(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】植物精油アミノ酸組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20240222BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240222BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240222BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240222BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240222BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20240222BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240222BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240222BHJP
【FI】
C11B9/00 D
A61K31/05
A61P31/04 171
A61P31/04
A61K47/18
A61K8/44
A61K8/33
A61Q17/00
A23L33/175
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552025
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2022077567
(87)【国際公開番号】W WO2022179539
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】202110209829.2
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523322782
【氏名又は名称】コクリスタル テクノロジー(チアシン)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】メイ シュエフォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン フォンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チエンロン
(72)【発明者】
【氏名】ルー リーイェー
(72)【発明者】
【氏名】チャン ツァイヨン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C206
4H059
【Fターム(参考)】
4B018MD19
4B018ME02
4B018ME14
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
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4C076CC32
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4C076DD51
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4C076GG03
4C083AA121
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4C083CC01
4C083DD21
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4C206AA01
4C206AA02
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4C206ZB35
4C206ZC61
4H059BA14
4H059BB55
4H059BC23
4H059CA06
4H059EA01
(57)【要約】
本発明は、植物精油アミノ酸組成物及びその製造方法に関する。本発明の組成物は、植物精油とアミノ酸を含む組成物であって、前記組成物は植物精油とアミノ酸を混合することにより得られ、前記植物精油がチモールおよびカルバクロールからなる群より選ばれる一つまたは二つであるものである。本発明の組成物は、著しく高くなる融点を有し、揮発性が低減され、従って、著しく改善された安定性を有する。本発明の組成物は、動物用の成長促進飼料添加物として使用された場合、嗜好性が改善され、ダイオフ率が減少する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物精油とアミノ酸を含む組成物であって、
前記組成物は、植物精油とアミノ酸を混合することにより得られ、前記植物精油がチモールおよびカルバクロールからなる群より選ばれる一つまたは二つであり、前記アミノ酸がL-プロリンおよびサルコシンからなる群より選ばれる一つまたは二つである、組成物。
【請求項2】
前記植物精油とアミノ酸を、9-1:1-9、好ましくは2-1:1-2のモル比で混合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物精油が、チモールおよびカルバクロールの混合物であり、その中、チモールとカルバクロールのモル比が、9-1:1-9であり、好ましくは2-1:1-2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、チモールとL-プロリンを1:2のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が6.4°±0.2°、12.1°±0.2°、12.4°±0.2°、17.7°±0.2°、20.2°±0.2°、22.1°±0.2°、23.0°±0.2°、23.7°±0.2°、25.1°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、チモールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が6.2°±0.2°、6.9°±0.2°、12.5°±0.2°、13.8°±0.2°、18.0°±0.2°、18.4°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、19.3°±0.2°、21.1°±0.2°、24.8°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図3に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が6.9°±0.2°、11.5°±0.2°、13.6°±0.2°、13.9°±0.2°、19.0°±0.2°、19.2°±0.2°、23.1°±0.2°、24.9°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図5に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、カルバクロールとL-プロリンを2:1のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.5°±0.2°、11.0°±0.2°、13.1°±0.2°、13.2°±0.2°、15.0°±0.2°、15.5°±0.2°、15.8°±0.2°、17.5°±0.2°、19.7°±0.2°、20.5°±0.2°、21.6°±0.2°、21.9°±0.2°、23.6°±0.2°、25.1°±0.2°、26.7°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図7に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、チモール、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1:2のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.2°±0.2°、6.8°±0.2°、12.5°±0.2°、13.8°±0.2°、18.4°±0.2°、18.8°±0.2°、19.4°±0.2°、21.3°±0.2°、24.8°±0.2°、25.0°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図9に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、
