(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】血漿カリクレイン抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240226BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240226BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240226BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240226BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240226BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P9/00
A61P17/00
A61P27/02
A61P19/02
A61P19/06
A61P1/00
A61P1/02
A61P29/00
A61P19/00
A61P7/02
A61P25/00
A61P11/00
A61P31/04
A61P9/10
A61P13/12
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541513
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022014242
(87)【国際公開番号】W WO2022165130
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523256339
【氏名又は名称】アステリア セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベディアン,ヴァヘ
(72)【発明者】
【氏名】ビスタ,プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】ハーウィン,ピーター,エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】キセラック,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイオリン,ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
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4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4B065CA44
4C084AA13
4C084MA66
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4C084ZA02
4C084ZA08
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA54
4C084ZA59
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4C084ZA67
4C084ZA81
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4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
血漿カリクレインを結合する抗体及びそのような抗体またはその抗原結合断片を含有する組成物が本明細書で提供される。提供されるのはまた、そのような抗体またはその抗原結合断片を作製する方法、及び遺伝性血管浮腫またはブラジキニン依存性浮腫の治療などにてそれらを使用する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血漿カリクレインに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と;LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)配列とを含み、
a. (i)前記HCDR1が配列番号14、23、29、または43に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号15、17、19、24、30、または44に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号16、25、または31に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
(ii)前記LCDR1が配列番号11、20、または27に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号12、18、21、または26に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号13、22、または28に示されるアミノ酸配列を含む;
b. (i)前記HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
(ii)前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む;
c. (i)前記HCDR1が配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
(ii)前記LCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号21または26に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む;
d. (i)前記HCDR1が配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
(ii)前記LCDR1が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号21または26に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む;あるいは
e. (i)前記HCDR1が配列番号43に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
(ii)前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む;前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記HCDR1が配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
前記LCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み;前記が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記HCDR1が配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3配列が配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
前記LCDR1が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み;前記CDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
(i)前記HCDR1が配列番号43に示されるアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み;且つ
(ii)前記LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合断片であって、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と;LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
a. 前記HCDR1はアミノ酸配列に対して最大1、2、または3個のアミノ酸置換がある配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;前記CDR2はアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個のアミノ酸置換がある配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記HCDR3はアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、または9個のアミノ酸置換がある配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、且つ
b. 前記LCDR1はアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、または7個のアミノ酸置換がある配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;前記LCDR2はアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換がある配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;及び前記LCDR3はアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換がある配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のそれぞれが多くても1つのアミノ酸置換を含む、請求項9に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
HCDR1、HCDR2、またはHCDR3から選択される多くても1つのCDRが置換を1つ含む、請求項9または10に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
LCDR1、LCDR2、及び/またはLCDR3から選択される多くても1つのCDRが置換を1つ含む、請求項9または10に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記VL領域が配列番号2、4、または6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記VL領域が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~13または14のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記VH領域が配列番号1、3または5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記VH領域が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
前記VH領域が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
前記VH領域が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記VH領域が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
前記VH領域が配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
前記VH領域が配列番号1、3、または5に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
前記VH領域が配列番号1、3、または5に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項23】
前記VH領域が配列番号1、3、または5に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VL領域が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
前記軽鎖が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
前記重鎖が配列番号7、9または10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18または24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項26】
前記重鎖が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18、24または25のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項27】
前記重鎖が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18、24または25のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項28】
前記重鎖が配列番号10、9または7に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18、24または25のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項29】
前記重鎖が配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18、24~26または28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項30】
前記重鎖が配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18、24、25、27または28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項31】
前記重鎖が配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖が配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18、24、25または28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項32】
前記VH領域が、配列番号1、3、または5に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項33】
前記VL領域が、配列番号2、4、または6に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項34】
前記VL領域が、配列番号6、4、または2に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント相同性がある配列を含み、且つ前記VH領域が配列番号1、3、または5に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント相同性がある配列を含む、請求項32または33のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項35】
前記重鎖が、配列番号7、9、または10に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント相同性がある配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項36】
前記軽鎖が、配列番号8に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント相同性がある配列を含む、請求項1~12または35のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項37】
前記CDR配列が、ヒトフレームワーク配列またはヒト化フレームワーク配列の間に挿入される、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項38】
前記抗体が、インタクト抗体または完全長抗体である、請求項1~37のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項39】
前記血漿カリクレインが配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインである、請求項1~38のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項40】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも1つに結合する、請求項1~39のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項41】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも1、2、3、4、5または6つに結合する、請求項1~40に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項42】
前記抗体またはその抗原結合断片が、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイで測定したとき約1、2、3、4または5×10
-9M以下のK
Dでヒト血漿カリクレイン(配列番号32)に結合する、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が以下の特徴:
a. pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)
b. ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び
c. ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を有する、請求項1~エラー!参照元が見つかりませんのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項44】
単離された抗体またはその結合断片であって、血漿カリクレインへの結合について請求項1~43のいずれか1項に記載の抗体と競合する、前記単離された抗体またはその結合断片。
【請求項45】
単離された抗体またはその結合断片であって、ヒト血漿カリクレインにて請求項1~44のいずれか1項に記載の抗体と同じエピトープに結合する、前記単離された抗体またはその結合断片。
【請求項46】
血漿カリクレインに結合する組換え抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が任意で
a. 少なくとも20日の血清半減期;
b. pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);
c. ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び
d. ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を有する、前記組換え抗体またはその抗原結合断片。
【請求項47】
抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの残基K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625のうちの1つ以上に結合する、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項48】
配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの残基K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625のうちの1つ以上に結合する、請求項47に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項49】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下の特徴:
a. pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);
b. ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び
c. ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を有する、請求項47または48のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項50】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~49のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項51】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1~50のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項52】
前記抗体がIgG、IgA、IgD、IgE及びIgMから選択されるクラスの重鎖定常領域を含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項53】
前記抗体が前記クラスIgG及びIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるサブクラスの重鎖定常領域を含む、請求項1~52のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項54】
前記抗体がIgG1重鎖定常領域を含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項55】
前記IgG1重鎖定常領域が野生型(WT)配列を含む、請求項54に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項56】
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付け目録に従って番号付けされたM252Y、S254T、及びT256Eの突然変異、またはM428L及びN434Sの突然変異を含む、請求項54に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項57】
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付け目録に従って番号付けされたM252Y、S254T、及びT256Eの突然変異を含む、請求項54に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項58】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域がリンカーによって連結されていない、請求項1~57のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項59】
前記抗体の結合断片がscFv抗体である、請求項1~57のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項60】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結される、請求項1~57または59のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項61】
前記ペプチドリンカーが(GGGGS)
n(配列番号35);(GGGGA)
n(配列番号36)の配列、またはそれらの任意の組み合わせを含み、その際、各nは独立して1~5である、請求項60に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項62】
単離された核酸であって、請求項1~61のいずれか1項に記載の重鎖または重鎖可変領域(VH)をコードするヌクレオチド配列を含む、前記単離された核酸。
【請求項63】
単離された核酸であって、請求項1~61のいずれか1項に記載の軽鎖または軽鎖可変領域(VL)をコードするヌクレオチド配列を含む、前記単離された核酸。
【請求項64】
請求項62に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項65】
請求項63に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項66】
さらに請求項62に記載の核酸を含む、請求項65に記載の発現ベクター。
【請求項67】
請求項64に記載の発現ベクター及び請求項65に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項68】
請求項66に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項69】
血漿カリクレインに結合する抗体またはその抗原結合断片を製造する方法であって、前記方法が、
(a)宿主細胞が重鎖または重鎖可変領域及び軽鎖可変領域または軽鎖を含むポリペプチド(単数)またはポリペプチド(複数)を発現するような条件下で請求項67または68に記載の宿主細胞を増殖させ、それによって前記抗体または前記抗体の前記抗原結合断片を作り出すことと;
(b)前記抗体または前記抗体の前記抗原結合断片を精製することとを含む、前記方法。
【請求項70】
請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項62~63のいずれか1項に記載の核酸を含む医薬組成物。
【請求項71】
前記医薬組成物が注射用医薬組成物である、請求項70に記載の医薬組成物。
【請求項72】
対象における遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、または熱傷から選択される疾患または障害がある対象を治療する方法であって、前記方法が、有効量の請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項73】
対象にて血漿カリクレインが介在する障害を治療する方法であって、前記方法が、有効量の請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体、または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項74】
前記障害が、遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、または熱傷である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、または熱傷から選択される疾患または障害の治療にて使用するための、請求項1~611のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【請求項76】
遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、または熱傷から選択される疾患または障害の治療のための薬物を製造することにて使用するための、請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【請求項77】
遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、または熱傷から選択される疾患または障害の治療のための、請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の使用。
【請求項78】
ブラジキニンのレベルを低下させる、またはブラジキニン産生を阻害することを必要とする対象にてそれを行う方法であって、治療有効量の請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体もしくはその結合断片、または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項79】
血漿カリクレイン活性を低下させる、またはそれを阻害することを必要とする対象にてそれを行う方法であって、治療有効量の請求項1~61のいずれか1項に記載の抗体もしくはその結合断片、または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項80】
