(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】3次元物体を生産するための装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/214 20170101AFI20240226BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240226BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240226BHJP
【FI】
B29C64/214
B29C64/124
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555832
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022056522
(87)【国際公開番号】W WO2022194769
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521417750
【氏名又は名称】スペクトロプラスト アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファノフ、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シャフナー、マヌエル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL74
(57)【要約】
本発明は、3次元物体を製造するための装置(1)に関する。この装置(1)は、電磁放射線のエネルギー源と、閉じた底部(12)と、側壁(14)とを有する頂部が開放した容器(10)であって、閉じた底部(12)は、少なくとも部分的に、電磁放射線について透過性であり、頂部が開放した容器(10)は、エネルギー源によって供給される電磁放射線に反応して固化する固化可能なペーストを含むように構成される、頂部が開放した容器と、鉛直方向に移動するように構成され、容器(10)の鉛直方向で上方に配置されたビルドプラットフォーム(20)であって、ビルドプラットフォーム(20)は、物体構築プロセスの間に、鉛直方向で、容器(10)の閉じた底部(12)から離れるように移動する、ビルドプラットフォーム(20)と、少なくとも容器(10)の閉じた底部(12)を横切る部分において、固化可能なペーストを均一に広げ、固化可能なペーストの層の厚さを画定するように、ペーストを広げるプロセスの間に、第1の方向に沿って水平に移動するように構成されたペーストスプレッダーアセンブリ(100)とを備えている。本発明によると、ペーストスプレッダーアセンブリ(100)は、容器の底部に面する少なくとも1つの平面状ファセット(112)を有する、少なくとも1つのブレード(110)を備えている。装置(1)は、少なくとも1つのブレード(110)が、第1の方向に垂直な水平軸(104)まわりに、非作動位置から作動位置まで回転可能であり、少なくとも1つのブレード(110)の作動位置における少なくとも1つの平面状ファセットのうちの、1つの平面状ファセットは、容器(10)の閉じた底部(12)に対して角度γをなし、ペーストを広げるプロセスの間に、ペーストと少なくとも部分的に接触し、角度γは、0°≦γ≦45°の範囲にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体を製造するための装置(1)であって、前記装置(1)が、
電磁放射線のエネルギー源と、
閉じた底部(12)と、側壁(14)とを有する頂部が開放した容器(10)であって、前記閉じた底部(12)は、少なくとも部分的に、電磁放射線について透過性であり、頂部が開放した前記容器(10)は、前記エネルギー源によって供給される前記電磁放射線に反応して固化する固化可能なペーストを含むように構成される、頂部が開放した容器(10)と、
鉛直方向に移動するように構成され、前記容器(10)の鉛直方向で上方に配置されたビルドプラットフォーム(20)であって、前記ビルドプラットフォーム(20)は、物体構築プロセスの間に、前記鉛直方向で、前記容器(10)の前記閉じた底部(12)から離れるように移動する、ビルドプラットフォーム(20)と、
