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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】変圧器装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/10 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
H02M5/10 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560401
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022058504
(87)【国際公開番号】W WO2022207761
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166436.2
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バカス,パナギオティス
(72)【発明者】
【氏名】アルベス,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】スベンソン,ヤン
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750BA01
5H750BA05
5H750CC03
5H750CC06
5H750CC11
5H750DD25
5H750GG01
5H750GG11
(57)【要約】
電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側(11)ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側(12)を有する変圧器(10)を備える、変圧器装置(18)である。変圧器装置(18)は、交流-交流PE変換器(14)であって、一次側(11)および/または二次側(12)の端子における短絡故障の場合に、交流-交流PE変換器(14)をバイパスするために使用されるサイリスタ(23)に接続された、交流-交流PE変換器(14)をさらに備える。変圧器装置(18)は、サイリスタタップ付き巻線(13a)に接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)をさらに備える。交流-交流PE変換器(14)は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)を介して、サイリスタタップ付き巻線(13a)と接続される。サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)の短絡故障からサイリスタタップ付き巻線(13a)を保護するためにインピーダンス(21)に接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器装置(18)であって、
電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側(11)ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側(12)を有する変圧器(10)と、
交流-交流パワーエレクトロニクス(PE)変換器(14)であって、前記一次側(11)および/または前記二次側(12)の端子における短絡故障の場合に、前記交流-交流PE変換器(14)をバイパスするために使用されるサイリスタ(23)に接続された、交流-交流PE変換器(14)と、を備え、
前記変圧器装置(18)は、サイリスタタップ付き巻線(13a)に接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)をさらに備え、前記交流-交流PE変換器(14)は、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)を介して、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)と接続され、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)の短絡故障から前記サイリスタタップ付き巻線(13a)を保護するためにインピーダンス(21)に接続される、変圧器装置(18)。
【請求項2】
前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ(24)および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタ(24)を備える、請求項1に記載の変圧器装置(18)。
【請求項3】
前記交流-交流PE変換器(14)は、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)と直列に接続される、請求項1または2に記載の変圧器装置(18)。
【請求項4】
前記交流-交流PE変換器(14)は、補助巻線(13b)に接続される、請求項1から3のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項5】
前記交流-交流PE変換器(14)は、前記交流-交流PE変換器(14)の短絡故障から前記補助巻線(13b)を保護するためにインピーダンス(20)に接続される、請求項4に記載の変圧器装置(18)。
【請求項6】
前記補助巻線(13b)はタップされる、請求項4に記載の変圧器装置(18)。
【請求項7】
前記補助巻線(13b)は別個である、請求項4に記載の変圧器装置(18)。
【請求項8】
前記変圧器装置(18)は、変圧器タンクをさらに備え、前記交流-交流PE変換器(14)、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)および前記インピーダンス(20、21)は、前記変圧器タンクの内側に設置される、請求項4から7のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項9】
前記変圧器装置(18)は、変圧器タンクおよび別個の容器をさらに備え、前記インピーダンス(20、21)は前記変圧器タンクの内側に設置され、前記交流-交流PE変換器(14)および前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記別個の容器に設置される、請求項4から7のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項10】
前記変圧器装置(18)は、別個の容器をさらに備え、前記インピーダンス(20、21)、前記交流-交流PE変換器(14)および前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記別個の容器に設置される、請求項4から7のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項11】
前記インピーダンス(21)は、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子または下端子のいずれかで接続された単一インピーダンスである、請求項1から10のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項12】
前記インピーダンス(21)は2つの部分に分割され、前記2つの部分のそれぞれが前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子および下端子に接続される、請求項1から10のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項13】
