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特表2024-509529DNMT1阻害剤としての置換ピリジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】DNMT1阻害剤としての置換ピリジン
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/85 20060101AFI20240226BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/664 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240226BHJP
   C07F 9/58 20060101ALI20240226BHJP
   C07C 209/08 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C07D213/85 CSP
A61K31/44
A61K31/664
A61P7/06
A61P35/02
A61P35/00
C07F9/58 Z
C07C209/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553223
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 IB2022051637
(87)【国際公開番号】W WO2022185160
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,325
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベノウィッツ,アンドリュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】フォスベナー,デイヴィッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】キング,ブライアン ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ロメリル,スチュアート ポール
【テーマコード(参考)】
4C055
4C086
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA03
4C055BA47
4C055BA52
4C055BB02
4C055BB11
4C055CA03
4C055CA35
4C055DA06
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086DA38
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA55
4C086ZB26
4C086ZB27
4H006AA01
4H006AA03
4H006AC90
4H006AD15
4H006BS10
4H006BU32
4H006NB16
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AC80
4H050AC90
4H050AD15
(57)【要約】
本発明は、DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)の活性の阻害剤である置換ピリジン誘導体に関する。本発明は、そのような化合物を含む医薬組成物、並びに癌、前癌症候群、ベータ異常ヘモグロビン症障害、及び不適切なDNMT1活性に関連する他の疾患の処置にそのような化合物を使用する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
式(II)
【化2】
の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
式(IV)
【化3】
のプロドラッグである化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
式(V)
【化4】
のプロドラッグである化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
塩がグリシン塩である、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項6】
塩が無水である、請求項5に記載のグリシン塩。
【請求項7】
塩が、無水結晶性グリシン塩である、請求項6に記載のグリシン塩。
【請求項8】
表1に提示されるXRPDパターンを実質的に示すことを特徴とし、表におけるデータが、プラスマイナス0.2である、請求項7に記載の無水結晶性グリシン塩。
【表1】
【請求項9】
図1によるXRPDパターンを実質的に示すことを特徴とする、請求項7に記載の無水結晶性グリシン塩。
【請求項10】
代表的な回折ピークを有するXRPDパターンを示すことを特徴とする、請求項7に記載の無水結晶性グリシン塩。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物若しくはプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項12】
薬物治療に使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物若しくはプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項13】
不適切なDNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物若しくはプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項14】
不適切なDNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための医薬を製造するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物若しくはプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項15】
不適切なDNMT1活性に関連する疾患を処置する方法であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物若しくはプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とするヒト患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項16】
不適切なDNMT1活性に関連する疾患が、癌、前癌症候群又はベータ異常ヘモグロビン症障害である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
癌が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、黒色腫、腎臓癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)又は乳癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ベータ異常ヘモグロビン症障害が、鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血又はベータサラセミアである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物若しくはプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の他の活性剤を含む、組合せ。
【請求項20】
鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血又はベータサラセミアを処置する方法であって、請求項4から10のいずれか一項に記載のプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とするヒト患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項21】
骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、黒色腫又は乳癌を処置する方法であって、請求項4から10のいずれか一項に記載のプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とするヒト患者に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)の活性の阻害剤である置換ピリジン誘導体に関する。本発明は、そのような化合物を含む医薬組成物、並びに癌、前癌症候群、ベータ異常ヘモグロビン症障害、及び不適切なDNMT1活性に関連する他の疾患の処置にそのような化合物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
エピジェネティクスは、基礎をなすDNAシークエンスから独立して、遺伝子をオン及びオフにする手段である。遺伝子プロモーターで発生するDNAメチル化は、抑制的エピジェネティックスマークの例であり、これは、クロマチンの凝集及び遺伝子サイレンシングを引き起こす。DNAメチル化は、5つのファミリーメンバーからなるDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)ファミリーにより媒介される。ファミリーメンバーのうち3つ、DNMT1、DNMT3A及びDNMT3Bは、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を含有する。これらの3つのメンバーは、de novo DNAメチル化パターンの確立に対して応答するが、DNMT1は、DNA複製後の娘鎖におけるメチル化パターンの維持に対しても応答する。
【0003】
癌では、DNAメチル化パターンが異常になり、このためプロモーター領域内で包括的低メチル化及び限局された高メチル化が生じる。これにより、腫瘍抑制遺伝子の下流サイレンシングが引き起こされる(Tingら、Genes Dev. 2006年;20:3215~3231頁)。さらに、DNMT1のサイレンシングにより、DNA脱メチル化が引き起こされ、腫瘍抑制遺伝子の再発現により腫瘍成長阻害が引き起こされる(Zhouら、Oncol. Lett. 2014年;5:2130~2134頁)。
【0004】
DNAメチル化阻害剤(DNA低メチル化剤といわれる)は、MDS、AML及びCMMLの処置のために利用される臨床的に有効な抗癌治療法である。これらの作用剤が利用できる一方、毒性、固形腫瘍における有用性及び経口バイオアベイラビリティに関して、依然として大きな改善の余地もある。したがって、癌及び/又は、DNAメチル化により媒介される何らかの疾患若しくは状態を処置するための新規なDNMT阻害剤は、関心を持たれることがある。本発明で特に関心を持たれるのが、DNMT1を特異的に標的化して、複製中の娘鎖に対する異常なメチル化パターン(例えば癌に発生するもの)の増殖を防止することである。
【0005】
ヘモグロビン障害、例えば鎌状赤血球貧血及びベータ-サラセミアは、世界で最もよく見られる遺伝性血液疾患を表す。鎌状赤血球貧血及びベータ-サラセミアは、赤血球中の酸素を運ぶタンパク質複合体であるヘモグロビンの障害を特徴とする。構造的には、ヘモグロビンは、通常、2対のタンパク質と4個のヘム分子で構成される。成人及び約4ヶ月超の子供は、成人ヘモグロビンといわれるヘモグロビンの形を発現し、これは主に、2つのアルファ-グロビンタンパク質と対になった2つのベータ-グロビンタンパク質と4個のヘム分子からなる。しかし、胎児及び乳児は典型的には、2つのアルファ-グロビンタンパク質と対になった2つのガンマ-グロビンタンパク質と4個のヘム分子で構成される胎児ヘモグロビンを発現することが多い。G-ガンマ及びA-ガンマといわれる2つの形態のガンマ-グロビンが存在することに注意されたく、これらは2つの異なる遺伝子(HBG1及びHBG2)によりコードされるが、高度に機能的に等しく、胎児ヘモグロビンは、G-ガンマ及び/又はA-ガンマの対とアルファ-グロビンタンパク質の対のいずれかの組合せと、分子4個のヘムを指す。
【0006】
鎌状赤血球貧血では、ベータ-グロビンをコード化する遺伝子が、異常なヘモグロビン構造を引き起こす変異を含有し、赤血球が、ある条件下で特徴的な鎌形状をとるに至る。この鎌形状により、赤血球の柔軟性低下、毛細血管の通過時間延長、及び組織を損傷し、患者の罹患を引き起こし得る頻繁な血管閉塞プロセスが生じる。対照的に、ベータ-サラセミアは、正常に産生されたアルファ-グロビンと組み合わせられるベータ-グロビンの不十分な産生を特徴とする。アルファグロビンの生じた蓄積は、赤血球前駆体に毒性であり、赤血球形成の無効化及び広範な赤血球の溶血が引き起こされる。
【0007】
現在、鎌状赤血球貧血又はベータ-サラセミアを治癒する承認された薬理学的処置はない。しかし、赤血球当たりの胎児ヘモグロビンレベルの全体的上昇と組み合わせた、胎児ヘモグロビンを産生する赤血球数の増加は、鎌状赤血球貧血及び鎌状赤血球症患者において、急性血管閉塞発症の頻度を減少させることにより臨床的利益が得られると証明されている。さらに、臨床的に証明されていないが、ベータ-サラセミアの疾患生物学により、胎児ヘモグロビン産生の高レベルへの増加は、この疾患の治療にも実行可能な方略であることが示唆されている。
【0008】
サイレンシングされたHBG1及びHBG2遺伝子を抑制解除するこの治療手段の目的は、赤血球形成において、エピジェネティックプロセスでのインターベンションを通して標的とされ得る。DNAメチル化における変化は、造血の過程で重要な決定事象であり、様々な細胞系譜への関わりを引き起こす分化のマイルストーンを示す。赤血球生成中に、包括的DNAメチル化の迅速な低下は、赤血球系に特異的な調節因子GATA1及びKLF1の発現、並びに造血前駆体調節因子GATA2及びPU.1の抑制に関わるポイントを画定する(1、2)。成人骨髄における赤血球系前駆細胞では、ベータ-グロビンHBB遺伝子のプロモーター領域におけるDNAは、ベータ-グロビンタンパク質の高レベル発現に対応して、メチル化されなくなる。対照的に、HBG1及びHBG2遺伝子座のプロモーターは、高度にメチル化され、ガンマ-グロビンタンパク質の発現の大幅な低下が引き起こされる(3)。DNAメチルトランスフェラーゼDNMT1、DNMT3A、及びDNMT3Bはそれぞれ、赤血球系前駆体で発現するが、特に赤血球系分化の最終段階におけるDNMT1の比較的大きい発現は、グロビン遺伝子の規制において主要な役割を果たしていることを示唆する(2)。5-アザシチジン及び5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビン)は、赤血球系前駆細胞における胎児ヘモグロビンの公知の誘発物質である全DNMT阻害剤である。赤血球系細胞の培養物及び胎児ヘモグロビン誘導のin vivoモデルにおいて(4、5)、これらの作用剤での処理は、ガンマグロビンタンパク質発現の増加に対応し、HBGプロモーターにおけるCpG部位のメチル化の低下を引き起こす。さらに、臨床研究の限定的なセットでは、両方の作用剤が、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球症及びベータ-サラセミアを有する患者において、胎児ヘモグロビンの増加を引き起こした(6~9)。これらの作用剤は、胎児ヘモグロビンの誘導に有効であるが、長期安全性、用量-制限毒性、及び好適ではない投与経路に対する懸念のため、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球症又はベータ-サラセミアを処置するのに幅広くは使用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】(1) Pop R, Shearstone JR, Shen Q, Liu Y, Hallstrom K, Koulnis M, et al. A key commitment step in erythropoiesis is synchronized with the cell cycle clock through mutual inhibition between PU.1 and S-phase progression. 2010;8.
【非特許文献2】(2) Shearstone JR, Pop R, Bock C, Boyle P, Meissner A, Socolovsky M. Global DNA demethylation during mouse erythropoiesis in vivo. 2011;334:799-802.
【非特許文献3】(3) Mabaera R, Richardson CA, Johnson K, Hsu M, Fiering S, Lowrey CH. Developmental- and differentiation-specific patterns of human +|- and +|-globin promoter DNA methylation. 2007;110:1343-52.
【非特許文献4】(4) Chin J, Singh M, Banzon V, Vaitkus K, Ibanez V, Kouznetsova T, et al. Transcriptional activation of the +|-globin gene in baboons treated with decitabine and in cultured erythroid progenitor cells involves different mechanisms. 2009;37:1131-42.
【非特許文献5】(5) Akpan I, Banzon V, Ibanez V, Vaitkus K, DeSimone J, Lavelle D. Decitabine increases fetal hemoglobin in Papio anubis by increasing +|-globin gene transcription. 2010;38:989-93.
【非特許文献6】(6) Dover GJ, Charache SH, Boyer SH, Talbot J, Smith KD. 5-Azacytidine increases fetal hemoglobin production in a patient with sickle cell disease. 1983;134:475-88.
【非特許文献7】(7) Saunthararajah Y, Hillery CA, Lavelle D, Molokie R, Dorn L, Bressler L, et al. Effects of 5-aza-2GC|-deoxycytidine on fetal hemoglobin levels, red cell adhesion, and hematopoietic differentiation in patients with sickle cell disease. 2003;102:3865-70
【非特許文献8】(8) Ley TJ, DeSimone J, Noguchi CT, Turner PH, Schechter AN, Heller P, et al. 5-Azacytidine increases +|-globin synthesis and reduces the proportion of dense cells in patients with sickle cell anemia. 1983;62:370-80.
【非特許文献9】(9) Lowrey CH, Nienhuis AW. Brief report: Treatment with azacitidine of patients with end-stage +|- thalassemia. 1993;329:845-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、DNMT1の阻害剤である新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、新規化合物を対象とする。
【0012】
具体的には、本発明は、式(I)
【0013】
【化1】
の化合物及びそのプロドラッグ、並びにその塩を対象とする。
【0014】
本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物をさらに対象とする。
【0015】
本発明は、不適切なDNMT1活性に関連する疾患を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法をさらに対象とする。
【0016】
本発明は、薬物治療において使用するための、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩をさらに対象とする。
【0017】
本発明は、不適切なDNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩をさらに対象とする。
【0018】
本発明は、不適切なDNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩の使用をさらに対象とする。
【0019】
本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の他の治療剤を含む組合せをさらになお対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1の化合物のグリシン酸塩のX線粉末回折である。
図2】実施例1の化合物のグリシン酸塩の示差走査熱量測定である。
図3】実施例1の化合物のグリシン酸塩の示差走査熱量測定である。
図4】実施例1の化合物のグリシン酸塩一水和物(Glycinate Salt of the Compound of Example 1, monohydrate)のX線粉末回折である。
図5】実施例1の化合物のグリシン酸塩一水和物の示差走査熱量測定である。
図6】実施例1の化合物のグリシン酸塩一水和物の熱重量分析である。
図7】化合物例1のX線粉末回折である。
図8】実施例1の化合物の示差走査熱量測定である。
図9】実施例1の化合物の熱重量分析である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一実施形態では、本発明は、式(I)
【0022】
【化2】
【0023】
の化合物及びそのプロドラッグ、及びその塩(以下、「本発明の化合物」)を対象とする。
【0024】
本発明の化合物は、少なくとも1つの不斉中心(キラル中心ともいわれる)を含有し、したがって、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー若しくは他の立体異性体として、又はその混合物として存在し得る。キラル中心、例えばキラル炭素原子は、置換基、例えばアルキル基にも存在し得る。本発明の化合物、又は本明細書で例証されているいずれかの化学構造に存在するキラル中心の立体化学が指定されていない場合、構造は、いずれかの立体異性体及びその混合物すべてを包含することが意図されている。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物、鏡像異性的に富化された混合物として、又は鏡像異性的に純粋な個々の立体異性体として使用され得る。
【0025】
したがって、一実施形態では、本発明の化合物は、式(II)
【0026】
【化3】
の化合物若しくはそのプロドラッグ、又はその塩である。
【0027】
別の実施形態では、本発明の化合物は、式(II)
【0028】
【化4】
の化合物又はそのプロドラッグである。
【0029】
さらなる実施形態では、本発明の化合物は、式(III)
【0030】
【化5】
の化合物若しくはそのプロドラッグ、又はその塩である。
【0031】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、当業者に公知である方法により分割され得る。例えば、そのような分割は、(1)ジアステレオ異性体塩、複合体若しくは他の誘導体の形成により、(2)立体異性体に特異的な試薬との選択的反応により、例えば酵素の酸化若しくは還元により、又は(3)キラル環境における、例えばキラル支持体、例えば結合したキラルリガンドを有するシリカ上での、若しくはキラル溶媒の存在下での、ガス-液体若しくは液体クロマトグラフィーにより実行され得る。当業者は、望ましい立体異性体が、上に記載されている分離手順の1つにより別の化学的実体に変換される場合、さらなるステップが、望ましい形態を遊離するのに必要とされることを認識する。或いは、特定の立体異性体は、光学活性試薬、基質、触媒若しくは溶媒を使用する不斉合成により、又は、不斉変換で1つの鏡像異性体を他のものに変換することにより合成され得る。
【0032】
本発明の化合物は、幾何学的不斉中心も含有し得る。本発明の化合物、又は本明細書で例証されているいずれかの化学構造に存在する幾何学的不斉中心の立体化学が指定されていない場合、構造は、trans幾何異性体、cis幾何異性体及びそれらの混合物すべてを包含することが意図されている。同じく、そのような互変異性体が平衡して存在する、又は一方の形態が優勢に存在するかどうかを問わず、すべての互変異性型も含まれる。
【0033】
本発明の化合物は、プロドラッグとして投与され得る。本明細書で使用されている、式(I)の化合物の「プロドラッグ」は、患者に投与されると、最終的には式(I)の化合物をin vivoで遊離する化合物の機能的誘導体である。式(I)の化合物のプロドラッグとしての投与は、当業者が、以下、(a)化合物のin vivoでの溶解度の改変、(b)化合物のin vivoでの活性発現の改変、(c)化合物のin vivoでの作用持続時間の改変、(d)化合物のin vivoでの輸送又は分布の改変、及び(e)副作用又は化合物が直面した他の困難の克服の1つ以上を行うことを可能にし得る。プロドラッグを調製するために使用される典型的な機能的誘導体は、in vivoで化学的又は酵素的に切断可能な化合物の改変を含む。ホスフェート、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート及びカルバメートの調製を含むそのような改変は、当業者に周知である。一実施形態では、プロドラッグ部分は、-P(O)(OH)2である。
【0034】
したがって、一実施形態では、本発明の化合物は、式(IV)
【0035】
【化6】
のプロドラッグ又はその塩である。
【0036】
別の実施形態では、本発明の化合物は、式(V)
【0037】
【化7】
のプロドラッグ又はその塩である。
【0038】
別の実施形態では、本発明の化合物は、式(V)
【0039】
【化8】
のプロドラッグである。
【0040】
さらなる実施形態では、本発明の化合物は、式(VI)
【0041】
【化9】
のプロドラッグ又はその塩である。
【0042】
本明細書での、式(I)の化合物及びそのプロドラッグ、並びにその塩への言及は、式(I)の化合物及びそのプロドラッグを、遊離酸若しくは遊離塩基として、又はその塩として、例えば薬学的に許容できるそれらの塩としてカバーすることは理解されるべきである。したがって、一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物又はそのプロドラッグを、遊離酸又は遊離塩基として対象とする。別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又はその塩を対象とする。さらなる実施形態では、本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は医薬として許容できるその塩を対象とする。
