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特表2024-509645コロナウイルス科感染の治療において使用するためのアプタマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】コロナウイルス科感染の治療において使用するためのアプタマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20240226BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240226BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20240226BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P3/02
A61P9/00
A61P25/00
A61P9/06
A61P9/12
A61P9/10
A61P17/14
A61P17/00
A61P1/04
A61P25/02
A61P7/02
C12N15/115 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561840
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2022059466
(87)【国際公開番号】W WO2022214670
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/059328
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519184745
【氏名又は名称】ベルリン キュアーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーバーラント アンネカトリン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルカット ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】グッテル ペーター
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA18
4C086ZA20
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA54
4C086ZA69
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZB33
4C086ZC21
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を克服した患者において、長期COVIDに関連する疾患症状の治療、治癒又は予防に使用するための新たなアプタマー分子、かかるアプタマー分子を含む医薬組成物及びキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス科に由来するウイルスによる感染を克服した患者において、長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することによる、被験体の治療に使用するためのアプタマーであって、該アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマー。
【請求項2】
前記疾患症状が、慢性疲労症候群、姿勢起立性頻脈症候群(PoTS)、自律神経失調症、振戦、注意欠陥、失名詞症、神経障害、横断性脊髄炎、急性壊死性脊髄炎、及びギラン・バレー症候群等の神経学的症状、心筋炎症、不整脈、頻脈、徐脈、高血圧症、及び房室(AV)ブロック等の心血管症状、脱毛症及び湿疹等の皮膚症状、又は胃腸疾患を含む群からの1つ以上を含む、請求項1に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項3】
前記アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体とその標的タンパク質との相互作用を阻害するために使用される、請求項1又は2に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項4】
前記アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を検出することができる患者の治療において使用するためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項5】
前記患者が、Gタンパク質共役受容体に対する機能的自己抗体、好ましくは、ヒトGタンパク質共役受容体アドレナリン作動性アルファ-1受容体、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体及び/又はノシセプチン受容体のいずれか1つ、より好ましくは、アドレナリン作動性ベータ2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体のいずれか1つに特異的な機能的自己抗体を示し、特に好ましくは、前記患者は、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及びMAS受容体のそれぞれに特異的な機能的自己抗体を含む抗体パターンを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマーと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための少なくとも1つのアプタマー及び容器を備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス科由来のウイルスによって引き起こされる感染の治療法において使用するための新たなアプタマー分子、in vitro/ex vivoでコロナウイルス科由来のウイルスによって引き起こされる感染を予防する方法、かかるアプタマー分子を含む医薬組成物及びキット、並びにコロナウイルス科由来のウイルスによる体細胞の感染を予防するためのアプタマー分子の使用に関する。本発明はまた、コロナウイルス科ウイルスの重要な酵素内の特異的な新たに同定されたエピトープに結合するアフィニティー分子に関する。
【背景技術】
【0002】
新規の高病原性コロナウイルス(SARS-CoV-2)の出現とその急速な国際的拡散は、深刻な世界的な公衆衛生上の緊急事態を引き起こしている。2003年の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び2012年の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)等、他の病原性コロナウイルス株に感染した患者と同様に、SARS-CoV-2に感染した患者は、乾いた咳、発熱、頭痛、呼吸困難、及び肺炎を含む様々な症状を呈し、推定死亡率は3%~5%である。
【0003】
2019年12月の最初の流行以来、SARS-CoV-2は世界全体で212の国、地域、及び領域に広がっている。2020年4月8日現在、世界で1317130人のウイルス感染が確認されており、74304人の感染患者の死亡が確認されている(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019)。
【0004】
現在、世界中の様々な都市及び国が、継続的な拡散を最小限に抑えるために様々な範囲で封鎖されており、WHOは、SARS-CoV-2の急速で世界的な拡散に対して、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を発表した。
【0005】
コロナウイルスゲノムに対する系統発生解析により、SARS-CoV-2は、ベータコロナウイルス属の新たなメンバーであることが明らかになり、ベータコロナウイルス属はSARS-CoV、MERS-CoV、コウモリSARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)、並びにヒト及び多様な動物種において同定されたその他のものを含む。
【0006】
各コロナウイルスは、スパイク(S)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質、膜(M)タンパク質、及びヌクレオキャプシド(N)タンパク質を含む4つの構造タンパク質を含む。その中でも、スパイク糖タンパク質又はSタンパク質は、ウイルスの付着、融合、及び侵入において最も重要な役割を果たし、抗体、侵入阻害剤、及びワクチンの開発の最も有望な標的としてはたらく。Sタンパク質は、最初にS1サブユニット内の受容体結合ドメイン(RBD)を介して宿主受容体に結合し、次いでS2サブユニットを介してウイルス膜と宿主膜を融合させることにより、宿主細胞へのウイルスの侵入を媒介する(非特許文献1)。したがって、ウイルスエンベロープ上のホモ三量体スパイク糖タンパク質(各スパイクモノマーのS1サブユニット及びS2サブユニット)は、それらの細胞受容体に結合するために使用される。かかる結合は、細胞侵入のための細胞膜とウイルス膜との間の融合につながる事象のカスケードを引き起こす。
【0007】
SARS-CoV及びMERS-CoVのRBDは異なる受容体を認識する。SARS-CoVはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)を受容体として認識するが、MERS-CoVはジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)を受容体として認識する。SARS-CoVと同様に、SARS-CoV-2もACE2をウイルスSタンパク質に結合する宿主受容体として認識する(非特許文献2)。
【0008】
SARS-CoVスパイク及びその細胞受容体ACE2との相互作用に関する以前のcryo-EM研究は、標的体細胞上のACE2受容体への結合が、SARS-CoVが標的細胞に侵入するための重要な最初の段階であることを示している。最近の研究は、SARS-CoV-2の侵入を媒介する際のACE2の重要な役割も指摘している(非特許文献3及び非特許文献4)。
【0009】
ACE2を発現するHeLa細胞は、SARS-CoV-2感染の影響を受けやすいのに対し、受容体を欠いているHeLa細胞はそうではない。in vitro結合測定は、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)が低nM範囲の親和性でACE2に結合することも示し、RBDが、ACE2によるSARS-CoV-2の結合を担うスパイク糖タンパク質のS1サブユニット内の重要な機能成分であることを示している。
【0010】
より最近では、SARS-CoV2もヘパラン硫酸を補因子又は細胞接着因子として使用し、その後のACE-2が媒介する細胞侵入の成功を可能にすることを実証することができた。RBDとヘパラン硫酸との事前の接触は、その後の細胞取り込みに必要な「ウイルスコレクター」として機能する可能性がある。ここでは、SARS-CoV-2のRBDの正電荷を帯びたアミノ酸が、ヘパラン硫酸及びヘパリンへの潜在的な結合パートナーとして検討されている(非特許文献5)。
【0011】
要約すると、それぞれの各コロナウイルスのスパイクタンパク質は、ウイルスの感染性及び病原性に決定的であり、それらに関連している。今の段階では、コロナウイルスのスパイクタンパク質に向けられ、したがって感染プロセスを妨害することができる新規で追加の作用物質を特定するための研究開発が活発に行われている。この部分を選択的に標的とする抗体が開発される可能性があるが、第I相臨床試験に合格し、したがって患者に安全に投与することができる(小)分子を特定する方が更に有利である。
【0012】
さらに、ウイルス及びウイルス感染サイクルは、理論的には物質によって攻撃される可能性のある、より脆弱な部位を有する。アプタマーとしても知られるオリゴヌクレオチドベースの薬物の場合、かかる分子による妨害を受けやすい幾つかのかかる重要な部位が以前に特定され、説明されている。小分子、抗体由来の生物製剤、及びアプタマーを含む薬物の追加の潜在的な標的部位は、RNAウイルスの複製プロセスに関与する酵素である。かかる新規の標的部位及びかかる新規の標的部位に対して向けられたアフィニティー分子の特性評価は、コロナウイルス科感染と闘うためのツールキットを補足するであろう。
【0013】
抗ウイルス活性アプタマーの概要は、Gonzalez et al.及びZou et al.(非特許文献6及び非特許文献7)によって提供されている。
【0014】
実際、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスNTPアーゼ/ヘリカーゼに対する阻害性RNAアプタマー及びDNAアプタマーの分離に基づいて、それぞれ、抗コロナウイルス療法が更に報告されている。かかる抗ウイルス活性アプタマーの中で、抗インフルエンザアプタマーA22(-AATTAACCCTCACTAAAGGGCTGAGTCTCAAAACCGCAATACACTGGTTGTATGGTCGAATAAGTTAA;配列番号6)は、ヘマグルチニンの受容体結合領域を遮断することに言及しなければならない。本発明による標的としてのウイルスの細胞侵入メディエータに加えて、インフルエンザウイルスの核タンパク質等の他のウイルス標的結合部位も既に同定されている(非特許文献8)。
【0015】
COVID-19患者から新たに収集されたデータに基づく最近の出版物は、SARS-CoV-2が血流及び体の様々な領域に到達し、そこで微小血栓症を引き起こすようであることを示唆又は更には証明さえもしている。かかる微小血栓症は現在、COVID-19患者の主な死亡原因の1つと見なされている(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。
【0016】
パンデミックの過程で、例えばイタリアの研究では、COVID-19から回復した後でも85%を超える高い割合の患者が持続的な症状を呈することが明らかになった(非特許文献12)。COVID-19後の症状の程度に関する同様の結果が、調査したCOVID-19患者の75%超が病後の症状を呈していることを示したドイツの研究で確認されている(非特許文献13)。
【0017】
活動性のSARS-CoV-2感染及び疾患であるCOVID-19が治まった後に観察される持続する症状の複合体は、一般にポストCOVID症候群、長期COVID、PASC(SARS-CoV-2感染後の急性後遺症)、CCS(慢性COVID症候群)又はロングホール(long-haul)COVIDと呼ばれる。
【0018】
これらの症状としては、慢性疲労症候群、姿勢起立性頻脈症候群(PoTS)、自律神経失調症、横断性脊髄炎、急性壊死性脊髄炎、ギラン・バレー症候群等の1つ以上の神経学的障害、並びに心筋炎症、不整脈、頻脈、徐脈、及び房室(AV)ブロック(心停止にまで発展することさえある)等の心血管への影響を挙げることができる。
【0019】
したがって、新たな治療薬は、活動性のSARS-CoV-2感染の予防及び治療だけでなく、長期COVIDの形でのかかる感染に続く症状の予防及び治療にも必要とされている。興味深いことに、最近、長期COVIDと自己免疫との関係が示唆された。この点に関して、SARS-CoV-2によって誘発された自己免疫反応が、この疾患の重症度と長寿(長期COVID)の重要な要因である可能性が示唆された(非特許文献14)。
【0020】
新たな化合物及び組成物はいずれも、理論的には、患者においてコロナウイルス科によって引き起こされる症状の緩和及び治癒を含む、短期間で多くの臨床的に関連する適用において使用される可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Lu, G. et al. Nature 500, 227-231 (2013).
【非特許文献2】Zhou, P., et al. Nature 579, 270-273 (2020).
【非特許文献3】Walls, A. C. et al. Cell S0092-8674(20)30262-2 (2020). https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.02.058.
【非特許文献4】Hoffmann, M. et al. Cell S0092-8674 (20)30229-4 (2020). https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.02.052
【非特許文献5】Clausen et al., 2020, Cell 183, 1043-1057. e15.
【非特許文献6】Gonzalez, V.M. et al., 2016. Use of Aptamers as Diagnostics Tools and Antiviral Agents for Human Viruses. Pharmaceuticals (Basel) 9. https://doi.org/10.3390/ph9040078
【非特許文献7】Zou et al., 2019. Application of Aptamers in Virus Detection and Antiviral Therapy. Front Microbiol 10, 1462. https://doi.org/10.3389/fmicb.2019.01462
【非特許文献8】Negri et al., 2012. Direct Optical Detection of Viral Nucleoprotein Binding to an Anti-Influenza Aptamer. Anal Chem. 2012 Jul 3; 84(13): 5501-5508.
【非特許文献9】Ackermann M. et al., N Engl J Med. 2020 doi: 10.1056/NEJMoa2015432
【非特許文献10】Varga Z et al., The Lancet 2020 doi: 10.1016/S0140-6736(20)30937-5.
【非特許文献11】Wichmann D et al. Annals of Internal Medicine 2020 doi: 10.7326/M20-2003
【非特許文献12】Carfi A, Bernabei R, Landi F, Gemelli Against COVID-19 Post-Acute Care Study Group (2020) Persistent Symptoms in Patients After Acute COVID-19. JAMA 324:603-605. https://doi.org/10.1001/jama.2020.12603
【非特許文献13】Puntmann VO, Carerj ML, Wieters I, et al (2020) Outcomes of Cardiovascular Magnetic Resonance Imaging in Patients Recently Recovered From Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). JAMA Cardiol. https://doi.org/10.1001/jamacardio.2020.3557.
