(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】難燃性化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240222BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240222BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240222BHJP
C08G 77/26 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C07F7/18 X CSP
C08L83/04
C08K5/10
C08G77/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555717
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021085662
(87)【国際公開番号】W WO2022189024
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523345884
【氏名又は名称】バイオエンビジョン テクノロジー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エイケネス, モーテン
(72)【発明者】
【氏名】ヘヴィク, ダグ
(72)【発明者】
【氏名】リード, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲンセン, トンエ
(72)【発明者】
【氏名】サフリ, サメル
(72)【発明者】
【氏名】クヌートセン, アニエ ロセ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッグヘイム, シリ
(72)【発明者】
【氏名】コテク, イヴァン
【テーマコード(参考)】
4H049
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP06
4H049VP08
4H049VP10
4H049VQ02
4H049VQ60
4H049VQ88
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS35
4H049VS88
4H049VU25
4H049VV02
4H049VW02
4J002CP031
4J002EH096
4J002EH146
4J002FD026
4J002GL00
4J246AA03
4J246AB07
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA26X
4J246CA34X
4J246CA40X
4J246CA76U
4J246CA76X
4J246CA80M
4J246CA80X
4J246FA061
4J246FA131
4J246FA441
4J246GC13
4J246HA59
(57)【要約】
本発明は、(R1SiO1.5)x(R2SiO1.5)y(R3SiO1.5)zを提供する。本発明は、耐火性物質に関し、より詳細には、新規な機能化された多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)と、それらの耐火性物質としてのポリマー材料中での使用とに関する。本発明の目的は、改善された溶解特性を可塑剤に提供して様々なポリマーブレンド中に均質に分散させつつ、耐火性物質として優れた性質を有する、新規なPOSS化合物を提供することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
(R
1SiO
1.5)
x(R
2SiO
1.5)
y(R
3SiO
1.5)
z
のシルセスキオキサン
(式中、
x≧1、y≧1、z≧1、かつx+y+z=6、8、10または12であり;
R
1はL
1-フタルイミドであり、ここでL
1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;前記フタルイミドは、1つまたは複数のハロゲン、C
1~C
6アルキル、-COOH、-OHまたは-NO
2によって必要に応じて置換され;
R
2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換され;
R
3はL
2-NH-CO-R
4であり、ここでL
2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;R
4は、C
1~C
34アルキルまたはC
8~C
34アルケンである)。
【請求項2】
L
1が、C
1~C
6アルキル、フェニルまたはビニルである、請求項1に記載のシルセスキオキサン。
【請求項3】
R
2が、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換されたC
1~C
18アルキル、C
1~C
7アルケンまたはフェニル基である、請求項1または2に記載のシルセスキオキサン。
【請求項4】
R
2が、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換されたC
1~C
8アルキル、C
1~C
5アルケンまたはフェニル基である、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサン。
【請求項5】
L
2が、C
1~C
6アルキル、フェニルまたはビニルである、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサン。
【請求項6】
R
4が、C
12~C
24アルキルまたはC
12~C
24アルケンである、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサン。
【請求項7】
R
4が、C
18~C
22アルキルまたはC
18~C
22アルケンである、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサン。
【請求項8】
L
1およびL
2が同一である、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサン。
【請求項9】
L
1およびL
2が共にC
1~C
6アルキルであり、R
2が、C
1~C
8アルキル、C
1~C
7アルケンまたはフェニル基である、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサン。
【請求項10】
式:
(H
