(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ソーラー添加剤と共に使用するためのポリ(ビニルブチラール)組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240226BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553312
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022017822
(87)【国際公開番号】W WO2022187082
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド,ブルース・エドワード
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA03
4G061AA20
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD18
(57)【要約】
安全ガラス構造に有用な、特定のポリ(ビニルアセタール)組成物が提供される。本発明の組成物は、シート状に押出され得、ガラスパネルの間の中間膜として機能することができる。特に、この組成物は、1種または複数のソーラー添加剤ならびに、二価のマグネシウムイオンおよび、少なくとも2つのカルボキシレート基を含み、このカルボキシレート基の対応するカルボン酸は、それぞれ、約4.80未満のpKaを有する。接着制御剤として使用される各マグネシウム塩は、水和物であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
a.ポリ(ビニルアセタール)樹脂と、
b.ソーラー添加剤と、
c.酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウムと、
d.少なくとも1種の可塑剤と、
e.二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含むマグネシウム塩であり、カルボキシレート基の対応するカルボン酸が、それぞれ約4.80未満のpKaを有し、マグネシウム塩またはその水和物の力価が、約10から約60である、マグネシウム塩と
を含み、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価が、約10から約60であり、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価に対するマグネシウム塩またはその水和物の力価の比が、約0.5~約2.0である、
ポリマー組成物。
【請求項2】
可塑剤が、波長589nmおよび温度25℃でASTM D542によって測定された、少なくとも1.460の屈折率を有する高屈折率可塑剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ソーラー添加剤が、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズまたは金属ドープ酸化タングステンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
金属ドープ酸化タングステンが、セシウムドープ酸化タングステンまたはセシウムおよびスズドープ酸化タングステンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ルチル型二酸化チタンをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
マグネシウム塩またはその水和物の力価が、約10から約40である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
アルカリ価が、約10から約40である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
1種または複数のエポキシ化合物をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
エポキシ化合物が、ポリグリコールのジエポキシド、脂肪族環状モノエポキシドおよび脂肪族環状ジエポキシドから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
エポキシ化合物が、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチルアジペート)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)グリコールのジエポキシド、ならびにエピクロロヒドリンおよびポリプロピレングリコールのジエポキシド対応物から選択される請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
1種または複数のシラン添加剤またはシラン含有化合物をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
シラン含有化合物が、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびこれらの組合せから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
マグネシウム塩が、サリチル酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム四水和物またはギ酸マグネシウム二水和物である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ポリ(ビニルアセタール)樹脂が、約1重量%未満の水分レベルを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
結合%が、約15%未満である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマー組成物であって、
a.約1重量%未満の水分レベルを有するポリ(ビニルアセタール)樹脂と、
b.ソーラー添加剤と、
c.酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウムと、
d.少なくとも1種の可塑剤と、
e.二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含むマグネシウム塩であり、カルボキシレート基の対応するカルボン酸が、それぞれ約4.80未満のpKaを有し、マグネシウム塩またはその水和物の力価が、約10から約60である、マグネシウム塩と
を含み、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価が、約10から約60であり、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価に対するマグネシウム塩またはその水和物の力価の比が、約0.5~約2.0であり、
結合のレベルが、約25%未満である、
ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物を含む中間膜シートであって、組成物が、中間膜シートに形成されている、中間膜シート。
【請求項18】
多層シートを形成するために1つまたは複数の追加の層をさらに含む、請求項17に記載の中間膜シート。
【請求項19】
3つの層を含む、請求項18に記載の中間膜シート。
【請求項20】
2枚のガラスシートおよび請求項17から19のいずれか一項に記載の中間膜シートを含む合わせ安全ガラスであって、中間膜シートが、2枚のガラスシートの間に配置されている、合わせ安全ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、合わせ安全ガラス構造体におけるポリビニルブチラール(PVB)シートのガラスへの接着性の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリ(ビニルブチラール)(PVB)は、安全ガラスまたは高分子積層体などの光透過性積層体の中間膜として使用できるポリマーシートの製造に一般的に使用されている。安全ガラスは、典型的には、2枚のガラスの間に配置されたポリ(ビニルブチラール)シートを含む透明積層体を指す。安全ガラスは、多くの場合、建築および自動車の開口部に透明障壁を提供するために使用される。その主な機能は、開口部に貫通させずに、物体からの打撃によって引き起こされるようなエネルギーを吸収することである。シート配合物への添加剤は、一般に、少なくとも1種の接着制御剤(以下、「ACA」)を含み、衝撃が発生した場合に適切なエネルギー吸収を提供しながら、ガラスの破砕を防止するために好適なレベルの接着性を維持できるように、ガラスへのシートの接着性を修正する。
【0003】
[0003]安全ガラスは、2層のガラスおよびポリ(ビニルブチラール)などのプラスチック中間膜をプリプレスに組み立て、予備積層体に仮付けし、光学的に透明な積層体に仕上げるプロセスによって形成され得る。組み立て段階は、1枚のガラスを敷き、そのガラスの上にポリ(ビニルブチラール)シートを重ね、ポリ(ビニルブチラール)シートの上に2枚目のガラスを敷き、次いで余分なポリ(ビニルブチラール)をガラス層の端に合わせて切り取ることを含み得る。
【0004】
[0004]プラスチック中間膜は、ポリ(ビニルブチラール)ポリマーを1種または複数の可塑剤、および場合により1種または複数の他の成分と混合し、この混合物を溶融加工してシートにすることによって製造され得、このシートは、典型的には、保存および輸送のために収集されて巻き上げられる。
【0005】
