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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】熱貯蔵および熱供給
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/28 20060101AFI20240226BHJP
   F22D 5/28 20060101ALI20240226BHJP
   F22D 11/06 20060101ALI20240226BHJP
   F22D 5/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
F22B1/28 Z
F22D5/28
F22D11/06 Z
F22D5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554869
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022055885
(87)【国際公開番号】W WO2022189428
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2103182.8
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510232430
【氏名又は名称】スピラックス‐サルコ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュブロック,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】テブット,ジョージ
(57)【要約】
熱エネルギー貯蔵および供給方法であって、圧力容器(110)にサブクール水を供給することと、容器が可変貯蔵圧力において飽和液体水と蒸気とを含むように電気式ヒーターを使用して圧力容器内の液体水を加熱することと、貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで上昇させるようにヒーター(112)を制御することと、減耗期間中に貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、熱エネルギー需要に応答して圧力容器の放出口から熱負荷(130、40)に蒸気を選択的に放出することとを含む方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギー貯蔵および供給方法であって、
圧力容器にサブクール水を供給することと、
前記容器が可変貯蔵圧力において飽和液体水と蒸気とを含むように電気式ヒーターを使用して前記圧力容器内の液体水を加熱することと、
前記貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで上昇させるように前記ヒーターを制御することと、
減耗期間中に前記貯蔵圧力が前記ピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、熱エネルギー需要に応答して前記圧力容器の放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出することとを含む、方法。
【請求項2】
前記放出蒸気が、中間蒸気アキュムレータを通過せずに直接、前記熱負荷に供給されるか、または、
前記圧力容器と前記熱負荷との間の任意の1つまたは複数の蒸気アキュムレータが前記圧力容器の容積より小さい総容積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記減耗期間中に、任意により蒸気の選択的放出と同時に、前記ヒーターを動作させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記減耗期間の一部または全部にわたり、および/または、
前記貯蔵圧力が、少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで少なくとも1MPaだけ上昇する再充填期間の一部または全部にわたり、
前記圧力容器にサブクール水を同時に供給せずに前記ヒーターを動作させることを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記減耗期間中に前記圧力容器内の液体水の液面が前記ヒーターの動作のための下限液面より下がるように、前記放出口から蒸気が放出され、
任意により、前記コントローラが、前記減耗期間中に、水の前記液面が前記下限液面より上にあるときに蒸気が放出されるのと同時に前記ヒーターを動作させ、前記コントローラが、前記下限液面を超える蒸気の継続放出のために前記ヒーターを停止させる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
放出圧力において前記熱負荷に蒸気が放出され、
前記貯蔵圧力が前記放出圧力より大きい場合に前記容器にサブクール水が供給される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ピーク貯蔵圧力が、前記容器にサブクール水が供給される最大給水圧力を超える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記減耗期間中に前記サブクール水が前記圧力容器に供給され、任意により、前記減耗期間中に前記圧力容器に供給されるサブクール水の質量が前記減耗期間中に放出される蒸気の質量の50%以下、たとえば25%以下、10%以下、または5%以下である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱負荷が、前記減耗期間中に熱交換器内で凝縮する放出蒸気が前記圧力容器の下部にある復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成するように、前記圧力容器と前記熱交換器との間に熱サイフォンが画定されるように前記圧力容器に対して相対的に位置づけられた前記熱交換器を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
重力の作用下で前記サブクール水を前記圧力容器に戻すのに十分な水頭を与えるように、前記熱交換器が前記復水注入口より高い位置に配置され、および/または、
前記熱交換器が前記熱交換器内の前記水を前記貯蔵圧力に対応する飽和温度に対して相対的に少なくとも10℃だけサブクールする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サブクール水が供給されるにつれて前記貯蔵圧力が低下するような注入流量で前記サブクール水が前記圧力容器に供給される、請求項6から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
フラッシュポテンシャルが、前記貯蔵圧力が前記熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に前記圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、前記フラッシュポテンシャルの放出時に前記ヒーターの動作のための下限量を上回る前記圧力容器内の液体水の量に対応し、
前記方法が、
前記液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価することと、
前記評価に基づいて、前記液面マージンを上昇させ、前記フラッシュポテンシャルを低下させるように、前記圧力容器にサブクール水を供給することとを含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記フラッシュポテンシャルが、ある期間にわたる予測需要および/または前記ヒーターの予測パワー出力の関数である予測フラッシュポテンシャルであり、前記液面マージンが、前記期間にわたる前記予測フラッシュポテンシャルの放出に基づく予測液面マージンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記予測需要が、設備の履歴蒸気需要データまたは履歴熱需要データなどの履歴需要データに基づき、および/または、
前記予測需要が、予報気象条件に基づき、および/または、
前記ヒーターの前記予測パワー出力が、前記ヒーターの履歴パワー可用量データに基づき、および/または、
前記ヒーターの前記予測パワー出力が、予報気象条件に基づく、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷があり、
前記熱負荷のそれぞれにそれぞれの熱エネルギー需要に基づいて前記圧力容器からそれぞれの制御弁を介して蒸気が選択的に放出され、
フラッシュポテンシャルが、前記貯蔵圧力が前記熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に前記圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
前記方法が、
前記フラッシュポテンシャルが前記複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価することと、
前記評価と、前記熱負荷に関する優先度データとに基づいて、それぞれの第2の熱エネルギー需要を満たすために前記第2の熱負荷に蒸気を放出するよりも優先して、それぞれの第1の熱エネルギー需要を満たすために前記第1の熱負荷に蒸気を放出すると決定することとをさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
再充填期間中に、
前記貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで少なくとも1MPaだけ上昇させるように前記圧力容器内の液体を加熱することと、
前記ピーク貯蔵圧力におけるピーク液面に対応する前記圧力容器内の水のピーク質量に達するように、前記圧力容器にサブクール水を供給することと、
任意により、前記再充填期間の存続時間が前記減耗期間の存続時間の少なくとも100%、たとえば少なくとも125%、または少なくとも150%である、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記再充填期間中の加熱のプロファイルに対して相対的にフロントロードされるように、前記再充填期間中の給水のプロファイルを段階付けることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
フラッシュポテンシャルが、前記貯蔵圧力が前記熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に前記圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、前記フラッシュポテンシャルの放出時の前記ヒーターの動作のための下限量を上回る前記圧力容器内の液体水の量に対応し、
前記方法が、前記再充填期間の水優先部分中に、前記液面マージンが漸進的に上昇するように前記圧力容器内の水の量を水の目標ピーク質量まで増加させながら、最小再充填フラッシュポテンシャルを維持するように、加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けることと、
その後、前記貯蔵圧力を前記ピーク貯蔵圧力まで上昇させるように前記再充填期間のフラッシュ優先部分中に前記液体水を加熱することとを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記最小再充填フラッシュポテンシャルが予測需要に対応し、前記予測需要が前記再充填期間の遊休部分中に蒸気の需要がないことに対応し、前記方法が、前記遊休部分中に前記貯蔵圧力を前記下限圧力より下に下げるためにサブクール水を供給することを含み、その後、前記圧力が、非ゼロ需要に対応するフラッシュポテンシャルを供給するための熱投入により上昇する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記減耗期間中の前記圧力容器内の水の液面の単位面積当たり蒸気放出の最大流量が、150kg/m時以下、たとえば100kg/m時以下、または50kg/m時以下である、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記圧力容器内からの蒸気の脱気流を脱気路に沿って向流として通過させて搬送することによって、前記脱気路に沿って前記圧力容器に供給されるサブクール水の注入流を脱気することを含み、
前記注入流が、前記圧力容器の貯蔵圧力の範囲にわたって前記圧力容器中に供給され、
前記注入流が貯蔵圧力の前記範囲にわたって前記蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、蒸気の前記脱気流の速度が前記注入流の温度および/または前記注入流と前記蒸気との温度差の関数として変化させられ、
任意により、前記速度が、蒸気の前記脱気流とそれに付随する同伴気体を排出するための制御弁を制御することによって変化させられ、
任意により、前記速度、または前記速度を制御するための制御弁設定が、前記注入流の温度および/または前記蒸気の温度と相関した速度または制御弁設定のデータベースを参照することによって決定される、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ピーク貯蔵圧力が少なくとも2.5MPa、たとえば少なくとも3MPaであり、および/または、
前記貯蔵圧力が、前記減耗期間中に1.5MPa以下、たとえば1MPa以下、または0.8MPa以下の値まで低下する、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
平均減耗パワーが、前記減耗期間中に前記圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーを前記減耗期間の存続時間で割った値と定義され、
最大減耗パワーが、前記減耗期間内の1分間の任意の最小パワー評価期間中に放出される蒸気の最大エンタルピーを、前記最小パワー評価期間で割った値と定義される、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記貯蔵圧力が少なくとも1MPaだけ上昇する再充填期間中に、前記ヒーターを使用して前記圧力容器内の液体水を加熱することをさらに含み、
平均再充填パワーが、前記再充填期間中に前記ヒーターによって前記液体水に与えられる累積エネルギーを前記再充填期間の存続時間で割った値と定義され、
最大再加熱パワーが、前記再充填期間内に前記ヒーターによって前記液体水にエネルギーが与えられる最大パワーと定義され、
前記平均再加熱パワーが、前記平均減耗パワーの50%以下であり、および/または、
前記平均再加熱パワーが、前記最大減耗パワーの50%以下であり、および/または、
前記最大再加熱パワーが、前記最大減耗パワーの50%以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(i)前記減耗期間中に前記圧力容器から放出される蒸気の前記累積エンタルピーと、(ii)前記再充填期間中の前記ヒーターの前記平均再加熱パワーとの大きさ比が、少なくとも25000秒である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
請求項27から47のいずれかに記載の熱設備を使用して行われる、請求項1から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
2MPaの貯蔵圧力で飽和液体水と蒸気とを含む水を貯蔵するための圧力容器であって、熱負荷に蒸気を放出するための放出口を有する前記圧力容器と、
前記圧力容器内の貯蔵圧力を変化させるために前記圧力容器に貯蔵されている液体水を加熱するように構成された電気式ヒーターと、
少なくとも2MPaの飽和液体水と蒸気とのピーク貯蔵圧力に達するように、前記圧力容器内の液体水を加熱するように前記ヒーターを制御することと、
熱エネルギー需要に応答して、前記放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出するように制御弁を制御することと、
前記貯蔵圧力が前記ピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、前記熱エネルギー需要を満たすために蒸気放出を可能にすることとによって、
前記熱貯蔵設備を動作させるように構成されたコントローラとを含む、熱エネルギー貯蔵および供給設備。
【請求項28】
前記放出口が、中間蒸気アキュムレータを通さずに前記熱負荷に直接、前記放出蒸気を供給するように前記熱負荷と連通しており、または、
前記圧力容器と前記熱負荷との間の任意の1つまたは複数の蒸気アキュムレータが、前記圧力容器の容積より小さい総容積を有する、請求項27に記載の設備。
【請求項29】
前記コントローラが、蒸気を選択的に放出するように前記制御弁を制御することとは独立して、前記圧力容器内の液体水を加熱するために前記ヒーターを制御するように構成され、それによって、使用時に、加熱と蒸気放出を同時に行うことが可能にされ、加熱と蒸気放出のそれぞれが他方を行わずに行うことが可能にされる、請求項27または28に記載の設備。
【請求項30】
前記コントローラが、前記圧力容器にサブクール水が供給されるようにすることとは独立して前記圧力容器内の液体水を加熱するために前記ヒーターを制御するように構成され、それによって使用時に、加熱とサブクール水供給を同時に行うことが可能にされ、サブクール水供給を同時に行わずに加熱することが可能にされる、請求項27から29のいずれかに記載の設備。
【請求項31】
前記コントローラが、前記貯蔵圧力が前記放出口から蒸気が放出される放出圧力より大きい場合に、前記圧力容器にサブクール水が供給されるようにするように構成されている、請求項27から30のいずれかに記載の設備。
【請求項32】
前記圧力容器にサブクール水を供給するように構成された送水ポンプをさらに含み、任意により、前記送水ポンプが前記ピーク貯蔵圧力より低い最大給水圧力を有する、請求項27から31のいずれかに記載の設備。
【請求項33】
前記圧力容器への供給のためにサブクール水を貯蔵するように構成されたサブクール水供給容器をさらに含み、
前記圧力容器の貯蔵容積に対する前記サブクール水供給容器の貯蔵容積の比率が、少なくとも5%、任意により少なくとも7.5%または少なくとも10%である、請求項27から32のいずれかに記載の設備。
【請求項34】
前記コントローラが、前記減耗期間中に前記圧力容器内の液体水の液面が前記ヒーターの動作のための下限液面より下がるように、前記コントローラが蒸気が放出されることを可能にする延長減耗モードで選択的に動作するように構成され、前記液面が前記ヒーターの動作のための前記下限液面より下である場合に、前記コントローラが前記ヒーターによる加熱を防止し、
任意により、前記コントローラが、前記ヒーターを、前記液面を前記下限液面より低下させることになる蒸気放出を前記コントローラが防止する加熱減耗モードで選択的に動作させるように構成され、前記コントローラが、前記液面が前記下限液面より下である場合、前記ヒーターによる加熱を可能にする、請求項26から33のいずれかに記載の設備。
【請求項35】
前記熱負荷が、前記圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンを画定するように前記圧力容器に対して相対的に位置づけられた前記熱交換器を含み、それによって前記熱交換器内で凝縮する放出蒸気が前記圧力容器の下部における復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成する、請求項27から31のいずれかに記載の設備。
【請求項36】
前記熱交換器が前記圧力容器より高い位置に配置され、前記コントローラが、前記熱交換器の前記相対位置を前提として重力の作用下で前記サブクール水を前記圧力容器に戻すのに十分な水頭があるように選択された放出圧力で蒸気を前記熱交換器に放出させるように構成され、および/または、
前記コントローラが、前記水が少なくとも10℃だけサブクールされるように前記熱交換器における熱交換を制御するように構成されている、請求項35に記載の設備。
【請求項37】
前記圧力容器内の水の液面に対応する液面信号を前記コントローラに提供するように構成された液面センサを含み、および/または、
前記圧力容器内の水の圧力に対応する圧力信号を前記コントローラに提供するように構成された貯蔵圧力センサを含み、および/または、
前記圧力容器内の水の温度に対応する温度信号を前記コントローラに提供するように構成された貯蔵温度信号を含み、および/または、
前記圧力容器の前記放出口から蒸気が放出される放出圧力に対応する圧力信号を前記コントローラに提供するように構成された放出圧力センサを含み、および/または、
前記放出口の下流の蒸気の流量に対応する流量信号を前記コントローラに提供するように構成された放出流量計を含み、および/または、
前記圧力容器に供給されるサブクール水の流量に対応する流量信号を前記コントローラに提供するように構成された流入流量計を含む、請求項27から36のいずれかに記載の設備。
【請求項38】
フラッシュポテンシャルが、前記貯蔵圧力が前記熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、前記圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、前記フラッシュポテンシャルの放出時の前記ヒーターの動作のための下限量を上回る前記圧力容器内の液体水の量に対応し、
前記コントローラが、時間依存設定などの所定の設定に基づいて、またはユーザ入力に基づいて、または予測需要プロファイルおよび/または前記ヒーターの予測パワー出力プロファイルに基づいて、前記熱貯蔵設備を再充填モードと減耗モードのいずれで動作させるかを選択するように構成され、
前記減耗モードにおいて、前記コントローラが、前記液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価し、前記評価が前記液面マージンが負であることに対応する場合は前記液面マージンを上昇させ、前記フラッシュポテンシャルを低下させるために、前記圧力容器にサブクール水を供給するように構成され、および/または、
前記再充填モードにおいて、前記コントローラが、(i)前記ピーク貯蔵圧力において目標液面に対応する水の目標質量まで液面マージンと前記圧力容器内の水の量とが漸進的に上昇する間に、所定のフラッシュポテンシャルであるかまたは予測需要に対応する最小再充填フラッシュポテンシャルを維持するためと、(ii)その後、前記貯蔵圧力を前記ピーク貯蔵圧力まで上昇させるように前記液体水を加熱するために、加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けるように構成されている、請求項27から37のいずれかに記載の設備。
【請求項39】
前記フラッシュポテンシャルが予測フラッシュポテンシャルであり、前記コントローラが、前記フラッシュポテンシャルをある期間にわたる予測需要および/または前記ヒーターの予測パワー出力の関数として予測するように構成され、
前記液面マージンが予測液面マージンであり、前記コントローラが、前記期間にわたる前記予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて前記液面マージンを予測するように構成されている、請求項38に記載の設備。
【請求項40】
前記コントローラが、前記設備の履歴蒸気需要データまたは履歴熱需要データなどの履歴需要データに基づいて前記予測需要を判定するように構成され、および/または、
前記コントローラが、予報気象条件に基づいて前記予測需要を判定するように構成され、および/または、
前記コントローラが、前記ヒーターの履歴パワー可用量に基づいて前記ヒーターの前記予測パワー出力を判定するように構成され、および/または、
前記コントローラが、予報気象条件に基づいて前記ヒーターの前記予測パワー出力を判定するように構成されている、請求項38または39に記載の設備。
【請求項41】
前記再充填モードにおいて、前記コントローラが、再充填期間のうちの遊休部分中に前記予測需要が蒸気の需要がないことに対応する場合、前記コントローラが前記遊休部分中に前記貯蔵圧力を前記下限圧力より下に低下させるためにサブクール水を供給させるように構成され、
任意により、前記コントローラが、その後、非ゼロ需要に対応するフラッシュポテンシャルを供給するために、前記圧力容器内の液体水を加熱することによって前記貯蔵圧力を上昇させるように構成されている、請求項38から40のいずれかに記載の設備。
【請求項42】
前記コントローラが、150kg/m時以下、たとえば100kg/m時以下、または50kg/m時以下である、前記圧力容器内の水の液面の単位面積当たりの最大流量で蒸気が選択的に放出されるように前記制御弁を制御するように構成されている、請求項27から41のいずれかに記載の設備。
【請求項43】
前記圧力容器が、第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷にそれぞれの制御弁を介して蒸気を放出するように構成され、
前記コントローラが、前記フラッシュポテンシャルが前記複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価するように構成され、