前記インピーダンス(21)は結合インピーダンスであり、前記結合インピーダンスは、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)の短絡故障の経路に沿った高インピーダンスに結びつけられ、前記サイリスタ(24)間の転流のための低インピーダンスに結びつけられる、請求項1から10のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項14】
RCスナバネットワーク(S)が各サイリスタ(24)に並列に接続され、前記RCスナバネットワーク(S)は直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサを備える、請求項2から13のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項15】
さらなるRCスナバネットワーク(Sx)が、前記サイリスタ(24)に並列に接続されたすべてのサイリスタ(24)に共通のスナバネットワークであり、前記RCスナバネットワーク(Sx)は、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサ、あるいはコンデンサを含む、請求項14に記載の変圧器装置(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本明細書における実施形態は、変圧器の分野に関する。特に、本明細書における実施形態は、パワーエレクトロニクス強化変圧器(PEET:Power-Electronics-Enhanced-Transformer)に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
変圧器は、電力ネットワークの電気グリッドで使用される機器である。変圧器は、電気エネルギーを輸送かつ分配するために、電圧および電流を変換する。パワーエレクトロニクス(PE:power electronic)変換器は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:insulated gate bipolar transistor)などのパワーエレクトロニクス構成要素を使用して、電力を制御かつ変換する。PE変換器は電力を生成するのではなく、むしろ、電力を変圧/変換する、すなわち、電源からの電力を変換する、例えば、ある周波数の交流(AC:alternating current)を、負荷から必要とされる電力の形態に、例えば、別の周波数の交流または直流(DC:direct current)に変圧/変換する。
【0003】
PE変換器に基づく様々なトポロジが、従来の電圧調整変圧器(VRT:voltage-regulating transformer)の機械式負荷時タップ切換器(OLTC:On-Load-Tap-Changer)を置き換えるために提案されている。変圧器に電圧調整機能を追加するために機械式OLTCを採用する従来の解決策の簡略化された単相表現が図1に示される。PE変換器は、従来の解決策においてのように、電圧調整機能を達成するために使用することができるが、従来の解決策では可能ではない追加の機能、例えば、電力流制御および位相不均衡緩和を達成するためにも使用することができる。したがって、PE変換器を変圧器と組み合わせる回路はPEETと呼ばれる。したがって、PEETは、パワーエレクトロニクスを利用して、電圧調整、電力流制御、位相不均衡緩和などの機能を変圧器に追加する回路である。
【0004】
米国特許出願公開第20100201338号、米国特許出願公開第2010220499号および米国特許出願公開第20160195891号は、交流-交流PE変換器を変圧器と組み合わせる回路を説明している。これらの回路は、主に、電圧調整(有段階もしくは無段階)および/または電力流制御を達成することを目的とし、変圧器の電力および電圧の小部分に対して定格である交流-交流PE変換器を採用している。交流-交流PE変換器は、2つの主な型があってもよい、すなわち、
1.間接交流-交流PE変換器であってもよく、これは直流リンクを介してエネルギー貯蔵素子、例えば、コンデンサ、電池、もしくはコンデンサ+電池と相互接続された2つの直流-交流変換器を備え、または
2.直接交流-交流変換器であってもよく、これは両極性の電圧を遮断し、両方向に電流を伝導する四象限スイッチを備え、エネルギー貯蔵素子との直流リンクを採用していない。
さらに、交流-交流PE変換器は、3つの異なるやり方で変圧器に接続されてもよく、すなわち、
1.タップ付き補助巻線に接続されたPE変換器、
2.別個の補助巻線に接続されたPE変換器、または
3.2つの巻線のうちの1つに直列に接続されたPE変換器。
【0005】
上述の従来技術で提案された回路は、図1に示されるもののような従来のVRTと比較して多くの利点を特徴とする。これらの利点のうちのいくつかは、高速かつ無段階の電圧調整、電圧ちらつきを軽減する可能性、ならびに電力流制御、高調波フィルタリング、無効電力補償および位相不均衡緩和などの追加機能を達成する可能性である。しかしながら、IGBTによって通常、構成されるPE変換器は、機械式OLTCよりも高いコストおよびかなりより高い損失を特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
本明細書における実施形態の目的は、先行技術で提案されたPE変換器のコストおよび損失を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様によれば、前記目的は、変圧器装置を提供することによって達成される。変圧器装置は、電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側を有する変圧器を備える。変圧器装置は、交流-交流PE変換器であって、一次側および/または二次側の端子における短絡故障の場合に、交流-交流PE変換器をバイパスするために使用されるサイリスタに接続された、交流-交流PE変換器をさらに備える。変圧器装置は、サイリスタタップ付き巻線に接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器をさらに備える。交流-交流PE変換器は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器を介してサイリスタタップ付き巻線と接続される。サイリスタベースの交流-交流PE変換器は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器の短絡故障からサイリスタタップ付き巻線を保護するためにインピーダンスに接続される。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、サイリスタベースの交流-交流PE変換器は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ、および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタを備える。
【0009】
現在の解決策は、交流-交流PE変換器の一部が、サイリスタが、IGBTおよびターンオフ機能を備えた他のデバイスと比較して安価で効率的であるため、サイリスタベースの交流-交流変換器に置き換えることを実現することに基づく。その結果、交流-交流PE変換器のコストおよび損失を低減する変圧器装置が達成される。
【0010】
本発明のさらなる技術的特徴は、添付の図を参照して与えられる1つまたはいくつかの例示的な実施形態の以下の説明を通じて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電圧調整機能を達成するために機械式OLTCを採用する従来の電圧調整変圧器を描く概略概観図である。
図2a】本明細書における実施形態による、タップ付き補助巻線を備えた変圧器装置を描く概略概観図である。
図2b】本明細書における実施形態による、別個の補助巻線を備えた変圧器装置を描く概略概観図である。
