(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ACE2 Fc融合タンパク質の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20240226BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240226BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240226BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240226BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240226BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61K38/48 ZNA
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61P31/14
C07K14/47
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553406
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2022055457
(87)【国際公開番号】W WO2022184854
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516338305
【氏名又は名称】フォーマイコン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】FORMYCON AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ライター、アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ジーグル、ライナー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
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4C076CC50
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4C076FF65
4C084AA03
4C084BA01
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4C084BA22
4C084BA23
4C084BA34
4C084BA41
4C084CA53
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4C084MA66
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4C084ZA422
4C084ZB331
4C084ZB332
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明はACE2 Fc融合タンパク質の医薬組成物及びその治療的使用、特にSARS-CoV-2による感染症の治療における治療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は前記断片の変異体を含む第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び
(b)pH5.4~6.4の緩衝液、
を含む、液体医薬組成物。
【請求項2】
液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は前記断片の変異体を含む第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び
(b)pH5.4~6.4の緩衝液、
を含む、液体医薬組成物。
【請求項3】
前記緩衝液が、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液からなる群から選択され、好ましくは前記緩衝液が、5mM~60mMの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
糖又は糖アルコールを更に含み、好ましくは、前記糖又は糖アルコールが、トレハロース、スクロース、及びマンニトールから選択され、並びに/又は前記糖又は糖アルコールが、100mM~300mMの濃度で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは、前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート20及びポリソルベート80から選択され、並びに/又は前記非イオン性界面活性剤が、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
無機塩を更に含み、好ましくは前記無機塩が、塩化ナトリウムであり、及び/又は前記無機塩が、30mM~150mMの濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項7】
1つ以上のアミノ酸を更に含み、好ましくは前記1つ以上のアミノ酸が、L-アルギニン及び/若しくはL-メチオニンであり、並びに/又は前記1つ以上のアミノ酸が、1mM~50mMの濃度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
前記ヒトACE2の断片が、配列番号2によるアミノ酸配列からなるか、又は前記ヒトACE2の断片が、配列番号3によるアミノ酸配列からなるACE2の細胞外ドメインである、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
前記IgGが、IgG1又はIgG4である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、配列番号5によるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分を含み、好ましくは、前記第1の部分と前記第2の部分とが、配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている、請求項1、3~9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、配列番号20及び21のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分の変異体を含み、好ましくは、前記第1の部分と前記第2の部分とが、配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている、請求項2~9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
前記融合タンパク質が、配列番号4によるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分を含み、好ましくは、前記第1の部分と前記第2の部分とが、配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている、請求項1、3~9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、配列番号22及び23のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分の変異体を含み、好ましくは、前記第1の部分と前記第2の部分とが、配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている、請求項2~9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
前記ヒトACE2断片の前記変異体が、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体であり、好ましくは、前記ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体が、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、配列番号6~13、44~47、58~61、72~75、86~89のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、請求項1、3~8のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項16】
前記融合タンパク質が、配列番号26~41、48~55、62~69、76~83、及び90~97のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、請求項2~8のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項17】
前記融合タンパク質の前記ACE2部分がN-グリコシル化されており、前記ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%が、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項18】
液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は前記断片の変異体を含む第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、並びに
(b)pH5.6~5.8の酢酸緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-アルギニン、L-メチオニン、及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の安定剤、
を含む、液体医薬組成物。
【請求項19】
前記ACE2 Fc融合タンパク質の濃度が1~60mg/mLである、請求項1~18のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項20】
ACE2に結合するコロナウイルス、好ましくは、SARS、SARS-CoV2、及びNL63からなる群から選択され、好ましくはSARS-CoV2である、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症の予防及び/又は治療における使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はACE2 Fc融合タンパク質の医薬組成物及びその治療的使用、特にSARS-CoV-2による感染症の治療における治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)は、中心に触媒亜鉛原子を有するレニン-アンジオテンシン系の重要なメタロプロテアーゼである(非特許文献1)。完全長ACE2は、N末端細胞外ペプチダーゼドメイン、コレクトリン様ドメイン、単一膜貫通ヘリックス、及び短い細胞内セグメントからなる。これは、アンジオテンシンIIを切断することでアンジオテンシン(1-7)を産生するとともに、アンジオテンシンIを切断することで、次いで他の酵素によって処理されてアンジオテンシン(1-7)になるアンジオテンシン(1-9)を産生するように作用する。ACE2は血圧を低下させるように作用し、Ras/MAS系におけるバランスを維持するためにACEの活性に対抗する。したがって、ACE2は心血管疾患の治療のための有望な標的である。
【0003】
最近、ACE2は、コロナウイルス、特に、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の受容体として大きな注目を集めている。SARS-CoV-2は、2019年12月に中国の武漢で最初に発見されたコロナウイルスであるが、世界中に急速に広がり、世界的なパンデミックを引き起こしている。パンデミックは、多くの国において、非常に顕著な経済的及び社会的影響を伴うロックダウンをもたらした。
【0004】
ACE2が、SARS-CoV(非特許文献2、非特許文献3)、及びSARS-CoV-2(非特許文献4)の受容体として機能することが示された。更に、SARS-CoV-2の呼吸器細胞への侵入は、ACE2及びセリンプロテアーゼTMPRSS2に依存する(非特許文献5)。
【0005】
細胞へのウイルス侵入に対するACE2の重要な役割を考慮して、細胞へのSARS結合を遮断するために可溶性ACE2を使用することが提案された(特許文献1、特許文献2)。同じアプローチが、SARS-CoV-2による感染症の治療について示唆された(非特許文献6)。SARS-CoV-2による感染症の治療における可溶性形態のACE2を用いた臨床試験は、Apeironによって開始されており(Pharmazeutische Zeitung、2020年4月10日)、最初の結果は、SARS-CoV-2によって引き起こされた重度のCovid-19を有する1人の患者が可溶性ACE2による治療で急速に回復したことを示した(非特許文献7)。
【0006】
しかしながら、単離された受容体ドメインは、典型的には、低い安定性及び血漿中半減期を特徴とする。ACE2の可溶性形態については、10時間の用量依存性の終末半減期が示された(非特許文献8)。これらの結果を考慮して、後の研究では、可溶性形態のACE2を1日2回の注入として投与することにした(非特許文献9)。しかしながら、1日に2回以上の投与は、患者及び医療従事者の両方にとって不便である。
【0007】
ヒトIgG1のFcドメインに連結された酵素的に活性な又は酵素的に不活性なACE2のいずれかの細胞外ドメインからなるACE2の融合タンパク質を構築し、試験した。両方のコンストラクトが、SARS-CoVとSARS-CoV-2の両方を強力に中和し、Sタンパク質媒介性融合を阻害したことが示された(非特許文献10)。非特許文献11は、野生型ACE2及びACE2の触媒活性に影響を及ぼす9つのACE2ミュータントと、ヒトIgG1のFc領域との融合タンパク質を記載している。しかしながら、ヒトIgG1のFcドメインと免疫細胞上のFcガンマ受容体との相互作用は、ウイルス感染を増強し得る(非特許文献12、非特許文献13)。
【0008】
非特許文献14は、触媒的に不活性なACE2の細胞外ドメインが免疫グロブリン重鎖のFcドメインに融合されている「ACE2マイクロボディ」を開示する。
非特許文献15、特許文献3及び特許文献4は、ACE2の細胞外ドメインとヒトIgG1又はIgG4のFcドメインとの融合タンパク質に関する。特許文献5は、ACE2の細胞外ドメインとヒトIgG1又はIgG4のFcドメインとの融合タンパク質の高シアリル化及び/又は脱フコシル化された形態、並びにIP10を更に含むそのような融合タンパク質に関する。
【0009】
特許文献6は、IgM及びIgG2のFcドメインを有するACE2融合タンパク質を開示している。
特許文献7~28もまた、ACE2と、異なる免疫グロブリンのFc部分との融合タンパク質を開示している。
【0010】
貯蔵中に必要なタンパク質安定性を提供し、ヒト患者によって十分に忍容されるACE2 Fc融合タンパク質の医薬組成物が必要とされている。
可溶性組換えヒトACE2を使用する臨床試験では、100mMグリシン、150mM NaCl、及び50μM塩化亜鉛中に5.2mg/mLの組換えヒトACE2を含む、pH7.5の製剤を使用した(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2005/032487号
【特許文献2】国際公開第2006/122819号
【特許文献3】国際公開第2021/234160号
【特許文献4】国際出願第PCT/EP2021/080130号
【特許文献5】欧州特許出願第21 210 215.6号
【特許文献6】欧州特許出願第21 188 832.6号
【特許文献7】国際公開第2021/170113号
【特許文献8】国際公開第2021/183404号
【特許文献9】米国特許出願公開第2021/0284716号明細書
【特許文献10】国際公開第2021/217120号
【特許文献11】国際公開第2021/213437号
【特許文献12】国際公開第2021/189772号
【特許文献13】国際公開第2021/231466号
【特許文献14】国際公開第2021/237239号
【特許文献15】国際公開第2021/203103号
【特許文献16】国際公開第2021/174107号
【特許文献17】国際公開第2021/236957号
【特許文献18】国際公開第2021/203098号
【特許文献19】国際公開第2021/227937号
【特許文献20】国際公開第2021/213421号
【特許文献21】国際公開第2021/205183号
【特許文献22】国際公開第2021/202427号
【特許文献23】国際公開第2021/194909号
【特許文献24】国際公開第2021/170131号
【特許文献25】国際公開第2022/012688号
【特許文献26】国際公開第2022/006601号
【特許文献27】国際公開第2021/263128号
【特許文献28】国際公開第2021/257512号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Donoghue et al.(2002)J.Circ.Res.87:e1-e9
【非特許文献2】Li et al.(2003)Nature 426:450-454
【非特許文献3】Prakabaran et al.(2004)Biochem.Biophys.Res.Comm.314:235-241
【非特許文献4】Yan et al.(2020)Science 367:1444-1485
【非特許文献5】Hoffmann et al.(2020)Cell 181:1-10
【非特許文献6】Kruse(2020)F1000Res.9:72
【非特許文献7】Zoufaly et al.(2020)The Lancet Respiratory Medicine 8:1154-1158
【非特許文献8】Haschke et al.(2013)Clin.Pharmacokinet.52:783-792
【非特許文献9】Khan et al.(2017)Critical Care 21:234
【非特許文献10】Lei et al.(2020)Nature Communications 11:2070
【非特許文献11】Liu et al.(2020)Int.J.Biol.Macromol.165:1626-1633
【非特許文献12】Perlman and Dandekar(2005)Nat.Rev.Immunol.5(12):917-927
【非特許文献13】Chen et al.(2020)Current Tropical Medicine Reports 3:1-4
【非特許文献14】Tada et al.(2020)(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.09.16.300319v1.full)
【非特許文献15】Svilenov et al.(2020)(Efficient inhibition of SARS-CoV-2 strains by a novel 10 ACE2-IgG4-Fc fusion protein with a stabilized hinge region|bioRxiv and https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S016635422100187X?via%3Dihub)
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ヒト対象への投与に適したACE2 Fc融合タンパク質の安定な液体製剤を提供する。
本発明は、液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び
(b)pH5.6~6.3の緩衝液、を含む、液体医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び
(b)pH5.6~6.3の緩衝液、を含む、液体医薬組成物を提供する。
【0015】
一実施形態では、緩衝液は、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液からなる群から選択され、好ましくは緩衝液は、5mM~60mMの濃度で存在する。
【0016】
液体医薬組成物は、糖又は糖アルコールを更に含んでもよく、好ましくは、糖又は糖アルコールは、トレハロース、スクロース、及びマンニトールから選択され、並びに/又は糖又は糖アルコールは、100mM~300mMの濃度で存在する。
【0017】
液体医薬組成物は非イオン性界面活性剤を更に含んでもよく、好ましくは、非イオン性界面活性剤はポリソルベート20及びポリソルベート80から選択され、並びに/又は非イオン性界面活性剤は0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する。
【0018】
液体医薬組成物は、無機塩を更に含んでもよく、好ましくは、無機塩は塩化ナトリウムであり、及び/又は無機塩は30mM~150mMの濃度で存在する。
液体医薬組成物は、1つ以上のアミノ酸を更に含んでもよく、好ましくは、1つ以上のアミノ酸はL-アルギニン及び/若しくはL-メチオニンであり、並びに/又は1つ以上のアミノ酸は1mM~50mMの濃度で存在する。
【0019】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列からなるか、又は配列番号3によるアミノ酸配列からなるACE2の細胞外ドメインである。
IgGは、IgG1又はIgG4であってもよい。
【0020】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分、又は配列番号20及び21のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分の変異体を含む。
【0021】
一実施形態では、IgGはIgG4又はIgG4の変異体であり、第1の部分と第2の部分とは配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている。
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号4によるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分、又は配列番号22及び23のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分の変異体を含む。
【0022】
一実施形態では、IgGはIgG1又はIgG1の変異体であり、第1の部分と第2の部分とは配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている。
ヒトACE2断片の変異体は、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体であってもよく、好ましくは、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体は、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0023】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号6~13、26~41、44~55、58~69、72~83、及び86~97のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0024】
本発明はまた、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、並びに
(b)pH5.6~5.8の酢酸緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-アルギニン、L-メチオニン、及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の安定剤、を含む、液体医薬組成物に関する。
【0025】
一実施形態では、ACE2 Fc融合タンパク質の濃度は1~60mg/mLである。
本発明はまた、ACE2に結合するコロナウイルス、好ましくは、SARS、SARS-CoV2、及びNL63からなる群から選択され、好ましくはSARS-CoV2である、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症の予防及び/又は治療における使用のための、本明細書に開示される液体医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素、限定なしで好適に実施され得る。
本発明を特定の実施形態に関して説明するが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0027】
「含む(comprising)」という用語が本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、他の要素を排除するものではない。本発明の目的では、「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下、群が少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示すると理解されたい。
【0028】
本発明の目的では、「得られた」という用語は、「得ることができる」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、例えば細胞又は生物が特定の方法によって得ることができると定義される場合、これはまた、この方法によって得られた細胞又は生物を開示すると理解されたい。
【0029】
単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」が使用される場合、特に明記されない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、ACE2 Fc融合タンパク質等の化学物質又は活性成分を含む任意の組成物を指し、この組成物は、疾患の医学的治癒、治療、又は予防における使用を意図しており、活性成分が有効であることを可能にするような形態である。特に、医薬組成物は、組成物が投与される対象にとって許容できないほど毒性である賦形剤を含有しない。医薬組成物は滅菌されており、すなわち無菌であり、全ての生きている微生物及びその胞子を含まない。本発明で使用される医薬組成物は、液体であり、安定である。
【0031】
「液体医薬組成物」では、薬学的に活性な薬剤、例えばACE2 Fc融合タンパク質を様々な賦形剤と組み合わせて、貯蔵後に安定な活性薬物を確保することができる。一実施形態では、本発明で使用される液体医薬組成物は、決して凍結乾燥されず、すなわち、製造方法は凍結乾燥ステップを含まず、組成物は貯蔵のために凍結乾燥されない。液体医薬組成物は、バイアル、IVバッグ、アンプル、カートリッジ、及びプレフィルド、又はすぐに使用できるシリンジにおいて貯蔵することができる。
【0032】
「安定」液体組成物は、その中に含まれるACE2 Fc融合タンパク質が、ある一定期間の貯蔵時にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を本質的に保持するものである。好ましくは、組成物は、貯蔵時にその物理的及び化学的安定性、並びにその生物学的活性を本質的に保持する。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed,Marcel Dekker,Inc,New York,New York,Pubs(1991)、及びJones,Adv Drug Delivery Rev,1993,10:29-90に概説されている。例えば、安定性は、選択された温度で選択された期間にわたって測定することができる。安定性は、カチオン若しくはアニオン交換クロマトグラフィー、又はキャピラリーゾーン電気泳動、アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析、質量分析、凝集分子又は断片化分子を検出するためのSDS-キャピラリーゲル電気泳動分析、ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS-C)分析、アゴニストの生物学的活性又は結合の評価等を使用して電荷不均一性を評価することによって、凝集体形成(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、及び/又は目視検査によって)の評価を含む様々な異なる方法で定性的及び/又は定量的に評価することができる。
【0033】
好ましくは、医薬組成物は、約40℃の温度及び75%相対湿度で少なくとも1~2週間安定であり、並びに/又は約5℃の温度で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6又は8ヶ月間、より好ましくは1年間安定であり、並びに/又は約25℃の温度及び60%相対湿度で少なくとも2週間若しくは1ヶ月間安定である。更に、製剤は、好ましくは本明細書の実施例に記載の製剤の凍結(例えば、-20℃又は-80℃)及び25℃での解凍後に、例えば1、2、3又は4サイクルの凍結及び解凍後に安定である。
【0034】
例えば、本発明で使用される医薬組成物において、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定される、5℃の温度で3ヶ月間貯蔵する前の試料中の高分子量種のパーセントと比較した、5℃の温度で3ヶ月間貯蔵した後の試料中の高分子量種のパーセントの絶対的増加は、10パーセントポイント以下、好ましくは8パーセントポイント以下、より好ましくは5パーセントポイント以下である。例えば、5℃の温度で3ヶ月貯蔵する前の試料における高分子量種のパーセントが0.5%であった場合、5℃の温度で3ヶ月貯蔵した後の試料における高分子量種のパーセントは、10.5%以下であり、好ましくは8.5%以下であり、より好ましくは5.5%以下である。
【0035】
「緩衝液」は、弱酸とその共役塩基、又はその逆の混合物からなる水溶液であり、pHの変化に抵抗し、したがってpHをほぼ一定の値に維持する。本発明で使用される緩衝液は、pH約5.4~約6.4の範囲である。好ましくは、本発明で使用される緩衝液は、pH約5.4~約6.2の範囲、より好ましくはpH約5.4~6.0の範囲、最も好ましくはpH5.4~5.9又は5.6~5.8の範囲である。本発明で使用される緩衝液は、pH5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3又は6.4、好ましくは5.6又は5.8である。
【0036】
本発明で使用される緩衝液は、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液からなる群から選択される。好ましくは、本発明の液体医薬組成物は、1つの緩衝液タイプのみを含み、より好ましくは、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液から選択される1つの緩衝液タイプのみを含む。最も好ましくは、本発明の液体医薬組成物は酢酸緩衝液を含む。
【0037】
「ヒスチジン含有緩衝液」及び「ヒスチジン緩衝液」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒスチジンを含む緩衝液を指す。ヒスチジン緩衝液の例としては、塩化ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン酢酸塩、ヒスチジンリン酸塩、及びヒスチジン硫酸塩が挙げられる。本発明の好ましいヒスチジン緩衝液は、L-ヒスチジンを更に含む。更により好ましくは、本発明のヒスチジン緩衝液は、ヒスチジン塩酸塩を含み、最も好ましくは、ヒスチジン塩酸塩及びL-ヒスチジンを含む。好ましくは、ヒスチジン緩衝液又はヒスチジン塩酸塩緩衝液又はヒスチジン塩酸塩/L-ヒスチジン緩衝液は、pH約5.4~6.4、好ましくはpH約5.8~6.3、より好ましくはpH5.9~6.2の範囲であり、最も好ましくはpH約6.0である。好ましくは、ヒスチジン緩衝液又はヒスチジン塩酸塩緩衝液又はヒスチジン塩酸塩/L-ヒスチジン緩衝液は、pH5.8、5.9、6.0、6.1、6.2又は6.3である。
【0038】
特定の好ましい実施形態では、ヒスチジン含有緩衝液は、5~30mM、好ましくは7~20mM、より好ましくは8~15mM、最も好ましくは10mMの濃度のヒスチジン塩酸塩/L-ヒスチジンを含む。
【0039】
別の特定の好ましい実施形態では、ヒスチジン緩衝液は10mMの濃度を有する。別の特定の好ましい実施形態では、ヒスチジン緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0である。
【0040】
別の特定の好ましい実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度のヒスチジン塩酸塩/L-ヒスチジンである。別の特定の好ましい実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン塩酸塩/L-ヒスチジンである。
【0041】
代替の実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液である。酢酸緩衝液を、氷酢酸と酢酸ナトリウム等の酢酸塩とを混合することによって調製してもよい。酢酸緩衝液は、1mM~50mM、好ましくは3mM~40mM、より好ましくは5mM~30mM、更により好ましくは7mM~20mM、最も好ましくは10mMの濃度を有する。好ましくは、酢酸緩衝液は、pH約5.4~6.0、好ましくはpH約5.5~5.9又は5.6~6.0又は5.6~5.8の範囲であり、最も好ましくはpH約5.6又は5.8である。好ましくは、酢酸緩衝液は、pH5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9又は6.0である。
【0042】
一実施形態では、酢酸緩衝液は10mMの濃度を有する。別の実施形態では、酢酸緩衝液は10mMの濃度及びpH5.6又は5.8であり、好ましくは酢酸緩衝液は10mMの濃度及びpH5.8である。
【0043】
一実施形態では、酢酸緩衝液は、氷酢酸及び酢酸ナトリウムを10mMの濃度で含む。別の実施形態では、酢酸緩衝液は、氷酢酸及び酢酸ナトリウムを10mMの濃度で含み、pH5.6又は5.8であり、好ましくは酢酸緩衝液は、氷酢酸及び酢酸ナトリウムを10mMの濃度で含み、pH5.8である。
【0044】
代替の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液である。リン酸緩衝液は、リン酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムとを混合することによって調製されてもよい。リン酸緩衝液は、1mM~50mM、好ましくは3mM~40mM、より好ましくは5mM~30mM、更により好ましくは7mM~20mM、最も好ましくは10mMの濃度を有する。好ましくは、リン酸緩衝液は、pH約5.5~6.3、好ましくはpH約5.5~6.2の範囲であり、最も好ましくはpH約6.0である。好ましくは、リン酸緩衝液は、pH5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2又は6.3である。
【0045】
