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特表2024-509494バイオマーカー検出のための純粋なグラフェン系のバイオセンサ並びに関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】バイオマーカー検出のための純粋なグラフェン系のバイオセンサ並びに関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20240226BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240226BHJP
   B82Y 15/00 20110101ALI20240226BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240226BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20240226BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
C01B32/194
C12M1/34 E ZNA
A61K49/00
B82Y15/00
B82Y40/00
C07K17/00
C12Q1/37
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023540759
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021065573
(87)【国際公開番号】W WO2022147171
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,972
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523248817
【氏名又は名称】ホークアイ バイオ,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516385790
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ カンザス
(71)【出願人】
【識別番号】521437677
【氏名又は名称】カンザス、ステート、ユニバーシティ、リサーチ、ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KANSAS STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー,ポール ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンチュラ,スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】アパリシオ,クリスティーナ-ミハエラ サンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ボスマン,ステファン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン,クリストファー エム.
(72)【発明者】
【氏名】コヴァルビアス-ザンブラーノ,オブドゥリア
(72)【発明者】
【氏名】コヴァルビアス,ホセ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4C085
4G146
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029FA12
4B029FA13
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ36
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR48
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4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
4C085HH11
4C085JJ03
4C085KA27
4C085KB82
4C085LL18
4C085LL20
4G146AA01
4G146AB04
4G146AB07
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AD40
4G146BA01
4G146CB10
4G146CB11
4G146CB19
4G146CB22
4G146CB32
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA60
4H045EA50
4H045EA51
(57)【要約】
本明細書において提供されるのは、グラフェンバイオセンサ及び関連するコア粒子、組成物、方法及びシステムであり、ここで、1つ以上の純粋なグラフェンシートが有機又は無機材料のコーティング層でコーティングされてコアグラフェン粒子を提供し、これに、検出可能な部分及びペプチド結合を含む検出可能な構成要素が、ペプチド結合の結合を介して結合される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純粋なグラフェンナノシート表面がある純粋なグラフェンナノシート及び
前記純粋なグラフェンナノシート表面の少なくとも50%を覆うコーティング層
を含むグラフェンコア粒子であって、
前記コーティング層が、水への溶解度が25℃で1質量%である有機化合物及び/又は無機化合物を含み
前記有機化合物及び/又は無機化合物は、前記純粋なグラフェンナノシートに付着して前記コーティング層を形成し、ここで、
前記純粋なグラフェンナノシート並びに/又は前記コーティング層の前記有機化合物及び/若しくは無機化合物が、水溶液中で対応する官能基に結合することができる官能基を提示するように構成される、グラフェンコア粒子。
【請求項2】
平均サイズが10nm~5000nmであり、コーティング材料が前記グラフェン粒子の表面の少なくとも85%をコーティングする、請求項1に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項3】
2~100枚の前記純粋なグラフェンナノシートを含み、前記粒子の平均サイズが900nm以下、350nm以下、又は250nmである、請求項1に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項4】
2~100枚の前記純粋なグラフェンシートを含み、コーティング材料が前記グラフェン粒子の表面の少なくとも90%をコーティングする、請求項1に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項5】
5~25枚の前記純粋なグラフェンシートを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項6】
5~7枚の前記純粋なグラフェンシートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項7】
前記純粋なグラフェンシートは、平均サイズが150nmの粒子を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項8】
コーティング材料が有機ポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項9】
有機ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマーのうちの1つ以上を含み、かつ、ポリスチレン-カルボン酸及びポリスチレン-アミンのうちの1つ以上を含み、他の好ましいコーティングは、化学的に修飾されたオリゴエチレングリコール、及びオリゴイミン、及びスターバーストデンドリマーである、請求項8に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項10】
コーティング材料が、前記グラフェンシートの表面の少なくとも99%を覆う、請求項1~8のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項11】
コーティング材料の厚さが18nm以下であり、標的化能力を特徴とする付着ペプチド配列に対しては最低2nmとなりうる、請求項1~10のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項12】
厚さが、8~17nm、2~18nm、又は5~15nmである、請求項1~11のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項13】
標的バイオマーカーを検出するように構成されたグラフェンバイオセンサであって
請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子と蛍光シグナルを発することができる検出可能部分と、を含み、前記検出可能部分は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合を介して前記グラフェンコア粒子に付着しており、
前記コーティング層及び前記ペプチド結合は、グラフェンナノシートが前記検出可能部分の蛍光シグナルを消光する、前記グラフェンナノシートと前記検出可能部分との間の消光距離を設定するように構成され、
前記ペプチド結合が、さらに、前記認識配列の前記標的バイオマーカーによる認識の際に、前記グラフェンナノシートと前記検出可能部分との間の発光距離を設定するように構成され、ここで、前記グラフェンナノシートが前記検出可能部分の前記蛍光シグナルを消光せず、
前記標的バイオマーカー特異的ペプチド結合及び前記検出可能部分は、したがって、前記標的バイオマーカーによる前記ペプチド結合の修飾時に検出可能な蛍光シグナルを放出するように構成された標的特異的検出可能成分を形成する、グラフェンバイオセンサ。
【請求項14】
前記認識配列が、プロテアーゼ、キナーゼ、アルギナーゼ、サイトカイン/ケモカイン、ジオキシゲナーゼ、エステラーゼ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるバイオマーカーに特異的である、請求項13に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項15】
前記プロテアーゼが、セリン、アスパルチル、システイン、メタロプロテアーゼ、カスパーゼ、ウロキナーゼ、カテプシン、カスパーゼ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項16】
前記バイオマーカーが、がん性又は前がん性細胞活性、細菌活性、感染、炎症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される状態を示す、請求項13~15のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項17】
前記検出可能部分が、有機色素、無機色素、フルオロフォア、ホスホフォア、光吸収粒子、量子ドット、及びそれらの組合せ、並びにそれらの金属化錯体からなる群から選択される発色団/発光団である、請求項13~16のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項18】
発色団/発光団が、クマリン、ピレン、シアニン、BODIPY色素、ベンゼン、N-メチルカルバゾール、エリトロシンB、N-アセチル-L-トリプトファンアミド、2,5-ジフェニルオキサゾール、ルブレン、及びN-(3-スルホプロピル)アクリジニウムからなる群から選択される有機色素である、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項19】
発色団/発光団が、ポルフィリン、フタロシアニン、クロリン、及びメタル化発色団からなる群から選択される無機色素である、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項20】
ポルフィリンが、テトラカルボキシ-フェニル-ポルフィリン(TCPP)又はZn-TCPPである、請求項19に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項21】
発色団/発光団が、リン光色素、フルオレセイン、ローダミン、及びアントラセンからなる群から選択されるフルオロフォア又はリンである、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項22】
量子ドットが、CdSe/ZnSコア/シェル量子ドット、CdTe/CdSeコア/シェル量子ドット、CdSe/ZnTeコア/シェル量子ドット、及び合金化半導体量子ドットからなる群から選択される、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項23】
ポリマー単層が、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリスチレン-カルボン酸、ポリスチレン-アミン、デキストラン、プルラン、キトサン、アルギネート、セルロース、及びヒアルロン酸、並びにそれらの混合物又はコポリマーからなる群から選択される、請求項13~22のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項24】
前記コア粒子のサイズが約50nm~約500nmである、請求項13~23のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項25】
各々のペプチド結合を介して前記グラフェンコア粒子に付着した複数の検出可能な成分を含む、請求項13~23のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項26】
各々が異なる標的バイオマーカーに特異的な認識配列がある各々のペプチド結合を介して前記グラフェンコア粒子に付着した少なくとも2つの異なる検出可能部分を含む、請求項13~25のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項27】
多重グラフェンバイオセンサであって、請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子と、前記グラフェンコア粒子に付着した複数の標的特異的検出可能成分とを含み
前記標的特異的検出可能成分は各々、蛍光シグナルを発することができる検出可能部分から形成され、前記検出可能部分は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合に結合し、
前記ペプチド結合が、前記グラフェンコア粒子の前記コーティング層と組み合わせて、前記検出可能部分と前記グラフェンシートコア粒子との間の消光距離を提供するように構成され、前記グラフェンナノシートが前記検出可能部分の前記蛍光シグナルを消光し
前記検出可能成分各々の前記標的バイオマーカーに対する前記認識配列は、前記標的バイオマーカーを特異的に検出するように構成されており、前記複数の検出可能成分は、複数の異なる前記標的バイオマーカーを特異的に検出するように選択される、多重グラフェンバイオセンサ。
【請求項28】
前記標的特異的検出可能成分を10個まで含み、各検出可能成分が、UV/Vis/NIRスペクトルの全範囲にわたって検出可能な検出可能部分を提示する、請求項27に記載の多重グラフェンバイオセンサ。
【請求項29】
バイオセンサ1グラムあたり1.6±0.2×10-5モルの密度で標的特異的検出可能成分オリゴペプチドを含む、請求項27又は28に記載の多重グラフェンバイオセンサ。
【請求項30】
1つ以上のコア粒子及び/又は請求項1~29のいずれか一項に記載の1つ以上のグラフェンバイオセンサを、適当な補助剤と組み合わせて含む、組成物。
【請求項31】
医薬組成物であり、補助剤が薬学的に許容される補助剤である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
生物学的試料を請求項13~29のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサと接触させて反応溶液を生成すること、及び、
前記反応溶液の変化を検出すること、
を含む、生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出する方法。
【請求項33】
さらに、
前記反応溶液を励起光源に曝露すること、及び、
前記試料中の前記バイオマーカーの活性の関数として、前記検出可能部分の吸収又は発光スペクトルの変化を検出すること
を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
変化が、接触前の吸収又は発光スペクトルに対する、前記接触後の前記検出可能部分の吸収又は発光極大のブルーシフトを含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
変化が、前記接触前の前記検出可能部分の吸収又は発光スペクトルに対する新たな可視色又は発光バンドの出現を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記接触させることが、前記試料を前記バイオセンサと90分未満、又は60分未満の時間でインキュベートすることを含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記接触させることが、複数のマイクロウェルを含むマイクロプレートを提供することであって、1つ以上の前記マイクロウェルに複数の前記バイオセンサが分布しており、かつ、生物学的試料を前記マイクロウェルに添加して、前記マイクロウェル各々において各々の反応溶液を作製することとを含む、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
検出の前に、試料及び/又は試験溶液が加熱される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出するためのシステムであって、請求項13~29のいずれか一項に記載のバイオセンサと、請求項32~38のいずれか一項に記載の生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出する方法において同時併用又は連続用いるための試薬とを含む、システム。
【請求項40】
生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のための方法であって
反応溶液を作製するために、生物学的試料を、複数のバイオマーカーに特異的な検出可能な成分を提示するように構成された請求項27~29のいずれか一項に記載の多重バイオセンサと接触させること;並びに
前記反応溶液における変化を検出すること、及び/又は
前記生物学的試料を、前記複数のバイオマーカーのうちの1つのバイオマーカーに特異的なペプチド結合を各々提示する、請求項13~26のいずれか一項に記載の複数のバイオセンサと接触させること、
を含む、方法。
【請求項41】
検出することの前に、前記試料及び/又は前記試験溶液を加熱する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記試料が複数の試料を含み、接触が複数の試料で並行して行われる、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
請求項27~29のいずれか一項に記載の多重バイオセンサ、及び/又は複数のバイオマーカーのうちの1つのバイオマーカーに特異的なペプチド結合を各々提示するバイオセンサ、並びに場合によっては、生物学的試料中のバイオマーカーの活性を多重検出する方法において同時併用するため、又は連続用いるため、の、請求項40~42のいずれか一項に記載の複数の試薬を含む、生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のためのシステム。
【請求項44】
請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子を作製する方法であって、グラフェン表面がある純粋なグラフェンナノシートを提供するすること、及び、前記グラフェン表面を有機分子及び/又は無機分子の層でコーティングすること、を含む、方法。
【請求項45】
請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子を作製するためのシステムであって、グラフェン表面がある純粋なグラフェンナノシートと、化学的に変換するための試薬とを含み、前記グラフェン表面が、コーティング層でコーティングされた純粋なグラフェンナノシートを提供する、システム。
【請求項46】
請求項13~26のいずれか一項に記載のバイオセンサを作製するための方法であって、請求項1に記載のグラフェンコア粒子を提供することと、ペプチド結合を介して検出可能な部分を前記グラフェン表面に付着させることとを含む、方法。
【請求項47】
付着させることの前に、請求項1~13のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子を分散させ、かつ、付着させることが、分散されたグラフェンコア粒子を、ペプチド結合に付着した検出可能部分を含む検出可能成分と接触させることによって行われる、請求項62に記載の方法。
【請求項48】
請求項13~25のいずれか一項に記載のバイオセンサを作製するためのシステムであって、グラフェン表面と、ペプチド結合と、検出可能部分と、ペプチド結合を介して検出可能部分をグラフェン表面に付着させるための試薬とを含む、純粋なグラフェンナノシートを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]関連出願の相互参照本出願は、2020年12月30日に出願された「バイオマーカー検出のための純粋なグラフェン系のバイオセンサ」と題する米国仮出願第63/131,972号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
政府補助金の陳述
[0002]本発明は、国立科学財団(National Science Foundation)によって与えられた助成金番号2032751の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利がある。
【0003】
技術分野
[0003]本開示は、バイオマーカーの検出及び関連するバイオセンサに関する。特に、本開示は、純粋なバイオマーカー検出のためのグラフェンバイオセンサ並びに関連するコア粒子、材料組成物、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]バイオマーカーの検出は、医学分野及び基礎生物学研究等の多くの研究分野の中心である。
[0005]特に、バイオマーカーの検出は、がんからウイルス感染、血液凝固及び炎症等のさらなる事象までの様々な状態の発生を含む、様々な生物におけるいくつかの生物学的事象の理解を得るための鍵である。
[0006]当該分野でなされた進歩にもかかわらず、特に条件に関連して、ナノモル以下の濃度での試料中のバイオマーカーのロバストで再現性のある検出は、依然として困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0007]本開示は、当業者によって理解されるように、ある実施形態では、高い再現性及び信号対雑音比でピコモル濃度又はフェムトモル濃度のバイオマーカーを検出しうる、本開示の文脈では試料中で極めて安定であるグラフェン系のバイオセンサ(本明細書ではグラフェンバイオセンサ又はバイオセンサともいう)並びに関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0008]第1の態様では、グラフェンコア粒子が記載される。グラフェンコア粒子は、水への溶解度が25℃で1質量%である有機化合物及び/又は無機化合物を含むコーティング層によってコーティングされた2つ以上の純粋なグラフェンナノシートを含む。グラフェンコア粒子において、2つ以上の前記純粋なグラフェンナノシート並びに/又は前記コーティング層の前記有機化合物及び/若しくは無機化合物が、水溶液中で対応する官能基に結合することができる官能基を提示するように構成される。
[0009]第2の態様では、標的バイオマーカーを検出するように構成されたバイオセンサが記載される。バイオセンサは、本開示のグラフェンコア粒子と、と蛍光シグナルを発することができる検出可能部分と、を含み、前記検出可能部分は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合を介して前記コア粒子に付着している。
バイオセンサにおいて、前記コーティング層及び前記ペプチド結合は、グラフェンナノシートが前記検出可能部分の蛍光シグナルを消光する、前記グラフェンナノシートと前記検出可能部分との間の消光距離を設定するように構成される。
バイオセンサにおいて、前記ペプチド結合が、さらに、前記認識配列の前記標的バイオマーカーによる認識の際に、前記グラフェンナノシートと前記検出可能部分との間の発光距離を設定するように構成され、ここで、前記グラフェンナノシートが前記検出可能部分の前記蛍光シグナルを消光しない。
したがって、バイオセンサにおいて、前記標的バイオマーカー特異的ペプチド結合及び前記検出可能部分は、したがって、前記標的バイオマーカーによる前記ペプチド結合の修飾時に検出可能な蛍光シグナルを放出するように構成された標的特異的検出可能成分を形成する。
【0007】
[0010]第3の態様では、本開示のコア粒子と、グラフェンコア粒子に付着した複数の標的特異的検出可能成分とを含む多重バイオセンサが記載される。多重バイオセンサにおいて、前記標的特異的検出可能成分は各々、蛍光シグナルを発することができる検出可能部分から形成され、前記検出可能部分は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合に結合している。
各標的特異的検出可能成分において、前記ペプチド結合が、前記グラフェンコア粒子の前記コーティング層と組み合わせて、前記検出可能部分と前記グラフェンシートコア粒子との間の消光距離を提供するように構成され、前記グラフェンナノシートが前記検出可能部分の前記蛍光シグナルを消光する。
バイオセンサにおいて、前記検出可能成分各々の前記標的バイオマーカーに対する前記認識配列は、前記標的バイオマーカーを特異的に検出するように構成されており、前記複数の検出可能成分は、複数の異なる前記標的バイオマーカーを特異的に検出するように選択される。
バイオセンサの複数の標的特異的検出可能成分において、各検出可能部分には、複数の標的特異的検出可能成分の別の検出可能部分の発光スペクトルとの重複が最小化された励起スペクトルがある。
【0008】
[0011]第4の態様では、本明細書に記載の1つ以上のグラフェンコア粒子及び/又は1つ以上のバイオセンサを、ビヒクル希釈剤、賦形剤等の適当な補助剤と組み合わせて含む組成物が記載される。ある実施形態では、組成物は医薬組成物であり、補助剤が薬学的に許容される補助剤である。組成物が、異なる標的バイオマーカーに特異的な2つ以上の検出可能な成分を提示する2つ以上のグラフェンバイオセンサを含む実施形態では、2つ以上の検出可能な成分の各検出可能な部分の励起スペクトルは、2つ以上の検出可能な成分の別の検出可能な部分の発光スペクトルとの重なりが最小限に抑えられる。
【0009】
[0012]第5の態様では、本明細書に記載のコア粒子を作製するための方法及びシステムが記載される。この方法は、グラフェン表面を有する純粋なグラフェンナノシートを提供するすること、及び、前記グラフェン表面を有機分子及び/又は無機分子の層でコーティングすること、を含む。
本明細書に記載のコア粒子を作製するためのシステムは、グラフェン表面がある純粋なグラフェンナノシートと、化学的に変換するための試薬とを含み、前記グラフェン表面が、コーティング層でコーティングされた純粋なグラフェンナノシートを提供する。
【0010】
[0013]第6の態様では、本明細書に記載のバイオセンサを作製するための方法及びシステムが記載される。この方法は、本明細書に記載のコア粒子を提供することと、ペプチド結合を介して検出可能な部分をグラフェン表面に付着させることとを含む。
本明細書に記載のバイオセンサを作製するためのシステムは、グラフェン表面と、ペプチド結合と、検出可能部分と、ペプチド結合を介して検出可能部分をグラフェン表面に付着させるための試薬とを含む、純粋なグラフェンナノシートを含む。本明細書に記載されるバイオセンサを作製するためのシステムにおいて、構成要素は、本明細書に記載されるバイオセンサを作製する方法において同時併用するか、又は連続用いるための、構成に含まれる。
【0011】
[0014]第7の態様では、生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出するための方法及びシステムが記載される。この方法は、生物学的試料を本開示によるいかなるバイオセンサと接触させて反応溶液を生成することと、反応溶液の変化を検出することとを含む。
このシステムは、本明細書に記載される生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出する方法において、本明細書に記載されるバイオセンサと、同時併用又は連続用いるための試薬とを含む。
【0012】
[0015]第8の態様では、生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のための方法及びシステムが記載される。本方法は、方法反応溶液を作製するために、生物学的試料を、複数のバイオマーカーに特異的な検出可能な成分を提示するように構成された本開示による多重バイオセンサと接触させること;並びに前記反応溶液における変化を検出すること、を含む。さらに、又はあるいは、本方法は、生物学的試料を、複数のバイオマーカーのうちの1つのバイオマーカーに特異的なペプチド結合を各々提示する複数のバイオセンサと接触させることを含み得る。
生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のためのシステムは、本明細書に記載の多重バイオセンサ多重バイオセンサ、及び/又は複数のバイオマーカーのうちの1つのバイオマーカーに特異的なペプチド結合を各々提示するバイオセンサ、並びに場合によっては、生物学的試料中のバイオマーカーの活性を多重検出する方法において同時併用するため、又は連続用いるため、の、請求項40~42のいずれか一項に記載の複数の試薬を含む。
【0013】
[0016]第9の態様では、標的バイオマーカーの検出のための方法及びシステムにおいて、検出の前に、試料及び/又は試験溶液の加熱を行う。特に、血清を前処理すること及び/又は選択された温度でプロテアーゼアッセイを行うことは、別個のさらなる機構を用いてシグナル対ノイズを改善することが予想外に見出された。
【0014】
[0017]本明細書に記載のバイオセンサ並びに関連するグラフェンコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムは、ある実施形態では、水性試料中で極めて安定なグラフェン系のバイオセンサを提供する。数ヶ月間、コロイド安定性の変化がOD650で-24%以下で、懸濁液中に少なくとも95%の粒子の割合を維持することができる。
【0015】
[0018]本明細書に記載のバイオセンサ並びに関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムにより、ある実施形態では、ピコモル又はフェムトモル濃度のバイオマーカーを高い再現性で検出しうる。ある実施形態では、異なる製造ロット又はバッチ間で検出される信号の変動係数が10%未満である。
【0016】
[0019]本明細書に記載されるバイオセンサ及び関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムは、ある実施形態では、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、複数のセンサにわたって25以上の信号対雑音比で、水溶液中のピコモル又はフェムトモル濃度のバイオマーカーを検出しうる。
【0017】
[0020]本明細書に記載されるバイオセンサ及び関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムにより、ある実施形態では、本開示を考察する当業者によって理解されるように、同じグラフェン粒子上又は同じ溶液内に提示される、UV/Visスペクトルにおいて10までの、又は電磁スペクトル全体において50までの数の異なる検出可能な成分がある高い多重化能力がある水性試料中の複数のバイオマーカーを検出しうる。
【0018】
[0021]本明細書に記載されるバイオセンサ及び関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムにより、ある実施形態では、水性形態で分散され、乾燥され、最大10サイクルの分散にわたって再分散され得る堅牢なバイオセンサを作製しうる。したがって、本開示のバイオセンサは、当業者によって理解されるように、乾燥形態で組成物及びシステムに含まれ得る。
【発明の効果】
【0019】
[0022]本明細書に記載のバイオセンサ並びに関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムは、特にピコモル濃度又はフェムトモル濃度等の極めて低い濃度で存在する場合に、1つ又は複数のバイオマーカーの再現性のある検出が望まれる様々な用途に関連して用いることができる。例えば、本明細書に記載されるバイオセンサ及び関連するコア粒子、材料、組成物、方法、及びシステムは、当業者によって特定可能な他の利点の中でも、疾患病理の発症の可視化、並びに診断用及び治療用細胞薬剤の開発を容易にする薬物治療及び治療に対する応答、並びに細胞シグナル伝達、恒常性、細胞遊走、温度及びpH等の外部刺激に対する応答等の生物学的事象の可視化のために、医療及び診断用途において用いることができる。
【0020】
[0023]さらなる例示的な用途としては、基礎生物学研究、応用生物学、生物工学、病因、医学研究、医学診断、治療を含むいくつかの分野において、薬物研究において、並びに診断及び治療アプローチ及びツールを開発するために、並びに本開示を読んだ当業者によって特定可能なさらなる分野において、本明細書に記載されるバイオセンサ及び関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムの使用が挙げられる。
[0024]本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
[0025]本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の1つ又は複数の実施形態を示し、詳細な説明及び実施例の項と共に、本開示の原理及び実装を説明する役割を果たす。本開示の例示的な実施形態は、詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】[0026][1]からの爆発グラフェンのSEM(走査型電子顕微鏡)を示す写真である。
図2】[0027]図2Aは、本開示のプロテアーゼ検出のための例示的なグラフェン系のバイオセンサの概略図である。[0028]図2Bは、本開示によるバイオセンサを提供するための例示的なプロセスの概略図である:A:カルボキシグラフェンの合成;B:アミド結合を介したポリエチレンイミンの化学的結合;C:認識配列(オリゴペプチド)及びテトラカルボキシ-フェニル-ポルフィリン(TCPP)等の蛍光色素の結合。[0029]図2Cは、重なり合った縁部で互いに絡み合ったグラフェンの薄い単分子層、又は2~3層を含むか若しくはそれからなるナノシートのより規則的な積層を示す概略図である。[0030]図2Dは、グラフェンナノシート微粒子の表面にわたって付加された高密度のカルボン酸基の概略図である。
図3】[0031]図3Aは、グラフェンの表面に調整された量のカルボン酸を付加するためのアジラン環化付加の反応スキームを示す図である。[0032]図3Bは、カルボキシグラフェン(CG)の単一ナノシートの例示的な構造を示す図である。[0033]図3Cは、表面全体にわたるカルボン酸基の高密度分布を示す例示的なカルボキシグラフェン最上層の構造の側面図である。[0034]図3Dは、N2下での合成カルボキシグラフェン20の示差熱分析(DTA)を示す図である。
図4】[0035]20mLの0.100M NaOHを100mgの培養カルボキシグラフェンに添加することから始まる滴定曲線(pH対容量0.100M HCl)を示すグラフである。丸い点:カルボキシグラフェンの滴定;四角の点:参照曲線(GO添加なし)。
図5】[0036]図5Aは、カルボキシグラフェン-ポリエチレンイミンの構造を示し、参照のために単一のシートのみを示す。[0037]図5Bは、N2下での例示的な合成カルボキシグラフェン-ポリエチレンイミン(G-PEI)の示差熱分析(DTA)の結果を報告するチャートである。
図6】[0038]図6Aは、例示的なカルボキシグラフェン-ポリエチレンイミンベースの生体センサの構造を示し、参照のために単一のシートのみを示す。[0039]図6Bは、水中のMMP-1についてのカルボキシグラフェン(上の曲線)、カルボキシグラフェン-PEI(下の曲線)、及びカルボキシグラフェン-Biosensor(中央の曲線)のUV/Visスペクトルを示すグラフである。[0040]図6Cは、励起スペクトルと吸収スペクトルとの間に重複がないか、又は最小限の重複しかない4つの例示的なBODIPY色素、特にBODIPY FL、BODIPY TR、BODIPY 530550、及びBODIPY 630650を示す。
図7】[0041]バイオセンサのための可能なスペーサーとしてのリジン及びオルニチンの概略図である。
図8】[0042]グラフェン表面の化学アミノ化のための芳香族置換ニトレン反応を示す概略図である。
図9】[0043]グラフェンに埋め込まれたカルボカチオンとPEIの第二級アミン基との反応スキームを示し、グラフェンの表面におけるPEIの化学的結合をもたらす。第一級アミン基も同様に反応し得ることに留意されたい。
図10】[0044]マレイミド誘導体とグラフェンとの間のディールスアルダー反応を示す。
図11】[0045]図11はプロテアーゼ検出に用いられる本開示のグラフェン系のバイオセンサの機能原理の概略図である。
図12】[0046]図12は、プロテアーゼ活性を検出するように構成された例示的なグラフェン系のバイオセンサの動作原理の概略図である。
図13】[0047]図13Aは、本開示の例示的なバイオセンサにおける対数シグナル対酵素濃度によって示される検出限界(LOD)の推定値を示す。特に、図13Aは、各対の棒の左の棒が、インキュベーション前に血清中にMMP1を添加した後に検出された初期蛍光シグナルを示し;各対の棒の右の棒が、37℃でのインキュベーション60分後に検出された蛍光シグナルを示すチャートである。AC(アッセイ対照)は緩衝液のみと混合されたバイオセンサ溶液であり、ブランクは緩衝液のみであり、これらはバックグラウンドシグナル、又は緩衝液及びバイオセンサのみから測定される蛍光シグナルを表す。[0048]図13Bは、試験した異なる例示的なバイオセンサ濃度についての蛍光シグナル対インキュベーション時間を示すチャートである。4つの異なる濃度のグラフェンバイオセンサ溶液を血清と共にインキュベートし、60分間にわたって測定した。37℃でのインキュベーションにおいて、各濃度は記号で表され、定量された最適なシグナルが0.01~0.1mg/mLの間の生物センサー濃度についてであったことを示す。
図14】[0049]汎gNBS緩衝のための11個の例示的な緩衝液製剤を報告する表である。
図15】[0050]図15は、図17の緩衝液中のカテプシンD(CTSDgNBS(パネルA)及びウロキナーゼ(uPA)gNBS(パネルB)の性能を示す結果を報告するチャートである。CTSD及びuPAgNBSを、示されるように図17の緩衝液1~11中に30μg/mlの最終濃度で懸濁した。5μlの血清A、S又はプールされた正常血清(PNS)又は緩衝液のみ(AC)を、三連で作業溶液に添加した。37℃で60分間インキュベートした後、421nm/650nmでの蛍光を測定した。
図16】[0051]ゼータ電位安定性に対する塩の影響を示す結果を報告するチャートである。uPAgNBSを、155mM NaClを含む(パネルB)又は含まない(パネルA)、示されたpHがある5mM MES緩衝液の作業溶液中で組み立てた。uPAgNBSの対照溶液を脱イオン水中で調製した。
図17】[0052]等張塩緩衝液中のuPAgNBS(パネルA)、マトリックスメタロプロテイナーゼ10(MMP10)gNBS(パネルB)、CTSDgNBS(パネルC)、及びカテプシンH(CTSH)gNBS(パネルD)の性能を示す実験の報告結果のチャートである。CTSD、uPA、MMP10及びCTSHgNBSを30μg/ml緩衝液1、2又は9中に30μg/mlの最終濃度で懸濁した。5μlの血清A、S又はプールされた正常血清(PNS)又は緩衝液のみ(AC)を、三連で作業溶液に添加した。37℃で60分間インキュベートした後、421nm/650nmでの蛍光を測定した。
図18】[0053]バックグラウンドノイズに対するNaCl濃度の影響を示すグラフである。uPAgNBSを、10μM二価陽イオン又は154mM NaClを含有するか又は塩を含有しない5mM又は10mM MES緩衝液と共にインキュベートした。37℃で90分後に得られたシグナル(平均RFUとして表される)。
図19】[0054]図19Aは、異なる倍率スケール、特に5nmでの純粋な爆発グラフェンのTEM画像である。倍率250,000、10nm。倍率120,000、20nm。倍率70,000 200nm:倍率10,000。[0055]図19Bは、グラフェンバイオセンサのTEM画像である。gNBSを、MMP15に対するペプチド標的を用いてアセンブルした。走査型電子顕微鏡写真を15,000倍(左パネル)及び(中央パネル)300,000倍(右パネル)で収集した。全体のサイズを見ることができ、グラフェンシートの層状構造が明らかになる。バーは200nm又は5nmを示す。
図20】[0056]グラフェン出発材料に対する超音波処理の影響を示す実験の結果を報告する写真である。3つのチューブは、左から右へ順に、KSUロット1、HEB100、及びHEB101の試料を示す。gNBSを、元のKSUプロトコールを用いて、NEに対するペプチド標的とアセンブルした。唯一の違いは、gNBSセンサーの組み立て前に、HEB100を10分間プローブ超音波処理し、HEB 101を60分間プローブ超音波処理したことであった。gNBS作業溶液の調製後、gNBSの粒子がKSUロット1調製物から沈殿するのを見ることができる。少量もHEB 100において検出され得る。HEB 101調製物中に沈殿は観察されない。
図21】[0057]多分散性に対する出発材料の超音波処理の影響を示す実験の結果を報告するチャートである。グラフは、作業溶液が最初に作製され、超音波処理水浴中で分散され(0分休止)、次いで30分後(30分休止)の場合の各製剤についての多分散指数(PDI)を示す。超音波処理されたグラフェンを用いて作製された粒子について、製造の各段階でPDIの有意な減少が観察され、プロセスの各段階で生成された粒子のより高い均一性を反映している。
図22】[0058]図22は、超音波処理時間の増加に伴うグラフェンについての270nmでの吸光度を報告するチャートである。DMF中のグラフェンの溶液を、漸増時間にわたってプローブ超音波処理した。試料を一定間隔で採取し、吸光度を測定し、関連する測定値をチャートにプロットした。
図23】[0059]異なる乾燥プロトコル後の元のKSUロット120120並びにCG調製物CG-1、CG-2、CG-3及びCG-4の総質量損失に関する熱質量分析(TGA)の結果を報告する表を示す。
図24】[0060]滴定による1.6±0.1×10-4mol/gのカルボン酸官能基を特徴とするCG調製物の熱質量分析の結果を報告するチャートである図である。グラフは、温度がRTから600℃上昇するときの質量の変化を示す。グラフは、100℃への上昇中に失われた質量を示す。400℃後の質量変化は最小である。
図25】[0061]図23のCG調製物CG1.1、CG1.2、CG1.3及びCG1.4の熱質量分析の結果を示す。CGの異なる調製物をTG分析に供した。グラフは、温度がRTから1000℃に上昇するときの質量の変化を示す。グラフは、100℃への上昇中に失われた質量を示す。400℃後の質量変化は最小である。
図26】[0062]gNBS性能に対する溶媒の除去の影響を示す実験結果を報告するチャートである。特に、uPAgNBSを、標準プロトコルを用いて、製造後2、16又は27日目に3回評価した。別のロットのuPAgNBSを、30分間の周囲乾燥及び37℃で一晩の周囲乾燥を含めて製造した。これらを製造の5日後に評価した。チャートは、試料/アッセイ対照によって計算された相対蛍光指数を示す。図26に報告される実験では、用いられるuPAセンサは、カルボキシグラフェン/ポリエチレンイミンに基づく。
図27】[0063]シグナルのバッチ間変動に対する出発材料の超音波処理の影響を報告するチャートである。好中球エラスターゼ(NE)用のgNBSの3つのロット、HEBロットNE100、HEBロットNE 101及びHEBロットNE 102を製造し、元のKSUロット120120と比較した。gNBSを、2人の異なる正常ヒトドナーからの血清を用いて正常条件下で試験した。
図28】[0064]分散努力を増加させた、バイオセンサ製造HEBロットNE100、HEBロットNE 101及びHEBロットNE 102のための配合を報告する表を示す。
図29】[0065]経時的なgNBS吸光度に対する水浴超音波処理の影響を評価することを目的とする実験の結果を報告するチャートである。gNBS HEBロットNE100、HEBロットNE 101及びHEBロットNE 102並びにKSUロット120120を作業緩衝液中に再懸濁し、超音波処理水浴中で時間を増加させながら懸濁した。間隔をおいて、試料を回収し、425nm及び265nmにおける吸光度を測定した。NEに対するgNBSの4つの異なるロットが示される。
図30】[0066]図30パネルA及び図30パネルBは、カルボキシグラフェンのpH滴定の結果を報告するチャートである。本明細書に記載のプロトコルを用いて調製したカルボキシグラフェンの溶液を、50mLの0.05M NaOH中で調製した。インキュベーション及びCGの除去後、得られた溶液を20mLの0.05M HClで処理し、次いで漸増量の0.05M NaOHで中和し、水の溶液の中和と比較した。