図2c】本明細書における実施形態による、サイリスタタップ付き巻線と直列に接続された交流-交流PE変換器を備えた変圧器装置を描く概略概観図である。
図3a】接地に対して浮いている交流-交流PE変換器の一例を描く概略概観図である。
図3b】接地に対して浮いている交流-交流PE変換器の別の例を描く概略概観図である。
図3c】接地に対して浮いている交流-交流PE変換器の別の例を描く概略概観図である。
図4a】サイリスタベースの交流-交流PE変換器の切替え状態の一例を描く概略概観図である。
図4b】サイリスタベースの交流-交流PE変換器の切替え状態の別の例を描く概略概観図である。
図5】サイリスタの転流を例示する概略概観図である。
図6a】サイリスタタップ付き巻線の単一インピーダンスでの実装を例示する概略概観図である。
図6b】サイリスタタップ付き巻線の2つのインピーダンスでの実装を例示する概略概観図である。
図6c】サイリスタタップ付き巻線の結合インピーダンスでの実装を例示する概略概観図である。
図7a】スナバネットワークの変形を例示する概略概観図である。
図7b】スナバネットワークの別の変形例を例示する概略概観図である。
図8】3相Y-Y接続の概略概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面は必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、明瞭にするために、いくつかの素子の寸法が誇張された場合があることに留意されたい。
【0013】
詳細な説明
上述したように、本明細書における実施形態は、交流-交流PE変換器の一部をサイリスタベースの交流-交流変換器で置き換えることを目的とする。IGBTおよびターンオフ機能を備えた他のデバイスと比較して、サイリスタは安価で効率的である。したがって、本明細書における実施形態による解決策の目的は、先行技術で提案されたPE変換器のコストおよび損失を低減することである。
【0014】
図2aは、本明細書における実施形態による変圧器装置18を概略的に例示する。変圧器装置18は変圧器10を備える。変圧器10は、電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側11ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側12を有する。変圧器装置18は、サイリスタ23に接続された交流-交流PE変換器14をさらに備える。サイリスタは、一次側11および/または二次側12の端子における短絡故障の場合に、交流-交流PE変換器14をバイパスするために使用される。変圧器装置18は、サイリスタタップ付き巻線13aに接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器16をさらに備える。交流-交流PE変換器14は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16を介してサイリスタタップ付き巻線13aで拡張され、すなわち接続される。サイリスタタップ付き巻線13aは、交流-交流PE変換器14の入力(左側端子)で、例えば、直列に接続されてもよい。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障からサイリスタタップ付き巻線13aを保護するためにインピーダンス21に接続される。インピーダンス21は、サイリスタタップ付き巻線13aに接続されてもよい。いくつかの実施形態によれば、インピーダンス21は、サイリスタタップ付き巻線13aの上端子または下端子のいずれかに接続された単一インピーダンスであってもよい。いくつかの実施形態によれば、インピーダンス21は、2つの部分に分割されてもよく、これらの部分のそれぞれは、サイリスタタップ付き巻線13aの上端子および下端子に接続される。いくつかの実施形態によれば、インピーダンス21は結合インピーダンスであってもよく、結合インピーダンスは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障の経路に沿った高インピーダンスに結びつけられ、サイリスタ24間の転流のための低インピーダンスに結びつけられる。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16に接続されたインピーダンス21について、図6a~図6cに関して以下でさらに詳細に説明する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ24および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタを備える。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、交流-交流PE変換器14は、補助巻線13bに接続される。補助巻線13bは、図2aに示されるようにタップされてもよい。補助巻線13bがタップされるということは、補助巻線13bが二次主巻線25に直列に接続され、サイリスタの切替え状態によっては、サイリスタタップ付き巻線13aにも直列に接続されることを意味する。したがって、タップ付き補助巻線を流れる電流は、二次主巻線およびサイリスタタップ付き巻線の電流と同じ大きさである。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、交流-交流PE変換器14は、交流-交流PE変換器14の短絡故障から補助巻線13bを保護するためにインピーダンス20に接続される。インピーダンス20は、補助巻線13bに接続されてもよい。交流-交流PE変換器14に接続されたインピーダンス20、およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16に接続されたインピーダンス21は、必ずしも、同じインピーダンス値を有する必要はない。
【0018】
図2bは、本明細書における実施形態による変圧器装置18を概略的に例示する。変圧器装置18は変圧器10を備える。変圧器10は、電源からの入力電圧および電流を受け取るための一次側11ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側12を有する。変圧器装置18は、サイリスタ23に接続された交流-交流PE変換器14をさらに備える。サイリスタは、一次側11および/または二次側12の端子における短絡故障の場合に、交流-交流PE変換器14をバイパスするために使用される。変圧器装置18は、サイリスタタップ付き巻線13aに接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器16をさらに備える。交流-交流PE変換器14は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16を介してサイリスタタップ付き巻線13aで拡張され、すなわち接続される。サイリスタタップ付き巻線13aは、例えば、交流-交流PE変換器の出力(右側端子)で直列に接続されてもよい。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障からサイリスタタップ付き巻線13aを保護するためにインピーダンス21に接続される。インピーダンス21は、サイリスタタップ付き巻線13aに接続されてもよい。いくつかの実施形態によれば、インピーダンス21は、サイリスタタップ付き巻線13aの上端子または下端子のいずれかで接続された単一インピーダンスであってもよい。いくつかの実施形態によれば、インピーダンス21は、2つの部分に分割されてもよく、これらの部分のそれぞれは、サイリスタタップ付き巻線13aの上端子および下端子に接続される。いくつかの実施形態によれば、インピーダンス21は結合インピーダンスであってもよく、結合インピーダンスは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障の経路に沿った高インピーダンスに結びつけられ、サイリスタ24間の転流のための低インピーダンスに結びつけられる。