(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】スチームクラッキングのための方法及びプラント
(51)【国際特許分類】
F22B 1/18 20060101AFI20240226BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20240226BHJP
F23K 5/08 20060101ALI20240226BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20240226BHJP
F22D 1/02 20060101ALI20240226BHJP
F22D 1/36 20060101ALI20240226BHJP
F23K 5/20 20060101ALI20240226BHJP
F22G 1/14 20060101ALI20240226BHJP
C10G 9/36 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
F22B1/18 H
F23K5/00 303
F23K5/08 Z
F23L15/00 Z
F23L15/00 A
F22D1/02
F22D1/36
F23K5/20
F22G1/14
C10G9/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555248
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2022055873
(87)【国際公開番号】W WO2022189421
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーダー,ダーヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ヘーレンツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グロンプ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エーバーシュタイン,クリストファー
【テーマコード(参考)】
3K023
3K068
4H129
【Fターム(参考)】
3K023QA07
3K023QA18
3K023QB01
3K023QB05
3K068AA01
3K068AA11
3K068AB05
3K068AB21
3K068AB35
4H129AA02
4H129CA08
4H129DA03
4H129FA02
4H129NA43
4H129NA44
(57)【要約】
本発明は、1つ以上の炭化水素をスチームクラッキングによって転化させるための方法に関し、上記方法では:上記1つ以上の炭化水素(H)を含有する1つ以上の投入材料流(F)は、1つ以上の産物流(C)を得ながら、1つ以上のクラッカー炉(10)の1つ以上の放射ゾーン(11)を通して案内され;上記1つ以上の放射ゾーン(11)は、加熱ガス(X)を燃焼用空気(L)と共に燃焼させることによって加熱され;上記燃焼用空気(L)の少なくとも一部分は、燃焼用空気予熱(75)に供され;蒸気(S、T)が供給水(W)から生成され;上記供給水(W)は、上記1つ以上のクラッカー炉(10)の1つ以上の対流ゾーン(12)において供給水予熱に供される。上記燃焼用空気予熱(75)は、少なくとも部分的に及び/又は少なくとも一時的に、上記供給水予熱の上流の上記供給水(W)の少なくとも一部から引き出された熱を用いて実施される。本発明は、対応するシステムにも関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の炭化水素をスチームクラッキングによって転化させるための方法であって:
前記1つ以上の炭化水素(H)を含有する1つ以上の投入材料流(F)は、1つ以上の産物流(C)を得ながら、1つ以上のクラッカー炉(10)の1つ以上の放射ゾーン(11)を通して案内され;
前記1つ以上の放射ゾーン(11)は、加熱ガス(X)を燃焼用空気(L)と共に燃焼させることによって加熱され;
前記燃焼用空気(L)の少なくとも一部分は、燃焼用空気予熱(75)に供され;
蒸気(S、T)が供給水(W)から生成され;
前記供給水(W)は、前記1つ以上のクラッカー炉(10)の1つ以上の対流ゾーン(12)において供給水予熱に供される、方法において、
前記燃焼用空気予熱(75)は、少なくとも部分的に及び/又は少なくとも一時的に、前記供給水予熱の上流の前記供給水(W)の少なくとも一部分から引き出された熱を用いて実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記供給水(W)から生成された前記蒸気は、前記供給水予熱の後に前記供給水(W)から形成された過熱及び/又は非過熱の高圧又は超高圧蒸気(T)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給水(W)の少なくとも一部分を、前記1つ以上の産物流(C)の少なくとも一部から引き出された熱を用いた前記供給水予熱の後に、供給水蒸発に供することによって、高圧又は超高圧蒸気(S)が得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高圧又は超高圧蒸気(S)の少なくとも一部分を、前記1つ以上の対流ゾーン(12)において蒸気過熱に供することによって、過熱高圧又は超高圧蒸気(T)が得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記燃焼用空気予熱(75)は更に、前記過熱高圧又は超高圧蒸気(T)の一部分から引き出された熱を用いて実施される、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱ガス(X)は、前記供給水予熱の上流において前記供給水(W)の少なくとも一部分から引き出された熱を用いて同様に実施される、加熱ガス予熱(65)に供される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記供給水予熱は、前記1つ以上の対流ゾーン(12)内の1つ以上の排煙チャネル内で実施され、
前記供給水予熱は、前記過熱高圧又は超高圧蒸気(T)を得るための前記蒸気過熱のための温度レベル、及び前記1つ以上の投入材料流(F)を形成するために使用される十分に加熱されたプロセス用蒸気を提供するためのプロセス用蒸気過熱のための温度レベルよりも、低い温度レベルで実施される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記供給水(W)は80~140℃の温度レベルで提供され、
前記供給水(W)は、前記燃焼用空気予熱(75)において40~100℃の温度レベルまで冷却される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記供給水(W)は前記燃焼用空気予熱(75)に、絶対圧力で30~60bar、又は絶対圧力で60~175barの圧力レベルで供給され、前記圧力レベルで前記供給水予熱に供される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記供給水(W)は前記燃焼用空気予熱(75)に、絶対圧力で20~60barの圧力レベルで供給され、絶対圧力で30~60bar、又は絶対圧力で60~175barの圧力レベルで前記供給水予熱に供される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
集中型給水システム(40)によって前記供給水(W)が供給される複数の前記クラッカー炉(10)が使用され、前記燃焼用空気予熱(75)は、前記複数のクラッカー炉(10)それぞれについて個別に、又は前記複数のクラッカー炉(10)について一度に、実施される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記空気予熱は更に、飽和蒸気及び/又は前記飽和蒸気から形成された蒸気凝縮液を用いて実施される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の投入材料流(F)、及び/又は前記1つ以上の投入材料流(F)の形成のために使用される1つ以上の物質流の予熱は、飽和蒸気及び/又は前記飽和蒸気から形成された蒸気凝縮液を用いて実施される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の炭化水素をスチームクラッキングによって転化させるためのシステムであって、
