(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ロボット手術システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20240226BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555315
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 IL2022050292
(87)【国際公開番号】W WO2022195588
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515055063
【氏名又は名称】ヒューマン エクステンションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショレヴ モルデハイ
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA05
4C130AA07
4C130AA13
4C130AA18
4C130AA22
4C130AA23
4C130AA24
4C130AA33
4C130AA34
4C130AA37
4C130AA38
4C130AA54
4C130AB01
4C130AC05
4C130BA02
4C130CA01
4C130DA10
(57)【要約】
外科医の手によって制御可能な一体型ユーザインターフェースを有する手術装置と、手術装置の一体型ユーザインターフェースをロボットアームに接続するためのアダプターと、ロボットアームに接続されたときに手術装置を遠隔操作するための制御部とを有する外科用システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムであって
(a)外科医の手によって制御可能な一体型ユーザインターフェースを有する手術装置と、
(b)前記手術装置を前記一体型ユーザインターフェースに接続するためのアダプターと、
(c)前記手術装置およびロボットアームを遠隔操作するための制御部であって、前記手術装置の遠隔操作は、前記ロボットアームの動きを指示する、前記制御部と、を備える、
手術システム。
【請求項2】
前記アダプターが前記手術装置に接続されると、前記一体型ユーザインターフェースは、前記ロボットアームへの受動カプラに変換される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記受動カプラは、前記アダプターが前記一体型ユーザインターフェースに結合されたときに、前記ロボットアームの向き情報を提供する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アダプターが前記一体型ユーザインターフェースに接続されると、前記手術装置のエンドエフェクタの制御が前記遠隔制御部に伝達される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アダプターは、前記ロボットアームに接続可能である、または前記ロボットアームと一体化される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ロッドは、前記一体型ユーザインターフェースのスロットに嵌合し、前記スロットは、前記一体型ユーザインターフェースの回転の中心にある、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ロッドを前記スロットに取り付けることは、前記一体型ユーザインターフェースの制御を前記制御部に伝達するためのスイッチを作動させる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記アダプターは、前記一体型ユーザインターフェースに外部接続する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記アダプターは、滅菌ドレープを介して前記一体型ユーザインターフェースに取り付けられるように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記アダプターが前記手術装置に接続されるとき、前記一体型ユーザインターフェースが機械的にロックされる、
請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
医療装置であって、
前記医療装置は、制御部の収容部に取り付けられた枢動支持体に設けられた手のひらインターフェースを有する一体型ユーザインターフェースを有する制御部を有し、
前記手のひらインターフェースは、医療装置を操作するために傾斜可能であり、
前記手のひらインターフェースは、ロボットアームに取り付けられるように構成され、前記手のひらインターフェースは、取り付けられると、中心位置にロックされ、前記医療装置を操作することができなくなる、
医療装置。
【請求項12】
前記枢動支持体は、ジンバル式である、
請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記医療装置は、操縦可能部分を有するシャフトを含み、
前記手のひらインターフェースの手動による傾斜は、前記医療装置の前記操縦可能部分を偏向させる、
請求項12に記載の医療装置。
【請求項14】
前記手のひらインターフェースが、前記ロボットアームに取り付けられたロッドを受け入れるためのスロットを有する、
請求項12に記載の医療装置。
【請求項15】
前記スロットは、向きに合わせて調整される、
請求項14に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月15日にアプリケーションされた米国仮特許出願第63/160,965号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ロボット手術システムに関し、より詳細には、ロボットアームに結合可能で、遠隔制御部を介して操作可能な手持ち式手術装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ロボット装置は、外科手術において外科医を支援するために、使用されることが多くなっている。このようなロボット装置は、外科医に取って代わるものというよりは、協働ロボットとして設計されている。
【0004】
協働ロボット(コボット)は、通常、手術器具を取り付けることができる操作可能な先端部を有する可動アーム(ロボットアーム)を有する。操作者は、アームおよび取り付けられた手術器具を部位に正確に位置決めして、医療処置や外科処置を行うことができる。より身近なコボットのひとつにダヴィンチ・システムがあり、手術中に外科医を補助するロボットアームとハイテクカメラで構築されている。ダヴィンチのアームは外科医の手の動きをより小さく、より正確な動きに変換し、侵襲の少ない手術を可能にする。
