(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】一過性造影剤入りの、その場で固化する注入可能な組成物、並びにそれらの製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 49/04 20060101AFI20240227BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240227BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K49/04 210
A61K9/08
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/32
A61K47/30
A61K9/10
A61K45/00
A61K47/46
A61P31/04
A61P29/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537953
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021064806
(87)【国際公開番号】W WO2022140513
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520273979
【氏名又は名称】フルイデックス メディカル テクノロジー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FLUIDX MEDICAL TECHNOLOGY, INC.
【住所又は居所原語表記】2500 South State Street,Suite D246,Salt Lake City,Utah 84115,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート ジェイ.ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア ショーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン フォイティック
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ カーズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB12
4C076CC03
4C076CC07
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC30
4C076CC32
4C076CC50
4C076DD26
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4C076EE10
4C076EE12
4C076EE13
4C076EE17
4C076EE30
4C076EE37
4C076EE41
4C076EE42
4C076EE56
4C076FF17
4C076FF31
4C076FF35
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA16
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4C084ZA08
4C084ZA21
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4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB35
4C084ZC02
4C084ZC03
4C084ZC20
4C084ZC42
4C084ZC75
4C084ZC78
4C085HH05
4C085JJ01
4C085KA36
4C085KA40
4C085KB18
4C085KB68
4C085KB79
4C085KB82
4C085LL01
4C085LL18
(57)【要約】
1種以上のポリカチオン多価電解質及びアニオン対イオンと、1種以上のポリアニオン多価電解質及びカチオン対イオンと、一過性造影剤とからなる注入可能な組成物が本明細書に記載される。注入可能な組成物は、水中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であるイオン濃度を有する。被験者への本組成物の導入時に、固体がその場で生成する。一過性造影剤は、数時間又は数日にわたって固体から拡散し、一時的な造影剤を提供し、永久的な造影剤とは異なって被験者において残存しない。この特徴は、臨床医が固体からの造影剤の拡散の前に医療処置を行うのに十分な時間を提供する。注入可能な組成物の粘度は、注入可能な組成物の用途に応じて変えることができる。分子量、電荷密度、並びに/又はポリカチオン塩及びポリアニオン塩の濃度を変えることによって、有用な範囲の粘度を有する注入可能な組成物を製造することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、1種以上のポリカチオン多価電解質及びアニオン対イオンと、1種以上のポリアニオン多価電解質及びカチオン対イオンと、一過性造影剤とを含む注入可能な組成物であって、前記組成物が、(i)水中での前記ポリカチオン多価電解質と前記ポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、前記被験者へ前記組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成し、前記一過性造影剤が前記固体から拡散する組成物。
【請求項2】
前記一過性造影剤は、ヨウ素化有機化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヨウ素化有機化合物は、イオパミドール、イオジキサノール、イオヘキソール、イオプロミド、イオブチリドール、イオメプロール、イオペントール、イオパミロン、イオキシラン、イオトロラン、イオトオロール及びイオベルソール、イオパノエート、ジアトリゾ酸、ヨータラム酸塩、イオキサグレート、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヨウ素化有機化合物は、ヨウ素化油を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記注入可能な組成物中の前記一過性造影剤の濃度は、10mgI/mL~1,000mgI/mLである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記一過性造影剤の最大100%までは、5分~30日間に前記固体又はゲルから拡散する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記対イオンは、ナトリウム及びクロリドイオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記注入可能な組成物中の前記イオン濃度は、前記被験者における前記イオン濃度よりも1.5~20倍大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリカチオン多価電解質は、ポリカチオン塩を水に溶解させることによって得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリカチオン多価電解質は、水中のポリカチオン塩酸塩に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリカチオン塩は、ポリアミンの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリアミンは、2個以上のペンダントアミノ基を含み、前記アミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アミン、アルキルアミノ基、ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾリル、又は1個以上のアミノ基で置換された芳香族基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリアミンの前記薬理学的に許容される塩は、3~20のアームを有するデンドリマーを含み、各アームが、末端アミノ基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリカチオン塩は、2個以上のペンダントアミノ基を含むポリアクリレートを含み、前記アミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アミン、アルキルアミノ基、ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾリル、又は1個以上のアミノ基で置換された芳香族基を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリカチオン塩は、生分解性ポリアミンの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記生分解性ポリアミンの前記薬理学的に許容される塩は、多糖、タンパク質、ペプチド、組み換えタンパク質、合成ポリアミン、プロタミン、分岐ポリアミン、又はアミン変性の天然ポリマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記生分解性ポリアミンの前記薬理学的に許容される塩は、アルキルジアミノ化合物で変性されたゼラチンを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリカチオン塩は、プロタミンの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリカチオン塩は、サルミン又はクルペインの薬理学的に許容される塩である、請求項9に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリカチオン塩は、2個以上のグアニジニル側鎖を含有する天然ポリマー又は合成ポリマーの薬理学的に許容される塩である、請求項9に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリカチオン塩は、2個以上のペンダントグアニジニル基を含むポリアクリレートの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリカチオン塩は、ペンダントグアニジニル基を含むホモポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリカチオン塩は、2個以上のペンダントグアニジニル基を含むコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項24】
前記ポリカチオン塩は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はメタクリルアミド主鎖と、前記主鎖に懸下した2個以上のグアニジニル基とを含む合成ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリカチオン塩は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるモノマーと、式I
【化1】
(式中、R
1は、水素又はアルキル基であり、Xは、酸素又はNR
5であり、ここで、R
5は、水素又はアルキル基であり、mは、1~10である)
の化合物の薬理学的に許容される塩との間の重合生成物を含む合成ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリカチオン塩は、式Iの前記化合物と、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はメタクリルアミドとの間の共重合生成物を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリカチオン塩は、式Iの前記化合物と、メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEMA)、又はそれらの任意の組合せとの間の共重合生成物を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
R
1はメチルであり、XはNHであり、mは3である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
式Iのグアニジニルモノマー対コモノマーのモル比は、1:20~20:1である、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリグアニジニルコポリマーは、1kDa~1,000kDaの平均モル質量を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
前記ポリアニオン多価電解質は、ポリアニオン塩を水に溶解させることによって得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリアニオン塩は、合成ポリマー又は天然に存在するポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記ポリアニオン塩は、2つ以上のカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前記ポリアニオン塩は、グリコサミノグリカン又は酸性タンパク質の薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
前記グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、又はヒアルロン酸を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記ポリアニオン塩は、6以上のpHで正味負電荷を有するタンパク質の薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
前記ポリアニオン塩は、ポリマーの主鎖に懸下した、前記ポリマー主鎖の主鎖に組み入れられた、又はそれらの組合せのアニオン性基を含む前記ポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項38】
前記ポリアニオン塩は、2つ以上のアニオン性基を含むホモポリマー又はコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項39】
前記ポリアニオン塩は、式XI
【化2】
(式中、R
4は、水素又はアルキル基であり;
nは、1~10であり;
Yは、酸素、硫黄、又はNR
30であり、ここで、R
30は、水素、アルキル基、又はアリール基であり;
Z’は、アニオン性基の薬理学的に許容される塩である)
を有する2つ以上の断片を含むコポリマーである、請求項31に記載の組成物。
【請求項40】
Z’は、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、置換若しくは非置換ホスフェート又はホスホネートである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
nは2である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ポリアニオン塩は、ポリホスフェートを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項43】
前記ポリホスフェートは、天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記ポリホスフェートは、ポリホスホセリンを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記ポリホスフェートは、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
前記ポリホスフェートは、ホスフェートアクリレート及び/又はホスフェートメタクリレートと、1種以上の追加の重合性モノマーとの間の共重合生成物である、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
前記ポリアニオン塩は、10~1,000のホスフェート基を有する、請求項31に記載の組成物。
【請求項48】
前記ポリアニオン塩は、無機ポリホスフェート、有機ポリホスフェート、又はリン酸化糖の薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項49】
前記ポリアニオン塩は、イノシトールヘキサホスフェートの薬理学的に許容される塩を含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記ポリアニオン塩は、ヘキサメタホスフェート塩を含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
前記ポリアニオン塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムを含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
前記ポリアニオン塩は、環状無機ポリホスフェート、線状無機ポリホスフェート、又はそれらの組合せの薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項53】
前記ポリアニオン塩は、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートの薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項54】
前記ポリアニオン塩は、ホスフェート若しくはホスホネートアクリレート又はホスフェート若しくはホスホネートメタクリレートと、1種以上の追加の重合性モノマーとの間の共重合生成物の薬理学的に許容される塩を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項55】
補強成分を更に含み、前記補強成分が、天然若しくは合成繊維、水不溶性充填材粒子、ナノ粒子、又はマイクロ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項56】
前記補強成分は、天然若しくは合成繊維、水不溶性充填材粒子、ナノ粒子、又はマイクロ粒子を含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
1種以上の生物活性剤を更に含み、前記生物活性剤が、抗生物質、鎮痛剤、免疫モデュレーター、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メッセンジャー分子、細胞シグナリング分子、受容体作動薬、腫瘍溶解性ウイルス、化学療法薬剤、受容体拮抗薬、核酸、化学修飾核酸、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項58】
10cp~20,000cpの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項59】
前記ポリカチオン多価電解質対前記ポリアニオン多価電解質の全正/負電荷比は、4~0.25であり、前記組成物中の前記イオン濃度は、0.5M~2.0Mである、請求項1に記載の組成物。
【請求項60】
前記ポリカチオン多価電解質及び前記ポリアニオン多価電解質の濃度は、0.5:1~2:1のポリカチオン多価電解質対ポリアニオン多価電解質の電荷比をもたらすのに十分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項61】
6~9のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項62】
