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特表2024-509575直接還元型金属を製造する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】直接還元型金属を製造する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/00 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
C21B13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555149
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 SE2022050213
(87)【国際公開番号】W WO2022191754
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2150290-1
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441283
【氏名又は名称】グリーンアイロン エイチツー アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】GREENIRON H2 AB
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】マレー,ハンズ
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DA02
4K012DA04
4K012DA05
(57)【要約】
連続プロセスで直接還元金属材料(106)を製造するための方法が開示される。この方法は、水素ガスおよび不活性ガスが、個々の移動炉(101)用に構成された異なるそれぞれのガス接続ステーション(130,140120-122,150-151)を介して、それぞれの閉ループの第1および第2のガス回路内で循環される方法であって以下のステップを備える:a) 金属材料(106)を炉に装入する;b) 炉を移動して不活性ガス接続ステーションに接続する;c) 加熱された不活性ガスを炉に供給する;d) 炉を切り離す;e) 炉を移動し、水素ガス接続ステーションに接続する;f) 加熱した水素ガスを炉に供給する;g) 炉を切り離す;h) 炉を移動して不活性ガス接続ステーションに接続する;i) 冷却された不活性ガスを炉に供給する;j) 炉を切り離す;k) 金属材料を排出する。本発明はまたシステムに関する。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続プロセスで直接還元金属材料(106)を製造するための方法であって、
前記方法は、第1のバルブシステムを使用して、複数の水素ガス接続ステーション(130,140)のセットのうちの1つまたは複数を介して水素ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第1のガス回路内で水素ガスを循環させることを含み、
前記方法は、第2のバルブシステムを用いて、複数の不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)のうちの1つまたは複数を介して不活性ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第2のガス回路内で不活性ガスを循環させることをさらに含み、
前記方法は、複数の個々の移動炉(101)の各々に対して実行される以下のステップをさらに含む:
a) 還元されるべき金属材料(106)の量を移動炉(101)に装入し;
b) 前記移動炉(101)を前記不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)の第1の1つに移動させかつ接続し;
c) 加熱された不活性ガスを前記移動炉(101)に供給し、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通り過ぎて循環する前記加熱された不活性ガスによって前記金属材料(106)が加熱されるようにし;
d) 前記移動炉(101)を前記第1の不活性ガス接続ステーションから切り離し;
e) 前記移動炉(101)を前記水素ガス接続ステーション(130,140)の第1の1つに移動させかつ接続し;
f) 加熱された水素ガスを前記移動炉(101)に供給して、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通り過ぎて循環する前記加熱された水素ガスによって前記金属材料(106)が還元されるようにし;
g) 前記移動炉(101)を前記第1の水素ガス接続ステーション(130,140)から切り離し;
h) 前記移動炉(101)を前記不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)の第2の1つに移動させかつ接続し;
i) 冷却不活性ガスを前記移動炉(101)に供給して、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通り過ぎて循環する前記冷却不活性ガスにより前記金属材料(106)を冷却し;
j) 前記移動炉(101)を前記第2の不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)から切り離し;および、
k) 前記還元および冷却された金属材料(106)を前記移動炉(101)から排出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記水素ガスおよび/または前記不活性ガスは、前記閉ループの第1および/または第2のガス回路において、大気圧または最大1.5バールで循環される
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
ステップi)において前記金属材料(106)を冷却するために使用される前記不活性ガスは、ステップc)において前記金属材料(106)を加熱するために使用される前記不活性ガスを予熱するために使用されるか、または前記不活性ガスとして使用される、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法はさらに、ステップc)において前記金属材料(106)を加熱するために使用される不活性ガスおよび/またはステップf)において使用される予熱された水素ガスを、前記不活性ガスまたは水素ガス接続ステーション(120-122,130,140)の上流に設けられた電気加熱器等の加熱器(173,191)を使用して予熱することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記移動炉(101)は、熱エネルギーの統合された供給源を構成しないという意味で、熱供給の点で受動的である、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記不活性ガス及び/又は前記水素ガスが、ステップc)、f)および/またはi)において供給され、これにより、前記移動炉(101)内に流入し、前記移動炉(101)内で前記金属材料(106)の下方から上方に向かって前記金属材料(106)を通過する、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記移動炉(101)が、閉じた炉空間(101a)を形成するよう互いに係合するように配置された2つの炉部分(104,105)を備えるよう構成され、
前記2つの炉部分(104,105)の少なくとも一方が水冷式であり、
前記方法は、冷却水回路において冷却水を循環させることを含み、
前記水素ガス(130,140)および/または不活性ガス(120-122,150-151)接続ステーションはさらに、当該接続ステーション(120-122,130,140,150-151)に接続される際に前記移動炉(101)に当該循環冷却水が供給されるように、当該冷却水のための接続部を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法はさらに、速度を制御可能なファンまたはポンプ(172,194)を用いて、前記第1および/または第2のガス回路内の循環速度を制御することを含み、これにより、前記金属材料(106)の加熱力、還元速度および/または冷却力が制御される、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップf)がさらに、前記金属材料(106)が還元された後、前記金属材料(106)をさらに焼結するために加熱水素ガスの供給を継続することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法はさらに、第3バルブシステムを用いて、前記複数の水素ガス接続ステーション(130,140)のセットのうちの1つまたは複数を介して炭素含有ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第3のガス回路内で前記炭素含有ガスを循環させることを含み、
ステップf)はさらに、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通過して循環する前記炭素含有ガスによって前記金属材料(106)が浸炭されるように、前記炭素含有ガスを前記移動炉(101)に供給することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法はさらに、第3のバルブシステムを用いて、複数の炭素含有ガス接続ステーションのセットのうちの1つまたは複数を介して炭素含有ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第3のガス回路内で前記炭素含有ガスを循環させることを含み、
前記方法はさらに、ステップg)の後であってステップh)の前に実行される以下のステップをさらに含む:
前記移動炉(101)を、前記炭素含有ガス接続ステーションの第1の1つに移動させかつ接続し;
前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通過して循環する炭素含有ガスによって前記金属材料(106)が浸炭されるように、前記炭素含有ガスを前記移動炉(101)に供給し;および、
前記移動炉(101)を前記第1の炭素含有ガス接続ステーションから切り離す、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法はさらに、並列および/または直列に使用される水素ガス接続ステーション(130,140)の数よりも多くの不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)を並列および/または直列に使用することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法であって、
