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特表2024-509554粘着剤組成物、これを用いて形成された粘着剤層、前記粘着剤層を含む粘着フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、これを用いて形成された粘着剤層、前記粘着剤層を含む粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240226BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240226BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240226BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553644
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 KR2022003049
(87)【国際公開番号】W WO2022186642
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0029637
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キョン-ムン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン-ジュン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AB01
4J004AB07
4J004FA08
4J040FA131
4J040FA291
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA31
4J040LA01
4J040NA17
(57)【要約】
本発明は、ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、可塑剤および光開始剤を含み、前記可塑剤は、重量平均分子量(Mw)が200以上であり、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計100重量部に対して、0.5~10重量部含まれるものである、粘着剤組成物、これを用いて形成される粘着剤層および前記粘着剤層を含む粘着フィルムに関し、多様な基材において高い密着力を有し、-30℃で貯蔵弾性率およびフォールディング性に優れ、高温高湿の苛酷条件でも信頼性に優れた効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、可塑剤および光開始剤を含み、
前記可塑剤は、重量平均分子量(Mw)が200以上であり、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計100重量部に対して、0.5~10重量部含まれるものである、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記可塑剤は、重量平均分子量(Mw)が200~1500である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリレートモノマーは、炭素数6~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび極性基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記極性基を有する(メタ)アクリレートは、アクリレートモノマーの総重量に対して、3~30重量%含まれるものである、請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ウレタンオリゴマーは、下記化学式1で表される化合物を含んで重合されるものである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】

(前記化学式1において、
Rは、炭素数1~20のアルキレン基であり、
nは、1~5の整数であり、
mは、0~5の整数である。)
【請求項6】
前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーは、1:9~5:5の重量比で含まれるものである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層。
【請求項8】
請求項7に記載の粘着剤層を含む粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、これを用いて製造された粘着剤層、前記粘着剤層を含む粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ産業では、タッチパネルまたはタッチスクリーンを搭載したり、高輝度および高透過性を得るために、光学的に透明な感圧粘着剤を多数用いている。
【0003】
技術の発展によって、ディスプレイ産業で用いられるタッチスクリーンまたはタッチパネルは次第にフォルダブル形態に切り替えられており、このようなタッチスクリーンまたはタッチパネルに透明導電性フィルムを付着するために使用される粘着剤は、各種基材に対する粘着性と同時に、高温、高湿条件などのような苛酷条件に露出する場合にも、カール(curl)や気泡などの発生が抑制できる耐久性が要求されている。
【0004】