2N-L
1-SiO
1.5)
x(R
2SiO
1.5)
y
のシルセスキオキサン
(式中、
x≧2、y≧2、かつx+y=6、8、10または12であり;
L
1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;
R
2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換される)。
【請求項11】
難燃性添加剤としての、先行する請求項のいずれかに記載のシルセスキオキサンの使用。
【請求項12】
c) 50~99重量%の可塑剤と;
d) 1~50重量%の、請求項1から10のいずれかに記載のシルセスキオキサンと
を含む可塑剤組成物であって、
前記可塑剤が、フタレート、ジカルボン酸1,2-シクロヘキサン、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、テレフタレート、またはこれらの任意の組合せの群から選択されるジカルボン酸/トリカルボン酸エステル系可塑剤から選択され、
前記可塑剤と前記シルセスキオキサンの組み合わされた重量%が、前記可塑剤組成物の全重量の95~100重量%の範囲内にある、
可塑剤組成物。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のシルセスキオキサンまたは請求項12に記載の可塑剤組成物を含む、ポリマー材料。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載のシルセスキオキサンまたは請求項12に記載の組成物を製造する方法であって、
- 式H
2N-L
1-Si(OR
5)
3の化合物および式R
2Si(OR
6)
3の化合物
(式中、
L
1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み、
R
2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換され;
R
5およびR
6のそれぞれは、-CH
3および-CH
2CH
3のいずれかである)
を、0.25から4のモル比で縮合させるステップと;
- 式(H
2N-L
1-SiO
1.5)
x(R
2SiO
1.5)
yの中間シルセスキオキサン
(式中、
x≧2、y≧2、かつx+y=6、8、10または12である)
を得るステップと;
- 前記中間シルセスキオキサンを、式LG-CO-R
4の第1の化合物
(式中、
LGは適切な脱離基であり、R
4は、C
1~C
34アルキルまたはC
8~C
34アルケンである)
および、1つまたは複数のハロゲン、C
1~C
5アルキル、-COOH、-OHまたは-NO
2によって必要に応じて置換された無水フタル酸である第2の化合物
と反応させるステップと;
- 請求項1から9のいずれかに記載のシルセスキオキサンを得るステップと
を含む方法。
【請求項15】
請求項10に記載のシルセスキオキサンまたは請求項12に記載の組成物を製造する方法であって、
- 式H
2N-L
1-Si(OR
5)
3の化合物および式R
2Si(OR
6)
3の化合物
(式中、
L
1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;
R
2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C
1~C
18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換され;
R
5およびR
6のそれぞれは、-CH
3および-CH
2CH
3のいずれかである)
を0.25から4のモル比で縮合するステップ;
- 請求項10に記載のシルセスキオキサンを得るステップ
を含む、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法または請求項15に記載の方法によって得ることが可能なシルセスキオキサン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、耐火性物質に関し、より詳細には、新規な機能化された多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)と、それらの耐火性物質としてのポリマー材料中での使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
我々の日常生活で使用される、多くの一般的なポリマー材料は非常に可燃性であり、それによって実際的な用途において使用するときにその火災のリスクが増大する。その結果、ポリマーの耐火性を改善することが、ほとんどの用途に対してポリマー使用を拡大するための主な課題になっている。
【0003】
ハロゲン含有化合物は、ポリマーに関する有効な耐火性物質であることが周知であり、しかしながら環境上の懸念に起因して、ハロゲン含有耐火性物質の使用は徐々に禁止されてきている(Environ Health Perspect., 2004, 112, pages 9-17)。
【0004】
ハロゲン含有化合物の使用の代替例は、リン系耐火性物質である。しかしながら多くのリン系耐火性物質はポリマーを可塑化することになり、それによって弾性率、ガラス転移温度および強度が低減する。一部のリン系耐火性物質に関連した環境上の懸念もある(Fire Sci. 2004, 22, pages 293-303)。
さらに、多様な母材での有機リン化合物の出現および環境上の挙動は、Wei et al (Environ Pollut., 2015, 196, pages 29-46)により考察されている。
【0005】
このように、ポリマー母材中に組み込まれるのに適合性のある、安全で環境に優しい耐火性物質を開発することが、引き続き求められている。
【0006】
カーボンナノチューブまたはナノクレイなどのナノサイズの充填剤でポリマーを強化することは、安全で環境に優しい耐火性物質を提供するための将来性ある方法である。この手法に従えば、耐火性物質の改善が比較的低い充填剤含量でも見られる。
【0007】
モンモリロナイトは、天然に遍在するので最も一般的に使用されるクレイであり、高純度および低コストで得ることができ、非常に豊富なインターカレーションの化学を示し、容易に有機的に修飾できることを意味する。天然のクレイ表面は親水性であり、したがってクレイは、水性溶液中に容易に分散するが、ポリマー中には分散しない。したがって天然のクレイは、アルキルアンモニウムおよびアルキルホスホニウムカチオンなどの有機カチオンを使用してしばしば修飾され、ポリマー中に容易に分散できる疎水性有機修飾クレイを形成する。しかしながら、有機カチオンとナノクレイとの間に共有結合はない。
