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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/04 20060101AFI20240222BHJP
   F04B 39/02 20060101ALI20240222BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F04B39/04 K
F04B39/02 Y
F04C29/02 351C
F04C29/02 361A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554887
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 KR2022015763
(87)【国際公開番号】W WO2023096160
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164806
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,スン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ドク ビン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウォン ビン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハク ス
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン シグ
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003BD13
3H003BH07
3H003CD01
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB03
3H129BB05
3H129BB35
3H129CC09
3H129CC45
(57)【要約】
【課題】リアハウジングに一体化された油分離器を成形できる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明の電動圧縮機は、外形をなして、冷媒が吸入される吸入口の位置に形成された前方ハウジングと、駆動部で発生した回転力を伝達されて冷媒を圧縮する圧縮ユニットと、圧縮ユニットによって圧縮された冷媒が滞留する吐出室、及び吐出室の冷媒が外部に吐出される吐出経路が形成されたリアハウジングと、を含み、吐出経路上の内壁に油分離部が形成され、油分離部は、吐出経路上の冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成されたことを特徴とする。冷媒の回転方向に沿って吐出孔から遠くなるほど油分離部に形成された第1溝部の深さが深くなることで、冷媒に含まれた油に対する分離が行われる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形をなして、冷媒が吸入される吸入口の位置に形成された前方ハウジングと、
駆動部で発生した回転力を伝達されて冷媒を圧縮する圧縮ユニットと、
前記圧縮ユニットによって圧縮された冷媒が滞留する吐出室、及び前記吐出室の冷媒が外部に吐出される吐出経路が形成されたリアハウジングと、を含み、前記吐出経路上の内壁に油分離部が形成され、
前記油分離部は、前記吐出経路上の冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成されたことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記油分離部は、前記冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成された部分の深さが可変することを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記油分離部は、前記冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成された部分の深さが深くなることを特徴とする請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記油分離部は、長さ方向の下側に行くほど内側に傾くように延びることを特徴とする請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記リアハウジングには、前記油分離部の上側に位置し、前記冷媒に含まれた油をさらに分離するために油分離板が備えられたことを特徴とする請求項4に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記リアハウジングには、前記油分離板が安着する係止段差が形成されたことを特徴とする請求項5に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記油分離板は、上面が開口したメインボディー部と、