【0005】
ロボットアームの正確な制御は、医療処置の安全性と成功の両方にとって極めて重要である。一般的なロボットシステムは、ロボットを手動で操作する受動的制御、あらかじめプログラムされた軌道に従ってロボットが自律的に動く能動的制御、遠隔操作者によってロボットが制御される遠隔制御、の3つの制御モードのうちいずれかを有する。
【0006】
ロボットシステムを使用する利点の一つは、外科医の腕や手とは異なり、システムアームが筋肉疲労や痙攣のような神経学的作用を受けないことである。そのため、医療用ロボットシステムを使用すれば、器具を安定させたり、器具を決められた経路に沿ってより高い精度で移動させたりすることができる。
【0007】
ロボット手術システムには多くの利点があるが、広範な縫合や複雑な縫合のような手術手順では、しばしば手動手術とロボット手術を切り替える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、外科医がロボット手術と手作業による手術をシームレスかつ迅速に切り替えることができ、適切なときに適切な場所でそれぞれの手法の利点を活用できるロボット手術システムが、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による手術システムは、外科医の手によって制御可能な一体型ユーザインターフェースを有する手術装置と、前記手術装置を前記一体型ユーザインターフェースに接続するためのアダプターと、前記手術装置および前記ロボットアームを遠隔操作するための制御部であって、前記手術装置の遠隔操作は、前記ロボットアームの動きを指示する、前記制御部、を備える。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記アダプターが前記手術装置に接続されると、前記一体型ユーザインターフェースは、前記ロボットアームへの受動カプラに変換される。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記受動カプラは、前記アダプターが前記一体型ユーザインターフェースに結合されたときに、前記ロボットアームの向き情報を提供する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記アダプターが前記一体型ユーザインターフェースに接続されると、前記手術装置のエンドエフェクタの制御が前記遠隔制御部に伝達される。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記アダプターは、前記ロボットアームに接続可能である、または前記ロボットアームと一体化される。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記ロッドは、前記一体型ユーザインターフェースのスロットに嵌合し、前記スロットは、前記一体型ユーザインターフェースの回転の中心にある。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記ロッドを前記スロットに取り付けることは、前記一体型ユーザインターフェースの制御を前記制御部に伝達するためのスイッチを作動させる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記アダプターは、前記一体型ユーザインターフェースに外部接続する。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記アダプターは、滅菌ドレープを介して前記一体型ユーザインターフェースに取り付けられるように構成される。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記アダプターが前記手術装置に接続されるとき、前記一体型ユーザインターフェースが機械的にロックされる。
【0019】
本発明の一態様による医療装置は、制御部の収容部に取り付けられた枢動支持体に設けられた手のひらインターフェースを有する一体型ユーザインターフェースを有する制御部を有し、前記手のひらインターフェースは、医療装置を操作するために傾斜可能であり、前記手のひらインターフェースは、ロボットアームに取り付けられるように構成され、前記手のひらインターフェースは、取り付けられると、中心位置にロックされ、前記医療装置を操作することができなくなる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記枢動支持体がジンバル式である。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記医療装置は、操縦可能部分を有するシャフトを含み、前記手のひらインターフェースの手動による傾斜は、前記医療装置の前記操縦可能部分を偏向させる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記手のひらインターフェースが、前記ロボットアームに取り付けられたロッドを受け入れるためのスロットを有する。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記スロットは、向きに合わせて調整される。
【0024】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。ここに記載のものと類似又は同等の方法および材料は本発明の実施又は試行に使用できるが、好適な方法および材料を以下に記載する。矛盾がある場合は、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0025】