[0005]ポリ(ビニルブチラール)樹脂の製造のプロセスでは、ビニルアルコールおよびアルデヒド前駆体からのビニルアセタールの形成を触媒するために、酸を使用することを伴う場合がある。ポリ(ビニルアセタール)の形成後、酸は適切な塩基を使用して中和され得る。このプロセスでは、典型的には、残留アセテートがポリ(ビニルブチラール)樹脂内に閉じ込められたままになり、安定化および接着品質の両方に影響を与える可能性がある。ただし、アセテートの残留濃度は、完成したポリ(ビニルブチラール)において、一定の接着性および他の特性が所望される場合、制限要因になる可能性がある。
【0006】
[0006]さらに、シート配合物中の接着制御剤は、ガラス積層体の衝撃に対してエネルギー吸収を提供するために、ガラスに対するシートの接着を制御する。実際、この「制御」は、接着性を低減させることに等しく、したがって、接着制御剤がPVBに結合するか、または反応によって静止すると、ガラスへのPVB接着性が望ましくないレベルまで増加する。特に、いくつかの接着制御剤、例えば2-エチル酪酸マグネシウムを、様々なソーラー添加剤(solar additive)と併せて使用する場合、「結合」と呼ばれる現象が典型的には発生し、PVB配合物のシートへの溶融加工(例えば、押出成形)中に、塩がPVBと反応して結合する。結合塩は、次いで接着制御に利用できなくなり、完成した積層体のガラスにシートが非常に強く接着して、衝撃強度の低下につながる。さらに、一般に、結合塩のレベルは、配合物中のACA、または太陽光吸収剤の初期レベルが増加するにつれて、比例的に増加する。したがって、ポリ(ビニルブチラール)シート、特にソーラー添加剤も含むこれらのシートの特性を高めるために、改善された組成物および方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]安全ガラス構造に使用されるポリ(ビニルブチラール)組成物は、多くの場合、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、セシウムドープ酸化タングステン、および他のドープ酸化タングステンなどの金属酸化物ナノ粒子の形態で、ソーラー添加剤および他の熱遮蔽粒子を含む。このようなナノ粒子は、一実施形態では、200nm未満(D50)であり、他の実施形態では、100nm未満(D50)である。これに関して、このようなナノ粒子は、概して、直径が約200nm未満または一部の実施形態では、約100nm未満(D50)であり、D50とは、動的光散乱によって測定される体積中位径であると理解され、体積による平均粒径であると考えられる。これらのソーラー添加剤を、特定の接着制御添加剤、例えば有機モノカルボン酸の多価金属塩(米国特許第5,728,472号参照)、例えば2-エチル酪酸マグネシウムまたは1-エチルヘキサン酸マグネシウムと併せて使用する場合、「結合」と呼ばれる現象が発生し、それによって接着制御剤がポリ(ビニルブチラール)樹脂に結合し、したがって接着制御剤としてのその有効性が低下する。本発明は、少なくとも1種のソーラー添加剤を有する特定のポリ(ビニルブチラール)組成物であって、ポリ(ビニルブチラール)組成物が、接着制御剤(ACA)として、マグネシウム塩、例えばサリチル酸マグネシウムもしくはギ酸マグネシウム、またはそれらのそれぞれの水和物を利用し、マグネシウム塩が、二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含み、カルボキシレート基の対応するカルボン酸が、それぞれ約4.80未満のpKaを有する、ポリ(ビニルブチラール)組成物を提供する。本明細書では、サリチル酸マグネシウムまたはギ酸マグネシウムに言及する場合、それぞれの水和物(サリチル酸マグネシウム四水和物およびギ酸マグネシウム二水和物)も含まれる。これらの組成物は、ソーラー添加剤を含む既存のポリ(ビニルブチラール)組成物よりも著しく改善された性能を有することが見出された。本発明によって提供されるように、本発明のポリ(ビニルブチラール)シートは、ポリマーシートが押出中に高温および含水量に曝される、これらの金属酸化物ナノ粒子含有環境(例えば、酸化インジウムスズ)において改善された安定性を示し、押出中のマグネシウムACA塩(すなわち、2-エチル酪酸マグネシウムまたは2-エチルヘキサン酸マグネシウム)の著しい分解によるポリマーシートの接着品質を、容認できないほど変化させることがない。異なるレベルのマグネシウムACA塩価およびアルカリ金属ACA塩価の組合せを使用して、引剥し試験法およびパンメル試験法(pummel test method)の両方で示されるように、接着性を調整および制御できる。したがって、本発明は、押出機配合物において、ポリ(ビニルブチラール)樹脂中の残留水分および他の添加剤からの水を制限する必要なく、ソーラー金属酸化物ナノ粒子(solar metal oxide nanoparticle)を伴うポリ(ビニルブチラール)を押出すことを可能にする。PVBシートの再保湿および積層プロセスを含む、押出シートの押出後熱処理も保護される。
【0008】
[0008]一実施形態では、グレージング用のポリマー中間膜は、ポリ(ビニルブチラール)、少なくとも1種の可塑剤、ソーラー添加剤、酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウム、ならびに二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含むマグネシウム塩を含み、このカルボキシレート基の対応するカルボン酸は、それぞれ約4.80未満(4.70、4.60、4.50、4.40、4.30、4.20、4.10、4.00)のpKaを有する。
【0009】
[0009]実施形態では、ポリマー中間膜は、二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含む少なくとも2種のマグネシウム塩を含み、このカルボキシレート基の対応するカルボン酸は、それぞれ、約4.80未満(4.70、4.60、4.50、4.40、4.30、4.20、4.10、4.00)のpKaを有する。
【0010】
[0010]実施形態では、マグネシウム塩は、サリチル酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム四水和物またはギ酸マグネシウム二水和物である。
【0011】
[0011]実施形態では、結合のレベル(結合%)は、25%未満(24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11または10%未満)である。
【0012】
[0012]実施形態では、可塑剤は、波長589nmおよび温度25℃でASTM D542によって測定された、少なくとも1.460の屈折率を有する可塑剤を含む。他の実施形態では、可塑剤は、可塑剤のブレンドを含む。実施形態では、可塑剤は、従来の可塑剤(波長589nmおよび温度25℃でASTM D542によって測定された1.460未満の屈折率を有する)ならびに波長589nmおよび温度25℃でASTM D542によって測定された少なくとも1.460の屈折率を有する可塑剤のブレンドを含む。
【0013】
[0013]実施形態では、中間膜シート(interlayer sheet)は前述の組成物を含み、この組成物は、中間膜シートに形成される。実施形態では、中間膜シートは、多層シートを形成するために1つまたは複数の追加の層をさらに含み、一部の実施形態では、中間膜シートは、3つの層を含む。
【0014】
[0014]実施形態では、合わせ安全ガラスは、2枚のガラスのシートおよび前述の中間膜シートを含み、この中間膜シートは、2枚のガラスシートの間に配置されている。合わせ安全ガラスの実施形態では、合わせ安全ガラスの2枚のガラスシートの少なくとも1枚は、金属コーティングをさらに含む。他の実施形態では、合わせ安全ガラスは、中間膜シートに隣接する熱可塑性フィルムをさらに含み、実施形態では、熱可塑性フィルムはポリエステルを含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0015]第1の態様では、本発明は、ポリマー組成物であって、
a.ポリ(ビニルアセタール)と、
b.ソーラー添加剤と、
c.酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウムと、
d.少なくとも1種の可塑剤と、
e.二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含むマグネシウム塩であり、カルボキシレート基の対応するカルボン酸が、それぞれ約4.80未満(4.70、4.60、4.50、4.40、4.30、4.20、4.10、4.00)のpKaを有し、マグネシウム塩またはその水和物の力価が、約10から約60である、マグネシウム塩と
を含み、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価が、約10から約60であり、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価に対するマグネシウム塩またはその水和物の力価の比が、約0.5~約2.0である、ポリマー組成物を提供する。
【0016】
[0016]第2の態様では、本発明は、ポリマー組成物であって、
a.樹脂が約1重量%未満の水分レベルを有するポリ(ビニルアセタール)と、
b.ソーラー添加剤と、
c.酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウムと、
d.少なくとも1種の可塑剤と、
e.二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基を含むマグネシウム塩であり、カルボキシレート基の対応するカルボン酸が、それぞれ約4.80未満(4.70、4.60、4.50、4.40、4.30、4.20、4.10、4.00)のpKaを有し、マグネシウム塩またはその水和物の力価が、約10から約60である、マグネシウム塩と
を含み、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価が、約10から約60であり、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムの組合せに起因するアルカリ価に対するマグネシウム塩またはその水和物の力価の比が、約0.5~約2.0である、ポリマー組成物を提供する。
