(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置、そのような吸引装置のためのアタッチメント、および歯科治療中に物質を吸引する方法
(51)【国際特許分類】
A61C 17/08 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61C17/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550237
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022054271
(87)【国際公開番号】W WO2022175530
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500000485
【氏名又は名称】フェルトン ホールディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ferton Holding SA
【住所又は居所原語表記】rue Saint Maurice 34 CH-2800 Delemont,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドネ、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ルノー、ヴァンサン
(57)【要約】
歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置(1)は、吸引された物質の通過を可能にする吸引開口(15)を有するハンドピース(10)を備えるとともに、ハンドピース(10)に取り付けられるように設計された、飛散防止のためのアタッチメント(20)をさらに備えており、アタッチメント(20)は、ハンドピース(10)に対してアタッチメント(20)を交換可能または恒久的に取り付けるための取付部(25)と、吸引開口部(26)であって、アタッチメント(20)がハンドピースに取り付けられると、吸引された物質が吸引開口部(26)および吸引開口(15)を通過するための吸引開口部(26)と、少なくとも、吸引開口部(26)から延在するとともに、臼歯を部分的に、または臼歯の少なくとも2つの側面を取り囲み、特に同時に歯科用ツール(2)を収容するように設計された作業チャネル(30)を形成する側壁(23)であって、作業チャネルは、歯科用ツール(2)を作業チャネルに導入するための少なくとも1つの導入部分を有する、側壁(23)と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置(1)であって、
吸引された物質の通過を可能にする吸引開口(15)を有するハンドピース(10)を備えるとともに、ハンドピース(10)に取り付けられるように設計された、飛散防止のためのアタッチメント(20)をさらに備えており、アタッチメント(20)は、
-ハンドピース(10)に対してアタッチメント(20)を交換可能または恒久的に取り付けるための取付部(25)と、
-吸引開口部(26)であって、アタッチメント(20)がハンドピースに取り付けられると、吸引された物質が吸引開口部(26)および吸引開口(15)を通過するための吸引開口部(26)と、
-少なくとも、吸引開口部(26)から延在するとともに、臼歯を部分的に、または臼歯の少なくとも2つの側面を取り囲み、特に同時に歯科用ツール(2)を収容するように設計された作業チャネル(30)を形成する側壁(23)であって、作業チャネルは、歯科用ツール(2)を作業チャネルに導入するための少なくとも1つの導入部分を有している、側壁(23)と、を備えている、吸引装置(1)。
【請求項2】
前記作業チャネル(30)が、互いに対向して配置される2つの壁部分(21)によって形成されており、壁部分(21)は、好ましくは、吸引開口部(26)の平面に垂直な方向において測定される同じ長さ(L1)を有している、請求項1に記載の吸引装置(1)。
【請求項3】
前記アタッチメント(20)が、互いに対向して配置されるとともに、前記吸引開口部(26)から前記長さ(L1)にわたって延在する側壁部分(21)と、互いに対向して配置されるとともに、前記吸引開口部(26)からさらなる長さ(L2)にわたって延在するさらなる側壁部分(22)と、を備えており、前記導入部分を形成するために、さらなる長さ(L2)の最小値の平均と最大の長さ(L1)の平均との比は、0~0.8、好ましくは0~0.4、最も好ましくは0~0.2である、請求項2に記載の吸引装置(1)。
【請求項4】
前記作業チャネル(30)が、前記ハンドピース(10)の長手方向(LD)に対して主に平行な方向に沿って、または前記ハンドピース(10)の長手方向(LD)に対して主に約45°まで、好ましくは30°まで、最も好ましくは15°まで傾斜した方向に沿って延在している、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項5】
前記吸引開口部(26)が非円形である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項6】
前記吸引開口部(26)の周方向に沿って、前記側壁(23)の長さ(L1)が調節される、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項7】
前記アタッチメント(20)が、好ましくは前記側壁部分(21)において、中断部、特にスリット(28)および/または孔を有している、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項8】
