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特表2024-509506液体中のワークピースのレーザー加工のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】液体中のワークピースのレーザー加工のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/122 20140101AFI20240226BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240226BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240226BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240226BHJP
【FI】
B23K26/122
B23K26/38
B23K26/082
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549632
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022054702
(87)【国際公開番号】W WO2022180178
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021104475.8
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523310859
【氏名又は名称】リドロテック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】LIDROTEC GMBH
【住所又は居所原語表記】Lothringer Allee 2,44805 Bochum Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カーニッツ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ホピウス,ヤン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,ヤニス
(72)【発明者】
【氏名】イーゲルマン,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168AD07
4E168AD11
4E168AD18
4E168CA06
4E168CA13
4E168CA14
4E168CB01
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA05
4E168EA06
4E168EA15
4E168FB09
4E168FC04
4E168FC05
4E168KB04
(57)【要約】
パルスレーザー照射を発生させるためのレーザー光源と、レーザー照射をワークピース上に集束させる集束ユニットと、ワークピースを受け入れるための処理チャンバと、を含み、前記処理チャンバは、レーザー照射を通過させるための透明なプロセスウィンドウを有する第1の側面と、第1の側面に対向して配置された第2の側面と、前記処理チャンバの内部を囲むチャンバ壁と、処理チャンバの内部で流れを生成するための流れ発生器と、ワークピース上のレーザー照射の位置を調整するための位置決めユニットと、を含み、前記流れ発生器は、第1の流れ軸に沿って第1の流れを生成するための第1の流れ発生器ユニットと、第2の流れ軸に沿って第2の流れを生成するための第2の流れ発生器ユニットとを備える、液体中のワークピースをレーザー加工するためのシステム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザー照射(14)を発生させるためのレーザー光源(12)と、
レーザー照射をワークピース(22)上に集束させる集束ユニット(14)と、
ワークピース(22)を受け入れるための処理チャンバ(20)と、
ワークピース(22)上のレーザー照射(14)の位置を調整するための位置決めユニット(16)と、を含み、
前記処理チャンバ(20)は、
レーザー照射(14)を通過させるための透明なプロセスウィンドウ(28)を有する第1の側面(24)と、
第1の側面(24)に対向して配置された第2の側面(26)と、
前記処理チャンバ(20)の内部(20a)を囲むチャンバ壁(30)と、
処理チャンバ(20)の内部(20a)で流れを生成するための流れ発生器と、を含み、前記流れ発生器は、第1の流れ軸に沿って第1の流れを生成するための第1の流れ発生器ユニット(32)と、第2の流れ軸に沿って第2の流れを生成するための第2の流れ発生器ユニット(32)とを備える、液体中のワークピースをレーザー加工するためのシステム(10)。
【請求項2】
第1の流れ軸および第2の流れ軸が共に、80°~100°、好ましくは85°~95°、特に好ましくは90°の角度を形成することを特徴とする、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記第1の流れ発生器ユニット(32)または前記第2の流れ発生器ユニット(32)は、吸引ポンプおよび/または加圧ポンプを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記第1の流れ発生器ユニット(32)または前記第2の流れ発生器ユニット(32)は、吸引ポンプおよび加圧ポンプを備え、前記吸引ポンプは前記加圧ポンプに対向する前記処理チャンバ(20)の内部(20a)の側面に配置され、特に、前記加圧ポンプによって前記液体が導入されるのと同じ速度で前記処理チャンバ(20)の内部(20a)から液体を排出するように構成されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記処理チャンバ(20)の前記第2の側面(26)は、開放設計であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(30)。
【請求項6】
前記処理チャンバ(20)は、前記第2の側面(26)に配置され、前記処理チャンバ(20)を開状態から閉状態に移行するように構成された閉鎖フラップを備えることを特徴とする、請求項5に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記処理チャンバ(20)の前記第2の側面(26)は、閉鎖設計であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記ワークピース(22)上の前記レーザー照射(14)の位置を調整するための前記位置決めユニット(16)は、前記レーザー照射(14)を偏向させるためのレーザースキャナおよび/または前記ワークピース(22)を位置決めするための位置決めテーブル(40)を備え、前記位置決めテーブル(40)は特に、水平面内に、さらに鉛直方向内に前記ワークピース(22)を位置決めするように構成されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記集束ユニットは、集光レンズ、顕微鏡の対物レンズ、および/または凹面鏡を備えることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記処理チャンバ(20)は、ガス供給装置および/またはガス排出装置を備えることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項11】