【0043】
当業者は、式(I)による化合物の薬学的に許容できる塩、又はそのプロドラッグを調製できることを認識する。実際に、本発明のある実施形態では、式(I)による化合物の薬学的に許容できる塩、又はそのプロドラッグは、そのような塩が、より高い安定性又は溶解度を分子に付与し、それにより、剤形への製剤化を促すことができるため、それぞれの遊離塩基又は遊離酸よりも好ましいことがある。
【0044】
本明細書で使用されている「薬学的に許容できる塩」という用語は、対象化合物の望ましい生物学的活性を保ち、最小限の望ましくない毒物学的な効果を呈する塩を指す。これらの薬学的に許容できる塩は、化合物の最終単離及び精製中にin situで、或いは、精製した化合物を、その遊離酸若しくは遊離塩基形態、又は薬学的に許容できない塩で、好適な塩基又は酸それぞれと、別々に反応させることにより調製され得る。
【0045】
薬学的に許容できない対イオン又は関連する溶媒を有する塩及び溶媒和物は、例えば、式(I)の化合物又はそのプロドラッグ、及び薬学的に許容できるその塩の調製における中間体として使用する場合、本発明の範囲内である。したがって、本発明の一実施形態は、式(I)の化合物及びそのプロドラッグ、並びにその塩を包含する。
【0046】
薬学的に許容できる塩は、とりわけBerge、J. Pharm. Sci.、1977年、66、1~19頁に記載されているもの、又は、P H Stahl及びC G Wermuth編、Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties, Selection and Use、第2版、Stahl/Wermuth:Wiley- VCH/VHCA、2011年(http://www.wiley.com/WileyCDA/WileyTitle/productCd-3906390519.htmlを参照されたい)に列挙されているものを含む。
【0047】
ある実施形態では、式(I)による化合物又はそのプロドラッグは、酸性官能基を含有し得る。好適な薬学的に許容できる塩は、そのような酸性官能基の塩を含む。代表的な塩は、アルミニウム、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(トリス、トロメタミン)、アルギニン、ベネタミン(N-ベンジルフェネチルアミン)、ベンザチン(N,N'-ジベンジルエチレンジアミン)、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビスマス、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、クレミゾール(1-pクロロベンジル-2-ピロリジン(pyrrolildine)-1'-イルメチルベンズイミダゾール)、シクロヘキシルアミン、ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエチルトリアミン、ジメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ドーパミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、L-ヒスチジン、鉄、イソキノリン、レピジン、リチウム、L-リジン、マグネシウム、メグルミン(N-メチルグルカミン)、ピペラジン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、キノリン、ナトリウム、ストロンチウム、t-ブチルアミン、ベタイン(tri-メチルグリシン)、L-プロリン、L-フェニルアラニン、L-アラニン、L-チロシン、L-ロイシン、イミダゾール、グリシン、L-バリン、L-セリン、モルホリン、トリ-コリン、ジエチレントリアミン(diethyenetriamine)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジン及び亜鉛を含むが、それらに限定されない。
【0048】
そのような塩基付加塩は、任意選択で好適な溶媒、例えば有機溶媒中での、式(I)の化合物又はそのプロドラッグ(例えば、カルボン酸又は他の酸性官能基を含有する)と、適切な塩基の反応により形成されて、塩を得ることができ、これは、結晶化及び濾過を含む多彩な方法により単離できる。
【0049】
式(I)の化合物又はそのプロドラッグが、2つ以上の塩基部分を含有する場合、塩形成の化学量論は、1、2以上の当量の酸を含み得ることが理解される。そのような塩は、1個、2個以上の酸対イオン、例えば二塩酸塩を含有し得る。
【0050】
式(I)の化合物又はそのプロドラッグの、化学量論及び非化学量論形態の薬学的に許容できる塩は、本発明の範囲内に含まれ、例えば対イオンが1つ超の酸性プロトンを含有する準化学量論的塩を含む。
【0051】
ある実施形態では、式(I)による化合物又はそのプロドラッグは、塩基性官能基を含有し得、したがって、好適な酸での処理により、薬学的に許容できる酸付加塩を形成することが可能である。好適な酸は、薬学的に許容できる無機酸、及び薬学的に許容できる有機酸を含む。代表的な薬学的に許容できる酸付加塩は、4-アセトアミド安息香酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、安息香酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩(カンシル酸塩)、カプリン酸塩(デカン酸塩)、カプロン酸塩(ヘキサン酸塩)、カプリル酸塩(オクタン酸塩)、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、チクロ、ジグルコン酸塩、2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩、ジコハク酸塩、ドデシル硫酸塩(エストール酸塩)、エデト酸塩(エチレンジアミン四酢酸塩)、エストール酸塩(ラウリル硫酸塩)、エタン-1,2-ジスルホン酸塩(エジシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシレート)、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(ムチン酸塩)、ゲンチシン酸塩(2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩)、グルコヘプトン酸塩(グルセプト酸塩)、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩(glycerophosphorate)、グリコール酸塩、ヘキシルレゾルシネート(hexylresorcinate)、馬尿酸塩、ヒドラバミン(N,N'-ジ(デヒドロアビエチル)-エチレンジアミン)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩(ナパジシル酸塩)、ナフタレン-2-スルホン酸塩(ナプシル酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、p-アミノベンゼンスルホン酸塩、p-アミノサリチル酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルエチルバルビツール酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシレート)、ピログルタミン酸塩、ピルビン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(8-クロロテオフィリン酸塩(8-chlorotheophyllinate))、チオシアン酸塩、トリエチオダイド、ウンデカン酸塩、ウンデシレン酸塩及び吉草酸塩を含むが、それらに限定されない。
【0052】
そのような酸付加塩は、任意選択で好適な溶媒、例えば有機溶媒中での、式(I)の化合物又はそのプロドラッグ(例えば塩基性アミン又は他の塩基性官能基を含有する)と、適切な酸の反応により形成されて、塩を得ることができ、これは、結晶化及び濾過を含む多彩な方法により単離できる。
【0053】
塩は、式(I)の化合物又はそのプロドラッグの最終単離及び精製中にin situで調製され得る。式(I)の塩基性化合物又はそのプロドラッグが、塩として単離される場合、その化合物の対応する遊離塩基形態は、無機又は有機塩基を用いた塩の処理を含む、当技術分野で公知の任意の好適な方法により調製され得る。同様に、カルボン酸又は他の酸性官能基を含有する式(I)の化合物又はそのプロドラッグが、塩として単離される場合、その化合物の対応する遊離酸形態は、無機又は有機酸を用いた塩の処理を含む、当技術分野で公知の任意の好適な方法により調製され得る。
【0054】
式(I)の化合物及びそのプロドラッグ、並びにその塩のすべての光学異性体、立体異性体、多形体及び放射性標識された誘導体は、「本発明の化合物」の範囲内に含まれる。
【0055】
本発明の化合物は、固体又は液体形態で存在し得る。固体状態では、本発明の化合物は、結晶性若しくは非結晶性形態で、又はそれらの混合物として存在し得る。結晶形態である本発明の化合物では、当業者は、溶媒分子が結晶化中に結晶性格子に組み込まれた、薬学的に許容できる溶媒和物が形成され得ることを認識する。本発明の化合物は、溶媒和及び非溶媒和形態で存在し得る。溶媒和物は、非水性溶媒、例えばエタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミン及びEtOAcを伴い得る、又はこれらは、結晶性格子中に組み込まれる溶媒として水を伴い得る。水が結晶性格子中に組み込まれる溶媒である溶媒和物は、典型的には、「水和物」といわれる。水和物は、化学量論の水和物、及び可変量の水を含有する組成物を含む。
【0056】
結晶形態で存在する本発明のある化合物は、様々なその溶媒和物を含めて、多形(すなわち異なる結晶性構造として発生する能力)を呈し得ることを、当業者はさらに認識する。これらの異なる結晶形態は、典型的には、「多形体」として公知である。本発明は、そのような多形体すべてを含む。多形体は、同一の化学組成を有するが、充填、幾何学的配置、及び結晶性固体状態の他の記述的性質の点で異なる。多形体は、したがって、異なる物理的性質、例えば形状、密度、硬度、変形性、安定性及び溶解性を有し得る。多形体は、典型的には、異なる融点、IRスペクトル、及びX線粉末回折パターンを呈し、これらは同定に使用され得る。当業者は、異なる多形体が、例えば、化合物を作るのに使用される反応条件又は試薬を変化又は調整することにより生成され得ることを認識する。例えば、温度、圧力又は溶媒における変化は、多形体を生じ得る。さらに、ある多形体は、ある条件下で別の多形体に自発的に変換し得る。
【0057】
本発明は、1個以上の原子が、自然においてごく普通に見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられることを除いて、本発明の化合物と同一である同位体標識化合物も含む。本発明の化合物中に組み込まれ得る同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素及びフッ素の同位体、例えば2H、3H、11C、14C及び18Fを含む。
【0058】
「鏡像異性的に富化された」は、鏡像異性体過剰率がゼロ超である生成物を指す。例えば、鏡像異性的に富化されたとは、鏡像異性体過剰率が50%ee超、75%ee超、及び90%ee超である生成物を指す。
【0059】
「鏡像異性体過剰率」又は「ee」は、一方の鏡像異性体の、他の鏡像異性体を超える過剰率であり、パーセンテージとして表現される。結果として、両方の鏡像異性体がラセミ混合物に等しい量で存在するので、鏡像異性体過剰率はゼロ(0%ee)である。しかし、一方の鏡像異性体が濃縮され、その結果生成物の95%を構成する場合、鏡像異性体過剰率は、90%ee(濃縮した鏡像異性体の量95%マイナス他の鏡像異性体の量5%)になり得る。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、R又はS鏡像異性体に関して少なくとも50%ee、少なくとも60%ee、少なくとも65%ee、少なくとも70%ee、少なくとも75%ee、少なくとも80%ee、少なくとも85%ee、少なくとも90%ee、少なくとも95%ee、少なくとも96%ee、少なくとも97%ee、少なくとも98%ee又は少なくとも99%eeを有し得る。
【0060】
「鏡像異性的に純粋」は、鏡像異性体過剰率が99%ee以上である生成物を指す。
【0061】
「薬学的に許容できる」は、医学的良識の範囲内であり、過剰な毒性、刺激若しくは他の問題、又は合併症を伴わず、妥当な利益/危険性比に見合っている、人間及び動物の組織との接触における使用に好適な化合物、塩、材料、組成物及び剤形を指す。
【0062】
本発明の化合物は、それを必要とする哺乳動物、特にヒトにおける選択的DNMT1阻害剤として有用である。DNMT1阻害剤である化合物は、根底にある病変が、不適切なDNMT1活性に(少なくとも部分的に)起因する疾患、例えば癌の処置に有用であり得る。「不適切なDNMT1活性」は、特定の患者で予想される通常のDNMT1活性から逸脱する任意のDNMT1活性を指す。不適切なDNMT1は、例えば、活性における異常な増大、又はDNMT1活性のタイミング及び/若しくは制御における異常の形態をとり得る。したがって、別の態様では、本発明は、そのような疾患を処置する方法を対象とする。
【0063】
本発明のいくつかの態様では、式(I)の化合物及びそのプロドラッグ、並びにその塩は、DNMT1の強力な阻害剤であり、DNMT3A及びDNMT3BよりもDNMT1に対して選択的である。
【0064】
そのような疾患は、癌、前癌症候群(前癌性状態といわれることがある)又はベータ異常ヘモグロビン症障害を含む。前癌性状態は、癌へと発展する高い危険性を伴う異常な細胞に関与する状態又は病変である。臨床的に、前癌性状態は、癌へと発展する高い危険性を有する多彩な状態又は病変を包含する。
【0065】
処置され得る癌は、腺癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、癌肉腫、黒色腫、副腎癌、副腎皮質癌、褐色細胞腫、乳癌、腺管上皮内癌、小葉癌、炎症性乳癌、浸潤性腺管癌、乳頭パジェット病、乳頭状乳癌、髄様癌、乳癌(mammary carcinoma)、肛門癌、総排泄孔癌、肛門直腸黒色腫、虫垂癌、虫垂神経内分泌腫瘍、虫垂粘液嚢胞腺癌、結腸型虫垂腺癌、印環細胞腺癌、杯細胞癌/腺神経内分泌癌(adenoneuroendocrine carcinomas)、胆管癌、肝内胆管細胞癌、肝外胆管細胞癌、肺門周囲胆管癌(perihilar cholangiocarcinoma)、遠位肝外胆管細胞癌(distal extrahepatic cholangiocarcinoma)、結腸直腸癌(CRC)、粘液癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、原発性結腸直腸リンパ腫、平滑筋肉腫、食道癌、小細胞癌、平滑筋腫、胆嚢癌、非乳頭状腺癌、乳頭状腺癌、胃癌、胃腺癌、肝臓癌、肝細胞癌、線維層状癌、血管肉腫、リンパ管肉腫、血管肉腫、肝芽腫、膵臓癌、管線癌、腺房腺癌、腺房細胞癌、膠様癌、巨細胞腫、肝様腺癌、粘液性嚢胞性新生物(mucinous cystic neoplasms)、膵芽腫、漿液性嚢胞腺腫、管内乳頭粘液性新生物(intraductal papillary mucinous neoplasm)、膵神経内分泌腫瘍、ガストリノーマ、インスリノーマ、グルカゴノーマ、VIPoma、ソマトスタチノーマ、PPoma、小腸癌、眼癌、眼球内黒色腫、眼球内リンパ腫、眼球内網膜芽細胞腫、結膜黒色腫、眼瞼癌、脂腺癌、涙腺腫瘍、悪性混合型上皮性腫瘍、腺様嚢胞癌、膀胱癌、尿路上皮癌、腎臓癌、腎細胞癌(RCC)、明細胞RCC、乳頭状RCC、嫌色素性RCC、集合管RCC、多房性嚢胞状RCC、腎粘液管状及び紡錘細胞癌、管状嚢胞性RCC、甲状腺様濾胞RCC、後天性嚢胞性腎疾患関連RCC、t(6;11)転座型RCC(TFEB)、ハイブリッドオンコサイトーマ/嫌色素性RCC、ウィルムス腫瘍、陰茎癌、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、移行上皮癌、精巣癌、精上皮腫、古典型セミノーマ、精母細胞性セミノーマ、非セミノーマ、胎児性癌、卵黄嚢癌、絨毛癌、奇形腫、ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫瘍、精巣網癌、尿道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、胚細胞腫、
性腺芽腫、混合型胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、内胚葉洞腫瘍、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、卵管癌、上皮性癌、未分化胚細胞腫、性索間質腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、原発性腹膜癌、子宮肉腫、子宮乳頭状漿液性癌、膣癌、明細胞腺癌、外陰部癌、疣贅性癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、咽頭癌、下咽頭癌、上咽頭癌、中咽頭癌、非角化型扁平上皮癌、未分化癌、喉頭癌、口腔癌(oral cavity cancer)、口腔癌(mouth cancer)、粘表皮癌、副鼻腔及び鼻腔癌、感覚神経芽腫、唾液腺癌、上皮筋上皮癌、副甲状腺癌、甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、ヒュルトレ細胞癌、髄様甲状腺癌、未分化甲状腺癌、傍神経節腫、頸動脈傍神経節腫、鼓室型傍神経節腫瘍(jugulotympanic paraganglioma)、迷走神経傍神経節腫、白血病、急性リンパ芽球性白血病、T-リンパ芽球性白血病、前駆体B-細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性巨核芽球性白血病、赤白血病、慢性リンパ性白血病、B-細胞性慢性リンパ性白血病、B-細胞性前リンパ球性白血病、T-細胞性前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、T-細胞大顆粒リンパ球性白血病、NK-細胞顆粒リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、形質細胞性白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、古典型ホジキンリンパ腫、結節硬化型古典型ホジキンリンパ腫、混合細胞型古典型ホジキンリンパ腫、リンパ球に富む古典型ホジキンリンパ腫、リンパ球減少型古典型ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B-細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B-細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、T-細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、ダブルヒット/トリプルヒットリンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性大細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、血管内大細胞型リンパ腫、原発性脾リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(MZL)、節外性MZL、節性MZL、脾MZL、有毛リンパ球を伴う脾MZL、末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、成人T-細胞リンパ腫/白血病、節外性NK/T-細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、肝脾T-細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T-細胞リンパ腫、T-細胞非ホジキンリンパ腫NOS(T-cell non-Hodgkin's lymphoma not otherwise specified)、ガンマ/デルタT-細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、HIV関連リンパ腫、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、活動性多発性骨髄腫、形質細胞腫、骨の孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、原発性アミロイドーシス、骨髄異形成症候群(MDS)、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、芽球増加を伴う不応性貧血、形質転換中の芽球増加を伴う不応性貧血、骨髄増殖性腫瘍、真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症、全身性肥満細胞症、骨癌、ユーイング肉腫、骨肉腫、髄内骨肉腫、傍骨性骨肉腫、骨外性骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、脊索腫、通常型(classic)脊索腫、軟骨様脊索腫、脱分化型脊索腫、軟骨肉腫、通常型軟骨肉腫、明細胞軟骨肉腫、粘液様軟骨肉腫、間葉型軟骨肉腫、脱分化型軟骨肉腫、横紋筋肉腫、胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、ブドウ状横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、エクストラオセアス肉腫(extraosseus sarcoma)、隆起性皮膚線維肉腫、類上皮肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫、線維肉腫、粘液肉腫、滑膜腫、脳癌、未分化星状細胞腫、膠芽腫、多形神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体癌、シュワン細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、髄芽腫、星状細胞腫、脳幹部グリオーマ、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、松果体腫、神経芽細胞腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍、びまん性内在性橋膠腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、未分化NSCLC、小細胞肺癌、胸膜肺芽腫、気管支原性癌、悪性中皮腫、悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、胸腺腫、胸腺癌、皮膚癌、ケラトアカントーマ、皮脂腺癌、汗腺癌、アポクリン癌、エクリン腺癌、明細胞エクリン腺癌(clear cell eccrine carcinoma)、メルケル細胞癌、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、軟骨性汗管腫、HPV関連癌、形質転換細胞を含有する腫瘍、前癌状態の細胞を含有する腫瘍、前癌性肥厚、前癌性化生、前癌性異形成、上皮内癌、混合腫瘍、悪性混合腫瘍、並びに複合癌を含む。
【0066】
処置され得る癌は、腫瘍遺伝子変異量高値(TMB)癌、DNAミスマッチ修復系の欠損(dMMR)を示す癌、高頻度マイクロサテライト不安定性状態(MSI-H)を示す癌、低頻度マイクロサテライト不安定性状態(MSI-L)を示す癌、選択されたテトラヌクレオチド反復でのマイクロサテライト変化増加(EMAST)を示す癌、マイクロサテライト安定(MSS)癌、ポリメラーゼデルタ(POLD)における変異を含む癌、ポリメラーゼイプシロン(POLE)における変異を含む癌、又は相同組換え修復欠損(HRD)を有する癌も含む。
【0067】
処置され得る癌は、発現プロファイリングにより定義される乳癌(三種陰性乳癌、HER2陽性乳癌、ルミナルA型乳癌、ルミナルB型乳癌、正常様乳癌)又はBRCA1若しくはBRCA2変異を有する乳癌をさらに含む。
【0068】
本発明の一実施形態では、処置される癌は、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、黒色腫又は乳癌である。本発明の別の実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病(AML)である。本発明のさらなる実施形態では、癌は、結腸直腸癌(CRC)である。
【0069】
本発明の処置方法は、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は医薬として許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。本発明の個々の実施形態は、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与することにより、上で言及されている障害のいずれか1つを処置する方法を含む。
【0070】
本明細書で使用されている「処置する」は、障害に関して、(1)障害、又は障害の生物学的徴候の1つ以上を寛解させる、又は防止すること、(2)(a)障害を引き起こす、若しくは障害に対して応答する生物学的カスケードポイントの1つ以上、又は(b)生物学的徴候の1つ以上を阻害すること、(3)障害に関連する症状又は効果の1つ以上を緩和すること、或いは(4)障害の進展、又は障害の生物学的徴候の1つ以上を遅くすることを意味する。
【0071】
本明細書で使用されている「安全で有効な量」は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩又は他の薬学的な活性剤に関して、患者の状態を処置するのに十分であるが、医学的良識の範囲内で、重篤な副作用を避けるのに十分な少なさ(妥当な利益/危険性比で)の化合物の量を意味する。安全で有効な量の化合物は、選択される具体的な化合物(例えば効力、効能及び化合物の半減期を考慮する);選択される投与経路;処置される障害;処置される障害の重症度;処置される患者の年齢、体格、重量、及び身体状態;処置される患者の病歴;処置の持続時間;同時治療の性質;望ましい治療効果;及び同様の要因によって異なるが、それでも当業者により日常的に判定され得る。
【0072】
本明細書で使用されている「患者」は、ヒト(成人及び子供を含む)又は他の動物を指す。一実施形態では、「患者」は、ヒトを指す。
【0073】
本発明は、したがって、不適切なDNMT1活性に関連する疾患を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0074】
一実施形態では、本発明は、癌、前癌症候群又はベータ異常ヘモグロビン症障害を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、癌、前癌症候群又はベータ異常ヘモグロビン症障害を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、黒色腫又は乳癌を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、急性骨髄性白血病(AML)を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0078】