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16に接続されたインピーダンス21について、図6a~図6cに関して以下でさらに詳細に説明する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ24および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタ24を備える。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、交流-交流PE変換器14は、補助巻線13bに接続される。補助巻線13bは、図2bに示されるように別個であってもよい。補助巻線13bが別個であるということは、補助巻線13bが二次主巻線25またはサイリスタタップ付き巻線13aに直接、接続されないが、交流-交流PE変換器14を介して接続されることを意味する。したがって、補助巻線13bの電流は、主巻線25およびサイリスタタップ付き巻線13aの電流と同じ大きさである必要はない。これは、別個の補助巻線13bの設計が、サイリスタタップ付き補助巻線13aの設計よりも柔軟であることを意味する。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、交流-交流PE変換器14は、交流-交流PE変換器14の短絡故障から補助巻線13bを保護するためにインピーダンス20に接続される。インピーダンス20はまた、補助巻線13bに接続されてもよい。交流-交流PE変換器14に接続されたインピーダンス20およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16に接続されたインピーダンス21は、必ずしも同じインピーダンス値を有する必要はない。
【0022】
図2cは、本明細書におけるいくつかの実施形態による変圧器装置18を概略的に例示する。変圧器装置18は変圧器10を備える。変圧器10は、電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側11ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側12を有する。変圧器装置18は、サイリスタ23に接続された交流-交流パワーエレクトロニクス(PE)変換器14をさらに備える。サイリスタは、一次側11および/または二次側12の端子における短絡故障の場合に、交流-交流PE変換器14をバイパスするために使用される。変圧器装置18は、サイリスタタップ付き巻線13aに接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器16をさらに備える。交流-交流PE変換器14は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16を介してサイリスタタップ付き巻線13aに拡張され、すなわち接続される。交流-交流PE変換器14は、サイリスタタップ付き巻線13aと直列に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、交流-交流PE変換器14は、主巻線25に直列に接続され、サイリスタタップ付き巻線13aまたは任意の補助巻線には接続されない。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障からサイリスタタップ付き巻線13aを保護するためにインピーダンス21に接続される。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ24および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタ24を備えてもよい。
【0023】
図2a、図2bおよび図2cは、したがって、1つまたは複数のサイリスタベースの交流-交流PE変換器16で拡張された回路を示す。サイリスタベースの交流-交流PE変換器16について、瞬時出力電圧は次式で与えられる。
【0024】
a)vs=vm+vo1+vo2
式では、vmは主巻線25の瞬時電圧であり、vo1はサイリスタベースの交流-交流PE変換器16によって生成される瞬時電圧であり、vo2は交流-交流PE変換器14によって生成される瞬時電圧である。vsの調整は、vo1とvo2とを制御することによって実現される。米国特許出願公開第20100201338号、米国特許出願公開第2010220499号および米国特許出願公開第20160195891号に示される先行技術の回路について、瞬時出力電圧vsは次式で与えられる。
【0025】
b)vs=vm+vo
式では、vmは主巻線25の瞬時電圧であり、voはPE変換器によって生成される瞬時電圧である。vsの調整は、voを制御することによって実現される。
上記a)およびb)から、ある調整範囲±ΔVについて、以下が適用されることが明らかになる。
【0026】
- voを生成する先行技術のPE変換器は、完全な調整範囲±ΔVを供給するために、定格でなければならない。
【0027】
- vo2を生成する図2a、図2bおよび図2cの交流-交流PE変換器14は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16がvo1を生成することによって電圧調整に寄与するため、調整範囲±ΔVの小部分を供給するために定格でなければならない。なお、交流-交流PE変換器14およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16の電圧定格は、完全な調整範囲±ΔVを提供するのに十分であるべきである。
【0028】
電流定格に関しては、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、サイリスタ23と同じ電流に対して定格であってもよい。このように、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、二次側12および/または一次側11における短絡に対する余分な過電流保護を必要とせず、サイリスタ損失は、公称電流に対して定格であるサイリスタと比較して低い。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、交流-交流PE変換器14は、接地に接続され、または接地の近くに接続される。これは、必要とされる絶縁電圧を最小限に抑えるために交流-交流PE変換器14が接地の近くに接続される図2a、図2bおよび図2cに例示される。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、図3a、図3bおよび図3cに例示される、交流-交流PE変換器14は接地に対して浮いていることが可能である。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、交流-交流PE変換器14は、IGBTに基づいてもよい。交流-交流PE変換器14は、他の半導体スイッチ、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、集積ゲート転流サイリスタ(IGCT:Integrated Gate-Commutated Thyristor)または二重モード絶縁ゲートトランジスタ(BIGT:Bi-mode insulated Gate Transistor)と共に実装されてもよい。さらに、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の各サイリスタスイッチは、逆並列に接続された2つの別個の位相制御サイリスタ(PCT:Phase Controlled Thyristors)で実装されるか、または単一の双方向制御サイリスタ(BCT:Bidirectionally Controlled Thyristor)で実装されてもよい。単一のBCTで実装されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、2つのサイリスタを1つの単一のパッケージに統合し、逆並列PCTsでの実装と比較して、機械的設計を簡素化する。