前記不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)のうちの複数は、並列に並んだ複数の移動炉(101)を加熱および/または冷却するために同時に使用され、
前記方法は、加熱された不活性ガスおよび/または冷却された不活性ガスを前記移動炉(101)のプロセスフローとは反対方向に循環させ、直列の前記複数の移動炉(101)を通過させ、その後、前記不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)の1つから切り離し、前記移動炉(101)を移動させ、前記不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)の次の1つに接続することにより、前記不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)の間の前記プロセスフローにおいて前記移動炉(101)を1つずつ移動させることを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップf)はさらに、加熱された水素ガスを加熱のための熱源として使用して、前記金属材料(106)を、前記金属材料(106)中に存在する汚染物質の溶融温度および/または蒸発温度を超えて加熱することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップa)は、還元すべき金属材料(106)を充填したバスケット(106a)を前記移動炉(101)の炉空間(101a)に装入することを含み、
ステップk)は、前記バスケット(106a)を前記炉空間(101a)から排出することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップf)は、前記移動炉(101)から出る水素ガスを前記移動炉(101)に入る水素ガスと熱交換し、熱交換された水素ガスを冷却して乾燥させ、さらに前記乾燥から形成される液体水を回収することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
連続プロセスにおいて直接還元金属材料(106)を製造するためのシステム(100)であって、
前記システムは、閉ループの第1のガス回路内で水素ガスを循環させるための循環手段を備え、このシステムは、前記システム(100)内に構成される複数の水素ガス接続ステーション(130,140)のセットのうちの1つまたは複数を介して水素ガスを選択的に循環させるように配置された第1のバルブシステムを備え、
前記システムは、閉ループの第2のガス回路内で不活性ガスを循環させるように配置された循環手段(172,174)をさらに備え、
前記システムは、前記システム(100)内に構成される複数の不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)のセットのうちの1つまたは複数を介して不活性ガスを選択的に循環させるように配置された第2のバルブシステムを備え、
前記システムは、複数の個々の移動炉(101)をさらに備え、
前記システムは、以下のように構成されている:
a) 還元されるべき金属材料(106)の量を移動炉(101)に装入する;
b) 前記移動炉(101)を前記不活性ガス接続ステーション(120-122, 150-151)の第1の1つに移動させかつ接続する;
c) 加熱された不活性ガスを前記移動炉(101)に供給し、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通過して循環する加熱された不活性ガスによって前記金属材料(106)が加熱されるようにする;
d) 前記移動炉(101)を前記第1の不活性ガス接続ステーションから切り離す;
e) 前記移動炉(101)を前記水素ガス接続ステーション(130,140)の第1の1つに移動させかつ接続する;
f) 加熱された水素ガスを前記移動炉(101)に供給し、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通過して循環する前記加熱された水素ガスによって前記金属材料(106)が還元されるようにする;
g) 前記移動炉(101)を前記第1の水素ガス接続ステーション(130,140)から切り離す;
h) 前記移動炉(101)を前記不活性ガス接続ステーション(120-122, 150-151)の第2の1つに移動させかつ接続する;
i) 冷却不活性ガスを前記移動炉(101)に供給し、前記移動炉(101)内の前記金属材料(106)を通り過ぎて循環する前記冷却不活性ガスによって前記金属材料を冷却する;
j) 前記移動炉(101)を前記第2の不活性ガス接続ステーション(120-122,150-151)から切り離す;および、
k) 還元され冷却された金属材料(106)を前記移動炉(101)から排出する、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元金属、特に炭素含有量が非常に少ない直接還元鉄(スポンジ(海綿)鉄としても知られる)を製造する方法およびシステムに関する。特に、本発明は、このような直接還元金属を製造するための、制御された水素雰囲気下での金属鉱石および金属酸化物の直接還元に関する。本発明はさらに、還元された金属材料を浸炭するために、同じプロセスの一部として炭素含有ガスを供給することにより、浸炭されたそのような直接還元金属を製造するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
還元剤として水素を使用する直接還元金属の製造は、それ自体は公知である。例えば、SE7406174-8、SE7406175-5には、金属鉱石の装入に水素雰囲気が流れ、その結果、還元されて直接還元純金属が形成される方法が記載されている。
【0003】
さらに、スウェーデン公開出願SE1950403-4、さらに本出願の優先日時点では公開されていないスウェーデン出願SE1951070-0およびSE2050771-1には、密閉水素雰囲気下で金属材料を直接還元するプロセス、さらにそのような直接還元金属材料を浸炭するプロセスが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような還元と可能な浸炭をより大規模に行う方法を提供する。
【0005】
具体的には、これらの先行技術の方法は、直接還元金属のバッチ式生産に有効である。生産量を増やすために、複数の小型炉を並行して使用することができる。また、前記スウェーデン特許出願に記載されているように、生産を大幅に自動化することもできる。
【0006】
しかしながら、生産規模の拡大を念頭に置くと、このような金属材料の直接還元を達成する、より容易に拡張可能で柔軟かつ堅牢な方法が必要とされている。このようなプロセスは、完全に自動化可能であり、一時的または恒久的な出力要件の変化に低コストで対応できるようにアレンジされていなければならない。
【0007】
本発明は、上述の問題点を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、連続プロセスで直接還元金属材料を製造するための方法に関し、この方法は、第1のバルブシステムを使用して、複数の水素ガス接続ステーションのセットのうちの1つまたは複数を介して水素ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第1のガス回路内で水素ガスを循環させることを含み、この方法は、第2のバルブシステムを用いて、複数の不活性ガス接続ステーションのうちの1つまたは複数を介して不活性ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第2のガス回路内で不活性ガスを循環させることをさらに含む。この方法は、複数の個々の移動炉の各々に対して実行される以下のステップをさらに含む:a) 還元されるべき金属材料の量を移動炉に装入し;b) 前記移動炉を前記不活性ガス接続ステーションの第1の1つに移動させかつ接続し;c) 加熱された不活性ガスを前記移動炉に供給し、前記移動炉内の前記金属材料を通り過ぎて循環する前記加熱された不活性ガスによって前記金属材料が加熱されるようにし;d) 前記移動炉を前記第1の不活性ガス接続ステーションから切り離し;e) 前記移動炉を前記水素ガス接続ステーションの第1の1つに移動させかつ接続し;f) 加熱された水素ガスを前記移動炉に供給して、前記移動炉内の前記金属材料を通り過ぎて循環する前記加熱された水素ガスによって前記金属材料が還元されるようにし;g) 前記移動炉を前記第1の水素ガス接続ステーションから切り離し;h)前記移動炉を前記不活性ガス接続ステーションの第2の1つに移動させかつ接続し;i) 冷却不活性ガスを前記移動炉に供給して、前記移動炉内の前記金属材料を通り過ぎて循環する前記冷却不活性ガスにより前記金属材料を冷却し;j) 前記移動炉を前記第2の不活性ガス接続ステーションから切り離し;および、k)前記還元および冷却された金属材料を前記移動炉から排出する。
【0009】
本発明はまた、連続プロセスにおいて直接還元金属材料を製造するためのシステムに関し、このシステムは、閉ループの第1のガス回路内で水素ガスを循環させるための循環手段を備え、このシステムは、前記システム内に構成される複数の水素ガス接続ステーションのセットのうちの1つまたは複数を介して水素ガスを選択的に循環させるように配置された第1のバルブシステムを備え、このシステムは、閉ループの第2のガス回路内で不活性ガスを循環させるように配置された循環手段をさらに備え、このシステムは、前記システム内に構成される複数の不活性ガス接続ステーションのセットのうちの1つまたは複数を介して不活性ガスを選択的に循環させるように配置された第2のバルブシステムを備え、このシステムは、複数の個々の移動炉をさらに備える。このシステムは、以下のように配置されている:a) 還元されるべき金属材料の量を移動炉に装入する;b) 前記移動炉を前記不活性ガス接続ステーションの第1の1つに移動させかつ接続する;c) 加熱された不活性ガスを前記移動炉に供給し、前記移動炉内の前記金属材料を通過して循環する加熱された不活性ガスによって前記金属材料が加熱されるようにする;d) 前記移動炉を前記第1の不活性ガス接続ステーションから切り離す;e) 前記移動炉を前記水素ガス接続ステーションの第1の1つに移動させかつ接続する;f) 加熱された水素ガスを前記移動炉に供給し、前記移動炉内の前記金属材料を通過して循環する前記加熱された水素ガスによって前記金属材料が還元されるようにする;g) 前記移動炉を前記第1の水素ガス接続ステーションから切り離す;h) 前記移動炉を前記不活性ガス接続ステーションの第2の1つに移動させかつ接続する;i)冷却不活性ガスを前記移動炉に供給し、前記移動炉内の前記金属材料を通り過ぎて循環する前記冷却不活性ガスによって前記金属材料を冷却する;j)前記移動炉を前記第2の不活性ガス接続ステーションから切り離す;およびk)還元され冷却された金属材料を前記移動炉から排出する。