前記アタッチメント(20)が、可撓性および/または軟質材料から形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項9】
前記側壁(23)の最大長さ(L1)が、3~20mm、好ましくは8~14mm、最も好ましくは約12mmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項10】
前記吸引開口(15)が、前記ハンドピース(10)の長手方向(LD)に垂直な基準面(RP)に対して、好ましくは約70°~90°、より好ましくは約75°~85°、最も好ましくは約75°~80°の第1の角度(W1)で傾斜している平面(P)内に延在している、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項11】
前記アタッチメント(20)の吸引開口部(26)が、その寸法および/または位置に関して、前記ハンドピース(10)の吸引開口(15)と異なっている、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項12】
前記吸引開口(15)および/または前記吸引開口部(26)の延長部が、10mm~50mm、好ましくは15mm~50mm、最も好ましくは20mm~40mmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項13】
吸引装置(1)が、ミラー要素(40)であって、好ましくは、前記吸引開口部(26)の反対側で吸引装置(1)に配置されているミラー要素(40)を有している、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸引装置(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の吸引装置(1)用のアタッチメント(20)。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の吸引装置(1)を使用して、歯科治療中に物質を吸引する方法であって、
治療ゾーン(TZ)は作業チャネルに覆われており、好ましくは、さらなるツール(2)が、物質を吸引するための吸引装置(1)と治療ゾーン(TZ)との間に少なくとも部分的に配置される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療中に飛散物(splatter)(水/唾液/細菌)およびエアロゾル(空気中の少量の汚染物質)などの物質を吸引するための吸引装置、そのような吸引装置のためのアタッチメント、および歯科治療中に物質を吸引するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療中に物質を吸引することは、従来技術からよく知られている。典型的には、歯膜(biofilm)、唾液、生体物質の破片(debris)、その他の突起物などの物質は、治療中に患者の口腔内に配置される吸引システムによって除去される。特に、本発明は、歯石除去器または粉末噴射装置と共に使用される、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置に関する。このようなツール、すなわち歯石除去器または粉末噴射装置の使用は、ツールと患者の口腔領域の歯との相互作用により、大量の飛散物が発生して実際に口腔領域から出る可能性があるので、効果的な吸引および飛散防止に特定の課題が生じる。
【0003】
従来技術としては、例えば、(特許文献1)の発明が知られており、これは、手術中に患者の口腔内に挿入され、口腔内全体に広がる吸引システムに関する。特に、(特許文献1)の吸引装置は、側壁部分の内側に配置された吸引開口部を有する2つの壁部分を含み、側壁部分は互いに対向して配置されている。互いに対向する壁の間の空間は、吸引動作中は閉じられる。
【0004】
(特許文献2)は、吸引ユニットに取り付けることができる漏斗のようなアタッチメントに関するものである。(特許文献3)は、供給ラインを出る流体を提供するためのハンドピースと、流体を除去する吸引ラインとの両方を備える装置に関する。供給ラインおよび吸引ラインは、供給ラインが吸引ラインに対して相対的に動かないように、共通の飛散防止装置に固定されている。そのため、一方では供給ライン、すなわち歯を治療するためのハンドピースの開口部と、他方では吸引ラインの開口部との間の相対位置を変更することはできない。
【0005】
(特許文献4)の発明は、患者の口を主に完全に塞ぐ、吸引装置のポット状アタッチメントに関する。(特許文献5)は、舌リトラクタを有する歯科用ハンドピースに関する。さらに、従来技術では、(特許文献6)の発明が知られており、これは、流体を噴出するハンドピースと、飛散防止部を形成するための壁の配置とに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第3145442号明細書
【特許文献2】独国実用新案第202009003818号明細書
【特許文献3】米国特許第4865021号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1131015号明細書
【特許文献5】国際公開第2014209504号
