IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-5095354-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸アルキルの調製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】4-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸アルキルの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/33 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
C07D307/33 340
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553361
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022054924
(87)【国際公開番号】W WO2022184611
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21160525.8
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントン・リスチンスキー
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・モリアナ・エライス
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・ヘムベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェームズ・フォード
(57)【要約】
本発明は、4-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸アルキル(I)の新規な調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R1は、(C1~C4)アルキルである)
の化合物を調製する方法であって、一般式(II)
【化2】
(式中、
R2は、(C1~C4)アルキルである)の化合物が、一般式(III)
【化3】
(式中、R1は先に定義した通りである)の化合物とともに、MOtBu
(式中、Mはアルカリ金属イオンである)の添加によって一般式(IV)
【化4】
(式中、R1は先に定義した通りである)の環化生成物を与え、
これが、非加水分解条件下で脱アルコキシカルボニル化を経て反応して一般式(I)の化合物を形成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、およびMOtBuの化合物の基の定義が以下の通りであることを特徴とする、請求項1に記載の方法:
R1は、エチルまたはメチルであり、
R2は、エチルまたはメチルであり、
Mは、ナトリウムまたはカリウムである。
【請求項3】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、およびMOtBuの化合物の基の定義が以下の通りであることを特徴とする、請求項1に記載の方法:
R1は、メチルであり、
R2は、メチルであり、
Mは、ナトリウムである。
【請求項4】
環化が0℃~70℃で行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
環化が40℃~60℃で行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
環化のための溶媒が、THF、トルエン、またはMe-THFであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
無水溶媒が環化のために使用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
環化中にMOtBuが0.5~8時間かけて添加されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
環化中にMOtBuが計量供給されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記脱アルコキシカルボニル化における試薬/溶媒がAcOHであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸アルキル(I)の新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の4-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸メチルは、農薬(国際公開第2018/228985号参照)活性物質の重要な前駆体である。
【0003】
式(I)の4-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸メチルの合成は、例えばHelv.Chim.Acta 1959、1177および国際公開第2016/205633号から知られている。しかしながら、(Z)-ブテン二酸ジメチルから出発する場合、式(I)の4-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボン酸メチルを調製するために3つの反応ステップが必要であり、これは収率の低下を伴う。さらに、先行技術で使用される試薬(例えば、ナトリウム粉末、NaH、TMSCHN2、CH2N2)は、工業規模の合成には適していない。これは、これらの化学物質の大規模での安全な取り扱いが困難であるか、またはこれらの化学物質の毒性が高いためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/228985号
【特許文献2】国際公開第2016/205633号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Helv.Chim.Acta 1959、1177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の先行技術に照らして、本発明の目的は、2つの反応ステップのみで一般式(II)および(III)の化合物から出発して、大規模な製造にも適した一般式(I)の化合物の調製方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、一般式(I)
【化1】
(式中、
R1は、(C1~C4)アルキルである)
の化合物を調製する方法であって、一般式(II)
【化2】
(式中、
R2は、(C1~C4)アルキルである)の化合物が、一般式(III)
【化3】
(式中、R1は先に定義した通りである)の化合物とともに、MOtBu
