3cm3を計測する病変が少なくとも1つあるが、手、足、又は性器にはないこと;(v)中程度又は重度の安定した診断(3又は4の治験責任医師による全体的評価(IGA)スコア);(vi)48以下の湿疹面積及び重症度指数(EASI)スコア;並びに(vii)体表面積(BSA)(頭部、手のひら、足の裏、鼠径部、及び性器)の3%~20%に影響を及ぼすADを有することを、含む。
【0098】
前記50人の対象を、2%化合物I治療(n=23)及びビヒクル治療(n=25)のグループに無作為に割り当てた。前記対象の2人は、無作為に割り当てたが、治療されなかった。前記割り当てられた対象のうち、化合物I治療グループの91%(n=21)及び72%(n=18)が、試験を完了した。前記試験対象の人口統計学的特徴及びベースライン特徴を、以下の表3に提供する。
【0099】
【表3】
【0100】
前記局所製剤を、1日2回、およそ8~12時間間隔で、局所的に適応した。一度に1mL、最大8mLを、対象の特定されたAD標的領域に適用し、及び皮膚上に薄いフィルムが得られるように対象の前記領域に擦り込む。前記特定されたAD標的領域を完全に覆うために必要な量が少ない場合、8mL未満を使用し得る。対象は、かゆみなどのADの症状を毎日記録する。対象は、適応後6時間以内は治療領域の洗浄を控えること、日光暴露を最小限にすること、治療部位への保湿剤、エモリエント剤、及び日焼け止めの使用を控えること、並びに各適応後6時間は大量の発刊を挽き超すような活動(例えば、運動)を控えることが求められた。前記試験は、4週間行われた。1日目、8日目及び15日目において、薬物動態学的サンプル(例えば、血液)を、局所製剤の適応の約2時間後に各対象から採取した。28日目において、以下の薬物動態学的サンプル:
・サブグループ1:適応前の1サンプル及び適応後0.5~2.5時間に1サンプル
・サブグループ2:適応後2.5~5時間に1サンプル及び少なくとも2時間後に1サンプル
・サブグループ3:適応後5~8時間に1サンプル及び少なくとも2時間後に1サンプル(その後の適応前)
を、採取した。
【0101】
1日目、8日目、15日目、及び28日目のこれらのそれぞれにおいて、各対象のADの症状を、EASIスコア、IGA、PP-NRS、及びBSAによって評価した。治療の主要有効性を、ベースラインEASI(1日目のEASI)から28日目のEASIの変化率で測定した。
有効性のさらなる測定は、1日目、8日目、15日目、及び28日目のそれぞれの間のEASIの変化率、並びに8日目、15日目、及び28日目におけるIGA、AD BSA、及びPP-NRSのベースライン及び/又は事前の評価;28日目までのベースラインからの2ポイント以上の改善と組み合わせた0~1のIGAスコアを達成する対象の割合;EASIスコアの50%、75%、及び90%の改善を達成する対象の割合(ベースラインと比較して)を含んだ。
【0102】
簡単な結果
50人の対象を、試験に登録し、そのうちの48人(96%)が最大の解析対象集団(Full Analysis Set)の基準を満たした。39/48(81.3%)の対象が、前記試験を完了し、AEsのために中止した3人の対象を含む、7人(14.6%)のビヒクル対象が、試験を中止した。化合物Iはビヒクル群よりも優れており、4週目の平均mEASIにおいて、ビヒクルグループにおける41.4%と比較して74.4%減少した(1-sided p<0.001)。化合物Iの有益な傾向を、mEASI50/75/90及びIGAレスポンダー、並びにIGA、BSA、及びかゆみスコアを含む、二次有効性エンドポイントにおいて観察した。86%より多い血漿サンプルが、0.1ng/mLの定量下限値のレベル以下の化合物Iを示した。平均薬物濃度は、化合物IのIC50の5%以下であった。化合物Iの忍容性は、概ね良好であり、各治療群で同様の割合の対象がAEを報告した(化合物Iグループにおける9/23及びビヒクルグループにおける9/25)。死亡またはSAEは、報告されなかった。ほとんどのAEは、軽度又は中程度の重症度であった。2つの関連性のない深刻な事象(心房細動(AF)及び高CPK)が、化合物Iの治療群で報告された。
【0103】
詳細な結果
図1は、8日目、15日目、及び28日目における、化合物I及びビヒクルで治療された対象について、ベースラインからのEASIスコアにおける変化率を示す。前記データは、ベースラインからのEASIスコアの顕著に大きな改善をビヒクルに対して示しており、ADにおいて確認され及び認識されているエンドポイントにおける有効性の決定的な証拠を示している。