【特許文献6】欧州特許出願公開第3360508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、本発明の目的は、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置を提供することであり、この吸引装置は、特に、吸引装置が他の独立したツール、好ましくは歯石除去器および/または粉末噴射装置と一緒に使用されるような場合に、口腔領域から出る飛散物の量を効果的に低減することができる。特に、吸引のための吸引装置は、物質を吸引するための吸引装置と共に使用されるツールの固有の特性に適合されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置、請求項14に記載の吸引装置用のアタッチメント、および請求項15に記載の歯科治療中に物質を吸引する方法によって達成される。さらなる実施形態は、説明、図面および従属請求項に組み込まれる。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置が提供され、この吸引装置は、吸引された物質の通過を可能にする吸引開口(suction aperture)を有するハンドピースを備えるとともに、ハンドピースに取り付けられるように設計された飛散防止のためのアタッチメントをさらに備えている。アタッチメントは、
-ハンドピースに対してアタッチメントを交換可能または恒久的に取り付けるための取付部と、
-吸引開口部(suction opening)であって、アタッチメントがハンドピースに取り付けられると、吸引された物質が吸引開口部および吸引開口を通過するための吸引開口部と、
-少なくとも、吸引開口部から延在するとともに、臼歯を部分的に、または臼歯の少なくとも2つの側部を取り囲むように設計された作業チャネルを形成し、特に、同時に歯科用ツールを受け入れるように設計された側壁であって、作業チャネルが歯科用ツールを作業チャネルに導入するための少なくとも1つの導入部分を有している、側壁と、を備えている。
【0010】
従来技術とは対照的に、有利な態様では、吸引効率を高めることができるように、吸引が行われる歯の上の容積を減少させるための作業チャネルを形成することが可能である。特に、高い吸引力を受ける容積を減少させることが可能であり、したがって効果的な吸引を行うことができる。その結果、アタッチメントを歯の上、特に治療ゾーンの上に配置することによって、臼歯をドーム状に覆うことが可能である。好ましくは、吸引装置は歯ブラシのような形をしており、口腔内のあらゆる部位にアクセスしやすくなっている。治療ゾーンの周りに高い吸引容量を作り出すことに加えて、治療ゾーンの視認性(visibility)の低下を回避することも可能である。臼歯の場合、治療ゾーンおよび/またはツールの上方に配置することも可能である。ドーム状の覆いは、側壁の内側によって飛散防止を支援し、飛散防止の効率を高めるために、歯に非常に近い位置に配置することができる。特に、アタッチメントの幾何学的形状は、アタッチメントと治療ゾーンまたは歯との間に歯石除去器または粉末噴射装置などの追加のツールを配置することさえ可能にする。特に、臼歯を「少なくとも部分的に」囲むとは、臼歯の少なくとも2つの側面、好ましくは3つの側面を覆うことができることを意味する。
【0011】
作業チャネルは、作業チャネルが歯列を受容するのに適するように構成されている。特に、作業チャネルは、少なくとも2つの側面、好ましくは3つの側面で複数の歯を取り囲むように構成されている。好ましくは、作業チャネルの長さは作業チャネルの幅よりも大きく、好ましくは1.5倍より大きく、より好ましくは2.5倍より大きく、最も好ましくは3.5倍より大きい。
【0012】
好ましくは、作業チャネルは、互いに対向して配置された2つの壁部分によって形成され、壁部分は、好ましくは、吸引開口部に対して垂直な方向において測定して、同じまたは類似の長さを有する。用語「類似の長さ」は、最大長さに対して約10%の長さの差を含む。長さは、吸引開口部に対して垂直な方向、特にアタッチメントの取付部における吸引開口部に対して垂直な方向において測定される。特に、長さは取付部から測定される。長さが側壁の周方向に沿って調節される場合、最大長さは、好ましくは、側壁または側壁部分の長さを画定する。さらに、吸引装置の遠位端は、患者、特にヒト患者の口の内側に配置されるように構成され、および/または臼歯を囲むように臼歯の上に配置することができる。
【0013】
特に、側壁は吸引開口部を取り囲み、特に取付部の外側の領域においても取り囲むように設けられている。側壁部分は、ハンドピースの長手方向に沿ってアーチ状にすることができ、好ましくは、側壁部分は、ハンドピースの長手方向に対して鏡面対称に配置される。好ましくは、取付部は、ハンドピース、特に吸引開口とアタッチメントとの間のインターフェースを形成する。
【0014】
好ましくは、アタッチメントは、
-互いに対向して配置されるとともに、長さにわたって取付部において吸引開口部から延在する側壁部分と、
-さらなる側壁部分であって、互いに対向して配置されるとともに、吸引開口部からさらなる長さにわたって延在している、さらなる側壁部分と、を有しており、さらなる長さの最小値の平均(a mean of the minimum further lengths)と最大の長さ(a maximum length)との比は、0~0.8、好ましくは0~0.4、最も好ましくは0~0.2である。特に、さらなる側壁部分/側壁部分は、さらなる最小長さ/最大長さに関して互いに区別されるため、さらなる最小長さ/最大長さの平均が考慮される。さらに、側壁部分/さらなる側壁部分は、最大長さおよびさらなる最小長さが、側壁部分の長さとさらなる側壁部分の長さとの比を決定することによって考慮されるように、それらの長さに関して調節されることが考えられる。好ましくは、さらなる最小長さ/最大長さの差は、さらなる最小長さの平均/最大長さの平均の25%未満、好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満である。側壁部分およびさらなる側壁部分は、それぞれ互いに対向して配置され、吸引開口部は、それぞれ側壁部分および/またはさらなる側壁部分の間に位置する。好ましくは、側壁部分およびさらなる側壁部分、特にそれらの全体的なコースは、主に互いに対して約90°に配向される。さらに、好ましくは、さらなる側壁部分、特に各側壁部分は、単一のさらなる最小長さを有しており、特に側壁部分、具体的には各側壁部分は、単一の最大長さを有する。