一方、大韓民国公開特許第10-2013-0056587号は、ガラス転移温度が50~-60℃であり、重量平均分子量40,000~60,000のウレタンオリゴマーを含むタッチパネル用粘着剤組成物を開示する。しかし、前記粘着剤をフォルダブルディスプレイに使用する場合、粘着フィルムが破断したり、浮き上がったり、シワが形成される問題が発生するだけでなく、一定の硬化度未満で耐久性が弱い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2013-0056587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、密着力、低温貯蔵弾性率、低温フォールディング性および高温信頼性に優れた粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記粘着剤層を含む粘着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、可塑剤および光開始剤を含み、前記可塑剤は、重量平均分子量(Mw)が200以上であり、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計100重量部に対して、0.5~10重量部含まれるものである、粘着剤組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層を提供する。
さらに、本発明は、前記粘着剤層を含む粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による粘着剤組成物は、多様な基材において高い密着力を示すだけでなく、これを用いて形成された粘着剤層を含む粘着フィルムは、-30℃で貯蔵弾性率およびフォールディング性に優れ、高温高湿の苛酷条件でも信頼性に優れた効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、可塑剤および光開始剤を含み、前記可塑剤は、重量平均分子量(Mw)が200以上であり、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計100重量部に対して、0.5~10重量部含まれるものである、粘着剤組成物、これを用いて形成される粘着剤層および前記粘着剤層を含む粘着フィルムに関する。
【0013】
本発明によれば、多様な基材において高い密着力を示すことができ、-30℃で貯蔵弾性率およびフォールディング性に優れ、高温高湿の苛酷条件でも信頼性に優れた粘着剤組成物、粘着剤層および粘着フィルムを提供することができる。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
<粘着剤組成物>
本発明による粘着剤組成物は、ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、可塑剤および光開始剤を含み、本発明の目的を阻害しない範囲内で追加の成分をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の粘着剤組成物のガラス転移温度(Tg)は、-70~-20℃であってもよく、好ましくは、-70~-40℃であってもよい。粘着剤組成物が前記ガラス転移温度範囲を満足する場合、低温フォールディング特性により優れるという利点がある。
【0016】
ウレタンオリゴマー
本発明において、ウレタンオリゴマーは、粘着剤組成物の物性と柔軟性を付与して粘弾性および貯蔵弾性率を維持する役割を果たす。
【0017】
前記ウレタンオリゴマーは、ポリオールとジイソシアネート化合物とを重合する公知の方法で製造することができる。
【0018】
ポリオールは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランなどのようなオキシランなどの環状エーテル単量体を用いれば、エーテル主鎖を有するオリゴマーを製造することができる。また、ε-カプロラクトンまたはピバロラクトンのような環状エステルを用いれば、エステル主鎖を有するオリゴマーを製造することができる。
【0019】
前記ポリオールは、下記化学式1で表されるポリエステルポリオールであってもよい。
【0020】
【化1】
【0021】
前記化学式1において、Rは、炭素数1~20のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数1~10のアルキレン基であってもよい。
【0022】
また、前記化学式1において、nは、1~5の整数であり、好ましくは、1~3の整数であってもよい。
【0023】
さらに、前記化学式1において、mは、0~5の整数であり、好ましくは、0~3の整数であってもよい。
【0024】
前記化学式1で表される化合物は、例えば、低分子ポリオールとε-カプロラクトンとを開環重合させることにより得られるポリカプロラクトンポリオールが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記製造されたポリオールにジイソシアネート化合物を反応させると、ウレタン結合基を有するポリオール構造を得ることができる。前記ジイソシアネート化合物は、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロペンチレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキセン-1,4-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、アゾベンゼン-4,4’-ジイソシアネート、m-またはp-テトラメチルキシレンジイソシアネートおよび1-クロロベンゼン-2,4-ジイソシアネートからなる群より選択される脂肪族ジイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
【0026】
前記ウレタンオリゴマーは、末端に少なくとも1つの光反応性官能基を含むものであってもよい。ウレタンオリゴマーが末端に少なくとも1つの光反応性官能基を含む場合、高温高湿信頼性において優れた特性を有するという利点があるので、好ましい。