少なくとも前記容器(10)の前記閉じた底部(12)を横切る部分において、前記固化可能なペーストを均一に広げ、前記固化可能なペーストの層の厚さを画定するように、ペーストを広げるプロセスの間に、第1の方向に沿って水平に移動するように構成されたペーストスプレッダーアセンブリ(100)と
を備え、
前記ペーストスプレッダーアセンブリ(100)は、前記容器の前記底部に面する少なくとも1つの平面状ファセット(112)を有する、少なくとも1つのブレード(110)を備え、
前記少なくとも1つのブレード(110)は、前記第1の方向に垂直な水平軸(104)まわりに、非作動位置から作動位置まで回転可能であり、前記少なくとも1つのブレード(110)の作動位置における少なくとも1つの平面状ファセットのうちの、1つの平面状ファセット(112)は、前記容器(10)の前記閉じた底部(12)に対して角度γをなし、前記ペーストを広げるプロセスの間に、前記ペーストと少なくとも部分的に接触し、前記角度γは、0°≦γ≦45°の範囲にある、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのブレード(110)は、前記少なくとも1つの平面状ファセット(112)が設けられる自由端(110a)を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つのブレード(410)の自由端(410a)に、複数の平面状ファセット(412a、412b、412c)が設けられ、前記作動位置において、前記複数の平面状ファセット(412a、412b、412c)のうちの1つが、前記容器(10)の前記閉じた底部(12)に対して角度γをなす、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の平面状ファセット(412a、412b、412c)が、互いに対して角度が付けられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の平面状ファセット(412a、412b、412c)のうちの、2つの隣接する平面状ファセット(410a、410b)の間の遷移領域(415)が曲線状である、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのブレード(110)が、前記水平軸(104)まわりに連続的に回転可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記ペーストスプレッダーアセンブリ(100)が、前記第1の方向に離間した2つのブレード(110)を含み、ブレード(110)のそれぞれが、少なくとも1つの平面状ファセット(112)を有する自由端(110a)を有している、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記2つのブレード(110)は、前記第1の方向に直交する鉛直延在面に関して対称である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記2つのブレード(110)の間に、空洞(114)が形成されている、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記空洞(114)が凹部である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の方向に平行な鉛直断面において、前記平面状ファセット(112)の先行エッジ(113a)と交わる、前記空洞(114)の地点に接する接線は、前記平面状ファセット(112)と、90°未満の角度βを囲む、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記2つのブレード(110)は、前記2つのブレード(110)の自由端(110a)とは反対側のもう1つの端部(110b)において接続されている、請求項7~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記ペーストスプレッダーアセンブリ(100)が剛性材料から形成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記角度γが、0°≦γ≦20°の範囲にある、請求項1~13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元物体を生産するための装置、より詳細には、固化可能なペーストから3次元物体を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形法とも呼ばれる3Dプリンターは、高精度かつ高確度に3次元物体の製造を可能にする。これら物体は、最終的な3次元物体の連続する断面に対応する複数の層へと固化可能な材料が追加される、層状の方法で構築される。