【0015】
特に、作業チャネルは、ハンドピースの長手方向に主に平行な方向に沿って、またはハンドピースの長手方向に対して主に約45°まで、好ましくは30°まで、最も好ましくは15°まで傾斜した方向に沿って延在する。その結果、主に臼歯の列と平行に延びる、あるいはそのような配置に適合したチャネルを形成することが可能になる。アタッチメントを回転させてチャネルの向きを適合させるために、アタッチメントを、吸引開口部に対して主に垂直に延びる軸を中心に回転させることも考えられる。好ましくは、そのような回転は、45°までの角度しか調節できないように制限される。また、ハンドピースの長手方向に対して、アタッチメントの所定の回転角度の間で段階的に向きを適合させることも考えられる。作業チャネルの方向は、主に、最大長さを有する側壁部分または最大長さを有する平行な壁部分の長手方向によって決定される。
【0016】
好ましくは、本発明によれば、アタッチメントの側壁の延長部、特にその最大長さは、吸引開口部の延長部または寸法と比較すると小さい。好ましくは、側壁の最大長さは、吸引開口部の最大延長部よりも小さい。換言すれば、アタッチメントは、同等の大きな吸引開口部を提供する一方で、吸引開口部から突出する側壁は、特に取付部における吸引開口部から測定して小さい。この幾何学的形状は、同等の薄い遠位端部分を有する、物質を吸引するための吸引装置の形成を支援し、吸引装置と別のツール、特に粉末噴射装置および/または歯石除去器との同時使用を支援することが判明した。特に、アタッチメントの平坦な構成により、患者の口を完全に塞ぐことなく使用することができ、さらに、通常飛散物が生じる治療ゾーンの上方で物質を効果的に吸引するために吸引装置を適切に配置するための柔軟性を提供する。好ましくは、治療ゾーンおよび/またはハンドピースをドーム状に覆うために、アタッチメントおよび吸引装置を、歯石除去器または粉末噴射装置などの追加の処置ツールおよび治療ゾーンの上方に配置することが可能である。
【0017】
好ましくは、吸引開口部および/または吸引開口は非円形である。例えば、吸引開口部および/または吸引開口は、長円形または楕円形の断面を有する。結果として、特に同じ直径を有するハンドピースの円形断面と比較して、吸引開口部に同等の大きな断面が提供される。吸引開口部および/または吸引開口が、台形のような、長方形または多角形の断面を有することも考えられる。さらに、側壁は、開口部を取り囲む閉じた円周側壁を形成するために、好ましくは互いに合体する1つの側壁部分または複数の側壁部分によって形成される。また、中断された側壁を形成するために、複数の壁部分を互いに間隔をあけて配置させることも考えられる。
【0018】
好ましくは、吸引開口部の大きさは、非円形の吸引開口部の場合、第1の延長部および第2の延長部によって画定される。第1の延長部および第2の延長部はそれぞれ、吸引開口部の平面において互いに垂直な2つの方向における最大長さを表す。例えば、吸引開口/吸引開口部の第1および第2の延長部は、楕円形断面の場合、楕円の短軸および長軸の寸法に対応する。円形断面の場合、第1および第2の延長部は同じ寸法を有し、吸引開口部の寸法は単一の値で与えられる。好ましくは、側壁の最大長さは第1の延長部より小さく、第1の延長部は第2の延長部より大きい。好ましくは、側壁の最大長さの1.5倍または2倍が第1の延長部よりも小さく、第1の延長部が第2の延長部よりも大きい。
【0019】
好ましくは、吸引開口部の周方向に沿って、側壁の長さが調節される。したがって、側壁部分の長さを患者の口腔内の典型的な歯の配列に合わせることができる。特に、最大長さを有する側壁部分は主に歯の配列に平行に延在し、最小長さを有するさらなる側壁部分は、治療中、特に臼歯の治療中に、典型的には歯の上に位置する。したがって、治療ゾーンをアタッチメントで効果的に覆うことが可能である。特に、調節された長さの態様は、アタッチメントが波状の模様を形成するように、および/または、少なくとも1つのアーチ状部分を含むように適合される。よって、アタッチメントが治療中にドーム状の構造を提供することがさらに可能である。
【0020】
好ましくは、アタッチメントは、好ましくは最大長さを有する側壁部分の1つに、中断部、特にスリットまたは孔(hole)を含むため、起こりうる頬への吸着を抑制する。さらに、アタッチメントは、可撓性および/または軟質材料から形成される。例えば、材料は、20~80ショアの値を有する。したがって、歯を傷めるおよび/または損傷することなく、歯に接触することができる。特に、臼歯でない歯を治療する場合、側壁、特に側壁部分を変形させることが可能である。その結果、歯の種類および口腔内のその位置に応じて、治療ゾーンの前の吸引容積の大きさを調節することが可能になる。さらに、患者の口の内側に接触する場合、より快適に接触することができる。例えば、アタッチメントは、変形可能な弾性材料から作られる。これは、アタッチメントをハンドピースの吸引開口のカラー部分の上まで引っ張る(pulled over)際の取付プロセスを支援する。
【0021】
好ましくは、アタッチメントは、アタッチメントを使用してそれを取り外した後に新しいアタッチメントと交換することができるように、使い捨て用として設計および構成される。あるいは、アタッチメントは、再使用されるように構成される。この場合、アタッチメントは、殺菌または殺菌手段との接触を可能にする特定の材料から作られる。この場合、ハンドピースを殺菌して別の患者に再使用するために、ハンドピースからアタッチメントを取り外すことが合理的である。
【0022】