【0027】
前記光反応性官能基は、例えば、アクリレート基、アセトフェノン基、ベンゾイン基、アシルホスフィンオキシド基、チタノセン基、ベンゾフェノン基、アントラセン基およびチオキサントン基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、アクリレート基、ベンゾフェノン基およびベンゾイン基からなる群より選択される1つ以上であってもよい。
【0028】
前記ウレタンオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、30,000~100,000であってもよいし、好ましくは、50,000~90,000であってもよい。ウレタンオリゴマーが前記重量平均分子量を満足する場合、高温高湿条件でより優れた信頼性を示すことができるという利点がある。
【0029】
前記ウレタンオリゴマーは、ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計総重量に対して、10~60重量%含まれ、好ましくは、15~50重量%含まれる。ウレタンオリゴマーが前記含有量範囲を満足する場合、粘着剤組成物の粘度と光学特性のバランスを適宜調節できるという利点があるので、好ましい。
【0030】
アクリレートモノマー
本発明において、アクリレートモノマーは、耐久性を付与すると同時に粘弾性を維持し、粘度を調節して粘着剤組成物の塗工性を向上させる役割を果たす。
【0031】
前記アクリレートモノマーは、炭素数6~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび極性基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、炭素数6~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび極性基を有する(メタ)アクリレートをすべて含むものであってもよい。この場合、低温でのフォールディング性が向上する効果を示すことができるという利点がある。
【0032】
前記炭素数6~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、炭素数が6~30のアルキル基を含む(メタ)アクリレートであれば特に限定されず、前記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む意味である。
【0033】
前記炭素数6~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて使用可能である。好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレート(2-Ethylhexyl acrylate)を含むことができる。
【0034】
前記極性基を有する(メタ)アクリレートは特に限定されないが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などを含むことができ、好ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0035】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレートなどが挙げられ、これらのうち、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0036】
前記極性基を有する(メタ)アクリレートは、アクリレートモノマーの総重量に対して、3~30重量%含まれ、好ましくは、5~20重量%含まれる。極性基を有する(メタ)アクリレートが前記含有量範囲を満足する場合、粘着力が向上して高温高湿下の信頼性に優れた効果を示すことができるという利点がある。
【0037】
前記アクリレートモノマーは、ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計総重量に対して、40~90重量%含まれ、好ましくは、50~80重量%含まれる。アクリレートモノマーが前記含有量範囲を満足する場合、粘度を調節して粘着剤組成物の塗工性を向上させるという利点がある。
【0038】
また、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーは、1:9~5:5の重量比で含まれ、好ましくは、2:8~4:6の重量比で含まれる。ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーが前記重量比を満足する場合、弾性率を調節したり、低温フォールディング性および信頼性の最適点を見つけられるという利点がある。
【0039】
可塑剤
本発明において、可塑剤は、粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層および粘着フィルムの柔軟性を向上させる役割を果たす。
【0040】
前記可塑剤は、粘着剤組成物に添加されて柔軟性を向上させることができるものであれば特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が200~1500のものを使用することができ、好ましくは、200~1000のものを使用することができ、さらに好ましくは、200~500のものを使用することができる。可塑剤の重量平均分子量が前記範囲を満足する場合、高温高湿条件でより優れた信頼性を示すことができるという利点がある。
【0041】
