(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】少なくとも1つの半導体モジュールを備えるパワーモジュール、及びパワーモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240226BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240226BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H05K7/20 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557223
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022053099
(87)【国際公開番号】W WO2022194452
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パブリチェク,ニコ
(72)【発明者】
【氏名】モーン,ファビアン
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB06
5E322DA04
5F136BA03
5F136CB06
5F136CB27
5F136DA27
5F136FA01
5F136FA51
(57)【要約】
本発明は、一体型冷却構造を伴う金属ベースプレート(108)を有する少なくとも1つの半導体モジュール(104)を備えるパワーモジュール(101)に関する。パワーモジュール(101)は、プラスチック材料から作られるとともに、少なくとも1つの半導体モジュール(104)とのフォームフィット接続を確立するように金属ベースプレート(108)の少なくとも一部分の周囲に成形される第1のハウジング部分(121)と、プラスチック材料から作られるとともに、少なくとも1つの半導体モジュール(104)の一体型冷却構造を冷却するためのクーラント(116)用のキャビティを形成するように第1のハウジング部分(121)に接合される第2のハウジング部分(122)とを更に備える。本開示は、更に、パワーモジュール(101)の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 一体型冷却構造を伴う金属ベースプレート(108)を有する少なくとも1つの半導体モジュール(104)と、
- プラスチック材料から作られるとともに、前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)とのフォームフィット接続を確立するように前記金属ベースプレート(108)の少なくとも一部分の周囲に成形される第1のハウジング部分(121)と、
- プラスチック材料から作られるとともに、前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)の前記一体型冷却構造を冷却するためのクーラント(116)用のキャビティを形成するように前記第1のハウジング部分(121)に接合される第2のハウジング部分(122)と、
を備えるパワーモジュール(101)。
【請求項2】
前記第1のハウジング部分(121)及び前記第2のハウジング部分(122)のうちの少なくとも一方が繊維強化ポリマー材料から作られる、請求項1に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項3】
前記第1のハウジング部分(121)及び前記第2のハウジング部分(122)は、プラスチック溶接接合、接着結合接合、及び加熱材料融合接合のうちの少なくとも1つによって接合される、請求項1又は2に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項4】
前記第1のハウジング部分(121)及び前記第2のハウジング部分(122)のうちの少なくとも一方は、ガラス繊維で強化されたポリフェニレンサルファイドすなわちPPS、ポリカーボネートすなわちPC、及びアクリロニトリルブタジエンスチレンすなわちABSのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項5】
前記第1のハウジング部分(121)及び前記第2のハウジング部分(122)の少なくとも一方が積層炭素複合部品である、請求項1から3のいずれか一項に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項6】
前記第1のハウジング部分(121)及び前記第2のハウジング部分(122)の少なくとも一方が予め含浸された複合繊維を含む、請求項5に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)は、少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)と、前記少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)に接続される複数のリード(113)とを備え、前記複数のリード(113)が前記第1のハウジング部分(121)の前記プラスチック材料に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項8】
