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特表2024-509556埋め込み読み出しを伴うコンパクトなシリコン量子ビットセル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】埋め込み読み出しを伴うコンパクトなシリコン量子ビットセル
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20240226BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240226BHJP
   H10N 60/10 20230101ALI20240226BHJP
   H10N 60/00 20230101ALI20240226BHJP
【FI】
H01L29/06 601D
H01L27/04 F
H01L27/04 L
H01L29/06 601L
H10N60/10 G ZAA
H10N60/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553704
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022055531
(87)【国際公開番号】W WO2022189284
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161175.1
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521435167
【氏名又は名称】クオンタム モーション テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス-ザルバ,ミゲル フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4M113
5F038
【Fターム(参考)】
4M113AB11
4M113AC44
4M113AC45
4M113AC50
4M113CA16
4M113CA17
5F038AC00
5F038AZ02
5F038AZ04
5F038EZ02
(57)【要約】
量子ビットの測定または読み出しを行うためのLC共振器回路を有する量子デバイスが開示されている。前記デバイスは、シリコン層601と、前記シリコン層601の上に配置され、この半導体層と機能性境界面を形成する誘電体層603と、前記誘電体層603の上に配置された第1の金属領域614と、前記誘電体層603の上に配置され、前記第1の金属領域614から横方向に分離された第2の金属領域624とを包含する。前記第1の金属領域614、および前記第2の金属領域624は、第1の状態と第2の状態を有する量子ビットを形成する二重量子ドットを、前記第1の金属領域614、および前記第2の金属領域624の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。前記二重量子ドットは、前記LC共振器回路内のキャパシタC1を備え、前記二重量子ドットのキャパシタンスは、前記量子ビットの前記状態に依存する。前記第1の金属領域614は、前記LC共振器回路内のインダクタL1を備え、前記LC共振器回路の共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存し、それにより、前記量子ビットの前記状態を測定または推定することが可能になる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビットの測定または読み出しを行うためのLC共振器回路を有する量子デバイスであって、
半導体層と、
前記半導体層の上に配置され、前記半導体層と機能性境界面を形成する誘電体層と、
前記誘電体層の上に配置された第1の金属領域と、
前記誘電体層の上に配置され、前記第1の金属領域から横方向に分離された第2の金属領域と、
を包含し、
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の状態と第2の状態を有する量子ビットを形成する二重量子ドットを、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置され、
前記二重量子ドットは、前記LC共振器回路内のキャパシタを備え、前記二重量子ドットのキャパシタンスは、前記量子ビットの前記状態に依存し、
前記第1の金属領域は、前記LC共振器回路内のインダクタを備え、
前記LC共振器回路の共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存し、それにより、前記量子ビットの前記状態を測定すること、または推定することが可能になる、
量子デバイス。
【請求項2】
前記第1の金属領域は、超電導体を包含する、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項3】
前記LC共振器回路の共振周波数に対応する周波数において電力を供給するように構成された電源と、
前記第1の金属領域および/または第2の金属領域に接続され、前記LC共振器回路を通る電力伝達を測定するように構成された、前記量子ビットの前記状態を推定するプローブと、
をさらに包含する、請求項1または2に記載の量子デバイス。
【請求項4】
前記第1の金属領域は、前記LC共振器回路内の第1のインダクタを備え、前記第2の金属領域は、前記LC共振器回路内の第2のインダクタを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項5】
前記第1の金属領域を覆うマスキング層をさらに包含する、請求項1から4のいずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項6】
前記半導体層はナノワイヤを包含し、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれが、前記ナノワイヤの1つのエッジと部分的に重なり、かつ前記ナノワイヤから離れる方向に伸長するそれぞれの部分を含むように前記ナノワイヤの対向する側に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項7】
前記誘電体層の上に配置される第3および第4の金属領域をさらに包含し、
前記第3および第4の金属領域は、前記第3および第4の金属領域のそれぞれが、前記ナノワイヤの1つのエッジと部分的に重なり、かつ前記ナノワイヤから離れる方向に伸長するそれぞれの部分を含むように前記ナノワイヤの対向する側に配置され、
前記第3および第4の金属領域は、前記ナノワイヤの長手方向の軸に沿って前記第1の金属領域および前記第2の金属領域から横方向に分離され、
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の二重量子ドットを前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置され、
前記第3および第4の金属領域は、前記第3および第4の金属領域の下の前記機能性境界面に第2の二重量子ドットを誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される、
請求項6に記載の量子デバイス。
【請求項8】
前記第3および第4の金属領域のそれぞれのインダクタンスは、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれのインダクタンスより大きい、請求項7に記載の量子デバイス。
【請求項9】
前記半導体層は、ナノワイヤを包含し、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、前記ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って横方向に分離される、請求項1から5のいずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項10】
前記誘電体層は、薄い領域と厚い領域を包含し、前記機能性境界面は、前記半導体層と前記誘電体層の前記薄い領域の間に形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のデバイスを使用して量子ビットの測定または読み出しを行うための方法であって、
第1および第2のバイアス電位をそれぞれ、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域に印加して二重量子ドットを誘導するステップと、第1の状態および第2の状態を有する量子ビットを、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に形成するステップと、
を包含し、前記第1および第2のバイアス電位は、実質的に同一であり、さらに、
選択された周波数を伴う信号を前記第1の金属領域に印加するステップと、
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の間にバイアス差を印加するステップと、
前記第1または第2の金属領域における電力伝達を測定するステップと、
を包含し、前記測定は、前記量子ビットの前記状態を測定または推定するために使用される、方法。
【請求項12】
前記選択された周波数は、前記二重量子ドットの前記キャパシタンスが最大のときの前記回路の前記共振周波数である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、20ケルビンより低い温度において行われる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれかに記載の量子デバイスを組み立てる方法であって、
半導体層の上に誘電体層を配置して機能性境界面を形成するステップと、
前記誘電体層の上に第1の金属領域を配置するステップと、
前記誘電体層の上に前記第1の金属領域から横方向に分離して第2の金属領域を配置するステップと、
を包含し、
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の状態と第2の状態を有する量子ビットを形成する二重量子ドットを、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するように構成され、
前記二重量子ドットは、前記LC共振器回路内のキャパシタを備え、前記二重量子ドットのキャパシタンスは、前記量子ビットの前記状態に依存し、
前記第1の金属領域は、前記LC共振器回路内のインダクタを備え、
前記LC共振器回路の共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存し、それにより、前記量子ビットの前記状態を測定すること、または推定することが可能になる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LC共振器回路を含む量子デバイスに関する。このデバイスは、量子ビットの測定または読み出しに適する。
【背景技術】
【0002】
近い将来の中間規模の量子コンピューティング、またはNISQ時代における量子ビットプロセッサは、50乃至100量子ビットを使用することになる可能性がある。量子ビットは、通常、必要プロセッサ・サイズが最小化するように稠密アレイで配置される。
【0003】
量子ビットプロセッサを使用する量子コンピュテーションは、通常、量子ビットに対する操作シーケンスの実施に続く量子ビットのそれぞれの状態の読み出しを必然的に伴う。読み出しは、LC共振器に電荷センサを結合することによって、またはLC共振器回路内に量子ビットを埋め込むことによって行うことが可能である。しかしながら、量子ビットの状態を読み出すために必要とされる回路は、量子ビット自体のために必要とされる面積と比較すると非常に大きな面積を占有する。各量子ビットのサイズは、使用される材料の特性に依存するが、通常、それによって占有される面積は、100×100nmから1×1μmまでの間とすることができる。対照的に、LC共振器によって占有される面積は、通常、少なくとも100×100μmであり、量子ビットの占有面積の大きさより数桁も大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LC共振器回路によって占有される比較的大きな面積は、この技術のスケーラビリティに対する著しい制限を引き起こす。読み出し回路のサイズを縮小することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、量子ビットの測定または読み出しを行うためのLC共振器回路を有する量子デバイスを提供する。前記デバイスは、半導体層と、前記半導体層の上に配置され、この半導体層と機能性境界面を形成する誘電体層と、前記誘電体層の上に配置された第1の金属領域と、前記誘電体層の上に配置され、前記第1の金属領域から横方向に分離された第2の金属領域と、を包含する。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の状態と第2の状態を有する量子ビットを形成する二重量子ドットを、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。前記二重量子ドットは、前記LC共振器回路内のキャパシタを備え、前記二重量子ドットのキャパシタンスは、前記量子ビットの前記状態に依存する。前記第1の金属領域は、前記LC共振器回路内のインダクタを備える。前記LC共振器回路の共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存し、それにより、前記量子ビットの前記状態を測定すること、または推定することが可能になる。
【0006】
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、二重量子ドットを前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。このことは、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域に対してバイアス電位を印加することによって達成され、それが電荷担体を局所的に閉じ込めるべく前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の近傍における電位ランドスケープを修正する。前記半導体層と前記誘電体層の間の境界面は、通常、機能性部分と非機能性部分を包含する。前記第1の金属領域および/または第2の金属領域に対してバイアス電位が印加されると、前記機能性部分が、通常、前記非機能性部分に関する電界効果より大きな電界効果を有し、その結果、前記第1の金属領域および/または第2の金属領域の下の前記機能性境界面において1つ以上の電荷担体を閉じ込めることが可能になる。前記電荷担体は、前記バイアス電位の極性に応じて電子または正孔とすることができる。
