(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】NKp46に対する抗体とその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240226BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240226BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240226BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240226BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240226BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240226BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240226BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240226BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240226BHJP
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A61P 35/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240226BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240226BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240226BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20240226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240226BHJP
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A61K 47/02 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240226BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240226BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240226BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240226BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C07K14/725
C07K14/705
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
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A61K51/10 200
A61K49/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
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A61P37/06
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A61K39/395 T
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/68
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A61K48/00
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61P37/04
G01N33/53 Y
G01N33/53 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553738
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 CN2022079236
(87)【国際公開番号】W WO2022184162
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110243601.5
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523172132
【氏名又は名称】上海齊魯制藥研究中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI QILU PHARMACEUTICAL RESEARCH AND DEVELOPMENT CENTRE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 柳青
(72)【発明者】
【氏名】顧 津明
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
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4H045AA10
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4H045DA83
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
NKp46受容体に対する抗体又はその抗原結合断片、前記抗体又はその抗原結合断片を含む誘導物、医薬組成物及びそれらのがん治療における関連応用を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:44~133配列で示されるCDRから選ばれる3つのCDRを含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83、86、89、92、95、98、101、104、107、110、113、116、119、122、125、128、131からなる群から選ばれるHCDR1;及び、SEQ ID NO: 45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132からなる群から選ばれるHCDR2;及び、SEQ ID NO: 46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、103、106、109、112、115、118、121、124、127、130、133からなる群から選ばれるHCDR3を含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45及びSEQ ID NO:46;或いは、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48及びSEQ ID NO:49;或いは、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51及びSEQ ID NO:52;或いは、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54及びSEQ ID NO:55;或いは、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57及びSEQ ID NO:58;或いは、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60及びSEQ ID NO:61;或いは、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63及びSEQ ID NO:64;或いは、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66及びSEQ ID NO:67;或いは、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69及びSEQ ID NO:70;或いは、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72及びSEQ ID NO:73;或いは、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75及びSEQ ID NO:76;或いは、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78及びSEQ ID NO:79;或いは、SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:81及びSEQ ID NO:82;或いは、SEQ ID NO:83、SEQ ID NO:84及びSEQ ID NO:85;或いは、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87及びSEQ ID NO:88;或いは、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:90及びSEQ ID NO:91;或いは、SEQ ID NO:92、SEQ ID NO:93及びSEQ ID NO:94;或いは、SEQ ID NO:95、SEQ ID NO:96及びSEQ ID NO:97;或いは、SEQ ID NO:98、SEQ ID NO:99及びSEQ ID NO:100;或いは、SEQ ID NO:101、SEQ ID NO:102及びSEQ ID NO:103;或いは、SEQ ID NO:104、SEQ ID NO:105及びSEQ ID NO:106;或いは、SEQ ID NO:107、SEQ ID NO:108及びSEQ ID NO:109;或いは、SEQ ID NO:110、SEQ ID NO:111及びSEQ ID NO:112;或いは、SEQ ID NO:113、SEQ ID NO:114及びSEQ ID NO:115;或いは、SEQ ID NO:116、SEQ ID NO:117及びSEQ ID NO:118;或いは、SEQ ID NO:119、SEQ ID NO:120及びSEQ ID NO:121;或いは、SEQ ID NO:122、SEQ ID NO:123及びSEQ ID NO:124;或いは、SEQ ID NO:125、SEQ ID NO:126及びSEQ ID NO:127;或いは、SEQ ID NO:128、SEQ ID NO:129及びSEQ ID NO:130;或いは、SEQ ID NO:131、SEQ ID NO:132及びSEQ ID NO:133から選ばれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、SEQ ID NO:14~43、136~152で示される重鎖可変領域に由来し、好ましくは、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 14~43、136~152で示される配列と少なくとも80%~100%の配列同一性を有する、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体は、組換え抗体であり、好ましくは、アルパカ由来抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体であり、より好ましくは、前記抗体がナノボディであり、さらに好ましくは、前記抗体は、ヒト化ラクダ科VHHである、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
さらに重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域は、Fc又は変異体Fcを含み、Fcは、マウス又はヒトに由来し、及び/又は、
前記抗NKp46抗体又はその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4形態である、
前記の請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片と捕捉マーカー又は検出マーカーとをカップリングして形成されるコンジュゲートであって、前記検出マーカーが放射性核種、発光物質、着色物質又は酵素を含むコンジュゲート。
【請求項7】
抗原結合ドメインの1つが、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、二重特異性抗体又は多重特異性抗体。
【請求項8】
前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含み、抗体、リンカー及び毒物を互いに接続させることで形成される、抗体-薬物複合体。
【請求項9】
キメラ抗原受容体であって、その細胞外認識ユニットが、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、或いは、前記核酸を含む組換えベクター、或いは、前記組換えベクターを含む宿主細胞又は前記核酸がゲノムに組み込まれている宿主細胞。
【請求項11】
適切な条件で請求項10に記載の宿主細胞を培養こと、及び前記細胞から発現産物を精製することを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を調製する方法。
【請求項12】
NKp46を発現する細胞を特異的に標的とする薬物の調製における、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用、又は、NKp46を特異的に発現する疾患の治療、予防又は検出における前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用であって、好ましくは、前記細胞がNK細胞である、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項13】