前記可塑剤は、例えば、DOP(dioctyl phthalate)、DOA(dioctyl adipate)、TCP(tricresyl phosphate)、DIOP(diisooctyl phthalate)、DINP(diisononyl phthalate)、DUP(diunedecyl phthalate)、BBP(butyl benzyl phthalate)、DEHA(bis(2-ethylhexyl)adipate)、DIDA(diisodecyl adipate)、DOS(bis(2-ethylhexyl)sebacate)、DIOZ(diisooctyl azelate)、TOP(tri-2-ethylhexyl phosphate)、TPP(triphenyl phosphate)、CDP(cresyl diphenyl phosphate)、TCP(tricresyl phosphate)、TXP(trixylyl phosphate)、TOTM(tri-2-ethylhexyl trimellitate)、ASE(alkyl sulphonic acid phenyl ester)、3G6(triethylene glycol dihexanoate)、4G7(tetraethylene glycol diheptanoate)、ATEC(acetyl triethyl citrate)、TBC(tributyl citrate)、TOC(trioctyl citrate)、ATOC(acetyl trioctyl citrate)、ATHC(acetyl trihexyl citrate)、TMC(trimethyl citrate)、DBM(dibutyl maleate)、DIBM(diisobutyl maleate)、BDNPF(bis(2,2-dinitropropyl)formal)、TNEN(2,2,2-trinitroethyl 2-nitroxyethyl ether)、polyethylene glycol ester、またはこれらの組み合わせを使用することができ、好ましくは、DOP(dioctyl phthalate)、DOA(dioctyl adipate)およびDIOP(diisooctyl phthalate)からなる群より選択される1種以上を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記可塑剤は、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計100重量部に対して、0.5~10重量部含まれ、好ましくは、1~8重量部含まれる。可塑剤が前記含有量範囲を満足する場合、低温での貯蔵弾性率特性を向上させることができ、高温高湿条件でより優れた信頼性を示すことができるという利点がある。
【0043】
光開始剤
本発明の粘着剤組成物は、光開始剤を含む。前記光開始剤は、重合反応を開始する化合物であり、光の作用によって活性ラジカルや酸を発生するもので、当該技術分野にて用いられる光開始剤であれば制限なく使用可能である。
【0044】
本発明の光開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられる。
【0045】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0046】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0047】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0048】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0049】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0050】
前記光開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、チバジャパン(株)製造)、セイクオール(SEIKUOL)BZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学(株)製造)、カヤキュア(kayacure)BP100(日本化薬(株)製造)、カヤキュアUVI-6992(ダウ社製造)、アデカオプトマーSP-152またはアデカオプトマーSP-170(以上、(株)ADEKA製造)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製造)、TAZ-104(三和ケミカル社製造)などの市販の光重合開始剤も用いることができる。
【0051】
前記光開始剤は、前記ウレタンオリゴマーおよびアクリレートモノマーの合計100重量部に対して、0.01~3重量部含まれ、好ましくは、0.1~2重量部含まれる。光開始剤が前記含有量範囲を満足する場合、粘着剤組成物の重合反応が十分に行われて形成される粘着剤層の凝集力を確保できるという利点がある。
【0052】
<粘着剤層、粘着フィルムおよびこれらの製造方法>
また、本発明は、上述した粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層、これを含む粘着フィルムおよびこれらの製造方法を提供する。
【0053】
前記粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を硬化して形成することができる。また、透明基材フィルムと、前記透明基材フィルムの少なくとも一面に形成された前記粘着剤層とを含む粘着フィルムを製造することができる。
【0054】
前記粘着剤層の厚さは、25~1000μmであってもよい。
前記透明基材フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れているものを使用することができるが、これに限定されない。
【0055】
前記硬化は、当分野にて用いられるものであれば特に限定しないが、紫外線を用いた光硬化が一般的である。
【0056】