パルスレーザー照射(14)を生成するためのレーザー光源(12)は、10fs~300ps、好ましくは100fs~200psのパルス持続時間を有するパルスレーザー照射を生成するように構成されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項12】
空間光変調器または回折光学素子によって特徴付けられ、前記空間光変調器または回折光学素子は、ワークピース(22)の平行レーザー加工のための複数のレーザー光(14)を提供するように構成されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項13】
処理チャンバ(20)の内部(20a)の記録を行うように構成されたカメラシステムを特徴とする、先の請求項のいずれか1つに記載のシステム(10)。
【請求項14】
処理チャンバ(20)の内部(20a)にワークピース(22)を提供すること(110)と、
処理チャンバ(20)の内部(20a)を液体で満たすこと(120)と、
集束ユニットを使用して、ワークピースの表面上(22a)にパルスレーザー照射(14)を集束すること(130)と、
位置決めユニット(16)を使用して、ワークピース表面上(22a)に集束されたレーザー照射(14)の相対移動を生成すること(140)と、
流れ発生器を使用して処理チャンバ(20)の内部(20a)に液流を生成すること(150)と、
液流の流れ方向を、ワークピースの表面上(22a)の集束されたレーザー照射(14)の相対的な移動方向に応じて調整すること(160)と、
を含む液体中でワークピースをレーザー加工するための方法(100)。
【請求項15】
前記流れ方向を調整することは、前記ワークピース表面上(22a)の前記レーザー照射(14)の相対的な移動方向に対して直角に配向された流れ方向を調整することを含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法(100)。
【請求項16】
ワークピースの表面(22a)に沿った集束されたレーザー照射(14)の相対移動は、0.6~1.4mm/s、特に0.8~1.2mm/s、特に好ましくは1mm/sの速度で行われることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法(100)。
【請求項17】
流速が1~10m/s、特に4~6m/s、特に好ましくは5m/sであることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1つに記載の方法(100)。
【請求項18】
カメラシステムを用いてレーザー照射(14)の相対移動方向を検出し、
レーザー照射(14)の検出された相対的な移動方向に直交する流れ方向を調整することを特徴とする、請求項14~17のいずれか1つに記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中のワークピースをレーザー加工するためのシステムおよび対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工システムは、様々な実施形態において従来技術から知られている。これに関連して、レーザー加工方法は、多くの場合、材料アブレーション法と材料添加法とに分けられる。材料アブレーションレーザー加工法は特に、レーザー切断およびレーザー穿孔を含む。材料添加レーザー加工法は、とりわけ、選択的レーザー溶融(SLM)およびレーザー金属蒸着(LMD)を含む。本発明は、材料アブレーションレーザー加工、特にレーザー切断に関する。
【0003】
ワークピースのレーザー加工では、使用されるレーザー照射は通常、集束ユニットによって加工対象のワークピースに集束される。集束された照射はワークピースを局所的に加熱し、その結果、適切なプロセスパラメータを使用して、材料がワークピースの照射領域で溶融または直接蒸発する。ワークピース表面に沿ってレーザー照射を移動させることによって、ワークピース表面の修正または切削端のいずれかを生成することができる。ワークピース表面に沿った集束されたレーザー照射の相対移動は、通常、レーザー照射の方向を変えるように構成されたレーザースキャナを使用することによって達成される。または、集束されたレーザー照射の絶対的な向きが一定のままであり、代わりに位置決めテーブルを使用してワークピースが前進するようにしてもよい。
【0004】
さらに、従来技術から、上述のプロセスを改善するために、液体中でレーザー加工動作を実行することが知られている。これはワークピースが使用される液体によって直接冷却されるという特別な利点を有し、一方では望ましくない熱的影響を回避または少なくとも低減し、他方ではアブレーションされた材料が表面上に戻ることを防止する。特に、これは、より良好な切削および表面品質を達成することを可能にする。液体中でのレーザー加工のために、例えば、ワークピースおよび液体を受け入れるために設けられた処理チャンバを使用することができる。
【0005】
しかしながら、上述の液体中でのレーザー加工に関する1つの問題は、アブレーションプロセスによるワークピースの加工中にマイクロおよびナノ粒子が生成され、この粒子が望ましくない方法でビーム経路に影響を及ぼすことである。集束されたレーザー照射は、生成された粒子で散乱され、ワークピース表面上のビームプロファイルを所望のプロファイルから逸脱させる。加えて、キャビテーション気泡は、多くの場合、処理中に形成され、さらなる干渉効果をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題に基づいて、本発明の目的は液体中のワークピースのレーザー加工のためのシステム、および対応する液体中のワークピースのレーザー加工のための方法を提供することであり、これは、ワークピースの改善されたレーザー加工を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題は、液体中のワークピースの材料アブレーションレーザー加工、特に、液体中のワークピースの材料アブレーションレーザー切断のためのシステムを提案する本発明によって達成され、
前記システムは、
パルスレーザー照射を発生させるためのレーザー光源と、
レーザー照射をワークピース上に集束させる集束ユニットと、
ワークピースを受け入れるための処理チャンバと、
ワークピース上のレーザー照射の位置を調整するための位置決めユニットと、を含み、
前記処理チャンバは、
レーザー照射を通過させるための透明なプロセスウィンドウを有する第1の側面と、
第1の側面に対向して配置された第2の側面と、
前記処理チャンバの内部を囲むチャンバ壁と、
処理チャンバの内部で流れを生成するための流れ発生器と、を含み、前記流れ発生器は、第1の流れ軸に沿って第1の流れを生成するための第1の流れ発生器ユニットと、第2の流れ軸に沿って第2の流れを生成するための第2の流れ発生器ユニットと、を備える。
【0008】