植物精油とアミノ酸を混合して植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る工程を含む、製造方法。
【請求項10】
前記混合が、以下の方法(一)および方法(二):
方法(一):植物精油とアミノ酸を溶媒において再結晶して沈殿を得て、沈殿物を乾燥して、植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る;
方法(二):植物精油とアミノ酸を混合し、粉砕デバイスに加えて機械力により十分に接触させ、または混合物溶液を噴霧乾燥し、または押出機により処理して、一部または全部反応した後、植物精油とアミノ酸を含む組成物を形成し、好ましくは、前記粉砕デバイスが、ボールミル、粉砕機、ブレンダーおよび撹拌装置からなる群より選ばれる
のいずれかにより実現される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む製品であって、例えば、サプリメント、食品、化粧品、医薬品、医薬用助剤または飼料である製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物精油抗生物質代替製品の技術分野に関し、具体的に、植物精油安定性を向上させ、揮発を低減させる植物精油アミノ酸組成物およびその製造方法に関する。前記組成物は、より優れた熱安定性を持つ。
【背景技術】
【0002】
2006年以来、欧州連合(EU)は家畜・家禽飼料における成長促進抗生物質飼料添加物の使用を完全に禁止しており、現在の動物の健康、成長、繁殖成績はいずれも非常に良好である。現在、EUの繁殖過程における抗生物質の使用量は大幅に削減され、2006年レベルの70%まで削減された。すなわち、治療に使用される抗生物質の使用量は30%削減されたが、動物の健康は大幅に改善され、これは大きな成果である。米国は2017年1月1日から、畜産における「人間にとって医学的に重要な抗生物質」の使用を厳しく制限している。中国は2015年から現在まで、多くの「抗生物質禁止」規制・政策を導入し、ロメフロキサシン、硫酸コリスチンおよびオラキンドックス等の合計8種類の抗生物質の動物飼料や動物飼育への使用を順次禁止し、2020年には飼料に成長促進抗生物質を使用した飼料添加物を全面的に禁止している。飼料への抗生物質の使用が禁止されれば、千年百年以前から使用されているオレガノオイル、コウジュオイル、マヨラナオイル中のカルバクロールおよびチモール成分といったハーブの抗菌成分が、間違いなく好ましい抗菌剤となる。カルバクロールおよびチモールは強い殺菌力を持ち、最小発育阻止濃度(MIC)はわずか0.12~50ppmで、動物の免疫能力を向上させることができる。また、そのユニークな殺菌メカニズムにより、細菌は耐性を作らず、人工的に大量に合成することができる。
【0003】
チモールとカルバクロールは、抗菌、防腐、抗酸化などの作用を持ち、口腔衛生や食品添加物に広く使用されている。チモールの化学構造を式Iに、カルバクロールの化学構造を式IIに示す:
【0004】
【0005】
両者は、いずれも植物精油であり、オレガノオイルエキスの主成分(60~80%)である。両者は相乗的な抗菌・殺菌活性があるため、単独で使用されることはほとんどなく、市販されている精油抗生物質代替製品の主な有効成分となっている。しかし、チモールとカルバクロールは融点が低い(チモールは50℃、カルバクロールは2℃)ため、製造、貯蔵、輸送中や、飼料添加物として造粒する際に、熱的に不安定で揮発しやすく、有効成分の損失が大きい。チモール、カルバクロールの長期保存や高温造粒時の安定性を向上させるために、様々な方法が開発されてきた。例えば、CN101331915Aは、チモールおよびオイゲノールと安息香酸の直接混合を報告している。CN103478232Aは、カルバクロールとβ-シクロデキストリンの包接混合物を報告しており、徐放効果を達成している。CN107753462Aは、チモールおよびカルバクロールを保護するためにポリマー材料マトリックスを使用することを報告している。しかし、上記の既存技術は、長期保存や高温造粒工程におけるチモールおよびカルバクロールの安定性を著しく向上させることはできない。
【0006】
したがって、植物精油の化学的安定性に対応できる新しい技術を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明は、精油抗生物質代替製品の上記欠点に対応し、高安定性、低揮発性で製造された製品の開発を検討したところ、偶然にも、サルコシンまたはプロリンとチモールまたはカルバクロールとの相互作用を使用することにより組成物を形成し、組成物の融点および安定性が大幅に改善されることを見出した。本発明は、非共有結合の存在下でチモールまたはカルバクロールと分子レベルで相互作用する特定の補助化合物としてのアミノ酸の添加によって組成物が得られた。同時に、チモールとカルバクロールの組み合わせは、顕著な相乗的抗菌、殺菌、抗酸化効果を持つ。室温で液体状態のカルバクロールと比較して、組成物の安定な固体粉末の製造は、食品添加物、医薬品添加物および飼料添加物の分野での応用にとってより便利である。本発明において、チモールおよびカルバクロールの融点は、組成物の形成後に著しく向上し(例えば、チモール-プロリン1:1(モル比)組成物の融点:123℃;カルバクロール-プロリン1:1(モル比)組成物の融点:133℃)、したがって、その熱安定性が改善されることが見出された。また、組成物の製造方法が簡便でかつ再現性がよいため、プロセス処理と物理的・化学的特性の向上に対して有利である。
【0008】
従って、本発明は、植物精油の安定性を向上し、揮発を低減する組成物である植物精油とアミノ酸との組成物であって、前記植物精油が、チモールおよび/またはカルバクロールであってよく、前記アミノ酸が、サルコシンおよび/またはプロリンであってよい組成物を提供する。本発明の組成物は、植物精油の融点を著しく向上させ、揮発性を低減させ、それにより安定性を著しく向上させることができる。本発明の組成物は、動物用の成長促進飼料添加物として使用される場合、より良好な嗜好性を有し、より低いダイオフ率を有する。
【0009】
本発明の目的の一は、植物精油とアミノ酸を含む組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の目的の二は、植物精油とアミノ酸を含む組成物の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の目的の三は、上記植物精油とアミノ酸の組成物を含む製品を提供することにある。
【0012】
本発明の目的の四は、上記の植物精油とアミノ酸を含む組成物の、サプリメント、食品、化粧品、医薬品、医薬用助剤または飼料の製造における使用を提供することにある。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、植物精油とアミノ酸を含む組成物であって、前記組成物は植物精油とアミノ酸を混合することにより得られ、前記植物精油がチモールおよびカルバクロールからなる群より選ばれる一つまたは二つであり、前記アミノ酸がL-プロリンおよびサルコシンからなる群より選ばれる一つまたは二つである、組成物を提供する。
【0014】
好ましくは、前記植物精油とアミノ酸が、9-1:1-9、好ましくは2-1:1-2のモル比で混合され、例えば、モル比が1:9、1:2、1:1、2:1、9:1等であってもよいが、これらに限定されない。