一実施形態では、リン酸緩衝液は10mMの濃度を有する。別の実施形態では、リン酸緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0である。
一実施形態では、リン酸緩衝液は、リン酸一ナトリウム及びリン酸二ナトリウムを10mMの濃度で含む。別の実施形態では、リン酸緩衝液は、リン酸一ナトリウム及びリン酸二ナトリウムを10mMの濃度で含み、pH6.0である。
【0046】
代替の実施形態では、緩衝液はコハク酸緩衝液である。コハク酸緩衝液は、コハク酸とコハク酸二ナトリウムとを混合することによって調製されてもよい。コハク酸緩衝液は、1mM~50mM、好ましくは3mM~40mM、より好ましくは5mM~30mM、更により好ましくは7mM~20mM、最も好ましくは10mMの濃度を有する。好ましくは、コハク酸緩衝液は、pH約5.8~6.5、好ましくはpH約6.0~6.4の範囲であり、最も好ましくはpH約6.3である。好ましくは、コハク酸緩衝液は、pH5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4又は6.5である。
【0047】
一実施形態では、コハク酸緩衝液は10mMの濃度を有する。別の実施形態では、コハク酸緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.3である。
一実施形態では、コハク酸緩衝液は、コハク酸及びコハク酸二ナトリウムを10mMの濃度で含む。別の実施形態では、コハク酸緩衝液は、コハク酸及びコハク酸二ナトリウムを10mMの濃度で含み、pH6.3である。
【0048】
代替の実施形態では、緩衝液はクエン酸緩衝液である。クエン酸緩衝液は、クエン酸とクエン酸ナトリウム等のクエン酸塩とを混合することにより調製される。クエン酸緩衝液は、1mM~50mM、好ましくは3mM~40mM、より好ましくは5mM~30mM、更により好ましくは7mM~20mM、最も好ましくは10mMの濃度を有する。好ましくは、クエン酸緩衝液は、pH約5.4~6.0、好ましくはpH約5.5~5.9の範囲であり、最も好ましくはpH約5.8である。好ましくは、クエン酸緩衝液は、pH5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9又は6.0である。
【0049】
一実施形態では、クエン酸緩衝液は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを10mMの濃度で含む。別の実施形態では、クエン酸緩衝液は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを10mMの濃度で含み、pH5.8である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、両親媒性化合物、すなわち、2つの液体間又は液体と固体との間の表面張力(又は界面張力)を低下させる、疎水性基及び親水性基の両方を含有する化合物を指す。「非イオン性界面活性剤」は、その頭部に荷電基を有していない。タンパク質含有組成物の凍結/解凍サイクル中の不溶性粒子の形成を、界面活性剤の添加によって顕著に阻害することができる。「非イオン性界面活性剤」の例としては、例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテルなどのポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル;ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシドなどのグルコシドアルキルエーテル;トリトンX-100などのポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル;ノノキシノール-9などのポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル;グリセリルラウレートなどのグリセロールアルキルエステル;ポリソルベートなどのポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル;スパンなどのソルビタンアルキルエステル;コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド;ポロキサマーなどのポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのブロックコポリマー;並びにポリエトキシ化タローアミン(POEA)が挙げられる。本発明の液体医薬組成物は、これらの界面活性剤を1つ以上組み合わせて含有することができる。好ましい実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、1つの非イオン性界面活性剤のみを含む。
【0051】
本発明の液体医薬組成物における使用のための好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、40、60又は80、特にポリソルベート20(すなわち、Tween20)又はポリソルベート80(すなわち、Tween80)である。本発明の医薬組成物における使用のための別の好ましい非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188である。
【0052】
非イオン性界面活性剤の濃度は、組成物の総体積に対して0.005~0.20%(w/v)の範囲、好ましくは0.01~0.10%(w/v)の範囲、最も好ましくは0.02~0.10%(w/v)の範囲である。
【0053】
好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤はポリソルベート20である。好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、組成物の総体積に対して0.005%~0.20%(w/v)の範囲、好ましくは0.008~0.05%(w/v)の範囲、最も好ましくは0.01~0.04%(w/v)の範囲の濃度を有するポリソルベート20である。
【0054】
別の好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、組成物の総体積に対して0.005%~0.20%(w/v)の範囲、好ましくは0.008~0.15%(w/v)の範囲、最も好ましくは0.02~0.1%(w/v)の範囲の濃度を有するポリソルベート80である。
【0055】
一実施形態では、非イオン性界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0056】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0057】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0058】
「糖」という用語は、炭素、水素、及び酸素のみを、通常は水素:酸素原子比2:1及び実験式Cm(H2O)nで含む有機化合物を指す。「糖」という用語は、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖を含む。糖の例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、リボース、スクロース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、デンプン、及びグリコーゲンが挙げられる。好ましくは、糖は非還元糖である。非還元糖は、遊離アルデヒド又はケトン基を含まないため、還元剤として作用することができない糖である。好ましくは、非還元糖はスクロース及びトレハロースから選択される。
【0059】
一実施形態では、糖はトレハロースである。トレハロースは非還元糖である。これは、グルコースとフルクトース単位との間の1,1-グリコシド結合によって形成される二糖である。好ましくは、トレハロースの二水和物形態が使用される。「トレハロース」及び「トレハロース二水和物」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本発明の液体医薬組成物中のトレハロース二水和物の濃度は100mM~300mMであり、好ましくはトレハロース二水和物の濃度は100mM~250mMであり、より好ましくはトレハロース二水和物の濃度は106mM~250mMであり、更により好ましくはトレハロース二水和物の濃度は106mM、220mM、又は250mMであり、最も好ましくはトレハロース二水和物の濃度は250mMである。
【0060】
一実施形態では、糖はスクロースである。スクロースは、非還元糖である。これは、2つのα-グルコース単位間の1,2-グリコシド結合によって形成される二糖である。本発明の液体医薬組成物におけるスクロースの濃度は100mM~300mMであり、好ましくはスクロースの濃度は120mM~280mMであり、より好ましくはスクロースの濃度は145mM~263mMであり、最も好ましくはスクロースの濃度は145mM又は263mMである。
【0061】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、糖は、106mMの濃度のトレハロースである。
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースである。
【0062】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、糖は、106mMの濃度のトレハロースである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースである。
【0063】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、糖は、263mMの濃度のスクロースである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の有する酢酸緩衝液であり、糖は、263mMの濃度のスクロースである。
【0064】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、糖は、106mMの濃度のトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0065】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、糖は、106mMの濃度のトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0066】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0067】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0068】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、糖は、263mMの濃度のスクロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0069】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、糖は、263mMの濃度のスクロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0070】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、145mMの濃度のスクロースである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、220mMの濃度のトレハロースである。
【0071】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、145mMの濃度のスクロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0072】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、220mMの濃度のトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0073】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20である。
【0074】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、糖アルコールを含む。糖アルコールは、各炭素原子に結合したヒドロキシル基を含む糖に由来する有機化合物である。好適な糖アルコールとしては、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、及びキシリトールが挙げられる。本発明の液状医薬組成物における糖アルコールの濃度は、50mM~300mMであり、好ましくは糖アルコールの濃度は80mM~280mMであり、より好ましくは糖アルコールの濃度は80mM~270mMであり、最も好ましくは糖アルコールの濃度は80mM~270mMである。
【0075】
好ましくは、糖アルコールはマンニトール又はソルビトールであり、より好ましくは糖アルコールはマンニトールである。本発明の液体医薬組成物中のマンニトール又はソルビトールの濃度は50mM~300mMであり、好ましくはマンニトール又はソルビトールの濃度は80mM~280mMであり、より好ましくはマンニトール又はソルビトールの濃度は80mM~270mMであり、最も好ましくはマンニトール又はソルビトールの濃度は80mM~270mMである。
【0076】
本発明の液体医薬組成物におけるマンニトールの濃度は、50mM~300mMであり、好ましくはマンニトールの濃度は80mM~280mMであり、より好ましくはマンニトールの濃度は80mM~270mMであり、最も好ましくはマンニトールの濃度は80mM~270mMである。
【0077】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、88.5mM、198mM、225mM、又は252mMのソルビトールを含む。
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、50mMのマンニトールを含む。
【0078】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は無機塩を含む。本明細書で使用される場合、「無機塩」は、浸透調節特性を有するイオン性化合物を指す。塩化ナトリウム(NaCl)等の無機塩は、溶液中でその構成イオンに解離することができ、すなわちNaClはNa+及びCl-イオンに解離し、これらは両方とも溶液の浸透圧、すなわち重量オスモル濃度に影響を及ぼす。本発明の液体医薬組成物中に存在し得る例示的な無機塩は、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及び重炭酸ナトリウムである。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は塩化ナトリウムを含む。
【0079】
一実施形態では、無機塩は、20~150mMの濃度で、好ましくは30~140mMの濃度で、より好ましくは40mM~135mMの濃度で存在する。
一実施形態では、無機塩は塩化ナトリウムであり、塩化ナトリウムは20~150mMの濃度で、好ましくは30~140mMの濃度で、より好ましくは40mM~135mMの濃度で存在する。一実施形態では、塩化ナトリウムは、40mM~50mMの濃度で、好ましくは50mMの濃度で存在する。
【0080】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、無機塩は、50mMの濃度の塩化ナトリウムである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、無機塩は、50mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0081】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、無機塩は、40mMの濃度の塩化ナトリウムである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、無機塩は、40mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0082】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、無機塩は、40mMの濃度の塩化ナトリウムである。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、無機塩は、50mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0083】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20であり、無機塩は、50mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0084】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20であり、無機塩は、40mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0085】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度のnポリソルベート20であり、糖は、250mMの濃度のトレハロースであり、無機塩は、50mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0086】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、界面活性剤は0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20であり、糖は、145mMの濃度のスクロースであり、無機塩は、40mMの濃度の塩化ナトリウムである。
【0087】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、亜鉛、銅、及びマンガンの塩等の遷移金属の塩を含む。本発明の液体医薬組成物中に存在し得る例示的な遷移金属の塩としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化銅、硫酸銅、塩化マンガン、及び硫酸マンガンが挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛等の亜鉛塩を含む。
【0088】
一実施形態では、遷移金属の塩は塩化亜鉛であり、塩化亜鉛は、10μM~300μM、好ましくは20μM~250μM、より好ましくは30μM~220μM、最も好ましくは50μM~200μMの濃度で存在する。
【0089】
一実施形態では、遷移金属の塩は塩化亜鉛であり、亜鉛イオンの濃度は、本発明の液体医薬組成物中に存在する融合タンパク質の濃度に応じて調整される。一実施形態では、融合タンパク質の量と亜鉛イオンの量との間の化学量論比は1:2であり、すなわち、タンパク質分子あたり2つの亜鉛イオンが本発明の液体医薬組成物中に存在する。一例では、融合タンパク質の濃度は20mg/mLであり、亜鉛イオンの濃度は200μMである。
【0090】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、1つ以上のアミノ酸を含む。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸は、タンパク質を構成するアミノ酸の群から選択される。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸は、L-アルギニン、グリシン、L-メチオニン、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-リシン、L-アラニン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、及びL-プロリンからなる群から選択される。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、L-アルギニン及び/又はL-メチオニンを含み、好ましくは、本発明の液体医薬組成物は、L-アルギニン及びL-メチオニンを含む。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物はグリシンを含まない。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、100mMグリシンを含まない。
【0091】
一実施形態では、1つ以上のアミノ酸は、1mM~150mMの濃度、好ましくは2mM~140mMの濃度、より好ましくは5mM~135mMの濃度で存在する。
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、20mM~60mM、好ましくは25mM~55mM、より好ましくは30mM~50mM、最も好ましくは30mMの濃度のL-アルギニンを含む。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、30mM、45mM又は50mM、好ましくは30mMの濃度のL-アルギニンを含む。
【0092】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、1mM~20mM、好ましくは3mM~15mM、より好ましくは5mM~10mM、最も好ましくは5mMの濃度のL-メチオニンを含む。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、5mM又は10mMの濃度のL-メチオニンを含む。
【0093】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、5mMの濃度のL-メチオニン及び30mMの濃度のL-アルギニンを含む。
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液と、5mMのL-メチオニンとを含む。
【0094】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液と、30mMのL-アルギニンとを含む。
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液と、5mMのL-メチオニンと、30mMのL-アルギニンとを含む。
【0095】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液と、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20と、5mMのL-メチオニンと、30mMのL-アルギニンとを含む。
【0096】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液と、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20と、250mMの濃度のトレハロースと、5mMのL-メチオニンと、30mMのL-アルギニンとを含む。
【0097】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液と、5mMのL-メチオニンとを含む。
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液と、30mMのL-アルギニンとを含む。
【0098】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液と、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20と、5mMのL-メチオニンとを含む。
【0099】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液と、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20と、30mMのL-アルギニンとを含む。
【0100】
「融合タンパク質」は、互いに天然に連結されていない少なくとも2つのポリペプチド部分によって形成されるタンパク質である。2つのポリペプチド部分はペプチド結合によって連結され、任意に、リンカー分子が2つのポリペプチド部分の間に挿入される。2つのポリペプチド部分は、転写され、単一分子として翻訳される。融合タンパク質は、典型的には、両方のポリペプチド部分に由来する官能性を有する。本発明に関連して、融合タンパク質は、ACE2の結合特性、特にコロナウイルス等のウイルスの結合、並びにヒトIgG1又はヒトIgG4のFc部分によってもたらされる半減期の増加及びFc受容体結合の増加を保持する。
【0101】
「ヒトACE2」という用語は、ヒト対象由来のアンジオテンシン変換酵素2を指す。ヒトACE2の完全長配列は805アミノ酸を有する。ヒトACE2は、シグナルペプチド、N末端細胞外ペプチダーゼドメイン、それに続くコレクトリン様ドメイン、単一膜貫通ヘリックス、及び短い細胞内セグメントを含む。ヒトACE2の完全長配列は配列番号1に示される。別段の指示がない限り、本明細書で使用されるアミノ酸ナンバリングは、配列番号1によるヒトACE2の完全長配列のナンバリングを指す。ヒトACE2の細胞外ドメインは、配列番号1のアミノ酸18~740からなり、配列番号3に示されている。シグナルペプチドは配列番号15に示される。
【0102】
「ヒトACE2の断片」という用語は、配列番号1によるヒトACE2の完全長配列と比較して1つ以上のアミノ酸を欠くポリペプチドを指す。ヒトACE2の断片は、少なくとも1つのコロナウイルスのSタンパク質、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に結合することができる。少なくとも1つのコロナウイルスのSタンパク質へのヒトACE2の断片の結合は、Sタンパク質を基質に固定化し、ヒトACE2の断片と接触させ、Sタンパク質とヒトACE2の断片との間の相互作用を検出するELISAアッセイで決定することができる。あるいは、少なくとも1つのコロナウイルスのSタンパク質へのヒトACE2の断片の結合は、例えばShang et al.(2020)Nature doi:10.1038/s41586-020-2179-y;Wrapp et al.(2020)Science 367(6483):1260-1263;Lei et al.(2020)Nature Communications 11(1):2070に記載されているように、表面プラズモン共鳴によって決定することができる。更なる代替において、少なくとも1つのコロナウイルスのSタンパク質へのヒトACE2の断片の結合は、例えば、Seydoux et al.(2020)https://doi.org/10.1101/2020.05.12.091298に記載されているように、バイオレイヤー干渉法によって決定することができる。
【0103】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の360~723の連続アミノ酸からなる。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の380~723、400~723、420~723、440~723、460~723、480~723、又は500~723の連続アミノ酸からなる。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の520~723、540~723、560~723、580~723、又は600~723の連続アミノ酸からなる。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の620~723、640~723、660~723、680~723、700~723、又は720~723の連続アミノ酸からなる。
【0104】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、アミノ酸残基K31及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、アミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42、及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0105】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の360~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の380~723、400~723、420~723、440~723、460~723、480~723、又は500~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の520~723、540~723、560~723、580~723、又は600~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の620~723、640~723、660~723、680~723、700~723、又は720~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0106】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の360~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の380~723、400~723、420~723、440~723、460~723、480~723、又は500~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の520~723、540~723、560~723、580~723、又は600~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の620~723、640~723、660~723、680~723、700~723、又は720~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0107】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の360~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42、及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の380~723、400~723、420~723、440~723、460~723、480~723、又は500~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42、及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の520~723、540~723、560~723、580~723、又は600~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42、及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列内の620~723、640~723、660~723、680~723、700~723、又は720~723の連続アミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42、及びK353を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0108】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~380、18~400、18~420、18~440、18~460、18~480、又は18~500からなる。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~520、18~540、18~560、18~580、又は18~600からなる。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~605、18~615、18~620、18~640、18~660、18~680、又は18~700からなる。更により好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~710、18~720、又は18~730からなる。
【0109】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列からなる。配列番号2によるアミノ酸配列は、配列番号1による配列において、アミノ酸Q18で始まり、アミノ酸G732で終わる。この断片のC末端のアミノ酸グリシンは、2つのタンパク質部分の融合を促進し、融合タンパク質の安定性を増加させる高い回転自由度を提供する。更に、配列番号1による配列においてアミノ酸Q18で始まりアミノ酸G732で終わるアミノ酸配列を含むACE2断片の使用は、より長いACE2断片よりも良好な収率を提供する。
【0110】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列を有するヒトACE2の完全な細胞外ドメインからなる。
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号16によるアミノ酸配列からなる。配列番号16によるアミノ酸配列は、配列番号1による配列において、アミノ酸Q18で始まり、アミノ酸G605で終わる。
【0111】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、アミノ酸残基N53、N90、及びN322においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0112】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列からなり、N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90、及びN322においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0113】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列からなり、N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90、及びN322においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690においてN-グリコシル化されており、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0114】
「N-グリコシル化された」又は「N-グリコシル化」という用語は、グリカン構造がタンパク質のアスパラギン残基のアミド窒素に結合していることを意味する。グリカンは、炭水化物の分岐した柔軟な鎖であり、タンパク質のアスパラギン残基に結合したグリカンの正確な構造は、糖タンパク質産生に使用される発現系に依存する。
【0115】