前記評価の結果に応答して、前記コントローラが、前記熱負荷のそれぞれの優先度を指定する優先度データを評価し、相対的に優先度がより低い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御するよりも優先して、相対的に優先度が高い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御する優先放出モードで動作するように構成されている、請求項27から41のいずれかに記載の設備。
【請求項44】
開放構成において前記圧力容器から放出される蒸気の形態で前記熱負荷に水を供給し、それによって復水としての前記水の対応する戻りなしに前記熱負荷が蒸気として供給された前記水を消費するように構成され、
前記コントローラが、0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で前記熱負荷に蒸気を放出するように構成され、または前記熱負荷が0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で放出された蒸気を受け取るように構成されている、請求項27から43のいずれかに記載の設備。
【請求項45】
前記圧力容器から放出された蒸気を少なくとも2つの熱負荷に供給するように構成され、
任意により、
前記熱貯蔵設備が、開放構成において前記圧力容器から放出された蒸気の形態の水を前記熱負荷のうちの1つに供給し、それによって前記水が異質プロセス流体または異質物と接触させられ、および/または復水としての前記水の対応する戻りなしに前記熱負荷から放出されるように構成され、および/または、
前記熱貯蔵設備が、閉ループにおいて前記圧力容器から放出された蒸気の形態の水を前記熱負荷のうちの1つに供給し、それによって前記水が、たとえばサブクール水供給容器を介して、サブクール水として少なくとも部分的に前記圧力容器に戻されるように構成されている、請求項27から44のいずれかに記載の設備。
【請求項46】
前記圧力容器が、脱気路に沿ってサブクール水の注入流を受け取り、前記圧力容器内からの蒸気の脱気流を前記脱気路に沿って向流として導くように構成された脱気装置を備え、
前記コントローラが、貯蔵圧力の範囲にわたって前記注入流が前記脱気路に沿った前記蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、前記注入流の温度および/または前記蒸気の温度の関数として蒸気の前記脱気流の速度を変化させるように構成され、
任意により、前記コントローラが、前記脱気装置からの蒸気の前記脱気流とそれに付随する同伴気体とを排出するための制御弁を制御することによって前記速度を変化させるように構成され、
任意により、前記コントローラが、前記注入流の前記温度および/または前記蒸気の前記温度と相関した速度または制御弁設定のデータベースを参照することによって、前記速度または前記速度を制御するための制御弁設定を制御するように構成されている、請求項27から45のいずれかに記載の設備。
【請求項47】
前記ヒーターが、前記ヒーターの動作のための下限液面が60%以下、たとえば50%以下、40%以下、または30%以下の前記圧力容器内の水の液体分率に対応するように、前記圧力容器内に設置されている、請求項27から46のいずれかに記載の設備。
mv
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー貯蔵および供給のための方法および装置(たとえば設備)に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを必要とする工業プラントおよびその他の施設に、プラントまたはその他の設備における熱負荷に配給するために蒸気を発生することができる蒸気供給システムを設けることが知られている。
【0003】
そのような蒸気供給システムは、典型的にはバーナー式ボイラーと、アキュムレータとを含む。蒸気需要の変動に対応するためにボイラーを大きなターンダウン比にわたって動作させるのは非効率的であり、したがって、ボイラーの動作期間中のボイラーの最適蒸気放出レートを上回る需要と下回る需要のそのような変動に対応するために、典型的にはアキュムレータが設けられる。
【0004】
化石燃料を必要とするシステムを、電気式システムに置き換える傾向がある。電気加熱素子を備えた電気式ボイラーが提案されており、電気加熱素子は、変動する蒸気需要にボイラーによってより効率的に対応することができるように、可変パワー出力とより一致した効率を提供する。
【発明の概要】
【0005】
[発明が解決しようとする課題]
[課題を解決するための手段]
第1の態様によると、熱エネルギー貯蔵および供給方法であって、
圧力容器にサブクール水を供給することと、
容器が可変貯蔵圧力において飽和液体水と蒸気とを含むように電気式ヒーターを使用して圧力容器内の液体水を加熱することと、
貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで上昇させるようにヒーターを制御することと、
減耗期間中に貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、熱エネルギー需要に応答して圧力容器の放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出することとを含む方法が開示される。
【0006】
本明細書で開示されている圧力数値は、明記されている場合(たとえばゲージ圧力として)を除き、絶対圧力である。本明細書で言う減耗期間とは、放出蒸気に対応するエンタルピー出力が圧力容器へのエネルギー投入よりも大きい期間とすることができる。放出蒸気に対応するエンタルビー出力は、蒸気が放出されたときに圧力容器のそれぞれの貯蔵圧力を参照することによって判定される、それぞれの期間中に圧力容器から放出される蒸気の総エンタルピーとすることができる。これは、蒸気の放出に起因する圧力容器内の水のエンタルピーの変化に相当する。エンタルピー出力は、放出蒸気に対応するエンタルピー損失とも呼ぶことがある。圧力容器へのエネルギー投入は、圧力容器に供給される(すなわち、減耗期間中に新たに供給される)サブクール水のエンタルピーと、ヒーターによる加熱によって圧力容器内の水に投入されるエネルギーとの合計である。
【0007】
蒸気は、放出口から放出される蒸気が制御弁を通過するように、制御弁、たとえば放出口または放出口の下流に配置された制御弁の制御によって、放出口から選択的に放出可能である。本明細書に記載の一部の実施例では、制御弁は容器から遠隔にあってもよく、たとえば熱サイフォン構成で復水回収管路上に設けられてもよい(このような場合、蒸気は制御弁を通過しない)。
【0008】
減耗期間中、総エンタルピー出力は総エネルギー投入量よりも大きくてよく、一方、どの瞬間における瞬間エンタルピー出力も同じ瞬間における瞬間エネルギー投入量よりも少なくなり得る。
【0009】
減耗期間は、別の面では、圧力容器中の水の質量変動およびエネルギー(またはエンタルピー)変動が、貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するような変動である期間と言うこともできる。質量変動とエネルギー変動は、蒸気の排出、加熱によるエネルギー投入、および/または、サブクール水の供給に起因し得る。
【0010】
放出蒸気は、中間蒸気アキュムレータを通過せずに直接、熱負荷に供給されるか、または、圧力容器と熱負荷との間の任意の1つまたは複数の蒸気アキュムレータが圧力容器の容積より小さい総容積を有してもよい。
【0011】
本明細書では、「直接」という表現は、アキュムレータを通過しないという意図を考慮して解釈されるべきである。したがって、放出蒸気は、1つまたは複数の他の構成要素を介して(たとえば過熱防止装置を介して)熱負荷に供給されてもよいが、アキュムレータは通過しなくてもよい。
【0012】
方法は、減耗期間にヒーターを動作させることを含むことができる。ヒーターは、減耗期間中に、蒸気の選択的な放出と同時に動作させることができる。
【0013】
方法は、圧力容器に同時にサブクール水を供給せずに、減耗期間の一部または全部の間、および/または、少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで少なくとも1MPaだけ貯蔵圧力が上昇する再充填期間の一部または全部の間、ヒーターを動作させることを含むことができる。
【0014】
本明細書で言う再充填期間とは、加熱による圧力容器へのエネルギー投入量が、熱エネルギー需要を満たすための蒸気放出に対応するエンタルピー出力よりも大きい期間を指す場合がある。再充填期間は、別の面では、圧力容器中の水の質量変動およびエネルギー(またはエンタルピー)変動が、貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力まで少なくとも1MPaだけ上昇する変動である期間と言うことができる。質量変動およびエネルギー変動は、加熱、蒸気の放出、および/または、サブクール水の供給に起因し得る。
【0015】
蒸気は、圧力容器内の液体水の液面(すなわち、液体水の表面、または液体水と蒸気との界面)が、減耗期間中にヒーターの動作のための下限液面を下回るように、放出口から放出されてもよい。コントローラは、水の液面が下限液面より上にあるときに蒸気が放出されるのと同時に、減耗期間中にヒーターを動作させてもよく、また、コントローラは、下限液面を超える蒸気の継続放出のためにヒーターの動作を停止させてもよい。
【0016】
圧力容器内の液体水の液面は、減耗期間の延長部分中にヒーターの動作のための下限液面を下回ってもよい。「延長」とは、圧力容器に追加の水を供給することによって液面が再び上昇するまでヒーターを動作させることができないというトレードオフと引き換えに、液面が下限液面を下回ることを許容することによって蒸気の放出を継続する能力が延長されることを意味する。延長減耗期間が終了した後(たとえば、蒸気の放出が停止された後、たとえば下限圧力条件に達したとき)、液面を液面限界を上回るまで回復させるために、圧力容器に水が供給されてもよく、その後、ヒーターを再び稼働させてもよい。
【0017】
たとえば、下限液面は、ヒーターの動作のための下限液面高さ(すなわち、液体水と蒸気との界面の最低高さ)であってもよく、これはヒーターの加熱素子が容器内で延びる高さに対応するかまたはその高さとすることができる。下限液面は、液体水の下限液体体積であってもよく、これは圧力容器内の液体水の体積分率(すなわち0~1)として表すことができる。
【0018】
言い換えると、蒸気は液面マージンが負になるように放出されてもよい。
【0019】
蒸気は、放出圧力で熱負荷に放出されてもよく、貯蔵圧力が放出圧力より大きい場合に容器にサブクール水が供給されてもよい。
【0020】
サブクール水は、(たとえば復水供給容器から)圧力容器への供給の瞬間にサブクールされる。言い換えると、水は圧力容器中の水の温度よりも低い温度で復水を貯蔵する復水供給容器から供給される。
【0021】
放出圧力は可変とすることができ、サブクール水は蒸気が放出中されていないときに供給されてもよく、その場合、放出圧力は、蒸気が最後に放出された放出圧力と解釈される。
【0022】
ピーク貯蔵圧力は、サブクール水が容器に供給される最大給水圧力を超えてもよい。
【0023】
サブクール水は、減耗期間中に圧力容器に供給されてもよい。減耗期間中に圧力容器に供給されるサブクール水の質量は、減耗期間中に放出される蒸気の質量の50%以下、たとえば25%以下、10%以下、または5%以下であってもよい。
【0024】
熱負荷は、ホットウェルなどのサブクール水供給容器への放出蒸気に対応する復水の流れを放出してもよい。減耗期間中に放出される蒸気の質量の少なくとも50%、たとえば少なくとも75%、少なくとも90%、または減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気によって生じる復水のほぼすべてに対応する復水の質量が、圧力容器へのその後の再供給のために減耗期間中にサブクール水供給部に供給されてもよい。
【0025】
熱負荷は、熱交換器内で凝縮する放出蒸気が、減耗期間中に圧力容器の下部における復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成するように、圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンが確立されるように圧力容器に対して相対的に位置づけられた熱交換器を含むことができる。
【0026】
重力の作用下でサブクール水を圧力容器に戻すのに十分な水頭を与えるように、熱交換器は復水注入口よりも高い位置に配置されてもよい。熱交換器は、熱交換器内の水を貯蔵圧力に対応する飽和温度に対して相対的に少なくとも10℃だけサブクールしてもよい。
【0027】
圧力容器からの蒸気の放出を制御するための制御弁が、熱交換器から復水を圧力容器に戻す復水管路上に設けられた復水管路制御弁であり、熱交換器から圧力容器への復水の流量を変化させ、または停止するために、コントローラによって制御可能であり、それによって圧力容器からの蒸気放出も制御してもよい。
【0028】
サブクール水は、サブクール水が供給されるにつれて貯蔵圧力が低下するような注入流量で圧力容器に供給されてもよい。
【0029】
フラッシュポテンシャルは、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応する。
【0030】
液面マージンは、フラッシュポテンシャルの放出時のヒーターの動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応する。
【0031】
方法は、液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価することと、その評価に基づいて、液面マージンを上昇させるためとフラッシュポテンシャルを低下させるために圧力容器にサブクール水を供給することとを含んでもよい。
【0032】
サブクール水は、評価が負の液面マージンに対応する場合に、液面マージンを上昇させ、フラッシュポテンシャルを低下させるために供給されてもよい。
【0033】
一例として、フラッシュポテンシャルは、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の質量に対応するか、またはそのような蒸気の質量と定義することができる。フラッシュポテンシャルは、熱負荷への蒸気の所定のピーク放出レートを維持することができる時間を参照するなど、他の方法で定義することもできる。
【0034】
一例として、液面マージンは、フラッシュポテンシャルの放出時の圧力容器内の水の液面の高さと、ヒーターの動作のための下限液面高さとの差(この差は、液面が下限液面を下回るときに負である)に対応するかまたはそのように定義することができる。液面マージンは、フラッシュポテンシャルの放出時の圧力容器内の液体水の体積と、ヒーターの動作のための液体水の下限液体体積との差と定義することもできる。体積は、圧力容器内の液体水の体積分率(すなわち0~1)として表すことができる。
【0035】
基準は、瞬間フラッシュポテンシャルの放出に基づいて、または予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて、液面マージンが正であるか負であるかに対応し得る。
【0036】
基準の評価は、フラッシュポテンシャルを判定することと、フラッシュポテンシャル(たとえば瞬間フラッシュポテンシャルまたは予測フラッシュポテンシャル)の放出に基づいて液面マージンを判定することとを含み得る。瞬間フラッシュポテンシャルは、圧力容器内の現在の貯蔵圧力および水の液面と、下限圧力との関数とすることができる。
【0037】
フラッシュポテンシャルは、ある期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力の関数である予測フラッシュポテンシャルであってもよい。液面マージンは、その期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づく予測液面マージンであってもよい。
【0038】
たとえば、基準を評価することは、その期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて予測液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価することを含むことができる。基準を評価することは、予測フラッシュポテンシャルを判定することと、その期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて予測液面マージンを判定することと、予測液面マージンが正であるか負であるかを判定することとを含むことができる。
【0039】
予測フラッシュポテンシャルは、現在の液面と貯蔵圧力に基づいて、およびその期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力に基づいて判定されてもよい。需要は、たとえば、予測熱エネルギー需要または予測蒸気需要であってもよい。
【0040】
予測需要は設備の履歴蒸気需要または熱需要データなどの履歴需要データに基づいてもよく、および/または、予測需要は予報気象条件に基づいてもよく、および/または、ヒーターの予測パワー出力はヒーターの履歴パワー可用量データに基づいてもよく、および/またはヒーターの予測パワー出力は予報気象条件に基づいてもよい。
【0041】
第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷があってもよい。それぞれの熱エネルギー需要に基づいて、圧力容器からそれぞれの制御弁を介して熱負荷のそれぞれに蒸気が選択的に放出されてもよい。方法は、フラッシュポテンシャルが複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価することを含んでもよい。方法は、評価と、熱負荷に関する優先度データとに基づいて、それぞれの第2の熱エネルギー需要を満たすために第2の熱負荷に蒸気を放出することに優先して、それぞれの第1の熱エネルギー需要を満たすために第1の熱負荷に蒸気を放出すると決定することを含むことができる。
【0042】
方法は、この判定に続いて、
それぞれの第1の熱エネルギー需要を満たすために第1の熱負荷に蒸気を放出することと、
それぞれの第2の熱エネルギー需要を部分的にのみ満たすために第2の熱負荷に蒸気を放出すること、または、
それぞれの第2の熱エネルギー需要にかかわりなく第2の熱負荷への蒸気の放出を防止すること、または、
第2の熱エネルギー需要を満たすために低下させた能力を指示するように、少なくとも第2の熱負荷を制御するコントローラに負荷制限信号を伝達し、それによってコントローラが、それぞれの熱エネルギー需要を低減するように第2の熱負荷を動作させることができる、負荷制限信号を伝達することを含んでもよい。
【0043】
方法は、再充填期間中に、貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで少なくとも1MPaだけ上昇させるように、圧力容器内の液体を加熱することと、ピーク貯蔵圧力におけるピーク液面に対応する圧力容器内の水のピーク質量に達するように、圧力容器にサブクール水を供給することとを含んでもよい。再充填期間の存続時間は、減耗期間の存続時間の少なくとも100%、たとえば少なくとも125%、または少なくとも150%とすることができる。
【0044】
たとえば、ピーク貯蔵圧力におけるピーク液面は90%であってもよく、または少なくとも80%であってもよい。
【0045】
方法は、再充填期間中の加熱のプロファイルに対して相対的にフロントローディング(前倒し)されるように、再充填期間中の給水のプロファイルを段階付けることを含んでもよい。
【0046】
サブクール水の供給をフロントローディングすることによって、再充填期間中の圧力容器内の水の温度を(たとえば、給水の一様なプロファイルまたは給水のバックローディング(後ろ倒し)プロファイルと比較して)相対的に低く維持することができ、それによって圧力容器の壁を通した熱損失を低減することができる。
【0047】
水のプロファイルが加熱のプロファイルに対して相対的にフロントローディングされるように給水と加熱を段階付けることは、液面マージンが水のピーク質量まで漸進的に上昇する間、最小再充填フラッシュポテンシャル(所定の最小フラッシュポテンシャルまたは予測需要に対応するフラッシュポテンシャルとすることができる)を維持することと、その後、圧力をピーク貯蔵圧力まで上昇させるように液体水を加熱することとを含むことができる。
【0048】
フラッシュポテンシャルは、本明細書の他の箇所で定義している通りとすることができる。液面マージンは、本明細書の他の箇所で定義している通りとすることができる。
【0049】
フラッシュポテンシャルは、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応する。
【0050】
液面マージンは、フラッシュポテンシャルの放出時のヒーターの動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応する。
【0051】
方法は、再充填期間の水優先部分中に、液面マージンが漸進的に上昇するように水の目標ピーク質量まで圧力容器内の水の量を上昇させながら、最小再充填フラッシュポテンシャルを維持するように加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けることと、その後、貯蔵圧力をピーク貯蔵圧力まで上昇させるために再充填期間のフラッシュ優先部分中に液体水を加熱することとを含んでもよい。
【0052】
最小再充填フラッシュポテンシャルは、所定の最小フラッシュポテンシャルであるか、または予測需要に対応するフラッシュポテンシャルとすることができる。
【0053】
最小再充填フラッシュポテンシャルは、予測需要に対応してもよい。予測需要は、再充填期間の遊休部分中に蒸気の需要がないことに対応してもよく(たとえば需要がないことであってもよく)、方法は、遊休部分中に貯蔵圧力を下限圧力よりも下に下げるためにサブクール水を供給することを含んでもよく、圧力はその後、非ゼロ需要に対応するフラッシュポテンシャルを提供するための熱投入によって上昇する。
【0054】
圧力容器内の水の液面の単位面積当たりの減耗期間中の蒸気放出の最大流量は、150kg/m時以下、たとえば100kg/m時以下、または50kg/m時以下である。単位面積当たりの蒸気放出の最大流量は、本明細書の他の箇所で説明しているような蒸気同伴のない最大蒸気放出流量(MSR)に対するパーセンテージとして表すことができ、MSRの10%以下、たとえば5%以下、または3%以下とすることができる。
【0055】
方法は、圧力容器内から蒸気の脱気流を脱気路に沿って向流として搬送することによって、脱気路に沿って圧力容器に供給されるサブクール水の注入流を脱気することを含むことができる。注入流は、圧力容器の貯蔵圧力の範囲にわたって圧力容器に供給されてもよい。注入流が貯蔵圧力の範囲にわたって蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、蒸気の脱気流の速度を注入流の温度および/または注入流と蒸気との温度差の関数として変化させる。この速度は、蒸気の脱気流とそれに付随する同伴気体とを排出するための制御弁を制御することによって変化させることができる。速度または速度を制御するための制御弁設定は、注入流の温度および/または蒸気の温度と相関した速度または制御弁設定のデータベースを参照することによって判定することができる。
【0056】
サブクール水の注入流を、本明細書に記載のように減耗期間または再充填期間期間中に脱気することができる。
【0057】
ピーク貯蔵圧力は少なくとも2.5MPa、たとえば少なくとも3MPaであってもよく、および/または貯蔵圧力は減耗期間に1.5MPa以下、たとえば1MPa以下、または0.8MPa以下の値まで低下してもよい。
【0058】
平均減耗パワーは、減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーを減耗期間の存続時間で割った値と定義することができる。最大減耗パワーは、減耗期間内の任意の1分間の最小パワー評価期間中に放出される蒸気の最大エンタルピーを、最小パワー評価期間で割った値と定義することができる。
【0059】
方法は、貯蔵圧力が少なくとも1MPaだけ上昇する再充填期間中に、ヒーターを使用して圧力容器内の液体水を加熱することをさらに含んでもよい。平均再充填パワーは、再充填期間中にヒーターによって液体水に与えられる累積エネルギーを、再充填期間の存続時間で割った値と定義することができる。最大再加熱パワーは、再充填期間内にヒーターによって液体水にエネルギーが与えられる最大パワーと定義することができる。平均再加熱パワーは平均減耗パワーの50%以下であり、および/または平均再加熱パワーは最大減耗パワーの50%以下であり、および/または最大再加熱パワーは最大減耗パワーの50%以下であるとされてもよい。
【0060】
(i)減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーと、(ii)再充填期間中のヒーターの平均再加熱パワーとの大きさ比は、少なくとも25000秒である。
【0061】
方法は、本開示の第2の態様による熱設備を使用して行われてもよい。
【0062】
第2の態様によると、
2MPaの貯蔵圧力で飽和液体水と蒸気とを含む水を貯蔵するための圧力容器であって、熱負荷に蒸気を放出するための放出口を有する圧力容器と、
圧力容器内の貯蔵圧力を変化させるために圧力容器に貯蔵されている液体水を加熱するように構成された電気式ヒーターと、
少なくとも2MPaの飽和液体水と蒸気とのピーク貯蔵圧力に達するように、圧力容器内の液体水を加熱するようにヒーターを制御することと、
