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特表2024-509385アクチノヒビンバリアントポリペプチド及び関連方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】アクチノヒビンバリアントポリペプチド及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240222BHJP
   C07K 14/36 20060101ALI20240222BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240222BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/36 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
A61K45/00
A61K39/395 T
A61P15/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550178
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 US2022070961
(87)【国際公開番号】W WO2022187851
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,715
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509223586
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ルーイビル リサーチ ファウンデーション,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】的場 伸行
(72)【発明者】
【氏名】デント,マシュー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084CA04
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB41
4C085BB42
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA80
(57)【要約】
アクチノヒビン又はそのバリアント(例えば、AvFc)を含むポリペプチドに感受性のある卵巣癌(例えば、上皮性卵巣癌)の治療が記載される。卵巣癌細胞(例えば、上皮性卵巣癌細胞)を死滅させるための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象において卵巣癌を治療する方法であって、治療的に有効な量のアクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記卵巣癌が上皮性卵巣癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が一次療法を受けたことがあり、残存疾患のない状態を達成している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が再発性又は難治性の卵巣癌を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記卵巣癌が化学療法抵抗性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記治療的に有効な量が、腫瘍量の低減、無進行生存の改善、全生存の改善、又はこれらの組合せのために十分な量である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが静脈内(i.v.)投与用に配合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドが第2の治療薬と組み合わせて投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒトである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが臨床外来の場で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが臨床入院の場で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
卵巣癌細胞を死滅させる方法であって、前記卵巣癌細胞と、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドとを接触させることを含む方法。
【請求項13】
前記卵巣癌細胞が上皮性卵巣癌細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記卵巣癌細胞が化学療法抵抗性である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)によって前記卵巣癌細胞の死滅を誘導する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記卵巣癌細胞を第2の治療薬と接触させることをさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、配列番号1~15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、任意選択的に、アクチノヒビンバリアントが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、抗体の断片結晶化可能ドメイン(Fc)をさらに含み、任意選択的に、前記ポリペプチドが、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、抗体の断片抗原結合ドメイン(Fab)、又は抗体の単鎖可変断片(scFv)をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリペプチドが修飾されているか、又は異種部分に結合されているか、又はこれらの組合せである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月4日に出願された米国仮特許出願第63/156,715号の利益を主張する。上記出願の教示全体は参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
ASCIIテキストファイル中の材料の参照による援用
本出願は、同時に提出された以下のASCIIテキストファイル:
a)ファイル名:56001010001PCT_Sequence_Listing_ST25.txt(2022年2月23日に作製、19,000バイトのサイズ)
に含有される配列表を参照によって援用する。
【0003】
政府の支援
本発明は、NIH/NCIからの1R21CA216447-01、及びNIH/NIAIDからのR21/R33 AI088585の下、政府の支援によりなされた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
卵巣癌(OVCA)、特に上皮性卵巣癌(EOC)は、最も致命的な婦人科癌の1つであり、女性における癌死亡の第5位である。EOCは通常、卵巣、卵管、又は腹膜腔の中皮内膜のいずれかの表面において小さい境界線上の上皮性腫瘍として始まる。これらの腫瘍は成長し、十分に分化した後、主に腹腔に転移するが、まれに肺、肝臓、及び脳に転移する。国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)のSurveillance,Epidemiology,and End Results(SEER)Programによると、米国での全体の5年生存率は、2016年の時点で48.3%であり、これは、主として、後期疾患の悲惨な生存率(30.5%)によって決定される。OVCAの年齢調整死亡率及び新規症例率はそれぞれ、年間100,000人当たり6.8人及び年間100,000人当たり10.5人であり、次に致命的な婦人科癌の子宮癌(死亡率は年間100,000人当たり5.0人である)をわずかに上回っている。これは、2016年の新規患者数22,530人及び死亡数13,980人の増加になる。過去20年間、新規症例数及び死亡数は徐々に低下する傾向にあるが、患者の予後、特に後期疾患の患者の予後は依然として悪いままである。これは、主に、集団ベースのスクリーニングの効果がないこと、症状が無害であること、そして化学療法抵抗性疾患に対する効果的な第2選択療法がないことに起因する。一般に、患者は一次治療に非常によく応答するが、女性の大多数(75%)は、化学療法抵抗性のために不治である疾患の再発を経験し得る。
【0005】
卵巣癌の標準ケア及びその欠点。一次腫瘍減量手術後に化学療法を行うことは、数十年間、EOCの第1選択の標準ケアであった。進行疾患の手術は、腹式子宮全摘術、両側卵管卵巣摘除術、及び大網切除術からなるが、疾患のグレードの低い患者は、妊孕性温存戦略を選ぶことができる。患者の大多数は、白金ベースの薬物、ほとんどの場合はカルボプラチンと、パクリタキセルなどのタキサンとからなる化学療法も受けることになる。一次療法後に残存疾患のないことが、最も重要な予後指標である。これは、疾患のステージに関係なくほとんどの患者に対して達成可能であるが、ほぼ全員が必ず、致死的な化学療法抵抗性疾患を経験することになる。この段階での治療の選択肢は、患者の白金フリー期間(白金薬物治療の合間の時間の長さ)と、その後の疾患の二次腫瘍減量手術に対する従順さとに基づいて限定されるが、それでも生存の可能性は低い。第1選択の標準ケアを経験した患者の場合、生存を延長するために残存疾患のないことが達成された後に与えられる、化学療法薬又は生物製剤からなる長期の維持療法を使用することで、より大きい利益が実証されている。ベバシズマブ及びポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤のFDA認可により、維持療法の利用可能性が拡大され、無進行生存が改善された;しかしながら、現在の臨床データでは、全生存期間の有意な増大は実証されておらず、これらの薬物は、重要な有害事象に関連する。さらに、FDAに認可されたEOCの標的免疫療法は存在せず、チェックポイント阻害剤による治験は決定的なものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
疾患を治癒させ、進行を延長させ、患者の生存を改善するための補完療法を含む、新規の抗卵巣癌薬が非常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される主題は、部分的に、Avarenレクチン及びヒトIgG1 Fcからなる融合タンパク質(AvFc)が上皮性卵巣癌(EOC)の独特のバイオマーカーを標的とするという発見に基づく。AvFcは、癌細胞の表面で大きな比率を占めるオリゴマンノースグリカンに対して選択的である。AvFcは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を含む抗癌活性を媒介する。
【0008】
一態様では、本開示は、卵巣癌(OVCA)細胞を死滅させる方法を提供し、本方法は、OVCA細胞と、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドとを接触させることを含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、OVCA細胞において抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を誘導する方法を提供し、本方法は、OVCA細胞と、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドとを接触させることを含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCAを治療する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量のアクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCAを治療するための薬剤の製造におけるポリペプチドの使用を提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0012】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCAを治療するのに使用するためのポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0013】
別の態様では、本開示は、OVCAを有する対象において腫瘍サイズを低減する方法を提供し、本方法は、アクチノヒビン又はそのバリアントを含む有効量のポリペプチドを対象に投与することを含み、ここで、ポリペプチドの投与は腫瘍サイズを低減する。