少なくとも1種のポリカチオン塩と、少なくとも1種のポリアニオン塩と、一過性造影剤とを水中で混合することを含む方法によって製造される注入可能な組成物であって、前記ポリカチオン塩が、ポリカチオン多価電解質とアニオン対イオンとに解離し、前記ポリアニオン塩が、ポリアニオン多価電解質とカチオン対イオンとに解離し、前記組成物が、(i)水中での前記ポリカチオン多価電解質と前記ポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、前記被験者へ前記組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成され、前記一過性造影剤が前記固体から拡散する組成物。
【請求項63】
請求項1~62のいずれか一項に記載の組成物を被験者へ導入することを含む、固体を前記被験者においてその場で生成させる方法であって、前記被験者への前記組成物の導入時に前記組成物がその場で固体に変換される方法。
【請求項64】
請求項1~62のいずれか一項に記載の組成物を前記被験者へ注入することを含む、前記被験者において生物活性溶離貯留物を生成するための方法。
【請求項65】
請求項1~62のいずれか一項に記載の組成物を被験者の血管へ導入することを含む、前記血管における血流を低下させる又は妨げる方法であって、前記血管へ前記組成物を導入するとすぐに、前記組成物が前記血管内でその場で固体に変換される方法。
【請求項66】
腫瘍、動脈瘤、静脈瘤、血管奇形、又は出血している傷口への血流を低下させる又は妨げる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記被験者における血管の内壁を補強する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
(a)少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物を含む組成物と、
(b)一過性造影剤と、
(c)請求項1~62のいずれか一項に記載の注入可能な組成物の製造指示書と
を含むキットであって、
前記ポリカチオン塩が、ポリカチオン多価電解質とアニオン対イオンとに解離し、前記ポリアニオン塩が、ポリアニオン多価電解質とカチオン対イオンとに解離し、前記組成物が、(i)水中での前記ポリカチオン多価電解質と前記ポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、前記被験者へ前記組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成され、前記一過性造影剤が前記固体から拡散するキット。
【請求項69】
前記少なくとも1種のポリカチオン塩と前記少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物を含む前記組成物は、乾燥粉末である、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記少なくとも1種のポリカチオン塩と前記少なくとも1種のポリアニオン塩との前記混合物を含む前記組成物は、水を更に含む、請求項68に記載のキット。
【請求項71】
前記造影剤は、水中に存在する、請求項68に記載のキット。
【請求項72】
(a)少なくとも1種のポリカチオン塩と、
(b)少なくとも1種のポリアニオン塩と、
(c)一過性造影剤と、
(d)請求項1~62のいずれか一項に記載の注入可能な組成物の製造指示書と
を含むキットであって、
前記ポリカチオン塩が、ポリカチオン多価電解質とアニオン対イオンとに解離し、前記ポリアニオン塩が、ポリアニオン多価電解質とカチオン対イオンとに解離し、前記組成物が、(i)水中での前記ポリカチオン多価電解質と前記ポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、前記被験者へ前記組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成され、前記一過性造影剤が前記固体から拡散するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月22日出願の、同時係属米国仮特許出願第63/129,162号の利益及びそれに対する優先権を主張するものであり、その内容は、それらの全体を本明細書に参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
経カテーテルによる塞栓は、血管又は血管床を閉塞させるために用いられる医療処置である。この処置において、血管アクセスは、典型的には大腿動脈において得られ、カテーテルは、フルオロスコピーを用いる場所へ導かれる。塞栓剤は、制御された、局部的な遮断を生じるために送達される。塞栓療法は、一連の疾患のための治療アルゴリズムに広く用いられている。塞栓デバイスは、上部及び下部胃腸出血[1-3]、肺及び気管支出血[4、5]、硬膜下血腫[6、7]、並びに骨盤出血[8]などの、特定のタイプの出血を処理するための第一モードの治療として使用されている。動静脈先天性異常[9、10]、瘻[11]、動脈瘤[12]、及び精索静脈瘤[13]などの血管異常もまた、一般的に塞栓を用いて治療される。良性腫瘍(例えば、子宮筋腫)と、肝細胞がん[14、15]、頭部及び頸部がん[16]、並びに腎細胞がん[17]などの、悪性腫瘍とは、塞栓の標的である。後者の場合に、これは、ほとんどの場合に、待機的治療であるが、塞栓は、手術中の出血を最小限にするために切除の前に行うことができる[14、18]。更に、門脈の術前塞栓は、肝葉における肥大を刺激するために一般的に行われ、除去することになっていない[19、20]。これらの十分に確立された使用に加えて、塞栓は、良性前立腺肥大(前立腺動脈塞栓)[21]、肥満(肥満塞栓)[22]、及び変形性関節症[23]の治療などの、幾つかの新しい症状における治療アルゴリズム内で研究中である。
【0003】
塞栓治療を行うために、様々な塞栓デバイス又は塞栓剤を、閉塞される血管のサイズに応じて、配置することができる[24、25]。大きい血管(1mm超)は、典型的には、コイル又は血管プラグなどの血液凝固閉塞デバイスを用いることによって閉塞させられる[24]。より小さい血管は、サイズが40~1200μmの範囲の、微小球及び塞栓粒子を使って閉塞させられ、それらは、血流によってカテーテルから下流に運ばれ、血管中に詰まることになる。
【0004】
液体塞栓剤は、低粘度の注入可能な形態を有し、長いマイクロカテーテルを通してのそれらの送達を可能にするが、血管に入ると硬化する。これらの試剤は、ほとんどの場合、より小さい血管(<300μm)への末梢浸透が望まれる状況で使用される[25]。臨床用途での液体塞栓剤の部類には、沈澱エチレン-ビニルコポリマー(EVOH)及びその場重合シアノアクリレート(CA)接着剤が含まれる。EVOH-系塞栓物質(例えば、OnyxTM、PHILTM、SquidperiTM)は、DMSOが拡散して離れるにつれてその場で沈澱するジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させられたポリマー[26]、及び血液中のアニオンとの接触時に重合するシアノアクリレート接着剤(例えばTrufillTM)[27]を含有する。
【0005】
送達中の蛍光透視視覚化は、塞栓治療の本質的特質である。液体塞栓物質と共に使用される視覚化剤のタイプは、重要な設計基準である。永久的な放射線不透過性は、治療中及び治療後の両方で注入部位の高コントラスト撮像などの利点を提供する。しかしながら、これらの試剤は、被験者において無期限に残存し、CTスキャンにおいて撮像アーチファクトを引き起こし得、並びに造影剤が位置する皮膚の下で望ましくない変色を提供し得る。更に、タンタルなどの、永久的な造影剤は、電気メスがその後に注入部位で行われる場合に、火花発生を受け得る。逆に、ビーズ又は粒子が造影剤キャリア中で送達される場合などの、塞栓部位から直ちに洗い流される造影剤は、追加の注入が必要である場合、臨床医が第1ビーズ又は粒子の位置を視覚化することを可能にしない。それ故に、少なくとも医療処置の長さの間存続するが、永久的な造影剤の不都合を回避するために数時間又は数日以内に消失する一時的な造影剤を持っていることが望ましい。
【0006】
液体塞栓物質の別の極めて重要な設計基準は、組成物の粘度である。塞栓剤は、長い、狭いマイクロカテーテルによって一般に投与される。小さい内径(i.d.)マイクロカテーテルは、実用的な注入圧力、例えば、マイクロカテーテル破裂圧力未満を達成するために低粘度組成物を必要とする。より高い粘度は、より大きい血管を塞栓するためのより大きいi.d.マイクロカテーテルにふさわしい。効果的な及び正確な塞栓と依然として達成する、様々なマイクロカテーテル寸法向けに最適化された粘度の液体塞栓物質は、臨床医にとって非常に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いったん被験者に投与されると塞栓剤から直ちに拡散するよりもむしろ数分~数時間一時的な造影剤を提供するか又は永久に被験者に残存する造影剤を含む、並びに被験者への塞栓剤の投与のやり方及び部位に適した粘度の範囲で入手可能である液体造影剤の臨床的必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1種以上のポリカチオン多価電解質及びアニオン対イオンと、1種以上のポリアニオン多価電解質及びカチオン対イオンと、一過性造影剤とからなる注入可能な組成物が本明細書に記載される。本注入可能な組成物は、水中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であるイオン濃度を有する。例えば、対イオンは、ポリカチオンとポリアニオンとが静電的に会合するのを防ぐのに十分な濃度のものであり、それは、安定した注入可能な組成物の形成をもたらす。被験者への本組成物の導入時に、固体がその場で生成する。一過性造影剤は、数時間又は数日にわたって本固体から拡散し、一時的な造影剤を提供し、永久的な造影剤とは異なって被験者に残存しない。この特徴は、臨床医が固体からの造影剤の拡散の前に医療処置を行うのに十分な時間を提供する。本注入可能な組成物の粘度は、注入可能な組成物の用途に応じて変えることができる。分子量、電荷密度、並びに/又はポリカチオン塩及びポリアニオン塩の濃度を変えることによって、有用な範囲の粘度を有する注入可能な組成物を製造することが可能である。
【0009】
本発明の利点は、次に来る説明においてある程度示されるであろうし、本説明からある程度明らかになるであろうし、又は以下に記載される態様の実践によって学び得る。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組合せを用いて実現される及び達成されるであろう。前述の概要及び以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的であるにすぎず、限定的ではないことが理解されるべきである。
【0010】
本明細書に援用される及び本明細書の一部を構成する、添付の図面は、以下に記載される幾つかの態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Poiseulleの法則によって予測される、800psiのカテーテル破裂圧力及び150cmの長さを仮定して、カテーテル内径の関数としての最大送達可能粘度を示す。
【
図3A-3B】1:1の固定した多価電解質正電荷対負電荷比での多価電解質ポリ(GPMA・HCl
n-co-MA)(PG-HCl
n)及びヘキサメタリン酸ナトリウム(Na
nMP)を含む注入可能な組成物の粘度へのポリマー濃度及び分子量(M
w)の影響を示す:粘度(y軸)は、異なるPG濃度でのPG-HCl
n濃度(x軸)に対してプロットされている。
【
図4】PG-HCl
n及びNa
nMPを使って調製された注入可能な組成物の粘度対非イオン性造影剤(イオヘキソール及びイオジキサノール)の濃度(mgI/mL)を示す。
【
図5】生理食塩水中へ送達される及び固体形態中へ移動するイオジキサノール(80mgI/mL)入りの注入可能な組成物を示す。
【
図6】通常の生理食塩水への注入24時間後の固化した注入可能な組成物の弾性率への分子量、ポリマー濃度及び添加された対イオンの影響を示す。振動貯蔵弾性率値は、1Hz、1%歪みで示される。
【
図7】logスケールでの非イオン性造影剤を使って調製されたPG-MP注入可能な組成物の液体及び固体形態の複素弾性率(G
*)の比較を示す。G
*値は、1Hz、1%歪みで報告される。
【
図8A-8B】異なるイオジキサノール濃度を有する注入可能な組成物に関する放射線不透過性の継続時間を示す。パネルAは、0mgI/mL~320mgI/mLの範囲のイオヘキソール濃度の注入可能な組成物に関して送達1時間後及び送達24時間後におけるHounsfield単位で測定された放射線不透過度を示す。パネルBは、1及び24時間における垂直画像及び軸位像でのこれらのサンプルの2つ(80mg/mL及びゼロの造影剤)からの画像を示す。放射線不透過性は、24時間において全てのサンプルで著しく低下する。
【
図9A-9B】豚腎臓でのイオヘキソール(300mgI/mL)を使って調製された注入可能な組成物(IC)の使用を示す。(A)IC-イオヘキソール300送達のエリアにおける放射線不透過性を示す送達の5分以内に撮られた画像。(B)この造影剤の一過性特質を実証している、IC-イオヘキソール300が送達されたエリアにおいてゼロの残存放射線不透過性を示す送達のおよそ24時間後に撮られた画像。
【
図10A-10D】豚腎臓でのエチオダイズド油(1:1)入りの注入可能な組成物の使用を示す。(A)豚腎臓の動脈血管系を示す処理前の血管造影図。(B)IC-エチオダイズド油エマルジョンの送達を示す蛍光透視像。(C)標的血管系の完全な閉塞を示す送達の5分以内に撮られた処理後の血管造影図。(D)注入可能な組成物に関してゼロの残存造影剤を示す、左腎の24時間フルオロスコープ画像。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に開示される多数の修正及び他の実施形態は、前述の記載及び関連図面に提示された教示の利益を享受する、開示される組成物及び方法に関連する技術分野の当業者に思い浮かぶであろう。それ故に、本開示は、開示される具体的な実施形態に限定されないこと、並びに修正及び他の実施形態は添付のクレームの範囲内に含まれることが意図されることが理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載される態様の多くの変形及び改作を認めるであろう。これらの変形及び改作は、本開示の教示に含まれること及び本明細書のクレームによって包含されることが意図される。
【0013】
特定の用語が本明細書で用いられるけれども、それらは、一般的な及び説明的な意味で用いられるにすぎず、限定の目的のために用いられない。
【0014】
本開示を読むと当業者に明らかであろうように、本明細書に記載される及び例示される個別の実施形態のそれぞれは、本開示の範囲又は主旨から逸脱することなしに他の幾つかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る又はいずれかの特徴と組み合わせられ得る別々の構成要素及び特徴を有する。
【0015】
いかなる列挙される方法も、列挙される事象の順番に又は論理的に可能である他の順番に実施することができる。すなわち、特に明記しない限り、本明細書に示されるいかなる方法又は態様も、そのステップが特定の順番に行われることを必要とすると解釈されることは決して意図されない。したがって、ステップが特定の順番に限定されることをクレーム又は記載において方法クレームが明記しない場合、いかなる点でも、順番が推論されることは決して意図されない。これは、ステップの配置又は操作の流れ、文法構成若しくは句読法に由来する明らかな意味、又は本明細書に記載される態様の数又はタイプに関して論理の問題などの、解釈のいかなる可能なノン-エクスプレス根拠も保持する。
【0016】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、それらに関連して刊行物が引用される、方法及び/又は材料を開示する及び記載するために引用される。全てのそのような刊行物及び特許は、あたかも各個別の刊行物又は特許が参照により援用されることを具体的に及び個別に示されるかのように参照により本明細書に援用される。参照によるそのような援用は、引用される刊行物及び特許に記載される方法及び/又は材料に明確に限定され、引用された刊行物及び特許からのいかなる辞書学的定義にも広がらない。引用される刊行物及び特許における、本出願において明確に繰り返されないいかなる辞書学的定義も、そのようなものとして処理されるべきではなく、且つ添付のクレームに現れるいかなる用語をも定義するとして読まれるべきではない。いかなる刊行物の引用も、出願日前のその開示に関するものであり、先行開示の理由で本開示がそのような公開に先行する権利を与えられないことの承認として解釈されるべきではない。更に、提供される公開日は、独立して確認される必要があるかもしれない実際の公開日とは異なる可能性がある。
【0017】
本開示の態様は、システム法定部類などの、特定の法定部類において記載し、特許請求することができるが、これは、便宜上であるにすぎず、当業者は、本開示の各態様が、任意の法定部類において記載し、特許請求することができることを理解するであろう。
【0018】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の態様を説明する目的のためにすぎず、限定的であることを意図しない。特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、開示される組成物及び方法が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものとの同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるものなどの、用語は、本明細書及び関連技術との関連でそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義しない限り理想的な又は過度に形式張った意味で解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書において及び次に来るクレームにおいて、以下の意味を有すると定義されるものとする多数の用語に言及されるであろう。
【0020】
本明細書及び添付のクレームにおいて用いられるとき、単数形態「a、an(1つの)」、及び「the(その)」は、特に文脈が明らかに指示しない限り、複数指示対象を含むことが指摘されなければならない。したがって、例えば、a(1つの)「ポリカチオン塩」への言及は、2種以上のそのようなポリカチオン塩の混合物等を含む。
【0021】
「任意の」又は「任意に」は、その後に記載される事象又は状況が起こり得る又は起こり得ないことを意味し、その記載が、事象又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、語句「補強剤を任意に含む」は、補強剤が組成物に含まれることができる又はできないことを意味し、その記載が、補強剤を含む及び補強剤を排除する両方の組成物を含むことを意味する。
【0022】
本明細書の全体にわたって、特に文脈が指示しない限り、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、述べられる要素、整数、ステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の包含を暗示するが、任意の他の要素、整数、ステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の排除を暗示しないことが理解されるであろう。
【0023】
本明細書で用いるところでは、用語「約」は、所与の数値が、所望の結果に影響を及ぼすことなく終点の「少し上」又は「少し下」であり得ることを規定することによって数値範囲終点に柔軟性を与えるために用いられる。本開示の目的のためには、「約」は、数値の10%下から数値の10%上まで広がる範囲を指す。例えば、数値が10である場合、「約10」は、終点9及び11を含めて、9~11を意味する。
【0024】