熱エネルギー需要に応答して、放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出するように制御弁を制御することと、
貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、熱エネルギー需要を満たすために蒸気を放出させることとによって、
前記熱貯蔵設備を動作させるように構成されたコントローラとを含む、熱エネルギー貯蔵および供給設備が提供される。
【0063】
ピーク貯蔵圧力は、少なくとも2.5MPa、たとえば少なくとも3MPaとすることができる。
【0064】
蒸気は、制御弁の制御によって放出口から選択的に放出することができ、たとえば、蒸気は制御弁を介して熱負荷に放出することができる。制御弁は、放出口から放出された蒸気が制御弁を通過するように放出口に、または放出口の下流に配置されてもよい。本明細書に記載の一部の実施例では、制御弁は容器から遠隔にあってよく、たとえば、熱サイフォン構成において復水回収管路上に設けられてもよい(その場合、蒸気は制御弁を通過しない)。
【0065】
放出口が、放出された蒸気を中間蒸気アキュムレータを通さずに熱負荷に直接供給するように熱負荷と連通しているか、または、圧力容器と熱負荷との間の任意の1つまたは複数の蒸気アキュムレータが圧力容器の容積より小さい総容積を有してもよい。
【0066】
コントローラは、蒸気を選択的に放出するための制御弁の制御とは独立して、圧力容器内の液体水を加熱するようにヒーターを制御するように構成され、それによって使用時に、蒸気の加熱と放出を同時に行うことが可能にされ、蒸気の加熱と放出のそれぞれが他方を行わずに行われることが可能にされてもよい。
【0067】
コントローラは、圧力容器にサブクール水が供給されるようにすることとは独立して、圧力容器内の液体水を加熱するためにヒーターを制御するように構成され、それによって使用時に、加熱とサブクール水供給とを同時に行うことが可能にされ、サブクール水供給を同時に行わずに加熱することが可能にされてもよい。
【0068】
コントローラは、貯蔵圧力が、放出口から(たとえば制御弁を介して)蒸気が放出される放出圧力よりも大きい場合に圧力容器にサブクール水を供給させるように構成されてもよい。
【0069】
設備は、圧力容器にサブクール水を供給するように構成された送水ポンプをさらに含むことができ、任意により、送水ポンプはピーク貯蔵圧力よりも低い最大給水圧力を有する。
【0070】
設備は、圧力容器への供給のためのサブクール水を貯蔵するように構成されたサブクール水供給容器をさらに含むことができる。圧力容器の貯蔵容積に対するサブクール水供給容器の貯蔵容積の比は、少なくとも5%、任意により少なくとも7.5%または少なくとも10%とすることができる。
【0071】
コントローラは、減耗期間中に圧力容器内の液体水の液面がヒーターの動作のための下限液面よりも下がるように、コントローラが蒸気の放出を可能にする延長減耗モードで選択的に動作するように構成され、液面がヒーターの動作のための下限液面より低い場合にコントローラがヒーターによる加熱を防止するようにしてもよい。コントローラは、コントローラが、液面を下限液面よりも下がらせることになる蒸気放出を防止する加熱減耗モードでヒーターを選択的に動作させるように構成され、コントローラが液面が下限液面の下にある場合にヒーターによる加熱を可能にするようにしてもよい。熱負荷が、圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンを画定するように圧力容器に対して相対的に位置づけられた熱交換器を含み、それによって、熱交換器内で凝縮する放出蒸気が、圧力容器の下部における復水注入口に戻らせるサブクール水の水柱を形成するようにしてもよい。熱負荷は、設備の一部とすることができる。
【0072】
熱交換器が圧力容器よりも高い位置に配置され、コントローラが、熱交換器のこの相対位置を前提として重力の作用下でサブクール水を圧力容器に戻すのに十分な水頭があるように選択された放出圧力で、蒸気を熱交換器に放出させるように構成されてもよい。コントローラは、水が少なくとも10℃だけサブクールされるように熱交換器における熱交換を制御するように構成されてもよい。
【0073】
設備は、圧力容器内の水の液面に対応する液面信号をコントローラに提供するように構成された液面センサ、および/または、圧力容器内の水の圧力に対応する圧力信号をコントローラに提供するように構成された貯蔵圧力センサ、および/または、圧力容器内の水の温度に対応する温度信号をコントローラに提供するように構成された貯蔵温度信号、および/または、蒸気が圧力容器の放出口から(それぞれの制御弁を介して)放出される圧力に対応する圧力信号をコントローラに提供するように構成された放出圧力センサ、および/または、放出口の下流(たとえばそれぞれの制御弁の下流)の蒸気の流量に対応する流量信号をコントローラに提供するように構成された放出流量計、および/または、圧力容器に供給されるサブクール水の流量に対応する流量信号をコントローラに提供するように構成された注入流量計を含んでもよい。
【0074】
フラッシュポテンシャルが、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応してもよい。
【0075】
液面マージンが、フラッシュポテンシャルの放出時のヒーターの動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応してもよい。
【0076】
コントローラは、時間依存設定などの所定の設定に基づいて、ユーザ入力に基づいて、または予測需要プロファイルおよび/もしくはヒーターの予測パワー出力プロファイルに基づいて、熱貯蔵設備を再充填モードで動作させるか減耗モードで動作させるかを選択するように構成されてもよい。減耗モードにおいて、コントローラは、液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価し、評価が液面マージンが負であることに対応する場合、液面マージンを上昇させ、フラッシュポテンシャルを減少させるために、圧力容器にサブクール水を供給するように構成されてもよい。再充填モードにおいて、コントローラは、(i)液面マージンと圧力容器内の水の量が、ピーク貯蔵圧力における目標液面に対応する水の目標質量まで上昇する間、所定のフラッシュポテンシャルであるかまたは予測需要に対応する最小再充填フラッシュポテンシャルを維持し、(ii)その後、貯蔵圧力をピーク貯蔵圧力まで上昇させるために液体水を加熱するように、加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けるように構成されてもよい。
【0077】
有用フラッシュポテンシャルは、(i)貯蔵圧力が、熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達すること、および(ii)圧力容器内の液体水の量が下限量に達することのいずれかの前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応する。評価が負の液面マージンが負であることに対応する場合に液面マージンを上昇させフラッシュポテンシャルを減少させるための減耗モードにおけるサブクール水の供給は、有用フラッシュポテンシャルを増加させるものであってもよい。
【0078】
基準は、瞬間フラッシュポテンシャルの放出に基づくかまたは予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて、液面マージンが正であるか負であるかに対応してもよい。
【0079】
コントローラは、フラッシュポテンシャルを判定することと、フラッシュポテンシャル(たとえば瞬間フラッシュポテンシャルまたは予測フラッシュポテンシャル)の放出に基づいて液面マージンを判定することとによって、減耗モードにおいて基準を評価し、および/または再充填モードにおいて給水のプロファイルを段階付けるように構成されてもよい。瞬間フラッシュポテンシャルは、圧力容器内の現在の貯蔵圧力および水の液面と下限圧力との関数とすることができる。他の場合には、コントローラは、たとえば本明細書の他の箇所に記載されているように液面センサから受け取った液面信号に基づいて、フラッシュポテンシャルおよび液面マージンを直接判定せずに、基準を評価し、および/または再充填における給水のプロファイルを段階付けるように構成されてもよい。
【0080】
フラッシュポテンシャルは予測フラッシュポテンシャルであってもよく、その場合、コントローラは、ある期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力の関数としてフラッシュポテンシャルを予測するように構成されてもよい。液面マージンは予測液面マージンであってもよく、コントローラは、その期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて液面マージンを予測するように構成されてもよい。
【0081】
評価される基準は、その期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて予測液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準であってもよい。コントローラは、予測フラッシュポテンシャルを判定することと、その期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて予測液面マージンを判定することと、予測液面マージンが正であるか負であるかを判定することとによって、基準を評価するように構成されてもよい。
【0082】
コントローラは、現在の液面と貯蔵圧力に基づいて、およびその期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力に基づいて、予測フラッシュポテンシャルを判定するように構成されてもよい。需要は、たとえば、予測熱エネルギー需要または予測蒸気需要であってもよい。
【0083】
ヒーターの予測パワー出力プロファイルは、ヒーターを使用して加熱するための予測パワー可用量に対応してもよい。
【0084】
コントローラが、設備の履歴蒸気または熱需要データなどの履歴需要データに基づいて予測需要を判定するように構成され、および/または、コントローラが、予報気象条件に基づいて予測需要を判定するように構成され、および/または、コントローラが、ヒーターの履歴パワー可用量データに基づいてヒーターの予測パワー出力を判定するように構成され、および/またはコントローラが、予報気象条件に基づいてヒーターの予測パワー出力を判定するように構成されてもよい。
【0085】
再充填モードにおいて、コントローラが、再充填期間の遊休部分中に予測需要が蒸気の需要なしに対応する場合に、コントローラが遊休部分中の貯蔵圧力を下限圧力より下に下げるためにサブクール水を供給させるように構成されてもよい。コントローラは、その後、非ゼロ需要に対応するフラッシュポテンシャルを供給するために圧力容器内の液体水を加熱することによって貯蔵圧力を上昇させるように構成されてもよい。
【0086】
コントローラは、150kg/m時以下、たとえば100kg/m時以下、または50kg/m時以下である圧力容器内の水の液面(すなわち表面)の単位面積当たりの最大流量で蒸気が選択的に放出されるように、制御弁を制御するように構成されてもよい。本明細書の他の箇所で説明しているように単位面積当たりの蒸気放出の最大流量は、蒸気同伴のない最大蒸気放出流量(MSR)に対するパーセンテージとして表すことができ、MRSの10%以下、たとえば5%以下、または3%以下とすることができる。
【0087】
圧力容器は、第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む、複数の熱負荷にそれぞれの制御弁を介して蒸気を放出するように構成されてもよい。コントローラは、フラッシュポテンシャルが複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価するように構成されてもよい。コントローラは、評価の結果に応答して、コントローラが熱負荷の相対的優先度を指定する優先度データを評価し、優先度が相対的により低い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすように蒸気の選択的放出を制御することに優先して、優先度が相対的に高い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御する、優先放出モードで動作するように構成されてもよい。
【0088】
評価の結果は、フラッシュポテンシャルが予測需要を満たすには不十分であることを示す結果であってもよい。
【0089】
優先放出モードにおいて、コントローラは、(たとえばコントローラによって受信されたそれぞれの需要信号に基づいて判定された)それぞれの熱エネルギー需要を満たすように蒸気を放出するために、相対的により高い優先度の負荷に関連付けられた制御弁を制御し、(i)(たとえばコントローラによって受信されたそれぞれの需要信号に基づいて判定された)それぞれの熱エネルギー需要を部分的にのみ満たすように蒸気を放出ように、相対的により低い優先度の負荷に関連付けられた制御弁を制御するか、または、(ii)負荷への蒸気の放出を防止するように相対的により低い優先度の負荷に関連付けられた制御弁を制御し、および/または、(iii)それぞれの熱エネルギー需要を満たすように低下された能力を指示するために相対的により低い優先度の熱負荷のコントローラに負荷制限信号を送信するように構成されてもよい。
【0090】
設備は、開放構成において圧力容器から熱負荷に放出される蒸気の形態で水を供給し、それによって復水としての水の対応する戻りなしに熱負荷が蒸気として供給された水を消費するように構成されてもよい。コントローラは、熱負荷に蒸気を0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で放出するように構成されてもよく、または熱負荷が放出された蒸気を0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で受け取るように構成される。
【0091】
設備は、圧力容器から放出された蒸気を少なくとも2つの熱負荷に供給するように構成されてもよい。設備は、開放構成において圧力容器から放出される蒸気の形態で熱負荷のうちの1つに水を供給するように構成されてもよく、それによって水が異質プロセス流体または異質物と接触させられ、および/または復水としての水の対応する戻りなしに熱負荷から放出される。これに加えて、またはこれに代えて、設備は、水を圧力容器から放出される蒸気の形態で熱負荷のうちの1つに閉ループで供給するように構成され、それによって水が少なくとも部分的に圧力容器にサブクール水としてたとえばサブクール水供給容器を介して戻されてもよい。
【0092】
閉ループにおいて、(蒸気として供給される)水は、少なくとも部分的に圧力容器にサブクール水として、異質プロセス流体または異質物と接触なしに戻されてもよい。
【0093】
圧力容器は、脱気路に沿ってサブクール水の注入流を受け取るように構成されるとともに圧力容器内からの蒸気の脱気流を脱気路に沿って向流として導くように構成された、脱気装置を備えてもよい。コントローラは、貯蔵圧力の範囲にわたって注入流が脱気路に沿った蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、蒸気の脱気流の速度を注入流の温度および/または蒸気の温度の関数として変化させるように構成されてもよい。コントローラは、脱気装置からの蒸気の脱気流とそれに付随する同伴気体とを排出するための制御弁を制御することによって速度を変化させるように構成されてもよい。コントローラは、注入流の温度および/または蒸気の温度と相関した速度または制御弁設定のデータベースを参照することによって、速度または速度を制御するための制御弁設定を制御するように構成されてもよい。
【0094】
ヒーターは、ヒーターの動作のための下限液面が、60%以下、たとえば50%以下、40%以下、または30%以下の圧力容器内の水の液体分率に対応するように、圧力器内に設置されてもよい。
【0095】
第3の態様によると、第1の態様に対応し、ピーク貯蔵圧力と減耗期間中の圧力の低減(および後述するようなその他の関連する数値定義)に関して第1の態様とは異なる、熱貯蔵および熱供給の方法が開示される。第3の態様の定義が第1の態様とどのように異なる場合があるかに関する記載については以下で定義する。互いに矛盾する場合を除き、その他のすべての点では、第1の態様に関して記載されている特徴が、必要な変更を加えて第3の態様にも適用可能である。
【0096】
第3の態様によると、ヒーターは貯蔵圧力を少なくとも0.5MPa、たとえば少なくとも1MPa、または少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで上昇させるように制御される。蒸気の選択的放出は、減耗期間中に、貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力の少なくとも50%である減耗圧力差だけ低下するような放出である。
【0097】
第3の態様によると、減耗期間は、圧力容器内の水の質量変動およびエネルギー(またはエンタルピー)変動が、貯蔵圧力が減耗圧力差だけ低下するような変動である期間と言うことができる。
【0098】
第1の態様における再充填期間に関する定義は、貯蔵圧力の上昇に関係する。第3の態様に関する対応する定義は、ピーク貯蔵圧力の少なくとも50%である再充填圧力差に対応する。具体的には、方法は、減耗期間の一部または全部の期間、および/または貯蔵圧力が再充填圧力差だけピーク貯蔵圧力まで上昇する再充填期間の一部または全部の期間、圧力容器にサブクール水を同時に供給せずにヒーターを動作させることを含んでもよく、再充填圧力差はピーク貯蔵圧力の少なくとも50%である。上述のように、ピーク貯蔵圧力は、少なくとも0.5MPa、たとえば少なくとも1MPa、または少なくとも2MPaである。
【0099】
第3の態様によると、再充填期間は、圧力容器内の水の質量およびエネルギー(またはエンタルピー)変動が、貯蔵圧力が再充填圧力差だけピーク貯蔵圧力まで上昇するような変動である期間と言うことができる。
【0100】
第3の態様によると、方法は、再充填期間において、貯蔵圧力を再充填圧力差だけピーク貯蔵圧力まで上昇させるために圧力容器内の液体を加熱することと、ピーク貯蔵圧力におけるピーク液面に対応する圧力容器内の水のピーク質量に達するように、圧力容器にサブクール水を供給することとを含んでもよい。再充填期間の存続時間は、減耗期間の存続時間の少なくとも100%、たとえば少なくとも125%、または少なくとも150%とすることができる。
【0101】
第3の態様による方法は、第2の態様による熱設備または第4の態様による熱エネルギー貯蔵および供給装置を使用して行われてもよい。
【0102】
第4の態様によると、第2の態様の設備に対応し、ピーク貯蔵圧力と減耗期間中の圧力の低減(および後述するようなその他の関連する数値定義)に関して第2の態様とは異なる、熱エネルギー貯蔵および供給装置(たとえば設備)が提供される。第4の態様の定義が第2の態様とどのように異なる場合があるかに関する記載については以下で定義する。互いに矛盾する場合を除き、その他のすべての点では、第1、第2および第3の態様のいずれに関して記載されている特徴も、必要な変更を加えて第4の態様に適用可能である。
【0103】
第4の態様によると、熱エネルギー貯蔵および供給装置が、
少なくとも0.5MPa、たとえば少なくとも1MPaまたは少なくとも2MPaの貯蔵圧力で飽和液体水と蒸気とを含む水を貯蔵するための圧力容器であって、熱負荷に蒸気を放出するための放出口を有する圧力容器と、
圧力容器内の貯蔵圧力を変化させるために圧力容器に貯蔵されている液体水を加熱するように構成された電気式ヒーターと、
少なくとも0.5MPa、たとえば少なくとも1MPaまたは少なくとも2MPaの飽和液体水と蒸気とのピーク貯蔵圧力に達するように、圧力容器内の液体水を加熱するようにヒーターを制御することと、
熱エネルギー需要に応答して、放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出するように制御弁を制御することと、
貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力からピーク貯蔵圧力の少なくとも50%だけ低下するように、熱エネルギー需要を満たすために蒸気を放出させることとによって、
熱貯蔵装置を動作させるように構成されたコントローラとを含む。
【0104】
放出圧力に関する定義は、第2の態様に関連して示されている。第4の態様による熱エネルギー貯蔵および供給装置は、(現行の貯蔵圧力と同じかまたはそれより低くてもよい)可変放出圧力で蒸気を放出するように構成されている。本明細書に記載のコントローラはプロセッサを含み得る。コントローラおよび/またはプロセッサは、本明細書に記載され、図面に示されている方法を行わせるための任意の適切な回路を含むことができる。コントローラまたはプロセッサは、コントローラまたはプロセッサがそのために構成されている方法および/または記載の機能を実行するための、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/またはシングルまたはマルチプロセッサアーキテクチャ、および/または順次(フォン・ノイマン)/並列アーキテクチャ、および/または少なくとも1つのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、および/または少なくとも1つのマイクロプロセッサ、および/または少なくとも1つのマイクロコントローラ、および/または中央処理装置(CPU)を含み得る。
【0105】
コントローラは、またはプロセッサは、本明細書に記載のデータを記憶し、および/または、本明細書に記載のプロセスおよび機能(たとえばパラメータの決定および制御ルーチンの実行)を実施するための機械可読命令(たとえばソフトウェア)を記憶する、1つまたは複数のメモリを含むかまたはそのようなメモリと通信することができる。
【0106】
メモリは、任意の適切な非一過性のコンピュータ可読記憶媒体、1つまたは複数のデータストレージデバイスであってもよく、ハードディスクおよび/またはソリッドステートメモリ(フラッシュメモリなど)を含み得る。一部の実施例では、コンピュータ可読命令は、無線信号を介して、または有線信号を介してメモリに転送されてもよい。メモリは、常設の非リムーバルメモリであってもよく、またはリムーバルメモリ(ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブなど)であってもよい。メモリは、プロセッサまたはコントローラによって読み出されると、本明細書に記載されている、および/または、図面に示されている方法を実施させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを記憶することができる。コンピュータプログラムは、ソフトウェア、またはファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせであってもよい。
【0107】
互いに矛盾する場合を除き、上記の態様のいずれか1つに関連して記載されている特徴は、必要な変更を加えていずれの他の態様にも適用可能である。また、相互に矛盾する場合を除き、本明細書に記載のいずれの特徴も、いずれの態様にも適用可能であり、および/または、本明細書に記載されているいずれの他の特徴とも組み合わせることができる。
【0108】
本発明について、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1図1は工業プラント用の例示の熱エネルギー貯蔵および供給設備を概略的に示す図である。
図2図2は蒸気需要の例示のプロファイルを示す図である。
図3図3a、図3b、図4a、図4bは熱エネルギー貯蔵および供給設備の動作条件の例示のプロファイルを示す図である。
図4図3a、図3b、図4a、図4bは熱エネルギー貯蔵および供給設備の動作条件の例示のプロファイルを示す図である。
図5図5は蒸気放出を制御する方法の流れ図である。
図6図6は加熱を制御する方法の流れ図である。
図7図7a~図7eはフラッシュポテンシャルの概念を例示するための参照として圧力容器内の様々な液面を概略的に示す図である。
図8】圧力容器へのサブクール水の供給を制御する方法の示す流れ図である。
図9】熱エネルギー貯蔵および供給設備のさらなる一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
図1に、熱エネルギー貯蔵および供給設備100を備えた、少なくとも1つの熱負荷を有する施設の一例として、工業プラント10を概略的に示す。
【0111】
工業プラント10は、この特定の実施例ではそれぞれ室内暖房システムと滅菌システムであるが、変形実施例では熱エネルギーを必要とする任意のシステムとすることができる、第1および第2のプラント熱負荷30、40を有する。第1のプラント熱負荷30(室内暖房システム)は、以下で詳述するように、熱負荷のためのプロセス流体として設備100から蒸気を直接受けるのではなく、設備100と工業プラント10との間に延びる熱伝達循環路132を介して熱エネルギー(熱)を受け取るように構成されている。それに対して、第2のプラント熱負荷40(滅菌システム)は、たとえば物の滅菌のために使用するために、熱負荷自体のプロセス流体として、設備100から放出される蒸気を直接受け取るように構成されている。第2のプラント熱負荷40で消費される蒸気(すなわち潜熱を放出するように凝縮されている)はドレイン50に放出されるが、変形実施例では、設備100の給水部に復水として戻されてもよい。