少なくとも1つの圧入端子(129)を更に備え、前記第1のハウジング部分(121)は、前記少なくとも1つの圧入端子(129)を支持するように構成される支持構造(128)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項9】
前記フォームフィット接続は、前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)の前記一体型冷却構造と前記第1のハウジング部分(121)との間に前記クーラント(116)のための封止を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項10】
- 前記第1のハウジング部分(121)の前記プラスチック材料に埋め込まれる前記金属ベースプレート(108)の表面エネルギーが45mN/mより大きい、及び
- 前記第1のハウジング部分(121)の前記プラスチック材料に埋め込まれる前記金属ベースプレート(108)の表面粗さが4μm~6μmである、
のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載のパワーモジュール(101)。
【請求項11】
パワーモジュール(101)を製造するための方法であって、
- 一体型冷却構造を伴う金属ベースプレート(108)を有する少なくとも1つの半導体モジュール(104)を第1のモールド内に配置するステップと、
- 前記第1のモールドを使用してプラスチック材料から第1のハウジング部分(121)を成形することによって、前記金属ベースプレート(108)の少なくとも一部分と前記第1のハウジング部分(121)の前記プラスチック材料との間にフォームフィット接続を確立するステップと、
- 第2のハウジング部分(122)をプラスチック材料から成形するステップと、
- 前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)の前記一体型冷却構造を冷却するためのクーラント(116)用のキャビティを形成するためにプラスチック接合法によって前記第1のハウジング部分(121)と前記第2のハウジング部分(122)とを接合するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)は、前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)が前記第1のモールド内に配置される前にモールド本体(110)内に埋め込まれる少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)は、前記第1のハウジング部分(121)の成形中に前記第1のハウジング部分(121)の前記プラスチック材料中に直接に埋め込まれる少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの半導体モジュール(104)は、前記少なくとも1つのパワー半導体ダイ(112)に電気的に接続される複数のリード(113)を更に備え、前記リード(113)は、前記第1のハウジング部分(121)の成形中に前記プラスチック材料中に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のハウジング部分(121)及び前記第2のハウジング部分(122)のうちの少なくとも一方の前記プラスチック材料は、予め含浸された複合繊維から作られるとともに、レジントランスファ成形又は平衡圧力流体成形に基づくオートクレーブ処理又は脱オートクレーブ複合材料処理によって形成される、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの半導体モジュールと、プラスチック材料から作られる第1のハウジング部分と、プラスチック材料から作られる第2のハウジング部分とを備えるパワーモジュールに関する。本発明は、更に、パワーモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第9,613,885号の文献は、複数の別個のモジュールとプラスチックハウジングとを含む冷却装置に関する。各モジュールは、モールドコンパウンドによって封入された半導体ダイと、半導体ダイに電気的に接続されてモールドコンパウンドから突出する複数のリードと、モールドコンパウンドによって少なくとも部分的に覆われない第1の冷却プレートとを含む。プラスチックハウジングは、各モジュールの外周を取り囲んで、マルチダイモジュールを形成する。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0316143号明細書の文献は、樹脂モールドにより形成される半導体ユニットを含む半導体モジュールに関する。樹脂モールドは、樹脂モールドに埋め込まれた半導体チップを冷却するためにクーラントが流れるクーラント経路を内部に形成している。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0232112号明細書の文献は、冷却フィンが設けられるフィン領域が一方の面に形成されるベースプレートと、ベースプレートの他方の面に配置されてスイッチングデバイスが設けられる基板と、内部空間に開口を有するケース部材とを含む半導体モジュールを開示し、開口は、該開口がベースプレートの一面よりも小さく且つフィン領域よりも大きくなるようにケース部材の一方の壁に形成される。