【非特許文献14】Khamsi R 2021, Nature 590(7844):29-31.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を患っている、又は感染を克服した被験体の治療法において使用するための新たな分子を提供することである。
【0023】
さらに、本発明の別の目的は、コロナウイルス科に由来するウイルスによる体細胞の感染を予防する方法を提供することである。
【0024】
かかるウイルス感染に対して使用され得る医薬組成物及びキットを提供することも、本発明の目的である。
【0025】
本発明の更なる目的は、コロナウイルス科由来のウイルスによる体細胞の感染を予防するための新規分子の使用を提供することである。
【0026】
COVID-19疾患の過程で最近認識された微小血栓症の関連性を考慮すると、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染に対して有効であると同時に抗凝固効果を示す新たな分子を提供することも目的である。
【0027】
本発明の更なる目的は、コロナウイルス科複製機構内の新規標的部位に対して向けられたアフィニティー分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前述の目的は、以下に明記する本発明の態様によって解決される。
【0029】
本発明の第1の態様によれば、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を治療、治癒、又は更なる進行を阻止することによる被験体の治療において使用するためのアプタマーであって、アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマーが提供される。
【0030】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態においては、被験体は哺乳動物であり、好ましくは、被験体はヒトである。
【0031】
本発明の第1の態様の1つの好ましい実施の形態においては、感染は、ベータコロナウイルス属、好ましくはサルベコウイルス亜属又はメルベコウイルス亜属由来のウイルスによって、より好ましくはMERS-CoV、SARS-CoV及びSARS-CoV-2を含む群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0032】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態においては、感染は、サルベコウイルス亜属由来のウイルス、好ましくは重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス種由来のウイルス、更により好ましくはSARS-CoV及びSARS-CoV-2のうちの1つによって引き起こされる。
【0033】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施の形態においては、感染は、SARS-CoV-2によって引き起こされる。
【0034】
本発明の第1の態様の1つの好ましい実施の形態においては、アプタマーが抗凝固活性を有し、好ましくは、アプタマーが、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿の部分トロンボプラスチン時間(PTT又は代替的にaPTT)として測定される凝固時間を60秒以上に延長することができる、及び/又はアプタマーが、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿のプロトロンビン時間(Quick値)を40%以下に低下させることができる。
【0035】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態においては、アプタマーはヒトトロンビンと選択的に相互作用するか又はそれと結合し、好ましくはアプタマーのヒトトロンビンへの結合のK値は1μM以下である。
【0036】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態においては、アプタマーは、ウイルスのスパイク(S)糖タンパク質、好ましくはスパイク(S)糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と選択的に相互作用することにより、より好ましくは、ウイルスのスパイク糖タンパク質と、被験体の宿主細胞のアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)又はジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)、更により好ましくはACE2との相互作用を阻止又は妨害することにより、体細胞の感染を妨害する。
【0037】
本発明の第1の態様の以前の実施の形態のより好ましい実施の形態においては、スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメインが、配列番号2(SARS-CoV-2スパイクRBD)又は配列番号3(SARS-CoVスパイクRBD)又は配列番号4(MERS-CoVスパイクRBD)の配列を有し、好ましくは、スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメインが配列番号2又は配列番号3の配列を有し、好ましくは、スパイク糖タンパク質が配列番号2の配列を有する。
【0038】
本発明の1つの好ましい実施の形態においては、アプタマーは、全身送達又は肺送達によって、好ましくは肺送達によって、より好ましくは吸入によって被験体に投与される。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、コロナウイルス科に由来するウイルスによる感染を克服した患者において、長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することによる、被験体の治療に使用するためのアプタマーであって、アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマーが提供される。
【0040】
第2の態様の好ましい実施の形態においては、疾患症状が、慢性疲労症候群、姿勢起立性頻脈症候群(PoTS)、自律神経失調症、振戦、注意欠陥、失名詞症、神経障害、横断性脊髄炎、急性壊死性脊髄炎、及びギラン・バレー症候群等の神経学的症状、心筋炎症、不整脈、頻脈、徐脈、高血圧症、及び房室(AV)ブロック等の心血管症状、脱毛症及び湿疹等の皮膚症状、又は胃腸疾患を含む群からの1つ以上を含む。
【0041】
本発明の第2の態様の別の好ましい実施の形態においては、アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体とその標的タンパク質との相互作用を阻害するために使用される。
【0042】
本発明の第2の態様の更に別の好ましい実施の形態においては、アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を検出することができる患者の治療において使用するためのものである。
【0043】
本発明の第2の態様の1つの好ましい実施の形態においては、患者が、Gタンパク質共役受容体に対する機能的自己抗体、好ましくは、ヒトGタンパク質共役受容体アドレナリン作動性アルファ-1受容体、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体及び/又はノシセプチン受容体のいずれか1つ、より好ましくは、アドレナリン作動性ベータ2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体のいずれか1つに特異的な機能的自己抗体を示し、特に好ましくは、患者は、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及びMAS受容体のそれぞれに特異的な機能的自己抗体を含む抗体パターンを示す。
【0044】
本発明の第3の態様によれば、アプタマーを用いてコロナウイルス科由来のウイルスによる体細胞の感染を予防する方法であって、方法がin vitro/ex vivoで実施され、アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、方法が提供される。
【0045】
本発明の第3の態様の好ましい実施の形態においては、細胞は哺乳動物細胞であり、好ましくは、細胞はヒト細胞である。
【0046】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による使用のためのアプタマーと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物が提供される。
【0047】
本発明の第4の態様の好ましい実施の形態においては、第1の態様による使用のための医薬組成物は、全身送達又は肺送達、好ましくは肺送達、より好ましくは吸入によって被験体に投与するためのものである。
【0048】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1の態様による使用のための少なくとも1つのアプタマー及び容器を備える、キットが提供される。
【0049】
本発明の第6の態様によれば、コロナウイルス科由来のウイルスによる体細胞の感染を予防するための、本発明の第1の態様に記載のアプタマーの使用であって、アプタマーがin vitro/ex vivoで使用される、使用が提供される。
【0050】
本発明の第7の態様によれば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2のRNA依存性RNAポリメラーゼのアミノ酸配列Leu-Tyr-Arg-Asn-Arg-Asp-Val(LYRNRDV;配列番号9)及び/又はHis-Arg-Phe-Tyr-Arg-Leu-Ala-Asn(HRFYRLAN;配列番号10)のペプチドに特異的に結合する、アフィニティー分子が提供される。
【0051】
本発明の第7の態様の好ましい実施の形態においては、アフィニティー分子が、最大で900ダルトンの分子量を有する小分子であり、より好ましくは、アフィニティー分子が、シンシナティ大学Compound Collection、ApexBio Technology LLCからのDiscoveryProbe(商標)Bioactive Compound Library Plus、及びCayman ChemicalからのSARS-CoV-2 Screening Libraryを含む群からのいずれか1つの小分子コレクションからの小分子である。
【0052】
本発明の第7の態様の別の好ましい実施の形態においては、アフィニティー分子がペプチドベースの化合物、より好ましくは抗体又はその結合フラグメントである。
【0053】
本発明の第7の態様の1つの好ましい実施の形態においては、アフィニティー分子がアプタマー又はオリゴヌクレオチドである。
【0054】
本発明の第8の態様においては、医薬として使用するための、第7の態様のアフィニティー分子が提供される。
【0055】
本発明の第9の態様においては、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染の治療、治癒又は更なる進行の阻止による被験体の治療において使用するための、第7の態様のアフィニティー分子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】SARS-CoV-2のスパイクタンパク質からのペプチド番号4(配列番号5の6aaペプチド配列;YRLFRK)の存在下でのBC007の四重鎖形成のNMR分析を示す図である。上のスペクトル:BC007と配列YRLFRKを有するペプチド番号4との1:1混合物の1H-NMRスペクトル;中央のスペクトル:配列番号5のペプチド番号4の純水中でのスペクトル;下のスペクトル:KCl存在下でのBC007の四重鎖構造のスペクトル。
図2図1と同じスペクトルを示す図であり、図は8.5ppm~6.0ppmの範囲に拡大されている。中央及び下:純粋な物質はかなりシャープなシグナルを示し、2つの物質の互いの相互作用により上スペクトルではそれらの位置が広がり、シフトする。
図3】VeroFM細胞及びCalu-3細胞におけるBC007の抗ウイルス用量反応効果に基づく、細胞培養物中でのBC007によるSARS-CoV-2複製の阻害を示す図である。
図4】本発明のアプタマーBC007(配列番号1)の固定化ヒトトロンビンへの結合のELISA試験を示す図である。
図5】それぞれ(A)部分トロンボプラスチン時間(PTT)及び(B)プロトロンビン時間(Quick)値として測定される、アプタマーBC007(配列番号1)及びAS1411(配列番号7)によって引き起こされる凝固阻害の測定結果を示す図である。
図6】SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(配列番号8の全長配列)のペプチドLYRNRDV(上;配列番号9)及びペプチドHRFYRLAN(下;配列番号10)の存在下でのBC007の四重鎖形成のNMR分析を示す図であり、両方のペプチドが、結合の成功及び特異的結合を示す四重鎖折り畳みを誘導することができた。
図7】SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼのペプチドHRFYRLAN(配列番号10)で滴定されたBC007のITC(等温滴定熱量測定)分析を示す図である;上-サーモグラム;下-結合等温線。
図8】SARS-CoV-2のスパイクRBDにも存在する比較用の高荷電ペプチド対照配列NRKRISN(配列番号11)で滴定されたBC007のITC分析を示す図である;上-サーモグラム;下-結合等温線。
図9】対照ペプチドNRKRISN(配列番号11)及びSARS-CoV-2のスパイクタンパク質由来のペプチド番号4(配列番号5;YRLFRK)の存在下でのBC007のNMR分析の比較を示す図である。
図10】患者血清中の長期COVID症状及び付随するGPCR自己抗体の概要を示す図である。
図11】ポストCOVID症状に苦しむ患者の血清からのGタンパク質共役受容体を標的とする機能的に活性な自己抗体のバイオアッセイでの測定を示す図である。A:ベータ2-アドレナリン受容体(ベータ2-R)、ノシセプチン受容体(ノシセプチン-R)、アンギオテンシンII AT1受容体(AT1)、及びアルファ1-アドレナリン受容体(アルファ1-R)に対する正の変時性自己抗体;これらの測定は、負の変時効果を発揮する抗体を遮断するアンタゴニストであるアトロピン、A779及びBQ123の存在下で行われた;アプタマーBC007とプレインキュベートすると、機能活性が失われた。対照は、健康なドナーの試料であった。B:MAS受容体(MAS-R)、ムスカリン作動性M2受容体(M2-R)、エンドセリン受容体(ETA-R)に対する負の変時性自己抗体;ここでは、正の変時作用自己抗体の活性は、ICI118.551、J113397、ロサルタン、及びウラピジルによって遮断された;アプタマーBC007とプレインキュベートすると、機能活性が失われた。対照は健康なドナーの試料であった;Neuro=神経学的症状;Cardiovasc**=心血管症状、n.a.=該当せず、PoTS=姿勢起立性頻脈症候群;NOC-AAB§=ノシセプチン受容体に対する機能的に活性な自己抗体、β2-AAB=ベータ1-アドレナリン受容体を標的とする自己抗体、α1-AAB=アルファ1-アドレナリン受容体を標的とする自己抗体、ETA-AAB=エンドセリン受容体を標的とする自己抗体、M2-AAB=ムスカリン受容体を標的とする自己抗体、AT1-AAB=アンギオテンシンII AT1受容体を標的とする自己抗体、MAS-AAB=MAS受容体を標的とする自己抗体。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、コロナウイルス科のウイルスのスパイクタンパク質と選択的に相互作用することができ、したがってかかるウイルスによる体細胞の感染を妨害すると予想される新規化合物の同定に基づく。さらに、本発明者らは、特定のアプタマー分子が、ヒト細胞におけるかかるウイルスの感染活性及び複製を阻害できることを認識することに成功した。
