(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ガス体積からの放射性希ガスの除去
(51)【国際特許分類】
G21F 9/02 20060101AFI20240226BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240226BHJP
G21C 9/004 20060101ALI20240226BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
G21F9/02 511L
B01D53/04 220
B01D53/04 230
G21C9/004
G21C13/00 600
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023544020
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2022052922
(87)【国際公開番号】W WO2022167669
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518251653
【氏名又は名称】エスシーケー.シーイーエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マーマンズ,ジャスパー
(72)【発明者】
【氏名】マルテンス,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】スクリアロヴァ,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ハイニッツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】カーディナエルス,トーマス
【テーマコード(参考)】
2G002
4D012
【Fターム(参考)】
2G002CA01
2G002DA01
2G002EA01
4D012BA01
4D012BA02
4D012CA01
4D012CA14
4D012CB16
4D012CB17
4D012CD01
4D012CD05
4D012CE02
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF04
4D012CF05
4D012CF10
4D012CH04
4D012CK05
(57)【要約】
第1の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去する方法であって、(a)20℃のガス温度における前記ガス体積の露点が、-20℃以下、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-45℃以下であるように、前記ガス体積を提供することと、(b)微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む前記微孔質モレキュラーシーブの床(33)上に前記ガス体積を通過させ、それによって前記放射性希ガスを前記床(33)に吸着させることと、を含む方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス体積から放射性希ガスを除去する方法であって、
a.ガス温度20℃における前記ガス体積の露点が-20℃以下、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-45℃以下となるように前記ガス体積を提供することと、
b.微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む前記微孔質モレキュラーシーブ床(33)上に前記ガス体積を通過させ、それによって前記放射性希ガスを前記床(33)に吸着させることと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記微孔質モレキュラーシーブは、
遷移金属ナノ粒子を含むか、及び/または
遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属は、10族、11族及び白金族から選択され、好ましくはAgである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記微孔質モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩ゼオライトまたはチタノケイ酸塩ゼオライトであり、好ましくはETS-10またはZSM-5である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記放射性希ガスはRnである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス体積は、1.700Å
3以下、好ましくは1.600Å
3以下、より好ましくは1.200Å
3以下、更により好ましくは0.800Å
3以下、最も好ましくは0.400Å
3以下の分極率を有する、非極性キャリアガスを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程aは、水分吸着床(32)上に前記ガス体積を通過させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
更なる工程cである
c.前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)を再生することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程cは、
前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)を加熱すること、及び/または
前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)を再生ガスでフラッシングすることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程bの前に更なる工程a’である
a’.前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)にとって有毒な物質を前記ガス体積から除去することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
吸着された前記放射性希ガスは、
効果的に減衰するまで保持されるか、または
更なる保管及び/または利用のために収集される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
室温で実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
核環境で実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガス体積から放射性希ガスを除去するための装置(10)であって、
i.1つ以上の水分吸着床(32)と、
ii.微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む前記微孔質モレキュラーシーブの1つ以上の希ガス吸着床(33)と、を備え、前記希ガス吸着床(33)は、前記水分吸着床(32)のアウトプットに結合されたインプットを有する、前記装置。
【請求項15】
iii.前記希ガス吸着床(33)及び任意選択で前記水分吸着床(32)に結合された1つ以上の再生ガス供給源(60)及び/または
iv.前記希ガス吸着床(33)及び/または前記水分吸着床(32)に対して有毒な物質を前記ガス体積から除去するための1つ以上のスクラバー(31)を更に備え、前記スクラバー(31)は、前記希ガス吸着床(32)のインプットへ結合されたアウトプットを有する、請求項14に記載の装置(10)。
【請求項16】
ガス体積から放射性希ガスを除去するための多層システムであって、前記層の1つ以上は、請求項14~15のいずれか一項に記載の装置(10)を備える、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス体積からの放射性希ガスの除去に関し、より詳細には、遷移金属を含む微孔質モレキュラーシーブ床への放射性希ガスの吸着に基づく、そのような除去に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療用途向けの225Acの製造において、放射性希ガスを媒体(例えば、ガス体積)から捕捉するか、または別の方法で除去する必要がある場合がある。225Acは、標的α療法(TAT)の潜在的な治療用途がある、高エネルギーのα放出放射性同位体である。TATは、組織内に短距離で高密度のイオン化飛跡をもたらす、α粒子の高い線形エネルギー付与(LET)に基づくがん治療法である。225Acは、その半減期(9.92日)、複数のα崩壊及び好ましい化学的性質により、TATの候補として特に適している。様々な研究で、転移性がん及び末期がんの225Ac治療の有効性が実証されている。現在、225Acは、主に233U備蓄からの229Thジェネレータから得られる。したがって、225Acの供給は、世界中で入手可能な229Thの量によって制限される。しかし、現在の在庫では、大規模な臨床試験及び世界的ながん治療に必要な需要を満たすことができない。
【0003】
226Raからの225Acの加速器を用いた生産は、この問題を克服するための解決策となる可能性がある。1つの経路は、例えば、電子加速器からの制動放射光子を使用した226Ra(γ,n)225Ra(β-)225Ac反応によるものであり、別の経路は、サイクロトロンでの陽子照射を使用した226Ra(p,2n)225Ac反応によるものである。しかし、そのような生産プロセスは、技術的に大きな課題となる。226Ra前駆体に基づく225Ac生成の主な問題の1つは、標的放射能及びラドン(より具体的には222Rn)の継続的な放出である。したがって、ラドンを捕捉することは、安全な運用のために重要であり、例えば、換気システムからの制御不能な放出を最小限に抑えるために重要である。更に、例えば、グラムレベルの226aの操作を行うことができるホットセル環境で実施できるラドン捕捉システムを有することは、産業的に重要であろう。ただし、希ガスは非極性の単原子分子であり、最外電子殻が8つの価電子で満たされている。そのため、それらは通常、他の物質と化学的に相互作用しない。その結果、希ガスは、捕捉または他の方法で除去することが難しいことで知られている。
【0004】
1つの既知の方法は、活性炭床への希ガスの吸着に基づくものである。一般に、吸着は、通常は、気体、液体または(溶解した)固体の原子、分子またはイオン-すなわち、吸着物が、吸着剤-通常は固体-の表面に拡散するプロセスであり、そこで、それは結合を形成する(化学吸着)か、または分子間力(物理吸着)によって保持される。したがって、吸着は表面現象である。化学的に不活性であるため、希ガスは、化学吸着ではなく物理吸着を経験する。物理吸着は比較的弱い力(例えば、ファンデルワールス力)に依存するが、その効率は通常、吸着剤の温度を下げることで改善できる。その結果、Kr、Xe及びRnのような希ガスの吸着は、従来技術では通常、極低温で冷却された活性炭床で行われる。1908年~2002年の文献に基づいて、活性炭及び様々な条件下で報告されたラドン吸着結果の概要は、Gaulによって作成された(GAUL,Wayne C.The application of moment analysis to the dynamic adsorption of radon by activated carbon.University of South Carolina,2004.PhD thesis.)。
