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特表2024-509454大規模並列RNA機能摂動プロファイリングのためのアッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】大規模並列RNA機能摂動プロファイリングのためのアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240222BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240222BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240222BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240222BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20240222BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240222BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240222BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240222BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12N15/113 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12Q1/6897 Z
C12N5/10
C12N7/01
C40B40/06
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555220
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2022055951
(87)【国際公開番号】W WO2022189464
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2103216.4
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523342067
【氏名又は名称】ラダー・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラビア・カーン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR77
4B063QS05
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA97X
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、レポーター遺伝子及びクエリー配列を含む核酸構築物を特徴とし、クエリー配列は、二次構造に折り畳まれたRNA及び若しくはRNA調節エレメントをコードするか、又はそれである。これらの核酸構築物は、本明細書にも開示される摂動プロファイリングのための大規模並列アッセイ方法において使用することができる。そのような方法は、細胞内状況内でRNAを調節するための化学的又は遺伝的な摂動の効果を研究する能力を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸構築物であって、
i.)第1のレポーター遺伝子をコードする第1の配列と、
ii.)第2のレポーター遺伝子をコードし、クエリー配列を含む第2の配列であって、
前記クエリー配列が、前記第2のレポーター遺伝子に作動可能に結合し、前記クエリー配列が、
遺伝子転写物の二次構造及び/若しくはRNA調節エレメントに折り畳まれたRNAをコードするか、又はそれであり、前記二次構造及び/又は転写物が、前記第2のレポーター遺伝子の前記転写物の一部ではない、第2の配列と、
iii.)i)及びii)の発現を駆動することができる1つ以上のプロモーターと、を含む、核酸構築物。
【請求項2】
前記第2の配列が、前記クエリー配列に固有のバーコード配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
iii)が、
i)の発現を駆動することができる第1のプロモーターと、
ii)の発現を駆動することができる第2のプロモーターと、を含み、
前記第1及び第2のプロモーターが、互いに独立して作動する、請求項1又は2に記載の核酸構築物。
【請求項4】
iii)が、i)及びii)の発現を駆動することができる単一プロモーターを含む、請求項1又は2に記載の核酸構築物。
【請求項5】
iii)が、単方向プロモーターを含む、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記クエリー配列が、非翻訳領域(UTR)又はイントロンであるRNA調節エレメントをコードするか、又はそれである、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項7】
前記クエリー配列が、前記第2のレポーター遺伝子ではない遺伝子の5’UTRをコードするか、又はそれである、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項8】
前記クエリー配列が、前記第2のレポーター遺伝子ではない遺伝子の変異5’UTRをコードするか、又はそれである、請求項7に記載の核酸構築物。
【請求項9】
前記クエリー配列が、前記第2のレポーター遺伝子ではない遺伝子の3’UTRをコードするか、又はそれである、請求項6に記載の核酸構築物。
【請求項10】
前記クエリー配列が、前記第2のレポーター遺伝子ではない遺伝子の変異3’UTRをコードするか、又はそれである、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記UTR又はイントロンが、1つ以上のRNA二次構造を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記クエリー配列が、内部リボソーム侵入部位(IRES)であるRNA調節エレメントをコードするか、又はそれである、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項13】
前記IRESが、1つ以上のRNA二次構造を含む、請求項12に記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記1つ以上のRNA二次構造が、G-クアドルプレックス(G4)、トリプルヘリックス、シュードノット、ステム-ループ、及びマルチウェイジャンクションからなるリストから選択される、請求項11又は13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記第1及び第2のレポーター遺伝子が、それらの間に前記IRESを有して配置される、バイシストロニックレポーターシステムを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記クエリー配列が、G-クアドルプレックス(G4)を含む二次構造をコードするか、又はそれである、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記クエリー配列が、トリプルヘリックスを含む二次構造をコードするか、又はそれである、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記クエリー配列が、シュードノットを含む二次構造をコードするか、又はそれである、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記クエリー配列が、ステム-ループを含む二次構造をコードするか、又はそれである、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記クエリー配列が、マルチウェイジャンクションを含む二次構造をコードするか、又はそれである、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記クエリー配列が、二次構造に折り畳まれた野生型RNAを含む二次構造をコードするか、又はそれである、請求項16~20のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項22】
前記クエリー配列が、変異体RNAをコードするか、又はそれであり、前記変異体RNAが、G-クアドルプレックス(G4)、トリプルヘリックス、シュードノット、ステム-ループ、及び/又はマルチウェイジャンクションを含む二次構造に折り畳まれるRNAの野生型配列に対して1つ以上の変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項23】
前記野生型配列に対する変異が、生物学的疾患状態に関連する変異である、請求項22に記載の核酸構築物。
【請求項24】
前記生物学的疾患状態が、哺乳動物における疾患である、請求項23に記載の核酸構築物。
【請求項25】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項24に記載の核酸構築物。
【請求項26】
前記クエリー配列が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスから二次構造に折り畳まれたRNAを含む二次構造をコードするか、又はそれであり、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項27】
前記クエリー配列が、G4、シュードノット、ステムループ、トリプルヘリックス、及びマルチウェイジャンクション、又はIRESなどの機能単位からなるリストから選択される2つ以上の二次構造をコードするか、又はそれらを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項28】
前記2つ以上の二次構造が、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの機能単位を形成する、請求項27に記載の核酸構築物。
【請求項29】
前記2つ以上の二次構造が、UTRなどの機能単位を形成する、請求項27に記載の核酸構築物。
【請求項30】
前記IRESが、UTRに含まれる、請求項28に記載の核酸構築物。
【請求項31】
前記第1及び/又は第2のレポーター遺伝子が、(a)蛍光タンパク質を発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項32】
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び/又は橙色蛍光タンパク質(OFP)を含む、請求項31に記載の核酸構築物。
【請求項33】
前記第1及び第2のレポーター遺伝子の一方が、緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項32に記載の核酸構築物。
【請求項34】
前記緑色蛍光タンパク質(GFP)が、不安定化GFPである、請求項33に記載の核酸構築物。
【請求項35】
先行請求項のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、ベクター。
【請求項36】
前記ベクターが、非ウイルスベクターである、請求項35に記載のベクター。
【請求項37】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項35に記載のベクター。
【請求項38】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項38に記載のベクター。
【請求項39】
前記ベクターが、RNAを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項40】
前記ベクターが、DNAを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項41】
RNA構築物を含む1つ以上の細胞を各々含む多数の細胞集団を含む、細胞のライブラリーであって、1つの単一集団の細胞の各RNA構築物が、互いに同じであるが、異なる集団の細胞のRNA構築物が、互いに異なり、