【0007】
前記第1の金属領域は、第1の量子ドットを前記第1の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。前記第2の金属領域も同様に、第2の量子ドットを前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のサイズは、前記第1および第2の量子ドットのサイズに、したがってそれらの帯電エネルギ等の電気的特性に影響を及ぼす。帯電エネルギは、前記量子ドットのサイズに反比例し、より小さい金属領域を使用し、より大きな帯電エネルギを伴う、より小さな量子ドットを誘導することが可能である。
【0008】
任意として、前記第1の金属領域または前記第2の金属領域のいずれかに対してバイアス電位を印加して単一量子ドットを誘導することができる。しかしながら、好ましくは前記第1および第2両方の金属領域に対してバイアス電位を印加し、二重量子ドットを誘導する。二重量子ドットは、前記第1の量子ドットおよび前記第2の量子ドットを包含する。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の間の間隔は、前記第1および第2の量子ドットのトンネル結合が可能となるようになされる。
【0009】
前記二重量子ドットは、第1の状態および第2の状態を有する量子ビットを形成する。たとえば、前記第1の状態は、反平行スピン配向を伴う電子を包含することができ、前記第2の状態は、平行スピン配向を伴う電子を包含することができる。この例においては、前記二重量子ドットのスピン動力学の結果として前記第1の状態のキャパシタンスが前記第2の状態のキャパシタンスより高い。前記電子スピンが平行である場合には、前記第1および第2の量子ドットの間におけるトンネリングが、スピンブロッケードに起因して抑圧されるか、またはゼロになることさえある。
【0010】
前記量子ビットの前記状態は、インダクタおよびキャパシタを包含するLC共振器回路を使用して読み出すことが可能である。LC共振器回路は、そのほかにLCタンク回路、LC共振器、タンク回路、または共振回路として知られているかもしれない。前記LC共振器回路は、式:ω=1/√LCに従う、インダクタンスLとキャパシタンスCに依存する共振周波数ωを有する。前記共振周波数においては、順方向の電力伝達が最大になる。上に述べられているデバイスにおいては、前記二重量子ドットは前記LC共振器回路内のキャパシタを備える。キャパシタンスは、したがって共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存する。したがって、前記量子ビットの前記状態を推定することが可能である。
【0011】
上に述べられている量子デバイスにおいては、前記第1の金属領域が二重に機能する。第一には、前記第1の金属領域が、量子ドットを前記第1の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。第二には、前記第1の金属領域が、前記LC共振器回路内のインダクタを備える。したがって、追加のインダクタが必要とされない。好ましくは、前記第1の金属領域のみが前記LC共振器回路内のインダクタを備える。したがって、前記デバイスは、好都合なことに、前記量子ビットの前記状態を測定または推定するコンパクトな量子ビット読み出しメカニズムを提供する。
【0012】
前記デバイスの前記半導体層は、ガリウムヒ素(GaAs)、ヒ化インジウム(InAs)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、炭化シリコン(SiC)、炭素、またはシリコン等の任意の適切な半導体とすることができる。グラフェンまたはカーボンナノチューブ等の異なる炭素の同素体を使用してもよい。真性シリコン、同位体的に純粋なシリコンSi28、またはドープ・シリコン等の形態の異なるシリコンを使用することもできる。前記半導体層は任意に、前記半導体層の下に絶縁層をさらに包含する層基板の部分を形成する。前記基板は、前記絶縁層の下に追加の層を包含することができる。一例においては、前記半導体層がシリコン層であり、埋め込み酸化物の上に配置され、さらにそれがシリコン基板の上に配置される。代わりに、前記半導体層の下に絶縁層が存在しなくてもよく、前記半導体層は、バルク半導体基板の部分を形成することができる。
【0013】
前記半導体層の上に配置され、この半導体層と機能性境界面を形成する前記誘電体層は、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、無ドープ・ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)等の任意の適切な電気的絶縁材料、またはケイ酸ハフニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化ハフニウム、および二酸化ジルコニウム等の高い比誘電率κを伴う材料とすることができる。
【0014】
好ましくは、前記第1の金属領域が、超電導体等の担体移動度の高い電導体を包含する。たとえば、前記第1の金属領域は、窒化チタン(TiN)、窒化ニオブ(NbN)、または窒化ニオブチタン(NbTiN)を包含することができる。これらの材料は、通常、高い運動インダクタンスを有する。前記LC共振器回路内のインダクタを備える前記第1の金属領域のインダクタンスは、前記第1の金属領域の材料特性および幾何形状に依存する。前記第1の金属領域のインダクタンスは、通常、10から100ナノヘンリーの間であり、好ましくは40から60ナノヘンリーの間である。たとえば、前記第1の金属領域の前記インダクタンスを50ナノヘンリーとすることができる。前記インダクタンスは、前記第1の金属領域の幾何形状に依存する。好都合なことに、前記第1の金属領域が高い運動インダクタンスを伴う材料を包含するときには、前記インダクタをより小さくすることが可能であり、よりコンパクトなデバイスが結果的にもたらされる。
【0015】
前記第1の金属領域の運動インダクタンスは、その幾何形状に依存する。前記運動インダクタンスは、前記第1の金属領域の厚さおよび長さに反比例し、前記第1の金属領域の伸長部分に比例する。したがって、低減された厚さ、より狭い領域、または増加された伸長部分のうちのいずれも前記第1の金属領域の運動インダクタンスを増加することになる。
【0016】
好ましくは、前記第1の金属領域の厚さを1から10ナノメートルの間にする。より薄い第1の金属領域は、より高い運動インダクタンスを有し、好都合なことには、結果としてそのことが前記第1の金属領域によって占有される面積をより小さくし、よりコンパクトなデバイスの実現を導く。
【0017】
前記第1の金属領域の部分を形成することができる材料等の超電導材料は、臨界温度を有し、それを下回るとその材料の比電気抵抗がゼロに、すなわちその材料が超電導になる。超電導体は、70ケルビンより低い、好ましくは20ケルビンより低い、より好ましくは10ケルビンより低い臨界温度を有することができる。このことは、より低い臨界温度を伴う超電導体が、通常、より高い運動インダクタンスを有するという利点を有する。しかしながら、超電導体の臨界温度は、限定要因ではない。
【0018】
したがって、前記第1の金属領域は、極低温度において前記量子デバイスの前記LC共振器回路内のインダクタを備え、前記二重量子ドットは、前記LC共振器回路内のキャパシタを備える。前記量子ビットの前記状態を測定または推定するために、好ましくは前記デバイスが、電源およびプローブをさらに包含する。前記電源は、通常、前記LC共振器回路の共振周波数に対応する周波数において電力を供給するように構成される。前記電源は、前記第1の金属領域に接続することができる。前記プローブは、前記第1の金属領域および/または第2の金属領域に接続することができ、通常、前記LC共振器回路を通る電力伝達を測定するように構成される。前記LC共振器回路を通る電力伝達の測定は、前記量子ビットの前記状態を推定するために使用することが可能である。
【0019】
測定される電力伝達は、たとえば、順方向の電力伝達S21とすることができる。この例においては、前記電源が前記第1の金属領域に接続され、前記プローブが前記第2の金属領域に接続される。S21は、前記第1および第2のポートの間における関係の決定に使用されるSパラメータまたは散乱パラメータである。前記LC共振器回路の前記共振周波数においては、順方向の電力伝達が高い。前記LC共振器回路の前記共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存する。
【0020】
別の例においては、前記測定される電力伝達を反射電力伝達S11とすることができる。この例においては、前記電源と前記プローブが前記第1の金属領域に接続される。S11は、さらなるSパラメータであり、前記LC共振器回路の前記共振周波数に依存する。前記LC共振器回路の前記共振周波数においては、前記反射電力伝達が低い。
【0021】
さらなる例においては、前記電源が第1の金属領域に接続され、プローブが前記第1の金属領域および前記第2の金属領域に接続される。この例においては、前記順方向の電力伝達S21および前記反射電力伝達S11の両方を測定することが可能である。
【0022】
前記電源は任意に、前記量子ビットの前記第1の状態に対応する前記LC共振器回路の前記共振周波数において電力を供給するように構成される。したがって、前記量子ビットが前記第1の状態にあれば、前記順方向の電力伝達S21が高くなる。前記量子ビットが前記第2の状態にあれば、前記順方向の電力伝達が低くなる。それに代えて、前記電源を、前記量子ビットの前記第2の状態に対応する前記LC共振器回路の前記共振周波数において電力を供給するように構成することができる。この例においては、前記量子ビットが前記第2の状態にある場合に前記順方向の電力伝達が高くなり、前記量子ビットが前記第1の状態にある場合に低くなる。
【0023】
前記電源は任意に、前記量子ビットの前記第1の状態に対応する前記LC共振器回路の前記共振周波数において電力を供給するように構成され、前記量子ビットの前記状態を推定するために前記反射電力伝達S11が使用される。前記量子ビットの前記第1の状態にあれば、前記反射電力伝達が低くなる。前記量子ビットの前記第2の状態にあれば、前記反射電力伝達が高くなる。前記反射電力伝達のスペクトルは、前記共振周波数において倒立したピークを含む。別の例においては、前記電源は、前記量子ビットの前記第2の状態に対応する前記LC共振器回路の前記共振周波数において電力を供給するように構成され、前記反射電力伝達は、前記量子ビットの前記状態を推定するために使用される。前記反射電力伝達は、前記量子ビットが前記第2の状態にある場合に低くなり、前記量子ビットが前記第1の状態にある場合に高くなる。
【0024】
好都合なことに、前記デバイスを使用して、前記電力伝達の測定に基づいて前記量子ビットの前記状態を感度よく推定することが可能である。さらにまた前記デバイスは、従来技術との比較において、有意によりコンパクトな量子ビット読み出しメカニズムを提供する。前記二重量子ドットの量子ビットの支持に適した前記第1の金属領域および前記第2の金属領域を包含する量子ビット・ユニット・セルは、約100ナノメートル×10マイクロメートルとすることができる。これは、類似の機能を伴う既存のデバイスのおおよそ10,000分の1の大きさである。
【0025】
通常、前記LC共振器回路は、2つの共振周波数を有し、第1の共振周波数は、前記量子ビットの前記第1の状態に対応し、第2の共振周波数は、前記量子ビットの前記第2の状態に対応する。好ましくは、前記共振周波数のうちの前記電源が電力を供給するように構成される方を、前記第1および第2の共振周波数のうちのより低い周波数とする。より低い周波数を選択する利点は、寄生損失の低減である。
【0026】
前記LC共振器回路の前記共振周波数は、前記回路内の前記インダクタおよびキャパシタによって決定される。任意に、前記第1の金属領域は前記LC共振器回路内の第1のインダクタを備え、前記第2の金属領域が前記LC共振器回路内の第2のインダクタを備える。好ましくは、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のみが前記LC共振器回路内のインダクタを備える。この配置を使用すると、前記量子ビットの読み出しを行う追加のインダクタが必要なくなり、したがって好都合なことに、前記デバイスをよりコンパクトにすることが可能である。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域によって提供される第1および第2のインダクタを含むことは、好都合なことに、前記第1または第2の金属領域のいずれかにおいて読み出しを行うことが可能であるという事実に起因して前記第1の金属領域によって提供される第1のインダクタのみを有することに追加される柔軟性を備える。さらにまた、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の両方が前記LC共振器回路内のインダクタを備え、かつそれらのインダクタが直列であるときには、前記回路の全体的なインダクタンスを増加することが可能である。このことは、特定のインダクタンスについての前記デバイスの寸法をさらに縮小することが可能であるという利点を有する。
【0027】
前記第2の金属領域が前記LC共振器回路内の第2のインダクタを備える場合には、好ましくは前記第2の金属領域が、前記第1の金属領域と実質的に同一の特徴を有する。たとえば、前記第2の金属領域は、窒化チタン、窒化ニオブ、または窒化ニオブチタン等の高い運動インダクタンスを伴う担体移動度の高い電導体を好ましく包含する。前記第2の金属領域は、前記第1の金属領域に類似する寸法を好ましく有する。このことは、その種のデバイスの製造がより容易になるという利点を有する。
【0028】