【0014】
別の態様では、本開示は、OVCAを有する対象において腫瘍サイズを低減するための薬剤の製造におけるポリペプチドの使用を提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0015】
別の態様では、本開示は、OVCAを有する対象において腫瘍サイズを低減するのに使用するためのポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0016】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてEOCを治療する方法を提供し、本方法は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0017】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてEOCを治療するための薬剤の製造におけるポリペプチドの使用を提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、本方法は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0018】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてEOCを治療するのに使用するためのポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、本方法は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0019】
上記のことは、添付図面(異なる図を通して、同様の参照文字は同じ部分を指す)に示されるように、例となる実施形態の以下のより詳細な記載から明らであろう。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに実施形態を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A-1D】卵巣癌(OVCA)に対するAvaren-Fc(AvFc)の活性を示す。図1A~1Bは、ヒトOVCA組織へのAvFcのオリゴマンノース依存性の結合を示す、ヒト上皮性卵巣癌(EOC)組織切片の免疫組織化学である。図1Aは、AvFcで染色した悪性組織及び隣接組織を示す。隣接組織では染色はほとんど~全く見られないが、悪性組織はAvFcにより強く結合されている。AvFcは、DAB染色のレベルにより見られるように、悪性組織を正常な隣接組織から明確に区別する。図1Bは、非糖結合変異体AvFclec-で染色した悪性組織及び隣接組織を示す。いずれの場合も結合は見られず、AvFcのヒトOVCA組織への結合はオリゴマンノース依存性であることが示される。図1Cは、単色フローサイトメトリーにより決定される、OVCA細胞株A2780、SKOV3、ID8、及びID8-VEGF-DEFB29へのAvFcの結合を示す。Y軸は、バックグラウンド蛍光に対するゲーティングにより決定される、FITCのパーセンテージを示す。図1Dは、ルシフェラーゼベースのレポーター細胞株アッセイを用いた、OVCA細胞株に対するAvFcの抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)活性を示す。AvFcは、4つの癌細胞株に対してADCCを強力に誘導し、最も高い活性度は、ID8及びID8-VEGF-DEFB29細胞株に対して見られる。
図2】フローサイトメトリーにより決定される、マウス及びヒトOVCA細胞株へのAvFcの結合を示す。簡単に言うと、1.3~130nMの範囲の濃度の各細胞株と共にAvFcをインキュベートし、その後、ヤギ抗ヒトFc-FITCコンジュゲートによりAvFcを検出した。非糖結合変異体AvFclec-を負の対照として使用した。
図3A-3B】マウスOVCA細胞株ID8(図3A)及びヒト細胞株A2780(図3B)へのAvFcの結合の代表的な蛍光顕微鏡写真である。
図4】マウスID8 OVCA負荷モデルを示す。メスC57bl/6マウスに、1匹当たり2百万個のID8細胞を腹腔内(i.p.)負荷した。腫瘍負荷の7日後から開始して、2日ごとに28日間(7日目~35日目;全部で15回の投与)、25mg/kgのAvFc又はビヒクル対照のいずれかでマウスをi.p.処置し、処置の休止後に、全ての動物が死亡するか、又は安楽死点(体重>35g)に到達するまで生存をモニターした。生存曲線は、ロングランク検定により有意に異なることが決定された(P=0.0048;GraphPad Prism 8ソフトウェア)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示のいくつかの態様は、例示のみを目的として実施例を参照しながら以下に記載される。本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細、関係、及び方法が記載されていることを理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示が、1つ又は複数の具体的な詳細がなくても実施可能であること、或いは他の方法、プロトコル、試薬、細胞株及び動物を用いて実施可能であることを容易に認識するであろう。いくつかの行為は、異なる順序で、及び/又は他の行為若しくは事象と同時に起こり得るので、本開示は、行為又は事象の説明される順序によって限定されない。さらに、本開示に従う方法論を実行するために、説明される全ての行為、ステップ又は事象が必要とされるわけではない。本明細書において記載又は参照される技術及び手順の多くは、当業者によって十分に理解されており、従来の方法論を用いて一般に使用される。
【0022】
定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定は意図されないことは理解されるべきである。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料は本発明の試験のための実施において使用され得るが、例示的な材料及び方法が本明細書に記載されている。本発明の説明及び特許請求において、以下の用語が使用され得る。
【0024】
リストが提示される場合、他に記載されない限り、そのリストの個々の要素それぞれ、及びそのリストの全ての組合せは、別個の実施形態であると理解されるべきである。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるべきである。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は2つ以上の細胞の組合せを含む、などである。
【0026】
記載される複数の要素間の「及び/又は」という接続用語は、個々の選択肢と、組み合わせた選択肢との両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合されている場合、第1の選択肢は、第2の要素を伴わない第1の要素の適用性を指す。第2の選択肢は、第1の要素を伴わない第2の要素の適用性を指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素の一緒の適用性を指す。これらの選択肢のいずれか1つはその意味の範囲内に含まれ、したがって本明細書で使用される「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。2つ以上の選択肢の同時適用性もその意味の範囲内に含まれ、したがって「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。
【0027】
「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」という移行用語は、特許用語において一般的に認められているその意味を暗示することが意図され;すなわち、(i)「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「特徴とする(characterized by)」と同義である「含む(comprising)」は包括的又はオープンエンドであり、記載されていない付加的な要素又は方法ステップを除外せず;(ii)「からなる(consisting of)」は、請求項に明記されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外し;そして(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、明記される材料又はステップと、特許請求される本発明の「基本及び新規の特徴に実質的に影響を与えないものと」に限定する。「含む」(又はその等価物)という語句に関して記載される実施形態は、「からなる」及び「から本質的になる」に関して独立して記載されているものも実施形態として提供する。
【0028】
「約」は、当業者により決定される特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、これは、その値がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存し得る。特定のアッセイ、結果又は実施形態との関連で、実施例又は明細書の他の場所において他に明確に記載されない限り、「約」は、当該技術分野における慣習により1標準偏差内、又は5%までの範囲内のうちいずれか大きい方を意味する。
【0029】
「ポリペプチド」、「ペプチド」又は「タンパク質」という用語は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)に関係なく、アミド結合により共有結合した少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを示す。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、任意の適切なL-及び/又はD-アミノ酸、例えば、一般的なα-アミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、バリン)、非α-アミノ酸(例えば、β-アラニン、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、サルコシン、スタチン)、並びに一般的でないアミノ酸(例えば、シトルリン、ホモシトルリン、ホモセリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン)を含むことができる。ペプチド上のアミノ、カルボキシル及び/又は他の官能基は、遊離していても(例えば、非修飾)、或いは適切な保護基によって保護されていてもよい。アミノ及びカルボキシル基に適した保護基、並びに保護基を付加又は除去するための方法は当該技術分野において知られており、例えば、Green and Wuts,“Protecting Groups in Organic Synthesis,”John Wiley and Sons,1991に開示されている。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドの官能基は、当該技術分野において既知の方法を用いて、誘導体化(例えば、アルキル化)又は標識化(例えば、フルオロゲン(fluorogen)又はハプテンなどの検出可能な標識による)することもできる。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、所望により、1つ又は複数の修飾(例えば、アミノ酸リンカー、アシル化、アセチル化、アミド化、メチル化、末端修飾因子(例えば、環化修飾)、N-メチル-α-アミノ基置換)を含むことができる。加えて、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、既知の及び/又は天然に存在するペプチドの類似体、例えば、保存的アミノ酸残基置換を有するペプチド類似体であることもできる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、最大同一性レベルを達成するように配列を整列させたときに、2つのヌクレオチド配列、又は2つのアミノ酸配列が、同じ位置に同じ残基を有する程度(パーセンテージで表される)を指す。配列のアライメント及び比較のために、通常、1つの配列が基準配列として指定され、これに対して試験配列が比較される。基準配列と試験配列との間の配列同一性は、最大同一性レベルを達成するように基準配列及び試験配列を整列させたときに、基準配列の全長にわたって基準配列及び試験配列が同じヌクレオチド又はアミノ酸を共有する位置のパーセンテージとして表される。例として、最大同一性レベルを達成するように整列させたときに、試験配列が、基準配列の全長にわたって同じ位置の70%において同じヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する場合に、2つの配列は70%の配列同一性を有すると考えられる。
【0031】
