IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファルマヌートラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

特表2024-509476鉄欠乏症の処置を受けた対象体における胃腸炎症の処置に用いるための鉄ベースの組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】鉄欠乏症の処置を受けた対象体における胃腸炎症の処置に用いるための鉄ベースの組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/26 20060101AFI20240222BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K33/26
A61P1/04
A61P7/06
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/24
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555716
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 IB2022052257
(87)【国際公開番号】W WO2022190072
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021000005981
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523345851
【氏名又は名称】ファルマヌートラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PHARMANUTRA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ラコルテ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】タランティーノ,ジェルマーノ
(72)【発明者】
【氏名】ブリッリ,エリーザ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC14
4C076CC16
4C076DD15
4C076DD68
4C076EE38
4C076FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA11
4C086HA19
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZA55
4C086ZA66
(57)【要約】
本発明は、鉄欠乏症の治療的または非治療的処置において対象体に製剤を投与することにより胃腸炎症を処置する方法で使用するための鉄ベースの製剤およびその組成物であって、該鉄製剤が、処置対象体の腸内微生物叢に存在する病原性細菌の量を減少させる(または一定に維持する)ことができる、好ましくは処置対象体の腸内微生物叢の種類を増加させることができる製剤および組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄欠乏症の治療的処置を以前受けていた対象体において、鉄(II)化合物または塩を該対象体に投与することにより、胃腸炎症を処置する方法で使用するための鉄(III)製剤であって、
- 該鉄(III)製剤が、処置対象体の腸内微生物叢に存在するプロテオバクテリア門に属する病原性細菌の量を減少させ、
- 該鉄(III)製剤が、
(a)鉄(III)塩または錯体、
(b)少なくとも1つのリン脂質、
(c)スクレスターまたはショ糖エステル
を含むかまたはそれらからなる、製剤。
【請求項2】
処置対象体が、胃腸炎症の対象体であり、かつ貧血であり、鉄(II)化合物または塩に基づく処置で以前処置されていたが、不成功であった、請求項1に記載の使用のための鉄(III)製剤。
【請求項3】
処置方法が、胃腸炎症および貧血を有する対象体を処置するためであり、好ましくは胃腸炎症が、再発型である、請求項1または2に記載の使用のための鉄(III)製剤。
【請求項4】
処置方法が、胃腸炎症を軽減するためであり;好ましくは、炎症が、感染によるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項5】
プロテオバクテリア門に属する病原性細菌が、大腸菌、ピロリ菌、チフス菌、コレラ菌、レンサ球菌を含むかまたはそれらからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項6】
鉄(III)製剤が、処置対象体の腸内微生物叢の種類を増加させるかまたは変化させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項7】
鉄(III)製剤が、(d)植物由来のゼラチン化またはアルファー化デンプン;好ましくはコメデンプンまたはトウモロコシデンプン;より好ましくはアルファー化コメデンプンをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項8】
(b)少なくとも1つのリン脂質が、レシチン;好ましくは、ヒマワリレシチン、トウモロコシレシチン、大豆レシチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるレシチン(E322)からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項9】
(c)スクレスターまたはショ糖エステルが、スクレスターE473;好ましくは、スクレスターの総重量に対して30~95重量%、好ましくは50~85重量%の植物由来の脂肪酸、好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸からなる脂肪酸を有する少なくとも2つのショ糖モノエステルを含むスクレスター(例えばE473)からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項10】
鉄(III)製剤が、
(a)ピロリン酸鉄(III)、
(b)ヒマワリレシチン;
(c)スクレスターまたはショ糖エステル;および
(d)アルファー化コメデンプン
を含むかまたはそれらからなり、
好ましくは、(c)スクレスターまたはショ糖エステルと(b)リン脂質またはレシチン間の[(c):(b)]の重量比が、50:1~10:1、好ましくは40:1~10:1、より好ましくは30:1~15:1に含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項11】
胃腸感染が、腸炎症、胃腸潰瘍、慢性胃炎、胃萎縮、腸憩室、下痢、嘔吐、胃腸痛、悪心、便秘からなる群より選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項12】
対象体が、胃腸感染を有するかまたはそのリスクのある対象体であり;
好ましくは、胃腸感染を有するかまたはそのリスクのある対象体が、栄養摂取が不十分な対象体、不適切な衛生状態で生活している対象体、セリアック病の対象体、IBDの対象体、肥満手術を受けた対象体、胃炎の対象体、萎縮性胃炎の対象体、胃食道逆流症(GERD)の対象体からなる群より選択される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【請求項13】
組成物が、
請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤、および
少なくとも1つの医薬または食品グレードの添加物および/または添加剤
を含むかまたはそれらからなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄欠乏症の処置を受けた対象体における胃腸感染の処置方法で使用するための、鉄ベースの製剤およびそれを含む組成物に関する。該処置方法によって、鉄欠乏症の治療的または非治療的処置を受けた対象体において鉄製剤を投与することにより生じる胃腸障害などの病的副作用またはその悪化を低減することができる。特に、鉄製剤およびそれを含む組成物は、処置対象体の腸内微生物叢に存在する、好ましくはプロテオバクテリア(Proteobacteria)門に属する、病原性細菌に量を減少させる(または、それを一定に維持するかもしくはその成長に対抗する)ことができる。さらに、鉄製剤およびそれを含む組成物は、有利には、バランスを生物に有利な種へシフトさせることにより処置対象体の腸内微生物叢の多様性を増加させることができ、それ故に、生じる副作用を低減させることができる。
【0002】
現在市場で入手可能なもの、例えばFe(II)ベースのものより選択される鉄ベースの補給剤の投与後、病原性細菌(例えばプロテオバクテリア門)の蔓延(または増加もしくは上昇)が、鉄ベースの補給剤を摂取する処置対象体の(胃)腸微生物叢で生じ得ることが知られている。
【0003】
腸内細菌叢異常(dysbiosis)は、腸内で、その炎症を引き起こす微生物である、いわゆる「悪玉」細菌の過剰増殖によって引き起こされる微生物の不均衡の状態である。マイクロバイオームは、我々生体、特に腸内に共存する共生細菌の集合であり、免疫系と密接に関係しているため、免疫寛容の制御において極めて重要な役割を果たしている。腸内マイクロバイオームの均衡が変化すると、それは腸内細菌叢異常と呼ばれ、栄養不良によっても引き起こされ得る障害であり、慢性炎症性疾患、肥満、腫瘍および大腸炎に関連している。
【0004】