組成物又は物品中の特定の要素又は成分の、本明細書及び終結のクレームにおける重量部への言及は、それらに関して重量部が表される組成物又は物品中の要素又は成分と、任意の他の要素又は成分との間の重量関係を示す。したがって、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yとを含有する配合物において、X及びYは、2:5の重量比で存在し、追加の成分が配合物中に含有されるかどうかに関わりなくそのような比で存在する。
【0025】
成分の重量パーセントは、特にそれとは反対を述べない限り、成分が含まれる配合物又は組成物の総重量を基準とする。重量パーセントは、重量/体積パーセント及び重量/重量パーセントを含み、カバーする。
【0026】
用語「アルキル基」は、本明細書で用いるところでは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等などの、1~25個の炭素原子の分岐の若しくは非分岐の飽和炭化水素基である。より長鎖のアルキル基の例としては、パルミテート基が挙げられるが、それに限定されない。「低級アルキル」基は、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0027】
用語「シクロアルキル基」は、本明細書で用いるところでは、少なくとも3個の炭素原子からなる非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
用語「治療する」は、本明細書で用いるところでは、注入可能な組成物の不在下での同じ症状と比較したときに前から存在する疾患の症状を維持する又は低下させることと定義される。用語「防ぐ」は、本明細書で用いるところでは、注入可能な組成物の不在下での同じ活性と比較したときに活性を完全に排除する又は活性を低下させる本明細書に記載される注入可能な組成物の能力である。用語「妨げる」は、本明細書で用いるところでは、プロセスを減速する又は防ぐ注入可能な組成物の能力を指す。
【0029】
「被験者」は、ヒト、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、齧歯類動物(例えば、マウス、ラット、モルモット等)、ネコ、ウサギ、雌牛、ウマを含むが、それらに限定されない哺乳類、並びに脊椎動物、鳥類、魚、両生類、及び爬虫類などの非哺乳類を指す。
【0030】
用語「塩」は、本明細書で用いるところでは、カチオン及びアニオンを有する水溶性化合物の乾燥固体形態と定義される。塩が水に添加されるとき、塩は、カチオンとアニオンとに解離する。ポリカチオン塩は、アニオン対イオンと共に複数のカチオン性基を有する化合物である。ポリアニオン塩は、カチオン対イオンと共に複数のアニオン性基を有する化合物である。
【0031】
用語「多価電解質」は、本明細書で用いるところでは、イオン化官能基を持ったポリマーと定義され、ここで、イオン化官能基は、ポリマー主鎖、ポリマーの側鎖、又はそれらの組合せに組み入れることができる。ポリカチオン及びポリアニオンは、ポリカチオン塩又はポリアニオン塩が水に溶解したときに生成する。
【0032】
用語「分子量」は、分子量の分布を含有する合成ポリマーのアンサンブルの平均分子量を指すために本明細書で用いられる。特に記載しない限り、本明細書に報告される値は、重量平均分子量(Mw)である。
【0033】
用語「安定溶液」は、本明細書で用いるところでは、静電的に相互作用しない逆帯電した多価電解質の液体組成物と定義される。多価電解質溶液は、肉眼的に異なった相へ分離しない。
【0034】
用語「固体」は、本明細書で用いるところでは、固体を生成させるために使用される注入可能な組成物の最初の流体形態よりも実質的に高い弾性率及び粘性係数を有する非流動性の、粘弾性の材料と定義される。
【0035】
用語「一過性」は、造影剤に関して本明細書で用いるところでは、本明細書に記載される注入可能な組成物によって生成した固体から経時的に拡散する又は抜け出す造影剤の能力と本明細書では定義される。
【0036】
用語「一時的な造影剤」は、本明細書で用いるところでは、一過性造影剤が、例えば、フルオロスコピー又はCTなどの撮像技法によって被験者において検出することができないように一過性造影剤の大部分が固体から拡散したときに起こる。
【0037】
用語「臨界濃度」は、それよりも上ではポリカチオンとポリアニオンとの特定の組合せが静電的に会合しない、したがって液相-液相体又は液相-固相分離を防ぐイオンの濃度である。特定の組成物に関する臨界イオン濃度は、多価電解質ペアの分子量及び濃度、ポリマーイオンのモル%、ポリマーイオン種、自由イオン種、及びpHなどの、複数の要因に依存する。水への溶解時にポリマー塩から解離する対イオンは、溶液の全イオン濃度に寄与する。ほとんどの場合に、本明細書に記載される多価電解質ペア及び濃度に関して、解離した対イオンの濃度は、特定の組成物に関する臨界イオン濃度よりも上である。いくつかの場合に、追加のイオン(例えば、NaClなどの一価のイオン)を、特定の組成物に関する臨界イオン濃度よりも上に全イオン濃度を上げるために添加することができる。
【0038】
「生理的条件」は、被験者の特定エリア内のオスモル濃度、イオン濃度、pH、温度等などの条件を指す。例えば、通常の血液ナトリウム濃度範囲は、ヒトにおいて、135~145mMol/Lである。
【0039】
本明細書で用いるところでは、複数(すなわち、2つ以上)の項目、構造要素、組成要素、及び/又は材料が、便宜上共通のリストに提示され得る。しかしながら、これらのリストは、まるでリストの各メンバーが、別個の及びユニークなメンバーとして個別に特定されるかのように解釈されるべきである。したがって、任意のそのようなリストの個別のメンバーは、それとは反対の指示なしに、共通のグループでのその提示にもっぱら基づいた同じリストの任意の他のメンバーと事実上同等のものと解釈されるべきではない。
【0040】
濃度、量、及び他の数値データは、範囲形式で本明細書に表されても又は提示されてもよい。そのような範囲形式は便宜上及び簡略して表現するために用いられるにすぎず、したがって、範囲の限界として明確に列挙される数値を含むのみならず、あたかも数値及び部分的な範囲が明確に列挙されているかのようにその範囲内に包含される個別の数値又は部分的な範囲を全てまた含むと柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例として、「約1」~「約5」の数値範囲は、約1~約5の明確に列挙された値を含むのみならず、示された範囲内の個別の値及び部分的な範囲をまた含むと解釈されるべきである。したがって、2、3、及び4などの個別の値、1~3、2~4、3~5、約1~約3、1~約3等などの部分的な範囲、並びに個別に、1、2,3、4、及び5がこの数値範囲に含まれる。同じ原理が、たった一つの数値を最小値又は最大値として列挙する範囲に適用される。更に、そのような解釈は、記載されている記号の幅又は範囲にかかわらず適用されるべきである。
【0041】
開示される組成物及び方法のために使用することができる、それらと併せて使用することができる、それらの調製のために使用することができる材料及び成分が開示されるか、又は開示される組成物及び方法の成果が開示される。これらの及び他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合に、これらの化合物の各様々な個別の及び集合的な組合せの特定指示及び並べ替えが明確に開示され得ないのに、それぞれが、本明細書で特に熟慮され、記載されることが理解される。例えば、分子A、B、及びCの部類、並びに分子D、E、及びFの部類、及び組合せA+Dの例が開示される場合に、たとえそれぞれが個別に列挙されなくても、それぞれは、個別に及び集合的に熟慮される。したがって、この例において、組合せA+E、A+F、B+D、B+E、B+F、C+D、C+E、及びC+Fのそれぞれは、特に熟慮され、A、B、及びC;D、E、及びF;並びにA+Dの例示的組合せの開示から開示されたと考えられるべきである。同様に、これらのいかなるサブセット又は組合せもまた、特に熟慮され、開示される。したがって、例えば、A+E、B+F、及びC+Eの部分群は、特に熟慮され、A、B、及びC;D、E、及びF;並びにA+Dの例示的組合せの開示から開示されたと考えられるべきである。このコンセプトは、開示される組成物の製造方法及び使用方法のステップを含むが、それらに限定されない本開示の全ての態様に当てはまる。したがって、開示される方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組合せで行うことができる様々な追加のステップが存在する場合、各そのような組合せは、特に熟慮され、開示されたと考えられるべきである。
【0042】
一過性造影剤入りの注入可能なその場で固化する注入可能な組成物
少なくとも1種のポリカチオン塩と、少なくとも1種のポリアニオン塩と、造影剤とを水中で混合することによって製造される注入可能な組成物が本明細書に記載される。水への添加時に、ポリカチオン塩及びポリアニオン塩は解離してポリカチオン、ポリアニオン、及び対イオンの溶液を生じる。溶液中の対イオンの濃度は、静電的会合と、異なった液相又は固相への多価電解質のその後の分離とを防ぐのに十分である、組成物の臨界イオン濃度よりも大きい。被験者内の適用部位は、注入可能な組成物のイオン濃度よりも下の全イオン濃度を有し、被験者への注入可能な組成物の投与時に多価電解質会合と固体の形成とをもたらす。
【0043】
被験者(例えば、血管内)への注入可能な組成物に導入時に、注入可能な組成物中に存在する対イオンは、組成物から拡散する。注入可能な組成物からのイオンの拡散は、組成物中に存在するポリカチオンとポリアニオンとの間の静電的相互作用を可能にし、その場で非流体の、水不溶性固体への多価電解質の変換をもたらす。その場で生成した固体は、被験者内の固化の部位に位置することができる、堅い、粘着性の物質である。
【0044】
本明細書に記載される注入可能な組成物は、以前の確立された塞栓物質よりも優れて多数の利点を有する。本明細書に記載される注入可能な組成物中に存在する一過性造影剤は、被験者への投与時にその場で生成した固体から容易に拡散する。一過性造影剤は、注入可能な組成物の投与の時にその場で生成した固体の容易な撮像を可能にする;しかしながら、一過性造影剤の全部ではないが大部分は、ある期間にわたって固体から拡散する。被験者への投与後数秒で減少する、即時の又は短期間の放射線不透過性を持った他の塞栓剤とは対照的に、本明細書に記載される注入可能な組成物によって生成する固体中の一過性造影剤は、ある時間固体中に残存する。言い換えれば、速く消散する造影剤と永久的な造影剤との間の中間継続時間の造影剤が存在し;固体からの一過性造影剤の放出は、長期間にわたって遅らせられる。この特徴は、送達された塞栓物質が塞栓治療の継続時間の全体にわたって見え続けることを可能にし、それは、物質配置のより良好な確認をもたらし、並びに治療中のその後の注入のための手引きを提供する。この一時的な放射線不透過性又はコントラストは、フルオロスコピー若しくはCTなどの、いかなるその後の撮像、又はすぐ近くの標的の将来の治療も妨げないという点において実用性を提供する。それはまた、金属造影剤を使った液体塞栓剤とは対照的に、火花発生なしに電気メスが使用されることを可能にする。したがって、本明細書に記載される注入可能な組成物は、こうして、永久的な造影剤の使用に関する欠点に対処する。
【0045】
注入可能な組成物の別の利点は、注入可能な組成物の用途に応じて変更する又は微調整することができる組成物の粘度である。以下に詳細に議論されるように、例えば、ポリカチオン塩及びポリアニオン塩の濃度及び/又は分子量などの様々なパラメーターを、組成物の粘度を変更するために用いることができる。更に、一過性造影剤の濃度もまた、組成物の粘度を変更するために用いることができる。これは、異なる粘度を有する注入可能な組成物の使用を必要とする広範囲の内径及び長さを有する針、カテーテル、マイクロカテーテル又は他の送達デバイスを用いて注入可能な組成物を投与することができるので、注入可能な組成物を多数の異なる用途において万能なものにする。
【0046】
液体塞栓物質の別の極めて重要な設計基準は、組成物の粘度である。粘度は、それによって塞栓物質を送達することができるマイクロカテーテルのサイズを決定する。液体塞栓物質を送達する能力の鍵になる要因は、マイクロカテーテルの破裂圧力、流体がカテーテルを押し通されるときにそれが耐えることができる最大流体力学的圧力である。この圧力は、各市販のマイクロカテーテルに関して測定され、明記されている。これらの破裂圧力は、300psi~1200psiで変わるが、800psiが、ハイエンドの塞栓マイクロカテーテルに関する一般的な値である。様々な要因が、カテーテルに関する最大流体力学的圧力に影響を及ぼす。これらの要因は、ポアズイユ(Poiseuille)の方程式によって関連付けられ、ここで、Pは圧力であり、rは管(カテーテル)の半径であり、Lはカテーテルの長さであり、Qは体積流量であり、μは塞栓物質の粘度である。この方程式は、円筒状管を通っての定常層流を仮定しており、それは、一般に、この用途に適切である。
【数1】
【0047】
この方程式は、カテーテルの末端での圧力がゼロであるか又は道理にかなってゼロに近く、ニュートンの流体挙動であると仮定して、カテーテル内の最大流体力学的圧力を予測する。結果として、カテーテルの破裂圧力は、塞栓剤、カテーテル、及び送達速度の特性を制約する。これらの要因のうちで最も重要なものは、カテーテル内径が、それを半分に減らすと、流体力学的圧力が16倍に高まることを意味する、4乗に反比例して圧力と関連付けられるので、カテーテルの内径である。カテーテルサイズの注意深い選択が成功裏の塞栓にとって重要であるが、それは、特定の用途によって様々に制限される。例えば、多数の状況は、カテーテルを直径が1mm未満の血管中へ導くことを要求し、外径が3F(1mm)未満のカテーテルの使用を必要とする。これらのカテーテルは、0.027インチ(0.69mm以下の内径を有する。いくつかの高度に選択的な又は神経血管用途は、0.014インチ(0.36mm)未満の内径を有する、外径が2F未満のカテーテルを要求する。カテーテル直径を制御するという制限を考えると、他のパラメーターの制御が、成功裏の適用を確保するために必要とされる。流体力学的圧力に正比例する方程式内の他の要因は、カテーテル長さ、材料の流量、及び材料の粘度である。カテーテルの長さ及び材料の流量は、注入性を制御するための主な要因としての材料の粘度を残して、治療仕様又はオペレータ好みによってまた大きく支配される特性である。
【0048】
図1は、液体の送達性への流体粘度及びカテーテルサイズの影響を例示する。この図において、最大送達可能な粘度が1分当たり0.1~1mLの範囲の流量でカテーテル内径(ID)の関数としてプロットされている。この図に関して、カテーテル破裂圧力は800psi(高品質塞栓マイクロカテーテルにとって一般的な破裂圧力で固定され、長さは150cmで固定される。実際には、カテーテル長さの範囲(約100cm~200cm)及び破裂圧力の範囲(約300psi~1200psi)を見いだすことができるが、最大粘度は両方と一次的に比例する。大きいカテーテル(0.040インチID以上、カテーテル)に関して、5000cPよりも大きい粘度が、1.0mL/分の高い流量でさえも許容され、10,000cPよりも高い粘度を0.5mL/分で送達することができる。しかしながら、カテーテルサイズが減らされるにつれて、最大送達粘度もまた急速に下がる。カテーテルIDが、0.025~0.027インチ(一般的なサイズ)に減らされる場合、粘度は、1mL/分での送達のためには1000cP未満でなければならない。カテーテルサイズが0.018インチID(小さい末梢血管カテーテル)に更に減らされるとき、236cPの粘度がこの流量を維持するために必要とされるであろう。小さい神経血管マイクロカテーテル(0.013インチ以下)においては、1mL/分で閉塞送達可能なために70cP未満の粘度が必要とされるであろう。図が示すように、粘度要件は、カテーテルサイズ及び所望の流量にわたって大きく変わる。これらのカテーテル制限を考えると、粘度の正確な制御は、液体塞栓技術プラットフォームの本質的特質である。より高粘度溶液が大きいカテーテルでの使用に適切であり、一方、粘度は、小さいマイクロカテーテルでの使用のために劇的に下げなければならない。
【0049】
最後に、注入可能な組成物は、必要に応じて簡単に及び容易に調製することができる。以下に議論されるように、注入可能な組成物は、組成物の用途に応じて多数の異なる方法で調製することができる。
【0050】
本明細書に記載される注入可能な組成物を製造するために使用される各成分並びに注入可能な組成物を製造する方法が以下に提供される。
【0051】
一過性造影剤
本明細書に記載される注入可能な組成物は、1種以上の一過性造影剤を含み、ここで、造影剤は、被験者への投与時にその場で生成する固体から容易に拡散し、一時的な造影剤を提供する。
【0052】
一態様において、一過性造影剤は、非イオン性化合物である。別の態様において、一過性造影剤は水溶性である。一態様において、一過性造影剤は、1個以上のヨウ素原子が有機化合物に共有結合している、ヨウ素化有機化合物である。ヨウ素化有機造影剤は、ヨウ素含有有機化合物の部類である。この一式の化合物は、イオパミドール、イオジキサノール、イオヘキソール、イオプロミド、イオブチリドール、イオメプロール、イオペントール、イオパミロン、イオキシラン、イオトロラン、イオトロール及びイオベルソールなどの、異なる市販の化合物を製造するための2,3,5-トリヨード安息香酸の誘導体、ヨーパノ酸塩(iopanoate)、ジアトリゾ酸、ヨータラム酸塩、並びにイオキサグレートであり、様々な側鎖が親化合物に加えられている。これらの側鎖は、化合物の溶解性、毒性、及びオスモル濃度を変更する。イオジキサノールは、6個のヨウ素原子を持った分子を生じる、親化合物の二量体である。これらの化合物及び親化合物2,3,5-トリヨード安息香酸に関する構造は、
図2に示されている。別の態様において、ヨウ素化有機化合物は、例えば、エチオダイズドケシ種油(Lipiodol)などのヨウ素化油である。
【0053】
注入可能な組成物中の一過性造影剤の濃度は、用途に応じて変わることができる。一態様において、注入可能な組成物中の一過性造影剤の濃度は、10mgI/mL~1,000mgI/mLであるか、又は10mgI/mL、25mgI/mL、50mgI/mL、75mgI/mL、100mgI/mL、125mgI/mL、150mgI/mL、175mgI/mL、200mgI/mL、225mgI/mL、250mgI/mL、275mgI/mL、300mgI/mL、325mgI/mL、350mgI/mL、375mgI/mL、400mgI/mL、425mgI/mL、450mgI/mL、475mgI/mL、500mgI/mL、525mgI/mL、550mgI/mL、575mgI/mL、600mgI/mL、625mgI/mL、650mgI/mL、675mgI/mL、700mgI/mL、725mgI/mL、750mgI/mL、775mgI/mL、800mgI/mL、825mgI/mL、850mgI/mL、875mgI/mL、900mgI/mL、925mgI/mL、950mgI/mL、975mgI/mL、若しくは1,000mgI/mL、100mgI/mL、100mgI/mL、100mgI/mL、100mgI/mL、100mgI/mL、100mgI/mLであり、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、400mgI/mL~600mgI/mL等)の下端点及び上端点であることができる。
【0054】
一態様において、固体から拡散する一過性造影剤の大部分は、一過性造影剤が、例えば、フルオロスコピー又はCTなどの撮像技法によって検出できないようなものである。一態様において、一過性造影剤の70%以下、80%以下、90%以下、95%以下、又は100%以下が、いったん固体がその場で生成すると、5分~48時間、又は5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、若しくは48時間、2日間、5日間、10日間、15日間、20日間、25日間、若しくは30日間で固体から拡散し、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、1時間~3時間等)の下端点及び上端点であることができる。
【0055】
ポリカチオン塩