最大同一性レベルを達成するような比較のための配列のアライメントは、適切なアライメント方法又はアルゴリズムを用いて当業者により容易に実施することができる。場合によっては、アライメントは、最大同一性レベルを提供するために導入されたギャップを含むことができる。例としては、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ処理実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、及び目視検査(一般に、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biologyを参照)が挙げられる。
【0032】
配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列はコンピュータへ入力され、必要に応じて、それに続く座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次に、指定されたプログラムパラメータに基づいて、配列比較アルゴリズムにより、基準配列に対する試験配列の配列同一性パーセントが計算される。配列同一性パーセントを決定するために一般的に使用されるツールは、米国国立衛生研究所(United States National Institutes of Health)の国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)、国立医学図書館(National Library of Medicine)により利用可能なProtein Basic Local Alignment Search Tool(BLASTP)である(Altschul et al.,1990)。
【0033】
「対象」は、あらゆるヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳類を含む。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0034】
疾患又は障害を「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、「予防(prevention)」、又は「予防(prophylaxis)」は、対象において障害が発生することを予防することを意味する。
【0035】
「応答性の」、「応答性」又は「応答する可能性がある」は、検出可能又は検出不能を問わず、1つ又は複数の症状の軽減又は改善、疾患の程度の減少、疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態、疾患の蔓延の予防、疾患の進行の遅延又は減速、病状の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的)などのあらゆる種類の改善又は肯定的な応答を指す。
【0036】
「担体」は、本開示の抗体と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。このようなビヒクルは、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などなどを含む、水及び油などの液体であり得る。例えば、ヒスチジン、塩化ナトリウム、及びスクロースは、本開示のポリペプチドを配合するために使用され得る。これらの溶液は無菌であり、一般に粒子状物質を含まない。これらは、従来の周知の滅菌技術(例えば、ろ過)によって滅菌され得る。非経口投与の場合、担体は滅菌水を含むことができ、溶解性又は保存性を高めるために他の賦形剤が添加されてもよい。また注射可能な懸濁液又は溶液は、水性担体を適切な添加剤と共に用いて調製され得る。他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む、適切なビヒクル及び製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691-1092に記載されており、特に958~989ページが参照される。
【0037】
例となる実施形態について以下に説明する。
【0038】
癌細胞を死滅させる方法
一態様では、本開示は、卵巣癌(OVCA)細胞を死滅させる方法を提供し、本方法は、OVCA細胞と、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドとを接触させることを含む。
【0039】
別の態様では、本開示は、OVCA細胞において抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を誘導する方法を提供し、本方法は、OVCA細胞と、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドとを接触させることを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、OVCA細胞をポリペプチドと接触させると、ベースラインレベル(例えば、治療前)と比較して、少なくとも約50%のADCCの誘導が生じ、例えば、少なくとも約:2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、10.5倍、11倍、11.5倍、12倍、12.5倍、13倍、13.5倍、14倍、14.5倍、15倍、15.5倍、16倍、16.5倍、17倍、17.5倍、18倍、18.5倍、19倍、19.5倍、又は20倍のADCCの誘導が生じる。いくつかの実施形態では、OVCA細胞をポリペプチドと接触させると、ベースラインレベルと比較して、約1.5~20倍のADCCの誘導、例えば、約:1.5~19.5倍、2~19.5倍、2~19倍、2.5~19倍、2.5~18.5倍、3~18.5倍、3~18倍、3.5~18倍、3.5~17.5倍、4~17.5倍、4~17倍、4.5~16.5倍、5~16.5倍、5~16倍、5.5~16倍、5.5~15.5倍、6~15.5倍、6~15倍、6.5~15倍、6.5~14.5倍、7~14.5倍、7~14倍、7.5~14倍、7.5~13.5倍、8~13.5倍、8~13倍、8.5~13倍、8.5~12.5倍、9~12.5倍、9~12倍、9.5~12倍、9.5~11.5倍、10~11.5倍又は10~11倍のADCCの誘導が生じる。
【0041】
ポリペプチド
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、野生型アクチノヒビンアミノ酸配列(例えば、配列番号1)又はそのバリアントを含む。アクチノヒビンは、抗ヒト免疫不全ウイルス活性を示す糖結合タンパク質であり、最初に放線菌K97-0003株から同定及び単離された(Chiba et al.,Biochem Biophys Res Commun.282:595-601(2001))。
【0042】
特別な実施形態では、ポリペプチドは、野生型アクチノヒビンアミノ酸配列(例えば、配列番号1)を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、野生型アクチノヒビンアミノ酸配列(例えば、配列番号1)のバリアントを含む。本明細書で使用される場合、「バリアント」という用語は、基準配列、すなわち、野生型アクチノヒビンに対して少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。
【0044】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1~15に記載される少なくとも1つの配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1~13に記載される少なくとも1つの配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2~15に記載される少なくとも1つの配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2~13に記載される少なくとも1つの配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0047】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0049】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号7と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0054】
特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号9と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0055】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0057】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号13と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号14と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号15と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、例えば、「GASDALIE」及び/又は「GnGn」修飾によって修飾される。「GASDALIE」修飾は、IgG1 FcドメインにおけるG236A/S239D/A330L/I332E変異を指す(例えば、Ahmed,A.A.,et al.,Journal of structural biology 194(1):78-89(2016)を参照)。「GnGn」修飾は、主に末端GlcNAc残基を含有し、植物特異的なグリカンを欠くためのFcグリカン修飾を指す(Strasser,R.,et al.,Plant Biotechnology Journal 6(4):392-402(2008))。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドはさらに、抗体の断片結晶化可能ドメイン(Fc)、抗体の断片抗原結合ドメイン(Fab)又は抗体の単鎖可変断片(scFv)を含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドはさらに、Fabを含む。特別な実施形態では、ポリペプチドはさらに、scFvを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはさらに、Fcを含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、高マンノースグリカン結合(放線菌由来、オリゴマンノース結合)レクチンのAvaren及びIgG1 Fc(ヒト免疫グロブリンG1の断片結晶化可能領域(Fc))を含む(「レクチボディ(lectibody)」Avaren-Fc(AvFc))。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号16と少なくとも約75%(例えば、少なくとも約:80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドのFc領域は、血漿半減期の延長のためのM428L及びN434S変異など、薬物動態(PK)及び/又は薬力学(PD)特性を最適化するために修飾される(M.R.Gaudinski,et al.,PLoS Med.15(2018),e1002493)。
【0065】
特別な実施形態では、ポリペプチドは、細胞傷害性化学物質、DNA損傷剤、放射性同位体、又はこれらの組合せに結合される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、細胞傷害性化学物質に結合される。ある特定の実施形態では、細胞傷害性化学物質は、チューブリン阻害剤(例えば、マイタンシノイド又はアウリスタチン)を含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、DNA損傷剤に結合される。いくつかの実施形態では、DNA損傷剤は、カリチアマイシンを含む。特別な実施形態では、ポリペプチドは、放射性同位体に結合される。ある特定の実施形態では、放射性同位体はルテチウム-177である。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、植物により産生される。他の実施形態では、ポリペプチドは、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)内で産生される。