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、横方向に分離されている。前記横方向の間隔は、電気的な分離をもたらす。任意に、前記半導体層の上に配置され、この半導体層と機能性境界面を形成する前記誘電体層は第1の誘電体層であり、前記デバイスは、さらに第2の誘電体層を包含し、前記第2の誘電体層は、少なくとも前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の上に配置される。前記第2の誘電体層は、少なくとも部分的に前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のエッジの上に重なることができる。前記第1の金属領域を覆う前記第2の誘電体層の部分は、前記第2の金属領域を覆う前記第2の誘電体層の部分から横方向に分離することができる。それに代えて、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の間におけるギャップが閉じられるように、前記第1の金属領域を覆う前記第2の誘電体層の部分を、前記第2の金属領域を覆う前記第2の誘電体層の部分と接続することができる。前記第2の誘電体層は、たとえば、窒化シリコンSi、酸化アルミニウムAl、または二酸化シリコンSiOとすることができる。前記第2の誘電体層の使用は、好都合なことに、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の前記電気的な分離を向上させることができ、かつ前記第1の金属領域および前記第2の金属領域をダメージから保護することもできる。
【0029】
任意に、前記デバイスはさらに、前記第1の金属領域を覆うマスキング層を包含する。前記マスキング層は、前記第1の金属領域の上に配置することができる。前記マスキング層は任意に、前記第2の金属領域も覆う。前記マスキング層は、たとえばポリシリコン、アルミニウム、酸化シリコン、窒化シリコン、または酸化アルミニウムを包含することができる。マスキング層を含むことの利点は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の保護である。前記第1の金属領域と前記第2の金属領域の両方の上に前記マスキング層を配置する場合には、前記マスキング層が、前記デバイスの製造プロセスの間および/または前記デバイスの操作の間に生じ得る機械的および電気的ダメージから前記第1の金属領域および前記第2の金属領域を保護することができる。
【0030】
前記デバイスの製造は、相補型金属酸化膜半導体製造プロセスを使用して好ましく行われる。これは、好都合なことに、前記デバイスの製造を容易にする。
【0031】
本発明のこの態様の実装においては、前記半導体層がナノワイヤを包含する。前記ナノワイヤは、ナノワイヤを画定する前記基板の選択的エッチングによって製造することができる。それに代えて、いくつかの例においては、前記ナノワイヤを成長させることができ、たとえば、カーボンナノチューブを成長させることが可能である。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれが前記ナノワイヤの1つのエッジと部分的に重なり、かつ前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれの部分が前記ナノワイヤから離れる方向に伸長するように前記ナノワイヤの対向する側に配置することができる。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれの部分は、前記ナノワイヤに対して実質的に垂直な方向に伸長することができる。このことは、好都合なことに、前記製造プロセスを容易にすることができる。
【0032】
それに代えて、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれの部分を非線形態様で延ばすことができる。各金属領域の前記運動インダクタンスは、その伸長部分に比例し、したがって、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれの前記部分を、蛇行または湾曲した曲がりくねった態様といった非線形態様で延ばすべく配置することは、前記デバイスの占有する面積をより小さくすることができるという利点を有する。別の例においては、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の前記伸長部分が、前記ナノワイヤに関してある角度をなし、前記伸長部分の個々の配置は、前記デバイスの電気的特性に影響を及ぼさない。前記ナノワイヤの上には誘電体層が配置され、前記半導体層と前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の間における電気的な分離がもたらされる。
【0033】
好ましくは、前記ナノワイヤの隅における第1および第2の量子ドットの誘導が可能となるように前記第1の金属領域および前記第2の金属領域が位置決めされる。前記二重量子ドットは、前記第1および第2の量子ドットのそれぞれを前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれの下に包含する。スプリット・ゲート・トランジスタと呼ぶことができるこの配置は、好都合なことに、その幾何形状の結果として強い電荷担体の閉じ込めをもたらし、前記電荷担体は、隅を形成する前記ナノワイヤの2辺によって2次元的に閉じ込められる。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の前記伸長部分の長さは、望ましいインダクタンスに従って選択される。この配置は、容易にそれをスケールアップすることができるというさらなる利点を有する。好ましくは、二重量子ドット・量子ビットの1次元アレイを前記ナノワイヤに沿って支持することが可能となるように前記金属領域が配置される場合に、前記金属領域の前記伸長部分を非線形または前記ナノワイヤに対して実質的に垂直にする。これは、隣接する金属領域を横方向かつ電気的に分離されたまま残すことが可能であり、あらゆるポイントにおいて接触に至らないという利点を有する。さらにまた、その種の構成は、好都合なことに、設計および製造がより容易である。
【0034】
前記デバイスをスケールアップするために、前記デバイスは任意に、前記誘電体層の上に配置される第3および第4の金属領域をさらに包含する。前記第3および第4の金属領域は、上に述べられている前記第1の金属領域および前記第2の金属領域に対応する。前記第3および第4の金属領域は、前記第3および第4の金属領域のそれぞれが前記ナノワイヤの1つのエッジと部分的に重なり、かつ前記ナノワイヤから離れる方向(好ましくは、前記ナノワイヤに対して垂直となる方向)に伸長するそれぞれの部分を含むことができるように前記ナノワイヤの対向する側に配置される。前記第3および第4の金属領域は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域から横方向に前記ナノワイヤの長手方向の軸に沿って好ましく分離される。通常、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の二重量子ドットを前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置され、また、前記第3および第4の金属領域は、第2の二重量子ドットを前記第3および第4の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。
【0035】
このようにして前記デバイスを、1つの次元においてスケーリングすることが可能である。各量子ビット・ユニット・セルが二重量子ドット・量子ビットの支持に適する2つの金属領域を包含する追加の量子ビット・ユニット・セルを、前記ナノワイヤに沿って間隔を空けて位置決めすることが可能である。前記間隔は、規則的または不規則的とすることができる。前記スケーラブルなアーキテクチャは、好都合であり、量子コンピューティングのリサーチ方向および量子ビット処理のための量子デバイスと調和する。
【0036】
任意に、前記第3および第4の金属領域のそれぞれのインダクタンスは、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれのインダクタンスより大きい。これを達成するためには、前記第3および第4の金属領域を、前記第1および第2の領域より先まで延ばすか、および/またはより狭くすることができる。それに代えて、前記第3および第4の金属領域を、前記第1および第2の領域より薄く作ることができるが、実際問題としてそれを達成することは、困難なものとなり得る。好ましくは、前記第3および第4の金属領域は前記第1の金属領域および前記第2の金属領域より先まで伸長し、同一の長さを有する。任意に、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は線形態様で前記ナノワイヤに対して実質的に垂直に伸長し、前記第3および第4の金属領域が前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の前記伸長部分を超えた領域を占有しないように前記第3および第4の金属領域が非線形態様で伸長する。このようにして前記デバイスを、よりコンパクトに有利に作ることが可能である。
【0037】
前記第1の二重量子ドットは、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域を包含し、かつ第1のLC共振器回路を形成する第1の量子ビット・ユニット・セル内の第1の量子ビットを形成する。前記第2の二重量子ドットは、前記第3および第4の金属領域を包含し、かつ第2の共振器回路を形成する第2の量子ビット・ユニット・セル内の第2の量子ビットを形成する。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域と前記第3および第4の金属領域の間のインダクタンスにおける差の効果は、前記第1および第2のLC共振器回路の前記共振周波数が異なることである。このことは、前記第1の量子ビットの前記状態と前記第2の量子ビットの前記状態を、周波数ドメインの多重化を使用して同時に測定または推定することが可能であるという利点を提供する。
【0038】
通常、前記デバイスは、さらにソース電極とドレイン電極を包含する。量子ビット・ユニット・セルの1次元アレイを包含するデバイスの場合は、前記ソースおよびドレイン電極が、それぞれ前記アレイの第1および第2の端部に好ましく配置される。たとえば、前記1次元アレイは、ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って1からnまで、連続的に配置されたn個の量子ビット・ユニット・セルを有することができる。この場合においては、前記ソース電極が、好ましく、1番目の量子ビット・ユニット・セルの最近傍に、前記ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って横方向に分離されて配置される。同様に、前記ドレイン電極は、好ましく、n番目の量子ビット・ユニット・セルの最近傍に、前記ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って横方向に分離されて配置される。このことは、単一量子ビット・ユニット・セルを包含するデバイス、すなわちn=1のデバイスについても当て嵌まるとし得る。通常、前記ソースおよびドレイン電極は、バイアス電位の印加が可能となるように電気的に接続されるべく配置される。前記ソースおよび/またはドレイン電極へのバイアス電位の印加は、前記半導体層のコンダクタンスの修正に使用することが可能である。
【0039】
本発明のこの態様の別の実装においては、前記半導体層はナノワイヤを包含し、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、前記ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って横方向に分離される。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれは、前記ナノワイヤの1つのエッジまたは両方のエッジの上に重なることができる。このことは、製造が容易であるという利点を有する。
【0040】
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、通常、前記ナノワイヤに対して実質的に垂直に伸長する。代わりに、前記第1の金属領域および/または第2の金属領域は、前記デバイスの機能に影響を及ぼすことなく任意の角度で伸長することができる。別の例においては、前記第1の金属領域および/または第2の金属領域が、銃眼模様の態様(crenelated manner)等の非線形態様で伸長することができる。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の伸長部分は、それらのインダクタンスを定義し、個々のレイアウトは、デバイスの機能に影響を及ぼすことなく設計要件に従って選択することが可能である。実際的な理由から、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の間に重なりがないようにそれらの配置を容易に行うために、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の伸長部分を実質的に垂直にすることが好都合である。
【0041】
任意に、前記第1の金属領域の主要部分は、前記ナノワイヤの、前記第2の金属領域の主要部分と同じ側に伸長する。代わりに、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の前記主要部分は、前記ナノワイヤの対向する側に伸長することができる。前記デバイスは、通常、総面積が低減されるように設計される。
【0042】
この実装においては、前記ソース電極がより前記第1の金属領域の近くに、前記ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って横方向に分離されて好ましく配置される。前記ドレイン電極は、より前記第2の金属領域の近くに、前記ナノワイヤの前記長手方向の軸に沿って横方向に分離されて好ましく配置される。
【0043】
本発明の態様のさらなる実装においては、前記誘電体層が薄い領域と厚い領域を包含する。前記誘電体層は、1つ以上の薄い領域と1つ以上の厚い領域を包含することができる。前記薄い領域および厚い領域は、前記誘電体層が厚さの一様でない連続する層となるように接続することができる。前記薄い領域内の前記誘電体層の厚さは、通常、前記厚い領域内の前記誘電体層の厚さの少なくとも半分である。前記薄い領域は、1から10ナノメートルまでの間の厚さを有することができる。前記誘電体層の前記厚い領域は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域を前記半導体層から電気的に絶縁する。前記機能性境界面は、前記半導体層と前記誘電体層の前記薄い領域の間に形成される。したがって、前記第1の金属領域および/または第2の金属領域にバイアス電位が印加されるときに前記誘電体層の前記薄い領域の下に閉じ込め領域を誘導することが可能である。このことは、前記デバイスをバルク技術において実装することが可能であるという利点を有する。