鉄補給後の胃腸病原菌の増加は、地理的領域または胃腸病原菌の存在が風土性である対象体(例えば発展途上国および/または栄養不良の対象体)において特に明白である。胃腸病原性細菌の蔓延は、胃腸感染および消化管感染に関連する疾患および/または障害、例えば腸炎症、胃腸潰瘍、慢性胃炎、胃萎縮、腸憩室、下痢、嘔吐、悪心および胃腸痛のリスクを高める。
【0005】
また、胃腸感染または障害は、鉄ベースの補給剤によって投与される鉄の吸収を低下させる。
【0006】
さらに、鉄欠乏症の対象体は、軽度であっても、一般に腸内微生物叢の不均衡を示し、特に短鎖脂肪酸の産生者として知られる有益な細菌の減少に伴う胃腸微生物叢の多様性の低下を示す。これは、鉄欠乏症の対象体(必ずしも貧血ではない)は、鉄欠乏症の影響を受けていない対象体と比較して胃腸感染にかかりやすいことを意味する。
【0007】
文献WO2019/025922は、鉄欠乏症を処置するための、鉄(III)塩、リン脂質およびスクレスター(sucrester)を含む組成物に関する。
【0008】
Abbati Gらの論文XP036744615は、胃腸障害を処置するための、Sucrosomial(登録商標)鉄と称される鉄ベースの組成物の使用に関する。
【0009】
Susana Gomez-Ramirezらの論文XP055665686は、胃腸障害を処置するための、Sucrosomial(登録商標)鉄と称される鉄ベースの組成物の使用に関する。
【0010】
Angela Fabianoらの論文XP055665690は、概してSucrosomial(登録商標)鉄と称される鉄ベースの組成物の胃腸吸収に対する研究に関するが、胃腸炎症の処置は開示していない。
【0011】
Angela Fabianoらの論文XP085262682は、概してインビボおよびインビトロのモデルにおける吸収に対する研究に関するが、胃腸炎症の処置は開示していない。
【0012】
Das Nupurらの論文XP055855831は、概して腸内微生物叢およびその調節に関する。
【0013】
現在までに、胃腸副作用、例えば下痢、悪心、嘔吐および腹痛を引き起こし得る鉄ベースの補給剤が多く市販されている。
【0014】
さらに、消化管内腔中の過剰な有利鉄は、基本的な腸内マイクロバイオームに悪影響を及ぼす病原性細菌の増殖を腸内で引き起こし、これは、腸内細菌叢異常を引き起こし、胃腸感染のリスクを上昇させ得る。
【0015】
上記の観点から、本発明が対処し解決すべき技術的課題は、鉄を補給することに加えて、胃腸感染または障害、例えば一般的な鉄ベースの補給剤の投与に関連する病的副作用を予防または軽減する鉄補給組成物を提供することである。
【0016】
言い換えれば、本発明が対処し解決すべき技術的課題は、鉄を補給することに加えて、(胃)腸微生物叢における病原性細菌(例えばプロテオバクテリア門)の増加を引き起こさないおよび/または防止する、および/または(胃)腸微生物叢のバランスおよび適切な多様性を回復させるのに有効であり、そして結果として、胃腸感染または障害、例えば一般的な鉄ベースの補給剤に関連する病的副作用を予防または軽減する鉄補給組成物を提供することである。
【0017】
さらに、腸内微生物叢の障害につながる疾患(IBD、セリアック病など)を有する対象体または栄養摂取が不十分であるかもしくは悪い衛生状態で生活している対象体などにおいて、胃腸微生物叢に病原性細菌(例えばプロテオバクテリア門)が存在する風土性状態を悪化させない鉄補給組成物が必要とされている。
【0018】
(胃)腸微生物叢の適切な多様性を回復させることは、主に、病原性細菌(プロテオバクテリア門)の増加を軽減または回避し、短鎖脂肪酸を産生できる細菌を増加させることからなるが、それだけではない。
【0019】
熱心な研究開発活動の後、本願出願人は、記載し、かつ請求する、鉄欠乏症の(治療的または非治療的)処置のための鉄(III)塩、リン脂質およびスクレスターを含む固形形態の鉄製剤(簡潔には、本発明による鉄製剤またはsucrosomal(登録商標)鉄)を提供することにより、上記の報告されている技術的課題に対処し、解決する。
【0020】
本発明による鉄製剤(sucrosomial(登録商標)鉄)は、例えば硫酸鉄を含む比較組成物より腸内微生物叢の多様性を大きく増加させること示した。特に、本発明による鉄製剤は、プロテオバクテリア門に属する病原性細菌の減少および短鎖脂肪酸を産生できる細菌の増加に対してプラスの効果を有することを示した。
【0021】
以下の詳細な説明から明らかになるこれらおよび他の目的は、明細書に示され、添付の特許請求の範囲に記載される技術的特徴の結果、本発明の固形形態の鉄製剤および関連する組成物により達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1A~Dは、3群のマウス(ID、FSおよびIS)における体重(A)、肝臓の鉄濃度(B)、血清鉄(C)およびトランスフェリン飽和度(D)を示す。すべてのデータは、10匹のマウスでの平均±SEMを表わす(***P<0.005)。
図2図2A~Dは、赤血球数(A)、ヘモグロビン(B)、ヘマトクリット(C)および平均赤血球容積(D)を示す。すべてのデータは、10匹のマウスでの平均±SEMを表わす(*P<0.05、***P<0.005)。
図3図3は、欠乏飼料(Aまたはベースライン)を用いて2週間後および分析下の鉄含有飼料(BまたはFS_B、ID_B、SI_B)を用いて2週間後に、各マウスから採取した糞便サンプルにおけるベータ多様性による微生物叢組成の測定結果である。
図4図4A~Bは、単一サンプルにおける微生物の多様性の測定結果である;図4Aは、各群の動物についての均一性、豊富さおよびシャノン指数を示し;図4Bは、ベースライン(A)に対する、特定の飼料(B)を用いた2週間後の各マウスにおけるシャノン指数および豊富さの変化を示す。
図5図5Aおよび5Bは、sucrosomial(登録商標)鉄(IS)または硫酸鉄(FS)を与えられたマウスにおける門(プロテオバクテリアおよびバクテロイドータ)レベルでの微生物組成の差異を表わす:ベースライン(A)に対する、示した特定の飼料(B)を用いた2週間後の各マウスのマイクロバイオームにおいて生じる方向変化。
図6図6A~6Gは、sucrosomial(登録商標)鉄(IS)または硫酸鉄(FS)を与えられたマウスにおけるアンプリコン単一バリアント(ラクノスピラセア種(asv33;asv24;asv72)、リケネラセアRC9(asv30;asv151)、フェカリバキュラム(asv90;asv18)、コリデキストリバクター(asv124)、オシリバクター(asv163)、パラステレラ(asv70)およびラクトバシラス(johnsonii_asv2))レベルでの微生物組成の差異を表わす:ベースライン(A)に対する、示した特定の飼料(B)を用いた2週間後の各マウスのマイクロバイオームにおいて生じる方向変化。
【発明の概要】
【0023】
本願出願人は、対象体が鉄ベースの治療を受けるとき、そのような治療を開始するに至った理由に関わらず(そのような理由が病的状態による鉄欠乏症、または、例えば激しいスポーツ活動による鉄レベルの回復の必要性に関連する可能性がある)、対象体の身体的状態および健康状態に応じて、2つのケースが極めて頻繁に発生することを発見した。
【0024】
第1のケースでは、すでに胃腸の病理学的障害または状態を患っていることに加えて、鉄欠乏症も患っており、それが問題の対象体が鉄ベースの治療を受けている理由である、対象者を扱い得る。この状況において、例えば鉄(II)をベースとする市販の鉄補給剤を摂取している対象体は、不適切な形態の鉄、鉄塩または鉄イオンの摂取によって胃腸の病的状態が著しく悪化する。
【0025】
第2のケースでは、スポーツマン/スポーツウーマンのように、健康状態が良好であるにも関わらず、病理学的起源または性質ではない理由で鉄レベルを回復する必要がある対象体を扱い得る。この状況においても、例えば鉄(II)をベースとする市販の鉄補給剤を摂取している対象体は、不適切な形態の鉄、鉄塩または鉄イオンの摂取によって胃腸の病理学的状態を引き起こし得る。
【0026】
本願出願人は、その製剤およびそれを含む組成物が、鉄または鉄塩または鉄イオンを、有害な病原性種の蔓延に有利な腸内微生物叢の変化(changes)または改変(alteration)を引き起こさないような特別かつ適切な形態を含むことを発見した。この効果は、本発明の製剤が胃腸感染または細菌叢異常の存在下で投与されるかどうかに関わらず達成される。
【0027】
本発明の目的は、鉄欠乏症の治療的または非治療的処置を受けた対象体において、本発明の固形形態の鉄製剤を投与することにより、胃腸炎症を処置する方法(すなわち病的副作用を低減および/または予防するための方法)で使用するための固形形態の鉄製剤を提供することである。
【0028】
本発明の更なる目的は、鉄欠乏症の治療的または非治療的処置を受けた対象体において、胃腸炎症の処置方法(すなわち病的副作用を低減および/または予防するための方法)で使用するための鉄組成物であって、該組成物が、固形形態の鉄製剤および少なくとも1つの添加物および/または添加剤を含む、組成物を提供することである。
【0029】
本発明の更なる目的は、鉄欠乏症を処置するために投与される治療有効量の鉄製剤または組成物を対象体に投与することにより、胃腸障害を処置する方法(すなわち病的副作用を低減および/または予防するための方法)を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的をなすものは、本発明の鉄製剤を投与することにより、鉄欠乏症の治療的処置(病的対象体)または非治療的処置(健康な対象体)を受けた対象体において、感染症に起因するかまたは起因しない胃腸炎症(および/またはそれに関連する疾患および/または症状)を処置する方法における使用のための固形形態の鉄製剤であって、該鉄製剤が、処置対象体の腸内微生物叢に存在する病原性細菌の量を減少させるかまたは一定に維持し、該製剤(略して、本発明の製剤)が:
(a)鉄塩または鉄錯体または酸化鉄、好ましくは鉄塩の鉄;
(b)少なくとも1つのリン脂質;
(c)スクレスターまたはショ糖エステル
を含むかまたはそれらからなる、製剤である。
【0031】
本発明の別の目的をなすものは、鉄欠乏症の治療的処置を以前受けていた対象体において、鉄(II)化合物または塩を該対象体に投与することにより、胃腸炎症を処置する方法で使用するための固形鉄(III)製剤であって、該鉄(III)製剤が、処置対象体の腸内微生物叢に存在するプロテオバクテリア門に属する病原性細菌の量を減少させ、該鉄(III)製剤が、(a)鉄(III)塩または錯体、(b)少なくとも1つのリン脂質、(c)スクレスターまたはショ糖エステルを含むかまたはそれらからなる、製剤である。好ましくは、該処置対象体は、胃腸炎症および貧血を有する対象体であり、鉄(II)化合物または塩、例えば硫酸鉄(II)に基づく別個で独立した処置で以前処置されていたが、治癒の兆候を示さなかったかまたはIBDなどの胃腸炎症を悪化させたことを考慮すると不成功であった。好ましくは、処置方法は、胃腸炎症、例えばIBD、および貧血を有する対象体を処置するためであり;好ましくは胃腸炎症が、再発型である。
【0032】
有利には、処置対象体の腸内微生物叢に存在する病原性細菌の量を減少させるかまたは一定に維持することに加えて、固形形態の鉄製剤はさらに、処置対象体の腸内微生物叢の種類を増加させる。
【0033】
リン脂質、スクレスターおよび植物デンプンを含む、本発明による固形形態の鉄製剤は、sucrosomial(登録商標)鉄(sucrosomial(登録商標)は、Pharmanutra S.p.A.およびAlesco S.r.l.に代わって登録された商標である)と市販では称される。
【0034】
さらに、本発明の目的をなすものは、対象体に組成物を投与することにより、鉄欠乏症の治療的または非治療的処置において、(本発明に記載する実施態様のいずれかによる)胃腸炎症および/またはそれに関連する疾患および/または症状を処置する方法で使用するための組成物であって、該組成物(簡潔には、本発明の組成物)が、記載の実施態様のいずれか1つによる本発明の鉄製剤、および少なくとも1つの医薬または食品グレードの添加物および/または添加剤を含むかまたはそれらからなる、組成物である。
【0035】
胃腸炎症、好ましくは感染による炎症の処置方法は、鉄欠乏症を処置し、同時に、胃腸障害、特に胃腸感染の発症、またはすでに存在する場合悪化を防止する、および/または胃腸障害を軽減するために、本発明の鉄製剤または組成物の治療有効量を投与することを提供する。
【0036】
胃腸炎症またはそれに関連する疾患もしくは症状は腸炎症、胃腸潰瘍、慢性胃炎、胃萎縮、腸憩室、下痢、嘔吐、胃腸痛、悪心、便秘からなる群より選択され得る。
【0037】
その量が本発明による鉄製剤または組成物を投与することにより減少されるかまたは維持される、プロテオバクテリア門に属する腸内微生物叢に存在する病原性細菌の例は、大腸菌(Escherichia coli)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、チフス菌(Salmonella typhi)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、レンサ球菌(Streptococci)を含むかまたはそれらからなる群より選択される病原性細菌である。
【0038】
本発明の鉄製剤または組成物は、有利には、胃腸感染または障害を有するかまたはそのリスクに接している対象体、例えば、栄養摂取が不十分な対象体、不適切な衛生状態で生活している対象体、セリアック病の対象体、IBDの対象体、肥満手術を受けた対象体、胃炎の対象体、胃萎縮の対象体、胃食道逆流(または胃食道逆流症、GERD)の対象体からなる群より選択される対象体における、胃腸炎症の処置で使用するためのものである。
【0039】
本発明に関連して、表現「不十分な/不適切な(inadequate)」は、当業者によって健康であるとみなされる対象体に必要とみなされる最少レベル未満を示すために用いられる。
【0040】
本発明の鉄製剤または組成物は、鉄欠乏症、例えば非病的鉄欠乏症、貧血(例えば、世界保健機関(WHO)により確立された限界値と比較してヘモグロビン濃度限界値が低い対象体)、鉄減少症(sideropenia)、妊娠中もしくは授乳中の女性または月経周期中の鉄欠乏症、高齢者の鉄欠乏症、または免疫系に障害を有する鉄欠乏症の処置のために対象体に投与され得る。
【0041】
本発明の鉄製剤または組成物は、身体能力(例えばスポーツマンおよびスポーツウーマン)または精神能力(例えば学習能力の理由)を向上させるために、血中の鉄(例えばシデレミア、トランスフェリン、フェリチン値)の増加をもたらす非治療的処置のために健康な対象体に投与され得る。
【0042】
(a)鉄塩または錯体、(b)少なくとも1つのリン脂質および(c)スクレスターに加えて、本発明の使用のための製剤は、(d)ゼラチン化(gelatinized)またはアルファー化(pre-gelatinised)植物由来のデンプン、好ましくはコメデンプン(Oryza sativa)またはトウモロコシデンプン、より好ましくはアルファー化コメデンプンをさらに含み得る。
【0043】
本発明の製剤((a)、(b)、(c)、および所望により(d)を含む製剤)中に存在する(a)鉄は、塩化物、硫酸塩、ピロリン酸塩、クエン酸塩、ビスグリシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、ポリマルトス酸塩などの有機または無機鉄塩より選択される、鉄(II)または鉄(III)塩または錯体、好ましくは鉄(III)であり得て;好ましくは、鉄が、ピロリン酸鉄(ピロリン酸鉄(III)、Fe4(P2O7)3)からなる。
【0044】
本発明に関連して、用語「鉄錯体」は、1つ以上の鉄原子、およびイオンまたは共有結合(リガンド)を形成することなく少なくとも部分的にそれを取り囲む1つ以上の原子、イオンまたは分子からなる配位錯体を示すために用いられる。
【0045】
例えば、本発明による使用のための製剤は、(a)ピロリン酸鉄、(b)リン脂質、好ましくはレシチン、(c)スクレスター、および所望により(d)アルファー化コメデンプンを含むかまたはそれらからなる。
【0046】
本発明の製剤((a)、(b)、(c)、および所望により(d)を含む製剤)中に存在する(b)少なくとも1つのリン脂質は、1,2-ジアシル-リン脂質、1-アルキル-2-アシル-リン脂質および1-アルケニル-2-アシル-リン脂質、好ましくは1,2-ジアシル-リン脂質、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルコリンまたはレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールまたはホスファチジン酸を含むかまたはそれらからなる群より選択されるホスホグリセリドであり得る。
【0047】
好ましい実施態様よれば、本発明による使用のための製剤((a)、(b)、(c)、および所望により(d)を含む)中の(b)少なくとも1つのリン脂質は、レシチン、好ましくはヒマワリレシチン、トウモロコシレシチン、大豆レシチン(例えばアレルゲンフリー)からなる群より選択されるレシチン(例えばE322)である。
【0048】
例えば、本発明による使用のための製剤は、(a)ピロリン酸鉄(b)レシチン、好ましくはヒマワリレシチン、(c)スクレスター、および所望により(d)アルファー化コメデンプンを含むかまたはそれらからなる。
【0049】
本発明の製剤((a)、(b)、(c)、および所望により(d)を含む製剤)中に存在する(c)スクレスターは、スクレスターE473、好ましくは、スクレスターの総重量に対して70~90重量%の植物由来の脂肪酸、好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸からなる脂肪酸を有する少なくとも2つのショ糖モノエステルを含むスクレスター(例えばE473)、および所望により(d)植物由来のゼラチン化またはアルファー化デンプン、好ましくはアルファー化コメデンプンであり得る。好ましい例によれば、本発明による使用のための製剤は、(a)ピロリン酸鉄、(b)ヒマワリレシチン(例えばE322)、(c)スクレスターE473、好ましくは、スクレスターの総重量に対して70~90重量%の少なくとも1つのステアリン酸と1つのパルミチン酸のショ糖モノエステルを含むスクレスター(例えばE473)、および(d)アルファー化コメデンプンを含む。
【0050】
一態様によれば、本発明による使用のための製剤((a)、(b)、(c)および所望により(d)を含む)は、(c)スクレスターと(b)リン脂質、好ましくはレシチンを、50:1~10:1(例えば約40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、17:1または15:1)、好ましくは35:1~15:1に含まれる[(c):(b)]の重量比で含む。
【0051】
一例によれば、本発明の固形形態の鉄製剤((a)、(b)、(c)、および所望により(d)を含む)は、製剤の総重量に対して重量割合で、1%~40%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%または35%)、好ましくは5%~20%(例えば約10%~12%、約44%~45%重量/重量のピロリン酸鉄に相当)の鉄元素(または金属鉄もしくは鉄(III))を含む。
【0052】