【0067】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。「単離された」ポリペプチドは、同定されて、その天然環境の成分から分離及び/又は回収されたものである。その天然環境の汚染物質成分は、ポリペプチドの診断的及び/又は治療的使用を妨害し得る材料、例えば、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性の溶質である。「単離された」ポリペプチドは、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%純粋であるポリペプチドなどの、より高純度まで単離されたポリペプチドを包含する。
【0068】
高マンノース型グリカンエピトープ
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、非癌性細胞又は正常な健康細胞よりも悪性細胞に対して高度に選択的である(又は特異的に結合する)。「特異的に結合する(specifically binding)」又は「特異的に結合する(specifically binds)」という用語は、正常な健康細胞と比べて、ポリペプチドと悪性の細胞との間の優先的な相互作用、すなわち、有意により高度な結合親和性を指す。
【0069】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドと、悪性OVCA細胞(例えば、上皮性卵巣癌(EOC)細胞)との間の結合親和性は、正常な健康細胞と比べて少なくとも約2倍高く、例えば、少なくとも約:2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10倍高い。ある特定の実施形態では、ポリペプチドと、悪性OVCA細胞(例えば、EOC細胞)との間の結合親和性は、正常な健康細胞と比べて少なくとも約10倍高く、例えば、少なくとも約:15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100倍高い。特別な実施形態では、ポリペプチドと、悪性OVCA細胞(例えば、EOC細胞)との間の結合親和性は、正常な健康細胞と比べて約2~10倍高く、例えば、約:2.5~10、2.5~9.5、2.5~9、3~9、3~8.5、3.5~8.5、3.5~8、4~8、4~7.5、4.5~7、4.5~6.5、5~6.5、5~6又は5.5~6倍高い。いくつかの実施形態では、ポリペプチドと、悪性OVCA細胞(例えば、EOC細胞)との間の結合親和性は、正常な健康細胞と比べて約10~100倍高く、例えば、約:10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20、20~100、20~90、20~80、20~70、20~60、20~50、20~40、20~30、30~100、30~90、30~80、30~70、30~60、30~50、30~40、40~100、40~90、40~80、40~70、40~60、40~50、50~100、50~90、50~80、50~70、50~60、60~100、60~90、60~80、60~70、70~100、70~90、70~80、80~100、80~90又は90~100倍高い。
【0070】
特別な実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)に対する本開示のポリペプチドのEC50は、約1~10nM、例えば、約:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1~9、2~9、2~8、3~8、3~7、4~7、4~6又は5~6nMである。
【0071】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、高マンノース型グリカンエピトープに特異的に結合する。
【0072】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原の部分を指す。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖側鎖などの部分の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)表面群からなり、特異的な三次元構造特性、及び特異的な電荷特性を有し得る。エピトープは、立体配座空間単位を形成する連続したアミノ酸及び/又は不連続なアミノ酸から構成され得る。不連続エピトープの場合、抗原の直線配列の異なる部分からのアミノ酸は、タンパク質分子の折り畳みにより三次元空間で極めて近接するようになる。
【0073】
「高マンノース型グリカン」という用語は、キトビオース(GlcNAc)コアに結合した5~9個の末端マンノース残基を含有するアスパラギン結合グリカン(N-グリカン)を指す。高マンノースグリカンは、真核細胞の小胞体において形成され、アスパラギン-X-セリン/スレオニン配列(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸であり得る)を含有する新たに合成された新生ポリペプチドに結合される。次に、これらのグリカンは通常、新生ポリペプチドがゴルジ装置を通る二次経路を経るにつれて処理され、より少ないマンノース残基を含有する複合型グリカンに成熟する。結果として、健康な正常細胞の表面に現れるタンパク質に結合した高マンノースグリカンは、少ししか残らない。しかしながら、悪性細胞により産生される細胞表面及び分泌タンパク質では、異常に高レベルの高マンノースグリカンが見られることが多い。
【0074】
高マンノース型グリカンの非限定的な例としては、Man9GlcNAc2(Man9)、Man8GlcNAc2(Man8)、Man7GlcNAc2(Man7)、Man6GlcNAc2(Man6)及びMan5GlcNAc2(Man5)が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、高マンノース型グリカンエピトープは、OVCA関連(例えば、EOC関連)である。
【0076】
特別な実施形態では、高マンノース型グリカンエピトープは、1つ又は複数の末端α1,2結合マンノース残基を含む。
【0077】
特別な実施形態では、ポリペプチドは、2つ以上の高マンノース型グリカンエピトープ、例えば、3、4、5又はそれ以上の高マンノース型グリカンエピトープに特異的に結合する。
【0078】
高グリコシル化タンパク質
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、高グリコシル化タンパク質に特異的に結合する。
【0079】
ある特定の実施形態では、高グリコシル化タンパク質は、少なくとも約10のN-グリコシル化部位、例えば、少なくとも約:11、12、13、14、15、16、17又は18のN-グリコシル化部位を含む。特別な実施形態では、高グリコシル化タンパク質は、約13~16のN-グリコシル化部位を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、2つ以上の高グリコシル化タンパク質、例えば、2、3、4、5又はそれ以上の高グリコシル化タンパク質に特異的に結合する。
【0081】
癌細胞
いくつかの実施形態では、OVCA細胞はEOC細胞である。
【0082】
いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、インビトロ細胞である。ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、エキソビボ細胞である。
【0083】
いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、本明細書に記載される対象(例えば、ヒト患者)の細胞である。ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、哺乳類細胞、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、雌ウシ、チンパンジー、マカク、カニクイザル、又はヒトからの細胞である。いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、マウス細胞である。いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、霊長類細胞である。特別な実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、ヒト細胞である。
【0084】
いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、例えば、18~75歳、18歳以上、又は40歳以上の成人ヒト患者の細胞である。ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、若年ヒト患者の細胞である。いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、18歳以下、及び/又は12歳以上であるヒト患者の細胞である。特別な実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、小児ヒト患者の細胞である。
【0085】
いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、新たにOVCA(例えば、EOC)と診断された対象の細胞である。ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、少なくとも約1か月間、少なくとも約1年間、少なくとも約5年間、又は少なくとも約10年間、OVCA(例えば、EOC)と診断されている対象の細胞である。
【0086】
ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、治療されていない対象(例えば、ヒト患者)の細胞である。特別な実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、事前に1つ又は複数の抗癌療法を受けたことのある対象の細胞である。いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、再発性及び/又は難治性の卵巣癌を有する対象の細胞である。
【0087】
ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、高マンノースグリカンの異常な表面蓄積を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示のOVCA細胞(例えば、EOC細胞)における細胞表面の高マンノースグリカンは、正常細胞の場合よりも少なくとも約2倍高く、例えば、正常細胞の場合よりも少なくとも約:2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10倍高い。特別な実施形態では、正常細胞の場合よりも約2~10倍高く、例えば、正常細胞の場合よりも約:2.5~10、2.5~9.5、2.5~9、3~9、3~8.5、3.5~8.5、3.5~8、4~8、4~7.5、4.5~7、4.5~6.5、5~6.5、5~6又は5.5~6倍高い。
【0088】
いくつかの実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、その細胞表面に高マンノースグリカンの異常な蓄積を伴うタンパク質を発現する。特別な実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、1つ又は複数の腫瘍関連糖鎖バイオマーカーを特徴とする。ある特定の実施形態では、OVCA細胞(例えば、EOC細胞)は、2つ以上の腫瘍関連糖鎖バイオマーカーを特徴とする。
【0089】
治療の方法
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCAを治療する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量のアクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0090】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCAを治療するための薬剤の製造におけるポリペプチドの使用を提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0091】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCAを治療するのに使用するためのポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0092】
別の態様では、本開示は、OVCAを有する対象において腫瘍サイズを低減する方法を提供し、本方法は、アクチノヒビン又はそのバリアントを含む有効量のポリペプチドを対象に投与することを含み、ここで、ポリペプチドの投与は腫瘍サイズを低減する。
【0093】
別の態様では、本開示は、OVCAを有する対象において腫瘍サイズを低減するための薬剤の製造におけるポリペプチドの使用を提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0094】