【0017】
[0017]上記成分a)で言及したポリ(ビニルアセタール)樹脂は、酸触媒の存在下でポリ(ビニルアルコール)を1種または複数のアルデヒドでアセタール化することにより形成することができる。次いで、得られた樹脂は、例えば米国特許第2,282,057号および第2,282,026号、ならびにWade,B.(2016)、“Vinyl Acetal Polymers”、Encyclopedia of Polymer Science and Technology、1~22ページ(John Wiley&Sons,Inc.)に記載されているものなどの公知の方法に従って分離、安定化、および乾燥することができる。得られたポリ(ビニルアセタール)樹脂中に存在する残留アルデヒド基または残基の総量は、ASTM D-1396によって測定される、少なくとも約50重量パーセント、少なくとも約60重量パーセント、少なくとも約70重量パーセント、少なくとも約75重量パーセント、少なくとも約80重量パーセント、または少なくとも約85重量パーセントであり得る。ポリ(ビニルアセタール)樹脂中のアルデヒド残基の総量は、アセタール成分と総称することができ、ポリ(ビニルアセタール)樹脂の残部は、残留ヒドロキシル基および残留アセテート基を含み、これは以下でさらに詳細に説明される。
【0018】
[0018]一部の実施形態では、ポリ(ビニルn-ブチラール)樹脂のビニルアセタール成分は、主としてn-ブチルアルデヒド由来のビニルブチラールを含むことができ、例えば、n-ブチルアルデヒド由来のビニルブチラールを少なくとも約70重量パーセント、少なくとも約80重量パーセント、または少なくとも約90重量パーセント含み得る。
【0019】
[0019]1種または複数のポリ(ビニルアセタール)樹脂はまた、n-ブチルアルデヒド以外の1種または複数のアルデヒド由来の1種または複数のビニルアセタールを含み得る。例えば、一部の実施形態では、組成物、層、または中間膜中の少なくとも1種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、およびこれらの組合せを含む、少なくとも1種の他のC2~C8アルデヒドから誘導され得る。一部の実施形態では、少なくとも1種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、イソ-ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、およびこれらの組合せからなる群より選択される1種または複数のC4~C8アルデヒドから誘導され得る。様々な実施形態では、少なくとも1種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、n-ブチルアルデヒド以外の1種または複数のアルデヒドをゼロ重量パーセント含むことができるか、または、少なくとも約1重量パーセント、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約30重量パーセント、少なくとも約40重量パーセントおよび/または約80重量パーセント以下、約70重量パーセント以下、約60重量パーセント以下、約50重量パーセント以下、約40重量パーセント以下、または約0~約40重量パーセント、約0~約30重量パーセント、約0~約20重量パーセント、約1~約80重量パーセント、約5~約70重量パーセント、または約10~約60重量パーセント含むことができる。
【0020】
[0020]ポリ(ビニルブチラール)は、酸触媒の存在下でポリ(ビニルアルコール)とブチルアルデヒドを反応させ、続いて樹脂を中和、分離、洗浄、および乾燥させることを含む工程を伴う公知のアセタール化プロセスによって製造され得る。いくらかの分離および洗浄は、中和されるべき酸の量を減らすために、例えばアセタール化後の水性プロセスにおいて、中和前に行われてもよい。
【0021】
[0021]採用されている2つの方法は、溶媒プロセスおよび水性プロセスである(例えば、Wade、B(2016)、“Vinyl Acetal Polymers”、Encyclopedia of Polymer Science and Technology、1~22ページ(John Wiley&Sons,Inc.)を参照されたい)。いずれの方法でも、ポリ(ビニルアルコール)を鉱酸触媒または有機酸触媒の存在下でアルデヒドと反応させて、ポリ(ビニルアセタール)および水を生成する。ブチルアルデヒドがアルデヒドとして使用される場合、得られるアセタールはポリ(ビニルブチラール)になる。
【0022】
[0022]実施形態では、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、約1重量%未満の水分レベルを有する。
【0023】
[0023]任意の好適な強酸(または鉱酸)が利用され得、概して、ポリ酢酸ビニルの加水分解においてインサイチュで生成され得る酢酸を含む。特定の実施形態では、硫酸が一次酸触媒として利用される。
【0024】
[0024]上記の方法のいずれかにおけるアセタール形成後、残留酸の中和は、例えば、水酸化物化合物の添加によって達成することができ、水酸化カリウムの場合、これは酢酸カリウムをもたらし、接着制御剤として機能する。米国特許第5,728,472号および第3,271,235号で開示されているように、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのいずれかが酸を中和するために使用され得る。これらの水酸化物のいずれかを使用すると、ポリマーマトリックス内の対応する酢酸塩の残存力価が生じる可能性がある(例えば、米国特許第2,496,480号を参照されたい)。この残存力価は、硫黄の残留酸化物の有害な作用による完成したポリマーの分解を防止するので、概して望ましい(例えば、硫酸が一次酸触媒として使用される場合)。
【0025】
[0025]完成したポリマーシートのこの接着性または接着レベルは、接着制御剤、二価のマグネシウムイオンおよび少なくとも2つのカルボキシレート基の使用によって本発明の場合にさらに改善され、このカルボキシレート基の対応するカルボン酸は、それぞれ約4.80未満のpKaを有し、この接着制御剤は、例えば、サリチル酸マグネシウムもしくはギ酸マグネシウムまたはそれらの対応する水和物である。
【0026】
[0026]様々な実施形態では、ポリ(ビニルブチラール)を含むポリマーは、PVOHとして計算される約9~約35重量パーセント(重量%)のヒドロキシル基、PVOHとして計算される13~30重量%のヒドロキシル基、またはPVOHとして計算される15~22重量%のヒドロキシル基を含む。ポリマーシートはまた、ポリ酢酸ビニルとして計算される15重量%未満の残留エステル基、13重量%、11重量%、9重量%、7重量%、5重量%、または3重量%未満の残留エステル基を含むことができ、残部はアセタール、例えばブチルアルデヒドアセタールであるが、場合により少量の他のアセタール基、例えば、2-エチルヘキサナール基(例えば、米国特許第5,137,954号を参照されたい)またはアセトアルデヒド由来のビニルエタナールを含む。
【0027】
[0027]様々な実施形態では、ポリマーは、1モル当たり30,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、120,000、250,000、または350,000グラム(g/モルまたはダルトン)を超える分子量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む。アセタール化工程中に少量のジアルデヒドまたはトリアルデヒドを添加して、分子量を350,000g/m超に増加させることも可能である(例えば、米国特許第4,902,464号、第4,874,814号、第4,814,529号、第4,654,179号を参照されたい)。本明細書では、「分子量」という用語は、重量平均分子量を意味する。任意の好適な方法を、本発明のポリマーシートを製造するために使用することができる。
【0028】
[0028]ソーラー添加剤は、酸化アンチモンスズ、酸化インジウムスズ、セシウムドープ酸化タングステン、および他のドープ酸化タングステンなどの金属酸化物ナノ粒子から選択することができる。これに関して、このようなドープ酸化タングステンは、一般式WyOzによって表すことができ、式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、2.0<z/y<3.0、2.2≦z/y≦2.99、または2.45≦z/y≦2.99を満たし、かつ/または複合酸化タングステンの粒子は、一般式MxWyOzによって表すことができ、式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Rh、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、およびこれらの2種以上の組合せから選択される元素であり、式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1.0または0.01≦x/y≦0.5、および2.0≦z/y≦3.0、2.2≦z/y≦2.99、または2.45≦z/y≦2.99を満たす。タングステン/酸素比の例としては、限定するものではないが、WO2.92、WO2.90、W20O58、W24O68、W17O47、W18O49などが挙げられる。特定の実施形態では、酸化タングステン剤は、上述の特性のいずれかを有する酸化セシウムタングステン(CsWO3)であり、様々な実施形態では、モル比Cs0.33WO3を有する酸化セシウムタングステン剤が使用される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,216,683号を参照されたい。特定の実施形態では、赤外線吸収粒子は、酸化インジウムスズ、セシウムドープ酸化タングステン、およびこれらの組合せを含むことができる。