各RNA構築物が、レポーター遺伝子を発現することができる発現カセットを含む第1のドメインと、前記RNAが二次構造に折り畳まれ、かつ/又は前記レポーター遺伝子転写物ではない遺伝子転写物のRNA調節エレメントを含む、第2のドメインと、を含む、細胞のライブラリー。
【請求項42】
各RNA構築物が、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸構築物であるか、又は請求項35~40のいずれか一項に記載のベクターから転写される、請求項41に記載の細胞のライブラリー。
【請求項43】
各第2のドメインが、G-クアドルプレックス(G4)を含む二次構造を含む、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項44】
各第2のドメインが、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む二次構造を含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項45】
各第2のドメインが、トリプルヘリックスを含む二次構造を含む、請求項41~44のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項46】
各第2のドメインが、シュードノットを含む二次構造を含む、請求項41~45のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項47】
各第2のドメインが、ステム-ループを含む二次構造を含む、請求項41~46のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項48】
前記ライブラリーの1つ以上の細胞集団が、野生型G4構造を含むG4含有RNA構築物を含み、前記ライブラリーの他の細胞集団が、変異体G4構造を含むG4含有RNA構築物を含む、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項49】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコード若しくは非コードRNA配列のクラスからのG4構造を含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項50】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのG4構造を含む、請求項43に記載の細胞のライブラリー。
【請求項51】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのIRES構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項52】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのIRES構造を含む、請求項44に記載の細胞のライブラリー。
【請求項53】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのトリプルヘリックス構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項54】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのトリプルヘリックス構造を含む、請求項45に記載の細胞のライブラリー。
【請求項55】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのシュードノット構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項56】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのシュードノット構造を含む、請求項46に記載の細胞のライブラリー。
【請求項57】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのステム-ループ構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項58】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される全てのステム-ループ構造を含む、請求項47に記載の細胞のライブラリー。
【請求項59】
各第2のドメインが、非翻訳領域(UTR)又はイントロンであるRNA調節エレメントを含む、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項60】
各第2のドメインが、長非コードRNA(lncRNA)に結合するか、又はRNA結合タンパク質に結合する結合部位を含む、請求項41~59のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項61】
各第2のドメインが、前記レポーター遺伝子ではない遺伝子の5’UTRを含む、請求項41~60のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項62】
各第2のドメインが、前記レポーター遺伝子ではない遺伝子の3’UTRを含む、請求項41~61のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項63】
各第2のドメインが、G4及びIRESを含む二次構造を含む、請求項41又は42に記載の細胞のライブラリー。
【請求項64】
前記RNA構築物が、前記細胞によって安定に発現される、請求項41~63のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項65】
前記RNA構築物が、前記細胞によって一時的に発現される、請求項41~63のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項66】
前記細胞が、1つ以上のRNA結合タンパク質をノックアウト、ノックダウン、又はサイレンシングするように遺伝子修飾されている、請求項41~65のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項67】
前記細胞集団が、単一培養体積内にプールされる、請求項41~66のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項68】
各細胞集団が、各々の他の細胞集団の細胞培養体積とは別の細胞培養体積中に存在する、請求項41~66のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項69】
各第1のドメインの前記レポーター遺伝子が、1つ以上の蛍光タンパク質を発現する、請求項41~68のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項70】
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び/又は橙色蛍光タンパク質(OFP)を含む、請求項69に記載の細胞のライブラリー。
【請求項71】
前記発現カセットが、GFPのコード配列と、RFPのコード配列と、それらの間にバイシストロニックプロモーターと、を含む、請求項70に記載の細胞のライブラリー。
【請求項72】
前記発現カセット内、GFPをコードする配列とRFPをコードする配列との間に、前記第2のドメインのIRESを更に含む、請求項70又は71に記載の細胞のライブラリー。
【請求項73】
前記第2のドメインが、各RNA構築物の5’末端にある、請求項41~72のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項74】
前記第2のドメインが、各RNA構築物の3’末端にある、請求項41~72のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項75】
各RNA構築物が、バーコード配列を更に含む、請求項41~74のいずれか一項に記載の細胞のライブラリー。
【請求項76】
請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸構築物又は請求項35~40のいずれか一項に記載のベクターを含む1つ以上の細胞を各々含む多数の細胞集団を含む、細胞のライブラリーであって、1つの単一集団の細胞の各核酸構築物が、互いに同じであるが、異なる集団の細胞の核酸構築物が、互いに異なる、細胞のライブラリー。
【請求項77】
各RNA構築物が、レポーター遺伝子を発現することができる発現カセットを含む第1のドメインと、前記RNAが二次構造に折り畳まれ、かつ/又は前記レポーター遺伝子転写物ではない遺伝子転写物のRNA調節エレメントを含む、第2のドメインと、を含む、RNA構築物のライブラリー。
【請求項78】
各第2のドメインが、G-クアドルプレックス(G4)を含む二次構造を含む、請求項77に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項79】
各第2のドメインが、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む二次構造を含む、請求項77又は78に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項80】
各第2のドメインが、トリプルヘリックスを含む二次構造を含む、請求項77~79のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項81】
各第2のドメインが、シュードノットを含む二次構造を含む、請求項77~80のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項82】
各第2のドメインが、ステム-ループを含む二次構造を含む、請求項77~81のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項83】
前記ライブラリーの1つ以上の細胞集団が、野生型G4構造を含むG4含有RNA構築物を含み、前記ライブラリーの他の細胞集団が、変異体G4構造を含むG4含有RNA構築物を含む、請求項78に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項84】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのG4構造を含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項78に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項85】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのG4構造を含む、請求項78に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項86】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのIRES構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項79に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項87】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのIRES構造を含む、請求項79に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項88】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのトリプルヘリックス構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項80に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項89】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのトリプルヘリックス構造を含む、請求項80に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項90】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのシュードノット構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項81に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項91】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのシュードノット構造を含む、請求項81に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項92】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからの全てのステム-ループ構造のサブセットを含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項82に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項93】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される実質的に全てのステム-ループ構造を含む、請求項82に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項94】