がん、感染症、炎症性又は自己免疫性疾患の薬物の調製における、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用、又は、がん、感染症、炎症性又は自己免疫性疾患の治療における、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用であって、好ましくは、前記がんは、白血病、侵襲性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経膠腫、子宮頸がん、頭頸部がん、直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、胃がん等を含む、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項14】
NKp46を発現する診断試薬の調製における、前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項15】
前記請求項のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片と緩衝液を含む、抗NKp46抗体含有溶液製剤。
【請求項16】
細胞を含む生体から生体サンプルを取得すること、前記細胞を請求項1~5に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片と接触させること、及び、抗体が細胞に結合するかどうかを評価することを含む、生体におけるNKp46発現細胞の存在を同定する方法。
【請求項17】
有効量の前記の請求項1~5のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含み、或いは、有効量の請求項6に記載のコンジュゲートを含み、或いは、有効量の請求項7に記載の二重特異性抗体又は多重特異性抗体を含み、或いは、有効量の請求項8に記載の抗体-薬物複合体を含み、或いは、有効量の請求項9に記載のキメラ抗原受容体を含み、或いは、有効量の請求項10に記載の核酸、組換えベクター又は宿主細胞を含み、
好ましくは、薬学的に許容可能な担体をさらに含み、
より好ましくは、1種又は複数種の他の追加の治療剤をさらに含み、好ましくは、前記1種又は複数種の他の追加の治療剤は、化学治療剤、細胞毒性剤、放射性療法剤、がんワクチン、腫瘍減量剤、標的抗癌剤、抗血管新生剤、生物学的応答修飾剤、サイトカイン、ホルモン、抗転移剤及び免疫治療剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫学分野に属し、具体的に、本開示は、NKp46受容体に対する抗体又はその抗原結合断片、前記抗体又はその抗原結合断片を含む誘導物、医薬組成物及びそのがん治療における関連応用に関する。
【背景技術】
【0002】
NK細胞は、先天性免疫系におけるエフェクターリンパ球に属し、ウイルス感染を抵抗し、並びに腫瘍の発生を防止する身体の防御の最前線である。獲得免疫系における細胞毒性T細胞と類似する役割を果たすが、それらの相違点は次のとおりである。即ち、通常の場合、細胞毒性T細胞は、サイトカインの放出を引き起こし、さらに標的細胞の溶解又はアポトーシスを引き起こすためにウイルス細胞の表面にあるMHCを検出する必要がある。一方、NK細胞は、抗体やMHCがない場合でも、これらの細胞を認識して迅速な免疫応答を実行することができる。自身のマーカーを失ったMHCクラスI細胞に対して、NK細胞は、活性化せずに殺傷することができ、これらの細胞は、通常、有害であるが、他の免疫細胞に認識され破壊されることはできない。
【0003】
NK細胞は、表面の活性化受容体と抑制性受容体とのバランスにより、NK細胞の活性を調節する。NK細胞表面の活性化受容体は、ヒト白血球抗原-I(human leukocyte antigen-I、HLA-I)系分子関連受容体及び非関連受容体に分けられ、前者には、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、2つのIgドメイン、及び短い細胞質尾部(killer cell immunogloblin-like receptor,2 domains short,KIR2DS)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3つのIgドメイン、及び短い細胞質尾部(killer cell immunogloblin-like receptor、3 domains short、KIR3DS)及びナチュラルキラー群2C(natural killer cell group 2C、CD94/NKG2C)が含まれ、後者には主としてナチュラルキラー群2D(natural killer cell group 2D,NKG2D)、天然細胞毒性受容体(natural cytotoxicity receptors、NCRであり、NKp46、NKp30、NKp44を含む)及びDNAXアクセサリー分子1(DNAX accessory molecule-1、DNAM-1)があり、対応する阻害性受容体は、KIR2DL、KIR3DL、及び、CD94/NKG2Aなどである。
【0004】
Sivoriらは、1997年、NKp46受容体を発見し、当該受容体は、最も早く発見された天然細胞毒性受容体であり、最も重要な天然細胞毒性受容体でもあり、すべてのNK細胞(成熟、未熟、休止及び活性化NK細胞を含む)の表面に発現され、自然殺戮において重要な役割を果たす。NK細胞の表面に特異的に発現され、分子量が46kDであるため、NKp46と名付けられた。NKp46遺伝子は、19番染色体に位置し、I型膜貫通型糖タンパク質であり、NKp46の細胞外領域には、D1及びD2という2つのIg様ドメインが含まれ、D2(細胞膜に近い領域)は腫瘍やウイルス感染細胞のリガンドに結合する領域である。膜貫通領域には、1つの正に荷電したアルギニンと、1つの免疫受容体のチロシンベース活性化配列の欠如する細胞質尾部があり、CD3ζ及びFcγR膜貫通領域にあるアスパラギン酸残基と塩橋を形成することができ、後者は、受容体結合を介してチロシンをリン酸化し、NKp46シグナル伝達を媒介する。これまで同定されているNKp46のリガンドは、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン及びパラインフルエンザウイルスのヘマグルチニンしかなく、細胞のリガンドはまだ知られていない。
【0005】
NK細胞が標的細胞を殺傷する場合、有毒な顆粒が漿膜表面に到達し、そして、細胞膜と融合し、顆粒内容物の放出を引き起こし、最終的に標的細胞の死をもたらす。脱顆粒の発生に伴い、CD107a分子が細胞膜の表面に輸送され、CD107a分子の発現アップレギュレーションは、パーフォリンの分泌と一致する。したがって、CD107a分子の発現が陽性であるNK細胞は、殺傷活性を有するNK細胞を表すことができる。
【0006】
NKp46の抗腫瘍における役割について、活性化されたNK細胞は、腫瘍細胞を殺傷する強力な効果があり、NKp46受容体が活性化刺激を伝達するために必要な組成である。NKp46の発現の低下は、子宮頸がん及びその前駆病変の免疫回避に関与していることが知られ、NKp46/NCR1発現の喪失は、リンパ腫の増殖を増加させる。Yasserらは、すべてのMM細胞株を殺傷するためにNKp46が必要であることを実証した。また、NKp46は、中枢神経系におけるミクログリアの除去にも重要な役割を果たし、Lunemannらは、脳に浸潤したNK細胞がNKp46、NKG2Dを介して認識され、活性化されたNK細胞がミクログリアとシナプス結合を形成し、ミクログリアのパーフォリンが細胞界面に極性化して殺傷の役割を果たすことを実証した。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、ヒト及びカニクイザルのNKp46に特異的に結合する抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、SEQ ID NO:44~133配列で示されるCDRから選ばれる3つのCDRを含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、SEQ ID NO:44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83、86、89、92、95、98、101、104、107、110、113、116、119、122、125、128、131から選ばれるHCDR1、及び、SEQ ID NO: 45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132から選ばれるHCDR2;及び、SEQ ID NO:46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、103、106、109、112、115、118、121、124、127、130、133から選ばれるHCDR3を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、重鎖可変領域を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45及びSEQ ID NO:46;又は、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48及びSEQ ID NO:49;又は、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51及びSEQ ID NO:52;又は、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54及びSEQ ID NO:55;又は、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57及びSEQ ID NO:58;又は、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60及びSEQ ID NO:61;又は、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63及びSEQ ID NO:64;又は、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66及びSEQ ID NO:67;又は、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69及びSEQ ID NO:70;又は、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72及びSEQ ID NO:73;又は、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75及びSEQ ID NO:76;又は、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78及びSEQ ID NO:79;又は、SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:81及びSEQ ID NO:82;又は、SEQ ID NO:83、SEQ ID NO:84及びSEQ ID NO:85;又は、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87及びSEQ ID NO:88;又は、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:90及びSEQ ID NO:91;又は、SEQ ID NO:92、SEQ ID NO:93及びSEQ ID NO:94;又は、SEQ ID NO:95、SEQ ID NO:96及びSEQ ID NO:97;又は、SEQ ID NO:98、SEQ ID NO:99及びSEQ ID NO:100;又は、SEQ ID NO:101、SEQ ID NO:102及びSEQ ID NO:103;又は、SEQ ID NO:104、SEQ ID NO:105及びSEQ ID NO:106;又は、SEQ ID NO:107、SEQ ID NO:108及びSEQ ID NO:109;又は、SEQ ID NO:110、SEQ ID NO:111及びSEQ ID NO:112;又は、SEQ ID NO:113、SEQ ID NO:114及びSEQ ID NO:115;又は、SEQ ID NO:116、SEQ ID NO:117及びSEQ ID NO:118;又は、SEQ ID NO:119、SEQ ID NO:120及びSEQ ID NO:121;又は、SEQ ID NO:122、SEQ ID NO:123及びSEQ ID NO:124;又は、SEQ ID NO:125、SEQ ID NO:126及びSEQ ID NO:127;又は、SEQ ID NO:128、SEQ ID NO:129及びSEQ ID NO:130;又は、SEQ ID NO:131、SEQ ID NO:132及びSEQ ID NO:133からなる群から選ばれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、SEQ ID NO:14~43、136~152で示される重鎖可変領域に由来する、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【0012】