一実施形態では、ACE2タンパク質上のN-グリカンの70%~95%、好ましくは73%~92%、最も好ましくは75%~90%が、N-グリカンに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、これは1つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。シアル酸分子は、グリカン構造の末端ガラクトース残基に結合している。一実施形態では、ACE2タンパク質上のN-グリカンの35%~60%、好ましくは38%~55%、最も好ましくは40%~50%が、N-グリカンに結合した少なくとも2つのシアル酸分子を有し、これは2つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。一実施形態では、ACE2タンパク質上のN-グリカンの1%~10%、好ましくは2%~9%、より好ましくは3%~8%、最も好ましくは5%~8%が、N-グリカンに結合した少なくとも3つのシアル酸分子を有し、これは3つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。一実施形態では、ACE2タンパク質上のN-グリカンの0%~4%、好ましくは0.5%~3%、より好ましくは0.8%~2.5%、最も好ましくは1%~2%が、N-グリカンに結合した少なくとも4つのシアル酸分子を有し、これは4つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。
【0116】
一実施形態では、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690(ナンバリングは配列番号1を参照する)はN-グリコシル化されており、当該アミノ酸残基に結合したN-グリカンの70%~95%、好ましくは73%~92%、最も好ましくは75%~90%は、N-グリカンに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、これは1つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。一実施形態では、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690(ナンバリングは配列番号1を参照する)はN-グリコシル化されており、ACE2タンパク質上のN-グリカンの35%~60%、好ましくは38%~55%、最も好ましくは40%~50%は、N-グリカンに結合した少なくとも2つのシアル酸分子を有し、これは2つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。一実施形態では、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690(ナンバリングは配列番号1を参照する)はN-グリコシル化されており、ACE2タンパク質上のN-グリカンの1%~10%、好ましくは2%~9%、より好ましくは3%~8%、最も好ましくは5%~8%は、N-グリカンに結合した少なくとも3つのシアル酸分子を有し、これは3つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。一実施形態では、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546、及びN690(ナンバリングは配列番号1を参照する)はN-グリコシル化されており、ACE2タンパク質上のN-グリカンの0%~4%、好ましくは0.5%~3%、より好ましくは0.8%~2.5%、最も好ましくは1%~2%は、N-グリカンに結合した少なくとも4つのシアル酸分子を有し、これは4つの末端ガラクトース分子がシアル酸分子に連結していることを意味する。
【0117】
糖タンパク質構造は、融合タンパク質の消化及びペプチドマッピングによる分析を含む、当業者に公知の様々な方法によって分析することができる。あるいは、糖タンパク質分析のために親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を行ってもよい。
【0118】
シアリル化の増加は、治療用タンパク質の半減期の増加をもたらす(例えば、Byrne et al.(2007)Drug Discovery Today 12(7-8):319-326;Jones et al.(2007)Glycobiology 17(5):529-540を参照)。
【0119】
シアリル化を増加させる特定の条件下で融合タンパク質を発現する宿主細胞を培養することによって、シアリル化が増加され得る。例えば、当該融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む真核生物宿主細胞は、マンガン塩、N-アセチルマンノサミン又はその誘導体、ガラクトース、グルコサミン又はその誘導体、及びDMSOの1つ以上を補充した培地中で培養されてもよい。
【0120】
上記の細胞培養添加剤は、真核生物宿主細胞で産生されるタンパク質のシアリル化を増強することが示されている(例えば、Liu et al.(2015)World J.Microbiol.Biotechnol.31(7):1147-1156;Crowell et al(2007)Biotechnol.Bioeng.96(3):538-549;Lee et al.(2017)Biotechnol.Bioeng.114(9):1991-2000);国際公開第2011/061275号;国際公開第2004/008100号を参照)。
【0121】
シアリル化は、20μM~80μMのマンガン塩、好ましくは25μM~70μMのマンガン塩、より好ましくは30μM~60μMのマンガン塩、最も好ましくは40μMのマンガン塩を補充した培地中で、当該融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む真核生物宿主細胞を培養することによって増加され得る。シアリル化は、20μM~80μMの塩化マンガン、好ましくは25μM~70μMの塩化マンガン、より好ましくは30μM~60μMの塩化マンガン、最も好ましくは40μMの塩化マンガンを補充した培地中で、当該融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む真核生物宿主細胞を培養することによって増加され得る。
【0122】
シアリル化は、5~30mMのN-アセチルマンノサミン、好ましくは6~25mMのN-アセチルマンノサミン、より好ましくは8~20mMのN-アセチルマンノサミン、最も好ましくは10mMのN-アセチルマンノサミンを補充した培地中で、当該融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む真核生物宿主細胞を培養することによって増加され得る。
【0123】
シアリル化は、20~80μMのマンガン塩及び5~30mMのN-アセチルマンノサミン、好ましくは25~70μMのマンガン塩及び6~25mMのN-アセチルマンノサミン、より好ましくは30μM~60μMのマンガン塩及び8~20mMのN-アセチルマンノサミン、最も好ましくは40μMのマンガン塩及び10mMのN-アセチルマンノサミンを補充した培地中で、当該融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む真核生物宿主細胞を培養することによって増加され得る。シアリル化は、20~80μMの塩化マンガン及び5~30mMのN-アセチルマンノサミン、好ましくは25~70μMの塩化マンガン及び6~25mMのN-アセチルマンノサミン、より好ましくは30μM~60μMの塩化マンガン及び8~20mMのN-アセチルマンノサミン、最も好ましくは40μMの塩化マンガン及び10mMのN-アセチルマンノサミンを補充した培地中で、当該融合タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む真核生物宿主細胞を培養することによって増加され得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、「シアリル化」という用語は、糖タンパク質をはじめとするタンパク質へのシアル酸残基の付加を指す。シアル酸は、他のオリゴ糖に連結することができる固有の9炭素単糖のファミリーの一般名である。2つのファミリーメンバーは、Neu5Ac又はNANAと略されるN-アセチルノイラミン酸、及びNeu5Gc又はNGNAと略されるN-グリコリルノイラミン酸である。ヒトにおけるシアル酸の最も一般的な形態はNANAである。
【0125】
ヒトACE2の断片の「変異体」は、上記で定義した断片であって、配列番号1による野生型完全長ヒトACE2のアミノ酸配列における対応する配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸残基が異なるか、又は少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、若しくは少なくとも13個のアミノ酸が異なる断片を指す。ヒトACE2の断片の「変異体」は、ヒトACE2の断片の配列における1つ以上のアミノ酸置換を含む。ヒトACE2の断片の「変異体」は、変異体が由来する配列と比較して、アミノ酸の付加又は欠失を全く含まない。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号2又は3によるヒトACE2の断片の変異体であり、配列番号2又は3による配列と比較してアミノ酸の付加又は欠失を全く含まず、すなわち、配列番号2又は3による配列と同じ長さを有する。本明細書で使用される場合、ヒトACE2の断片の変異体は、少なくとも1つのコロナウイルスのSタンパク質、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に結合することができる。少なくとも1つのコロナウイルスのSタンパク質、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に対するヒトACE2の断片の変異体の結合は、ヒトACE2の断片について上述したように決定することができる。
【0126】
一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1つのアミノ酸が異なる。別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と2つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と3つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と4つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と5つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と6つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と7つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と8つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と9つのアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と10個のアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と11個のアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と12個のアミノ酸が異なる。更に別の実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と13個のアミノ酸が異なる。
【0127】
一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~13個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~10個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~8個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~7個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~6個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~5個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~4個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1~3個のアミノ酸が異なる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号1による配列中の対応するアミノ酸配列と1又は2個のアミノ酸が異なる。
【0128】
ヒトACE2の断片の1つの変異体は、酵素的に不活性な変異体であってもよい。「ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体」は、アンジオテンシンIIをAng1-7に切断する能力を欠く。ヒトACE2の酵素活性は、当業者に公知の方法によって決定することができる。ヒトACE2の酵素活性を決定するための好適なキットは、例えば、BioVision又はAnaspecから市販されている。酵素的に不活性なACE2変異体を使用することによって、心血管系に対する効果又は血圧の調節等のACE2の酵素活性に関連するあらゆる副作用が排除される。更に、RAS-MAS平衡を相殺するリスクが低減される。
【0129】
ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体は、ACE2の触媒中心内のアミノ酸の1つ以上の変異を含んでもよい。特に、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体は、配列番号1による配列の残基374における野生型ヒスチジンの変異及び/又は配列番号1による配列の残基378における野生型ヒスチジンの変異を含む。野生型ヒスチジンは、ヒスチジン以外の任意のアミノ酸に変異していてもよく、特に、野生型ヒスチジンはアスパラギンに変異している。好ましくは、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体は、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0130】
別の実施形態では、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体は、以下のアミノ酸残基の1つ以上に変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する:残基345(野生型ではヒスチジン)、273(野生型ではアルギニン)、402(野生型ではグルタミン酸)、及び505(野生型ではヒスチジン)。一実施形態では、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体は、残基345のヒスチジンのアラニン又はロイシンへの変異、残基273のアルギニンのアラニン、グルタミン又はリシンへの変異、残基402のグルタミン酸のアラニンへの変異、及び/又は残基505のヒスチジンのアラニン又はロイシンへの変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。特定の実施形態では、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性な変異体は、残基273のアルギニンのアラニンへの変異(R273A変異とも呼ばれる)を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。アルギニン273は基質結合に重要であり、その置換は酵素活性を無効にすることが見出された(Guy et al.(2005)FEBS J.272(14):3512-3520)。
【0131】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~380、18~400、18~420、18~440、18~460、18~480、又は18~500からなり、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~520、18~540、18~560、18~580、又は18~600からなり、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~615、18~620、18~640、18~660、18~680、又は18~700からなり、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。更により好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~710、18~720、又は18~730からなり、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0132】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、H374N及びH378N変異を含む。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、H374N及びH378N変異を含む。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号24によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号25によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0133】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~380、18~400、18~420、18~440、18~460、18~480、又は18~500からなり、R273A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~520、18~540、18~560、18~580、又は18~600からなり、R273A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~615、18~620、18~640、18~660、18~680、又は18~700からなり、R273A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。更により好ましくは、ヒトACE2の断片は、配列番号1による配列のアミノ酸18~710、18~720、又は18~730からなり、R273A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0134】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号42によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号43によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0135】
ヒトACE2の断片の別の変異体は、ACE2のシェディング(shedding)を阻害する変異体であってもよい。ACE2がACE2外部ドメインの切断によってヒト気道上皮から脱落(シェディング)すること、及びADAM17がACE2切断を調節することが示された。更に、ACE2の外部ドメインに位置する完全長ACE2のロイシン584における点変異は、シェディングを消失させた(Jia et al.(2009)Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.297(1):L84-96)。したがって、一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体はロイシン584における変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。一実施形態では、ロイシン584における変異はL584A変異である。
【0136】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、L584A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、L584A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0137】
一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、H374N変異、H378N変異、及びL584A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、H374N変異、H378N変異、及びL584A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0138】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、H374N変異、H378N変異、及びL584A変異を含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0139】
ヒトACE2の断片の別の変異体は、プロテアーゼTMPRSS2によるACE2の切断を阻害する変異体であってもよい。TMPRSS2によるACE2タンパク質分解が、SARS-CoVの侵入を増大させることが示された(Heurich et al.(2014)J.Virol.88(2):1293-1307)。TMPRSS2はまた、細胞へのSARS-CoV-2の進入において役割を果たす(Hoffmann et al.(2020)Cell 181:1-10)。TMPRSS2によるACE2の切断を無効にするために、切断に必須のアミノ酸残基を変異させてもよい。ACE2のアミノ酸697から716にわたるアミノ酸領域内のアルギニン残基及びリシン残基が、TMPRSS2によるACE2切断に必須であることが示された(Heurich et al.(2014)J.Virol.88(2):1293-1307)。したがって、一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、アミノ酸697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも1つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片の変異体は、アミノ酸697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも2つ又は3つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片の変異体は、アミノ酸697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも4つ又は5つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。最も好ましくは、ヒトACE2の断片の変異体は、残基697、702、705、708、710、及び716に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。これらの残基のいずれかにおける野生型アミノ酸残基は、他の任意のアミノ酸に変異されていてもよく、特に、野生型アミノ酸残基はアラニンに変異されている。
【0140】
一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも1つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。好ましくは、ヒトACE2の断片の変異体は、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも2つ又は3つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。より好ましくは、ヒトACE2の断片の変異体は、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも4つ又は5つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。最も好ましくは、ヒトACE2の断片の変異体は、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0141】
ヒトACE2の断片の変異体は、残基619、621、及び/又は625に変異を更に含んでもよく、ナンバリングは配列番号1を参照する。特に、ヒトACE2の断片の変異体は、以下の変異:K619A、R621A、及び/又はK625Aを更に含んでもよく、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0142】
したがって、一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及び、R716Aを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0143】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、アミノ酸697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも1つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、残基697、702、705、708、710、及び716に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも1つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0144】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、アミノ酸697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも1つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、残基697、702、705、708、710、及び716に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも1つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0145】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、並びに以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0146】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、並びに以下の変異:R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0147】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、アミノ酸619、621、625、697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも1つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、残基619、621、625、697、702、705、708、710、及び716に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも1つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0148】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、アミノ酸619、621、625、697、702、705、708、710、及び716から選択される少なくとも1つの残基に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、残基619、621、625、697、702、705、708、710、及び716に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aのうちの少なくとも1つを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0149】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、並びに以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0150】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、並びに以下の変異:K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A、及びR716Aを含み、ナンバリングは配列番号1による配列を参照する。
【0151】
ヒトACE2の断片の別の変異体は、2つのACE2分子間にジスルフィド架橋を形成するための追加のシステインを提供する変異体であってもよい。ジスルフィド架橋は、融合タンパク質の固有の安定性を高め、融合タンパク質のその標的への結合にも影響を及ぼし得る。追加のシステインは、配列番号1のナンバリングにおけるセリン645のシステインによる置換によって提供されてもよい。
【0152】
したがって、一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体はS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、S645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号56によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0153】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、S645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号57によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0154】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、H374N変異、H378N変異、及びS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号70によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0155】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、H374N変異、H378N変異、及びS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号71によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0156】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、及びS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号84によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0157】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、及びS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、配列番号85によるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0158】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、及びS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0159】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、及びS645C変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0160】
ヒトACE2の断片の別の変異体は、二量体化を阻害する変異体であってもよい。したがって、一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体は、アミノ酸Q139に変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。一実施形態では、ヒトACE2の断片の変異体はQ139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0161】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、Q139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、Q139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0162】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、及びQ139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0163】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、及びQ139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0164】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号16による配列からなり、Q139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号16による配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異、及びQ139A変異を含み、ナンバリングは配列番号1を参照する。
【0165】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む。ヒトIgGのFc部分は、IgG1、IgG2、又はIgG4のFc部分であってもよい。
【0166】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgG4のFc部分又はその変異体を含む。ヒトIgG4のFc部分は、Fc部分を形成するように互いに連結されたヒトIgG4のCH2及びCH3ドメインを含む。完全長ヒトIgG4抗体では、Fc部分はヒンジ領域を介してFab断片に連結されている。Fab断片は、重鎖可変領域及びCH1ドメインを含む。好ましくは、融合タンパク質に使用されるヒトIgG4のFc部分は、配列番号5による配列を有する。
【0167】
