(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】自動車用の制動システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/96 20060101AFI20240226BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240226BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20240226BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B60T8/96
B60T13/74 G
B60T17/18
B60T7/12 D
B60T13/74 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553404
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022055427
(87)【国際公開番号】W WO2022184838
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517271212
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ フランス
【氏名又は名称原語表記】Hitachi Astemo France
【住所又は居所原語表記】126 Rue de Stalingrad, 93700 Drancy, France
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】アクルタム サミー
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス エルナンデス カルロス エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】デルメール ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ラムダン アブデッサメッド
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB03
3D048CC41
3D048CC43
3D048CC49
3D048DD02
3D048HH02
3D048HH13
3D048HH18
3D048HH47
3D048HH50
3D048HH51
3D048HH58
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048QQ07
3D048QQ12
3D048RR01
3D048RR29
3D049BB02
3D049CC02
3D049CC03
3D049CC07
3D049HH02
3D049HH10
3D049HH42
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049HH54
3D049QQ01
3D049QQ04
3D049RR01
3D049RR11
3D246BA02
3D246BA03
3D246BA08
3D246CA03
3D246DA01
3D246DA02
3D246GA01
3D246GC09
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA64A
3D246JB41
3D246LA12Z
3D246LA16A
3D246LA16B
3D246LA72Z
(57)【要約】
本発明は、自動車用の制動システム(3)に関し、このシステムは、主要制動回路(5)と、パーキングブレーキをかけるように構成された補助電気制動回路(7)と、i)第1の制動部材(F1)および第2の制動部材(F2)を作動させるために主要制動回路(5)を制御するとともに、ii)補助電気制動回路(7)内で第1の制動部材(F1)の第1の電動アクチュエータ(13)を制御する第1の電子制御装置(9)と、補助電気制動回路(7)内で第2の制動部材(F2)の第2の電動アクチュエータ(15)を制御する第2の電子制御装置(11)とを含む。本発明はまた、このような制動システム(3)を含む自動車と、このような制動システム(3)を制御する方法とに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)用の制動システム(3)において、
-主要制動回路(5)と、
-パーキングブレーキをかけるように構成された補助電気制動回路(7)と、
-第1の電子制御装置(9)であって、
i)第1の制動部材(F1)および第2の制動部材(F2)を作動させるために前記主要制動回路(5)を制御し、
ii)前記補助電気制動回路(7)内で前記第1の制動部材(F1)の第1の電動アクチュエータ(13)を制御する、第1の電子制御装置と、
-前記補助電気制動回路(7)内で前記第2の制動部材(F2)の第2の電動アクチュエータ(15)を制御する第2の電子制御装置(11)と、
を含むことを特徴とする制動システム。
【請求項2】
前記制動システムが、
-前記第1の電子制御装置(9)に接続された主要入力と、前記第1の制動部材(F1)の前記第1の電動アクチュエータ(13)に接続された出力とを備えた第1のスイッチ(35)であって、前記第1のスイッチ(35)が、前記第2の電子制御装置(11)に接続された非常用入力を含み、前記第1の電子制御装置(9)が故障した場合に、前記第2の電子制御装置(11)を前記第1の制動部材(F1)の前記第1の電動アクチュエータ(13)に接続するように構成されている、第1のスイッチ(35)と、