【0008】
カーボンナノチューブおよびナノクレイの使用の代替例は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)を共通のポリマー系に物理的にまたは化学的に組み込んで、改善された耐火特性を持つ混成複合体を提供することである。POSSは、その環境上の中立性、良好な耐熱性、ならびに優れた熱酸化安定性により、そのナノ構造が魅力的になった無機-有機混成化合物の1種である(New York: Springer Netherlands; 2011, pages 209-228)。
【0009】
POSSは、一般式(RSiO
1.5)
n(式中、Rは有機官能基を表し、nは一般に6、8、10または12である)を有する。nが8であるPOSSを、
図1に示す。
図1のような単一構造によってしばしば表されるが、POSSの合成によって得られた生成物は通常、R基の性質に応じて、一般式による種々の閉鎖ケージ構造と少量の完全に閉鎖されていない構造との混合物である。これらのケージ構造は、独自の混成(無機-有機)化学組成物と、直径が約1.5nmのナノサイズのケージ構造とを組み合わせる(R基が含まれる)。それらは最小の可能性あるシリカ粒子であると大まかに見なすことができる。しかしながら、シリカおよびナノクレイとは異なって、各POSS分子は、その外面に共有結合された有機官能基を有し、様々なポリマー系を持つPOSSの溶解性および適合性を提供し得る。
【化1】
【0010】
いくつかの種々のポリマーPOSS複合体が、高い耐火性に関連付けられることが示されてきたが、(progress in polymer science, 67, 2017, pages 77-125)、ポリマー系へのPOSSの組込みがポリマーのその他の物理的性質、特にポリマー系の機械的性質に悪影響を及ぼさないことが、必須である。
【0011】
POSS R官能基における変化は、POSS部分とホストポリマーセグメントとの間の相互作用を決定することが既に知られており、即ちこれは、ミクロ構造およびレオロジーに影響を及ぼすことが知られている(Journal of Macromolecular Science, Part C: Polymer Reviews, 49: 25-63, 2009)。理論に拘泥するものではないが、R官能基の選択は、耐火性およびポリマーPOSS複合体のその他の物理的性質の両方に関して必須と考えられる。
【0012】
ポリマーPOSS複合体を得るためのモノマー混合物中へのPOSSの組込みは、重合が生じる前にPOSSの性質によりモノマーと緊密にブレンドさせなければならないので、瑣末なことではない。
本発明の目的は、改善された溶解特性を可塑剤に提供して様々なポリマーブレンド中に均質に分散させつつ、耐火性物質として優れた性質を有する、新規なPOSS化合物を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Environ Health Perspect., 2004, 112, pages 9-17
【非特許文献2】Fire Sci. 2004, 22, pages 293-303
【非特許文献3】New York: Springer Netherlands; 2011, pages 209-228
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明は、添付される請求項によって、および下記において定義される:
第1の態様では、本発明は、式:
(R1SiO1.5)x(R2SiO1.5)y(R3SiO1.5)z
のシルセスキオキサン
(式中、
x≧1、y≧1、z≧1、かつx+y+z=6、8、10または12であり;
R1はL1-フタルイミドであり、ここでL1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;フタルイミドは、1つまたは複数のハロゲン、C1~C6アルキル、-COOH、-OHまたは-NO2によって必要に応じて置換され;
R2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換され;
R3はL2-NH-CO-R4であり、ここでL2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;R4は、C1~C34アルキルまたはC8~C34アルケンである)
を提供する。
【0015】
「残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含む」という用語は、炭素鎖が、エーテル部分R-O-Rまたは第二級アミン部分R-NH-Rを含み得ることを意味するものとする。
【0016】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、L1は、C1~C6アルキル、フェニルまたはビニルであってもよい。
【0017】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、R2は、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換されたC1~C18アルキル、C2~C7アルケンまたはフェニル基であってもよい。
【0018】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、R2は、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換されたC1~C8アルキル、C2~C5アルケンまたはフェニル基であってもよい。
【0019】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、L2は、C1~C6アルキル、フェニルまたはビニルであってもよい。
【0020】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、R4は、C8~C34アルキルまたはC12~C24アルケンであってもよい。
【0021】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、R4は、C12~C24アルキルまたはC12~C24アルケンであってもよい。
【0022】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、R4は、C18~C22アルキルまたはC18~C22アルケンであってもよい。
【0023】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、L1およびL2は同一であってもよい。言い換えれば、L1はL2に等しい。