IgG4サブクラスの抗体はFcガンマ受容体に対して部分的な親和性しか有しておらず、補体を活性化しないため(Muhammed(2020)Immunome Res.16(1):173を参照)、それはIgG1サブクラスの抗体と同程度に免疫系を活性化しない。その結果、サイトカイン発現が刺激されるのはより低い程度までであり、サイトカインストームのリスクが低下する。
【0168】
「ヒトIgG4のFc部分の変異体」は、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して1つ以上のアミノ酸置換を有するヒトIgG4のFc部分を指す。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1又は2個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較してエフェクター機能の低下をもたらす。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して半減期の増加をもたらす。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較してエフェクター機能の低下、及び配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して半減期の増加をもたらす。
【0169】
一実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、配列番号4によるIgG1の野生型Fc部分を産生しない。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、野生型IgG1のエフェクター機能を変化したIgG4 Fc部分に付与しない。
【0170】
好ましくは、エフェクター機能の低下は、補体依存性細胞傷害(CDC)の低下を含む。より好ましくは、ヒトIgG4のFc部分の変異体のCDCは、配列番号5によるヒトIgG4の野生型Fc部分のCDCと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍減少する。CDCを決定及び定量する方法は、当業者に周知である。概して、CDCは、抗原結合部分に融合したFc部分を好適な標的細胞及び補体とインキュベートし、標的細胞の細胞死を検出することによって決定することができる。補体動員は、ELISAプレートを使用してC1q結合アッセイで分析することができる(例えば、Schlothauer et al.(2016)Protein Eng.Des.Sel.29(10):457-466を参照)。
【0171】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、配列番号5による配列のF3、L4、G6、P7、F12、V33、N66、及びP98から選択されるアミノ酸残基に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。これらのアミノ酸残基は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸残基F234、L235、G237、P238、F243、V264、N297、及びP329に対応する。これらの残基におけるアミノ酸置換は、エフェクター機能の低下をもたらすことが示された(国際公開第94/28027号;国際公開第94/29351号;国際公開第95/26403号;国際公開第2011/066501号;国際公開第2011/149999号;国際公開第2012/130831号;Wang et al.(2018)Protein Cell.9(1):63-73)。
【0172】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235E/Aに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換L4E/Aを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0173】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換F234A及びL235Aに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換F3A及びL4Aを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0174】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換F234A、L235E、G237A、及びP238Sに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換F3A、L4E、G6A、及びP7Sを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0175】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換F243A及びV264Aに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換F12A及びV33Aを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0176】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235E及びP329Gに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換L4E及びP98Gを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0177】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換N297A/Q/Gに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換N66A/Q/Gを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0178】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のT250、M252、S254、T256、E258、K288、T307、V308、Q311、V427、M428、H433、N434、及びH435から選択されるアミノ酸残基に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。これらのアミノ酸残基は、配列番号5による配列のアミノ酸残基T19、M21、S23、T25、E27、K57、T76、V77、Q80、V196、M197、H202、N203、及びH204に対応する。これらのアミノ酸置換は、Fc含有タンパク質の増大した半減期をもたらすことが示された(国際公開第00/42072号;国際公開第02/060919号;国際公開第2004/035752号;国際公開第2006/053301号;国際公開第2009/058492号;国際公開第2009/086320号;米国特許出願公開第2010/0204454号;英国特許出願公開第2013/02878;国際公開第2013/163630号;米国特許出願公開第2019/0010243号)。抗体又はFc融合タンパク質の半減期は、抗体又はFc融合タンパク質の投与後の異なる時点で血清中の抗体又はFc融合タンパク質濃度を測定し、そこから半減期を計算することによって決定することができる。
【0179】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M252Y、S254T、及びT256Eに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換M21Y、S23T、及びT25Eを含む。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、配列番号20によるアミノ酸配列を有する。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0180】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T256D及びT307Qに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換T25D及びT76Qを含む。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、配列番号21によるアミノ酸配列を有する。この変異体は、増加した半減期、及び増強されたFcRnへの結合を有する。
【0181】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T250Q/E及びM428L/Fに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換T19Q/E及びM197L/Fを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0182】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換N434S及びV308W/Y/Fに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換N203S及びV77W/Y/Fを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0183】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M252Y及びM428Lに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換M21Y及びM197Lを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0184】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T307Q及びN434Sに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換T76Q及びN203Sを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0185】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M428L及びV308Fに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換M197L及びV77Fを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0186】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換Q311V及びN434Sに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換Q80V及びN203Sを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0187】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換H433K及びN434Fに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換H202K及びN203Fを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0188】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換E258F及びV427Tに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換E27F及びV196Tを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0189】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換K288E及びH435Kに対応する、配列番号5による配列中のアミノ酸置換K57E及びH204Kを含む。この変異体は、増加した半減期を有する。
【0190】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgG1のFc部分又はその変異体を含む。ヒトIgG1のFc部分は、Fc部分を形成するように互いに連結されたヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含む。完全長ヒトIgG1抗体では、Fc部分はヒンジ領域を介してFab断片に連結されている。Fab断片は、重鎖可変領域及びCH1ドメインを含む。好ましくは、融合タンパク質に使用されるヒトIgG1のFc部分は、配列番号4による配列を有する。
【0191】
「ヒトIgG1のFc部分の変異体」は、配列番号4によるヒトIgG1の野生型Fc部分と比較して1つ以上のアミノ酸置換を有するヒトIgG4のFc部分を指す。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、配列番号4によるヒトIgG1の野生型Fc部分と比較してエフェクター機能の低下をもたらす。
【0192】
好ましくは、エフェクター機能の低下は、補体依存性細胞傷害(CDC)の低下を含む。より好ましくは、CDCは、配列番号4によるヒトIgG1の野生型Fc部分のCDCと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍減少する。CDCを決定及び定量する方法は当業者に周知であり、上に記載されている。
【0193】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、配列番号4による配列のL3、L4、及びP98から選択されるアミノ酸残基に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。これらのアミノ酸残基は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸残基L234、L235、及びP329に対応する。
【0194】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235E/Aに対応する、配列番号4による配列中のアミノ酸置換L4E/Aを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0195】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L234A及びL235Aに対応する、配列番号4による配列中のアミノ酸置換L3A及びL4Aを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0196】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L234A、L235A、及びP329Gに対応する、配列番号4による配列中のアミノ酸置換L3A、L4A、P98Gを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0197】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235A及びP329Gに対応する、配列番号4による配列中のアミノ酸置換L4A及びP98Gを含む。この変異体は、エフェクター機能の低下、特にCDCの低下を有する。
【0198】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M252Y、S254T、及びT256Eに対応する、配列番号4による配列中のアミノ酸置換M21Y、S23T、及びT25Eを含む。一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、配列番号22によるアミノ酸配列を有する。この変異体は、増加した半減期、及び増強されたFcRnへの結合を有する。
【0199】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、完全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T256D及びT307Qに対応する、配列番号4による配列中のアミノ酸置換T25D及びT76Qを含む。一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分の変異体は、配列番号23によるアミノ酸配列を有する。この変異体は、増加した半減期、及び増強されたFcRnへの結合を有する。
【0200】
一実施形態では、ヒト抗体のFc部分、又はその断片若しくは変異体は、脱フコシル化されている。「脱フコシル化」という用語は、タンパク質、ここではヒト抗体のFc部分が、フコース部分を欠くグリカン構造を含むことを意味する。フコース部分は、グリカン構造内のN-アセチルグルコサミン部分に結合していてもよい。ヒト抗体のFc部分等の脱フコシル化タンパク質は、N-アセチルグルコサミン部分に結合したこのフコース部分を欠く。脱フコシル化抗体又はヒト抗体のFc部分は、アスパラギン297(配列番号4又は5による配列におけるアスパラギン66である)のオリゴ糖総量の60%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下、又は20%以下のフコース量を有する。一実施形態では、脱フコシル化抗体又はヒト抗体のFc部分は、アスパラギン297(配列番号4又は5による配列におけるアスパラギン66である)におけるオリゴ糖総量の40%~60%のフコース量を有する。一実施形態では、脱フコシル化抗体又はヒト抗体のFc部分は、アスパラギン297(配列番号4又は5による配列におけるアスパラギン66である)のグリカン構造に結合したフコースを全く有していない。特定の実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の脱フコシル化分子を含有する。全てのN-グリコシル化融合タンパク質が脱フコシル化されている必要はない。
【0201】
脱フコシル化は、融合タンパク質の消化及びペプチドマッピングによる分析を含む、当業者に公知の様々な方法によって分析することができる。あるいは、糖タンパク質分析のために親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を行ってもよい。
【0202】
脱フコシル化抗体又はそのFc部分は、FcγRIIIに対するより強い親和性のために、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の増加を示すことが示された(Shields et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740),Kanda et al.(2007)J.Biotechnol.130:300-310;Yamane-Ohunuki et al.(2004)Biotechnol.Bioeng.87:614-622)。
【0203】
脱フコシル化融合タンパク質は、融合タンパク質を発現する宿主細胞を、フコシル化阻害剤を補充した培地中、特定の条件下で培養することによって産生することができる。「フコシル化阻害剤」は、タンパク質のフコシル化に関与する酵素、特にフコシルトランスフェラーゼに結合し、その活性を阻害する分子である。好適なフコシル化阻害剤としては、2-フルオロフコース、A2FF1P、B2FF1P(Pijnenborg et al.(2020)Chem.Eur.J.27:4022-4027)、2F-ペルアセチル-フコース、ペルアセチル化5-チオフコース、2-デオキシ-D-ガラクトース、ペルアセチル化6-アルキル-フコース及び6,6,6-トリフルオロフコース(Li et al.(2018)Cell Chemical Biology 25:499-512)、GDP-D-ラムノース、Ac-GDP-D-ラムノース、ラムノースリン酸ナトリウム(国際公開第2021/127414号)、5-アルキニル-フコース及び5-アルキニル-フコースパーアセテート((Zimermann et al.(2019)Antibodies 8(1):9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
好ましくは、フコシル化阻害剤は2-フルオロフコースである。好ましくは、2-フルオロフコースは、5~200μMの濃度で、好ましくは10~150μMの濃度で細胞培養培地に添加される。
【0205】
あるいは、脱フコシル化タンパク質は、融合タンパク質を発現する宿主細胞を培養することによって産生することができ、真核生物宿主細胞は、フコシル化に関与するタンパク質の活性を低下させるように遺伝子改変されている。
【0206】
一実施形態では、フコシル化に関与するタンパク質は、GDP-マンノース4,6-デヒドラターゼ(GMD)(Kanda et al.(2007)J.Biotechnol.130:300-310)、GDP-フコース輸送体(GFT)(Bardhi et al.(2017)J.Virol.91(20):e937-917;Chen et al.(2016)MABs 8:761-774)、及びα-(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)(Mori et al.(2004)Biotechnol.Bioeng.88:901-908;Imai-Nishiya et al.(2007)BMC Biotechnol.7:84;Dicker and Strasser(2015)Expert Opin.Bio.Ther.15:1501-1516)からなる群から選択される。
【0207】
一実施形態では、融合タンパク質の第1の部分及び第2の部分は、連結配列によって連結される。連結配列は、それ自体で機能を有しておらず、融合タンパク質の折り畳みに影響を及ぼさない短いアミノ酸配列である。一実施形態では、連結配列は、8~20個のアミノ酸、好ましくは10~18個のアミノ酸、より好ましくは11~17個のアミノ酸、又は12~16個のアミノ酸、最も好ましくは13個のアミノ酸を含む。一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分がヒトIgG4のFc部分又はその変異体である場合、連結配列は、8~20個のアミノ酸、好ましくは10~18個のアミノ酸、より好ましくは11~17個のアミノ酸、又は12~16個のアミノ酸、最も好ましくは13個のアミノ酸を含む。一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分がヒトIgG1のFc部分又はその変異体である場合、連結配列は、7~18個のアミノ酸、好ましくは8~15個のアミノ酸、より好ましくは9~14個のアミノ酸、又は10~13個のアミノ酸、最も好ましくは11個のアミノ酸を含む。
【0208】
一実施形態では、連結配列は、グリシン及びセリンから選択される小さいアミノ酸からなる。連結配列の概要は、Chen et al.(2013)Adv.Drug Deliv.Rev.65(10):1357-1369に提供されている。
【0209】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分がヒトIgG4のFc部分である場合、連結配列はヒトIgG4のヒンジ領域からなる。一実施形態では、連結配列は、配列番号18による配列からなる。配列番号18による配列では、IgG4の野生型ヒンジ領域の残基10のセリン(完全長IgG4のセリン228に対応する)がプロリンで置換されており、IgG半分子の交換の減少がもたらされる。IgG4抗体はFabアーム交換を受けることがあり、2つの別個のFabアームの組み合わせをもたらし、新しい二重特異性抗体分子を作り出すことが知られている(例えば、Aalberse et al.(2009)Clin.Exp.Allergy 39(4):469-477を参照)。このFabアーム交換は、IgG4のヒンジ領域に位置するFc領域のセリン228のプロリンへの変異(S228P;Silva et al.(2015)J.Biol.Chem.290:5462-5469を参照)によって阻止することができる。更に、短いリンカー配列の使用は、融合タンパク質の安定性を高め、融合タンパク質のプロテアーゼへのアクセス可能性を低下させる。
【0210】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分がヒトIgG1のFc部分である場合、連結配列はヒトIgG1のヒンジ領域からなる。一実施形態では、連結配列は、配列番号19による配列からなる。
【0211】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号6によるアミノ酸配列、配列番号18による連結配列、及び配列番号5によるヒトIgG4のFc部分を有する。
【0212】
別の特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号7によるアミノ酸配列、配列番号19による連結配列、及び配列番号4によるヒトIgG1のFc部分を有する。
【0213】
別の特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号8によるアミノ酸配列、配列番号18による連結配列、及び配列番号5によるヒトIgG4のFc部分を有する。
【0214】
別の特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号9によるアミノ酸配列、配列番号19による連結配列、及び配列番号4によるヒトIgG1のFc部分を有する。
【0215】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号10によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号18による連結配列、及び配列番号5によるヒトIgG4のFc部分を有する。
【0216】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号11によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号19による連結配列、及び配列番号4によるヒトIgG1のFc部分を有する。
【0217】
別の特定の実施形態では、融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号12によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号18による連結配列、及び配列番号5によるヒトIgG4のFc部分を有する。
【0218】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号13によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号19による連結配列、及び配列番号4によるヒトIgG1のFc部分を有する。
【0219】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号26によるアミノ酸配列、配列番号18による連結配列、及び配列番号20によるヒトIgG4のFc部分の変異体を有する。
【0220】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号27によるアミノ酸配列、配列番号19による連結配列、及び配列番号22によるヒトIgG1のFc部分の変異体を有する。
【0221】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号30によるアミノ酸配列、配列番号18による連結配列、及び配列番号20によるヒトIgG4のFc部分の変異体を有する。
【0222】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号31によるアミノ酸配列、配列番号19による連結配列、及び配列番号22によるヒトIgG1のFc部分の変異体を有する。
【0223】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号34によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号18による連結配列、及び配列番号20によるヒトIgG4のFc部分の変異体を有する。
【0224】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~732(配列番号2)を含む配列番号35によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号19による連結配列、及び配列番号22によるヒトIgG1のFc部分の変異体を有する。
【0225】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号38によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号18による連結配列、及び配列番号20によるヒトIgG4のFc部分の変異体を有する。
【0226】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N及びH378N変異を有するヒトACE2のアミノ酸18~740(配列番号3)を含む配列番号39によるアミノ酸配列(ナンバリングは配列番号1を参照する)、配列番号19による連結配列、及び配列番号22によるヒトIgG1のFc部分の変異体を有する。
【0227】
一実施形態では、本明細書に記載の上記融合タンパク質のいずれかは、IP10又はその変異体に融合される。IP10(CXCL10、ガンマ-IP10、小誘導性サイトカインB10、INP10、SCYB10及び10kDAインターフェロンガンマ誘導性タンパク質と同義)は、ケモカイン受容体CXCR3を介して免疫細胞に結合するケモカインであり、異なる免疫細胞の化学誘引、内皮細胞へのT細胞接着の促進、抗腫瘍活性、並びに骨髄コロニー形成及び血管新生の阻害をもたらす。更に、IP10は、免疫細胞の活性化及び感染部位への移動を刺激することによって、ウイルス感染中に重要な役割を果たす。IP10のアミノ酸配列は配列番号98に示される。IP10が四量体を形成することができることが示された(Swaminathan et al.(2003)Structure 11:521-532)。したがって、IP10を含む融合タンパク質では、IP10部分は融合タンパク質分子の四量体を提供し、それによってSARS-CoV-2のスパイクタンパク質等のそれらの標的に対する融合タンパク質の親和性を増加させる。標的に対する四量体融合タンパク質のより高い親和性のために、融合タンパク質の投与量を減少させることが可能であり得る。更に、IP10とscFvとの融合タンパク質は、免疫エフェクター細胞を動員することができることが示された(Guo et al.(2004)Biochem.Biophys.Res.Comm.320:506-513)。したがって、IP10を含む融合タンパク質は、ACE2-Fc融合タンパク質によって結合された標的、特にSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に免疫エフェクター細胞を動員し、ウイルスの中和をもたらすことができる。
【0228】
好ましくは、IP10は、ヒト抗体のFc部分のC末端に融合される。
一実施形態では、ヒト抗体のFc部分とIP10とは連結配列によって連結されている。一実施形態では、ヒト抗体のFc部分間の連結配列は、グリシン及びセリンから選択される小さいアミノ酸からなる。一実施形態では、ヒト抗体のFc部分間の連結配列は、8~14個、好ましくは9~13個、より好ましくは10~12個、最も好ましくは11個のアミノ酸からなる。一実施形態では、ヒト抗体のFc部分間の連結配列は、グリシン及びセリンから選択される8~14個、好ましくは9~13個、より好ましくは10~12個、最も好ましくは11個のアミノ酸からなる。一実施形態では、連結配列は、配列番号14によるアミノ酸配列からなる。
【0229】
「IP10の変異体」は、配列番号98による野生型IP10と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有するIP10を指す。IP10の変異体は依然として四量体を形成し、免疫エフェクター細胞を動員することができる。
【0230】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、及び配列番号170からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0231】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び(b)pH5.6~6.4の緩衝液、を含む。一実施形態では、液体医薬組成物のpHは5.6~6.0であり、緩衝液は、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液から選択され、好ましくは酢酸緩衝液である。好ましくは、緩衝液は、5mM~60mMの濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は、トレハロース、スクロース、及びマンニトールから選択される糖及び/又は糖アルコール、好ましくはトレハロースを更に含む。好ましくは、糖及び/又は糖アルコールは、100mM~300mMの濃度である。一実施形態では、液体医薬組成物は非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは非イオン性界面活性剤はポリソルベート20及びポリソルベート80から選択され、好ましくは非イオン性界面活性剤は0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は無機塩を更に含み、好ましくは無機塩は塩化ナトリウムである。好ましくは、無機塩は、30mM~150mMの濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は、L-アルギニン及びL-メチオニンから選択される1つ以上のアミノ酸を、好ましくは1mM~50mMの濃度で更に含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号99~102、111~114、123~126、135~138、147~150、159~162のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号99~102、111~114、123~126、135~138、147~150、159~162のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0232】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、