【0058】
本発明者らは、一般にトロンビン結合アプタマー又はBC007とも呼ばれる配列番号1のアプタマーと、トロンビン等の幾つかの結合パートナーとの相互作用を集中的に研究した。NMR技術を使用してBC007とトロンビンとの間の相互作用の特異性を調査している際に、BC007によるNMR検出可能な四重鎖構造の採用によって証明されるように、BC007への強力な結合には完全長のトロンビン分子全体が必要ではないことを検出することができた。
【0059】
実際、結合部分から得られたはるかに短いペプチド配列は、同じ結果につながることが認識された(データは示していない)。実際、BC007の四重鎖折り畳みを引き起こす全長トロンビンから採取されたペプチドは、好ましくはアルギニンの正電荷を有する側鎖を持つ幾つかのアミノ酸を含む配列モチーフからなるか、又はそれらを有することが明らかになった。これらのペプチドは、トロンビンと並んでコロナウイルス科由来のウイルスのスパイクタンパク質等の他のタンパク質で請求項に記載のアプタマーによって選択的に結合され得るそれらの正電荷に起因して、溶媒に面する表面を表す可能性がある。
【0060】
現在のSARS-CoV-2及びその他のコロナウイルス関連感染症の大流行によって引き起こされる問題に直面して、本発明者らは、請求項に記載のアプタマー分子がコロナウイルス感染に対する作用物質として機能する可能性があるかどうかを検討した。
【0061】
驚くべきことに、本発明者らは、異なるコロナウイルス株のスパイクタンパク質、特にその受容体結合ドメインに属する配列が、アルギニンに富むクラスター等の正電荷を有する側鎖を持つ幾つかのアミノ酸を含む配列モチーフを有することを学んだ(上記の非特許文献4を参照されたい)。
【0062】
この情報と共に、特定のアプタマーとトロンビンとの相互作用の研究から得た実質的な経験に基づいて、本発明者らは、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン内の正電荷を帯びたアミノ酸の代表的なクラスター及びアルギニンに富む配列セクション(クラスター等)、並びにコロナウイルス科ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ内のこれまで知られていなかった標的ペプチドの同定に成功した。
【0063】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメインの一部であるペプチド番号4(アミノ酸配列YRLFRK;配列番号5を有する)を、BC007との結合研究の代表的なペプチドとして選択した。驚くべきことに、ペプチド番号4とBC007との間に強い相互作用が実際に存在し、これがBC007に四重鎖折り畳みを採用させることを観察した(図1及び図2、並びに以下の実施例セクションの実施例1を参照されたい)。
【0064】
かかる強力な相互作用は非常にもっともらしいものであり、全長分子、スパイクタンパク質全体、及びウイルス粒子全体において持続する可能性が高く、ここではスパイクタンパク質はコロナウイルス科のウイルスの感染性及び病原性を担う。また、コロナウイルス科由来の他のウイルス株のスパイクタンパク質内に正電荷を帯びたアミノ酸のクラスターが存在することに基づいて、本発明が他のかかるウイルスに対しても有用であると考えられる。
【0065】
本発明のアプタマーとSARS-CoV-2のスパイク配列モチーフとの強力な相互作用に関するこの証拠から出発して、本発明者は、SARS-CoV-2に感染したヒト細胞に対する本発明のアプタマーの阻害活性の分析を進めた。
【0066】
驚くべきことに、本発明のアプタマーは、SARS-CoV-2のウイルス活性の非常に効率的な阻害を実証しただけでなく、COVID-19の潜在的な治療の選択肢として現在議論されている他の抗ウイルス剤を実際に上回っているように見えた(実施例2を参照されたい)。
【0067】
これらの結果は、コロナウイルス科のウイルスによる感染の治療、治癒又は予防における本発明のアプタマーの使用の治療的適用がベースとしている治療効果を明らかに反映している。
【0068】
観察された効果に加えて、G-四重鎖オリゴヌクレオチド構造は、宿主細胞へのHIVの侵入を阻害するだけでなく(ISIS5320)、HIVインテグラーゼ自体も阻害することによって(T30177又はAR177、臨床試験における最初のインテグラーゼ阻害剤)、例えばHIV感染における抗ウイルス効果の発生を引き起こすことが以前に報告されている(総説については、Roxo, C., et al., 2019. G-Quadruplex-Forming Aptamers-Characteristics, Applications, and Perspectives. Molecules 24. https://doi.org/10.3390/molecules24203781を参照されたい)。
【0069】
HIVは、SARS-CoV-2及び他のコロナウイルス科のウイルスと同様に、ssRNAウイルスであり、ウイルス複製のステップが同等であることを意味する。したがって、結合パートナーとの相互作用でG四重鎖のような折り畳みを採用する可能性がある請求項に記載のアプタマーが、スパイクタンパク質との直接的な相互作用に加えて、SARS-CoV-2インテグラーゼ又はその他の脆弱な部位も阻害し得るという可能性は非常に高い。
【0070】
さらに、COVID-19を患っている患者の死亡における微小血栓症の重要な関連性を示す最近のデータ、抗血栓効果及び抗凝固効果を持つ分子が、コロナウイルス科感染症との関連で研究されている。本願の請求項に記載のアプタマー分子がコロナウイルス科由来のウイルスによる感染と闘い、同時に抗凝固効果を示す能力により、本発明は、COVID-19及び他のコロナウイルス科関連疾患に対する使用に更に適したものとなる。
【0071】
これは、COVID-19に対する治療薬として最近提案された他のアプタマー、例えばアプタマーAS1411(配列番号7)に勝る本発明のアプタマーの特別な利点である。かかる比較アプタマーは、抗血栓効果又は抗凝固効果を全く欠いており、したがって、本発明の二重モードの攻撃を欠いている。AS1411はもともと、細胞の表面に見られるヌクレオリンと呼ばれるタンパク質に結合する合成DNA分子として開発された。この活性をもとに、AS1411は、以前は癌治療の治験薬として研究されてきた。
【0072】
本発明の1つの態様によれば、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を治療、治癒、又は更なる進行を阻止することによる被験体の治療において使用するためのアプタマーであって、アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマーが提供される。
【0073】
本発明の範囲内で、ウイルスによる感染の治療における使用はまた、被験体の最初の感染が、本発明による使用のためのアプタマーによって予防され得ることを意味するものとする。さらに、より重要なことに、本発明による使用のためのアプタマーは、コロナウイルス科由来のウイルスに感染していると同定された被験体における感染の治療、治癒又は更なる進行の阻止に使用されるものとする。
【0074】
上記で検討されるように、非特許文献5の新たな知見に関して、更に、配列番号1のアプタマーもRBDのヘパリン結合モチーフと競合する可能性があるということはもっともらしい。上記アプタマーは、トロンビンのフィブリノーゲン結合部位であるエキソサイト1への結合がよく知られており、調査されていることに加えて、トロンビンのヘパリン結合モチーフと選択的に相互作用することが既に報告されている(エキソサイト2;Padmanabhan and Tulinsky, 1996 Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 52:272-282を参照されたい)。かかるヘパリン結合部位での負電荷を帯びたアミノ酸の存在の増加により、トロンビンのヘパリン結合モチーフへの既知の結合と同様に、SARS-CoV-2のRBDのヘパリン結合部位での配列番号1の結合がもっともらしいように見える。
【0075】
本発明の1つの実施形態によれば、アプタマーは、被験体の宿主細胞の細胞ヘパラン硫酸と選択的に相互作用することにより、体細胞の感染を更に妨害する。
【0076】
本発明の好ましい実施形態によれば、ウイルス感染を治療、治癒、又はその更なる進行を防止すべき被験体は脊椎動物であり、より好ましくは、被験体は哺乳動物である。本発明の意味の範囲内で、哺乳動物の群としては、限定されるものではないが、ラット、マウス、フェレット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、畜牛、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヒト以外の霊長類、及びヒトが挙げられる。最も好ましくは、被験体はヒトである。
【0077】
本発明の好ましい実施形態においては、本明細書に開示及び記載された本発明のアプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)、及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む。別のより好ましい実施形態においては、上記アプタマーは、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GG
TGT GGT TGG)からなる。
【0078】
2つの配列間の同一性のパーセントの決定は、本発明によればKarlin及びAltschulの数理アルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 5873-5877)を使用することにより達成される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら(J. Mol. Biol. (1990) 215: 403-410)のBLASTN及びBLASTPプログラムの原理である。BLASTヌクレオチド検索は、BLASTNプログラムで行われる。比較する目的でギャップ付きアライメントを得るために、ギャップ付きBLASTが、Altschulら(Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389-3402)により記載されるように利用される。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合に、それぞれのプログラムのデフォルトのパラメーターが使用される。
【0079】
本発明のより好ましい実施形態によれば、本明細書に開示される個々のアプタマー配列と少なくとも85%同一、更により好ましくは少なくとも90%同一、特に好ましくは少なくとも95%同一である核酸配列からなる、又は該核酸配列を含むアプタマー配列は、本発明の一部をなす。
【0080】
本発明の目的上、用語「アプタマー」は、標的分子に特異的にかつ高い親和性で結合するオリゴヌクレオチドを指す。規定の条件下で、アプタマーは、特定の3次元構造へと折り畳まれ得る。本発明の1つの好ましい実施形態においては、特許請求の範囲に記載されるアプタマーは、標的配列と特異的にかつ高い親和性で相互作用する。
【0081】
好ましい実施形態によれば、アプタマーは、コロナウイルス科由来のウイルスのスパイク糖タンパク質内の配列、好ましくはS1サブユニット内の配列、より好ましくはその受容体結合ドメイン内の配列と相互作用する。本発明の1つの実施形態によれば、アプタマーは、7アミノ酸のストレッチ内に2つ以上の正電荷を帯びたアミノ酸、より好ましくはアルギニンを有するウイルス配列内の領域に結合する。
【0082】
本発明のアプタマーは、核酸分子、つまりヌクレオチドの配列を含む、又は該配列のみからなる。好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、本明細書に規定されるヌクレオチド配列のみからなる。
【0083】
本発明のアプタマーは、好ましくは非修飾及び/又は修飾されたD-ヌクレオチド及び/又はL-ヌクレオチドを含む。核酸塩基の一般的な一文字表記によれば、ヌクレオチド配列がDNA配列であれば、「C」はシトシンを表し、「A」はアデニンを表し、「G」はグアニンを表し、そして「T」はチミンを表し、そしてヌクレオチド配列がRNA配列であれば、「T」はウラシルヌクレオチドを表す。以下でそれに反することが示されない限り、用語「ヌクレオチド」は、リボヌクレオチド及びデスオキシリボヌクレオチドを指すものとする。
【0084】
本発明のアプタマーは、DNAヌクレオチド配列又はRNAヌクレオチド配列を含み、又はそれらの配列からなり、したがってそれぞれDNAアプタマー又はRNAアプタマーと呼ばれ得る。本発明のアプタマーがRNAヌクレオチド配列を含む場合に、本発明全体を通じて指定された配列モチーフ内で、「T」はウラシルを表すと解される。
【0085】
本発明全体を通じて簡潔にする目的で、明示的なDNAヌクレオチド配列についてのみ述べられる。しかしながら、それぞれのRNAヌクレオチド配列も本発明により包含されると解される。
【0086】
1つの実施形態によれば、DNAアプタマーの使用が好ましい。DNAアプタマーは通常、血漿中でRNAアプタマーよりも安定である。しかしながら、代替的な実施形態によれば、RNAアプタマーが好ましい。別の実施形態によれば、一本鎖ヌクレオチド配列が好ましい。別の代替的な実施形態によれば、二本鎖ヌクレオチド配列が好ましい。
【0087】
本発明のアプタマーは、2’-修飾ヌクレオチド、例えば2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、及び/又は2’-アミノ修飾ヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含み得る。本発明のアプタマーはまた、デスオキシリボヌクレオチド、修飾デスオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又は修飾リボヌクレオチドの混合物を含み得る。用語「2’-フルオロ修飾ヌクレオチド」、「2’-メトキシ修飾ヌクレオチド」、「2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド」、及び/又は「2-アミノ修飾ヌクレオチド」はそれぞれ、修飾リボヌクレオチド、及び修飾デスオキシリボヌクレオチドを指す。
【0088】
本発明のアプタマーは修飾を含み得る。そのような修飾は、例えば少なくとも1つのヌクレオチドのアルキル化、すなわちメチル化、アリール化、若しくはアセチル化、エナンチオマーの包有、及び/又はアプタマーと1つ以上のその他のヌクレオチド若しくは核酸配列との融合を含む。そのような修飾は、例えば5’-PEG修飾及び/又は3’-PEG修飾、又は5’-CAP修飾及び/又は3’-CAP修飾を含み得る。代替的に又は付加的に、本発明のアプタマーは、修飾ヌクレオチド、好ましくはロックド核酸、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシ修飾ヌクレオチド、及び/又は2’-アミノ修飾ヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0089】
ロックド核酸(LNA)は、それぞれのRNAヌクレオチドの立体配座が固定された類似体を表す。ロックド核酸のオリゴヌクレオチドは、1つ以上の二環式リボヌクレオシドを含み、その2’-OH基は、C-炭素原子とメチレン基を介して連結されている。ロックド核酸は、それぞれの非修飾RNAアプタマー相当物と比べて改善されたヌクレアーゼに対する安定性を示す。またハイブリダイゼーション特性も改善され、それによりアプタマーの親和性及び特異性の向上が可能となる。
