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特表2024-509415焦点深度拡張型を提供する眼内レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】焦点深度拡張型を提供する眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023552305
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022019463
(87)【国際公開番号】W WO2022192339
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,414
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519104204
【氏名又は名称】タトヴァム エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TATVUM LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ティワリ,ニヴェダン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097EE03
4C097SA02
(57)【要約】
焦点深度拡張型を提供する眼内レンズであって、レンズは、第1の領域において、基本度数より大きいレンズ度数を達成するように外縁まで増加し、第2の領域において、基本度数未満である最小レンズ度数を達成するように減少し、次いで、基本度数を達成するように増加する、度数プロファイルを有し、第2の領域は、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって基本度数を維持する。IOLは、光軸から1.4mmの半径方向距離内の屈折特徴を使用してMTFを生成し、少なくとも0.35の絶対最大MTF値を有する第1のピーク、および、少なくとも約1.25ジオプタの焦点深度を達成するように少なくとも0.15のMTF値を維持する第1のピークと連続する領域を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点深度拡張型を提供する眼内レンズであって、前記レンズは、光軸および遠見視力を達成するための基本度数を有し、前記レンズは、
第1の領域を有するEDOF特徴によって部分的に画定されるサジタル表面プロファイルを備えた表面を有する光学部を備え、前記第1の領域は、前記光軸から前記第1の領域の外縁まで半径方向位置が増加する関数として曲率が非減少であり、前記外縁において前記基本度数より大きい度数を達成し、前記サジタル表面プロファイルは、前記外縁から半径方向外側に延在する第2の領域を有し、該第2の領域は、前記外縁から半径方向位置が増加する関数として曲率が非増加であり、前記基本度数未満の度数を達成し、それにより非増加部分を画定し、次いで、前記第2の領域における曲率は、非減少であり前記基本度数を達成し、次いで、明所視条件に対してユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって前記基本度数を実質的に維持する、
レンズ。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記光軸から前記第1の領域の外縁までの半径方向位置が増加する関数として曲率が増加し、前記第2の領域は、前記基本度数未満の度数を達成するために前記外縁から半径方向位置が増加する関数として曲率が減少し、その後、前記基本度数を達成するために半径方向位置の関数として曲率が増加することを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記サジタル表面プロファイルは、式z(r)によって特定することができ、
【数1】
式中、mは4以上である
ことを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項4】
m=4であることを特徴とする、請求項3に記載のレンズ。
【請求項5】
前記基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項6】
前記基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項7】
α(r)は、半径方向距離の関数として指数関数的に変化することを特徴とする、請求項3に記載のレンズ。
【請求項8】
【数2】
であり、
式中、rは、前記レンズ光軸からの半径方向距離であり、
Rは、表面曲率半径であり、
cは、表面円錐定数であり、
α、αおよびAは、rの関数としての4次係数の変動を定義する定数であり、
limは、前記第1の領域の外縁の位置であって、4次係数(α(r))の半径方向遷移位置を定義する
ことを特徴とする、請求項7に記載のレンズ。
【請求項9】
前記基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項8に記載のレンズ。
【請求項10】
前記基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項8に記載のレンズ。
【請求項11】
r>rlimについて、
【数3】
であり、α(r)は、rlimにおいて値αに達する
ことを特徴とする、請求項8に記載のレンズ。
【請求項12】
r>rlimについて、
【数4】
であり、
式中、Bは定数であり、α(r)は、rlimより大きいrの値に対して徐々に値αに達する
ことを特徴とする、請求項8に記載のレンズ。
【請求項13】
z(r)は、さらに項zshiftを含み、
【数5】
であることを特徴とする、請求項8に記載のレンズ。
【請求項14】
前記基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項12に記載のレンズ。
【請求項15】
前記基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項12に記載のレンズ。
【請求項16】
前記サジタル表面プロファイルは、式z(r)によって特定することができ、
【数6】
前記EDOF特徴サジタルプロファイル項は、多項式を用いて特定できることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項17】
前記多項式は、指数変動を近似することを特徴とする、請求項16に記載のレンズ。
【請求項18】
前記多項式は、
【数7】
の形式のものであることを特徴とする、請求項16に記載のレンズ。
【請求項19】
前記多項式は、24次以上のものであり、m≧12であることを特徴とする、請求項18に記載のレンズ。
【請求項20】
前記表面は、前面または後面であり、前記非増加曲率部分は、外縁および最小レンズ度数の位置が実質的に半径方向に一致するように、前記外縁に位置する不連続部によって特徴付けられることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項21】
前記表面は、前面または後面であり、前記非増加曲率部分は、第1の領域の外縁から最小レンズ度数の半径方向位置までの距離が0.4mm未満であるように、半径の関数として滑らかに変化することを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項22】
前記基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項23】
前記基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項24】
前記レンズは単焦点であることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項25】
前記サジタル表面プロファイルはさらに、表面上に重ね合わされる回折プロファイルによって画定されることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ。
【請求項26】
前記回折プロファイルは、MTFの第1のピークおよびMTFの第2のピークを有する焦点深度を生成するように構成され、前記EDOF特徴は、前記第1のピークと前記第2のピークとの間のMTFを増加させ、該MTFは、ISO 1モデル眼を使用して特定され、前記MTFは、前記レンズを546nmで1.336の屈折率を有する房水に浸漬した際に、直径3mmの瞳孔に対して、546nm光において、網膜における50lp/mmの空間周波数に対して特定されることを特徴とする、請求項25に記載のレンズ。
