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特表2024-509642誘導加熱溶解用途向けの電流源インバータ及び電圧源インバータを備えたアクティブ整流器電力システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】誘導加熱溶解用途向けの電流源インバータ及び電圧源インバータを備えたアクティブ整流器電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240226BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H02M7/48 U
H02M7/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560949
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022014310
(87)【国際公開番号】W WO2022169689
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/271,543
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/146,412
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510098157
【氏名又は名称】エイジャックス トッコ マグネサーミック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】デラペンナ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ピティチキン アンドリー
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006BB00
5H006CA01
5H006CA03
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006CC08
5H006DB01
5H006DB02
5H770AA09
5H770BA09
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA17
5H770DA41
(57)【要約】
誘導加熱又は溶解システム及びその電力変換システムは、誘導加熱コイルと、整流器トランジスタを有するアクティブ整流器と、アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンク回路と、インバータトランジスタ及びDCリンク回路に結合された入力を有するインバータと、インバータの出力に結合され誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、システム出力電力を制御する変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する整流器トランジスタのトリガの間で略一定の角度で整流器トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、インバータコントローラと、アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を有する。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流トランジスタを有するアクティブ整流器と、
前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンクリアクタを有するDCリンク回路と、
インバータトランジスタと、前記DCリンク回路に結合された入力とを有するインバータと、
前記インバータの出力に結合され、誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、
システム出力電力を制御するための変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する前記整流トランジスタのトリガ間の略一定の角度で前記整流トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、
インバータコントローラと、
前記アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を含む、
電力変換システム。
【請求項2】
前記インバータコントローラは、
前記共振タンク回路の共振周波数より高いインバータ出力周波数で、前記共振タンク回路にインバータ出力電圧を供給するように、前記インバータトランジスタを制御するように構成される、
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記インバータコントローラは、
前記共振タンク回路にインバータ出力電圧を供給するように前記インバータトランジスタを制御するように構成されると共に、
前記インバータ出力電圧とインバータ出力電流との間のインバータ位相角を一定値に保持するように構成される、
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記整流トランジスタは、IGBTである、
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記共振タンク回路は、並列共振回路である、