各第2のドメインが、非翻訳領域(UTR)であるRNA調節エレメントを含む、請求項77に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項95】
各UTRが、長非コードRNA(lncRNA)を結合する結合部位を含む、請求項94に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項96】
各第2のドメインが、前記レポーター遺伝子ではない遺伝子の5’UTRを含む、請求項77~95のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項97】
各第2のドメインが、前記レポーター遺伝子ではない遺伝子の3’UTRを含む、請求項77~95のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項98】
各第2のドメインが、G4及びIRESを含む二次構造を含む、請求項77に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項99】
各第1のドメインの前記レポーター遺伝子が、1つ以上の蛍光タンパク質を発現する、請求項77~98のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項100】
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び/又は橙色蛍光タンパク質(OFP)を含む、請求項99に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項101】
前記発現カセットが、GFPのコード配列と、RFPのコード配列と、それらの間にバイシストロニックプロモーターと、を含む、請求項100に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項102】
前記発現カセット内、GFPをコードする配列とRFPをコードする配列との間に、前記第2のドメインのIRESを更に含む、請求項100又は101に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項103】
前記第2のドメインが、各RNA構築物の5’末端にある、請求項77~102のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項104】
前記第2のドメインが、各RNA構築物の3’末端にある、請求項77~102のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項105】
各RNA構築物が、バーコード配列を更に含む、請求項77~104のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリー。
【請求項106】
各核酸構築物が、請求項1~34に記載の構築物である、核酸構築物のライブラリー。
【請求項107】
請求項77~106のいずれか一項に記載のRNA構築物のライブラリーを含むか、又はそれをコードする、ベクターのライブラリー。
【請求項108】
各ベクターが、非ウイルスベクターである、請求項107に記載のベクターのライブラリー。
【請求項109】
前記非ウイルスベクターが、前記RNA構築物を発現するDNAプラスミドを含む、請求項108に記載のベクターのライブラリー。
【請求項110】
前記非ウイルスベクターが、前記RNA構築物を含む、請求項108に記載のベクターのライブラリー。
【請求項111】
各ベクターが、ウイルスベクターである、請求項107に記載のベクターのライブラリー。
【請求項112】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項111に記載のベクターのライブラリー。
【請求項113】
請求項108~110のいずれか一項に記載のベクターのライブラリーで細胞の集団をトランスフェクトすること、又は請求項111若しくは112に記載のベクターのライブラリーで細胞の集団をトランスフェクトすることを含む、請求項41~76のいずれか一項に記載の細胞のライブラリーを生成する方法。
【請求項114】
前記細胞集団が、腫瘍細胞を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記細胞集団が、組織試料を含むか、又は組織試料由来である、請求項113又は114に記載の方法。
【請求項116】
前記細胞集団が、哺乳動物対象からの生検由来である、請求項113~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記哺乳動物対象が、ヒト対象である、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記生検が、腫瘍由来である、請求項116又は117に記載の方法。
【請求項119】
前記細胞集団が、人工多能性幹細胞(IPS細胞)である、請求項113に記載の方法。
【請求項120】
RNA調節エレメント及び/又は二次構造と相互作用する薬剤を選択するために候補薬剤のパネルをスクリーニングする多重化された方法であって、
a.請求項41~76のいずれか一項に記載の細胞のライブラリーを多重化された方法で候補薬剤のパネルと接触させることと、次いで
b.(a)レポーター遺伝子発現が平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している細胞集団を特定することと、次いで
c.ステップbにおいて特定された前記細胞集団と接触していた前記候補薬剤を選択することと、を含む、方法。
【請求項121】
前記RNA構築物が、バーコード配列を含み、ステップb.が、レポーター遺伝子発現が、平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、細胞集団のバーコード配列を読み取ることを更に含む、請求項120に記載の多重化された方法。
【請求項122】
ステップb.が、レポーター遺伝子発現が、平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、細胞集団を特定するため、及びレポーター遺伝子発現レベルに従って細胞集団を分離するため、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いる、請求項120又は121に記載の多重化された方法。
【請求項123】
ステップa.が、マルチウェルプレートにおいて前記細胞のライブラリーを前記候補薬剤のパネルと接触させることによって行われる、請求項120~122のいずれか一項に記載の多重化された方法。
【請求項124】
ステップa.が、高スループット液滴マイクロ流体システムを介して前記細胞のライブラリーを前記候補薬剤のパネルと接触させることによって行われる、請求項120~122のいずれか一項に記載の多重化された方法。
【請求項125】
前記候補薬剤が、小分子である、請求項120~124のいずれか一項に記載の多重化された方法。
【請求項126】
前記候補薬剤が、RNA分子である、請求項120~124のいずれか一項に記載の多重化された方法。
【請求項127】
前記候補RNA分子が、siRNA、miRNA、又はlncRNAである、請求項126に記載の多重化された方法。
【請求項128】
請求項125~127のいずれか一項に記載の方法によって選択される薬剤。
【請求項129】
RNA調節エレメント及び/又は二次構造の集団を、前記エレメント/構造の機能を評価するためにスクリーニングする方法であって、請求項41~76のいずれか一項において定義される細胞のライブラリーを提供することと、前記細胞を増殖させることと、各細胞集団におけるレポーター遺伝子の発現レベルを評価することと、を含む、方法。
【請求項130】
各RNA調節エレメント及び/又は二次構造が、G-クアドルプレックス(G4)を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのG4構造を含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される全てのG4構造を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
各RNA調節エレメント及び/又は二次構造が、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項134】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのIRES構造を含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項131に記載の方法。
【請求項135】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される全てのIRES構造を含む、請求項133に記載の方法。
【請求項136】
各RNA調節エレメント及び/又は二次構造が、トリプルヘリックスを含む、請求項129に記載の方法。
【請求項137】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのトリプルヘリックス構造を含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される全てのトリプルヘリックス構造を含む、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
各RNA調節エレメント及び/又は二次構造が、シュードノットを含む、請求項129に記載の方法。
【請求項140】
前記RNA構築物が、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのシュードノット構造を含むパネルを構成し、前記非コードRNA配列のクラスが、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記RNA構築物が、目的の生物のゲノムによって発現される全てのシュードノット構造を含む、請求項139に記載の方法。
【請求項142】
前記細胞が、1つ以上のRNA結合タンパク質をノックアウト、ノックダウン、又はサイレンシングするように遺伝子修飾されている、請求項129~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
請求項41~76のいずれか一項において定義されるRNA構築物。
【請求項144】
疾患状態に関連する遺伝的摂動を特定する方法であって、請求項41~76のいずれか一項に記載の細胞のライブラリーを提供することであって、前記細胞の第1の亜集団が、特定の疾患を有する1つ以上の対象由来のRNA調節エレメント及び/又は二次構造を含み、前記細胞の第2の亜集団が、特定の疾患を有しない1つ以上の対象由来のRNA調節エレメント及び/又は二次構造を含む、提供することと、前記第1及び第2の亜集団における相対レポーター遺伝子発現レベルを比較することと、を含む、方法。
【請求項145】
疾患状態に関連する化学的摂動を特定する方法であって、請求項41~76のいずれか一項に記載の細胞のライブラリーを提供し、前記細胞の第1の亜集団を1つ以上の化学剤と接触させることと、前記第1の亜集団における相対レポーター遺伝子発現レベルを、前記1つ以上の化学剤と接触していない第2の亜集団の相対レポーター遺伝子発現レベルと比較することと、を含む、方法。
