IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クイル ピュージェット サウンド バイオセラピューティクス コーポレーションの特許一覧

特表2024-509510抗PD1抗体と抗CTLA4抗体との組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】抗PD1抗体と抗CTLA4抗体との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240226BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240226BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240226BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240226BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240226BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61K48/00
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549911
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022017093
(87)【国際公開番号】W WO2022178319
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/151,030
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519155088
【氏名又は名称】クイル ピュージェット サウンド バイオセラピューティクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジー
(72)【発明者】
【氏名】ファンスロウ,ウィリアム シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】トレイバー,デイビッド エル.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA55
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書では、抗hCTLA4抗体および抗hPD1抗体を含む抗体の混合物、そのような混合物をコードするポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含む宿主細胞、このような混合物の製造方法および使用方法、ならびにこのような抗体の混合物、または混合物をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含む医薬組成物が提供される。
【選択図】図20A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含む抗ヒトプログラム死1(抗hPD1)抗体であって、ここで、(1)前記抗hPD1抗体の前記HCは、配列番号1のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ、2)前記抗hPD1抗体の前記LCは、配列番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされる、抗ヒトプログラム死1(抗hPD1)抗体と;
(b)HCおよびLCを含む抗ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(抗hCTLA4)抗体であって、(1)前記抗hCTLA4抗体の前記HCは、配列番号13のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ、(2)前記抗hCTLA4抗体の前記LCは、配列番号17のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされる、抗ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(抗hCTLA4)抗体と、を含む、抗体の混合物であって、
ここで、前記混合物中の前記抗hCTLA4抗体の量と前記混合物中の前記抗hPD1抗体の量との重量対重量(w/w)比(抗hCTLA4:抗hPD1比)は、1:1~1:4の範囲であり、
ここで、前記抗hPD1抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において220~380時間のin vivo半減期(t1/2)を有し、かつ/またはこれまでに前記抗hPD1抗体を投与されていないヒトに投与した場合、前記抗hPD1抗体は、135~300時間のin vivo t1/2を有し、
ここで、前記抗hCTLA4抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において40~150時間のin vivo t1/2を有し、かつ/またはこれまでに前記抗hCTLA4抗体を投与されていないヒトに投与した場合に、前記抗hCTLA4抗体は、90~210時間のin vivo t1/2を有する、混合物。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列が、配列番号10のアミノ酸配列もコードし、
配列番号5のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列が、配列番号12のアミノ酸配列もコードし、
配列番号13のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列が、配列番号22のアミノ酸配列もコードし、
配列番号17のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列が、配列番号24のアミノ酸配列もコードする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1~1:3の範囲である、請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.2~1:2.5の範囲である、請求項3に記載の混合物。
【請求項5】
前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.5~1:2.5の範囲である、請求項4に記載の混合物。
【請求項6】
前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.7~1:2.3の範囲である、請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
前記抗hPD1抗体の前記HCおよび前記LCの前記アミノ酸配列は、それぞれ配列番号2および6の核酸配列によってコードされ;
前記抗hCTLA4抗体の前記HCおよび前記LCの前記アミノ酸配列は、それぞれ配列番号14および18の核酸配列によってコードされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
前記抗hPD1抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において250~350時間のin vivo t1/2を有し、かつ/またはこれまでに前記抗hPD1抗体を投与されていないヒトに投与した場合、前記抗hPD1抗体は、140~250時間のin vivo t1/2を有し、
前記抗hCTLA4抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において70~130時間のin vivo t1/2を有し、かつ/またはこれまでに前記抗hCTLA4抗体を投与されていないヒトに投与した場合に、前記抗hCTLA4抗体は、90~140時間のin vivo t1/2を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記混合物を少なくとも10名のヒト患者の群に、5mg/kg以下の用量で投与した場合、前記患者の15%、14%、13%、12%、または11%以下が、グレード3またはグレード4の有害事象(AE)を経験する、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項10】
前記混合物を少なくとも10名のヒト患者の群に、5mg/kg以下の用量で投与した場合、前記患者の10%、9%、または8%以下が、グレード3またはグレード4のAEを経験する、請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
前記混合物を少なくとも10名のヒト患者の群に、5mg/kg以下の用量で投与した場合、前記患者の7%以下、6%、または5%が、グレード3またはグレード4のAEを経験する、請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の混合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物の前記pHが、pH4.5~pH5.5である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物中の総タンパク質濃度が、20mg/mL~30mg/mLである、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、250~380mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の混合物をコードする1つ以上のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチド(複数可)が、配列番号2、6、14、および18の前記核酸配列を含む、請求項16に記載のポリヌクレオチド(複数可)。
【請求項18】
請求項16または17に記載のポリヌクレオチド(複数可)を含む1つ以上のベクター。
【請求項19】
ウイルスベクター(複数可)である、請求項18に記載のベクター(複数可)。
【請求項20】
腫瘍溶解性ウイルスベクター(複数可)である、請求項19に記載のベクター(複数可)。
【請求項21】
レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、改変ワクシナウイルスアンカラ(MVA)、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、レオウイルス(複数可)、またはポックスウイルスベクターである、請求項19または20に記載のベクター(複数可)。
【請求項22】
請求項16もしくは17に記載のポリヌクレオチド(複数可)および/または請求項18に記載のベクター(複数可)を含む宿主細胞であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の混合物を産生することができる宿主細胞。
【請求項23】
前記宿主細胞により産生される前記混合物の前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.2~1:3の範囲である、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記宿主細胞により産生される前記混合物の前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.5~1:2.5の範囲である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記宿主細胞により産生される前記混合物の前記抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.7~1:2.3の範囲である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
CHO細胞またはマウス骨髄腫細胞である、請求項22~25のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項27】
以下のステップ:
請求項22~26のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養するステップと;
前記培養上清または前記宿主細胞塊から前記抗体の前記混合物を回収するステップと;を含む、抗体の混合物を作製するための方法。
【請求項28】
がん、免疫不全障害、または感染症を有する患者を治療するための方法であって、
(a)ある用量の請求項1~11のいずれか一項に記載の混合物もしくは請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記患者に投与するステップ、または
(b)ある用量の請求項16もしくは17に記載のポリヌクレオチド(複数可)または請求項18~21のいずれか一項に記載のベクター(複数可)を前記患者に投与するステップ、を含む、方法。
【請求項29】
前記用量の前記混合物または前記医薬組成物が、週に約2回、週に1回、または2週、3週、4週、5週、6週、7週もしくは8週に1回投与され、前記混合物または前記医薬組成物の前記用量が、以下のうちの1つ以上によって表される、請求項28(a)に記載の方法:
(1)前記用量が、少なくとも約0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、または8.0mg/kgである;
(2)前記用量が、最大で約9、8、7、6、5、4、または3mg/kgである;
(3)前記用量が、約1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、または8.0mg/kgである;
(4)前記用量が、約200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、または500mgである;
(5)前記用量が、少なくとも約75、100、125、150、200、225、または250mgである;および
(6)前記用量が、最大で約600、500、400、または300mgである。
【請求項30】
前記用量が、少なくとも3mg/kg、かつ5mg/kg以下である、および/または
前記用量が、少なくとも180mgかつ400mg以下であり、
ここで、前記用量は、約3週間ごとに1回投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記用量が、約5mg/kgである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記用量が、300~400mgである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、がんを有し、
前記混合物または前記医薬組成物が、少なくとも10名の患者に投与され、
前記客観的奏効率(ORR)が、少なくとも5、10、15、20、25、30、または35パーセントであり、および/または前記病勢コントロール率(DCR)が、少なくとも25、30、35、40、45、50、55、または60パーセントである、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリヌクレオチド(複数可)または前記ベクター(複数可)の前記用量が、週に約2回、週に1回、または2週、3週、4週、5週、6週、7週、または8週に1回投与され、前記ポリヌクレオチド(複数可)または前記ベクター(複数可)の前記用量は、以下の1つ以上によって表される:請求項28(b)に記載の方法:
(1)前記用量が、患者の体重1kgあたり、少なくとも約5x10コピー(コピー/kg)の前記ポリヌクレオチド(複数可)または前記ベクター(複数可)である;
(2)前記用量が、最大約1015コピー/kgである;
(3)前記用量が、約1010コピー/kg~約1014コピー/kgである;および
(4)前記用量が、約1010、1011、1012、1013、5x1013、1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、または1015コピーである。
【請求項35】
前記混合物、前記医薬組成物、前記ポリヌクレオチド(複数可)、または前記ベクター(複数可)の前記用量が、注入またはボーラス注射などの静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射によって投与される、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、黒色腫、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌を含む肺癌、上咽頭癌、頭頸部の扁平上皮癌、胃癌もしくは胃食道癌、明細胞または非明細胞腎細胞癌、尿路上皮癌、軟部組織もしくは骨肉腫、中皮腫、古典的ホジキンリンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、膀胱癌、メルケル細胞癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、肝細胞癌、卵巣癌、または高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)もしくはDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)の成人および小児固形腫瘍を有する、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、前記混合物、前記医薬組成物、前記ポリヌクレオチド(複数可)、または前記ベクター(複数可)の前記投与前、前記投与後、または前記投与と同時に、化学療法剤または放射線で治療される、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記用量の前記混合物、前記医薬組成物、前記ポリヌクレオチド(複数可)、または前記ベクター(複数可)が、少なくとも10名の患者に投与され、前記用量を投与された前記患者が、放射線または化学療法剤と同時に治療されておらず、前記用量が投与された前記患者の15%以下、14%、13%、12%、または11%が、グレード3またはグレード4AEを経験する、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記用量が投与された前記患者の10%以下、9%または8%が、グレード3またはグレード4AEを経験する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記用量が投与された前記患者の7%以下、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%が、グレード3またはグレード4AEを経験する、請求項39に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、治療用組換え抗体の分野における組成物および方法が記載される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年2月15日に作成されたASCIIコピーは、126861-0003WO01_SL.txtという名称であり、47,915バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体技術は、徐々により成熟し、多くの成功したモノクローナル抗体製品が承認されている。しかし、1つの有効な抗体薬物の開発に適した、完全に検証された標的の数はますます不足している。完全な治療効果を得るには、多くの場合、2つ以上の個別の抗体を組み合わせる必要がある。例えば、ペルツズマブとトラスツズマブとの併用により、乳癌患者の生存期間を15ヶ月以上延長させ得、その効果は、トラスツズマブ単独療法よりもはるかに大きくなる。近年、アテゾリズマブとベバシズマブとの併用により、転移性肝細胞癌患者の生存を大幅に延長させることが示され、肝癌の治療において、免疫チェックポイント阻害剤および血管新生阻害剤の相乗効果をもたらす抗体併用療法の力が強調されている
【0004】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年2月15日に作成されたASCIIコピーは、126861-0003WO01_SL.txtという名称であり、47,915バイトのサイズである。
【0005】
現在、多くの抗体が組み合わせて臨床評価されているが、抗体併用療法が承認されるまでの規制の道のりは、多くの場合長く、費用を要する。典型的には、抗体の併用は、個々の抗体単独に対してランダム化試験でテストする必要があり、多くの場合、抗体併用療法が承認され得る前に、個々の抗体が承認された製品であるものとする。このプロセスは、個々の抗体がそれ自体ではほとんど有効性を有しない併用製品にとって大きな課題となる。したがって、開発者は、併用試験が実施され得る前に、第1相試験を超えて単一抗体を開発するために多くのリソースを投入する必要がある。この理由により、単純な制御経路を有する1つの実体であるが、2つの異なる標的に係合することができる二重特異性抗体を開発することは、多くの場合、抗体の併用で同じ目的を達成するための選択肢である。しかし、設計の制限により、二重特異性抗体は、特に各標的に対する2つの抗体アームの比率を制御する際に、抗体の併用の完全な柔軟性を有しない。二重特異性抗体を含む1つの製品では、1種類のFc骨格のみ選択できるが、抗体の併用では、2つの抗体のそれぞれに、適切な効果機能および薬物動態(PK)を有するFc骨格を柔軟に選択できるようになる。抗体併用療法の開発においては、新規アプローチが急務となっている。
【0006】
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)およびプログラム細胞死1(PD-1)は、T細胞免疫応答の重要な免疫チェックポイント阻害剤(ICI)である。CTLA-4シグナル伝達は、免疫応答の初期段階中に、リンパ節におけるT細胞増殖の開始を制限するのに対し、PD-1は、腫瘍微小環境におけるプロセス後半でのT細胞活性を制限する。CTLA-4は、自己免疫の抑制および自己寛容の維持に不可欠であるが、抑制的な腫瘍環境の維持にも重要な役割を果たす制御性T細胞(Treg)の機能に重要である。CTLA-4およびPD-1チェックポイントは、一般に、がん細胞または腫瘍浸潤免疫細胞上のこれらの阻害性受容体のリガンドの上方制御を介して腫瘍によって悪用され、免疫系を回避および/または抑制する7,8。CTLA-4またはPD-1の遮断により、結果として、がん患者の腫瘍量が劇的に減少し、複数の適応症に対するいくつかの製品が規制当局の承認を受けている9,10。さらに、ニボルマブなどのPD-1ブロック抗体およびイピリムマブなどのCTLA-4ブロック抗体は、異なるが相補的な作用機序を介して作用することが示されている
11-13
【0007】
抗PD-1(aPD-1)抗体と抗CTLA-4(aCTLA-4)抗体との併用は、臨床試験で複数の腫瘍タイプで広範囲にテストされている14,15。併用試験の主な原動力は、PD-1単独療法よりも全体的な奏効率および奏効期間を改善することであったが、これは典型的には、約20~30%の患者および高レベルのPDリガンド1(PD-L1)の発現を伴う腫瘍中で働く。PD-1遮断に抗CTLA-4抗体を添加することにより、ほぼすべての場合に全奏効率が数値的に増加し、多くの場合、奏効期間および生存期間の延長となり得る16。ニボルマブとイピリムマブとの併用は、黒色腫、腎癌、MSI-H CRC、NSCLC、MPM、および肝癌の治療に承認された。しかし、この併用による応答増加の正確なメカニズムは、依然として不明である。近年公開された多群フェーズ3研究では、進行性非小細胞肺癌(NSCLC)の第一選択治療として、2つの異なる抗CTLA-4抗体が抗PD-1抗体またはPD-L1抗体と併称して試験した
17,18。IgG1抗CTLA-4抗体であるイピリムマブとニボルマブ(抗PD-1抗体)との併用は、化学療法と比較して全生存期間を改善し、PD-L1≧1%を発現する腫瘍を有する患者に対して、米国で承認されている17。対照的に、IgG2抗CTLA-4抗体であるトレメリムマブは、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)と併用した場合、化学療法と比較して、無増悪生存期間または全生存期間を改善しない18。これら2つの試験間での結果の差について、依然として説明されていない。サブグループ分析では、PD-L1レベル(>1%もしくは<1%)または腫瘍変異負荷(TMB)閾値に関係なく、イピリムマブの追加が、PD-1単独療法よりも利益をもたらし得ることが示されている。一方、トレメリムマブは、bTMBが20mut/Mbを超える患者にのみ利益をもたらし得る。抗CTLA-4抗体が利益をもたらす複数のメカニズムが存在する可能性がある。IgG1アイソタイプの選択は、in vivoでのCTLA-4抗体活性の一部にとって重要であり得る。例えば、ヒトでは確認されていないが、マウスでの複数の前臨床研究では、腫瘍内Tregを枯渇させる能力、または腫瘍内のTreg対CD8細胞の相対比を変化させる能力が、抗CTLA-4抗体の抗腫瘍応答にとって重要であることが示唆されている。この能力は、Fc媒介抗体エフェクター機能に依存する19-21
【0008】
PD-1とCTLA-4との併用の遮断は、抗PD-1単独療法と比較して、免疫関連有害事象(irAE)の増加を引き起こし得る22。最も一般的なirAEとしては、掻痒症、悪心、発疹、下痢、および無緊張が挙げられる。異なる比率のニボルマブとイピリムマブとを併用して使用した試験では、irAEのレベルが、ニボルマブの用量よりもイピリムマブの用量と関連している可能性が高いことが実証された。併用療法の毒性の上昇を管理する現在の戦略は、ニボルマブと共に投与した場合の、イピリムマブの用量および頻度を減少させることによるものである23。一般的に使用される1mg/kgのイピリムマブを6週間ごとに投与し、ニボルマブを2週間または3週間ごとに3mg/kgまたは240mgの一定用量で投与するレジメンでは、重篤なAEによる患者の脱落率を顕著に減少させることができる。しかし、グレード3または4のAEの頻度は、PD-1単独療法よりも併用療法の方が依然としてはるかに高い17。興味深いことに、NSCLC患者における抗CTLA-4IgG1分子であるクアボンリマブとペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)との併用に関する最近の試験では、低用量のCTLA-4抗体(6週間ごとに25mg)では、他の高用量レジメンよりも優れた安全性プロファイルを備えた同等の有効性が示され、通常用量のペムブロリズマブ(3週間ごとに200mg)とのさらなる併用試験の推奨第2相用量(RP2D)として選択された24。これらの発見により、併用治療の安全性および忍容性をさらに改善する必要性がもたらされる。
【0009】
上述のとおり、有効性のさらなる改善が必要である。さらに、一部の試験では、このような併用療法は、抗PD1抗体または抗CTLA4抗体のいずれかを単独で使用する治療よりも、グレード3および4の有害事象など、より多くの有害事象(以下の定義、および有害事象共通用語基準(CTCAE)バージョン5.0 2010 /ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/docs/CTCAE_v5_Quick_Reference_8.5x11.pdfで入手可能)を参照されたい、これらは、参照により本明細書に組み込まれる)と関連している。さらに、2つの異なる抗体を別々に生産することは、煩わしく、高価、かつ複雑である。したがって、当技術分野では、抗PD1抗体および抗CTLA4抗体のより効率的に産生される併用、および既存の組み合わせよりも安全かつ効果的な併用が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書では、PD-1およびCTLA-4免疫チェックポイント経路の二重遮断を送達することができる併用製品が提供される。一実施形態では、本発明のPSB205(QL1706)が提供され、1つの宿主細胞株から天然の形態に近い2つの抗体の産生が可能になる新規技術プラットフォームを使用して生成され、1つの製品として製造される。新規PSB205産物は、二重遮断剤の抗腫瘍活性の増強を維持するが、irAEの発生率の増加を誘導させないことが本明細書において企図される。二重特異性抗体とは対照的に、PS205の抗PD-1および抗CTLA-4成分は、各抗体および併用療法の状況において最適な標的範囲および生物学的活性を達成するように個別に設計された。PSB205の抗CTLA-4成分は、他のCTLA-4抗体よりも速いクリアランス速度を有するように操作されており、これにより各治療サイクル内での曝露量の減少が生じる。一定期間の抗PD-1曝露の存在下で抗CTLA-4曝露が減少するこの独特のプロファイルは、忍容性を改善し、したがって患者が、CTLA-4抗体媒介irAEによる中断なく、PSB205の長期間投与を受けることができるようにすることを本明細書では企図する。本発明者らの第1相試験の予備データでは、PSB205(QL1607)が良好な忍容性を呈し、PD-1阻害剤に耐性のある患者など、上咽頭癌患者および肺癌患者において、良好な抗腫瘍反応を呈したことが示された。
【0011】
また、本明細書では、抗hCTLA4抗体および抗hPD1抗体を含む抗体の混合物、そのような混合物をコードするポリヌクレオチドおよびこれらのポリヌクレオチドを含む宿主細胞、このような混合物およびそれらをコードするポリヌクレオチドの製造方法および使用方法、ならびにこのような抗体の混合物、または混合物をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含む医薬組成物が提供される。以下の番号付き項目は、これらの組成物および方法の態様を説明するものであり、本明細書の説明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0012】
特定の実施形態では、PSB205(QL1706)は、同じ1つの細胞から一定の比率で発現され、1つの製品(MabPair)として一緒に製造される2つの操作されたモノクローナル抗体(抗PD-1IgG4および抗CTLA-4IgG1)を含む。最適な有効性および安全性プロファイルを達成するために、PSB205は、PD-1とCTLA-4の異なるレベルの対象範囲を1つの製品中で実現するように設計された。特定の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、その曝露を減少させ、irAEのリスクを低下させるために、より短い半減期を有するように操作された。前臨床実験および第1相臨床試験の両方で、PSB205は、抗腫瘍活性を示し、KI67+CD8 T細胞およびICOS+CD4 T細胞の増加を含むPD-1およびCTLA-4経路の両方の機能的二重遮断を明らかに示すことが判明した。第I相試験の予備データでは、PSB205(QL1607)が、PD1阻害剤に耐性のある固形腫瘍患者など、固形腫瘍患者において良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も良好であることも示された。
【0013】
MabPairプラットフォームにより、1つの二機能性製品中で抗体併用療法の送達が可能である。PSB205(QL1706)などのMabPair分子は、抗PD-1モノクローナル抗体および抗CTLA-4モノクローナル抗体などの2つの異なる分子の標的範囲の最適レベルを達成するように特別に操作でき、これにより良好な忍容性を有し、有効性の改善となり得る。
【0014】
また、本明細書では、以下を含む抗体の混合物に対応する、例えば態様1などの番号付き態様として記載される特定の実施形態も提供される:
(a)重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含む抗ヒトプログラム死1(抗hPD1)抗体であって、ここで、(1)抗hPD1抗体のHCは、配列番号1のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ、2)抗hPD1抗体のLCは、配列番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされる、抗ヒトプログラム死1(抗hPD1)抗体と;
(b)HCおよびLCを含む抗ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(抗hCTLA4)抗体であって、ここで、(1)抗hCTLA4抗体のHCは、配列番号13のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ、(2)抗hCTLA4抗体のLCは、配列番号17のアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされる、抗ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(抗hCTLA4)抗体と、を含み、
(c)ここで、混合物中の抗hCTLA4抗体の量と混合物中の抗hPD1抗体の量との重量対重量(w/w)比(抗hCTLA4:抗hPD1比)は、1:1~1:4の範囲であり、
ここで、抗hPD1抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において220~380時間のin vivo半減期(t1/2)を有し、かつ/またはこれまでに抗hPD1抗体を投与されていないヒトに投与した場合、抗hPD1抗体は、135~300時間のin vivo t1/2を有し、
(d)ここで、抗hCTLA4抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において40~150時間のin vivo t1/2を有し、かつ/またはこれまでに抗hCTLA4抗体を投与されていないヒトに投与した場合に、抗hCTLA4抗体は、90~210時間のin vivo t1/2を有する。
【0015】
態様2.配列番号1のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列もコードし、
配列番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号12のアミノ酸配列もコードし、
配列番号13のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号22のアミノ酸配列もコードし、
配列番号17のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号24のアミノ酸配列もコードする、態様1の混合物。
【0016】
態様3.抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1~1:3の範囲である、態様1または2の混合物。
【0017】
態様4.抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.2~1:2.5の範囲である、態様3に記載の混合物。
【0018】
態様5.抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.5~1:2.5の範囲である、態様4に記載の混合物。
【0019】
態様6.抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.7~1:2.3の範囲である、態様5に記載の混合物。
【0020】
態様7.抗hPD1抗体のHCおよびLCのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2および6の核酸配列によってコードされ;
抗hCTLA4抗体のHCおよびLCのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号14および18の核酸配列によってコードされる、態様1~6のいずれか1つの混合物。
【0021】
態様8.抗hPD1抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において250~350時間のin vivo t1/2を有し、かつ/またはこれまでに抗hPD1抗体を投与されていないヒトに投与した場合、抗hPD1抗体は、140~250時間のin vivo t1/2を有し、
抗hCTLA4抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において70~130時間のin vivo t1/2を有し、かつ/またはこれまでに抗hCTLA4抗体を投与されていないヒトに投与した場合に、抗hCTLA4抗体は、90~140時間のin vivo t1/2を有する、態様1~7のいずれか1つの混合物。
【0022】
態様9.混合物を少なくとも10名のヒト患者の群に、5mg/kg以下の用量で投与した場合、患者の15%以下、14%、13%、12%、または11%が、グレード3またはグレード4の有害事象(AE)を経験する、態様1~8のいずれか1つの混合物。
【0023】
態様10.混合物を少なくとも10名のヒト患者の群に、5mg/kg以下の用量で投与した場合、患者の10%以下、9%、または8%が、グレード3またはグレード4のAEを経験する、態様9の混合物。
【0024】
態様11.混合物を少なくとも10名のヒト患者の群に、5mg/kg以下の用量で投与した場合、患者の7%以下、6%、または5%が、グレード3またはグレード4のAEを経験する、態様10の混合物。
【0025】
態様12.態様1~11のいずれか1つの混合物を含む医薬組成物。
【0026】
態様13.医薬組成物のpHが、pH4.5~pH5.5である、態様12の医薬組成物。
【0027】
態様14.組成物中の総タンパク質濃度が、20mg/mL~30mg/mLである、態様12または13の医薬組成物。
【0028】
態様15.医薬組成物が、250~380mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する、態様12~14のいずれか1つの医薬組成物。
【0029】
態様16.態様1~11のいずれか1つの混合物をコードする1つ以上のポリヌクレオチド。
【0030】
態様17.ポリヌクレオチド(複数可)が、配列番号2、6、14、および18の核酸配列を含む、態様16のポリヌクレオチド(複数可)。
【0031】
態様18.態様16または17のポリヌクレオチド(複数可)を含む1つ以上のベクター。
【0032】
態様19.ウイルスベクター(複数可)である、態様18のベクター(複数可)。
【0033】
態様20.腫瘍溶解性ウイルスベクター(複数可)である、態様19のベクター(複数可)。
【0034】
態様21.レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、改変ワクシナウイルスアンカラ(MVA)、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、レオウイルス、またはポックスウイルスベクターである、態様19または20のベクター(複数可)。
【0035】
態様22.態様1~11のいずれか1つの混合物を産生することができる、態様16もしくは17のポリヌクレオチド(複数可)および/または態様18のベクター(複数可)を含む宿主細胞。
【0036】
態様23.宿主細胞により産生される混合物の抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.2~1:3の範囲である、態様22の宿主細胞。
【0037】
態様24.宿主細胞により産生される混合物の抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.5~1:2.5の範囲である、態様23の宿主細胞。
【0038】
態様25.宿主細胞により産生される混合物の抗hCTLA4:抗hPD1比が、1:1.7~1:2.3の範囲である、態様24の宿主細胞。
【0039】
態様26.CHO細胞またはマウス骨髄腫細胞である、態様22~25の宿主細胞。
【0040】
態様27.以下のステップ:
態様22~26のいずれか1つの宿主細胞を培養するステップと;
培養上清または宿主細胞塊から抗体の混合物を回収するステップと、を含む、抗体の混合物を作製するための方法。
【0041】
態様28.がん、免疫不全障害、または感染症を有する患者を治療するための方法であって、