前記疾患または前記障害が遺伝性血管浮腫である、請求項72~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記疾患または前記障害がブラジキニン依存性浮腫である、請求項72~79のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/142,748号;2021年3月10日に出願された米国仮特許出願第63/159,323号;2021年7月9日に出願された米国仮特許出願第63/220,194号;及び2021年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/262,838号の優先権及び利益を主張するが、その内容はそれぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は免疫学、特に治療用抗体、及びそれら抗体を用いた疾患の治療である。
【背景技術】
【0003】
血漿カリクレインはセリンプロテアーゼであり、さまざまな炎症性疾患、心血管疾患、感染症(敗血症)及び腫瘍疾患の潜在的な薬物標的である(Sainz I.M.et al.,Thromb Haemost 98,77-83,2007)。血漿カリクレインの活性化は、第XII因子のそのフィードバック活性化を介して内因性凝固を増幅し、炎症誘発性ノナペプチドであるブラジキニンの産生を介して炎症を増強する。血漿カリクレインは、循環における主要なキニノゲナーゼとして、血管系におけるブラジキニンの生成に主に関与している。血漿カリクレインの主要な天然阻害剤であるC1阻害剤タンパク質(C1-INH)の遺伝的欠損は、遺伝性血管浮腫(HAE)を引き起こす。HAE患者は未知の誘因によって引き起こされることが多い疼痛性浮腫の急性発作に苦しむ(Zuraw B.L.et al.,N.Engl J Med 359,1027-1036,2008)。薬理学的薬剤の使用または動物モデルでの遺伝子研究によって、血漿カリクレイン・キニン系(血漿KKS)は種々の疾患に関与している。血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、抗体、例えば、阻害抗体)は、種々の疾患及び状態、例えば、血漿カリクレイン活性のレベルに関連する疾患及び状態に対して有用な治療剤である。
【0004】
これまでに行われた努力にもかかわらず、血漿カリクレインを標的とする治療用抗体のニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載されている本発明は、血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインに結合する高親和性の結合タンパク質、例えば、抗体及び抗原結合断片の発見に部分的に基づく。抗体は血漿カリクレイン、例えば、ヒト血漿カリクレインに対して高い特異性を有する。この抗体は、プレカリクレインと比べて血漿カリクレインに対する高い選択性を有し、トリプシン及び他のセリンプロテアーゼに対する有意な的外れ結合を欠く。これらの結合タンパク質はまた、延長半減期を有してもよく、例えば、血中での延長半減期を有してもよい。これら及び他の特徴のせいで、抗体は血漿カリクレインが介在する種々の障害、例えば、遺伝性血管浮腫やブラジキニン依存性浮腫の治療に有用であってもよく、また、他の抗体と比べて低い用量及び/または長い投与間隔でこれらの障害の治療を円滑にしてもよい。
【0006】
本発明の一態様では、本明細書で開示されているのは血漿カリクレインを結合する抗原結合断片を含む抗体である。血漿カリクレインは、ヒト血漿カリクレイン、例えば、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインであってもよい。
【0007】
本明細書に開示されている抗体及び抗原結合断片は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含んでもよい。
【0008】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号14、23、29、または43に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号15、17、19、24、30、または44に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号16、25、または31に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11、20、または27に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号12、18、21、または26に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号13、22、または28に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0009】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0010】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号21または26に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0011】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号21または26に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0012】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号43に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0013】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0014】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0015】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0016】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0017】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0018】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み;CDR2が配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0019】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1が配列番号43に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2が配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3が配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むVHと、LCDR1が配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2が配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3が配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。
【0020】
例えば、抗体またはその結合断片は、HCDR1がそのアミノ酸配列に対して最大1、2、または3のアミノ酸置換がある配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;CDR2がそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13のアミノ酸置換がある配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR3がそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、または9のアミノ酸置換がある配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVHと;LCDR1がそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、または7のアミノ酸置換がある配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2がそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4のアミノ酸置換がある配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR3がそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4のアミノ酸置換がある配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVLとを有してもよい。抗体または結合断片の一部では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のそれぞれが多くても1つのアミノ酸置換を含む一方で、他の抗体または結合断片では、HCDR1、HCDR2、またはHCDR3から選択される多くても1つのCDRが1つの置換を含み、及び/またはLCDR1、LCDR2、及び/またはLCDR3から選択される多くても1つのCDRが1つの置換を含む。
【0021】
本明細書に開示されている抗体または結合断片のVLは、配列番号2、4、または6、例えば配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本明細書に開示されている抗体または結合断片のVHは、配列番号1、3、または5、例えば配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。VHは配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。VHは配列番号1、3、または5に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは、配列番号2、4、または6に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0022】
本明細書に開示されている抗体または結合断片の軽鎖は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本明細書に開示されている抗体または結合断片の重鎖は配列番号10、9または7に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、軽鎖は配列番号8のアミノ酸配列を含んでもよく、重鎖は配列番号7のアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、軽鎖は配列番号8のアミノ酸配列を含んでもよく、重鎖は配列番号9のアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、軽鎖は配列番号8のアミノ酸配列を含んでもよく、重鎖は配列番号10のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0023】
抗体または抗原結合断片は、配列番号5、3または1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を持つVH領域、及び/または配列番号2、4、または6に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を持つVL領域を有してもよい。
【0024】
抗体または抗原結合断片は、配列番号10、9、または7に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、また99%のパーセント相同性を持つ重鎖アミノ酸配列、及び/または配列番号8に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント相同性を持つ軽鎖配列を有してもよい。
【0025】
本明細書に開示されている抗体及び結合断片のCDR配列はヒトフレームワーク配列またはヒト化フレームワーク配列の間に挿入されてもよい。抗体は、例えば、インタクトな抗体または完全長の抗体であってもよい。
【0026】
本明細書に開示されている抗体または抗原結合断片は、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも1つに結合してもよい。例えば、それらは、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の1つ以上に結合してもよい。
【0027】
本明細書に開示されている抗体または抗原結合断片は 表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって測定されるとき、ヒト血漿カリクレイン、例えば、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインに約1、2、3、4、または5×10-9M以下のKDで結合してもよい。それらは、pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)、及び/またはヒト血漿カリクレインについて0.1nM~5nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び/またはヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のKD、及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)を有してもよい。
【0028】
本発明はまた、血漿カリクレインへの結合に関して本明細書に開示されている抗体または結合断片と競合する抗体及びその結合断片も対象とする。例えば、そのような抗体は、本明細書に開示されている抗体とヒト血漿カリクレイン上の同じエピトープに結合してもよい。例えば、そのような抗体は、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの残基K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625のうちの1つ以上に結合してもよい。例えば、そのような抗体は、配列番号32に示されるアミノ酸配列を有するヒト血漿カリクレインの残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625のうちの1つ以上に結合してもよい。そのような抗体は、以下の特徴:(i)少なくとも20日の血清半減期;(ii)pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないKD (例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);(iii)ヒト血漿カリクレインについて0.1nM~5nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び/または(iv)ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のKD、及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を有してもよい。
【0029】
本明細書に開示されている抗体または抗原結合断片はモノクローナル抗体であってもよい。それらはヒト化抗体であってもよい。それらは、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMから選択されるクラスの重鎖定常領域を有してもよい。定常領域がクラスIgGである場合、サブクラスはIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されてもよい。重鎖定常領域がIgG1である場合、それはEU番号付け目録に従って番号付けされたM252Y、S254T、及びT256Eの突然変異、またはM428L及びN434Sの突然変異を有してもよい。重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、リンカーによって連結されていてもよく、または連結されていなくてもよい。scFv抗体のようにそれらがリンカーによって連結されている場合、リンカーは(GGGGS)n(配列番号35);(GGGGA)n(配列番号36)の配列、またはそれらの任意の組み合わせを有するペプチドリンカーであってもよく、各nは独立して1~5である。
【0030】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されている抗体または結合断片の重鎖または重鎖可変領域(VH)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸、と同様に本明細書に開示されている抗体または抗原結合断片の軽鎖または軽鎖可変領域(VL)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を含む。重鎖及び軽鎖は同じ核酸配列上にコードされてもよく、または重鎖が1つの核酸上にコードされ、軽鎖が別の核酸によって別々にコードされてもよい。VL及びVHは同じ核酸配列上にコードされてもよく、またはVHが1つの核酸上にコードされ、VLが別の核酸によって別々にコードされてもよい。発現ベクターは重鎖と軽鎖の双方をコードする核酸を含有してもよく、または発現ベクターはVL鎖とVH鎖の双方をコードする核酸を含有してもよい。宿主細胞は、重鎖及び軽鎖の双方をコードする核酸を含有する発現ベクターを含有してもよく、または宿主細胞は、重鎖をコードする核酸を含有する発現ベクターと、軽鎖をコードする核酸を含有する発現ベクターとを含有してもよい。宿主細胞は、VH及びVLの双方をコードする核酸を含有する発現ベクターを含有してもよく、または宿主細胞は、VHをコードする核酸を含有する発現ベクターと、VLをコードする核酸を含有する発現ベクターとを含有してもよい。宿主細胞は、重鎖及び軽鎖、またはVH及びVLを発現して本発明の抗体または抗原結合断片を作り出すような条件下で増殖させてもよい。
【0031】
別の態様では、本発明は本明細書に開示されている抗体もしくは抗原結合断片、またはそれをコードする核酸を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、例えば、注射可能または静脈内投与可能であってもよい。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に開示されているような血漿カリクレイン抗体もしくはその抗原結合断片、またはそれを含有する医薬組成物を投与することによって、対象における遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、または熱傷から選択される疾患または障害がある対象を治療する方法を提供する。
【0033】
開示されている抗体または抗原結合断片は、遺伝性血管浮腫またはブラジキニン依存性浮腫を含む、対象における血漿カリクレインが介在する障害を治療する方法に使用されてもよい。開示されている抗体またはその抗原結合断片は、遺伝性血管浮腫またはブラジキニン依存性浮腫のような前述の状態を治療するための薬剤の製造にも使用されてもよい。
【0034】
開示されている抗体またはその結合断片は、対象におけるブラジキニンレベルを低下させるために、対象におけるブラジキニン産生を低下させるもしくは阻害するために、及び/または対象における血漿カリクレイン活性を低下させるもしくは阻害するために使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】相対光単位(RLU)に基づいたヒト血漿カリクレインに対する種々のハイブリドーマ株の選択性を示す棒グラフである。
【
図2】ヒト血漿カリクレインに対する種々の抗体の阻害活性を示すグラフである。
【
図3】pKalの濃度が1nM(上のグラフ)及び10nM(下のグラフ)である場合の、ヒト血漿カリクレインに対する種々の抗体の阻害活性を示すグラフを提供する。
【
図4】pKalの濃度が1nMである場合の、ヒト血漿カリクレインに対する種々の抗体の阻害活性を示すグラフを提供する。
【
図5】試験管内でのブラジキニン産生の阻害においてMAb4-YTEがDX-2930より強力であることを示すグラフを提供する。
【
図6】pH7.4及びpH6.0におけるpKal(グラフの上の列)及びpreKal(グラフの下の列)に対するDX-2930、MAb4-YTE、及びMAb4-LSの親和性を比較する表面プラズモン共鳴(SPR)結合データのグラフを提供する。
【
図7】実施例2に記載されているような異種間pKal結合アッセイにおいて、MAb4-YTEの濃度に対してプロットした血漿カリクレイン(pKal)活性を示すグラフである。それが示すように、MAb4-YTEはヒトだけでなく、サル、ラット、ウサギのpKalの強力な阻害剤である。
【
図8】カニクイザルにおけるMAb4、MAb4-LS、及びMAb4-YTEの濃度を経時的に示す薬物動態データのグラフを提供する。
【
図9】MAb4-YTEがカニクイザルにて生体内でDX-2930と比べて実質的に延長された血漿半減期を有することを示すグラフを提供する。DX-2930の経時的な抗体濃度を上のグラフに、MAb4-YTE を真ん中のグラフに示し、上と真ん中のグラフのデータを一緒に下のグラフに示す。
【
図10】比較抗体と比べて、MAb4-YTEの生体内でのさらに長い作用持続時間を示すグラフである。
【
図11】トリプシン阻害アッセイにおけるガベキサートメシル酸塩、DX-2930、及びMAb4-YTEのIC50を示すグラフを提供する。
【
図12】MAb4-LSとMAb4-YTE抗体のDX-2930表面への競合結合、MAb4-YTEとDX-2930抗体のMAb4-LS表面への競合結合、及びMAb4-LSとDX-2930抗体のMAb4-YTE表面への競合結合を示すグラフである。
【
図13】ヒトpKalとMAb4-YTEのペプチド相互作用を示す図である。
【
図14】A~JはヒトpKalとMAb4-YTEとの間の相互作用を示す。AはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの正面図のリボン/表面の描写を示す。BはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの背面図のリボン/表面の描写を示す。CはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの側面
図1のリボン/表面の描写を示す。DはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの側面
図2のリボン/表面の描写を示す。EはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの上面図のリボン/表面の描写を示す。FはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの正面図のリボンの描写を示す。GはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの背面図のリボンの描写を示す。HはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの側面
図1のリボンの描写を示す。IはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの側面
図2のリボンの描写を示す。JはpKal-MAb4-YTEエピトープ架橋マッピングの上面図のリボンの描写を示す。
【
図15】ヒトpKalとDX-2930のペプチド相互作用の図である。
【
図16】A~JはヒトpKalとDX-2930との間の相互作用を示す。AはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの正面図のリボン/表面の描写を示す。BはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの背面図のリボン/表面の描写を示す。CはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの側面
図1のリボン/表面の描写を示す。DはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの側面
図2のリボン/表面の描写を示す。EはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの上面図のリボン/表面の描写を示す。FはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの正面図のリボンの描写を示す。GはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの背面図のリボンの描写を示す。HはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの側面
図1のリボンの描写を示す。IはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの側面
図2のリボンの描写を示す。JはpKal-DX-2930エピトープ架橋マッピングの上面図のリボンの描写を示す。
【
図17】以下の実施例5に記載されているような、抗体MAb4-YTEと比べた、抗体DX-2930によって架橋されたヒトpKalの残基を示すマップであり、これらの抗体がpKal上の異なるエピトープに結合することを示す。
【
図18A】MAb4-YTEの重鎖の核酸配列(上段;配列番号48)及びアミノ酸配列(下段;配列番号10)を示す。配列は
図18Aで開始し、
図18Bに続き、
図18Cで終了する。
【
図18B】MAb4-YTEの重鎖の核酸配列(上段;配列番号48)及びアミノ酸配列(下段;配列番号10)を示す。配列は
図18Aで開始し、
図18Bに続き、
図18Cで終了する。
【
図18C】MAb4-YTEの重鎖の核酸配列(上段;配列番号48)及びアミノ酸配列(下段;配列番号10)を示す。配列は
図18Aで開始し、
図18Bに続き、
図18Cで終了する。
【
図19A】MAb4-YTEの軽鎖の核酸配列(上段;配列番号49)及びアミノ酸配列(下段;配列番号8)を示す。配列は
図19Aで開始し、
図19Bで終了する。
【
図19B】MAb4-YTEの軽鎖の核酸配列(上段;配列番号49)及びアミノ酸配列(下段;配列番号8)を示す。配列は
図19Aで開始し、
図19Bで終了する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書に記載されている本発明は、血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインに結合する高親和性の結合タンパク質、例えば、抗体及び抗原結合断片の発見に部分的に基づく。抗体は血漿カリクレイン、例えば、ヒト血漿カリクレインに対して高い特異性を有する。該抗体は、プレカリクレインと比べて血漿カリクレインに対する高い選択性を有し、トリプシン及び他のセリンプロテアーゼに対する有意な的外れ結合を欠く。これらの結合タンパク質はまた、延長半減期を有してもよく、例えば、血中での延長半減期を有してもよい。これら及び他の特徴のせいで、抗体は血漿カリクレインが介在する種々の障害、例えば、遺伝性血管浮腫やブラジキニン依存性浮腫の治療に有用であってもよく、また、他の抗体と比べて低い用量及び/または長い投与間隔でこれらの障害の治療を促進にしてもよい。
【0037】
本明細書に記載されている抗体は、以下の特徴:(i)少なくとも20日の血清半減期;(ii)pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);(iii)ヒト血漿カリクレインについて0.1nM~5nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び/または(iv)ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のKD、及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を有してもよい。
【0038】
これらの結合タンパク質はまた、遺伝性血管浮腫及びブラジキニン依存性浮腫のような種々の血漿カリクレイン介在性障害を治療するための組成物、例えば、医薬組成物にて使用することもできる。
【0039】
I.血漿カリクレイン抗体
本明細書で使用されるとき「抗体」という用語は、所望の生物活性を示す任意の形態の抗体を指す。したがって、「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びラクダ化単一ドメイン抗体を対象とするが、これらに限定されない。本明細書に記載されている抗体には、2つの免疫グロブリン軽鎖と結合した2つの免疫グロブリン重鎖を含有する完全長またはインタクトの抗体が含まれる。
【0040】