【0005】
ただし、この方法にはいくつかの課題がある。例えば、活性炭吸着床は、極低温での冷却を維持する必要があり(例えば、少なくとも0℃未満、-50、-65または-75℃未満など)、そうしないと、希ガスの吸着係数k-つまり、保持時間t-が著しく低下する。更に、極低温であっても、吸着係数kは、活性炭床が通常、特に床を連続モードで操作する場合、有意義な量の希ガスを捕捉するために、サイズが大きくなければならないようにするものである。更に、極低温で作動する冷却システムは、パイプ内での結露及び凍結の影響を受ける。パイプを保護するために水分トラップが配置されている場合でも、この影響により、凍結した水によってガス流が遮断される可能性がある。最後に、大量の木炭自体は火災の危険性が高い。
【0006】
したがって、当技術分野では、希ガスを捕捉または除去するためのより良いアプローチが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、ガス体積から希ガスを除去するための良好な方法を提供することである。本発明の更なる目的は、それに関連する優れたデバイスを提供することである。この目的は、本発明による方法、装置及びシステムによって達成される。
【0008】
本発明の実施形態の利点は、希ガスの効果的な吸着を達成できることである。
【0009】
本発明の実施形態の利点は、希ガス吸着床に吸着される水の量を減らすことができることである。本発明の実施形態の更なる利点は、希ガスの効果的な吸着を長時間維持できることである。
【0010】
本発明の実施形態の利点は、ガス体積から希ガスを除去するための特にコンパクトな装置を実現できることである。
【0011】
本発明の実施形態の利点は-例えば、炭素ベースの材料とは対照的に-希ガス吸着床が火災の危険を生じないことである。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、それらを、核環境、例えば、放射性希ガス源の近くで実行または設置できることである。本発明の実施形態の更なる利点は、ガス体積を長距離にわたって輸送する必要がないことである。
【0013】
本発明の実施形態の利点は、それらが有用であるために冷却に依存せず、例えば、室温(またはそれ以上)で非常に効果的であり得ることである。
【0014】
本発明の実施形態の利点は、希ガスが、効果的に減衰するまで、装置内(例えば、希ガス吸着床上)に保持できることである。
【0015】
本発明の実施形態の利点は、装置に冗長性を組み込むことができ、それによって効率と安全性が向上することである。
【0016】
本発明の実施形態の利点は、吸着床を直接再生できることである。
【0017】
本発明の実施形態の利点は、吸着床に対して有毒であり得る物質を、それらの上にガス体積を通過させる前に除去できることである。
【0018】
本発明の実施形態の利点は、短寿命及び/または長寿命の放射性希ガスをガス体積から除去するために使用できることである。
【0019】
本発明の実施形態の利点は、それらが、比較的簡単で経済的な方法で実行できることである。
【0020】
第1の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去する方法であって、(a)20℃のガス温度におけるガス体積の露点が、-20℃以下、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-45℃以下であるように、ガス体積を提供することと、(b)微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む微孔質モレキュラーシーブの床上にガス体積を通過させ、それによって放射性希ガスを床に吸着させることと、を含む。
【0021】
第2の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去するための装置であって、(i)1つ以上の水分吸着床と、(ii)微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む微孔質モレキュラーシーブの1つ以上の希ガス吸着床と、を備え、希ガス吸着床は、水分吸着床のアウトプットに連結されたインプットを有する。
【0022】
第3の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去するための多層システムに関し、1つ以上の層は第2の態様の任意の実施形態による装置を備える。
【0023】
添付の独立及び従属請求項において、本発明の特定の好ましい態様について述べる。従属請求項からの特徴を、必要に応じて独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよく、単に請求項で明白に述べたとおりでなくてもよい。
【0024】
本分野ではデバイスの常に改善、変更及び進化してきたが、本概念は、従来の慣行からの逸脱を含む、実質的に新しくかつ斬新な改善を表していると考えられており、その結果、この性質のより効率的で安定した信頼性の高いデバイスが提供される。
【0025】
本発明の上述の及び他の特徴、機能及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と関連した、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、本発明の範囲を限定することなく、例示のためにのみ行われる。以下に引用する参照図は、添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に従って放射性希ガスを除去するための組み込み冗長性を有する例示的な装置を概略的に示す。
【
図2】本明細書に記載の第1の実施例による、概念実証のラドン吸着実験に使用される実験装置を概略的に示す。
【
図3】第1及び第2の実施例による、破過実験中に使用されるプロセス工程のフローチャートである。
【
図4】第1の実施例による、NuclearCarb207C、Ag-13X及び1.5mmのAg-ETS-10ペレットの
222Rn破過曲線のグラフである。
【
図5】第1の実施例による、Ag-ZSM-5の
222Rn破過曲線のグラフである。
【
図6】第1の実施例による、16~30メッシュのAg-ETS-10顆粒の
222Rn破過曲線のグラフである。
【
図7】第1の実施例による水分トラップを除去する効果を示す、1.5mmのAg-ETS-10ペレットの
222Rn破過曲線のグラフである。
【
図8】第1の実施例によるRnモニターによって測定された相対湿度と共に、
図7の曲線のクローズアップを示すグラフである。
【
図9】第1及び第2の実施例による、再生温度の機能における16~30メッシュのAg-ETS-10顆粒の吸湿(重量%)のグラフである。
【
図10】第1の実施例による、H
2及びNO
x蒸気に曝露された16~30メッシュのAg-ETS-10顆粒の
222Rn破過曲線のグラフである。
【
図11】第2の実施例によるAg-ETS-10結晶上の銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図12】第2の実施例による、ラドン吸着実験に使用される実験装置を概略的に示す。
【
図13】本明細書に記載の第2の実施例による、NuclearCarb207C、CarboAct、Ag-13X、Ag-ZSM-5及びAg-ETS-10上で測定された
222Rnの室温破過曲線のグラフである。
【
図14】第2の実施例による、相対湿度50%の実験室空気と接触したときのAg-ETS-10からの
222Rnの測定された放出のグラフである。
【
図15】本明細書に記載の第3の実施例による、異なる(乾燥)キャリアガス(N
2、空気及びAr)に対するAg-ETS-10からの
222Rnの測定された破過曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
異なる図面では、同じ引用符号は同じまたは類似の要素を指す。
【0028】
本発明を特定の実施形態に対して特定の図面を参照して説明するが、本発明はそれらには限定されず請求項のみによって限定される。記載した図面は、単に概略的であり非限定的である。図面では、説明を目的として、一部の要素のサイズが誇張されて一定の比率では描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は本発明の実際の実施化には対応しない。
【0029】
更に、説明及び請求項における用語「第1」「第2」「第3」などは同様の要素を区別するために用いており、必ずしも順序を順位付けまたは任意の他の方法において時間的、空間的のいずれかで記述するためのものではない。当然のことながら、そのように用いる用語は適切な状況の下では交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示した以外の順序での動作が可能である。
【0030】
また、説明及び請求項における用語「の上」「の下」「の上方」「の下方」などは便宜的に用いており、必ずしも相対位置を説明するためではない。当然のことながら、そのように用いる用語は適切な状況の下ではその反意語と交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示した以外の向きで動作することができる。
【0031】
なお、請求項で用いる用語「含む」は、その後に列記される手段に限定されると解釈してはならない。他の要素またはステップを除外するものではない。したがって、記載した特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を言及とおりに特定していると解釈すべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップもしくはコンポーネント、もしくはそれらのグループの存在または付加を排除するものではない。したがって、「含む」という用語は、記載された機能のみが存在する状況、及びこれらの機能と1つ以上の他の機能が存在する状況を包含する。したがって、「手段A及びBを含むデバイス」という表現の範囲は、コンポーネントA及びBのみからなるデバイスに限定して解釈されるべきではない。意味するところは、本発明に関しては、デバイスの唯一の関連性のあるコンポーネントはA及びBであるということである。
【0032】
同様に、特許請求の範囲でも使用される「結合された」という用語は、直接接続のみに限定されると解釈されるべきではないことに注意されたい。「結合された」及び「接続された」という用語は、それらの派生語と共に使用され得る。これらの用語は、相互に同義語とみなされないことを理解されたい。したがって、「デバイスBに結合されたデバイスA」という表現の範囲は、デバイスAのアウトプットがデバイスBのインプットに直接接続されているデバイスまたはシステムに限定されるべきではない。他のデバイスまたは手段を含む経路であり得る、AのアウトプットとBのインプットの間の経路が存在する。「結合した」とは、2つ以上の要素が物理的もしくは電気的に直接接触しているか、または2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、それでも互いに協力または相互作用していることを意味する。
【0033】