【0031】
サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の動作原理は非常に類似しており、図2aの回路について説明する。図2aのサイリスタベースの交流-交流PE変換器16の切替え状態は図4aおよび図4bに示され、以下に簡単に説明する。
【0032】
- 切替え状態U、図4aに示される:サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の上サイリスタ24が導通している。これにより、サイリスタタップ付き巻線13aがバイパスされ、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16によって生成された電圧vo1は、その調整範囲の最小値となる。交流-交流PE変換器14は、電圧vo2を加算または減算する。
【0033】
- 切替え状態L、図4bに示される:サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の下サイリスタ24が導通している。これにより、サイリスタタップ付き巻線13aが挿入され、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16によって生成された電圧vo1は、その調整範囲の最大値となる。交流-交流PE変換器14は、電圧vo2を加算または減算する。
【0034】
言い換えれば、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、ハイブリッド電圧調整を提供し、この調整は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16による粗い電圧調整と交流-交流PE変換器14による微細な電圧調整とを組み合わせる。粗い電圧調整は、微細な電圧調整よりも少ない頻度で採用されるべきであり、微細な電圧調整は、通常は伝導のために最適化され、高速かつ頻繁な切替え動作ではないサイリスタ24の特性に即している。
【0035】
交流-交流PE変換器14およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、調整範囲±ΔVの任意の割合を提供するために定格であってもよい。なお、図4aおよび図4bに例示された動作原理に基づいて、ならびに前述のa)vs=vm+vo1+vo2、およびb)vs=vm+voに基づいて、以下の観察を行うことができる。
【0036】
- 交流-交流PE変換器14がサイリスタベースの交流-交流PE変換器16よりも±ΔVの小さい部分を提供するために定格である場合、電圧調整は無段階ではない。これは、最大vo2に等しい切替え状態Uの最大電圧vo1+vo2(vo1は、ゼロに近いと考えられる、サイリスタ24およびインピーダンス21の電圧降下に等しい)が、最大vo1に最小vo2を加えたものに等しい切替え状態Uの最小電圧vo1+vo2よりも低いためである。
【0037】
- 交流-交流PE変換器14が、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16よりも±ΔVの大きい部分を供給するために定格である場合、電圧調整は無段階となるが、交流-交流PE変換器14のコストは最小に抑えられない。
【0038】
上述の観察に基づいて、各型の変換器が±ΔVの半分を供給するために定格である場合、最小のPE変換器コストで無段階電圧調整が達成できる。このように、電圧調整は、以下の様式を採用することによって実現することができる。
【0039】
- 調整 -ΔV-0:サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は切替え状態Uにあり、交流-交流PE変換器14は±ΔV/2の全範囲内で調整している。なお、切替え状態Uは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16に対する-ΔV/2の電圧調整に相当する。
【0040】
- 調整 0-ΔV:サイリスタベースの交流-交流PE変換器16は切替え状態Lであり、交流-交流PE変換器14は±ΔV/2の全範囲内で調整している。なお、切替え状態Lは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16に対する+ΔV/2の電圧調整に相当する。
【0041】
サイリスタ24の転流は、図5に例示される原理に基づいてもよい。サイリスタ24は、図5において、24aおよび24bとして示される。転流するために、電流は上サイリスタ24aと下サイリスタ24bとの間にあり、太字で示されるサイリスタ24aはパルス動作されてもよく、一方、ゲートパルスはサイリスタ24bに送られるべきではない。トリガする必要があるサイリスタは電流方向に依存し、転流の成功は転流電圧(vcom)の極性とゲートパルスのタイミングとに依存する。
【0042】
図5は、異なる電流方向に対してパルス化する必要があるサイリスタ24aを示す。より具体的には、上サイリスタスイッチと下サイリスタスイッチとの間の電流転流は、サイリスタ24aをパルス動作することによって行われるべきであるが、ゲートパルスはサイリスタ24bに送られるべきではない。サイリスタ24aをトリガすることによって、短絡電流は2つのサイリスタ24aのうちの1つによって遮断されるので、サイリスタタップ付き巻線13aの端子間にこの電流を流すことなく、一方のサイリスタから他方のサイリスタへ(転流電圧vcomの極性に応じて)電流を移送することができる。電流の転流は、以下の様式で行うことができる。
【0043】
- 上サイリスタスイッチから下サイリスタスイッチへの転流について:転流電圧vcomは、それぞれ、上サイリスタを逆方向にバイアスし、下サイリスタを順方向にバイアスする極性を有するべきである。
【0044】
- 下サイリスタスイッチから上サイリスタスイッチへの転流について:転流電圧vcomは、それぞれ、下サイリスタを逆方向にバイアスし、上サイリスタを順方向にバイアスする極性を有するべきである。
【0045】
転流電圧vcomの極性が適していない場合、インピーダンス21、例えば、短絡制限リアクタンスは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障に対してサイリスタタップ付き巻線13aを保護するために寸法が決められているので、例えば、数ミリ秒の範囲の短期間の短絡を許容することができる。
【0046】
サイリスタベースの交流-交流PE変換器16および対応するサイリスタタップ付き巻線13aの保護は、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の重要な特徴である。図6a、図6bおよび図6cは、インピーダンス21、例えば、様々な目的のために、すなわち、1)サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障からサイリスタタップ付き巻線13aを保護するために、および2)オンになっているサイリスタの電流の変化率(di/dt)を制限するために、採用される短絡制限リアクタンスを導入する異なるやり方を例示する。典型的には、インピーダンス21、例えばサイリスタのdi/dtを制限するリアクタンスは相対的に小さく、したがって、短絡制限リアクタンスのサイズは、サイリスタタップ付き巻線13aの耐短絡能力によって定められる。このインピーダンス21は、図6aに示されるように、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の回路に、サイリスタタップ付き巻線13aの上端子または下端子のいずれかで接続された単一のユニットとして導入されてもよい。あるいは、インピーダンス21は、2つの部分に分割されてもよく、これらの部分のそれぞれは、サイリスタタップ付き巻線13aの上端子および下端子に接続されるので、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の回路は、図6bに例示されるように対称となる。最後に、図6cに示されるように、特別な型の結合インピーダンス21が採用されてもよい。この結合インピーダンスは、以下の要件を満たすように設計されてもよい。