【請求項27】
前記EDOF特徴は、前記第1のピークと前記第2のピークとの間でのみ前記MTFを増加させることを特徴とする、請求項26に記載のレンズ。
【請求項28】
前記回折プロファイルは、二焦点回折プロファイルであることを特徴とする、請求項26に記載のレンズ。
【請求項29】
最大MTF値は0.35以上であることを特徴とする、請求項26に記載のレンズ。
【請求項30】
前記MTFにおける前記第1のピークおよび前記第2のピークは、約2.5ジオプタだけ離れており、前記EDOF特徴は、前記第1のピークから近視方向に、少なくとも約1.25ジオプタにわたって0.15以上のMTFを維持する、前記第1のピークと連続する焦点深度を提供することを特徴とする、請求項29に記載のレンズ。
【請求項31】
焦点深度拡張型を提供する眼内レンズであって、前記レンズは、光軸および遠見視力を達成するための基本度数を有し、前記レンズは、
第1の領域において、前記光軸から前記第1の領域の外縁まで半径方向位置が増加する関数として非減少であり、前記外縁において基本度数より大きいレンズ度数を達成する、度数プロファイルによって特徴付けられる光学部を備え、前記外縁から
第2の領域において、半径方向外側に延在する第2の領域において、前記度数プロファイルは、前記外縁から半径方向位置が増加する関数として非増加であり、前記基本度数未満である最小レンズ度数を達成し、それによって、非増加部分を画定し、次いで、半径方向位置が増加する関数として非減少であり基本度数を達成し、次いで、前記第2の領域は、明所視条件に対してユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって前記基本度数を実質的に維持する、
レンズ。
【請求項32】
前記第1の領域は、前記光軸から前記第1の領域の外縁までの半径方向位置が増加する関数として度数が増加し、前記第2の領域は、前記最小レンズ度数を達成するために前記外縁から半径方向位置が増加する関数として度数が減少し、その後、前記基本度数を達成するために半径方向位置の関数として曲率が増加することを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項33】
前記第1の領域にわたる度数の増加は、0.5~5.0ジオプタの範囲内であることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項34】
前記レンズは、1.0~1.5ジオプタの範囲の知覚焦点深度を達成することを特徴とする、請求項33に記載のレンズ。
【請求項35】
前記レンズは単焦点であることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項36】
前記外縁に度数の段差があることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項37】
前記外縁と前記最小レンズ度数との間の度数は滑らかに変化し、前記外縁と前記最小レンズ度数との間の度数の減少は、0.4mm未満の半径方向距離にわたって生じることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項38】
前記レンズは、前面および後面を備え、前記度数プロファイルは、前記前面および前記後面のうちの少なくとも1つにおける表面曲率の変化によって達成され、前記前面または前記後面は、前記第1の領域の外縁において度数の段差を有することを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項39】
前記レンズは、前面および後面を備え、前記度数プロファイルは、前記前面および前記後面のうちの少なくとも1つにおける表面曲率の変化によって達成され、前記前面も前記後面も、前記第1の領域の外縁において度数の段差を有さないことを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項40】
前記レンズは、前面および後面を備え、前記度数プロファイルは、前記前面および前記後面のうちの少なくとも1つにおける表面曲率の変化によって達成され、前記第2の領域の非増加部分は、前記第1の領域の外縁から前記最小レンズ度数の半径方向位置までの距離が0.4mm未満であるように滑らかに変化する半径の関数としての度数によって特徴付けられることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項41】
前記レンズは、度数プロファイルを提供するように半径方向に変化する屈折率を有する屈折率勾配レンズであることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項42】
前記基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項43】
前記基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって前記第2の領域において実質的に維持されることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項44】
前記レンズはさらに、その上に重ね合わされる回折プロファイルを有する表面を備えることを特徴とする、請求項31に記載のレンズ。
【請求項45】
前記回折プロファイルは、MTFの第1のピークおよびMTFの第2のピークを有する焦点深度を生成するように構成され、前記度数プロファイルは、前記第1のピークと前記第2のピークとの間のMTFを増加させ、該MTFは、ISO 1モデル眼を使用して特定され、前記MTFは、前記レンズを546nmで1.336の屈折率を有する房水に浸漬した際に、直径3mmの瞳孔に対して、546nm光において、網膜における50lp/mmの空間周波数に対して特定されることを特徴とする、請求項44に記載のレンズ。
【請求項46】
前記度数プロファイルは、前記第1のピークと前記第2のピークとの間でのみ前記MTFを増加させることを特徴とする、請求項45に記載のレンズ。
【請求項47】
前記回折プロファイルは、二焦点回折プロファイルであることを特徴とする、請求項45に記載のレンズ。
【請求項48】
前記最大MTF値は0.35以上であることを特徴とする、請求項45に記載のレンズ。
【請求項49】
前記MTFにおける前記第1のピークおよび前記第2のピークは、約2.5ジオプタだけ離れており、前記度数プロファイルは、前記第1のピークから近視方向に、少なくとも約1.25ジオプタにわたって0.15以上のMTFを維持する、前記第1のピークと連続する焦点深度を提供することを特徴とする、請求項45に記載のレンズ。
【請求項50】
光軸を有し、該光軸から1.4mmの半径方向距離内の屈折特徴を使用して焦点深度拡張型を提供し、スルーフォーカスMTFを生成する、眼内レンズであって、
0.35を超える絶対最大MTF値を有する第1のピークと、該第1のピークから近視方向に延在する少なくとも約1.25ジオプタの焦点深度を達成するように、0.15を超えるMTF値を維持する前記第1のピークと連続する領域により特徴付けられ、前記MTFは、ISO 1モデル眼を使用して特定され、前記MTFは、前記レンズを546nmで1.336の屈折率を有する房水に浸漬した際に、直径3mmの瞳孔に対して、546nm光において、網膜における50lp/mmの空間周波数に対して特定される、レンズ。
【請求項51】
前記レンズは、スルーフォーカスMTFにおいて単一のピークのみを有し、レンズは単焦点であることを特徴とする、請求項50に記載のレンズ。
【請求項52】
最大スルーフォーカスMTF値は0.5以上であることを特徴とする、請求項51に記載のレンズ。
【請求項53】
前記屈折特徴は、前記光軸から1.2mmの半径方向距離内にあることを特徴とする、請求項50に記載のレンズ。
【請求項54】
前記屈折特徴は、前記光軸から0.7mmの半径方向距離内にあることを特徴とする、請求項50に記載のレンズ。
【請求項55】
前記レンズは、半径方向に変化する屈折率を有する屈折率分布レンズであり、前記屈折特徴はGRIN特徴であることを特徴とする、請求項50に記載のレンズ。
【請求項56】
前記レンズはさらに、その上に重ね合わされる回折プロファイルを有する表面を備えることを特徴とする、請求項50に記載のレンズ。
【請求項57】
前記回折プロファイルは、前記スルーフォーカスMTFにおいて第2のピークを生成するように構成され、前記第1のピークと連続する領域は、前記第1のピークと前記第2のピークとの間に延在することを特徴とする、請求項56に記載のレンズ。
