IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイティ ビルディングス インコーポレーテッドの特許一覧

特表2024-509396建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷
<>
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図1
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図2
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図3
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図4
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図5
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図6
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図7A
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図7B
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図8A
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図8B
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図9
  • 特表-建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】建物構成要素及び建物のための連続繊維強化による遊離基重合可能複合物の3次元印刷
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20240222BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240222BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240222BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20240222BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20240222BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240222BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240222BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240222BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20240222BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/314
B29C64/321
B29C64/336
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y70/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551124
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022017363
(87)【国際公開番号】W WO2022182677
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】17/183,335
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521473077
【氏名又は名称】マイティ ビルディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】コルシコフ,ワシリー
(72)【発明者】
【氏名】イワノワ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコヴレフ,エゴール
(72)【発明者】
【氏名】ボブリシェフ,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】チェーホフツィー,ワシリー
(72)【発明者】
【氏名】ナウーモフ,セルジ
(72)【発明者】
【氏名】ダボフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】スタロドゥプツェフ,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】レップ,エーバルド
(72)【発明者】
【氏名】グドコフ,スタニスラフ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AB11
4F213AB16
4F213AB18
4F213AC02
4F213AD02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL22
4F213WL24
4F213WL26
4F213WL27
4F213WL28
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL87
(57)【要約】
3D印刷装置は、ベース複合材料を通過させるように構成されるベース複合材料チャネルと、繊維ストランドを通過させるように構成される繊維ストランドチャネルと、繊維チャネルを通じて繊維ストランドを供給するように構成される繊維供給コンポーネントとを含み得る。繊維ストランドは、3D印刷装置に入る前にベース複合材料とは別個であってもよく、繊維供給コンポーネントは、繊維ストランドをベース複合材料に結合させることを促進して、ベース複合材料の内部に繊維ストランドを有する、3D印刷された建物構成要素の層を形成することができる。繊維ストランドが3D印刷装置の内部にあるときに、繊維ストランドに含浸させる含浸液又は含浸材料を通過させる含浸材料チャネルを含めてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(「3D」)印刷装置であって、
ベース複合材料を前記3D印刷装置内で通過させるように構成されるベース複合材料チャネルと、
前記ベース複合材料とは別個の繊維ストランドを前記3D印刷装置内で通過させるように構成される繊維ストランドチャネルと、
前記繊維チャネルを介して前記繊維ストランドを供給するように構成される繊維供給コンポーネントであって、前記繊維ストランドを前記ベース複合材料に結合させることを促進して、前記ベース複合材料の内部に前記繊維ストランドを有する、3D印刷された建物構成要素の層を形成する繊維供給コンポーネントと
を備える、3D印刷装置。
【請求項2】
前記繊維ストランドは、前記3D印刷装置に入る前に、含浸材料で予め含浸される、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項3】
前記繊維ストランドが前記3D印刷装置の内部にあるときに、前記繊維ストランドに含浸させる含浸材料を通過させるように構成される含浸材料チャネル
をさらに備える、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項4】
前記繊維ストランドチャネルを別個の交換可能な繊維ストランド供給部に連結するように構成される繊維ストランド供給部コネクタと、
前記含浸材料チャネルを別個の交換可能な含浸材料供給部に連結するように構成される含浸材料供給部コネクタと
をさらに備える、請求項3に記載の3D印刷装置。
【請求項5】
前記ベース複合材料チャネルを別個の交換可能なベース複合材料供給部に連結するように構成されるベース複合材料供給部コネクタ
をさらに備える、請求項4に記載の3D印刷装置。
【請求項6】
前記繊維ストランドの含浸は、前記繊維ストランドが前記繊維供給コンポーネントを通過した後に行われる、請求項3に記載の3D印刷装置。
【請求項7】
前記含浸材料は液体であり、前記含浸材料チャネルを通過する含浸液の容量は、約0.2から8.0L/時の範囲に及ぶ、請求項3に記載の3D印刷装置。
【請求項8】