更なる例によれば、本発明の固形形態の鉄製剤((a)、(b)、(c)、および所望により(d)を含む)は、製剤の総重量に対して、以下の重量割合で構成成分を含む:
(a)1%~40%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%または35%)、好ましくは5%~20%の鉄元素(または金属鉄もしくは鉄(III))(例えば約10%~12%、約44%~45%重量/重量のピロリン酸鉄に相当);
(b)0.05%~15%(例えば、0.5%、0.1%、1%、2%、2.5%、3%、4%、6%、8%または10%)、好ましくは0.1%~2%(例えば約0.5±0.1%または1.0±0.1%)のリン脂質、好ましくはレシチン(例えば固体ヒマワリレシチン(E322));
(c)1%~50%(例えば、3%、5%、7%、10%、12%、15%、17%、20%、25%、30%、または40%)、好ましくは10%~25%、例えば約17%~18%±1%)のスクレスター;および所望により、
(d)10%~85%、例えば15%、20%、30%、35%、40%、50%または60%)、好ましくは25%~50%(例えば約37~38±1%)の植物由来のデンプン、好ましくはアルファー化コメデンプン。
【0053】
用語レシチンは、動物および植物組織(特に卵黄)に存在する化学化合物類を示すのに用いられる。レシチンは、天然の乳化剤であり、抗酸化特性を有する。
【0054】
化学的な観点から、レシチンは、ホスファチジルコリン((R)-1-オレオイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン)からなるか、または主成分として少なくとも1つのリン脂質、好ましくはホスファチジルコリンを含む。ホスファチジルコリンは、ホスファチジン酸がコリンでエステル化されたホスホグリセリドである。ホスファチジン酸は、グリセロールの1位と2位を脂肪酸で、3位をオルトリン酸でエステル化することによって生成される形式的には最も単純なホスホグリセリドを表わす。
【0055】
本発明の製剤((a)、(c)、および所望により(d)を含む)に含まれる(b)ホスファチジルコリンまたはレシチンは、好ましくは、ヒマワリレシチン、トウモロコシレシチンおよび大豆レシチン、より好ましくは固形形態(例えば粉末または顆粒)のレシチン、例えば固形レシチンE322、さらにより好ましくは固形ヒマワリレシチン(例えばE322)、例えばアレルゲンフリー固形ヒマワリレシチンE322(好ましくは粉末または顆粒の形態)より選択される。用語「アレルゲンフリー」は、アレルゲン残留物を含まないことを意味する。用語「E322」は、レシチンが欧州の法律で許可され、Italian Ministerial Decree No. D.M. 1996で規制されている食品添加物(乳化剤)であることを示す。
【0056】
2008年8月27日付のDirective 2008/84/EC(Official Journal of the European Union No L253で公開)は、レシチンが食品品質基準(レシチンE322)を満たすとみなされるために満たさなければならない純度基準を定めている:アセトン不溶物(すなわち活性物質)が最低60%;水分が最大2%;酸性度数最大35;過酸化物数が最大10;トルエン不溶物(すなわち不純物)が最大0.3%。
【0057】
本発明の製剤に含まれる粉末または顆粒の形態の(b)ホスファチジルコリンまたはレシチン(好ましくはヒマワリレシチンE322)は、例えば、レシチンの重量に対して1.5%~4.5%(例えば2%、2.5%、3.5%または4%)に含まれる重量%の水分含量;および/またはレシチンの重量に対して20%~60%(例えば30%、40%、45%または50%)に含まれる重量%のグルコース含有量を有し得る。本発明に関して用いられ得る(b)ヒマワリレシチンE322(粉末または顆粒)の例は、以下の組成(化学的/物理的分析、%重量/重量)を有し得る:40%~50%のヒマワリレシチン、40%~50%(例えば約42%)の炭水化物、6%~10%のタンパク質、3%~8%の灰分、2%~5%の水分および0.5%~1.5%の別の流動化剤。
【0058】
一態様によれば、本発明の製剤((a)、(c)、および所望により(d)を含む)に含まれる(b)レシチンは、分解または加水分解レシチンを含まないかまたはそれからなるものではなく、そして、酵素分解的分解または加水分解レシチン(すなわち、酵素的に分解または加水分解された)を含まないかまたはそれからなるものではない。
【0059】
本発明の製剤((a)、(b)、および所望により(d)を含む)の一実施態様に含まれる(c)スクレスター(またはスクレスターの同義語として、ショ糖エステルまたは炭水化物脂肪酸エステル)は、スクレスターE473、好ましくは、1つ以上の植物由来の脂肪酸、好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸でスクロースをエステル化することより得られるモノエステルをスクレスターの総重量に対して50%~95%(例えば60%、70%、80%、85%または90%、好ましくは70%~90%)の重量%で含むスクレスター(E473)であり得る。用語「E473」は、スクレスターが欧州の法律で許可され、Italian Ministerial Decree No. D.M. 1996で規制されている食品添加物(乳化剤)であることを示す。
【0060】
スクレスターは、一般に、脂肪酸をエステル化すること、または脂肪酸のメチルエステルを炭水化物(糖類とも呼ばれる)でトランスエステル化することにより得られ;用いる炭水化物は、スクロース(単糖)および多糖類である(それ故に名称「脂肪酸のショ糖エステル」)。これら化合物の化学的/物理的特性は、エステル化脂肪酸の数および種類に依存する。スクレスターは、本質的に乳化剤であり、親水性相と親油性相の安定性を高めるために組成物に添加される。
【0061】
本発明に関して用いられ得る(c)スクレスター(E473)の例は、14~18(例えば15、16または17)の範囲に含まれる親水性-親油性バランス(HLB)値を有する、および/または以下の組成(%重量/重量):総エステル含有量が少なくとも90%で、そのうち少なくとも70%が1つ以上の植物由来の脂肪酸、好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸でスクロースをエステル化することより得られるモノエステル;遊離脂肪酸含有量(例えばオレイン酸)が3%以下;遊離スクロース含有量が2%以下;水分が4%以下;酸価が5以下を有する、スクレスターである。(c)市販のスクレスターの例は、Chimab S.p.A(Italia)が製造するショ糖エステルSP70である。
【0062】
一態様によれば、本発明の製剤((a)、(b)、および所望により(d)を含む)に含まれる(c)スクレスターは、ポリグリセロール脂肪酸エステルを含まないか、またはそれからなるものではない。
【0063】
本発明の製剤((a)、(b)および(c)および所望により(e)を含む)に所望により含まれる、(d)アルファー化コメデンプンは、例えば、以下の化学的/物理的特性を有し得る:水分が7%以下;タンパク質含有量が1%以下;灰分含有量が1%以下;pH(溶液 10%)が5.5~7.5;密度が0.40~0.48 g/cm3;最小デンプン含有量が97%;および脂肪含有量が0.1%以下。本発明に関して使用できる市販のアルファー化コメデンプンの例は、Reire Srl(Italia)が製造するAX-FG-Pである。
【0064】
本発明に記載する構成成分(a)、(b)、(c)および(d)は、当業者に公知の技術および装備に従って製造し得て、これらは市場で入手可能である。
【0065】
本発明の組成物は、医薬組成物、医療機器のための組成物(Medical Device Regulation (EU) 2017/745 (MDR))、栄養補助食品および/または特別医療目的用食品(FSMP)であり得る。
【0066】
本発明の固形形態の鉄製剤と共に本発明の組成物に含まれる少なくとも1つの医薬または食品グレードの添加物および/または添加剤は、希釈剤、溶媒、可溶化剤、増粘剤、甘味剤、風味増強剤、色素、滑沢剤、界面活性剤、抗菌剤、抗酸化剤、防腐剤、固化防止剤、賦形剤、帯電剤、pH安定化緩衝剤およびそれらの混合物などの当業者に公知の補助物質より選択される医薬または食品用途に適した治療活性を有しない物質からなる。このような物質の非限定的な例は、ヒドロキシメチルセルロース、色素E171、ベジタリアンのステアリン酸マグネシウム、脂肪酸のマグネシウム塩、二酸化ケイ素、結晶性セルロースである。
【0067】
本発明の鉄製剤および添加物/添加剤に加えて、本発明の組成物は、好ましくは(e-i)ビタミンC、(e-ii)少なくとも1つのビタミンB群、好ましくはビタミンB6および/またはB9および/またはB12、(e-iii)ビタミンD群、好ましくはビタミンD3、(e-iv)ビタミンE、およびそれらの混合物;好ましくは(e-i)ビタミンCおよび/または(e-ii)少なくとも1つのビタミンB群を含むかまたはそれらからなる群より選択される、(e)少なくとも1つのビタミンをさらに含み得る。
【0068】
(e)少なくとも1つのビタミンは、500%RDA~300%RDA、例えば100%RDA、150%RDA、200%RDAまたは250%RDA(RDA:推奨食事許容量)の量で組成物中に存在し得る。
【0069】
本発明の組成物に含まれる(e)少なくとも1つのビタミンは、本発明の固形形態のsucrosomial(登録商標)鉄製剤について記載する実施態様のいずれかと同様に、(e)少なくとも1つのビタミン、(b)リン脂質(例えばレシチン)、(c)スクレスター、および所望により(d)植物デンプン(例えばアルファー化コメデンプン)を含む固形形態の製剤である、sucrosomial(登録商標)ビタミンであり得る。