前記システムは、1つ以上の放射ゾーン(11)を有する1つ以上のクラッカー炉(10)を備え、前記クラッカー炉(10)は、前記1つ以上の炭化水素(H)を含有する1つ以上の投入材料流(F)を、前記1つ以上のクラッカー炉(10)の前記1つ以上の放射ゾーン(11)を通して案内して、1つ以上の産物流(C)を得るように設計され、
前記システムは、加熱ガス(X)を燃焼用空気(L)と共に燃焼させることによって前記1つ以上の放射ゾーン(11)を加熱するための、1つ以上のバーナーを備え、
前記システムは燃焼用空気予熱(75)を有し、前記燃焼用空気(L)の少なくとも一部分を前記燃焼用空気予熱(75)で加熱するように設計され、
前記システムは、供給水(W)から蒸気(S、T)を生成するように設計された1つ以上の蒸気生成器を有し、
前記システムは、前記供給水(W)を、前記1つ以上のクラッカー炉(10)の1つ以上の対流ゾーン(12)内で、供給水予熱に供するように設計された、システムにおいて、
前記燃焼用空気予熱(75)は、前記供給水予熱の上流において前記供給水(W)の少なくとも一部分から引き出された熱を、少なくとも一時的に前記燃焼用空気に伝達するように設計された、熱伝達手段を備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部分による、スチームクラッキングのための方法及びシステムに関する。
【0002】
本発明は、オレフィン及び他の基礎化学物質の生産に使用される、例えば非特許文献1の「エチレン」の項目に記載されているような、スチームクラッキング(Steamcracken)(蒸気分解(Dampfspalten)、熱分解(thermisches Spalten)、蒸気クラッキング(Dampfcracken)等)に関する。以下で使用される用語については、対応する専門文献も参照される。
【背景技術】
【0003】
スチームクラッキングでは、吸熱反応の開始及び維持のために必要な熱エネルギは典型的には、燃焼チャンバ内での加熱ガスの燃焼によって供給され、上記燃焼チャンバは、分解炉又はクラッカー炉のいわゆる放射ゾーンを形成し、またこれを通っていわゆるコイル(分解チューブ)が案内されており、反応することになる炭化水素と蒸気との混合物が上記コイルを通過することによって、生成混合物が得られ、これは生ガス又は分解ガスと呼ばれる。最も一般的な用途では、燃焼に必要な燃焼用空気は、予熱されることなく放射ゾーンに導入され、そこで加熱ガスと共に燃焼される。添付の
図1に簡略化された図が示されている。これについては、対応する参照記号と共に、以下で最初に説明する。
【0004】
図1に示されているクラッカー炉10、又は対応する炉ユニット(ここでは分解炉、若しくは単に炉とも呼ばれる)は、放射ゾーン11及び対流ゾーン12を備える。スチームクラッキングのためのシステムは、対応する複数のクラッカー炉10を内包できる。以下で「集中型(central)」と呼ばれるシステムコンポーネント又はユニットは、複数のクラッカー炉10に対して利用可能であり、分散型ユニットは各クラッカー炉10に対して個別に設けられる。
【0005】
例として示されている集中型投入材料予熱20及び集中型プロセス用蒸気発生30によって、炭化水素投入材料Hが加熱されて、プロセス用蒸気Pが供給され、これは対流ゾーン12において、それ自体は公知の様式で更に加熱され(特に
図4も参照)、混合されて供給流Fが形成され、その後、放射ゾーン11へと供給される。上述のように、
図1による図は大幅に簡略化されており、単なる例である。従って、例えばいわゆる通路制御では、対応する1つの供給流を対流ゾーン12の領域において既に複数の部分流に分割でき、上記部分流を互いに別個に予熱し、最後にそれぞれ例えば6個又は8個の分解チューブのグループによって放射ゾーン11へと案内できる。ここで、及びこれ以降において、集中型ユニットはいつでも分散型ユニットに置き換えることができ、またその逆も可能である。
【0006】
分解ガスCは放射ゾーン11から取り出され、このガスは、特に公知の急冷器として形成できるか又はこのような急冷気を備えることができ、かつ同時に蒸気生成器としても機能できる、1つ以上の分解ガス冷却器13によって冷却でき、その後、集中型分解ガス分離及び分解ガス調製90へと供給できる。特に従来の急冷器又はいわゆる線形急冷熱交換器(linear quench exchanger:LQE)として設計できる、対応する急冷器の更なる詳細については、以下で説明される。本発明は、ある1つの具体的実施形態によって限定されない。
【0007】
供給水Wが集中型給水システム40によって供給され、図示されている例ではこの水も同様に対流ゾーン12で加熱された後、1つ以上の分解ガス冷却器13によって更に加熱され、最終的に蒸発させられ、これにより高圧又は超高圧の飽和蒸気S(これ以降、単に飽和蒸気とも呼ばれる)が得られる。図示されている例では、飽和蒸気Sは対流ゾーン12で過熱され、これによって過熱高圧蒸気又は過熱超高圧蒸気T(これ以降、簡略化して過熱蒸気とも呼ばれる)が得られ、集中型蒸気システム50に供給される。
【0008】
高圧、中圧、若しくは低圧の過熱蒸気、洗浄水、及び/又は急冷油といった処理剤又は補助剤だけでなく、熱媒体又は熱源として電流も使用される、存在する場合もある集中型加熱ガス予熱65の下流に接続された、集中型加熱ガスシステム60によって供給加熱ガスYが加熱されて予熱済み加熱ガスXが形成され、これは放射ゾーン11又はその中の(別個には図示されていない)バーナーに供給される。
【0009】
ここで図示されている実施形態では、燃焼用空気Lは空気取込口79を通って、放射ゾーン11又はそこにあるバーナー内へと移動する。排煙Zは放射ゾーン11から排出され、このガスは対流ゾーン12を通過した後、排煙処理へ、又はブロワーを用いて若しくは用いずに集中型若しくは分散型煙突80へ、そして大気中へと排出される。
【0010】
図1に示されている集中型加熱ガス予熱65は任意である。分散型加熱ガス予熱(即ち複数の別個のクラッカー炉10又は炉ユニットに対して個別のもの)も可能である。これは投入材料予熱やプロセス用蒸気生成についても同様であり、これらもまた、集中型設計の代わりに分散型で実施できる。
【0011】
燃焼用空気の予熱を、加熱ガスを節約することでエネルギ消費及び二酸化炭素放出を削減するための効率向上手段として適用できることは、先行技術から公知である。対応する実施形態が
図2、3に示されており、
図2は集中型、
図3は分散型の、燃焼用空気圧縮70及び燃焼用空気予熱75を示す。
【0012】
一般に、用語「効率の向上(increase in efficiency)」はここでは特に、いわゆる比効率(specific efficiency)の向上として理解でき、これは、導入される加熱ガスのエネルギのうち、形成される産物、ここでは分解ガス中に回収される部分を意味するものとして理解される。これはいわゆる熱効率、即ちアンダーファイアリング(underfiring)のための出力のうち、産物及び他の媒体(分解ガス若しくは蒸気)中に回収される部分、又は換言すれば(煙突、高温表面、漏れを介して)熱損失として失われない部分とは異なっている。同じ量の分解ガスについて必要なアンダーファイアリングが少なくなるため、空気の予熱によって比効率は向上する。対照的に、熱効率は空気の予熱の適用によっては必ずしも向上しない。というのは、熱効率は場合によっては最低排煙送達温度(以下を参照)によっても制限されるためである。
【0013】
これ以降、集中型配置のユニットと分散型配置のユニットとに、同一の参照符号を付す。配置のタイプは、図示されている、各クラッカー炉10又は炉ユニットの内側又は外側の位置決めに従っており、内側に位置決めされる場合には分散型配置が存在し、外側に位置決めされる場合には集中型配置が存在する。例えば、集中型燃焼用空気圧縮70を分散型燃焼用空気予熱75の場合に実施することもできる。これ以降、燃焼用空気は単に空気とも呼ばれ、その予熱は単に空気予熱とも呼ばれる。