ポリカチオン塩は、複数のカチオン性基及び薬理学的に許容される対イオンを有する化合物であり、ここで、カチオン性基対アニオン対イオンの1:1化学量論比が存在する。一態様において、ポリカチオン塩は、複数のカチオン性基及び薬理学的に許容されるアニオン対イオンを持ったポリマー主鎖を有するポリマーである。カチオン性基は、ポリマー主鎖に懸下している及び/又はポリマー主鎖内に組み入れることができる。
【0056】
一態様において、ポリカチオン多価電解質は、ポリカチオン塩を水に溶解させることによって得られる。一態様において、ポリカチオン塩は、ポリカチオン塩酸塩であり、ここで、水との混合時に、ポリカチオン多価電解質とクロリドイオンとを生じる。別の態様において、本明細書に記載されるポリカチオン塩は、複数の塩基性基(例えば、アミノ基)を持ったポリマーを酸と化合させて相当するカチオン性基を生じることによって製造することができる。様々な態様において、薬理学的に許容されるポリカチオン塩を形成するために用いられ得る酸は、塩酸のような無機酸、酢酸、又は他の一価カルボン酸を含む。
【0057】
また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルクロリド、ブロミド、及びヨージドなどの、低級アルキルハロゲン化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミルスルフェートのようなジアルキルスルフェート、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロリド、ブロミド及びヨージドなどの長鎖ハロゲン化物、ベンジル及びフェネチルブロミドのようなアラルキルハロゲン化物等のような試剤で第四級化することができる。
【0058】
他の態様において、ポリカチオン塩がポリマーである場合、ポリカチオン塩は、1種以上のモノマーの重合によって製造することができ、ここで、モノマーは、対応する対イオンと共に1つ以上のカチオン性基を有する。このアプローチを用いるポリカチオン塩を製造するための非限定的な手順は、実施例において提供される。一態様において、いったんポリカチオンが調製されると、カチオン性基の数に対して化学量論量のアニオン対イオンを持ったポリカチオン塩を製造するために乾燥(例えば、凍結乾燥)前に、過剰のイオンを濾過又は透析によってポリカチオンから除去することができる。
【0059】
一態様において、ポリカチオン塩の対イオンは、例えば、クロリド、ピルベート、アセテート、トシレート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ラクテート、サリチレート、グルクロネート、ガラクツロネート、亜硝酸塩、メシレート、トリフルオロアセテート、硝酸塩、グルコネート、グリコレート、ホルメート、又はそれらの任意の組合せなどの一価イオンである。一態様において、ポリカチオン塩の対イオンは、例えば、スルフェート又はホスフェートなどの多価イオンである。
【0060】
一態様において、ポリカチオン塩は、ポリアミンの薬理学的に許容される塩である。ポリアミンのアミノ基は、分岐であるか又はポリマー主鎖の一部であることができる。一態様において、ポリアミンは、2個以上のペンダントアミノ基を含み、ここで、アミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アミン、アルキルアミノ基、ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾリル、又は1個以上のアミノ基で置換された芳香族基を含む。
【0061】
一態様において、ポリアミンの薬理学的に許容される塩は、芳香族基に直接に又は間接的に結合した1個以上のアミノ基を有するアリール基を含むことができる。或いはまた、アミノ基は、芳香環に組み入れることができる。例えば、芳香族アミノ基は、ピロール、イソピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、又はインドールである。別の態様において、芳香族アミノ基は、ヒスチジン中に存在するイソイミダゾールを含む。別の態様において、生分解性ポリアミンは、エチレンジアミンで変性されたゼラチンであることができる。
【0062】
ポリアミンのアミノ基は、薬理学的に許容される対イオンを持ったカチオンアンモニウム基を生じるために約6~約9のpH(例えば、生理的pH)でプロトン化することができる。
【0063】
一般に、ポリアミン塩は、生理的なpHで又はその近くで負電荷に対して大過剰の正電荷を持ったポリマーである。例えば、ポリカチオン塩は、10~90モル%、10~80モル%、10~70モル%、10~60モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、又は10~20モル%のプロトン化アミノ基を有することができる。別の態様において、ポリアミンのアミノ基の全てがプロトン化されている。
【0064】
一態様において、ポリカチオン塩は、リジン、ヒスチジン、又はアルギニンのプロトン化された残基を有することができる。例えば、アルギニンは、グアニジニル基を有し、ここで、グアニジニル基は、本明細書で有用なカチオン性基に変換することができる好適なアミノ基である。
【0065】
別の態様において、ポリアミンは、生分解性の合成ポリマー又は天然に存在するポリマーであることができる。ポリアミンがそれによって分解することができるメカニズムは、使用されるポリアミンに応じて変わるであろう。天然ポリマーの場合、それらは、ポリマー鎖を加水分解することができる酵素が存在するので生分解性である。例えば、プロテアーゼは、ゼラチンのような天然のタンパク質を加水分解することができる。合成の生分解性ポリアミンの場合、それらはまた、化学的に不安定な結合を有する。例えば、β-アミノエステルは、加水分解性エステル基を有する。
【0066】
一態様において、ポリアミンは、多糖、タンパク質、ペプチド、又は合成ポリアミンを含む。2個以上のアミノ基を持っている多糖を本明細書で使用することができる。一態様において、多糖は、キトサン又は化学修飾キトサンなどの天然多糖である。同様に、タンパク質は、合成の又は天然に存在する化合物であることができる。別の態様において、ポリアミンは、ポリ(β-アミノエステル)、ポリエステルアミン、ポリ(ジスルフィドアミン)、混合ポリ(エステル及びアミドアミン)、並びにペプチド架橋ポリアミンなどの合成ポリアミンである。
【0067】
一態様において、ポリアミンの薬理学的に許容される塩は、アミン変性の天然ポリマーであることができる。例えば、アミン変性の天然ポリマーは、1つ以上のアルキルアミノ基、ヘテロアリール基、又は1個以上のアミノ基で置換された芳香族基で変性されたゼラチンであることができる。アルキルアミノ基の例は、式IV~VI
【化1】
(式中、R
13~R
22は、独立して、水素、アルキル基、又は窒素含有置換基であり;
s、t、u、v、w、及びxは、1~10の整数であり;
Aは、1~50の整数である)
に描かれており、
ここで、アルキルアミノ基は、天然ポリマーに共有結合している。一態様において、天然ポリマーがカルボキシル基(例えば、酸又はエステル)を有する場合、カルボキシル基は、アルキルジアミノ化合物と反応してアミド結合を生み出し、アルキルアミノ基をポリマーに組み入れることができる。したがって、式IV~VIに言及すると、アミノ基NR
13は、天然ポリマーのカルボニル基に共有結合している。
【0068】
式IV~VIに示されるように、アミノ基の数は変わることができる。一態様において、アルキルアミノ基は、
-NHCH2NH2、-NHCH2CH2NH2、-NHCH2CH2CH2NH2、-NHCH2CH2CH2CH2NH2、-NHCH2CH2CH2CH2CH2NH2、
-NHCH2NHCH2CH2CH2NH2、
-NHCH2CH2NHCH2CH2CH2NH2、
-NHCH2CH2CH2NHCH2CH2CH2CH2NHCH2CH2CH2NH2、
-NHCH2CH2NHCH2CH2CH2CH2NH2、
-NHCH2CH2NHCH2CH2CH2NHCH2CH2CH2NH2、又は
-NHCH2CH2NH(CH2CH2NH)dCH2CH2NH2(ここで、dは、0~50である)
である。
【0069】
一態様において、アミン変性の天然ポリマーの薬理学的に許容される塩は、芳香族基に直接に又は間接的に結合した1個以上のアミノ基を有するアリール基を含むことができる。或いはまた、アミノ基は、芳香環に組み入れることができる。例えば、芳香族アミノ基は、ピロール、イソピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、又はインドールである。別の態様において、芳香族アミノ基は、ヒスチジン中に存在するイソイミダゾール基を含む。別の態様において、生分解性ポリアミンは、エチレンジアミンで変性されたゼラチンであることができる。
【0070】
他の態様において、ポリカチオン塩は、デンドリマーであることができる。デンドリマーは、分岐ポリマー、マルチアームのポリマー、星形ポリマー等であることができる。一態様において、デンドリマーは、ポリアルキルイミンデンドリマー、混合アミノ/エーテルデンドリマー、混合アミノ/アミドデンドリマー、又はアミノ酸デンドリマーである。別の態様において、デンドリマーは、ポリ(アミドアミン)、又はPAMAMである。一態様において、デンドリマーは、3~20のアームを有し、ここで各アームは、アミノ基を含む。
【0071】
一態様において、ポリカチオン塩は、1つ以上のペンダントプロトン化アミノ基を有するポリアクリレートを含む。例えば、ポリカチオン塩の主鎖は、アクリレート、メタクリレートを含むが、それらに限定されないアクリレートモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等の重合に由来することができる。一態様において、ポリカチオン塩主鎖は、ポリアクリルアミドに由来する。他の態様において、ポリカチオン塩は、ランダムコポリマーである。他の態様において、ポリカチオン塩は、ブロックコポリマーであり、ここで、コポリマーのセグメント又は部分は、コポリマーを製造するために用いられるモノマーの選択及び方法に応じて、カチオン性基又は中性基を有する。
【0072】
別の態様において、ポリカチオン塩は、プロタミンの薬理学的に許容される塩である。プロタミンは、精子形成中に精子頭部へのクロマチンの縮合に役割を果たすポリカチオンの、アルギニンリッチのタンパク質である。水産業の副産物として、魚の精子から精製された、市販のプロタミンは、大量に容易に入手可能であり、比較的安価である。本明細書で有用なプロタミンの非限定的な例は、サルミンである。別の態様において、プロタミンはクルペインである。
【0073】
一態様において、ポリカチオン塩は、複数のグアニジニル基を持ったポリマーである。一態様において、グアニジニル基は、ポリマー主鎖に懸下している。ポリカチオン上に存在するグアニジニル基の数は、最終的に、ポリカチオンの電荷密度を決定する。一態様において、グアニジニル基は、ポリマー主鎖に結合したアルギニンの残基に由来することができる。
【0074】
ポリグアニジニルポリマーは、複数のグアニジニル基を有するホモポリマー又はコポリマーであることができる。一態様において、ポリグアニジニルコポリマーは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組合せなどのモノマーと、式I
【化2】
(式中、R
1は、水素又はアルキル基であり、Xは、酸素又はNR
5であり、ここで、R
5は、水素又はアルキル基であり、mは、1~10である)
のグアニジニルモノマーとの間のフリーラジカル重合によって調製される合成化合物、又はそれの薬理学的に許容される塩である。一態様において、式Iの中性化合物がポリマーを製造するために使用される場合、結果として生じたポリマーは、その後に、例えば、塩酸などの酸又は塩化アンモニウムと反応させて、ポリカチオン塩を生じることができる。
【0075】
一態様において、式Iの化合物において、R1はメチルであり、XはNHであり、mは3である。別の態様において、モノマーは、メタクリルアミド、メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEMA)、又はそれらの任意の組合せである。
【0076】
更なる態様において、式Iのグアニジニルモノマー対モノマーのモル比は、1:20~20:1であるか、又は1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、若しくは20:1であり、ここで、いかなる比も、範囲(例えば、2:1~5:1等)の下端点及び上端点であることができる。一態様において、式Iのグアニジニルモノマー対モノマーのモル比は、3:1~4:1である。別の態様において、ポリグアニジニルポリマーは、式Iのグアニジニルモノマーに由来するホモポリマーである。
【0077】
ポリグアニジニルコポリマーは、例えば、RAFT重合(すなわち、可逆的付加開裂連鎖移動重合)などの文献で公知の重合技法又はフリーラジカル重合などの他の方法を用いて合成することができる。一態様において、重合反応は、水性環境で実施することができる。上で議論されたように、ポリグアニジニルコポリマーは、最初に中性ポリマーとして調製し、これに、薬理学的に許容される塩を製造するための酸での処理が続くことができる。
【0078】
別の態様において、制御されたMw及び狭い多分散指数(PDI)のマルチプルコポリマーは、RAFT重合によって合成することができる。一態様において、ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩は、約1kDa~約100kDaの平均分子量(Mw)を有するか、又は1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100kDaであることができ、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、10~25kDa等)の下端点及び上端点であることができる。
【0079】
別の態様において、ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩は、多峰性ポリグアニジニルコポリマーである。用語「多峰性ポリグアニジニルコポリマー」は、少なくとも2つ以上の分子量単峰性分岐曲線の合計である分子量分布曲線を有するポリグアニジニルコポリマーである。一態様において、ポリグアニジニルコポリマーは、5~100kDaのモードのポリグアニジニルコポリマー分子量の多峰性分布を有するか、又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100kDaであることができ、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、10~30kDa等)の下端点及び上端点であることができる。
【0080】
別の態様において、ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩中のグアニジニル側基の数は、全ポリマー側鎖の約10~約100モル%で変わることができるか、又は約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100モル%であることができ、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、60~90モル%等)の下端点及び上端点であることができる。一態様において、グアニジニル側基は、ポリグアニジニルコポリマーの約70~約80モル%である。逆に、コモノマー濃度は、約50~約0モル%で変わることができるか、又は約50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、若しくは0モル%であることができ、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、10~40モル%等)の下端点及び上端点であることができる。一態様において、コポリマーのMn、PDI、及び構造は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、1H NMR、及び13C NMR又は他の一般的な技法によって立証することができる。本明細書で有用なコポリマーを調製する及び特性化する例示的な手順は、下の実施例において提供される。
【0081】
本明細書に記載される注入可能な組成物中のポリカチオン塩の濃度は、組成物の用途に応じて変わることができる。一態様において、本明細書に記載される注入可能な組成物を製造するために使用されるポリカチオン塩の濃度は、100mg/mL~1,000mg/mL、又は100mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、350mg/mL、400mg/mL、450mg/mL、500mg/mL、550mg/mL、600mg/mL、650mg/mL、700mg/mL、750mg/mL、800mg/mL、850mg/mL、900mg/mL、950mg/mL、1,000mg/mLであり、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、200mg/mL~500mg/mL等)の下端点及び上端点であることができる。
【0082】
ポリアニオン塩
ポリアニオン塩は、複数のアニオン性基及び薬理学的に許容されるカチオン対イオンを持った化合物であり、ここで、アニオン性基対カチオン対イオンの1:1の化学量論比が存在する。
【0083】
一態様において、ポリアニオン多価電解質は、ポリアニオン塩を水に溶解させることによって得られる。一態様において、本明細書に記載されるポリアニオン塩は、複数の酸性基(例えば、カルボン酸基)を持った化合物の溶液のpHを塩基の添加で調整して対応するアニオン性基を生じることによって製造することができる。様々な態様において、薬理学的に許容されるポリアニオン塩を形成するために用いられ得る塩基は、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、酢酸塩等を含む。一態様において、いったんポリアニオンが調製されると、アニオン性基の数に対して化学量論量のカチオン対イオンを持ったポリアニオン塩を製造するために、過剰のイオンを、乾燥(例えば、凍結乾燥)前に濾過又は透析によってポリアニオンから除去することができる。
【0084】
一態様において、ポリアニオン塩のカチオン対イオンは、例えば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムイオンなどの一価カチオンである。別の態様において、ポリアニオン塩の対イオンは、例えば、カルシウム、マグネシウムイオン、又はそれらの混合物などの多価イオンである。
【0085】
一態様において、ポリアニオン塩は、複数のアニオン性基及び薬理学的に許容されるカチオン対イオンを持ったポリマー主鎖からなる。アニオン性基は、ポリマー主鎖に懸下している及び/又はポリマー主鎖内に組み入れられていることができる。特定の態様において、(例えば、生物医学的応用)、ポリアニオン塩は、アニオン性基を有する任意の生体適合性ポリマーである。
【0086】
一態様において、ポリアニオン塩は、合成ポリマー又は天然に存在するポリマーの薬理学的に許容される塩であることができる。天然に存在するポリアニオンの例としては、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、及びヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。他の態様において、中性pHにおいて正味の負電荷を有するタンパク質又は低いpIを持ったタンパク質を、本明細書に記載される天然に存在するポリアニオンとして使用することができる。アニオン性基は、ポリマー主鎖に懸下している及び/又はポリマー主鎖に組み入れられていることができる。
【0087】
ポリアニオン塩が合成ポリマーである場合、それは、一般に、アニオン性基又はアニオン性基にイオン化することができる基を有する任意のポリマーである。アニオン性基に転換することができる基の例としては、カルボキシレート、スルホネート、ボロネート、スルフェート、ボレート、ホスホネート、又はホスフェートが挙げられる。
【0088】
