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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電気モータ回転子及び電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2791 20220101AFI20240222BHJP
【FI】
H02K1/2791
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553440
(86)(22)【出願日】2021-09-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2021119322
(87)【国際公開番号】W WO2022193592
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202110278645.1
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517032680
【氏名又は名称】美的威霊電機技術(上海)有限公司
【住所又は居所原語表記】Building 42,1387 Zhangdong Road,Pudong New District,Shanghai 201203 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】葛梦
(72)【発明者】
【氏名】李文瑞
(72)【発明者】
【氏名】蘭海
(72)【発明者】
【氏名】武谷雨
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼黎明
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622QB02
(57)【要約】
本願は電気モータ回転子及び電気モータを提供し、前記電気モータ回転子は、回転子鉄心と、前記回転子鉄心の周方向に沿って設置され、前記回転子鉄心の周方向に複数の磁極を形成する複数の永久磁石であって、隣接する2つの磁極の磁化方向が逆であり、各前記磁極内の永久磁石の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角をαとしたとき、前記αが0度以上且つ40度以下であり、前記磁極の中央で磁束密度が高く、円周方向の両端に向かうにつれて磁束密度が徐々に低下する磁気特性が形成される、複数の永久磁石と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の周方向に沿って設置され、前記回転子鉄心の周方向に複数の磁極を形成する複数の永久磁石であって、隣接する2つの磁極の磁化方向が逆であり、形成された各前記磁極の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角をαとしたとき、前記αが0度以上且つ40度以下であり、前記磁極の中央で磁束密度が高く、円周方向の両端に向かうにつれて磁束密度が徐々に低下する磁気特性が形成される、複数の永久磁石と、
を備える電気モータ回転子。
【請求項2】
各前記磁極内の磁区配向は複数あり、各前記磁極内の複数の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角は、前記磁極中心線に近い位置から前記磁極中心線から離れた位置に向かって徐々に大きくなる
請求項1に記載の電気モータ回転子。
【請求項3】
前記磁極の数が8以上且つ20以下である場合、前記αの最大値は18度以上且つ40度以下である
請求項1又は請求項2に記載の電気モータ回転子。
【請求項4】
前記磁極の数が20以上である場合、前記αの最大値は15度以上且つ35度以下である
請求項1又は請求項2に記載の電気モータ回転子。
【請求項5】
各前記永久磁石の内面及び外面は何れも弧状である
請求項1に記載の電気モータ回転子。
【請求項6】
各前記永久磁石の外面の円弧の直径は90mm~320mmの間であり、各前記永久磁石の前記回転子鉄心の軸方向に沿った高さは50mm以下であり、各前記永久磁石の前記回転子鉄心の径方向に沿った厚さは10mm以下である
請求項5に記載の電気モータ回転子。
【請求項7】
複数の前記永久磁石が前記回転子鉄心の内面に貼り付けられて固定されている
請求項6に記載の電気モータ回転子。
【請求項8】
各前記永久磁石には、1つの前記磁極又は偶数個の前記磁極が形成されている
請求項1に記載の電気モータ回転子。
【請求項9】
偶数個の前記磁極は2個または4個である
請求項7に記載の電気モータ回転子。
【請求項10】
電気モータであって、
固定子と、回転軸と、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の電気モータ回転子とを備え、前記回転軸は、前記電気モータの回転する回転子鉄心に固定され、前記固定子は、前記電気モータ回転子と同心であり、前記電気モータ回転子の内側に嵌設されている