本発明の方法およびシステムの実施は、選択されたタスクまたはステップを手動で、自動的に、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを有する。さらに、本発明の方法およびシステムの好ましい実施形態の実際の計装および機器によれば、いくつかの選択されたステップは、ハードウェアによって、または任意のファームウェアの任意のオペレーティングシステム上のソフトウェアによって、またはそれらの組合せによって実装され得る。例えば、ハードウェアとして、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の選択されたステップは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア指令として実装され得る。いずれの場合も、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の指令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行されるものとして説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、本明細書において、添付の図面を参照して、単に例示として説明される。ここで、図面を具体的に参照して詳細に説明すると、示されている具体的な内容は、例示のためであり、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論の目的のためだけであり、本発明の原理および概念的側面の最も有用で容易に理解されると考えられる説明を提供するために提示されていることが強調される。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要な以上に詳細に本発明の構造的な詳細を示そうとするものではなく、図面を用いた説明により、本発明のいくつかの態様が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかとなり得る。
【
図1】
図1は、ユーザの手によって制御可能な一体型ユーザインターフェースを有する手持ち式手術器具を示す。
【
図2】
図2は、本発明の教示により構成されたロボットアームに取り付けられた
図1の手持ち式手術器具を示す。
【
図3】
図3A、Bは、手持ち式手術器具に接続するためのロボットアーム(
図3A)およびアダプター部(
図3B)を示す。
【
図4】
図4は、手持ち式手術器具の一体型ユーザインターフェースをより詳細に示し、一体型ユーザインターフェースの内部の構成要素およびアダプター接続部位を示す。
【
図5】
図5は、ロボットアームのアダプターと一体型ユーザインターフェースとの接続を示す。
【
図6】
図6は、ロボットアームに接続されたときに、一体型ユーザインターフェースを中心に維持するための、一体型ユーザインターフェースおよびロッドへのアダプター接続を示す。
【
図7】
図7A~Eは、一体型ユーザインターフェースを介して手動で操作される場合(
図7A)、およびロボットアームに接続された場合に手持ち式手術器具を操作する遠隔ユーザインターフェースを介して遠隔操作される場合の手持ち式手術器具およびその偏向可能な先端の動きを示す(
図7B~E)。
図7Fは、外科医がスクリーン上で観察した動きの方向を示している。
【
図8】
図8A、Bは、遠隔ユーザインターフェースおよびロボットアームによって操作される手術器具の前進および後退動作を示す。
【
図9】
図9A、Bは、一体型ユーザインターフェース(
図9A)および遠隔ユーザインターフェースおよびロボットアーム(
図9B)を介して動作が行われるときに、手術器具を制御する処理のステップを示す。
【
図10】
図10は、遠隔ユーザインターフェースを介してロボットアームを制御するためのフィードバックとして機能するセンサーからの測定を示す。
【
図11】
図11は、単一の遠隔インターフェースを介して、いくつかのロボットアームおよび取り付けられた手術装置を制御する外科医を示す。
【
図12-1】
図12A~Cは、ロボットアームをドレープ付き手持ち式装置に接続するのに適したアダプターの構成を示す。
【
図12-2】
図12D~Fは、ロボットアームをドレープ付き手持ち式装置に接続するのに適したアダプターの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、手動手術およびロボット手術に使用することができるシステムに関する。具体的には、本発明は、単一の手術システムを使用して、手動手術およびロボット手術の両方の機能を外科医に提供するために使用することができる。
【0028】
本発明の原理および動作は、図面および添付の説明を参照することにより、より良く理解され得る。
【0029】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その承認申請において、以下の説明に示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな手段で実施または実行することが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0030】
一般的なロボットシステムは、ロボットが手動で操作される受動的制御、ロボットが予めプログラムされた軌道に従って自律的に動くことができる能動的制御、および遠隔操作者によってロボットが制御される遠隔制御、の3つの制御モードのうち1つを有する。
【0031】
ロボット手術システムは、手術の正確な制御を可能にし、医療処置の安全性および成功率を向上させるが、それらは、通常、専用システムであり、手術器具がロボットアームへの取り付けまたはロボットアームとの一体型のために特別に設計されていることで、システム故障の場合、または手術器具がロボットアームに接続されていない場合に、外科医が手術器具を操作することを望んでも手動で使用することができない。
【0032】
本発明者は、本発明を具現化しつつ、ロボット操作モードと手動操作モードの両方を提供できる手術システムを考案した。
【0033】
このため、本発明の一態様によれば、開腹手術または低侵襲手術において使用することができる手術システムが提供される。手術システムは、外科医の手によって制御可能な一体型ユーザインターフェースを有する手術装置と、一体型ユーザインターフェースを介して手術装置をロボットアームに接続するためのアダプターとを有する。一体型ユーザインターフェースを有する手術装置は、その一体型ユーザインターフェース上でのハンドコントロールを介して手動で操作され得るが、アダプターを介してロボットアームに接続されている場合、手術装置は、(例えば、外科医に取り付けられる)遠隔ユーザインターフェースを介して制御される。このため、アダプター結合は、一体型ユーザインターフェースを受動カプラに効果的に変換する。遠隔ユーザインターフェースは、(一体型ユーザインターフェースと同様の方法で)手術装置を制御し、ロボットアームの移動を指示する。手術装置のエンドエフェクタの動作(例えば、手術装置の関節運動、そこに取り付けられた把持部の動作など)に対する遠隔制御は、手術装置の一体型ユーザインターフェースを介して中継されず、装置制御部に直接伝達され、手術装置またはアダプターに一体化された位置/力センサーを利用する。手術装置の空間位置に対する遠隔制御は、ロボットアームを介して中継され、ロボットアーム、アダプター、および、任意で、手術装置と一体化された、位置/力センサーを利用する。
【0034】
