(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】強磁性ゲルを使用して表面又は気体媒体を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
G21F9/28 521
G21F9/28 511C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553363
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 FR2022050337
(87)【国際公開番号】W WO2022184996
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・ゴサール
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・フランス
(72)【発明者】
【氏名】ユベール-アレクサンドル・テュルク
(57)【要約】
無機増粘剤、強磁性化合物及び溶媒を含むコロイド溶液からなる無機強磁性ゲルを使用して基材の表面を除染するための方法又は気体媒体を除染する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料の基材の少なくとも1つの表面を除染するための方法であって、前記表面は、前記基材の第1の層において前記表面上及び/又は前記表面下(表面下部)に位置する少なくとも1つの汚染種で汚染されており、以下の連続工程:
a)無機増粘剤、強磁性化合物及び溶媒を含むコロイド溶液からなる無機強磁性ゲルを前記表面に適用し、次に、前記表面に適用された前記ゲルを、磁石を使用して距離を置いて移動させて広げる工程;
b)前記ゲルを、少なくとも、前記ゲルが前記汚染種を破壊及び/又は不活化及び/又は分解及び/又は吸収し、前記ゲルが乾燥して、前記表面上の前記汚染種を含有する乾燥固体残留物を形成するのに十分な時間、前記表面上に維持する工程;
c)前記汚染種を含有する前記乾燥固体残留物を、磁石を使用して移動させ、前記表面上に集め、前記汚染種を含有する前記乾燥固体残留物を回収する工程、
を含む少なくとも1つのサイクルを実行する、方法。
【請求項2】
固体材料の前記基材が、金属及び金属合金、例として、ステンレス鋼、塗装鋼、アルミニウム、及び鉛;プラスチック材料又はゴム等のポリマー、例として、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリカーボネート(PC);ガラス;セメント及びセメント質材料;モルタル及びコンクリート;しっくい;レンガ;天然又は人工石;セラミックス、から選択される材料のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲルを、面積1m
2当たりゲル100g~2000g、好ましくは面積1m
2当たりゲル500~1500g、更により好ましくは面積1m
2当たり600~1000gの比率で除染すべき前記表面に適用し、これは、一般に、前記表面上に堆積されるゲルの厚さ0.5mm~2mmの間に相当する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)中、磁石を使用して、2mm~2cmのゲル厚さを前記表面上に維持する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)中、前記ゲルを、噴霧によって、ブラッシングによって、又はコテによって前記表面に適用し、次に、前記表面に適用された前記ゲルを、磁石を使用して距離を置いて移動させ、広げる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面がパイプ又はダクトの内表面であり、前記ゲルを、前記パイプ又はダクトの入口の前記内表面に堆積させ、次に、前記パイプ又はダクトの外表面付近又は外表面上に配置された磁石を使用して、前記表面上に移動させて広げる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
浮遊汚染種で汚染されたある体積の気体媒体を除染するための方法であって、前記体積の気体媒体が固体基材の少なくとも1つの表面と接触しており、以下の連続工程:
a)無機増粘剤、強磁性化合物及び溶媒を含むコロイド溶液からなる無機強磁性ゲルを、微細な液滴の前記体積の気体媒体中に噴霧し、それによりミストを形成する工程;
b)前記浮遊汚染種を、強磁性ゲルの前記液滴によって捕捉し、取り込む工程;
c)捕捉された前記浮遊汚染種を含む強磁性ゲルの前記液滴を、前記固体基材の前記表面の決められた領域上に堆積して蓄積するまで、磁石の作用下で移動させる工程;
d)前記ゲルを、少なくとも前記ゲルが乾燥して、捕捉された前記浮遊汚染種を含有する乾燥固体残留物を形成するのに十分な時間、前記固体基材の前記表面の決められた領域上に維持する工程;
e)前記捕捉された浮遊汚染種を含有する前記乾燥固体残留物を回収する工程、
を含む、方法。
【請求項8】
気体媒体の前記体積が、前記表面を形成する床、天井及び壁等の仕切りによって画定される密閉体積であり、微細な液滴の前記ミストが、密閉空間全体を充填し、捕捉された前記浮遊汚染種を含有する強磁性ゲルの前記微細な液滴が、少なくとも1つの仕切り上、好ましくは床等の下部仕切り上に堆積する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微細な液滴が、1~1000μm、好ましくは5~200μmの、直径等の最大寸法によって規定されるサイズを有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記浮遊汚染種が、固体粒子、液体粒子の形態、又は分子種の形態である、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記汚染種、又は前記複数の汚染種が、イオン性、化学、生物、核又は放射性汚染種から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つの汚染種、又は前記複数の汚染種が、放射性及び/若しくは化学的に有毒であり、並びに/又はその(それらの)形状及び/若しくはサイズにより有毒である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記汚染種又はその(それらの)形状及び/又はサイズにより有毒である前記汚染種が、固体粒子の形態、例としてマイクロ粒子若しくはナノ粒子、例えば繊維の形態、例としてマイクロファイバー若しくはナノファイバー、ナノチューブの形態、又はナノクリスタル等の結晶の形態の汚染種から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記汚染種、又は前記複数の汚染種が、金属、メタロイド又はイオン形態の金属及びメタロイド、好ましくはいわゆる「重金属」、並びに金属、メタロイド又はイオン形態の有毒金属及びメタロイド;これらの金属及びメタロイドの化合物、例として有機金属化合物、金属塩、金属酸化物、金属炭化物等;セラミックス;木材;穀物;小麦粉;アスベスト;及び、例えばガラスウールの形態のガラス、から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記乾燥固体残留物を、磁石を使用して、及び/又はブラッシングによって、及び/又は吸引、例えば磁石を備えた吸引装置を使用して回収する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コロイド溶液が、以下の成分:
- 界面活性剤;
- 活性除染剤;
- 気体汚染種、特に水素等の有毒又は爆発性の気体汚染種を捕獲するためのゲッター;
- 高吸水性ポリマー;
- 汚染種抽出剤、
から選択される1種又は複数種の成分を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コロイド溶液が、
- 前記ゲルの質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~25質量%、更により好ましくは8質量%~20質量%の、少なくとも1種の無機増粘剤;
- 前記ゲルの質量に対して、0.1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%の少なくとも1種の強磁性化合物;
- 任意選択で、前記ゲルの質量に対して0.05質量%~2質量%の少なくとも1つの界面活性剤;
- 任意選択で、0.05~10mol/Lのゲル、好ましくは0.1~5mol/Lのゲル、更により好ましくは1~2mol/Lのゲルの、少なくとも1種の活性除染剤;
- 任意選択で、気体汚染種、特に水素等の有毒又は爆発性の気体汚染種を取り込み、捕獲する、前記ゲルの質量に対して0.1質量%~5質量%の少なくとも1種のゲッター;
- 任意選択で、前記ゲルの質量に対して0.05質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%の少なくとも1種の高吸水性ポリマー;
- 任意選択で、前記ゲルの質量に対して0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の汚染種抽出剤;
- 及び残りの溶媒であって、その量が前記ゲルの質量に対して少なくとも20質量%である溶媒、
を含む、好ましくはそれらからなる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機増粘剤が、アルミナ等の金属酸化物、シリカ等のメタロイド酸化物、金属水酸化物、メタロイド水酸化物、金属オキシ水酸化物、メタロイドオキシ水酸化物、アルミノケイ酸塩、スメクタイト等のクレイ、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤が、湿潤特性、乳化特性、及び洗剤特性のうちの1つ又は複数を有する界面活性剤;及びそれらの混合物から選択される、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記界面活性剤が、アルコールアルコキシレート、アルキルアリールスルホネート、アルキルフェノールエトキシレート、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドをベースとしたブロックコポリマー、エトキシ化アルコール、エーテルホスフェート、エトキシ化酸、グリセロールエステル、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩(quat)、アルカノールアミド、アミン酸化物及びそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記強磁性化合物が、強磁性金属、例として鉄、コバルト、及びニッケル;強磁性合金、例としてホイスラー合金、及び永久磁石、例としてネオジム、若しくはジスプロシウム等の希土類永久磁石、又はコバルト永久磁石を形成する合金;並びにフェライト、から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記活性除染剤が、塩基、例として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの混合物;酸、例として硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、シュウ酸水素ナトリウム等のシュウ酸水素塩、及びこれらの混合物;酸化剤、例として過酸化物、過マンガン酸塩、過硫酸塩、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、セリウムIV塩及びこれらの混合物;第四級アンモニウム塩、例としてヘキサデシルピリジニウム(セチルピリジニウム)クロリド等のヘキサデシルピリジニウム(セチルピリジニウム)塩;還元剤;並びにこれらの混合物から選択される、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、水;テルペン及びアルコール等の有機溶媒;並びにそれらの混合物から選択される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1つの目的は、強磁性除染ゲルを使用して表面又は気体媒体を除染するための方法である。