(a)ある用量の態様1~11のいずれか1つの混合物もしくは態様12~15のいずれか1つの医薬組成物を患者に投与するステップ、または
(b)ある用量の態様16もしくは17のポリヌクレオチド(複数可)または態様18~21のいずれか1つのベクター(複数可)を患者に投与するステップ、を含む、方法。
【0042】
態様29.態様28(a)の方法であって、ある用量の混合物または医薬組成物が、週に約2回、週に1回、または2週、3週、4週、5週、6週、7週もしくは8週に1回投与され、ある用量の混合物または医薬組成物は、以下のうちの1つ以上によって表される:
(1)用量が、少なくとも約0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、または8.0mg/kgである;
(2)用量が、最大で約9、8、7、6、5、4、または3mg/kgである;
(3)用量が、約1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、または8.0mg/kgである;
(4)用量が、約200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、または500mgである;
(5)用量が、少なくとも約75、100、125、150、200、225、または250mgである、および
(6)用量が、最大で約600、500、400、または300mgである、方法。
【0043】
態様30.態様29に記載の方法であって、
用量が、少なくとも3mg/kgかつ5mg/kg以下である、および/または、
用量が、少なくとも180mgかつ400mg以下であり、
ここで、用量が、約3週間に1回投与される、方法。
【0044】
態様31.用量が、約5mg/kgである、態様30に記載の方法。
【0045】
態様32.用量が、300~400mgである、態様30の方法。
【0046】
態様33.態様29~32のいずれか1つに記載の方法であって、
患者が、がんを有し、
混合物または医薬組成物が、少なくとも10名の患者に投与され、
客観的奏効率(ORR)は、少なくとも5、10、15、20、25、30、または35パーセントであり、および/または病勢コントロール率(DCR)は、少なくとも25、30、35、40、45、50、55、または60パーセントである、方法。
【0047】
態様34.態様28(b)の方法であって、ポリヌクレオチド(複数可)またはベクター(複数可)の用量が、週に約2回、週に1回、または2週、3週、4週、5週、6週、7週、または8週に1回投与され、ポリヌクレオチド(複数可)またはベクター(複数可)の用量は、以下の1つ以上によって表される:
(1)用量は、患者の体重1kgあたり、少なくとも約5x10コピー(コピー/kg)のポリヌクレオチド(複数可)またはベクター(複数可)である;
(2)用量は、最大約1015コピー/kgである;
(3)用量は、約1010コピー/kg~約1014コピー/kgである;および
(4)用量は、約1010、1011、1012、1013、5x1013、1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、または1015コピーである、方法。
【0048】
態様35.混合物、医薬組成物、ポリヌクレオチド(複数可)、またはベクター(複数可)の用量が、注入またはボーラス注射などの静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射によって投与される、態様28~34のいずれか1つの方法。
【0049】
態様36.患者が、黒色腫、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌を含む肺癌、上咽頭癌、頭頸部の扁平上皮癌、胃癌または胃食道癌、明細胞または非明細胞腎細胞癌、尿路上皮癌、軟部組織または骨肉腫、中皮腫、古典的ホジキンリンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、膀胱癌、メルケル細胞癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、肝細胞がん、卵巣がん、または高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)の成人および小児固形腫瘍を有する、態様28~35のいずれか1つの方法。
【0050】
態様37.患者が、混合物、医薬組成物、ポリヌクレオチド(複数可)、またはベクター(複数可)の投与前、投与後、または投与と同時に、化学療法剤または放射線で治療される、態様28~36のいずれか1つの方法。
【0051】
態様38.本用量の混合物、医薬組成物、ポリヌクレオチド(複数可)、またはベクター(複数可)が、少なくとも10名の患者に投与され、その用量を投与された患者が、放射線または化学療法剤と同時に治療されておらず、本用量が投与された患者の15%以下、14%、13%、12%、または11%が、グレード3またはグレード4AEを経験する、態様28~37のいずれか1つの方法。
【0052】
態様39.本用量が投与された患者の10%以下、9%、または8%が、グレード3またはグレード4のAEを経験する、態様38に記載の方法。
【0053】
態様40.本用量が投与された患者の7%以下、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%が、グレード3またはグレード4AEを経験する、態様39に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】抗hPD1IgG4抗体PSB103をコードするベクターのプラスミドマップを示す図である。プラスミド内の様々な遺伝エレメントは、次のように標識されている:ProPGK、ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター;DHFR、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子;SV40pA、SV40ポリアデニル化シグナル;ProEF2/CMV;伸長因子2とサイトメガロウイルス(CMV)のハイブリッドプロモーター;抗PD-1IgG4-HC;PSB103抗hPD1HCをコードする配列;CMVpA;CMVからのポリアデニル化シグナル;ProCMV/EF1;CMVと伸長因子1のハイブリッドプロモーター;抗PD-1LC;カッパLCであるPSB103抗hPD1抗体のLCをコードする配列;PuroResis;ピューロマイシン耐性遺伝子;pMB1ori;DNA複製のpMB1起点;kanaResis;カナマイシン耐性遺伝子;NruI;制限酵素NruIの認識部位。
図2】PSB103を発現するCHO細胞株を得るための選択スキームを示す図である。このプロセスは実施例1で説明する。左側の「トランスフェクション」と表示したボックスは、図1に図示したプラスミドによるCHO細胞のトランスフェクションを表す。トランスフェクトされた細胞は、2つのプールに分割し、中央の2つのボックスに示すとおり、これらは2つの異なるフェーズ1選択レジメンに供される。次に、右側の4つのボックスに示すとおり、2つの第1相プールをそれぞれ2つのプールに分割し、2つの異なる第2相選択レジメンに供した。
図3】抗hCTLA4抗体PSB105のHCをコードするベクターのプラスミドマップを示す図である。プラスミド内の様々な遺伝エレメントは、次のように標識されている:プロモーターPGK Mm、ハツカネズミ由来のホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター;プロモーターEF1a Hs、ホモ・サピエンス由来の伸長因子1-αのプロモーター;イントロンEF1a Hs、ホモ・サピエンス由来の伸長因子1-αのイントロン;抗CTLA-4 IgG1-HC、抗hCTLA4抗体PSB105のIgG1 HCをコードするDNA;EES、Atum(Newark,California)が有する発現増強配列;HPRE、B型肝炎ウイルス転写後調節エレメント;Ocrabbit、ウサギベータグロビン遺伝子のポリアデニル化(ポリ(A))シグナル;HS4インシュレータ、ニワトリベータグロビン遺伝子由来のHS4インシュレータエレメント;Ori pUC、大腸菌における複製のためのDNA複製起点;カナマイシン耐性、カナマイシン耐性遺伝子;NruI、制限酵素NruIの認識部位;pAグロビンHs、ホモ・サピエンスベータグロビン遺伝子のポリ(A)シグナル;およびハイグロマイシン耐性、ハイグロマイシン耐性遺伝子。
図4】抗hCTLA4抗体PSB105のLCをコードするベクターのプラスミドマップを示す図である。プラスミド内の様々な遺伝エレメントは、次のように標識されている;P-EF1a Hs、ホモ・サピエンス由来の伸長因子1-αのプロモーター;EF1-Hs エクソン1、ホモ・サピエンス由来の伸長因子アルファのエクソン1;イントロンEF1a Hs、ホモ・サピエンス由来の伸長因子1-αのイントロン;イントロンアクセプターMm IgH、ハツカネズミ由来のIgHイントロンアクセプター;抗CTLA-4 LC、抗hCTLA4抗体PSB105のLCをコードするDNA;EES、Atum独自の発現増強配列(Newark,California);HPRE、B型肝炎ウイルス転写後調節エレメント;Ocrabbit、ウサギベータグロビン遺伝子のポリ(A)シグナル;HS4インシュレータ、ニワトリベータグロビン遺伝子由来のHS4インシュレータエレメント;Ori pUC、大腸菌における複製のためのDNA複製起点;カナマイシン耐性、カナマイシン耐性遺伝子;NruI、制限酵素NruIの認識部位;pAグロビンHs、ホモ・サピエンスベータグロビン遺伝子のポリ(A)シグナル;Mmグルタミン合成酵素、ハツカネズミ由来のグルタミン合成酵素;およびP-PGK Mm、ハツカネズミ由来のホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター。
図5】PSB103およびPSB105の結合特異性を示す図である。実験は、実施例2に記載する。パネル、図5Aおよび図5Bは、それぞれ、抗hPD1抗体PSB103および抗hCTLA4抗体PSB105の結果を示す。パネルAおよびBの両方において、これらの抗体への結合について試験したリガンドは、次のようにx軸下に左から右に示す:huPD1、Fc断片に融合したヒトPD1の細胞外ドメイン;muPD1、ヒスチジン-aviタグに融合したマウスPD1の細胞外ドメイン(これにより、タンパク質の効率的な精製(ヒスチジンタグ)およびビオチンによるタンパク質(aviタグ)の標識が可能になる);huPDL1、ヒスチジン-aviタグに融合したヒトPDL1の細胞外領域;huCD28、Fc断片に融合したヒトCD28の細胞外ドメイン;huCTLA4、Fc断片に融合したヒトCTLA4の細胞外ドメイン。斜めの縞模様、不連続な短い水平線、または太い連続した水平線の棒グラフは、それぞれ100ng/mL、33ng/mL、または0ng/mLの試験リガンドを含むサンプルからのデータを示す。y軸は、450nmでの光学密度(OD450)を示し、このアッセイにおける結合量を反映する。
図6A】カニクイザル(Macaca fascicularis)におけるPSB103および関係のないIgG4抗体の単回用量薬物動態を示す図である。この実験は、実施例3に記載されている。パネル図6Aおよび図6Bは、それぞれ、PSB103および関係のないIgG4抗体を注射されたサルからのデータを示す。x軸は、試験抗体注射後の時間(時間)、y軸は、血清中に検出された抗体濃度(μg/mL)をそれぞれ示す。記号は、次のことを意味する:白丸および黒丸は、それぞれ、第1および第2のアリコートからのデータを示し、両方とも雌のサルからのサンプルからのものである。白三角および黒三角は、それぞれ、雄のサルからのサンプルからの第1および第2のアリコートからのデータを示す。
図6B】カニクイザル(Macaca fascicularis)におけるPSB103および関係のないIgG4抗体の単回用量薬物動態を示す図である。この実験は、実施例3に記載されている。パネル図6Aおよび図6Bは、それぞれ、PSB103および関係のないIgG4抗体を注射されたサルからのデータを示す。x軸は、試験抗体注射後の時間(時間)、y軸は、血清中に検出された抗体濃度(μg/mL)をそれぞれ示す。記号は、次のことを意味する:白丸および黒丸は、それぞれ、第1および第2のアリコートからのデータを示し、両方とも雌のサルからのサンプルからのものである。白三角および黒三角は、それぞれ、雄のサルからのサンプルからの第1および第2のアリコートからのデータを示す。
図7】カニクイザルにおける、PSB105、関係のないIgG1抗体であるおよびイピリムマブの単回投与薬物動態を示す図である。この実験は、実施例3に記載されている。x軸およびy軸は、それぞれ、試験抗体の注射後の時間(時間)および血清中で検出された抗体の量(μg/mL)を示す。記号は次のことを示す。黒四角および白四角は、それぞれPSB105を投与した雄サルおよび雌サルからのデータを示す。黒丸および白丸は、それぞれ関係のないIgG1抗体を投与された雄サルおよび雌サルからのデータを示す。黒三角および白三角は、それぞれイピリムマブを投与された雄サルおよび雌サルからのデータを示す。
図8A】PSB103(抗hPD1抗体)およびPSB105(抗hCTLA4抗体)の両方を発現する宿主細胞を産生するための一般的な選択スキームを示す図である。パネル図8Aは、実施例1に記載される抗hPD1抗体PSB103を発現する宿主細胞の作製を示す。細胞内の記号「Y」は、抗体を表す。
図8B】PSB103(抗hPD1抗体)およびPSB105(抗hCTLA4抗体)の両方を発現する宿主細胞を産生するための一般的な選択スキームを示す図である。パネル図8Bは、実施例4に記載されている、PSB103および抗hCTLA4抗体PSB105の両方を発現する細胞の作製を示す図である。
図9】PSB103およびPSB105を発現する細胞を選択するための薬物選択プロトコルの図を示す。このプロセスは、実施例4に記載されている。一番左のボックスは、PSB105の重鎖および軽鎖をコードするベクターによるG19G4-4B4細胞(PSB103を発現)のトランスフェクションを表す。48時間後、この培養物を3つの培養物に再分割し、異なる薬物選択を行った(図9の中央の3つのボックスに示す)。これら3つの培養物を、96ウェルプレートに播種した(図9の右側の9つのボックスに示す)。示されているとおり、選択下で成長を示すこれらのウェルのうち48個を12ウェルマイクロタイタープレートで拡大させ、それらが産生する抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の相対量をアッセイした。
図10A】トランスフェクトされた細胞の蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を示す図である。実施例4で説明したように、PSB103およびPSB105の両方をコードするベクターをトランスフェクトした細胞株を、FACSを用いてスクリーニングし、細胞株内のほとんどの個々の細胞が、PSB103(IgG4抗hPD1抗体)およびPSB105(IgG1抗hCTLA4抗体)の両方を発現する株を見出した。パネル図10Aは、PSB103のみ、PSB105のみ、または両方を発現する細胞が出現すると予想されるFACSデータのグラフの部分を示す。示されているとおり、PSB105の検出に使用される抗IgG1抗体は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識され、PSB103の検出に使用される抗IgG4抗体は、アロフィコシアニン(APC)で標識されている。
図10B】トランスフェクトされた細胞の蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を示す図である。実施例4で説明したように、PSB103およびPSB105の両方をコードするベクターをトランスフェクトした細胞株を、FACSを用いてスクリーニングし、細胞株内のほとんどの個々の細胞が、PSB103(IgG4抗hPD1抗体)およびPSB105(IgG1抗hCTLA4抗体)の両方を発現する株を見出した。パネル図10Bは、細胞株内のほとんどの個々の細胞が、PSB103およびPSB105の両方を発現し、PSB103またはPSB105のみを発現する細胞はほとんどなかった細胞株からのデータを示す。パネル図10Cは、明らかに検出可能な数の細胞が、PSB103またはPSB105のみを発現する一方、個々の細胞の大部分が両方を発現する細胞株からのデータを示す。
図10C】トランスフェクトされた細胞の蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を示す図である。実施例4で説明したように、PSB103およびPSB105の両方をコードするベクターをトランスフェクトした細胞株を、FACSを用いてスクリーニングし、細胞株内のほとんどの個々の細胞が、PSB103(IgG4抗hPD1抗体)およびPSB105(IgG1抗hCTLA4抗体)の両方を発現する株を見出した。パネル図10Cは、明らかに検出可能な数の細胞が、PSB103またはPSB105のみを発現する一方、個々の細胞の大部分が両方を発現する細胞株からのデータを示す。
図11A】総抗体力価および抗hPD1抗体パーセントに関するクローン細胞株のスクリーニングを示す図である。実施例4で説明したように、総抗体力価(パネル図11Aに示す)および抗hPD1抗体PSB103である抗体のパーセント(パネル図12Bに示す)を決定した。示されているとおり、クローン細胞株は、x軸下のクローン番号によって識別させ、その後に抗体が収集されたときに、細胞が培養された日数を括弧内に示す。
図11B】総抗体力価および抗hPD1抗体パーセントに関するクローン細胞株のスクリーニングを示す図である。実施例4で説明したように、総抗体力価(パネル図11Aに示す)および抗hPD1抗体PSB103である抗体のパーセント(パネル図12Bに示す)を決定した。示されているとおり、クローン細胞株は、x軸下のクローン番号によって識別させ、その後に抗体が収集されたときに、細胞が培養された日数を括弧内に示す。
図12A】クローン細胞株20F5の生産性および成長特性を示す図である。方法は、実施例4で説明する。図12Aにおいて、x軸は、流加生産培養を開始するために使用される培養物の集団倍加レベル(PDL、すなわち、リサーチセルバンク(RCB)からの解凍後の細胞倍加数)を示し(パネル図12Aおよび図12B内のデータが得られる)、これは、各棒グラフの下の数字で示す。流加培養を開始するために使用される培養培地中のハイグロマイシンB(HGB)およびメトトレキサート(MTX)の有無は、PDLの下に示す。すべての流加培養は、MTXおよびHGBを含まない培地(-MTX/-HGB培地)中で行った。左端の4つの棒グラフで表す培養は、流加培養の開始前に9~10回の細胞倍加の間、MTXおよびHGBを含まない培地(-MTX/-HGB)中であり、これも-MTX/-HGB培地中であった。それ以前は、これらはMTXを含みHGBを含まない培地(+MTX/-HGB培地)に含まれていた。したがって、左端の棒グラフで表される培養物は、この培養物から流加培養を開始したとき、PDL9.2までの増殖全体において、-MTX/-HGB培地中であった。左から5番目および6番目の棒グラフで表される培養物は、それぞれ、PDLで示される細胞倍加数の+MTX/-HGBおよび+MTX/+HGB培地で行った。流加培養(そこから図12Aおよび図12Bのパネルのデータが得られる)を、-MTX/-HGB培地中のこれらの培養物から開始した。y軸は、流加培養の総抗体生産性(グラム/リットル)を示し、これは、各流加培養の開始(11日目)から11日後に採取したサンプルから決定した。パネル図12Bでは、3つの棒グラフ群のそれぞれの個々の棒グラフは、パネル図12Aと同じ順序で同じ流加培養からのデータを表す。分析されたサンプルが採取された流加培養日は、x軸下の3つの棒グラフの群のそれぞれの下に示す。y軸は、抗hPD1抗体、すなわちPSB103である、産生された総抗体のパーセントを示す。パネル図12Cは、+MTX/+HGB培地(破線)または+MTX/-HGB培地(実線)における細胞株20F5の細胞倍加時間を、PDLと対応させて示す。示されているように、x軸は、PDLを示し、y軸は、細胞倍加時間を示す。
図12B】クローン細胞株20F5の生産性および成長特性を示す図である。方法は、実施例4で説明する。図12Aにおいて、x軸は、流加生産培養を開始するために使用される培養物の集団倍加レベル(PDL、すなわち、リサーチセルバンク(RCB)からの解凍後の細胞倍加数)を示し(パネル図12Aおよび図12B内のデータが得られる)、これは、各棒グラフの下の数字で示す。流加培養を開始するために使用される培養培地中のハイグロマイシンB(HGB)およびメトトレキサート(MTX)の有無は、PDLの下に示す。すべての流加培養は、MTXおよびHGBを含まない培地(-MTX/-HGB培地)中で行った。左端の4つの棒グラフで表す培養は、流加培養の開始前に9~10回の細胞倍加の間、MTXおよびHGBを含まない培地(-MTX/-HGB)中であり、これも-MTX/-HGB培地中であった。それ以前は、これらはMTXを含みHGBを含まない培地(+MTX/-HGB培地)に含まれていた。したがって、左端の棒グラフで表される培養物は、この培養物から流加培養を開始したとき、PDL9.2までの増殖全体において、-MTX/-HGB培地中であった。左から5番目および6番目の棒グラフで表される培養物は、それぞれ、PDLで示される細胞倍加数の+MTX/-HGBおよび+MTX/+HGB培地で行った。流加培養(そこから図12Aおよび図12Bのパネルのデータが得られる)を、-MTX/-HGB培地中のこれらの培養物から開始した。y軸は、流加培養の総抗体生産性(グラム/リットル)を示し、これは、各流加培養の開始(11日目)から11日後に採取したサンプルから決定した。パネル図12Bでは、3つの棒グラフ群のそれぞれの個々の棒グラフは、パネル図12Aと同じ順序で同じ流加培養からのデータを表す。分析されたサンプルが採取された流加培養日は、x軸下の3つの棒グラフの群のそれぞれの下に示す。y軸は、抗hPD1抗体、すなわちPSB103である、産生された総抗体のパーセントを示す。パネル図12Cは、+MTX/+HGB培地(破線)または+MTX/-HGB培地(実線)における細胞株20F5の細胞倍加時間を、PDLと対応させて示す。示されているように、x軸は、PDLを示し、y軸は、細胞倍加時間を示す。
図12C】クローン細胞株20F5の生産性および成長特性を示す図である。方法は、実施例4で説明する。図12Aにおいて、x軸は、流加生産培養を開始するために使用される培養物の集団倍加レベル(PDL、すなわち、リサーチセルバンク(RCB)からの解凍後の細胞倍加数)を示し(パネル図12Aおよび図12B内のデータが得られる)、これは、各棒グラフの下の数字で示す。流加培養を開始するために使用される培養培地中のハイグロマイシンB(HGB)およびメトトレキサート(MTX)の有無は、PDLの下に示す。すべての流加培養は、MTXおよびHGBを含まない培地(-MTX/-HGB培地)中で行った。左端の4つの棒グラフで表す培養は、流加培養の開始前に9~10回の細胞倍加の間、MTXおよびHGBを含まない培地(-MTX/-HGB)中であり、これも-MTX/-HGB培地中であった。それ以前は、これらはMTXを含みHGBを含まない培地(+MTX/-HGB培地)に含まれていた。したがって、左端の棒グラフで表される培養物は、この培養物から流加培養を開始したとき、PDL9.2までの増殖全体において、-MTX/-HGB培地中であった。左から5番目および6番目の棒グラフで表される培養物は、それぞれ、PDLで示される細胞倍加数の+MTX/-HGBおよび+MTX/+HGB培地で行った。流加培養(そこから図12Aおよび図12Bのパネルのデータが得られる)を、-MTX/-HGB培地中のこれらの培養物から開始した。y軸は、流加培養の総抗体生産性(グラム/リットル)を示し、これは、各流加培養の開始(11日目)から11日後に採取したサンプルから決定した。パネル図12Bでは、3つの棒グラフ群のそれぞれの個々の棒グラフは、パネル図12Aと同じ順序で同じ流加培養からのデータを表す。分析されたサンプルが採取された流加培養日は、x軸下の3つの棒グラフの群のそれぞれの下に示す。y軸は、抗hPD1抗体、すなわちPSB103である、産生された総抗体のパーセントを示す。パネル図12Cは、+MTX/+HGB培地(破線)または+MTX/-HGB培地(実線)における細胞株20F5の細胞倍加時間を、PDLと対応させて示す。示されているように、x軸は、PDLを示し、y軸は、細胞倍加時間を示す。
図13A】液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によるPSB205の調製物(PSB103-SおよびPSB105-Sと呼ばれる)から単離されたPSB103およびPSB105の分析を示す図である。この実験は、実施例5に記載している。パネル図13A図13B、および図13Cは、それぞれ、PSB103-S、PSB105-S、およびこれらの抗体が単離されたPSB205の調製からのデータを示す。ダルトン単位でのピークのサイズは、最大のピークの近くに示す。様々な種のHC残基N297のグリコシル化状態(Edelmann et al.(1969),The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule, Proc. Natl.Acad.Sci.USA63:78-85の番号付けスキームに従って番号付け、これは、参照により本明細書に組み込まれる;N297は、それぞれ配列番号1および13のN296位およびN298位に対応する)は、以下のマークによって示す:G0F/G0F、各HCのN297に3つのマンノース(Man3)残基、4つのN-アセチルグルコサミン残基((glcNAc)4)、および1つのフコース残基((Fuc)1)(Man3(glcNAc)4(Fuc)1)を含むグリカン;G0F/G0F-GlcNAc、一方のHCのN297上のMan3(glcNAc)4(Fuc)1グリカンと、他方のHCのN297上のMan3(glcNAc)3(Fuc)1グリカン;G0F/G1F、1つのHCのN297上のMan3(glcNAc)4(Fuc)1グリカン、および他のHCのN297上に1つのガラクトース残基((Gal)1)、3つのマンノース残基、4つのN-アセチルグルコサミン残基、および1つのフコース残基を含むグリカン((Gal)1Man3(glcNAc)4(Fuc)1)。これらの化学構造の描写については、例えば、Yang et al.(2016)、Ultrafast and high-throughput N-glycan analysis for monoclonal antibodies,MAbs8(4):706-717およびグリカンの記号命名法(SNFG)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/snfg.htmlで入手可能)を参照され、これは参照により本明細書に組み込まれる。x軸は、検出された抗体種の質量(ダルトン)を示し、y軸は、分析されたサンプル内の存在量のパーセントを反映するパーセント強度を示す。
図13B】液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によるPSB205の調製物(PSB103-SおよびPSB105-Sと呼ばれる)から単離されたPSB103およびPSB105の分析を示す図である。この実験は、実施例5に記載している。パネル図13A図13B、および図13Cは、それぞれ、PSB103-S、PSB105-S、およびこれらの抗体が単離されたPSB205の調製からのデータを示す。ダルトン単位でのピークのサイズは、最大のピークの近くに示す。様々な種のHC残基N297のグリコシル化状態(Edelmann et al.(1969),The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule, Proc. Natl.Acad.Sci.USA63:78-85の番号付けスキームに従って番号付け、これは、参照により本明細書に組み込まれる;N297は、それぞれ配列番号1および13のN296位およびN298位に対応する)は、以下のマークによって示す:G0F/G0F、各HCのN297に3つのマンノース(Man3)残基、4つのN-アセチルグルコサミン残基((glcNAc)4)、および1つのフコース残基((Fuc)1)(Man3(glcNAc)4(Fuc)1)を含むグリカン;G0F/G0F-GlcNAc、一方のHCのN297上のMan3(glcNAc)4(Fuc)1グリカンと、他方のHCのN297上のMan3(glcNAc)3(Fuc)1グリカン;G0F/G1F、1つのHCのN297上のMan3(glcNAc)4(Fuc)1グリカン、および他のHCのN297上に1つのガラクトース残基((Gal)1)、3つのマンノース残基、4つのN-アセチルグルコサミン残基、および1つのフコース残基を含むグリカン((Gal)1Man3(glcNAc)4(Fuc)1)。これらの化学構造の描写については、例えば、Yang et al.(2016)、Ultrafast and high-throughput N-glycan analysis for monoclonal antibodies,MAbs8(4):706-717およびグリカンの記号命名法(SNFG)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/snfg.htmlで入手可能)を参照され、これは参照により本明細書に組み込まれる。x軸は、検出された抗体種の質量(ダルトン)を示し、y軸は、分析されたサンプル内の存在量のパーセントを反映するパーセント強度を示す。
図13C】液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によるPSB205の調製物(PSB103-SおよびPSB105-Sと呼ばれる)から単離されたPSB103およびPSB105の分析を示す図である。この実験は、実施例5に記載している。パネル図13A図13B、および図13Cは、それぞれ、PSB103-S、PSB105-S、およびこれらの抗体が単離されたPSB205の調製からのデータを示す。ダルトン単位でのピークのサイズは、最大のピークの近くに示す。様々な種のHC残基N297のグリコシル化状態(Edelmann et al.(1969),The covalent structure of an entire γG immunoglobulin molecule, Proc. Natl.Acad.Sci.USA63:78-85の番号付けスキームに従って番号付け、これは、参照により本明細書に組み込まれる;N297は、それぞれ配列番号1および13のN296位およびN298位に対応する)は、以下のマークによって示す:G0F/G0F、各HCのN297に3つのマンノース(Man3)残基、4つのN-アセチルグルコサミン残基((glcNAc)4)、および1つのフコース残基((Fuc)1)(Man3(glcNAc)4(Fuc)1)を含むグリカン;G0F/G0F-GlcNAc、一方のHCのN297上のMan3(glcNAc)4(Fuc)1グリカンと、他方のHCのN297上のMan3(glcNAc)3(Fuc)1グリカン;G0F/G1F、1つのHCのN297上のMan3(glcNAc)4(Fuc)1グリカン、および他のHCのN297上に1つのガラクトース残基((Gal)1)、3つのマンノース残基、4つのN-アセチルグルコサミン残基、および1つのフコース残基を含むグリカン((Gal)1Man3(glcNAc)4(Fuc)1)。これらの化学構造の描写については、例えば、Yang et al.(2016)、Ultrafast and high-throughput N-glycan analysis for monoclonal antibodies,MAbs8(4):706-717およびグリカンの記号命名法(SNFG)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/snfg.htmlで入手可能)を参照され、これは参照により本明細書に組み込まれる。x軸は、検出された抗体種の質量(ダルトン)を示し、y軸は、分析されたサンプル内の存在量のパーセントを反映するパーセント強度を示す。
図14A】LC-MSによる異なるロットのPSB205の分析を示す。実施例5に記載のとおり、2つの異なるロットのPSB205をLC-MSによって分析した。パネル図14Aおよび図14Bは、それぞれ、PSB205-ToxロットおよびPSB205-GMPロットからのデータを示す。x軸は、検出された抗体種の質量(ダルトン)を示し、y軸は、分析されたサンプル内の存在量のパーセントを反映するパーセント強度を示す。抗体のグリコシル化状態は、図13のように示す。
図14B】LC-MSによる異なるロットのPSB205の分析を示す。実施例5に記載のとおり、2つの異なるロットのPSB205をLC-MSによって分析した。パネル図14Aおよび図14Bは、それぞれ、PSB205-ToxロットおよびPSB205-GMPロットからのデータを示す。x軸は、検出された抗体種の質量(ダルトン)を示し、y軸は、分析されたサンプル内の存在量のパーセントを反映するパーセント強度を示す。抗体のグリコシル化状態は、図13のように示す。
図15】PSB205のGMPロットからの熱容量プロットを示す図である。この実験は、実施例7に示す。x軸は、温度(℃)を示し、y軸は、モル熱容量(kcal/モル/℃)を示す。
図16】CMV感染細胞溶解物および抗体で刺激され、抗CD8抗体およびHLA-CMVデキストラマーで標識された細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である。この実験は、実施例8に記載されている。すべてのパネルのx軸は、FITC標識抗CD8抗体からの蛍光を示し、y軸は、フィコエリトリン(PE)標識HLA-CMVデキストラマーからの蛍光を示す。各パネルの四角で囲んだ領域は、CD8CMV細胞を示し、四角で囲んだ領域の左側の数字は、CD8CMV細胞である全細胞のパーセンテージを示す。パネル図16Aは、IgG1アイソタイプ対照抗体およびCMV感染細胞ライセートで刺激した細胞からのデータを示す。パネル図16Bは、PSB103およびCMV感染細胞ライセートで刺激した細胞からのデータを示す。パネル図16Cは、PSB105およびCMV感染細胞ライセートで刺激した細胞からのデータを示す。パネル図16Dは、PSB205およびCMV感染細胞ライセートで刺激した細胞からのデータを示す。
図17A】CMV感染細胞ライセートおよび抗体で刺激した細胞中のCD8CMV細胞のパーセンテージおよび絶対数の定量を示す図である。この実験は、実施例8に記載されている。パネル図17Aは、CD8CMV細胞であった全細胞のパーセンテージを示す。x軸は、サンプルを刺激するために使用された抗体を示し、y軸は、CD8CMV細胞であった全細胞のパーセンテージを示す。パネル図17Bのグラフは、検出されたCD8CMV細胞の絶対数をy軸に示し、サンプルを刺激するために使用した抗体をx軸に示す。両方のパネルで、エラーバーは標準偏差を示す。簡素にするために、エラーバーの半分のみを示す。
図17B】CMV感染細胞ライセートおよび抗体で刺激した細胞中のCD8CMV細胞のパーセンテージおよび絶対数の定量を示す図である。この実験は、実施例8に記載されている。パネル図17Aは、CD8CMV細胞であった全細胞のパーセンテージを示す。x軸は、サンプルを刺激するために使用された抗体を示し、y軸は、CD8CMV細胞であった全細胞のパーセンテージを示す。パネル図17Bのグラフは、検出されたCD8CMV細胞の絶対数をy軸に示し、サンプルを刺激するために使用した抗体をx軸に示す。両方のパネルで、エラーバーは標準偏差を示す。簡素にするために、エラーバーの半分のみを示す。
図18】腫瘍モデル系におけるPSB205およびその成分抗体の効果を示す図である。実験は、実施例9に詳細に記載されている。x軸は、実験期間中の日数を示し、y軸は、腫瘍体積をmmで示す。腫瘍に対する試験済みの抗体治療は次の記号で示す:黒丸、IgG陰性対照抗体;黒四角、PSB103(抗hPD1抗体);上向き黒三角形、PSB105(抗hCTLA4抗体);下向き黒三角形、PSB205(PSB103およびPSB105の混合)。アスタリスクは、IgG対照抗体のデータとPSB205のデータと間の差の統計的有意性レベルに関する以下のp値を示す。*、p=0.03;**、p=0.01;および***、p=0.0006。
図19】個々の患者の腫瘍直径のベースラインからの変化を示す図である。方法は、実施例10に記載されている。棒グラフは、表12に列挙されている評価可能な患者32名のうち、肺癌(LC)患者13名(青色の棒)および上咽頭癌(NPC)患者19名(茶色の棒)を含む、個々の各ヒト患者の腫瘍直径のベースラインからの変化を示している。y軸は、腫瘍直径の変化をmm単位で示す。直径の変化も、各棒グラフの上(増加の場合)または各棒グラフの下(減少の場合)に示される。各患者に投与されるPSB205の投与量は、x軸の真下に示す。その上に星印が付けられた3つの棒グラフは、元の腫瘍の直径の変化を有することに加えて、新規腫瘍を有している患者を示す。
図20】PSB205の生成および特性評価を示す図である。(図20A):1つの哺乳動物細胞株から2つの正しく組み立てられた抗体を産生するためのMabPair技術の原理を示す。独自に設計されたHCペアリングキーおよびHC/LCペアリングキーを使用して、同族のHCおよびLCペアリングを制御し、望ましくない副産物を排除できる。(図20B):産生細胞株におけるPSB103およびPSB105の共発現は、それぞれhuIgG4およびhuIgG1特異的試薬の細胞内染色によって検出された。(図20C):PSB205サイズバリアントをサイズ排除HPLCによって分析した。クロマトグラムは、PSB205の2つのmAbのモノマーのメインピークを重ねて示し、高分子量(HMW)種の前部マイナーピーク、および低分子量(LMW)種の後部マイナーピーク(検出されない)を示している。その結果、モノマー(メインピーク)によって定義されるPSB205純度は、典型的には、様々なバッチで97~99%と測定された。(図20D)PSB205における2つのmAbのベースライン分離は、疎水性相互作用HPLC法によって達成された。したがって、これは2つのmAb、[抗PD-1]:[抗CTLA-4](w/w)の濃度比を決定するためのツールとして機能した。(図20E)液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)によるPSB205の無傷のグリコフォーム質量プロファイルの分析を示す。デコンボリューションされた質量スペクトルの149,320Daおよび147,610Daの2つのメインピークは、それぞれ抗PD-1および抗CTLA-4のG0F/G0Fグリコフォームと十分に一致する。(図20F):LC-MS/MSペプチドマッピングによるPSB205中の2つのmAbの特徴を示す図である。いずれかのmAbから同定されたペプチドを区別するために、精製した個々の抗PD-1および抗CTLA-4もPSB205サンプルと共に分析した。抗PD-1および抗CTLA-4のトリプシンペプチドのほとんどは、2つのマップに割り当てられたピークで同定された。中央のパネルには、PSB205のペプチドマップ(抗PD-1および抗CTLA-4の両方を含む)が含まれており、これは2つの個別のmAbペプチドマップを組み合わせたペプチドマップを表す。同定された配列カバー率は、抗PD-1については98.2%、抗CTLA-4については95.8%であったため、タンパク質配列は、高い信頼度で確認された。