抗体軽鎖は通常、1つの可変領域(VL)と1つの定常領域(CL)とから成る。重鎖は通常、1つの可変領域(VH)と少なくとも3つの定常領域(CH1、CH2及びCH3)(アイソタイプによってはそれ以上)とから成る。通常、各鎖のアミノ末端部分に見られる各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は抗体結合部位を形成し、この部位は主に抗原認識に関与し、抗体の結合特異性を決定する。したがって一般に、インタクトな抗体または完全長の抗体は2つの結合部位を有し、すなわち二価である。2つの結合部位は同じであってもよく、同じ抗原を標的としてもよく;または、二官能性抗体または二重特異性抗体のように、2つの結合部位が異なっていてもよく、例えば、各結合部位は異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープを標的とする。
【0041】
免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定義してもよい。通常、ヒトの軽鎖はカッパ軽鎖とラムダ軽鎖に分類される。さらに、ヒト重鎖は通常、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプはそれぞれIgM、IgD、IgG(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA、及びIgEとして定義されている。
【0042】
通常、抗体の重鎖と軽鎖の双方の可変ドメインは、4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する3つの相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域を含む。CDRはふつう、フレームワーク領域によって並べられ、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端まで、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの双方がFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。本明細書で使用されるとき、「HCDR1」、「HCDR2」、及び「HCDR3」はそれぞれ重鎖可変領域のCDR1、2、または3を指し、且つ「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」はそれぞれ軽鎖可変領域のCDR1、2または3を指す。
【0043】
各CDRへのアミノ酸の割り当ては、一般に、Kabatの定義(例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616を参照のこと)、またはChothiaの定義(例えば、Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883を参照のこと)に従うが、例えば、IMGT(例えば、Lefranc(2005),Nucl.Acids Res.,33,D593-D597;Lefranc et al.,(2003),Dev.Comp.Immunol.,27,55-77;Lefranc et al.,(2005),Dev.Comp.Immunol.,29,185-203(2005);Lefranc et al.,(2005),Dev.Comp.Immunol.,2005,29,917-938を参照のこと)またはAbM(例えば、Martin,et al.,(1989)Proc.Natl Acad.Sci.USA,86,9268-9272;Pedersen et al.,(1992),Immunomethods,1,126;Rees et al.,(1996)In Sternberg M.J.E.(ed.),Protein Structure Prediction.Oxford University Press,Oxford,141-172を参照のこと)のような代わりの定義も知られている。
【0044】
本明細書で使用されるとき「親抗体」という用語は、ヒト治療用抗体として使用するための抗体のヒト化のような、意図された用途のために抗体を修飾するのに先立って、免疫系を抗原に曝露することによって得られる抗体を指すのに使用される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、別段の指示がない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、抗体の抗原結合断片、すなわち、完全長のまたはインタクトな抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片、例えば、1つ以上のCDR領域を保持する断片を指す。抗体結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子、例えば、sc-Fv;抗体断片から形成されるナノボディ及び多重特異性抗体;単一ドメイン抗体;組換え重鎖のみの抗体(VHH);サメ重鎖のみの抗体(VNAR)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「Fab断片」という用語は一方の軽鎖と、一方の重鎖のCH1及び可変領域とを含む抗体断片を意味すると理解される。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「Fc」領域という用語は、それぞれ抗体の少なくともCH2及びCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する抗体断片を指す。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「Fab’断片」という用語は、一方の軽鎖と、VHドメインとCH1ドメインとさらにはCH1とCH2ドメインの間の領域を含有する一方の重鎖の一部または断片とを含有する抗体断片を意味すると理解される。2つのFab’断片の2つの重鎖の間に形成される鎖間ジスルフィド結合はF(ab’)2断片を形成することができる。
【0049】
本明細書で使用されるとき「Fv領域」という用語は、重鎖及び軽鎖の双方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠く抗体の領域を指す。
【0050】
「単鎖Fv」または「scFv」という用語は、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドはVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによってscFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、例えば、Pluckthun(1994),THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315を参照のこと。国際特許出願公開番号WO88/01649号及び米国特許第4,946,778号及び同第5,260,203号も参照のこと。
【0051】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、実質的に均質な抗体の集団を指し、すなわち、集団を構成する抗体分子は、少量で存在してもよい考えられる天然に存在する突然変異を除いてアミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は通常、可変ドメイン、特にCDRに異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含み、これらは異なるエピトープに特異的であることが多い。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975),Nature, 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,(1991)Nature,352:624-628及びMarks et al.,(1991)J.Mol.Biol.222:581-597に記載された技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。Presta,(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照のこと。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「キメラ抗体」という用語は、第1の抗体由来の可変ドメインと第2の抗体由来の定常ドメインとを有する抗体を意味すると理解され、第1及び第2の抗体は異なる種に由来する;例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855)を参照のこと。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト及び非ヒト(例えば、マウス、ラット)の抗体の双方に由来する配列を含有する抗体の形態を指す。例えば、ヒト化抗体は、CDRまたはその一部が非ヒト免疫グロブリンの配列に由来する、またはそれに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてまたはその一部がヒト免疫グロブリンの配列に由来する、またはそれに対応する可変領域を含むことができる。ヒト化抗体は任意で、ヒト免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト軽鎖定常領域及び/またはヒト重鎖定常領域、例えば、ヒトFc、またはヒトCH1、CH2、及び/またはCH3ドメイン)の少なくとも一部を含んでもよい。本明細書に記載されているCDR配列は、ヒトまたはヒト化フレームワーク配列の間に挿入されてもよい。
【0054】
ヒト化は、ヒトに投与された場合に、抗体、例えば非ヒト抗体の免疫原性を低下させるために行うことができる。ヒト化アプローチの1つでは、マウス免疫グロブリン定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域に置き換えられているキメラタンパク質が作り出される。例えば、Morrison et al.,1984,PROC.NAT.ACAD.SCI.81:6851-6855,Neuberger et al.,1984,NATURE 312:604-608;米国特許第6,893,625号(Robinson);同第5,500,362号(Robinson);及び同第4,816,567号(Cabilly)を参照のこと。
【0055】
CDR移植として知られるアプローチでは、軽鎖及び重鎖の可変領域のCDRが別の種のフレームワークに移植される。例えば、マウスのCDRをヒトFRに移植することができる。いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域のCDRはヒトFRまたはコンセンサスヒトFRに移植される。コンセンサスヒトFRを作り出すには、いくつかのヒト重鎖または軽鎖のアミノ酸配列に由来するFRを整列させて、コンセンサスアミノ酸配列を特定する。CDR移植は米国特許第7,022,500号(Queen);同第6,982,321号(Winter);同第6,180,370号(Queen);同第6,054,297号(Carter);同第5,693,762号(Queen);同第5,859,205号(Adair);同第5,693,761号(Queen);同第5,565,332号(Hoogenboom);同第5,585,089号(Queen);同第5,530,101号(Queen);Jones et al.(1986)NATURE 321:522-525;Riechmann et al.(1988)NATURE 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)SCIENCE 239:1534-1536;及びWinter(1998)FEBS LETT 430:92-94に記載されている。
【0056】
「SUPERHUMANIZATION(商標)」と呼ばれるアプローチでは、ヒトCDRのヒト化されるマウス抗体との構造類似性に基づいて、ヒトCDR配列がヒト生殖系列遺伝子から選択される。例えば、米国特許第6,881,557号(Foote)及びTan et al.,2002,J.IMMUNOL.169:1119-1125を参照のこと。
【0057】
免疫原性を低下させる他の方法には、「再形成」、「ハイパーキメラ化」、及び「ベニアリング/再表面化」が挙げられる。例えば、Vaswami et al.,1998,ANNALS OF ALLERGY,ASTHMA,& IMMUNOL.81:105;Roguska et al.,1996,PROT.ENGINEER ,9:895-904;及び米国特許第6,072,035号(Hardman)を参照のこと。ベニアリング/再表面化のアプローチでは、マウス抗体における表面にアクセス可能なアミノ酸残基が、ヒト抗体における同じ位置でさらに頻繁に見られるアミノ酸残基に置き換えられる。この種の抗体再表面化は、例えば、米国特許第5,639,641号(Pedersen)に記載されている。
【0058】
マウス抗体をヒトでの医療用途に好適な形態に変換する別のアプローチは、ACTIVMAB(商標)技術(Vaccinex,Inc.,Rochester,NY)として知られており、これには哺乳類細胞で抗体を発現させるワクシニアウイルス系ベクターが関与する。IgG重鎖及び軽鎖の高レベルの組み合わせ多様性を生成することができる。例えば、米国特許第6,706,477号(Zauderer);同第6,800,442号(Zauderer);及び同第6,872,518号(Zauderer)を参照のこと。マウス抗体をヒトでの使用に好適な形態に変換する別のアプローチは、KaloBios Pharmaceuticals,Inc.(Palo Alto,CA)によって商業的に実施されている技術である。この技術には、独自のヒト「アクセプター」ライブラリーを使用して抗体選択用の「エピトープに焦点を当てた」ライブラリーを作成することが関与する。マウス抗体をヒトでの医療用途に好適な形態に修飾する別のアプローチは、XOMA(US)LLCによって商業的に実施されているHUMAN ENGINEERING(商標)技術である。例えば、国際(PCT)公開番号WO93/11794及び米国特許第5,766,886号(Studnicka);同第5,770,196号(Studnicka);同第5,821,123号(Studnicka);及び同第5,869,619号(Studnicka)を参照のこと。
【0059】
本明細書に開示されている抗体は、異なるタイプに変換することもでき、例えば、ヒトIgGなどに変換することができる。抗体をヒト抗体に変換することによって、ヒト対象は抗体を異物として認識することがなくなるはずである。非ヒトIgG抗体からヒトIgG抗体への変換は周知であり、ネイティブ配列が知られれば日常的に行うことができる。本明細書で考察するように、抗体は既知の方法に従って修飾することができる。このような方法は、例えば、Riechmann L,Clark M,Waldmann H,Winter G(1988).Reshaping human antibodies for therapy”.Nature 332(6162):332-323;Tsurushita N,Park M,Pakabunto K,Ong K,Avdalovic A,Fu H,Jia A,Vasquez M,Kumar S.(2004)に記載されており、その全体が参照によって組み込まれる。したがって、本発明の抗体はヒト化抗体であってもよい。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「完全ヒト抗体」という用語はヒト免疫グロブリンのタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、またはマウス細胞由来のハイブリドーマで産生される場合、マウスの糖鎖を含有してもよい。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「特異的結合」、「免疫特異的結合」、「免疫特異的に結合する」、または「特異的に結合する」という用語は、所定の抗原(例えば、血漿カリクレイン)または該抗原上に存在するエピトープに結合する抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体は10-7M以下の解離定数(KD)で所定の抗原(例えば、血漿カリクレイン)を結合し、及び/または所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、または別の非特異的ポリペプチド)への結合についてのそのKDよりも少なくとも2倍低いKDで所定の抗原に結合する。「血漿カリクレインを認識する抗体」及び「血漿カリクレインに特異的な抗体」という語句は、本明細書では「血漿カリクレインに免疫特異的に結合する抗体」という用語と相互交換可能に使用される。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、ヒトプレカリクレインのような、しかし、これに限定されない他のタンパク質よりも血漿カリクレインに特異的にまたは優先的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体、または抗体の抗原結合断片は、他の抗原との親和性よりも少なくとも2倍大きい、少なくとも10倍大きい、少なくとも20倍大きい、または少なくとも100倍大きい親和性でその抗原(血漿カリクレイン)に結合する。
【0062】
競合阻害によってmAbの特異性及び親和性を決定する方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993),及びMuller,Meth.Enzymol.92:589 601(1983)に見いだすことができ、これらの参考文献は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「相同体」という用語は、参照配列に対して少なくとも40%であるが、100%未満の配列相同性または配列同一性を有するタンパク質配列を指す。2つのペプチド鎖間の同一性パーセントは、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen Corp.,Carlsbad,Calif.)のAlignXモジュールの初期設定、またはBLASTのような他の好適な配列比較ソフトウェアを使用したペアごとの配列比較によって決定することができる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載されている配列に対して少なくとも50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の相同性または同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は本明細書に記載されている配列と比べて保存的置換を有する。例示的な保存的置換は表1に示されており、開示されている主題の範囲内に包含される。保存的置換は、抗体の特性に悪影響を及ぼさない限り、フレームワーク領域または抗原結合部位に存在してもよい。抗体の特性、例えば安定性や親和性を改善するために置換が行われてもよい。保存的置換は、そのような修飾がなされる分子と同様の機能的特徴及び化学的特徴を有する分子を作り出すであろう。例示的なアミノ酸置換を以下の表1に示す。
【表1】
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されているタンパク質及びペプチドの変異型が提供される。いくつかの実施形態では、変異型は置換、欠失、または挿入を含む。いくつかの実施形態では、変異型は1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10(例えば、1~10)の置換を含む。本明細書に記載されているように、置換は保存的置換であることができる。いくつかの実施形態では、置換は非保存的である。いくつかの実施形態では、変異型は1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10(例えば、1~10)の欠失を含む。いくつかの実施形態では、変異型は1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10(例えば、1~10)の挿入を含む。いくつかの実施形態では、置換、欠失、または挿入は本明細書で提供されているCDRに存在する。いくつかの実施形態では、置換、欠失、または挿入は本明細書で提供されているCDRに存在しない。
【0065】
通常、本明細書で提供されている変異型抗体または該抗体の抗原結合断片は、その活性がモル基準で表現される場合(親抗体であることができる未修飾抗体または参照抗体と比較すると)、その血漿カリクレイン結合活性の少なくとも10%を保持する。いくつかの実施形態では、変異型抗体(またはその抗原断片)、または本明細書で提供されている抗体の抗原結合断片は、親抗体であることができる非修飾抗体または参照抗体としての血漿カリクレイン結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%以上を保持する。本明細書に記載されているように、本発明の抗体または抗原結合断片は、その生物活性を実質的に変化させない、抗体の「保存的変異型」または「機能保存的変異型」とも呼ばれ得る、保存的または非保存的なアミノ酸置換を含むことができることも意図される。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「エピトープ」という用語はAbの抗原結合領域の1つ以上にて抗体によって認識され、結合され得る任意の分子の一部を指す。エピトープはふつう、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性がある表面群化から成り、特定の3次元構造特性と同様に特定の電荷特性を有する。エピトープの例には、本明細書で提供されている抗体が結合する残基が挙げられるが、これらに限定されない。エピトープは、線形または連続のエピトープ、すなわち、抗原、例えば、ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の一次構造のアミノ酸の線形配列であってもよい。あるいは、他の実施形態では、エピトープは抗原がその二次構造を想定するときに特定の三次元形状を有する立体構造エピトープであってもよい。例えば、立体構造エピトープは、抗原の非線形、すなわち非連続的なアミノ酸を含んでもよい。
【0067】
本明細書に開示されている抗体は、例えば、高い効力、特異性、及び長期の血清滞留性を持つ阻害性抗体であってもよく、高い効力は、低い薬物用量での高い有効性に変換され、高い特異性は、関連する的外れセリンプロテアーゼの阻害による副作用を軽減する。
【0068】
抗体またはその抗原結合断片が本明細書に提供されているようなアミノ酸配列またはその変異型を含む、血漿カリクレインに結合する抗体またはその抗原結合断片は、以下の特徴:少なくとも20日の血清半減期;pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);ヒト血漿カリクレインについて0.1nM~5nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び/またはヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のKD、且つヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のKD(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗体は血漿カリクレインに結合するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は血漿カリクレインのエピトープのアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレインは以下のアミノ酸配列:MILFKQATYF ISLFATVSCG CLTQLYENAF FRGGDVASMY TPNAQYCQMR
CTFHPRCLLF SFLPASSIND MEKRFGCFLK DSVTGTLPKV HRTGAVSGHS LKQCGHQISA CHRDIYKGVD MRGVNFNVSK VSSVEECQKR CTNNIRCQFF SYATQTFHKA EYRNNCLLKY SPGGTPTAIK VLSNVESGFS LKPCALSEIG CHMNIFQHLA FSDVDVARVL TPDAFVCRTI CTYHPNCLFF TFYTNVWKIE SQRNVCLLKT SESGTPSSST PQENTISGYS LLTCKRTLPE PCHSKIYPGV DFGGEELNVT FVKGVNVCQE TCTKMIRCQF FTYSLLPEDC KEEKCKCFLR LSMDGSPTRI AYGTQGSSGY SLRLCNTGDN SVCTTKTSTR IVGGTNSSWG EWPWQVSLQV KLTAQRHLCG GSLIGHQWVL TAAHCFDGLP LQDVWRIYSG ILNLSDITKD TPFSQIKEII IHQNYKVSEG NHDIALIKLQ APLNYTEFQK PICLPSKGDT STIYTNCWVT GWGFSKEKGE IQNILQKVNI PLVTNEECQK RYQDYKITQR MVCAGYKEGG KDACKGDSGG PLVCKHNGMW RLVGITSWGE GCARREQPGV YTKVAEYMDW ILEKTQSSDG KAQMQSPA(配列番号:32)を有するヒト血漿カリクレイン(UNIPROT P03952、KLKB1)である。
【0070】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレインは、カニクイザル血漿カリクレイン(UNIPROT A0A2K5VTJ9-1、配列番号45)、ウサギ血漿カリクレイン(UNIPROT G1T127、配列番号46)、またはラット血漿カリクレイン(UNIPROT P14272、配列番号47)である。例えば、抗体またはその抗原結合断片はウサギ、ラット、またはサルの血漿カリクレインに結合してもよい。
【0071】
上記に示したようなヒト血漿カリクレインの配列には、アミノ酸残基1~19のシグナルペプチド配列が含まれるが、それは翻訳後プロセッシング中に切断され得る。いくつかの実施形態では、抗体はシグナルペプチド配列がないヒト血漿カリクレイン、例えば、成熟ヒト血漿カリクレインに結合する。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗体は本明細書に提供されているアミノ酸配列を含む。
【0073】
抗体の配列を修飾してヒトIgG抗体を得ることができる。本明細書で提供されている配列の変換を改変して他の種類の抗体を得ることができる。CDRを他の抗体、タンパク質、または分子に結合させて、血漿カリクレインに結合する抗体断片を作り出すこともできる。これは、抗体薬物複合体(「ADC」)または多重特異性分子の形態であることもできる。配列は本明細書に記載されているようにキメラ抗体にすることもできる。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体は本明細書に提供されている配列を含むアミノ酸配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は本明細書に提供されている1つ以上のアミノ酸配列、その抗原結合断片、またはそのヒトIgG変異型を含む。「そのヒトIgG変異型」は、出発抗体がヒトIgG抗体ではない場合に、ヒトIgGとなるように修飾された抗体を指す。
【0075】
抗体はキメラ抗体またはヒト抗体に修飾することもできる。抗体はまた、注射可能な医薬組成物において使用することもできる。また、本明細書に記載されているように、抗体は単離された抗体または操作された抗体であることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗体の「誘導体」、その断片、領域、または誘導体が提供され、この用語には、免疫グロブリン断片に機能的に類似する分子種をもたらすように切り詰められたまたは修飾された遺伝子によってコードされるそれらのタンパク質が含まれる。修飾には、植物毒素や細菌毒素のような細胞毒性タンパク質をコードする遺伝子配列の付加が含まれるが、これらに限定されない。修飾には、蛍光タグや化学発光タグのようなレポータータンパク質も含まれ得る。断片及び誘導体はどんな方法でも生成することができる。
【0077】
本明細書に記載されているAbによって認識されるこれらの抗原結合領域及び/またはエピトープの同定は、本出願の実施形態に匹敵する同様の結合特性及び治療上または診断上の有用性を持つ追加のモノクローナル抗体を生成するのに必要な情報を提供する。
【0078】