【0005】
欧州特許第1843392号は、流体容器を画定する壁を含むハウジングを有する電子機器アセンブリを提供する。1つ以上の熱伝導性ヒートシンクデバイスが、ハウジングにおける1つ以上の開口を貫通して延在し、液体クーラントと熱的に連通している。1つ以上の電子機器デバイスが、流体容器内の液体クーラントによって電子機器デバイスが冷却されるように、ヒートシンクデバイスの実装面に実装される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造及び組み立てが容易で、軽量であるとともに、パワー半導体ダイの効率的な冷却を可能にする、半導体モジュール用の改良された冷却アセンブリが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、一体型冷却構造を伴う金属ベースプレートを有する少なくとも1つの半導体モジュールを備えるパワーモジュールが提供される。パワーモジュールは、プラスチック材料から作られるとともに、少なくとも1つの半導体モジュールとのフォームフィット接続を確立するように金属ベースプレートの少なくとも一部分の周囲に成形される第1のハウジング部分と、プラスチック材料から作られるとともに、少なくとも1つの半導体モジュールの一体型冷却構造を冷却するためのクーラント用のキャビティを形成するように第1のハウジング部分に接合される第2のハウジング部分とを更に備える。上記のパワーモジュールでは、少なくとも1つの半導体モジュールをクーラントハウジングに取り付けて一体型冷却構造の周囲にクーラントの流れを案内するための更なる部品が必要ない。この結果、製造プロセスがより簡素化され、部品点数が削減される。更に、プラスチック材料の使用により、アセンブリが特に軽量になる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分のうちの少なくとも一方が繊維強化ポリマー材料から作られる。繊維強化ポリマー材料は、軽量と高強度とを兼ね備えており、水及び/又はエチレングリコール系クーラントを含む多くの用途分野に適している。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分は、プラスチック溶接接合、接着結合接合、及び加熱材料融合接合のうちの少なくとも1つによって接合される。そのような接合は、製造が容易であり、冷却アセンブリからのクーラントの漏れを防止する。同時に、2つの異なるハウジング部分から冷却アセンブリを製造することにより、比較的複雑なハウジング構造を提供することが可能になる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1のハウジング部分及び/又は第2のハウジング部分は、ガラス繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のうちの少なくとも1つを含む。上記の材料は、難燃性で、それぞれ最大200℃及び140℃の温度に耐えることができ、エチレングリコールなどの一般的なクーラントに適合する。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1のハウジング部分及び/又は第2のハウジング部分が積層炭素複合部品である。例えば、第1のハウジング部分及び/又は第2のハウジング部分は、予め含浸された複合繊維を含むことができる。そのような材料は、強力で軽量であり、脱オートクレーブ複合材料製造などの新規な加工技術を使用して製造され得る。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの半導体モジュールは、モールド本体によって封入される少なくとも1つのパワー半導体ダイを備える。これにより、開示されたパワーモジュールへの従来の半導体モジュールの組み込みが可能になる。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの半導体モジュールは、少なくとも1つのパワー半導体ダイと、少なくとも1つのパワー半導体ダイに接続される複数のリードとを備え、複数のリードが第1のハウジング部分のプラスチック材料に少なくとも部分的に埋め込まれる。少なくとも1つのパワー半導体ダイのリードを第1のハウジング部分に埋め込むことは、安定化に役立つと同時に、リードを互いに絶縁することに役立つ。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワーモジュールは、少なくとも1つの圧入端子を更に備え、第1のハウジング部分は、少なくとも1つの圧入端子を支持するように構成される支持構造を備える。そのような構成は、モジュールをプリント回路基板又は同様のキャリア基板に圧入する際に比較的大きな力を吸収するのに役立つ。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、フォームフィット接続は、少なくとも1つの半導体モジュールの一体型冷却構造と第1のハウジング部分との間にクーラントのための封止を形成する。この場合、クーラントのためのキャビティを封止するために更なるガスケットが必要ないため、パワーモジュールの部品点数が更に削減される。