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項6】
整流トランジスタを有するアクティブ整流器と、
前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCキャパシタを有するDCリンク回路と、
インバータトランジスタと、前記DCリンク回路に結合された入力とを有するインバータと、
前記インバータの出力に結合され、誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、
システム出力電力を制御するための変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する前記整流トランジスタのトリガ間の略一定の角度で前記整流トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、
インバータコントローラと、
前記アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を含む、
電力変換システム。
【請求項7】
前記インバータコントローラは、
前記共振タンク回路の共振周波数より高いインバータ出力周波数で、前記共振タンク回路にインバータ出力電圧を供給するように、前記インバータトランジスタを制御するように構成される、
請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記インバータコントローラは、
前記共振タンク回路にインバータ出力電圧を供給するように前記インバータトランジスタを制御するように構成されると共に、
前記インバータ出力電圧とインバータ出力電流との間のインバータ位相角を一定値に保持するように構成される、
請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項9】
前記インバータコントローラは、前記インバータ位相角を約15度に制御するように構成される、
請求項8に記載の電力変換システム。
【請求項10】
前記整流トランジスタは、IGBTである、
請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項11】
前記共振タンク回路は、直列共振回路である、
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項12】
誘導加熱コイルと、
整流トランジスタを有するアクティブ整流器と
前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンク回路と、
インバータトランジスタと、前記DCリンク回路に結合された入力とを有するインバータと、
前記インバータの出力に結合され、前記誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、
システム出力電力を制御するための変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する前記整流トランジスタのトリガ間の略一定の角度で前記整流トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、
インバータコントローラと、
前記アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を含む、
誘導加熱又は溶解システム。
【請求項13】
前記システムが電流源インバータシステムであり、
前記DCリンク回路は、前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンクリアクタを含み、
前記共振タンク回路は、並列共振回路である、
請求項12に記載の誘導加熱又は溶解システム。
【請求項14】
前記システムが電圧源インバータシステムであり、
前記DCリンク回路は、前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンクキャパシタを含み、
前記共振タンク回路は、直列共振回路である、
請求項12に記載の誘導加熱又は溶解システム。
【請求項15】
前記インバータコントローラは、
前記共振タンク回路の共振周波数より高いインバータ出力周波数で、前記共振タンク回路にインバータ出力電圧を供給するように、前記インバータトランジスタを制御するように構成される、
請求項12に記載の誘導加熱又は溶解システム。
【請求項16】
前記インバータコントローラは、
前記共振タンク回路にインバータ出力電圧を供給するように前記インバータトランジスタを制御するように構成されると共に、
前記インバータ出力電圧とインバータ出力電流との間のインバータ位相角を一定値に保持するように構成される、
請求項12に記載の誘導加熱又は溶解システム。
【請求項17】
前記インバータコントローラは、前記インバータ位相角を約15度に制御するように構成される、
請求項16に記載の誘導加熱又は溶解システム。
【請求項18】
前記整流トランジスタは、IGBTである、