前記ベース複合材料チャネルを通過するベース複合材料の容量は、約8から245L/時の範囲に及び、前記繊維ストランドの押出速度は、約40から1000mm/秒の範囲に及ぶ、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項9】
前記繊維ストランドチャネルの出口は、前記ベース複合材料チャネルの出口の上方に位置して、押し出された前記ベース複合材料の上部への前記繊維ストランドの押出を促進する、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項10】
前記繊維ストランドチャネルの出口は、前記ベース複合材料チャネルの出口の下方に位置して、押し出された前記ベース複合材料の下方への前記繊維ストランドの押出を促進する、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項11】
前記3D印刷装置を移動印刷デバイスに連結する連結コンポーネント
をさらに備える、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項12】
前記移動印刷デバイスは、計算機数値制御システム又はロボットアームである、請求項10に記載の3D印刷装置。
【請求項13】
前記ベース複合材料チャネルを別個の交換可能なベース複合材料供給部に連結するように構成されるベース複合供給部コネクタと、
前記繊維ストランドチャネルを別個の交換可能な繊維ストランド供給部に連結するように構成される繊維ストランド供給部コネクタと
をさらに備える、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項14】
前記3D印刷された建物構成要素は、
約45から92MPaの極限圧縮強さと、
約4から10GPaの圧縮弾性率と、
約2から7パーセントの圧縮時相対変形と、
約12から180MPaの極限引っ張り強さと、
約2から20GPaの引っ張り弾性率と、
約1から4パーセントの引っ張り時相対変形と、
約30から180MPaの極限曲げ強さと、
約1から8GPaの弾性率と、
約2から8パーセントの相対曲げ変形と、
約8から46kJ/m2の衝撃強さと、
約0.59perm-インチの透湿性と
を含む材料特性を有する、請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項15】
3D印刷システムであって、
複数の3Dシステム構成要素を収容する可動プリンタヘッドと、
前記プリンタヘッドの内部に位置し、ベース複合材料を前記プリンタヘッド内で通過させるように構成されるベース複合材料チャネルと、
前記プリンタヘッドの内部に位置し、前記ベース複合材料とは別個の繊維ストランドを前記プリンタヘッド内で通過させるように構成される繊維ストランドチャネルと、
前記プリンタヘッドの内部に位置し、前記繊維ストランドが前記プリンタヘッドの内部にあるときに、前記繊維ストランドに含浸させる含浸材料を通過させるように構成される含浸材料チャネルと、
前記プリンタヘッドの内部に位置し、前記繊維チャネルを通じて前記繊維ストランドを供給するように構成される繊維供給コンポーネントであって、前記繊維ストランドを前記ベース複合材料に結合させることを促進して、前記ベース複合材料の内部に前記繊維ストランドを有する、3D印刷された建物構成要素の層を形成する繊維供給コンポーネントと、
交換可能で、前記ベース複合材料を前記ベース複合材料チャネルに供給するベース複合材料供給部と、
前記ベース複合材料チャネルを前記ベース複合材料供給部に連結するベース複合材料供給部コネクタと、
交換可能で、前記繊維ストランドを前記繊維ストランドチャネルに供給する繊維ストランド供給部と、
前記繊維ストランドチャネルを前記繊維ストランド供給部に連結する繊維ストランド供給部コネクタと、
交換可能で、前記含浸材料を前記含浸材料チャネルに供給する含浸材料供給部と、
前記含浸材料チャネルを前記含浸材料供給部に連結する含浸材料供給部コネクタと、
前記3D印刷システムの動作中に前記プリンタヘッドを移動させるように構成される移動印刷デバイスと、
前記プリンタヘッドを前記移動印刷デバイスに連結する連結コンポーネントと
を備える、3D印刷システム。
【請求項16】
前記3D印刷された建物構成要素は、
約45から92MPaの極限圧縮強さと、
約4から8GPaの圧縮弾性率と、
約2から10パーセントの圧縮時相対変形と、
約12から180MPaの極限引っ張り強さと、
約2から20GPaの引っ張り弾性率と、
約1から4パーセントの引っ張り時相対変形と、
約30から180MPaの極限曲げ強さと、
約1から8GPaの弾性率と、
約2から8パーセントの相対曲げ変形と、
約8から46kJ/m2の衝撃強さと、
約0.59perm-インチの透湿性と
を含む材料特性を有する、請求項15に記載の3D印刷システム。
【請求項17】
建物構成要素を3D印刷する方法であって、
3D印刷装置の内部でベース複合材料チャネルを通じてベース複合材料を供給し、
前記3D印刷装置の内部で繊維ストランドチャネルを通じて前記ベース複合材料とは別個の繊維ストランドを方向付け、
少なくとも1つのノズルを通じて前記繊維ストランド及び前記ベース複合材料を同時に押し出して、前記ベース複合材料の内部に前記繊維ストランドを有する印刷層を形成し、
電磁放射又は熱を用いて前記印刷層をキュアする、
方法。
【請求項18】
前記3D印刷された建物構成要素は、
約45から92MPaの極限圧縮強さと、
約4から8GPaの圧縮弾性率と、
約2から10パーセントの圧縮時相対変形と、
約12から180MPaの極限引っ張り強さと、
約2から12GPaの引っ張り弾性率と、
約1から4パーセントの引っ張り時相対変形と、
約30から180MPaの極限曲げ強さと、
約1から8GPaの弾性率と、
約2から8パーセントの相対曲げ変形と、
約8から46kJ/m2の衝撃強さと、
約0.59perm-インチの透湿性と
を含む材料特性を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維ストランドは、前記3D印刷装置に入る前に含浸材料で予め含浸される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記3D印刷装置の内部で含浸材料チャネルを通じて含浸材料を供給し、
前記3D印刷装置の内部で前記繊維ストランドを前記含浸材料で飽和させて含浸繊維ストランドを形成する
ステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記含浸材料は液体であり、前記含浸材料チャネルを通過する含浸液の容量は、約0.2から8.0L/時の範囲に及ぶ、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
押出及びキュアのステップは、前記建物構成要素が形成されるまで繰り返され、前記建物構成要素は複数の印刷層を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記ベース複合材料は、少なくとも1つのアクリルモノマ又はオリゴマ、無機充填剤、及び少なくとも1つの可溶性重合開始剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記ベース複合材料は、増粘剤、及び接着促進剤、強化剤、1以上の可塑剤、及び少なくとも1つの難燃剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記繊維ストランドは、ナイロン、アラミド、炭素、ガラス、玄武岩、及び絹からなる群から選択される1以上の材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記繊維ストランドは、前記ベース複合材料の上部に押し出される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記繊維ストランドは、前記ベース複合材料に少なくとも部分的に挿入されるように押し出される、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記電磁放射は、約200から420nmの範囲の波長及び約0.1から10W/cm2の範囲の光強度を有する紫外光を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記ベース複合材料チャネルを通過するベース複合材料の容量は約8から245L/時の範囲に及び、前記繊維ストランドの押出速度は約40から1000mm/sの範囲に及ぶ、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記ベース複合材料は、重量で前記ベース複合材料の約1%から12%を構成する1以上の可塑剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記1以上の可塑剤は、リン酸トリス(クロロプロピル)、リン酸トリクレシル、又はトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)を少なくとも含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ベース複合材料の粘度は約100,000から160,000cPの範囲に及び、前記1以上の可塑剤の使用により、前記印刷された建物構成要素において約0.05%から0.15%の相対反りレベルが生じる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記繊維ストランドは、約0.7から6mmの範囲に及ぶ直径を有し、前記印刷層は、約3から8mmの範囲に及ぶ厚さ及び約10から26mmの範囲に及ぶ幅を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