【0002】
本発明による方法で使用されるゲルは着磁性ゲルであり、すなわち、それらは磁石によって生成される磁場に対して敏感である。
【0003】
本発明による方法で使用されるゲルはまた、一般に吸引可能なゲルである。
【0004】
本発明は、第1に、強磁性除染ゲルを使用して表面を除染する方法に関する。
【0005】
本発明による表面を除染するための方法により、金属材料、プラスチック材料、鉱物及びガラス質材料の表面等、あらゆる種類の表面を除染することができる。
【0006】
本発明による表面を除染するための方法は、とりわけ、多孔質材料、例としてモルタル及びコンクリート等のセメント質材料、レンガ、石膏、並びに天然石又は人造石、の表面を除染するのに特に適用可能である。
【0007】
本発明による表面を除染するための方法により、あらゆる種類の汚染種(汚染物質(contaminant)又は汚濁物質(pollutant)とも呼ばれる)、特にイオン性、化学、生物、核又は放射性汚染種を除去することができる。
【0008】
本発明はまた、気体媒体中に浮遊する汚染種で汚染されたこれらの気体媒体を除染するための方法にも関する。
【0009】
気体媒体は空気であってもよく、この場合、本発明による方法は大気汚染除去方法と呼ばれる。
【0010】
浮遊汚染種又は汚染物質、特に上記の汚染種であり得るものは、特に固体粒子、液体粒子の形態、又は更には分子種の形態であり得る。
【0011】
より正確には、本発明による気体媒体を除染するための方法により、これらの浮遊汚染物質を捕捉、捕獲、引き戻し、及び固体表面上に結合させることができ、場合によってはこの表面を除染することができる。
【0012】
本発明の技術分野は、一般に、表面上及び/又は基材の第1の層に埋め込まれていて表面下(表面下部)に見出され、又は気体媒体中に浮遊しており、表面上及びこれらの基材の第1の層に埋め込まれている表面下(表面下部)のその存在、又はこれらの気体媒体中に浮遊しているその存在が、望ましくない、汚濁物質及び汚染物質を除去することを目的とした、乾式プロセスによる基材の表面又は気体媒体の汚染除去の技術分野として定義することができる。
【0013】
換言すれば、本発明の技術分野は、イオン性、生物又は化学除染、消毒、クリーニング、表面の脱脂、並びに固体及び大気の除染の分野である。
【0014】
本発明による表面又は気体媒体を除染するための方法は、多数の多様な用途を有し、産業及び家庭の両方の多くの活動分野に関係する。
【0015】
より具体的には、本発明による方法は、除染、核施設の解体、及び表面汚染の場合の核施設の保守の分野で使用することができる。
【背景技術】
【0016】
「吸引可能な」除染ゲルは、鉱物粒子、例えばシリカ粒子又はアルミナ粒子の濃縮コロイド懸濁液である。これらの鉱物粒子は、液体溶液用の粘性ゲル化剤として機能する。ゲルの溶液には、1種又は複数種の除染試薬及び、場合によっては、特にレオロジー特性の調整が可能になる、界面活性剤等の共増粘剤が含まれている。これらの種々の成分を選択して、適合した装置を使用して容易に堆積させるか又は噴霧することができるゲルを配合する。
【0017】
吸引可能なゲルにより、乾燥廃棄物の粉末状の性質に関連する問題を回避することができ、ゲルを実施する方法の効率を高めることが可能になる。
【0018】
これらのゲルは現在、(1)表面の処理、より正確には除染、(2)気体媒体の処理、より正確には除染、特に大気除染、という2種の用途向けに開発されている。
【0019】
(1)吸引可能なゲルを使用した表面処理。
表面処理の範囲では、ゲルを、処理される表面上に薄層として堆積させるか又は噴霧する。そのレオロジー特性により、ゲルは、あらゆる種類の仕切りに、垂直仕切りであっても、これに流れずに付着する。ゲルの配合中に除染試薬が存在すると、表面層上で腐食作用又は溶解作用を起こすことが可能になり、埋め込まれた汚染物質が放出される。その後、汚染物質はゲル内で可溶化及び/又は吸収される。最終的に、ゲルは乾燥して破砕され、汚染物質を含有する「フレーク」と呼ばれる非粉末状の固体残留物が生成される。これらのフレークは、乾燥プロセス、特に吸引によって容易に除去されるため、「吸引可能な」ゲルと呼ばれている。いわゆる「BC」ゲル等の一部の活性成分によって、生物及び/又は化学汚染を分解して、これを無害にすることも可能になる。
【0020】
したがって、これらの吸引可能なゲルを実施する除染方法は、乾式表面除染方法であり、液体廃棄物が発生せず、乾燥固体残留物がほとんど発生しない。実際、これらの乾燥固体残留物は、平均して、最初に噴霧されたゲルの質量の4分の1のみを占める。加えて、これらの方法は、噴霧して乾燥残留物を吸引することにより実施するのが容易であり、ゲルの乾燥中に作業者の立ち会いが必要ないため、作業者が放射性汚染にさらされる時間が制限される。
【0021】
吸引可能なゲルを使用した表面処理は、さまざまな用途の範囲内で実施されている。
【0022】
実際、ゲルの配合を適合させることで、核除染、表面除染又は脱脂[1~2]、生物表面除染[3]、又は固体基材の表面に堆積した有機層の除去[4]、の作業に使用することができる。
【0023】
どのような用途の分野であっても、吸引可能なゲルは、2段階法を使用して適用される。
【0024】
第1の工程:処理される表面にゲルを適用する。
この適用は、さまざまな方法で実行することができる:
- コテの使用による手作業。この技術は、スパチュラ又はコテを使用して表面上にゲルを堆積させ、コーティングのように広げることで構成される。この技術は、小さな平面上で実行するのが容易である。しかし、表面が大きい場合、又は形状がより複雑である場合、適用するのは困難になる。例えば、作業者が配管又はダクト内にゲルの層を広げることは不可能であるか、又は非常に困難である。加えて、汚染された表面の近くに作業者が存在する必要があり、これは特に核又は生物除染作業の範囲では問題となる可能性がある。
- 噴霧による。この技術は、噴霧装置を使用してゲルを堆積することで構成されており、特に大きな平面上でのゲル層の適用が容易になり、迅速化する。しかし、作業者がダクトの内側又は配管の内側等、噴霧装置から放出されるジェットが届きにくい表面にジェルを適用することは不可能である。
【0025】
より一般的には、例えば、壁又は床等、表面に容易にアクセスできる場合には、ゲルのコテ適用と噴霧適用の両方が非常に良好な技術である。しかし、ダクトの内側等の届きにくい領域では、ゲルを適用するのは不可能ではないにしても非常に複雑になるため、液体溶液又は発泡体が好ましい。しかし、これらの溶液及び発泡体は、汚染された液体廃棄物を生成するため、液体廃棄物処理ステーション(LETS)での処理に適合させるか、環境に放出する必要がある。
【0026】
第2の工程:残留物、乾燥廃棄物の回収。
ゲルの適用、表面上でのゲルの作用(除染、脱脂等)、及び乾燥の後、吸引可能なゲルは乾燥廃棄物である残留物を形成する。次に、これらの残留物は以下のように回収することができる:
- 手作業で、ブラシ及びシャベルを使用して、残留物を好適なコンテナに移す。この手作業は、作業者にとって特に困難かつ反復的であり、汚染にさらされる時間が長くなり、特に核又は生物除染作業の場合には特に問題となる。
- 又は、電気吸引装置を使用し、これには、作業者と汚染を含有する残留物との間の密接な接触を回避し、残留物を適合したコンテナに直接入れるという利点がある。しかし、吸引作業により粒子が再浮遊する可能性がある。したがって、THEフィルターは吸引装置の出口で使用する必要があり、追加の二次廃棄物となる。加えて、固体残留物が、多くの場合、非常に嵩高い吸引装置にアクセスできない領域に存在する場合、固体残留物の回収は複雑になる可能性がある。
【0027】
(2)吸引可能なゲルを使用した気体媒体及び雰囲気の処理。
文献[5]には、浮遊汚染種で汚染された空気等の気体媒体を除染する方法が記載されており、この方法では、微細な液滴をこの気体媒体に噴霧して無機ゲルのミストを形成する。次に、汚染種が取り込まれ、ゲル液滴によって捕捉され、液滴は気体媒体を囲む体積の仕切り(壁、床、天井)に堆積して付着する。したがって、堆積した液滴はゲル層を形成し、最終的には乾燥して、取り込まれた浮遊汚染種を含有する乾燥残留物を形成する。
【0028】
したがって、この方法により、気体媒体中に浮遊する汚染物質を捕捉して結合することができるが、この方法にはいくつかの欠点がある。
- 一部の液滴は、場合によっては非常に微細であるため、落下するまでに長時間かかり、数時間浮遊したままになる可能性があり、その結果、除染作業が非常に長くなる可能性がある。
- 通気導管等の狭い容積の除染は、ゲルミストが形成される場所が噴霧装置固有の制限を受け、そのような容積にアクセスできないため、問題が生じる可能性がある。
- 一部の敏感な表面では、多くの場合、ゲル液滴の付着を避ける必要があるが、噴霧の精度によってはこれが可能ではない。
- 特にアクセスが困難な領域に液滴が堆積している場合、汚染物質を含有する最終固体廃棄物の回収が複雑になる場合がある。
- 非常に微細な液滴の生成により、特に吸引回収方法を使用する場合、再浮遊する可能性のある小さな固体廃棄物の形成につながる可能性がある。
【0029】
したがって、上記を考慮すると、ゲル、特に吸引可能なゲル(このゲルがコテ又は噴霧を使用して適用されるかどうかにかかわらず)を実施して、表面を除染するための方法、及びある体積の気体媒体を除染するための方法が必要であり、これらの方法は、上で述べたような従来技術の方法の欠陥、欠点、及び不利な点を有さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