【0044】
前記第1の金属領域は、通常、前記誘電体層の薄い領域と前記誘電体層の厚い領域に上敷きされる。前記第1の金属領域にバイアスが印加されると、1つ以上の電荷担体を、前記誘電体層の前記厚い領域の下における電界効果の低減に起因して、前記誘電体層の前記厚い領域ではなく前記薄い領域の下に閉じ込めることが可能になる。前記第2の金属領域もまた、通常、前記誘電体層の薄い領域と厚い領域に上敷きされる。
【0045】
前記デバイスは、前記誘電体層の厚い領域によって取り囲まれた前記誘電体層の実質的に矩形の薄い領域を包含することができる。前記矩形の薄い領域は、通常、30から200ナノメートルまでの間で分離されるか、または好ましくは30から150ナノメートルまでの間で分離され、数マイクロメートルにわたって伸長することができる第1のエッジと第2のエッジを包含する。任意に、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれが前記矩形の薄い領域の1つのエッジと部分的に重なり、かつ前記薄い領域から離れる方向に伸長し、前記厚い領域の上に重なるそれぞれの部分を含むように、それぞれ前記矩形の薄い領域の前記第1および第2のエッジの上に配置される。通常、第1および第2の量子ドットを、それぞれ前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記誘電体層の前記矩形の薄い領域の前記エッジに誘導することが可能である。
【0046】
前記厚い領域を上敷きする前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の前記伸長する部分のレイアウトは、線形または非線形とすることが可能である。前記レイアウトは、通常、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域によって占有される面積を低減するべく配置される。前記レイアウトは、製造プロセスを容易にするべく好ましく配置される。
【0047】
前記デバイスは任意に、前記誘電体層の上に配置された前記第3および第4の金属領域をさらに包含する。前記第3および第4の金属領域は、前記第3および第4の金属領域のそれぞれが前記矩形の薄い領域の1つのエッジと部分的に重なり、かつ前記薄い領域から離れる方向に伸長するそれぞれの部分を含むように、それぞれ前記矩形の薄い領域の前記第1および第2のエッジの上に配置することができる。前記それぞれの部分は、前記厚い領域の上に重なる。前記第3および第4の金属領域は、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域から横方向に前記矩形の薄い領域の長手方向の軸に沿って好ましく分離される。
【0048】
前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の二重量子ドットを前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。前記第3および第4の金属領域は、第2の二重量子ドットを前記第3および第4の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。前記機能性境界面は、通常、前記半導体層と前記誘電体層の前記薄い領域の間に形成される。任意に、前記第3および第4の金属領域のそれぞれのインダクタンスは、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域のそれぞれのインダクタンスより大きい。
【0049】
別の例においては、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域が、前記誘電体層の前記矩形の薄い領域の前記長手方向の軸に沿って横方向に分離される。通常、第1および第2の量子ドットを、前記薄い誘電体層と前記半導体層の間の境界面において前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下に誘導することが可能であり、この境界面は、機能性境界面と呼ばれる。この例においては、前記第1および第2の量子ドットを、前記誘電体層の前記矩形の薄い領域の実質的な中心に形成することができる。
【0050】
本発明の別の態様は、上に述べられている前記量子デバイスを使用して量子ビット測定または読み出しを行うための方法を提供する。前記方法は、第1および第2のバイアス電位をそれぞれ、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域に印加して二重量子ドットを誘導するステップと、第1の状態および第2の状態を有する量子ビットを、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に形成するステップと、選択された周波数を伴う信号を前記第1の金属領域に印加するステップと、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の間にバイアス差を印加するステップと、前記第1または第2の金属領域における電力伝達を測定するステップと、を包含し、前記測定は、前記量子ビットの前記状態の測定または推定に使用される。
【0051】
この方法においては、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域が、二重量子ドットの誘導、および前記量子ビットの前記状態の測定または推定の両方に使用される。好ましくは、前記第1の金属領域が、量子ビットの測定または読み出しを行うために使用される前記LC共振器回路内の唯一のインダクタである。この二重の機能の結果として、好都合なことに、前記デバイスによって占有される面積を低減することが可能になる。いくつかの実装においては、前記第2の金属領域が、前記LC共振器回路内の追加のインダクタを備える。
【0052】
任意に、前記第1および第2のバイアス電位を同一にすることが可能であり、たとえば、単一電源を使用して印加することができる。しかしながら、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、電気的に分離された領域である。
【0053】
前記二重量子ドットは、第1の状態および第2の状態を有する量子ビットを形成する。前記量子ビットは、前記量子ビットの前記状態に依存するキャパシタンスを有する。前記量子ビットは、LC共振器回路内のキャパシタを形成し、前記第1の金属領域は、前記LC共振器回路内のインダクタを備える。前記LC共振器回路の前記共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存する。前記LC共振器回路の前記共振周波数においては、前記順方向電力伝達が最大になり、前記反射電力伝達が最小になる。
【0054】
好ましくは前記第1の金属領域に印加される前記選択された周波数が、前記LC共振器回路の共振周波数に対応する。通常、前記選択された周波数は、前記二重量子ドットの前記キャパシタンスが最大のときの前記LC共振器回路の前記共振周波数である。これは、たとえば、前記量子ビットの前記第1の状態に対応させることができる。より大きなキャパシタンスは、結果としてより低い共振周波数をもたらす。より低い周波数を有する信号の印加は、通常、結果としてそれがもたらす寄生損失がより低いという利点を有する。
【0055】
前記測定される電力伝達は、順方向電力伝達S21または反射電力伝達S11とすることができる。好ましくは、前記測定される電力伝達が前記順方向電力伝達であれば、前記方法が、前記第2の金属領域における前記順方向電力伝達の測定を包含する。好ましくは、前記測定される電力伝達が前記反射電力伝達であれば、前記方法が、前記第1の金属領域における前記反射電力伝達の測定を包含する。一例においては、前記信号の前記周波数が、前記量子ビットが前記第1の状態にあるときの前記LC共振器回路の前記共振周波数に対応する。この例においては、前記量子ビットが前記第1の状態にある場合に前記順方向電力伝達S21が高くなり、前記反射電力伝達S11が低くなる。それとは逆に、前記量子ビットが前記第2の状態にある場合には、前記順方向電力伝達が低くなり、前記反射電力伝達が高くなる。このようにして、前記第1または第2の金属領域における前記電力伝達の測定を、前記量子ビットの前記状態の測定または推定に使用することが可能である。
【0056】
ここに述べられている方法は、1つの量子ビットの測定を含む。前記デバイスが追加の量子ビットを包含する場合には、前記方法は、さらに、複数の量子ビットの前記状態を読み出すために多重化の方法を伴うことができる。複数の量子ビットを伴うデバイスにおいては、前記方法は、第1および第2のバイアス電位を、それぞれ、第1の二重量子ドットを誘導するべく前記第1の金属領域および前記第2の金属領域に印加し、第1の量子ビットを形成することと、第3および第4のバイアス電位を、それぞれ、第2の二重量子ドットを誘導するべく第3および第4の金属領域に印加し、第2の量子ビットを形成することと、を包含することができる。
【0057】
任意に、前記方法は、時間ドメインの多重化を包含する。前記方法は、第1の時間tにおいて、第1の選択された周波数を伴う信号を前記第1の金属領域に印加することを包含し得る。前記方法は、前記第1の時間より遅い第2の時間t、すなわちt>tにおいて、第2の選択された周波数を伴う信号を前記第3の金属領域に印加することを包含し得る。前記第2の選択された周波数は、前記第1の選択された周波数と同一であってもよい。前記第2および第4の金属領域のそれぞれにおける前記電力伝達の測定は、前記第1および第2の量子ビットの前記状態を推定するべく順次に行われる。時間ドメインの多重化を行う利点は、前記デバイスおよび前記技術両方のスケーラビリティである。
【0058】
任意に、時間ドメインの多重化の代替として、またはそれとの組み合わせにおいて、前記方法は周波数ドメインの多重化を包含する。周波数ドメインの多重化を行うために、前記第1の金属領域および/または第2の金属領域の前記インダクタンスは、前記第3および/または第4の金属領域の前記インダクタンスと異なる。その結果、それぞれの前記LC共振器回路の前記共振周波数が異なり、ある範囲の周波数にわたる前記電力伝達の測定を使用して、前記第1の量子ビットと前記第2の量子ビットの前記状態を同時に測定または推定することが可能になる。周波数ドメインの多重化を行う利点は、複数の量子ビットの同時読み出しに起因する処理速度の向上である。
【0059】
好ましくは前記方法が、20ケルビンより低い温度において、より好ましくは10ケルビンより低い温度において行われる。好都合なことに、極低温度においては、前記二重量子ドットの占有に対する熱励起の効果が低減される。さらにまた、前記第1の金属領域は、臨界温度Tより下において超電導となる超電導体を包含することができる。前記臨界温度は、材料に依存するが、通常は低い温度である。したがって、前記第1の金属領域の温度が極低温度であるとき、前記第1の金属領域は、通常、超電導となる。したがって好都合なことに、前記第1の金属領域は、極低温度におけるインダクタとしての使用に適する。
【0060】
本発明のさらなる態様は、上に述べられている量子デバイスを組み立てる方法を提供する。前記方法は、半導体層の上に誘電体層を配置して機能性境界面を形成するステップと、前記誘電体層の上に第1の金属領域を配置するステップと、前記誘電体層の上に前記第1の金属領域から横方向に分離して第2の金属領域を配置するステップと、を包含する。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、第1の状態と第2の状態を有する量子ビットを形成する二重量子ドットを、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域の下の前記機能性境界面に誘導することが可能となるように電気的に接続するように構成される。前記二重量子ドットは、前記LC共振器回路内のキャパシタを備え、前記二重量子ドットのキャパシタンスは、前記量子ビットの前記状態に依存する。前記第1の金属領域は、前記LC共振器回路内のインダクタを備える。前記LC共振器回路の共振周波数は、前記量子ビットの前記状態に依存し、それにより、前記量子ビットの前記状態を測定すること、または推定することが可能になる。
【0061】
好ましくは、前記第1の金属領域が、前記LC共振器回路内の唯一のインダクタを備える。量子デバイスを組み立てるこの方法は、好都合なことに、量子ビットの読み出しに適したコンパクトなデバイスを結果としてもたらす。
【0062】
任意に、前記第1の金属領域の前記配置は、前記第2の金属領域の前記配置とは異なる処理ステップにおいて行われる。この方法においては、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域を、それぞれ窒化チタンおよびポリシリコン等の異なる材料から形成することができる。
【0063】
代わりに、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域は、同一の処理ステップにおいて前記誘電体層上に配置される。このことは、製造プロセスを簡略化することが可能であるという利点を有する。この場合においては、通常、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域が同一の、窒化ニオブ等の材料またはそのほかの高い運動インダクタンスを伴う材料から作られる。
【0064】
前記方法は、さらに、前記第1の金属領域の上におけるマスキング層の配置を包含することができる。任意に、前記方法は、前記第2の金属領域の上におけるマスキング層の配置も包含する。前記第1の金属領域および前記第2の金属領域をマスキング層で覆う場合には、好都合なことに、それらがダメージから保護される。潜在的なダメージが、追加の処理ステップによって引き起こされることがあり得る。
【0065】
たとえば、前記デバイスは、通常、ソースおよびドレイン電極を含む。前記デバイスを組み立てる前記方法は、任意に、前記ソースおよびドレインのオーム接触を画定するセルフアライメント注入プロセスの実施を含む。このプロセスの間に、前記第1および第2の金属層は、それらが覆われていない限りダメージを受ける可能性がある。
【0066】