(b)pH5.6~6.0の酢酸緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-アルギニン、L-メチオニン、及び無機塩、好ましくは塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の安定剤、を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号99~102、111~114、123~126、135~138、147~150、159~162のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0233】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び(b)pH5.6~6.4の緩衝液、を含む。一実施形態では、液体医薬組成物のpHは、6.1~6.4、好ましくは6.2である。好ましい実施形態では、緩衝液は、好ましくは10mM~40mMの濃度のL-アルギニンHClである。一実施形態では、液体医薬組成物は、トレハロース、スクロース、及びマンニトールから選択される糖及び/又は糖アルコール、好ましくはトレハロースを更に含む。好ましくは、糖及び/又は糖アルコールは、20mM~250mMの濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは非イオン性界面活性剤はポリソルベート20及びポリソルベート80から選択され、好ましくは非イオン性界面活性剤はポリソルベート20である。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は、L-メチオニンを、好ましくは1mM~50mM、より好ましくは1mM~20mM、更により好ましくは1mM~10mM、例えば5mMの濃度で更に含む。一実施形態では、液体医薬組成物は無機塩を更に含み、好ましくは無機塩は塩化ナトリウムである。好ましくは、無機塩は、30mM~150mMの濃度で存在する。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号99~102、111~114、123~126、135~138、147~150、159~162のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号99~102、111~114、123~126、135~138、147~150、159~162のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0234】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、
(b)pH6.1~6.4、好ましくは6.2のL-アルギニンHCL緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-メチオニン、及び無機塩、好ましくは塩化ナトリウムから選択される1つ以上の安定剤、を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号99~102、111~114、123~126、135~138、147~150、159~162のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0235】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び(b)pH5.6~6.4の緩衝液、を含む。一実施形態では、液体医薬組成物のpHは5.6~6.0であり、緩衝液は、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液から選択され、好ましくは酢酸緩衝液である。好ましくは、緩衝液は、5mM~60mMの濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は、トレハロース、スクロース、及びマンニトールから選択される糖及び/又は糖アルコール、好ましくはトレハロースを更に含む。好ましくは、糖及び/又は糖アルコールは、100mM~300mMの濃度である。一実施形態では、液体医薬組成物は非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは非イオン性界面活性剤はポリソルベート20及びポリソルベート80から選択され、好ましくは非イオン性界面活性剤は0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は無機塩を更に含み、好ましくは無機塩は塩化ナトリウムである。好ましくは、無機塩は、30mM~150mMの濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は、L-アルギニン及びL-メチオニンから選択される1つ以上のアミノ酸を、好ましくは1mM~50mMの濃度で更に含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号103~110、115~122、127~134、139~146、151~158、163~170のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号103~110、115~122、127~134、139~146、151~158、163~170のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0236】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、
(b)pH5.6~6.0の有する酢酸緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-アルギニン、L-メチオニン、及び無機塩、好ましくは塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の安定剤、を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号103~110、115~122、127~134、139~146、151~158、163~170のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0237】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び(b)pH5.6~6.4の緩衝液、を含む。一実施形態では、液体医薬組成物のpHは、6.1~6.4、好ましくは6.2である。好ましい実施形態では、緩衝液は、好ましくは10mM~40mMの濃度のL-アルギニンHClである。一実施形態では、液体医薬組成物は、トレハロース、スクロース、及びマンニトールから選択される糖及び/又は糖アルコール、好ましくはトレハロースを更に含む。好ましくは、糖及び/又は糖アルコールは、20mM~250mMの濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは非イオン性界面活性剤はポリソルベート20及びポリソルベート80から選択され、好ましくは非イオン性界面活性剤はポリソルベート20である。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する。一実施形態では、液体医薬組成物は、L-メチオニンを、好ましくは1mM~50mM、より好ましくは1mM~20mM、更により好ましくは1mM~10mM、例えば5mMの濃度で更に含む。一実施形態では、液体医薬組成物は無機塩を更に含み、好ましくは無機塩は塩化ナトリウムである。好ましくは、無機塩は、30mM~150mMの濃度で存在する。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号103~110、115~122、127~134、139~146、151~158、163~170のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号103~110、115~122、127~134、139~146、151~158、163~170のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0238】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、IP10に連結されたヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、
(b)pH6.1~6.4、好ましくはpH6.2のL-アルギニンHCL緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-メチオニン、及び無機塩、好ましくは塩化ナトリウムから選択される1つ以上の安定剤、を含む。好ましい実施形態では、IP10は、配列番号98によるアミノ酸配列又はその変異体を含み、融合タンパク質は、配列番号103~110、115~122、127~134、139~146、151~158、163~170のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0239】
一実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
【0240】
一実施形態では、緩衝液はpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液はpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
【0241】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度を有する酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
【0242】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号6によるアミノ酸配列を有する。
【0243】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースである。
【0244】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0245】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースである。
【0246】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0247】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0248】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0249】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0250】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0251】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0252】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0253】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0254】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0255】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0256】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0257】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0258】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0259】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0260】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0261】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0262】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0263】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0264】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20であり、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0265】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号6によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20であり、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0266】
一実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
【0267】
一実施形態では、緩衝液はpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度を有する酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
【0268】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
【0269】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0270】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0271】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0272】
一実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0273】
一実施形態では、緩衝液はpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液はpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0274】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度を有する酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0275】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0276】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースである。
【0277】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0278】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースである。
【0279】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0280】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0281】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0282】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0283】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0284】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0285】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0286】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0287】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、106mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0288】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0289】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0290】
一実施形態では、緩衝液は、20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0291】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0292】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0293】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0294】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0295】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20であり、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0296】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20であり、糖は、263mMの濃度を有するスクロースである。
【0297】
一実施形態では、緩衝液はヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0298】
一実施形態では、緩衝液はpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0299】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0300】
一実施形態では、緩衝液は、pH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、220mMの濃度を有するトレハロースであり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0301】
一実施形態では、緩衝液は、pH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0302】
一実施形態では、緩衝液は、pH6.0のヒスチジン緩衝液であり、糖は、145mMの濃度を有するスクロースであり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有する。
【0303】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、220mMの濃度を有するトレハロースである。
【0304】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0305】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、145mMの濃度を有するスクロースである。
【0306】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0307】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、220mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0308】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0309】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH6.0のヒスチジン緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号10によるアミノ酸配列を有し、糖は、145mMの濃度を有するスクロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0310】
一実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
【0311】
一実施形態では、緩衝液はpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度を有する酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
【0312】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
【0313】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0314】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0315】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0316】
一実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0317】
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0318】
一実施形態では、緩衝液は、pH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0319】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度を有する酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0320】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0321】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0322】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0323】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0324】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0325】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号7によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0326】
一実施形態では、緩衝液は酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0327】
一実施形態では、緩衝液は、pH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%から95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0328】
一実施形態では、緩衝液は、pH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0329】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度を有する酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0330】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.6~6.0の範囲内の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0331】
一実施形態では、緩衝液は、10~20mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0332】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する。
【0333】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースである。
【0334】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0335】
一実施形態では、緩衝液は、10mMの濃度及びpH5.8の酢酸緩衝液であり、融合タンパク質は、配列番号27によるアミノ酸配列を有し、融合タンパク質のACE2部分はN-グリコシル化されており、ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%は、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有し、糖は、250mMの濃度を有するトレハロースであり、界面活性剤は、0.02%(w/v)の濃度を有するポリソルベート20である。
【0336】
本発明の液体医薬組成物中のACE2 Fc融合タンパク質の濃度は、1~60mg/mL、好ましくは5~50mg/mL又は8~40mg/mL、より好ましくは10~30mg/mL又は15~25mg/mL、最も好ましくは20mg/mLである。別の実施形態では、本発明の液体医薬組成物中のACE2 Fc融合タンパク質の濃度は、20~60mg/mL、好ましくは30~50mg/mL、より好ましくは40mg/mLである。
【0337】
本発明の液体医薬組成物は、医療的使用のためのものであり、すなわち、疾患を予防及び/又は治療するために使用されることが意図されている。
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:疾患に由来する1つ以上の症状を緩和すること、疾患の程度を減少させること、疾患を安定化させること(例えば、疾患の悪化の予防又は遅延)、疾患の広がりを予防又は遅延させること、疾患の再発を予防又は遅延させること、疾患の進行を遅延又は遅らせること、疾患状態を改善すること、疾患の寛解(部分的又は全体)を提供すること、疾患を治療するために必要な1つ以上の他の薬物の用量を減少させること、及び/又は生存期間を延長すること。本発明の使用は、治療のこれらの態様のいずれか1つ以上を企図する。
【0338】
「予防する」という用語及び「予防された」、「予防すること」等の同様の用語は、疾患又は状態の再発を予防、阻害、又はその可能性を低減するためのアプローチを示す。それはまた、疾患又は状態の再発を遅延させること、又は疾患又は状態の症状の再発を遅延させることを指す。本明細書で使用される場合、「予防」及び同様の用語はまた、疾患又は状態の再発前に疾患又は状態の強度、影響、症状、及び/又は負荷を軽減することを含む。
【0339】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を予防及び/又は治療するために使用される。コロナウイルスは、ポジティブセンス一本鎖RNAゲノム及び正二十面体タンパク質シェルを有するエンベロープウイルスである。S1及びS2サブユニットからなるスパイクタンパク質は、エンベロープから突出し、ACE2に結合することによって標的細胞との相互作用を媒介するホモ三量体を形成する。コロナウイルスは、ヒト及び他の哺乳動物並びに鳥類種において呼吸器疾患を引き起こすことが多い。ヒトでは、7つのコロナウイルス株:HCoV-OC43、HCoV-HKU1、HCoV-229E、HCoV-NL63、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV-2が知られている。最初の4つのコロナウイルス株(HCoV-OC43、HCoV-HKU1、HCoV-229E、HCoV-NL63)は、軽度の症状しか引き起こさないが、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV-2による感染症は、重篤で潜在的に生命を脅かす疾患につながることがある。
【0340】
SARS-CoV、SARS-CoV-2、及びHCoV-NL63はACE2に結合し、この結合を使用して標的細胞に入ることが示されている(Li et al.(2003)Nature 426(6965):450-4;Hoffmann et al.(2020)Cell 181:1-10;Hofmann et al.(2005)Proc Natl Acad Sci U S A.102(22):7988-93)。したがって、本発明の液体医薬組成物は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症、特にSARS-CoV、SARS-CoV-2、又はHCoV-NL63による感染症を治療及び/又は予防するために使用することができる。ACE2を発現する細胞に、コロナウイルススパイクタンパク質及びレポータータンパク質を発現する偽型VSV(水疱性口内炎ウイルス)を一過性又は恒常的のいずれかで接種し、接種期間後にレポータータンパク質の活性を検出することによって、ACE2に結合する更なるコロナウイルスを特定することができる(Hoffmann et al.(2020)Cell 181:1-10のプロトコルを参照)。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、SARS-CoVではない。
【0341】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、SARS-CoV-2であるか、又はアミノ酸置換D614G及び/又はアミノ酸置換N439Kを含むSARS-CoV-2の変異体である。アミノ酸置換D614Gを含むSARS-CoV-2の変異体は、Korber et al.(2020)Cell 182(4):812-827に記載されており、アミノ酸置換N439Kは、Thomson et al.(https://doi.org/10.1101/2020.11.04.355842)に記載されている。一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614Gを含むSARS-CoV-2の変異体である。アミノ酸置換D614Gは、Wuhan参照株の23,403位におけるAからGへのヌクレオチド変異によって引き起こされる。変異体におけるアミノ酸のナンバリングは、配列番号17によるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質におけるナンバリングを参照する。したがって、配列番号17によるスパイクタンパク質を有するSARS-CoV-2ウイルスは、任意の変異体が由来する野生型SARS-CoV-2であると定義される。
【0342】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G及び少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を含むSARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、N501Y、A570D、P681H、T716I、S982A、及びD1118Hを含み、アミノ酸69、70、及び145の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、Y453F、I692V、及びM1229Iを含み、アミノ酸69及び70の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、S13I、W152C、及びL452Rを含むSARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、E484K、及びV1176Fを含むSARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027I、及びV1176Fを含むSARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、D80A、D215G、K417N、E484K、N501Y、及びA701Vを含み、アミノ酸242、243、及び244の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、L18F、D80A、D215G、K417N、E484K、N501Y、及びA701Vを含み、アミノ酸242、243、及び244の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、D80A、R246I、K417N、E484K、N501Y、及びA701Vを含み、アミノ酸242、243及び244の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換E484Q及びL452Rを含むSARS-CoV-2の変異体である。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換E484K及びD614Gを含み、アミノ酸145及び146の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。
【0343】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換T19R、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R、及びD950Nを含み、アミノ酸156及び157の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。
【0344】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493K、G496S、Q498R、N501Y、Y505H、及びP681Hを含む、SARS-CoV-2の変異体である。
【0345】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換A67V、T95I、Y145D、L212I、G339D、S371L、S373P、S375F、Q493R、T547K、D614G、H655Y、N679K、N764K、D796Y、N856K、Q954H、N969K、L981Fを含む、SARS-CoV-2の変異体である。
【0346】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸N211、Y144、V143、G142、V70、H69の欠失を含む、SARS-CoV-2の変異体である。
【0347】
投与経路は、公知の受け入れられている方法、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内、又は関節内の経路による注射又は注入による。別の実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、鼻腔内に、例えば、鼻スプレー、鼻軟膏、又は点鼻薬によって投与される。別の実施形態では、本発明のタンパク質担持液体医薬組成物は、局所投与又は吸入によって投与される。好ましくは、本発明の液体医薬組成物は、静脈内注射又は注入によって投与される。
【0348】