【0024】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、L1およびL2は共にC1~C6アルキルであってもよく、R2はC1~C8アルキル、C1~C7アルケンまたはフェニル基である。
【0025】
第1の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、R4は、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸または大豆酸など、適切な脂肪酸から誘導されてもよい。
【0026】
第2の態様では、本発明は、式:
(H2N-L1-SiO1.5)x(R2SiO1.5)y
のシルセスキオキサン
(式中、
x≧2、y≧2、かつx+y=6、8、10または12であり;
L1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;
R2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換される)
を提供する。
【0027】
第2の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、L1およびR2は、第1の態様の任意の実施形態に関して定義された通りであってもよい。
【0028】
第3の態様では、本発明は、難燃性添加剤としての第1または第2の態様によるシルセスキオキサンの使用を提供する。
【0029】
難燃性添加剤は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、エポキシド、様々なポリエステルおよびポリスチレン(PS)を含む群から選択される熱可塑性、熱硬化性、またはエラストマー性ポリマー材料を含む任意の適切なポリマー材料など、それを必要とする任意の適切な材料に添加されてもよい。難燃性添加剤は、有利には、アルミニウム三水和物(ATH)または三酸化アンチモンなどの無機難燃性添加剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0030】
第4の態様では、本発明は:
a) 50~99重量%の可塑剤と;
b) 1~50重量%の第1または第2の態様によるシルセスキオキサンと
を含む可塑剤組成物であって;
可塑剤が、フタレート、ジカルボン酸1,2-シクロヘキサン、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、テレフタレート、またはこれらの任意の組合せの群から選択されるジカルボン酸/トリカルボン酸エステル系可塑剤から選択され、
可塑剤とシルセスキオキサンの組み合わされた重量%が、可塑剤組成物の全重量の90~100重量%の範囲内にある、
可塑剤組成物を提供する。
【0031】
第4の態様の実施形態では、可塑剤組成物は、第1または第2の態様によるシルセスキオキサンを1~10または1~5重量%含む。
【0032】
第5の態様では、本発明は、第1もしくは第2の態様によるシルセスキオキサンまたは第4の態様による可塑剤組成物を含むポリマー材料を提供する。ポリマー材料は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、エポキシド、様々なポリエステルおよびポリスチレン(PS)を含む群から選択される熱可塑性材料、熱硬化性材料、またはエラストマーであってもよい。ポリマー材料は、有利には、アルミニウム三水和物(ATH)または三酸化アンチモンなどの無機難燃性添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
第6の態様では、本発明は、第1の態様によるシルセスキオキサンまたは第4の態様による組成物を製造する方法であって:
- 式H2N-L1-Si(OR5)3の化合物および式R2Si(OR6)3の化合物
(式中、
L1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み、
R2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換され;
R5およびR6のそれぞれは、-CH3および-CH2CH3のいずれかである)
を0.25から4のモル比で縮合させるステップと;
- 式(H2N-L1-SiO1.5)x(R2SiO1.5)yの中間シルセスキオキサン
(式中、
x≧2、y≧2、かつx+y=6、8、10または12である)
を得るステップと;
- 中間シルセスキオキサンを、式LG-CO-R4の第1の化合物
(式中、
LGは適切な脱離基であり、R4は、C1~C34アルキルまたはC8~C34アルケンである)
および、1つまたは複数のハロゲン、C1~C5アルキル、-COOH、-OHまたは-NO2によって必要に応じて置換された無水フタル酸である第2の化合物
と反応させるステップと;
- 第1の態様によるシルセスキオキサンを得るステップと
を含む方法を提供する。
【0034】
第6の態様の実施形態では、式H2N-L1-Si(OR5)3の化合物の、式R2Si(OR6)3の化合物に対するモル比は、0.4から2.5である。
【0035】
第6の態様の実施形態では、方法は、得られたシルセスキオキサンを適切な可塑剤に添加して、第4の態様による組成物を得るステップを含む。
【0036】
第6の態様の実施形態では、第1の化合物は、式H2N-L1-Si(OR5)3の化合物に対して0.2から0.8、0.3から0.7または0.4から0.6のモル比で添加される。
【0037】
第6の態様の実施形態では、第1の化合物は、中間シルセスキオキサンに対して0.1から0.6のモル比で添加される。
【0038】
第6の態様の実施形態では、第2の化合物は、式H2N-L1-Si(OR5)3の化合物に対して0.2から0.8、0.3から0.7または0.4から0.6のモル比で添加される。
【0039】
第6の態様の実施形態では、第2の化合物は、中間シルセスキオキサンに対して0.1から0.6のモル比で添加される。
【0040】
第6の態様によるシルセスキオキサンの実施形態では、第1の化合物は、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸または大豆酸などの適切な脂肪酸であってもよい。
【0041】
第7の態様では、本発明は、第2の態様によるシルセスキオキサンまたは第4の態様による組成物を製造する方法であって:
- 式H2N-L1-Si(OR5)3の化合物および式R2Si(OR6)3の化合物
(式中、