図31】[0067]グラフェンカルボキシグラフェン(CG)調製物及びポリエチレンイミンで誘導体化されたCG(CGP)調製物の異なるロットの元素分析の結果を報告する表を示す。特に、グラフェンの2つの異なるロット、示されるようなCGの6つの異なる調製物及びCGPの1つの調製物を、C、H、Oについての元素分析に供し、結果が引用される場合、Nについての元素分析に供した。全ての結果は、KSUによって生成された*データ以外、Galbraith Laboratoriesによって生成された。結果をパーセント組成で示す。比較のために、CGP102は、CG1.0と会合したPEI誘導体化生成物である。
図32】[0068]カルボキシル化工程を伴わないgNBSの調製に関する実験の結果を報告するチャートである。PEIをカルボキシグラフェン骨格(uPA)に、又はEDC化学を用いてグラフェン骨格に直接結合させることによってuPAgNBSを構築したか、又はEDCを用いずに80℃に加熱してPEIと反応させた。続いて、uPA-TCPPを3つ全ての骨格に添加し、得られたgNBSをプールした正常血清(プール正常血清)又は緩衝液(アッセイ対照)で45℃で90分間刺激した後、VarioSkan Luxで421/653nmで測定した。
図33】[0069]事前のカルボキシル化を伴わないPEIの迅速なコンジュゲーションの結果を報告するチャートである。1.2k又は10k PEIをアジド酢酸NHSエステルで活性化し、それを80℃でグラフェンにカップリングさせることによって、uPAgNBSを調製した。得られたセンサーの活性を、緩衝液、50mg/mLのBSA又はプールした正常血清で刺激することによって評価した。
図34】[0070]MMP1g-TEG3アミンバイオセンサについてのDLS及びゼータ電位の結果を報告する表を示す。
図35】[0071]MMP1g-PEIバイオセンサ(パネルA)対MMP1g-TEG3アミンバイオセンサ(パネルB)について測定された蛍光強度の結果を報告するチャートである。蛍光強度を37℃でのインキュベーション後15分毎に測定し、これらの強度は時間が経過するにつれて増加し続け、両方についてほぼ直線的な傾向に従った。両方のバイオセンサを比較すると、G-TEG3アミンは、G-PEIと比較して60分間のインキュベーション後と比較してより高い強度を与えた。
図36】[0072]G-PEI対G-TEG3アミン及びアッセイ対照についての60分間のインキュベーション後の蛍光強度の結果を報告するチャートである。60分間のインキュベーション後(パネルA)、G-TEG3アミンについての強度は、G-PEIと比較して最も高い強度を与えた。これは、対照血清S及びPについて、G-TEG3アミンの強度がG-PEIと比較してほぼ2倍高かったことを示す。(パネルB)mMP1g-PEI対G-TEG3アミンバイオセンサのアッセイ対照について測定された蛍光強度。
図37】[0073]好中球エラスターゼgNBSの溶液の可視スペクトルにわたる吸光度の結果を報告するチャートである。
図38】[0074]グラフェンによる複数の異なる色素の消光を示す実験の結果を報告するチャートである。標準的な手順を用いて、NE-FAM(パネルA)、NE-TAMRA(パネルB)、又はuPA-TCPP(パネルC)を超音波処理したグラフェンにカップリングすることによって、gNBSを調製した。70μL容量中の各センサーの用量応答を、緩衝液単独(AC)又は384ウェルプレート中の10μl血清を用いて三重に刺激した。プレートを45℃でインキュベートし、蛍光を10分間隔で90分間読み取った。
図39】[0075]ローダミン-BgNBSがあるグラフェンによるローダミン-Bの消光を示す実験の結果を報告するチャートである。MMP7及びMMP9ローダミンBペプチドをCGPに結合させ、血清又は緩衝液のみ(AC)の存在下で60分間インキュベートした。
図40】[0076]多重gNBSを用いた実験の結果を報告するチャートである。gNBSセンサーは、標準的な手順を用いて、超音波処理されたグラフェンに示されるようにArg-FAM又はNE-TAMRAをカップリングすることによって調製した。70μlの作業溶液を、200μg/mlの最終濃度の各センサー単独(Singleplex)又は両方一緒(Multiplex)で調製した。3連のウェルを10μlの緩衝液又は10μlの血清で処理し、45℃で90分間インキュベートし、測定は10分間隔で行った。各ウェルを496/526(FAM)及び555/586(TAMRA)(D03-250)で測定した。
図41】[0077]複数の異なるプラットフォーム上のナノセンサ分析の結果を報告するチャートである。標準的な手順を用いて、NE-FAMを超音波処理したグラフェンにカップリングすることによって、gNBSセンサーを調製した。200μg/mlのセンサーを用いて125μlの作業溶液を調製した。3連のウェルを5μlの緩衝液(AC)又は5μlの血清で処理した。5μlの血清を125μlの緩衝液に希釈するさらなるウェルも調製した(試料バックグラウンド)。各ウェルを、Varioskanで30分間隔で、StepOnePlusで1分間隔で496/526(FAM)で測定した。
図42】[0078]熱処理後のプロテアーゼを検出するための実験の結果を示す(パネルA)。対照血清及びプールした正常対照血清を用いて、5mM MES、10μMカチオン及びIS:155の125μl作業溶液中でMMP10gNBS及びCTSHgNBSを刺激した。各血清のアリコートを55℃で60分間インキュベートし、複製反応を刺激するために用いた。両方の反応セットを37℃で1時間インキュベートし、蛍光をVarioskan Luxで測定した。(パネルB)MMP2gNBS及びCTSHgNBSを、5mM MES、10μMカチオン及びIS:155の作業溶液125μl中で刺激した。それらを5μlの緩衝液(AC)で刺激するか、又は5μlの対照血清C若しくはプールされた正常血清(PNS)で3回刺激した。あるいは、血清を、65℃で10分間、最終濃度が5mMになるようにEDTAで、又はその両方で予め処理した。RFUで報告される得られた活性を、各センサーについて示す。
図43】[0079]血清の熱前処理を含む実験の結果を報告するチャートである。CTSHgNBSを、5mM MES、10μMカチオン及びIS:155の作業溶液125μl中で刺激した。それらを5μlの緩衝液(AC)で刺激するか、又は予め65℃で熱処理されたか若しくはされていない5μlのPNSで3回刺激した。CTSHgNBSの活性を、37℃インキュベーションにおいて30分間隔で6時間モニターした。このチャートは、健康前処置が線形活動をもたらすことを示している。
図44】[0080]血清の熱前処理を含む実験の結果を報告するチャートである。18個のgNBSを、5mM MES、10μMカチオン及びIS:155の作業溶液125μl中で調製した。それらを5μlの緩衝液(AC)で刺激するか、又は予め65℃で熱処理されたか若しくはされていない5μlのPNSで3回刺激した。gNBSの活性インキュベートした後、gNBSの活性を測定した。結果は、試料RFUをアッセイ対照で除したRFIとして表す(RFI=SM-(AC+SC))。チャートは、熱前処理がセンサパネル全体にわたって増加した活性をもたらすことを示す。
図45】[0081]異なる温度で実施したアッセイの結果を報告するチャートである。125μLのMMP12及びCTSDgNBSを、5μlの緩衝液(アッセイバックグラウンドグラフ)で、又は5μlのPNSで3連で刺激し、アッセイを、VarioSkan Luxにおいて37、41又は45℃(白記号)でインキュベートした。あるいは、血清を65℃で12分間熱処理し、次いで5μLを、標準MES緩衝液中の125μLのMMP12又はCTSDgNBSに3連で添加した。インキュベーションの間、10分間隔で蛍光を測定した。試料バックグラウンド測定は、センサーなしで125μLの緩衝液と共にインキュベートしたが、5μLの血清を添加したウェルからの結果を示した。チャートは、インキュベーションの高温が血清の熱処理を模倣することを示す。
図46】[0082]チャートに示される18個の異なる標的プロテアーゼに特異的なgBNSのプロテインコロナの検出を報告するチャートである。175個のヒト試料にわたって観察された平均及び最小シグナルを、20mg/mlアセチル化BSA溶液と比較した。グラフは、全18個のセンサにわたる175個の試料についての平均及び最小蛍光読み出しを示す。
図47】[0083]凍結乾燥gNBS試薬の精度を検出することを目的とする実験の結果を報告するチャートである。gNBSの選択物を、3つの異なる賦形剤製剤:A、B、又はCのうちの1つにおいて384ウェルプレート中で凍結乾燥した。各製剤を、同じバッチから調製したが凍結乾燥していない湿潤試薬と比較した。(パネルA) アッセイ間精度:3つの384ウェルプレートを別々の3日間にわたって試験し、256の総血清試料及び4つのNBS/プレート。各プレート上の賦形剤当たり64個の血清試料を試験した。平均の試料標準偏差と各賦形剤についての平均の平均との商を平均することによって測定された%CV。(パネルB) アッセイ内精度:賦形剤当たり64個の血清試料及び4個のNBSを試験した。精度は、384ウェルプレートラン内の各賦形剤の平均%CVから測定した。
図48】[0084]肺がん群及び非肺がん群に分けられた256人又は175人の患者について評価された各NBSについての平均RFUを報告する表を示す。各々207人及び175人の全患者を調べたEU 351及びUS SST-18と呼ばれる2つの研究が提示されている。数字は、示された群について各gNBSによって生成された平均RFUを示した。各群の対象は、病理学的に確認された肺がん症例又は臨床的に確認された陰性肺がん症例に分けられる。全ての症例は未治療患者である。
図49】[0085]肺がん試料と非肺がん試料のRFUを比較するスチューデントの両側異分散t検定のp値の表を示す。
図50】[0086]分子量(Da)対粒子直径(オングストローム)のプロットを示す。Mn:数平均高分子質量、Mw:質量平均高分子質量、Mv:平均高分子量(Loebach 1975の図1に対応)。[2])。
図51】[0087]プロテアーゼ活性検出のためのグラフェンバイオセンサにおけるペプチド長(A)とポリマー層厚さ(B)との許容比を示す。
図52】[0088]オリゴエチレングリコールの水溶性有機分子の例示的な単層、及びグラフェン1の表面への関連する付着のための関連する反応スキームを示す。
図53】[0089]カルボキシグラフェンのpH滴定を示し、ここで、約7.00のpHの同じ値についての2つの滴定曲線におけるNaOHの体積の差は、カルボキシグラフェンの質量増加あたりのイオン化基(カルボキシル基)の濃度を与える。
図54】[0090]2つの異なる色素で標識された異なる切断可能なペプチド配列、特にTCPPで標識されたMMP-9(GAGVPLS-LYSGAG)(配列番号132)及びロダミンBで標識されたMMP-9(GCDDHAAG-LLGLDG)(配列番号133)を提示するコア粒子G-PEI及びG-TEG3アミンを用いた、3つの異なる対照血清試料における標的バイオマーカーMMP-9の検出を示す実験の結果を示すチャートである。蛍光強度を、3つの対照試料(各チャートにおいてA、B及びCと印を付けた)において示されるように経時的に測定した。
図55】[0091]gNBSの吸光度効率に対する分散及び溶媒除去の例示的な影響を示すチャートである。gNBSの作業溶液を、25μg/mLの濃度で155mM NaClを含む5mM MES pH7.4中で調製した。250nm~650nmにわたる吸収を、超音波処理なしの2つのロット(ロット1及び2)並びに1時間の超音波処理(ロット3及び4)及び溶媒除去(ロット4)で調製された2つのロットを反映する各ロットについて測定した。データは、OD270でのスペクトル又は吸光度効率として示される。特に、図54のパネルAは、250nm~650nmにわたるNEバイオセンサについての吸光度効率の変化を示す。図54のパネルBは、250nm~650nmにわたるMMP15バイオセンサの吸光度効率の変化を示す。表は、各バイオセンサの4ロットにわたるOD270での吸光度効率の増加を強調している。
図56】[0092]信号対雑音性能に対する緩衝液製剤の影響を示す。gNBSの作業溶液を、図14に詳述されるように緩衝液中で調製した。シグナル対ノイズを、試料/アッセイ対照(RFI)において観察された蛍光の比に基づいて計算した。MESのみを含有する緩衝液7は、緩衝液1(Hepes)と同様に機能した。30mM NaCl(緩衝液8)又は155mM NaCl(緩衝液9)の添加は、RFIを増加させる。
図57】[0093]信号対雑音性能に対する緩衝液製剤及び熱処理の例示的な影響を示すチャートである。gNBSの作業溶液を、10μMの二価カチオン及び155mMのNaClを補充したHEPES又はMES緩衝液中で調製した。試料を65℃で12分間熱処理し(MESベースライン)、又は熱処理せず(HEPESベースライン)、37℃で90分間インキュベートした。
図58】[0094]gNBSセンサーの例示的なコロイド安定性を示すチャートである。gNBSの作業溶液を、25μg/mLで155mM NaClを含む5mM MES pH7.4中で調製した。250nm~650nmでの吸収を、溶液をボルテックスする際に各ロットについて測定した。試料を室温で1時間放置した。第2の試料を60分後に測定した。データは、時間0からの吸光度の倍数変化を表す。異なる試料は、超音波処理なしの2つのgNBSロット(ロット1及び2)、並びに1時間の超音波処理(ロット3及び4)及び溶媒除去(ロット4)で調製された2つのロットを反映する。FeNB(300μg/mL)が比較のために含まれる。ロット2は、コロイド安定性を過小評価して懸濁液中に全く残らなかった大きなgNBS粒子を有していた。
図59】[0095]gNBSについての異なる製造プロトコルにわたる信号対雑音の例示的な評価を示すチャートである。CTSBは、元の鉄骨格(FeNB)を用いて、グラフェン骨格及び元のKSUプロトコル(gNBSロット1)を用いて、拡張乾燥手順を用いたKSUプロトコルの複製(gNBSロット2)を用いて、プローブ超音波処理したgNBS骨格(gNBSロット3)を用いて、及び製造時の溶媒除去のために完全に乾燥させたプローブ超音波処理したgNBS骨格(gNBSロット4)を用いて製造した。グラフは、時間0におけるRFI(SM/AC)によって測定されたシグナル:ノイズ(A)、プールされた正常血清との60分間のインキュベーション後のシグナル:ノイズ(B)、及びRFI 60/RFI 0の比として表されたシグナル:ノイズ(C)を示す。同様の観察が、別の実験においてCTSB、MMP12及びNEについてなされた(D)。
図60】[0096]多重化設定におけるgNBSの検出の結果を示すチャートである。シグナルは、100%で得られたシグナルの百分率として表される。
図61】[0097]Fe及びグラフェンバイオセンサの異なる製造プロトコルにわたる信号対雑音の例示的な評価を示すチャートである。バイオセンサは、元の鉄骨格(FeNB)を用いて、グラフェン骨格及び元のKSUプロトコル(gNBSロット1)を用いて、拡張乾燥手順を用いるKSUプロトコルの複製(gNBSロット2)を用いて、プローブ超音波処理したgNBS骨格(gNBSロット3)を用いて、及び製造時に溶媒除去のために完全に乾燥させたプローブ超音波処理したgNBS骨格(gNBSロット4)を用いて製造した。グラフは、RFI(SM/AC)によって測定された、時間0及び2つの異なる正常ヒト血清との60分間のインキュベーション後のシグナル:ノイズの平均を示す。4つの例示的なバイオセンサが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0098]本開示は、様々な生物学的マーカーの非侵襲的検出及び定量のためのアッセイのための、グラフェン系のバイオセンサ並びに関連するコア粒子、材料、組成物、方法及びシステムに関する。
【0023】
[0099]本明細書で用いられる用語「グラフェン」は、二次元ハニカム格子ナノ構造に配置された原子の単層からなる炭素の同素体を示す。この名称は、「グラファイト」及び接尾辞-エンに由来し、炭素のグラファイト同素体が多数の二重結合を含むという事実を反映している。特に、グラフェンは、本開示の文脈では、六角形に配置されたsp2混成の少なくとも1000個の炭素原子の単一層を指す。本明細書で用いられる交換可能なグラフェン凝集体又はグラフェン粒子は、互いに積み重ねられた少なくとも2層のグラフェンを指す。
[0100]したがって、本開示の意味におけるグラフェンは、シート状に組織化された少なくとも98%の炭素原子を含む。グラフェンシートにおいて、各原子は、σ結合によってその3つの最も近い隣接原子に接続され、全判にわたって延在する伝導バンドに1つの電子を寄与する。[3](実施例1及び実施例2で考察した概略図及び特性を参照されたい)。
[0101]本開示の意味でのグラフェンにおいて、典型的なグラフェン表面の典型的な見かけの静的接触角θ*は、θ*=150±15°であり、これは、境界超疎水性(θ*≧150°)である。この発見と、グラフェンがほとんど炭素(少なくとも99±1%)のみからなるという事実とに基づいて、グラフェンが公知の最も疎水性の材料の1つであることが十分に確立されている。したがって、水中でのその分散性は、1ミリリットル当たり<1×10-8mgである。[4]
[0102]グラフェンは、グラファイトを超える吸収係数で、UV、可視及び近赤外領域の光を吸収する。[5]したがって、本開示の意味におけるグラフェンは、すべての可視波長の光を吸収するように構成された材料である。[3]積層グラフェンは、遠UVから中IR(100~1500nm)の全波長範囲にわたる光吸収を特徴とする。[6]爆発グラフェン(5~7層)について、本発明者らは、660nmで吸収係数α>5,000mLmg-1-1を見出し、これは文献[7]と極めてよく一致している。一般に、様々な供給源からのグラフェンは、660nmで1,000~5,000の吸収係数αがある。
【0024】
[0103]本開示の意味でのグラフェンにおいて、直接励起は深/遠紫外で起こり、可視範囲におけるグラフェンの表面プラズモンは様々な強度であり、グラフェンの直接励起及び表面プラズモンは、励起状態で蛍光シグナルを放出することができる最も検出可能な部分(蛍光色素又は粒子など)を効果的に励起することができない。この表示は、当業者によって理解されるように、電磁スペクトルの全可視範囲(400~730nm)に適用される。[6]
[0104]本開示の意味におけるグラフェンは、純粋なグラフェン(そのままの、純粋な、酸化されていない形態のグラフェン)、並びに酸化又は表面修飾された形態のグラフェン、(表面修飾された)グラフェン及び当業者によって同定可能なさらなるグラフェン形態を含む。
[0105]純粋なグラフェンは、XRD(層距離)、TEM及びSEM(形態)、RAMAN(存在する場合、層距離及び乱層構造特性)、並びにFTIR(炭素-炭素二重結合及び芳香族オーバートーンを除いて、特徴的な有機官能基の欠如)等の当業者によって識別可能な技術によって識別することができる。特に、FTIR及びRAMANスペクトルは、当業者によって理解されるように、グラフェン表面の酸化/化学修飾を考慮して関連スペクトルが変化するので、表面のみ酸化された又は化学修飾されたグラフェンよりも純粋なグラフェンを同定するために用いることができる。XRD、TEM、SEM、RAMAN、FTIRを用いて、グラフェンの層構造を破壊する酸化/化学修飾に対して、やはり当業者によって識別可能な関連スペクトルの変化を考慮して、純粋なグラフェンを識別することができる。加えて、全ての場合において、元素分析は、当業者によって理解されるように、グラフェン材料が>98%炭素であることを確認する。
[0106]本明細書に記載の実施形態では、本開示の意味における純粋なグラフェンは、本明細書に記載のグラフェンコア粒子の成分として用いることができ、2つ以上の純粋なグラフェンシートが、標的バイオマーカーに特異的な検出可能な成分の結合のために構成されたコーティング材料でコーティングされたグラフェン粒子を形成する。
【0025】
[0107]本明細書で用いられる用語「粒子」又は「微粒子」は、サイズ、体積、密度、又は質量等の明確な物理的又は化学的特性がある物質の部分を示す。様々な材料の例示的な粒子は、本明細書のその内容の全体が援用される、2020年12月30日に出願された「Optical Nanobiosensors for Rapid Identification of Lung Conditions」と題する2020年12月30日に出願された米国仮特許出願第63/132,058号、及びdocket number P2685-PCTである2021年12月29日に出願された「Nanosensors For Rapid Identification of Lung Conditions」と題する対応するPCT出願に記載されている。
【0026】
[0108]本発明の意味における粒子のサイズは、1~5000ナノメートルである。特に、本発明の意味における粒子のサイズは、1~250ナノメートル、及びナノスコピックメゾスコピック/系において50~150nmであってよい。本明細書で用いられるサイズは、粒子のいかなる2点の最大物理的長さである。本開示の意味での粒子において、粒子のサイズは、粒子のいかなる2点間の最長距離を指す。例えば、不規則な形状のグラフェン粒子は、不規則な形状のグラフェン粒子上のいかなる2つの炭素間で最も長いサイズがある。球状粒子において、粒子のサイズは、球状粒子の直径である。
【0027】
[0109]本開示のグラフェン粒子において、グラフェン粒子の質量分布は、遠心分離及び沈降に必要な時間の測定並びに当業者によって特定可能なさらなる技術によって検出することができる。空気中(又はN2、Ar)及び適当な疎水性溶媒(例えばクロロホルム)中のグラフェン粒子の実際のサイズは、動的光散乱(DLS)によって決定することができる。粒子の表面電荷は、ゼータ電位測定によって決定することができる。
[0110]グラフェン微粒子は、AB又はベルナル積層形態で配置された層があってよく、原子の半分は、下のグラフェンシートの六角形の中心の真上に位置し、原子の半分は原子の上に位置する。グラフェン粒子はまた、AA形態で配列された層があることができ、層は正確に整列され、1つの層中の各炭素原子は、グラフェンの隣接層の別の炭素原子の上に正確に配置される。ターボストラティック粒子(AA及びABスタッキング)において、個々の層は、当業者によって理解されるように、互いに対して移動することができる。
【0028】
[0111]本開示のグラフェンコア粒子は、2つ以上のグラフェン層を含む構成でファンデルワールススタッキングによって凝集した純粋なグラフェンシートを含む。
[0112]本開示の意味における「シート」又は「層」は、スケールの厚さが1~150nmの範囲である二次元ナノ構造を示す。グラフェン材料の六方格子がある炭素原子の単層は、当業者によって理解されるように、0.34nmである。単層のグラフェンは入射光の2.3%を吸収し、約97.7%が通過させるので、本開示のグラフェンコア粒子に2枚以上のシートを含めることにより、特に積層グラフェン層が数層グラフェンに組織化されている場合に、積層グラフェン層の電子グラフェン層の電子相互作用から生じる光吸収(黒色度)を高めることができる。
【0029】
[0113]本明細書で用いられる用語「数層グラフェン」は、グラフェン層の数が、約2~約100グラフェンシート、好ましくは3~50グラフェンシート、さらにより好ましくは5~25シートの範囲である。本明細書に開示される数層グラフェンでは、層の最小数は2であり、積層グラフェン層の最大数は100であり、グラフェンにおける層間距離は、グラファイトにおける0.337nmと比較して、0.348±0.003nmである。[8]積み重ねられたグラフェンフレークの最大直径の下限は10nmであり、上限は5,000nmである。
【0030】
[0114]本開示の意味におけるグラフェン粒子中のナノシートの数は、透過電子顕微鏡法(TEM)、X線回折(XRD)、ラマン分光法、及び当業者によって特定可能なさらなる技術によって検出することができる。
【0031】
[0115]本開示のグラフェン粒子において、グラフェンナノシートのサイズは、通常、約20~約500nmの範囲(例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)画像によって検出される200nm又は150nmのサイズ)であり、ここで、用語「サイズ」は、グラフェンコア粒子における最大点間距離(例えば、球状粒子の場合の直径、又は矩形形状における対角線距離)を指す。
【0032】
[0116]好ましい実施形態では、本開示のグラフェン粒子は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、本開示の検出可能な部分によって放出される蛍光シグナルの効率的な消光を可能にする光吸収特性を可能にする2~100個のグラフェンシートがある数層グラフェン粒子である。
【0033】
[0117]本開示の好ましい実施形態では、グラフェン粒子はさらに、が、サイズ900nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは350nm以下、さらにより好ましくは50nm~250nmであり、コーティング材料と組み合わせた本開示の安定なコア粒子の形成、及びピコモル又はフェムトモル濃度での標的バイオマーカーの検出を可能にする。
【0034】
[0118]特に、本明細書に記載のグラフェン粒子を形成する純粋なグラフェンシートは、当業者によって特定可能な方法及び技術に従って提供することができる。
[0119]例えば、純粋なグラフェンは、爆発チャンバ内でのアセチレン/酸素混合物の爆発を介して生成することができる。そのように生成されたグラフェンナノシートは、気相中で凝集してエアロゲルを形成し、エアロゲルは、当業者によって識別可能なアプローチに従って採取されて、爆発グラフェン又は爆発グラフェンとしても識別されるグラフェンを提供することができる。
【0035】
[0120]純粋なグラフェンは、酸化剥離によってグラファイトから得ることもできる。関連する方法によれば、グラファイトは、化学的に極めて厳しい条件(例えば、Hummers法)及び熱の下で酸化され、酸化された単層グラフェン(酸化グラフェンと呼ばれる)が得られる。次いで、当業者によって特定可能なアプローチに従って、ヒドラジン又は他の還元剤を用いて、酸化グラフェンを数層の純粋なグラフェンに還元する。[9]
[0121]純粋なグラフェンは、フラッシュ合成を行うことによっても得ることができる。したがって、有機材料は、得られたフラッシュグラフェンに当業者によって特定可能なアプローチに従って直流を印加することによって、数層グラフェンに変換することができる。[10,11]
[0122]純粋なグラフェンは、CVDグラフェンを提供するために当業者によって特定可能なアプローチに従って基板(高感度光学バイオセンサには適していない)上にグラフェン単層を生成するCVD(化学蒸着)によっても得ることができる。[9]
[0123]本明細書に記載されるグラフェンコア粒子のある実施形態では、純粋なグラフェン出発材料は、好ましくは、当業者によって特定可能なプロセス及びアプローチで調製することができる爆発合成グラフェン又はフラッシュ合成グラフェンを用いて調製される(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される[12]、[8]、[13]、[14])。
【0036】
[0124]爆発サイズのグラフェンの調製は、特に、固体、液体、又は気体としての炭素含有材料(複数可)を、酸化剤又は酸素源(例えば、O、NO、NO)と共に、反応容器内で比較的高温で制御して爆発させて、触媒材料を用いることなく、純粋なグラフェンナノシート及びこれらのナノシートの分岐フラクタル凝集体を生成することを含むプロセスを伴う。一般に、反応容器には所望量の反応物が装填され、スパークを用いて材料の爆発が達成される。エアロゾルが生成され、これはしばしばゲル化を受けてグラフェン粒子を含むエアロゾルゲルを形成する。([15]及び[16])。
【0037】
[0125]スケールアップされたアプローチでは、装置は、反応チャンバと、反応チャンバに動作可能に接続された真空源と、点火アセンブリとを備える。反応チャンバは、炭素含有材料源及び酸化剤源と動作可能に結合される。真空源は、特に粒子材料の生成に続いて、反応チャンバの内容物の少なくとも一部を選択的に排気するように動作可能である。点火アセンブリはまた、反応チャンバに動作可能に接続され、各々の供給源から反応チャンバに送達されるある量の炭素含有材料及びある量の酸化剤の燃焼を開始するように構成される。点火アセンブリは、その間にイオン化アークを生成するように動作可能な一対の電極を備え、各電極は、点火アセンブリ内に取り外し可能に受け入れられる各々のカセット内に収容される。純粋なグラフェンの大量生産のためのスケールアップされた装置及び合成プロセスは、2021年6月15日に出願された同時係属中の米国特許出願第63/039,087号及び2020年6月15日に出願された対応するPCT/US2021/037321号に記載されており、各々参照により本明細書に援用される。
【0038】
[0126]反応に用いるための例示的な炭素含有材料は、炭素リッチ前駆体、ガス、ガス混合物、粉末、エアロゾル、及び他の注入可能な材料を含む。炭素含有材料は、単一の材料若しくは化合物、又は炭素含有化合物の混合物を含んでもよい。例としては、石炭、石油コークス、バイオ炭、カーボンブラック、バイオ廃棄物(例えば、食品又は農業廃棄物)、バイオマス又は有機廃棄物(例えば、セルロース系材料、草など)が挙げられる。より高い炭素含有量の材料が特に好ましいことが理解されるであろう。出発物質は、いかなる炭化水素化合物、特に飽和又は不飽和C~C12炭化水素化合物を含むことができ、高飽和C~C12炭化水素が特に好ましい。特定の実施形態では、好ましい炭化水素材料としては、アセチレン、エチレン、トルエン、ブタジエン、及び/又はイソプレンが挙げられる。温度及び/又は圧力パラメータは、選択された材料に応じて調整することができる。
【0039】
[0127]1つ以上の実施形態では、燃焼反応は、少なくとも3000K、少なくとも3500K、又は少なくとも4000Kの温度で起こる。特定の実施形態では、燃焼反応は、約3000Kから約5000Kの間、約3500Kから約4500Kの間、又は約4000Kの温度で起こる。これらの温度での炭素含有材料及び酸化剤の燃焼は、黒鉛スートとは対照的に、高度に秩序化されたグラフェン微粒子の形成に有利に働くことが見出された。必要であれば、燃焼中の温度制御を補助するために、ヘリウム、ネオン、アルゴン、又は窒素等の不活性ガス材料を反応容器に充填される反応混合物中に含めることができる。また、特定の実施形態では、特に燃焼反応が爆発である実施形態では、反応混合物の燃焼は極めて迅速に進行する。爆発は、通常、媒体を通して加速し、最終的にその前に直接伝播する衝撃フロントを駆動する超音速発熱フロントを含む。特定の実施形態では、燃焼の持続時間は、約5~約100Ms、約10~約75ms、又は約20~約50msである。
【0040】
[0128]爆発前に反応容器内に存在する炭素含有材料に対する酸化剤の比は、反応混合物の爆発の際に形成されるグラフェン微粒子の特性に寄与し得る。特定の実施形態では、炭素含有材料に対する酸化剤のモル比は、1.5以下、好ましくは1.0以下、さらにより好ましくは0.5以下である。特定の実施形態では、酸化剤対炭素含有材料の比は、約0.1~約1.5、約0.18~約1.2、約0.18~約1.0、又は約0.18~約0.8、又は約0.18~約0.5である。本方法は、優れた純度のグラフェンのバルク合成又は大量合成を可能にする。本明細書における所望のサイズ範囲のグラフェンナノシート微粒子を作製する好ましい目的のために、炭素含有材料に対する酸化剤の比は、好ましくは約0.2~約0.5であり、約0.3、0.35、又は0.4が特に好ましい比である。純粋なグラフェンの好ましい微粒子は、サイズが約20~約500nmの範囲であり、約150nm+/-20nmが目標サイズ範囲である。特に、本開示のバイオセンサでは、得られる微粒子が単分散である必要はない。むしろ、多分散グラフェン微粒子混合物は、バイオセンサを調製するために容易に用いることができる。実際に、光散乱実験によれば、グラフェン凝集体は、Df=1.8±0.1のフラクタル次元があるより小さい凝集体から構成されるミクロンスケールでDf=2.5±0.1のフラクタル次元がある超凝集体フラクタル形態を特徴とする。この挙動は、(ナノ)バイオセンサ中の金属、金属酸化物、金属/金属酸化物、又は半導体粒子について以前には観察されなかった。
【0041】
[0129]純粋なグラフェンを合成するための代替的なアプローチとしては、様々な炭素系材料又は他の炭素源、例えば石炭、石油コークス、バイオ炭、カーボンブラック、食品廃棄物、ゴムタイヤ、及び混合プラスチック廃棄物のフラッシュジュール加熱を用いて材料をグラフェンに変換するフラッシュグラフェン(2019年8月23日出願のPCT/US2019/047967、WIPO公開WO2020/051000、参照により本明細書に援用される)が挙げられる。炭素源は、2つの電極間の反応容器内で軽く圧縮され、コンデンサバンクからの高電圧放電は、反応容器内の炭素源材料を100Ms未満で少なくとも3000Kにする。このプロセスは、炭素源中の非晶質炭素をフラッシュグラフェンに変換する。この方法における収率は、出発物質の炭素含量に大きく依存する。ある実施形態では、炭素源材料は、材料の導電性を改善するために、カーボンブラック又は別の同様の導電性材料と混合されてもよい。ある実施形態では、フラッシュグラフェンは、20nm未満の平均粒径がある。ある実施形態では、フラッシュグラフェンは、0.5~1.2μmの平均サイズのより大きいが薄いシートの形態で製造される。そのような薄いシートは、微粒子形態で用いられる代わりに、単層のグラフェンナノシートが固体表面上に堆積される代替センサに好適であり得る。
[0130]これらの新しい合成プロセスから得られる純粋なグラフェンは、様々な形態をとることができるが、好ましくは、単層又は多層グラフェンとして、分岐したフラクタル凝集体、ナノシート、結晶性フレーク、ナノプレートレット及びプレートレット鎖の形態であり、一般に、高純度(≧98.5%炭素)のふわふわした又はファジーな黒色粉末又は微粒子材料として巨視的に特徴付けることができる。
[0131]微粒子は、重なり合った縁部で互いに絡み合った薄いみ合った薄い単分子層として、又は2~3層、潜在的に25層まで、潜在的に10層まで、例えば2~25層、さらにより好ましくは約5~約10層(20nm~500nmの範囲の全体サイズがある)を含む又はからなるナノシートのより規則的な積層として観察することができる。
[0132]したがって、本明細書における「純粋な」グラフェンへの言及は、有機合成、化学蒸着、又はグラファイトからの剥離を介して作製されたグラフェンと比較して、炭素源のグラフェンへの高温(例えば、~>3000K)変換(例えば、アモルファス炭素の爆発グラフェン、フラッシュグラフェンなどへの急速加熱又は燃焼)によって生成された高純度グラフェンを示すために特に用いられる。換言すれば、純粋なグラフェンは、好ましくはグラファイト又は酸化グラファイトを本質的に含まない。したがって、純粋なグラフェンは高純度であり、これは異物及び不純物を本質的に含まず(0.5%w/w未満、好ましくは0.1%w/w未満)、炭素含有量が少なくとも約98.5%、好ましくは少なくとも99%(逆に酸素含有量が1%未満)であることを意味する。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた爆発グラフェンの検出の考察は、実施例21並びに純粋な爆発グラフェンの例示的なTEM画像である関連する図19A及び図19Bに提供される。
[0133]ある実施形態では、純粋なグラフェンナノシート粒子及び関連するコア粒子に基づくバイオセンサに関し、材料は、爆発グラフェン(好ましくは0.25、0.30、又は0.35)を含む。
[0134]いくつかの最も好ましい実施形態では、グラフェンナノシート微粒子は、フラクタル形態のグラフェンの凝集体を含む。
【0042】
[0135]物体に関連して本明細書で用いられる用語「フラクタル」は、自己相似性として知られる特性、すなわち、より小さい部分に縮小することができ、各より小さい部分が全体の縮小コピーである幾何学的形状を示す物体を示す。フラクタル次元は、フラクタルが空間を満たすようにどのように見えるかを記述する統計量である。[17]
[0136]したがって、通常、フラクタル形態の積層数層グラフェンフィーチャは、当業者によって理解されるように、Df=2.5±0.3(上限)とDf=1.8±0.4(下限)との間のフラクタル次元がある。[8](実施例1も参照)。
[0137]バイオセンサにおいて用いられるグラフェン対他のナノ材料のフラクタル性は、SEM(走査型電子顕微鏡)等の光散乱法によって確認することができる。[18]及び光散乱法等の当業者によって識別可能なさらなる技術を含む。[19](実施例1も参照)。
[0138]本明細書に記載のグラフェンコア粒子では、2つ以上のグラフェンナノシートが有機及び/又は無機材料のコーティング層でコーティングされている。したがって、コーティングを可能にするために、グラフェンナノシートを官能化又は誘導体化して、有機及び/又は無機材料上に提示された対応する官能基に結合することができる官能基を表面上に提示して、コーティング層の形成を可能にする。
[0139]本明細書で用いられる用語「官能基」は、その構造の特徴的な化学反応に関与する分子構造内の原子の特定の基を示す。例示的な官能基としては、炭化水素、二重結合又は三重結合を含有する基、ハロゲンを含有する基、酸素を含有する基、窒素を含有する基並びにリン及び硫黄を含有する基が挙げられ、これらはすべて当業者によって特定可能である。
[0140]官能基等の要素に関連して用いられる用語「対応する」は、適当な条件下で互いに反応することができる2つ以上の要素を特定する。通常、対応する部分と特に官能基との間の反応は、2つの要素の結合をもたらす。
【0043】
[0141]本明細書で用いられる用語「結合する」、「結合」、「コンジュゲーション」は、エレメントが互いに近接しているエレメントの安定な会合をもたらす、2つのエレメント間の引力相互作用を示す。各要素が分子中に含まれる場合、結合の結果は、典型的には分子複合体の形成である。本開示の意味における誘引性相互作用は、非共有結合及び共有結合の両方を含む。共有結合は、原子間又は原子と他の共有結合との間で電子対を共有することを特徴とする化学結合の形態を示す。例えば、原子が電子を共有するときに原子間に形成される引力-斥力安定性は、共有結合として知られている。共有結合には、σ結合、π結合、金属-非金属結合、アゴスティック相互作用、及び3中心2電子結合を含む多くの種類の相互作用が含まれる。本明細書で用いられる非共有結合は、電子対の共有を伴わないが、むしろ電磁相互作用のより分散した変化を伴う、タンパク質タンパク質相互作用等の化学結合のタイプを示す。非共有結合には、イオン結合、疎水性相互作用、静電相互作用、水素結合、及び双極子-双極子結合が含まれる。静電相互作用は、2つの反対に荷電した実体間の会合を含む。
【0044】
[0142]例示的な対官能基及び対応するカップリング化学を、以下のスキーム(scheme)(I)~(IX)に示す。
【0045】
【化1】
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
本開示の意味における対応する官能基のさらなる対は、当業者によって特定可能である。
【0048】
[0143]本明細書に記載の実施形態では、本明細書に記載の方法で得られた純粋なグラフェンナノシート微粒子を、本明細書に記載の適当な官能基で官能化して、バイオセンサのコア粒子として用いるのに適した誘導体化合物の調製を容易にすることができる。グラフェンは、共有結合官能化による有機基の化学修飾を用いて官能化することができる。別のアプローチは、2020年6月17日に出願されたPCT/US2020/038055(参照により本明細書に援用される)に詳細に記載されているフェントン酸化プロセスを含む。このプロセスでは、積層グラフェンの表面は、硫酸第一鉄及び過酸化水素を酸化剤として利用して酸化され、その結果、表面に>95%のカルボン酸官能基が生成される。全ての他の可能な官能基、例えば水酸化物、アルデヒド、ケトン又はオキシランは、<5%で存在する。
【0049】
[0144]本方法は、一般に、鉄源の存在下、低pH(<5.0)の水性反応溶液中で、純粋なグラフェン微粒子を過酸化水素と反応させることを含む。反応溶液は、反応溶液中で生成されたヒドロペルオキシルラジカルをグラフェン微粒子と反応させて、溶液中の純粋なグラフェン微粒子の外表面を酸化し、グラフェン/酸化グラフェン微粒子を生成するために、ある期間にわたって撹拌又は撹拌される。得られるグラフェン/酸化グラフェン微粒子は、様々な反応を介して容易に修飾することができる薄い酸化グラフェン表面コーティング又はシェルがあるグラフェンコアを含む。
【0050】
[0145]特定の実施形態では、本明細書において「カルボキシグラフェン」と称される、高密度の表面-COOH基がある好ましいグラフェン誘導体は、安定したアジランアンカーを生じるニトレンの付加環化に基づく純粋なグラフェン及び表面官能化を用いて合成することができる。特定のプロセスでは、純粋なグラフェンナノ粒子を、無水ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、又はクロロホルム等の適当な有機極性溶媒系に室温で分散させる。分散が完了した後、第1級又は第2級ハロゲンがあるカルボン酸(例えば、クロロ酢酸、3-ヨードプロピオン酸、4-ブロモ酪酸、4-ブロモ吉草酸、5-ブロモ吉草酸など)を添加し、続いて無水アジ化水素酸、又はそのアジド誘導体、例えば、無水アジ化ナトリウム(NaN)、アジ化リチウム、及び/又はアジ化カリウムを添加する。次いで、反応溶液の温度を約80℃までゆっくりと上昇させる(約1℃/分)。20℃から40℃の間で、求核置換反応(SN)が起こり、有機アジド及び溶媒可溶性ハロゲン化ナトリウムが形成される。有機アジドは、二窒素(N)を放出し、約50℃を超える温度でニトレン中間体を形成する。ニトレンは、窒素の外殻において8個の電子の代わりに6個の電子を特徴とする。この反応性中間体は、(S)-アミンとの環化付加を受ける。P-P安定なアジランアンカー(3員C-N-C環)を形成するために、グラフェンハニカム格子の表面で二重結合を形成する。アジラン付加環化は、グラフェン自体の光学的及び電気的特性を損なうことなく、調整された量のカルボン酸をグラフェンの表面に付加する機会を提供する。この場合、さらなる官能化及び/又は水溶性ポリマーコーティングとの相互作用のために、グラフェンナノシート微粒子の表面全体にわたって高密度のカルボン酸基を付加することができる(実施例2~9参照)。
【0051】
[0146]ある実施形態では、本開示によるコーティング層のさらなる反応及び形成を可能にするために、グラフェンのさらなる機能的修飾を記載することができる。これに関連して、本明細書では官能化のために脂肪族結合が用いられるが、グラフェン表面の化学的アミノ化のための芳香族反応も文献に記載されている([20]参照により本明細書に援用される)(実施例10)。
[0147]さらに、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、上述の官能基化の代わりに、又はそれに加えて、グラフェンの表面電荷を減少させて、カチオン性ポリマーを結合するのに適したものにするために、さらなる修飾を行うことができる。
【0052】
[0148]本明細書に記載のグラフェンコア粒子において、グラフェンナノシートは、有機及び/又は無機材料のコーティング層でコーティングされている。
[0149]本明細書で用いられる用語「コーティング層」は、表面又は本体を覆う材料のシート、量、又は厚さを示す。特に、本開示の意味におけるコーティング層は、グラフェン粒子の表面を覆う有機材料及び/又は無機材料の厚さを示す。本開示のグラフェンコア粒子において、コーティング層は、2つの主要な機能:a)水性緩衝液中でのグラフェンの分散を可能にすること、及びb)結合した検出可能な開示部分の距離を20nm未満に維持して、それらの係留状態での効果的なクエンチングを容易にすること、がある。
[0150]特に、本明細書に記載の実施形態では、25℃で1質量%の水への溶解度がある親水性有機及び/又は無機化合物のコーティング層が適用される。
【0053】
[0151]本明細書で用いられる用語「有機化合物」は、炭素-水素結合を含有し、水からの水素結合を促進及び/又は受容する能力があるいかなる化学化合物を示す。有機化合物中の水素原子の全部又は一部が他の原子で置換されていてもよい。
[0152]本明細書で用いられる用語「無機化合物」は、C-H結合がないを化学物質を指す。通常、フッ素より重い少なくとも1種の元素を特徴とする無機化合物である。
[0153]特に、本明細書に記載のバイオセンサを提供するのに適した有機化合物及び/又は無機化合物は、水への溶解度が少なくとも10グラム/リットルHOであり、当業者に理解されるように、本明細書に記載のグラフェンに共有結合することができるか、又は水中で静電的に安定してグラフェンに結合することができる。
[0154]ある実施形態では、本明細書に記載のバイオセンサを提供するのに適した有機及び/又は無機化合物は、コンセンサスlogP(又はClogP)<0を特徴とする。
[0155]本開示の意味におけるClogP値は、当業者に知られているように、n-オクタノールと水との間のその分配係数の対数log(Cオクタノール/C水)を指す。高い親油性は、高いClogP値に対応する。本開示のコーティングの有機分子は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、特定のClogP値があるように部分及び/又は置換基の組み合わせで構成することができる。
[0156]本開示によるコーティング材料は、1~-2.5、好ましくは0~-2の範囲のClogPがあると予想される。
[0157]ある実施形態では、無機化合物は、メソポーラスシリカ、メソポーラスシラザン、酸化アルミニウム、酸化スズ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、ランタニドの酸化物を含む。アミン前駆体(例えば、Si(NH-CH;Si(О-CH-CH)3(CH-CH-CH-NH);M(О-CH-CH(M=Si、Sn、Ti、Zn);又はM(О-CH-CH(M=Al又はランタニド(III)カチオン))は、グラフェン又は化学的に修飾されたグラフェンの表面のヒドロキシル基、カルボン酸、又はオキシレン環と反応して、安定なО-金属結合を形成する。これに続いて、グラフェン結合金属の周囲のアルコキシ、アルコキシ-アミン、及びアミン結合が加水分解され、グラフェンを取り囲む半導体酸化物及び金属酸化物層が得られる。[21]