【0015】
好ましくは、前記植物精油がチモールおよびカルバクロールの混合物であり、その中、チモールとカルバクロールのモル比が9-1:1-9であってもよく、好ましくは2-1:1-2である。
【0016】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとサルコシンを1:2のモル比で混合することにより得られる。
【0017】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られる。
【0018】
一実施形態では、本発明の組成物は、カルバクロールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られる。
【0019】
一実施形態では、本発明の組成物は、カルバクロールとL-プロリンを2:1のモル比で混合することにより得られる。
【0020】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモール、カルバクロールとL-プロリンを1:1:2のモル比で混合することにより得られる。
【0021】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモール、カルバクロールとサルコシンを1:1:2のモル比で混合することにより得られる。
【0022】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとサルコシンを2:1のモル比で混合することにより得られる。
【0023】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとL-プロリンを1:2のモル比で混合することにより得られる。
【0024】
一実施形態では、本発明の組成物は、カルバクロールとL-プロリンを1:2のモル比で混合することにより得られる。
【0025】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとサルコシンを2:1のモル比で混合することにより得られる。
【0026】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとサルコシンを1:3のモル比で混合することにより得られる。
【0027】
一実施形態では、本発明の組成物は、カルバクロールとサルコシンを1:2のモル比で混合することにより得られる。
【0028】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとサルコシンを1:9のモル比で混合することにより得られる。
【0029】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとサルコシンを9:1のモル比で混合することにより得られる。
【0030】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとL-プロリンを1:9のモル比で混合することにより得られる。
【0031】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモールとL-プロリンを9:1のモル比で混合することにより得られる。
【0032】
一実施形態では、本発明の組成物は、カルバクロールとL-プロリンを1:9のモル比で混合することにより得られる。
【0033】
一実施形態では、本発明の組成物は、チモール、カルバクロールとL-プロリンを1:1:18のモル比で混合することにより得られる。
【0034】
本発明の組成物では、好ましくは、前記混合が、以下の方法(一)および方法(二)のいずれかにより実現される:
【0035】
(一)植物精油とアミノ酸を溶媒において再結晶して白色沈殿を得て、沈殿物を乾燥して本発明の組成物を得る;
【0036】
(二)植物精油とアミノ酸を混合し、混合デバイスに加入して機械力により十分に接触させ、または混合物溶液を噴霧乾燥し、または押出機により処理して、一部または全部反応した後、植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る。
【0037】
本発明の組成物では、上記方法(一)において、前記溶媒が、原料にとって一定的な溶解度を持ち、かつ原料に変質させないすべての溶媒を含み、好ましくはが水、アルコール系、ケトン系、エステル系、アルカン、芳香族炭化水素またはハロアルカン等の溶媒からなる群より選ばれる一つまたは複数種であり;より好ましくは、前記溶媒メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタンからなる群より選ばれる一つまたは複数種である。
【0038】
本発明の組成物では、上記方法(二)において、前記粉砕デバイスが、好ましくは、ボールミル、粉砕機、ブレンダーおよび撹拌装置からなる群より選ばれる。
【0039】
上記方法(一)および方法(二)は、操作が簡単で、結晶化プロセスの制御が容易であり、結晶化度が高く、再現性がよく、チモールおよび/またはカルバクロールとアミノ酸を含む組成物を安定に得ることができる。
【0040】
本発明の一つの好ましい実施形態では、前記植物精油とアミノ酸を含む組成物は、チモールとL-プロリンを1:2のモル比で混合することにより得られる。好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.4°±0.2°、12.1°±0.2°、12.4°±0.2°、17.7°±0.2°、20.2°±0.2°、22.1°±0.2°、23.0°±0.2°、23.7°±0.2°、25.1°±0.2°で特徴的ピークを有する。より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する。好ましくは、前記組成物は、示差走査熱量分析図が約129±2℃で特徴的吸熱ピークを有し;より好ましくは、基本的に、
図2に示される示差走査熱量分析図を有する。
【0041】
本発明の一つの好ましい実施形態では、前記植物精油とアミノ酸を含む組成物は、チモールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られる。好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.2°±0.2°、6.9°±0.2°、12.5°±0.2°、13.8°±0.2°、18.0°±0.2°、18.4°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、19.3°±0.2°、21.1°±0.2°、24.8°±0.2°で特徴的ピークを有する。より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図3に示されるX線粉末回折パターンを有する。好ましくは、前記組成物の示差走査熱量分析図は、約123±2℃で特徴的吸熱ピークを有し;より好ましくは、基本的に、
図4に示される示差走査熱量分析図を有する。
【0042】
本発明の一つの好ましい実施形態では、前記植物精油とアミノ酸を含む組成物は、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られる。好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.9°±0.2°、11.5°±0.2°、13.6°±0.2°、13.9°±0.2°、19.0°±0.2°、19.2°±0.2°、23.1°±0.2°、24.9°±0.2°で特徴的ピークを有する。より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図5に示されるX線粉末回折パターンを有する。好ましくは、前記組成物の示差走査熱量分析図は、約133±2℃で特徴的吸熱ピークを有し;より好ましくは、基本的に、
図6に示される示差走査熱量分析図を有する。
【0043】