【0104】
図6は、前記試験期間中のEASI50レスポンダーデータを要約した表である。示されるように、第1週の終わりに(8日目)、化合物Iを処置された患者の34.8%は、EASIスコアの50%の改善を達成したのに対し、ビヒクルを処置された患者は、12%であった。第2週の終わりに(15日目)、化合物Iを処置された患者の69.6%対ビヒクルを処置された患者の36%は、EASIスコアの50%の改善を達成し、及び第4週の終わりに(28日目)、化合物Iを処置された患者の91.3%対ビヒクルを処置された患者の40%は、EASIスコアの50%の改善を達成した(前記試験の28日目における化合物I及びビヒクルを処置された患者におけるEASI50、EASI75及びEASI90レスポンダーの割合を示すグラフである図2も参照)。
【0105】
図7は、前記試験期間中のEASI75レスポンダーのデータを要約した表である。示されるように、第1週の終わりに(8日目)、化合物Iを処置された患者の13.0%は、EASIスコアの75%の改善を達成したのに対し、ビヒクルを処置された患者は、4%であった。第2週の終わりに(15日目)、化合物Iを処置された患者の21.7%対ビヒクルを処置された患者の16%は、EASIスコアの75%の改善を達成し、及び第4週の終わりに(28日目)、化合物Iを処置された患者の65.2%対ビヒクルを処置された患者の24%は、EASIスコアの75%の改善を達成した(図2も参照)。
【0106】
図8は、前記試験期間中のEASI90レスポンダーのデータを要約した表である。示されるように、第1週の終わりに(8日目)、化合物Iを処置された患者の4.3%は、EASIスコアの90%の改善を達成したのに対し、ビヒクルを処置された患者は、0%であった。第2週の終わりに(15日目)、化合物Iを処置された患者の8.7%対ビヒクルを処置された患者の8%は、EASIスコアの90%の改善を達成し、及び第4週の終わりに(28日目)、化合物Iを処置された患者の30.4%対ビヒクルを処置された患者の20%は、EASIスコアの90%の改善を達成した(図2も参照)。
【0107】
図9は、前記試験期間中の週ごとのピーク時掻痒数値評価スケール(PP-NRS)におけるベースラインにおける変化を要約した表であり、及び図3は、この変化のグラフを示す。わずか1週間後に、化合物Iを処置された患者は、ベースラインに対してPP-NRSスコアが平均1.72の減少を経験したことは注目に値する。1.0の差は、臨床的に意味のある減少だと考えられる。
図4は、試験中に2ポイント以上の改善を伴う0又は1の治験責任医師による全体的評価(IGA)の治療反応を有する対象(化合物I及びビヒクル治療)の割合を示す。
図5は、1日目、8日目、15日目、及び28日目のそれぞれにおける、化合物I及びビヒクル処置された対象におけるベースラインからの、疾患に影響されたBSAの変化を示す。
【0108】
予想されたように、前記試験における化合物Iの対象への局所投与は、いずれの患者においても、化合物Iの臨床的に適切な血漿中濃度をもたらさなかった。全ての血漿中濃度は、IC50(IC50=36ng/mL)の半分未満であった。化合物I溶液を受ける対象の1日目、8日目、28日目における平均血漿中濃度は、以下:
・1日目、投与2時間後:1.604ng/mL
・8日目、投与2時間後:0.519ng/mL
・28日目、投与前:0.328ng/mL
であった。IC50の1/10を超える濃度を示した対象は、3人(合計6サンプル)のみであった。対象は、15ng/mLを超える化合物Iの濃度は持たなかった。定量化現値(LLOQ)は、0.100ng/mLであった。
以下の表4及び5は、前記試験期間中の最低(表4)及び最高(表5)の化合物Iの血漿中濃度を示す対象のPKデータを示す。
【0109】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0110】