[0158]特に、ある実施形態では、無機化合物は、直径2~50nmの細孔があるシリカの形態であるメソポーラスシリカであり得る。メソポーラスシリカは、例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)又は(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(しばしばMPTMSと略される)の出発材料を用いて調製することができる。例示的なプロセスにおいて、シリカ前駆体は、テトラヒドロフラン/水混合物(THF/HO:99:1~95:5質量%)中で、室温で24時間撹拌し、続いて5,000RPMで10分間遠心分離し、HO中に再分散され、続いて遠心分離(5,000RPMで15分間)によって収集される。(積層された)グラフェンの周りのメソポーラスシリカ層の厚さは、当業者によって理解されるように、TEOS又はMPTMSとグラフェンとの質量比(0.001/1.0~0.1/1)によって決定される。
【0054】
[0159]無機化合物がメソポーラスシリカである実施形態では、極性Si-OH基(シラノール)を特徴とするシリカ表面の官能化は、例えば、以下のことのうちの1つによって達成することができる。
-シリルエーテル形成:Si-OH+X-R→Si-0-R+HX(X=ハロゲン)、続いて有機化学。そのためには、有機基Rガスに極性官能基を含有させる。
-ペプチド配列のC末端又はその側鎖中のカルボン酸エステル基を、安定なアミド結合によってコーティング中に含有されるアミン基に係留する。
-グラフェンの周囲のメソポーラスシリカ層(又は金属酸化物層)をSiCl、SiHCl、SiHCl又はSi(CHClと反応させ、続いてペプチドのN末端を表面上のSi-Cl基に化学吸着させる工程。これは、極性ヒドロキシル、チオール、又はカルボン酸基を反応させることによっても達成することができる。
-表面上の極性Si-Cl基は、NaN(アジ化ナトリウム)と反応してシリコン-アジドを形成することができ、これはクリック反応を受ける。
【0055】
[0160]ある実施形態では、有機化合物は、脂肪族アミン、芳香族アミン、オリゴエチレングリコール、脂肪族オリゴアミン、エチレンオリゴイミン、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂肪族アルコール、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及びこれらの組み合わせを含む。
【0056】
[0161]ある実施形態では、コーティング層を形成する無機及び/又は有機化合物は、1つ以上のポリマーを含む。本明細書で用いられる用語「ポリマー」は、多くの繰り返しサブユニットから構成される極めて大きな分子又は巨大分子からなる物質又は材料を示す。ポリマーは、有機又は無機、合成及び天然であり得、通常、モノマーとして知られる多くの小分子の重合を介して作製される。当業者に理解されるように、小分子化合物と比較して、それらの結果として大きな分子量は、靭性、高弾性、粘弾性、並びに結晶ではなく非晶質及び半結晶性構造を形成する傾向を含む独特の物理的特性をもたらす。[22])
[0162]1つ以上の実施形態では、コーティング有機ポリマーは、以下の式(I):
【0057】
【化4】
(式中、M1~Mmは、同一又は異なる重合性有機モノマーによって形成された重合モノマー部分であり、mは1~10の範囲であり、y1、y2~ymは各々独立して1~1,000である)
によって表すことができる。
[0163]特に、例示的な重合性有機モノマーとしては、アジリジンプロピレンオキシド、エチレングリコール、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリルアミド、N-イソ-プロピルアクリルアミド、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、2-ビニルピリジンN-オキシド、2-エチル-2-オキサゾリンがあげられる。
【0058】
[0164]したがって、1つ以上の実施形態では、次いで、1つ以上の水溶性有機ポリマーをグラフェン誘導体(例えば、カルボキシグラフェン)の表面に添加することができる。式(I)の好適な水溶性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリスチレン-カルボン酸、ポリスチレン-アミン、並びに天然バイオポリマー(例えば、デキストラン、プルラン、キトサン、アルギン酸塩、セルロース、及びヒアルロン酸)、並びにこれらの混合物又はコポリマーが挙げられる。
[0165]ある実施形態では、ポリマーは、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリグリコレート、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリスチレン-カルボン酸、ポリスチレン-アミン、ポリスチレン-スルホン酸、デキストラン、プルラン、キトサン、アルギネート、セルロース、及びヒアルロン酸等のホモポリマー、並びにそれらの混合物又はコポリマーを含むか、又はそれらからなる。
【0059】
[0166]ある実施形態では、ポリマーは、ブロックコポリマーを含むか、又はブロックコポリマーからなる。これらの実施形態では、ブロックコポリマーが用いられる場合、疎水性ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びさらなるもの)は、ブロックコポリマーがコンセンサスlogP<0、又はHO 1リットルあたり>1.0×10グラムの水への溶解度を特徴とする限り、ブロックコポリマーの成分であり得る。[23]疎水性ポリマーは、純粋なグラフェンの表面上に吸着されると予想されるが、それらの親水性成分は、水分散性を媒介する。これらの実施形態のいくつかにおいて、グラフェンの表面電荷て、グラフェンの表面電荷が正(ゼータ電位=+60mV)である場合、グラフェンの表面電荷は正である。[1,8]これは、ポリスチレンスルホン酸等の負に帯電したポリマーが、ポリスチレンのブロックコポリマー及び当業者によって識別可能なさらなる有機コポリマーにおいて用いられる場合に、疎水性及び電荷引力の組み合わせを可能にする。
[0167]疎水性-親水性ブロックコポリマーが用いられるある実施形態では、ブロックコポリマーは、グラフェンを良好に分散させる溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF))に溶解される。超音波処理を継続しながら、HOを混合物に添加し、ブロックコポリマーの疎水性末端をグラフェンに結合させる。この結合は、当業者によって理解されるように、疎水性-親水性ブロックコポリマー中の負に荷電した基の存在のために強化される。
【0060】
[0168]ある実施形態では、好ましい有機ポリマーは、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマー、並びにポリスチレン-カルボン酸及びポリスチレン-アミンのうちの1つ以上を含む。他の好ましいコーティングは、化学的に修飾されたオリゴエチレングリコール、及びエチレンオリゴイミン、及びスターバーストデンドリマーである。
[0169]ある実施形態では、グラフェン粒子は、水溶性有機分子、例えば、オリゴエチレングリコールの単層でコーティングすることができ、これはグラフェンの表面に繋ぐことができる(実施例32参照)。
[0170]全ての炭水化物が様々な位置でアミノ化され得ることに留意されたい。
【0061】
[0171]ある実施形態では、グラフェン粒子は、無機水溶性シェル(例えば、メソポーラスシリカナノ層)によってコーティングすることができる。メソポーラスシリカ、メソポーラスアミノシリカ及び二酸化チタンが好ましい。
[0172]本開示のグラフェンコア粒子において、1つ以上の有機化合物及び/又は無機化合物は、グラフェンナノシートの表面上に存在する官能基(例えば、カルボキシル基、実施例3~9参照)と反応して、グラフェン凝集体の周囲にポリマーの薄くて密な層を形成する(厚い層又はハロとは対照的に)。(実施例30、32、35参照)。[24]
[0173]本開示の実施形態では、25℃で1質量%の水への溶解度がある有機化合物及び/又は無機化合物のコーティング層によってコーティングされた2つ以上の純粋なグラフェンナノシートを含むグラフェンコア粒子は、驚くべきことに、水溶液中で安定であり、標的バイオマーカーに特異的な検出可能な成分を付着させることができることが見出された。
[0174]驚くべきことに、上記の特徴があるグラフェン粒子は、水溶液中で20日又はさらに30日を超え得る安定性を示すことが見出された。さらに、当業者に理解されるように、濃度に依存して、そのようにコーティングされたグラフェン粒子の起こり得る沈降は、粒子を分散させることによって、例えば超音波処理によって対処することができ、その結果、95%超の粒子を含む溶液を得ることができることが見出された。
[0175]特に、記載されるようなバイオセンサは、緩衝懸濁液中の検出可能な部分の光吸収の30日間にわたる20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下の減少によって定義される緩衝懸濁液中で化学的に安定であり、物理的に安定である。
[0176]本明細書で用いられる用語「安定な」及び「安定性」は、化学的安定性並びにコロイド安定性を示す。
[0177]本明細書で用いられる用語「化学的安定性」は、バイオセンサの化学的同一性の保存を指す。当業者が理解するように、本明細書に記載されるバイオセンサは、グラフェン、コーティング材料、ペプチド、及び検出可能部分を含む、バイオセンサの各構成要素を一緒に接続する化学結合を含む。さらに、グラフェン、コーティング材料、ペプチド、及び検出可能部分の各々は、原子を互いに接続してグラフェン、コーティング材料、ペプチド、及び検出可能部分を形成する化学結合を含むことが理解されるべきである。バイオセンサの化学的同一性の保存は、バイオセンサを構成する化学結合のいずれも破壊されず、新しい化学結合が形成されないことを意味する。このような化学的完全性は、元素分析、UV-vis吸収分光法、磁気共鳴分光法、ラマン分光法、IR分光法、及び蛍光分光法を含むがこれらに限定されない測定によって確認することができる。
[0178]本明細書で用いられる用語「コロイド安定性」は、バイオセンサのコロイド懸濁液の物理的状態の保存を指す。コロイド安定性は、ファンデルワールス及び静電相互作用(古典的なDerjaguin-Landau-Verwey-Overbeek(DLVO)理論)、立体相互作用(例えば、ポリマー吸着)、並びに疎水性効果を含むいくつかのタイプの相互作用に依存する。電気泳動光散乱(ELS)は、分散液が安定なままである可能性を評価するために用いられる一般的な技術である。ELSは、分散液のゼータ電位を測定することを可能にし、これは静電相互作用についての情報を提供し、外挿によって凝集する傾向を提供する。ゼータ電位は、分散安定性の信頼できる指標であると考えられるが、立体効果、沈降、又は疎水性効果等のいくつかのパラメータも強い影響がある。
【0062】
[0179]ある実施形態では、本明細書に記載のコアグラフェン粒子及び関連するバイオセンサは、緩衝懸濁液中の検出可能な部分の光吸収の30日間にわたる20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下の減少によって定義される緩衝懸濁液中で化学的に安定であり、物理的に安定である。
[0180]したがって、本明細書に記載される実施形態では、本開示の安定なグラフェンコア粒子は、水溶液中の懸濁液に含まれる場合、少なくとも95%の粒子が懸濁液中に残り、OD650で-24%以下のコロイド安定性の変化がある溶液をもたらすグラフェン粒子を指す。
[0181]特に、コロイド安定性の変化が26%以下であることを反映するデータがサブレンジで得られている。22%及び25%平均24%の沈降は、本開示による4ロットのナノバイオセンサの最悪の性能を反映している。1つの代表的な実施形態では、OD650で測定された60分でのグラフェンの安定性は、NE及びMMP15ナノバイオセンサについて、絶対コロイド安定性の9%及び10%の減少を示した(実施例40のロット4を参照)。したがって、好ましい実施形態による本開示のグラフェンバイオセンサの水溶液におけるコロイド安定性の低下は10%未満であると予想される。
[0182]特に、本明細書に記載の好ましい実施形態では、本開示の安定なグラフェンコア粒子は、少なくとも2.40±0.05×10-5mol/g、好ましくは最大6.0±0.5×10-4mol/gの充填密度がある1~20nm厚のコーティング層を形成するように反応させた1つ以上の有機化合物及び/又は無機化合物を含む。
[0183]したがって、本開示の好ましい安定なグラフェンコア粒子では、付着したコーティング層の最小幾何学的広がりは0.45nmであり、最大20nmとすることができ、コーティング層は少なくとも50%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%を覆う。最も好ましくは、ポリマーの単層がグラフェンの周囲に形成され、好ましくはその中にグラフェンナノシートを完全に封入する。最も好ましい実施形態では、グラフェン粒子は、走査型電子顕微鏡及びデジタル光散乱測定を用いて決定される平均のサイズがが10nm~5000nm、好ましくは150~500nmである。
【0063】
[0184]当該実施形態では、グラフェンコア粒子の安定性は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、12ヶ月を超えて水溶液中で安定なグラフェン粒子及び関連するバイオセンサの例を用いて、数ヶ月及び数年単位であり得る。
【0064】
[0185]表面被覆率の決定は、BET表面を比較することによって行われる。Brunauer-Emmett-Teller(BET)理論は、固体表面上の気体分子の物理的吸着を説明することを目的とし、材料の比表面積の測定のための重要な分析技術の基礎として役立つ。それは、77Kでグラフェン上へのN2の吸着を測定する。この測定の結果は、アクセス可能な表面のサイズである(ここでは:150±40m/g)。極性頭部基(酸又は塩基)での滴定実験から、表面基の平均密度を決定する。動的光散乱を用いて、付着するポリマーのサイズ、並びにグラフェン+層+ポリマーのサイズを測定する。表面コーティング及びポリマーの化学的性質に依存して、表面のゼータ電位は、完全な表面被覆が達成されるまで連続的に変化する。
【0065】
[0186]本明細書に記載のある実施形態では、本開示のグラフェンコア粒子は、検出可能な成分と組み合わされて、本明細書に記載のグラフェンバイオセンサを提供する。特に、本明細書に記載のグラフェンバイオセンサは、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合を介してグラフェンコア粒子に付着した検出可能な部分を含む。
【0066】
[0187]本明細書で用いられる用語「バイオマーカー」は、生物学的事象に関連する生物学的環境において見出される生物学的分子を示す。特に、バイオマーカーは、生理学的事象(生物及びそれらの部分の正常な機能に関連する生物学的事象)の発生又は生理学的状態の改変、特に、正常若しくは異常なプロセス又は状態の徴候の発生に関連し得る。
[0188]本明細書で用いられる用語「状態」は、生物に関して本明細書で用いられる場合、個体の完全な身体的、精神的及び社会的健康の状態に関連する標準的な身体状況に適合しない、生物個体の身体の身体状況(全体として、又はその部分の1つ以上として)を示す。本明細書中に記載される状態としては、障害及び疾患が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、用語「障害」は、身体又はその部分のいずれかの機能異常に関連する生きている個体の状態を示し、そして用語「疾患」は、身体又はその部分のいずれかの正常な機能を損なう生きている個体の状態を示し、そして代表的には、特徴的な徴候及び症状によって明らかにされる。
[0189]したがって、本明細書に記載の実施形態では、個体の状態に関連する標的バイオマーカーを、診断目的のために、及び/又は身体が状態の処置にどの程度良好に応答するかを見るために選択することができる。
[0190]本開示の標的バイオマーカーはまた、ペプチド結合と相互作用して関連する立体構造を改変するように構成された分子である。ある実施形態では、標的バイオマーカーは、ペプチド認識配列との特異的相互作用のために構成されたタンパク質である。
【0067】
[0191]本明細書中で用いられる用語「タンパク質」は、二次構造、三次構造、及びおそらく四次構造があるポリペプチドを示す。タンパク質の二次、三次、及び四次構造は、様々な長さスケール(10分の1オングストローム~nm)及び時間スケール(ns~s)で生じ得るので、様々な例において、二次、三次、及びおそらく四次構造は動的であり、完全には剛直ではない。
[0192]本明細書中で用いられる用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸モノマー及び/又はそのアナログから構成されるポリマーを示し、ここで、ポリマー中のアミノ酸のα炭素、アミン基及びカルボキシル基によって形成される部分は、ポリマーの骨格を形成する。本明細書中で用いられる用語「アミノ酸」、「アミノ酸モノマー」、又は「アミノ酸残基」は、天然に存在するアミノ酸、いかなる天然に存在しないアミノ酸、及びいかなる人工アミノ酸(全てのアミノ酸サブセットのD光学異性体及びL光学異性体の両方を含む)のいずれかをいう。特に、アミノ酸は、アミン(-NH)及びカルボン酸(-COOH)、並びにα炭素に接続された各アミノ酸に特異的な側鎖から構成される有機化合物を指す。異なるアミノ酸は、異なる側鎖を有し、電荷、極性、芳香族性、還元電位、疎水性、及びpKa等の特有の特徴がある。アミノ酸は、第1のアミノ酸のアミン基と第2のアミノ酸のカルボン酸基との間の反応との間の反応によるペプチド結合を介してポリマーを形成することができる。
[0193]用語「ポリペプチド」は、全長タンパク質を含むいかなる長さのアミノ酸ポリマー、並びにその類似体及び断片を含む。ポリペプチドはタンパク質の一次構造を提供し、ここで、タンパク質の用語「一次構造」は、ポリペプチドポリマーを形成するために共有結合したポリペプチド鎖中のアミノ酸の配列を指す。タンパク質「配列」は、一次構造を形成するアミノ酸の順序を示す。一次構造内のアミノ酸間の共有結合は、ペプチド結合又はジスルフィド結合を含むことができる。本開示の意味におけるポリペプチドは、通常、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基の直鎖から構成される。末端残基及び隣接セグメントを包含する直鎖状ポリペプチド鎖の2つの末端は、各末端上の遊離基の性質に基づいて、カルボキシル末端(C末端)及びアミノ末端(N末端)と呼ばれる。
【0068】
[0194]それらのサイズに依存して、ペプチドは、オリゴペプチド(2-20残基)及びポリペプチド(>20残基)として分類され得る。タンパク質は、通常、50残基長を超えるポリペプチド鎖からなる。[25]ペプチドの平均長さは、ペプチドの2D構造(アルファヘリックス又は非晶質)に応じて、アミノ酸当たり0.35~0.40nmと推定することができる。[25]ベータシートを形成するペプチドは、酵素切断時のそれらの放出動態が極めて遅いため、バイオセンサの設計に適していないことに留意されたい。50アミノ酸のペプチドは、その2D構造に応じて、17.5~20nmの長さがある。非天然アミノ酸は、ペプチドをグラフェン又はグラフェン結合有機若しくは無機シェルの表面に固定するために、又はフルオロフォア(有機色素若しくはナノ構造)の結合のために、これらのペプチドにおいて用いることができることにも留意されたい。
【0069】
[0195]本明細書中で用いられる場合、用語「アミノ酸」、「アミノ酸モノマー」、又は「アミノ酸残基」は、各アミノ酸に特異的な側鎖とともに、アミン官能基及びカルボン酸官能基から構成される有機化合物をいう。特に、アルファ(α)-アミノ酸は、アミン(-NH)及びカルボン酸(-COOH)から構成される有機化合物を意味し、各アミノ酸に特異的な側鎖がアルファ炭素に連結されている。異なるアミノ酸は、異なる側鎖を有し、電荷、極性、芳香族性、還元電位、疎水性、及びpKa等の特有の特徴がある。アミノ酸は、共有結合して、第1のアミノ酸のアミン基と第2のアミノ酸のカルボン酸基との間の反応によるペプチド結合を介してポリマーを形成することができる。本開示の意味におけるアミノ酸は、20種の天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸のいずれかを指し、D及びL光学異性体の両方を含む。
【0070】
[0196]好ましい実施形態では、標的バイオマーカーは、酵素及びケモカイン/サイトカイン等の長さ>50アミノ酸があるタンパク質である。これらの酵素のいくつかは、複素環結合金属(例えば、全てのマトリックスメタロプロテイナーゼ)からなる補酵素及び補因子がある。これらのタンパク質のいくつかは、当業者によって理解されるように、翻訳後修飾され、糖又は脂質に結合される。
[0197]さらなる実施形態では、標的バイオマーカーは、ペプチド結合の立体構造を変化させるか、又はペプチド結合を切断することができる多くの無機及び有機分子を含むことができる。ペプチド又はタンパク質に関連して本明細書で用いられる用語「コンホメーション」は、タンパク質構造(ポリペプチド中の原子の三次元配置)及び分子のタンパク質全体形状を決定するその構成原子の空間配置として定義される。化合物及びペプチドに関連して本明細書で用いられる用語「切断」は、化学結合の切断及び/又は化学結合の切断を伴う化学反応を示す。ペプチド結合の切断は、通常、当業者によって理解されるように、結合中のペプチド結合の酵素的加水分解、及びより小さいペプチド部分への結合の分解をもたらす。
[0198]ペプチド結合と相互作用してペプチドの立体構造を改変するか、又はペプチド結合を切断するように構成された有機及び/又は無機バイオマーカーを同定する方法は、
-ペプチド結合の三次構造を計算的にモデル化して、計算的にモデル化されたペプチド結合を提供すること
-候補有機又は無機バイオマーカーの三次構造を計算的にモデル化して、計算的にモデル化された候補有機又は無機バイオマーカーを提供すること
-前記コンピュータによりモデル化されたペプチド結合とコンピュータによりモデル化された候補有機又は無機バイオマーカーとの相互作用の標的部位を決定すること
-前記相互作用の標的部位における相互作用候補有機又は無機バイオマーカーの後に、前記コンピュータモデル化されたペプチド結合における変化を決定すること
-前記決定された変化が、前記ペプチド結合の立体構造の変化又は前記ペプチド結合の切断である場合、前記コンピュータモデル化されたペプチド結合及び有機又は無機標的バイオマーカーを選択すること、により行われる。
【0071】
[0199]さらに又はあるいは、ペプチド結合と相互作用するように構成された有機及び/又は無機バイオマーカーを同定するための方法であって
-候補有機及び/又は無機化合物とペプチド結合との間の相互作用を可能にする時間及び条件下で、候補有機及び/又は無機バイオマーカーをペプチド結合と接触させる工程;並びに
-ペプチド結合の立体構造の変化及び/又はペプチド結合の切断を検出することであって、検出結果を提供するために接触させることに続いて行われることと
-検出結果がペプチド結合の立体構造の検出された変化又はペプチド結合の検出された切断である場合に有機及び/又は無機バイオマーカーを選択し、したがって同定された有機及び/又は無機バイオマーカーを提供すること、を含んでよい。
【0072】
[0200]次いで、本開示のバイオセンサは、ペプチド結合を、検出可能部分と、付着後のグラフェン粒子に対して20nm以下の消光距離で検出可能部分があるように選択された厚さのコーティング層があるように選択された本開示のグラフェンコア粒子とに付着させることによって、標的化合物を検出するように構成することができる。特に、標的化合物が、ペプチド結合の長さの増加をもたらすペプチド結合の立体構造の検出された変化がある場合、コーティング層は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、付着後に提供されるバイオセンサにおいて、検出可能な部分がペプチド結合の長さの増加後の発光距離にあるように構成される。次いで、そのように構築されたバイオセンサの機能性を、当業者によって理解されるように試験することができる。
【0073】
[0201]例えば、タンパク質バイオマーカー及び対応する超分子認識配列の同定を、以下の手順に従って行った。
1)標的の一次構造を、データバンク(例えば、UniProtKB又はタンパク質データバンク)から検索した。
2)標的の三次構造を決定し、次いで、Dr.SeokによってComputational Biology Lab,ソウル国立大学(韓国)において開発されたGalaxyWEBタンパク構造予測クラスター等のタンパク構造予測ソフトウェアを利用して精密化した。
3)標的に対するモノクローナル抗体(MAB)フラグメントの一次構造を、データソース(例えば、Protein Data Bank、SciFinder、又は抗体の販売者によって提供される情報)から検索した。Galaxy-WEBを用いて三次構造を生成した。
4)Institute Pasteur Biology IT Center,Paris,Franceによって開発されたMobyleプラットフォームを用いて、標的と抗体鎖との間のドッキング手順をシミュレートする。この手順は、標的の「真の」エピトープを明らかにする。
5)次いで、最終的な「サイトファインダー」手順を、標的のエピトープを抗体(Ab)フラグメントの改善された構造にドッキングするMobyleプラットフォーム上で行う。この構造は、タンパク質タンパク質相互作用の例において標的への結合に実際に関与するAbフラグメントのペプチド配列を明らかにする。
F)
[0202]プロテインバイオマーカー及び対応する超分子認識配列の同定のための例示的な方法に、さらに又はあるいは、次いで、標的のプロテアーゼエピトープをプロテアーゼ酵素活性部位の改善された構造にドッキングさせるMobyleプラットフォーム上で、最終「部位ファインダー」手順を行う。この構造は、標的への結合に実際に関与する活性部位のペプチド配列を明らかにする。
[0203]タンパク質バイオマーカー及び対応する超分子認識配列の同定のための例示的な方法に、さらに又はあるいは、切断部位及びプロテアーゼターゲティングのための配列を、MEROPS(ペプチダーゼデータベース)等の利用可能な部位から同定することができる。
[0204]タンパク質バイオマーカー及び対応する超分子認識配列を同定するための例示的な方法において、超分子認識配列が直鎖状である場合、それを合成し、ナノセンサーの認識配列として用いた。得られたナノバイオセンサのLODが少なくとも10-14Mでない場合、別のmAbからの構造情報を用いてインシリコ手順を繰り返した。
【0074】
[0205]いくつかの例示的な実施形態では、多くの有機分子は、ペプチドと相互作用してその立体構造を変化させることができる酵素等のタンパク質と相互作用することもできる。これに関して、全ての酵素阻害剤は、それが結合するタンパク質の立体構造を変化させることができる。例示的な酵素阻害剤としては、非ペプチド性HIV-1プロテアーゼ阻害剤チプラナビル、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)、抗がん薬メトトレキセート、ストレプトマイセストランスペプチダーゼの阻害剤としてのペニシリンGが挙げられる。
【0075】
[0206]いくつかの例示的な実施形態では、標的バイオマーカーとペプチド結合との間の相互作用は、ペプチド結合の切断をもたらし得る。特に、ある実施形態では、標的バイオマーカーはプロテアーゼを含む。例示的なプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ、システイン、トレオニンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、及びアスパラギンペプチドリアーゼが挙げられる。一般に、ヒトゲノムの全ての既知の553種のプロテアーゼ(21種のアスパラギン酸プロテアーゼ、143種のシステインプロテアーゼ、186種の金属プロテアーゼ、176種のセリンプロテアーゼ及び27種のスレオニンプロテアーゼ)、並びに齧歯類モデルにおけるそれらの類似体は、当業者によって理解されるように、本開示のバイオセンサを用いて検出することができる。[26]
[0207]ある実施形態では、標的バイオマーカーは、ペプチドの翻訳後修飾を行う酵素を含み、これは、それらの生物物理学的特性(動的、有効長など)を変化させる。例は、アルギナーゼ(アルギニンをオルニチンに変換する)及びペプチドのサイズ鎖にいかなる化学基を結合又は除去する酵素の全ての群である。例としては、(脱)リン酸化が可能な酵素(キナーゼ、ホスファターゼ)、糖化酵素(N-糖化、N-糖化、糖化、C-糖化、及びホスホ糖化)、ユビキチン化、S-ニトロシル化、メチル化、N-アセチル化、及び脂質化(C末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI))アンカー、N末端ミリストイル化、S-ミリストイル化、S-プレニル化)が挙げられる。
【0076】
[0208]ある実施形態では、標的バイオマーカーは、テーラードオリゴペプチドに結合することができるタンパク質(例えば、サイトカイン/ケモカイン)を含む。結合事象は、ペプチドの生物物理学的特性(動的、有効長など)を変化させる。検出され得る例示的なバイオマーカーは、全てのサイトカイン、ケモカイン、シグナルペプチド(例えば、炎症促進性因子、抗炎症性因子、成長因子)を含み、ホルモンは、当業者によって理解されるように関心対象である。
【0077】
[0209]本明細書に記載の実施形態では、本開示のグラフェンバイオセンサの検出可能な構成要素の一部であるペプチド結合は、当業者によって理解されるように、対象の標的バイオマーカーに特異的に結合するように選択される。
[0210]第1の分子の第2の分子への結合に関して本明細書で用いられる用語「特異的」、「特異的に」又は「特異性」は、第1の分子と第2の分子との間の認識、接触及び安定な複合体の形成、並びに第1の分子及び第2の分子の各々と存在し得る他の分子との間の認識、接触及び安定な複合体の形成が実質的に少ないか又は全くないことを指す。例示的な特異的結合は、抗体-抗原相互作用、細胞受容体-リガンド相互作用、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション、酵素基質相互作用、及び当業者によって同定可能なさらなる相互作用である。ソフトウェア等のコンピュータ支援ツールに関連して本明細書で用いられる用語「特異的」、「特異的に」又は「特異性」は、標的配列とデータベースの配列とのアラインメント後に、例えばデータベース内の配列群の中から標的配列(本明細書に記載のマーカーの1つなど)を同定することができるツールを示す。標的配列を特異的に検出するように構成された例示的なソフトウェアは、Primer-3、PerlPrimer及びPrimerBlastを含む。-単一の実験において複数の分析物を同時に測定する。
【0078】
[0211]ある実施形態では、認識配列は、標的タンパク質に対する超分子認識配列又は認識配列であり得、これは、結合認識が標的タンパク質に対する特異性がある(すなわち、選択的結合部位を含有する)ことを意味する。従って、認識配列は、非特異的結合モチーフを回避することが理解される。本明細書に記載される認識配列は、好ましくは、迅速な診断のために切断可能である。
【0079】
[0212]本開示のグラフェンナノバイオセンサの実施形態では、ペプチド結合は、目的のバイオマーカーに対するいかなる様々な認識配列又は認識配列を含むことができ、これは、結合配列が標的バイオマーカーに対する特異性がある(すなわち、標的バイオマーカーに対する選択的結合及び/又は切断部位を含有する)ことを意味する。従って、連結配列は、非特異的結合モチーフを回避することが理解される。ペプチド結合は、通常、クエンチのためにグラフェン担体粒子の適当な近傍内に検出可能な部分を配置する短い直鎖状オリゴペプチドである。特定の実施形態では、ペプチド結合の長さは、100アミノ酸残基未満、好ましくは75アミノ酸残基未満、より好ましくは50アミノ酸残基以下であり得る。最も好ましい実施形態では、ペプチド結合長さはより短く、50アミノ酸残基未満、より好ましくは30アミノ酸残基未満、さらにより好ましくは20アミノ酸残基以下である。
【0080】
[0213]例えば、本開示のグラフェンバイオセンサにおいて、ペプチド結合は、4~50個のアミノ酸残基、より好ましくは4~30個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは10~20個のアミノ酸残基の範囲であり得る。本明細書で用いられる、分子間の非特異的結合又は反応から認識配列を区別することが意図される認識に関連する「特異的相互作用」又は「特異性」への言及は、オリゴペプチド配列が相互作用し得る特異的標的バイオマーカーのセットが限定され、いくつかの場合では、標的バイオマーカー以外のいかなる他の分子と結合も酵素的切断も感知可能な速度又は頻度で起こらないように排他的でさえあることを意味する。
[0214]特に、本明細書に記載される実施形態では、標的バイオマーカーに対するペプチド結合の特異性は、当業者によって理解されるように、ペプチド結合によって標的とされる特定のバイオマーカーとは異なるバイオマーカーに対するペプチド結合の最小限の相互作用をもたらす。
【0081】
[0215]バイオセンサは、選択された認識配列に応じて、多種多様なバイオマーカーを標的とするように構成することができる。例としては、プロテアーゼ、キナーゼ、アルギナーゼ、サイトカイン/ケモカイン、ジオキシゲナーゼ(例えば、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1、及び/又はトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ)、エステラーゼなどを含む多数の酵素が挙げられ、これらは次いで、試験される試料中の特定の健康状態と相関させることができる。例えば、そのようなバイオマーカーは、がん又は前がん状態の細胞活性、細菌活性、炎症等の指標であり得、文献において公知である。1つ以上の実施形態では、認識配列は、標的分析物(例えば、プロテアーゼ、エステラーゼなど)の存在下で酵素的切断を受ける酵素基質(ペプチド配列)を指す「認識配列」を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。そのような認識配列は、例えば、米国特許第8,969,027号及び米国特許第9,216,154号、米国公開第2017/0219548号に記載されており、各々、本開示と矛盾しない範囲で参照により本明細書に援用される。関連する認識配列を本開示の表に提供する。指針となるパラダイムは、まさにプロテアーゼについて、いかなる他のプロテアーゼによるよりもその標的プロテアーゼによって速く切断される認識配列をインシリコで設計することができるということである。
【0082】
[0216]1つ以上の実施形態では、認識配列は酵素的翻訳後修飾例えば、2016年3月18日に出願された国際公開第2016/149637号パンフレット(本開示と矛盾しない範囲で参照により本明細書に援用される)に記載されている通りである。この実施形態では、GR7G中のアルギニンは、オルニチンGO7Gに変換され、したがって、ペプチドの動態及び幾何学的伸長を変化させ、これは、光学的Fe/Feナノバイオセンサにおける蛍光検出を可能にする。他の翻訳後酵素は、当業者によって理解されるように、areindeolamine-2,3-ジオキシゲナーゼ及びトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼによって検出された。
【0083】
[0217]標的酵素等の標的バイオマーカーの存在下で、酵素は、認識配列を修飾し(切断せずに)、より具体的には、認識配列の一次構造(アミノ酸残基及び代謝産物)及び二次構造の両方を修飾する。本明細書で用いられるそのような用語「修飾」又は「翻訳後修飾」は、基質配列中のアミノ酸残基(及び特に側鎖)の異なる形態及び/又は異なる残基への変換又は形質転換を指す。これは、次に、二次構造を伸長、「アンフォールド」、又は「ほどく」、及び/又は認識配列の移動度を増加及び/又は減少させる。1つ以上の実施形態では、認識配列は化学修飾なしに物理的結合を検出するための超分子認識配列又は酵素的切断。特に、標的タンパク質は、アルファヘリックス及び/又はベータシート構造等の最初の折り畳まれた二次構造が修飾され、直線的に伸長又はアンフォールドするように、超分子認識配列に直線的に結合する。各々の場合において、標的分析物(例えば、タンパク質、酵素など)と認識配列との相互作用は、標的分析物の存在を示す、バイオセンサにおける検出可能な変化を引き起こす。
【0084】
[0218]1つ以上の実施形態では、認識配列は、例えば、2015年7月27日に出願された国際公開第2016/018798号パンフレット(本開示と矛盾しない範囲で参照により本明細書に援用される)に記載されているような炎症、感染、及び/又は細菌活性のバイオマーカーに対する認識配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。これらの実施形態のいくつかにおいて、標的バイオマーカーは、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-12、及びMMP-13と比較したMMP-8、MMP-9、MMP-11、MMP-14、及び好中球エラスターゼ等の炎症、感染、及び/又は細菌活性を示す酵素であり得る。炎症、感染、及び/又は細菌活性を部分的に示すと考えられる他の酵素標的バイオマーカーは、当業者によって理解されるように、カテプシン-B、-D、-E、-K、及び-L並びにウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子であった。
【0085】
[0219]一般に、プロテアーゼ及び/又はエステラーゼ等の酵素は、炎症、感染、及び/又は細菌活性を示す例示的なバイオマーカーである。認識配列は、特異的に(例えば、標的プロテアーゼによってのみ切断可能な認識配列を用いて)又は一般的に(例えば、いかなるプロテアーゼ又はエステラーゼによって切断可能な配列を用いて)プロテアーゼ又はエステラーゼによって切断可能であるように選択される。結合が切断されると、粒子は互いから解放され、システムにおいて検出され得るスペクトル変化を生じさせる。
[0220]認識配列は、通常、検出可能部分と純粋なグラフェン担体粒子との間のオリゴペプチド結合の一部として提供される。好適なオリゴペプチド結合は、典型的には末端カルボン酸基(C末端)及び末端アミン基(N末端)と共に、標的バイオマーカーの認識配列を含む(から本質的になる、又はからなることさえある)。オリゴペプチドは、C末端にチオール基を、N末端にカルボン酸基を含むこともできる。ある実施形態では、オリゴペプチドリンカーは、認識配列のN末端側の少なくとも10アミノ酸の親水性領域と、認識配列のC末端側の連結領域とを含み、C末端連結領域は、その末端にチオール反応性基を含む。ある実施形態では、オリゴペプチドのC末端は、システイン残基、リジン、又はアスパラギン酸を含む。ある実施形態では、オリゴペプチドのN末端親水性領域は、約1:1の比で過剰な正電荷又は負電荷がある。N末端親水性領域は、互いに水素結合を形成することができるアミノ酸残基を含むこともできる。
【0086】
[0221]ある実施形態では、C末端及びN末端連結領域は、切断不可能である(例えば、認識配列ではない)実質的にいかなるアミノ酸配列:(X)n-[認識配列]-(X)mからなることができ、式中、Xはいかなるアミノ酸(配列中で切断配列をもたらさない)であり、n及びmの各々は5未満である。
[0222]ある実施形態では、認識配列は、N及び/又はC末端に1つ又は複数のスペーサー残基を含むことができる。例えば、1~10個のアミノ酸(天然及び非天然のいかなるアミノ酸、L及びD-、又はそれらの組み合わせ)をスペーサーとして一端又は両端に用いて、選択された検出可能な部分に応じてオリゴペプチド鎖長をさらに延長することができる。例としては、GAG及び等のN末端配列、-AG等のC末端配列が挙げられる。
[0223]標的バイオマーカーに応じて、所望の認識配列を選択し、合成することができる。種々の配列も文献において利用可能であるか、又はインシリコ結合研究を通して決定され得ることが理解される。
【0087】
[0224]例示的な認識配列を、それらの関連するバイオマーカーと共に以下の表に列挙する。ある場合では、提案される切断点を「-」で示す。列挙された配列の変異体もまた意図される。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
単球化学誘引物質プロテイン-1;ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド20(CCL20)又は肝臓活性化調節ケモカイン(LARC)又はマクロファージ炎症プロテイン-3(MIP3A);顆粒球コロニー刺激性因子;インターロイキン-1-受容体様1型;マクロファージ炎症プロテイン;破骨細胞刺激性因子-1;メタロプロテイナーゼ阻害剤1;胸腺間質リンホポエチン。
【0092】
[0225]1つ以上の実施形態では、ナノセンサは、サイトカイン検出に特異的な認識配列を用いて構成され得る。これらの実施形態では、オリゴペプチド結合は、目的のサイトカインの受容体/結合部位のための直鎖状超分子認識配列(すなわち、パラトープ)を含む。サイトカインの存在下で、サイトカイン結合中のテザーの伸長は、結合した検出可能な粒子からのシグナル変化(例えば、蛍光増加)をもたらし、これを検出することができる。ナノセンサーはサイトカイン濃度を測定することができる。例示的な超分子認識配列を以下の表2に列挙する。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
[0226]単球化学誘引物質プロテイン-1;ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド20(CCL20)又は肝臓活性化調節ケモカイン(LARC)又はマクロファージ炎症プロテイン-3(MIP3A);顆粒球コロニー刺激性因子;インターロイキン-1-受容体様1型;マクロファージ炎症プロテイン;破骨細胞刺激性因子-1;メタロプロテイナーゼ阻害剤1;胸腺間質リンホポエチン;CD:分化クラスター;ATP依存性RNAヘリカーゼDDX3X(ヒト気管支上皮細胞由来);アルカリホスファターゼ、胎盤型ホスファターゼPPB1;アルギニンtRNAリガーゼ、細胞質;E3ユビキチン-プロテインリガーゼUBR4(末梢気道上皮細胞);推定検出限界(LOD)。
[0227]ある実施形態では、超分子認識配列は、N及び/又はC末端に1つ又は複数のスペーサー残基を含むことができる。例えば、1~10個のアミノ酸(天然及び非天然のいかなるアミノ酸、L及びD-、又はそれらの組み合わせ)を、スペーサーとして一端又は両端で用いることができる。例としては、GAG及び等のN末端配列、-AG等のC末端配列が挙げられる。
[0228]ある実施形態では、適当な長さ(例えば、少なくとも10アミノ酸残基)のいかなる他の直鎖状ペプチド配列が、コンセンサスモチーフを特徴とする配列を除いて、超分子認識配列のために用いられうる。ペプチド合成機上で合成される場合、約25アミノ酸残基までのペプチド配列が用いられうるが、生物(例えば、E.coli)において合成される配列は、約300アミノ酸残基長までであり得る。いかなる設計された配列は、MEROPS等のデータバンクを利用して、切断配列の存在についてチェックされるべきである。
【0096】
[0229]ある実施形態では、エキソソームの表面マーカーとして一般に認められているCD9、CD63、及びCD81を標的とするためのペプチド-アプタマーも開発されている。それらはエキソソームに結合することができ、事前の(超)遠心分離なしにナノセンサーを用いて収集された生物学的試料からそれらを直接単離することを可能にする。CD9、CD63、及びCD81の併用は、気道細胞等の試料から生じる実質的に全てのエキソソームが捕捉されることを確実にするであろう。溶解緩衝液で処理した後、捕捉されたエキソソームのカーゴを分析することができる。エキソソームの分析は、本技術の別の既存の態様を提示する。小気道上皮細胞及び気管支気道上皮細胞から生じるエキソソームは、それらの外膜におけるそれらのプロテアソーム(テトラスパニン含量(CD9、CD63、CD81)を含む)において有意に異なる。
[0230]ある実施形態では、本開示のバイオセンサは、利用可能なセンサー技術に適合するように粒子、オリゴペプチド結合などを修飾し、同様に、さらなる標的を検出するための様々なセンサー技術を用いることによって、基礎となるナノセンサー構造を適合させる柔軟性を示す。例えば、ナノセンサーは、プロテアーゼ活性を検出するために調製することができ、ここで、本開示のグラフェンコア粒子は、当業者によって理解されるように、米国特許第8,969,027号に記載されるペプチド結合及び部分に関連して用いられる。
【0097】
[0231]ある実施形態では、上記の1つ以上と組み合わせてナノセンサーにおいて用いることもできる酵素認識配列は、以下の表3におけるものを含み、ここで、切断点を「-」で示す。
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
【表10】
[0232]ある実施形態では、ペプチド結合の認識配列は、N末端スペーサー(例えば、GAG、GAA、GAP)及びC末端スペーサー(例えば、GA、AG、又はEG)を含むことができる。
【0101】
[0233]本開示のグラフェンバイオセンサにおいて、ペプチド結合は、検出可能な部分又は標識をグラフェンコア粒子に付着させるために用いられる。
[0234]本明細書で用いられる用語「付着する」又は「付着された」は、2つ以上の構成要素を共に保つために、結合、リンク、力、又はタイによって接続又は一体化することを指し、これは、例えば、第1の分子が第2の分子若しくは材料に直接結合されるか、又は1つ以上の中間分子が第1の分子と第2の分子若しくは材料との間に配置される、直接的又は間接的付着のいずれかを包含する。
[0235]本明細書で用いられる用語「検出する」又は「検出」は、試料、反応混合物、分子複合体及び基質を含むがこれらに限定されない、空間の限られた部分における標的の存在、存在又は事実の決定を示す。本明細書で用いられる用語「検出する」又は「検出」は、他の化合物と相互作用し、特に結合する能力、別の化合物を活性化する能力、及び本開示を読んだ当業者によって同定可能なさらなる特性を含むがこれらに限定されない、標的の化学的及び/又は生物学的特性の決定を含み得る。検出は、定量的又は定性的であり得る。検出は、定量化されていない別の標的又はシグナルに対する相対存在量に関して、標的又はシグナルの質又は種類の同定を指す、関連する、又は伴う場合、「定性的」である。検出は、標的又はシグナルの量又は量の測定(定量化とも呼ばれる)を指すか、それに関連するか、又はそれを伴う場合、「定量的」であり、これには、標的又はシグナルの量又は割合を決定するように設計されたいかなる分析が含まれるが、これらに限定されない。本開示の意味における定量的検出は、当業者によって理解されるように、標的バイオマーカーの特定の量を上回る/下回る、半定量的に行われる検出を含む。