【請求項58】
前記屈折特徴は、前記第1のピークと前記第2のピークとの間でのみ前記MTFを増加させることを特徴とする、請求項57に記載のレンズ。
【請求項59】
前記回折プロファイルは二焦点回折プロファイルであることを特徴とする、請求項57に記載のレンズ。
【請求項60】
前記最大スルーフォーカスMTF値は0.35以上であることを特徴とする、請求項59に記載のレンズ。
【請求項61】
前記MTFにおける前記第1のピークおよび前記第2のピークは、約2.5ジオプタだけ離れていることを特徴とする、請求項57に記載のレンズ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年3月9日出願の米国仮特許出願第63/158,414号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
眼内レンズ、特に焦点深度拡張型を提供する眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
白内障により不透明になった天然の水晶体に代わるための眼内レンズ(IOL)の使用が、十分に確立されている。IOLは、典型的には、光学部、および、眼内に光学部を配置するためのハプティックを含む。
【0004】
単焦点IOLは、最も一般的に移植されるタイプのIOLである。単焦点レンズは、遠見視力のみを提供するように選択され、中距離および近距離にある対象物にはユーザの焦点が合わず、眼鏡の使用を必要とする。
【0005】
多焦点IOLは、各視力領域に対応する焦点を生成することによって、遠見、中間、および/または近見視力領域を含む、ある範囲の視力を提供する。従来の多焦点レンズは、典型的には、屈折型または回折型の2つのクラスのうちの1つに適合する。
【0006】
屈折型多焦点IOLは、複数の屈折力領域に分割される光学部を有し、特定の領域からの光は、屈折力を使用して、1つの対応するレンズ焦点のみに向けられる。典型的には、屈折型多焦点レンズは、遠見、中間および/または近見視力を提供するために2つ以上の焦点を形成する。そのようなレンズは、基本度数を提供する領域(典型的には、遠見視力を提供するように選択される)を有し、残りの領域は、中間および/または近見視力を提供するように加入度数を導入する。
【0007】
屈折型多焦点レンズと同様に、回折型多焦点レンズは、遠見、中間、および/または近見視力を提供するために2つ以上の焦点を形成する;しかしながら、回折型多焦点レンズは、放射状ゾーンを備える回折素子を使用して、光を焦点に導く。回折型多焦点レンズでは、ゾーンを分離する放射状エッジは、焦点に関連する特定の屈折力を達成するように選択される。典型的には、回折レンズは、遠見視力を提供するように選択される基本度数を提供する内在屈折力を有し、回折素子は、中間および/または近見視力を提供するように加入度数を導入する。回折型多焦点レンズおよび屈折型多焦点レンズの両方の技術により、視覚が鮮明である明確な焦点と、焦点間の視覚が低下する領域とを有する、焦点深度を有するIOLがもたらされる。
【0008】
所与の位置における視覚システムの性能を測定するための性能指数のよく知られた例は、変調伝達関数(一般に「MTF」と呼ばれる)として知られている。光学系のMTFは、物体の像が生成されるときに光学系が維持することができる入力物体のコントラストの割合の尺度である。MTFは、空間周波数(例えば、網膜におけるミリメートル(mm)当たりの線対)の関数として測定することができる。概して、所与の光学系に対するMTF値は、空間周波数の増加に伴って減少する。所与の空間周波数について、MTF曲線をレンズからの距離の関数としてプロットすることができる。レンズからの距離の関数として測定されるMTFは、スルーフォーカスMTFと呼ばれる。
【0009】
所与の空間周波数について、IOLの1つまたは複数の焦点の各々は、MTF曲線におけるピークとしてスルーフォーカスMTFプロットに現れる。単焦点レンズはMTFにおいて単一のピークを有するが、多焦点レンズはMTFにおいて2つ以上のピークを有する(例えば、近焦点、中間焦点および/または遠焦点に対応する)。ピークの周囲には、より低いMTFの領域がある。
【0010】
一部のレンズは、1つまたは複数のピークから、そうでなければより低いMTF値を有するであろう領域まで、光エネルギーを広げるように設計され、そうでなければ視力をサポートしないであろう領域は、許容可能な視力を提供することができる。このようなレンズは、焦点深度拡張型(EDOF)レンズと呼ばれる。
【0011】
EDOF能力を提供するIOL設計技術は、以下を含む:a)IOLに中心屈折力加入ゾーンを提供する工程;b)IOLに比較的高次の正または負の球面収差を提供する工程;およびc)基本屈折率のIOLに比較的低い度数の加入回折プロファイルを提供する工程。これらのEDOF技術は、着用者が焦点深度にわたって異なるレベルの視覚品質を経験し、また、様々な程度の視力障害(例えば、ハローまたはゴースト)を経験している状態で、個人ごとに異なる視覚品質および患者満足度を提供してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
個体差を少なくするEDOF IOLが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、EDOF IOL性能の個体差が、瞳孔サイズおよび瞳孔応答特性の差異、角膜収差(これは、焦点深度の拡張を補助するまたは打ち消し得る)の差異、および/または散乱光に対する感度の差異に起因することを特定した。そのようなばらつきは、所与の着用者集団について測定されたように、着用者の満足度を低下させる傾向がある。
【0014】
本発明の態様は、焦点深度拡張型(EDOF)を生成するレンズの特徴が、選択された照明条件に対してユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向位置内でIOL上に配置されるIOLを対象とする。そのような設計は、対象集団中の人が視力障害(例えば、ハローまたはゴースト)を経験する可能性を低減する。そのような設計では、特徴は、明所視条件に対応する半径方向位置内に配置され、例えば、基本度数(遠見視力を提供する)が、明所視条件下でユーザの眼の瞳孔の半径方向外側部分の少なくとも30%にわたって存在する。そのような設計により、眼は、十分な距離分解能ならびに焦点深度拡張型性能を達成することができる。
【0015】
EDOF特徴を明所視瞳孔の内側部分に限定することによって、一部には、集団内の各患者に存在する収差の大きさが瞳孔の内側部分に向かって小さくなる傾向があり、その結果、集団全体の収差のばらつきが小さくなるため、集団内の個人ごとのばらつきが制限される。さらに、EDOF特徴を明所視瞳孔の内側部分内に維持することによって、瞳孔サイズおよび瞳孔応答の影響が制限される。さらに、そのような設計により、低光量条件下で追加のEDOF特徴を露出する瞳孔拡張の可能性が低減または排除される。さらに、夜間視(暗所視)に使用される瞳孔の比較的大きい領域におけるEDOF特徴の存在を回避することによって、着用者が特に視力障害を受けやすい夜間に、EDOF特徴から光散乱を導入する可能性が低減される。
【0016】
IOLは、典型的には、所与のユーザの眼にカスタマイズされず、特徴の半径方向位置は、集団の瞳孔測定に基づいて統計的に選択され得ることが理解されるであろう(すなわち、EDOF特徴は、基本度数が、選択された集団の少なくとも60%または選択された集団の少なくとも約70%に対して明所視条件下で瞳孔の眼の半径方向外側部分の少なくとも30%にわたって存在するように配置される)。例えば、所与の集団において所望の結果を達成するため、特徴は、光軸を中心とする半径0.7mmまたは1.2mmまたは1.4mm内の領域内に位置してもよい。
【0017】
レンズは、着用者の瞳孔からずれた位置(例えば、水晶体嚢内などの後房内)に外科的に移植され得るが、本明細書では、半径方向の瞳孔寸法は、レンズ上の半径方向寸法に等しいと仮定される。
【0018】