【0029】
[0029]様々な実施形態では、本発明のポリマー組成物は、樹脂100部当たり(phr)20~80、20~60、25~60、または35~45部の可塑剤を含むことができる。当然、他の量は、特定の用途に適したものとして使用することができる。一部の実施形態では、可塑剤は、20個未満、15個未満、12個未満、または10個未満の炭素原子の炭化水素セグメントを有する。
【0030】
[0030]可塑剤の量は、ポリ(ビニルブチラール)シートのガラス転移温度(Tg)に影響を与えるように調整され得る。一般に、Tgを低下させるために、大量の可塑剤が添加される。本発明のポリ(ビニルブチラール)ポリマーシートは40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、または15℃以下のTgを有することができる。
【0031】
[0031]好適な可塑剤の例としては、限定するものではないが、従来の可塑剤、例えば、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「TEG-EH」、「3GEH」としても公知である)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「4GEH」)、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジ(ブトキシエチル)アジペート、およびビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、およびこれらの混合物が挙げられる。可塑剤は、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)およびテトラエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)からなる群より選択することができるか、または可塑剤は、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)を含むことができる。本明細書では、約1.450以下の屈折率を有する可塑剤は、「従来の可塑剤」と称される。これらの可塑剤は、約1.442~約1.449の屈折率を有する。比較すると、PVB樹脂は約1.485~1.495の屈折率を有する。様々な特性および用途のために製造された中間膜では、TEG-EH(屈折率=1.442)は、存在する最も一般的な可塑剤の1つである。本明細書に列挙されていないものを含む他の可塑剤も使用され得る。
【0032】
[0032]一部の実施形態では、1つまたは複数の層に含まれる可塑剤は、高屈折率(RI)可塑剤であり得る。本明細書では、「高RI可塑剤」という用語は、波長589nmおよび温度25℃でASTM D542によって測定された、少なくとも1.460の屈折率を有する可塑剤を意味する。使用される場合、高RI可塑剤は、上記で論じたように測定して、少なくとも約1.470、少なくとも約1.480、少なくとも約1.490、少なくとも約1.500、少なくとも約1.510、少なくとも約1.520および/または約1.600以下、約1.575以下、または約1.550以下の屈折率を有することができる。
【0033】
[0033]高RI可塑剤の種類またはクラスの例としては、限定するものではないが、ポリアジペート(RI約1.460~約1.485)、エポキシ化大豆油などのエポキシド(RI約1.460~約1.480)、フタレートおよびテレフタレート(RI約1.480~約1.540)、ベンゾエートおよびトルエート(RI約1.480~約1.550)、ならびに他の特殊可塑剤(RI約1.490~約1.520)が挙げられる。好適なRI可塑剤の具体例としては、限定するものではないが、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、ブトキシエチルベンゾエート、ブトキシエチオキシエチル(butoxyethyoxyethyl)ベンゾエート、ブトキシエトキシエチルベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3-ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ-o-トルエート、トリエチレングリコールジ-o-トルエート、ジプロピレングリコールジ-o-トルエート、1,2-オクチルジベンゾエート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート、ビスフェノールAビス(2-エチルヘキサオネート)、ジ-(ブトキシエチル)テレフタレート、ジ-(ブトキシエチオキシエチル(butoxyethyoxyethyl))テレフタレート、およびこれらの混合物が挙げられる。高RI可塑剤は、ジプロピレングリコールジベンゾエートおよびトリプロピレングリコールジベンゾエート、ならびに/または2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエートから選択することができる。
【0034】
[0034]樹脂層または中間膜が高RI可塑剤を含む場合、可塑剤は、単独で層中に存在することができるか、または1種または複数の追加の可塑剤とブレンドされ得る。他の可塑剤はまた、高RI可塑剤を含んでもよいか、または1種または複数が、1.460未満の屈折率を有する低RI可塑剤であってもよい。一部の実施形態では、低RI可塑剤は、約1.450未満、約1.445未満、または約1.442未満の屈折率を有してもよく、先に列挙した群から選択することができる。2種以上の可塑剤の混合物が採用される場合、混合物は、上記範囲の1つまたは複数以内の屈折率を有することができる。
【0035】
[0035]一部の実施形態では、中間膜は、少なくとも第1の樹脂および第1の可塑剤を含む第1の樹脂層と、第2の樹脂および第2の可塑剤を含む第2の樹脂層とを含んでもよい。第1および第2の可塑剤は、同じ種類の可塑剤であってもよいか、または第1および第2の可塑剤は、異なっていてもよい。一部の実施形態では、第1および第2の可塑剤のうちの少なくとも1種は、2種以上の可塑剤のブレンドであってもよく、これは、1種または複数の他の可塑剤と同じでも異なっていてもよい。
【0036】
[0036]様々な実施形態では、高屈折率可塑剤は、可塑剤の屈折率が、コア層および/またはスキン層の両方に対して少なくとも約1.460、または約1.460超、または約1.470超、または約1.480超、または約1.490超、または約1.500超、または1.510超、または1.520超となるように選択される。一部の実施形態では、高屈折率可塑剤は、従来の可塑剤と併せて使用され、一部の実施形態では、含まれる場合、従来の可塑剤は、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(TEG-EH)であり、可塑剤混合物の屈折率は、少なくとも1.460である。本明細書では、本開示の全体で使用される可塑剤または樹脂の屈折率は、波長589nmおよび25℃でASTM D542に従って測定されるか、またはASTM D542に従って文献で報告されているように測定される。
【0037】
[0037]サリチル酸マグネシウム[CAS番号18917-89-0]またはその四水和物[CAS番号18917-95-8]は、押出用のポリ(ビニルブチラール)樹脂可塑剤プリミックスに添加するために、室温で20重量%の水溶液として調製され得る。水溶液は弱酸性のみであり、標準的な押出条件中での添加レベルでポリ(ビニルブチラール)樹脂を脱アセタール化することは見出されなかった。同様に、この水溶液は、所望により追加の酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウムを含むことができる。ギ酸マグネシウム[CAS番号557-39-1]またはその二水和物[CAS番号6150-82-9]は、室温で10重量%の水溶液として調製され得、必要なマグネシウム塩価に基づいて同様の調製物に添加され得る。
【0038】
[0038]さらなる実施形態では、ポリマー組成物は、ソーラー添加剤安定剤として、1種または複数のエポキシ化合物をさらに含んでもよい。これらのエポキシ化合物は、ポリマー組成物自体に添加されてもよいか、またはエポキシ化合物は、1種または複数のソーラー添加剤をやはり含むポリマーシートの少なくとも一部を覆うフィルムに添加されてもよい。任意の好適なエポキシ化合物を、当該技術分野で公知であるように、本発明と共に使用することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,529,848号および第5,529,849号を参照されたい)。
【0039】
[0039]様々な実施形態では、本明細書に記載される有用なエポキシ化合物は、(a)ビスフェノール-Aのモノマージグリシジルエーテルを主として含むエポキシ樹脂、(b)ビスフェノール-Fのモノマージグリシジルエーテルを主として含むエポキシ樹脂、(c)ビスフェノール-Aの水素化ジグリシジルエーテルを主として含むエポキシ樹脂、(d)ポリエポキシ化フェノールノボラック、(e)エポキシ末端ポリエーテルとして代替的に公知のポリグリコールのジエポキシド、および(f)前述の(a)から(e)のエポキシ樹脂のいずれかの混合物(the Encyclopedia of Polymer Science and Technology、第6巻、1967年、Interscience Publishers,N.Y.、209~271ページを参照されたい)から選択される。
【0040】
[0040]クラス(a)のビスフェノールAの好適な市販のジグリシジルエーテルは、Dow Chemical CompanyまたはOlin CorporationのD.E.R.(商標)331である。クラス(b)のビスフェノール-Fエポキシのジグリシジルエーテルは、EPON Resin DPL-862(Hexion)であり、クラス(c)のビスフェノール-Aエポキシの水素化ジグリシジルエーテルは、EPONEX(商標)Resin 1510(Hexion)である。クラス(d)のポリエポキシ化フェノールホルムアルデヒドノボラックは、Olin CorporationからD.E.N(商標)431として入手可能である。クラス(e)のポリ(オキシプロピレン)グリコールのジエポキシドは、Olin CorporationからD.E.R.(商標)732として入手可能である。