別の態様では、本開示は、OVCAを有する対象において腫瘍サイズを低減するのに使用するためのポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドはアクチノヒビン又はそのバリアントを含み、治療は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0095】
アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドは、本明細書に記載されるポリペプチドのいずれか1つであり得る。
【0096】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCA(例えば、EOC)を治療する方法を提供し、本方法は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0097】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCA(例えば、EOC)を治療するための薬剤の製造におけるポリペプチドの使用を提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、本方法は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0098】
別の態様では、本開示は、それを必要としている対象においてOVCA(例えば、EOC)を治療するのに使用するためのポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、本方法は、有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0099】
組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、組成物、例えば医薬組成物において提供される。
【0100】
いくつかの実施形態では、組成物(例えば、医薬組成物)はさらに、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、希釈剤又は等張化剤(tonifier)を含む(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。薬学的に許容される適切な担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投薬量及び濃度ではレシピエントに対して無毒である。薬学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、希釈剤又は等張化剤の非限定的な例としては、緩衝剤(例えば、リン酸、クエン酸、ヒスチジン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又はメチオニン)、防腐剤、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);親水性ポリマー、アミノ酸、炭水化物(例えば、単糖、二糖、グルコース、マンノース又はデキストリン);キレート剤(例えば、EDTA)、糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール)、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);非イオン性界面活性剤(例えば、Tween)、PLURONICSTM及びポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物(例えば、医薬組成物)は、適切な投与スケジュール及び投与経路のために配合される。投与経路の非限定的な例としては、経口、直腸、粘膜、静脈内、筋肉内、皮下及び局所などが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の組成物(例えば、医薬組成物)は、水溶液又は乾燥製剤(例えば、凍結乾燥)の形態で貯蔵される。
【0102】
いくつかの実施形態では、組成物は、注入(例えば、静脈内注入)又は注射(例えば、筋肉内、皮下、腹腔内又は腫瘍内注射)によって投与されるように配合される。ある特定の実施形態では、組成物は、静脈内注入によって投与されるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、筋肉内注射によって投与されるように配合される。特別な実施形態では、組成物は、皮下注射によって投与されるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、腹腔内注射によって投与されるように配合される。ある特定の実施形態では、組成物は、腫瘍内注射によって投与されるように配合される。
【0103】
いくつかの実施形態では、組成物は、併用療法として1つ又は複数の付加的な治療薬と共に投与されるように配合される。1つ又は複数の付加的な治療薬の非限定的な例としては、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(CAR-T細胞)、CARを発現するナチュラルキラー細胞(CAR-NK細胞)、CARを発現するマクロファージ(CAR-M細胞)、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、T細胞リダイレクター、放射線療法、手術及び標準ケア薬が挙げられる。
【0104】
ある特定の実施形態では、手術は、腹式子宮全摘術、両側卵管卵巣摘除術、又は大網切除術を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、化学療法剤はシスプラチンを含む。
【0106】
ある特定の実施形態では、化学療法は、白金ベースの薬物(例えば、カルボプラチン)及びタキサン(例えば、パクリタキセル)を含む。
【0107】
「同時投与」、「を伴う投与」、「と組み合わせた投与」、「と組み合わせて」などは、選択された治療法又は薬物の単一の患者への投与を包含し、同じ若しくは異なる投与経路により、又は同じ若しくは異なる時に、治療法又は薬物が投与される治療計画を含むことが意図される。
【0108】
アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドと、1つ又は複数の付加的な治療薬とを組み合わせることから得られる製品を指す医薬組成物(又は医薬品の組合せ)には、固定された組合せ及び固定されていない組合せの両方が含まれる。
【0109】
「固定された組合せ」は、2つ以上の化合物を含む単一の医薬組成物を指し、例えば、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドと、1つ又は複数の付加的な治療薬とは、単一の実体又は剤形の形態で同時に投与される。いくつかの実施形態では、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドと、1つ又は複数の付加的な治療薬とを含む医薬組成物は、固定された組合せとして提供される。
【0110】
「固定されていない組合せ」は、1つ又は複数の化合物それぞれが含む、別々の医薬組成物を指し、例えば、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドと、1つ又は複数の付加的な治療薬とは、別々の実体として、同時に、並行して、又は特定の時間制限を置かずに順次投与される。ここで、このような投与は、対象の体内に有効レベルの2つ以上の化合物を提供する。いくつかの実施形態では、アクチノヒビン又はそのバリアントを含むポリペプチドと、1つ又は複数の付加的な治療薬とを含む医薬組成物は、固定されていない組合せとして提供される。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド(例えば、AvFc)は、約10~50mg/kg、例えば、約:10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg若しくは50mg/kg、又は約:10~45mg/kg、15~45mg/kg、15~40mg/kg、20~40mg/kg、20~35mg/kg、25~35mg/kg若しくは25~30mg/kgで対象に全身投与される。ある特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、AvFc)は、約2~7日ごと(例えば、約:2、3、4、5、6又は7日ごと)に約2~10週間(例えば、約:2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週間、又は約:2~9、3~9、3~8、4~8、4~7、5~7若しくは5~6週間)、約10~50mg/kgで対象に全身投与される。特別な実施形態では、ポリペプチド(例えば、AvFc)は、1日置きに(Q2D)14又は20日間(それぞれ、合計8回又は11回の投与)、約25mg/kgで対象に全身投与される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド(例えば、AvFc)は、7日ごとに(Q7D)1~2か月間、約10~50mg/kgで対象に全身投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチド又は医薬組成物(例えば、AvFc)は、第2の治療薬と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、抗体(例えば、モノクローナル抗体(mAb))である。抗体は、癌そのものの態様(例えば、腫瘍関連抗原)又は生理学的/免疫学的プロセス(例えば、T細胞アネルギー及びアポトーシスを防止するか又は遅延させるチェックポイント阻害剤)を標的とすることができ、或いは内因性VEGFを標的として、腫瘍における血管形成を阻害する(例えば、ベバシズマブ)。特別な実施形態では、第2の治療薬は、養子免疫療法薬、抗体-薬物コンジュゲート、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、若しくはPARP阻害剤、又はこれらの組合せを含む。化学療法の組合せの非限定的な例には、白金ベースの薬物(例えば、カルボプラチン)及びタキサン(例えば、パクリタキセル)が含まれる。免疫チェックポイント阻害剤の非限定的な例としては、ペムブロリズマブ(KEYTUDA(登録商標)、Merck)、デュルバルマブ(IMFINZI(登録商標)、Medimmune/AstraZeneca)、ドスタルリマブ(Tesaro)、アベルマブ(Bavencio(登録商標)、Merck KGaA/Pfizer)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標)、Genentech/Roche)、及びニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。PARP阻害剤の非限定的な例としては、ニラパリブ(ZEJULA(登録商標)、Tesaro)、オラパリブ(LYNPARZA(登録商標)、AstraZeneca)、及びルカパリブ(Rubraca(登録商標)、Clovis Oncology)などが挙げられる。抗体-薬物コンジュゲートの非限定的な例は、ヒト葉酸受容体1(FOLR1)を標的とするミルベツキシマブソラブタンシンである。養子免疫療法の非限定的な例は、例えば、FOLR1を標的とするキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)、又はサイトカイン誘導キラー細胞(CIK細胞)である。
【0113】
卵巣癌
「癌」は、制御されない形で増殖して、場合によっては患者の身体の他の領域に転移する(広がる)傾向のある、細胞の異常な成長を指す。
【0114】
いくつかの実施形態では、OVCAはEOCである。
【0115】
いくつかの実施形態では、OVCA(例えば、EOC)は、1つ又は複数の腫瘍関連糖鎖バイオマーカーを特徴とする。ある特定の実施形態では、OVCA(例えば、EOC)は、2つ以上の腫瘍関連糖鎖バイオマーカーを特徴とする。
【0116】
ある特定の実施形態では、OVCA(例えば、EOC)は、高マンノースグリカンの異常な細胞表面蓄積を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示のOVCA細胞(例えば、EOC細胞)における細胞表面の高マンノースグリカンは、正常細胞の場合よりも約2~10倍高い。
【0117】
いくつかの実施形態では、OVCA(例えば、EOC)は、高マンノースグリカンの異常な蓄積を伴うタンパク質の細胞表面発現を特徴とする。
【0118】
特別な実施形態では、OVCA(例えば、EOC)は化学療法抵抗性である。
【0119】
対象
「対象」という用語は、動物(例えば、哺乳類)を指す。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。ある特定の実施形態では、対象は、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、雌ウシ、チンパンジー、マカク、カニクイザル、及びヒトからなる群から選択される哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象は霊長類である。特別な実施形態では、対象はヒトである。