本発明の一態様は、焦点深度拡張型を提供する眼内レンズであって、光軸および遠見視力を達成するための基本度数を有するレンズを対象とする。レンズは、第1の領域を有するEDOF特徴によって部分的に画定されるサジタル表面プロファイルを備えた表面を有する光学部を備え、第1の領域は、光軸から第1の領域の外縁まで半径方向位置が増加する関数として曲率が非減少であり、外縁において基本度数より大きい度数を達成する。サジタル表面プロファイルは、外縁から半径方向外側に延在する第2の領域を有し、この第2の領域は、外縁から半径方向位置が増加する関数として曲率が非増加であり、基本度数未満の度数を達成し、それによって非増加部分を画定する。次いで、第2の領域における曲率は、半径方向位置の関数として非減少であり、基本度数を達成する。次いで、明所視条件に対してユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって(すなわち、EDOF特徴部の半径方向外側のレンズの部分にわたって)基本度数が実質的に維持される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、光軸から第1の領域の外縁までの半径方向位置が増加する関数として曲率が増加している;また、第2の領域は、基本度数より低い度数を達成するために外縁から半径方向位置が増加する関数として曲率が減少し、その後、基本度数を達成するために半径方向位置の関数として曲率が増加する。
【0020】
いくつかの実施形態では、サジタル表面プロファイルは、式z(r)によって特定することができ、
【数1】
式中、Rは表面曲率半径であり、cは表面円錐定数であり、mは4以上である(すなわち、α(r)rは、mが4以上の整数である1つまたは複数の項からなる)。
【0021】
いくつかの実施形態において、m=4である(すなわち、α(r)rは、m=4である単一の項からなる)。
【0022】
いくつかの実施形態では、基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって第2の領域内で実質的に維持される。他のそのような実施形態では、基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって第2の領域内で実質的に維持される。
【0023】
いくつかの実施形態では、α(r)は、半径方向距離の関数として指数関数的に変化する。例えば、
【数2】
であり、
式中、rは、レンズ光軸からの半径方向距離であり、
α、αおよびAは、rの関数としての4次係数の変動を定義する定数であり、
limは、第1の領域の外縁の位置であって、4次係数(α(r))の半径方向遷移位置を定義する。
【0024】
いくつかの実施形態では、r>rlimについて、
【数3】
であり、α(r)は、rlimにおいて値αに達する。
【0025】
他の実施形態において、r>rlimについて、
【数4】
であり、
式中、Bは定数であり、α(r)は、rlimより大きいrの値に対して徐々に値αに達する。
【0026】
いくつかの実施形態では、z(r)はさらに項zshiftを含み、
【数5】
である。
【0027】
いくつかの実施形態では、サジタル表面プロファイルは、式z(r)によって特定することができ、
【数6】
式中、EDOF特徴サジタルプロファイル項は、多項式を用いて特定される。
【0028】
いくつかの実施形態では、多項式は指数変動を近似する。例えば、多項式は、
【数7】
の形式であってもよい。
【0029】
多項式は24次以上であってもよく、m≧12(すなわち、mが12未満である項は存在しない)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、表面は、前面または後面であり、非増加曲率部分は、外縁および最小レンズ度数の位置が実質的に半径方向に一致するように、外縁に位置する不連続部によって特徴付けられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、表面は、前面または後面であり、非増加曲率部分は、第1の領域の外縁から最小レンズ度数の半径方向位置までの距離が0.4mm未満であるように、半径の関数として滑らかに変化する
【0032】
レンズは単焦点であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、サジタル表面プロファイルはさらに、表面に重ね合わされる回折プロファイルによって画定される。
【0034】
回折プロファイルは、MTFにおける第1のピークおよびMTFにおける第2のピークを有する焦点深度を生成するように構成されてもよく、EDOF特徴は、第1のピークと第2のピークとの間のMTFを増加させ、MTFは、ISO 1モデル眼を使用して特定され、MTFは、レンズを546nmで1.336の屈折率を有する房水に浸漬した際に、直径3mmの瞳孔に対して、546nm光において、網膜における50lp/mmの空間周波数に対して特定される。
【0035】
EDOF特徴は、第1のピークと第2のピークとの間でのみMTFを増加させることができる。いくつかの実施形態では、回折プロファイルは、二焦点回折プロファイルである。いくつかの実施形態では、最大MTF値は0.35以上である。
【0036】
いくつかの実施形態では、MTFの第1のピークおよび第2のピークは、約2.5ジオプタだけ離れており、EDOF特徴は、第1のピークから近視方向に、少なくとも約1.25ジオプタにわたって0.15以上のMTFを維持する、第1のピークと連続する焦点深度を提供する。
【0037】
本発明の別の態様は、焦点深度拡張型を提供する眼内レンズに関し、レンズは、光軸と遠見視力を達成するための基本度数とを有する。レンズは、第1の領域において、光軸から第1の領域の外縁までの半径方向位置が増加する関数として非減少である度数プロファイルによって特徴付けられる光学部を備え、外縁における基本度数を上回るレンズ度数を達成する。外縁から半径方向外側に延在する第2の領域では、度数プロファイルは、外縁から半径方向位置が増加する関数として非増加であり、基本度数未満である最小レンズ度数を達成し、それによって、非増加部分を画定する。次いで、第2の領域は、基本度数を達成するために半径方向位置が増加する関数として非減少である。次いで、基本度数は、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって実質的に維持される。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、光軸から第1の領域の外縁までの半径方向位置が増加する関数として度数が増加している;また、第2の領域は、最小レンズ度数を達成するために外縁から半径方向位置が増加する関数として度数が減少し、その後、基本度数を達成するために半径方向位置の関数として曲率が増加する。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1の領域にわたる度数の増加は、0.5~5.0ジオプタの範囲内である。いくつかの実施形態では、レンズは、1.0~1.5ジオプタの範囲の知覚焦点深度を達成する。
【0040】
レンズは単焦点であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、外縁に度数の段差がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、外縁と最小レンズ度数との間の度数は、滑らかに変化し、外縁と最小レンズ度数との間の度数の減少は、0.4mm未満の半径方向距離にわたって生じる。他の実施形態では、レンズは、前面および後面を備え、度数プロファイルは、前面および後面のうちの少なくとも1つにおける表面曲率の変化によって達成され、前面または後面は、第1の領域の外縁において度数の段差を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、レンズは、前面および後面を備え、度数プロファイルは、前面および後面のうちの少なくとも1つにおける表面曲率の変化によって達成され、前面も後面も、第1の領域の外縁において度数の段差を有さない。
【0044】
いくつかの実施形態では、レンズは、前面および後面を備え、度数プロファイルは、前面および後面のうちの少なくとも1つにおける表面曲率の変化によって達成され、第2の領域の非増加部分は、第1の領域の外縁から最小レンズ度数の半径方向位置までの距離が0.4mm未満であるように滑らかに変化する半径の関数としての度数によって特徴付けられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、レンズは、度数プロファイルを提供するように半径方向に変化する屈折率を有する、屈折率勾配レンズである。
【0046】
いくつかの実施形態では、基本度数は、少なくとも0.3mmの半径方向距離にわたって第2の領域内で実質的に維持される。いくつかの実施形態では、基本度数は、少なくとも0.6mmの半径方向距離にわたって第2の領域内で実質的に維持される。
【0047】
いくつかの実施形態では、レンズは、その上に重ね合わされた回折プロファイルを有する表面をさらに備える。
【0048】