別の実施形態では、本発明は、結腸直腸癌(CRC)を処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0079】
さらなる実施形態では、本発明は、鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血又はベータサラセミアを処置する方法であって、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法を提供する。鎌状赤血球貧血は、ベータグロビン遺伝子の対立遺伝子の両方における、ホモ接合体のE6V変異を特徴とする単一の特殊な疾患である。対照的に、鎌状赤血球症は、いくつかの関連疾患の集合であり、これらはすべて、様々な重症度の同様の症状を提示する。鎌状赤血球症患者は、E6V変異を伴う(鎌状赤血球貧血のように)一方のベータグロビン遺伝子の対立遺伝子を有し、第2のベータグロビン遺伝子の対立遺伝子は、任意の数の変異を保有するが、とりわけ変異は、ベータサラセミアを引き起こす。最もよく見られる鎌状赤血球症の徴候は、「鎌状ベータゼロ」及び「鎌状ベータプラス」と呼ばれるが、他のものも同様に存在する。鎌状赤血球症患者における第2のベータグロビン対立遺伝子には、変異がないことはない(一方の通常のベータグロビン対立遺伝子に加えての、一方のE6Vベータグロビン対立遺伝子は、鎌状赤血球の特色として公知であり、これは全体として無害ではないが、一般的に処置されない)が、第2の対立遺伝子における変異がE6V変異ではないだけにすぎないことに注意されたい。鎌状赤血球の特色は、鎌状赤血球症とは考えられないことに注意されたい。
【0080】
本発明は、薬物治療において使用するための、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩をさらに対象とする。
【0081】
本発明は、不適切なDNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩をさらに対象とする。
【0082】
本発明は、不適切なDNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩の使用をさらになお対象とする。
【0083】
式(I)の化合物及びそのプロドラッグ、並びに薬学的に許容できるそれらの塩は、必須ではないが、通常、患者への投与前に医薬組成物に配合される。
【0084】
したがって、一態様では、本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。
【0085】
別の態様では、本発明は、0.5から3500mgの式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び0.1から2gの1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を含む、不適切なDNMT1活性により媒介される疾患を処置するための医薬組成物を対象とする。
【0087】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩は、全身投与及び局所投与の両方を含む任意の好適な投与経路により投与され得る。全身投与は、経口投与、非経口投与、経皮投与及び直腸投与を含む。非経口投与は、経腸又は経皮以外の投与経路を指し、典型的には注入又は注射による。非経口投与は、静脈内、筋肉内及び皮下注入又は注射を含む。局所投与は、皮膚並びに眼球内、耳、腟内への適用、吸入投与及び鼻腔内投与を含む。吸入は、口腔を通して、又は経鼻経路を通して吸入されるかどうかを問わず、患者の肺内への投与を指す。一実施形態では、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩は、経口的に投与され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のあるプロドラッグは、経口バイオアベイラビリティの増大につながる改善した溶解度のため、特に経口投与に好適であり得る。
【0089】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩は、1回、又は複数回の用量が、所定の時間にわたり様々な時間間隔で投与される用法に従って投与され得る。例えば、用量は、1日につき1回、2回、3回、4回、5回又は6回投与され得る。用量は、望ましい治療効果が達成されるまで、又は望ましい治療効果を無期限に維持するために投与され得る。式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩に好適な用法は、その化合物の薬物動態学的性質、例えば吸収、分布及び半減期によって決まり、これらは当業者により判定され得る。さらに、そのようなレジメンが行われる持続時間を含む、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩に好適な用法は、処置される障害、処置される疾患の重症度、処置される患者の年齢及び物理的状態、処置される患者の病歴、同時治療の性質、望ましい治療効果、並びに当業者の知識及び専門知識内の同様の要因によって決まる。好適な用法が、個々の患者の用法に対する応答を考慮して、又は個々の患者が変化を必要とする時間にわたって調整を必要とし得ることは、そのような当業者によりさらに理解される。
【0090】
上に記載されている医薬品投与単位における発明された薬学的にの活性化合物の用量は、好ましくは0.001~500mg/kg、好ましくは0.01~100mg/kgの活性化合物の範囲から選択される、効果のある非毒性量である。DNMT1阻害剤を必要とするヒト患者を処置する場合、選択された用量は、好ましくは1日に1から6回、経口的又は非経口的に投与される。非経口投与の好ましい形態は、局所投与、直腸投与、経皮投与、注射による投与及び注入による継続的投与を含む。ヒト投与用の経口投与単位は、好ましくは、0.5から3500mgの活性化合物を含有する。好適には、ヒト投与用の経口投与単位は、好ましくは、0.5から1,000mgの活性化合物を含有する。より低い投与量を使用する経口投与が好ましい。しかし高い投与量での非経口投与も、患者に安全で都合がよい場合、使用してよい。
【0091】
式(I)の化合物及び薬学的に許容できるそれらの塩は、通常、必須ではないが、患者への投与前に医薬組成物に配合される。
【0092】
したがって、一態様では、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。
【0093】
別の態様では、本発明は、0.05から1000mgの式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩、及び0.1から2gの1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。
【0094】
さらなる態様では、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩を含む、不適切なDNMT1活性により媒介される障害を処置又は予防するための医薬組成物を対象とする。
【0095】
本発明の医薬組成物は、安全で有効な量の式(I)の化合物、又は薬学的に許容できるその塩が抽出され得、次いで例えば散剤又はシロップ剤と患者に与えられる、バルク形態で調製及び包装され得る。或いは、本発明の医薬組成物は、物理的に個別の単位それぞれが、式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩を含有する単位剤形で調製及び包装され得る。単位剤形で調製した場合、本発明の医薬組成物は、典型的には、例えば、0.5から1,000mg、又は1mgから700mg、又は5mgから100mgの式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を含有し得る。
【0096】
本発明の医薬組成物は、典型的には、1つの式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を含有する。
【0097】
本明細書で使用されている「薬学的に許容できる賦形剤」は、形態又は稠度を医薬組成物に与えることに関与する薬学的に許容できる材料、組成物又はビヒクルを意味する。各賦形剤は、患者に投与された場合、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩の効能を実質的に低下させ得る相互反応、また、薬学的に許容できない医薬組成物を生じ得る相互反応が避けられるように、混ぜた場合に医薬組成物の他の原料と適合しなければならない。さらに、各賦形剤は、もちろん、例えば十分に高い純度の薬学的に許容できなければならない。
【0098】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び薬学的に許容できる賦形剤(複数可)は、典型的には、望ましい投与経路により患者への投与に適合した剤形に配合される。例えば、剤形は、(1)経口投与に適合したもの、例えば錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、散剤、シロップ剤、エリキシル剤(elixers)、懸濁液剤、液剤、エマルション剤、サシェ剤及びカシェ剤、(2)非経口投与に適合したもの、例えば再構成用の無菌液剤、懸濁液剤及び散剤、(3)経皮投与に適合したもの、例えば経皮パッチ剤、(4)直腸投与に適合したもの、例えば坐剤、(5)吸入に適合したもの、例えばエーロゾル剤、液剤及び乾燥散剤、並びに(6)局所投与に適合したもの、例えばクリーム剤、軟膏剤、ローション剤、液剤、ペースト剤、スプレー剤、フォーム剤及びゲル剤を含む。
【0099】
好適な薬学的に許容できる賦形剤は、選択された具体的な剤形に応じて変動する。さらに、好適な薬学的に許容できる賦形剤は、組成物において果たし得る特定の機能について選択され得る。例えば、ある薬学的に許容できる賦形剤は、均一な剤形の生成を促進する能力について選択され得る。ある薬学的に許容できる賦形剤は、安定な剤形の生成を促進する能力について選択され得る。ある薬学的に許容できる賦形剤は、患者に投与されたら、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩の、体のある器官又は部分から、体の別の器官又は部分へと保有又は輸送を促進する能力について選択され得る。ある薬学的に許容できる賦形剤は、服薬遵守を向上させる能力について選択され得る。
【0100】
好適な薬学的に許容できる賦形剤は、以下のタイプの賦形剤:希釈剤、フィラー、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、顆粒化剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、懸濁剤、乳化剤、甘味料、香味剤、香味マスキング剤、着色剤、固結防止剤、吸湿剤(hemectant)、キレート剤、可塑剤、増粘剤、抗酸化剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤及び緩衝剤を含む。当業者は、ある薬学的に許容できる賦形剤が、1つ超の機能を果たし得ること、及び、賦形剤がどのくらい配合物に存在するか、また、他のどの賦形剤が配合物に存在するかに応じて代替機能を果たし得ることを認識する。
【0101】
当業者は、当業界の知識及び技術を所有して、好適な、薬学的に許容できる賦形剤を、本発明における使用に適切な量で、自らが選択できるようにする。さらに、薬学的に許容できる賦形剤を記載し、好適な薬学的に許容できる賦形剤を選択するのに有用であり得る、当業者が利用できるいくつかのリソースが存在する。例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)、The Handbook of Pharmaceutical Additives (Gower Publishing Limited)、及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients(American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Press)を含む。
【0102】
本発明の医薬組成物は、当業者に公知である技術及び方法を使用して調製する。当業界で普通に使用される方法のいくつかは、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)に記載されている。
【0103】
したがって、別の態様では、本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を調製する方法であって、原料を混合するステップを含む、方法を対象とする。式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を含む医薬組成物は、例えば、周囲温度及び大気圧での混和により調製され得る。
【0104】
一実施形態では、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩は、経口投与用に配合される。さらなる実施形態では、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるそれらの塩は、非経口投与用に配合される。
【0105】
一態様では、本発明は、安全で有効な量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び希釈剤又はフィラーを含む固体経口剤形、例えば錠剤又はカプセル剤を対象とする。好適な希釈剤及びフィラーは、ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン及びアルファ化デンプン)、セルロース及びその誘導体(例えば微結晶セルロース)、硫酸カルシウム、及びリン酸水素カルシウムを含む。経口固体剤形は、結合剤をさらに含み得る。好適な結合剤は、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、及びアルファ化デンプン)、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グアーガム、ポビドン及びセルロース、並びにその誘導体(例えば微結晶セルロース)を含む。経口固体剤形は、崩壊剤をさらに含み得る。好適な崩壊剤は、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルメロース(croscarmelose)、アルギン酸及びナトリウムカルボキシメチルセルロースを含む。経口固体剤形は、滑沢剤をさらに含み得る。好適な滑沢剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及び滑石を含む。
【0106】
適切な場合、経口投与用投与単位の配合物は、マイクロカプセル化され得る。組成物は、例えば微粒子材料をポリマー、ワックスなどでコーティング、又はその中に包埋することにより、放出を延長する、又は持続させるためにも調製され得る。
【0107】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩は、標的化可能な薬物担体として可溶性ポリマーとも合わせられ得る。そのようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノール又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンを含み得る。さらに、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩は、薬物の制御放出の達成に有用なある分類の生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン(polepsilon caprolactone)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーと合わせられ得る。
【0108】
別の態様では、本発明は、液体経口剤形を対象とする。経口液体、例えば液剤、シロップ剤及びエリキシル剤は、所定の量が、予め決定された量の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を含有するように、投与単位形態で調製され得る。シロップ剤は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、好適に香味付けした水溶液中で溶解することにより調製され得る一方、エリキシル剤は、非毒性アルコール性ビヒクルの使用を通して調製され得る。懸濁液剤は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、非毒性ビヒクル中に分散させることにより配合され得る。可溶化剤及び乳化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル、防腐剤、香味添加剤、例えばペパーミント油、又は天然甘味料若しくはサッカリン若しくは他の人工甘味料も、添加され得る。
【0109】
非経口投与に適合した医薬組成物は、製剤を意図される受容個体の血液と等張にする抗酸化剤、緩衝液、静菌薬及び溶質を含有し得る水性及び非水性無菌注射用溶液、並びに、懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性無菌懸濁液を含む。組成物は、単位用量、又は複数回用量コンテナ、例えば密封アンプル及びバイアルで提示され得、使用直前に、無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注射用溶液及び懸濁液は、無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0110】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩は、1つ以上の他の活性剤と同時投与され得る。したがって、一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の他の活性剤を含む組合せを提供する。さらなる実施形態では、他の活性剤(複数可)は、癌又は前癌症候群の処置に有用なことが公知である。
【0111】
本明細書で使用されている「同時投与」という用語は、本明細書に記載されているDMNT1活性阻害剤、並びに、化学療法及び放射線処置を含む癌の処置に有用なことが公知のさらなる活性剤又は作用剤の同時投与、又は任意の手段の個別の順次投与を意味する。本明細書で使用されているさらなる「活性成分(active ingredient)」、「活性成分(active ingredients)」、「活性剤(active agent)」又は「活性剤(active agents)」という用語は、患者に投与された場合、有利な性質であることが公知の、又はそれを実証する任意の化合物又は治療剤を含む。好ましくは、投与が同時ではない場合、化合物は、互いに近接した時間に投与される。さらに、これは、化合物が同一剤形で投与される場合でも問題にならず、例えばある化合物は、注射により投与され得、別の化合物は、経口的に投与され得る。
【0112】
典型的には、処置されることに感受性がある腫瘍に対して活性を有する任意の抗新生物剤は、本発明における癌の処置で同時投与され得る。そのような作用剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology、V.T. Devita、T.S. Lawrence及びS.A. Rosenberg(編)、第10版(2014年12月5日)、Lippincott Williams & Wilkins Publishersで見出され得る。当業者は、薬物の具体的な特性、及び関与する癌に基づいて有用になり得る作用剤の組合せを見つけることができるであろう。本発明に有用な典型的な抗新生物剤は、微小管阻害又は抗有糸分裂剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ血管形成阻害剤、免疫療法薬、プロアポトーシス剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、プロテアソーム阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、癌代謝阻害剤、及び癌遺伝子治療剤を含むが、それらに限定されない。
【0113】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩と組み合わせて使用するため、又はそれと同時投与するためのさらなる活性成分又は原料の例は、抗新生物剤である。抗新生物剤の例は、化学療法剤、免疫調節剤、免疫調節因子及び免疫刺激性アジュバントを含むが、それらに限定されない。
【0114】
微小管阻害又は抗有糸分裂剤は、細胞周期のM期すなわち有糸分裂期中に、腫瘍細胞の微小管に対して活性な、細胞周期特異的作用剤である。微小管阻害剤の例は、ジテルペノイド及びビンカアルカロイドを含むが、それらに限定されない。
【0115】
白金配位錯体は、DNAと相互反応する非細胞周期特異的抗癌剤である。白金錯体は腫瘍細胞に入り、アクア化を受け、DNAとストランド内及びストランド間の架橋を形成し、有害な生物学的効果を腫瘍にもたらす。白金配位錯体の例は、シスプラチン及びカルボプラチンを含むが、それらに限定されない。
【0116】
アルキル化剤は、非細胞周期特異的抗癌剤であり、強い求電子剤である。典型的には、アルキル化剤は、アルキル化により、DNA分子の求核性部分、例えばホスフェート、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシル及びイミダゾール基を通したDNAへの共有結合を形成する。そのようなアルキル化は、核酸の機能を妨害し、細胞死を引き起こす。アルキル化剤の例は、ナイトロジェンマスタード、例えばシクロホスファミド、メルファラン及びクロランブシル;アルキルスルホネート、例えばブスルファン;ニトロソウレア、例えばカルムスチン;並びにトリアゼン、例えばダカルバジンを含むが、それらに限定されない。
【0117】
抗生物質抗新生物剤は、DNAに結合又はインターカレートする、非細胞周期特異的作用剤である。この作用は、核酸の通常機能を妨害し、細胞死を引き起こす。抗生物質抗新生物剤の例は、アクチノマイシン、例えばダクチノマイシン;アントラサイクリン(anthrocyclins)、例えばダウノルビシン及びドキソルビシン;及びブレオマイシンを含むが、それらに限定されない。
【0118】
トポイソメラーゼI阻害剤は、カンプトテシンを含むが、それらに限定されない。カンプトテシンの細胞毒性活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連していると考えられている。
【0119】
トポイソメラーゼII阻害剤は、エピポドフィロトキシンを含むが、それらに限定されない。エピポドフィロトキシンは、マンドレイクという植物に由来する細胞周期特異的抗新生物剤である。エピポドフィロトキシンは、典型的には、トポイソメラーゼII及びDNAとの三成分錯体を形成することにより、細胞周期のS及びG2期に細胞に影響を与え、DNAストランド破壊を引き起こす。ストランド破壊が蓄積し、細胞死が続く。エピポドフィロトキシンの例は、エトポシド及びテニポシドを含むが、それらに限定されない。
【0120】
代謝拮抗新生物剤は、DNA合成を阻害することにより、又はプリン若しくはピリミジン塩基合成を阻害することにより、細胞周期のS期(DNA合成)で作用し、それによりDNA合成を限定する細胞周期特異的抗新生物剤である。結果として、S期は進行せず、細胞死が続く。代謝拮抗抗新生物剤の例は、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン及びゲムシタビンを含むが、それらに限定されない。
【0121】
ホルモン及びホルモン類似体は、ホルモン(複数可)及び成長、並びに/又は癌の成長低下の間に関係がある癌の処置に有用な化合物である。癌処置に有用なホルモン及びホルモン類似体の例は、副腎皮質ステロイド、例えばプレドニゾン及びプレドニゾロン;アミノグルテチミド及び他のアロマターゼ阻害剤、例としてアナストロゾール、レトロゾール(letrazole)、ボラゾール(vorazole)及びエキセメスタン;プロゲスチン(progestrins)、例として酢酸メゲストロール;エストロゲン、アンドロゲン及び抗アンドロゲン、例としてフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン及び5α-還元酵素、例としてフィナステリド及びデュタステリド;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、並びに選択的エストロゲン受容体調節因子(SERMS);また、黄体形成(leutinizing)ホルモン(LH)及び/又は卵胞刺激ホルモン(FSH)放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)及びその類似体、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト、例として酢酸ゴセレリン及びロイプロリドを含むが、それらに限定されない。
【0122】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を誘発する化学プロセスをブロック又は阻害する阻害剤である。本明細書で使用されている、この変化は、細胞増殖又は分化である。本発明に有用なシグナル伝達阻害剤は、受容体チロシンキナーゼの阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼの阻害剤、SH2/SH3ドメインブロッカー、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼの阻害剤、ミオ-イノシトールシグナル伝達の阻害剤、及びRas癌遺伝子の阻害剤を含むが、それらに限定されない。
【0123】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞成長の規制に関与する様々なタンパク質における、特定のチロシル残基のリン酸化反応を触媒する。そのようなタンパク質チロシンキナーゼは、受容体又は非受容体型キナーゼとして広く分類され得る。
【0124】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及びチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは、細胞成長の規制に関与し、一般的に成長因子受容体といわれる。例えば過剰発現又は変異による、これらのキナーゼの多くの不適切な又は制御不能な活性化、すなわち異常なキナーゼ成長因子受容体活性は、制御不能な細胞成長を生じることが示されている。したがって、そのようなキナーゼの異常な活性は、悪性組織成長につながっている。結果として、そのようなキナーゼの阻害剤により、癌処置方法が得られる。成長因子受容体は、例えば、上皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、免疫グロブリン様及び上皮成長因子相同ドメインを有するチロシンキナーゼ(TIE-2)、インスリン成長因子-I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子Cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB及びTrkC)、エフリン(eph)受容体、並びにRET癌原遺伝子を含む。成長受容体のいくつかの阻害剤は、開発中であり、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。成長因子受容体及び成長因子受容体機能を阻害する作用剤は、例えば、Kath J.C., Exp. Opin. Ther. Patents、10(6):803~818頁(2000年);Shawver L.K.ら、Drug Discov. Today, 2(2):50~63頁(1997年);並びにNew Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Kerr D.J.及びWorkman P.(編)中のLofts, F. J.及びGullick W.J.、「Growth factor receptors as targets.」(1994年6月27日)、CRC Pressに記載されている。成長因子受容体阻害剤の非限定的な例は、パゾパニブ及びソラフェニブを含む。