化合物Iの局所投与の有害事象(AE)を観察し、並びに重症度(例えば、軽度、中程度、又は重度)及び因果関係に基づいて記録した。本明細書に開示した方法による化合物Iの使用の全体的な安全性は、有害事象の発生率、対象のバイタルサイン、及び身体検査の結果に基づく。表6は、治療中に発生した有害事象及び重度な有害事象を経験した対象の数の全体的な要約を示し、並びに表7は、試験参加者から報告された有害事象の要約を示す。重度な有害事象は報告されず、及び化合物Iグループでは、有害事象により試験を中止した患者はいなかった。ビヒクルグループの3人の患者は、COVID-19、SARS-CoV-2、及び適応部位の炎症により中止した。
【0111】
【表6】
【表7】
【0112】
結論
4週間の治療期間及び治療をしない2週間の追跡期間からなるこのフェーズ2a臨床試験において、中程度から重度のAD被験者の50人が、1:1の割合で2つのうち1つの治療群に無作為に割り当てられ:化合物Iの局所溶液2.0%w/w又はビヒクルを1日2回適応した。この最初の人体試験の重要な目的の1つは、中程度から重度のアトピー性皮膚炎の対象に、この局所的なJAK阻害剤化合物の“ソフト”な側面を評価することであった。化合物I治療群における薬物動態学的血漿サンプルの予備的な測定は、平均薬物濃度は化合物IのIC50の5%を超えることはなかったことを示した。
【0113】
この試験の前記主要な有効性エンドポイントは、4週目の湿疹面積及び重症度指数(EASI)スコアのベースラインから変化率であった。前記EASIを、前記試験で治療されなかった身体部位(すなわち、頭部、手のひら、足の裏、鼠径部、又は性器)の評価を除外するように修正した(mEASI)。
無作為に割り当てられ、及び少なくとも1回分の試験投薬を投与された対象を含む前記最大の解析対象集団(FAS)を、主要エンドポイントとして使用した。化合物Iの治療群の2人の対象は、ベースライン調査後に追跡不能になり、及び投与された正式な記録がないという理由でFAS解析から除外された。統計的有意性については、検出されていない重要な二次有効性エンドポイントは、治療の開始後4週間以内にEASIスコアにおいて50%を達成した対象の割合(EASI-50)、各試験の来院時の治験責任医師による全体的評価(IGA)スコアのベースラインからの変化、各試験の来院時の体表面積(BSA)のベースラインからの変化、及び経時的なピーク時掻痒数値評価スケール(PP-NRS)スコアのベースラインからの変化を含んだ。主要な有効性エンドポイントのみに、統計学的に有意な結果を検出する力を付与した。
【0114】
前記FASは、無作為に割り当てられ、及びそれぞれ化合物I又はビヒクルの少なくとも1つの投与を記録した23人及び25人の対象からなった。前記試験は、高度な統計学的有意性を有する、その主要なエンドポイントを達成し、化合物Iを適応した対象では、4週間目のベースラインからのmEASIスコアが74.5%減少したのに対し、ビヒクル適応した対象では、41.4%減少に相当した。さらに、EASIスコアの変化率の事前に計画されたプロトコルごとの解析と同様に、ベースラインのEASIスコアを28日目に繰り越して使用する、FASに含まれない前記2人の無作為に割り当てられた対象を含む事後解析は、どちらも統計的に有意であった。
さらに、化合物Iに有利な正の傾向を、かゆみの改善、EASI-50レスポンダーの割合、及び疾患によって影響を受ける体表面積の減少など、重要な二次有効性エンドポイントで観察した。
【0115】
化合物Iは、概ね良好な忍容性であった。各治療群の9人の対象は、有害事象を報告した(化合物I治療群及びビヒクル治療群それぞれ、9/23及び9/25)。深刻な有害事象は、報告されなかった。最も一般的な有害事象(化合物I治療群の2人以上の対象で報告された)は、血中クレアチンホスホキナーゼの増加及び頭痛であり、臨床治験責任医師により化合物Iとは無関係であると判断された。FAS分析において、化合物Iからの2人の対象が、前記試験から離脱し(1人は追跡不能、1人は同意離脱)、一方、7人の対象が、ビヒクル治療群から離脱した(3人はAEのため、及び4人は同意離脱)。血栓症の報告は、なかった。
化合物Iの局所溶液によるBID治療は、中程度又は重度のADの大人において有効であった。局所適用された薬剤は、IC50を大幅に下回る全身血漿中濃度をもたらし、及びその結果、臨床的意義はないと思われる。化合物Iの局所溶液によるBID治療は、4週間の治療期間中、概ね忍容性が良好であった。本研究は、フェーズ2b試験への移行を支持する。
【0116】
(実施例5)中程度又は重度のアトピー性皮膚炎(AD)の治療のための、局所的なJAK阻害剤の安全性、忍容性、薬物動態、及び有効性を判断するためのフェーズ2b試験