【0112】
この実施例では、プラント熱負荷30、40は、設備100とは独立して動作させられ、(後述するように)それぞれの熱エネルギー需要を伝えるように設備のコントローラ200に動作可能に結合されている。熱エネルギー需要は、任意の適切な形態で、たとえば、熱パワー必要量(たとえば単位kW)、蒸気需要(たとえば単位kg/秒)、または任意の種類の所定最大需要に対するパーセンテージなどの関連パラメータに対応する需要信号として伝えることができる(たとえば、コントローラによって300kWなどの最大需要に対する割合として解釈されて150kWの需要となる「0.5」のコード化)。
【0113】
熱貯蔵および熱供給システム100は、高圧および高温で水を貯蔵するための圧力容器110を含む。完全を期するために、本開示では「水」という用語は任意の相の水を指すために使用され、それに対して「液体水」および「蒸気」という用語は、それぞれ、液相および気相の水を指すために使用される。圧力容器110は、飽和液体水と蒸気を、少なくとも2MPa、たとえば、少なくとも3MPaまたは少なくとも4MPa、または2MPaから6MPaの間の貯蔵圧力で貯蔵するように構成されている。後述する特定の実施例では、圧力容器110は、最大約3MPa(たとえば大気圧にある設備の場合の30バールゲージ圧力に対応する3.101MPa)の目標ピーク貯蔵圧力まで水を貯蔵するために使用される。これらの値は圧力容器の最低要件に相当し、圧力容器は当然ながらより低い値の貯蔵圧力で水を貯蔵することができることを理解されたい。本明細書の他の箇所で説明されているように、変形実施例では、圧力容器は、より低い貯蔵圧力(貯蔵能力に応じてより低い最低要件となる)、たとえば少なくとも0.5MPaまたは少なくとも1MPaで飽和液体水および蒸気を貯蔵するように構成可能されてもよい。
【0114】
圧力容器110は、圧力容器内の貯蔵圧力を変化させるために圧力容器に貯蔵されている液体水を加熱するように構成された電気式ヒーター112を含む。ヒーター112は、再生可能エネルギー源(たとえば太陽光発電電源または風力発電電源)および/または(たとえばガスタービンなどのエンジンに結合された)発電機などの、ローカル電源を含み得る、電源113に結合されている。電源は、ローカル電源を含んでもよく、および/または、非ローカル電力網(たとえばナショナルグリッド)から電力を供給するための電力網接続を含んでもよい。ローカル電源は、マイクログリッドであってもよい。マイクログリッドは、専用ローカル地理的区域に電力を供給するために非ローカル電力網とは独立して動作させることができ、任意により非ローカル電力網に接続可能な、複数のエネルギー源(たとえば電気エネルギー源)からなるローカル配電網と定義することができる。マイクログリッドは、画定された境界を有し、単一の制御可能な実体として機能することができる。それに対して、非ローカル電力網は、広い地理的区域(州など)にサービス提供し、電力網全体が単一の実体としては制御されないような、多数の電源を含むものと理解される。設備の電源が、(i)マイクログリッドであるローカル電源と、(ii)非ローカル電力網へのグリッド接続とを含む場合、グリッド接続は、非ローカル電力網へのマイクログリッドの接続とすることができる。当業者には、マイクログリッドと非ローカル電力網の規模および制御の相違がわかるが、電源が(i)マイクログリッドを含むローカル電源と、(ii)非ローカル電力網へのグリッド接続とを含む場合、(いずれの非ローカル電力網とも独立して動作させる場合の)マイクログリッドの発電能力は、非ローカル電力網の発電能力よりも低いと言うことができる。たとえば、非ローカル電力網の発電能力の10%以下、1%以下、または0.1%以下である場合がある。
【0115】
圧力容器110は、ローカル熱負荷に配給可能な熱エネルギー貯蔵の形態で、マイクログリッドのエネルギー貯蔵を提供することができる。
【0116】
この実施例では、ヒーター112は、ヒーター(または少なくともヒーターの各加熱素子)を沈める圧力容器内の水の下限液面が、約30%の液体分率に対応する、圧力容器の直径の約33%の高さとなるように、圧力容器110の下部に位置する。他の実施例では、下限液面はこれより高くても低くてもよく、たとえば20%と70%の間、たとえば20%~60%、または25%~50%の液体分率に対応してもよい。圧力容器内の水の液面114は、飽和液体水と蒸気など、液体水と気体との界面である。
【0117】
圧力容器110は、コントローラ200に結合され、圧力容器110内の水の貯蔵圧力に対応する貯蔵圧力信号をコントローラ200に伝達するように構成された、センサ210を備える。当然のことながら、容器が液体水と蒸気を含むように水が飽和している場合、圧力はそれぞれの飽和温度に直接対応する。したがって、適切なセンサは、圧力を監視するように構成された圧力センサ、または温度を監視するように構成された温度センサであってもよい。この特定の実施例では、センサ210は貯蔵圧力を監視し、監視圧力をコード化した貯蔵圧力信号をコントローラ200に送信するように構成された圧力センサである。
【0118】
圧力容器110は、当技術分野で知られている任意の適切な種類のものとすることができる液面センサ214、たとえばセンサの監視範囲にわたって延びる細長いプローブを有し、液面センサ214またはコントローラにおける適切なキャリブレーションにより、監視範囲全体にわたって圧力容器内の水の液面を判定するために処理することができる連続可変液面信号(たとえば単位mA)を出力するように構成された、静電容量プローブ液面センサをさらに備える。他の実施例では、液面センサは、たとえば各センサが、液面が不連続出力数量として判定されるように、液面が圧力容器内のそれぞれの高さ/液面より上であるか下であるかを判定するように構成された、複数のセンサを含んでもよい。液面センサ214は、液面に対応する液面信号をコントローラ200に伝達するように構成される。
【0119】
圧力容器110は、蒸気をより低圧の下流圧力(放出圧力)まで低下させるように動作可能な制御弁を介して、圧力容器から蒸気を放出するための放出口116を含む。この実施例では、放出口は圧力容器の圧力容器の最大動作液面より上の容器の上部内に位置する。最大動作液面は、(以下でさらに述べるような)目標ピーク液面とすることができ、または、目標ピーク液面より上の意図しない動作に対応するように、それよりわずかに高くてもよい。たとえば、目標ピーク液面は、容器の容積の90%の目標ピーク液体分率に対応してもよい。この実施例では、以下で詳述するように、それぞれの熱負荷に関連付けられた第1および第2の放出制御弁216、217があり、各放出制御弁は放出口116の下流にあり、放出管路101によって放出口116に接続されている。しかし、他の実施例では、単一または共通の放出制御弁が放出口116の下流に(たとえば図1の破線でマークされている場所215に)あってもよく、または圧力容器110の放出口116と一体化されてもよい。各放出制御弁216、217は、弁を動作させるためのそれぞれの放出制御信号を受信するように、コントローラ200に動作可能に結合されている。
【0120】
圧力容器110は、図1に示すように組み込み脱気装置(すなわち、圧力容器110と一体化されている)とすることができる脱気装置120をさらに備える。脱気装置は、圧力容器に供給された液体水の供給量から、酸素と、二酸化炭素などのその他の溶存成分とを除去するように構成されている。脱気装置120は、当技術分野で知られているような任意の適切な種類のものであってよいが、この実施例では、脱気装置を通って垂直方向に分散されている複数の脱気トレイを含む構成を有するように概略的に示されている。脱気装置120は、水の注入流のための脱気路122(この実施例では、トレイ121を通過する巻き込み経路)を画定し、圧力容器内からの蒸気の脱気流を脱気路に沿って注入流との向流として導くように構成されている。脱気流を脱気路に沿って通すことによって、水の注入流が容器の飽和温度まで上昇させられ、酸素や二酸化炭素などの溶存物質が、脱気流とともに脱気装置から放出される注入流から除去される。脱気流は、図1に示すように、脱気装置排出制御弁124を備えた脱気排出口を通って排出可能である。脱気装置排出制御弁124は、弁を動作させるための脱気流制御信号を受信するようにコントローラ200に動作可能に結合されている。
【0121】
脱気装置への注入流は、以下で詳述するように、需要に応答して水供給源から圧力容器に水を選択的に供給するように制御される。この実施例では、注入流は、注入ポンプ122によって脱気装置に選択的に流入させられる。注入ポンプ122は、それによって注入ポンプ122が圧力容器110と脱気装置120とに可変注入流量と適切な圧力で注入流を流入させるように制御される給水信号を受信するように、コントローラ200に動作可能に結合されている。変形実施例では、注入流は、コントローラ200から受信した給水信号に基づいて注入流量を制御する注入制御弁によって脱気装置に流れることが選択的に可能にされてもよく、注入制御弁は、上述のように水に加圧する注入ポンプ122の下流にあるか、または中間ポンプなしに供給部に結合され、または水に加圧してもよい。
【0122】
変形実施例では、水の注入流は、水供給源から圧力容器110に直接(すなわち、注入流が圧力容器に流入するときに注入流を脱気する脱気装置を通過せずに)供給されてもよく、注入流は上述のように注入ポンプおよび/または注入制御弁を介してコントローラ200によって制御される。脱気装置を含む設備では、水の注入流を、脱気装置を経由するかまたは脱気装置を迂回するかのいずれかで選択的に圧力容器に供給することができるように、水供給源と圧力容器との間に、脱気装置を迂回する迂回管路、たとえば注入ポンプから、または弁機構(たとえば三方弁)から注入ポンプの下流に延びる迂回管路があってもよい。このような機構は、脱気を必要とする可能性がある圧力容器への初期給水のためには脱気装置を使用することができ、その後、給水容器にすでに脱気されている水が入っていると判定される(またはみなされる)場合には脱気装置を迂回することができるため、それぞれの給水源が、設備内から水が(後述するような)閉ループで戻される給水容器である場合に有利となり得る。
【0123】
本開示によって企図される蒸気貯蔵および供給設備は、熱負荷への蒸気の供給のための開放構成または閉ループを有することができる。
【0124】
開放構成は、それぞれの熱負荷に供給される(蒸気として供給される)水が、異質プロセス流体または異質物と接触させられ、および/または復水としての水の対応する戻りなしに熱負荷から放出される構成とみなされる。「異質プロセス流体または異質物」という表現は、熱負荷に供給される水を汚染する可能性がある物質を意味することが意図されている。たとえば、(蒸気として供給される)水が熱負荷またはその下流における別の流体と直接接触する場合、水はその流体と混合する可能性がある。同様に、蒸気が、滅菌器内で滅菌されるかまたは蒸気炉内で加熱乾燥される物などの異質物を加熱するために使用される場合、水(蒸気の場合がある)がそれらの物からの物質によって汚染される可能性がある。開放構成の別の定義は、水が閉ループ内に収容されない構成であろう(介在処理なしに水を圧力容器に再循環させるように構成されている閉ループ)。
【0125】
閉ループは、それぞれの熱負荷に供給される水の一部または全部がサブクール水として、任意により(圧力容器に水を不連続的に供給することができる)サブクール水供給容器を介して、圧力容器に戻される構成とみなすことができる。閉ループは、水が異質プロセス流体または異質物に接触しないように、水の汚染を実質的に防ぐ。
【0126】
図1の例示の設備100は、閉ループ構成における熱交換器である第1の熱負荷130に、第1の放出制御弁216の下流にある配給管路102を介して蒸気を供給するように構成されている。第1の熱負荷130に(蒸気として)供給される水は、後述するように給水容器150を介して圧力容器110に戻される。熱交換器130は、プロセス流体循環路132を介して工業プラント10の第1のプラント熱負荷30に熱的に結合され、熱交換器13に供給される蒸気はプロセス流体循環路のプロセス流体に直接接触しない。コントローラ200は、熱伝達のために熱交換器130に蒸気が選択的に放出されると、熱伝達循環路132に関連付けられた伝熱ポンプ133を作動させるように構成されている。他の実施例では、プロセス循環路132がなくてもよく、配給管路102は、給水容器150に戻る前に、第1のプラント熱負荷30内に直接延びていてもよい(この場合でも第1のプラント熱負荷30のプロセス流体には直接接触しない)。コントローラ200は、熱交換器130を通る蒸気の流量を制御するために、第1のプラント熱負荷30から受信した需要信号に基づいて第1の放出制御弁216を動作させるように構成されている。この実施例では、流量は、コントローラ200に第1の流量信号を提供する、配給管路102に沿って配置された第1の流量計218によって監視され、コントローラ200は、熱エネルギー需要を満たすために監視流量に基づいて、および/または、配給管路102に沿った追加のセンサによって監視可能な圧力および温度などのその他のパラメータに基づいて、第1の放出制御弁216を制御することができる。
【0127】
給水容器150は、第1の熱負荷130(熱交換器130)から戻された水を受け取るための回収注入口と、外部給水(処理済み水道水または工業プラント10の復水回収システムなど)からの水を受け取るための供給源注入口とを有する。給水容器150は、圧力容器110に水を供給するように構成された放出口を有する。この実施例では、放出口は、注入ポンプ122と脱気装置120とを介して圧力容器110に水を供給するが、上述のように、他の実施例では、水は迂回管路を通して圧力容器110に供給されてもよい。
【0128】
例示の設備100は、開放構成において、上述したような滅菌器システム40(第2のプラント熱負荷40)である第2の熱負荷に蒸気を供給するようにさらに構成されている。蒸気は、第2の放出制御弁217の下流にある配給管路103を介して供給される。コントローラ200は、第2のプラント熱負荷40への蒸気の流量を制御するために、第2のプラント熱負荷40から受信した需要信号に基づいて、第2の放出制御弁217を動作させるように構成されている。滅菌器40は工業プラントの熱負荷の代表例であり、実際には、各個別負荷に蒸気を送る工業プラントの蒸気網によって蒸気が供給されるように構成された複数の熱負荷があり得ることを理解されたい。本開示では、このような配管網と複数の負荷とは、関連付けられた総蒸気需要を有する単一の第2の熱負荷40と同等であるとみなすことができる。
【0129】
この実施例では、第2の熱負荷への流量は、コントローラ200に第2の流量信号を提供する、配給管路103に沿って配置された第2の流量計219によって監視され、コントローラ200は、熱エネルギー需要を満たすために監視流量に基づいて、および/または、配給管路103に沿った追加のセンサによって監視可能な圧力および温度などの他のパラメータに基づいて、第2の放出制御弁217を制御することができる。この実施例では、第2のプラント熱負荷40は、第2の熱負荷における異質物(すなわち滅菌のために滅菌器内に置かれる物)と接触させるために蒸気が開放構成で供給されるような滅菌器である。
【0130】
さらに、図1に示すように、滅菌器40に供給された水(蒸気として供給される)は、復水としてドレイン50に排出される。変形実施例では、水は(たとえば、フィルタ装置および/または逆浸透装置などの水処理装置によって)処理されてもよく、その後、給水容器150に供給されてもよい。しかし、これも、本明細書で定義されているような開放構成を構成することになる。
【0131】
この実施例では、給水容器150は、従来考えられた蒸気供給システムと比較して、圧力容器110の貯蔵容積の比率として相対的に大きな容積を有する。この特定の実施例では、給水容器150は、ピーク条件(たとえば、3.101MPaのピーク貯蔵圧力および0.9液体分率のピーク液面)で圧力容器に貯蔵されている水を、0.9101MPa(8バールゲージ)の下限圧力まで減少させることによって放出される全蒸気に対応する復水を受け取るような大きさとされる。これは、(大気圧(0.101MPa)における85℃のサブクール水の貯蔵に対応する)圧力容器の容積の約11.5%の容積を有する給水容器に相当する。他の実施例では、この比率はこれより高くても低くてもよく、意図された使用方式に応じて選択される。たとえば、ピーク貯蔵圧力がより高い場合、比率はより大きくてもよく、ピーク貯蔵圧力がより低い場合は比率はより低くてもよい。また、開放構成においてかなりの割合の蒸気が熱負荷に放出される可能性が予測されるときは、給水容器に再循環する水がより少なくてもよい。従来考えられた蒸気供給システムでは、一般にそれぞれの圧力容器への連続給水があるため、そのようなシステムは圧力容器(たとえばボイラーまたはアキュムレータ)の大きさに対してかなり小さい給水容器を有する。それに対して、以下の説明から明らかになるように、本明細書で開示されている熱エネルギー貯蔵および供給システムは、必ずしも同時再給水を必要とせずに圧力容器から蒸気を放出するように動作させることができ、水は後で圧力容器に再充填する機会があるときに供給することができる。具体的には、減耗期間中に容器に供給されるサブクール水の質量は、減耗期間中に放出される蒸気の質量と比較して相対的に低くてもよく、たとえば50%以下、または25%以下、10%以下、または5%以下であってもよい。以下で詳述するように、熱エネルギーの需要が圧力容器内の持続可能液面を維持するためにサブクール水の追加を必要とせずに満たされる場合は、この質量はゼロであってもよい。
【0132】
使用時、設備100は熱エネルギーを貯蔵し、熱負荷に供給する。圧力容器110に入っている水を、それぞれの熱負荷によって必要とされるよりも有意に高い貯蔵圧力まで加熱することによって、熱エネルギーの相当な量の蓄えを圧力容器110に貯蔵することができる。次に、需要に応答して貯蔵圧力を低下させることによって熱負荷に供給するための蒸気を発生(フラッシュ)させることができる。このシステムは、きわめて変動しやすい熱エネルギー需要を有するか、または、比較的短期間(たとえば施設のピーク運転時間中)に大量のエネルギーを必要とし、間に相当な低需要期間(たとえば夜間)がある熱負荷とともに使用するのに特に適している。
【0133】
図2に、工業プラント10の熱エネルギー需要(具体的には蒸気需要)の例示のプロットを示す。「加熱需要」というラベルが付いた細かい破線は、熱交換器130への蒸気供給を介して熱を受け取るヒーティングシステム30の蒸気需要に対応する。単位はkg/時で表した蒸気需要であり、これは閉ループ構成における熱交換器130に供給される蒸気に対応する。「滅菌器需要」というラベルが付いた粗い破線は、開放構成における設備100から直接蒸気を受け取る滅菌器40の蒸気需要に対応する。実線は、それぞれの需要の合計である。図2に示すように、主として滅菌器需要によって駆動される08:00(午前8時)頃から16:00(午後4時)までにわたる需要の大部分が含まれる相対的に短い時間帯がある。残りの時間(夜間)には需要が相対的に低い。
【0134】
この設備は、圧力容器110に相当な貯蔵量の熱エネルギーを蓄積するように動作させられ、この熱エネルギーは(時間のX軸に従うプロットの上方に示されている)減耗期間302中に放出することができ、その後、再充填期間304中に再蓄積することができる。
【0135】
本明細書で使用する「フラッシュポテンシャル」という表現は、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応する。開放構成における熱負荷に蒸気が供給される場合、関連付けられる下限圧力は、固定または可変とすることができる熱負荷の最小配給圧力における熱負荷で受け取られる蒸気流を維持するのに十分な放出圧力である(放出圧力は典型的には配給圧力より約0.1MPa大きい)。配給圧力が可変の場合、蒸気設備とは独立して制御可能である。図1の例示の設備100では、コントローラ200に配給圧力信号を提供するためにコントローラ200に動作可能に結合された、第2の熱負荷に関連付けられた配給圧力を監視するための圧力センサ240があり、コントローラは対応する放出圧力(たとえば配給圧力より上の固定量)で蒸気を放出するようにそれぞれの制御弁を制御する。圧力センサ240は、工業プラント10の外部(すなわち破線の外部)に示されているが、変形実施例では、第2の熱負荷40または第2の熱負荷40が属する工業プラント10の蒸気網に関連付けられた配給圧力を監視するために工業プラント10内に設置されているがコントローラ200に動作可能に結合されたままである圧力センサに置き換えられてもよい。たとえば、熱負荷網の配給圧力は7バールゲージ(8.101MPa)に設定されてもよく、関連付けられた放出圧力は8バールゲージ(9.101MPa)であってもよい。
【0136】
閉ループにおける熱負荷に蒸気が供給される場合、下限圧力は可変であってもよく、それぞれの熱負荷の熱エネルギー需要を満たすのに必要な流量に依存し得る。たとえば、閉ループシステムの下限圧力は大気圧(またはより低圧)であってもよい。この下限圧力は、関連付けられた飽和温度と、熱エネルギー需要を満たすようにそれぞれの負荷に伝達される熱を維持するのに十分に高い流量によってのみ制限され得る。
【0137】
開放構成と閉ループ構成の両方における熱負荷に蒸気が供給される場合、フラッシュポテンシャルを査定するための下限圧力は、個々の負荷のそれぞれの下限圧力のうちの最も高い圧力である。
【0138】
この実施例では、下限圧力は、第2の熱負荷の配給圧力(7バールゲージ、8.101MPa)に対応する放出圧力(8バールゲージ、9.101MPa)である。
【0139】
「液面マージン」という表現は、フラッシュポテンシャルの放出時のヒーターの継続動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応する。したがって、液面マージンは、フラッシュポテンシャルの放出が、下限量より多い液体水の量を残すことになる場合に正であり、下限量より少ない量があることになる場合には負である。
【0140】
したがって、任意の特定の瞬間におけるフラッシュポテンシャルは、満たすことができる最大需要に対応する。そのフラッシュポテンシャルに関連付けられた負の液面マージンは、圧力容器内の液体の量が、ヒーターを動作させ続けながらその需要を満たすことができる能力の制限要因であることを示し、一方、正の液面マージンは、ヒーターを動作させ続けながらフラッシュポテンシャルに対応する需要(たとえば蒸気の需要)を満たすことができることを示す。
【0141】
フラッシュポテンシャルは、当業者によって容易に計算することができる。フラッシュポテンシャルは、圧力容器内の液体水の量と、貯蔵圧力と下限圧力における液体水のエンタルピーの差(圧力差にほぼ対応する)とに比例する。フラッシュポテンシャルは、下限圧力における蒸発のエンタルピーに反比例する。同様に、液面マージンは、所与の圧力における水の既知の飽和質量の質に基づいて容易に計算することができる。しかし、両方の数量は、関連する数量を監視することによって間接的に監視することができるかまたは間接に制御することができる。たとえば、図7a~図7eを参照しながら以下で詳述するように、所与の貯蔵圧力および下限圧力の場合のフラッシュポテンシャルと液面マージンは、液面に基づいて判定することができる。したがって、液面を参照することによる(たとえば液面に基づく基準を評価することによる)設備の動作は、本明細書に記載のようにフラッシュポテンシャルおよび/または液面マージンを制御するように設備を動作させることに対応し得る。フラッシュポテンシャル、液面マージンまたは関連数量の計算に明確に言及している場合を除き、本明細書で言うフラッシュポテンシャルに基づくおよび/または液面マージンに基づく制御は、フラッシュポテンシャルおよび/または液面マージンを直接計算せずに実施可能であり、制御の適切な実装形態は、たとえば貯蔵圧力と相関した液面閾値のデータベースを参照することによる監視液面および貯蔵圧力に基づく。
【0142】
貯蔵圧力および液面は、熱エネルギーを貯蔵し、圧力容器から分配するための設備の動作において重要な数量である。
【0143】
圧力容器内の条件に影響を及ぼす基本変数は、(i)フラッシュによる蒸気の放出、(ii)サブクール水の追加、および(iii)加熱素子を使用した加熱であり、これらのそれぞれは単独でまたは互いに組み合わせて行うことができる。(i)圧力容器からの蒸気のフラッシュは、貯蔵圧力を低下させることによって実現され、これは単独で容器内の液面を低下させる。(ii)容器へのサブクール水の追加は単独で貯蔵圧力を低下させ、液面を上昇させる。(iii)加熱は単独で、貯蔵圧力を上昇させ、液面を上昇させる。
【0144】
本明細書でサブクール水の供給と言う場合、圧力容器の貯蔵圧力における飽和温度に対して相対的に水がサブクールされることを指す。本明細書の他の箇所に記載されているように、圧力容器への水の注入流を、注入流が圧力容器に流入するときに、たとえば脱気装置120において、飽和温度まで加熱することができる。しかし、そのような加熱は圧力容器内からの熱エネルギーを使用し、したがって、圧力容器への流入の前の条件を参照することによって注入の状態をサブクールと呼ぶのは、エネルギーバランスと圧力容器に(サブクール)水を供給する効果とを理解する助けとなるため、適切であるとみなされる。
【0145】
図3aおよび図3bは、減耗期間と再充填期間とを含む、設備100の例示の24時間動作サイクル中の動作条件のプロットである。図3aは、(圧力容器内の)貯蔵圧力と液面との傾向を示す。図3bは、フラッシュポテンシャルと液面マージンとの傾向を示す。
【0146】
図3aおよび図3bは、図2に示すものに対して相対的な熱エネルギー需要の簡略化されたプロファイルを含む、簡略化された1組の動作変数に基づく。この例示の動作変数は、約6.5時間継続する減耗期間の存続時間中の約330kg/時の定常最大蒸気需要と、24時間サイクルのうちの残りの時間だけ継続する再充填期間中の需要のない状態とを含む。