前記繊維ストランドの寸法は負荷条件及び前記印刷層の寸法により規定され、前記繊維ストランドは、前記印刷層の平均断面積の約1%から20%の範囲に及ぶ断面積を有する、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年2月23日に提出された米国特許出願第17/183,335号の利益を主張するものであり、当該米国特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概して3次元印刷に関し、特に建物構成要素及び構造の3次元印刷に関するものである。
【背景技術】
【0003】
背景
複合材料の繊維強化材は、複合材料の総負荷容量を向上するために自動車、航空機、及び土木のような工業においては一般的なものである。3次元(「3D」)印刷の分野における最近の応用は、連続繊維により内部的に強化された主材料マトリクスを有する複雑な部品を形成することを含んでいる。これは、異なる種類の材料マトリクスの内部に多様なコア組成を用いて埋め込まれた連続繊維を利用する3D印刷を含み得る。
【0004】
例えば、熱可塑性材料を主マトリクス材料として付与することができ、連続繊維を第2の強化材料として使用することができる。これは、典型的には、熱可塑性マトリクスを含浸させた複合繊維を伴うものである。複合繊維ストランド又は「フィラメント」を、マトリクス材料の融点を超える温度までフィラメントが加熱される押出機に入れることができ、その後、融解した層がノズルを介して押し出され、溶着した部分を複数層で形成することができる。高価なプリプレグ繊維を使用するのではなく、例えば印刷プロセス中にプリンタ内部で繊維に含浸させることにより、乾燥した繊維にその場で速硬性熱硬化樹脂を含浸させることができる。プリンタを通じて含浸させた繊維を引き出して高強度エネルギー源を用いて硬化して3D複合部を得ることができる。
【0005】
残念なことに、融解した熱可塑性材料の粘度が極めて高いために、繊維に熱可塑物を高品質に確実に含浸させることは困難であり得る。得られた印刷された複合物は、多孔質すぎるものであり得る。このため、繊維及び硬化した熱可塑物が一緒にうまく機能しない。極めて高い圧力を付与することにより、低い含浸品質へ向かうこの傾向を打破し得るが、高圧は、繊維にダメージを与え得るものであり、完成した印刷された材料の内部構造の不均一を生じ得るものである。
【0006】
熱可塑物をフィラメントとして押出機に供給することのさらなる欠点は、これが、印刷された部分を製造するために使用できる多様なマトリクス材料を制限し、また製造コストを著しく増加させ得ることである。フィラメントを使用することのさらに他の欠点は、使用される繊維の種類及び熱可塑物内の強化材料の割合が、強化フィラメントの元の製造によって厳格に決まってしまい、これが完成製品の設計の自由度を厳しく制限し、複雑な構造を有する3D物体を印刷又は製造する能力を低減することである。
【0007】
大部分が均質なプラスチック又は他の材料が使用される場合は、強度及び効率の点で相対的に劣っていると示されているが、この場合にはさらなる欠点が生じ得る。特に、繊維強化材料を用いた現在の3D印刷手法は、建物建設についての比較的高い性能の規格を満たすことが求められている最終製品の耐荷重、難燃性、及び他の完成材料特性が不十分であるため、建物建設の分野においては不適切である。
【0008】
繊維強化物を3D印刷する従来の方法はこれまでうまく機能していたが、改善は常に役立つ。特に、必要とされているものは、建物建設の高性能規格を満たす材料特性を有し、設計の自由度がより高い繊維強化製品を3D印刷するためのシステム及び方法である。
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示の利点は、建物建設業界の高性能規格を満足する材料特性を有する繊維強化建物構成要素を3D印刷するための改善されたシステム及び方法を提供し、また、そのようなシステム及び方法における設計の自由度を高めることにある。開示されている特徴、装置、システム、及び方法は、繊維強化コアを有する層の3D印刷を伴う改善された3Dソリューションを提供するものである。これらの利点は、印刷プロセス中に印刷装置自体で別個のベース複合材料を別個の繊維ストランドに結合することにより少なくとも部分的に実現され、ベース複合材料と繊維ストランドとの間の接触を強化するバインダとしての含浸流体で繊維ストランドを飽和させることも含み得る。
【0010】
本開示の様々な実施形態においては、3D印刷装置は、ベース複合材料チャネル、繊維ストランドチャネル、及び繊維供給コンポーネントを少なくとも含み得る。ベース複合材料チャネルは、ベース複合材料を3D印刷装置内で通過させるように構成され得る。繊維ストランドチャネルは、繊維ストランドを3D印刷装置内で通過させるように構成され得る。繊維ストランドは、少なくとも3D印刷装置に入るときには、ベース複合材料とは別個のものであり得る。繊維供給コンポーネントは、繊維ストランドをベース複合材料に結合させることを促進して、ベース複合材料の内部に繊維ストランドを有する、3D印刷された建物構成要素の層を形成するために、繊維チャネルを介して繊維ストランドを供給するように構成され得る。
【0011】
様々な詳細な実施形態においては、別個の繊維ストランドは、3D印刷装置に入る前に、含浸材料で予め含浸され得る。予め含浸された繊維ストランドが使用されない他の詳細な実施形態においては、3D印刷装置は、繊維ストランドが3D印刷装置の内部にあるときに、繊維ストランドに含浸させる含浸材料を通過させるように構成される含浸材料チャネルをさらに含み得る。また、3D印刷装置は、ベース複合材料チャネルを別個の交換可能なベース複合材料供給部に連結するように構成されるベース複合材料供給部コネクタと、繊維ストランドチャネルを別個の交換可能な繊維ストランド供給部に連結するように構成される繊維ストランド供給部コネクタと、含浸材料が使用される場合には、含浸材料チャネルを別個の交換可能な含浸材料供給部に連結するように構成される含浸材料供給部コネクタとを含み得る。繊維ストランドの含浸は、繊維ストランドが繊維供給コンポーネントを通過した後に行われ得る。
【0012】
さらなる詳細な実施形態においては、含浸材料は液体であってもよく、含浸材料チャネルを通過する含浸液の容量は、約0.2から8.0L/時の範囲に及ぶ。加えて、ベース複合材料チャネルを通過するベース複合材料の容量は、約8から245L/時の範囲に及び得る。繊維ストランドの押出速度は、約40から1000mm/秒の範囲に及び得る。ある構成においては、繊維ストランドチャネルの出口は、ベース複合材料チャネルの出口の上方に位置して、押し出されたベース複合材料の上部への繊維ストランドの押出を促進し得る。他の構成においては、繊維ストランドチャネルの出口は、ベース複合材料チャネルの出口の下方に位置して、押し出されたベース複合材料の下方への繊維ストランドの押出を促進し得る。また、3D印刷装置は、3D印刷装置を移動印刷デバイスに連結する連結コンポーネントを含み得る。移動印刷デバイスは、計算機数値制御システム又はロボットアームであり得る。得られる3D印刷された建物構成要素は、標準的な建物建築規準を満足するか、あるいはこれを超える材料特性を有し得る。
【0013】