【0047】
- 結合巻線の流束は、電流がサイリスタタップ付き巻線13aの上端子から下端子に、またはその逆に流れると、付加される。したがって、結合インピーダンス21のインダクタンスは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の短絡故障時に生じるこの電流方向に対して高くなる。
【0048】
- 結合巻線の流束は、電流がサイリスタタップ付き巻線13aの上端子および下端子からサイリスタの共通端子に、またはその逆に流れると、差し引かれる。したがって、結合インピーダンス21のインダクタンスは、上サイリスタスイッチと下サイリスタスイッチとの間の電流の転流時に生じるこの電流方向に対して低くなる。
【0049】
また、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の実装のために、ターンオフ後の電圧の高い変化率(dv/dt)からサイリスタ24を保護するために追加の受動構成要素が必要とされる場合がある。図7aおよび図7bは、オフにされたサイリスタのdv/dtを制限するスナバネットワークの2つの変形を示す。より具体的には:
図7aは、記号Sで示され、各サイリスタ24、例えば、サイリスタスイッチ専用であるRCスナバネットワーク、分岐のみを示す。すなわち、RCスナバは、各サイリスタ24に並列に接続されてもよい。
【0050】
図7bは、記号Sxで示される共通コンデンサ(C)またはRCネットワーク、分岐と、記号Sで示される各サイリスタ24に並列に接続されたRCスナバ、分岐との組合せを示す。
【0051】
したがって、いくつかの実施形態によれば、RCスナバネットワークSは、各サイリスタ24に並列に接続されてもよく、RCスナバネットワークSは、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサを備える。そして、いくつかの実施形態によれば、さらなるRCスナバネットワークSxは、サイリスタ24に並列に接続された、すべてのサイリスタ24のための共通のスナバネットワークであり、RCスナバネットワークSxは、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサ、あるいはコンデンサを備える。Sxは、両方のサイリスタの共通のスナバとして定められてもよく、両方のサイリスタ、すなわち、サイリスタブリッジに並列に接続されて、各サイリスタに別個に接続されなくてもよい。各抵抗およびコンデンサは、複数のより小さい抵抗器およびコンデンサの直列および並列接続によって構成されてもよく、すなわち、抵抗器は、単一の抵抗器、あるいは直列および/または並列に接続された、いくつかのより小さい抵抗器であってもよく、コンデンサは、単一のコンデンサ、あるいは直列および/または並列に接続された、いくつかのより小さいコンデンサであってもよい。
【0052】
図7aおよび図7bの変形の間の主な違いは、サイリスタ24のdv/dt制限が、前者においてS分岐の静電容量を直接定めるが、後者においてはSx分岐およびS分岐の実効静電容量を定めることである。したがって、図7bの変形により、S分岐を設計する際の自由度がある程度得られ、例えば、dv/dt制限を超えないために必要とされるバルク静電容量が共通のSx分岐に設置され、より小さい静電容量がS分岐に設置され得る。Sx分岐は、以下のやり方で実装されてもよい。
【0053】
- 単一のコンデンサ、
- 並列接続されたコンデンサ、
- 直列接続されたコンデンサ、
- 直列並列接続されたコンデンサのマトリクス、
- 抵抗器、または各単一のコンデンサまたはコンデンサの任意の組合せ(直列、並列、またはその両方)のいずれかに直列に接続された抵抗器のマトリクスと組み合わされた上記すべて。導入された(1つまたは複数の)抵抗器は、回路の(1つまたは複数の)コンデンサと誘導性素子との間の共振を減衰させるのに役立つ。
【0054】
S分岐は、上記の最後の点で述べたように実装することができる。最後に、図7aまたは図7bに例示されていない特別な避雷器、例えば、バリスタが、これらの分岐およびサイリスタ24を過電圧過渡現象から保護するために、S分岐およびSx分岐に並列に接続されてもよい。
【0055】
図2a~図2cおよび図3a~図3cは、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16の単相回路を例示する。しかしながら、図2a~図2cおよび図3a~図3cのサイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、二次側12において三相Y字状回路(Y)またはデルタ(D)構成で接続されてもよく、一方、一次側11はYまたはD構成のいずれかに接続されてもよい。したがって、一次-二次の可能な三相構成は、Y-Y、D-Y、Y-D、デルタ-Y、D-Dであり得る。図8は、三相Y-Y接続の一例を例示する。
【0056】
したがって、変圧器10の、交流-交流PE変換器14およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16との統合に関して、以下の選択肢がしたがって可能である。
【0057】
完全統合:いくつかの実施形態によれば、変圧器装置18は、変圧器タンクをさらに備えてもよく、交流-交流PE変換器14、サイリスタベースの交流-交流PE変換器16およびインピーダンス20、21は、変圧器タンクの内側に設置される。
【0058】
部分的に統合:いくつかの実施形態によれば、変圧器装置18は、変圧器タンクおよび別個の容器をさらに備え、インピーダンス20、21は変圧器タンクの内側に設置され、交流-交流PE変換器14およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、別個の容器に設置される。
【0059】
分離:いくつかの実施形態によれば、変圧器装置18は、別個の容器をさらに備え、ここで、インピーダンス20、21、交流-交流PE変換器14およびサイリスタベースの交流-交流PE変換器16は、別個の容器に設置される。
【0060】
本明細書における実施形態は、以下の利益および利点を提供する。
- 有段階調整の、無段階調整による従来のOLTCとの置換え。
【0061】
- 従来のVRTと比較してタップの数を低減することによる変圧器設計要件の簡素化。
【0062】
- 巻線およびタップの数の低減により、および機械的設計がより複雑にならないため、変圧器の製造コストを低減する可能性。
【0063】
- 機能を変圧器へ拡張する可能性(例えば、ちらつき緩和、高調波補償)。
- サイリスタの損失が非常に低いため、PE変換器の損失が先行技術と比較して低い。
【0064】
- サイリスタのコストがより低いため、PE変換器のコストが先行技術と比較して低い。
【0065】
態様のうちのいずれかの任意の特徴は、適切な場合には、任意の他の態様に適用されてもよいことに留意されたい。同様に、態様のうちのいずれかの任意の利点は、他の態様のいずれにでも適用されてもよい。