L1は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C8炭化水素ラジカル;および置換または非置換アリーレンからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、酸素および窒素元素の1種または複数を必要に応じて含み;
R2は、直鎖、分岐状または環状であってもよい飽和または不飽和C1~C18炭化水素ラジカルからなる群から選択される残基であり;前記残基の炭素鎖は、1つまたは複数の酸素を必要に応じて含み、1つまたは複数のハロゲンによって必要に応じて置換され;
R5およびR6のそれぞれは、-CH3および-CH2CH3のいずれかである)
を0.25から4のモル比で縮合するステップと;
- 第2の態様によるシルセスキオキサンを得るステップと
を含む方法を提供する。
【0042】
第7の態様では、本発明は、第6または第7の態様による方法によって得ることが可能なシルセスキオキサンを提供する。
【0043】
本明細書で使用される「アルキル」および「アルケン」という用語は、直鎖状、環状、および分岐状のアルキルおよびアルケンをそれぞれ包含するものである。
【0044】
言い換えれば、C1~C18アルキルは、例えばメチルエチル、プロピル、sec-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチルまたはオクタデシルであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
本明細書で特に定義されない限り、使用される全ての技術的および科学的用語は、有機化学およびポリマー技術の分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0046】
本明細書に記述されるものに類似するまたは等しい全ての方法および材料を、本発明の実施または試験で使用することができ、その適切な方法および材料が本明細書に記述されている。本明細書に記述される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生ずる場合、定義を含む本明細書が優先することになる。
【0047】
数値限界または範囲が本明細書で述べられている場合、その端点が含まれる。また、数値限界または範囲内の全ての値および下位範囲も、明示的に書き出されるかのように特に含まれる。
【0048】
本発明の背景は、改善された耐火性と、ポリマーブレンドに組み込むのに適した溶解性とを有する新規なPOSS化合物を提供するという望みであった。新規なPOSSは、好ましくは、最終ポリマー材料の機械的性質に、いかなる悪影響も持つべきではない。
【0049】
ポリマー産業で周知の可塑剤と均質にブレンドするための新規なPOSS化合物の適切性は、特に関心のあるものである。可塑剤を適切なポリマーモノマーと混合する前にPOSSを可塑剤に溶解することにより、通常なら相溶性が課題になり得る新規なPOSSがポリマーに組み込まれ得る。可塑剤とブレンドするための新規なPOSS化合物の適切性は、置換基の定められた組合せによって主に確実になる。
【0050】
上述のように、本発明によるPOSS化合物は、所望のモノマーに添加される前に可塑剤とブレンドするのに特に適切である。本発明のPOSS化合物を溶解するための適切な可塑剤は、例えばフタル酸エステル、例えばフタル酸ジイソノニル(DINP)、および類似体の1,2-シクロヘキサンジカルボン酸エステル、例えば1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)である。可塑剤のほぼ90%がPVCで使用され、この材料に、改善された柔軟性および耐久性を与える。PVCなどのプラスチックでは、可塑剤が多く添加されるほど、その低温柔軟温度が低くなる。可塑剤を含有するプラスチック物品は、改善された柔軟性および耐久性を示すことができる。
【0051】
様々な可塑剤、特にPVCに対する可塑剤でPOSSの所望の溶解度を得るため、本出願人は、短いおよび長い炭素鎖の両方を含む置換基の適切な組合せを有するPOSS化合物が、有利になる可能性があると仮定した。さらに、少なくとも1つの置換基は、難燃特性を最適化するのにフタルイミドを含むべきである。
【0052】
本発明で概略的に記述されたように、単なる例示を目的として本明細書で提供されかつ他に指示しない限り限定を意図するものではない、ある特定の実施例を参照することにより、さらなる理解を得ることができる。
実験手順
【0053】
本発明による例示的なPOSS化合物ならびに比較例のPOSS化合物の合成について、以下に記述する。
【0054】
上記にて論じたように、POSS化合物は、種々の閉鎖ケージ構造の混合物として一般に得られる。
【0055】
Bruker 400MHz NB Avance III UltraShielded Plus機器を使用して、単離されたPOSS化合物の選択に関して1H-NMR、13C-NMRおよび29Si-NMRスペクトルを得た。化合物の混合物に起因して、スペクトルは極めて複雑であるが、29Si-NMRは、閉鎖ケージ構造に属するシフトのみ示し、即ち開放構造は検出されなかった。
【実施例】
【0056】
例示的なPOSS化合物
比較例の出発化合物
(実施例1.1)
(アミノ-POSS)
温度調節可能なヒートジャケットを備える3Lの反応器には、撹拌子、温度計、滴下漏斗、還流と蒸留との間の急速交換用のカラムヘッドを持つ垂直クーラー、および真空接続(膜ポンプ)がある。800g(3.61mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、880g(14.65mol)の1-プロパノール、および130g(7.23mol)の水の混合物を、反応槽に添加した。得られた混合物を、窒素ガスおよび真空を使用して3回パージした。次いで反応混合物を、2時間、加熱還流した(標準大気圧で)。次いで揮発性反応生成物および溶媒を、蒸留によって除去した。約750gの揮発性反応生成物および溶媒が除去されたら、1200gのキシレンを添加し、キシレンの沸点に到達するまで蒸留を続けた。合計で2212gの揮発性反応生成物および溶媒が除去され、399g(3.61mol)のアミノ-POSSおよび399gのキシレンが最終混合物中に得られ、キシレン中アミノ-POSSの50重量%溶液798gが得られた。
【0057】
アミノ-POSSの合成において、溶媒キシレンは、プロパノールに置き換えられてもよく、蒸留温度は相応に修正されてもよい。
本発明による出発化合物
(実施例1.2)
(アミノ-プロピル-POSS)
【0058】