請求項12に記載の誘導加熱又は溶解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年2月5日に出願された米国仮特許出願第63/146,412号「誘導加熱溶解用途向けの電流源インバータを備えたIGBT整流器電力システム」の優先権及び利益を主張しており、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。また、本出願は、2021年10月25日に出願された米国仮特許出願第63/271,543号「誘導加熱溶解用途向けの電圧源インバータを備えたIGBT整流器電力システム」の優先権及び利益を主張しており、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱溶解システムは、誘導加熱コイルを駆動するために、ライン周波数電力を制御可能な高周波電力に変換する整流器及びインバータを使用する。誘導加熱コイル巻線は、しばしば過酷な電気的及び機械的環境に設置され、他の巻線、負荷又は接地への断続的な短絡が起こりやすく、インバータに反映される急速なインピーダンス変化を引き起こす。いくつかのシステムでは、CSIシステムにおけるDCリアクトル(例えば、DCリンクチョーク)の電流制限効果によるインピーダンス変化に対応するために、誘導加熱コイルを含む並列共振タンク回路に電流源インバータ(CSI:current source inverter)の出力が供給される。
【0003】
シリコン制御整流器(SCR:silicon controlled rectifier)はCSIコンバータで使用できるが、オンにするために順方向電流と正のゲート電圧を必要とし、並列共振タンク回路はSCRベースのインバータを起動するために発振電流を必要とする。第2セットのSCRと誘導加熱コイルと直列のキャパシタを有する「ポニー回路」を含み、インバータSCRを起動する前に並列共振回路で発振を開始するために少量の時間活性化することができる。しかしながら、負荷インピーダンスは誘導加熱及び溶解用途において劇的に変化する可能性があり、インバータがラッチオンするのに十分な電流を生成することが困難となり、より高い電流を引き出せるように回路を再調整することを必要とする起動問題を引き起こす。このような再調整及びポニー回路コンポーネントは、電力システム全体に複雑さとコストを追加する。
【0004】
誘導加熱溶解システムは、しばしばSCRベースの整流器の位相制御を使用し、SCRベースの整流器からのDC出力電圧を制御する。この場合、整流器SCRは、AC入力相電圧に対する角度αでトリガ又はオンされ、角度αは、DC出力電圧振幅を制御するために変化する。しかし、0より大きい角度αで整流器を動作させると、位相電圧と位相電流の間に変位が生じ、変位力率が低下する。さらに、3相整流は、ある相から次の相への転流が発生すると、位相電圧の歪みを生じ、電圧ノッチが生じる。ノッチの深さ、面積、及び位置は、角度αが変化すると変化し、電圧ノッチは、同じフィードを共有する他の装置に影響し得る。加えて、整流器によってソースから引き出される電流は、全高調波歪(THD)性能に劣る非正弦波であり、電流と電圧の両方のTHDは、角度αの増加とともに増加する。インバータ電圧及びインバータ電流の角度変化は、インバータの周波数変調などによって電力を制御するために使用できる。しかし、インバータSCRのスイッチング損失は、インバータ電圧と電流の間の角度が増加するにつれて増加する。そして、インバータSCRのスイッチング損失により、より高いスイッチング角度でより少ない量の電流を処理するために、より低い角度でスイッチングする場合、デバイスが提供し得る電流引き込みからデバイスの定格を下げる必要がある。
【0005】
電圧源インバータ(VSI)は、誘導加熱溶解システムのための直列共振タンクに電力を供給するために使用できる。VSIシステムは、起動回路を必要とせずに、制御の容易さ、インピーダンス整合の容易さ、及び複雑さの低減を提供できる。いくつかの電圧源電源システムは、入力ACをDCに変換するために受動多相ダイオード整流器を使用し、0.93以上の一定のライン力率を提供できる。しかし、ダイオードをオン又はオフにすることはできず、DCバス電圧は一定であり、インバータ出力電力を制御するために使用することはできない。代わりに、多くのVSIシステムでは、インバータ周波数変調を使用して電力を制御している。インバータコントローラは、直列共振タンク回路の共振周波数から離れたところでインバータスイッチをオン又はオフにする。ユーザが所望の電力セットポイントを増加させると、インバータコントローラはパルスの周波数を直列共振タンク回路の共振周波数に向かって移動するように変更する。制御パルスの周波数が直列共振タンク回路の固有共振周波数に近づくと、インバータの出力電力が増加する。しかし、インバータ周波数変調制御は、インバータの非共振スイッチングのため、インバータスイッチのスイッチング損失が増加する。さらに、同量の電流に対して、位相角が増加すると、モジュール損失も増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、電力変換システムは、整流トランジスタを有するアクティブ整流器と、前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンクリアクタを有するDCリンク回路と、インバータトランジスタと、前記DCリンク回路に結合された入力とを有するインバータと、前記インバータの出力に結合され、誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、システム出力電力を制御するための変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する前記整流トランジスタのトリガ間の略一定の角度で前記整流トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、インバータコントローラと、前記アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を含む。