本システムの上記構成および機能により、外科医は、ロボットアームから取り外された手術装置を手動で操作することができ、また、ロボットアームに取り付けられた同器具を、支点が不要となる開腹手術と同様の方法で、ロボット操作することができる。
【0035】
これにより、手術装置を手動制御する経験を有する外科医は、ロボットアーム構成により、同装置の操作に素早く適応することができる。
【0036】
アダプターは、ロボットアーム(または一体型ユーザインターフェース)の一部を形成することができる。いずれの場合も、アダプターは、好ましくは一体型ユーザインターフェースの回転中心と位置合わせされることで一体型ユーザインターフェースを設定位置にロックする収容部に接続するロッド(またはピン)を有することができる。ロッドを収容部に接続すると、手術装置の一体型ユーザインターフェースから制御部に制御を伝達するリミットスイッチが作動する。
【0037】
ロボットアームは、1つまたは複数の平面内で移動可能な1~3、またはそれ以上のジョイントを有する任意のタイプのアームとすることができる。
【0038】
ロボットが人間との接触から隔離されている現在のロボット手術アプリケーションとは異なり、協働ロボット(またはCobot)は、限られたスペースで人間と協働して働くように設計される。このため、協働ロボットは、安全な操作を保証するセンサーとソフトウェアを活用しつつ、軽量構造、丸みを帯びた縁部、および速度と力の固有制限により、安全性を重視して設計される。
【0039】
コボットと人間は、同じエリアで同時に動作することができ、また、人間とコボットの両方が動いている間、コボットは人間の動きにリアルタイムで反応する。
【0040】
一般的なコボットアームは、ジョイントによって相互接続された複数の個別のアーム部を有する。各アームは、モータ、ブレーキシステム、およびセンサーを有することができる。ジョイントおよびアームは、各ジョイントのモータおよびブレーキシステムを制御し、センサー信号を受信および処理するための中央制御システムに接続されている。各ジョイントは、入出力部材を備えた収容部を有する。
【0041】
ジョイント収容部の入力部材は、ジョイントの近くのリンクの先端部に接続される。収容部の出力部材は、収容部内に設けられたモータによって収容部に対して回転可能である。ジョイント収容部には安全ブレーキを内蔵していてもよい。安全ブレーキは、通常、モータ車軸に設けられた環状部材を含む。このため、環状部材はモータ車軸に対して回転するが、環状部材とモータ車軸との間の摩擦を伴う。また、ブレーキ機構はソレノイドを有することができ、このソレノイドは、ブレーキの作動時に、ラチェットを変位させて環状部材と係合させ、収容部に対するモータ車軸の回転を遅らせる。
【0042】
ジョイント収容部はまた、センサーの一部として2つのエンコーダーを有することができる。第1エンコーダーは、収容部に対する出力部材の角度方向を検知し、第2エンコーダーは、ジョイント収容部に対するモータ車軸の角度方向又は回転を検知する。
【0043】
各コボットアームシステムはまた、カート、作業面、またはクランプに接続可能な基端ベースと、末端コネクタを有する。末端コネクタは、コボットと共に特に使用されるように構成されたエンドエフェクタ、カメラ、または追加のセンサーの取り付けを可能にする。
【0044】
中央制御回路は、コボットアームシステムと一体化することも、外部ボックス内に配置することもできる。
【0045】
市販のコボットには多数の種類がある。コボットシステムは、その寸法、重量、リーチ、一般的な動作範囲、消費電力、積載荷重、精度、騒音、およびほこり、湿度、温度などのさまざまな環境条件への適応性において異なる場合がある。
【0046】
例えば、軽い組立作業や自動化された作業台用のUR3eのような小型の協働テーブルトップコボットは、重量11kg、可搬重量3kg、リーチ0.5Mで、すべての手首関節の±360度回転、および末端関節の無限回転が可能である。
【0047】
UR16eなどのヘビーデューティー・コボットは、重機械操作、マテリアルハンドリング、包装、ねじやナットの駆動用途に使用され、重量33kg、可搬重量16kg(35.3lbs.)、リーチ0.9Mで、すべての手首関節の±360度回転、および末端関節の無限回転が可能である。
【0048】
腹腔鏡手術の分野では、コボットは、少なくとも0.4Mのリーチと少なくとも1Kgの可搬重量を有し得る。ロボットアームは、少なくとも3つの電動自由度と、15Kgを超えない重量とを有することができる。コボットは、手術台に固定またはクランプすることができ、またはカートに取り付けることができる。
【0049】
本発明で使用するために変更可能なコボットには、可搬重量2.1kg、リーチ0.7M、重量4.6kgの6軸コボットであるKINOVA-MICO2、可搬重量3kg、リーチ0.5M、重量11kgの6軸コボットである、UNIVERSAL ROBOTS-UR3、またはUNIVERSAL ROBOTSによって製造されたUR3コボットが含まれる。
【0050】
手術装置は、腕および手の動きによって手動で操作される任意のタイプの電動装置であり得る。このような装置は、アクセスポート(トロカール)を介した低侵襲手術用に構成することができる。手術装置は、エンドエフェクタ(把持部、カッター、カメラなど)を有するシャフトに取り付けられた制御部を有することができる。ユーザインターフェースは、(ワイヤまたはモータおよびワイヤ/歯車を介して)シャフトのたわみ/関節運動、ならびにエフェクタ端部(例えば、把持部)の動作を制御することができる。手術装置の空間的位置決め(上下、左右)は、アームの動きによって制御することができる。以下、本システムと共に使用するように構成された手術装置の一例を説明する。
【0051】
遠隔ユーザインターフェースは、一体型ユーザインターフェースと機能的に類似していてもよく、シャフト偏向およびエフェクタエンド動作に対して同様の制御を提供しつつ、(ロボットアームによって実行される)空間的位置決めのためのユーザ制御も提供する。
【0052】
本システムと共に使用するように構成された遠隔ユーザインターフェースの一例を以下に説明する。
【0053】
ここで、図面を参照すると、
図1および
図2は、それぞれ、手動で操作可能な手術装置と、手術装置が取り付けられたロボットアームとを示す。
【0054】
手術装置(以下、装置10と称する)は、シャフト14に取り付けられた制御部22を有する。
【0055】
制御部22は、駆動ユニット18および回路20を有する収容部16と、収容部16の基端24に取り付けられた一体型ユーザインターフェース22(以下、インターフェース22)とを有する。収容部16およびインターフェース22は、機械加工、3Dプリンティング、鋳造/成形などの製造方法を用いて、ポリマーおよび/または合金から製造することができる。収容部16は、直径40~60mm、高さ約60~150mmとすることができる。インターフェース22は、