いくつかの実施形態では、回折プロファイルは、MTFにおける第1のピークおよびMTFにおける第2のピークを有する焦点深度を生成するように構成されてもよく、度数プロファイルは、第1のピークと第2のピークとの間のMTFを増加させ、MTFは、ISO 1モデル眼を使用して特定され、MTFは、レンズを546nmで1.336の屈折率を有する房水に浸漬した際に、直径3mmの瞳孔に対して、546nm光において、網膜における50lp/mmの空間周波数に対して特定される。
【0049】
度数プロファイルは、第1のピークと第2のピークとの間でのみMTFを増加させることができる。回折プロファイルは、二焦点回折プロファイルであってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、最大MTF値は0.35以上である。いくつかの実施形態では、MTFにおける第1のピークと第2のピークとは、約2.5ジオプタだけ離れており、度数プロファイルは、第1のピークから近視方向に、少なくとも約1.25ジオプタにわたって0.15以上のMTFを維持する、第1のピークと連続する焦点深度を提供する。
【0051】
本発明のさらに別の態様は、光軸を有し、0.35を超える(例えば、0.35~0.85または0.5~0.85)絶対最大MTF値を有する第1のピークによって特徴付けられるスルーフォーカスMTFを生成するために、光軸から1.4mmの半径方向距離内の屈折特徴を使用して焦点深度拡張型を提供する、眼内レンズを対象とする。レンズは、第1のピークから近視方向に延在する少なくとも約1.25ジオプタの焦点深度を達成するように、0.15を超える(例えば、0.15~0.6)MTF値を維持する、第1のピークと連続する領域を有する。MTFは、ISO 1モデル眼を使用して特定される;MTFは、レンズを546nmで1.336の屈折率を有する房水に浸漬した際に、直径3mmの瞳孔に対して、546nm光において、網膜における50lp/mmの空間周波数に対して特定される。
【0052】
いくつかの実施形態では、レンズは、スルーフォーカスMTFにおいて単一ピークのみを有し、レンズは単焦点である。
【0053】
いくつかの実施形態では、最大スルーフォーカスMTF値は0.5以上である。
【0054】
いくつかの実施形態では、屈折特徴は、光軸から1.2mmの半径方向距離内にある。
【0055】
いくつかの実施形態では、レンズは、半径方向に変化する屈折率を有する、屈折率勾配レンズであり、屈折特徴はGRIN特徴である。
【0056】
レンズは、回折プロファイルが重ね合わされた表面をさらに含み得る。回折プロファイルは、スルーフォーカスMTFにおいて第2のピークを生成するように構成されてもよく、第1のピークと連続する領域は、第1のピークと第2のピークとの間に延在する。いくつかの実施形態では、屈折特徴は、第1のピークと第2のピークとの間でのみMTFを増加させる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「サジタル表面プロファイル」なる用語は、表面上の各位置について、光軸に対して垂直であり、光軸において表面と交差する平面からの距離を用いた、レンズ表面の表面形状の特定を称し、距離は光軸に対して平行に測定される。サジタル表面プロファイルは、一般に、表面SAG、または単にSAGと呼ばれる。レンズが回転対称である場合、光軸からレンズの光学ゾーンのエッジまで延在する単一のサジタル表面プロファイルは、表面の形状を完全に特定するのに十分である。本発明は非回転対称レンズを除外しないが、以下の説明では、特に断らない限り、レンズは回転対称であると仮定する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「基本度数」なる用語は、レンズの公称度数を指し、IOLでは、別段の指定がない限り、遠見視力に対応する度数を意味する。本明細書で使用される場合、「基本度数サジタル表面プロファイル」なる用語は、レンズの対向する表面と組み合わせて基本度数を提供する表面のサジタル表面プロファイルを指す。本明細書で使用される場合、「基本度数サジタル表面プロファイルに対応する曲率」なる用語は、レンズの対向する表面と組み合わせて基本度数を提供する表面形状を指す。当該技術分野で知られているように、単一の度数(基本度数など)を有するレンズを構成するために、レンズの一方または両方の表面は、例えば、球面収差を低減または排除するために、半径方向位置の関数として曲率が変化し得る(すなわち、非球面であり得る)。
【0059】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1A】本発明の態様による焦点深度拡張型(EDOF)眼内レンズ(IOL)の一例の概略平面図
図1B】線1B-1Bに沿った図1AのEDOF IOLの概略断面側面図
図2A】本発明の態様によるEDOFレンズの表面のサジタル表面プロファイルの一例
図2B図2Aに示されるレンズのEDOFレンズの表面のEDOF特徴のサジタル表面プロファイル(すなわち、従来の円錐項によって特定される表面の態様は省略される)
図3図2Aに示されるレンズ表面を含む20ジオプタレンズの度数プロファイルのグラフ図
図4図3を参照して説明した20ジオプタレンズのスルーフォーカスMTFのグラフ図
図5】本発明の態様によるEDOFレンズの表面のサジタル表面プロファイルの第2の例
図6A】EDOF特徴が図2Bに示される表面のEDOF特徴の多項式近似を使用して特定される、EDOFレンズの表面のEDOF特徴のサジタル表面プロファイル(すなわち、円錐項は省略される)
図6B図6Aに示されるEDOF特徴の多項式定義を使用する表面を含む20ジオプタレンズのスルーフォーカスMTFのグラフ図
図7】本発明の態様による屈折-回折EDOFレンズの表面のサジタル表面プロファイルの一例を示す図
図8図7に示される表面を有する20ジオプタレンズのスルーフォーカスMTFのグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の態様を、以下の具体的な実施例を参照してさらに説明する。これらの実施例は、例示として与えられ、特許請求される発明を任意の特定の実施例に限定することを意味しないことが理解される。
【0062】
図1Aおよび図1Bは、それぞれ、本発明の態様による、遠見視力および焦点深度拡張型を達成するための基本度数を有するEDOF眼内レンズ100の一例の概略平面図および断面側面図である。以下に示すように、IOL100は、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向周辺内に位置する焦点深度拡張型(EDOF)を生成する特徴を有する。
【0063】
IOL100は、光軸OAを有する光学部110と、いずれも光学ゾーンOZ上に延在する前面112および後面114とを備える。IOL100等のIOLは、典型的には、眼内に光学部を位置付けるための2つ以上のハプティック(図示せず)を有するが、いくつかの実施形態では、単一のハプティックが存在してもよい。典型的には、レンズ100は回転対称であるが、いくつかの実施形態は回転非対称(例えば、トーリック)であってもよい。
【0064】
図2Aは、本発明の態様によるEDOFレンズ100(図1に示す)の表面114のサジタル表面プロファイルの例である。図示の実施形態では、後面114は、光軸AOから第1の領域Rの外縁OEまでの半径方向位置が増加する関数として曲率が増加する第1の領域Rを有するEDOF特徴によって部分的に画定されるサジタル表面プロファイル200を有する。第1の領域内の曲率は、半径方向位置が外縁OEに向かって増加するにつれて、基本度数サジタル表面プロファイルに対応する曲率より大きくなる(すなわち、レンズは、第1の領域の少なくとも一部において基本度数よりも大きい度数を達成する)。図示した実施形態では、第1の領域は、単調に増加する曲率を有するが、第1の領域は、均一な曲率の1つまたは複数の領域を有してもよく、そうでなければ増加してもよい;すなわち、第1の領域は、非減少曲率を有してもよい。以下に説明されるように、サジタル表面プロファイルはさらに、従来の円錐項および/または回折素子によって画定されてもよい。
【0065】
後面114のサジタル表面プロファイルは、外縁OEから半径方向外側に延在する第2の領域Rを有し、第2の領域内のサジタル表面プロファイルは、外縁OEから曲率が(半径方向位置の関数として)減少している。曲率は、基本度数プロファイルに対応する曲率よりも小さくなる(すなわち、レンズは、第2の領域の一部において基本度数よりも小さい屈折力を達成する)。次いで、第2の領域内の曲率は、基本度数プロファイルに対応する曲率まで(半径方向位置の関数として)非減少である。図示した実施形態では、第2の領域は曲率が減少し、次いで曲率が増加するが、第2の領域は、均一な曲率の1つまたは複数の領域を有することができる;すなわち、第2の領域は、基本度数を達成するために、非増加曲率、次いで非減少曲率を有してもよい。