図21】PSB205の前臨床評価を示す図である。(図21A):健康なドナーからの単球由来未熟樹状細胞を、10倍段階希釈した様々な抗体の存在下で、1:10および1:3の比率で、異なるドナーからの精製T細胞と混合した(10μg/ml~0.001μg/ml)。6日目に、上清中のIFNガンマのレベルをELISAによって評価した。(図21B):健康なドナーからのPBMCを、異なる比率(5:1~0.2:1)で混合した様々な濃度のPSB103(0.5μg/ml~20μg/ml)およびPSB105(0.05μg/ml~4μg/ml)の存在下で、SEB(100ng/ml)で96時間刺激した。上清中のIL-2のレベルをELISAによって測定した。等高線プロットは、異なる濃度および様々な比率でのIL-2の倍加を示す。各データポイントは、グラフ上の赤い点で表す。右側の棒グラフは、倍加を白(最高)および緑(最低)で色別に表す。この結果は、異なるドナーからの3つの実験を代表するものである。(図21C):HLA-CMVpp65陽性ドナーからのPBMCを、様々な抗体の存在下で、CMV(3μg/mL)ライセートで7日間刺激した:IgG1(5μg/mL)、PSB103(5μg/mL)、PSB105(2.5μg/mL)、PSB205(5μg/mL)。培養物中のCMVpp65陽性CD8T細胞の数をフローサイトメトリーによって数えた。(図21D):HCC827をNCGマウスに移植した。腫瘍サイズが60~80mm^3に達したとき、「方法および材料」に記載のとおり、健康なドナーからのヒトPBMCを使用して、NCGマウスを再構成した。対照ヒトIgG1(7.5mg/kg n=5)、PSB103(5mg/kg n=5)、PSB105(2.5mg/kg n=5)、およびPSB103:PSB105と2:1の比率で混合(7.5mg/kg n=5)に週に2回、3週間i.p.注射した。(図21E):それぞれ5mg/kgおよび3mg/kgをカニクイザルに単回静脈内投与後のPSB103(左)、PSB105およびイピリムマブ(右)の血清濃度対時間曲線を示す図である。
図22】サイクル1および定常状態(サイクル6)における投与後の時間を対応させたaCTLA-4(図22A)およびaPD-1(図22B)の平均(+SD)血漿濃度であり、Q3Wの0.3mg/kg~10mg/kgの用量レベルでのlog10スケール(μg/mL)で示す。1つの時点での値の半分以上(>50%)がBQLである場合、平均値は、0として報告される。これらのBQL値については、片対数スケールプロットでは省略される。1つの時点において、サンプルが2つのみ存在する場合、エラーバーは、表示しない。(図22C):PSB205治療後の循環CD3T細胞におけるPD-1受容体の占有率を示す図である。PD1受容体占有率の平均パーセンテージを、PSB205の治療前および後の様々な時点でプロットした。(図22D)PSB205治療後のCD4およびCD8 T細胞の増殖を示す図である。治療前または治療後168時間後のKi67+CD4 T細胞(左パネル)とCD8 T細胞(右パネル)のパーセンテージを各患者において比較し、線で結び付けた。治療前または治療後168時間のICOS+CD4 T細胞の平均値:パーセンテージを比較し、線で結び付けた。(図22D)および(図22E)に示すp値は、ウィルコクソンの符号付きランク検定を使用して計算した。
図23】腫瘍反応を示す図である。ベースラインからの標的病変の最良客観的反応(図23A)。1名の患者は、ベースライン後の腫瘍評価結果を1つのみ得て、標的病変のうちの1つを測定できなかった。以前の免疫療法を受けていない患者(図23B)および以前の抗PD-1/PD-L1療法を受けた患者(図23C)における腫瘍縮小のベースラインからの変化率を示す。-30%の点線は、PRのしきい値を示す。個々の患者の治療期間(図23D)を示す。図23Eには、以前のPD-L1/TGFβ二重特異性阻害剤療法に対して抵抗性であった、5mg/kgでの上咽頭癌患者における代表的な部分腫瘍応答を示す。すべての標的病変の直径の合計は、ベースラインで101mm、7週目で47mm(-53.5%)であった。図23Fは、以前のニボルマブおよび4-1BB阻害剤療法に対して抵抗性であった、10mg/kgでの非小細胞肺癌患者における代表的な部分腫瘍応答を示す。すべての標的病変の直径の合計は、ベースラインで77mm、13週目で49mm(-36.4%)であった。
図24】両方のパネル図24Aおよび図24Bは、PSB103と称される抗PD-1IgG4のAllo-MLRにおけるT細胞活性化の増強を示す。Ab=抗体;IFNγ=インターフェロンガンマ;MLR=混合リンパ球反応;Nivo=ニボルマブ;Pembro=ペンブロリズマブ。
図25】二重細胞レポーター細胞アッセイにおいて、PSB205およびPSB103が、PD-1結合および機能活性を阻害し(図25A)、PSB205およびPSB105が、CTLA4媒介阻害活性を阻害した(図25B)ことを示す図である。
図26】PSB205がSEBスーパー抗原によって誘導されるT細胞活性化を相乗的に増強することを示す。
図27】HLA-CMVpp65陽性ドナーからのPBMCが、7日間、様々な抗体の存在下でCMV(3ug/ml)ライセートによって、二重で刺激されたことを示す図である:IgG1(5ug/ml)、PSB103(5ug/ml)、PSB105(2.5ug/ml)、PSB205(5ug/ml)。培養物中のCMVpp65陽性CD8T細胞の数をフローサイトメトリーによって数えた。
図28】Jeko-1をNCGマウスに移植した。腫瘍サイズが80~100mm^3に達したとき、「方法および材料」に記載のとおり、健康なドナーからのヒトPBMCを使用して、NCGマウスを再構成した。対照ヒトIgG1(7.5mg/kgn=5)、PSB103(5mg/kg n=5)、PSB105(2.5mg/kg n=5)、およびPSB103:PSB105と2:1の比率で混合(7.5mg/kg n=5)に週に2回、3週間i.p.注射した。
図29】PSB205治療により、カニクイザルにおける循環CD4+/CD278+T細胞のレベルが増加することを示す。16日目(2回目の投与から24時間後)の推定血清濃度を、16日目のPSB205治療サルの血液中の循環CD4+/CD278+T細胞の%に対してプロットした。
図30】CTLA-4(図30A)およびaPD-1(図30C)の実際の用量によって正規化された個々のCmax、ならびにaCTLA-4(図30B)およびaPD-1(図30D)について実際の用量によって正規化させた個々のAUC0-tが、用量レベルに対応させて示されることが示されている。
図31】PSB205治療後のICOS+CD4+CD8-T細胞の拡大を示す図である。異なる時点(投与前、治療後168時間および336時間)における各用量群のICOS+CD4 T細胞の平均パーセンテージを比較し、実線で結び付けた。
図32】PSB205治療後のICOS+CD4+CD8-T細胞の拡大を示す図である。異なる時点(投与前、治療後168時間および336時間)における各用量群のICOS+CD4 T細胞の平均パーセンテージを比較し、実線で結び付けた。
【発明を実施するための形態】
【0055】
【表1】
【0056】
本明細書に記載されるのは、1つの細胞株中で産生され得る抗体の混合物または組み合わせであり、本明細書に記載される混合物中の抗体は、抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体であり、それぞれが、特定の配列および特性を有する。抗体は、混合物中に特定の比率で存在する。本明細書に提供されるデータによって明らかであるように、この混合物は、抗体単独、2つの別個の細胞株中で産生された抗体の混合物、および/または抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の他の混合物のいずれかと比較して、有利な特性を有する。
【0057】
定義
本明細書で意味する「有害事象」(AE)とは、医学的治療または処置の使用に一時的に関連し、医学的治療または処置に関連しているとみなされ得る、またはみなされ得ない、好ましくない意図しないあらゆる兆候(臨床検査所見の異常を含む)、症状、または疾患である。AEは、以下のようにグレード1~5AEに分類される:グレード1、無症候性、または臨床もしくは診断検査で観察される軽度の症状を含む軽度のAE、いかなる介入も示さない;グレード2、年齢に応じた日常生活活動(ADL)を制限し得る最小限の症状を含む中程度のAE、局所的または非侵襲的介入を示す;グレード3、直ちに生命を脅かすものではなく、生活に支障をきたし得る、またはセルフケアに伴うADLを制限し得る、入院または入院の延長の必要性を示す重度または医学的に重大なAE;グレード4、緊急介入を示す生命を脅かすAE;グレード5、死に関連するAE。免疫関連有害事象(irAE)は、本明細書においてAEが意味する範囲内に含まれる。irAEは、一時的に薬物治療に関連しており、身体内のあらゆる器官系、最も一般的には消化管、内分泌腺、皮膚、および肝臓の炎症で構成され得る。例えば、Postow et al.(2018)、Immune-related adverse events associated with immune checkpoint blockade,New Engl. J.Med.378:158-168を参照のこと(DOI:10.1056/NEJMra1703481で入手可能であり、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。中枢神経系、または心血管系、肺系、筋骨格系、および血液系の炎症も、irAEの一部であり得る。同上
【0058】
本明細書で意味する「改変」は、アミノ酸配列の変化である。改変は、挿入、欠失、または置換であり得る。「改変」とは、1つのアミノ酸の挿入、欠失、または置換である。例えば、欠失によってアミノ酸配列から3つのアミノ酸が除去された場合、3つの改変(この場合は欠失)が発生している。置換である改変は、元の配列中に存在するアミノ酸、その後に元の配列内のアミノ酸の位置、その後に元のアミノ酸を置き換えるアミノ酸を記載することによって言及することができる。例えば、G133Mは、元の配列の133位のグリシンが、メチオニンに置き換えられることを意味する。さらに、133Mは、133位のアミノ酸がメチオニンであることを意味するが、元のアミノ酸の同一性を特定するものではなく、メチオニンなど、任意のアミノ酸であり得る。最後に、G133は、グリシンが元の配列の133位のアミノ酸であることを意味する。
【0059】
本明細書で意味する「抗体」は、少なくとも1つの重鎖(HC)可変ドメイン(V)または軽鎖(LC)可変ドメイン(V)を含むタンパク質である。抗体は、多くの場合、VおよびVの両方を含む。VおよびVは、例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,Public Health Service,National Institutes of Health,NIH Publication No.91-3242,1991,pp.xvi-xixおよびpp.103-533に詳細に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。「抗体」には、単鎖Fv抗体(リンカーによって連結されたVおよびVを含むscFv)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv:Fc抗体などの異なる形式を有する分子(Carayannopoulos and Capra,Ch.9 in FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,3.sup.rd ed.,Paul, ed.,Raven Press,New York,1993,pp.284-286に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる)、および他の多くの可能な形式の中でも、以下に定義するIgG抗体が挙げられる。
【0060】
本明細書で意味する「二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)」は、例えば、Huehls et al.(2015),Bispecific T cell engagers for caner immunotherapy,Immunol.Cell Biol.93(3):290-296に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
「化学療法剤」は、分裂中の細胞を標的とし、細胞分裂に関連するプロセス、例えば、DNA複製、RNA合成、タンパク質合成、有糸分裂紡錘体の組み立て、分解または機能、および/またはヌクレオチドまたはアミノ酸など、これらのプロセスにおいて任意の役割を担う分子の合成もしくは安定性を妨害する。したがって、化学療法剤は、がん細胞および他の分裂細胞の両方を死滅させ得る。化学療法剤は、当技術分野においてよく知られている。それらには、例えば、以下の剤が挙げられる:アルキル化剤(例えば、ブスルファン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ストレプトゾトシン、メチルロムスチン、シス-ジアンミンジクロロ白金、チオテパ、およびアジリジニルベンゾキノン);無機イオン(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン);ナイトロジェンマスタード(例えば、塩酸メルファラン、クロランブシル、イホスファミド、および塩酸メクロレタミン);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU));抗腫瘍性抗生物質(例えば、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ダウノマイシン、ミトラマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、およびブレオマイシン);植物誘導体(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、VP-16、およびVM-26);代謝拮抗剤(例えば、ロイコボリンを含むまたは含まないメトトレキサート、ロイコボリンを含むまたは含まない5-フルオロウラシル、5-フルオロデオキシウリジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ゲムシタビン、シタラビン、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、およびフルダラビン);ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、イリノテカン、およびトポテカン);ならびにアクチノマイシンD、ダカルバジン(DTIC)、mAMSA、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、L-アスパラギナーゼ、およびミトキサントロン。例えば、Cancer:Principles and Practice of Oncology,4.sup.th Edition,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,Pa.(1993)を参照されたい。この関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
他の化学療法剤としては、上記に列挙したものと同じ一般的なメカニズムによって作用するものが挙げられる。例えば、アルキル化剤およびナイトロジェンマスタードなどのように、DNAをアルキル化することによって作用する剤は、化学療法剤とみなされる。例えば、メトトレキサート、シタラビン、6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、およびゲムシタビンなどのヌクレオチド合成を妨げる剤は、化学療法剤とみなされる。有糸分裂紡錘体毒は、例えばパクリタキセルおよびビンブラスチンと同様に化学療法剤とみなされている。DNA複製を妨害するトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ポドフィロトキシン)は、化学療法剤とみなされている。様々な機構によってDNA合成を妨げる抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、およびマイトマイシン)は、化学療法剤とみなされている。アミノ酸をカルバモイル化する剤(例えば、ロムスチン、カルムスチン)、またはアスパラギンプールを枯渇させる剤(例えば、アスパラギナーゼ)も化学療法剤とみなされる。Merck Manual of Diagnosis and Therapy,17.sup.th Edition,Section 11,Hematology and Oncology,144.Principles of Cancer Therapy,Table144-2(1999)。化学療法剤には、上記に挙げた化学療法剤によって影響を受けるのと同じ細胞プロセスに直接影響を与えるものが特に含まれる。
【0063】
抗体の混合物に関連して本明細書で意味する「同族」HCは、特定のLCが対合して特定の抗原に対する結合部位を形成することが知られているHCである。例えば、既知の完全長IgG抗体Xが、抗原Xに結合する場合、抗体X HCは、抗体X LCの同族HCであり、その逆も同様である。さらに、抗体の混合物が抗原Yに結合する抗体Xおよび抗体Yの両方を含む場合、抗体Y HCは、抗体X LCに対して「非同族」であり、その逆も同様であり、抗体Y LCは、抗体X HCに対して「非同族」であり、その逆も同様である。
【0064】
「相補性決定領域」(CDR)は、VまたはV内の超可変領域である。各VおよびVは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる3つのCDRを含む。CDRは、抗体の表面にループを形成し、主に抗体の結合特異性の決定に関与する。CDRは、さらに4つの保存されたフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4と呼ばれる)の間、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4などに点在している。Kabat et al.は、V CDRを次のように配置する:CDR1は、31~35位にある(35Aおよび35Bに番号付けされた挿入であり得る);CDR2は、50~65位にある(52A~52Cに番号付けされた挿入であり得る);CDR3は、95~102位にある(100A~100Kの番号付けされた挿入であり得る)。Kabat et al.、上記、xvii。重鎖CDRのこれらの位置は、V CDR1が本明細書では26~35位を含むとみなされることを除いて、本明細書で使用される。Kabat et al.は、V CDRを以下のように配置する:CDR1は、24~34位にある(27A~27Fに番号付けされた挿入であり得る);CDR2は、50~56位にある;CDR3は、89~97位にある(95A~95Fに番号付けされた挿入であり得る)。Kabat et al.,上記、xvii、参照により本明細書に組み込まれる。Vを有するCDRのこれらの位置が本明細書で使用される。直前に使用した番号付けスキームは、Kabat et al.によって利用されたものであり、Kabat et al.,上記、103~539ページに例示されている。
【0065】
2つの治療/薬物が同じ短い時間枠内、例えば同じ日、または同じより長い時間枠内で投与される場合、治療または薬物は、別の治療または薬物と「同時に」投与されたとみなされる。このようなより延長された時間枠には、例えば、一方の治療/薬物が週に1回投与され、他方が4日ごとに投与される状況が含まれ得る。2つの治療/薬物が同日に投与されることはまったくない、またはまれである場合もあり得るが、2つの治療/薬物は、数週間、数ヶ月、またはそれ以上の一般的な期間にわたって、継続して投与される。同様に、一方の薬物が年に1回投与され、他方の薬物が毎週投与される場合、年に1回投与される薬物の投与前および/または投与後に、毎週投与される薬物がその年の間に投与される場合、それらは「同時」に投与されたものとみなされる。したがって、本明細書で意味するように、2つの治療/薬物の「同時」投与には、共通の期間に継続する2つの異なる治療/薬物による進行中の治療が含まれる。
【0066】
「完全奏効」(CR)は、治療中のがん患者に関連して使用される場合、RECISTガイドライン(バージョン1.1)に記載のとおり評価される。Eisenhauer et al.(2009),New response evaluation criteria in solid tumours:revised RECIST guideline(version 1.1.),Eur. J.Cancer 45:228-247、その全体が本明細書に組み込まれる。これらのガイドラインでは、ベースラインにおいて、最大5個の腫瘍の、測定可能なすべての腫瘍の直径を測定することによって、全体的な腫瘍量を評価する方法について説明している。これらの直径を加算して、合計を求める。これらの測定された腫瘍は、「標的病変」と呼ばれる。CRでは、本試験の過程において、すべての標的病変が検出不可能となった。
【0067】
「部分奏効」(CR)も、治療中のがん患者に関連して使用される場合、RECISTガイドライン(バージョン1.1)に記載のとおり評価される。PRを有すると判定された患者では、標的病変(複数可)の直径の合計が、ベースラインでのこれらの直径の合計と比較して、治療の過程で、少なくとも30%減少している。
【0068】
「進行性疾患」(PD)も、治療中のがん患者に関連して使用される場合、RECISTガイドライン(バージョン1.1)に記載のとおり評価される。PDを有すると判定された患者では、標的病変(複数可)の直径の合計が、試験の過程中に検出された最小の合計と比較して、少なくとも20%増大している。この最小の合計は、ベースラインで検出された合計、または本試験の後半で検出された合計であり得る。さらに、合計が少なくとも20%増加した場合には、少なくとも5mmの絶対的増加を示す必要がある。1つ以上の新規腫瘍の出現もPDであるとみなされる。
【0069】
「安定疾患」(SD)も、治療中のがん患者に関連して使用される場合、RECISTガイドライン(バージョン1.1)に記載のとおり評価される。SDは、試験の過程において検出された直径の最小合計と比較した場合、標的病変の直径の合計がPRとして認定されるほど十分に縮小していないか、またはPDとして認定されるほど十分に増大していないことを意味する。この最小の合計は、ベースラインで検出された合計、または本試験の後半で検出された合計であり得る。
【0070】
「客観的奏効率」(ORR)は、PRを達成した患者の割合とCRを達成した患者の割合との合計である。
【0071】
「病勢コントロール率」(DCR)は、PRを達成した患者の割合と、CRを達成した患者の割合と、SDを達成した患者の割合との合計である。
【0072】
本明細書で意味する場合、第1の核酸配列がアミノ酸配列を「コードする」とは、遺伝暗号に従って、第1の核酸配列が、転写および翻訳されたときに、そのアミノ酸配列を含むタンパク質を産生するための青写真を提供することができる場合である。第1の核酸配列はまた、第1の核酸配列を含むポリヌクレオチドが導入された宿主細胞によって産生されるが、第1の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含まない同じ宿主細胞によって産生されないタンパク質によって構成されるアミノ酸配列を「コードする」。このようなアミノ酸配列は、大部分が、遺伝暗号によって予測されるとおりであるが、アミノ酸配列を変化させる翻訳後修飾を含み得る(または含み得ない)。このようなわずかに改変されたアミノ酸配列は、実際には、第1の核酸配列によってコードされており、本明細書では、たとえそれが、予測されたアミノ酸配列からの軽微な変動を含み得るとしても、実際にその産生のための青写真として機能する。
【0073】
本明細書で意味する「Fc断片」、「Fc領域」、または「Fc部分」は、HC由来のヒンジドメイン(ヒンジ)、第2のHC定常ドメイン(C2)、および第3のHC定常ドメイン(C3)から本質的になるが、IgAまたはIgMなどの一部のアイソタイプでは、C3の下流に、領域、例えば第4のHC定常ドメイン(C4)をさらに含み得る。
【0074】
本明細書で意味する「重鎖(HC)」は、少なくともV、第1のHC定常ドメイン(C1)、ヒンジ、C2、およびC3を含む。これらのドメインをすべて含むHCは、「完全長HC」または「IgG HC」(HCがIgGアイソタイプのものである場合)とも呼ばれ得る。IgAまたはIgMなどの一部のアイソタイプには、IgM C4ドメインなどの追加の配列が含まれ得る。
【0075】
「ヒト」ヌクレオチドまたはアミノ酸配列、タンパク質、または抗体は、ヒトにおいて天然に存在するもの、または以下に説明する少数の改変を除いて、そのような配列またはタンパク質と同一であるものである。多くのヒトのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が、例えば、当該技術分野における「ヒト」という語の使用を例示している上記のKabat et al.,に報告されている。本明細書で意味する「ヒト」アミノ酸配列または抗体は、天然に存在する配列と比較して、1つ以上の挿入、欠失、または置換を含み得る。ただし、「ヒト」アミノ酸配列には、天然に存在する配列の100個のアミノ酸ごとに1個のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換が10個を超えて含まれないことを条件とする。同様に、ヒトのヌクレオチド配列には、天然に存在する配列中において、300ヌクレオチドごとに1ヌクレオチドの挿入、欠失、および/または置換を、30を超えずに含む。VまたはV配列の特定の場合には、CDRは、非常に可変であることが予想され、特定のVまたはVアミノ酸配列(またはそれをコードするヌクレオチド配列)が、「ヒト」配列であるかを決定する目的である場合、CDR(またはそれらをコードするヌクレオチド)は、配列の一部とはみなされない。
【0076】
本明細書で意味する「ヒト化」抗体は、抗体が非ヒト起源であるが、可能な限りヒトになるように操作され、それにより、抗体の安定性および結合特性を保持しながら、望ましくはヒトにおける免疫原性を低下させる抗体である。一般に、これは、定常ドメインおよび可変ドメインのフレームワーク領域の大部分またはすべてがヒト配列またはほぼヒト配列であるのに対し、CDRは、異なる生物に由来することを意味する。しかし、例えば、マウス抗体由来のCDRをヒトのフレームワークに移植するのみでは、所望の特性を有する抗体が産生されない可能性があり、さらなる修飾が必要になり得る。近年では、ヒト化の結果を合理化し改善するための様々なアプローチが開発されている。例えば、Choi et al.(2015)、mAbs7(6):1045-1057、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0077】
本明細書で意味する「IgG抗体」は、(1)それぞれがV、C1、ヒンジ、C2、およびC3を含む2つのHC、ならびに(2)それぞれがVおよびLC定常ドメイン(C)を含む2つのLCを含む。IgG抗体の重鎖は、IgGアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のものである。これらのドメインは、例えば、Kabat et al.、上述、pp.xv-xixおよび647~699に記載されており、これらのページは、参照により本明細書に組み込まれる。Cは、カッパ(Cκ)またはラムダ(Cλ)ドメインであり得る。
【0078】
本明細書で意味する「免疫調節分子」は、免疫系の活性を媒介することができる成分、例えばタンパク質と相互作用し、それによって免疫系の活性を調節する分子である。免疫系の活性は、以下の実施例8に記載のサイトメガロウイルス(CMV)リコール応答アッセイで評価することができ、免疫調節分子は、陰性対照分子と比較して、このアッセイにおいて活性を増加または減少させることができる。一例として、本明細書に記載の抗hPD1 PSB103抗体およびPSB205抗体混合物は、この定義によれば免疫調節分子である。
【0079】
本明細書で意味する「軽鎖(LC)」は、VおよびCを含み、これはCκまたはCλであり得る。これらのドメインは、その例示的なアミノ酸配列を含めて、例えば、Kabat et al.,上記、xiii-lix,103-309、および647-660に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
抗体の混合物という文脈における抗体の「主要種」とは、本明細書で意味する場合、混合物内の抗体の総量の少なくとも10%を構成する特定の抗体である。抗体の混合物中に主要種がいくつあるかを決定するには、実施例5に記載され、米国仮出願第62/342,167号の図14に示されている低pHカチオン交換(CEX)クロマトグラフィー(米国仮出願第62/342,167号の一部が、参照により本明細書に記載される)が実施され得る。この方法は、Chen et al.(2010),Protein Science,19:1191-1204によって説明され、これは、その全体が本明細書に組み込まれる。簡単に言えば、これは、Waters Alliance2695高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用する、Thermo ProPac(商標)WCX-10 weak CEXカラム、4x250mmを使用し、その後に50mm guardカラム(ProPac(商標)WCX-10G)を使用する。クロマトグラフィーは、100%緩衝液A(20mM酢酸ナトリウムpH5.2)から100%緩衝液B(20mM酢酸ナトリウムと250mM塩化ナトリウムpH5.2)の直線勾配で、30分間実施され得る。カラムを高塩(1M塩化ナトリウム)で洗浄し、緩衝液Aの開始条件に再平衡化することができる。抗体は、214nmの吸光度により、カラム流出液中で検出され得る。検出されたピークの相対量は、EMPOWER(商標)ソフトウェア(Waters Corp.,Milford,MA,USA)を使用して決定され得る。低pH CEXは、異なる全長抗体種を区別でき、混合物中の特定の抗体種の相対量を定量するために使用可能である。
【0081】
本明細書において意味される、抗体の混合物内の抗体の「微量種」は、混合物中の抗体の総量の10%未満を構成する。これは、「主要種」の定義で説明されているように、低pH CEXクロマトグラフィーによって決定され得る。
【0082】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的に使用される。
【0083】
本明細書で意味する「腫瘍溶解性ウイルス」は、正常細胞と比較して、がん細胞を優先的に溶解するウイルスである。腫瘍溶解性ウイルスは、天然に存在し得るか、または研究室で構築され得る。腫瘍溶解性ウイルスの例としては、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびワクシニアウイルスが挙げられる。
【0084】
本明細書で意味する「PSB103」は、配列番号1および5のアミノ酸配列をコードするDNA(複数可)によってコードされる抗hPD1IgG4抗体を指す。
【0085】
本明細書で意味する「PSB105」は、配列番号13および17のアミノ酸配列をコードするDNA(複数可)によってコードされる抗hCTLA4 IgG1抗体を指す。
【0086】
本明細書で意味する「PSB205」は、上で定義したPSB105およびPSB103の抗体混合物であり、混合物中のPSB105:PSB103の重量/重量(w/w/)比は、それぞれ、1:1~1:4であり、ここで、混合物は、PSB105およびPSB103以外の主要種の抗体を含まない。
【0087】
本明細書で意味する「放射線」は、がんの治療に使用される。本明細書で意味する放射線治療には、例えば、光子、陽子、または電子ビームを使用する外部ビーム放射線、および/または内部放射線が含まれ得る。多くの種類の外部放射線療法、例えば、3D構造放射線療法、強度変調放射線療法(IMRT)、画像誘導放射線療法(IGRT)、トモセラピー(登録商標)、定位放射線手術、および定位体放射線療法がある。内部照射法には、例えば、放射性物質、例えば放射性ヨウ素を使用する、近接照射療法または全身投与が含まれる。
【0088】
本明細書で意味するカニクイザルにおける「単回用量試験」は、試験対象の薬物を1回用量のみカニクイザルに投与する薬物動態試験である。このような試験は、実施例3に記載の方法からの軽微な変更、例えば、投与される薬物の用量または薬物を投与されるサルの数の変更が、依然として本明細書で意味する「単回用量試験」とみなされる範囲内であることを理解して、実施例3に本質的に記載のとおりに実施される。
【0089】
本明細書で意味する「カニクイザルにおける単回用量試験におけるin vivo半減期(t1/2)」は、本質的に以下の実施例3に記載のとおりに決定される。例えば、異なる用量を試験する、および/または異なる数のサルを試験するなど、実施例3に記載のプロトコルと軽微に異なるプロトコルの結果によるin vivo t1/2も、本明細書で意味する「カニクイザルにおける単回用量試験でのin vivo t1/2」とみなされる。
【0090】
本明細書で意味する「標的生物製剤」は、別の特定の分子(タンパク質であり得る)との相互作用を介して、細胞の生物学的状態の態様に影響を与え得るタンパク質である。例えば、「標的生物製剤」は、細胞の生存、増殖、特定のサイトカインまたはタンパク質の産生などの能力に影響を与え得る。一例として、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、「標的生物製剤」であり、これは、PD1と相互作用し、増殖の増加およびIFNγ産生の増加など、T細胞に複数の生物学的効果を引き起こすためである。
【0091】
本明細書で意味する「標的阻害剤」は、特定の細胞分子(タンパク質であり得る)との相互作用を介して、細胞の生物学的状態の態様に影響を与えることができる低分子である。例えば、「チロシンキナーゼ阻害剤」は、チロシンキナーゼとの相互作用を介して、チロシンキナーゼの活性(様々な細胞機能に影響を与える)に影響を与える低分子である。
【0092】
本明細書で意味する場合、特定の疾患または状態に対する「治療」とは、1つ以上の抗体、または1つ以上の抗体をコードするポリヌクレオチドの投与を含み得、その結果、ヒト患者または疾患もしくは状態を反映すると考えられる動物モデル系において、1つ以上の症状が軽減されるか、または疾患もしくは状態の予想される進行が減少または中断される一連の行動を指す。あるいは、またはさらに、治療により、疾患または症状を反映すると考えられるin vitro細胞ベースアッセイの結果が変化し得る。これらの違いは、ヒトまたは動物における症状の客観的測定によって、または細胞ベースのアッセイにおける様々なパラメータ(例えば、1つ以上のサイトカイン、例えばIFNγの産生、細胞増殖、細胞死、細胞傷害性免疫細胞、例えば、T細胞の増殖など)の測定によって、確認され得る。例えば、がんの「治療」の場合、その治療により、結果として、腫瘍体積の減少、ヒトまたは動物モデル系において予期される腫瘍転移の消失、生存期間の延長、またはがんに罹患しているヒトまたは動物における無増悪期間または無病生存期間の延長をもたらし得る。がん治療により、結果として、細胞ベースのアッセイにおける免疫系の活性化を示す指標の増加、例えば、抗原特異的T細胞の数の増加、および/またはT細胞による、サイトカイン、例えば、IFNγおよび/またはIL-2の産生の増加がもたらされ得る。
【0093】
抗hPD1抗体
本明細書に記載の抗hPD1抗体は、ヒトまたはヒト化IgG抗体であり得る。本明細書に記載の抗hPD1抗体のHCは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 HCなどのヒトまたはヒト化IgG HCであり得る。いくつかの実施形態では、このHCは、IgG4 HCである。一態様では、このHCは、配列番号2の核酸配列によってコードされ得る。配列番号2によってコードされる例示的なアミノ酸配列としては、配列番号1および/もしくは配列番号10、または配列番号1もしくは配列番号10に対して4、3、2、もしくは1つの改変を含むアミノ酸配列が挙げられる。ポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列は、例えば遺伝暗号によって予測されるアミノ酸配列と比較して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。このような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は配列番号10であり、これは、CHO宿主細胞で作製された抗hPD1抗体のHCに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号10のアミノ酸配列を有するHCを含む抗hPD1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞において産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体のHCのアミノ酸配列は、HCのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号1または配列番号10に対する10以下、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0個の改変を含み得る。
【0094】
混合物中の抗hPD1のVは、例えば、配列番号3および/もしくは配列番号9のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または配列番号3および/もしくは配列番号9に対して4、3、2、または1つの改変を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。そのような核酸配列の1つは、配列番号4である。配列番号4によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号3と比較して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。そのような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は、配列番号9であり、これは、CHO宿主細胞内で作製された抗hPD1抗体のVに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号9のアミノ酸配列を有するVを含む抗hPD1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞において産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体のVのアミノ酸配列は、Vのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号3または配列番号9に対して4、3、2、1、または0個の改変を含み得る。
【0095】
別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、配列番号3をコードする核酸配列によってコードされるVを含むことができ、配列番号1に含まれるアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を有する定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3抗体の定常ドメイン(これらは、ヒトまたはヒト化抗体であり得るかまたはあり得ない)を含むことができる。
【0096】
本明細書に記載の抗hPD1抗体のLCは、CκまたはCλを含むヒトまたはヒト化IgG LCであり得る。いくつかの実施形態では、Cは、Cκを含む。本明細書に記載の抗hPD1抗体のLCは、配列番号5および/もしくは配列番号12のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または配列番号5に対する4つ、3つ、2つ、もしくは1つの改変を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。そのような核酸配列の1つは、配列番号6である。配列番号6によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号5に対して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。そのような翻訳後修飾の正確な性質は、宿主細胞の性質に依存し得る。そこで抗体が産生される。このようなアミノ酸配列の例は配列番号12であり、これは、CHO宿主細胞中で作製された抗hPD1のLCに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号12のアミノ酸配列を有するLCを含む抗hPD1抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞において産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体のLCのアミノ酸配列は、LCのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号5または配列番号12に対して4、3、2、1、または0個の改変を含み得る。