本発明の医薬組成物の投与量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて変化し得る。適切な投与量又は投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。動物実験は、ヒト治療の有効用量を決定するための信頼できる指針を提供する。有効用量の種間増減は、Mordenti,J.and Chappell,W.「The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,」In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42-46.によって定められた原理に従って行うことができる。
【0349】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、0.1mg/kg体重~4mg/kg体重の投与量、例えば0.1mg/kg体重、0.2mg/kg体重、0.3mg/kg体重、0.4mg/kg体重、0.5mg/kg体重、0.6mg/kg体重、0.7mg/kg体重、0.8mg/kg体重、0.9mg/kg体重、1.0mg/kg体重、1.1mg/kg体重、1.2mg/kg体重、1.3mg/kg体重、1.4mg/kg体重、1.5mg/kg体重、1.6mg/kg体重、1.7mg/kg体重、1.8mg/kg体重、1.9mg/kg体重、2.0mg/kg体重、2.1mg/kg体重、2.2mg/kg体重、2.3mg/kg体重、2.4mg/kg体重、2.5mg/kg体重、2.6mg/kg体重、2.7mg/kg体重、2.8mg/kg体重、2.9mg/kg体重、3.0mg/kg体重、3.1mg/kg体重、3.2mg/kg体重、3.3mg/kg体重、3.4mg/kg体重、3.5mg/kg体重、3.6mg/kg体重、3.7mg/kg体重、3.8mg/kg体重、3.9mg/kg体重、又は4.0mg/kg体重の投与量で静脈内投与され、mgは、液体医薬組成物で送達されるACE2 Fc融合タンパク質のmgを指す。好ましくは、本発明の液体医薬組成物は、2.5mg/kg体重の投与量で静脈内投与され、mgは、液体医薬組成物で送達されるACE2 Fc融合タンパク質のmgを指す。好ましくは、液体医薬組成物は、投与前に生理食塩水で希釈される。一実施形態では、生理食塩水は、0.4~1.5%(w/v)、好ましくは0.6~1.0%(w/v)、より好ましくは0.9%(w/v)の総量で塩化ナトリウムを含む。
【0350】
一実施形態では、本発明の液体医薬組成物は、10mg/kg体重~150mg/kg体重の投与量、例えば10mg/kg体重、15mg/kg体重、20mg/kg体重、25mg/kg体重、30mg/kg体重、35mg/kg体重、40mg/kg体重、45mg/kg体重、50mg/kg体重、55mg/kg体重、60mg/kg体重、65mg/kg体重、70mg/kg体重、75mg/kg体重、80mg/kg体重、85mg/kg体重、90mg/kg体重、95mg/kg体重、100mg/kg体重、105mg/kg体重、110mg/kg体重、115mg/kg体重、120mg/kg体重、125mg/kg体重、130mg/kg体重、135mg/kg体重、140mg/kg体重、145mg/kg体重、又は150mg/kg体重の投与量で静脈内投与され、mgは、液体医薬組成物で送達されるACE2 Fc融合タンパク質のmgを指す。好ましくは、本発明の液体医薬組成物は、15mg/kg体重の投与量で静脈内投与され、mgは、液体医薬組成物で送達されるACE2 Fc融合タンパク質のmgを指す。好ましくは、液体医薬組成物は、投与前に生理食塩水で希釈される。一実施形態では、生理食塩水は、0.4~1.5%(w/v)、好ましくは0.6~1.0%(w/v)、より好ましくは0.9%(w/v)の総量で塩化ナトリウムを含む。
【0351】
液体医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1日おきに、1週間に1回、又は2週間に1回投与されてもよい。
液体医薬組成物は、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、又は10日間投与されてもよい。
【0352】
本発明の液体医薬組成物を投与することによって、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染症が治療され、すなわち、SARS-CoV-2による感染症の症状の少なくとも1つが軽減又は消失する。SARS-CoV-2による感染症の症状としては、咳、息切れ、呼吸困難、発熱、悪寒、疲労、筋肉痛、喉の痛み、頭痛、胸痛、並びに嗅覚及び/又は味覚の喪失が挙げられる。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の投与により、SARS-CoV-2による感染症によって引き起こされる発熱が減少する。一実施形態では、対象への本発明の液体医薬組成物の投与は、対象がSARS-CoV-2による重症感染症過程を経るリスクを低下させる。一実施形態では、対象への本発明の液体医薬組成物の投与は、対象が多臓器不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、又は肺炎を経るリスクを低下させる。一実施形態では、対象への本発明の液体医薬組成物の投与は、対象が肺損傷、神経障害、皮膚科学的障害、及び心血管疾患等のSARS-CoV-2による感染症の長期的影響を受けるリスクを低下させる。一実施形態では、対象への本発明の液体医薬組成物の投与は、血液中のサイトカインIL6及び/又はIL8の濃度を低下させる。一実施形態では、対象への本発明の融合タンパク質の投与は、血液中のSARS-CoV-2ウイルス粒子の濃度を低下させる。一実施形態では、対象への本発明の融合タンパク質の投与は、抗ウイルス抗体の産生を刺激する。一実施形態では、対象への本発明の融合タンパク質の投与は、抗ウイルスIgA及び/又はIgG抗体の産生を刺激する。
【0353】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質を、SARS-CoV-2の重度の感染症に罹患している対象に投与する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質を、SARS-CoV-2に感染しており、人工呼吸を必要とする対象に投与する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質を、SARS-CoV-2に感染しており、体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする対象に投与する。
【0354】
本発明の融合タンパク質を投与することによって、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染症が予防され、すなわち、治療された対象はSARS-CoV-2による感染症の症状を発症しない。
【0355】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質を、SARS-CoV-2に感染した対象と接触していた対象に投与する。SARS-CoV-2に感染した対象と接触していた対象は、スマートフォンにインストールされた「コロナ警告アプリ」を利用して特定することができる。
【0356】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、対象の喉スワブを用いた試験が、SARS-CoV-2に感染していることを示すが、SARS-CoV-2による感染症の症状を何ら発症していない、当該対象に投与される。
【0357】
ACE2に結合するコロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染症の治療又は予防において、本発明の融合タンパク質を、公知の抗ウイルス剤と組み合わせてもよい。抗ウイルス剤は、ウイルス感染症を治療するために使用される医薬品であり、特定の抗ウイルス剤及び広範囲ウイルス剤の両方を含む。好適な抗ウイルス剤には、限定されないが、ヌクレオシド類似体、ウイルスプロテアーゼの阻害剤、ウイルスポリメラーゼの阻害剤、細胞へのウイルス侵入の遮断剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤が含まれ、また炎症メディエーターの阻害剤も含まれる。
【0358】
特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、レムデシビル、アルビドールHCl、リトナビル、ロピナビル、ダルナビル、リバビリン、クロロキン及びそれらの誘導体、例えばヒドロキシクロロキン、ニタゾキサニド、メシル酸カモスタット、抗IL6及び抗IL6受容体抗体、例えばトシリズマブ、シルツキシマブ並びにサリルマブ及びリン酸バリシチニブからなる群から選択される。
【0359】
SARS-CoV-2による感染症の治療又は予防において、本発明の医薬組成物は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体を更に含有するか、又は抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体と組み合わせてもよい。抗SARS-CoV2モノクローナル抗体としては、限定されないが、Eli Lilly and Campanyによって開発されたバムラニビマブ(LY-CoV555 20;LY3819253;)、エテセビマブ(LY-3832479;LY-COV016;JS-016;NP-005)、REGN10933(カシリビマブ)及びREGN10987(イムデビマブ)の混合物であり、Regeneronによって開発されたREGN-COV2、Vir Biotechnology及びGlaxoSmithKlineによって開発されたソトロビマブ(VIR-7831;GSK4182136;)、Celltrionによって開発されたCT-P59、抗体AZD8895とAZD1061との組み合わせであり、Astra Zenecaによって開発されたAZD 7442、Junshi Biosciencesによって開発されたJS016、Tychan Pte Ltdによって開発25されたTY027、Brii Biosciencesによって開発されたBRII-96及びBRII-98、Sinocelltech Ltdによって開発されたSCTA01、Ology Bioservicesによって開発されたADM03820、Boehringer Ingelheimなどによって開発されたBI767551、Corat Therapeuticsによって開発されたCOR-101、Pfizer Inc.によって開発されたPaxlovid(PF-07321332;リトナビル)が挙げられる。
【0360】
コロナウイルスの結合におけるその機能とは別に、ACE2はまた、高血圧症(高血圧を含む)、うっ血性心不全、慢性心不全、急性心不全、収縮性心不全、心筋梗塞、動脈硬化症、腎機能障害、腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症、腎線維症、慢性腎不全、急性腎不全、急性腎傷害、炎症性腸疾患、及び多臓器機能不全症候群等、いくつかの障害及び疾患に関与している。したがって、本発明の融合タンパク質は、これらの障害及び疾患の治療にも使用することができる。
【0361】
医薬組成物は、バイアル又はプレフィルドシリンジで供給されてもよい。医薬組成物は、静脈内注入によって、例えば30分以下の期間にわたって投与されてもよい。医薬組成物は、静脈内注入によって、例えば30分~1時間、好ましくは1時間の期間にわたって投与されてもよい。
【0362】
本発明を図面及び上述の説明において詳細に図示及び説明してきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示、及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。
【0363】
詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、用途及び使用を限定することを意図するものではない。以下の実施例は本発明を更に説明するが、本発明の範囲をそれに限定するものではない。当業者であれば、本発明の説明に基づいて種々の変更及び修正を加えることが可能であり、そのような変更及び修正も本発明に含まれる。
【実施例】
【0364】
2つのACE2-IgG4融合タンパク質(コンストラクトv1261及びコンストラクトv1263、配列番号6及び10による配列を参照)の好適な液体医薬製剤を、5ステップの手順で特定した。
【0365】
実施例1に記載されているように、2つのACE2-IgG4融合タンパク質の各々について、最高融解温度及び凝集傾向について25の異なる組成物をスクリーニングして、熱アンフォールディング及び凝集に対する安定性を提供するための最適な条件及び賦形剤を特定した。
【0366】
実施例2に記載されるように、2つのACE2-IgG4融合タンパク質を、標準製剤において異なる熱条件(37℃で互いに異なる期間のインキュベーション及び凍結/解凍研究)に供した。物理的及び化学的修飾(実施例2参照)を、一連の分析方法を用いてモニターした。
【0367】
実施例3では、実施例1の結果に基づく1つの製剤を、熱安定性及び融解温度に関して、コンストラクトv1261及びv1263の細胞株開発中に試験した。
実施例2において特定された品質属性及びそれらのモニタリング方法、並びに実施例1において特定された好ましい賦形剤に基づいて、実施例4及び5において記載される製剤の新しいセットを作製した。2つのACE2-IgG4融合コンストラクトをこれらの製剤に移し、物理化学的安定性及び効力に関する最良の安定化効果について、異なる温度及びストレス条件での安定性研究中に評価した。
【0368】
実施例6では、製剤4a(表12)が、ヒトIgG1(v1260、配列番号7)のFc部分を有するACE2融合タンパク質にも使用できることを確認する。更に、製剤4aにおける短期安定性を、異なるACE2-IgG1コンストラクト(v1260、配列番号7、v1328、配列番号27)について分析し、結果を実施例7に示す。
【0369】
実施例8では、選択された製剤中のヒトIgG4(v1261、配列番号6)のFc部分を有する正常シアリル化ACE2融合タンパク質及び高シアリル化ACE2融合タンパク質の安定性を調べる。
【0370】
実施例9では、製剤4aにおけるACE2(18-732)-IgG4正常シアリル化(v1261、配列番号6)の安定性試験の結果を、以下の条件について示す。
●F/T:-76℃±9℃及び室温で3サイクル
●76℃±9℃で最大6ヶ月
●5℃±3℃及び25℃±2℃/60%RH±5%RHで最大6ヶ月、並びに40℃±2℃/75%RH±5%RHで最大3ヶ月)。
【0371】
分析方法の説明:
1.NanoDSF
1.1 材料
【0372】
1.2 分析
●試料を透析し、続いて緩衝液(0.02%PS20、30mM L-アルギニン塩酸塩、250mMトレハロース二水和物、5mM L-メチオニン、50mM NaCl、10mM酢酸pH5.8)中で1mg/mLの濃度に希釈した。
【0373】
●キャピラリーが試料(約10μL)で完全に満たされるまで、キャピラリーを試料溶液に浸漬し、気泡について注意深くチェックした。気泡を有するキャピラリーを廃棄し、交換した。
【0374】
●全ての試料がロードされると、ThermControlソフトウェアを開始し、必要な光強度を決定するためにディスカバリスキャンを行った。
●25%の光強度を選択した。
【0375】
●温度を20℃から95℃まで上昇させた。1.0℃/分の勾配を設定した。
●ThermStabilityソフトウェアをデータ解析に使用した。
2.サイズ排除クロマトグラフィー
2.1 材料
【0376】
2.2 分析
溶媒:
●移動相A:20mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.0
試料調製:
●試料濃度:約1mg/mL
機器パラメータ:
●システム:拡張カラムオーブン、TUV検出器を備えたAcquity H-class+bio
●UV検出:二重波長、214及び280nm、サンプリングレート:2点/秒/
3.アニオン交換クロマトグラフィー
3.1 材料
【0377】
3.2 分析
溶媒:
●移動相A:20mM Tris pH8.5
●移動相B:20mM Tris pH8.5+2M NaCl
試料調製:
●ブランク:95:5比の移動相A+移動相B
●試料濃度:約1.0mg/mL
機器パラメータ:
●システム:拡張カラムオーブン、TUV検出器を備えたAcquity H-class+bio
●カラム:Propac WAX-10、2×250mm
●2.5%から100%までの直線勾配の緩衝液Bを使用した。
【0378】
【0379】
4.2 試料調製:
●試料緩衝液:100mM Tris pH9.0-2%SDS
●マスターミックス:50μL試料緩衝液、2μL内部標準(10kDa)、5μL 250mMヨードアセトアミド;分析用試料数を乗じる(+10%の追加容量)
●57μLマスターミックスと混合した45μL試料、インキュベーション:90℃、10分
4.3 分析:
●システム:CESI 8000、Sciex。
【0380】
●検出器:PDA検出、220nm±10nm、データレート:2Hz
5.結合ELISA(ACE2-IgG4コンストラクトの検出)
5.1材料
【0381】
5.2 分析
●96ウェルプレート(NUNC)をコーティングする。
●翌日、コーティングを除去し、洗浄緩衝液で3回(300μL/ウェル)プレートを洗浄する
●ウェルを200μL/ウェルのブロック緩衝液(1%BSAを補充した洗浄緩衝液)でブロックし、室温及び150rpmで1時間インキュベートする
●ブロック緩衝液を除去する(プレートをはじく)
●100μL/ウェルの試料を適用し(調製用複製)、室温及び150rpmで1時間インキュベートする(濃度範囲:5.00-1.67-0.56-0.19-0.062-0.021-0.0069-0.0023-0.00076-0.00025-0.000085-0μg/mL)
●洗浄緩衝液でプレートを3回(300μL/ウェル)洗浄する
●検出Ab(ブロック緩衝液で1/4000希釈)を適用し、室温及び150rpmで1時間インキュベートする。
【0382】
●洗浄緩衝液でプレートを3回(300μL/ウェル)洗浄する
●TMB溶液(室温で予め温めた必要量)を適用し、室温で2分間インキュベートする
●1M HClで反応を停止する
●室温で15分間、光から保護してインキュベートする
●マイクロプレートリーダー(Synergy HTX、BioTek)を使用してOD450nm及びOD655nmでの基準を測定する
●4パラメータロジスティック曲線適合モデルを使用して、y軸上のOD450nm(バックグラウンド値の減算後=ACE2-Fcなし)に対してx軸上のACE2-Fc濃度(μg/mL)をプロットする
6.結合ELISA(ACE2-IgG1コンストラクトの検出)
6.1 材料
【0383】
6.2分析
●96ウェルプレート(NUNC)をコーティングする。
●翌日、コーティングを除去し、洗浄緩衝液で3回(300μL/ウェル)プレートを洗浄する
●ウェルを200μL/ウェルのブロック緩衝液(1%BSAを補充した洗浄緩衝液)でブロックし、室温及び150rpmで1時間インキュベートする
●ブロック緩衝液を除去する(プレートをはじく)
●100μL/ウェルの試料を適用し(調製用複製)、室温及び150rpmで1時間インキュベートする(濃度範囲:5.00-1.67-0.56-0.19-0.062-0.021-0.0069-0.0023-0.00076-0.00025-0.000085-0μg/mL)
●洗浄緩衝液でプレートを3回(300μL/ウェル)洗浄する
●検出Ab(ブロック緩衝液で1/5000希釈)を適用し、室温及び150rpmで1時間インキュベートする。
【0384】
●洗浄緩衝液でプレートを3回(300μL/ウェル)洗浄する
●TMB溶液(室温で予め温めた必要量)を適用し、室温で2分間インキュベートする
●1M HClで反応を停止する
●室温で15分間、光から保護してインキュベートする
●マイクロプレートリーダー(Synergy HTX、BioTek)を使用してOD450nm及びOD655nmでの基準を測定する
●4パラメータロジスティック曲線適合モデルを使用して、y軸上のOD450nm(バックグラウンド値の減算後=ACE2-Fcなし)に対してx軸上のACE2-Fc濃度(μg/mL)をプロットする
7.分析的超遠心分離
7.1 方法の説明
適用された設定における分析的超遠心分離(AUC)の目的は、沈降速度分析によるタンパク質凝集及び分解の分析である。沈降速度において、高遠心場における溶質の移動は、高分子のサイズ、形状、及び相互作用を定義するための流体力学理論を使用して解釈される。遠心分離プロセス中、分析された試料は、光学検出システムを介してリアルタイムで監視される。これにより、適用された遠心場の結果としての回転軸プロファイルに対する試料濃度を観察することができる。これにより、溶解したタンパク質の形状及びモル質量、並びにそのサイズ分布を報告することが可能になる。沈降速度実験は、An-Ti 50ローター及び吸光度光学系を備えたOptima AUC(Beckman Coulter)分析的超遠心分離機を用いて行う。試料を対応する製剤緩衝液で0.5g/Lに希釈した。実験は、40.000rpmのローター速度で300分間、20℃で独立した三連測定にて行う。UV吸光度検出は、2分のスキャン間隔により280nmで実行される。沈降係数及び分子量の分布は、c(s)モデルを使用して数学的に決定された。試料種の分子量は、以下の関係を用いて計算することができる。
【0385】
【0386】
式中、sは沈降係数、Rは気体定数、Dは拡散係数、Tは絶対温度、
【0387】
【0388】
は部分比容、及びρは溶媒密度である。Dは、沈降バンドの形状から直接決定することができる。
7.2 データ分析
データ分析を、プログラムSedfit(P.Schuck(2000)Biophys.Journal 78:1606-1619)により行った。以下の適合パラメータを適用した:
【0389】
得られたデータのノイズ及びベースライン、並びに試料メニスカス及び摩擦比を試料分析中に適合させ、セル底部距離値を固定した。得られた沈降分布を、その後、GUSSIツールを使用してプロットした。
【0390】
【0391】
8.2方法の説明
組換えタンパク質産物の荷電変異体は、グリコシル化、リン酸化、酸化、脱アミド化、又はリシンクリッピング等の翻訳後修飾を含むことが多い。全プロセス及び貯蔵中、タンパク質分子は物理化学的ストレスにさらされ、酸化又は脱アミド化によって引き起こされる電荷変異体の形成をもたらし得る。これらの修飾は、タンパク質の完全電荷プロファイルに寄与するものであり、分子の生物学的活性に影響を及ぼし得る。cIEFは、これらの荷電タンパク質(例えばアイソフォーム)をpH勾配内で分離するための高速高分解能技術である。両性電解質とタンパク質との混合物をnL容量のキャピラリーに注入し、電流を印加してpH勾配の形成を誘導する。タンパク質は、それらのpIに従って勾配内を移動し、キャピラリーの完全長に沿って吸光度(280nmで)又は蛍光(消光280、発光320~450nm)を測定することによって検出される。
【0392】
タンパク質の同一性及び純度の決定には、cIEFの原理を適用した。以下の条件を使用し、以下の設定を適用した:
●緩衝液交換:50mM Tris、50mM NaCl、pH7.2
●マスターミックス:
■0.35%メチルセルロース
■4%Servalyte3-6
■2%Servalyte3~10%
■20%スクロース(67m%(20℃)ストック溶液から)
■2%pIマーカー3.38
■2%pIマーカー5.85
●方法:1.0分、1500ボルト(集束)、10.0分3000ボルト(分離)
●データ評価のための曝露:蛍光、10秒
9.公定法
公定法を、欧州薬局方(Ph.Eur.)に従って行った:
●可視粒子(Ph.Eur.2.9.20)
●肉眼で見えない粒子(Ph.Eur.2.9.19)
●pH(Ph.Eur.2.2.3)
●色(Ph.Eur.2.2.2)
●透明度(Ph.Eur.2.2.1)
●重量オスモル濃度(Ph.Eur. 2.2.35)。
【0393】
10.タンパク質濃度の決定
吸光分光法は、溶液中のタンパク質の濃度を決定するための迅速で便利な方法として役立つ。溶液中のタンパク質は紫外光を吸収し、約280nm(芳香族アミノ酸)及び200nm(ペプチド結合)に吸光度極大を有する。ランベルト・ベールの法則(A280nm=ε280nm*c*d)及びタンパク質の比吸光係数(ε280)を使用して、溶液の吸光度からタンパク質の濃度を計算することができる。
【0394】
この原理を、異なる装置(NanoDrop、SoloVPE及びUV/Vis分光光度計(OD280))を使用する濃度決定に使用した。
11.酵素活性アッセイ:
11.1 材料及び装置
【0395】
【0396】
11.3 方法の説明
ACE2活性アッセイの原理は、20分間にわたる5ngの活性ACE2(FYB207)による合成ペプチド基質(MCA)の切断に基づく。ACE活性アッセイの原理は、ACE2-IgG融合タンパク質の酵素活性の決定に適用される。
【0397】
標準:
1)5μLの1mM MCA標準を195μLのACE2アッセイ緩衝液で希釈することによって、MCA標準の25μM溶液を調製した。
【0398】
2)0、2、4、6、8及び10μLの25μM MCA標準を96ウェルプレート内の一連のウェルに添加し、ACE2アッセイ緩衝液で100μL/ウェルの最終容量に調整した。したがって、0、50、100、150、200及び250pmol/ウェルのMCA標準液をそれぞれ生成した。
【0399】
3)混合後、最も高いMCA濃度についてプレートリーダーで測定できる極大値の80%になるようにゲインを調整して、終点モードで蛍光(Ex/Em=320/420nm)を測定した。
【0400】
アッセイ:
1)試料を50mM Tris-150mM NaCl緩衝液pH7.5で適切な濃度に希釈した。
【0401】
0.05mg/mLへの予備希釈。
0.0025mg/mLへの更なる希釈。
2)全ての試料+対照をACE2アッセイ緩衝液中で調製した:
陰性対照(=ブランク):2μLの50mM Tris-150mM NaCl緩衝液pH7.5+48μL ACE2アッセイ緩衝液
陽性対照:2μL陽性対照+48μL ACE2アッセイ緩衝液
試料:2μL希釈試料+48μL ACE2アッセイ緩衝液
3)試料を室温で15分間インキュベートした。
【0402】
4)所望の数のウェルに対するMCA基質混合物の調製。
1ウェルの基質混合物:2μLのACE2基質+48μLのACE2アッセイ緩衝液。
5)50μLのACE2基質混合物を試料、陽性対照、及び陰性対照ウェルの各々に添加し、混合した。
【0403】
6)蛍光(Ex/Em=320/420nm)を動的モードで室温にて2時間測定し、標準曲線を用いてゲインを決定した。
7)動的曲線の線形領域を選択した(最初の20分間)。
【0404】
8)この選択された線形領域(最初の20分)の開始時と終了時とのRFUの差を決定した。
9)ACE2-Fc試料を用いた速度論的測定からブランク測定値を差し引いた。
【0405】
10)このRFU値は、標準曲線の線形範囲内にあるべきである。
11)標準曲線の線形フィットを使用して、酵素によって切断されたMCAの量を決定した。
【0406】
12.実施例9内に適用された非還元CE-SDS:
12.1 材料及び装置
【0407】
12.2 方法及び試料調製
ドデシル硫酸ナトリウムを用いたキャピラリー電気泳動(CE-SDS)は、質量電荷比に従ってポリマーマトリックス内のSDS-タンパク質複合体を分離するための高速高分解能技術である。SDS-タンパク質複合体は、電流が印加されるnL容量のマトリックス充填キャピラリーに移動する。小さなタンパク質はマトリックス内でより速く動き、より大きなタンパク質はより遅く動く。キャピラリーの端部で吸光度(280nm)を測定することにより、タンパク質を検出する。ProteinSimpleのモーリスcIEF/CE-SDS機器を使用した。
【0408】
CE-SDSの原理を、ACE2-Fcの純度の測定に適用する。以下の条件及び最適な運転パラメータを使用した。
●緩衝液交換:50mM Tris、50mM NaCl、pH7.2
●最終希釈用SDS-緩衝液:CE-SDS PLUS 1×試料緩衝液
●アルキル化:10分、70℃
●5750Vでの分離:非還元=40分
12.実施例9内に適用したSE-HPLC:
12.1 材料及び装置
●Waters製のU(H)PLCシステム
●ランニング緩衝液:1×PBS、0.1M NaCl、PH7.0
12.2 方法の説明
(超)高速液体クロマトグラフィー((U)HPLC)の原理は、移動液相と固定相との間の試料の相互作用及び差次的分配に基づく。SE-UPLCの場合、分離は成分の分子サイズ又は流体力学的体積に基づく。カラム内の多孔質充填材料の細孔に対して大きすぎる分子が最初に溶出し、細孔に入る小分子が最後に溶出する。例えば不純物又は緩衝液成分の溶出時間は、それらの相対サイズに依存する。
【0409】
SE-UPLCの原理は、ACE2-Fcの純度及び不純物の決定に適用される。試験には以下の条件を用いた。
●移動相:1×PBS、0.1M NaCl、pH7.0
●カラム:ACQUITY UPLC Protein BEH SECカラム、200Å、1.7μm、4.6×150mm
●方法:イソクラティック0.3mL/分
●検出波長:214nm及び280nm
実施例1:融解温度及び凝集による25の製剤のスクリーニング
1.試料調製
2つのコンストラクトv1261及びv1263の各々1mg(両方とも50mM TRIS、150mM塩化ナトリウム、pH7.5中1mg/mLの濃度)をスピン濾過によって8mg/mLに濃縮した。タンパク質濃度をOD分光光度法によって確認した。その後、全ての試料を透析により20mM MOPS、150mM塩化ナトリウム、pH7.5に移した。最後に、透析産物のタンパク質濃度をOD280によって再度決定したところ、7.5mg/mLを得た。
【0410】
次のステップでは、25の異なる製剤を製造した。このため、2 bind GmbH(Regensburg,Germany)製のFORMOscreen緩衝液キット(カタログ番号2BBT-001)を使用し、これは、マルチプレートフォーマットに基づく製剤の調製を可能にする。最初に、個々の成分をユーザマニュアルに従って混合し、試料体積を縮小するためにわずかに変更した:4.40μlの各5×緩衝液ストックを96ウェルプレート内で14.60μlの超純水と混合し、3.0μlの対応するACE2-IgG4-融合コンストラクト(v1261又はv1263、タンパク質濃度:7.5mg/mL)を添加し、混合した。これを行うことによって、1mg/mLの最終タンパク質濃度で合計22μlを、表1による製剤で調製した。
【0411】
【0412】
表1に従って、緩衝系に加えて以下の賦形剤を安定剤/等張化剤として試験した:スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、アミノ酸L-アルギニン、グリシン、プロリン、L-メチオニン、及び塩化ナトリウム。全てのこれらの物質の濃度及び混合物を、表1に従う製剤内で変化させた。
【0413】
pHを調整するための緩衝系として以下の賦形剤を試験した:ヒスチジン/ヒスチジンHCl、クエン酸ナトリウム/クエン酸、コハク酸二ナトリウム/コハク酸、酢酸ナトリウム/酢酸、リン酸一ナトリウム/リン酸二ナトリウム、L-アルギニンHCl、及びTris。「安定剤」のカテゴリーで上述したアミノ酸は、緩衝剤としても作用することができる。緩衝系の濃度を表1に示し、製剤のpH値を5.4~8.6の間で変化させた。
【0414】
以下の賦形剤を界面活性剤として試験した:ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188及びPEG-3350。この実施例における濃度を、ポリソルベート80については0.009%(w/v)~0.2%(w/v)、ポリソルベート20については0.006%(w/v)~0.2%(w/v)、PEG-3350については0.47%(w/v)~3.00%(w/v)の間で変化させ、ポロキサマー188については0.02%(w/v)の濃度を使用した。界面活性剤を使用しない製剤も評価した(C1)。更なる情報については、表1を参照されたい。
【0415】
更に、メチオニン(2.7mM~10mM)及びEDTAナトリウム(0.06mM)をいくつかの製剤に含めて、2つのACE2コンストラクトの酸化を防止した。
表1による25の製剤で製剤化された両方のコンストラクト(v1261及びv1263)を、それらの融解温度及び不溶性凝集体の生成について分析した。
【0416】
2.NanoDSFによる融点決定及び凝集測定
立体構造の安定性は、タンパク質の長期安定性を予測するための重要なパラメータであり、本明細書では、ACE2-IgG4融合コンストラクトの最初の製剤候補を特定するために使用した。表1による25の製剤での両方のコンストラクト(v1261及びv1263)の融解温度を、Nanotemper GmbH製のPrometheus NT.48 nanoDSF装置及びPR.ThermControl-CFRソフトウェアを用いて定量した。Prometheus装置は、無標識条件下での固有の蛍光変化の検出に基づいてタンパク質アンフォールディング転移を分析する。これにより、330nm及び350nmの波長での熱変性中のACE2 Fc融合タンパク質のトリプトファン及びチロシン残基の蛍光の変化を測定する。通常、トリプトファン及びチロシン残基は、それが天然状態にあるとき、タンパク質の疎水性コアに位置する。温度を上昇させることにより、タンパク質の立体構造は天然の折り畳まれた状態からアンフォールディングされた状態に変化する。この転移が起こる温度は融点と呼ばれ、タンパク質の熱安定性を推定するために使用される。融点温度Tonset温度は、折り畳みの変化によってタンパク質が変性し始める温度として定義され、Tmは、タンパク質集団の半分がアンフォールディングされる融解温度を示す。
【0417】
NanoDSFによる熱安定性の評価に加えて、不溶性凝集体の生成も、同じキャピラリー内の後方反射によって監視することができる。凝集体は、照射されたときに光を散乱させる。試料を通過した後の光ビームの強度の損失を測定することにより、凝集レベルの指標が得られる。温度を上昇させながら生成したデータから、凝集開始温度(Tagg-on)を決定する。
【0418】
表1による試料(全て1mg/mLのコンストラクトを含む)を毛管力によってキャピラリーに充填し、走査した。測定パラメータを表2に示す。
【0419】
【0420】
融点Tm及びアンフォールディング開始温度は、Nanotemper製のソフトウェアPR-ThermControl-CFRによって計算した。各試料を1回の測定で分析した。表3は、コンストラクトv1261についての異なる品質属性の平均を要約し、表5は、コンストラクトv1263についての結果を要約する。各パラメータについて10個の最良性能の製剤を(1)~(10)からランク付けし、更に太字で示す。
【0421】
【0422】
Prometheusシステムを用いてv1261の試料を分析すると、以下の結果が得られた(詳細な結果については表3を参照)。
製剤H11、A4、A7、D11、及びC12は、v1261コンストラクトの長期安定製剤を開発するために好ましいv1261(表4を参照)について試験した25の製剤での最高融解温度を含む。驚くべきことに、これらの製剤は、安定剤として糖を含むことができ、又は糖を含まない塩化ナトリウム製剤(H11)に基づくことができる。すなわち、安定剤としてトレハロース及びスクロースのような糖を含有する溶液は、等張剤として塩化ナトリウムを含有する糖を含まない製剤に匹敵する融解挙動を含む。
【0423】
ソルビトール(例えば、製剤A5、B8)、マンニトール(H3)、グリシン(H3)及びプロリン(D10)の使用は、nanoDSFによって評価される安定性を改善しなかった。
【0424】
【0425】
驚くべきことに、スクロース及び塩化ナトリウムに加えて賦形剤としてL-アルギニン(表2を参照)を含有する製剤C1はまた、高いTagg-onをもたらし、この製剤がいかなる界面活性剤も含有しない場合であっても、他の試験された製剤と比較して凝集に対する有望な安定性を示した。