【請求項146】
前記1つ以上の化学剤が、治療剤、小分子、及び更なるRNA分子から選択される、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
細胞ネットワーク又は生物学的表現型若しくは回路を作製する方法であって、
(a)請求項41~76のいずれか一項に記載の細胞のライブラリーにおける前記クエリー配列に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ以上の一次又はコンビナトリアル遺伝的摂動を導入することであって、前記複数の細胞における各細胞が、少なくとも1つの摂動を受ける、導入することと、
(b)測定することであって、
(i)いずれの摂動も受けなかった1つ以上の細胞と比較して、単一細胞におけるゲノム、遺伝子、プロテオミック、エピジェネティック、及び/又は表現型の違いを検出することと、
(ii)単一細胞において前記摂動を検出することと、を含む、測定することと、
(c)前記測定された違いに共変量を説明するモデルを適用することによって、前記摂動に関連する測定された違いを決定することと、を含み、それによって、細胞間及び/又は細胞内ネットワーク又は回路が推測される、方法。
【請求項148】
測定ステップ(b)が、単一細胞配列決定を含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
測定ステップ(b)が、前記バーコード配列を読み取ることを含む、請求項147又は148に記載の方法。
【請求項150】
前記モデルが、測定されたシグナルの捕捉率、前記摂動が実際に前記細胞を摂動させたか(表現型の影響)、異なる細胞若しくは細胞状態のいずれかの亜集団の存在、及び/又はいずれの摂動も伴わない一致した細胞の分析を説明することを含む、請求項147~149のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA構築物を含む細胞のパネルを含むスクリーニング方法に関し、特に、排他的ではないが、細胞ベースのスクリーニングプラットフォームにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
RNAが、薬物いわゆる「創薬不可能な」タンパク質への、及び非コードゲノムを調節するための機構としての両方で、魅力的な標的薬物発見及び開発であることは、十分に確立されている。しかしながら、小分子でRNAを調節する能力は、体系的な方法ではまだ達成されていない。
【0003】
以前の研究は、RNAが細胞状況内で二次及び三次構造を形成することを実証した。これらのRNA構造モチーフは、遺伝子発現、RNAスプライシング、及び翻訳の調節などの多様な範囲の生物学的機能にわたって重要である。これらは、RNA-タンパク質相互作用(RNAがRNA結合タンパク質と相互作用する)及びRNA-DNA相互作用(DNAに結合するRNA)などの他の細胞構成要素との機能的相互作用の結果として、細胞内で機能する。
【0004】
標的毎のスクリーニングアプローチを可能にする、RNA構造(例えば、マイクロアレイ、ASMS、Alphascreen)に対して小分子をスクリーニングするためのいくつかの生化学的アッセイが存在する。これらの方法は、大きな化学的ライブラリーがRNA標的に対してスクリーニングされることを可能にするが、ネイティブ細胞RNA機能及び構造はこれらの方法において考慮されないため、細胞状況の欠如は依然として課題である。
【0005】
細胞状況内でRNA構造に結合する小分子をスクリーニングする細胞システムも、標的毎に開発されている。ネイティブRNA構造は、細胞状況内で維持されるが、この方法を使用した複数の標的にわたる高スループットスクリーニングは、面倒であり、複数の化学的ライブラリーの構築を必要とする。
【0006】
既存の方法は、単一標的の特定を必要とし、多数のRNA構造に対する多数の分子の影響を研究することができない。これまで、細胞内状況内でRNAを調節するための化学的又は遺伝的な摂動の効果を研究する能力は、体系的な方法ではまだ達成されていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、インシリコ方法を使用して、ゲノムにおいて多数のRNA二次構造を特定した。例えば、約4,000個のG-クアドルプレックス構造が特定された。本発明は、第一に、UTR内などの、それらの内因性ゲノムコンテキスト内のこれらの構造の機能的性質を可能にし、この機能が、例えば、細胞内でプローブされ、解明されることを可能にする。この形態のスクリーニングは、ネイティブ生物学的状況内で、大規模にRNA構造への化学的又は遺伝的な摂動の効果の研究を可能にするため、調査のための生物学の新しい分野を開く。第二に、本発明は、これらの新たに特定された構造と相互作用することができる候補薬剤(例えば、治療剤、小分子、更なるRNA分子)をスクリーニングするための、例えば、これらの二次構造を含む機能的構築物を含有する細胞のライブラリーを使用することによる、手段を提供する。これは、「多重化RNA構造小分子スクリーニング」と呼ぶことができる。例えば、小分子の、RNA構造モチーフを特異的かつ選択的に結合し、細胞内の生物学的機能を破壊する能力は、以前に古典的創薬によって標的化された、新規生物学を標的とすることを可能にする。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、核酸構築物であって、i.)第1のレポーター遺伝子をコードする第1の配列と、ii.)第2のレポーター遺伝子をコードし、クエリー配列を含む第2の配列と、を含み、クエリー配列は、第2のレポーター遺伝子に作動可能に結合し、クエリー配列は、遺伝子転写物の二次構造及び/若しくはRNA調節エレメントに折り畳まれたRNAをコードするか、又はそれであり、当該二次構造及び/又は転写物は、第2のレポーター遺伝子の転写物の一部ではない、核酸構築物を提供する。核酸構築物はまた、第1及び第2の配列の発現を駆動することができる1つ以上のプロモーターを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の配列は、クエリー配列に固有のバーコード配列を含む。
【0010】
1つ以上のプロモーター(iii)は、第1の配列の発現を駆動することができる第1のプロモーターと、第2の配列の発現を駆動することができる第2のプロモーターと、を含み得る(第1及び第2のプロモーターは互いに独立して作動することができる)。他の実施形態では、核酸構築物は、第1及び第2の配列の発現を駆動することができる単一プロモーターを含む。単一プロモーターは、双方向プロモーター又は単方向プロモーターであり得る。
【0011】
好ましい実施形態では、クエリー配列は、非翻訳領域(UTR)であるRNA調節エレメントをコードするか、又はそれである。UTRは、異種遺伝子(すなわち、第2のレポーター遺伝子ではない遺伝子のUTR)由来である。いくつかの実施形態では、UTRは、異種遺伝子の5’UTRである。他の実施形態では、UTRは、異種遺伝子の3’UTRである。クエリー配列中のUTRは、ネイティブ遺伝子のUTR配列に対して変異され得る。例えば、クエリー配列中のUTRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の一塩基欠失、置換、及び/又は挿入を含み得る。
【0012】
UTRは、1つ以上のRNA二次構造、例えば、G-クアドルプレックス(G4)、トリプルヘリックス、シュードノット、ステム-ループ、及び/又はマルチウェイジャンクションを含み得る。UTRは、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、クエリー配列は、イントロンであるRNA調節エレメントをコードするか、又はそれである。
【0014】
いくつかの実施形態では、クエリー配列は、内部リボソーム侵入部位(IRES)であるRNA調節エレメントをコードするか、又はそれである。
【0015】
イントロン又はIRESは、1つ以上のRNA二次構造、例えば、G-クアドルプレックス(G4)、トリプルヘリックス、シュードノット、ステム-ループ、及び/又はマルチウェイジャンクションを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、第1及び第2のレポーター遺伝子が、それらの間にIRESを有して配置される、バイシストロニックレポーターシステムを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、クエリー配列は、G-クアドルプレックス(G4)を含む二次構造をコードするか、又はそれである。いくつかの実施形態では、クエリー配列は、トリプルヘリックスを含む二次構造をコードするか、又はそれである。いくつかの実施形態では、クエリー配列は、シュードノットを含む二次構造をコードするか、又はそれである。いくつかの実施形態では、クエリー配列は、ステム-ループを含む二次構造をコードするか、又はそれである。いくつかの実施形態では、クエリー配列は、マルチウェイジャンクションを含む二次構造をコードするか、又はそれである。
【0018】
クエリー配列は、二次構造に折り畳まれた部分を含む野生型RNAをコードし得るか、又はそれを含み得る。代替的に、クエリー配列は、変異体RNAをコードし得るか、又はそれを含み得、変異体RNAは、二次構造に折り畳まれた部分を含むRNAの野生型配列に対して1つ以上の変異を含む。これらの二次構造は、G-クアドルプレックス(G4)、トリプルヘリックス、シュードノット、ステム-ループ、及び/又はマルチウェイジャンクションを含み得る。いくつかの実施形態では、野生型配列に対する変異は、生物学的疾患状態に関連する変異であることが知られているか、又はその疑いがある。
【0019】
いくつかの実施形態では、クエリー配列は、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスから二次構造に折り畳まれたRNAを含む二次構造をコードするか、又はそれであり、非コードRNA配列のクラスは、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、クエリー配列は、G4、シュードノット、ステムループ、トリプルヘリックス、及びマルチウェイジャンクション、又はUTR又はIRESなどの機能単位からなるリストから選択される2つ以上の二次構造をコードするか、又はそれらを含む。2つ以上の二次構造は、UTR又はIRESなどの機能単位を形成し得る。
【0021】
ステムループは、不対ループで終わるRNAの同じ一本鎖の2つの領域間の塩基対合を含むRNA構造である。ステムループは、具体的には不対ループが短いとき、ヘアピン又はヘアピンループとしても知られている。
【0022】
いくつかの実施形態では、2つ以上の二次構造は、UTRなどの機能単位を形成する。例えば、UTRは、IRES及び別の二次構造を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のレポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、橙色蛍光タンパク質(OFP)、及び/又は青色蛍光タンパク質(BFP)などの蛍光タンパク質を発現する。他の好適なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のレポーター遺伝子の一方は、緑色蛍光タンパク質(GFP)である。GFPは、不安定化GFPであり得る。同様に、RFP、YFP、OFP、及び/又はBFPは、不安定化され得る。
【0024】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、第2のレポーター遺伝子は、「第1のドメイン」と称され得、クエリー配列は、「第2のドメイン」と称され得る。
【0025】
本発明はまた、先行請求項のいずれか一項の核酸構築物を含むベクターを提供する。ベクターは、DNA又はRNAを含み得る。ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。これらのベクターのライブラリーも提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、ベクターは、耐性遺伝子などの選択可能なマーカーを含み得る。そのような選択可能なマーカーは、ベクターのクローニング及び選択、並びに/又はベクターを含有する細胞の選択を補助することができる。選択マーカーは、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、又はブラスチジンであり得る。