【0010】
以下では、本発明の例示的な実施形態および添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明による方法を実行するように配置された、本発明によるシステムの概要であり、具体的には、移動炉における装入金属材料の加熱および冷却のための不活性ガスフローを示す図である。
図2図2は、図1に対応する概要図であるが、特に装入金属材料の冷却フローを示す図である。
図3図3は、図1に対応する概要図であるが、特に装入金属材料の加熱フローを示す図である。
図4図4は、図1に対応する概要図であるが、特に装入金属材料を還元するための水素ガスの流れを示す図である。
図5図5は、図1に対応する概要図であるが、特に装入金属材料を焼結するための水素ガスの流れを示す図である。
図6図6は、移動炉と接続ステーション間の接続を簡略化した図である。
図7図7は移動炉の簡略図である。
図8図8は、本発明による方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図7は、同一または対応する部分について同一の参照数字を共有している。図1図5は、本発明によるシステム100を異なる観点から示しており、これらの図は、個々の図において明瞭化の目的から細部が異なっていることに留意されたい。
【0013】
先に述べたスウェーデンの特許出願を参照して、従来の解決策はすべて、予熱、還元、冷却を含む完全なプロセスを同一の固定炉で行うことに焦点を当てている。プロセス効率は、当該炉内の過圧、ガス/ガス熱交換器の炉への直接接続、特に炉底への直接接続、および加熱された炉空間内の発熱体の使用によって達成されてきた。さらに、このような従来公知の解決策では、このような炉を複数並行して使用し、またこのような固定炉間の熱効率向上メカニズムを利用することで、生産の柔軟性を実現していた。
【0014】
このような解決策は、小規模な設備には有効である。しかし、スループットの高い設備では、必ずしもそうではない。
【0015】
ここで述べるような大規模な設備では、大気圧またはわずかな過圧(大気圧に対してせいぜい50%の過圧、あるいはせいぜい10%の過圧など)で作動する炉空間を使用しないのが有利である。過圧が大きいと水素と水蒸気の関係が有利になり、ガス再循環が小さくても急速な還元が可能であるにもかかわらず、より小さい圧力を使用することが可能であることが証明されており、コストも低くなる。
【0016】
約550℃の還元温度では、約100℃の過熱が必要である。実際の水素の必要量は、以下の通りである(各温度における水素ガスと水蒸気の関係を考慮する):
【0017】
還元温度(℃): 550 600 650
水素ガス(%): 80 75 72.5
水蒸気(%): 20 25 27.5
【0018】
600℃を平均温度値とし、ヘマタイト(Fe2O3)を例にとると、理論的には1トン当たり421 Nm3の水素ガスが平衡状態で必要となり、25%の水蒸気が生成される。これは、完全な還元には1トン当たり合計1684 Nm3の水素ガスが必要であることを意味する。マグネタイト(Fe3O4)の対応する場合、1トン当たり387 Nm3の水素ガスが使用され、1トンのマグネタイトを還元するには1548 Nm3の水素ガスが必要であることを意味する。円筒形の容器に金属材料のボールを入れると、体積の約52%が固体材料で、約48%がボール間の自由空間となる。その場合以下となる:
【0019】
装入重量(トン): 1 2 5
容器直径(m) : 0.98 1.38 2.19
素材ベッドの高さ(m): 0.5 0.5 0.5
ガス用空間 (Nm3): 0.18 0.36 0.90
【0020】
これらの値を使用すると、所望の還元速度と同様の入力値とが与えられた場合に、必要な流量を計算することが可能である。ガス流量を変化させ、生成された水の量、排出ガスの温度、その他のパラメータを測定することにより、最適な効率でプロセスを制御することが可能である。
【0021】
システム100に空気が入らないようにするには、システム100を密閉し、システム100内のガスを循環させるための1つまたは複数のファンまたはポンプが必要である。真空ポンプは、プロセス開始に関連してシステム100からあらゆる空気を汲み出し、また処理ステップ間の処理中のガス交換にも使用できる。
【0022】
上記従来の解決策によれば、ガス/ガス熱交換器は、装入材料に密接に接触するように、炉の下面に方向に接続して配置されていた。しかし、本発明者は、このようなガス/ガス熱交換器を炉空間から離れた位置に配置できることを発見した。これは、ガス/ガス熱交換器内で鉛や亜鉛などの金属が凝縮し、洗浄が必要となる場合に有利である。使用済みのガス/ガス熱交換器を、炉に直接接続するのではなく、中央部に配置することも、二重化が容易であるため有利であり、そのようなガス/ガス熱交換器を1台停止して洗浄し、その間、並列に設置されたガス/ガス熱交換器を作動させて熱交換を行うことができる。個別に運転可能な複数の並列熱交換器を使用することで、そのようなガス/ガス熱交換器を任意の時点で1台、2台、またはそれ以上使用することも可能になり、生産能力の柔軟性が高まり、生産停止のリスクが低下する。このような2台以上の並列設置型ガス/ガス熱交換器のセットを相互接続して、複数の個別炉からのガス流量を同時に供給する場合は特に顕著となる。
【0023】
本発明者は、炉空間に対して外部に配置された別のガス加熱器を使用することも提案する。すなわち、炉空間内に加熱要素を設けることで、装入材料自体が加熱される前に、炉壁と、装入材料が充填されたバスケットの外側とが加熱される。別途、外部に配置された加熱ユニットを使用し、炉空間に入る前にガスを加熱し、この外部で加熱されたガスは、装入材料の下方から装入材料を通って上方に、炉空間に供給することができる。このようにして、装入材料は炉壁やバスケット壁の手前で加熱される。また、このように装入材料を加熱することで、炉空間の断熱材厚みの要件が減少し、炉の重量とコストが低減する。
【0024】
これに対応して、装入材料の冷却中、冷却ガスは有利には装入材料を通して下方から炉内空間に導入される。
【0025】
上述したガス/ガス熱交換器の場合と同様に、使用されるガス加熱器および/または冷却器は、炉空間に対して外部に配置されてもよく、例えば中央に配置されてもよく、2つ、3つまたはそれ以上の並列に配置された加熱器/冷却器から構成されてもよく、それぞれの並列流で一度に1つまたは複数が作動し、柔軟性と弾力性を提供してよい。
【0026】
炉、熱交換器、その他の機器を交換可能なコンポーネントとして提供し、1つまたは複数を並行して使用できるようにすることで、総処理量(スループット)と生産量、保守の面で、システム全体としての柔軟性が大幅に向上する。
【0027】
上記従来の解決策と同様に、本発明はさらに、加熱、還元および冷却の両方に1つの同じ炉空間を使用するという基本概念を使用し、プロセスを簡素化し、炉空間間および炉空間を通過する材料の輸送要件を緩和する。
【0028】
しかしながら、異なるガス流を固定炉に接続することに替えて、本発明は、加熱、還元、冷却、および必要とされるその他の処理ステップを達成するために、異なるガス流を供給するための異なる固定ステーションに炉を物理的に移動させることを提案する。これらのステーションは、システムの異なる部分間の熱伝達を処理するために相互接続することができ、全体として、金属材料の直接還元を実行するための非常に柔軟かつ効率的なシステムを実現する。
【0029】
図7に示すように、本発明によるこのような移動炉101は、下部105と上部104とからなる炉本体を備えてよい。上部104は、ヒンジ104aまたは類似の機構を用いて、炉101内への金属材料106の装入および炉101からの排出のために加熱された炉空間の内部101aを露出させるように開閉可能であってもよい。上部104は、セラミック材料で絶縁保護された板金で構成することができる。上部104と下部105の間の接続部102には、冷却水や各種ガス流のためのコネクタ103を配置することができる。冷却水は炉101内を循環して炉101を冷却し、上部104と下部105の接続部を冷却するように配置されてもよく、接続部は場合によっては、前記接続部104、105間の周辺に走行する接続部の全長に沿って水冷される周辺接続リングとして配置されてよい。
【0030】
炉101はさらに架台108を含み、この架台108は、炉101を搭載することができる安全で安定したテーブルを提供する。このような架台108はそれぞれ、単一の炉101のために配置することもできるが、2つの炉101を支持するように配置することもでき、その場合、一方の炉が他方の炉からの廃熱を、好適に配置されたガス/ガス熱交換器を使用して、前記スウェーデン特許出願に記載されたものに相当する方法で使用するように、双方の炉が相互接続される。
【0031】
架台108は、固定炉101を備えた小規模な設備にも使用できる。その場合、架台108は生産設備の床に直接載置することができる。しかしながら、本発明によれば、架台108は車輪のような移動手段を備えている。図7に示す好ましい実施形態では、架台108は、車輪109aを有するトロリーのような可動プラットフォーム109上に設けられる。炉101、特にその下部105を可動プラットフォーム109上に直接載置し、プラットフォーム109の残りの部分を使用せずに、架台101または下部105に車輪を直接設けてもよい。図7に示す構造が最も全体的な柔軟性が高いので好ましい。
【0032】
ここでは、架台108および/または可動プラットフォーム109を含み、特に車輪109aのような移動手段を含む移動炉101を「移動炉」と表記する。
【0033】
車輪109aは、床面上を直接自由に転動するように配置されてもよいし、レールなどの上を案内されながら転動するように配置されてもよい。いずれの場合も、本システムは、個々の移動炉101上に配置され、車輪109aの推進力および/または方向を制御するように配置された炉制御装置109bのような移動炉移動制御装置、および/または、各移動炉101をレール制御または遠隔制御して当該移動炉101の移動を制御するように配置された中央炉制御装置20から構成することができる。制御装置109b、20は、当該システム100で使用される移動炉101の所望の移動パターンを達成するために、それ自体従来通りの好適な方法で協働し得ることが理解されるべきである。制御装置109b、20は特に、任意の適切な有線または無線通信プロトコルを使用して通信するように配置されてもよい。また、炉制御装置109bは、車輪109bの推進力および移動炉101に搭載された制御電子機器への電力供給のために、バッテリまたは電気エネルギー受電装置から構成されてよい。制御装置109bはまた、移動炉101がコネクタ103を接続部11に自動的にドッキングできるようにするための制御機構を備えてもよい(図6および以下を参照)。このようなドッキングは、ガイドレール、コンピュータビジョンガイダンス、レーザガイダンスなどを使用するような、それ自体既知の任意の適切な方法で達成することができる。