前記油分離部により油が除去されたガス状の冷媒が移動するように、前記メインボディー部の内側の下面に形成された冷媒通過孔と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記冷媒通過孔は、前記メインボディー部の下面から上面に向かって内径が拡大することを特徴とする請求項7に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記メインボディー部は、内側長さ方向に形成された補助油分離部をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の電動圧縮機。
【請求項10】
前記リアハウジングには、前記油分離板の上面にブッシュが配置されたことを特徴とする請求項5に記載の電動圧縮機。
【請求項11】
前記ブッシュには、冷媒が通過するように開口孔が形成され、前記開口孔は、前記油分離板の内径よりも小さく形成されたことを特徴とする請求項10に記載の電動圧縮機。
【請求項12】
前記油分離板は、内側の下面がマッシュ状に形成されたことを特徴とする請求項11に記載の電動圧縮機。
【請求項13】
前記リアハウジングに形成された吐出孔を基準として、前記油分離部は、対向して前記リアハウジングの下側に配置され、前記油分離板は、前記吐出孔の上側に離隔して配置されたことを特徴とする請求項4に記載の電動圧縮機。
【請求項14】
前記圧縮された冷媒は、前記リアハウジングに形成された吐出孔を介して油分離部への流動が行われることを特徴とする請求項13に記載の電動圧縮機。
【請求項15】
前記油分離部は、前記リアハウジングが鋳造される際、油分離構造形成手段によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項16】
前記油分離構造形成手段は、全体的な外形をなし、吐出孔と連通する連通孔が形成され、長さ方向に溝部と突部が繰り返し形成された第1ボディー部と、
前記第1ボディー部の上側に延び、前記第1ボディー部の外径より相対的に大きな外径を有する第2ボディー部と、
前記第2ボディー部の内側下端に形成された係止段差形成部と、を含むことを特徴とする請求項15に記載の電動圧縮機。
【請求項17】
前記油分離部は、前記油分離構造形成手段と共に鋳造されて全体的な外形をなす吐出壁部の内側に、前記突部と対応する位置に形成された第1溝部と、
前記油分離構造形成手段の溝部と対応する位置に形成された第1突部と、を含むことを特徴とする請求項16に記載の電動圧縮機。
【請求項18】
前記油分離部は、全体区間のうちで縦方向に前記連通孔から第1ボディー部の下側端部まで延びた第1区間と、前記第1区間の上側から前記第2ボディー部の上側端部まで所定の長さに延びた第2区間と、からなることを特徴とする請求項16に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機から吐出された冷媒に含まれた油を分離するためのものに関し、より詳しくは、冷媒に含まれた油の油分離性能が向上した電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に備えられた冷房装置は、圧縮機と、凝縮器と膨脹弁及び蒸発器で構成され、圧縮機(compressor)は、蒸発器から吐出された冷媒ガスを液化しやすい高温高圧の状態に圧縮して凝縮器に伝達する。また、圧縮機は、冷房が持続するように冷媒をポンピングして再循環させる役割をする。凝縮器は、高温高圧の冷媒ガスを外気と熱交換させて冷却することで液化させ、膨脹弁(expansion valve)は、液状冷媒を断熱膨脹させて温度と圧力を降下させることで蒸発器で蒸発しやすい状態にする。蒸発器(evaporator)は、液状冷媒を室内に導入される外気と熱交換させることにより、熱を吸収及び蒸発させて気化させる。外気は、冷媒に熱を奪われることで冷却され、ブロアによって車室内に吹き込まれる。圧縮機は、作動流体(冷媒)を圧縮する部分が往復運動をしながら圧縮を行う往復式と、回転運動をしながら圧縮を行う回転式とがあり、前記往復式としては、クランクを用いて駆動源の駆動力を複数のピストンに伝達するクランク式と、斜板が設けられた回転軸に伝達する斜板式と、ウォブルプレートを用いるウォブルプレート式とがある。
【0003】
一例として、スクロール圧縮機とは、ロータリー圧縮機の一種であり、インボリュート歯形の2つの噛み合ったスクロールが旋回運動をしながら圧縮が行われる圧縮機を意味する。前記スクロール圧縮機は、吐出チャンバの内部で幾何学的に180の位相差を有する旋回スクロールと固定スクロールとが相互間に相対回転を行いながら作動し、前記旋回スクロールと固定スクロールとは、スクロール形状の翼(wrap)を有しており、前記翼は、同一の形状を有するインボリュート(involute)曲線からなっている。スクロール圧縮機は、旋回スクロールと固定スクロールとの噛み合いによって三日月状の圧縮室が形成され、圧縮サイクルをなす。前記圧縮室は、外側であるほど体積が大きく、中心に近いほど体積が小さくなる形態で形成され、外側には吸入室が形成され、中心部には吐出口が形成される。