好ましくは、アタッチメントは透明な材料から作られる。透明な材料を使用することにより、特に、歯石除去器または粉末噴射装置などの追加のツールが、物質を吸引するための吸引装置と歯との間に、特にアタッチメントの下または隣に配置される場合に、操作者が追加のツールを見ることができる。これは、物質を吸引するための吸引装置と同時に使用するツールの取り扱いを簡素化する。
【0023】
好ましくは、側壁の最大長さは、3mm~20mm、好ましくは8mm~14mm、最も好ましくは約12mmである。
好ましくは、吸引開口は、ハンドピースの長手方向に垂直な基準面に対して、好ましくは約70°~90°、より好ましくは約75°~85°、最も好ましくは約75°~80°の第1の角度で傾斜した平面内に延在する。その結果、吸引開口部の断面を比較的大きくすることができる。これにより、遠位端部分では、同じ直径を有するハンドピースの前端部における円形断面よりも大きい断面が形成される。
【0024】
好ましくは、ハンドピースは、吸引開口を含む遠位端部分を有しており、遠位端部分は、長手方向に対して、好ましくは1°~40°、より好ましくは1°~25°、最も好ましくは1°~20°の第2の角度で傾斜している。遠位端部分のそのような傾斜配置の結果として、別のツールを治療部位に容易に配置することができるとともに、歯科治療中の物質を吸引するための吸引装置の取り扱いをさらに簡素化する。
【0025】
好ましくは、吸引開口および/または吸引開口部の延長部は、10mm~50mm、好ましくは15mm~50mm、最も好ましくは20mm~40mmである。非円形断面の場合、第1の延長部は、10mm~50mm、好ましくは15mm~50mm、最も好ましくは20mm~40mm、例えば約31mmの値を有しており、第2の延長部は、10mm~40mm、好ましくは15mm~35mm、最も好ましくは20mm~30mm、例えば約23mmの値を有している。
【0026】
好ましくは、吸引開口を含む遠位端部分の厚さは、長手方向に沿って測定して、25mm未満、好ましくは20mm未満、最も好ましくは約18mmである。その結果、非常に平坦な遠位端部分を提供することが可能となり、治療中に患者の口を完全に塞ぐことがなく、また、吸引装置の再配置や向きを簡単に変更することができるため、飛散物が口腔領域から出るのを最も効果的に防止することができる。
【0027】
好ましくは、アタッチメントは、スナップ接続またはオーバーモールドによってハンドピースに取り付けられる。例えば、スナップ接続のために、アタッチメントは、ハンドピースの材料と比較してより可撓性および弾性である材料から作られており、それにより、アタッチメントを、ハンドピースの遠位端部分、特にハンドピースの吸引開口を取り囲むカラーのような部分に取り付ける(pulled on)ことができる。好ましくは、アタッチメントおよびハンドピースの遠位端部分は、吸引開口および吸引開口部の断面または平面に対して垂直な方向に沿って、形状嵌め(form fitting)および/または力嵌め(force fitting)を可能にする。オーバーモールドの場合には、簡単かつ堅固な方法で恒久的な接続が可能になる。
【0028】
好ましくは、アタッチメントの吸引開口部は、その寸法および/または位置に関して、ハンドピースの吸引開口と異なっている。吸引開口および吸引開口部の寸法を互いに対して変更することによって、吸引装置の吸引動作を最適化できることが判明した。特に、吸引装置のアタッチメントの近位端からアタッチメントの遠位端まで、すなわち長手方向におけるアタッチメントの延在部に沿って、より均一な吸引効果を得ることが可能である。これにより、口腔底部(最後臼歯部)、すなわちアタッチメントの遠位端においても、最適な吸引が可能となる。好ましくは、ハンドピースの吸引開口の第1の断面は、アタッチメントの吸引開口部の第2の断面よりも小さい。特に、アタッチメントおよび/またはハンドピースは、吸引開口および吸引開口部の寸法および/または位置の差を生じさせるために、吸引開口および/または吸引開口部を覆う要素、特にカラーまたはシート状要素を含む。好ましくは、ハンドピースの管は、アタッチメントの吸引開口部の少なくとも一部を覆うために、アタッチメントの吸引開口部の領域内に少なくとも部分的に延在する。したがって、ハンドピースの吸引開口と比較して、寸法および/または位置が異なる吸引開口部を形成することが可能になる。さらに、好ましくは、吸引開口の第1の断面の第1の中心は、アタッチメントの吸引開口部の第2の中心に対してずれている(shifted)。好ましくは、第1の中心および第2の中心は、ハンドピースの長手方向に平行な方向に沿って互いにずれている。
【0029】
好ましくは、吸引開口は、吸引開口部の第2の中心と比較して吸引装置/アタッチメントの遠位端に近い位置にある。
第1の中心および第2の中心が、長手方向に対して垂直な方向に沿って互いにオフセットしていることも考えられる。さらに、吸引開口部と比較してより小さい吸引開口を形成するために、追加の要素を吸引装置に挿入することが考えられる。例えば、吸引開口部および吸引開口の好ましい寸法および/または位置を設定するために、ハンドピースとアタッチメントとの間に壁を配置することが考えられる。
【0030】
好ましくは、吸引装置はミラー要素を含み、ミラー要素は、好ましくは吸引装置において吸引開口部とは反対側に配置される。ミラー要素は、例えば、吸引を停止した直後に治療ゾーンを確認することを可能にする。例えば、操作者は吸引装置の向きを変えるだけで、操作者の視点からは見えにくい領域を映すことができる。ミラー要素は、好ましくは、その反射面が吸引装置の外側で吸引開口部から離れる方向に向くように配置される。ミラー要素は、例えば、適切な空洞を形成することによって、および/またはミラー要素を所望の位置、特に空洞内に接着、クリップ圧入(clipping press-fitting)、またはオーバーモールドすることによって、吸引装置に固定することができる。特に、ミラー要素はハンドピースの背面に配置される。