【0070】
sucrosomial(登録商標)鉄と少なくとも1つのsucrosomial(登録商標)ビタミンを含む、本発明による組成物の例は、鉄とビタミンC、ビタミンD3、ビタミンB(好ましくはB12)、ビタミンE、およびそれらの混合物より選択される少なくとも1つのビタミン;鉄とビタミンC;鉄とビタミンD3;鉄とビタミンCおよびビタミンD3;鉄とビタミンCおよびビタミンB12;鉄とビタミンD3およびビタミンB12;鉄とビタミンCおよびビタミンD3およびビタミンB12である。
【0071】
記載の実施態様のいずれか1つによる本発明の組成物は、好ましくは、固形形態、例えばそのままの固形形態または口中で溶解可能な固形形態(または口腔内可溶性、すなわち口腔内で溶解する)または水分散可能な固形形態(すなわち水ベースの液体中に溶解する)、例えば粉末、顆粒、微顆粒、フレーク、錠剤またはカプセル剤として製剤化される。
【0072】
あるいは、記載の実施態様のいずれか1つによる本発明の組成物は、液体形態、例えば液体中の固体の溶液、分散液または懸濁液、または半固形形態、例えばクリーム、ゲルまたはソフトゲルであり得る。
【0073】
本発明の製剤または組成物は、好ましくは、経口投与用に、例えばそのままの固形形態、口中で溶解可能なまたは水分散可能な固形形態として製剤化される。
【0074】
錠剤形態の本発明の組成物は、200mg~2000mgに含まれる重量を有し得て、例えば硬質錠剤は800mg~1000mgである。該錠剤は、胃のバリアを通過できる1つ以上のコーティング層またはフィルムでコーティングまたはフィルムされていてもよい。該コーティングは、ミツロウまたは糖ベースの溶液を含み得る。
【0075】
カプセル剤の形態の本発明の組成物は、100mg~1500mgの範囲に含まれる重量、より好ましくは約800mgの重量を有し得て;該カプセル剤は、硬ゼラチンまたは軟ゼラチンまたはソフトゲルであり得る。
【0076】
記載の実施態様のいずれか1つによる本発明の鉄製剤(sucrosomial(登録商標)鉄)は、特許文献WO2014/009806A1の第7頁第1行から第8頁第20行に記載の第1方法(出典明示により本願の一部とする)または特許文献WO2014/009806A1の第8頁第22行から第10頁第21行に記載の第2方法(出典明示により本願の一部とする)に従って製造され得る。
【0077】
例えば、本発明の鉄製剤の製造方法は、(1)粉末または顆粒の形態の鉄塩または錯体を製造する工程;(2)該鉄塩または錯体を、リン脂質、好ましくはレシチン(例えば、ヒマワリレシチン)および少なくとも1つのスクレスターと混合して、工程2の混合物または本発明の製剤を得る工程であって、有利には、レシチンが、加水分解または酵素的に加水分解されたレシチンではない工程;(3)所望により、工程2の混合物を植物由来のデンプン(例えば、アルファー化コメデンプン)と混合して、本発明の製剤を得る工程;(4)所望により、工程2または工程3の後に、例えば公称目開き150μm~1400μm(例えば180、212、250、300、355、425、500、600、710、850、1000、または1180μm)、好ましくは600μm~850μm、例えば710μm(25USメッシュ)を有する篩で篩過する工程を含む。
【0078】
好ましくは、工程2および/または3の混合は、室温(15℃~30℃、好ましくは約25℃)にて、10分間~120分間、好ましくは15分間~60分間、例えば約30分間行われる。
【0079】
好ましい態様によれば、工程2および/または3の混合は、溶媒の不存在下で行われ(乾燥混合)、および/または本発明の鉄製剤の製剤プロセスは、噴霧乾燥工程を含まない。
【0080】
さらに、鉄をリン脂質および少なくとも1つのスクレスターと混合する工程2は、2つのサブ工程に分けられてもよく、第1のサブ工程は、鉄をリン脂質と混合することを提供し、第2のサブ工程は、第1のサブ工程で得られた混合物を少なくとも1つのスクレスターと混合することを提供する。
【0081】
本発明の鉄製剤の製造方法は、当業者に公知の装置を用いて、例えば、本発明に関して定義される重量%に従って構成成分(a)、(b)、(c)、および所望により(d)を混合することにより実施される。
【0082】
本発明の鉄製剤と共に本発明の組成物に所望により含まれる少なくとも1つのsucrosomial(登録商標)ビタミンは、鉄の代わりに少なくとも1つのビタミンを用いて、本明細書に記載に記載の本発明の鉄製剤の製造方法に従って製造され得る。
【0083】
本発明に関連して、用語「対象体」は、哺乳類(動物およびヒト)、好ましくはヒト対象体、男性および女性、例えば、小児年齢の対象体、成人、高齢対象体、疾患を有する対象体およびスポーツ活動に通常積極的な対象体を指すために用いられる。
【0084】
用語「治療有効量」は、当業者によって求められ、定義される、組織、系または対象体における生物学的または医学的反応を誘発する鉄製剤の量を示すために用いられる。
【0085】
他に明記されない限り、「xからyの範囲に含まれる」量の成分を含む製剤または組成物の表現は、当該成分が製剤または組成物中に、特定されていない場合であっても、当該範囲の両端の間、構成される範囲の両端のあらゆる量で存在し得ることを示すために用いられる。
【0086】
他に明記されない限り、製剤または組成物中の成分の含有量は、製剤または組成物の総重量に対するその成分の重量パーセントを指す。
【0087】
他に明記されない限り、製剤または組成物が1つ以上の成分を「含む」という表示は、他の成分(具体的に示された1つまたは複数のもの以外)が存在し得ることを意味し、製剤または組成物が所定の成分「からなる」という表示は、他の成分の存在が除外されることを意味する。
【0088】
本発明の実施態様(FRn)を以下に示す。
【0089】
FR1 鉄欠乏症の治療的または非治療的処置を受けた対象体において、鉄製剤を該対象体に投与することにより、胃腸炎症またはそれに関連する疾患もしくは症状を処置する方法で使用するための鉄製剤であって、
該鉄製剤が、処置対象体の腸内微生物叢に存在するプロテオバクテリア門に属する病原性細菌の量を減少させ、そして
該鉄製剤が、
(a)鉄塩または錯体、
(b)少なくとも1つのリン脂質、
(c)スクレスターまたはショ糖エステル
を含むかまたはそれらからなる、製剤。
【0090】
FR2 処置方法が、胃腸炎症を軽減するためであり;好ましくは、炎症が、感染によるものである、FR1に記載の使用のための製剤。
【0091】
FR3 プロテオバクテリア門に属する病原性細菌が、大腸菌、ピロリ菌、チフス菌、コレラ菌、レンサ球菌を含むかまたはそれらからなる群より選択される、FR1またはFR2に記載の使用のための製剤。
【0092】
FR4 鉄製剤が、処置対象体の腸内微生物叢の種類を増加させるかまたは変化させる(modify)、FR1~FR3のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0093】
FR5 製剤が、(d)植物由来のゼラチン化またはアルファー化デンプン;好ましくはコメデンプンまたはトウモロコシデンプン;より好ましくはアルファー化コメデンプンをさらに含む、FR1~FR4のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0094】
FR6 (b)少なくとも1つのリン脂質が、レシチン;好ましくは、ヒマワリレシチン、トウモロコシレシチン、大豆レシチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるレシチン(E322)からなる、FR1~FR5のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0095】
FR7 (c)スクレスターまたはショ糖エステルが、スクレスターE473;好ましくは、スクレスターの総重量に対して30~95重量%、好ましくは50~85重量%の植物由来の脂肪酸、好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸からなる脂肪酸を有する少なくとも2つのショ糖モノエステルを含むスクレスター(例えばE473)からなる、FR1~FR6のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0096】
FR8 製剤が、
(a)ピロリン酸鉄、
(b)ヒマワリレシチン;
(c)スクレスターまたはショ糖エステル;および
(d)アルファー化コメデンプン
を含むかまたはそれらからなり、
好ましくは、(c)スクレスターまたはショ糖エステルと(b)リン脂質またはレシチン間の[(c):(b)]の重量比が、50:1~10:1、好ましくは40:1~10:1、より好ましくは30:1~15:1で構成される、FR1~FR7のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0097】
FR9 胃腸感染および/またはそれに関連する疾患もしくは症状が、腸炎症、胃腸潰瘍、慢性胃炎、胃萎縮、腸憩室、下痢、嘔吐、胃腸痛、悪心、便秘からなる群より選択される、FR1~FR8のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0098】
FR10 対象体が、胃腸感染を有するかまたはそのリスクのある対象体であり;
好ましくは、胃腸感染を有するかまたはそのリスクのある対象体が、栄養摂取が不十分な対象体、不適切な衛生状態で生活している対象体、セリアック病の対象体、IBDの対象体、肥満手術を受けた対象体、胃炎の対象体、萎縮性胃炎の対象体、胃食道逆流症(GERD)の対象体からなる群より選択される、FR1~FR9のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0099】