本発明の態様は、好都合なことに、前記量子ビット読み出しメカニズムが前記デバイスの前記金属領域内に埋め込まれるコンパクトなデバイス・レイアウトを提供する。前記第1の金属領域は、それを量子ドットの誘導に使用することが可能であり、かつ前記量子ビットの前記状態を推定するために使用される前記LC共振器回路内のインダクタとしてそれを使用することが可能であることから二重の機能を提供し、このことは、既存のデバイスとの比較において量子ビットの支持および読み出しに必要とされる回路のサイズの4桁に至る縮小を好都合にもたらす。量子ビットの支持および読み出しのための前記回路が占有する面積は、約100ナノメートル×10マイクロメートルとし得る。さらにまた、本発明の態様は、複数の量子ビットの処理に適したスケーラブル・デバイス・アーキテクチャへの統合に適する。
【0067】
以下、次に挙げる添付図面を参照して本発明の実施態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1A】従来技術の量子デバイスの断側面図である。
図1B】従来技術の量子デバイスの断側面図である。
図2A】量子デバイスの断側面図である。
図2B】量子デバイスの断側面図である。
図3A】量子デバイスの断側面図である。
図3B】量子デバイスの断側面図である。
図4A】量子デバイスの平面図である。
図4B】量子デバイスの平面図である。
図5】量子デバイスを組み立てる方法を図解したフローチャートである。
図6】量子デバイスの断側面図である。
図7】量子デバイスの断側面図である。
図8】量子ビットの測定または読み出しを行うための方法を図解したフローチャートである。
図9】量子デバイスを図解した回路図である。
図10A】第1のキャパシタンスについての周波数の関数として図解した電力伝達のグラフである。
図10B】第2のキャパシタンスについての周波数の関数として図解した電力伝達のグラフである。
図11A】量子デバイスの平面図である。
図11B】量子デバイスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1Aおよび1Bは、従来技術の量子デバイスの断側面図を略図的に図解している。図1Aに示されているデバイスは、例示的なナノワイヤ・トランジスタである。このナノワイヤ・トランジスタは、二酸化シリコンの層2の上に配置されたシリコン・ナノワイヤ1を包含する。二酸化シリコン層2は、シリコンの層(図示せず)をさらに包含している基板の部分を形成する。二酸化シリコンを包含する誘電体層3が、シリコン・ナノワイヤ1を覆っている。その誘電体層3を窒化チタンの層4が覆っている。窒化チタン層4の厚さは、約5ナノメートルである。ポリシリコンの層5が、窒化チタンの層4を覆っている。ポリシリコン層5は、導電性であり、シリコン・ナノワイヤ1からゲート電極6まで伸長している。ゲート電極6は、導電性のポリシリコン層5へのバイアス電位の印加に使用することが可能な電源(図示せず)に接続される。この方法においては、1つ以上の電荷担体をシリコン・ナノワイヤ1内に閉じ込め、量子ドットを形成することができる。
【0070】
図1Bに示されているデバイスは、例示的なプレーナ・トランジスタである。このプレーナ・トランジスタは、シリコン層7と、部分的にシリコン層7を覆う二酸化シリコン層8を包含する。このデバイスは、二酸化シリコン層8内のギャップ内においてシリコン層7の上に堆積された誘電体層3を包含する。この例における誘電体層3は、二酸化シリコンである。別の従来技術の例においては、二酸化シリコン層がシリコン層の上に堆積され、その二酸化シリコン層は、可変層厚である。図1Bに示されているデバイスは、図1Aに示されているものと同様に、さらに、窒化チタン層4と、ゲート電極6に接続されたポリシリコン層5を含む。窒化チタン層4は、誘電体層3を覆い、そのチタン層4をポリシリコン層5が覆う。ポリシリコン層5は、ゲート電極6へ向かって誘電体層3から離れる方向に伸長している。このデバイスを使用すると、導電性のポリシリコン層5にバイアス電位を印加したときに、誘電体層3の下(または、可変層厚の二酸化シリコン層の薄い領域の下)に1つ以上の電荷担体を閉じ込めることが可能である。1つ以上の電荷担体は、量子ドット内に閉じ込められるとし得る。
【0071】
図1Aおよび1Bにおいては、窒化チタン層4を閾値電圧エンジニアリングに使用することが可能である。閾値電圧エンジニアリングは、量子ビットの動作値を適切な値にセットすることが可能となるように閾値電圧をオフセットするために使用される技術である。代替従来技術の例においては、窒化チタン層の厚さが多様となり得るが、通常は1から10ナノメートルまでの間となる。窒化チタンは、高い運動インダクタンスを伴った材料である。窒化チタン層4のインダクタンスは、幾何形状に依存するが、既存の量子デバイスにおいては、通常、1ナノヘンリーより小さい。
【0072】
図2Aおよび2Bは、本発明の実施態様に従った量子デバイスの断側面図を略図的に図解している。
【0073】
図2Aに示されているデバイスは、厚い誘電体層202の上に配置された半導体層201を図解している。この例においては、半導体層201がシリコンを包含し、厚い誘電体層202が二酸化シリコンSiOを包含する。代替例においては、半導体層201を、GaAs、InAs、SiGe、グラフェン、カーボンナノチューブ、またはSiCといった任意の適切な半導体とすることができ、また、厚い誘電体層202は、酸化シリコン、窒化シリコン、または酸化アルミニウムといった任意の適切な電気的絶縁層とすることができる。厚い誘電体層202は、厚い誘電体層202の下の、この例においてはシリコンから作られる、さらなる支持層(図示せず)包含する基板の部分を形成する。代替例においては、厚い誘電体層が存在せず、半導体層が基板の部分を形成する。
【0074】
図2Aのシリコン層201は、図2Aに示されるとおり、紙面に入り込む方向に伸長するシリコン・ナノワイヤを包含する。薄い誘電体層203が、シリコン層201の上に配置される。薄い誘電体層203は、シリコン層201の露出側を覆い、熱成長させた二酸化シリコンSiOを包含する。金属領域204が、薄い誘電体層203の上に配置される。薄い誘電体層203は、シリコン層201と金属領域204の間に静電バリアを備える。
【0075】
金属領域204は、窒化チタンTiNを包含する。代替例においては、金属領域が、窒化ニオブまたは窒化ニオブチタンを包含することができる。TiNは、高い運動インダクタンスを伴う超電導材料である。たとえば、TiNの薄膜の運動インダクタンスは、10ナノメートルの膜厚について平方当たり200ピコヘンリーを超えることが可能である。金属領域204のインダクタンスは、その寸法に依存する。そのインダクタンスは、金属領域204の伸長部分に比例し、金属領域204の長さに反比例する。したがって、運動インダクタンスは、金属領域204の長さに対する伸長部分の比に比例する。10ナノメートルの一定の厚さを有するTiN薄膜については、等しい長さと伸長部分を有する領域のインダクタンスが200ピコヘンリーを超えることになる。TiNの運動インダクタンスが高いということは、金属領域を比較的小さくしても高いインダクタンスを伴うインダクタの提供が可能であることを意味する。この例においては、金属領域204の厚さが20ナノメートルである。インダクタンスは、厚さに反比例し、したがって別の例においては、金属領域の厚さを低減することによってインダクタンスを増加することができる。
【0076】
金属領域204の長さは、ナノワイヤの長手方向の軸に沿って測定され、この例においては22ナノメートルであるが、この断面図の中にそれを見ることは可能でない。金属領域204は、金属領域204の下の半導体層201と薄い誘電体層203の間の機能性境界面におけるナノワイヤ内に量子ドットを誘導することが可能となるように電気的に接続される。金属領域204の長さは、サイズに、したがって、量子ドットの帯電エネルギ等の特性に影響を及ぼす。インダクタンスは、金属領域204の長さに反比例する。別の例においては、金属領域の長さを増加することによって量子ドットのサイズを増加することができ、これは、より低い帯電エネルギを有する量子ドットと、低減されたインダクタンスを有する金属領域を結果としてもたらす。
【0077】
金属領域204は、ナノワイヤに対して実質的に垂直な第1の方向に伸長する。代替例において、金属領域はナノワイヤから、金属領域とナノワイヤの間に鋭角をなして伸長する。金属領域204は、ゲート電極206と接触するまで伸長する。金属領域204の伸長部分は、第1の方向に沿って測定したときのゲート電極206とシリコン層201の間の隔たりdである。インダクタンスは、ゲート電極206からシリコン層201まで電流が通る長さによって定義され、金属領域204のインダクタンスは、その伸長部分に比例する。したがって、この例において50ナノヘンリーのインダクタンスを達成するためには、金属領域204の伸長部分を約10.6マイクロメートルにする。別の例においては、インダクタンスを増加するべく金属領域の伸長部分を増加することができる。
【0078】
それに代えて、金属領域204を非線形態様で延ばすことができる。たとえば、厚い誘電体層202の表面にわたって金属領域204を蛇行させることができる。その結果、この例における金属領域204の最遠点が、その金属領域の伸長部分がdであるにもかかわらず、dより短くなる。このことは、よりコンパクトなデバイスのアーキテクチャの設計に使用することが可能である。
【0079】
図2Bに示されているデバイスは、図2Aに示されているデバイスと同じ構造的特徴を有する。しかしながら、図2Bにおいては、半導体層201がガリウムヒ素GaAsを包含し、薄い誘電体層203が熱成長させた酸化物を包含する。支持層(図示せず)はGaAsを包含し、厚い誘電体層202は、二酸化シリコン、窒化シリコン、または酸化アルミニウムを包含する。それに加えて、図2Bのデバイスは、さらにマスキング層205を包含する。マスキング層205は、金属領域204を覆う。この例においては、マスキング層205がポリシリコンを包含する。代わりに、マスキング層が、たとえばアルミニウムを包含することができる。マスキング層205は、金属層204に対するダメージの防止に使用される。図2Bに示されているマスキング層205は、金属層204とゲート電極206の間に位置決めされる。マスキング層205は導電性であり、その結果、金属層204がゲート電極206と電気的に接続される。
【0080】
図3Aおよび3Bは、本発明の実施態様に従った量子デバイスの断側面図を略図的に図解している。図3Aにおけるデバイス基板は、ヒ化インジウムInAsを包含する半導体層307を包含する。代替例においては、相補型金属酸化膜半導体製造プロセスと互換性のある任意の半導体材料を使用することができる。厚い誘電体層308が半導体層307を部分的に覆っている。これは、半導体層307の上に厚い誘電体層308を、ギャップが残るように選択的に堆積させることによって達成することが可能である。代わりに、第1の処理ステップにおいて厚い誘電体層308を堆積させて半導体層307を完全に覆い、第2の処理ステップにおいて、厚い誘電体層308の部分を除去してギャップを形成することができる。厚い誘電体層308は、この例において酸化アルミニウムAlを包含する。代替例においては、厚い誘電体層が二酸化シリコンまたは窒化シリコンを包含する。
【0081】
酸化アルミニウムを包含する薄い誘電体層303が、半導体層307の上に配置される。別の例においては、薄い誘電体層が、二酸化ハフニウムまたはほかの高い比誘電率を伴う任意の材料を包含する。この例における薄い誘電体層303および厚い誘電体層308は、別々の処理ステップにおいて堆積される。それに代えて、化学的または物理的プロセスを使用して厚い誘電体層308の部分の選択的に除去し、薄い誘電体層303の領域を形成することによって薄い誘電体層303を形成することもできる。
【0082】
図2Aおよび2Bと同様に、薄い誘電体層303の上に金属領域304が配置される。図3Aおよび3Bにおいては、金属領域304が窒化ニオブNbNを包含する。NbNは、高い運動インダクタンスを伴う材料である。代替例においては、金属領域304が、窒化チタンまたは窒化ニオブチタンを包含することができる。金属領域304は、厚い誘電体層308に沿って伸長し、ゲート電極306との電気的接触に至る。図3Aおよび3Bにおいては、ゲート電極306に対するバイアス電位の印加により、量子ドットを金属領域304の下の半導体層307と薄い誘電体層303の間の機能性境界面に誘導することが可能である。
【0083】
図3Bに示されているデバイスは、図3Aに示されているデバイスと同じ構造的特徴を有し、マスキング層305をさらに含む。マスキング層305は、アルミニウムを包含し、金属領域304の上に配置される。別の例においては、マスキング層が、ポリシリコン等の任意の導電性材料を包含する。図3Bにおいては、半導体層307が二層膜グラフェンを包含する。厚い誘電体層308は、半導体層307上に選択的に堆積された二酸化アルミニウムを包含する。薄い誘電体層303は、厚い誘電体層308の堆積に続いて堆積されるか、または成長させた酸化グラフェンを包含する。半導体層307は、シリコン基板等の基板上に支持されている。代替例においては、薄い誘電体層が、化学蒸着堆積(CVD)等の適切な技術を使用して堆積させることができる酸化アルミニウムまたは酸化シリコンを包含する。
【0084】
図4Aおよび4Bは、本発明の実施態様に従った量子デバイスの平面図を略図的に図解している。これらのデバイスは、それぞれ、ナノワイヤ401と電気的に接続されるソース電極416およびドレイン電極426を包含するトランジスタを包含する。この例においては、ナノワイヤがシリコンを包含する。代替例においては、ナノワイヤがガリウムヒ素、単層または多層カーボンナノチューブ、シリコンゲルマニウム、ヒ化インジウム、グラフェン、または炭化シリコンを包含する。ソースおよびドレイン電極416、426は、電圧源と電気的に接続される。ソースとドレイン電極416、426の間へのバイアス差の印加を使用して、シリコン・ナノワイヤ401の電気的特性を修正することが可能である。ナノワイヤ401は、高ドープ領域404と無ドープ領域405を含む。
【0085】