本開示のさらなる様々な実施形態においては、3D印刷システムは、複数の3Dシステム構成要素を収容する可動プリンタヘッドと、プリンタヘッドの内部に位置し、ベース複合材料をプリンタヘッド内で通過させるように構成されるベース複合材料チャネルと、プリンタヘッドの内部に位置し、ベース複合材料とは別個の繊維ストランドをプリンタヘッド内で通過させるように構成される繊維ストランドチャネルと、プリンタヘッドの内部に位置し、繊維ストランドがプリンタヘッドの内部にあるときに、繊維ストランドに含浸させる含浸材料を通過させるように構成される含浸材料チャネルと、プリンタヘッドの内部に位置し、繊維チャネルを通じて繊維ストランドを供給するように構成される繊維供給コンポーネントとを含み得る。繊維供給コンポーネントは、繊維ストランドをベース複合材料に結合させることを促進して、ベース複合材料の内部に繊維ストランドを有する、3D印刷された建物構成要素の層を形成することができ、3D印刷された建物構成要素は、標準的な建物建築規準を満足するか、あるいはこれを超える材料特性を有し得る。
【0014】
また、3D印刷システムは、交換可能で、ベース複合材料をベース複合材料チャネルに供給するベース複合材料供給部と、ベース複合材料チャネルをベース複合材料供給部に連結するベース複合材料供給部コネクタと、交換可能で、繊維ストランドを繊維ストランドチャネルに供給する繊維ストランド供給部と、繊維ストランドチャネルを繊維ストランド供給部に連結する繊維ストランド供給部コネクタと、交換可能で、含浸材料を含浸材料チャネルに供給する含浸材料供給部と、含浸材料チャネルを含浸材料供給部に連結する含浸材料供給部コネクタとを含み得る。また、3D印刷システムは、3D印刷システムの動作中にプリンタヘッドを移動させるように構成される移動印刷デバイスと、プリンタヘッドを移動印刷デバイスに連結する連結コンポーネントとを含み得る。
【0015】
本開示のさらなる実施形態においては、標準的な建物建築規準を満足するか、あるいはこれを超える材料特性を有する建物構成要素を3D印刷する様々な方法が提供される。関連するプロセスステップは、3D印刷装置の内部でベース複合材料チャネルを通じてベース複合材料を供給し、3D印刷装置の内部で繊維ストランドチャネルを通じてベース複合材料とは別個の繊維ストランドを方向付け、少なくとも1つのノズルを通じて繊維ストランド及びベース複合材料を同時に押し出して、ベース複合材料の内部に繊維ストランドを有する印刷層を形成し、電磁放射又は熱を用いて印刷層をキュアすることを含み得る。
【0016】
様々な詳細な実施形態においては、繊維ストランドは、3D印刷装置に入る前に含浸材料で予め含浸され得る。予め含浸された繊維ストランドが使用されない他の詳細な実施形態においては、方法ステップは、3D印刷装置の内部で含浸材料チャネルを通じて含浸材料を供給し、3D印刷装置の内部で繊維ストランドを含浸材料で飽和させて含浸繊維ストランドを形成することも含み得る。含浸材料は液体であってもよく、含浸材料チャネルを通過する含浸液の容量は、約0.2から8.0L/時の範囲に及び得る。様々な構成においては、押出及びキュアのステップは、建物構成要素が形成されるまで繰り返され、建物構成要素は複数の印刷層を有し得る。
【0017】
様々な詳細な実施形態においては、ベース複合材料は、少なくとも1つのアクリルモノマ又はオリゴマ、無機充填剤、及び少なくとも1つの可溶性重合開始剤を含み得る。また、ベース複合材料は、増粘剤、接着促進剤、強化剤、1以上の可塑剤、及び/又は少なくとも1つの難燃剤を含み得る。また、繊維ストランドは、ナイロン、アラミド、炭素、ガラス、玄武岩、及び絹からなる群から選択される1以上の材料を含み得る。ある構成においては、繊維ストランドは、ベース複合材料の上部に押し出され得る。他の構成においては、繊維ストランドは、ベース複合材料に少なくとも部分的に挿入されるように押し出され得る。
【0018】
電磁放射は、約200から420nmの範囲の波長及び約0.1から10W/cm2の範囲の光強度を有する紫外光を含み得る。また、ベース複合材料チャネルを通過するベース複合材料の容量は約8から245L/時の範囲に及び、繊維ストランドの押出速度は約40から1000mm/sの範囲に及び得る。さらに、ベース複合材料は、重量でベース複合材料の約1%から12%を構成する1以上の可塑剤を含み得る。1以上の可塑剤は、リン酸トリス(クロロプロピル)、リン酸トリクレシル、又はトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)を少なくとも含み得る。ベース複合材料の粘度は約100,000から160,000cPの範囲に及び、1以上の可塑剤の使用により、印刷された建物構成要素において約0.05%から0.15%の相対反りレベルが生じ得る。繊維ストランドは、約0.7から6mmの範囲に及ぶ直径を有し得る。印刷層は、約3から8mmの範囲に及ぶ厚さ及び約10から26mmの範囲に及ぶ幅を有し得る。様々な構成においては、繊維ストランドの寸法は負荷条件及び印刷層の寸法により規定され得る。繊維ストランドは、印刷層の平均断面積の約1%から20%の範囲に及ぶ断面積を有する。
【0019】
本開示の他の装置、方法、特徴、及び利点は、以下の図及び詳細な説明を検討すれば、当業者に明らかであるか、明らかになるであろう。そのような付加的な装置、方法、特徴及び利点のすべてはこの説明の中に含まれ、本開示の範囲内にあり、添付した特許請求の範囲により保護されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
含められる図面は、説明のためのものであり、開示された繊維強化複合材料から建物構成要素を3D印刷するための装置、システム及び方法について考えられる構造及び構成の例を提供するためだけの役割を有する。これらの図面は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、当業者により本開示に対してなし得る形態及び詳細における変更をいかなる方法によっても制限するものではない。
【0021】
図1図1は、本開示の一実施形態による、層に3D印刷される例示の繊維強化複合材料を側断面図で示すものである。
【0022】
図2図2は、本開示の一実施形態による、例示の3D印刷された繊維強化複合材料の複数の層を正面斜視破断図で示すものである。
【0023】
図3図3は、本開示の一実施形態による、繊維強化複合材料を3D印刷する例示の方法のフローチャートを示すものである。
【0024】
図4図4は、本開示の一実施形態による、例示の3D印刷システムの模式図を示すものである。
【0025】
図5図5は、本開示の一実施形態による、例示の3D印刷装置を側断面図で示すものである。
【0026】
図6図6は、本開示の一実施形態による、3D印刷装置の例示のノズル構成を底面図で示すものである。
【0027】
図7A図7Aは、本開示の一実施形態による、印刷速度に対する複合ベース材料の流量及び含浸材料の流量の例示の関係のグラフを示すものである。
【0028】
図7B図7Bは、本開示の一実施形態による、繊維ストランドの断面積に対する印刷層の断面積の例示の関係のグラフを示すものである。
【0029】
図8A図8Aは、本開示の一実施形態による、繊維強化複合材料の例示の層を側断面図で示すものである。
【0030】
図8B図8Bは、本開示の一実施形態による、図8Aの繊維強化複合材料の層を平面図で示すものである。
【0031】
図9図9は、本開示の一実施形態による、相対反りに対するベース複合材料の粘度の例示の関係のグラフを示すものである。
【0032】
図10図10は、本開示の一実施形態による、標準的な建物建築規準を満足するか、あるいはこれを超える材料特性を有する建物構成要素を3D印刷する例示の方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本開示に係る装置、システム、及び方法の例示的な適用例がこのセクションで説明される。これらの例は、背景を追加し、本開示の理解を手助けするためだけに提供されている。このため、本明細書で提供されているこれらの具体的な詳細の一部又は全部がなくても本開示を実施し得ることは当業者には明らかなことである。ある例においては、本開示が不必要に不明瞭になることを避けるために、公知のプロセスステップが詳細には述べられていない。他の利用も考えられるため、以下の例は限定的なものと解釈すべきではない。以下の詳細な説明では、添付図面が参照され、これらの添付図面は、説明の一部を構成しており、添付図面においては、本開示の特定の実施形態が例として示されている。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施できる程度に十分に詳細に述べられているが、これらの例は限定的なものではなく、他の実施形態を用いることができ、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく変更が可能であることは理解できよう。