【0034】
制御装置20は、特に断らない限り、様々な相互作用するシステム100のコンポーネント上に局所的に配置された物理的制御要素に制御を与えるように配置されたデジタル、電子通信プロトコルを使用するような、それ自体従来の制御機構を使用して、システム100の様々な部分を機械的に制御することによって、本明細書に記載された全ての方法ステップを自動的に実行するために、論理および通信インタフェースを備えて配置される。制御装置20はまた、システム100の制御および監視のための適切なユーザーインタフェースと通信するように構成されるか、または接続され得る。
【0035】
接続部102は、例示的な接続ステーションの対応する接続部11とともに、図6により詳細に示されている。ガスおよび冷却水は、接続ステーションから、システム100の残りの部分に接続された導管14を介して、集中制御されたバルブシステム13に供給される。バルブシステム13は、当該接続ステーションに接続されている移動炉101の現在行われている処理ステップの関数として、所望の流体の供給を制御するように配置される。
【0036】
上記流体は、図6に示されるように、相互作用するガス/水コネクタ12、103を介して、接続ステーションから移動炉101に供給され、移動炉101を構成する閉ループ循環で戻される。
【0037】
アライメント手段15は、接続部102を接続部11にドッキングする際に使用されてよい。
【0038】
接続部11はまた、圧力、温度、および/または、流入および/または流出するガスおよび/または冷却水の他の所望のパラメータを測定し、システム100の動作の制御に使用するために、そのような記録された測定値を制御装置20に報告するための、必要な測定装置を備えてもよい。
【0039】
電気加熱要素は、移動炉101内には配置されず、各接続ステーションの接続部11に供給されるガスに関連して、固定された、好ましくは中央の場所に配置される。このような加熱要素は、電気モリブデン加熱要素であってもよく、当該閉鎖空間を流れるガスに加熱を提供することを明確な目的として、箱のような閉鎖空間内に配置されてもよい。上述したように、このような加熱装置は、柔軟性および復元力を高めるために、2つ以上の別個のものを並列に配置してもよい。
【0040】
大規模な設備では、このような電気加熱装置は、還元、焼結及び/又は浸炭のための接続ステーションにのみ配置することができるが、一方、より小規模な設備では、全ての接続ステーションに加熱装置を設けることができる。すなわち、より大規模な設備では、各接続ステーションは、ある特定の目的に使用するために特化されることがあるが、一方、小規模な設備では、システム100の現在の処理状況に応じて、1つの接続ステーションが異なる目的に使用されることがある。上述したガス/ガス熱交換器に関しても同様である。
【0041】
前記接続ステーションに供給されるガスは、適切なファンまたはポンプを使用して推進され、当該ガスの適切な流れを提供し、ひいては、使用されるプロセスライン全体に亘って、処理時間および還元されるべき材料の流量/スループットの点で最適化された結果を提供する。ガス流は、また場合によってはガス体積流量、温度および湿度などの関連パラメータの1つまたは複数は、好ましくは、制御装置20によって、上記ファンまたはポンプを使用して、および/または本明細書に記載の他の装置を使用して、常に個々の接続ステーションごとに個別に制御されることに留意されたい。
【0042】
大規模な設備では、装入材料加熱用の別個のガス循環システムと、装入材料冷却用の別個のガス循環システムとが存在してよい。このような別個のガス循環システムは、不活性ガスの循環システムであってもよく、循環ガス、特に冷却ガスの湿度を制御するためのガス乾燥装置を備えてもよい。熱交換器は、本発明によるこのようなシステムにおいて、冷却ガスから加熱ガスに熱を伝達するために使用されてよい。図1図5に示すような他の実施形態では、加熱と冷却は1つの同じ不活性ガス回路を共有してもよい。
【0043】
システム100はまた、冷却/加熱システム内でガスを循環させるためのファン又はポンプを備えてよく、冷却されるべき高温の装入材料の冷却から加熱されるべき低温の装入材料の加熱へとガスの流速を制御するように配置されてよい。小規模な設備では、1つの同じファンまたはポンプが、このようなガス循環タスクのいくつかまたはすべてを達成することができるが、一方、大規模な設備では、ガス循環タスクのそれぞれに1つまたは複数の専用ファンおよび/またはポンプが存在してよい。例えば、大規模な設備では、装入材料の加熱と冷却は、同じファンまたはポンプ、場合によっては同じガス乾燥器を使用して行うことができ、一方、還元、焼結、および/または浸炭に関するガス循環は、別個の専用ファンおよび/またはポンプ、場合によっては別個の専用ガス乾燥器を使用して行うことができる。
【0044】
図8は、図1図5に示されるシステム100を用いて実行される、本発明による方法を示す。
【0045】
本方法は、一般に、連続プロセスで直接還元金属材料106を製造する方法である。本明細書において、「連続プロセス」という用語は、バッチ式に実行されないプロセスを意味する。したがって、このような連続プロセスは、プロセスの入口点での新しい材料の装入と、出口点での還元された材料の排出とを含み、上記入口点と上記出口点との間で1つ以上の中間処理工程が行われ、直後に装入された材料が排出される前に次の材料の装入が行われる。装入と排出自体は、もちろん不連続的に行われることもあるが、材料が一方の点で断続的だが絶えず装入され、同様に他方の点で排出されるので、時間の経過とともに連続的なプロセスを形成する。
【0046】
本発明では、このプロセスの連続性は、接続ステーション間を移動する本実施形態の移動炉101を用いて達成される。具体的には、還元されるべき金属材料106は、上記入口点で移動炉101の1つに装入され、その後、その同じ移動炉101内を、排出または再装入されることなく、複数の異なる処理接続ステーションを経由して移動し、最終的に、当該移動炉101から排出される前記出口点まで移動する。従って、このような装入量の金属材料106はそれぞれ「バッチ」と見なすことができるが、複数のこのような「バッチ」が生産ラインに沿って同時に処理され、次から次へと同時に移動するため、総プロセスは上記の意味で連続的となる。
【0047】
本方法は、第1のバルブシステムを用いて、複数の水素ガス接続ステーション130、140(図1参照)のセットのうちの1つまたは複数を介して水素ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第1のガス回路で水素ガスを循環させることを含む。
【0048】
ここで、ガスが接続ステーションを「経由して」循環されるとは、当該ガスが、先頭の導管において、当該接続ステーションに導かれ、その後、別個の導管において、当該接続ステーションから離れて閉ループ導管回路においてさらに循環されることを意味する。上述したように、当該接続ステーションには、当該接続ステーションに接続された移動炉101に、導管103を介して、先頭の導管からガスを供給するためのコネクタ12が配置されており、これにより、ガスは、移動炉101に循環され、再び、当該接続ステーションに戻され、上記別個の導管を介してさらに遠ざかるよう輸送される。通常、ガスは、接続された炉101の炉空間101aを通って循環される。言い換えれば、接続ステーションと接続された炉101とは上記閉ループ回路の一部を形成する。さらに、冷却水も対応する方法で循環されるが、炉空間101aを通っては循環されないことが理解される(図7参照、2つの下部導管はガス接続を示し、太線で図示された2つの上部導管は冷却水接続を示す)。好ましくは、各移動炉101は、2つのガス接続口103(1つの先頭(リード)導管と1つのリターン導管)を備え、この2つの導管は、当該移動炉のために現在実行されている処理ステップに応じて、不活性ガス、水素ガス、浸炭ガスなどのすべてのガス循環に使用される。
【0049】
本方法はまた、第2のバルブシステムを用いて、複数の不活性ガス接続ステーション120~122、150~151、160のセットのうちの1つまたは複数を介して不活性ガスを選択的に循環させることにより、閉ループの第2のガス回路内で窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを循環させることを含む。不活性ガスの循環は、水素ガスの循環と同様であるが、少なくとも部分的に異なる閉ループ循環である。
【0050】
各接続ステーションにおいて、水素ガス、不活性ガス、およびその他の循環ガスの流れ、および接続された移動炉101へのアクセスは、制御装置20の制御の下、バルブシステム13によって制御される。これらのガス回路は、好ましくは、不活性ガスが、例えばガス排出後に移動炉101に残留する残留ガスとは別に、循環のために水素ガスと混合されることがないように構成される。
【0051】
詳細は後述するが、システム100は、任意の特定の時点で各移動炉101に循環されるこのようなガスの温度を制御するための加熱器および熱交換器も備える。
【0052】
本方法はさらに、本タイプの複数の個々の移動炉101の各々に対して実行される、多数の処理ステップを含んでよい。
【0053】
一般に、各移動炉101は、上記接続ステーション間を移動し、装入および排出に加えて、加熱、還元、焼結、浸炭および/または冷却を含む多数の異なる処理ステップに供される。このような各処理ステップは、各々が直列または並列に配置された1つまたは複数の個別の接続ステーションによって処理される。
【0054】
したがって、最初のステップで、この方法は開始される。
【0055】
続くステップにおいて、例えば、上部104を開き、適切な自動装入システムを介して金属材料106を炉空間101aに装入することにより、還元すべき金属材料160の量を、移動炉101に装入し、その後、上部104を再び閉じる。
【0056】
続くステップにおいて、当該移動炉101は、上記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151、160のうちの第1の1つに移動され、接続される。図1では、この第1のものは、加熱接続ステーション120、121、122のいずれか1つとして図示されている。
【0057】
後続の加熱ステップにおいて、移動炉101に加熱不活性ガスが上述の方法で供給され、これにより、移動炉101内の金属材料106が、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する加熱不活性ガスによって、加熱炉空間101aで加熱される。
【0058】
従って、不活性ガスは、好ましくは炉空間101aの外部、さらには移動炉101の外部で加熱され、金属材料106を通過して循環されるので、金属材料106はそれによって加熱される。