【0031】
本発明の別の態様は、本発明による吸引装置用のアタッチメントである。吸引装置に関連して説明される全ての利点および詳細は、アタッチメントにも同様に適用され、その逆もまた同様である。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明による吸引装置を使用することによって歯科治療中に物質を吸引する方法であり、治療ゾーンが作業チャネルによって覆われ、好ましくは、物質を吸引するための吸引装置と治療ゾーンとの間にさらなるツールが少なくとも部分的に配置される。吸引装置およびアタッチメントに関連して説明される全ての利点および詳細は、上記方法にも同様に適用され、その逆もまた同様である。
【0033】
まだ明示的に記載されていない場合であっても、個々の実施形態またはそれらの個々の態様および特徴は、そのような組み合わせまたは交換が有意義であり、本発明の意味においてであればいつでも、記載された本発明の範囲を限定または拡大することなく、互いに組み合わせまたは交換することができる。本発明の一実施形態に関して説明される利点は、適用可能な場合はいつでも、本発明の他の実施形態の利点でもある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による、使用時における歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置を概略的に示す。
【
図2】
図1の吸引装置を2つの側面図において概略的に示す。
【
図3】
図1の吸引装置を別の側面図において概略的に示す。
【
図4】
図1の吸引装置を斜視図において概略的に示す。
【
図5】
図1の吸引装置を別の使用状況において示す。
【
図6】本発明の別の実施形態による吸引装置を概略的に示す。
【
図7】別のさらなる実施形態による吸引装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の好ましい実施形態による、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1の使用中の状態を示している。特に、物質を吸引するためのそのような吸引装置1は、治療中に物質を除去することを意図しており、物質は、例えば、飛散物および/またはエアロゾルであり、このような飛散物および/またはエアロゾルは、そうでなければ、治療ゾーンTZに溜まったり蓄積されたものであり、操作者が治療ゾーンTZ内の目標、すなわち歯の表面領域を適切に治療することを妨げる可能性がある。
【0036】
特に、歯科治療中に材料を吸引するための吸引装置1は、動作中に歯を治療する独立したツール2と同時に使用することができるように意図されかつ構成される。「独立した」という用語は、一方では歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1が、他方ではツール2が互いに対して移動可能であり、互いに剛性的に固定されていないことを意味する。好ましくは、ツール2は、歯の表面から歯石および/または歯膜を除去するための歯石除去器または粉末噴射装置である。そのようなツール2を使用することは、通常、激しい飛散の発生を伴い、飛散物が実際に患者の口腔領域から出ることさえある。
【0037】
動作中に口腔領域から出る飛散物の量を低減するために、アタッチメント20が、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1の遠位端部分11に配置される。特に、アタッチメント20は、ツール2、好ましくは歯石除去器および粉末噴射装置、特に粉末噴射装置のノズルヘッドと共に使用できるように構成される。その結果、吸引装置1およびツール2を患者の口腔内に入れて、同時に方向付けることができる。特に、治療ゾーンTZおよび/またはツール2をドーム状に覆うために、治療中にアタッチメント20をツール2の上方に配置することが可能である。
【0038】
図2は、
図1の歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1を2つの側面図において概略的に示している。歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1は、長手方向LDに沿って延びるハンドピース10と、好ましくはハンドピース10に取り外し可能に取り付けられるアタッチメント20とを備えている。ハンドピース10は、特にハンドピース10の遠位端部分11に位置する吸引開口15を有している。吸引開口15は特に、ハンドピース10の長手方向LDに垂直に延在する基準面RPに対して、好ましくは約70°~90°、より好ましくは約75°~85°、最も好ましくは約75°~80°の第1の角度W1で傾斜した平面P内に延在するように設けられている。その結果、吸引開口15は、第1の延長部E1および/または第2の延長部E2を有する、非円形断面、好ましくは楕円形断面を有し、第1の延長部E1および第2の延長部E2は、平面P内で互いに垂直であり、基準平面RPに対して傾斜している2つの方向に沿った吸引開口15のそれぞれの最大延長部に対応している。好ましくは、吸引開口部26は、少なくとも部分的に吸引開口部15の前に配置され、および/または吸引開口部26は、吸引開口15に対して傾斜して配向されている。
【0039】
その結果、吸引開口15は同等の大きな寸法の開口部となり、吸引処置中に多くの物質を集めて除去することができる。さらに、ハンドピース10の遠位端部分11は、長手方向LDに対して約1°~40°、より好ましくは約1°~25°、最も好ましくは約1°~20°の第2の角度W2で傾斜している。
【0040】
図2の左側の図に示されている吸引装置1において、アタッチメント20はハンドピース10に、特にハンドピース10の吸引開口15に取り付けられている。