【0066】
外縁OEにわたる曲率(すなわち、第1の領域内の位置から第2の領域内の位置まで延在する)は、連続的に変化してもよく、まず第1の領域Rにおいて増加し、次いで第2の領域Rにおいて減少する;あるいは、外縁OEにおいて曲率の不連続が存在してもよい。さらに、サジタル表面プロファイルは、外縁OEにわたって連続的であってもよく、または高さに段差を有してもよい。
【0067】
基本度数が達成される半径方向外側位置(すなわち、図3に示す位置BP)に対して、第2の領域Rは、明所視条件に対してユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって存在する基本度数プロファイルを実質的に維持するように、サジタル表面プロファイルを有する。明所視瞳孔の外側部分にわたって基本度数を提供する(すなわち、EDOF特徴を明所視瞳孔の内側部分に限定する)ことにより、EDOF IOL性能の個人間のばらつきが減少し、所与の着用者集団に対する着用者の満足度が改善されることが理解されるであろう。例えば、選択された照明条件に対して、ユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向周辺内に焦点深度拡張型を生成するレンズの特徴を配置することによって、対象集団内の人が視力障害(例えば、ハローまたはゴースト)を経験する可能性も減少される。光学ゾーンは、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する距離よりも光軸から遠くに延在し、明所視条件よりも低い照明条件中の視力に適応することが理解されるであろう。例えば、光学ゾーンは、光軸から約2.0mm~2.5mmまたは約3.0mmの半径方向距離まで延在し得る。上述のように、本発明の態様によれば、EDOF特徴は、低照明条件に使用されるレンズの部分(すなわち、明所視に使用される部分を越える)内に延在しないことが望ましい。
【0068】
所与の集団について、明所視条件下での人の眼の瞳孔は、典型的には、半径1.0~2.0mmの範囲である。上述のように、基本度数プロファイルが、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%(例えば、0.3~0.6mm)にわたって存在する場合、EDOF特徴は、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の70%以下に制限されることが理解されるであろう。
【0069】
レンズは基本度数を達成するが、例えば、ユーザの眼の球面収差の補償がレンズ処方において提供される場合、度数は、基本度数または実質的に基本度数(すなわち、基本度数の約+/-10%以内)に維持されることを理解されたい。
【0070】
上述のような表面を有するレンズはまた、対向する表面(すなわち、図1Bに示すような表面)を含む。対向面は凸面であっても凹面であってもよい。対向面の曲率は、半径方向位置の関数として一定であってもよい。あるいは、曲率は、光軸からレンズのエッジまで、半径方向位置の関数として単調に増加または減少してもよい。例えば、対向面によって引き起こされる球面収差を排除または低減するため、または当該技術分野で知られているように、ユーザの眼の球面収差を補償するために、例えば、凸面は、半径方向位置の関数として単調に減少する曲率を有してもよい。
【0071】
本実施例および本明細書における全ての実施例について、レンズ材料は、546nmで1.5332の屈折率を有する疎水性アクリルである。疎水性アクリルレンズが実施例で使用されるが、親水性アクリル、ポリメチル-メタクリレート(PMMA)、またはシリコーン等の他の材料が、本発明の態様による設計を達成するために使用されてもよい。本明細書で説明されるようなEDOF特徴を有するレンズは、成形または機械加工等の任意の好適な技法を使用して製造することができる。
【0072】
図2Bは、ベースレンズのサジタル表面プロファイル寄与を差し引いた、図2Aに示されるEDOFレンズの表面のEDOF特徴のサジタル表面プロファイルのグラフ図である。特に、表面の従来の成分(すなわち、以下の式1(a)の円錐項によって決定されるもの)は省略される;また、4次項α(r)rによって決定される表面の態様が図示される。
【0073】
図3は、図2Aに示すレンズ表面112(図1Aに示す)を含む20ジオプタレンズの度数プロファイル300のグラフ図であり、対向面は、均一な度数または実質的に均一な度数(すなわち、約+/-10%以内)を有する。図示される例示的な度数プロファイルでは、第1の領域Rは、図2における第1の領域Rに対応する(すなわち、レンズの曲率が増加している)。第1の領域Rでは、度数プロファイルは、第1の領域全体にわたって増加する半径方向距離の関数として増加し、基本度数Фbaseよりも大きいレンズ度数が達成される。第1領域Rは、光軸OAから第1領域の外縁OEまで配置されている。表面100は、第1の領域Rの全体にわたって増加する度数を有するものとして図示されているが、第1の領域は、度数が半径方向距離の関数として均一である、1つまたは複数の領域を有してもよい。したがって、第1の領域Rは、半径方向距離の関数として非減少である度数プロファイルを有し得る。
【0074】
図示の実施形態では、レンズは光軸において基本度数Фbaseに対応する度数を有するが、このような構成は必須ではない。第1の領域Rの目的は、光軸に沿って光を広げることであり、レンズの残りの部分からの光と組み合わされると、遠見視力から中間視に向かって延びる焦点深度に沿った焦点の広がりが提供される。光軸から外縁OEまでの度数の増加ΔDは、典型的には、0.5ジオプタ~5ジオプタの範囲であり、0.5ジオプタは、比較的小さい焦点深度を提供し、5ジオプタは、比較的大きい焦点深度を提供する。
【0075】
第1の領域内で生じる度数の増加は、光軸に沿った光の十分な広がりをもたらす(すなわち、少なくとも約1ジオプタ~約1.5ジオプタのDOFを達成する)のに十分大きいが、視力障害の可能性を不当に増加させるほど大きくはないように選択される。本発明のいくつかの態様によるレンズの性能目標は、知覚される解像度における単一ピークであり(すなわち、レンズは単焦点である)、近視方向に向かってピークの周りに焦点深度を有する。
【0076】
第1の領域Rにおける度数の変動ΔDは、レンズの加入度数と等価ではないことを理解されたい。各度数(ピーク度数を含む)は、半径方向に限りなく小さい範囲にわたってのみ生じ得るため、着用者によって知覚される加入度数は、度数の変動ΔD1よりも小さい。
【0077】
図3に示すように、度数プロファイルは、外縁OEから半径方向外側に延びる第2の領域R図1の第2の領域Rに対応する)を有する。第2の領域Rでは、度数プロファイルは、外縁OEから、基本度数Фbaseを下回る最小レンズ度数MPまで減少し、次いで、位置BPにおいて基本度数Фbaseを達成するように増加する。上述のように、第2の領域Rは、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって存在する基本度数を実質的に有する。
【0078】
基本度数Фbase未満の度数への(第2の領域における)度数の減少は、外縁OEにおける度数の段差(すなわち、曲率の急激な変化)として生じ得る。度数の段差は、外縁の位置と最小レンズ度数の位置とが半径方向に一致するかまたは実質的に半径方向に一致する(すなわち、製造公差および測定公差によって決定される)という結果をもたらすことを理解されたい。あるいは、度数の減少は、滑らかに変化する関数を使用して達成されてもよい。典型的には、外縁と最小レンズ度数MPとの間の度数の減少は、半径方向位置の関数として(例えば、0.4mm未満または0.3mm未満の距離にわたって)比較的急速に起こる;例えば、減少が度数の段差として起こらない場合、半径方向位置の関数として急速に(かつ連続的に)変化する曲率を有する連続関数が使用され得る。例えば、高次多項式(例えば、24次以上)または以下で説明されるような別の連続関数が使用されてもよい。
【0079】