【0090】
別の好ましい修飾は、アプタマーの3’-末端及び/又は5’-末端への、いわゆる3’-CAP構造、5’-CAP構造、及び/又は修飾グアノシンヌクレオチド(例えば、7-メチル-グアノシン)の付加である。3’-末端及び/又は5’-末端のそのような修飾は、アプタマーがヌクレアーゼによる迅速な分解から保護されるという効果を有する。
【0091】
代替的に又は付加的に、本発明のアプタマーは、ペグ化された3’-末端又は5’-末端を示し得る。3’-PEG修飾又は5’-PEG修飾は、少なくとも1個のポリエチレングリコール(PEG)単位の付加を含み、好ましくは、該PEG基は、1個~900個のエチレン基、より好ましくは1個~450個のエチレン基を有する。好ましい実施形態においては、上記アプタマーは、HO-(CHCHO)-H(式中、nは1~900の整数であり、好ましくは、nは1~450の整数である)を有する線状PEG単位を有する。
【0092】
本発明のアプタマーは、全体的に又は部分的にペプチド核酸(PNA)として構成され得る。本発明によるアプタマーはさらに、Keefe AD et al., Nat Rev Drug Discov. 2010 Jul;9(7):537-50、又はMayer G, Angew Chem Int Ed Engl. 2009;48(15):2672-89、又はMayer, G. and Famulok M., Pharmazie in unserer Zeit 2007; 36: 432-436に記載されるように修飾され得る。
【0093】
用語「オリゴヌクレオチド」は概して、複数の結合されたヌクレオシド単位を含むポリヌクレオシドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNA又はcDNAを含む既存の核酸源から得ることができるが、好ましくは合成法により製造される。好ましい実施形態においては、それぞれのヌクレオシド単位は、野生型オリゴヌクレオチドと比べて、限定されるものではないが、修飾ヌクレオシド塩基及び/又は修飾糖単位を含む様々な化学修飾及び置換基を含み得る。
【0094】
化学修飾の例は、当業者に既知であり、例えばUhlmann, E. et al. (1990) Chem. Rev. 90:543、"Protocols for Oligonucleotides and Analogs" Synthesis and Properties & Synthesis and Analytical Techniques, S. Agrawal, Ed, Humana Press, Totowa, USA 1993、及びHunziker, J. et al. (1995) Mod. Syn. Methods 7:331-417、及びCrooke, S. et al. (1996) Ann. Rev. Pharm. Tox. 36:107-129に記載されている。
【0095】
上記ヌクレオシド残基は、とりわけオリゴヌクレオチドの、例えばヌクレアーゼによる酵素的分解に対する安定性を改善するために、数多くの既知のヌクレオシド間結合のいずれかにより互いに結合され得る。そのようなヌクレオシド間結合としては、限定されるものではないが、ホスホジエステル型、ホスホロチオエート型、ホスホロジチオエート型、アルキルホスホネート型、アルキルホスホノチオエート型、ホスホトリエステル型、ホスホロアミデート型、シロキサン型、カーボネート型、カルボアルコキシ型、アセトアミデート型、カルバメート型、モルホリノ型、ボラノ型、チオエーテル型、架橋ホスホロアミデート型、架橋メチレンホスホネート型、架橋ホスホロチオエート型、及びスルホン型のヌクレオシド間結合が挙げられる。
【0096】
用語「オリゴヌクレオチド」はまた、1つ以上の立体特異的なヌクレオシド間結合(例えば、(Rr)-又は(Sr)-ホスホロチオエート型、アルキルホスホネート型、又はホスホトリエステル型の結合)を有するポリヌクレオシドも含む。本明細書で使用される場合に、用語「オリゴヌクレオチド」及び「ジヌクレオチド」は表現上、結合がリン酸基を含むか否かにかかわらず、任意のそのようなヌクレオシド間結合を有するポリヌクレオシド及びジヌクレオシドを含むと解釈される。或る特定の好ましい実施形態においては、これらのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル型、ホスホロチオエート型、若しくはホスホロジチオエート型の結合、又はそれらの組合せであり得て、より好ましくは、上記ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである。
【0097】
さらに、上記アプタマーは、それらの構造的完全性を保護するためだけでなく、それらを細胞内に送達するのを促進するために、適切なビヒクル中にカプセル化され得る。好ましいビヒクルには、リポソーム、脂質ベシクル、マイクロ粒子等が含まれる。
【0098】
上述の様式の1つにより本発明のアプタマーを修飾する1つの利点は、そのアプタマーが使用される環境に存在する、例えばヌクレアーゼのような有害な影響に対して、該アプタマーが安定化され得ることである。上記修飾はまた、アプタマーの薬理学的特性を適合させるためにも適している。上記修飾は、好ましくはアプタマーの親和性又は特異性を変更しない。
【0099】
本発明のアプタマーを、担体分子及び/又はレポーター分子にコンジュゲートすることもできる。担体分子は、アプタマーにコンジュゲートされた場合に、例えば安定性を向上させる及び/又は排出速度に影響を及ぼすことによりコンジュゲートされたアプタマーのヒト血漿における血漿内半減期を延長するような分子を含む。適切な担体分子の1つの例は、PEGである。
【0100】
レポーター分子は、コンジュゲートされたアプタマーの検出を可能にする分子を含む。そのようなレポーター分子の例は、GFP、ビオチン、コレステロール、色素、例えば蛍光色素のような色素、電気化学的に活性なレポーター分子、及び/又は放射性残基、特にPET(陽電子放出断層撮影)検出のために適した放射性核種、例えば18F、11C、13N、15O、82Rb、若しくは68Gaのような放射性核種を含む化合物である。当業者は、適切な担体分子及びレポーター分子、並びに該分子を本発明のアプタマーにコンジュゲートさせる方法を熟知している。
【0101】
本発明の第1の態様の好ましい1つの実施形態においては、本発明のアプタマーは抗凝固活性を有する。抗凝固活性は、好ましくは、抗血栓活性を意味し、好ましくは、微小血栓症を予防又は軽減すると理解される。
【0102】
より好ましくは、本発明のアプタマーは、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿の部分トロンボプラスチン時間(PTT又は代替的にaPTT)として測定される凝固時間を60秒以上延長することができる。本発明の1つの実施形態によれば、本発明のアプタマーは、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿の部分トロンボプラスチン時間として測定される凝固時間を40秒以上、より好ましくは50秒以上延長することができる。好ましい1つの実施形態によれば、本発明のアプタマーは、アプタマーAS1411(配列番号7)よりもヒト較正血漿の部分トロンボプラスチン時間を延長する。
【0103】
またより好ましくは、アプタマーは、0.03mg/mlのアプタマー濃度でヒト較正血漿のプロトロンビン時間(Quick値)を40%以下に低下させることができる。本発明の1つの実施形態によれば、本発明のアプタマーは、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿のプロトロンビン時間(Quick値)を80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下に低下させることができる。1つの好ましい実施形態によれば、本発明のアプタマーは、アプタマーAS1411(配列番号7)よりもヒト較正血漿のプロトロンビン時間(Quick値)を低下させる。
【0104】
1つの好ましい実施形態によれば、PTT時間は、以下の実施例セクションに記載の試験を使用することによって評定される。或いは、好ましくは、PTT時間及び/又はQuick値は、当該技術分野で一般に知られているように評定される。較正血漿として、健康な個体の任意のヒト参照血漿を使用することができ、好ましくは、HemosILヒト較正血漿(Instrumentation Laboratory、Werfen)を使用する。
【0105】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態においては、アプタマーは、ヒトトロンビンと選択的に相互作用するか又は結合し、好ましくは、アプタマーのヒトトロンビンへの結合のK値は1μM以下であり、より好ましくは、K値は100nM以下であり、更により好ましくは、K値は10nM以下である。K値は、好ましくは、ドットブロット結合アッセイにおいてヒトトロンビンの希釈系列(1pM~1000nMの範囲)を使用し、得られたデータに1:1のNA:タンパク質複合体を表す式(アプタマー結合の分数=振幅((トロンビン)/(K+(トロンビン)))(KaleidaGraph v.3.51、Synergy Software、ペンシルベニア州レディング)を当てはめて決定され得る。
【0106】
本発明の範囲内で、2分子間の選択的結合若しくは相互作用、又は特異的結合若しくは相互作用は、結合パートナーとして無関係の相互作用しない又は結合しない分子と比較して、好ましくは、2つの引用される分子が少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも50倍、特に好ましくは少なくとも100倍増加した親和性で結合又は相互作用することを意味し得る。
【0107】
本発明のアプタマーは、コロナウイルス科に由来するウイルス株による感染の治療に有用である。本発明との関連で、アプタマーは、動物被験体だけでなくヒト被験体にも有用であると考えられる。1つの実施形態によれば、アプタマーは、ヒト被験体に使用するためのものである。別の実施形態によれば、アプタマーは動物被験体に使用するためのものである。
【0108】
コロナウイルスによる感染を阻害することにより、コロナウイルス感染の潜在的な悪影響が中和及び減少され、任意の疾患症状がなくなるか、又は通常のレベルに減少する可能性がある。結果として、コロナウイルス感染に起因又は関連する疾患の程度及び重症度が大幅に低下する可能性がある。したがって、本発明は、コロナウイルス感染に関連する疾患又は症状の治療における使用に適したアプタマーを提供する。
【0109】
本発明の別の実施形態によれば、本発明によるアプタマーを使用することによって、コロナウイルス科由来のウイルスによる体細胞の感染を予防する方法が提供される。1つの好ましい実施形態においては、感染を予防する方法は、被験体におけるコロナウイルス科由来のウイルスによる感染を治療、治癒又は進行を阻止することを包含する。
【0110】
本発明の好ましい実施形態においては、上記方法は、in vitro/ex vivoで行われる。より好ましくは、本発明の方法によるアプタマーと接触させられるべき細胞は、生きている生物全体の一部をなすものではない。1つの実施形態においては、接触させられるべき細胞は、細胞培養において培養され得る。個々の細胞又は細胞群のそのような培養は、当該技術分野において通常行われるように実施され得る。
【0111】
本発明の方法の別の好ましい実施形態においては、この方法は、in vivoで、及び/又は生きている生物全体の一部をなす細胞に実施することができる。この実施形態によれば、接触される細胞、組織又は器官は、コロナウイルス科由来のウイルスに感染していると以前に診断されている。好ましくは、本発明に従って処置される細胞は、胃腸管又は気道に属し、より好ましくは気道に属し、より好ましくは肺細胞が処置される。
【0112】
本発明はまた、コロナウイルス科に由来するウイルスによる感染を克服した患者において、長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することによる、被験体の治療に使用するためのアプタマーであって、アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマーに関する。
【0113】
長期COVIDは、コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を克服した患者に観察された状態又は症状の複合体である。それに関連する症状の複合体はまだ調査中であるが、活動性感染の症状がなくなった後でも症状が優勢であることがますます明らかになっている。
【0114】
同様に本明細書に含まれる実験データに基づいて、活動性のSARS-CoV-2感染に耐えた患者で観察されたこれらの症状の多くは、機能的な自己抗体の存在と関連していることが明らかになった(図10)。本発明のアプタマーは、かかる機能的自己抗体に対する阻害活性を有することが以前に実証されていたため(本明細書の図11でも実証されている)、本発明のアプタマーは、長期COVIDとしてグループ化されたかかる症状に対する活性を有すると想定することができる。
【0115】
いずれにせよ、本明細書において長期COVIDとしてまとめられた症状は、SARS-CoV-2等のコロナウイルス科による感染の晩発効果又は遅発効果と見なされる。この点に関して、長期COVIDに対する本発明のアプタマーの特別な効果は、本明細書に記載され特許請求の範囲に記載されるように、SARS-CoV-2等のコロナウイルス科由来のウイルスによる感染の治療の一部として見ることができる。
【0116】
1つの実施形態においては、疾患症状が、慢性疲労症候群、姿勢起立性頻脈症候群(PoTS)、自律神経失調症、振戦、注意欠陥、失名詞症、神経障害、横断性脊髄炎、急性壊死性脊髄炎、及びギラン・バレー症候群等の神経学的症状、心筋炎症、不整脈、頻脈、徐脈、高血圧症、及び房室(AV)ブロック等の心血管症状、脱毛症及び湿疹等の皮膚症状、又は胃腸疾患を含む群からの1つ以上を含む。
【0117】
好ましくは、アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体とその標的タンパク質との相互作用を阻害するために使用される。また、好ましくは、アプタマーは、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を検出することができる患者の治療において使用するためのものである。
【0118】
本発明の1つの実施形態においては、治療される患者が、Gタンパク質共役受容体に対する機能的自己抗体、好ましくは、ヒトGタンパク質共役受容体アドレナリン作動性アルファ-1受容体、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリンM2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体及び/又はノシセプチン受容体のいずれか1つ、より好ましくは、アドレナリン作動性ベータ2受容体、ムスカリンM2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体のいずれか1つに特異的な機能的自己抗体を示し、特に好ましくは、患者は、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、ムスカリンM2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及びMAS受容体のそれぞれに特異的な機能的自己抗体を含む抗体パターンを示す。
【0119】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つのアプタマー、及び任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、本発明のアプタマー又は本発明の異なるアプタマーの混合物と薬学的に許容可能な賦形剤、例えば適切な担体又は希釈剤のような薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0120】