図2の右側の図では、アタッチメント20はハンドピース10の吸引開口15から間隔をあけて配置されている。
【0041】
具体的には、アタッチメント20は、その使用中に吸引される物質が通過する吸引開口部26を有している。特に、吸引開口部26は、非円形のリング要素によって形成されており、このリング要素は好ましくは取付部25を含み、取付部25は、特に吸引開口15の前でアタッチメント20をハンドピース10の遠位端部分11に固定することを支持するように意図されている。
【0042】
好ましくは、ハンドピース10、特にハンドピース10の遠位端部分11、およびアタッチメント20は、ハンドピース10とアタッチメント20との間の可逆的接続を確立するためのスナップ接続を形成するように構成されている。例えば、アタッチメント20は、ハンドピース10の遠位端部分11の材料と比較してより可撓性および/または弾性である材料から作製され、それにより、取付部25、特にリング状の取付部25を、吸引開口15を有するハンドピース10の遠位端部分11に取り付ける(pulled onto)ことができる。
【0043】
特に、アタッチメント20の取付部25は、ハンドピース10の遠位端部分11の吸引開口15を取り囲むカラー部分14と相互に作用する。さらに、ハンドピース10のカラー部分14および遠位端部分11は、吸引開口15の平面Pに垂直な方向において、取付部25と形状嵌め(form fitting)および/または力嵌め(force fitting)で相互に作用する。
【0044】
特に、吸引開口15および吸引開口部26は、アタッチメント20のハンドピース10への取り付けが、吸引装置1の使用中に物質を吸引するために使用される開口部の断面を減少させないように、主に同じ形状および同じ大きさを有する。アタッチメント20は、アタッチメント20の取付部25から延在または突出する側壁23を含むことが好ましい。
【0045】
アタッチメント20の側壁23は、吸引開口部26または平面Pに対して垂直な方向に沿って測定される、その長さにおいて調節される。特に、側壁23は、少なくとも1つの側壁部分21を有しており、この側壁部分21は、取付部25において吸引開口部26から長さL1にわたって延在する。特に、2つの側壁部分21は、アタッチメント20の吸引開口部26の両側に位置し、作業チャネル30を形成する。作業チャネル30は、高い吸引容積を保証できると同時に、側壁23の内側を飛散防止部として使用できるような寸法に設定される。好ましくは、アタッチメント20を有する吸引装置1は、全ての歯、特に臼歯への最適なアクセス性を保証するために、歯ブラシと同様に構成される。特に、側壁部分21に割り当てられた長さL1は、取付部25から吸引開口部26の平面Pに実質的に垂直な方向に突出する側壁23の最大長さを表す。側壁23は、吸引開口部26の平面Pに対して垂直に延在してもよいし、吸引開口部26の平面Pに垂直な方向に対して傾斜していてもよい。
【0046】
特に、最大長さを有する側壁部分21は、吸引開口部26の軸に対して鏡面対称に配置され、軸は、吸引開口部26の断面の長軸または第1の延長部E1であり、および/または軸は主に長手方向LDに平行に延びる。
【0047】
さらに、好ましくは、側壁部分21の最大長さL1は、吸引装置1の吸引開口部26および/または吸引開口15の断面の最大延長(maximum extension)よりも小さい。特に、長さL1は、吸引開口部26に割り当てられている、楕円形断面の長軸(lage axis)に沿った延長部、すなわち第1の延長部E1、および短軸(small axis)に沿った延長部、すなわち第2の延長部の両方よりも小さい。換言すれば、取り付けられた状態でハンドピース10の遠位端部分11から突出する側壁部分21は、比較的小さいので、例えば、治療ゾーン、すなわち歯と、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1との間に配置することができるツール2の追加の使用を支持する。特に、上記した特定の幾何学的形状が物質の効果的な除去を可能にするとともに、治療中、特に歯石除去器および/または粉末噴射装置による歯の治療中に発生する飛散物が治療ゾーンTZまたは患者の口から出るのを妨げることが判明した。
【0048】
特に、吸引装置1は、吸引開口15を含む遠位端部分11において、25mm未満、好ましくは20mm未満、最も好ましくは18mm未満の厚さDを有する。さらに、側壁23の最大長さL1は、好ましくは3~20mmであり、好ましくは8~14mmであり、最も好ましくは約12mmである。
【0049】
図3は、好ましい実施形態による歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1の別の側面図を示す。実際は、側面図は、好ましくは第1の延長部E1および第2の延長部E2を有する吸引開口15および吸引開口部26の上面図を含み、第1の延長部E1は、ハンドピース10の長手方向LDに沿った最大延長部であり、第2の延長部E2は、第1の延長部E1およびハンドピース10の長手方向LDに対して垂直な方向に沿って延びる吸引開口15および/または吸引開口部26の最大延長部である。
【0050】
図4は、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1を斜視図において概略的に示している。この斜視図は、側壁23がその長さL1に関して調節されており、特に、互いに対向して、特にハンドピース10の長手方向LDに対して主に垂直に延びる方向に沿って互いに対向して位置するさらなる側壁部分22を含むことを示している。さらなる側壁部分22は、側壁部分21の長さL1よりも短いさらなる長さL2を有しており、それにより、物質を吸引するための吸引装置1が、最大長さL1を含む側壁部分21が患者の口腔内の歯の配列に主に平行に延在するように、治療ゾーンTZの上方または下方に位置することができる。また、さらなる側壁部分22の減少したさらなる長さL2により、ノズルヘッドおよび/または別のツール2を吸引装置1と歯との間に同時に配置することができる。