【0007】
他の態様において、電力変換システムは、整流トランジスタを有するアクティブ整流器と、前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCキャパシタを有するDCリンク回路と、インバータトランジスタと、前記DCリンク回路に結合された入力とを有するインバータと、前記インバータの出力に結合され、誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、システム出力電力を制御するための変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する前記整流トランジスタのトリガ間の略一定の角度で前記整流トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、インバータコントローラと、前記アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を含む。
【0008】
さらに他の態様において、誘導加熱又は溶解システムは、誘導加熱コイルと、整流トランジスタを有するアクティブ整流器と、前記アクティブ整流器の出力に結合されたDCリンク回路と、インバータトランジスタと、前記DCリンク回路に結合された入力とを有するインバータと、前記インバータの出力に結合され、前記誘導加熱コイルを有する共振タンク回路と、システム出力電力を制御するための変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用して、AC入力相電圧に対する前記整流トランジスタのトリガ間の略一定の角度で前記整流トランジスタを制御するように構成された整流器コントローラと、インバータコントローラと、前記アクティブ整流器の入力に結合された入力フィルタと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】誘導加熱溶解CSI電力システムの概略図である。
【0010】
図2】多相SCRベースの整流器、DCリンクリアクタを有するDCリンク回路、SCRベースの出力インバータ、誘導加熱コイルを含む共振タンク回路、ポニー回路、整流器コントローラ、インバータコントローラを有するCSI電力システムの概略図である。
【0011】
図3図2の整流器に供給されるAC入力相電圧、ならびに整流器のDC波形、及び整流器のDC出力電圧のグラフである。
【0012】
図4】電圧ノッチのあるAC入力相電圧の1つのグラフである。
【0013】
図5】AC入力相電圧の1つと対応するAC入力相電流のグラフを示す。
【0014】
図6】IGBTアクティブ整流器とIGBTインバータを有する誘導加熱溶解CSI電力システムの概略図である。
【0015】
図7図6のシステムにおけるアクティブ整流器正弦波パルス幅変調スイッチング制御信号の信号図である。
【0016】
図8図6のシステムにおける1相のAC入力電流とAC位相電圧のグラフである。
【0017】
図9図6のシステムにおける出力電流(アンペアRMS)の関数としてのインバータ電力と温度のグラフである。
【0018】
図10図6のシステムにおける一定のインバータ位相角に対するインバータ電力と温度のグラフである。
【0019】
図11】ダイオード整流器とIGBTインバータを有する誘導加熱溶解VSI電力システムの概略図である。
【0020】
図12図11のシステムにおけるインバータ電力と温度のグラフである。
【0021】
図13】IGBTアクティブ整流器とIGBTインバータを有する誘導加熱溶解VSI電力システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面では、類似の参照番号は全体的に類似の要素を示しており、様々な特徴は必ずしも縮尺に合わせて描かれているわけではない。様々な回路、システム及び/又は構成要素の1つ又は複数の動作特性は、以下、回路が電力供給され動作しているときに、場合によっては様々な構造の構成及び/又は相互接続に起因する機能の文脈で記述される。
【0023】
図1は、多相SCRベース整流器101、DCリンクリアクタ(例えば、チョーク)を有するDCリンク回路102、SCRベース出力インバータ103、誘導加熱コイルを含む共振タンク回路104、整流器コントローラ106、及びインバータコントローラ108を有するCSI電力システム100を示す。整流器101とインバータ103は、線周波数電力を制御可能な高周波電力に変換し、加熱及び/又は溶解用途のために誘導加熱コイルを駆動する。並列共振タンク回路104に供給されるCSIインバータ103の使用は、誘導加熱コイルの巻線が、他の巻線、負荷又は接地への断続的な短絡を起こしやすく、インバータに反映される急速なインピーダンス変化を引き起こすという誘導加熱コイルの過酷な電気的及び機械的環境のために有利である。電流源インバータ103は、DCリンク回路102のDCリアクタの電流制限効果によって、そのようなインピーダンス変化を容易に処理する。
【0024】