目的及びエンドポイント
本研究の主要な目的は、1日2回(BID)又は1日1回(QD)の適用を受ける中程度及び重度のADの患者において、化合物I溶液の有効性を評価することである。本研究の前記主要な有効性エンドポイントは、4週目のEASIスコアのベースラインからの変化率である。
【0117】
本試験の前記二次目的は、いくつかの追加のエンドポイントを評価することにより、化合物Iの溶液の有効性をさらに特徴づけることである。これらのエンドポイントは、(i)各試験の来院時の湿疹面積及び重症度指数(EASI)スコアのベースラインからの変化率を決定すること、(ii)治療開始から4週間以内にベースラインから2以上のポイントの改善と組み合わされる、0~1の(IGA)スコアと定義される、治験責任医師による全体的評価(IGA)における治療成功度(IGA-TS)を達成する患者の割合を決定すること、(iii)各試験の来院時のEASIスコア(それぞれ、EASI-50、EASI-75、及びEASI-90)において50%、75%、及び90%の改善を達成した患者の割合を決定すること、を含む。さらに、ベースラインからのいくつかのエンドポイント測定値の変化を、評価する。これらは、(iv)各試験の来院時のIGAスコアのベースラインからの変化、(v)各試験の来院時の体表面積(BSA)のベースラインからの変化、(vi)ピーク時掻痒数値評価スケール(PP-NRS)スコアのベースラインからの経時的変化、(vii)ベースラインから28日目までのBSAの割合の変化、(viii)ベースラインから28日目までのPGICの変化、(ix)ベースラインから28日目までのPGICにおいて、1又は2のいずれかのスコアの患者の割合(x)ベースラインから28日目までのPP-NRSの変化を、含む。最後に、以下の追加の二次エンドポイントは:(xi)28日目にPP-NRSが4ポイント改善した患者の割合、(xii)各来院時の化合物Iのトラフ薬物動態(PK)濃度の評価、及び(xiii)有害事象(AE)の頻度、期間、及び重症度を観察することにより評価される安全性及び忍容性も、評価する。
【0118】
上記に加えて、本試験は、以下の調査の目的:(i)“クリア(Clear)”(0)又は“ほぼクリア(alomost clear)”(1)のIGAスコアになるまでの時間を評価する目的、(ii)EASIにおける50%、70%、90%の改善になるまでの時間を評価する目的、及び(iii)少なくとも2、3,又は4ポイントのPP-NRSスコアの改善を達成するまでの時間を評価する目的でも、調査する。安全性は、以下の結果:(i)治療中に発生したAE(TEAE)及びSAEの発生の記録、(ii)患者の日常検査値の追跡、(iii)患者のバイタルサインの追跡、(iv)患者の身体検査の実施、及び(v)12誘導心電図による患者の監視を、通じて評価される。化合物Iの溶液の薬物動態の評価において、臨床的に適切な結晶中濃度が、観察されないと予想されるため、スパースサンプリングアプローチを、採用する。PKサンプルは、1日目、15日目、及び28日目の試験薬の適用前に採取される。
【0119】
研究デザイン
これは、中程度から重度のAD患者の標的部位への1日2回(BID)又は1日1回(QD)の適用後の化合物I溶液の安全性、忍容性、薬物動態、及び有効性を判断するための無作為化、二重拘束、ビヒクル対照、並行群間試験である。
前記研究は、最大30日間のスクリーニング期間、4週間の治療期間、及び2週間のフォローアップ期間からなる。最終フォローアップまで残っている患者の本研究の合計期間は、最大42日間である。
患者は、無作為化の30日前までに適格性を決定するためにスクリーニング評価を受ける。全ての参加基準を満たす患者は、1日目に無作為化される。試験薬を、4週間投与し、試験薬の最終投与は、28日目の朝に投与される。患者は、安全性、有効性、及びPK/PD評価のため、8日目及び28日目に診療を受ける。患者は、安全性を評価するため、試験薬の最終投与から2週間後に、治療後フォローアップ(PFTU)受診(Post-Treatment Follow-Up Visit)のために再来院する。全ての評価は、Schedule of Events(SOE)に詳細に記載された通りに実施される。
【0120】
患者は、最大30日間のスクリーニングを受け、その後、4週間の治療及び2週間のPTFUを受ける。