【0034】
本開示は、様々な実施形態において、繊維強化複合材料から建物構成要素を3D印刷するための特徴、装置、システム、及び方法に関するものである。開示されている実施形態は、3D印刷プロセス中に改善された繊維強化材料を形成する、より万能な方法を提供するものである。特に、開示されている実施形態は、3D印刷プロセスの前ではなく、3D印刷プロセス自体の間にベース複合材料と別個の繊維ストランドとを結合することを含み得る。既に含浸させた繊維ストランドを用いるのではなく、3D印刷プロセス中に繊維ストランドへの含浸材料の付加が行われ得る。光硬化性ベース複合材料内に埋められた機能充填剤が、3D印刷された完成建物構成要素に対して、強度、耐火性、熱伝導度等の向上といったさらなる所望の特性を提供することができる。
【0035】
実際の3D印刷プロセス中に別個のベース複合材料と繊維ストランドとを結合することにより、建設業界及びそれを超える業界における応用によって、多様な材料の組み合わせをより多くし、構造をより複雑にし、印刷された建物構成要素及び他の3D印刷された物をより強化することが可能になる。コンピュータ支援設計モデルから直接建物構成要素及び部品を幾何学的寸法制限なしに高い材料利用率で高速に製造又は印刷することができる。また、柔軟でより高速の印刷速度の変化により、構造的建物構成要素及び他の物の3D印刷に必要とされる時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
様々な実施形態においては、切断デバイスは、与えられた建設要素の所望の特徴により完成材料に繊維ストランドの選択的強化を与えることにより、3D印刷された構成要素の柔軟性及び機能性を向上させることができる。様々な構成においては、既存の技術を超える改良は、繊維ストランドに熱硬化物を含浸させること及び印刷前の材料前処理の別個の段階として繊維ストランドをプレキュアリングすることを含み得る。そのような構成においては、繊維ストランドと熱硬化物の両方を押出機に供給することができ、押出機は印刷中に繊維を一緒に結合することができる。
【0037】
開示されている実施形態により実現されるいくつかの利点は、ベース複合材料の内部での埋込繊維ストランドの強力な付着と、印刷された最終物の機械的特性の向上とを含み得る。これらは、繊維ストランドにベース複合材料とより高い化学的適合性を有する感光性構成物を含浸させた後の繊維ストランドの高速固化の結果であり得る。
【0038】
様々な構成においては、様々な材料から様々な組み合わせでベース複合材料を形成してもよい。例えば、ベース複合材料マトリクスは、1以上のアクリルモノマ及び/又はオリゴマのような異なる重合材料を含み得る。加えて、複合物全体の粘度を高めるために、ベース複合材料を半重合させてもよい。ある構成においては、無機充填剤と少なくとも1つの機能充填剤との組み合わせが用いられ得る。
【0039】
様々な実施形態においては、繊維ストランドの固化条件に影響を与えるために、一部の構成要素を置換する、さらに/あるいは1以上の補助添加材を加えることにより含浸材料の組成を変えてもよい。
【0040】
ある実施形態においては、印刷された物の機能性及び可変性を増すように要求に応じて繊維ストランドを切断するために切断デバイスを使用することができる。連続的に印刷される層に別の強化材料を連続的に供給してもよく、あるいは、ベース複合材料のみによって層を印刷し続けてもよい。
【0041】
場合によっては、特定の望ましい材料特性を得るために繊維ストランドの線密度は変化し得る。ある構成においては、ベース複合材料のマトリクスは、印刷中及び印刷後の反り作用を低減するように材料の特徴を高めるための可塑剤又は他の物質を含み得る。加えて、3D印刷された物のさらにより良い機能性及び特性の柔軟性を提供するために、複数の繊維ストランドを同時に押し出すことにより繊維強化を行ってもよい。
【0042】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、建物構造及び構成要素の3D印刷について議論しているが、開示されている特徴、装置、システム、及び方法は、関連する3D印刷された部品又は物についても同様に使用可能であることは容易に理解できよう。例えば、開示されているシステム及び方法を使用して建物構成要素又は部品ではない3D印刷された物を生成することができる。図示された実施形態の他の用途、構成、及び推定も考えることができる。
【0043】
まず、図1を参照すると、複数層で3D印刷された例示の繊維強化複合材料が側断面図で示されている。印刷装置100により連続経路20内で1層ごとに印刷層10を印刷することができる。印刷装置100は、以下でより詳細に述べるように、様々な他の構成要素がある中でも、プリンタヘッド、ノズル、材料チャネル、及び繊維供給コンポーネントを含むことができる。それぞれの印刷層は、ベース複合材料14内に埋まった繊維ストランド12を含むことができ、繊維ストランド12とベース複合材料14とが接する部分に、繊維ストランドからベース複合材料へのインタフェイス16が存在している。
【0044】
熱又は紫外(「UV」)光のような電磁放射による印刷装置から押し出された材料の固化を通じて層形成を行うことができる。キュアされる材料における重合開始剤の種類に応じて、熱及び/又は広範な光放射波長が使用され得る。例えば、390~400nm、400~410nm、又は410~420nmの範囲のUV光が使用され得る。容易に考えられるように、他の波長範囲も考えられる。概して、ベース複合材料14の遊離基重合可能組成物は、一時的な補助支持構造を必要とすることなく、図示されるような1層ごとのプロセスにおける高速印刷を可能にする。
【0045】
様々な実施形態においては、繊維ストランド12は、印刷の直前に印刷装置100内で飽和又は含浸され得る。これは、電磁放射又は熱処理の影響を受けやすい含浸液又は他の材料を用いて行うことができる。含浸材料は、低い粘度(例えば、10~100mPs*s)を有し得る。この結果、個々のモノフィラメントを簡単に潤滑させることができ、キュアリング又は固化の後において、繊維ストランド12とベース複合材料14との間にインタフェイス16で強力な結合を生じさせることができる。
【0046】
ある実施形態においては、含浸材料内で遊離基重合可能バインダにより浸潤させた繊維ストランドは、含浸材料の重合動力学の速度が速いために高速に固化し得る。押出直後の第1のUV光の通過時のようなキュアリング段階中にバインダの完全硬化を可能にするように含浸液又は含浸材料の組成を綿密に考えることができる。含浸材料は、組成混合物であってもよく、含浸混合物とベース複合材料14の有機成分との化学的適合性は、繊維ストランドにおけるベース複合材料インタフェイス16に対する強力な接触付着力を提供し得る。様々な実施形態においては、含浸された又は「濡れた」繊維ストランド12を、その後キュアリングが必要とされるときの押出に先立ってキュアリングが早まって生じないように、含浸と押出との間で冷却し、光源又は他のキュアリング放射源から離しておくことができる。
【0047】
ベース複合材料14の重合を段階的に実現してもよい。例えば、第1のUV照明の通過によりベース複合材料14が完全重合の約50~60%に達し、さらなる層が順次堆積されつつ、3~6回のUV照明の通過により重合度を増し得る。その後、材料が約80~90%の最大重合度を達成して強力な層間付着を形成することができる。
【0048】
ツール経路に追従して部品全体又は印刷された建物構成要素の1層ごとの構造を生成するように別個のロボットアーム又はツールギアに連結され得る印刷ヘッド、押出機、又は他の同様な構成要素により絶え間なく繊維ストランドを引き出せるように、繊維ストランド12は、押し出されたベース複合材料14に付着することができる。ある実施形態においては、複数の強化材を同時に適用してもよく、これらの強化材は同じ種類で同一径及び同一断面形状を有していてもよい。
【0049】
説明のための1つの非限定的な例においては、繊維ストランド12は、ガラス繊維ストランドであり得る。ガラス繊維ストランドの線密度の例は、約1200Texから約19200Texの範囲に及び得るが、他の好適な値も考えられる。ガラス繊維ストランドの径は、約0.7mmから約6mmの範囲に及び得るものであり、押し出されたベース複合材料の寸法を適切に考慮して変えることができる。例えば、押し出された層全体の厚さは、約3mmから約8mmの範囲に及び得る。
【0050】