本明細書の全体を通して「一実施形態」または「実施形態」に言及した場合、その意味は、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造体または特性は、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるということである。したがって、本明細書の全体を通していろいろな場所で語句「一実施形態では」または「実施形態では」が現れた場合、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではないが、全くないわけでない。更に、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造体または特性を任意の好適な方法で組み合わせてもよいことは、当業者であれば本開示から明らかである。
【0034】
同様に、当然のことながら、本発明の典型的な実施形態の説明において、本発明の種々の特徴を単一の実施形態、図またはその説明においてひとまとめにすることがあるが、その目的は、本開示を効率化し本発明の種々の態様のうちの1つ以上を理解することを助けるためである。しかし、この開示方法は、請求に係る発明に必要な特徴が各請求項で明確に列挙したものよりも多いという考えを反映していると解釈してはならない。むしろ、以下の請求項で反映しているように、本発明の態様は、先に開示した単一の実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、詳細な説明に続く請求項は、本明細書によってこの詳細な説明に明確に組み込まれており、各請求項は本発明の別個の実施形態として自立している。
【0035】
更に、本明細書で説明するいくつかの実施形態には、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴が含まれているが他は含まれていない一方で、種々の実施形態の特徴を組み合わせたものは本発明の範囲内であることが意図され、種々の実施形態を構成する。これは当業者であればわかることである。例えば、以下の請求項では、請求に係る実施形態のいずれかを任意の組み合わせで用いることができる。
【0036】
本明細書で示した説明では、多くの具体的な詳細について述べている。しかし当然のことながら、本発明の実施形態をこれらの具体的な詳細を伴うことなく実施してもよい。他の場合では、良く知られた方法、構造体及び技術については詳細には示していない。これはこの説明の理解が不明瞭にならないようにするためである。
【0037】
以下の用語は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。
【0038】
本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、ゼオライトは、天然または合成由来の微孔質アルミノケイ酸塩及び/またはチタノケイ酸塩モレキュラーシーブである。それらは、様々なカチオンを収容できる空洞を含む複雑な三次元構造を有しているため、吸着剤として使用できる。多くの種類のゼオライトが存在し、例えば、結晶構造、細孔形状及び/または細孔サイズに関してそれぞれに固有の特性がある。
【0039】
本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブは、その原子(通常、イオン)の一部を遷移金属で置換する交換プロセスを受けた微孔質モレキュラーシーブである。例えば、微孔質モレキュラーシーブ中のNa+及び/またはK+は、イオン交換反応において遷移金属カチオン(例えばAg+)によって(部分的に)置換され得る。
【0040】
第1の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去する方法に関し、(a)20℃(293.15K)のガス温度でのガス体積の露点が、-20℃以下、好ましくは-30℃(243.15K)以下、より好ましくは-45℃(228.15K)以下、例えば-60℃(213.15K)~-100℃(173.15K)であるようなガス体積を提供することと、(b)微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブの床の上を(例えば、通り抜けて)ガス体積を通過させ、それによって放射性希ガスを床に吸着させる(これは「希ガストラップ」とも称され得る)ことと、を含む。
【0041】
理論に束縛されるものではないが、吸着プロセスでは、移動(気体または液体)相中の吸着物の量と吸着剤上の吸着物の量との間に平衡が確立される。このプロセスは通常、流体中の吸着物質の分圧(ガスの場合)に対する吸着物質の量として表される等温線によって記述される。この平衡を記述するために、様々な等温線モデルが存在する(例えば、線形、Freundlich、Langmuirなど)。例えば、ヘンリーの法則の一種である線形等温線は、吸着物の量(分圧)が低い場合に使用でき、
q=K・p
式中、qは吸着剤の単位質量あたりの吸着量、Kは温度依存の経験定数、pはガス流中の吸着物の分圧である。更に、吸着物-この場合、希ガス(例えば、Rn)-が、吸着物に対して特定の親和性を有する吸着材料の充填カラムを通って移動する場合、吸着プロセスにより、吸着力の弱いキャリアガス(例えば、窒素、酸素など)と比較して吸着物の遅延が生じる。システムのタイプに応じて、充填吸着カラムの動態を説明する様々なモデルが存在する。希ガス吸着に関する文献でよく見られる平均遅延/保持時間t(秒)を説明する簡単な方法は、
t=(k・m)/F
であり、式中、k(cm3/g)は吸着係数、m(g)は吸着剤の質量、F(cm3/s)は体積流量である。この関係は、希ガスの濃度パルスが既知の質量と流量による吸着カラムに注入される実験での保持時間tの測定値から、吸着係数kの値を決定する簡単な方法を提供する。平均保持時間tは、測定された破過希ガス濃度が、観測された最大希ガス濃度の5%である時間として定義される(実施例を参照)。吸着係数は、(希ガス)吸着床の能力を評価する上で重要である。所与の吸着物について、係数は、吸着剤のタイプ、温度、使用されるキャリアガス及びその汚染物質によって影響を受け得る。得られた吸着係数を比較できる。係数が高いほど、吸着剤に対する吸着物の親和性が高くなり、遅延が長くなる。
【0042】
本発明において、遷移金属を含む微孔質モレキュラーシーブに基づく希ガス吸着床は、かなりの量の水(約10~20重量%程度)を吸着することができ、それによって、希ガスを吸着する更なる効果が損なわれる(実施例を参照)。このように、更なる予防措置がなければ、希ガス吸着床を頻繁に再生する必要があるか、または大きな床を使用する必要がある。しかし、希ガス吸着床にガスを通す前にその露点を低くすることにより、水の吸着が大幅に減少し、吸着床は希ガスをより効率的に長時間吸着することができる。これにより更に、放射性希ガス除去装置の特にコンパクトな設計が可能になり-なぜなら、希ガス吸着床のサイズは、その有効性を維持しながら大幅に縮小できるため、そのため、放射性希ガス源の近くに装置を容易に配置することができる(下記参照)。
【0043】
好ましい実施形態では、工程(a)は、20℃のガス温度でのガス体積の露点が-20℃以下、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-45℃以下、例えば-60℃~-100℃であるように、ガス体積から水を除去する(「乾燥する」)ことを含むことができる。そのような実施形態では、工程(a)は、ガス体積を水分吸着床(「水分トラップ」とも称され得る)上に(例えば、通り抜けて)通過させることを含むことができる。諸実施形態では、水分吸着床は、ゼオライト(例えば、4A、13X、ZSM-5またはETS-10)などの更なる微孔質モレキュラーシーブを含んでもよい。希ガス吸着床とは対照的に、水分吸着床は通常、遷移金属を含まなくてもよい。好ましくは、ガス体積を乾燥することは、例えば、工程(b)の直前など(例えば、
図1に概略的に示されているように)放射性希ガスがその中に存在する間に実行され得る。これにより、有利なことに、工程(b)で希ガス吸着床上をガス体積が通過する際に、例えば、放射性希ガス源がガス体積への水源でもある場合でさえ、ガス体積が所望の低露点を有することをより確実にすることが可能になる。あるいはまたは補足的に、ガス体積を乾燥することは、放射性希ガスがその中に存在する前に実施されてもよい(例えば、実施例に記載され、
図2に概略的に示されるように)。これにより、有利なことに、その時点で、ガス体積は通常、まだ放射性になっていない可能性がある、放射性希ガスと接触する前にガス体積を乾燥させることが可能になる。したがって、乾燥工程はまだ放射線被曝の重大なリスクを伴うことはなく、乾燥工程に使用される構成要素(例えば、水分吸着床)は通常、放射能汚染されることはない。そのため、乾燥工程に必要な安全対策を、例えば、緩和することができ、使用する構成要素の取り扱い及び廃棄をより簡単に行うことができる。両方の方法を組み合わせて、放射性ガスに曝露する前にガス体積を容易に乾燥させると同時に、前記曝露後に-例えば、工程(b)の直前に-露点を確保することができることに留意されたい。
【0044】
代替的または補足的な実施形態では、工程(a)は、放射性希ガスを乾燥ガス体積(例えば、乾燥キャリアガス)に添加する(例えば、放射性希ガスを曝露する)ことを含み得る。ここで、乾燥ガス体積とは、ガス温度20℃における露点が-20℃以下、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-45℃以下、例えば、-60℃~-100℃を有するガス体積である(上記を参照)。諸実施形態では、乾燥ガス体積は、乾燥工程を既に受けたガス体積(上記参照)、または本質的に乾燥しているガス体積(例えば、N2などの乾燥不活性ガス)であり得る。この方法の利点は、放射性希ガスがその中に存在する前にガス体積を乾燥させることについて上述したものと同様である。更に、そのような乾燥ガス体積の組成は、通常、有利なことに、吸着床(複数可)にとって有毒であり得る物質(例えば、NOx、CO2及び/またはO2などの酸化剤、下記を参照)を(例えば、少なくとも部分的に、好ましくは完全に)回避するように選択し、それによって、前記有毒物質を除去する工程の必要性を減らす-または、更には不要にする-ことができる。
【0045】
ガス体積は、通常、(i)除去される1つ以上の放射性希ガスと、(ii)非極性キャリアガスと、を含むことができる。例えば-特に、工程(b)に入る場合-ガス体積は、(i)除去される放射性希ガスの1つ以上と、(ii)非極性キャリアガスと、から実質的になり得る。換言すれば、工程(b)に入る際にガス体積内に残っていて(すなわち、工程(b)の前に除去されていない、下記を参照)、工程(b)で吸着の対象となる放射性希ガスではない任意の非極性ガスは、非極性キャリアガスの一部とみなすことができる。非極性キャリアガスは、一般に、(乾燥)N2などの任意の適切な非極性ガスであってよい(湿気/水及び吸着床(複数可)にとって有毒な物質は、好ましくは回避され得ることに留意されたい-上記を参照-が、これらは通常、極性であり、したがって、非極性キャリアガスの一部ではない)。それにもかかわらず、非極性キャリアガスは、好ましい実施形態では、1.700Å3以下、好ましくは1.600Å3以下、より好ましくは1.200Å3以下、更により好ましくは0.800Å3以下、最も好ましくは0.400Å3以下、例えば0.300Å3以下の分極率(α)を有し得る。理論に束縛されるものではないが、非極性ガスの吸着強度は、その分極率に一次近似で依存するため、分極率が高いほど、希ガス吸着床と(例えば、その中の遷移金属と)の相互作用が強くなる。したがって、非極性キャリアガスと希ガス吸着床との相互作用を最小限に抑え、吸着部位を可能な限り解放して放射性希ガスを吸着できるようにするために、低分極率を有する非極性キャリアガスを使用することが有利である。この点で、2つの非極性キャリアガス間の分極率のわずかな違いでさえ、放射性希ガスの保持に大きな違いが生じ得ることに注意されたい。