【0003】
SLA(ステレオリソグラフィー)プリントおよびDLP(デジタルライトプロセッシング)プリントを含む様々なタイプの3Dプリントプロセスが、利用可能である。両方とも、エラストマー樹脂などの感光性材料を硬化させるために、光、一般的には、スペクトルのUV領域の光の使用に依存する。
【0004】
SLAプリントでは、(ビルドプラットフォームとも呼ばれる)オブジェクトプラットフォームが、一般的に、液体樹脂の浴槽を含む容器の中に浸される。レーザーなどの光源の光が、樹脂の所定の領域に当たると、光重合を引き起こし、所定のパターン(当該パターンは、コンピュータで読み取り可能な3Dデータによって定められる)で樹脂層を横切って当該レーザー光を掃引することによって、所望の形状の固化した樹脂層が得られる。一般的には、レーザーは、樹脂に直接当たるのではなく、代わりに、レーザービームを所望の点に向ける、高速で動作するミラーによって偏向される。SLAプリントとは対照的に、DLPプリントは、単一のスポットに限定されることはなく、その代わりに、全体の層が一度に印刷される。これは、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を含むDLPプロジェクタを使用することによって達成される。光源、一般的にはLEDによって生成された光は、DMDによって選択的に反射され、樹脂層へと投影される。
【0005】
一般的に、物体の構築プロセスの間に光が伝搬する方向に応じて、「従来の」(「トップダウン」)プロセスと、「逆」(「ボトムアップ」)プロセスとに区別される。逆プロセスにおいて、オブジェクトプラットフォームは、上方へと、タンクの底部から離れる方向に移動する。オブジェクトプラットフォームと容器の底部との間の距離が、1つの層の厚さを画定する。その後、オブジェクトプラットフォームと容器の底部との間の樹脂が、光重合される。次のステップにおいて、光重合された層構造を保持するオブジェクトプラットフォームは、少なくとももう1つの層の高さの分だけ、上方へと移動し、次の層が光重合されることを可能にする。その結果、下向きの方向で連続的にプリントされる物体の複数の層のため、プリントされた物体は、完成物体に対して上下逆に配向される。従来のプロセスでは、ビルドプラットフォームは、ビルドプラットフォームの頂部上に薄い樹脂層が残るのに十分な量だけ、樹脂槽の中へと下方に移動する。そして、樹脂層が硬化される。硬化ステップの後、ビルドプラットフォームは、再び下方に移動し、その結果、次の層が、ビルドプラットフォームの頂部上に確立され、その後硬化される。結果として、完成した物体は、最上層が固化したものの最後となって、層ごとに作り上げられる。
【0006】
最近、3Dプリントプロセスを使用してシリコンなどの固化可能なペーストから3次元物体を製造するという要求がある。3Dプリントされたシリコン部品は、産業分野および医療分野において広く使用され、もしそれらが、射出成形の代わりにSLAプリントまたはDLPプリントによって製造されれば、大幅なコストと時間の節約を得ることができる。SLAプリントまたはDLPプリントにおいて高粘度のシリコン、または一般的に高粘度の材料を使用するとき、高粘度の材料が、重力によって平らにならないという問題が生じる。しかし、高粘度の材料の平坦かつ滑らかな表面は、3Dプリントプロセスとって最も重要である。この問題に取り組むために、高粘度の材料を平らにするために、スプレッダーが、光効果処理の前に使用される。
【0007】
米国特許出願公開第2015/0224710号明細書には、固化可能なペーストから3次元物体を作製するための装置が開示されている。均一な層の厚さを確保するために、ペースト容器の底部を横切るように動くスプレッダーが使用される。スプレッダーは、鋸歯状のブレードリップを有するブレードを含む。固化可能なペーストがスプレッダーと容器の側壁のうちの1つとの間で捕捉されることを避けるために、スプレッダーは、スプレッダーの移動方向に沿って互いに離れて配置された2つのブレードを含む。