【0016】
第2の態様によれば、パワーモジュールを製造するための方法が開示される。この方法は、
- 一体型冷却構造を伴う金属ベースプレートを有する少なくとも1つの半導体モジュールを第1のモールド内に配置するステップと、
- 第1のモールドを使用してプラスチック材料から第1のハウジング部分を成形することによって、金属ベースプレートの少なくとも一部分と第1のハウジング部分のプラスチック材料との間にフォームフィット接続を確立するステップと、
- 第2のハウジング部分をプラスチック材料から成形するステップと、
- 少なくとも1つの半導体モジュールの一体型冷却構造を冷却するためのクーラント用のキャビティを形成するためにプラスチック接合法によって第1及び第2のハウジング部分を接合するステップと、
を含む。
【0017】
以上のステップにより、金属インサート成形プロセスを使用した軽量パワーモジュールの製造が可能となる。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの半導体モジュールは、少なくとも1つの半導体モジュールが第1のモールド内に配置される前にモールド本体内に埋め込まれる少なくとも1つのパワー半導体ダイを備える。これにより、個別に製造された半導体モジュールをパワーモジュールに簡単に組み込むことができる。
【0019】
少なくとも1つの別の実施形態によれば、少なくとも1つの半導体モジュールは、第1のハウジング部分の成形中に第1のハウジング部分のプラスチック材料中に直接に埋め込まれる少なくとも1つのパワー半導体ダイを備える。この手法により、パワーモジュールの製造に必要な処理ステップの数が更に削減される。
【0020】
詳しく前述したように、本開示は幾つかの態様及びその実施形態を含む。態様のうちの1つ及びその実施形態に関して説明される全ての特徴は、それぞれの特徴が特定の態様との関連で明示的に言及されていなくても、他の態様に関しても本明細書に開示される。
【0021】
更なる理解をもたらすために、添付の図が含まれる。図では、同じ構造及び/又は機能の要素が同じ参照符号によって参照される場合がある。図に示される実施形態が例示的な表示であり、必ずしも原寸に比例して描かれているわけではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来のパワーモジュールの第1の断面を概略的に示す。
【
図2】
図1のパワーモジュールの第2の断面を概略的に示す。
【
図3】本開示の一実施形態に係るパワーモジュールの第1の断面を概略的に示す。
【
図4】
図3のパワーモジュールの第2の断面を概略的に示す。
【
図5】本開示の他の実施形態に係るパワーモジュールの断面を概略的に示す。
【
図6】本開示の他の実施形態に係るパワーモジュールの断面を概略的に示す。
【
図7】パワーモジュールを製造するための方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、様々な修正及び代替形態をとることができるが、その詳細は、例として図に示されており、詳細に説明される。しかしながら、本発明を説明した特定の実施形態に限定しようとするものではないことを理解されたい。逆に、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にある全ての修正、均等物、及び代替物を網羅することが意図される。
【0024】
本開示の理解を助けるために、最初に、アルミニウム合金冷却器アセンブリを有する従来のパワーモジュール1について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0025】
図1は、パワーモジュール1の第1の断面を概略的に示しており、クーラントは
図1に示される平面に出入りして流れる。
図2は、同じパワーモジュールの第2の垂直断面を示し、この場合、クーラントは、
図2の左側に示される第1のポート2から、
図2の右側に示される第2のポート3へ流れる。
【0026】
パワーモジュール1は、冷却アセンブリ5に取り付けられた2つの半導体モジュール4を備える。
図2から分かるように、半導体モジュール4は、それぞれの半導体モジュール4のベースプレート8を冷却アセンブリ5の上面9にクランプするクランプ6及び対応するネジ7によって冷却アセンブリ5に取り付けられる。
【0027】
ベースプレート8は、金属材料から作られ、モールド本体10に埋め込まれる。モールド本体10が基板11を埋め込み、基板11上には、パワーモジュール1のパワーコンポーネントを形成する実際の半導体ダイ12が形成される。幾つかの導電リード13が基板11の裏面に取り付けられる。リード13は、モールド本体10の外側の端子14まで延びる。
【0028】