【0027】
本発明はまた、本発明の第1の態様による核酸構築物を含む1つ以上の細胞を各々含む多数の細胞集団を含む、細胞のライブラリーであって、1つの単一集団の細胞の各核酸構築物が、互いに同じであるが、異なる集団の細胞の核酸構築物が、互いに異なる、細胞のライブラリーを提供する。いくつかの態様では、細胞のライブラリーは、RNA構築物を含む1つ以上の細胞を各々含む多数の細胞集団を含み、1つの単一集団の細胞の各RNA構築物は、互いに同じであるが、異なる集団の細胞のRNA構築物は、互いに異なり、各RNA構築物は、レポーター遺伝子を発現することができる発現カセットを含む第1のドメインと、RNAが二次構造若しくは構造の組み合わせに折り畳まれ、かつ/又はレポーター遺伝子転写物ではない遺伝子転写物のRNA調節エレメントを含む、第2のドメインと、を含む。
【0028】
第2の態様では、本発明は、各RNA構築物が、レポーター遺伝子を発現することができる発現カセットを含む第1のドメインと、RNAが二次構造に折り畳まれ、かつ/又はレポーター遺伝子転写物ではない遺伝子転写物のRNA調節エレメントを含む、第2のドメインと、を含む、RNA構築物のライブラリーを提供する。
【0029】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様によるRNA構築物のライブラリーを含むか、又はそれをコードするベクターのライブラリーを提供する。ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターであり得る。ライブラリーのベクターが非ウイルスベクターであるいくつかの実施形態では、それらは、RNA構築物を発現するDNAプラスミドを含み得る。ライブラリーのベクターが非ウイルスベクターである他の実施形態では、それらは、RNA構築物自体を含み得る。ライブラリーのベクターがウイルスベクターである実施形態では、それらは、レンチウイルスベクター、例えば、組み込みレンチウイルスベクターであり得る。他のウイルスベクターは、本明細書に開示されるように、当業者に周知であり、本発明の作業において用いられ得る。
【0030】
第4の態様では、本発明は、RNA調節エレメント及び/又は二次構造と相互作用する薬剤を選択するために候補薬剤のパネルをスクリーニングする多重化された方法を提供し、方法は、
a.第1の態様による細胞のライブラリーを多重化された方法で候補薬剤のパネルと接触させることと、次いで
b.(a)レポーター遺伝子発現が平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している細胞集団を特定することと、次いで
c.ステップbにおいて特定された当該細胞集団と接触していた候補薬剤を選択することと、を含む。
【0031】
第5の態様では、本発明は、RNA調節エレメント及び/又は二次構造の集団をスクリーニングして、それらの機能を評価する方法を提供する。この態様では、方法は、第1の態様による細胞のライブラリーを採取することと、細胞を増殖させることと、各細胞集団におけるレポーター遺伝子の発現レベルを評価することと、を含む。本発明の他の態様の構築物に沿って、1つの単一集団の細胞の各RNA構築物は、互いに同じであるが、異なる集団の細胞のRNA構築物は、互いに異なる。各RNA構築物は、レポーター遺伝子を発現することができる発現カセットを含む第1のドメインと、RNAが二次構造に折り畳まれ、かつ/又はレポーター遺伝子転写物ではない遺伝子転写物のRNA調節エレメントを含む、第2のドメインと、を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、RNA構築物は、細胞によって安定して発現される。他の実施形態では、RNA構築物は、細胞によって一時的に発現される。細胞は、1つ以上のRNA結合タンパク質をノックアウト、ノックダウン、又はサイレンシングするように遺伝子修飾されていてもよい。細胞は、患者由来細胞であってもよく、又はiPS由来細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞集団は、単一培養体積内にプールされる。他の実施形態では、各細胞集団は、各他の細胞集団のそれぞれの細胞培養体積とは別の細胞培養体積中にある。
【0033】
本発明のライブラリー(及び方法)において使用される細胞は、真核細胞、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、細胞株、一次細胞、例えば、健康な個体又は病気の個体から採取されたものであり得る。細胞は、例えば、本明細書に記載されるような、遺伝子ノックアウトなどの更なる遺伝子修飾を含み得る。
【0034】
好ましい実施形態では、各RNA構築物は、バーコード配列を含む。各バーコード配列は、各第2のドメインに固有である。よって、バーコードを読み取ること(例えば、配列決定などを介して)は、第2のドメインの種が決定されることを可能にする。
【0035】
いくつかの実施形態では、RNA構造の組み合わせは、mRNAの翻訳、又はRNA結合タンパク質への結合を通したmRNAのスプライシングに影響を及ぼすことができる。ライブラリーは、RNA構造の組み合わせを有する野生型UTR、及びRNA構造を破壊する変異を有するRNA構造を含むUTR含有の複数のRNA構築物を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、RNA構造における変異を含むUTR含有RNA構築物を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現されるコードRNA配列又は非コードRNA配列のクラスからのUTR構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるUTR構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0036】
同様に、ライブラリーは、RNA構造の組み合わせを有する野生型ステムループ又はマルチウェイジャンクションを含むステムループ又はマルチウェイジャンクション含有の複数のRNA構築物、及びRNA構造を破壊する変異を有するRNA構造を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、RNA構造における変異を含むステムループ又はマルチウェイジャンクション含有RNA構築物を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現されるコードRNA配列又は非コードRNA配列のクラスからのステムループ又はマルチウェイジャンクション構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるステムループ又はマルチウェイジャンクション構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、RNA構造の組み合わせは、IRES(内部リボソーム侵入部位)などの、機能的ドメインを形成することができる。この第2のドメインは、内部リボソーム侵入部位(IRES)を集合的に含む二次構造の組み合わせを含み得る。ライブラリーは、野生型IRES構造を含むIRES含有RNA構築物を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、変異体IRES構造を含むIRES含有RNA構築物を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現されるコードRNA配列又は非コードRNA配列のクラスからのIRES構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるIRES構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、各第2のドメインは、G-クアドルプレックス(G4)、マルチウェイジャンクションのステムループ、シュードノット、又はそれらの組み合わせを含む二次構造などの、複数のRNA構造からなる完全調節エレメントを含む。ライブラリーは、野生型G4、ステムループ、又はマルチウェイジャンクション構造などの野生型構造を含む、マルチウェイジャンクション、又はステムループ、又はG4含有RNA構築物などの、複数の二次構造を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、変異G4構造などの二次構造の変異体形態、又はマルチウェイジャンクション若しくはステムループ若しくは他の構造形成を破壊する変異を含む、ステムループ、マルチウェイジャンクション、G4含有RNA構築物などの二次構造を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現されるコードRNA配列又は非コードRNA配列のクラスからのG4構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるG4構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、トリプルヘリックスを含む二次構造を含み得る。ライブラリーは、野生型トリプルヘリックス構造を含むトリプルヘリックス含有RNA構築物を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、トリプルヘリックス構造を破壊することができる変異を含むトリプルヘリックス含有RNA構築物を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現される非コードRNA配列のコードのクラスからのトリプルヘリックス構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるトリプルヘリックス構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、シュードノットを含む二次構造を含み得る。ライブラリーは、野生型シュードノット構造を含むシュードノット含有RNA構築物を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、シュードノット構造を破壊することができる変異を含むシュードノット含有RNA構築物を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現されるコードRNA配列及び/若しくは非コードRNA配列からのシュードノット構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるシュードノット構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、ステム-ループを含む二次構造を含み得る。ライブラリーは、野生型ステム-ループ構造を含むステム-ループ含有RNA構築物を含み得、ライブラリーの他の細胞集団は、ステム-ループ構造を破壊することができる変異を含むステム-ループ含有RNA構築物を含む。細胞におけるRNA構築物は、目的の生物(例えば、ヒト)によって発現される非コードRNA配列のクラスからのステム-ループ構造を含むパネルを構成し得、コードRNA配列又は非コードRNA配列のクラスは、mRNA UTR、lncRNA、miroRNA、及びcirRNAから選択される。細胞におけるRNA構築物は、例えば、インシリコ又はインビトロスクリーニングによって定義されるように、目的の生物のゲノムによって発現されるステム-ループ構造の大部分、又は実質的に全て、例えば、これらの構造の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、RNA構築物の各第2のドメインは、RNA調節エレメントを含む。いくつかの実施形態では、RNA調節エレメントは、mRNAからの非翻訳領域(UTR)又はイントロンである。いくつかの実施形態では、UTR又はイントロンは、長非コードRNA(lncRNA)又はRNA結合タンパク質又はmicroRNA(miRNA)を結合する結合部位を含む。いくつかの実施形態では、RNA各第2のドメインは、レポーター遺伝子ではない遺伝子の5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、RNA各第2のドメインは、レポーター遺伝子ではない遺伝子の3’UTRを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、各第2のドメインは、G4、ステムループ、マルチウェイジャンクション、又はIRESなどの機能構造の構造の組み合わせの両方を含み得る。これらの構造/エレメントは、第2のドメイン/クエリー配列を形成するUTR構造内に含まれ得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、各第1のドメインのレポーター遺伝子は、1つ以上の蛍光タンパク質を発現する。例えば、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、及び/又は赤色蛍光タンパク質(RFP)であり得る。広範囲のプロモーターは、RNA構築物の一部、例えば、CMV、sv40、EF1a、CAG、PKG、又はH1を形成することができると想定される。プロモーターは、レポーター(例えば、GFP及びRFP)をコードする配列の上流に存在し得る。代替的、双方向プロモーターは、それらの間に配置され得る。RNA構築物は、蛍光タンパク質をコードする配列(例えば、GFPをコードする配列及びRFPをコードする配列)間で、発現カセット内に第2のドメインのIRESを含み得る。プロモーターは、GFP及びRFPをコードする配列の上流に存在し得る(IRESがそれらの間に配置されている)。代替的、発現カセットは、GFPのコード配列及びRFPのコード配列、並びにその間にバイシストロニックプロモーターを含み得る。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、第2のドメインは、各RNA構築物の5’末端に配置される。他の実施形態では、第2のドメインは、各RNA構築物の3’末端にある。