一態様において、ポリアニオン塩はポリホスフェートである。別の態様において、ポリアニオン塩は、5~90モル%のホスフェート基を有するポリホスフェート化合物である。別の態様において、ポリアニオン塩は、10~1,000のホスフェート基、又は10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、若しくは1,000のホスフェート基を有し、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、100~300等)の下端点及び上端点であることができる。
【0089】
一態様において、ポリホスフェートは、例えば、DNA、RNA、又はホスビチン(卵タンパク質)、象牙質(天然歯リンタンパク質)、カゼイン(リン酸化ミルクタンパク質)、又は骨タンパク質(例えばオステオポンチン)のような高リン酸化タンパク質などの天然に存在する化合物であることができる。
【0090】
別の態様において、ポリアニオン塩は、アミノ酸セリンを重合させ、次いでポリペプチドを化学的に又は酵素的にリン酸化することによって製造される合成ポリペプチドであることができる。別の態様において、ポリアニオン塩は、ホスホセリンの重合によって製造することができる。一態様において、ポリホスフェートは、タンパク質(例えば、天然セリン-又はトレオニン-リッチのタンパク質)を化学的に又は酵素的にリン酸化することによって製造することができる。更なる態様において、ポリホスフェートは、セルロース又はデキストランなどの多糖を含むが、それらに限定されないポリアルコールを化学的にリン酸化することによって製造することができる。ポリアニオンポリマーは、その後、薬理学的に許容される塩に変換することができる。
【0091】
別の態様において、ポリホスフェートは、合成化合物であることができる。例えば、ポリホスフェートは、ポリマー主鎖に結合したペンダントホスフェート基及び/又はポリマー主鎖(例えば、ホスホジエステル主鎖)中に存在するホスフェートを持ったポリマーであることができる。
【0092】
一態様において、ポリアニオン塩は、1つ以上のペンダントホスフェート基を有するポリアクリレートを含む。例えば、ポリアニオン塩は、アクリレート、メタクリレートを含むが、それらに限定されないアクリレートモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等の重合に由来することができる。他の態様において、ポリカチオン塩は、ブロックコポリマーであり、ここで、コポリマーのセグメント又は部分は、コポリマーを製造するために用いられるモノマーの選択に応じて、アニオン性基及び中性基を有する。一態様において、アニオン性基は、複数のカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基であることができる。
【0093】
一態様において、ポリアニオン塩は、複数の式XI
【化3】
(式中、R
4は、水素又はアルキル基であり;
nは、1~10であり;
Yは、酸素、硫黄、又はNR
30であり、ここで、R
30は、水素、アルキル基、又はアリール基であり;
Z’は、アニオン性基の薬理学的に許容される塩である)
の断片を有するポリマーである。
【0094】
一態様において、式XI中のZ’は、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、置換若しくは非置換ホスフェート、又はホスホネートである。別の態様において、式XI中のZ’は、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、置換若しくは非置換ホスフェート、又はホスホネートであり、式XI中のnは2である。
【0095】
一態様において、ポリアニオン塩は、式(PnO3n)n-を有する環状の無機ポリホスフェート、式(PnO3n+1)n+2-を有する線状の無機ポリホスフェート、又はそれらの組合せなどの無機ポリホスフェートであることができる。一態様において、ポリアニオン塩は、複数のホスフェート基を有する無機ポリホスフェート(例えば、NaPO3)nであり、ここで、nは、10~1,000又は10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、若しくは1,000ホスフェート基であり、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、100~300等)の下端点及び上端点であることができる。無機ホスフェートの例としては、Graham塩、ヘキサメタホスフェート塩、及びトリホスフェート塩が挙げられるが、それらに限定されない。これらの塩の対イオンは、例えば、Na+、K+、NH4
+、又はそれらの組合せなどの一価カチオンであることができる。一態様において、ポリアニオン塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムである。
【0096】
別の態様において、ポリアニオン塩は、有機ポリホスフェートである。一態様において、有機部分を連結しているホスホジエステル主鎖を持ったポリマー(例えば、DNA又は合成ホスホジエステル)が、本明細書で有用な有機ポリホスフェートである。
【0097】
別の態様において、ポリアニオン塩は、リン酸化糖の薬理学的に許容される塩である。糖は、ヘキソーズ又はペントース糖であることができる。加えて、糖は、部分的に又は完全にリン酸化することができる。一態様において、リン酸化糖は、イノシトールヘキサホスフェート(IP6)である。
【0098】
本明細書に記載される注入可能な組成物中のポリアニオン塩の濃度は、組成物の用途に応じて変わることができる。一態様において、本明細書に記載される注入可能な組成物を製造するために使用されるポリアニオン塩の濃度は、100mg/mL~1,000mg/mL、又は100mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、350mg/mL、400mg/mL、450mg/mL、500mg/mL、550mg/mL、600mg/mL、650mg/mL、700mg/mL、750mg/mL、800mg/mL、850mg/mL、900mg/mL、950mg/mL、1,000mg/mLであり、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、200mg/mL~500mg/mL等)の下端点及び上端点であることができる。
【0099】
補強成分
別の態様において、本明細書に記載される注入可能な組成物はまた、補強成分を含む。用語「補強成分」は、本明細書で生成する固体の1つ以上の機械的又は物理的特性(例えば、粘着性、破壊靱性、弾性率、硬化後の寸法安定性、色、可視性)を高める又は修正する任意の成分として本明細書では定義される。補強成分が固体の機械的特性を高めることができる様式は、変わることができ、注入可能な組成物を調製するために使用される成分及び補強成分の選択に依存するであろう。本明細書で有用な補強成分の例は、以下に提供される。
【0100】
一態様において、補強成分は、コイル又は繊維である。更なる態様において、コイル又は繊維は、白金、プラスチック、ナイロン、別の天然若しくは合成繊維、重合性モノマー、ナノ構造体、ミセル、リポソーム、水不溶性充填材、又はそれらの任意の組合せであることができる。一態様において、コイル又は繊維は、注入可能な組成物と同時に投与される。別の態様において、コイル又は繊維は、注入可能な組成物の前か又は後かのどちらかで投与される。
【0101】
他の態様において、補強成分は水不溶性充填材であることができる。充填材は、粒子(マイクロ及びナノ)から繊維状材料までの範囲の、様々な異なるサイズ及び形状を有することができる。充填材の選択は、注入可能な組成物の用途に応じて変わることができる。
【0102】
本明細書で有用な充填材は、有機及び/又は無機材料からなることができる。一態様において、ナノ構造体は、カーボンのような有機材料、又はホウ素、モリブデン、タングステン、ケイ素、チタン、銅、ビスマス、炭化タングステン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、窒化ホウ素、酸化ジスプロシウム、酸化水酸化鉄(III)、酸化鉄、酸化マンガン、二酸化チタン、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、若しくはそれらの任意の組合せを含むが、それらに限定されない無機材料からなることができる。
【0103】
一態様において、充填材は、金属酸化物、セラミック粒子、又は水不溶性無機塩を含む。本明細書で有用な充填材の例としては、以下にリストアップされる、SkySpring Nanomaterials,Inc.によって製造されるものが挙げられる。
金属及び非金属元素
Ag、99.95%、100nm
Ag、99.95%、20~30nm
Ag、99.95%、20~30nm、PVP被覆
Ag、99.9%、50~60nm
Ag、99.99%、30~50nm、オレイン酸被覆
Ag、99.99%、15nm、10重量%、自己分散性
Ag、99.99%、15nm、25重量%、自己分散性
Al、99.9%、18nm
Al、99.9%、40~60nm
Al、99.9%、60~80nm
Al、99.9%、40~60nm、低酸素
Au、99.9%、100nm
Au、99.99%、15nm、10重量%、自己分散性
B、99.9999%
B、99.999%
B、99.99%
B、99.9%
B、99.9%、80nm
ダイヤモンド、95%、3~4nm
ダイヤモンド、93%、3~4nm
ダイヤモンド、55~75%、4~15nm
黒鉛、93%、3~4nm
スーパー活性炭、100nm
Co、99.8%、25~30nm
Cr、99.9%、60~80nm
Cu、99.5%、300nm
Cu、99.5%、500nm
Cu、99.9%、25nm
Cu、99.9%、40~60nm
Cu、99.9%、60~80nm
Cu、5~7nm、分散系、油溶性
Fe、99.9%、20nm
Fe、99.9%、40~60nm
Fe、99.9%、60~80nm
カルボニル-Fe、ミクロサイズの
Mo、99.9%、60~80nm
Mo、99.9%、0.5~0.8μm
Ni、99.9%、500nm(調整可能な)
Ni、99.9%、20nm
Ni カーボンで被覆された、99.9%、20nm
Ni、99.9%、40~60nm
Ni、99.9%、60~80nm
カルボニル-Ni、2~3μm
カルボニル-Ni、4~7μm
カルボニル-Ni-Al(Niシェル、Alコア)
カルボニル-Ni-Fe合金
Pt、99.95%、5nm、10重量%、自己分散性
Si、立方晶系、99%、50nm
Si、多結晶性、99.99995%、塊
Sn、99.9%、<100nm
Ta、99.9%、60~80nm
Ti、99.9%、40~60nm
Ti、99.9%、60~80nm
W、99.9%、40~60nm
W、99.9%、80~100nm
Zn、99.9%、40~60nm
Zn、99.9%、80~100nm
金属酸化物
AlOOH、10~20nm、99.99%
Al2O3アルファ、98+%、40nm
Al2O3アルファ、99.999%、0.5~10μm
Al2O3アルファ、99.99%、50nm
Al2O3アルファ、99.99%、0.3~0.8μm
Al2O3アルファ、99.99%、0.8~1.5μm
Al2O3アルファ、99.99%、1.5~3.5μm
Al2O3アルファ、99.99%、3.5~15μm
Al2O3ガンマ、99.9%、5nm
Al2O3ガンマ、99.99%、20nm
Al2O3ガンマ、99.99%、0.4~1.5μm
Al2O3ガンマ、99.99%、3~10μm
Al2O3ガンマ、押出物
Al2O3ガンマ、押出物
Al(OH)3、99.99%、30~100nm
Al(OH)3、99.99%、2~10μm
アルミニウムイソ-プロポキシド(AIP)、C9H21O3Al、99.9%
AlN、99%、40nm
BaTiO3、99.9%、100nm
BBr3、99.9%
B2O3、99.5%、80nm
BN、99.99%、3~4μm
BN、99.9%、3~4μm
B4C、99%、50nm
Bi2O3、99.9%、<200nm
CaCO3、97.5%、15~40nm
CaCO3、15~40nm
Ca3(PO4)2、20~40nm
Ca10(PO4)6(OH)2、98.5%、40nm
CeO2、99.9%、10~30nm
CoO、<100nm
Co2O3、<100nm
Co3O4、50nm
CuO、99+%、40nm
Er2O3、99.9%、40~50nm
Fe2O3アルファ、99%、20~40nm
Fe2O3ガンマ、99%、20~40nm
Fe3O4、98+%、20~30nm
Fe3O4、98+%、10~20nm
Gd2O3、99.9%<100nm
HfO2、99.9%、100nm
In2O3:SnO2=90:10、20~70nm
In2O3、99.99%、20~70nm
In(OH)3、99.99%、20~70nm
LaB6、99.0%、50~80nm
La2O3、99.99%、100nm
LiFePO4、40nm
MgO、99.9%、10~30nm
MgO、99%、20nm
MgO、99.9%、10~30nm
Mg(OH)2、99.8%、50nm
Mn2O3、98+%、40~60nm
MoCl5、99.0%
Nd2O3、99.9%、<100nm
NiO、<100nm
Ni2O3、<100nm
Sb2O3、99.9%、150nm
SiO2、99.9%、20~60nm
SiO2、99%、10~30nm、シランカップリング剤で処理された
SiO2、99%、10~30nm、ヘキサメチルジシラザンで処理された
SiO2、99%、10~30nm、チタンエステルで処理された
SiO2、99%、10~30nm、シランで処理された
SiO2、10~20nm、アミノ基で変性された、分散性の
SiO2、10~20nm、エポキシ基で変性された、分散性の
SiO2、10~20nm、二重結合で変性された、分散性の
SiO2、10~20nm、二重層で表面変性された、分散性の
SiO2、10~20nm、表面変性された、超疎水性&親油性の、分散性の
SiO2、99.8%、5~15nm、表面変性された、疎水性&親油性の、分散性の
SiO2、99.8%、10~25nm、表面変性された、超疎水性の、分散性の
SiC、ベータ、99%、40nm
SiC、ベータ、ウィスカー、99.9%
Si3N4、非晶質の、99%、20nm
Si3N4アルファ、97.5~99%、繊維、100nm×800nm
SnO2、99.9%、50~70nm
ATO、SnO2:Sb2O3=90:10、40nm
TiO2アナターゼ、99.5%、5~10nm
TiO2ルチル、99.5%、10~30nm
TiO2ルチル、99%、20~40nm、SiO2で被覆された、高疎水性の
TiO2ルチル、99%、20~40nm、SiO2/Al2O3で被覆された
TiO2ルチル、99%、20~40nm、Al2O3で被覆された、疎水性の
TiO2ルチル、99%、20~40nm、SiO2/Al2O3/ステアリン酸で被覆された
TiO2ルチル、99%、20~40nm、シリコーンオイルで被覆された、疎水性の
TiC、99%、40nm
TiN、97+%、20nm
WO3、99.5%、<100nm
WS2、99.9%、0.8μm
WCl6、99.0%
Y2O3、99.995%、30~50nm
ZnO、99.8%、10~30nm
ZnO、99%、10~30nm、シランカップリング剤で処理された
ZnO、99%、10~30nm、ステアリン酸で処理された
ZnO、99%、10~30nm、シリコーンオイルで処理された
ZnO、99.8%、200nm
ZrO2、99.9%、100nm
ZrO2、99.9%、20~30nm
ZrO2-3Y、99.9%、0.3~0.5μm
ZrO2-3Y、25nm
ZrO2-5Y、20~30nm
ZrO2-8Y、99.9%、0.3~0.5μm
ZrO2-8Y、20nm
ZrC、97+%、60nm
【0104】
一態様において、充填材はナノシリカである。ナノシリカは、広いサイズ範囲で多数の供給業者から市販されている。例えば、水性Nexsilコロイド状シリカは、Nyacol Nanotechnologies,Inc.から6~85nmの直径で入手可能である。アミノ変性ナノシリカはまた、例えばSigma Aldrichから、しかし非変性シリカよりも狭い範囲の直径で市販されている。
【0105】
別の態様において、充填材は、リン酸カルシウムからなることができる。一態様において、充填材は、式Ca5(PO4)3OHを有する、ヒドロキシアパタイトであることができる。別の態様において、充填材は、置換ヒドロキシアパタイトであることができる。置換ヒドロキシアパタイトは、別の原子で置換された1つ以上の原子を持ったヒドロキシアパタイトである。置換ヒドロキシアパタイトは、式M5X3Yで表され、ここで、Mは、Ca、Mg、Naであり;Xは、PO4又はCO3であり;Yは、OH、F、Cl、又はCO3である。ヒドロキシアパタイト構造中の少ない不純物はまた、以下のイオンから存在し得る:Zn、Sr、Al、Pb、Ba。別の態様において、リン酸カルシウムは、オルトリン酸カルシウムを含む。オルトリン酸カルシウムの例としては、リン酸一カルシウム無水物、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム無水、リン酸八カルシウム、ベータリン酸三カルシウム、アルファリン酸三カルシウム、スーパーアルファリン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、非晶質リン酸三カルシウム、又はそれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。他の態様において、リン酸カルシウムはまた、骨基質タンパク質を優先的に吸着することができる、カルシウム欠乏ヒドロキシアパタイトを含むことができる。
【0106】
特定の態様において、充填材は、1つ以上のアミノ基又は活性化エステル基で官能化することができる。この態様において、充填材は、ポリカチオン又はポリアニオンに共有結合させることができる。例えば、アミノ化シリカは、活性化エステル基を有するポリアニオンと反応させて新しい共有結合を形成することができる。
【0107】
生物活性剤
本明細書に記載される注入可能な組成物は、1種以上の生物活性剤を含むことができる。一態様において、生物活性剤は、抗生物質、鎮痛剤、免疫モデュレーター、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メッセンジャー分子、細胞シグナリング分子、受容体作動薬、腫瘍溶解性ウイルス、化学療法薬剤、血管新生阻害剤、受容体拮抗薬、核酸、又はそれらの任意の組合せである。
【0108】
一態様において、生物活性剤は、核酸であることができる。核酸は、オリゴヌクレオチド、デオキシリボ核酸(DNA)、mRMAなどのリボ核酸(RNA)、又はペプチド核酸(PNA)であることができる。興味のある核酸は、それがそこで自然に生じる細胞から得られる核酸、組み換え技術によって生み出された核酸、若しくは化学的に合成された核酸、又は化学修飾核酸などの、任意の源からの核酸であることができる。例えば、核酸は、cDNA若しくはゲノムDNA又は自然発生のDNAのヌクレオチド配列に相当するそれを有するように合成されたDNAであることができる。核酸はまた、突然変異型若しくは変更型の核酸(例えば、少なくとも1つの核酸残基の変更、削除、置換若しくは付加によって自然発生のDNAとは異なるDNA)又は自然界に存在しない核酸であることができる。
【0109】
他の態様において、生物活性剤は、骨治療用途に使用される。例えば、生物活性剤は、骨形態形成タンパク質(BMP)及びプロスタグランジンであることができる。生物活性剤が骨粗しょう症を治療するために使用される場合、例えば、ビスホスフェートなどの当技術分野において公知の生物活性剤は、注入可能な組成物及びそれから生成する固体によって被験者に局所的に送達することができる。
【0110】
特定の態様において、注入可能な組成物を製造するために使用される充填材はまた、生物活性特性を有することができる。例えば、充填材が銀粒子である場合、本粒子はまた、抗菌剤として挙動することができる。放出の速度は、注入可能な組成物を調製するために使用される材料の選択、並びに生物活性剤がイオン化可能な基を有する場合、本試剤の電荷によって制御することができる。したがって、この態様において、注入可能な組成物から生成する固体は、局部的な制御された薬物放出貯留物として機能することができる。同時に組織及び骨を固定して並びに生物活性剤を送達してより大きい患者の安心を提供する、骨の治癒を加速する、及び/又は感染を予防することが可能であり得る。