本発明はワークピースのレーザー加工中に生成された粒子およびキャビテーション気泡を処理チャンバの内部から効果的に除去することを可能にし、それによって、加工中に生じ得る任意の干渉効果を大幅に低減する。加えて、本発明は処理チャンバ内の液体の永続的な交換を可能にし、それによって、処理されたワークピースの冷却を改善する。さらに、本発明は、処理チャンバ内の流れ方向の調整を可能にする。これは、処理チャンバ内の可変の流れ方向がレーザー照射の移動方向に対する流れ方向の特定の適合を可能にするので、特に有利である。実験的研究は、流れ方向がレーザー照射の運動方向(「書き込み方向」とも呼ばれる)に直交するように調整される場合、切削端の質が著しく改善され得ることを示した。
【0009】
使用されるレーザー照射は、特に超短パルスで有り得る。ここで、集束ユニットは、レーザー光源と処理チャンバとの間に配置される。集束ユニットは、レーザー照射がワークピース表面上に集束されることを可能にするように構成される。プロセスウィンドウは、特にガラスから形成することができる。この点において、パルスレーザー照射とプロセスウィンドウとの間の相互作用をできるだけ最小限に抑えるために、比較的薄いガラスを使用することができる。位置決めユニットは、レーザー照射の方向を変更して生成されるレーザースポットの絶対位置を変更するか、またはワークピースの絶対位置を変更するように構成することができる。チャンバ壁は、矩形または円形の形状で処理チャンバの内部を囲むように設けられてもよい。チャンバ壁は、特に金属から形成することができる。流れ発生器ユニットは特に、処理チャンバの内部に液体を導入するように、または処理チャンバの内部から液体を排出するように構成することができる。
【0010】
第1および第2の流れ軸は特に、ゼロに等しくない共通の角度を形成するように設けられる。さらに、流れ発生器は、好ましくはチャンバ壁面に沿って等間隔に配置された2つ以上の流れ発生器ユニットを有するようにしてもよい。
【0011】
例えば、処理チャンバの内部の周囲に配置され、4方向に流れを生成するように構成された、合計4つの流れ発生器ユニットが設けられてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、チャンバ壁は処理チャンバの内部を円形に囲み、処理チャンバは内部の周囲に円形に配置され、第1の流れ軸、第2の流れ軸、第3の流れ軸、および第4の流れ軸に沿って流れを生成するように構成された4つ、6つ、8つ、または12の流れ発生器ユニットを備え、それぞれの隣り合う流れ軸は90°、60°、45°、または30°の角を形成する。この点に関して、それぞれの流れ発生器ユニットは処理チャンバ内に液体を導入するために、または処理チャンバから液体を排出するために提供される別個のポンプを有することができる。
【0013】
本発明によるシステムの一実施形態によれば、第1の流れ軸および第2の流れ軸は共に、80°~100°、好ましくは85°~95°、特に好ましくは90°の角度を形成することができる。このようにして、レーザー光の現在の書き込み方向に応じて、書き込み方向に適合された流れを生成することができる。流れ方向は、手動または自動のいずれかで調整することができる。手動の流れ方向調節により、ユーザは、制御部を使用して、電流の流れ方向が書き込み方向に対して実質的に直交するように構成された流れを提供するためにどのように調節されなければならないかを調節することができる。または、流れ方向は、自動的に調整され得る。この目的のために、書き込み方向が自動的に検出または定義され、書き込み方向に応じて流れ方向を調整することが提供されてもよい。また、書き込み処理のパラメータが、予め定められていてもよい。そうすることで、レーザー照射が移動する書き込み経路、ならびに書き込み経路に適合された流れの挙動を、書き込みプロセスの開始前に定義することができる。実験研究では、流れ方向と書き込み方向が直交する方が好ましいことが示されているが、ほぼ直交する配向でも、例えば、液体の流れと書き込み方向が同じ方向である場合よりも良好な結果が得られる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、第1の流れ発生器ユニットおよび第2の流れ発生器ユニットは、吸引ポンプおよび/または加圧ポンプを備えることができる。これにより、処理チャンバ内に液体を導入したり、処理チャンバ内から液体を排出したりすることができる。流れ発生器ユニットはまた、液体入口チャネルおよび/または液体出口チャネルを備えてもよい。対応するチャネルは、それぞれ1つの流れ発生器ユニットが一方向の流れを生成するように構成されるように設計することができる。ここで、液体チャネルは例えば、円形の断面またはスリット形状の断面を有することができる。
【0015】
本発明によれば、第1の流れ発生器ユニットまたは第2の流れ発生器ユニットは、吸引ポンプおよび加圧ポンプを備え、吸引ポンプは加圧ポンプに対向する処理チャンバの内部の側面に配置され、特に、加圧ポンプによって液体が導入されるのと同じ速度で処理チャンバの内部から液体を排出するように構成されてもよい。これは、処理チャンバ内に特に均一な流れを提供することを可能にする。これにより、処理中に生成された粒子およびキャビテーション気泡を効率的かつ均一に処理容積の外に輸送する一方で、処理チャンバの内部における任意の破壊的な乱流を低減することによって、書き込みプロセスがさらに改善される。
【0016】
さらに、本発明によれば、処理チャンバの第2の側面が開放設計であってもよい。言い換えれば、本実施形態によれば、処理チャンバの第2の側面は、チャンバ壁またはチャンバ床によってそれぞれ第2の側面で閉鎖されない。処理チャンバのこの実施形態は、比較的大きなワークピースが処理される場合に特に有利である。閉鎖設計の従来の処理チャンバでは、処理されるワークピースのサイズが処理チャンバの内部によって制限される。処理チャンバの開放された実施形態により、ワークピース自体は処理チャンバの内部に隣接するチャンバ壁を形成し、ワークピースはまた、数デシメートルまたは数メートルにわたって移動することができ、その結果、特に大きなワークピースは、処理チャンバの構造的な設計により処理されることができる。加えて、この構造設計は処理チャンバを比較的小さく保つことを可能にし、これは、必要な液体消費を著しく減少させる。また、それは、大きな処理チャンバに典型的に必要とされる比較的厚いプロセスウィンドウの必要性を排除する。これは、パルスレーザー照射とプロセスウィンドウとの間の相互作用(特に、レーザー照射の吸収および散乱)が低減され、それによって干渉効果も低減されるという追加の利点を有する。
【0017】
好ましい実施形態によれば、処理チャンバは、第2の側面に配置され、処理チャンバを開状態から閉状態に移行するように構成された閉鎖フラップを備えることもできる。閉鎖フラップは、例えばヒンジを介して処理チャンバに接続することができる。具体的には、閉鎖フラップがチャンバの第2の側面が開状態または閉状態に容易かつ柔軟に移行され得るように、チャンバ壁に旋回可能に接続され得る。したがって、本発明による処理チャンバは、特定の用途への柔軟な適応を可能にする。このようにして、処理チャンバは、小さいワークピースおよび大きいワークピースに適している。代替的に、例えば、閉鎖フラップは、スライド機構によって、開位置と閉位置との間で並進移動できるようにしてもよい。閉鎖フラップはまた、処理チャンバの内部を密封するように機能するシール要素を有していてもよい。シール要素は、例えばOリングとして設計することができる。さらに、閉鎖フラップは円形ディスクの形態であり、シール要素はOリングの形態であり、Oリングは、閉鎖フラップの表面上の中心に固定されてもよい。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、処理チャンバの第2の側面が閉鎖設計であってもよい。チャンバの閉鎖された実施形態は、小さなワークピースが処理されるときに有利であり得る。閉鎖された処理チャンバでは、ワークピースを処理チャンバ床に容易に固定することができる。その場合、追加のホルダは必ずしも必要ではない。この場合、集束されたレーザー光の相対移動は、レーザースキャナを用いてビームを偏向させることによって行われてもよい。加えて、閉鎖された処理チャンバの使用は、チャンバから流出する液体の量を処理チャンバの閉鎖された実施形態においてより容易に制御することができるので、水の消費を低減することができる。