-前記第2の電子制御装置(11)に接続された主要入力と、前記第2の制動部材(F2)の前記第2の電動アクチュエータ(15)に接続された出力とを備えた第2のスイッチ(37)であって、前記第2のスイッチ(37)が、前記第1の電子制御装置(9)に接続された非常用入力を含み、前記第2の電子制御装置(11)が故障した場合に、前記第1の電子制御装置(9)を前記第2の制動部材(F2)の前記第2の電動アクチュエータ(15)に接続するように構成されている、第2のスイッチ(37)と、
を含んでいる、請求項1に記載の制動システム(3)。
【請求項3】
前記第1の電子制御装置(9)が前記第1の電動アクチュエータ(13)を制御し、前記第2の電子制御装置(11)が前記第2の電動アクチュエータ(15)を制御して、パーキングブレーキおよび非常走行ブレーキを選択的に実施する、請求項1または2に記載の制動システム(3)。
【請求項4】
前記第1の制動部材(F1)が、自動車の第1の車輪(R1)を制動するように構成され、前記第2の制動部材(F2)が、前記第1の車輪(R1)とは異なる自動車の第2の車輪(R2)を制動するように構成され、前記第1および第2の車輪(R1、R2)が好ましくは自動車(1)の後輪である、請求項1から3のいずれか一項に記載の制動システム(3)。
【請求項5】
前記第1の電子制御装置(9)および第2の電子制御装置(11)が、自動車(1)の車輪(R1-R4)の回転速度を示す信号の処理ユニット(19)と、ダイナミック制動管理/電子安定性制御ユニット(21)とをそれぞれ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の制動システム(3)。
【請求項6】
前記主要制動回路(5)が制動油圧回路であり、前記制動部材(F1-F4)の各々に対して1つの油圧アクチュエータ(12)を含んでいる、請求項1から5のいずれか一項に記載の制動システム(3)。
【請求項7】
さらに、前記主要制動回路(5)のマニュアル制御装置(29)を含んでおり、前記第1の電子制御装置(9)は、前記マニュアル制御装置(29)が運転者(C)のマニュアル制動制御により作動されるとき、前記主要制動回路(5)に付加的な油圧を供給することにより前記マニュアル制御装置(29)をアシストするように構成されている、請求項6に記載の制動システム(3)。
【請求項8】
前記第1の電子制御装置(9)と前記第2の電子制御装置(11)との間にデータ通信バス(25)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の制動システム(3)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の制動システム(3)を含む、好ましくは自動運転車(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の自動車(1)または請求項1から8のいずれか一項に記載の制動システム(3)の制御方法であって、制動制御ステップ(100)に際して:
-主要制動回路(5)の故障が検知されると(110)、前記第1の電子制御装置(9)が前記第1の電動アクチュエータ(13)の非常用制御ステップ(120)を実行し、前記第2の電子制御装置(11)が前記第2の電動アクチュエータ(15)の非常用制御ステップ(130)を実行する、
制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法または、請求項9に記載の自動車(1)もしくは請求項1から8のいずれか一項に記載の制動システム(3)の制御方法であって、制動制御ステップ(100’)に際して:
-前記第1の電子制御装置(9)の故障が検知されると(140)、前記第2の電子制御装置(11)が前記第1の電動アクチュエータ(13)の非常用制御ステップを実行し、
-前記第2の電子制御装置(11)の故障が検知されると(160)、前記第1の電子制御装置(9)が前記第2の電動アクチュエータ(15)の非常用制御ステップ(170)を実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の制動の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、たとえば主要油圧制動回路と、補助電気制動回路と、マニュアル制動部材とを含む自動車用の制動システムが既に知られている。
【0003】
主要油圧制動回路は、たとえば、電動倍力装置または英語で「Electric Brake Booster(電動ブレーキブースタ)」とも呼ばれる電子制御装置により制御される。これは、たとえば自動車の場合のように、ブレーキペダルを踏み込むことによるマニュアル制動制御時あるいは、自動車の運転管理中央処理装置から送られる自動制動制御時に、かけるべき圧力を補助することによって油圧制動圧を増幅可能にするものである。油圧制動回路は、油圧ピストン等の制動部材の油圧アクチュエータを制御する。
【0004】
補助電気制動回路は、電動パーキングブレーキまたは英語で「Electric Parking Brake」機能、さらに好ましくは自動パーキングブレーキまたは英語で「Automatic Parking Brake」機能を果たす。この補助電気制動回路は、制動部材の電動アクチュエータを制御する。
【0005】
油圧および/または電気で作動される制動部材は、自動車の車輪にブレーキをかけるように構成される。そのため、制動部材の各々は、たとえばブレーキパッド等の摩擦手段を備えたブレーキキャリパをたとえば含んでいる。ブレーキキャリパは、たとえば、ブレーキディスクのような、自動車の車輪にそれぞれ結合される制動要素に向かってブレーキパッドを駆動する。たとえば、補助電気制動回路の電動パーキングブレーキ機能は、作動ボタンを押すことによって作動され、あるいは作動解除される。
【0006】