上述したような従来技術の方法の問題に対する解決策を提供する、ゲルを実施する汚染除去方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この目的及び他の目的は、本発明によれば、固体材料の基材の少なくとも1つの表面を除染するための方法であって、前記表面は、基材の第1の層において前記表面上及び/又は前記表面下(表面下部)に位置する少なくとも1つの汚染種で汚染されており、以下の連続工程:
a)無機増粘剤、強磁性化合物及び溶媒を含むコロイド溶液からなる無機強磁性ゲルを前記表面に適用し、次に、表面に適用されたゲルを、磁石を使用して、距離を置いて移動させて広げる工程;
b)ゲルを、少なくとも、ゲルが汚染種を破壊及び/又は不活化及び/又は分解及び/又は吸収し、ゲルが乾燥して、表面上の前記汚染種を含有する乾燥固体残留物を形成するのに十分な時間、表面上に維持する工程;
c)前記汚染種を含有する乾燥固体残留物を、磁石を使用して移動させ、表面上に集め、前記汚染種を含有する乾燥固体残留物を回収する工程、
を含む少なくとも1つのサイクルを実行する、方法によって達成される。
【0033】
したがって、基材は固体であり、この基材の表面も固体である。
【0034】
有利には、固体材料の基材は、金属及び金属合金、例として、ステンレス鋼、塗装鋼、アルミニウム、及び鉛;プラスチック材料又はゴム等のポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリカーボネート(PC);ガラス;セメント及びセメント質材料;モルタル及びコンクリート;しっくい;レンガ;天然又は人工石;セラミックス、から選択される材料のものであり得る。
【0035】
汚染種は、イオン性、化学、生物、核又は放射性汚染種から選択されてもよい。
【0036】
特に、汚染種は、ゲルの説明及び気体媒体を除染するための方法の説明において以下に列挙するすべての汚染種から選択されてもよい。
【0037】
特に、汚染種は、一価及び多価の金属イオン、特に有毒な一価及び多価金属イオン、例としてクロム(VI)イオン、ニッケル(II)イオン、銀(I)イオン、カドミウム(II)イオン、水銀(II)イオン、ヒ素(III)イオン、及び鉛(II)イオンから選択されるイオン性汚染種であり得る。
【0038】
汚染種は、細菌、真菌、酵母菌、ウイルス、毒素、胞子、特にバチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)胞子、プリオン及び原生動物から選択される生物汚染種であり得る。
【0039】
特に、生物汚染種は、生物毒性種、例として病原性胞子、例えばバチルス・アントラシス胞子、毒素、例えばボツリヌス毒素又はリシン、細菌、例としてエルシニア・ペスト(Yersinia pestis)細菌、プリオン、及びウイルス、例としてコロナウイルス、ワクシニアウイルス又は出血熱ウイルス、例えばエボラ出血熱ウイルス、から選択されてもよい。
【0040】
汚染種は、有毒化学種、例として有毒ガス、特に神経毒性又は糜爛性ガス、特に有機リン化合物、例としてサリン又はGB剤、VX、タブン又はGA剤、ソマン、シクロサリン、ジイソプロピルフルオロホスホネート(DFP)、アミトン又はVG剤、パラチオン、マスタードガス又はH剤若しくはHD剤、ルイサイト又はL剤、T剤、から選択されてもよい。
【0041】
汚染種は、放射性及び/若しくは化学的に有毒であり得、並びに/又はその形状及び/若しくはサイズにより有毒であり得る。
【0042】
その形状及び/又はサイズにより有毒である汚染種は、固体粒子の形態、例としてマイクロ粒子若しくはナノ粒子、例えば繊維の形態、例としてマイクロファイバー若しくはナノファイバー、ナノチューブの形態、又はナノクリスタル等の結晶の形態の汚染種であり得る。
【0043】
特に、汚染種は、アスベストであってもよい。
【0044】
有利には、無機強磁性ゲルは、面積1m2当たりゲル100g~2000g、好ましくは面積1m2当たりゲル500~1500g、更により好ましくは面積1m2当たり600~1000gの比率で除染すべき表面に適用することができ、これは、一般に、表面上に堆積されるゲルの厚さ0.5mm~2mmの間に相当する。
【0045】
有利には、工程b)中、磁石を使用して、ゲルの大きな厚さ、例えば2mm~2cmの厚さを表面上に維持することができる。
【0046】
これにより、腐食の深さが増大し、除染の効果を増大させることができる。
【0047】
有利には、工程a)中、無機強磁性ゲルを、噴霧によって、ブラッシングによって、又はコテを用いて前記表面に適用し、次に、表面に適用されたゲルを、磁石を使用して距離を置いて移動させ、広げる。
【0048】
有利には、除染される表面は、噴霧によって、ブラッシングによって、又はコテによって、到達するのが困難であるか又は不可能でもある表面、例えばパイプ又はダクトの内表面であってもよい。
【0049】
次に、無機強磁性ゲルを、パイプ又はダクトの入口の内表面に堆積させ、次に、パイプ又はダクトの外表面付近又は外表面上に配置された磁石を使用して、内表面上に移動させて広げる。
【0050】
有利には、乾燥は、1℃~50℃、好ましくは15℃~25℃の温度、及び20%~80%、好ましくは20%~70%の相対湿度下で実行する。
【0051】
有利には、ゲルを、2~72時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは4~24時間表面上に維持する。
【0052】
有利には、乾燥固体残留物は、サイズが1~10mm、好ましくは2~5mmの粒子、例えばフレークの形態である。
【0053】
有利には、前記汚染種を含有する乾燥固体残留物を、磁石を使用して、及び/又はブラッシングによって、及び/又は吸引によって、例えば磁石を備えた吸引装置を使用して回収する。
【0054】
有利には、このサイクルを、すべてのサイクルで同じゲルを使用するか、又は1回若しくは複数回のサイクルで異なるゲルを使用して、1~10回繰り返す。
【0055】
本発明はまた、浮遊汚染種で汚染されたある体積の気体媒体を除染するための方法であって、前記体積の気体媒体が固体基材の少なくとも1つの表面と接触しており、以下の連続工程:
a)無機増粘剤、強磁性化合物及び溶媒を含むコロイド溶液からなる無機強磁性ゲルを、微細な液滴の前記体積の気体媒体中に噴霧し、よってミストを形成する工程;
b)浮遊汚染種を、強磁性ゲルの前記液滴によって捕捉し、取り込む工程;
c)捕捉された浮遊汚染種を含む強磁性ゲルの液滴を、固体基材の前記表面の決められた領域上に堆積して蓄積するまで、磁石の作用下で移動させる工程;
d)ゲルを、少なくともゲルが乾燥して、捕捉された浮遊汚染種を含有する乾燥固体残留物を形成するのに十分な時間、固体基材の表面の決められた領域上に維持する工程;
e)前記捕捉された浮遊汚染種を含有する乾燥固体残留物を回収する工程、
を含む、前記方法に関する。
【0056】
気体体積を除染するための本発明による方法のいくつかの態様、特に工程a)及びb)に関しては、文献[5]又は対応する国際PCT出願を参照することができる。
【0057】
有利には、気体媒体は、空気であってもよい。
【0058】
有利には、気体媒体の体積は、前記表面を形成する床、天井及び壁等の仕切りによって画定される密閉体積であってもよく、微細な液滴のミストは、密閉空間全体を充填し、捕捉された前記浮遊汚染種を含有する強磁性ゲルの微細な液滴が、少なくとも1つの仕切り上、好ましくは床等の下部仕切り上に堆積する。
【0059】
有利には、微細な液滴は、1~1000μm、好ましくは5~200μmの、直径等の最大寸法によって規定されるサイズを有する。
【0060】
浮遊汚染種は、表面を除染する方法を説明する際、既に上に列挙した、及びゲルを説明する以下で列挙したすべての汚染種から選択されてもよいが、イオン性種は一般的に例外である。
【0061】
浮遊汚染種は、固体粒子、液体粒子の形態、又は分子種の形態であり得る。
【0062】
汚染種は、化学、生物、核又は放射性汚染種から選択されてもよい。
【0063】
浮遊汚染種は、放射性汚染種及び/若しくは化学的に有毒であり得、及び/又はそれらの形状及び/若しくはサイズにより有毒であり得る。
【0064】
それらの形状及び/又はサイズにより有毒である浮遊汚染種は、固体粒子の形態、例としてマイクロ粒子若しくはナノ粒子、例えば繊維の形態、例としてマイクロファイバー若しくはナノファイバー、ナノチューブの形態、又はナノクリスタル等の結晶の形態の汚染種から選択されてもよい。
【0065】
特に、浮遊汚染種は、金属、メタロイド又はイオン形態の金属及びメタロイドから、好ましくはいわゆる「重金属」、並びに金属、メタロイド又はイオン形態の有毒金属及びメタロイド;これらの金属及びメタロイドの化合物、例として有機金属化合物、金属塩、金属酸化物、金属炭化物等;セラミックス;木材;穀物;小麦粉;アスベスト;及び、例えばガラスウールの形態のガラス、から選択されてもよい。
【0066】
特に、浮遊汚染種は、アスベストであってもよい。
【0067】
有利には、前記捕捉された浮遊汚染種を含有する乾燥固体残留物を、磁石を使用して、及び/又はブラッシングによって、及び/又は吸引によって、例えば磁石を備えた吸引装置を使用して回収することができる。
【0068】
有利には、磁石は電磁石である。
【0069】
実際、少なくとも1つの表面を除染するための方法の工程a)若しくは工程c)の間、又はある体積の気体媒体を除染するための方法の工程e)の間、すなわちゲルを広げるとき、又は、固体乾燥残留物を回収するときに電磁石を使用することは、除染方法を容易にする、なぜなら:
- 電磁石のスイッチをオフにし、規定された目的の領域に到達するまで非作動にして、その後ゲルを移動させる場合にのみ作動させることができる。これにより、ゲルが実施される場所によっては有害である可能性がある寄生磁化が回避されるからである。
- 同様に、電磁石を作動させて廃棄物及び固体残留物を回収し、その後非作動にして固体廃棄物を放出し、これを好適なコンテナに移すことができるからである。
【0070】
有利には、磁石を、遠隔処理又は遠隔操作によって動かす。
【0071】
実際、磁石を使用してゲルを広げ、回収することは、作業者が実行することができるが、遠隔操作で行うこともできる。実際、ひどく汚染されているためアクセスが困難な領域の場合、吸引可能なゲルを噴霧することにより実施して吸引するよりも、遠隔処理で磁石を使用してゲルを堆積させ、それを広げて固体廃棄物を回収する方がはるかに容易である。
【0072】
表面を除染するため、及び気体媒体を除染するための両方のための、本発明による方法は、無機増粘剤、強磁性化合物及び溶媒を含むコロイド溶液からなる無機強磁性ゲルである特定のゲルを実施する。
【0073】