本明細書に記載されている可変領域は、ヒト定常領域またはマウス定常領域を含む任意のタイプの定常領域と組み合わせることができる。抗体の定常(C)領域、断片及び領域をコードするヒト遺伝子は、既知の方法によってヒト胎児肝臓ライブラリーから導き出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現し、且つ産生する細胞を含む任意のヒト細胞に由来することができる。ヒトCH領域は、ガンマ、μ、α、δ、またはεを含むヒトH鎖の既知のクラスまたはアイソタイプのいずれか、及びG1、G2、G3、及びG4のようなそのサブタイプに由来することができる。H鎖アイソタイプは抗体の種々のエフェクター機能に関与しているので、CH領域の選択は、補体結合または抗体依存性細胞傷害(ADCC)における活性のような所望のエフェクター機能によって導かれるであろう。好ましくは、CH領域はガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)、ガンマ4(IgG4)、またはμ(IgM)に由来する。ヒトCL領域はヒトL鎖アイソタイプ、カッパまたはラムダのいずれかに由来することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗体はFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは抗体の半減期を延長するための突然変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,670,600号に記載されているもののような突然変異を含む。いくつかの実施形態では、定常領域は、KabatのEU番号付け目録に従って番号付けされた、野生型ヒトIgG定常ドメインに対してアミノ酸残基428位に突然変異を含む。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、残基428に対応する突然変異を含む抗体は、野生型ヒトIgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比べて、長い半減期を有することができる。いくつかの実施形態では、突然変異はスレオニン、ロイシン、フェニルアラニンまたはセリンによるネイティブ残基の置換である。いくつかの実施形態では、抗体はさらに、KabatのEU番号付け目録に従って番号付けされたアミノ酸残基251~256、285~290、308~314、385~389、及び429~436のうちの1つ以上にて対応する野生型ヒトIgG定常ドメインと比べて1つ以上のアミノ酸置換を含む。これらの位置における特定の突然変異または置換は、米国特許第7,670,600号に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0080】
例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,394,925号に提供されているもののような他の突然変異はFcドメインにて使用することができる。いくつかの実施形態では、Fc領域は428位及び434位にアミノ酸置換を含む変異型Fc領域であり、その際、アミノ酸置換は428位にて野生型アミノ酸ではないロイシン、及び434位にて野生型アミノ酸ではないセリンであり、その際、ポリペプチドは抗体であり、番号付けはKabat et al.のEU目録に従う。いくつかの実施形態では、Fc領域はS228P、L235E、M428L、またはN434Sの置換を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域はM428L置換を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域はN434S置換を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域はM428L及びN434Sの置換を含み、番号付けはKabat et al.のEU目録に従う。いくつかの実施形態では、Fc領域はM252Y、S254T、及び/またはT256Eの置換を含む、またはFc領域はM252Y、S254T、及びT256Eの置換を含み、番号付けはKabat et al.のEU目録に従う。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている抗体は抗原の存在を検出するのに使用される。本抗体は抗原の存在を検出するための任意の装置または方法で使用することができる。
【0082】
I.A.抗体のCDR配列
本明細書に開示されている抗体または抗原結合断片はそのCDR配列によって定義されてもよい。例えば、抗体または抗原結合断片は、Kabatの番号付けによって定義されるような抗体または抗原結合断片のCDRである、表2に提供されているアミノ酸配列の1つ以上を含んでもよい。
【表2】
【0083】
抗体または抗原結合断片は、Chothiaの番号付けによって定義されるような抗体または抗原結合断片のCDRである、表3に提供されているアミノ酸配列の1つ以上を含んでもよい。
【表3】
【0084】
抗体または抗原結合断片は、IMGTの番号付けによって定義されるような抗体または抗原結合断片のCDRである、表4に提供されているアミノ酸配列の1つ以上を含んでもよい。
【表4】
【0085】
抗体または抗原結合断片は、AbMの番号付けによって定義されるような抗体または抗原結合断片のCDRである、表5に提供されているアミノ酸配列の1つ以上を含んでもよい。
【表5】
【0086】
抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31の配列を有する重鎖または軽鎖のCDRを含んでもよい。例えば、抗体、またはその抗原結合断片の軽鎖CDRは配列番号11、12、13、18、20、21、22、26、27、または28の配列を有してもよい。例えば、抗体、またはその抗原結合断片の重鎖CDRは配列番号14、15、16、17、19、23、24、25、29、30、または31.xxの配列を有してもよい。
【0087】
本明細書に記載されているCDRは、上記の表に示されているChothia及びIMGTのような異なる定義によって特徴付けられるCDRと相互交換することができる。例えば、Kabatによって定義されたLCDR1はChothia、IMGT、またはAbMによって定義されたLCDR1と相互交換することができ;Kabatによって定義されたLCDR2はChothia、IMGT、またはAbMによって定義されたLCDR2と相互交換することができる、などである。例えば、いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号11、20、または27の配列を有し;LCDR2は配列番号12、18、21、または26の配列を有し;LCDR3は配列番号13、22、または28の配列を有する一方で、いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号14、23、29、または43の配列を有し;HCDR2は配列番号15、17、19、24、30、または44の配列を有し;HCDR3は配列番号16、25、または31の配列を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号11の配列を有し、LCDR2は配列番号12の配列を有し、LCDR3は配列番号13の配列を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号11の配列を有し、LCDR2は配列番号18の配列を有し、LCDR3は配列番号13の配列を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号20の配列を有し、LCDR2は配列番号21の配列を有し、LCDR3は配列番号22の配列を有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号20の配列を有し、LCDR2は配列番号26の配列を有し、LCDR3は配列番号22の配列を有する。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号27の配列を有し、LCDR2は配列番号21の配列を有し、LCDR3は配列番号28の配列を有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号27の配列を有し、LCDR2は配列番号26の配列を有し、LCDR3は配列番号28の配列を有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号11の配列を有し、LCDR2は配列番号12の配列を有し、LCDR3は配列番号28の配列を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、LCDR1は配列番号11の配列を有し、LCDR2は配列番号18の配列を有し、LCDR3は配列番号28の配列を有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号14の配列を有し、HCDR2は配列番号15の配列を有し、HCDR3は配列番号16の配列を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号14の配列を有し、HCDR2は配列番号17の配列を有し、HCDR3は配列番号16の配列を有する。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号14の配列を有し、HCDR2は配列番号19の配列を有し、HCDR3は配列番号16の配列を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号23の配列を有し、HCDR2は配列番号24の配列を有し、HCDR3は配列番号25の配列を有する。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号29の配列を有し、HCDR2は配列番号30の配列を有し、HCDR3は配列番号31の配列を有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域を含み、HCDR1は配列番号43の配列を有し、HCDR2は配列番号44の配列を有し、HCDR3は配列番号25の配列を有する。
【0102】
異なるCDRモチーフは上記の表に示されていないものを含め、任意の組み合わせで組み合わせることができる。例えば、以下の実施形態はそのような組み合わせの非限定的な例として提供される。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号12または18のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号15、17、または19のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号12のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号15のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号12のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号17のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号12のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号19のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号18のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号15のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号18のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号17のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号18のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号13のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号14のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号19のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号16のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号20のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号21または26のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号22のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号23のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号24のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号25のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号20のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号21のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号22のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号23のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号24のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号25のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号20のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号26のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号22のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号23のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号24のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号25のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号27のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号21または26のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号28のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号29のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番30のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号31のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号27のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号21のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号28のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号29のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番30のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号31のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号27のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号26のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号28のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号29のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番30のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号31のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号12または18のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号28のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号43のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番44のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号25のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号12のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号28のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号43のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番号44のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号25のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11のアミノ酸配列を有し;LCDR2は配列番号18のアミノ酸配列を有し;LCDR3配列は配列番号28のアミノ酸配列を有し、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1配列は配列番号43のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR2配列は配列番44のアミノ酸配列を有し;重鎖CDR3配列は配列番号25のアミノ酸配列を有し;または前述のいずれかの変異型を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、HCDR1はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4のアミノ酸置換がある配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13のアミノ酸置換がある配列番号15、17、または19に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、または9のアミノ酸置換がある配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、LCDR1はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、または7のアミノ酸置換がある配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4のアミノ酸置換がある配列番号12または18に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4のアミノ酸置換がある配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であってもよい。いくつかの実施形態では、この段落に記載されている抗体は本明細書では「変異型」と呼ばれる。これらの変異型は、例えば、親和性成熟、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、または当該技術分野で既知のもしくは本明細書に記載されている任意の他の方法によって、本明細書に提供されている配列に由来してもよい。あるいは、これらの変異型は本明細書に提供されている配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書に提供されている方法に従って新たに単離されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、HCDR1はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、または8のアミノ酸置換がある配列番号14、23、29または43に示されるアミノ酸配列を含み;HCDR2はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13のアミノ酸置換がある配列番号15、17、19、24、30または44に示されるアミノ酸配列を含み;且つHCDR3はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、7、8、または9のアミノ酸置換がある配列番号16、25または31に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、LCDR1はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5、6、または7のアミノ酸置換がある配列番号11、20または27に示されるアミノ酸配列を含み;LCDR2はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、または4のアミノ酸置換がある配列番号12、18、21または26に示されるアミノ酸配列を含み;且つLCDR3はそのアミノ酸配列に対して最大1、2、3、4、5または6のアミノ酸置換がある配列番号13、22または28に示されるアミノ酸配列を含む。アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であってもよい。いくつかの実施形態では、この段落に記載されている抗体は本明細書では「変異型」と呼ばれる。これらの変異型は、例えば、親和性成熟、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、または当該技術分野で既知のもしくは本明細書に記載されている任意の他の方法によって、本明細書に提供されている配列に由来してもよい。あるいは、これらの変異型は本明細書に提供されている配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書に提供されている方法に従って新たに単離されてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11、20、または27から選択される配列を有し、LCDR1は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、LCDR2は配列番号12、18、21、及び26から選択される配列を有し、LCDR2は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、LCDR3は配列番号13、22、及び28から選択される配列を有し、LCDR3は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1は配列番号14、23、または29から選択される配列を有し、HCDR1は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、HCDR2は配列番号15、19、24、または30から選択される配列を有し、HCDR2は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、HCDR3は配列番号16、25、または31から選択される配列を有し、HCDR3は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は(i)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域を含み、その際、LCDR1は配列番号11の配列を有し、LCDR1は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、LCDR2は配列番号18の配列を有し、LCDR2は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、LCDR3は配列番号13の配列を有し、LCDR3は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、且つ(ii)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、その際、HCDR1は配列番号14の配列を有し、HCDR1は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、HCDR2は配列番号19の配列を有し、HCDR2は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含み、HCDR3は配列番号16の配列を有し、HCDR3は多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域CDR1は本明細書に開示されている他の軽鎖CDR1配列のいずれかで置換される。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域CDR2は本明細書に開示されている他の軽鎖CDR2配列のいずれかで置換される。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域CDR3は本明細書に開示されている他の軽鎖CDR3配列のいずれかで置換される。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域CDR1は本明細書に開示されている他の重鎖CDR1配列のいずれかで置換される。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域CDR2は本明細書に開示されている他の重鎖CDR2配列のいずれかで置換される。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域CDR3は本明細書に開示されている他の重鎖CDR3配列のいずれかで置換される。
【0124】
本発明の抗体またはその結合断片は、配列番号1、3または5の重鎖可変領域配列のHCDR1、HCDR2及び/またはHCDR3の配列に対応する配列を持つHCDR1、HCDR2、及び/またはHCDR3を有してもよく、及び/または配列番号2、4、または6の軽鎖可変領域配列のLCDR1、LCDR2及び/またはLCDR3の配列に対応する配列を持つLCDR1、LCDR2及び/またはLCDR3を有してもよい。例えば、本発明の抗体またはその結合断片は、配列番号3または5の重鎖可変領域配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列に対応する配列を持つHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有してもよく;且つ配列番号4または6の軽鎖可変領域配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列に対応する配列を持つLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有してもよい。例えば、本発明の抗体またはその結合断片は、配列番号5の重鎖可変領域配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列に対応する配列を持つHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有してもよく;且つ配列番号6の軽鎖可変領域配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列に対応する配列を持つLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有してもよい。CDRは、Kabatによって、Chothiaによって、IMGTによって、またはAbMによって定義されてもよい。例えば、CDRはKabatによって定義されているとおりである。例えば、CDRはChothiaによって定義されているとおりである。
【0125】
I.B.抗体の可変配列及び完全長配列
いくつかの実施形態では、抗体は、表6に提供されている以下の配列を有する1つ以上のペプチド、またはその変異型を含む:
【表6-1】
【表6-2】