【0014】
空気予熱において例えば、加熱媒体としての、高圧、中圧若しくは低圧の、用途に応じて過熱された若しくは過熱されていない蒸気、又は洗浄水及び/若しくは急冷油、あるいは熱源としての電流を使用できる。排ガス流Zから直接伝達される熱を熱源として使用することもできる。図示されている過熱高圧又は超高圧蒸気Tの使用は任意であり、選択される予熱温度に応じて使用される。
【0015】
従って要約すると、予熱された燃焼用空気は、集中型又は分散型の様式で供給できる。利用可能性及び所望の予熱温度に応じて、加熱媒体として、加熱媒体として、例えば集中型分解ガス分離及び分解ガス調製からの(過熱)超高圧蒸気、(過熱)高圧蒸気、(過熱)中圧蒸気、(過熱)低圧蒸気、飽和蒸気、洗浄水、又は急冷油、あるいは典型的には分散型配置の空気予熱の場合には対流ゾーンから出た後の排煙を使用できる。
【0016】
低圧蒸気はここでは、一般に1~10barの絶対圧力(abs.)、特に4~8bar(abs.)の圧力レベルの蒸気を意味するものと理解され、中圧蒸気は、10~30bar(abs.)、特に15~25bar(abs.)の圧力レベルの蒸気を意味するものと理解され、高圧蒸気は、30~60bar(abs.)、特に35~50bar(abs.)の圧力レベルの蒸気を意味するものと理解され、超高圧蒸気は、60~175bar(abs.)、特に80~125bar(abs.)の圧力レベルの蒸気を意味するものと理解される。これ以降で短縮された用語として高圧蒸気について言及される場合、これは超高圧蒸気としても理解されるものとする。
【0017】
用語「超高圧レベル」は、超高圧蒸気について指定された圧力レベルを指し、これが蒸気自体について指定されるか、又は例えば蒸気の形成に使用される供給水について指定されるかにはかかわらない。これは高圧レベル、中圧レベル、及び低圧レベルについても同様である。
【0018】
空気予熱に使用される空気予熱器を通る流れに必要な圧力レベルを提供するために、又は対応する圧力損失を補償するために、大気から吸引された空気を、集中型又は分散型の空気圧縮において、被駆動ファンで圧縮できる。あるいは、空気予熱の下流に配設された、対応する吸引を引き起こすブロワーを使用することもできる。
【0019】
空気予熱は、例えば特許文献1~3においてスチームクラッキングに関連して、また例えば特許文献4、5においてボイラーでの空気予熱に関連して、説明されている。
【0020】
熱分解反応器の外部に接続された一次分画ユニットから排出される底部水流、上部水流、及び/又は急冷用水流を利用して、炭化水素の熱分解変換及び分離のためのシステムの分解炉への導入の前に燃焼用空気を予熱することによって、プロセス全体の熱効率を最適化できることが、特許文献6から公知である。
【0021】
特許文献7は、炭化水素投入材料を分解ガスに変換するための分解炉システムを開示しており、上記分解炉システムは、対流部、放射部、及び冷却部を備え、上記対流部は、炭化水素投入材料を取り込んで予熱するよう構成された複数の対流バンクを含み、上記放射部は、上記投入材料を熱分解反応が可能となる温度まで加熱するよう構成された少なくとも1つの放射コイルを備える燃焼スペースを含み、上記冷却部は、少なくとも1つの移送ライン熱交換器を含む。
【0022】
空気予熱は一般に、放射ゾーン内での熱伝達を改善して、炉の燃料要件を削減する。従って、同一の炉負荷(ここでは特に、同一の産物流をもたらす、同量の炭化水素及び同一の分解強度を意味するものと理解される)で、全体として消費する必要がある燃焼出力が少なくなり、また同時に、排ガスエネルギのうち、より大きな相対部分が、プロセスガスに伝達される。これは一方では、排ガス質量流量を減少させ、その結果として煙突から大気中に放出される燃焼排出物及び残留熱が削減される。また他方では、これにより、放射ゾーンの出口において排煙中に残留する熱の量が、予熱されていない炉に比べて大幅に減少することになる。
【0023】
しかしながら、予熱温度を上昇させると、下流の対流ゾーンの設計及び動作が困難になる。上記ゾーンでは、分解される炭化水素投入材料、及び関連するプロセス用蒸気が、550~700℃の温度まで予熱される。更に高圧又は超高圧レベルで炉に供給されるボイラー供給水は通常、対流ゾーンにおいて100~110℃で予熱され、分解ガス冷却器内で蒸発し、最終的に対流ゾーンで過熱される。
【0024】
対流ゾーンでの排ガス熱の可用性が低下するため、空気予熱温度が高い場合には、同一の炉負荷で、炭化水素投入材料及びプロセス用蒸気のために必要となる予熱能力、並びに分解ガス冷却器内で生成される飽和蒸気流のために必要な過熱能力が、略一定となるという問題が生じる。従って排ガス熱の不足は供給水の予熱において顕著となり、これは部分的に制限する必要がある。更に、排煙の熱を加熱対象の媒体に伝達するための、対流ゾーンの上部の対流バンドル(bundle)、即ちそこに配設された熱交換ユニットの場合、排煙の流入温度は、予熱されない炉と比較して大幅に低下する。温度勾配が減少するため、対流バンドルの表面積の要件が大幅に大きくなり、必要な構造的コストが大きくなる。
【0025】
特許文献3では、この問題を、例えばヒートポンプシステムによって、又は予熱されていない水を蒸気ドラムに供給することによって、解決することを目的としている。しかしながら、上記文献で提案された解決策は、必要なヒートポンプ、並びに/又は分解ガスの冷却及び蒸気の生成の実施形態の大幅な変更によって、装置に関する多大な追加の労力を生じさせるものであり、特に永続的な運用性の証明が依然として得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第3,426,733号
【特許文献2】欧州特許第0229939号
【特許文献3】欧州特許出願公開第3415587号
【特許文献4】独国特許出願公開第102004020223号
【特許文献5】国際公開第2013/178446号
【特許文献6】米国特許第4,321,130号
【特許文献7】米国特許出願公開第2020/172814号
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、2009年4月15日オンライン出版、DOI: 10.1002/14356007.a10_045.pub2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って本発明は、スチームクラッキングのためのシステムの、経済的、効率的かつ実用的で、実装可能な動作を可能にする解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
このような背景に対して、本発明は、独立請求項の前提部分による、スチームクラッキングのための方法及びシステムを提供する。有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明の主題を形成する。
【0030】
本発明によって:ここでは排煙チャネル内の個々の対流バンドルの高さの合計として観察される、対流ゾーンの極めてコンパクトな設計;対流ゾーンの下流の煙突ラインの単純な構造;及び最大の排煙熱利用、即ち煙突における排煙流出温度の低さを実現できる。更に、過熱高圧又は超高圧蒸気を最大限に生成することによって、燃料要件を最小限に抑えることができる。
【0031】
本発明の核心となる概念は、供給水、即ち後に(超)高圧蒸気の生成に使用される水を、燃焼用空気の予熱にも使用することである。
【0032】
本発明に従って提案される、供給水の中間冷却につながる手段は、燃焼プラントからの蒸気の生成において供給水の予熱を最大にしようとする一般的な慣行と矛盾する。本発明の文脈では、追加の構造的コストを最小限に抑えながら排煙からのエネルギ回収を最大にするために、最大限の蒸気の生成が意図的に回避される。蒸気の生成の減少は、スチームクラッキングシステムの将来的な実施形態を考慮すると特に有利である。というのは、これにより、好ましいことに、機械を駆動するためのいわゆるグリーン電力の使用を増やすことができるためである。このようにして、システムの二酸化炭素排出を全体として更に削減できる。化石燃料の残部の燃焼から最大のエネルギ収量を得ることで、燃焼の使用が最小限に抑えられる。