【0097】
本明細書に記載の抗hPD1抗体のVは、配列番号7および/もしくは配列番号11のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または配列番号7に対する4つ、3つ、2つ、もしくは1つの改変を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。そのような核酸配列の1つは、配列番号8である。配列番号8によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号7に対して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。そのような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は、配列番号11であり、これは、CHO宿主細胞中で作製された抗hPD1抗体のVに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号11のアミノ酸配列を有するVを含む抗hPD1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞において産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体のVのアミノ酸配列は、Vのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号7または配列番号11に対して4、3、2、1、または0個の改変を含み得る。
【0098】
別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、配列番号7をコードする核酸配列によってコードされるVを含むことができ、配列番号5に含まれるアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を有するCを含むことができる。例えば、そのようなCは、ラムダまたはカッパCであり得、これは、ヒト抗体またはヒト化抗体由来であっても、ヒト抗体またはヒト化抗体由来でなくてもよい。
【0099】
さらに、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、様々な機能的属性を有し得る。一態様では、そのような抗hPD1抗体は、ヒトおよびカニクイザルPD1に結合できるが、マウスPD1、ヒトPDL1、ヒトCD28、またはヒトCTLA4には結合できない。これらの機能的態様は、実施例2および7、ならびに図5で実証される。したがって、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、ヒトPD1および密接に関連する抗原であるカニクイザルPD1に対して特異的結合を呈することができる。考えられるすべての関連抗原を試験してはいないが、実施例2および7、ならびに図5に示される試験結果は、本明細書で意味されるヒトPD1への「特異的」結合が何を意味するかを定義する。
【0100】
別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、ヒトPDL1(hPDL1)のhPD1への結合を遮断することができる。この特性は、国際公開第2018/089293号の実施例7ならびに図13および14に示されるデータによって実証され、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
さらなる態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、1x10-51/s以下、7x10-41/s、5x10-41/s、3x10-41/s、または2x10-41/sのk、および/または30nM以下、20nM、10nM、7nM、5nM、または4nMのKで、ヒトPD1の細胞外ドメインを含む単量体分析物に結合することができる。別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、2x10-51/s、1x10-51/s、9x10-41/s、8x10-41/s、7x10-41/s、または6x10-41/sのk、および/または30nM以下、20nM、10nM、8nM、7nM、または6nMのKで、カニクイザルPD1の細胞外ドメインを含む単量体分析物に結合することができる。このような速度論的測定は、実施例7に記載されているように、Biacore光学バイオセンサーを使用して決定することができる。そのような単量体分析物には、例えば、ヒスチジンタグ(hisタグ)および/またはグルタチオンS-トランスフェラーゼタグ(GSTタグ)に融合されたhPD1またはカニクイザルPD1(cPD1)の細胞外ドメインが含まれる。対照的に、抗体のFc領域に融合されたhPD1またはcPD1の細胞外ドメインは、二量体化するため、本明細書で意味するような単量体分析物ではない。
【0102】
さらに別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において、約100~400時間、120~350時間、200~350時間、250~350時間、または275~350時間の範囲のin vivo半減期(t1/2)を有し得る。
【0103】
さらに、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、抗hPD1抗体を以前に投与されていないヒト対象において、135~300時間、135~275時間、または140~250時間のin vivo t1/2を有し得る。
【0104】
さらに、本明細書に記載の抗hPD1抗体は、そのHCのアミノ酸配列中に228Pを含むことができる。この説明で使用されている番号付けシステムは、上記のEdelmann et al.の番号付けシステムである。抗体の様々な部分の長さにある程度のばらつきがあり得るため、そのような番号付けは、特定の抗体の番号付けに正確に対応し得ない。誤解を回避するため、このHC位(228)は、配列番号1の227位に対応する。
【0105】
抗hCTLA4抗体
本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、ヒトまたはヒト化IgG抗体であり得る。本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のHCは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 HCなどのヒトまたはヒト化IgG HCであり得る。いくつかの実施形態では、このHCは、IgG1 HCである。一態様では、このHCは、配列番号14の核酸配列によってコードされ得る。配列番号14によってコードされる例示的なアミノ酸配列としては、配列番号13および/または配列番号22、または配列番号13もしくは配列番号22に対して10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1つの改変(複数可)を含むアミノ酸配列が挙げられる。配列番号14によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号13に対して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。このような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は、配列番号22であり、これは、CHO宿主細胞中で作製された抗hCTLA4抗体のHCに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号22のアミノ酸配列を有するHCを含む抗hCTLA4抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞中で産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のHCのアミノ酸配列は、HCのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号13または配列番号22に対して、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0個の改変(複数可)を含み得る。
【0106】
混合物中の抗hCTLA4のVは、例えば、配列番号15および/または配列番号21のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または配列番号15および/または配列番号21に対して4、3、2、または1つの改変を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。1つのこのような核酸配列は、配列番号16である。配列番号16によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号15に対して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。このような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は、配列番号21であり、これは、CHO宿主細胞中で作製された抗hCTLA4抗体のVに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号21のアミノ酸配列を有するVを含む抗hCTLA4抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞中で産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のVのアミノ酸配列は、Vのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号15または配列番号21に対して、4、3、2、1、または0個の改変(複数可)を含み得る。
【0107】
本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のLCは、CκまたはCλを含むヒトまたはヒト化LCであり得る。いくつかの実施形態では、このLCは、Cκを含むことができる。本明細書に記載される抗hCTLA4抗体のLCは、配列番号17および/または配列番号24のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または配列番号17に対して、4、3、2、または1個の改変(複数可)を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。1つのこのような核酸配列は、配列番号18である。配列番号18によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号17に対して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。このような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は、配列番号24であり、これは、CHO宿主細胞中で作製された抗hCTLA4抗体のLCに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号24のアミノ酸配列を有するLCを含む抗hCTLA4抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞によって産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のLCのアミノ酸配列は、LCのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号17または配列番号24に対して、4、3、2、1、または0個の改変(複数可)を含むことができる。
【0108】
本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のVは、配列番号19および/または配列番号23のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または配列番号19に対して、4、3、2、または1個の改変(複数可)を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。1つのこのような核酸配列は、配列番号20である。配列番号20によってコードされるアミノ酸配列は、例えば配列番号19に対して、その配列を改変させる翻訳後改変を含むことができる。このような翻訳後修飾の正確な性質は、抗体が産生される宿主細胞の性質に依存し得る。このようなアミノ酸配列の例は、配列番号23であり、これは、CHO宿主細胞中で作製された抗hCTLA4抗体のVに見られる実際の翻訳後修飾を反映している。以下の実施例6を参照されたい。明確にするために、配列番号23のアミノ酸配列を有するVを含む抗hCTLA4抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含むVをコードする核酸を含む宿主細胞、例えばCHO細胞中で産生され得る。別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のVのアミノ酸配列は、Vのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関係なく、配列番号19または配列番号23に対して、4、3、2、1、または0個の改変(複数可)を含み得る。
【0109】
さらに、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、様々な機能的属性を有する。一態様では、このような抗hCTLA4抗体は、ヒトおよびカニクイザルCTLA4に結合できるが、ヒトPD1、マウスPD1、ヒトPDL1、またはヒトCD28には結合できない。これらの機能的態様は、実施例2および7、ならびに図5で実証される。したがって、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、ヒトCTLA4および密接に関連する抗原であるカニクイザルCTLA4に対して、特異的結合を呈し得る。考えられるすべての関連抗原を試験してはいないが、実施例2および7、ならびに図5に示される試験結果は、本明細書で意味されるヒトCTLA4への「特異的」結合が何を意味するかを定義する。
【0110】
別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、そのリガンドであるヒトB7-1および/またはB7-1(hB7-1および/またはhB7-2)へのhCTLA4の結合を遮断することができ、かつ標的細胞上で、CTLA4の機能的効果を遮断することができる。これらの属性は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/089293号の実施例4に示されるデータによって実証される。
【0111】
さらなる態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、5x10-31/s以下、2x10-31/s、8x10-41/s、5x10-41/s、1x10-41/s、もしくは8x10-51/sのkおよび/または30nM以下、20nM、10nM、7nM、5nM、4nM、3nM、または2nMのKで、ヒトCTLA4の細胞外ドメインを含む単量体分析物に結合することができる。別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、5x10-31/s以下、2x10-31/s、8x10-41/s、5x10-41/s、もしくは4x10-41/sのk、および/または30nM以下、20nM、10nM、7nM、5nM、4nM、または3nMのKで、カニクイザルCTLA4の細胞外ドメインを含む単量体分析物に結合することができる。このような体内動態的測定は、実施例7に記載されているように、Biacore光学バイオセンサーを使用して決定することができる。このような単量体分析物の例としては、hisタグおよび/またはGSTタグに融合されたhCTLA4またはcCTLA4の細胞外ドメインが挙げられる。一方、抗体のFc領域に融合したhCTLA4またはcCTLA4の細胞外ドメインは、二量体化するであろうため、単量体分析物とはみなされない。
【0112】
さらに別の態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、カニクイザルにおいて、約25~200、50~150、または75~125時間の範囲の単回用量血清半減期を有し得る。
【0113】
さらに、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、抗hCTLA4抗体を以前に投与されていないヒト対象において、90~210、100~195、100~140、または140~250時間のin vivo t1/2を有し得る。
【0114】
さらに、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、その定常ドメイン内の特定の部位に、特定のアミノ酸を含むことができる。これらには、次のうちの1つ以上(またはすべて)が含まれ得る:HC内では147D;HC内では170C;HC内では173C;HC内では220G;HC内では255K;HC内では399R;HC内では409E;LC内では131K;LC内では160C;LC内では162C;LC内では214S。この説明では、Edelman et al.(前出)の番号付けシステムが使用される。上述したとおり、抗体の様々な部分の長さにばらつきがあるため、この番号付けは、特定の抗体のアミノ酸配列における実際の位置に正確に対応しない場合がある。誤解を回避するために、これらのHC位置は、配列番号13中の以下の位置に(上記と同じ順序で)対応する:148位、171位、174位、221位、256位、400位、および410位。これらのLC位置は、配列番号17中の以下の位置に(上記と同じ順序で)対応する:131位、160位、162位、および214位。本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、配列番号16および20によってコードされる可変ドメインと、その配列が配列番号13、17、22、および/または24中に含まれない定常ドメインとを含むことができるが、これらの定常ドメインは、この段落で述べた特定の位置に、特定のアミノ酸の1つ以上(またはすべて)を含むものとする。このような抗体は、カッパまたはラムダLCを有するIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体であり得、ヒト抗体または非ヒト抗体であり得る。
【0115】
抗体混合物
本明細書には、上記の抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体を含む2つの主要な抗体種を含む抗体の混合物が記載される。これら2つの抗体を含む混合物を、本明細書ではPSB205と称する。いくつかの実施形態では、PSB205は、これら2つの主要な抗体種以外の主要な抗体種を含まない。いくつかの実施形態では、このような混合物は、抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体をコードする核酸を含む宿主細胞内で作製され得る。いくつかの実施形態では、これらの宿主細胞は、抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体以外の主要な種の抗体を含まない混合物を産生することができる。したがって、宿主細胞によって潜在的に産生される可能性のある他の抗体種からこれら2つの抗体種を分離することが不要であり得る。あるいは、PSB205中の抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体を別々の宿主細胞株で産生し、所望の比率で組み合わせて混合物PSB205を作製することもできる。PSB205は、以下に説明し、以下の実施例において例示する特定の特性を有する。
【0116】
一態様では、PSB205は、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体および抗hPD1抗体を、それぞれ、約3:1~約1:4、約2:1~1:4、約1:1~約1:3、約1:1.5~約1:2.5、または約1:1.7~約1:2.3、の重量/重量(w/w)比(抗hCTLA4:抗hPD1比)で含むことができる。いくつかの実施形態では、この抗hCTLA4:抗hPD1比は、それぞれ、3:1、2:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、または1:4であり得る。したがって、PSB205は、抗hCTLA4抗体の量と比較して、より多量の抗hPD1抗体を含むことができ、または、代替として、抗hPD1抗体の量と比較して、より多量の抗hCTLA4抗体を含むことができる。この比は、PSB205中の抗hCTLA4抗体および抗hPD1抗体の結合特性および薬物動態特性などの特性と合わせて、PSB205の機能的特性に影響を与え得る。
【0117】
一態様では、カニクイザルにおける単回用量試験における、PSB205の一部である抗hPD1抗体のin vivo t1/2は、PSB205中の抗hCTLA4抗体のものよりも長い。カニクイザルにおける単回用量試験における抗hPD1抗体と比較した、抗hCTLA4抗体のin vivo t1/2の比(t1/2(CTLA4):t1/2(PD1))は、それぞれ、約1:4~約1:1であり得る。より具体的には、この比は、約1:4、1:3.8、1:3.7、1:3.6、1:3.5、1:3.4、1:3.3、1:3.2、1:3.1、1:3、1:2.9、1:2.8、1:2.7、1:2.6、1:2.5、1:2.4、1:2.3、1:2.2、1:2.1、1:2、1:1.9、1:1.8、1:1.7、1:1.6、1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2、1:1.1、または1:1であり得る。PSB205中の2つの抗体のw/w比とともに、これらのt1/2が異なる場合には、抗体混合物PSB205の投与により、抗hCTLA4抗体の用量よりも高い、および/またはよりゆっくりとin vivoで除去される抗hPD1抗体の用量を確実に送達することができる。
【0118】
同様に、これまでに抗hCTLA4抗体または抗hPD1抗体のいずれも投与されていないヒト患者では、t1/2(CTLA4):t1/2(PD1)は、約1:3、1:2.75、1:2.5、1:2.25、1:2、1:1.75、1:1.5または1:1.25であり得る。
【0119】
より具体的には、PSB205に含まれる本明細書に記載の抗hPD1抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において、約150時間~約350時間のin vivo t1/2を有し得る。いくつかの実施形態では、そのようなt1/2は、約275時間~約350時間、約280時間~約340時間、約290時間~約330時間、または約290時間~約310時間であり得る。いくつかの実施形態において、そのようなt1/2は、約292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、または302時間であり得る。
【0120】
別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体を以前に投与されていないヒト患者において、PSB205抗体混合物の一部である本明細書に記載の抗hPD1抗体のt1/2は、約120~約300時間、約135~約300時間、または約140~約250時間であり得る。いくつかの実施形態では、そのようなt1/2は、約135時間、140時間、145時間、147時間、150時間、155時間、160時間、165時間、170時間、175時間、180時間、185時間、190時間、195時間、200時間、205時間、210時間、215時間、220時間、225時間、227時間、230時間、240時間、250時間、または275時間であり得る。
【0121】
PSB205中に含まれる本明細書に記載の抗hCTLA4抗体は、カニクイザルにおける単回用量試験において、約30時間~約130時間のin vivo t1/2を有し得る。いくつかの実施形態において、そのようなt1/2は、約40時間~約200時間、約40時間~約150時間、約70時間~約130時間、約50時間~約120時間、約60時間~約110時間、または約80時間~約110時間であり得る。いくつかの実施形態では、そのようなt1/2は、約40時間、45時間、時間、50時間、55時間、60時間、65時間、70時間、75時間、80時間、85時間、90時間、95時間、100時間、101時間、102時間、103時間、104時間、105時間、106時間、107時間、108時間、109時間、110時間、111時間、112時間、113時間、114時間、115時間、116時間、117時間、118時間、119時間、または120時間であり得る。
【0122】
さらなる態様では、本明細書に記載の抗hCTLA4を以前に投与されていないヒト患者において、PSB205抗体混合物の一部である本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のt1/2は、約80時間~約250時間、約90時間~約210時間、約100時間~約195時間、または約90時間~約140時間であり得る。いくつかの実施形態において、そのようなt1/2は、約90時間、95時間、100時間、105時間、110時間、115時間、120時間、125時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間、170時間、180時間、または190時間であり得る。
【0123】
別の態様では、PSB205は、PSB105中の抗hPD1抗体PSB103または抗hCTLA4抗体のいずれかと比較して、in vivoで相乗的な機能的効果を呈し得る。例えば、PSB205は、ヒト腫瘍のマウス異種移植モデル系などの腫瘍モデル系において、抗hPD1抗体PSB103または抗hCTLA4抗体PSB105のいずれか単独よりも大幅に、腫瘍体積および/または腫瘍直径を減少させることができる。例えば、実施例9を参照されたい。さらなる態様では、PSB205は、抗hPD1抗体または抗hCTLA4抗体のいずれか単独よりも、CMVリコール応答アッセイにおいて産生されるサイトメガロウイルス(CMV)特異的T細胞の数を増加させることができる。実施例8。別の態様では、ヒトがん患者へのPSB205の投与は、本明細書に定義される部分奏効(PR)または完全奏効(CR)をもたらし得る。さらなる態様では、ヒトがん患者へのPSB205の投与は、プラセボの投与よりも長い無増悪生存期間をもたらし得る。さらに、ヒトがん患者へのPSB205の投与は、本明細書に記載の抗hPD1抗体または抗hCTLA4抗体のいずれかを単独で投与するよりも長い無増悪生存期間をもたらし得る。
【0124】
さらなる態様では、PSB205の投与は、ヒト患者において低レベルの有害事象(AE)を生じさせ得る。上記および当技術分野の標準刊行物で定義されているように(例えば、https://ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/docs/ctcae_v5_quick_reference_5x7.pdfを参照)、グレード3または4のAEは、介入が必要であることを示す重篤事象である。当然のことながら、AEの発生は、薬物の用量に関連し得る。一態様では、約0.3mg/kg以下、または約24mg以下、21mg、18mg、15mgもしくは12mgの用量のPSB205では、グレード3または4のAEは生じ得ない。別の態様では、約1.0mg/kg以下、または約90mg以下、80mg、70mg、60mg、50mgもしくは40mgの用量のPSB205では、グレード3または4のAEは生じ得ない。さらに別の態様では、約3.0mg/kg以下、または約270mg以下、240mg、210mg、180mg、150mgもしくは120mgの用量のPSB205では、投与された患者の10パーセント以下、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1パーセントにおいて、グレード3もしくは4のAEが生じ得るか、または、いくつかの実施形態では、投与された患者のいずれにおいてもグレード3もしくは4のAEは生じ得ない。さらなる態様では、約5.0mg/kg以下、または約450mg以下、425mg、400mg、375mg、350mg、325mg、300mg、275mg、250mg、225mgもしくは200mgのPSB205の用量により、投与された患者の15パーセント以下、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1パーセントにおいて、3または4のAEが生じたか、またはいくつかの実施形態では、投与された患者のいずれにおいても、3または4のAEは生じ得ない。
【0125】
抗hPD1抗体および/または抗hCTLA4抗体をコードするポリヌクレオチド
本明細書に記載の抗hPD1抗体もしくは抗hCTLA4抗体、または両方の抗体を含む混合物、すなわちPSB205をコードする核酸は、以下の実施例1および4に記載のように、またはこれらの配列および本明細書に提供する他の開示を使用する他の適切な方法を使用することによって作製することができる。例えば、本明細書の開示を考慮すると、本明細書に記載の抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体をコードするDNA配列を合成することができる。別の態様では、本明細書に記載の抗hPD1抗体由来および抗hCTLA4抗体由来のHCおよびLCをコードするベクターは、実施例1に記載のように作製することができる。
【0126】
本明細書に記載の抗hPD1抗体のHC、LC、V、およびVをコードする特定のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとしては、それぞれ、配列番号2、配列番号6、配列番号4、および配列番号8を含むポリヌクレオチドが挙げられる。これらの配列は、それぞれ、以下のアミノ酸配列:配列番号1、配列番号5、配列番号3、および配列番号7をコードする。遺伝暗号の縮重のため、他のヌクレオチド配列も、配列番号1、配列番号5、配列番号3、および配列番号7をコードし得る。このようなヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも、本明細書において企図されるポリヌクレオチドの範囲内である。配列番号1に対して、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の改変(複数可)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドもまた、配列番号5、配列番号3、および/または配列番号7に対して、4、3、2、または1個の改変(複数可)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであるとして企図される。
【0127】
本明細書に記載の抗hCTLA4抗体のHC、LC、V、およびVをコードする特定のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとしては、それぞれ、配列番号14、配列番号18、配列番号16、および配列番号20を含むポリヌクレオチドが挙げられる。これらの配列は、それぞれ、以下のアミノ酸配列:配列番号13、配列番号17、配列番号15、および配列番号19をコードする。遺伝暗号の縮重のため、他のヌクレオチド配列も、配列番13、配列番号17、配列番号15、および配列番号19をコードすることができる。このようなヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも、本明細書で企図されるポリヌクレオチドの範囲内である。配列番号13に対して、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の改変(複数可)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドもまた、配列番号17、配列番号15、および/または配列番号19に対して、4、3、2、または1個の改変(複数可)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであるとして企図される。
【0128】
本明細書に記載の抗hPD1および/または抗hCTLA4抗体をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含むベクター(複数可)は、様々な種類のベクターのいずれかの中で作製することができる。ベクターは、ベクターを含む宿主細胞の選択のため、および/または宿主細胞中でのベクターの維持および/または増幅のための選択マーカーを含むことができる。そのようなマーカーとしては、例えば、(1)原核宿主細胞に対して抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を付与する遺伝子、(2)細胞の栄養要求性欠損を補う遺伝子、または(3)その操作により、複雑な培地または規定された培地からは得られない重要な栄養素が供給される遺伝子が挙げられる。具体的な選択可能マーカーとしては、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子が挙げられる。ゼオシン耐性遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子も、原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞の両方中での選択に使用され得る。ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子および/またはプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子は、当技術分野で知られているように、哺乳類細胞において使用することができる。例えば、Kingston et al.2002,Amplification using CHO cell expression vectors,Current Protocols in Molecular Biology,Ch.16,Unit 16.23,Wiley 2002を参照されたい。
【0129】
さらに、ベクターは、ベクターの維持および/または本明細書に記載の抗体または抗体混合物をコードする挿入配列の発現に必要な1つ以上の他の配列エレメントを含み得る。そのようなエレメントとしては、例えば、複製起点、プロモーター、1つ以上のエンハンサー、転写ターミネーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、外因性配列(本明細書に記載の抗体または抗体の混合物をコードするDNAなど)のポリリンカー挿入部位、ならびに2つの挿入配列間の介在配列、例えば、HCおよびLCをコードするDNAが挙げられる。これらの配列エレメントは、ベクターの複製および/または増幅、ならびにベクターに挿入された異種配列のび発現を促進するように、所望の宿主細胞内で機能するように選択することができる。このような配列エレメントは、当技術分野でよく知られており、多数の市販のベクターで入手可能である。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体もしくは抗hPD1抗体、または本明細書に記載のこれらの抗体の混合物、すなわちPSB205をコードするポリヌクレオチドは、1つ以上のウイルスベクター、任意により腫瘍溶解性ウイルスベクター上に担持され得る。そのようなウイルスベクターの例としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルス、レオウイルス、およびポックスウイルスベクターが挙げられる。このような実施形態では、本明細書に記載の抗体または抗体の混合物をコードするポリヌクレオチドを含むこれらのウイルスベクターは、疾患を治療するために患者に投与することができる。
【0131】
例えば、がん患者において、抗体または抗体の混合物をコードするポリヌクレオチドを含むそのようなウイルスベクターは、多くの可能性の中でも、例えば注射、吸入(例えば、肺癌)、局所投与(例えば、皮膚癌)、および/または(核酸が吸収され得る)粘膜への投与によって、患者中の腫瘍またはがん細胞の主要部位に直接投与できる。あるいは、このようなウイルスベクターは、本明細書に記載されるように、例えば、経口、局所、粘膜を介して、または皮下、静脈内、動脈内、筋肉内もしくは腹膜注射によって、全身投与することができる。
【0132】
同様に、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体もしくは抗hPD1抗体またはこれらの抗体の混合物をコードするポリヌクレオチドは、疾患に罹患している患者に投与することができる担体構造、例えばリポソームに封入することができる。本明細書で企図されるポリヌクレオチドとしては、RNAおよびDNA、ならびに例えば天然に存在するDNAおよび/またはRNAよりも安定および/または有効である化学的に修飾されたポリヌクレオチドが挙げられる。例えば、Burnett and Rossi(2012),RNA-based therapeutics-current progress and future prospects,Chem.Biol.19(21):60-71を参照されたい。これらの封入ポリヌクレオチドは、多くの可能性の中でも、例えば注射、吸入(例えば、肺癌)、局所投与(例えば、皮膚癌)、および/または(核酸が吸収され得る)粘膜への投与によって、患者中の腫瘍またはがん細胞の主要部位に直接投与できる。あるいは、このような封入ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように、例えば、経口、局所、粘膜を介して、または皮下、静脈内、動脈内、筋肉内もしくは腹膜注射によって、全身投与することができる。
【0133】
医薬組成物
本明細書に記載の抗体、抗体混合物、ポリヌクレオチド、および/またはベクターは、薬学的に許容される製剤中で投与され得る。抗体の混合物に関しては、各抗体を別々にまたは一緒に製剤化し、投与することができる。多数の医薬製剤が当技術分野で知られている。このような製剤の多くは、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA,2005に記載されており、その関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。このような薬学的に許容される製剤は、例えば、溶液または懸濁液などの液体、丸薬、カプセル、ペースト、またはゲルなどの固体であり得る。液体製剤は、例えば、以下の成分:緩衝剤、賦形剤、塩、糖、洗浄剤、およびキレート剤のうちの1つ以上を含むことができる。これは、抗体、抗体混合物、ポリヌクレオチド、またはベクターの機能を保存し、患者が十分に耐えられるように設計され得る。
【0134】
抗体または抗体の混合物の場合、医薬組成物は、約4.5~約7.5、約4.5~約7.0、約4.5~約6.5、約4.5~約6.0、または4.5~約5.5のpHを有し得る。このような製剤中の抗体の濃度は、約5mg/mL~約40mg/mL、約10mg/mL~約35mg/mL、約15mg/mL~約30mg/mL、または約20mg/mL~約30mg/mLであり得る。このような組成物の重量オスモル濃度は、約250mOsm/kg~約380mOsm/kg、約260mOsm/kg~約350mOsm/kg、約275~約295mOsm/kg、および/または約280mOsm/kg~約290mOsm/kgの範囲であり得る。このような組成物は、他の多くの可能性の中でもとりわけ、スクロース、トレハロース、またはソルビタールなどの糖を含むことができる。このような組成物は、多くの可性の中で、塩、例えば、ナトリウム塩、塩酸塩の塩、硫酸塩の塩、酢酸塩の塩、またはリン酸塩の塩を含むことができる。このような組成物は、他の可能性の中でも特に、ポリソルベート-20などの界面活性剤を含むことができる。