【0008】
中国実用新案第209718634号明細書は、固化可能なペーストから3次元物体を作製するための装置に関する。それは、テーパー状のブレード形状の回転不可のスプレッダーを含む。
【0009】
上記のことを考慮して、本発明の目的は、高粘度の固化可能なペーストを使用する先行技術のSLAプリントプロセスまたはDLPプリントプロセスに関連する問題を軽減することであり、さらに、その質を改善することである。特に、本発明の目的は、広げられた固化可能なペーストにおいて光効果ステップの前に欠乏領域が生じるのを回避することである。
【発明の概要】
【0010】
本目的は、独立請求項1の主題によって達成される。本発明の選択的なまたは好適な特徴が、従属請求項において示される。
【0011】
本発明によれば、3次元物体を製造するための装置が提供される。この装置は、電磁放射線のエネルギー源と、閉じた底部と、側壁とを有する頂部が開放した容器であって、閉じた底部は、少なくとも部分的に、電磁放射線について透過性であり、頂部が開放した容器は、エネルギー源によって供給される電磁放射線に反応して固化する固化可能なペーストを含むように構成される、頂部が開放した容器と、鉛直方向に移動するように構成され、容器の鉛直方向で上方に配置されたビルドプラットフォームであって、ビルドプラットフォームは、物体構築プロセスの間に、鉛直方向で、容器の閉じた底部から離れるように移動する、ビルドプラットフォームと、少なくとも容器の閉じた底部を横切る部分において、固化可能なペーストを均一に広げ、固化可能なペーストの層の厚さを画定するように、ペーストを広げるプロセスの間に、第1の方向に沿って水平に移動するように構成されたペーストスプレッダーアセンブリとを備えている。ペーストスプレッダーアセンブリは、容器の底部に面する少なくとも1つの平面状ファセットを有する、少なくとも1つのブレードを備え、少なくとも1つのブレードは、第1の方向に垂直な水平軸まわりに、非作動位置から作動位置まで回転可能であり、少なくとも1つのブレードの作動位置における少なくとも1つの平面状ファセットのうちの、1つの平面状ファセットは、容器の閉じた底部に対して角度γをなし、ペーストを広げるプロセスの間に、ペーストと少なくとも部分的に接触し、角度γは、0°≦γ≦45°の範囲にある。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つのブレードは、少なくとも1つの平面状ファセットが設けられる自由端を有している。
【0013】
より好ましくは、少なくとも1つのブレードの自由端に、複数の平面状ファセットが設けられ、作動位置において、複数の平面状ファセットのうちの1つが、容器の閉じた底部に対して角度γをなす。
【0014】
さらに好ましくは、複数の平面状ファセットが、互いに対して角度が付けられている。
【0015】
複数の平面状ファセットのうちの、2つの隣接する平面状ファセットの間の遷移領域が曲線状である場合、有利である。
【0016】
さらなるオプションとして、少なくとも1つのブレードが、水平軸まわりに連続的に回転可能である。
【0017】
本発明の別の好適実施形態によれば、ペーストスプレッダーアセンブリが、第1の方向に離間した2つのブレードを含み、ブレードのそれぞれが、少なくとも1つの平面状ファセットを有する自由端を有している。
【0018】
任意で、2つのブレードは、第1の方向に直交する鉛直延在面に関して対称である。
【0019】
2つのブレードの間に、空洞が形成されていることが、好ましい。
【0020】
空洞が凹部であれば、より好ましい。
【0021】
第1の方向に平行な鉛直断面において、平面状ファセットの先行エッジと交わる、空洞の地点に接する接線は、平面状ファセットと、90°未満の角度βを囲めば、さらに好ましい。
【0022】
本発明の別の好適な実施形態によれば、2つのブレードは、2つのブレードの自由端とは反対側のもう1つの端部において接続されている。
【0023】
ペーストスプレッダーアセンブリが、剛性材料から形成されていれば、有利である。
【0024】
最も好ましくは、角度γは、0°≦γ≦20°の範囲にある。
【0025】