いくつかの実施形態において、重鎖可変領域を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:14~43、136~152で示される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記モノクローナル抗体は、組換え抗体であり、好ましくは、アルパカ抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、前記抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記モノクローナル抗体は、ナノボディであり、好ましくは、ヒト化ラクダ科VHHである、本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、前記重鎖定常領域がFc又は変異体Fcを含み、Fcがラット又はヒトに由来する、本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4形態である、本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片が捕捉マーカー又は検出マーカーにカップリングして形成される、本開示に係るコンジュゲートであって、前記検出マーカーが、放射性核種、発光物質、着色物質又は酵素を含む、コンジュゲートを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインの1つが、前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、二重特異性抗体を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインの1つが、前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、多重特異性抗体を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含み、抗体、リンカー及び毒物を互いに接続させることで形成される、抗体-薬物複合体を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体であって、その細胞外認識ユニットが、前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、キメラ抗原受容体を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態において、本開示に係る核酸の組換えベクターを提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示に係る組換えベクターを含む宿主細胞又は本開示に係る核酸がゲノムに組み込まれている宿主細胞を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、適切な条件で本開示に係る宿主細胞を培養こと、及び、前記細胞から発現産物を精製することを含む、本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の方法。
【0026】
いくつかの実施形態において、NKp46を発現する細胞を特異的に標的とする薬物の調製における本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用であって、好ましくは細胞がNK細胞である、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、がん、感染症、或いは、炎症性又は自己免疫性疾患の薬物の調製における本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用であって、好ましくは、前記腫瘍は、白血病、侵襲性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経膠腫、子宮頸がん、頭頸部がん、直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、胃がん等を含む、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、NKp46を発現するNKの診断試薬の調製における、本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片の使用を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片及び緩衝液を含む、抗NKp46抗体含有溶液製剤を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、細胞を含む生体から生体サンプルを取得すること、前記細胞を本開示に係る抗NKp46抗体又はその抗原結合断片に接触させること、及び、前記抗体が前記細胞に結合するかどうかを評価することを含む、生体におけるNKp46発現細胞の存在を検測する方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、有効量の前記のいずれか1項に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含み、或いは、有効量の二重特異性抗体を含み、或いは、有効量の多重特異性抗体を含み、或いは、有効量の抗体-薬物複合体を含み、或いは、有効量のキメラ抗原受容体を含み、或いは、有効量の核酸を含み、或いは、有効量の組換えベクターを含み、或いは、有効量の宿主細胞を含む、薬物組成物を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体をさらに含む、本開示に係る医薬組成物を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態において、1種又は複数種の他の追加の治療剤をさらに含み、好ましくは、前記1種又は複数種の他の追加の治療剤は、化学治療剤、細胞毒性剤、放射性療法剤、がんワクチン、腫瘍減量剤、標的抗癌剤、抗血管新生剤、生物学的応答修飾剤、サイトカイン、ホルモン、抗転移剤及び免疫治療剤を含む、本開示に係る医薬組成物を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態において、容器及び容器に収容された本開示に係る医薬組成物を含む、カートリッジ又はキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面は、本明細書に開示の新特徴をさらに説明する。これらの図面を参照すると、本明細書に開示された特性及び利点がよりよく理解されるが、これらの図面は、本明細書に開示された原理の具体的な実施形態のみを説明するために使用され、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0036】
【
図1】フローサイトメトリー検出による抗NKp46陽性コントロール抗体により実証されたCHOK1細胞におけるヒトNKp46の発現状況を示し、図面における実線は、プラスミドのトランスフェクトされていないCHOK1親細胞におけるヒトNKp46の発現状況を示し、図面における点線は、CHOK1親細胞にヒトNKp46プラスミドをトランスフェクトした後、ヒトNKp46タンパク質の過剰発現状況を示す。
【
図2】フローサイトメトリー検出による抗NKp46陽性コントロール抗体により検証されたCHOK1細胞におけるカニクイザルNKp46の発現状況を示し、図面における実線は、プラスミドのトランスフェクトされていないCHOK1親細胞におけるカニクイザルNKp46の発現状況を示し、図面における点線は、CHOK1親細胞にカニクイザルNKp46プラスミドをトランスフェクトした後、カニクイザルNKp46タンパク質の過剰発現状況を示す。
【
図3-6】本開示に係る抗NKp46キメラ抗体のNKp46発現細胞(ヒトNKp46-CHOK1)への結合状況を示す。
【
図7-10】本開示に係る抗NKp46キメラ抗体のNKp46発現細胞(カニクイザルNKp46-CHOK1)への結合状況を示す。
【
図11-12】本開示に係る抗NKp46キメラ抗体によるインビトロでのNK細胞活性化の結果を示す。
【
図13-16】本開示に係る抗NKp46ヒト化抗体のNKp46発現細胞(ヒトNKp46-CHOK1)への結合状況を示す。
【
図17-20】本開示に係る抗NKp46ヒト化抗体のNKp46発現細胞(カニクイザルNKp46-CHOK1)への結合状況を示す。
【
図21-24】本開示に係る抗NKp46ヒト化抗体によるインビトロでのNK細胞活性化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<用語>
本明細書に記載されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、各々の刊行物、特許又は特許出願が特定にかつ個別に引用により本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、引用により本明細書に組み込まれる。
【0038】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、解決手段及び試薬に限定されるものではなく、これらが変化することができることを理解すべきである。また、本明細書において使用される用語は、発明を実施するための実施形態を説明するためだけであり、本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解すべきである。別途定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、いずれも当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0039】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、数値範囲を含み、かつ本発明のいくつかの態様は、範囲形式で記載することができる。他の説明がない限り、数値範囲又は範囲で記載される形式は、単に便宜性及び簡潔性のためであることを理解すべきであり、本発明の範囲を厳密に限定するものと見なすべきではない。従って、範囲形式の記載は、本明細書にすでに明示されているとおり、取りうる全ての部分範囲と該範囲内で取りうる全ての特定の数値が具体的に開示するものと考えるべきである。例えば、1~6の範囲の表記について、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、及び、このような範囲における特定の数値点、例えば1、2、3、4、5、6などが具体的に開示されていると考えるべきである。上記原則は、いずれも同様に適用される。範囲を用いて記載する場合、該範囲は、範囲の端点を含む。
【0040】
量、時間的持続時間などの測定可能な値を指す場合、「約」という用語は、指定された値の±20%、又は場合によっては±10%、又は場合によっては±5%、又は場合によっては±1%、又は場合によっては±0.1%を含む変化を意味する。
【0041】
本明細書において使用されるアミノ酸の3文字記号及び1文字記号は、J.Biol.Chem、243、p3558(1968)に記載されている。
【0042】
従来型イムノグロブリンは、2つの重鎖及び2つの軽鎖から構成されるヘテロ四量体であり、合わせた分子量は約150kDaである。ラクダ科(Camelidae)のメンバーにおいて、血清抗体の相当な割合が分子量約80kDのホモ二量体IgGである(Hamers-Casterman C.ら,1993, Nature,363:446-448)。これらの重鎖イムノグロブリン(Ig)は3つのドメインを含有し、その可変領域はVHH(variable domain of heavy chain of heavy-chain antibody)と呼ばれる。組換えVHH(サイズ12~14kD程度)は、インタクトな抗原結合ドメインを構成し、広範な抗原結合レパートリを示す。その超可変領域は拡張しており、特有の特徴(例えば、3~4の疎水性フレームワーク残基(これは従来型抗体においてはVLと相互作用する)の、より親水性のアミノ酸での置換)を示す。拡がったCDRを安定させるため、VHHは、標準的なジスルフィド結合に加え、ヒトコブラクダのCDR1とCDR3との間、ラマのCDR2とCDR3との間に余分のジスルフィド結合を有し得る(Harmsen,M.M.and De Haard H.J., 2007,Appl Microbiol Biotechnol.,77:13-22;Muyldermans S.,2001,J Biotechnol.,74:277-302)。拡張CDR3ループは凸面状立体構造を採用することができる。一方、従来型パラトープは凹面状又は平面状構造に限られている(Muyldermans S.,2001,J Biotechnol.,74:277-302)。これら特徴により、VHHは、従来型抗体には免疫原性が乏しい独特なエピトープを認識することが可能である(Lafaye P.ら,2009,Mol Immuno.,46:695-704;Wernery U., 2001,J Vet Med B Infect Dis Vet Public Health.,48:561-568)。VHHは、定義によれば、単価抗体(本来、アビディティ効果は排除される)であるが、インビトロでIC50として測定される生物学的活性は、通常の二価抗体分子に類似することもある(Thys B.ら,2010,Antiviral Research.,87:257-264)
【0043】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に相同な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団に含まれる個々の抗体(微量に存在する可能性のある天然の変異を除く)は同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して高い特異性を持っている。さらに、(通常、抗原における異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む)従来のポリクローナル抗体製剤と異なり、各モノクローナル抗体は抗原における単一の決定基又はエピトープのみを対象とする。
【0044】
いくつかの態様において、本開示は、ラクダ科/ヒトのキメラ抗体、特に、VH及び/又はVLドメインの全体がラクダ科配列(例えば、ラマ又はアルパカ)であり、残部が完全にヒト配列からなるキメラ抗体に関する。さらに、いくつかの好ましい態様において、本開示は、VH及び/又はVLドメインが、能動免疫により得られるラクダ科VH及び/又はVLドメインと比較して、フレームワーク領域において1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含む、「ヒト化」又は「生殖細胞系列化」ラクダ科抗体及びラクダ科/ヒトのキメラ抗体に関する。ヒト生殖細胞系列VH又はVLドメインに対する配列同一性パーセントは、そのような「ヒト化」プロセス、即ち、元のラクダ科VH又はVLドメイン中に存在するミスマッチアミノ酸残基の、ヒト生殖細胞系列VH又はVLドメイン中の対応する残基による置換、によって高められる。
【0045】
本開示は、天然、組換えVHH又はVHを含む。
【0046】
「組換え」は、遺伝子工学的方法(クローニング、増幅)を採用して前記VHH又はVHを生成することに関する。
【0047】
本開示に係るVHHによれば、単量体の形態又はホモ多量体の形態は、例えば、ホモ二量体又はホモ三量体でありうる。
【0048】
本開示に係る抗体は、アルパカ由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、好ましくは、ヒト化抗体を含む。