【0041】
[0041]好適なエポキシ化合物のさらなる例には、米国特許第3,723,320号に記載される種類の3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート組成物が含まれる。好適なエポキシ化合物の一例は、次式:
【0042】
【0043】
[0042][式中、R1は、-(CH2)0-3-C(O)OR、-C(O)R、-OR、または-CH2ORであり、式中、Rは、1から約12個の炭素原子を有するアルキル基であり、RはR1、水素、または1から約9個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3およびR4は、独立して水素または1から約4個の炭素原子を有するアルキル基である]
に対応する。
【0044】
[0043]また、米国特許第4,206,067号に開示されているものなどのジエポキシドが有用であり、これは2つの結合したシクロヘキサン基を含み、それぞれにエポキシド基が縮合されている。このようなジエポキシド化合物は、次式:
【0045】
【0046】
[式中、R3は、1~10個の炭素原子、0から6個の酸素原子、および0から6個の窒素原子を含む有機基であり、R4~R9は、水素および1~5個の炭素原子を含む脂肪族基の中から独立して選択される]
に対応する。例示的なジエポキシドには、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチルアジペート)、および2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサンが含まれる。さらなる例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,585,436号に見出され得る。
【0047】
[0044]さらなる有用なエポキシは、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(HexionからHeloxy Modifier 116として入手可能)である。さらなる有用なエポキシには、ポリ(オキシプロピレン)グリコールのジエポキシド、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ならびにエピクロロヒドリンおよびポリプロピレングリコールのジエポキシド生成物が含まれる。エポキシ化合物の混合物も使用され得る。
【0048】
[0045]エポキシ化合物は、エポキシ剤の種類、ポリマーフィルムの組成、およびソーラー添加剤の量を考慮して、任意の好適な量で測定に組み込まれ得る。エポキシ化合物は、概して、ソーラー添加剤と共に、例えばフィルム内に組み込まれ、フィルム上、フィルムのハードコート内、2つのポリマーフィルムをともに複数層フィルムに結合する結合剤中に堆積させてもよいか、またはフィルムが製造される際に単独でもしくは他の添加剤と併せて注入されてもよい。
【0049】
[0046]様々な実施形態では、エポキシ化合物は、ポリマーフィルムの0.2~10.0重量パーセント、0.3~5.0重量パーセント、0.5~4.0重量パーセント、または1.0~3.5重量パーセントの重量パーセントで組み込まれる。これらの値は、任意の特定の用途で所望されるように、任意の組合せでソーラー添加剤について上記で与えられた値と組み合わせることができる。
【0050】
[0047]別の実施形態では、組成物は、接着制御安定化化合物として、アルコキシシランなどの1種または複数のケイ素含有シラン化合物をさらに含んでもよい。このような化合物の一例は、シラノール化合物である。シートの表面に存在する接着制御安定化剤がシラノールを含む場合、ポリマーシートの表面に塗布されるコーティング材料は、シラノールを含んでもよいか、または、シートへのコーティング材料の塗布時にシラノールに変換され得る1種または複数の未加水分解ケイ素含有化合物を含んでもよい。シラノール含有化合物に容易に変換可能な好適なケイ素含有化合物の例には、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、およびトリアルコキシシランを含む有機アルコキシシランが含まれ得る。一部の実施形態では、ケイ素含有化合物は、例えばトリメトキシシランまたはトリエトキシシランなどのトリアルコキシシランであってもよい。好適なトリアルコキシシランの例としては、限定するものではないが、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエチオキシシラン(aminopropyltriethyoxysilane)、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびこれらの組合せを挙げることができる。ケイ素含有化合物がシラノールを含む場合、上記に列挙したケイ素含有化合物の1種または複数の加水分解形態を含んでもよい。このようなシランの例には、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、およびこれらの組合せが含まれる。さらなる例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,022,908号に見出すことができる。
【0051】
[0048]他の添加剤は、最終製品におけるその性能を高めるためにポリマー組成物に組み込まれてもよい。このような添加剤には、限定するものではないが、当技術分野で公知であるように、分散剤、可塑剤、染料、顔料(例えば、ルチル型二酸化チタン)、安定剤(例えば、紫外線安定剤)、酸化防止剤、難燃剤、他の赤外線吸収剤、前述の添加剤の組合せなどが含まれる。
【0052】
[0049]したがって、ポリ(ビニルアセタール)ポリマー組成物は、当業者に公知の方法に従って熱処理され、シート形態に構成され得る。したがって、別の態様では、本発明のポリマー組成物は、シートに形成される。
【0053】
[0050]本明細書では、「ポリマー中間膜シート」、「中間膜」、および「ポリマー溶融シート」という用語は、概して、単層シートまたは多層中間膜を指し得る。「単層シート」は、その名のとおり、1層として押出された単一のポリマー層である。一方、多層中間膜は、個別に押出された層、共押出された層、または個別に押出された層および共押出された層の任意の組合せを含む複数層を含み得る。したがって、多層中間膜は、例えば、ともに組み合わされた2つ以上の単層シート(「複数層シート」)、ともに共押出された2つ以上の層(「共押出シート」)、ともに組み合わされた2つ以上の共押出シート、少なくとも1つの単層シートおよび少なくとも1つの共押出シートの組合せ、単層シートおよび複数層シートの組合せ、ならびに少なくとも1つの複数層シートおよび少なくとも1つの共押出シートの組合せを含み得る。本開示の様々な実施形態では、多層中間膜は、互いに直接接触して配置された少なくとも2つのポリマー層(例えば、共押出および/またはともに積層された単層または複数層)を含み、各層は、以下でより完全に詳述されるポリマー樹脂を含む。少なくとも3つの層を有する多層中間膜について、本明細書では、「スキン層」は、概して中間膜の外層を指し、「コア層」は、概して内層を指す。したがって、1つの例示的な実施形態は、スキン層//コア層//スキン層となる。層または層の組合せは、ソーラー添加剤を含んでもよい。複数層シートに関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,252,500号に見出すことができる。
【0054】
[0051]さらなる態様では、本発明は、多層シートである本発明のシートを提供する。
【0055】
[0052]ポリ(ビニルブチラール)シートを形成する1つの例示的な方法は、樹脂、可塑剤、および添加剤を含む溶融ポリ(ビニルブチラール)(以下「溶融物」)を、シートダイ(例えば、ある寸法が、垂直寸法よりも実質的に大きい開口部を有するダイ)を通して押し込むことにより、この溶融物を押出すことを含む。ポリ(ビニルブチラール)シートを形成する別の例示的な方法は、溶融物をダイからローラー上にキャストし、樹脂を固化させ、続いて固化した樹脂をシートとして取り出すことを含む。いずれの実施形態においても、シートのどちらかの面または両面における表面性状は、ダイ開口部の表面を調整することによって、またはローラー表面で性状を提供することによって制御され得る。シートの性状を制御するための他の技術には、材料のパラメータ(例えば、樹脂および/または可塑剤の含水量、溶融温度、ポリ(ビニルブチラール)の分子量分布、または前述のパラメータの組合せ)を変化させることが含まれる。さらに、シートは、積層プロセス中のシートの脱気を容易にするために一時的な表面凹凸を画定する間隔を空けた突起部を含むように構成することができ、その後、積層プロセスの高温および圧力によりこの突起部がシートの中に溶融し、それによって滑らかな仕上がりになる。様々な実施形態では、ポリマーシートは、0.1~2.5ミリメートル、0.2~2.0ミリメートル、0.25~1.75ミリメートル、および0.3~1.5ミリメートル(mm)の厚さを有することができる。
【0056】
[0053]したがって、別の実施形態では、本発明は、シートに形成される本発明のポリ(ビニルアセタール)組成物を提供する。
【0057】
[0054]また、本明細書に開示される本発明のポリマー組成物シートのいずれかのスタックまたはロールが任意の組合せで本発明に含まれる。
【0058】
[0055]また、本発明には、フロントガラスおよび他の合わせガラス製品を製造する方法であって、2層のガラスの間に本発明のポリマーシートを挿入する工程と、3層積層体を積層する工程とを含む、方法が含まれる。
【0059】