【0059】
続くステップにおいて、移動炉101は、上記第1の不活性ガス接続ステーション120~122から切り離される。
【0060】
続くステップにおいて、移動炉101は、物理的に、上記水素ガス接続ステーション130、140の第1の1つに移動され、接続される。当該水素ステーション130、140は、第1の不活性ガス接続ステーション120、121、122とは物理的に異なる接続ステーションであることが理解される。
【0061】
続く還元ステップにおいて、上述の方法で加熱水素ガスが移動炉101に供給され、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する加熱水素ガスによって、金属材料106が還元される。
【0062】
したがって、水素ガスは加熱された金属材料106を通過して循環し、金属材料106はそれによって還元される。
【0063】
続くステップにおいて、移動炉101が上記第1の水素ガス接続ステーション130、140から切り離される。
【0064】
続くステップにおいて、移動炉101は、上記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151、160のうちの第2の1つに物理的に移動され、接続される。図1では、この第2のものは冷却接続ステーション150、151のいずれかとして図示されている。
【0065】
続く冷却ステップにおいて、冷却された不活性ガスが、上述の方法で移動炉101に供給され、これにより、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する冷却された不活性ガスによって、その中に含まれる金属材料106が冷却される。従って、この冷却は、上述の加熱ステップに対応する方法で行われる。
【0066】
続くステップにおいて、移動炉101が上記第2の活性ガス接続ステーション150~151から切り離される。
【0067】
続くステップにおいて、還元冷却された金属材料106が移動炉101から排出される。
【0068】
後続のステップにおいて本方法は終了してもよい。しかしながら、本方法は、典型的には、以下に例示するように、接続ステーションの連鎖に沿って次々と移動する複数の移動炉101を使用して行われ、したがって、中断することなく連続的な流れで任意の時間継続され得ることが理解される。2つの移動炉101がその材料を排出すると、再び装入ステーション110に戻って補充し、やり直すことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、水素ガスは、大気圧、または最大1.5バールの圧力、さらには最大1.1バールの圧力で、閉ループ第1ガス回路内を循環する。
【0070】
それに対応していくつかの実施形態では、不活性ガスは、大気圧、または最大1.5バールの圧力、さらには最大1.1バールの圧力で、閉ループ第2ガス回路内を循環する。
【0071】
上述したように、冷却不活性ガス、すなわち冷却ステップにおいて金属材料106を冷却するために使用される不活性ガスは、加熱ステップcにおいて金属材料106を加熱するために使用される不活性ガスを予熱するためにも使用することができる。このような熱伝達は、ガス/ガス熱交換器を使用して実行さてよい。あるいは、図1図3に示されているように、金属材料を冷却するために使用される不活性ガスは、そのような冷却の後、場合によってはガス加熱器173による追加加熱の後、還元すべき金属材料106を加熱するために使用される不活性ガスとして使用されてもよい。
【0072】
本方法は、上述したように、不活性ガスの上記流れの間で熱交換するために、複数のガス/ガス熱交換器を並列に使用することを含んでよく、ここで、高温ガスの複数の並列流および/または低温ガスの複数の並列流が互いに熱交換される並列熱伝達流で構成されてよい。
【0073】
このような熱交換に加えて(またはその代わりに)、本方法はさらに、当該不活性ガスまたは水素ガス接続ステーション120~122,130,140の上流に設けられた、電気加熱器などのガス加熱器173,191を用いて、加熱ステップにおいて金属材料106を加熱するために使用される不活性ガスを予熱すること、および/または還元ステップにおいて使用される水素ガスを予熱することを含んでもよい。
【0074】
上述したように、移動炉101は、熱エネルギー源を内蔵していないという意味で、熱供給に関して受動的であることが好ましい。その代わりに、処理中、特に加熱および/または還元および/または焼結および/または浸炭中に金属材料106に供給されるすべての熱エネルギーは、炉空間101aに流入する加熱ガスを介して外部から供給される。しかしながら、金属材料 106 自体の発熱反応によって熱エネルギーが供給されることもある。ここで重要なことは、そのような発熱反応から生じる熱入力とは別に、炉空間101aに追加の熱エネルギーが供給されないことである。その代わりに、全ての熱エネルギーを外部から供給することで、移動炉は、内部加熱器や電気接続などを一切持たない単純なものとなり、本明細書で説明するように、異なる接続ステーション間で移動させつつ、堅牢で故障しにくいものとすることができる。
【0075】
上述したように、不活性ガスおよび/または水素ガスは、加熱、還元および/または冷却ステップにおいて、移動炉101内に流入し、移動炉101内において金属材料106の下方から上方に向かって金属材料106を通過するように供給されてもよい。また、焼結ステップおよび/または浸炭ステップにおいても同様である。
【0076】
各移動炉101は、閉じた炉空間101aを形成するよう互いに係合するように構成された、上述したタイプの2つの炉部分104、105を備えてよい。そして、上記2つの炉部分104、105の少なくとも一方、または2つの炉部分104、105間の接続部は、冷却水循環システム180から供給される冷却水を用いて水冷されてもよい。この場合、本方法はさらに、上記別個の冷却水回路において冷却水を循環させることを含んでよい。さらに、上記水素接続ステーション130, 140および/または上記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151は、移動炉101が当該接続ステーション120~122、130、140、150~151に接続する際に、当該循環冷却水が供給されるように、当該冷却水のための接続部を備えてもよい。これにより、システム100内の全ての循環移動炉101を効率的に冷却する方法が提供され、また、移動炉101から冷却され、当該冷却水によって移動炉101から運び出される熱を有効に利用する方法も提供される。例えば、加熱された冷却水は、地域暖房システムにおける加熱水の供給などに利用することができる。
【0077】
第1および/または第2のガス回路内を循環するガスの循環速度(または時間単位当たりの体積流量)は、制御装置20によって速度を制御可能なファンまたはポンプ(172,194)を用いて制御することができ、これにより、金属材料106の加熱電力、還元速度、焼結速度、浸炭速度および/または冷却電力が所望の各設定値になるように制御され、これらは当然時間と共に変化し得る。各移動炉101からの温度に関する測定値、およびシステム100の他の部分からの温度、含水率、化学組成、含水率などに関する測定値も、システム100の動作制御の基礎とするための制御装置20への入力データとして使用することができる。
【0078】
さらに、いくつかの実施形態では、還元ステップはさらに、金属材料106が還元された後、金属材料106をさらに焼結するために、加熱された水素ガスの供給を継続することを含んでよい。図1および図5では、これは別個の焼結接続ステーション140によって図示されており、このステーションに、上述した一般的な方法で、接続された移動炉101にガスが供給される。
【0079】
さらに、いくつかの実施形態では、CH4のような炭素含有ガスを使用して金属材料を浸炭することができる。炭素含有ガスは、専用の接続ステーション(図示せず)、還元接続ステーション 130 および/または焼結接続ステーション 140 を介して供給することができる。図1および図5に示す例では、焼結ステーション140 がバルブシステム 13 を介して CH4ガスを供給するように構成されることにより浸炭が行われる。
【0080】
したがって、本方法はさらに、第3のバルブシステムを用いて、上記炭素含有ガスを、複数の水素ガス接続ステーション130、140のセットのうちの2つまたは複数を介して選択的に循環させることにより、閉ループの第3のガス回路においてそのような炭素含有ガスを循環させることを含んでもよい。具体的には、還元ステップ(またはその後の焼結ステップまたは専用の浸炭ステップ)はさらに、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する炭素含有ガスによって金属材料106が浸炭されるように、上記炭素含有ガスを移動炉101に供給することを含んでよい。
【0081】
第3の閉ループガス回路は、その一部または全部を第2の閉ループガス回路と同じにしてもよいし、または別個のガス回路にしてもよい。
【0082】
浸炭が還元接続ステーション130で行われない場合、システム100は、1つまたは複数の炭素含有ガス接続ステーションのセットを備えてよい。その場合、本方法はさらに、移動炉が還元接続ステーション130から切り離された後、冷却ステップの前に実行される以下のステップを含んでよい:
【0083】
第1に、移動炉101を炭素含有ガス接続ステーションの第1の1つに移動させ、接続してよい。
【0084】
第2に、炭素含有ガスを移動炉101に供給し、これにより、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する炭素含有ガスによって金属材料106を浸炭させてよい。
【0085】
第3に、移動炉101を第1の炭素含有ガス接続ステーションから切り離してよい。
【0086】
図1は、還元ステップが使用するよりも高い温度で金属材料106を焼結するために使用される焼結ステーション140を示す。炭素含有ガスは、水素ガスと炭素含有ガスとの制御された混合ガスのような、このような焼結接続ステーション140の1つまたは複数を介して供給され得る。
【0087】
2つ以上の加熱ステーション 120~122; 2つ以上の還元ステーション 130;2つ以上の焼結ステーション 140;2つ以上の浸炭ステーション;および/または2つ以上の冷却ステーション150~151の場合、本方法はさらに、移動炉101を当該タイプの接続ステーションの第1のものから切り離すこと、移動炉101を当該タイプの接続ステーションの第2のものに移動させてそれに接続すること等を含んでよく、これにより、移動炉101が、同じタイプの2つまたは複数の接続ステーションに直列に経時的に接続されて処理されるようにすることができる。これについては以下に例示する。また、これに加えて、あるいはこれに代えて、設備の規模や所望の総処理量に応じて、同種の異なる接続ステーションを使用する移動炉101の並列フローを複数設けることもできる。