【0120】
「それを必要としている対象」という用語は、本発明の方法に従ってポリペプチドが投与される予定であるか或いは投与されている、疾患(例えば、EOCなどのOVCA)を有すると診断されたか或いは疑われている哺乳類対象、好ましくはヒトを指す。「それを必要としている対象」には、望まれない生理学的変化又は疾患を既に有している対象と、生理学的変化又は疾患を有する傾向にある対象とが含まれる。
【0121】
診断は、当該技術分野において既知の任意の方法又は技術によって実施され得る。当業者は、本開示に従って治療される対象が標準的な試験を受けていてもよいし、或いは検査なしに、疾患又は状態に関連する1つ又は複数の危険因子の存在のためにリスクがあると特定されていてもよいことを理解するであろう。
【0122】
いくつかの実施形態では、対象は成人患者である。ある特定の実施形態では、対象は若年患者である。特別な実施形態では、対象は小児患者である。
【0123】
いくつかの実施形態では、対象は18~75歳である。ある特定の実施形態では、対象は40歳以上、例えば、少なくとも:45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90歳である。
【0124】
ある特定の実施形態では、対象は、18歳以上、例えば、18歳~40歳未満、18歳~45歳未満、18歳~50歳未満、18歳~55歳未満、18歳~60歳未満、18歳~65歳未満、18歳~70歳未満、18歳~75歳未満、40歳~75歳未満、45歳~75歳未満、50歳~75歳未満、55歳~75歳未満、60歳~75歳未満、65歳~75歳未満、60歳~75歳未満、40歳以上、45歳以上、50歳以上、55歳以上、60歳以上、65歳以上、70歳以上又は75歳以上である。
【0125】
いくつかの実施形態では、対象は、18歳以下、例えば、0~18歳、0~12歳、0~16歳、0~17歳、2~12歳、2~16歳、2~17歳、2~18歳、3~12歳、3~16歳、3~17歳、3~18歳、4~12歳、4~16歳、4~17歳、4~18歳、6~12歳、6~16歳、6~17歳、6~18歳、9~12歳、9~16歳、9~17歳、9~18歳、12~16歳、12~17歳又は12~18歳である。
【0126】
いくつかの実施形態では、対象は12歳以上である。
【0127】
ある特定の実施形態では、対象は、2歳以上、例えば、少なくとも:3、4、5、6、7、8、9、10、11、12歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は4歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は5歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は6歳以上である。
【0128】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも約1か月間、例えば、少なくとも約:2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、1年間、18か月間、2年間、30か月間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間又は10年間、OVCA(例えば、EOC)と診断されている。
【0129】
特別な実施形態では、対象は、新たにOVCA(例えば、EOC)と診断される。「新たに診断される」とは、OVCA(例えば、EOC)と診断されているが、OVCAに対する治療をまだ受けていない対象を指す。
【0130】
ある特定の実施形態では、対象は、治療を経験していない。
【0131】
いくつかの実施形態では、対象は、事前に1つ又は複数の抗癌療法を受けたことがある。特別な実施形態では、事前の1つ又は複数の抗癌療法は、手術、1つ又は複数の化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的抗癌療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、手術は、腹式子宮全摘術、両側卵管卵巣摘除術、又は大網切除術を含む。いくつかの実施形態では、化学療法は、白金ベースの薬物(例えば、カルボプラチン)及びタキサン(例えば、パクリタキセル)を含む。
【0132】
現在のEOC管理における主要な問題は、化学療法抵抗性腫瘍の再発である。特別な実施形態では、対象は一次療法を受けたことがあり、残存疾患のない状態を達成している。
【0133】
ある特定の実施形態では、本開示のポリペプチド(例えば、AvFc)は、疾患の再発のない場合、既存の維持療法の補足として、又は代わりとして投与される。例えば、ポリペプチド(例えば、AvFc)は、外来の場で静脈内(i.v.)注入又は腹腔内(i.p.)注射用の溶液中に配合され、一次療法の完了後に患者に与えられる。外来診療の場での薬物の投与により、患者の緊密なモニタリングが可能になり得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチド(例えば、AvFc)は、疾患の再発の場合、既存の第2選択療法の補足として、又は代わりとして投与される。例えば、ポリペプチド(例えば、AvFc)は、最初に入院の場で投与された後、患者の状態に応じて数週間、外来診療で投与され、その後、必要に応じて外来の場で維持治療が行われる。
【0135】
特別な実施形態では、対象は再発したか、或いは1つ又は複数の事前の抗癌療法による治療に抵抗性である。「難治性」とは、治療に応答しない疾患を指す。難治性疾患は、治療の前又は治療の開始時に治療に対して抵抗性であることもあるし、或いは難治性疾患は、治療の間に抵抗性になることもある。「再発性」とは、治療法による事前の治療後の改善期間の後に、疾患又は疾患の徴候及び症状が再発することを指す。いくつかの実施形態では、対象は、再発性の卵巣癌を有する。ある特定の実施形態では、対象は、難治性の卵巣癌を有する。特別な実施形態では、対象は、再発性且つ難治性の卵巣癌を有する。
【0136】
治療
OVCAなどの疾患又は障害を「治療する(treat)」、「治療する(treating)」又は「治療」は、以下のうちの1つ又は複数を達成することを指す:障害の重症度及び/又は持続期間の低下、治療される障害に特徴的な症状の悪化の阻害、以前に障害を有していた対象における障害の再発の制限又は予防、或いは以前に障害の症状を示した対象における症状の再発の制限又は予防。
【0137】
「治療的に有効な量」、「有効量」又は「有効投薬量」は、所望の治療結果(例えば、生理的な応答又は状態の治療、治癒、阻害又は改善)を達成するために必要な投薬量及び期間において有効な量である。最大治療効果は、必ずしも1回の投与で生じるわけではなく、一連の投与後にだけ生じることもある。したがって、治療的に有効な量は、1回又は複数回の投与で投与され得る。治療的に有効な量は、哺乳類の病状、年齢、及び体重、投与モード、並びに治療法又は治療法の組合せが個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に従って異なり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドの治療的に有効な量は、細胞傷害性効果を誘導するのに十分な量である。ある特定の実施形態では、細胞傷害性効果は、1つ又は複数のFc媒介性細胞傷害性効果(例えば、ADCC)を含む。
【0139】
特別な実施形態では、細胞傷害性効果(例えば、ADCC)は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約:15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%誘導される(例えば、増大される)。いくつかの実施形態では、細胞傷害性効果(例えば、ADCC)は、約1~90%、例えば、約:1~85%、5~85%、5~80%、10~80%、10~75%、15~75%、15~70%、20~70%、20~65%、25~65%、25~60%、30~60%、30~55%、35~55%、35~50%又は40~50%誘導される。
【0140】
特別な実施形態では、細胞傷害性効果(例えば、ADCC)は、少なくとも約100%、例えば、少なくとも約:1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍誘導される。いくつかの実施形態では、細胞傷害性効果(例えば、ADCC)は、約1~15倍、例えば、約:1~14倍、1.5~14倍、1.5~13倍、2~13倍、2~12倍、2.5~12倍、2.5~11倍、3~11倍、3~10倍、3.5~10倍、3.5~9倍、4~9倍、4~8倍、4.5~8倍、4.5~7倍、5~7倍、又は5~6倍誘導される。
【0141】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドの治療的に有効な量は、腫瘍成長を阻害する(例えば、遅延させる及び/又は低減する)のに十分な量である。ある特定の実施形態では、腫瘍成長は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約:15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%阻害される。いくつかの実施形態では、腫瘍成長は、約1~90%、例えば、約:1~85%、5~85%、5~80%、10~80%、10~75%、15~75%、15~70%、20~70%、20~65%、25~65%、25~60%、30~60%、30~55%、35~55%、35~50%又は40~50%阻害される。
【0142】
特別な実施形態では、治療的に有効な量は、腫瘍量を有意に低減する、生存を改善する(例えば、生存を延長し、及び/又は生存の可能性を増大させる)、又はその両方のために十分な量である。
【0143】
「生存」は、患者が生き続けていることを指し、カプランーマイヤー法によって推定することができる。「生存」には、無進行生存(PFS)及び全生存(OS)が含まれる。
【0144】
「PFS」は、治療から最初の疾患の進行又は死亡までの時間を指す。PFSは、例えば、固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)によって評価することができる。いくつかの実施形態では、PFSは、対照と比較して、少なくとも約1か月、例えば、少なくとも約:1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21又は24か月延長される。
【0145】
「OS」は、治療の開始から又は最初の診断から約:1、1.5、2、3、4、5、又は10年などの一定期間、患者が生き続けていることを指す。いくつかの実施形態では、OSは、対照と比較して、少なくとも約1か月、例えば、少なくとも約:1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21又は24か月延長される。
【0146】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドの治療的に有効な量は、残存疾患(任意の腹部転移を含む)のない状態を達成する、疾患の再発を予防する、又はその両方のために十分な量である。
【0147】
診断
ある特定の実施形態では、治療方法はさらに、必要としている対象の生体サンプルが、高マンノース型グリカンエピトープを特徴とするかどうかを決定することを含む。
【0148】
「診断する」又は「診断」は、対象が所与の疾患又は状態を患っているかどうかを決定する方法、或いは所与の疾患又は状態を将来発症し得るかどうかを決定する方法、或いは事前に診断された疾患又は状態の治療に応答する可能性があるかどうかを決定する方法、すなわち治療に応答する可能性について患者集団を階層化する方法を指す。診断は通常、診断すべき疾患の一般的なガイドライン、又は対象が特定の治療に応答する可能性のあることを示す他の基準に基づいて、医師によって実施される。
【0149】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、
a)対象からの生体サンプルを提供することと、
b)生体サンプル中の高マンノースグリカンエピトープの異常な蓄積の有無を決定することと
を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、生体サンプルは、卵巣生検(例えば、卵巣腫瘍生検)を含む。ある特定の実施形態では、生体サンプルは血液サンプルを含む。
【0151】
例となる実施形態が特に図示及び説明されたが、特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における種々の変化がなされ得ることは当業者により理解されるであろう。
【0152】
実施形態