図2は、多相SCRベース整流器201、DCリンクリアクタ(例えば、チョーク)を有するDCリンク回路202、SCRベース出力インバータ203、誘導加熱コイルを含む共振タンク回路204、ポニー回路205、整流器コントローラ206、及びインバータコントローラ208を有するCSI電力システム200を示す。システム200は、整流器201及びインバータ203の両方にSCRを含む。SCRが電流を伝導するためには、SCRは、伝導すべき順方向電流と、それぞれのコントローラ206又は208からのゲートにおける正のパルスを有していなければならない。この例におけるポニー回路205は、誘導加熱コイルと直列の第2セットのSCR及びキャパシタを含み、インバータSCRが導通するために並列共振タンク回路204内で発振する電流を提供する。ポニー回路205の付加されたSCRは、並列共振タンク回路204で発振を開始するために、インバータコントローラ208によって短時間動作される。そして、SCRをオン状態に維持するのに電流が十分に高くなると、インバータコントローラ208はインバータ203を起動する。誘導加熱溶解用途において負荷インピーダンスは劇的に変化するので、インバータ203がラッチオンするのに十分な電流を得るのは難しい。これは電力変換器システム200の初期問題につながる可能性があり、これはより高い電流を引き出せるように回路を再調整することによってのみ解決できる。これらのコンポーネントによって、電力システム200全体が複雑になり、高コストになる。
【0025】
図3は、時間の関数として整流器201に供給される各位相A、B及びCのAC入力電圧を表す曲線301,302及び303、ならびに整流器201のDC波形を示す曲線304、及び整流器201のDC出力電圧を示す曲線305を有するグラフ300を示す。一例では、加熱及び/又は溶解のためにCSIベースのシステム200によって供給される電力は、出力DC電圧を変化させるためにSCRベースの整流器201を位相制御することによって制御される。整流器コントローラ206は、整流器201からの合成DC電圧を変化させるために、AC入力電力の位相電圧を参照して整流器SCRのトリガを位相角α(例えば、図3において「α」と表示されている)だけ遅延させる。整流器201の出力電圧は、次のように計算できる。
【数1】
【0026】
0より大きい角度αで動作するこの位相制御整流器は、位相電圧と位相電流との間に変位を生じさせ、その結果、変位力率が低下する。この変位により、使用される実際の電力よりも多くの皮相電力を要するための電力料金が、ユーザに請求されるかもしれない。
【0027】
図4は、AC入力相電圧の一つを示す曲線401を有するグラフ400を示す。この例における三相整流は、ある相から次の相への転流が発生すると、位相電圧に歪みが生じ、その結果、位相電圧波形の指示された部分402に電圧ノッチが生じる。位相制御整流器は、位相角αが変化するとノッチの深さ、面積及び位置が移動するため、この問題がさらに大きくなる。この問題は、同じフィードを共有する他の装置に影響を及ぼす可能性がある。位相制御整流器201は、電圧を複数回ゼロクロスさせ得る。すなわち、他の機器がタイミング基準として電圧のゼロクロスを使用する場合、他の機器の誤動作を引き起こし得る。
【0028】
図5は、AC入力相電圧の一つの電圧曲線501を有するグラフ500と、対応するAC入力相電流曲線511を有するグラフ510を示す。三相6パルス整流器は、ソースから引き出される電流511に歪みを生じる。電流が整流器201を介して伝導する性質のために、グラフ510に示すように、引き出される電流は非正弦波である。これにより、ライン電流511の全高調波歪が非常に高くなる。角度αが増加すると、電流と電圧の両方のTHDが増加する。これは、入力ライン上で共有されるキャパシタのような反応性コンポーネントの問題を引き起こす。これにより、コンポーネントの不要な共振や過熱が発生し得る。
【0029】
図6は、多相IGBTアクティブ整流器601、DCリンクリアクタ(例えば、チョーク)を備えたDCリンク回路602、IGBT出力インバータ603、誘導加熱コイルを含む共振タンク回路604、整流器コントローラ606、インバータコントローラ608、及び入力フィルタ610を備えたCSI電力システム600を示している。整流器コントローラ606は、対応するAC入力位相電圧に対する所定の位相のアクティブ整流器IGBTのトリガ間のほぼ一定の角度αでアクティブ整流器601のIGBTを制御する。一定の整流器位相角αでの動作により、ライン歪み、電圧ノッチなどが、フィルタ610によって対処される管理可能なレベルまで安定化される。整流器コントローラ606は、一定の整流器位相角αを維持しつつ、変調指数(MI)制御付き正弦波パルス幅変調(SPWM)を使用してアクティブ整流器IGBTを動作させ、システム出力電力を制御する。
【0030】
代わりに、例えば、インバータ603の周波数を変調することによって、インバータ出力電圧と出力電流との間のインバータ位相角を変化させることを出力電力制御に使用できる。但し、インバータの電圧と電流との間の角度が増加すると、同じ電流量でもインバータIGBTのスイッチング損失は増加する。これは、より高いスイッチング角度でより少ない量の電流を処理するために、低位相角度でスイッチングする場合に使用可能な電流引き込みからインバータIGBTのディレーティングにつながる。インバータIGBTスイッチング損失及びディレーティングを軽減又は回避するために、システム600は、代わりに、整流器変調指数制御を実行し、整流器位相角αを実質的に一定値(例えば、±1度)に制御しながら出力電力を制御する。電力変換システム600は、CSIコンバータの上記のすべての問題をまとめて軽減する。
【0031】