「強磁性化合物」とは、磁場の作用に敏感な化合物、より正確には磁石によって生成される磁場の作用に敏感な化合物、特に磁石によって引き付けられるか、又は永久磁石を形成することができる化合物を意味する。
【0074】
本発明による方法で実施されるゲルは、強磁性化合物を含有するため、「強磁性ゲル」と呼ばれる場合がある。
【0075】
本発明による方法で実施されるゲルは、強磁性化合物を含有するため、磁石によって生成される磁場の作用に敏感であり、磁石によって引き付けられ、移動することができるので、「着磁性ゲル」と呼ぶこともできる。
【0076】
「ゲル」という用語は、当業者には完全に明らかであり、広く許容されている意味を有する。
【0077】
しかし、一般に、ゲルの粘度は0.1Pa.s以上であると考えることができる。
【0078】
一般に、溶媒の量はゲルの質量に対して少なくとも20質量%であり、そうでないと一般にゲルは得られず、むしろ磁石によって正確に移動させることができない、非常にペースト状で結合していない混合物が得られるからである。
【0079】
本発明による方法で実施されるゲルは、無機鉱物増粘剤を含むという点で、無機鉱物ゲルと呼ばれる。
【0080】
一般に、ゲルは増粘剤としてこの無機鉱物増粘剤のみを含有しており、有機増粘剤を含有していない。
【0081】
本発明による方法で実施されるゲルは、一般に「吸引可能なゲル」として規定することができる。
【0082】
「吸引可能なゲル」という用語は、この技術分野で一般的に使用されており、以下に説明するように広く許容されている意味を有する。
【0083】
吸引可能なゲルは、吸引可能でないゲルとは本質的に異なっている。
【0084】
本発明による方法で実施される除染ゲル中の強磁性化合物の存在は、本発明による方法を従来技術の方法と区別する基本的な特徴の1つである。
【0085】
強磁性化合物が組み込まれた除染ゲルを実施する除染方法は、特に上記文献[1]~[5]に代表される従来技術文献には記載も示唆もされていない。
【0086】
したがって、本発明による方法で実施されるゲルは、強磁性化合物が加えられた従来の吸引可能なゲルとして規定することができる。
【0087】
強磁性化合物を含有する特定の除染ゲルを実施する本発明による方法よって、特にゲル中のこの強磁性化合物の存在により、従来技術の吸引可能なゲルを使用して表面及び気体媒体を除染するための方法のすべての欠点を克服すること、及びこれらの方法によって引き起こされる問題の解決策を提供すること、が可能になる。
【0088】
従来技術の方法とは異なり、本発明による方法で実施されるゲル中の強磁性化合物の存在は、ゲルを、磁場の作用下で、例えば磁石で強磁性ゲルを引き付けることによって容易に移動させることができることを意味する。強磁性ゲルを、磁場の作用、例えば磁石によって生成される磁場によって容易に移動させることができるという事実は、本明細書に記載されているように、表面及び気体媒体を除染するための方法の範囲内で多くの利点をもたらし、これらの方法が抱えていた問題を克服することが可能になる。
【0089】
加えて、ゲルの乾燥によって生成された固体残留物も、磁場、例えば磁石によって生成される磁場の作用下で容易に移動させて回収することができ、このことは、本明細書に記載されているように、表面及び気体媒体を除染するための方法の文脈の中で多くの利点ももたらし、これらの方法が抱えていた問題を克服することが可能になる。
【0090】
本発明による方法で使用される吸引可能なゲルは、吸引可能なゲルとして知られているすべての有利な特性を有し、これらの有利な特性は、これらのゲルに強磁性化合物を添加しても影響を受けず、それ自体が他の有利な特性を提供する。
【0091】
特に、この強磁性化合物をゲルに添加しても、吸引可能なゲルを調製する工程を決して変えるものではない。
【0092】
強磁性化合物は使用が容易であり、本発明によるゲルを調製する際の撹拌工程中に、粒子の形態で、本発明による方法で実施されるゲル配合物に組み込まれる。
【0093】
強磁性化合物を添加しても、特にレオロジー及び乾燥中の破砕に関して、ゲルの物理化学的挙動が大幅に改変されないことに注意することも重要である。
【0094】
その結果、ゲル配合物は、意図された用途に応じて、所望のゲルの質感に容易に適合させることができる。ゲルの配合は、除染ゲルの酸性、塩基性、及び溶媒媒体に適合する。
【0095】
本発明による方法は、本発明による方法で実施される除染ゲル中の強磁性化合物の存在に関連して多くの利点を有する。とりわけこれらの利点がある:
- 汚染された表面にゲルを適用する場合:
永久磁石又は電磁石を使用してゲルを移動させることができる。この作業は、以下のように実行することができる:
- 遠隔から、ゲルの上で磁石を動かして均質な層を形成するか、
- 又は、除染する表面の反対側に磁石を配置して仕切りを介して実行することもでき、これは、例えばダクトの内側にゲルを広げることができるため、極めて有利である。
【0096】
一般的に言えば、磁石を使用してゲルを移動することができるため、特に噴霧によってアクセスが困難又はアクセス不可能な表面上に、ゲルの層を堆積させることが可能になる。
【0097】
磁石を使用すると、ゲルを特定の領域(例えば、表面上のホットスポット)上にかなりの厚さで維持し、流動を回避することもできる。これにより、表面をより深く除染することができる。
【0098】
- 大気除染の場合:
ゲルの微細な液滴を引き付けて、浮遊エアロゾルを磁石で捕捉することができる。これにより、最も微細な液滴が落下するため、大気除染作業を加速させることができ、これがなければ、液滴は数時間浮遊したままになる可能性がある。
【0099】
ゲル液滴の雲を磁石で引き付けることによって移動させることができる。これは、通気導管等の狭い容積の内側を除染するのに有利であり得る。
【0100】
- ゲルが乾燥した後の固体廃棄物の回収の場合:
磁石を備えた吸引装置を使用してゲル残留物を回収すると、大流量(抽出要件の軽減)及びTHEフィルターを必要とせずに、固体廃棄物を回収することが可能になる。
【0101】
それによって、関与する流れに起因する粉末粒子の再浮遊の可能性も回避される。
【0102】
残留物をまた、電磁石を使用して磁化された表面上に残留物を集め、その後「ゴミ箱」コンテナの上で電磁石を非作動にすることによって、吸引することなく簡単に回収することもでき、残留物は分離してコンテナ内に直接落ちる。
【0103】
表面近くを通過するだけで残留物を回収することができる速度は、作業者が曝露される時間が短縮されることを意味する。
【0104】
磁石を使用すると、固体廃棄物の回収が、遠隔処理又は遠隔操作によって、吸引装置を使用するよりも容易に達成される。
【0105】
有利には、コロイド溶液は、以下の成分:
- 界面活性剤;
- 活性除染剤;
- 気体汚染種、特に水素等の有毒又は爆発性の気体汚染種を捕獲するためのゲッター;
- 高吸水性ポリマー;
- 汚染種抽出剤
から選択される1種又は複数種の成分を更に含む。
【0106】
好ましくは、コロイド溶液は:
- ゲルの質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%、更により好ましくは5質量%~25質量%、更に良好には8質量%~20質量%の、少なくとも1種の無機増粘剤;
- ゲルの質量に対して、0.1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%の少なくとも1種の強磁性化合物;
- 任意選択で、ゲルの質量に対して0.05質量%~2質量%の少なくとも1つの界面活性剤;
- 任意選択で、0.05~10mol/Lのゲル、好ましくは0.1~5mol/Lのゲル、更により好ましくは1~2mol/Lのゲルの、少なくとも1種の活性除染剤;
- 任意選択で、気体汚染種、特に水素等の有毒又は爆発性の気体汚染種を取り込み、捕獲する、ゲルの質量に対して0.1質量%~5質量%の少なくとも1種のゲッター;
- 任意選択で、ゲルの質量に対して0.05質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%の少なくとも1種の高吸水性ポリマー;
- 任意選択で、ゲルの質量に対して0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の汚染種抽出剤;
- 及び残りの溶媒であって、その量がゲルの質量に対して少なくとも20質量%である溶媒を含む、好ましくはそれらからなる。
【0107】
ゲルを構成する全成分の質量百分率の合計は、明確に100質量%となる。
【0108】
「溶媒残留物」とは、溶媒がコロイド溶液中に常に存在しており、溶媒の量が、溶媒以外のコロイド溶液の成分の量に加えられる場合、(これらの成分が上記の必須成分か、任意選択の成分であるか、又は言及されているかもしく言及されていないその他の任意選択の追加成分であるかにかかわらず)、コロイド溶液の全成分の総量が100質量%であるような量であることを意味する。
【0109】
ゲルが、上記の任意選択の成分の1種又は複数種を含有する必要はないことに留意すべきである。実際、溶媒、増粘剤及び強磁性化合物のみを含むゲルをうまく使用することができ、これにより、上に列挙した効果及び利点を達成することが可能になる。
【0110】
換言すれば、好ましくは、コロイド溶液は:
- ゲルの質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%、更により好ましくは5質量%~25質量%、更に良好には8質量%~20質量%の、少なくとも1種の無機増粘剤;
- ゲルの質量に対して、0.1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%の少なくとも1種の強磁性化合物;
及び以下の成分から以下の割合で選択される、1種又は複数種の成分:
- 任意選択で、ゲルの質量に対して0.05質量%~2質量%の少なくとも1つの界面活性剤;
- 任意選択で、0.05~10mol/Lのゲル、好ましくは0.1~5mol/Lのゲル、更により好ましくは1~2mol/Lのゲルの、少なくとも1種の活性除染剤;
-任意選択で、気体汚染種、特に水素等の有毒又は爆発性の気体汚染種を取り込み、捕獲する、ゲルの質量に対して0.1質量%~5質量%の少なくとも1種のゲッター;
- 任意選択で、ゲルの質量に対して0.05質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%の少なくとも1種の高吸水性ポリマー;
- 任意選択で、ゲルの質量に対して0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の汚染種抽出剤; - 及び残りの溶媒であって、その量がゲルの質量に対して少なくとも20質量%である溶媒を含む、好ましくはそれらからなる。
【0111】
換言すれば、又は好ましくは、コロイド溶液は:
- ゲルの質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%、更により好ましくは5質量%~25質量%、更に良好には8質量%~20質量%の、少なくとも1種の無機増粘剤;