【0066】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書において明示的に別段の定めがない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a)/1つの(an)/前記(the)素子、装置、構成要素、手段、ステップ等」へのすべての言及は、明示的に別段の記載がない限り、素子、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの実例に言及するものとして率直に解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられていない限り、開示された正確な順序で行われなくてもよい。本開示の異なる特徴/構成要素に対する「第1」、「第2」等の使用は、特徴/構成要素を他の類似の特徴/構成要素と区別することのみを意図し、特徴/構成要素に任意の順序または階層を与えることは意図していない。
【0067】
前述の説明および添付の図面は、本明細書で教示される方法および巻線配置の非限定的な例を表していることが理解される。したがって、本明細書で教示される巻線配置および技術は、前述の説明および添付の図面によって限定されない。代わりに、本明細書における実施形態は、以下の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によってのみ限定される。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器装置(18)であって、
電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側(11)ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側(12)を有する変圧器(10)と、
交流-交流パワーエレクトロニクス(PE)変換器(14)であって、前記一次側(11)および/または前記二次側(12)の端子における短絡故障の場合に、前記交流-交流PE変換器(14)をバイパスするために使用されるサイリスタ(23)に接続された、交流-交流PE変換器(14)と、を備え、
前記変圧器装置(18)は、サイリスタタップ付き巻線(13a)に接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)をさらに備え、前記交流-交流PE変換器(14)は、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)を介して、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)と接続され、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)の短絡故障から前記サイリスタタップ付き巻線(13a)を保護するためにインピーダンス(21)に接続され
前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ(24)および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタ(24)を備え、
前記インピーダンス(21)は結合インピーダンスであり、電流が前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子から下端子に、およびその逆に流れるときに磁束が付加されるときに、前記結合インピーダンスは高インピーダンスに結びつけられ、電流が前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子および下端子から前記サイリスタ(24)の共通端子に、およびその逆に流れるときに、前記結合巻線の磁束が差し引かれるときに、前記結合インピーダンスは低インピーダンスに結びつけられる、変圧器装置(18)。
【請求項2】
前記交流-交流PE変換器(14)は、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)と直列に接続される、請求項1に記載の変圧器装置(18)。
【請求項3】
前記交流-交流PE変換器(14)は、補助巻線(13b)に接続される、請求項1または2に記載の変圧器装置(18)。
【請求項4】
前記交流-交流PE変換器(14)は、前記交流-交流PE変換器(14)の短絡故障から前記補助巻線(13b)を保護するためにインピーダンス(20)に接続される、請求項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項5】
前記補助巻線(13b)はタップされる、請求項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項6】
前記補助巻線(13b)は別個である、請求項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項7】
前記変圧器装置(18)は、変圧器タンクをさらに備え、前記交流-交流PE変換器(14)、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)および前記インピーダンス(20、21)は、前記変圧器タンクの内側に設置される、請求項からのいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項8】
前記変圧器装置(18)は、変圧器タンクおよび別個の容器をさらに備え、前記インピーダンス(20、21)は前記変圧器タンクの内側に設置され、前記交流-交流PE変換器(14)および前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記別個の容器に設置される、請求項からのいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項9】
前記変圧器装置(18)は、別個の容器をさらに備え、前記インピーダンス(20、21)、前記交流-交流PE変換器(14)および前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記別個の容器に設置される、請求項からのいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項10】
前記インピーダンス(21)は2つの部分に分割され、前記2つの部分のそれぞれが前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子および下端子に接続される、請求項1からのいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項11】
RCスナバネットワーク(S)が各サイリスタ(24)に並列に接続され、前記RCスナバネットワーク(S)は直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサを備える、請求項から10のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項12】
さらなるRCスナバネットワーク(Sx)が、前記サイリスタ(24)に並列に接続されたすべてのサイリスタ(24)に共通のスナバネットワークであり、前記RCスナバネットワーク(Sx)は、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサ、あるいはコンデンサを含む、請求項11に記載の変圧器装置(18)。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器装置(18)であって、
電源から入力電圧および電流を受け取るための一次側(11)ならびに出力電圧および電流を負荷に供給するための二次側(12)を有する変圧器(10)と、
交流-交流パワーエレクトロニクス(PE)変換器(14)であって、前記一次側(11)および/または前記二次側(12)の端子における短絡故障の場合に、前記交流-交流PE変換器(14)をバイパスするために使用されるサイリスタ(23)に接続された、交流-交流PE変換器(14)と、を備え、