本発明の一つの好ましい実施形態では、前記植物精油とアミノ酸を含む組成物は、カルバクロールとL-プロリンを2:1のモル比で混合することにより得られる。好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.5°±0.2°、11.0°±0.2°、13.1°±0.2°、13.2°±0.2°、15.0°±0.2°、15.5°±0.2°、15.8°±0.2°、17.5°±0.2°、19.7°±0.2°、20.5°±0.2°、21.6°±0.2°、21.9°±0.2°、23.6°±0.2°、25.1°±0.2°、26.7°±0.2°で特徴的ピークを有する。より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図7に示されるX線粉末回折パターンを有する。好ましくは、前記組成物は、示差走査熱量分析図が約80±2℃で特徴的吸熱ピークを有し;より好ましくは、基本的に、
図8に示される示差走査熱量分析図を有する。
【0044】
本発明の一つの好ましい実施形態では、前記植物精油とアミノ酸を含む組成物は、チモール、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1:2のモル比で混合することにより得られる。好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.2°±0.2°、6.8°±0.2°、12.5°±0.2°、13.8°±0.2°、18.4°±0.2°、18.8°±0.2°、 19.4°±0.2°、21.3°±0.2°、24.8°±0.2°、25.0°±0.2°で特徴的ピークを有する。より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図9に示されるX線粉末回折パターンを有する。好ましくは、前記組成物は、示差走査熱量分析図が約125±2℃で特徴的吸熱ピークを有し;より好ましくは、基本的に、
図10に示される示差走査熱量分析図を有する。
【0045】
比較により分かるように、チモール、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1:2のモル比で混合することにより得られる組成物のX線粉末回折パターンは、基本的に、チモールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られる組成物と、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られる組成物とのX線粉末回折パターンの重ね合わせであり、示差走査熱量分析図は、組成物以外の成分の影響を受け、その特徴的吸熱ピークが対応する組成物の特徴的吸熱ピークと異なった。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、植物精油とアミノ酸を含む組成物の製造方法であって、植物精油とアミノ酸を混合して植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る工程を含む、製造方法を提供する。
【0047】
本発明の製造方法では、好ましくは、前記アミノ酸がL-プロリンおよびサルコシンからなる群より選ばれる一つまたは二つである。
【0048】
本発明の製造方法では、好ましくは、前記植物精油とアミノ酸を9-1:1-9、好ましくは2-1:1-2のモル比で混合し、例えば、モル比が1:9、1:2、1:1、2:1、9:1等であってもよいが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の製造方法では、好ましくは、前記植物精油において、チモールとカルバクロールのモル比が9-1:1-9であってもよく、好ましくは2-1:1-2である。
【0050】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとサルコシンを1:2のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0051】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0052】
一実施形態では、本発明の製造方法は、カルバクロールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0053】
一実施形態では、本発明の製造方法は、カルバクロールとL-プロリンを2:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0054】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモール、カルバクロールとL-プロリンを1:1:2のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0055】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモール、カルバクロールとサルコシンを1:1:2のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0056】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとサルコシンを2:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0057】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとサルコシンを1:3のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0058】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとL-プロリンを1:2のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0059】
一実施形態では、本発明の製造方法は、カルバクロールとL-プロリンを1:2のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0060】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとサルコシンを2:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0061】
一実施形態では、本発明の製造方法は、カルバクロールとサルコシンを1:2のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0062】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとサルコシンを1:9のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0063】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとサルコシンを9:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0064】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとL-プロリンを1:9のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0065】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモールとL-プロリンを9:1のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0066】
一実施形態では、本発明の製造方法は、カルバクロールとL-プロリンを1:9のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0067】