【0004】
前記スクロール圧縮機において、圧縮は、スクロールの外周縁に与えられた体積の密閉空間内の密封された吸入ガスとスクロールとの相対的な回転により、吐出口に向かって圧縮空間の大きさが徐々に減少し、前記吐出口を介して吐出される。前記吐出チャンバから吐出された冷媒は、油分離器を介して遠心分離された後、吐出ポートを介して最終的に吐出が行われる。
【0005】
従来の油分離器は、スクロール圧縮機に備えられたリアハウジングの内部にドリル加工によって所定の深さに吐出通路を形成した後、オイルリングを前記油分離器の内側に挿入して製作する。この場合、油が油分離器の内側に流入した後、前記吐出通路を介して移動される過程で、油の分離効率が低下し、冷媒に油が残存した状態で蒸発器に移動されるという問題が生じた。この場合、蒸発器における冷媒の蒸発効率が低下し、これにより圧縮機の効率にまで影響を及ぼすという問題が生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施例は、リアハウジングを鋳造成形で製作するとき、前記リアハウジングに油分離器形状を有する油分離器構造形成手段を予め挿入し、前記リアハウジングに鋳造が終了した場合に前記油分離構造形成手段を容易に分離してリアハウジングに一体化された油分離器を成形できる電動圧縮機を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電動圧縮機は、外形をなし、冷媒が吸入される吸入口の位置に形成された前方ハウジングと、駆動部で発生した回転力を伝達されて冷媒を圧縮する圧縮ユニットと、前記圧縮ユニットによって圧縮された冷媒が滞留する吐出室、及び前記吐出室の冷媒が外部に吐出される吐出経路が形成されたリアハウジングと、を含み、前記吐出経路上の内壁に油分離部が形成され、前記油分離部は、前記吐出経路上の冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成されることを特徴とする。
【0008】
前記油分離部は、前記冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成された部分の深さが可変することを特徴とする。
【0009】
前記油分離部は、前記冷媒の回転方向に沿って凹凸状に形成された部分の深さが深くなることを特徴とする。
【0010】
前記油分離部は、長さ方向の下側に行くほど内側に傾くように延びる。
【0011】
前記リアハウジングには、前記油分離部の上側に位置し、前記冷媒に含まれた油をさらに分離するために油分離板が備えられる。
【0012】
前記リアハウジングには、前記油分離板が安着する係止段差が形成される。
【0013】
前記油分離板は、上面が開口したメインボディー部と、前記油分離部により油が除去されたガス状の冷媒が移動するように、前記メインボディー部の内側の下面に形成された冷媒通過孔と、を含む。
【0014】
前記冷媒通過孔は、前記メインボディー部の下面から上面に向かって内径が拡大することを特徴とする。
【0015】
前記メインボディー部は、内側長さ方向に形成された補助油分離部をさらに含む。
【0016】
前記リアハウジングには、前記油分離板の上面にブッシュが配置されたことを特徴とする。
【0017】
前記ブッシュには、冷媒が通過するように開口孔が形成され、前記開口孔は、前記油分離板の内径よりも小さく形成される。
【0018】
前記油分離板は、内側の下面がマッシュ状に形成される。
【0019】
前記リアハウジングに形成された吐出孔を基準として、前記油分離部は、対向して前記リアハウジングの下側に配置され、前記油分離板は、前記吐出孔の上側に離隔して配置される。
【0020】
前記圧縮された冷媒は、前記リアハウジングに形成された吐出孔を介して油分離部への流動が行われる。
【0021】
前記油分離部は、前記リアハウジングが鋳造される際、油分離構造形成手段によって形成される。
【0022】
前記油分離構造形成手段は、全体的な外形をなし、前記吐出孔と連通する連通孔が形成され、長さ方向に溝部と突部が繰り返し形成された第1ボディー部と、前記第1ボディー部の上側に延び、前記第1ボディー部の外径より相対的に大きな外径を有する第2ボディー部と、前記第2ボディー部の内側下端に形成された係止段差形成部と、を含む。
【0023】
前記油分離部は、前記油分離構造形成手段と共に鋳造されて全体的な外形をなす吐出壁部の内側に、前記突部と対応する位置に形成された第1溝部と、前記油分離構造形成手段の溝部と対応する位置に形成された第1突部と、を含む。
【0024】
前記油分離部は、全体区間のうちの縦方向で前記連通孔から第1ボディー部の下側端部まで延びた第1区間と、前記第1区間の上側から前記第2ボディー部の上側端部まで所定の長さに延びた第2区間と、からなる。
【発明の効果】