【0426】
界面活性剤ポリソルベート20及びポリソルベート80は、試験した範囲でスクリーニングにおいて同等に機能し、両方ともポロキサマー188及びPEG-3350の使用と比較して優れていた。界面活性剤を使用しない製剤も、安定な製剤をもたらした(C1)。
【0427】
溶液の最適pHは、5.6~6.3の範囲であると決定された。表3からの結果に基づいて、これのために特定された好適な緩衝系は以下の通りである:ヒスチジン/ヒスチジンHCl(製剤C4、C11及びC12を参照)、酢酸/酢酸ナトリウム(製剤A4を参照)、リン酸一ナトリウム/リン酸二ナトリウム(製剤A7を参照)、及びコハク酸/コハク酸二ナトリウム(製剤H11を参照)。
【0428】
v1263試料をPrometheusシステムで分析すると、以下の結果が得られた(詳細な結果については表5を参照)。
【0429】
【0430】
製剤C12、B7、H7、C4、F8、及びH3は、v1263コンストラクトの長期安定製剤を開発するために好ましいv1263について試験した25の製剤での最高融解温度を含む(表5を参照)。製剤の大部分は、安定剤としてのトレハロース又はスクロースのような糖とポリソルベート20又はポリソルベート80と組み合わせて、緩衝剤としてのヒスチジンに基づいており、高い融点を達成することができた(表6を参照)。
【0431】
ソルビトール(例えば、製剤A5、B8)、及びプロリン(D10)の使用は、nanoDSFによって評価される安定性を改善しなかった。
驚くべきことに、スクロース及び塩化ナトリウムに加えて賦形剤としてL-アルギニン(表2を参照)を含有する製剤C1は、最も高いTagg-onの1つをもたらし、この製剤がいかなる界面活性剤も含有しない場合であっても、他の試験された製剤と比較して凝集に対する非常に有望な安定性を示した(表5を参照)。製剤A4は、最も高いTagg-onをもたらし、凝集を防止するために有望であると思われる。
【0432】
界面活性剤ポリソルベート20及びポリソルベート80は、試験した範囲でスクリーニングにおいて同等に機能し、両方ともポロキサマー188及びPEG-3350の使用と比較して優れていた。
【0433】
溶液の最適pHは、5.8~6.3の範囲であると決定された。表5の結果に基づいて、これに適した特定された緩衝系は、ヒスチジン/ヒスチジンHCl(製剤B7、H7、F8、C4及びC12を参照)、酢酸(製剤A4を参照)、及びクエン酸/クエン酸ナトリウム(製剤H3を参照)である。
【0434】
【0435】
実施例2
物理化学的分析方法によって重要な属性を特定するためのACE2-IgG4-融合コンストラクトv1261及びv1263の加速安定性及び凍結解凍プログラム
ACE2-IgG4-融合コンストラクトv1261及びv1263を50mM TRIS、150mM塩化ナトリウム、pH7.5に製剤化した。各コンストラクトの濃度を1mg/mLに調整し、280nmでのUV-Vis分光法によって検証した。
【0436】
上記製剤中の1mg/mLの濃度のコンストラクトをポリプロピレンバイアルに充填し、37℃で最大6週間貯蔵して、分解経路を特定し、可能な製剤戦略を評価して、これらの分子修飾に対するACE2-IgG4-FCコンストラクトの安定性を最適化した。更に、タンパク質安定性に対するこのプロセシングステップの影響を評価するために、両方のコンストラクト(v1261及びv1263)に凍結/解凍サイクルによってストレスをかけた。
【0437】
貯蔵又はストレス処理後、試料を、高分子量種(HMWS)の存在についてはサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって、断片及びHMWSの存在については非還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって分析した。ペプチドマッピングを使用して、酸化及び脱アミド化による修飾を定量した。
【0438】
SE-HPLCによる高分子量種(HMWS)の分析
15μgの各試料を、2つのACE2-IgG4-FC融合コンストラクトの高分子量種を検出するために、ACQUITY UPLC Protein BEH SEC 200Å、1.7μm、4.6mm×150mm、10K~500Kカラムに適用した。ガードカラムACQUITY UPLC Protein SEC Guard Column 200Å、1.7μm、4.6mm×30mm、10K~500Kを使用して、メインカラムを保護した。
【0439】
150mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いて、30℃で0.3mL/分の流速によりイソクラティック溶出によってタンパク質を溶出した。溶出された種を280nmの波長で検出し、溶出された種の濃度対時間を示すグラフに表示した。溶出プロファイルは、非凝集タンパク質を有する主ピーク及びタンパク質のより高い分子量形態を表すタンパク質のピークを示した。全てのピークの面積を決定した。
【0440】
表7は、HMWSのピーク面積の、試料v1261及びv1263の溶出種の総ピーク面積に対するパーセントを示す。
【0441】
【0442】
HMWSの生成は、37℃で1週間貯蔵した後に既に強く増加しており、凝集の明らかな傾向が見られる。また、凍結/解凍サイクルを行った後、HMWSは増加し、コンストラクトが凍結に対して安定でないことを示した。
【0443】
両方のACE2-IgG4-Fcコンストラクトが、凝集しやすい。これらの結果に基づいて、凝集に対する製剤の改善が必要であり、実施例1で特定された賦形剤及び条件の使用が、長期安定製剤を開発するために必要である。
【0444】
非還元SDS-cGEによる高分子量種(HMWS)及び低分子量種(LMWS)の検出
試料中の低分子量種(LMWS)及び共有結合した高分子量種(HMWS)を定量するために、ABSciex製のCESI8000システムを使用してキャピラリーゲル電気泳動を行った。2%SDSを含む、100mM Tris pH9.0を含む試料緩衝液を使用した。50μlの試料緩衝液を使用し、2μlの内部標準及び5μlの250mMヨードアセトアミドを添加することによってマスターミックスを作製した。分析対象の各試料(1mg/mL)を57μlのマスターミックス溶液と混合した。
【0445】
分析のために、試料を圧力注入(34.5kPa(5psi)、65秒)によって注入した。SDS-cGEは、有効長10cmの中性の剥き出しの溶融シリカキャピラリーへの順方向注入によって行った。キャピラリー温度25℃、-15kVで25分間分離を行った。分析の前に、試料を90℃で10分間熱変性させた。
【0446】
UV吸収を220nmで測定した。32Karatソフトウェア(Beckman Coulter)を使用して、ピーク積分に関してデータを評価した。キャピラリー電気泳動では、初期ピークが後のピークよりも検出器ウィンドウを通って速く移動するという事実を考慮して、ピーク面積を速度補正相対ピーク面積として決定した。試料ピーク積分を、製剤緩衝液又は純水ブランクの電気泳動図と比較して行い、非タンパク質特異的ピークを特定し、除外した。
【0447】
【0448】
表8によれば、LMWSは、37℃での貯蔵中に両方のコンストラクトにおいて増加した。v1261では、インキュベーション期間中にHMWSは検出されず、v1263では、HMWSのわずかな増加を観察することができた。凍結/解凍サイクルを両方のコンストラクトに適用することによると、LMWSもHMWSも生成されなかった。
【0449】
これらの結果に基づいて、両方のコンストラクトは断片化を起こしやすいことが示されており、非還元CE-SDSによるこの重要な品質属性の監視は、次の製剤化ラウンドにおいて考慮する必要がある(実施例4を参照)。
【0450】
LC-MSペプチドマッピングによる酸化及び脱アミド化の検出
コンストラクトv1261及びv1263の両方における酸化修飾及び脱アミド化の定量化をペプチドマッピングによって行った。
【0451】
各試料(20μg)を試料緩衝液で1mg/mLに希釈した。試料緩衝液は、20mM Tris pH7.8、1mM EDTA、及び15mM L-メチオニンからなっていた。42μlの8MグアニジンHCl(100mM Tris pH7.8、5.5mM DTT中で調製)を4℃で1時間かけて添加することによって試料を還元した。その後、5.5μlの150mMヨードアセトアミドを添加し、試料を暗所で室温にて30分間貯蔵することによってアルキル化を行った。240μlの試料緩衝液、5μlのトリプシン及び組換えLys-Cの両方の1μg/μlの酵素溶液を添加し、37℃で4時間インキュベートすることによって、両方のACE2-IgG4-FC融合コンストラクトを消化した。インキュベーション後、17μlの20%ギ酸溶液を添加した。
【0452】
LC-MSペプチドマッピングによる試料分析のため、42.5μlの試料(2.5μg)をACQUITY Peptide BEH C18、130Å、1.7μm、2.1×150mmカラムに適用した。
【0453】
液体クロマトグラフィーには、60分以内に5%~43%アセトニトリルの勾配を0.2mL/分の流速で使用した。移動相AはMilli-Q水中の0.1%ギ酸からなり、移動相Bはアセトニトリル中の0.1%ギ酸からなった。カラム温度50℃で分離を行った。シール洗浄/パージを80/20アセトニトリル/Milli-Q水で行った。
【0454】
測定のため、以下のパラメータを使用した:
-100~2000m/z
-キャピラリー:3kV
-試料コーン:25V
-ソース温度:100℃
-脱溶媒温度:250℃
-脱溶媒ガス流量:500L/h
-低CE法:MS:6V、MSE:15~30V
-高CD法:MS:6V、MSE:60~100V
その後、UNIFYデータベースを使用して、カバレッジマップについて既知のタンパク質配列を検索した。潜在的なメチオニン酸化部位又はアスパラギン脱アミド化部位を有する全てのペプチドの抽出イオン電流(XIC)法を、37℃での貯蔵中及び凍結/解凍サイクル後のコンストラクトv1261及びv1263におけるこれらの修飾の定量化に関する評価に使用した。
【0455】
【0456】
【0457】
37℃での貯蔵では、コンストラクトv1261及びv1263の両方におけるメチオニン酸化の増加をLC-MSペプチドマッピングによって実証することができた(表9及び表10を参照)。両方のコンストラクトが、凍結/解凍サイクルを適用した後、メチオニン酸化に対して安定であった。
【0458】
メチオニン酸化は、以下のペプチドにおいて生じた:
T5:EQSTLAQMYPLQEIQNLTVK
T19:LMNAYPSYISPIGCLPAHLLGDMWGR
T57:NQMILFGEEDVR
T68:DTLMISR
表9及び表10の結果に基づいて、両方のコンストラクトは酸化されやすいことが示され、LC-MSペプチドマッピングによるこの重要な品質属性を監視するために、次の製剤化ラウンドで考慮する必要がある(実施例4を参照)。酸化に対する製剤の改善が必要であり、長期安定製剤を開発するためには、実施例1で特定された酸化防止剤又は酸化を防止する条件の使用が必要である。
【0459】
【0460】
表11によれば、37℃の貯蔵条件でのLC-MSペプチドマッピングによって、アスパラギン脱アミド化の増加を実証することができた。凍結/解凍サイクルを適用した後、両方のコンストラクトが脱アミド化に対して安定であった。
【0461】
以下のペプチドでアスパラギン脱アミド化が起こった:
T64-66:SRINDAFRLNDNSLEFLGIQPTLGESK
T84-T82:GFYPSDIAVEWESNGQPENNYK
これらの結果に基づいて、両方のコンストラクトは脱アミド化される傾向があることが示され、LC-MSペプチドマッピングによるこの重要な品質属性の監視は、次の製剤化ラウンドで考慮する必要がある(実施例3を参照)。アスパラギン脱アミド化に対する最適化のために、種々の条件、例えばpHを評価する必要がある。
【0462】
実施例3
実施例1は、Prometheusシステムによって監視された融解温度及び凝集挙動に基づいて、2つのACE2-IgG4融合コンストラクト(v1261及びv1263)を安定化するための賦形剤及び条件を含んだ。
【0463】
これらの結果に基づいて、10mM酢酸、30mM L-アルギニン塩酸塩、250mMトレハロース二水和物、5mM L-メチオニン、50mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート20、pH5.8中1mg/mLのACE2 IgG4融合コンストラクトを含む新しい製剤を製造した。
【0464】
2つのACE2融合コンストラクト(v1261及びv1263)の各々を、クローン評価研究中にこの製剤に移し、融点及び凝集に関してDSFによって分析した。
20℃から始まり95℃までの範囲で1℃/分の昇温を使用して、実施例1と同一の方法設定で、DSFを行った。
【0465】
この製剤を使用することにより、全ての試験したクローンにおいて高い融点及び非常に高い凝集開始点が得られ、最終的に凝集に対する長期安定性をもたらすこととなった。
v1261については、16個のクローンを評価した。Tonは45.6℃~47.5℃、Tmは54.8℃~56.1℃、Taggは63.7℃~67.8℃、Tagg-IP(凝集変曲点)は70.1℃~72.3℃の範囲で定量した。
【0466】
v1263については、16個のクローンを評価した。Tonは45.0℃~46.3℃、Tmは50.4℃~54.5℃、Taggは64.7℃~68.2℃、Tagg-IP(凝集変曲点)は70.9℃~72.9℃の範囲で定量した。
【0467】
実施例4
実施例1及び3では、安定な製剤を生成するための高融点及び有望な凝集開始点を有する製剤が特定された。
【0468】
コンストラクトv1261及びv1263の両方を、20mg/mLの標的濃度の試験したACE2-IgG4融合コンストラクトを含む表12による製剤に移し、物理化学的安定性及び効力に関する最良の安定化効果について、異なる温度及びストレス条件での安定性研究中に評価した。
【0469】
【0470】
安定性をいくつかの温度条件(5℃、25℃/60%RH及び40℃/75℃RH)で以下の期間評価した。
5℃及び25℃/60%RH:最大6ヶ月
40℃/75%RH:最大3ヶ月
別の組の実験では、試料を3回及び5回の凍結/解凍サイクルに供した。
【0471】
上記製剤中の約20mg/mLの濃度のコンストラクトをポリプロピレンバイアルに充填し、5℃で最大3ヶ月間(v1261のみ)及び25℃で1ヶ月間貯蔵して、分解経路を特定し、可能な製剤戦略を評価して、これらの分子修飾に対するACE2-IgG4-FCコンストラクトの安定性を最適化した。更に、タンパク質安定性に対するこのプロセシングステップの影響を評価するために、両方のコンストラクト(v1261及びv1263)に凍結/解凍サイクルによってストレスをかけた。
【0472】
貯蔵又はストレス処理後、試料を、高分子量種(HMWS)の存在についてはサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって、断片(LMWS)及びHMWSの存在については非還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって分析した。ペプチドマッピングを、酸化、脱アミド化、及び糖化による修飾を定量するために使用した。アニオン交換クロマトグラフィーによって、酸性種及び塩基性種の存在を監視した。
【0473】
コンストラクトv1261
OD280nmによって測定された濃度は、全ての貯蔵条件下で全ての試験した製剤において方法の変動性の範囲内で安定した結果を示した(データは示さず)。
【0474】
【0475】
製剤4aは、出発材料と比較してわずかな増加しか決定されなかったため、貯蔵後のHMWSの形成に関して優れた安定性を示した。
LMWS及びHMWSの各々のパーセントを、コンストラクトv1261の5℃又は25℃での貯蔵後及び凍結/解凍後にCE-SDSによって決定した。
【0476】
結果は、全ての製剤が25℃で1ヶ月後及び5℃で3ヶ月後に断片化(%LMWS)に対して安定であることを示した。全ての製剤はまた、5℃で3ヶ月後に低い%HMWSを示し、これも良好な安定性を示した。
【0477】
更に、25℃で1ヶ月後の%HMWSは、他の製剤と比較して製剤4aにおいてより低いレベルであった。特に、製剤4aは、出発材料と比較してHMWSのわずかな増加しか決定されなかったため、貯蔵後のHMWSの生成に関して優れた安定性を示した。
【0478】
【0479】
製剤4aについて、方法の変動性を超える酸化の増加は、試験した全ての貯蔵条件で定量化されなかった。脱アミド化値は、試験した全ての製剤において方法の変動性の範囲内で一定であった。
【0480】
糖化は、全貯蔵期間中、非常に低い含量(0.6%~0.7%)で安定であると決定された(データは示さず)。
ACE2タンパク質のリシン並びにメチオニンアミノ酸残基が相互作用している及び結合したS-タンパク質に非常に近接している場合、トレハロース並びにメチオニンを含む製剤は、タンパク質アミノ酸の可能性のあるリシン糖化及びメチオニン酸化に関して長期貯蔵中に融合タンパク質の高い効力を維持すると考えられる。
【0481】
【0482】
25℃の加速貯蔵条件であっても、貯蔵後に酸性種のごくわずかな増加のみが定量化されたため、製剤4aは最良の安定化効果をもたらした。製剤4aでは、塩基性種は25℃で1ヶ月貯蔵後に同等のわずかな増加を示し、塩基性種の含量は5℃で3ヶ月貯蔵後に安定であると決定された。
【0483】
要約すると、製剤4aは、物理化学的安定性に関してコンストラクトv1261の全体的な安定化をもたらした。
コンストラクトv1263
OD280nmによって測定された濃度は、全ての試験された製剤において、全ての貯蔵条件中、方法の変動性の範囲内で安定した結果を示した(データは示さず)。
【0484】
【0485】
全ての製剤は、全ての試験した貯蔵条件でHMWSの生成に関して非常に良好な安定性を示した。製剤1b及び2bは、わずかにより高い含量のHMWSを生成するようである。
【0486】
LMWSの各々のパーセントを、25℃での貯蔵後、コンストラクトv1263についてCE-SDSによって決定した。
全ての製剤は、試験した貯蔵条件の後のLMWSの形成に関して非常に良好な安定性を含んでいた。
【0487】
【0488】
試験した全ての製剤は、酸化及び脱アミド化に関して優れた安定性を示した。加速貯蔵条件で貯蔵した後、全ての値は出発物質に匹敵し、方法の変動性の範囲内であった。
また、糖化は、全貯蔵期間中、非常に低い含量(0.6%~0.7%)で安定であると決定された(データは示さず)。
【0489】
【0490】
【0491】
試験した全ての製剤は、酸性種及び塩基性種の両方の生成に関して非常に良好な安定性を示した。
コンストラクトv1263については、全ての試験した製剤が優れた製剤候補であり、加速貯蔵条件でも優れた安定性を示し、この分子について2℃~8℃での有望な長期貯蔵安定性を示す。
【0492】
実施例5
実施例1では、2つのACE2 IgG4 Fc融合コンストラクト(v1261及びv1263)を安定化するための賦形剤及び条件を、融解温度及び凝集挙動に基づいて特定した。
【0493】
実施例2では、品質属性を特定し、タンパク質修飾を監視するための好適な方法セットを開発した。製剤最適化の必要性も実証することができた。最適化されていない製剤は、HMWSの生成、断片化、並びに脱アミド化、酸化及びおそらく糖化の増加をもたらす。
【0494】
実施例3では、高い融点及び有望な凝集開始点を有する新しい製剤を特定して、安定な製剤を生成した。
これらの結果に基づいて、表13による医薬組成物を更なる分析のために選択した。
【0495】
溶液を緩衝するために、ヒスチジン、リン酸、酢酸、及びコハク酸の緩衝系を評価した。互いに異なるpH値を含む複数の製剤を、最適pHの特定のために分析した。
界面活性剤として、ポリソルベート20、ポリソルベート80、及びポロキサマー188を評価し、界面活性剤を含まない製剤も試験した。
【0496】
製剤を安定化するためにトレハロース及びスクロースを評価し、完全に無糖の塩ベースの製剤(塩化ナトリウムを含む)も評価し、更に糖と塩との両方を含む製剤を分析した。
更に、更なる産物安定化に対する賦形剤L-アルギニン及びL-メチオニンの影響を評価した。
【0497】
【0498】
上に列挙した全ての医薬組成物を、透析によって調製した。
安定性をいくつかの温度条件(5℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RH)で以下の期間評価した。
【0499】
5℃:最大12ヶ月
25℃/60%RH:最大6ヶ月
40℃/75%RH:最大3ヶ月
別の組の実験では、試料を3回及び5回の凍結/解凍サイクルに供した。
【0500】
以下の分析パネルを使用してタンパク質安定性を分析した:
UV280(ACE2-IgG4-FC融合コンストラクトの濃度)、SE-HPLC(凝集)、非還元CE-SDS(LMWS、HMWS)、ペプチドマッピング(脱アミド化、酸化、糖化)、nanoDSF(融解温度及び凝集)、cIEF(塩基性種及び酸性種)、AEX(塩基性種及び酸性種)、活性の定量のための結合ELISA及び酵素活性の定量のためのアッセイ。
【0501】
実施例6:ACE2(18-732)-IgG1、v1260の製剤スクリーニング
融点Tm及びアンフォールディング開始温度は、Nanotemper製のソフトウェアPR-ThermControl-CFRによって計算した。各試料を1回の測定で分析した。v1260の試料をPrometheusシステムで分析すると、以下の結果が得られた(表22を参照、各パラメータについて10の最良に機能する製剤を(1)~(10)からランク付けし、更に太字で示す)。
【0502】
【0503】
IgG1(v1260)(表22を参照)及びIgG4(v1261)(表3を参照)のACE2-Fc融合コンストラクトの安定性は、有意差なく同等である。2つの変異を有する触媒的に不活性なコンストラクト(v1263)は、より低い融解温度を示す(表5を参照)。
【0504】
ソルビトール(例えば、製剤A5、B8)、マンニトール(H3)、グリシン(H3)及びプロリン(D10)の使用は、nanoDSFによって評価される安定性を改善しなかった。
【0505】
驚くべきことに、スクロース及び塩化ナトリウムに加えて賦形剤としてL-アルギニン(表22を参照)を含有する製剤C1はまた、高いTagg-onをもたらし、この製剤がいかなる界面活性剤も含有しない場合であっても、他の試験された製剤と比較して凝集に対する有望な安定性を示した。
【0506】
界面活性剤ポリソルベート20及びポリソルベート80は、試験した範囲でスクリーニングにおいて同等に機能し、両方ともポロキサマー188及びPEG-3350と比較して優れていた。界面活性剤を全く含まない製剤も、安定な製剤をもたらした(C1)。
【0507】
溶液の最適pHは、5.6~6.3の範囲であると決定された。表22の結果に基づいて、このpH範囲に適した特定された緩衝系は、酢酸/酢酸ナトリウム(製剤A4、D11を参照)、ヒスチジン/ヒスチジンHCl(製剤C4、C11及びC12を参照)、リン酸一ナトリウム/リン酸二ナトリウム(製剤A7を参照)、及びコハク酸/コハク酸二ナトリウム(製剤H11を参照)である。
【0508】
v1260について試験した25の製剤の中で、製剤H11、A7、A4、D11、及びC12(表23を参照)は、v1260コンストラクトの長期間安定な製剤を開発するために好ましい最も高い融解温度を示した。驚くべきことに、これらの製剤は、安定剤として糖を含むことができ、又は糖を含まない塩化ナトリウム製剤(H11)に基づくことができる。すなわち、安定剤としてトレハロース及びスクロースのような糖を含有する溶液は、等張剤として塩化ナトリウムを含有する糖を含まない製剤に匹敵する融解挙動を示す。
【0509】
【0510】
実施例7:ACE2(18-732)-IgG1(v1260、配列番号7)、正常シアリル化(NS)/ACE2(18-732)-IgG1(v1260、配列番号7)、高シアリル化(HS)/ACE2(18-732)-IgG1(YTE)(v1328、配列番号27)、高シアリル化の短期安定性
他のACE2-Fc融合タンパク質に関しても製剤4aの好適性を示すために、タンパク質精製及び製剤4aへの交換後の、正常シアリル化を伴うACE2(18-732)-IgG1(v1260)(表24)、ACE2(18-732)-IgG1(v1260)高シアリル化(HS)(表25)、及びACE2(18-732)-IgG1(YTE)(v1328)高シアリル化(表26)の結果を示す。
【0511】
以下の分析パネルを使用してタンパク質安定性を分析した:
SoloVPE(ACE2-Fc融合コンストラクトの濃度の定量化)、SE-HPLC(凝集)、非還元CE-SDS(LMWS)、nanoDSF(融解温度及び凝集)、AEX(塩基性種及び酸性種)、及び結合ELISA(標的への結合に関する効力の定量化)。
【0512】
【0513】
【0514】
【0515】
融合タンパク質v1260(ACE2(18-732)-IgG1正常シアリル化並びに高シアリル化及びv1328(ACE2(18-732)-IgG1(YTE)高シアリル化を、タンパク質精製及び製剤4aへの緩衝液交換後に、凝集体、断片、塩基性種及び酸性種、融解温度、並びに標的結合に関して分析した。これらの融合タンパク質についての結果(表24、表25、及び表26)は、IgG4バージョンの分子で得られた結果に匹敵した。これにより、異なるACE2-Fcコンストラクトに対する製剤4aの適用性が確認される。
【0516】
実施例8:ACE2(18-732)-IgG4、正常シアリル化(5℃で8ヶ月間)、及び高シアリル化(凍結/解凍(F/T)時及び5℃又は26℃で3ヶ月間)の安定性研究:
融合タンパク質の正常シアリル化形態及び高シアリル化形態の両方を調査した。正常シアリル化形態を、標準的な培養条件下で生成した(CHO細胞を、4mMのL-グルタミン、抗凝集剤(Gibco;1:1000に希釈)及び5μM塩化亜鉛を補充したFortiCHO培地(Thermo Fisher Scientific)中で培養した。3日目から14日目まで1日あたり2%CellBoost 7a培地及び0.2%CellBoost 7bのフラットフィードを添加した。3日目から4g L-1までグルコース溶液からグルコースを添加した)。
【0517】
対照的に、高シアリル化形態を、4mMのL-グルタミン、抗凝集剤(Gibco;1:1000に希釈)、5μM塩化亜鉛、40μM塩化マンガン、及び10mM N-アセチルマンノサミンを補充したFortiCHO培地(Thermo Fisher Scientific)中、37℃で2日間培養することにより生成した。培養3日目から14日目まで、40μM塩化マンガン及び0.185mMガラクトースを含有するCellBoost 7a培地(Thermo Fisher Scientific)及びCell Boost 7b培地(Thermo Fisher Scientific)を細胞に毎日供給し、37℃の温度で維持した。3日目から4g L-1までグルコース溶液からグルコースを添加した。
【0518】
10mM酢酸、30mM L-アルギニン塩酸塩、250mMトレハロース二水和物、5mM L-メチオニン、50mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート20、pH5.8中に40mg/mLの標的濃度のACE2 IgG4融合コンストラクト(v1261)を含む製剤を生成し、250μLの溶液を2Rバイアルに充填した。
【0519】
精製されたタンパク質溶液を、異なる温度及びストレス条件で貯蔵するか、又は安定性研究内で3回の凍結解凍サイクルを行った後、異なる分析技術を用いてACE2-IgGの物理化学的品質パラメータ並びにその効力を評価した。安定性を以下の条件で評価した:
●5℃及び26℃:ACE2(18-732)-IgG4高シアリル化について、最大3ヶ月
●凍結/解凍:ACE2(18-732)-IgG4高シアリル化について、-80℃及び室温で3サイクル
●5℃:正常シアリル化を伴うACE2(18-732)-IgG4について、最大8ヶ月
以下の分析パネルを使用してタンパク質安定性を分析した:
Nanodrop(ACE2-Fc融合コンストラクトの濃度の定量化)、SE-HPLC(凝集)、非還元CE-SDS(LMWS)、nanoDSF(融解温度及び凝集)、AEX(塩基性種及び酸性種)、及び結合ELISA(標的への結合に関する効力の定量化)。
【0520】
以下の結果が観察され、表27及び表28に要約されている。
【0521】
【0522】
貯蔵中及びF/T中にACE2(18-732)-IgG4高シアリル化について、以下の傾向が観察された。試料濃度は、5℃及び26℃で3ヶ月間貯蔵した後、アッセイ変動性内で安定していた。また、SE-HPLCによって決定されたHMWSの含量はアッセイ変動内の全ての試験した条件で安定であったため、凝集レベルは5℃及び26℃で3ヶ月間の貯蔵によって著しい影響を受けなかった。
【0523】
総LMW面積%は、両方の温度条件で経時的に増加し、F/Tサイクル中にLMWSは形成されなかった。
酸性種のパーセントは、貯蔵時に経時的に増加した。
【0524】
26℃で3M(3ヶ月)後のアンフォールディングは著しい影響を受けなかった。しかしながら、26℃で3M後、凝集開始温度は低下した。
5℃又は26℃で3ヶ月間貯蔵した試料は、標的への結合に関して、T0での試料と同様の効力を示す。
【0525】
【0526】
5℃で8ヶ月間貯蔵した後、ACE2(18-732)-IgG4正常シアリル化について以下の傾向が観察された:試料濃度並びにHMWSレベルの両方が、方法の変動性の範囲内で一定のままであった。
【0527】
総LMWS面積%は、経時的にわずかに増加しただけであった。荷電種に関して、酸性種のパーセントは、貯蔵時に経時的にわずかに増加した。アンフォールディングは著しい影響を受けず、凝集開始温度は5℃で8ヶ月後にわずかに上昇した。
【0528】
5℃で8ヶ月間貯蔵した試料は、T0と比較した場合、長期貯蔵後に同様の効力を示した。
2つの直交法を使用して凝集体形成の初期レベルを比較するために、バッチをT0で分析的超遠心分離(AUC)によって更に分析した。凝集体形成は、SE-HPLC及びAUCによって分析した場合に同等であった(データを示さず)。
【0529】
実施例9:ACE2(18-732)-IgG4、正常シアリル化、(v1261、配列番号6)の安定性研究
製剤4a(10mM酢酸、30mM L-アルギニン塩酸塩、250mMトレハロース二水和物、5mM L-メチオニン、50mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート20、pH5.8)中の標的濃度40mg/mLのACE2-IgG4融合コンストラクトを含む製剤を生成し、1mLの溶液を2Rバイアルに充填した。
【0530】
溶液を、異なる温度及びストレス条件で貯蔵するか、又は安定性研究内で3回の凍結解凍サイクルを行った後、互いに異なる分析技術を用いてACE2-IgGの物理化学的品質パラメータ並びにその効力及び活性を評価した。安定性を以下の条件で評価した:
●F/T:-76℃±9℃及び室温で3サイクル
●-76℃±9℃で最大6ヶ月
●5℃±3℃及び25℃±2℃/60%RH±5%RHで最大6ヶ月、並びに40℃±2℃/75%RH±5%RHで最大3ヶ月。
【0531】
以下の分析パネルを使用してタンパク質安定性を分析した:
OD280(ACE2-Fc融合コンストラクトの濃度の定量化)、SE-HPLC(凝集)、非還元CE-SDS(LMWS、HMWS)、cIEF(塩基性種及び酸性種)、結合ELISA(標的への結合に関する効力の定量化)、ACE2-IgGの酵素活性、可視粒子、肉眼で見えない粒子、pH、色、透明度、重量オスモル濃度。
【0532】
以下の結果が観察され、表29に要約されている。
【0533】
【0534】
【0535】
【0536】
以下の傾向が、ACE2(18-732)-IgG4正常シアリル化について観察された。
試料濃度は、5℃、-80℃で6ヶ月間、並びにF/T条件について、方法の変動性の範囲内で一定のままであった。わずかな蒸発しか伴わない1mLの低い充填体積により、高温(25℃及び40℃)では、経時的な濃度のわずかな増加を観察することができる。
【0537】
凝集体をSE-HPLCで分析し、総HMWS面積%は、5℃及び-80℃で6ヶ月間、並びにF/T条件で、方法の変動性の範囲内で一定のままであった。高温(25℃及び40℃)では、総HMWS面積%並びに総LMWS面積%の増加が経時的に観察され、これは、この方法が安定性を示すものであることを特定する。
【0538】
断片化を非還元CE-SDSで更に分析し、総LMWS面積%は、5℃及び-80℃で6ヶ月間、並びにF/T条件で一定のままであった。高温(25℃及び40℃)では、総LMWS面積%の増加が経時的に観察され、これは、この方法が安定性を示すものであることを特定する。
【0539】
荷電種に関して、酸性種のパーセントは、5℃での貯蔵時に経時的にわずかに増加した。この傾向は高温(25℃及び40℃)でも観察され、これは、この方法が安定性を示すものであることを特定する。
【0540】
分析された全ての試料は、平均付近で同等の酵素活性の散布を示す。結合ELISAの場合、効力は、5℃で3ヶ月間及び-80℃で6ヶ月間、並びにF/T条件で、アッセイ変動性内で一定のままであった。高温(25℃及び40℃)では、効力の低下が経時的に観察され、これは、この方法が安定性を示すものであることを特定する。
【0541】
pH値は、5℃及び-80℃で6ヶ月間、並びにF/T条件で、方法の変動性の範囲内で一定のままであった。高温(25℃及び40℃)では、pHのわずかな増加が経時的に観察された。
【0542】
肉眼で見えない粒子は低レベルであり、予想通り高温(25℃及び40℃)で経時的に増加した。
安定性研究のバイアルは、試験した条件では目に見える粒子を本質的に含んでいなかった。
【0543】
ポリソルベート濃度並びに重量オスモル濃度は一定のままであり、平均付近に散在していた。
透明度及び色は許容限度内で一定のままであった。
【0544】
本発明のいくつかの実施形態は以下に関する:
1.液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び
(b)pH5.4~6.3の緩衝液、
を含む、液体医薬組成物。
【0545】
2.当該緩衝液が、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びコハク酸緩衝液からなる群から選択される、項目1に記載の液体医薬組成物。
3.当該緩衝液が、5mM~60mMの濃度で存在する、項目1又は2に記載の液体医薬組成物。
【0546】
4.液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、及び
(b)pH5.4~6.0の酢酸緩衝液、
を含む、液体医薬組成物。
【0547】
5.当該酢酸緩衝液が、5mM~60mMの濃度で存在する、項目4に記載の液体医薬組成物。
6.糖又は糖アルコールを更に含む、先行する項目のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【0548】
7.当該糖が、トレハロース及びスクロースから選択される、項目6に記載の液体医薬組成物。
8.当該糖が、100mM~300mMの濃度で存在する、項目6又は7に記載の液体医薬組成物。
【0549】
9.非イオン性界面活性剤を更に含む、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
10.当該非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート20及びポリソルベート80から選択される、項目9に記載の液体医薬組成物。
【0550】
11.当該非イオン性界面活性剤が、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する、項目9又は10に記載の液体医薬組成物。