マニュアル制動部材は、たとえばペダルおよび/またはレバーの形態を呈し、たとえば、ブレーキケーブルを介してハンドブレーキとして制動部材に直接作用を及ぼす。補足的に、マニュアル制動部材は、パーキングブレーキ機能を果たすために、オートマチックトランスミッションのギアのパーキングラチェット(「parking pawl」という名称で知られたパーキングブレーキの事例)、あるいは、マニュアルトランスミッションのギアの係合のような作用を自動車のトランスミッションに及ぼす。
【0007】
さらに、電子制御装置は、たとえば油圧制動回路を制御するように構成されることによって、自動車の主要油圧制動機能を実施するだけでなく、ドイツ語の「Antiblokiersystem」の略号ABSでも知られる車輪のロック防止機能、あるいは、英語の「Electronic Stability Program(電子安定プログラム)」の略号ESPもしくは英語の「Electronic Stability Control(電子横滑り防止装置)」の略号ESCでも知られる電子軌道制御のための電子安定性制御機能のような、いくつかのダイナミック制動機能を保証する。
【0008】
主要油圧制動回路が故障した場合は、マニュアル制動部材によって、非常用のダイナミック制動(走行制動とも呼ばれる)を保証することができる。補助電気制動回路が故障した場合は、マニュアル制動部材によって同様に非常用のパーキングブレーキをかけることができる。したがって、このようなマニュアル制動部材は、制動システムにおいて冗長性を確保し、安全性を高める。しかしながら、たとえば自動運転車等のいくつかの自動車は、このようなマニュアル制動部材を必ずしも含んでいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、制動システムが故障した場合に、マニュアル制動部材の存在とは関係なく、非常用のパーキングブレーキ、さらには非常用の走行ブレーキを自動的にかけることが可能な自動車用の制動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、
-主要制動回路と、
-パーキングブレーキをかけるように構成された補助電気制動回路と、
-第1の電子制御装置であって、
i)第1の制動部材および第2の制動部材を作動させるために主要制動回路を制御し、
ii)補助電気制動回路内で第1の制動部材の第1の電動アクチュエータを制御する、第1の電子制御装置と、
-補助電気制動回路内で第2の制動部材の第2の電動アクチュエータを制御する第2の電子制御装置と、
を含む、自動車用の制動システムを対象とする。
【0011】
そのため、第1の電子制御装置または第2の電子制御装置の故障によって補助電気回路が故障した場合、このような制動システムが制動部材の電気的な作動を保証することができる。したがって、必ずしもマニュアル制動部材を設ける必要はなく、これは、自動運転車の場合は特に有利である。なぜなら、補助電気制動回路は、第1の電子制御装置または第2の電子制御装置の故障時でさえパーキングブレーキを保証し、さらには、主要制動回路が故障した場合に非常用走行ブレーキをかけることができるからである。
【0012】
提案されたシステムでは、たとえばオートマチックトランスミッションにおいてパーキングラチェットタイプのマニュアル制動部材なしで済ますことができ、制動システムのコストを下げられるので特に有利であることが分かる。
【0013】
単独または組み合わせて選択される制動システムの他の任意の特徴によれば:
-第1の電子制御装置は、主要制動回路のアクチュエータを制御し、これらのアクチュエータが第1および第2の制動部材を作動させる。たとえば、制動部材の各々は、たとえばブレーキパッドのような摩擦手段を備えたブレーキキャリパを含む。ブレーキキャリパは、自動車の車輪に結合される制動要素、たとえばブレーキディスクのように、ロータに向かってブレーキパッドを連動させる。たとえば、主要制動回路の各アクチュエータは、ブレーキキャリパを駆動する油圧ピストンを含む。
【0014】
-制動システムは、主要制動回路のアクチュエータと第1および第2の電動アクチュエータとを介して第1および第2の制動部材を駆動する。
【0015】
-各制動部材は、自動車の車輪に結合される制動要素のような、ロータとの摩擦手段を含み、好ましくは摩擦手段がブレーキパッドであり、制動要素がブレーキディスクである。
【0016】
-第1の電子制御装置は、主要制動回路のアクチュエータと第1の電動アクチュエータのための制御値、さらには第2の電動アクチュエータのための制御値に制動制御を変換する。
【0017】
-制御値はアクチュエータに適合され、電気信号、油圧値、および空気圧値を含むグループの中から選択される。
【0018】
-第2の電子制御装置は、第2の電動アクチュエータ、さらには第1の電動アクチュエータのための電気信号に制動制御を変換する。
【0019】
-制動制御は、運転者のマニュアル制御または、自動車の運転管理中央処理装置から送られる自動制御である。自動運転車の場合は自動制御の状況がきわめて有利である。
【0020】
-第1の電子制御装置は、第3および第4の制動部材をさらに作動させるために主要制動回路を制御する。
【0021】
-第1の電子制御装置は、主要制動回路内でマスターシリンダを作動させる電気モータを含み、この電気モータは、第1の電子制御装置により制御される。
【0022】
-制動システムは、
第1の電子制御装置に接続された主要入力と、第1の制動部材の第1の電動アクチュエータに接続された出力とを備えた第1のスイッチであって、この第1のスイッチが、第2の電子制御装置に接続された非常用入力を含み、第1の電子制御装置が故障した場合に第2の電子制御装置を第1の制動部材の第1の電動アクチュエータに接続するように構成されている、第1のスイッチと、
-第2の電子制御装置に接続された主要入力と、第2の制動部材の第2の電動アクチュエータに接続された出力とを備えた第2のスイッチであって、この第2のスイッチが、第1の電子制御装置に接続された非常用入力を含み、第2の電子制御装置が故障した場合に、第1の電子制御装置を第2の制動部材の第2の電動アクチュエータに接続するように構成されている、第2のスイッチと、