さらにデバイスは、それぞれ、第1の金属領域414と、第1の金属領域414から横方向に分離された第2の金属領域424を包含する。ナノワイヤ401の無ドープ領域405は、第1および第2の金属領域414、424の下に伸長し、ナノワイヤ401のエッジまで至る。ナノワイヤ401は、薄い誘電体層(図示せず)によって第1および第2の金属領域414、424から電気的に分離されている。第1の金属領域は、LC共振器回路内の第1のインダクタを備え、第2の金属領域は、LC共振器回路内の第2のインダクタを備える。第1および第2の金属領域は、LC共振器回路内の唯一のインダクタを備える。追加のオンチップまたはオフチップのインダクタは存在しない。第1および第2の金属領域414、424は、少なくとも第1および第2の金属層414、424とナノワイヤ401の間に位置決めされた薄い誘電体層(図示せず)によってナノワイヤ401から電気的に分離されている。代替例において、薄い誘電体層がナノワイヤの主要部分を覆うことができるか、または第1および第2の金属層の下にだけ配置されるとすることができる。この例における薄い誘電体層は、熱成長させた自然酸化物である。
【0086】
第1および第2の金属領域414、424は、外部電圧源に接続されるそれぞれのゲート電極(図示せず)と電気的に接続される。電圧源は、二重量子ドットを第1および第2の金属領域414、424の下の機能性境界面に誘導することが可能となるように第1および第2の金属領域414、424に電圧を印加するべく使用することが可能である。機能性境界面は、デバイスの幾何形状およびデバイス内の層の電気的特性によって画定される。この例においては、ナノワイヤが、シリコンを包含するさらなる支持層によって支持される厚い誘電体層の上に重なって提供される。機能性境界面は、ナノワイヤの外側表面と、ナノワイヤの上に重なる薄い誘電体層の間である。ナノワイヤの下の厚い誘電体層は、ナノワイヤから離れる電界効果を低減する。機能性境界面に誘導された二重量子ドットは、2つの状態を有する量子ビットを形成し、量子ビットの状態に従って変化する可変キャパシタンスを有する。二重量子ドットは、量子ビットの状態の測定または推定に使用することが可能なデバイスのLC共振器回路内のキャパシタを備える。
【0087】
図4Aにおいては、第1および第2の金属領域414、424がナノワイヤ401の長手方向の軸に沿って分離されている。代替例においては、ナノワイヤ401が、半導体特性について選択された、成長させたカーボンナノチューブに置き換えられる。第1および第2の金属領域414、424の間の隔たりSggは、通常、10から100ナノメートルまでの間である。隔たりSggは、バイアス電位の印加時に第1および第2の金属領域414、424の下に形成される第1および第2の量子ドットの明確な区別が可能となる充分な大きさに構成される。他方において隔たりSggは、第1および第2の量子ドットをトンネル結合して二重量子ドット・量子ビットを形成することが可能になる充分な小ささで構成される。
【0088】
第1および第2の金属領域414、424のそれぞれは、長さLと伸長部分dを有する。通常、第1の金属領域の長さおよび伸長部分は、第2の金属領域のそれと同じである。しかしながら、これは、要件ではなく、金属領域の寸法は、望ましいデバイスのパフォーマンス特性に従って選択することが可能である。第1および第2の金属領域414、424のインダクタンスは、伸長部分に比例し、長さに反比例する。単位長当たりの運動インダクタンスLは、次式によって決定される。

これにおいてμは、真空の透磁率であり、λは、磁場侵入長であり、Lおよびtは、金属領域の長さおよび厚さである。通常、長さLは、7から100ナノメートルまでの間であり、伸長部分dは、1から100ナノメートルまでの間である。第1および第2の金属領域の厚さtは、通常、1から20ナノメートルまでの間である。より厚い金属領域は、より低い平方当たりのインダクタンスを有し、したがって、より大きな面積を占有する。しかしながら、より薄い金属領域の製造は、製造の困難に起因して歩留まりが低くなる場合がある。一例においては、金属領域はTiNを包含し、長さが40ナノメートルで厚さが10ナノメートルである。この例においては、インダクタンスは、金属領域が伸長するミクロン当たり5ナノヘンリーである。
【0089】
図4Aにおいては、第1および第2の金属領域414、424が、ナノワイヤ401の両方のエッジの上に重ねられて位置決めされる。第1および第2の金属領域414、424に対するバイアス電位の印加は、第1および第2の金属領域の下のナノワイヤ401内に第1および第2の量子ドットをそれぞれ誘導することが可能である。第1および第2の量子ドットのそれぞれは、ナノワイヤのエッジから離れた、実質的にその中心に位置決めされる。第1および第2の量子ドットのそれぞれにおける電荷担体の閉じ込めは、ナノワイヤ401の狭い幅w、それぞれの金属領域の長さL、およびナノワイヤ401と薄い誘電体層(図示せず)の間の機能性境界面を使用して達成される。ナノワイヤ401の幅wは、通常、30から140ナノメートルの間である。好ましくは、wが100ナノメートルより小さい。この例においては、シリコン・ナノワイヤ401の幅wが約60ナノメートルである。ナノワイヤがより狭いほど、閉じ込めがより強くなる。ナノワイヤの適切な幅は、電荷担体の有効質量等の、デバイスに使用される半導体の特性に依存する。
【0090】
代替例においては、第1および第2の金属領域が、ナノワイヤの1つのエッジの上にだけ重ねられて位置決めされ、第1および第2の金属領域のそれぞれは、ナノワイヤの同じエッジの上に重なる。第1および第2の金属領域は、ナノワイヤの長手方向の軸に沿って横方向に分離される。この代替例においては、電荷担体の閉じ込めが、ナノワイヤの隅と金属領域の長さLを使用して達成される。ナノワイヤの幅wは、この代替例においては無関係であり、数マイクロメートル以上にすることが可能である。
【0091】
図4Bにおいては、第1および第2の金属領域414、424がナノワイヤ401の対向する側に位置決めされる。第1および第2の金属領域414、424のそれぞれは、ナノワイヤ401の1つのエッジと部分的に重なる。第1および第2の金属領域414、424は、ナノワイヤ401の幅に沿って間隔Svvだけ分離される。隔たりSvvは、通常、10から100ナノメートルまでの間である。間隔Svvは、バイアス電位の印加時に第1および第2の金属領域414、424の下に形成される第1および第2の量子ドットの明確な区別が可能となる充分な大きさに構成される。他方において、間隔Svvは、第1および第2の量子ドットをトンネル結合して二重量子ドット・量子ビットを形成することが可能になる充分な小ささで構成される。
【0092】
デバイスのキャパシタンスは、デバイスの幾何形状および量子ビットの状態に依存する。総キャパシタンスは、二重量子ドット・量子ビット、幾何学的キャパシタンス、および寄生キャパシタンスから生じる不定のキャパシタンスからなる。LC共振器回路の共振周波数は、キャパシタンスに依存する。
【0093】
二重量子ドット・量子ビットは、第1のキャパシタンスを伴う第1の状態と第2のキャパシタンスを伴う第2の状態を有する。第1および第2のキャパシタンス値は異なる。この例においては、電子のスピン配向が量子ビットの第1の状態において反平行であり、量子ビットの第2の状態において平行である。第1の状態においては、第1および第2の量子ドットの間のトンネリングが可能である。第2の状態においては、スピンブロッケードに起因してトンネリングが抑圧される。したがって、第1のキャパシタンスは、第2のキャパシタンスより遙かに大きい。第1のキャパシタンスは、フェムトファラッドの範囲内となり得るが、量子ビットの特性に依存することになる。
【0094】
幾何学的キャパシタンスは、次式を使用して見積もることが可能である。

これにおいてεdieは、薄い誘電体層の比誘電率であり、Lおよびtは、それぞれ金属領域の長さおよび厚さであり、Svvは、ナノワイヤの長手方向の軸に対して垂直な方向における第1および第2の金属領域の間の間隔である。例示的な値、L=50ナノメートル、t=10ナノメートル、およびSvv=10ナノメートルを使用すると、二酸化シリコンの薄い誘電体層を使用するデバイスについての幾何学的キャパシタンスは、約2アトファラドになる。これは、第1のキャパシタンスより遙かに小さい。
【0095】
寄生キャパシタンスは、任意の金属領域と電気的グラウンド状態の間において生じ得る。しかしながら、通常、寄生キャパシタンスは小さく、たとえば、約0.1乃至0.2フェムトファラッドである。寄生キャパシタンスの値は、通常、製造者によって示され、量子ビット測定パラメータを最適化する計算に組み込むことが可能である。キャパシタンスにおける変化は、LC共振器回路の共振周波数への影響を有し、したがって、測定を行うときには考慮に入れる必要がある。
【0096】
別の例においては、デバイスが、第1および第2の金属層を覆い、かつ任意で第1および第2の金属層の間のギャップを完全に、または部分的に占有する追加の誘電体層を包含する。この追加の誘電体層は、窒化シリコンSiから作ることができ、近隣の金属領域の間の電気的な分離の確保、および電気的および/または物理的ダメージに対する保護の提供に使用される。この追加の誘電体層は、任意の電気的絶縁材料から作ることもできる。
【0097】
さらなる例においては、第1の金属領域414がTiNを包含し、第2の金属領域424がポリシリコンを包含する。この例においては、第1の金属領域414がLC共振器内のインダクタを備える。しかしながら、第2の金属領域424は、インダクタンスに寄与しない。
【0098】
図5は、本発明の実施態様に従った量子デバイスを組み立てる方法を図解している。ステップ501において、半導体層の上に誘電体層が配置されて機能性境界面が形成される。誘電体層は、電気的絶縁層を備える。一例においては、半導体層がシリコンを包含し、誘電体層が二酸化シリコンまたは比誘電率の高い二酸化ハフニウム等の材料を包含する。別の例においては、半導体層が、ガリウムヒ素、ヒ化インジウム、シリコンゲルマニウム、グラフェン、カーボンナノチューブ、または炭化シリコンのうちの任意の1つを包含し、誘電体層が、熱成長させた酸化物または原子層堆積を使用して堆積させた高k誘電体材料を包含する。1つの例においては、半導体層が、30から140ナノメートルまでの間の幅を伴うナノワイヤである。別の例においては、半導体層が平坦なプラトー領域であり、誘電体層が薄い領域と厚い領域を包含する。薄い領域の幅は、30から140ナノメートルまでの間である。
【0099】
ステップ502においては、第1の金属領域が誘電体層の上に配置される。ステップ503においては、第1の金属領域から横方向に分離されて第2の金属領域が誘電体層の上に配置される。横方向の間隔は、通常、10から100ナノメートルまでの間である。第1および第2の金属領域は、第1および第2の金属領域の下の機能性境界面にそれぞれ第1および第2の閉じ込め領域を誘導することが可能となるように電気的に接続するべく配置される。第1および第2の閉じ込め領域は、結合されて第1の状態および第2の状態を有する量子ビットを形成する。量子ビットは、可変キャパシタンスを有し、量子ビット状態の測定または推定に使用することが可能なLC共振器回路内のキャパシタを備える。
【0100】
第1および第2の金属領域は、窒化チタン、窒化ニオブ、または窒化ニオブチタン等の高い運動インダクタンスを伴う材料を包含する。第1および第2の金属領域は、LC共振器回路内の第1および第2のインダクタを備える。代替例においては、第1の金属領域だけがLC共振器回路内のインダクタを備える。LC共振器回路は、インダクタンスの値と量子ビットの可変キャパシタンスに依存する第1および第2の共振周波数を有する。
【0101】
第1および第2の金属領域の寸法は、それらのインダクタンスに影響する。第1および第2の金属領域の長さは、通常、7から100ナノメートルまでの間である。長さは、第1および第2の閉じ込め領域のサイズおよびインダクタンスに影響し、より長い第1および第2の金属領域は、結果としてより大きな第1および第2の閉じ込め領域とより低いインダクタンスをもたらすことになる。第1および第2の金属領域は、通常、閉じ込め領域から離れる方向に、第1および第2の金属領域の望ましいインダクタンスに応じて1乃至100マイクロメートルで伸長する。より大きなインダクタンスが必要とされる場合には、より先まで伸長するべく第1および第2の金属領域が設計される。
【0102】
表1は、窒化チタン(TiN)、窒化ニオブ(NbN)、および窒化ニオブチタン(NbTiN)についての平方当たりの運動インダクタンスの値を示している。運動インダクタンスの値は、表1に与えられている厚さについて実験的に決定され、材料の運動インダクタンスの比較を厚さとは独立して提供するべく正規化されている。臨界温度Tもまた、これら3つの材料について与えられている。TiNについての実験的な値は、Shearrow(シーアロウ)ほか著「Applied Physics Letters(アプライド・フィジクス・レターズ)」:第113巻、212601(2018年)に掲載された。NbNについての実験的な値は、Hayashi(ハヤシ)ほか著「Journal of Physics(ジャーナル・オブ・フィジクス)」:Conference Series(カンファレンス・シリーズ)、第507巻、042015(2014年)に掲載された。NbTiNについての実験的な値は、Samkharadze(サムクハラズ)ほか著「Physical Review Applied(フィジカル・レビュー・アプライド)」:第5巻、044004(2016年)に掲載された。
【0103】
【0104】
ここで、運動インダクタンスの高い任意の材料がこの中で述べられているデバイスの第1および/または第2の金属層としての使用に適することに注意を要する。いくつかの超電導体は高い運動インダクタンスを有している。通常、無秩序超電導体は、より高い平方当たりの運動インダクタンスを有する。さらにまた、より低い臨界温度を伴う超電導体は、通常、より高い運動インダクタンスを有する。
【0105】
インダクタンスに及ぶ第1および第2の金属領域の寸法の効果は、次の表2に与えられている値を使用して知ることが可能である。表2は、窒化チタンを使用して50ナノヘンリーのインダクタンスを達成するに必要とされる第1および第2の金属領域のそれぞれの厚さt、長さL、および伸長部分dの例示的な値を示している。
【0106】
【0107】
第1および第2の金属領域の配置に続いて、別の例示的な組み立て方法は、第1および第2の金属層を覆うマスキング層を配置するステップをさらに含む。マスキング層は、ポリシリコンまたはアルミニウム等の導電性材料を包含する。このデバイスの製造プロセスは、デバイスのソースおよびドレイン電極を画定するセルフアライメント注入プロセスを伴うことができる。その場合において、マスキング層は、下にある金属領域を保護する。
【0108】
本発明の実施態様に従った量子デバイスは、業界標準の相補型金属酸化膜半導体製造プロセスを使用して製造することが可能である。
【0109】