電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2021年3月15日に出願された、出願番号が202110278645.1である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容を引用により本願に組み入れる。
【0002】
本願は電気モータの技術分野に関するものであり、特に、電気モータ回転子及び電気モータに関するものである。
【背景技術】
【0003】
工業生産や家庭用電気機器に広く使われる永久磁石電気モータは、回転子及び固定子を含む。電気モータの回転子に複数の固定子鉄心が設けられ、固定子鉄心に巻線が巻かれて三相巻線となる。従来の技術では、電気モータのうちの回転子電気モータの多くは表面磁石型の永久磁石電気モータ構造となっている。この構造では、永久磁石は通常、ラジアル着磁又はパラレル着磁が利用され、形成された永久磁石による回転子側及び固定子側の磁界が均一に分布し、電気モータのパワー密度は高くなく、電気モータの出力能力が限られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、従来技術における電気モータのパワー密度の向上が困難であるという問題点を解決するための電気モータ回転子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本願は電気モータ回転子を提案し、前記電気モータ回転子は、
回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の周方向に沿って設置され、前記回転子鉄心の周方向に複数の磁極を形成する複数の永久磁石であって、隣接する2つの磁極の磁化方向が逆であり、各前記磁極内の永久磁石の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角をαとしたとき、前記αが0度以上且つ40度以下であり、磁極の中央で磁束密度が高く、円周方向の両端に向かうにつれて磁束密度が徐々に低下する磁気特性が形成される、複数の永久磁石と、を備える。
【0006】
一実施例において、各前記磁極内の永久磁石の磁区配向は複数あり、各前記磁極内の永久磁石の複数の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角は、前記磁極中心線に近い位置から前記磁極中心線から離れた位置に向かって徐々に大きくなる。
【0007】
一実施例において、前記磁極の数が8以上且つ20以下である場合、前記αの最大値は18度以上且つ40度以下である。
【0008】
一実施例において、前記磁極の数が20以上である場合、前記αの最大値は15度以上且つ35度以下である。
【0009】
一実施例において、各前記永久磁石の内面及び外面は何れも弧状である。
【0010】
一実施例において、各前記永久磁石の外面の円弧の直径は90mm~320mmの間であり、各前記永久磁石の前記回転子鉄心の軸方向に沿った高さは50mm以下であり、各前記永久磁石の前記回転子鉄心の径方向に沿った厚さは10mm以下である。
【0011】
一実施例において、複数の前記永久磁石が前記回転子鉄心の内面に貼り付けられて固定されている。
【0012】
一実施例において、各前記永久磁石には、1つの前記磁極又は偶数個の前記磁極が形成されている。
【0013】
一実施例において、偶数個の前記磁極は2個又は4個である。
【0014】
本願はさらに、固定子と、回転軸と、上記の何れか一項に記載の電気モータ回転子とを備える電気モータを提案し、前記回転軸は、前記電気モータの回転する回転子鉄心に固定され、前記固定子は、前記回転子と同心であり、前記回転子の内側に嵌設されている。
有益な効果
【0015】
本願の技術案によれば、複数の永久磁石を前記回転子鉄心の周方向に沿って設置することで、前記回転子鉄心の周方向に複数の磁極を形成し、隣接する2つの磁極の磁化方向が逆であり、各磁極内の永久磁石の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角をαとしたとき、αが0度以上且つ40度以下であり、磁極の中央で磁束密度が高く、円周方向の両端に向かうにつれて磁束密度が徐々に低下する磁気特性が形成される。この磁区方向の配置により、該電気モータ回転子を電気モータに適用すると、固定子と鎖交する磁束が増加し、(磁力線から分かるように)磁力線が磁極中心線へ向かって収束するため、磁極中心線付近では磁束密度が高く、周方向両端部では磁束密度が低いため、回転子内側近傍では磁界が強くなり、回転子外側では磁界が弱くなり、固定子と回転子との間の空隙磁界強度が増大し、回転子鉄心の飽和度が低下し、電気モータの出力トルクが増大し、電気モータのパワー密度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の実施例及び従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下では、実施例或いは従来技術の説明に必要とされる添付図面を簡単に紹介する。下記説明における添付図面は本願の一部の実施例に過ぎないことは明らかであって、当業者にとって、創造的な労働を行うことなく、これらの添付図面が示す構造により他の添付図面を得ることができる。