【0051】
さらに、取付部25から突出する側壁23の長さL1は、側壁部分21からさらなる側壁部分22へと連続的に変化しており、特に、治療中に患者が損傷を受けないように、その経路に急激な変化はない。
【0052】
図5は、第2の好ましい実施形態による、歯科治療中に物質を吸引するための吸引装置1の治療中の状態を示している。特に、
図5の吸引装置1は、
図1~
図4に示す吸引装置1に対応しており、加えて、側壁部分21にスリット28の形態の中断部を含んでおり、中断部は、好ましくは、側壁部分21の最大長さL1に位置する。このようなスリット28は、吸引中の吸引装置1が歯および/または口腔に吸着されるのを防止する。代替的に、中断部が側壁部分21の孔で形成されることも考えられる。
【0053】
図6は、別の好ましい実施形態による吸引装置1を3つの異なる斜視図で示している。先の実施形態の特徴に加えて、
図6の実施形態は、ハンドピース1の背面に配置されたミラー要素40を含む。ミラー要素40は、特に、吸引開口部26またはアタッチメント20から背を向けた側に配置され、例えば、吸引装置1、特にハンドピース10の向きを変えるだけで、吸引処置を終了した後に操作者が使用することができる。好ましくは、ミラー要素40の断面積は、吸引開口部26の断面積よりも小さく、いずれも吸引開口部26の延長部に平行な方向で測定される。例えば、吸引開口部26の断面積に対するミラー要素40の断面積の比は、0.6より小さく、より好ましくは0.4より小さく、最も好ましくは0.35より小さい。ミラー要素40は、例えば結像による拡大効果を生み出すために、平坦であっても湾曲していてもよい。
【0054】
図7は、本発明による吸引装置1の別のさらなる実施形態を示している。特に、
図7の吸引装置1は主に、
図1~
図6に示する吸引装置1に対応している。特に、
図7の実施形態は、アタッチメント20の吸引開口部26とは異なる、ハンドピース10の吸引開口15を有する吸引装置1に関する。特に、ハンドピース10およびアタッチメント20は、吸引開口15がアタッチメント20の吸引開口部26と区別できるように構成されている。特に、
図7の実施形態では、ハンドピース10の吸引開口15は、アタッチメント20の吸引開口部26に比べて小さい。特に、ハンドピース10の遠位端DEは、ハンドピース10の遠位端部分11においてハンドピース10によって形成される管の部分が、アタッチメント20の吸引開口部26を少なくとも部分的に覆うように形成されている。換言すれば、管の側壁は、特に、アタッチメント20/吸引開口部26の遠位端DEにおいて、吸引開口部26を覆うために吸引開口部26の領域内に延びる。好ましくは、吸引開口15は平面P内に延在する第1の断面を有し、吸引開口部26は平面P内に延在する第2の断面を有する。好ましくは、第2の断面積に対する第1の断面積の比は、0.8未満、好ましくは0.75未満、最も好ましくは0.65未満である。
【0055】
好ましくは、第2の断面積に対する第1の断面積の比は、0.3~0.9、より好ましくは0.4~0.8、最も好ましくは0.5~0.75である。
さらに、第1の中心M1を吸引開口15の第1の断面に、第2の中心M2を吸引開口部26の第2の断面に割り当てることができる。好ましくは、第1の中心M1は第2の中心M2に対して、特にハンドピース10、特にその管の長手方向LDに平行な方向に沿ってオフセットして配置される。特に、第1の中心M1は吸引装置1の遠位端DEに近い位置にあり、第2の中心M2はアタッチメント20の近位端PEに近い位置にある。このように、特に吸引装置1の遠位端DEに向かってオフセットされた配置は、操作においてより均質な吸引を可能にし、通常はアクセスすることが容易でない口腔底部(最後臼歯の領域)から粒子または物質を除去することも可能にする。好ましくは、第1の中心M1と第2の中心M2は、少なくとも約1mm、より好ましくは少なくとも約3mm、最も好ましくは少なくとも約8mmを超えてずれている。
【0056】
さらに、吸引開口部26の形状と吸引開口15の形状が互いに異なることも考えられる。吸引開口部26は楕円形であってもよいが、吸引開口15は正楕円形とは異なる形状を有していてもよい。
【0057】
図8aおよび
図8bは、特に
図7の実施形態における吸引装置1の吸引効果を説明するシミュレーションを示している。
図8aは、互いに類似する吸引開口部26および吸引開口15を有する吸引装置1を示している。
図8bは、
図7の吸引装置1の吸引シミュレーションを示している。図示のように、吸引効果は、
図8bの例では、特に長手方向LDに沿って、より均一に分散しているが、
図8aの最大吸引効果は、
図8aの吸引装置1のアタッチメント20の近位端PEに集中している。結果として、
図7の実施形態の吸引開口部26および吸引開口15のオフセット配置および異なる大きさは、吸引装置1の吸引効果の最適化を可能にする。
【符号の説明】
【0058】
1…吸引装置、2…ツール、10…ハンドピース、11…遠位端部分、14…カラー部分、15…吸引開口、20…アタッチメント、21…側壁部分、22…さらなる側壁部分、23…側壁、25…取付部、26…吸引開口部、28…スリット、30…作業チャネル、40…ミラー要素、P…平面、RP…基準平面、L1…長さ、L2…さらなる長さ、LD…長手方向、D…厚さ、W1…第1の角度、W2…第2の角度、E1…第1の延長部、E2…第2の延長部、TZ…治療ゾーン、DE…遠位端、PE…近位端、M1…第1の中心、M2…第2の中心。
【国際調査報告】