図示した実施形態では、度数プロファイルは、EDOF特徴(上述のような)を有する後面、および、表面全体にわたって実質的に均一な度数プロファイルを有する前面によって達成される;しかしながら、前面または後面のいずれかは、EDOF特徴を有することができる。いくつかの実施形態では、前面および後面のうちの少なくとも1つの曲率は、前述のような度数プロファイルを達成するように変動する;しかしながら、いくつかの実施形態では、IOL 100の屈折率は、度数プロファイルを達成するように変動する(すなわち、レンズはGRINレンズである)。屈折率の変化は、レンズの度数全体を提供し得る(すなわち、レンズの表面は平面である);あるいは、レンズの表面の一方または両方は、いくらかの度数を提供するように湾曲していてもよい。
【0080】
図2Aを参照して上述したような焦点深度拡張型を提供することが可能なレンズのサジタル表面プロファイルを生成するのに適し、上述したような明所視瞳孔の内側部分に限定されたEDOF特徴を提供するのに適した、式のセットの一例が、式1(a)および1(b)によって与えられる。これらの式はまた、明所視条件に対して、ユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって実質的に基本度数を提供するために好適である。
【数8】
式中、rはレンズ光軸からの半径方向距離であり、
Rは表面曲率半径であり、
cは表面円錐定数であり、
α、αおよびAは、rの関数としての4次係数の変動を定義する定数であり、
limは、第1の領域の外縁の位置であり、4次係数(α(r))の半径方向遷移位置を定義する。
【0081】
式1(a)および式1(b)によれば、表面は、光軸における値α(典型的には基本度数に対応する)から第1のゾーンの外縁における値αまで増加する4次SAG項を使用して、光軸OAから第1のゾーンの外縁(rlim)まで増加する曲率を定義するSAGによって特徴付けられる。rlimより大きいrの値について、4次係数項は固定値αに等しく、したがって、レンズ上の外側半径方向位置に対して(すなわち、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって)基本度数を達成する。単一項α(r)*rのみが示されているが、追加の高次項(例えば、α(r)*rおよび/またはα(r)*rなど)も含まれ得る。
【0082】
以下は、上記で説明されるような焦点深度拡張型と、明所視瞳孔の内側部分に限定されたEDOF特徴とを提供することができる、式1(c)-1(d)の別のセットである。
【数9】
式中、Bは、適切な平滑化のために選択された定数である。
【0083】
式1(c)および式1(d)によれば、表面は、光軸における値α(基本度数に対応する)から第1のゾーンの外縁における値αまで増加する係数を有する4次SAG項を使用して、光軸OAから第1のゾーンの外縁(rlim)まで増加する曲率を定義するSAGによって特徴付けられる。rlimより大きいrの値について、4次SAG項の係数は、値αで始まり、値αに戻り、したがって、レンズ上の外側半径方向位置に対して(すなわち、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって)実質的に基本度数を達成する。
【0084】
式1(c)~式1(d)によれば、表面は、光軸OAから第1のゾーンのエッジrlimまで増加する曲率半径を有し、基本度数よりも大きい度数に対応する曲率を達成する。rlimより大きいrの値に対して、表面の曲率半径は、基本度数値より大きい度数に対応する曲率で始まり、次いで、曲率は、基本度数未満に対応する曲率まで減少し、その後、レンズ上の外側半径方向位置に対して実質的に基本度数に対応する曲率に戻る。上記の式1(a)で説明したように、式1(c)は単一項α(r)*rのみを有するように示されているが、追加の高次項(例えば、α(r)*rおよび/またはα(r)*r)も含まれ得る。
【0085】
いくつかの事例では、表面z(r)は、半径方向位置rlimにおいてさらに平滑化され、式1(c)-1(d)によって定義される表面についてrlimにおいて生じ得るSAGプロファイルの段差を排除する。式1(e)~1(g)は、図2Aを参照して上述したような特性を有するサジタル表面プロファイルを生成することができる。
【数10】
【0086】
上記の式1(a)で説明したように、式1(c)および1(e)は、単一項α(r)*rのみを有するように示されているが、追加の高次項(例えば、α(r)*rおよび/またはα(r)*rなど)も含まれ得る。
【0087】
式1(c)および式1(d)と同様に、式1(e)~式1(f)は、光軸における値α(基本度数に対応する)から第1のゾーンの外縁における値αまで増加する4次SAG係数項を使用して、光軸OAから第1のゾーンの外縁(rlim)まで増加する曲率を定義するSAGによって特徴付けられる表面を画定する。rlimより大きいrの値に対して、4次SAG係数項は、値αで開始し、値αに戻り、したがって、レンズ上の外側半径方向位置(すなわち、明所視条件に対するユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって)に対する基本度数に実質的に対応する曲率を提供する。さらに、式1(g)は、rlimにおける任意の段差を排除するために、サグにおけるオフセット(zshift)を提供する。
【0088】
上記の曲率の不連続な変化およびサジタル表面高さの段差は、焦点深度拡張型を提供するレンズの能力に影響を及ぼさないことを理解されたい;しかしながら、外科的移植の前または後にレンズを検査する間、光源で照らすと段差が容易に明らかになることがある。したがって、いくつかの実施形態では、式1(c)~1(d)または式1(e)~1(g)を使用して表面を平滑化することが有利である。
【0089】
図2Aに示されるレンズ100のサジタル表面プロファイルは、以下の値を使用して式1(e)~1(g)から生成された:
R=21.722mm
c=-1.2257
α=-1.0x10-4
α=24.0x10-4、および
lim=0.75mm
A=-9.0
B=-9.0。
【0090】
上記の式Z(r)では、単一項α(r)*rのみが示されているが、追加の高次項(例えば、α(r)*rおよび/またはα(r)*r)も含まれ得る。
【0091】
図3は度数プロファイルであり、図4はスルーフォーカスMTFのグラフ図であり、いずれも、上記の値を使用して計算され、後面を生成し、球面であり21.722mmの曲率半径を有する前面を有し、20ジオプタレンズを形成する。特に、本実施例について、および本明細書で特定される全てのMTFについて、MTFは、ISO 1モデル眼を使用して計算され、MTFは、網膜における50lp/mm像、546nm光、および3mm瞳孔について計算される。本明細書で行われる全ての計算について、レンズは、房水(546nmで1.336の屈折率)に浸されていると仮定される。
【0092】
当該技術分野で理解されるように、度数プロファイルは、例えば、表面曲率を使用して計算することができ、または波面測定システム等の好適な計測器具を使用して測定することができる。
【0093】
EDOF特徴は、点BP(すなわち、最小度数MPの後に基本度数が達成される位置)の半径方向内側の位置に存在する。例えば、EDOF特徴は、光軸を中心として1.4mmまたは1.2mmまたは0.7mmの半径内に位置してもよい。EDOF特徴の半径方向の広がりは、上記の式における定数α、α、Aおよびrlimによって決定されることが理解されるであろう。
【0094】
図4において、横軸上の0ジオプタ(D)位置は遠見視力に対応し、正のジオプタ値は近視デフォーカス量に対応する。いくつかの実施形態では、EDOF IOLは、遠見視力において最良焦点(すなわち、絶対MTF最大)を有し、近見視力に向かって延在する焦点深度を有するように設計される。遠見視力における視力は比較的高いMTF(0.5以上)であり、約1.25ジオプタの焦点深度(すなわち、0ジオプタ位置と連続し、0.15以上のMTFを有する位置)が達成されることが明らかである。レンズは、MTFプロットにおいて単一のピークのみを有し、したがって、単焦点である。
【0095】
当該技術分野で理解されるように、MTFは、ニューヨーク州ピッツフォードのSinclair OpticsからのOslo(登録商標)またはワシントン州カークランドのZemax、LLCからのZemaxなどのレイトレーシングプログラムを使用して、または別の既存のシミュレーションツールによって、または自己書き込みコードによって、簡単な数値的手法で計算することができ、これらはすべて同等の結果を提供する。
【0096】