【0125】
成長因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体型チロシンキナーゼといわれる。抗癌薬の標的又は潜在的な標的である、本発明に有用な非受容体型チロシンキナーゼは、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(焦点接着キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ及びBcr-Ablを含む。そのような非受容体型キナーゼ及び非受容体型チロシンキナーゼの機能を阻害する作用剤は、Sinha S.及びCorey S. J.、J. Hematother. Stem Cell Res.、8(5):465~480頁(2004年)及びBolen, J.B.、Brugge, J.S.、Annu. Rev. Immunol.、15:371~404頁(1997年)に記載されている。
【0126】
SH2/SH3ドメインブロッカーは、PI3-K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)及びRas-GAPを含む多彩な酵素又はアダプタータンパク質におけるSH2又はSH3ドメイン結合を妨害する作用剤である。抗癌薬の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall T. E.、J. Pharmacol. Toxicol. Methods、34(3):125~32(1995年)で論じられている。
【0127】
セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤は、Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェン又は細胞外調節キナーゼ(MEKs)、及び細胞外調節キナーゼ(ERKs)のブロッカーを含むMAPキナーゼカスケードブロッカー;PKC(アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、ミュー、ラムダ、イオタ、ゼータ)のブロッカーを含むプロテインキナーゼCファミリーメンバーブロッカー;IkBキナーゼ(IKKa、IKKb);PKBファミリーキナーゼ;AKTキナーゼファミリーメンバー;TGFベータ受容体キナーゼ;並びにラパマイシン(FK506)及びラパログ、RAD001又はエベロリムス(AFINITOR(登録商標))、CCI-779又はテムシロリムス、AP23573、AZD8055、WYE-354、WYE-600、WYE-687及びPp121を含むが、それらに限定されないラパマイシン(mTOR)阻害剤の哺乳動物の標的を含むが、それらに限定されない。セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤の例は、トラメチニブ、ダブラフェニブ、並びにAkt阻害剤アフレセルチブ、及びN-{(1S)-2-アミノ-1-[(3,4-ジフルオロフェニル)メチル]エチル}-5-クロロ-4-(4-クロロ-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-2-フランカルボキサミドを含むが、それらに限定されない。
【0128】
PI3-キナーゼ、ATM、DNA-PK及びKuのブロッカーを含むホスファチジルイノシトール3-キナーゼファミリーメンバーの阻害剤も、本発明に有用である。そのようなキナーゼは、Abraham R. T.、Curr. Opin. Immunol.、8(3):412~418頁(1996年);Canman C. E.及びLim D.S.、Oncogene、17(25):3301~3308頁(1998年);Jackson S. P.、Int. J. Biochem. Cell Biol.、29(7):935~938頁(1997年);並びにZhong H.ら、Cancer Res.、60(6):1541~1545頁(2000年)で論じられている。
【0129】
ミオ-イノシトールシグナル伝達阻害剤、例えばホスホリパーゼCブロッカー及びミオ-イノシトール類似体も本発明に有用である。そのようなシグナル阻害剤は、New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy、Kerr D. J.及びWorkman P.(編)中のPowis G.及びKozikowski A.、「Inhibitors of Myo-Inositol Signaling.」、(1994年6月27日)、CRC Pressに記載されている。
【0130】
別の群のシグナル伝達経路阻害剤は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。そのような阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル-ゲラニルトランスフェラーゼ及びCAAXプロテアーゼの阻害剤、並びにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム及び他の免疫療法を含む。そのような阻害剤は、野生型変異rasを含有する細胞においてras活性化をブロックし、それにより抗増殖剤として作用することが示されている。Ras癌遺伝子阻害は、Scharovsky O. G.ら、J. Biomed. Sci.、7(4):292~298頁(2000年);Ashby M. N.、Curr. Opin. Lipidol.、9(2):99~102頁(1998年);並びにBennett C. F.及びCowsert L. M.、Biochim. Biophys. Acta.、1489(1):19~30頁(1999年)で論じられている。
【0131】
受容体キナーゼリガンド結合へのアンタゴニストは、シグナル伝達阻害剤としての役割も果たし得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤は、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体又は他のアンタゴニストの使用を含む。受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体又は他のアンタゴニストの例は、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標));トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標));ペルツズマブ(PERJETA(登録商標));ラパチニブ、エルロチニブ及びゲフィチニブを含むErbB阻害剤;並びに2C3 VEGFR2特異的抗体(Brekken R. A.ら、Cancer Res.、60(18):5117~5124頁(2000年)を参照されたい)を含むが、それらに限定されない。
【0132】
非受容体キナーゼ血管形成阻害剤も、本発明における使用を見出し得る。血管形成関連VEGFR及びTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤に関して上で論じられている(両方の受容体は、受容体チロシンキナーゼである)。erbB2及びEGFRの阻害剤は、血管形成、主にVEGF発現を阻害することが示されているので、血管形成は、一般にerbB2/EGFRシグナル伝達につながる。したがって、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明のEGFR/erbB2阻害剤と組み合わせて使用され得る。例えば、VEGFR(受容体チロシンキナーゼ)を認識しないが、リガンドに結合する抗VEGF抗体;血管形成を阻害するインテグリン(アルファvベータ3)の小分子阻害剤;エンドスタチン及びアンギオスタチン(非RTK)も、開示されている化合物と組み合わせて有用となることが証明されている(Bruns C. J.ら、Cancer Res.、60(11):2926~2935頁(2000年);Schreiber A. B.ら、Science、232(4755):1250~1253頁(1986年);Yen L.ら、Oncogene、19(31):3460~3469頁(2000年)を参照されたい)。
【0133】
免疫療法レジメンに使用される作用剤も、本発明と組み合わせて有用になり得る。erbB2又はEGFRに対する免疫応答を生成するいくつかの免疫学的方略が存在する。これらの方略は、一般的に、腫瘍ワクチン投与の領域にある。免疫学的アプローチの効能は、小分子阻害剤を使用する、erbB2/EGFRシグナル伝達経路の組み合わせた阻害を通して、大幅に向上し得る。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチの考察は、Reilly R. T.ら、Cancer Res.、60(13):3569~3576頁(2000年);及びChen Y.ら、Cancer Res., 58(9):1965~1971頁(1998年)で見出される。
【0134】
プロアポトーシスレジメンに使用される作用剤(例えば、Bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)も、本発明の組合せに使用され得る。タンパク質のBcl-2ファミリーのメンバーは、アポトーシスをブロックする。Bcl-2の上方調節は、したがって化学耐性につながった。研究は、上皮成長因子(EGF)が、Bcl-2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(すなわちMcl-1)を刺激することを示している。したがって、腫瘍におけるBcl-2の発現を下方調節するように設計された方略は、臨床的な利益を実証した。Bcl-2用のアンチセンスオリゴヌクレオチド方略を使用した、そのようなプロアポトーシスの方略は、Waters J. S.ら、J. Clin. Oncol.,18(9):1812~1823頁(2000年);及びKitada S.ら、Antisense Res. Dev.、4(2):71~79頁(1994年)で論じられている。
【0135】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるプロテインキナーゼのファミリー、及び、サイクリンといわれるタンパク質のファミリーとの相互反応は、真核細胞サイクル全体の進展を制御する。異なるサイクリン/CDK複合体の協調的な活性化及び不活化は、細胞周期全体の通常の進展に必要である。細胞周期 シグナル伝達のいくつかの阻害剤は、開発中である。例えば、CDK2、CDK4及びCDK6並びにその阻害剤を含むサイクリン依存性キナーゼの例は、例えば、Rosania G. R.及びChang Y.T.、Exp. Opin. Ther. Patents、10(2):215~230頁(2000年)に記載されている。さらに、p21WAF1/CIP1は、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)の強力で普遍的な阻害剤として記載されている(Ball K. L.、Prog. Cell Cycle Res.、3:125~134頁(1997年))。p21WAF1/CIP1の発現を誘導することが公知の化合物は、細胞増殖の抑制に結び付けられ、腫瘍抑制活性を有するとされ(Richon V. M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97(18):10014~10019頁(2000年))、細胞周期シグナル伝達阻害剤として含まれる。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、p21WAF1/CIP1の転写活性化に結び付けられ(Vigushin D. M.、及びCoombes R. C.、Anticancer Drugs、13(1):1~13頁(2002年))、本明細書における組み合わせた使用に好適な細胞周期シグナル伝達阻害剤である。そのようなHDAC阻害剤の例は、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸及びモセチノスタットを含むが、それらに限定されない。
【0136】
プロテアソーム阻害剤は、p53タンパク質のようなタンパク質を分解する細胞複合体であるプロテアソームの作用をブロックする薬物である。いくつかのプロテアソーム阻害剤が、市場に出されている、又は癌を処置するために研究されている。本明細書における組み合わせた使用に好適なプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA及びカルフィルゾミブを含むが、それらに限定されない。
【0137】
70キロダルトンの熱ショックタンパク質(Hsp70)及び90キロダルトンの熱ショックタンパク質(Hsp90)は、遍在的に発現する熱ショックタンパク質のファミリーである。Hsp70及びHsp90は、ある癌のタイプで過剰発現する。いくつかのHsp70及びHsp90阻害剤は、癌の処置で研究されている。本明細書において組み合わせて使用するためのHsp70及びHsp90阻害剤の例は、タネスピマイシン及びラディシコールを含むが、それらに限定されない。
【0138】
多くの腫瘍細胞は、正常組織の代謝とは著しく異なる代謝を示す。例えば、グルコースをピルビン酸に変換する代謝プロセスである解糖の速度は上昇し、生成されたピルビン酸は、トリカルボン酸(TCA)サイクルを経由してミトコンドリアにおいてさらに酸化されるのではなく、乳酸に還元される。この効果は、好気条件下でも見られることが多く、ワールブルク効果として公知である。
【0139】
筋細胞において発現する乳酸脱水素酵素のアイソフォームである乳酸脱水素酵素A(LDH-A)は、ピルビン酸から乳酸への還元を行うことにより、腫瘍細胞の代謝において極めて中心的な役割を果たし、次いで、細胞外に輸送され得る。酵素は、多くの腫瘍型で上方調節されることが示されている。ワールブルク効果で記載されたグルコース代謝の変化は、癌細胞の成長及び増殖に重要であり、RNA-iを使用したLDH-Aのノックダウンは、異種移植片モデルにおいて細胞増殖及び腫瘍成長の低下を引き起こすことが示されている(Tennant D. A.ら、Nat. Rev. Cancer、10(4):267~277頁(2010年);Fantin V.R.ら、Cancer Cell、9(6):425~434頁(2006年))。
【0140】
高いレベルの脂肪酸シンターゼ(FAS)は、癌前駆体病変で見出されている。FASの薬理学的阻害は、癌発生及び維持の両方に関与する重要な癌遺伝子の発現に影響を与える。Alli P.M.ら、Oncogene、24(1):39~46頁(2005年)。
【0141】
LDH-Aの阻害剤及び脂肪酸生合成の阻害剤(又はFAS阻害剤)を含む癌代謝の阻害剤は、本明細書における使用に好適な組合せである。
【0142】
癌遺伝子治療は、治療目的のために癌を改変するウイルス又は非ウイルス遺伝子送達ベクターを使用した、組換えDNA/RNAの選択的移入に関与する。癌遺伝子治療の例は、自殺及び腫瘍溶解性遺伝子治療、並びに養子T-細胞治療法を含むが、それらに限定されない。
【0143】
本明細書で使用されている「免疫調節物質」は、免疫系に影響を与えるモノクローナル抗体を含む任意の物質を指す。本発明の式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩は、免疫-調節因子と考えられる。免疫調節物質は、癌を処置するための抗新生物剤として使用され得る。例えば、免疫-調節因子は、CTLA-4に対する抗体又は他のアンタゴニスト、例えばイピリムマブ(YERVOY(登録商標))及びトレメリムマブ;PD-1に対するもの、例えばドスタルリマブ、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))及びセミプリマブ(LIBTAYO(登録商標));並びにTIM-3に対するもの、例えばコボリマブを含むが、それらに限定されない。他の免疫調節物質は、PD-L1、OX-40、LAG3、TIM-3、41BB及びGITRに対する抗体又は他のアンタゴニストを含むが、それらに限定されない。
【0144】
本明細書で使用されている「PD-1アンタゴニスト」は、癌細胞で発現するPD-L1の免疫細胞(T細胞、B細胞又はNKT細胞)で発現するPD-1への結合をブロックし、好ましくは癌細胞で発現するPD-L2の免疫細胞で発現するPD-1への結合もブロックする任意の化学化合物又は生物学的分子を意味する。PD-1及びそのリガンドの代替名又は同義語は、PD-1ではPDCD1、PD1、CD279及びSLEB2;PD-L1ではPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274及びB7-H;並びにPD-L2ではPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc及びCD273を含む。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI遺伝子座No.:NP_005009で見出され得る。ヒトPD-L1及びPD-L2アミノ酸配列は、NCBI遺伝子座No.:NP_054862及びNP_079515でそれぞれ見出され得る。
【0145】
本発明の態様のいずれかに有用なPD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、好ましくはヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)又はその抗原結合フラグメントを含む。mAbは、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得、ヒト定常領域を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域からなる群から選択され、好ましい実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1又はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、Fab、Fab'-SH、F(ab')2、scFv及びFv断片からなる群から選択される。
【0146】
ヒトPD-1に結合し、様々な本発明の態様及び実施形態に有用なmAbの例は、米国特許第8,552,154号;米国特許第8,354,509号;米国特許第8,168,757号;米国特許第8,008,449号;米国特許第7,521,051号;米国特許第7,488,802号;WO2004072286;WO2004056875;及びWO2004004771に記載されている。
【0147】
本発明の態様及び実施形態のいずれかに有用な他のPD-1アンタゴニストは、PD-1に特異的に結合し、好ましくはヒトPD-1に特異的に結合するイムノアドヘシン、例えば、定常領域、例えば免疫グロブリン分子のFc領域に融合するPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含有する融合タンパク質を含む。PD-1に特異的に結合するイムノアドヘシン分子の例は、WO2010027827及びWO2011066342に記載されている。本発明の処置方法、医薬及び使用において、PD-1アンタゴニストとして有用な特定の融合タンパク質は、AMP-224(B7-DCIgとしても公知)を含み、これは、PD-L2-FC融合タンパク質であり、ヒトPD-1に結合する。
【0148】
ニボルマブは、OPDIVO(登録商標)として市販のヒト化モノクローナル抗PD-1抗体である。ニボルマブは、いくつかの切除不能又は転移性黒色腫の処置に適応される。ニボルマブは、Igスーパーファミリー膜貫通タンパク質であるPD-1に結合し、そのリガンドPD-L1及びPD-L2による活性化をブロックし、T-細胞の活性化、及び腫瘍細胞又は病原体に対する細胞媒介免疫応答を引き起こす。活性化PD-1は、P13k/Akt経路活性化の抑制を通してT-細胞活性化及びエフェクター機能を負に調節する。ニボルマブの他の名称は、BMS-936558、MDX-1106及びONO-4538を含む。ニボルマブのアミノ酸配列、並びに使用及び作製する方法は、米国特許第US8, 008, 449号で開示されている。
【0149】
ペンブロリズマブは、KEYTRUDA(登録商標)として市販のヒト化モノクローナル抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブは、いくつかの切除不能又は転移性黒色腫の処置に適応される。ペンブロリズマブのアミノ酸配列、並びに使用する方法は、米国特許第8,168,757号で開示されている。
【0150】
抗PD-L1抗体及びそれを作製する方法は、当業界で公知である。PD-L1に対するそのような抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル、及び/又は組換え、及び/又はヒト化であり得る。PD-L1抗体は、癌を処置するための免疫調節剤として開発中である。
【0151】
模範的なPD-L1抗体は、米国特許第9,212,224号;米国特許第8,779,108号;米国特許第8,552,154号;米国特許第8,383,796号;米国特許第8,217,149号;米国特許公報第20110280877号;WO2013079174;及びWO2013019906で開示されている。PD-L1に対するさらなる模範的な抗体(CD274又はB7-H1ともいわれる)及び使用するための方法は、米国特許第8,168,179号;米国特許第7,943,743号;米国特許第7,595,048号;WO2014055897;WO2013019906;及びWO2010077634で開示されている。本発明の処置方法、医薬及び使用におけるPD-1アンタゴニストとして有用な、特定の抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体は、MPDL3280A、BMS-936559、MEDI4736、MSB0010718Cを含む。
【0152】
アテゾリズマブは、TECENTRIQ(登録商標)として市販の完全ヒト化モノクローナル抗PD-L1抗体である。アテゾリズマブは、いくつかの局所進行又は転移性尿路上皮癌の処置に適応される。アテゾリズマブは、PD-L1とPD-1及びCD80の相互反応をブロックする。他の模範的なPD-L1抗体は、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))及びデュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))を含む。
【0153】
PD-1を、又は別の標的と共にPD-L1を標的とする二官能性融合タンパク質も、本発明に有用になり得る。PD-L1及びTGF-β経路を同時にブロックするように設計された二官能性融合タンパク質ビントラフスプアルファは、米国特許第9,676,863号で開示されている。
【0154】
OX40としても公知のCD134は、CD28とは異なり、休止中のナイーブT細胞で構成的に発現しない受容体のTNFR-スーパーファミリーのメンバーである。OX40は、活性化後の24から72時間後に発現する二次共刺激分子であり、そのリガンドOX40Lも、休止中の抗原提示細胞で発現しないが、それらの活性化に続く。OX40の発現は、T細胞の完全な活性化に依存し、CD28がないと、OX40の発現は遅延し、4分の1のレベルになる。OX-40抗体であるOX-40融合タンパク質、及びそれらを使用する方法は、米国特許:第US7, 504, 101号、第US7, 758, 852号、第US7, 858, 765号、第US7, 550, 140号、第US7, 960, 515号、WO2012027328、WO2013028231で開示されている。
【0155】
開示されている化合物と組み合わせて使用するための、又はそれと同時投与するための、さらなる活性成分又は原料(抗新生物剤)の追加の例は、CD20に対する抗体若しくは他のアンタゴニス、レチノイド又は他のキナーゼ阻害剤である。そのような抗体又はアンタゴニストの例は、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)及びMABTHERA(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))及びベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むが、それらに限定されない。
【0156】
開示されている化合物と組み合わせて使用するための、又はそれと同時投与するための、さらなる活性成分又は原料(抗新生物剤)の追加の例は、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)を含むが、それらに限定されないToll様受容体4(TLR4)アンタゴニストである。
【0157】
AGPは、免疫化された動物において、サイトカイン産生を刺激し、マクロファージを活性化し、先天性免疫応答を促進し、抗体産生を増大させるためのワクチンアジュバント及び免疫刺激剤として有用なことが公知である。AGPは、TLR4の合成リガンドである。AGP、及びTLR4を経由したその免疫調節効果は、特許公報、例えばWO2006016997、WO2001090129、及び/又は米国特許第6,113,918号で開示されており、文献で報告されている。追加のAGP誘導体は、米国特許第7,129,219号、米国特許第6,911,434号、及び米国特許第6,525,028号で開示されている。あるAGPは、TLR4のアゴニストとして作用する一方、他のものはTLR4アンタゴニストとして認識される。
【0158】
開示されている化合物と組み合わせて使用するための、又はそれと同時投与するための、さらなる活性成分又は原料(抗新生物剤)の追加の非限定的な例は、ICOSに対する抗体である。
【0159】
アゴニスト活性を有するヒトICOSに対するマウス抗体のCDRは、PCT/EP2012/055735(WO2012131004)で示されている。ICOSに対する抗体は、WO2008137915、WO2010056804、EP1374902、EP1374901、及びEP1125585でも開示されている。
【0160】
開示されている化合物と組み合わせて使用するための、又はそれと同時投与するための、さらなる活性成分又は原料(抗新生物剤)の追加の例は、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。そのような阻害剤の非限定的な例は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ及びタラゾパリブを含む。
【0161】