好ましくは、本発明のアプタマーは、上記医薬組成物の有効成分をなす、及び/又は有効量で存在する。用語「有効量」は、疾患又は病態に対して予防的、診断的、又は治療的に意義のある効果を有する本発明のアプタマーの量を示す。予防的効果は、疾患の発病を防止する。治療的に意義のある効果は、疾患の1つ以上の症状を或る程度まで軽減する、又は疾患若しくは病態と関連する若しくはそれらの原因となる1つ以上の生理学的パラメーター若しくは生化学的パラメーターを部分的に若しくは完全に通常に戻す。
【0121】
本発明のアプタマーを投与するためのそれぞれの量は、所望の予防的効果、診断的効果、又は治療的効果を達成するのに十分に高い。当業者によれば、任意の特定の哺乳動物への投与の具体的な用量レベル、頻度、及び期間は、使用される具体的な成分の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食生活、投与時間、投与経路、薬物の組合せ、及び具体的療法の強度を含む多種多様な要因に依存するものと理解されるであろう。よく知られた手段及び方法を用いて、当業者によれば通常の実験事項として正確な量を決定することができる。
【0122】
本発明の医薬組成物の1つの実施形態によれば、アプタマーの全含量の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%は、本発明のアプタマーで構成されている。
【0123】
治療のために使用される場合に、上記医薬組成物は一般的に、任意選択で1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせた製剤として投与されることとなる。用語「賦形剤」は、本明細書では本発明のアプタマー以外のあらゆる成分を記載するために使用される。賦形剤の選択は、大体において特定の投与様式に依存することとなる。賦形剤は、適切な担体及び/又は希釈剤であり得る。
【0124】
本発明の医薬組成物は、好ましくは経口投与又は静脈内投与することができる。1つの好ましい実施形態によれば、医薬組成物は吸入によって投与される。代替的な実施形態によれば、医薬組成物は静脈内投与される。
【0125】
好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、全身送達又は肺送達によって、好ましくは肺送達によって、より好ましくは吸入によって被験体に投与される。吸入により投与される医薬組成物は、粉末又はスプレーの形態であることが好ましい。
【0126】
ヒト患者への投与では、本発明のアプタマー及び/又は本発明の医薬組成物の総1日用量は、もちろん投与様式に応じて、典型的には0.001mg~8000mgの範囲である。例えば、静脈内の1日用量は、0.001mg~40mgしか必要としない場合がある。総1日用量は、単回投与又は分割投与で投与することができ、医師の裁量により、本明細書に示される典型的な範囲から外れる場合がある。
【0127】
これらの投薬量は、体重約75kg~80kgの平均的なヒト被験体に基づく。医師は、乳児及び高齢者等、体重がこの範囲外の被験者の用量を容易に決定することができる。
【0128】
本発明と関連して、アプタマーは、好ましくは、1つ以上のワクチン、抗原、抗体、細胞傷害剤、アレルゲン、抗生物質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアンタゴニスト、ペプチド、タンパク質、遺伝子治療ベクター、DNAワクチン、アジュバント、キナーゼ阻害剤、T細胞治療薬、又は硫酸化ポリグリセロール若しくは類似の硫酸化ポリマーと組み合わせて投与することができる。
【0129】
本発明はまた、本発明のアプタマー、容器、及び任意に書面の使用説明及び/又は投与手段を備えるキットを包含する。
【0130】
コロナウイルス感染に起因する又はそれと関連する疾患の治療では、投与経路に関係なく、本発明のアプタマーは、治療サイクルあたり150mg/kg体重以下、好ましくは20mg/kg体重以下、より好ましくは10mg/kg体重以下、更により好ましくは1μg/kg~20mg/kg体重の範囲から選択され、最も好ましくは0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲から選択される全1日用量で投与される。本発明の好ましい実施形態においては、アプタマーは、1日の間に複数の別々の投与段階、好ましくは1日2回~6回、例えば1日4回で投与される。アプタマーは、1日あたり1900mgずつ4回の投薬で投与されてもよい。
【0131】
本発明の1つの態様によれば、コロナウイルス科由来のウイルスによる体細胞の感染を予防するための、本明細書において定義されるアプタマーの使用が提供される。本発明の好ましい実施形態においては、アプタマーはin vitro/ex vivoで使用され得る。代替的な好ましい実施形態においては、アプタマーはin vivoで使用され得る。
【0132】
本発明のアプタマーの製造又は大量生産は、当該技術分野でよく知られており、単なる日常的な活動である。
【0133】
本発明の1つの態様によれば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(配列番号8)のアミノ酸配列Leu-Tyr-Arg-Asn-Arg-Asp-Val(LYRNRDV;配列番号9)及び/又はHis-Arg-Phe-Tyr-Arg-Leu-Ala-Asn(HRFYRLAN;配列番号10)のペプチドに特異的に結合する、アフィニティー分子が提供される。
【0134】
本発明の範囲内で、アフィニティー分子は、所与の標的、例えば配列番号9又は配列番号10のペプチドに対して高い親和性を有する任意の分子であり得る。高親和性での結合は、好ましくは、無関係なエピトープ、タンパク質又はタンパク質領域と比較して、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍増加した親和性で上記標的エピトープに結合することを意味する。
【0135】
本発明者らが行った追加の研究では、驚くべきことに、請求項に記載のアプタマーが、酵素であるSARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(配列番号8;NCBI参照配列アクセッション番号:YP_009725307.1)の2つのこれまで知られていなかった別々のエピトープと特異的に相互作用し、結合することがわかった。NMR研究及び等温滴定熱量測定によって、本発明のアプタマーとRNA依存性RNAポリメラーゼの上記エピトープとの間の選択的相互作用が確証的に示された(図6及び図7を参照されたい)。特異的結合が観察されたこの酵素の定義されたペプチドストレッチは、アミノ酸731~737(LYRNRDV;配列番号9)及びアミノ酸650~657(HRFYRLAN;配列番号10)である。
【0136】
同等の標的配列は、コロナウイルス科の別のメンバーであるSARS-CoVのRNA依存性RNAポリメラーゼの配列でも同定されている(データは示していない)。RNA依存性RNAポリメラーゼの配列は、コロナウイルス科内で非常に高いアミノ酸配列同一性を共有するが、他のウイルス性RNA依存性RNAポリメラーゼ及び逆転写酵素との配列類似性は非常に低いことが先行技術から知られている(例えば、Xu X et al. (2003) Molecular model of SARS coronavirus polymerase: implications for biochemical functions and drug design. Nucleic Acids Res 31:7117-7130、7118頁、右側の列、第1パラグラフ全体、第2文を参照されたい)。したがって、コロナウイルス科の他のウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼにも同等の標的配列が存在する可能性が考えられる。
【0137】
NMR研究で観察されたような強い相互作用は、この場合にも非常にもっともらしく、コロナウイルス科の活性ウイルスと同様に全長分子において持続する可能性が高い。実際、スパイクタンパク質及びウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに対する請求項に記載のアプタマーの追加の活性は、既知の薬物と比較して細胞培養アッセイで観察された優れた結果を説明することができる。
【0138】
レムデシビル及びガリデシビル等のコロナウイルス科に対して活性な抗ウイルス剤は、RNA依存性RNAポリメラーゼ内の配列と相互作用する可能性があることが以前に報告されていたが(ガリデシビルを用いた研究及び標的アミノ酸としてのアミノ酸Thr455、Arg553、Lys621、Arg624、Asp452、Ala554、Asp623、Asn691、Ser759、Asp760の同定について、Wang Y, Anirudhan V, Du R, Cui Q, and Rong L (2020) RNA-dependent RNA polymerase of SARS-CoV-2 as a therapeutic target. J Med Virol, doi: 10.1002/jmv.26264.、並びにレムデシビルを用いた研究及び標的アミノ酸としてのアミノ酸Asn497、Arg569、Asp684、Leu576、Ala685、Tyr687の同定について、Wu C, Liu Y, Yang Y, Zhang P, Zhong W, Wang Y, Wang Q, Xu Y, Li M, Li X, Zheng M, Chen L, and Li H (2020) Analysis of therapeutic targets for SARS-CoV-2 and discovery of potential drugs by computational methods. Acta Pharm Sin B, doi: 10.1016/j.apsb.2020.02.008.を参照されたい)、報告された配列は、本発明者らによって同定されたペプチドストレッチとは異なり、無関係である。
【0139】
標的酵素RNA依存性RNAポリメラーゼは、コロナウイルス科ウイルスのウイルス複製機構の重要な構成要素である。かかる酵素の又はかかる酵素への特異的結合が、コロナウイルス科のRNAウイルスのウイルスRNAの正確で効率的な複製を少なくとも妨害すること、損なうこと、又は阻害さえすることは、当業者には明らかであろう。このように、ウイルスの感染性は、宿主におけるウイルスのライフサイクルへの影響により減少する。
【0140】
上記重要な酵素の新規エピトープの同定は、ウイルス複製の妨害又は阻害にもつながる追加の結合パートナーの生成及び同定を可能にすることから、技術分野への重要な貢献である。また、新たに同定されたエピトープは、アフィニティー分子の適切な結合部位として以前に知られている上記重要な酵素のどのエピトープとも異なるため、それに結合する任意のアフィニティー分子は少なくとも、RNA依存性RNAポリメラーゼに特異的に結合する任意の他の分子によって提供される阻害作用を補うように作用する。
【0141】
さらに、新たに同定されたエピトープが酵素の外側に向かって配置されているため、溶媒に面しており、特異的な相互作用又は結合に容易にアクセスできることが認識及び実証された(データは示していない)。また、アプタマーバインダーはほとんどの場合、それらの標的タンパク質の機能を妨害することができ、この目的のためにin vivoで意図的に発現されることさえあることにも言及する必要がある(Ulrich H (2005) DNA and RNA aptamers as modulators of protein function. Medicinal Chemistry (Shariqah (United Arab Emirates)) 1:199-208.)。
【0142】
驚くべきことに、本発明のアプタマーは、SARS-CoV-2のウイルス活性の非常に効率的な阻害を実証しただけでなく、COVID-19の潜在的な治療の選択肢として現在議論されている他の抗ウイルス剤を実際に上回っているように見えた(実施例2を参照されたい)。これは、ウイルスの感染プロセス及び宿主内での複製の二重作用に起因する可能性がある。
【0143】
ウイルスの複製サイクルに決定的なこの重要な酵素の新たなエピトープを提供することにより、当業者は、追加の小分子、抗体若しくは抗体由来の生物製剤、又は上記新たに同定されたエピトープに対して親和性を有するオリゴヌクレオチド/アプタマーを、当該技術分野で一般に知られている標準的な手順を使用して同定、生成、又は作製することができる。
【0144】
本発明の第6の態様の好ましい実施形態においては、アフィニティー分子が、最大で900ダルトンの分子量を有する小分子である。好ましくは、アフィニティー分子は、シンシナティ大学Compound Collection、ApexBio Technology LLCからのDiscoveryProbe(商標)Bioactive Compound Library Plus、及びCayman ChemicalからのSARS-CoV-2 Screening Libraryを含む群からのいずれか1つの小分子コレクションからの小分子である。
【0145】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、アフィニティー分子は、ZINC15データベースに存在する小分子である(Sterling T and Irwin JJ, Journal of Chemical Information and Modeling 2015 55(11), 2324-2337; DOI: 10.1021/acs.jcim.5b00559)。
【0146】
或いは、好ましくは、親和性分子はKowalewski J and Ray A (2020), Heliyon. 6. e04639. 10.1016/j.heliyon.2020.e04639の開示によれば、少なくとも1つのウイルス標的、より好ましくは少なくとも2つのウイルス標的に対して潜在的な活性を有することが見出される。
【0147】
COVID-19阻害に関し、以前の出版物は、とりわけかかる相互作用を識別することができる適切なin silico法(コンピュータープログラム)を利用して、既存の薬物又は低分子ライブラリーを既にスクリーニングし、SARS-CoV-2感染又は複製に決定的なタンパク質との相互作用/結合の可能性を確認している。
【0148】
かかるスクリーニングでは、SARS-CoV-2の既知のタンパク質構造への結合の可能性について既存の薬物がスクリーニングされ、それによって、既知のウイルス抑制剤に加えて、抗潰瘍薬であるファモチジンがSARS-CoV-2の可能性のある3CLproプロテアーゼ遮断剤として同定され(Wu C, Liu Y, Yang Y, Zhang P, Zhong W, Wang Y, Wang Q, Xu Y, Li M, Li X, Zheng M, Chen L, and Li H (2020) Analysis of therapeutic targets for SARS-CoV-2 and discovery of potential drugs by computational methods. Acta Pharm Sin B, doi: 10.1016/j.apsb.2020.02.008.)、また幾つかの抗生物質がRNA依存性RNAポリメラーゼの可能性のある遮断剤として同定され(Pokhrel R, Chapagain P, and Siltberg-Liberles J (2020) Potential RNA-dependent RNA polymerase inhibitors as prospective therapeutics against SARS-CoV-2. J Med Microbiol, doi: 10.1099/jmm.0.001203.)、また同様に他の小分子がRNA依存性RNAポリメラーゼの遮断剤として同定された(Aftab SO, Ghouri MZ, Masood MU, Haider Z, Khan Z, Ahmad A, and Munawar N (2020) Analysis of SARS-CoV-2 RNA-dependent RNA polymerase as a potential therapeutic drug target using a computational approach. Journal of Translational Medicine 18:275.)。