実際、驚くべきことに、乾燥空気(およそ78%のN2、21%のO2及び1%のArからなる)を使用すると、放射性希ガスの保持時間が、純粋なN2(α=1.710Å3)と比較して、最大で約30~40%増加することが観察され、一方で、Ar(α=1.664Å3)を使用すると、純粋なN2と比較して保持時間が10倍程度増加した。したがって、O2(α=1.562Å3)、F2(α=1.160Å3)、H2(α=0.787Å3)、Ne(α=0.381Å3)、He(α=0.208Å3)などの軽ガス、または非極性キャリアガスとしてこれらの混合物を使用すると、ますます大きな効果が期待できる。ただし、分極率が低くても、前述の非極性ガスの一部(例えば、O2、F2またはH2)は、それにもかかわらず、1つ以上の吸収床材料(例えば、希ガス吸収床材料)と化学的に反応し得-したがって、それに対して有毒であり得-そのため、それにもかかわらず、それらの全体的な効果は実際には長期的にはマイナスになり得る。したがって、Ar、Ne、He及びこれらの混合物は、そのような理由で好ましい場合がある。様々な物質の実験的な分極率の広範なリストは、米国国立標準技術研究所(https://cccbdb.nist.gov/pollistx.asp)によって提供されており、これらは、更にはOlneyらから生じている(OLNEY,Terry N.,et al.Absolute scale determination for photoabsorption spectra and the calculation of molecular properties using dipole sum-rules.Chemical physics,1997,223.1:59-98.),Landolt-Bornstein(LANDOLT-BORNSTEIN.Zahlenwerte und Funktionen.Springer,1962,Vol.1,Pt.3,p.509.),(GRAFF,J.;DAGDIGIAN,P.J.;WHARTON,L.Electric resonance spectrum of NaLi.The Journal of Chemical Physics,1972,57.2:710-714.),Miller and Bederson(MILLER,Thomas M.;BEDERSON,Benjamin.Atomic and molecular polarizabilities-a review of recent advances.Advances in atomic and molecular physics,1978,13:1-55.),Bray and Gubbins(BRAY,C.G.;GUBBINS,K.E.Theory of Molecular Fluids. Volume1:Fundamentals.1984.),Miller(MILLER,Kenneth J.Additivity methods in molecular polarizability.Journal of the American Chemical Society,1990,112.23:8533-8542.),Gussoni et al.(GUSSONI,M.;RUI,M.;ZERBI,Giuseppe. Electronic and relaxation contribution to linear molecular polarizability. An analysis of the experimental values.Journal of molecular structure,1998,447.3:163-215.),Ballard et al.(BALLARD,A.;BONIN,K.;LOUDERBACK,J.Absolute measurement of the optical polarizability of C60.The Journal of Chemical Physics,2000,113.14:5732-5735.),Jacobson et al.(JACOBSON,P.L.,et al.Microwave spectroscopy of heliumlike Rydberg states of H2 and D2:Determinations of the dipole polarizabilities of H2+ and D2+ ground states.Physical Review A,2000,62.1:012509.),Thakkar and Wu(THAKKAR,Ajit J.;WU,Taozhe. How well do static electronic dipole polarizabilities from gas-phase experiments compare with density functional and MP2 computations?The Journal of Chemical Physics,2015,143.14:144302.)and Miller (MILLER,T.M.Handbook of Chemistry and Physics Online,http://hbcponline.com/faces/documents/10_04/10_04_0001.xhtml.)。これらのうち、特にOlneyらは、検討中の物質に特に関連している。したがって、比較を容易にするために、物質の分極率の実験的決定は、好ましくは、前記参考文献に従って行うことができる。非極性キャリアガスが物質の混合物である場合、個々の物質の分極率の加重平均(分圧で加重)を「非極性キャリアガスの分極率」として使用することができる。
【0046】
諸実施形態では、ガス体積から希ガスを除去することは、ガス体積から希ガスを少なくとも部分的に除去することであり得る。好ましい実施形態では、ガス体積から希ガスを除去することは、ガス体積から希ガスを完全に除去することであり得る。
【0047】
微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属は、異なる形態で存在し得る。諸実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、遷移金属ナノ粒子を含んでもよい(すなわち、遷移金属はナノ粒子の形態で存在してもよい)。代替的または補足的な実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブであり得る(すなわち、遷移金属は交換イオンの形態で存在し得る)。好ましい実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、遷移金属ナノ粒子を含む遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブであり得る(すなわち、遷移金属は、交換された原子/イオンの形態及びナノ粒子の形態の両方で存在し得る)。後者は、例えば、通常、ナノ粒子が交換された遷移金属から形成される場合であり得る。諸実施形態では、遷移金属は、本質的に金属性(例えば、通常、遷移金属ナノ粒子の場合)及び/またはイオン性(例えば、通常、交換遷移金属の場合)であり得る。遷移金属ナノ粒子と交換された遷移金属の両方は、希ガスと相互作用し、それらを床に吸着させる。前述にもかかわらず-所与の遷移金属の場合、希ガスは、通常、原子遷移金属よりも遷移金属のナノ粒子とより強く相互作用する(例えば、より高いファンデルワールス力を経験する)場合がある。このように、微孔質モレキュラーシーブが遷移金属ナノ粒子と交換遷移金属の両方を含む場合、最初は、遷移金属ナノ粒子への結合が支配的であり得(より低い分圧ではそのままであり得る)、一方で、交換遷移金属への結合は、遷移金属ナノ粒子部位が占有されるにつれてますます重要になり得る(これは、1kPa以上などのより高い分圧で特に関連する可能性がある)。
【0048】
諸実施形態では、遷移金属ナノ粒子(例えば、ナノクラスターまたはナノドット)は、0.2と100nmの間、好ましくは0.5と50nmの間、より好ましくは1と30nmの間、更により好ましくは2と20nmの間、最も好ましくは5と15nmの間、例えば約10nmの直径(例えば、平均直径)を有し得る。諸実施形態では、遷移金属ナノ粒子は、微孔質モレキュラーシーブの表面上または微孔質モレキュラーシーブの細孔内に配置され得る。いくつかの実施形態では、遷移金属ナノ粒子は、遷移金属交換された微孔質モレキュラーシーブを熱的に活性化することによって(in situで)形成され得る。例えば、遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブは、100~500℃、好ましくは150~400℃、より好ましくは200~300℃、例えば約250℃の温度で熱的に活性化され得る。熱活性化は、1~24時間、好ましくは3~18時間、より好ましくは6~15時間、更により好ましくは9~12時間実施することができる。そのような実施形態では、通常、交換された遷移金属のすべてが遷移金属ナノ粒子に変換されるわけではないため、そのような場合の結果は、一般に、遷移金属ナノ粒子を含む遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブになる。代替的または補足的な実施形態では、ナノ粒子は、ex situで形成され、微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に堆積され得る。これは、例えば、化学蒸着(CVD)などの方法を使用して行うことができる。
【0049】
諸実施形態では、遷移金属は、10族(すなわち、ニッケル族、例えば、Ni、PdまたはPt)、11族(すなわち、銅族、例えば、Cu、AgまたはAu)及び白金族(例えば、Ru、Rh、Pd、Os、IrまたはPt)から選択され得る。好ましい実施形態では、遷移金属はAgであり得る。比較として、銀交換ゼオライトは、空気からのキセノンの除去に関して、ナトリウムゼオライトよりも高い親和性を示すことが知られている。希ガスの物理的及び化学的性質は一般的に類似しているため、これは、他の希ガス(例えば、Rn)についても同様であると予想される。実際-少なくともRnの場合、Agナノ粒子を含むAg交換ゼオライトは、高い希ガス吸着係数をもたらすことがわかった(実施例を参照)。同様に、希ガスとAg(交換及び/またはナノ粒子の形態で)の間の想定される相互作用メカニズムに基づいて、同様の物理的及び化学的性質を共有する、すべての10族、11族ならびに白金族遷移金属元素について同様の効果が期待される。とは言うものの、これらの後者を含むモレキュラーシーブは、潜在的に商業的関連性及び/または入手可能性が低い場合がある(例えば、それらの合成に伴う難しさのため)。いくつかの実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、2つ以上の(形態の)遷移金属を含んでもよい。例えば、微孔質モレキュラーシーブは、1つ以上の種類の遷移金属ナノ粒子、及び/または1つ以上の種類の交換遷移金属を含むことができる。そのような場合、遷移金属のそれぞれは、独立して、10族、11族及び白金族遷移金属から選択され得る。
【0050】
諸実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、2nm以下、好ましくは0.2と1.5nmの間、より好ましくは0.4と1.2nmの間、最も好ましくは0.5と1nmの間の孔径を有し得る。諸実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、ゼオライトなどの無機モレキュラーシーブであってもよい。諸実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩ゼオライト(例えば、ZSM-5または13X)またはチタノケイ酸塩ゼオライト(例えば、ETS-10)、好ましくはチタノケイ酸塩ゼオライトであり得る。特に好ましい実施形態では、微孔質モレキュラーシーブは、ETS-10またはZSM-5であり得る。遷移金属(Ag)ナノ粒子を含む(Ag交換)ETS-10及びZSM-5は、有利なことに、特にRnに対して、非常に高い捕捉効率を有することがわかった(実施例を参照)。