【0049】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、アルパカ由来抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域(又はFc領域)との融合によって形成される抗体であり、キメラ抗体では、アルパカ由来抗体に誘導される免疫反応が低減される。キメラ抗体を作製するために、まず、特定のアルパカ由来特異的なモノクローナル抗体をつくるハイブリドーマ又は抗体ライブラリーを構築し、次いで、アルパカ由来可変領域遺伝子をヒト定常領域遺伝子(又はFc領域遺伝子)と連結してキメラ遺伝子を作製し、これを発現ベクターに挿入し、最後、原核生物又は真核生物系においてキメラ抗体分子を発現させる。
【0050】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」とは、アルパカのCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワーク、即ち、異なるタイプのヒト生殖系列抗体フレームワーク配列に移植することで産生される抗体を指す。ヒト化抗体は、多量のアルパカタンパク質成分を含むキメラ抗体に誘発される異種反応の欠点を克服する。このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公のDNAデータベース又は公開された刊行物から入手できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(https://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/)から取得できし、また、Kabat,E.A.et al.,1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest第5版に記載される。免疫原性の低下及びそれに引き起こされる活性の低下を回避するために、前記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列は、活性維持のために、最小限の逆転突然変異又は復帰突然変異を実行してすることができる。
【0051】
「VHH」は、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ等)重鎖抗体に由来する可変抗原結合ドメイン(Nguyenら,2000 EMBO J.,19,921-930;Muyldermans 2001 J Biotechnol.,74,277-302及びレビューVanlandschoot et al.,2011 Antiviral Res.92,389-407を参照)に関する。
【0052】
一般に、ナノボディとは、下記(一般)構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有するアミノ酸配列として定義され得、ここで、FR1~FR4はそれぞれ、フレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3はそれぞれ、相補性決定領域1~3を指す。
【0053】
当分野では、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの主な種類の抗体が知られ、対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれ、IgG及びIgAは、さらに異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられ、IgAは、IgA1及びIgA2に分けられる。いかなる脊椎動物種に由来する抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる、2種類の明らかに異なるタイプの1つに分類され得る。
【0054】
IgG、IgA及びIgD抗体の場合、当該定常領域は、CH1、CH2及びCH3と呼ばれる3つのドメインを含む(IgM及びIgEは、第4のドメインCH4を有する)。IgG、IgA及びIgDクラスにおいて、CH1及びCH2ドメインは、プロリン及びシステインに富む、可変長のセクションである柔軟性ヒンジ領域に分離される。各クラスの抗体は、対のシステイン残基によって形成される鎖間及び鎖内ジスルフィド結合をさらに含む。
【0055】
「Fc」という用語は、本明細書において、少なくとも定常領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域が含まれる。本明細書において別途指定されていない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、 National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されているような、EUインデックスとも呼ばれるEU番号システムに従う。
【0056】
なお、本発明のモノクローナル抗体可変領域のCDR及びFRの区分は、Kabatに基づいて特定される。他の命名及び番号付けシステム、例えば、Chothia、IMGT又はAHoなども当業者に知られている。従って、本発明のモノクローナル抗体配列を基礎とし、任意の命名システムから誘導された1種以上のCDRを含むヒト化抗体は、いずれも本発明の範囲内に明確的に保持される。
【0057】
「配列同一性」又は「配列類似性」又は「配列相同性」という用語は、前記配列をアラインメントする(必要な場合にギャップを導入する)ことにより最大のパーセント配列同一性を取得し、かつ任意の保存的置換を配列同一性の一部と見なさない場合、候補配列中のアミノ酸残基と参照ポリペプチド配列中の同じアミノ酸残基のパーセントを指す。当分野の様々な方法を用いて配列をアラインメントすることで、アミノ酸配列同一性パーセントを測定することができ、例えば、公衆が入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMEGALIGN(DNASTAR)ソフトウェアを使用する。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含める、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0058】
「抗体断片」という用語は、完全抗体の少なくとも一部を含む。本明細書において使用されるとき、抗体分子の「断片」は、抗体の「抗原結合断片」を含み、かつ「抗原結合断片」という用語は、免疫グロブリン又は抗体における、選択された抗原又はその抗原エピトープに特異的に結合又は反応するポリペプチド断片、又はこの断片からさらに誘導された融合タンパク質産物、例えば、一本鎖抗体、キメラ抗原受容体中の細胞外結合領域などを指す。例示的な抗体断片又はその抗原結合断片は、可変軽鎖断片(VL)、可変重鎖断片(VH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、単一ドメイン抗体、線形抗体、一本鎖抗体(scFv)及び抗体断片で形成された二重特異性抗体又は多重特異性抗体などを含むが、これらに限定されない。
【0059】
「多重特異性抗体」という用語は、抗体を1つ又は複数の他の結合分子に機能的に連結する(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合又はその他の方法)ことにより形成された、2つ以上の異なる部位及び/又は標的部位に結合する新たな抗体構築物を指す。ここで、よく使用される「二重特異性抗体」は、特に2つの異なる抗原及び/又はエピトープに対して特異性を有する抗体構築体を指す。通常、二重特異性抗体又は多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを含む。
【0060】
「抗原」という用語は、抗体又は抗体結合断片に認識され、抗体又は抗体結合断片に特異的に結合する物質を指し、広義には、抗原は、単一のエピトープ、複数のエピトープ、単一のドメイン、複数のドメイン、又は完全な細胞外ドメイン(ECD)又はタンパク質を含む、選択された標的の任意の免疫原性断片又は決定基を含むことができる。ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖及び脂質、これらの一部及びこれらの組み合わせが、いずれも抗原を構成することができる。非限定的な例示的抗原は、腫瘍抗原又は病原体抗原などを含む。「抗原」とは、免疫応答を引き起こす分子であってもよい。任意の形式の抗原又は該抗原を含む細胞又は製剤は、いずれも抗原決定基に対して特異性を有する抗体を生成するために用いることができる。抗原は、単離された全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、その表面に少なくとも一部の抗原を発現させる細胞で免疫化される)、又は可溶性タンパク質(例えば、当該タンパク質のECD部分のみで免疫化される)、又はタンパク質構築物(例えば、Fc抗原)であってもよい。当該抗原は、遺伝子修飾された細胞において産生することができる。前記任意の抗原は、単独で使用してもよく、本分野で周知の1種以上の免疫原性増強アジュバントと組み合わせて使用してもよい。当該抗原をコードするDNAは、ゲノムであっても非ゲノム(例えば、cDNA)であってもよく、免疫原性応答を引き起こすのに十分なECDの少なくとも一部をコードすることができる。任意のベクターを使用してその中に抗原を発現させる細胞を形質転換することができ、前記ベクターは、アデノウイルススベクター、レンチウイルスベクター、プラスミド及びカチオン性脂質のような非ウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。
【0061】
「エピトープ」という用語とは、抗原における、免疫グロブリン又は抗体に特異的に結合する部位を指す。エピトープは、隣接するアミノ酸、又はタンパク質の三次折り畳みにより並列するが隣接しないアミノ酸で形成することができる。隣接するアミノ酸からなるエピトープは、通常に、変性溶媒への暴露の際に保持される一方で、三次折り畳みにより形成されるエピトープは、通常に、変性溶媒での処理によって失われる。エピトープは、通常に、独特の空間的コンフォメーションで少なくとも3~15個のアミノ酸を含む。特定の抗体によりそれの結合するエピトープを決定する方法は、本分野で周知であり、免疫ブロット及び免疫沈殿検出分析などを含む。エピトープの空間的コンフォメーションを決定する方法は、例えば、X線結晶分析法、二次元核磁気共鳴などの本分野における技術及び本明細書に記載の技術を含む。
【0062】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖、環状又は分岐鎖であってもよく、修飾されたアミノ酸、特に保存的に修飾されたアミノ酸を含むことができ、また、非アミノ酸に中断されてもよい。当該用語は、変性されたアミノ酸ポリマー、例えば、硫酸化、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、ヨウ化、メチル化、酸化、タンパク質加水分解加工、プレニル化、ラセミ化、セレネニル化、転移-RNA媒介のアミノ付加、例えば、アルギニン化、遍在化、又は任意の他の操作、例えば、標識成分との複合などにより変性されたアミノ酸ポリマーをさらに含む。本明細書において使用されるとき、「アミノ酸」という用語は、天然及び/又は非天然又は合成アミノ酸を指し、グリシン及びD又はL光学異性体、及び、アミノ酸類似体及びペプチド模倣物を含む。指定されたタンパク質「に誘導された」ポリペプチド又はアミノ酸配列とは、ポリペプチドの由来を指す。当該用語は、指定された核酸配列に発現されたポリペプチドをさらに含む。
【0063】
「アミノ酸修飾」(又は「修飾されたアミノ酸」)という用語は、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含む。本明細書における「アミノ酸置換」又は「置換」は、親ポリペプチド配列の特定の位置のアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えることを意味する。例えば、置換S32Aとは、32位のセリンがアラニンに置き換えられることを意味する。
【0064】
ヒト化抗体可変領域とヒト受容体可変領域との配列同一性又は相同性は、本明細書に述べられるように測定することができ、このような測定をすると、好ましくは、少なくとも60%又は65%の配列同一性、より好ましく、少なくとも70%、75%、80%、85%又は90%の配列同一性、さらに好ましくは、少なくとも93%、95%、98%又は99%の配列同一性を共有することになる。好ましくは、異なる残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保守的置換」とは、1つのアミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)の側鎖(R基)を有する他のアミノ酸残基に置き換えられたアミノ酸置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。当分野では、類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーが定義されている。これらファミリーは、塩基性側鎖を含むアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電していない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って、本発明の抗体のCDR領域又はフレームワーク領域の1つ又は複数のアミノ酸残基を、他の類似した側鎖のアミノ酸残基に置き換えることができる。2つ又は2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なる場合、配列同一性のパーセンテージ又は類似度を上方に調整して、この置換の保存的な性質を補正することができる。
【0065】
「親和性」又は「結合親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とそれに結合するパートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。「KD」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指す。結合親和性は、本分野で公知の様々な技術、例えば、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法、二面偏波式干渉法、静的光散乱法、動的光散乱法、等温滴定型カロリメトリー、ELISA、超遠心分析法及びフローサイトメトリーなどを使用して決定することができる。