【0033】
純粋な蒸気ボイラーの用途では、蒸気の生成のための燃料の利用の程度を最適化しようとするだけでよいが、蒸気分解炉の場合ははるかに困難である。この場合、投入材料の化学変換後の蒸気の生成は、得られる熱量を利用するための二次的なタスク又は要件に過ぎない。従って、蒸気分解炉における本発明による手段の使用は、全体としての燃料の利用の程度だけでなく、化学プロセスの使用と蒸気の生成との間の配分にも影響を及ぼす。従って、純粋な蒸気ボイラーに提供される手段は、スチームクラッキングシステムに容易には転用できない。
【0034】
本発明による、及び本発明によるものではない、更なる実施形態では、本発明によって提案される手段の代わりに、又はそれに加えて、空気予熱における加熱媒体として炉専用の(超)高圧蒸気を使用でき、空気及び/又は加熱ガス予熱における加熱媒体として供給水と(超)高圧蒸気とを併用でき、並びに投入材料の予熱のための加熱媒体として(超)高圧飽和蒸気を使用できるか、又はプロセス用蒸気の過熱及び投入材料の予熱のための加熱媒体として(超)高圧蒸気を併用できる。
【0035】
本発明は、1つ以上の炭化水素をスチームクラッキングによって転化させるための方法に由来し、上記方法では:上記1つ以上の炭化水素を含有する1つ以上の投入材料流は、1つ以上の産物流、即ち分解ガス流又は粗ガス流を得ながら、1つ以上のクラッカー炉の1つ以上の放射ゾーンを通して案内され;上記1つ以上の放射ゾーンは、加熱ガスを燃焼用空気と共に燃焼させることによって加熱され;上記燃焼用空気の少なくとも一部分は、燃焼用空気予熱に供され;蒸気が供給水から生成され;上記供給水は、上記1つ以上のクラッカー炉の1つ以上の対流ゾーンにおいて供給水予熱に供される。上述のように、上記投入材料流は、例えば上記放射ゾーン内の分解チューブが複数のグループに分割されているのに従って、並行して1つ以上の対流ゾーンに案内することもできる。
【0036】
本発明によると、既に上述したように、上記燃焼用空気予熱は、上記供給水予熱の上流において上記供給水の少なくとも一部分から除去された熱を用いて実施される。
【0037】
従って本発明は、冷却済み供給水を上記1つ以上の炉の上記対流ゾーンに供給することを含み、これによって、最大限の冷却と、これに伴う排煙のエネルギ利用とを達成できる。供給水の冷却については、特に排ガス管の腐食の回避のために加熱ガスの品質を考慮できる、様々な変形例が存在する。炉に供給される供給水を、集中型又は分散型空気加熱における加熱媒体として使用することに加えて、以下で説明されるように、上記供給水を、上記に加えて更に、又は本発明によるものではない実施形態によれば上記の代わりに、集中型又は分散型加熱ガス予熱における加熱媒体として使用できる。あるいは、本発明によるものではない実施形態によると、冷却を炉プロセスの外側で実施できる。
【0038】
上記供給水予熱は、上記供給水のうち特に調整可能な第1の部分のみを、1つ以上の燃焼用空気予熱器内で、加熱対象の上記燃焼用空気の少なくとも一部分との熱交換のために、及び任意に、1つ以上の加熱ガス予熱器内で、加熱対象の上記加熱ガスの少なくとも一部分との熱交換のために使用し、上記供給水のうち特に調整可能な第2の部分を、上記燃焼用空気予熱器、及び任意に上記加熱ガス予熱器の周囲に、バイパス流として案内するような方法で実施できる。上記第1の部分及び上記第2の部分は、後で再び組み合わせて、上記対流ゾーンにおける上記供給水予熱に供給できる。
【0039】
特に上記供給水の上記第1及び/又は第2の部分が調整可能であるように設計される場合、これによって、上記対流ゾーンへの入口における上記供給水の温度を制御できる。上記供給水の温度は、動作中に煙突内の排煙の流出温度を制御するために使用できる。上記流出温度は、このようなプロセスの進行において、供給水の温度に大きく依存する。
【0040】
このような温度制御によって、特に例えば加熱ガスの組成が可変である場合(これは排煙が部分的に凝縮したときの腐食のリスクにつながり得る)に、排煙の温度を動作中に特に一時的に上昇させることができる。この場合、供給水によって達成される空気予熱は小さくなるが、対応する出力は、後続の空気予熱段階によって、又は炉内での燃料供給量の増大によって、保証できる。好ましい加熱ガス組成による最適な動作の場合には、供給水による最大の予熱能力の実現が目標とされ、これは排煙熱の最大の利用につながる。
【0041】
換言すれば、排煙の温度は、上記供給水のうち、上記空気予熱に使用され、また任意に加熱ガス予熱にも使用される部分を調整することによって調整でき、これは、上記供給水予熱の下流の上記対流ゾーンにおいて達成すべき、又は検出される、排煙の温度に基づいて実施できる。
【0042】
本発明は一般に、供給水から生成された蒸気が、供給水予熱の下流において供給水から生成された過熱又は非過熱の高圧又は超高圧蒸気を含む方法において使用される。この場合、上記供給水の少なくとも一部分を、特に1つ以上の分解ガス冷却器又は急冷器内の上記1つ以上の産物流の少なくとも一部から引き出された熱を用いた供給水予熱後に、供給水蒸発に供して、高圧又は超高圧蒸気を得ることができる。次に、上記高圧又は超高圧蒸気の少なくとも一部分を、1つ以上の対流ゾーン内での蒸気過熱に供することにより、(過熱)高圧又は超高圧蒸気を得ることができる。更に詳細には、
図1~4に関連する説明を参照されたい。
【0043】
一般に本発明の文脈では、上記燃焼用空気予熱は、上記(過熱)高圧又は超高圧蒸気の一部分から除去された熱を用いて実施できる。本発明による実施形態では、これは、供給水の熱の使用に追加して実施され、本発明によるものではない実施形態では、供給水の熱の使用の代わりに実施される。
【0044】
既に何度か上述しているように、上記加熱ガスを加熱ガス予熱に供することができ、この加熱ガス予熱も同様に、上記供給水予熱の上流で上記供給水の少なくとも一部分から引き出された熱を用いて実施できる。これは、本発明による実施形態では上記燃焼用空気予熱に加えて実施され、本発明によるものではない実施形態では上記燃焼用空気予熱の代わりに実施できる。
【0045】
本発明の文脈では、上記供給水予熱は上記1つ以上の対流ゾーンの1つ以上の排煙チャネル内で実施され、上記供給水予熱は特に、上記過熱高圧又は超高圧蒸気を維持するための蒸気過熱、上記1つ以上の投入材料流の形成に使用されるプロセス用蒸気を提供するためのプロセス用蒸気加熱、及び上記1つ以上の投入材料流の投入材料加熱の大部分のために使用される温度レベルより低い温度レベルで実施される。特に、上記供給水予熱は上記排煙チャネルの末端付近又は末端で実施され、上記末端からは、これに対応して冷却された排煙が流出する。即ち上記排煙からの更なる熱回収が、(上記排煙の流れの方向において)下流の一点において、最大1回実施される。これにより、上記対流ゾーンからの上記排煙の流出温度を特に有利に制御できる。
【0046】
本発明の文脈では、蒸気供給水は、特に80~140℃の温度レベルで、特に集中型又は分散型供給水システムによって供給でき、また上記供給水は上記燃焼用空気予熱中に、40~100℃、~95℃、~90℃又は~85℃の温度レベルまで冷却できる。
【0047】
本発明の文脈では、上記供給水は、30~60bar(abs.)、特に35~50bar(abs.)又は60~175bar(abs.)、特に80~125bar(abs.)の圧力レベルで上記燃焼用空気予熱に供給でき、また追加の圧力を印加することなく、この圧力レベルで上記供給水予熱に供することができる。あるいは上記供給水は、20~60bar(abs.)、特に25~50bar(abs.)又は30~40bar(abs.)の圧力レベルで上記燃焼用空気予熱に供給でき、続いて追加の圧力を印加した後、30~60bar(abs.)、特に35~50bar(abs.)又は60~175bar(abs.)、特に80~125bar(abs.)の圧力レベルで上記供給水予熱に供することができる。後者の場合、上記燃焼用空気予熱後に上記供給水を1つ以上のポンプによって対応する圧力とすることができ、有利である。
【0048】