図7は、AC電源入力フィード(例えば、60Hz又は50Hz)の基本周波数におけるAC入力位相の一つの正弦波形を示す曲線701と、三角変調信号を示す曲線702を有するグラフ700を示す。図7は、また、対応する位相のアクティブな整流器トランジスタを制御するために整流器コントローラ606によって生成されるパルス幅変調スイッチング制御信号を示す曲線711を有するグラフ710を示す。図6のIGBTベースのアクティブ整流器601は、SCRの代わりにトランジスタ(例えば、IGBT、電界効果トランジスタ(FET)等)を使用する三相6パルス整流器である。アクティブ整流器トランジスタは、図7に示すようにSPWMを使用して駆動される。一例における整流器コントローラ606は、基本周波数における各対応するAC入力位相(例えば、A、B、C)の正弦波波形(例えば、曲線701)を、より高い周波数の各三角形キャリア波形(例えば、曲線702)と比較し、各位相の正弦波変調信号701を互いに120度シフトさせる。パルス幅変調は、整流器コントローラ606の電気回路(例えば、正弦波発生器及びコンパレータ)を用いて実施でき、あるいは、正弦波PWMは、整流器コントローラ606のプログラムされたプロセッサを用いてデジタル的に実施できる。
【0032】
整流器コントローラ606による比較により、パルス列内の基本周波数を符号化する各位相のための一連のパルス(例えば、曲線711)が生成される。正弦波波形の振幅(例えば、曲線701の振幅)と三角キャリア波形の振幅(例えば、曲線702の振幅)の比が変調指数(MI)である。一例における整流器コントローラ606は、システム電力を制御するために、変調指数を変化させて各アクティブ整流器トランジスタのデューティサイクルを変更し、IGBT整流器601の整流されたDC出力を調整する。アクティブ整流器601の高周波電流パルスは、アクティブ整流器入力とAC電源供給の間に結合されたローパスフィルタ610を介して積分される。
【0033】
図8のグラフ800は、システム600における一例の位相のAC入力又はライン電流を示す曲線801と、対応するAC入力位相のAC位相電圧を示す曲線802とを含む。ローパスフィルタ610は、アクティブ整流器トランジスタの高スイッチング周波数電流を除去し、基本周波数の電流のみをラインに反射させる。電流の転流は基本ライン周波数に比べて高周波数であるため、ローパスフィルタ610は、6パルス整流プロセスで通常見られるノッチを除去か大幅に低減し、それによってライン電圧とライン電流の両方でTHDを低減する。これにより、電圧歪みが非常に低くなり、複数のゼロクロスが除去されるため、フィードを共有する装置の潜在的な問題が解決される。さらに、曲線801及び802の位相が揃った波形によって示されるように、整流器コントローラ606は、電圧及び電流波形の相対位相を制御して、力率を改善する。前述したように、6パルスダイオード整流器は、電圧と電流の間に変位を生じさせて、ライン力率を減少させる。SPWM法は、出力電圧を調整するために電圧と電流を変位させる必要がないため、電流(例えば、曲線801)は、電圧(曲線802)と同位相に保持され、1(例えば、力率1)に等しい変位力率を生成できる。整流器コントローラ606は、ライン上に見られる変位力率に影響を与えることなく、アクティブ整流器601の出力電圧を変化させられる。
【0034】
加えて、インバータトランジスタ(例えば、IGBT)は、並列共振タンクに電流が蓄積されてSCRの最小ラッチ電流を満たすのを待たずに起動できるので、図6のCSIベースのシステム600は、ポニー回路又は他の起動回路を必要としない。その代わりに、インバータ603で使用されるスイッチは、最小ラッチ電流を必要としないトランジスタである。インバータ603は、単純に連続的に切り替えることができる。図示の例では、インバータ603は、DCリンクリアクタの各端子と並列共振タンク回路との間に結合された4つのIGBTトランジスタを有するHブリッジ構成である。一例では、ブリッジがオンになると、並列タンクの共振周波数よりも高いインバータ出力周波数で、電流がインバータ603を介して並列タンク回路に供給される。これにより、インバータ及びDCリアクタを流れる電流量を増加させるタンク全体の電圧が上昇する。これにより、インバータがラッチオンするのに十分な電流を得るための二次回路が不要になる。これはまた、従来の電流源電源で散見される「起動問題」を解決する。
【0035】
図9は、出力電流(アンペアRMS)の関数としてのグラフ900を示す。グラフ900は、IGBT電力(図の左側のワットスケールに対して)を示す曲線901、モジュールワットを示す曲線902、インバータIGBTのダイオード電力を示す曲線903、インバータIGBT接合温度(図の右側の℃スケールに対して)を示す曲線904、及びIGBTケース温度を示す曲線905を有する。一定のライン力率を保持し、電圧ノッチを低減するために、整流器コントローラ606は、アクティブ整流器601の点弧角を一定に保持する。これにより、高い位相角で必要な電流を処理するため、インバータの損失が増加する。図9に示すように、同じ量の電流に対して位相角が増加すると、インバータIGBTモジュールのワット損失及び接合温度は増加する。
【0036】
図10は、20°で一定に保持されたインバータ位相角に対する出力電流(Arms)の関数としてのグラフ1000を示す。グラフ1000は、IGBT電力(図の左側のワットスケールに対して)を示す曲線1001、モジュールワットを示す曲線1002、インバータIGBTのダイオードの電力を示す曲線1003、及びインバータIGBT接合温度(図の右側の℃スケールに対して)を示す曲線1004、及びIGBTケース温度を示す曲線1005を有する。一定のライン力率を保持し、電圧ノッチを低減するために、整流器コントローラ606は、アクティブ整流器601の点弧角を一定に保持する。これにより、高いインバータ位相角で必要な電流を処理するため、インバータ603の損失が増加する。図10に示すように、同一モジュール内の電流をほぼ二倍に増加させることができ、ディレーティングの問題を解決する。