【0066】
「結合競合」又は「競合的抗体」という用語は、一般に、本開示に係る抗体と同じエピトープに結合する抗体を指し、その結合は、本開示に係る抗体の結合の阻害又は遮断をもたらし、競合アッセイにより競合阻害の程度を得ることができる。
【0067】
「医薬組成物」という用語は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する被験体にとって許容できない毒性である他の成分を含まない、製剤を指す。
【0068】
「薬学的担体」又は「薬学的に許容可能な担体」という用語は、治療剤とともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤又は媒体を意味する。
【0069】
「有効量」という用語は、本発明の有効成分を含む医薬製剤の投与量であって、患者に単一又は複数の投与量で投与された後に、治療された患者において予期の効果をもたらす投与量を意味する。有効量は、当業者である主治医が、例えば、人種の違い、体重、年齢や健康状態、関連する具体的な疾患、疾患の重症度、個々の患者の応答、投与された具体的な抗体、適用モード、投与された製剤の生物学的利用特性、選択された投与スキーム、及び、それに伴うあらゆる治療法の使用という、複数の要因を考慮することで容易に決定することができる。
【0070】
「宿主細胞」、「宿主細胞系」及び「宿主細胞培養物」という用語は、交換可能に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、このような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、一次形質転換された細胞及びそれに由来する子孫を含み、継代の数を考慮しない。子孫は、親細胞と核酸含量で完全に同一ではないかもしれないが、突然変異が含まれる場合がある。本明細書において、最初に形質転換された細胞からスクリーニングされるか、或いは、選択されるものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体の子孫が含まれる。
【0071】
本明細書において使用される「トランスフェクション」という用語は、外因性核酸を真核細胞に導入することを指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、脂質トランスフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染及び微粒子銃(biolistics)を含む、本分野で公知の様々な手段により実現することができる。
【0072】
「安定なトランスフェクション」又は「安定的トランスフェクション」という用語は、外因性核酸、DNA又はRNAをトランスフェクション細胞のゲノムに導入し組み込むことを指す。「安定なトランスフェクタント」(stable transfectant)という用語は、外因性DNAを安定的にゲノムDNAに組み込む細胞を指す。
【0073】
「をコードする核酸分子」、「をコードするDNA配列」及び「をコードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順を指す。これらデオキシリボヌクレオチドの順は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順を決める。従って、核酸配列は、アミノ酸配列をコードする。
【0074】
抗体及び抗原結合断片を生産・精製する方法は、コールド・スプリング・ハーバー研究所の抗体実験技術ガイドにおける第5~8章及び第15章のような従来技術でよく知られており、発見されている。本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、遺伝子操作方法で非ヒト由来CDR領域に1つ又は複数のヒトFR領域を加えたものである。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)のウェブサイトhttp://imgt.cines.frから取得されるか、或いは、免疫グロブリン雑誌、(2001)ISBN:012441351から取得される。
【0075】
本発明の工学的抗体又はその抗原結合断片は、従来の方法を用い、調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列を、発現ベクターにクローニング・組み換えることができる。組換え免疫グロブリンの発現ベクターは、CHO細胞を安定的にトランスフェクションすることができる。より推奨される従来技術としては、哺乳類発現系は、抗体のグリコシル化、特にFc領域中の高度に保存されたN末端のグリコシル化を招致する。安定クローンは、ヒト由来抗原に特異的に結合する抗体を発現させることで得られる。陽性クローンは、抗体を産生するためにバイオリアクターの無血清培地で拡大培養される。抗体が分泌される培養液は、従来技術により精製・採取される。抗体は、従来の方法によりろ過、濃縮される。可溶性混合物と多量体も、分子篩、イオン交換のような従来の方法により除去されてもよい。
【0076】
本明細書において使用される「個体」又は「被験体」という用語は、任意の動物、例えば、哺乳動物又は有袋動物を指す。本発明の個体は、ヒト、非ヒト霊長類動物(例えば、カニクイザル、アカゲザル又は他の種類のマカックザル)、マウス、ブタ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ラット及び任意の種類の家禽を含むが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書において使用される「腫瘍」という用語は、細胞又は組織の病理学的な増殖を特徴とする疾患、及び、その後の他の組織又は器官への遊走又は浸潤を指す。腫瘍増殖は、一般的に、制御されず、進行性であり、正常細胞の増殖を誘発・阻害しない。腫瘍は、膀胱、骨、脳、乳腺、軟骨、神経膠細胞、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、睾丸、胸腺、甲状腺、気管、尿道、尿管、尿道、子宮、膣器官、又は組織又は対応する細胞から選択されるものを含むが、これらに限定されない、様々な細胞、組織又は器官に影響を与えることができる。腫瘍は、例えば、肉腫、がん、又は細胞腫瘍(形質細胞の悪性腫瘍)のようながんを含む。本発明に係る腫瘍は、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、慢性白血病、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症)、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、原発性マクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、例えば、肉腫及びがん(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、血管肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、気管支がん、髄様がん、腎臓細胞がん、肝がん、ナイル管がん、絨毛膜がん、精上皮腫、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、睾丸がん、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴覚神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫)、食道がん、胆嚢がん、腎臓がん、多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。好ましくは、前記「腫瘍」は、膵臓がん、肝がん、肺がん、胃がん、食道がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、結腸がん、乳がん、リンパ腫、胆嚢がん、腎臓がん、白血病、多発性骨髄腫、卵巣がん、子宮頸がん及び神経膠腫を含むが、これらに限定されない。
【0078】
本明細書において使用される「疾患」又は「病症」又は「障害」などという用語は、細胞、組織又は器官の正常な機能を損傷・妨害する任意の変化又は失調を指す。例えば、前記「疾患」は、腫瘍、病原体感染、自己免疫疾患、T細胞機能障害性疾患、又は免疫寛容の欠陥(例えば、移植拒絶)を含むが、これらに限定されない。
【0079】
本明細書において使用される「治療」という用語は、個人又は処理細胞に起因する疾患を変化させようとする過程での臨床的介入を指し、予防してもよいし、臨床病理上で介入してもよい。治療効果は、疾患の発生又は再発の防止、症状の軽減、何らかの疾患による直接的又は間接的な病理結果の減少、転移の防止、疾患の進行速度の低下、病状の改善又は緩和、予後の緩和又は改善などを含むが、これらに限定されない。
【0080】
「カートリッジ」又は「キット」という用語は、有効量の1種以上の単位投与形態の本発明の医薬組成物を含む。いくつかの実施形態において、「カートリッジ」又は「キット」は、滅菌容器を含むことができ、このような容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ブリスターパック又は本分野に既知の他の適切な容器の形態であってもよい。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は薬物を保持するのに適切な他の材料から作ることができる。また、カートリッジは、本発明の医薬組成物を個体に投与する説明書をさらに含む。説明書には、一般的に、本発明の医薬組成物を用いて疾患を治療する方法が含まれる。
【0081】
<実施例>
【0082】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。これら実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。以下の実施例において具体的な条件を明記していない実験方法は、一般的に、分子クローニング試験ガイド(J.Sambrook et al.編、Molecular Cloning Experiment Guide, Third Edition, Science Press, 2002)に記載されているような従来の条件に従い、或いは、製造元に推奨される条件に従った。
【0083】
実施例1 ヒトNKp46及びカニクイザルNKp46抗原の情報
【表1】
【0084】
実施例2 ヒトNKp46及びカニクイザルNKp46細胞株の調製
SEQ ID NO:1で示されるヒトNKp46アミノ酸をコードするヌクレオチド配列をpCMV3(SinoBiological、商品番号CV011)ベクターにクローニングし、ヒトNKp46細胞株の構築に用いられるベクターが得られた。得られたベクターをCHOK1細胞(ATCC、商品番号CCL-61)にトランスフェクトし、ヒトNKp46を発現するCHOK1細胞株(「ヒトNKp46-CHOK1細胞株」と略称される)が得られた。
【0085】
SEQ ID NO:2で示されるカニクイザルNKp46アミノ酸をコードするヌクレオチド配列をpCMV3ベクターにクローニングし、カニクイザルNKp46細胞株の構築に用いられるベクターが得られた。得られたベクターをCHOK1細胞にトランスフェクトし、カニクイザルNKp46を発現するCHOK1細胞株(「カニクイザルNKp46-CHOK1細胞株」と略称される)が得られた。
【0086】
陽性対照抗体(Santa Cruz Biotechnology,商品番号sc-59343)を使用し、FACS測定方法で上記の得られたヒトNKp46-CHOK1細胞株におけるヒトNKp46の発現状況を検出し、試験において、陰性対照としてanti-HEL human IgG1 LALA(Biointron、商品番号B109802)を設けた。
【0087】
陽性対照抗体(Santa Cruz Biotechnology、商品番号sc-59343)を使用し、FACS測定方法で上記の得られたカニクイザルNKp46-CHOK1細胞株におけるカニクイザルNKp46の発現状況を検出し、試験において、陰性対照としてanti-HEL human IgG1 LALA(Biointron、商品番号B109802)を設けた。
【0088】
結果を以下に示した:
ヒトNKp46-CHOK1細胞株におけるヒトNKp46の発現状況は、
図1に示されているように、結果として、CHOK1細胞において、ヒトNKp46は、良好な過剰発現現象を有し、続く実験において細胞レベルでのNKp46モノクローナル抗体のヒトNKp46への結合状況を検証することに用いられると示された。
【0089】
カニクイザルNKp46-CHOK1細胞系株におけるカニクイザルNKp46の発現状況は、
図2に示されたように、結果として、CHOK1細胞において、カニクイザルNKp46は、良好な過剰発現現象を有し、続く実験において細胞レベルでのNKp46 モノクローナル抗体のカニクイザルNKp46への結合状況を検証するために用いられると示された。
【0090】
実施例3 アルパカ/ラクダVHH重鎖抗体免疫ライブラリーの構築
それぞれSEQ ID NO:3で示されるヒトNKp46抗原及びSEQ ID NO:4で示されるカニクイザルNKp46抗原を使用し、アルパカ/ラクダを交替で免疫化した。免疫時期はそれぞれ0日目、14日目、28日目、42日目であり、合計4回の免疫を行った。それぞれ28日目、42日目、及び56日目に血液サンプルを採取し、血清を分離し、フローサイトメトリーで血清における免疫応答反応状況を検出した。検出された血清力価が1:10000を超えると免疫化を終了させた。免疫されたアルパカ/ラクダから再度血液サンプル100mLを採取し、以下の手順を行った。
【0091】
1.リンパ球分離液(Solarbio社)を用い、プロトコールに従い、ラクダ/アルパカPBMCをそれぞれ分離した。
【0092】
2.細胞トータルRNA抽出キット(OMEGA社)を使用し、プロトコールに従い、ラクダ/アルパカのトータルRNAをそれぞれ抽出した。
【0093】
3.PrimeScriptTM逆転写キット(Takara社)を用い、プロトコールに従い、ラマ/アルパカのcDNAをそれぞれ合成した。
【0094】