本発明は、実施例として、添付の図面を参照して今から説明されるであろう。これら図面は、本発明の範囲を限定することを意図したものではないが、むしろ、その好適実施形態を表す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固化可能なペーストを用いた3次元物体を製造するための装置の斜視図を示す。
【
図2】
図1に示された装置に使用されるスプレッダーアセンブリの斜視図を示す。
【
図3】
図2に示されたスプレッダーアセンブリのブレード構成の断面図を示す。
【
図4】本発明の別の実施形態によるスプレッダーアセンブリのブレード構成を第1の非作動位置で示す垂直断面図である。
【
図5】例示的な第2の作動位置において
図4のブレード構成を示す。
【
図6】第1の非作動位置における本発明のさらなる実施形態に係るスプレッダーアセンブリのブレード構成の断面図を示す。
【
図7】第1の非作動位置における本発明のさらに別の実施形態に係るスプレッダーアセンブリのブレード構成の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、固化可能なペーストを用いた任意の3Dプリントプロセスに一般的に利用可能である。具体的には、本発明は、SLAプリント、DLPプリント、およびLCDプリントプロセス、あるいは、予め堆積させた材料層またはその部分の固化を必要とする任意の他のプロセスに、特に適している。
【0028】
本明細書において記載される固化可能なペーストは、重合成分および非重合成分を含み得る。好ましくは、固化可能なペーストは、シリコンなどのエラストマーペーストである。固化可能なペーストは、好ましくは、高粘度を有し、その粘度は、好ましくは、10~1000Pa・sの範囲にあり、より好ましくは、50~500Pa・sの範囲にあり、さらに好ましくは、100~300Pa・sの範囲にあり、最も好ましくは、150~200Pa・sの範囲にある。
【0029】
図1は、固化可能なペーストから3次元物体を製造するために使用される装置1の斜視図を示す。
図1において、デカルト座標系も示されている。x方向が、長さ方向を示し、y方向が、幅方向を示し、z方向が、高さ方向を示し、x-y平面が、水平面を表し、z方向が垂直方向を表す。
【0030】
装置1は、ベース部2および頂部3を備えるハウジングアセンブリを含む。頂部3は、ベース部2の前部に対してオフセットしているが、好ましくは、その後部と同一平面にある。装置1がSLAの3Dプリントに使用されるか、DLPの3Dプリントに使用されるか、あるいはLCDの3Dプリントに使用されるかにかかわらず、全ての光学、機械装置、プロジェクタ、などが、好ましくは、ベース部2および頂部3の内部の中に収容され、そのため、
図1には示されない。
【0031】
ベース部2の上面は、固化可能なペーストを受容しかつ収容するように構成された容器10を支持する。容器10は、開放した頂部と、閉じた底部12と、閉じた底部12の周囲のまわりにおいて連続した側壁14と、を有する。固化可能なペーストを固化するまたは光重合する(光硬化する)目的のために、閉じた底部12は、固化プロセスのために使用される光または電磁放射線を透過させる透過窓16を含む。
【0032】
容器10は、容器10の両側に配置された2つのホルダー8によって、ベース部2の上面に固定される。これらホルダー8は、好ましくはナットおよびボルトなどの機械的な留め具によって、ベース部2に固定される。ホルダー8は、取り外し可能に容器10をベース部2に強固に取り付けるという目的を果たす。
【0033】
製造すべき3次元物体のための基板(ホルダー)として役立つビルドプラットフォームまたはオブジェクトプラットフォーム20が、容器10の鉛直方向上方に配置される。ビルドプラットフォーム20は、2つのキャリッジアーム22を含む垂直キャリッジに取り付けられる。2つのキャリッジアーム22は、水平方向でx方向に離間している。これらアーム22は、長手方向スロット9の中へと延在する。長手方向スロット9は、鉛直方向に延在し、頂部3の前部に設けられる。これらアーム22は、必要に応じてビルドプラットフォーム20を鉛直方向に上下に移動させるために、機械的駆動装置(図示せず)と協働する。
【0034】
図2を参照してより詳細に説明されるスプレッダーアセンブリ100は、水平方向に、好ましくは、x方向に、即ち、鉛直方向であるz方向に対応するビルド軸に垂直な方向に移動可能である。スプレッダーアセンブリ10は、ベース部2の内部に位置する機械的駆動装置(図示せず)と協働する。スプレッダーアセンブリ10の動作長さは、頂部2の上面において形成されたスロット6の長さによって制限される。スロット6は、好ましくはx方向に延在する。