【0051】
諸実施形態では、放射性希ガスは、Ar(例えば、37Ar、39Arまたは42Ar)、Kr(例えば、85/85mKr)、Xe(例えば、133/135Xe)及びRn(例えば、210Rn、211Rn、219Rn、220Rn、221Rnまたは222Rn)、好ましくはKr、XeまたはRn、最も好ましくはRnから選択され得る。吸着効率は通常、軽い希ガスでは低く、重い希ガスではますます高くなる。したがって、Kr、Xe及びRnの顕著な吸着は通常、室温でも達成できる、これは通常、Arの場合はそれほど多くない。質量数が、希ガス吸着床との相互作用に大きな影響を及ぼすとは予想されていないが-半減期の違いは、希ガスの寿命に影響を与える可能性があり(例えば、希ガス吸着床)、したがって、その点で役割を果たすが-本発明は、それにもかかわらず、222Rnの除去に特に適しており、これには特別な必要性があり(背景技術を参照)、本発明は非常にうまく機能する(実施例を参照)。
【0052】
諸実施形態では、吸着された放射性希ガスは、効果的に減衰するまで-例えば、装置内に収容されて(下記を参照)-保持されてもよい。例えば、吸着された放射性希ガスは、放射性希ガスの活性が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、更により好ましくは少なくとも99.9%、最も好ましく少なくとも99.99%、例えば、完全に(すなわち、100%)減少するまで、保持され得る。吸着された希ガスを保持することは、例えば、希ガスを、例えば、以前の床の再生中に、1つの希ガス吸着床から別の希ガス吸着床に通過させる(または、水分吸着床に戻す)ことも含み得ることに留意されたい。したがって、比較的短い崩壊の放射性希ガスの場合、本方法は、有利なことに、希ガスを捕捉し、それを装置内(例えば、希ガス吸着床)で崩壊させることを伴うことができる。これは、例えば、Rnの場合で、その最長寿命の同位体は、半減期が3.8日の222Rnである。より具体的には、寿命の短い(例えば、半減期が7日未満の)放射性希ガス(同位体)の場合、本方法を実行するための2つの主なモード:(1)希ガスが装置内で効果的に減衰できるように、低流量で希ガス吸着床上にガス体積を通過させること、または(2)高流量でガス体積を希ガス吸着床上に通過させることにより、ガス体積中の希ガス濃度を低下させること-装置内の希ガスを完全に分解することなく、一定の除染係数(DF)を実現する-を区別できる。前者は通常、高放射性希ガスパフを捕捉する場合、及び/または連続的に放出する放射性希ガス源を扱う場合に好ましい可能性がある。後者は、大量のガス体積を処理する必要がある場合に適している可能性がある。
【0053】
他の実施形態では、吸着された放射性希ガスは、更なる貯蔵及び/または利用のために収集され得る。実際、長寿命の放射性希ガス(例えば、85Kr、39Ar及び/または42Ar-半減期がそれぞれ11年、269年及び32.9年)の場合、これらが装置内で崩壊するのを待つこと(例えば、希ガス吸着床上で)は、通常、実際には非現実的であり得る。このように、本方法はむしろ、希ガスを希ガス吸着床に捕捉し-それによって濃縮し、続いて希ガス吸着床から希ガスを除去する(例えば、その再生中)ことを伴い得る。次いで、希ガスを収集し、貯蔵し、及び/または別の用途で使用することができる。
【0054】
諸実施形態では、本方法は、工程(b)の前(好ましくは、工程(a)の前)に、更なる工程(a’)である、ガス体積から、希ガス吸着層(例えば、そのような微孔質モレキュラーシーブ及び/または遷移金属)及び/または水分吸着層-存在する場合-に対して有害であり得る物質(例えば、NOx、CO2及び/またはO2などの酸化剤)を除去することを含むことができる。この文脈において、吸着床に対して「有毒」な物質とは、吸着床と可逆的もしくは不可逆的に結合または反応し、それによって意図した吸着物に対する捕捉効率を低下させる-吸着床の使用が特に意図された吸着質以外の-物質である。諸実施形態では、工程(a’)は、ガス体積をスクラバー上を(例えば、通り抜けて)通過させることを含み得る。例えば、NaOHスクラバーを使用してNOxを除去することができる。そのような有毒物質がガス体積内に予想され得る場合、ガス体積を希ガス吸着床に通す前に(及び/または水分吸着床に通す前に)それらを除去することにより、有利なことに、その効率をより良好に維持することが可能になる。低い露点を確保することで、ガス吸着床の効果が向上するのと似ている。
【0055】
諸実施形態では、本方法は、(c)希ガス吸着床及び/または-存在する場合-水分吸着床を再生する更なる工程(c)を含み得る。諸実施形態では、工程(c)は、希ガス吸着床及び/または-存在する場合-水分吸着床を加熱すること、及び/または希ガス吸着床及び/または-存在する場合-水分吸着床を再生ガス(例えば、N2もしくはArなどの不活性ガス、または空気などの別のガス)でフラッシングすることを含むことができる。この点では、放射性希ガスは、有利なことに、水(水分)を含む再生ガスを用いて、希ガス吸収床から迅速かつ効率的に(鋭いパルスで、実施例2を参照)取り除け得ることが見出された。理論に束縛されるものではないが、水分子は、Agナノ粒子上の活性吸着部位について希ガス(例えばRn)と強く競合し、それによって床から希ガスを効果的に除去すると考えられる。したがって、再生ガスは、好ましい実施形態では、競合する吸収物(すなわち、水などの希ガスと競合する吸着物)を含むことができる。諸実施形態では、希ガス吸着床を加熱することは、希ガス吸着床を外部から加熱すること(例えば、加熱要素で包むか、または炉もしくはオーブン内に置くことによって)及び/または希ガス吸着床を内部から加熱すること(例えば、高温の再生ガスを使用することによって)を含み得る。諸実施形態では、希ガス吸着床を加熱することは、希ガス吸着床を100~500℃、好ましくは150~400℃、更により好ましくは200~350℃の温度に加熱することを含み得る。
【0056】
好ましい実施形態では、本方法(例えば、その中の少なくとも工程(b))は、-150℃~50℃、好ましくは-100~40℃、より好ましくは-50~35℃、更により好ましくは0~30℃、最も好ましくは室温(例えば、15~25℃、例えば20℃)の温度で行うことができる。本発明は、有利なことに、冷却を必要とせずに良好な吸着効率を達成することを可能にするが、より低い温度で操作することは、吸着効率を更に改善することができる。
【0057】
諸実施形態では、本方法は、核環境で実行することができる。例えば、ガス体積は、放射性希ガス源に由来することができ、本方法は、前記希ガス源に近接して(例えば、前記希ガス発生源から15m以内、好ましくは10m以内、より好ましくは5m以内、更により好ましくは3m以内、なお更により好ましくは2m以内、最も好ましくは1m以内で)実施することができる。諸実施形態では、放射性希ガス源は、原子力グローブボックス、ホットセル、ターゲットステーション、燃料庫、または照射リグ内に配置することができる。諸実施形態では、本方法は、前記原子力グローブボックス、前記ホットセル、前記ターゲットステーション、前記燃料庫、または前記照射リグに近接して、またはその中で実施され得る。放射性希ガス源の近くで本方法を実行することにより、放射性ガスを長距離にわたって輸送する必要が有利なことに回避され、それに伴うリスクを防止することができる。
【0058】
諸実施形態では、第1の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、独立して、他の任意の態様の任意の実施形態について対応して記載されたとおりであり得る。
【0059】
第2の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去するための装置であって、(i)1つ以上の水分吸着床と、(ii)微孔質モレキュラーシーブ上及び/または微孔質モレキュラーシーブ中に配置された遷移金属を含む微孔質モレキュラーシーブの1つ以上の吸着床と、を備え、希ガス吸着床は、水分吸着床のアウトプットに結合されたインプットを有する。
【0060】
諸実施形態では、本装置は、(iii)希ガス吸着床及び任意選択で水分吸着床に結合された1つ以上の再生ガス源を更に備えることができる。諸実施形態では、1つ以上の再生ガス供給源を、希ガス吸着床(複数可)のアウトプットに結合することができる。そうすることで、装置内の希ガス吸着床に残留する放射性ガスを(例えば、平行な第二の希ガス吸着床上に、または水分吸着床に戻して)保持する一方で、希ガス吸着床は容易に再生できる(通常のガス体積の流れと反対方向に)。
【0061】
諸実施形態では、本装置は、(iv)希ガス吸着床及び/または水分吸着床に対して有毒な物質をガス体積から除去するための1つ以上のスクラバーを更に備えることができる。諸実施形態では、スクラバー(複数可)は、希ガス吸着床(複数可)のインプットに結合されたアウトプットを有してもよい-例えば、水分吸着床(複数可)を介して。
【0062】
複数の希ガス吸着床、水分吸着床、スクラバーなどを使用することによって、有利なことには、ある程度の冗長性を装置に組み込むことができる。例えば、1つ以上の希ガス吸着床または水分吸着床が再生されている間に、別の床が積極的に使用され得るか、または-補完的または代替的に-(更に)別の床をスタンバイさせることができる(例えば、バックアップとして)。このような冗長性により、効率のレベル(例えば、より継続的な使用を可能にする)と安全性のレベル(例えば、要素の1つに欠陥がある場合の1つ以上のバックアップを有することによって)を改善できる。放射性希ガス(20、例えば
222Rn)で汚染された環境を示す、このような装置(10)の例を
図1に示し、これは、2つの並列カラムのスクラバー(31)、2つの並列カラムの水分吸着床(32)及び2つの並列カラムの希ガス吸着床(33)に順番に連結されている。換気装置(40)は、カラム(31~33)を介して放射性希ガスを含むガス体積を引き込み-(部分的に)希ガスを除去した後-元の環境(20)に戻して循環させる。逆循環ガス体積中の放射性希ガスの含有量は、希ガスモニター(51)を使用して確認される。装置(10)を通るガス体積の流速は、希ガス吸着床(33)と換気装置(40)との間に位置する流量制御装置(52)によって制御される。露点(または、相対湿度)計(53)は、水分吸着床(32)と希ガス吸着床(33)との間に配置される。測定された希ガス含有量または露点のいずれかが高すぎる(例えば、所定の閾値を超える)場合、流量を減らし得るか-これにより、希ガス及び/または水をそれぞれのカラム(32、33)に捕捉する時間が長くなる可能性がある-または、カラムを再生できる。この目的のために、カラム(31~33)のそれぞれは、再生ガス源(60)に結合される。1つのカラムが再生されている間、並列の冗長カラムを使用することができ、装置(10)は連続して機能できることに留意されたい。
図1に示されるように、再生ガス源との結合は、カラムのアウトプットを通じて実現され、再生プロセスによって脱着された吸着物が上流に押し出される。スクラバー(31)及び水分吸着床(32)の場合、脱着された有毒化合物及び水は、通常、排気装置(70)に排出される。しかしながら、排気装置を通して排出される放射性希ガスの量は、通常、最小に保たれなければならない(例えば、所定の閾値未満)。換言すれば、放射性希ガスの濃度が十分に低下していない場合、それを排出すべきではない。装置(10)内で崩壊する希ガスの場合、再生によって脱着された希ガスは、(1)並列カラム上に導かれてそこに捕捉され得るか、(2)上流の水分吸着カラムに押し戻され得るか(ただし、これは、装置の連続操作を危険にさらす可能性がある)、または(3)元の環境(20)に循環して戻され、装置全体を再び通過する可能性がある。カラム上で崩壊しない希ガスの場合、貯蔵ユニットに結合された-