【0147】
減耗期間中はヒーターによる使用のために利用可能な電力はないが、再充填期間全体を通じて加熱のための電力は120kWの一定したレートで利用可能である。このようなシナリオは、実際には、たとえば、電力がローカル電源(再生可能エネルギー電源など)から得られ、減耗期間中(たとえば日中)に他の目的のために使用され、再充填期間中(たとえば夜間)にのみ加熱のために利用可能である場合に生じ得る。
【0148】
この場合も簡単にするために、図3および図4のプロットは、減耗期間の開始から始まる時間で示されている。24時間サイクルの開始時(すなわち減耗期間の開始時)の圧力容器の初期条件は、ピーク貯蔵圧力が30バールゲージ(3101kPa)でピーク液体水分率が90%である。熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力は8バールゲージ(9101kPa)であり、これは熱負荷のための配給圧力に対応する(たとえば、配給圧力は7バールゲージ(8101kPa)であり、1バール(100kPa)のオフセットがある)。ヒーターの継続動作のための下限液面は、0.5の液体分率に対応する。容器の大きさは約22.5mである。
【0149】
この簡略化された実施例では、蒸気需要は、フラッシュポテンシャルが減耗期間の終了時に完全に消耗するように選択され、したがって、フラッシュポテンシャルがゼロに低下するにもかかわらず図3aおよび図3bのプロットは、減耗期間を終了させる、蒸気需要を満たせないことを表していない。
【0150】
図3aおよび図3bに示すように、減耗期間中、貯蔵圧力は、(一定した)蒸気需要を満たすのに十分な蒸気をフラッシュさせるための30バールゲージ(3101kPa)のピーク貯蔵圧力から漸進的に低下し、それによってフラッシュポテンシャルが低下する。圧力容器から(蒸気の形態で)水が放出されるために液面も低下する。減耗期間中、フラッシュポテンシャルは常に需要を満たすのに十分であり、復水が加えられないため、液面マージンは減耗期間中に一定したままである。フラッシュポテンシャルは、蒸気の漸進的放出を反映するように漸進的に低下する。
【0151】
減耗期間の終了時、動作は、24時間サイクルの残りの時間だけ継続する、需要がない再充填期間に移行する。
【0152】
再充填期間中、設備は、(i)(蒸気の形態で)放出された分を置き換えるように圧力容器にサブクール水を再供給することと、(ii)圧力容器をピーク貯蔵圧力まで再加圧するために熱を加えることの両方を行うように動作させられる。具体的には、ピーク貯蔵圧力におけるピーク液体分率に対応する水の目標(またはピーク)質量に達するように水が加えられ、一方、水の目標質量を前提としてピーク貯蔵圧力に達するように熱が加えられる。
【0153】
再充填期間中のサブクール水と熱の供給は、任意の適切な方式で管理または段階づけることができる。
【0154】
図3aおよび図3bの特定の実施例では、熱は一定したレート(120kW)で与えられ、一方、サブクール水はフロントローディングプロファイルに従って供給される。サブクール水の供給をフロントローディングすることによって、再充填期間の早期に圧力容器内の水が相対的に低い圧力および温度(および相対的に高い液面)に維持され、再充填期間の末期のみにより高い圧力および温度に達し、それによって可能な限り長時間、圧力容器の壁を通した熱損失を最小限にすることができる。
【0155】
この特定の実施例では、サブクール水の供給は、後述するようにフラッシュポテンシャルと液面マージンとに基づいて制御される。フラッシュポテンシャルは、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気放出を維持するための下限圧力まで低下させられているため、再充填期間の始めはゼロであり、したがって蒸気が要求された場合に追加の蒸気を供給する能力はない。
【0156】
再充填期間の初期フラッシュ優先部分の間、必要であれば使用することができる最小再充填フラッシュポテンシャル(この実施例では500kgの所定値)までフラッシュポテンシャルを蓄えるために、対応するサブクール水供給を行わずに、熱が供給される。再充填期間のこの初期フラッシュ優先部分では液面マージンが低下する。この初期部分中にサブクール水を供給すると、圧力上昇レートを遅くすることになり(または圧力も低下させる)、それによってフラッシュポテンシャルの蓄積が遅くなる。
【0157】
再充填期間のその後の水優先部分(9時頃に開始)において、液面マージンが上昇する間に最小再充填フラッシュポテンシャルが維持されるようなレートでサブクール水が供給される。この水優先動作モードは、水の質量が目標(またはピーク)質量に達するまで維持される。
【0158】
(11時頃に)水の目標質量に達すると、再充填期間の第2のフラッシュ優先部分において設備が動作させられ、目標ピーク貯蔵圧力に達するまで、対応するサブクール水供給を行わずに熱が供給される。この実施例では、目標ピーク貯蔵圧力には20時頃に達し、24時間サイクルのうちの約4時間の最終期間中にそれ以上の水も熱も加えられない。あるいは、予測需要および予測加熱パワーが利用可能であることを前提として、(たとえば、水優先部分と第2のフラッシュ優先部分との間の4時間の部分に熱もサブクール水も供給しないことによって)第2のフラッシュ優先期間を遅延させるように給水および/または加熱プロファイルを変更することができる。他の使用例では、特に再充填期間中に蒸気需要がある使用例では、圧力容器内の水の目標(ピーク)質量を目指して、または維持するために、第2のフラッシュ優先期間中にさらなるサブクール水が供給されてもよい。
【0159】
図4aおよび図4bは、図3aおよび図3bと同じ数量を示す、減耗期間と再充填期間を含む設備を動作させる第2の実施例の動作条件のプロットである。第2の実施例では、(同じ120kWのパワーでの)加熱のためのパワーが減耗期間と再加熱期間の両方全体を通じて利用可能であり、蒸気需要が500kg/時で有意により高い点を除き、動作変数は第2の実施例と同じである。より高い必要液面の影響をシミュレーションするために、下限液面もより高く、0.67の液体分率に対応する。
【0160】
図4aおよび図4bのプロファイルは、減耗期間中に圧力と液面が低下する点が図3aおよび図3bのプロファイルと類似している。有意により高い蒸気需要レートは、減耗期間中に利用可能な加熱パワーによって埋め合わせされる。しかし、この実施例では、減耗期間の末期部分で液面マージンがゼロに達し、これは、貯蔵圧力を下限圧力まで下げることによってフラッシュポテンシャルが放出された場合、液面がヒーターの継続動作のための下限液面になることを意味する。液面マージンを維持するために減耗期間のこの末期部分中に圧力容器にサブクール水が加えられ、これは貯蔵圧力とフラッシュポテンシャルが低下する速度を加速させるが、フラッシュポテンシャルは依然として使い果たされない。具体的には(図4aに示すように)全フラッシュポテンシャルは要求されないため、減耗期間中に液面は下限に達しない。
【0161】
再充填期間に、フラッシュポテンシャルが最小再充填フラッシュポテンシャル(この実施例では250kg)まで上昇させられる短い初期フラッシュ優先部分がある。その後、水の目標質量に達するまで、液面マージンが上昇しながら最小再充填フラッシュポテンシャルが維持される水優先部分が続く。次に、目標ピーク貯蔵圧力に達するまで、対応するサブクール水供給を行わずに熱が加えられる第2の水優先部分が続く。最後に、監視数量が一定したままである、24時間サイクルの終わりに向かう期間がある。
【0162】
サブクール水と熱の供給を段階づけるためのその他の方法も適用可能である。たとえば、再充填期間の開始時(または再充填期間中の任意の時点で)、コントローラが、水の目標質量に達するように圧力容器内の水の現在の質量に追加すべきサブクール水の追加質量を判定してもよい。水の現在の質量は、液面信号から導出される液面と、貯蔵圧力信号から導出される貯蔵圧力とに基づいて判定することができる。コントローラは、ピーク貯蔵圧力に達するように再充填期間中に(現在および追加の)水に与える熱の総量を判定してもよい。コントローラは、加熱パワーと比例するように、圧力容器にサブクール水が供給されるレートを制御し、それによって再充填期間中の貯蔵圧力と液面(/液体分率)の両方が連続して徐々に上がるようにすることができる。
【0163】
圧力容器は蒸気需要の最大期待レートに対して相対的に大きい熱エネルギーの蓄え(たとえば、大きいフラッシュポテンシャル)を与えるように構成され、動作させられるため、使用時に、容器から出る蒸気の流量は、圧力容器が潜在的に収容することができる最大値と比較して相対的に低い。これは、蒸気の乾き度に関する利点を有する。具体的には、オンデマンド蒸気発生システムまたは短期蒸気アキュムレータシステムの場合、液体水の表面から蒸気が放出される最大期待レートが同伴液体水を抑制するのに十分に低いか否かを判定することが従来行われている。本出願人によって実施され、優先日の前に報告された経験的テスト研究は、水の表面から乾き蒸気を放出可能なレートは圧力の関数であることを示しており、蒸気同伴のない最大蒸気放出レート(MSR)(kg/m時)はバール単位で表した絶対圧力に220を乗じた値(または22掛けるMPaで表した絶対圧力)に等しいという実効概算値を示している。たとえば、蒸気アキュムレータの設計では、コストと設置サイズとを削減し、それによって最大蒸気放出レート(MSR)、たとえば25%と90%の間と比較して相対的に高い最大期待(またはピーク)蒸気放出レートとするために、それぞれの容器の大きさを縮小しようと試みることが従来の慣例である。それに対して、本明細書に記載の熱エネルギー貯蔵および供給設備および方法は、はるかにより低い蒸気放出レートとなる傾向がある。図3aおよび図3bを参照しながら上述した特定の実施例では、適切な大きさとされた容器の最大期待またはピーク蒸気放出レートは、いずれも90%充填を想定して控えめに査定した場合でも、ピーク貯蔵圧力の場合はMSRの約0.7%に等しく、下限圧力の場合はMSRの約2.3%に等しい。80%充填の場合、これらの値はそれぞれ0.6%と2%である。したがって、放出蒸気中の同伴液体水のリスクは低い。
【0164】
図5図7は、熱貯蔵および熱供給設備のそれぞれの制御変数を制御することによってそのような設備を動作させる方法の流れ図である。この方法について、図1の例示の熱貯蔵および熱供給設備を参照し、図3aおよび図3bに示す動作条件のプロファイルを参照しながら説明する。
【0165】
図5は、圧力容器100から熱負荷への蒸気の放出を制御するためにコントローラ200によって実行される方法500を示しており、第1のプラント熱負荷30における熱エネルギーの需要を一例として参照しながら説明するが、この方法は、別の熱負荷における需要または複数の負荷にわたる累積需要にも等しく適用されることを理解されたい。図5の「ブロック」を参照して説明する方法のステップは、設備の動作中に連続してまたは周期的に反復される。
【0166】
ブロック502で、コントローラが、第1のプラント熱負荷30から受信した需要信号に基づいて需要があるか否かを判定する。需要がない場合、方法はブロック510に進み、それぞれの放出制御弁216が閉じられるかまたは閉じたままにされる。
【0167】
需要がある場合、方法はブロック504に進み、コントローラは、たとえば液面センサから受信した液面信号に基づいて、液面が下限液面より上であるか否かを判定する。液面が下限液面より上でない場合、方法はブロック510に進み、それぞれの放出制御弁216が閉じられるかまたは閉じたままにされる。この状態は、たとえば図3図4を参照しながら上述したようにたとえば圧力容器への熱の追加および/またはサブクール水の追加によって液面が上昇させられるまで続き得る。
【0168】
液面が下限液面よりも上である場合、方法はブロック520に進み、コントローラはそれぞれの第1の放出制御弁216を開くように制御して、圧力容器110内の貯蔵圧力を低下させ、それによって液体水をフラッシュさせ、放出口116を通り、第1の放出制御弁216を通って熱交換器130まで配給管路102を通って放出させる。本明細書の他の箇所に記載されているように、コントローラは、(たとえばフィードバックループ内の)それぞれの熱負荷への蒸気の供給に対応する監視パラメータに基づいて、たとえば第1の流量計218によって提供される第1の流量信号に基づいて、第1の放出制御弁216を制御することができる。
【0169】
ブロック522で、コントローラは、需要が満たされるか否かを判定することができる。たとえば、コントローラは、それぞれの第1の流量計218から受信した第1の流量信号に基づいて、それぞれの配給管路102を通る蒸気の流量が需要を満たすのに十分であるか否かを判定することができる。需要を満たすのに十分な水のフラッシュポテンシャルが圧力容器内にない場合、需要は満たされない可能性がある。コントローラが、需要が満たされないと判定した場合、コントローラは、たとえばさらに加熱し、および/または圧力容器に給水することによってフラッシュポテンシャルが上昇するまで、放出制御弁216を閉じると決定してもよい。需要が満たされないとの判定に応答して、コントローラは、たとえば二次電源から(たとえば、太陽光または風力電力などの再生可能エネルギーを配給するローカル電源(マイクログリッドなど)ではなく電力網接続から)の電力を使用して、追加の熱が供給されるように制御することができる。需要が満たされるか否かにかかわらず、方法は設備100の動作全体を通して、ブロック502に戻ることによって繰り返される。
【0170】
図6に、図5の方法500と並行して、方法500とは独立して行うことができる、ヒーターにローカル電源によって電力供給される場合のヒーターの制御方法600を示す。上記と同様に、図1の例示の設備100を参照しながら説明する。この例示の方法は、本明細書の他の箇所に記載されている電力網接続などの二次電源からの電力の任意による供給については言及しない。
【0171】
熱エネルギー貯蔵および供給設備100は、マイクログリッドなどのローカル電源によって電力供給される場合に特に利点がある。ローカル電源、特に再生可能電源は一般に、知られている理由(たとえば風力または太陽光エネルギーの量が変化しやすい)により、多数の異なる再生可能および非再生可能発電所から配電する非ローカル配電網と同じ一貫性および信頼性では電力を供給しない。熱エネルギー貯蔵および供給設備100は、電気エネルギーを、利用可能になったときに貯蔵するため、熱エネルギーに変換することで大量の備蓄を提供し、後で需要に対してその熱エネルギーを放出することができる。本発明人らは、そうした方が、ローカルで発生したエネルギーを需要に対して後で電気ボイラーにおいて使用するために電池に蓄えるよりも効率的であることを見出した。また、本明細書に記載のようにエネルギーを熱エネルギーとして貯蔵することは、リチウムなどの電池技術に付随する大量の化学製品および材料(その多くは希少であるか、または鉱床に環境被害を与える)を必要としないため、電池貯蔵に優る利点を有する。
【0172】
設備によってエネルギーが貯蔵されるレートと放出されるレートは大きく分離している。したがって、電気エネルギーが利用可能であるとき圧力容器内の液体水を加熱することによって、圧力容器内に大量の備蓄熱エネルギーを蓄積することができる。全般的に(すなわち、圧力容器の条件の動作マップの大部分にわたって)、容器へのサブクール水の対応する供給を必要とせずに熱を供給することができる。主な例外は、容易に回避されるシナリオであり、すなわち、(i)圧力容器がピーク貯蔵圧力にあるが、圧力容器内の水の質量が水の目標ピーク質量より低い場合、および(ii)液面が、ヒーターの動作を続けるための下限液面、たとえば圧力容器内のヒーターまたはその加熱素子の最上部位置に対応する下限液面を下回る場合である。(i)の場合、貯蔵水の質量を上昇させ、圧力を低下させるために追加のサブクール水を供給する必要がある。(ii)の場合、液面を上昇させるためにヒーターを動作させることができない状況なので、液面を上昇させるために追加の水を供給する必要がある。
【0173】
ブロック602で、コントローラは、加熱のための電力がローカル電源から利用可能であるか否かを判定する。この判定は、ローカル電源によって現在発生されている電力、および/または他の負荷を考慮したローカル電源から現在利用可能な電力(たとえば、発生電力から設備100および/または工業プラントにおける他の電気負荷に供給される電力を引いた電力)の判定とすることができる。電力が利用可能でない場合、方法はブロック610に進み、コントローラは圧力容器内の水を加熱するようにヒーターを動作させない。電力が利用可能な場合、方法はブロック604に進む。
【0174】
ブロック604で、コントローラは、(たとえばコントローラで受信した貯蔵圧力信号に基づいて)貯蔵圧力がすでにピーク貯蔵圧力であるか否かを判定する。ピーク貯蔵圧力である場合、上述のように、方法は加熱しないためにブロック610に進む。貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力未満である場合、熱が供給される。
【0175】
ブロック606で、コントローラは、(コントローラで受信した液面信号に基づいて)液面が加熱のための範囲内であるかを判定する。この実施例では、この判定は、(i)液面が、上述のように圧力容器内のヒーターまたはその加熱素子の最上部位置に対応し得る、ヒーターの継続動作のための下限液面より上であるか否かを判定することと、(ii)液面が、圧力容器内の水の目標ピーク質量に対応する上限液面より上ではないと判定することとに対応する。上限液面は圧力に依存し得る。具体的には、容器を単独で(すなわち蒸気放出も給水もない状態で)加熱することにより、圧力を上昇させ、液面を上昇させる。したがって、容器が目標ピーク貯蔵圧力より低い貯蔵圧力で目標ピーク液体分率(たとえば90%)にある場合、目標ピーク貯蔵圧力に達するようにさらに加熱すると、液面をさらに上昇させることになる。コントローラは、そのようなシナリオが生じるのを回避するように圧力容器への水の供給を制御することができるが、それでも任意によりブロック606で確認することができる。
【0176】
液面が加熱範囲内でない場合、上述のように方法はブロック610に進み、熱は与えられない。しかし、液面が加熱範囲内にある場合、方法はブロック620に進み、利用可能な電力に対応するレートで熱が供給される。
【0177】
熱が供給されるか否かにかかわらず、方法は、設備100の動作全体を通してブロック602に戻ることによって繰り返される。
【0178】
ヒーターは、代替蒸気供給システムにおいて設けることができるヒーターまたはバーナーの定格(すなわち最大パワー出力)よりも大幅に低い定格を有し得る。そのような代替蒸気供給システムは、ピーク蒸気供給レートに基づいてヒーターの大きさを決めることができるが、本開示によるヒーターは、電力と1日などの動作サイクル中に必要となり得る熱の総量とに基づいて大きさを決めることができる。設備の動作モードを考慮して(すなわち、加熱のために同時に利用可能な電力をはるかに超えるレートで放出可能な長期間にわたる熱エネルギーの相当な蓄えを蓄積するために)、本発明人らは、相対的に低い加熱パワーで、相対的に高い累積熱エネルギー需要と相対的に高い需要レートとを満たすことができるシステムを提供した。ヒーター自体が相対的に低い定格を有してもよく、または相対的に低いパワー出力を有するローカル電源に結合されてもよく、またはコントローラがヒーターのパワー出力を制限してもよい。
【0179】
需要を満たすためのシステムの相対的に高い能力と比較して相対的に低い加熱パワーを定量化するために、本開示は以下のパラメータを定義する。
【0180】
- 平均減耗パワーは、減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーを減耗期間の存続時間で割った値と定義される。
【0181】
- 最大減耗パワーは、減耗期間内の1分間の任意の最小パワー評価期間中に放出される蒸気の最大エンタルピーを最小パワー評価期間で割った値と定義される。したがって、典型的には、より低い圧力で放出される蒸気がより高い圧力で放出される蒸気よりもより低いエンタルピーを有し得るということを考慮して、蒸気放出のピークレートに対応する。
【0182】
- 平均再加熱パワーは、再充填期間中にヒーターによって液体水に与えられる累積エネルギーを再充填期間の存続時間で割った値と定義される。
【0183】
- 最大再加熱パワーは、再充填期間内にヒーターによって液体水にエネルギーが供給される最大パワーと定義される。
【0184】
本開示によると、再充填期間中の平均再加熱パワーは、平均減耗パワーより大幅に低くてもよく、限定期間中の相対的に高いエネルギー需要を満たすために相対的に低い電源または低い定格のヒーターを使用するシステムの構成に対応する、たとえば平均減耗パワーの50%以下であってもよい。図3の特定の実施例では、平均減耗パワーは0.26MWであり、一方、平均再加熱パワーは0.12MWである。この比率は、減耗期間中に加熱が供給される場合にはより低くなる。
【0185】
本開示によると、平均再加熱パワーは、最大減耗パワーの50%以下であってもよい。図3の特定の実施例では、最大減耗パワーは、約330kg/時の一定した需要レートで圧力容器がピーク貯蔵圧力にあるときの蒸気の放出に対応する。これは、約0.26MWの最大減耗パワーに対応する。
【0186】
本開示によると、最大再加熱パワーは、最大減耗パワーの50%以下であってもよい。図3の特定の実施例の対応する値は上記で示されている通りである。
【0187】
本開示によると、(i)減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーと、(ii)再充填期間中のヒーターの平均再加熱パワーとの大きさ比は、少なくとも25000秒である。これは、熱負荷を満たすためのシステムの能力と比較して相対的に低い再充填パワーに対応し、これは本発明においては同等の用途のための従来考えられた蒸気供給システムと比較して異なる。単位は秒であるが、これは再充填期間の時間には対応しない。図3に示す特定の実施例では、大きさ比は約50000秒である。
【0188】
ヒーターの定格は、供給の可変性に部分的に基づいて選定されてもよい。たとえば、電源から電力を確実に引き出すことができる場合は、ヒーターの定格は1サイクルにわたってヒーターによって供給される総期待熱エネルギーをサイクルの存続時間で割った値に等しくなり得る。しかし、変化しやすい出力を有する電源(風力または太陽光など)の場合、適切な定格はローカル電源の予測パワー出力プロファイルを評価することによって判定することができる。ローカル電源は、ヒーターの定格を上回るピーク電力を発生することができることがある。本明細書の他の箇所に記載のように、ローカル電源が目標貯蔵圧力および/または目標水質量(目標ピーク貯蔵圧力および目標ピーク水質量であってもよい)を達成するための必要パワー出力を満たすことができない場合には、(たとえば非ローカル電力網接続から)補助電力が供給されてもよい。
【0189】
図8を参照しながらサブクール水の供給を制御する方法について説明する前に、図7a~図7eに示すように、本明細書で使用されている「フラッシュポテンシャル」および「液面マージン」という表現を例示すれば理解の助けになる。
【0190】
図7a~図7eは、図1の圧力容器110に相当する円柱状容器710を示している。線L0はヒーターの継続動作のための容器710の下限液面を表す(すなわち、それぞれのヒーターまたは少なくともヒーターの加熱素子の高さに対応する)。線714は、容器710内の水の液面を表す。本明細書の他の箇所に記載のように、液面は液体水と蒸気との界面の高さ、または容器内の液体分率として表すことができる。各図において、水の現在の貯蔵圧力は同じである(さらに、容器の目標ピーク貯蔵圧力より低い)が、水の質量、したがって液面は異なる。
【0191】
図7aでは、液面714は、ヒーターを動作させることができないように下限液面L0より下である。この条件は、動作中に、下限よりも低い液面をとっている間でもフラッシュポテンシャルを消耗するように設備を意図的に動作させ、それによって、この動作中に容器へのさらなる水の供給によって液面が上昇させられるまではさらなる熱が投入されるのを防ぐ場合に生じ得る。
【0192】
図7b~図7dのそれぞれにでは、容器710の2つの図が並べて示されている。左側の図は、現在の貯蔵圧力における現在の液面714を示し、右側の図はフラッシュポテンシャルの放出後に液面716がどのようになるかを示している。
【0193】
図7cでは、液面714が、ゼロである液面マージンに対応するゼロマージン液面L1にある(すなわち、容器710の右側の図に示すように、フラッシュポテンシャルの放出時の液面が下限液面L0に等しい)。
【0194】
図7bでは、液面714は、液面マージンが負になるように、液面L0(下限液面)とL1(ゼロマージン液面)との間の中間点にある。
【0195】
図7eでは、容器710の左側の図に、現在の貯蔵圧力における現在の液面714を示し、容器710の右側の図に、水の貯蔵圧力を目標ピーク貯蔵圧力まで上昇させた場合の同じ質量の水の液面716を示す。図7eでは、現在の液面714は、目標ピーク液面である(より高い)目標ピーク貯蔵圧力における液面716に対応するピーク充填液面L2、たとえば90%にある。
【0196】
図7dでは、液面714は、液面L1(ゼロマージン液面)とL2(ピーク充填液面)との間の中間液面にある。
【0197】
図からわかるように、下限液面はすべての貯蔵圧力において同じであり、一方、ゼロマージン液面L1とピーク充填液面L2は貯蔵圧力に応じて変化する。
【0198】