【0019】
本発明のさらなる実施形態によれば、ワークピース上のレーザー照射の位置を調整するための位置決めユニットは、レーザー照射を偏向させるためのレーザースキャナおよび/またはワークピースを位置決めするための位置決めテーブルを備え、位置決めテーブルはレーザー光軸に対して半径方向に延在する平面内に、さらにレーザー光軸に対して軸方向に延在する方向にもワークピースを位置決めするように特に構成されてもよい。位置決めテーブルはワークピースを水平面内に、また鉛直方向内に位置決めするように構成することができる。レーザースキャナを使用する利点は、集束されたレーザー光を非常に高速に偏向できるため、その結果非常に高速な処理速度を可能にすることである。位置決めテーブルを使用する利点は、レーザー光軸に対して軸方向である方向にワークピースを位置決めすることも可能にすることである。これにより、例えば、ワークピース上のフォーカスポイントまたはビームウェストを調整することが可能になる。これはまた、ワークピース上の有効ビーム直径を調整し、ワークピース上の放射束密度が変更されることを可能にする。
【0020】
本発明のさらなる実施形態によれば、集束ユニットは、集光レンズ、顕微鏡の対物レンズ、および/または凹面鏡を備えていてもよい。集束ユニットの焦点距離は、レーザー光を所望のビーム直径に集束させるように選択することができる。さらに、集束ユニットは、加工対象のワークピース表面が集束ユニットの焦点に位置するように位置決めされ得る。
【0021】
また、ガス供給装置および/またはガス排出装置が設けられていてもよい。このガス供給装置によれば、処理チャンバ内に液体が充填される前または後に、ワークピースまたは加工対象のワークピース表面をガスで洗浄することができる。したがって、有利な方法では、チャンバが液体で満たされる前、または処理後にサンプルが乾燥する前に、それぞれワークピース表面上に存在する粒子を除去することができる。
【0022】
さらに、パルスレーザー照射を生成するためのレーザー光源は、10fs~300ps、好ましくは100fs~200psのパルス持続時間を有するパルスレーザー照射を生成するように構成されてもよい。
【0023】
本発明の一実施例によれば、0.2~300Wのレーザーパワー、10kHz~80MHzの繰り返し率、258nm、266nm、344nm、355nm、515nm、532nm、1030nm、または1,064nmの波長、0.5mm/s~20000mm/sの書き込み速度が使用される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、空間光変調器または回折光学素子を設けることもでき、空間光変調器または回折光学素子は、ワークピースの平行レーザー加工のための複数のレーザー光を提供するように構成される。空間光変調器は、反射型または半透明の空間光変調器を使用することができる。空間光変調器または回折光学素子は、それぞれ、レーザー光源と処理チャンバとの間に配置される。複数のレーザー光を提供することによって、より速い処理速度が可能になることが有利に達成される。
【0025】
さらに、本発明のさらなる実施形態によれば、処理チャンバの内部を記録するように構成されたカメラシステムが提供されてもよい。ここで、カメラは、プロセスウィンドウを介して記録を行うようにしてもよい。これにより、レーザー光の現在の書き込み方向を検出することができる。これは、例えば、表面上のレーザー光フォーカスを検出することによって、または粒子雲が生成されるワークピースの表面上の領域を検出することによって行うことができる。処理から生じる粒子雲は通常、肉眼で見ることができ、カメラによって確実に検出することができる。または、カメラシステムが、処理チャンバの内部の周囲の2つの異なる位置に配置された2つのカメラを備えることも提供され得る。例えば、2つのカメラが2つの方向での記録を可能にし、記録方向が互いに直交するようにすることができる。カメラは、一方向におけるレーザー光の位置を独立して検出することができる。カメラ記録を評価することによって、書き込み速度を決定することができる。そして、検出された書き込み方向に応じて、流れ方向を調整することができる。特に、流れ方向は、書き込み方向に対して直角に調整することができる。
【0026】
処理チャンバは、1~6バール、特に3~4バールの動作圧力を提供するように構成されていてもよい。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明は液体中でレーザー加工するためのワークピースを受け入れるための処理チャンバを提案し、前記処理チャンバは、
レーザー照射を通過させるための透明なプロセスウィンドウを有する第1の側面と、
第1の側面に対向して配置された第2の側面と、
前記処理チャンバの内部を囲むチャンバ壁と、
処理チャンバの内部で流れを生成するための流れ発生器であって、第1の流れ軸に沿って第1の流れを生成するための第1の流れ発生器ユニットと、第2の流れ軸に沿って第2の流れを生成するための第2の流れ発生器ユニットとを備える流れ発生器と、を備える。
【0028】
冒頭に記載した目的はまた、本発明が、液体中のワークピースの材料アブレーションレーザー加工、特に液体中のワークピースのレーザー切断のためのシステムを提案することによっても達成され、
前記システムは、
パルスレーザー照射を発生させるためのレーザー光源と、
レーザー照射をワークピース上に集束させる集束ユニットと、
ワークピースを受け入れるための処理チャンバと、
ワークピース上のレーザー照射の位置を調整するための位置決めユニットと、を含み、
前記処理チャンバは、
レーザー照射を通過させるための透明なプロセスウィンドウを有する第1の側面と、
第1の側面に対向して配置された第2の側面であって、第2の側面は開放設計である第2の側面と、
前記処理チャンバの内部を囲むチャンバ壁と、を備える。
【0029】
さらに、上述の目的は、液体中のワークピースの材料アブレーションレーザー加工のための、特に液体中のワークピースのレーザー切断のための提案された方法で達成され、この方法は、
処理チャンバの内部におけるワークピースを提供することと、
処理チャンバの内部を液体で満たすことと、
集束ユニットを使用してワークピースの表面上にパルスレーザー照射を集束させることと、
位置決めユニットを使用して、ワークピース表面上に集束されたレーザー照射の相対移動を生成することと、
流れ発生器を使用して処理チャンバの内部に液流を生成することと、