図4~
図5にも示されている。
【0056】
シャフト14は、操縦可能部分24と、末端側に取り付けられたエンドエフェクタエンド/器具(把持部26が示されている)とを有することができる。シャフト14は、当技術分野で周知の材料および手法を使用して製造することができる。
【0057】
シャフト14は、駆動ユニット18から顎部26および操縦可能部分28の端部に力を伝達するために、その長さ方向に沿って配置された複数のワイヤを有する。
【0058】
シャフト14は、長さ20~40cm、直径3~16mmとすることができ、中空または中実とすることができる。中空シャフト14は、ワイヤの内部配線を可能にする。シャフト14が中実である場合、ワイヤは専用ガイドを介してシャフト14の外面に配線することができる。
【0059】
シャフト14の操縦可能部分は、切り欠きを有するチューブ(例えば、US4911148に示されているもの)から、または、チューブまたはリンク内に形成されたガイドに通された制御ワイヤを備えたリンク(例えば、US7682307、US6817974)から製造することができる。あるいは、操縦可能部分は、本発明者に対する米国仮特許出願第61/765,745号に記載されるように製造することができ、その教示は、本明細書に完全に組み込まれる。
【0060】
シャフト14の基端30は収容部16の先端部32に取り付けられ、シャフト14の制御/作動用ワイヤ/ロッドは収容部32を通って、駆動ユニット18に取り付けられる。駆動ユニット18は、ユーザインターフェース22の動きを制御/作動用ワイヤの引き操作に変換するためのレバーおよびギアを有してもよい。そのような伝達は、機械式(手動)または電動式とすることができる。
【0061】
外科医の手50は、使用者の手の甲が拘束部52の下に配置され、ユーザの指のうちの3本が手のひらインターフェース54を自由に把持し、親指および人差し指がフィンガーインターフェース56に係合するように配置される。
【0062】
拘束部52は、下向きの力を加えつつ、外科医の手の甲に適合するように弾性変形可能である。
【0063】
手のひらインターフェース54は、ベースに対する手のひらの表面54の向きを測定することによって、ユーザの手の空間的な向きを測定するためのセンサーを有するベースに旋回可能に取り付けられる。
【0064】
フィンガーインターフェース56は、手のひらインターフェース54に接続されている。加えて、フィンガーインターフェース56のパドル58(2つが示されている)は、装置10のエフェクタエンド(例えば、把持部などの手術器具)を制御するために、移動可能(内向きに挟む、外向きに解除する)かつ回転可能(時計回り、反時計回)である。
【0065】
図2に示すように、装置10は、インターフェース22を介してロボットアーム100に接続可能である(ここでは、まとめてシステム70と称する)。ロボットアーム100は、ベッド、テーブル等にロボットアーム100を接続するためのベース102と、ジョイント(112、114)を介して相互接続された3つのセグメント(106、108、110)とを有する。ジョイント116は、アダプター(以下に記載)を介して、ロボットアーム100を装置10に接続する。
【0066】
図3A、Bは、ロボットアーム100、およびインターフェース22を介してロボットアーム100を外科装置10に接続するためのロッド124を有するアダプター120を示す。
【0067】
図3Aは、末端リンク110の先端部に配置されたアダプター120を有するロボットアーム100の全体図である。この構成では、ロボットアーム100は、3つのリンク、すなわち、ベース102に対してその長軸の周りを回転する垂直リンク106、ジョイント112(モータ収容部の一部)を介してセグメント106に接続されるセグメント108、およびジョイント114(モータ収容部の一部)を介してセグメント108に接続される末端セグメント110を有する。セグメント108および110は、ジョイント112および114の長軸の周りを回転する。ただし、
図3Aにおいて、ロボットアーム100は、ロボットアーム100が所望の位置にアダプター120を空間的に位置決めすることを可能にする最小限の数のアームおよびジョイントを有する。様々なロボットアームおよびコボットが市販されており、様々な数のセグメントおよびジョイントが提供されている。ロボットアーム100は、末端アダプター120を有するように市販のコボットを修正することによって製造することができる。クランプ104は、ロボットアーム100をカートまたは手術台に接続するために使用され得る。セグメント108および110の長さは20~40cmであってもよく、これにより40~80cmのリーチを可能にする。
【0068】
図3Bは、アダプター120をより詳細に示す。アダプター120は、ロボットアーム100のリンク110の先端部を、好ましくは装置10のユーザインターフェース22の回転中心に接続する。アダプター120は、リングアダプター116を介してアーム110の先端部に接続される。ロッド124は、リング116から突出しており、装置10のインターフェース22に単一方向で接続できるようにするための鍵穴(非対称形状)を有する。ロッド124の先端部上のリミットスイッチ122は、ロッド124がユーザインターフェース22に完全に接続されると押し下げられる。バルジ126は、ユーザインターフェース22の外面54と接続し、ロボットアーム100が装置10を運ぶときの支持体として機能する。
【0069】
図4は、アダプター120を介してロボットアーム100と接続するためのコネクタ収容部132およびユーザインターフェース22の内部構造をより詳細に示す断面図である。リミットスイッチ140は、装置10のユーザインターフェース22に配置される。リミットスイッチ140のレバー142は、アダプター120のロッド124がコネクタ収容部132内にカチッとはまったかどうかを示す。ユーザインターフェース22は、球面ベース136を覆う手のひらインターフェース54を有し、これにより、ユーザは、球面ベース136の中心の周りで、装置10の本体16に対してユーザインターフェース22を傾斜させることができる。球面ベース136は、フレーム144を介して手のひらインターフェース54に接続される。手のひらインターフェース54は、アダプター120のロッド124が、その中心で、球面ベース136に機械的に接続することを可能にする開口部134を有する。ロッド124が収容部132に固定されると、リミットスイッチ140のレバー142が押し下げられ、ロボットアーム100が手持ち式装置10に接続されたことを示す。
【0070】