それを必要としている対象において卵巣癌を治療する方法であって、治療的に有効な量のアクチノヒビンバリアントを含むポリペプチドを対象に投与することを含む方法。
【0153】
卵巣癌が上皮性卵巣癌である、条項1の方法。
【0154】
対象が一次療法を受けたことがあり、残存疾患のない状態を達成している、条項1又は2の方法。
【0155】
対象が再発性及び難治性の卵巣癌を有する、条項1又は2の方法。
【0156】
卵巣癌が化学療法抵抗性である、条項1又は2の方法。
【0157】
治療的に有効な量が、腫瘍量の有意な低減、無進行生存の改善、全生存の改善、又はこれらの組合せのために十分な量である、条項1~5のいずれか1つの方法。
【0158】
ポリペプチドが静脈内(IV)投与用に配合される、条項1~6のいずれか1つの方法。
【0159】
ポリペプチドが第2の治療薬と組み合わせて投与される、条項1~7のいずれか1つの方法。
【0160】
対象がヒトである、条項1~8のいずれか1つの方法。
【0161】
ポリペプチドが臨床外来の場で投与される、条項9の方法。
【0162】
ポリペプチドが臨床入院の場で投与される、条項9の方法。
【0163】
卵巣癌細胞を死滅させる方法であって、卵巣癌細胞と、アクチノヒビンバリアントを含むポリペプチドとを接触させることを含む方法。
【0164】
卵巣癌細胞が上皮性卵巣癌細胞である、条項12の方法。
【0165】
卵巣癌細胞が化学療法抵抗性である、条項12又は13の方法。
【0166】
ポリペプチドが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)によって卵巣癌細胞の死滅を誘導する、条項12~14のいずれか1つの方法。
【0167】
卵巣癌細胞を第2の治療薬と接触させることをさらに含む、条項12~15のいずれか1つの方法。
【0168】
アクチノヒビンバリアントが、配列番号2~13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、そして任意選択的に、アクチノヒビンバリアントが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む、条項1~16のいずれか1つの方法。
【0169】
ポリペプチドが、抗体の断片結晶化可能ドメイン(Fc)をさらに含み、そして任意選択的に、ポリペプチドが、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む、条項1~17のいずれか1つの方法。
【0170】
ポリペプチドが、抗体の断片抗原結合ドメイン(Fab)、又は抗体の単鎖可変断片(scFv)をさらに含む、条項1~17のいずれか1つの方法。
【0171】
ポリペプチドが修飾されているか、又は異種部分に結合されているか、又はこれらの組合せである、条項1~19のいずれか1つの方法。
【実施例
【0172】
卵巣癌は、最も致命的な婦人科癌である。卵巣癌(OVCA)、特に上皮性卵巣癌(EOC)は、世界中で最も致命的な婦人科癌である。この疾患の治療には、手術と、白金ベースの薬物及びタキサンによる化学療法との組合せが含まれる。ほとんどの患者は、第1選択の療法に応答するが、ほぼ全員が致死的な再発性の疾患(多くの場合、化学療法抵抗性)を経験することになる。維持療法としてのPARP阻害剤及びベバシズマブの最近のFDA認可により、一次療法後の無進行生存は増大したが、全生存率に対する効果はほとんどもたらされていない。
【0173】
新規の又は補完的な第2選択療法の欠如、全生存を改善する維持療法の欠如、及び高マンノースグリカンがEOCの独特で創薬可能な標的であり得るという証拠の増大により、提唱された製品についての説得力のある議論が提供される。癌細胞表面の異常なグリコシル化は十分に説明された現象であり、この疾患の顕著な特徴であると考えられる。腫瘍の糖鎖生物学の最近の進歩により、種々の腫瘍タイプがその表面において高マンノースグリカンレベルの増大を示しており、これらのグリカンが悪性腫瘍及び転移において役割を果たし得ることが実証された。高マンノースグリカンは、小胞体においてN-グリコシル化経路の初期に生じ、通常、分泌経路を出る前にマンノシダーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼにより処理され、したがって、通常、正常な状態では細胞の表面には見られない。しかしながら、ホルマリン固定パラフィン包埋組織を用いた質量分析による定量的N-グリカン分析により、高マンノースグリカンは、OVCA腫瘍の表面で過剰発現されることが示される。さらに、高マンノースグリカンは、非癌性卵巣上皮細胞と比較して、EOC細胞株の膜糖タンパク質において著しく増大していることが示されており、SKOV3細胞での転移活性を増大させ得る。高マンノースグリカンは、有用なEOCバイオマーカーであり、潜在的に、創薬可能な標的であり得る。
【0174】
EOCに対する新規のファーストインクラスの標的療法としてのAvFc。Avaren-Fcは、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)植物において高度に発現され、効率的に産生され得る、ヒトIgG1のFc領域に融合された高マンノースグリカン結合レクチンからなる強力な抗体様免疫治療薬である。本明細書に記載されるデータは、AvFcが、EOC組織に対して特に高い選択性を有し、いくつかのEOC細胞株に結合して、それに対して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を強力に誘導可能であることを示す(図1A~1C)。さらに、AvFc投与は、マウス(免疫適格性及び免疫不全の両方)、ラット、及びアカゲザルを含む複数の種において良好な耐容性を示し、ヒト末梢血単核細胞に対して細胞傷害性又は分裂促進性でない。AvFcの反復全身投与は、ヒト肝臓キメラマウスモデルにおいて、いかなる識別可能な毒性も引き起こすことなくC型肝炎ウイルス負荷から完全に保護されることが示されている(C型肝炎ウイルスもその表面で高マンノースグリカンを過剰発現する)。製造可能性、有効性、及び安全性に関するこれらの結果に基づいて、AvFcは、一次的、二次的、又は維持的な使用のための既存の療法を補完する又は置き換えることによってEOC治療に対する有力な新しい選択肢を提供し得る。患者の全生存を改善することができるこのような療法は、潜在的に、EOC管理のパラダイムを変化させ、新しい標準ケアを導入し得る。
【0175】
EOCに対する第1選択の療法(手術及び化学療法)を受けている患者の大多数は、ステージに関係なく、残存疾患がなくなり、続いて維持療法を開始する。現在、EOCに対する維持療法は、PARP阻害剤のルカパリブ、オラパリブ、又はニラパリブと、血管形成阻害剤のベバシズマブとからなる。これらの薬物による臨床試験では、無進行生存の有意な改善が実証されているが、全生存率にはまだ影響を与えていない。例えば、ルカパリブのARIEL3試験では、ルカパリブにおけるBRCA変異体EOCを有する患者の無進行生存の中央値は、プラセボ対照群の5.4か月に対して、16.6か月であることが示された。化学療法と比較したベバシズマブの結果も同様である(無進行生存の中央値は8.6か月に対して12.3か月)。どちらの研究でも完全な全生存データは報告されていないが、ベバシズマブのOCEANS試験の中間報告では、有意な改善は示されなかった(全生存中央値は、化学療法+ベバシズマブの33.3か月と比較して化学療法では35.2か月)。維持療法の失敗及び疾患の再発の場合、二次療法の選択は、白金フリー期間と、二次腫瘍減量手術に対する腫瘍塊の外科的切除可能性の評価とに依存する。プラチン感受性の疾患の場合、第2選択療法には、プラチン、パクリタキセル、リポソームドキソルビシン、又はゲムシタビンが含まれる。残念ながら、再発性EOCは、ほとんどの場合、特にプラチンに対して化学療法抵抗性である。この状況では、ほとんど不可避であるその後の疾患進行又は許容できない毒性が発生するまで、パクリタキセル、リポソームドキソルビシン、又はゲムシタビンを含むいくつかの逐次的な単一化学療法薬が使用される。したがって、患者において疾患を治癒させて無進行生存を延長し、全生存を改善するための新規の療法又は補完療法が臨床的に緊急に必要とされている。
【0176】
後期EOC患者は、予後不良と、限られた治療選択とに直面している。PARP阻害剤のような新規の維持療法は、無進行生存を増大させるが、全生存への利益はまだ実証されていない。さらに、第2選択療法は限定されており、一般的に効果がない。さらに、最近の分析では、PARP阻害剤は非常に高価なことがあり、無進行生存期間1年当たりの増分費用対効果比が235,000ドル及び287,000ドルであることにより、維持療法としては費用対効果が低い可能性があることが示された。したがって、無進行生存及び全生存を改善する任意の新しい治療介入は歓迎されるであろう。
【0177】
前述したように、ほぼ全てのEOC患者は、第1選択療法後に残存疾患がなくなるにもかかわらず、再発を起こすことになる。維持療法は再発までの時間を長くすることができるが、これまでのところ、生存率に対する効果はほとんど~全くなく、化学療法抵抗性疾患の蔓延のために二次療法は限定される。さらに、特異的な腫瘍バイオマーカーを標的とする、EOCに対して現在認可されている免疫療法は存在しない。手術、維持、及び化学療法の全てにより、金銭的なコストだけでなく身体的及び精神的なコストの観点からも、患者及び医療提供者は同じように多大な犠牲が要求される。したがって、現在の療法を補完する又は置き換えて、患者において疾患を治癒させる、無進行生存を延長する、又は全生存を改善することができる新規の療法は、医学界に歓迎されるであろう。
【0178】
このプロジェクトの目標は、卵巣癌(OVCA)に対する新規の治療法を開発することである。
【0179】
この目的に向かって、ヒトIgG1のFc領域に融合された高マンノースグリカン結合レクチンのAvarenからなるAvaren-Fc(AvFc)と呼ばれる新規の抗体様分子が、上皮性卵巣癌の治療のために開発された。高マンノースグリカンは、卵巣癌細胞の表面に異常に高い割合で見られる未成熟グリカンであり、したがって、独特で創薬可能な標的であり得る。AvFcは卵巣癌組織に対して高選択性を示しており、いくつかの卵巣癌細胞株(ヒト及びマウスの両方)に結合し、それに対して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を誘導することができる。さらに、Avaren-Fcは、細胞傷害性又は分裂促進性でなく、動物において明白な毒性を示さない。
【0180】
実施例1.OVCAに対するAvFcの活性
実施例1は、AvFcが高マンノースグリカンに依存した形でヒト卵巣癌組織に結合することを実証する。免疫組織化学(IHC)は、48歳(列a)、72歳(列b)、及び55歳の患者(列c)からの3つのステージIのHGSOC組織、並びに3つの隣接する正常卵巣組織(下)を含有する組織アレイ(US Biomax,Rockville,MD)において実施した(図1A~1B)。ヒト卵巣上皮癌組織切片の免疫組織化学は、悪性組織がAvFcにより強く結合されているが、隣接組織では染色がほとんど~全く見られないことを示す(図1A)。さらに、悪性組織及び隣接組織を非糖結合変異体AvFclec-で染色すると、いずれの場合も結合は見られなかった(図1B)。したがって、AvFcは、正常な隣接組織から悪性組織を明確に区別し、AvFcのヒト卵巣癌組織への結合は、高マンノースグリカン依存性である。
【0181】
標的免疫療法は、他の種類の癌に対してかなりの成功を収めている。AvFcのヒト高悪性度漿液性卵巣癌組織への結合の免疫組織化学的分析は、AvFcが、非悪性隣接組織と比べて、悪性組織に対して高度に選択性であることを示した(図1A)。逆に、高マンノースグリカン結合活性が欠乏したAvFc変異体(AvFclec-)は組織に結合することができず(図1B)、AvFcの結合は高マンノースグリカンに媒介され、ヒト患者からの組織は、実際に、AvFcにより区別することができる高マンノースグリカンのクラスターで被覆されていることが示された。複数の動物モデルで見られる毒性の欠如と組み合わせたこの選択性は、AvFcが特定の腫瘍形成促進分子(EGFRのような)を標的としないという事実にもかかわらず、腫瘍組織に対して効果的であるように十分に選択性であることを示す。
【0182】
ヒト株A2780及びSKOV3並びにマウス株ID8及びID8-VEGF-DEFB29を含むいくつかのOVCA細胞株へのAvFcの結合は、蛍光染色(図3A~3B)及びフローサイトメトリー(図1C及び2)によって評価した。AvFcはこれらの細胞株に用量依存的に結合し、13nMで飽和が生じた(図2)。高レベルの結合により、AvFcは、これらの癌細胞株に対するADCCの強力な誘導因子であり得ることが示唆される。実際、ルシフェラーゼベースのレポーター細胞ADCCアッセイにおいて、AvFcはADCCを誘導することができ、EC50値は低ナノモル範囲であり、最大誘導倍率の値は、ベースラインよりも1.5~11.5倍高かった(図1D及び図4)。AvFcは、OVCAに対して有意なインビボ活性を有することができ、ID8マウスOVCAモデルの使用が正当化される。
【0183】