このように、(超)高圧レベルの供給水を用いて空気を直接予熱でき、従ってこれに続いて、中間冷却済みの上記供給水を上記対流ゾーンに直接供給できる。あるいは上記空気予熱は、上述のように、減圧レベルの供給水を用いて実施することもできる。後者により、関連する空気予熱器の設計圧力が大幅に低くなり、従ってこの装置のための構造的コストが低くなる。
【0049】
本発明の文脈では、これもまた上述されているように、集中型給水システムによって供給水が供給される複数のクラッカー炉を使用でき、上記燃焼用空気予熱を、上記複数のクラッカー炉のそれぞれについて別個に(分散型燃焼用空気予熱)、又は上記複数のクラッカー炉について一度に(集中型燃焼用空気予熱)、実施できる。
【0050】
本発明による実施形態、及び本発明によるものではない実施形態を、特に
図5~22を参照して以下で更に説明する。
【0051】
本発明の全ての実施形態において、上記燃焼用空気予熱は特に複数の段階で実施でき、例えば、供給水を第1の段階の加熱媒体として使用でき、中圧蒸気を第2の段階の加熱媒体として使用でき、飽和又は過熱(超)高圧蒸気を第3の段階の加熱媒体として使用できる。
【0052】
更なる可能な加熱タイプ又は加熱媒体(特に電流)も使用できる。更に、上述の予熱段階より多い又は少ない予熱段階を設けることもできる。また、それ以前の段階で(即ちより低い温度レベルで)流出した加熱媒体(特に形成された凝縮液)の全て又は一部を再使用することもでき、好ましくは、既に形成されている凝縮液が更に冷却される熱交換器内において、同じ圧力レベルで直接再使用でき、又は減圧レベルまで部分的に緩和して、この減圧レベルの過熱蒸気を追加した後で、再使用できる。任意に、対応する高さ(蒸気ドラムの上方)に配置すること(即ち自然循環)によって、又は圧力を(例えばポンプを用いて)上昇させることによって、凝縮液を蒸気生成に戻すことも、有利である。
【0053】
続いて、これに対応して冷却された上記供給水が上記対流ゾーンへと供給されるが、その温度は著しく低下している。
【0054】
本発明はまた、1つ以上の炭化水素をスチームクラッキングによって転化させるためのシステムに関し、その特徴は上述のように、対応する独立請求項に記載されている。
【0055】
本発明に従って提供されるシステム及びその特徴に関しては、本発明による方法についての上述の説明が、対応するシステムにも同様に関連するため、この説明を明示的に参照する。これは特に、対応する方法をいずれの実施形態において実施するために有利に構成された、対応するシステムの実施形態にも当てはまる。
【0056】
具体的な実施例を参照して以下で再び説明されるように、本出願の文脈で説明される本発明による手段及び本発明によるものではない手段は、個別に適用された場合に、又は好ましくは組み合わせて適用された場合に、空気予熱を用いる蒸気分解炉の構造的コスト及び/又はエネルギ効率を、測定可能なレベルで改善できる。
【0057】
個々の手段の効果のうちの第1のものを、表1に示す。空気予熱を用いず集中型加熱ガス予熱を用いる、同一の炭化水素負荷を受けた炉(参考A、評価変数の相対比較のための100%の基準)を、第1の比較システムとして使用した。空気予熱及び集中型加熱ガス予熱を用いるが本発明の特徴によるものではない、同一の炭化水素負荷を受けた炉を、第2の比較システムとして提示する(参考B)。表1に記載されている空気予熱を用いるケースは全て、放射ゾーンの入口で得られる燃焼用空気の温度248℃に基づくものである。1F、2A、3B、4B、5B、6Bで示される変形例は、図面を参照して説明され、本発明による変形例及び本発明によるものではない変形例を表す。
【0058】
表1 空気予熱温度248℃での効率の比較
*:空気予熱に供給水を用いない実施形態
**:空気予熱に供給水を用いる実施形態
【0059】
表1に示されている、**が付された全ての変形例は、供給水を空気予熱のための加熱媒体として供給するものであるため、本発明に従って設計されている。
【0060】
空気予熱の本質的な利点が、参考Aと参考Bとの比較において、燃料消費の22%の削減という形で示されている。同じ比較は、空気予熱炉の場合に、(バンドルの高さの合計の形での)構造的コストの上昇と、排煙流出温度の上昇に関連する(上述の熱効率の意味での)炉の効率の低下とを補償するために、更なる手段が必要であることを示している。以下で説明される本発明による実施形態は、これら2つの欠点を同時に可能な限り補償することを目的とする。
【0061】
変形例1Fと参考Bとの比較は、供給水を空気予熱に使用し、その後、低下した温度レベルで対流ゾーンに供給すること(本発明によるもの;これ以降「手段1」と呼ぶ)によって、排煙流出温度の大幅な低下と、それによる炉のエネルギ効率の改善とがもたらされることを示している。その代わりに受け入れなければならない追加の構造的コストは、5パーセントポイントの増加という極めて小さなものであり、同時に流出温度は略50Kだけ低下する。変形例2Aと変形例3Bとを比較した場合にも同様である。これら2件の比較は、手段1の有効性を明確に示すものであり、手段1によって、追加の構造的コストをほとんど伴うことなく、炉の効率を大幅に改善できる。
【0062】
手段1の別の大きな利点は、対流ゾーンから出た後の排煙のガイドの設計が簡単であることである。これは空気予熱を用いない炉の場合と非常に類似しているため、排ガス流と燃焼用空気との間に直接熱交換器を使用する場合(この場合、個々の炉の排煙経路に大容積のチューブ構成と熱交換表面とを設置しなければならない)よりも大幅に簡単である。手段1は、同様のプロセス効果、即ち燃焼用空気への排ガス熱の伝達をもたらすが、炉の領域に既に存在する熱伝達媒体(供給水)を介した間接的なものであり、上記熱伝達媒体は液体状態であるため、必要なチューブ断面積は大幅に小さくなる。
【0063】
別の利点は、上述のバイパスガイドを介して上述の温度制御が可能であることであり、これにより、燃焼用空気と排ガス流との間で直接熱交換を行うシステムとは対照的に、動作中に排ガス温度を簡単に調整/変更できる。これにより、加熱ガスの品質の変動を大幅に適切に処理できる;上述の説明を参照。
【0064】
(超)高圧飽和蒸気を用いた空気予熱(それのみで考えると本発明によるものではない手段2)の効果は、変形例1Fと変形例2Aとの比較によって示すことができる。(超)高圧蒸気のための過熱器バンドルの上流で(超)高圧蒸気を除去することにより、これに比例してより多くの排ガス熱を、排煙経路内の更に下流に位置するバンドルのために利用できるようになる。バンドル内の温度差は増大し、その結果として、対流ゾーンの表面積要件と、その結果として生じる対流ゾーンの高さとが、急激に減少する。従って手段2を単独で使用すると、構造的コストはかなり最小限に抑えられるものの、排煙流出温度が100Kだけ上昇するため、炉のエネルギ効率は低下する。
【0065】
従って、手段1と手段2とはある意味で対照的な効果を有する。しかしながら、参考Bと実施例3Bとの比較によると、手段1と手段2との組み合わせ(本発明による手段3と呼ばれる)が、構造的コスト及びエネルギ効率に関して炉を同時に改善することにつながることは、極めて明らかである。
【0066】
変形例3Bと変形例4Bとの比較は、(超)高圧飽和蒸気(それのみで考えると本発明によるものではない手段4)を用いた追加のプロセス用蒸気過熱の効果を示す。手段2と同様に、このような飽和蒸気の除去と、それをプロセス用蒸気の過熱のために使用することとによって、構造的コストの削減がもたらされ、これを(本発明による)手段1及び(それのみで考えると本発明によるものではない)手段2と組み合わせることによって、ここで与えられている実施例では、一定の炉エネルギ効率がもたらされる。
【0067】
変形例3Bと変形例5Bとの比較は、(超)高圧飽和蒸気(それのみで考えると本発明によるものではない手段5)を用いた追加の投入材料予熱の効果を示す。(それぞれそれのみで考えると本発明によるものではない)手段2、4と同様に、このような飽和蒸気の除去と、それを投入材料予熱のために使用することとによって、構造的コストの削減がもたらされ、これにより、ここで与えられている実施例5Bでは、(本発明による)手段1と(それのみで考えると本発明によるものではない)手段2とを同時に適用することによって、一定の炉エネルギ効率がもたらされる。
【0068】