一実施形態では、本発明の製造方法は、チモール、カルバクロールとL-プロリンを1:1:18のモル比で混合することにより前記組成物を得る工程を含む。
【0068】
本発明の製造方法では、好ましくは、前記混合が、以下の方法(一)および方法(二)のいずれかにより実現される:(一)植物精油とアミノ酸を溶媒において再結晶して沈殿を得て、沈殿物を乾燥して、植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る;(二)植物精油とアミノ酸を混合し、粉砕デバイスに加入し機械力により十分に接触させ、または混合物溶液を噴霧乾燥し、または押出機により処理して、一部または全部反応した後、植物精油とアミノ酸を含む組成物を形成する。
【0069】
本発明の製造方法では、上記方法(一)において、前記溶媒が、原料にとって一定的な溶解度を持ち、かつ原料に変質させないすべての溶媒を含み、好ましくは、水、アルコール系、ケトン系、エステル系、アルカン、芳香族炭化水素またはハロアルカン等の溶媒からなる群より選ばれる一つまたは複数種であり;より好ましくは、前記溶媒が、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタンからなる群より選ばれる一つまたは複数種である。
【0070】
本発明の製造方法では、上記方法(二)において、前記粉砕デバイスが、好ましくは、ボールミル、粉砕機、ブレンダーおよび撹拌装置からなる群より選ばれる。
【0071】
一実施形態では、植物精油とアミノ酸をボールミルに加入し、振とう周波数が5~60Hz、好ましくは30Hzで、振とう時間が5~60分間、好ましくは20分間で、本発明の組成物を得る。
【0072】
一実施形態では、植物精油とアミノ酸を粉砕機に加入し、粉砕時間が1~60分間、好ましくは2分間で、本発明の組成物を得る。
【0073】
本発明の製造方法では、上記方法(一)および方法(二)は、操作が簡便であり、結晶化工程の制御が容易であり、結晶化度が高く、再現性が良好であるため、植物精油とアミノ酸を含有する組成物を安定に得ることができる
【0074】
本発明の第3の態様によれば、上記植物精油とアミノ酸の組成物を含む製品、例えばサプリメント、食品、化粧品、医薬品、医薬用助剤または飼料を提供する。
【0075】
前記製品は、さらに、当該製品に対して必要とするその他の適切な原料を含むことができる。例えば、食品には、食品主材と、食品的に許与される食用可能な食品添加物、例えば甘味料、風味剤、防腐剤、香味料、着色剤等が含まれることができる。化粧品には、化粧品的に許容される化粧品主材料と添加物、例えば溶媒、香味料、防腐剤、エッセンス、着色剤等が含まれることができる。医薬品には、医薬用活性成分と、薬理学的に許容される助剤、例えば担体、希釈剤、アジュバント、着色剤等が含まれることができる。飼料には、飼料主材料、例えば豆粕、干し草等と、飼料的に許容される飼料助剤、例えば甘味料、風味剤、防腐剤、香味料、着色剤等が含まれることができる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
上記製品は、本発明による植物精油とアミノ酸を含む組成物を添加して製造されるものである。本発明の植物精油とアミノ酸を含む組成物を添加すること以外、前記製品の製造方法は、その一般的な方法により製造することができる。
【0077】
ここで記載の異なる比率は、いずれもモル比であり;採用される用語である飼料とは、いずれかの動物に適するか、動物によって摂取されようとする化合物、製剤、混合物または組成物を意味する。ここで記載の前記補助化合物は、主分子の一部または全部と分子レベルの相互作用が存在する。ここで記載の前記チモールおよびカルバクロールは、天然および合成由来に適用される。
【0078】
本発明は、以上によりすでに詳細に説明されたが、上記の実施形態は、本質的には例示的なものであり、本発明を限定する意図がない。また、本明細書は、前記の従来技術または発明の概要または以下の実施例で説明されるいずれかの理論により制限されない。
【0079】
特に明記しない限り、本出願書類全体を通しての数値範囲は、その中のいずれかのサブ範囲およびその中の所定値の最小のサブユニットで増分されるいずれかの数値を含む。特に明記しない限り、本出願書類全体を通しての数値は、所定値からの小さな偏差を含み、およびおおよそ言及された値を有し、および言及された正確な値を有する実施形態の範囲のおおよその尺度または制限を表す。発明を実施するための形態の末尾に提供される工作実施例を除いて、添付の特許請求の範囲を含む本出願書類におけるパラメータ(例えば、量または条件)の値は、「約」が実際に値の前に現れるかどうかにかかわらず、すべての場合において、「約」という用語によって修正されるものとして理解される。「約」とは、記載された値がわずかに不正確であることが許容されることを意味する(値の精度がいくらか近似していること;おおよそ、または値に適度に近いこと;近似値)。「約」によって提供される不正確さが当技術分野におけるこの通常の意味で理解されない場合、本明細書で使用される「約」は、少なくとも、これらのパラメータを測定し使用する通常の方法によって生じ得る変動を示す。例えば、「約」は、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、または0.5%以下、いくつかの態様では0.1%以下の変動を含み得る。
【0080】
特に明記しない限り、本出願書類全体を通しての用語「包含」、「含む」、「有する」、「含有」またはその他の類似の用語は、組成物または製品が、本明細書に列挙された要素に加えて、明示的に列挙されていないが、組成物または製品に通常内在する他の要素を含み得ることを示す開放式用語である。また、本明細書において、用語「包含」、「含む」、「有する」、「含有」は、具体的に開示されたものとみなされ、「~からなる」と「~から本質的になる」という閉鎖式接続詞または半閉鎖式接続詞の両方を含むものとみなされる。「本質的に~からなる」とは、本明細書に記載された要素が、組成物または製品の95%以上、97%以上、ある態様では99%以上を構成することを意味する。
【0081】
有益な効果
本発明は、精油製品の使用中に安定性が悪く、揮発・損失しやすいという問題に対し、フェノール類の主活性成分であるチモールおよび/またはカルバクロールをアミノ酸と結合させ、分子レベルの相互作用を実現した組成物を提供するものである。本発明の組成物1~4は、香辛料そのものと比較して、融点がそれぞれ79、73、131および78℃上昇した。本発明の組成物のメカニズムは、チモールおよびカルバクロールの融点を上昇させることであり、その結果、それらの蒸気圧が著しく低下するため、揮発が抑制され、保存中および加工中の香辛料の安定性が向上する。例えば、組成物5の場合、保存中および造粒加工中の両方において、市販品と比較してより優れた安定性を示した(試験例4および試験例5)。同時に、動物飼料添加物の使用における本発明によって提供される組成物の利点は、揮発し難く、嗜好性が良く、安定性を向上させ、動物の体内の状況の質と量に現れて、抗菌性を十分に発揮させ、かつダイオフ率の影響を減らした。肉アヒルの試験結果は、ダイオフ率を著しく減少する效果を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】組成物1のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図2】組成物1の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【
図3】組成物2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図4】組成物2の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【
図5】組成物3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図6】組成物3の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【