【0035】
図2は、スプレッダーアセンブリ100を詳細に示す。スプレッダーアセンブリ100は、2つの鉛直方向に延びるフレーム部材2を備える。スプレッダーアセンブリ100は、
図3においてx方向に平行な鉛直断面で詳細に示される、ブレード構造またはブレード構成108をさらに含む。ブレード構造108は、2つのフレーム部材102によって回転可能に支持される。それは、好ましくは連続的な方法で、好ましくはy方向に延在する水平軸104のまわりに回転可能である。電気モータ106、好ましくは、サーボモータが、時計方向または半時計方向のいずれかにブレード構造108を回転させるために使用される。軸104のまわりにブレード構造108を回転させるための他の手段を使用してもよいことを特に言及することは価値がある。
【0036】
閉じた底部12が水平x-y平面に関して所定の角度をなして配置されるように、容器10およびビルドプラットフォームまたはオブジェクトプラットフォーム20は、傾斜させてもよいことを特に言及することは価値がある。その結果として、スプレッダーアセンブリの動作経路、特に、ブレード構造の動作経路は、依然として水平方向に沿うが、鉛直方向成分を有する。加えて、ビルドプラットフォーム20は、厳密に鉛直の軌道、即ち、z方向に沿う軌道に沿って移動するのではなく、代わりに、x-z平面において軸外の直線状の経路に沿って移動する。つまり、ビルドプラットフォーム20の移動経路は、依然として鉛直方向であるが、水平方向成分も有する。
【0037】
参照符号108、208、308、408によって示されるブレード構造の異なる実施形態は、
図3~
図7を参照して、以下に記載される。ブレード構造108、208、308、408の異なる回転位置は、第1の非作動位置および第2の作動位置と呼ばれ、当該作動位置は、固化可能なペーストを広げるためにブレード構造が容器10を横切って移動するブレード構造108、208、308、408のその回転位置である。もちろん、異なる第1の非作動位置が存在し得る一方で、ブレード構造108、208、308、408は、容器10の閉じた底部12に対する、ブレード構造108、208、308、408の特定の側面(平面状ファセット)の角度方向に応じて、異なる第2の作動位置へと回転することも可能であり、当該特定の側面は、容器10の閉じた底部12を横切って固化可能なペーストを広げるために固化可能なペーストと接触するように意図されたその平面状ファセットである。
【0038】
ブレード構造108は、
図3において、x方向に平行な鉛直断面でより詳細に示されており、
図3は、ブレード構造108の第1の非作動位置を示している。ブレード構造108は、好ましくは、2つのブレード110を含む。ブレード110は、好ましくは、鉛直軸または鉛直面に関して対称に構成される。各ブレード110は、その下部の自由端110aに、容器10の閉じた底部12、したがって、容器10の内部の固化可能ペーストに向けて向かうか、または、これらに面する平面状ファセット112を有する。自由端110aとは反対側の端部110bにおいて、2つのブレード110が、ブリッジ部材110cによって接続される。
【0039】
平面状ファセット112のx方向の長さは、好ましくは、0.1~20mmまでの範囲にあり、好ましくは、5~10mmまでの範囲にあり、より好ましくは、7~9mmまでの範囲にある。平面状ファセット112は、好ましくは、ブレード構造108の幅に対応する(y方向の)幅を有する。追加または代替的に、平面状ファセット112は、好ましくは、透過窓16の幅、または少なくともプリントすべき3次元物体の幅に少なくとも対応する(y方向の)幅を有する。
【0040】