を含む。
【0023】
したがって、第1の電子制御装置が故障した場合、第1の電子制御装置から第2の電子制御装置へと第1の電気スイッチを切り換えることによって電気制動の全体が保持される。第2の電子制御装置が故障した場合、第2の電子制御装置から第1の電子制御装置へと第2の電気スイッチを切り換えることによって電気制動の全体が保持される。このようにして、電気制動が特に安全に実施され、とりわけパーキングブレーキの場合には、30%までの勾配で車両を駐車したまま保持することができる。これは、特に、電気的に作動する2つの制動部材の組み合わせによって、自動車の少なくとも2つの車輪にパーキングブレーキがかけられることによる。これにより、パーキングブレーキ機能の冗長性が得られ、パーキングブレーキに関して自動車の安全性が改善される。正常な動作時には、パーキングブレーキ機能が好ましくは自動で行われ、自動車のスイッチが切られるとすぐに作動され、あるいは坂道発進の場合に作動される。そのため、制動システムは自動パーキングブレーキ機能を実施する。この場合、第1の電子制御装置または第2の電子制御装置が故障していても、自動パーキングブレーキ機能は最適に実施される。これは、たとえばこの場合、ダイナミック制動管理/安定性制御機能が働き続けるからである。
【0024】
-第1のスイッチと第2のスイッチは同一の電子部品内に形成される。そのため、制動システムの個々の部品が少なくてすみ、システムはコンパクトで組み立てやすくなる。
【0025】
-第1のスイッチおよび第2のスイッチは別々の電子基板に配置される。そのため、一方の電子基板の故障が他方の電子基板に影響しないので、制動システムの信頼性が改善される。
【0026】
-パーキングブレーキと非常走行ブレーキを選択的に実施するために、第1の電子制御装置は第1の電動アクチュエータを制御し、第2の電子制御装置は第2の電動アクチュエータを制御する。したがって、補助電気制動回路がパーキングブレーキ機能を保証し、非常走行制動機能を確実に実施する。「走行」とは、好ましくは6km/時を上回る速度で自動車が移動する動作を意味する。「走行」という用語は、ここでは、自動車の駐車と対置され、さらには、車道と自動車の車輪との間の摩擦が原因で自発的に停止しようとしている自動車と対置される。したがって、正常な動作時には、補助電気回路がもっぱらパーキングブレーキ機能を実施し、主要制動回路が故障した場合、非常走行ブレーキ機能を実施する。これにより走行ブレーキ機能に冗長性が生まれるので、走行時の制動に関して自動車の安全性が高められる。正常な動作時には、パーキングブレーキ機能が好ましくは自動的に実施され、自動車のエンジンが停止されて自動車のスイッチが切られるとすぐに作動され、あるいは坂道発進の場合に作動される。
【0027】
このように、制動システムは、好ましくは自動車の速度が6km/時未満の場合に自動パーキングブレーキ機能を実施する。
【0028】
-第1の制動部材は、自動車の第1の車輪を制動するように構成され、第2の制動部材は、自動車の第1の車輪とは異なる第2の車輪を制動するように構成され、第1および第2の車輪は、好ましくは自動車の後輪である。そのため、制動システムが故障した場合、たとえば第1または第2の電子制動装置が故障した場合でも、制動、特にパーキングブレーキが実施される。自動車の少なくとも1つの車輪で制動が保証されるので、パーキングブレーキは、たとえば8%までの勾配に車両を駐車する必要があるときでも保証される。
【0029】
-制動システムは、主要制動回路により作動される第3の制動部材と第4の制動部材を含む。これらの部材は、好ましくは1つの車輪すなわち第3および第4の車輪をそれぞれ制動するように構成され、これらの車輪は車両の前輪である。
【0030】
-第1の電子制御装置と第2の電子制御装置はそれぞれ、自動車の車輪の回転速度を示す信号の処理ユニットと、ダイナミック制動管理/電子安定性制御ユニットとをそれぞれ含む。そのため、第1の電子制御装置と第2の電子制御装置はそれぞれ、制動システムの動作制御機能と、ダイナミック制動管理/安定性制御機能とを実施することができる。これらの機能はたとえば、車輪のロック防止、電子軌道制御のための電子安定性制御機能、自動パーキングブレーキ機能を含むグループの中から選択される。
【0031】
-制動システムは、自動車の各車輪に回転速度センサを含む。そのため、自動車の車輪の回転速度を示す信号は、これらのセンサから送られる。
【0032】
-主要制動回路は油圧制動回路であり、各々の制動部材に対して1つの油圧アクチュエータを含む。あるいは、主要制動回路は電気制動回路であり、各々の制動部材に対して1つの電動アクチュエータを含む。これらの電動アクチュエータは、第1の電動アクチュエータおよび第2の電動アクチュエータとは異なる。あるいはまた、主要制動回路は空気圧式制動回路であり、各々の制動部材に対して1つの空気圧アクチュエータを含む。
【0033】
-制動システムは、さらに、主要制動回路のマニュアル制御装置を含み、第1の電子制御装置は、マニュアル制御装置が運転者のマニュアル制動制御により作動されるとき、主要制動回路に付加的な油圧を供給することによってマニュアル制御装置をアシストするように構成されている。このようにして、制動システムは、たとえば自動車が自動運転モードではない場合、マニュアル制御を介して容易に制動を実現することができる。
【0034】
-付加的な油圧は、主要制動回路内でマスターシリンダを作動させる電気モータによって供給され、電気モータは、第1の電子制御装置により制御される。そのため、このような構成によって、英語で「Electric Brake Booster」とも呼ばれる電動倍力装置が形成される。
【0035】