図7】組成物4のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図8】組成物4の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【
図9】組成物5のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図10】組成物5の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらにより限定されていない。
【0084】
下記の実施例で使用される実験方法は、特に説明しない限り、いずれも一般的な方法である。
【0085】
下記の実施例で使用される材料、試薬等は、特に説明しない限り、いずれも市販的に入手することができる。
【0086】
チモールおよびカルバクロールは、Nanjing Jiulonghui Spices Co., Ltdから購入され;サルコシンおよびL-プロリンは、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltdから購入された。
【0087】
ボールミルは、Shanghai Jingxin Industrial Development Co., Ltdから購入された。
【0088】
粉砕機は、Xinlongwei Machinery Parts Co., Ltdから購入された。
【0089】
検測装置および分析方法:
【0090】
X線粉末回折(XRPD)方法、装置型番:Bruker D8 advance、ターゲット:Cu Kα(40kV、40mA)、装置が使用前に装置に添付した基準試料でピーク位置を校正した。サンプリングソフトは、Diffrac Plus XRD Commanderであり、解析ソフトは、MDI Jade 6.0であった。試料は、室温条件で試験され、検測が必要とする試料を有機ガラスプレートに置いた。試料から検出器までの距離:30cm、スキャン範囲:3~40°(2θ値)、スキャンステップ:0.02°、ステップ幅:0.1秒/ステップ。
【0091】
示差走査熱量分析(DSC)方法、装置型番:TA DSC Q2000、温度範囲:50~200℃、スキャン速度:10℃/min、窒素流速:50mL/min。
【0092】
熱重量損失分析(TGA)方法、装置型番:Netzsch TG 209F3型熱重分析計で検測され、温度:80℃で100分間維持し、パージガス:25mL/min。
【0093】
チモールおよびカルバクロールの含有量分析方法は、中国農業部業界規格NY/T 3137-2017を採用した。
【0094】
製造実施例
【0095】
製造実施例1:組成物1の製造
【0096】
組成物1の製造過程は、以下の通りであった。
【0097】
5mmolチモールおよび10mmolサルコシンをモル比1:2で20mLメタノールに加入し、60℃で1h撹拌した後、再結晶して白色沈殿を得て、沈殿物を濾過して真空デシケーターに置いて常温乾燥し、チモールとサルコシンから形成された組成物1を得て、収率が86%であった。
【0098】
または、5mmolチモールおよび10mmolサルコシンをモル比1:2でボールミルに加入し、振とう周波数が30Hz、振とう時間が20分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物1を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が98%であった。
【0099】
または、1molチモールおよび2molサルコシンをモル比1:2で粉砕機に加入し、粉砕時間が2分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物1を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が95%であった。
【0100】
製造実施例1で製造された試料は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)方法により同定し、上記三つの製造過程で得られた試料の測定結果が一致し、結果が
図1~
図2に示される。
図1は、組成物1のX線粉末回折(XRPD)パターンであり;
図2は、組成物1の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【0101】
製造実施例2:組成物2の製造
【0102】
組成物2の製造過程は、以下の通りであった:
【0103】
10mmolチモールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1で10mLエタノールに加入し、40℃で1h撹拌した後、再結晶して白色沈殿を得て、沈殿物を濾過して真空デシケーターに置いて常温乾燥し、チモールとL-プロリンから形成された組成物2を得て、収率が92%であった。
【0104】
または、10mmolチモールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1でボールミルに加入し、振とう周波数が30Hz、振とう時間が20分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物2を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が98%であった。
【0105】
または、1mmolチモールおよび1mmol L-プロリンをモル比1:1で粉砕機に加入し、振とう時間が2分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物2を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が94%であった。
【0106】
製造実施例2で製造された試料は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)方法により同定し、上記三つの製造過程で得られた試料の測定結果が一致し、結果が
図3~
図4に示される。
図3は、組成物2のX線粉末回折(XRPD)パターンであり;
図4は、組成物2の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【0107】
製造実施例3:組成物3の製造
【0108】
組成物3の製造過程は、以下の通りであった:
【0109】
10mmolカルバクロールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1で10mLエタノールに加入し、40℃で1h撹拌した後、再結晶して白色沈殿を得て、沈殿物を濾過して真空デシケーターに置いて常温乾燥し、カルバクロールとL-プロリンから形成された組成物3を得て、収率が94%であった。
【0110】
または、10mmolカルバクロールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1でボールミルに加入し、振とう周波数が30Hz、振とう時間が20分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物3を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が98%であった。
【0111】
または、10mmolカルバクロールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1で粉砕機に加入し、振とう時間が2分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物3を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が95%であった。
【0112】
製造実施例3で製造された試料は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)方法により同定し、上記三つの製造過程で得られた試料の測定結果が一致し、結果が