温度調節可能なヒートジャケットを備える3Lの反応器には、撹拌子、温度計、滴下漏斗、還流と蒸留との間の急速交換用のカラムヘッドを持つ垂直クーラー、および真空接続(膜ポンプ)がある。625g(2.82mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、583g(2.82mol)のトリエトキシ(プロピル)シラン、687g(11.4mol)の1-プロパノール、および203g(11.29mol)の水の混合物を、反応槽に添加した。得られた混合物を、窒素ガスおよび真空を使用して3回パージした。次いで反応混合物を、16時間、加熱還流した(標準大気圧で)。次いで揮発性反応生成物および溶媒を、蒸留によって除去した。約1000gの揮発性反応生成物および溶媒が除去されたら、1200gのキシレンを添加し、キシレンの沸点に到達するまで蒸留を続けた。合計で2138gの揮発性反応生成物および溶媒が除去され、581g(5.65mol)のアミノ-プロピル-POSSおよび581gのキシレンが最終混合物中に得られ、キシレン中アミノ-プロピル-POSSの50重量%溶液1162g得られた。得られた生成物の29Si-NMRは、-65から-70ppmで主要なピークを示し、完全に縮合されたケージ構造であることを示している。
【0059】
アミノ-プロピル-POSSの合成において、溶媒キシレンは、1-メトキシ-2-プロパノールによって置き換えられてもよく、蒸留温度は相応に修正されてもよい。
(実施例1.3)
(アミノ-フェニル-POSS)
【0060】
温度調節可能なヒートジャケットを備える10Lの反応器には、撹拌子、温度計、滴下漏斗、還流と蒸留との間の急速交換用のカラムヘッドを持つ垂直クーラー、および真空接続(膜ポンプ)がある。443g(2.00mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、1923g(8.00mol)のトリエトキシ(フェニル)シラン、2432g(40.46mol)の1-プロパノール、および360g(20.00mol)の水の混合物を、反応槽に添加した。得られた混合物を、窒素ガスおよび真空を使用して3回パージした。次いで反応混合物を、16時間、加熱還流した(標準大気圧で)。次いで揮発性反応生成物および溶媒を、蒸留によって除去した。約3000gの揮発性反応生成物および溶媒が除去されたら、4500gのキシレンを添加し、キシレンの沸点に到達するまで蒸留を続けた。合計で7148gの揮発性反応生成物および溶媒が除去され、1256g(10mol)のアミノ-フェニル-POSSおよび1256gのキシレンが最終混合物中に得られ、キシレン中アミノ-フェニル-POSSの50重量%溶液2512gが得られた。
(実施例1.4)
(アミノ-ビニル-POSS)
【0061】
温度調節可能なヒートジャケットを備える3Lの反応器には、撹拌子、温度計、滴下漏斗、還流と蒸留との間の急速交換用のカラムヘッドを持つ垂直クーラー、および真空接続(膜ポンプ)がある。400g(1.81mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、344g(1.81mol)のトリエトキシ(ビニル)シラン、880g(14.64mol)の1-プロパノール、および130g(7.23mol)の水の混合物を、反応槽に添加した。得られた混合物を、窒素ガスおよび真空を使用して3回パージした。次いで反応混合物を、16時間、加熱還流した(標準大気圧で)。次いで揮発性反応生成物および溶媒を、蒸留によって除去した。約1200gの揮発性反応生成物および溶媒が除去されたら、1200gのキシレンを添加し、キシレンの沸点に到達するまで蒸留を続けた。合計で2318gの揮発性反応生成物および溶媒が除去され、343g(3.62mol)のアミノ-ビニル-POSSおよび343gのキシレンが最終混合物中に得られ、キシレン中アミノ-ビニル-POSSの50重量%溶液686gが得られた。
(実施例1.5)
(アミノ-オクチル-POSS)
【0062】
温度調節可能なヒートジャケットを備える3Lの反応器には、撹拌子、温度計、滴下漏斗、還流と蒸留との間の急速交換用のカラムヘッドを持つ垂直クーラー、および真空接続(膜ポンプ)がある。400g(1.81mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、500g(1.81mol)のトリエトキシ(オクチル)シラン、880g(14.64mol)の1-プロパノール、および130g(7.23mol)の水の混合物を、反応槽に添加した。得られた混合物を、窒素ガスおよび真空で3回パージした。次いで反応混合物を、16時間、加熱還流した(標準大気圧で)。次いで揮発性反応生成物および溶媒を、蒸留によって除去した。約1000gの揮発性反応生成物および溶媒が除去されたら、1200gのキシレンを添加し、キシレンの沸点に到達するまで蒸留を続けた。合計で2114gの揮発性反応生成物および溶媒が除去され、498g(3.61mol)のアミノ-オクチル-POSSおよび498gのキシレンが最終混合物中に得られ、キシレン中アミノ-オクチル-POSSの50重量%溶液996gが得られた。
(実施例1.6)
(アミノ-プロピル-POSS)
【0063】
温度調節可能なヒートジャケットを備える3Lの反応器には、撹拌子、温度計、滴下漏斗、還流と蒸留との間の急速交換用のカラムヘッドを持つ垂直クーラー、および真空接続(膜ポンプ)がある。500g(2.26mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、155g(0.75mol)のトリエトキシ(プロピル)シラン、550g(9,15mol)の1-プロパノール、および108g(6,02mol)の水の混合物を、反応槽に添加した。得られた混合物を、窒素ガスおよび真空を使用して3回パージした。次いで反応混合物を、16時間、加熱還流した(標準大気圧で)。次いで揮発性反応生成物および溶媒を、蒸留によって除去した。約1000gの揮発性反応生成物および溶媒が除去されたら、1200gの1-メトキシ-2-プロパノールを添加し、1-メトキシ-2-プロパノールの沸点に到達するまで蒸留を続けた。合計で2138gの揮発性反応生成物および溶媒が除去され、321g(3.01mol)のアミノ-プロピル-POSSおよび321gの1-メトキシ-2-プロパノールが最終混合物中に得られ、1-メトキシ-2-プロパノール中アミノ-プロピル-POSSの50重量%溶液642gが得られた。
【0064】
全ての出発化合物は、反応混合物の揮発性物質を蒸留/蒸発させることによって、定量的収率近くで単離することができた。
本発明によるPOSS化合物
SF453
【0065】