B細胞成熟抗原(BCMA)の通常の機能は、2つの公知のリガンド(TNFファミリーからのB細胞活性化因子(BAFF/BLyS)、及び増殖誘導リガンド(APRIL)からのシグナルの形質導入により細胞生存を促進することである。BCMA発現は、分化の後段階においてB細胞で制約され、扁桃における胚中心B細胞、血液形質芽球及び長寿命形質細胞上で発現する。BCMAは、多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)を含む様々なB細胞悪性腫瘍において、様々な頻度で発現する。BCMAの制約された通常の組織発現プロファイルは、上方調節、並びにMM及び他の癌における生存機能と共に、直接的な殺細胞活性を用いた治療抗体のために興味を引く標的となる。BCMAの阻害剤及び他の標的化剤、例えば抗体薬剤複合体は、本発明に対して使用され得る。抗BCMA抗体薬剤複合体であるベランタマブマホドチンは、米国特許第9,273,141号で開示されている。
【0162】
開示されている化合物と組み合わせて使用するための、又はそれと同時投与するための、さらなる活性成分又は原料(抗新生物剤)の追加の非限定的な例は、STING調節化合物、CD39阻害剤、並びにA2a及びA2aアデノシンアンタゴニストである。
【0163】
式(I)の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩と組み合わせて使用され得る、選択された抗新生物剤は、アバレリクス、アベマシクリブ、アビラテロン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルドキソルビシン、アレクチニブ、アレムツズマブ、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、AZD-9291、ベリノスタット、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ブリナツモマブ、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カペシタビン、セリチニブ、クロファラビン、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダラツムマブ、ダサチニブ、デガレリクス、デノスマブ、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、エロツズマブ、エンチノスタット、エンザルタミド、エピルビシン、エリブリン、フィルグラスチム、フルマチニブ、フルベストラント、フルキンチニブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イリノテカン、イクサベピロン、イキサゾミブ、レナリドミド、レンバチニブ、ロイコボリン、メクロレタミン、ネシツムマブ、ネララビン、ネツピタント、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オラパリブ、オマセタキシン、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パルボシクリブ、パロノセトロン、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペメトレキセド、プレリキサホル、ポマリドミド、ポナチニブ、プララトレキサート、キザルチニブ、ラジウム-223、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、ロラピタント、ルカパリブ、シプリューセル-T、ソニデギブ、スニチニブ、タリモジンラヘルパレプベク、チピラシル、トポテカン、トラベクテジン、トリフルリジン、トリプトレリン、ウリジン、バンデタニブ、ベリパリブ(velaparib)、ベムラフェニブ、ベネトクラックス、ビンクリスチン、ビスモデギブ、及びゾレドロン酸を含むが、それらに限定されない。好ましい抗新生物剤は、ベネトクラックスを含む。
【0164】
好ましい作用剤は、BCL2標的化剤、例えばベネトクラックス、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばFLT3変異を標的化するもの(ギルテリチニブ及びミドスタウリン)、ソニックヘッジホッグ阻害剤グラスデギブ、IDH1又はIHD2変異標的化剤、例えばイボシデニブ又はエナシデニブ、NEDD8標的化剤、例えばペボネジスタット、HDAC阻害剤、例えばボリノスタット又はパノビノスタット、PRC2錯体を標的化する作用剤、例えばタゼメトスタット(EZH2i)又はMAK683(EEDi)、白金系抗新生物剤、例えばシスプラチン、IO標的化剤、例えば抗CD47(マグロリマブ)、TIM-3(サバトリマブ)、CTLA-4(イピリムマブ)、及び抗PD-1/PD-L1(ペムブロリズマブ(pembrolizmab))、並びにP53標的化薬物を含む。
【0165】
一実施形態では、請求されている発明の癌処置方法は、式(I)の化合物及び/若しくはそのプロドラッグ、並びに/又は薬学的に許容できるその塩と、少なくとも1つの抗新生物剤、例えば微小管阻害剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管形成阻害剤、免疫療法薬、プロアポトーシス剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤;プロテアソーム阻害剤;並びに癌代謝の阻害剤からなる群から選択されるものとの同時投与を含む。
【0166】
式(I)の化合物又はそのプロドリッグ(prodrigs)、及び薬学的に許容できるそれらの塩は、異常ベータヘモグロビン症、例えば鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血、及びベータサラセミアの処置に有用なことが公知の少なくとも1つの他の活性剤と同時投与され得る。
【0167】
本発明の組合せと組み合わせて使用する、又はそれと同時投与するためのさらなる活性成分又は原料の例は、ヒドロキシ尿素である。
【0168】
本発明の化合物は、従来の有機合成方法を使用して調製する。好適な合成経路は、以下に、以下の一般的な反応スキームで描写されている。出発材料のすべては、市販されている、又は当業者により市販の出発材料から容易に調製される。
【0169】
本明細書で使用されている記号、並びにこれらのプロセス、スキーム及び実施例で使用される慣例は、現代科学文献、例えば、Journal of the American Chemical Society又はJournal of Biological Chemistryに使用されるものと一致する。標準的な1文字又は3文字の略語は、一般的にアミノ酸残基を指定するために使用され、これらは、特に注記がなければL-配置と仮定される。特に注記がなければ、すべての出発材料は、商業的供給業者から得られ、さらなる精製なしで使用される。具体的には、以下の略語が実施例で、また、明細書全体を通して使用され得る:
Ac(アセチル)、
Ac2O(無水酢酸)、
CH3CN(アセトニトリル)、
Boc(tert-ブトキシカルボニル)、
Boc2O(二炭酸ジ-tert-ブチル)、
Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、
DCE(1,2-ジクロロエタン)、
DCM(ジクロロメタン)、
ATP(アデノシン三リン酸)、
ビス-ピナコラトジボロン(4,4,4',4',5,5,5',5'-オクタメチル-2,2'-bi-1,3,2-ジオキサボロラン)、
BSA(ウシ血清アルブミン)、
C18(HPLC固定相における、ケイ素上の18-炭素アルキル基を指す)
Cy(シクロヘキシル)、
DCM(ジクロロメタン)、
DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、
DIPEA(ヒューニッヒ塩基、N-エチル-N-(1-メチルエチル)-2-プロパンアミン)、
ジオキサン(1,4-ジオキサン)、
DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)、
DME(1,2-ジメトキシエタン)、
DMEDA(N,N'-ジメチルエチレンジアミン)、
DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、
DMSO(ジメチルスルホキシド)、
DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)、
EDC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'エチルカルボジイミド)塩酸塩、
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、
EtOAc(酢酸エチル)、
EtOH(エタノール)、
Et2O(ジエチルエーテル)、
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルエタンスルホン酸)、
HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、
HOAt(1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール)、
HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、
HOAc(酢酸)、
HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)、
HMDS(ヘキサメチルジシラジド)、
ヒューニッヒ塩基(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、
IPA(イソプロピルアルコール)、
インドリン(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)、
KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)、
LAH(水素化アルミニウムリチウム)、
LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、
LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、
MeOH(メタノール)、
MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)、
mcM(マイクロモル)、
mCPBA(m-クロロ過安息香酸(m-chloroperbezoic acid))、
NaHMDS(ナトリウムヘキサメチルジシラジド)、
NCS(N-クロロスクシンイミド)、
NBS(N-ブロモスクシンイミド)、
PE(石油エーテル)、
Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、
Pd(dppf)Cl2.DCM錯体([1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II).ジクロロメタン錯体)、
PyBOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、
PyBrOP(ヘキサフルオロリン酸ブロモトリピロリジノホスホニウム)、
RPHPLC(逆相高圧液体クロマトグラフィー)、
RT(室温)、
Sat.(飽和)、
SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)、
SGC(シリカゲルクロマトグラフィー)、
SM(出発材料)、
TLC(薄層クロマトグラフィー)、
TEA(トリエチルアミン)、
TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル1-オキシル、フリーラジカル)、
TFA(トリフルオロ酢酸)、
THF(テトラヒドロフラン)、及び
Ts-Cl(塩化p-トルエンスルホニル)。
【0170】
エーテルに関するすべての言及は、ジエチルエーテルであり、ブラインは、NaClの飽和水溶液を指す。
【0171】
合成スキーム
当業者は、本明細書に記載されている置換基が、本明細書に記載されている合成方法と適合しない場合、置換基は、反応条件に安定している好適な保護基で保護され得ることを認識する。保護基は、反応シークエンスにおける好適な時点で除去して、望ましい中間体又は標的化合物を得ることができる。好適な保護基、並びにそのような好適な保護基を使用して、異なる置換基を保護及び脱保護するための方法は、当業者に周知であり、その例は、T. Greene及びP. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis(第4版)、John Wiley & Sons、NY(2006年)で見出され得る。いくつかの例では、置換基は、使用される反応条件下で反応性になるように具体的に選択され得る。これらの状況下で、反応条件は、選択された置換基を、中間体化合物として有用である、又は標的化合物において望ましい置換基である別の置換基に変換する。
【0172】
スキーム1における式16のプロドラッグは、キラル分割が行われるかどうかに応じて、単一の鏡像異性体又はラセミ化合物であり得る。ジシアノピリジン核中間体6は、2-シアノアセトアミド1から容易に調製され得る。中間体を含有するプロドラッグは、置換されたマンデル酸、例えば市販の4-ヒドロキシマンデル酸7を用いてスタートすることにより調製され得る。7からSN2求電子剤パートナー13への変換を可能とし得る、多彩な保護基、及び脱離基のシナリオが想像できる。
【0173】
【化10】
プロドラッグの機能を有さない化合物、例えば17は、スキーム2に示されているように中間体11から調製され得る。この段階で、17は必要に応じて分割して、単一の鏡像異性体18を得ることができる。
【0174】
【化11】
キラル分割の代わりに、不斉経路を利用して、スキーム3で詳述されているキラルアミド22又はその対応するプロドラッグ16を得ることができる。単独の立体中心は、文献に記載されている多彩な方法を通したケトアミド中間体19の不斉還元により確立され得る。
【0175】
【化12】
【0176】
【化13】
【0177】
【化14】
【0178】
特定の本発明の化合物は、実施例セクションで調製される。
【0179】
[実施例]
[実施例1]
方法A
(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸
ステップ1:5-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-オン
【0180】
【化15】
16L JLR(容器A)に2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸(1000g、5.947mol)を、ジクロロメタン(DCM)(5000mL)と共に入れ、撹拌をスタートした。2,2-ジメトキシプロパン(2925mL、23.8mol)を次いで、反応混合物に添加した。反応混合物を0℃に冷却した。反応温度が0~5℃に達した場合、BF3・OEt2錯体(45.2mL、0.357mol)をピペットにより2minにわたって添加した。DCMを使用して、添加を完了した。反応混合物を次いで0℃にて4時間撹拌した。
【0181】
別の反応容器(容器B)に、5Lの飽和NaHCO3水溶液を添加し、容器の内部温度を0℃にセットした。容器Aからの反応混合物を、容器B中の飽和重炭酸ナトリウム溶液に真空供給により添加した。添加が完了したら、懸濁液を10分撹拌し、次いで20℃に温めた。有機層を20Lカーボイ中に分離した。水性層を、追加のDCM(1.2L)で抽出し、この有機層を、20Lカーボイ中の有機層と合わせた。合わせた有機層をJLRへ戻し、ブライン(3L)で洗浄した。有機層を再度分離した。翌日、DCMを最小撹拌容積に蒸留した。残りの反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮乾固させた。残ったオフホワイト固体を次いで真空下で乾燥させて、5-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-オン(720g、58.1%収率)をオフホワイト固体として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.28 - 7.24 (m, 2H), 6.83 - 6.78 (m, 2H), 5.37 (s, 1H), 1.75 (s, 3H), 1.70 - 1.67 (m, 3H).
【0182】
ステップ2:4-(2,2-ジメチル-5-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)フェニルメタンスルホネート
【0183】
【化16】
16L JLR(容器A)に、ジクロロメタン(DCM)(4390mL)に溶解した5-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-オン(720.0g、3458mmol)の溶液を入れ、反応混合物を0℃に冷却した。塩化メシル(323mL、4150mmol)を次いで、添加漏斗により約5minにわたって反応混合物に添加し、添加漏斗を100mL DCMですすぐことにより、反応器中への移動を完了させた。トリエチルアミン(723mL、5187mmol)を、添加漏斗を使用して、約43minにわたってゆっくり添加し、添加漏斗を100mL DCMですすぐことにより、反応器中への移動を完了させた。反応混合物を0℃にて2時間撹拌した。
【0184】
別の反応容器(容器B)に、4390mLの飽和NaHCO3水溶液を添加し、容器の内部温度を0℃にセットした。容器Bを減圧下に置いて、反応混合物の、容器Aから容器B中へのゆるやかな真空供給を促進した。容器Aを300mLのDCMですすぎ、この洗浄溶液も容器Bに移した。撹拌を止め、500mLのDI水を、スプレーボールにより容器Bに添加して、反応器の壁を洗い流した。かき混ぜを再スタートし、内部温度を20℃にセットした。撹拌を30min後に中断し、二相混合物を20℃にて終夜放置した。初期温度を10℃にセットし、容器を真空下に置いた。30分後、内部温度を25℃に上昇させた。その後1.5時間にわたって、容積を1.5から2Lの間に減少させ、真空を解放した。容器Bにおける有機層を排出し、反応器をDCMですすいで、移動を完了させた。残りの有機層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固させ、高真空下でさらに乾燥させて、4-(2,2-ジメチル-5-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)フェニルメタンスルホネート(689.67g、69.7%収率)をオフホワイト固体として得た。LCMS m/z = 304.2 [M+H2O]+. 1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.61 - 7.56 (m, 2H), 7.39 - 7.35 (m, 2H), 5.44 (s, 1H), 3.18 (s, 3H), 1.76 (s, 3H), 1.72 (s, 3H).
【0185】
ステップ3:4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0186】
【化17】
16L JLRに、4-(2,2-ジメチル-5-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)フェニルメタンスルホネート(689.67g、2409mmol)をメタノール(2400mL)と共に入れ、溶液を撹拌した。ジャケット温度を0℃にセットした。反応混合物にMeOH(7M)中のアンモニアの溶液(1377mL、9636mmol)を47分にわたって添加した。反応混合物を同一の温度にて7.5時間撹拌した後で、ジャケット温度を次いで10℃に温めた。メタノール中の追加の250mL(1750mmol)の7Mアンモニアを添加し、反応混合物を同一の温度にて16.5時間撹拌した。反応混合物を次いで、パンフィルターを通して濾過した。収集した固体を追加のメタノールで洗浄し、乾燥させて、4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(544.86g、92%収率)を白色固体として得た。LCMS m/z = 268.1 [M+Na]+. 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.64 - 7.54 (m, 3H), 7.40 - 7.32 (m, 3H), 6.29 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 5.03 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 3.38 (s, 3H).
【0187】
ステップ4:4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0188】
【化18】
16L JLR(容器A)に、4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(545g、2222mmol)及びジクロロメタン(DCM)(4331mL)を入れた。撹拌を始め、ジャケット温度を0℃にセットした。25分後、塩化メシル(216mL、2778mmol)を反応混合物に添加した。トリエチルアミン(465mL、3333mmol)を次いで、添加漏斗により、35分にわたってゆっくり添加した。添加が完了したら、ジャケット温度を20℃に40分にわたって上昇させた。反応混合物を同一の温度にて19時間撹拌したが、出発材料が残った。ジャケット温度を0℃にリセットした。追加の塩化メシル(30mL、385.8mmol)を、70mLのDCMと共に反応混合物に添加して、添加を完了した。追加量のトリエチルアミン(70mL、501.7mmol)を次いで添加した。添加を完了したら、ジャケット温度を22℃にセットし、反応混合物を1時間撹拌した。
【0189】
別の反応容器(容器B)に、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2166mL)を入れ、ジャケット温度を0℃にセットした。容器Aからの反応混合物を、発熱及びガス放出を制御する速度にて容器Bに真空供給した。移動が完了したら、ジャケット温度を30分にわたって20℃に上昇させ、反応混合物をこの温度にてさらに30分撹拌した。反応混合物を次いで、パンフィルターを通して濾過した。収集した固体材料を水(550mL)で洗浄し、真空下でパンフィルターにおいて終夜乾燥させた。固体を次いで真空オーブン中で45℃にて終夜さらに乾燥させて、4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(530.36g、73.8%収率)を白色固体として得た。LCMS m/z = 346.1 [M+Na]+. 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.88 (s, 1H), 7.63 - 7.58 (m, 2H), 7.45 - 7.41 (m, 2H), 5.92 (s, 1H), 3.42 (s, 3H), 3.27 (s, 3H).
【0190】
ステップ5:4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0191】
【化19】
内部温度を-5℃にセットした16L JLR(容器A)に、8Lのテトラヒドロフラン(THF)を入れ、撹拌をスタートした。反応容器に、次いで水素化ナトリウム(60重量%)(203.45g、5.087mol)を粉末添加漏斗により入れた。コンテナ及び漏斗を1L THFで反応器中にすすいで、移動を完了させた。反応混合物に粉末添加漏斗によりピロリン酸テトラベンジル(1471g、2.732mol)を添加した。コンテナ及び漏斗を0.5L THFで反応器中にすすいで、移動を完了させた。反応温度を-3℃にセットし、追加の2.5LのTHFを、反応混合物に添加した。反応混合物に4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(736g、2276mol)を7部で30分にわたって添加する一方、添加の間に反応混合物を通気させた。ジメシレートコンテナ(dimesylate container)を追加のTHF(3L)ですすぐことにより添加を完了し、反応器中の全体のTHFを15Lとした。撹拌を300rpmに増加させ、反応ジャケットを30分にわたって25℃に温めた。反応混合物を次いで同一の温度にて2時間撹拌した。
【0192】
反応を2部でクエンチした。内部温度を0℃にセットした別の反応容器(容器B)に、6Lの飽和クエン酸溶液を添加した。容器B中のこの溶液に、容器Aからの8.5Lの反応混合物を30分にわたって添加した。添加中に、容器Bのジャケット温度を-15℃に調整した。添加が完了したら、容器Bのジャケット温度を10℃に上昇させた。10℃にて1時間撹拌した後で、混合物はパンフィルター(2枚のシャークスキン濾紙を使用した)を通して濾過した。容器Bから完全に排出した後で、これに、6Lの飽和クエン酸溶液を再度入れ、温度を-15℃に調整した。クエンチ手順は、残った反応混合物を容器Aから容器Bへと35分にわたって添加することにより繰り返した。容器Bの温度を再度10℃に調整した。容器Aを500mLのTHFですすぎ、このすすぎ液を、容器Bに添加した。容器Bのジャケット温度を25℃に調整し、混合物を同一の温度にて25分保持した。反応混合物は、以前に使用された同一のパンフィルターを通して濾過した。tert-ブチルメチルエーテル(TBME)をパンフィルターに添加して、濾過を補助したが、改善は、あったとしてもわずかにしか得られなかった。50分後、パンフィルター中の材料を、真空供給により反応容器中にまた移した。TBME(8L)を反応器に添加し、混合物は、パンフィルターを通して再度濾過した。濾過が進行するにつれて、固体混合物はペーストになり、プロセスを促進するために掻き落としを必要とした。1.5時間後、容器からのすべての内容物をパンフィルターに添加し、反応容器を追加の1.5LのTBMEですすいだ。このすすぎ液を、パンフィルターに添加し、濾過を終夜放置した。終夜の真空濾過後、単離した固体をガラス製乾燥トレイに移した。トレイを25℃にて真空オーブンに終夜入れた。
【0193】
真空オーブン中で終夜乾燥させた後で、固体材料を12L 3口フラスコに移し、8Lの水中で懸濁した。混合物は、オーバーヘッドメカニカルスターラーを使用して1時間激しく混合し、次いで3層のシャークスキン濾紙を備えたステンレス鋼パンフィルターを通して濾過した。追加の2Lの水を使用して、移動を完了した。濾過ケーキを2Lの水で2回、続いて4LのTBMEで洗浄した。固体を次いで、パンフィルター中において真空下で終夜乾燥させた。固体をパンフィルターから2枚のベーキングディッシュに移し、さらに窒素ブリードを伴う、加熱していない真空オーブン中で約48時間乾燥させた。固体を合わせて、4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(1060g、80%)を白色固体として得た。LCMS m/z = 584.3 [M+H]+. 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 10.51 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 7.67 - 7.61 (m, 2H), 7.48 - 7.43 (m, 2H), 7.41 - 7.31 (m, 8H), 7.28 - 7.23 (m, 2H), 6.11 (s, 1H), 5.10 - 4.85 (m, 4H), 3.41 (s, 3H), 3.29 (s, 3H).