図5~
図6に示される。
図5は、組成物3のX線粉末回折(XRPD)パターンであり;
図6は、組成物3の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【0113】
製造実施例4:組成物4の製造
【0114】
組成物4の製造過程は、以下の通りであった:
【0115】
10mmolカルバクロールおよび5mmol L-プロリンをモル比2:1で10mLエタノールに加入し、40℃で1h撹拌した後、再結晶して白色沈殿を得て、沈殿物を濾過して真空デシケーターに置いて常温乾燥し、カルバクロールとL-プロリンから形成された組成物4を得て、収率が82%であった。
【0116】
または、10mmolカルバクロールおよび5mmol L-プロリンをモル比2:1でボールミルに加入し、振とう周波数が30Hz、振とう時間が20分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物4を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が98%であった。
【0117】
または、10mmolカルバクロールおよび5mmol L-プロリンをモル比2:1粉砕機に加入し、振とう時間が2分間で、チモールとサルコシンから形成された組成物4を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が96%であった。
【0118】
製造実施例4で製造された試料は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)方法により同定し、上記三つの製造過程で得られた試料の測定結果が一致し、結果が
図7~
図8に示される。
図7は、組成物4のX線粉末回折(XRPD)パターンであり;
図8は、組成物4の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【0119】
製造実施例5:組成物5の製造
【0120】
組成物5の製造過程は、以下の通りであった:
【0121】
5mmolチモール、5mmolカルバクロールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1:2でボールミルに加入し、振とう周波数が30Hz、振とう時間が20分間で、組成物5を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が98%であった。
【0122】
または、5mmolカルバクロール、5mmolカルバクロールおよび10mmol L-プロリンをモル比1:1:2で粉砕機に加入し、振とう時間が2分間で、組成物5を得て、流動性良好な結晶性粉末であり、収率が95%であった。
【0123】
製造実施例5で製造された試料は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)方法により同定し、上記三つの製造過程で得られた試料の測定結果が一致し、結果が
図9~
図10に示される。
図9は、組成物5のX線粉末回折(XRPD)パターンであり;
図10は、組成物5の示差走査熱量分析(DSC)図である。
【0124】
試験例
【0125】
試験例1
【0126】
DSC図から、組成物1、組成物2、組成物3、組成物4の融点を得て、結果を以下の表に示した。
【0127】
【0128】
試験例2
【0129】
チモールおよび/またはカルバクロールとL-プロリンおよび/またはサルコシンを表2で示される組成でボールミルに加え、振とう周波数が30Hz、振とう時間が20分間で振とうして、組成物を得た。80℃で100分間を維持して、組成物を熱重量損失分析(TGA)に供して、チモールおよび/またはカルバクロールおよびその組成物の蒸気圧を、以下の式により算出した。
【0130】
【0131】
ここで、mは時間tでの試料の質量であり、-dm/dtは単位面積当たりの重量損失率であり、pは飽和蒸気圧であり、αは気化定数であり、Tは絶対温度であり、Rは気体定数であり、Mは蒸発物質の分子量である。真空条件下で、α=1である。保護ガスの存在で、αは、定数とみなすことができる。
【0132】
蒸気圧が大きいほど揮発性が大きくなり、表2から、組成物の形成により蒸気圧が著しく低下し、従って揮発性を効果的に低下させることができ、それにより加工および貯蔵中のそれらの安定性を著しく改善することができたことがわかる。本発明の組成物は、チモールおよびカルバクロールの蒸気圧を共に著しく低下させ、それによりそれらの揮発性を低下させ、安定性を改善した。それにより、チモールおよび/またはカルバクロールとサルコシンおよび/またはプロリンとの組成物は、いずれもチモールおよび/またはカルバクロールの蒸気圧を著しく低下させ、揮発性を低下させ、それによりそれらの安定性を改善することができた。
【0133】
【0134】
試験例3
【0135】
本試験は単要素設計を採用し、全部で4つの処理を設けた。処理1:基礎飼料に植物精油を添加しなかった;処理2:基礎飼料に組成物5を30mg/kg添加した;処理3:基礎飼料に組成物5を60mg/kg添加した;処理4:基礎飼料に組成物5を120mg/kg添加した。
【0136】
384羽の1日齢の肉アヒルを4つの処理群に分けて、各処理群につき6反復、1反復あたり16羽の肉アヒルを用いた。基本飼料はトウモロコシ・豆粕タイプで、実験期間は35日間、肉アヒルは1~14日齢と15~35日齢の2段階に分けて飼育した。
【0137】
表3に示すように、植物精油組成物を添加しない処理1と比較して、処理2~3は、ダイオフ率が著しく低下され、添加量が120mg/kgに達すると、ダイオフ率は0となった。このように、本発明により提供される組成物を動物飼料添加剤に使用する利点は、揮発し難く、嗜好性が良く、安定性を向上させ、動物の体内の状況の質と量に現れて、抗菌性を十分に発揮させ、かつダイオフ率の影響を減らした。肉アヒルの試験結果から、ダイオフ率の著しい減少の効果を示した。
【0138】
【0139】
試験例4
【0140】
組成物5の加速安定性の利点を調べた。
【0141】
被検試料由来:上記の製造実施例5で製造した組成物5試料および市販の混合精油添加物コーチング製品A(チモール25%;カルバクロール25%含有)。
【0142】
40℃/75%RHの条件下で、0日の際に組成物5中のチモールおよびカルバクロールの含有量がそれぞれ25.7%/25.5%であり、製品A添加物中のチモールおよびカルバクロールの含有量がそれぞれ26.1%/26.2%であり、2ヶ月後の組成物5中のチモールおよびカルバクロールの含有量がそれぞれ25.6%/25.2%であり、製品A添加物中のチモールおよびカルバクロールの含有量がそれぞれ20.6%/20.7%であった。
【0143】
2ヶ月の加速実験では、組成物5の保持率は99.2%であったのに対し、製品Aのチモールおよびカルバクロールはともに不安定で、保持率は79.0%であり、これにより、本発明の組成物がより優れた保存安定性を有することが示されている。
【0144】
【0145】
試験例5
【0146】
組成物5の造粒過程中の安定性の利点を調べた。
【0147】
被検試料由来:上記の製造実施例5で製造した組成物5試料および市販の混合精油添加物製品B(チモール8.5%;カルバクロール8.5%含有)。
【0148】
中国アヒル飼料規格の肉アヒル飼料の造粒加工を参照し、製品Bの精油保持率は53%であったが、組成物5の保持率は72.3%であった。これにより、本発明の組成物の精油はより優れた加工安定性を有することがわかった。
【0149】
【0150】
試験例6
【0151】
本試験は単要素設計を採用し、全部で4つの処理を設けた。処理1:基礎飼料に植物精油を添加しなかった;処理2:基礎飼料に組成物5を30mg/kg添加した;処理3:基礎飼料に組成物5を60mg/kg添加した;処理4:基礎飼料に組成物5を120mg/kg添加した。
【0152】
640羽の1日齢の肉鶏を4つの処理群に分けて、各処理群につき8反復、1反復あたり20羽の肉鶏を用いた。基本飼料はトウモロコシ・豆粕タイプで、実験期間は42日間で、肉鶏は1~21日齢と22~42日齢の2段階に分けて飼育した。