【0046】
いくつかの実施形態では、RNA構造は、レポーター(すなわち、GFP)の5’末端に配置される。他の実施形態では、RNA構造は、レポーターの3’末端に配置される。
【0047】
好ましい実施形態では、RNA構築物は、バーコード配列を含み、ステップb.は、レポーター遺伝子発現が、平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、細胞集団のバーコード配列を読み取るサブステップを更に含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、ステップb.は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、レポーター遺伝子発現が、平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、細胞集団を特定し、レポーター遺伝子発現レベルに従って細胞集団を分離する。
【0049】
いくつかの実施形態では、ステップa.は、マルチウェルプレートにおいて細胞のライブラリーを候補薬剤のパネルと接触させることによって行われる。他の実施形態では、ステップa.は、高スループット液滴マイクロ流体システムを介して細胞のライブラリーを候補薬剤のパネルと接触させることによって行われる。
【0050】
いくつかの実施形態では、候補薬剤は、小分子である。他の実施形態では、候補薬剤は、RNA分子、例えば、siRNA、miRNA、又はlncRNAである。候補薬剤が、タンパク質、例えば、RNA結合タンパク質(RBP)、イントラボディなどである、等価方法も想定される。
【0051】
いくつかの実施形態では、候補薬剤は、疾患を有する患者由来のiPS由来細胞株などの患者由来試料に導入された遺伝的摂動である。他の実施形態では、候補薬剤は、RNA分子、例えば、siRNA、miRNA、又はlncRNAである。候補薬剤が、タンパク質、例えば、RNA結合タンパク質(RBP)、イントラボディなどである、等価方法も想定される。
【0052】
いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、いくつかの細胞集団を標的とするが、他の細胞集団を標的としない薬剤(例えば、化学物質)又は遺伝的摂動のスクリーニングを伴う。細胞集団は、標的化が望まれるエレメント(例えば、がん関連遺伝子におけるRNA二次構造)を含むRNA構築物を含有するものと、標的化が望まれないエレメント(例えば、非がん関連遺伝子由来のRNA二次構造)を含むRNA構築物を含有するものと、に群化することができる。よって、我々は、例として、MYC、RAS、VEGF、及び/又はKRASなどの、がん関連遺伝子のmRNA中に存在する、複数のG4、ステムループ、又はマルチウェイジャンクション構造などの、複数のRNA構造と相互作用する薬剤をスクリーニングする方法を提供する。小分子、RNA分子、イントラボディなどは、RNA二次構造のこれらのサブセットを同時に結合して、複数の生物学的プロセスを標的とするように操作し、本発明を使用してスクリーニング及び検証することができる。
【0053】
これらの方法は、既知の及び/又は新しい薬剤が、RNA標的化作用様式を示すものとして特定されることを可能にする。
【0054】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載されるベクターのライブラリーで細胞の集団をトランスフェクト又は形質導入することによって、細胞のライブラリーを生成する方法を提供する。細胞は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞であり得る。細胞は、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(IPS細胞)であり得る。細胞は、腫瘍細胞であり得る。細胞は、組織試料由来であり得る。細胞は、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象からの生検由来であり得る。
【0055】
更なる態様では、本発明は、RNA調節エレメント及び/又は二次構造と相互作用する薬剤を選択するために候補薬剤のパネルをスクリーニングする多重化された方法を提供し、方法は、a.多重化された方法で細胞のライブラリーを候補薬剤のパネルと接触させることと、次いで、b.レポーター遺伝子発現が平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、1つ以上の細胞集団を特定することと、次いで、c.ステップbにおいて特定された当該細胞集団と接触していた候補薬剤を選択することと、を含む。
【0056】
RNA構築物は、バーコード配列を含み得、ステップb.は、レポーター遺伝子発現が、平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、細胞集団のいずれかのバーコード配列を読み取ることを更に含み得る。
【0057】
ステップa.は、マルチウェルプレートにおいて細胞のライブラリーを候補薬剤のパネルと接触させることによって、又は高スループット液滴マイクロ流体システムを介して細胞のライブラリーを候補薬剤のパネルと接触させることによって行われ得る。いくつかの実施形態では、候補薬剤は、小分子、又はsiRNA、miRNA、若しくはlncRNAなどのRNA分子である。
【0058】
ステップb.は、レポーター遺伝子発現が、平均レポーター遺伝子発現に対して増加又は減少している、細胞集団を特定するため、及びレポーター遺伝子発現レベルに従って細胞集団を分離するため、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いてもよい。
【0059】
更なる態様では、本発明は、RNA調節エレメント及び/又は二次構造の集団を、当該エレメント/構造の機能を評価するためにスクリーニングする方法を提供し、方法は、細胞のライブラリーを提供することと、細胞を増殖させることと、各細胞集団におけるレポーター遺伝子の発現レベルを評価することと、を含む。各RNA調節エレメントは、UTRであり得る。各RNA二次構造は、G4であり得る。RNA構築物は、目的の生物のゲノムによって発現される全てのG4構造を含み得る。RNA構築物は、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのG4構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される。各RNA調節エレメント及び/又は二次構造は、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含み得る。RNA構築物は、目的の生物のゲノムによって発現される全てのIRES構造を含み得る。RNA構築物は、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのIRES構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される。各RNA調節エレメント及び/又は二次構造は、トリプルヘリックスを含む。RNA構築物は、目的の生物のゲノムによって発現される全てのトリプルヘリックス構造を含み得る。RNA構築物は、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのトリプルヘリックス構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される。各RNA調節エレメント及び/又は二次構造は、シュードノットを含む。RNA構築物は、目的の生物のゲノムによって発現される全てのシュードノット構造を含む。RNA構築物は、目的の生物によって発現されるコードRNA配列若しくは非コードRNA配列のクラスからのシュードノット構造を含むパネルを構成し得、非コードRNA配列のクラスは、mRNA、lncRNA、miroRNA、又はcirRNAのイントロン若しくはUTRから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のRNA結合タンパク質をノックアウト、ノックダウン、又はサイレンシングするように遺伝子修飾されている。
【0061】
更なる態様では、本発明は、疾患状態に関連する遺伝的摂動を特定する方法を提供し、方法は、本発明の核酸構築物を含む細胞のライブラリーを提供することであって、細胞の第1の亜集団が、特定の疾患を有する1つ以上の対象由来のRNA調節エレメント及び/又は二次構造を含み、細胞の第2の亜集団が、特定の疾患を有しない1つ以上の対象由来のRNA調節エレメント及び/又は二次構造を含む、提供することと、第1及び第2の亜集団における相対レポーター遺伝子発現レベルを比較することと、を含む。
【0062】
更なる態様では、本発明は、疾患状態に関連する化学的摂動を特定する方法を提供し、方法は、本発明の核酸構築物を含む細胞のライブラリーを提供し、細胞の第1の亜集団を1つ以上の化学剤と接触させることと、第1の亜集団における相対レポーター遺伝子発現レベルを、1つ以上の化学剤、例えば、小分子、既知の治療剤、及び/又は更なるRNA分子と接触していない第2の亜集団の相対レポーター遺伝子発現レベルと比較することと、を含む。
【0063】
更なる態様では、本発明は、細胞ネットワーク又は生物学的表現型若しくは回路を作製する方法を提供し、方法は、(a)複数の細胞における各細胞が少なくとも1つの摂動を受ける、本発明の核酸構築物を含む細胞のライブラリーにおけるクエリー配列に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ以上の一次又はコンビナトリアル遺伝的摂動を導入することと、(b)(i)いずれの摂動も受けなかった1つ以上の細胞と比較した単一細胞におけるゲノム、遺伝的、プロテオミック、エピジェネティック、及び/又は表現型の違いを検出することと、(ii)単一細胞における摂動を検出することと、を含む、測定プロセスと、(c)測定された違いに共変量を説明するモデルを適用することによって摂動に関連する測定された違いを決定することと、を含み、それによって、細胞間及び/又は細胞内ネットワーク又は回路が推測される。測定プロセス(b)は、核酸構築物中に存在し得るバーコード配列を単一細胞配列決定すること及び/又は読み取ることを含み得る。モデルは、測定されたシグナルの捕捉率、摂動が実際に細胞を摂動させたか(表現型の影響)、異なる細胞若しくは細胞状態のいずれかの亜集団の存在、及び/又はいずれの摂動も伴わない一致した細胞の分析を説明し得る。
【0064】
本発明は、そのような組み合わせが明らかに許容されないか、又は明示的に回避される場合を除き、記載される態様及び好ましい特徴の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
ここで、本発明の原理を例示する実施形態及び実験を、添付の図面を参照して考察する。