【0088】
上述したように、本方法は、加熱、還元、焼結、浸炭および冷却の全部または一部を含む多数の連続する処理ステップにおいて、各移動炉101で金属材料106を処理するための別個の接続ステーションを使用する。前述したように、浸炭は別個の接続ステーションで行われてもよいし、例えば焼結接続ステーション140の一部として行われてもよい。
【0089】
これらのステップのうち、特に加熱ステップ中に材料106が適切な還元温度まで加熱される場合には、還元ステップは通常最も時間のかからないステップである。通常、最も時間がかかるのは加熱と冷却のステップである。このことは、多くの移動炉101が使用されるような大規模で高度に自動化された設備を設計する場合に重要である。
【0090】
通常、大規模な設備では少なくとも10台の移動炉101が同時に使用され、例えば少なくとも20台の移動炉101が同時に使用される。しかしながら、移動炉101のモジュール設計により、移動炉101そのものを小規模な設備で使用することも可能である。規模を拡大または縮小するには、接続ステーションを追加または削除するだけで、同じタイプの移動炉101を適切な数だけ使用することができる。
【0091】
好ましくは、各移動炉101は少なくとも1000kgの金属材料を保持できるように設計されている。また、各移動炉101は最大で10000kgの金属材料を保持するように設計されている。
【0092】
一般に、本システム100は、以下の部分から構成され得る:
粉砕装置であって、そのような材料からなるボールを製造するために適切な金属含有粉末材料を製造するように構成された粉砕装置;
本方法を用いて直接還元する例えば直径1~5cmの金属含有材料ボールを製造するように構成されたボール製造装置;
製造されたボール(または現地で生産された、または遠隔地の生産施設から受け取った同様のまたは他の金属材料)を前記移動炉101に装入するように構成された装入装置;
好ましくは、下流の冷却ステップから受け取った予熱ガスを使用して、装入した金属材料を例えば550~600℃のプロセス温度に加熱するための、1つまたは好ましくは複数の加熱接続ステーション120~122からなる加熱装置;
1つまたは好ましくは複数の還元接続ステーション130から構成される還元装置;
1つまたは好ましくは複数の焼結/浸炭ステーション140を備える焼結/浸炭ステップ;
装入金属材料106を、最大100℃、例えば最大50℃の温度まで冷却するように構成された1つまたは好ましくは複数の冷却接続ステーション150~151を備える冷却ステップ;および/または
還元/焼結/浸炭された材料106が移動炉106から排出され、さらなる処理および/または輸送のために適切に包装される排出/包装ステップ160。
【0093】
好ましくは、装入および排出は適切なロボットアームを使用するなどして自動的に行われる。
【0094】
小規模の設備では、加熱、還元、焼結および/または冷却は、そのような処理ステップごとに1つの接続ステーションのみを使用して行うことができるが、一方、大規模の設備では、1つまたは複数の上記処理ステップは、並列および/または直列に配置された2つ以上の接続ステーションを使用して行うことができる。
【0095】
より小規模な設備では、上記接続ステーション間の移動炉の輸送は、オーバーヘッドクレーンやトラックを用いて行うことができ、そのため、移動炉には車輪109aは必要なく、場合によってはトロリー109も不要である。一方、より大規模な設備では、上述のようなレールまたは自由に動くコンピュータ制御のトロリー109を使用して輸送することができる。架台108とプラットフォーム109を備えた上述の構造は、同じ構成部品を使用し、移動炉101と接続ステーション、および必要に応じて搬送機構の数を変えるだけで、このような小規模生産ユニットと大規模生産ユニットとの間で規模を拡大または縮小する便利な方法を提供することが理解される。
【0096】
所望の総スループットとは別に、異なるタイプの各接続ステーションの数は、主として、任意の1つの処理ステップにおける移動炉101の処理時間(消費される総時間)と、当該処理ステップのための並列動作する接続ステーションの数との組み合わせによって決定される。異なる処理ステップは、通常、異なる処理時間に関連付けられるので、比較的短い処理時間を有する処理ステップが、先行する処理ステップおよび後続する処理ステップをどのように配置するかを決定する。例えば、前の処理ステップの処理時間が長い場合、処理ステップ間の移動炉101のスムーズで均一な流れを実現するために、後続の処理ステップには前の処理ステップよりも多くの並列接続ステーションを配置する必要がある。先行する処理ステップと比較して、後続の処理ステップが遅い(時間的に長い)場合も同様である。
【0097】
例えば、通常、還元処理工程は比較的速い工程である(最短の処理時間を要する)。通常、還元処理ステップの後に焼結/浸炭処理ステップが続き、後者は材料106の加熱も伴う。例えば、焼結・浸炭に要する時間が還元に要する時間の2 倍である場合、還元接続ステーション130 から移動炉101 を受け取るための焼結/浸炭接続ステーション 140の数は、還元接続ステーション130の数の2倍でなければならない。これに対応して、加熱接続ステーション120~122と還元接続ステーション130との間のインタフェースでは、還元に要する時間は通常、金属材料106を還元温度まで加熱する時間よりも短くなるため、通常、還元接続ステーション130よりも多くの加熱接続ステーション120~122が必要となる。
【0098】
上述したように、異なる処理ステップ間の他の違いは、加熱および冷却ステップでは、移動炉101へまたは移動炉101から熱エネルギーを搬送するために窒素ガスなどの不活性ガスが使用され、一方、還元および焼結では例えば水素ガスが使用されることである。さらに、浸炭工程では炭化水素のような炭素含有ガス、例えばCH4を使用し、これは同じ閉ループ回路内で水素ガスとともに使用することができる。
【0099】
図1は、本発明による大規模設置システム100の一例を概略的に示している。
【0100】
この図1に示されるように、加熱処理部および冷却処理部は相互に接続され、共に閉鎖ガスシステムを形成し、その中で窒素ガス(または他の不活性ガス)が圧送または循環され、冷却端で金属材料106からの熱エネルギーを、還元に渡される前に、装入から到着する冷却された金属材料106を加熱するように伝達する。上述したように、金属材料106の搬送は、金属材料106が本タイプの移動炉101で搬送され、順次、異なるガス流が供給されるための異なる接続ステーション間を適切な/所定の時間、移動することによって行われる。
【0101】
上述したように、金属材料106の加熱および冷却に要する時間は、通常、金属材料106の還元および焼結/浸炭に要する時間よりも長く、そのため、通常、ある時点において、還元および焼結/浸炭に要する時間よりも、これらの加熱/冷却処理ステップで動作する接続ステーションおよび移動炉の数が多くなる。
【0102】
その結果、本方法は、並列および/または直列に使用される水素ガス接続ステーション130、140の数よりも、並列および/または直列に使用される不活性ガス接続ステーション120~122、150~151の数を多く使用することを含んでよい。
【0103】
この実施形態では、還元および焼結は後述する方法で行われる。しかしながら、不活性ガス循環システムおよび水素/炭素含有ガス循環システムの両方は、それぞれの閉鎖システムであり、そのようなガスを環境中に実質的に排出しないように、または互いに干渉しないように構成されている。
【0104】
したがって、本発明によるすべての処理ステップは、好ましくは、移動炉101がシステム100内の異なるステップ間で移動される閉鎖システム100内で行われ得る。各処理ステップの枠内で、当該移動炉101はその処理ステップ内のある時点でそれぞれの接続ステーションに接続される。
【0105】
様々な処理ステップを経て金属材料を搬送する複数の移動炉101のセットは、この同じ閉鎖システム100の一部を形成し、これにより、全てのプロセスは、閉鎖システム100において、様々な処理ステップの接続ステーション間を移動し、接続する当該移動炉101において行われる。この目的のために、移動炉101の開口機構104aは、好ましくは、閉鎖された炉空間101aがガス密閉され、ガス漏れを生じることなく、少なくとも1.5バールの一定の過圧(およびそれに対応する低圧)に耐えるように構成される。例えば、上部104は、ステーション110での装入に関連して自動的に作動する油圧式またはスクリュー式の押圧機構を用いて、下部107に対して閉じた状態に保持することができる。
【0106】
上記移動炉101の全て、または少なくとも複数は、同一であってもよく、または少なくとも接続部11に対して同一のインタフェースを有してもよく、一方、各接続ステーションは、個々の接続ステーションにおいて移動炉101に所望の特性を有する所望のガスを、好ましくは上述の冷却水の並列流と共に供給するように配置される。このようにして、移動炉101は交換可能であり、移動炉101を追加または除去するだけでシステム100を拡張または縮小することができる。
【0107】
熱的観点からは、ほとんどの熱伝達は、還元前の加熱(550-580℃で行われる)および焼結/浸炭(900-1000℃で行われる)の間に、装入金属材料106に行われる。その後、熱エネルギーは、排出および包装のために、冷却中に装入材料106から遷移し、約20~50℃まで至ってよい。
【0108】
最短の処理時間(典型的には還元時間)に一致させるために、加熱ステップおよび冷却ステップはそれぞれ、有利には、1つまたは複数の直列接続された一連の接続ステーション120~122;150~151から構成されて配置されてもよく、このような各接続ステーション120~122;150~151に関連する処理時間は、最大で、または正確に、または少なくともほぼ、最短時間の処理ステップの処理時間(この場合、単一の還元接続ステーション130における処理時間)と同じである。従って、還元ステップに30分かかる場合、別の移動炉101は30分毎に、900℃等の温度を保持したまま第1の冷却接続ステーション150に到着する。
【0109】