冷却アセンブリ5は、エチレングリコールと水の混合物などのクーラント16を第1のポート2から第2のポート3へ又はその逆に案内するために使用される中空のアルミニウム合金本体部分15から作られる。第1のポート2から第2のポート3へ向かう途中、液体クーラント16は、ピンフィン17のアレイを通過する。ピンフィン17は、ベースプレート8から延びるとともに、アルミニウム合金本体部分15の対応する開口18を通じてクーラント16の流中へ突出し、したがって、クーラント16に晒されるベースプレート8の表面積を大幅に増大させる。動作時、半導体ダイ12によって放散される熱は、ベースプレート8及びピンフィン17のアレイを介してクーラント16に伝導され、これにより、一体型冷却構造を伴わない半導体パワーモジュールと比較して、半導体ダイ12から離れる熱の流れを大幅に改善する。
【0029】
自動車用途では、冷却アセンブリ5の第1のポート2及び第2のポート3を車両の一般的な冷却システムに接続することができる。半導体モジュール4と冷却アセンブリ5との間の液密封止を維持するために、Oリングガスケット19が、冷却アセンブリ5の開口18を取り囲むそれぞれの溝20内に配置される。
【0030】
上記のパワーモジュール1及び冷却アセンブリ5は、様々な用途シナリオで確実に動作する。しかしながら、アルミニウム合金などの金属材料から冷却アセンブリ5を形成すると、パワーモジュール1全体の重量が増加する。更に、そのような複数部品からなる部分的に金属のパワーモジュール1のアセンブリは、比較的高い製造コスト及び多くの部品点数をもたらす。したがって、そのようなパワーモジュールの重量及び部品数を更に減らす必要がある。
【0031】
図3及び
図4は、本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュール101の断面を概略的に示す。
図3及び
図4に示される断面は、
図1及び
図2にそれぞれ示されるパワーモジュール1の断面に対応する。説明を容易にするために、
図3及び
図4に示される実施形態を説明するために、対応する参照符号が使用される。
【0032】
説明される開示に係るパワーモジュール101は、2つの半導体モジュール104及び共通の冷却アセンブリ105を備える。勿論、更なる半導体モジュール104又は単一の半導体モジュール104のみを備えるパワーモジュールも想定し得る。パワーモジュール101は、例えば液冷インバータの一部であってもよい。前に詳述したように、各半導体モジュール104はモールド本体110を備え、1つ以上の半導体ダイ112を支持する基板111がモールド本体110中に埋め込まれる。例えば、半導体ダイ112は、インバータのパワースイッチング段のIGBT、ダイオード、又はMOSFETであってもよい。半導体ダイ112及び/又は基板111は、リード113によって端子114から接触され得る。また、モールド本体110は、半導体ダイ112と熱的に接続する金属ベースプレート108を部分的に収容する。金属ベースプレート108は、半導体ダイ112の反対側でベースプレート108から延びる幾つかのピンフィン117の形態の一体型冷却構造を有する。
【0033】
図1及び
図2に示される冷却アセンブリ5とは対照的に、
図3及び
図4に示される冷却アセンブリ105はプラスチック材料から作られる。例えば、ガラス繊維強化ポリマー、又は炭素繊維強化ポリマーなどのポリマー材料が使用されてもよい。冷却アセンブリ105を形成するために、2つの別個のハウジング部分、すなわち、第1のハウジング部分121及び第2のハウジング部分122が水密接合部123によって接合される。説明される実施形態において、第1のハウジング部分121及び第2のハウジング部分122は、成形によって形成されてキャビティを含み、キャビティを通じてクーラント116が第1のポート102から第2のポート103へ又はその逆に流れることができる。第1のハウジング部分121と第2のハウジング部分122とは共にプラスチック製の本体部分115を形成する。
【0034】
図1及び
図2に示されるアセンブリとは対照的に、2つの半導体モジュール104及び共通の冷却アセンブリ105は、2つの半導体モジュール104を第1のハウジング部分121のプラスチック材料中に部分的に埋め込むことによって完全に一体化される。これは、金属ベースプレート108を冷却アセンブリ105の第1のハウジング部分121に強固に組み込む金属インサート成形によって達成される。
【0035】
例えば、金属ベースプレート108を備える半導体モジュール104は、第1のハウジング部分121を成形するために使用される型に配置される。その後、プラスチック材料が、該プラスチック材料中にベースプレート108の一部が埋め込まれる状態で、その型内へ注入されて、第1のハウジング部分121を成形する。したがって、半導体モジュール104を冷却アセンブリ105に固定するための更なる部品やステップは必要ない。成形のために使用される型は、ピンフィン117が第1のハウジング部分121の対応する開口118を通じて突出するように形成される。
図3及び
図4から分かるように、ピンフィン117は、クーラント116用のキャビティ内に突出する。
【0036】