- ゲルの質量に対して、0.1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%の少なくとも1種の強磁性化合物;
- 及び残りの溶媒であって、その量がゲルの質量に対して少なくとも20質量%である溶媒を含む、好ましくはそれらからなる。
【0112】
本発明による方法で実施されるゲル中の界面活性剤の存在は、ゲルのレオロジー特性に有利かつ顕著な影響を与える。特に、この界面活性剤は、ゲルが、適用又は噴霧後のゲルの粘度を回復すること、又は微細な液滴の形態での霧化又は噴霧化を助け、ゲルを垂直面及び天井に適用又は堆積するときに広がるか又は流出するリスクを回避する。
【0113】
ゲル内に少なくとも1種の活性除染剤が存在することにより、汚染種を除去、破壊、不活化、死滅、又は抽出することができる。
【0114】
ゲル中に少なくとも1種の汚染種抽出剤が存在すると、汚染種の捕捉及び結合が促進される。
【0115】
ゲル中に少なくとも1種の高吸水性ポリマーが存在することにより、汚染物質、汚濁物質が細孔の奥深くまで浸透した場合に、多孔質表面、特にセメント質材料上のゲルの除染性能を改善することが可能になる。
【0116】
本発明による方法で実施されるゲルはコロイド溶液であり、これは、本発明によるゲルが増粘剤の固体無機鉱物粒子を含有し、その基本的な一次粒子のサイズが一般に2nm~20μmの間、好ましくは2nm~200nmの間であることを意味する。
【0117】
有機増粘剤を一切使用せず、一般に無機増粘剤を専ら使用するため、本発明により実施されるゲルの有機物含有量は、一般に4質量%未満、好ましくは2質量%未満であり、これは、本発明により実施されるゲルの利点である。
【0118】
これらの無機鉱物固体粒子は増粘剤として作用し、これにより溶液、例えば水溶液のゲル化が可能になる。
【0119】
有利には、無機増粘剤は、アルミナ等の金属酸化物、シリカ等のメタロイド酸化物、金属水酸化物、メタロイド水酸化物、金属オキシ水酸化物、メタロイドオキシ水酸化物、アルミノケイ酸塩、スメクタイト等のクレイ、及びそれらの混合物から選択されてもよい。
【0120】
特に、無機増粘剤は、アルミナ(Al2O3)及びシリカ(SiO2)から選択されてもよい。
【0121】
無機増粘剤は、単一のシリカ若しくはアルミナのみを含んでもよく、又はそれらの混合物、すなわち、2種以上の異なるシリカの混合物(SiO2/SiO2混合物)、2種以上の異なるアルミナの混合物(Al2O3/Al2O3混合物)、或いは、1種又は複数種のシリカと1種又は複数種のアルミナの混合物(SiO2/Al2O3混合物)を含んでもよい。
【0122】
有利には、無機増粘剤は、熱分解法シリカ、沈降シリカ、親水性シリカ、疎水性シリカ、酸性シリカ、Rhodia社から市販されているTixosil(登録商標)73シリカ等の塩基性シリカ、及びこれらの混合物から選択されてもよい。
【0123】
酸性シリカの中でも、特に、CABOT(登録商標)社から市販されている熱分解法又はヒュームドシリカ「Cab-O-Sil」(登録商標)M5、H5又はEH5、及びEVONIK INDUSTRIES(登録商標)社からAEROSIL(登録商標)として市販されている熱分解法シリカに言及することができる。
【0124】
これらの熱分解法シリカの中でも、最低限の鉱物装填量で最大の増粘特性をもたらす、380m2/gの比表面積を有するAEROSIL(登録商標)380シリカが好ましい。
【0125】
使用されるシリカはまた、例えば、ケイ酸ナトリウム溶液と酸を混合することによる湿式プロセスによって得られる、いわゆる沈降シリカであってもよい。好ましい沈降シリカは、EVONIK INDUSTRIES(登録商標)社からSIPERNAT(登録商標)22 LS及びFK 310として、又はRHODIA(登録商標)社からTIXOSIL(登録商標)331として市販されており、後者は、平均比表面積が170~200m2/gである沈降シリカである。
【0126】
有利には、無機増粘剤は、沈降シリカと熱分解法シリカの混合物からなる。
【0127】
アルミナは、か焼アルミナ、粉砕か焼アルミナ及びこれらの混合物から選択されてもよい。
【0128】
有利には、無機増粘剤は、一般にゲルの総質量に対して5質量%~30質量%である、1種又は複数種のアルミナからなり得る。
【0129】
この場合、アルミナは、好ましくは、20℃~50℃の間の温度及び20%~60%の間の相対湿度での、平均30分~5時間のゲルの乾燥を確実にするために、ゲルの総質量に対して8質量%~17質量%の濃度である。
【0130】
有利には、アルミナは、熱分解法アルミナ、好ましくは微細粒熱分解法アルミナから選択されてもよい。
【0131】
例として、熱分解法微細アルミナである、EVONIK INDUSTRIES(登録商標)社から商品名「Aeroxide Alumina C」で販売される製品に言及することができる。
【0132】
無機鉱物増粘剤の性質は、限定されるものではないが特に、無機鉱物増粘剤が1種又は複数種のアルミナからなる場合、本発明による方法で実施されるゲルの乾燥、及び得られる残留物の粒径に予想外に影響を与える。
【0133】
これは、増粘剤が1種又は複数種のシリカ、より一般的には上述の1種又は複数種の金属酸化物又はメタロイド酸化物からなる場合にも当てはまる。
【0134】
この特性はアルミナに限定されたものではなく、吸引可能なゲルに共通の一般的な特性である。
【0135】
実際に、乾燥ゲルは、制御されたサイズの粒子、より詳細にはミリメートルサイズの固体フレークの形態であり、そのサイズは、特に前述の組成のために、専らではないが特に、増粘剤が1種又は複数種のアルミナからなる場合、一般に1~10mm、好ましくは2~5mmの範囲である。
【0136】
ここでもまた、これは、増粘剤が1種又は複数種のシリカ、より一般的には上述の1種又は複数種の金属酸化物又はメタロイド酸化物からなる場合にも当てはまる。
【0137】
粒径は、一般に、その粒子の最大寸法に対応することに留意すべきである。
【0138】
換言すれば、例えば、シリカ又はアルミナのタイプの、本発明により実施されるゲルの鉱物固体粒子は、その増粘剤の役割に加えて、フレークの形態の乾燥廃棄物を最終的に得るためのゲルの破砕を確実にするため、ゲルの乾燥中の基本的な役割も果たす。
【0139】
本発明による方法で実施されるゲルは活性除染剤を含有してもよい。
【0140】
この活性除染剤は、汚染種の性質:この汚染種が化学種、生物種、或いは核種、放射性種であるか、換言すれば、この除染剤は、任意の「NRBC」(核、生物、放射能性、化学)除染剤であってもよく、又はこの汚染種が、有機若しくは鉱物の液体若しくは固体であるか、にかかわらず、汚染種を除去することが可能な任意の活性除染剤であってもよい。
【0141】
したがって、本発明による方法で実施されるゲルは、生物活性又は化学或いは核又は放射性活性除染剤を含有してもよい。
【0142】
活性除染剤は、基材の表面上、及び/又は基材の第1の層に(表面から)埋め込まれた、表面の下(表面下)、基材の深部に存在する汚染種を除去するために、脱脂剤、剥離剤、又は腐食剤であってもよい。
【0143】
一部の活性除染剤は、いくつかの除染機能を同時に実行することができる。
【0144】
殺生剤とも称される場合がある生物除染剤は、生物種、特に有毒な生物種と接触したときに、それを不活化又は破壊する可能性が高いあらゆる薬剤を意味する。
【0145】
生物種は、細菌、真菌、酵母菌、ウイルス、毒素、胞子、特にバチルス・アントラシス胞子、プリオン及び原生動物等の、あらゆるタイプの微生物を意味する。
【0146】
本発明による方法で使用されるゲルによって除去、破壊、又は不活化される生物種は、本質的に、生物毒性種、例として病原性胞子、例えばバチルス・アントラシス胞子、毒素、例えばボツリヌス毒素又はリシン、細菌、例えばエルシニア・ペスト細菌、及びウイルス、例えばコロナウイルス、ワクシニアウイルス又は出血熱ウイルス、例えばエボラタイプのもの、である。
【0147】
化学除染剤とは、化学種、特に有毒な化学種と接触したときに、それを破壊又は不活化する可能性が高いあらゆる薬剤を意味する。
【0148】
本発明による方法で実施されるゲルによって除去される化学種は、特に有毒化学種、例として有毒ガス、特に神経毒性又は糜爛性ガスである。
【0149】
これらの有毒ガスは、特に有機リン化合物であり、例えば、サリン又はGB剤、VX剤、タブン又はGA剤、ソマン、シクロサリン、ジイソプロピルフルオロホスホネート(DFP)、アミトン又はVG剤、及びパラチオンである。他の有毒ガスは、マスタードガス、H剤若しくはHD剤、ルイサイト又はL剤、T剤である。
【0150】
活性除染剤、例えば活性生物又は化学除染剤は、塩基、例として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの混合物;酸、例として硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、シュウ酸水素ナトリウム等のシュウ酸水素塩、及びこれらの混合物;酸化剤、例として過酸化物、過マンガン酸塩、過硫酸塩、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、セリウムIV塩及びこれらの混合物;第四級アンモニウム塩、例としてヘキサデシルピリジニウム(セチルピリジニウム)クロリド等のヘキサデシルピリジニウム(セチルピリジニウム)塩;還元剤;並びにこれらの混合物から選択されてもよい。
【0151】
例えば、活性除染剤は、ゲルに除染、生物及び/又は化学除染特性を与える漂白剤等の消毒剤であってもよい。
【0152】
一部の活性除染剤を、上で定義したカテゴリーのいくつかに分類してもよい。
【0153】
したがって、硝酸は酸であるが、酸化剤及び腐食剤でもある。
【0154】
殺生物剤等の活性除染剤は、ゲルの乾燥時間と適合する除染力、例えば、生物種、特に生物毒性種を抑制する能力を保証するために、例えば、20℃~50℃の間の温度及び20%~60%の間の相対湿度での、平均30分~5時間のゲルの乾燥を確実にするために、一般に、0.05~10mol/Lのゲル、好ましくは0.1~5mol/Lのゲル、更により好ましくは1~2mol/Lのゲルの濃度で使用される。
【0155】
乾燥時間に対して最も不都合な温度及び湿度条件下を含めて完全な効力を達成するために、ゲルの配合は、さまざまな活性剤濃度を支持する。実際、除染剤、特に酸性又は塩基性除染剤の濃度を増加させると、方法の効率が増大することに注目することができる。
【0156】
活性除染剤は、酸又は酸の混合物であってもよい。これらの酸は、一般に、鉱酸、例として塩酸、硝酸、硫酸及びリン酸から選択される。
【0157】
硝酸等の酸には、汚染物質を含有する固体基材の表面層を除去することが可能になる腐食作用がある(実施例5を参照のこと)。
【0158】