【0153】
表6に示すように、処理2~4は、植物精油組成物を添加しない処理1と比較して体重を著しく増加させ、30mg/kgの添加レベルで体重が6%増加した。これにより、本発明に提供される組成物を動物飼料添加剤に使用する利点は、揮発し難く、嗜好性が良く、安定性を向上させ、動物の体内の状況の質と量に現れて、抗菌性および体重増加効果を十分に発揮させた。肉鶏の試験結果により、体重の著しい増加が示された。
【0154】
【0155】
同行のデータで肩の小文字が、有意差(p<0.05)を示し、同じまたは文字なしが、有意差なし(p>0.05)を示す。
【0156】
試験例7
【0157】
本試験は単要素設計を採用し、全部で4つの処理を設けた。処理1:基礎飼料に植物精油を添加しなかった;処理2:基礎飼料に組成物5を30mg/kg添加した;処理3:基礎飼料に組成物5を60mg/kg添加した;処理4:基礎飼料に組成物5を120mg/kg添加した。
【0158】
96頭の離乳した子豚を28日間給餌試験し、4つの処理群に分けて、各処理群につき4反復、1反復あたり6頭の豚を用いた。1日目と28日目にそれぞれ体重、飼料摂取量、1日の下痢を記録し、飼料体重比と下痢率を算出した。
【0159】
表7に示すように、試験28日終了時点で、60mg/kg添加した処理3群は、植物精油組成物を添加しない処理1と比較して、体重が著しく増加し、飼料体重比が著しく減少し、体重が15%増加し、飼料体重比が22%減少した。
【0160】
【0161】
同行のデータで肩の小文字が、有意差(p<0.05)を示し、同じまたは文字なしが、有意差なし(p>0.05)を示す。
【0162】
以上は本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではなく、本明細書で明らかにされた本発明の技術的範囲内において、当業者であれば、創造的な労力を経ることなく考え得るいかなる変更または置換も、本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物精油とアミノ酸を含む組成物であって、
前記組成物は、植物精油とアミノ酸を混合することにより得られ、前記植物精油がチモールおよびカルバクロールからなる群より選ばれる一つまたは二つであり、前記アミノ酸がL-プロリンおよびサルコシンからなる群より選ばれる一つまたは二つである、組成物。
【請求項2】
前記植物精油とアミノ酸を、9-1:1-9、好ましくは2-1:1-2のモル比で混合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物精油が、チモールおよびカルバクロールの混合物であり、その中、チモールとカルバクロールのモル比が、9-1:1-9であり、好ましくは2-1:1-2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、チモールと
サルコシンを1:2のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が6.4°±0.2°、12.1°±0.2°、12.4°±0.2°、17.7°±0.2°、20.2°±0.2°、22.1°±0.2°、23.0°±0.2°、23.7°±0.2°、25.1°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、チモールとL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が6.2°±0.2°、6.9°±0.2°、12.5°±0.2°、13.8°±0.2°、18.0°±0.2°、18.4°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、19.3°±0.2°、21.1°±0.2°、24.8°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図3に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が6.9°±0.2°、11.5°±0.2°、13.6°±0.2°、13.9°±0.2°、19.0°±0.2°、19.2°±0.2°、23.1°±0.2°、24.9°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図5に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、カルバクロールとL-プロリンを2:1のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.5°±0.2°、11.0°±0.2°、13.1°±0.2°、13.2°±0.2°、15.0°±0.2°、15.5°±0.2°、15.8°±0.2°、17.5°±0.2°、19.7°±0.2°、20.5°±0.2°、21.6°±0.2°、21.9°±0.2°、23.6°±0.2°、25.1°±0.2°、26.7°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図7に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、チモール、カルバクロールおよびL-プロリンを1:1:2のモル比で混合することにより得られ、好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.2°±0.2°、6.8°±0.2°、12.5°±0.2°、13.8°±0.2°、18.4°±0.2°、18.8°±0.2°、19.4°±0.2°、21.3°±0.2°、24.8°±0.2°、25.0°±0.2°で特徴的ピークを有し、より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図9に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、
植物精油とアミノ酸を混合して植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る工程を含む、製造方法。
【請求項10】
前記混合が、以下の方法(一)および方法(二):
方法(一):植物精油とアミノ酸を溶媒において再結晶して沈殿を得て、沈殿物を乾燥して、植物精油とアミノ酸を含む組成物を得る;
方法(二):植物精油とアミノ酸を混合し、粉砕デバイスに加えて機械力により十分に接触させ、または混合物溶液を噴霧乾燥し、または押出機により処理して、一部または全部反応した後、植物精油とアミノ酸を含む組成物を形成し、好ましくは、前記粉砕デバイスが、ボールミル、粉砕機、ブレンダーおよび撹拌装置からなる群より選ばれる
のいずれかにより実現される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む製品であって、例えば、サプリメント、食品、化粧品、医薬品、医薬用助剤または飼料である製品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本発明の一つの好ましい実施形態では、前記植物精油とアミノ酸を含む組成物は、チモールと
サルコシンを1:2のモル比で混合することにより得られる。好ましくは、前記組成物のX線粉末回折パターンは、2θ角度が約6.4°±0.2°、12.1°±0.2°、12.4°±0.2°、17.7°±0.2°、20.2°±0.2°、22.1°±0.2°、23.0°±0.2°、23.7°±0.2°、25.1°±0.2°で特徴的ピークを有する。より好ましくは、前記組成物は、基本的に、
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する。好ましくは、前記組成物は、示差走査熱量分析図が約129±2℃で特徴的吸熱ピークを有し;より好ましくは、基本的に、
図2に示される示差走査熱量分析図を有する。
【国際調査報告】