【0135】
ポリヌクレオチドおよび抗体などのタンパク質は、通常、経口投与ではなく非経口投与される。製剤によって、経口投与によりタンパク質またはポリヌクレオチドが胃の酸性環境にさらされる可能性があり、これにより、例えばタンパク質の加水分解により、タンパク質またはポリヌクレオチドが不活性化される可能性がある。いくつかの実施形態では、特定の製剤は、特定のタンパク質またはポリヌクレオチドの経口投与が可能になり得、そのタンパク質またはポリヌクレオチドは、胃酸に対して感受性がないか、または例えば丸薬もしくはカプセル上の特定のコーティングによって酸性環境から十分に保護されている。製剤はまた、例えば、鼻腔内、膣、直腸、もしくは経口投与、または吸入剤としての投与など、粘膜を介して投与することもできる。いくつかの実施形態では、製剤を局所的に投与することもできる。一般に、抗体およびポリヌクレオチドは、液体製剤の非経口注射、例えば、皮下、静脈内、動脈内、病巣内(例えば、腫瘍内)、筋肉内、または腹膜注射によって投与される。
【0136】
低分子である標的阻害剤は、経口投与または上記の他の方法によって投与することができる。経口投与に適した製剤には、例えば、溶液または懸濁液などの液体、ペースト、ゲル、カプセル、または丸薬などの固体が含まれ得る。
【0137】
抗hCTLA4抗体および/または抗hPD1抗体をコードする核酸を含む宿主細胞
本明細書に記載の抗hCTLA4もしくは抗hPD1抗体またはそれらの混合物をコードする核酸、または(例えば、トランスフェクション、形質導入、リポフェクション、形質転換、微粒子による衝撃、マイクロインジェクション、またはエレクトロポレーションによって)導入できるような核酸を担持するベクターは、宿主細胞に個別に、同時に、または順次導入され得る。いくつかの実施形態において、それらは、実施例4に記載されるように順次導入され得る。本明細書に記載の抗hPD1抗体および/または抗hCTLA4抗体をコードする核酸を含むそのような宿主細胞は、本明細書に記載の抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の両方をコードする核酸を含むことができる。
【0138】
これらの宿主細胞は、哺乳動物、原生動物、真菌、植物、または細菌の細胞であり得る。より具体的には、グラム陰性またはグラム陽性の原核生物、例えば、大腸菌、枯草菌、またはネズミチフス菌などの細菌を宿主細胞として使用することができる。他の実施形態では、宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ、Schizosaccharomyces pombe(シゾサッカロマイセス ポンビー)などの種、またはKluyveromyces属、カンジダ属、Spodotera属の真核生物、または異種ポリペプチドを発現できる任意の細胞などの真核細胞であり得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり得る。異種ポリペプチドの発現に適した多くの哺乳動物細胞株が当技術分野で知られており、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)など、様々な販売業者から入手することができる。適切な哺乳動物宿主細胞株としては、例えば、例えば、COS-7株(ATCCCRL1651)(Gluzman et al.,1981,Cell23:175)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCCCCL163)、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、またはそれらの誘導体、例えば、VeggieCHOおよび関連細胞株(これらは、無血清培地で成長する(Rasmussen et al.,1998,Cytotechnology28:31)、CHO-K1およびCHOpro-3細胞株およびそれらの誘導体例えば、DUKX-X11およびDG44細胞株(ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)活性が欠損しているもの)、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞(例えば、ATCCCRL10)、McMahan et al.,1991,EMBOJ.10:2821に記載されているアフリカミドリザル腎臓細胞株CVI(ATCCCCL70)に由来するCVI/EBNA細胞株、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、例えば、293、293EBNAまたはMSR293、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、HL-60細胞、U937細胞、HaK細胞、Jurkat細胞、HepG2/3B細胞、KB細胞、NIH3T3細胞、S49細胞、ならびにマウス骨髄腫細胞(NS0およびSp2/0細胞など)が挙げられる。異種ポリペプチドを発現できる他の原核生物、真核生物、または哺乳動物の細胞種も使用することができる。
【0140】
より詳細には、本明細書に記載の抗hCTLA4抗体と抗hPD1抗体の混合物、すなわちPSB205をコードする核酸を含む宿主細胞株、例えばCHO細胞株は、これら2つの抗体を安定した比率、すなわち、例えば約1:2(抗hCTLA4:抗hPD1)で産生することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞によって産生される抗体の抗hCTLA4:抗hPD1比は、約3:1~約1:4、約2:1~1:4、約1:1~約1:3、約1:1.5~約1:2.5、または約1:1.7~約1:2.3であり得る。さらなる実施形態では、宿主細胞によって産生される抗体混合物中の抗hCTLA4:抗hPD1比は、約3:1、2:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、または1:4であり得る。さらなる実施形態では、宿主細胞によって産生される抗hCTLA4:抗hPD1比は、約1:1.8~約2.2であり得る。このような比は、少なくとも約30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100の集団倍加レベル(PDL)で、細胞について維持することができる。
【0141】
さらなる態様では、本明細書に記載の宿主細胞、例えばCHO細胞株は、その細胞上清中に少なくとも約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5、または3グラム/リットル(g/L)の総量の抗体を産生することができる。他の実施形態では、宿主細胞による抗体産生は、以下の範囲のうちの1つ以上内であり得る:1.0~4.0g/L、1.0~3.0g/L、1.0~2.0g/L、2.0~4.0g/L、0.5~2.0g/L、0.5~1.5g/L、0.6~1.4g/L、0.7~1.3g/L、0.8~1.2g/L、または0.9~1.2g/L。
【0142】
別の態様では、PSB205を産生できるCHO宿主細胞株の細胞倍加時間は、約18~32、18~30、19~28、または20~25時間であり得る。さらに、そのような宿主細胞株は、10~200、20~200、10~175、20~150、20~100、20~60、または10~60の集団倍加レベル(PDL)で、この範囲内の倍加時間を維持することができる。本明細書で意味するPDLは、凍結細胞バンクから解凍してから集団内の細胞が2倍になった回数である。
【0143】
抗体または抗体混合物を作製する方法
本明細書に記載される抗体および抗体の混合物は、様々な方法によって作製することができる。本明細書に記載の抗hPD1および/または抗hCTLA4抗体は、抗体(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を宿主細胞に導入すること、宿主細胞を培養すること、細胞塊または細胞上清から抗体(複数可)を回収すること、および任意により、抗体を精製することによって作製され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体混合物は、2つの別個の宿主細胞株で作製することができ、そのうちの1つは、抗hPD1抗体を産生し、もう1つは、抗hCTLA4抗体を産生する。このような実施形態では、2つの宿主細胞株を別々にまたは一緒に培養し、それらが産生する抗体(複数可)を細胞上清(複数可)または細胞塊(複数可)から精製することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞株は、別々に培養され、細胞上清または細胞塊は、抗体の精製前に混合される。他の実施形態では、2つの細胞株は、別々に培養され、抗体は、2つの細胞上清または細胞塊から別々に精製される。さらなる実施形態では、2つの宿主細胞株は、一緒に培養され、抗体を細胞上清または細胞塊から精製する。2つの細胞株を別々に培養する場合、抗体は、任意の所望の比率で組み合わせることができる。精製は、例えば、プロテインAカラムクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、沈殿戦略による様々な精製など、潜在的なステップを含めて、必要に応じて実施され得る。
【0145】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗体混合物は、抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の両方をコードするポリヌクレオチドを含む1つの宿主細胞株、例えば実施例4に記載のクローンCHO細胞株中で作製することができる。この場合、宿主細胞株を培養し、宿主細胞により産生される抗体を細胞上清または細胞塊から単離する。本明細書に記載の抗体混合物を産生する宿主細胞株は、多くても3つまたは2つの主要な抗体種を産生する。さらなる精製は、例えば、プロテインAカラムクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、沈殿戦略による様々な精製など、潜在的なステップを含めて、必要に応じて実施され得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞株は、本明細書に記載の抗hPD1抗体PSB103および抗hCTLA4抗体PSB105の2つの主要な抗体種のみを産生する。このような場合、場合によっては宿主細胞によって産生される抗体種の中に存在する可能性がある他の抗体種からこれらの種を精製することは不要であり得る。このような状況では、抗体混合物PSB205は、1つの産生および精製プロセスで産生することができる。
【0146】
治療方法
抗hCTLA4抗体もしくは抗hPD1抗体、またはそれらの混合物、すなわちPSB205、またはこれらの治療薬のいずれかをコードするポリヌクレオチド(複数可)もしくはベクター(複数可)をヒト患者に投与して、様々な状態を治療することができる。任意により、このような治療法は、非経口的に投与することもできるが、胃の酸性環境において治療薬が破壊されることなく経口投与を可能にするように治療薬が特に製剤化されている場合には、経口経路も可能であり得る。いくつかの実施形態では、このような治療薬は、注射によって、任意によっては、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、皮内、または腫瘍内注射によって投与することができる。注射は、注入またはボーラスによって投与され得る。いくつかの実施形態では、治療薬の投与は、粘膜を介して行い得る。そのような投与経路としては、例えば、鼻、直腸、もしくは経膣投与、または眼瞼もしくは舌の下への投与(嚥下を伴わない)、または吸入による投与が含まれる。
【0147】
PSB205の用量は、少なくとも0.1mg/kgであり、5、10、または15mg/kg以下であり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、10mg/kg以下、8mg/kg、5mg/kg、3mg/kg、2mg/kgもしくは1mg/kg、および/または少なくとも0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、2mg/kgもしくは3mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、または9mg/kgであり得る。さらに、投与量は、患者の体重とは関係なく、特定の量として定義され得る。このような用量は、約5mg~約800mgの範囲であり得る。特定の実施形態において、そのような用量は、800mg以下、700mg、600mg、550mg、500mg、475mg、450mg、425mg、400mg、375mg、350mg、325mg、300mg、275mg、250mg、225mg、200mg、175mg、150mg、100mg、75mg、または50mg、および/または少なくとも約60mg、80mg、100mg、150mg、200mg、250mg、または300mgであり得る。さらに、用量は、約125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、または450mgであり得る。あるいは、患者の皮膚の表面積に対して、投与量を定義することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、投与量は、少なくとも3.5mg/mm、180mg/mm以下であり得る。いくつかの実施形態では、用量は、400以下mg/mm、350mg/mm、300mg/mm、350mg/mm、200mg/mm、180mg/mm、150mg/mm、110mg/mm、75mg/mm、50mg/mm、40mg/mm、30mg/mm、25mg/mm、12mg/mm、10mg/mm、7.5mg/mm、もしくは5mg/mmおよび/または少なくとも0.2mg/mm、0.5mg/mm、1mg/mm、3mg/mm、5mg/mm、10mg/mm、20mg/mm、30mg/mm、50mg/mm、75mg/mm、もしくは100mg/mmであり得る。
【0148】
抗hCTLA4または抗hPD1抗体の用量は、少なくとも0.033mg/kgであり、3.35mg/kg、6.7mg/kg、または10mg/kg以下であり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、10mg/kg以下、6.7mg/kg、4.8mg/kg、3.35mg/kg、2mg/kg、または0.67mg/kgmg/kg、および/または少なくとも0.033mg/kg、0.1mg/kg、0.33mg/kg、0.67mg/kg、または1mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、約0.033mg/kg、0.1mg/kg、0.67mg/kg、1.0mg/kg、1.67mg/kg、3.0mg/kg、3.33mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、or10mg/kgであり得る。さらに、投与量は、患者の体重とは関係なく、特定の量として定義され得る。このような用量は、約60mg~約700mgの範囲であり得る。特定の実施形態では、そのような用量は、700mg以下、600mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、215mg、170mg、130mg、100mg、もしくは70mg、および/または少なくとも約0.033mg、0.1mg、0.7mg、1.5mg、2mg、2.7mg、3.5mg、5mg、7mg、10mg、15mg、17mg、20mg、25mg、35mg、45mg、55mg、65mg、100mg、もしくは150mgであり得る。あるいは、患者の皮膚の表面積に対して、投与量を定義することもできる。例えば、投与量は、少なくとも0.1mg/mm以下、0.5mg/mm、または1.1mg/mmであり、350mg/mm、300mg/mm、250mg/mm、200mg/mm、または130mg/mmであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、300mg/mm以下、200mg/mm、130mg/mm、120mg/mm、100mg/mm、75mg/mm、50mg/mm、35mg/mm、30mg/mm、20mg/mm、15mg/mm、10mg/mm、7.5mg/mm、5mg/mm、または3mg/mm、および/または少なくとも0.18mg/mm、0.3mg/mm、1mg/mm、2mg/mm、3mg/mm、6mg/mm、10mg/mm、17mg/mm、25mg/mm、33mg/mm、66mg/mm、または80mg/mmであり得る。
【0149】
PSB205または抗hCTLA4もしくは抗hPD1抗体をコードするポリヌクレオチド(複数可)単独の用量、またはそのようなポリヌクレオチド(複数可)を含むベクター(複数可)の用量は、患者の体重1キログラム当たり少なくとも約10、1010、1011、1012、1013 コピー(コピー/kg)のポリヌクレオチド(複数可)またはベクター(複数可)であり得る。別の態様では、そのような用量は、最大約6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、または1015コピー/kgであり得る。さらなる態様では、そのような用量は、約1010コピー/kg~約1014コピー/kgであり得る。あるいは、用量は、患者の体重に関係なく、約10、1010、1011、1012、1013、5x1013、1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、1015、または1016コピーのポリヌクレオチド(複数可)であり得る。
【0150】
上で論じた量の投与の頻度は調整することができる。いくつかの実施形態では、抗hCTLA4または抗hPD1抗体、PSB205、またはこれらの治療薬のいずれかをコードするポリヌクレオチド(複数可)は、3週間に1回投与され得る。他の実施形態では、そのような治療薬は、週に2回、週に1回、10日ごとに1回、2週ごとに1回、または3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週もしくは10週ごとに1回投与することができる。さらなる実施形態では、そのような治療薬は、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月ごとに1回投与することができる。
【0151】
抗hCTLA4もしくは抗hPD1抗体、PSB205、またはこれらのいずれかをコードするポリヌクレオチド(複数可)は、様々な状態を有するヒト患者を治療するために使用することができる。このような治療薬は、免疫応答のいくつかの態様を増強できるため、それらが有用な症状には、一般に、免疫応答の増強が有用である症状が含まれる。本明細書で意味するように、免疫応答が特定の治療薬によって増強されたか否かは、実施例8に記載のCMVリコール応答アッセイによって評価することができる。上記の治療薬で治療可能な状態としては、感染症、免疫不全障害、ならびにこれらに限定されないが、様々ながん、例えば、黒色腫、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌などの肺癌、上咽頭癌、頭頸部の扁平上皮癌、胃癌または胃食道癌、明細胞癌または非明細胞癌腎細胞癌、尿路上皮癌、軟部組織または骨肉腫、中皮腫、古典的ホジキンリンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、膀胱癌、メルケル細胞癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、肝細胞癌、卵巣癌、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)またはDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)成人および小児固形腫瘍、明細胞腎肉腫、結腸直腸癌、食道扁平上皮癌などの食道癌、子宮内膜癌、腫瘍変異負荷の高い癌、および皮膚扁平上皮癌が挙げられる。
【0152】
一態様では、PSB205による治療は、一定の割合の患者において何らかの有害事象(AE)の発生を引き起こす可能性があり、これは、投与量および/または投与頻度に依存し得る。また、PSB205と同時に投与され得る他の薬物の存在にも依存し得る。PSB205に関連するAEを決定する目的では、重大なAEを引き起こすことが知られている他の薬物または治療、例えば化学療法または放射線療法を同時に受けている患者は除外される。場合によっては、AEには、グレード3またはグレード4のAEなど、重篤なAEが含まれ得る。特定の用量および投与頻度でグレード3または4のAEを経験する患者の割合を決定するには、少なくとも約10名、20名、30名、40名、50名、60名、70名、80名、90名、100名、またはそれ以上の患者に投与させ得る。いくつかの実施形態では、10名以上の患者が、3週間に1回、3mg/kg以下のPSB205を投与される場合、投与を受けた患者の20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1パーセントが、グレード3またはグレード4のAEを経験する。他の実施形態では、これらの患者はいずれも、グレード3または4のAEを経験しない。いくつかの実施形態では、10名以上の患者が、3週間ごとに1回、5mg/kg以下のPSB205を投与される場合、患者の20パーセント以下、15パーセント、10パーセント、9パーセント、8パーセント、7パーセント、6パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセント、または1パーセントが、グレード3またはグレード4のAEを経験する。
【0153】
別の態様では、PSB205による治療は、様々な状態、例えば上記の様々ながんを効果的に治療することができる。有効性の割合、例えば客観的奏効率(ORR)または病勢コントロール率(DCR)を決定するには、少なくとも約10名、20名、30名、40名、50名、60名、70名、80名、90名、100名、またはそれ以上の患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、10名以上のがん患者に、少なくとも約3mg/kgかつ5mg/kg以下のPSB205を2週間、3週間、または4週間ごとに約1回投与する場合、ORRは、少なくとも約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、または60パーセントであり得る。いくつかの実施形態では、10名以上のがん患者に、少なくとも約3mg/kgで5mg/kg以下のPSB205を2週間、3週間、または4週間ごとに約1回投与する場合、DCRは、少なくとも約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、または60パーセントであり得る。いくつかの実施形態では、治療される患者は、肺癌または上咽頭癌を有し得る。
【0154】
抗hCTLA4もしくは抗hPD1抗体、PSB205、またはこれらのいずれかをコードするポリヌクレオチド(複数可)は、抗体、抗体の混合物またはポリヌクレオチド(複数可)の前、後、および/または同時に投与される追加の治療法とともに投与することができる。追加の治療法は、免疫調節分子、放射線、化学療法剤、標的生物剤、標的阻害剤、および/または腫瘍溶解性ウイルスからなる群から選択され得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、追加の治療法は、PDL1、TIGIT、CCR4、CCR8、CSFR1a、B7H3、B7H4、CD96、またはCD73のアンタゴニスト、GITR、41BB、OX40、またはCD40のアゴニスト、タリモジーン・ラハーパレプベック(IMLYGIC(商標))などの腫瘍溶解性ウイルス、ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、インドールアミン2、3ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、ベバシズマブなどの抗血管新生剤、抗体薬物複合体、またはチロシンキナーゼ阻害剤であり得る。
【0156】
追加療法が化学療法剤である場合、それは、例えば、ブスルファン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ストレプトゾトシン、メチルロムスチン、シス-ジアンミンジクロロ白金、チオテパ、アジリジニルベンゾキノン、シスプラチン、カルボプラチン、塩酸メルファラン、クロランブシル、イホスファミド、塩酸メクロレタミン、カルムスチン(BCNU))、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ダウノマイシン、ミトラマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、VP-16、VM-26、メトトレキサート(ロイコボリンを含むまたは含まない)、5-フルオロウラシル(ロイコボリンを含むまたは含まない)、5-フルオロデオキシウリジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ゲムシタビン、シタラビン、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、フルダラビン、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、アクチノマイシンD、ダカルバジン(DTIC)、mAMSA、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、L-アスパラギナーゼ、ミトキサントロンであり得る。例えば、Cancer:Principles and Practice of Oncology,4.sup.th Edition,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,Pa.(1993)を参照されたい。この関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
上記で本発明を一般的な用語で説明してきたが、以下の特定の実施例は、本発明を例示するために提供されるものであり、その範囲を限定するものではない。本明細書に記載の本発明の趣旨に沿って、本発明に対して様々な変更および修正を加えることができ、当業者には明らかであることが理解される。そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲を含め、本明細書に記載の本発明の範囲内にある。
【0158】
実施例
実施例1:個々の抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の作製
抗hPD1抗体PSB103のHCおよびLCをコードする配列を含む1つのベクターを以下のように作製した。配列番号1および配列番号5のアミノ酸配列をコードするDNA断片の配列を、Gene Optimizer(商標)オンラインソフトウェア(GeneArt,ThermoFisher Scientfic)を使用して、ハムスター(Cricetulus griseus)細胞における発現用に最適化した。得られ最適化されたDNA配列、すなわち配列番号2および6を化学合成した。HCおよびLCをコードするDNA配列を一過性発現ベクターに別々にサブクローニングし、大腸菌細胞に導入した。この抗体のHCは、改変S228Pを含んでいた(ここで、228位は、Edelmann et al.,(前出)に示されているとおりであり、配列番号1の227位に対応する)。この改変により、IgG4抗体中でのFabアームの交換が妨げられ得る。Silva et al.(2015)では、新規の定量的イムノアッセイと生理学的マトリックス調製物の組み合わせを使用して実証されたように(J.Biol.Chem.290(9):5462-5469)、S228P変異により、in vivoおよびin vitroのIgG4 Fabアームの交換が妨げられる。
【0159】
大腸菌細胞からのプラスミドDNAのインサートの配列を決定し、この配列が正しいことを確認した。配列は、設計した配列と100%同一であった。これらのプラスミドDNAを鋳型として使用し、AvrIIおよびBstZ17I部位(HC)またはEcoRVおよびPacI部位(LC)を含むプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、HCおよびLCをコードする配列を個別に増幅した。得られたPCR産物は、アガロースゲルからバンドを切り出し、これらのゲルバンドからDNA断片を精製することによって精製した。HCをコードするバンドをAvrIIおよびBstZ17Iで消化し、これらの同じ酵素で消化したFreedom(登録商標)pCHO1.0ベクター(ThermoFisher Scientific)にライゲーションし、大腸菌細胞に導入した。個々のコロニーからのプラスミドDNAの配列が決定され、PSB103のHCの正確なアミノ酸配列をコードする、設計されたDNA配列を含むプラスミドDNAを含む1つのコロニーを同定した。このコロニーを拡大し、そのプラスミドDNAを精製した。
【0160】
LCをコードする精製バンドをEcoRVおよびPacIで消化し、同じ酵素で消化した上記のPSB103のHCをコードする挿入DNAを含むFreedom(登録商標)pCHO1.0ベクターにライゲーションした。このDNAを大腸菌細胞に導入した。個々のコロニーをカナマイシン上で選択し、選択したコロニーからのプラスミドDNAの配列決定を行った。抗hPD1抗体のHCおよびLCをコードする配列と一致するインサートを有するプラスミドDNAを含むコロニーを2回再度ストリークした。1つのコロニーが選択され、そのプラスミドDNAの両方の鎖の配列を決定した。配列は、ベクター配列と一致し、プラスミド内のインサートは、抗hPD1抗体PSB103のHCおよびLCをコードする配列と100%一致した。図1は、このベクターとそのインサートの図を示す。
【0161】
PSB103を産生するクローン細胞株を産生する最初のステップとして、CHO-S(商標)細胞(ThermoFisherScientific)のリサーチセルバンク(RCB)を以下のように作製した。現在の適正製造基準(cGMP)に従って産生されたCHO-S(商標)細胞のマスターセルバンク(MCB)バイアルを37℃のウォーターバスで解凍し、8mM L-グルタミンを補充した29mLのCD FortiCHO(商標)培地(ThermoFisher Scientific)に接種した。十分な細胞数が得られた場合、細胞を遠心分離し、細胞ペレットを8mML-グルタミンと10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を10細胞/mLの濃度で添加したFortiCHO(商標)培地に再懸濁し、これらの細胞の1mLアリコートをバイアルに分配した。細胞のバイアルを凍結し、-70℃の冷凍庫に一晩移し、その後液体窒素冷凍庫の気相に移した。
【0162】
次いで、抗hPD1抗体PSB103のHCおよびLCをコードするインサートを含むFreedom(登録商標)pCHO1.0ベクターをRCBからCHO細胞に導入した。以下に詳細に説明するように、抗hPD1抗体PSB103を安定して発現するクローン細胞株(G19G4-4B4と呼ばれる)が樹立された。G19G4-4B4を培養し、PSB103を細胞上清から回収し、以下に記載する実験で使用するために精製した。
【0163】
より詳細には、抗hPD1抗体PSB103のHCおよびLCをコードするベクター(図1に図示)は、制限酵素NruIによる切断によって線状にし、製造業者の指示に従って、FreeStyle(商標)MAX試薬(ThermoFisher)を使用して、CHO-S(商標)細胞の3つの並行トランスフェクションを実施した。Freedom(商標)CHO-S(商標)Kit(カタログ番号A1369601)UserGuide、Publication NumberMAN0003505、RevisionC.0、Thermo FisherScientificを参照されたい。その関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。図2に示すとおり、トランスフェクションの3日後、3つのトランスフェクションのそれぞれを2つのプールに分割した。1つのプールは、それぞれ10μg/mLおよび100nMのピューロマイシンおよびメトトレキサート(MTX)を含み、他方は、それぞれ20μg/mLおよび200nMのピューロマイシンおよびMTXを含む。トリパンブルー染色で測定して、プールが少なくとも85%の生存率を回復したら、選択の第2段階を開始した。この第2段階では、第1段階の各プールを2つのプールに分割し、1つのプールは、それぞれ30μg/mLおよび500nMのピューロマイシンおよびMTXを含み、他方は、それぞれ50μg/mLおよび1μMのピューロマイシンおよびMTXを含んだ。トリパンブルー染色で測定した場合、第2段階選択プールの生存率が90%に達したら、10日間培養した流加生産物における抗hPD1抗体力価を評価した。プール3-2-5は、抗体力価に基づいて選択した。これらの細胞を、上記のようにDMSOを含むCDFortiCHO(商標)培地中、バイアル中で凍結させて、RCBを作製した。
【0164】
クローン細胞株を得るために、直前に記載したRCBからの凍結細胞のバイアルを、8mMのグルタミン、1μMのMTX、および1%の抗凝集剤(ThermoFisher、カタログ番号0010057AE)を含有するCDFortiCHO(商標)培地中で解凍させた。3日間の成長後、細胞を遠心分離し、8mMグルタミン、1μMMTX、および1%抗凝集剤を補充した既知組成培地に再懸濁させた。細胞をさらに2回継代培養し、各移植間に3日間成長させた。
【0165】
次いで、細胞を、グルタミン、1μMMTX、および0.5%CloneDetect(Molecular Devices)を補充した半固体CloneMedia(Molecular Devices,SanJose,California)中で最終濃度300細胞/mLに希釈した。Molecular Devices,アプリケーションノート「Confident identification of monoclonal CHO-S cells grown in semi-solid media using the CloneSelect Imager」(https://www.moleculardevices.com/en/assets/app-note/reagents/confident-identification-of-monoclonal-cho-s-cells-grown-in-semi-solid-media-using-cloneselect#grefで入手可能)を参照されたい。これは、参照により本明細書に組み込まれる。細胞を6ウェルプレートに2mL/ウェルで播種し、36.5℃、5%CO、および90%相対湿度(RH)でインキュベートした。10日間の静置培養後、ClonePix(商標)2システム(Molecular Devices)を使用して、プレートの蛍光をスクリーニングした。ClonePix(商標)2システムは、高蛍光を発する356個のコロニーを、100μLの既知組成培地を含む96ウェルプレートの個々のウェルに移した。4~5日間の静置培養後、各ウェル中の培地を慎重に吸引し、50μLの新鮮培地と交換した。その後、コロニーが80%コンフルエンスに達するまで、培地をこのようにして3~4日ごとに交換した。培地を再度交換し、コロニーをさらに3日間インキュベートした。
【0166】
次に、抗hPD1抗体の発現および成長特性についてコロニーを評価した。上記の356個の拡大させたコロニーを、96ウェルプレートからスピンチューブにコロニーを移すことによってさらに拡大させた。これらのスピンチューブ培養物を上記のようにバイアル中で凍結し、1つの細胞クローニングに使用するRCBを作製した。拡大プロセス中に、流加生産における細胞株の発現および成長特性を評価した。最初の生産は、24ウェルのマイクロタイタープレートで行った。ForteBioOctet(登録商標)システムプロテインA定量アッセイ(Sartorius,Goettingen,Germany)を使用して測定した抗体発現レベルに基づいて、高い抗体発現および許容可能な成長特性を有する185細胞株をスピンチューブに拡大し、2回目の流加生産を実施した。この評価に基づいて、以下に説明する限界希釈によるクローニングのために、G19G4細胞株を選択し、前述のようにG19G4のRCBを作製した。
【0167】
G19G4 RCBのバイアルを既知組成培地で解凍し、培養した。数回継代後、細胞をCDFortiCHO(商標)培地で希釈し、限界希釈法によりクローニングのために96ウェルプレートに播種した。ウェルは、播種後3時間後(T=0)、ならびに1日目、3日目、9日目、および13日目に撮像した。1つの細胞からのクローン(イメージングに基づく)を拡大し、成長特性についてスクリーニングし、流加培養における抗体産生性能を評価した。クローンG19G4-4B4は、その成長特性および抗体産生性能に基づいて、リードクローンとして選択し、1L振盪フラスコで拡大させ、DMSOを補充した既知組成培地で凍結させて、上記のようにRCBを生成した。
【0168】
抗hCTLA4抗体PSB105を発現する細胞株を作製するために、PSB105のHCをコードするベクターと、PSB105のLCをコードするもう1つのベクターの2つのベクターを以下のように作製した。抗hCTLA4抗体PSB105のHCをコードするベクターを構築するために、配列番号13(抗hCTLA4抗体のHCのアミノ酸配列)をコードするDNA断片の配列を、GeneOptimizer(商標)オンラインソフトウェア(GeneArt,ThermoFisher Scientfic)を使用して、ハムスター細胞(C.griseus)での発現用に最適化した。その配列が配列番号14に示される最適化されたDNA断片は、化学的に合成された。このDNA断片は、次の位置で次のアミノ酸改変を有するHCをコードする(Edelman et al.、前出により定義):K147D、F170C、V173C、C220G、R255K、D399R、およびK409E(配列番号13の148位、171位、174位、221位、256位、400位、および410位に対応する)。これらの改変の一部(K147D、F170C、V173C、C220G、および抗hCTLA4LC改変S131K、Q160C、S162C、およびC214S)は、確実に同族HC/LCの対形成を行う。その他(D399RおよびK409E)は、確実にホモ二量体HC/HC対の形成行う。1つ(R255K)は、in vivoクリアランス率の上昇および/またはin vivo半減期(t1/2)の短縮を引き起こす。この合成されたDNA断片をPCRによって増幅し、得られた断片を上記のようにアガロースゲル上で精製した。精製した断片をSapIで消化し、SapIで消化したM268-cベクター(Atum,Newark,California)にライゲートさせた。ライゲーションした混合物を大腸菌細胞に導入し、コロニーを選択し、これらのコロニーからのプラスミドインサートの配列を決定した。抗hCTLA4抗体のHCをコードする配列と100%一致するコロニーをさらに2回ストリークし、第2のストリークからのコロニー由来のプラスミドDNAのインサートの配列を決定した。それは、抗hCTLA4抗体のHCをコードする配列と一致した。
【0169】
第2のステップでは、Electraキット(https://www.atum.bio/catalog/reagents/electraを参照)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、インサートを哺乳動物細胞での安定した発現に好適であるベクター、すなわちpD2537(Atum)に移入した。室温で15分間インキュベート後、Electra反応物をエレクトロポレーションによって大腸菌に導入した。細胞を、30μg/mLカナマイシン(それによりpD2537ベクターを選択する)およびpM268-cプラスミドに対して逆選択する10mMp-クロロフェニルアラニンを含む酵母抽出グルコース(YEG)寒天プレート上にプレーティングした。抗hCTLA4 HCをコードするDNAの存在についてコロニーをスクリーニングし、陽性コロニー中のプラスミドのインサートの配列決定を行った。次いで、抗hCTLA4抗体のHCをコードするDNAの配列と一致するプラスミドを含むコロニーをさらに2回ストリークし、2番目のストリークからのコロニー由来のプラスミド全体の両鎖の配列を決定した。それは、ベクター配列および抗hCTLA4HCのアミノ酸配列をコードするDNA配列と一致した。抗hCTLA4HCのHCをコードするDNAを含むプラスミドpD2537のマップを図3に示す。