フラッシュポテンシャルが消耗する間にさらなる熱投入がない状態では、任意の特定の貯蔵圧力における最適液面は、ゼロマージン液面L1となる。これは、圧力容器を下限圧力まで減圧する一方、下限液面L0には達するがそれよりは下がらないことを表す。
【0199】
液面714がL0とL1の間であり、フラッシュポテンシャルが消耗する間に熱の投入がない場合、液面が下限L0に達する前にフラッシュポテンシャルの一部のみ(「有用フラッシュポテンシャル」)を放出することができる。一般に、液面と液体水のエンタルピーの両方が上昇するため、熱投入に応答してフラッシュポテンシャル(有用フラッシュポテンシャルを含む)が上昇する。一般に、サブクール水の投入は液体質量の総量を上昇させるが液体水の温度とエンタルピーを低下させるため、サブクール水の投入に応答してフラッシュポテンシャルが低下する。しかし、液面714がL0とL1の間の場合、水の量が、蒸気が蒸発するようにフラッシュさせられ、放出されることを可能にすることの制限要因として働くため、有用フラッシュポテンシャルはサブクール水投入に応答して上昇する傾向がある。したがって、水の追加は、総フラッシュポテンシャルを減らすが、より多くのフラッシュポテンシャルが使用されることを可能にする。
【0200】
液面714がL1とL2の間のとき、フラッシュポテンシャル(有用フラッシュポテンシャルと等しくなっている)は熱投入に応答して上昇することになる。液面がフラッシュポテンシャルの放出を可能にすることの制限要因として働かず、一方、サブクール水の追加が圧力容器内の液体水の圧力とエンタルピーとを低下させるため、フラッシュポテンシャル(この場合も有用フラッシュポテンシャルに対応する)はサブクール水投入に応答して低下することになる。
【0201】
したがって、有用フラッシュポテンシャルは、所与の圧力の場合の液体水液面がL0とL1との間のときにサブクール水を追加することと、所与の圧力の場合の液体水液面がL1とL2との間のときにサブクール水を追加せずに熱を加えることとによって、最もよく節約または増加させられる。
【0202】
当然ながら、液体水液面がL1とL2との間のときに圧力容器にサブクール水を追加することも必要である。しかし、そのような水の追加は設備の動作モードに依存し得る。
【0203】
上記の説明は、瞬間的フラッシュポテンシャル、すなわち、圧力容器内の水の現在の質量と貯蔵圧力とに基づいて、圧力を下限圧力まで低下させることによってフラッシュさせることができる蒸気の量にも当てはまる。しかし、上記の説明は、予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力に基づいて判定される、予測フラッシュポテンシャル、予測液面マージンおよび予測有用フラッシュポテンシャルにも当てはまる。
【0204】
予測フラッシュポテンシャルが瞬間フラッシュポテンシャルとどのように異なり得るかを例示するために、液面が0.75で、瞬間フラッシュポテンシャルがXkg(たとえば500kg)で、正の液面マージンY(たとえば、下限液面0.5より0.1上の液体分率)があるシナリオを考えることができる。予測需要が2時間の期間にわたり毎時250kg/時の蒸気放出に対応する場合、追加加熱とサブクール水の供給がなければフラッシュポテンシャルは2時間の期間の終わりに使い果たされることになり、液面は下限液面L0になる。しかし、同じ2時間の期間にわたって100kWのヒーターの予測パワー出力がある場合、同じ量の蒸気を放出するためにその2時間にわたって必要な圧力の低下がより低くなり(熱の投入も液体水を蒸発させるため)、2時間の期間の終わりに正のフラッシュポテンシャルがまだ存在することになる。しかし、液体マージンが負になる場合、有用フラッシュポテンシャルが制限され得る。
【0205】
フラッシュポテンシャル、液体マージンおよび/または有用フラッシュポテンシャルは、以下でさらに詳述するように、予測需要とヒーターの予測出力とに基づいて一定時間にわたって評価することができる。これは、後述するように、減耗期間中にサブクール水の供給を制御するために特に有用となり得る。図7に関連して上述したような液面L0、L1、L2の文脈では、これらの予測数量は特にゼロマージン液面L1に影響を与え得る(液面L0は現在の液面についてのみ関連し、一方、液面L2は再充填期間に最も関連する)。
【0206】
上記の特定の例示のシナリオを続けると、瞬間フラッシュポテンシャルと液面マージンとに基づくゼロマージン液面L1は0.65とすることができ、0.5の下限液面に達するための0.15の液面の低下に対応する。しかし、予測フラッシュポテンシャルと予測液面マージンとに基づくゼロマージン液面L1は、ヒーターが圧力容器に追加のエネルギーを供給しているとき、2時間の期間中に同じ量の蒸気を出力するのに貯蔵圧力のより低い低下が必要になり得るため、より低く、たとえば0.6であり得る。また、より高い貯蔵圧力では、液面はより低速のレートで低下し得る。
【0207】
同様の分析を、予測需要および予測パワー出力に基づいてピーク充填液面L2を判定するために適用することもできる。しかし、圧力容器の現在の条件に基づく分析と比較して、予測数量を使用する効果は、予測需要を満たすために水の一部が放出されることを見込んで、水の目標ピーク質量を上回るより多くの水を圧力容器に加えるという判定のみである可能性がある。(特に熱損失を低減するように圧力容器の温度を下げるために)これを行うことには効率上の利点があり得るが、実際の制御実装形態は、水の目標ピーク質量を上限として反映することができる。たとえば、圧力容器に相対的により低い圧力で目標ピーク質量より大きい質量の水が満たされた場合、予測需要が生じなければ、液面は目標ピーク貯蔵圧力においてその関連付けられた目標ピーク液面を超えることになる。
【0208】
図8に、図5および図6の方法500、600と並行して、独立に行うことができる、圧力容器へのサブクール水の供給を制御する方法800を示す。上記と同様、図1の例示の設備100を参照しながら説明する。
【0209】
本明細書の他の箇所で説明されているように、単独で(すなわち、ヒーターによる加熱および/または蒸気の放出とは別に)、圧力容器にサブクール水を供給すると、圧力容器内の水の貯蔵圧力が低下する。したがって、蒸気を放出するための設備100の動作は、圧力容器内に十分な質量の水があることに依存するが、設備の動作マップの多くの部分において、圧力容器に水を再供給する行為は、蒸気を放出する圧力容器の潜在能力(すなわちフラッシュポテンシャルを低下させる傾向がある。
【0210】
本発明人らは、給水のタイミングとレートは、設備の運用の目的に応じて制御することができると考えた。
【0211】
方法のブロック802で、コントローラ200が、液面がヒーターの継続動作のための下限液面L0未満であるか否かを判定する。この判定は、液面センサ214から受信した液面信号に基づいてもよい。液面が下限液面L0より下である場合、方法はブロック820に移行する。
【0212】
ブロック820で、供給するサブクール液体の量が決定される。全フラッシュポテンシャルを放出するために液面が下限液面L0を下回って延長することが許容される延長減耗モードで設備を動作させる場合、コントローラはサブクール水を加えないと決定する。他のすべてのモード(すなわち、液面をヒーターの動作のための下限液面より低下させることになる蒸気の放出をコントローラが防止する加熱減耗モード、または再充填モード)では、コントローラはサブクール水を加えると決定する。
【0213】
供給するサブクール水の量は、液面と貯蔵圧力の両方に基づいて決定することができる(ブロック820)。たとえば、コントローラは、下限液面に達するのに要するサブクール水の量を計算してもよく、または、液面および貯蔵圧力と相関した所定の値のデータベースから量を参照してもよい。サブクール水の量は、任意の適切な方式で、たとえば水の質量、注入ポンプの動作の存続期間、および/または流量として、指定することができる。
【0214】
ブロック822で、サブクール水を供給する流量が決定される。液面を下限液面L0まで回復させる文脈では、ヒーターは動作停止している必要があり、したがって流量は、加熱のレートを参照せずに判定される。コントローラが、サブクール水を脱気すると決定した場合、流量は、脱気装置の動作に関連付けられた所定の注入流量に基づいて決定されてもよく、所定の注入流量は、脱気装置が注入流の温度を飽和温度まで上昇させることができる注入流量に対応し得る。それ以外の場合、流量は、注入ポンプによりたとえば最適または最大流量として決定されてもよい。
【0215】
ブロック824で、サブクール水がブロック820、822で決定された量まで、および/または流量で供給させられる。
【0216】
この特定の実施例では加えるサブクール水の量と供給レート(ブロック822)の両方が決定されるが、変形実施例では、コントローラは、たとえば所定のレートでサブクール復水の供給を開始するためにブロック824に直接進んでもよい。(上述のように)この方法の反復は供給の停止のための適切な制御を与えてもよい。
【0217】
方法は、方法を反復するためにブロック802に移行する。方法は、圧力容器へのサブクール水の供給のための要件が反復的に決定されるように、決定された量が最後の反復回において供給されるまで繰り返されてもよい。
【0218】
ブロック802で、液面が下限液面L0にあるかまたは上回ると判定された場合、方法はブロック804に移行する。ブロック804で、液面マージンが負であるか否かが判定される。液面マージンは、フラッシュポテンシャルの放出時に圧力容器内の液面がそれだけ下限液面L0の上または下になる量に対応する。
【0219】
液面マージンが負であるとの判定は、圧力容器内の水の量が現在、蒸気を放出する圧力容器の能力に対する制限要因であると判定することに対応する。本発明人らは、圧力容器にサブクール水を加えることによって、(上記で定義した)有用フラッシュポテンシャルを増加させることができることを見出した。これは貯蔵圧力とフラッシュポテンシャルとを(任意の液面に)低下させるが、有用フラッシュポテンシャルを増大させる。液面マージンが負の場合、方法はブロック820に進む。
【0220】
ブロック820~824で、上述のように、供給するサブクール水の量が決定され(ブロック820)、供給のための流量が決定され(ブロック822)、コントローラは、決定された量が供給されるようにし、その後、この方法を繰り返す。液面を下限液面L0に回復させる文脈と同様、供給するサブクール水の量は計算することができるか、または液面および貯蔵圧力と相関した所定の値のデータベースから参照してもよい。有用フラッシュポテンシャルを増大させる利点は供給レートとはかかわりなく、供給される水の質量に基づいて得られるため、液面を下限液面L0まで回復する文脈と同様、流量は加熱のレートを参照せずに決定することができる。
【0221】
ブロック804における液面マージンがゼロまたは正であるという判定は、圧力容器内の水の量が現在、蒸気を放出する圧力容器の能力に対する制限要因ではないという判定に対応する。この判定は、本明細書の他の箇所に記載されているように、予測フラッシュ需要および予測液面マージン(これら自体は圧力容器の現在の条件(貯蔵圧力、液面)に基づいて判定される)と、予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力に基づいてもよい。
【0222】
液面マージンがゼロまたは正であると判定された場合、方法はブロック806に進む。
【0223】
この段階で、圧力容器にサブクール水を供給するか否かは、設備が運用される特定の用途、および/または予測需要に基づいてもよい。
【0224】
相当な需要または不確定な需要を満たすように設備を動作させる場合、サブクール水の追加は、フラッシュポテンシャル(さらに有用フラッシュポテンシャルも)を減少させることになるため、サブクール水の追加は非生産的であるとみなされる場合がある。また、ゼロまたは正の液面マージンはヒーターの継続動作のために十分な液体水を圧力容器に残してフラッシュポテンシャルを完全に使い果たされたことに対応するため、サブクール水の追加は不要であるとみなすこともできる。液面マージンがある期間にわたって予測液面マージンであり、ゼロまたは正である場合、これは、ヒーターの継続動作のために十分な液体水を圧力容器に残してその期間にわたってフラッシュポテンシャルが完全に使い果たされたことに対応する。
【0225】
したがって、相当な需要または不確定な需要を満たすように設備を動作させる場合、本発明人らは、有用フラッシュポテンシャルを無用に低減するのを回避するためにサブクール水の追加を遅らせることができると判断した。
【0226】
それに対して、容器に目標ピーク条件まで(すなわち、水の目標ピーク質量で目標ピーク貯蔵圧力まで)再充填するためには、目標質量に達するための追加のサブクール水と、目標圧力に達するための熱との両方を容器に再供給する必要がある。
【0227】
本発明人らは、図8の方法を参照しながら一例として説明しているように、この二重の要件を満たすために、設備は異なる動作モードを有してもよいと判断した。
【0228】
ブロック806で、コントローラは、設備を減耗モードと再充填モードのいずれで動作させるかを決定する。減耗モードは、ある持続時間にわたって圧力容器に貯蔵されている熱エネルギーを全般に減耗させる熱需要を満たすための減耗期間中の設備の動作に対応する。減耗期間は、貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaなど、有意な量だけ低下するように、放出蒸気に対応するエンタルピー出力(または損失)が、圧力容器に投入されるエネルギーより大きい期間と言うことができる。再充填モードは、ある持続時間にわたって圧力容器に全般に熱エネルギーが蓄積する再充填期間中の設備の動作に対応する。再充填期間は、加熱によって圧力容器に投入されるエネルギーが、熱エネルギー需要を満たすための蒸気放出に対応するエンタルピー出力(または損失)よりも大きく、それによって貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力(たとえば少なくとも2MPa)まで少なくとも1MPaだけ上昇する期間と言うことができる。本明細書の他の箇所で説明されているように、ピーク貯蔵圧力がより低い(たとえば少なくとも0.5MPa、または少なくとも1MPa、または少なくとも2MPa)場合がある変形実施例では、減耗期間と再充填期間は、たとえば、それぞれのピーク貯蔵圧力の少なくとも50%である減耗圧力差および/または再充填圧力差を参照にして同一基準で異なるように定義可能である。
【0229】
コントローラは、任意の適切な方式で設備を減耗モードと再充填モードのいずれで動作させるかを決定することができ、その例には、(i)それぞれのモードでの動作の時間ベースのスケージュール(たとえば、09:00~17:00は減耗モード、17:00~09:00は再充填モード)、(ii)次の6時間または次の12時間などのある期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力を参照するか、または(iii)予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力に基づいて、圧力容器が減耗条件と目標ピーク条件のどちらに先に達すると予測されるかに関する予測を参照することによる方式が含まれる。例として、(iii)の場合、減耗条件はフラッシュポテンシャルを消耗して残った液面マージンがゼロになること、または有用フラッシュポテンシャルが500kgなどの最小減耗ポテンシャルまで減少することに対応してもよい
ブロック806で、設備を減耗モードで動作させると決定した場合、方法はブロック810に進む。ブロック10で、設備を圧力容器にサブクール液体を加えないように動作させてから、ブロック802に戻り、方法を繰り返す。サブクール水を加えないことによって、減耗期間中にフラッシュポテンシャル(有用フラッシュポテンシャル)を可能な限り高く維持することができると同時に、蒸気需要を満たし続けることができる。
【0230】
ブロック806で設備を再充填モードで動作させると決定した場合、方法はブロック808に進む。
【0231】
ブロック808で、フラッシュポテンシャルを優先させる再充填モードで動作させるか(「フラッシュ優先」)、または圧力容器内の水質量蓄積を優先させるか(水優先)を決定する。本発明人らは、最小フラッシュポテンシャルが確立された後でのみ追加の水の貯蔵を優先させることによって、需要を満たす瞬間的能力(すなわちフラッシュポテンシャル)を節約し、蓄積することと、将来の時点におけるさらにより大きな需要を形成するために追加の水を貯蔵することとの間で最適バランスをとることができると判断した。
【0232】
方法800のブロック808において液面マージンが正でなければならないことを考慮すると、フラッシュポテンシャルと有用フラッシュポテンシャルは、容器に追加の熱投入を行わずに満たすことができる需要に等しく、そのような需要に対応する。この実施例では、コントローラは、(たとえば、一般的に適用可能であるか、またはその代わりに、時刻、曜日などの動作変数によって相関された所定の最小ポテンシャルのデータベースから判定された)所定の最小ポテンシャルとすることができるか、または上述のようにある期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力に基づいて判定することができる、最小再充填ポテンシャルを、フラッシュポテンシャルが下回るか否かを判定する。たとえば、最小充填ポテンシャルは、500kgのフラッシュポテンシャルに相当してもよい。
【0233】
コントローラは、フラッシュポテンシャルが最小充填ポテンシャルを下回るか否かを、コントローラで受信した液面信号に基づくこと(たとえば、貯蔵圧力と任意により最小再充填ポテンシャル(利用可能な場合)によって相関させた最小再充填ポテンシャルに対応する液面信号のデータベースを参照することによる)、または、フラッシュポテンシャルを計算し、最小再充填ポテンシャルと比較することを含む、任意の適切な方式で判定することができる。
【0234】
フラッシュポテンシャルが最小再充填ポテンシャル未満である場合(たとえば、液面が所与の圧力についてそれぞれの閾値より低い場合)、コントローラは、本明細書でフラッシュ優先の再充填モードにおける動作と呼ぶ最小再充填ポテンシャルまでフラッシュポテンシャルを上昇させるのに十分な熱が供給されるまで、サブクール水を加えないと決定する。
【0235】
フラッシュポテンシャルが最小再充填ポテンシャル以上である場合、コントローラは、圧力容器内の水の質量を水の目標ピーク質量まで上昇させるためにサブクール水を追加すると決定する。方法はブロック820に進み、水優先の再充填モードで、コントローラは水の目標ピーク質量に達するように供給する水の量を決定する。ブロック822で、水優先の再充填モードで、コントローラは圧力容器に水を供給するレートを決定する。この実施例では、このレートは、サブクール水の追加にもかかわらず、フラッシュポテンシャルが、水の追加と、蒸気放出があれば蒸気放出とを相殺するレートで圧力容器内の水を同時に加熱することにより可能な最小再充填ポテンシャルに(またはそれより上に)維持されるように選択される。これは、たとえば、ヒーターの現在のパワー出力および/または予測パワー出力(それ自体が電源から利用可能な電力に制限され得る)と、現在の需要および/または予測需要とに基づいて、最小再充填ポテンシャルが維持されるようにする水追加レートを計算することによって実現することができる。
【0236】
ブロック824で、決定された量で圧力容器にサブクール水が供給され、方法はブロック802に戻る。上記のように、方法は、方法が現行の条件および/または予測条件に基づいてサブクール液体を供給するか否かを連続的に再評価するように、決定された量のサブクール水が実際に供給されるまで反復することができる。
【0237】
液体の量が水の目標ピーク質量に達し、方法が方法800のブロック808に戻ると、コントローラはフラッシュ優先の再充填モードで動作すると決定し、それによって、貯蔵圧力が目標ピーク貯蔵圧力まで徐々に高まることができるようにしながら、サブクール液体のさらなる追加を防止する。
【0238】
上記の説明は、(最小再充填フラッシュポテンシャルを維持しながら)給水をフロントロードするためにサブクール水供給と加熱のプロファイルとを段階づけるように設備を動作させる一実施例を示している。本明細書の他の箇所に記載されているように、これによって水の温度が再充填期間のうちの相対的に長い期間にわたって低く維持され、動作の最終段階においてのみ貯蔵期間に対応する温度に向かって上昇することができる。これにより、圧力容器の壁を通した熱損失を低減することができる。
【0239】
上述のような減耗モードの動作に対応する減耗期間と、再充填モードの動作に対応する再充填期間とをフラッシュ優先および水優先のそれぞれの段階に関連して示す図3a~図4bを参照しながら上述した、貯蔵圧力、液面、フラッシュポテンシャルおよび液面マージンの例示のプロファイルを再び参照されたい。
【0240】
上述の例示の方法および特に1つまたは複数の熱負荷への蒸気の放出を制御する図5の例示の方法500では、フラッシュポテンシャル(または有用フラッシュポテンシャル)が使い尽くされるまで、負荷の優先度を参照せずにそれぞれの熱負荷のすべての熱エネルギー需要を(満たす)ことができる。
【0241】
しかし、フラッシュポテンシャルを節約するために、たとえば図5の方法500のブロック520で、それぞれの負荷の熱エネルギー需要を満たすか否かを判定するための基準が評価されてもよい。たとえば、フラッシュポテンシャルが複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準が評価されてもよい。評価が、フラッシュポテンシャルが予測需要を満たすのに十分であることに対応する場合、コントローラは、負荷のそれぞれに蒸気がそれぞれの需要を満たすレートで放出されるように設備を動作させ続ける。しかし、評価が、フラッシュポテンシャルが予測需要を満たすのに不十分であることに対応する場合、コントローラは、優先度がより低い負荷に優先して、より優先度がより高い1つまたは複数の負荷に蒸気を優先して放出するように設備を動作させる。たとえば、コントローラは、それぞれの熱負荷の相対優先度を指定する優先度データを記憶するかまたはその他によりアクセスしてもよい。たとえば、滅菌負荷(たとえば優先度10)が加熱(たとえば優先度4)より相対的に優先度が高くてもよい。優先度データは、任意の適切な方式で定義可能であり、単純な実装形態は(たとえばそれぞれ1または0により)高優先度か低優先度かを定義するデータである。
【0242】
基準は、予測需要を圧力容器に貯蔵されている水からの蒸気の放出によって満たすことができるか否かを査定するための任意の適切な基準とすることができる。比較的単純な例示の実装形態では、基準は、フラッシュポテンシャルがそれぞれの時点について所定量より高いか低いかの判定に対応してもよい。たとえば、設備が、09:00と16:00の間に200kg/時など、所定の期間にわたって比較的一定した需要を満たすように稼働させられる場合、設備は、圧力容器の貯蔵圧力をピーク貯蔵条件(すなわち、液面が目標ピーク液面であり、貯蔵圧力が目標ピーク貯蔵圧力)から低下させることによって、その期間にわたって対応する対応可能需要(たとえば1400kg)を満たすように構成されてもよい。この例を続けると、12:00までに600kg以下の蒸気が放出されていること、または、ゼロまたは正の液面マージンを維持しながら12:00における圧力容器内の貯蔵圧力および/または液面が少なくとも800kgのフラッシュポテンシャルに対応することが期待されてもよい。
【0243】
基準は、貯蔵圧力が、対応可能需要に対応する特定の時刻における所定の最小貯蔵圧力より上であるか下であるか、または時間の関数として決定される最小貯蔵圧力より上であるか下であるかを判定するように定義されてもよい。たとえば、12:00に1.8MPaの最小貯蔵圧力があり、14:00に1.6MPaの最小貯蔵圧力があってもよい。最小貯蔵圧力を下回る貯蔵圧力は、期待よりも高い需要に相当することになり、それによって、容器におけるフラッシュポテンシャルが(200kg/時での継続使用に基づく)予測需要を満たすのに十分ではない可能性があることを示すことになる。同様の評価を、任意の適切なパラメータに基づいて、たとえば(圧力と相関性がある)貯蔵温度、液面(高さまたは体積/体積分率)、またはたとえば監視液面および貯蔵圧力情報を使用したフラッシュポテンシャルおよび/または液面マージンの直接計算/推定に基づいて行うことができる。このような評価は、本明細書の他の箇所に記載されているようにヒーターの予測パワー出力を考慮に入れてもよい。
【0244】
他の例示の実装形態では、基準は、予測需要を対応可能需要(すなわち、圧力容器の熱エネルギー貯蔵能力に基づいて対応可能であることがわかっている需要)と比較するように定義されてもよい。対応可能需要は、圧力容器の現在の条件(たとえば貯蔵圧力と液面)に基づいて評価されてもよく、または、ピーク貯蔵条件(すなわち、液面が目標ピーク液面にあり、貯蔵圧力が目標ピーク貯蔵圧力にある)からの減耗に対応する対応可能総需要であってもよい。対応可能需要が放出可能な蒸気の量で表される場合は、対応可能需要は液面マージンがゼロまたは正であるときのフラッシュポテンシャルと同等(または、本明細書の他の箇所で定義されている有用フラッシュポテンシャルと同等)である。同様に、予測需要は、(たとえば基準を評価する瞬間に始まる)将来の期間の予測需要であってもよく、またはその代わりに減退期間中の蒸気の放出によってすでに満たされている需要を含んでもよい(すなわち、減退期間の予測総需要であってもよい)。後者の場合、基準は現在の対応可能需要または圧力容器の現在のフラッシュポテンシャルを直接には参照しなくてもよく、予測総需要が、ピーク貯蔵条件からの減耗に対応する対応可能総需要または総フラッシュポテンシャルを超えるか否かのみを考慮してもよい。