焼結/浸炭接続ステーション140の後の第1の冷却接続ステーション150は、新たな移動炉101がステーション140から到着する際に利用可能である必要がある(現在、供用中の移動炉101に接続されていない)ので、順番に先行する移動炉101は、その時までに既に次の接続ステーションに沿って移動していなければならない。従って、移動炉101は、一連の冷却接続ステーション150~151に沿って、この一連の終点で移動炉内の金属材料106の温度が排出に望ましい温度、例えば50℃に達するまで順に移動する。従って、一連の冷却接続ステーション150~151は、直列に接続された接続ステーション150~151の各々に接続された約30分間を費やしたときに、金属材料106が直列の終わりに約50℃に達するような(図1に示された2つのそのようなステーションよりも大きい)数のそのようなステーション150~151から構成され得る。微調整のために、制御装置20は、バルブV12、V14、V15、V17を制御することにより、またはファンまたはポンプ172を制御することにより、全ての冷却接続ステーション150~151を通る総流量をより高いレベルで制御することにより、各時点で、前記冷却接続ステーション150~151の各々に循環される圧力または冷却ガス流速を個別に制御することができる。
【0110】
直列に作動する暖房接続ステーション120~122に関しても同様である。
【0111】
さらに、このような一連の加熱/冷却接続ステーション120~122;150~151を2つ以上の並列フローに配置し、それぞれが移動炉101のそれぞれのフローに対応することもできる。
【0112】
移動炉101が特定の接続ステーションから切り離されると、移動炉101へのガス接続が切断され、バルブシステム13のバルブがコネクタ12へのガス供給をスイッチオフする。移動炉101が特定の接続ステーションに接続されると、移動炉101へのガス接続が開放され、バルブシステム13のバルブがコネクタ12へのガス供給をオンにする。
【0113】
包装ステーション160では、被還元材料の再酸化を避けるために、被還元材料106の温度は好ましくは50℃以下である。装入ステップにおいて、装入ステーション110での装入は、バスケット106a(図7)内に材料106を装入することによって行われてもよく、バスケット106aは、移動炉101の炉空間101aに還元される金属材料106で充填される。次に、排出ステップは、バスケット106aを炉空間101aから排出することからなる。従って、金属材料106は、このような多数のバスケット106aでシステム100の周囲を搬送され、各バスケット106aが順番に移動炉101に装入され、移動炉101から搬出される。
【0114】
不活性冷却ガスから炉空間101aを空にするために、包装ステーション160で炉空間101aを開放する前に、移動炉101はバルブV10およびV11を介してファンまたはポンプ174に接続され、不活性ガスは不活性ガス貯蔵器171に導かれる。その後、バルブV10およびV11が閉じられ、ファンまたはポンプ174がスイッチオフされ、大気圧の空気が開口炉空間101aに導入される。上部104が持ち上げられ、還元冷却された金属材料106を含むバスケット106aが移動炉101から持ち上げられる。バスケット106aは空にされ、再び移動炉101内の所定の位置に置かれる。その後、移動炉101は装入ステーション110に戻され、還元すべき金属材料106が再び装入される。あるいは、バスケット106aは、移動炉101が排出ステーション160を空にして出発し、処理ラインに沿って別の走行のために装入ステーション110で新たな充填されたバスケット106aが提供されるように、別個の流れで移動することができる。
【0115】
冷房と暖房のループは閉じたユニットを形成し、ガス貯蔵器171からのガスの充填から始まり、ガスはバルブV6を経由して入る。バルブV5が閉じられると、ガスはバルブV7(バルブV8は閉じられている)、ファンまたはポンプ172、バルブV9を経由して最後の冷却接続ステーション151まで続く。移動炉101が現在この接続ステーション151に接続されていない場合、バルブV12とV14は閉じられ、バルブV13は開かれて、ガスは接続されていない接続ステーション151を迂回して次の上流の冷却ステーション150に送られる。一方、最後の冷却ステーション151が移動炉101に接続されている場合、バルブV13は閉じられ、バルブV12とV14は開かれているので、不活性冷却ガスはV12を介して冷却ステーション151に入り、さらに接続されている移動炉101に入り、当該移動炉101内の材料106を冷却し、再びバルブV14を介して次の上流冷却接続ステーション150に入り、バルブV15を介してその接続ステーション150に現在接続されている移動炉101に入る。この状況では、バルブV16は閉じられ、接続ステーション151で材料106によって既に幾分暖められた冷却ガスは、接続ステーション150に接続された移動炉101内の材料106を冷却するために使用され、後者の材料106は接続ステーション151で既に冷却された材料よりも暖かい。移動炉101の流れに対応する冷却接続ステーション150-151は2つ以上あってもよく、冷却ガスは移動炉101の一般的な移動方向Dと比較して反対方向に流れる。
【0116】
冷却ガスの流れを、冷却水循環システム180からの冷却ガスと冷却水の流れ矢印を用いて図2に示す。スイッチオフバルブは破線で示されている。
【0117】
最も上流に配置された冷却接続ステーション150では、温められた冷却ガスは、約800~900℃の温度でバルブV17を通って排出される。
【0118】
この高温の不活性ガスは、この材料106が還元ステーション130に運ばれる前に、加熱接続ステーション120~122において、還元されるべき金属材料106を加熱するために使用される。
【0119】
この不活性加熱ガス(全く同じ不活性ガスが冷却ガスとして機能する冷却接続ステーション150~151から到来する)を用いた加熱は、冷却接続ステーション150~151の場合と同様に、処理ラインを形成する加熱ステーション120~122に沿って移動する移動炉101の一般的な移動方向Dに対して向流(逆流)的に発生してよく、図3では冷却ガスの流れについて図2と同様に矢印を用いて図示されている。従って、図1 では、移動炉 101 が一連の接続ステーション 120~122、150~151 に沿って右方向に移動する間、不活性ガスは左方向に流れる。
【0120】
従って、不活性加熱ガスは、バルブV21を通って、加熱接続ステーション122の最も下流に配置された移動炉101に流入する。バルブV22は閉じられ、加熱ガスは、バルブV23およびV24(バルブV25は閉じられる)を経由して、接続ステーション121の次の上流の移動炉101へ、バルブV26およびV27(バルブV28は閉じられる)を経由して、接続ステーション120の最上流の移動炉101へ、そしてバルブV29を経由して流出する。
【0121】
一般に、場合によっては、不活性ガス接続ステーション120~122、150~151の複数を同時に使用して、複数の移動炉101を並列に加熱および/または冷却することができる。この場合、本方法は、加熱された不活性ガスおよび/または冷却された不活性ガスを、移動炉101の一般的なプロセスフローDとは反対方向に循環させること、直列の上記複数の移動炉101を通過させること、および、上記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151のうちの1つから移動炉101を切り離して当該移動炉101を移動させ、前記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151の次の1つに順に接続することにより、前記移動炉101を1つずつ前記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151の間において前記プロセスフローD内で移動させること、を含んでよい。
【0122】
還元に先立ち、金属材料106は、少なくとも350℃まで、例えば少なくとも400℃まで、例えば少なくとも500℃まで、および/または多くとも650℃まで、例えば多くとも500℃まで加熱することができる。加熱ガスは不活性であるため、装入材料106はこの加熱によって化学的影響を受けない。しかしながら、比較的低い製錬点または蒸発点を有する含有金属は、高すぎる温度で凝集状態が変化する可能性がある。したがって、金属材料106は、好ましくは、還元前には金属材料106中の含有金属が溶融または蒸発し始める温度まで加熱されず、そのような含有金属の蒸発は、代わりに、ガス/ガス熱交換器195の形態でそのような蒸発した金属を凝縮させる手段を有する還元ステーション130で行われ得る。
【0123】
一般に、還元ステップは、加熱された水素ガスを前記加熱のための熱源として使用して、金属材料106中に存在する汚染物質の溶融温度および/または蒸発温度を超えて金属材料106を加熱することを含んでよい。
【0124】
不活性加熱ガスが、最下流の加熱接続ステーション122に入る前に追加の加熱を必要とする場合、バルブV19は閉じられ、バルブV18、V20は開かれ、これにより、不活性ガスは、ステーション150とステーション122との間のガス加熱器173によって通過する。上述したように、これは、例えば、この金属材料106の化学組成に基づいて還元すべき金属材料106の所望の最高加熱温度に依存し得る。例えば、金属材料106が容易に製錬/蒸発する金属を含まない場合には、約700℃の加熱温度がステーション122に供給されてよく、次に、ガス加熱器173は、不活性加熱ガスのこの温度を達成するために選択的に係合され得る。追加の加熱が必要ない場合には、バルブV19が開かれ、バルブV18、V20が閉じられ、これにより、ガス加熱器173は係合解除される。
【0125】
最下流の加熱接続ステーション122が、その時点で接続された移動炉101によって占有されていない場合には、バルブV22を開き、バルブV21、V23を閉じて、不活性加熱ガスが、ステーション122をバイパスして次の上流に配置された接続ステーション121に直接供給されるようにしてよい。
【0126】
ステーション122に接続された移動炉101内の金属材料106が所望の温度に達すると、バルブV22が開かれ、バルブV21、V23が閉じられ、不活性ガスが次の上流に配置されたステーション121に直接供給される。この時点で最後の加熱ステーション122の移動炉101は不活性ガスで満たされているため、バルブV31が開かれ、ファンまたはポンプ174と接触し、さらにバルブV10を介して(開いている)ガス貯蔵器171と接触する。このようにして、不活性ガスはステーション122の移動炉101からガス貯蔵器171に排気される。排気された不活性ガスの温度が高すぎる場合には、貯蔵前に冷却器を用いて温度を下げることができる。移動炉101から不活性ガスが排出されると、バルブV31、V10、V11が閉じられ、ファンまたはポンプ174がスイッチオフされ、移動炉101は還元ステップ130に移動する準備が整う。
【0127】
幾分冷却された不活性ガスは、説明したように、第1の加熱接続ステーション120(装入ステーション110の後の第1のステーション120である)に向かって上流側に進み続け、その途中で、連続して接続された各移動炉内の金属材料106を加熱する。
【0128】
最上流のステーション120は空であってよく、この場合、バルブV27、V29は閉じられ、バルブV28は開かれ、このステーション120をバイパスする。
【0129】