[0236]本明細書で用いられる用語「検出可能な部分」又は「標識」は、放射性同位元素、フルオロフォア、化学発光色素、発色団、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、粒子、金属ゾル、リガンド(ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、又はハプテンなど)などを含むがこれらに限定されない、検出可能な分子を指す。結果として、本明細書で用いられる用語「標識シグナル」は、標識の検出を可能にする標識から放出されるシグナルを示し、これには、放射能、蛍光、化学発光、酵素反応の結果としての化合物の産生などが含まれるが、これらに限定されない。
[0237]本明細書に記載される実施形態では、検出可能部分は、蛍光シグナルを放射することができる。蛍光シグナルという用語は、より短い波長の光源によって電子的に励起され得る化合物によって放出される、より長い波長の光シグナルを示す。
[0238]光源によって励起され、蛍光シグナルを発することができる化合物である例示的な検出可能な標識としては、視覚的に知覚され得るか、又は適当な機器を用いて測定され得る、蛍光又は色変化等の検出可能なシグナル(例えば、光学的又は分光学的)を生成する検出可能な粒子が挙げられる。本発明のアッセイにおける使用に適した発色団/発光団としては、いかなる有機又は無機色素、フルオロフォア、リン光体、光吸収粒子(例えば、Au、Ag、Pt、Pd)、それらの組み合わせ、又はそれらの非磁性金属化錯体が挙げられる。好ましくは、選択された発色団/発光団は、グラフェン担体粒子よりも小さく、典型的には約20nm未満の粒径(最大縁間サイズ、すなわち直径)がある。
【0102】
[0239]適当な有機色素は、クマリン、ピレン、シアニン、ベンゼン、N-メチルカルバゾール、エリトロシンB、N-アセチル-L-トリプトファンアミド、2,5-ジフェニルオキサゾール、ルブレン、及びN-(3-スルホプロピル)アクリジニウムからなる群から選択される。好ましいクマリンの具体例としては、7-アミノクマリン、7-ジアルキルアミノクマリン、及びクマリン153が挙げられる。好ましいベンゼンの例としては、1,4-ビス(5-フェニルオキサゾール-2-イル)ベンゼン及び1,4-ジフェニルベンゼンが挙げられる。好ましいシアニンの例としては、オキサシアニン、チアシアニン、インドシアニン、メロシアニン、及びカルボシアニンが挙げられる。他の例示的なシアニンとしては、ECL Plus、ECF、C3-オキサシアニン、C3-チアシアニン色素(EtOH)、C3-チアシアニン色素(PrOH)、C5-インドシアニン、C5-オキサシアニン、C5-チアシアニン、C7-インドシアニン、C7-オキサシアニン、CypHer5、Dye-33、シアニン(Cy7、Cy7.5、Cy5.0、Cy5.5、Cy3Cy5 ET、Cy3B、Cy3.0、Cy3.5、Cy2)、CBQCA、NIR1、NIR2、NIR3、NIR4、NIR820、SNIR1、SNIR2、SNIR4、メロシアニン540、ピナシアノール-ヨウ化物、1,1-ジエチル-4,4-カルボシアニンヨウ化物、Stains All、Dye-1041、又はDye-304、並びにすべてのBODIPY色素があげられる。
[0240]シアニン色素は、理想的にはシアニン色素のフェルスター半径(Cy3.0及びCy3.5については5~6nm、Cy5.0及びCy5.5については6~7nm、並びにCy7及びCy7.5については約7nm)よりも短いペプチド結合を用いて、種々の配置で結合され得る。(約2.84nmまでの)いかなるスペーサー及び切断配列中の12個以下のアミノ酸残基(4nmまで)からなるテザーの最大長は、より短い切断配列(uPA及びMMP)がCy3.x及びCy5.x色素との使用に適しているが、カテプシンは、好ましくはCy5.x及びCy7.x色素に連結されて、テザーされたシアニン色素の最適な消光を可能にすることを示す。全てのシアニンについて、それらの発光極大は、ヒト尿の自己蛍光に対して赤方偏移している。複数のシアニンを単一粒子に結合させて、オリゴプレックスナノプラットフォームを作製し、最大4つの酵素の活性を同時に測定することができる。電磁スペクトルのUVA又は青色領域における4つの色素すべてを同時に励起することができ、又は各色素を個別に励起することができる。全てのシアニン色素は、それらの発光極大(蛍光一重項状態に典型的)に対して20~25nmだけ青色シフトした励起極大がある。例示的な発光スペクトル:NS-Cy3.0(λex=538、λem=560)、NS-Cy5.5(λex=639、λem=660)、NS-Cy7.0(λex=740、λem=760)及びNS-Cy7.5(λex=808、λem=830)。
【0103】
[0241]好適な無機染料は、金属化及び非金属化ポルフィリン、フタロシアニン、クロリン(例えば、クロロフィルA及びB)、及び金属化発色団からなる群から選択される。好ましいポルフィリンは、テトラカルボキシ-フェニル-ポルフィリン(TCPP)及びZn-TCPPからなる群から選択される。好ましい金属化発色団は、ルテニウムポリピリジル錯体、オスミウムポリピリジル錯体、ロジウムポリピリジル錯体、イリジウム(III)の3-(1-メチルベンゾイミダゾール-2-イル)-7-(ジエチルアミノ)-クマリン錯体、及びイリジウム(III)との3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-(ジエチルアミノ)-クマリン錯体からなる群から選択される。
[0242]適当なフルオロフォア及びホスホフォアは、リン光性色素、フルオレセイン、ロダミン(例えばロダミンB、ロダミン6G)、及びアントラセン(例えば9-シアノアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、1-クロロ-9,10-ビス(フェニル-エチニル)アントラセン)からなる群から選択される。
【0104】
[0243]グラフェン及び誘導体の広いUV/Vis吸収スペクトルは、各々の(異なる)認識配列がある複数の検出可能な標識を付着させて、一度に2つ以上のバイオマーカーを標的化することを可能にする。機能するためには、共結合した検出可能な標識の励起スペクトルと吸収スペクトルとの間の重複がないか、又は最小限であるべきであり、したがって、粒子間のFRET及び/又は各々のシグナルの干渉が最小限に抑えられる。原則的に、蛍光色素のいかなる組み合わせが想定され得るが、BODIPY色素は、小さいストークスシフト(最も低い励起バンドの最大値と蛍光バンドの最大値との間の距離)を特徴とするので、特に適当である。この戦略の例は、各々の(異なる)配列を介して接続されたBODIPY FL(505λex/513λem)、BODIPY 530550(534λex/554λem)、BODIPY TR(589λex/617λem)、及びBODIPY 630650(646λex/660λem)の並行使用であり、4つのバイオマーカーの活性を単一のバイオセンサで独立してモニターする。例示的なBODIPY色素は、実施例7に記載されている。
[0244]あるいは、シアニン色素2、3、5、及び7、別の可能な組み合わせである。しかしながら、フェルスター半径が極めて大きく、希釈しても互いに干渉することがある。
[0245]蛍光量子ドット及び蛍光粒子も用いることができる。量子ドットは、周期表のII-VI族又はIII-V族元素からの原子から構成される半導体である(例えば、CdSe、CdTe、InP)。量子ドットの光学特性は、(通常は安定化)シェルを合成することによって操作することができる。このような量子ドットは、コア-シェル量子ドット(例えば、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/CdSe)として知られている。同じ材料であるが異なるサイズがある量子ドットは、異なる色の光を放出することができる。それらの輝度は、3つの空間次元すべてにおける電子の閉じ込めによるエネルギー準位の量子化に起因する。バルク半導体では、電子-正孔対はボーア励起子半径内に束縛され、これは各タイプの半導体に特徴的である。量子ドットはボーア励起子半径よりも小さく、離散的なエネルギー準位の出現を引き起こす。半導体の価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップΔEは、ナノ結晶のサイズ及び形状の関数である。量子ドットは、従来の有機フルオロフォアよりもわずかに低い発光量子収率を特徴とするが、それらは、はるかに大きい吸収断面積及び極めて低い光退色速度がある。量子ドットのモル吸光係数は約10~10-1cm-1であり、これは有機色素よりも10~100倍大きい。
【0105】
[0246]コア/シェル量子ドットは、より低いバンドギャップのコアの周りに、より高いバンドギャップのシェルを有し、シェルによって吸収されることなく光を放出する。シェルは、コアからの表面非放射性発光を不動態化することにより、フォトルミネセンス量子収率を向上させ、自然分解を防止する。I型量子ドット(例えば、CdSe/ZnS)のシェルは、コアよりも高いエネルギー伝導帯及び低いエネルギー価電子帯を有し、その結果、電子及び正孔の両方がコアに閉じ込められる。II型量子ドット(例えば、CdTe/CdSe、CdSe/ZnTe)のシェルの伝導帯及び価電子帯は、コアの伝導帯及び価電子帯よりもエネルギーが両方とも低いか又は両方とも高い。従って、電子及び正孔の運動は一次元に制限される。コア-シェル界面での励起子の放射再結合は、タイプII発光を生じる。タイプII量子ドットは、バンドエッジ付近で間接半導体として挙動し、したがって、赤色及び近赤外への吸収テールがある。合金化半導体量子ドット(CdSeTe)も用いることができるが、タイプI及びIIが最も好ましい。変化させることができる合金組成及び内部構造は、粒子のサイズを変えることなく光学特性を調整することを可能にする。
[0247]特に好ましい量子ドットは、CdSe/ZnSコア/シェル量子ドット、CdTe/CdSeコア/シェル量子ドット、CdSe/ZnTeコア/シェル量子ドット、及び合金化半導体量子ドット(例えば、CdSeTe)からなる群から選択される。より好ましくは、量子ドットは、直径が約10nm未満、さらにより好ましくは直径が約2nm~約5.5nm、最も好ましくは直径が約1.5nm~約4.5nmである。複数のセンサ(多重検出)を作成するために異なる色の発光が必要とされる場合、これは、異なる発光波長をもたらす量子ドットコアのサイズを変更することによって達成することができる。量子ドットは、粒子に関して上述したように、安定化されていても、安定化されていなくてもよい。量子ドットを安定化するための好ましい配位子は、レゾルシナレンである。
【0106】
[0248]本開示のグラフェンバイオセンサにおいて、有利には、グラフェンコア粒子は、検出可能な部分のシグナルのためのクエンチャーとして作用し、その結果、共結合したクエンチャー粒子をセンサーに別個に添加する(例えば、担体粒子に直接結合させる)必要がない。したがって、他のセンサとは異なり、グラフェンコア粒子に付着した粒子(検出可能部分)は、グラフェンコア粒子担体粒子と相互作用するが、通常、それらが互いに相互作用せず、感知機能に関してグラフェンコア粒子とのみ相互作用するように選択され配置される(例えば、互いに及び担体粒子に近接して)。(例えば、実施例の節で図示され例示されるグラフェン粒子に付着したペプチドの特徴を参照)。
[0249]したがって、本明細書に記載の実施形態では、コア粒子及びバイオセンサは各々、少なくとも1つの検出可能な部分がペプチド結合を介して純粋なグラフェンナノシート微粒子に付着しているグラフェンコア粒子を含む。この構成では、検出可能な部分は、グラフェンに対して消光距離にあり、検出可能な部分の検出可能な信号は、中心グラフェンナノシート微粒子に近接しているために消光され、弱められるか、又は検出不能になる。ペプチド結合は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含み、その結果、標的バイオマーカーは、試験試料中に存在する場合、ペプチド結合と相互作用し(典型的にはペプチド結合のコンフォメーションを切断又は改変し)、それによって、グラフェン粒子の消光が起こらない発光距離に検出可能部分をもたらす(例えば、検出可能部分を放出することによって、又は関連するコンフォメーションの変化によって距離を改変することによって)。一旦放出されるか、又は立体構造の変化を介して放出距離にもたらされると、検出可能な部分はもはや中心グラフェンナノシート微粒子によって消光されず、そのシグナル(又はそのシグナルの変化)を検出することができ、それによって試料中の標的バイオマーカーの存在及び/又は活性を示すことができる。
【0107】
[0250]本明細書に記載されるほとんどの実施形態では、本開示のグラフェンバイオセンサにおいて、グラフェンが検出可能部分のシグナルを消光するグラフェン粒子に対して消光距離に検出可能部分を配置することを可能にするために、付着ポリマー層+共付着認識配列の直径は20nmを超えない(実施例の項で説明及び例示されるポリマーの特性を参照)。
[0251]したがって、ある実施形態では、本開示のグラフェンコア粒子及び/又はバイオセンサ中のコーティング材料の厚さは、18nm以下であり、標的化能力を特徴とする結合ペプチド配列に対して最小2nmであってよい。
[0252]ある実施形態では、本開示のグラフェンコア粒子及び/又はバイオセンサ中のコーティング材料の厚さは、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、コーティング材料に付着した、又は付着する可能性がある検出可能な成分のサイズに応じて、8~17nm、2~18nm、又は5~15nmである。
[0253]本明細書に記載されるある実施形態では、プロテアーゼ活性検出のためのグラフェンバイオセンサにおけるペプチド長(A)とポリマー層厚さ(B)の許容比は、実施例31に例示される手順で検出することができる。
[0254]標的バイオマーカーが翻訳後修飾を行うある実施形態では、層厚は、それらの標的への結合又は翻訳後修飾の前に20nmに近い。両方の事象は、ペプチド配列を伸長して、グラフェン粒子が検出可能な部分を消光しない発光距離で検出可能な部分を生じさせ、したがって、テザーされたフルオロフォアからの蛍光増加を引き起こす。
【0108】
[0255]本開示のバイオセンサは、驚くべきことに、特に、グラフェン層が、グラフェン粒子の少なくとも90%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%までがコーティング材料でコーティングされた2~100枚の純粋なグラフェン、より好ましくはフラクタル純粋なグラフェンを含む実施形態では、関連する信号検出の高い安定性だけでなく高い再現性も有することが見出された。これらの実施形態では、標的バイオマーカーは、高い再現性で、特に、10%未満の異なる製造ロット又はバッチ間で検出されたシグナルの変動係数で検出することができ、ここで、シグナルは、各ロットのセンサーのみのバックグラウンドを超える蛍光の量である。
[0256]本明細書に記載の実施形態では、ナノバイオセンサの再現性は、変動係数に関して表すことができる規定の生物学的試料の測定条件を再現する能力によって決定される。
[0257]したがって、本開示のバイオセンサの高い再現性は、当業者が、水溶液中で化学的に安定であるように修飾され、本開示に従って様々なセンサー部分に結合されたコア粒子を、単一の生物学的試料から同じ量のシグナルを生成するために独立したアセンブリで製剤化することを可能にする。生物学的プロセスを測定するための価値があるために、規定された生物学的試料によって放出されるシグナルの量は、再現可能でなければならない。
[0258]グラフェン層が、少なくとも90%がコーティング材料でコーティングされた2~100枚の純粋なグラフェンを含む、本明細書に記載のグラフェンバイオセンサの実施形態では、センサの異なる製造ロット又はバッチ間の差は、各ビルドについて10%未満の変動係数がある信号を表示することが予想される。
[0259]特に、再現性を検出するために、反応に添加されるセンサーの量は、質量に依存するのではなく、好ましくは吸光度を用いて行われる。特に、粒子の濃度は、R2>0.99の標準曲線を用いて吸光度測定によって決定することができる。これらの条件下で、粒子の濃度をCV%<4%で調整することができる。
[0260]グラフェン層が走査型電子顕微鏡及びデジタル光散乱測定を用いて決定される平均で10nm~5000nm、好ましくは150~500nmの粒子を含む粒子の懸濁液が、コーティング材料で少なくとも90%コーティングされている、本明細書に記載の実施形態では、再現性は、センサを含む水性懸濁液の安定性に関して検出することもでき、再現性は、OD650又はOD270でコロイド安定性を評価することによって評価される。設定された時間内に粒子のサイズが10nm~5000nm、好ましくは150~500nmである実施形態では、測定間のOD650の平均減少は24%以下であり、好ましい実施形態では、典型的には10%以下である。
【0109】
[0261]これらの実施形態では、センサの構成は、センサが水溶液中で均一に懸濁された状態のままである製剤を可能にする。この特徴は、粒子の均一な分布、及びフェムトモル程度の低い濃度で存在する生物学的試料中に存在する稀な特異的バイオマーカーとのその後の相互作用を可能にする。安定性は、グラフェン表面の非極性の性質をマスクする表面修飾による数層グラフェンの修飾によってさらに支持される。これらの修飾は、粒子が水性環境中の懸濁液中に留まることを可能にする電荷を導入する。極性修飾の導入は、少なくとも1mg/mlの緩衝溶液中でのセンサーの調製を支持するために必要とされる。少なくとも1mg/mlの安定な溶液を用いて、全てのセンサは、5~500μg/mLの試料と機能的濃度で混合することができる。好ましくは、センサー濃度は、25、又は30、又は50、又は100、又は200、又は300μg/mLに保持される。最適な機能濃度は、特定の成分及び関連する特徴に基づいて、各センサについて決定することができる。サイズ及び電荷修飾を導入することの組み合わされた影響は、グラフェンナノバイオセンサの吸光度が室温で1時間にわたって変化しないように、粒子の安定な懸濁液を維持する溶液を生成することである。この溶液安定性は、室温で60分間隔にわたってOD650又はOD270でコロイド安定性を評価することによって評価される。グラフェンセンサは、-20~-26%のOD650の変化を示す。OD270でのグラフェンセンサの吸光度は、-17%~-21%の変化を示すことができる。したがって、グラフェンセンサのコロイド懸濁液は、当業者によって理解されるように、当技術分野で知られている他の粒子よりも効率的に懸濁液中に留まる。
[0262]好ましい実施形態では、グラフェン粒子は、900nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは250nm以下のサイズを有し、フェムトモル濃度程度の低濃度で存在する標的バイオマーカーについて検出を行うことができる。
【0110】
[0263]本開示のバイオセンサはまた、驚くべきことに、特に、グラフェン層が、グラフェン粒子の表面の少なくとも90%、好ましくは100%がコーティング材料でコーティングされた2~100枚の純粋なグラフェン、より好ましくはフラクタル純粋なグラフェンを含む実施形態では、シグナル検出の高い安定性及び高い再現性だけでなく、高いシグナル対ノイズ比も有することが見出され、コーティングされていないグラフェンの表面における以前に切断された検出可能な部分(蛍光色素など)の吸着及び消光による蛍光読み出しへの干渉が最小化された。
[0264]特に、上記の特徴があるバイオセンサは、水溶液中で少なくとも25以上の信号対雑音性能(S:N)を提供する。上記の特徴がある例示的なバイオセンサを用いて実施された実験では、バイオセンサについて時間0でセンサ及び血清と共にインキュベートされた試料の関係は、相対蛍光指数(RFI)又は試料RFU/アッセイ対照RFU平均4.3+/-1.9を見出した。さらに、最大90分間水溶液中に維持されたバイオセンサは、バックグラウンドシグナルの有意な変化を示さず、統合されたS:Nは、バイオセンサの異なるロットが測定されるとき、複数のセンサーにわたって平均して25から46、159、312へと増加する。したがって、t=0及びt=60におけるシグナル対ノイズ比の両方を評価する積分S:Nは、グラフェンバイオセンササイズ及び溶媒汚染が安定化されるにつれて、3倍~13倍の間の定義された刺激に対する感度の増加を実証する(代表的な実施例44並びに対応する図59及び図60を参照されたい)。このS:N性能は、当業者によって理解されるように、センサに依存する。
[0265]特に、本明細書に記載される例示的なナノバイオセンサを用いて実施されたこれらの実験では、当業者によって理解されるように、8~50の範囲の4つの異なるセンサー(実施例17、図20、ロット1配合物、図59参照)を平均して、25倍の改善が測定された。同じ4つのセンサは、109~623倍のS:Nの範囲で312 SN平均(実施例40及び実施例43ロット4を参照)に改善した。比較すると、鉄粒子センサは、同じ緩衝液及び試料を用いて同時に測定された同じ4つのセンサについて20(6~42の範囲)の平均SNを有していた(実施例44参照)。
【0111】
[0266]ある実施形態では、バイオセンサは、上記の構成のセンサの異なる長さ及び構成があることができる。例えば、ある実施形態では、ペプチドテザーの長さは、50アミノ酸を超え得る。これは、例えば、ペプチド鎖のバックベンディングが検出可能な部分を放出距離にもたらすことが想定される全ての場合において可能である。
[0267]ある実施形態では、ペプチド結合は、本明細書においてスペーサー又はコネクターとしても示される部分を介して間接的に、本開示のグラフェンコア粒子のコーティング層又はグラフェン表面及び/又は検出可能部分に付着され得る。例えば、表1の例示的なペプチド結合は、各配列のN末端の前にスペーサーGAGを含むことができ、スペーサーAGはC末端で用いられる。本開示のグラフェンバイオセンサにおける適当なスペーサーの選択は、当業者によって理解されるように、検出される標的バイオマーカー並びに特定のバイオセンサの消光距離及び発光距離を考慮して行うことができる(実施例9を参照)。
【0112】
[0268]ある実施形態では、ペプチド結合は、3アミノ酸スペーサーGAG、及び4+4アミノ酸認識配列、及び2-3アミノ酸スペーサー(G)AGを含むオリゴペプチドであり、長さは5±0.5nmである。ある実施形態では、層のサイズは、2nm(官能化グラフェン)+12nm(PEI等のコーティング材料)=14nmである。14nm+5nmのスペーサーを含むペプチド結合=19nm<20nmである。
【0113】
[0269]ある実施形態では、グラフェン系のバイオセンサは、グラフェン担体粒子と検出可能な部分との間の表面プラズモン共鳴及びFRETに基づく検出方法のために構成される。FRETは、2つの粒子間のエネルギー移動を表す。表面プラズモン共鳴を用いて粒子を励起する。最初に励起状態にあるドナー粒子は、非放射性双極子-双極子カップリングを介して、このエネルギーを近接するアクセプター粒子に移動させることができる。簡単に説明すると、検出可能な粒子はその初期状態でオリゴペプチドによって結合されているが、ドナー粒子の励起時に第1の発光が観察される。標的バイオマーカーがその認識配列に結合及び/又は切断すると、FRET変化が観察され、発光スペクトルが変化する。通常、2つの粒子間の距離がバイオマーカーによって(ペプチド結合の切断又は延長のいずれかによって)変化すると、検出可能な粒子から光が放出され、吸収及び放出における明確な青色シフトを観察することができる。これは、両粒子間の距離が大きくなるためである。ある実施形態では、検出可能な粒子からの信号強度は、2つの粒子間の距離が増加するにつれて増加する。
[0270]本明細書に記載されるバイオセンサにおいて、グラフェンの光物理的特性を考慮すると、プラズモン消光は、当業者によって理解されるように、プラズモン励起及び消光のオーバーレイによって特徴付けられる他のナノ材料とは対照的に支配的である。
[0271]一般に、バイオセンサの励起は、より高いエネルギー状態がある粒子(例えば、ドナー粒子)に向けられる。グラフェン(及びカルボキシグラフェン)の吸収スペクトルは、UVと近IRとの間でほとんど変化しないので、このバイオセンサは、広い光学領域で動作することができる。検出可能な粒子の励起は、有利には、約300nm~約1500nmで行うことができる。励起は、通常、タングステンランプ、LED、レーザー、及び/又は生物発光(例えば、ルシフェラーゼ、ウミシイタケ、緑色蛍光タンパク質)からなる群から選択される適当な波長のエネルギー源を用いて行われる。ペプチドがオリゴペプチド結合を結合、切断、又は化学的に修飾する際の粒子の吸収及び/又は発光の変化は、バイオマーカー活性に応じて、約1分~約120分、好ましくは約1分~約60分、場合によっては約1分~約30分の期間にわたって観察される。実際には、アッセイはまず、既知の濃度の標的バイオマーカーを含む対照試料及び含まない対照試料を用いて、特定のバイオセンサについて較正することができる。
[0272]特に、純粋なグラフェンナノシートは、本明細書に記載のコア粒子内にあり、付着は、検出可能な部分を、本明細書に記載のコア粒子の化学的に変換された表面に付着させることによって行われる。コア粒子が有機及び/又は無機分子の層を含む実施形態では、化学的に変換された表面は、有機及び/又は無機分子の層でコーティングされ、付着は、有機及び/又は無機分子の層へのペプチド結合の結合を介して行われる。
[0273]最も好ましい実施形態では、付着させる前に、純粋なグラフェンナノシートを分散させ(例えば、超音波処理によって)、付着させることは、分散された純粋なグラフェンナノシート上で行われる。
[0274]好ましい実施形態では、分散は、フラクタルグラフェンを含むグラフェン粒子を用いて行われる。これらの実施形態では、分散は、製造に入るグラフェンの集団におけるより大きなフラクタルの表現を減少させるために望ましい可能性がある。フェムトモル濃度で標的バイオマーカーを検出するある実施形態では、粒子の粒子集団サイズは、粒子の均質かつ安定な水溶液を支持するために、典型的には10~5000nm、最適には50~500nmである。音波処理の使用は、システムにエネルギーを導入して静電結合を破壊し、ファンデルワールス力がフラクタルを一緒に保持する。一旦破壊されると、コーティング反応(例えば、重合)は、示されるように集団を捕捉する。音波処理は、系にエネルギーを導入する1つの機構を表し、その一部は、より大きなフラクタルを破壊するために用いられる。これは、超音波処理のパワーに依存して平衡まで続く。DMF中の数層グラフェンの200mL溶液中でマイクロチッププローブソニケーターを用いて2~40KJ又は10~20KJ又はより好ましくは12~15KJを導入することにより、適当な粒子の集団が生成される。あるいは、フラクタル集団のサイズは、高せん断ホモジナイザーを用いる分散によって改変され得る。あるいは、エネルギーは、より大きなフラクタルを破壊するためにマイクロ波によって、又は高圧下での押し出しによって供給される可能性があると予想される。これらの方法は、大きなフラクタルを分散させて全体的な集団サイズを減少させる機械的方法を用いる。あるいは、濾過又はサイズ分画又は遠心分離下での沈降等のサイズ選択技術を用いて、50~500nmを表す集団を選択するために、サイズ選択を行うことが予想される。実施例は、参照プローブ超音波処理を含んだ(実施例22並びに関連する図27及び図29を参照されたい)。有効終点は、TEM又は光散乱法等のいかなる方法による分散のための処理後に最終集団のサイズを決定することによって決定される。OD270/mg/mlによって測定された吸光度効率を用いて、分散ことが含まれるので、>1.0、並びに>2.0及び>3.0の効率が観察された。(実施例40及び好ましい実施形態の効率を表す表図55の関連データを参照)。
【0114】
[0275]基FGg及びFGcgの結合によるコーティング材料の結合は、好ましくは、官能化グラフェン微粒子の分散後に行われ、ペプチド結合において提示された対応する官能基FGpに結合するように構成された官能基FGcpを提示するコアグラフェン微粒子をもたらす。
【0115】
[0276]ある実施形態では、スキーム(I)~(IX)に例示されるような適当なカップリング化学に基づいて、バイオセンサの合成のための以下のスキームが記載される。
【0116】
【化5】
(式中、Aはグラフェンを官能化するように構成された試薬であり、CMは本開示の意味におけるコーティング材料であり、Pは本開示の意味におけるペプチド結合であり、DMは検出可能な部分である)。
[0277]スキームXに示すように、式(Xa)のグラフェンを試薬FG1-A-FGg(式中、FG1はグラフェンと反応するか又は反応させられる反応性官能基であり、FGgはコーティング材料に化学的に結合することができる官能基であり、AはC2~C4又はC5~C12置換又は非置換直鎖又は分岐アルキル基の化学部分であり、1~4個の炭素原子がO、S又はNHから選択される1つ又は複数のヘテロ原子で置き換えられていてもよい)と反応させる。例示的なFG1としては、加熱条件下でニトレンに分解する-N(アジド)、ジエノフィルであるマレイミドが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なFGgとしては、-COOH又はNHが挙げられる。
[0278]式(Xb)の官能化グラフェンは、官能化コーティング材料FGcg-CM-FGcpと反応し、ここで、FGcgは、官能化グラフェン上のFGgと反応することができる官能基である。したがって、FGgが-COOHである場合、例示的なFGcgは、FGgとアミド結合を形成するNHであり得る。
[0279]式(Xc)のコーティングされたグラフェンは、官能基FGcpを含み、FGcpは、官能化ペプチドFGpc-P-FGpd上のFGpcと反応することができる官能基である。同様に、例示的なFGcpとしては、-COOH又はNHが挙げられる。したがって、FGcpが-COOHである場合、例示的な対応するFpcは、FGcpとアミド結合を形成するためのNHであり得る。
[0280]式(Xd)のペプチド誘導体化グラフェンは、官能基FGpdを含み、FGpdは、官能化検出部分FGdp-DM上のFGdpと反応することができる官能基である。同様に、例示的なFGdpとしては、-COOH又はNHが挙げられる。したがって、FGdpが-COOHである場合、例示的な対応するFpdは、FGdpとアミド結合を形成するNHであり得る。
[0281]本明細書に記載されるカップリング官能基の対のいずれも、本明細書に記載されるスキーム(I)~スキーム(IX)に例示されるように、いかなる他のカップリング官能基と共に実施され得ることが理解されるべきである。従って、1つの官能基がアミン-NHである場合、他の官能基は、カルボン酸に加えて、NHS(スキームV)又はオキシラン(スキームIX)であり得る。
【0117】
[0282]本明細書に記載されるある実施形態では、好ましくは分散された微粒子上へのコーティングのアセンブリは、最初にグラフェン微粒子の表面にコーティング層を付着させて、アミド、アミン、エステル、エーテル、チオエステル、又はチオエステル結合等のコーティング層FGcpの官能基を提示するコーティングされた微粒子を提供することによって、及びペプチドリンカーFGpの対応する官能基を介して官能基FGcpにペプチド結合を付着させることによって行うことができる。ある実施形態では、ポリマーへのリンカーが最初に、次いでそれをグラフェンに付着させる。結合は、直接的又は間接的に行うことができ、当業者によって理解されるように、対応する官能基に応じて共有結合又は非共有結合を介して行うことができる。
【0118】
[0283]ある実施形態では、本開示のペプチド結合は、EPLQLKM等のグラフェンを直接結合するように構成されたスペーサーを介して結合することができる。[27](グラフェンのエッジを標的とする)及びHSSYWYAFNNKT[27](平坦なグラフェン表面上に吸着)して、いかなるペプチド配列を純粋なグラフェンに固定する。[27](平坦なグラフェン表面上に吸着)して、いかなるペプチド配列を純粋なグラフェンに固定する。
[0284]ある実施形態では、本開示のペプチド結合は、グラフェンに結合したチイルラジカルに酸化された末端システインに結合することができる。
[0285]ある実施形態では、非天然アミノ酸は、連結を行うためにペプチド配列のN末端に繋がれ得る(全ての化学は上記の通りである)。
【0119】
[0286]ある実施形態では、コーティング材料は、20nm未満のオリゴエチレン基、直径20nm未満のスターバーストデンドリマー、及びブロックコポリマーを含むことができる。ある実施形態では、コーティング材料がブロックコポリマーを含むことができる場合、疎水性ポリマー、例えばポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及び当業者によって特定可能なさらなるポリマーが用いられる。ポリスチレンスルホン酸等の負に帯電したポリマーがポリスチレンのブロックコポリマー中で用いられる場合、疎水性及び電荷引力の組み合わせでブロックコポリマーの成分であり得る。これらの実施形態では、疎水性-親水性ブロックコポリマーは、グラフェンを良好に分散させる溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF))に溶解させることができる。超音波処理を継続しながら、HOを混合物に添加し、ブロックコポリマーの疎水性末端をグラフェンに結合させる。この超分子付着は、連続的なHO添加による疎水性低下の増加に起因して、分散物中で自発的に起こる。したがって、このセンサが水性溶媒中で用いられる限り、この付着原理は確実に働くことが期待される。
[0287]水溶液中の本開示の意味におけるグラフェンバイオセンサの特性に従って、グラフェンバイオセンサは、驚くほど安定であり、水性試料中の標的バイオマーカーの高度に再現性のある検出を提供することができることも見出された。
【0120】
[001]本明細書で用いられる用語「試料」は、生物学的環境、培養物、組織、市販の組換えタンパク質、合成化合物又はそれらの部分等の試料からの流体など、大量の何かを示す限られた量の何かを示す。
[002]本明細書で用いられる用語「試料」は、試験、検査、又は研究に用いるための環境からの物質の一部を示す。環境は個人を含むことができる。名詞として言及される場合、検出、診断及び治療の文脈において本明細書で用いられる用語「個体」は、動物、特に高等動物、特に哺乳動物等の脊椎動物、特にヒトを含むがこれらに限定されない単一の生物有機体を指す。これらの例では、試料は、組織、器官、又は尿道、尿、子宮頸部、腟、直腸、oropharynges、結膜、又はいかなる体液等の生物からの他の生物学的材料の一部を含むことができる。
【0121】
[0288]特に、生物学的試料は、サンプリングされた個体における類似の細胞の全集団を代表するものとして、いかなる生物学的系統の1つ以上の細胞を含み得る。例示的な生物学的試料は、以下を含む:静脈及び動脈血、血しょう、血清、乾燥血スポット、脳脊髄液、腰椎穿刺、鼻分泌物、洞洗浄液、涙、角膜擦過物、唾液、痰又は喀出物、気管支鏡検査分泌物、経気管吸引物、気管内吸引物、気管支肺胞洗浄、嘔吐物、内視鏡生検、結腸生検、胆汁、膣液及び分泌物、子宮内膜液及び分泌物、尿道液及び分泌物、粘膜分泌物、滑液、腹水、腹膜洗浄物、鼓膜吸引物、尿、クリーンキャッチ中間尿、カテーテル留置尿、恥骨上吸引物、腎臓結石、前立腺分泌物、糞便、粘液、膿、創傷ドレナージ、皮膚剥離物、皮膚切片及び皮膚生検、毛髪、爪切り、頬組織、骨髄生検、固形臓器生検、外科標本、固形臓器組織、死体、又は腫瘍細胞等の当業者によって同定され得るものを含む。生物学的試料は、当業者によって識別可能であるように、試料タイプに適した滅菌技術又は非滅菌技術を用いて得ることができる。いくつかの生物学的試料は、スワブを人体の表面と接触させ、前記表面からいくつかの材料を除去することによって得ることができ、例としては、咽喉スワブ、鼻腔スワブ、鼻咽頭スワブ、口腔咽頭スワブ、頬又は頬スワブ、尿道スワブ、膣スワブ、子宮頸部スワブ、生殖器スワブ、肛門スワブ、直腸スワブ、結膜スワブ、皮膚スワブ、及びいかなる創傷スワブが挙げられる。生物学的試料のタイプ及び意図される分析に依存して、生物学的試料は、試料調製及び分析のために新たに用いられうるか、又は固定剤を用いて固定され得る。
【0122】
[0289]本明細書に記載の方法及びシステムでは、試料を2つ以上の部分に分割し、かつ/又は処理によって処理して、標的バイオマーカーを濃縮し、かつ/又は選択された物質を除去して、検出の質を高めることができる。したがって、本明細書で用いられる用語試料という用語は、化学的に処理された、又は貯蔵、保存、若しくはさらなる分析された試料を含む。
[0290]グラフェンコア粒子並びに関連するグラフェンバイオセンサ、組成物、方法及びシステムに関連して用いられる試料は、水性試料である。
[0291]本開示の意味における「水性試料」は、水が溶媒又は主成分である試料である。特に、水溶液は、通常、実験の間、センサー及び試料の存在下で規定のpHを維持することができる濃度で緩衝成分を含む。
[0292]本明細書に記載の実施形態では、少なくとも90%のコーティング材料でコーティングされた2~100個の純粋なグラフェンシート、好ましくはフラクタルグラフェンがある本開示の意味におけるグラフェンバイオセンサは、水性試料中で驚くほど安定であり、特に10nm~5000nm、好ましくは150~500nmのサイズがある場合に、高い再現性及び信号対雑音比によって特徴付けられる検出を提供することができることが見出された。
【0123】
[0293]特に、ある実施形態では、これらの特徴を含む本開示のセンサは、3%未満の変動係数CVがあるセンサ濃度(同じ特徴があるバイオセンサ溶液の独立したバッチ)を再現するための吸光度を示す。このCVの達成は、決定された反応において均一に分布したままであるセンサがある溶液があることによって得られる。分散こと(例えば、超音波処理を用いる)及び溶媒除去を含む、方法。で調製されたナノセンサの調製は、60分間隔で15%未満の沈降でコロイド安定性を維持したセンサの溶液を生成した。特に、粒子分散工程及び溶媒除去工程を含む、方法。によって粒子が提供される実施形態では、9%~10%の沈降が観察された。
【0124】
[0294]ある実施形態では、本開示のセンサの再現性はまた、これらの2つの値がS:Nを推定するために除算されるので、アッセイ対照及び試料の両方の再現性のある推定を通して検出され得る。本開示のセンサは、20%未満のバッチ間CV%を示す。これに関連して、上記の特徴の組み合わせがある本開示のバイオセンサは、3%~10%のバッチ間CV%を提供することができる。最適には、バッチ間のCV%は<10%であろう。これは、センサーの独立したバッチを調製し、適合条件下のSN(SM/AC)を標準刺激と比較することによって評価される。(実施例22及び関連する図27並びに実施例44及び関連する図59を参照されたい)。
[0295]ある実施形態では、本開示のグラフェンバイオセンサのS:Nは、低く安定したアッセイ読み取り値を維持することによって決定することができる。例えば、VarioSkan Luxで評価されるバイオセンサでは、ΔCは0.01~0.1である。信号は、センサ及び刺激に依存する。同じ刺激を用いるいかなる所与のセンサに対する試料信号は、分散された溶媒硬化センサで15倍改善することができる。さらに、分散物の漸増添加(SNの6.8倍の平均増加)並びに分散物及び溶媒除去(SNの平均15倍の増加)は、コア粒子(実施例44及び関連する図59を参照のこと)、(1)超音波処理又は>3.0 OD270/mg/mlの吸光度効率に相当するものを用いて分散された(実施例40及び関連する図55を参照のこと)、及び(2)TGAが5%(wt%)未満、おそらく2%未満の総質量損失を測定するように溶媒の量を減少させることが、このS:N性能に関連する(実施例21及び関連する図25を参照のこと)の組み合わせ使用を示す。
【0125】
[0296]ある実施形態では、再現性及びシグナル対ノイズ比は、適当な緩衝液選択を行うことによって増加させることができる。緩衝液選択は、バイオマーカー検出のための最も適当なpH標的を反映するGoodのリストからの選択に基づいて行うことができる。一塩基性塩の添加は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、添加される塩の濃度に依存する程度までS:N性能を増加させる。一塩基性塩は、アッセイ対照を減少させ、試料と比較してS:N比を増加させる。一塩基性塩の包含は、アッセイ対照をVarioSkan Luxで平均0.01~0.1 RFUに減少させる。全体として、試験した全てのセンサーにわたる緩衝液の影響は、S:Nを平均で4倍増加させる(2.5倍~6.7倍の範囲)(実施例42及び関連する図57を参照されたい)。特定のプロテアーゼ酵素は、二価陽イオン等の緩衝補因子を必要とする。プロテアーゼ検出のための好ましい実施形態では、緩衝液は、10μMのカルシウム、マグネシウム及び亜鉛二価イオンを含む。試験された製剤は、全てのセンサーにわたって用いられた生理学的に適当なpHとしてpH7.2に焦点を当てた。しかしながら、腫瘍環境及び細胞内区画は、しばしば7.0未満のpHを反映する。従って、pHは、多重反応におけるように反応チャンバが共有される場合を除いて、1つの条件である必要はない。いくつかの酵素は酸性条件を必要とし、いずれの例についても、pH7.0及びpH6.0並びに6.4及び6.8は、カテプシン等の酵素又は炎症環境に由来する酵素を支持すると予想される。受容体リガンド相互作用は、好ましくは生理学的条件で測定され、したがって、155mM及びpH7.2は、当業者によって理解されるように、多くのセンサー製剤を広く支持する条件である。
【0126】
[0297]ある実施形態では、本開示のグラフェンバイオセンサは、検出可能な部分及び標的バイオマーカーに特異的な認識配列を各々含む複数の検出可能な成分を含む。
[0298]それらの実施形態のいくつかにおいて、複数の検出可能成分のうちの検出可能成分の認識配列は、異なる標的バイオマーカーを特異的に認識するように構成される。
[0299]したがって、これらの実施形態では、本開示のグラフェンバイオセンサは、多重検出のために、及び単一の実験で複数の分析物を同時に測定するように構成される。
[0300]特に、本明細書で用いられる用語「多重(化)」は、同じ試薬混合物を用いて、2つ以上の標的バイオマーカーを同じ反応で検出することができる実施形態を示す。
[0301]ナノバイオセンサの複数の標的特異的検出可能成分において、各検出可能部分の励起スペクトルは、複数の標的特異的検出可能成分の別の検出可能部分の発光スペクトルとの最小化された重複がある。したがって、これらの実施形態では、各検出可能部分は、複数の検出可能成分の検出可能部分の励起スペクトルと発光スペクトルとの間の重複が最小限であるか全くない特定のバイオマーカーに割り当てられて、読み出しを歪める検出可能部分間のFRET効果を最小限に抑える。
[0302]グラフェンセンサーの特性および特徴の観点から、多重検出用に構成されたグラフェンセンサにおいて、2~100個のグラフェンシート及びグラフェン表面の少なくとも90%をコーティングするコーティング層があるセンサの多重検出能力は、ペプチド配列+検出可能部位の数が5以上であり、場合によってはUV/Visスペクトルでは最大10、全電磁スペクトルでは最大50である。
【0127】
[0303]本明細書に記載のグラフェンバイオセンサのある実施形態では、ペプチド及び検出可能な部分(例えば、フルオロフォア)を含む検出可能な成分は、マルチプレックスバイオセンサ中に最大1.0±0.25×10-3モル/グラムの濃度で含まれ得る。ある実施形態では、標的バイオマーカー(例えば、プロテアーゼ)のフェムトモルからマイクロモルの濃度範囲にわたる最も速いシグナル増加が所望される場合、検出可能な成分の濃度は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、グラフェン-ナノバイオセンサ1グラム当たり1.6±0.2×10-5モルであり得る。
[0304]したがって、これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、バイオセンサは、<1>を考慮して多重バイオセンサであり、ナノバイオセンサ1グラム当たり1.0±0.25×10-3モルの検出可能成分(ペプチド配列+検出可能部分)の濃度は、多重化の目的のために用いられているペプチド配列+検出可能部分の数によって除算される。等しくない濃度の各検出可能成分が用いられている場合、当業者によって理解されるように、各ペプチド配列+検出可能部分についての全ての部分濃度の合計は、ナノバイオセンサ1グラム当たり1.0±0.25×10-3モルに等しくなければならない。
[0305]さらに、バイオセンサがマルチプレックスバイオセンサである実施形態のいくつかにおいて、標的バイオマーカー(例えば、プロテアーゼ)のフェムトモルからマイクロモルの濃度範囲にわたって最も速いシグナル増加を得るために、テザーペプチド配列+検出可能部分の好ましい濃度がナノバイオセンサ1グラム当たり1.6±0.2×10-5モルであることを考慮して、この濃度は、多重化の目的で用いられている検出可能成分の数で除算される。等しくない濃度が用いられている場合、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、各ペプチド配列+フルオロフォアについての全ての部分濃度の合計は、ナノバイオセンサ1グラム当たり1.6±0.2×10-5モルに等しくなければならない。
[0306]したがって、本明細書に記載される多重化ナノバイオセンサのいくつかの好ましい実施形態では、利用される全てのペプチド+フルオロフォアの合計の濃度は、本開示を読んだ当業者によって理解されるように、1.0±0.25×10-3モル/グラム~1.0±0.25×10-7モル/グラム、好ましくは1.0±0.25×10-4モル/グラム~1.0±0.25×10-6モル/グラム、さらにより好ましくは1.0±0.25×10-5モル/グラム~2.0±0.25×10-5モル/グラムの範囲であり得る。
[0307]同様の多重化能力は、異なる標的バイオマーカーに特異的な検出可能成分を各々提示する本開示の複数のバイオセンサを含む組成物を用いることによって達成することができる。これらの実施形態では、反応の一部として、各センサが、センサのみとして定義されるバックグラウンド信号よりも大きい信号を依然として生成することができるように、別々に組み立てられたセンサを混合することができる。これに関連して、標的バイオマーカーに特異的なバイオセンサは、1個、又は2個、又は3個、又は4個、又は5個、又は6個、又は7個、又は10個、又は20個の異なるセンサーと混合することができ、それでもバックグラウンドより大きいシグナルを生成することができる。1:20の表示では、多重化センサは、期待値の5~7%で検出可能である。したがって、多重化センサは、20個の多重化センサのうちの1個、又は10個、又は4個、又は2個で検出することができる。