-マニュアル制御装置はペダルまたはレバーを含み、これが、好ましくは主要制動回路内でマスターシリンダを作動させる。
【0036】
-制動システムは、第1の電子制御装置と第2の電子制御装置との間にデータ通信バスを含んでいる。これにより、第1の電子制御装置と第2の電子制御装置が互いにデータを交換し、制動を最適化することができる。
【0037】
-データ通信バスは多重化方式であり、好ましくはCANタイプであって、好ましくは少なくとも500kbit/秒のデータ伝送速度を有する。したがって、これにより、第1の電子制御装置と第2の電子制御装置との良好な同期が簡単に得られ、制動を適切に同期することができる。
【0038】
-制動システムは、第1および第2の電気スイッチを第1および第2の電子制御装置に接続するアナログ接続線を含む。このようにして、第1の電子制御装置と第2の電子制御装置が第1および第2の電気スイッチに接続される。これにより、第1の電子制御装置または第2の電子制御装置が故障したとき、第1および第2の電気スイッチを容易に制御することができる。代替的に、データ通信バスにより、第1および第2の電気スイッチを第1および第2の電子制御装置に接続する。したがって、第1の電子制御装置と第2の電子制御装置が第1および第2の電気スイッチに接続される。これにより、第1の電子制御装置または第2の電子制御装置は、第2の電子制御装置または第1の電子制御装置が故障したときに第1および第2の電気スイッチを容易に制御することができる。
【0039】
-第2の電子制御装置は第1の電子制御装置の故障を検知するように構成され、第1の電子制御装置は第2の電子制御装置の故障を検知するように構成される。
【0040】
-第1および第2の電子制御装置は、それぞれ電子監視ユニットを備え、このユニットは、好ましくは自動車の車輪の回転速度を示す信号に基づいて、主要制動回路の故障を検知するように構成されている。
【0041】
-第1の電子制御装置および第2の電子制御装置は独立している。そのため、これらの電子制御装置の一方が故障しても、他方の電子制御装置の故障または動作不全は起きない。
【0042】
-第2の電子制御装置はもっぱら補助制動回路を制御する。したがって、制動システムは最適な設計で実現される。
【0043】
-第2の電子制御装置は主要制動回路を制御しない。そのため、主要制動回路が複雑化せず、その結果、制動システムは最適な設計で実現される。
【0044】
本発明は、また、上記のような制動システムを備えた自動車、好ましくは自動運転車を対象とする。
【0045】
本発明はさらに、上記のような自動車または上記のような制動システムの制御方法を対象とし、制動制御ステップに際して、
-主要制動回路の故障が検知されたとき、第1の電子制御装置が第1の電動アクチュエータの非常用制御ステップを実行し、第2の電子制御装置が第2の電動アクチュエータの非常用制御ステップを実行する。
【0046】
この制御方法の任意選択による1つの特徴によれば、
-主要制動回路の故障検知ステップが、第1の電子制御装置および/または第2の電子制御装置によって実施される。
【0047】
本発明は、さらに、上記のような制御方法または上記のような自動車または上記のような制動システムを対象とし、制動制御ステップに際して、
-第1の電子制御装置の故障が検知されたとき、第2の電子制御装置が第1の電動アクチュエータの非常用制御ステップを実行し、
-第2の電子制御装置の故障が検知されたとき、第1の電子制御装置が第2の電動アクチュエータの非常用制御ステップを実行する。
【0048】
単独または組み合わせて選択されるこの制御方法の任意の別の特徴によれば、
-第1の電子制御装置の故障の検知ステップは、第2の電子制御装置によって実施される。
【0049】
-第2の電子制御装置の故障の検知ステップは、第1の電子制御装置によって実施される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明は、添付図面を参照しながら、もっぱら例としてなされた以下の説明を読めば、いっそう明らかになるであろう。
【
図2】第1の実施形態による制動システムの概略図である。
【
図3】第1の実施形態による制動システムの部分概略図である。
【
図4】第2の実施形態による制動システムの概略図である。
【
図5】第3の実施形態による制動システムの概略図である。
【
図6】第4の実施形態による制動システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
すべての図において、同じ要素には同じ参照符号を付している。
【0052】
この詳細な説明で以下に挙げる実施形態は例である。この詳細な説明は、1つまたは複数の実施形態に言及しているが、これは、特徴が、たった1つの実施形態だけに適用されることを意味するものではない。さまざまな実施形態の複数の単純な特徴を組み合わせ、および/または相互に入れ替えることによって他の実施形態を提供することも同様に可能である。
【0053】
この説明では、たとえば「第1の制動部材」または「第2の制動部材」のような名称または表現で幾つかの要素または部材を示している。この場合、これは、同じではない要素または部材を区別または名付けるための名称である。これらの名称は、互いの要素(または部材)の優先性または序列を前提とするものではなく、当該説明の範囲を逸脱することなく、このような名称を互いに入れ替えることも容易に可能である。これらの名称は、また、たとえば何らかの基準を評価するための経時的な順序を前提とするものでもない。
【0054】
図1は、制動システム3と、4つの車輪R1、R2、R3、R4とを含む自動車1、たとえば自動運転車を概略的に示している。矢印により示された自動車1の正常な前進移動方向からみて、2個の車輪R1、R2は後輪であり、2個の車輪R3、R4は前輪である。
【0055】