図6は、本発明の実施態様に従った量子デバイスの断側面図の図解である。図6においては、デバイスがシリコンを包含する基板600を含んでいる。このデバイスは、基板600から突出してフィン型電界効果トランジスタFinFETを形成するシリコン・フィン601を包含する。この例においては、シリコン基板600がエッチングされ、基板の残りの部分から突出するフィン601が形成される。
【0110】
二酸化シリコンを包含する薄い誘電体層603がフィン601の上に配置される。第1および第2の金属領域614、624が配置され、フィン601の2つのエッジの上に重ねられる。第1および第2の金属領域614、624は、デバイス内のLC共振器内の第1および第2のインダクタを備える。第1および第2の金属領域614、624は、それぞれ、第1および第2のゲート電極616、626へ向かって伸長する。
【0111】
薄い誘電体層603とフィン601の間に機能性境界面が形成される。薄い誘電体層603は、基板600およびフィン601を覆うが、第1および/または第2の金属領域614、624にバイアスが印加されたときにフィン601の幾何形状がフィン601の電界効果を強化する。その結果として、第1の量子ドット610を、第1の金属領域614の下のシリコン・フィン601と薄い誘電体層603の間の機能性境界面におけるフィン601の隅に支持することが可能になる。同様に、第2の量子ドット620を、第2の金属領域624の下の機能性境界面におけるフィン601の隅に支持することが可能である。第1および第2の量子ドット610、620は、トンネル結合されて二重量子ドットを形成することが可能である。二重量子ドットは、2つの量子状態を有する量子ビットを形成し、デバイスのLC共振器回路内のキャパシタを備える。第1および第2の量子ドット610、620は、それぞれ、第1および第2の金属領域614、624に対するバイアス電位の印加によって誘導することが可能である。
【0112】
極低温度においては、第1および第2の量子ドット610、620のそれぞれを、第1および/または第2の金属領域614、624への適切なバイアス電位の印加に応答する単一電子の閉じ込めに使用することが可能である。ある特定の条件の下においては、量子ドット610、620の間を電子が前後にトンネリングすることが可能である。しかしながら、別の特定の条件の下においては、スピンブロッケードに起因してトンネリングが抑圧される。したがって、二重量子ドットは、トンネリングが量子力学的に抑圧されない場合に高いキャパシタンスを伴う可変キャパシタとして振る舞う。この例における二重量子ドットの最大キャパシタンスは、1から10フェムトファラッドまでの間である。デバイスのキャパシタンスは、量子ビットの状態をはじめ、デバイスの幾何形状および材料特性に依存する。したがって、LC共振器回路の共振周波数もまた量子ビットの状態に依存する。量子ビットの状態とLC共振器回路の共振周波数の間における関係は、周波数依存電力伝達の測定を通じて量子ビットの状態を推定するために使用することが可能である。
【0113】
図7は、本発明の実施態様に従った量子デバイスの断側面図の図解である。図7においては、デバイスがシリコンを包含する基板700を含んでいる。非一様な厚さを有する誘電体層702、703が、基板700の上敷きされる。誘電体層702、703は、薄い領域703と厚い領域702を包含する。この例においては、誘電体層702、703が、二酸化シリコンを包含する連続した領域である。
【0114】
誘電体層の薄い領域703は、実質的に矩形のエリアを占有する。その矩形のエリアは、第1のエッジおよび第2のエッジを有する。デバイスは、第1のエッジにおいて誘電体層の薄い領域703の部分と厚い領域702の部分の上に重なる第1の金属領域714を包含する。またデバイスは、第2のエッジにおいて誘電体層の薄い領域および厚い領域702、703の部分の上に重なる第2の金属領域724を包含する。第1および第2の金属領域714、724は、この例においてはNbTiNを包含する。代替例においては、第1および第2の金属領域がTiNまたはNbNを包含する。第1および/または第2の金属領域にバイアスが印加されたときには、より薄い誘電体層の部分における電界効果がより強くなる。その結果として、第1および第2の金属領域714、724の下の薄い誘電体層703と半導体層700の間に機能性境界面が形成される。第1および第2の量子ドット710、720を、それぞれ、第1および第2の金属領域714、724の下の機能性境界面に誘導することが可能である。
【0115】
別の例においては、断面で示されたときのデバイスが、2つの薄い領域と3つの厚い領域を包含する。薄い領域は、デバイスの異なる領域内において互いに接続することができ、厚い領域もまた、ほかの場所で互いに接続することができる。この例においては、第1の金属領域が第1の厚い領域と第1の薄い領域の上、さらに任意として第2の厚い領域の部分に上敷きされる。第2の金属領域は、第2の薄い領域と第3の厚い領域の上、さらに任意として第2の厚い領域の部分に上敷きされる。第1および第2の金属領域は、それにもかかわらず、電気的かつ物理的に分離されている。
【0116】
図7に示されているデバイスは、二重量子ドットを包含する単一量子ビットを図解している。このデバイスは、量子ビットのアレイを支持するべくスケーリングすることができる。さらなる金属領域を、少なくとも誘電体層の薄い領域内において誘電体層の上に重ねて配置することができる。たとえば、第3および第4の金属領域を、第1および第2の金属領域から横方向に分離させて誘電体層の薄い領域の上に重ねて配置することができる。
【0117】
さらなる修正においては、誘電体層の薄い領域を任意の形状にすることが可能である。通常、それぞれの誘電体層の薄い領域の形状は、2つの平行なエッジを包含する。しかしながら、これらのエッジの間の間隔は、誘電体層の薄い領域の長さに沿って変化させることができる。また薄い領域は、量子ビットの2次元アレイを支持するべく非線形とすることもできる。
【0118】
図8は、本発明の実施態様に従った量子ビットの測定または読み出しを行うための方法を図解している。この方法は、この中に述べられている本発明の実施態様に従ったデバイスのいずれに対しても行うことが可能である。デバイスは、次に詳説する方法のステップを実行する前に、極低温度に冷却される。この例においては、デバイスが4.2ケルビンより低く冷却される。しかしながら、代替例においては、動作温度、すなわち方法の実行が可能な温度が異なることがある。
【0119】
動作温度は、第1の金属領域のために使用する材料に依存する。第1の金属領域が、LC共振器内のインダクタを提供するのに必要な高い運動インダクタンスの特性を呈するためには、第1の金属領域が、臨界温度Tより低い温度まで冷却されなければならない。たとえば、見積もられる窒化チタンの臨界温度は、2ケルビンより低く、見積もられる窒化ニオブの臨界温度は、13乃至15ケルビンであり、見積もられる窒化ニオブチタンの臨界温度は、9ケルビンである。
【0120】
動作温度は、量子ドットのサイズにも依存する。量子ドット内に電荷担体を閉じ込めるためには、熱エネルギが量子ドットの帯電エネルギより遙かに低くなければならない。より大きな量子ドットは、より小さい帯電エネルギを有することになり、その結果として、電荷担体を閉じ込めるために動作温度をより低くする必要がある。
【0121】
ステップ801においては、第1のバイアス電位が第1の金属領域に対して印加され、第2のバイアス電位が第2の金属領域に対して印加される。第1および第2の金属領域は、たとえば図4Aに示されているとおりに直列に、またはたとえば図4Bに示されているとおりに並列に配置されていることがある。第1および第2のバイアス電位は、第1の量子ドットを第1の金属領域の下の半導体層と薄い誘電体層の間の機能性境界面に誘導し、第2の量子ドットを第2の金属領域の下の機能性境界面に誘導するような値になる。この例における第1および第2のバイアス電位は、実質的に同じであり、約0.5ボルトである。第1および第2のバイアス電位の適切な値は、デバイスの幾何形状に依存することになる。
【0122】
極低温度においては、第1および第2のバイアス電位の大きさを、第1および第2の量子ドットのそれぞれに単一電子、またはいくつかの電子を閉じ込めるべく選択することが可能である。この例においては、単一電子が量子ドットのそれぞれに閉じ込められる。
【0123】
第1および第2の量子ドットは、二重量子ドットを形成するようにトンネル結合される。特定の条件の下においては、第1の量子ドットから第2の量子ドットへ、また第2の量子ドットから第1の量子ドットへ単一電子をトンネリングさせることが可能である。2つの量子ドットの間において単一電子がトンネリングするときの二重量子ドットのキャパシタンスは、比較的大きい。
【0124】
二重量子ドットは、第1および第2の量子ドット内の相対的な電子スピン状態によって定義される2つの量子状態を有する量子ビットを形成する。この例においては、電子スピンが反平行であるとき、量子ビットが第1の状態にあり、電子スピンが平行であるときは、量子ビットが第2の状態にある。第2の状態においては、スピンブロッケードに起因してトンネリングが抑圧されることから、第1の量子ビット状態のキャパシタンスの方が第2の量子ビット状態のそれより大きい。
【0125】
ステップ802においては、電源を使用して高周波信号が第1の金属領域に対して印加される。この高周波信号の周波数は、二重量子ドットと第1および第2の金属領域を包含するLC共振器回路の共振周波数に対応する。LC共振器回路の共振周波数は、二重量子ドットのキャパシタンスに依存する。二重量子ドットのキャパシタンスは、上に述べられているとおり、量子ビットの状態に依存する。
【0126】
この例においては、高周波信号の周波数が、量子ビットが第1の状態にあるときのLC共振器回路の共振周波数に対応する。より大きなキャパシタンスは、より低い共振周波数に対応する。より低い周波数信号の印加は、より少ない寄生損失を結果としてもたらす。
【0127】
ステップ802においては、高周波励起の振幅が、量子ドットの間のトンネル結合電圧Vinよりそれが小さくなるように選択される。したがって、第1および第2の量子ドットの間における電子のトンネリングはない。トンネル結合電圧は、次式によって決定される。

これにおいて、eは、電子の電荷であり、αは、ゲートレバーアームであり、Δは、トンネル結合エネルギであり、Qは、LC共振器の品質係数である。ゲートレバーアームは、第1の金属領域の、第1および第2の量子ドットに対するそれぞれのゲート・キャパシタンスと各量子ドットの総キャパシタンスの比の間の差として定義される。一例において、α=0.5、Δ=10μeV、およびQ=1000であるとき、トンネル結合電圧Vin=10 nVがもたらされる。
【0128】
ステップ803においては、第1および第2の金属領域の間にバイアス差が印加される。そのバイアス差は、ステップ801において印加される第1および第2のバイアス電位と比較すると小さい。バイアス差は、トンネル結合電圧より大きい。通常、バイアス差は、数ミリボルトである。バイアス差は、選択されるバイアス差が第1および第2の金属領域の間に存在し、かつ高周波信号が第1の金属領域に印加されているときに、量子ビットが第1の状態にあれば、第1および第2の量子ドットの間を電子が前後にトンネリングすることになり、その結果として高いキャパシタンス状態となるように選択される。それに代わり、量子ビットが第2の状態にある場合には、トンネリングが大きく抑圧されることになり、結果として低いキャパシタンス状態がもたらされる。
【0129】
ステップ804においては、第1または第2の金属領域に接続されたプローブを使用してLC共振器回路を通る電力伝達が測定される。量子ビットが第1の状態にあれば、共振周波数が高周波信号の周波数と整合し、電力伝達が高くなる。量子ビットが第2の状態にあれば、電力伝達が低くなる。第1の金属領域に接続されたプローブを使用して反射電力伝達S11を測定することが可能である。それに代えて、第2の金属領域に接続されたプローブを使用して順方向電力伝達S21を測定することが可能である。
【0130】
この例においては、電力伝達の測定がベクトルネットワークアナライザを使用して行われる。代替例においては、高周波電圧源と電力センサを使用して電力伝達を測定することが可能である。電力センサは、たとえば、ダイオードとすることができる。
【0131】
代替例においては、ステップ802における高周波信号が量子ビットの第2の状態の共振周波数に対応する。この例においては、量子ビットが第1の状態にある場合に、回路の共振周波数が高周波信号の周波数と整合しないことになり、電力伝達が低くなる。量子ビットが第2の状態にあれば、電力伝達が高くなる。
【0132】
図9は、本発明の実施態様に従った量子デバイスを表した回路図である。デバイスは、破線のエリアAの中に表されている。第1の金属領域は、LC共振器回路内の第1のインダクタンスを伴う第1のインダクタL1を備える。第2の金属領域は、LC共振器回路内の第2のインダクタンスを伴う第2のインダクタL2を備える。第1および第2のインダクタL1、L2は、LC共振器回路内の第1のキャパシタC1を備える二重量子ドットと直列である。ここでは、二重量子ドットのキャパシタンスが量子ビットの状態に従って変化することに注意を要する。
【0133】
回路図内には、オフチップ検出エレクトロニクスもまた図解されている。回路の動作周波数を調整する追加の構成要素を使用して回路を操作することが可能である。第2および第3のキャパシタC2、C3は、オフチップ検出エレクトロニクスの寄生キャパシタンスを表す。第2および第3のキャパシタC2、C3は、総寄生キャパシタンスを表し、この例においては、そのキャパシタンスが、第2および第3のキャパシタC2、C3のそれぞれについて約200フェムトファラッドである。代替例においては、第2のキャパシタC2のキャパシタンスと第3のキャパシタC3のキャパシタンスが異なるとすることができる。
【0134】
第4および第5のキャパシタC4、C5は、デカップリング・キャパシタを表す。この例においては、第4および第5のキャパシタC4、C5のキャパシタンスのそれぞれが約0.25ピコファラドである。これらのデカップリング・キャパシタは、デバイスへの最大電力伝達を可能にし、そのことが、量子ビット状態の測定のための最大感度を提供する。第4および第5のキャパシタC4、C5は、共振において回路を通る最大電力伝達の調整に使用することが可能である。
【0135】
さらに回路は、デバイスが量子ビット動作ポイントとなるように第1および第2の金属領域のDCバイアスをオフセットするべく使用することが可能な第1および第2のバイアス・ティー(図示せず)を含むことができる。バイアス・ティーのそれぞれは、抵抗がより大きな1メガオームを超える抵抗器を包含することができ、デカップリング・キャパシタとデバイスの間に位置決めすることができる。
【0136】