[0056]さらに、本発明は、ガラスの層を含む合わせ安全ガラスを含み、典型的には本発明のポリマーシートのいずれかと接触して配置される二酸化ケイ素を含む(ただし、後述する他の種類のガラスが使用されてもよい)。さらに、ガラスシートの間に配置される中間膜ポリマーシートと共に前記ガラスのシートの少なくとも2枚を含む合わせ安全ガラスを含み、このポリマーシートは、本発明の実施形態として本明細書に開示されているポリマーシートのいずれかである。
【0060】
[0057]本明細書に記載される複数層グレージングまたはパネルは、概して、第1の基板厚さを有する第1の剛性基板シートと、第2の基板厚さを有する第2の剛性基板シートとを含む。第1および第2の基板の各々は、ガラスなどの剛性材料で形成され得、同じかまたは異なる材料から形成されてもよい。一部の実施形態では、第1および第2の基板のうちの少なくとも1つは、ガラス基板とすることができ、一方、他の実施形態では、第1および第2の基板のうちの少なくとも1つは、例えば、ポリカーボネート、コポリエステル、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの組合せなどの剛性ポリマーを含む別の材料で形成され得る。実施形態では、両方の剛性基板がガラスである。任意の好適な種類の非ガラス材料を使用して、必要な性能および特性に応じて、そのような基板を形成することができる。典型的には、剛性基板のいずれも、以下で詳細に説明するように、熱可塑性ポリマー材料を含むより柔らかいポリマー材料からは形成されない。
【0061】
[0058]任意の好適な種類のガラスを使用して、剛性ガラス基板を形成することができ、一部の実施形態では、ガラスは、アルミナケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英または溶融シリカガラス、およびソーダ石灰ガラスからなる群より選択されてもよい。ガラス基板は、使用される場合、アニール、熱強化または焼戻し、化学強化、エッチング、コーティング、またはイオン交換による強化をされてもよいか、またはこれらの処理の1つまたは複数が施されていてもよい。ガラス自体は、ロール法ガラス、フロートガラス、または板ガラスであってもよい。一部の実施形態では、ガラスはイオン交換によって化学的に処理または強化されていなくてもよく、一方、他の実施形態では、ガラスはアルミナケイ酸塩ガラスでなくてもよい。第1および第2の基板がガラス基板である場合、各基板を形成するために使用するガラスの種類は、同じでも異なっていてもよい。
【0062】
[0059]剛性基板は、任意の好適な厚さを有することができる。一部の実施形態では、剛性基板がすべてガラス基板である場合、ガラスシート(第1または第2のガラス)のうちの少なくとも1つの呼び厚さは、0.1mmから12.7mmの範囲であり、複数層ガラスパネルは、第1および第2のガラスシート(および必要に応じて、他の任意のガラスまたは剛性シート)の任意の組合せの構成を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2の基板の呼び厚さは、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.75mm、少なくとも約1.0mm、少なくとも約1.25mm、少なくとも約1.3mm、少なくとも約1.6mm、少なくとも約1.9mm、少なくとも約2.2mm、少なくとも約2.5mm、または少なくとも約2.8mmおよび/もしくは約3.2mm未満、約2.9mm未満、約2.6mm未満、約2.5mm未満、約2.3mm未満、約2.0mm未満、約1.75mm未満、約1.7mm未満、約1.5mm未満、約1.4mm未満、または約1.1mm未満であり得る。
【0063】
[0060]さらに、または代替的に、第1および/または第2の基板は、少なくとも約2.3mm、少なくとも約2.6mm、少なくとも約2.9mm、少なくとも約3.2mm、少なくとも約3.5mm、少なくとも約3.8mm、または少なくとも約4.1mmおよび/または約12.7mm未満、約12.0mm未満、約11.5mm未満、約10.5mm未満、約10.0mm未満、約9.5mm未満、約9.0mm未満、約8.5mm未満、約8.0mm未満、約7.5mm未満、約7.0mm未満、約6.5mm未満、約6.0mm未満、約5.5mm未満、約5.0mm未満、または約4.5mm未満の呼び厚さを有することができる。他の厚さは、必要な用途および特性に応じて適切であり得る。
【0064】
[0061]本発明はまた、フロントガラス、窓、および他の完成ガラス製品、または本発明のポリマーシートを含む複数層パネルを含む。
【0065】
[0062]本発明と共に使用するための、様々なポリマーシートおよび/または合わせガラスの特性および測定技術がここで説明される。ポリマーシート、特にポリ(ビニルブチラール)シートの透明度は、シートを透過しない光の定量であるヘイズレベルまたは値を測定することによって求められ得る。ヘイズ率は、以下の技術に従って測定され得る。ヘイズの量を測定するための装置である、Hunter Associates(米国バージニア州、Reston)から入手可能なHazemeter, Model D25は、ASTM D1003-61(1977年再認可)-手順Aに従って使用され得、2度の観察角度で光源Cを使用する。本発明の様々な実施形態では、ヘイズ率は、5%未満、3%未満、または1%未満である。
【0066】
[0063]パンメル接着力は、以下の技術に従って測定され得、ここで「パンメル」は、ガラスに対するポリマーシートの接着力を定量化するために本明細書において言及され、パンメル値を求めるために以下の技術が使用される。2層ガラス積層体試料を、標準的なオートクレーブ積層条件で調製する。積層体を、約-17℃(0°F)に冷却し、ハンマーで手動で連打してガラスを割る。次いで、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着していない割れたガラスをすべて取り除き、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着したままのガラスの量を一連の標準と目視で比較する。標準は、様々な程度のガラスがポリ(ビニルブチラール)シートに接着したままである尺度に対応している。特に、パンメル標準ゼロでは、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着したままであるガラスはない。パンメル標準10では、ガラスの100%がポリ(ビニルブチラール)シートに接着したままである。本発明の合わせガラスパネルの場合、様々な実施形態は、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも9、または10のパンメル値を有する。他の実施形態は、8から10の間を含むパンメル値を有する。
【0067】
[0064]本明細書に記載のシートおよび層は、積層体が高温および高湿度の条件に曝される場合でさえ、高レベルの水分の侵入にもかかわらず、他の層または基板への接着を維持することができる場合がある。例えば、本発明による層および中間膜は、ASTM E203に従うカールフィッシャー滴定によって測定して、少なくとも約0.3パーセント、少なくとも約0.4パーセント、少なくとも約0.5パーセント、少なくとも約0.7パーセント、または少なくとも1パーセントの平均水分量を有しながら、引剥し粘着力を示し得る。
【0068】
[0065]ポリマーシートの「黄色度」は、以下に従って測定され得る。本質的に平面および平行である滑らかなポリマー表面を有する、厚さ1cmのポリマーシートの透明な成形ディスクを形成する。黄色度は、可視スペクトルの分光光透過率からASTM法D1925「プラスチックの黄色度の標準試験方法(Standard Test Method for Yellowness Index of Plastics)」に従って測定される。値は、測定した試験片の厚さを使用して、1cmの厚さに補正される。
【0069】
[0066]本明細書では、「力価」は、以下の方法を使用してシート試料中の酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウム(本明細書では、「全アルカリ価」)ならびにマグネシウム塩について求められ得る。
【0070】
[0067]計量される各シート試料中の樹脂の量を求めるために、次の式が使用され、式中、PHRは、元のシート試料調製物中の、可塑剤および樹脂への他の任意の添加剤を含む樹脂の45359.2グラム(100ポンド)当たりのグラム(ポンド)数として定義される。
【0071】
シート試料中の樹脂のグラム数= シート試料のグラム数
(100+PHR)/100
[0068]シート試料中の約5グラム(g)の樹脂は、最初にシート試料の量を推定するために使用される目標質量であり、シート試料中の樹脂の計算質量が、各力価測定に使用される。すべての滴定は、同日に完了するべきである。
【0072】
[0069]シート試料を、ビーカー内でメタノール250mlに溶解する。シート試料が完全に溶解するまでに、最大8時間かかる場合がある。メタノールのみのブランクもビーカーに調製する。試料およびブランクは、pH2.5で停止するようにプログラムされた自動pH滴定装置を使用して、それぞれ0.00500の規定のHClで滴定する。pH4.2を得るために試料およびブランクのそれぞれに添加したHClの量を記録する。HCl力価は、下記式に従って求められる。
HCl力価(0.01N HCLのml/100g樹脂)=
50×(試料のHClのml-ブランクのHClのml)
樹脂の計算されたグラム数