ブレード構造108の第1の非作動位置において、平面状ファセット112のそれぞれは、水平なx軸に対して角度αだけ上方に傾斜している。この角度αは、好ましくは、0°<α≦90°の範囲にあり、より好ましくは、0°<α≦45°の範囲にある。2つの平面状ファセットの傾斜角度は、好ましくは同じでありかつ互いに対して相補的である、即ち、一方の平面状ファセット112が、x軸に対して正の角度+αを持ち、一方では、他方の平面状ファセット112は、x軸に対して負の角度-αを持つ。ブレード構造108の例示的な第2の作動位置において、スプレッダーアセンブリ100の移動方向(+/-x方向)に応じて、固化可能なペーストを広げるのに使用される平面状ファセット112のうちの1つは、好ましくは、容器10の閉じた底部12に平行である。しかし、ブレード構造108の他の第2の作動位置では、固化可能なペーストを広げるのに使用される平面状ファセット112のうちの1つは、容器10の閉じた底部12に対して角度が付けられていてもよく、好ましくは、角度αに等しいかまたは角度αよりも小さい角度γが、付けられてもよい。角度γは、好ましくは、0°≦γ≦45°の範囲にあり、より好ましくは、0°≦γ≦20°の範囲にある。角度γは、固化可能なペーストを広げるために使用される平面状ファセットと、容器10の閉じた底部12と、の間の角度として定義される。
【0041】
加えて、再度、スプレッダーアセンブリ100の移動方向(+/-x方向)に応じて、各平面状ファセット112は、先行エッジ113aおよび後方エッジ113bを有する。例えば、スプレッダーアセンブリ100が、+x方向に移動する場合、
図3における左側のブレード110の平面状ファセット112が、先行エッジ113aおよび後方エッジ113bを有する。逆に、スプレッダーアセンブリ100が、-x方向に移動する場合、
図3における右側のブレード110の平面状ファセット112が、先行エッジ113aおよび後方エッジ113bを有する。
【0042】
2つのブレード110の間には、空洞114が設けられている。空洞114は、好ましくは凹形状であるが、x-z断面で見たときに、楕円形状、多角形状、円弧形状、曲線形状、または単に長方形状などの他の形状を有してもよい。x軸に平行な鉛直断面において、平面ファセット112の先行エッジ113aと交わる空洞114の最下点に接する接線は、好ましくは、平面状ファセット112と、90°未満の角度βを囲むことを特に言及することは重要である。
【0043】
図4は、第2の非作動位置における本発明の別の実施形態に係るスプレッドアセンブリのブレード構造208を示す。ブレード構造208は、2つのブレード210の間の空洞214が、
図3のブレード構造108の空洞114とは異なる形状または幾何学を有するという点で、
図3に示されるブレード構造108と相違する。
図4においては、空洞208は、曲線的である。
図3の実施形態にあるように、x軸に平行な鉛直断面において、平面状ファセット212の先行エッジ213aと交わる空洞214の最下点に接する接線は、平面状ファセット212と、90°未満の角度βを囲む。
【0044】
図5は、容器10の閉じた底部12を示す水平な直線とともに、例示的な第2の作動位置における
図4のブレード構造208を示す。
図5において、ブレード構造208は、+x方向に移動すると理解され、その結果、先行エッジ213aは、後方エッジ213bよりも前に位置している。角度βも
図5に示される。ブレード構造208のこの例示的な第2の作動位置における平面状ファセット208は、容器10の閉じた底部12に平行である。
【0045】
図6は、第1の非作動位置における本発明のさらに別の実施形態に係るブレード構造308を示す。2つのブレード310の間の空洞314は、
図3のブレード構造108の空洞114とは異なる形状または幾何学を有するという点で、ブレード構造308は、
図3のブレード構造108と相違する。
図3と同様に、空洞308は、これもまた凹面である。しかし、空洞308の曲率半径は、
図3の空洞108の曲率半径よりも大きい。その結果として、
図5の実施形態における角度βは、
図3の実施形態における角度βよりも小さい。
【0046】
図7を参照して、本発明のさらに別の好ましい実施形態が示される。この実施形態によれば、ブレード構造408は、各ブレード410の自由端410aに、複数の平面状ファセット412a、412b、412cを備えていてもよい。複数の平面状ファセット412a、412b、412cは、互いに対して角度が付けられ、したがって、曲線的なペースト広げ表面を画定する。これらの角度は、2つの隣接する平面状ファセットの間において同じであってもよいし、あるいは、最も内側の平面状ファセット412aから最も外側の平面状ファセット412cに向かって増加(または減少)してもよい。
図7とは異なり、2つの隣接する平面状ファセット412aと412bとの間の遷移領域415は、好ましくは、丸みを帯びているかまたは曲線状であってもよい。