換言すれば、酸は一般に、汚染された基材、特に金属基材の第1の層に(表面から)埋め込まれた汚染を放出するための腐食力のために使用される。
【0159】
酸は、一般に、20℃~50℃の間の温度及び20%~60%の間の相対湿度での、平均30分~5時間のゲルの乾燥を確実にするために、好ましくは0.5~10mol/L、より好ましくは1~10mol/L、更に良好には3~6mol/Lの濃度で存在する。
【0160】
このタイプの酸性ゲルでは、無機増粘剤は、好ましくは、シリカ又はシリカの混合物である。
【0161】
或いは、活性除染剤、例えば、生物活性除染剤は、塩基、好ましくは、好ましくはソーダ、カリ及びこれらの混合物から選択される鉱物塩基であってもよい。
【0162】
そのような塩基性ゲル配合物の場合、本発明による方法で実施されるゲルは、除染作用に加えて、基材の表面上の考えられる汚染種を除去することも可能にする脱脂作用を有する。
【0163】
既に上記で言及されたように、ゲルの乾燥時間に対して最も不都合な気候条件下を含めて完全な効力を達成するために、本発明による方法で実施されるゲルは、塩基性除染剤の広範な濃度範囲を有することができる。
【0164】
実際に、一般に殺生物剤として作用するNaOH又はKOH等の塩基性除染剤の濃度を増加させると、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)胞子について実証されているように、生物種の阻害率を相当に増加させることができる。
【0165】
塩基は、有利には、20℃~50℃の間の温度及び20%~60%の間の相対湿度での、平均30分~5時間のゲルの乾燥を確実にするために、10mol/L未満、好ましくは0.5~7mol/Lの間、更により好ましくは1~5mol/Lの間、更に良好には3~6mol/Lの間の濃度で存在する。
【0166】
このタイプのアルカリ性、塩基性ゲルでは、無機増粘剤は、好ましくはアルミナ又はアルミナの混合物である。
【0167】
除染剤は、特に、生物除染剤である場合、好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0168】
例えば、温度の関数としての胞子阻害動力学及びゲル乾燥時間に関して、活性除染剤は、特に殺生物剤の場合、好ましくは、1~5mol/Lの間の濃度の水酸化ナトリウムである。
【0169】
生物除染の場合、好ましい除染剤は、文献[3]に記載されているような鉱物塩基と酸化剤の組合せであり、その説明を参照することができる。
【0170】
ゲルはまた、界面活性剤又は界面活性剤の混合物を含有してもよい。
【0171】
有利には、界面活性剤は、湿潤特性、乳化特性、及び洗剤特性のうちの1つ又は複数を有する界面活性剤;及びそれらの混合物から選択されてもよい。
【0172】
界面活性剤は、アルコールアルコキシレート、アルキルアリールスルホネート、アルキルフェノールエトキシレート、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドをベースとしたブロックコポリマー、エトキシ化アルコール、エーテルホスフェート、軽質及び重質エトキシ化酸、グリセロールエステル、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩(quat)、アルカノールアミド、アミン酸化物及びそれらの混合物、からなる群から選択されてもよい。
【0173】
界面活性剤は、好ましくは、BASF(登録商標)社によってPLURONIC(登録商標)の名称で市販されているブロックコポリマーである。
【0174】
Pluronics(登録商標)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである。
【0175】
一般に、生物除染ゲルにはPluronics(登録商標)が好ましい。
【0176】
酸性ゲル等の腐食作用を必要とする除染ゲルには、他の界面活性剤が好ましい。この点に関しては、文献[1]を参照することができる。
【0177】
界面活性剤は、ゲルのレオロジー特性、特に製品のチキソトロピー性及びその回復時間に影響を与え、流れ落ちの発生を防止する。
【0178】
界面活性剤はまた、乾燥廃棄物の付着を制御し、これにより廃棄物が確実に非粉状であるように乾燥残留物のフレークのサイズを制御することも可能になる。
【0179】
有利には、強磁性化合物は、強磁性金属、例として鉄、コバルト、及びニッケル;強磁性合金、例としてホイスラー合金、及び永久磁石、例としてネオジム、若しくはジスプロシウム等の希土類永久磁石、又はコバルト永久磁石を形成する合金;並びにフェライト、から選択される。
【0180】
強磁性化合物は、一般に粒子、例えば球状又は回転楕円体状の粒子の形態である。
【0181】
これらの粒子は一般に、2nm~20μmのサイズ(直径等の最大寸法によって規定される)を有する。
【0182】
有利には、ゲッターは、活性表面部位を含有する、比表面積が非常に大きい固体、例として、多孔質炭素、例えば活性炭素;ケージ材料粒子、例として、ゼオライト及びMOF粒子;並びに捕獲される汚染種、より詳細には水素と反応することができる鉱物酸化物粒子、例として、酸化マンガン(MnO3、Mn2O3、Mn2O4)及び貴金属酸化物、例えばAg2O又はRuO2から選択される。
【0183】
有利には、汚染種抽出剤は、無機吸着剤、例として、ゼオライト、クレイ、アパタイト等のリン酸塩、チタン酸ナトリウム等のチタン酸塩、並びにフェロシアン化物及びフェリシアン化物から選択される。
【0184】
このゼオライト又はクレイ等の必要に応じた抽出剤は、汚染種が放射性核種である場合に使用することができるが、この必要に応じた抽出剤はまた、例えば、有毒金属又は重金属等の金属等の、放射性核種以外の汚染種の場合にも使用することができる。
【0185】
「SAP」としても知られている「高吸水性ポリマー」とは一般に、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍の質量の水性液体、特に水、及び特に蒸留水を自発的に吸収することができる乾燥状態のポリマーを意味する。
【0186】
このような高吸水性ポリマーは、特に文献WO-A1-2013/092633[7]に記載されており、これを参照することができる。
【0187】
本発明による方法で実施されるゲル用の溶媒は、一般に、水、テルペン及びアルコール等の有機溶媒、並びにそれらの混合物から選択される。
【0188】
好ましい溶媒は水であり、したがってこの場合、溶媒は水からなり、100%水を含む。
【0189】
或いは、本発明による方法で実施されるゲル用の溶媒は、1種又は複数種の有機溶媒、例としてテルペン、特にd-リモネンを含んでもよく、好ましくはそれからなる。
【0190】
本発明による方法で実施されるゲルにおける有機溶媒の使用により、固体基材の表面から、汚染種を含有する有機層(例えば、塗料、コーティング又はビチューメンしみ)を除去することが可能になる。
【0191】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、例示的かつ非限定的な目的でなされた以下の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【
図1】無機強磁性ゲルを使用した、本発明による固体基材表面を除染するための方法により処理することができる固体基材の表面、すなわち配管内側の表面の一例を示す模式図である。
【
図2A】無機強磁性ゲルを使用して固体基材の表面を除染するための、本発明による方法の連続工程を示す概略断面図である。
【
図2B】無機強磁性ゲルを使用して固体基材の表面を除染するための、本発明による方法の連続工程を示す概略断面図である。
【
図2C】無機強磁性ゲルを使用して固体基材の表面を除染するための、本発明による方法の連続工程を示す概略断面図である。
【
図2D】無機強磁性ゲルを使用して固体基材の表面を除染するための、本発明による方法の連続工程を示す概略断面図である。
【
図3A】無機強磁性ゲルを使用して浮遊汚染種で汚染されたある体積の気体媒体を除染するための本発明による方法の連続工程を示す概略断面図である。
【
図3B】無機強磁性ゲルを使用して浮遊汚染種で汚染されたある体積の気体媒体を除染するための本発明による方法の連続工程を示す概略断面図である。
【
図3C】強磁性ゲルを使用して、本発明による方法により実行された除染作業後に得られた乾燥固体廃棄物の、電磁石を使用した回収を示す概略図である。
【
図3D】強磁性ゲルを使用して、本発明による方法により実行された除染作業後に得られた乾燥固体廃棄物の、電磁石を使用した回収を示す概略図である。
【
図4】実施例1で調製した「ゲル4、9、10及び12」と呼ばれるゲルについて、粘度(Pa.s単位)の推移を剪断速度(1/秒単位)の関数として示すグラフである(実施例2を参照のこと)。
【
図5】実施例1で調製した「ゲル4、9、10及び12」と呼ばれるゲルについて、ひずみ(%単位)の関数として剪断応力(Pa単位)の推移を示すグラフである(実施例2を参照のこと)。
【
図6A】実施例1で調製した「ゲル1」と呼ばれるゲルを、それぞれ磁石により広げた写真である(実施例3を参照のこと)。
【
図6B】実施例1で調製した「ゲル2」と呼ばれるゲルを、それぞれ磁石により広げた写真である(実施例3を参照のこと)。
【
図6C】実施例1で調製した「ゲル3」と呼ばれるゲルを、それぞれ磁石により広げた写真である(実施例3を参照のこと)。
【
図6D】実施例1で調製した「ゲル4」と呼ばれるゲルを、それぞれ磁石により広げた写真である(実施例3を参照のこと)。
【
図7A】乾燥前に堆積した、実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルを示す写真である(実施例4を参照のこと)。
【
図7B】乾燥後に堆積した、実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルを示す写真である(実施例4を参照のこと)。
【
図7C】実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルを示し、磁石を使用した乾燥後の乾燥ゲル残留物の回収を示す写真である(実施例4を参照のこと)。
【
図8A】実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルによる鋼プレート表面の腐食を示す写真である。
図8Aは、ゲルのない初期プレートを示す(実施例5を参照のこと)。
【
図8B】実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルによる鋼プレート表面の腐食を示す写真である。
図8Bは、ゲルが堆積したプレートを示す(実施例5を参照のこと)。
【
図8C】実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルによる鋼プレート表面の腐食を示す写真である。