FR11 組成物が、
先行する項のいずれか一項に記載の製剤、および
少なくとも1つの医薬または食品グレードの添加物および/または添加剤
を含むかまたはそれらからなる、FR1~FR10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【実施例
【0100】
以下の報告は、本発明による固形形態の鉄製剤のいくつかの例である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0101】
実験パート
パート1
【0102】
1.試験目的
Sideral(登録商標)RMとも呼ばれるsucrosomial(登録商標)鉄(表A.1に従った本発明による鉄(III))のマウスの腸内マイクロバイオームに対する効果を決定し、硫酸鉄FeSO4(比較の鉄(II))の効果と比較する。比較は、用いた塩中の同じ鉄元素(一方はFe(III)、他方はFe(II)としてイオン形態の鉄)を用いて行った。
【0103】
2.方法
4週齢のC57BL/6雄性マウス30匹に、鉄欠乏食(AIN-93Gげっ歯類飼料に基づき、約1mg/kgの鉄)を与えた。すべてのマウスを同じ環境(QIMR Berghofer Animal Facility)で飼育して、個々のマウス間のマイクロバイオームの固有の変動を最小限に抑えた。
【0104】
6週齢(すなわち、鉄欠乏飼料で2週目)にて、糞便をマイクロバイオーム分析のために採取した。これは各マウスの対照サンプルであり、管腔が鉄欠乏している場合のその特定の動物の基本的なマイクロバイオームを表す。この時点(6週齢、欠乏飼料で2週間目)では、マウスの鉄貯蔵量は減少していると推定されるが、貧血ではないため、分析が複雑になる可能性があるマイクロバイオームに対する貧血の潜在的な更なる影響を回避する。
【0105】
6週齢での糞便採取後、マウスを鉄欠乏飼料から酸鉄(硫酸鉄(II))またはsucrosomial(登録商標)鉄などの鉄を50mg/kg含む飼料に切り替えた(1群当たり10匹のマウス)。
【0106】
残りの10匹のマウスは、欠乏飼料を与え続けた対照群であった。
【0107】
その後、糞便サンプルを8週齢(すなわち、鉄含有飼料で2週目)にて各マウスから採取し、マウスを屠殺し、組織を分析のために採取した。肝臓および血清サンプルを各動物から安楽死後に採取し、-80℃で保存した。血液学的パラメーターを、安楽死直後に「Coulter Ac・T diff Hematology Analyzer」(Beckman Coulter、Gladesville、NSW、Australia)を用いて評価した。血清鉄パラメーターを、Iron/TIBC Reagent Kit(Pointe Scientific、Canton、MI)を用いて評価し、組織中の鉄レベルを上記(Frazer, D. M., et al. Cell Mol Gastroenterol Hepatol 3, 410-421 (2017))に従って決定した。鉄および血液学的パラメーターの分析では、群間の統計的差異を、一元配置分散分析を用いて計算し、続いて、分散が等しい群についてはTukey事後検定を用い、分散が等しくない群についてはGames-Howell事後検定用いて計算した。分散の有意差を、Levene検定を用いて特定した。DNAを糞便サンプルから採取し、微生物プロファイル(QIMR Berghofer Medical Research Institute)を決定した。
【0108】
試験下のマウス群:
ID:鉄欠乏飼料(約1mg/kg鉄)のままの対照群。
FS:50mg/kgの鉄を硫酸鉄(FSは硫酸鉄の略語)- Fe(II)の形態で含む飼料を与えた群。
SI:50mg/kgの鉄をsucrosomial(登録商標)鉄(SIはsucrosomial鉄の略語)の形態で含む飼料を与えた群。
【0109】
3.結果
3.1 sucrosomial(登録商標)鉄または硫酸鉄ベースの飼料を与えられたマウスの鉄状態。
【0110】
マイクロバイオームに対する効果を決定する前に、セクション2(ID、FSおよびSI)で特定した分析対象の3群のラットにおいて鉄状態を分析した。
【0111】
8週齢で屠殺した後、分析対象の3群のマウス(ID、FS、SI)の肝臓および血清中の鉄レベル、および血液学的パラメーターを試験した。図1A~Dのすべてのデータは、1群当たり10匹のマウスでの平均±SEMを表わす(*P<0.05、***P<0.005)。
【0112】
3群の体重に有意差はなかった(ID、FSおよびSI;図1A)。sucrosomial(登録商標)鉄および硫酸鉄で処置した群間で肝臓の鉄濃度、血清鉄レベル、トランスフェリン飽和度、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットまたは平均赤血球容積に有意差はなかった(図1B~D、2A~D)。しかしながら、いずれの場合も、鉄欠乏群(ID、対照群)の平均は、鉄含有飼料を用いた群(FSおよびSI)より有意に低かった(図1B~D、2A~D)。これらの動物(ID、対照群)は4週間鉄欠乏飼料を続けていたので、鉄欠乏症の兆候を示すことは予想外ではない。
【0113】
鉄状態が鉄(sucrosomial(登録商標)鉄(SI)または硫酸鉄(FS))で処置した群と同様であると判断したため、これらの動物のマイクロバイオームの変化を試験した。
【0114】
3.2 全体的な微生物組成 - ベータ多様性
ベータ多様性は、サンプル間の全体的な微生物組成を比較する、すなわち、異なるサンプルがどのような特定された微生物プロファイルに基づいているかを示す。主座標分析(PCoA)は、2次元空間における全体的な微生物群集に基づいてサンプルを分類する。図3の各シンボルは、飼料と時点(すなわち、ベースライン、または特定の飼料でさらに2週間後)を示す形式でサンプルを表す。参照サンプルは、鉄欠乏飼料の最初の2週間(ベースライン)の後に各マウスから採取したサンプルである。各サンプル間の距離は、サンプルが他のサンプルに対してどの程度類似しているか/類似していないかを示す(すなわち、離れているほど、類似していない)。データは、鉄が豊富な飼料(硫酸鉄(FS)またはsucrosomial鉄(IS))のいずれかを与えられたマウスから採取したサンプルは、大部分が一緒にグループ化され、鉄欠乏飼料(ID)を与えられたマウスから採取したサンプルと区別できたことを示している。これは、鉄含有飼料が全体的な微生物の多様性を変化させることができたことを示している。ケージ効果(すなわち、一緒に飼育された動物はより類似したマイクロバイオームを有する)とマウス効果(すなわち、マイクロバイオームが、鉄欠乏飼料であっても同じマウスで時間の経過とともに変化することが観察された)の両方が観察された。これらの効果は、マウスに関しては珍しいことではなく、その後の分析で修正された。
【0115】
3.3 全体的な微生物組成 - アルファー多様性
アルファー多様性は、単一サンプル内の微生物の多様性を測定する。いくつかのパラメーターを用いて、サンプルの多様性を測定する。豊富さ(richness)は、検出された異なる微生物配列の数を指し、サンプル内の細菌株の数の推定値である。均一性(evenness)は、細菌がサンプル内にどの程度均一に分布しているか、すなわち優勢種があるかどうかを示す。シャノン指数(Shannon index)は、各サンプルの豊富さと均一性の組合せである。シャノン指数の増加は、健康に良いと一般に認められている。本サンプルにおいて、対応のない統計(ANOVA)を用いて、多様性が著しく変化した。参照サンプル(ベースライン)は、最低の豊富さを示し、次に鉄欠乏群(ID)および鉄が豊富な飼料(FSおよびSI)が続いた。シャノン指数は、硫酸鉄を与えたマウスにおいてより低く、sucrosomial鉄を与えたマウスにおいてより高かった(図4A)。これは、全体的な腸内微生物の健康状態が、鉄欠乏飼料(ID)および硫酸鉄(FS)含有飼料に対して、sucrosomial(登録商標)鉄(SI)含有飼料で改善したことを示す。次いで、ランダム効果として「マウス」と「ケージ」、独立変数として「飼料」および固定効果として「時間」を用いて、腸内微生物叢の個々の不均一性による変化の多様性指数(シャノン、豊富さ、チャオ1(chao 1、別の豊富さ)、均一性指数)を結果とする混合効果回帰分析を行った(図4B)。sucrosomial鉄含有飼料単独に切り替えることによりシャノン指数の著しい増加が見られ、この飼料が健康な腸内マイクロバイオームを生じることが改めて示唆された。
【0116】
3.4 門レベルでの変化
多様性指数はマイクロバイオームの全体的な健康状態を測定するが、存在する細菌の種類を試験することは有用である。16Sシーケンシングによって得られた多くの配列は、まだ特定の細菌種に割り当てられていないが、アンプリコンの多くは進行中の変化に関する情報を提供する分類学的分類にグループ化できる。分類学的分類は、極めて一般的な上位ランク(例えば門)と極めて特定的な下位ランク(例えば属)を含む分類学的分類階層に基づいている。以下のすべての分析について、結果として分類群の豊富さのP値を、効果として「マウス」と「ケージ」、独立変数として「飼料」および固定効果として「時間」を用いる混合効果回帰モデルから得た。P値を、ボンフェローニ補正を用いて調整して、偽陽性を避けた。0.05未満のP値を、有意であるとみなした。
【0117】