【0025】
本実施例は、リアハウジングを鋳造方式で成形するとき、油分離構造形成手段により油分離器を成形することができるため、製作の利便性、及びドリリング工程の削除によるコスト削減を図ることができる。本実施例は、油分離構造形成手段により油分離を実施する場合、冷媒に含まれた油の接触面積が増加した状態で移動及び分離が行われるため、油分離の効率を向上させることができる。本実施例は、圧縮機から吐出された冷媒が流入した後、遠心分離原理によって冷媒に含まれた油が分離され、冷媒ガスのみ吐出孔を介して移動させることができるため、油分離の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施例による電動圧縮機の縦断面図である。
図2】本発明の一実施例による油分離構造形成手段を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施例による油分離部及び主な構成が備えられたリアハウジングの縦断面図である。
図4】本実施例によるリアハウジングの内側で冷媒が移動する経路を示す図である。
図5】本実施例によるリアハウジングの内側を示す図である。
図6】本実施例による油分離板の縦断面図である。
図7】本実施例による油分離板の他の実施例を示す斜視図である。
図8】本実施例による油分離板の内側がマッシュ状でなる実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示して詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。添付の図面に示された線の厚さや構成要素の大きさなどは、説明の明瞭性と便宜のために誇張して示されていることもある。
【0028】
また、後述する用語は、本発明での機能を考慮して定義された用語であり、これらは、ユーザ、オペレータの意図又は判例に応じて変わり得る。よって、このような用語に対する定義は、本明細書全体にわたる内容に基づいて行われるべきである。
【0029】
本実施例による電動圧縮機について図面を参照して説明する。
【0030】
参照図面として、図1は、本発明の一実施例による電動圧縮機の縦断面図であり、図2は、本発明の一実施例による油分離構造形成手段を示す斜視図であり、図3は、本発明の一実施例による油分離部及び主な構成が備えられたリアハウジングの縦断面図であり、図4は、本実施例によるリアハウジングの内側で冷媒が移動する経路を示す図であり、図5は、本実施例によるリアハウジングの内側を示す図である。
【0031】
図1ないし図5を参照すると、本実施例による電動圧縮機(1)は、外形をなし、冷媒が吸入される吸入口の位置に形成された前方ハウジング(2a)と、中間ハウジング(2b)及びリアハウジング(2)とで構成され、中間ハウジング(2b)の内部に駆動部(3)と圧縮ユニット(5)とが内蔵されている。また、駆動部(3)は、固定子と回転子、及び前記回転子の中央に挿入された回転軸(4)を含んで構成される。
【0032】
駆動部(3)は、回転力を発生して圧縮ユニット(5)に伝達し、圧縮ユニット(5)によって冷媒に対する圧縮及び吐出が行われる。圧縮ユニット(5)は、固定スクロールと旋回スクロールと、を含んで構成され、前記固定スクロールは、固定された状態が維持され、前記旋回スクロールは、前記固定スクロールに対して偏心回転可能と設けられ、前記固定スクロールとの相対移動を行いながら冷媒を圧縮する。リアハウジング(2)は、中間ハウジング(2b)の一側端部に位置し、より詳しくは、図面を基準として右側端部に結合された状態で、中間ハウジング(2b)に選択的に取り外し可能と取り付けられる。
【0033】
圧縮ユニット(5)から吐出された冷媒は、圧縮ユニット(5)によって吐出された後、リアハウジング(2)に形成された吐出孔(12)を介して移動し、油分離部(22)に沿って回転することで冷媒に含まれた油が分離される。特に、本実施例は、油分離構造形成手段(20)を用いてリアハウジング(2)に油分離部(22)を鋳造方式で成形するとき、リアハウジング(2)の内側に位置付けて共に成形することで、作業者の作業性を向上させることができる。
【0034】
また、本実施例は、油分離構造形成手段(20)を用いてリアハウジング(2)を鋳造した後のさらなる作業が最小化され、リアハウジング(2)を製作するときに油分離が行われる空間に対する公差管理が容易であるため、設計自由度が向上することができる。油分離構造形成手段(20)は、リアハウジング(2)に油分離が可能な油分離部(22)を形成するために用いられる。
【0035】
特に、本実施例は、リアハウジング(2)を成形するとき、作業者が容易に油分離構造形成手段(20)を挿入できるため製作性が向上し、ドリリング加工工程などの追加作業が不要になりコスト削減を図ることができ、作業者の作業性も向上させることができる。
【0036】