図5は、ロボットアーム100のアダプター120と装置10のユーザインターフェース22との接続状態を示す断面図である。ロッド124は収容部132に接続され、リンク110の長軸と同一直線上にあるロッド124の中心線148は、(破線円68が示すように)球面ベース136の回転中心148に向けられる。ロッド124が収容部132内にカチッとはまると、スイッチ122(
図3Bに示される)は収容部132に対して押し下げられ、リミットスイッチ140のレバー142はロッド124によって押し下げられる。
【0071】
図6は、ロボットアーム100のアダプター120と装置10のユーザインターフェース22との接続状態をより詳細に示す。(鍵穴型の開口部134を通る)アダプター120のロッド124は、インターフェース22内に位置する収容部132内にカチッとはまることにより、スイッチ122を収容部132に対して押し下げ、リミットスイッチ140のレバー142は、ロッド124によって押し下げられる。バルジ126は、インターフェース22のカバー130を支持する。
【0072】
図9A~
図10を参照して以下でさらに説明するように、リミットスイッチ122、140の両方が押し下げられると、手持ち式電動装置10とロボットアーム100の別々の制御システムが単一の制御回路の下に統合されて、外科医が手持ち式電動装置10のエンドエフェクタ26とロボットアーム100とを同時に制御することが可能となる。
【0073】
図12A~Fは、ロボットアームをドレープされた装置に接続するのに適したアダプターを示す。
【0074】
装置10が(滅菌のため)ドレープされる場合、ロボットアーム100を装置10に接続するために、外部アダプター構成が必要とされる。アダプター300は、インターフェース22の外面を把持するアーム302を有する。インターフェース22がドレープされると、アーム302は、ドレープによって提供される無菌バリアを遮ることなく、インターフェース22を確実に把持する。アダプター300は、アダプター310がインターフェース22に接続されているかどうかを示すリミットスイッチ122を有することができる。
【0075】
図12A~Cに示すように、アダプター300は、(
図3A~
図6を参照して上述したように)インターフェース22の回転中心と位置合わせすることができる。あるいは、アダプターは、角度付きコネクタ312(
図12D~F)を介して末端アーム110に接続されてもよい。
【0076】
別の例として、ロボットアーム100を装置10に接続する際、インターフェース22をロックするために装置10のインターフェースロックアウト機構を利用してもよい。装置10は、外科医によって手動で使用されるときにインターフェース22をロック/ロック解除するための電動ブレーキ機構を備えていても良い。このような機構は、ロボットアーム100が(ドレープを介して)装置10に接続されたときに、スイッチが入るようにしてもよい。これにより、(所望の位置、例えば、中心位置で)手のひらインターフェースのジンバル機構をロックし、ロボットアームと共に装置10を使用することを可能にする。
図7Aは、外科医の手50によって、一体型インターフェース22を保持しつつ、装置10を手動で位置決めする状態を示す。外科医は、方向矢印80が示すように、支点60に対して所望の向きに装置10を傾斜させ、装置10のシャフトを、支点60をから直線矢印82の方向に出し入れするようにスライドさせてもよい。
【0077】
図7B~Eは、遠隔ユーザインターフェース200(以下、インターフェース200)による、装置10に対するリモート制御を示す。この構成では、一体型インターフェース22は、ロボットアーム100と装置10の本体およびシャフト24との間の受動カプラとして機能し、ロボットアーム100による装置10の位置決めおよび配向を可能にする。
【0078】
インターフェース200を介するロボット制御は、以下のように影響を受ける。装置10はアダプター120およびロッド122を介してロボットアーム100に接続され、インターフェース22は解除されて(ロッド124を介して)中心位置で係合され、インターフェース22の機能が、
図5の中心線148が示すようなロボットアーム100の末端リンク110の長軸の端部における既知の点に位置する、受動ジンバル結合器へと変更される。
【0079】
いったん装置10がロボットアーム100に取り付けられると、球面ベース136に配置されたセンサーは、
図9A~10を参照して後述するように、複合制御回路(220、222、224)のピッチセンサーおよびヨーセンサーとして機能する。
【0080】
図7B~Cは、装置10がロボットアーム100に取り付けられたときの、エンドエフェクタの位置決めに対する遠隔制御を示す。ただし、外科医は、2Dスクリーン(
図7F)を介して処置を見ているため、エンドエフェクタの位置は、
図7Fに示されるように、左、右、上、下方向への移動として見られる。
【0081】
支点60を介してシャフト24を位置決めしつつ、装置10のエンドエフェクタ26を(矢印62が示すように)左側に移動させたい場合、外科医は、遠隔制御装置200の先端を左側(矢印72)に移動させて、ロボットシステム100に、装置10を支点60に対して右に時計回り(CW)に傾けるように指令することで、シャフト24を支点60の周りに方向62に反時計回り(CCW)に回転させ、結果として先端26を左側に移動させる。
【0082】
図7Cに示されるように、装置10のエンドエフェクタ26を右側(方向64)に移動させたい場合、外科医は、遠隔制御装置200の先端を右側(矢印74)に移動させて、ロボットシステム100に、装置10を支点60に対して左側に時計回りに傾けるように指令することで、シャフト24を支点60周りに回転させ、結果として先端26を右側に移動させる。
【0083】
図7D~Eは、ロボットシステムによる操作中のエンドエフェクタの位置決めの上下方向の遠隔制御を示す。
【0084】
装置10のエンドエフェクタ26を下側に移動させたい場合(矢印66)、外科医は、
図7Dに示すように遠隔制御装置200の先端を下側に移動させて(矢印76)、ロボットシステム100に、支点60に対して装置10を上に傾けるように指令することで、先端26を強制的に下側に移動させる。
【0085】
装置10のエンドエフェクタ26を上側に移動させたい場合(矢印68)、外科医は、
図7Eに示されるように、遠隔制御装置200の先端を上側に移動させ(矢印78)、ロボットシステム100に、支点68に対して装置10を下方に傾けるように指令し、先端26を強制的に上側に移動させる。
【0086】
図8A、Bは、ロボットシステムによる操作によりエンドエフェクタ260を位置決めする、出し入れによる遠隔制御を示す。
【0087】
装置10のエンドエフェクタ26を内側に移動させたい場合(矢印84、