図9に図解されている回路の共振周波数は、第1および第2のインダクタと、第1、第2、第3、第4、および第5のキャパシタに依存する。最大電力伝達は、回路の共振周波数において生じる。図10Aおよび10Bは、順方向電力伝達S21を、第1のキャパシタンスの2つの値についての周波数の関数として図解している。回路の応答がシミュレートされている。
【0137】
図10Aは、第1のキャパシタンスが10フェムトファラッドのときの順方向電力伝達を図解している。これらの入力値を使用すると、回路の共振周波数は約5.15ギガヘルツであることが期待される。第1のキャパシタンスの第2の値、すなわち5フェムトファラッドのときには、図10Bに示されているとおり、回路の共振周波数は約7.20ギガヘルツであることが期待される。
【0138】
図11Aおよび11Bは、本発明の実施態様に従った量子デバイスの平面図を略図的に図解している。これらのデバイスは、それぞれ、外部電源と電気的に接続されるソース電極1002およびドレイン電極1003を包含する。これらのデバイスは、複数の量子ビット状態を読み出すために必要となる高周波源および検出器の数を減ずるべく高周波マルチプレクサを包含することができる。
【0139】
図示されているデバイスのアーキテクチャは、1つのナノワイヤ1001と、複数の量子ビット・ユニット・セル1021~1024、1041~1043を図解している。図11Aおよび11Bは、高ドープ領域1004および無ドープ領域1005を略図的に示す。図11Aは、4つの量子ビット・ユニット・セル1021~1024を図解し、図11Bは、3つの量子ビット・ユニット・セル1041~1043を図解する。参考のために述べるが、図4Bおよび図6は、単一の量子ビット・ユニット・セルを伴う類似のデバイスを図解する。
【0140】
図11Aにおいては、ナノワイヤがシリコンゲルマニウム(SiGe)ナノワイヤである。代替例においては、ナノワイヤがヒ化インジウム(InAs)ナノワイヤである。各量子ビット・ユニット・セル1021~1024は、SiGeナノワイヤ1001の対向する側に位置決めされた2つの金属領域1011~1018を包含する。ナノワイヤ1001の無ドープ領域1005は、金属領域1011~1018の下においてナノワイヤ1001の両エッジまで伸長し、金属領域1011~1018は、薄い誘電体層(図示せず)によってナノワイヤ1001から電気的に分離される。第1の量子ビット・ユニット・セル1021は、第1および第2の金属領域1011、1012を包含する。第2の量子ビット・ユニット・セル1022は、第3および第4の金属領域1013、1014を包含する。第3の量子ビット・ユニット・セル1023は、第5および第6の金属領域1015、1016を包含する。第4の量子ビット・ユニット・セル1024は、第7および第8の金属領域1017、1018を包含する。代替例においては、デバイスがさらなる量子ビット・ユニット・セル、またはより少ない量子ビット・ユニット・セルを包含する。ソースとドレイン電極1002、1003の間の間隔は、量子ビット・ユニット・セルの数に従って修正することが可能である。各金属領域1011~1018は、ゲート電極(図示せず)と電気的に接続される。金属領域1011~1018は、デバイス内の唯一のインダクタを備える。外部インダクタは存在しない。
【0141】
この例においては、量子ビット・ユニット・セルのそれぞれが、実質的に同じ幾何学的特性を有し、その結果として類似する電子特性を有する。たとえば、金属領域1011~1018のそれぞれは、実質的に同じ長さであり、その結果として実質的に同一のインダクタンスを有する。したがって、量子ビット・ユニット・セル1021~1024のそれぞれの共振周波数が類似することになる。各量子ビットの状態は、第1の量子ビット・ユニット・セル1021内の量子ビット、第2の量子ビット・ユニット・セル1022内の量子ビット、第3の量子ビット・ユニット・セル1023内の量子ビット、および第4の量子ビット・ユニット・セル1024内の量子ビットの測定を順次行うことによって測定または推定することができる。
【0142】
さらにまた、各ペアの金属領域(すなわち、第1および第2の金属領域1011、1012、第3および第4の金属領域1013、1014、第5および第6の金属領域1015、1016、第7および第8の金属領域1017、1018)の間における間隔は実質的に同じである。このことは、各量子ビット・ユニット・セル1021~1024内に誘導することが可能な二重量子ドット・量子ビットが、デバイスの不完全性から結果として招かれる変動を計算に組み入れた範囲で類似する電子特性を有するということになる。デバイスの不完全性は、たとえば、材料の瑕疵または処理の不規則性から生じることがある。
【0143】
量子ビット・ユニット・セル1021~1024は、ナノワイヤ1001の長手方向の軸に沿って分離される。第3および第4の金属領域は、ナノワイヤの長手方向の軸に沿って第1および第2の金属領域から横方向に分離される。それぞれの隣接する金属領域の間における横方向の間隔は、重なりが存在しないようなものとする。この例においては、量子ビット・ユニット・セルの間における間隔は実質的に同じである。たとえば、第1の量子ビット・ユニット・セル1021内の第1の金属領域1011および第2の量子ビット・ユニット・セル1022内の第3の金属領域1013の間における間隔は、10から100ナノメートルまでの間である。
【0144】
代替例においては、隣接する量子ビット・ユニット・セルの間における間隔は異なってもよい。たとえば、第1と第3の金属領域1011、1013の間における間隔を、第3と第5の金属領域1013、1015の間における間隔より大きくすることができる。しかしながら、ナノワイヤに沿った金属領域の配置は、実質的に対称であり、したがって、第1と第3の金属領域1011、1013の間における間隔は、第2と第4の金属領域1012、1014の間における間隔と、製造許容誤差を許容した範囲で同一である。
【0145】
図11Bにおいては、ナノワイヤ1001がシリコンを包含する。第1の量子ビット・ユニット・セル1041が第1および第2の金属領域1031、1032を包含し、第2の量子ビット・ユニット・セル1042が第3および第4の金属領域1033、1034を包含し、第3の量子ビット・ユニット・セル1043が第5および第6の金属領域1035、1036を包含する。代替例においては、デバイスがさらなる量子ビット・ユニット・セル、またはより少ない量子ビット・ユニット・セルを包含する。各金属領域1031~1036は、ゲート電極(図示せず)と電気的に接続される。金属領域1031~1036は、このデバイスのLC共振器回路内の唯一のインダクタである。ナノワイヤ1001の無ドープ領域1005は、金属領域1031~1036の下においてナノワイヤ1001の両エッジまで伸長し、金属領域1031~1036は、薄い誘電体層(図示せず)によってナノワイヤ1001から電気的に分離される。
【0146】
この例においても、図11Aに関して説明したように、各量子ビット・ユニット・セル1041~1043内の金属領域のペアの間における間隔は実質的に同じであり、ナノワイヤの両方のエッジに沿って隣接する金属領域の間における間隔は実質的に同じである。しかしながら、図11Bに示されたデバイスにおいては、各量子ビット・ユニット・セル1041~1043は、金属領域1031~1036の伸長部分の相違に起因して異なる共振周波数を有する。この例においては、各ペアの金属領域が、実質的に同じ距離だけ伸長している。このことは、製造プロセスを容易にし、データ抽出を簡略化することができる。この例においては、第1および第2の金属領域1031、1032の伸長部分がもっとも短い。第3および第4の金属領域1033、1034は、第1および第2の金属領域1031、1032よりわずかに先まで伸長する。第5および第6の金属領域1035、1036は、もっとも先まで伸長する。したがって、第1および第2の金属領域1031、1032のそれぞれのインダクタンスが第3および第4の金属領域1033、1034のそれぞれのインダクタンスより小さく、第5および第6の金属領域1035、1036のそれぞれのインダクタンスがもっとも大きい。
【0147】
代替例においては、第2、第4、および第6の金属領域1032、1034、1036が、実質的に同じ量で伸長し、第1、第3、および第5の金属領域1031、1033、1035だけが異なる伸長部分を有するとすることができる。この配置においては、各量子ビット・ユニット・セルの総インダクタンスがさらに修正される。
【0148】
さらなる例においては、第1、第3、および第5の金属領域1031、1033、1035だけがそれぞれの量子ビット・ユニット・セル1041、1042、1043内の唯一のインダクタを備える。第2、第4、および第6の金属領域1032、1034、1036は、ポリシリコンを包含し、任意のサイズとすることができ、これらのサイズは、LC共振器回路のインダクタンスに影響を与えない。これにおいても、第1、第3、および第5の金属領域1031、1033、1035が異なる距離で伸長し、LC共振器回路の間のインダクタンスにおける多様性をもたらすことが可能である。
【0149】
第1、第2、および第3の量子ビット・ユニット・セル1041~1043の異なるインダクタンス、したがって、異なる共振周波数に起因して、各量子ビットの状態を、周波数ドメインの多重化を使用して測定または推定することができる。
【0150】
図8は、単一量子ビット・ユニット・セルを伴うデバイスのための量子ビットの測定または読み出しを行う方法を記述している。複数の量子ビット・ユニット・セルを伴うデバイスについては、各量子ビット・ユニット・セル内の量子ビットの状態の測定または推定に時間ドメインおよび/または周波数ドメインの多重化を採用することが可能である。
【0151】
たとえば、時間ドメインの多重化の方法を、図11Aに示されているデバイス内の量子ビットのそれぞれの状態の測定に使用することができる。この例においては、高周波信号が第1の金属領域に印加され、その後に続いて第1の量子ビット・ユニット・セル内の量子ビットの状態が第2の金属領域において測定されるか、または推定される。その後、高周波信号が第3の金属領域に印加され、第2の量子ビット・ユニット・セル内の量子ビットの状態が第4の金属領域において測定されるか、または推定される。
【0152】
図11Bに示されているデバイスについては、周波数ドメインの多重化の方法を、量子ビットのそれぞれの状態の測定に使用することができる。この例においては、量子ビットのそれぞれの状態を同時に測定または推定することが可能である。
【0153】
代替例においては、時間および周波数ドメインの多重化の方法の組み合わせを採用することができる。たとえば、デバイスは、同じ寸法を伴ういくつかの量子ビット・ユニット・セルと異なる寸法を伴ういくつかの量子ビット・ユニット・セルを包含することができる。使用されるデバイスおよび方法の特定の実装は、望ましいデバイwスの特性および幾何形状等の何らかの実際的制限に依存することになる。たとえば、20個の量子ビット・ユニット・セルを伴うデバイスについて言えば、もっとも小さい金属領域のインダクタンスが望ましい値より下になる可能性があり、また、もっとも大きい金属領域のサイズが結果として大きな寄生キャパシタンスをもたらす可能性および/または結果として幾何学的制約をもたらす可能性があることから、異なる20の伸長部分を有することは適切でないと見られる。
【0154】
上記の内容から分かるように、量子ビットの測定または読み出しを行うためのLC共振器回路を有する量子デバイスが、当該デバイスを使用した量子ビットの測定または読み出しを行うための方法および当該デバイスを組み立てる方法とともに開示されている。デバイス内のLC共振器回路は、キャパシタとインダクタを包含する。インダクタは、高い運動インダクタンスを伴う材料を包含する金属領域によって提供される。金属領域は、1つ以上の電子の閉じ込めに使用することが可能な量子ドットを誘導することにも適している。2つの状態を有する量子ビットを形成する二重量子ドットを、2つの近隣の金属領域を使用して誘導することが可能である。LC共振器回路内のキャパシタは、量子ビットの状態に依存して変化するキャパシタンスを有する二重量子ドット・量子ビットによって提供される。LC共振器回路の共振周波数は、そのキャパシタンスに依存する。LC共振器回路を通る電力伝達は、周波数依存であり、かつ回路の共振周波数において最大になる。量子ビットの状態は、キャパシタンスに影響を及ぼし、またそれが、共振周波数に影響を及ぼす。したがって、回路の共振周波数における電力伝達の測定を、量子ビットの状態を推定するために使用することが可能である。第1の金属領域の二重機能、すなわち量子ドットの誘導およびLC共振器内のインダクタの提供は、第1の金属領域を形成する高い運動インダクタンスを伴う材料の使用とともに、結果として量子ビット読み出しケイパビリティを伴うコンパクトなデバイスをもたらす。
【符号の説明】
【0155】
1 シリコン・ナノワイヤ
2 二酸化シリコン層
3 誘電体層
4 窒化チタン層
5 ポリシリコン層
6 ゲート電極
7 シリコン層
8 二酸化シリコン層
201 半導体層、シリコン層
202 厚い誘電体層
203 薄い誘電体層
204 金属領域、金属層
205 マスキング層
206 ゲート電極
303 薄い誘電体層
304 金属領域
305 マスキング層
306 ゲート電極
307 半導体層
308 厚い誘電体層
401 ナノワイヤ
404 高ドープ領域
405 無ドープ領域
414 第1の金属領域、金属層
416 ソース電極
424 第2の金属領域、金属層
426 ドレイン電極
600 基板
601 シリコン・フィン、フィン
603 薄い誘電体層
610 第1の量子ドット
620 第2の量子ドット
614、624 第1および第2の金属領域
616、626 第1および第2のゲート電極
700 基板、半導体層
702 厚い領域(誘電体層)
703 薄い領域(誘電体層)
710 第1の量子ドット
714 第1の金属領域
720 第2の量子ドット
724 第2の金属領域
1001 ナノワイヤ、SiGeナノワイヤ
1002 ソース電極
1003 ドレイン電極
1004 高ドープ領域
1005 無ドープ領域
1011~1018 金属領域
1021~1024 量子ビット・ユニット・セル
1031~1036 金属領域
1041~1043 量子ビット・ユニット・セル
C1 第1のキャパシタ
C2 第2のキャパシタ
C3 第3のキャパシタ
C4 第4のキャパシタ
C5 第5のキャパシタ
L1 第1のインダクタ
L2 第2のインダクタ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
【国際調査報告】