油分離構造形成手段(20)は、油に含まれた異物を分離する油分離部(22)が形成されるように、図面に示されたような長さ及び構造で延び、ドリル加工によりリアハウジング(2)に追加作業を行うことなく、リアハウジング(2)に対する鋳造が全て完了した後に分離する場合、さらなるドリル加工が不要になるため、コスト削減及び作業者の作業性を向上させることができる。油分離構造形成手段(20)は、図面に示されたように所定の長さで形成された円筒状の空間で形成され、軸方向に延びた長さは多様に変更し得る。
【0037】
本実施例による油分離構造形成手段(20)は、全体的な外形をなし、吐出孔(12)と連通する連通孔(24a)が形成され、長さ方向に溝部(21a)と突部(21b)が繰り返し形成された第1ボディー部(21)と、第1ボディー部(21)の上側に延び、第1ボディー部(21)の外径より相対的に大きな外径を有する第2ボディー部(24)と、前記第2ボディー部の内側下端に形成された係止段差形成部(23)と、を含む。第1ボディー部(21)は、第2ボディー部(24)より相対的に長く延び、第2ボディー部(24)は、第1ボディー部(21)の外径より相対的に大きな外径を有しており、内側下部に後述する油分離板(28)が安着する構造を形成する係止段差形成部(23)が形成される。
【0038】
第1ボディー部(21)は、リアハウジング(2)に挿入及び分離が容易なように図面に示された形態で形成され、溝部(21a)と突部(21b)が円周方向に沿って繰り返される形態で長さ方向に沿って図面に示された長さに延びる。第1ボディー部(21)は、溝部(21a)と突部(21b)により後述する油分離部(22)を成形し、溝部(21a)と突部(21b)によって冷媒に含まれた油を分離するように誘導することができる。油分離構造形成手段(20)は、長さ方向に延びた全体区間(S)のうち、縦方向に第1ボディー部(21)の下側端部まで延びた第1区間(S1)と、第1区間(S1)の上側から第2ボディー部(24)の上側端部まで所定の長さに延びた第2区間(S2)と、からなる。
【0039】
油分離構造形成手段(20)は、第1区間(S1)と第2区間(S2)とにそれぞれ区間分離されており、係止段差形成部(23)を基準にそれぞれ区画されるため、リアハウジング(2)に位置した後に鋳造過程で位置が変わることがない。また、作業者がリアハウジング(2)の内側に位置させる場合であっても、呉取付が発生することなく設置作業を実施することができる。油分離部(22)は、油分離構造形成手段(20)と共に鋳造されて全体的な外形をなす吐出壁部(22c)の内側に突部(21b)と対応する位置に形成された第1溝部(22a)と、油分離構造形成手段(20)の溝部(21a)と対応する位置に形成された第1突部(22b)と、を含む。
【0040】
第1溝部(22a)と第1突部(22b)は、吐出壁部(22c)の内側に形成され、冷媒の回転方向に沿って第1溝部(22a)の深さが深くなるように形成されているため、冷媒に含まれた油は、衝突及び接触によって比重の重い油は下側に移動し、相対的に比重の軽いガス状の冷媒のみ容易に分離される。油分離部(22)に対するより詳細な説明は後述する。リアハウジング(2)は、油分離構造形成手段(20)が共に鋳造方式で成形される場合、内側に油分離部(22)(図4及び図5を参照)が容易に形成されることで、油分離のための追加作業なしに、一回の鋳造成形により油分離部(22)を有するリアハウジング(2)を製作することができる。
【0041】
リアハウジング(2)には、油分離部(22)の上側に位置し、前記冷媒に含まれた油をさらに分離するための油分離板(28)が備えられる。油分離板(28)は、係止段差(22d)に安着でき、挿入と同時に位置が固定されて設置が容易になる。油分離板(28)は、油分離部(22)で分離されなかった冷媒に含まれた油をさらに分離するために備えられる。油分離板(28)は、上面が開口して円筒状に形成されたメインボディー部(28a)と、油分離部(22)により油が除去されたガス状の冷媒が移動するように、メインボディー部(28a)の内側の下面に形成された冷媒通過孔(28b)と、を含む。
【0042】
冷媒通過孔(28b)は、所定の直径で図面に示されたように、複数が一定の間隔を維持して配置され、冷媒ガスの経由中に余分の速度が低下することによって、冷媒ガスに未分離の油が分離されるように誘導する。冷媒ガスは、油分離板(28)を通過する前は移動による抵抗が発生しないが、前記複数の冷媒通過孔(28b)を通過しながら移動速度が低下することによって油が分離され、前記冷媒ガスに残存する油がさらに分離され得る。リアハウジング(2)には、油分離板(28)の上面にブッシュ(29)が配置され、一例として、ブッシュ(29)はリング状に形成され、油分離板(28)で未分離の余分の油をさらに分離することができる。
【0043】
ブッシュ(29)には、冷媒が通過するように開口孔(29a)が形成され、開口孔(29a)は、油分離板(28)の内径よりも小さく形成されているため、さらなる油分離が行われ得る。特に、ブッシュ(29)は、冷媒ガスがブッシュ(29)をそのまま通過するよりは、下面に衝突した後に開口孔(29a)を介して移動するようになるので、油の落下移動をより容易に誘導することができる。ブッシュ(29)は、作業者の組み立てをより容易にするために外側にネジ山が形成されていてもよい。