図8Cは、乾燥後のゲルが堆積したプレートを示す(実施例5を参照のこと)。
【
図8D】実施例1で調製された「ゲル13」と呼ばれる着磁性ゲルによる鋼プレート表面の腐食を示す写真である。
図8Dは、乾燥ゲルの固体残留物を除去した後のプレートを示す(実施例5を参照のこと)。
【発明を実施するための形態】
【0193】
(気体媒体の表面及び体積の両方について)本発明による除染方法で実施されるゲルは、周囲温度で容易に調製することができる。
【0194】
例えば、本発明による方法で実施されるゲルは、強磁性化合物を、水、好ましくは脱イオン水等の溶媒、又は溶媒と、既に上に列挙した成分、すなわち:界面活性剤;高吸水性ポリマー;活性除染剤;ゲッター;汚染種抽出剤の中から選択される1種又は複数種の成分との混合物に、好ましくは徐々に添加することによって調製することができる。
【0195】
この混合は、例えば3枚羽根プロペラを備えた機械的撹拌機を使用した機械的撹拌によって実行することができる。回転速度は、例えば200rpmであり、撹拌時間は、例えば3~5分である。
【0196】
強磁性化合物の溶媒又は溶媒と上記成分との混合物への添加は、単に強磁性化合物を前記混合物に注ぐことによって実行することができる。強磁性化合物を添加する場合、溶媒、この強磁性化合物、及び任意選択で上記の成分を含有する混合物を、一般に機械的撹拌下に保持する。
【0197】
この撹拌は、例えば、3枚羽根プロペラを備えた機械的撹拌機を用いて実行することができる。均質な懸濁液が得られるまで撹拌を続ける。
【0198】
次いで、無機増粘剤を、なおも撹拌しながら、この均質な懸濁液に、好ましくは徐々に添加する。
【0199】
撹拌速度は一般に、溶液の粘度が増加するにつれて徐々に増加し、最終的に、例えば、飛散が生じることなくすべての無機増粘剤が添加されたとき、400~600rpmの撹拌速度に達する。
【0200】
無機増粘剤(鉱物)を添加した後、完全に均質なゲルを得るために、例えば2~5分間撹拌をなおも継続する。
【0201】
このようにして調製されたゲルを、使用前に少なくとも1時間静置する。
【0202】
本発明による方法で使用されるゲルを調製するための他のプロトコールは、上記とは異なる順序でゲル成分を添加することにより実施することができることが明らかである。
【0203】
一般に、本発明による方法で実施されるゲルは、上記で規定された微小な液滴の形態で、堆積又は噴霧、霧状化又は霧化することができるように、1000s-1の剪断力下で200mPa.s未満の粘度を有するべきである。
【0204】
粘度回復時間は、一般に1秒以下でなければならず、低剪断粘度は、1mm未満の厚さに堆積又は噴霧したときに、仕切り上に流れないように、10Pa.sより大きくなければならない。
【0205】
このようにして調製された強磁性ゲルは、表面を除染するための方法、又はある体積の気体媒体を除染するための方法に使用することができる。
【0206】
図1、
図2A、
図2B、
図2C及び
図2Dは、強磁性粒子を含有する強磁性ゲルを使用してダクト、パイプ(12)の内表面(11)を除染する方法を示す。この表面には、噴霧又はコテを使用して適用されたゲルは、アクセスすることができない。
【0207】
まず、(
図1及び
図2A)、十分な量の強磁性ゲル(14)を、ダクトの入口(13)において、処理されるダクト(12)の内表面(11)上に堆積させる。
【0208】
次に、磁石(15)を、ダクト(12)の外表面(16)の近くに配置する。
【0209】
次に、磁石が外表面(16)に沿って動かされ(矢印17は磁石の動きを示す)(
図2B)、ゲル(14)が、ダクト(12)の内表面(11)上で距離を置いて広げられる。これにより、ダクト(12)の内表面(11)上にゲルのミリメートル層(18)が形成される。このゲルの層(18)は、内表面(11)を除染するのに必要な時間の間、ダクト(12)の内表面(11)上に残る。
【0210】
次に、ゲル層(18)の乾燥を実行し、それにより、ダクト(12)の内表面(11)上に乾燥ゲル固体残留物(19)が形成される(
図2C)。
【0211】
ゲルが乾燥し、ダクト(12)の内表面(11)が除染されると、磁石(15)を再び使用して、ダクト(12)の内表面(11)から乾燥ゲル固体残留物(19)を回収することができる。
【0212】
このために、磁石はパイプの外表面(16)に沿って動かされる(矢印20は磁石の動きを示す)(
図2C及び
図2D)。乾燥ゲル固体残留物(19)は、まだ強磁性粒子を含有しており、次に、磁石(15)によって引き付けられ、ダクト(12)の出口(21)に向かって移動し、そこで集められ(22)、これを回収することができる(
図2D)。
【0213】
図2Dに示す工程の終了時には、内表面はきれいになり、除染されている。
【0214】
図3A及び
図3Bは、強磁性粒子を含有する強磁性ゲルを使用して、ある体積の気体媒体又は大気を除染するための方法を示す。
【0215】
空気等の気体媒体中に浮遊する汚染種のエアロゾルを取り込むために、強磁性ゲルを、液滴のミストの形態で噴霧する。
【0216】
図3Aは、その中に噴霧された強磁性ゲル液滴(32)を含有する体積(31)を示し、この体積は、上部仕切り(33)、下部仕切り(34)及び側面仕切り(35及び36)によって画定されている(他の2つの側面仕切りは、
図3A及び
図3Bには示されていない)。
【0217】
ゲルの液滴(32)は、汚染種のエアロゾルを取り込み、それらを体積(31)の仕切り(33、34、35、36)上に引き戻す。
【0218】
1つ又は複数の磁石(37)を使用して、除染作業を加速し、又は除染される体積(31)内でゲル液滴(32)を移動させる。
図3Bでは、3つの磁石(37)が実装されている。汚染種を取り込んだ浮遊ゲルの液滴は、磁石に引き付けられ、磁石が配置されている領域に移動する。
【0219】
このようにして、一方では、数時間浮遊したままになり得る非常に微細な液滴の落下を加速することが可能であり、他方では、液滴が凝集して乾燥し、最終的にその体積内に最初から存在する汚染種のエアロゾルを含有する乾燥固体残留物を形成することができる領域を画定することが可能である。
【0220】
図3Bでは、磁石(37)は下部仕切り(34)の近傍に配置されており、浮遊液滴は磁石によって下部仕切り(34)に向かって引き付けられている。矢印(38)は、磁石に引き付けられた浮遊液滴の動きを示している。したがって、液滴はより迅速に下方に引き戻され、下部仕切り(34)上で凝集して乾燥し、この仕切り上に乾燥固体残留物(39)が形成される。
【0221】
図3C及び
図3Dは、強磁性ゲルを使用して、本発明による方法により実行された除染作業後に得られた乾燥固体廃棄物の、電磁石を使用した回収を示す。
【0222】
電磁石を使用すると、汚染及び強磁性化合物を含有する乾燥固体廃棄物の回収が容易になる。
【0223】
第1に、電磁石(310)が作動して、廃棄物、乾燥固体残留物(311)を表面上に引き付けて、それらを回収する(
図3C)。
【0224】
電磁石は磁化された固体残留物内に含まれているため、汚染を広げるいかなるリスクもなく動かすことができる。
【0225】
好適なコンテナ(312)の上に置かれると、電磁石(310)が非作動にされ(非作動は、黒い十字で示されている)、固体残留物(311)がコンテナ(312)内に落下し、最終的に廃棄物に充てることができる。
【0226】
次に、本発明を以下の実施例を参照して説明するが、これらは例示的かつ非限定的な目的で示される。
【実施例】
【0227】
(実施例1)
本発明による方法で実施される強磁性ゲル及び比較ゲルの調製。
この実施例は、本発明による方法で実施される強磁性ゲルの調製、及び実施例2~6で使用される比較ゲルの調製について説明する。
【0228】
本発明による方法で実施される強磁性ゲル(3、4、9、10、12及び13)は、液体、ゲル化剤、増粘剤及び強磁性粒子からなるが、比較ゲル(1及び2)は、液体及び強磁性粒子のみからなる。実施例3は、アルミナ又はシリカ等の増粘剤を含まない比較ゲル1及び2が、本発明による方法で実施される強磁性ゲルの範囲に入らないことを示す。
【0229】
これらのゲルを、以下のプロトコールに従って調製する:
液体、すなわち脱イオン水又は40%硝酸を、まず好適なコンテナ内で秤量する。強磁性化合物、すなわちフェライトを、撹拌しながら液体に徐々に添加して、均質な懸濁液を得る。
【0230】
増粘剤、すなわちアルミナ又はシリカを、順番に、なおも撹拌しながら徐々に添加する。すべての成分が組み込まれたら、ゲルが得られ、混合物をできるだけ均質にするために数分間撹拌したままにする。
【0231】
フェライトは、SIGMA ALDRICH(登録商標)社から市販されている「酸化鉄(II,III)粉末」フェライト、Fe3O4である。
【0232】
アルミナは、比表面積が100m2/g(BET)の熱分解法アルミナである、EVONIK INDUSTRIES AG(登録商標)社から市販されているAeroxide(登録商標)Alu Cアルミナである。
【0233】
シリカは、比表面積が100m2/g (BET)の熱分解法アルミナである、EVONIK INDUSTRIES AG (登録商標)社から市販されているAerosil (登録商標) 380シリカである。
【0234】
このようにして調製されたゲルの配合を以下のTable 1(表1)に示す。
【0235】
【0236】
(実施例2)
本発明による方法で実施される強磁性ゲルのレオロジー特性。
この実施例では、本発明による方法で実施される強磁性ゲルが必要なレオロジー特性:
- 磁石を使用して距離を置いて表面上に広がっている、特性
- ミリメートルの厚さで堆積された垂直表面上で流れずに保持される、特性
を備えていることを実証する。
【0237】
このためには、ゲルは以下のようである必要がある:
- レオ流動化:ゲルが流動できるように、剪断下で粘度が低下する必要がある。
- 降伏応力流体:静止状態では、垂直表面上に保持するためにゲルが流れてはならない。したがって、それらは小さいPaの降伏応力を有する必要がある。降伏応力は、それ未満ではゲルが流動しない(固体のように挙動する)が、それを超えるとゲルが流動する(液体のように挙動する)応力である。
【0238】
これらのレオロジー特性により、噴霧によるゲルの適用も可能になることに留意すべきである。
【0239】
TA Instruments DHR1レオメーターを使用して、粗い平面/平面形状で種々のレオロジー測定を実行した。
【0240】
本発明による方法で実施される強磁性ゲルのレオ流動化の性質の実証。
第1に、ゲルの粘度を、剪断速度の関数として測定した。20s
-1の剪断速度で1分間の事前剪断後、1分間静置し、合計60秒間の時間にわたって0.01s
-1~100s
-1の範囲で連続剪断速度勾配を適用する。
図4は、0.01~100s
-1の間の剪断速度について、本発明による方法で実施される強磁性ゲルの粘度(Pa・s単位)の推移を、剪断速度(s