【0194】
ステップ6:アンモニウム3,5-ジシアノ-4-エチル-6-ヒドロキシピリジン-2-オレート
【0195】
【化20】
0℃に冷却した水(750mL)中の2-シアノアセトアミド(300g、3.571mol)及びアンモニア(水中25重量%、618mL、7.142mol)の撹拌した溶液に、プロピオンアルデヒド(128mL、1.785mol)を滴下添加した。反応混合物を室温にて3h撹拌した。沈殿した固体を濾取し、氷冷した水(2×500mL)、続いて冷メタノール(300mL)で洗浄し、乾燥させて、アンモニウム3,5-ジシアノ-4-エチル-6-ヒドロキシピリジン-2-オレート(150g、39%)をオフホワイト固体として得た。LCMS m/z = 188.0 [M-H]-. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 10.35 (s, 1H), 7.1 (br s, 4H), 2.48 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.17 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0196】
ステップ7:2,6-ジクロロ-4-エチルピリジン-3,5-ジカルボニトリル
【0197】
【化21】
0℃に冷却したPOCl3(750mL、8046mmol)中のアンモニウム3,5-ジシアノ-4-エチル-6-ヒドロキシピリジン-2-オレート(150g、697mmol)の撹拌した懸濁液に、N,N-ジメチルアニリン(150mL、1601mmol)を滴下添加した。反応混合物を120℃にて6h加熱した。反応の進展を、TLCによりモニターした(TLC系、ヘキサン中10%EtOAc、Rf:0.6、検出:UV)。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗物質を得た。粗物質を氷冷した水で希釈し、10min撹拌した。沈殿した固体を濾取し、乾燥させた。固体をジクロロメタン(2L)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(1L)、水(1.5L)及びブライン溶液(1L)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で脱水し、濾過し、減圧下で濃縮して、黄色固体を得た。固体材料をジエチルエーテル(500mL)で粉砕し、濾過し、乾燥させて、2,6-ジクロロ-4-エチルピリジン-3,5-ジカルボニトリル(130g、571mmol、82%収率)を黄色固体として得た。LCMS m/z = 224.1 [M-H]-. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 3.13 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.42 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0198】
ステップ8:2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル
【0199】
【化22】
オーバーヘッドステアリング及び温度プローブを有する3L 3口フラスコに、2,6-ジクロロ-4-エチルピリジン-3,5-ジカルボニトリル(130.0g、575mmol)及びDMF(1300mL)を入れ、撹拌して、赤みがかった溶液を形成した。反応フラスコを氷浴に入れ、溶液を、内部tempがca. 3℃に達するまで撹拌した。THF中のジメチルアミンの溶液(288mL、575mmol)を、内部tempが<5℃に留まる速度で、添加漏斗により添加した。トリエチルアミン(80mL、575mmol)を滴下添加し、内部tempを<7℃に維持した。混合物は、トリエチルアミン添加の終わり頃に暗紫色になった。チオ酢酸カリウム(164g、1438mmol)を添加し、冷却浴を除去した。混合物を、RTにて2h撹拌し、冷1N HCl溶液(1150mL、1150mmol)及び水(2600mL)の混合物中に注いだ。混合物をca. 30min撹拌し、沈殿した固体を濾取した。濾過ケーキをいくつかの部の水(合計1L)で洗浄し、ブフナー漏斗上で終夜乾燥させた。橙色固体を、オーバーヘッドステアリングを有する3L 3口フラスコに移した。酢酸エチル(1200mL)を入れ、スラリーをca. 30min撹拌した。固体を濾取した。ケーキを200mL EtOAcでスラリー化し、ブフナー漏斗上で吸引乾燥させた。スラリー化/乾燥をもう2回繰り返し、2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル(115.57g、87%収率)を明黄色固体として得た。LCMS m/z = 233.0 [M+H]+. 1HNMR: (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 14.05 - 9.86 (m, 1H), 3.29 (s, 6H), 2.68 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.21 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0200】
ステップ9:4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0201】
【化23】
16L JLRに、ジクロロメタン(8L)、4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(966g、1.655mol)、2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル(381g、1.640mol)、及びジクロロメタン(8L)を添加した。反応混合物を5℃に冷却した。トリエチルアミン(174g、1.722mol)を、添加漏斗により21分にわたって反応混合物に添加しつつ、反応温度を3.3~4.9℃の間で維持した。反応混合物を5℃にて5min保ってから、室温に温めた。30分後、室温にて、反応を完了させた。水(6L)を反応混合物に6minにわたって添加した。追加の1Lの水を次いで添加し、反応混合物を13min撹拌した。層を分離し、有機層は、インラインフィルターを使用して20Lカーボイに移した。水性層を500mLのジクロロメタンで洗浄し、層を分離した。この有機層を、20Lカーボイ中の元の有機層と合わせた。合わせた有機層は、ロータリーエバポレーターを使用して、20L丸底フラスコ中において減圧下で濃縮した。生じたフォーム状/ガム状半固体を6Lのメタノールで処理し、ロータリーエバポレーター浴中で50℃にて20分、真空にせずに回転させた。ロータリーエバポレーターでのフラスコの回転中に、黄色がかった固体が現れ始めた。フラスコをロータリーエバポレーターから除去し、混合物を室温に終夜冷却した。翌朝、混合物は、3×シャークスキン濾紙を備えたステンレス鋼パンフィルターを使用して濾過した。メタノール(1L)を使用して、移動を促進した。濾過ケーキをメタノール(2L)で2回すすいだ。固体は、パンフィルター中において、固体上の空気、次いで窒素を吸引することにより真空下で終夜乾燥させた。翌朝、固体を3Lの2:1ジエチルエーテル/酢酸エチル溶媒混合物で洗浄し、乾燥させて、4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(963g、82%)を黄褐色固体として得た。LCMS m/z = 720.3 [M+H]+. 1HNMR: (400 MH
z, DMSO-d6) δ ppm 10.62 - 10.52 (m, 1H), 7.63 - 7.57 (m, 2H), 7.43 - 7.38 (m, 2H), 7.36 - 7.27 (m, 8H), 7.26 - 7.20 (m, 2H), 5.82 (s, 1H), 5.11 - 4.84 (m, 4H), 3.40 (s, 3H), 3.27 (s, 6H), 2.77 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.22 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0202】
ステップ10:(R)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0203】
【化24】
4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(1kg)を、アセトニトリル:メタノール90:10混合物に溶解した(120g分を2Lの90:10アセトニトリル:メタノールに溶解した)。材料は、ガラス繊維紙を通して濾過し、Varian分取HPLC、Chiralpak AS 20μ 77×250mmカラムで、アイソクラティック95:5 - CH3CN:CH3OH(50mM NH4OAc)方法を使用して精製して(分解して)、望ましいE2(R)-鏡像異性体を得た。標準的な注入は、150mLの移動相中の9gの4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネートであった。この方法を使用して1000gのラセミ化合物を加工した後で、望ましいE2(R)-鏡像異性体を99.73%化学純度(0.17%E1鏡像異性体、0.1%不純物)の薄黄褐色固体として得た。材料を20L Buchiiフラスコ中で、残留溶媒と暗褐色/黒色線条を含有する固体として単離した。ジエチルエーテル(1.5L)を、この材料に添加し、固体をフラスコ壁から大きいへらで取り除いた。フラスコを旋回させて、黒色エーテル層中で懸濁したオフホワイト固体を生成した。固体は、ステンレス鋼パンフィルターを使用して濾取した。望ましい鏡像異性体をフラスコからできるだけ多く移動させるために、Buchiiフラスコを濾液で3回すすいだ。生じた濾液を濃縮乾固させた、残りの残渣をジエチルエーテル(500mL)に懸濁して、望ましい鏡像異性体の第2の産物を生成した。この固体は、第1の産物を既に含有する同一のパンフィルター中で濾取した。合わせた固体を追加のジエチルエーテル(1L)で洗浄し、次いで真空下で終夜乾燥させて、(R)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(296.4g、67.6%収率)を薄灰色固体として得た。LCMS m/z = 720.3 [M+H]+. 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 10.57 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 7.62 - 7.58 (m, 2H), 7.43 - 7.38 (m, 2H), 7.34 - 7.27 (m, 8H), 7.25 - 7.20 (m, 2H), 5.82 (s, 1H), 5.10 - 4.84 (m, 4H), 3.39 (s, 3H), 3.26 (s, 6H), 2.76 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.21 (t, J = 7.6 Hz, 3H). キラルHPLC: 99.6% (R)-鏡像異性体.
【0204】
ステップ11:(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸
【0205】
【化25】
機械的オーバーヘッドスターラーを備えた12L 3口丸底フラスコに、(R)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(200.0g、278mmol)及びジクロロメタン(2000mL)を入れて、均質な橙色溶液を得た。この溶液に、室温にてジクロロメタン(200mL)中のヨードトリメチルシラン(122g、611mmol)の溶液を、添加漏斗により50分にわたって滴下添加した。ヨードトリメチルシラン添加後に撹拌した25分後の、MeOH/MeCN中でクエンチしたアリコートのLCMS分析は、望ましい生成物と4%モノ-ベンジルリン酸エステルを指し示した。追加のヨードトリメチルシラン(1.660mL、12.19mmol)を添加し、淡橙色懸濁液を20分撹拌した。合計2時間の撹拌後、メタノール(200mL、4946mmol)を添加漏斗により28分にわたって滴下添加した。追加の200mLのジクロロメタンを添加し、撹拌を続けた。200mLのジクロロメタンでのさらなる希釈が、撹拌を補助するために必要であった。撹拌を15分続けてから、追加の200mLのジクロロメタンを添加した(合計のジクロロメタンは2800mLであった)。メタノール添加が完了した後、混合物を機械的に2時間45分撹拌した。懸濁液を分け、ポリエチレンフリットディスクに取り付けた6枚の使い捨てポリプロピレンフィルター漏斗を通して濾過した。固体は、赤色/ピンク色が濾液に見られなくなるまでジクロロメタンで繰り返しすすいだ。収集した白色固体を、漏斗中において真空下で乾燥させ、単一の乳鉢に移し、流動性の高い微細白色粉末にゆっくりすり潰した。固体を真空オーブンに加熱せずに14時間入れて、(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸(123.4g、82%)を白色固体として得た。LCMS m/z = 540.0 [M+H] +. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 11.55 (br s, 2H), 9.74 (br d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.61 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 5.79 (br s, 1H), 3.41 (s, 3H), 3.36 (s, 6H), 2.75 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.20 (t, J = 7.6 Hz, 3H). キラルHPLC: 98.9% (R)-鏡像異性体.
【0206】
実施例1の遊離酸母材のX線粉末回折(XRPD)パターンは、図7に示されており、回折角度及びd-間隔の要約は、以下の表IIIに示されている。
【0207】
【表1】
【0208】
この遊離酸母材の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、以前のDSC設備と同一であり、図8に示されている。実験は、軽く圧着したアルミニウムパンにおいて、10℃/minの加熱速度を300℃の最終温度まで使用して実施した。この化合物は、DSCで単純な単一の溶融事象を示し、開始温度166.6℃、ピーク温度173.8℃及び融解エンタルピー68J/g、続いて熱分解200℃超であった。化合物は、分解事象の前にTGAにより取るに足らない重量減少を呈した。当業者は、吸熱の開始温度、ピーク温度及びエンタルピーが、実験条件に応じて変動し得ることを把握し得る。
【0209】
この遊離酸母材の熱重量分析(TGA)サーモグラムは、以前のTGA設備と同一であり、図9に示されている。実験は、開口アルミニウムパンにおいて、N2パージ、及び10℃/minの加熱速度下で、200℃の最終温度まで実施した。化合物は、分解事象前に190℃にて1.3%の重量減少を呈した。
【0210】
方法B(鏡像選択的経路を経由)
(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸
ステップ1:(S)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0211】
【化26】
500mL丸底フラスコをヒートガンで約5分加熱しつつ、窒素でパージした。室温に冷却した後で、フラスコにNaH(ミネラル油中60%分散体、1.089g、27.2mmol)及びTHF(120mL)を入れた。混合物を0℃に冷却し、二リン酸テトラベンジル(7.99g、14.85mmol)を添加し、続いて(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(4.0g、12.37mmol)を約3分かけて少しずつ添加した。反応混合物を窒素バルーン下で0℃にて撹拌した。0℃にて2時間後、LCMS分析は、残りの出発材料を示さなかった。反応混合物を10%クエン酸水溶液(200mL)中に慎重に注ぎ、激しく撹拌した。生じた沈殿物を濾取し、水(3×50mL)、続いてEt2O(3×50mL)ですすぎ、高真空下で一定重量に乾燥させて、(S)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(6.57g、11.26mmol、91%収率)を白色固体として得た。LCMS m/z = 584.0 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.48 (br s, 1H), 7.69 - 7.57 (m, 2H), 7.48 - 7.41 (m, 2H), 7.41 - 7.22 (m, 10H), 6.11 (s, 1H), 5.13 - 4.96 (m, 3H), 4.96 - 4.88 (m, 1H), 3.40 (s, 3H), 3.28 (s, 3H). キラルSFC: 100% ee.
【0212】
ステップ2:(R)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0213】
【化27】
THF(20mL)中の2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル(480mg、2.066mmol)の溶液に、0℃にてNaH(83mg、2.066mmol)を添加した。生じた混合物を0℃にて30min撹拌し、次いでDCM(1mL)中の(S)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(1266mg、2.170mmol)の溶液に0℃にて滴下添加した。混合物を室温に温め、1h撹拌し、塩化アンモニウムとクエンチした。水性層を、DCMで抽出し、硫酸ナトリウムで脱水した。残渣をMeOHで粉砕して、(R)-4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(908mg、1.198mmol、58%収率)をオフホワイト固体として得た。LCMS m/z = 720.2 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.56 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 7.67 - 7.56 (m, 2H), 7.48 - 7.39 (m, 2H), 7.37 - 7.29 (m, 8H), 7.29 - 7.23 (m, 2H), 5.81 (s, 1H), 5.09 - 4.86 (m, 4H), 3.39 (s, 3H), 3.27 (s, 6H), 2.76 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.21 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 約25%の出発メシル酸塩で汚染. キラルHPLC: 99.3% ee.
【0214】
方法C(グリシン塩の鏡像選択的合成)
(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸グリシン塩
【0215】
ステップ1:(S)-4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0216】
【化28】
オーバーヘッドステアリングを備えた1L JLRに、H2O(400mL)次いで2,2-ビス(ヒドロキシエチル)-(イミノトリス)-(ヒドロキシメチル)-メタン(10.8g、51.4mmol)を入れ、3min撹拌し、ジャケット温度を20℃にセットした。ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸二ナトリウム塩(NADP+、二ナトリウム)(500mg)、ケトレダクターゼ酵素(1.50g)及びH2O(15mL)から作られた溶液を、次いでJLRに入れ、得られた溶液を5min撹拌した。4-(2-アミノ-2-オキソアセチル)フェニルメタンスルホネート(50.0g、206mmol)、H2O(100mL)次いでイソプロパノール(63.4mL、822mmol)を添加し、反応を30℃に加熱した。24h撹拌した後で、反応を0℃に冷却し、1N NaOH水溶液(25.0mL)を添加した。得られたスラリーを0℃にて23h保ち、次いで沈殿した固体を真空濾過により濾別した。単離した固体をH2O(各250mL洗浄) で2回、次いでtert-ブチルメチルエーテル(250mL)で洗浄した。真空下で乾燥させた後で、望ましい生成物(S)-4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネートを白色からオフホワイト固体(45.0g、184mmol、89%収率)として単離した。
LCMS m/z = 246.0 [M+H]+. 1H NMR: (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.54 - 7.49 (m, 2H), 7.42 (br s, 1H), 7.33 - 7.28 (m, 2H), 7.21 (br s, 1H), 6.13 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.89 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 3.37 (s, 3H). キラルHPLC: >99% ee.
【0217】
ステップ2:(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0218】
【化29】
オーバーヘッドステアリングを備えた100mL JLRに、(S)-4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(2.57g、10.5mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(10.3mL)を入れ、撹拌し、ジャケット温度を20℃にセットした。1-メチルイミダゾール(1.51g、18.4mmol)を次いで添加し、反応を0℃に冷却した。黄色溶液に、メタンスルホン酸無水物(2.56g、14.7mmol)を、N,N-ジメチルアセトアミド(5.12mL)中の溶液としてゆっくり添加しつつ、反応温度<5℃を保持した。反応を次いで20℃に温め、その温度にて21h撹拌した。完了したら、反応を0℃に冷却し、H2O(26mL)を添加して1hにわたってクエンチし、続いて5%硫酸ナトリウム水溶液(51.5mL)を2hにわたって添加した。得られたスラリーを20h撹拌し、次いで固体を真空濾過により収集した。単離した固体をH2O(各25mL洗浄)で2回洗浄し、次いでtert-ブチルメチルエーテル(各15mL洗浄)で2回洗浄した。真空下で乾燥させた後で、望ましい生成物(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネートを白色固体(3.14g、9.71mmol、93%収率)として単離した。
LCMS m/z = 324.0 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.86 (s, 1H), 7.63 - 7.54 (m, 3H), 7.41 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 5.91 (s, 1H), 3.41 (s, 3H), 3.26 (s, 3H).