4.上記で得られたcDNAを鋳型とし、以下のSEQ ID NO:5~SEQ ID NO:13で示される特異的なプライマーを用い、ネステッドPCR増幅を行った。
サイクル1のPCR
SEQ ID NO:5(フォワードプライマー):GTCCTGGCTGCTCTTCTACAAGG;
SEQ ID NO:6(リバースプライマー):GGTACGTGCTGTTGAACTGTTCC。
サイクル2のPCR
SEQ ID NO:7(フォワードプライマー):
ACTCGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAG;
SEQ ID NO:8(フォワードプライマー):
ACTCGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGGTRCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAG;
SEQ ID NO:9(フォワードプライマー):
ACTCGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGATGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAG;
SEQ ID NO:10(リバースプライマー):
GGTGTTGGCCTCCCGGGCCACTAGTGCTKGAGACRGTGACCTGGGT;
SEQ ID NO:11(リバースプライマー):
GGTGTTGGCCTCCCGGGCCACTAGTGCTKGAGACRGTGACCAGGGT;
SEQ ID NO:12(リバースプライマー):
GGTGTTGGCCTCCCGGGCCACTAGTTGAKGAGACRGTGACCTGGGT;
SEQ ID NO:13(リバースプライマー):
GGTGTTGGCCTCCCGGGCCACTAGTTGAKGAGACRGTGACCAGGGT。
【0095】
5.増幅してラクダ/アルパカVHH遺伝子断片が得られた。
上記の増幅により得られたラクダ/アルパカVHH断片を回収し、Sfi I酵素消化により、pADL-23c(Biovector)ファージベクターにライゲーションし、TG1大腸菌コンピテント細胞を電気形質転換し、アルパカ/ラクダVHH重鎖抗体免疫ライブラリーを構築した。そのうち、NKp46ラクダ免疫ライブラリーの容量サイズは、5.2E7であり、アルパカ免疫ライブラリーの容量サイズは、7.8E7であった。
【0096】
実施例4 NKp46に特異的に結合する陽性クローンのスクリーニング
ヒトNKp46とカニクイザルNKp46に交差結合できる陽性抗体を得るために、前記ライブラリーを増幅し、M13K07ヘルパーファージを添加し、ファージを組み立てた。その後、それぞれ1×10
12pfuのラクダとアルパカ免疫ライブラリーに投入し、ファージが磁気ビーズに結合したビオチン化ヒトNKp46タンパク質(8μg/mL)とともに室温で1時間インキュベートし、結合していないファージを0.05%PBSTで洗い流した後、NKp46に特異的に結合したファージを100mMのトリエチルアミンで溶出し、勾配希釈した後、対数増殖期に増殖した大腸菌SS320を感染させ、アンピシリンプレートに37℃で一晩培養し、単一クローンを選択し、IPTG誘導発現を行い、上清をELISA検出に用いられた。ELISAプレートをそれぞれ2μg/mLのヒトNKp46又はカニクイザルNKp46抗原で4℃、一晩コーティングし、0.05%PBSTで3回洗浄し後、5%スキムミルクで室温、1hブロックし、0.05%PBSTで3回洗浄した後、各ウェルに誘導された上清30μLを加え、陰性対照ウェルに培地を加え、室温で1hインキュベートし、最後にanti-Myc HRPで検出し(IPTGに誘導・発現されたVHHは、hisタグ及びc-Mycタグが付いていた)、ELISA試験により得られたヒト及びカニクイザルNKp46に結合するOD450値が1.0を超え、培地陰性対照に結合するELISA OD450比値がいずれも3を超えるクローンをシーケンシングして、本開示の30つの重鎖抗体可変領域のアミノ酸を取得し、結果を表2に示す。
【表2】
【0097】
上記のアミノ酸配列に基づき、Kabatの番号付け規則に従い、抗体の可変領域のCDR及びFRを区分し、各抗体における3つのCDR配列の構成を以下の表3に示す。表3の括弧内の数字は、配列番号を表し、例えば、(44)はSEQ ID NO:44を表す。
【表3】
【表4】
【0098】
実施例5 抗NKp46キメラ抗体の構築及びその真核細胞における一過性トランスフェクション発現
シーケンシングの完了した本開示に係るモノクローナルの可変領域とアミノ酸配列、例えば、SEQ ID NO:134で示されるヒトIgG1定常領域をスプライシングして生成する標的遺伝子断片をpTT5発現ベクター(Nova lifetech)にクローニングし、トランスフェクショングレードの発現プラスミドを調製した。
【0099】
無血清培地にExpi293FTM細胞(Thermo Fisher Scientific)を培養し、細胞を振盪フラスコ(Corning社)に接種し、37°C、8% CO2環境でシェーカーに置いて培養した。細胞密度を調整し、標的遺伝子断片を含むpTT5組換え発現ベクター及びPEIトランスフェクション試薬を適切な割合で混合し、細胞培養用振盪フラスコに加え、細胞を6日間培養した後、発現上清を回収し、高速遠心して細胞破片を除去し、Protein Aカラムによりアフィニティー精製をした。A280読み取り値がベースラインに低下するまでカラムをPBSでリンスした。pH3.0~pH3.5の酸性溶離液で目標タンパク質を溶離し、1M Tris-HCl、pH8.0~9.0で中和した。溶出したサンプルを適切に濃縮した後、培地をPBSに交換し、分注して置いた。最終的に精製されたキメラ抗体に対して、SDS-PAGE及びHPLC純度分析及びA280濃度測定を実施した。
【0100】
実施例6 抗NKp46キメラ抗体のNKp46発現細胞への結合
実施例2で調製されたヒトNKp46-CHOK1安定細胞株及びカニクイザルNKp46-CHOK1安定細胞株を培養し、細胞を0.25%トリプシン(EDTA含有)で約5分間消化し、完全培地を加えて反応を終了させた。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBSに再懸濁してカウンティングした。細胞を密度1E6/mLに調整し、100μL/ウェルでCorning-No.3799 96ウェル培養プレートに接種し、37℃、8%CO2環境で一晩培養し、その後、96ウェル培養プレートを1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、4℃で静置しておいた。
【0101】
上記の実施例で得られた抗NKp46キメラ抗体を24個選択し、1%BSAを含むPBSで抗NKp46キメラ抗体溶液を調製し、初期濃度は100nMで、10倍希釈で10-4nM、10-3nM、10-2nM、10-1nM、100nM、101nM及び102nMの7つの勾配が得られた。
【0102】
調製された抗体(100μL/ウェル)を細胞培養プレートに再懸濁した。再懸濁した細胞培養プレートを4°C冷蔵庫で1時間インキュベートした。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS160μLで1回洗浄し、上清を捨てて保管した。1%BSAを含むPBSで二次抗体(goat anti human IgG Fc PE)を調製し、1:200という比例で希釈した。調製した二次抗体(100μL/ウェル)で細胞を再懸濁し、冷蔵庫、4℃で0.5時間インキュベートした。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS160μLで1回洗浄し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS100μLで細胞を再懸濁し、細胞を300メッシュのガーゼで濾過し、フローサイトメーターで抗体と細胞との結合の平均蛍光強度を分析した。フローサイトメーターからFCSファイルをエクスポートし、FlowjoソフトウェアでPEチャネルの平均蛍光強度(以下、MFIと略称する)を解析し、解析で得られた平均蛍光強度をGraphpadにインポートし、抗体の細胞に対する半数結合濃度(以下、EC
50と略称する)及び最高平均蛍光強度(Top MFI)を解析し、結果を表4及び
図3~10に示す。抗NKp46キメラ抗体は、過剰発現したヒト及びカニクイザルNKp46細胞に対していずれも良好な結合を示した。
【表5】
【表6】
【0103】
実施例7 抗NKp46キメラ抗体によるインビトロでのNK細胞活性化試験
新鮮なヒト末梢血細胞(PBMC)を採取し、EasySepTM Human NK Cell Isolation Kit(StemCell)でNK細胞を分離し、それをカウンティングした。α-MEM培地で細胞を培養し、15%熱不活化FBS、0.2mMイノシトール、0.1mMβ-メルカプトエタノール、0.02mM葉酸、200U/mL IL-2を添加した。NK細胞を密度1E6/mLに調整し、37℃、5%CO2インキュベーターで6~8日間培養した。抗体をPBSで希釈し、最高濃度は20nMになり、3倍希釈で20nM、6.67nM、2.23nM、0.74nM、0.247nM、0.083nM及び0.027nMの7つの勾配濃度が得られた。希釈した抗体をCorning-No.3599である96ウェル培養プレートに100μL/ウェルに被覆させ、4℃で一晩コーティングした。96ウェルプレートを150μL/ウェルのPBSで2回洗浄した。完全培地で活性化NK細胞を密度1E6/mLに調整し、そして100μL/ウェルで洗浄した96ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO2インキュベーターで4時間培養した。細胞をcorning-No.3599培養プレートからcorning-No.3799培養プレートに移し、1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てて保管した。
【0104】
取扱説明書の要求に従い、CD3-APC(BD@555335)、CD56-BV421(BD@562751)、CD107a-PE(BD@560948)をそれぞれ希釈した。上記で得られた予備細胞を再懸濁し、上記で希釈したCD3-APC、CD56-BV421、CD107a-PE抗体を50μL/ウェルの濃度で添加し、4℃で0.5時間インキュベートした。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS160μLで1回洗浄し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS100μLで1回洗浄し、細胞を300メッシュのガーゼで濾過した。そして、フローサイトメーターでNKにおけるCD107a陽性細胞の割合を解析した。フローサイトメーターからFCSファイルをエクスポートし、FlowjoソフトウェアでNK(CD3
-CD56
+)細胞におけるCD107a陽性細胞の割合を解析し、Graphpadにインポートし、NK活性化の半数効果濃度(以下、EC
50と略称する)及び最高平均蛍光強度(Top MFI)を解析し、結果を表5及び
図11~12に示した。抗NKp46キメラ抗体は、異なるインビトロでのNK細胞活性化能力を示した。
【表7】
【表8】
【0105】
実施例8 抗NKp46抗体のヒト化設計
上記の番号がNKp46-PC11、NKp46-PA27、NKp46-PA31及びNKp46-PA45である抗NKp46キメラ抗体を選択し、ヒト化を行った。
【0106】
実施例8.1 NKp46-PC11のヒト化
(1)NKp46-PC11ヒト化フレームワークの選択
配列アライメントによりクローン番号NKp46-PC11と高い同一性を有する生殖系列遺伝子配列、即ち、IGHV3-23*04(配列同一性64.3%)及びIGHJ4_01(配列同一性73.3%)をVHH移植フレームワークの鋳型として選択した。NKp46-PC11 CDR領域を選択されたヒト抗体可変領域フレームワークにグラフトした後、ヒト化抗体hPC11が得られ、ヒト化可変領域hPC11 VHH-CDR グラフト 配列をSEQ ID NO135に示した。
【0107】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASPYSANSFSMAWVRQAPGKGLEWVSCIQAESGSTNVAPSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAFKRNVGGCELRPEHWRFWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:135)
【0108】
SEQ ID NO135において、順にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、配列において斜体にしたのは、FR配列であり、下線を引いたのは、CDR配列であり、グラフトはキメラ抗体のCDRをヒト生殖系列FR領域に移植した後、得られたヒト化可変領域VHH配列を表した。
【0109】
hPC11に対して復帰突然変異を行い、H1-PC11(配列をSEQ ID NO:136に示す)、H2-PC11(配列をSEQ ID NO:137に示す)、H3-PC11(配列をSEQ ID NO:138に示す)、H4-PC11(配列をSEQ ID NO:139に示す)及びH5-PC11(配列をSEQ ID NO:140に示す)の5つのヒト化抗体が得られた。
【0110】
実施例8.2 NKp46-PA27のヒト化
(1)NKp46-PA27ヒト化フレームワークの選択
配列アライメントによりクローン番号NKp46-PA27と高い同一性を有する生殖系列遺伝子配列、即ち、IGHV3-30*15(配列同一性:74.5%)及びIGHJ4_01(配列一致性:80%)をVHH移植フレームワークの鋳型として選択した。NKp46-PA27 CDR領域を選択されたたヒト抗体可変領域フレームワークにグラフトした後、ヒト化抗体hPA27が得られ、ヒト化可変領域hPA27 VHH-CDR グラフト配列をSEQ ID NO:141に示した。
【0111】
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGRTESWYRMGWVRQAPGKGLEWVARISGDTNIKYYAGSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMSSLRAEDTAVYYCAADRTGATWDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:141)