変形例4B又は変形例5Bと変形例6Bとの比較は、(超)高圧飽和蒸気(それのみで考えると本発明によるものではない手段6)を用いた、プロセス用蒸気過熱と投入材料予熱との併用の効果を示す。飽和蒸気を最大限除去し、それをプロセス用蒸気の過熱及び投入材料予熱のために使用することによって、構造的コストの削減がもたらされ、これにより、ここで与えられている実施例では、(本発明による)手段1と(本発明によるものではない)手段2とを同時に適用することによって、変形例3B、4B、5Bと同様に一定の炉エネルギ効率がもたらされる。
【0069】
表1に記載されている変形例は、説明されている供給水及び/又は(超)高圧蒸気の使用に加えて洗浄水、中圧蒸気、及び/又は過熱(超)高圧蒸気を使用する、3つの段階を有する空気予熱器シーケンスの異なる複数の実施形態を使用している。
【0070】
特許請求対象の手段の有効性の更なる説明として、表2は、空気予熱を更に上昇させ(300℃)、これに対応して燃料消費が更に削減された、様々な変形例の実施形態に関する結果を示す。説明されている手段の効果は変更なく適用される。変形例4A*と変形例4B*との比較は、構造的コストに対する手段2のプラスの影響を示す。実施例4B*と実施例4B**との比較は、手段1の追加による、炉の効率に関する付加価値を示す。
【0071】
表2 空気予熱温度300℃での効率の比較
*:空気予熱に供給水を用いない実施形態
**:空気予熱に供給水を用いる実施形態
【0072】
表2において**が付された全ての変形例は、供給水を空気予熱のための加熱媒体として供給するものであるため、本発明に従って設計されている。
【0073】
一般に、より高い予熱温度において、複数の手段を組み合わせることによって比較的大きな付加価値が提供されることが示されている。例えば、変形例4B**と変形例6B**、即ち手段1、2に手段6を追加した後とを比較すると、構造的コストは5パーセントポイント削減されている。更に最大限組み合わせた実施形態として、変形例6C**は、略同一の炉効率を有する変形例6B**に比べて構造的コストを増大させることによって、蒸気送出の増加を達成する可能性を示している。この場合、これは、熱伝達媒体側でのプロセス用蒸気過熱と投入材料予熱との直列接続、即ちプロセス用蒸気過熱で形成された凝縮液を投入材料予熱のための熱伝達媒体として使用することによって、達成される。
【0074】
表2に記載されている例は、説明されている供給水及び/又は(超)高圧蒸気の使用に加えて低圧蒸気及び/又は過熱(超)高圧蒸気を使用する、2つの段階、3つの段階、又は4つの段階を有する空気予熱器シーケンスの異なる複数の実施形態を使用している。
【0075】
本発明は特に、例えば特許文献3に記載されているシステムでも使用でき、ここでは、分解ガスが投入材料流に対して直接冷却されるため、分解ガスの冷却中に放出される熱の一部分のみが、(超)高圧蒸気の生成に利用される。具体的には、本出願に記載の手段の適用も、このようなシステムと同一の、又は少なくとも略同一の利点を提供する。
【0076】
本発明は、排煙からの二酸化炭素の分離を伴うシステムにも適用できる。特に本発明による手段1を適用する場合、対流ゾーンの終端において、排煙の特に低い流出温度が達成され、これは、これ以降に例えばアミンスクラビングによって二酸化炭素を除去するのに有利である(アミンスクラビングの典型的な動作温度は20~60℃である)。
【0077】
本発明の一実施形態では、燃焼用空気を酸素で富化することもできる。特別な純度要件/濃度は必要なく、例えば水の電気分解の副産物を使用でき、又は空気分離プラント等の他のいずれの技術的ソースを使用できる。酸素富化の効果は空気予熱に略匹敵する。というのは、それぞれの場合において断熱燃焼温度が上昇し、従って放射ゾーンの効率が向上して排煙量が減少するためである。この効果は空気予熱と(完全に)同等ではない。というのは、(窒素含有量が低い場合等に)酸素含有量が比較的高いと、排煙の組成が若干異なっていても同等の効果が達成されるためである。具体的には、燃焼から形成される二酸化炭素及び水が比例的に増加し、前者は例えば、アミンスクラビングによる二酸化炭素の回収に有利であり、排煙のあらゆる再循環において更に有利となる。利点は更に、(超)高圧蒸気を用いた空気予熱に関して記載した値を超える、放射ゾーンの効率又は排煙の減少、従ってアンダーファイアリングの節減を達成できることである。
【0078】
上述のように、上記手段は、考えられる全ての炭化水素投入材料を用いる蒸気分解炉に使用できる。例としては、2個、3個、及び/又は4個の炭素原子を有する炭化水素(気体)、ナフサ(液体)、軽油(液体)、並びにプラスチックのリサイクル等のリサイクル法の産物(気体及び液体)が挙げられる。
【0079】
いずれの場合にも、燃焼用空気の全て又は一部分のみを予熱できる。部分的な空気予熱は例えば、フロアバーナーとサイドバーナーとを両方とも使用する場合に選択でき、バーナーのうちの一部のみ、好ましくはフロアバーナーに、予熱された空気が供給される。本出願の文脈において、空気予熱温度に関して示されている数値は常に、燃焼用空気全体の、結果として得られる予熱温度を指す。他のシステムからのプロセス流(例えばガスタービンの排ガス)を、炉の空気の予熱に使用することもできる。
【0080】
変形例4~6では、それぞれの場合において、別個の水又は炭化水素流を(超)高圧蒸気に対して加熱することが説明されている。同様に、この方法で炭化水素と水との混合物質流を加熱することもできる。この実施形態は、特に気体投入材料の場合に使用するのに適切である。というのはこの場合、対流ゾーンにおいて投入材料の状態変化が生じないためである。
【0081】
ここで説明されている飽和蒸気の使用は、これまで典型的なものであり、かつ技術的に使用されていたレベルである、約175bar(abs.)までのレベルに関連する。しかしながらあるいは、炉の領域での更なる予熱及び/又は過熱用途のために、より高い圧力及び温度レベル(例えば175bar(abs.)及び355℃)の飽和蒸気を部分的に提供する事も考えられる。
【0082】
本発明は好ましくは、システムの関連する別個の部分における、単独の又は複数のコンプレッサーの電気駆動と併用される。その結果、好ましいことに、本発明による空気予熱によって引き起こされる、炉からの(超)高圧蒸気の送出の減少が補償される。このようにシステムの電化を進めることにより、更に、電力網からの引き込みによって再生可能エネルギの利用を増やすこともできる。システム起動のためのバックアップシステムとして蒸気ボイラーを保守することも、その程度は低いものの必要となる。
【0083】
ここで説明されている手段は、蒸気分解炉の完全な新設の場合、及び既存の炉の近代化の場合の両方に適用できる。後者の場合、特にバンドルの高さの合計に関する利点は、例えば既存の鋼構造内に修正されたバンドル構造を収容する必要がある場合に特に重要である。
【0084】
これより、本発明の実施形態を先行技術と比較して図示した図面を参照して、本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】
図1~4は、本発明によるものではない構成を示す。
【
図2】
図1~4は、本発明によるものではない構成を示す。
【
図3】
図1~4は、本発明によるものではない構成を示す。
【
図4】
図1~4は、本発明によるものではない構成を示す。
【