【0219】
ステップ3:(S)-4-(2-((ジメトキシホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0220】
【化30】
オーバーヘッドステアリングを備えた、窒素でフラッシュした1L JLRにテトラヒドロフラン(200mL)、続いて(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(40g、124mmol)を入れ、次いでおよそ5min撹拌し、ジャケット温度を20℃にセットした。スラリーを次いで0℃に冷却し、クロロ-ジメチルホスフェート(20mL、186mmol)を容器に入れた。1h撹拌した後で、テトラヒドロフラン(272mL、272mmol)中のリチウムtert-ブトキシドの1M溶液をゆっくり添加しつつ、反応温度を<5℃に保持した。反応をおよそ1h撹拌し、HPLC分析により不完全と判定した。追加のクロロ-ジメチルホスフェート(6.3mL、58mmol)を反応に入れ、続いてテトラヒドロフラン(37.1mL、37.1mmol)中のリチウムtert-ブトキシドの1M溶液をゆっくり添加した。反応を30min撹拌し、次いで、10%クエン酸水溶液(w/w、40mL)をゆっくり添加することによりクエンチしつつ、反応温度<5℃を保持した。反応をおよそ15min撹拌し、次いで追加の10%クエン酸水溶液(w/w、80mL)を入れつつ、反応温度<5℃を保持した。温度を20℃に上昇させ、その温度にておよそ30min保った。反応混合物を次いで0℃に冷却し、およそ14h保った。反応を真空蒸留により、およそ300mLの合計体積に濃縮した。イソプロパノール(380mL)を反応に入れ、反応を20℃にて2h撹拌した。反応を真空蒸留により、およそ520mLの合計体積に濃縮し、次いでH2O(80mL)及びイソプロパノール(80mL)を添加し、反応を0℃に冷却した。19h撹拌した後で、生成物スラリーをフィルター乾燥機に移した。母液は、窒素圧力を使用して、濾過して除いた。反応器をH2O(400mL)ですすぎ、次いでフィルター乾燥機に移して、単離した固体を洗浄した。窒素圧力を使用して、生成物濾過ケーキを通して洗浄液を押し出した。反応器をイソプロパノール(400mL)ですすぎ、次いでフィルター乾燥機に移して、単離した固体を洗浄した。窒素圧力を使用して、生成物濾過ケーキを通して洗浄液を押し出した。生成物固体を次いでtert-ブチルメチルエーテル(200mL)で洗浄した。単離した
固体を窒素下で23時間乾燥させ、次いで真空下で20℃にて21h乾燥させて、望ましい生成物(S)-4-(2-((ジメトキシホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネートを白色固体(35.1g、81mmol、66%収率)として得た。
LCMS m/z = 454.1 [M+Na]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 10.28 (br s, 1H), 7.60 - 7.68 (m, 2H), 7.44 - 7.51 (m, 2H), 6.07 (s, 1H), 3.67 (d, J = 12 Hz, 3H), 3.57 (d, J = 12 Hz, 3H), 3.43 (s, 3H), 3.30 (s, 3H). キラルHPLC: >99% ee.
【0221】
ステップ4:(R)-4-(1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-((ジメトキシホスホリル)アミノ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0222】
【化31】
窒素でフラッシュした、オーバーヘッドステアリングを備えた1L JLRにH2O(338mL)及び炭酸ナトリウム(5.18g、48.9mmol)を入れ、次いで20℃にて撹拌した。反応容器の壁を追加のH2O(42.0mL)ですすぎ、次いで混合物を10min撹拌した。アセトン(170mL)、続いて2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル(22.7g、98.0mmol)、及び追加のアセトン(42.0mL)を入れた。混合物をおよそ1h撹拌し、次いで(S)-4-(2-((ジメトキシホスホリル)アミノ)-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(42.2g、98.0mmol)を一度に添加した。反応を2h撹拌し、次いで沈殿した固体を真空濾過により収集した。単離した固体をH2O(各126mL洗浄)で2回、次いでイソプロパノール(各210mL洗浄)で2回、次いでtert-ブチルメチルエーテル(420mL)で洗浄し、窒素流で15hブロー乾燥させた。生成物濾過ケーキを、tert-ブチルメチルエーテル(336mL)で次いで再スラリー化した。およそ10min混合した後で、固体を濾過して乾燥させ、追加のtert-ブチルメチルエーテル(126mL)ですすいだ。真空下で乾燥させた後で、望ましい生成物(R)-4-(1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-((ジメトキシホスホリル)アミノ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネートを収集して、オフホワイト固体(50.6g、88.0mmol、90%収率)を得た。
LCMS m/z = 568.1 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 10.33 - 10.43 (m, 1H), 7.55 - 7.66 (m, 2H), 7.36 - 7.48 (m, 2H), 5.81 (br s, 1H), 3.64 (d, J = 12 Hz, 3H), 3.52 (d, J = 12 Hz, 3H), 3.42 (s, 3H), 3.37 (s, 6H), 2.77 (q, J = 8 Hz, 2H), 1.21 (t, J = 8 Hz, 3H). キラルHPLC: >99% ee.
【0223】
ステップ5:(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸DMFヘミ溶媒和物
【0224】
【化32】
窒素でパージした2L JLRに、ジクロロメタン(250mL)及び(R)-4-(1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-((ジメトキシホスホリル)アミノ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(65.0g、115mmol)を入れ、次いで容器壁を追加のジクロロメタン(100mL)で洗浄して、均質な黄褐色溶液を生成した。この溶液を0℃に冷却後、ヨードトリメチルシラン(42.1mL、309mmol)を入れつつ、内部温度<5℃を保持した。生じた褐色反応混合物を0℃にて1h撹拌した。反応混合物のHPLC分析は、反応が不完全と指し示し、したがって追加のヨードトリメチルシラン(3.12mL、22.9mmol)を入れた。13分撹拌した後で、DMFクエンチ溶液のおよそ50%(91mL)を添加することにより反応をクエンチしつつ、内部温度<5℃を保持した(注記:DMFクエンチ溶液は、H2O(3.30mL、183mmol)を無水DMF(179mL)に添加することにより調製した)。反応混合物を0℃にて3分保ち、次いで結晶化物をジクロロメタン(6.50mL)中でスラリー化した(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸DMFヘミ-溶媒和物(165mg)にシードし、0℃にておよそ30分保った。希薄なスラリーは次いで、ジクロロメタン(650mL)を少しずつ添加することによりさらに希釈し、次いで0℃にておよそ30分撹拌した。DMFクエンチ溶液の残りおよそ50%(91mL)をゆっくり入れつつ、内部温度<5℃を維持した。添加が完了したら、ジャケット温度を2℃/minの速度で20℃に上昇させ、20℃にておよそ45min保った。反応スラリーをジクロロメタン(650mL)でさらに希釈し、12h撹拌した。沈殿した固体を真空濾過により収集し、次いでジクロロメタン(各325mL洗浄)で2回洗浄した。固体を20℃にて酢酸エチル(325mL)でおよそ2.5h再スラリー化し、真空濾過により単離し、次いで真空下で乾燥させて、(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸DMFヘミ-溶媒和物(58.4g、101mmol、89%収率)を白色からオフホワイト生成物として得た。1H NMRは、生成物:DMF比を1:0.8と示す。
LCMS m/z = 540.0 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 10.77 - 12.19 (br s, 1 H), 9.75 (br d, J = 9.5 Hz, 1 H), 7.96 (s, 0.8 H, DMF), 7.58 - 7.65 (m, 2 H), 7.31 - 7.46 (m, 2 H), 5.80 (br s, 1 H), 3.42 (s, 3 H), 3.37 (m, 6 H), 2.90 (s, 2.8 H, DMF), 2.74 (m, 4.8 H, DMFを含む), 1.21 (t, J = 7.5 Hz, 3 H). キラルHPLC: >99% ee.
【0225】
ステップ6:(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸グリシン塩
【0226】
【化33】
プロセスは、容器A及び容器Bとし、それぞれオーバーヘッドステアリングを備えた1対の16L JLRで実行した。微粒子化したグリシン(71.5g、0.952mol)、ジクロロメタン(9L)及びメタノール(896.5mL)を、容器Aに入れ、容器Bへの同一の充填を繰り返した。混合物を25℃にて撹拌した。次いで、酢酸エチル(1.1L)中の(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸DMFヘミ-溶媒和物(137.5g、0.238mol)のスラリーを、少なくとも15minにわたって容器Aに入れた。スラリーコンテナを酢酸エチル(550mL)ですすぎ、次いでこのすすぎ液を反応器に移した。容器Bへのスラリーの充填及び酢酸エチルのすすぎを繰り返した。容器A及び容器Bにおける結晶化物を(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸グリシン塩(5.5g)にシードした。酢酸エチル(1.1L)中の(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸DMFヘミ-溶媒和物(137.5g、0.238mol)をゆっくり添加するプロセス、酢酸エチル(550mL)のコンテナすすぎ、及びすすぎ液の容器A及び容器Bへの移動を、シード後に各反応器に3回繰り返した。スラリーを25℃にて終夜撹拌し、反応を完了させた。容器A及びB両方のスラリー混合物を、濾紙を備えたステンレス-鋼パンフィルター中に空けた。母液は、真空圧力を使用して濾過して除いた。容器A及び容器Bをそれぞれ酢酸エチル(3.3L)ですすぎ、次いでパンフィルターに移して、単離した固体を洗浄し、濾過した。酢酸エチルを用いた容器A及び容器Bへのすすぎの2回目を繰り返した。真空圧力を使用して、生成物濾過ケーキを通して洗浄液を押し出した。単離した固体は、LOD分析により、(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸グリシン塩(1101g、1.791mol、92.5%収率)が白色固体として<1%得られるまで、真空下で50℃にて乾燥させた。1H NMRは、生成物:グリシン比を1:1と示す。
LCMS m/z = 540.2 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 9.41 (br d, J = 7.50 Hz, 1 H), 7.66 (br d, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.36 (br d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.80 (s, 1 H), 3.48 (s, 2 H), 3.41 (s, 3 H), 3.34 (s, 7 H), 2.74 (q, J = 7.5 Hz, 3 H), 1.19 (t, J = 7.5 Hz, 3 H). キラルHPLC: >99% ee.
【0227】
実施例1の結晶性化合物、グリシン化合物対(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸(1:1)。
【0228】
この材料のX線粉末回折(XRPD)パターンは、図1に示されており、回折角度及びd-間隔の要約は、以下の表Iに示されている。XRPD分析は、SiゼロバックグランドウエハでのPANanalytical X'Pert Pro Diffractometerで、X'celerator(商標)RTMS(リアルタイムマルチストリップ)検出器を使用して実施した。取得条件は、Cu Kα放射線、波長(λ):1.5405980Å、発生器電圧:45kV、発生器電流:40mA、ステップサイズ:0.0167°2θ。入射ビーム側の構成:10mmのプログラム可能な発散スリット、0.02radのSollerスリット、散乱防止スリット(0.5°)、及び10mmのビームマスク。回折ビーム側の構成:10mmプログラム可能な散乱防止スリットアセンブリ(X'celerator module)及び0.02radのSollerスリットを含んでいた。
【0229】
【表2】
【0230】
この材料の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、オートサンプラー及び冷蔵冷却システムを備えたTA Instruments Discovery Differential Scanning Calorimeterにて、40mL/min N2パージ下で記録し、図2に示されている。実験は、軽く圧着したアルミニウムパンにおいて、10℃/minの加熱速度を200℃の最終温度まで使用して実施した。この化合物は、DSCにおいて、開始温度183.6℃、ピーク温度188.8℃及び融解エンタルピー64J/gの簡潔な単一溶融事象を示す。融解エンタルピーの判定は、溶融後即時の熱分解のため信頼性が高くない。化合物は、分解事象の前にTGAにより取るに足らない重量減少を呈した。当業者は、吸熱の開始温度、ピーク温度及びエンタルピーは、実験条件に応じて変動し得ることを認識する。
【0231】
この材料の熱重量分析(TGA)サーモグラムは、TA Instruments Discovery Thermogravimetric Analyzerで記録し、図3に示されている。実験は、開口アルミニウムパンにおいて、N2パージ下で、また10℃/minの加熱速度を200℃の最終温度まで実施した。化合物は、分解事象前に160℃にて0.3%重量減少を呈した。
【0232】
XRPD、DSC及びTGAに関係する上のパラグラフにおける全般的ポイントのそれぞれは、本出願で行われるXRPD、DSC及びTGA分析のそれぞれに適用可能である。さらに、このケースで報告されているXRPDデータのすべてにおいて、データは、プラスマイナス0.2の精度を有する。
【0233】
ステップ7:(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸グリシン塩一水和物
【0234】
【化34】
オーバーヘッドステアリングを取り付けた50mL JLRに、(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸DMFヘミ-溶媒和物(1.5g、2.54mmol)及び酢酸エチル(37.5mL)を入れた。撹拌しつつ、反応器のジャケットを1℃/minにて50℃に加熱し、50℃にて95分維持した。水中の2Mグリシンの溶液(2.67mmolグリシン)を、装着した10mL投与ユニット中に装填した。水(1.33mL)中の2Mグリシンを反応混合物に90分にわたって入れた。充填後、混合物を60分保ち、次いでこれを0.25℃/minにて5℃に冷却した。反応混合物を5℃にて60分保った。反応混合物を次いで終夜プログラム化して、1℃/minにて50℃に加熱し、50℃にて保ち、0.25℃/minにて5℃に冷却し、5℃にて60分保つという温度サイクルを2回完了した。反応混合物を5℃にて4.5日間保ち、次いで使い捨てフィルター漏斗を通して濾過した。反応固体のウェットケーキを酢酸エチル(2×9mL)で2回すすぎ、濾過した。固体を25℃にて真空オーブンに終夜置き、乾燥させて、(R)-(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸水和物グリシン塩(1.55g、2.45mmol)を白色固体として生成した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 9.34 (s, 1 H), 7.65 (br d, J = 7.5 Hz, 2 H), 7.36 (br d, J = 7.5 Hz, 2 H), 5.79 (br s, 1 H), 3.40 (s, 6 H), 3.35 (br s, 9 H), 2.74 (q, J = 7.0 Hz, 2 H), 1.19 (t, J = 7.0 Hz, 3 H). キラルHPLC: >99% ee.
【0235】
実施例1の一水和グリシン酸塩のX線粉末回折(XRPD)パターンは、図4に示されており、回折角度及びd-間隔の要約は、以下の表IIに示されている。
【0236】
【表3】
【0237】
以前のDSC設備と同一の、この水和したグリシン酸塩材料の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、図5に示されている。実験は、軽く圧着したアルミニウムパンにおいて、10℃/minの加熱速度を250℃の最終温度まで使用して実施した。この化合物は、40~140℃の広範な吸熱脱水事象、続いて開始温度175.5℃、ピーク温度179.3℃及び融解エンタルピー52J/gの急激な融解吸熱を示す。融解エンタルピーの判定は、溶融後即時の熱分解のため信頼性が高くない。当業者は、吸熱の開始温度、ピーク温度及びエンタルピーは、実験条件に応じて変動し得ることを認識する。
【0238】
以前のTGA設備と同一の、この水和したグリシン酸塩材料の熱重量分析(TGA)サーモグラムは、図6に示されている。実験は、開口アルミニウムパンにおいて、N2パージ下で、また10℃/minの加熱速度で250℃の最終温度まで実施した。化合物は、40から140℃の3.0%の重量減少を呈し、分解事象前に一水和物形態を示した。
【0239】
[実施例2]
(R)-4-(2-アミノ-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
ステップ1:4-(2-アミノ-2-オキソアセチル)フェニルメタンスルホネート
【0240】
【化35】
アセトニトリル(3000mL)中の4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(50g、204mmol)の撹拌した懸濁液に、窒素下で室温にて二酸化マンガン(248g、2854mmol)を1回の充填で1分にわたって添加した。反応混合物を70℃にて16時間加熱し、次いで80℃にて48時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、celiteを通して濾過し、celiteベッドをアセトニトリル(2000mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して、44gの望ましい粗生成物をオフホワイト固体として得た。UPLC MSによる材料の分析は、生成物質量に対応する46.67%の曲線下面積、及び出発材料質量に対応する48.26%の曲線下面積を指し示した。粗生成物/出発材料混合物に、以下に記載されているPCCを使用した酸化反応を施した。
【0241】
テトラヒドロフラン(THF)(2.4L)中の4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート及び4-(2-アミノ-2-オキソアセチル)フェニルメタンスルホネート(42.0g、86mmol)の混合物を含有する撹拌した溶液に、celiteと混合することにより、窒素下で室温にてPCC(18.53g、86mmol)を1回の充填で添加した。反応混合物を室温にて2時間撹拌した。反応混合物を、celiteを通して濾過し、celiteベッドを(2000mL)のTHFで洗浄した。濾液を真空で濃縮して、粗生成物を暗褐色固体として得た。粗生成物を、100mLのメタノール及び150mLのDCMの混合物に溶解し、400gのシリカ(60~120メッシュ)上で吸収した。生じた材料は、4kgのシリカ(230~400メッシュ)を通して濾過し、シリカベッドを(3000mL)の酢酸エチルで洗浄した。濾液を真空で濃縮して、4-(2-アミノ-2-オキソアセチル)フェニルメタンスルホネート(26g、52%)をオフホワイト固体として得た。LCMS m/z = 244.0 [M+H]+ . 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.37 (br s, 1H), 8.13-8.09 (m, 2H), 8.06 (br s, 1H), 7.58-7.54 (m, 2H), 3.49 (s, 3H).
【0242】
ステップ2:(S)-4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0243】
【化36】
大型の撹拌バーを備えた500mL丸底フラスコに、4-(2-アミノ-2-オキソアセチル)フェニルメタンスルホネート(5.0g、20.56mmol)及びイソプロパノール(10mL)を入れた。生じた混合物に、pH7.0の0.1M KPi緩衝液中のベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸二ナトリウム塩(NADP+、二ナトリウム)(100mg、20.56mmol)の1.25mg/mL溶液80mL、続いてSynBioケトレダクターゼ酵素Seq ID S00000617(300mg、20.56mmol)を添加した。生じたスラリーを室温にて激しく撹拌した。合計46時間後、水性層を固体KClで飽和し、混合物をEtOAc(200mL)で希釈した。形成されたエマルション、したがって、混合物は、Celite(登録商標)パッドを通して濾過し、大量のEtOAc(3×75mL)で完全にすすぎ、透明な別個の層を得た。有機層をブラインで洗浄し、合わせた水性層をEtOAc(2×75mL)で逆抽出した。合わせた有機物をNa2SO4で脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、高真空下で一定重量に乾燥させて、(S)-4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(4.40g、87%収率)を白色固体として得た。LCMS m/z = 246.0 [M+H]+. 1HNMR: (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.54 - 7.49 (m, 2H), 7.42 (br s, 1H), 7.33 - 7.28 (m, 2H), 7.21 (br s, 1H), 6.13 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.89 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 3.37 (s, 3H). キラルHPLC: >99% ee.
【0244】
ステップ3:(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0245】
【化37】
ジクロロメタン(DCM)(40mL)中の(S)-4-(2-アミノ-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(4.3g、17.53mmol)の冷(0℃)懸濁液に、Ms-Cl(1.639mL、21.04mmol)を約1分かけて、続いてTEA(3.67mL、26.3mmol)を約3分かけて添加した。2時間後、LCMSは、約15%出発材料(3時間後に追加の進展なし)を示し、したがって、反応混合物を0℃に再度冷却し、追加分のMs-Cl(0.410mL、5.26mmol)及びTEA(1.222mL、8.77mmol)を添加した。氷浴を除去し、反応を室温に温めた。追加の30分後、反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(50mL)でクエンチし、激しく撹拌した。生じた懸濁液/エマルションを濾過し、固体を水(3×30mL)及びジエチルエーテル(3×30mL)で順次すすぎ、高真空下で一定重量に乾燥させて、(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(4.44g、78%収率)をわずかにオフホワイトの固体として得た。LCMS m/z = 324.0 [M+H]+. 1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.86 (s, 1H), 7.63 - 7.54 (m, 3H), 7.41 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 5.91 (s, 1H), 3.41 (s, 3H), 3.26 (s, 3H).