【0126】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、以下の配列:配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、またはそれらの変異型の1つ以上から選択される配列を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は配列番号1、3または5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2、4または6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2、4または6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2、4または6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2、4または6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、または抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、または抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体は配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、または抗体は配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、または抗体は配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号1、3、5、7、9または10のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む
【0137】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号7、9または10のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む
【0138】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む
【0139】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む
【0140】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む
【0141】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は配列番号1、3、または5に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0142】
本明細書で提供されている抗体または抗原結合断片は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のアミノ酸置換がある配列番号1、3、または5で提供されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。例えば、1つ以上の置換はCDR領域のみで、フレームワーク領域のみで、またはCDR領域とフレームワーク領域の双方で見いだされてもよい。例えば、重鎖可変領域は、配列番号1、3、または5のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよく、その際、配列番号1、3、または5のどんな変異もHCDR1、HCDR2、またはHCDR3の内部では生じない。例えば、変異は1つ以上のフレームワーク領域で見いだされる。いくつかの例では、アミノ酸置換(複数可)は、(a)保存的アミノ酸置換(複数可)であってもよい。この段落に記載されている抗体は本明細書では「変異型」と呼ばれる。そのような変異型は、例えば、親和性成熟、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、または当該技術分野で既知のもしくは本明細書に記載されている任意の他の方法によって、本明細書に提供されている配列から導き出されてもよい。あるいは、そのような変異型は本明細書に提供されている配列に由来しなくてもよく、例えば、抗体を得るために本明細書に提供されている方法に従って新たに単離されてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は配列番号2、4、または6に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0144】
本明細書で提供されている抗体または抗原結合断片は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のアミノ酸置換がある配列番号2、4、または6で提供されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。例えば、1つ以上の置換はCDR領域のみで、フレームワーク領域のみで、またはCDR領域とフレームワーク領域の双方で見いだされてもよい。例えば、軽鎖可変領域は配列番号2、4、または6と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよく、その際、配列番号2、4、または6のどんな変異もLCDR1、LCDR2、またはLCDR3の内部では生じない。例えば、変異は1つ以上のフレームワーク領域で見いだされる。いくつかの例では、アミノ酸置換(複数可)は、(a)保存的アミノ酸置換(複数可)であってもよい。この段落に記載されている抗体は本明細書では「変異型」と呼ばれる。これらの変異型は、例えば、親和性成熟、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、または当該技術分野で既知のもしくは本明細書に記載されている任意の他の方法によって、本明細書に提供されている配列から導き出されてもよい。あるいは、これらの変異型は本明細書に提供されている配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書に提供されている方法に従って新たに単離されてもよい。
【0145】
重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)の配列は、VH及びVLの領域がペプチドリンカーで連結されているscFv型を含むが、これらに限定されない任意の型であることができる。本明細書で提供されている種々のペプチドを連結するのに使用できるペプチドリンカーの例には、(GGGGS)n(配列番号35);(GGGGA)n(配列番号36)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず、その際、各nは独立して1~5である。いくつかの実施形態では、可変領域、例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、リンカー、例えば、ペプチドリンカーで連結されていないのに対して、他の実施形態では、可変領域、例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、リンカー、例えばペプチドリンカーで連結されている。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗体はIgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMから選択されるクラスの重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体はIgGクラス及びIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるサブクラスの重鎖定常領域を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、抗体はIgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、IgG1重鎖定常領域は野生型(WT)配列を含む。いくつかの実施形態では、IgG1重鎖定常領域はEU番号付け目録に従って番号付けされたときM252Y、S254T、及びT256Eの突然変異、またはM428L及びN434Sの突然変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG1重鎖定常領域はKabatのEU番号付け目録に従って番号付けされたときM252Y、S254T、及びT256Eの突然変異を含む。M428L及びN434Sの突然変異を含有する配列番号9として本明細書で開示されている重鎖アミノ酸配列では、M428L突然変異は重鎖配列の残基432で発生し、N434S突然変異は重鎖配列の残基438で発生する。M252Y、S254T及びT256Eの突然変異を含有する配列番号10として本明細書で開示されている重鎖アミノ酸配列では、M252Y突然変異は重鎖配列の残基256で発生し、S254T突然変異は重鎖配列の残基258で発生し、T256E突然変異は重鎖配列の残基260で発生する。
【0148】
いくつかの実施形態では、重鎖は配列番号10、9、または7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、重鎖は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、重鎖は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は配列番号1~10及び11~19のいずれかに示される配列を有するペプチドを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は前述のいずれかの配列またはその変異型を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は配列番号1、3、5、7、9、もしくは10のアミノ酸配列、または前述のいずれかの変異型を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は配列番号2、4、6、もしくは8のアミノ酸配列、または前述のいずれかの変異型を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は配列番号2、4、6もしくは8のアミノ酸配列、またはそれらの任意の組み合わせを有するVLペプチドを含む。VLペプチドは本明細書に提供されているようなこれらの配列のいずれかの変異型を含むことができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は配列番号1、3、5、7、9、もしくは10のアミノ酸配列、またはそれらの任意の組み合わせを有するVHペプチドを含む。VHペプチドは本明細書に提供されているこれらの配列のいずれかの変異型を含むことができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1、3、5、7、9、または10の配列を含み、VLペプチドは配列番号2、4、6、または8の配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1、3、5、7、9、または10の配列と少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含み、且つ、VLペプチドは配列番号2、4、6、または8の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1、3、5、7、9、または10の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2、4、6、または8の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含むが、ただし、該VLペプチドは配列番号11、12、13、18、20、21、22、26、27、または28の配列を有する軽鎖CDRを含み、且つVHペプチドは配列番号14、15、16、17、19、23、24、25、29、30、31、43、または44の配列を有する重鎖CDRを含むという条件がある。いくつかの実施形態では、VH鎖またはVL鎖におけるCDRは本明細書に提供されている組み合わせで示される通りである。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、VHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1、3、5、7、9、または10の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含み、且つ、VLペプチドは配列番号2、4、6、または8の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含むが、ただし、該VLペプチドは配列番号11、20、または27から選択される配列を有するLCDR1と;配列番号12、18、21、及び26から選択される配列を有するLCDR2と;配列番号13、22、及び28から選択される配列を有するLCDR3とを含み;且つ、該VHペプチドは配列番号14、23、29、または43から選択される配列を有するHCDR1と;配列番号15、17、19、24、30、または44から選択される配列を有するHCDR2と;配列番号16、25、または31から選択される配列を有するHCDR3とを含むという条件がある。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1、3、5、7、9、または10の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2、4、6、または8の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含むが、ただし、該VLペプチドはLCDR1が多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む、配列番号11、20、または27から選択されるLCDR1と;LCDR2が多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む、配列番号12、18、21、及び26から選択される配列を有するLCDR2と;LCDR3が多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む、配列番号13、22、及び28から選択される配列を有するLCDR3とを含み;且つ該VHペプチドはHCDR1が多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む、配列番号14、23、29、または43から選択される配列を有するHCDR1と;HCDR2が多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む、配列番号15、17、19、24、30、または44から選択される配列を有するHCDR2と;HCDR3が多くても1つの保存的アミノ酸置換を含む、配列番号16、25、または31から選択される配列を有するHCDR3とを含むという条件がある。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、VHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2の配列を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号1の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号4、6、または8の配列を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号3の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号4の配列を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号3の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2、6、または8の配列を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号5の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号6の配列を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号5の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2、4、または8の配列を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号7の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号6の配列を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号7の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号8の配列を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号7の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2または4の配列を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号9の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号8の配列を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号9の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号6の配列を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号9の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2または4の配列を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号10の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号8の配列を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号10の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号6の配列を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はVHペプチド及びVLペプチドを含み、その際、VHペプチドは配列番号10の配列を含み、且つVLペプチドは配列番号2または4の配列を含む。
【0176】
これらの特定の組み合わせに加えて、本明細書に開示されているVHペプチドのいずれかは本明細書に開示されているVLペプチドのいずれかと組み合わせることができる。
【0177】
本明細書に提供されているように、本明細書に記載されている異なるペプチド(VHまたはVL)はペプチドリンカーで連結することができ、またはペプチドリンカーで連結せずに、代わりに連続配列のために連結することができる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは(GGGGS)n(配列番号35);(GGGGA)n(配列番号36)の配列、またはそれらの任意の組み合わせを含み、その際、各nは独立して1~5である。連結されたペプチド型はVH-Z-VLまたはVL-Z-VHの式で表すことができ、式中、Zはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、Zは(GGGGS)n(配列番号35);(GGGGA)n(配列番号36)、またはそれらの任意の組み合わせであり、各nは独立して1~5である。
【0178】
II.抗体エピトープ結合
いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基K550またはR551の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基K585またはS597の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、またはS597の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基Y617またはT625の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の残基K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも1つを含むヒト血漿カリクレイン上のエピトープに結合する。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32に列挙されるヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも1つに結合する。
【0180】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32に列挙されるヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも2つに結合する。
【0181】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32に列挙されるヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも3つに結合する。
【0182】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32に列挙されるヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも4つに結合する。
【0183】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32に列挙されるヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625の少なくとも5つに結合する。
【0184】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32に列挙されるヒト血漿カリクレインの以下の残基:K550、R551、K585、S597、Y617、またはT625に結合する。
【0185】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも1つに結合する。
【0186】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625のうちの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24に結合する。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも2つに結合する。
【0188】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも3つに結合する。
【0189】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも4つに結合する。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも5つに結合する。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも6つに結合する。
【0192】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも7つに結合する。
【0193】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも8つに結合する。
【0194】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも9つに結合する。
【0195】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも10個に結合する。
【0196】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも11個に結合する。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも12個に結合する。
【0198】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも13個に結合する。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも14個に結合する。
【0200】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも15個に結合する。
【0201】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも16個に結合する。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも17個に結合する。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも18個に結合する。
【0204】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも19個に結合する。
【0205】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも20個に結合する。
【0206】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも21個に結合する。
【0207】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも22個に結合する。
【0208】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも23個に結合する。
【0209】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の以下の残基:K550、R551、K585、H586、N587、G588、M589、W590、R591、L592、V593、G594、I595、T596、S597、Y617、M618、D619、W620、I621、L622、E623、K624、またはT625の少なくとも24個に結合する。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともK550に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともR551に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともK585に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともH586に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともN587に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともG588に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともM589に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともW590に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともR591に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともL592に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともV593に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともG594に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともI595に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともT596に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともS597に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともY617に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともM618に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともD619に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともW620に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともI621に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともL622に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともE623に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともK624に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、野生型ヒト血漿カリクレイン(配列番号32)の少なくともT625に結合する。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト血漿カリクレインの線形エピトープに結合する。例えば、線形エピトープは配列番号37、38、または39のアミノ酸配列を有する。抗体またはその抗原結合断片はこれらの線形エピトープの1つ、2つまたは3つと結合してもよい。さらなる実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号40、41、及び/または42の配列を有する線形エピトープ、及び/または配列番号40、41、及び/または42のアミノ酸配列のいずれのアミノ酸残基にも結合しない。