図5】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図6】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図7】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図8】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図9】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図10】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図11】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図12】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図13】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図14】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図15】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図16】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図17】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図18】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図19】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図20】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図21】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図22】
図5~22は、本発明の実施形態による構成と、言及されている場合にはそれぞれ、本発明によるものではない構成とを示す。
【
図23】
図23は、本発明の実施形態と本発明によるものではない実施形態とを概略図にまとめたものである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
上述の説明、及び以下の更なる説明において、本発明によるものではないシステム及びそれに基づく対応する方法ステップ、並びに本発明の実施形態によるシステム及びそれに基づく対応する方法ステップが説明される。単に簡潔にするため、及び不必要な繰り返しを避けるため、方法ステップとシステム構成部品と(例えば冷却ステップと、この目的のために使用される熱交換器と)について、同一の参照記号及び説明が使用される。図では、同一又は同等の構成部品には同一の参照記号が使用され、これらについても、単に分かりやすくするために、繰り返し説明しない。
【0087】
これより、本発明及び対応する実施形態の利点を、特に上で説明した
図1、2に示されている先行技術による実施形態(
図1による、空気予熱を用いず集中型加熱ガス予熱を用いるもの、及び
図2による、例えばおよそ248℃までの空気予熱を用いながら
図1に示されているような集中型加熱ガス予熱も用いるもの)と比較して説明する。これらの考慮事項は、ナフサを投入材料として使用するクラッカー炉に基づくものである。しかしながら、本発明の異なる複数の態様は、気体投入材料又はより重い液体投入材料を用いる炉にも同様に適用される。
【0088】
特に
図4には、基礎となる対流ゾーン12のトポロジーが示されている。しかしながら、本発明の範囲内において、他のプロセス構成を使用することもできる。このトポロジーは、流出する排煙Zの方向とは反対方向に、第1の供給水予熱121、投入材料予熱122、第2の供給水予熱123、第1の高温バンドル124、プロセス用蒸気過熱125、第1の(超)高圧蒸気過熱126、第2の(超)高圧蒸気過熱127、及び第2の高温バンドル128を含む。
【0089】
供給水Wは、第1の供給水予熱121及び第2の供給水予熱123を通して案内された後、例えば分解ガス冷却器13内の、対応する(超)高圧蒸気生成器へと供給される。そこで生成されたまだ過熱されていない(超)高圧蒸気Sは、第1の(超)高圧蒸気過熱126及び第2の(超)高圧蒸気過熱127を通して案内され、これによって過熱(超)高圧蒸気Tが得られ、ここで、第1の(超)高圧蒸気過熱126と第2の(超)高圧蒸気過熱127との間に供給水を注入できる。炭化水素投入材料Hは投入材料予熱122において加熱され、プロセス用蒸気Pはプロセス用蒸気過熱125において加熱され、その後これらを組み合わせることによって供給流Fが形成され、これは第1の高温バンドル124及び第2の高温バンドル128において更に加熱される。
【0090】
図1~4に関する説明は他の図にも当てはまり、
図1~4で使用されている参照記号はそれ以降の図でも使用される。これ以降の図では、分かりやすくするために、全ての材料流には繰り返し言及しない。
【0091】
図5~10は、本発明による実施形態の第1のグループによるスチームクラッキングのためのシステムの、1A~1Fで示される変形例を示す。これらを関連付ける特徴は、最大限のエネルギ回収のために冷却済み供給水を使用する点である。図示されている全ての変形例1A~1Fの原理は、上述のように、炉ユニット10に既に存在する供給水を、空気予熱75のための加熱媒体として、及び任意に、低温範囲、即ち最高100℃の温度範囲での加熱ガス予熱65のための加熱媒体として、使用することである。予熱75及び場合によっては予熱65から出た冷却済み供給水はその後、対流ゾーン12へと供給されるが、上述のように、先行技術に比べて温度が著しく低い。
【0092】
図5~10に示されている予熱は上述のように、複数のステージ、例えば第1の供給水を加熱媒体として使用する第1の段階、中圧蒸気を加熱媒体として使用する第2の段階、及び(超)高圧蒸気を加熱媒体として使用する第3の段階で構成できる。
【0093】
上述のように、更なる可能な加熱タイプ又は加熱媒体も使用できる。更に、これもまた上述のように、より多い又は少ない予熱段階を設けることもできる。流出する加熱媒体の使用、又は蒸気生成への凝縮液の再循環に関しては、上述の説明も同様に参照する。
【0094】
図5に示されている変形例1Aでは、供給水Wの一部分を、対応する加熱流WHとして集中型空気予熱75で使用する。更なる一部分をバイパスWBとして集中型空気予熱75を通して案内することによって、上で説明されている制御機能を実現できる。後者は以下で説明されている変形例1B~1Fにも当てはまる。
【0095】
図6に示されている変形例1Bでは、供給水Wの複数の部分を、加熱流WH1、WH2として集中型空気予熱75及び集中型加熱ガス予熱65で使用する。
【0096】
図7に示されている変形例1Cでは、分散型空気予熱75は供給水WHを用いて加熱され、加熱ガスの予熱は実施されない。
【0097】
図8に示されている変形例1Dでは、同様に分散型空気予熱75は供給水WH1を用いて加熱され、また分散型加熱ガス予熱65は供給水WH2を用いて加熱される。
【0098】
図9に示されている変形例1Eでは、分散型空気予熱75は供給水WH1を用いて加熱されるが、集中型加熱ガス予熱65は供給水WH2を用いて加熱される。従ってWB1、WB2と呼ばれる2つのバイパスが存在する。
【0099】
図10に示されている変形例1Fでは、分散型空気予熱75は供給水WHを用いて加熱され、集中型加熱ガス予熱65は、供給水を用いた加熱なしで実施される。
【0100】
図11~13は、本発明によるものではない実施形態の第2のグループによるスチームクラッキングのためのシステムの、2A~2Cで示される変形例を示す。これらを関連付ける特徴は、空気予熱75における加熱媒体として、炉専用の(超)高圧飽和蒸気を使用する点である。図示されている変形例の原理は、同じクラッカー炉10の蒸気生成器13で生成された飽和蒸気Sを、中温~高温の範囲、即ち150~330℃の温度範囲での空気の加熱75のための加熱媒体として、部分的に使用することである。対流ゾーン12(
図4参照)の蒸気過熱器126、127に供給される飽和蒸気の量は、これに伴って削減され、その結果、これに比例してより多くの排ガス熱を、対流ゾーン12内の排煙Zの経路内で下流に配設された熱交換器121~125に利用できるようになる。
【0101】
図11、12に示されている変形例2A、2Bでは、これらの手段が分散型空気予熱75と併用され、
図12に示されている変形例2Bには集中型空気予熱が更に存在し、この集中型予熱は、より明確に区別するために75’で表される。しかしながら、
図13に示されている変形例2Cは集中型空気予熱しか備えない。全ての場合において、加熱に使用される対応する飽和蒸気流は、SHで表される。そこから形成される凝縮液はSCで表される。図示されている例では、これは集中型蒸気システム50に戻される。