液流の流れ方向を、ワークピースの表面上の集束されたレーザー照射の相対的な移動方向に応じて調整することと、を含む。
【0030】
好ましくは、本方法は、ワークピースが処理された後にチャンバがガスで満たされることをさらに提供することができる。
【0031】
本発明による方法は、マイクロおよびナノ粒子、ならびに加工動作中に生成されるキャビテーション気泡および持続性気泡の効率的な除去を可能にする。上述の粒子および気泡は、処理チャンバの内部から効率的に除去され、その結果、レーザー照射と粒子および気泡との相互作用から生じる干渉効果が著しく低減される。加えて、本発明による方法は、レーザー加工中のワークピースのより効率的な冷却を可能にする。
【0032】
本発明による方法の一実施形態によれば、流れ方向を調整することは、ワークピース表面上のレーザー照射の相対的な移動方向に対して直角に配向された流れ方向を提供することを含んでもよい。実験テストでは、レーザー照射の相対的な移動方向に対して直交する流れ方向がレーザー加工の品質の向上につながることが示されている。
【0033】
本発明による方法のさらなる実施形態によれば、生成された流れの強度が、プロセスパラメータの関数としてさらに調整されることがさらに提供されてもよい。ここで、流れの強度は比較的高いレーザーパワーが設定されたときに増加させることができ、流れの強度は、比較的低いレーザーパワーが設定されたときに減少させることができる。同様に、例えば、書き込み速度が比較的速い場合には、流れの強度を低減できるようにすることができる。代替的にまたは追加的に、比較的低い書き込み方向が設定されたときに流れ強度が低減されるようにしてもよい。したがって、生成される流れは、予想される粒子の量に応じて最適化することができる。
【0034】
本発明による方法のさらなる実施形態によれば、ワークピースの表面に沿った集束されたレーザー照射の相対移動は、0.6~1.4mm/s、特に0.8~1.2mm/s、特に好ましくは1mm/sの速度で行われる。実験テストでは、書き込み速度の関数として切削品質を調べた。これは、特に良好な切削端が特定の書き込み速度において達成され得ることを示した。切削の品質は例えば、アスペクト比、すなわち切削深さと切削幅との比によって評価することができる。アスペクト比が高ければ高いほど、切断品質をより良好に評価することができる。約0.1mm/s~10m/sの書き込み速度を評価した実験では、最高アスペクト比は約1mm/sの書き込み速度で達成できることが示された。4m/sの書き込み速度では4~6のアスペクト比しか達成できなかったが、1mm/sの値まで書き込み速度を低減すると15までのアスペクト比を達成できた。
【0035】
実施された実験では、1mm/sの書き込み速度が使用されたとき、特に高いアスペクト比が達成され得る。実験は、350fsのレーザーパルス持続時間、200kHzの繰り返し率、1,030nmの波長、360mWの平均出力、70mmの焦点距離を有するFθ対物レンズ、10μmの焦点におけるビーム直径、および1.5m/sの流速を使用した。
【0036】
本発明による方法のさらなる実施形態によれば、流速が1~10m/s、特に4~6m/s、特に好ましくは5m/sであってもよい。さらなる代替実施形態によれば、流速が2~3m/sであってもよい。
【0037】
さらに、本発明による方法のさらなる例示的な実施形態によれば、
カメラシステムを用いてレーザー照射の相対移動方向を検出することと、
レーザー照射の相対移動の検出された方向に直交する流れ方向を調整することと、を提供することができる。
【0038】
さらに、カメラシステムから画像信号を受信し、これらの画像信号を評価する制御部が提供されてもよい。ワークピース表面上のレーザー光の位置は、個々の画像信号から決定することができる。したがって、画像信号を評価することによって、レーザー照射の移動方向を決定することができる。レーザー光の決定された相対移動方向に応じて、流れ方向を調整することができる。例えば、制御部は入力でイメージ信号を受信し、出力で個々の流れ発生器ユニットを制御するための制御信号を提供するマイクロコントローラとして設計することができる。さらに、マイクロコントローラは書き込みプロセスのためのプロセスパラメータを提供し、それによって書き込みプロセスを制御するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0040】
図1】従来技術による液体中でワークピースを加工するためのレーザー加工システムを示す。
図2】本発明に係るレーザー加工システムの一実施形態を示す。
図3】本実施形態に係る処理チャンバの平面図を示す図である。
図4】本発明に係る処理チャンバの一実施形態の側面図を示す。
図5図4に示す処理チャンバの平面図を第1の動作形態で示す。
図6図4に示す処理チャンバの平面図を第2の動作形態で示す。
図7】本発明に係る処理チャンバの異なる実施形態を示す。
図8】本発明に係る方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、液体中のワークピース22のレーザー加工のためのシステム10を示す。システム10は、パルスレーザー照射14を生成するように特に構成されたレーザー光源12を備える。生成されたレーザー照射14は、位置決めユニット16によって偏向される。図1に示す例示的な実施形態では、位置決めユニット16がレーザースキャナとして設計され、集束レーザー光14をワークピースの表面上に位置決めするように設けられる。偏向されたレーザー照射14は、集束ユニット18に向けられる。図示の例示的な実施形態では、集束ユニット18が集光レンズとして設計される。あるいは、集束ユニット18は顕微鏡の対物レンズまたは凹面鏡として設計することもできる。集束ユニット18は、レーザー照射14を処理チャンバ20内に集束させる。処理チャンバ20は、ワークピース22を受け入れるように構成された内部20aを備える。また、処理チャンバ20の内部20aは、液体で満たされている。液体は、水または他の液体であり得る。特に、この目的のために水を使用することができる。レーザー照射14は、集束ユニット18によってワークピース22の表面22a上に集束される。結果として、ワークピース表面22aは、1,000℃を超える温度まで加熱され、ワークピース材料の一部を蒸発させる。蒸発した材料は、液体によって冷却され、液体中の粒子雲31として見えるナノ粒子およびマイクロ粒子を形成する。しかしながら、前記粒子雲31は、集束されたレーザー照射14の伝播に影響を及ぼす。レーザー照射14と粒子雲31との望ましくない相互作用は、通常、レーザー切断の品質を低下させる。
【0042】
処理チャンバ20は、通常、第1の側面24と、第1の側面24の反対側に配置された第2の側面26とを備えるように構成される。プロセスウィンドウ28はレーザー照射14を処理チャンバ20の内部に向けることができるように、処理チャンバ20の第1の側面24上に凹んでいる。従来技術によれば、処理チャンバ20の第2の側面26は、処理チャンバ20の内部20aから液体が漏れ出ることができないように閉鎖設計されている。処理チャンバ20の内部20aは、チャンバ壁30によって囲まれている。
【0043】