【0170】
抗hCTLA4 SB105抗体のLCをコードするベクターを以下のように構築した。抗hCTLA4抗体のLCをコードするDNA配列を、上記のようにハムスター(C.griseus)細胞での発現用に最適化し、化学合成し、SapI部位を含むプライマーを使用するPCRによって増幅した。このPCR断片をSapIで消化し、SapIで消化したpM268-c(Atum)にライゲーションし、大腸菌細胞に導入した。選択したコロニーからのプラスミドインサートのDNA配列を決定し、抗hCTLA4抗体PSB105のLCをコードする配列を含むコロニーを同定した。このコロニーを拡大させ、第2のステップ用のプラスミドDNAを作製するに使用した。
【0171】
第2のステップでは、PSB105のLCをコードするDNAが挿入されたpM268-cベクター(上記)および哺乳動物細胞中で安定して発現するためのベクターであるpD2531-EFMベクター(Atum)を使用して、Electra反応(あるベクターから別のベクターにインサートを効率的に移すため)を実施した。反応を15分間実施し、次に大腸菌細胞に導入し、30μg/mLカナマイシン(それによりpD2531-EFMベクターを選択する)および10mMp-クロロフェニルアラニン(pM268-cプラスミドに対して選択するため)上にプレーティングした。選択されたコロニーからのプラスミドDNAの配列が決定され、PSB105のLCをコードするインサートを含むコロニーを同定した。次いで、このコロニーを2回ストリークし、2番目のストリークからのコロニー由来のプラスミドDNAの配列を決定した。この配列は、ベクター配列と一致し、挿入された配列は、PSB105のLCをコードした。プラスミドDNAは、このコロニーから作製された。このベクターのマップを図4に示す。
【0172】
PSB105を発現するCHO細胞株は、上記ならびに図3および図4に図示されているPSB105のHCおよびLCをコードする哺乳動物発現プラスミドを同時に導入することによって作製した。より詳細には、2つのベクターをNruI-HF(登録商標)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状にし、製造業者の指示に従って、FreeStyle(商標)MAX試薬(Thermo Fisher)を使用して、CHO-S(商標)細胞をトランスフェクトするために使用した。Freedom(商標)CHO-S(商標)Kit(カタログ番号A1369601)UserGuide、Publication NumberMAN0003505、RevisionC.0、Thermo FisherScientificを参照されたい。これは、参照により本明細書に組み込まれる。トランスフェクションの2日後、25μMメチオニンスルホキシミン(MSX)および200μg/mLハイグロマイシンB(HGB)を補充した40mLCD-FortiCHO培地への完全な培地交換を行うことによって選択を開始した。トランスフェクション培養物を3つの別々のプールに分割し、それぞれをT-150フラスコに3x10、5x10、または8x10細胞/mLで播種した。6日後、すべてのプールを遠心分離し、培地を注意深く吸引した。細胞ペレットをそれぞれ、25μMMSXおよび200μg/mLHGBを含む新鮮な培地中に3x10細胞/mLで再懸濁させ、125mLの通気口付き振盪フラスコ中で培養した。続いて、プールを、生存率がすべて>90%(トリパンブルー染色により測定した場合)になるまで、直前に記載したように継代し、その時点で、11日間の流加生産において、抗体発現について判定した。発現レベルに基づいて、T-150フラスコに3x10細胞/mLで初期播種することによって生成されたプール(PSB105プール2.03と称する)を、5L撹拌タンクバイオリアクター内でPSB105を生産するために選択した。
【0173】
最後に、G19G4-4B4細胞株とPSB105プール2.03とをそれぞれ別々に培養すること、これらの培養物の細胞上清から抗体を回収すること、グラジエント溶出ではなく1つの溶出ステップを使用してプロテインAカラムで抗体を精製すること、により、PSB103およびPSB105抗体を並行して作製した。
【0174】
実施例2:抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の結合特異性の評価。
抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体、すなわちPSB103およびPSB105の結合の特異性は、hPD1、hCTLA4、およびCD28ファミリーの他のメンバーへの結合を測定する固相酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって評価した。
【0175】
簡潔に説明すると、96ウェルの平底マイクロタイタープレートのウェルを1μg/mLの捕捉分子でコーティングし、これは、(1)Fc断片に融合したヒトPD1の細胞外ドメイン(hPD1.Fc)、(2)Fc断片に融合したヒトCTLA4の細胞外ドメイン(hCTLA4.Fc)、(3)ヒスチジン-aviタグと融合したヒトPDL1の細胞外領域(hPDL1-his-avi)(タンパク質の効率的な精製(ヒスチジンタグ)とビオチンによるタンパク質(aviタグ)の標識が可能になる)、(4)ヒスチジン-aviタグに融合したマウスPD1の細胞外ドメイン(mPD1-his-avi)、または(5)Fc断片に融合されたヒトCD28の細胞外ドメイン(hCD28.Fc;R&DSystemsカタログ番号342-CD)のいずれかであった。プレートを粘着ストリップで密封し、18~24℃で一晩インキュベートした。プレートを、0.05%Tween-20を含む1xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。300μLのブロック緩衝液(1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む1xダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS))を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートすることによってプレートをブロックした。プレートを上記のとおり洗浄した。
【0176】
一次抗体(PSB103またはPSB105)を100μLの量で各ウェルに添加した。連続希釈系列で同じ一次抗体を含む複数のウェルをテストした。プレートを接着ストリップで密封し、室温で1時間インキュベートし、上記のように洗浄した。次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートしたポリクローナルヤギ抗ヒトκ軽鎖100μL(Sigmaカタログ番号A7164)を試薬希釈剤(0.05%Tween-20および0.1%BSAを含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS))で1:10000に希釈し、これを各ウェルに添加した。プレートを再度接着ストリップで密封し、室温で1時間インキュベートし、上記のように洗浄した。次に、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質溶液(Pierce(商標)TMB基質キット、ThermoFisherカタログ番号34021より)100μLを、各ウェルに添加し、プレートは直射光下に置くことなく、室温で20分間インキュベートした。最後に、Pierce(商標)TMB基質Kitの停止溶液50μLを各ウェルに添加し、450nmに設定したマイクロプレートリーダーで、各ウェルの光学密度を測定した。
【0177】
結果を図5、パネルAおよびBに示す。PSB103は、hPD1への結合を示したが、mPD1、hPDL1、hCD28、またはhCTLA4には結合しなかった。同様に、PSB105は、hCTLA4への結合を示したが、hPD1、mPD1、hPDL1、またはhCD28には結合しなかった。したがって、PSB103およびPSB105は両方とも、それらの抗原に対して特異的な結合を呈した。
【0178】
実施例3:カニクイザルにおけるPSB103およびPSB105の単回投与薬物動態。
カニクイザルにおけるPSB103の単回投与薬物動態学的特性を以下のように評価した。カンボジア起源のタンパク質ナイーブカニクイザル(すなわち、以前にヒト抗体を投与されていないサル)(体重4.129~5.971kg、年齢5~7歳)2頭の雄および2頭の雌を、2つの試験群のうちの一方に配置し(n=2、雄1匹/群、雌1匹/群)、投与開始前の7日間、試験室に順応させた。一方の群のサルは、PSB103の投与を受け、他方の群は、関係のないIgG4抗体の投与を受けた。PSB103およびIgG4抗体を、試験1日目に5mg/kgの用量で、1回のゆっくりとした静脈内(IV)ボーラス注射により注射した。投与前日を-1日目と示し、それより前の日を-2日目、-3日目などと順に番号を付けた。1日目の翌日を2日目、3日目と順に番号を付けた。体重は、-4日目、-1日目、9日目、および23日目に記録し、臨床観察は、順応中の選択日および生涯毎日2回行った。血液サンプル約0.5mLを、投与前ならびに、投与後0.083(5分)、0.5(30分)、2、8、16、24、72、144、240、336、504、および672時間後に採取した。室温、2,000xgで15分間遠心分離することにより血清を得た。各サンプルを2つのアリコート、すなわちアリコート1および2に分割した。
【0179】
サンプルの生物分析は、PSB103に対する抗イディオタイプ抗体を使用する検証済みのELISAプロトコルによって実施した。簡潔に説明すると、PSB103(3G12)に対する抗イディオタイプ抗体を使用して、マイクロプレートのウェルをプレコートした。ブロッキングおよび洗浄後、サンプル(試験サンプル、ブランク、標準、および品質管理サンプルを含む)をウェルに加え、プレートをインキュベートし、その後洗浄した。次に、抗イディオタイプ3G12(bio-3G12)抗体のビオチン化型をウェルに添加した。結合したbio-3G12は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジンで検出した。HRPの基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)を含む展開溶液をマイクロプレートのウェルに添加すると、サンプル中のPSB103の濃度に比例する450nmの比色シグナルが得られた。光学密度データからサンプル中のPSB103の濃度への変換は、4パラメータロジスティックモデルに従って回帰された、同時に分析された検量線との比較によって行った。PSB103の定量下限(LLOQ)は、50ng/mLであった。図6は、これらのデータの片対数プロットを示す。
【0180】
薬物動態(PK)評価は、検証済みのPhoenixWinNonlin(登録商標)バージョン6.1ソフトウェア(Pharsight Corporation)の非コンパートメント分析モデル血漿(200-202)IVボーラスによる個々の血清濃度および公称時間データを使用して実施した。公称PK採血時点は、投与前、ならびに投与後0.083(5分)、0.5(30分)、2、8、16、24、72、144、240、336、504および672時間であった。血清濃度時間曲線下面積(AUC)は、線形対数台形則によって推定され、ラムダz(λz)を推定するための時点は、回帰用に最適に適合し均一に重み付けされた濃度データを使用して、ソフトウェアによって選択された。これらのデータを以下の表1に示す。
【0181】
【表2】
【0182】
これには、各時点で群内の2匹のサルのそれぞれから採取されたサンプルが含まれ、各サンプルは、分析のために2つの別々のアリコートに分割された。
【0183】
SDは、標準偏差を意味する。
【0184】
個々の動物のアリコート間または動物間のPKパラメータの違いは、生物分析データの変動性および動物の数が制限されていることに起因していた。IVボーラス投与で予想されるように、最高血清濃度(Cmax)は、一般に、最初の時点、0.083時間(Tmax)であった。
【0185】
第2の単回投与PK試験では、抗hCTLA4抗体PSB105のPKパラメータを評価した。タンパク質ナイーブカニクイザル6匹を、雄1匹および雌1匹を含む3つの群に分けた。3つの群は、PSB105(群1)、関係のないヒトIgG1抗体(群2)、またはイピリムマブと呼ばれる市販の抗hCTLA4抗体(群3)を3mg/kgの用量でボーラスIV注射によって単回投与を受けた。公称採血時点は、投与前、ならびに投与後0.083(5分)、0.5(30分)、2、8、16、24、72、144、240、336、504および672時間であった。血清を上記のように調製し、PSB105(3G4)に対する抗イディオタイプ抗体を使用する検証済みのELISA法により、試験抗体の血清濃度を測定した。このアッセイは、3G12およびbio-3G12の代わりに、3G4およびそのビオチン化型(bio-3G4)を使用したことを除いて、PSB103について上述したように実施した。PSB105のLLOQは、250ng/mLであった。図7にこれらのデータを示す。
【0186】
PKパラメータは、上記のように決定され、以下の表2に示す。
【0187】
【表3】
【0188】
aこれには、各時点で、各群2匹のサルのそれぞれから採取されたサンプルが含まれる。
【0189】
SDは、標準偏差を意味する。
【0190】
表1のデータと併せて考えると、これらのデータは、PSB103が、カニクイザルにおいて、PSB105(109時間)のほぼ3倍であるt1/2(297時間)を有し、これは、PSB103がPSB105よりも長く血流中に残留する可能性が高いことを示している。さらに、PSB105は、また、カニクイザルにおいて、承認済みの抗hCTLA4抗体であるイピリムマブ(397時間)よりもはるかに短いt1/2を有する。
【0191】
実施例4:PSB103およびPSB105の両方を発現する哺乳動物宿主細胞株の作製
以下に、PSB103およびPSB105を発現するCHO宿主細胞株の作製について説明する。最初のステップとして、CHO-S(商標)細胞(ThermoFisher Scientific)のRCBを実施例1に記載のとおり作製した。
【0192】
その後、図8に示すように、抗hPD1抗体PSB103および抗hCTLA4抗体PSB105の両方を発現する細胞株を2つのステップで作製した。まず、実施例1で上述したクローン細胞株G19G4-4B4RCB(PSB103を発現する)からの1つのバイアルを解凍し、8mMのグルタミンおよび1μMのMTXを補充した19mLのCD FortiCHO(商標)培地を含む125mLのフラスコ中で拡大させた。細胞を2~3日ごとに2週間にわたり希釈して継代し、その後トランスフェクトした。トランスフェクションの前に、上記および図3および4に図示した抗hCTLA4抗体PSB105のHCおよびLCをコードするプラスミドを、NruI-HF(登録商標)(New England Biolabs,Ipswich,Massachusetts)で線状にした。それぞれ3x10細胞と上記の抗hCTLA4抗体PSB105のHCおよびLCをコードするプラスミドのそれぞれ25μgとを使用する2つのトランスフェクションを、製造業者の指示を利用して、FreeStyle(商標)MAX試薬(ThermoFisherScientific)を使用して実施した。トランスフェクトされた細胞を、8mMグルタミンおよび1μM MTXを補充した30mLのCDFortiCHO(商標)培地を含む2つのフラスコに、細胞濃度10細胞/mLで播種した。フラスコを、150RPMで回転する軌道直径25mmのシェーカープラットフォーム上で、37℃、5%COで48時間インキュベートした。
【0193】
その後、2つのフラスコを組み合わせること、得られた培養物を3つのプールに分離すること、および0.5Xグルタミンシンセターゼ発現(GS)培地サプリメント(Sigma)、100nMMTX、200μg/mLハイグロマイシンB(HGB)、およびメチオニンスルホキシミン(MSX)なし、10μMMSX、または25μMMSXのいずれかで、約1000~3000細胞/ウェルを使用して、細胞を96ウェルプレートに播種することによって選択を開始した。この選択スキームを図9に示す。MTXは、抗hPD1抗体PSB103をコードするベクターの存在のために選択する。HGBは、抗hCTLA4抗体PSB105のHCをコードするベクターの存在のために選択する。グルタミンが不在であり、グルタミンシンセターゼ阻害剤MSXが存在することにより、ハツカネズミグルタミンシンセターゼをコードするDNAを含む抗hCTLA4抗体PSB105のLCをコードするベクターの存在について選択される。プレートを12日間インキュベート後、成長を示すウェルを識別するために撮像した。48個のウェルを選択し、12ウェルプレートに播種するまで順次大きいウェルに拡大した。
【0194】
細胞が12ウェルプレート内でコンフルエントに達したときに、上清をELISAによって分析して、抗hCTLA4抗体PSB105および抗hPD1抗体PSB103を約1:2の比で発現するウェルを同定した。3つのプールのそれぞれから選択したウェル(MSXなし、10μMMSX、または25μMMSX)を分析して、細胞によって産生された総抗体の何パーセントが抗hPD1抗体PSB103であるかを決定した。データを以下の表3に示す。
【0195】
【表4】
【0196】
表3のデータは、MSXを含まないウェルが、平均してより高い割合の抗hPD1抗体PSB103を産生したことを示している。テスト対照の、MSXを含まない16ウェルのうち15ウェル、すなわち5G7を除くすべてを、50mLコニカルチューブにまとめてプールし、軌道直径25mmのシェーカープラットフォーム上225RPMで回転させ、37℃、5%COでさらに4日間インキュベートした。細胞を、6mMグルタミンを補充したCD FortiCHO(商標)培地で2.5細胞/mLに希釈し、96ウェルプレートに0.5細胞/mLで播種した。細胞を1つのみ含むウェルを識別するために、プレーティングの2時間後、ならびに2、13、および21日目にウェルを撮像した。1つの細胞クローンを140個、拡大させた。
【0197】
これらの細胞株のうち125個は、最初に細胞を透過処理し、次にIgG4およびIgG1の細胞内発現を染色することによって、抗hPD1抗体PSB103(IgG4抗体)および抗hCTLA4抗体PSB105(IgG1抗体)の発現についてスクリーニングした。いくつかの細胞が主にIgG4抗体のみまたは抗IgG1抗体のみを発現するクローン細胞株(図10、パネルCに示すように)は、さらなる分析のためには選択されなかった。ほとんどすべての細胞が抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体の両方を発現するクローン細胞株(図10、パネルBに示すように)をさらなる分析のために選択した。
【0198】
これらの細胞株のうち14株を振盪フラスコで拡大させ、培養開始から12日後および/または14日後にプロテインAカラムを使用して細胞上清から抗体を回収した。抗体の量は、220nmで吸光度を測定し、その結果を既知の濃度の標準タンパク質の希釈系列の吸光度と比較することによって判定した。抗hPD1抗体である全抗体のパーセント(抗hPD1%)は、Zhang et al.(2013)によって、Improving pH gradient cation-exchange chromatography of monoclonal antibodies by controlling ionic strength,J.Chromatography A 1272:56-64に記載されているとおり、pH勾配陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって決定した。これは、参照により本明細書に組み込まれる。これらのデータを以下の表4および図11に示す。
【0199】
【表5】
【0200】
上記の表4に示すように、約50~75%の抗hPD1抗体および少なくとも1g/Lの総抗体から産生される5つのクローン細胞株をさらなる分析のために選択した。これらの細胞をベンチスケールバイオリアクター内で成長させ、細胞倍加時間を測定した。抗体を細胞上清から回収し、抗体力価および抗hPD1抗体パーセントを上記のように決定した。抗体混合物中の抗体の純度は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施することによって評価した。これらのデータを以下の表5に示す。
【0201】
【表6】
【0202】
さらなる特性評価のために細胞株20F5を選択した。20F5細胞のRCBを上記のように作製した。集団倍加レベル(PDL)、すなわちRCBの確立以来、集団内の細胞が2倍になった回数、および/または全体的な抗体発現、抗hCTLA4:抗hPD1抗体比、および/または細胞倍加時間に影響を及ぼす培地中におけるメトトレキサート(MTX)またはハイグロマイシンB(HGB)の存在を決定するために、さらなる実験を行った。
【0203】
簡潔に言えば、20F5 RCBのバイアルを100nM MTXおよび200μg/mL HGBを含む培地(+MTX/+HGB培地)で解凍させた。解凍の3日後、この培養物を使用して、100nM MTXを含有し、HGBを含まない培地(+MTX/-HGB培地)中で追加の培養物を作製した。得られた2つの培養物を、それぞれの培地中で3~4日ごとに継代することにより、約60PDLの間、熟成させた。倍加時間を監視し、図12、パネルCに示すデータを生成した。これらのデータは、20F5の倍加時間が約10~60のPDLでほぼ一定であり、+MTX/+HGBおよび+MTX/-HGB培地でも同様であることを示した。
【0204】
上述の+MTX/+HGBおよび+MTX/-HGB培地での培養物を熟成している間、各培養物のバイアルをPDL約13および約28で凍結させた(RCBの作製について上述したとおりである)。約35のPDLで、+MTX/-HGB培地の培養物を使用して、MTXおよびHGBを両方とも含まない培地(-MTX/-HGB培地)で別の培養物を作製し、これをPDL45.3に達するまで培養した。この時点で、-MTX/-HGB培地で流加培養を接種するために使用され、図12、パネルAの左から4番目の棒グラフに示すデータが得られた。+MTX/-HGB培地は、PDL45.4に達し、-MTX/-HGB培地で流加培養を接種するために使用された。これにより、図12、パネルAの左から5番目の棒グラフに示されるデータが得られた。
【0205】
さらに、+MTX/+HGB培地での培養がPDL44.5に達したとき、それを使用して-MTX/-HGB培地で流加培養を開始し、図12、パネルAの右端の棒グラフに示すデータが得られた。
【0206】
さらに、PDL約13および28で凍結させた+MTX/-HGB培養物からの細胞のバイアルを-MTX/-HGB培地に解凍し、それぞれPDL22.4および37.2に達するまで、-MTX/-HGB培地中で培養した。この時点で、これらの培養物を使用して、-MTX/-HGB培地で流加培養物を接種し、図12、パネルAの左から2番目および3番目の棒グラフにそれぞれ示すデータが得られた。
【0207】
最後に、20F5RCBからの細胞のバイアルを-MTX/-HGB培地で解凍し、PDL9.2に達するまで-HGB/-MTX培地で培養した。その培養物を使用して、-MTX/-HGB培地で流加培養したものを接種し、図12、パネルAの左端の棒グラフに示すデータが得られた。
【0208】
各培養の開始後6、8、および11日目に、上記のすべての流加培養物から細胞培養上清サンプルを採取し、産生された抗体の総量および抗hPD1抗体である抗体のパーセントを決定した。11日目のサンプル中の抗体は、プロテインAカラムを使用して回収した。回収した抗体の量は、220nmで吸光度を測定し、その結果を既知の濃度の抗体の希釈系列の吸光度と比較することによって判定した。これらの結果を図12、パネルAに示す。
【0209】
ストレプトアビジン(SA)センサーを備えたOctet Redシステム(Sartorius)を使用して開発された社内メソッドを使用して(Sartorius、カタログ番号:18-5019)、抗hPD1抗体のパーセントは、6、8、11日目に収集された細胞培養上清サンプルから直接測定した。簡潔に言えば、抗hPD1抗体および抗hCTLA4抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体(抗id Ab)を、市販のキットを使用して、製造業者のプロトコル(ThermoScientific,カタログ番号:21955)に従って、ビオチン/抗idAbモル比1:1でビオチン化した。次に、ビオチン化抗イディオタイプ抗体をSAセンサーに固定化し、2セットのセンサーを生成した。一方のセットは、抗hPD1 抗-idAbを使用し、他方のセットは、抗hCTLA4 抗-idAbを使用した。精製した抗hPD1および抗hCTLA4をPBSで連続希釈して、既知の濃度で各抗体の標準曲線を作成し、希釈した6、8、および11日目の細胞上清サンプルも含むアッセイプレートに添加した。抗hPD1抗-idを固定化したSAセンサーを使用して、細胞培養サンプル中の抗hPD1抗体の量を測定し、抗CTLA4抗-idを固定化したSAセンサーを使用して、細胞培養サンプル中の抗CTLA4抗体の量を測定した。結果を、既知の濃度での各抗体の精製サンプルからの結果と比較して、細胞培養サンプル中に存在する抗体の量を決定した。各サンプル中に存在する抗体の総量は、サンプル中に検出された抗hPD1および抗CTLA4の量を加えることによって決定した。各サンプル中に存在する抗hPD1抗体のパーセントは、各サンプル中で測定された抗hPD1の量を各サンプル中に存在する抗体の総量で割ることによって決定した。データを図12、パネルBに示す。
【0210】
まとめると、図12のデータは、PDLが試験範囲内のPDLを有する細胞集団中での抗hCTLA4:抗hPD1抗体比または全体的な抗体発現に実質的に影響を及ぼすことはないことを示した。図12、パネルAおよびB。さらに、全体的な抗体力価および抗hCTLA4/抗hPD1抗体比は、すべての培養物で本質的に同じであり、試験した様々な培地がこれらの指標に影響を及ぼすものではなかったことを示している。図12、パネルAおよびB。さらに、細胞株20F5の倍加時間は、培地が+MTX/-HGB/培地または+HGB/+MTX培地であるかに関係なく、PDL約10~60での培養において、ほぼ一定であった。図12、パネルC。20F5細胞株によって産生されるPSB103とPSB105との混合物を、本明細書ではPSB205と称する。
【0211】
実施例5:PSB205の作製
PSB205は、以下のとおり作製した。20F5細胞株を培養し、細胞上清を回収した。PSB205は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、細胞上清から精製され、抗体混合物は、勾配ではなく、1つのステップでプロテインAから溶出させた。調製物の純度を高めるために、例えば、アニオンおよび/またはカチオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および/またはサイズ排除クロマトグラフィーなどの様々なカラムクロマトグラフィーステップに加えて、様々な沈殿戦略、透析、および/または様々なろ過ステップのいずれかなどの他のステップを任意により追加することができる。
【0212】
最後に、重量/重量(w/w/)パーセンテージとしてのPSB105とPSB103の比を、2つの異なるロットのPSB205について決定した。一方のロットは、毒性学研究に使用されたもの(PSB205-Tox)であり、他方のロットは、適正製造基準(GMP)プロトコルを使用して産生されたもの(PSB205-GMP)である。抗体の相対濃度は、減少させた塩濃度を用いて、抗体を分離する疎水性相互作用高速液体クロマトグラフィー(HI-HPLC)を使用して決定した。抗体は、UV光により検出した。PSB103およびPSB105の個別のピーク面積を並行して積分し、合計した。各抗体の比率は、2つの抗体ピークのそれぞれの面積を両方の抗体ピークの面積の合計で割ることによって決定した。これらのデータを以下の表6にまとめる。
【0213】
【表7】
【0214】
これらのデータは、異なるロットにおけるPSB105:PSB103の比率が非常に同等であることを示している。
【0215】
PSB205-ToxおよびPSB205-GMP中の抗体の非還元無傷質量を、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によって測定した。同様のデータが、PSB205の調製物から単離されたPSB103およびPSB105の種からも得られ、これらを本明細書ではPSB103-SおよびPSB105-Sと称する。より具体的には、質量スペクトルは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を備えた四重極飛行時間型(QTOF)質量分析計に接続されたサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UPLC)によって取得された。結果を、図13、パネルA(PSB103-S)、B(PSB105-S)、およびC(PSB103-SおよびPSB105-Sが単離されたPSB205調製物)、ならびに図14、パネルA(PSB205-Tox)およびB(PSB205-GMP)に示す。検出された主要な抗体種のサイズは、PSB103およびPSB105の様々なグリコシル化種に対応していた(N-グリコシル化抗体種の詳細な説明については、例えば、Yang et al.(2016),Ultrafast and high-throughput N-glycan analysis for monoclonal antibodies,MAbs 8(4):706-717を参照されたい。これは参照により本明細書に組み込まれる)。ここで、以下に説明するとおり、両方の抗体のHCは、C末端リジンを含まない。両方の抗体のHCのN末端グルタミンは、ピログルタミン酸に変換されている。検出されたグリコシル化種の同定は、図13の簡単な説明で説明している。C末端リジンまたは未修飾のN末端グルタミンなどの主要な抗体種は検出されなかった。図13に示す結果から導き出されたサイズを以下の表7に示す。
【0216】
【表8】
【0217】
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、PSB205の安定性を測定した。理論的には、DSCは、溶液中のタンパク質の過剰熱容量とタンパク質を含まない対照溶液の過剰熱容量を温度変化に対応させて測定し、その間、構造のアンフォールディング遷移が、吸熱ピークとして観察される。この転移の中間点の温度が、融解温度(Tm)として定義される。この試験では、熱安定性は、MicroCalVP-DSCキャピラリーセル微量熱量計を使用したDSCによって測定した。DSCおよびその結果の分析は、例えば、Durowoju et al.(2017),Differential scanning calorietry-a method for assessing the thermal stability and conformation of protein antigen,J.Visualized Experiments 121:e55262(doi:10.3792/55262で入手可能)に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0218】
図15に示す例示的な結果のサーモグラムは、PSB205のGMPロットが3つの熱転移を呈したことを示している。PSB205の毒性ロットおよびGMPロットの両方で、同様のサーモグラムが示された。非二状態モデル(non-two-state model)を各熱スキャンにフィットさせ、3つのTm値(Tm1、Tm2、およびTm3)を取得した。具体的には、PSB205の毒性ロットは、それぞれ64.6℃、73.3℃、および77.9℃のTm1値、Tm2値、およびTm3値を有する。PSB205のGMPロットのTm1、Tm2、およびTm3値は、それぞれ64.0℃、73.0℃、および78.0℃であった。したがって、観察された熱転移は、ロットごとにほとんど変化しなかった。
【0219】
実施例6:PSB205の構造バリアント
PSB205がCHO細胞内で産生されたということは、例えばグリコシル化形態または修飾もしくは欠失アミノ酸を含む形態などの翻訳後修飾形態などの構造バリアントが、調製物PSB205中に存在することが可能であった。上記のように、PSB205、すなわちPSB105における抗hCTLA4抗体のHCおよびLCは、配列番号14および18の核酸配列によってコードされ得る。これらの配列は、それぞれ配列番号13および17のアミノ酸配列をコードする。同様に、PSB205、すなわちPSB103における抗hPD1抗体のHCおよびLCは、配列番号2および6の核酸配列によってコードされ得、これらは、配列番号1および5のアミノ酸配列をコードする。しかし、翻訳後修飾の可能性があるため、これらの抗体がこれらの核酸配列を含むポリヌクレオチドでトランスフェクトされたCHO細胞で作製される場合、これらの配列は、PSB105およびPSB103の構造を正確に定義できない可能性がある。
【0220】
上で説明したとおり、PSB205中の抗体の非還元無傷質量は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によって測定した。具体的には、質量スペクトルは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を備えた四重極飛行時間型(Q TOF MS)質量分析計に接続されたサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UPLC)によって取得された。これは、PSB205、ならびにクロマトグラフィーによってPSB205の調製物から単離されたPSB105およびPSB103に対して行われた。PSB105およびPSB103のこれらの単離された調製物は、それぞれPSB105-SおよびPSB103-Sと称した。生データは、スペクトルデコンボリューションソフトウェアで分析した。以下で説明するように、PSB103およびPSB105の両方のHC上のN末端グルタミンは、PSB205に存在するほとんどの種でピログルタミン酸に変換でき(例えば、Pyroglutamate in PubChem Compound Summary(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Pyroglutamateで入手可能)を参照されたい)、両方のHC中のC末端リジンは、PSB205に存在するほとんどの種で欠失され得る。PSB205中で最も豊富な2つの抗体種のサイズ、すなわち147,609.8ダルトンおよび149,319.7ダルトンは、それぞれPSB105種とPSB103種と一致しており、かつ各HC/HC対上に直前に言及した2つの修飾、およびG0F/G0Fグリコシル化を有し、おそらく各HC上のN297のよく知られたグリコシル化部位に付着している(例えば、Yang et al,.上記および図13の簡単な説明)を有する。これは、Edelman et al.,(前出)に従って番号付けされた位置であり、それぞれ配列番号1および13の296位および298位に対応する。147,769.7ダルトンおよび149,475.0ダルトンで検出された2番目に顕著な2種は、HC/HC対上に直前に言及した2つの修飾およびG0F/G1F(同上)グリコソイル化を有するPSB105およびPSB103種と一致しており、これもおそらくN297に付着している。したがって、PSB205には、特定のグリコシル化抗体種が含まれている。
【0221】
上で述べたように、PSB205中の抗体の一次アミノ酸配列は、検出された抗体種中で修飾されていることが判明した。これは、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)トリプシンペプチドマッピングによって確認された。例えば、Jenkins et al.(2015),Recommendations for validation of LC-MS/MS bioanalytical methods for protein biotherapeutics,AAPS Journal 17(1):17pages(DOI:10.1208/s12248-014-9685-5で入手可能である)を参照されたい。これは、参照により本明細書に組み込まれる。LC-MS/MSは、ESIを備えたQ TOF MSに接続したUV215nm検出を備えた逆相超高速液体クロマトグラフィー(RP-UPLC)を使用して実施した。
【0222】
PSB205には、PSB105およびPSB103の両方が含まれるため、個々の精製抗体PSB105-SおよびPSB103-Sのトリプシンペプチドマップを最初にPSB205のトリプシンペプチドマップと比較して、PSB205マップ内のどのトリプシンペプチドがどの抗体に由来するかを決定した。PSB105およびPSB103の予測される個々のペプチドのほとんどは、それぞれPSB105-SおよびPSB103-Sのトリプシンペプチドマップで検出され、PSB205のペプチドマップでも検出された。4アミノ酸以下のいくつかの短いペプチドが検出されなかったが、これは、この方法の限界によるものであった。
【0223】
しかし、一部のペプチドは、理論的に予測されたサイズと一致しなかった。PSB105およびPSB103は両方とも、これらのHCをコードするDNA配列に基づいて、HC内にN末端グルタミン残基を有すると予測される。PSB105およびPSB103の両方のN末端トリプシンペプチド(単離された形態、およびPSB205中の混合物の一部の場合)は、N末端グルタミンがピログルタミン酸に変換された場合のこれらのペプチドの理論的サイズと一致するサイズを有していた。同様に、PSB105およびPSB103の両方のHCのC末端アミノ酸は、これらのHCをコードするDNA配列に基づいてリジンであると予測される。しかし、PSB105およびPSB103の両方のC末端ペプチドのサイズは、C末端リジンを除くこれらのペプチドの理論的に決定されたサイズと一致していた。したがって、PSB103およびPSB105は両方とも、N末端グルタミンの修飾、およびC末端リジンの欠失を有する。
【0224】
さらに、アスパラギン(N)残基の若干の脱アミド化が、PSB103およびPSB105の両方の特定のトリプシンペプチド中で観察された。この脱アミド化は、上記のLC-MS/MS方法を使用して、トリプシンペプチドのサイズの変化によって検出された。パーセンテージは、脱アミド化トリプシンペプチドのピーク面積を、脱アミド化ペプチドのピーク面積と、同じ脱アミド化されていないペプチドのピーク面積との合計で割ることによって求めた。これらの結果を表8にまとめる。
【0225】
【表9】
【0226】
これは、図14のパネルAに質量データが示されているのと同じ毒性ロットである。
【0227】
これは、図14のパネルBに質量データが示されているのと同じGMPロットである。
【0228】
PSB103とPSB105との間で共有されている配列。
【0229】
これらのデータは、脱アミド化パーセントがPSB205の2つのロットで本質的に同じであることを示している。一部のアスパルギン残基における比較的高レベルの脱アミド化は、トリプシン消化条件、すなわち、pH8、37℃で一晩という、脱アミド化を誘導可能な条件によって説明され得る。
【0230】
実施例7:PSB103、PSB105、およびPSB205のそれらの抗原への結合動力学
ヒトPD1およびカニクイザルPD1(hPD1およびcPD1)の細胞外ドメインへのPSB103の結合、およびhPD1の細胞外ドメインへのPSB205の結合の動力学は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用し、CM5センサーチップを備えたBiacore3000光学バイオセンサーによって、製造業者の一般的プロトコルに従って測定して判定した。
【0231】