図1に示されているような元の環境ではなく-最後の経路を使用して、希ガス吸着床に濃縮された後の放射性希ガスを回収することができる。
【0063】
諸実施形態では、ガス吸着床、水分吸着床及び/またはスクラバーは、ガス体積が通過するカラムの形態であってもよい。
【0064】
諸実施形態では、第2の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、独立して、他の任意の態様の任意の実施形態について対応して記載されたとおりであり得る。
【0065】
第3の態様では、本発明は、ガス体積から放射性希ガスを除去するための多層システムに関し、1つ以上の層は、第2の態様の任意の実施形態による装置を備える。
【0066】
例えば、本発明による装置は、第1の容器(例えば、レセプタクル、グローブボックスまたはホットセル)内のガス体積容積から放射性希ガスを除去するために前記第1の容器に取り付けることができ、一方で、(本発明に従って、または異なる原理に基づいて)更なる装置を、更なる容器のガス体積から放射性希ガス(例えば、同じ希ガス)を除去するために、更なる容器-第1の容器を取り囲む-(例えば、レセプタクルが配置されているグローブボックスもしくはホットセル、またはレセプタクル、グローブボックスもしくはホットセルが配置されている空間もしくはバンカー)に取り付けられてもよい。そうすることで、第1の装置は、放射性希ガスの大部分を除去することができる一方で、すり抜けたもの(例えば、前記第1の装置の排気装置中に)は、第1の装置を覆う更なる装置によって捕捉することができる、非常に効果的な多層システムを実現できる。諸実施形態では、第1の装置は、低流速を使用して操作されてもよく、更なる装置は、高流速を使用して操作されてもよい(上記参照)。
【0067】
諸実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の任意の特徴は、独立して、他の任意の態様の任意の実施形態について対応して記載されたとおりであり得る。
【0068】
ここで、本発明は、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明によって説明される。本発明の真の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って本発明の他の実施形態を構成できることは明らかであり、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0069】
実施例1
本発明の概念実証を説明しかつ支持するために、希ガスとしてRnを使用し、異なる種類の希ガス吸着床を使用して、多くの異なる実験を行った。それにもかかわらず、これらの実験は、異なる希ガス及び/または更なる希ガス吸着床を使用して同様に実行できることは明らかであろう。
【0070】
これらの実験は関連する一般的な傾向を確実に示しているが、より完全な全体像に到達するために、より体系的で厳密な実験を行うことができることに留意されたい。したがって、現在の実験から得られる特定の値は、予備的な結果とみなされる。更に、達成された結果を更に最適化する余地がまだあると思われる。例えば、プロセス及び/または吸着剤の形態を更に微調整することによって、更に高い吸着係数 を達成することができる。
【0071】
1.吸着剤材料
活性炭、及びAgナノ粒子を含む3種類の銀交換ゼオライトの4つの吸着剤を試験し、比較した。後者は、銀交換ゼオライトを熱的に活性化して、その中及び/またはその上にAgナノ粒子を形成することによって作製された。
【0072】
活性炭
活性炭は、大きな表面積を備える高度に多孔質材料-炭素から本質的になる-であるため、吸着用途に適している。それは、通常、木材またはココナッツの殻などの炭素質材料から製造される。活性炭は、希ガスを捕捉するための現在の基準材料とみなすことができる。本実験では、メッシュサイズ6×12のNuclearCarb207C活性炭が選択され、これは-文献調査に基づいて-室温でのラドン捕捉の有望な可能性を示したためである。それは、ココナッツの殻から製造され、Chemviron Carbon(英国)により供給される高活性粒状炭素である。
【0073】
銀交換ゼオライト
本実験では、3つの異なる種類の銀交換ゼオライトを評価した。
【0074】
Ag-13X:13Xは、ナトリウムカチオン(の一部)が銀イオンと交換されたアルミノシリケートモレキュラーシーブである(化学式:Ag84Na2[(AlO2)86(SiO2)106])。本実験では、メッシュサイズ10~20で化学式がAg84Na2[(AlO2)86(SiO2)106]・xH2Oの粒状銀交換Ag-13XがSigma-Aldrich(ベルギー)から供給された。
【0075】
Ag-ZSM-5:ZSM-5は、新世代のSPALAX(商標)システム用に「Commissariat a l’energie atomique et aux energies alternatives」(CEA)によって特別に開発されたアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、プロセスの精製/濃縮段階で既存の活性炭カラムを置き換え、この段階のサイズとエネルギー消費量を削減することを目的としている。Ag-ZSM-5は、CEA(フランス)から20~50メッシュの球状粒子の形態で提供された。
【0076】
Ag-ETS-10:ETS-10は、Si/Ti比が約5、各Tiに2つの交換可能なカチオンを備えた微孔質チタノシリケートモレキュラーシーブである。それは、約1nmの孔径を有する。Ag-ETS-10は-加熱すると-交換された銀を10nm未満の寸法のナノ粒子に自動縮小する珍しい能力を有する(
図11を参照)。Ag-ETS-10の2つの形態が本発明で使用された。結合された1.5mmのペレット、及び結合剤のない16~30メッシュの顆粒は、Extraordinary Adsorbents Inc.(Edmonton,Alberta,Canada)によって供給された。
【0077】
2.実験装置
室温でのラドン吸着実験は、
図2に概略的に示される実験装置を使用して実施された。装置は、前述の吸着剤の1つを充填した容量120mlのラドントラップカラム(33)を含んでいた。カラム(33)にはクイック接続が装備されており、簡単かつ迅速な取り外し及び/または交換を確実にする。
【0078】
空気は、
222Rn源(20、以下参照)を介して、または「低ラドン」(例えば、自然存在量レベル)の実験室空気を供給できる追加の分岐を介して、捕捉装置(33)に供給された。分岐には、13X型と4A型の乾燥剤の混合物を含む水分トラップ(32、Agilent MT1204)が装備されていた。同様に、ラドン含有空気は、
222Rn源(20)の前にある対応する水分トラップ(32)によって除湿された。空気の湿度は、露点計(
図2には示されていない、Michell Easidew OnlineEA2-TX-100)を使用して監視された。
【0079】
この実験のためのラドンは、放射能が3.8MBqの226Raを含むガス源(20)を通るPylonモデルRN-1025流によって生成された。これは、非ガス状物質の放出を避けるために、ガラスとプラスチックのフィルターで囲まれた乾燥粉末からなった。ガス源の総量は244mLであった。ガス源(20)を通る最大流量は、約10l/分であった。
【0080】
ラドン吸着カラムを、6l/分の名目流量を提供する真空ポンプ(40、KNF LABOPORT N86)に接続した。追加のループにより、ポンプ(40)をバイパスできる。流量を測定し、0.2~2.2l/分の範囲で動作する流量計(52、Vogtlin Q-Flow FLQ-CESA-BD)で調整した。
【0081】
流量計(52)を専用のラドンモニター(51、AlphaGUARD DF2000)に接続し、吸着カラム(33)を出るラドンの放射能/濃度を測定した。モニター(51)には、本実験で0.5~1l/分に調整された流量調整ポンプが装備されていた。
【0082】
典型的な実験パラメーターは、以下の表に記載されているとおりである。
【表1】
【0083】
3.実験手順
試料の前処理
活性炭と銀交換ゼオライトは、各実験の前に、抵抗炉-Nabertherm L3/P(1993)またはCarbolite AAF11/7のいずれか-で熱活性化された。実験前に、約250℃に設定された炉を使用して、Ag-13X、Ag-ETS-10及びAg-ZSM-5を一晩(少なくとも12時間)活性化した。炭素試料は、150℃の温度で活性化された。活性化後、実験室条件下で各試料を直ちに実験カラムに移した。
【0084】
各材料の吸湿量も、実験室の空気に曝露された再生試料の質量を天秤で数日間繰り返し測定することによって評価した。
【0085】
破過実験
破過実験は、
図3に示すフローチャートに従って行った。
【0086】
最初の工程では、Pylon RN-1025を脱気し、最後の使用以降に源に蓄積した222Rnを除去する。試験装置に注入される総222Rn放射能を減らすために、脱気工程が必要である。50gのNuclearCarb207Cを備えたカラムを取り付け、蓄積したラドンの脱気と捕捉を行った。脱気は1l/分で1時間行った。RN-1025チャンバーを完全に脱気した後、カラムを取り外した。次に、検討した吸着剤を含む新しいカラムを装置に取り付けた。
【0087】
約3.5時間後、ラドン源を再びフラッシングし、試験する吸着剤に約100kBqのラドンを蓄積させた。ラドンをカラムに捕捉した後、ラドン源を閉じ、ラドンモニターのポンプを使用して清浄な空気をカラムに送った。注入されたすべてのラドンがカラムを通過した時点で、実験は終了した。各実験の終わりに、システムをきれいな空気でフラッシングした。
【0088】
4.結果と考察
吸着剤使用の影響
3つの異なる吸着剤-NuclearCarb207C(81)、Ag-13X(82)及びAg-ETS-10(結合1.5mmペレット;83)-のラドン破過曲線を
図4に示す。Ag-ZMS-5及びAg-ETS-10(結合剤なし16~30メッシュ)の破過曲線を、それぞれ
図5及び
図6に示す。予備的な結果を以下の表にまとめる。得られた吸着係数 は、昇順に、2680ml/g(Ag-13X)、2750ml/g(NuclearCarb207C)、50960ml/g(Ag-ZSM-5)、115000ml/g(Ag-ETS-10、1.5mmペレット)、320000ml/g(Ag-ETS-10、16~30メッシュの顆粒)であった。Ag-ETS-10吸着剤は、最も高い吸着係数を示し、他の吸着剤よりも優れていた。小さな16~30メッシュのAg-ETS-10顆粒は、わずか4.69grの材料で、1l/分で25時間の平均保持時間tと-75℃の露点を有し、その結果、試験材料の最も高い吸着係数が得られた。16~30メッシュのAg-ETS-10顆粒1grと同じ保持時間を得るには、少なくとも100gのNuclearCarb207Cが必要だった。したがって、Ag-ETS-10は、コンパクトな吸着による希ガス(Rn)捕捉システムで使用するための特に有望な材料である。
【表2】
【0089】
水分の影響
Ag-ETS-10のような(Ag交換)ゼオライトもH
2Oに対する親和性を有するので、ラドン吸着に対する水分吸着の効果が調査された。実験では、Ag-ETS-10を含む吸着カラムへの水分のアクセスを可能にするために、水分吸着カラム(
図2)が取り除かれた。水分トラップが取り除かれる前に、実験はRn破過なしで10日以上実行された。除去後(91)、わずか6時間後にRn破過(92)が始まる(