液体中のワークピース22のレーザー加工のための従来技術において知られているシステム10の欠点は、ワークピース22の加工から生じる粒子雲31がレーザー加工動作に悪影響を及ぼし得るという事実に特に見られる。液体中でレーザー加工するための既知のシステム10の別の欠点は、加工可能なワークピース22のサイズが処理チャンバ20の寸法によって制限されることである。したがって、実際には、より大きなワークピースまたはより大きな表面をそれぞれ処理することはしばしば不可能である。したがって、異なるサイズのワークピース22を処理する場合、異なるサイズの処理チャンバを設ける必要があることが多いが、これはワークピース22を処理する労力およびコストを増大させる。
【0044】
図2は、本発明による液体中のワークピース22のレーザー加工のためのシステムの例示的な実施形態を示す。図1に記載されたシステム10と同様に、本発明によるレーザー加工システム10はまた、位置決めユニット16を介して集束ユニット18に向けられるパルスレーザー照射14を生成するためのレーザー光源12を備え、集束ユニット18は、レーザー照射14を処理チャンバ20内に集束させる。ワークピース22は処理チャンバ20の内部20aに配置され、集束ユニット18はレーザー照射14をワークピース22の表面22a上に集束させるように選択され、構成される。図2に示すシステム10では、処理チャンバ20が第1の側面24を有し、処理チャンバ20の第1の側面24にプロセスウィンドウ28が配置され、これにより、レーザー照射14が処理チャンバ20の内部20aに入ることができる。ここに示される例示的な実施形態では、図10に記載されるシステム10とは異なり、処理チャンバ20の第2の側面26が開放設計である。処理チャンバ20の第2の側面26の閉鎖設計と比較して、これは、チャンバ20の開放設計のために、任意のサイズのワークピースを処理することができるという利点を有する。処理チャンバ20の開放設計は、ワークピース22またはワークピース22が位置決めされる位置決めテーブル40が処理チャンバ20の底部を形成し、チャンバ20の内部20aを閉鎖することを可能にする。その結果、図2に示す処理チャンバ20は、有利には処理チャンバ20の内部20aよりも著しく大きいワークピース22の処理を可能にする。
【0045】
図2に示される本発明によるシステム10の実施形態では、チャンバ壁30が処理チャンバ20の内部20aを取り囲む。処理チャンバ20はまた、流れ発生器ユニット32を備える。ここで、流れ発生器ユニット32は、加圧ポンプ(図2には図示せず)と、液体入口チャネル34とを備える。液体入口チャネル34は、チャンバ壁30内に形成される。さらに、流れ発生器ユニットは、吸引ポンプ(図2にも示されている)と、液体入口チャネル34に対向するチャンバ20の内部20aの側面に配置された液体出口チャネル36とを備える。流れ発生器ユニット32は、流れ軸に沿って流れを生成するように構成される。この例示的な実施形態では、流れ軸が図2に示されるx軸に対応する。生成された流れは、処理チャンバ20の内部20aからワークピース表面22aの処理中に形成された粒子雲31を効果的に除去することができる。これは、粒子雲31によって引き起こされるレーザー加工中の干渉効果を回避するか、または少なくとも大幅に低減することを可能にする。流れ発生器ユニット32は、粒子雲31が形成されるときはいつでも、処理チャンバ20内に液体を導入するように構成することができる。加圧ポンプおよび吸引ポンプを用いることにより、処理チャンバ20の内部20aに導入された液体を処理チャンバ20の反対側から同時に排出することができ、処理チャンバ20の内部20aのより均一な流れを調整することができる。あるいは、流れ発生器ユニットが加圧ポンプのみ、または吸引ポンプのみを備えるようにしてもよい。
【0046】
図2から分かるように、本明細書に示す実施形態は、処理チャンバ20の内部20aにガスを導入するように構成されたガス入口38も含む。特に、ガスは、高圧で内部20aに導入することができる。その結果、レーザー加工動作が開始する前および/または加工動作が完了した後に、ワークピース22の表面22aから粒子を除去することができる。これは、いくつかのプロセスステップが1つの同じチャンバ内で実行されることを可能にし、全体的な加工動作をより効率的にする。加えて、ガス入口38は有利には処理が完了した後に、処理されたワークピースを乾燥させるために使用され得る。さらに、1つ以上のガス出口が、処理チャンバ20内に設けられてもよい。
【0047】
図2に示す例示的な実施形態では、位置決めユニット16は、x/y平面内でワークピース22の表面22a上にレーザー光を位置決めするように構成されたレーザースキャナとして設計されているが、特にz軸に沿ってワークピース22を位置決めするように構成された位置決めテーブル40が代替的にまたは追加的に設けられてもよい。これにより、一方ではレーザー光14の焦点位置を調整することができ、他方では処理チャンバ20と位置決めテーブル40との間の距離を画定することができる。したがって、第2の側面26において処理チャンバ20から液体を漏出することができるか、またどれだけの量の液体を漏出することができるかを調整することができる。例えば、レーザー加工動作中に比較的多量の粒子が形成されることが予想される場合、例えば、処理チャンバ20と位置決めテーブル40との間の間隔が増大され、流れ発生器ユニット32が比較的高圧で処理チャンバ20の内部20aに液体を導入し、その結果、大量の液体が処理チャンバ20に導入され、また、適時に排出されるようにしてもよい。このようにして、内部20aに形成された粒子雲31の特に効率的な除去が可能になる。
【0048】
図3は、図2に示される処理チャンバ20の平面図を示す。この図に見られるように、処理チャンバ20の図示の実施形態には複数の流れ発生器ユニットが設けられ、そのうちの液体入口チャネル34および液体出口チャネル36がこの図にそれぞれ示されている。本明細書に示される処理チャンバ20の実施形態には合計6つの流れ発生器ユニットが設けられており、6つの流れ軸に沿って処理チャンバ内に流れを生成するように構成されている。流れ軸は、互いに60°の角度を形成する。図2に示されるように、液体入口チャネル34および液体出口チャネル36はそれぞれ、環状チャンバ壁30に形成され、処理チャンバ20の内部20aの周囲に円形に配置される。6つの異なる方向における流れを調整できることにより、書き込み方向に応じて液体の流れ方向を調整することができ、これにより、粒子雲31および任意のキャビテーション気泡を特に効率的に除去することができる。
【0049】
図4は、本発明による処理チャンバ20のさらなる例示的な実施形態を示す。ここに示す例示的な実施形態では、集束ユニット18がz軸に沿って配置することができる集光レンズとして設計されている。このようにして、レーザー照射14の焦点位置を位置決めすることが可能である。これにより、ビーム直径をワークピース表面22a上で調整することができる。加えて、図4に示される例示的な実施形態では、処理チャンバ20がz軸に沿って配置されるように適合されることが提供される。これにより、処理チャンバ20と位置決めテーブル40との間の位置を調整することができ、このようにして、処理チャンバ20の第2の側面26からどれだけの量の液体を漏出することができるかを調整することができる。
【0050】