12.無機塩を更に含む、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0551】
13.当該無機塩が、塩化ナトリウムである、項目12に記載の液体医薬組成物。
14.当該無機塩が、30mM~150mMの濃度で存在する、項目12又は13に記載の液体医薬組成物。
【0552】
15.1つ以上のアミノ酸を更に含む、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
16.当該1つ以上のアミノ酸が、L-アルギニン及び/又はL-メチオニンである、項目15に記載の液体医薬組成物。
【0553】
17.当該1つ以上のアミノ酸が、1mM~50mMの濃度で存在する、項目15又は16に記載の液体医薬組成物。
18.当該ヒトACE2の断片が、配列番号2によるアミノ酸配列からなる、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0554】
19.当該ヒトACE2の断片が、配列番号3によるアミノ酸配列からなるACE2の細胞外ドメインである、項目1~17のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
20.当該IgGが、IgG1又はIgG4である、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0555】
21.当該融合タンパク質が、配列番号5によるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
22.当該融合タンパク質が、配列番号20及び21のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分の変異体を含む、項目4~20のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0556】
23.当該IgGがIgG4又はIgG4の変異体であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0557】
24.当該融合タンパク質が、配列番号4によるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分を含む、項目1~20のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
25.当該融合タンパク質が、配列番号22及び23のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分の変異体を含む、項目4~20のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0558】
26.当該IgGがIgG1又はIgG1の変異体であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている、項目1~20、24、又は25のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0559】
27.当該ヒトACE2断片の変異体が、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体である、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
28.当該ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体が、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングが配列番号1を参照する、項目27に記載の液体医薬組成物。
【0560】
29.当該融合タンパク質が、配列番号6~13、44~47、58~61、72~75、86~89のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、項目1~17のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0561】
30.当該融合タンパク質が、配列番号26~41、48~55、62~69、76~83、及び90~97のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、項目4~17のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0562】
31.当該融合タンパク質の当該ACE2部分がN-グリコシル化されており、当該ACE2部分上の当該N-グリカンの70%~95%が、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0563】
32.当該ACE2 Fc融合タンパク質の濃度が1~60mg/mLである、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
33.液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、並びに
(b)pH5.6~6.0のヒスチジン又は酢酸緩衝液、
(c)ポリソルベート20及びポリソルベート80から選択される非イオン性界面活性剤、
(d)スクロース及びトレハロースから選択される糖、並びに
(e)任意に、無機塩及び/又は1つ以上のアミノ酸、
を含む、液体医薬組成物。
【0564】
34.当該ヒスチジン又は酢酸緩衝液が、5mM~60mMの濃度で存在する、項目33に記載の液体医薬組成物。
35.当該糖が、100mM~300mMの濃度で存在する、項目33又は34に記載の液体医薬組成物。
【0565】
36.当該非イオン性界面活性剤が、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する、項目33~35のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
37.無機塩を更に含む、項目33~36のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0566】
38.当該無機塩が、塩化ナトリウムである、項目37に記載の液体医薬組成物。
39.当該無機塩が、30mM~150mMの濃度で存在する、項目37又は38に記載の液体医薬組成物。
【0567】
40.1つ以上のアミノ酸を更に含む、項目33~39のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
41.当該1つ以上のアミノ酸が、L-アルギニン及び/又はL-メチオニンである、項目40に記載の液体医薬組成物。
【0568】
42.当該1つ以上のアミノ酸が、1mM~50mMの濃度で存在する、項目40又は41に記載の液体医薬組成物。
43.当該ヒトACE2の断片が、配列番号2によるアミノ酸配列からなる、項目33~42のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0569】
44.当該ヒトACE2の断片が、配列番号3によるアミノ酸配列からなるACE2の細胞外ドメインである、項目33~42のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
45.当該IgGが、IgG1又はIgG4である、項目33~44のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0570】
46.当該融合タンパク質が、配列番号5によるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分、又は配列番号20及び21のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分の変異体を含む、項目33~45のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0571】
47.当該IgGがIgG4又はIgG4の変異体であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている、項目33~46のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0572】
48.当該融合タンパク質が、配列番号4によるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分、又は配列番号22及び23のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分の変異体を含む、項目33~45のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0573】
49.当該IgGがIgG1又はIgG1の変異体であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている、項目33~45及び48のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0574】
50.当該ヒトACE2断片の当該変異体が、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体である、項目33~49のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
51.当該ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体が、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングが配列番号1を参照する、項目50に記載の液体医薬組成物。
【0575】
52.当該融合タンパク質が、配列番号6~13、26~41、44~55、58~69、72~83、及び86~97のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、項目33~42のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0576】
53.当該融合タンパク質の当該ACE2部分がN-グリコシル化されており、当該ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%が、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する、項目33~52のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0577】
54.当該ACE2 Fc融合タンパク質の濃度が1~60mg/mLである、項目33~53のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
55.液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、並びに
(b)pH6.0のヒスチジン緩衝液、
(c)ポリソルベート20、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、アルギニン、メチオニン、及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の安定剤、
を含む、液体医薬組成物。
【0578】
56.当該ヒスチジン緩衝液が、5mM~60mMの濃度で存在する、項目55に記載の液体医薬組成物。
57.製剤が、100mM~300mMの濃度で存在するトレハロースを含む、項目55又は56に記載の液体医薬組成物。
【0579】
58.当該非イオン性界面活性剤が、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在する、項目55~57のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
59.塩化ナトリウムを更に含む、項目55~58のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0580】
60.当該塩化ナトリウムが、30mM~150mMの濃度で存在する、項目59に記載の液体医薬組成物。
61.当該アルギニンが、10mM~50mMの濃度で存在する、項目55~60のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0581】
62.当該メチオニンが、1mM~20mMの濃度で存在する、項目55~61のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
63.当該ヒトACE2の断片が、配列番号2によるアミノ酸配列からなる、項目55~62のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0582】
64.当該ヒトACE2の断片が、配列番号3によるアミノ酸配列からなるACE2の細胞外ドメインである、項目55~62のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
65.当該IgGが、IgG1又はIgG4である、項目55~64のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0583】
66.当該融合タンパク質が、配列番号5によるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分、又は配列番号20及び21のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分の変異体を含む、項目55~65のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0584】
67.当該IgGがIgG4であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている、項目55~66のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0585】
68.当該融合タンパク質が、配列番号4によるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分、又は配列番号22及び23のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分の変異体を含む、項目55~65のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0586】
69.当該IgGがIgG1であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている、項目55~65及び68のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0587】
70.当該ヒトACE2断片の当該変異体が、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体である、項目55~69のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
71.当該ヒトACE2の当該酵素的に不活性な変異体が、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングが配列番号1を参照する、項目70に記載の液体医薬組成物。
【0588】
72.当該融合タンパク質が、配列番号6~13、26~41、44~55、58~69、72~83、及び86~97のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、項目55~62のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0589】
73.当該融合タンパク質の当該ACE2部分がN-グリコシル化されており、当該ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%が、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する、項目55~72のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0590】
74.当該ACE2 Fc融合タンパク質の濃度が1~60mg/mLである、項目55~73のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
75.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0のヒスチジン緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、L-アルギニン、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
【0591】
76.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、220mMトレハロース、30mM L-アルギニン、及び注射用水を含む、項目75に記載の液体医薬組成物。
【0592】
77.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0のするヒスチジン緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、L-アルギニン、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
【0593】
78.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、220mMトレハロース、30mM L-アルギニン、及び注射用水からなる、項目77に記載の液体医薬組成物。
【0594】
79.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0のヒスチジン緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、L-メチオニン、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
【0595】
80.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、250mMトレハロース、5mM L-メチオニン、及び注射用水を含む、項目79に記載の液体医薬組成物。
【0596】
81.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0のヒスチジン緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、L-メチオニン、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
【0597】
82.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、250mMトレハロース、5mM L-メチオニン、及び注射用水からなる、項目81に記載の液体医薬組成物。
【0598】
83.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0のヒスチジン緩衝液、ポリソルベート20、スクロース、塩化ナトリウム、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
【0599】
84.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、145mMスクロース、40mM塩化ナトリウム、及び注射用水を含む、項目83に記載の液体医薬組成物。
【0600】
85.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0のヒスチジン緩衝液、ポリソルベート20、スクロース、塩化ナトリウム、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
【0601】
86.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、145mMスクロース、40mM塩化ナトリウム、及び注射用水からなる、項目85に記載の液体医薬組成物。
【0602】
87.液体医薬組成物であって、
(a)ヒトACE2の断片又は当該断片の変異体を含む第1の部分であって、当該ヒトACE2が配列番号1によるアミノ酸配列を有する、第1の部分と、ヒトIgGのFcタンパク質又はヒトIgGのFc部分の変異体を含む第2の部分とを含む、融合タンパク質、並びに
(b)pH5.6~5.8の酢酸緩衝液、
(c)ポリソルベート20又はポリソルベート80、
(d)トレハロース又はスクロース、並びに
(e)任意に、L-アルギニン、L-メチオニン、及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の安定剤、
を含む、液体医薬組成物。
【0603】
88.当該酢酸緩衝液が、5mM~60mMの濃度で存在する、項目87に記載の液体医薬組成物。
89.製剤が、100mM~250mMの濃度で存在するトレハロースを含む、項目87又は88に記載の液体医薬組成物。
【0604】
90.製剤が、150mM~300mMの濃度で存在するスクロースを含む、項目87又は88に記載の液体医薬組成物。
91.製剤が、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在するポリソルベート20を含む、項目87~90のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0605】
92.製剤が、0.01%(w/v)~0.2%(w/v)の濃度で存在するポリソルベート80を含む、項目87~90のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
93.塩化ナトリウムを更に含む、項目87~92のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【0606】
94.当該塩化ナトリウムが、30mM~150mMの濃度で存在する、項目93に記載の液体医薬組成物。
95.当該L-アルギニンが、10mM~50mMの濃度で存在する、項目87~94のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0607】
96.当該L-メチオニンが、1mM~20mMの濃度で存在する、項目87~95のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
97.当該ヒトACE2の断片が、配列番号2によるアミノ酸配列からなる、項目87~96のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0608】
98.当該ヒトACE2の断片が、配列番号3によるアミノ酸配列からなるACE2の細胞外ドメインである、項目87~96のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
99.当該IgGが、IgG1又はIgG4である、項目87~98のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0609】
100.当該融合タンパク質が、配列番号5によるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分、又は配列番号20及び21のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG4のFc部分の変異体を含む、項目87~99のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0610】
101.当該IgGがIgG4であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号18によるアミノ酸配列によって連結されている、項目87~100のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0611】
102.当該融合タンパク質が、配列番号4によるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分、又は配列番号22及び23のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むヒトIgG1のFc部分の変異体を含む、項目87~99のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0612】
103.当該IgGがIgG1であり、当該第1の部分と当該第2の部分とが配列番号19によるアミノ酸配列によって連結されている、項目87~99及び102のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0613】
104.当該ヒトACE2断片の当該変異体が、ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体である、項目87~103のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
105.当該ヒトACE2の酵素的に不活性な変異体が、H374N及びH378N変異を含み、ナンバリングが配列番号1を参照する、項目104に記載の液体医薬組成物。
【0614】
106.当該融合タンパク質が、配列番号6~13、26~41、44~55、58~69、72~83、及び86~97のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する、項目87~96のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0615】
107.当該融合タンパク質の当該ACE2部分がN-グリコシル化されており、当該ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%が、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する、項目87~106のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0616】
108.当該ACE2 Fc融合タンパク質の濃度が1~60mg/mLである、項目87~107のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
109.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、塩化ナトリウム、L-アルギニン、L-メチオニン、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
【0617】
110.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、250mMトレハロース、50mM塩化ナトリウム、30mM L-アルギニン、5mM L-メチオニン、及び注射用水を含む、項目109に記載の液体医薬組成物。
【0618】
111.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、塩化ナトリウム、L-アルギニン、L-メチオニン、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
【0619】
112.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、250mMトレハロース、50mM塩化ナトリウム、30mM L-アルギニン、5mM L-メチオニン、及び注射用水からなる、項目111に記載の液体医薬組成物。
【0620】
113.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、スクロース、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
114.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、263mMスクロース、及び注射用水を含む、項目113に記載の液体医薬組成物。
【0621】
115.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、スクロース、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
116.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、263mMスクロース、及び注射用水からなる、項目115に記載の液体医薬組成物。
【0622】
117.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.6の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
118.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.6の20mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、106mMトレハロース、及び注射用水を含む、項目117に記載の液体医薬組成物。
【0623】
119.配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.6の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
120.1~60mg/mLの配列番号6又は10による融合タンパク質、pH5.6の20mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、106mMトレハロース、及び注射用水からなる、項目119に記載の液体医薬組成物。
【0624】
121.配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、塩化ナトリウム、L-アルギニン、L-メチオニン、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
【0625】
122.1~60mg/mLの配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、250mMトレハロース、50mM塩化ナトリウム、30mM L-アルギニン、5mM L-メチオニン、及び注射用水を含む、項目121に記載の液体医薬組成物。
【0626】
123.配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、塩化ナトリウム、L-アルギニン、L-メチオニン、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
【0627】
124.1~60mg/mLの配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、250mMトレハロース、50mM塩化ナトリウム、30mM L-アルギニン、5mM L-メチオニン、及び注射用水からなる、項目123に記載の液体医薬組成物。
【0628】
125.配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、スクロース、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
126.1~60mg/mLの配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、263mMスクロース、及び注射用水を含む、項目125に記載の液体医薬組成物。
【0629】
127.配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、スクロース、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
128.1~60mg/mLの配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.8の10mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、263mMスクロース、及び注射用水からなる、項目127に記載の液体医薬組成物。
【0630】
129.配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.6の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、及び注射用水を含む、液体医薬組成物。
130.1~60mg/mLの配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.6の20mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、106mMトレハロース、及び注射用水を含む、項目129に記載の液体医薬組成物。
【0631】
131.配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.6の酢酸緩衝液、ポリソルベート20、トレハロース、及び注射用水からなる、液体医薬組成物。
132.1~60mg/mLの配列番号7又は27による融合タンパク質、pH5.6の20mM酢酸緩衝液、0.02%(w/v)ポリソルベート20、106mMトレハロース、及び注射用水からなる、項目131に記載の液体医薬組成物。
【0632】
133.当該融合タンパク質の当該ACE2部分がN-グリコシル化されており、当該ACE2部分上のN-グリカンの70%~95%が、それに結合した少なくとも1つのシアル酸分子を有する、項目120~132のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【0633】
134.ACE2に結合するコロナウイルスによる感染症の予防及び/又は治療における使用のための、先行する項目のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
135.当該ACE2に結合するコロナウイルスが、SARS、SARS-CoV2、及びNL63からなる群から選択され、好ましくは、それがSARS-CoV2である、項目134に記載の使用のための液体医薬組成物。
【0634】
136.当該液体医薬組成物が、抗ウイルス剤と組み合わせて投与される、項目134又は135に記載の使用のための液体医薬組成物。
137.当該抗ウイルス剤が、レムデシビル、アルビドールHCl、リトナビル、ロピナビル、ダルナビル、リバビリン、クロロキン及びそれらの誘導体、ニタゾキサニド、メシル酸カモスタット、トシリズマブ、シルツキシマブ、サリルマブ、パクロビド、及びリン酸バリシチニブからなる群から選択される、項目131に記載の使用のための液体医薬組成物。
【0635】
138.高血圧症(高血圧を含む)、うっ血性心不全、慢性心不全、急性心不全、収縮性心不全、心筋梗塞、動脈硬化症、腎機能障害、腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症、腎線維症、慢性腎不全、急性腎不全、急性腎傷害、炎症性腸疾患、及び多臓器機能不全症候群の治療における使用のための、項目1~133のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【配列表】
【国際調査報告】