最初にセンサーチップを機器上に置き、一晩以上平衡化させた。ランニング緩衝液(0.01M HEPES pH7.4,0.15M NaCl,3mM EDTA,0.005%v/v界面活性剤P20(HBS-EP,GE Life Sciences(現Cytiva)カタログ番号BR100188))を濾過し、システムに配置する前に脱気させた。ランニング緩衝液が接続されたら、Biacore3000を3回プライミングし、実験を行う前に「正規化(Normalize)」システム手順を実施して、システムの光学系を校正した。すべての測定は、25℃で行った。
【0232】
最初に、アミンカップルキット(GE Life Sciences,BR100050)を使用して約8000共鳴単位(RU)のヤギ抗ヒト抗体捕捉抗体(Jackson Labs,カタログ番号109-005-098)を、CM5チップ(GE Life Sciencesカタログ番号BR100399)の2つのフローセルのそれぞれに固定した。カニクイザルPD1のPSB103リガンドへの結合を評価するために、CM5チップの1つのフローセルは、約100~200RUのPSB103を捕捉するのに使用し、他方のフローセルは、実験の参照チップとして機能した。cPD1-his分析物(C末端にヒスチジンタグを有するcPD1のアミノ酸1~167;Sino Biological、カタログ番号90311-C08H)を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充したランニング緩衝液で、濃度1.2、3.7、11.1、33.3、100、および300nMまで希釈した。これらの希釈液を、捕捉されたPSB103を含む試験フローセルおよび参照フローセルに流速50μL/分で注入した。複合体をそれぞれ300秒間会合させ、1500秒間解離させた。表面は、10mMグリシン-HCl、pH1.5を30秒間注入して再生した。各分析物サンプルと緩衝液ブランクの二重注入を、参照フローセルおよびリガンド捕捉フローセル上に流した。
【0233】
Scrubber2ソフトウェアバージョン2.0c(BioLogic Software)を使用して、cPD1-his分析物を使用して生成されたデータを位置合わせし、二重参照した。解離定数(k)は、解離相データから決定した。この解離相係数は、一次結合モデルを使用して会合相データのグローバルフィットにおける固定パラメータとして適用され、結合速度係数(k)を決定した。
【0234】
ヒスチジンタグに融合したヒトPD1(hPD1-his)の細胞外ドメインを含むPD1分析物への結合を評価するために、上記のヤギ抗ヒト抗体捕捉抗体の約8000共鳴単位(RU)を、上記に記載のとおり、CM5チップの3つのフローセルのそれぞれに固定した。次に、約350RUのPSB103または600RUのPSB205を、ヤギ抗ヒト捕捉抗体でコーティングされた2つの異なるフローセル上で捕捉した。第3のフローセルは、参照フローセルとして機能した。hPD1-hisリガンドを、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したランニング緩衝液で濃度12、25、50、100、200、および300nMに希釈した。これらの希釈液を流速30μL/分で3つのフローセルに注入した。複合体をそれぞれ120秒間会合させ、600秒間解離させた。表面は、10mMグリシン-HCl、pH1.5を、2回20秒間注入して再生した。各分析物サンプルと緩衝液ブランクの二重注入を、参照フローセルおよびリガンド捕捉フローセル上に流した。
【0235】
これらのデータは、手動で調整し、BIAevaluationバージョン4.1.1ソフトウェア(General Electric Company)を使用して二重参照させた。ソフトウェア内のグローバルデータ分析オプションを使用して、データを単純な1:1ラングミュア相互作用モデルに適合させた。cPD1-hisおよびhPD1-hisの両方のデータを以下の表9に示す。
【0236】
【表10】
【0237】
これらのデータは、PSB103が同等の高い親和性で単量体抗原cPD1-hisおよびhPD1-hisに結合すること、およびPSB103およびPSB205が、hPD1-hisに対してほぼ同じ結合動態で結合することを示している。
【0238】
同様の一連の実験において、PSB105のヒトCTLA4(hCTLA4)およびカニクイザルCTLA4(cCTLA4)への結合動力学、およびPSB205のhCTLA4への結合動態を評価した。CM5センサーチップをBIAcore3000機器に置き、一晩以上平衡化させた。ランニング緩衝液は、システムに置く前に濾過し、脱気した。ランニング緩衝液が接続されたら、Biacore3000を3回プライミングし、実験を実行する前に「正規化(Normalize)」システム手順を実施して、システムの光学系を校正した。すべての測定は、25℃で行った。約8000共鳴単位(RU)のヤギ抗ヒト抗体捕捉抗体を、各リガンドのフローセルとリガンドのない参照フローセルなどのCM5チップの各フローセルに固定した。
【0239】
約550RUのPSB105が、フローセル上に捕捉された。hCTLA4-hisリガンド(ヒスチジンタグに融合したヒトCTLA4の細胞外ドメイン;AcroBiosystemsカタログ番号CT4-H5229-100μg)を、0.1%BSAを含むランニング緩衝液で、0.64、1.25、2.5、5、10、および20nMに希釈し、流速30μL/分でフローセルに注入した。cCTLA4-hisリガンド(ヒスチジンタグに融合したカニクイザルCTLA4の細胞外ドメイン;AcroBiosystemsカタログ番号CT4-C5227-200μg)を、濃度3.75、7.5、15、30、および60nM、流速30μL/分で、フローセルに注入した。複合体をそれぞれ180秒間会合させ、300秒間解離させた。表面は、10mMグリシン-HCl、pH1.5を流速30μL/分で40秒間注入して再生した。各分析物サンプルおよび緩衝液ブランクを二重に注入し、参照表面およびリガンド捕捉表面上に流した。
【0240】
別の分析物、hCTLA4-GST-his(グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグおよびヒスチジンタグが融合したヒトCTLA4の細胞外ドメイン、社内で作製)のPSB105およびPSB205への結合に関する情報を収集する最初のステップとして、PSB105の約300RUおよびPSB205の約480RUを、CM5チップの2つの異なるフローセルに捕捉させた。別のフローセルには、捕捉されたリガンドは有さず、参照フローセルとして使用した。分析物は、濃度12.5、25、50、100、および200nMで、流速30μL/分で、フローセルに注入させた。複合体をそれぞれ120秒間会合させ、600秒間解離させた。表面は、10mMグリシン-HCl、pH1.5を12秒間2回注入して再生した。各分析物サンプルおよび緩衝液ブランクの二重注入を、参照フローセルおよびリガンド捕捉表面上に流した。
【0241】
CTLA4分析物を使用した上記の実験からのデータは、BIAevaluationソフトウェアバージョン4.1.1(General Electric Company)を使用して評価し、データを手動で位置合わせし、二重参照した。ソフトウェア内のグローバルデータ分析オプションを使用して、データを単純な1:1ラングミュア相互作用モデルに適合させた。結果を以下の表10に示す。
【0242】
【表11】
【0243】
これらのデータは、PSB105が単量体ヒトおよびカニクイザルCTLA4抗原の両方に高親和性で結合することを示している。さらに、PSB105とPSB205は、hCTLA4-GST-his分析物の結合動態が類似している。表9のデータと併せて考えると、これらのデータは、PSB205中の2つの抗体のそれぞれが、これら2つの抗体のいずれか単独のものと本質的に同じ動態でその抗原に結合することを示す。
【0244】
実施例8:サイトメガロウイルス(CMV)リコール応答アッセイにおけるPSB205の活性。
以下の実験では、CMVリコール応答アッセイで検出されたCD8T細胞の数に対するPSB205の効果を、PSB103、PSB105、またはIgG1アイソタイプ対照抗体と比較して試験した。
【0245】
IgG1アイソタイプ対照抗体調製物は、Southern Biotech(カタログ番号0151k-14)から入手し、PSB103、PSB105、およびPSB205を本明細書に記載のとおり作製した。CMVドナーからのヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、Bentech Bio(現在は、Bloodworks Northwest,Seattle,WA)から購入した。
【0246】
PBMCを解凍し、マイクロタイタープレートの16ウェルに播種し、各ウェルには、10%ウシ胎児血清(FCS)を補充した容量200μLのRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地中に3.8x10個の細胞を入れた。これらの細胞を、5μg/mLのIgG1アイソタイプ対照、5μg/mLのPSB103、2.5μg/mLのPSB105、または7.5μg/mLのPSB205のいずれかの存在下、3μg/mLの濃度で、CMVに感染した細胞のライセート(AstarteBiologics(現Cellero)から購入、カタログ番号1004、ロット番号3341DE16)で刺激した。細胞を刺激開始7日後に収集し、室温で15分間、2μLのデキストラマー(HLA-A*0201[NLVPMVATV]-PE、Immudexから購入)、CMV抗原pp65を特異的に認識するCD8T細胞に結合することが予想されるフィコエリトリン(PE)標識デキストラン/MHCクラスI(MHCI)/ペプチド複合体で染色した。次に、BD Bioscienceから購入したフルオレセインイソチオシアネート(FITC)にコンジュゲートした抗CD8抗体2μLを加え、染色を室温で30分間続けた。次に、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、最終細胞ペレットを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充した400μLのPBSに再懸濁させた。細胞を分析して、FACscalibur(商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用して、抗CD8抗体および/またはデキストラマーによって結合された細胞の数を決定した。
【0247】
これらのデータから生成したグラフを図16に示す。データは、CMVライセート(抗原)およびPSB205の存在下で刺激されたPBMCが、CMVライセートおよびPSB105またはPSB103単独のいずれかの存在下で刺激されたPBMCよりも、デキストラマーに結合するCD8細胞、すなわちCMV抗原を認識するCD8T細胞(CD8CMV細胞)をより多く拡大させることを示している。(1)CD8CMV細胞の絶対数および(2)CD8CMV細胞である全細胞の割合の定量では、CMVライセートとPSB205の存在下で刺激されたPBMCが、CMVライセートとPSB103またはPSB105のいずれか単独で刺激した細胞より多いCD8CMV細胞を有することが示されている。図17。これらのデータでは、PSB105は、CD8CMV細胞の数にほとんどまたはまったく影響を有しない一方で、PSB103では、ある程度のプラスの効果を有し、PSB205では、PSB103より明らかに大きいプラスの効果を有することを示している。したがって、PSB205は、CMV抗原特異的CD8T細胞の拡大に対して、(PSB103またはPSB105単独と比較して)相乗効果を示す。
【0248】
実施例9:HCC827異種移植片腫瘍モデル系におけるPSB205、PSB103、およびPSB105の有効性。
この試験の目的は、樹立されたヒト肺腺癌細胞株由来の腫瘍異種移植片に対するPSB205とその構成成分である抗体PSB103およびPSB105の有効性を評価することであった。異種移植片を作製するために使用したヒト腺癌細胞株は、HCC827であった。例えば、ATCCカタログ番号CRL-2868を参照されたい。
【0249】
より詳細には、20匹のマウスのそれぞれの右脇腹に、5x10個のHCC827細胞を含む0.1mLのPBSを皮下接種した。この接種日を0日目と称する。それ以降の試験日には、順番に上向きの番号を付ける。一方、ヒトPBMCは、標準手順を使用して1名の健康なヒトドナーの末梢血から単離され、移植のために1x10細胞/mLで再懸濁させた。腫瘍サイズ中央値が60~80mmに達したとき(腫瘍接種後約5日)、1x10個のPBMCを各マウスに静脈内移植した。その後、すべてのマウスの体重を測定し、ノギスを使用して腫瘍サイズを測定した。その後、マウスを抗体治療のために4つの群に分配した。
【0250】
4つの異なる抗体治療(1群あたり5匹のマウス)のいずれかによる治療を、PBMC移植の1時間後に開始した。この治療は、週2回(BIW)抗体治療コースの最初の投与であり、これを3週間継続した。抗体は、腹腔内注射により投与した。腫瘍は、ノギスを使用して、週2回測定した。プロトコルの詳細を以下の表11に示す。
【0251】
【表12】
【0252】
結果を図18に示す。二元配置分散分析(ANOVA)を使用して、時間および治療を対応させて、腫瘍阻害を分析した。これらのデータは、PSB205群のマウスは、ヒトIgG1群のマウスと比較して、統計的に有意な腫瘍縮小を示したが、PSB103およびPSB105群のマウスは、そのような縮小を示さなかった。したがって、PSB103およびPSB105の組み合わせ、すなわちPSB205は、これらの抗体のいずれか単独よりも有効であった。
【0253】
実施例10:ヒトにおけるPSB205の投与量および安全性の予備評価。
ヒト患者におけるPSB205の安全性を確認するための非盲検の用量漸増試験を、上咽頭癌(NPC)および肺癌(LC)患者の治療センターで実施した。用量漸増は、PSB205の用量0.3~10mg/kgを3週間ごと(q3w)に静脈内投与する加速3+3設計に基づくものであった。拡大段階は、選択された用量コホートで実施した。本試験の主な目的は、進行性悪性腫瘍患者におけるPSB205の最大耐用量(MTD)および推奨第2相用量(RP2D)を決定することにより、PSB205の安全性および忍容性を定義することであった。
【0254】
44名のNPCおよびLC患者が登録された。各患者の1つ以上の腫瘍(最大5個の腫瘍)の直径(複数可)を、ベースライン時とその後7、13、22、および31週目に、コンピューター断層撮影スキャン(CTスキャン)を使用して測定した。複数の腫瘍が測定された場合、測定された腫瘍の直径の合計を決定した。この合計は、標的病変の合計と称する。患者はいかなる時でも自由に試験への参加を中止できた。以下の表12は、反応評価可能な対象の登録状況および予備有効性データをまとめたものである。「反応評価可能」であるためには、PSB205による治療後に、腫瘍(複数可)が、縮小したか、成長したか、または変化がないかを判断するために、患者は、少なくとも7週目のCTスキャンを受けている必要があった。
【0255】
【表13】
用量表示後に「-PK」が続く場合は、安全性および有効性の指標のモニタリングに加えて、薬物動態測定が行われた患者を示す。
「LC」は、肺癌を表す。
「NPC」は、上咽頭癌を表す。
空白のボックスは、以前に抗hPD1標的治療を受けていないことを示す。2つの治療(例えば「カムレリズマブ/プラセボ」)のいずれかである以前の治療を受けた記載されている患者は、薬物を受けたかプラセボを受けたか不明である盲検臨床試験に参加していた。
「サイクル番号」は、患者にPSB205が投与された回数を示す。
「Disctd」は、中止を表す。
これらの対象は、用量制限毒性(DLT)のため試験治療を中止した。
この対象は、グレード4の注入反応のため試験治療を中止した。
奏効は、RECISTガイドライン(バージョン1.1)に準拠して、本明細書で上記に定義されているように、進行性疾患(PD)、部分奏効(PR)、安定疾患(SD)、または完全奏効(CR)として示す。
【0256】
この臨床試験の結果によって示唆されたPSB205の観察された有効性を強調するために、入手可能な予備データを表13にまとめる。これは、病勢コントロール率(DCR、すなわち、部分奏効または完全奏効(PRまたはCR)または安定疾患(SD)を呈する評価可能対象の割合)、および客観的奏効率(ORR、すなわち、治療後にPRまたはCRを示した患者の割合)を示す。
【0257】
【表14】
【0258】
1~10mg/kgの用量での集合データは、PSB205のこれらの用量がLCおよびNPCに対する有効な治療用量であり得ることを示唆している。観察された反応の程度を説明するために、図19は、32名の評価可能な対象のそれぞれについて、ベースラインからの腫瘍直径の変化を、それぞれが受けた用量と共に示す。これらのデータは、1~10mg/kgの用量のPSB205を投与された一部の患者によって実質的な反応が達成されたことを示している。
【0259】
表14は、1または3mg/kgのPSB205を投与された患者が経験した有害事象(AE)に関するデータを提供する。グレード1、2、3、および4のAEは、上記のとおり定義されており、有害事象共通用語基準(CTCAE)バージョン5.02010(//ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/docs/CTCAE_v5_Quick_Reference_8.5x11.pdfで入手可能)で定義されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。0.3mg/kgで治療された患者では、AEは、観察されなかった。
【0260】
【表15】
【0261】
表15は、5mg/kgまたは10mg/kgのPSB205を投与された患者で観察されたAEに関するデータを示す。
【0262】
【表16】
【0263】
表16には、表14および15のデータをまとめる。
【0264】
【表17】
【0265】
表14~16のデータは、1mg/kgまたは3mg/kgの用量群では、グレード3または4のAEが観察されなかったことを示している。5mg/kg群では、22名中1名(4.5%)のみの患者が、グレード3または4の事象を経験した。10mg/kgでは、患者6名中3名(50%)が、グレード3または4の事象を経験した。最も一般的なAEには、グレード1の掻痒症、発疹、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加(肝臓、心臓、または他の臓器の機能不全を示し得る)が含まれる。
【0266】
実施例11:ヒトにおけるPSB205の用量および安全性の補足評価。
図20~32、表17~26およびそれらの凡例などの以下の実施例11は、上記の内容の様々な態様に関する追加のデータおよび分析を提供し、上記の内容の範囲を限定するものではなく補足することを意図している。
【0267】
PSB205の設計および生成
組換え抗体は、典型的には、1つの操作された細胞株によって産生され、そこで、分泌され得る前に抗体の重鎖(HC)および軽鎖(LC)は、正しく組み立てられる必要がある。2つの抗体を一緒に産生するためには、2つの異なるHCおよびLCを同じ宿主細胞に導入する必要がある。HCおよびLCのランダムなペアリングにより、合計10個の生成物を生成することができ、そのうちの2個のみが同族鎖ペアリングを有する(図20A)。特に、同族のHC/HCおよびHC/LCのペアリングが正確に組み立てられるように、HC/HCおよびHC/LC界面残基を変更した。これらの独自に設計されたHCペアリングキーとLCペアリングキーが導入されると、いかなる種も誤ってペアリングされることなく、2つの異なる抗体を一緒に発現させることができる。この抗体工学技術プラットフォームによって生成される生成物には、2つの組換え抗体が一定の割合である混合物が含まれており、これは、MabPair分子と称する。PSB205は、2つの主要な免疫チェックポイント調節因子であるPD-1およびCTLA-4を標的として開発されたMabPair製品である。
【0268】
抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体は、個別に操作され、特性評価した(表20~21)。PSB103と称される抗PD-1 IgG4は、複数の細胞ベースのアッセイにおいて、ペムブロリズマブと同様の効力を有することが示された(図24、表20)。PSB105と呼ばれる抗CTLA-4IgG1は、イピリムマブと同様の遮断活性を呈した。アルギニン255の1つの変異(R255K)がFc領域に導入され、FcRnへの結合が減少し(表22)、イピリムマブと比較して、抗CTLA-4のin vivoでのクリアランスが速くなり、抗体半減期が短縮された(表23)。
【0269】
PSB103(抗PD-1 IgG4)およびPSB105(抗CTLA-4 IgG1)は、CHO細胞株において2:1の固定比で一緒に産生させた(図20B)。PSB205中の抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体との相対比は、その成分に対して比色スケールのPKシミュレーションを使用して決定した。このシミュレーションでは、PSB205を3週間間隔で投与したときに、異なるレベルの定常状態での抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の曝露が得られることが予測される。PSB205は、1つの製品として製造され、その純度および製品の品質は、一連の分析方法を使用することによって、完全に特性評価した。製品中に、検出可能なミスペアリング種は見られなかった(図20C~E)。
【0270】
PSB205の前臨床特性評価
PSB205とその抗PD-1成分(PSB103)または抗CTLA4成分(PSB105)が、PD-1:PD-L1相互作用またはCTLA-4:B7-1/B7-2相互作用を遮断する能力は、2つの異なるデュアルセルレポーターアッセイを使用して評価した。図25に示すように、PSB103およびPSB205は両方とも、NFAT活性化およびルシフェラーゼシグナルの増加を可能にするPD-L1:PD-1相互作用の濃度依存性阻害を媒介した。PSB105およびPSB205も、レポーターアッセイにおいてCTLA4媒介阻害を解除した。
【0271】
樹状細胞は、共刺激分子(B7-1およびB7-2)および共抑制分子(PD-L1)を発現し、T細胞によって発現されるCD28/CTLA4およびPD-1にそれぞれ係合する。PSB205が樹状細胞によるT細胞刺激にどのような影響を与えるかを調べるために、同種反応性ドナーの単球由来の未成熟樹状細胞を使用して、精製T細胞を刺激した。図21Aに示すように、PSB103単独およびPSB205の両方が、異なるDC/T比でT細胞によるインターフェロン-γ(IFN-γ)産生を増加させた。抗CTLA-4は、IFN-γ産生の増加に寄与しなかった。
【0272】
PSB103およびPSB105は、異なるPKプロファイルを有するため、ヒトにおけるそれらの比率は、時間の経過とともに変化する。PSB205の相乗効果の範囲を評価するために、様々な比率で混合した様々な濃度のPSB103およびPBS105の存在下でSEBを使用して、末梢血単核球(PBMC)を刺激した。図21Bおよび図26に示すように、PSB103(0.5~20μg/mLの範囲)とPSB105(0.05~4μg/mLの範囲)を異なる比率(5:1~0.2:1の範囲)で組み合わせた場合、T細胞によるインターロイキン2(IL-2)の産生が増加し、これは、PBS205中のPSB103およびPBS105が、治療中にin vivoにおいて、広範囲の相乗効果を達成できることを示唆している。
【0273】
PSB205における比率2:1でのPSB103とPSB105との組み合わせが、抗原特異的CD8T細胞の刺激において相乗効果を達成できるか否かを調べるために、CMV感染細胞からのサイトメガロウイルス(CMV)ライセートを使用して、血清陽性個体からのPBMCを刺激した。immudex HLA-A*0201/NLVPMVATVのデキストラマーを使用して、7日目のCMVのpp65に特異的なCD8T細胞の拡大を列挙した。図21Cおよび図27に示すとおり、PSB103(抗PD1)またはPSB105(抗CTLA4)のいずれか単独で治療した群よりも、PSB205治療群からより高いパーセンテージおよび絶対数のCMV+CD8T細胞が回収された。
【0274】
PSB205は、PBMC由来のヒト免疫細胞を含むNOD-Prkdcscid IL2Rγnull(NCG)マウスの腫瘍異種移植モデルで評価した。図21Dに示すように、2:1の比率でのPSB103とPSB105との組み合わせ(PSB205)は、HCC827腫瘍成長の制御に有効であったが、このモデルでは、PSB103またはPSB105のいずれか単独では、いかなる効果も示さなかった。腫瘍がHCC827よりも速く成長するJeko-1腫瘍モデルでPSB205をさらに試験した。図28に示すとおり、PSB103またはPSB105のいずれか単独は、Jeko-1腫瘍成長を有意に阻害したが、PSB205は、PSB103単独よりも、さらに有効であった。
【0275】
PSB103およびPSB105のPKプロファイルは、カニクイザルにおける単回投与探索実験で個別に評価した。全身曝露は、1回のi.v.注射後にすべての動物で達成された。平均最終消失半減期(t1/2)は、PSB103について297時間であると決定した。(表23)PSB105は、イピリムマブと比較して、クリアランス率の上昇および全身曝露の減少を示した。PSB105およびイピリムマブのt1/2は、それぞれ109時間および397時間であった(図21E)。これは、少なくとも部分的には、PSB105におけるFcRn親和性の低下に起因する。
【0276】
PSB205は、複数回投与のGLP毒性実験で評価した。カニクイザルに、それぞれ3、15、または60mg/kgで、2週間ごとに4週間(1、15、および29日目)にわたってPSB205を注射したところ、良好な忍容性で、PSB205に関連する肉眼で確認される有害事象は発生しなかった。60mg/kgでは、数頭の動物で軟便が観察されたが、病理学的変化は確認されなかった。PSB205治療により、Ki67+T細胞およびICOS+CD4T細胞が増加した。これは、CTLA-4遮断の固有のバイオマーカーである。ICOS+CD4+T細胞の増加は、PSB205の用量に直接関係していた(図29)。
【0277】
PSB205(QL1706)の第1相臨床試験
ベースライン特性
2020年3月31日から12月20日までの固形腫瘍患者計47名が登録され、それぞれ16名が、用量漸増コホート、31名の患者が用量拡大コホートに含まれた。患者のベースライン臨床特性を表17に示す。年齢中央値は、51歳(27歳から73歳の範囲)で、38名(80.9%)が男性であった。17名(36.2%)の患者は、ECOGパフォーマンスステータスが0であった。患者のうち、25名(53.2%)が鼻咽頭癌(NPC)、20名(42.6%)がNSCLC、1名(2.1%)が甲状腺癌、1名(2.1%)が臍管の粘液性腺癌を有した。46名(97.9%)の患者が、ステージIVで、1名のみがステージIIIであった。28名(59.6%)の患者は、免疫療法歴を有さず、18名(38.3%)は、ICI治療を受け、4名(8.5%)は、他の免疫療法を受けた。以前の治療ラインの中央値は、2.0(0~5の範囲)であった。
【0278】
薬物動態分析
PSB205の抗PD-1成分および抗CTLA-4成分のPKプロファイルは、各成分に特異的な2つの異なる抗イディオタイプ抗体を使用することによって、個別に特性評価した。分析は、治療のサイクル1(N=36)およびサイクル6(N=9)から収集されたデータを使用して実施した。
【0279】
図22A~Bは、0.3~10mg/kgのPSB205を3週間ごと(Q3W)に投与後のaPD-1およびaCTLA-4の平均濃度-時間プロファイルを示す。aCTLA-4およびaPD-1の両方の曝露は、単回投与および複数回投与後に用量が増加するにつれて増加した。図30A~Dに示すように、異なる用量間でのaCTLA-4およびaPD-1の個々の用量正規化CmaxおよびAUC0-tの分布は類似しており、これは、aCTLA-4およびaPD-1の両方が、0.3~10mg/kgの範囲の単回用量で、線形PK特性を呈し得ることを示している。利用可能な複数回投与データを有する患者の数が制限されていることを考慮すると、複数回投与後のaCTLA-4およびaPD-1のPK特性の直線性は、この時点では、確立されていない。aCTLA-4およびaPD-1のPKパラメータを表24にまとめる。
【0280】
aCTLA-4のクリアランス(CL)は、単回投与および複数回投与後も同様のままであった(すなわち、それぞれ0.0159~0.0252L/hおよび0.0134~0.0225L/h)。対応する平均t1/2は、それぞれ104~121時間(4~5日)および111~190時間(5~8日)であった。複数回投与後、aCTLA-4の有意な蓄積は観察されなかった。
【0281】
aPD-1の平均CLは、単回投与後(n=10)0.0122~0.0159L/hであったが、複数回投与後は、0.00676~0.00720L/hに減少した(n=5、サイクル6)。平均t1/2は、単回投与後147~227時間(6~9日)(n=10)であったが、サンプリング時点が限られているため、複数回投与後には正確に推定できなかった。それにもかかわらず、定常状態でははるかに長いt1/2が予想される。表24に示すとおり、PSB205のQ3W反復投与後には、aPD-1のある程度の蓄積が存在し得る。平均Rac_trough(トラフ濃度[Ctrough]によって評価された蓄積比)、Rac_max(Cmaxによって評価された蓄積比)、およびRac_AUC(AUC0-tauによって評価された蓄積比)は、それぞれ、1.79~2.40(n=8)、1.24~1.59(n=9)、および1.52~1.77(n=4)であった。
【0282】
薬力学
PSB205によるPD-1標的範囲のレベルは、循環CD3T細胞に対する受容体占有アッセイによって評価した。高いパーセンテージのPD-1受容体占有率の持続が、治療サイクル全体を通してすべての投与群で観察された(図22C)。受容体占有率の用量依存的な差は観察されなかった。10mg/kgを摂取した一部の患者で示された受容体占有率の変動は、サンプルサイズが小さいことおよび個人差が原因であると考えられる。PSB205の投与は、CD4細胞およびCD8細胞の両方の増殖の増強と関連していた。図22Dに示すとおり、CD4およびCD8T細胞集団におけるKI67+細胞の増加は、低用量群よりも5mg/kgおよび10mg/kg群でより顕著であった。さらに、CD4 T細胞では、CTLA-4遮断の代用としてよく知られているICOSの用量依存的な上方制御が存在した。ベースラインを超えるICOS+CD4 T細胞の最も高い増加は、5mg/kg群および10mg/kg群で観察された(図22E図31)。ICOS+CD4 T細胞の増加は、5mg/kgおよび10mg/kg群では少なくとも2週間(336時間)持続したが、1mg/kgおよび3mg/kg群では持続しなかった(図32)。Ki67+T細胞およびICOS+CD4T細胞の一貫した持続的な増加は、5mg/kgを超える用量で、PD-1およびCTLA-4の機能的遮断が達成できることを示唆するものである。
【0283】
安全性データ
患者は、中央値で2サイクル(1~12)のPSB205を3週間ごとに投与された。2020年12月20日の時点で、追跡期間の中央値は、54日(16日、128日)で、患者47名中25名(53.2%)がまだ治療を受けていた。治療を中止した22名の患者のうち、最も一般的な理由は、疾患の進行(n=15、68.2%)であり、次いでAE(n=5、22.7%)、試験からの離脱(n=2、9.1%)であった。
【0284】
治療関連有害事象(TRAE)は、患者47名中31名(66.0%)に発生し、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、および10mg/kgの群において、その頻度は、それぞれ、83.3%(5/6)、33.3%(2/6)、67.8%(19/28)および83.3%(5/6)であった(表18)。ほとんどの患者が、特に5mg/kgを投与された患者(50%、14/28)において、グレード1のTRAEを経験した(38.3%、18/47)。5mg/kgを投与された2名の患者および10mg/kgを投与された3名の患者は、グレード3以上のTRAEを経験した。全体として、最も一般的な(5%以上)TRAEは、掻痒症(23.4%、11/47)、発疹(21.3%、10/47)、AST増加(14.9%、7/47)、疲労(12.8%、6/47)、甲状腺機能亢進症(10.6%、5/47)、甲状腺機能低下症(10.6%、5/47)、ALT増加(8.5%、4/47)、発熱(8.5%、4/47)、注入関連反応(6.4%、3/47)であった。
【0285】
あらゆるグレードのirAEが、47名の患者中16名(34.0%)に発生した。最も一般的な(5%以上)irAEは、掻痒症(23.4%、11/47)、発疹(21.3%、10/47)、甲状腺機能亢進症(10.6%、5/47)、および甲状腺機能低下症(10.6%、5/47)であった(表25)。2名(4.3%)の患者(1名は、5mg/kg群、他の1名は、10mg/kg群)は、グレード3以上のirAEを有した。
【0286】
原因に関係なく重篤な有害事象(SAE)は、患者47名中7名(14.9%)で発生し、6名は薬物関連と考えられ、5名の患者で発生し、そのうち1名は、5mg/kg、4名は、10mg/kgを投与された。
【0287】
10mg/kg群の2名の患者は、用量制限毒性(DLT)を経験し、その内の1名は、グレード1の歯肉出血を合併したグレード3の血小板数減少、他の1名は、グレード4の免疫介在性腎炎であった。したがって、最大耐用量(MTD)は5mg/kgQ3Wと決定した。
【0288】
臨床有効性
表19に示すとおり、有効性分析に利用可能なデータを有する35名の患者のうち、10名(28.6%)が、部分奏効(PR)を有し、7名(20.0%)が、安定疾患(SD)を有し、客観的奏効率(ORR)は、28.6%、病勢コントロール率(DCR)は、48.5%であった。20名のNPC患者のうち、7名(35.0%)がPRを達成し、2名(10.0%)がSDを達成し、ORRは、35.5%、DCRは、45.0%であった。14名のNSCLC患者のうち、3名(21.4%)がPRを達成し、5名(35.7%)がSDを達成し、ORRは21.4%、DCRは57.1%であった。すべての患者のベースラインおよび治療期間からの標的病変の最良客観的反応(BOR)を図23Aおよび23Bに示す。無増悪生存期間(PFS)の中央値、奏効期間、および全生存期間(OS)は、追跡した患者数が少なく、かつ比較的短い追跡期間であったため、評価しなかった。免疫療法歴のない20名の患者では、PR率およびSD率は、それぞれ40.0%(n=8)および25.0%(n=5)であり、ORRは、40.0%(n=8)、DCRは、65.0%であった(n=13)(表26)。
【0289】
以前に抗PD-1/PD-L1療法を受けた患者10名のうち、2名(20.0%)がPRを達成し、1名(10.0%)がSDを達成し、ORRは、20.0%、DCRは、30.0%となった(表26)。図23Cおよび図23Dは、以前の任意の免疫療法を受けなかった患者および以前の抗PD-1/PD-L1療法を受けた患者における腫瘍縮小のベースラインからの変化率を示す。第3選択療法として、PD-L1/TGFβを標的とする二重特異性抗体を以前投与した最良の腫瘍反応が進行性疾患(PD)であったステージIV NPCの55歳男性患者は、5mg/kg群に登録され、7週目にPRを達成した。この患者の腫瘍CTスキャンを図23Eに示す。ステージIVのNSCLCを有する46歳の男性患者は、最良の腫瘍反応が、以前のニボルマブ療法中(2行目)PRであり、以前の抗4-1BB抗体療法中(4行目)SDであったため、10mg/kgコホートに登録され、13週目にPRを達成した(図23F)。
【0290】
RP2Dの判定
忍容性、PK、および薬力学の総合評価に基づいて、進行固形悪性腫瘍におけるPSB205をさらに調査するため、5mg/kgQ3WのレジメンをRP2Dとして選択した。
【0291】
考察
本発明によれば、PD-1およびCTLA-4の二重遮断を有する最初のMabPair製品であるPSB205の設計および第1相臨床試験が本明細書に提供される。PSB205は、他のPD-1/PD-L1阻害剤による治療歴のある患者を含む第1相試験の混合コホートにおいて、抗腫瘍反応を促進することを実証した。臨床試験は、依然として進行中であるが、初期解析では、他のPD-1およびCTLA-4の二重遮断薬と比較して、グレード3以上のTRAEの発生率が低く、全体的な安全性プロファイルが良好であることも示している。予備データは、固形悪性腫瘍の治療における抗腫瘍反応および忍容性の向上による患者転帰の改善におけるPSB205の可能性についてのさらなる調査を裏付けるものである。本試験は、MabPair分子の最初の臨床試験を表す。PSB205の開発に使用された戦略は、抗体成分ごとに有効性および毒性の最適なバランスを注意深く維持する必要がある他のプログラムにも適用され得る。
【0292】
PSB205の2つの抗体成分は、1つの製品として機能するように製造されており、それぞれ、PD-1およびCTLA-4を標的として阻害する。抗体の2つのアームが1:1の比率に固定されている二重特異性抗体とは対照的に、PSB205などのMabPair製品では、その2つの抗体成分により、異なる標的特異的レベルのPKカバレッジおよび抗体エフェクター機能を提供できる。この機能は、CHO細胞株中で2つの抗体が一緒に産生される比率と各抗体のPKプロファイルを調整することによって、実現可能である。PSB205の抗PD-1成分は、IgG4であるが、抗CTLA-4成分は、IgG1アイソタイプである。抗CTLA-4IgG1のFc媒介エフェクター機構は、腫瘍微小環境における制御性T細胞に対するその効果にとって重要であり得る。これは、Fc受容体(CD16a-V158)の高親和性対立遺伝子を有する患者におけるイピリムマブに対する応答が改善されたという最近の報告によって裏付けられている20。さらに、CTLA-4遮断は、T細胞応答のプライミングを改善し、T細胞クローンの多様性を増加させることができ、これは、新しいT細胞を腫瘍にもたらす助けとなり得る25。しかし、T細胞の拡大の延長により、免疫関連毒性が引き起こされ得る26。各治療サイクル内でPD1およびCTLA4経路の二重遮断、およびPD1阻害による腫瘍特異的T細胞の局所活性化により、強力な共刺激およびT細胞の拡大の最適なバランスを達成するためにいかにCTLA-4遮断のレベルを調整するかは、併用療法を奏効させるために重要となるであろう。PSB205の抗CTLA-4IgG1は、FcRnへの結合を減少させるように操作されており、これにより循環中のクリアランスが急速になる。PSB205における抗CTLA4抗体の消失半減期は、ヒトでは約5日であり、イピリムマブの半減期15日と比較して著しく短い。これにより、用量漸増中の曝露制御がより柔軟になり、TRAE事象では、薬物を迅速に消失させ得る。この独自の特徴は、ヒトにおける腫瘍反応の改善および忍容性の向上につながり得る。
【0293】
最初のヒト試験におけるPK分析は、PSB205の各投与後にPD-1およびCTLA-4に対して異なるレベルの標的範囲をもたらす設計目標を達成したことを示唆している。5mg/kg用量群におけるPSB205の最初の単回投与後のaPD-1およびaCTLA-4成分の平均t1/2は、それぞれ約8日および4日であった。複数回投与後のaCTLA-4の平均t1/2は、約5日であった。各用量群のaCTLA-4は、複数回投与後も身体内に明らかな蓄積を示さなかった。対照的に、ニボルマブおよびイピリムマブの平均t1/2は、それぞれ、約19.1日27、および15.4日であった。イピリムマブは半減期が長いため、3週間ごとに使用した場合、複数の治療サイクル後にイピリムマブのレベルが大幅に蓄積する可能性があり、これが、irAEの上昇に寄与し得る。ニボルマブ(3mg/kg)およびイピリムマブ(1mg/kg)をQ3Wで併用した場合、イピリムマブ(1mg/kg)を6週間ごとに投与したレジメンと比較して、顕著に高いirAE率が観察された23。イピリムマブの投与頻度を6週間ごとに少なくすることにより、抗体の定常状態濃度が低下し、併用療法の忍容性が改善し得る。aCTLA-4成分の半減期が短いため、3週間ごとに投与した場合、PSB205の繰り返し投与後に、顕著な蓄積なく、aCTLA-4の所望のトラフレベルを維持することが可能である。この独自のPKプロファイルは、PSB205の全体的な良好な安全性プロファイルに寄与し得る。比較的速いクリアランスにもかかわらず、PSB205治療後のCTLA-4の機能的遮断の強力な所見が存在する。PSB205は、5mg/kgで投与した場合、CD8細胞の増殖とICOS+CD4 T細胞の拡大を効果的に誘導することができ、これにより、5mg/kgの用量でPD1およびCTLA4経路の機能的遮断が示されたが、irAEの悪化は引き起こさないであろう。