図8A)、外科医は、遠隔制御ベース202から離れるように遠隔制御装置200の先端210をスライドさせて(矢印94)、ロボットシステム100に、装置10のシャフト24を支点60を介して患者の体内にスライドさせるように指令し、先端26を体腔内でより深く移動させる。
【0088】
装置10のエンドエフェクタ26を外側に移動させたい場合(矢印86、
図8B)、外科医は、遠隔制御装置200の先端を遠隔制御ベース202(矢印96)に向かってスライドさせ、ロボットシステム100に、シャフト24および先端26を体腔から外にスライドさせるように指令する。
【0089】
図9A、Bは、ユーザインターフェース22(
図9A)、遠隔制御装置200、ロボットアーム100(
図9B)を介して移動が行われる場合の、手術器具を制御する処理のステップを示す。
【0090】
図9Aは、インターフェース22を用いた装置10のエンドエフェクタ26の制御を説明するフローチャートである。装置10を用いて操作するために、外科医は、エンドエフェクタ26を患者の体内に配置した状態で、装置10をユーザインターフェース22によって保持し、シャフトを切開部を介してスライドさせ、切開部を支点として使用する。装置を所望の位置に移動させる間、外科医は、装置10の本体16に対してインターフェース22を傾けることによってエンドエフェクタの向きを制御してもよい。関節の向きは、ユーザインターフェース22(CI)に配置された配向センサーによって制御される。中央処理ユニットは、配向センサーからの読み込んだ値を用いて、所望の関節角度を計算し、それらをエンドエフェクタ26の関節を動作させるモータへの指令に変換する。エンドエフェクタ機構の制御は、同様の制御フローによって実行される。例えば、エンドエフェクタが把持部である場合、フィンガーインターフェースのペダルを押したり離したりすることで、顎部の開閉動作を制御し、ペダルを回転させることで、把持部の顎部の回転を制御する。
【0091】
図9Bは、遠隔制御装置150(ロボット手術システム70を制御するためにカスタマイズされた遠隔制御装置200によって置き換えられる)を使用するロボットアーム100の末端コネクタ120の制御を説明するフローチャートである。ロボットアーム100の先端部に位置するアダプター120の先端を所望の位置に移動させるために、ユーザは、遠隔制御装置150のハンドルを所望の方向に、または所望の位置に(制御に使用されるアルゴリズムに応じて)移動させる。ロボットアーム100の中央処理ユニットは、末端アダプター120の先端を所望の位置にするのに必要な指令を計算し、それらをモータに対する指令に変換することで、所望の位置への先端の移動が行われる。
【0092】
図10は、外科用ロボットシステム70の中央処理ユニット220によって処理される信号および制御の概要を示すフローチャートである。装置10のインターフェース22がロボットアーム100に接続されると、両リミットスイッチ122および140が押し下げされ、インターフェース22が、ロボットアーム100の末端リンク110に対する装置10の本体16の向きを測定する受動ジンバルに変換されることを処理ユニット220に示す。次に、装置10の幾何学的寸法が既知であるため、中央処理ユニット220は、シャフト14の向きおよびエンドエフェクタ26の位置を計算することができる。
【0093】
レバー142が押されると、装置10の制御回路は、関節を制御するための入力として、装置10のインターフェース22のピッチセンサーおよびヨーセンサーからの読み込んだ値を使用せず、フィンガーインターフェース56のセンサーから読み込んだ値を無効にする。リミットスイッチ122および142の両方が解放されるまで、関節運動およびエンドエフェクタの動きを制御する指令は、遠隔制御装置200によってのみ生成される。
【0094】
ロボットアーム100によって装置10を移動させる場合、装置10の動きを安全に、例えば、切開部位に力を加えて患者に害を与えないようにすることが不可欠となる。
【0095】
このように、本システムにより、外科医は、トロカールを介してエンドエフェクタ26を挿入することによって、エンドエフェクタ26およびシャフト24に対する切開点位置を較正することを可能にする。エンドエフェクタ26がトロカールの回転点に位置するとき、外科医は較正ボタンを押す。ロボットアーム100のセグメントおよびジョイントの寸法およびセグメント間の角度は既知であり、また、装置10の寸法およびインターフェース22のピッチセンサーおよびヨーセンサーによって測定されるその向きが既知であるので、切開点の正確な位置を計算することができ、また支点を決定することができる。これにより、システム70の制御回路は、安全に装置10を切開部位に対して配向およびスライドさせることが可能となる。較正処理が誤って実行され、正確でなかった場合、(受動カプラとして機能する)インターフェース22は安全機構としても機能し、不正確な較正処理を補償してもよい。
【0096】
装置10がロボットアーム100によって動かされるのに伴って、最初の較正に続いて、再較正を連続的に実行することができる。システム70の制御回路が計算された経路で装置10を動かすと、制御回路はユーザインターフェース22の角度も計算する。また、連続的なオンライン較正が実行されてもよい。すなわち、パスが実行されると、制御回路は、ユーザインターフェース22のピッチセンサーおよびヨーセンサーからの信号を読み込み、それらを予め計算された値と比較するようにしてもよい。誤差が所望の値より大きい場合、制御システムは、誤差を許容可能な値まで低減する切開点の新しい値を計算する。
【0097】
同様の補正プロセスが、シャフトを切開部位から出し入れするときに実行されてもよい。
【0098】
装置10に慣性測定ユニット(IMU)部材を追加することで、位置決め誤差を低減し、装置10を円滑に移動させることができる。
【0099】
また、ユーザインターフェース22は、ユーザインターフェース22から取得された信号をセンサーの予め計算された値と比較することによって、安全機構として機能しうる。例えば、エンドエフェクタが体腔内の組織と予期せず衝突した場合、ロボットアームは、その所定の計算経路を継続するが、ユーザインターフェース22からの測定信号は、これらの予め計算された値と一致しなくなる。制御システムは、測定値と予め計算された値との間の増加していく差を、動きの停止または減速につながる許容できない閾値に達するまで、計算および監視する。
【0100】
上記と同様にシステム70の安全性を高めるために、装置10に接続されたIMUから読み込んだ値とインターフェース22のセンサーからの信号との組み合わせを用いることもできる。
【0101】
2つ以上の(それぞれ専用装置10に取り付けられる)ロボットアーム100を使用する場合、第2較正処理は、各アーム100の較正の後に実行され得る。第2較正処理は、ロボットアーム100間の衝突、または装置10のシャフト間の衝突を回避するために中央制御システムによって使用される。