実施例1.2に従って得られた生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)1162gに、1500gのキシレンおよび402g(1.41mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(25g)に等しい場合、反応を80℃に冷却し、209g(1.41mol)の無水フタル酸チップを添加し、反応混合物を130℃で2時間加熱した。
得られた生成物の29Si-NMRは、-65から-71ppmの間のピークのみ示し、これは完全に縮合されたケージ構造を示している。
SF457
【0066】
実施1.2に従って得られた1162gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)に、1500gのキシレンおよび241g(0.85mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容量50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(15.2g)に等しい場合、反応を80℃に冷却し、293g(1.98mol)の無水フタル酸チップを添加し、反応混合物を130℃で2時間加熱した。
SF468
【0067】
実施例1.3に従って得られた2512gの生成物(キシレン中、アミノ-フェニル-POSSの50重量%溶液)に、3000gのキシレンおよび356g(1.25mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(23g)に等しい場合、反応を80℃に冷却し、111g(0.75mol)の無水フタル酸チップを添加し、反応混合物を130℃で2時間加熱した。
得られた生成物の29Si-NMRは、-65から-71ppmの間および-77から-82ppmの間でのみピークを示し、これは完全に縮合されたケージ構造を示すものである。
SF506
【0068】
実施例1.4に従って得られた686gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-ビニル-POSS)に、1000gのキシレンおよび254g(0.90mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(16g)に等しい場合、反応を80℃に冷却し、134g(0.9mol)の無水フタル酸チップを添加し、反応混合物を130℃で2時間加熱した。
SF460
【0069】
実施例1.2に従って得られた1162gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)に、1500gのキシレンおよび397g(1.41mol)の大豆酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(25g)と等しい場合、反応を80℃に冷却し、209g(1.41mol)の無水フタル酸チップを添加し、反応混合物を130℃で2時間加熱した。
得られた生成物の29Si-NMRは、-65から-71ppmの間のピークのみ示し、これは完全に縮合したケージ構造を示している。
SF456
【0070】
実施例1.2に従って得られた1162gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)に、1500gのキシレンおよび804g(2.83mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量は、計算された収量(51g)に等しい。
SF400
【0071】
実施例1.5に従って得られた996gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-オクチル-POSS)に、900gのキシレンおよび257g(0.9mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(16g)に等しい場合、反応を80℃に冷却し、134g(0.9mol)の無水フタル酸チップを添加し、反応混合物を130℃で2時間加熱した。
FN400126
【0072】
実施例1.6に従って得られた642gの生成物(1-メトキシ-2-プロパノール中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)に、642gの1-メトキシ-2プロパノールおよび115g(0.75mol)のサリチル酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、メタノールを留去した。留去されたメタノールの量が、計算された収量(24g)に等しい場合、反応を80℃に冷却した。66g(0.75mol)の炭酸エチレンを添加し、反応混合物を80℃で2時間保持した。次いで111.5g(0.75mol)の無水フタル酸チップを添加した。無水フタル酸が溶解したら、キシレンを添加し、混合物中の温度が130℃に到達するまで1-メトキシ-2-プロパノールを留去した。反応混合物を、130℃で2時間保持した。
FN400127
【0073】
実施例1.2に従って得られた1116gの生成物(1-メトキシ-2-プロパノール中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)に、1394gの1-メトキシ-2プロパノールおよび119g(1.36mol)の炭酸エチレンを添加した。反応混合物を80℃に加熱し、80℃で2時間保持した。次いで201g(1.36mol)の無水フタル酸チップを添加した。無水フタル酸が溶解したら、キシレンを添加し、1-メトキシ-2-プロパノールを、混合物中の温度が130℃に到達するまで留去した。反応混合物を、130℃で2時間保持した。
FN400151
【0074】
実施例1.2に従って得られた1116gの生成物(1-メトキシ-2-プロパノール中、50重量%のアミノ-プロピル-POSS)に、1394gの1-メトキシ-2プロパノールおよび48g(0.54mol)の炭酸エチレンを添加し、反応混合物を80℃に加熱し、80℃で2時間保持した。次いで321g(2.17mol)の無水フタル酸チップを添加した。無水フタル酸が溶解したら、キシレンを添加し、1-メトキシ-2-プロパノールを、混合物中の温度が130℃に到達するまで留去した。反応混合物を、130℃で2時間保持した。
【0075】
本発明による全てのPOSS化合物は、反応混合物の揮発性物質を蒸留/蒸発させることによって、定量的収率近くで単離することができた。
比較例のPOSS化合物
SF406
【0076】