【0149】
同様に、当業者は、任意の小分子の任意の利用可能なコレクション又はライブラリーを、バルクライブラリーとして、又は特定の親和性、特徴若しくは要件によってサブグループ化して取得し、例えば、標的として配列番号9又は配列番号10の新たに同定されたペプチドエピトープのいずれかに対する表面プラズモン共鳴に基づいて、ハイスループット分析を実行することができる。そうすることで、新たなエピトープへの特異的結合を示す新規の小分子は、過度の負担なく、当該技術分野で一般に知られている標準的な手順を使用して同定することができる。
【0150】
好ましく使用される小分子の例示的なコレクションは、米国カリフォルニア州サンディエゴのChemBridge CorporationからのChemBridge DIVERSet-CLコレクション及びChemBridge DIVERSet-EXPコレクション、ベルギー国ヘールのThermo Fisher ScientificからのMaybridgeスクリーニングコレクション(Maybridge HitDiscover、Maybridge HitFinder又はMaybridge HitCreatorの形式)、米国ミシガン州アナーバーのCayman Chemicalからの抗ウイルススクリーニングライブラリー(供給元/製品番号30390-50)若しくはSARS-CoV-2スクリーニングライブラリー(供給元/製品番号9003509)、若しくはシンシナティ大学Compound Collectionの任意の多様性セット、又は当業者によって有用であるとみなされる適切な小分子の任意の他の利用可能なコレクション若しくはライブラリーである。
【0151】
本発明の第6の態様の別の好ましい実施形態においては、アフィニティー分子がペプチドベースの化合物、より好ましくは抗体又はその結合フラグメントである。
【0152】
新規抗体又はかかる抗体の結合フラグメントを生成するために、例えば、対応するペプチド配列で動物を免疫する間、新たに同定されたペプチドエピトープに対する確立された信頼性の高いハイブリドーマ技術を使用して有効なモノクローナル抗体を生成することは、容易で、複雑ではなく、一般的な慣行である。ウイルス性疾患の治療には、完全ではない抗体(約150kDa)が投与される可能性があるが、in vivoで標的に到達できるようにするため、例えばFabフラグメント等のフラグメント、又は抗体に由来する更に小さな部分を治療に使用することができる。
【0153】
かかる結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab)、Fv、ダイアボディ、単鎖抗体フラグメント、又はエピトープに対して特異的な親和性を有する他のフラグメントのみからなるか、又はそれらを含み得る。この点に関して、本発明では、配列番号9若しくは配列番号10の新たに見出されたエピトープに特異的に結合するか、又はそれに対して向けられたアフィニティー分子は、無関係のエピトープ、タンパク質又はタンパク質領域と比較して、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍増加した親和性で上記標的エピトープに結合するアフィニティー分子を意味する。
【0154】
本発明の好ましい実施形態によれば、単離された標的エピトープへのアフィニティー分子の特異的結合は、以下に更に説明するように、等温滴定熱量測定法によって測定した場合、500μM未満、好ましくは200μM未満、より好ましくは100μM未満のKで与えられると考えられる。本発明の別の好ましい実施形態によれば、全長RNA依存性RNAポリメラーゼへの親和性分子の特異的結合は、以下で更に説明するように、等温滴定熱量測定によって測定した場合、1mM未満、好ましくは100μM未満、より好ましくは10μM未満のKで与えられると考えられる。或いは好ましくは、K値を決定するための親和性測定は、Biacore Assay Handbook 29-0194-00 Edition AAに従って、GE Healthcare Life Sciences製のBiacore(商標)アッセイ、又は当該技術分野で知られている任意の他の親和性測定を使用して実施され得る。
【0155】
本発明の第6の態様の1つの他の好ましい実施形態においては、アフィニティー分子がアプタマー又はオリゴヌクレオチドである。抗体の場合と同様に、アクセスしやすく、かかるアッセイにおいて容易に使用することができる、標的に特異的に結合するオリゴヌクレオチド分子を生成する手順がある。
【0156】
既知のエピトープに対する新規のオリゴヌクレオチドバインダーを見つけるためのこれらの技術の1つとしてのSELEXは、早くは1990年に使用され、説明された。今日、多くの異なるSELEXベースのアプタマー選択手順が開発され、使用されており(Ali MH, Elsherbiny ME, and Emara M (2019) Updates on Aptamer Research. International Journal of Molecular Sciences 20.)、これにより、ほぼ全ての考えられる標的に対するアプタマーの選択が可能になった(Stoltenburg R, Nikolaus N, and Strehlitz B (2012) Capture-SELEX: Selection of DNA Aptamers for Aminoglycoside Antibiotics. Journal of Analytical Methods in Chemistry 2012:415697.)。
【0157】
1990年にアプタマーが最初に発表されて以来、アプタマーは、ヌクレオチド、補因子又はアミノ酸のような小分子から、ペプチド、多糖及びタンパク質をこえて、細胞全体、ウイルス及び単細胞生物等の複雑な構造まで、多種多様な種々のクラスの標的について記述されてきた(例えば、Zhang Y, Lai BS, and Juhas M (2019) Recent Advances in Aptamer Discovery and Applications. Molecules 24.を参照されたい)。
【0158】
この点に関して、コロナウイルス科ウイルスの重要な酵素内の新規エピトープを提供することにより、当業者は、当該技術分野で一般に知られている標準的な手順を使用して、小分子、抗体由来化合物及びアプタマー等の追加のアフィニティー分子を生成することができる。かかる追加のアフィニティー分子は、ウイルスの重要な酵素内のまだ知られていない部位に特異的に結合し、ウイルスの複製サイクルを妨害するため、SARS-CoV-2の感染と戦う有効な作用物質と考えられる。
【0159】
本明細書に記載される本発明の全ての実施形態は、あらゆる組合せで、当業者がそのような組合せを何ら技術的な意味をなさないと考えない限りは組み合わせることができると見なされる。
【実施例
【0160】
1.BC007とSARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)の配列モチーフとの間の相互作用のNMR分析
全てのNMRスペクトルを、298Kにおいて90/10 HO/DOでBruker AV600分光計(Bruker Biospin、ドイツ国ラインシュテッテン)において600MHzで取得した。Brukerパルスプログラムzggpw5に含まれるWatergate w5パルスシーケンスを使用して、溶媒シグナルを抑制した。取得パラメーターは以下を含んだ:時間領域=65K、スキャン数=512、掃引幅=24ppm、及び90°高出力パルス=13.8μs。
【0161】
BC007及び配列番号5のペプチドの濃度は1mMであった。物質を、いかなる添加剤も含まない0.5mlの純粋なHO/DO混合物に溶解した。
【0162】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインの配列番号5のペプチドと組み合わせたBC007の図1の上のNMRスペクトル(上のスペクトル)は、ペプチドとの相互作用によって誘導され、12.5ppmで8つのイミノシグナルによって明確に認識することができるBC007の四重鎖構造の形成を示し、スペクトル内のペプチドシグナルは、カリウム誘導性の折り畳みと比較して強くシフトして広がり、これは2つの分子(ペプチドとBC007)の相互作用によって引き起こされる効果である。
【0163】
図1の下のNMRスペクトルでは、12ppmの範囲のイミノシグナルは、ここでもカリウムイオンの存在によって誘導される構造形成を明確に示しているが、イミノプロトンの化学シフトは上のスペクトルとは明らかに異なる。ペプチド単独では、12ppmの範囲のイミノシグナルは観察されない(中央のスペクトル)。
【0164】
配列番号1のアプタマーは、カリウムイオンの存在下でその特徴的な折り畳みが安定すること(Schultze, P. et al., 1994. Three-dimensional solution structure of the thrombin-binding DNA aptamer d(GGTTGGTGTGGTTGG). J. Mol. Biol. 235, 1532-1547. https://doi.org/10.1006/jmbi.1994.1105)及び水中で主にランダムなコイル構造で存在すること(Weisshoff, H. et al., 2018. Characterization of Aptamer BC 007 Substance and Product Using Circular Dichroism and Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy. J Pharm Sci. https://doi.org/10.1016/j.xphs.2018.04.003を参照されたい)が以前に報告されている。
【0165】
図2の拡大図では、各分子単独の場合に存在するピークがどれくらい非常にシャープなシグナルに基づいているかがわかる。次いで、これらのシグナルは、コロナウイルスに対して活性であると考えられている作用物質としての配列番号1のアプタマーと、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインからの代表的な配列としての配列番号5との間の強い相互作用により、上スペクトルではそれらの位置が広がり、シフトする。
【0166】
これらの結果に基づいて、細胞侵入及び感染のためにスパイクタンパク質及びそれらの受容体結合ドメインも使用するコロナウイルス科の同じファミリーの完全なウイルス材料及び他の株との上記相互作用は、in vivo条件下でも起こると予想される。
【0167】
2.ヒト及び霊長類の細胞株におけるBC007によるSARS-CoV-2複製の阻害
BC007の抗ウイルス用量反応効果の調査は、VeroFM細胞及びCalu-3細胞で実施された。配列番号1のアプタマーBC007を様々な濃度でウイルスに添加し、4℃で15分間保持した後、混合物を細胞に(MOI0.0005まで)添加し、ウイルスの付着及び侵入を開始するため37℃で30分間温めた。
【0168】
この30分間のインキュベーションの後、上清を除去し、細胞をPBSで1回洗浄し、洗浄後に同じ最終濃度のBC007を含む培地を添加した。37℃で24時間のインキュベーション(複製)後、試料アリコートをプラークアッセイのために各濃度について採取し、プラークアッセイは以前に記載されるように実施した(Herzog et al., Virology Journal 2008, 5:138)。
【0169】
BC007は、Vero細胞株及びCalu-3細胞株において、低用量で非常に効率的なウイルス複製の阻害を示した(図3を参照されたい)。ウイルス感染の阻害について決定された半最大有効濃度(EC50、或いは半最大阻害濃度IC50と呼ばれる)は、Calu-3細胞で3.74μM、Vero細胞で0.21μMであった。
【0170】
SARS-CoV-2の潜在的な治療に関係する他の抗ウイルス剤との比較については、Wang et al., Cell Research 2020, 30:269-271の出版物が参照される。そこでは、リバビリン、ペンシクロビル、ファビピラビル、ニタゾキサニド、クロロキン、及びレムデシビルを、Vero E6細胞と0.05の開始MOIを使用する同様の実験設定で試験した。
【0171】
Wang et al.,のこの報告では、EC50濃度は、リバビリンで109.50μM、ペンシクロビルで95.96μM、ファビピラビルで61.88μM、ニタゾキサニドで2.12μM、クロロキンで1.13μM、及びレムデシビルで0.77μMと決定された(Wang et al., 2020の269頁左側の列と右側の列にかかる全段落、及び270頁の図1aを参照されたい)。
【0172】
レムデシビルで得られた結果に基づいて、レムデシビルは低マイクロモル濃度でウイルス感染を強力に遮断すると結論付けられた。さらに、レムデシビルは、そのSARS-CoV-2阻害効果を試験するために使用される濃度で実質的な細胞毒性を欠いていた。
【0173】
Wang et al., 2020で報告された結果を考慮すると、本発明のアプタマーを用いてVero細胞で得られた結果は、現在コロナウイルス科感染症の潜在的な治療選択肢として議論されている他の抗ウイルス剤を用いて観察される効率まで、又はそれを超えるウイルス感染の強力な遮断も実証することが明らかになる。
【0174】
重要なことに、またWang et al., 2020で非常によく機能することが特定された分子と同様に、本発明のアプタマーは、Vero細胞及び更にはヒト細胞(Calu-3)に対するSARS-CoV-2の感染活性の効率的な阻害を示しただけでなく、第I相臨床試験が成功裏に完了したことで既に示されているように、ヒト細胞で観察されたSARS-CoV-2の阻害に意図され、必要とされる用量では毒性は全くなかった(Becker et al., Clin Drug Investig 2020 May;40(5):433-447)。
【0175】
現在議論されている治療選択肢としてのレムデシビルに対する本発明のアプタマーの際立った利点は、上記アプタマーの調製の単純さ及び容易さである。コロナウイルス科感染の治療に提案されている抗ウイルス剤の例としてのレムデシビルは、約70の原材料、試薬、及び触媒を必要とすることが報告されており、その一部は人間にとって非常に危険である(Langreth, Robert (14 May 2020). "All Eyes on Gilead". Bloomberg Businessweek. Bloomberg, L.P.を参照されたい)。
【0176】
さらに、合成には時間のかかるおよそ25の化学工程が含まれているようであり、オリジナルのエンドツーエンド(end-to-end)の製造プロセスでは、委託製造業者で原材料から最終製品まで9ヶ月~12ヶ月の時間が必要となる。
【0177】
対照的に、未改変のDNA分子として使用及び投与され得る本発明のアプタマーは、レムデシビル等の比較の抗ウイルス剤にかかる費用のほんの一部で、数週間のうちに世界のニーズを満たすキログラム量まで大規模に生産することができる。
【0178】
3.BC007とヒトトロンビンとの間の相互作用、並びにその結果としての凝固阻害