図5は、本発明の態様によるEDOFレンズの表面のサジタル表面プロファイルの第2の例の一部を示す。サジタル表面プロファイルの図示された部分は、rlimに近接するプロファイルの部分を示す。表面は、比較的低出力のレンズ(例えば、6ジオプタ)に対応する。表面は、式1(a)-1(b)を使用して生成された。図示された部分は、曲率の不連続な変化を含み、rlim(光軸から約1.0mm)におけるサジタル表面プロファイルにおける段差を含む。式1(a)および1(b)によって特定される曲率の変化によって引き起こされるrlim近傍のサジタル高の変化が最も明白であるため、比較的低倍率のレンズの表面を選択した。曲率の変化の効果は、図5では容易に見ることができるが、段差は、図示された部分にわたるz(r)の全体の高さ変化と比較して比較的小さく、したがって、図5では容易に見ることができない。
【0097】
図5の表面の表面サジタルプロファイルは、以下の値を使用して生成された:
R=45mm
C=-1.2257
α=-1.0×10-4
α=7.0×10-4
A=-4、および
B=-20。
【0098】
上記のサグ式(1(a)-1(b)、1(c)-1(d)および1(e)-1(g))は、円錐項および指数係数を伴う4次項を有する(すなわち、SAGが指数関数的に変化する)非球面SAGプロファイルが、度数プロファイルの比較的急速な増加を達成し、EDOF特徴が上記で説明されるようにレンズの半径の内側部分に維持されることを可能にするための1つの技法であることを示すが、他の数式を使用して、度数プロファイルの所望の急速な増加(および場合によっては度数プロファイルの急速な減少)を達成することができる。例えば、表面は、スプライン、ベジェ曲線、または、6次以上の非球面項が含まれる(4次項に加えて、または4次項なしでよい;また、4次より低い項は存在しない)式1(a)に示されるようなSAGプロファイル、高次多項式(例えば、24次以上)、またはrの関数として表面曲率の変動を提供する経験的に導出されたSAG関数によって説明することができる。
【0099】
EDOF特徴を明所視瞳孔の内側部分に限定し、明所視視覚条件についてユーザの眼の瞳孔に対応する半径方向距離の少なくとも30%にわたって実質的に基本度数プロファイルを提供することができるレンズのSAGプロファイルを生成するのに適した別のタイプの式の一例は、式2によって与えられる。式2は、高次多項式(例えば、24次以上(m>12))を用いてSAGを特定するのに適した式の一例である。
【数11】
【0100】
図6Aは、EDOFレンズの表面のEDOF特徴の一例のサジタル表面プロファイルであり(すなわち、円錐項は省略される)、EDOF特徴は、式2に示されるような多項式を使用して特定される。特に、図6は、EDOF特徴のSAGを示し、
=2.2312345x10-04
=-8.6023283x10-04
=-1.9063097x10-02
=5.1027672x10-02
10=-5.8342430x10-02
12=3.8059413x10-02
14=-1.5613206x10-02
16=4.1760810x10-03
18=-7.2856545x10-04
20=8.0014765x10-05
22=-5.0251952x10-06
24=1.3766880x10-07
である。
【0101】
図6Aはまた、比較のために図2Aのサジタル表面プロファイルを示す。24次多項式の係数は、例えば、光軸からレンズのエッジまで式1(e)~1(g)を使用して生成されるSAGを密接に近似するSAGを提供するために選択され得ることが理解されるであろう。式1(e)~1(g)を使用して生成された表面は、説明のために近似されたが、式1(a)~1(b)または1(c)~1(d)を使用して生成された表面は、高次多項式を使用して同様に近似することができる。
【0102】
例えば、EDOF特徴を使用して表面を形成することができ、式2の円錐項においてR=21.722mmおよびc=-1.2257を使用して後面を形成する。そのような後面は、21.722mmの曲率半径を有する球状前面と組み合わせて使用され、20ジオプタレンズを形成し得る。
【0103】
図6Bは、図6Aを参照して説明される24次多項式によって定義されるEDOF特徴を使用する20ジオプタレンズのスルーフォーカスMTFが、式1(e)-1(g)を使用して生成される表面のスルーフォーカスMTFに非常に類似することを示すグラフ図である。したがって、多項式を使用して特定されるSAGを有するレンズと式1(e)~1(g)を使用して特定されるレンズとのSAGおよびMTFの類似性を考慮すると、多項式を使用して特定されるレンズの度数プロファイルは、図2Bに示されるものと同様の度数プロファイルを提供することが予想され得る。
【0104】
例えば、第1のゾーンの外縁から外側に延在する度数の基本度数未満の値への減少は、半径方向位置関数として(例えば、0.4mm未満または0.3mm未満の距離にわたって)比較的急速に起こる。
【0105】
いくつかの実施形態では、上記で説明されるようなEDOF機能を提供するように構成されるレンズ表面に、回折プロファイルを追加し、屈折-回折レンズを形成する。例えば、回折プロファイルは、上記で説明されるような屈折EDOF設計を含む表面上に重ね合わせられてもよい(例えば、回折プロファイルは、式1(a)~1(b)または式1(c)~1(d)または式1(e)~1(g)を使用して特定される表面に加入度数を提供する)。図7は、本発明の態様による屈折-回折EDOFレンズの表面800のサジタル表面プロファイルの一例を示す。図示される実施形態では、回折プロファイルは、ゾーンエッジ810a、810b、810c、および810Dによって画定される4つのゾーンを備える。回折プロファイルの図示された実施形態は、二焦点構成(レンズの基本度数に対応するゼロ次ピークと、回折プロファイルによって提供される加入度数に対応する第2のピークとを有する)であるが、回折プロファイルは、多焦点構成(対応する加入度数を有する1つまたは複数の追加のピークを有する)であってもよい。回折プロファイルは、多焦点設計であり得るが、屈折EDOF特徴によって提供される焦点深度拡張型は、典型的には、回折プロファイルによって生成される第1のピーク(すなわち、遠方焦点に対応する)と回折プロファイルによって生成される第2のピーク(すなわち、隣接するピーク(近視方向の第1のピーク))との間の焦点深度の領域においてMTF値を増加させる。いくつかの実施形態では、MTFの増加は、第1のピークと第2のピークとの間でのみ起こる;しかしながら、いくつかの実施形態では、MTFの増加は、主に、第1のピークと第2のピークとの間の領域内で生じるが、この領域を越えて延在する。典型的には、MTFの増加全体は、遠視方向ではなく、第1のピークから近視方向に生じることが望ましい。
【0106】
図7に示される例示的な屈折-回折サジタル表面プロファイルは、式1(e)~1(g)によって特定され、以下の値:
R=21.722mm
c=-1.2257
α=-0.000197
α=0.0005
A=-9
B=-9
が使用され、回折プロファイルは以下のように特定される:2.2Dの回折加入度数、546nmの設計波長、1.218μmの回折段階高さ、および半径0.4mmの中心屈折ゾーン。回折プロファイル自体は、IOLで使用するための従来の設計である。
【0107】
図8は、図7に示す例示的な表面を含むレンズのスルーフォーカスMTFのグラフ図である。MTFを生成するために使用されるレンズは、面対向面800が18mmの曲率半径を有する球面である20ジオプタレンズである。二焦点回折プロファイルは、光をピーク820および830に導き、屈折EDOF特徴は、光を領域850に導く。
【0108】
遠見視力(0ジオプタ)における視力は比較的高く(すなわち、MTFは0.35を超える)、約1.3ジオプタの焦点深度(すなわち、0ジオプタ位置と連続し、0.1より大きいMTFを有する位置)が達成されることが明らかである。レンズは、MTFプロットにおいて2つのピークを有し(0.1より大きい値を使用する)、したがって、二焦点である。焦点深度は、ピーク820と830との間の全距離には及ばないが、選択された着用者の眼の収差により、ピークからピーク間の焦点深度の部分まで光エネルギーが拡散されることが予想され、したがって、約3ジオプタの焦点深度にわたって、着用者が連続的な視覚を得ることができることを理解されたい。所望の知覚焦点深度を達成するために、いくつかの実施形態では、MTFの第1のピーク(遠見視に対応する)およびMTFの隣接ピーク(近視方向)は、約2.5ジオプタだけ離れており、第1のピークと連続する焦点深度は、少なくとも約1.25ジオプタである。
【0109】
本明細書において様々な実施形態が詳細に示され説明されてきたが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内にあると考えられることは、当業者には明らかであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】