門レベルでは、プロテオバクテリアが、sucrosomial(登録商標)鉄(SI)含有飼料を用いた群では著しく減少したが、鉄欠乏飼料群(ID)または硫酸鉄(FS)含有飼料を用いた群では減少しなかった(図5)。プロテオバクテリアは、エシェリヒア(Escherichia)、エンテロバクター(Enterobacter)およびサルモネラ(Salmonella)などの多くの病原体を含む門である。これまでの研究では、鉄補給剤は、胃腸病原体が風土性である地域において、胃腸病原体の蔓延を増加させ得ることが示されている。これらの病原体は、我々の動物には存在しなかったが、sucrosomial(登録商標)鉄(SI)群でのプロテオバクテリアの減少は、この鉄補給剤の保護的な腸効果を伴っており、sucrosomial(登録商標)鉄が、腸病原体が風土性である地域において、他の鉄補給剤と比較してより良い選択肢であることを示唆する。
【0118】
バクテロイドータ(Bacteroidota)門のメンバーは、硫酸鉄(FS)含有飼料を与えられたマウスにおいて著しく減少したが、sucrosomial(登録商標)鉄(SI)含有飼料では変化しないままであった(図5)。鉄欠乏飼料では著しい増加が観察された。これらの変化の理由は不明であるが、バクテロイドータは腸内に生息する主要な門の1つであり、短鎖脂肪酸の産生に関与している。バクテロイドータの減少は、肥満と関連している。
【0119】
3.5 アンプリコン単一バリアント(ASV)レベルでの変化
ASVは、実際に配列決定されたアンプリコンを表す。マイクロバイオームは複雑であるため、多くは種レベルで完全には特徴付けられていない。sucrosomial(登録商標)鉄(SI)含有飼料を与えた群において、ラクノスピラセア種(Lachnospiraceae spp)、リケネラセアRC9(Rikenellaceae RC9)、フェカリバキュラム(Faecalibaculum)、コリデキストリバクター(Colidextribacter)およびオシリバクター(Oscillibacter)を含む様々なASVが増加した(図6A~6E)。これらの細菌群は、短鎖脂肪酸を産生する能力があるため、一般に健康なマイクロバイオームと関連している。
【0120】
フェカリバキュラムは、腸腫瘍に対する保護効果を有することが示されている。げっ歯類での試験は硫酸鉄(FS)が腸癌の発生を促進し得ることを示しているため、これは興味深い。
【0121】
対照的に、パラステレラ(Parasutterella)属の細菌は、sucrosomial(登録商標)鉄(IS)の群で減少した(図6F)。パラステレラ種はまた過敏性腸症候群および慢性腸炎症に関連しているが、この属に属する細菌株は腸内マイクロバイオームの正常なメンバーと考えられている。
【0122】
ラクトバシラス(Lactobacillus)は、sucrosomial(登録商標)鉄(SI)で処置した動物においてのみ属レベルで減少した(図6G)。ラクトバチルス種は有益であると考えられているが、この属が生存のために鉄を必要としない数少ない生物群の1つであることを考慮すると、この減少はsucrosomial鉄の負の影響と考えられるべきではない。したがって、この結果は、鉄を必要とする他の細菌の増殖が抑制されるときである、鉄欠乏飼料の最初の2週間の間の、ラクトバシラス種の比例的増加を表す可能性が高い。sucrosomial(登録商標)鉄(SI)含有飼料への切り替えは、他の細菌種の増殖を可能にし、腸内マイクロバイオームの全体的な多様性および健康状態を高める。結果的な競合種の増加は、ラクトバシラスをより正常なレベルまで減少させる。
【0123】
硫酸鉄(FS)ベースの飼料を摂取した動物において同様のラクトバシラスの減少はなかったという観察は、この群の多様性の欠如を反映している可能性があり、競合種が少ないためラクトバシラスレベルが高いままである。
【0124】
多様性の欠如は、マイクロバイオームが健康的でないことを示している。
【0125】
4.結論
全体として、sucrosomial(登録商標)鉄(IS)含有飼料によって誘導される腸内マイクロバイオームの変化は有益であり、硫酸鉄(FS)含有飼料または鉄欠乏飼料と比較して微生物の多様性が増加する。微生物の多様性の増加は、より健康なマイクロバイオームを産生すると一般に考えられている。より一般的には、多様性の増加は、プロテオバクテリア門に属する病原性細菌の減少と関連する。
【0126】
このように、プロテオバクテリア門の減少は、sucrosomial(登録商標)鉄(SI)飼料において観察された。sucrosomial(登録商標)鉄ベースの飼料を用いた多くの病原性細菌株を含む門であるプロテオバクテリアの減少は、鉄ベースの補給剤が、腸感染のリスクを高め、腸内病原体が風土性である地域においてその効果が減少することが示されているため、潜在的に有益である。
【0127】
Sucrosomial(登録商標)鉄(IS)はまた、短鎖脂肪酸の産生で知られる有益な細菌の増殖を促進した。
【0128】
上記に基づいて、結果は、sucrosomial(登録商標)鉄が、マウスモデルにおいて硫酸鉄(FS)と比較して腸内マイクロバイオームに対してより有益な効果を有することを示唆する。
【0129】
パート2 試験デザイン
【0130】
(イントロダクション)
鉄は、赤血球のヘモグロビンおよび筋肉のミオグロビンに存在する必須成分であり、多くの細胞活動の機能にも不可欠である。しかしながら、鉄は活性酸素種の生成を触媒することから毒性であり得て、それ故に、鉄の恒常性は、哺乳類、特に鉄が主に吸収される十二指腸ではよく制御されている。腸内微生物叢は、胃腸(GIT)に存在する微生物の全体を表す。腸内微生物叢は、胃腸GITに常在する共生および病原性の細菌すべてを含む。腸内微生物叢は、ミネラルおよび栄養素の吸収、酵素、ビタミンおよびアミノ酸の合成、短鎖脂肪酸(SCFA)の生成において重要な役割を果たす。しかしながら、細菌叢異常としても知られる微生物組成の変化の結果として、これらの機構が損なわれ得る潜在的なリスクがある。
【0131】
腸内微生物叢は、食餌、経口経路で投与される補給剤または鉄ベースの薬物に由来する、様々な濃度の未吸収の鉄に遭遇する。鉄は、酸化還元反応、代謝モデルおよび電子伝達系に存在する機構に関与する鉄含有タンパク質の補因子として機能することから、細菌にとって必須であり、宿主内の鉄状態および飼料に存在する鉄の利用可能性は、この微生物媒体を変化させ得る。
【0132】
経口経路による鉄の投与は、腸内病原性細菌の増殖および菌力を高め、下痢および腸炎症を引き起こし得る。一方で、鉄欠乏症もまた、微生物組成を変化させる。
【0133】
鉄欠乏症に対処する1つの方法は、鉄ベースの製品で補うことであるが;この様式は、常に有効であるとは限らず、重大な副作用を引き起こし得る。
【0134】
経口経路による鉄ベースの製品の補給による副作用の発症を克服するには、投与量および副作用を減少させるように、鉄を保護し、腸吸収を増加させるのに有効な経口使用のための新しい鉄含有製剤が必要である。
【0135】
(a)鉄塩または錯体(ピロリン酸鉄(III))、(b)少なくとも1つのリン脂質、および(c)スクレスターまたはショ糖エステルを含むかまたはそれらからなる本発明の組成物は、スクレスターおよびリン脂質マトリックスにより保護されるピロリン酸鉄(III)を有するという利点を有する。本発明の組成物は、大部分が従来の鉄吸収モデル(インビトロ試験)を圧倒する小胞様構造の形態である。胃腸でのこの挙動により、本発明の組成物は、硫酸鉄(II)などの従来の鉄塩と比較して良好な忍容性を示し、高い生体利用性を有する。
【0136】
鉄の経口投与が、病原性細菌の増殖を増加させることによる鉄を代謝する微生物の能力により、腸内微生物叢の組成を変化させ得ることから、この実験パートの目的は、本発明によるピロリン酸鉄(III)および硫酸鉄(II)が投与された鉄欠乏症対象体における糞便マイクロバイオームの変化改変を調査することである。
【0137】
(試験の主目的)
2つの異なる鉄製剤(Sucrosomial(登録商標)鉄(ピロリン酸鉄(III)を含む本発明の組成物)対硫酸鉄(II))の補給中の糞便微生物叢の変化を評価する。
【0138】
(試験の副次目的)
糞便中カルプロテクチン濃度を評価する。
【0139】
(試験の第1エンドポイント)
この試験の第1の目標は、異なる細菌集団、その豊富さおよび生物多様性の点で糞便微生物叢の組成を比較し、異なる鉄製剤が異なる微生物叢組成をもたらし得るかを評価することである。処置前に採取したベースライン微生物叢を、処置中および処置後の3つの異なる時点と比較する。
【0140】
(試験の第2エンドポイント)
この試験の第2の目標は、糞便中カルプロテクチンの変化の可能性を評価し、糞便微生物叢の変化との相関関係をより深く理解することに焦点を当てる。
【0141】
(試験下の集団)
この試験において、貧血および非貧血であるが鉄欠乏症である健康な対象体の両方を含む20人の対象体を募集した。対象体は、胃腸障害があるか、または鉄ベースの栄養療法を必要としていると報告されている。募集は、鉄欠乏または1日の鉄投与量が極めて少ないことが検出された場合、定期的な受診によって行われた。
【0142】
(配置)
一般的なデータを募集中に収集した:性別、年齢、自発的な習慣、BMI、排便の頻度、食習慣。臨床現場において、鉄補給は、貧血患者、または鉄欠乏症の臨床的もしくは生化学的兆候がある患者に提案されている。
【0143】
対象体を、処置A(Sucrosomial(登録商標)鉄)または処置B(硫酸鉄(II))の群1または2に識別した。6mlの血液サンプルを、鉄ベースの製品の投与および処置の開始前に採取する。
【0144】
14日後、血液サンプルを副次的結果の決定のために採取し、この手順を鉄の副次的投与で繰り返す。
【0145】
(処置)
募集した対象体は鉄欠乏であり、Sucrosomial(登録商標)鉄30mgまたは硫酸鉄(II)105mgで処置される。本試験は、オープンラベル非盲検の非ランダム化でデザインし、すべての対象体がSucrosomial(登録商標)鉄組成物および硫酸鉄(II)組成物を投与された(オープンラベルの非ランダム化エントリー制御クロスオーバーデザイン)。