【0245】
対応可能需要、フラッシュポテンシャル、液面マージンおよび/または有用フラッシュポテンシャルの判定は、本明細書の他の箇所に記載されているようなヒーターの予測パワー出力を考慮に入れてもよく、加熱パワーの可用量は所与の量の蒸気を放出するための貯蔵圧力の低下を遅くする効果を有する。
【0246】
図1の例示の設備100において、コントローラ200は、09:00~17:00の減耗期間中の予測需要とその期間中の判定フラッシュポテンシャルとに基づき、減耗期間を通じて反復的に評価される基準を評価するように構成される。予測需要は、減耗期間中に必要な蒸気の質量(たとえば単位kg)として判定され、加熱に対応する需要は予報気象条件の関数としてコントローラによって判定された予測需要であり、滅菌に対応する需要は最近6週間にわたる同じ曜日(たとえば今日が木曜日の場合は最近6回の木曜日)の履歴需要の平均に対応する予測需要である。たとえば、コントローラは、その日または減耗期間にわたる平均予報気温を含む気象予報データを受け取ってもよく、平均予報気温の関数としてベースライン加熱需要を計算に入れた関数を評価してもよい。他の実施例では、加熱需要および/または滅菌需要は、その特定の日のその他のデータに少なくとも部分的に基づいて判定されてもよい。たとえば、加熱需要が、プラント10の中央カレンダーシステムに基づいて使用されると予測される部屋数に基づいて予測されてもよく、または滅菌需要がそれぞれの日に行われる滅菌作業に関する情報を記憶するデータベースに基づいて予測されてもよい。
【0247】
この実施例では、フラッシュポテンシャルが現在の貯蔵条件、すなわち圧力容器における現在の貯蔵圧力(圧力信号に基づく)と現在の液面(液面信号に基づく)とに基づいてそれぞれの時点に判定され、蒸気の質量(たとえば単位kg)として表される。フラッシュポテンシャルは、現在の貯蔵条件に基づき、本明細書の他の箇所に記載のようなヒーターの予測パワー出力に基づいて、予測フラッシュポテンシャルとして判定される。たとえば、コントローラ200が、ローカル電源からコントローラによって受け取られる(たとえば、気象予報データに基づいて風力タービンまたはマイクログリッドなどのローカル電源のコントローラによって予測された複数の10分間の時間区分における予測電力可用量を規定する)電力予測データを受け取ってもよく、コントローラ200が、現在の貯蔵条件、予測需要およびヒーターの予測パワー出力に基づいて、減耗期間の終わりまでの圧力容器内の貯蔵条件のプロファイルをシミュレーションしてもよい。
【0248】
この実施例では、シミュレーションされた減耗期間中に液面マージンが負になると予測されるか否かを判定することによって、フラッシュポテンシャルが予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準が評価される。
【0249】
コントローラ200が基準を評価し、フラッシュポテンシャルが予測需要を満たすには不十分であると判定した場合、コントローラは優先度がより低い負荷による蒸気消費を低減するための応答処置をとる。
【0250】
この特定の実施例では、コントローラ200は、各熱負荷の優先度を定義する優先度データ、具体的には、第1の熱負荷30(ヒーティングシステム)の優先度0(低優先度)と第2の熱負荷40(滅菌システム)の優先度1(高優先度)を記憶する。優先度データに基づいて、コントローラは、第1の熱負荷を制御するプラント10のコントローラに負荷制限信号を伝達して、負荷の熱エネルギー需要を満たすための低減された能力を指示することによって応答処置をとる。したがって、プラント10は(たとえばシステムのためにより低温の設定点を設定することによって)低電力消費モードに移行することができ、それによって熱エネルギー需要を低減する。
【0251】
他の実施例では、コントローラ200は、他の応答処置をとってもよく、たとえばそれぞれの熱エネルギー需要に関係なくそれぞれの負荷への蒸気の放出を防止するように優先度の低い熱負荷のそれぞれの制御弁を制御すること、またはそれぞれの熱エネルギー需要を部分的にのみ満たすために蒸気を放出するようにそれぞれの制御弁を制御することであってもよい。
【0252】
図9に、工業プラント90とともに使用するために設置されたさらなる例示の熱エネルギー貯蔵および供給設備900を示す。この設備と工業プラントの構成要素の多くは、図1の実施例を参照しながら上述したものとほぼ同じであり、同様の構成要素には同様の参照番号が使用されている。
【0253】
具体的には、工業プラント90における同様の構成要素は、ヒーティングシステムであって図1の例示の工業プラント10を参照しながら上述したような閉循環路132によって設備900の熱交換器930に熱結合された単一の熱プラント負荷40を含む。
【0254】
すべてが図1を参照しながら上述した通りである設備900内の構成要素についてはこの段落で説明し、これには、ヒーター112とそれに関連付けられた電源113とを備え、液面113を有する水が収容された圧力容器110が含まれる。圧力容器は、注入ポンプ122によってサブクール水供給部150からサブクール液体が供給される脱気装置120を備える。圧力容器110は、放出管路101に蒸気を放出する放出口116を有する。検知機器には、上述のように圧力容器内に配置された液面センサ214と圧力センサ210が含まれる。圧力容器から放出される蒸気を受け取る設備の熱負荷として熱交換器930が設けられているが、後述するように熱交換器130とは異なる。
【0255】
設備900は、熱交換器930が、圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンを画定するように圧力容器110に対して相対的に位置づけられており、それによって熱交換器内で凝縮する放出蒸気が、復水回収管路903を介して圧力容器の下部における復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成する点が、図1を参照しながら上述した設備とは異なる。具体的には、熱交換器930は、熱交換器の熱交換器素子の最上点と圧力容器の最上点との間で測定される、たとえば少なくとも0.5mの高さ差だけ、圧力容器より高い(したがって高さで表された圧力容器内のピーク液体水液面より高い)位置に配置されている(たとえば0.5mと2mの間、たとえば0.6mまたは1m高い)。熱交換器は、圧力容器の最上点より、または圧力容器内の充填液面の動作範囲より、たとえば少なくとも0.1m、たとえば少なくとも0.2m、たとえば0.1mと2mの間の高さ差だけ高い位置にある熱交換器内の凝縮位置のおかげで、圧力容器より高い位置に配置可能である。コントローラ920は、熱交換器のこの相対位置を前提として重力の作用下で任意の充填液面において圧力容器にサブクール水を戻すのに十分な水頭があるように、貯蔵圧力からの最小圧力低下で熱交換器に蒸気を放出するように構成されている。蒸気を凝縮させる熱交換器の作用は、熱サイフォンの方式で圧力容器からの蒸気の連続する流れを促進すると考えられる。また、熱交換器930におけるサブクーリングは、水の密度を高くし、圧力容器110に戻る再循環を促進する。
【0256】
コントローラは、貯蔵圧力で蒸気が実質的に放出されるように、制御弁915を完全に開くように制御することができる。熱負荷にとって過剰な蒸気流の場合には、コントローラはある期間にわたって流れを調整しながら供給するために一定のデューティーサイクルで開くように制御弁を制御することができる(たとえば所与の期間において60%の時間だけ開き、40%の時間だけ閉じる)。変形実施例では、放出制御弁915が圧力容器の放出口にある代わりに、またはその制御弁915に加えて、熱交換器930から圧力容器110に復水を搬送する復水回収管路903に沿って配置された復水管路制御弁915’があってもよい。コントローラは、圧力容器に戻るように熱交換器930内およびその下流に形成された復水の水柱を調整しながら供給する(たとえば選択的に可能にする)ために、復水管路制御弁915’を制御するように動作可能に結合されてもよい(図示せず)。復水管路制御弁915’が閉じられると、それ以上の蒸気が熱交換器930に流入しないように熱交換器930内に復水が蓄積し、それによって圧力容器からの蒸気の放出を制限する。
【0257】
圧力容器の放出口における制御弁915による圧力低減(ある場合)を、復水が圧力容器に戻ることができるように、水柱によって加えられる圧力を変化させるために制御することができる。同様に、熱サイフォン流を制御するためにサブクール水の密度を変化させるように熱交換器930におけるサブクールの量を制御することができる。また、所望の範囲の条件にわたる熱サイフォンとしての連続動作を確実にするために、モデリングによって任意の特定の設備のために適切な高さを選択することができる。
【0258】
単一の熱負荷930しかないため、この実施例では、熱交換器930への蒸気の放出を制御するために放出管路101に沿ってコントローラに動作可能に結合された単一の放出制御弁915がある(ただし、これは上述のように任意である)。放出口/放出制御弁915の下流に、それぞれ流量信号と圧力信号とを提供するようにコントローラ920に結合された流量計916と圧力センサ918がある。この簡略化された実施例では、放出管路101は熱交換器930まで延びる単一の配給管路902にのみ蒸気を放出するが、変形実施例では複数の分岐する配給管路があってもよいことはわかるはずであるためこれについて単独で説明している。
【0259】
コントローラ920は、熱プラント負荷40からの需要信号に基づいて需要を判定する点と、ヒーター112を使用した圧力容器内の水の加熱の制御については、実質的に図1のコントローラ200を参照しながら上述した通りである。コントローラ920は、放出制御弁915を制御することによって、熱プラント負荷40から受信した需要信号に基づいて蒸気の放出を制御するように構成される。この実施例では、コントローラ920は、需要を満たす熱交換器930内の目標伝熱率を可能にする蒸気の流量を供給するために、貯蔵圧力またはそれをわずかに下回る可変放出圧力で蒸気を放出するように放出制御弁915を開かせる。図1の熱交換器130の場合と同様、コントローラ920は、熱伝達のために熱交換器930に蒸気を選択的に放出すると、熱伝達循環路132に関連付けられた伝熱ポンプ133を作動させるように構成されている。上述の変形実施例では、コントローラ920は、復水管路制御弁915’を制御して需要を満たす熱交換器930内の目標伝熱率を可能にする蒸気の流量での熱交換器への蒸気の放出を制御することができる。
【0260】
圧力容器への復水の戻りのための熱サイフォン構成があるため、コントローラが圧力容器からの蒸気の放出を制御するためにリターン流を制限する場合を除いて、コントローラ920による制御を必要とせずにサブクール水が圧力容器に自然に戻される。コントローラ920は、この実施例では給水容器150として示されているが他の実施例では別の給水源であってもよい給水部からの、上述のように脱気装置120を介した圧力容器へのサブクール水の初期供給を制御するように構成される。
【0261】
使用時、給水源から圧力容器110に水の初期供給が上述のように目標ピーク水質量まで供給される。コントローラ920は、少なくとも2MPaなどの目標ピーク貯蔵圧力まで水を加熱するようにヒーター112を動作させる。(たとえば熱プラント負荷40から受信した需要信号に基づく)熱エネルギーの需要に応答して、コントローラ920は、圧力容器内の貯蔵圧力を低下させ、それによって放出制御弁915を介して選択的に放出される圧力容器内の液体水をフラッシュさせるために、放出制御弁915を開くように制御する。あるいは、容器から蒸気を放出させるように復水管路制御弁915’を制御することができる。
【0262】
蒸気は、圧力容器110の上方に位置する熱交換器930に放出圧力で供給され、熱伝達循環路132内の作動流体への熱伝達のための蒸発潜熱を放出するように熱交換器930内で凝縮し、次に熱伝達循環路132が熱を熱プラント負荷40(ヒーティングシステム)に伝達する。熱エネルギーの需要に応答して、コントローラ920は、熱交換器930において受け取られる蒸気からの熱伝達の準備が整うように熱伝達循環路132のポンプ133も動作させる。
【0263】
熱交換器930内で蒸気がたとえば少なくとも10℃だけサブクールされ、熱交換器930と圧力容器との間のサブクール水の水柱の圧力水頭により(蒸気の流量による流速水頭とともに)熱サイフォン機構によって圧力容器110に戻る。それぞれの放出制御弁を開くことによって貯蔵圧力を低下させるとただちにフラッシュさせるために蒸気との界面における液体水が飽和温度のままであるように、圧力容器に戻る復水が圧力容器内に液体水の熱成層化を生じさせることができる。
【0264】
コントローラ920は、図6の方法600によって圧力容器内の水を加熱するために、ヒーター112を独立して制御する。
【0265】
上述のように、設備900は、たとえば上述のような減耗期間と再充填期間とに、熱エネルギーの大量の蓄えを放出し、その後、再充填するように動作させることができる。具体的には、減耗期間には(熱交換器930からのサブクール水のリターン流のエンタルピーを考慮に入れて)圧力容器からのエンタルピー損失がヒーターを介して圧力容器内の水に与えられる投入エネルギーより大きくなるようなレートで熱負荷930に蒸気を放出させることができ、この結果として、圧力容器内の水の貯蔵圧力が(たとえば少なくとも2MPaの)目標ピーク貯蔵圧力から有意に、たとえば少なくとも1MPaだけ低下し得る。同様に、再充填期間にわたって貯蔵圧力が上昇し、有意な量、たとえば少なくとも1MPaだけ上昇することができるように、需要がないかまたは比較的低い期間中には蒸気の放出によるヒーターからの投入エネルギーが(この場合も熱交換器930からのサブクール水のリターン流のエンタルピーを考慮に入れて)エンタルピー損失よりも大きくなることができる。
【0266】
当然のことながら、熱交換器930から熱サイフォン構成を介してサブクール水が連続的に戻されるため、図9の熱サイフォン設備900の動作はサブクール水供給の段階付けを決定するためのいかなる手順も必要としない。
【0267】
本明細書に記載の熱エネルギー貯蔵および供給設備は、非ローカル電力網への接続を有してもよく(本明細書では「グリッド電力」と呼び、一方、マイクログリッドから引き出される電力はローカル電源から引き出されるとみなされる)、設備のコントローラが、(i)ローカル電源からの電力供給に基づくヒーターの予測パワー出力が減耗期間中の熱エネルギー需要を満たすには不十分であること、および/または(ii)ローカル電源からの電力供給に基づくヒーターの予測パワー出力が再充填期間中の目標ピーク貯蔵条件(たとえば水の目標ピーク質量のための目標ピーク貯蔵圧力)を満たすには不十分であること、に対応する基準に基づいて、グリッド電力を引き出すための基準を評価するように構成されてもよい。
【0268】
補助グリッド電力の需要が(i)または(ii)に基づいて判定されると、コントローラは、コストに基づいてグリッド電力をいつ引き出すか、および/または引き出すか否かを決定することができる。たとえば、電力コストは日中に相対的に高く、夜間に相対的に低い場合がある。したがって、基準は、電力コストが相対的に低いときに電力網電源から電力を引き出すことを可能にするようにバイアスされてもよい。基準は、圧力容器の現在条件または予測条件、たとえばある期間にわたる現在もしくは予測フラッシュポテンシャルまたは現在もしくは予測液面マージンに基づいてもよい。本明細書の他の箇所に記載のように、予測フラッシュポテンシャルは、熱エネルギーの予測需要、および/または、(加熱のための電力の予測可用量に対応する)ヒーターの予測パワー出力に基づいてもよい。したがって、基準は、そうしなければ需要を満たす設備の能力が損なわれることになると判定される場合に、相対的により高いコストで電源から電力を引き出すことを許容することができる。これに加えて、またはこれに代えて、基準は、補助グリッド電力の需要があるがエネルギーコストが相対的に高い場合、本明細書の他の箇所に記載されているように、優先度がより高い熱負荷には蒸気の供給が維持されている状態で、相対的に優先度が低い熱負荷への蒸気の供給が制限されるように定義されてもよい。
【0269】
例示に過ぎないが、設備は風力電源を含むローカル電源と非ローカル配電網へのグリッド接続とを有してもよく、関連付けられた工業プラントが、09:00から始まる各日の日中の操業時間に熱エネルギーの相対的に高い需要があり、18:00と09:00の間に最小熱エネルギー需要があるように動作させられてもよい。18:00における圧力容器内の条件に基づいて、コントローラは、09:00までに目標ピーク貯蔵圧力と目標液体水液面に達するように、夜間の再充填期間に700kWの加熱を供給すると決定してもよい。再充填期間の始めに、コントローラは、ヒーターの履歴電力可用量データに基づいて、および/または、予報気象条件に基づいて(両者は、コントローラに提供されるかまたはコントローラがアクセス可能なデータベースに記憶されている履歴電力可用量データおよび/または気象予報データを参照することによって判定されてもよい)、900kWのヒーター用風力発電電源からの電力可用量を予測してもよい。再充填期間内の中間時刻(03:00など)に、コントローラは、たとえば更新された気象予報条件に基づいて、再充填期間の予測電力可用量が600kWしかないと判定する可能性がある。この判定に基づいて、コントローラは、電力網電源から補助電力を引き出すと決定してもよい。コントローラは、圧力容器における現在の条件および/または予測条件に基づいて、補助電力の引き出しを開始可能な最も遅い時刻を判定し、その最も遅い時刻まで補助電力の引き出しを遅らせることができる。具体的には、ヒーターは最大パワー出力(たとえば120kW)を有することができる。また、圧力容器にサブクール液体を投入するレートは、(たとえば液面マージンを上昇させながらフラッシュポテンシャルを維持するための)並行加熱の量によって、および/またはそのようなサブクール液体を十分に脱気しながら投入することができるレートによって、制限される。
【0270】
本開示は、以下の番号付けされた実施例の主題に及ぶ。
【0271】
実施例1. 熱エネルギー貯蔵および供給方法であって、
圧力容器にサブクール水を供給することと、
容器が可変貯蔵圧力において飽和液体水と蒸気とを含むように電気式ヒーターを使用して圧力容器内の液体水を加熱することと、
貯蔵圧力をピーク貯蔵圧力まで上昇させるようにヒーターを制御することであって、ピーク貯蔵圧力が少なくとも0.5MPa、たとえば少なくとも1MPa、または少なくとも2MPaである、ヒーターを制御することと、
減耗期間中に貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力からたとえばピーク貯蔵圧力の少なくとも50%だけ低下するように、熱エネルギー需要に応答して圧力容器の放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出することとを含む、方法。
【0272】
実施例2. 放出蒸気が、中間蒸気アキュムレータを通過せずに直接、熱負荷に供給されるか、または、
圧力容器と熱負荷との間の任意の1つまたは複数の蒸気アキュムレータが圧力容器の容積より小さい総容積を有する、実施例1に記載の方法。
【0273】
実施例3. 減耗期間中に、任意により蒸気の選択的放出と同時に、ヒーターを動作させることを含む、実施例1または2に記載の方法。
【0274】
実施例4. 減耗期間の一部または全部にわたり、および/または、
貯蔵圧力が、ピーク貯蔵圧力までたとえばピーク貯蔵圧力の少なくとも50%だけ上昇する再充填期間の一部または全部にわたり、
圧力容器にサブクール水を同時に供給せずにヒーターを動作させることを含む、実施例1から3のいずれかに記載の方法。
【0275】
実施例5. 減耗期間中に圧力容器内の液体水の液面がヒーターの動作のための下限液面より下がるように、放出口から蒸気が放出され、
任意により、コントローラが、減耗期間中に、水の液面が下限液面より上にあるときに蒸気が放出されるのと同時にヒーターを動作させ、コントローラが、下限液面を超える蒸気の継続放出のためにヒーターを停止させる、実施例1から4に記載の方法。
【0276】
実施例6. 放出圧力において熱負荷に蒸気が放出され、
貯蔵圧力が放出圧力より大きいときに容器にサブクール水が供給される、実施例1から5のいずれかに記載の方法。
【0277】
実施例7. ピーク貯蔵圧力が、容器にサブクール水が供給される最大給水圧力を超える、実施例6に記載の方法。
【0278】
実施例8. 減耗期間中にサブクール水が圧力容器に供給され、任意により、減耗期間中に圧力容器に供給されるサブクール水の質量が減耗期間中に放出される蒸気の質量の50%以下、たとえば25%以下、10%以下、または5%以下である、実施例6または7に記載の方法。
【0279】
実施例9. 熱負荷が、減耗期間中に熱交換器内で凝縮する放出蒸気が圧力容器の下部にある復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成するように、圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンが確立されるように圧力容器に対して相対的に位置づけられた熱交換器を含む、実施例1から6のいずれかに記載の方法。
【0280】
実施例10. 重力の作用下でサブクール水を圧力容器に戻すのに十分な水頭を与えるように、熱交換器が復水注入口より高い位置に配置され、および/または、
熱交換器が熱交換器内の水を貯蔵圧力に対応する飽和温度に対して相対的に少なくとも10℃だけサブクールする、実施例9に記載の方法。
【0281】
実施例11. サブクール水が供給されるにつれて貯蔵圧力が低下するような注入流量でサブクール水が圧力容器に供給される、実施例6から10のいずれかに記載の方法。
【0282】
実施例12. フラッシュポテンシャルが、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、フラッシュポテンシャルの放出時にヒーターの動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応し、
方法が、
液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価することと、
評価に基づいて、液面マージンを上昇させ、フラッシュポテンシャルを低下させるように、圧力容器にサブクール水を供給することとを含む、実施例1から11のいずれかに記載の方法。
【0283】
実施例13. フラッシュポテンシャルが、ある期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力の関数である予測フラッシュポテンシャルであり、液面マージンが、期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づく予測液面マージンである、実施例12に記載の方法。
【0284】
実施例14. 予測需要が、装置(たとえば設備)の履歴蒸気需要データまたは履歴熱需要データなどの履歴需要データに基づき、および/または、
予測需要が、予報気象条件に基づき、および/または、
ヒーターの予測パワー出力が、ヒーターの履歴パワー可用量データに基づき、および/または、
ヒーターの予測パワー出力が、予報気象条件に基づく、実施例13に記載の方法。
【0285】
実施例15. 第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷があり、
熱負荷のそれぞれにそれぞれの熱エネルギー需要に基づいて圧力容器からそれぞれの制御弁を介して蒸気が選択的に放出され、
フラッシュポテンシャルが、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
方法が、
フラッシュポテンシャルが複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価することと、
評価と、熱負荷に関する優先度データとに基づいて、それぞれの第2の熱エネルギー需要を満たすために第2の熱負荷に蒸気を放出するよりも優先して、それぞれの第1の熱エネルギー需要を満たすために第1の熱負荷に蒸気を放出すると決定することとをさらに含む、実施例1から14のいずれかに記載の方法。
【0286】
実施例16. 再充填期間中に、
貯蔵圧力をピーク貯蔵圧力まで、ピーク貯蔵圧力の少なくとも50%である再充填圧力差だけ上昇させるように圧力容器内の液体を加熱することと、
ピーク貯蔵圧力におけるピーク液面に対応する圧力容器内の水のピーク質量に達するように、圧力容器にサブクール水を供給することと、
任意により、再充填期間の存続時間が減耗期間の存続時間の少なくとも100%、たとえば少なくとも125%、または少なくとも150%である、実施例1から15のいずれかに記載の方法。
【0287】
実施例17. 再充填期間の加熱のプロファイルに対して相対的にフロントロードされるように、再充填期間中の給水のプロファイルを段階付けることを含む、実施例16に記載の方法。
【0288】
実施例18. フラッシュポテンシャルが、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、フラッシュポテンシャルの放出時のヒーターの動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応し、
方法が、再充填期間の水優先部分中に、液面マージンが漸進的に上昇するように圧力容器内の水の量を水の目標ピーク質量まで増加させながら、最小再充填フラッシュポテンシャルを維持するように、加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けることと、