図2を続けると、例示の3D印刷された繊維強化複合材料の複数の層が正面斜視破断図において示されている。この角度から示されているように、連続経路20において1層ごとに印刷層10を積層することができる。再び、それぞれの印刷層は、ベース複合材料14内に埋まった繊維ストランド12を含むことができ、繊維ストランドからベース複合材料へのインタフェイス16を有している。繊維ストランド12は、バインダ又は含浸材料18を含浸させた複数の個々の繊維を含み得るもので、バインダ又は含浸材料18は、その後、ベース複合材料14内に収容される。図示されているように、印刷層10のそれぞれはコアシェル構造を有し得るもので、繊維ストランド12は、長手方向に(すなわち紙面に向かって)それぞれの堆積層を横断して中心軸の周囲に分布している。
【0051】
繊維ストランド12の供給速度及び印刷層10を堆積する印刷ヘッドの移動速度を制御することにより、繊維ストランド12内の中立から正の引っ張りを繊維ストランド12に沿った張力を介してプリンタ出口と印刷された物との間で維持することができ、得られる引っ張りは印刷された物の引っ張り強さを増加させる。
【0052】
印刷された物において様々な所望の材料特性を実現するために、繊維ストランド12について異なる形状、径、及び許容量を使用することができる。ある実施形態においては、繊維ストランド12は楕円形状を有していてもよく、そのサイズは、付与される引っ張りに関してわずかに変化していてもよい。以下の表1は、印刷速度に基づいて変化し得る繊維ストランド寸法の例を示している。容易に考えられるように、別の構成については他の印刷速度及び他の相対的な繊維ストランド寸法及び特性も考えられる。
【表1】
【0053】
異なる種類及びサイズの繊維ストランドを用いることができ、望むように印刷速度を変化させることができるので、繊維ストランドとベース複合材料の体積比率を変化させることにより、3D印刷された材料の機械的性能を向上又は調整することができる。また、そのような調整は、材料の消費を削減することができ、このため、製造コストも減らすことができる。連続的繊維強化遊離基重合可能複合材の3D印刷技術は、材料を建設業界において使用される耐荷重構造及びオーバハング構造のような用途に好適なものとする。
【0054】
説明のためだけに提供される様々な非限定的な具体例においては、押出型3Dプリンタは、印刷の直後に3D印刷層をキュア又は硬化するためのUV-LED光源を備え得る。UV-LED光源は、415.6nmのピーク波長を有し得るもので、例えば、0.6W/cm2の最大光強度及び70×56mm2のビームサイズを有し得る。他のパラメータ及び寸法も考えられる。ベース複合材料の供給速度が約0.213L/時であるとき、40mm/sの印刷速度を適用することができる。これにより、幅18mm及び高さ4mmの総を形成することができる。印刷された構成要素の強化のために4800、9600及び19200Texの線密度を有する連続ガラス繊維ストランドを使用することができる。繊維強化材を使用した場合と繊維強化材を使用しない場合とで複合材料の印刷層に沿って観測される印刷された構成要素の性能を示す比較例が以下の表2に示されている。
【表2】
【0055】
表2から分かるように、未強化ベース複合材料と比較した繊維強化材料の材料性能は、様々な点で向上する。例えば、材料性能は、引っ張り強さについては2~30の因子だけ増加し得るし、圧縮強さについては2倍になり得るし、剛性については3~6の因子だけ増加し得る。4800Texの線密度を有する繊維ストランドが適用される場合には衝撃強さも劇的に改善され得る。これは、未強化ベース複合材料においてはたった1kJ/m2であったのに比べて30±8kJ/m2の値になることが認められた。したがって、開示された装置システム及び方法を用いて3D印刷された建物構成要素及び他の物の材料性能は、当該分野においてこれまで知られていたものよりも実質的に改善される。
【0056】
ここで図3に移ると、繊維強化複合材料を3D印刷する例示の方法300のフローチャートが示されている。開始ステップ302の後、第1のプロセスステップは、ベース複合材料及び繊維ストランドを別個に3D印刷装置に供給することを含み得る。ベース複合材料は、ベース複合材料供給部からのものであり得るし、繊維ストランドは、繊維ストランド供給部からのものであり得る。両方の材料を別個に印刷装置の印刷ヘッドに、具体的にはノズル又は押出機構成要素に供給することができる。
【0057】
次の任意的なプロセスステップ306では、繊維ストランドは、含浸液又は含浸材料のようなバインダで飽和され得る。繊維ストランドが含浸材料で予め飽和されていないときに、このステップを用いることができ、印刷装置内でこのステップが行われ得る。例えば、ステップ306は、繊維ストランドが繊維ストランド供給部を離れた後であって、印刷される前のノズル又は押出機に到達する前に起こり得る。
【0058】
続くプロセスステップ308では、ベース複合材料と繊維ストランドとは一緒に同時に印刷されて3D印刷層を形成し得る。例えば、繊維ストランドは、プリンタヘッドのノズル又は押出機から、印刷されている又は同時に押し出されているベース複合材料の上に、下に、又はその内部に部分的に埋まって押し出され得る。
【0059】
次のプロセスステップ310では、印刷層をキュアすることができる。これは、熱及び/又はUV光のような電磁放射源の利用を含み得る。キュアリング後に、上記図1及び図2の印刷層に示されているもののように、ベース複合材料内に繊維ストランドが埋まった印刷層が形成される。複数の印刷層が必要とされる場合には、このプロセスがその後繰り返され得る。その後、この方法はステップ312で終了する。
【0060】
様々な実施形態においては、ステップ304~310のうち1つ以上を省略することができ、さらに/あるいは他のステップを追加することができる。例えば、印刷プロセス中にプリンタヘッドを移動させるステップを含めることができる。さらに、様々なステップを異なる順序で行うことができ、一部のステップを同時に行うことができる。例えば、連続3D印刷プロセス中にステップ304~310のすべてを同時に行うことができる。また、方法300が3D印刷プロセスの比較的高いレベルの概要であり、簡略化のために様々な詳細及びステップがこの段階で含められていないことは容易に理解できよう。さらに詳細なステップ及び説明が、図10で示される詳細な説明に関して以下で提供される。
【0061】
次に図4に移ると、例示の3D印刷システムが模式図の形態で示されている。この3D印刷システム100は、複数の3Dシステム構成要素を収容する可動プリンタヘッド110を含み得る。これらは、プリンタヘッド110内に位置し、繊維ストランドをプリンタヘッド110内で通過させるように構成される繊維ストランドチャネル112と、プリンタヘッド110内に位置し、ベース複合材料をプリンタヘッド110内で通過させるように構成されるベース複合材料チャネル114とを少なくとも含み得る。繊維ストランド12は、繊維ストランド12とベース複合材料14が押出ノズル118内で又は押出ノズル118の直後に一緒になるまで、ベース複合材料14から別になっていてもよい。押出ノズル118もプリンタヘッド110に位置し得る。
【0062】
また、プリンタヘッド110は、繊維ストランドがプリンタヘッド110の内部にあるときに、繊維ストランド12を含浸させる含浸液又は含浸材料16を通過させるように構成される含浸材料チャネル116を含み得る。また、プリンタヘッドは、繊維チャネル112を通じて繊維ストランド12を供給するように構成される繊維供給コンポーネント120を含み得る。この繊維供給コンポーネント120は、ベース複合材料14への繊維ストランド12の結合を促進し、図1及び図2に示されているもののように、ベース複合材料14内に繊維ストランド12を位置させ、3D印刷された建物構成要素の層を形成することができる。繊維供給コンポーネントに関するさらなる詳細は以下の図5に関して示される。再び、3D印刷された完成建物構成要素は、他に優れた特徴がある中でも、標準的な建物建築規準を満足するか、あるいはこれを超える材料特性を有し得る。
【0063】
また、3D印刷システム100は、繊維ストランド12を繊維ストランドルート132に沿ってプリンタヘッド110内に供給する繊維ストランド供給部130を含み得る。繊維ストランド供給部130は、ある配置においては未含浸の繊維ストランドを巻いたものであり得る。繊維ストランド供給部130は、交換可能なものであってもよく、最終的には繊維ストランド12を繊維ストランドチャネル112に供給する。繊維ストランド供給部コネクタ134が、繊維ストランドチャネル112を繊維ストランド供給部130に連結することができる。そのような繊維ストランド供給部コネクタは、柔軟に移動可能なものであり、3D印刷動作中のプリンタヘッド110の移動を促進することができる。