【0112】
SEQ ID NO141において、順にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、配列において斜体にしたのは、FR配列であり、下線を引いたのは、CDR配列であり、グラフトはキメラ抗体のCDRをヒト生殖系列FR領域に移植した後得られたヒト化可変領域VHH配列を表した。
【0113】
hPA27に対して復帰突然変異を行い、H1-PA27(配列をSEQ ID NO:141に示し、元のグラフトした配列)、H2-PA27(配列をSEQ ID NO:142に示す)、H3-PA27(配列をSEQ ID NO:143に示す)、H4-PA27(配列をSEQ ID NO:144に示す)の4つのヒト化抗体が得られた。
【0114】
実施例8.3 NKp46-PA31のヒト化
(1)NKp46-PA31ヒト化フレームワークの選択
配列アライメントによりクローン番号NKp46-PA31と高い同一性を有する生殖系列遺伝子配列、即ち、IGHV3-23*04(配列同一性74.5%)及びIGHJ4_01(配列一致性73.3%)をVHH移植フレームワークの鋳型として選択した。NKp46-PA31 CDR領域を選択されたヒト抗体可変領域フレームワークにグラフトした後、ヒト化抗体hPA31が得られ、ヒト化可変領域hPA31 VHH-CDRグラフト配列を、SEQ ID NO:145に示した。
【0115】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRTFSRLPMGWVRQAPGKGLEWVSAISWSSSTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVGGSLDYSATVVYTAARAYADWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:145)
【0116】
SEQ ID NO145において、順にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、配列において斜体にしたのは、FR配列であり、下線を引いたのは、CDR配列であり、グラフトはキメラ抗体のCDRをヒト生殖系列FR領域に移植した後、得られたヒト化可変領域VHH配列を表した。
【0117】
hPA27に対して復帰突然変異を行い、H1-PA31(配列をSEQ ID NO:145に示し、元のグラフト配列)、H2-PA31(配列をSEQ ID NO:146に示す)、H3-PA31(配列をSEQ ID NO:147に示す)、H4-PA31(配列をSEQ ID NO:148に示す)の4つのヒト化抗体が得られた。
【0118】
実施例8.4 NKp46-PA45のヒト化
(1)NKp46-PA45ヒト化フレームワークの選択
配列アライメントによりクローン番号NKp46-PA45と高い同一性を有する生殖系列遺伝子配列、即ち、IGHV3-23*04(配列同一性79.6%)及びIGHJ4_01(配列同一性73.3%)をVHH移植フレームワークの鋳型として選択した。NKp46-PA45 CDR領域を選択されたヒト抗体可変領域フレームワークにグラフトした後、ヒト化抗体hPA45が得られ、ヒト化可変領域hPA45 VHH-CDRグラフト配列をSEQ ID NO:149に示した。
【0119】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRTFSRLPMAWVRQAPGKGLEWVSAISWSGGSTYYADSMKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVGDSAPYSATIVYTDARAYAYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:149)
【0120】
SEQ ID NO149において、順にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、配列において斜体にしたのは、FR配列であり、下線を引いたのは、CDR配列であり、グラフトはキメラ抗体のCDRがヒト生殖系列FR領域に移植された後、得られるヒト化可変領域VHH配列を表した。
【0121】
hPA45に対して復帰突然変異を行い、H1-PA45(配列をSEQ ID NO:149に示し、元のグラフト配列)、H2-PA45(配列をSEQ ID NO:150に示す)、H3-PA45(配列をSEQ ID NO:151に示す)、H4-PA45(配列をSEQ ID NO:152に示す)の4つのヒト化抗体が得られた。
【0122】
実施例9 NKp46に特異的に結合するヒト化抗体の調製
当業者に知られている標準的な方法により、ヒト化抗体の可変領域とヒトIgG1定常領域とをスプライシングした目的遺伝子断片をpTT5発現ベクター(Nova lifetech)にサブクローニングし、対数増殖期にあるExpi293FTM細胞をExpiFectamineTM 293トランスフェクション試薬で一過的にトランスフェクトし、培養上清を回収し、アフィニティー精製を行い、最終に精製されたヒト化抗体に対して、SDS-PAGE及びHPLCによる純度分析及びA280濃度測定を行った。
【0123】
実施例10 NKp46に特異的に結合するヒト化抗体のインビトロでの細胞結合検証
実施例2で得られたヒトNKp46-CHOK1安定細胞株及びカニクイザルNKp46-CHOK1安定細胞株を培養し、細胞を0.25%トリプシンEDTAで約5分間消化し、完全培地で終了した。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBSで再懸濁してカウンティングした。細胞を密度1E6/mLに調整し、100μL/ウェルでCorning-No.3799 96ウェル培養プレートに接種し、1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、4℃で保管した。1%BSAを含むPBSで抗体を調製し、初期濃度は、100nMであり、10倍希釈でそれぞれ10-4nM、10-3nM、10-2nM、10-1nM、100nM、101nM及び102nMの7つの勾配が得られた。調製された抗体(100μL/ウェル)で細胞を再懸濁した。再懸濁した細胞培養プレートを4℃冷蔵庫で1時間インキュベートした。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBSで1回洗浄し、上清を捨てて保管した。
【0124】
1%BSAを含むPBSで二次抗体(goat anti human IgG Fc PE)を調製し、1:200という比で希釈した。調製された二次抗体(100μL/ウェル)で細胞を再懸濁し、4℃冷蔵庫で0.5時間インキュベートした。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS160μLで1回洗浄し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS100μLで細胞を再懸濁し、細胞を300メッシュのガーゼで濾過した。そして、フローサイトメーターで抗体と細胞との結合の平均蛍光強度を解析した。フローサイトメーターからFCSファイルをエクスポートし、FlowjoソフトウェアでPEチャネルの平均蛍光強度(以下、MFIと略称する)を解析し、解析により得られた平均蛍光強度をGraphpadにインポートし、抗体の細胞に対する半数結合濃度(以下、EC
50と略称する)及び最高平均蛍光強度(Top MFI)を解析し、結果を表6及び
図13~
図20に示した。抗NKp46ヒト化抗体は、過剰発現したヒト及びカニキザルNKp46細胞への結合能力において、対応するキメラ抗体に相当した。
【表9】
【0125】
実施例11 抗NKp46ヒト化抗体によるインビトロでのNK細胞活性化試験
新鮮なヒト末梢血細胞(PBMC)を採取し、EasySepTM Human NK Cell Isolation KitでNK細胞を分離し、カウンティングした。α-MEM培地で細胞を培養し、15%熱不活化FBS、0.2mMイノシトール、0.1mM β-メルカプトエタノール、0.02mM葉酸、200U/mL IL-2を添加した。NK細胞を密度1E6/mLに調整し、37℃、5%CO2インキュベーターで6~8日間培養した。抗体をPBSで希釈し、最高濃度は20nMであり、それぞれ20nM、6.67nM、2.23nM、0.74nM、0.247nM、0.083nM及び0.027nMの7つの勾配濃度が得られた。希釈された抗体(100μL/ウェル)をCorning- No.3599である96ウェル培養プレートに被覆させ、4℃で一晩被覆した。96ウェルプレートを150μL/ウェルのPBSで2回洗浄した。完全培地で活性化NK細胞を密度1E6/mLに調整し、そして、100μL/ウェルで洗浄した96ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO2インキュベーターで4時間培養した。細胞をcorning-No.3599培養プレートからcorning-No.3799培養プレートに移し、1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てて保管した。
【0126】
取扱説明書に従い、抗体(CD3-APC,CD56-BV421,CD107a-PE)を希釈し、50μL/ウェルで細胞を再懸濁し、4℃で0.5時間インキュベートした。1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS160μLで1回洗浄し、上清を捨て、1%BSAを含むPBS100μLで再懸濁し、細胞を300メッシュのガーゼで濾過した。そして、フローサイトメーターでNK(CD3
-CD56
+)細胞におけるCD107a陽性細胞の割合を解析した。フローサイトメーターからFCSファイルをエクスポートし、FlowjoソフトウェアでNK(CD3
-CD56
+)細胞におけるCD107a陽性細胞の割合を解析し、GraphpadにインポートしてNK活性化の半数効果濃度(以下、EC
50と略称する)及び最高平均蛍光強度(Top MFI)を解析し、結果を表7及び
図21~24に示した。抗NKp46ヒトイル化抗体は、対応するキメラ抗体と比較して、インビトロでのNK細胞の活性化能力が維持されたか、或いは、わずかに弱いと示す。
【表10】
【0127】
実施例12 NKp46に特異的に結合するヒト化抗体のBiacore親和性試験
NKp46に特異的に結合するヒト化抗体とヒトNKp46(Kactus Biosystems、NKP-HM146)及びカニクイザルNKp46(Kactus Biosystems、NKP-CM146)との親和性及び動力学的特性を、Biacore 8K機器により分析した。まず、エチル-ジメチルアミノプロピル-カルボジイミド(EDC)及びヒドロキシスクシンイミドNHSでBiacore機器CM5チップを活性化させ、次に抗ヒトFcマウスモノクローナルを固定化し、さらにエタノールアミンでブロックした。
【0128】
ヒトNKp46への親和性及び動力学的特性を測定するために、NKp46ヒト化抗体をHBS-EP+緩衝液(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05% P20)で0.8μg/mLに希釈し、流速10μL/minで60s捕捉した。ヒトNKp46を一連の濃度(400nM~3.125nM)まで連続的に2倍希釈し、流速50μL/minで90s結合させ、500s解離させた。
【0129】
カニクイザルNKp46との親和性及び動力学的特性を測定するために、NKp46ヒト化抗体をHBS-EP+緩衝液(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl,3mM EDTA,0.05%P20)で0.8μg/mLに希釈し、流速10μL/minで60s捕捉した。カニクイザルNKp46を一連の濃度(400nM~3.125nM)まで連続的に2倍希釈し、流速50μL/minで90s結合させ、500s解離させた。
【0130】
各サイクルの試験が終了した後、3M MgCl
2溶液を使用し、流速30μL/minで30s洗浄し、捕捉された抗体を抗原とともに除去し、チップの再生を完了した。原始データを、Biacore Insight Evaluation Software(バージョン3.0.12.15655)で分析し、(1:1)のラングミュアモデルにフィッティングさせた。結果を表8に示した。抗NKp46ヒト化抗体は、対応するキメラ抗体と比較して、基本的にヒトNKp46抗原タンパク質との親和性が維持されていた。
【表11】
【表12】
【0131】
実施例13 抗NKp46ヒト化抗体の物理的安定性測定
異なる抗体のpH7.4、PBS緩衝液における熱安定性は、NanoDSF(示差蛍光走査技術)により検出された。サンプル濃度は、約1 mg/mLであり、Prometheus NT.Plex機器により検出された。検出する前、各サンプルを10,000gで10分間遠心分離した。サンプル40μLをサンプルプレートの各ウェルに添加した(機器のローディング容量は10μLで、各サンプルは1つの複製ウェルがある)。走査温度は30°C以上、95°C以下である。スキャン速度は0.5℃/minであった。試験結果を表9に示した。
【表13】
【0132】
SEC-HPLCでサンプルの純度をモニタリングし、特定の濃度条件下でのサイクル安定性を調べた。例示的な条件として、例えば、サンプル濃度を10mg/mLに制御し、10mM酢酸塩、9%トレハロース(pH 5.5)の緩衝液において、並びに、濃度を1mg/mLPBS(PH7.4)緩衝液に制御し、40℃で0日間、7日間、14日間保存した後の安定性状況を比較した。Waters Xbridge Protein BEH SEC 3.5μm 7.8*300mmカラムで検出し、移動相は、PBS緩衝液であり、H
3PO
4でpH 6.8に調整し、流速は、0.5 mL/minであった。試験結果を表10に示した。
【表14】
【0133】