[0070]マグネシウム塩価を求めるために、以下の手順を使用する。54グラムの塩化アンモニウムおよび、メタノールで1リットルに希釈した水酸化アンモニウム350mlから調製したpH10.00の緩衝液12~15ml、ならびにErichrome Black T指示薬12~15mlをブランクおよび各シート試料に添加するが、これらはすべて、上記のようにすでにHClで滴定されている。次いで、滴定剤を、0.3263gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物、5mlの水から調製し、メタノールで1リットルに希釈した0.000298g/mlのEDTA溶液に変更する。EDTA滴定は、596nmにおける光透過率によって測定する。透過%は、最初に試料またはブランクにおいて100%に調整してから滴定を開始し、その間に溶液は明るいマゼンタピンク色である。596nmでの透過率が一定になると、EDTA滴定が完了し、溶液は濃いインジゴ色になる。インジゴブルーの終点を達成するように滴定したEDTAの体積を、ブランクおよび各シート試料について記録する。マグネシウム塩価は、下記式に従って求められる。
【0073】
0.000298g/mlのEDTA×
(試料のEDTAのml-
マグネシウム塩価 = ブランクのEDTAのml)
(樹脂1グラム当たり1×10-7モルの (シート試料中の樹脂のグラム数)×
マグネシウム塩として) 380.2g/モルのEDTA×0.0000001
[0071]この結果から、全アルカリ価は、樹脂1グラム当たり1×10-7モルの酢酸塩として、下記式に従って計算され得る。
全アルカリ価=シートのHCl力価-(2×全マグネシウム塩価)
[0072]酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムのいずれかに起因する全アルカリ価の部分は、上記のように、最初に全アルカリ価を求めることによって求めることができる。全アルカリ価を求めた後、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によってポリマーシートの破壊分析を実施し、カリウムのppm濃度およびナトリウムのppm濃度を得ることができる。
【0074】
[0073]酢酸ナトリウムに起因するアルカリ価は、本明細書において、全アルカリ価に比[ナトリウムのppm/(ナトリウムのppm+カリウムのppm)]を乗じたものとして定義される。
【0075】
[0074]酢酸カリウムに起因するアルカリ価は、本明細書において、全アルカリ価に比[カリウムのppm/(ナトリウムのppm+カリウムのppm)]を乗じたものとして定義される。
【0076】
[0075]本発明は、その特定の実施形態の以下の実施例によってさらに説明され得るが、これらの実施例は、単に例示の目的に含まれ、特に示されない限り本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0077】
[0076]各ケースで、1500グラムのPVB樹脂をベースとした樹脂および可塑剤の混合物を含む2つのプリミックスバッチを、約200℃でのシート押出に使用した。定常状態の組成を確かめるためにACA滴定によって試験した各ケースについて、PVBシートの試料を押出の終わり(約5分)にかけてのみ収集してから、2番目のプリミックスバッチを押出で使い果たした。
【0078】
[0077]ITOナノ粒子の有無にかかわらず試料に対して例示的な滴定を実施し、高結合と比較して低結合が示された。表1に示すように、試料1、2および6はITOナノ粒子を含まず、試料3、4および5はすべて0.108%のITOナノ粒子を含んでいた。サリチル酸マグネシウムを含む試料5を除くすべての試料で、ACAとしてビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを使用した。
【0079】
[0078]下記表1の試料5について、サリチル酸マグネシウム四水和物を水に溶解し、20重量%溶液を調製した。可塑剤であるTEG-EG(トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート))に個別に溶解できなかったため、6.95gを押出用の各1500gのPVB樹脂バッチにブレンドした。サリチル酸マグネシウム四水和物のACA計算は、次のとおりである。
【0080】
1500gのPVB当たりの20%サリチル酸マグネシウム四水和物のグラム数=25力価のMgの場合25*0.0000001*1500*370.6/(20/100)=6.95g
[0079]試料2、3、および4、また試料1および6の標準の場合、ビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを40重量%水溶液として使用し、試料2では20力価、試料3および4では30力価に相当する量をそれぞれの可塑剤混合物に添加し、60℃に加熱して残留水を除去して、他の添加剤、例えば、UV遮断剤および酸化防止剤を溶解させた。ビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムのACA計算は、次のとおりである。
【0081】
1500gのPVB当たりの40%ビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムのグラム数=20力価のMgの場合20*0.0000001*1500*310/(40/100)=2.325g
[0080]サリチル酸マグネシウムを伴う押出で使用するための試料5の可塑剤混合物には、可塑剤、TEG-EH、ならびにUV遮断剤および酸化防止剤のみが含まれていた。同様に、それらを60℃に加熱して、固体を可塑剤に溶解させた。得られた押出PVBシートは、38phrの可塑剤含有量および0.108%のITOを有していた(試料1、2および6の場合はITOなし)。結果を下記表1に示す。
【0082】
【0083】
[0081]滴定手順の測定標準統計値(measurement standard statistics)を以下に示す。
【0084】
【0085】
[0082]ACA滴定の結果によると、25力価のサリチル酸マグネシウムおよび0.108%のITOナノ粒子を伴って押出された試料5のPVBシートは、30力価のビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムおよび0.108%のITOナノ粒子で作製された試料3および4と比較して、わずかな結合%を有した。ITOナノ粒子を含まない対照試料と比較して、ITOを含まず、20力価のビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを伴って押出された対照試料2およびビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムから約12力価のマグネシウムを含む標準(試料1および6)は、同等のわずかなレベルの結合%(例えば、2%未満)を有する。それぞれ27および30力価のギ酸マグネシウムならびに0.160%および0.228%のITO%(ITOの最も高い装填量)を有する試料7および8のPVBシートは、15%を超える結合%を有し、30力価のビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムおよび0.108%のITOナノ粒子で作製された試料3および4よりも低いレベルの結合%(例えば7%未満)を有した。
【0086】
[0083]引剥し試験測定:本明細書で提供されるガラスに対する90°引剥し粘着力の値は、以下の手順に従って求めた。まず、ニップロールまたは真空脱気法を使用して30.48cm(12インチ)×17.145cm(6.75インチ)のガラス/PVBシート/アルミ箔積層体を調製し、得られた積層体を、143℃、185psigで20分間の保持条件を含む標準的な合わせガラス製造条件下でオートクレーブ処理した。組み立て前に、ガラスを標準的な方法に従って洗浄し、PVBシートを0.43重量パーセントの標準水分量に調整した。積層体に使用したPVBシートは、30ミル(0.762mm)の厚さを有した。積層体の形成に使用したガラスは、2.3mm厚さの透明フロートガラスであり、ガラスの空気側をPVB層に向けて積層体を組み立てた。アルミ箔を、PVBシートへの非常に高い接着性を確保するように処理した。
【0087】
[0084]上記のようにオートクレーブ処理した後、積層体を試験前に少なくとも16時間、周囲条件で保存した。次いで、各30.48cm(12インチ)×17.145cm(6.75インチ)のガラス積層体を、最初に各7.62cm(3インチ)×17.145cm(6.75インチ)の寸法を有する別々の部分に切断して4つの試験片にこの積層体を切断し、次いでこの試験片の長辺に沿ってアルミ箔およびPVB層を重ねて、各試験片の中心から4センチメートルの間隔で2本の平行線を一度に切断することにより、引剥し粘着力試験のための積層体を準備した。両方の切片は、各試験片の全長に沿って延伸していた。その後、各試験片を裏返し、ガラスに刻み目を付け、上部から約5.715cm(2.25インチ)の場所でその幅に沿って割った。次いで、試験片をガラスの刻み目ラインに沿って90°の角度で曲げた。
【0088】
[0085]次いで、各試験片の引剥し粘着力を、InstronまたはMTS Systems製のものなどの、万能材料試験器(UTM)を使用して、90°引剥し粘着力測定を実施するように設計された搭載システムを装備して試験した。引剥し粘着力試験片を、上部の5.715cm(2.25インチ)×7.62cm(3インチ)部分がグリップ内にしっかりと保持され、下部の7.62cm(3インチ)×11.43cm(4.5インチ)の部分が、4cmのテストストリップ領域を妨げることなく支持されるようにスライド搭載装置に保持し、引剥し試験全体を通して90°の角度が維持されるように試料を配向させた。次いで、試験片を毎分12.7cm(5インチ)の速度(cm(インチ)/分)で引剥した。7.62cm(3インチ)の長さにわたって必要な平均引剥し力(N)を求め、テストストリップの幅(4cm)にわたって正規化して、90°の引剥し粘着力値を得た。
【0089】