【0017】
図1】本願の電気モータの固定子と回転子との組立構造の模式図である。
図2】本願の電気モータの回転子と連結ブラケットとの組立構造の模式図である。
図3】本願の電気モータの回転子における一対の磁極の磁化方向の配置模式図である。
図4】本願の電気モータの回転子の各永久磁石に1つの磁極が設けられている模式図である。
図5】本願の電気モータの回転子の各永久磁石に2つの磁極が設けられている模式図である。
図6】本願の電気モータの回転子の各永久磁石に4つの磁極が設けられている模式図である。
図7】本願の電気モータ回転子の永久磁石と従来の永久磁石とにより形成される電気モータの逆起電力FFTの比較模式図である。
図8】本願の電気モータ回転子の永久磁石と従来の永久磁石とで形成される電気モータの逆電位の各次の高調波の割合の比較模式図である。
図9】本願に係る電気モータの固定子板の一実施例の模式図である。
図10】本願に係る電気モータの固定子板の別の実施例の模式図である。
図11】本願に係る電気モータの固定子板のさらに別の実施例の模式図である。
図12】本願に係る電気モータの固定子板のさらに別の一実施例の模式図である。
図13】本願の電気モータの固定子の構造模式図である。
図14】本願の電気モータ回転子のコイルの固定子ティース上での配置接続模式図である。
【符号の説明】
【0018】
1 電気モータ回転子
11 永久磁石
12 回転子鉄心
2 固定子
21 固定子ティース
22 固定子ヨーク
221 外側固定子ヨーク
222 内側固定子ヨーク
25 固定子スロット
26 凸起
27 凹溝
3 コイル
4 連結ブラケット
【0019】
添付図面を参照して、実施例と組み合わせて本願目的の実現、機能特徴及び長所をさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本願実施例における図面と組み合わせ、本願実施例における技術案を明確且つ完全に説明する。説明される実施例は本願の全ての実施例ではなく、本願の一部の実施例に過ぎないことは明らかである。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得られる全ての他の実施例は、本願の保護する範囲に属す。
【0021】
本願実施例での全ての方向性指示(例えば上、下、左、右、前、後...)は、当該方向性指示はある特定の姿勢(添付図面に示す)における各部品間の相対的位置関係、移動状況等を説明するためだけに用いられるのであって、もし当該特定の姿勢が変わる場合、当該方向性指示もそれに応じて変わることは、説明しておく必要がある。
【0022】
また、本願実施例において「第一」、「第二」等に係る説明は説明のために利用されるだけであって、その相対的重要性を提示又は暗示する、或いは提示される技術的特徴の数を暗示的に指定するように理解すべきではない。これにより、「第一」、「第二」に限定された特徴は明示的或いは暗示的に少なくとも一つの当該特徴を含んでもよい。また、各実施例の技術案は互いに組み合わせることができる。ただし、当業者が実現できることはその前提である。技術案の組み合わせに矛盾が生じるか、実現できない場合には、このような技術案の組み合わせが存在せず、且つ本願が請求する保護範囲にないと理解すべきである。
【0023】
上記の目的を達成するために、本願は、電気モータ回転子を提案し、図1に示すように、前記電気モータ回転子は固定子2の外側に嵌設され、固定子2と同心になって、固定子2と協働して電気モータを形成する。図2に示すように、前記電気モータ回転子1は、環状構造である回転子鉄心12と、前記回転子鉄心12の周方向に沿って設置され、前記回転子鉄心12の周方向に複数の磁極(図3に一対の磁極における磁化方向の配置模式図が示され、図において、各永久磁石11には1つのみの磁極が設けられている)を形成する複数の永久磁石11であって、隣接する2つの磁極の磁化方向が逆であり、各前記磁極内の永久磁石11の磁区配向とその磁極中心線(磁極中心線は図3の点線直線に示され、磁区は図3~6における矢印に示される)とのなす挟角はαであり、磁極の中央で磁束密度が高く、円周方向の両端に向かうにつれて磁束密度が徐々に低下する磁気特性が形成されるように、前記αが0度以上且つ40度以下である複数の永久磁石と、を備える。図中の点線弧線で示すように、回転子鉄心内側近傍では磁界が強くなり、回転子鉄心外側では磁界が弱くなる。
【0024】