図5は、図4に示した処理チャンバ20の平面図を第1の動作形態で示している。ここに示すレーザー加工動作では、レーザー照射14の焦点が正のx軸に沿って移動する。処理チャンバ20の内部20aに生成された粒子の効果的な除去を確実にするために、流れ発生器ユニットは、正のy軸の向きに液流を生成するように動作される。この例示的な実施形態に示されるように、y軸方向の流れを生成するために、流れ発生器は、合計3つのポンプおよび3つの液体入口チャネル34によって提供される複数の液流を生成することができる。処理チャンバ20の内部20aの液体入口チャネル34に対向する側には3つの液体出口チャネル36が設けられており、これらは吸引ポンプによって処理チャンバ20の内部20aから液体を排出する。このようにして、チャンバ20の内部20aに液流が生成され、この液流は、書き込み方向に対して直角に配向される。図5に示す処理チャンバ20は異なる方向の液流を簡単な方法で発生させることができ、その結果、それぞれの処理方向または書き込み方向に最適な液流方向を調整することができることを示している。
【0051】
図6は、図4に示される処理チャンバ20のさらなる平面図を示す。ここで、描画モードでは、集束レーザー光14がワークピースの表面に沿って斜めに移動することが分かる。この書き込みモードでは、流れ方向が3つの加圧ポンプを駆動することによって調整され、その結果、液体は3つの液体入口チャネル34を通って、書き込み方向に対して実質的に直角に配向された流れ方向に、処理チャンバ20の内部20aに流入する。加えて、3つの吸引ポンプが作動され、その結果、液体は、処理チャンバ20の内部20aから、アクティブな液体入口チャネル34の反対側にある3つの液体出口チャネル36に排出される。このようにして、均一な流れが処理チャンバ20の内部20aに生成され、この流れはレーザー照射の書き込み方向に対して直角に配向される。実験テストに示されるように、処理品質、特に切削品質は、液体の流れ方向が書き込み方向に対して直角に配向される処理チャンバ20の内部20aにおいて調整される場合、改善され得る。
【0052】
すでに上述したように、本実施形態によれば、流れ発生器は第1の方向に流れを生成し、第2の方向に流れを生成するように構成された2つの流れ発生器ユニットのみを備えることもできる。例えば、処理チャンバ20は、正のx軸の方向に液流を生成するように構成された第1の流れ発生器ユニットと、正のy軸の方向に液流を生成するように構成された第2の流れ発生器ユニットとを含むことができる。このようにして、処理チャンバ20の内部20aにおいて、それぞれ1つの流れを調整することができ、この流れは、現在の書き込み方向に対して直交するか、または可能な限り直交する。したがって、レーザー照射がx軸の方向に進むと、y軸の方向に液体の流れを発生させることができる。レーザー照射がy軸の方向に進むと、x軸の方向に流れを発生させることができる。一方、レーザー照射が、x軸に対して45°未満の角度を形成する軸に沿って移動される場合、y軸の方向に流れを生成することができる。一方、レーザー照射が、y軸に対して45°を超える角度を形成する軸に沿って移動される場合、x軸の方向に流れを生成することができる。このようにして、書き込み方向に対して可能な限り直角に配向された流れを常に提供することができる。
【0053】
さらに、図7は、本発明による処理チャンバ20の異なる実施形態を示す。図7(a)では、処理チャンバ20は、比較的大量の液体が処理チャンバ20の第2の側面26から流出できるように調整される。これは、例えば、z軸に沿って処理チャンバ20の位置を調整することによって、またはz軸に沿って位置決めテーブル40を調整することによって実現することができる。第2の側面26上で開放設計の処理チャンバ20と位置決めテーブル40との間の相対距離によって、第2の側面26においてどれだけの量の液体を漏出することができるかが決定する。すでに上述したように、特に大量の液体が処理チャンバ20を通って流れる場合、処理チャンバ20と位置決めテーブル40との間の比較的大きな距離が有利となり得る。これは、比較的多量の粒子がレーザー加工中に生成されることが予想される場合に特に当てはまる。
【0054】
図7(b)は、処理チャンバ20と位置決めテーブル40との間の距離が、処理チャンバ20の第2の側面26から比較的少ない量の液体が漏出することを可能にするように調整される、別の例示的な実施形態を示す。これは、処理チャンバ20の内部20a内で発生した粒子および任意のキャビテーション気泡を除去するのに、低流量でも十分であると予想される場合に特に有利であり得る。例を図に示す。7(a)および(b)は、第2の側面26が開放設計である処理チャンバ20が、1つの同じ処理チャンバ20を使用して任意のサイズのワークピースを処理できるという従来技術を超える利点を提供することを示す。処理チャンバ20は比較的小さく設計されているが、この処理チャンバ20を使用して、数十cm、さらには1mより大きい寸法を有するワークピースを処理することができる。
【0055】
図7(c)は、本発明による処理チャンバ20のさらなる例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、シール要素42もまた、液体が処理チャンバ20の第2の側面26から漏出するのを防止するために設けられる。これにより、レーザー加工時の液体消費量を低く抑えることができる。加えて、密封された処理チャンバ20は、チャンバ20からどれだけの量の液体が排出されるかについての簡素化された制御を可能にする。
【0056】
図7(d)では処理チャンバ20がその第2の側面26上に追加のカバー要素44を有し、この実施形態ではカバープレートとして設計される。カバー要素44は加工されるべきワークピースの領域のみが露出されるように、ワークピース22をカバーする役割を果たす。一方では、これはワークピース22が加工作業中にレーザー照射14に実際に曝露される領域でのみ、液と接するという長所を有する。これは、使用される液体との望ましくない相互作用を示すワークピースを使用する場合に特に有利である。カバー要素44を使用する別の利点は、図7(c)に示される実施形態よりも必要な液体が少なくて済むことである。
【0057】
最後に、図8は、液体中のワークピースのレーザー加工のための、本発明による方法100の例示的な実施形態を示す。ここに示される方法100では、第1のステップ110において、ワークピースが処理チャンバ20の内部に提供される。例えば、処理チャンバ20は、図7に示される例示的な実施形態に従って形成されてもよい。第2のステップ120では、処理チャンバの内部が液体で満たされる。液体は、水または他の液体であり得る。次のステップ130では、パルスレーザー照射が集束ユニットを使用して、ワークピースの表面上に集束される。次に、ステップ140において、集束レーザー光の相対移動がワークピースの表面上に生成され、この目的のために位置決めユニットが使用される。位置決めユニットはレーザー光の絶対位置を変更するように、またはワークピースの絶対位置を変更するように構成することができる。別の工程150では、処理チャンバの内部の液流が生成され、その際、流れ発生器が使用される。特に、流れ発生器は第1の流れ発生器ユニットおよび第2の流れ発生器ユニットを含むことができ、各々は、第1の方向および第2の方向に流れを生成するように構成される。最後に、次の工程160において、液流の流れ方向は、ワークピースの表面上の集束されたレーザー照射の相対移動方向に応じて調整される。特に、ワークピース表面上のレーザー照射の相対移動方向に直交する流れ方向を調整することができる。これにより、チャンバ内で発生した粒子やキャビテーション気泡を効率よく除去することができ、レーザー加工時の干渉効果を大幅に低減し、切断品質を向上させることができる。