ヒトトロンビン(250nM)を0.1M炭酸緩衝液でNunc Maxisorp ELISAプレートに4℃で一晩固定し、次いで、室温で1時間、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4中の1%BSAを用いてブロッキングを行う。次いで、5’-ビオチン化アプタマーBC007を様々な濃度(100nM、500nM、及び(und)1000nM)で添加し、室温で2時間インキュベートする。トロンビンに結合したアプタマーは、POD結合ニュートラアビジンを介して検出され、PODの量は、過酸化水素/テトラメチルベンジジン(TMB)反応によって決定され、読み出しをプレートリーダーで波長450nm=測定波長(基準波長650nm)で行う。洗浄は、通常のELISA洗浄バッファーを使用してそれぞれの間に実行され、トロンビンを含まないプラスチックプレートは、対照としての役割を果たす。トロンビン結合アッセイの結果を図4に示す。
【0179】
凝固阻害の判定のため、部分トロンボプラスチン時間(PTT)を以下のように測定した。1mMアプタマー溶液(配列番号1のBC007又は参照アプタマーとしての配列番号7のアプタマーAS1411)50μlを、1mL HemosILヒト較正血漿(Instrumentation Laboratory、Werfen)で希釈した。次いで、この溶液を、更に、HemosIL較正血漿中で0.083mg/ml、0.028mg/ml、0.009mg/ml、0.003mg/ml、0.001mg/mlの濃度まで1:2で段階希釈した。
【0180】
これらの試料を、製造元のプロトコルに従って、リン脂質及び緩衝液とともにインキュベートした。カルシウムの添加後、凝固までの時間をACL TOP凝固システム(Werfen)で測定した。結果を図5Aに示す。
【0181】
アプタマーBC007及び配列番号7の参照アプタマーAS1411のQuick値を、当該技術分野で一般に知られているように決定した。結果を図5B(Quick値)に示す。
【0182】
4.BC007とSARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼの2つの配列モチーフとの間の相互作用の分析
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(NCBI参照配列:YP_009725307.1)から得られた2つの配列セクション:HRFYRLAN(His650-Arg651-Phe652-Tyr653-Arg654-Leu655-Ala656-Asn657)及びLYRNRDV(Leu731-Tyr732-Arg733-Asn734-Arg735-Asp736-Val737)をNMR分光法によりBC007との結合及び相互作用について分析した。両方の配列セクション(ペプチド)は、BC007にそのよく知られた四重構造(図6)を形成させることができ、これは結合の成功及び特異的結合の読み出しである。
【0183】
図6の上部にあるLYRNRDVと組み合わせたBC007の上のNMRスペクトルは、ペプチドとの分子相互作用によって誘導されたBC007の四重鎖構造の形成を示し、これは、11.5ppm~12.5ppmのイミノシグナルによって明確に認識することができる。下のスペクトルは、BC007とHRFYRLANとの間の結合を示す。
【0184】
物質を、いかなる添加剤も含まない0.5mlの純粋なHO/DO混合物に溶解した。BC007とSARS-CoV-2タンパク質のこれらの配列セクションとの相互作用を調査するNMRデータを、298Kにおいて90/10 HO/DOで、Bruker AV600分光計(Bruker Biospin、ドイツ国ラインシュテッテン)において600MHzにて取得した。Brukerパルスプログラムzggpw5に含まれるWatergate w5パルスシーケンスを使用して、溶媒シグナルを抑制した。取得パラメーターは以下を含んだ:時間領域=65K、スキャン数=512、掃引幅=24ppm、及び90°高出力パルス=13.8μs。
【0185】
HRFYRLANとBC007との間の結合の更なる分析を、等温滴定熱量測定(ITC)によって実施した。このITC分析の結果を図7に示し、図中、上部がサーモグラム、下部が結合等温線である。
【0186】
ITC実験を、MicroCal PEAQ-ITCマイクロ熱量計(Malvern Panalytical GmbH、ドイツ国)で実施した。両方の相互作用パートナーを、50mMリン酸ナトリウム、150mM NaClバッファー、pH7.06に溶解した。実験を25℃で行った。通常の実験では、ペプチド(3.6mM又は4mM)を比色計セルのアプタマー溶液(200μM)に2μlずつ滴定した。注入間の時間間隔を、熱シグナルがベースラインに戻るのに十分な200秒に調整した。反応混合物を750rpmで連続的に撹拌した。
【0187】
バッファーへのペプチドの添加に関連する希釈熱(別の対照実験で決定)は、測定された結合熱に対して無視できる小さな一定値であった。機器ソフトウェア(MicroCal PEAQ-ITC Analysis)を、ベースライン調整、ピーク積分、及び注入されたリガンドのモル量に関する反応熱の正規化、並びにデータフィッティング及び結合パラメーター評価に使用した。
【0188】
このITC分析は、2つの結合パートナーであるBC007とHRFYRLANとの間の1:1の化学量論的結合を明らかにし、これは真の特異的結合を強力に支持する。
【0189】
ITC分析の対照実験は、配列NRKRISN(配列番号11;理論上のpI値12.01)を持つSARS-CoV-2のスパイクRBDからの高荷電ペプチドを使用して実行した。結果を図8に示す。この対照により、RNA依存性RNAポリメラーゼの結合ペプチドであるHRFYRLAN(理論上のpI値10.84)及びLYRNRDV(理論上のpI値8.75)とBC007との間の唯一の非特異的な静電相互作用が明らかに除外された可能性がある。
【0190】
実験を、MicroCal PEAQ-ITCマイクロ熱量計(Malvern Panalytical GmbH、ドイツ国)で再度実施した。両方の相互作用パートナーを、50mMリン酸ナトリウム、150mM NaClバッファー、pH7.16に溶解した。実験を25℃で行った。通常の実験では、ペプチド(3.6mM又は4mM)を比色計セルのアプタマー溶液(200μM)に2μlずつ滴定した。注入間の時間間隔を、熱シグナルがベースラインに戻るのに十分な200秒に調整した。反応混合物を750rpmで連続的に撹拌した。バッファーへのペプチドの添加に関連する希釈熱(別の対照実験で決定)は、測定された結合熱に対して無視できる小さな一定値であった。機器ソフトウェア(MicroCal PEAQ-ITC Analysis)を、ベースライン調整、ピーク積分、及び注入されたリガンドのモル量に関する反応熱の正規化、並びにデータフィッティング及び結合パラメーター評価に使用した。
【0191】
最後に、NMR分光法も行って、BC007の対照ペプチドNRKRISNへの結合の可能性を分析した。その結果を図9に示す。NRKRISNと組み合わせたBC007のNMRスペクトルは、BC007の四重鎖構造がほぼ完全に形成されていないことを示しており、11.5ppm~12.5ppmのイミノシグナルの欠落で認識可能である。比較用;上のスペクトル:ペプチド配列YRLFRK(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質からの配列、理論上のpI値11.0)のBC007結合。
【0192】
物質を、いかなる添加剤も含まない0.5mlの純粋なHO/DO混合物に溶解した。BC007とSARS-CoV-2タンパク質のこの配列セクションとの相互作用を調査するNMRデータを、298Kにおいて90/10 HO/DOで、Bruker AV600分光計(Bruker Biospin、ドイツ国ラインシュテッテン)において600MHzにて取得した。Brukerパルスプログラムzggpw5に含まれるWatergate w5パルスシーケンスを使用して、溶媒シグナルを抑制した。取得パラメーターは以下を含んだ:時間領域=65K、スキャン数=512、掃引幅=24ppm、及び90°高出力パルス=13.8μs。
【0193】
5.活動性SARS-CoV-2感染から回復した患者の血清中のGPCR自己抗体の同定及び特性評価
PCRによって確認された、急性疾患からの回復後、25人の患者から血清を得た。23人の患者がポストCOVID-19の症状に苦しんでいたが、2人の患者は無症状であった。
【0194】
安全対策として、COVID-19患者の血清を使用前に56℃で30分間熱不活性化した。その後、0.4mLの試料を1Lの透析バッファー(0.15M NaCl、10mMリン酸バッファー、pH7.4;Membra-Cel MD 44、14kDa、Serva)に対して24時間透析して、低分子量の生物活性化合物及びペプチドを除去した。最後に、40μLの透析試料をバイオアッセイに加えた(1:50の最終希釈)。
【0195】
GPCR-fAABの同定及び特性評価には、複数のGPCR-AABの並行測定のため、ベータ1アドレナリン受容体に対するGPCR-fAABについては、Davideit et al.(Davideit H et al (2019) Determination of Agonistically Acting Autoantibodies to the Adrenergic Beta-1 Receptor by Cellular Bioassay. Methods Mol Biol 1901:95-102. https://doi.org/10.1007/978-1-4939-8949-2_8)、及びWenzel et al.(Wenzel K, Schulze-Rothe S, Haberland A, et al (2017) Performance and in-house validation of a bioassay for the determination of beta1-autoantibodies found in patients with cardiomyopathy. Heliyon 3:e00362. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2017.e00362)によって非常に詳細に記載されるバイオアッセイを使用し、同様に、他のGPCR-fAABについても(Wallukat et al. (2018) PLoS ONE 13:e0192778も参照されたい)バイオアッセイを行った。
【0196】
それぞれの自己抗体との接触後、GPCRを発現する自発的に拍動する心筋細胞の基礎拍動数の変化を測定シグナルとして使用した。受容体の特異性を、その後の特定の受容体遮断剤の添加でもたらされるこの効果の無効化、又は対応する受容体エピトープ競合細胞外ループペプチドの添加のいずれかによって確認した。詳細:β2-fAABの特定のため、受容体アンタゴニストICI118.551(0.1μM)を使用し、ヒトβ2-アドレナリン受容体の1番目又は2番目の細胞外ループに対応する中和ペプチドも使用した。
【0197】
負の変時性ムスカリンM2受容体自己抗体(M2-fAAB)の効果は、アトロピン(1μM)によって遮断された。ロサルタン(1μM)は正の変時性AT1-fAABの効果を遮断し、A779(1μM)は負の変時性MAS-fAABの効果を遮断した。MAS-fAABの同定のため、ヒトMAS受容体の第1及び第2の細胞外ループに対応する追加の競合ペプチドを利用した。
【0198】
ETA-fAABは、特異的エンドセリン受容体アンタゴニストBQ123(0.1μM)と、またそれぞれ受容体の1番目又は2番目の細胞外ループに対応する競合ペプチドの添加により、それらの負の変時効果を遮断することによって同定された。
【0199】
ノシセプチン受容体アンタゴニストJ113397(0.1μM)を使用して、正の変時性NOC-fAABの効果を遮断し、1番目又は2番目の細胞外ループに対応する競合ペプチドも遮断した。1μMのウラピジル又はプラゾシンを添加すると、α1-fAABの正の変時効果が消失した。全てのペプチドについて、100μg/mLのストック溶液2μLを対応するGPCR-fAAB試料40μLに加え、30分間インキュベートした後、混合物を細胞に移した。
【0200】
回復したCOVID-19患者25人の血清で、幾つかの異なるGPCR-fAABが同定された。調査した25人の患者全員が、2種~7種の異なるGPCR-fAABを持っていた(図10)。
【0201】
調査した患者のほとんど全員に見られた2つの機能的に活性な自己抗体は、β2アドレナリン受容体(β2-fAAB)及びムスカリンM2受容体(M2-fAAB)に対して向けられていた。これらのfAABは、それぞれ標的受容体に対して正と負の変時応答を誘発した。
【0202】
調査された25人のポストCOVID-19患者のうち23人(92%)にも存在していた他の2つのfAABは、アンギオテンシンII AT1受容体(fAT1-AAB)及びアンギオテンシン1-7MAS受容体(MAS-AAB)に向けられていた。これらの受容体は、レニンアンギオテンシンシステム(RAS)に属し、それぞれのfAABによって標的とされると、それぞれ正及び負の変時効果を引き起こす。
【0203】
感染後の脱毛(脱毛症)は、回復した患者のうち8人が経験した。これらの患者の血清では、負の変時性ETA-fAAB(4/8)、正の変時性NOC-fAAB(5/8)、及び正の変時性α1-AAB(3/8)の更に3種のGPCR-fAABが発見された。全ての脱毛症患者が、これらの3種のGPCR-fAABの全てを示したわけではない。代わりに、それらの発生は様々であり、パターンはまだ検出できていない。図10に示すように、調査した25人のポストCOVID-19の患者のうち2人が、症状を示さずにfAABを発生させた。
【0204】
ウイルスのフォローアップ検査が陰性になった後も長く持続する継続的な疲労のような症状は、この研究の患者で頻繁に(17/25)報告された障害であった。古典的なコロナウイルス非依存性疲労症候群に苦しむ患者では、β2-fAAB、M2-fAAB、及び場合によってはETA-fAABの発生が以前に報告されている。
【0205】
ここでは、調査したほとんど全ての血清がβ2-fAAB及びM2-fAABを含んでいた。β2-fAABとM2-fAABの組合せは、PoTSと自律神経失調症を患っている患者の血清でも確認されており、どちらもポストCOVID-19患者で現在観察されている状態である(それぞれ3/25及び2/25、重複していない)。
【0206】
さらに、このβ2-fAABとM2-fAABとの組合せは、本発明者らによって以前に、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)を有する患者、ナルコレプシー1型を患っている患者(ここでは更に、10例中9例でNOC-fAABを伴う)、及び小径線維疾患を有する患者においても同定されている。
【0207】
調査したCOVID-19患者血清の90%超(23/25)で観察された、同定されたGPCR-fAABのうち2つは、RASの受容体、すなわちアンギオテンシンII AT1受容体及びアンギオテンシン(1-7)MAS受容体に向けられていた。これらの血管作動性AT1-fAABは、悪性高血圧、治療抵抗性高血圧、子癇前症、及び腎疾患を有する患者で以前に同定されている。
【0208】
このデータから、長期COVID疾患症状の発生におけるGPCR-AABの重要な役割が既に示されている。したがって、BC007は、かかる抗体の有害効果に対する確立された有効な作用物質として、長期COVID症状を患う患者に有望な治療選択肢であるようである。
【0209】
6.アプタマーBC007(配列番号1)の投与の前後での長期COVID-19血清試料におけるGPCR-AAB活性の特性評価
試料調製
COVID-19を克服しているが、長期COVIDに関連する持続症状を患う患者由来の血清を安全対策として使用前に56℃で30分間、熱失活させた。その後、0.4mLの試料を1Lの透析バッファー(0.15M NaCl、10mMリン酸バッファー(pH7.4);Membra-Cel MD 44、14kDa、Serva)に対して24時間、透析し、低分子量の生物活性化合物及びペプチドを除去した。