ガラス繊維強化ポリマーを標準的な射出成形プロセスによって製造できる。繊維は、一般に短く、特定の方向に配向されない。多くの異なる材料、例えばSolvay Ryton又はCovestro Bayblendが市販されている。そのような冷却アセンブリ105及び対応するパワーモジュール101は、幾つかの有利な特性を有する。例えば、強化ポリマー材料の使用により、冷却アセンブリ105の重量及びコストが比較的低くなる。同時に、多くの熱可塑性ポリマー材料、例えば、PPSを含むSolvay Ryton、又はPCとABSとのブレンドを含むCovestro Bayblendは、UL94 V-0可燃性要件に合格し、例えば自動車用パワーモジュールの分野で、要求に応じて、最大200℃及び140℃のそれぞれの耐熱性がある。更に、Rytonは、様々な水系のクーラーの冷却システムで使用される不凍成分であるエチレングリコールに適合するとも明記される。更に、ポリマー射出成形技術は、従来の金属機械加工又はダイカスト技術よりも柔軟であり、したがって、プラスチック本体部分115のより複雑な細部の製造が可能になる。
【0037】
或いは、射出成形プラスチック部品を使用する代わりに、予め含浸させた複合繊維、例えば炭素繊維から第1のハウジング部分121及び/又は第2のハウジング部分122を形成することも可能である。炭素繊維強化ポリマーは、一般に、製造コストが高く、高い強度対重量比が不可欠な航空宇宙機器やスポーツ用品で知られている。それらの繊維は、長く、織られており、及び/又は特定の方向に配向される。繊維は、例えばポリアクリロニトリル又はレーヨンのような合成ポリマーから作られる。特定の用途の場合、繊維にエポキシが予め含浸されたシートは、「プリプレグ」とも呼ばれ、そのような高性能部品は、加熱された圧力チャンバを伴うオートクレーブ内で製造され得る。最近では、オートクレーブを使用しない成形を使用して、炭素繊維の層状シートから部品を製造することができ、これは「脱オートクレーブ」製造と呼ばれる。レジントランスファ成形又は平衡圧力流体成形に基づく脱オートクレーブ複合材料製造により、比較的低コストでの大量生産が可能になる。
【0038】
2つのハウジング部分121、122間の水密接合部123は、例えば、超音波又はレーザベースのプラスチック溶接、適切な接着剤結合又は加熱材料融合接合を使用して形成することができ、2つのハウジング部分間の別個の封止の必要性を軽減する。
【0039】
前述したように、ベースプレート108の下面に形成されたピンフィン117のアレイは、冷却アセンブリ105の開口118を通じて突出する。説明された実施形態において、2つの半導体パワーモジュール104に対応する2つの開口118は、第1のハウジング部分121に形成される。
【0040】
図1及び
図2に示される実施形態とは異なり、冷却アセンブリ105の上面109に対する半導体モジュール104の取り付け及び封止は、第1のハウジング部分121の成形中に直接に達成される。したがって、
図3及び
図4に示される実施形態の場合、ネジ及びクランプ、Oリングや他の形態のガスケットなどの別個の取り付け部品又は封止部品は必要ない。説明した実施形態では、結合されることになる領域での表面エネルギーが45mN/mより大きくなる場合があり、また、それらの表面粗さRaは4μm~6μmとなり得る。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るパワーモジュール101の断面図を概略的に示す。ここでも、
図5に示される第2の実施形態に関しては対応する参照符号が使用される。したがって、簡潔にするために、対応する部分の説明はここでは繰り返さない。
【0042】
図5に示される実施形態において、第1のハウジング部分121のプラスチック材料は、金属ベースプレート108の平面を越えて垂直方向に延在する。特に、このプラスチック材料は、モールド本体110の左側も取り囲んで、左側に配置された1つ以上の圧入端子129を部分的に埋め込んで支持する支持構造128を形成する。これにより、少なくとも2つの更なる利点が得られる。
【0043】
第1に、個々のリード113と圧入端子114の間隔を厳密に制御することができ、これにより、隣接する電気接続間の任意の望ましくない電気的接続を回避することができる。この効果は、端子114につながるリード113の部分がプラスチック材料に完全に埋め込まれる場合に更に改善することができ、その結果、抵抗が高くなり、したがって個々のリード113間のクリープ電流が低下する。そのため、この実施形態は、必要な沿面距離を侵害することなく、電気的性能を向上させるために端子114又は129の間隔を狭くすることを可能にする。
【0044】
第2に、第1のハウジング部分121が機械的支持体としても機能することができる。これは、
図5に示されるように、プリント回路基板130の対応する開口への挿入中に圧入端子129を機械的に支持するのに特に有用である。
【0045】
図5に示される実施形態がパワーモジュール104の両端で異なるタイプの端子を使用するという事実に注目されたい。特に、圧入端子129は左側で使用され、一方、右側で使用される端子114は、平らな金属端子として構成される。勿論、全ての端子114を圧入端子として構成することも可能である。
【0046】
図6に示される更なる実施形態において、第1のハウジング部分121は、本質的に半導体モジュール104の全ての構成要素を埋め込む。すなわち、金属ベースプレート108、半導体基板111、半導体ダイ112、及びリード113は、第1のハウジング部分121のプラスチック材料中に直接埋め込まれる。したがって、半導体ダイ112を取り囲むモールド本体を準備するための別個の成形ステップは必要ない。