【0058】
個々の工程は理解を深めるために固定された順序で上述されているが、個々のステップは異なる順序で実行することもできることが当業者には明らかである。例えば、処理チャンバの内部の液流を最初に生成することができ、その後にのみパルスレーザー照射をワークピースの表面に集束させることができる。
【0059】
本発明はレーザー切断プロセスに関連して特に説明されてきたが、本発明が他のレーザー加工動作にも使用できることは当業者には明らかである。特に、本発明は、パルスレーザー照射を用いた液体中の表面のレーザーパターニングにも適用される。
【0060】
本発明はさらに、以下の態様を含む。
【0061】
1. パルスレーザー照射を発生させるためのレーザー光源と、
レーザー照射をワークピース上に集束させる集束ユニットと、
ワークピースを受け入れるための処理チャンバと、
ワークピース上のレーザー照射の位置を調整するための位置決めユニットと、を含み、
前記処理チャンバは、
レーザー照射を通過させるための透明なプロセスウィンドウを有する第1の側面と、
第1の側面に対向して配置された第2の側面と、
前記処理チャンバの内部を囲むチャンバ壁と、
処理チャンバの内部で流れを生成するための流れ発生器と、を含み、前記流れ発生器は、第1の流れ軸に沿って第1の流れを生成するための第1の流れ発生器ユニットと、第2の流れ軸に沿って第2の流れを生成するための第2の流れ発生器ユニットとを備える、液体中のワークピースをレーザー加工するためのシステム。
【0062】
2. 第1の流れ軸および第2の流れ軸が共に、80°~100°、好ましくは85°~95°、特に好ましくは90°の角度を形成することを特徴とする、態様1に記載のシステム。
【0063】
3. 前記第1の流れ発生器ユニットまたは前記第2の流れ発生器ユニットは、吸引ポンプおよび/または加圧ポンプを備えることを特徴とする、態様1または2に記載のシステム。
【0064】
4. 前記第1の流れ発生器ユニットまたは前記第2の流れ発生器ユニットは、吸引ポンプおよび加圧ポンプを備え、前記吸引ポンプは前記加圧ポンプに対向する前記処理チャンバの内部の側面に配置され、特に、前記加圧ポンプによって前記液体が導入されるのと同じ速度で前記処理チャンバの内部から液体を排出するように構成されることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0065】
5. 前記処理チャンバの前記第2の側面は、開放設計であることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0066】
6. 前記処理チャンバは、前記第2の側面に配置され、前記処理チャンバを開状態から閉状態に移行するように構成された閉鎖フラップを備えることを特徴とする、態様5に記載のシステム。
【0067】
7. 前記処理チャンバの前記第2の側面は、閉鎖設計であることを特徴とする、態様1~4のいずれか1つに記載のシステム。
【0068】
8. 前記ワークピース上の前記レーザー照射の位置を調整するための前記位置決めユニットは、前記レーザー照射を偏向させるためのレーザースキャナおよび/または前記ワークピースを位置決めするための位置決めテーブルを備え、前記位置決めテーブルは特に、水平面内に、さらに鉛直方向内に前記ワークピースを位置決めするように構成されることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載の装置。
【0069】
9. 前記集束ユニットは、集光レンズ、顕微鏡の対物レンズ、および/または凹面鏡を備えることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0070】
10. 前記処理チャンバは、ガス供給装置および/またはガス排出装置を備えることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0071】
11. パルスレーザー照射を生成するためのレーザー光源は、10fs~300ps、好ましくは100fs~200psのパルス持続時間を有するパルスレーザー照射を生成するように構成されることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0072】
12. 空間光変調器または回折光学素子によって特徴付けられ、前記空間光変調器または回折光学素子は、ワークピースの平行レーザー加工のための複数のレーザー光を提供するように構成されることを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0073】
13. 処理チャンバの内部の記録を行うように構成されたカメラシステムを特徴とする、前記態様のいずれか1つに記載のシステム。
【0074】
14. 処理チャンバの内部にワークピースを提供することと、
処理チャンバの内部を液体で満たすことと、
集束ユニットを使用して、ワークピースの表面上にパルスレーザー照射を集束し、
位置決めユニットを使用して、ワークピース表面上に集束されたレーザー照射の相対移動を生成することと、
流れ発生器を使用して処理チャンバの内部に液流を生成することと、
液流の流れ方向を、ワークピースの表面上の集束されたレーザー照射の相対的な移動方向に応じて調整することと、
を含む液体中でワークピースをレーザー加工するための方法。
【0075】
15. 前記流れ方向を調整することは、前記ワークピース表面上の前記レーザー照射の相対的な移動方向に対して直角に配向された流れ方向を調整することを含むことを特徴とする、態様14に記載の方法。
【0076】
16. ワークピースの表面に沿った集束されたレーザー照射の相対移動は、0.6~1.4mm/s、特に0.8~1.2mm/s、特に好ましくは1mm/sの速度で行われることを特徴とする、態様14または15に記載の方法。
【0077】
17. 流速が1~10m/s、特に4~6m/s、特に好ましくは5m/sであることを特徴とする、態様14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
18. カメラシステムを用いてレーザー照射の相対移動方向を検出し、
レーザー照射の検出された相対的な移動方向に直交する流れ方向を調整することを特徴とする、態様14~17のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0079】
10 レーザー加工システム
12 レーザー光源
14 レーザー照射
16 位置決めユニット
18 集束ユニット
20 処理チャンバ
20a 処理チャンバの内部
22 ワーク
22a ワーク表面
24 処理チャンバの第1の側面
26 処理チャンバの第2の側面
28 プロセスウィンドウ
30 チャンバ壁
31 粒子雲
32 流れ発生器ユニット
34 液体入口チャネル
36 液体出口チャネル
38 ガス入口
40 位置決めテーブル
42 シール要素
44 カバー要素
100 液体中のワークピースのレーザー加工のための本発明による方法
110 第1の工程
120 第2の工程
130 第3の工程
140 第4の工程
150 第5の工程
160 第6の工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】