【0212】
III.抗体複合体
本明細書で提供される抗体は化学部分に結合されてもよい。化学部分は、とりわけ、ポリマー、放射性核種、または細胞毒性因子であってもよい。化学部分はMRIで検出可能な標識であってもよい。いくつかの実施形態では、これを抗体薬物複合体と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、化学部分は対象の体内での抗体分子の半減期を延長するポリマーである。好適なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量を持つPEG)、デキストラン及びモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられるが、これらに限定されない。Lee,et al.,(1999)(Bioconj.Chem.10:973-981)はPEGを結合した単鎖抗体を開示している。Wen,et al.,(2001)(Bioconj.Chem.12:545-553)は放射性金属キレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))に連結されているPEGと抗体を結合させることを開示している。化学部分の例には、カリケアマイシン(例えば、オゾガマイシン)、モノメチルオーリスタチンE、メルタンシンなどのような抗有糸分裂薬が挙げられるが、これらに限定されない。他の例には、生物学的に活性がある抗微小管剤、アルキル化剤、及びDNA副溝結合剤が挙げられるが、これらに限定されない。化学部分は、連結基(マレイミド)、カテプシン切断可能リンカー(バリン-シトルリン)のような切断可能リンカー、及びいくつかの実施形態では、1つ以上のスペーサー(例えば、パラ-アミノベンジルカルバメート)を介して抗体に連結することができる。
【0213】
本発明の抗体及び抗体断片はまた、例えば、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、及び40K、157Gd、55Mn、52Tr及び56Feのような標識と結合させてもよい。
【0214】
抗体及び抗体断片はまた、希土類キレート剤、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロンのような蛍光色素分子、ルシフェリン、ルミナル標識、イソルミナル標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識(acridimium salt)、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、及び安定したフリーラジカルを含む蛍光標識または化学発光標識と結合されてもよい。
【0215】
抗体分子はまた、例えば、ジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosa外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質及び化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンシンタンパク質、Phytoiacca americanaタンパク質PAPI、PAPII、及びPAP-S、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、saponaria officinalis阻害剤、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、及びエノマイシンのような細胞傷害性因子にも結合されてもよい。
【0216】
本発明の抗体分子を種々の部分に結合させるための当該技術分野で既知の任意の方法が採用されてもよく、これには、Hunter,et al.,(1962)Nature 144:945;David,et al.,(1974)Biochemistry 13:1014;Pain,et al.,(1981)J.Immunol.Meth.40:219;及びNygren,J.,(1982)Histochem.and Cytochem.30:407によって記載された方法が含まれる。抗体を結合させる方法は従来のものであり、当該技術分野において非常に周知である。
【0217】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、抗血漿カリクレイン抗体)が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体は血漿カリクレインに結合する組換え抗体である。いくつかの実施形態では、血漿カリクレインタンパク質はヒト血漿カリクレインタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗体はプレカリクレインタンパク質に特異的に結合しない。本明細書で使用されるとき、「組換え抗体」という用語は天然に存在しない抗体を指す。いくつかの実施形態では、「組換え抗体」という用語はヒト対象から単離されない抗体を指す。
【0218】
IV.核酸とその製造方法
本発明はまた、本明細書に開示されている抗体または抗原結合断片のそれぞれをコードする核酸も企図しており、これには、本明細書に開示されているような抗体の重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変領域をコードする核酸が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている抗体または断片をコードする核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書で提供されている抗体もしくはその抗原結合断片、または重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変領域のアミノ酸配列をコードする。
【0219】
例えば、一実施形態では、核酸は配列番号1、3、または5のいずれか1つの重鎖可変領域をコードする一方で、別の実施形態では、核酸は配列番号2、4、または6のいずれか1つの軽鎖可変領域をコードする。特定の実施形態では、核酸は配列番号7、9、または10の重鎖配列をコードする一方で、別の実施形態では、核酸は配列番号8の軽鎖配列をコードする。
【0220】
一実施形態では、核酸は、配列番号14、23、29、または43のアミノ酸配列を有するHCDR1と;配列番号15、17、19、24、30、または44のアミノ酸配列を有するHCDR2と;配列番号16、25、または31のアミノ酸配列を有するHCDR3とを含む重鎖または重鎖可変領域をコードする。
【0221】
別の実施形態では、核酸は、配列番号11、20、または27のアミノ酸配列を有するLCDR1と;配列番号12、18、21、または26のアミノ酸配列を有するLCDR2と;配列番号13、22、または28のアミノ酸配列を有するLCDR3とを含む軽鎖または軽鎖可変領域をコードする
【0222】
別の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号33の核酸配列によってコードされる重鎖可変領域と配列番号34の核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む。本発明の抗体はまた、配列番号48の核酸配列によってコードされる重鎖と配列番号49の核酸配列によってコードされる軽鎖とを含んでもよい。
【0223】
本明細書に記載されているように、既知の配列を持つ抗体の産生は日常的であり、どんな方法によっても行うことができる。本明細書に開示されているものような抗体を作り出す方法は当該技術分野で知られている。配列が分かれば、本明細書に提供されている例に従うことを含む既知の方法に従って抗体を生成することもできる。
【0224】
例えば、軽鎖可変領域及び/または重鎖可変領域をコードするDNA分子は、本明細書に提供されている配列情報を使用して化学的に合成することができる。合成DNA分子は、例えば、定常領域コード配列及び発現制御配列を含む他の適切なヌクレオチド配列に連結して、所望の抗体をコードする従来の遺伝子発現構築物を生成することができる。定義された遺伝子構築物の生成は当該技術分野の日常的な技術の範囲内である。あるいは、本明細書に提供されている配列は、その配列が本明細書に提供されている配列情報、またはハイブリドーマ細胞内のマウス抗体の重鎖と軽鎖コードする遺伝子に関する先行技術の配列情報に基づく合成核酸プローブを使用して、従来のハイブリッド形成技術またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によってハイブリドーマからクローニングすることができる。
【0225】
所望の抗体をコードする核酸を発現ベクターに組み込む(連結する)ことができ、これを従来の形質移入または形質転換の技術を介して宿主細胞に導入することができる。例示的な宿主細胞は、他の方法ではIgGタンパク質を産生しないE.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞、HeLa細胞、幼若ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)及び骨髄腫細胞である。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞が免疫グロブリン軽鎖及び/または重鎖の可変領域をコードする遺伝子を発現できる条件下で増殖させることができる。したがって、本発明は、本発明の抗体またはその断片をコードする核酸を含むベクター、と同様にそのような核酸またはベクターを含む細胞を提供する。
【0226】
具体的な発現及び精製条件は採用される発現系に応じて異なる。例えば、遺伝子をE.coliで発現させる場合、それは先ず、好適な細菌プロモーター、例えばTrpまたはTac及び原核生物シグナル配列の下流に操作された遺伝子を配置することによって発現ベクターにクローニングされる。発現された分泌タンパク質は屈折体または封入体に蓄積し、フレンチプレスまたは超音波処理による細胞の破壊後に回収することができる。次いで、屈折体は可溶化され、当該技術分野で知られている方法によってタンパク質が畳み直され、切断される。
【0227】
操作された遺伝子が真核宿主細胞、例えばCHO細胞で発現される場合、それは先ず、好適な真核プロモーター、分泌シグナル、ポリA配列、及び終止コドンを含有する発現ベクターに挿入される。任意で、ベクターまたは遺伝子構築物はエンハンサー及びイントロンを含有してもよい。この発現ベクターは任意で、定常領域の全部または一部をコードする配列を含有し、重鎖または軽鎖の全体または一部を発現させるのを可能にする。遺伝子構築物は従来の技術を使用して真核宿主細胞に導入することができる。宿主細胞は、VLまたはVHの断片、VL-VHヘテロ二量体、VH-VLまたはVL-VH単鎖ポリペプチド、完全な重鎖または軽鎖の免疫グロブリン鎖、またはそれらの一部を発現し、そのそれぞれは別の機能(例えば、細胞傷害性)を有する部分に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、重鎖(例えば、重鎖可変領域)または軽鎖(例えば、軽鎖可変領域)の全体または一部を発現するポリペプチドを発現する単一のベクターで形質移入される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(a)重鎖可変領域を含むポリペプチド及び軽鎖可変領域を含むポリペプチド、または(b)免疫グロブリン重鎖全体及び免疫グロブリン軽鎖全体をコードする単一のベクターで形質移入される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、1を超える発現ベクター(例えば、重鎖または重鎖の可変領域の全体または一部を含むポリペプチドを発現する1つの発現ベクター、及び軽鎖または軽鎖可変領域の全体または一部を含むポリペプチドを発現する別の発現ベクター)で同時形質移入される。
【0228】
免疫グロブリン重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドは、そのような可変領域をコードする発現ベクターで形質移入した宿主細胞を、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で増殖(培養する)させることによって作り出すことができる。発現後、ポリペプチドを回収し、当該技術分野で知られている技術、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグのようなアフィニティータグを使用して精製または単離することができる。
【0229】
血漿カリクレインを結合するモノクローナル抗体、または該抗体の抗原結合断片は、(a)完全なもしくは部分的な免疫グロブリン重鎖をコードする発現ベクターと完全なもしくは部分的な免疫グロブリン軽鎖をコードする別の発現ベクター;または(b)双方の鎖(例えば、完全なもしくは部分的な重鎖及び軽鎖)をコードする単一の発現ベクターによって形質移入した宿主細胞を双方の鎖の発現を可能にする条件下で増殖(培養する)させることによって作り出すことができる。インタクトな抗体(または抗原結合断片)は、当該技術分野で既知の技術、例えば、プロテインA、プロテインG、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグのようなアフィニティータグを使用して回収し、精製または単離することができる。単一の発現ベクターまたは2つの別個の発現ベクターから重鎖及び軽鎖を発現させることは、当該技術の通常の技量の範囲内である。
【0230】
本明細書に記載されている抗体をコードする核酸配列は、本明細書に記載されている可変領域の少なくとも1つをコードするゲノムDNAもしくはcDNA、またはRNA(例えば、mRNA)であることができる。V領域抗原結合セグメントをコードするDNA源としての染色体遺伝子断片の使用に代わる便利な方法は、例えば、その言及が全体として参照によって本明細書に組み込まれるLiu et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 84:3439(1987)及びJ.Immunology 139:3521(1987)によって報告されているように、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築にcDNAを使用することである。cDNAを使用するには、所望のタンパク質の合成を達成するために、宿主細胞に適した遺伝子発現エレメントを遺伝子と組み合わせる必要がある。cDNA配列の使用は、cDNA配列が適切なRNAスプライシング系を欠く細菌または他の宿主内で発現させることができるという点で、ゲノム配列(イントロンを含有する)よりも有利である。
【0231】
例えば、血漿カリクレインを検出、結合、または中和することができるV領域抗原結合セグメントをコードするcDNAは、本明細書で提供されているアミノ酸配列の使用に基づく既知の方法を使用して提供することができる。遺伝暗号は縮重しているので、特定のアミノ酸をコードするのに1を超えるコドンを使用することができる((Watson,et al.,下記)。遺伝暗号を使用して、それぞれがアミノ酸をコードできる1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを同定することができる。特定のオリゴヌクレオチドが実際に実際のXXXをコードする配列を構成する確率は、異常な塩基対関係と、抗体または断片を発現している真核細胞または原核細胞にて特定のコドンが実際に(特定のアミノ酸をコードするのに)使用される頻度とを考慮することによって推定することができる。このような「コドン使用規則」はLathe,et al.,J.Molec.Biol.183:112(1985)によって開示されている。Latheの「コドン使用規則」を使用して、抗体の可変領域または定常領域の配列をコードできる理論的に「最も可能性の高い」ヌクレオチド配列を含有する単一のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのセットが同定される。
【0232】
V.医薬組成物及びその投与
抗体及びその抗原結合断片を含む、且つそれらをコードする核酸分子を含む本明細書に開示されている血漿カリクレイン結合タンパク質は、例えば、対象への投与用の医薬組成物として製剤化することができる。
【0233】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」という用語は、生体内または生体外での診断または治療の用途に好適である活性薬剤または薬剤(例えば、本明細書に記載されている抗体または抗原結合断片)の担体(不活性または活性がある)との組み合わせを指す。
【0234】
本明細書に開示されているような抗体、その断片、またはそのような抗体をコードする核酸を含有する医薬組成物は、単位剤形で提示することができ、任意の好適な方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されている抗血漿カリクレイン抗体または他のタンパク質の医薬組成物または無菌組成物を調製するために、本明細書に提供されている抗体もしくはその抗原結合断片または他のタンパク質は薬学的に許容される担体または賦形剤と混合される。医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化されるべきである。有用な製剤は製薬分野で知られている方法によって調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.(Mack Publishing Company,1990)を参照のこと。
【0235】
「薬学的に許容される」及び「薬理学的に許容される」という語句は本明細書で使用されるとき、適宜動物またはヒトに投与される際に、有害反応、アレルギー反応、または他の不必要な反応を生成することがない化合物、分子実体、組成物、材料及び/または剤形を指す。ヒトへの投与については、調製物はFDA生物学的製剤基準室(FDA Office of Biologics standards)によって要求されている無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度の基準を満たすべきである。「薬学的に許容される」及び「薬理学的に許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制機関または米国以外の国の対応する機関によって承認もしくは認可されたもの、または動物、さらに詳しくはヒトに使用するために米国薬局方または他の一般に認められた薬局方に収載されているものを意味することができる。
【0236】
本明細書で使用されるとき「担体」は、身体のある器官または部分から身体の別の器官または部分への抗体またはその結合断片のような医薬剤の担持または輸送に関与する液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料のような材料、組成物、またはビヒクルを指す。
【0237】
本明細書で使用されるとき「薬学的に許容される賦形剤」は、対象への活性剤、例えば、抗体またはその結合断片の投与及び/または対象による吸収を助け、患者に対して著しく有害な毒物学的効果を引き起こすことなく、本発明の組成物中に含まれることができる物質を指す。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、水、NaCl、生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、エマルション(例えば、油/水または水/油エマルション)、乳酸リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香味料、塩溶液(例えば、リンゲル溶液)、アルコール、油、ゼラチン、例えば、ラクトース、デキストロース、アミロース、またはデンプンのような炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチセルロース、ポリビニルピロリジン、及び顔料などが挙げられる。そのような調製物は、滅菌し、所望であれば、本発明の組成物と有害に反応しない、潤滑剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝液、着色剤及び/または芳香物質のような補助剤と混合することができる。賦形剤の例については、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA(1975)を参照のこと。
【0238】
非経口投与に好適な製剤成分には、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸及び重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;EDTAのようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩のような緩衝液、ならびに塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性調節のための薬剤が挙げられる。
【0239】
静脈内投与については、好適な担体には、生理食塩水、静菌水、クレモフォールELTM(BASF,Parsippany,NJ)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、またはデキストロース溶液が挙げられる。担体は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、且つ微生物に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)を含有する溶媒または分散媒、及びそれらの好適な混合物であることができる。
【0240】
医薬製剤は好ましくは無菌である。滅菌は、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、フィルター滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前または後に行うことができる。
【0241】
本明細書で提供されている抗体の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液の形態で許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製されてもよい(例えば、Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照のこと)。いくつかの実施形態では、抗体は酢酸ナトリウム溶液pH5~6で適切な濃度に希釈され、浸透圧のためにNaClまたはスクロースが添加される。安定性を高めるために、ポリソルベート20またはポリソルベート80のような追加の薬剤が添加されてもよい。
【0242】
単独でまたは別の薬剤との併用で投与される抗体組成物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%致死用量)及びED50(集団の50%に治療有効用量)を決定するための細胞培養物または実験動物における標準薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す抗体が望ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータは、ヒトに使用するための投与量範囲を処方する際に使用することができる。そのような化合物の投与量は好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、採用される剤形及び投与経路に応じてこの範囲内で変動してもよい。
【0243】
本発明の抗体組成物は、例えば、Physicians’Desk Reference 2003(Thomson Healthcare;57th edition(November 1,2002))に従って対象に投与されてもよい。
【0244】
投与方法はさまざまであることができる。好適な投与経路には、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、腸内投与、非経口投与;筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、髄内投与、髄腔内投与、直接脳室内投与、静脈内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、眼内投与、吸入による投与、吹送投与、局所投与、皮膚投与、経皮投与、または動脈内投与が挙げられる。
【0245】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、注射のような侵襲性経路によって投与することができる。いくつかの実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片、またはその医薬組成物は、静脈内に、皮下に、筋肉内に、動脈内に、関節内(例えば、関節炎の関節内)に、腫瘍内に、または吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲性経路による投与(例えば、経口;例えば、丸薬、カプセル剤または錠剤)も本発明の実施形態の範囲内である。静脈内注入による投与は抗体が対象に投与されてもよい1つの方法である。
【0246】
いくつかの実施形態では、抗血漿カリクレイン抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本明細書に提供されている障害を治療するのに使用される任意の治療薬のような、しかし、これらに限定されない少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態では、抗体は本明細書で提供されている障害の別の治療と組み合わせて投与される。例えば、本発明の抗血漿カリクレイン抗体は、HAEの治療に使用される1つ以上の追加療法、例えば、BERINERT(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤)、FIRAZYR(登録商標)(イカチバント注射)、KALBITOR(登録商標)(エカランチド)、RUCONEST(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤、コンテストアルファ)、CINRYZE(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤)、HAEGARDA(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤皮下)、TAKHZYRO(登録商標)(ラナデルマブ-flyo)、ORLADEYO(商標)(ベロトラルスタット)、ガラダシマブ、ドニダロルセン、ダナゾールやスタノゾロールのような合成17-α-アルキル化アンドロゲン、及び/またはアミノカプロン酸のような抗線溶薬と共に投与されてもよい。抗血漿カリクレイン抗体は、1つ以上の前述の追加療法と同時に投与されてもよく、例えば、それらは共投与されてもよい。抗血漿カリクレイン抗体は、前述の療法の1つの前後に、例えば、前述の追加療法のいずれかと異なる日または異なる週、またはさらには異なる月に連続的に投与されてもよい。
【0247】
組成物は、当該技術分野で既知の医療機器によって投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、事前充填注射器または自己注射器を含む、皮下注射針による注射によって投与することができる。
【0248】
医薬組成物は、無針皮下注射装置;例えば、米国特許第6,620,135号;同第6,096,002号;同第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号または同第4,596,556号に開示されている装置によって投与されてもよい。
【0249】