【0044】
リアハウジング(2)は、油分離構造形成手段(20)によって鋳造作業が完了する場合、内側に吐出孔(12)を基準として油分離部(22)が対向してリアハウジング(2)の内側に形成され、油分離板(28)は、吐出孔(12)の上側に離隔して取り付けられる。油分離部(22)は、冷媒の回転方向に沿って吐出孔(12)から遠くなるほど油分離部(22)の深さが深くなっているため、油の回転力と接触面積の増加により、冷媒に含まれた油を安定して分離することができる。前記冷媒は、純粋なガス状の冷媒と油を含み、前記冷媒に含まれた油は、リアハウジング(2)に移動した後に冷媒ガスと油にそれぞれ分離され、前記油に含まれた一部の異物は油と共に下側に移動する。
【0045】
冷媒は、吐出孔(12)を介して流入した後に内側円周方向で吐出孔(12)から遠くなるA方向に向かって所定の速度で遠心力を有して油分離部(22)と接触しながら回転が行われる。油分離部(22)は、断面図に示されたように、吐出孔(12)と隣接する位置から冷媒の回転方向に行くほど、第1溝部(22a)が吐出壁部(22c)に沿って徐々に深さが深くなるように形成されているため、冷媒に含まれた油が第1溝部(22a)に流入した後に内側面と衝突することで、油が重力方向の下側に容易に移動することができる。油分離部(22)が上記のように形成される理由は、冷媒が吐出孔(12)を経由して、連通孔(24a)を介して油分離部(22)のa位置における深さが図示されたように形成される場合、前記冷媒が前記位置で拡散すると共に内側面と接触することによる面積の増加によって油分離がより円滑に行われる。
【0046】
本実施例は、このような作用を極大化させるために前記a位置からbとc位置に移動するうちに徐々に深さが深くなるように構成することで、回転による遠心力と共に冷媒と接触する接触面積が徐々に増加することによって安定して遠心分離を誘導し、これを通じて冷媒に含まれた油の分離効率を向上させることができる。一例として、冷媒は、回転方向に沿って移動し、d位置では油分離部(22)の接触面積が最も増加して衝突すると共に、比重の高い油は、重力方向の下側に移動した後、別途形成された通路(図示せず)を介して背圧室と吸入室の側に差圧によって移動する。
【0047】
油分離部(22)は、長さ方向の下側に行くほど内側に傾くように延びており、冷媒に含まれた油の下側移動性を向上させることで、油の分離効率を向上させることができる。添付の図6を参照すると、本実施例による冷媒通過孔(28b)は、内径が一定に維持されるか、又はメインボディー部(28a)の下面から上面に向かって内径が拡大するように形成される。
【0048】
冷媒通過孔(28b)が上記のように内径が拡大する場合、冷媒ガスの移動速度が低下し、冷媒通過孔(28b)の内側面との面接触を通じてさらに油を分離することができるため、油分離の効率をより向上させることができる。油分離板(28)は、メインボディー部(28aの内側の下面から上側に所定の長さに延びて内側に空間が形成され、前記空間で冷媒ガスの拡散が行われることで、冷媒通過孔(28b)を通過した冷媒ガスに含まれた油をさらに分離することができる。
【0049】
図7を参照すると、本実施例によるメインボディー部(28a)は、内側長さ方向に形成された補助油分離溝(28c)をさらに含み、補助油分離溝(28c)は、前述した冷媒通過孔(28b)を経由した冷媒ガスに含まれた余分の油が補助油分離溝(28c)との面接触を通じて分離されるように誘導する。
添付の図8を参照すると、本実施例による油分離板(28)は、内側の下面がマッシュ状に形成される。このように油分離板(28)がマッシュ状に形成される場合、間隔が密に配置されるため、冷媒ガスに含まれた油分離の効率を向上させることができる。
【0050】
以上、本発明の一実施例に対して説明したが、該当の技術分野における通常の知識を有した者であれば特許請求の範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を多様に修正及び変更でき、これも本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本実施例は、油分離が必要な電動圧縮機に適用して用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電動圧縮機
2 リアハウジング
2a 前方ハウジング
2b 中間ハウジング
3 駆動部
4 回転軸
5 圧縮ユニット
12 吐出孔
20 油分離構造形成手段
21 第1ボディー部
21a 溝部
21b 突部
22 油分離部
22a 第1溝部
22b 第1突部
22c 吐出壁部
22d 係止段差
23 係止段差形成部
24 第2ボディー部
24a 連通孔
28 油分離板
28a メインボディー部
28b 冷媒通過孔
28c 補助油分離溝
29 ブッシュ
29a 開口孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】