【0210】
長期COVID-19血清試料におけるGPCR-AAB活性の測定のための新生仔ラットの自発的に拍動する心筋細胞のバイオアッセイ(心筋細胞拍動数アッセイ、CBRA-LC)
長期COVID-19患者の血清中のGPCR-AABの推定のために、40μLの透析試料をバイオアッセイに加えた(1:50の最終希釈)。Wallukat G, and Wollenberger A (1987) Biomed Biochim Acta 46:S634-639に記載されるCBRAの原理に従いAAbの変時効果を測定した。
【0211】
1つの試料において種々のGPCR-AABの組合せを測定するのに、Wallukat G et al. (2018) PLoS ONE 13:e0192778.、Wallukat G et al. (2019) Methods Mol Biol 1955:247-261、及びOrjatsalo M et al. (2021) Sleep Med 77:82-87.に記載の測定原理を適用している。
【0212】
このアッセイのために、新生仔(neonatale)ラット心筋細胞の単層を調製し、12.5cmのファルコンフラスコにて培養した。最初に、6つの心筋細胞クラスターの基礎拍動数を視覚的に確認し、記録した。正の変時応答を発現するGPCR-AABの測定のために、細胞を、負の変時GPCR-AAB効果を全て遮断する受容体遮断剤のカクテル(M2-AABを遮断する1μMアトロピン、ETA-AABを遮断する0.1μM BQ123、及びMAS-AABを遮断する1μM A779)とともにプレインキュベートする。
【0213】
40μLの透析試料(1:50の希釈)を加え、37℃で1時間インキュベートした後、同じクラスターにて再び正の変時応答を測定した。基礎拍動数の差はデルタパルスレート[ΔPR/分]として表した。続いて、ベータ2-AAb(0.1μM ICI118551)、AT1-AAB(1μMロサルタン)、アルファ1-AAB(1μMウラピジル又はプラゾシン)及びノシセプチン-AAB(0.1μM J113397)の正の変時効果を遮断する受容体遮断剤を段階的に加えることで、正の変時GPCR-AABの総活性における各AABの割合が求められる。
【0214】
負の変時応答を示すGPCR-AABを測定するのに、試験を逆に行った。最初に、正の変時応答を遮断する受容体遮断剤のカクテル(ベータ2-AABを遮断する0.1μM ICI118551、AT1-AABを遮断する1μMロサルタン、アルファ1-AABを遮断する1μMウラピジル又はプラゾシン、及びノシセプチン-AABを遮断する0.1μM J113397)を用いて細胞を前処理してから、40μL(1:50)の調製済みの患者血清を加えた。
【0215】
負の変時応答が得られる場合、続いてアトロピン(M2-AAB)、BQ123(ETA-AAB)、及びA779(MAS-AAB)を段階的に加えることで、負の変時GPCR-AABの総活性における各AABの割合が求められる。
【0216】
BC007による治療後の長期COVID患者の追跡
治療成功又は治療効果を決定するために、BC007の投与後、所与の期間(6時間、2日、7日、30日)患者を追跡した。再び、全ての正の変時GPCR-AAB又は全ての負の変時GPCR-AABのいずれかについての受容体遮断剤カクテルで予め処理した心筋細胞に患者試料を加えた。
【0217】
患者血清によって反対の変時試料効果が引き起こされなかったことを検出することができた場合(全ての負の変時GPCR-AABについて心筋細胞に対する正の変時応答が遮断された場合、又はその逆の場合)、これは、この試料中に相応するGPCR-AABが存在しないことを示していると解釈することができた。
【0218】
しかしながら、このような場合、単一のGPCR-AABをそれぞれ単一の受容体遮断剤と区別することはできなくなる。
【0219】
【表1】
【0220】
上記の表に示され、実験条件に基づいた値について、1.17を超える任意の値は試験された自己抗体(単数又は複数)が存在するとみなし、この閾値未満の任意の値はそれが存在しないとみなす。
【0221】
この実験により、COVID-19を克服しているが、感染後に持続し、長期COVIDに関連する症状を患う患者において見出され、特定されたGPCR自己抗体が実際に、ラット心筋細胞アッセイによって示されるように、Gタンパク質共役受容体に対する直接的で測定可能な効果を有することが実証される。
【0222】
さらに、長期COVID患者へのBC007の投与が、おそらくは上記GPCR自己抗体の特異的な結合及び持続的な中和によるかかる自己抗体の影響を和らげることを明らかに実証することができた。
【0223】
このデータは、BC007(配列番号1)が、SARS-CoV-2感染を克服した後の長期COVIDの主な原因物質の1つとして現れるGPCR自己抗体を中和することができるという本発明の根幹についての実験的証拠を表している。本発明者らは同様の観察結果を導き、Hohberger et al. (2021) Front. Med. 8:754667にて公開している。
【0224】
まとめると、BC007、及びGPCR自己抗体に対するその特異的で効率的な作用は、SARS-CoV-2感染を克服した後の長期COVID症候群の持続的な疾患症状を患う患者に最も有望な治療選択肢の1つとなる。
【0225】
更に興味深いことに、SARS-CoV-2感染及びその進行に対するBC007の機能と長期COVID症状に対するBC007の機能とを合わせることで、進行中の感染だけでなく感染を克服した後に持続し得る症状の治療にも更に適したものになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024509645000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス科に由来するウイルスによる感染を克服した患者において、長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することによる、被験体の治療に使用するためのアプタマーであって、該アプタマーが、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマー。
【請求項2】
前記疾患症状が、慢性疲労症候群、姿勢起立性頻脈症候群(PoTS)、自律神経失調症、振戦、注意欠陥、失名詞症、神経障害、横断性脊髄炎、急性壊死性脊髄炎、及びギラン・バレー症候群等の神経学的症状、心筋炎症、不整脈、頻脈、徐脈、高血圧症、及び房室(AV)ブロック等の心血管症状、脱毛症及び湿疹等の皮膚症状、又は胃腸疾患を含む群からの1つ以上を含む、請求項1に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項3】
前記アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体とその標的タンパク質との相互作用を阻害するために使用される、請求項1又は2に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項4】
前記アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を検出することができる患者の治療において使用するためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項5】
前記患者が、Gタンパク質共役受容体に対する機能的自己抗体、好ましくは、ヒトGタンパク質共役受容体アドレナリン作動性アルファ-1受容体、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体及び/又はノシセプチン受容体のいずれか1つ、より好ましくは、アドレナリン作動性ベータ2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体のいずれか1つに特異的な機能的自己抗体を示し、特に好ましくは、前記患者は、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及びMAS受容体のそれぞれに特異的な機能的自己抗体を含む抗体パターンを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項6】
前記患者がSARS-CoV-2感染を克服している、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項7】
配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項8】
配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列のみからなる、請求項7に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項9】
前記患者がSARS-CoV-2感染を克服しており、前記アプタマーが配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項10】
配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列のみからなる、請求項9に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項11】
前記アプタマーが抗凝固活性を有し、好ましくは、前記アプタマーが微小血栓症を予防又は軽減する、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項12】
前記アプタマーが抗凝固活性を有し、好ましくは、前記アプタマーが0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿の部分トロンボプラスチン時間(PTT)として測定される凝固時間を60秒以上に延長することができる、及び/又は前記アプタマーが、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿のプロトロンビン時間(Quick値)を40%以下に低下させることができる、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項13】
コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を克服した患者において長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することにより被験体の治療に使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載のアプタマーと少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
前記患者がSARS-CoV-2感染を克服している、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス科に由来するウイルスによる感染を克服した患者において、長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することによる、被験体の治療用の医薬であって、配列番号1の核酸配列(GGT TGG TGT GGT TGG)及び/又は配列番号1と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、アプタマーを含む、医薬
【請求項2】
前記疾患症状が、慢性疲労症候群、姿勢起立性頻脈症候群(PoTS)、自律神経失調症、振戦、注意欠陥、失名詞症、神経障害、横断性脊髄炎、急性壊死性脊髄炎、及びギラン・バレー症候群等の神経学的症状、心筋炎症、不整脈、頻脈、徐脈、高血圧症、及び房室(AV)ブロック等の心血管症状、脱毛症及び湿疹等の皮膚症状、又は胃腸疾患を含む群からの1つ以上を含む、請求項1に記載の医薬
【請求項3】
前記アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体とその標的タンパク質との相互作用を阻害するために使用される、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項4】
前記アプタマーが、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を検出することができる患者の治療において使用するためのものである、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項5】
前記患者が、Gタンパク質共役受容体に対する機能的自己抗体、好ましくは、ヒトGタンパク質共役受容体アドレナリン作動性アルファ-1受容体、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体及び/又はノシセプチン受容体のいずれか1つ、より好ましくは、アドレナリン作動性ベータ2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、MAS受容体のいずれか1つに特異的な機能的自己抗体を示し、特に好ましくは、前記患者は、アドレナリン作動性ベータ-2受容体、ムスカリンM受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及びMAS受容体のそれぞれに特異的な機能的自己抗体を含む抗体パターンを示す、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項6】
前記患者がSARS-CoV-2感染を克服している、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項7】
配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列を含む、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項8】
配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列のみからなる、請求項7に記載の使用のためのアプタマー。
【請求項9】
前記患者がSARS-CoV-2感染を克服しており、前記アプタマーが配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列を含む、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項10】
配列番号1(GGT TGG TGT GGT TGG)の核酸配列のみからなる、請求項9に記載の医薬
【請求項11】
前記アプタマーが抗凝固活性を有し、好ましくは、前記アプタマーが微小血栓症を予防又は軽減する、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項12】
前記アプタマーが抗凝固活性を有し、好ましくは、前記アプタマーが0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿の部分トロンボプラスチン時間(PTT)として測定される凝固時間を60秒以上に延長することができる、及び/又は前記アプタマーが、0.03mg/mlのアプタマー濃度で、ヒト較正血漿のプロトロンビン時間(Quick値)を40%以下に低下させることができる、請求項1又は2に記載の医薬
【請求項13】
コロナウイルス科由来のウイルスによる感染を克服した患者において長期COVIDに関連する疾患症状を治療、治癒又は予防することにより被験体の治療に使用される、請求項1又は2に記載のアプタマーと少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
前記患者がSARS-CoV-2感染を克服している、請求項13に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】