なお、各永久磁石11には、1つの磁極が設けられていてもよく、複数の磁極が設けられていてもよい。複数の磁極が設けられている場合、各永久磁石11の磁極数は2、4、8等の偶数個である。図4には各永久磁石11に1つの磁極が設けられている模式図が、図5には各永久磁石11に2つの磁極が設けられている模式図が、図6には各永久磁石11に4つの磁極が設けられている模式図が示されている。隣接する2つの磁極の磁化方向が逆である。図3図5に示すように、1対の磁極における磁化方向の配置模式図が示され、固定子2により形成される電流による磁界と相互作用力を発生可能な、永久磁石による磁界が形成される。
【0025】
なお、磁区は図3~6の矢印で示すようであり、各永久磁石11は複数の磁区を有し、永久磁石11は、射出成形又はプレス成形により、完成された磁石を製造した後、特製の治具内で着磁したり、射出成形中に材料のランナー方向を制御して特定方向の磁区を形成したりするため、加工効率が高く、ロット生産の実現が比較的容易である。各永久磁石11内の磁区は複数の配向(図3~6における矢印で示す方向はすなわち磁区配向を示す)を有するが、複数の磁区からなる単一の永久磁石11から見て、隣接する2つの永久磁石11に現れる磁化方向はやはり逆である。各永久磁石11は弧状の内面と弧状の外面(例えば、半径が同じである円弧線分、又は中間が弧状で両端が直線である組み合わせ、又は半径が異なる2つの弧状線分の組み合わせなど)を有する。本実施例において、各永久磁石11の外面が回転子鉄心12の内側に貼り付けられて配置されているが、もちろん、他の実施例において、回転子鉄心12にスロットを設けて、永久磁石11をスロット内に固定してもよい。各前記永久磁石11の外面の円弧の直径は90mm~320mmの間であり、各前記永久磁石11の前記回転子鉄心12の軸方向に沿った高さは50mmより小さく、各前記永久磁石11の前記回転子鉄心12の径方向に沿った厚さは10mmより小さい。これにより、該電気モータ回転子電気モータに適用された場合、出力トルクが高く、性能上の要求を満たすとともに、コストが低い。本実施例により提案される電気モータ回転子は、洗濯機の電気モータに適用することができる。電気モータが高い出力トルクを有するため、洗濯機の強い動力を保証することができ、コストの低減に有利である。
【0026】
本実施例において、各磁極内の永久磁石11の磁区配向とその磁極中心線とのなす挟角αが0度以上且つ40度以下であり、各磁極に対応する永久磁石11内の磁区には、一定の磁区配向変化の規則が存在する。図3~6に示すように、回転子鉄心12の周方向において、同一磁極内の角度αが一方側から他方側に向かって漸減してから漸増しており、各磁極内の磁区配向が概ね放射状になるように、各磁区の磁区配向が順に一定角度だけ回転するようにしてもよい。このような磁区配向の配置では、磁極の中央で磁束密度が高く、円周方向の両端に向かうにつれて磁束密度が徐々に低下する磁気特性が形成される。該電気モータ回転子が電気モータに適用されると、固定子と鎖交する磁束が増加し、(磁力線から分かるように)磁力線が磁極中心線へ向かって収束するため、磁極中心線付近では磁束密度が高く、周方向両端部では磁束密度が低いため、回転子鉄心内側近傍では磁界が強くなり、回転子鉄心外側では磁界が弱くなり、磁界が正弦分布を示す。従来の着磁方式と比べて、上記の着磁方式を利用すると、磁界の分布が正弦分布により近くなり、高調波含有率が低くなるため、コギングトルクとトルクリップルとを低減させて、電気モータ運転時の騒音を低減させるのに有利である。もちろん、磁力線を回転子の内側へ収束させればよく、同じ回転角度に従って磁区配向を設定しなくてもよい。αの最大値の範囲は磁極数に相関する。さらに別の実施例において、前記磁極の数が20以上である場合、前記αの最大値は15度以上且つ35度以下である。したがって、回転子鉄心内側近傍では磁界が強くなり、外側では磁界が弱くなることで、固定子と回転子との間の空隙磁界強度が増大し、回転子側の磁界の飽和度が低下し、電気モータの出力性能が向上し、パワー密度が増大する。また、その磁界分布が正弦分布により近くなり、高調波含有率がより低くなるため、コギングトルクとトルクリップルとを低減させることで、電気モータの振動騒音を低減させるのに有利である。別の実施例において、前記磁極の数が8以上且つ20以下である場合、前記αの最大値は18度以上且つ40度以下であり、例えば30度など、この範囲にある任意の数値であってもよく、具体的には必要に応じて設定することができる。
【0027】
本願はさらに、固定子2と、回転軸と、上記の電気モータ回転子とを備える電気モータを提案し、前記回転軸は、前記電気モータ回転子の回転子鉄心11に固定され、前記固定子は、前記回転子と同心であり、前記回転子の内側に嵌設されている。
【0028】