【0066】
図1】RNA構造の機能を調査するために利用されるレポーター構築物の3つの図表示を示す。図1Aにおいて、RNA構造又はその変異バージョンの配列は、d2EGFPのすぐ上流にクローニングされる。mCherryは、それ自体のプロモーターによって発現され、内部対照として機能する。調査されている異なるRNA構造を表す、各レポーターは、EF1aプロモーターのすぐ下流にクローニングされた固有のバーコードを含有する。図1Bにおいて、RNA構造は、d2EGFPのすぐ下流にクローニングされる。調査されている異なるRNA構造を表す、各レポーターは、EF1aプロモーターの下流にクローニングされた固有のバーコードを含有する。図1Cにおいて、バイシストロニックレポーターシステムが表される。EF1aプロモーターは、IRESに隣接する2つのレポーター遺伝子(d2GFP及びmCherry)の上流にある。ヘアピンを形成するであろう配列は、リボソームのリードスルーを防止するように機能するd2GFPのすぐ下流にクローニングされる。調査されている異なるIRESエレメントを表す、各レポーターは、IRESのすぐ上流にクローニングされた固有のバーコードを含有する。ピューロマイシンは、それ自体のプロモーターhPGKによって発現され、内部制御として機能する。
図2】アッセイワークフローの一般的な概要を示す。異なるRNA構造を有する複数のレポーターがまず生成され、レンチウイルスにパッケージングされる。レンチウイルスがプールされ、プールのMOIが決定される。細胞は、低MOIで感染させて、細胞当たりの単一レポーター組み込みを確実にする。未処理の、又はRNA構造を調節する小分子で処理された、感染細胞は、mCherry及びGFP発現に基づいてFACS選別される。次いで、選別された集団は、バーコード及びNGSのPCR増幅に供される。
図3】アンプリコン配列決定戦略の例を示す。(A)ユニバーサルフォワードプライマー及びリバースプライマーを、固有のバーコードに隣接する定常領域において設計して、200~250ntのアンプリコン生成物を得た。(B)2段階PCR戦略が採用され、1.埋め込まれたバーコードを有する領域は、記載されるプライマーを用いてgDNAから増幅される。2.フォワードプライマー及びリバースプライマーは、第1のPCRの生成物上にアニーリングされる。フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方は、固有の試料指標を有する。(C)gDNAは、レポーターで感染させた細胞プールから単離し、バーコード領域は、PCRを用いて増幅した。PCR生成物は、Agilent TapeStationで分析され、適切なインサートサイズを明らかにする。異なる実施形態では、プライマーは、d2EGFPの3′UTRにおいてクローニングされた構造のバーコードを増幅するように設計した。
図4】Gクアドルプレックス(G4)である、例示的な標的LTX032のための例示的なフローサイトメトリー分析ワークフローを示す。(A)レポーターレンチベクターで感染させた細胞におけるGFP発現を調べるために用いられる典型的なフローサイトメトリーゲーティング戦略。ゲートは、単一の生細胞を特定するように設定した。次いで、GFP発現は、mCherry陽性細胞において定量化した。(B)3つの異なるレポーター構築物で感染させた細胞におけるGFP発現を表すヒストグラム、1.5’UTR空ベクター、2.5’UTRにクローニングされたLTX032(RNA構造)、3.レポーターの上流のカセットにクローニングされたLTX032sc(同じRNA構造の変異バージョン)。
図5】レポーターアッセイにおいてRNA構造機能性を試験する例を示す。細胞プールを、一定のMOIで個々のレポーター構築物で感染させた。それぞれmCherry%細胞及びmCherry MFIによって決定される、感染効率及びmCherry発現レベルは、感染細胞集団にわたって一定であった。変異した対照及び空ベクターに対して、野生型RNA構造を含有するレポーターで感染させた細胞プールにおけるGFP発現の低減が観察された。これは、この例示的なRNA構造が、GFPの翻訳を抑制することにおいて機能的であることを示す。
図6】プールされたレンチウイルスアプローチの例を示す。野生型RNA構造及びそれらの変異体バージョン並びに空ベクターを含む、10レポーターのレンチウイルスを手動でプールし、プールのMOIを決定した。(A)細胞をレンチウイルスプールで感染させ、フローサイトメトリー分析に供した。ゲートは、単一の生細胞を特定するように設定した。mCherry陽性細胞においてGFP発現分布を定量化した。細胞をそれらのGFP発現に基づいて選別した。選別された細胞集団を、図3に記載されるように、ユニバーサルプライマーを利用してバーコードのgDNA抽出及びPCR増幅に供した。増幅された生成物をNGSに供した。(B)レポーターをそれらのバーコードに基づいてデコンボリューションし、倍率変化をGFP低/GFP低細胞間で計算した。
【発明を実施するための形態】
【0067】
ここで、本発明の態様及び実施形態を、添付の図面を参照して考察する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本文で言及される全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書では、我々は、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの機能的エレメントにおける特定のRNA構造クラス内の複数のRNA構造(例えば、G-クアドルプレックス、トリプルヘリックス、シュードノット、マルチウェイジャンクション、又はそれらの組み合わせに対して遺伝的又は化学的なライブラリーのスクリーニングを可能にする細胞スクリーニングプラットフォームについて記載する。
【0069】
ベクターは、真核細胞においてRNA構造を発現するために使用され得る。使用され得るベクターとしては、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、及び人工染色体が挙げられる。使用され得るウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)が挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、レンチウイルスベクターが挙げられる。本発明のベクターは、安定してトランスフェクトされた細胞又は一時的にトランスフェクトされた細胞をもたらし得る。
【0070】
一実施形態では、RNA構造モチーフの遺伝的摂動は、レポーター遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、このレポーター遺伝子は、1つ以上の蛍光タンパク質を発現する。レポーター遺伝子の改変された発現は、改変された蛍光読み出しをもたらし、この蛍光読み出しは、細胞選別機構を使用して細胞を分離するために使用される。各カテゴリー内の細胞は、次いで選別され、RNA構築物上のDNAバーコードは、各プール内の細胞を配列決定して、各カテゴリー内の元の構築物の容易なマッピングを可能にするために、次いで使用される。
【0071】
一実施形態では、RNA構造モチーフへの小分子の結合は、レポーター遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、このレポーター遺伝子は、1つ以上の蛍光タンパク質を発現する。レポーター遺伝子の改変された発現は、改変された蛍光読み出しをもたらし、この蛍光読み出しは、細胞選別機構を使用して細胞を分離するために使用される。各カテゴリー内の細胞は、次いで選別され、RNA構築物上のDNAバーコードは、各プール内の細胞を配列決定して、各カテゴリー内の元の構築物の容易なマッピングを可能にするために、次いで使用される。
【0072】
よって、IRESエレメント(内部リボソーム侵入部位)などの機能構造を形成することができる、G-クアドルプレックス、トリプルヘリックス、シュードノット、及びマルチウェイジャンクション、又はそれらの組み合わせなどのいくつかの異なる機能的RNA構造は、調査の対象である。このアプローチは、並列した複数の遺伝的摂動の効果又は並列した複数の類似RNA構造に対する化合物セットの効果の研究を可能にする。このアプローチは、我々が遺伝的変異又は化学的摂動の効果を大規模に特定することを可能にする。これは、一般的なRNAモチーフ結合剤及び特定のRNA構造に特異的に結合する結合剤が互いに区別されることを可能にするであろう。更に、このアプローチはまた、医化学キャンペーンに適用することができ、科学文献からの化合物をスクリーニングし、G-クアドルプレックス、ステムループ、又はマルチウェイジャンクションなどの、所与のRNA構造クラスにわたる特異性及び選択性に対する化学修飾の影響を研究することができる。これらの組み合わせは、内部リボソーム侵入部位などの機能的エレメント、又はHNRNPなどのRNA結合タンパク質のスプライシング部位のための結合部位を形成することができる。
【0073】
キナーゼパネルと同様に、G-クアドルプレックスなどの、RNAパネル、又はIRESパネルが組み立てられ得る。これらのタイプのRNA二次構造は、以下のセクションにおいて簡潔に考察される。
【0074】
G-クアドルプレックス(G4)
G-クアドルプレックス(G4)は、同じ又は異なる鎖上のいずれかで、グアニン塩基の会合によって形成される、核酸三次構造である。4つのグアニン塩基は、Hoogsteen水素結合によって相互作用して、グアニンテトラッド(G-テトラッド)、他のG-テトラッドと水素結合することができる正方形平面構造を形成して、G-クアドルプレックスを形成する。G4は、転写調節、テロメア長調節、及び免疫グロブリン重鎖スイッチングなどの、広範な生物学的機能に関与すると考えられる。
【0075】
内部リボソーム侵入部位(IRES)
IRESは、キャップ非依存的な様式で翻訳開始を誘発することによって代替翻訳を調整するRNAエレメントである。IRESは、RNAにおける5’UTR又は他の場所に位置し得る。哺乳動物mRNAの10%は、代替的な翻訳に使用することができるIRESエレメントを有する。IRESの構造は、リボソームがその二次又は三次構造に結合することによってIRESにリクルートされるため、それらの機能にとって重要である。
【0076】
デュアルプロモーターレポーターシステム
RNA構造の翻訳制御は、デュアルプロモーターレポーターシステムを使用して測定することができる。このレポーターは、ORFの5’又は3’末端に局在するRNA構造を含む。ORFは、ホタルルシフェラーゼ又はGFPなどの、レポーター遺伝子をコードする。次いで、ORFの翻訳は、このRNA構造によって調節される。構造が翻訳を抑制するように機能する場合、蛍光シグナルの喪失が予想される。逆に、構造が翻訳を増強するように機能する場合、蛍光シグナルの獲得が予想される。第2のプロモーターは、第2のORFの発現を駆動するために含まれる。第2のORFは、内部対照として機能する、RFP及びレニラルシフェラーゼなどの、異なるレポーター遺伝子をコードする。
【0077】
バイシストロニックレポーターシステム
IRES活性は、バイシストロニックレポーターシステムによって測定することができる。これは、IRESに隣接する2つの完全オープンリーディングフレーム(ORF)の上流にプロモーターを有するmRNAを含む。各ORFは、GFP又はホタルルシフェラーゼなどの、レポーター遺伝子をコードする。mRNAの転写時に、IRESの上流のORFは、キャップ依存的な様式で翻訳され、一方IRESの下流のORFは、キャップ非依存的な様式で翻訳され、IRESによって開始される。
【0078】
それらの特定の形態で、又は開示される機能を行うための手段、又は必要に応じて、開示される結果を得るための方法若しくはプロセスの観点で表される、前述の記載において、又は以下の特許請求の範囲において、又は添付の図面において開示される特徴は、個別に、又はそのような特徴の任意の組み合わせで、その多様な形態で本発明を実現するために利用され得る。
【0079】
本発明は、上記に記載される例示的な実施形態と併せて記載されているが、多くの等価修飾及び変形は、本開示が与えられるとき当業者には明らかになるであろう。したがって、上記に記載される本発明の例示的な実施形態は、限定するものではなく、例示的であるとみなされる。記載される実施形態への様々な変更が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0080】