【0047】
図7は、ステップS1~S5を使用してパワーモジュール101を製造するための方法を概略的に示す。ステップS1~S5が異なる順序で及び/又は並行して実行されてもよいという事実に注目されたい。例えば、第2のハウジング部分122は、第1のハウジング部分121の前に形成されてもよい。
【0048】
任意選択的なステップS1では、半導体モジュール104が形成される。特に、1つ以上の半導体112を支持する基板111がベースプレート108に取り付けられ得る。基板111又は半導体ダイ112の個々の部分は、電気リード113に接続され得る。その後、これらの構成要素は、半導体モジュール104の電気的絶縁及び機械的安定性のために、別個のモールド本体110によって封入され得る。しかしながら、詳しく前述したように、ステップS3中に、半導体モジュール104の個々の部品をプラスチック材料中に直接埋め込むこともできる。
【0049】
ステップS2では、金属ベースプレートを伴う少なくとも1つの半導体モジュール104が第1のモールド内に配置される。具体的には、ステップS1で準備された1つ以上の半導体モジュール104を、金属インサート成形に使用されるモールド内に配置することができる。これにより、同じ型枠内に配置された複数の半導体モジュール114の端子114間の正確な相対的な位置合わせも容易になる。したがって、従来の成形工具は非常に精密であるため、例えばモジュール端子114の電気接続に必要な、異なる半導体モジュール114間の厳密な位置決め公差が容易になる。更に、半導体モジュール104は、金属ベースプレート108に取り付けられた一体型冷却構造がステップS3の成形中にプラスチック材料で充填されることになる容積の外側に確実に突出するような形態で位置合わせされることになる。
【0050】
ステップS3では、第1のモールドを使用するプラスチック材料からのモールディングを使用して第1のハウジング部分121が成形される。プラスチック材料を第1のモールドに注入することによって、金属ベースプレート108の少なくとも一部分と第1のハウジング部分121のプラスチック材料との間に機械的に安定したフォームフィット接続が形成される。その結果、半導体モジュール114は第1のプラスチックハウジング部分121に強力に取り付けられ、それにより、漏れのない封止が形成される。射出成形プロセス及び同様の成形プロセス中のモールド温度が、一般に、パワー半導体モジュール104の動作温度よりもかなり低いことに留意されたい。したがって、パワー半導体モジュール104内の結合層又はモールドコンパウンド接着が劣化するリスクは低い。
【0051】
ステップS4では、モールディングを使用して第2のハウジング部分が形成される。ステップS4で使用される材料及び技術は、ステップS3で使用される材料及び技術と同様である。
【0052】
ステップS5において、第1及び第2のハウジング部分121及び122は、クーラント116用の液密キャビティを形成するために、適切なプラスチック接合方法によって接合される。第1のハウジング部分121及び第2のハウジング部分122は、ベースプレート108の一体型冷却構造がクーラント116用のキャビティ内へと突出するように構成されて位置合わせされる。詳しく前述したように、レーザ又は超音波溶接を使用して、2つのハウジング部分121及び122間に水密溶接シームを形成することができる。或いは、接着結合接合又は加熱材料融合接合が、接着剤を使用して又は2つのハウジング部分121及び122のうちの少なくとも一方の材料を部分的に溶融することによって形成されてもよい。
【0053】
述べたように
図1~
図7に示される実施形態は、改良された冷却アセンブリ105及びパワーモジュール101の例示的な実施形態を表わし、また、それらの製造に必要なステップも詳述する。これらは、本開示に係る全ての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の冷却アセンブリ及びパワーモジュール及びそれらの製造方法は、前述の実施形態に関して示された実施形態とは異なる場合がある。
【符号の説明】
【0054】
参照符号
1 パワーモジュール
2 第1のポート
3 第2のポート
4 半導体モジュール
5 冷却アセンブリ
6 クランプ
7 ネジ
8 ベースプレート
9 (上)面
10 モールド本体
11 基板
12 半導体ダイ
13 リード
14 端子
15 アルミニウム合金本体部分
16 クーラント
17 ピンフィン
18 開口
19 Oリングガスケット
20 溝
101 パワーモジュール
102 第1のポート
103 第2のポート
104 半導体モジュール
105 冷却アセンブリ
106 クランプ
107 ネジ
108 ベースプレート
109 (上)面
110 モールド本体
111 基板
112 半導体ダイ
113 リード
114 端子
115 プラスチック本体部分
116 クーラント
117 ピンフィン
118 開口
121 第1のハウジング部分
122 第2のハウジング部分
123 接合部
128 支持構造
129 圧入端子
130 プリント基板
【国際調査報告】