図3の実施形態と同様に、x軸に平行な鉛直断面において、平面状ファセット412a(複数の平面状ファセット412a、412b、412cの内の最も内側の平面状ファセット412a)の先行エッジ413aと交わる空洞414の最下点に接する接線は、最も内側の平面状ファセット412aと、90°未満の角度βを囲む。
【0047】
本明細書に記載されている本発明の全ての実施形態に関して、固化可能なペーストが、好ましくは閉じた底部の近くに容器の側壁のうちの1つに設けられたポート(図示せず)を通じて、容器の中に注入されたとき、固化可能なペーストは、その高い粘度により、重力それ自体によって流れない傾向にある。したがって、容器の閉じた底部では、固化可能なペーストがない欠乏領域が存在する場合がある。1つの平面状のファセットは、容器の閉じた底部に対して角度γだけ角度が付けられ、容器の閉じた底部から所定の距離だけ離間されるように、スプレッダーアセンブリ、特にブレード構造が、ブレード構造を回転させることによって、下げられて作動位置に位置される。そして、ブレード構造は、水平方向に、例えば、x方向に移動し、閉じた底部上、好ましくは、閉じた底部に設けられた透過窓上のみで、固化可能なペーストを均一に広げ、ある領域における過剰なペーストを除去し、あらゆる欠乏領域にペーストを充填する。
【0048】
ブレード構造が、好ましくは連続的に、回転可能であることによって、ブレード構造の各ブレードが一つのみの平面状ファセットを有する場合であっても、プリントの間に層の厚さを変えることを保証する。ブレードの回転位置を調整することによって、ブレード構造は、異なる作動位置をとることが可能であり、その結果、平面状ファセットの異なる部位(代替的には、複数の平面状ファセットのうちの1つの異なる部位、またはそれらのいくつかがブレード構造の自由端に設けられている場合は均一に異なる複数の平面状ファセット)が、ペーストを広げるプロセスの間にペーストと接触する。したがって、より速いがきめ細かさがより低い3Dプリント、またはより時間がかかるがきめ細かさがより高い3Dプリントのいずれかを達成するために、連続した複数の層の厚さを変えることができる。さらに、異なる広げ角度γを有する複数の作動位置によって、プリンターが異なるレオロジー的性質を有する様々な樹脂を塗るまたはプリントすることを可能にする。
【0049】
+x方向および-x方向のブレード構造の往復運動の間の各ターンの後に、角度γが変えられ、その結果、平面状ファセットが、全体のプリントプロセスの間に、容器の閉じた底部に対して、変化する角度γを有することも考えられる。
【0050】
各ブレードが、互いに対して角度が付けられた複数の平面状ファセットを有する場合、より広い範囲で異なる層の厚さを得ることができる。本発明では、層の厚さは、好ましくは、0.001~1mmまでの範囲にあり、さらにもっと好ましくは、0.01~1mmまでの範囲にある。
【0051】
さらに、ブレード構造は、ブレード構造がペースト注入ポートが位置する容器の側壁に対して配置できるようにして構成される。その後、固化可能なペーストは、容器の中に、およびブレード構造の空洞の中に注入される。したがって、空洞およびその体積は、容器の閉じた底部上のすべての欠乏領域を埋めるために、固化可能なペーストのための貯蔵槽の役割を果たす。
【0052】
角度γおよびまたは/空洞の幾何学形状、特に角度βは、ペーストの粘度に応じて選択できる。角度γおよび/または角度βを変えることによって、それぞれのブレードによってペーストに加わる力の垂直成分および水平成分をバランスさせることができる。例えば、小さな角度γおよび/または小さな角度βを選択することによって、この力の垂直方向に作用する成分を高めることができる。シアシニング性のペースト材料の文脈においては、これは、特に有利である。より小さな角度γおよび/より小さな角度βによって、シアシニング性のペースト材料にせん断力が加わり、ペーストを広げるステップの前にペーストの粘度を一時的に低下させる。したがって、当該広げプロセスを容易にする。
【0053】
一般的に、本発明に係るスプレッダーアセンブリの使用により、スプレッダーアセンブリを高速で動かすことができるため、ペーストを広げるプロセスに必要な時間が短くなる。このことは、より速くかつより経済的な3Dプリントプロセスをもたらす。
【国際調査報告】