本研究の開始は、最初の患者がインフォームドコンセントを提供した日とし、及び本研究の終わりは、患者の最後の評価の日とする。
約240人の患者を登録する予定である。患者は、化合物Iの局所溶液(0.5、1.0、2.0%w/w)BID(1日2回)若しくはビヒクル(化合物Iを含まない局所的なビヒクル溶液)BID、又は化合物Iの局所溶液(2.0%w/w)QD(1日1回)若しくはビヒクルQDの2;2;2;1;2:1に無作為に割り当てられる。
【0121】
目的母集団
本研究の適切な組み入れ基準は:(i)Hanifin及びRajka(Hanifin and Rajka 1980)の特定の診断基準を満たすADの診断を有する患者;(ii)スクリーニング来院前の少なくとも6ヵ月のADの病歴があり、及びスクリーニング来院前の4週間に顕著なADの炎症がない患者;(iii)スクリーニング来院時及び試験薬の最初の投与前の1日目に、少なくとも3cm2の病変が1つあり、この病変は、患者の病状を代表するものでなければならないが、頭皮、顔面、手のひら、足の裏、鼠径部又は性器には存在しない患者;(iv)スクリーニング来院時に中程度又は重度(IGAスコア3又は4)のADと診断されている患者;並びに(v)スクリーニング来院時にBSAの10%以上(毛髪のある頭皮、手のひら、足の裏、鼠径部、及び性器を含まない)に影響を及ぼすADを有する患者を、含む。
【0122】
本試験の適切な除外基準は:以下のいずれかを有する患者は本研究から除外される;(i)患者の病歴に基づく、又はスクリーニング期間中に治験責任医師が判断したADの不安定な経過(自然に改善する、又は急速に悪化する);(ii)難治性AD(すなわち、スクリーニング来院前1年以内に頻繁に入院及び/又は頻繁な皮膚感染症に対する点滴治療を必要としたAD);(iii)前記患者がビヒクル対照の候補とならない重症度のAD(EASI>48);(iv)AD治療に関連したいくつかの兆候又は症状(例えば、アナフィラキシーの病歴、過敏性反応、皮膚萎縮、脈理、色素変化)で、治験責任医師がADの評価を損なう可能性があると判断したもの、又は患者が試験参加により許容できないリスクにさらされるもの;(v)付随する皮膚疾患若しくは臨床的に感染したAD、又は
試験評価に支障をきたし得る投与されるエリアの他の皮膚疾患の存在;(vi)1日目前の指示されたウォッシュアウト期間内に以下の治療、
・1日目より4週間前以内に光線療法(紫外線A療法、紫外線B療法又はソラレン及び紫外線A療法)
・1日目より12週間(又は製品の半減期の5倍のいずれか長い方)前以内に全身性の生物学的免疫抑制療法又は免疫調節療法(例えば、エタネルセプト、アレフェセプト、インフリキシマブ、デュピルマブ)
・1日目より4週間前以内に非生物学的免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート、レチノイド、カルシニューリン阻害剤、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド[ヒドロキシ尿素]、アザチオプリン)
・1日目より4週間前以内にヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(全身及び局所)
・1日目より2週間前以内に全身性コルチコステロイド(鼻腔内、吸入、及び局所眼科コルチコステロイドは、許される)
・1日目より4週間前以内に細胞増殖抑制剤
・1日目より2週間前以内にクリサボロール
・1日目より30日間前以内に全身性抗生物質
・1日目より2週間前以内にADに対する局所治療(コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、局所的なH1及びH2抗ヒスタミン剤、局所抗菌剤、及び他の薬用外用剤)
・1日目より12週間前以内に弱毒化生ワクチン
・1日目より30日間又は半減期の5倍(いずれか長い方)前以内に他の治験薬
のいずれかを使用していることが、含まれる。
【0123】
安全性解析:前記FASを、安全性データ(AE、臨床検査値、バイタルサイン、検査結果、及び心電図)の解析のために使用する。
血漿中薬物濃度:化合物Iの血漿中薬物濃度は、公称の時点及び日ごとに要約される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10A
図10B
図11A
図11B
【国際調査報告】