前記紫外線を用いた重合時、光源は、発光分布が400nm以下、好ましくは、150~400nm、より好ましくは、200~380nmの波長のもので、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯およびメタルハライドランプなどを用いることができる。
【0057】
前記光照射の強度は、要求される粘着剤の物性によって適宜調節可能であり、自由ラジカル光開始剤の活性に有用な積算光量は、10~5000mJ/cmであることが好ましく、200~2000mJ/cmがより好ましい。前記範囲内で適切な硬化反応時間を有し、ランプから輻射される熱および重合反応時の発熱によって製造された硬化物の凝集力の低下、黄変または支持体の劣化を発生させないので、好ましい。
【0058】
以下、本発明を実施するための具体的な実施例を記述する。しかし、本発明が下記の内容に制限されるものではなく、通常の分野にて必要な程度によって適宜変更可能である。
【実施例
【0059】
製造例:ウレタンオリゴマーの製造
製造例1
重量平均分子量が1230のポリカプロラクトンジオール(商品名:Placcel212、ダイセル化学工業(株)製)81重量部に、500ppmのジブチルチンジラウレート触媒(DBTDL)とイソホロンジイソシアネート10重量部を80℃で反応させて得られるイソシアネートポリマーに、ヒドロキシエチルアクリレート9重量部を反応させて、重量平均分子量60,000のウレタンアクリレートオリゴマーを製造した。
【0060】
製造例2
重量平均分子量が2000のポリカプロラクトンジオール(商品名:Placcel220、ダイセル化学工業(株)製)81重量部に、500ppmのジブチルチンジラウレート触媒(DBTDL)とイソホロンジイソシアネート10重量部を80℃で反応させて得られるイソシアネートポリマーに、ヒドロキシエチルアクリレート9重量部を反応させて、重量平均分子量80,000のウレタンアクリレートオリゴマーを製造した。
【0061】
実施例および比較例:粘着剤組成物および粘着フィルムの製造
(1)粘着剤組成物
下記表1の成分および含有量によって粘着剤組成物を製造した。測定装置(DSC8000、PerkinElmer社)を用いて各粘着剤組成物のガラス転移温度(Tg)を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
2-HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
DOA:ジオクチルアジペート(Mw:370)
DOP:ジオクチルフタレート(Mw:390)
DMAD:ジメチルアジペート(Mw:174)
I-184:イルガキュア184(チバジャパン(株)製造)
(2)粘着フィルム
前記(1)で製造された粘着剤組成物をコーティング液離型処理されたポリエチレンフタレートフィルム(厚さ:75μm)にバーコーターを用いてコーティングした。以後、UVランプを用いて紫外線を10分間照射して硬化し、前記粘着剤組成物の硬化後の厚さが50μmとなるように粘着フィルムを製造した。
【0064】
実験例
(1)貯蔵弾性率の測定
前記製造された粘着フィルムに対して、貯蔵弾性率を粘弾性測定装置(MCR-301、Anton Paar社)を用いて測定した。より詳しくは、粘着フィルムのサイズを長さ30mm×幅30mmに裁断し、前記裁断した粘着フィルムの片面に付着した離型フィルムを除去した後、ガラス基板に接合し、その後、測定チップ(tip)と接着した状態で、-30~100℃の温度領域で周波数1.0Hz、変形2%、昇温速度5℃/minの条件下で貯蔵弾性率を測定し、この時、-30℃の測定値を読み取り、測定結果を下記表2に記載した。
【0065】
(2)フォールディング(Folding)性評価
前記製造された粘着フィルムを50μmのPETに接合して、長さ20mm×幅100mmに切断して試験片として用いた。
【0066】
フォールディング性評価のための屈曲性評価装置(COVOTECH社、CFT-720C)に前記試験片を固定させ、曲率半径2mmにフォールディングされるようにし、1分あたり25回フォールディング、1回フォールディング後、0.2秒維持の条件下、-30℃の条件でフォールディング評価をした。フォールディング評価適用時、1回フォールディングを1cycleとし、フォールディング部位で縞状などが生じたり、粘着フィルムの破断、浮き上がり、剥離などが生じる最初のcycle数を評価し、フォールディング部位で縞状などが生じたり、粘着フィルムの破断、浮き上がり、剥離などが生じるとNG、なければOKと判定した。その結果は下記表2に示した。
【0067】
(3)高温信頼性評価
偏光板とPETとの間に、前記製造された粘着フィルムを位置させて接合した後、200mm×300mmに裁断して、高温高湿(85℃、85%相対湿度)状態で10日間保管した後、肉眼で観察して気泡発生の有無を確認し、下記の評価基準によって高温信頼性を評価した。その結果は下記表2に示した。
【0068】
<評価基準>
◎:気泡または剥離なし
○:気泡または剥離が1個以上5個未満
△:気泡または剥離が5個以上10個未満
×:気泡または剥離が10個以上
【0069】
【表2】
【0070】
前記表2を参照すれば、本発明による実施例1~4による粘着剤組成物を用いて製造された粘着フィルムは、-30℃での貯蔵弾性率およびフォールディング性評価、高温信頼性評価においてすべて優れた結果を示すことを確認することができる。
【0071】
これに対し、重量平均分子量200未満の可塑剤を使用する比較例1および可塑剤を適正含有量を超えて含む比較例2の場合、-30℃での貯蔵弾性率および/または高温信頼性の評価結果が著しく低下し、可塑剤を含まない比較例3の場合、-30℃での貯蔵弾性率およびフォールディング性の評価結果が著しく低下することを確認することができる。
【国際調査報告】