図7)。
図8は、ラドンモニター(93)からの湿度測定値を含む破過曲線の詳細図を示す。これらの測定値は、管内の実際の水分含有量を表すものではないが、目安となる。この図は、ラドンの破過が湿度の上昇に関連していることを明確に示している。理論に束縛されるものではないが、これは、暫定的に、Ag-ETS-10が極性H
2Oを保持し、それによって吸着部位を占有するか、または非極性Rnを追い出すことにさえ起因する可能性がある。そのため、Ag-ETS-10は基本的に水分トラップとして機能し、H
2Oで十分に飽和すると、希ガスを保持しなくなる。したがって、希ガス吸着床上を通過する前にガス体積の湿度レベル(露点)を制御することにより、前記希ガス吸着床の効率を実質的により良好に維持することが可能になる。
【0090】
熱安定度
別の実験では、16~30メッシュのAg-ETS-10顆粒の熱安定性は、水分を吸収する能力によって評価された。このために、約10gのAg-ETS-10試料を、200~700℃の範囲の様々な温度にて抵抗炉(上記を参照)で2時間乾燥させた。次いで、水分摂取量(H
2O容量)を平衡に到達させ、続いて質量増加を同じ天秤で記録した(上記を参照)。結果を
図9に示す。Ag-ETS-10は約400℃で劣化し始め、約500℃でその水分吸着容量を完全に失うことが観察された。続いて、500℃で焙じた試料のラドン保持を試験したところ、すぐに破過が観察され、吸着特性がより一般的に失われていることが確認された。
【0091】
ガス汚染物質の影響
ガス流中の(有毒な)汚染物質の影響を評価するために、16~30メッシュのAg-ETS-10を、H
2及びppm範囲のNO
xフューム(4M HNO
3中の金属Cuを含む溶解ボトルから生成される)を含む空気流に曝露した。その後の
222Rn破過曲線を
図10に示す。その結果、吸着材料の分解が観察され、目視観察は、Ag-ETS-10の外観が茶色から白色に変化したことを示し、その後の試験(上記を参照)は、吸着係数kが約40000ml/g(すなわち、約320000ml/gから低下、上記を参照)まで有意に低下したことを示した。材料の再生サイクルでは、そのRn吸着能力を回復できず、これは、NO
xによって引き起こされた材料への不可逆的な損傷を示している。理論に束縛されるものではないが、これは、暫定的に、例えば、金属銀からAg
+に-そうして、微孔質モレキュラーシーブ内でAgNO
3が形成され得る-及び/または水素結合を形成することによって特に水を吸着しやすくなるAgO
2に、NO
xがAgを酸化させたことに起因する可能性がある。したがって、これらの効果により、希ガス吸着床がそれに対する親和性を失う可能性がある。このような有毒な汚染物質がガス体積内にあると予想される場合、その効率を良好に維持するために、ガス体積を希ガス吸着床に通す前に(及び/または水分吸着床に通す前に)、汚染物質を除去することが有益であり得る。
【0092】
実施例2
前述のように、実施例1で説明した実験の目的は、むしろ、本発明の概念実証を説明及び裏付けることであった。対照的に、一般的な方法が使用され、同じ傾向が現れたが、実験条件をより適切に制御し、より確実な結果を得るために、装置を実施例2用に改良した。
【0093】
1.結果
NuclearCarb207C(101)、CarboAct(102)、Ag-13X(103)、Ag-ZSM-5(104)及びAg-ETS-10(105)について、室温で実験的に測定された破過曲線-流量2L/分、吸着床容積17cm
3及び露点が-70と-90℃の間の窒素キャリアガスを使用-を、
図13に示す。
【0094】
活性炭とAg-13Xの両方でのRnの破過は、注入後、数分以内に生じたが、Ag-ZSM-5とAg-ETS-10でのRnの保持はかなり長くなる。最後に挙げた物質の場合、Rnの放出は、注入の7日後に開始することが観察されたが、吸着床による崩壊により、その最初の放射能の1/32しか検出できなかった。各吸着材料の質量、注入及び排出された
222Rn放射能、Rn保持時間、充填密度、及び測定された吸着係数kの概要を以下の表に示す。
【表3】
【0095】
図13で見ることができるように、同様の結果がAg-ZSM-5で得られたが、検討された炭素材料及びAg-13Xは、はるかに弱いラドン相互作用を示した。
【0096】
以下の「方法」セクションで説明するように、すべての実験は、残留水分量が少ないため、ボトル入りの5N 窒素をキャリアガスとして使用して実行された。Rn吸着が生じた後、実験室の空気をAg-ETS-10の吸着床上を通過させたところ、Rn吸着に対する水分の明確な競合効果が実験的に証明された。
図14は、Rn破過曲線(111)(2L/分の流量及び16.3gの吸着剤の質量を使用)、Rn吸着床の前の露点(112)、Rn吸着床の後の露点(113)、Rn吸着床の温度(114)、及び周囲空気を入れる瞬間(115)のグラフ表示を示す。観察できるように、Rn破過は、排出された空気流の露点の増加と正確に一致する。吸着床の温度上昇は、水分がカラムに入る際に測定される。また、
図13に示した前の実験で観察された広いピークとは対照的に、Rnが鋭いパルスとして吸着床を離れることもわかる。この挙動は、Agナノ粒子の活性吸着部位に対するRnとの水分子の競合によって説明できる。Ag-ZSM-5でも同様の観察が行われた。結果は、検討した両方の材料、Ag-ETS-10及びAg-ZSM-5の低水分圧での乾燥剤としての強力な性質を確認した。
【0097】
2.考察
検討した材料で測定された222Rnの破過曲線に基づいて、Ag-ETS-10とAg-ZSM-5の両方は、室温でラドンに対して顕著な保持特性を示した。これら2つの合成ゼオライト型フレームワークのそれぞれについて、流出ガス流中の222Rnの実質的な減少を達成することができる。16.3gのAg-ETS-10は、222RnのMBq量を1週間にわたって保持することができ、排気装置での222Rn濃度の測定可能な増加が検出きる前に、20m3(または、106床容積)を超えるN2がカラムを通過した。最大破過では、Ag-ETS-10吸着床からのRnの放出は17日間遅延し、これは、222Rnの約4.5半減期に相当する。Ag-ZSM-5と共に、Ag-ETS-10は、NuclearCarb207C、CarboActo及びAg-13Xと比較して、少なくとも2桁大きいラドンの吸着係数を示す。発明者の知る限りでは、室温でのラドン吸着係数が1000m3/kgを超える吸着剤を示す科学文献の測定結果はまだ報告されていない。
【0098】
得られた結果を評価するためには、水分制御が非常に重要であることがわかった。検討されたAg-ETS-10材料は非常に強力な乾燥剤であることが示され、湿気の共吸着との干渉の可能性に関して、Rn破過実験を解釈する際には注意が必要である。実際のところ、実験室の空気で行われた最初の実験(例えば、実施例1を参照)は、実験室内の相対湿度の変化によるRnの測定された吸着係数の大きな変動を明らかにした。周囲の湿度への曝露を回避する材料の慎重なin situでの再生は、データの再現性にとって非常に重要であることが証明されている。13X水分吸着床上で乾燥させた実験室の空気を使用した同様の実験システムによる実験の裏付けは、Ar、Kr、Xe、CO2及びCOなどの他の空気成分がRnとわずかな競合しか示さなかった(少なくとも、大気中で通常遭遇する濃度では)、一方で、相対湿度の強い影響が観察された。これは、空気浄化のための効率的であるが単純なRn吸着システムの設計に有利である。なぜなら、Rnを効率的に捕捉するためには、インプット空気流の除湿-または、酸化種及び/または酸蒸気の除去(下記を参照)と組み合わせた除湿-のみが必要となるからである。しかし、塩素を含む有機種は、Xe吸着に関してAg-ZSM-5に測定可能な中毒効果を示すことが最近示された。銀を酸化する種から吸着床を適切に保護することが有用であり得ると結論付けることができる。
【0099】
それにもかかわらず、Ag-ETS-10とAg-ZSM-5の革新的な性質は、低バックグラウンド環境を必要とする実験室での空気浄化のために提案されたRn削減システムの以下の実施例によって視覚化できる。222Rn放射能濃度が20Bq/m3の空気を100m3/時で処理すると仮定した場合、直径30cm及び高さ100cm(V=70L)の吸着床では、入ってくるRnの流れを650時間または4週間(k=1000m3/kg)遅らせることができる。これは、室温で連続的に作動する単一の吸着カラムの流出空気流における、0.15Bq/m3の破過222Rn放射能濃度に相当する。活性炭により同様の吸着システムは、数立方メートルの床容積と極低温冷却を必要とする。これは、Rn関連の研究及び空気分離産業における銀交換ゼオライトの経済的可能性を明確に証明している。
【0100】
このようなシステムを使用すると、吸着されたRnの減衰率がその流入フラックスに近づく定常状態に達すると、Rnの大幅な蓄積がカラムに発生することを簡単に示すことができる。更に、
図14の結果が示すように、水分が吸着床上を通過するのを可能にし、それによってRnを置換することによって、限られた体積でRnを効率的に取り除くことができる。上記の例では、100kBqの
222Rnを数m
3で得ることができ、これを、更に小規模のカラムに濃縮することができる。
【0101】
記載されているゼオライト吸着剤の別の-より新奇かもしれないが-用途は、医療関連の放射性同位体の生成のために226Ra化合物を取り扱うことから発生する222Rn放出を大幅に削減する可能性がある。出願人の知る限りでは、大量(例えば、グラム単位またはそれ以上)の226Raを処理するためにゼオライトを222Rn吸着剤として(例えば、ホットセル内に)実装することは、これまで報告されていない。
【0102】
3.材料
吸着剤材料Ag-ZSM-5、Ag-ETS-10(粒状、メッシュ16~30)、Ag-13X及びNuclearcarb207Cは、実施例1に記載したとおりであった。更に、CarboAct高純度炭素(断片化、0.01~0.4cm)は、Carbo-act International(Netherlands)から入手した。吸湿剤13X APGは、UOP CH Sarl(Switzerland)から球状8×12メッシュビーズとして入手した。
【0103】
実施例1と同様に、PYLON Electronics Inc.(Canada)が提供するPYLON RN-1025フロースルー3.8MBq 226Ra源を脱気することによって、222Rnを生成及び供給した。各実験の前に、実行される各実験の前に222Rnの特定の放射能を増大させるために、源を脱気した。
【0104】
4.方法
実験用のRn吸着装置
Rn吸着実験は、ドラフト(「排気装置」70)内に配置された実験室規模の装置(10)で実行された。これは、
図12に概略的に示されている。捕捉装置は、2つの冗長水分トラップ(32)と2つのRn吸着カラム(33)、システム内の水分含有量を示すための湿度計(露点計、53)、流量制御装置(MFC及びVA流量計、52)、真空ポンプ(40)及びラドンモニター(51)からなる。本システムは、ステンレス鋼管(OD1/4インチ、実線または長い破線)、取り付け具及び弁で構築されており、漏れ止め及び水分制御を保証する。可能/賢明であれば、可撓性PFA(パーフルオロアルコキシ)管(短い破線または点線)が使用される。実線(ステンレス鋼)と短い破線(PFA)の線は順方向ループを示し、長い破線(ステンレス鋼)と点線(PFA)の線は再生ループを示す。
【0105】
社内のLN2供給タンク(21)から供給される窒素は減圧され(54)、キャリアガスとして実験システムに供給される。それにもかかわらず、この装置では、周囲の空気(22)を使用/導入することもできた。装置内のキャリアガスの流れは、熱式質量流量制御装置(Red-y smart,Vogtlin Instruments GmbH(Switzerland)、52)によって制御される。