前記変圧器装置(18)は、サイリスタタップ付き巻線(13a)に接続されたサイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)をさらに備え、前記交流-交流PE変換器(14)は、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)を介して、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)と接続され、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)の短絡故障から前記サイリスタタップ付き巻線(13a)を保護するためにインピーダンス(21)に接続され、
前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、1つもしくは複数の並列接続されたサイリスタ(24)および/または1つもしくは複数の直列接続されたサイリスタ(24)を備え、
前記インピーダンス(21)は結合インピーダンスであり、電流が前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子から下端子に、およびその逆に流れるときに磁束が付加されるときに、前記結合インピーダンスは高インピーダンスに結びつけられ、電流が前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子および下端子から前記サイリスタ(24)の共通端子に、およびその逆に流れるときに、前記結合巻線の磁束が差し引かれるときに、前記結合インピーダンスは低インピーダンスに結びつけられる、変圧器装置(18)。
【請求項2】
前記交流-交流PE変換器(14)は、前記サイリスタタップ付き巻線(13a)と直列に接続される、請求項1に記載の変圧器装置(18)。
【請求項3】
前記交流-交流PE変換器(14)は、補助巻線(13b)に接続される、請求項1または2に記載の変圧器装置(18)。
【請求項4】
前記交流-交流PE変換器(14)は、前記交流-交流PE変換器(14)の短絡故障から前記補助巻線(13b)を保護するためにインピーダンス(20)に接続される、請求項3に記載の変圧器装置(18)。
【請求項5】
前記補助巻線(13b)はタップされる、請求項3に記載の変圧器装置(18)。
【請求項6】
前記補助巻線(13b)は別個である、請求項3に記載の変圧器装置(18)。
【請求項7】
前記変圧器装置(18)は、変圧器タンクをさらに備え、前記交流-交流PE変換器(14)、前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)および前記インピーダンス(20、21)は、前記変圧器タンクの内側に設置される、請求項3から6のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項8】
前記変圧器装置(18)は、変圧器タンクおよび別個の容器をさらに備え、前記インピーダンス(20、21)は前記変圧器タンクの内側に設置され、前記交流-交流PE変換器(14)および前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記別個の容器に設置される、請求項3から6のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項9】
前記変圧器装置(18)は、別個の容器をさらに備え、前記インピーダンス(20、21)、前記交流-交流PE変換器(14)および前記サイリスタベースの交流-交流PE変換器(16)は、前記別個の容器に設置される、請求項3から6のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項10】
前記インピーダンス(21)は2つの部分に分割され、前記2つの部分のそれぞれが前記サイリスタタップ付き巻線(13a)の上端子および下端子に接続される、請求項1から9のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項11】
RCスナバネットワーク(S)が各サイリスタ(24)に並列に接続され、前記RCスナバネットワーク(S)は直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサを備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の変圧器装置(18)。
【請求項12】
さらなるRCスナバネットワーク(Sx)が、前記サイリスタ(24)に並列に接続されたすべてのサイリスタ(24)に共通のスナバネットワークであり、前記さらなるRCスナバネットワーク(Sx)は、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサ、あるいはコンデンサを含む、請求項11に記載の変圧器装置(18)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
米国特許出願公開第20100201338号、米国特許出願公開第2010220499号および米国特許出願公開第20160195891号は、交流-交流PE変換器を変圧器と組み合わせる回路を説明している。これらの回路は、主に、電圧調整(有段階もしくは無段階)および/または電力流制御を達成することを目的とし、変圧器の電力および電圧の小部分に対して定格である交流-交流PE変換器を採用している。交流-交流PE変換器は、2つの主な型があってもよい、すなわち、
1.間接交流-交流PE変換器であってもよく、これは直流リンクを介してエネルギー貯蔵素子、例えば、コンデンサ、電池、もしくはコンデンサ+電池と相互接続された2つの直流-交流変換器を備え、または
2.直接交流-交流PE変換器であってもよく、これは両極性の電圧を遮断し、両方向に電流を伝導する四象限スイッチを備え、エネルギー貯蔵素子との直流リンクを採用していない。
さらに、交流-交流PE変換器は、3つの異なるやり方で変圧器に接続されてもよく、すなわち、
1.タップ付き補助巻線に接続されたPE変換器、
2.別個の補助巻線に接続されたPE変換器、または
3.2つの巻線のうちの1つに直列に接続されたPE変換器。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
現在の解決策は、交流-交流PE変換器の一部が、サイリスタが、IGBTおよびターンオフ機能を備えた他のデバイスと比較して安価で効率的であるため、サイリスタベースの交流-交流PE変換器に置き換えることを実現することに基づく。その結果、交流-交流PE変換器のコストおよび損失を低減する変圧器装置が達成される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
したがって、いくつかの実施形態によれば、RCスナバネットワークSは、各サイリスタ24に並列に接続されてもよく、RCスナバネットワークSは、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサを備える。そして、いくつかの実施形態によれば、さらなるRCスナバネットワークSxは、サイリスタ24に並列に接続された、すべてのサイリスタ24のための共通のスナバネットワークであり、さらなるRCスナバネットワークSxは、直列および/または並列に接続された抵抗器およびコンデンサ、あるいはコンデンサを備える。Sxは、両方のサイリスタの共通のスナバとして定められてもよく、両方のサイリスタ、すなわち、サイリスタブリッジに並列に接続されて、各サイリスタに別個に接続されなくてもよい。各抵抗およびコンデンサは、複数のより小さい抵抗器およびコンデンサの直列および並列接続によって構成されてもよく、すなわち、抵抗器は、単一の抵抗器、あるいは直列および/または並列に接続された、いくつかのより小さい抵抗器であってもよく、コンデンサは、単一のコンデンサ、あるいは直列および/または並列に接続された、いくつかのより小さいコンデンサであってもよい。
【国際調査報告】