任意の疑義の回避のために、本明細書で提供される任意の理論的説明は、読者の理解を改善する目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれによっても拘束されることを望まない。
【0081】
本明細書で使用される任意のセクション見出しは、構成上の目的のためだけのものであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0082】
文脈が別段に必要としない限り、以下の特許請求の範囲を含む、本明細書全体を通して、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という語、並びに「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、及び「含む(including)」などの変形は、述べられた整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0083】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数参照を含むことに留意する必要がある。本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、そのある特定の値から、及び/又はその他の特定の値まで、を含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞の「約」を使用することによって、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する「約」という用語は、任意であり、例えば、+/-10%を意味する。
【0084】
定義
本明細書において、「作動可能に結合した」という用語は、選択されたヌクレオチド配列及び調節ヌクレオチド配列が、ヌクレオチドコード配列の発現を調節配列の影響又は制御下に置くような方法で共有結合している状況を含み得る。よって、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部又は全部を形成するヌクレオチドコード配列の転写に影響を及ぼすことができる場合、調節配列は、選択されたヌクレオチド配列に作動可能に結合している。必要に応じて、得られた転写物は、次いで、所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳され得る。
【0085】
本発明による方法は、インビトロ、エクスビボ、若しくはインビボで実施され得るか、又は生成物は、インビトロ、エクスビボ、若しくはインビボで存在し得る。「インビトロ」という用語は、実験室条件における又は培養における材料、生物学的物質、細胞、及び/又は組織での実験を包含することを意図しており、「インビボ」という用語は、無傷の多細胞生物での実験及び手順を包含することを意図している。「エクスビボ」は、有機物の外側、例えば、ヒト又は動物の体の外側に存在するか、又は発生するものを指し、これは、有機物から採取された組織(例えば、全臓器)又は細胞上にあり得る。
【0086】
方法がインビトロで実施される場合、それは、高スループットスクリーニングアッセイを含み得る。方法において使用される試験化合物は、合成コンビナトリアルペプチドライブラリーから得られ得るか、又は合成ペプチド若しくはペプチド模倣分子であり得る。他の試験化合物は、定義された化学物質、オリゴヌクレオチド、又は核酸リガンドを含み得る。
【実施例
【0087】
実施例1
RNA構造の機能調査のための高スループット試験に適したレポーターの設計
レンチベクター骨格を、以下の特徴:不安定化GFP(d2EGFP)、トランスフェクションの内部対照として機能するmCherry:ピューロマイシン融合生成物、及びバーコードを含むように修飾した。このレポーターでは、EF1aプロモーターは、d2GFPの発現を駆動する。野生型又は変異体のいずれかの、RNA構造を有するこのインサートを、レンチベクターにおけるd2EGFPのUTRにクローニングして、d2EGFPの翻訳に対するその機能的効果を研究した。ここで、mCherryは、CMVプロモーターの制御下で独立して発現され、内部制御として機能する。調査された各RNA構造について、RNA構造の変異バージョンを含有するレンチベクターも生成した。レンチベクターをパッケージングし、レンチウイルス力価をp24 ELISA法を用いて測定した。
【0088】
実施例2
レポーターシステムを使用したRNA構造の機能評価
まずレンチウイルス感染を最適化した。ウェル当たり4,000個の細胞を、3つの異なるMOI(3、10、30)で感染させた。感染は、ポリブレン(2、4、又は8ug/mL)の有無、かつスピンフェクション(900g、1時間)の有無にかかわらず行った。蛍光を、感染から48時間後の様々な感染条件において、IncuCyteを使用して評価した。スピンフェクションと組み合わせた8ug/mLのポリブレンは、最も高い感染率をもたらしたが、感染は、ポリブレン又はスピンフェクションの非存在下で効率的であった。感染、ポリブレン、又はスピンフェクションによる細胞増殖に対する有意な効果は観察されなかった。蛍光タンパク質の発現ダイナミクスを評価するために、細胞を、上記のように感染させ、蛍光を、IncuCyteを使用して監視した。d2GFP及びmCherryの両方は、感染後16~20時間の間に検出可能になった。d2GFPシグナルは、不安定化された性質のために32~36時間後にプラトーに到達した。
【0089】
ウェル当たり200,000個の細胞(6ウェルフォーマット)を、ポリブレン、又はスピンフェクションなしで、1のMOIで感染させた。ウイルス含有培地を18時間後に除去し、新鮮培地によって置き換えた。細胞を更に24時間培養した。感染から42時間後、細胞をPBSで洗浄し、分離し、生存率染色のために96ウェルフォーマットに移した。細胞をZombie Violet Fixable Viability色素で染色した。Zombie Violet色素をPBS(18ml+18μl ZoVi)中で1:1000で希釈し、100uLを各ウェルに添加した。細胞溶液を暗所で20分間室温でインキュベートした。細胞をスピンダウンし、上清を除去した。細胞を150μl BioLegend’s Cell Staining Buffer(カタログ番号420201)で1回洗浄し、上清をスピンダウン後に除去した。100uLの4%PFA溶液を各ウェルに添加し、クラスタリングを回避するために直ちに混合した。細胞を暗所で20分間、室温で固定した。スピンダウン後、細胞を100uLのPBSで洗浄した。染色及び固定された細胞を、FACSJazz器具での獲得まで、4℃の暗所で保存した。
【0090】
実施例3
プールされたレンチウイルス形質導入
レンチウイルスプールを、WT、MUT、又は対照レンチベクターのいずれかを含有する10個のレンチウイルスをプールすることによって生成した。プールの力価は、3,4x10^8TU/mlであると決定した。2000万個の細胞を、FACSを用いて分析した。プールの感染率は、29.2%であると決定した。「GFP高」カテゴリー(上位25%)中の100,000個の細胞及び「GFP低」カテゴリー(下位25%)中の72,000個の細胞を細胞選別後に得た。
【0091】
実施例4
gDNA単離、PCR、及び配列決定
DNA単離を、GeneRead FFPEキットを使用して行った。合計344.ngのDNAを「GFP高」選別集団から単離し、305.12ngを「GFP低」選別集団から単離した。100ngの投入材料をPCR反応に使用した。200ntアンプリコンが生成されるように、21ntの長さのフォワード及びリバースプライマーを、バーコード領域を増幅するように設計した。プライマーのTmは61度であり、GC含有量は57%であった。次いで、フォワードプライマー及びリバースプライマーを第1のPCR反応の生成物上にアニーリングした。フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方は、固有の試料指標を有する。PCR生成物をAgilent TapeStationで分析した。
【0092】
参考文献
本発明及び本発明が関連する最新技術をより完全に記載及び開示するために、いくつかの刊行物が上記に引用されている。これらの参考文献の完全な引用は、以下に提供される。これらの参考文献の各々の全体が本明細書に組み込まれる。
Jones et al.,“A Scalable,Multiplexed Assay for Decoding GPCR-Ligand Interactions with RNA Sequencing”,2019,Cell Systems 8,254-260
EP3649236A1,“Multiplexed receptor-ligand interaction screens”(Kosuri&Jones)
Dixit et al.,“Perturb-seq:Dissecting molecular circuits with scalable single cell RNA profiling of pooled genetic screens”Cell.2016;167(7):1853-1866.e17.
WO2017/075294,“Assays For Massively Combinatorial Perturbation Profiling And Cellular Circuit Reconstruction”(Regev et al.)
Rizvi et al.,“RNA-ALIS:Methodology for screening soluble RNAs as small molecule targets using ALIS affinity-selection mass spectrometry”,Methods 2019;167:28-38
Fardokht et al.,“Selective Small-Molecule Targeting of a Triple Helix Encoded by the Long Noncoding RNA,MALAT1”,CS Chem.Biol.2019,14,2,223-235
Connelly et al.,“Discovery of RNA Binding Small Molecules Using Small Molecule Microarrays”,Methods Mol Biol.2017;1518:157-175.
Pedram Fatemi et al.,“Screening for Small-Molecule Modulators of Long Noncoding RNA-Protein Interactions Using AlphaScreen”,J Biomol Screen.2015 Oct;20(9):1132-41
Lorenz et al.,“Development and Implementation of an HTS-Compatible Assay for the Discovery of Selective Small-Molecule Ligands for Pre-microRNAs”,SLAS Discov.2018 Jan;23(1):47-54.
Sidarovich et al.,“A Cell-Based High-Throughput Screen Addressing 3′UTR-Dependent Regulation of the MYCN Gene”,Mol Biotechnol.2014;56(7):631-643.
Yang et al.,“IRES-mediated cap-independent translation,a path leading to hidden proteome”,J Mol Cell Biol.2019 Oct 25;11(10):911-919
Hejazi Pastor,“Targeting the CACNA1A IRES as a Treatment for Spinocerebellar Ataxia Type6”,Cerebellum.2018 Feb;17(1):72-77
Vaklavas et al.,“Small molecule inhibitors of IRES-mediated translation”,Cancer Biol Ther.2015;16(10):1471-85
標準的な分子生物学的手法については、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3 ed.2001,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】