実施例2.マウスにおけるAvFcの有効性
メスC57bl/6マウスに、1匹当たり2百万個のID8細胞を腹腔内(i.p.)負荷した。腫瘍負荷の7日後から開始して、2日ごとに28日間(7日目~35日目;全部で15回の投与)、25mg/kgのAvFc又はビヒクル対照のいずれかでマウスをi.p.処置し、処置の休止後に、全ての動物が死亡するか、又は安楽死点(体重>35g)に到達するまで生存をモニターした。生存曲線(図4)は、ロングランク検定により有意に異なることが決定された(P=0.0048;GraphPad Prism 8ソフトウェア)。
【0184】
ID8マウスEOCモデルにおけるAvFcの有効性を実証するために、追加のインビボデータが取得され得る。EOCに対するAvFcの有効性は、免疫適格性マウスにおけるマウスID8EOC負荷モデルを用いて評価され得る。このモデルは、卵巣癌研究の分野で標準モデルであり、治療候補の評価のために使用されている。ヒト腫瘍に対するAvFcの有効性を試験することも臨床的に適切であり得るが、現在利用可能なインビボヒト腫瘍負荷モデルでは、ヒト由来腫瘍をインビボでうまく生着及び成長させるために免疫不全マウスの使用が必要とされる。ここで、提唱されるAvFcの主な作用機序は、機能的な免疫系を必要とするので、提唱されるID8負荷研究は適切なモデルを提供する。
【0185】
研究1-1:ID8負荷実験。PBS中の4x10個のID8-luc細胞が0日目に腹腔内に移植され得る。AvFcによる腹腔内処置は、移植後7日目に開始し、25mg/kg又は10mg/kgの用量レベルでQ2Dにより28日間継続され得る。これは、AvFcの非HMG結合変異体バージョンのAvFclec-、及びこのモデルで有効性の歴史があり、正の対照として使用することができるシスプラチン(5mg/kg QW 28日間)と比較され得る。疾患の進行は、腹囲及び体重を毎週測定すると共に、150mg/kgのルシフェリンを注入し、生きた動物のインビボイメージングを用いてバイオルミネセンスを週に2回測定することによりモニターされ得る。動物は、35gに達した場合又は瀕死の場合に安楽死され得る。安楽死の後、腹腔洗浄によって免疫細胞が収集され、フローサイトメトリーにより免疫表現型検査が行われ、腫瘍微小環境においてAvFcが免疫細胞の組成に影響を与えるかどうかが評価され得る。
【0186】
ID8負荷モデルの結果が評価され得る。腹囲及びバイオルミネセンスで決定したときに、AvFcは生存を有意に増大させ、腫瘍量を有意に低減することが期待される。このモデルを使用して、AvFc処置と、シスプラチン(EOCに対する標準ケアの化学療法を表し、提唱されるモデルにおいて有効性を提供することが示されている)との組合せを評価し、任意の潜在的な相加効果又は相乗効果について試験することができる。
【0187】
実施例3.AvFcの最適化
理論的根拠:抗体のFc領域への変化は、種々のFc受容体(FcγR)に対するその親和性を変更し、そのPK/PD特性に影響を与えることができる。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の使用は、AvFcの治療活性をさらに改善し得る。
【0188】
研究2-1:インビトロでの活性に対するAvFcのFc修飾の影響の評価。Fc修飾、特にGASDALIE及びGnGn修飾の影響は、いくつかのヒト卵巣癌細胞株を標的とするインビトロのレポーターベースのADCCアッセイを用いて、AvFcの活性に対して評価され得る。AvFcの修飾形態は、野生型の植物産生AvFc、及びCHO細胞で産生されるAvFcと比較され得る。
【0189】
研究2-2:インビボでの活性に対するAvFcのFc修飾の影響の評価。インビトロでのFc修飾の影響を評価した後、研究1-1に記載されるID8負荷モデルを用いて変化が確認され得る。
【0190】
研究2-3:ADC担体としてのAvFcの使用の探索。AvFc及び種々のOVCA化学療法薬(パクリタキセルなど)に基づくADCが生成され、その効果は、インビトロの細胞傷害性アッセイ、及び初代細胞のADCCアッセイを用いて調査され得る。
【0191】
マイルストーン3:AvFcの最も有効な形態を使用して、潜在的なGLP毒性研究、及びヒトでの研究が継続され得る。
【0192】
現在の化学療法薬は、多大なコストにもかかわらず、EOC患者における無進行生存及び全生存をまだ劇的に改善していない。AvFcのような独特のバイオマーカーを標的とする新規のファーストインクラスの薬物の使用は、患者の転帰を大幅に改善する可能性を有する。既存の治療を補完する、相乗効果を与える、或いはそれを完全に置き換えることは、EOC患者のケアに大きな影響を与え得る。
【0193】
AvFcの標的集団には、任意のステージのEOCと診断され、第1選択の標準ケアを完了しており、残存疾患がなくなった患者が含まれる。現在、米国では67,000人がOVCAを抱えて生きており、世界的には、この数は762,000人に達し得ると推定される。2018年に米国で診断されたOVCAの新規症例は、22,240件であり、全体の平均罹患率は100,000人当たり11.8人であると推定された。EOCは、OVCAの群を抜いて一般的な形態であり、新規のOVCA診断全体の約90%を構成する。これらの患者の大多数は、第1選択の治療の後に残存疾患がなくなり得るが、ほぼ全員が1年以内に疾患の再発を経験することになる。OVCAの罹患率及び死亡率は過去数十年間減少しており、依然として減少傾向にあるが、この傾向は弱く、OVCAは当面の間、女性の婦人科癌関連の死亡率の主要な原因になると予測される。
【0194】
AvFcは、OVCA由来の高マンノースグリカンに対して高度に選択性であり、その主な作用機序が抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を含む、ファーストインクラスの免疫療法抗体様分子である。独特なバイオマーカー(高マンノースグリカン)を使用する新規のファーストインクラスの薬剤として、AvFcは、OVCA免疫療法における新しいパラダイムを表す。今まで、この適応症のための臨床又は前臨床開発において、他の高マンノースグリカン結合薬剤は存在せず、したがって、AvFcは、開発中の化学療法薬及び生物製剤の分野の中で抜きんでている。さらに、OVCAに対して特定された特異的な腫瘍関連抗原がないことは、AvFcが、OVCA細胞に直接結合して死滅させることができる開発中の少数しかない免疫療法の1つであることを意味する。
【0195】
配列
配列番号1は、野生型アクチノヒビンポリペプチのアミノ酸配列である。
【化1】
【0196】
配列番号2は、本開示の主題に従って作製されたアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント1と指定される。
ASGTIRNAETGRLLDSNYDGAVYTLPANGGSYQRWTGPGDGTVRNAETGRLLDSNYDGAVYTLPANGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRLLDSNYDGAVYTLPANGGSYQKWTG(配列番号2)
【0197】
配列番号3は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアントと指定される。
ASGTIRNAETGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTG(配列番号3)
【0198】
配列番号4は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント3と指定される。
【化2】
【0199】
配列番号5は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント4と指定される。
【化3】
【0200】
配列番号6は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント5と指定される。
ASGTIRNAETGRLLDSNYNGNVYTLPANGGNYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRVLDSNYNGNVYTLPANGGNYQKWTG(配列番号6)
【0201】
配列番号7は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント6と指定される。
ASGTIRNAETGRCLDSNYDGNVYTLPCNGGSYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYDGNVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYDGNVYTLPCNGGSYQKWTG(配列番号7)
【0202】
配列番号8は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント7と指定される。
ASGTIRNAQTGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQRWTGPGDGTVRNAQTGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQKWTG(配列番号8)
【0203】
配列番号9は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント8又はAvaren(ニコチアナ(Nicotiana)において発現されるアクチノヒビンバリアント)と指定される。
ASGTIRNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQKWTG(配列番号9)
【0204】
配列番号10は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント9と指定される。
ASGTIRNAQTGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQKWTG(配列番号10)
【0205】
配列番号11は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント10と指定される。
ASGTIRNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQRWTGPGDGTVRNAQTGRCLDSNYDGAVYTLPCNGGSYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQKWTG(配列番号11)
【0206】
配列番号12は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント11と指定される。
ASGTIRNAQTGRLLDSNYNGNVYTLPANGGNYQRWTGPGDGTVRNAQTGRLLDSNYNGNVYTLPANGGNYQKWTGPGDGTIQNAQTGRVLDSNYNGNVYTLPANGGNYQKWTG(配列番号12)
【0207】
配列番号13は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント12と指定される。
ASGTIRNAETGRLLDSNYNGNVYTLPANGGNYQRWTGPGDGTVRNAETGRLLDSNYNGNVYTLPANGGNYQKWTGPGDGTIQNAETGRVLDSNYNGNVYTLPANGGNYQKWTG(配列番号13)
【0208】
配列番号14は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント13と指定される。
ASGTIRNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYNGNVYTLPCNGGNYQKWTG(配列番号14)
【0209】
配列番号15は、本開示の主題に従って作製された別のアクチノヒビンバリアントポリペプチドのアミノ酸配列であり、本明細書ではバリアント14と指定される。
ASGTIRNAETGRCLDSNYDGNVYTLPCNGGNYQRWTGPGDGTVRNAETGRCLDSNYDGNVYTLPCNGGNYQKWTGPGDGTIQNAETGRCLDSNYDGNVYTLPCNGGNYQKWTG(配列番号15)
【0210】
配列番号16は、リンカーポリペプチドを介して、免疫グロブリン(Ig)Gの断片結晶化可能(Fc)領域を含むアミノ酸配列に融合された、配列番号9のアクチノヒビンバリアントポリペプチド(バリアント8)を含むアミノ酸配列であり、本明細書ではAvFcと称される。
【化4】
【0211】
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【0212】
本明細書で引用される全ての特許、公開出願及び参考文献の教示は、参照によってその全体が援用される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
【配列表】
2024509385000001.app
【国際調査報告】