【0111】
一態様において、生物活性剤は、FDA認可の血管新生阻害剤である。一態様において、血管新生阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。理論に制約されることを望まずに、血管形成は、大部分、受容体チロシンキナーゼ(RTK)による細胞シグナリングによって開始され、維持される。一態様において、RTKは、内皮細胞の血管透過性、増殖、及び移動を刺激する、VEGF;出芽内皮をサポートする周皮細胞及び平滑筋細胞を補充する、PDGF;並びに内皮細胞、平滑筋細胞、及び線維芽細胞の増殖を刺激する、FGFなどの、幾つかの血管形成プロモーターのための受容体を含む。一態様において、血管新生阻害剤は、スニチニブリンゴ酸(SUN)、パゾパニブ塩酸塩(PAZ)、ソラフェニブトシル酸塩(SOR)、バンデタニブ(VAN)、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せなどのTKIである。
【0112】
別の態様において、生物活性剤は、ヒト化抗VEGF及び抗VEGFR Fabフラグメントであることができる。この態様において、静電相互作用は、放出の動力学を制御することができる。一態様において、Fabフラグメントの固有電荷は、注入可能な組成物中の多価電解質成分と相互作用するのに十分である。別の態様において、Fabフラグメンテーションの固有電荷は、注入可能な組成物中の多価電解質成分と相互作用するのに不十分であり、Fabフラグメントは、マレアミド共役化学を用いて短い多価電解質を反応性の高いスルフヒドリル基に結合させることによって電荷密度を上げるために変性される。
【0113】
一態様において、血管新生阻害剤は、抗VEGF抗体である。もっと更なる態様において、抗VEGF抗体は、ベバシズマブであるか、又はバイオシミラー抗VEGF抗体であるか、又は、例えば、ラニビズマブなどの、抗VEGF抗体誘導体である。
【0114】
キット
注入可能な組成物を製造するためのキットが本明細書に記載される。一態様において、キットは、(a)少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物を含む組成物と、(b)造影剤と、(c)注入可能な組成物の製造指示書とを含む。別の態様において、キットは、(a)少なくとも1種のポリカチオン塩と、(b)少なくとも1種のポリアニオン塩と、(c)一過性造影剤と、(d)注入可能な組成物の製造指示書とを含む。
【0115】
本明細書で使用されるポリカチオン塩及びポリアニオン塩は、長時間乾燥粉末として貯蔵することができる。一態様において、キットは、別個のバイアル中に別個の成分としてポリカチオン塩及びポリアニオン塩の乾燥粉末、又は単一容器中に乾燥粉末若しくは固体としてポリカチオン塩とポリアニオン塩との混合物を含むことができる。他の態様において、キットは、別個の成分として(例えば、別個のバイアル中に)ポリカチオン塩及びポリアニオン塩の水溶液又は水中のポリカチオン塩とポリアニオン塩との混合物を含むことができる。
【0116】
一態様において、キットは、造影剤を乾燥粉末又は固体として含むことができる。別の態様において、一過性造影剤は、水溶液又は油中にあることができる。
【0117】
キットはまた、注入可能な組成物の製造指示書を含む。本明細書で用いるところでは、「指示書」は、キットに関する関連資料又は方法論を記載する文書を意味する。これらの資料は、下記の任意の組合せを含む:背景情報、成分のリスト及びそれらの在庫情報(購入情報等)、キットの使用に関する手短な又は詳細なプロトコル、トラブル・シューティング、参考文献、テクニカル・サポート、及び任意の他の関連文書。指示書は、書面か、又はコンピューターで判読できるメモリーデバイスで供給され得る若しくはインターネットウェブサイトからダウンロードされ得る電子的形態としてか、又は記録されたプレゼンテーションかのいずれで、キットと共に又は別個のメンバー構成要素として供給することができる。指示書は、1つ又は多数の文書を含むことができ、将来のアップデートを含むことを意図する。
【0118】
キットはまた、本明細書に記載されるような追加の成分(例えば、補強成分、生物活性剤等)を含むことができる。他の態様において、キットは、例えば、注射器、マイクロカテーテルなどの任意の機械的構成要素、並びに注入可能な組成物を混合する及び被験者に送達するための他のデバイスを含むことができる。
【0119】
注入可能な組成物の調製
本明細書に記載される注入可能な組成物の調製は、多数の技法及び手順を用いて行うことができる。注入可能な組成物を製造するための例示的な技法は、実施例において提供される。一態様において、少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物からなる粉末が、注入可能な組成物を製造するのに十分な時間、水中に一過性造影剤を含む組成物と混合される。
【0120】
別の態様において、少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物からなる水溶液は、油状の一過性造影剤を含む組成物と混合される。この態様において、多価電解質からなる水溶液と、油中の一過性造影剤とは、エマルジョンを生じるのに十分な時間混合される。
【0121】
一態様において、1種以上の追加の試剤(例えば、補強剤又は生物活性剤)は、注入可能な組成物が形成された後に添加することができる。別の態様において、血管新生阻害剤及び1種以上の追加の試剤(例えば、補強剤又は生物活性剤)は、注入可能な組成物の形成中に添加することができる。
【0122】
一態様において、注入可能な組成物のpHは、6~9、6.5~8.5、7~8、又は7~7.5である。別の態様において、組成物のpHは、血液における通常の生理的なpHである、7.2である。
【0123】
本明細書に記載される注入可能な組成物は、安定溶液(すなわち、異なった相への識別できる分離のない、多価電解質の液体組成物)である。注入可能な組成物を製造するために使用される成分は、次いでその後に水と混合される乾燥粉末形態で使用することができるけれども、注入可能な組成物は、水性配合物として配合し、将来の使用のために貯蔵することができる。特定の態様において、注入可能な組成物中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐために、1種以上の追加の塩を注入可能な組成物に添加することができる。一態様において、塩は一価塩である。例えば、本明細書で定義されるような安定した組成物を製造するために、塩化ナトリウムを注入可能な組成物に添加することができる。一価塩の濃度は、ポリカチオン塩及びポリアニオン塩の分子量、濃度、及び電荷比に応じて変わることができる。他の態様において、追加の一価塩は、注入可能な組成物を安定溶液として製造するために必要とされない。
【0124】
被験者における適用部位及び送達デバイス寸法に応じて、注入可能な組成物の粘度は、適切に変更することができる。これは、例えば、異なるサイズのマイクロカテーテルが異なる応用に対して必要とされる、肝動脈マイクロカテーテル送達などの医学的応用に関して重要な特徴である。例えば、ポリカチオン塩及び/又はポリアニオン塩の濃度及び/又は分子量の変更を、注入可能な組成物の粘度を変更するために用いることができる。
【0125】
一態様において、注入可能な組成物は、10cp~20,000cp、又は10cp、25cp、50cp、75cp、100cp、125cp、150cp、200cp、225cp、250cp、275cp、300cp、325cp、350cp、375cp、400cp、425cp、450cp、475cp、500cp、1,000cp、1,500cp、2,000cp、2,500cp、3,000cp、3,500cp、4,000cp、4,500cp、5,000cp、5,500cp、6,000cp、6,500cp、7,000cp、7,500cp、8,000cp、8,500cp、9,000cp、9,500cp、10,000cp、11,000cp、12,000cp、13,000cp、14,000cp、15,000cp、10,000cp、16,000cp、17,000cp、18,000cp、19,000cp、若しくは20,000cpの粘度を有し、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、1,500cp~7,000cp等)の下端点及び上端点であることができる。
【0126】
注入可能な組成物の用途
本明細書に記載される注入可能な組成物は、多数の利益及び生物化学的用途を有する。上に議論されたように、注入可能な組成物は、狭いゲージデバイス、カテーテル、針、カニューレ、又はチュービングによって容易に注入できる流体である。注入可能な組成物は、潜在的に有毒な溶媒の必要性を排除する水性である。
【0127】
本明細書に記載される注入可能な組成物は、被験者の適用部位のイオン濃度よりも高いイオン濃度では流体であるが、適用部位のイオン濃度では不溶性固体である。注入可能な組成物が、注入可能な組成物のイオン濃度と比べてより低いイオン濃度での被験者へ導入されるとき、注入可能な組成物中のイオン濃度が適用部位イオン濃度に近付くにつれて、組成物は、適用部位においてその場で多孔質固体を形成する。その後に生成する固体は、注入可能な組成物の初期流体形態のそれよりも高い機械弾性率を有する。
【0128】
一態様において、注入可能な溶液は、固体粒子が周期的に形成され、被験者内のカテーテルの先端から放出されるようにパルスとして送達される。その場で形成された固体粒子は、合成塞栓を創り出すためにカテーテル先端から末梢位置へ血流によって運ぶことができる。
【0129】
一態様において、注入可能な組成物のイオン濃度は、組成物中に存在するカチオン対イオン及びアニオン対イオンの合計である。別の態様において、注入可能な組成物のイオン濃度は、組成物中に存在するカチオン対イオン及びアニオン対イオン並びに組成物に添加される追加イオン(例えば、組成物への添加)の合計である。一態様において、組成物は、被験者におけるイオン濃度よりも約1.5~約20倍大きい、又は被験者におけるイオン濃度よりも約1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20倍大きいイオン濃度を有し、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、2倍~15倍)の下端点及び上端点であることができる。別の態様において、組成物におけるイオン濃度は、0.5M~2.0M、又は0.5M、0.75M、1.0M、1.25M、1.5M、1.75M、若しくは2.0Mであり、ここで、いかなる値も、範囲(例えば、0.75M~1.5M)の下端点及び上端点であることができる。
【0130】
注入可能な組成物は、生理的な条件下で固体をその場で形成することができる。生理的なナトリウム及びクロリド濃度は、およそ150mMである。したがって、150mMよりも大きいイオン濃度を有する注入可能な組成物が被験者に導入される(例えば、哺乳類へ注入される)場合、注入可能な組成物は、適用の部位で多孔質固体に変換される。したがって、本明細書に記載される注入可能な組成物は、以下に詳細に記載される、多数の医学的及び生物医学的応用を有する。
【0131】
一態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者の血管における血流を減少させる又は妨げるために使用することができる。この態様において、注入可能な組成物から生成した固体は、人工的な塞栓を血管内に創り出す。したがって、本明細書に記載される注入可能な組成物は、合成塞栓剤として使用することができる。この態様において、注入可能な組成物は、血管中へ注入され、これに、血管を部分的に又は完全にブロックするために固体の形成が続く。この方法は、腫瘍、動脈瘤、静脈瘤、動静脈先天性異常、開放創若しくは出血している傷口、又は他の血管外傷若しくは障害への血流を妨げるための人工的な塞栓形成の創出などの多数の用途を有する。他の態様において、注入可能な組成物は、リンパ管、ダクト、気道、及び医学的応用において固体を形成することが望ましい他のチャネルなどの被験者における他のエリアに投与することができる。
【0132】
上で議論されたように、注入可能な組成物は、合成塞栓剤として使用することができる。しかしながら、他の態様において、本明細書に記載される注入可能な組成物は、1種以上の追加の塞栓剤を含むことができる。市販されている塞栓剤は、血管の塞栓のために使用されるマイクロ粒子である。マイクロ粒子のサイズ及び形状は変わることができる。一態様において、マイクロ粒子は、ポリマー材料からなることができる。これの例は、サイズが45μm~1,180μmの範囲のポリビニルアルコールからなる、Merit Medical Systems,Inc.によって製造されるBearinTM nsPVA粒子である。別の態様において、塞栓剤は、ポリマー材料からなるマイクロスフェアであることができる。そのような塞栓剤の例としては、サイズが40μm~1,200μmの範囲のトリスアクリル架橋ゼラチンでできている、Embosphere(登録商標)Microspheres;サイズが30μm~200μmの範囲のHepaSphereTM Microspheres(酢酸ビニル及びメチルアクリレートから製造される球形の、親水性のマイクロスフェア);並びにサイズが30μm~200μmの範囲のQuadraSphere(登録商標)Microspheres(酢酸ビニル及びメチルアクリレートから製造される球形の、親水性のマイクロスフェア)が挙げられ、それらの全ては、Merit Medical Systems,Inc.によって製造されている。別の態様において、マイクロスフェアは、造影剤として使用することができる1種以上の金属を含浸させることができる。これの例は、サイズが40μm~1,200μmの範囲の2%の元素状金を含浸させた架橋トリスアクリルゼラチンでできている、Merit Medical Systems,Inc.によって製造されるEmboGold(登録商標)Microspheresである。
【0133】
別の態様において、本明細書に記載される注入可能な組成物は、例えば、塞栓コイル、線維等などの1種以上の機械的血管デバイスと組み合わせて使用することができる。一態様において、機械的塞栓物質が先ず、当技術分野において公知の技法を用いて被験者の血管に投与され、これに、機械的デバイス内への又はそれにごく接近した血管への注入可能な組成物の投与が続く。
【0134】
一態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者における血管の内壁を補強するために使用することができる。注入可能な組成物は、血管が完全に閉塞されないように血管の内壁をコーティングするのに十分な体積で血管中へ導入することができる。例えば、注入可能な組成物は、動脈瘤が存在する血管中へ注入することができる。ここで、注入可能な組成物は、動脈瘤の断裂を減らす又は防ぐことができる。
【0135】
一態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者における血管の穿刺を閉じる又は密封するために使用することができる。一態様において、注入可能な組成物は、血管がブロックされないように血管内部から穿刺を閉じる又は密封するのに十分な量で血管中へ注入することができる。別の実施形態において、注入可能な組成物は、穿孔を密封するために血管の外面上での穿孔に適用することができる。
【0136】
一態様において、注入可能な組成物及びそれかれ生成する固体は、多数の異なる骨折及び骨破壊を修復するために使用することができる。固体は形成時に、幾つかのメカニズムによって骨(及び他の材料)に接着する。骨のヒドロキシアパタイト鉱物相(Ca5(PO4)3(OH))の表面は、正電荷及び負電荷の両方の配列である。ポリアニオン上に存在する陰性基(例えば、ホスフェート基)は、正の表面電荷と直接相互作用することができるか、又はそれは、ポリカチオン上のカチオン性基を通して負の表面電荷に架橋することができる。同様に、ポリカチオンと負の表面電荷との直接の相互作用は、接着に寄与するであろう。或いはまた、酸化された架橋剤は、骨基質タンパク質の求核性側鎖に結合することができる。
【0137】
そのような破壊の例としては、完全骨折、不完全骨折、線状骨折、横骨折、斜骨折、圧迫骨折、らせん骨折、粉砕骨折、圧縮骨折、又は開放骨折が挙げられる。一態様において、骨折は、関節内骨折又は頭蓋顔面骨骨折である。関節内骨折などの骨折は、軟骨表面へ広がる及び軟骨表面を粉々にする骨損傷である。注入可能な組成物から生成する固体は、そのような骨折の減少の維持に役立ち、より少ない侵襲的手術を可能にし、手術室にいる時間を減らし、コストを削減し、及び後外傷性関節炎のリスクを低下させることによるより良好な結果を提供し得る。
【0138】
他の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、高度に粉砕した骨折の小さい断片を接合するために使用することができる。この態様において、骨折した骨の小片を、存在する骨に接着させることができる。機械固定器でそれらに穴を開けることによって小さい断片の減少を維持することがとりわけ課題である。断片の数が小さければ小さいほど、及び大きければ大きいほど、問題はより大きくなる。一態様において、注入可能な組成物は、全体亀裂を満たすよりもむしろ骨折を治すために、小さい体積で注入されて上に記載されたようなスポット溶接を創り出し得る。小さい生体適合性スポット溶接は、周囲組織の治癒の妨害を最小限にするであろうし、必ずしも生分解性でなくてもよいであろう。この点において、それは、永久埋め込み型のハードウェアに似ているであろう。
【0139】
他の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、骨又は例えば、軟骨、靱帯、腱、軟組織、臓器、及びこれらの材料の合成誘導体などの他の組織に基質を接着させることができる。例えば、酸化チタン、ステンレス鋼、又は他の金属でできた移植片が、一般的に、骨折骨を修復するために使用される。注入可能な組成物は、基材を骨に接着させる前に金属基材、骨又は両方に適用することができる。本明細書に記載される注入可能な組成物及び「スポット溶接」技法を使用すれば、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者における生物学的足場を配置するために使用することができる。本明細書に記載される注入可能な組成物からなる小さい粘着性タックは、足場への又は足場からの細胞の移動又は小さい分子の移送を邪魔しないであろう。特定の態様において、足場は、骨及び組織の成長又は修復を容易にする1種以上の薬物を含有することができる。他の態様において、足場は、例えば、抗生物質などの感染を防ぐ薬物を含むことができる。例えば、足場は、薬物でコーティングすることができるか又は、別の方法では、薬物は、薬物が経時的に足場から溶離するように足場内に組み入れることができる。
【0140】
本明細書に記載される注入可能な組成物から生成する固体は、1種以上の生物活性剤を封入する、足場で支える、密封する、又は保持することができるとまた熟慮される。したがって、固体は、送達デバイス又は埋め込み可能な薬物貯留物として使用することができる。
【0141】
注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、様々な他の外科処置において使用することができる。一態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、外傷によって又は外科処置によって引き起こされる眼外傷を治療するために使用することができる。一態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者における角膜又は強膜裂傷を修復するために使用することができる。他の態様において、注入可能な組成物は、外科処置(例えば、緑内障手術又は角膜移植)から損傷した眼組織の治癒を容易にするために使用することができる。参照により援用される、米国特許出願公開第2007/0196454号明細書に開示されている方法は、本明細書に記載される注入可能な組成物を眼の異なる領域に適用するために用いることができる。