【0037】
ここで、図11図13を参照すると、別の態様は、VSIベースの誘導加熱溶解電力変換器を提供する。図11は、多相ダイオード整流器1101、DCリンクキャパシタを有するDCリンク回路1102、IGBT出力インバータ1103、誘導加熱コイルを有する直列共振タンク回路1104、及びインバータコントローラ1108を有する誘導加熱溶解VSI電力システム1100を示す。直列共振タンク回路1104に供給される電圧源インバータ1103は、例えば、起動回路を必要とせず、制御の容易さ、インピーダンス整合の容易さ、及び複雑さの低減による利点を提供する。整流器1101は、入力ACをDCに変換してDCリンクキャパシタにDCバス電圧を供給する多相ダイオード整流器である。受動整流器は、例えば0.93又はそれ以上の一般的に一定のライン力率を提供する。しかし、ダイオードをオン又はオフにすることができないため、整流器1101によって出力されるDCバス電圧は、一定のAC入力供給電圧に対して一定であり、インバータ出力電力を制御するために整流器1101を使用できない。例えば、直列共振タンク回路1104の共振周波数から離れてインバータスイッチをオン及びオフにする信号を生成するインバータ制御部1108を用いて、インバータの周波数変調によって出力電力を制御できる。所望の出力電力設定点が増加すると、インバータ制御部1108は、直列共振タンク回路1104の共振周波数に向かって移動するようにパルスの周波数を変更する。インバータスイッチング制御パルスの周波数が直列共振タンク回路1104の固有共振周波数に近づくにつれて、インバータ1103の出力電力は増加する。
【0038】
しかしながら、図12に示すように、この方法は、インバータ1103の非共振スイッチングのために増加するインバータIGBTスイッチング損失の影響を受ける。図12は、図11のシステム1100におけるインバータ電力及び温度をインバータ位相角の関数として示すグラフ1200を含む。グラフ1200は、IGBT電力(図の左側のワットスケールに対して)を示す曲線1201、モジュールワットを示す曲線1202、インバータIGBTのダイオードの電力を示す曲線1203、ならびにインバータIGBT接合温度(図の右側の℃スケールに対して)を示す曲線1204、及びIGBTケース温度を示す曲線1205を有する。図12に示すように、同じ電流量に対して、インバータ位相角が横軸に沿って増加するにつれて、モジュール電力損失(曲線1202)も増加する。
【0039】
図13は、別の態様による誘導加熱溶解VSI電力システム1300を示す。システム1300は、IGBTアクティブ整流器及びIGBTインバータを有する。システム1300は、多相IGBTアクティブ整流器1301、DCリンクリアクトル(例えば、チョーク)を有するDCリンク回路1302、IGBT出力インバータ1303、誘導加熱コイルを含む直列共振タンク回路1304、整流器コントローラ1306、インバータコントローラ1308、及び入力フィルタ1310を含む。この例では、インバータ制御部1308は、インバータスイッチのスイッチング損失を低減するために、インバータ位相角を低く固定する。これにより、インバータ電流を増加させてスイッチング損失を導通損失と交換し、同じインバータ1303の出力kw能力を増加させられる。
【0040】
アクティブ整流器1301は、SCRの代わりに、トランジスタ(例えば、IGBT、FET等)を使用する三相6パルスアクティブ整流器である。整流器コントローラ1306は、SPWM(例えば、図7に関連して上述したように、AC入力電力の基本周波数における正弦波波形と、より高い周波数の三角キャリア波形との回路ベース又はデジタル比較)を使用してアクティブ整流器トランジスタを駆動する。一例では、整流器コントローラ1306は、パルス列内の基本周波数を符号化するパルスを有するアクティブ整流器1301にアクティブ整流器スイッチング制御信号を提供する。三角キャリア波形の振幅に対する正弦波波形の振幅の比が変調指数であり、整流器コントローラ1306は、変調指数を変化させてアクティブ整流器トランジスタのデューティサイクルを変化させ、IGBTアクティブ整流器1301の整流されたDC出力を制御する。高周波電流パルスは、ローパスフィルタ1310を介して積分される。ローパスフィルタ1310は、アクティブ整流トランジスタの高スイッチング周波数電流を除去し、基本周波数の電流のみをラインに反射させる。
【0041】
IGBTアクティブ整流器1301のDC出力は変化させられるので、それを電圧源インバータ1303と併用してインバータ出力電力を制御できる。一例では、インバータ制御器1308は、インバータ出力電圧とインバータ出力電流との間のインバータ位相角を15度インダクティブなどの固定値に保持する(例えば、調節する)。そして、整流器制御器1306は、インバータ1303の出力電力を制御するために、インバータ1303に供給するDC電圧を制御する変調指数制御を行う。これにより、図11のシステム1100と比較して、インバータのスイッチング損失を低減するする。また、インバータモジュールの総損失を大幅に増加させることなく、インバータ電流を増加させられる。
【0042】
好ましい実施形態を参照して例示的な実施形態を説明した。明らかに、上述の詳細な説明を読んで理解すれば、修正及び変更が想起される。例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内にある限り、そのようなすべての修正及び変更を含むものとして解釈されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】