【0102】
第2較正処理を実行するために、ユーザは、2つの装置10のエンドエフェクタ26を互いに取り付けたうえで、制御部200上の第2較正ボタンを押すことができる。両方のロボットアーム100の寸法は既知であるので、他方のロボットアーム100に対する各ロボットアーム100の原点を計算することができる。第2較正処理により、制御システムが各ロボットシステムの各リンク、装置、およびシャフトの空間位置を計算し、それらの間の衝突を防止することができる。ただし、ユーザは、逆の順序で2つの較正処理を実行してもよい。すなわち、ロボットアーム間の較正および切開点の較正をこの順序で実行してもよい。さらに、ロボットアーム間の較正は、患者の体外または体内で行われてもよく、また、必要に応じていつでも繰り返されてもよい。
【0103】
インターフェース200は、有線接続、または無線接続(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、または専用RFプロトコル)によって、装置10およびロボットアーム100と通信してもよい。
【0104】
インターフェース200は、対象または外科医(例えば、ベルト)に接続可能なベース202を有する。ベース202は、ジンバルジョイント206を介して第1アーム204に接続される。第2アーム208は、第1アーム204に伸縮自在に接続され、そこから前進/後退および回転することができる。第2アーム208の先端部は、第2アーム208に対するフィンガーインターフェース210の枢動を可能にするヒンジ211を介して、フィンガーインターフェース210に接続される。フィンガーインターフェース210は、アーム204に対するアーム208の回転によりエフェクタ端部(例えば、把持部)を回転させ、パドル213の開閉機能により把持部の顎部を開閉し、ヒンジ211での移動によりシャフト14を撓ませるように使用され得る。
【0105】
インターフェース200は、(ジンバルジョイント206を介した)ベース202に対する第1アーム204の移動により、ロボットアーム100の移動に対する制御を行う。
図7B~Dに示されるように、アーム204のベース202に対する左への傾斜は、(ロボットアーム100によって作動されるように)装置10の右への傾斜となり、アーム204のベース202に対する右への傾斜は、(ロボットアーム100によって作動されるように)装置10の左への傾斜となる。同様に、アーム204のベース202に対する上方への傾斜は、(ロボットアーム100によって作動されるように)装置10の後方への傾斜となり、アーム204のベース202に対する下方への傾斜は、(ロボットアーム100によって作動されるように)装置10の前方への傾斜となる。このような装置10の位置制御は、外科医の手と同じ方向に手術装置のエンドエフェクタが移動する、開腹手順で使用される手術装置の制御と同様である。
【0106】
図11は、腹腔鏡手術において3つのシステム70を使用する一般的な構成を示す。
【0107】
外科医3がシステム70を使用することを決定すると、ロボットアーム10a~cは、カートを介して手術台70の隣に配置され、手術台7の側部に配置されたレール71にクランプされ得る。次に、手持ち式装置10a、bをロボットアーム100a、bに接続し、腹腔鏡カメラをロボットアーム100cに接続することができる。
【0108】
装置10a、bはそれぞれ切開部60a、bから挿入し、腹腔鏡11は切開部60cから挿入する。
【0109】
上記のように、装置10a、bおよび腹腔鏡11に対して2ステップの較正処理が実行される。外科手術を実行するために、外科医3は、遠隔ユーザインターフェース200a、bのフィンガーインターフェースを保持して、両方の手持ち式装置10a、bを同時に制御する。腹腔鏡カメラを位置決めするために、外科医3は、インターフェース200aまたは200bのうちの1つからカメラ制御に制御を切り替える。また、腹腔鏡カメラは追加の遠隔ユーザインターフェース200を使用する補助者(図示せず)によって制御されてもよい。処置における任意の時点で、外科医およびスタッフは、装置10a~cのうちの1つを切り離すことができ、外科医がロボットアーム100a~cに接続された装置を遠隔制御する間に、別の外科医または助手は、装置10a~cのうちの1つ以上を手動で操作することができる。ロボットアーム100a~cは、(上述のように)安全プロトコルを有するので、遠隔制御されるロボットアームの近くで働く補助者にとって潜在的なリスクはない。加えて、ロボットアーム100a~cのいずれも、手術室に存在しない外科医(例えば、遠隔操作)によって操作することができる。手順が継続するにつれて、手持ち式装置は、ロボットアームに再接続されてもよく、構成変更が導入されなかった場合、追加の較正は必要ない。
【0110】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、±10%を意味する。
【0111】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴も、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、別個に、または任意の適切な下位組み合わせで提供されてもよい。
【0112】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明したが、多くの代替案、変更例および変形例が当業者に明らかであることは明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲内に入る、そのような代替案、修正および変形をすべて包含することを意図する。
【0113】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれることが参照される際に個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個別に記載されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることが出願人の意図である。さらに、本出願における参考文献の引用または特定は、かかる参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈してはならない。セクションの見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の優先権文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】