【0246】
ステップ4:(R)-4-(2-アミノ-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0247】
【化38】
酢酸エチル(50mL)中の2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル(1.437g、6.19mmol)の懸濁液に、iPr2EtN(1.350mL、7.73mmol)を添加した。橙色懸濁液を室温にて撹拌した。30分後、酢酸エチル(30mL)中の(S)-4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(2.0g、6.19mmol)の懸濁液を添加し、生じた橙色懸濁液を室温にて撹拌した。4時間後、フラスコの内側をへらでかき落とし、これにより生成物の沈殿を開始した。生じた懸濁液を追加で30分撹拌し、次いで0℃に冷却した。沈殿物はフィルター漏斗を使用して濾取し、冷(0℃)EtOAc(2×20mL)、水(2×10mL)、冷(0℃)EtOAc(2×20mL)、続いてジエチルエーテル(2×10mL)で順次すすいだ。固体を高真空下で48時間乾燥させて、(R)-4-(2-アミノ-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(1.37g、48.2%収率)をオフホワイト固体として得た。LCMS m/z = 460.2 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.96 (s, 1H), 7.62 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.42 - 7.31 (m, 3H), 5.66 (s, 1H), 3.39 (s, 3H), 3.33 (s, 6H), 2.75 (q, J = 7.8 Hz, 2H), 1.20 (t, J = 7.8 Hz, 3H).
【0248】
[実施例3]
(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸
【0249】
【化39】
アセトニトリル(1L)中の4-(2-((ビス(ベンジルオキシ)ホスホリル)アミノ)-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(77.34g、107mmol)の溶液に、0℃にてヨードトリメチルシラン(34mL、247mmol)を添加し、混合物を室温に温めた。反応混合物を室温にて30min撹拌した。反応を1.2Lの10%メタ重亜硫酸ナトリウムでクエンチした。形成された沈殿物及び濃厚な混合物を撹拌した。混合物を濾過し、収集した固体を1Lの水で洗浄した。フィルター漏斗において真空下で終夜乾燥させた。生じた固体を2Lのエーテルに懸濁し、30min撹拌した。混合物を濾過し、収集した固体を乾燥させて、(2-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-(4-((メチルスルホニル)オキシ)フェニル)アセチル)ホスホルアミド酸(32g、59.3mmol、55.2%収率)をオフホワイト固体として得た。LCMS m/z = 540.0 [M+H] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 9.48 (s, 1H), 7.66 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 5.81 (s, 1H), 3.40 (s, 3H), 3.34 (s, 6H), 2.74 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.20 (t, J = 7.6 Hz, 3H) (2つのホスフェートのプロトンは認められず).
【0250】
[実施例4]
4-(2-アミノ-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート
【0251】
【化40】
酢酸エチル(50mL)中の2-(ジメチルアミノ)-4-エチル-6-メルカプトピリジン-3,5-ジカルボニトリル(2.0g、8.61mmol)の黄色懸濁液に、DIEA(1.880mL、10.76mmol)及び4-(2-アミノ-1-((メチルスルホニル)オキシ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(2.78g、8.61mmol)に順次、一度に添加した。混合物を室温にて24時間撹拌した。固体を濾取し、酢酸エチル、水、及びさらなる酢酸エチルですすいだ。固体を乾燥させて、3.50gの淡黄色固体を得た。固体材料を30mLの水に懸濁し、1時間撹拌した。固体を濾取し、水ですすぎ、乾燥させて、4-(2-アミノ-1-((3,5-ジシアノ-6-(ジメチルアミノ)-4-エチルピリジン-2-イル)チオ)-2-オキソエチル)フェニルメタンスルホネート(3.09g、76%)を淡黄色固体として得た。LCMS m/z = 460.0 [M+H] +. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.97 (s, 1H), 7.65 - 7.59 (m, 2H), 7.41 - 7.34 (m, 3H), 5.65 (s, 1H), 3.40 (s, 3H), 3.33 (s, 6H), 2.75 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.20 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0252】
生物学的データ
DNMT1シンチレーション近接アッセイ(SPA) - アッセイA(全長ヒトDNMT1)
このアッセイは、化合物の効力を評価するシグナル増加フォーマットにおけるシンチレーション近接技術を使用した。全長ヒトDNMT1、ヘミメチル化DNA二本鎖*、及びトリチウム化SAMを利用して活性をモニターした。アッセイプレートの製作は以下のパラメーターからなり、500nLの11pt、化合物の3倍段階希釈物を96ウェルCostarプレート(#3884)中に押し込んだ。以下からなるアッセイ緩衝液ミックスをアッセイ当日に作製した:20mMトリスpH7.5、1mM DTT、1mM EDTA、及び5%グリセロール。アッセイ緩衝液中の30nM DNMT1タンパク質(全長ヒトDNMT、自家製)からなる2×酵素ミックスを次いで調製した。2×基質ミックスを最後に作製し、これは、アッセイ緩衝液中の160nM 40merヘミメチル化DNA*、0.48μM 3H-SAM及び2.92μM冷SAMからなっていた(3H-SAMは最後に添加される)。クエンチ(1mM SAH)をバルクで行い、使用するときまで-20にて冷凍した。10μLの2×基質ミックスは、マルチチャネル電子ピペットを使用して全体のプレートに添加した。プレートは、混合を確実にするために、添加の間に少なくとも10s振とうした。次に、20μLの2×クエンチミックスを、マルチチャネルピペットを使用してカラム12に添加した(プレートを振とうする)。マルチチャネル電子ピペットを使用して、10μLの2×酵素ミックスを、全体のプレート(full plate)に添加し、カラム11でスタートし、カラム10に移動した(カラム12は、クエンチ前の繰り越し分を避け続けた)。プレートをカバーして、プレートを振とう機で30分インキュベーションした。インキュベーション期間の終わりに、20μLのクエンチミックスを、カラム12を除いてすべてのウェルに添加し(プレートを振とうする)、続いてDNアーゼを含まない水で希釈した20μLの3mg/mL PerkinElmer PEI PVT SPAビーズ(Cat. #RPNQ0097)を添加し、少なくとも30分振とうした。プレートを透明なシールで封止し、500rpmで1min遠心分離した。プレートをMicroBetaで読み取った(PerkinElmer、3Hについて読み取った(1min/ウェル)。
【0253】
Microsoft Excelを使用して、Vi/Voまでデータを分析し、GraFitを使用してデータを当てはめた。応答は、各プレート内の非阻害(DMSO)及びプレクエンチ対照に標準化した。用量反応曲線は、0に制約したYminを用いる3パラメータロジスティックフィットを使用して分析し、結果をIC50値として表現した。
【0254】
最終アッセイ条件:20mMトリス(Hampton Research - HR-937-06)、pH7.5、1mM DTT(Invitrogen - P2325)、1mM EDTA(Invitrogen - AM9260G)、5%グリセロール(Teknova - G1796)、0.02%Pluronic F127(Life Technologies - P6866)、15nM DNMT1(全長ヒトDNMT1 - GSK自家製)、240nM 3H-SAM(PerkinElmer - NET155H001MC)、1460nM冷SAM(New England Biolabs - B9003S)及び80nM 40-merヘミメチル化DNAオリゴヌクレオチド(Integrated DNA Technologies - カスタム)、1mM SAH(Sigma A9384)、及び水中に再懸濁した1mg/mL PEI PVT SPA Beads(PerkinElmer RPNQ0097)。
*40mer me-DNAオリゴマー二本鎖:
5'-CCTCTTCTAACTGCCAT(Me-dC)GATCCTGATAGCAGGTGCATGC-3'
5'-GCATGCACCTGCTATCAGGATCGATGGCAGTTAGAAGAGG-3'
【0255】
DNMT1 シンチレーション近接アッセイ(SPA) - アッセイB(ヒト切断DNMT1(601-1600))
このアッセイは、化合物の効力を評価するシグナル増加フォーマットにおけるシンチレーション近接技術を使用した。ヒト切断DNMT1(601-1600)、単一のヘミメチル化CpG部位オリゴヌクレオチド、及びトリチウム化SAMを利用して活性をモニターした。アッセイプレート生成は、以下のパラメーターからなっていた:10mM化合物(11-ポイント、3倍段階希釈)を、Griener白色LV 384ウェルプレート(#784075)中にウェル当たり100nL(100%DMSO中100×)で押し込んだ。以下からなるアッセイ緩衝液ミックスをアッセイ当日に作製した:塩基緩衝液:(500mM Hepes、ph8、1M MgCl2、予め作製し、ストックとして室温にて保存した)、10% NP40-Surfact AMPS、10% Ultrapure BSA 50mg/ml及び2M DTT(DL-ジチオトレイトール(DL-Dithiolthreitol))。DNMT1タンパク質(切断ヒトDNMT1 - 601-1600、16.876μMのストック濃度の自家製)からなる2×酵素ミックスを次いで調製し、アッセイ緩衝液ミックスに添加した。2×基質ミックスを最後に作製し、これは:1mM 40-merヘミメチル化DNAオリゴヌクレオチド、12.5μM 3H-SAM(アデノシル-L-メチオニン-S-[メチル-3H]特異的活性55~85Ci/mmol)、及びS-アデノシル-L-メチオニン(これは、ヌクレアーゼを含まないH2O中で1mMに希釈してから、基質ミックスに添加した)の32mM溶液からなり、アッセイ緩衝液ミックス(3H-SAMは最後に添加される)中に添加した。5μLのアッセイ緩衝液ミックスを、Thermo Multidrop combiを使用して、カラム18のみの中に分注した。次に、Thermo Multidrop combiを使用して、5μLの2×酵素ミックスをカラム1~17、19~24に分注した。Thermo Multidrop combiを使用して、次いで5μLの2×基質ミックスを全体のプレートに分注した。プレートを積層し、上部のプレートの上にカバープレートを用いて40分インキュベーションした。クエンチミックスは、インキュベーションステップのおよそ25分マークで作製し、これは、ヌクレアーゼを含まないH2O中のS-アデノシル-L-メチオニン&PerkinElmer PEI PSイメージングビーズ(Cat. #RPNQ0098)(10mg/ml)の32mM溶液からなっていた。クエンチミックスをボルテックスしてから使用して、溶液中のビーズを得た。40分のインキュベーション後、Thermo Multidrop combiを使用して、10μLのクエンチミックスを全体のプレートに分注した。プレートを透明なシールで封止し、1000rpm/1minで遠心分離し、30分暗順応させた。プレートをViewlux(PerkinElmer、613nm発光フィルター、300sec二重露光(10min.の合計読取り時間))で読み取った。
【0256】
Abaseデータベースを使用して、データを分析した。応答を、各プレート内の非阻害(DMSO)及び低阻害対照に標準化した。用量反応曲線は、4-パラメータロジスティックフィットを使用して分析し、結果をpIC50値として表現した。
【0257】
最終アッセイ条件:50mM HEPES(Teknova - H1035)、pH8.0、2mM MgCl2(Sigma - M1028)、1mM DTT(Sigma - D5545)、0.01%NP40界面活性剤Amps(Themo Scientific - 28324)、0.01%BSA(Ambion - AM2618)、40nM DNMT1(切断ヒトDNMT1(601-1600 - GSK自家製)、100nM 3H-SAM(American Radiolabeled Chemicals Inc - ART 0288)、900nM冷SAM(New England Biolabs - B9003S)及び200nM 40-merヘミメチル化DNAオリゴヌクレオチド(Integrated DNA Technologies - 43334514)。
【0258】
絶食模擬腸液における固体化合物の溶解度
絶食模擬腸液(FaSSIF)における固体化合物の溶解度を、室温にて4時間の平衡後、pH6.5で判定した(Sou, T.;Bergstrom、C. A. S. Automated assays for thermodynamic (equilibrium) solubility determination. Drug Discovery Today: Technologies 2018年、27、11~19頁に記載されている手順を使用した)。1mlのFaSSIF緩衝液(3mMタウロコール酸ナトリウム、リン酸ナトリウム緩衝液中の0.75mMレシチン、pH6.5)を、4mlバイアル中の手作業で秤量した1mgの固体化合物に添加した。生じた懸濁液を室温にて900rpmで4時間振とうし、次いでMultiscreen HTS、96ウェルsolubility filter plateに移して、残留固体及び濾液を分離した。濾液中の化合物濃縮物の定量を、DMSO中の化合物の既知の濃度の単一点較正を使用してHPLC-UVにより行った。既知の溶解度の内部標準3組(アトバコン、ニメスリド及びワルファリン、それぞれ2、20及び140μg/ml)を、化合物と同時にテストして、プロセスの適合性を評価した。アッセイの動的範囲は、1~1000μg/mlであった。
【0259】
結果
【0260】
【表4】
【0261】
薬物動態学的研究:すべての研究は、実験動物のケア、福祉及び処置に関するGSKポリシーに従って実施され、GSKの動物実験委員会により、又は研究が行われる機関の倫理審査プロセスにより審査された。薬物動態学的研究は、非クロスオーバーデザインで、実施例2では非絶食雄Wistar Hanラット、n=3/投与経路、また、参照化合物4では、非絶食雄Sprague-Dawleyラット、n=2/投与経路を使用して実施した。化合物は、5%DMA/15%Solutol中の溶液として調製し、IV注射及びPO強制経口投与として60分投与した。血液試料を、投与前から投与後24時間を通して複数の時点で連続的に収集し、検体をLC/MS/MSにより定量した。PO投与間隔から得られた用量標準化曲線下面積(DNAUC)を、IV経路からのDNAUCと比較することにより[(PO DNAUC/IV DNAUC)*100]、パーセントバイオアベイラビリティを計算した。
【0262】
In Vivoマウス研究 - 方法:
50%Matrigel(BD Biosciences)/50%ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に懸濁したSKM-1細胞(3.8×106)を、8~11週齢雌NOD.CB17-Prkdc<scid>1NCrCrlマウスにインプラントした。腫瘍をデジタルキャリパーで測定し、腫瘍の大きさに従って、効能又はPK/PD研究で、それぞれ219又は1076mm3の平均腫瘍体積を有する処置群に層別ブロック無作為化した(P値>0.9085)。GSK4172239Aを、無菌水中に毎週配合した。マウスを、体重及び腫瘍の大きさについて週に2回測定した。投与を無作為割付当日にスタートした。動物に、強制経口投与(PO)により1日2回(BID)、実施例1を22、67又は200mg/kg投与した。研究中、2つの連続測定で≧2,500mm3の最大腫瘍負荷を超えなかった。PK/PD研究では、20回目の投与(10日)の2時間後に腫瘍、血液及び骨髄を収集した。PKでは、血液を水と50:50混合しつつ、腫瘍を、1:4希釈で無菌水中に均質化した(Omni手持ち式ホモジナイザー)。両方の試料をアセトニトリルと沈殿させ、実施例4の濃度をHPLC-MS/MS(Waters Acquity uPLC、Sciex API5000)により判定した。SKM-1腫瘍及びマウス骨髄試料は、包括的DNAメチル化(5-メチルシトシン)LC-MS/MSアッセイを使用して評価した。DNAは、Quick-DNA Miniprepキット(Zymo Research)を、製造者の指示に従って使用して単離した。各試料では、DNA Degradase Plus(Zymo Research)を製造者の指示に従って、1,250ngのDNAまで添加して、ゲノムDNAから個々のヌクレオシドを放出した。Degradaseで処理したDNA(10μl)は、100ng/ml 2'-デオキシシチジン-13C,15N2(Toronto Research Chemicals)及び10 ng/ml 5-メチル-2'-デオキシシチジン-13C,15N2(Toronto Research Chemicals)で標識した標準物質を含有する190μlのアセトニトリル/水/水酸化アンモニウム(90:10:0.1)溶液と合わせた。HPLC-MS/MS方法を最適化して、2'-デオキシシチジン及び5-メチル-2'-デオキシシチジンを定量化した。検体及び標識した標準物質を、Waters Acquity UPLCでAcquity BEHアミド、1.7μm、2.1×50mm2カラムを使用したHILIC(親水性相互作用液体クロマトグラフィー)、続いて陽イオンターボスプレーイオン化を用いたSciex API5000でのMS/MS分析により分離した。2'-デオキシシチジン及び5-メチル-2'-デオキシシチジンの濃度は、純粋2'-デオキシシチジン(Sigma-Aldrich)及び5-メチル-2'-デオキシシチジン(Santa Cruz Biotechnology)から生成された標準曲線を使用して判定した。5-メチルシトシンの濃度を合計シトシン濃度に対して標準化して、5-メチルシトシンのパーセンテージを判定した。処理した試料からの値は、ビヒクル対照に対して標準化した。
【0263】
In Vivoマウス研究 - 結果:
実施例1は、in vivo活性を呈示している。実施例1は、皮下SKM-1ヒトAML(急性骨髄性白血病)異種移植片を持つ免疫不全マウスで評価した。動物に、強制経口投与(PO)により1日2回(BID)、実施例1を22、67又は200mg/kg投与した。薬物動態学的(PK)及び薬力学的(PD)変化を検査するために、20回目の投与(10日、群当たりの動物n=5)の2時間後に腫瘍、血液及び骨髄を収集した。薬物動態学的評価により、薬物曝露(ラセミ活性部分の実施例4として測定した)が用量に比例し、血液及び腫瘍でおおよそ等価であることが明らかになった。さらに、DNMT1を阻害する機構の結果、DNAメチル化の低下は、LC-MS/MSに基づく5-メチルシトシンアッセイを使用して包括的に評価した。包括的DNAメチル化は、ビヒクルと比較して、すべての用量の実施例1で低下し、200mg/kg群で観察された腫瘍の49%、及び骨髄の47%で最大変化が認められた。後続の研究では、抗腫瘍効能を検査するために、処理の間、腫瘍体積を週に2回、≧4週間測定した(群当たりの動物n=10)。最終日にビヒクル群は動物9匹を含有しており、実施例1を22日目にビヒクルと比較した場合、22mg/kg群での35%の平均から200mg/kg群での顕著な退縮に及ぶ、腫瘍成長阻害による腫瘍体積の用量依存的な縮小を誘導した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
式(II)
【化2】
の化合物若しくはそのプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
式(IV)
【化3】
の化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
式(V)
【化4】
の化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
塩が
【化5】
グリシン塩である、請求項4に記載の化合物
【請求項6】
塩が結晶性である、請求項5に記載のグリシン塩。
【請求項7】
塩が無水である、請求項5又は6に記載のグリシン塩。
【請求項8】
Iに提示されるXRPDパターンを実質的に示すことを特徴とし、表におけるデータが、プラスマイナス0.2である、請求項7に記載の無水結晶性グリシン塩。
【表1】
【請求項9】
図1によるXRPDパターンを実質的に示すことを特徴とする、請求項7に記載の無水結晶性グリシン塩。
【請求項10】
塩が一水和物である、請求項5又は6に記載のグリシン塩。
【請求項11】
表IIに提示されるXRPDパターンを実質的に示すことを特徴とし、表におけるデータが、プラスマイナス0.2である、請求項10に記載の結晶性グリシン塩一水和物。
【表2】
【請求項12】
図4によるXRPDパターンを実質的に示すことを特徴とする、請求項10に記載の結晶性グリシン塩一水和物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
治療に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項15】
DNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項16】
DNMT1活性に関連する疾患の処置に使用するための医薬を製造するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項17】
DNMT1活性に関連する疾患を処置する方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とするヒト患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
DNMT1活性に関連する疾患が、癌、前癌症候群又はベータ異常ヘモグロビン症障害である、請求項15に記載の化合物、請求項16に記載の化合物の使用、又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
癌が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、黒色腫、腎臓癌、胃癌、非小細胞肺癌(NSCLC)又は乳癌である、請求項18に記載の化合物、化合物の使用、又は方法
【請求項20】
ベータ異常ヘモグロビン症障害が、鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血又はベータサラセミアである、請求項18に記載の化合物、化合物の使用、又は方法
【請求項21】
請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩、及び1つ以上の他の活性剤を含む、組合せ。
【請求項22】
鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血又はベータサラセミアを処置する方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とするヒト患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、黒色腫又は乳癌を処置する方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロドラッグ、又は薬学的に許容できるその塩を、それを必要とするヒト患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
鎌状赤血球症、鎌状赤血球貧血又はベータサラセミアの処置に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【請求項25】
骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸癌(CRC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、黒色腫又は乳癌の処置に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容できるその塩。
【国際調査報告】