不活性ガスは、バルブV2を介してガス/水熱交換器170に送られ、そこで不活性ガスは、約20℃または不活性ガスの十分な乾燥を達成する他の適切な温度に冷却される。ガス/水熱交換器170に接続してガス乾燥器(図示せず)を使用することも可能である。こうして加熱された水は、例えば地域暖房システムで使用することができる。
【0130】
不活性加熱ガスがステーション120~122に沿った経路で温度が低下して、それが循環する金属材料106を加熱するのにもはや有用でなくなった場合には、バルブV2、V24~V29は、またはそれに対応して不活性ガスの流れがステーション120~122に中断される場所に応じて、加熱ガスが、金属材料106を通過して流れ続ける代わりに、ガス/水熱交換器170に直接運ばれるように、操作されることができる。最上流の加熱された移動炉101を出る加熱ガスの温度は、好ましくは少なくとも100℃であり、これにより、含まれるあらゆる水蒸気をガス/水熱交換器170に運び、そのような水を液体の形で堆積させることができる
【0131】
不活性ガスは、ファンまたはポンプ172を介して冷却ステップに戻され、上述の第2の閉循環ループを形成する。ガス貯蔵器171は、このループ内の不活性ガス圧力を1.0~1.5バールの間、例えば1.0~1.1バールの間の選択された均一圧力に制御するために使用される。
【0132】
バルブV29の後、不活性ガスは、バルブV1またはバルブV2のいずれかを、これらのバルブV1,V2のどれが開いているかに応じて、通過する。ガスが既に乾燥している場合、ガスはバルブV1(バルブV2は閉じている)を経由してガス貯蔵器171に戻り、ファンまたはポンプ172を経由する。ガスが湿っている場合、バルブV1を閉じ、バルブV2を開き、ガスが乾燥のためにガス/水熱交換器170を通過してから、バルブV3、V5を経由してファンまたはポンプ172に戻るようにする。不活性ガスの循環が続いている限り、バルブV8は閉じられ、バルブV7、V9は開かれる。
【0133】
装入ステーション110では、バスケット106aは、還元すべき金属材料で充填され、バスケット106aは移動炉101内に配置される。炉内空間101aが密閉された後、真空ポンプ111を用い、バルブV30を介して収容空気を排気し、炉内空間101aを所定の低圧にする。その後、移動炉101は装入ステーション110から第1の加熱接続ステーション120に移動され、図1中Dで示される一般的な方向に、上述の接続ステーション間の移動を開始する。ステーション120において、移動炉101は不活性ガス回路に接続され、その時点から不活性ガス閉回路の一部を形成する。
【0134】
上述したように、本方法において最も迅速に達成される処理ステップは、通常、還元であり、焼結を使用する場合は、おそらく焼結がその後に続く。最も遅く達成される処理ステップは冷却であり、次いで加熱である。従って、各還元接続ステーション150には、加熱を待っている新たに装入されたバスケット106aを有する複数の移動炉101が存在することが好ましい。
【0135】
還元ステップは図4により詳細に示されている。還元には、上記不活性ガスとは対照的に水素ガスが使用され、別の水素ガス加熱器191で加熱される。この加熱器191は、所望の水素ガス温度を維持するためにも使用され、金属材料106の還元は吸熱化学反応であることに留意されたい。
【0136】
好ましくは、純粋または実質的に純粋な水素ガスが使用される。
【0137】
還元ステップでは、接続された移動炉101から流出する水素ガスから移動炉101に流入する水素ガス190への熱伝達のために、ガス/ガス熱交換器195も使用する。還元反応により水蒸気の形で水が生成され、この水蒸気はガス/ガス熱交換器195で凝縮される。水素ガス中の水分をさらに減少させるために、接続されたガス/水熱交換器192でさらに冷却することもでき、ガス乾燥器193を使用することもできる。水素ガスは、ファンまたはポンプ194を使用して循環され、ガス加熱器191(前述のタイプの電気ヒータであってもよい)によって加熱される。
【0138】
一般に、還元ステップは、移動炉101から出る水素ガスを移動炉101に入る水素ガスと熱交換し、熱交換された水素ガスを冷却して乾燥させ、さらに、前記乾燥から形成される液体水を回収することを含んでよい。
【0139】
還元中、水素ガスは消費されるため、使用済み/未使用水素ガス用の制御された貯蔵器197、198から所望の圧力まで補充される。所望の圧力は、1.0~1.5バール、例えば1.0~1.1バールである。
【0140】
還元速度は、制御装置20が、接続された移動炉101内で材料106を通過する単位時間当たりの水素ガス量を制御すること、および/または、制御装置20が、上記水素ガスの選択された過圧を制御することによって制御することができる。
【0141】
全ての凝縮水は凝縮水タンク196に集められる。タンク196内の水の量は、適切なレベルセンサによって測定され、制御装置20によって還元金属材料106の総量を決定するために使用され得る。
【0142】
金属材料106の還元が完了すると、加熱器191と同様に循環ポンプまたはファン194はスイッチオフされる。冷却水および水素ガス供給バルブは、接続ステーション130のバルブシステム13によって閉じられる。次の移動炉101がステーション130に到達するまで、接続ステーション130の他の固定(定置)設備は一時的にスイッチオフされてよい。凝縮水タンク196は空にされる。
【0143】
好ましくは、金属材料106の再酸化を最小限に抑えるため、移動炉101は、炉空間101a内の水素ガス圧を維持したまま焼結/浸炭接続140ステーションに移動される。
【0144】
焼結/浸炭接続ステーション140に接続されている場合、移動炉101内でシステム100によって循環される雰囲気もまた、水素ガスであるか、少なくとも水素ガスを副成分として含んでいる。図5に示すように、システム100は、図4に示すような対応する方法で要素180、190、191、193、194、195、197、198を使用する。これらの構成要素のそれぞれは、システム100の動作モードに応じて、図4に対応して示されたものと同じであっても、追加的であってもよいことが理解される。すなわち、還元130ステーションおよび焼結140ステーションは、同時に動作するように配置されてもよいし、一度に1つずつ動作するように構成されてもよい。
【0145】
一般に、還元接続ステーション130から流出する水素ガスは、典型的には650~750℃を保持し、ガス加熱器191を用いて所望の焼結温度、例えば850~950℃までその温度を上昇させた後、焼結に使用することができる。
【0146】
水素ガスが、CH4 未使用ガスタンク200から供給されるCH4のような炭素含有ガスと混合される好ましいケースでは、還元ガス回路と比較して、焼結ガス用に別個の回路を使用することが望まれる。しかしながら、還元ステップからのエネルギーが、還元ステップで使用された加熱水素ガスを焼結ステップへの入力として再利用することによって利用される場合、場合によっては、回路を相互に接続することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、図5に示す閉ループ回路内で高温の水素ガスのみを循環させて焼結を最初に行い、その後、炭素含有ガスも循環に加えて浸炭を行うことができる。その後、次の移動炉101がステーション140に接続され、水素ガスが再び回路に循環される前に、使用済みガス貯蔵器202への真空ポンプ202を使用して、回路からガス201を空にし、水素/浸炭ガスを窒素ガスなどの不活性ガスに置き換えることができる。
【0148】
接続ステーション140を出る際、移動炉101の炉空間101aは、冷却処理ステップ150~151に備えて、好ましくは窒素ガスなどの不活性ガスでも充満される。
【0149】
上述したように、本発明はさらに、本方法と同様に、本明細書に一般的に記載されるタイプの連続プロセスにおいて直接還元金属材料106を製造するために構成されるそのようなシステム100自体に関する。このシステムは、閉ループの第1のガス回路内で水素ガスを循環させるための循環手段194;前記第1のバルブシステム;閉ループの第2のガス回路内で不活性ガスを循環させるように構成された循環手段172、174;前記第2のバルブシステム;および、本明細書に記載されるタイプの複数の個々の移動炉101を備える。
【0150】
次に、システム100は、本方法に関連して本明細書に記載されるステップに対応する、一連の自動的に実行されるステップを実行するように構成され得る。一般に、これらのステップは、制御装置20の制御下で、本明細書に記載され例示された自動処理装置を用いて実行される。特に、システム100は、以下のように構成される:
移動炉101に還元すべき金属材料106の量を装入する;
移動炉101を、前記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151の第1の1つに移動させるとともに接続する;
移動炉101に加熱不活性ガスを供給し、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する加熱不活性ガスによって金属材料106が加熱されるようにする;
移動炉101を前記第1の不活性ガス接続ステーションから切り離す;
移動炉101を前記水素ガス接続ステーション130、140のうちの第1の1つに移動させるとともに接続する;
移動炉101に加熱水素ガスを供給し、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する加熱水素ガスによって金属材料106を還元する;
移動炉101を前記第1の水素ガス接続ステーション130、140から切り離す;
移動炉101を前記不活性ガス接続ステーション120~122、150~151の第2の1つに移動させるとともに接続する;
冷却不活性ガスを移動炉101に供給し、移動炉101内の金属材料106を通過して循環する冷却不活性ガスにより金属材料106を冷却する;
移動炉101を前記第2の不活性ガス接続ステーション120~122、150~151から切り離す;および、
還元され冷却された金属材料106を移動炉101から排出する。
【0151】
以上、好適な実施形態について説明した。しかしながら、本発明の基本的な技術思想から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えることができることは、当業者には明らかである。
【0152】
例えば、システム100は、本明細書で説明したものとは別に、追加の処理工程を含んでいてもよい。また、移動炉101は、本明細書で説明したものとは別に、設計および機能性の点で異なってよい。
【0153】
本方法に関して述べたことはすべて、本システムにも同様に適用可能であり、逆も真である。
【0154】
したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で種々の変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】