実施例1.1に従って得られた798gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-POSS)に、1000gのキシレンおよび308g(0.9mol)のベヘン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(16g)に等しい場合、反応を50℃に冷却し、92g(0.9mol)の無水酢酸をゆっくり添加した。反応が停止して熱を発生させたら、反応混合物を80℃に加熱し、268g(1.81mol)の無水フタル酸チップを添加した。反応混合物を130℃に2時間加熱した。
【0077】
反応は、残留アミンが5mg KOH/g試料よりも低くなった後、完了したと見なされた。
【0078】
反応からの酢酸残留物を、反応混合物に水を3×100ml添加する共蒸留によって除去した。
SF427
【0079】
実施例1.1に従って得られた798gの生成物(キシレン中、50重量%のアミノ-POSS)に、1000gのキシレンおよび1027g(3.61mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(65g)に等しかった。
SF205
【0080】
実施例1.1に従って得られた、キシレン生成物中アミノ-POSSの50重量%溶液798gに、1000gのキシレンおよび307g(0.9mol)のベヘン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(16g)に等しい場合、493g(2.71mol)のサリチル酸グリコールを添加し、反応混合物を16時間、加熱還流した。
SF228
【0081】
実施例1.1に従って得られた、キシレン生成物中アミノ-POSSの50重量%溶液798gに、1000gのキシレンおよび513g(1.81mol)のステアリン酸を添加した。反応混合物を加熱還流し、水を、容積50mlのDean-Starkトラップを使用して、キシレンとの共沸混合物として留去した。留去された水の量が、計算された収量(32g)に等しい場合、330g(1.81mol)のサリチル酸グリコールを添加し、反応混合物を16時間、加熱還流した。
FN400120
【0082】
実施例1.1に従って得られた生成物(プロパノール中、50重量%のアミノ-POSS)9620gに、8000gのプロパノールおよび3315g(21.79mol)のメチルサリチレートを添加した。反応混合物を加熱還流し、メタノールを留去した。留去されたメタノールの量が、計算された収量(698g)に等しい場合、反応を80℃に冷却し、959g(10.89mol)の炭酸エチレンをゆっくり添加した。反応が停止して熱を発生させたら、反応混合物を80℃に加熱し、1613g(10.89mol)の無水フタル酸チップを添加した。無水フタル酸が溶解したら、キシレンを添加し、プロパノールを、混合物中の温度が130℃に到達するまで留去した。反応混合物を、130℃に2時間、加熱した。
【0083】
全ての比較例のPOSS化合物は、反応混合物の揮発性物質を蒸留/蒸発させることによって、定量的収率近くで単離することができた。
反応がいつ完了したかを決定すること:
全ての反応は、下記の方法に従って決定されるように、残留アミン価が10よりも下であるがより好ましくは5よりも下に到達したときに完了したと見なされた:
【0084】
既知の量の材料を、2-ブトキシエタノールまたはクロロベンゼンのいずれかの10mLと、氷酢酸50mLに溶解した。この混合物を、酢酸に溶解したHClO
4の0.10モル溶液で滴定した。
下式を使用して、アミン価を計算した:
【数1】
例えば:4.1mlの0.10M HClO
4を1.203gのPOSS試料およびTS%含量51.33%(0.5133)で滴定したときに等価点が観察された場合、
【数2】
POSSおよび可塑剤(DINP)を含む組成物の調製
【0085】
反応混合物を、丸底フラスコに添加し、そこにフタル酸ジイソノニル(DINP)を添加した。反応溶媒を真空下で除去して、POSSおよびDINPのみを得た。得られた組成物は、POSSと適切なモノマーとの均質なブレンドを得るのに、非常に有利である。
【0086】
POSSが使用されることになるポリマーに応じて、組成物は、水と混合することによって乳化されてもよい。これらのエマルジョンは、様々なモノマーの水系分散体、即ちラテックス、例えばPVCおよびアクリレート中で有利に使用され得る。
難燃剤としての例示的なPOSS化合物の試験
例示的なPOSS化合物の難燃特性を、ISO11925-2単一炎源燃焼試験、https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:11925:-2:ed-3:v1:enに従い試験した。
【0087】
燃焼試験に適した試験片を得るため、一部の例示的な化合物(SF453、SF457、SF468、SF506、SF460、SF456)および一部の比較化合物(SF406、SF427、SF205、SF228)を、PVC中の添加剤として使用して、1.3から1.6mmの厚さを有するポリマーフィルムの適切な細片を得た。各試験片は、PVCモノマー(P1412E-PVC)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、アルミニウム三水和物(ATH)、および安定化剤(Baerostab UBZ 660-4 RF)を1:100:50:20:3の重量比で含むそれぞれの例示的な化合物の混合物を硬化することによって得た。
【0088】
本発明による例示的なPOSS化合物は、良好乃至優れた難燃特性をISO11925-2試験で示し、表1を参照されたい。表1では、様々な反応物の量がmol%を単位として示される。
【0089】
ISO11925-2燃焼試験からの実験結果は、例えば様々な脂肪酸の第一級アミン基、フタルイミド残基への付加によって得られるような長い炭化水素鎖と、いかなるアミノ官能基も持たない短い炭化水素鎖との組合せを有するPOSS化合物が、難燃剤として非常に有利な性質を有することを明らかにする。
【0090】
燃焼試験に適した試験片の第2のシリーズでは、その他の例示的な化合物(FN400151、FN400126、FN400127)および比較化合物(FN400120)を、ポリオール中の添加剤として使用した。フォームの適切な試料を得るため、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)をポリオールおよび水と、34:20:1の重量比で混合した。
【0091】
炎の高さのみ、ISO11925-2に従い測定したが、その他の炎のパラメーター、例えば合/否試験は、この材料に関係しない。
【0092】
本発明による例示的なPOSS化合物は、比較例よりも著しく低い炎の高さを示し、ISO11925-2試験で良好乃至優れた難燃特性を提供し、表2を参照されたい。表2では、様々な反応物の量がmol%を単位として与えられる。
【表1】
【表2】
【国際調査報告】