図2は、第1の実施形態による制動システム3を概略的に示している。制動システム3は、主要制動回路5と補助電気制動回路7とを含んでいる。補助電気制動回路7は、パーキングブレーキをかけるように構成されている。制動システム3は、さらに、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11とを含んでいる。第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11は、制動システム3内で異なる部品である。換言すれば、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11は独立している。
【0056】
この実施例では、制動システム3が、第1の制動部材F1と、第2の制動部材F2と、第3の制動部材F3と、第4の制動部材F4とを含んでいる。第1の制動部材F1は、後輪R1を制動するために構成され、第2の制動部材F2は、後輪R2を制動するために、第3の制動部材F3は前輪R3を制動するために、第4の制動部材F4は前輪R4を制動するために構成されている。第1の電子制御装置9は、第1の制動部材F1と第2の制動部材F2を作動させるために主要制動回路5を制御する。このため、第1の電子制御装置9は、主要制動回路5のアクチュエータ12を制御し、これらのアクチュエータが、第1の制動部材F1、第2の制動部材F2、第3の制動部材F3、および第4の制動部材F4を作動させる。各々の制動部材F1-F4は、たとえばブレーキパッドのような摩擦手段を備えたブレーキキャリパを含み、ブレーキキャリパは、自動車の車輪R1-R4に結合される制動要素Dたとえばブレーキディスクをロータに向かって駆動する。この実施例では、制動システム3が油圧制動回路であり、各々の制動部材F1-F4に対して1つの油圧アクチュエータ12を含んでいる。たとえば、主要制動回路5の各アクチュエータ12は、ブレーキキャリパを駆動する油圧ピストンを含んでいる。第1の電子制御装置9は、主要制動回路5内でマスターシリンダ33を作動させる電気モータ31を含み、電気モータ31は、第1の電子制御装置により制御される。そのため、主要制動回路5は、第1の電子制御装置9のマスターシリンダ33をアクチュエータ12に接続する油圧ダクト16を含んでいる。
【0057】
別の変形実施形態では、主要制動回路5が電気制動回路であり、各々の制動部材F1-F4に対して1つの電動アクチュエータ12を含んでおり、これらの電動アクチュエータ12は、補助電気制動回路7の電動アクチュエータとは異なっている。また別の変形実施形態では、主要制動回路5が空気圧式制動回路であり、各々の制動部材F1-F4に対して1つの空気圧式アクチュエータ12を含んでいる。
【0058】
補助電気制動回路7は、第1の制動部材F1の第1の電動アクチュエータ13と、第2の制動部材F2の第2の電動アクチュエータ15とを含む。第1の電子制御装置9は、補助電気制動回路7内で第1の制動回路F1の第1の電動アクチュエータ13を制御する。したがって、第1の電子制御装置9は、主要制動回路5のアクチュエータ12および第1の電動アクチュエータ13のための制御値に制動制御を変換する。制動制御は、運転者のマニュアル制御または、自動車の運転管理中央処理装置による自動制御である。制御値はアクチュエータに適合され、電気信号、油圧値、および空気圧値を含むグループの中から選択される。制動システム3が油圧制動回路であるこの実施例では、アクチュエータ12のための制御値が油圧値であり、第1の電動アクチュエータ13のための制御値が電気信号である。
【0059】
第2の電子制御装置11は、補助電気制動回路7において、第2の制動部材F2の第2の電動アクチュエータ15を制御する。第2の電子制御装置11は、第2の電動アクチュエータ15のための電気信号に制動制御を変換する。第2の電子制御装置11は、もっぱら補助制動回路7を制御する。換言すれば、第2の電子制御装置11は、主要制動回路5を制御しない。
【0060】
したがって、制動システム3は、主要制動回路5のアクチュエータ12、第1の電動アクチュエータ13および第2の電動アクチュエータ15を介して第1の制動部材F1と第2の制動部材F2を駆動する。
【0061】
制動システム3は、自動車の各車輪R1-R4に回転速度センサ17を含んでいる。
【0062】
図3に示したように、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11は、それぞれ、自動車1の車輪R1-R4の回転速度を示す信号の処理ユニット19と、ダイナミック制動管理/安定性制御ユニット21と、監視ユニット23とを含む。そのため、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11は、それぞれ、制動システムの動作制御機能とダイナミック制動管理/安定性制御機能とを実施することができる。これらの機能は、たとえば、車輪のロック防止機能、電子軌道制御のための電子安定性制御機能、自動パーキングブレーキ機能を含むグループの中から選択される。監視ユニット23は、好ましくは自動車1の車輪R1-R4の回転速度を示す信号に基づいて、主要制動回路5の故障を検知するように構成されている。この実施例では、自動車1の車輪R1-R4の回転速度を示す信号が回転速度センサ17から送られる。
【0063】
パーキングブレーキまたは非常走行ブレーキを選択的に実現するために、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13を制御し、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15を制御する。正常な動作では、パーキングブレーキ機能が好ましくは自動的に行われ、たとえば第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11とによって同時に行われる。
【0064】