【0128】
[0308]ある実施形態では、標的バイオマーカーの多重検出は、複数の標的バイオマーカーに関連する状態の検出に関連して行うことができる。例えば、本開示のセンサーは、肺がんの存在及び非存在についてのMMP-9、CTS-K、MMP-2及びARGの多重検出のために用いることができる。別の例では。本開示のセンサーは、アルギナーゼIL-13の多重検出のために、抗炎症(Anti-inflammatory) イベント及び条件。個体における炎症促進性事象及び状態の検出及び診断のためのIL-6、GCSF、MIP-1、MCP-1。
【0129】
マルチプレックスを作製するための例示的なプロセス
[0309]ある実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のグラフェンコア粒子、グラフェンバイオセンサは、適当な補助剤と共に組成物中に含まれる。本明細書で用いられる用語「補助剤」という用語は、活性成分として組成物中に含まれる、本明細書に記載のグラフェンバイオセンサのための溶媒、担体、結合剤又は希釈剤として通常作用する様々な媒体のいずれかを示す。特に、1種以上のオキシムを含む組成物は、本明細書に記載の方法又は系の1つにおいて用いることができる。
[0310]特に、ある実施形態では、保存及び/又は使用のために、バイオセンサは、通常、いかなるタイプの適当な希釈剤、賦形剤、ビヒクルなどであり得る薬学的に許容される溶媒系中に分散される。本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に許容される」とは、過剰な毒性、刺激又はアレルギー応答なしに被験体に投与され得、そして受容不可能な生物学的効果を引き起こさないか、又はそれが含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用しないという点で、生物学的又は他の点で望ましくないものではないことを意味する。
【0130】
[0311]ある実施形態では、薬学的に許容される担体は、当業者に周知であるように、バイオセンサ成分のいかなる分解を最小化するように、及び当業者に周知であるように、被験体におけるいかなる有害な副作用(インビボ投与について)を最小化するように、選択され得る。例示的な担体としては、ジエチルエーテル、DMF、DMSO等の非水性溶液が挙げられる。バイオセンサは、室温条件で、100℃までの高温まででさえ、貯蔵安定である。°Cは劣化せず、特別な取扱い要件なしに(例えば、冷蔵なしに)貯蔵及び輸送することができる。
[0312]薬学的に許容される成分としては、獣医学的使用並びにヒト薬学的使用に許容されるものが挙げられ、投与経路に依存する。例えば、注射による投与に適した組成物は、通常、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。例示的な担体としては、通常(n.)生理食塩水(約0.9%NaCl)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、滅菌水/蒸留オートクレーブ処理水(DAW)等の水溶液、又は当業者によって理解される他の許容されるビヒクルが挙げられる。
【0131】
[0313]グラフェン担体粒子は、本開示のデータに基づいて、無期限に安定である。ペプチド結合はまた、長期間(数年間)安定である。検出可能な部分のために選択された特定の化合物は、全体的なバイオセンサの貯蔵安定性を低下させる可能性があり、所望であれば、特定のセンサーをより注意深い条件下(例えば、アルゴン下)で保管して、繊細な検出可能な部分をより長期間保存することができることが理解されるであろう。
【0132】
[0314]また、バイオセンサは、グラフェン担体粒子を使用時まで保存することができ、使用時にペプチド結合及び検出可能な部分が付加される(例えば、エンドユーザーへの出荷の直前に、又はエンドユーザーによって付加される)連続段階で製造することができることも理解されるであろう。同様に、グラフェン担体粒子は、選択されたペプチド結合と予めコンジュゲートさせ、検出可能な部分を結合させずに保存することができ、検出可能な部分は、使用により近い後の時点で添加することができる。注目すべきことに、グラフェン担体粒子は誤標識に対してより高い耐性を有し、グラフェン粒子自体に(結合を介してではなく)偶発的に直接結合した検出可能部分は、他の正しく結合した検出可能部分に干渉しないはずである。すなわち、不正確に付着した担体粒子の信号は、担体粒子に近接しているために単に永久的に消光される。したがって、バイオセンサは、製造中により高い許容閾値を有し、それらの利点にさらに寄与する。
【0133】
[0315]本明細書に記載の実施形態では、組成物は、当業者によって理解されるように、本開示のグラフェンコア粒子及び/又はバイオセンサに加えて、適当な濃度の成分を含むことができる。特に、本開示の意味における組成物は、通常、塩と、それが溶解している溶液のpHを制御されたpHに維持するように選択された緩衝剤(それが溶解している溶液のpHを維持することができる物質)とを含むことができる。例示的な好ましい実施形態では、組成物は、10μMの二価カチオン及び155mMのNaClがある5mMのMES、並びに本開示を読んだ当業者によって特定可能な塩及び緩衝液のさらなる組み合わせを含むことができる。
【0134】
[0316]1つ以上の実施形態では、バイオセンサは、マイクロプレートウェルに予め分配され、使用のために保管/分配され得る。黒色チムニーウェルマイクロプレートは、この目的に特に適している。不透明なマイクロプレート構成は、周囲光干渉及びノイズを低減するためにアッセイに好ましい。種々の生物学的マーカーの非侵襲性検出及び定量化のための方法もまた、本明細書中に記載される。これらの方法は、本明細書に記載されるバイオセンサを利用し、様々な状態及び疾患を示す生物学的マーカーを評価するために、医療施設においてポイントオブケア資源の不可欠な部分として、家庭で、又は現場で実施することができる。このような生物学的マーカーに基づく診断は、精密医学において、特に気道疾患について、例えば肺がんと他の肺状態との区別において、多数の適用を有し得る。
【0135】
[0317]好ましい実施形態では、組成物はlyuphilized形態であり得る。凍結乾燥を支持する補助試薬としては、トレハロース、デキストロース、スクロース、グリシン、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、デンプン(トウモロコシ)、シリコーン/二酸化チタン、ステアリン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、ゼラチン、タルク、スクロース、ステアリン酸カルシウム、ポビドン、アルファ化デンプン、HPMC、OPA製品、クロスカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、リン酸カルシウム、又はクロスポビドンを挙げることができる。
【0136】
[0318]ある実施形態では、本明細書に記載のグラフェンバイオセンサは、水性試料中のバイオマーカーの活性を検出する方法であって、生物学的試料を本開示によるいかなるバイオセンサと接触させて反応溶液を作製する工程;及び反応溶液中の変化を検出する工程を含む、方法。において用いることができる。
【0137】
[0319]好ましい実施形態では、水性試料は、個体からの生物学的試料である。これらの実施形態では、生物学的試料は、個体から試料を収集し、分析のために試料を処理することによって提供することができる。これらの実施形態では、試料の処理は、通常、検出試薬と組み合わせて用いられるように構成された処理済み水性試料をもたらす。特に、反応溶液中のバイオセンサは、標的バイオマーカー(試料中に存在する場合)がバイオセンサ中の認識配列と相互作用するのに十分な時間、当該加工された生物試料と接触させることができる。生物学的試料としては、血液、尿、唾液、涙、痰、気管支肺胞洗浄液、鼻スワブ、呼気凝縮液、乳、糞便、直腸液、膣液などが挙げられるが、これらに限定されない。一局面において、生物学的試料は、被験体から収集され、分析のために調製される。試料は、例えば、試料の手動ピペッティング又は混合/希釈、手動タンパク質スポット切断、手動生検収集、手動採血、及び手動マイクロウェルローディングを含む、手動で収集及び調製することができる。あるいは、例えば、自動液体ハンドラー、自動タンパク質スポットカッター、自動生検収集、自動採血、及び自動マイクロウェルローディングの使用を含む、自動プロセスを用いることができる。生物学的試料は、対象の健康状態を示す生物学的マーカーとして用いることができる、本明細書に記載の様々な酵素を含む目的のバイオマーカーを含有し得ることが理解されるであろう。試料を反応溶液に添加する前、間、又は後に、薬学的に許容される緩衝液を添加して、目的のバイオマーカー並びに用いられる特定の検出可能な部分に応じてpHを最適レベルに調整することができる。例えば、HEPES等の弱アルカリ性緩衝液を用いて、反応混合物のpHを所望の範囲内に調整することができる。さらに、pH微調整するためにpHを調整することができる。例えば、MMP及びカテプシン等のある種の酵素は、がん性試料から採取された場合、非がん性試料と比較してわずかに酸性のpH(下限約6.6)下でより活性である。したがって、pHは、アッセイの出力をさらに高めるために本開示の範囲内で最適化することができるパラメータである。反応溶液はまた、検出のための酵素活性をさらに増強するために、補因子(例えば、Mg(II)、Ca(II)、又はZn(II))でスパイクされ得る。
【0138】
[0320]標的バイオマーカーが試料中に存在する場合、検出可能な部分は、蛍光又は色の変化等の検出可能なシグナル(例えば、光学的又は分光学的)を生成し、これは視覚的に知覚され得るか、又は適当な機器で測定され得る。プレートリーダーを用いて、アッセイの結果を検出することができる。説明したように、繋がれた場合、中心グラフェン粒子は、検出可能部分の発光を消光する。プロテアーゼ又は他の標的バイオマーカーの存在下で、それは、中心粒子から検出可能部分を分離する結合を切断するか、又はクエンチング近接の外側に検出可能部分を伸長する結合を修飾する。検出可能な粒子は、担体粒子への近接度に応じて変化する検出可能なシグナルを生成し、これを検出し、標的タンパク質の活性と相関させることができる。例えば、TCPPの最大吸収は420nm付近であるので、安価な420nmのLED又はいかなる他の種類のレーザーダイオードを、検出可能部分としてTCPPを用いるバイオセンサの励起に用いることができる。バイオセンサは、実施例に例示されるTCPP-グラフェンFRET対に限定されないことが理解されるであろう。いかなるFRET感知対を用いることができる。他のFRET対が用いられる場合、励起波長及び検出デバイスは、それに応じて改変され得る。
【0139】
[0321]ある実施形態では、FRETは、電磁スペクトルの全範囲にわたって行うことができる。
[0322]ある実施形態では、光音響検出(様々なフルオロフォアの光音響応答を区別することができる。
[0323]ある実施形態では、グラフェンコアから放射性同位体を放出させ、次いで濾別することができる。
[0324]ある実施形態では、MRIプローブは、強磁性材料(酸化鉄)又は高スピンdand f-block金属錯体でコーティングされたグラフェンから放出され得る。
[0325]ある実施形態では、EPRプローブは、強磁性材料(酸化鉄)又は高スピンダンf-ブロック金属錯体でコーティングされたグラフェンから放出され得る。
【0140】
[0326]バイオセンサを用いるアッセイは、サブフェムトモルレベル(<10~15モル/リットル)までバイオマーカーを検出することができ、これは、イムノアッセイ等の競合技術に対して少なくとも2桁高い感度である。実際に、最適化されていないバイオセンサを用いる実施例において実証されるように、プロテアーゼについて10~16の検出限界(LOD)が可能である。この技術の固有の利点は、異なるバイオマーカー(例えば、いくつかのプロテアーゼ、サイトカイン及びキナーゼ)を1つの液体生検で測定することができることである。すなわち、本技術は、単一プラットフォームにおける異なるクラスのバイオマーカーの同時検出を可能にする。したがって、多重化実施形態では、アッセイが単一の生物学的試料中の複数の異なるタイプの標的バイオマーカーを分析することができるように、複数の異なるタイプの検出可能部分を用いることが好ましい。複数のバイオマーカーを見ることは、関連疾患(例えば、肺がん対他の疾患)間の区別、及び極めて初期の状態における疾患の検出を可能にする。後者は、例えば、肺がん検出にとって重要である。なぜなら、がん生存は、ステージ3又は4と比較して、ステージ0又は1で検出される場合に有意に増加するからである。
【0141】
[0327]特に、本明細書に記載される多重バイオセンサにおいて、検出可能成分は、共結合された検出可能部分(例えば、フルオロフォア)の励起及び発光スペクトルが重複を最小化するように選択される。より具体的には、本明細書に記載されるバイオセンサの多重化実施形態における検出可能成分の選択は、フルオロフォア等の検出可能部分間のFRETの発生を最小限に抑えるために行われる。この点において、例えば、BODIPY色素等の可変性部分の選択は、当業者によって理解されるように、それらが狭い励起及び発光スペクトルの両方を示すので、十分に適しているようである。
[0328]好ましい実施形態では、水性試料は、試料を本明細書に記載のグラフェンバイオセンサの1つ以上と接触させる前及び/又は接触させている間に熱処理することができる。
【0142】
[0329]に、ある実施形態では、本明細書に記載されるバイオセンサの非存在下での試料は、40℃~75℃の範囲の温度で0.5~3時間熱処理され得る。好ましくは、試料又は血清は、50℃~60℃の範囲の温度で0.5~2時間熱処理することができる。ある実施形態では、試料又は血清を、55℃の温度で1時間熱処理することができる。
【0143】
[0330]標的バイオマーカーの検出のための方法のある実施形態では、検出の前に、本明細書に記載のバイオセンサの存在下で試験溶液を加熱する。本明細書に記載のバイオセンサの存在下でのアッセイ試料又は血清は、40℃~75℃の範囲の温度で0.5~3時間熱処理することができる。好ましくは、アッセイ試料又は血清は、50℃~60℃の範囲の温度で0.5~2時間、バイオセンサの存在下で熱処理することができる。ある実施形態では、アッセイ試料又は血清を、バイオセンサの存在下、55℃の温度で1時間熱処理することができる。
【0144】
[0331]ある実施形態では、加熱処理は、実施例21に例示された試料の加熱処理のためのプロトコルに従って行うことができる。熱処理は、アッセイ前若しくはアッセイ中、又はその両方に試料に適用することができる。熱処理の影響は、試料読み取り値を特異的に増加させる一方で、アッセイ対照には影響を及ぼさないことである。したがって、SNは、増加した特異的シグナルのために増加する。室温~75℃の温度が有効である。好ましくは、試料を65℃で5~12分間前処理することができるか、又はアッセイをインキュベーションの間41℃若しくは45℃で行う。
[0332]いくつかの好ましい実施形態では、加熱は、一塩基性塩を含む溶液に対して、及び/又はpH=7.2を保持する緩衝溶液中でのインキュベーションに対して行われる。いくつかの好ましい実施形態では、インキュベーションは45℃で行うことができる。
[0333]したがって、ある実施形態では、バイオセンサ及び/又は関連する組み合わせは、当業者によって理解されるように、個体における標的状態に関連する標的バイオマーカーを検出するように構成することができる。
【0145】
[0334]例えば、1つ以上の実施形態では、ナノセンサは、2つ以上のプロテアーゼ(例えば、パネル内)のプロテアーゼ活性プロファイリングに基づいて、肺状態の迅速な診断のために構成され得る。認識配列は、それらの各々のプロテアーゼによるタンパク質分解切断を受けるか、又は翻訳後修飾配列の化学的構成が変化する。例えば、アルギナーゼI+IIは、オリゴペプチドのタンパク質分解的切断なしにアルギニンをオルニチンに変換する。したがって、本明細書に記載される方法はまた、当業者によって理解されるように、酵素的翻訳後修飾の検出のための国際公開第2016/149637号に記載されるもの等の他のナノセンサーとの使用に適合され得る。ナノバイオセンサ及び方法は、標的バイオマーカーを検出し、それによって肺疾患、がん、及び感染症を含む多数の肺の状態を診断するために用いることができる。
【0146】
[0335]一態様では、慢性炎症性肺疾患(喘息、COPD、線維症)のためのナノバイオセンサは、表4に報告されるプロテアーゼを、ペプチド結合のための対応する認識配列と共に標的化する。
【0147】
【表11】
*注記される場合を除き、配列は、N末端GAGスペーサー及びC末端AGスペーサーをさらに含む。
【0148】
[0336]ある実施形態では、肺高血圧症(PAH)のためのナノバイオセンサは、ペプチド結合のための対応する認識配列と共に表5に報告されるプロテアーゼを標的化するように構成され得る。
【0149】
【表12】
*注記される場合を除き、配列は、N末端GAGスペーサー及びC末端AGスペーサーをさらに含む。
【0150】
[0337]PAHは、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、慢性気管支炎等の二次合併症を引き起こす可能性がある。3つのMMPの活性は、PAH、MMP-2、-9、及び-14(MT1-MMP-1)において増強される。MMP-2及びMMP-9は、基底膜結合コラーゲンIVを切断することができ、これは肺血管系のリモデリングを加速する。MMP-14は膜結合性であるが、疾患の状態で液体生検(血清、BALF、及び潜在的にEBC)において検出することができる。
【0151】
[0338]ある実施形態では、ナノバイオセンサは、ペプチド結合のための対応する認識配列と共に表6に報告されるプロテアーゼを標的とするインフルエンザウイルス感染の検出のために設計することができる。
【0152】
【表13】
*注記される場合を除き、配列は、N末端GAGスペーサー及びC末端AGスペーサーをさらに含む。
【0153】
[0339]ある実施形態では、本開示のバイオセンサは、インフルエンザウイルス感染H1N1(A/Memphis/14/96)、H2N9(A/マガモ/Alberta/205/98)、及びH3N2(A/Texas/6/96)を促進するTMPRSS2(epithesin)及びトリプシン様ペプチターゼ(HAT)等の肺内の他のプロテアーゼの検出のために構成することができ、これらの条件においてヘマグルチニン(HA)が切断されると、ウイルス病原体は、「インフルエンザサイトカインプロテアーゼサイクル」においてプロテアーゼ発現を刺激することができる。グランザイムはまた、H1N1を活性化することが知られている。したがって、本発明者らは、グランザイムBをこのパネルに含めた。後者の利点は、当業者によって理解されるように、それがEBCにおいて検出され得ることである。
【0154】
[0340]ある実施形態では、ナノバイオセンサはウイルス感染の検出は、肺におけるカリクレインの活性を標的とする。カリクレイン(KLK)は、トリプシン様又はキモトリプシン様特異性のいずれかがある15個の密接に関連する分泌セリンプロテアーゼからなるプロテアーゼのファミリーである。KLK-2、KLK-3、KLK-4、KLK-5、KLK-6、KLK-12、及びKLK-15は、健康な個体の肺においてあまり発現されない。この発現パターンはウイルス感染に応答して変化する。インフルエンザ感染の場合、KLK-1、KLK-2及びKLK-5の発現は増加するが、KLK-13及びKLK-14の発現は減少する。KLK-13は、実質的に全てのコロナウイルス(SARS及びMERS型)において増加する。感染。例示的なカリクレイン及びペプチド結合についての関連する対応する例示的な認識配列を表7に報告する。
【0155】
【表14】
*注記される場合を除き、配列は、N末端GAGスペーサー及びC末端AGスペーサーをさらに含む。
**は、N末端GAGスペーサー及びC末端GAスペーサーを含む。
***は、N末端GAAスペーサー及びC末端AGスペーサーを含む。
【0156】
[0341]ある実施形態では、バイオセンサは、肺炎連鎖球菌感染標的細菌プロテアーゼの検出のために構成することができる。Streptococcus pneumococcusの標的バイオマーカーである例示的なプロテアーゼ及びペプチド結合の関連する対応する例示的な認識配列を表8に報告する。
【0157】
【表15】
**は、N末端GAGスペーサー及びC末端GAスペーサーを含む。
[0342]肺炎連鎖球菌(S.pneumococcus)は、肺における最も一般的な細菌感染であり、当業者によって理解されるように、連鎖球菌の全部ではないとしても大部分が肺炎連鎖球菌IgA1プロテアーゼを発現する。従って、このプロテアーゼは知られている最も活性なプロテアーゼの1つであり、連鎖球菌感染の場合にのみ存在する。それは、細菌性肺感染についての迅速な試験(<10分)を可能にする。
【0158】
[0343]一態様では、結核菌感染を検出するためのナノバイオセンサは、以下のプロテアーゼを標的とする。(Mycobacterium tuberculosis)の標的バイオマーカーである例示的プロテアーゼ及びペプチド結合の関連する対応する例示的認識配列を表9に報告する。
【0159】
【表16】
**は、N末端GAGスペーサー及びC末端GAスペーサーを含む。
[0344]標的バイオマーカーとして用いることができるさらなる分泌結核菌プロテアーゼは、MycP1及びRv2869c(結核菌)様ペプチダーゼ(RIP-1)であり、これらは両方とも、当業者によって理解されるように、MTbに特異的である。
【0160】
[0345]ある実施形態では、本開示のナノバイオセンサは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の検出のために構成され得る。COPDの標的バイオマーカーである例示的なプロテアーゼ及びペプチド結合についての関連する対応する例示的な認識配列を表10に報告する。
【0161】
【表17】
*注記される場合を除き、配列は、N末端GAGスペーサー及びC末端AGスペーサーをさらに含む。
****は、N末端GAPスペーサー及びC末端AGスペーサーを含む。
*****は、N末端GAAスペーサー及びC末端EGスペーサーを含む。
【0162】
[0346]COPDのさらなる標的バイオマーカーは、内因性セリンプロテアーゼ阻害剤が健康なヒト対象におけるセリンプロテアーゼに対する肺組織保護に関与するという事実に基づいて同定及び選択することができる。遺伝性インヒビター欠損は、COPDの発症の最も重要な理由であると考えられ、喫煙が続く。有効な阻害剤の非存在下では、制御されないタンパク質分解及びその後の肺損傷が観察される。COPD検出のための最も重要なプロテアーゼは、好中球エラスターゼ、好中球由来MMP-8、マクロファージ由来MMP-12、カテプシンG及びプロテイナーゼ3である。これらのプロテアーゼは、コラーゲン、ラミニン、フィブリリン、及びエラスチン等のECM成分を損傷することができる。特に、肺エラスチンの切断は肺気腫を引き起こし、これはCOPD病態生理学の推進力である。MMP-7は、細胞外プロテオグリカンデコリンを分解し、デコリン結合トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)のその後の放出をもたらす。したがって、6つ全てのプロテアーゼ(NE、MMP-7、-8、-12、CTSG、及びプロテイナーゼ3)の同時活性化は、COPDの検出を可能にする。
【0163】
[0347]ある実施形態では、ナノバイオセンサはプロテアーゼのパネルを用いた肺がんの検出及び小細胞肺がん(SCLC)標的と非小細胞肺がん(NSCLC)標的との間の区別: SCLC及びNSCLCの標的バイオマーカーである例示的なプロテアーゼ、並びにペプチド結合の関連する対応する例示的な認識配列を表11に報告する。
【0164】
【表18】
*注記される場合を除き、配列は、N末端GAGスペーサー及びC末端AGスペーサーをさらに含む。
******は、N末端GAAスペーサー及びC末端AGスペーサーを含む。
【0165】
[0348]ある実施形態では、SCLC及びNSCLC対非がん性健康状態の検出、並びにSCLCとNSCLCとの区別のためのプロテアーゼの選択のための関連データセットは、当業者によって理解されるように、NCBIgEOデータベース(本開示の出願日におけるウェブサイトwww.ncbi.nlm.nih.gov/geo/を参照されたい)から得ることができる。分析に含まれるデータセットは、原発腫瘍試料及び健康なヒト組織の両方を含むデータセットがあるヒトがんから取得された。SCLC及びNSCLCについての例示的な計算されたp値を以下の表12に報告する。
【0166】
【表19】
[0349]これらの遺伝子発現データに基づいて、酵素の選択されたパネルは、SCLCとNSCLCとを区別することができるはずである。
[0350]SCLCとNSCLCとの区別は、各タイプのがんに対する異なる治療アプローチのために重要である。NSCLCの主なサブタイプは、腺がん、扁平上皮がん、及び大細胞がんである。異なるタイプの肺細胞から始まるこれらのサブタイプは、それらの治療及び予後(見通し)がしばしば類似しているので、NSCLCとして一緒にグループ化される。全ての肺がんのより小さなサブセットはSCLCである。このサブセットは、化学療法及び放射線治療に対してより感受性であるが、それらの全体的な死亡率はより高い。
【0167】
[0351]さらに、膵臓がんと同様に、非がん性からがん性への移行中にプロテアーゼシグネチャーが明確に変化するため、リキッドバイオプシーによるステージ0及び1でのNSCLCの検出が可能である。主に、プロテアーゼ/アルギナーゼの同じ選択は、SCLCと健康な組織とを区別することができる。遺伝子発現の差に基づいて、MMP10及びカテプシンHを、SCLCとNSCLCとを区別するのに適したプロテアーゼとして選択することができる。
[0352]NCBIgEO、Entrezgene ID、Unigene ID及びGene Symbol等のデータベースを用いることを含む、同様の遺伝子発現分析を用いて、膵臓がん等の他の固形腫瘍において過剰発現されるプロテアーゼを決定することができる。この戦略は、ヒトゲノムから膵臓がんの近位バイオマーカーである高い確率がある酵素候補を選択することができる。
[0353]これらの標的パネル配列及び検出プラットフォームは、参照により本明細書に援用される米国特許第8,969,027号;同第9,682,155号;同第9,731,034号;及び同第9,216,154号、並びに2017年3月24日に出願された同時係属中の国際公開第2017/165800号(米国特許出願公開第2020/0300849号)に記載されているものを含む、溶液ベースのアッセイ、マイクロフルイディクスアッセイ、マイクロウェルアッセイ、ハイスループットアッセイなどを含む、本開示のいくつかのすることができる。
【0168】
[0354]さらに好ましい実施形態では、炎症性生物学的マーカーは、特定のウイルス、細菌、又はカビ感染の検出とともに検出され得る。例えば、ナノセンサーは、カプシドB(AISGSGGSTYYANSVLG(配列番号71)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌Bを検出するための認識配列、又はヘモフィルス・インフルエンザ菌NT(TNLGILHSMVARAVGNNTQG (配列番号72))、又はMoraxella catarrhalis(GIITYALSGGEIKILAG(配列番号73))に対するペプチドアプタマを用いて調製することができる。同様に、ウイルス感染のためのナノセンサーは、HIV検出のためのプロテアーゼ認識配列(SAVL-LEAT(配列番号74)又はSQNY-PIVQ(配列番号75))を用いて調製することができる。
【0169】
[0355]グラフェンコア粒子が、標的バイオマーカーと相互作用する修飾可能な認識配列、プロテアーゼ認識配列、翻訳後修飾可能な配列nt結合を介して結合される代替的な構成で、上記の前述のセンサーの各々を設計することができることが理解されるであろう。このような実施形態では、検出可能な粒子は、比較的静止したままであり、担体粒子に付着したままであるが、その代わりに、クエンチャー粒子は、切断されるか、又は検出可能な粒子及び担体粒子から離れて移動され、上記のように、粒子間の距離の変化をもたらす。上述のように、グラフェンコア粒子と検出可能な粒子との間の距離の増加(クエンチャー粒子テザーの切断又は伸長から)は、ナノセンサーからのシグナルの検出可能な変化をもたらす。
【0170】
[0356]1つ以上の実施形態では、本開示によるセンサを用いて、感染した下気道上皮細胞感染に関連するマーカーを検出することによって下気道感染を診断することができる。これらのマーカーには、CCL20、TSLP、及びCCL3-L1が含まれる。本明細書に記載されるように、エキソソーム内容物は、エキソソームが上気道に由来するか下気道に由来するかを決定するために用いられ得、感染又は他の状態が対象の体内のどこに由来し得るかの局在化をさらに補助する。センサはまた、慢性肺疾患がある患者における環境リスクアセスメントのために用いられうる。大気汚染物質、オゾン、微粒子、アセトアルデヒド、アクロレイン、ホルムアルデヒド、タバコの煙及び他の化合物への曝露は、気道の炎症を引き起こす。サイトカイン、プロテアーゼ、及び/又はキナーゼ等のマーカーの検出を用いて、下気道炎症が明白である段階を同定することができ、個別化された環境評価が可能になる。ナノセンサーはまた、喘息における炎症のリアルタイム管理における下気道炎症の測定も用いることができる。重度の喘息に関連する生物学的マーカー及びタンパク質発現パターンの理解に関する詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許第8,053,199号に記載されている。現在、抗炎症薬(コルチコステロイド、IL-13抗体など)が投与され、症状及び増悪に基づいてモニターされている。サイトカイン、プロテアーゼ、及び/又はキナーゼ等の下気道マーカーについて試験することによって、患者及び介護者は炎症をリアルタイムで追跡し、それに応じて治療を調整することができる。同様に、ナノセンサは、重度の喘息及び慢性閉塞性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患)における下気道リモデリングの測定に用いることができる。リモデリングとは、気道の線維症のプロセスであって、重度の喘息及びCOPDがある患者のサブセットにおいて進行する肺機能低下に関連するプロセスを指す。現在利用可能な処置又は診断はない。エピジェネティックリモデリングを対象とする新しい療法が現在開発されている。本発明者らの方法は、進行性気道リモデリングの指標として、フィブロネクチン、IL6、又はビメンチンの存在を検出及び測定することによって、臨床使用のためのリモデリング阻害剤の開発及び承認を可能にする。
【0171】
[0357]ある実施形態では、本開示のセンサは、日和見感染の検出に関連して用いることができる。日和見感染はまた、がんの治療を受けている患者、関節リウマチ若しくは炎症性腸疾患の治療によって免疫抑制されている患者、又はHIVがある患者において重大な合併症である。ニューモシスティス肺炎(PCP)は、HIV患者の最も一般的な感染であり、現在、侵襲的気管支鏡検査によってのみ診断することができる。侵襲性アスペルギルス症はまた、白血病の化学療法を受けている患者において生じる日和見肺感染症である。白血病治療から免疫抑制された患者において真菌が気道に侵入した場合、ナノセンサーを用いて、別個の宿主応答タンパク質の存在を示すことができる。
【0172】
[0358]ある実施形態では、本開示のセンサは、肺移植における移植拒絶又は宿主対移植片疾患を監視するために用いることもできる。肺移植患者は、集中的な免疫抑制療法で治療され、彼らの医師は、免疫抑制が多すぎる(日和見感染を受ける)か、又は免疫抑制が少なすぎる(臓器を拒絶する)かの間の細い線を治療する。移植患者が彼らの免疫プロファイルをリアルタイムベースでモニターすることができれば、これは移植の管理をはるかに容易にするであろう。ナノセンサは、肺がん治療に対する応答を監視するために用いることができることも理解されるであろう。モバイルバイオセンシングは、気道における又は血液中を循環するサイトカイン、プロテアーゼ、及び/又はキナーゼ(例えば、MMP、EMTなど)等のがんシグネチャを検出する。これは、遊離タンパク質及び微粒子(エキソソーム)内に含まれるタンパク質を含む。
【0173】
[0359]ある実施形態では、本開示のセンサは、タンパク質試料の収集、処理、プロファイリング、及び検出と併せて用いることができる。本明細書に記載の実施形態は、タンパク質レベル発現の増加又は減少に関連する細菌、ウイルス、及びカビ感染を評価するために、従来のPCR/RT-PCR、リアルタイム定量的PCR/RT-PCR、及び等温PCR/RT-PCR法と併せて利用することもできる。したがって、本発明によるアッセイは、特に遺伝子検査によってリスクがあると事前に同定されたリスク群において、独立型技術として、及び/又は従来のアプローチと併せて用いることができる。
【0174】
[0360]一般に、本開示のセンサによって行われる検出は、調製された試料をナノセンサ(及び一般に複数のナノセンサ)と接触させて、反応混合物を生成することを含む。次いで、ナノセンサーは、適当なエネルギー源を用いてプローブされるか又は励起され得る。用いられる波長は、ナノセンサにおいて用いられる粒子に依存する。次いで、粒子の吸収及び/又は発光の変化は、標的バイオマーカーがナノセンサーと相互作用する(例えば、認識配列の結合及び伸長及び/又は発光の変化がある期間にわたって検出される。
【0175】
[0361]本明細書に記載される実施形態はまた、マイクロ流体及びスマートデバイスプラットフォームと一体化されたナノセンサに依存し、これは次に、単純であるがロバストな蛍光又は光学リーダによって読み取ることができる。「マイクロ流体」は、一般にマイクロリットル(10-6)からピコリットル(10-12)の範囲の少量の(流体)試料を操作、制御、及び/又は分析する技法を指す。一態様では、マイクロ流体技術を用いて、迅速なハイスループット試料収集、試料処理、試料プロファイリング及び標的検出を導入する。さらに好ましい実施形態では、マイクロ流体デバイスは、限定はしないが、スマートフォン又はスマートタブレット等のモバイルコンピューティングデバイスとインターフェース接続する。タブレット、スマートフォン、ハンドヘルドコンピュータ、ラップトップ情報を他のコンピューティングデバイスに送信することができる、タブレット、スマートフォン、ハンドヘルドコンピュータ、ラップトップなどを含むモバイルコンピューティングデバイス。この統合されたプラットフォームは、時間のかかる手動の試料取扱いことを伴う複数の機器を用いる現在の「従来の」プロトコルを改革する。さらなる好ましい実施形態では、迅速な分析時間及び多重化能力がある独立型の電池式診断プラットフォームは、患者及び医療専門家によって診断ツールとして用いられうるハンドヘルドスマートフォンベースのシステムを用いて、ヒト体液の最小限の消費(<5μl/サンプリング)で、測定された量の統計的有意性を達成する。
【0176】
[0362]ある実施形態では、本開示のバイオセンサを用いて実行されるアッセイは、上述の様々なセンサのうちの2つ以上の組み合わせを利用することができる。重要なことに、本開示に従って利用されるナノセンサーは、生物学的マーカーとの特異的相互作用を引き起こす超分子認識配列、プロテアーゼ認識配列、翻訳後修飾可能配列を含むように設計することができる。本明細書で用いられる用語場合、「特異的相互作用」への言及は、センサーの認識配列間の相互作用を分子間の非特異的結合又は反応から区別することを意図しており、オリゴペプチド配列が相互作用することができる特異的標的分析物のセットが限定され、場合によっては、結合も酵素的切断も他の分子と感知できる速度で起こらないように排他的でさえあることを意味する。
【0177】
[0363]本開示の方法は、層状グラフェン、有機及び/又は無機分子、検出可能部分、ペプチド結合、検出可能成分、バイオセンサ、本明細書に記載される化学反応を行うための試薬、並びに当業者によって同定可能なさらなる成分の様々な組合せを含む対応するシステムを用いて行うことができる。
[0364]例示的な光学検出技術が記載される。しかし、アッセイを分析する他の方法が用いられうることが理解されるべきである。一般に、本方法は、反応溶液(例えば、マイクロウェル中)を適当なエネルギー源に曝露することを含む。用いられる波長は、バイオセンサにおいて用いられる検出可能な標識に依存する。次いで、検出可能部分からのシグナルの位置/存在及び濃度/強度の両方が、検出可能部分の定量的評価及び定性的評価の両方のために、適当な感知機器又は検出機器を用いて感知又は検出され得る。
【0178】
[0365]本明細書に開示されるシステムは、部品のキットの形態で提供され得る。バイオセンサを作製するために本明細書に記載される方法のいずれか1つを実施するための部品のキットにおいて、グラフェン粒子は、単独で、又はグラフェン粒子の化学変換を実施するための1つ以上の緩衝液及び試薬の存在下でキットに含まれ得る。バイオマーカーの検出のためのキットにおいて、本明細書に記載される1つ以上のバイオセンサは、単独で、又は1つ以上のバイオマーカーの検出を行うための1つ以上の緩衝液及び試薬の存在下で、キットに含まれ得る。当業者によって識別可能なさらなる成分も含めることができる。
[0366]部品のにおいて、グラフェン粒子、バイオセンサ及び試薬は、キット中に独立して含まれ、場合によっては、適当なビヒクル、担体又は補助剤と一緒に組成物中に含まれる。例えば、1つ以上のバイオセンサは、1つ以上の適当な組成物中の検出のための試薬と共に、1つ以上の組成物中に含まれ得る。
さらなる成分は、ラベル、参照標準、及び本開示を読んだ当業者によって識別可能なさらなる成分を含むことができる。
【0179】
[0367]本明細書に記載される実施形態では、キットの構成要素は、本明細書に開示される方法を実施するために、適当な説明書及び他の必要な試薬とともに提供され得る。キットは通常、別々の容器中に組成物を含有する。説明書、例えば、紙若しくはテープ、CD-ROM、フラッシュドライブ等の電子的支持体上の書面若しくは音声による説明書、又はアッセイを実施するための説明書のpdfコピーを含むユニフォームリソースロケータ(URL)の表示による説明書が、通常、キットに含まれる。キットはまた、用いられる特定の方法に依存して、他のパッケージ化された試薬及び材料(すなわち、洗浄緩衝液など)を含み得る。
[0368]組成物の適当な補助剤の同定、並びに一般的にキットの製造及び包装に関するさらなる詳細は、本開示を読んだ当業者によって同定され得る。
【0180】
[実施例]
[0369]以下の実施例は、本開示による方法を説明する。しかしながら、これらの実施例は説明のために提供されるものであり、その中のいかなるものも本開示の全体的な範囲に対する限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0181】
グラフェン及び金属の光化学特性
[0370]グラフェンは、少なくとも98%の炭素を含有し、曝気された水性緩衝液中で、水又は水性緩衝液並びにチオール官能基(例えば、タンパク質及びグルタチオン上に提示される)と最小限の反応を示す。これらの特性は、金属/金属酸化物材料の特性と反対である。
[0371]紫外(UV)、可視及び近赤外(IR)領域におけるグラフェンのUV/V吸収は、グラファイトの吸収を上回る。[28]特に、積層グラフェンは、遠UVから中IR(100~1500nm)の全波長範囲にわたる光吸収を特徴とする。[6]
[0372]直接励起は深/遠紫外で起こるが、可視範囲におけるグラフェンの表面プラズモンは極めて強く、付着した有機蛍光色素又はナノ粒子を効果的に励起することができない。[6]
[0373]対照的に、多くのナノ粒子(特にAu、Agだけでなく、Fe/Fe3O4中のFeも)は、電磁スペクトルの可視範囲において強いプラズモンを示し、これはフルオロフォア励起及び消光の両方に寄与する。[29,30]グラフェンにおいて、スペクトルの可視範囲におけるプラズモン励起は、近くに付着した蛍光有機色素からのエネルギー移動によって起こり得、金属ナノ構造及び量子ドットからも同様に予想される。[31]
[0374]グラフェンの光物理的特性のために、フルオロフォアごとのFRETアクセプターを設計に組み込む必要はない。これは、マルチタスキングを可能にし、ナノバイオセンサを動力学的に著しく減速させるナノバイオセンサの表面での過密化を回避する。
[0375]グラフェンの光物理的特性のために、FRET対内でグラフェンを用いる場合、FRETドナー(フルオロフォアなど)を補完するためにFRETアクセプターを設計に組み込む必要はない。これらのグラフェンの特性は、当業者によって理解されるように、ナノバイオセンサを動力学的に著しく減速させるナノバイオセンサの表面における過密化をユーザが最小限に抑えることを可能にする。
[0376]上記に加えて、爆発グラフェン等のいくつかの形態のグラフェン及びフラッシュグラフェンからのいくつかの画分は、SEM(走査型電子顕微鏡)及び光散乱等の光散乱法によって確認することができる超凝集フラクタル形態がある。[18,19]
[0377]7層を含むフラクタルグラフェンの例示的なSEM(走査型電子顕微鏡)画像を図1に報告する。[8]
[0378]図1の例示に見られるように、グラフェンの積層は、Df=2.5±0.3(上限)とDf=1.8±0.4(下限)との間のフラクタル次元を特徴とする。一般に、爆発グラフェンのサイズ及び表面修飾に応じて、Df=2.9±0.09とDf=2.1±0.09との間のいかなるフラクタル次元を達成することができる。
[0379]爆発グラフェンのフラクタル形状は、光が構造内に「閉じ込められる」ので、光吸収を高める。平坦なグラフェンシートでは、光はグラフェンを1回だけ通過するが、フラクタル形態内からの光反射及び回折は、当業者によって理解されるように、複数の吸収事象を引き起こす。
【実施例2】
【0182】
バイオセンサ及び製造方法の概要
[0380]グラフェンが爆発グラフェンによって提供され、コア粒子のコーティングがポリマーコーティングによって提供される例示的な実施形態に関連して、本明細書に記載されるバイオセンサの主要構成要素の概略図が図2Aに提供される。
[0381]図2Aに概略的に示される例示的な構成において、爆発グラフェン凝集体のナノシートは、ポリマーコーティングの単層によってコーティングされたコア粒子のグラフェン成分を提供するために用いられる。認識配列及び検出可能な部分を含むペプチド結合によって形成される検出成分は、ポリマーコーティングへの結合を介してコア粒子にさらに結合される。
【0183】
[0382]図2Aに概略的に示される構造があるバイオセンサは、図2Bに概略的に示される例示的なプロセスを用いて提供され得る。図2Bの概略図では、グラフェン表面は、例えば複数のカルボン酸基で官能化され、及び/又は薄いポリマー単層でコーティングされている。図2Bの例示的な図では、複数の検出可能な部分を、各々のオリゴペプチド結合を介して同じ担体粒子に付着させることができる。例えば、図2Bに概略的に示すように、2つ以上の異なる検出可能部分を、各々の標的バイオマーカーに対する特異性がある各々のオリゴペプチド結合を介して同じ担体粒子に結合させることができる。
【0184】
[0383]特に、図1の概略図は、以下の通りである。2Bは、新規バイオセンサの設計を示す:A:カルボキシグラフェンの合成;B:アミド結合を介したポリエチレンイミンの化学的結合;C:認識配列(オリゴペプチド)及び蛍光色素(TCPP)の結合。TCPPは、樹脂上にある間にオリゴペプチドのN末端に結合される。樹脂からの切断及びHPLC精製(必要な場合)の後、認識配列+TCPPを、そのC末端によってポリエチレンイミンに結合させる。速度論的理由により、認識配列+TCPPは、オリゴペプチドのC末端を介して結合される。正しいプロテアーゼの存在下で、認識配列はタンパク質分解的に切断され、認識配列の半分に共有結合した蛍光色素TCPP+が放出される(光スイッチ効果)。
[0384]重なり合った縁部で互いに絡み合ったグラフェンの薄い単分子層、又は2~3層を含むか若しくはそれからなるナノシートのより規則的な積層のさらなる概略図を図2Cに報告する。
[0385]グラフェンナノシート微粒子の表面にわたって付加された高密度のカルボン酸基の概略図を図2Dに報告する。
[0386]グラフェンのカルボキシル化及びPEIポリマーコーティングを介した検出可能な成分の結合のためのプロセスに関するさらなる詳細は、実施例3~実施例9に報告される。
【実施例3】
【0185】
カルボキシグラフェン合成-一般的方法
[0387]本明細書で「カルボキシグラフェン」と呼ばれるグラフェン誘導体を合成するために、爆発グラフェン(0.2~0.5)ナノ粒子(ナノシート粒子)を室温で無水ジメチルホルムアミド(DMF)中に分散させる。
[0388]分散が完了した後、第一級又は第二級ハロゲンがあるカルボン酸を添加し、続いて無水アジ化ナトリウム(NaN)を添加する。次いで、温度を80℃までゆっくりと上昇させる(1℃/分)。20℃~40℃で求核置換反応(SN)が起こり、ここで有機アジド及びDMF可溶性ハロゲン化ナトリウムが形成される。有機アジドは二窒素(N2)を放出し、>50℃の温度でニトレン中間体を形成する。ニトレンは、窒素の外殻において8個の電子の代わりに6個の電子を特徴とする。この反応性中間体は、(S)-アミンとの環化付加を受ける。II-IIグラフェンの表面に二重結合を形成して、安定なアジランアンカーを形成する。
[0389]アジラン付加環化は、グラフェンの光学的及び電気的特性を損なうことなく、調整された量のカルボン酸をグラフェンの表面に付加する機会を提供する。
[0390]例示的な反応スキーム及びプロトコルを実施例4に概説する。
【実施例4】
【0186】
グラフェン誘導体化(カルボキシグラフェン(CG))
[0391]ワンポット反応における爆発グラフェンからのカルボキシグラフェンの合成のための例示的な反応スキームを図3Aに示す。
[0392]プロトコルは、98.9%C、0.08%H、及び1.02%Oの元素組成がある爆発合成グラフェン(0.40)ナノシート微粒子から開始する。次いで、材料をブロモ吉草酸及びアジ化ナトリウムと反応させて、以下のようにカルボキシグラフェン(CG)を得る。