(式中、Mはアルカリ金属イオンである)の添加によって一般式(IV)
【化4】
(式中、R1は先に定義した通りである)の環化生成物を与え、
これが、非加水分解条件下で脱アルコキシカルボニル化を経て反応して一般式(I)の化合物を形成することを特徴とする、方法によって達成される。
【0008】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、およびMOtBuの化合物の基の好ましい定義は、以下の通りである:
R1は、エチルまたはメチルであり、
R2は、エチルまたはメチルであり、
Mは、ナトリウムまたはカリウムである。
【0009】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、およびMOtBuの化合物の基の特に好ましい定義は、以下の通りである:
R1は、メチルであり、
R2は、メチルであり、
Mは、ナトリウムである。
【0010】
方法の説明:
一般式(I)の化合物を調製するための反応条件を以下に詳細に説明する。
スキーム1
【化5】
【0011】
一般式(II)の化合物は、MOtBuの存在下で一般式(III)の化合物と反応して一般式(IV)の環化生成物を形成し、これは、非加水分解条件下で脱アルコキシカルボニル化を経て反応して一般式(I)の化合物を形成する。
【0012】
環化後、実際の生成物、すなわち一般式(IV)の化合物に加えて、反応混合物中に一般式(III)の残留反応物および一般式(V)の中間体も存在し得る。
【0013】
一般式(II)および(III)の化合物は、市販されている。一般式(III)の化合物は、驚くべきことに、E異性体またはZ異性体の形態で使用することができる。このことは、文献からは知られていない。反応条件下で、E異性体とZ異性体との間の異性化が起こる。
【0014】
一般式(I)の化合物は、立体中心を有する。その結果、生成物はラセミ体の形態で存在する。
【0015】
環化:
環化は先行技術から知られており、先行技術ではNaHまたはナトリウム粉末を用いて行われる(Helv.Chim.Acta 1959、1177;国際公開第2016/205633号)。これらの試薬は、大規模での安全な取り扱いが困難であるため、工業規模の合成には適していない。
【0016】
本発明による方法の収率は、先行技術に記載のNaHまたはナトリウム粉末を使用する方法の収率(30%未満)よりも高い(30%超)。さらに、tert-ブトキシド塩基の使用は、この反応が工業規模でも使用可能であることを意味する。
【0017】
高収率を達成するための利点は、MOtBuのゆっくりとした添加である。
【0018】
MOtBuの添加は、好ましくは0.5~8時間にわたって、より好ましくは3~5時間にわたって行われる。
【0019】
MOtBuと一般式(II)の化合物とのモル比は、0.8~3当量、好ましくは0.9~1.2当量である。
【0020】
一般式(II)の化合物と一般式(III)の化合物とのモル比は、0.8~3当量、好ましくは0.9~1.2当量である。
【0021】
温度は、広範囲に変化させてよく、例えば、溶媒によって決まる。温度は、反応について、好ましくは0℃~70℃、非常に特に好ましくは40℃~60℃である。
【0022】
反応は、通常、溶媒中、好ましくはTHF、トルエン、またはMe-THF中で行われる。好ましくは、これは無水(「乾燥」または純)溶媒である。
【0023】
脱アルコキシカルボニル化(Organic Reactions、第81巻):
硫酸の水溶液を用いる場合(Helv.Chim.Acta 1959、1177;国際公開第2016/205633号参照)、非加水分解性の反応条件、例えば無水反応条件下で4-オキソテトラヒドロフランカルボン酸へのエステル開裂/脱炭酸が起こるのに対して、一般式(I)の化合物中のエステルは存在したままである。このことは、先行技術においてCH2N2を用いて行われる新たなエステル化の追加のステップの必要がないことを意味する。その結果、先行技術において必要な、水から単離することが困難な4-オキソテトラヒドロフランカルボン酸の度重なる抽出の必要もない。
【0024】
その結果、収率を実質的に増加させることができる(先行技術で硫酸を用いた場合の75%に対して95%超)。ジアゾメタンなどの有毒な試薬を使用しないで済ますことができる。
【0025】
試薬(表1参照)は、場合により溶媒と組み合わせて過剰量で使用される。好ましくは、試薬は溶媒としても使用される。
【0026】
反応の温度は、試薬/溶媒によって決まる。
【0027】
表1は、これらの反応条件のいくつかを例として列挙しているが、これらに限定されない。
【0028】
【表1】
【実施例
【0029】
本発明を以下の実施例によってより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0030】
測定方法
生成物を1H-NMRによって特徴付けた。
【0031】
実施例1
【化6】
4-オキソテトラヒドロフラン-2,3-ジカルボン酸メチル
108gのグリコール酸メチル(1.2mol)および172gのマレイン酸ジメチル(1.2mol)を、800mLのTHFとともに、加熱/冷却ジャケットを備えた容器(2L)に加える。混合物を50℃に加熱し、次いで、NaOtBu 120g(1.25mol)のTHF(800mL)溶液を3時間かけて添加する。最初の数分の間、内部温度は53℃に上昇し、次いで50℃のままとなる。塩基の約15%を添加した後、反応混合物は濁り、固体が沈殿する。塩基の添加の終わりに、反応混合物を50℃でさらに1時間撹拌し、次いで-1℃に冷却する。次いで、これに酢酸215g(3.6mol)を20分間かけて添加する。反応混合物の温度は6℃に上昇する。次いで、反応混合物を1℃に冷却し、47.1gのHClガスを液面下に45分間かけて導入する。反応混合物の温度は8.5℃に上昇する。THF溶媒を50mbarの圧力および50℃の温度で蒸留により除去する。残っているのは油である。
【0032】
4-オキソテトラヒドロフラン-2-ジカルボン酸メチル
前の反応ステップからの油を酢酸200mLに添加し、生成した固体をろ別する。ろ液を6時間かけて118℃に加熱する。次いで、酢酸を50℃で4mbarの圧力で留去する。生成物を蒸留によって精製する。生成物は、油(87.4g、46%)である。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6):δ (ppm) = 4.97 (dd, J = 8.8, 5.1 Hz, 1H), 4.02 (d, J = 16.7 Hz, 1H), 3.99 (d, J = 16.7 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 2.88 (dd, J = 18.2, 8.8 Hz, 1H), 2.60 (dd, J = 18.2, 5.1 Hz, 1H).
【0033】
【表2】
【国際調査報告】