制動システム3は、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11との間にデータ通信バス25を含む。データ通信バス25は多重化方式であり、好ましくはCANタイプであって、好ましくは少なくとも500kbit/秒のデータ伝送速度を有する。
【0065】
第2の電子制御装置11は、第1の電子制御装置9の故障を検知するように構成され、第1の電子制御装置9は、第2の電子制御装置11の故障を検知するように構成されている。そのため、第1の電子制御装置9の監視ユニット23は、第2の電子制御装置11から送信されてデータ通信バス25を通過するデータの監視によって第2の電子制御装置11の故障を検知するように構成され、第2の電子制御装置11の監視ユニット23は、第1の電子制御装置9から送信されてデータ通信バス25を通過するデータの監視によって第1の電子制御装置9の故障を検知するように構成されている。
【0066】
さらに、第1の電子制御装置9の監視ユニット23と第2の電子制御装置11の監視ユニット23は、回転速度センサ17から送信されるデータの監視によって主要制動回路5の故障を検知するように構成されている。
【0067】
制動システム3は、第1の電動アクチュエータ13を第1の電子制御装置9に接続し、第2の電動アクチュエータ15を第2の電子制御装置11に接続する、電気接続線27を含む。
【0068】
図4は、第2の実施例による制動システム3を概略的に示している。この第2の実施形態は、制動システム3がさらに主要制動回路5のマニュアル制御装置29を含んでいることにおいて、
図2に示した第1の実施形態とは異なっている。第1の電子制御装置9は、運転者Cのマニュアル制動制御によりマニュアル制御装置29が作動されるとき、主要制動回路5に付加的な油圧を供給することによってマニュアル制御装置29をアシストするように構成されている。マニュアル制御装置29はペダルまたはレバーを含んで、主要制動回路5内でマスターシリンダ33を作動させる。主要制動回路5内でマスターシリンダ33を作動させる電気モータ31により、付加的な油圧が供給され、電気モータは、第1の電子制御装置9により制御される。
【0069】
図5は、第3の実施形態による制動システム3を概略的に示している。この第3の実施形態は、制動システム3が、電気接続線27を介して第1の電子制御装置9に接続される主要入力と、電気接続線27を介して第1の制動部材F1の第1の電動アクチュエータ13に接続される出力とを備えた第1のスイッチ35を含んでいることにおいて、
図2に示した第1の実施形態とは異なっている。第1のスイッチ35は、電気接続線27を介して第2の電子制御装置11に接続される非常用入力を含んでいる。第1のスイッチ35は、第1の電子制御装置9が故障した場合に第2の電子制御装置11を第1の制御部材F1の第1の電動アクチュエータ13に接続するように構成されている。制動システム3は、電気接続線27を介して第2の電子制御装置11に接続される主要入力と、電気接続線27を介して第2の制動部材F2の第2の電動アクチュエータ15に接続される出力とを備えた第2のスイッチ37を同様に含んでいる。第2のスイッチ37は、電気接続線27を介して第1の電子制御装置9に接続される非常用入力を同様に含んでいる。第2のスイッチ37は、第2の電子制御装置11が故障した場合に、第1の電子制御装置9を第2の制動部材F2の第2の電動アクチュエータ15に接続するように構成されている。この実施形態において、第1のスイッチ35と第2のスイッチ37は別々に、すなわち別の電子基板に配置される。
【0070】
図5に示した実施形態において、制動システム3は、第1のスイッチ35と第2のスイッチ37を第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11に接続するアナログ接続線41を含んでいる。このようにして、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11は、第2の電子制御装置11が故障した場合はもっぱら第1の電子制御装置9に向けて、また、第1の電子制御装置9が故障した場合はもっぱら第2の電子制御装置11に向けて、第1のスイッチ35および第2のスイッチ37を切り換えることができるように、第1のスイッチ35と第2のスイッチ37に接続されている。これによって、第2の電子制御装置11が故障した場合、第1の電子制御装置9は、同様に制動制御を、第2のスイッチ37を介して第2の電動アクチュエータ15のための制御値に変換する。第1の電子制御装置9が故障した場合、第2の電子制御装置11は、同様に制動制御を、第1のスイッチ35を介して第1の電動アクチュエータ13のための制御値に変換する。
【0071】
図6は、第4の実施形態による制動システム3を概略的に示している。この第4の実施形態は、アナログ接続線41に代わって、データ通信バス25が第1のスイッチ35と第2のスイッチ37を第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11に接続していることにおいて、
図5に示した第3の実施形態とは異なっている。そのため、第1の電子制御装置9と第2の電子制御装置11は、第2の電子制御装置11が故障した場合はもっぱら第1の電子制御装置9に向けて、また、第1の電子制御装置9が故障した場合はもっぱら第2の電子制御装置11に向けて、第1のスイッチ35および第2のスイッチ37を切り換えることができるように、第1のスイッチ35と第2のスイッチ37に接続されている。これによって、第2の電子制御装置11が故障した場合、第1の電子制御装置9は、同様に制動制御を、第2のスイッチ37を介して第2の電動アクチュエータ15のための制御値に変換する。第1の電子制御装置9が故障した場合、第2の電子制御装置11は、同様に制動制御を、第1のスイッチ35を介して第1の電動アクチュエータ13のための制御値に変換する。