【0064】
様々な実施形態においては、この最終製品の強化材料は、繊維ストランド供給部130内に位置するスプールの周囲に巻き付けるのに十分なほど柔軟な連続指向性繊維ストランドであり得る。繊維ストランド12は、他に好適な繊維がある中でも、ナイロン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩、アラミド、及び絹のような様々な種類の有機繊維又は無機繊維のうちの1つであり得る。
【0065】
また、3D印刷システム100は、ベース複合材料14をベース複合材料ルート142に沿ってプリンタヘッド110内に供給するベース複合材料供給部140を含み得る。ベース複合材料供給部140は、交換可能なものであってもよく、最終的にはベース複合材料14をベース複合材料チャネル114に供給する。ベース複合材料供給部コネクタ144は、ベース複合材料チャネル114をベース複合材料供給部140に連結することができ、柔軟に移動可能なものであり、3D印刷動作中のプリンタヘッド110の移動を促進することができる。ベース複合材料移送ポンプ146は、ベース複合材料ルート142に沿ってベース複合材料を汲み上げるのを促進することができる。
【0066】
様々な実施形態においては、ベース複合材料14は、遊離基重合可能材料を含み得る。例示的な樹脂又は材料は、1以上のアクリルモノマ及び/又はオリゴマ、無機充填剤又は充填剤の組み合わせ(これは組成に有益な特性を付与し得る)及び1種以上の可溶性重合開始剤を含み得る。ベース複合材料14の特性は、配合において使用された成分の量に依存し得る。任意の数の強化材(例えば繊維ストランド)を被覆する、覆う、あるいは取り囲むためにマトリクス複合物を使用し、この強化材とともに3D印刷された複合建物構成要素又は構造の少なくとも一部(例えば壁)を作ってもよい。
【0067】
3D印刷システム100は、含浸材料16を含浸材料ルート152に沿ってプリンタヘッド110内に供給する含浸材料供給部150を含み得る。含浸材料供給部150は、交換可能なものであってもよく、最終的には含浸材料16を含浸材料チャネル116に供給する。含浸材料供給部コネクタ154は、含浸材料チャネル116を含浸材料供給部150に連結することができ、柔軟に移動可能なものであり、3D印刷動作中のプリンタヘッド110の移動を促進することができる。含浸材料移送ポンプ156は、含浸材料ルート152に沿って含浸材料を汲み上げるのを促進することができる。様々な実施形態においては、含浸材料16は、1以上のアクリル酸塩モノマ又はオリゴマとを含む遊離基重合可能な低粘度混合液と、少なくとも1つの光重合開始剤とを含み得る。
【0068】
繊維ストランドチャネル112の端部に向かって繊維含浸が起こり得る。ノズル118の出口を通じて、ベース複合材料14の層が押し出されるのと同時に、バインダ又は含浸材料で覆われた繊維ストランドを供給することができる。ある実施形態においては、繊維ストランド12は、予め含浸されたものとして供給され得る。そのような場合には、含浸材料16及びその関連する成分は、そのような実施形態においては使用されないか、存在さえしないこともある。
【0069】
ある構成においては、繊維供給コンポーネント120はカッタ2001を含み得る。この結果、繊維ストランドを切断した後にノズルからベース複合材料のみが押し出されるように繊維ストランドを切断することができる。様々な構成においては、含浸材料チャネル116の後に又はノズル118の出口にカッタ2001を設けることができる。ある構成においては、カッタ2001を自動化することができ、この結果、3D印刷装置は、繊維ストランドが埋まった層とこれが埋まっていない層とを印刷することができる。これは、繊維ストランドの使用が複雑な生成における柔軟性を制限し得るか、さらに/あるいはよりコストがかかるような複雑な構成においては望ましいことがある。この結果、非強化層の所々の領域が、材料特性を向上させるために重大ではない非荷重領域において許容され得る。同様のカッタ2002を用いてノズル118から押し出される材料を切断することができ、この材料は、ベース複合材料だけであってもよいし、繊維ストランドと結合されたベース複合材料であってもよい。
【0070】
加えて、エネルギー源160は、連続印刷層が印刷された直後にこれをキュアするための熱又は電磁放射のようなキュアリング構成要素を提供することができる。例えば、3D印刷システム100内にUV光162を含めることができる。ある構成においては、電磁放射がプリンタヘッド110の移動方向において新に排出された層の表面に照射スポットを形成するように、プリンタヘッド110に近接してエネルギー源160を設けることができる。ある実施形態においては、電磁熱誘起重合プロセスを続いて適用してもよい。
【0071】
さらにまた、3D印刷システムの動作中にプリンタヘッド110を移動させるようにロボットアーム又はCNCのような移動印刷デバイス170を構成することができ、連結コンポーネント172がプリンタヘッド110を移動印刷デバイス170に連結することができる。
【0072】
様々な実施形態においては、ベース複合材料の流量は約8から245L/時の範囲に及び、含浸材料の流量は約0.2から8.0L/時の範囲に及び得る。これらの流量は、変化し得るものであり、所望の印刷速度、使用される印刷繊維の種類及びサイズ、押出層の構成、及び他の関連するファクタに応じて選択され得る。ある構成においては、印刷速度は約40から1000mm/秒の範囲に及び、3D印刷プロセスにおける柔軟性、複雑な幾何学的寸法を有する物を印刷できる能力、及びプロセス全体における大幅な時間短縮をもたらすことができる。
【0073】
図5を続けると、例示の3D印刷装置が側断面図で示されている。繊維供給コンポーネント120は、上記図4に示されるもののような3D印刷システム全体の一部である3D印刷装置であり得る。3D印刷装置又はシステムの残りの部分を通じて連続繊維ストランドを供給するように繊維供給コンポーネント120を構成することができる。アウトフィーダコンポーネントは、開始ローラ122と第2のローラ124とを含むことができ、これらが組み合わさって繊維ストランドチャネル112を通じて繊維ストランド12を印刷用ノズル118の中に供給する。
【0074】
ローラ122,124は、繊維ストランド12が含浸材料チャネル116からの含浸材料及びベース複合材料チャネル114からのベース複合材料と一緒になるまで、3D印刷装置を通じて繊維ストランド12を手動で押したり引いたりすることができる。これらはすべてノズル出口119の直前又は正にノズル出口119で起こり得る。ある構成においては、様々なチャネル112,114,116は、ノズル出口119の近傍で順次合体していてもよい。繊維供給コンポーネント120の構成は、ベース複合材料チャネル114の出口に対する繊維ストランドチャネル112の出口の位置によって決まる、少なくとも3つの異なる繊維ストランドの形態を提供することができる。
【0075】
一実施形態においては、繊維ストランドチャネル112の出口が、ベース複合材料チャネル114の出口の上方に位置し得る。この構成では、同時に押し出されるベース複合材料の層の上に繊維ストランドを押し出し、また、印刷時に押し出されるベース複合材料の層の中に部分的に挿入することができる。これは、例えば、繊維ストランドの断面積の約70~90%が押し出された層の中に挿入されるか埋め込まれることを含み得る。
【0076】
他の実施形態においては、繊維ストランドチャネル112の出口が、ベース複合材料チャネル114の出口と同軸上に位置し得る。この構成においては、印刷時にベース複合材料の押し出された層の中に繊維を完全に埋めることができる。さらに他の実施形態においては、繊維ストランドチャネル112の出口が、ベース複合材料チャネル114の出口の下方に位置し得る。この結果、繊維ストランドは、印刷時にベース複合材料の押し出された層の下方に押し出される。
【0077】
様々な構成においては、繊維供給コンポーネント120は、繊維供給コンポーネント120を移動印刷デバイスに取り付けるように構成されるコネクタを含み得る。一実施形態においては、移動印刷デバイスはCNCシステムであり得る。他の実施形態においては、移動印刷デバイスはロボットアームであり得る。他の種類の移動印刷デバイスも考えられ、そのような移動印刷デバイスの取付部の位置は、プリンタ又はシステム上のどこに位置していてもよい。
【0078】