【0102】
変形例2A、2B、2Cについて
図11、12、13で示されているように、結果として生じる(超)高圧凝縮液をプラントの集中型蒸気システムに供給することによって、上記凝縮液に内包された残留エネルギを更に利用でき、また最終的に上記凝縮液を適切な凝縮液処理へと供給できる。またここでは、全体又は一部が以前の予熱段階で(即ち、より低い温度レベルで)形成された凝縮液を、好ましくは減圧レベルまで部分的に緩和して、この減圧レベルの過熱蒸気を追加した後で、再使用することもできる。しかしながら、事前の緩和及び過熱蒸気の混合を行わずに、凝縮液を予熱において過冷却することもできる。
【0103】
図14、15は、本発明による実施形態の第3のグループによるスチームクラッキングのためのシステムの、3A、3Bで示される変形例を示す。これらを関連付ける特徴は、供給水と(超)高圧飽和蒸気Sとを、空気予熱75及び/又は加熱ガス予熱65における加熱媒体として併用することである。図示されている全ての変形例の原理は、実施形態の第1及び第2のグループについて既に説明されている複数の手段を併せて適用すること、即ち100℃までの低温範囲での空気予熱75及び/又は加熱ガス予熱65のために供給水Wを使用し、更に150~330℃の中温又は高温範囲での空気予熱75のために飽和蒸気を使用することである。
【0104】
上述のように、予熱は、複数のステージ、例えば第1の供給水を加熱媒体として使用する第1の段階、中圧蒸気を加熱媒体として使用する第2の段階、及び超高圧飽和蒸気を加熱媒体として使用する第3の段階で構成できる。上述のように、更なる可能な加熱タイプ又は加熱媒体も使用できる。更に、これもまた上述のように、より多い又は少ない予熱段階を設けることもできる。流出する加熱媒体の使用、又は蒸気生成への凝縮液の再循環に関しては、上述の説明も参照する。
【0105】
図14に示されている変形例3Aでは、これらの加熱媒体は共に分散型空気予熱75のために使用されるが、
図15に示されている変形例3Bでは、より明確に区別するために75’で表されている集中型空気予熱が追加で提供され、分散型空気予熱75は(超)高圧飽和蒸気Sを用いて行われ、集中型空気予熱76は供給水Wを用いて行われる。
【0106】
図16、17は、実施形態の第4のグループによるスチームクラッキングのためのシステムの、4A、4Bで示される変形例を示し、
図16は本発明によるものではない実施形態を示し、
図17は本発明による実施形態を示す。これらを関連付ける特徴は、プロセス蒸気Pの過熱のための加熱媒体として、(超)高圧飽和蒸気Sを使用する点である。図示されている全ての変形例の原理は、同じ炉10の蒸気生成器13で生成された飽和蒸気Sを、中温~高温の範囲、即ち150~330℃の温度範囲でのプロセス蒸気Pの過熱のための加熱媒体として、部分的に使用することである。対流ゾーン12(
図4参照)内の飽和蒸気Sのための蒸気過熱器126、127に供給される飽和蒸気の量は、これに対応して削減され、その結果、これに比例してより高い温度レベルのより多くの排ガス熱を、対流ゾーン12内の排煙Zの経路内で下流に配設された熱交換器121~125に利用できるようになる。更に、これにより対流ゾーン12内のプロセス用蒸気過熱器125の負荷も部分的に又は完全に低減されるため、より高い温度レベルの更に多くの排ガス熱が、対流ゾーン12内の排煙Zの経路内においてプロセス用蒸気過熱器125の下流に配設された熱交換器121~124に利用可能となる。
【0107】
図16、17に示されている変形例4A、4Bでは、それぞれに分散型プロセス用蒸気加熱35が設けられており、
図16に示されている変形例4Aではそれだけが加熱されているが、対照的に
図17に示されている変形例では、分散型空気予熱75’も、(超)高圧飽和蒸気Sを加熱媒体として用いて加熱されている。
図17に示されている変形例は更に、本発明による実施形態として、この場合には上流の集中型空気予熱75における、空気予熱のための供給水の使用を伴う。
【0108】
図18、19は、実施形態の第5のグループによるスチームクラッキングのためのシステムの、5A、5Bで示される変形例を示し、
図18は本発明によるものではない実施形態を示し、
図19は本発明による実施形態を示す。これらを関連付ける特徴は、炭化水素投入材料Hの予熱のための加熱媒体として、(超)高圧飽和蒸気Sを使用する点である。図示されている全ての変形例の原理は、同じクラッキング炉10の蒸気生成器13で生成された飽和蒸気Sを、100~330℃の中温~高温の範囲での炭化水素投入材料Hの予熱(液体投入材料の場合には、発生し得る部分的な蒸発も含む)のための加熱媒体として、部分的に使用することである。投入材料側では投入材料流の単相での予熱が実施される(液体又は気体)。更に、液体から気体への部分的な又は完全な相転移も(投入材料及び流出温度に応じて)生じ得る。対流ゾーン12(
図4参照)内の飽和蒸気Sのための蒸気過熱器126、127に供給される飽和蒸気の量は、これに対応して削減され、その結果、これに比例してより高い温度レベルのより多くの排ガス熱を、対流ゾーン12内の排煙Zの経路内で下流に配設された熱交換器121~125に利用できるようになる。更に、対流ゾーン12の投入材料予熱器121の負荷が部分的に又は完全に低減されるため、更に多くの排ガス熱が、より高い温度レベルで、下流の熱交換器121のために利用可能となる。
【0109】
図18、19に示されている変形例5A、5Bでは、それぞれに分散型投入材料加熱25が設けられており、
図18に示されている変形例5Aではそれだけが加熱されており、対照的に
図19に示されている変形例では、分散型空気予熱75’も、(超)高圧飽和蒸気Sを加熱媒体として用いて加熱されている。
図19に示されている変形例は更に、本発明による実施形態として、この場合には上流の集中型空気予熱75における、空気予熱のための供給水の使用を伴う。
【0110】
図20~22は、実施形態の第6のグループによるスチームクラッキングのためのシステムの、6A~6Cで示される変形例を示し、
図20は本発明によるものではない実施形態を示し、
図21、22は本発明による実施形態を示す。これらを関連付ける特徴は、プロセス蒸気の過熱及び投入材料の予熱のための加熱媒体として、(超)高圧飽和蒸気Sを併用する点である。図示されている全ての変形例の原理は、同じクラッキング炉10の蒸気生成器13で生成された飽和蒸気Sを、150~330℃の中温~高温の範囲でのプロセス用蒸気Pの過熱と、100~330℃の中温~高温の範囲での炭化水素投入材料流Hの予熱(液体投入材料の場合には、発生し得る部分的な蒸発も含む)との両方のための加熱媒体として、部分的に使用することである。対流ゾーン12(
図4参照)内の(超)高圧飽和蒸気Sのための蒸気過熱器126、127に供給される飽和蒸気の量は、これに対応して削減され、その結果、これに比例してより高い温度レベルのより多くの排ガス熱を、対流ゾーン12内の排煙Zの経路内で下流に配設された熱交換器121~125に利用できるようになる。更に、対流ゾーン12のプロセス蒸気Pのための過熱器125の負荷が部分的に又は完全に低減されるため、更に多くの排ガス熱が、より高い温度レベルで、下流の熱交換器121~124のために利用可能となる。
【0111】
図20~22に示されている変形例6A~6Cでは、それぞれに分散型投入材料加熱25及び分散型プロセス用蒸気過熱35が設けられている。
図20、21に示されている変形例6A、6Bでは、これらのユニットに、図示されている様式で飽和蒸気Sが供給される。
図22に示されている変形例6Cでは、プロセス用蒸気過熱35と投入材料予熱25とは、熱媒体側において直列に接続されている。
図21、22に示されている変形例6B、6Cでは、分散型空気予熱75’に、更に飽和蒸気Sが供給される。
図21、22に示されている変形例は、本発明による実施形態として、この場合には上流の集中型空気予熱75における、空気予熱のための供給水の使用も伴う。
【0112】
図23は、本発明による実施形態と本発明によるものではない実施形態とを概略図にまとめたものであり、ここでは対応する材料流の名称を再び個々に示してはいない。
図23は特に、上で説明されている、ユニットの集中型の提供及び分散型の提供の可能性を示している。
【国際調査報告】