【0072】
さらに、この第4の実施形態では、第1のスイッチ35と第2のスイッチ37の異なる配置が示されている。そのため、第1のスイッチ35と第2のスイッチ37は同一の電子基板に配置されており、好ましくは同一の電子部品39に形成されている。
【0073】
次に、自動車1または制動システム3の制御方法の第1の実施例について
図7を参照しながら説明する。このような制御方法は、制動ステップ100に際して、主要制動回路5の故障が検知されると、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13の非常用制御ステップ120を実行し、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15の非常用制御ステップ130を実行する。
【0074】
この実施例では、主要制動回路5の故障検知ステップ110が第1の電子制御装置9および/または第2の電子制御装置11によって実施され、より詳しくは、第1の電子制御装置9の監視ユニット23および/または第2の電子制御装置11の監視ユニット23を介して実施され、監視ユニットは、回転速度センサ17から送信されるデータを監視する。
【0075】
このようにして、主要制動回路5が故障した場合、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13を制御し、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15を制御することにより、制動ステップ100が走行制動ステップであるときに非常走行制動を実現する。主要制動回路5が故障した場合、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13を制御し、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15を制御することから、あとは正常な動作によってパーキングブレーキをかければよい。
【0076】
次に、自動車1あるいは制動システム3の制御方法の第2の実施例について
図8を参照しながら説明する。このような制御方法は、制動ステップ100’に際して以下のステップを含む:
-第1の電子制御装置9の故障が検知されたとき、第2の電子制御装置11が第1の電動アクチュエータ13の非常用制御ステップ150を実行し、
-第2の電子制御装置11の故障が検知されたとき、第1の電子制御装置9が第2の電動アクチュエータ15の非常用制御ステップ170を実行する。
【0077】
この実施例では、第1の電子制御装置9の故障検知ステップ140が第2の電子制御装置11によって、より詳しくは第2の電子制御装置11の監視ユニットを介して実施され、第2の電子制御装置11の故障検知ステップ160が第1の電子制御装置9によって、より詳しくは第1の電子制御装置9の監視ユニット23を介して実施される。
【0078】
したがって、第1の電子制御装置9が故障した場合、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15を正常に制御し、さらに、第1の電動アクチュエータ13の非常用制御ステップ150を介して第1の電動アクチュエータ13を制御する。このようにして、第1の電子制御装置9が故障した場合、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15と第1の電動アクチュエータ13を制御するので、非常用のパーキングブレーキがかけられる。
【0079】
同様に、第2の電子制御装置11が故障した場合、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13を正常に制御し、さらに、第2の電動アクチュエータ15の非常用制御ステップ170を介して第2の電動アクチュエータ15を制御する。このようにして、第2の電子制御装置11が故障した場合、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13と第2の電動アクチュエータ15を制御するので非常用のパーキングブレーキがかけられる。
【0080】
一つの変形実施形態によれば、この制御方法の第2の実施例は、当該方法の第1の実施例と組み合わされる。この場合、主要制動回路5や第1の電子制御装置9が故障した場合でも、第2の電子制御装置11が第2の電動アクチュエータ15と第1の電動アクチュエータ13を制御するので、非常用走行ブレーキがかけられる。さらに、主要制動回路5と第2の電子制御装置11が故障した場合でも、第1の電子制御装置9が第1の電動アクチュエータ13と第2の電動アクチュエータ15を制御するので、非常用走行ブレーキがかけられる。
【0081】
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、当該技術の専門家にとっては他の実施形態も明らかになるであろう。特に、技術的に実現可能な場合は、これらの実施形態を互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 自動車
3 制動システム
5 主要制動回路
7 補助電気制動回路
9 第1の電子制御装置
11 第2の電子制御装置
12 主要制動回路5のアクチュエータ
13 第1の電動アクチュエータ
15 第2の電動アクチュエータ
16 油圧ダクト
17 回転速度センサ
19 処理ユニット
21 ダイナミック制動管理/電子安定性制御ユニット
23 監視ユニット
25 データ通信バス
27 アナログ接続線
29 マニュアル制御装置
31 電気モータ
33 マスターシリンダ
35 第1のスイッチ
37 第2のスイッチ
39 電子部品
41 アナログ接続線
R1 、R2 後輪
R3、R4 前輪
F1-F4 制動部材
D ブレーキディスク
【国際調査報告】