【0142】
注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、皮膚と、カテーテル、電極リード線、針、カニューレ、オッセオ-インテグレーテッド人工工具等などの挿入された医療デバイスとの間の接合部を密封するために使用することができる。ここで、医療デバイスの挿入及び/又は除去時に、接合部を密封するために被験者の皮膚と挿入された医療デバイスとの間の接合部に適用される。したがって、注入可能な組成物から生成した固体は、デバイスが被験者において挿入され、その後に固体を形成するときに侵入部位での感染を防ぐ。他の態様において、注入可能な組成物は、創傷治癒を早める及び更なる感染を防ぐために、デバイスが除去された後に皮膚の浸入部位に適用することができる。
【0143】
別の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、腫瘍生検中の腫瘍細胞の増殖を防ぐ又は減少させるために使用することができる。本方法は、生検針の除去時に生検針によって生み出されたトラックを注入可能な組成物で埋め戻すことを伴う。一態様において、注入可能な組成物は、生検中に被験者の他の部分への悪性腫瘍細胞の潜在的な増殖を防ぐ又は減少させるであろう抗増殖剤を含む。
【0144】
別の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、内部組織又は膜中の穿孔を閉じる又は密封するために使用することができる。特定の医学的応用において、内部組又は膜は、穴を開けられ、それは、追加の合併症を避けるためにその後に密封されなければならない。或いはまた、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、組織を密封し、更なる損傷を防ぎ、創傷治癒を容易にするために、足場又はパッチを組織又は膜に接着させるために使用することができる。
【0145】
別の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者における瘻を密封するために使用することができる。瘻は、臓器、血管、又は腸及び、例えば、皮膚などの別の構造体間の異常なチャネル(経路、トンネル)である。瘻は、通常、負傷又は手術に起因するが、それらはまた、感染又は炎症から生じることができる。瘻は、一般に、病状であるが、それらは、治療的理由で外科的に創り出され得る。一態様において、瘻は、腸管皮膚瘻(ECF)である。ECFは、腸管又は胃と皮膚との間に成長する異常なチャネルである。結果として、胃又は腸の内容物は、皮膚に漏出する。ほとんどのECFは、腸の手術後に現れる。
【0146】
他の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、被験者における2つの組織間の望ましくない接着を防ぐ又は減らすことができ、ここで、本方法は、組織の少なくとも1つの表面を注入可能な組成物と接触させることを伴う。
【0147】
別の態様において、注入可能な組成物及びそれから生成する固体は、血管においてカテーテルなどの医療デバイスを固定することができる。固体に変換される本明細書に記載される注入可能な組成物の能力は、血管内での医療デバイスの固定を可能にする。一態様において、カテーテルを血管の内壁に固定することができる。別の態様において、2つのカテーテルを血管中へ挿入し、その後に注入可能な組成物を使用して血管の内壁に固定することができる。この態様において、カテーテルを血管中に固定し、長期間1種以上の生物活性剤のための送達デバイスとして使用することができる。カテーテルは、塞栓及び血管から除去することができる。塞栓中の結果として生じた穴は、その後に、本明細書に記載される追加の注入可能な組成物で満たして穴を取り囲み、塞栓を保持することができる。
【0148】
血管内にカテーテルなどの送達デバイスを固定するための注入可能な組成物の使用は、選択肢及び多くの潜在的な利益を臨床医に提供する。血管系内の正確な位置への生物活性剤及び他の物質の標的化及び集中的送達は、臨床的な課題である。血流は、意図される標的血管及び/又はエリアから離れて下流に試剤を運び、標的へ注入される、生物活性剤又は物質のより低い量をもたらす。加えて、血管中へ放出される、及び標的から離れて下流に流れるいかなる物質も、身体の健康的な、標的とされないエリアにおいて予期せぬ結果をもたらし得る。
【0149】
生物活性剤又は他の物質の特定の及び制御された送達は、固定されたカテーテルによって標的エリアへ直接に送達することができる。標的注入は、生物活性剤の有効性を高め得、この場合に血管系システムにおける流れのための生物活性剤の損失を最小限にすることができる。更に、血管に固定されるカテーテルは、特定の標的血管及び/又はエリアへの他の物質の送達のための入口及び/又はデバイスとして機能することができる。
【0150】
態様
態様1.水と、1種以上のポリカチオン多価電解質及びアニオン対イオンと、1種以上のポリアニオン多価電解質及びカチオン対イオンと、一過性造影剤とを含む注入可能な組成物であって、組成物が、(i)水中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、被験者へ組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成し、一過性造影剤が固体から拡散する組成物。
【0151】
態様2.一過性造影剤は、ヨウ素化有機化合物を含む、態様1の組成物。
【0152】
態様3.ヨウ素化有機化合物は、イオパミドール、イオジキサノール、イオヘキソール、イオプロミド、イオブチリドール、イオメプロール、イオペントール、イオパミロン、イオキシラン、イオトロラン、イオトロール及びイオベルソール、イオパノエート、ジアトリゾ酸、ヨータラム酸塩、イオキサグレート、又はそれらの任意の組合せを含む、態様2の組成物。
【0153】
態様4.ヨウ素化有機化合物は、ヨウ素化油を含む、態様2の組成物。
【0154】
態様5.注入可能な組成物中の一過性造影剤の濃度は、10mgI/mL~1,000mgI/mLである、態様1~4のいずれか1つの組成物。
【0155】
態様6.一過性造影剤の最大100%までは、5分~30日間に固体又はゲルから拡散する、態様1~5のいずれか1つの組成物。
【0156】
態様7.対イオンは、ナトリウム及びクロリドイオンを含む、態様1~6のいずれか1つの組成物。
【0157】
態様8.注入可能な組成物中のイオン濃度は、被験者におけるイオン濃度よりも1.5~20倍大きい、態様1~7のいずれか1つの組成物。
【0158】
態様9.ポリカチオン多価電解質は、ポリカチオン塩を水に溶解させることによって得られる、態様1~8のいずれか1つの組成物。
【0159】
態様10.ポリカチオン多価電解質は、水中のポリカチオン塩酸塩に由来する、態様1~8のいずれか1つの組成物。
【0160】
態様11.ポリカチオン塩は、ポリアミンの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0161】
態様12.ポリアミンは、2個以上のペンダントアミノ基を含む、態様11の組成物であって、アミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アミン、アルキルアミノ基、ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾリル、又は1個以上のアミノ基で置換された芳香族基を含む組成物。
【0162】
態様13.ポリアミンの薬理学的に許容される塩は、3~20のアームを有するデンドリマーを含む、態様11又は12の組成物であって、各アームが、末端アミノ基を含む組成物。
【0163】
態様14.ポリカチオン塩は、2個以上のペンダントアミノ基を含むポリアクリレートを含む、態様9又は10の組成物であって、アミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アミン、アルキルアミノ基、ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾリル、又は1個以上のアミノ基で置換された芳香族基を含む組成物。
【0164】
態様15.ポリカチオン塩は、生分解性ポリアミンの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0165】
態様16.生分解性ポリアミンの薬理学的に許容される塩は、多糖、タンパク質、ペプチド、組み換えタンパク質、合成ポリアミン、プロタミン、分岐ポリアミン、又はアミン変性の天然ポリマーを含む、態様15の組成物。
【0166】
態様17.生分解性ポリアミンの薬理学的に許容される塩は、アルキルジアミノ化合物で変性されたゼラチンを含む、態様16の組成物。
【0167】
態様18.ポリカチオン塩は、プロタミンの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0168】
態様19.ポリカチオン塩は、サルミン又はクルペインの薬理学的に許容される塩である、態様9又は10の組成物。
【0169】
態様20.ポリカチオン塩は、2個以上のグアニジニル側鎖を含有する天然ポリマー又は合成ポリマーの薬理学的に許容される塩である、態様9又は10の組成物。
【0170】
態様21.ポリカチオン塩は、2個以上のペンダントグアニジニル基を含むポリアクリレートの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0171】
態様22.ポリカチオン塩は、ペンダントグアニジニル基を含むホモポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0172】
態様23.ポリカチオン塩は、2個以上のペンダントグアニジニル基を含むコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0173】
態様24.ポリカチオン塩は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はメタクリルアミド主鎖と、主鎖に懸下した2個以上のグアニジニル基とを含む合成ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0174】
態様25.ポリカチオン塩は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるモノマーと、式I
【化4】
(式中、R
1は、水素又はアルキル基であり、Xは、酸素又はNR
5であり、ここで、R
5は、水素又はアルキル基であり、mは、1~10である)
の化合物の薬理学的に許容される塩との間の重合生成物を含む合成ポリグアニジニルコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様9又は10の組成物。
【0175】
態様26.ポリカチオン塩は、式Iの化合物と、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はメタクリルアミドとの間の共重合生成物を含む、態様25の組成物。
【0176】
態様27.ポリカチオン塩は、式Iの化合物と、メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-[3-(N’-ジカルボキシメチル)アミノプロピル]メタクリルアミド(DAMA)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)メタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEMA)、又はそれらの任意の組合せとの間の共重合生成物を含む、態様25の組成物。
【0177】
態様28.R1はメチルであり、XはNHであり、mは3である、態様25の組成物。
【0178】
態様29.式Iのグアニジニルモノマー対コモノマーのモル比は、1:20~20:1である、態様25の組成物。
【0179】
態様30.ポリグアニジニルコポリマーは、1kDa~1,000kDaの平均モル質量を有する、態様25の組成物。
【0180】
態様31.ポリアニオン多価電解質は、ポリアニオン塩を水に溶解させることによって得られる、態様1~30のいずれか1つの組成物。
【0181】
態様32.ポリアニオン塩は、合成ポリマー又は天然に存在するポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様31の組成物。
【0182】
態様33.ポリアニオン塩は、2つ以上のカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基を含む、態様31又は32の組成物。
【0183】
態様34.ポリアニオン塩は、グリコサミノグリカン又は酸性タンパク質の薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0184】
態様35.グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、又はヒアルロン酸を含む、態様34の組成物。
【0185】
態様36.ポリアニオン塩は、6以上のpHで正味負電荷を有するタンパク質の薬理学的に許容される塩を含む、態様31~35のいずれか1つの組成物。
【0186】
態様37.ポリアニオン塩は、ポリマーの主鎖に懸下した、ポリマー主鎖の主鎖に組み入れられた、又はそれらの組合せのアニオン性基を含むポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0187】
態様38.ポリアニオン塩は、2つ以上のアニオン性基を含むホモポリマー又はコポリマーの薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0188】
態様39.ポリアニオン塩は、式XI
【化5】
(式中、R
4は、水素又はアルキル基であり;
nは、1~10であり;
Yは、酸素、硫黄、又はNR
30であり、ここで、R
30は、水素、アルキル基、又はアリール基であり;
Z’は、アニオン性基の薬理学的に許容される塩である)
を有する2つ以上の断片を含むコポリマーである、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0189】
態様40.Z’は、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、置換若しくは非置換ホスフェート又はホスホネートである、態様39の組成物。
【0190】
態様41.nは2である、態様40の組成物。
【0191】
態様42.ポリアニオン塩は、ポリホスフェートを含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0192】
態様43.ポリホスフェートは、天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、態様42の組成物。
【0193】
態様44.ポリホスフェートは、ポリホスホセリンを含む、態様42の組成物。
【0194】
態様45.ポリホスフェートは、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートを含む、態様42の組成物。
【0195】
態様46.ポリホスフェートは、ホスフェートアクリレート及び/又はホスフェートメタクリレートと、1種以上の追加の重合性モノマーとの間の共重合生成物である、態様42の組成物。
【0196】
態様47.ポリアニオン塩は、10~1,000のホスフェート基を有する、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0197】
態様48.ポリアニオン塩は、無機ポリホスフェート、有機ポリホスフェート、又はリン酸化糖の薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0198】
態様49.ポリアニオン塩は、イノシトールヘキサホスフェートの薬理学的に許容される塩を含む、態様48の組成物。
【0199】
態様50.ポリアニオン塩は、ヘキサメタホスフェート塩を含む、態様48の組成物。
【0200】
態様51.ポリアニオン塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムを含む、態様48の組成物。
【0201】
態様52.ポリアニオン塩は、環状無機ポリホスフェート、線状無機ポリホスフェート、又はそれらの組合せの薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0202】
態様53.ポリアニオン塩は、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートの薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0203】
態様54.ポリアニオン塩は、ホスフェート若しくはホスホネートアクリレート又はホスフェート若しくはホスホネートメタクリレートと、1種以上の追加の重合性モノマーとの間の共重合生成物の薬理学的に許容される塩を含む、態様31~33のいずれか1つの組成物。
【0204】
態様55.補強成分を更に含む、態様1~54のいずれか1つの組成物であって、補強成分が、天然若しくは合成繊維、水不溶性充填材粒子、ナノ粒子、又はマイクロ粒子を含む組成物。
【0205】
態様56.補強成分は、天然若しくは合成繊維、水不溶性充填材粒子、ナノ粒子、又はマイクロ粒子を含む、態様55の組成物。
【0206】
態様57.1種以上の生物活性剤を更に含む態様1~56のいずれか1つの組成物であって、生物活性剤が、抗生物質、鎮痛剤、免疫モデュレーター、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メッセンジャー分子、細胞シグナリング分子、受容体作動薬、腫瘍溶解性ウイルス、化学療法薬剤、受容体拮抗薬、核酸、化学修飾核酸、又はそれらの任意の組合せを含む組成物。
【0207】
態様58.10cp~20,000cpの粘度を有する、態様1~57のいずれか1つの組成物。
【0208】
態様59.ポリカチオン多価電解質対ポリアニオン多価電解質の全正/負電荷比は、4~0.25であり、組成物中のイオン濃度は、0.5M~2.0Mである、態様1~58のいずれか1つの組成物。
【0209】
態様60.ポリカチオン多価電解質及びポリアニオン多価電解質の濃度は、0.5:1~2:1のポリカチオン多価電解質対ポリアニオン多価電解質の電荷比をもたらすのに十分である、態様1~59のいずれか1つの組成物。
【0210】
態様61.6~9のpHを有する、態様1~60のいずれか1つの組成物。
【0211】
態様62.少なくとも1種のポリカチオン塩と、少なくとも1種のポリアニオン塩と、一過性造影剤とを水中で混合することを含む方法によって製造される注入可能な組成物であって、ポリカチオン塩が、ポリカチオン多価電解質とアニオン対イオンとに解離し、ポリアニオン塩が、ポリアニオン多価電解質とカチオン対イオンとに解離し、組成物が、(i)水中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、被験者へ組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成し、一過性造影剤が固体から拡散する組成物。
【0212】
態様63.態様1~62のいずれか1つの組成物を被験者へ導入することを含む固体を被験者においてその場で生成させる方法であって、被験者への組成物の導入時に組成物がその場で固体に変換される方法。
【0213】
態様64.態様1~62のいずれか1つの組成物を被験者へ注入することを含む被験者において生物活性溶離貯留物を生成するための方法。
【0214】
態様65.態様1~62のいずれか1つの組成物を被験者の血管へ導入することを含む被験者の血管における血流を低下させる又は妨げる方法であって、血管へ組成物を導入するとすぐに組成物が、血管内でその場で固体に変換される方法。
【0215】
態様66.腫瘍、動脈瘤、静脈瘤、血管奇形、又は出血している傷口への血流を低下させる又は妨げる、態様65の方法。
【0216】
態様67.被験者における血管の内壁を補強する、態様65の方法。
【0217】
態様68.