【0146】
処置群:
群1:i)2カプセル/日のSucrosomial(登録商標)鉄を14日間;ii)1カプセル/日の硫酸鉄(II)を14日間。
群2:i)1カプセル/日の硫酸鉄(II)を14日間;ii)2カプセルのSucrosomial(登録商標)鉄を14日間。
2つの処置(処置A、Sucrosomial(登録商標)鉄;処置B、硫酸鉄(II))間で、すべての対象体に4日間のウォッシュアウト期間与える。対象体を、情報提供とオープンラベルに基づいて、一方の処置から別の処置へ移行する。
【0147】
処置は、次のとおり続く:
- 硫酸鉄(II)またはSucrosomial(登録商標)鉄での2週間の処置
- 4日間のウォッシュアウト
- 硫酸鉄(II)またはSucrosomial(登録商標)鉄での2週間の処置
【0148】
微生物叢分析のための糞便サンプルを次のとおり採取する:
- T0=処置開始前
- T1=14日
- T2=18日
- T3=32日
採取2時間以内に、-80℃の温度で保管する実験室に送り、DNAおよびRNAの品質をそのままに維持する。ゲノムDNAを、QIAmp PowerFecal Pro DNA Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を用いて糞便サンプルから抽出する。DNA濃度を、OD260nmを測定することにより計算し、DNA純度を、BioPhotometer D30 分光光度計(Eppendorf)を用いてOD260/OD280およびOD260/OD230の比を決定することにより推定する。
【0149】
(メタゲノム解析)
糞便サンプルから抽出したDNAゲノムを、165 rRNA細菌をコードするゲノムをシーケンシングすることによりメタゲノム解析に供する。続いて、Novogeneを用いて、NGS(Next Generation Sequencing)およびデータ分析を行う。遺伝子の異なる領域、すなわちV3-V4を、Phusion(登録商標)High-Fidelity PCR Master Mix(New England BioLabs、USA)を用いて増幅する。PCR産物をQIAGEN Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製し、ライブラリーをNEBNext(登録商標)ultraTM DNA Library Prep Kit for illuminaで作製し、QubitおよびqPCRで定量した。シーケンシングアプリコンを、HiSeq illuminaプラットフォームで行う。得られた配列を、相同種を収集すると考えられるDNA配列の97%の類似性によってOUTにグループ化する。配列分析を、Uparseソフトウェアを用いて行う。すべてのOUT間の系統関係を、多重比較プログラムMUSCLEを用いて決定する。アルファーおよびベータの多様性を、結果から計算する。
【0150】
(組入れ基準)
- 18~70歳の対象体
- 鉄欠乏症:血中の鉄レベルが低く、血清フェリチンレベルが25μg/l未満
- BMIが18.5~24.9kg/m2
- 鉄欠乏症の症状は、極度の疲労感、脱力感、青白い肌、高い心拍数または息切れまたは呼吸困難、頭痛、舌の炎症または発赤を含む
- 栄養士によって予め評価された、食事による鉄の不十分な摂取、正常なカルプロテクチンレベル
- 書面によるインフォームドコンセント
【0151】
(除外基準)
以下の基準の少なくとも1つを満たす対象体は不適切とみなす。
- 試験開始前の4週間に、PPI(プロトンポンプ阻害剤)、抗生物質、シンバイオティクスまたはプロバイオティクスの長期使用などの微生物叢組成を変化させる薬物を服用している対象体
- IBD、慢性肝炎または膵炎、C.ディフィシル、サルモネラ、カンピロバクター、シゲラによる最近の感染、または大腸菌による攻撃的な感染と診断された対象体
- 過去4か月以内に輸血を受けた対象体
- 妊娠中の対象体
- 試験開始の6か月前までに授乳中の対象体
- 週に1本超のタバコを吸う喫煙者
【0152】
データ収集
糞便カルプロテクチン。腸内微生物叢は主に次の4つの門に占められている:ファーミキューテス(Firmicutes)、バクテロイデス(Bacteroidetes)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、プロテオバクテリア。
【0153】
(統計分析)
0.05未満のp値を統計的に有意とみなす。分析を、SPSS(version 21、IBM Corp、Armonk、NY)を用いて行う。
【0154】
本発明の好ましい実施態様(FRn)を以下に示す。
【0155】
FRP1 鉄欠乏症の治療的処置を以前受けていた対象体において、鉄(II)化合物または塩を該対象体に投与することにより、胃腸炎症を処置する方法で使用するための鉄(III)製剤であって、
- 該鉄(III)製剤が、処置対象体の腸内微生物叢に存在するプロテオバクテリア門に属する病原性細菌の量を減少させ、そして
- 該鉄(III)製剤が、
(a)鉄(III)塩または錯体、
(b)少なくとも1つのリン脂質、
(c)スクレスターまたはショ糖エステル
を含むかまたはそれらからなる、製剤。
【0156】
FRP2 処置対象体が、胃腸炎症の対象体であり、かつ貧血であり、鉄(II)化合物または塩に基づく処置で以前処置されていたが、不成功であった、FRP1に記載の使用のための鉄(III)製剤。
【0157】
FRP3 処置方法が、胃腸炎症および貧血を有する対象体を処置するためであり、好ましくは胃腸炎症が、再発型である、FRP1またはFRP2に記載の使用のための鉄(III)製剤。
【0158】
FRP4 処置方法が、胃腸炎症を軽減するためであり;好ましくは、炎症が、感染によるものである、FRP1~3のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0159】
FRP5 プロテオバクテリア門に属する病原性細菌が、大腸菌、ピロリ菌、チフス菌、コレラ菌、レンサ球菌を含むかまたはそれらからなる群より選択される、FRP1~4のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0160】
FRP6 鉄(III)製剤が、処置対象体の腸内微生物叢の種類を増加させるかまたは変化させる、FRP1~5のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0161】
FRP7 鉄(III)製剤が、(d)植物由来のゼラチン化またはアルファー化デンプン;好ましくはコメデンプンまたはトウモロコシデンプン;より好ましくはアルファー化コメデンプンをさらに含む、FRP1~6のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0162】
FRP8 (b)少なくとも1つのリン脂質が、レシチン;好ましくは、ヒマワリレシチン、トウモロコシレシチン、大豆レシチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるレシチン(E322)からなる、FRP1~7のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0163】
FRP9 (c)スクレスターまたはショ糖エステルが、スクレスターE473;好ましくは、スクレスターの総重量に対して30~95重量%、好ましくは50~85重量%の植物由来の脂肪酸、好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸からなる脂肪酸を有する少なくとも2つのショ糖モノエステルを含むスクレスター(例えばE473)からなる、FRP1~8のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0164】
FRP10 鉄(III)製剤が、
(a)ピロリン酸鉄(III)、
(b)ヒマワリレシチン;
(c)スクレスターまたはショ糖エステル;および
(d)アルファー化コメデンプン
を含むかまたはそれらからなり、
好ましくは、(c)スクレスターまたはショ糖エステルと(b)リン脂質またはレシチン間の[(c):(b)]の重量比が、50:1~10:1、好ましくは40:1~10:1、より好ましくは30:1~15:1で構成される、FRP1~9のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0165】
FRP11 胃腸感染が、腸炎症、胃腸潰瘍、慢性胃炎、胃萎縮、腸憩室、下痢、嘔吐、胃腸痛、悪心、便秘からなる群より選択される、FRP1~10のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0166】
FRP12 対象体が、胃腸感染を有するかまたはそのリスクのある対象体であり;
好ましくは、胃腸感染を有するかまたはそのリスクのある対象体が、栄養摂取が不十分な対象体、不適切な衛生状態で生活している対象体、セリアック病の対象体、IBDの対象体、肥満手術を受けた対象体、胃炎の対象体、萎縮性胃炎の対象体、胃食道逆流症(GERD)の対象体からなる群より選択される、FRP1~11のいずれか一項に記載の使用のための製剤。
【0167】
FRP13 組成物が、
先行する項のいずれか一項に記載の製剤、および
少なくとも1つの医薬または食品グレードの添加物および/または添加剤
を含むかまたはそれらからなる、FRP1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
【国際調査報告】