[0393]1.0gのグラフェンナノシート(GN)微粒子を、250mLの三口丸底フラスコ中で20℃で20mLのDMFに懸濁させた。次に、40℃で、0.50gの5-ブロモ吉草酸(0.0028mol)を並びに0.18gのNaN結晶をGN懸濁液に添加した。NaNが溶解した後、懸濁液を80℃までゆっくり加熱し(約1℃/分)、1時間撹拌した。N2の放出が観察された。最後に、1時間後、懸濁液を室温に冷却し、誘導体化されたGNを遠心分離(7,000RPMで5分間)によって回収し、DMFで5回、次いで無水ジエチルエーテルで3回洗浄した。得られたCGを特徴付けのために50℃で1時間乾燥させ、次いでアルゴン下で保存した。収率:82%(全反応と仮定して質量による)。カルボキシグラフェンの元素分析は、94.22%C、1.79%H、1.17%N、及び2.82%Oである。Nの取り込みは、付加反応が成功したことを示す。
[0394]単一のグラフェンナノシートのみが示されているカルボキシグラフェンの概略構造を図3Bに報告し、表面にわたるカルボン酸基の高密度分布を示すカルボキシグラフェン最上層の側面図を図3Cに報告する。
[0395]図3Dに示すように、示差熱分析(DTA)は、100℃を超えて加熱したときに4.5±0.5質量%の質量損失を示す。100℃を超える温度では、グラフェンから予想されるように、材料は実質的に安定である。初期の質量損失は、カルボキシグラフェンの外殻に結合した吉草酸ユニットの部分的損失から生じる。
【実施例5】
【0187】
カルボキシグラフェン(CG)の滴定
[0396]100mgのカルボキシグラフェン(CG)を20mLの0.100M NaOHに懸濁させた。懸濁液を300Kで5分間撹拌した後、0.100MのHCl溶液を段階的に添加した。各工程において、平衡に達したことを確認した後(1~5分)、次の量のHClを添加する前に、pHメーターを用いて溶液のpHを記録した。同じ容量のNaOHを用いて同じ手順を用いたが、カルボキシグラフェンを添加しなかった。
[0397]図4に示すように、約7.00のpHの同じ値についての2つの滴定曲線におけるHClの体積の差は、カルボキシグラフェンの質量増加当たりのイオン化基(カルボキシル基)の濃度を与える。この滴定曲線は、6.1×10-4mol/gの酸性基(-COOH)(すなわち、nm2当たりの4-COOH基の表面密度)があることを示す。比較のために、これは、1.7×10-4mol/g(すなわち、nm2当たりの1-COOH基の表面密度)がある本発明者らのフェントン酸化グラフェン酸化物と比較して4倍高い。カルボキシグラフェン表面における-COOH基のこの密度は、合成されたカルボキシグラフェンにおける-COOH基1個当たりの平均間隔0.27nm2に相当する。これは、表面-COOH基による極めて高い標識密度に対応し、これらのカルボキシグラフェンナノシート微粒子のはるかに高い水中分散性に寄与する。
[0398]カルボキシグラフェンの合成は、より速い反応時間で、Fenton酸化グラフェンと比較してさらに単純化されることが理解されるであろう。このプロセスはまた、鉄塩(これは、本明細書中に記載されるバイオセンサ中の結合された発蛍光団の光物理的特性をいくらか妨害する)の添加を含まない。
【実施例6】
【0188】
カルボキシグラフェン-ポリエチレンイミン(G-PEI)
[0399]ポリエチレンイミンをカルボキシグラフェンにつなぎ合わせてポリエチレンイミン誘導体化カルボキシグラフェンを生成するための例示的な合成手順を以下に記載する。
[0400]100mgの上記で合成したカルボキシグラフェンを、50mL丸底フラスコ中の20mL無水DMFに室温で懸濁させた。次に、50mgのポリエチレンイミン、分岐、分子量10,000(PEI)、25mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド(EDC)、及び25mgの4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)をカルボキシグラフェン溶液に添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。その後、カルボキシグラフェン-ポリエチレンイミン(G-PEI)を遠心分離(7000RPMで5分間)によって収集し、DMFで2回、ジエチルエーテルで3回洗浄した。各洗浄こと後に遠心分離によって材料を収集した。収率:65%(全反応と仮定して質量による)。
[0401]得られたカルボキシグラフェン-ポリエチレンイミンの構造の概略図を図5Aに示し、参照のために1枚のシートのみを示す。得られたカルボキシグラフェン-PEIの元素分析:82.58%C、4.65%H、10.65%N、及び2.12%O。N含量の有意な増加は、PEIの付加反応が成功したことを示す。N含有量に基づいて、本発明者らは、得られたカルボキシグラフェン-PEIが27±2%のPEIを含有すると推定する。
[0402]図5Bに示される示差熱分析(DTA)は、150℃で開始し、全温度範囲にわたって延びる4.5±0.5質量%の質量損失を示す。この挙動は、カルボキシグラフェンとは明らかに異なり、ポリエチレンイミンの結合によるグラフェンナノシートの安定化と一致する。
【実施例7】
【0189】
PEIコーティング爆発グラフェン系のバイオセンサの合成
[0403]テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)及びMMP-1(GAGVPMS-MRGGAG)のペプチド切断配列によって形成された検出成分を、以下のプロトコルに従って、PEI被覆グラフェン系の生体センサに付着させた。
[0404]50mgの上記で合成したカルボキシグラフェン-PEIを、小さなガラスバイアル中の約8.1mLのDMFに懸濁した。次に、5mgのDMAP及び5mgのEDCを、MMP-1(GAGVPMS MRGGAG)のペプチド切断配列とプレコンジュゲートした約3.5mgのTCPPと共にバイアルに添加した。試料を5分間超音波処理して、全てがDMF中に懸濁していることを確実にした。次いで、反応物を室温で一晩撹拌した。
[0405]バイオセンサを遠心分離(7000RPMで5分間)によって回収し、DMFで洗浄し、ジエチルエーテルで3回洗浄した。図6Aは、カルボキシグラフェン-ポリエチレンイミンベースの生体センサの構造を示し、参照のために単一のシートのみが示されている。
[0406]合成された材料を分光法によって分析した。図6Bに示すように、カルボキシグラフェン、カルボキシグラフェン-PEI、及び水中のMMP-1に対するカルボキシグラフェン-biosensorのUV/Visスペクトルを分析した。TCPP検出可能標識のソーレー帯は、約420nmで明確に識別可能である。TCPPは、MMP-1の認識配列を含むペプチドを介してポリエチレンイミン層に繋がれている。135,000 M-1 cm-1の推定吸収係数に基づいて、TCPP濃度は、カルボキシグラフェン 1グラム当たり1.63×10-5モルである。
[0407]上記に概略的に示されるプロセスで付加され得るさらなる例示的な検出可能部分は、図6Cに報告されており、これは、BODIPY FL、BODIPY TR、BODIPY 530550、及びBODIPY 630650を含む、励起スペクトルと吸収スペクトルとの間に重複がないか、又は最小限の重複しかないBODIPY色素を示す。
【実施例8】
【0190】
グラフェン表面のさらなる官能化
[0408]先の実施例では、グラフェン表面の官能化を行って、カルボン酸基をグラフェンの表面に係留した。次いで、ポリエチレンイミン(又は主に他のポリマー)を、安定なアミド結合を介してカルボン酸官能基に結合させた。
[0409]さらなる官能基は、例えばカルボキシル基の修飾を介してグラフェンの表面上に提示され得る。当業者は、Organic Chemistry(有機化学)のツールボックス全体を用いて、そのような官能化を行うことができる。[32]これは、ポリマー又はモノマーをグラフェンの表面に係留するために適用可能である。例えば、以下の例示的な反応を参照する。
-カルボン酸のアルコールへの変換及び安定なエーテルの形成
-カルボン酸のエステルへの変換
-カルボン酸のアルデヒドへの、次いで二重結合への変換(ウィッティヒ型反応)。
-カルボン酸を有効な脱離基がある炭素中心に変換し、続いて核置換反応を行う
である。
[0410]当業者に理解されるように、有機又は無機化合物上の、又は直接ペプチド結合上の対応する官能基に結合するように構成された官能基を提示するために、事前の官能化の有無にかかわらず、グラフェン上でさらなる反応を用いることができる。これらの反応は以下を含む。
クリック反応[33,34]特に、ディールス-アルダー反応[35,36])。これらは、グラフェンの表面を用いて直接行うことができ、又はペプチド配列と、表面にすでに連結されているテザーとを接続するために行うことができる。
グラフェンの表面へのラジカル(例えば、炭素、窒素、酸素、及び硫黄を中心とする)の添加[37,38]
グラフェンの表面への求電子剤(例えば、炭素、窒素、酸素、及び硫黄を中心とする)の添加[38]
[0411]カルボキシグラフェン及び分子モデリングの滴定実験に従ってカルボキシグラフェンを提供するために官能化が行われる実施形態では、グラフェンの表面に付着した直鎖状分子の可能な最高充填密度は、6.0±0.5×10-4mol/gである。水分散性が依然として観察され得る下限は、2.40±0.05×10-5mol/gである。
[0412]当業者によって理解されるように、異なる官能基化について、さらなる最大及び最小充填密度を特定することができる。非置換(純粋な)グラフェンの表面領域を特徴とする非対称ナノバイオセンサを合成する場合、この領域は、グラフェンの表面で以前に切断された蛍光色素の吸着及び消光による粒子の蛍光読み出しへの干渉を最小限にするために、10相対パーセントより大きくない。
【実施例9】
【0191】
カルボキシル化グラフェンへのペプチドの直接的及び間接的付着
[0413]ポリエチレンイミン又は他の水溶性ポリマーを利用する代わりに、検出成分のための代替的な結合プロセスにおいて、蛍光色素に連結されるペプチド配列はまた、カルボキシグラフェンのカルボキシル基に直接連結され得る。
[0414]場合によっては、グラフェン表面への直接付着に加えて、又はその代わりに、ペプチド結合は、カルボキシへの結合のためのアミン基を提示するスペーサー又はconnercorを介して間接的に付着させることができる。その目的のために、リジン、オルニチン、又はスペーサー及び接近可能な余分な一級アミンを特徴とするいかなる非天然アミノ酸を利用して、図7の概略図によって示されるように、付着を容易にすることができる。
[0415]スペーサーは、粒子と検出可能な部分との間の所望の距離を得るために粒子サイズを制御しながら、所望のペプチド結合と組み合わせて当業者によって用いられうる。
[0416]中心グラフェン系のナノ構造と本明細書に記載のバイオセンサの検出可能成分(例えば、フルオロフォアが結合した認識配列)との間の特別なクラスの「コネクター」は、超分子系である。多数の超分子ホスト-ゲスト系が文献に公開されている。[39][40]以下のホスト-ゲストシステムが注目に値する。
a)ビオチン/ストレプトアビジン[41]
b)シクロデキストリン及び種々の宿主[42]
c)ストダート-シクロファン及び親水性ホスト[43]
d)ククルビツリル及びテーラードホスト[44]
e)(構造的に修飾された)DNAアセンブリ[45]
f)核酸/ペプチドハイブリッド[46]
g)デザイナーペプチドの超分子結合[47]
【実施例10】
【0192】
グラフェン表面の化学的アミノ化及びペプチド結合の付着
[0417]グラフェン表面の化学的アミノ化のための芳香族置換ニトレン反応等のグラフェン表面の例示的なさらなる化学的アミノ化は、以下の通りである。[20]図8に概略的に示されている。
[0418]例示的なプロトコルに従って、1.0gのグラフェンナノシート(GN)微粒子を、250mLの三口丸底フラスコ内で20℃で20mLのDMFに懸濁させた。次に、40℃で、0.50gの1-アミノ-4-ブロモ-ブタン(0.0033mol)、並びに0.20gのNaN結晶をGN懸濁液に添加した。NaNが溶解した後、懸濁液を80℃までゆっくり加熱し(約1℃/分)、1時間撹拌した。N2の放出が観察された。最後に、1時間後、懸濁液を室温に冷却し、誘導体化されたGNを遠心分離(7,000RPMで5分間)によって回収し、DMFで5回、次いで無水ジエチルエーテルで3回洗浄した。得られたグラフェンアミン(GA)を特徴付けのために50℃で1時間乾燥させ、次いでアルゴン下で保存した。収率:80%(全反応と仮定して質量による)。カルボキシグラフェンの元素分析は、95.48%C、1.86%H、2.38%N、及び0.28%Oである。Nの取り込みは、付加反応が成功したことを示す。
[0419]検出可能な成分TCPP-GAG RPFS-MIMG AEGを添加するために、1.00gのGAを、撹拌子を備えたフラスコ中の30mLのDMF中に分散させた。0.54gのEDC及び0.53gのDMAPを添加し、室温で溶解するまで撹拌した。0.20gのTCPP-GAG RPFS-MIMG AEGを添加し、反応物を21時間撹拌した。CGP粒子を、上記のように遠心分離を用いてDMFで4回洗浄し、エチルエーテルで3回洗浄した。MMP 3-TCPP標識粒子のGA認識配列を、アルゴンでフラッシュし、緩く覆って室温で48時間保持することによって乾燥させた。この反応は、本開示の意味におけるペプチド結合(認識配列、翻訳後修飾及び超分子結合)として設計及び構成されたあらゆるペプチドを用いて行うことができる。
【実施例11】
【0193】
グラフェン埋め込みカルボカチオンとPEIの第二級アミン基との反応
[0420]PEIのさらなる結合反応は、爆発グラフェン中のカルボカチオンとの第二級アミン基の結合を介して行うことができる。
[0421]爆発グラフェン0.3では、多数の「ホール」(カルボカチオン)が構造内に埋め込まれ、したがって、+60mVのゼータ電位を引き起こす。[8]表面近くの孔は、上に示したようにポリエチレンイミンと反応することができる。求核付加反応が、爆発グラフェンと実質的に全ての(ポリマー、モノマー、及び小分子)アルコール、チオール、アミン、ホスフィン、及び潜在的にカルボン酸との間で起こり得ることは注目に値する。
[0422]従来の数層グラフェンにおいて、ヒドロキシル基及びオキシレン官能基は、PEIと反応することができる。ヒドロキシル基は脱離後にカルボカチオンを形成し、これは次に図9のスキームに従って反応する。オキシレン(酸素含有三員環)は、求核付加下でアミンと反応する。これらの反応は、PEIをグラフェン層に共有結合させる。グラフェンに欠陥(カルボカチオン)が存在する場合、グラフェンにPEIを直接結合させる別の可能性が存在する。これは、グラフェン表面へのPEIの直接求核性付着を可能にする。
【実施例12】
【0194】
グラフェンの表面における静電引力
[0423]爆発グラフェンの強い正電荷を利用して、スルホン酸、アミノスルホン酸、及び有機硫酸塩を特徴とするアニオン性ポリマーをグラフェンの表面に吸着させることができる。駆動力は静電引力である。
ブロックコポリマーが用いられる場合、疎水性ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)がブロックコポリマーの成分であり得ることに留意されたい。それらは純粋なグラフェンの表面に吸着されるが、それらの親水性成分は水分散性を媒介する。爆発-グラフェンの表面電荷は正(ゼータ電位=+60 mV)であることに留意されたい。[8]これは、ポリスチレンスルホン酸のような負に荷電したポリマーがポリスチレン等のブロックコポリマー中で用いられる場合に、疎水性及び電荷引力の組み合わせを可能にする。
【実施例13】
【0195】
グラフェンの「クリックケミストリー」
[0424]本明細書に記載されるコア粒子のグラフェンナノシートの表面上への分子の付着を可能にするさらなる反応は、クリックケミストリーによって行うことができる。
[0425]「クリックケミストリー」は、爆発(及び数層)グラフェンの表面で行うことができる。典型的な反応は、銅触媒を必要としないので、ディールス-アルダー反応である。図10は、マレイミド誘導体とグラフェンとの間のディールス-アルダー反応のスキームを示す。しかしながら、主に、例えばLi et al.2016に記載されているように、表面上へのチオールの付加を含むいかなるクリック反応を行うことができる。[48]、Namvariら、2014年。[49]及びFarivarら、2021。[50]グラフェンの表面へのラジカル(例えば、炭素、窒素、酸素、及び硫黄を中心とする)の添加とともに[37,38]-グラフェンの表面への求電子剤(例えば、炭素、窒素、酸素、及び硫黄を中心とする)の添加。[38]及び当業者によって同定可能な他の方法(実施例8も参照されたい)。
【実施例14】
【0196】
バイオセンサ及び関連する機能原理の使用
[0426]関連する使用のために本明細書に記載されるバイオセンサの機能原理は、図11に概略的に示される。
[0427]図11の概略図では、標的バイオマーカーを含有する生物学的試料と相互作用すると、ペプチド結合が変化し(例えば、切断又は伸長され)、蛍光スペクトルの変化など、センサーで用いられる検出可能な部分の検出可能なシグナルの特徴的な変化をもたらすことが示されている。蛍光の観察可能な変化(検出可能な部分に応じて増加、減少、シフトなど)は、バイオマーカーの存在及び/又は活性の関数である。
[0428]図11に概略的に示される例示的な実施形態では、認識配列(オリゴペプチド)のタンパク質分解切断の際に、結合したフルオロフォアが放出され、バイオセンサのグラフェンコアによる消光を逃れる。プロテアーゼ活性の関数である蛍光の増加及び強度が観察される。粒子ベースのバイオセンサの代わりに、バイオセンサは、グラフェンが最初に固体支持体(例えば、平面基板)上に固定化され、その上に他の要素、例えば、ペプチド結合、次いで検出可能部分が付着されて、平面センサー、例えば、ラテラルフロー型センサー又は固定マイクロウェルセンサーを作製することを除いて、同様の構成要素を用いて構築することができる。本開示を読んだ当業者によって理解されるように、センサは、そうでなければ同じように動作し、試料が固体支持体に添加され、試料中の標的バイオマーカーによる結合又は切断が、固体支持体上のアッセイにおいて検出可能な変化をもたらす。
【実施例15】
【0197】
多重バイオセンサ
[0429]古典的なバイオセンサ設計は、1粒子当たり1つのみのプロテアーゼ切断可能な蛍光色素又は量子ドットの使用を可能にするが、グラフェン及び誘導体の広いUV/Vis吸収スペクトルは、異なるプロテアーゼに対するいくつかのバイオセンサの付着を可能にする。
[0430]図12は、マトリックス-メタロプロテイナーゼ-1のための爆発-グラフェン系のバイオセンサの実施例を示す。プロテアーゼ活性についてのグラフェン系のバイオセンサの動作原理を本明細書に示す。
[0431]図12に示すように、プロテアーゼ(試験試料中に存在する場合)は、そのコンセンサス(切断)配列を切断し、フルオロフォアを放出する。後者はグラフェンの消光を回避し、蛍光の測定可能な増加をもたらす(「フルオロフォアオン」)。MMP1用のプロトタイプバイオセンサを、酵素の濃度を増加させながら試料中で試験した。
[0432]図13A及び13Bに示されるように、検出されたシグナルの強度は酵素の濃度に比例することが分かる。最適でない実験設計の下でさえ、このプロトタイプバイオセンサについて推定される検出限界(LOD)は、フェムトモルのプロテアーゼ活性が検出され得ることをなお示す。TCPPが結合している場合、強いカルボキシグラフェン消光のために実質的に蛍光を示さない。次いで、それを60分間放出する。その蛍光は検出可能である。
【実施例16】
【0198】
緩衝及び標準反応
[0433]プロテアーゼ酵素は、生理学的条件下で作用するタンパク質消化酵素である。マトリックスメタロプロテイナーゼファミリーは、錯化二価カチオンを含むが、カテプシンプロテアーゼは、酸性リソソーム環境において主に活性化される。最初に設計されたFe-NBSプロトコルの操作を、10μMの二価カチオンを含む25μMのHEPES緩衝液中で調製した。
[0434]この系は、二価陽イオンの必要性も支持しながら、プロテアーゼ活性を支持するための等張条件を含めることによって、改善されたpH制御を通じてより強いシグナルを達成するように変更された。将来の多重化を可能にするために、一度に複数の異なるgNBSセンサと互換性のある緩衝液を構築することが可能であることを実証することも求められた。
[0435]この目的のために、全てが10μM最終濃度のMgCl、CaCl及びZnClを含む一連の緩衝液を設計した。HEPES緩衝液並びにMES、TRIS及びリン酸緩衝生理食塩水を評価した(図14の表)。
[0436]uPAgNBS及びCTSDgNBSの溶液を、水中300μg/mlの10×作業濃度で調製した。それらを超音波処理水浴中で10分間超音波処理した。gNBSを、図14に報告される異なる緩衝液製剤の各々において1:10に希釈した。
[0437]125μlのgNBS溶液を、黒色96ウェルプレートに反復して分注した。5μLの血清を添加し、プレートを37℃で60分間インキュベートした。放出された蛍光を、421nm励起及び650nm発光でVarioSkan Luxプレートリーダー上で読み取った。アッセイは、血清の代わりに5μlの適当な緩衝液を添加したアッセイ対照を含んでいた。gNBSを、2つの異なる正常健康ドナー血清試料又はプールされた正常血清(PNS)と共にインキュベートした。緩衝液1は元の製剤であった。全ての緩衝条件においてプロテアーゼ活性が観察された。結果を図15パネルA(CTDSgNBS)及び図15パネルB(uPAgNBSS)に報告する。
[0438]PBS及びMES緩衝製剤では、はるかに安定したpHが観察され、pHは数日間安定していた。DMSOのみが、刺激条件下で観察されたRFUを有意に増加させた。しかしながら、注目すべきことに、NaClを含む緩衝液は、バックグラウンド及び血清シグナルの両方を有意に低下させた。ACを減少させることは、gNBSの信号対雑音性能を増加させるのに役立つ。すべてNaClを含有する緩衝液2、3、6、8及び9は、元の緩衝液と比較してAC性能が有意に低下した。
[0439]緩衝液9は、最良の信号対雑音性能がある緩衝液として選択された。この性能は、生理学的イオン濃度の影響がゼータ電位を安定化させ、ペプチド-TCPP構築物の天然の立体構造を可能にするという結論を支持した。したがって、粒子溶液の安定性に寄与するゼータ電位安定化はまた、最適な酵素条件を支持する。ゼータ電位に対するNaClの影響は、図16において観察することができる。これらの観察を確認するために、緩衝液1、2及び9を用いてさらなるgNBSで実験を繰り返した。uPA、CTSD、MMP10、及びCTSHについてのgNBSの評価はすべて、等張塩濃度を含有する緩衝液についてACシグナルの減少及び最も高いシグナル対ノイズを示し、緩衝液9は緩衝液2より優れていた(図17)。
[0440]これらの実験は、本開示のバイオセンサの特徴に加えて、プロテアーゼ活性を検出するために用いられるgNBSの効率的な機能のためのイオンの役割を実証した。
[0441]特に、本開示のセンサの機能性は、同じ仕様で繰り返し構築される能力に依存し、センサの異なるバッチ及びロットが同じ信号を生成するように製造され得るように、正常血清試料中の活性化プロテアーゼ又は他の適当なバイオマーカーの測定を可能にする。
[0442]さらに、緩衝液及び製造条件は、最適なシグナル対ノイズ比を生成するように選択され得る。この実験において、一塩基性塩イオンの包含が、緩衝液のみのシグナルの減少によって反映されるようなノイズの有意な減少に寄与することが観察される(図15及び図17のAC値を参照されたい)。
[0443]一塩基性塩イオンの影響もまた、pH5.0~ph8.0のpH範囲にわたって粒子のゼータ電位を安定化することが認められた。この範囲は、リソソーム又は他の酸性環境において通常発現される特定のプロテアーゼファミリーメンバーについての天然の作業環境を反映する。プロテアーゼ活性は、pH2.0~pH10.0の天然の生物学的環境を反映するpH条件の範囲にわたって生じ得る。pH要件に応じて、MES緩衝液は、PIPES、MOPS、HEPES、TRIS、リン酸緩衝液、Bikini、CHES、又はGoodのリストに一般的に見られる他の緩衝液等の、pKaがpH目標により適している緩衝液で置き換えられてもよい。
[0444]上記の観察は、塩の包含がセンサーのAC活性を減少させるという結論を支持した。有効塩濃度は、同じ緩衝液中であるが、いずれの一塩基性塩イオンも存在しない同じセンサーと比較して、1.0未満の比として観察することができる(図18に示す)。15.5mM~155mMの一塩基性塩イオンは、塩/無塩条件のACの比を減少させる。高張塩条件は、同様に、ACを低減することによって、信号対雑音性能を増加させ得る。高塩度環境を反映する生理学的条件における塩濃度は、600mMほどの大きさ、又は1Mほどの高さであり得る。
【実施例17】
【0199】
超音波処理工程を用いて調製したバイオセンサの調製及び性能
[0445]定義された比率の酸素の存在下で炭化水素基材の気相爆発を用いる爆発反応において、数層のグラフェンを生成することができる。得られたグラフェンは、0.3のモル酸素比で爆発させた場合に、平均して50~500nmのサイズである分岐フラクタル凝集体から構成される。
[0446]得られた粒子の電子顕微鏡検査は、図19Aの例示的な写真によって示されるように、鎖、シート、凝集体及び個々の小板から様々に構成されるグラフェン凝集体を示す。
[0447]サイズ及び形状のスペクトルは、gNBSに対して行われた透過型電子顕微鏡法の分析から明らかである(図19B)。図19Bに画像化された粒子は、2020年12月30日のKSU開示(ロット120120)に記載されているように調製した。それらは、多くの異なるサイズの不規則な形状の粒子を示し、より高い倍率での層の数は、予想される5~25層のグラフェンを反映する。
[0448]フラクタルとして、個々の粒子について規定されたサイズ又は形状は存在しない。それらは、爆発プロセスにおいて形成される凝集体から構成され、したがってスペクトル内でサイズ及び形状がランダムである。
[0449]爆発グラフェンの例示的なSEM(走査型電子顕微鏡)を図1に示す。[8]アッセイ用のgNBSの溶液を調製するために、gNBSを集め、緩衝液に再懸濁して、規定の質量濃度にする。次いで、この溶液を超音波処理水浴中に分散させる。水浴中の時間は、元の開示において定義されておらず、粒子の異なるレベルの破壊をもたらす可能性がある。この変動の影響は図20に見られる。gNBSの作業溶液が生成される場合、KSUロット120120調製物は、溶液から沈殿するいくらかの粒子を生じる。これは、初期の製造プロセス中にグラフェンの効率的な分散が存在せず、不安定な最終生成物をもたらすためである。対照的に、グラフェンがgNBSの製造中及び構築前にプローブ超音波処理によって調製される場合、粒子はより多分散性のままである。
[0450]得られたgNBS集団の分布に対する超音波処理の影響をさらに評価するために、粒子の分散特性を、Malvern Instruments ZetaSizer running v7.02分析ソフトウェアで分析した。爆発グラフェンをDMFに直接溶解させるか(超音波処理なし)、又はFisherbrand FB705 Sonic Dismemberatorを用いてDMF中で1時間超音波処理することによって能動的に分散させた。
【0200】
[0451]得られたグラフェン溶液を、まずブロモ吉草酸及びアジ化ナトリウムと反応させてカルボキシグラフェン(CG)を得ることにより、標準的なプロトコルを用いてgNBSに組み立てた(図21:パネルA)。これを、EDC及びDMAPを用いてPolyethyleiminineをカルボキシグラフェンに繋ぎ止めることによってさらに修飾して、Polyethyleinimine誘導体化カルボキシグラフェンを得る(図21、パネルB)。最後に、ペプチド-TCPPを、DMAP触媒と共にEDC化学を用いて添加して、センサーを得る;この場合、プロテアーゼ好中球エラスターゼ(NE)によって認識されるペプチドを用いる。各中間体、CG、及びポリエチレンイミン(CGP)で誘導体化されたCGの溶液を調製し、超音波処理水浴中で10分間処理して、粒子の効率的な混合及び再分配のために溶液を分散させ、効果的な表面修飾及び水溶性を確実にした。PDI測定を超音波処理直後に行い、次いで30分間静置した後に再び行った。
[0452]多分散指数(PDI)測定の結果を図21に示す。PDIは、溶液中の粒子の均一性の尺度である。データは、gNBSの組み立て前に出発グラフェン材料を1時間超音波処理した後、粒径の均一性がより大きい(PDI数がより小さい)ことを示す。この均一性は、CG及びCGP中間体、並びにNEgNBS最終生成物について明らかであった。
[0453]これに加えて、1.0gのグラフェン0.3(0-C比)の溶液を、さらに処理することなく20mLのDMFに溶解した。270nmでの吸光度をNanoDrop 1000C分光光度計で測定した。次いで、この溶液を、プローブソニケーターを用いて、35強度レベルで20秒オン及び10秒オフのパルスを60分間まで用いて分散させた。試料を間隔を置いて収集し、ABS270nmを1時間まで測定した。プローブ超音波処理が継続されるにつれて、グラフェンのスラリーは、ABS270nmの読み取りを行うために希釈されなければならず、読み取りが希釈のために補正される点まで濃くなった。図22は、超音波処理時間の増加に伴う吸光度の増加を示す。より多くのエネルギーが印加されるにつれてグラフェンフラクタルがより小さい粒子に破壊されるので、吸光度は増加する。
[0454]超音波処理中に印加されるエネルギーから粒子の数が増加するにつれて、全体的な粒径が減少し、その結果、UV-visスペクトル上の透過率の減少として観察される光のミー散乱又はレイリー散乱が生じる。[51]したがって、グラフェンが超音波処理されるにつれて、投入質量は製造プロセスへと減少するが、粒子表面積の全体的な増加に起因して、付着したペプチド-TCPP粒子の同じ数又はより多くの数を維持することができる。
【0201】
[0455]プロテアーゼは、緩衝液中のpH及び化学物質等の環境変化に極めて敏感である。バイオセンサの洗浄及び製造中に用いられた化学物質がセンサ上に残っておらず、本発明者らが観察したバッチ間変動に寄与していないことが確認された。CGの4つの調製物について熱質量分析(TGA)を実施した。TGA Instrument TGA5500を使用し、窒素環境において20℃/分で室温(20℃)から1000℃まで温度を上昇させる。
[0456]粒子を完全に乾燥させる努力をした製造されたナノセンサのロットにおいて、質量損失パーセンテージの全体的な減少が観察された(図23の表)。
[0457]具体的には、元のKSUロット(120110)のTGAは、質量の大部分が100℃までの温度間隔で失われたことを示し、製造に用いられた溶媒の沸点と一致し、残留溶媒汚染を示した。プロトコルが、温度及び乾燥剤を用いて乾燥させる努力を含むように修正されたので、質量損失のパーセンテージは減少した(図24及び図25)。
[0458]溶媒が除去されていないセンサーは、完全に機能する前に硬化期間を経なければならないことが観察された。KSUによって作製されたナノセンサーの最初のロットについて、この期間は2週間であると決定され、ここで、シグナル/ノイズ比は、主に上昇したACに起因して有意なシグナルを生成するには不十分であった。対照的に、製造後の37℃での一晩の乾燥インキュベーションを含む、残留溶媒を除去する努力を伴って調製されたナノセンサーは、製造の5日以内に強いシグナルを生成した(図26)。最終センサー製品の乾燥は、残留溶媒を除去し、最適な活性を明らかにするために重要であると考えられる。
[0459]残留溶媒は、シグナル対ノイズ性能の低下として示されるセンサーの最適な活性化を阻害することによって、gNBSの性能に影響を与える。したがって、製造溶媒の除去は、TGAを用いて特徴付けられる。TGAは、全質量の百分率として放出された溶媒の量の測定値を提供する。具体的には、溶媒は、20℃~200℃又は20℃~400℃で除去される。センサーの総質量への寄与として、gNBSの調製は、30%未満の熱転移質量の寄与をもたらすはずである。最適には、TGAによって測定される質量損失は、10%未満又は5%未満であるべきである。最適には、TGAによって測定される質量損失は、1%未満であるべきである。
【実施例18】
【0202】
バッチ間変動及び超音波処理の影響
[0460]元の開示によって定義された製造プロトコルは、3ことプロセスであった。
[0461]第1のグラフェンを改質してカルボキシグラフェン(CG)を生成した。これは、2.0gの爆発合成グラフェン0.3(0-C比)を40mLのDMF中に、室温のシリコーン油浴中に磁気撹拌棒を用いて懸濁させた250mLの三角フラスコ中で分散させることによって達成された。分散後、溶液の吸光度をNanoDrop 2000C分光光度計で測定した。反応の温度を40℃に上昇させ、1.0gの5-ブロモ吉草酸をグラフェン懸濁液に添加し、続いて0.36gのアジ化ナトリウム結晶をゆっくり添加した。全ての試薬が溶解したら、温度を80℃までゆっくりと上昇させ、80℃で1時間インキュベートし、次いで室温まで冷却させた。懸濁液を、乾燥前に、10,000×gで5分間、DMFで5回、エチルエーテルで3回遠心分離することによって洗浄した。
[0462]第2に、ポリエチレンイミン誘導体化カルボキシグラフェン(CGP)中間体の製造のために、1gのCGを、撹拌棒を備えたフラスコ中の30mLのDMF中に分散させた。0.54gのEDC及び0.53gのDMAPを添加し、室温で溶解するまで撹拌した。1.2gのポリエチレンイミンを添加し、反応物を21時間撹拌した。CGP粒子を、上記のように遠心分離を用いてDMFで4回洗浄し、エチルエーテルで3回洗浄した。CGP粒子をアルゴンでフラッシュし、緩く覆って室温で48時間保持することによって乾燥させた。
[0463]最後のことは、センサーペプチド-TCPPのコンジュゲーションである。103mgのCGPを16mLのDMF中に、超音波処理水浴を用いて1分間分散させた。10.5mgのEDC及び11mgのDMAPを、室温で撹拌しながらCGPに添加した。7mgのTCPP標識ペプチドを添加し、反応物を室温で20時間撹拌した。得られたgNBSをDMFで3回、エチルエーテルで3回洗浄した後、アルゴンでフラッシュした。最終gNBS生成物を-20℃で保存した。このプロトコルは、元のKSUプロトコルを反映する。
[0464]最初のプロトコルを用いてグラフェンを用いて作製されたgNBSの調製物は、同じ日に調製されたバッチであっても、ロット間で性能の大きな変動を示すことが観察された(図27は、ロット120120及びNE100をNE101及びNE102と比較する)。作業溶液の調製において、超音波処理水浴を用いるセンサーの分散が、超音波処理ごとに異なる集団サイズ及び粒子数を生成し得る可能性が考えられた。したがって、粒径が製造前に最適化されない限り、gNBS作業溶液の反復超音波処理は、分析の結果を規則的に変化させる。
[0465]出発材料に対する超音波処理の影響を決定するために、製造を図28の表に概説されるように修正した。出発グラフェン材料を、元のプロトコルに記載されるように超音波処理なしで使用し、撹拌子のみを用いてDMF中に分散させるか、又は出発材料をプローブ超音波処理器を用いて10分間若しくは20分間分散させた(図28の表)。分散後、グラフェンの投入量は、粒子数及び表面積の増加のために減少したが、コンジュゲーション反応に投入されたペプチドTCPPの量は同じままであった。1ロットのNEgNBSをKSUプロトコルを用いて製造し、2ロットを出発グラフェンの10分及び20分のプローブ超音波処理を用いて製造した。
【0203】
[0466]3つ全てをKSUで製造されたロットと比較した(図26)。KSUロット120120及びHEBロットNE100を、同じプロトコル及び分散手順を用いて製造した。HEBロットNE101及びNE102を、プローブ超音波処理を含めることによって改変した。gNBSを、センサー及び緩衝液を含有するが血清を含有しないアッセイ対照(AC)と比較して、正常ヒト血清を用いて標準条件下で評価した。ロット120120及びHEBロットNE100について、バッチ1とバッチ2との間に244%の平均差が観察された。対照的に、プローブ超音波処理ロット(NE101及びNE102)は、バッチ間で132%の平均差を示した(図27)。製造前の超音波処理による分散は、グラフェン出発材料におけるより一貫した粒径、より小さくより許容可能なPDI(<0.5)(図21)をもたらし、最終的なgNBSセンサにおいてより再現性のある活性をもたらしたと結論付けられた。
[0467]最終調製物中の粒径に対する影響を確認するために、本発明者らは、完成粒子に対する水浴中での超音波処理の影響を評価した。有意なABS増加が、製造中に超音波処理を受けなかったNE-gNBSで観察され、グラフェン(265nm)及びTCPP(425nm)について、ABS波長で259%のABSの平均増加であった。
[0468]対照的に、超音波処理を含めて調製されたロットについての経時的なABSの変化は、同じ波長での経時的なABSの平均121%の変化を示した(図29)。本発明者らの結論は、プローブ超音波処理ことを含む粒子の調製が、作業溶液を調製するために用いられる水浴超音波処理ことによって影響を受けない、より均質な懸濁液を生成したということであった。
【実施例19】
【0204】
バイオセンサの調製及び性能
[0469]粒子のアセンブリのための好ましいプロトコルは、超音波処理又は物理的破壊を用いて粒子のサイズ分布を調整することを含む。グラフェンは、アジランアンカーを用いて表面にカルボキシル部分を付加することによって誘導体化される。次いで、ポリエチレンイミン(PEI)等のポリマーを添加し、続いてペプチド色素複合体を結合させることによって表面を修飾する。
[0470]本実施例において報告される一連の実験を用いて、代替の製造プロトコルのために考慮され得る修正を評価するために、他の構成要素を代用することによって、これらのこと及び構成要素の境界を見出すことが求められた。
[0471]特に、合成の第1工程中に起こるカルボキシ標識の量を決定するために実験を繰り返した。0.5M NaOH及びHClの溶液を、高純度HPLCグレードの水を用いて調製した。0.5M NaOH溶液をアルゴンで2時間脱気した後、CGを分散させた。脱気後、250mgのCGを50mLの0.05M NaOH中に分散させた。試料を水浴中で10分間超音波処理し、次いで室温で24時間撹拌した。24時間後、CG懸濁液を濾過してCHを除去し、溶液(CG濾過した0.05M NaOH、0.05M NaOH及び0.05M HCl)を一晩脱気した。次に、20mLの0.05M HClを、CG処理し濾過したNaOH溶液の10mLアリコートに添加した。NaOHを添加するたびにpHが安定したら、次の添加の前にpHを記録した。ブランクについては、0.05M NaOHの10mL溶液を、0.05M HClの添加及び0.05M NaOHによる逆滴定によって同じ方法で調製した。滴定中、脱気を維持した。このプロトコルを用いて、CG調製物は、中和のためにブランクよりも多くのNaOHを必要とし、酸性官能基の存在を示唆した。反復実験は、1.765×10-4及び1.8×10-4mol/gの酸性基の濃度を計算した。元の推定値よりも低かったが、それはグラフェンへの酸性基の付加を支持した(図30パネルA及びパネルB)。
[0472]この観察を支持して、未修飾グラフェン及びカルボキシグラフェンの元素分析は、出発グラフェン材料中に検出できないレベルの酸素及び水素を示した(図31の表)。カルボキシル化後、0.5%~3.5%の検出可能なレベルのH及びOが観察された。元のKSUプロトコール(KSU及びCG1.0)と比較して減少した酸素含量が認められたので、その酸素含量の一部は溶媒に由来すると結論付ける。これを支持して、調製物CG1.2、CG1.3、及びCG1.4(図28の表を参照されたい)は、超音波処理を用いて調製され、乾燥プロトコルを含み、検出されたH及びOのより低い得られたパーセンテージを示した。比較のために、PEI(CGP102)で誘導体物(CGP)は、H、O及びNの有意により高い寄与をもたらした。CGP102を、CG1.0を用いてアセンブルした(図31の表)。
[0473]これに基づいて、元のpH滴定は、グラフェンに付加されたカルボン酸基の数を過大評価し、アルゴン脱気及び逆滴定を用いてより正確に推定されたと結論付けられた。これは、元のプロトコルで生成された生成物中よりも残留溶媒を排除するように努力したCG調製物中の酸素含有量の推定値が低いことを示した元素分析によって支持された。元素分析における差異にもかかわらず、記載された全てのプロトコルは、グラフェンをH及びOでアノテートし、機能的バイオセンサを生成することが依然として可能であった。
【0205】
[0474]バイオセンサアセンブリのための工程を決定するために、グラフェンへのPEIの付加を、前のカルボキシル化工程の非存在下で試験した。第1の例では、対照uPAgNBSを、グラフェンのカルボキシル化、続いてPEI重合による標準プロトコルを用いて組み立てた。第2の実施例では、図28の表のCGP104について概説したように、243mg/gのEDC及び247mg/gのDMAPを用いて、500mg/gのPEIを同じように添加して、0.3グラフェンをCGの代わりに用いた(uPA-GCなし)。
[0475]この反応物を撹拌しながら室温で90分間インキュベートした。第3の例では、550mg/gのPEIを添加したが、EDC又はDMAP触媒を添加せずに、0.3グラフェンをDMF中に分散させた。代わりに、反応物を80℃に1時間加熱した(uPA-80℃)。PEIの添加が完了したら、3つ全ての調製物を200プルーフエタノールで少なくとも5回洗浄し、DMFに再懸濁した。次いで、全ての3つの調製物を、uPA-TCPP配列を用いてペプチドTCPPに結合体化した。3つ全ての構築物を、室温で90分間撹拌しながら、105mg/gのEDC、111mg/gのDMAP及び65mg/gのuPA-TCPPで処理した。得られた粒子をエタノールで洗浄し、37℃のオーブンで一晩乾燥させた。10mM MES、10μM CaCl、MgCl、ZnCl、及びIS:155中に200μg/mlの溶液を調製することによって、センサーを試験した。70μlの各作業溶液を、10μlのプールされた正常血清と45℃で90分間インキュベートした。
[0476]蛍光を、VarioSkan Luxプレートリーダーで425nm励起及び653nm発光で測定した。3つの調製物は全て、0.05未満のアッセイ対照値をもたらし、19~31のプールされた正常血清からのRFUを有していた(図32)。3つのセンサーは全て、非共有結合TCPPを明らかにする処理である10mMKOHへの反応の調整に対して非感受性であった(データは示さず)。
[0477]したがって、グラフェンの元素分析は0.5%の酸素の検出限界があるので、CGの生成に伴って酸素の量が検出可能なレベルまで増加すると、PEIの添加のための標的も検出可能になると結論付けられた。しかしながら、80℃での熱ベースの縮合によって、又は触媒があるPEIをグラフェンに直接添加することによって生成された機能的センサを考慮すると、0.3グラフェンが、センサを組み立てるのに必要な少数のPEI分子を結合するいくらかの能力があるという証拠が得られ、爆発グラフェン中の酸素の存在を示唆する。
【0206】
[0478]より少ない工程を必要とし得るか、又はより効率的であり得る、PEIをグラフェンにカップリングするさらなる方法も評価した。それは、修飾されたテトラエチレングリコール(TEG)、アジド酢酸NHSエステル、又はアジド酢酸等のブロモ吉草酸リンカーことの代用物として同定された。これらの分子は、ブロモ吉草酸+アジ化合物の代わりにazidogroup及びカルボキシレート基又はアミン基を提供する。
[0479]125mgのグラフェンを22.5mLのDMF中でプローブ超音波処理し、60℃に加熱する実験を行った。60mgの10k MW PEIを3mLのDMFに添加し、次いで270mgのアジド酢酸NHSエステルを添加することによって、PEIを調製した。混合物を60℃に加熱し、30分間インキュベートした。次いで、活性化PEI溶液をグラフェンに添加し、温度を60℃から80℃まで10分間かけて上昇させた。反応を1時間継続し、エタノール洗浄及び乾燥を用いて精製した。第2の調製物は、1.2k MW PEIの代わりに10k MW PEIを用いた以外は同様にして作製した。続いて、両方の構築物を、室温で90分間撹拌しながら、105mg/gのEDC、111mg/gのDMAP及び65mg/gのuPA-TCPPで処理した。得られた粒子をエタノールで洗浄し、37℃のオーブンで一晩乾燥させた。10mM MES、10μM CaCl、MgCl、ZnCl、及びIS:155中に200μg/mlの溶液を調製することによって、センサーを試験した。70μlの各作業溶液を、10μlの緩衝液、50mg/mLアセチル化BSA、又はプールされた正常血清と共に、黒色384ウェルプレートにおいて45℃で90分間インキュベートした。
[0480]蛍光を、425nm励起及び653nm発光でVarioSkan Luxプレートリーダー上で測定した(図33)。いずれかのPEI調製物を用いて作製されたuPAセンサーの同様の活性化が観察された。この観察は、異なる分子量のポリマーを選択し、したがってグラフェン消光剤と蛍光体との間の距離を減少させることによって、ペプチド及び関連する色素のグラフェン骨格からの距離を操作することが可能であることを示す。これは、本発明者らが、より短いフェルスター半径がある、又はより効率的なフルオロフォアである、より効率的な蛍光色素に変更するにつれて、必要になる可能性が高い。この実験はまた、ブロモ吉草酸以外のアンカーを用いる能力を確認する。
【0207】
[0481]現在、グラフェン系のバイオセンサの組み立ては、以下の:グラフェン対カルボキシグラフェン対カルボキシグラフェン-PEI対グラフェンバイオセン、の修飾を用いて行われる一連の表面修飾反応からなる。この複雑な合成手順を減らすために、以下に記載されるバイオセンサの組み立ての前にグラフェンの単一表面修飾を調査した。
[0482]丸底フラスコ中、室温で、1gの0.3爆発グラフェンを50mLの蒸留及び脱気したN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Fisher Scientificカタログ番号:D119-20)中に分散させることによって、小規模反応を開始した。次いで、この分散溶液を40℃まで加熱し、556μL(0.0028mol)のアジド-TEG3-アミン(BroadPharm Cat#:BP-20580)をゆっくり添加した。その後、温度を80℃に上げ、反応溶液を1時間撹拌した。1時間後、反応物を室温に冷却し、遠心分離(8000RPMの速度で5分間)によって試料を収集した。最後に、G-TEG3アミン生成物をDMFで5回、無水ジエチルエーテルで3回洗浄した。得られたG-TEG3アミンをアルゴンでさらに乾燥させ、-20℃で保存した。
【0208】