-1単位)の関数として示す。
【0241】
各ゲルについて、剪断速度に伴う粘度の明らかな低下が
図4において観察され、これは、レオ流動化流体の挙動の特徴である。
【0242】
より具体的には、本発明による方法で実施される強磁性ゲルであり、増粘剤としてアルミナを含む、ゲル4、9及び10については、ゲルの粘度が固体の総質量パーセントとともに増加することが観察される。
【0243】
増粘剤としてシリカを含むゲル12の場合、剪断速度に伴う粘度のわずかにより小さくなった低下が観察される(直線の傾きがより小さい)。
【0244】
したがって、本発明による方法で実施されるすべての強磁性ゲルは、低剪断時(すなわち静止時)では高い粘度を有し、剪断時には非常に低い粘度を有し、これにより磁場の影響下で広げられるか、又は噴霧することができる。
【0245】
実施例1におけるゲルの降伏応力の実証。
低剪断速度(0.00673s
-1)を、ゲルに一定に適用して、静止状態からゲルを変形させて降伏点を決定する。
図5は、一定の低剪断における、ゲルの剪断応力(Pa単位)の推移を、加えられたひずみ(%単位)の関数として表す。
【0246】
各ゲルについて、まず、応力がひずみの関数として急激に増加するため、材料は固体状態(弾性ひずみ)にあることがわかる。これに続いて挙動が変化する:応力が降伏点に達し、材料は液体状態(定常流)に切り替わる。降伏応力はゲル降伏点での応力に対応し、得られた降伏応力値をTable 2(表2)に示す。
【0247】
【0248】
ゲル4は、固相中の質量パーセントがかなり高いため、降伏応力が高くなる。ゲル配合物中の固相の量が減少すると、降伏応力が低下する(ゲル10、次にゲル9)。前と同様、増粘剤を改変すると挙動が変化する。例えば、ゲル12(増粘剤としてシリカを使用)では、21Paという有意な降伏応力を達成するために、より低い質量パーセントの固相が必要である。
【0249】
表面除染作業の状況内では、降伏応力値が10を超えると、磁石を使用して表面上に広げたゲルが流動せず、数ミリメートルの厚さで表面に付着することができる。したがって、この実施例のゲルのうち、ゲル4、10、及び12は着磁性ゲルとして使用することができる。
【0250】
大気除染作業の状況内では、このような降伏応力値により、ゲルは、汚染物質を捕捉した後に表面上に堆積すると、流動せず、数ミリメートルの厚さにわたってこれらの表面に付着することが可能になる。
【0251】
この実施例の結論として、本発明による方法で実施される着磁性ゲル4、10及び12は、表面除染作業のための磁石を使用した遠隔適用だけでなく、大気除染作業用の微細な液滴形態での噴霧にも必要なレオロジー特性を有しているようである。
【0252】
(実施例3)
磁石を使用して実施例1のゲルを広げる
この実施例では、実施例1の着磁性ゲルの広がり特性が、ゲル中の強磁性粒子及び増粘剤の存在に依存することを実証する。
【0253】
このために、まず、ゲル1、2、3、及び4をアルミニウムプレート上に堆積させる。次に、ECLIPSE MAGNETICS社製のタイプN829の円筒形磁石(ネオジム磁石)を使用して、これを、ゲルを広げるためにアルミニウムプレートの反対側の面上にて手作業で動かす。
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、それぞれゲル1、2、3及び4について、最初のゲルスポット(左)及び磁石通過後の形状(右)を示す。
【0254】
- 増粘剤(アルミナもシリカも含まない)を含まない比較ゲル1及び2では、ゲルが破砕によって部分的に移動するか(ゲル1)、又は「滑って」表面に付着しない(ゲル2)ことが観察される。したがって、均質な広がりはなく、このことは、配合物を結合する増粘剤が存在しないことによって説明される。この実施例は、比較ゲル1及び2を、本発明の方法の枠組み内で使用することができないことを明らかに示している。実際、たとえこれらの比較例のゲルが磁化によって移動できたとしても、ミリメートルの厚さのゲル層を堆積することはできない。このためには、アルミナ又はシリカ等の増粘剤の存在が必要である。
【0255】
- 本発明による方法で実施される、増粘剤(アルミナ)を含む強磁性ゲル3及び4の場合:磁石が移動するとゲルはよく広がり、残りが表面上を移動するとゲルのある特定のミリメートルの厚さが支持体に付着する。増粘剤の存在は、配合物を結合するのに役立ち、したがって十分な広がりを保証する。更に、ゲル3よりも固相の質量パーセントが高いゲル4は、あまりよく広がらないことが観察される。実際、同じ磁石を使用する場合、粘度の高いゲルほど広がりにくくなる。したがって、ゲルのレオロジー特性、磁石の強さ、及び広がりやすさの間には関係がある。
【0256】
(実施例4)
乾燥時のゲルの破砕及び乾燥固体廃棄物の回収。
本発明による方法で実施される強磁性着磁性ゲルは、「吸引可能な」ゲルの特性を有するゲルであり、乾燥すると破砕して、乾燥、固体廃棄物を形成し、ブラッシング又は吸引によって容易に回収することができる。
【0257】
この実施例では、本発明による方法で実施される強磁性ゲルを乾燥させることによって得られる乾燥固体廃棄物も、磁化によって遠隔から回収できることを実証する。
【0258】
この実施例の試験は、316Lステンレス鋼パンで実行した。
図7A、
図7B及び
図7Cは、ゲル13(76.2%硝酸溶液及び23.8%固相、実施例1を参照のこと)の厚さ1mmの層の乾燥(25℃及び40%相対湿度で)後の固体廃棄物の形成(
図7B)、及び磁石を使用したこの廃棄物の回収(
図7C)を示す。
【0259】
図7A及び
図7Bでは、ゲル13の層を乾燥させると、ミリメートルサイズの固体廃棄物が形成されることが観察される。2gのゲルが広げられている(
図7A、乾燥前)。ゲル層が完全に乾燥した後(
図7B)、質量の損失は約1.5gと推定される。このことは、ゲル質量のおよそ75%、すなわち液相のほぼすべてが蒸発したことを意味する。
【0260】
図7Cでは、乾燥後に固体廃棄物を回収するために磁石(青いプラスチックで保護されている)が使用されている。すべての廃棄物が磁化によって回収されたことが視覚的に観察される。磁石を通過した後、磁石に付着した残存する廃棄物の量は約0.08g(すなわち4%)と推定される。この廃棄物は、パンの端にある非常に薄い層から発生する。したがって、生成された廃棄物が支持体から容易に分離し、磁化によって引き付けられるように、十分な厚さのゲルが必要である。
【0261】
(実施例5)
本発明による方法で実施される強磁性着磁性ゲルの鋼に対する腐食作用。
この実施例では、本発明による方法で実施される強磁性ゲルの表面上の腐食作用を実証する。
【0262】
ゲル13(実施例1を参照のこと)は、炭素鋼表面を腐食するために使用する。
【0263】
厚さ1mmのゲル13(17.5%硝酸を含む)を、事前に秤量した炭素鋼パンに置く。乾燥後、ゲルフレークを除去し、質量損失を推定するために、パンを再度秤量する。
図8A、
図8B、
図8C、及び
図8Dは、得られた結果を示す。
【0264】
ゲルの堆積及び乾燥後に、表面の明らかな劣化が観察される(
図8D)。次に、0.5588gの質量損失が測定され、このことは、着磁性ゲルが吸引可能なゲルと同じように表面を腐食する可能性があり、したがって表面の除染に使用することができることを明確に実証している。
【0265】
腐食厚さは、以下のように推定する:
- ゲルで覆われた総表面積(パンの底部及び端部)は23.85cm2である。
【0266】
- 使用される鋼の密度は7.8g/cm3である。
【0267】
- 腐食厚さを、質量/(表面積×密度)の比として計算する。
【0268】
これにより、平均でおよそ30μmの腐食厚さが得られる。
【0269】
(実施例6)
本発明による方法で実施される強磁性着磁性ゲルを使用した基材の除染。
この例では、本発明による方法で実施される強磁性着磁性ゲルの放射性除染特性を実証する。
【0270】
硝酸セシウム溶液を調製し、その濃度は原子吸光分光法により2.86mg.L-1に相当すると測定される。次に、2mLのこの溶液をステンレス鋼のパンの底部に堆積させる。次に、溶液を蒸発させる。これにより、5.72mgの133Csで汚染された表面をシミュレートする(137Cs放射性汚染をシミュレートする)。
【0271】
ゲル13(実施例1を参照のこと)の1mm層を、人工的に汚染した表面に適用し、ゲルを乾燥させて固体残留物の形成を観察する。
【0272】
乾燥後、固体残留物を回収して、表面を水ですすぐ。すすぎ水を、原子吸光分光法によって分析して、支持体に付着したままのCsの量、したがって着磁性ゲルの有効性を決定する。
【0273】
分析後、表面すすぎ水中に0.58mgのCsが測定された。次に、除染係数(DF)を計算することができ、これは、DF=初期汚染質量/最終汚染質量として規定する。この試験ではおよそ10のDFが得られ、このことは、本発明による方法で実施される強磁性着磁性ゲルによる表面の放射性除染の有効性を明らかに実証している。
【0274】
(参考文献)
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[3] LUDWIG A.、GOETTMANN F.、FRANCES F.、LEGOFF C.、TANCHOU V.、「Gel alcalin oxydant de decontamination biologique et procede de decontamination biologique de surface utilisant ce gel」:WO-A1-2014/154818。
[4] GOSSARD A., FRANCES F.、「Gel aspirable et procede pour eliminer une contamination conenue dans une couche organique en surface d'un substrat solide」:WO-A1-2018/024990。
[5] GOSSARD A.、TURC H.A.、VENDITTI P.、GRANDJEAN A.、「Procede de decontamination d'un milieu gazeux contamine par des especes contaminantes en suspension」:FR-A1-3083712。
[6] WO-A1-2014/154817。
[7] WO-A1-2013/092633。
【符号の説明】
【0275】
11 内表面
12 ダクト
13 入口
14 ゲル
15 磁石
16 外表面
17 矢印
18 ゲルのミリメートル層
19 乾燥ゲル固体残留物
20 矢印
21 出口
22 収集
31 体積
32 強磁性ゲル液滴
33 上部仕切り
34 下部仕切り
35 側面仕切り
36 側面仕切り
37 磁石
38 矢印
39 乾燥固体残留物
310 電磁石
311 乾燥固体残留物
312 コンテナ
【国際調査報告】