[0086]追加の試料を、ITOナノ粒子の有無にかかわらず(表2に示すように)、サリチル酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、およびビス(2-エチルヘキサン酸マグネシウム)で生成し、結合%および粘着特性を試験した(引剥しおよびパンメル試験で測定)。試料および結果を以下に記載する。すべての試料は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂(Eastman Chemical CompanyのBUTVAR(登録商標)樹脂)およびTEG-EH可塑剤で作製した。樹脂および可塑剤を混合し、TEG-EH可塑剤100部当たり38部を達成した。
【0090】
[0087]試料9および10(ITOを含まないサリチル酸マグネシウム)の場合、サリチル酸マグネシウムを伴う押出のための可塑剤混合物には、可塑剤(TEG-EH)、UV遮断剤、および酸化防止剤のみが含まれていた。サリチル酸マグネシウム力価は、示されているように樹脂に別個に添加した。可塑剤混合物を60℃に加熱して、UV安定剤および酸化防止剤の固体を可塑剤に溶解した。ITOナノ粒子分散剤は、可塑剤混合物に添加しなかった。樹脂に添加したサリチル酸マグネシウム力価に加えて、いくつかの追加の酢酸カリウム力価を樹脂に添加して、以下の表2に示す全酢酸カリウム力価を達成した。
【0091】
[0088]試料11、12、13、および14(ITOを含むサリチル酸マグネシウム)の場合、サリチル酸マグネシウムを伴って押出すための可塑剤混合物には、可塑剤(TEG-EH)、UV遮断剤、および酸化防止剤のみが含まれていた。サリチル酸マグネシウム力価は、示されているように樹脂に別個に添加した。可塑剤混合物を60℃に加熱して、UV安定剤および酸化防止剤の固体を可塑剤に溶解した。ITOナノ粒子分散剤を可塑剤混合物に添加して、0.1025%または0.1600%のITO%のいずれかの最終ITOナノ粒子濃度を達成した(表2に示す)。樹脂に添加したサリチル酸マグネシウム力価に加えて、いくつかの追加の酢酸カリウム力価を樹脂に添加して、表2に示す全酢酸カリウム力価を達成した。
【0092】
[0089]試料15および16(ITOを含むビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウム)の場合、ビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを40重量%水溶液として使用し、試料15では25力価、試料16では26力価に相当する量で添加した。それぞれの可塑剤混合物を60℃に加熱し、残留水を除去して、他の添加剤、例えば、UV遮断剤および酸化防止剤固体を可塑剤に溶解させた。ITOナノ粒子分散剤を試料15および16のそれぞれの可塑剤混合物に添加し、それぞれの組み合わされた樹脂および可塑剤混合物から押出されたPVBシートにおいて、それぞれ0.1025%および0.1600%のITO%の最終ITOナノ粒子濃度が達成されるようにした。PVB樹脂および添加塩からの添加酢酸カリウム力価は、それぞれ26.9および28.9力価であった。
【0093】
[0090]試料17および18(ITOを含まないビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウム)の場合、溶解したビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを伴う樹脂および可塑剤、UV安定剤および酸化防止剤を混合した。ITOは添加しなかった。PVB樹脂および添加塩からの全酢酸カリウムは、14.1および14.4力価であると測定された。
【0094】
[0091]試料19および20(CWOを含むビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウム)の場合、ビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを40重量%水溶液として使用し、17力価に相当する量で樹脂および可塑剤添加した。それぞれの可塑剤混合物を60℃に加熱し、残留水を除去して、他の添加剤、例えば、UV遮断剤および酸化防止剤固体を可塑剤に溶解させた。CWOナノ粒子分散剤を試料19および20のそれぞれの可塑剤混合物に添加し、それぞれの組み合わされた樹脂および可塑剤混合物から押出されたPVBシートにおいて、それぞれ0.065%および0.041%のCWO%の最終CWOナノ粒子濃度が達成されるようにした。PVB樹脂および添加塩からの添加酢酸カリウム力価は、両試料とも28.3力価であった。
【0095】
[0092]試料21および22(ITOを含むギ酸マグネシウム)の場合、ギ酸マグネシウムを10.0重量%水溶液として使用し、2つの異なるITOレベル0.160%および0.228%に対してそれぞれ27および30力価に相当する量で樹脂および可塑剤に添加した。それぞれの可塑剤混合物を60℃に加熱し、残留水を除去して、他の添加剤、例えば、UV遮断剤および酸化防止剤固体を可塑剤に溶解させた。ITOナノ粒子分散剤を、それぞれの可塑剤混合物に添加した。PVBシートは、それぞれの組み合わされた樹脂および可塑剤混合物から押出した。PVB樹脂および添加塩からの添加酢酸カリウム力価は、試料21および22についてそれぞれ29.0および32.0力価であった。
【0096】
[0093]試料23および24(ITOを含むビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウム)の場合、ビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムを40重量%水溶液として使用し、ITOレベル0.1079%に対してそれぞれ28および23力価に相当する量で樹脂および可塑剤に添加した。2つの異なる可塑剤(35%ジプロピレングリコールジベンゾエート/65%3GEH)の可塑剤混合物またはブレンドを使用した。それぞれの可塑剤混合物を60℃に加熱し、残留水を除去して、他の添加剤、例えば、UV遮断剤および酸化防止剤固体を可塑剤に溶解させた。ITOナノ粒子分散剤を、それぞれの可塑剤混合物に添加した。PVBシートは、それぞれの組み合わされた樹脂および可塑剤混合物から押出した。PVB樹脂および添加塩からの添加酢酸カリウム力価は、試料23および24についてそれぞれ26.0および28.0力価であった。
【0097】
【0098】
[0094]表2の押出されたシートのACA滴定の結果が示すように、試料15および16、ならびに試料23および24(ITOを含むビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウム)は、ITOを含まない試料またはサリチル酸マグネシウムもしくはギ酸マグネシウムを使用した試料と比較して、有意に上昇した結合%または加水分解%を有する。本発明のサリチル酸マグネシウムおよびギ酸マグネシウムACAは、ITOの存在下での押出中の加水分解に効果的に抵抗し、結合%を低く維持した(すなわち、25%未満の結合%または20%未満の結合%または15%未満の結合%)。
【0099】
[0095]それぞれのカルボン酸マグネシウム塩を配合するために使用したそれぞれのカルボン酸のpKaを、表3に示す。
【0100】
【0101】
[0096]許容可能な接着レベルを維持しながら結合率または加水分解を低減または防止するために、本発明者は、従来の接着制御剤であるビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウム(対応するカルボン酸のpKaが、約4.82であるカルボキシレート基を有する)の代わりに、異なるマグネシウム塩(対応するカルボン酸のpKaが、約4.80未満であるカルボキシレート基を有する)を接着制御剤として使用することで、マグネシウム塩ACAの結合率または加水分解を低減させ、許容可能な接着レベルを生じさせることを見出した。
【0102】
[0097]前述のように、このマグネシウム塩は、2価のマグネシウムと少なくとも1つのカルボキシレート基であるマグネシウム塩を含むカルボン酸マグネシウム塩であり、一般式M(R’COO)nに由来し、式中、Mはマグネシウムなどの金属であり、nは1、2、3、または4などの整数である。本発明のマグネシウム塩は、具体的には、式M(R’COO)nを有し、式中、Mはマグネシウムであり、nは2であり、R’は1から20個の炭素原子を有する有機基である。有機基は、例えば、アルキル、アリールまたは複素環基であってもよい。マグネシウム塩はまた、対応する水和物を含む。実施形態では、対応するカルボン酸のpKaは、約2.00から約4.80未満の範囲内である。実施形態では、対応するカルボン酸のpKaは、2.00超、2.10超、2.20超、2.30超、2.40超、2.50超、2.60超、2.70超、2.80超、2.90超、3.00超、3.10超、3.20超、3.30超、3.40超、3.50超、3.60超、または3.70超である。実施形態では、対応するカルボン酸のpKaは、4.70未満、4.60未満、4.50未満、4.40未満、4.30未満、4.20未満、4.10未満、または4.00未満である。
【0103】
[0098]本発明のカルボン酸マグネシウム塩は、概して、水酸化マグネシウム(または酸化マグネシウム)と2-エチルヘキサン酸(「2-EHA」)よりも強い酸との反応から合成され、この酸は、標準的または一般的に使用される接着制御塩(RSS5)の1つを生成するために使用される酸である。他の公知の接着制御塩または接着制御剤(「ACA」)には、限定するものではないが、米国特許第5,728,472号(その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるACA、残留酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ビス(2-エチル酪酸)マグネシウム、および/またはビス(2-エチルヘキサン酸)マグネシウムが含まれる。
【0104】
[0099]2-EHAよりも強い酸を使用することにより、塩基性(反応性)の低いマグネシウム塩が得られる。一般的な反応は以下のとおりである。
【0105】
[00100]Mg(OH)2+2(R’COOH)-≫Mg(ROO)2+2H2O(式中、R’は、アルキル、アリールまたは複素環基などの1から20個の炭素原子を有する有機基である)。
【国際調査報告】