【0294】
この試験では、PSB205は、一般に忍容性が良好であり、RP2Dでの患者の7.1%で、グレード3以上のTRAEが生じた。これまでの試験では、オプジーボおよびヤーボイの併用療法におけるグレード3以上のTRAEの発生率は、22%~59%の範囲であり、NSCLCでは32.8%17、MSI-H/dMMR結腸直腸癌では22%28、肝細胞癌では29%~53%29、悪性胸膜中皮腫では30.3%30、腎細胞癌では46%31、黒色腫では59%32であることが示されている。臨床試験が進行中であることにより、データは、現在も成熟しているところであるが、予備データに基づくPSB205の全体的な安全性プロファイルは、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の併用に関する他の試験により公開されているデータと比べて同程度である。TRAEの発生率が低下すると、患者は、長期間治療を継続できるようになり、これが、有効性の改善に寄与し得る。
【0295】
PSB205は、本試験でも有望な臨床活性を示した。評価可能な患者35名のうち10名(28.6%)が部分奏効を達成し、これには、他のPD1/PDL1阻害剤で以前に治療を受けた患者も含めた。反応の持続期間は、より長期の追跡調査によって確立する必要があるが、抗腫瘍活性の初期観察は、特にNPCについては有望であり、全奏効率は、35%(7/20)であった。現在、NPCに対する承認された免疫療法は依然として存在しない2ライン以上のNPC免疫療法に関するいくつかの臨床試験が進行中であり、報告されたORRは、20.5%~34%の範囲である33-36。NPC患者は、腫瘍内でのTregの浸潤が増加していることが示されている37。これらの患者は、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体との併用に対してより感受性が高い可能性がある。2ライン以上のNPC患者を対象としたニボルマブ(3mg/kg、2週間ごと)と低用量イピリムマブ(1mg/kg、6週間ごと)の最近の第2相試験では、全奏効率30%(12/40)、TRAEを経験した患者86%(34/40)、グレード3以上のTRAEを経験した患者10%(4/40)が報告された38。本試験で観察された最初の有望なデータは、ニボルマブと低用量イピリムマブの併用によって得られるものと同様の抗腫瘍反応を達成するPSB205の可能性を示しており、これにより、NPC患者でのさらなる臨床試験が認可される。NSCLCおよびNPCを伴うPD-1抵抗性患者における抗腫瘍反応の最初の所見では、これらの治療困難な患者集団においてPSB205を探索できることが示唆されており、これにより、併用療法の見込みがもたらされる。
【0296】
PSB205は、その良好な安全性プロファイルおよび有望な抗腫瘍活性により、低分子、がんワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、治療用抗体などの他の治療用分子とのさらなる併用試験のためのバックボーンとしてさらに開発することができる。2つの薬物の投与を必要とする従来の抗体併用療法と比較して、MabPair製品は、単純な制御経路を備えた1つの実体として開発され得る。これにより、抗体併用療法の開発にかかる時間およびコストが削減される。
【0297】
本発明によれば、1つのバイアル製品で抗体併用療法を送達するための新規アプローチが本明細書で提供される。PD-1およびCTLA-4の二重遮断機能を備えた最初のMabPair製品であるPSB205(QL1607)は、第1相臨床試験で評価され、進行性固形悪性腫瘍における許容可能な安全性プロファイルおよび臨床抗腫瘍活性の初期エビデンスを示した。
【0298】
材料および方法
PSB205の設計および生成
MabPairプラットフォームの開発については、別の報告で説明する(LiuZ et al、原稿準備中)。抗ヒトPD-1抗体クローン#1および抗ヒトCTLA-4抗体11F4の生成および操作は、別々に記載されている(米国特許第2019/0248899号および米国特許第2019/0276542号)。抗PD1抗体の可変重鎖(VH)遺伝子および可変軽鎖(VL)遺伝子を、それぞれヒトガンマ4定常重鎖および定常カッパ軽鎖に挿入した。IgG4のFabアーム交換を防ぐために、ヒンジ領域に置換S228Pを導入した。抗CTLA-4の可変重鎖(VH)遺伝子および可変軽鎖(VL)遺伝子を、それぞれヒトガンマ1定常重鎖および定常カッパ軽鎖に挿入した。同じ細胞内で抗PD-1IgG4抗体と共発現させた場合に、同族のHC/HC鎖およびHC/LC鎖の対形成を正確に制御するために、抗CTLA-4IgG1抗体にいくつかの置換を導入させた。抗CTLA-4IgG1のC3領域に2つの置換(D399RおよびK409E)を導入して、HCの対形成を制御した。C1領域に3つの置換(K147D、F170C、およびV173C)、重鎖の上部ヒンジ領域に1つの置換(C220G)、およびCκ領域に4つの置換(S131K、Q160C、S162C、およびC214S)を導入して、抗CTLA-4 IgG1抗体におけるLCの正しい対形成を制御した。さらに、C2領域に1つの置換(R255K)を導入して、FcRnの結合を改変した。
【0299】
MabPairカクテルは、Expi293細胞およびExpiCHO細胞の両方中において、複数回の一過性トランスフェクションによって産生され、プロテインAカラムで精製した。質量分析により、すべてのHC/HCおよびHC/LC鎖がいかなる誤対形成もなく、正確に組み立てられていることが確認された。
【0300】
安定CHO細胞株中でのPSB205(QL1706)の産生
抗PD-1IgG4抗体のHCおよびLCの両方をコードするDNAをpCHO1.0ベクター(ThermoFisher)にサブクローニングし、CHO-S(商標)細胞株のトランスフェクションおよび選択に使用する。高レベルの抗PD-1IgG4抗体を産生する1つの安定細胞株、クローンG19G4-4B4を、操作された抗CTLA-4IgG1抗体のLCおよびHCを導入するための宿主細胞として選択した。両方の抗体の発現力価が高い安定クローンをさらにスクリーニングして、抗PD1IgG4抗体および抗CTLA-4IgG1抗体を約2:1の比で産生できるCHO細胞の1つのクローンを同定した。
【0301】
臨床試験
試験設計および参加者
これは、進行性悪性腫瘍患者におけるPSB205の安全性、忍容性、MTD、PK、および一次臨床活性を評価するための第I相非盲検用量漸増および拡張試験であった。
【0302】
最初の用量漸増は、PSB205のDLT、MTD、およびRP2Dを決定するために実施した。標準的な3+3用量漸増設計と組み合わせた加速滴定を採用した。簡潔に言えば、最初の投与群には1名の対象のみが登録された。DLT評価期間中に、薬物関連AE≦グレード2のみが観察された場合、対象は、標準的な3+3用量設計を使用して実施された第2の用量群に登録される。最大投与量(MAD)は、10mg/kgに設定される。用量漸増プロセスにおいて、選択した用量群の対象が拡大され、したがって、進行悪性腫瘍患者におけるPSB205のPK評価および一次有効性評価に十分な症例が提供された。試験プロトコルは、Sun Yat-sen University Cancer Centerの倫理委員会によって承認されている(No.A2019-091-1)。すべての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提出している。
【0303】
以下の主要な対象基準を満たす患者が登録された:(1)18歳以上の男性または女性の対象;(2)標準治療が無効であるか、有効な治療法がない進行性悪性腫瘍の病理学的に診断が確定し、固形腫瘍については、RECISTv1.1に従って画像測定可能な病変が観察された;(3)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが、0または1であり、余命が3ヶ月より長い;(4)最初の薬物投与前に必要な臓器の機能レベル;(5)治験治療期間全体および治験薬の最後の投与後180日まで、有効な避妊法を実施することに同意する。主な除外基準は次のとおりである:(1)過去または進行中の自己免疫疾患、間質性肺疾患、および全身性コルチコステロイド(>10mg/日プレドニゾンまたは同等物)または他の免疫抑制薬の長期使用を必要とする他の疾患;(2)以前のがん免疫療法に関連したグレード3または4の免疫関連AE;(3)PD-1またはPD-L1阻害剤と組み合わせたCTLA-4阻害剤による以前の治療;(4)妊娠中または授乳中の女性。
【0304】
治療
PSB205の5つの用量(0.3、1、3、5、および10mg/kg)を3週間ごとに静脈内注入によって投与した。各対象は、1つの投与のみを受けた。いずれの対象も、以下のいずれかの理由により試験を中止させ得る:疾患の進行(治験責任医師が継続的な臨床効果があると考えていない限り)、試験の完了(最長2年間)、耐えられないAEの発現、新規抗腫瘍治療の開始もしくはインフォームドコンセントの撤回のいずれか早い方。
【0305】
RECISTv1.1標準に従って疾患が疾患の進行を有する固形腫瘍患者については、対象が臨床的に安定しており、治療継続の利点が有利であると治験責任医師が判断した場合、PSB205治療は継続される。同時に、画像検査によって疾患の進行を監視する必要がある(間隔は、4週間以上)。疾患の進行が確認されたが、対象が臨床的に安定しており、治療継続の利点が得られると治験責任医師が判断した場合は、利点がなくなるまでPSB205治療を行う。
【0306】
結果
主要評価項目は、進行性悪性腫瘍患者におけるAE、SAE、DLTの発生率によって定義されるPSB205の安全性および忍容性、ならびにPSB205のRP2Dであった。副次評価項目は、進行性悪性腫瘍患者におけるPSB205のPK、予備的有効性および免疫原性であった。
【0307】
PSB205曝露と機能的ROとの相関関係、およびバイオマーカーとPSB205有効性との相関関係も分析した。
【0308】
安全性分析には、PSB205を少なくとも1回投与されたすべての対象を含めた。AEの等級付けは、共通有害事象評価基準(CTCAE)v5.0に従って行った。用量漸増段階では、PSB205の初回用量の投与後21日(1サイクル)以内に発生したPSB205関連AEに基づいてDLTを評価した。CTCAEv5.0標準によれば、DLTは、次のように定義されている:グレード3または4の非血液学的毒性(適切な支持療法により72時間以内に回復するグレード3の疲労、グレード3の悪心/嘔吐を除く)、あらゆるグレード4の血液学的事象(グレード4の血小板減少症など)、出血を伴うあらゆるグレード3の血小板減少症、またはグレード3の発熱性好中球減少症、およびあらゆる新たなステロイド使用事象(すでにステロイドを服用している対象は除く)。irAEは、主に地域の医療行為に従って管理した。治験責任医師は、Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated with Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline(2018 version)に従い、対象のベネフィット/リスク比を総合的に評価し、投与の中止/再開を判断した42
【0309】
固形腫瘍患者の場合、腫瘍反応は、RECISTv1.1に従って評価した。CTスキャンまたはMRIは、ベースラインで、最初の4サイクルでは2治療サイクル(6週間)ごとに、その後は3治療サイクル(9週間)ごとに実施した。
【0310】
免疫原性評価は、各サイクルの投与前に採取した血液を使用して実施した。
【0311】
薬物動態のサンプリングスケジュールおよびアッセイ方法
aCTLA-4およびaPD-1の薬物動態の特徴を明らかにするための血漿サンプルを以下の時点で収集した。サイクル1では、1日目から14日目(単回投与)およびサイクル6では1日目から14日目(複数回投与):投与前、注入終了時、投与後2、8、24、48、72、168、336時間;サイクル2および他のサイクルでは:投与前、注入終了時、および注入終了48時間後:来院終了、ならびに最終投与から30、60、および90日後。これらのサンプルは、検証済みの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)法を使用して分析した。
【0312】
薬物動態分析方法
aCTLA-4およびaPD-1のPKパラメータは、ソフトウェアWinNonlinバージョン8.2(Certara USA,Inc.,New Jersey,US)のノンコンパートメントアプローチを使用して分析した。単回投与段階のPKパラメータとしては、最大濃度に達するまでの時間(Tmax)、最大濃度(Cmax)、トラフ濃度(Ctrough)、時間ゼロから最後の定量可能な濃度の時間までの曲線下面積(AUC0-t)、外挿後に導出された曲線下面積のパーセンテージ(AUC_%Extrap)、時間0から無限大までの曲線下面積(AUC0-inf)、時間0から21日目までの曲線下面積(AUC0-21d)、消失半減期(t1/2)、クリアランス(CL)および分布容積(V)が挙げられ、複数回投与段階のパラメータとしては、Tmax、Cmax、Ctrough、平均濃度(Cavg)、投与間隔にわたる曲線下面積(AUC0-tau、tauは21日に等しい)、AUC0-inf、AUC_%Extrap、t1/2、定常状態でのクリアランス(CLss)、定常状態での分布容積(Vss)、Cmaxによって評価される蓄積率(Rac_max)、Ctroughによって評価される蓄積率(Rac_trough)、AUCによって評価される蓄積率(Rac_AUC)が挙げられる。
【0313】
薬動力学的評価
PD-1受容体占有検出のための血液は、サイクル1では投与前、投与後72、168および336時間、サイクル2では投与前1日目、および投与後48時間、ならびに腫瘍の各画像評価で採取される。他のバイオマーカーは、サイクル1では、投与前、投与後168時間および336時間、サイクル2では、投与前1日目、および投与後48時間、ならびに腫瘍の各画像評価において、T細胞中で検出された。
【0314】
統計分析
この第I相試験は、標準的な3+3用量漸増設計と組み合わせた加速滴定に基づいて、安全性および忍容性を評価できるように設計した。人口動態、安全性、および忍容性の分析は、記述式であった。ORR(DCRを含む)の推定値およびその95%CIは、評価可能な患者に基づいて、正確なClopper-Pearson法によって計算した。特定の薬力学マーカーの投与前と投与後(サイクル1 168時間)の値の比較は、WilcoxonSigned-RankTestを使用して行った。
【0315】
表と表の凡例
【表18】
【0316】
略語:ECOG、EasternCooperativeOncologyGroup;NSCLC、非小細胞肺癌;NPC、上咽頭癌;aPD-1、抗プログラム細胞死タンパク質1;aPD-L1、抗PD-1リガンド。
1名の対象は、PD-L1/TGFβに対する二重特異性抗体を受けた;1名の対象は、抗PD-1抗体および抗4-1BB抗体の2種類の免疫療法を受けた;1名の対象は、抗PD-1抗体および抗OX40抗体の2種類の免疫療法を受けた;これら3例は、「aPD-1/aPD-L1」および「他の免疫療法」の両方で1回記録された。
OX40、4-1BB、およびTGFβを標的とする薬物を含む。
【0317】
【表19】
【0318】
【表20】
【0319】
【表21】
【0320】
【表22】
【0321】
【表23】
【0322】
【表24】
【0323】
【表25】
【0324】
注1:薬物動態パラメータは、平均±SD(CV%)[N]として表される。ここで、Nは、統計的記述に含まれるデータの数である。Nが2の場合、すべてのパラメータは、中央値(最小値、最大値)として表わされる[2]。TmaxおよびTlastは、中央値(最小値、最大値)[N]として表される。
【0325】
注2:サイクル6のAUC0-21d、VおよびCLの結果は、それぞれサイクル6のAUC0-tau、VssおよびCLssの結果を使用して報告した。
a.サイクル1では、5mg/kgコホートの対象01040、01041、01042、および01048、ならびに10mg/kgコホートの対象01030、01036、および01037は、すべてのサンプルを収集しなかったため、これらの対象のCtroughおよびAUC0-tは、分析に含まなかった。
b.サイクル1では、AUC_%Extrap>20%およびR_adjust<0.9の場合、λは、正確に推定されなかった。したがって、AUC0-∞、AUC_%Extrap、CL、V、t1/2など、λに基づいて計算した一部の対象のパラメータは、λが不正確な場合、この分析においては、まとめなかった。
c.サイクル1では、λが正確に推定されなかった場合、一部の対象のAUC0-21dは分析に含まれなかったが、この条件では、Tlast<tau(504時間)であり、Tlastとtauとの差が1%未満の場合、AUC0-21dの結果は、AUC0-t値に置き換えられ、分析に含まれた。
d.サイクル6では、5mg/kgコホートの対象01018は、すべてのサンプルを収集しなかったため、この対象のCtroughおよびAUC0-tは、分析に含めなかった。
e.サイクル6では、AUC_%Extrap>20%およびR_adjust<0.9の場合、λは、正確に推定されなかった。したがって、AUC0-∞、AUC_%Extrap、t1/2など、λに基づいて計算した一部の対象のパラメータは、λが不正確な場合、この分析においては、まとめなかった。
f.サイクル6では、AUC0-tauが正確に推定されなかった場合、Cavg、CLssなどのAUC0-tauに基づいて計算されたパラメータは、分析においてまとめなかった。
g. サイクル6では、λまたはAUC0-tauが正確に推定されなかった場合、この2つに基づくVssは、まとめなかった。
h.サイクル6では、いずれかの対象のサイクル1のAUC0-21dまたはサイクル6のAUC0-tauが正確に推定されなかった場合、それらのRac_AUCは、不正確とみなし、まとめなかった。
i.サイクル6では、対象がサイクル1またはサイクル6のいずれかですべてのサンプルを収集しなかった場合、それらのRac_Ctroughは、不正確とみなし、まとめなかった。
【0326】
【表26】
【0327】
【表27】
【0328】
参考文献
1. Swain SM, Baselga J, Kim S-B, Ro J, Semiglazov V, Campone M, et al. Pertuzumab, Trastuzumab, and Docetaxel in HER2-Positive Metastatic Breast Cancer. New England Journal of Medicine. 2015;372(8):724-734.
2. Finn RS, Qin S, Ikeda M, Galle PR, Ducreux M, Kim TY, et al. Atezolizumab plus Bevacizumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma. The New England journal of medicine. 2020;382(20):1894-1905.
3. Brunet JF, Denizot F, Luciani MF, Roux-Dosseto M, Suzan M, Mattei MG, et al. A new member of the immunoglobulin superfamily--CTLA-4. Nature. 1987;328(6127):267-270.
4. Ishida Y, Agata Y, Shibahara K, Honjo T. Induced expression of PD-1, a novel member of the immunoglobulin gene superfamily, upon programmed cell death. EMBO J. 1992;11(11):3887-3895.
5. Fife BT, Bluestone JA. Control of peripheral T-cell tolerance and autoimmunity via the CTLA-4 and PD-1 pathways. Immunol Rev. 2008;224:166-182.
6. Wing K, Onishi Y, Prieto-Martin P, Yamaguchi T, Miyara M, Fehervari Z, et al. CTLA-4 control over Foxp3+ regulatory T cell function. Science. 2008;322(5899):271-275.
7. Pardoll DM. The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy. Nat Rev Cancer. 2012;12(4):252-264.
8. Chen L, Flies DB. Molecular mechanisms of T cell co-stimulation and co-inhibition. Nat Rev Immunol. 2013;13(4):227-242.
9. Robert C, Long GV, Brady B, Dutriaux C, Maio M, Mortier L, et al. Nivolumab in previously untreated melanoma without BRAF mutation. The New England journal of medicine. 2015;372(4):320-330.
10. Wolchok JD, Hodi FS, Weber JS, Allison JP, Urba WJ, Robert C, et al. Development of ipilimumab: a novel immunotherapeutic approach for the treatment of advanced melanoma. Ann N Y Acad Sci. 2013;1291:1-13.
11. Wei SC, Levine JH, Cogdill AP, Zhao Y, Anang NAS, Andrews MC, et al. Distinct Cellular Mechanisms Underlie Anti-CTLA-4 and Anti-PD-1 Checkpoint Blockade. Cell. 2017;170(6):1120-1133 e1117.
12. Wei SC, Anang NAS, Sharma R, Andrews MC, Reuben A, Levine JH, et al. Combination anti-CTLA-4 plus anti-PD-1 checkpoint blockade utilizes cellular mechanisms partially distinct from monotherapies. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019;116(45):22699-22709.
13. Wei SC, Duffy CR, Allison JP. Fundamental Mechanisms of Immune Checkpoint Blockade Therapy. Cancer Discov. 2018;8(9):1069-1086.
14. Rotte A. Combination of CTLA-4 and PD-1 blockers for treatment of cancer. Journal of experimental & clinical cancer research : CR. 2019;38(1):255.
15. Kooshkaki O, Derakhshani A, Hosseinkhani N, Torabi M, Safaei S, Brunetti O, et al. Combination of Ipilimumab and Nivolumab in Cancers: From Clinical Practice to Ongoing Clinical Trials. International journal of molecular sciences. 2020;21(12).
16. Larkin J, Chiarion-Sileni V, Gonzalez R, Grob JJ, Rutkowski P, Lao CD, et al. Five-Year Survival with Combined Nivolumab and Ipilimumab in Advanced Melanoma. The New England journal of medicine. 2019;381(16):1535-1546.
17. Hellmann MD, Paz-Ares L, Bernabe Caro R, Zurawski B, Kim SW, Carcereny Costa E, et al. Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer. The New England journal of medicine. 2019;381(21):2020-2031.
18. Rizvi NA, Cho BC, Reinmuth N, Lee KH, Luft A, Ahn MJ, et al. Durvalumab With or Without Tremelimumab vs Standard Chemotherapy in First-line Treatment of Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer: The MYSTIC Phase 3 Randomized Clinical Trial. JAMA oncology. 2020;6(5):661-674.
19. Selby MJ, Engelhardt JJ, Quigley M, Henning KA, Chen T, Srinivasan M, et al. Anti-CTLA-4 antibodies of IgG2a isotype enhance antitumor activity through reduction of intratumoral regulatory T cells. Cancer Immunol Res. 2013;1(1):32-42.
20. Arce Vargas F, Furness AJS, Litchfield K, Joshi K, Rosenthal R, Ghorani E, et al. Fc Effector Function Contributes to the Activity of Human Anti-CTLA-4 Antibodies. Cancer Cell. 2018;33(4):649-663 e644.
21. Simpson TR, Li F, Montalvo-Ortiz W, Sepulveda MA, Bergerhoff K, Arce F, et al. Fc-dependent depletion of tumor-infiltrating regulatory T cells co-defines the efficacy of anti-CTLA-4 therapy against melanoma. J Exp Med. 2013;210(9):1695-1710.
22. Sznol M, Ferrucci PF, Hogg D, Atkins MB, Wolter P, Guidoboni M, et al. Pooled Analysis Safety Profile of Nivolumab and Ipilimumab Combination Therapy in Patients With Advanced Melanoma. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2017;35(34):3815-3822.
23. Hellmann MD, Rizvi NA, Goldman JW, Gettinger SN, Borghaei H, Brahmer JR, et al. Nivolumab plus ipilimumab as first-line treatment for advanced non-small-cell lung cancer (CheckMate 012): results of an open-label, phase 1, multicohort study. The Lancet Oncology. 2017;18(1):31-41.
24. Perets R, Bar J, Rasco DW, Ahn MJ, Yoh K, Kim DW, et al. Safety and efficacy of quavonlimab, a novel anti-CTLA-4 antibody (MK-1308), in combination with pembrolizumab in first-line advanced non-small-cell lung cancer. Annals of oncology : official journal of the European Society for Medical Oncology. 2020.
25. Kvistborg P, Philips D, Kelderman S, Hageman L, Ottensmeier C, Joseph-Pietras D, et al. Anti-CTLA-4 therapy broadens the melanoma-reactive CD8+ T cell response. Science translational medicine. 2014;6(254):254ra128.
26. Oh DY, Cham J, Zhang L, Fong G, Kwek SS, Klinger M, et al. Immune Toxicities Elicted by CTLA-4 Blockade in Cancer Patients Are Associated with Early Diversification of the T-cell Repertoire. Cancer Res. 2017;77(6):1322-1330.
27. Lee KW, Lee DH, Kang JH, Park JO, Kim SH, Hong YS, et al. Phase I Pharmacokinetic Study of Nivolumab in Korean Patients with Advanced Solid Tumors. The oncologist. 2018;23(2):155-e117.
28. Lenz H-J, Lonardi S, Zagonel V, Van Cutsem E, Limon ML, Wong KYM, et al. Nivolumab plus low-dose ipilimumab as first-line therapy in microsatellite instability-high/DNA mismatch repair deficient metastatic colorectal cancer: Clinical update. Journal of Clinical Oncology. 2020;38(4_suppl):11-11.
29. Yau T, Kang YK, Kim TY, El-Khoueiry AB, Santoro A, Sangro B, et al. Efficacy and Safety of Nivolumab Plus Ipilimumab in Patients With Advanced Hepatocellular Carcinoma Previously Treated With Sorafenib: The CheckMate 040 Randomized Clinical Trial. JAMA oncology. 2020;6(11).
30. Baas P, Scherpereel A, Nowak A, Fujimoto N, Zalcman GJJoTO. ID:2908 First-Line Nivolumab + Ipilimumab vs Chemotherapy in Unresectable Malignant Pleural Mesothelioma: CheckMate 743. 2020;15(10):e42.
31. Motzer RJ, Tannir NM, McDermott DF, Aren Frontera O, Melichar B, Choueiri TK, et al. Nivolumab plus Ipilimumab versus Sunitinib in Advanced Renal-Cell Carcinoma. The New England journal of medicine. 2018;378(14):1277-1290.
32. Hodi FS, Chiarion-Sileni V, Gonzalez R, Grob JJ, Rutkowski P, Cowey CL, et al. Nivolumab plus ipilimumab or nivolumab alone versus ipilimumab alone in advanced melanoma (CheckMate 067): 4-year outcomes of a multicentre, randomised, phase 3 trial. The Lancet Oncology. 2018;19(11):1480-1492.
33. Fang W, Yang Y, Ma Y, Hong S, Lin L, He X, et al. Camrelizumab (SHR-1210) alone or in combination with gemcitabine plus cisplatin for nasopharyngeal carcinoma: results from two single-arm, phase 1 trials. The Lancet Oncology. 2018;19(10):1338-1350.
34. Hsu C, Lee SH, Ejadi S, Even C, Cohen RB, Le Tourneau C, et al. Safety and Antitumor Activity of Pembrolizumab in Patients With Programmed Death-Ligand 1-Positive Nasopharyngeal Carcinoma: Results of the KEYNOTE-028 Study. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2017;35(36):4050-4056.
35. Ma BBY, Lim WT, Goh BC, Hui EP, Lo KW, Pettinger A, et al. Antitumor Activity of Nivolumab in Recurrent and Metastatic Nasopharyngeal Carcinoma: An International, Multicenter Study of the Mayo Clinic Phase 2 Consortium (NCI-9742). Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2018;36(14):1412-1418.
36. Wang FH, Wei XL, Feng J, Li Q, Xu N, Hu XC, et al. Efficacy, Safety, and Correlative Biomarkers of Toripalimab in Previously Treated Recurrent or Metastatic Nasopharyngeal Carcinoma: A Phase II Clinical Trial (POLARIS-02). Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2021:Jco2002712.
37. Lau KM, Cheng SH, Lo KW, Lee SA, Woo JK, van Hasselt CA, et al. Increase in circulating Foxp3+CD4+CD25(high) regulatory T cells in nasopharyngeal carcinoma patients. British journal of cancer. 2007;96(4):617-622.
38. Kao H, Ang M, Ng QS, Tan DSW, Tan W, Rajasekaran T, et al. 266O - Combination ipilimumab and nivolumab in recurrent/metastatic nasopharyngeal carcinoma (R/M NPC): Updated efficacy and safety analysis of NCT03097939. Annals of Oncology. 2020;31(suppl_6):S1347-S1354.
39. Socinski MA, Jotte RM, Cappuzzo F, Orlandi F, Stroyakovskiy D, Nogami N, et al. Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC. The New England journal of medicine. 2018;378(24):2288-2301.
40. McGregor BA, McKay RR, Braun DA, Werner L, Gray K, Flaifel A, et al. Results of a Multicenter Phase II Study of Atezolizumab and Bevacizumab for Patients With Metastatic Renal Cell Carcinoma With Variant Histology and/or Sarcomatoid Features. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2020;38(1):63-70.
41. Kudo M, Matilla A, Santoro A, Melero I, Gracian AC, Acosta-Rivera M, et al. Checkmate-040: Nivolumab (NIVO) in patients (pts) with advanced hepatocellular carcinoma (aHCC) and Child-Pugh B (CPB) status. Journal of Clinical Oncology. 2019;37(4_suppl):327-327.
42. Brahmer JR, Lacchetti C, Schneider BJ, Atkins MB, Brassil KJ, Caterino JM, et al. Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2018;36(17):1714-1768.

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図22-1】
図22-2】
図22-3】
図23-1】
図23-2】
図23-3】
図23-4】
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【手続補正書】
【提出日】2023-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024509510000001.app
【国際調査報告】