医薬組成物は点滴によって投与されてもよい。医薬組成物を投与するための周知の埋入物及びモジュール形態の例には、制御された速度で薬物を分配するための埋入可能な微量注入ポンプを開示している米国特許第4,487,603号、正確な注入速度で薬物を送達するための薬物注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための可変流量の埋入可能な注入装置を開示している米国特許第4,447,224号、マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達システムを開示している米国特許第4,439,196号が挙げられる。他の多くのそのような埋入物、送達システム、及びモジュールは当業者に周知である。注入はまた、生理食塩水のような薬学的に許容される担体中の抗体を規定の期間にわたって静脈内送達することによっても実施されてもよい。医薬組成物の静脈内送達は、対象の静脈または動脈に埋め込まれたポートを介して発生してもよい。
【0250】
あるいは、抗体を全身性ではなく局所性に、例えば、注射を介して、またはデポー剤もしくは徐放性製剤にて投与してもよい。さらに、標的薬物送達システム、例えば、組織特異的抗体でコーティングしたリポソームで抗体を投与してもよい。
【0251】
投与計画は、治療用抗体の血清または組織での代謝回転率、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性、生物学的マトリックス内の標的細胞のアクセス可能性を含むいくつかの因子に左右される。好ましくは、投与計画は、標的疾患状態の改善を達成するのに十分な治療用抗体を送達する一方で同時に、望ましくない副作用を最小限に抑えるものである。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の治療用抗体及び治療される状態の重症度にある程度依存する。治療用抗体の適切な用量を選択するための指針が利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert,et al.(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602を参照のこと)。
【0252】
適切な用量の決定は、例えば、治療に影響を与える当該技術分野で既知または疑われるパラメーターまたは因子を使用して、臨床医によって行われ得る。一般に、用量は最適用量より若干少ない量で開始し、その後、あらゆるマイナスの副作用に対して所望のまたは最適な効果が達成されるまで、少しずつ増量する。診断上重要な評価基準には、例えば、炎症の症状や炎症性サイトカインの産生レベルの評価基準が挙げられる。一般に、使用される生物製剤は、治療の対象となる動物と同じ種に由来し、それによって試薬に対する免疫反応を最小限に抑えることが望ましい。ヒト対象の場合、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体が望ましくてもよい。
【0253】
抗体またはその抗原結合断片は、連続注入によって、または 例えば毎日、週に1~7回、毎週、隔週、毎月、隔月もしくは四半期ごとに投与される用量によって提供することができる。いくつかの実施形態では、週の総用量は、一般に少なくとも0.05μg/kg体重、さらに一般的には少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg以上である(例えば、Yang,et al.(2003)New Engl.J.Med.349:427-434;Herold,et al.(2002)New Engl.J.Med.346:1692-1698;Liu,et al.(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Portielji,et al.(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:133-144を参照のこと)。用量はまた、対象の血清中の抗体の所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/ml以上を達成するように提供されてもよい。他の実施形態では、抗体は、毎週、隔週、「4週間ごと」、毎月、隔月、または四半期ベースにて10、20、50、80、100、200、500、1000、1500、2000、または2500mg/対象で皮下にまたは静脈内に投与される。
【0254】
VI.治療方法及び医薬用途
抗体及びその抗原結合断片を含む、本明細書に開示されている血漿カリクレイン結合タンパク質は、対象にて疾患を治療するのに使用することができる。
【0255】
本明細書で使用されるとき、「治療する」または「治療」という用語は、障害に関連する症状の発生の阻害または遅延、及び/またはそのような障害の症状の重症度の軽減を含む。この用語にはさらに、既存の制御されていないまたは望ましくない症状の改善、追加の症状の予防、及びそのような症状の根本的な原因の改善または予防が含まれる。
【0256】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」、「治療有効用量」及び「有効量」という用語は、単独でまたは追加の治療剤と併用して細胞、組織、または対象に投与した場合に、疾患もしくは状態の1つ以上の症状、またはそのような疾患もしくは状態、例えば、血漿カリクレインが観察された病状を引き起こしたことが知られているHAEまたは状態の進行に測定可能な改善を引き起こすのに有効である抗体またはその抗原結合断片の量を指す。治療有効用量はさらに、症状の少なくとも部分的な改善、例えば、関連する医学的状態、例えば、血漿カリクレインが観察された病状を引き起こしたことが知られているHAEまたは状態の治療、治癒、予防または改善をもたらす、あるいはそのような状態の治療、治癒、予防、または改善の速度の増加をもたらすのに十分な抗体またはその結合断片の量を指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、治療有効用量はその成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、治療有効用量は、組み合わせて投与しても、連続的に投与しても、同時に投与しても、治療効果をもたらす有効成分の組み合わせた量を指す。治療薬の有効量は、診断基準またはパラメーターの少なくとも10%ふつうは少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%。さらに好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の改善をもたらすであろう。疾患の重症度を評価するために主観的尺度が使用される場合、有効量は主観的尺度の改善ももたらすことができる。いくつかの実施形態では、ある量は、それが血漿カリクレインが観察される病状の原因として知られているHAEまたは状態の症状を治療するまたは予防するのに使用できる量である場合、治療有効量である。例えば、本発明の抗体またはその結合断片の治療有効量は、HAE発作の頻度を減らしてもよい、またはHAE発作の重症度、例えば、発作中に対象が経験する浮腫のレベルを低減してもよい。
【0257】
本明細書で使用されるとき「対象」という用語は、哺乳類(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)及び、例えば、ヒトを含む動物のような任意の生物を指す。一実施形態では、対象はヒトである。対象は患者とも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、対象はそれを必要とする(in need thereof)対象である。「それを必要とする(in need thereof)」対象とは、治療されるべき状態の治療が必要であると特定されており、そのような状態を治療するという特定の意図を持って治療される対象を指す。状態は、例えば、本明細書に記載されている状態のいずれかであることができる。「対象」は「患者」と相互交換可能に使用される。
【0258】
いくつかの実施形態では、本方法は、治療有効量または予防有効量の本明細書に記載されている1つ以上の抗体もしくは抗体の抗原結合断片、または治療有効量を含有する医薬組成物を、感受性のある対象または血漿カリクレインが観察された病状を引き起こしたことが知られている状態を示す対象に投与することを含む。scFv、Fab及びF(ab’)2断片及び本明細書で提供されている他の形態の抗体を含むが、これらに限定されない、抗体の任意の活性形態を投与することができる。
【0259】
本明細書で使用されるとき、「血漿カリクレイン関連病状」は、血漿カリクレインの機能または異常発現によって引き起こされる状態を指す。これらの状態には、遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈血栓症または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、及び熱傷が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、病状は遺伝性血管浮腫である。いくつかの実施形態では、病状はブラジキニン依存性浮腫である。
【0260】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されている抗体は血漿カリクレイン関連の障害を有する、または有すると疑われる対象を治療するのに使用される。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連の障害は、遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈血栓症または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、及び熱傷から成る群から選択される。
【0261】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内在性活性化系)に関連する異常な凝固を、例えば、APTT凝固アッセイによって測定したとき、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはさらには100%(すなわち、検出可能な異常な凝固がない))減らす。
【0262】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されている抗体は本明細書に記載されている障害、例えば、遺伝性血管浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈血栓症または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、遺伝性血管浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、もしくは熱傷の治療のために、または創傷治癒を促進するために使用することができる。いくつかの実施形態では、障害は遺伝性血管浮腫またはブラジキニン依存性浮腫である。いくつかの実施形態では、障害は遺伝性血管浮腫である。
【0263】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されている抗体は本明細書に記載されている障害、例えば、遺伝性血管浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈血栓症または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、遺伝性血管浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、もしくは熱傷の治療のための薬物の製造に、または創傷治癒のための薬物の製造に使用される。
【0264】
個体の治療は、治療有効量の本明細書に記載されている抗体もしくは抗原結合断片、またはそのような抗体もしくは断片を含有する医薬組成物の投与を含んでもよい。抗体は、本明細書で提供されているもののようなキットで提供され得る。抗体は、単独で、または本明細書に提供されているような別の治療薬、鎮痛薬、または診断薬と混合して使用することができ、または投与することができる。血漿カリクレインに結合することができる抗体もしくはその断片、またはレシピエント患者にて血漿カリクレインから防御することができる抗体を患者に提供する際、投与される薬剤の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身状態、既往歴などのような因子に応じて変化するであろう。
【0265】
血漿カリクレイン活性に関連する状態を治療することができる抗体、または血漿カリクレイン関連病状の治療に使用される抗体は、血漿カリクレイン関連の症状または病状の軽減、解消、または改善に影響を与えるのに十分な量で対象に提供されることを意図している。そのような病状には、遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、遺伝性血管浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈血栓症または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、及び熱傷が含まれるが、これらに限定されない。例えば、病状は遺伝性血管浮腫(HAE)である。
【0266】
したがって、いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン介在性障害がある対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に提供されているような、治療有効量の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、障害は、遺伝性血管浮腫、ブラジキニン依存性浮腫、遺伝性血管浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜浮腫、第XII因子関連寒冷自己炎症性症候群(FACAS)、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症・変性性脊椎疾患、動脈血栓症または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、変形性関節症、血管炎、浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘導される凝固、頭部外傷または腫瘍周囲の脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、及び熱傷である。いくつかの実施形態では、障害は遺伝性血管浮腫である。いくつかの実施形態では、障害はブラジキニン依存性浮腫である。
【0267】
血漿カリクレイン活性を低下させるまたは阻害することを必要とする対象におけるそれを行う方法も本明細書に開示されている。例えば、本明細書に開示されている抗体またはその結合断片は、対象におけるヒト血漿カリクレインのような血漿カリクレインの活性を低下させるまたは阻害するための治療有効量でその対象に投与することができる。対象は、HAEのような本明細書に開示されている血漿カリクレイン関連の障害を有してもよい。いくつかの実施形態では、対象におけるHAE発作を少なくとも1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、またはそれ以上防ぐのに十分な量で血漿カリクレイン活性を低下させてもよく、または阻害してもよい。
【0268】
ブラジキニンの産生または活性を減らすまたは阻害することを必要とする対象にてそれを行う方法も本明細書に開示されている。例えば、本明細書に開示されている抗体または結合断片は、対象にてブラジキニンのレベルまたは活性を低下させるための治療有効量で対象に投与することができる。対象は、HAEのような本明細書に開示されている血漿カリクレイン関連の障害を有してもよい。いくつかの実施形態では、対象にてHAE発作を少なくとも1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、またはそれ以上防ぐための量でブラジキニンの産生または活性を低下させてもよく、または阻害してもよい。
【0269】
本明細書で提供されているように、抗体またはその抗原結合断片は他の治療薬と共に投与することができ、他の治療薬は、例えば、BERINERT(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤)、FIRAZYR(登録商標)(イカチバント注射)、KALBITOR(登録商標)(エカランチド)、RUCONEST(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤、コンテストアルファ)、CINRYZE(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤)、HAEGARDA(登録商標)(C1エステラーゼ阻害剤皮下)、TAKHZYRO(登録商標)(ラナデルマブ-flyo)、ORLADEYO(商標)(ベロトラルスタット)、ガラダシマブ、ドニダロルセン、ダナゾールやスタノゾロールのような合成17-α-アルキル化アンドロゲン、及び/またはアミノカプロン酸のような抗線溶薬のような、HAEを治療するのに使用される1つ以上の追加の治療薬を含んでもよい。追加の治療法(複数可)は本明細書に開示されている抗体と同時にまたは順次、投与することができる。
【0270】
本明細書に記載されている実施形態を実施するのに有用なキットも提供される。本発明のキットは、上記の抗体を含有する、またはそれに関連して包装される第1の容器を含むことができる。キットはまた、実施形態を実施するために必要なまたは便利な溶液を含有する、または関連して溶液に包装される別の容器を含んでもよい。容器は、ガラス、プラスチック、またはホイルで作ることができ、バイアル、ボトル、パウチ、チューブ、バッグなどであることができる。キットはまた、実施形態を実施するための手順や、第1の容器手段に含有される試薬の量などの分析情報のような、書面による情報も含有してもよい。容器は、書面による情報と共に、別の容器装置、例えば、箱や袋の中に入れられていてもよい。
【0271】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレインタンパク質に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は単離される。いくつかの実施形態では、抗体は血漿カリクレインに特異的に結合する。
【0272】
いくつかの実施形態では、抗体は血漿カリクレインタンパク質、例えば、ヒト血漿カリクレインの機能を阻害する、または中和する。本明細書で使用されるとき、「中和する」という用語はタンパク質の活性または機能が阻害されることを意味する。阻害は完全であることができ、または部分的であることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質の活性または機能は少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、または99%阻害される。阻害パーセントは、抗体の非存在下でのタンパク質の機能または活性に基づくことができる。いくつかの実施形態では、抗体は血漿カリクレインによって促進される凝固機能を阻害する。したがって、本発明は、血漿カリクレイン活性を調節する方法、例えば、血漿カリクレインを、本明細書に開示されている血漿カリクレイン抗体、またはその抗体を含む医薬組成物と接触させて、ヒト血漿カリクレインのような血漿カリクレインの活性を調節する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該方法は本明細書で提供される抗体、またはそれを含む医薬組成物を対象に投与して、対象にて血漿カリクレイン活性を調節することを含む。
【0273】
冠詞「a」及び「an」は本開示にて、文脈が不適切でない限り、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すのに使用される。例として、「(an)要素」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0274】
「及び/または」という用語は、別途示されない限り、本開示にて「及び」あるいは「または」のいずれかを意味するのに使用される。3以上の列挙された対象に関連する「及び/または」という表現は、文脈から別段に理解されない限り、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0275】
「少なくとも1つの」という表現は、文脈及び用途から別途理解されない限り、その表現の後に列挙される対象のそれぞれ、及び列挙される対象の2以上の種々の組み合わせを個別に含むことを理解すべきである。
【0276】
「含む(include)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、または「含有すること(containing)」という用語の使用はその文法上の等価物も含めて、一般に、特に明記されない限り、または文脈から理解されない限り、制約のない且つ非限定のものとして、例えば、追加の未記載の要素または工程を排除するものではないと理解すべきである。
【0277】
定量値の前で「約」という用語が使用される場合、本発明はまた、特に具体的に記述されない限り、その特定の定量値そのものも含む。本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、別段の指示がない限り、または文脈から推測されない限り、公称値からの±5%の変動を指す。
【0278】
本明細書で使用されるとき「と組み合わせて」という用語は、記載されている薬剤を、混合物として一緒に、単剤として同時に、または単剤として任意の順序で連続的に動物または対象に投与できることを意味する。
【0279】
例えばポリマーの絶対値ではなく分子量が提供されている場合、特に記載がない限り、または文脈から理解されない限り、分子量は平均分子量であると理解されるべきである。
【0280】
本明細書における任意の及びあらゆる例、または例示的な表現、例えば「~のような」または「~を含む」の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図したものであり、特許請求の範囲に記載されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる文言も、請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0281】
本発明が作動可能である限り、工程の順序や特定の動作を実行する順序は重要ではないことを理解すべきである。さらに、2以上の工程または動作を同時に実行してもよい。
【0282】
本説明の全体を通して、組成物が特定の成分を有する、含む、または含むものとして記載されている場合、または工程および方法が特定の工程を有する、含む、または含むものとして記載されている場合、さらに、引用された成分から本質的に成る、またはそれから成る本発明の組成物が存在すること、及び引用された処理工程から本質的に成る、またはそれから成る本発明に係る工程および方法が存在することが企図される。
【0283】
本出願では、ある要素または構成成分が引用された要素または構成成分のリストに含まれる、及び/またはそこから選択されると言われている場合、その要素または構成成分は引用された要素または構成成分のいずれか1つであり得ること、あるいは、その要素または構成成分は引用された要素または構成成分の2以上から成る群から選択され得ることが理解されるべきである。
【0284】
さらに、本明細書に記載されている組成物または方法の要素及び/または特徴は、本明細書で明示的であれ、黙示的であれ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の方法で組み合わせることができることを理解すべきである。例えば、特定の化合物に言及する場合、文脈から別途理解されない限り、その化合物は本発明の組成物の種々の実施形態及び/または本発明の方法にて使用することができる。換言すれば、本出願内では、実施形態は、明確で簡潔な本出願の記載及び図面を可能にする方法で記載され、及び描かれているが、実施形態は本教示および発明(複数可)から離れることなく、種々に組み合わせ、または分離されてもよいことが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載され、及び図示されている特徴はすべて、本明細書に記載され、及び図示されている本発明(複数可)のすべての態様に適用可能であり得ることが理解されるであろう。
【0285】
今や、以下の実施例を参照して主題を説明する。これらの実施例は、例示目的のためにのみ提供されているにすぎず、特許請求の範囲はこれらの実施例に限定されると決して解釈されるべきではないが、むしろ、本明細書に提供されている教示の結果として明白になっている任意の及び全ての変形を包含するように解釈されるべきである。当業者は、本質的に同様の結果をもたらすために変更または修正されてもよい種々の重要性の低いパラメーターを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0286】
実施例1:新規血漿カリクレイン抗体の生成
プレカリクレイン(prekal)をノックアウトした5匹のマウスを、活性型ヒト血漿カリクレイン(pkal、Enzyme Research Labs,South Bend,IN)で踵関節経路を介して免疫した。血清力価が強力な免疫応答を示した場合、流入領域リンパ節を採取し、電気融合を使用してリンパ球を骨髄腫株と融合させた。得られたハイブリドーマを30枚の384ウェルプレートに播種し、ヒトpkal及びprekalへの結合についてELISAによってスクリーニングした。pkalに優先的に結合するハイブリドーマ株をサブクローニングし、増殖させた。
【0287】
pkal及びprekalへの結合についてモノクローナルIgGをELISAによって再び調べ、蛍光発生ペプチド基質アッセイでpkal(1nM酵素)酵素活性の阻害についてスクリーニングした(Kenniston et al.J Biol.Chem.2014 Aug 22;289(34):23596-608)。
図1に示すように、24L13を含む3つのモノクローナル系列はpkalに対して選択的であることが確認された。
図2は、1つの系列(24L13、MAb1と名付けられた抗体)も、陽性対照であるC1inh、及び米国特許第8,816,055号に記載されている別の抗体であるDX-2930と比べて、酵素アッセイ(Kenniston,2014)において阻害性であったことを示している。このハイブリドーマを配列決定して、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(配列番号1及び配列番号2;MAb1)を決定した。
図3に示すように、組換え発現させたMAb1はハイブリドーマ由来IgGの阻害活性を保持していた。MAb1の重鎖可変ドメインの核酸配列は配列番号33として提供され、MAb1の軽鎖可変ドメインの核酸配列は配列番号34として提供されている。
【0288】
IMGT(imgt.org)に列挙されているヒト生殖系列配列との比較によってマウス可変ドメインに最も近いヒト生殖系列配列を特定した。ヒト生殖系列に向けてマウス配列を展開するために重鎖と軽鎖の双方に対してフレームワーク修飾の入れ子セットを設計し、ペアで発現させ、pkalへの結合親和性、及びpkal酵素活性の阻害の効力について調べた。変異型VH5_VL4(MAb2)は結合親和性及び阻害効力の双方を維持し、最適にヒト化された(配列番号3、配列番号4)。加えて、重鎖CDR2の構造的責任であるNGをNAに修飾して脱アミド化のリスクを減らすのに成功した(配列番号5)。
【0289】
MAb1軽鎖CDR配列を多様化し、Fabファージディスプレイライブラリーを構築した。pkalによる連続的な選択及びprekalによる脱選択を使用して、pkal選択性クローンを濃縮した。選択性クローンをIgGとして発現させ、pkal酵素活性の阻害について調べた(
図4)。軽鎖CDR2変異型クローンVL4_213T.05(MAb3-VL;配列番号6)は、pkal阻害の高い効力を持つ選択性変異型として同定された。ヒト化VL4変異型(配列番号6、MAb3-VL)に移植されたこの軽鎖CDR2は、ヒト化された責任固定重鎖可変領域(配列番号5、MAb3-VH)と共に発現させた場合、選択性と活性を維持した。MAb3のVL配列及びVH配列のヒト化され最適化された構築物は、完全長ヒトIgG1カッパ型として発現される場合、MAb4(重鎖:配列番号7、軽鎖:配列番号8)と名付けられた。
【0290】
MAb4の治療可能性をさらに最適化するために、LS(EU番号付けによるM428L及びN434Sに相当)またはYTEの突然変異(EU番号付けによるM252Y、S254T、及びT256Eに相当)を導入することによって重鎖定常ドメインを修飾した(それぞれ配列番号9及び配列番号10)。軽鎖配列番号8と共に発現される場合、これらのヒト化IgG構築物は、それぞれMAb4-LS及びMAb4-YTEと命名された。
【0291】
実施例2:血漿カリクレイン抗体の試験管内での特徴付け