その後、貯蔵圧力をピーク貯蔵圧力まで上昇させるように再充填期間のフラッシュ優先部分中に液体水を加熱することとを含む、実施例16または17に記載の方法。
【0289】
実施例19. 最小再充填フラッシュポテンシャルが予測需要に対応し、予測需要が再充填期間の遊休部分中に蒸気の需要がないことに対応し、方法が、遊休部分中に貯蔵圧力を下限圧力より下に下げるためにサブクール水を供給することを含み、その後、圧力が、非ゼロ需要に対応するフラッシュポテンシャルを供給するための熱投入により上昇する、実施例18に記載の方法。
【0290】
実施例20. 減耗期間中の圧力容器内の水の液面の単位面積当たり蒸気放出の最大流量が、150kg/m時以下、たとえば100kg/m時以下、または50kg/m時以下である、実施例1から19のいずれかに記載の方法。
【0291】
実施例21. 圧力容器内からの蒸気の脱気流を脱気路に沿って向流として通過させて搬送することによって、脱気路に沿って圧力容器に供給されるサブクール水の注入流を脱気することを含み、
注入流が、圧力容器の貯蔵圧力の範囲にわたって圧力容器中に供給され、
注入流が貯蔵圧力の範囲にわたって蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、蒸気の脱気流の速度が注入流の温度および/または注入流と蒸気との温度差の関数として変化させられ、
任意により、速度が、蒸気の脱気流とそれに付随する同伴気体を排出するための制御弁を制御することによって変化させられ、
任意により、速度、または速度を制御するための制御弁設定が、注入流の温度、および/または蒸気の温度と相関した速度または制御弁設定のデータベースを参照することによって決定される、実施例1から20のいずれかに記載の方法。
【0292】
実施例22. ピーク貯蔵圧力が少なくとも2.5MPa、たとえば少なくとも3MPaであり、および/または、
貯蔵圧力が、減耗期間中に1.5MPa以下、たとえば1MPa以下、または0.8MPa以下の値まで低下する、実施例1から21のいずれかに記載の方法。
【0293】
実施例23. 平均減耗パワーが、減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーを減耗期間の存続時間で割った値と定義され、
最大減耗パワーが、減耗期間内の1分間の任意の最小パワー評価期間中に放出される蒸気の最大エンタルピーを、最小パワー評価期間で割った値と定義される、実施例1から22のいずれかに記載の方法。
【0294】
実施例24. 貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力の少なくとも50%だけ上昇する再充填期間中に、ヒーターを使用して圧力容器内の液体水を加熱することをさらに含み、
平均再充填パワーが、再充填期間中にヒーターによって液体水に与えられる累積エネルギーを再充填期間の存続時間で割った値と定義され、
最大再加熱パワーが、再充填期間内にヒーターによって液体水にエネルギーが与えられる最大パワーと定義され、
平均再加熱パワーが、平均減耗パワーの50%以下であり、および/または、
平均再加熱パワーが、最大減耗パワーの50%以下であり、および/または、
前記最大再加熱パワーが、最大減耗パワーの50%以下である、実施例23に記載の方法。
【0295】
実施例25. (i)減耗期間中に圧力容器から放出される蒸気の累積エンタルピーと、(ii)再充填期間中のヒーターの平均再加熱パワーとの大きさ比が、少なくとも25000秒である、実施例23または24に記載の方法。
【0296】
実施例26. 実施例27から47のいずれかに記載の熱エネルギー貯蔵および供給装置(たとえば設備)を使用して行われる、実施例1から25のいずれかに記載の方法。
【0297】
実施例27. 0.5MPa、たとえば1MPaまたは2MPaの貯蔵圧力で飽和液体水と蒸気とを含む水を貯蔵するための圧力容器であって、熱負荷に蒸気を放出するための放出口を有する圧力容器と、
圧力容器内の貯蔵圧力を変化させるために圧力容器に貯蔵されている液体水を加熱するように構成された電気式ヒーターと、
少なくとも0.5MPa、たとえば少なくとも1MPaまたは少なくとも2MPaの飽和液体水と蒸気とのピーク貯蔵圧力に達するように、圧力容器内の液体水を加熱するようにヒーターを制御することと、
熱エネルギー需要に応答して、放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出するように制御弁を制御することと、
貯蔵圧力がピーク貯蔵圧力からピーク貯蔵圧力の少なくとも50%の減耗圧力差だけ低下するように、熱エネルギー需要を満たすために蒸気放出を可能にすることとによって、
熱貯蔵設備を動作させるように構成されたコントローラとを含む、熱エネルギー貯蔵および供給装置(たとえば設備)。
【0298】
実施例28. 放出口が、中間蒸気アキュムレータを通さずに熱負荷に直接、放出蒸気を供給するように熱負荷と連通しており、または、
圧力容器と熱負荷との間の任意の1つまたは複数の蒸気アキュムレータが、圧力容器の容積より小さい総容積を有する、実施例27に記載の装置。
【0299】
実施例29. コントローラが、蒸気を選択的に放出するように制御弁を制御することとは独立して、圧力容器内の液体水を加熱するためにヒーターを制御するように構成され、それによって、使用時に、加熱と蒸気放出を同時に行うことが可能にされ、加熱と蒸気放出のそれぞれが他方を行わずに行うことが可能にされる、実施例27または28に記載の装置。
【0300】
実施例30. コントローラが、圧力容器にサブクール水が供給されるようにすることとは独立して圧力容器内の液体水を加熱するためにヒーターを制御するように構成され、それによって使用時に、加熱とサブクール水供給を同時に行うことが可能にされ、サブクール水供給を同時に行わずに加熱することが可能にされる、実施例27から29のいずれかに記載の装置。
【0301】
実施例31. コントローラが、貯蔵圧力が放出口から蒸気が放出される放出圧力より大きい場合に、圧力容器にサブクール水が供給されるようにするように構成されている、実施例27から30のいずれかに記載の装置。
【0302】
実施例32. 圧力容器にサブクール水を供給するように構成された送水ポンプをさらに含み、任意により、送水ポンプがピーク貯蔵圧力より低い最大給水圧力を有する、実施例27から31のいずれかに記載の装置。
【0303】
実施例33. 圧力容器への供給のためにサブクール水を貯蔵するように構成されたサブクール水供給容器をさらに含み、
圧力容器の貯蔵容積に対するサブクール水供給容器の貯蔵容積の比率が、少なくとも5%、任意により少なくとも7.5%または少なくとも10%である、実施例27から32のいずれかに記載の装置。
【0304】
実施例34. コントローラが、減耗期間中に圧力容器内の液体水の液面がヒーターの動作のための下限液面より下がるように、コントローラが蒸気が放出されることを可能にする延長減耗モードで選択的に動作するように構成され、液面がヒーターの動作のための下限液面より下である場合に、コントローラがヒーターによる加熱を防止し、
任意により、コントローラが、ヒーターを、液面を下限液面より低下させることになる蒸気放出をコントローラが防止する加熱減耗モードで選択的に動作させるように構成され、コントローラが、液面が下限液面より下である場合、ヒーターによる加熱を可能にする、実施例26から33のいずれかに記載の装置。
【0305】
実施例35. 熱負荷が、圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンを画定するように圧力容器に対して相対的に位置づけられた熱交換器を含み、それによって熱交換器内で凝縮する放出蒸気が圧力容器の下部における復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成する、実施例27から31のいずれかに記載の装置。
【0306】
実施例36. 熱交換器が圧力容器より高い位置に配置され、コントローラが、熱交換器の相対位置を前提として重力の作用下でサブクール水を圧力容器に戻すのに十分な水頭があるように選択された放出圧力で蒸気を熱交換器に放出させるように構成され、および/または、
コントローラが、水が少なくとも10℃だけサブクールされるように熱交換器における熱交換を制御するように構成されている、求項35に記載の装置。
【0307】
実施例37. 圧力容器内の水の液面に対応する液面信号をコントローラに提供するように構成された液面センサを含み、および/または、
圧力容器内の水の圧力に対応する圧力信号をコントローラに提供するように構成された貯蔵圧力センサを含み、および/または、
圧力容器内の水の温度に対応する温度信号をコントローラに提供するように構成された貯蔵温度信号を含み、および/または、
圧力容器の放出口から蒸気が放出される放出圧力に対応する圧力信号をコントローラに提供するように構成された放出圧力センサを含み、および/または、
放出口の下流の蒸気の流量に対応する流量信号をコントローラに提供するように構成された放出流量計を含み、および/または、
圧力容器に供給されるサブクール水の流量に対応する流量信号をコントローラに提供するように構成された流入流量計を含む、実施例27から36のいずれかに記載の装置。
【0308】
実施例38. フラッシュポテンシャルが、貯蔵圧力が熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、フラッシュポテンシャルの放出時のヒーターの動作のための下限量を上回る圧力容器内の液体水の量に対応し、
コントローラが、時間依存設定などの所定の設定に基づいて、またはユーザ入力に基づいて、または予測需要プロファイルおよび/またはヒーターの予測パワー出力プロファイルに基づいて、熱貯蔵装置を再充填モードと減耗モードのいずれで動作させるかを選択するように構成され、
減耗モードにおいて、コントローラが、液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価し、評価が液面マージンが負であることに対応する場合は液面マージンを上昇させ、フラッシュポテンシャルを低下させるために、圧力容器にサブクール水を供給するように構成され、および/または、
再充填モードにおいて、コントローラが、(i)ピーク貯蔵圧力において目標液面に対応する水の目標質量まで液面マージンと圧力容器内の水の量とが漸進的に上昇する間に、所定のフラッシュポテンシャルであるかまたは予測需要に対応する最小再充填フラッシュポテンシャルを維持するためと、(ii)その後、貯蔵圧力をピーク貯蔵圧力まで上昇させるように液体水を加熱するために、加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けるように構成されている、実施例27から37のいずれかに記載の装置。
【0309】
実施例39. フラッシュポテンシャルが予測フラッシュポテンシャルであり、コントローラが、フラッシュポテンシャルをある期間にわたる予測需要および/またはヒーターの予測パワー出力の関数として予測するように構成され、
液面マージンが予測液面マージンであり、コントローラが、上記期間にわたる予測フラッシュポテンシャルの放出に基づいて液面マージンを予測するように構成されている、実施例38に記載の装置。
【0310】
実施例40. コントローラが、装置の履歴蒸気需要データまたは履歴熱需要データなどの履歴需要データに基づいて予測需要を判定するように構成され、および/または、
コントローラが、予報気象条件に基づいて予測需要を判定するように構成され、および/または、
コントローラが、ヒーターの履歴パワー可用量データに基づいてヒーターの予測パワー出力を判定するように構成され、および/または、
コントローラが、予報気象条件に基づいてヒーターの予測パワー出力を判定するように構成されている、実施例38または39に記載の装置。
【0311】
実施例41. 再充填モードにおいて、コントローラが、再充填期間のうちの遊休部分中に予測需要が蒸気の需要がないことに対応する場合、コントローラが遊休部分中に貯蔵圧力を下限圧力より下に低下させるためにサブクール水を供給させるように構成され、
任意により、コントローラが、その後、非ゼロ需要に対応するフラッシュポテンシャルを供給するために、圧力容器内の液体水を加熱することによって貯蔵圧力を上昇させるように構成されている、実施例38から40のいずれかに記載の装置。
【0312】
実施例42. コントローラが、150kg/m時以下、たとえば100kg/m時以下、または50kg/m時以下である、圧力容器内の水の液面の単位面積当たりの最大流量で蒸気が選択的に放出されるように制御弁を制御するように構成されている、実施例27から41のいずれかに記載の装置。
【0313】
実施例43. 圧力容器が、第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷にそれぞれの制御弁を介して蒸気を放出するように構成され、
コントローラが、フラッシュポテンシャルが複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価するように構成され、
評価の結果に応答して、コントローラが、熱負荷のそれぞれの優先度を指定する優先度データを評価し、相対的に優先度がより低い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御するよりも優先して、相対的に優先度が高い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御する優先放出モードで動作するように構成されている、実施例27から41のいずれかに記載の装置。
【0314】
実施例44. 開放構成において圧力容器から放出される蒸気の形態で熱負荷に水を供給し、それによって復水としての水の対応する戻りなしに熱負荷が蒸気として供給された水を消費するように構成され、
コントローラが、0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で熱負荷に蒸気を放出するように構成され、または熱負荷が0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で放出された蒸気を受け取るように構成されている、実施例27から43のいずれかに記載の装置。
【0315】
実施例45. 圧力容器から放出された蒸気を少なくとも2つの熱負荷に供給するように構成され、
任意により、
熱貯蔵装置が、開放構成において圧力容器から放出された蒸気の形態の水を熱負荷のうちの1つに供給し、それによって水が異質プロセス流体または異質物と接触させられ、および/または復水としての水の対応する戻りなしに熱負荷から放出されるように構成され、および/または、
熱貯蔵装置が、閉ループにおいて圧力容器から放出された蒸気の形態の水を熱負荷のうちの1つに供給し、それによって水が、たとえばサブクール水供給容器を介して、サブクール水として少なくとも部分的に圧力容器に戻されるように構成されている、実施例27から44のいずれかに記載の装置。
【0316】
実施例46. 圧力容器が、脱気路に沿ってサブクール水の注入流を受け取り、圧力容器内からの蒸気の脱気流を脱気路に沿って向流として導くように構成された脱気装置を備え、
コントローラが、貯蔵圧力の範囲にわたって注入流が脱気路に沿った蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、注入流の温度および/または蒸気の温度の関数として蒸気の脱気流の速度を変化させるように構成され、
任意により、コントローラが、脱気装置からの蒸気の脱気流とそれに付随する同伴気体とを排出するための制御弁を制御することによって速度を変化させるように構成され、
任意により、コントローラが、注入流の温度および/または蒸気の温度と相関した速度または制御弁設定のデータベースを参照することによって、速度または速度を制御するための制御弁設定を制御するように構成されている、実施例27から45のいずれかに記載の装置。
【0317】
実施例47. ヒーターが、ヒーターの動作のための下限液面が60%以下、たとえば50%以下、40%以下、または30%以下の圧力容器内の水の液体分率に対応するように、圧力容器内に設置されている、実施例27から46のいずれかに記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギー貯蔵および供給方法であって、
圧力容器にサブクール水を供給することと、
前記容器が可変貯蔵圧力において飽和液体水と蒸気とを含むように電気式ヒーターを使用して前記圧力容器内の液体水を加熱することと、
前記貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで上昇させるように前記ヒーターを制御することと、
減耗期間中に前記貯蔵圧力が前記ピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、熱エネルギー需要に応答して前記圧力容器の放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出することとを含む、方法。
【請求項2】
放出圧力において前記熱負荷に蒸気が放出され、
前記貯蔵圧力が前記放出圧力より大きい場合に前記容器にサブクール水が供給され、
前記減耗期間中に前記サブクール水が前記圧力容器に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷があり、
前記熱負荷のそれぞれにそれぞれの熱エネルギー需要に基づいて前記圧力容器からそれぞれの制御弁を介して蒸気が選択的に放出され、
フラッシュポテンシャルが、前記貯蔵圧力が前記熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に前記圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
記フラッシュポテンシャルが前記複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価することと、
前記評価と、前記熱負荷に関する優先度データとに基づいて、それぞれの第2の熱エネルギー需要を満たすために前記第2の熱負荷に蒸気を放出するよりも優先して、それぞれの第1の熱エネルギー需要を満たすために前記第1の熱負荷に蒸気を放出すると決定することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
再充填期間中に、
前記貯蔵圧力を少なくとも2MPaのピーク貯蔵圧力まで少なくとも1MPaだけ上昇させるように前記圧力容器内の液体を加熱することと、
前記ピーク貯蔵圧力におけるピーク液面に対応する前記圧力容器内の水のピーク質量に達するように、前記圧力容器にサブクール水を供給することと、
前記再充填期間中の加熱のプロファイルに対して相対的にフロントロードされるように、前記再充填期間中の給水のプロファイルを段階付けることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2MPaの貯蔵圧力で飽和液体水と蒸気とを含む水を貯蔵するための圧力容器であって、熱負荷に蒸気を放出するための放出口を有する前記圧力容器と、
前記圧力容器内の貯蔵圧力を変化させるために前記圧力容器に貯蔵されている液体水を加熱するように構成された電気式ヒーターと、
少なくとも2MPaの飽和液体水と蒸気とのピーク貯蔵圧力に達するように、前記圧力容器内の液体水を加熱するように前記ヒーターを制御することと、
熱エネルギー需要に応答して、前記放出口から熱負荷に蒸気を選択的に放出するように制御弁を制御することと、
前記貯蔵圧力が前記ピーク貯蔵圧力から少なくとも1MPaだけ低下するように、前記熱エネルギー需要を満たすために蒸気放出を可能にすることとによって、
前記熱貯蔵設備を動作させるように構成されたコントローラとを含む、熱エネルギー貯蔵および供給設備。
【請求項6】
前記圧力容器への供給のためにサブクール水を貯蔵するように構成されたサブクール水供給容器をさらに含み、
前記圧力容器の貯蔵容積に対する前記サブクール水供給容器の貯蔵容積の比率が、少なくとも5%である、請求項に記載の設備。
【請求項7】
前記コントローラが、前記減耗期間中に前記圧力容器内の液体水の液面が前記ヒーターの動作のための下限液面より下がるように、前記コントローラが蒸気が放出されることを可能にする延長減耗モードで選択的に動作するように構成され、前記液面が前記ヒーターの動作のための前記下限液面より下である場合に、前記コントローラが前記ヒーターによる加熱を防止する、請求項5または6に記載の設備。
【請求項8】
前記熱負荷が、前記圧力容器と熱交換器との間に熱サイフォンを画定するように前記圧力容器に対して相対的に位置づけられた前記熱交換器を含み、それによって前記熱交換器内で凝縮する放出蒸気が前記圧力容器の下部における復水注入口に戻されるサブクール水の水柱を形成する、請求項に記載の設備。
【請求項9】
前記熱交換器が前記圧力容器より高い位置に配置され、前記コントローラが、前記熱交換器の前記相対位置を前提として重力の作用下で前記サブクール水を前記圧力容器に戻すのに十分な水頭があるように選択された放出圧力で蒸気を前記熱交換器に放出させるように構成され、および/または、
前記コントローラが、前記水が少なくとも10℃だけサブクールされるように前記熱交換器における熱交換を制御するように構成されている、請求項に記載の設備。
【請求項10】
フラッシュポテンシャルが、前記貯蔵圧力が前記熱負荷への蒸気の放出を維持するための下限圧力に達する前に、前記圧力容器内の液体水からフラッシュさせることができる蒸気の量に対応し、
液面マージンが、前記フラッシュポテンシャルの放出時の前記ヒーターの動作のための下限量を上回る前記圧力容器内の液体水の量に対応し、
前記コントローラが、時間依存設定などの所定の設定に基づいて、またはユーザ入力に基づいて、または予測需要プロファイルおよび/または前記ヒーターの予測パワー出力プロファイルに基づいて、前記熱貯蔵設備を再充填モードと減耗モードのいずれで動作させるかを選択するように構成され、
前記減耗モードにおいて、前記コントローラが、前記液面マージンが正であるか負であるかに対応する基準を評価し、前記評価が前記液面マージンが負であることに対応する場合は前記液面マージンを上昇させ、前記フラッシュポテンシャルを低下させるために、前記圧力容器にサブクール水を供給するように構成され、および/または、
前記再充填モードにおいて、前記コントローラが、(i)前記ピーク貯蔵圧力において目標液面に対応する水の目標質量まで液面マージンと前記圧力容器内の水の量とが漸進的に上昇する間に、所定のフラッシュポテンシャルであるかまたは予測需要に対応する最小再充填フラッシュポテンシャルを維持するためと、(ii)その後、前記貯蔵圧力を前記ピーク貯蔵圧力まで上昇させるように前記液体水を加熱するために、加熱のプロファイルに対して相対的に給水のプロファイルを段階付けるように構成されている、請求項に記載の設備。
【請求項11】
前記再充填モードにおいて、前記コントローラが、再充填期間のうちの遊休部分中に前記予測需要が蒸気の需要がないことに対応する場合、前記コントローラが前記遊休部分中に前記貯蔵圧力を前記下限圧力より下に低下させるためにサブクール水を供給させるように構成されている、請求項10に記載の設備。
【請求項12】
前記圧力容器が、第1の熱負荷と第2の熱負荷とを含む複数の熱負荷にそれぞれの制御弁を介して蒸気を放出するように構成され、
前記コントローラが、前記フラッシュポテンシャルが前記複数の負荷の予測需要を満たすのに十分であるか否かに対応する基準を評価するように構成され、
前記評価の結果に応答して、前記コントローラが、前記熱負荷のそれぞれの優先度を指定する優先度データを評価し、相対的に優先度がより低い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御するよりも優先して、相対的に優先度が高い熱負荷の熱エネルギー需要を満たすために蒸気の選択的放出を制御する優先放出モードで動作するように構成されている、請求項に記載の設備。
【請求項13】
開放構成において前記圧力容器から放出される蒸気の形態で前記熱負荷に水を供給し、それによって復水としての前記水の対応する戻りなしに前記熱負荷が蒸気として供給された前記水を消費するように構成され、
前記コントローラが、0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で前記熱負荷に蒸気を放出するように構成され、または前記熱負荷が0.5MPaと1.0MPaの間の最小放出圧力で放出された蒸気を受け取るように構成されている、請求項に記載の設備。
【請求項14】
前記圧力容器から放出された蒸気を少なくとも2つの熱負荷に供給するように構成され、
記熱貯蔵設備が、開放構成において前記圧力容器から放出された蒸気の形態の水を前記熱負荷のうちの1つに供給し、それによって前記水が異質プロセス流体または異質物と接触させられ、および/または復水としての前記水の対応する戻りなしに前記熱負荷から放出されるように構成され、および/または、
前記熱貯蔵設備が、閉ループにおいて前記圧力容器から放出された蒸気の形態の水を前記熱負荷のうちの1つに供給し、それによって前記水が、たとえばサブクール水供給容器を介して、サブクール水として少なくとも部分的に前記圧力容器に戻されるように構成されている、請求項に記載の設備。
【請求項15】
前記圧力容器が、脱気路に沿ってサブクール水の注入流を受け取り、前記圧力容器内からの蒸気の脱気流を前記脱気路に沿って向流として導くように構成された脱気装置を備え、
前記コントローラが、貯蔵圧力の範囲にわたって前記注入流が前記脱気路に沿った前記蒸気に対応する飽和温度に達することを目標として、前記注入流の温度および/または前記蒸気の温度の関数として蒸気の前記脱気流の速度を変化させるように構成されている、請求項に記載の設備。
【国際調査報告】