[0483]次に、G-TEG3アミンを用いてMMP1バイオセンサを組み立て、これは、G-PEIバイオセンサについて確立された同じ最適化条件に従って組み立てられた。このために、2つの溶液を調製した:1)3.75mgのTCPP-MMP1ペプチド、5mgのEDC、及び5mgのDMAPを2mLの蒸留及び脱気したDMFに溶解し、2)50mgのG-TEG3アミンを2mLの蒸留及び脱気したDMFに分散した。両方の溶液を超音波処理水浴中で超音波処理し(3分間)、完全に溶解するまでボルテックスした。次いで、溶液1)及び2)を混合し、溶液をさらに超音波処理(3分間)して、すべてがDMF中に懸濁したままであることを確実にした。次いで、溶液を室温で一晩撹拌した。24時間後、バイオセンサを遠心分離(8000RPMで8分間)により回収し、DMFで3回及びジエチルエーテルで3回洗浄した。最後に、バイオセンサをアルゴンで乾燥させて保存し、-20℃で保存した。
[0484]バイオセンサを組み立てたら、NanoBrook 90 Plus PALSを用いて動的光散乱(DLS)及びゼータ電位測定を行った。このために、MMP1の0.03mg/mL溶液を、高純水(HPLC水、Fisher Cat#:W7-4)を用いて調製した。平均サイズ(DLS)、多分散指数、及びゼータ電位表面電荷を示す(図34の表)。結果は、バイオセンサが4.36 mVのわずかな正電荷、713.30nmの平均直径サイズ、及び0.147のPDIがあることを実証した。
【0209】
[0485]以下の実験は、両方のバイオセンサ、G-PEImMP1対G-TEG3アミンMMP1の並列比較であった。この実験のために、各MMP1バイオセンサの0.03mg/mL溶液を、HEPES緩衝液(10μmol/LのCa2+、Mg2+、Zn2+で強化した25μmol/LのHEPES緩衝液、pH7.20)を用いて調製した。バイオセンサ溶液を調製した後、pHは、G-TEG3アミンについては7.40に、G-PEIについては7.52に増加したので、次いで、0.1 M HCl溶液を用いて、両方の溶液についてpHを7.20に調整した。
[0486]3つの溶液を(以下に記載されるように)調製し、96ウェルプレート(Greiner Bio-one、マイクロプレート96ウェル、PS、F底、Black非結合;品番:655900)に2連で播種した。
-溶液1:試料対照(125μLのHEPES緩衝液+5μLの収集された対照血清-S、P、又はプールされたもの)
-溶液2:アッセイ対照(HEPES緩衝液中の125μLのバイオセンサ溶液+5μLのHEPES緩衝液)
-溶液3:アッセイ(HEPES緩衝液中の125μLのバイオセンサ溶液+5μLの収集した対照血清-S、P、又はプール)。
[0487]溶液をプレーティングした後、96ウェルプレートを37℃で1時間インキュベートし、1時間のインキュベーションの間、15分毎に蛍光強度を測定した。BioTek Synergy H1プレートリーダー(exc=425±10nm、em:650±20nm)をnm、em:±20nm)。図35は、各対照血清(S、P、及びプール)について、MMP1g-PEI及びMMP1g-TEG3アミンバイオセンサについて15分毎に測定した蛍光強度を示す。G-TEG3アミンについて1時間のインキュベーション後に測定された最も高い強度は、G-PEIバイオセンサと比較して、試験した3つ全ての対照血清についてより高かった。
[0488]また、強度は、3つ全ての対照血清試料で試験した両方のバイオセンサについて、ほぼ線形の傾向に従って経時的に増加した。図36パネル(A)は、各対照血清を用いて試験した両方のバイオセンサとの1時間のインキュベーション後に測定した強度を示す。ここで、G-PEIg-PEI対G-TEG3アミンを比較して注目することができ、これは、G-PEIと比較して、対照血清S及びPについてよりもG-TEG3アミンについてほぼ2倍高かった。アッセイ対照についての強度は、G-PEIと比較してG-TEG3アミンについてより低かったことも言及されるべきであり、これは図36パネル(B)に要約される。全体として、G-TEG3アミンベースのバイオセンサは、より低いアッセイ対照及び血清に対するより大きな特異的シグナルがある改善されたシグナル/ノイズ測定値をもたらす。
【0210】
[0489]上記の実験を考慮して、爆発合成されたグラフェンは疎水性であり、水又は水性緩衝液中に実質的に分散しない(及び多くの界面活性剤が有機色素の蛍光量子収率を妨げる)ので、所望の安定性を得るためには親水性コーティングの添加が行われるべきであると結論付けられた。
[0490]これは、ニトレン付加を介してグラフェンスタックの表面にカルボン酸基を付着させることによって達成することができる。[52]あるいは、アミン末端オリゴエチレングリコールは、ニトレン付加を介して爆発グラフェンの表面に付着させることができる。
[0491]このカルボン酸にポリエチレンイミンを結合させる。あるいは、アミン基を爆発グラフェンの表面に付着させ、次いでカルボキシル基を示すポリマーに付着させることができる。
[0492]あるいは、ポリマーへのアジド基があるグラフェン付加のために前駆体を結合させ、次いでポリマーをグラフェン表面に固定することができる。
[0493]付着した有機コーティング(ポリマー、オリゴエチレングリコール)は、以下の機能がある。
[0494]親水性コーティングなしでは、グラフェンnanobioensorsは水性緩衝液中に分散可能ではない。バイオセンサの達成可能な濃度は、コーティングの化学的性質及びグラフェンに対するコーティングの質量比に強く依存する。
[0495]コーティングは、水性緩衝液中に分散された場合のバイオセンサの安定性に関与し、バイオセンサのグラフェンコアは極めて安定である。
【0211】
[0496]PEIのサイズ及び構造は、認識配列のタンパク質分解性切断の際に観察される蛍光の増加に関与する。一般に、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)は、グラフェン(アクセプター)と結合した有機フルオロフォアとの間で生じている。FRETの有効性は距離に依存する。したがって、PEIの構造(分岐対直鎖)が重要である。しかしながら、グラフェン(特にグラフェンスタック)は、UVから近赤外領域までの光を効率的に吸収する。び庵ら(2016)による理論的研究は、グラフェン単層の周りの消光球が約20nmに及ぶことを示唆している。[53]この「Foerster Volume」内で、強い消光が起こり、これはTCPP蛍光を極めて強く減少させる。フェルスター体積から脱出すると、TCPPは発光を開始する。
【実施例20】
【0212】
多重グラフェンバイオセンサ
[0497]同じ反応ウェル内で複数の異なるセンサを動作させる可能性を考慮した。グラフェンは、広いスペクトルの光吸収がある(図37)。したがって、複数の異なるペプチド-色素配列を単一のグラフェン粒子上で組み立てることができ、又は異なる単一のペプチド-色素で各々標識された複数のセンサーを一緒に混合することができる。
[0498]2つの独立して標識された粒子を混合する後者のシステムを用いて、本開示のバイオセンサの多重能力を評価した。好中球エラスターゼ(NE)及びアルギナーゼ(ARG)のペプチドを、FAM又はTAMRAで様々に標識した。ペプチド-FAM又はペプチド-TAMRAを、ペプチド-TCPPの製造プロセスに直接置き換えたが、唯一の改変は、これらの色素の蛍光効率の増加による半分の密度でのコンジュゲーションであった。そこで、ペプチドを35mg/g CGPで添加した(図28の参照表)。gNBS作業溶液は、NE-FAM、NE-TAMRA、又はuPA-TCPPgNBSを、10mM MES、10μM CaCl、MgCl、ZnCl、IS:155から構成されるアッセイ緩衝液に集めることによって調製した。漸増量の各gNBSを含む125μlの作業溶液を黒色96ウェルプレートに分注し、単一ウェルにおいてアッセイ対照(AC)用の緩衝液で、又は3連で5μlのプールした正常血清で刺激した。プレートをVarioskan Lux中、45℃でインキュベートした(図38及び図39)。蛍光を、FAMについてEx496/Em526及びEx555/Em586を用いて90分間にわたって各反応について観察した。あるいは、上記のKSU製造プロトコールを用いて、MMP7及びMMP9ペプチドをローダミン-Bに結合させ、70mg/gでCGPに結合させた。gNBS作業溶液を、10mMのMES、10μMのCaCl、MgCl、ZnCl、IS:155中の30μg/mLのgNBSの最終濃度で調製し、125μLの反応物を黒色96ウェルプレート中に3連で設定し、5μLの血清又は緩衝液のみ(AC)と共に37℃で60分間インキュベートした。BioTek Synergy H1 FL800プレートリーダー上でEx535/Em570で蛍光を測定した(図39)。
[0499]これらの観察は、グラフェンが複数の異なる色素に対して有効な消光剤として作用し得るというモデルを支持する。異なる色素を用いて複数の異なるセンサーを構築することができ、これらの色素を別個の反応においてグラフェン骨格によって首尾よくクエンチすることができることが実証されたので、複数の色素を同じ反応において観察することができることを実証することを試みた。
【0213】
[0500]Arg-FAM及びNE-TAMRAgNBSを再び調製して、上記のようなgNBS製造35mg/g CGPへの投入ペプチド色素寄与を半減させた。gNBS作業溶液は、400μg/mlのArg-FAM又はNE-TAMRAgNBSを、10mMのMES、10μMのCaCl、MgCl、ZnCl、IS:155から構成されるアッセイ緩衝液に集めることによって調製した。80μlの反応物を、35μlの単一センサー及び35μlの緩衝液、又はいずれかのセンサーの200μg/mlの最終濃度のために混合された35μlの各センサーがある384wブラックプレート中に設定した。10μlのプールした正常血清又は緩衝液を各センサー溶液に添加した。
[0501]センサーを全て三重に刺激し、45℃で90分間インキュベートし、測定を10分間隔で行った。各ウェルを、496/526nm(FAM)及び555/586nm(TAMRA)で測定した(図40)。
[0502]個々のセンサー及び多重化されたセンサーは両方とも検出することができ、一方のセンサーから他方のチャネルへのシグナルは検出されなかったが、両方のセンサーが存在する場合にはいくらかの消光の証拠があることに留意されたい(いずれかのチャネルにおいて、シングルプレックス蛍光を多重化蛍光と比較されたい)。Arg-FAMがシングルプレックス及びマルチプレックス反応において上昇したバックグラウンドを示したことも注目された。これは、高効率色素が用いられている場合にコンジュゲートされるペプチドの量が、グラフェン骨格のクエンチする能力を超え得ることを示すものとして解釈された。
[0503]このノイズは、標識のレベルを滴定することによって軽減することができる。あるいは、FAM色素とグラフェンとの間のより短い連結化学は、FAMをFRETパートナーにより接近させ、消光を改善する。これに関連して、実行可能な解決策として、図32に記載されているように、10k MW PEIを1.2K MW PEIで置換することを考慮した。
[0504]グラフェン骨格が結合した色素を効果的に若しくはアジド酢酸NHSエステル若しくは同等物によるような直接コンジュゲーションの組合せを用いることは、色素標識ペプチドをグラフェン骨格にコンジュゲートして、グラフェン骨格が結合した色素を効果的にクエンチすると考えられた。
[0505]この化学の変形は、ペプチド-色素コンジュゲートがグラフェンの20nm以内に維持される限り、上で例示したように有効であると予想される。[53][54]したがって、信号対雑音性能は、選択された色素の量子効率に応じて色素の効率的な消光を最適化するために重合又は共役化学を最適化することによって色素共役体とグラフェン骨格との間の距離を変更することによって修正される。このコンジュゲーション選択は、ペプチド-色素複合体の二次コンジュゲーションを可能にし、グラフェン粒子の可溶化を支持するために、カルボン酸、アミノ、又はアルコール側鎖等の十分な荷電基にも寄与しなければならない。
【0214】
[0506]最後に、NE-FAMgNBS反応を二連で設定し、一方のアッセイは96wブラックプレートで行い、Varioskan Luxプラットフォームで分析し、他方のアッセイは96ウェルPCRプレートでNE-FAMgNBSを使用し、StepOnePlus PCRプラットフォームで分析した(図31)。バックグラウンドシグナルの不在及びインキュベーション時間と蛍光との間の線形関係は、両方のプラットフォーム上で明らかであり、これらのタイプのgNBSアッセイが、定量的PCRプラットフォーム等の、蛍光光度計よりもさらに広く分布している実験室装置上で実行され得る可能性を高める。
【実施例21】
【0215】
血清の熱処理
[0507]プロテアーゼ酵素を熱不活性化することによってこれらの反応の特異性を実証するために実験を設計した。この目的のために、2つの異なる対照血清の試料を55℃で1時間熱処理した。熱処理血清及び非処理血清を、標準条件を用いてMMP10及びCTSHgNBSと共にインキュベートした。両方の血清及び両方のセンサーについて、RFUのわずかな上昇が予想外に観察された。(図42パネルA)。2つの対照血清を65℃で10分間処理して実験を繰り返した(より長い間隔は血清の沈殿を引き起こした)。さらに、本発明者らは、センサー反応における最終EDTA濃度が5mMとなるように血清をEDTAで処理した。本発明者らはまた、MMP10gNBSの代わりにMMP2を用いて、この観察がどのように一般化可能であるかを調べた(図42パネルB)。血清をEDTAで処理すると、他の報告と一致して活性がわずかに減少した。[55]対照的に、血清を65℃で熱処理すると、両方の血清及び両方のセンサーにおいて活性が有意に増加した。EDTAの添加は、未処理血清に対して行ったように、上昇した活性を適度に減少させ、この影響はMMP2センサーに対してより顕著であった。したがって、驚くべきことに、高温での血清の処理は、gNBSシグナルを増加させることができるさらなるプロテアーゼ活性を明らかにする。この変化が、チモーゲンが活性化されるにつれて生じるさらなる活性化事象の結果であるかどうかを決定するために、本発明者らは、CTSHgNBSを、プールされた正常血清又は65℃で10分間熱処理された複製試料で刺激した。反応を、最初の1時間後に30分間隔で240分間にわたって測定した。未処理血清及び熱処理血清の活性は両方とも、持続時間にわたって線形反応として維持された(図43)。さらなるチモーゲンが活性化された場合、動態の増加が経時的に予想される。しかしながら、動態の変化の証拠は見られなかった。
[0508]この結論を支持するものとして、プールされた正常血清センサー活性に対する熱処理の影響を、18のプロテアーゼバイオセンサにおいて評価した(図44)。アッセイ対照(RFI>0.05)を有意に上回るシグナルがある全てのセンサーは、65℃の熱処理血清を用いた場合、平均3.2倍の活性の増加を示した。
[0509]最後に、MMP12及びCTSDgNBSを、5mM MES、10μMカチオン及びIS:155の作業溶液125μl中で調製した。それらを5μlの緩衝液(アッセイバックグラウンド)で、又は5μlのPNSで三連で刺激した。複製プレートを組み立て、各複製をVarioSkan Lux中で37℃、41℃又は45℃でインキュベートした。インキュベーションの間、10分間隔で蛍光を測定した。試料バックグラウンド測定は、5μLの血清を添加した125μLの緩衝液(センサーなし)と共にインキュベートしたウェルからの結果を示した。この実験群では、血清は測定前に熱処理されなかった。代わりに、反応を漸増温度で実施した。
[0510]各温度増分はさらなる活性を明らかにしたので、MMP12及びCTSDgNBSの両方について、41℃インキュベーションは37℃よりも多くの蛍光を生じ、45℃インキュベーションは41℃よりも多くの蛍光を生じた(図45)。MMP12及びCTSDについては、予め熱処理されていない血清中で、アッセイ温度を41℃に上昇させると、RFUがほぼ2倍になった(各々1.7倍及び1.9倍)。アッセイ温度を45℃に上昇させると、RFUは3倍になった(3.1×)。これらの条件下で、センサーのバックグラウンドシグナル又は試料バックグラウンドの上昇はなかった。比較のために、本発明者らはまた、65℃で5分間血清を前処理し、65℃での前処理及び上昇したアッセイ温度の両方が適用された場合のシグナル対ノイズに対する影響を比較した(図45における白記号及び黒記号を比較)。
[0511]65℃で血清を前処理することは、熱処理血清に対してシグナルを2.3倍増加させる。それはまた、各々41℃及び45℃で続いて実行されるアッセイについて2.3倍及び2.0倍のシグナルである。したがって、血清を前処理し、高温でプロテアーゼアッセイを行うことにより、別個のさらなる機構を用いてシグナル対ノイズが改善される。
[0512]プロテアーゼ酵素の熱安定性に関して、活性MMP2酵素は、本明細書で用いられる温度よりも実質的に高い70℃及び78℃の2つの不可逆的アンフォールディング温度があることが報告されている(A)。[56]プロテアーゼ活性を調節するように設計された阻害剤のファミリーが、より高い温度感受性を発現し、これらの反応をより高い温度で操作することが、それらの阻害剤の影響を低減するという可能性が考えられた。上昇した温度の影響は、シグナル:ノイズ比における有意な改善に共に寄与するアッセイの複数の局面を変化させると結論付けられた。
【0216】
[0513]プロテアーゼ酵素の安定性及び温度上昇に対するインヒビタータンパク質の相対的不安定性は、阻害された酵素に対する活性の比を変化させることが予想される。高温は、プロテアーゼ活性の改善された検出を提供する高温での上昇した酵素動態をもたらす。さらに、温度を上昇させる粒子の周囲で観察され、本明細書に記載されるタンパク質コロナを改変することが予想される(図46)。
[0514]沈殿を引き起こす前に血清中の他のタンパク質を変性させる温度と、プロテアーゼ活性に対する改善とのバランスをとる温度依存性の勾配が予想された。アッセイ前又はアッセイ中に血清をインキュベートすることは両方とも、シグナル対ノイズ比を増加させるのに有効である。41℃、又は45℃、又は50℃、又は55℃、又は60℃、又は65℃、又は70℃、又は75℃、又はこれらの標的間の間隔が、所望の影響に有効であると考えられている。
【実施例22】
【0217】
陰性対照
[0515]タンパク質が粒子の周りに凝集するときに形成されるコロナを記載している文献が十分に記載されている。[57]いかなる活性も欠くタンパク質の溶液が、バックグラウンドシグナルを生成し、それに寄与することを示すことができるかどうかを試験することが望まれた。これらのセンサーの大部分がプロテアーゼ特異的切断を必要とすることを想起されたい。
[0516]アルギナーゼは、標的を翻訳後修飾する酵素としての例外である。gNBS系では、アルギナーゼはアルギニンをオルニチン及び尿素に変換する。この修飾は、構造を変化させ、ペプチドに末端TCPP色素をグラフェンのフェルスター半径の外側に配置させる。したがって、バックグラウンド性能に対する一般的なタンパク質コロナの寄与は、理解するのに重要である。陰性対照としてタンパク質を用いてシグナル対ノイズを理解するために、18gNBSで175個のヒト血清試料を評価した。各gNBSをMESアッセイ緩衝液(10mM MES、10μM Cations、155mM NaCl、pH7.2)中に集めた。125μLの各gNBS作業溶液を3つのウェルに添加した。5μLの血清を二連のウェルに添加し、5μLの緩衝液を第3のウェルに添加した。
[0517]試料のみの対照も含め、5μLの血清を125μLのセンサーを含まない緩衝液に加えた。加えて、センサーの各セットも、20mg/mLアセチル化BSAの溶液5μlで刺激した。プレートを緩く覆い、45℃で90分間インキュベートした後、蛍光をVarioskan LuxプレートリーダーでEx/Em 425/653nmで500ms間測定した(図24)。1つの例外(ArggNBS)を除いて、全てのgNBSによって得られた平均蛍光は、BSA反応よりも有意に大きかった。1つのセンサーのみが、BSA対照以下のシグナルがある血清試料を有していた。BSA対照は、緩衝液のみにおいてセンサーによって提示される蛍光の量を測定するために用いられたアッセイ対照よりも有意に大きかった。本発明者らは、この陰性対照を、gNBSの非特異的性能のはるかに貴重な反映として解釈する。ArggNBSの活性に対する温度の影響は、このセンサーの最適温度が45℃未満であることを証明し得る。
【実施例23】
【0218】
凍結乾燥
[0518]反復可能かつ再現可能な性能を維持することは、有効な信号対雑音比を維持することの中心である。MES作業緩衝液中のuPA、CTSE、CTSK、及びNEgNBSの調製物を提供し、凍結乾燥プレートを、3つの異なる賦形剤製剤を用いて調製した。プレートを、同じロットの正常血清を用いて異なる日に試験し、同じプレートに添加した湿式化学バッチと比較した。
[0519]両方の設定における変動係数の減少によって測定されるように、湿潤試薬と比較した場合、アッセイ間及びアッセイ内精度の改善が観察された(図47)。したがって、より高い精度を維持することは、プロテアーゼ活性の測定が、異なる測定にわたってより反復可能なシグナルを生成することを可能にする。この精度は、アッセイ設定において一定のシグナル対ノイズ性能を維持するために必要である。プロテアーゼ活性の一貫した反復可能な再現性のある測定を用いて、プロテアーゼ標的のパネルにわたるプロテアーゼ活性間の関係を組み立てて、正常な患者由来の血清を異なる炎症状態のスペクトルがある患者から区別することができる。
【実施例24】
【0219】
グラフェンバイオセンサの臨床性能
[0520]gNBSの性能を臨床試料で評価した。第1のコホートでは、256人の対象が欧州施設から集められ、肺がん(n=89)又は非肺がん(n=167)として分類された。血清試料をサーマルサイクラー中65℃で12分間熱処理し、15℃に冷却した。MESアッセイ緩衝液(5mM MES、10μMカチオン、pH7.20、154mM NaCl)を用いて、センサーに応じて0.1~0.15の最終ABS425nmに調整された各gNBSがある作業溶液を作製した。この調製物を水浴中で10分間超音波処理し、125μLを複製ウェルに分注した。5μlの熱処理血清を2連のウェル及び単一血清のみの対照に添加した。センサーのみのアッセイ対照を各プレートに含めた。
[0521]プレートをゆるいホイルで覆い、37℃のインキュベーターに90分間入れた。蛍光をVarioSkan Luxで読み取り、Ex/Em 425/653nmで読み取った。LC及び非LC対象について観察された平均蛍光を報告した(図48の表)。プロテアーゼ活性の一般的な減少は、肺がん患者対非肺がん患者において記録される。患者のステージ及び疾患のサブタイプは、この観察に影響を与えなかった。同様に、非LC対象は、非LC分析を混乱させなかった乳がん、結腸直腸がん及び血液悪性腫瘍がある9人の患者を含んだが、これらの対象はこの分析に含まれなかった。175人の対象の第2のコホートを、「US SST-18」コホートの一部として採用した。
[0522]この実験では、全ての非LC対照は、20パック年以上の喫煙習慣がある年齢適合ドナーであり、LCコホートの症例対照群であった。LCコホートにおいて、LC試料の大部分は、未治療のステージIの対象からのものであった。この実験において、本発明者らは、第2のロットのセンサー、異なるVarioskan Lux蛍光光度計、EUではなくUSに由来する試料を試験した。gNBSを集め、溶液を、MESアッセイ緩衝液(10mM MES、10μMカチオン、pH7.20、155mM NaCl)中のセンサーに応じて0.1~0.15の最終ABS425nmに調整した。125μlのアッセイ緩衝液又は各gNBSを含有するアッセイ緩衝液を96wブラックプレートにロードした。
[0523]プレートをルーズホイルで覆い、45℃で90分間インキュベートした。Ex/Em 425/653nm(500ms)でワンタイムエンドポイントを用いて、VarioSkan Luxで蛍光を読み取った。LC試料における全体的なプロテアーゼ活性の同様の著しい減少が観察された(図48の表)。肺がんのRFUを様々な非肺がんコホートと比較するスチューデントの両側異分散t検定で計算した。本計算は、両方のコホート及び全てのセンサーにわたって2.6e-6~2.6e-27のp値を与えた。この観察の影響は、これらのセンサが、疾患の存在を検出する極めて強力な能力がある診断可能性を達成するために、多くの異なる配置で構成され得る可能性である。
[0524]図49は、肺がん試料と非肺がん試料のRFUを比較するスチューデントの両側異分散t検定のp値の表を示す。
【実施例25】
【0220】
バイオセンサを作製するための例示的な方法及びシステム
[0525]粒子を組み立てるための例示的な方法は、以下の(a)~(e):
1)少量の層状グラフェンをジメチルホルムアミド(DMF)グラフェンの塊を分散させて溶液を得る。
2)1時間にわたってグラフェン1g当たり10~15KJを用いるプローブ超音波処理器を用いて、最大1時間にわたって溶液を超音波処理する。
3)カルボキシル化グラフェン(CG)を得るために、本明細書に記載のアジ化ナトリウム及びブロモ吉草酸との求核置換反応を用いることによって、グラフェン表面を官能化してカルボキシル化表面を誘導する。
4)CGをDMF又はエタノールで洗浄して反応物を除去する。
5)PEIで集成されたコア粒子については、CGをDMFに再懸濁してCG/DMF溶液を得る。
6)超音波処理を用いてCG/DMFを分配する。
7)例示的なポリエチレンイミン(PEI)の場合、1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を規定の比で1~2時間、RTで用いてPEIをコンジュゲートする。
8)生成物をエタノールで十分に洗浄して、コア粒子を得る。
9)コア粒子を周囲温度で30分間乾燥させる。コア粒子を37℃で24~48時間さらに乾燥させる工程と、を含む、方法
を含むことができる。
[0526]対応するシステムは
a)層状グラフェン;
b)グラフェンの修飾、ポリマーの付着、及びその後のセンサーのための試薬;
c)超音波処理、プローブ超音波処理、高せん断ミキサーを用いる物理的分散、分散(例えば、マイクロ波)のための装置;
d)アセンブリにおいて用いられるグラフェンの濃度を標準化するために吸光度を測定するためのツール(例えば、Nanodrop分光光度計);及び/又は
e)センサを乾燥させるためのセンサ製造のためのデバイス(例えば、場合によっては真空又は乾燥チャンバによって補完されるオーブン)、を含みうる。
【実施例26】
【0221】
本開示のバイオセンサを用いてバイオマーカーを検出するための例示的なシステム
[0527]本開示による1つ以上の標的バイオマーカーを検出するための方法は、以下の構成要素を含むシステムを用いて実施することができる。
1)ナノセンサー。これは、単一のセンサ又は複数のセンサとすることができる。センサは、溶液として提供され、各センサの作業溶液について規定された吸光度を用いて作業濃度に調整することができる。あるいは、センサーは、不透明な96又は384ウェルプレート中で予め凍結乾燥されて提供され得る。
2)緩衝液:センサアクティビティは、最適緩衝液によってサポートされる。この緩衝液は、溶液として、又はマルチウェルプレート中の凍結乾燥ケークとして提供され得る。緩衝液は、規定のpHで溶液を安定化するための成分を含む。現在の構成では、このpHは7.2である。最適pHは、存在するセンサー並びに酵素の健康及び活性を支持するために必要な最適pHに依存して変化し得る。
好ましくは、緩衝液はまた、一塩基性イオンを含む。一塩基性溶液は、酵素の健康を支持し、粒子にイオン緩衝を提供して分散を支持する。また、ペプチド立体配置は、一塩基性塩濃度によって影響を受ける。
一般に、緩衝液は酵素活性に必要なイオンを含有する。プロテアーゼ酵素の例では、MMPは二価カチオンを必要とする酵素であるので、緩衝液には二価カチオンの選択物が補充される。
[0528]さらなる成分は、例えば、以下を含んでよい。
3)標準曲線は、ある範囲の濃度で含まれた色素から構成された。これらの標準曲線は、相対蛍光単位(用いられる蛍光光度計に依存する)を色素の濃度に変換するために用いられる。標準曲線は、多重化反応のための複数の異なる色素を含有し得る。したがって、標準曲線は、キットが多くの異なるプラットフォーム上で用いられることを可能にする。あるいは、相対蛍光を用いてもよい。
[0529]これに加えて又はこれに代えて、システムは以下を含んでよい。
4)機能的センサーの存在を実証するための対照。これらのコントロールは、既知の活性及び実証された活性がある血清試料を含み得る。それらは、既知の活性がある精製酵素であってもよい。それらは、ペプチドを加水分解して色素を非酵素的に放出するように設計された化学であってもよい。
[0530]システムは以下を含んでよい。
5)実験期間中、マルチウェルプレートを一定温度に維持することができるインキュベーター。いくつかの蛍光計については、このインキュベーション能力が含まれる。プレートは、実験期間中又は5分間まで、25℃又は37℃又は41℃又は45℃又は50℃又は55℃又は60℃又は65℃で維持される必要がある。
6)反応中に放出された蛍光の量を決定するための蛍光光度計。この蛍光は、典型的には終点として測定されるが、変化率が1分又は5分又は15分又は30分又は60分の間隔で測定されるように動力学的に測定されてもよい。
7)定義されたアプリケーションに特有のアルゴリズム。診断状態を説明するためのセンサ活動の統合は、定義された活動を解釈し、試料に分類を割り当てるアルゴリズムを必要とする。このアルゴリズムは、アプリケーション及びセンサに特有である。
[0531]特に、成分1~4及び7)は、当業者によって理解されるように、部品のキットに含まれ得る。
[0532]多重検出に関して、さらなる考慮事項は以下の通りである。色素選択、センサーと複数の色素との組み合わせは、色素間にFRETがないことを確実にするように較正される。加えて、センサが単一の粒子に取り付けられるか、又は別個の粒子に取り付けられて混合されるかに依存して、粒子の最終濃度は、反応物と相互作用して反応を駆動するのに十分な粒子が存在するが、放出された信号をクエンチするほど多くのグラフェン粒子が存在しないように最適化されなければならない。さらに、混合センサーについては、両方の酵素標的の最適な活性について妥協する緩衝液が存在すべきである。したがって、安定したpH及び規定された塩濃度並びに分光光度的に規定されたセンサ濃度がある緩衝液を提供することは、環境を再現し、バッチ間の安定性を支持する(図27参照)。
【実施例27】
【0222】
試験溶液中でのバイオセンサの安定性、再現性、シグナル対ノイズ比及び多重化能力
[0533]gNBSセンサーの製造中、センサー試薬に共有結合している層状グラフェンはほとんどない。共有結合的に集合しているグラフェン粒子は、水溶液中で分解されない。結果として、粒子は、水溶液中でpHドリフトを引き起こさないことが観察され、本明細書に記載されるように、それらは水溶液中で分散性である。
[0534]グラフェン系のセンサの構造的利点の第2の態様は、血清の存在下での水溶液中のナノセンサの各ファミリーの信号対雑音性能に反映される。時間0では、t=0で酵素が切断して蛍光を放出する時間がなかったので、蛍光シグナルの有意な放出は予想されない。さらに、血清を添加すると、シグナルの増加は、システムの感度と、シグナルをすることができるような一貫して低いノイズの両方に依存する。FeNB及びgNBSの両方について、t=0でセンサー及び血清と共にインキュベートした試料の関係を評価し、2つの差を見出した。
[0535]緩衝液のみの存在下でのセンサーであるアッセイ対照は、FeNBについてのセンサーに依存して、60分間にわたってシグナルのわずかな増加を示す。この増加は2倍のオーダーである。対照的に、90分まで水溶液中に維持されたgNBSは、バックグラウンドシグナルの有意な変化を示さない。しかしながら、音波処理で調製されず、溶媒が除去されていないgNBSのS:N性能は、S:Nがt=0で低減される一方で、経時的により低いシグナルも生成する。したがって、gNBSセンサーの性能は、t=0におけるより良好なS:N及び刺激とのインキュベーションにおける改善されたS:N検出に依存する。
【0223】
[0536]より重要なことに、t=0におけるグラフェンNBSについてのシグナル:ノイズが計算される場合、試料蛍光をアッセイ対照蛍光で割ることによって測定されるように、低いシグナル対ノイズが観察される。gNBSセンサは、t=0において、アッセイ対照と試料との間により小さい差を示す。t=0でのS:Nは、プローブ超音波処理又は大規模乾燥を用いて製造されなかったロット内の複数の異なるグラフェンセンサ(これらの例では、CTSB、uPA、CTSK、CTSD、CTSE、MMP12、MMP13、MMP15、NE、MMP3、MMP9)について4.1+/-1.6(1S.D)である。
[0537]対照的に、超音波処理及び乾燥が含まれると、t=0でのS:Nは6.9~7.6に増加し、FeNBと有意に異ならない。しかしながら、血清で60分間刺激した後、例示的なFeNBセンサーCTSBでは、t=60におけるS:Nは2.0であった。CGKSUロット120120で作製されたCTSBについて、t=60でのSNは9.8であった。HEB CTSB100については、SNは12.0であり、HEB CTSB101についてはSN=18.5であり、CTSB102についてはSN=27であった。したがって、溶媒除去及び超音波処理が製造に含まれるので、血清の単一試料で明らかになった酵素活性の量は、この実施例では2.0から27に増加する。
[0538]S:N性能差は、t=0性能及び所与の試料について経時的に生成された相対信号の両方において明白である。したがって、S:Nは、いかなる個々のセンサの異なる性能に依存しない。むしろ、骨格に一般化することができ、特定の酵素活性に一般化することはできない。gNBSに対するFeNBを、溶媒除去及び超音波処理の包含を反映するgNBSの異なるロットを用いた単一の実験において比較した。gNBSのS:N性能は、溶媒除去及び超音波処理を反映する製造プロトコルの各反復とともに増加する。
【0224】
[0539]試験溶液を定義する際に、最適な処方は、センサーの安定性の尺度である最良のS:N性能を、酵素活性のための健康な環境の提供を反映する経時的な活性の最良の動力学的増加と調和させる。
[0540]これ。バランスが観察された。これは、MESを用いて7.2のpH環境で最適化される。一塩基性塩の包含は、155mMで包含される場合、酵素活性のための生理学的環境を維持した。しかしながら、0mM~1Mの範囲の一塩基性塩濃度もまた、センサーのS:Nに影響を与える。図14に報告する結果によって実証されるように、一塩基性塩濃度の増加は、60分でのアッセイ対照シグナルを減少させる。したがって、粒子のみに起因する「ノイズ」は、塩濃度が増加するにつれて低くなる。155mMを、粒子ノイズを減少させ、かつ生理学的条件で酵素活性を支持する濃度として用いた。
【実施例28】
【0225】
加熱工程がある実施形態における、試験溶液中のバイオセンサの安定性、再現性、信号対雑音比、及び多重化能力
[0541]熱処理の影響は、インキュベーションの前に血清に適用された場合、又はアッセイが37℃より高い温度で行われた場合に観察されている。典型的なセンサー、この例ではMMP10について、65℃で5分間のインキュベーションによるアッセイの前の熱処理、SM/ΔCS:Nは、熱処理なしで1.2であり、熱処理ありで1.3である。従って、低い信号対雑音比は熱処理によって増加しない。血清の存在下でのインキュベーション後、未処理血清のシグナルは、90分後に14.1 SM/ACに増加した。対照的に、熱処理された試料SM/ACは26.8に増加し、信号強度において190%の増加であった。したがって、熱処理の影響は、t=0シグナルについては明らかではなく、むしろ、熱処理(図44)及び増加したアッセイ温度(図45)の両方が、より多くの酵素活性を提供し、これは、測定された動態間隔にわたってより大きなシグナルをもたらす。酵素活性は、上昇した温度(65℃)で前処理された場合、平均3.2倍増加する。同様に、シグナルは、アッセイを45℃でインキュベートした場合、平均で3.1倍増加し、41℃でインキュベートした場合、1.7~1.9倍増加した。このような変化は全てのセンサーで観察され、測定された活性の増加は温度に依存していた。したがって、41℃は、37℃よりも高い活性を示した。45℃は41℃よりも高い活性を示した。
[0542]温度調節機能があるオーブン又は蛍光光度計において、温度を確立し、維持した。高温は、プロテアーゼ活性の改善された検出を提供する高温での上昇した酵素動態をもたらす。さらに、温度の上昇は、粒子の周囲に観察され、本明細書に記載されるタンパク質コロナを改変することが予想される(図46)。
[0543]沈殿を引き起こす前に血清中の他のタンパク質を変性させる、プロテアーゼ活性に対する改善と温度とのバランスをとる温度依存性の勾配が予想される。アッセイ前又はアッセイ中に血清をインキュベートすることは両方とも、シグナル対ノイズ比を増加させるのに有効である。41℃、又は45℃、又は50℃、又は55℃、又は60℃、又は65℃、又は70℃、又は75℃の温度、又はこれらの標的間の間隔は、所望の影響に有効であると考えられた。
【実施例29】
【0226】
爆発グラフェンPEIコア粒子
[0544]以下の例示的な実験手順は、爆発グラフェンを用いて説明される。[12][58]しかしながら、実質的にいかなる数層グラフェンをバイオセンサバイオマーカー検出の合成のために用いることができる。これに関連して、利用されるグラフェンシート又は凝集体は、水に分散可能なサイズ(直径<1マイクロメートル)である。
[0545]爆発グラフェンは、典型的には5~7層の積層グラフェンからなる。各層のおおよその直径は150nmである。[8]カルボキシグラフェンを形成する表面反応は、グラフェンスタックの2つの外側表面及び潜在的にエッジのいくつかのみを対象とする。
[0546]ポリエチレンイミンは、カルボキシグラフェン表面のカルボン酸基に共有結合することができる(カルボン酸基の密度:pH滴定によると、1.76±0.6×10-4モル-COOH基/グラム)。
【実施例30】
【0227】
グラフェン粒子に付着したポリマー又は他の有機若しくは無機構造の特徴を特徴付ける
[0547]ポリエチレンイミンは極めて親水性である(コンセンサスlogP=-1.94、水への溶解度>1.2×10グラム/リットルHO、これは、グラフェン粒子を水性緩衝液中に分散させるために必要である)。[59]
[0548]主に、正確なサイズの全てのポリマーを結合させることができる。-コンセンサスlogP<0、又はHO 1リットル当たり>1.0×10グラムの水への溶解度を特徴とする。[23]グラフェン(I)の光物理的特性は以下の通りである。[53]-20nmまでの距離にわたって付着した有機蛍光体、金属粒子、及び量子ドットの消光を可能にし、これもまた、いかなる他の既知のエネルギー移動距離(フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)及びプラズモン消光)よりも大きい。[53]
[0549]したがって、である。結合したポリマー層+共結合した認識配列の直径は20nmを超えない。そうでなければ、結合したフルオロフォアの蛍光は、酵素的放出の際に増加しない。分子量対粒子直径のプロット(Loebach(1975)、図1[60]この推定に適用可能である、図50として報告される本明細書のエマルジョンポリマーについて、最大20nmの直径を特徴とするポリマーの許容可能な質量範囲は、0.5~1.7×10(Mn)及び0.5~3.0×10(Mw)である。しかしながら、それらの直径が20nmまで加算され得るので、より小さいポリマーが用いられうる。
【実施例31】
【0228】
ペプチドの結合
[0550]それらのサイズに依存して、ペプチドは、オリゴペプチド(2-20残基)及びポリペプチド(>20残基)として分類され得る。タンパク質は、50残基長を超えるポリペプチド鎖からなる。[61]ペプチドの平均長さは、ペプチドの2D構造(アルファヘリックス又は非晶質)に応じて、アミノ酸当たり0.35~0.40nmと推定することができる。[61]ベータシートを形成するペプチドは、酵素切断時のそれらの放出動態が極めて遅いため、バイオセンサの設計に適していないことに留意されたい。50アミノ酸のペプチドは、その2D構造に応じて、17.5~20nmの長さがある。非天然アミノ酸は、ペプチドをグラフェン又はグラフェン結合有機若しくは無機シェルの表面に固定するために、又はフルオロフォア(有機色素若しくはナノ構造)の結合のために、これらのペプチドにおいて用いることができることにも留意されたい。
[0551]図51は、プロテアーゼ活性検出のためのグラフェンバイオセンサにおけるペプチド長(A)とポリマー層厚さ(B)との許容比を示す。最大層厚さ(ペプチド+ポリマー)は20nmを超えることができない。サイトカイン/ケモカイン及びアルギナーゼ検出のためのグラフェンバイオセンサにおいて、層の厚さは、それらの標的への結合又は翻訳後修飾の前に20nmに近い。両方の事象は、ペプチド配列を伸長し、したがって、係留されたフルオロフォアからの蛍光増加を引き起こす。
[0552]主に、グラフェン粒子は、無機水溶性シェル(例えば、メソポーラスシリカナノ層)で囲むことができる。[62]その場合、有機及び無機ナノ層の厚さ要件は同じである:メソポーラスシリカシェル+ペプチド配列の最大直径は、20nm以下でなければならない。
【実施例32】
【0229】
付着有機分子
[0553]官能基を提示する有機及び無機化合物は、1つ又は複数の対応する官能基を提示するように化学修飾されたグラフェン表面に付着させることができる。
[0554]例えば、水溶性有機分子、例えば、OH官能基を提示するオリゴエチレングリコールの単層を、ニトレン基を付加することによって修飾されたグラフェンの表面に繋ぎ止めて、修飾グラフェンを得て、NH官能基を提示することができる。
[0555]図52に示すように、ポリマーの代わりに、水溶性有機分子、例えばオリゴエチレングリコールの単層をグラフェンの表面に繋ぐことができる。主に、logP及び水溶性の要件は、有機ポリマーの場合と同じである。
[0556]分子モデリング(Chemdraw 3D)によれば、アミノ-テトラエチレングリコールアジド(NH-TEG-N)の最大直径は1.5nmであることに留意されたい。したがって、これらの例示的な実施形態では、テトラエチレングリコール単位のサイズは1.4nmである。したがって、グリコール単位(-О-CH-CH-)の数は58未満であり、20nmの全長を超えない。
[0557]センサーを構成するためにグラフェン粒子をコーティングする場合、オリゴエチレンオキシドテザーの長さからオリゴペプチドの長さを減算しなければならない。
[0558]主に、グラフェンの表面に結合することができ、必要とされる水への溶解度(logP<0又は水への溶解度>1.0×10グラム/リットルHO)に適合するいかなる直鎖又は分岐鎖分子に留意されたい。[23]20nmのエネルギー転移消光距離要件に適合する限り、これを用いることができる。
[0559]当業者は、グラフェン表面の官能基に対応する官能基を提示する異なる有機又は無機材料について上記の例を修正することができるであろう。特に、当業者は、グラフェンの表面に付着させることができ、水性溶媒中で目標分散性(>0.1mg/mL)を達成するいかなる直鎖状又は分岐状分子、及び関連するグラフェンコア粒子を用いて、コーティング材料及びペプチド結合の構成が20nmエネルギー移動消光距離要件に適合する限り、本開示のバイオセンサを提供することができることを理解するであろう。
【実施例33】
【0230】
カルボキシグラフェン(CG)の滴定
[0560]250mgのカルボキシグラフェン(CG)を50mLの0.05M NaOH(HPLC用水を用いて調製し、アルゴンで2時間脱気したNaOH溶液)中に分散させた。カルボキシグラフェン懸濁液を10分間超音波処理し、300Kで24時間撹拌した。24時間撹拌した後、懸濁液を濾過してカルボキシグラフェンを除去し、すべての溶液(カルボキシグラフェン濾過溶液、0.05M HCl、及び0.05M NaOH)をアルゴンで終夜脱気した。翌日に滴定を開始する前に、pHメーターを標準pH溶液で較正した。20mLの0.05M HClをカルボキシグラフェン濾過した溶液からの10mLアリコートに添加し、0.05M NaOH(漸増ことで添加)で逆滴定した。次のNaOHの添加前にpHメーターが安定した後、NaOHの各添加後にpHを記録した。ブランク滴定のために、10mLの0.05M NaOHをカルボキシグラフェンと同じ方法で調製し、20mLの0.05M HClを添加し、0.05M NaOHで逆滴定した。
[0561]図53に示すように、約7.00のpHの同じ値についての2つの滴定曲線におけるNaOHの体積の差は、カルボキシグラフェンの質量増加当たりのイオン化基(カルボキシル基)の濃度を与える。
[0562]カルボキシグラフェン濾過した溶液及びブランクの両方について、滴定中にアルゴンによる脱気を維持したことに言及すべきである。
[0563]約7.00のpHの同じ値についての2つの滴定曲線におけるHClの体積の差は、カルボキシグラフェンの質量増加当たりのイオン化基(カルボキシル基)の濃度を与える。この滴定曲線は、我々が1.765×10-4及び1.8×10-4mol/gの酸性基(-COOH)(すなわち、nm当たりの4-COOH基の表面密度)があることを示す。
【実施例34】
【0231】
信号対雑音比
[0564]信号対雑音比の増加に関与する構造的特徴は、フラクタルグラフェンと、係留された検出可能部分蛍光色素(TCPP、並びにより高い蛍光量子収率がある他の色素)のグラフェン表面から20nm未満の距離を維持するように構成されたコーティング及びペプチド結合とを含むようにバイオセンサを構成することを含む。
[0565]認識配列の大部分は13アミノ酸残基を特徴とし、これは5±1nmの長さをもたらす。共有結合したPEI層の厚さは10nmである。結果として、TCPPフルオロフォアの平均位置は、20nmの閾値を十分に下回る。
[0566]本明細書に記載のバイオセンサで達成可能なシグナル対ノイズ比のさらなる例を実施例19に示す(図33及び図35並びに本明細書の関連部分を参照のこと)。実施例28(図46及び明細書の関連部分を参照)及び実施例46(図54及び明細書の関連部分を参照)。これらの例は、当業者によって理解されるように、グラフェン表面と繋ぎ止められたフルオロフォアとの間の距離を<20nmに維持する全ての実施形態の操作性を示す。
【実施例35】
【0232】
バイオセンサ用のコアグラフェン粒子の製造方法
[0567]本開示によるコア粒子を作製するための例示的な手順はは以下の通りである。
工程1:必要なUV/Vis吸収挙動(UVから中IR(100~1500nm)の強い発光)を確保するために、爆発グラフェン又は数層グラフェンを選択する。
工程2:グラフェン粒子を水性緩衝液中に分散可能にするために、例えば有機シェル又は無機シェルを含めることによって、グラフェン表面の化学変換を行う。