血漿カリクレインを阻害することが知られ、HAE治療の臨床試験の対象である市販のモノクローナル抗体DX-2930と比較した、MAb4とそのFc変異型、MAb4-YTE及びMAb4-LSの試験管内での効力を生理学的に関連する機能アッセイ試験にて調べた。具体的には、各抗体がその天然基質である高分子量キニノーゲン(HMWK)のpkal切断を阻害する能力を観察した。これらの実験では、10または30nMのpkalを阻害抗体と共に室温で1時間予備インキュベートし、その後600nMのHMWKを添加して20分間インキュベートし、0.5μMのAEBSFを添加して反応を停止させた。pkalによって触媒されてHMWKから放出されるブラジキニン(BK)の濃度を、市販のELISAキット(Enzo,Farmingdale,NY)にて反応生成物の1/100希釈を使用して測定した。pKal阻害アッセイにおける新たに生成した抗体と参照抗体DX-2930の比較を
図5に示す。Mab4、Mab4-YTE、及びMab4-LSの構築物は、DX-2930と比べて、さらに強力なpKal阻害とさらに急勾配のヒルスロープを示した。これに関連して、MAb4及びそのFc変異型は、pkalによるHMWK切断の強力な阻害剤であり、ヒルスロープ約2を示し(例えば、
図5を参照)、これは、MAb4及びそのFc変異型がpkalのアロステリック阻害剤であってもよいという仮説と一致する。さらに、Mab4構築物へのYTE修飾またはLS修飾の導入は、阻害アッセイにおける構築物の効力に実質的な影響を与えなかった。
【0292】
使用された高分子量キニノーゲンの濃度はヒトの体内を循環する濃度であり、使用された血漿カリクレインの濃度は、発作中の遺伝性血管浮腫(HAE)患者の血漿中推定値の範囲内であるので、HMWKアッセイのパラメーターは生理学的に関連性があった。Mab4-YTE及びDX-2930の双方はブラジキニン産生の用量依存性阻害を示し、これは血漿カリクレイン活性の低下を示し、
図5に示すように、Mab4-YTEはDX-2930よりも血漿カリクレイン活性及びブラジキニン放出の阻害に対してさらに大きな効力を示した。
【0293】
相対的な効力の指標を提供するために、抗体のIC
90値も決定した。HAEでは、HAE発作を防ぐための治療上関連する阻害レベルは、血漿カリクレインの約90%を阻害することであると考えられている。これは、90%の阻害効果をもたらす薬剤の濃度であるIC90と呼ばれる測定値に相当する。HMWK機能アッセイでは、
図5に示すように、IC
90値は、カリクレイン活性の90%阻害をもたらす抗体の濃度であり、治療上関連する阻害レベルであると考えられている。DX-2930のIC
90値は300nMであるのに対し、MAb4及びそのFc変異型のIC
90値は30nMである。したがって、この試験管内HMWK機能アッセイは、MAb4-YTEがDX-2930よりも約10倍高い効力を有することを示した。DX-2930を用いた臨床試験では、HAE発作率を最適に低下させ、発作のない持続時間を最大化するには200~300nMのDX-2930の定常状態血漿レベルを必要とすることが示されているので、このアッセイの結果はDX-2930で観察された臨床有効性と一致している。
【0294】
リードpkal抗体の動態特性及び選択性を37℃、pH7.4またはpH6.0にてSPRによって推定した。MAb4-LS(配列番号9及び8)及びMAb4-YTE(配列番号10及び8)は、pkalに対して一桁ナノモルの低い親和性を示し、prekalに対して実質的な選択性を示した(
図6)。実際、MAb4-LS及びMAb4-YTE、ならびにDX-2930は血漿カリクレインに対してプレカリクレインよりも1000倍を超える高い親和性を有する(
図6)。ヒト血漿カリクレインに関するMAb4-YTEのK
DはpH7.4で1.1nM、pH6.0で0.9nMであった一方で、MAb4-LSのK
DはpH7.4で2.2nM、及びpH6.0で1.2nMであった。これらの抗体は、特にpH6.0~pH7.4の範囲内でヒト血漿カリクレインへの標的結合にて有意なpH依存性を示さなかった。対照的に、参照抗体DX-2930はpH7.4で18nM、pH6.0で236nMのK
Dを示した(
図6)。結果として、Mab-YTE抗体及びMab4-LS抗体は血漿カリクレインに対して参照抗体DX-2930よりも強い結合親和性(5倍を超える、例えば8~16倍)を有し、これは機能的血漿カリクレイン阻害アッセイにてDX-2930と比べてMab4-YTEの効力が約10倍大きいことに一致する。さらに、DX-2930抗体は同じ条件下でかなりのpH感受性を示した。例えば、DX-2930抗体はpH6とpH7.4で測定した場合、K
Dの10倍を超える低下を示した。表7は、pH7.4、37℃における上記のようなSPR結合に基づくMAb4-YTE及びDX-2930のK
a、K
d及びK
Dの値を示す。
【表7】
【0295】
まとめると、
図6に提示するデータは抗体Mab4-YTEまたはMab4-LSが以下の特徴:
(a)pH6.0~7.4の間で実質的にpHに依存しないK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);
(b)ヒト血漿カリクレインについて0.1nM~5nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような);及び
(c)ヒト血漿カリクレインについては0.1nM~5nMの間のK
D、及びヒトプレカリクレインについては250nM~2,000nMの間のK
D(例えば、50mMのHEPES、150mMのNaCl、0.1または1.3mMのCa
2+、1mg/mLのBSA、0.02%のTween-20、pH6.0または7.4を含有する緩衝液にて37℃でSPRによって決定されるような)のうちの1つ以上を有することを示している。
【0296】
Fc突然変異(MAb4-LS及びMAb4-YTE)を持つ血漿カリクレイン抗体のhFcRn結合も評価した。MAb4-LS及びMAb4-YTEの2つの希釈系列を作製した:0.05%P20(ポリソルベート20)を含むPBS中、pH6.0で2000nM~31.25nMのMAb4-LS及びMAb4-YTE、及びpH7.4で2000nM~500nM。IgG1を対照抗体として使用した。Biacore T200を使用してSPRを介してFcRn結合について抗体試料を評価した。BiacoreチップはヒトFcRnと結合したCM5(Sino Biological、カタログ番号CT009-H08H)だった。使用したランニング緩衝液は、PBS 0.05% P20及びpH6またはpH7.4であった。pH6.0でのhFcRn結合を表8に示す。MAb4-LS及びMAb4-YTEは双方とも、未修飾MAb4と比べて(2.29×10
1のK
dと比べて3.10×10
2及び2.77×10
2のK
d)及びDX-2930(1.67×10
1 K
d)と比べてpH6.0でのオフ速度の低下(10倍遅い)によって、pH依存性のhFcRn結合が増加した。pH7.4では、3つの抗体すべてに対する結合の証拠はなく、MAb4、MAb4-LS及びMAb4-YTEのFcRn結合がpH依存性であることを示唆している[データは示さず]。したがって、理論に束縛されることを望まないが、MAb4-LS抗体及びMAb4-YTE抗体は双方とも、親MAb4抗体と比べて、エンドソーム(pH6)内のFcRnにはさらに良好に結合し、血液(pH7.4)内のFcRnにはさらに弱く結合してもよく、IgG-FcRn再循環経路を介して抗体が血液中に再循環し、それによってMAb4-LS及びMAb4-YTEの循環半減期をMAb4及びDX-2930と比べて約3~4倍延長する(実施例3の表10を参照のこと)。
【表8】
【0297】
また、MAb4-YTEは、pKalの低分子蛍光基質であるPro-Phe-Arg-AMC(PFR-AMC)を使用して評価したところ、ヒトだけでなくカニクイザル、ラット、ウサギの血漿カリクレイン酵素活性も強力に阻害することが示された。MAb4-YTE抗体を、
図7のグラフに示すような示された濃度にてそれぞれの種に由来する1nMのpKalと共に3つ組ウェルにおいて37℃で1時間インキュベートした。10μMの蛍光発生レポーター基質PFR-AMCを添加し、動態モードでの蛍光プレートリーダーにてpKal活性を60分間測定した。各反応ウェルからの最初の40分間の基質放出データに対する線形回帰分析を実行して、各阻害剤濃度について初期反応速度(RFU/分)を得た。初期反応速度を適合させ(4パラメーター適合)、IC
50値を得て、基準化して、近似曲線の上限及び下限の内の酵素活性パーセントを取得した。IC
50のデータを表9に示す。nMでのMAb4-YTEの濃度に対してプロットしたpKal活性のレベルを
図7に示す。このデータは、MAb4-YTEがヒトだけでなく、サル、ウサギ、及びラットのpKalの強力な阻害剤であることを示している。
【表9】
【0298】
実施例3:血漿カリクレイン抗体の生体内の薬物動態学の特徴付け
MAb4(配列番号7及び8)、MAb4-LS(配列番号9及び8)、及びMAb4-YTE(配列番号10及び8)をさらに、別の血漿カリクレイン抗体DX-2930と並行して、カニクイザルの薬物動態試験にて特徴付けた。これらの抗体の試験は同時に実施されたが、直接比較ではなく独立した試験だった。LMナイーブまたはナイーブの3.0~4.0kgのオスN=18のカニクイザルをHainan Jingang Biotech Co.LTD.から購入した。抗体を20mMのヒスチジン、150mMのNaCl、0.01%Tween80、pH6.5中で調製した。これらの試験では、すべての抗体をオスのカニクイザル(N=3)に5mg/kgで10分間かけてIV注入によって投与した。各時点で、橈側皮静脈及び伏在静脈から予め冷却したクエン酸チューブに血液を採取した。試料は週に1回、42日間(DX-2930及びMAb4)または84日間(MAb4-YTE及びMAb4-LS)採取した。血液試料を濡れた氷の上に置き、4℃で遠心分離して、試料採取から15分以内に血漿を得た。血漿試料を約-70℃で保存した。血漿試料中の各抗血漿カリクレイン抗体の存在は、捕捉剤として抗ヒト抗体、検出試薬としてヒトIgG重鎖及び軽鎖サル吸着抗体(Southern Biotech,Cat#:2049-01及びBethyl,Cat#A80-319P)でコーティングしたプレートを使用してELISAによって決定した。SpectraMax M2を使用してELISAプレートを読み取った。
【0299】
MAb4及びDX-2930(
図8に示すMAb4の半減期、
図9に示すDX-2930の半減期)は10~12日の終末相半減期を有し、これは非ヒト霊長類におけるDX-2930に関するUSFDAのレビュー文書及び出版物で報告されているものと一致する。対照的に、MAb4-LSは約23日の終末相半減期を示し、MAb4-YTEは約34日の終末相半減期を示した(
図8を参照のこと)。MAb4-YTEの終末相半減期はDX-2930及びMAb4で観察される半減期よりも約3~4倍長い。これらの結果は半減期が延長されたMAb4抗体の優位性を示している。別の血漿カリクレイン抗体へのLSまたはYTEの突然変異の導入は半減期を増やさないことが発見された(データは示さず)ので、この結果は驚くべきものであった。加えて、新たに生成された抗体の阻害効力の増加と半減期の増加は、DX-2930と比べて有効量のMAb4-YTEまたはMAb4-LSが生体内で長期間維持されてもよいことを示している。
図9は、各抗体のpKalのIC90と比較したMAb4-YTE(真ん中パネル)及びDX-2930(上部パネル)のPK半減期を示す。(上部パネルと真ん中パネルのデータは、MAb4-YTEとDX-2930の双方の血漿レベルを示すために、下部パネルで互いに重ね合わせている)。DX-2930の血漿レベルは約10日目までに予測最小治療濃度(IC90)を下回るが、MAb4-YTEは84日間を超えて予測最小治療濃度(IC90)を超えたままである。表10はカニクイザル試験由来のPKデータの要約を提供している。理論に束縛されるものではないが、実施例2に記載されているFc修飾抗体のpH依存性FcRn結合の増大によって、カニクイザルにおけるクリアランスが遅くなり、半減期が延長された。
【表10】
【0300】
試験管内効力データと非ヒト霊長類の試験に由来する半減期の結果の評価は、抗体の有効性の潜在的な持続期間を示唆している。具体的には、カニクイザル試験に由来する各時点で測定された抗体の血漿濃度を使用して、試験管内効力アッセイにおける抗体のその濃度で観察された血漿カリクレイン阻害に基づいてその時点での血漿カリクレイン阻害の予想レベルを予測することができる。
【0301】
図10は、カニクイザルのPK試験からの血漿濃度と、HMWKアッセイデータに基づくMab4-YTE及びDX-2930による生体内pKal阻害パーセントを比較する試験管内機能アッセイで測定されたpKal阻害と、生体内PKデータとに基づく予測モデルを提供する。カニクイザル試験では、DX-2930の血漿レベルは約10日目までに試験管内効力アッセイで予測される最小治療濃度またはIC90を下回り、20日目までに予測される試験管内効力アッセイは血漿カリクレインの約50%阻害をもたらすレベルになった。対照的に、カニクイザル試験では、MAb4-YTEの血漿レベルは、実験の全期間である84日間、試験管内効力アッセイによって予測されるIC90を超えたままだった。
【0302】
これらの前臨床データは、等用量では、MAb4-YTEはヒトにて数ヵ月の半減期を有するので、DX-2930よりも作用持続時間が有意に長いことを示唆している。これによって、DX-2930よりも長い作用持続時間を有する、さらに低い用量のMAb4-YTEが可能になる可能性があってもよい。したがって、MAb4-YTEは血漿カリクレインの病的活性を長期間阻害することによって、HAE患者に対する効果的な予防療法であってもよい。加えて、HAE発作を防ぐために必要な治療上有効な血漿レベルを維持しながら、抗体の投与頻度を低くしてもよい。したがって、MAb4-YTEまたはMAb4-LSのような抗体は、低頻度の間隔で、例えば3ヵ月ごとに、またはさらに長い間隔で投与されてもよいことが可能である。これは、DX-2930のような現在利用可能なHAE治療法に比べて大きな利点となる。したがって、MAb4-YTEは低頻度の投与、さらに少ない投与量、及び長期間にわたるHAE発作の抑制という利点を組み合わせる可能性がある。
【0303】
実施例4.血漿カリクレイン抗体の的外れ結合の試験管内での特徴付け
膜プロテオームアレイアッセイを実行してMAb4の非特異的結合を特定した。MAb4については的外れ結合は観察されなかった(データは示さず)。
【0304】
さらに、抗体を調べて抗体がエフェクター機能を含有するかどうかを決定した。抗体はエフェクター機能を有さないことが分かった(データは示さず)。
【0305】
抗体の特異性も、抗体が無関係なセリンプロテアーゼに結合するかどうかを評価することによって決定した。抗体をセリンプロテアーゼのパネル(約20)に対してスクリーニングしたが、有意な交差反応性結合は観察されなかった(データは示さず)。
【0306】
MAb4が交差反応性を示すかどうかを決定するために、トリプシン阻害アッセイを開発し、実行した。0.25nMのトリプシン、ヒト膵臓(Cat#16-19-032000,Athens Research and Technology Inc)、及び1μMで開始するMAb4-YTEの希釈系列を、緩衝液におけるPFR-AMC(蛍光発生基質、Bachem,cat#4004023)と共に2時間インキュベートした。蛍光強度を5分ごとに測定した。ガベキサートメシル酸塩を陽性対照として1μMで開始する希釈系列にて使用した。各アッセイを2つ組で実施した。結果を
図11及び表11に提供する。MAb4-YTEはトリプシン活性を阻害せず、IC50は計算できなかった。対照的に、抗体DX-2930は血漿カリクレインの機能活性を阻害する(約300nM)DX-2930の効力範囲内であるIC50 (243nM~376nM)にてトリプシンの活性を阻害した。したがって、Mab4-YTEはDX-2930と比べてさらに優れたプロテアーゼ選択性プロファイルを示した。
【表11】
【0307】
追加のセリンプロテアーゼ阻害アッセイを開発し、実行してMAb4が交差反応性を示すかどうかを決定した。16のプロテアーゼに対して1μMで開始する3倍連続希釈による10用量アッセイにて2つ組でMAb4-YTE及びDX-2930を調べた。対照化合物は10μMまたは100uM(tPA、マトリプターゼ2、カリクレイン5、カリクレイン2、カリクレイン1、グランザイムB、及びAPC)で開始する3倍連続階希釈による10用量アッセイで調べた。蛍光標識されたペプチド基質からの蛍光シグナルの増加の経時的測定としてプロテアーゼ活性をモニターし、シグナル勾配(シグナル/分)の最初の直線部分を分析した。抗体価測定についての%酵素活性はPBS緩衝液の存在下でのビヒクル対照を100%活性として計算した。MAb4-YTE及びDX-2930によるプロテイナーゼ阻害のIC50値を以下の表12に要約する。
【表12】
【0308】
空のセルは阻害作用がないこと、またはIC50曲線に当てはめることができなかった化合物活性を示す。1μMを超えるIC50値は利用可能な最良の曲線の当てはめに基づいて推定した。
【0309】
このアッセイで調べたセリンプロテアーゼに対するMAb4-YTEのIC50は計算できなかった。ヘプシン及びトロンビンAに対するDX-2930については1μM(1.00E-06)を超えるIC50が推定された。セリンプロテアーゼ阻害プロファイルの差異は、DX-2930と比べてMAb4-YTEのプロテアーゼ選択性が高いことと一致していた。
【0310】
要するに、MAb4-YTEはトリプシン活性または調べたセリンプロテアーゼを阻害しなかったので、的外れ阻害活性を示さない。対照的に、DX-2930血漿カリクレイン抗体は有意なトリプシン阻害活性と同様にヘプシン及びトロンビンAに関して的外れな阻害活性を示したということは、的外れ活性の欠如によるMAb4-YTEの標的に対する特異性と選択性の優れた特性を実証している。
【0311】
実施例5:血漿カリクレイン抗体のエピトープの特徴付け
競合結合アッセイ
【0312】
SPRに基づく競合実験(Biosensor Tools,Salt Lake City,UT)は、MAb4が活性部位に結合する競合阻害剤であることが示されているDX-2930(Kenniston,2014)のエピトープとは異なるエピトープに結合することを示している(
図12)。DX-2930、MAb4-LS、及びMAb4-YTEを、10mMのNaAc、pH5.0との標準的なNHS/ECDカップリングを使用してXantec30Mセンサーチップにアミンカップリングした。捕捉及びスタッキングの試験では、ランニング緩衝液は1mg/mlのBSA及び0.02%p20と共に1.3mMのCa++を含むHBS(pH7.4)を含有した。ヒト血漿カリクレインをさまざまな抗体表面に捕捉し(時間0~180秒、1μM)、次に各表面結合複合体に対して各mAbを1μMで調べた。
【0313】
各抗体をそれ自体に対して調べた場合、結合は観察されなかった(
図12)。しかしながら、MAb4-LS及びMAb4-YTEは双方ともDX-2930抗体表面によって捕捉されたカリクレインに結合した(
図12)。加えて、DX-2930は、MAb4-LS抗体及びMAb4-YTE抗体の双方によって捕捉されたカリクレインに結合した(
図12)。これらの結果は、MAb4-LS及びMAb4-YTEがDX-2930とは異なるエピトープに結合することを示している。
【0314】
pKal-抗体複合体の架橋及びマスフィンガープリンティング
【0315】
先ず、ヒトpKalをペプチドマスフィンガープリンティングによって特徴付けした。ヒト血漿カリクレインタンパク質をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンのタンパク質分解に供した後、nLC-QExactive+OrbitrapMS/MS分析を行った。QExactive+質量分析計(Thermo Scientific)と連携したnLC Ultimate 3000-RSLCシステムを使用した。7μMのヒトpKalを1μLのDSS d0/d12(2mg/mL;DMF)とインキュベートした後、室温で180分間インキュベートした。対照試料は架橋試薬を添加せずに調製した。試料を室温で180分間インキュベートした。インキュベート後、1μLの重炭酸アンモニウム(最終濃度20mM)を添加することによって架橋反応を停止し、室温で60分間インキュベートした。次に、スピードバックを使用して双方のチューブを乾燥させた後、8M尿素を再懸濁(10μL)した。混合後、DTT(1μL、500mM)を双方のチューブに加えた。次に混合物を37℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、ヨードアセトアミド(1μL、1M)を各チューブに添加し、その後暗室で室温にてさらに60分間インキュベートした。インキュベート後、100μLのタンパク質分解緩衝液を双方のチューブに加えた。トリプシン緩衝液は50mMのAmbic、pH8.5、5%アセトニトリルを含有し;キモトリプシン緩衝液は100mMのTris HCl、10mMのCaCL2、pH7.8を含有し;ASP-N緩衝液は50mMのリン酸緩衝液、pH7.8を含有し;エラスターゼ緩衝液は、50mMのTris HCl、pH8.0を含有し;サーモリシン緩衝液は50mMのTris HCl、0.5mMのCaCL2、pH9.0を含有した。
【0316】
トリプシンのタンパク質分解
【0317】
100μLの還元/アルキル化ヒトpKalを1μLのトリプシン(Promega)と1/100の比率で混合した。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベートした。
【0318】
キモトリプシンのタンパク質分解
【0319】
100μLの還元/アルキル化ヒトpKalを0.5μLのキモトリプシン(Promega)と1/200の比率で混合した。タンパク質分解混合物を25℃で一晩インキュベートした。
【0320】
ASP-Nのタンパク質分解
【0321】
100μLの還元/アルキル化ヒトpKalを0.5μLのASP-N(Promega)と1/200の比率で混合した。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベートした。
【0322】
エラスターゼのタンパク質分解
【0323】
100μLの還元/アルキル化ヒトpKalを1μLのエラスターゼ(Promega)と1/100の比率で混合した。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベートした。
【0324】
サーモリシンのタンパク質分解
【0325】
100μLの還元/アルキル化ヒトpKalを2μLのサーモリシン(Promega)と1/50の比率で混合した。タンパク質分解混合物を70℃で一晩インキュベートした。
【0326】
消化後、最終1%のギ酸を溶液に添加した。タンパク質分解後、タンパク質分解によって生成されたペプチド溶液1μLをナノ液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000-RSLC)に負荷した。Quadrupole-Orbitrap MS分析は製造元の指示書に従って実行した。タンパク質分解MSの結果に基づいて、トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びサーモリシンのペプチドの重複マッピングが得られ、ヒトpKal配列の99.05%を網羅した。
【0327】
次に、重水素化架橋剤とインキュベートした後、ヒトpKal/MAb4-YTE及びヒトpKal/DX-2930の複合体のエピトープを上記のように決定した。架橋ペプチドを濃縮した後、試料を高分解能質量分析法(nLC-Quadrupole-Orbitrap MS)によって分析し、生成されたデータをXQuest及びStavroxソフトウェアを使用して分析した。
【0328】
調製したヒトpKal/MAb4-YTE(1.4μM及び0.8μM)とヒトpKal/DX-2930(1.4μM及び0.4μM)との混合物20μLを、2μLのDSS d0/d12(2mg/mL;DMF)と混合し、室温で180分間インキュベートした。インキュベート後、1μLの重炭酸アンモニウム(最終濃度20mM)を添加することによって反応を停止させ、その後、室温で1時間インキュベートした。次いで、溶液をスピードバックを使用して乾燥させた後、H2O 8M尿素懸濁液(20μL)を加えた。混合後、2μLのDTT(500mM)を溶液に添加した。次に混合物を37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、2μLのヨードアセトアミド(1M)を加え、その後、暗室で室温にて1時間インキュベートした。インキュベート後、80μLのタンパク質分解緩衝液を添加した。トリプシン緩衝液は50mMのAmbic、pH8.5、5%アセトニトリルを含有し;キモトリプシン緩衝液は100mMのTris HCl、10mMのCaCl2、pH7.8を含有し;ASP-N緩衝液は50MMのリン酸緩衝液、pH7.8を含有し;エラスターゼ緩衝液は50mM のTris HCl、pH8.0を含有し;サーモリシン緩衝液は50mMのTris HCl、0.5mMのCaCl2、pH9.0を含有した。トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びサーモリシンによるタンパク質分解は、pKalタンパク質について上述した条件を使用して実行した。架橋ペプチドは、Xquestバージョン2.0及びStavrox3.6ソフトウェアを使用して分析した。
【0329】
ヒトPKALとMAb4-YTEの間の分子界面は、化学架橋、高質量MALDI質量分析法、及びnLC-Orbitrap質量分析法を使用して特徴付けた。トリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、及びサーモリシンによる、重水素化d0d12を含むタンパク質複合体ヒト-PKAL/MAb4-YTEのタンパク質分解の後、nLC-orbitrap MS/MS分析によって、ヒト-PKALとMAb4-YTEの間の10の架橋ペプチドが検出された。
【0330】
架橋データの分析によって、MAB4-YTEの相互作用にはヒトpKal上の以下のアミノ酸550、551、585、591、597、617、625が含まれることが示された。
図13はヒトpKalとMAB4-YTEのペプチド相互作用の図を提供している。ヒトpKal配列は下に示されており、Mab4-YTEの架橋エピトープは残基550、551、585、597、617、及び625で示されている。
図14A~Jは、ヒトpKal上の抗体エピトープ部位のリボン/表面及びリボンのモデルを示す。MAb4-YTE抗体のエピトープ部位はUNIPROT P03952を参照配列としたPDB構造6O1Gをモデルにした。モデル内にて濃い色で示されたアミノ酸は、ヒトpKal配列の残基550~551(KR(配列番号37))、残基585~597(KHNGMWRLVGITS(配列番号38))及び残基617~625(YMDWILEKT(配列番号39))に対応する。
【0331】
架橋データの分析によって、DX-2930の相互作用にはヒトpKal上の以下のアミノ酸434、446、475、482、555、558、560が含まれることが示された。
図15はヒトpKalとDX-2930のペプチド相互作用の図を提供している。ヒトpKal配列は下に示されており、DX-2930の架橋エピトープは残基434、446、475、482、555、558、及び560で示されている。
図16A~Jは、ヒトpKal上の抗体エピトープ部位のリボン/表面及びリボンのモデルを示す。DX-2930抗体のエピトープ部位はPDB構造6O1Gをモデルとした。モデル内にて濃い色で示されたアミノ酸は、ヒトpKal配列の残基434~446(HCFDGLPLQDVWR(配列番号40))、残基475~482(YKVSEGNH(配列番号41))、及び残基555~560(YKITQR(配列番号42))に対応する。
図17は抗体MAb4-YTEと比較した、抗体DX-2930によって架橋されたヒトpKalの残基を示す地図を提供している。
【0332】
架橋質量分析データによって、MAB4-YTEがDX-2930と比べてヒトpKal上の異なるエピトープに結合することが確認されている。理論によって束縛されることを望まないが、DX-2930と比べたMab4-YTEについての血漿カリクレイン上の異なる結合部位は、DX-2930と比べて改善されたプロテアーゼ選択性プロファイル、血漿カリクレイン結合のpH感受性の欠如、及びMab4-YTEの全体的に優れたプロファイルを説明してもよい。
【0333】
参照による組み込み
本明細書において参照される特許文書及び科学文書の各々の開示はすべて、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0334】
均等物
本開示は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて種々の改変が上記の説明及び添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変は、実施形態及び添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0335】
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載されている本発明を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および同等性の範囲内に入るすべての変更はそこに包含されることが意図される。
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【表13-4】
【表13-5】
【表13-6】
【表13-7】
【表13-8】
【配列表】
【国際調査報告】