【0106】
装置には、入ってくるガスの水分含有量を減らすためにモレキュラーシーブ13Xで満たされた2つの冗長水分トラップ(32)が装備されている。カラムは、社内で設計かつ製造された。両方のカラムの容積は約385cm3(内径4.05cm及び長さ30cm)で、ステンレス鋼(SS316)製である。カラム上部のCuシール付きCFフランジにより、カラムの開閉が可能になり、漏れ止めが確保される。1つのカラムが飽和状態になった場合(または、ある時点で再生成された場合)、連続操作を保証できるように、冗長性は提供される。装置の様々な位置で水分含有量を測定するために、いくつかの露点トランスミッター(53、Easidew online,Michell Instruments(UK))が装置に取り付けられている。
【0107】
ラドン吸着は、吸着カラム(33)のうちの1つの中で行われる。これらのカラムには、選択した吸着剤を充填できる。カラムは、社内で設計かつ製造された。両方のカラムの容積は約17cm3(内径1.2cm及び長さ15cm)で、ステンレス鋼(SS316)製である。カラム上部のCuシール付きCFフランジにより、カラムの開閉が可能になり、漏れ止めが確保される。
【0108】
この装置により、in situで、すなわち、カラム内に吸着剤を保持したまま、異なる吸着剤を再生できる。ステンレス鋼カラムの加熱は、熱電対(55)を介して温度を所定の設定点に調節する温度コントローラに接続された電熱線を介して行われる。熱電対(55)は、カラムの外壁に配置される。カラムと電熱線は、グラスファイバーテープで断熱されている。
【0109】
排出されるラドン濃度は、ラドンモニター(51)、すなわち、AlphaGUARDプロフェッショナルラドンモニターDF2000,Bertin GmbH(Germany)で排出流の一部をサンプリングすることによって監視される。それは、2Bq/m3~2MBq/m3の測定範囲で、体積ラドン濃度を連続的に測定できる。モニターには、排出流のサンプリングを可能にする、0.05L/分~2L/分まで調整できる流量調整ポンプが装備されている。
【0110】
装置には(真空)圧力トランスミッター(圧力範囲1~2.5バール、56)が装備されており、装置内の圧力を監視できる。更に、このトランスミッターは、特に開閉後の装置とカラムの漏れ止めを検証するために使用される。
【0111】
(取り外し可能な)吸着カラム(120cm3、34)をクイック接続(57)を介して実験ループ内に挿入し、Rn源の脱気を可能にすることができる。取り外すと、ループはステンレス鋼管を介して閉じられる。
【0112】
材料再生
試験した各吸着剤は、各実験の前に、不活性ガス条件下での熱処理による活性化工程を受けた。いずれの場合も、再生ガスとして乾燥窒素を使用した。活性化は、Ag-ETS-10では230℃、Ag-13X及びAg-ZSM-5では250℃で少なくとも15時間実行され、両方の活性炭では150℃が選択された。水分吸着剤13X APGは、280℃で再生された。窒素は、名目圧力8バール及び露点-70と-90℃の間の社内LN2供給タンクから供給された。
【0113】
破過実験
破過実験は、実施例1と同じ一般的なフローチャートに従って行った(
図3を参照)。
【0114】
最初の工程では、ラドン源(Pylon RN-1025)を活性炭(NuclearCarb207C)を含むカラムで脱気し、蓄積した222Rnを除去し、3.8MBqの226Raの平衡状態にする。試験装置に注入される総222Rn放射能を減らすために、脱気工程が必要である。約50gのNuclearCarb207Cを充填したカラムが、設置されている。脱気は0.5L/分で1時間行う。ラドン源を完全に脱気した後、カラムを取り外す。
【0115】
脱気の後、ラドンは、所望の放射能に達するまで、再び源に蓄積し始める。次の工程では、蓄積されたラドンは、ラドン源を実験用の流量で5分間フラッシングすることにより、選択された吸着剤カラム内に注入される。
【0116】
ラドンをカラムに捕捉した後、ラドン源を閉じ、注入されたすべてのラドンがカラムを通過するまで(完全な破過)、N2をカラムに供給する。この時点で、実験は終了する。
【0117】
試験した各吸着剤の吸着係数k(m3/kg)は、次の式を使用して計算され、
k=(t*F)/m
ここで、tは保持時間(秒)、mは吸着剤の質量(kg)、Fは体積流量(m3/秒)である。平均保持時間tは、測定された破過ラドン放射能濃度が、観察された最大ラドン放射能濃度の5%になる時間として採用された。大規模なデータセットの場合、データは250ポイントで平均化される。そうして、保持時間は、最大平均値の5%の平均値が観測された時間とみなされる。測定された吸着係数に関連する全体的な不確実性は、20%程度であると推定される。
【0118】
実施例3
実施例1及び/または実施例2を繰り返すが、Ar、O2、Ne、Heまたはこれらとの混合物などの異なる低分極性(上記を参照)キャリアガスを使用する。
【0119】
図15は、窒素、(乾燥)空気及びAr(3L/分の流速、毎実行で注入された485kBq
222Rn、及び吸着剤質量3gを使用)である異なるキャリアガスを使用して、Ag-ETS-10上で実験用に測定されたRn破過曲線のグラフ表示を示す。窒素は、社内のLN
2供給タンクから供給される。空気は建物の中央圧縮空気供給によって供給され、更に13Xモレキュラーシーブで乾燥される。最後に、アルゴンはガスボンベ(Arテクニカルグレード4.8、X50S,Air Products)を介して供給される。様々な実験で測定された露点は類似しており、平均すると約-80℃である。
【0120】
乾燥空気(およそN278%、O221%及びAr1%からなり、O2とArは両方ともN2より分極しにくい)を使用すると、純粋なN2と比較して、約30%~40%のRn保持時間の増加になった。Arの使用により保持時間が長くなったため、実験を早期に終了することが決定された。得られたデータを比較すると、約7倍の保持時間の増加が期待できる。保持時間の増加は、キャリアガスと吸着剤との相互作用が弱くなっていることを示しており、吸着部位でのラドンとの競合が少なくなる。N2は空気よりもAg-ETS-10との相互作用が強く、空気はArよりも強い相互作用を示す。理論に束縛されるものではないが、非極性ガスの吸着強度は、その分極率に一次近似で依存するため、分極率が高いほど、希ガス吸着床と(例えば、その中の遷移金属と)の相互作用が強くなる。
【0121】
O2、Ne、Heまたはこれらとの混合物などのガスを使用すると、更に低い分極率を有し、更に大きな効果を達成することができる。
【0122】
好ましい実施形態ではあるが、本発明を説明するために、特定の構造、構成及び材料が本明細書で論じられていることを理解されたい。添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を逸脱することなく、形式及び詳細において種々の修正、変更及び変形を行い得ることは、当業者には明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス体積から放射性希ガスを除去する方法であって、
a.ガス温度20℃における前記ガス体積の露点が-20℃以下、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-45℃以下となるように前記ガス体積を提供することと、
b.微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む前記微孔質モレキュラーシーブ床(33)上に前記ガス体積を通過させ、それによって前記放射性希ガスを前記床(33)に吸着させることと、を含み、
前記微孔質モレキュラーシーブがETS-10またはZSM-5であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記微孔質モレキュラーシーブは、
遷移金属ナノ粒子を含むか、及び/または
遷移金属交換微孔質モレキュラーシーブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属は、10族、11族及び白金族から選択され、好ましくはAgである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記放射性希ガスはRnである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス体積は、1.700Å
3以下、好ましくは1.600Å
3以下、より好ましくは1.200Å
3以下、更により好ましくは0.800Å
3以下、最も好ましくは0.400Å
3以下の分極率を有する、非極性キャリアガスを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程aは、水分吸着床(32)上に前記ガス体積を通過させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
更なる工程cである
c.前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)を再生することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程cは、
前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)を加熱すること、及び/または
前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)を再生ガスでフラッシングすることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程bの前に更なる工程a’である
a’.前記希ガス吸着床(33)及び/または-存在する場合-前記水分吸着床(32)にとって有毒な物質を前記ガス体積から除去することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
吸着された前記放射性希ガスは、
効果的に減衰するまで保持されるか、または
更なる保管及び/または利用のために収集される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
室温で実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
核環境で実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ガス体積から放射性希ガスを除去するための装置(10)であって、
i.1つ以上の水分吸着床(32)と、
ii.微孔質モレキュラーシーブ上及び/またはその中に配置された遷移金属を含む前記微孔質モレキュラーシーブの1つ以上の希ガス吸着床(33)と、を備え、前記希ガス吸着床(33)は、前記水分吸着床(32)のアウトプットに結合されたインプットを有し、
前記微孔質モレキュラーシーブがETS-10またはZSM-5であることを特徴とする、前記装置。
【請求項14】
iii.前記希ガス吸着床(33)及び任意選択で前記水分吸着床(32)に結合された1つ以上の再生ガス供給源(60)及び/または
iv.前記希ガス吸着床(33)及び/または前記水分吸着床(32)に対して有毒な物質を前記ガス体積から除去するための1つ以上のスクラバー(31)を更に備え、前記スクラバー(31)は、前記希ガス吸着床(32)のインプットへ結合されたアウトプットを有する、請求項13に記載の装置(10)。
【請求項15】
ガス体積から放射性希ガスを除去するための多層システムであって、前記層の1つ以上は、請求項13~14のいずれか一項に記載の装置(10)を備える、前記システム。
【国際調査報告】