CE-SDSによりサンプルの分子完全性をモニタリングし、特定の濃度条件でサイクル安定性を調べた。サンプル濃度を10mg/mL、10mM 酢酸塩、9%トレハロース(pH 5.5)の緩衝液において、40℃で0日間、7日間及び14日間を保存した後、還元条件及び非還元条件での分子完全性状況を比較した。サンプル200μg(還元100μg、非還元100μg)を採取し、サンプル緩衝液を加え、97μLにし、還元サンプルに2-メルカプトエタノール 5μLを添加し、非還元サンプルに250mM ヨードアセトアミド 5μLを添加し、すべてのサンプルを70℃で10分間加熱した。PA 800 Plus(Beckman Sciex)により検出し、電気泳動時間は40分間であり、試験結果を表11に示した。
【表15】
【0134】
実施例14 抗NKp46ヒト化抗体の化学的安定性測定
cIEFによりサンプル分子の電荷不均一性をモニタリングした。抗体は、脱アミド化作用、異性化、末端の変化、グリコシル化、酸化、断片化、重合などを含む多くの翻訳後修飾がある。これらの修飾により抗体の表面電荷変化を引き起こし、電荷の不均一性が生じる可能性がある。cIEFは、抗体が持つ電荷に基づいて抗体を分離し、さらに抗体の電荷不均一性を分析するものである。サンプル濃度を10mg/mLに制御し、10mM酢酸塩、9%トレハロース(pH5.5)の緩衝液において、40℃で0日間、7日間、14日間を保存した後、電荷不均一性状況を比較した。サンプル20ugを取り、Separation Mix緩衝液に添加し、Maurice.C(ProteinSimple)で7分間に集束され、抗体サンプルの電荷分布を検出した。試験結果を表12に示した。
【表16】
【0135】
LC-MS技術により抗体サンプルの翻訳後修飾を検出した。脱アミド化修飾は、後期安定性に影響を与える可能性がある抗体の一般的な化学修飾、特にCDR領域のアミノ酸の一部を高度に脱アミド化する修飾を、通常、可能な限り回避し、或いは、変異を低減する。例示的な条件として、例えば、測定する抗体の濃度を10mg/mLに制御し、10mM酢酸塩、9%トレハロース(pH5.5)緩衝液において、並びに、濃度を1mg/mL PBS(pH7.4)緩衝液に制御し、40℃で、インキュベーターで保管し、それぞれ0日目、7日目、14日目にサンプルを採取し、酵素加水分解実験に用いた。抗体サンプル30μgを取り、8M塩酸グアニジン 6μL及び200mM DTT 3μLを添加し、60℃で水浴において20min放置し、そして20mM Histidine緩衝液(pH6.0) 46μL及びPNGase F酵素(Promega,V5111)2μLを添加し、37℃で水浴おいて16h放置した。Q-Exactive Plus機器でLC-MSにより脱アミド化修飾を検出した。試験結果を表13に示した。
【表17】
【0136】
上記の実験データから、H1-PC11、H2-PA27、H2-PA31及びH2-PA45などの4つのヒト化抗体は、比較的に高い熱変形温度を示し、40℃の高温条件で14日間保存した後、多量体及び断片の割合の変化が少なく、化学修飾を発生する割合の変化も低く、これらの4つのヒト化抗体の物理的安定性及び化学的安定性は、共に比較的に良好であった。
【0137】
上記の本発明の形態は、例示的なものにすぎず、当業者であれば、従来とは異なる実験を行う必要なしに、無数の特定の化合物、材料、及び操作の同等物を認識・決定することができる。全てのこれらの同等物は、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:
104~106、113~115、44~103、107~112、116~133配列で示されるCDRから選ばれる3つのCDRを含
み、
好ましくは、重鎖可変領域を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:104、113、44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83、86、89、92、95、98、101、107、110、116、119、122、125、128、131からなる群から選ばれるHCDR1;及び、SEQ ID NO: 105、114、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、108、111、117、120、123、126、129、132からなる群から選ばれるHCDR2;及び、SEQ ID NO: 106、115、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、103、109、112、118、121、124、127、130、133からなる群から選ばれるHCDR3を含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:104、SEQ ID NO:105及びSEQ ID NO:106;或いは、SEQ ID NO:113、SEQ ID NO:114及びSEQ ID NO:115;或いは、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45及びSEQ ID NO:46;或いは、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48及びSEQ ID NO:49;或いは、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51及びSEQ ID NO:52;或いは、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54及びSEQ ID NO:55;或いは、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57及びSEQ ID NO:58;或いは、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60及びSEQ ID NO:61;或いは、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63及びSEQ ID NO:64;或いは、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66及びSEQ ID NO:67;或いは、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69及びSEQ ID NO:70;或いは、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72及びSEQ ID NO:73;或いは、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75及びSEQ ID NO:76;或いは、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78及びSEQ ID NO:79;或いは、SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:81及びSEQ ID NO:82;或いは、SEQ ID NO:83、SEQ ID NO:84及びSEQ ID NO:85;或いは、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87及びSEQ ID NO:88;或いは、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:90及びSEQ ID NO:91;或いは、SEQ ID NO:92、SEQ ID NO:93及びSEQ ID NO:94;或いは、SEQ ID NO:95、SEQ ID NO:96及びSEQ ID NO:97;或いは、SEQ ID NO:98、SEQ ID NO:99及びSEQ ID NO:100;或いは、SEQ ID NO:101、SEQ ID NO:102及びSEQ ID NO:103;或いは、SEQ ID NO:107、SEQ ID NO:108及びSEQ ID NO:109;或いは、SEQ ID NO:110、SEQ ID NO:111及びSEQ ID NO:112;或いは、SEQ ID NO:116、SEQ ID NO:117及びSEQ ID NO:118;或いは、SEQ ID NO:119、SEQ ID NO:120及びSEQ ID NO:121;或いは、SEQ ID NO:122、SEQ ID NO:123及びSEQ ID NO:124;或いは、SEQ ID NO:125、SEQ ID NO:126及びSEQ ID NO:127;或いは、SEQ ID NO:128、SEQ ID NO:129及びSEQ ID NO:130;或いは、SEQ ID NO:131、SEQ ID NO:132及びSEQ ID NO:133から選ばれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
好ましくは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、NKp46に特異的に結合できる抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、前記HCDR1、HCDR2及びHCDR3は、SEQ ID NO:142、146、14~43、136~141、143~145、147~152で示される重鎖可変領域に由来し、好ましくは、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 142、146、14~43、136~141、143~145、147~152で示される配列と少なくとも80%~100%の配列同一性を有する、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体は、組換え抗体であり、好ましくは、アルパカ由来抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体であり、より好ましくは、前記抗体がナノボディであり、さらに好ましくは、前記抗体は、ヒト化ラクダ科VHHであ
り、
好ましくは、さらに重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域は、Fc又は変異体Fcを含み、Fcは、マウス又はヒトに由来し、及び/又は、
前記抗NKp46抗体又はその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4形態である、
前記の請求項
1に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片と捕捉マーカー又は検出マーカーとをカップリングして形成されるコンジュゲートであって、前記検出マーカーが放射性核種、発光物質、着色物質又は酵素を含むコンジュゲート。
【請求項4】
抗原結合ドメインの1つが、前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、二重特異性抗体又は多重特異性抗体。
【請求項5】
前記
請求項1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含み、抗体、リンカー及び毒物を互いに接続させることで形成される、抗体?薬物複合体。
【請求項6】
キメラ抗原受容体であって、その細胞外認識ユニットが、前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、或いは、前記核酸を含む組換えベクター、或いは、前記組換えベクターを含む宿主細胞又は前記核酸がゲノムに組み込まれている宿主細胞。
【請求項8】
適切な条件で請求項
7に記載の宿主細胞を培養こと、及び前記細胞から発現産物を精製することを含む、前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を調製する方法。
【請求項9】
NKp46を発現する細胞を特異的に標的とする
ことに使用されるための、前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片、又は、NKp46を特異的に発現する疾患の治療、予防又は検出に
使用されるための、前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、好ましくは、前記細胞がNK細胞である、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片
、
好ましくは、がん、感染症、炎症性又は自己免疫性疾患の治療に使用されるための、
前記請求項1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片であって、好ましくは、前記がんは、白血病、侵襲性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経膠腫、子宮頸がん、頭頸部がん、直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、胃がん等を含む、抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
NKp46を発現する
疾患への診断に
使用されるための、前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記請求項
1又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片と緩衝液を含む、抗NKp46抗体含有溶液製剤。
【請求項12】
細胞を含む生体から生体サンプルを取得すること、前記細胞を請求項1
又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片と接触させること、及び、抗体が細胞に結合するかどうかを評価することを含む、生体におけるNKp46発現細胞の存在を同定する方法。
【請求項13】
有効量の前記の請求項1
又は2に記載の抗NKp46抗体又はその抗原結合断片を含み、或いは、有効量の請求項
3に記載のコンジュゲートを含み、或いは、有効量の請求項
4に記載の二重特異性抗体又は多重特異性抗体を含み、或いは、有効量の請求項
5に記載の抗体?薬物複合体を含み、或いは、有効量の請求項
6に記載のキメラ抗原受容体を含み、或いは、有効量の請求項
7に記載の核酸、組換えベクター又は宿主細胞を含み、
好ましくは、薬学的に許容可能な担体をさらに含み、
より好ましくは、1種又は複数種の他の追加の治療剤をさらに含み、好ましくは、前記1種又は複数種の他の追加の治療剤は、化学治療剤、細胞毒性剤、放射性療法剤、がんワクチン、腫瘍減量剤、標的抗癌剤、抗血管新生剤、生物学的応答修飾剤、サイトカイン、ホルモン、抗転移剤及び免疫治療剤を含む、医薬組成物。
【国際調査報告】