[0568]得られた有機又は無機シェルは、グラフェンの消光特性のため、直径20nm未満のサイズがある。
[0569]得られた粒子の主な特徴付け工程は以下の通りである。
工程1:UV/Vis吸収分光法、クロロホルム中200~1500nmの範囲;材料がグラフェンであることを確認するためのRAMAN及びXRD、材料が98++炭素であることを確認するための元素分析、グラフェンナノフレークのサイズ分布を確認するためのTEM、グラフェンのフラクタル性を確認するためのSEM。
工程2:グラフェンの周りの有機又は無機シェルの官能基を特徴付けるためのFTIR、材料がグラフェンであることを確認するためのRAMAN及びXRD、グラフェンコア+シェルの化学組成を確認するための元素分析、グラフェンナノフレークのサイズ分布を確認するためのTEM、グラフェンのフラクタル性を確認するためのSEM。固体NMRは、グラフェン内に水素原子が存在しないので、交差分極が利用される場合、シェルのみの化学的構成を示す。[63]
【実施例36】
【0233】
本開示のバイオセンサの製造方法
[0570]本開示のバイオセンサを作製するための例示的な手順は、以下の工程を含む。
工程1:必要なUV/Vis吸収挙動(UVから中IR(100~1500nm)の強い発光)を確保するために、爆発グラフェン又は数層グラフェンを選択する。
工程2:有機シェル及び/又は無機シェルを含める工程によって、グラフェン表面の化学変換を行って、水性緩衝液中に分散可能にする。得られる有機又は無機シェルは、グラフェンの消光特性のために直径20nm未満であるべきである。
工程3:必要なペプチド配列を合成し、ペプチド配列のN末端にフルオロフォアを付加する。これに続いて、樹脂からペプチド+フルオロフォアが切断される。
工程4:ペプチド+フルオロフォアを有機又は無機シェルに付着させる。
【実施例37】
【0234】
本開示のバイオセンサを用いてバイオマーカーを検出する方法
[0571]本開示の方法に従ってバイオマーカーを検出する例示的な方法は
1)グラフェンに結合したフルオロフォアの最適範囲を選択する。ペプチド+TCPPの最適濃度は、100mgのカルボキシグラフェンに対して7.3mgであった。これにより、カルボキシグラフェン-PEI 1グラム当たり1.6±0.2×10-5モルのペプチド+TCPP(蛍光体)が得られる。それよりも高いローディングでは、バイオセンサは、酵素反応速度論との立体干渉のために有意に遅く反応する。上限(1×10-10モルL-1の活性プロテアーゼの存在における活性が1時間以内に検出できない場合)は、カルボキシグラフェン-PEI 1グラム当たり1.0±0.25×10-3モルのペプチド+TCPP(蛍光体)である。下限(シグナルの消失)は、カルボキシグラフェン-PEI 1グラム当たり1.0±0.25×10-7モルのペプチド+TCPP(蛍光体)である。
2)定義された水性緩衝液中でのバイオセンサの分散。バイオセンサ溶液の最適濃度範囲は0.1~0.03mg/mLであり、0.3mg/mLで最も高い蛍光強度が得られる。
3)液体生検(血液、血漿、血清、唾液、血清、唾液、気管支肺胞洗浄、呼気凝縮液)を添加する。標的酵素又はタンパク質の濃度は、サブフェムトモル(10-16モルL-1)からマイクロモル(10-6モルL-1)の範囲であるべきである。
4)分散したバイオセンサ+液体生検を規定の温度で規定の時間インキュベートすること、又は規定の温度若しくは温度間隔で経時的に蛍光の増加を記録すること。
[0572]タンパク質分解活性測定のための全てのバイオセンサは、高度に選択的な認識配列を特徴とする。アルギナーゼ測定のためのバイオセンサは、ペプチドを伸長させる翻訳後修飾(合成後修飾:アルギニンからオルニチン)に依存する。標的化ペプチドのタンパク質レセプターへの結合は、同様に前者を伸長する。フルオロフォアとグラフェンとの間の全ての距離増加は、グラフェンから20nmの距離を超える場合、蛍光の増加(及びその後の活性の検出)をもたらす。そうでなければ、蛍光消光が優勢になる。
【実施例38】
【0235】
本開示のバイオセンサを用いてバイオマーカーを多重検出する方法
[0573]主に、分散したバイオセンサの濃度範囲及び液体生検の調製は、1つ又は複数の種の検出について同じである。速度論的側面(酵素はペプチド配列に到達しなければならない)のため、本発明者らは、グラフェンの表面におけるペプチド+フルオロフォアの最大密度を増加させることができない。
[0574]上述したように、ペプチド+TCPP(蛍光体)の可能な最高濃度は、1.0±0.25×10-3モル/グラムであり、最適濃度(フェムトモルからマイクロモルのプロテアーゼactの濃度範囲にわたる最も速いシグナル増加)は、1.6±0.2×10-5モルペプチド+TCPP(蛍光体)/グラムカルボキシグラフェン-PEIである。マルチタスキングを達成するためにいくつかのペプチド配列+異なる蛍光体が用いられる場合、最適な反応速度論を確実にするために、それらの画分は、カルボキシグラフェン-PEI 1グラム当たり1.6±0.2×10-5モルまでのペプチド+TCPP(蛍光体)を合計しなければならない。より遅いセンサーについては、ペプチド+異なるフルオロフォアの総濃度(全ての画分)は、1.0±0.25×10-3モル/グラムに達することができる。
[0575]ペプチド+フルオロフォアより多くをグラフェン周囲のシェルに付着させる方法は、1)段階的な添加、2)全てのペプチド+フルオロフォアの並行した添加を含む。いずれのアプローチについても、化学物質添加条件は最適化されなければならない。
[0576]いくつかのペプチド+蛍光体を化学的に付着させた後、いくつかの洗浄手順(DMF中に3回再分散させ、続いて遠心分離し、続いてジエチルエーテル中に3回再分散させ、遠心分離し、続いてアルゴン下、40℃で24時間乾燥させる)を行った。マルチタスキングバイオセンサを分析に用いられる緩衝液中に分散させ、結合したフルオロフォアの濃度を、分析緩衝液中の同じ色素の較正曲線を用いてUV/Vis吸収分光法によって測定する。
[0577]さらに、グラフェンの表面電荷を減少させて、上述の官能化の代わりに又はそれに加えて、カチオン性ポリマーを結合するのに適したものにするために、さらなる修飾を行うことができる。
【実施例39】
【0236】
グラフェン粒子及びバイオセンサのさらなる構成要素の特徴
[0578]グラフェンを水分散性にする、及び/又は十分な水溶性(コンセンサスlogP<0、又はHO 1リットル当たり>1.0×10グラムの水への溶解度)の有機配位子若しくはポリマーのいずれかの固定を可能にするいかなる表面反応。[23])が好適である。代替的、メソポーラスシリカ等の無機シェルを用いて、グラフェンを分散させることもできる。
[0579]有機又は無機コーティングのための最も重要な因子は、水溶性、ペプチド+検出可能部分成分を付着させるための官能基の存在、及び付着したときにフルオロフォアの消光を容易にするためのグラフェン周囲の20nm未満の厚さの要件である。
[0580]ペプチド結合に関して、特異性は、用いられるペプチド配列から生じる。異なる蛍光団を、樹脂上にあるペプチドのN末端位置に付着させる。あるいは、発蛍光団はまた、C末端に結合され得るが、このアプローチは、より複雑かつ高価である(しかし、実施可能である)。
[0581]プロテアーゼ及びその各々の認識配列との一致が存在する場合、切断及びその後の蛍光増加がはるかに速く起こるので、多重化は、液体生検中の酵素及びタンパク質と各同時付着ペプチドとの相互作用によって達成される。同じことが、標的化ペプチド配列及びそれらの各々のタンパク質標的の成功した結合事象についても当てはまる。
[0582]結合した色素からの蛍光に加えて、さらなる検出可能なシグナルは以下を含む。
1)付着したナノ構造及び色素からのリン光
2)主に、励起は多光子励起によって達成することができる。
3)付着したナノ構造及び色素からの光音響シグネチャ
4)グラフェン表面から切断され、分析される放射性同位体。
5)安定ラジカル(EPRプローブ)は、高スピンdorf f-ブロック金属がある酸化物で被覆されたグラフェンから放出されるか、又は別の安定ラジカルに共係留される。
6)MRIプローブは、高スピンdorf-ブロック金属カチオン、又は超分子的に結合した高スピンdorf-ブロック金属カチオンがある酸化物で覆われたグラフェンから放出される。
【実施例40】
【0237】
グラフェンバイオセンサの吸収効率に対する分散及び溶媒除去の影響
[0583]KSUプロトコル、KSUプロトコルのHEB複製、超音波処理プロトコル(ロット3)、及び溶媒汚染を排除する超音波処理プロトコル(ロット4)を各々反映するナノセンサーのロット1、2、3、及び4を反映するグラフェンバイオセンサの溶液を、155mM NaClを含有する5mM MES pH7.4中の作業溶液として調製した。センサーを25μg/mLの濃度で調製した。作業溶液を調製し、水浴中で溶液1mL当たり1分間超音波処理した。2μLを3回サンプリングする直前に試料を1回ボルテックスした。Nanodrop上で250nm~650nmにわたる吸光度を測定することによって吸光度を確立した。次に試料を撹拌せずに1時間放置した。60分後、センサー溶液中に50%の深さまで沈めたピペットチップを用いて2μLの試料を採取した。このt=60試料について吸光度スペクトルを繰り返した。グラフは、4ロットのNE及びMMP15バイオセンサの各々についての吸光度スペクトルを示す。吸光度効率は、バイオセンサ1mg/ml当たりの260nmでの吸光度として計算して表に示す。分析は、調製中に超音波処理され、溶媒を除去するために乾燥されるにつれて、センサの吸光度が増加することを示す。この観察は、測定されたバイオセンサに依存しない。(図55参照)。
【実施例41】
【0238】
グラフェンバイオセンサの信号対雑音性能に対する緩衝液製剤の影響
[0584]uPAナノセンサーの溶液を、水中で300μg/mlの10×作業濃度で調製した。それらを超音波処理水浴中で10分間超音波処理した。ナノセンサーを、図14に報告されている異なる緩衝液製剤の各々において1:10に希釈した。125μlのバイオセンサ溶液を、黒色96ウェルプレートに反復して分注した。5μLの血清を添加し、プレートを37℃で60分間インキュベートした。放出された蛍光を、421nm励起及び650nm発光でVarioSkan Luxプレートリーダー上で読み取った。アッセイは、血清の代わりに5μlの適当な緩衝液を添加したアッセイ対照を含んでいた。バイオセンサを、2つの異なる正常健康ドナー血清試料又はプールされた正常血清(PNS)と共にインキュベートした。緩衝液1は元の製剤であった。全ての緩衝条件においてプロテアーゼ活性が観察された。S:Nは、SM/AC比をS:Nの推定値として示す図56(uPAバイオセンサ)に報告されている。NaClを含む緩衝液は、バックグラウンド及び血清シグナルの両方を有意に低下させたことが注目された。ACを減少させることは、gNBSの信号対雑音性能を増加させるのに役立つ。NaClを含有する緩衝液7及び8は、元の緩衝液と比較してAC性能が有意に低下した。これにより、SN性能が向上した。
【実施例42】
【0239】
グラフェンバイオセンサの信号対雑音性能に対する緩衝液製剤及び熱処理の影響
[0585]18の異なるバイオセンサの作業溶液を、10μMの二価カチオン及び155mMのNaClを補充したHEPES又はMES緩衝液中で調製した。試料を65℃で12分間熱処理し(MESベースライン)、又は熱処理せず(HEPESベースライン)、37℃で90分間インキュベートした。90分後、放出された蛍光をVarioSkan Luxで評価し、S:N性能をSM/ACによって計算した。一塩基性塩イオンを添加するためのプロトコル変更の影響、MES緩衝液によるよりロバストなpH制御は、Varioskanプラットフォーム上のACの0.10 RFU以下への平均低減を実証した。より低いACに加えて、より安定なpH対照は、HEPESベースラインに対して平均して4倍増加したS:N計算をもたらした(図57参照)。
【実施例43】
【0240】
グラフェンバイオセンサのコロイド安定性
[0586]KSUプロトコルのロット1、2、3及び4、KSUプロトコルのHEB複製、超音波処理プロトコル(ロット3)及び溶媒汚染を排除する超音波処理プロトコル(ロット4)を各々反映するNE又はMMP15グラフェンバイオセンサの溶液を、155mM NaClを含有する5mM MES pH7.4中の作業溶液として調製した。センサーを25μg/mLの作業濃度で調製した。比較として、Feバイオセンサの調製物も、同じ緩衝液を用いて300μg/mLの作業濃度で調製した。作業溶液を調製し、水浴中で溶液1mL当たり1分間超音波処理した。試料を、2μLを3回サンプリングする直前に1回ボルテックスした。Nanodropで250nmから650nmにわたる吸光度を測定することによって、吸光度を確立した。次に試料を撹拌せずに1時間放置した。60分後、センサー溶液中に50%の深さまで沈めたピペットチップを用いて2μLの試料を採取した。このt=60試料について吸光度スペクトルを繰り返した。性能は、OD270又はOD 650での吸光度効率の変化率として表示される。
[0587]分析は、センサが調製中に超音波処理され、溶媒を除去するために乾燥されるにつれて、センサの安定性が増加することを示し、これは、各ロット調製で60分間にわたる吸光度の変化の減少に反映される。この観察は、測定されたバイオセンサに依存しない。(図58)。
【実施例44】
【0241】
グラフェンバイオセンサのための異なる製造プロトコルにわたる信号対雑音の評価
[0588]KSUプロトコルのロット1、2、3及び4、KSUプロトコルのHEB複製、超音波処理プロトコル(ロット3)及び溶媒汚染を排除する超音波処理プロトコル(ロット4)を各々反映するNE、CTSB又はMMP12グラフェンバイオセンサの溶液を、155mM NaClを含有する5mM MES pH7.4中の作業溶液として調製した。及び10μMの二価カチオン センサーを25μg/mLの作業濃度で調製した。比較として、Feバイオセンサの調製物も、同じ緩衝液を用いて300μg/mLの作業濃度で調製した。バイオセンサを同じ日に同じ血清で刺激した(パネルA、B及びC、図59、並びにパネルD、図59)。
[0589]45℃で60分後に放出された蛍光をVarioSkan Luxで測定した。異なる日の4つのバイオセンサにわたって、超音波処理(ロット3及び4)及び溶媒除去(ロット4)の影響は、t=60 S:Nを明確に実証し、増加させる(t=60 RFI(図59、パネルB及び図61)を参照されたい)。非刺激グラフェンナノセンサ対Feナノセンサの安定性を捕捉するために、本発明者らはまた、時間0及び時間60におけるS:Nの比を計算した。3つの異なる測定における3つの異なるバイオセンサについて、t=60/0 S:N比は、ロット3及びロット4について有意に増加した(図59、パネルC及びD)。全ての配置は、Feバイオセンサよりも強いS:N性能をもたらすことが認められた(図61)。
【実施例45】
【0242】
グラフェンバイオセンサのための異なる製造プロトコルにわたる信号対雑音の評価
[0590]TCPPで標識されたCTS-K及び蛍光色素FAMで標識されたNEのためのグラフェンバイオセンサの溶液を、10μM二価カチオン及び155mM NaClを含む10mM MES溶液(pH7.25)中に各々50μg/mlで作製した。CTSK-TCPPバイオセンサの溶液を体積比で混合して、5%NE-FAM、10%、25%、50%、75%、90%又は100%NE-FAMバイオセンサの混合物を生成した。70μLの各混合物を、10μLのプールLのプールした正常血清で3通り刺激し、45℃で90分間インキュベートした後、422/650及び496/526nmでの蛍光を測定して、各々TCPP及びFAMを検出した。384
[0591]データを分析して、センサーの既知の混合物に基づいて、センサーの各希釈検出可能なシグナルの割合を決定した。グラフは、TCPPについての予測シグナル及び観察シグナルを示す(図60)。
[0592]TCPP又はFAM標識センサーからのシグナルの極めて効率的な検出が、異なるセンサーに対して別個のシグナルを独立して生成している競合センサーにおいてセンサーを1:20に希釈した場合であっても観察された。
[0593]これらの結果は、当業者によって理解されるように、多重化反応において1:20混合物として存在するセンサーを確実に検出することができるという結論を支持する。
【実施例46】
【0243】
グラフェン系のバイオセンサ:G-PEI及びG-TEG3アミンの合成
[0594]2つの異なる切断可能なペプチド配列を2つの異なる色素で標識し、MMP-9(GAGVPLS-LYSGAG)(配列番号132)をTCPPで標識し、第2のMMP-9(GCDDHAAG-LLGLDG)(配列番号132)をロダミンBで標識した。これらを、以下のプロトコルに従って、グラフェン系のバイオセンサ、G-PEI及びG-TEG3アミンに付着させた。
[0595]25mgのカルボキシグラフェン-PEI又はグラフェン-TEG3アミンを超音波処理し、小型ガラスバイアル中の4mLのDMFに懸濁した。次いで、各バイアルについて、2.5mgのDMAP、2.5mgのEDC、及び約1.75mgのTCPP及びローダミンB標識ペプチドを添加した。試料を5分間超音波処理し、反応物を室温で一晩撹拌した。
[0596]翌日、各バイオセンサを遠心分離(7000RPMで5分間)によって回収し、DMFで2回、ジエチルエーテルで3回洗浄した。
[0597]各バイオセンサを3つの異なる対照血清試料と共にインキュベートして、TCPP(425nm励起及び650nm発光)及びローダミンB(535nm励起及び570nm発光)の両方の蛍光強度を60分間にわたって測定した。37℃でのインキュベーション。
[0598]図54は、60分のインキュベーション期間内に両方のバイオセンサについて15分毎に測定された蛍光強度を示す。結果は、インキュベーション時間が増加するにつれて両方の対応するフルオロフォアについて蛍光強度が増加し、各対照血清試料とインキュベートしたG-PEI及びG-TEG3アミンバイオセンサの両方について60分で最高強度に達することを実証した。これらの結果は、2つの異なるフルオロフォアを用いる両方のバイオセンサの成功したアセンブリを実証した。
【実施例47】
【0244】
多重センサーの製造方法
[0599]多重グラフェンバイオセンサは、段階的添加又は競合合成によって調製することができる。
[0600]UV/Vis/近IR範囲における最大数は、仮想非重複励起及び発光スペクトルの要件のため、10である。
[0601]グラフェンを取り囲むシェルに繋がれたオリゴペプチドの最適密度は、バイオセンサ1グラム当たり1.6±0.2×10-5モルのペプチド+フルオロフォアである。それよりも高いローディングでは、バイオセンサは、酵素反応速度論との立体干渉のために有意に遅く反応する。上限(1×10-10モルL-1の活性プロテアーゼの存在下での活性が1時間以内に検出できない場合)は、バイオセンサ1グラム当たり1.0±0.25×10-3モルのペプチド+フルオロフォアである。下限(シグナルの消失)は、バイオセンサ1グラム当たり1.0±0.25×10-7モルのペプチド+フルオロフォアである。
[0602]マルチタスキングセンサの合成は、以下のように達成することができる。
1)グラフェン周囲のシェルへの10個までの異なるペプチド+フルオロフォアの競合的結合。結合は同じ時間間隔の間に形成される。得られたペプチド+フルオロフォアの分布は統計的である。
2)ペプチド+フルオロフォアの各々を別々に添加し、続いて精製する。
[0603]両方のアプローチは、添加される試薬の濃度及び反応時間に関して最適化され得る。競合的合成は時間がかからない。
【実施例48】
【0245】
標的バイオマーカーに特異的なペプチド結合を同定するための一般的プロトコル
[0604]プロテアーゼの認識配列に関する元の情報は、データベースMEROPSから得られる。[64]全てのプロテアーゼについて、認識配列について最大25の異なる候補が構築される。ポーランドワルシャワ大学のKolinski研究グループによって提供される計算サービスであるCAPS-dockを用いることによって、本発明者らは、ヒトプロテアーゼの活性中心に対して優れた適合である認識配列を選択することができた。[65]
[0605]CABS-dockは、ペプチドの完全な柔軟性及び受容体骨格の小さな変動を可能にする好ましい結合部位のドッキング検索及び決定を行う。CABS-dockシミュレーションは、粗い粒度のタンパク質モデルを用いて実行され、最適化が完了すると、タンパク質データバンク(PDB)適合座標に戻される。
[0606]キナーゼについては、リン酸化部位付近の関連ペプチド配列がUNIPROTから入手可能である。サイトカイン/ケモカインについては、サイトカイン/ケモカイン受容体の構造はUNIPROTから入手可能である。CAPS-dockを用いたドッキング実験は、より強い結合オリゴペプチドを見出すために、これらの受容体における関連アミノ酸の点突然変異を導くことができる。全てのインシリコ由来のオリゴペプチドをバイオセンサで試験する。
[0607]要約すると、本明細書で提供されるのは、グラフェンバイオセンサ及び関連するコア粒子、組成物、方法及びシステムであり、ここで、1つ以上の純粋なグラフェンシートが有機材料又は無機材料のコーティング層でコーティングされてコアグラフェン粒子を提供し、コアグラフェン粒子に、検出可能な部分及びペプチド結合を含む検出可能な成分が、ペプチド結合の結合を介して結合される。
【0246】
[0608]上記の例は、当業者に、本開示のバイオセンサ、コア粒子、材料、組成物、方法及びシステムの実施形態をどのように作製及び用いるかの開示及び説明を与えるために提供され、本発明者らがそれらの開示とみなすものの範囲を限定することを意図しない。当業者は、様々な実施形態及び特許請求の範囲による標的化合物除去剤、核酸除去剤、固体マトリックス、及びデバイスに基づいて、例示されたバイオセンサ、コア粒子、材料、組成物、方法、及びシステムの特徴をどのように適合させるかを認識するであろう。
[0609]背景、概要、図面の簡単な説明、発明を実施するための形態、及び実施例を含む本明細書において言及される全ての特許及び刊行物は、本開示が属する当業者の技術レベルを示す。
[0610]背景、概要、図面の簡単な説明、発明を実施するための形態、及び実施例を含む本開示において引用される各文書(ウェブページ、特許、特許出願、学術論文、要約、実験室マニュアル、書籍、又は他の開示を含む)の全開示は、参照により本明細書に援用される。背景、概要、図面の簡単な説明、発明を実施するための形態、及び実施例を含む、本開示において引用される全ての参考文献は、各参考文献が個々にその全体が参照により組み込まれているのと同程度に、参照により組み込まれる。しかしながら、引用された参考文献と本開示との間に何らかの不一致が生じた場合、本開示が優先する。
[0611]さらに、2021年12月28日に作成されたASCIIテキストファイル「P2672-PCT-2021-12-28-SequenceListing_ST25」の配列表のコンピュータ可読形式は、その全体が参照により本明細書に援用される。
[0612]本開示において用いられている用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として用いられており、そのような用語及び表現の使用において、示され記載されている特徴又はその一部のいかなる等価物を除外する意図はないが、特許請求されている本開示の材料、組成物、システム及び方法の範囲内で様々な改変が可能であることが認識される。したがって、本開示のバイオセンサ、コア粒子、材料、組成物、方法及びシステムは、実施形態、例示的な実施形態及びいかなる特徴によって具体的に記載されているが、本明細書に記載される概念の改変及び変形は、当業者によって再分類され得、そのような改変及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示における本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
[0613]また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「当該(the)」は、その内容が明らかに他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。「複数(plurality)」という用語は、内容が別途明確に指示しない限り、2つ以上の指示対象を含む。他に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味がある。
[0614]マーカッシュ群又は他の群が本開示において用いられる場合、その群の全ての個々のメンバー並びにその群の全ての組み合わせ及び可能なサブコンビネーションは、本開示に個々に含まれることが意図される。本明細書に記載又は例示される構成要素又は材料のあらゆる組合せを用いて、別段の記載がない限り、本開示の材料、組成物、システム及び方法を実施することができる。当業者は、具体的に例示されるもの以外の方法、デバイス要素、及び材料が、過度の実験に頼ることなく、本開示の材料、組成物、システム、及び方法の実践において採用され得ることを理解するであろう。いかなるそのような方法、デバイス要素、及び材料のすべての当技術分野で知られている機能的等価物は、本開示に含まれることが意図される。
【0247】
[0615]本明細書はまた、本開示の様々な実施形態に関する特定のパラメータを定量化するために数値範囲を用いる。本明細書において範囲、例えば、温度範囲、周波数範囲、時間範囲、又は組成範囲が与えられるときはいつでも、すべての中間範囲及びすべての部分範囲、並びに与えられた範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれることが意図される。特に。数値範囲が提供される場合、そのような範囲は、範囲の下限値のみを列挙する特許請求の範囲の限定、並びに範囲の上限値のみを列挙する特許請求の範囲の限定に対する文字通りの支持を提供するものとして解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、約10~約100の開示された数値範囲は、「約10より大きい」(上限なし)と記載された請求項及び「約100未満」(下限なし)と記載された請求項に対する文字通りの支持を提供する。
[0616]本明細書に開示される範囲又は群のいかなる1つ以上の個々のメンバーは、本開示の請求項から除外され得る。本明細書に例示的に記載される開示は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素(単数又は複数)、限定(単数又は複数)の非存在下で適当に実施され得る。
[0617]本明細書で用いられる用語場合、「及び/又は」という語句は、2つ以上の項目の列挙において用いられる場合、列挙された項目のうちのいずれか1つが単独で用いられうること、又は列挙された項目のうちの2つ以上のいかなる組み合わせが用いられうることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有又は排除すると記載されている場合、組成物は、Aのみ;Bのみ;Cのみ;を含有又は排除することができる。AとBの組み合わせ;A及びCの組み合わせ;B及びCの組み合わせ;又はA、B、及びCの組み合わせ、である。
[0618]本開示における「場合により(optional)」又は「場合によっては(optionally)」は、その後に記載される状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、したがって、その記載は、本開示において提供されるガイダンスに従って状況が起こる場合及び起こらない場合を含む。例えば、「場合によっては置換された」という句は、非水素置換基が所与の原子上に存在してもしなくてもよいことを意味し、したがって、この記載は、非水素置換基が存在する構造及び非水素置換基が存在しない構造を含む。句「場合によっては置換された」は、句「置換又は非置換」と交換可能に用いられることが理解される。特に明記しない限り、置換されていてもよい基は、基の置換可能な各位置に置換基を有していてもよく、いかなる所与の構造中の2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換されていてもよい場合、置換基は、全ての位置で同じであっても異なっていてもよい。想定される置換基の組合せは、本開示を考慮して化合物の所望の特徴を考慮して、及び安定な又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす特徴を考慮して同定することができる。本明細書で用いられる用語「安定な」は、それらの生成、検出、並びにある特定の実施形態では、それらの回収、精製、及び本明細書に開示される目的のうちの1つ以上のための使用を可能にする条件に供された場合に実質的に変化しない化合物を指す。
[0619]本開示の材料、組成物、システム及び方法のある実施形態を説明してきた。本明細書に提供される特定の実施形態は、本開示の材料、組成物、システム及び方法の有用な実施形態の例であり、本開示の材料、組成物、システム及び方法が、本開示において本明細書に記載されるデバイス、デバイス構成要素、方法ことの多数の変形形態を用いて実施され得ることは、当業者には明らかであろう。当業者には明らかであるように、本方法に有用な方法及びデバイスは、多数のいかなる組成物並びに処理要素及びことを含むことができる。
[0620]特に、本開示における本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
参考文献
【0248】
【表20】
【0249】
【表21】
【0250】
【表22】
【0251】
【表23】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
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図43
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図51
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図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
【配列表】
2024509494000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純粋なグラフェンナノシート表面がある少なくとも2枚の純粋なグラフェンナノシートが互いに積層して純粋なグラフェン集合体を形成しており、
前記純粋なグラフェンナノシート表面の少なくとも50%を覆うコーティング層
を含むグラフェンコア粒子であって、
前記コーティング層が、水への溶解度が25℃で1リットルのH Oあたり少なくとも10グラムである有機化合物及び/又は無機化合物を含み、ここで、
前記有機化合物及び/又は無機化合物は、前記純粋なグラフェンナノシートに付着して前記コーティング層を形成し、
前記少なくとも2枚の純粋なグラフェンナノシートの純粋なグラフェンの炭素含有量は、少なくとも99%であり、かつ、酸素含有量は1%未満であり、前記純粋なグラフェンは異物および不純物を含まないように純粋であり、
前記純粋なグラフェンナノシート並びに/又は前記コーティング層の前記有機化合物及び/若しくは無機化合物が、水溶液中で対応する官能基に結合することができる官能基を提示するように構成される、グラフェンコア粒子。
【請求項2】
平均サイズが10nm~5000nmであり、コーティング材料が表面の少なくとも85%をコーティングする、請求項1に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項3】
2~100枚の前記純粋なグラフェンナノシートを含み、平均サイズが900nm以下、350nm以下、又は250nmである、請求項1に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項4】
2~100枚の前記純粋なグラフェンシートを含み、コーティング材料が表面の少なくとも90%をコーティングする、請求項1に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項5】
5~25枚の前記純粋なグラフェンシートを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項6】
5~7枚の前記純粋なグラフェンシートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項7】
前記純粋なグラフェンシートは、平均サイズが150nmの粒子を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項8】
コーティング材料が有機ポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項9】
有機ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリスチレン-カルボン酸及びポリスチレン-アミンのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項10】
コーティング材料が、前記純粋なグラフェンシートの表面の少なくとも99%を覆う、請求項1~8のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項11】
コーティング材料の厚さが18nm以下であり、標的化能力を特徴とする付着ペプチド配列に対しては最低2nmとなりうる、請求項1~10のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項12】
厚さが、8~17nm、2~18nm、又は5~15nmである、請求項1~11のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子。
【請求項13】
標的バイオマーカーを検出するように構成されたグラフェンバイオセンサであって
請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子と蛍光シグナルを発することができる検出可能部分と、を含み、前記検出可能部分は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合を介して前記グラフェンコア粒子に共有結合しており、
前記コーティング層及び前記ペプチド結合は、グラフェンナノシートが前記検出可能部分の蛍光シグナルを消光する、前記グラフェンナノシートと前記検出可能部分との間の消光距離を設定するように構成され、
前記ペプチド結合が、さらに、前記認識配列の前記標的バイオマーカーによる認識の際に、前記グラフェンナノシートと前記検出可能部分との間の発光距離を設定するように構成され、ここで、前記グラフェンナノシートが前記検出可能部分の前記蛍光シグナルを消光せず、
前記標的バイオマーカー特異的ペプチド結合及び前記検出可能部分は、前記標的バイオマーカーによる前記ペプチド結合の修飾時に検出可能な蛍光シグナルを放出するように構成された標的特異的検出可能成分を形成する、グラフェンバイオセンサ。
【請求項14】
前記認識配列が、プロテアーゼ、キナーゼ、アルギナーゼ、サイトカイン/ケモカイン、ジオキシゲナーゼ、エステラーゼ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるバイオマーカーに特異的である、請求項13に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項15】
前記プロテアーゼが、セリン、アスパルチル、システイン、メタロプロテアーゼ、カスパーゼ、ウロキナーゼ、カテプシン、カスパーゼ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項16】
前記標的バイオマーカーが、がん性又は前がん性細胞活性、細菌活性、感染、炎症、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される状態を示す、請求項13~15のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項17】
前記検出可能部分が、有機色素、無機色素、フルオロフォア、ホスホフォア、光吸収粒子、量子ドット、及びそれらの組合せ、並びにそれらの金属化錯体からなる群から選択される発色団/発光団である、請求項13~16のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項18】
発色団/発光団が、クマリン、ピレン、シアニン、BODIPY色素、ベンゼン、N-メチルカルバゾール、エリトロシンB、N-アセチル-L-トリプトファンアミド、2,5-ジフェニルオキサゾール、ルブレン、及びN-(3-スルホプロピル)アクリジニウムからなる群から選択される有機色素である、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項19】
発色団/発光団が、ポルフィリン、フタロシアニン、クロリン、及びメタル化発色団からなる群から選択される無機色素である、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項20】
ポルフィリンが、テトラカルボキシ-フェニル-ポルフィリン(TCPP)又はZn-TCPPである、請求項19に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項21】
発色団/発光団が、リン光色素、フルオレセイン、ローダミン、及びアントラセンからなる群から選択されるフルオロフォア又はリンである、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項22】
量子ドットが、CdSe/ZnSコア/シェル量子ドット、CdTe/CdSeコア/シェル量子ドット、CdSe/ZnTeコア/シェル量子ドット、及び合金化半導体量子ドットからなる群から選択される、請求項17に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項23】
前記コーティング層が、ポリエチレンイミン、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリスチレン-カルボン酸、ポリスチレン-アミン、デキストラン、プルラン、キトサン、アルギネート、セルロース、及びヒアルロン酸、並びにそれらの混合物又はコポリマーからなる群から選択される、請求項13~22のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項24】
前記グラフェンコア粒子のサイズが約50nm~約500nmである、請求項13~23のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項25】
各々の前記ペプチド結合を介して前記グラフェンコア粒子に付着した複数の検出可能な成分を含む、請求項13~23のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項26】
各々が異なる前記標的バイオマーカーに特異的な認識配列がある各々の前記ペプチド結合を介して前記グラフェンコア粒子に付着した少なくとも2つの異なる前記検出可能部分を含む、請求項13~25のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサ。
【請求項27】
多重グラフェンバイオセンサであって、請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子と、前記グラフェンコア粒子に付着した複数の標的特異的検出可能成分とを含み、ここで、
前記標的特異的検出可能成分は各々、蛍光シグナルを発することができる検出可能部分から形成され、前記検出可能部分は、標的バイオマーカーに特異的な認識配列を含むペプチド結合に結合し、
前記標的特異的検出可能成分各々において、前記ペプチド結合が、前記グラフェンコア粒子の前記コーティング層と組み合わせて、前記検出可能部分と前記グラフェンコア粒子との間の消光距離を提供するように構成され、前記グラフェンナノシートが前記検出可能部分の前記蛍光シグナルを消光し
前記検出可能成分の前記標的バイオマーカーに対する前記認識配列は、前記標的バイオマーカーを特異的に検出するように構成されており、前記複数の検出可能成分は、複数の異なる前記標的バイオマーカーを特異的に検出するように選択される、多重グラフェンバイオセンサ。
【請求項28】
前記標的特異的検出可能成分を10個まで含み、前記検出可能成分は各々、UV/Vis/NIRスペクトルの全範囲にわたって検出可能な検出可能部分を提示する、請求項27に記載の多重グラフェンバイオセンサ。
【請求項29】
バイオセンサ1グラムあたり1.6±0.2×10-5モルの密度で標的特異的検出可能成分オリゴペプチドを含む、請求項27又は28に記載の多重グラフェンバイオセンサ。
【請求項30】
請求項1~12のいずれか一項に記載の1つ以上のグラフェンコア粒子、及び/又は、請求項1~29のいずれか一項に記載の1つ以上のグラフェンバイオセンサを、適当な補助剤と組み合わせて含む、組成物。
【請求項31】
医薬組成物であり、補助剤が薬学的に許容される補助剤である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
生物学的試料を請求項13~29のいずれか一項に記載のグラフェンバイオセンサと接触させて反応溶液を生成すること、及び、
前記反応溶液の変化を検出すること、
を含む、生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出するための方法。
【請求項33】
さらに、
前記反応溶液を励起光源に曝露すること、及び、
前記生物学的試料中の前記バイオマーカーの活性の関数として、前記検出可能部分の吸収又は発光スペクトルの変化を検出すること
を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
変化が、接触前の吸収又は発光スペクトルに対する、前記接触後の前記検出可能部分の吸収又は発光極大のブルーシフトを含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
変化が、前記接触前の前記検出可能部分の吸収又は発光スペクトルに対する新たな可視色又は発光バンドの出現を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記接触させることが、前記生物学的試料をバイオセンサと90分未満、又は60分未満の時間でインキュベートすることを含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記接触させることが、複数のマイクロウェルを含むマイクロプレートを提供することであって、1つ以上の前記マイクロウェルに複数のバイオセンサが分布しており、かつ、前記生物学的試料を前記マイクロウェルに添加して、前記マイクロウェル各々において各々の前記反応溶液を作製することを含む、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
検出の前に、前記生物学的試料及び/又は試験溶液が加熱される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出するためのシステムであって、請求項13~29のいずれか一項に記載のバイオセンサと、請求項32~38のいずれか一項に記載の生物学的試料中のバイオマーカーの活性を検出するための方法において同時併用又は連続して用いるための試薬とを含む、システム。
【請求項40】
生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のための方法であって
反応溶液を作製するために、生物学的試料を、複数のバイオマーカーに特異的な検出可能な成分を提示するように構成された請求項27~29のいずれか一項に記載の多重グラフェンバイオセンサと接触させること;並びに
前記反応溶液における変化を検出すること、及び/又は
前記生物学的試料を、前記複数のバイオマーカーのうちの1つのバイオマーカーに特異的なペプチド結合を各々提示する、請求項13~26のいずれか一項に記載の多重バイオセンサと接触させること、
を含む、方法。
【請求項41】
検出の前に、前記生物学的試料及び/又は試験溶液が加熱される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記生物学的試料が複数の生物学的試料を含み、接触させることが複数の生物学的試料で並行して行われる、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
請求項27~29のいずれか一項に記載の多重グラフェンバイオセンサ、及び/又は、請求項40~42のいずれか一項に記載の生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のための方法において、複数のバイオマーカーのうちの1つのバイオマーカーに特異的なペプチド結合を各々提示するバイオセンサ、並びに場合によっては、同時併用するため、又は連続して用いるための複数の試薬を含む、生物学的試料中の複数のバイオマーカーの活性の多重検出のためのシステム。
【請求項44】
請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子を作製するための方法であって、純粋なグラフェン表面がある少なくとも2枚の純粋なグラフェンナノシートを互いに積層して提供して、純粋なグラフェン集合体を形成すること、及び、前記グラフェン表面を有機分子及び/又は無機分子のコーティング層でコーティングすること、を含む、方法。
【請求項45】
請求項13~26のいずれか一項に記載のバイオセンサを作製するための方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子を提供することと、ペプチド結合を介して検出可能な部分を前記グラフェンの表面に付着させることとを含む、方法。
【請求項46】
付着させることの前に、請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子を分散させ、かつ、付着させることが、分散された前記グラフェンコア粒子を、前記ペプチド結合に付着した前記検出可能部分を含む前記検出可能成分と接触させることによって行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項13~25のいずれか一項に記載のバイオセンサを作製するためのシステムであって、請求項1~12のいずれか一項に記載のグラフェンコア粒子と、ペプチド結合と、検出可能部分と、前記ペプチド結合を介して前記検出可能部分を粒子の表面に付着させるための試薬とを含む、システム。
【国際調査報告】