図6は、3D印刷装置のための例示のノズル構成を底面図で示すものである。再び、可動プリンタヘッド110は、他のプリンタヘッド構成要素がある中でも、新に印刷された材料をキュアリングするためのエネルギー源160と、印刷中にプリンタヘッド110を様々な方向に様々な速度で移動するように構成される移動印刷デバイス170と、3D印刷中に繊維ストランド及びベース複合材料を押し出すように構成される出口を有するノズル118とを含み得る。
【0079】
概して、押し出された印刷層の寸法は、ノズル出口119の寸法によって大部分が決まる。ノズル出口のサイズ及び形状によっては、印刷層の幅は、ある構成においては約10から26mmの範囲に及び得る。直径10mmの出口119を有するノズル118を適用することによって、例えば、印刷層の幅は、約10から13mmに設定され得る。ノズル出口の直径を14mmまで増加させることによって、印刷層の幅は、約14から18mmに設定され得る。出口径が20mmのノズルについては、印刷層の幅は、約20から26mmに設定され得る。容易に考えられるように、ノズル出口及び印刷層の幅について他のサイズや範囲も考えられる。
【0080】
ノズル出口から先に堆積した層の印刷面までの距離を変化させることにより、また、積層複合材料全体のキュアリング深さを変化させることにより、印刷層の厚さを管理することができる。印刷層の断面積に対する繊維ストランドの断面積の比率のように繊維ストランドの線密度を変化させることにより印刷層の断面積を決定することができる。例えば、この比率は、印刷された完成建物構成要素又は物において所望の機械的性能特性を得るために、ベース複合材料の印刷層の平均断面積の約1%から約20%の範囲に及び得る。
【0081】
図7A及び図7Bは、3D印刷積層材料についての例示の関係のグラフを示すものである。図7Aは、印刷速度に対する様々な複合ベース材料の流量及び含浸材料の流量を示しており、図7Bは、繊維ストランドの断面積に対する印刷層の断面積を示している。提示されているグラフは、様々な材料特性を変化させたときの印刷に関する経験上の相対速度と、開示されているシステム及び方法を用いた様々な異なる印刷積層材料にわたって測定された材料特性を示している。
【0082】
図8A及び図8Bは、3D印刷された繊維強化複合材料の例示の理想的な層を側面図及び平面図でそれぞれ示すものである。異なる条件で反りを測定するために理想的な層を用いることができ、理想的な層は、完全に平坦で真っ直ぐな印刷層の寸法を表している。様々な実施形態においては、様々な材料、速度、及び手法を用いて3D印刷された印刷層に対して相対反り試験を行うためのベースラインとして理想的な層20を用いることができる。3D印刷層の反りは、ベース複合材料の粘度に対してかなり相関があり、多くの場合、この粘度を制御することが望ましいと考えられることは注目に値する。特に、強化材、とりわけ繊維ストランド強化材の好ましい使用は有用であり得る。
【0083】
典型的な発熱光ポリマキュア反応により、3D印刷された材料によく見られる反り作用は強化材を介して緩和される。様々な実施形態においては、ベース複合材料は、有機リン酸塩又はトリメリット酸塩のような1以上の可塑剤を含み得る。これは、印刷物上に負荷をかけている間にベース複合材料から繊維ストランドへの負荷がより効率的に移ることにより、複合マトリクス剛性を低減し、印刷された部品の機械的性能を向上するために、複合材質量の12wt%を下回る濃度であり得る。
【0084】
図9は、相対的な反りに対するベース複合材料の粘度の例示の関係のグラフを示している。図9にグラフで示されている測定例においては、複合樹脂強化材と可塑剤としての塩化有機リン酸塩の付加の反りレベルに対する影響がベース複合樹脂の粘度の関数として示されている。図8A図8Bに例示されるような矩形断面を有する3D印刷された壁のような単純な部品に対して評価を行った。図示されるように、相対的な反りパーセンテージは、一般的に、低い粘度に対しては小さいが、本明細書で述べる繊維ストランドの変形例のような強化材料の付加により実質的に低下する。
【0085】
最後に図10を見ると、標準的な建物建築規準を満足するか、あるいはこれを超える材料特性を有する建物構成要素を3D印刷する例示の方法1000のフローチャートが示されている。方法1000は、印刷装置で別個の繊維ストランドをベース複合材料に結合することにより建物構成要素を印刷する様々な方法のうち1つの方法のみを表しており、開示されている例示的な方法の他の変形例及び推定も考えられることは理解できよう。必ずしも示されているすべてのステップが必要なのではなく、詳細には開示されていないさらなるステップも追加され得る。さらに、ステップの順序を変更してもよく、一部のステップを同時に行ってもよい。例えば、一部の連続印刷プロセスにおいては、すべてのステップを同時に行ってもよい。
【0086】
開始ステップ1002の後、第1のプロセスステップ1004は、ベース複合材料チャネルを通じてベース複合材料を供給することを含み得る。ベース複合材料チャネルは、上述したように移動プリンタヘッドの内部に位置し得るものであり、プリンタヘッドの外部に位置する交換可能なベース複合材料源から供給され得る。
【0087】
次のプロセスステップ1006では、繊維ストランドが、別個の繊維ストランドチャネルを通じて方向付けられ得る。この繊維ストランドチャネルも移動プリンタヘッドの内部に位置し得るものであり、プリンタヘッドの外部に位置する交換可能な繊維ストランド源から供給され得る。
【0088】
続くプロセスステップ1008では、含浸材料が別個の含浸材料チャネルを通じて供給され得る。含浸材料は、繊維ストランドを含浸させて使用される特定のベース複合材料に繊維ストランドを結合するのを促進するのに好適な液体であり得る。含浸材料チャネルも、プリンタヘッドの内部に位置し得るものであり、プリンタヘッドの外部に位置する交換可能な含浸材料源から供給され得る。
【0089】
次のプロセスステップ1010では、繊維ストランドが含浸材料で飽和され得る。これは、プリンタヘッド内で行われ得るもので、繊維ストランドチャネルの端部に向けられ得る。様々な実施形態においては、予め飽和された繊維ストランドを使用してもよく、その結果、プロセスステップ1008及び1010は必要に応じてスキップされ得る。
【0090】
次のプロセスステップ1012では、含浸された繊維ストランドとベース複合材料が一緒に同時に押し出され、堆積層又は3D印刷層を形成し得る。繊維ストランドは、上述したようにノズル出口の構成によって、ベース複合材料層の上、下、あるいは内部に配置され得る。
【0091】
次のプロセスステップ1014では、ベース複合材料により取り囲まれた繊維ストランドコアの印刷層がキュアされ得る。これは、熱源又はUV光のような放射源を用いて実現され得る。ある構成においては、キュアリングコンポーネントは、プリンタヘッドの方向にノズル出口に付いて行くことができ、その結果、印刷層がノズルから押し出された直後にキュアリングが生じる。
【0092】
プロセスステップ1016では、印刷デバイスが移動され得る。これは、図1に示されるように1層ごとに押し出された材料に対して連続し得る連続層の3D印刷を促進することができる。容易に理解できるように、プロセスステップ1016を他のプロセスステップと同時に行って連続印刷プロセスを促進することができる。
【0093】
決定ステップ1018では、進行中の印刷層においてさらに繊維ストランドが必要とされているか否かについて問い合わせが行われ得る。必要とされていない場合には、本方法は、繊維ストランドが切断され得るプロセスステップ1020に続く。そのような場合には、繊維ストランドコアなしでベース複合材料のみが印刷される3D印刷が継続し得る。
【0094】
さらに繊維ストランドが必要とされている場合には、本方法は、印刷が完了したか否かについて問い合わせが行われ得る決定ステップ1022に続き得る。完了していない場合には、本方法は、プロセスステップ1012に戻り、その後のすべてのステップを繰り返し得る。ある構成においては、本方法は、例えばプロセスステップ1004までさらに戻って、その後すべてのステップを繰り返し得る。しかしながら、決定ステップ1024で実際に印刷が完了しているとなった場合には、本方法は終了ステップ1026で終了する。
【0095】
上記の開示は、明確化と理解のために例示として説明のために詳細に述べられてきたが、上述した開示は、本開示の趣旨又は本質的な特徴を逸脱することなく数多くの他の具体的な変形例及び実施形態において具現化され得ることは理解できるであろう。変更及び修正を行うことができ、本開示は上述した詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲により規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
【国際調査報告】