固定子2と電気モータ回転子1との間に間隔を置いて空隙(図示せず)が形成され、回転子鉄心12の内側の磁界が強化されるため、空隙部の磁気誘導強度が増大する。固定子2上のコイル3に電気が通されると、電気モータ回転子1上の強化された永久磁石による磁界と電流による磁界との間の相互作用力が増大し、電気モータのパワー密度が向上する。図7は、本実施例で提案された永久磁石11により、回転子の内側近傍では磁界が強くなり、外側では磁界が弱くなる磁界分布が形成された場合と、内側と外側とで均等に分布する磁界が形成された場合との、電気モータの逆起電力のFFTの比較模式図である。本願における永久磁石11を採用する場合、無負荷時の逆起電力基本波の振幅がより大きいことが分かり、これは、電気モータの出力能力がより強いことを示し、電気モータのパワー密度の向上に有利である。図8は、本実施例で提案された永久磁石11により、回転子の内側近傍では磁界が強くなり、外側では磁界が弱くなる磁界分布が形成された場合と、内側と外側とで均等に分布する磁界が形成された場合との、電気モータの逆起電力の各次の高調波の含有率の比較模式図である。本願の永久磁石11を採用すると、逆起電力のうち第5次、第7次の高調波が明らかに低下することが分かり、これは、回転子鉄心12の内側に向かう磁界分布が正弦分布により近くなることを示し、コギングトルクとトルクリップルとを低減させることで、振動騒音を低減させるのに有利である。また、回転子鉄心12は通常透磁性材料からなるが、本実施例においては、回転子鉄心12の外側に向かう磁界が小さいため、回転子1の磁気回路の飽和が回避され、電気モータ出力能力を向上させることができるほか、回転子鉄心12の損失も低減し、電気モータ効率をさらに向上させる。同じユニット電気モータ数の場合、本実施例で提案された回転子の極数の方がより高い電気モータ出力効率を実現できるため、ユニット電気モータ数の増大に依存せずにコギングトルクを低減することができ、製造工程では巻線の時間を短縮することができ、電気モータの製造や加工の難易度を低減する。
【0029】
固定子2は、透磁性材料からなる固定子板を含み、図9図12に示すように、固定子板には環状の固定子ヨーク22が設けられ、固定子ティース21が、固定子ヨーク22の外径において外側に延在してなる。
【0030】
固定子2は、複数の固定子板が積層されて形成され、複数の扇形ユニットが互いに突き合わされて固定子板が形成され、扇形ユニットの両端にそれぞれ凹溝27と凸起25とが設けられ、隣接する扇形ユニットの一端の凹溝27に凸起25が挿入されて固定子板が形成されている。あるいは、ラミネーションユニットは、固定子ヨーク22と複数の固定子ティース21とを有するベルト状の固定子ティースベルトが螺旋状に巻かれて形成されている。図12に示すように、固定子ヨーク22には間隔をおいて複数の切欠き28が設けられており、固定子ティース21と切欠き28とはそれぞれ前記固定子ティース21ベルト上の対向する両側に位置しており、切欠き27を設けることにより、ベルト状固定子ティースベルトを螺旋状に巻くことが容易になる。図12の破線と実線は、それぞれ2本の固定子ティースベルトを示している。実際の応用では、固定子を加工するための仕入れ材料は通常、ベルト状のプレス成形板であり、このような固定子ティースベルトを螺旋状に巻いて固定子を形成する方法は、プレス成形板の材料を節約して、プレス成形板によるスクラップがより少なくなり、コストの削減に有利である。隣接する2つの固定子ティース21の間に固定子スロット25が形成されている。一つの可能な実施例において、固定子スロット25と回転子極数との比は3:4であり、固定子ティース21にコイル3が巻設されて巻線が形成されている。前記固定子ティース21には、前記固定子ティース21の表面を包み込む絶縁層(図示せず)が設けられる。前記絶縁層は、絶縁薄膜、又は2つの絶縁ソケットを一体に被せ合わせる構造で、コイル3と固定子ティース21を絶縁する。固定子ティース21上でのコイル3の配置は、図14に示すように、固定子ヨーク22の周方向に隣接する3つの固定子ティース21上の巻線に、位相がそれぞれ120°異なる電流が通されて、3相巻線となっている。固定子スロット25と回転子極数との比が3:4であるので、各相の巻線の数は、ちょうど固定子ティース21の数の3分の1となる。ここで、回転子極数とは、回転子1が有する総磁極数である。例えば、各永久磁石11に1つの磁極が形成された場合、回転子極数は永久磁石11の数と等しく、各永久磁石11に2つの磁極が形成された場合、回転子極数は永久磁石11の数の2倍と等しく、各永久磁石11に4つの磁極が形成された場合、回転子極数は永久磁石11の数の4倍と等しい。
【0031】
回転子磁極数が多いと、隣接する磁極間の磁束漏れが増加し、電気モータ出力トルクが低下する。回転子磁極数が少ないと、永久磁石内部の異なる位置での磁区配向が大きく変化し、加工や製造が困難となる。したがって、一実施例として、固定子スロット25の数を30として、回転子磁極数を40として、ユニット電気モータ数を10とすると、コギングトルクが低く、巻線時間が短くなる。
【0032】
以上に述べたことは本願の好ましい実施例に過ぎず、それによって本願の特許の範囲を制限するわけではない。本願の発明構想の下で、本願の明細書及び添付図面の内容を利用してなされた均等構造変換、或いは他の関連する技術分野への直接/間接的な応用は、何れも本願の特許の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】