(a)少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物を含む組成物と、
(b)一過性造影剤と、
(c)態様1~62のいずれか1つの注入可能な組成物の製造指示書と
を含むキットであって、
ポリカチオン塩が、ポリカチオン多価電解質とアニオン対イオンとに解離し、ポリアニオン塩が、ポリアニオン多価電解質とカチオン対イオンとに解離し、組成物が、(i)水中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、被験者へ組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成し、一過性造影剤が固体から拡散するキット。
【0218】
態様69.少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物を含む組成物は、乾燥粉末である、態様68のキット。
【0219】
態様70.少なくとも1種のポリカチオン塩と少なくとも1種のポリアニオン塩との混合物を含む組成物は、水を更に含む、態様68のキット。
【0220】
態様71.造影剤は、水中に存在する、態様68のキット。
【0221】
態様72.
(a)少なくとも1種のポリカチオン塩と、
(b)少なくとも1種のポリアニオン塩と、
(c)一過性造影剤と、
(d)態様1~62のいずれか1つの注入可能な組成物の製造指示書と
を含むキットであって、
ポリカチオン塩が、ポリカチオン多価電解質とアニオン対イオンとに解離し、ポリアニオン塩が、ポリアニオン多価電解質とカチオン対イオンとに解離し、組成物が、(i)水中でのポリカチオン多価電解質とポリアニオン多価電解質との会合を防ぐのに十分であり、且つ(ii)被験者におけるイオンの濃度よりも大きいイオン濃度を有し、被験者へ組成物を導入するとすぐに固体がその場で生成し、一過性造影剤が固体から拡散するキット。
【実施例】
【0222】
以下の実施例は、どのようにして本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法が製造され、評価されるか、純粋に例示的であることを意図されるか、本発明者らが自分たちの発明と見なすものの範囲を限定することを意図しないかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示される。数(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保するために努力されてきたが、いくらかの誤差及び偏差は考えられるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度は℃単位であり、周囲温度においてであり、圧力は大気圧又はその近くの圧力である。反応条件、例えば成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、並びに他の反応範囲及び条件の多数の変化及び組合せを用いて記載されるプロセスから得られる生成物純度及び収率を最適化することができる。合理的な及び所定の実験だけが、そのようなプロセス条件を最適化するために必要とされるであろう。
【0223】
ポリN-(3-メタクリルアミノプロピル)グアニジニウムクロリド(pGPMA-HCl)の調製
GPMA-HClモノマーを、文献[58、59]から改良された手順を用いて合成した。手短には、フラスコに、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMA-HCl)及び防止剤4-メトキシフェノール(1重量%、APMAに対して)を装入した。DMFを添加して1Mの濃度でAPMA-HClを溶解させた。トリエチルアミン(TEA)(2.5当量)をフラスコに添加し、混合物をN2下に5分間撹拌し、その後1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩(1当量)を添加した。反応は、N2下に20℃で進行した。16h後に、TEA・HCl塩を、真空濾過によって反応混合物から分離した。GPMAモノマーをジエチルエーテルで4回抽出し、デンスオイルとして回収した。最後に、モノマーを真空下で乾燥させた。生成物を、プロトン及び炭素NMRによって確認した。H NMR(400 MHz,D2O):δ(ppm)1.68(q,CH2-CH2- CH2),1.77(s,CH3),3.08(m,CH2-N),3.18(m,CH2-N),5.30(s,=CH2),5.55(s,=CH2).13C NMR:(400 MHz,D2O)δ(ppm)17.74(CH3),27.62(CH2),36.62(CH2-N),38.71(CH2-N),121.13(C=CH2),138.83(CH2=C),156.6 2(C),171.55(C=O).GPMAの形成はまた、ESI質量分析によって立証された(185.1Da)。
【0224】
GPMA・HClとメタクリルアミド(MA)とのランダムコポリマーを、60:40(GPMA:MA)のモル供給比でのフリーラジカル重合によって合成した。GPMA・HCl及びMAモノマーを、1Mの全モノマー濃度で60:40v:vの水メタノール混合物に溶解させた。4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸を、所望の分子量に応じて、1.5%(w:v)で開始剤として添加した。結果として生じた混合物をセプタム密封し、N2で1時間バブリングすることによって脱気した。反応はN2下で進行した。温度を目標Mwに応じて70~82℃で変えた。結果として生じた溶液を冷却し、空気に曝し、ポリマーをアセトン中で沈澱させ、次いで水に溶解させた。溶液のpHを、HClを使用してpH6未満に調整した。ポリマーを、脱イオン水を使ったタンジェンシャルフロー濾過によって精製した。このプロセスは、グアニジニウム対HClのおよそ1:1の化学量論比で塩酸塩を形成した。ポリマーMwは、屈折率検出器及びWyatt miniDAWN TREOS光散乱検出器を備えたAglient HPLC 1260 Infinityでの水性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって特性評価した。0.1M LiBr中の1重量%酢酸の溶離液(pH=3.3)を、Eprogen CATSEC 300カラム上を1mL/分で流した。光散乱を用いるMw分析のために、p(GPMA-co-MA)に関するdn/dc値は、1mL/分で0.25~2mg/mLの範囲のPGの既知の原液をWyatt miniDAWN TREOS光散乱検出器中へ注入し、濃度に応じた強度の変化を測定することによって決定した。モルパーセント(モル%)GPMAは、GPMA上のCH2-N基(δ=2.8~3.2ppm)(4つの全H)と、ポリマー主鎖(GPMA及びMAの両方上の5つの全H)及びポリマー側鎖(GPMA上の2H)中の飽和炭化水素基(δ=0.4~2.2ppm)との相対積分によって決定した。
【0225】
P(GPMA-HCl)をまた、同等の結果で代わりの方法を用いて合成した。第一に、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMA・HCl)とメタクリルアミド(MA)とのランダムコポリマーを、60:40(APMA:MA)の固定したモル供給比でのフリーラジカル重合によって合成した。APMA-HCl及びMAモノマーを、1Mの全モノマー濃度で60:40v:v水メタノール混合物に溶解させた。4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸を、目標のポリマー分子量に応じて、1.5%(w:v)で開始剤として添加した。反応を、目標ポリマーMwに応じて、反応温度が70~82℃で変わる状態で、N2下に行った。結果として生じた溶液を冷却し、空気に曝し、p(APMA-co-MA-HCl)コポリマーをアセトン中で沈澱させ、次いで水に溶解させた。第二に、p(APMA-co-MA)HClコポリマーの側鎖第1級アミンをグアニジニウム基に変換した。コポリマー、p(APMA・HCl-co-MA)を、約1Mの濃度で水に溶解させた。1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩(最初のAPMAに対して1.15当量)を添加した。炭酸ナトリウムを添加して反応混合物のpHを約9に上げた。反応は、25℃でN2下に14~28時間進行した。GPMA・HClへのAPMA・HCl側鎖の転化率は、1H NMRを用いて測定されるように99%超であった。次いで生成物をHClでpH6未満に酸性化し、脱イオン水を使ったタンジェンシャルフロー濾過を用いてコポリカチオン及び会合した対イオンを精製し、その後凍結乾燥させてCl-イオン対グアニジニウム+側鎖のおよそ1:1の化学量論比の乾燥Cl-塩を生み出した。
【0226】
ポリアニオン塩の調製
ヘキサメタリン酸ナトリウム。市販のヘキサメタリン酸ナトリウム(NanMP)は、環状及び線状の両方の、通常鎖当たり10~20個のリン原子を含有する、ナトリウム塩形態での無機ホスフェートオリゴマーの混合物である[40-43]。それらの完全イオン化形態において、環状無機ポリホスフェートは、式(PnO3n)n-を有し、一方、線状形態は、(PnO3n+1)n+2-を含む。ポリホスフェートが線状であるか環状であるかどうかに関わりなく、各リン原子は、約4.5以下のpKaで、1個の弱く会合したプロトンを有する[40、44]。線状ポリホスフェートの末端基プロトンは、pH4.5及び9.5の間で解離する。それ故に、生理的pH(7.2~7.4)でのNanMPの電荷密度は、1個のリン原子当たり1つの負電荷として計算された。市販のNanMPを7.2~7.4にpH調整し、凍結乾燥させて乾燥塩を得た。
【0227】
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスフェート)(pMOEP)ナトリウム塩。ポリMOEPを、メタノール中のMOEP(80モル%)(12.5mg ml-1 MOEP)と、メタクリル酸(20モル%)とのフリーラジカル重合によって合成した。反応は、55℃においてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、4.5モル%)で開始され、15h進行した。生成物をアセトン中へ沈澱させ、次いで水(10gのp-MOEP当たり200mlのH2O)に溶解させた。pHをNaOHで7.4に調整した。p-MOEPを、Ultracel 10kDa膜のMillipore Pellicon 3 カセットフィルターを用いてタンゲンシャルフロー濾過によって精製した。ポリマーを、濾過中に10体積の水で洗浄した。生成物を凍結乾燥させ、-20℃で貯蔵した。結果として生じたホスフェートコポリマーは、1H及び31P NMRによって測定されるように、83.5モル%のホスフェート側鎖、1.4モル%のHEMA、及び15.0モル%のMA側鎖を含有した。p-MOEPの分子量(Mw)及び多分散指数(PDI)を、UV、RI及びWyatt MiniDawn Treos(光散乱)検出器を備えたGPC Agilentシステムを用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。AQゲル-OH混合M(Agilent)カラムを、0.1M硝酸ナトリウム及び0.01Mリン酸一ナトリウム、pH8.0で平衡させた。平均Mw及びPDIを、それぞれ、89kDa及び1.6であるとWyatt MiniDawn ASTRAソフトウェアを用いて計算した。
【0228】
注入可能な組成物の調製
(ポリ)GPMA・HCln-co-MA(PG-HCln)及びヘキサメタリン酸ナトリウム(NanMP)の溶液を、乾燥PG・HCln及びNanMP塩の混合物への水の添加によって調製した。順次、ポリマーを溶解させ、その後、代わりの調製方法として、混合すると、同等の特性を持った最終組成物をもたらした。特に記載のない限り、溶液は、2.65:1のPG-HCln対NanMP質量比に相当する、1:1ポリマー電荷比で調製した。19~53kDaの範囲の平均分子量(Mw)のPG-HClnコポリマーを使用して、PG-HCln濃度が300~750mg/mLで変わる溶液を調製した。溶液のCl-及びNa+濃度は、それぞれ、ポリマー塩、PG-HCln及びNanMPの濃度(mol/L)及び電荷密度(mol/g)から計算することができる。多価電解質溶液中の最終多価電解質濃度並びにNa+及びCl-対イオンの計算される濃度を表1に示す。
【0229】
【0230】
結果として生じた注入可能な多価電解質組成物の大部分は、無期限に肉眼で見える相分離に対して安定した無色透明の均一な溶液であった。PG-HCln濃度範囲の下端(350mg/ml)で、より低いMw(19kDa)のPG-HClnコポリマーを使用するいくつかの溶液は、透明でなくなり、2つの異なった液相へ分離した(複合コアセルベーション)。これらの場合に、安定した均一の溶液は、追加のNaClを添加してNaCl濃度を特定の多価電解質溶液に関する臨界濃度よりも上に高めることによって創り出された。例えば、350mg/mlでの19kDa PGコポリマーは、2つの液相へ相分離した。400mg/ml PGの溶液のNaCl濃度と同等の、1440mMに全NaCl濃度を高めるための180mM NaClの添加で、溶液は、無色透明になり、相分離に対して安定になる。全ての溶液は、通常の生理食塩水(150mM NaCl)中へ注入されたときに固化した。
【0231】
一過性造影剤入りの注入可能な組成物の調製
一過性造影剤を含有する注入可能な組成物は、乾燥ポリカチオン塩及びポリアニオン塩を溶解させるために、水で希釈された、非イオン性ヨウ素化造影剤の市販溶液を使用して調製した。数溶液を、非イオン性のイオヘキソール又はイオジキサノールを使用して調製した。造影剤の最終濃度は、1ミリリットル当たり60~370ミリグラムのヨウ素(mgI/ml))の範囲であった。PG-HCln濃度を、1:1電荷比においてNanMPを使って350~700mg/mLで変えた。
【0232】
一過性造影剤入りの注入可能な組成物はまた、2:1~1:2の範囲の体積/体積比を用いて多価電解質溶液でエチオダイズド油(ヨウ素化ケシ種油)を乳化させることによって調製した。油及び多価電解質溶液を注射器中へ装填分離し、次いで注射器をメス-メスコネクタで連結した。溶液を、送達直前に完全に混合されるまで注射器間で行ったり来たり移動させた。
【0233】
注入可能な組成物の特性評価
液体状態特性
注入可能な組成物(IC)の粘度は、小サンプルカップアダプター及びCPA-41Zスピンドル付きのBrookfield Amrtek DV2T粘度計を用いて25℃で測定した。ICは、19~50kPaの範囲のM
wのPG・HCl
nコポリマーを使って、及び350~700mg/mlのPG・HCl
n濃度で調製した。全ての溶液は、1:1ポリマー電荷比でのNa
nMPを使って調製した。ICの粘度は、70~14,910cPの範囲であり、PG・HCln分子量及び濃度の両方と共に上昇した(
図3)。ICの粘度は、より高いPG・HCl
n M
w及びより高い濃度の両方と共に上昇した。PG・HClの濃度を350mg/mLから700mg/mLに、及びM
wを19kDaから50kDaに上げると、粘度の200倍超の上昇(71cPから14910cPへ)をもたらした。したがって、ポリマー濃度及び分子量を用いて多様なマイクロカテーテル、針、及びカニューレによる送達のための粘度を調整することができる。粘度の範囲を、広範囲のM
w、多価電解質濃度、又はイオン性側鎖のモル%を用いて広げることができる。非イオン性造影剤濃度へのIC粘度の依存性を同様に特性化した。ICを、400mg/mLの固定したPG・HCl
n(M
w 42kDa)濃度及び1:1ポリマー電荷比でのNa
nMPで調製した。イオヘキソール及びイオジキサノールの濃度を、それぞれ、60~240mgI/ml及び80~320mgI/mlで別々に変える時に、IC粘度は、60cpから3600cpまで上昇した(
図4)。
【0234】
PG・HCln濃度へのIC粘度の依存性は、固定した濃度のイオヘキソール(240mgI/mL)を使用して並びに300及び400mg/mLのPG・HCln(Mw 47kDa)濃度を使用して評価した。全NaCl濃度を、300mg/ml溶液において1440mM(400mg/mL溶液に等しい)に調整した。粘度は、PG・HCln濃度を上げると共に上昇し、300mg/mLでの451cPの粘度から400mg/mLでの1010cPの粘度になった。他の非イオン性造影剤及び濃度は、粘度の点で同様な傾向であった
【0235】
2:1~1:2の体積/体積比でエチオダイズド油を使って乳化させられたICの粘度は、全て100cP未満であった。1:1エマルジョンの粘度は、例えば、90cPであった。IC/油エマルジョンは、白色で及び不透明であり、数分~数時間にわたってゆっくり分離した。生理食塩水中への送達時に、エマルジョンは、堅い、粘弾性の固体を形成した。
【0236】
粘度特性評価の結果は、液体状態IC粘度がPG・HCln濃度及びMwのどちらか又は両方、並びに非イオン性造影剤の濃度を用いて、特定の用途及び送達デバイスにマッチするように調整できることを実証している。
【0237】
ICの全てが150mM NaCl又は生理的緩衝液中へ注入されたときに固化し、それは流動学的に及び視覚的に評価された。溶液は、無色透明な溶液から不透明な粘弾性の固体へと直ちに移動する。80mgI/mLのイオジキサノールを使って調製されたICの例を、
図5に示す。
【0238】
固体状態材料特性
血液のイオン環境を模倣するように設計された、非緩衝の平衡塩類溶液(BSS)中へのICの注入後の固体状態のレオロジー特性を、37℃での温度制御レオメーター(AR 2000ex,TA Instruments)で特性評価した。粘着性サンドペーパーを、測定中の滑りを防ぐために平板ジオメトリー(20mm及び40mm)に取り付けた。ICは、1:1ポリマー電荷比でのNanMPを使用して、19kDa及び53kDaのMwの2種のPG・HClnコポリマーを使って、及び2つのPG・HCln濃度、400及び500mg/mlで調製した。ICを、円形金型中に固定された反転板の最上部上で注入した。ジオメトリー及びICを含有する金型をBSS中に沈めてICを固化させた。本システムを24時間平衡させ、その後レオメーター上へロードした。1%の固定歪みで0.1から1Hzまでの発振周波数掃引を37℃で行って粘弾性特性を調べた。
【0239】
1Hz及び1%歪みでの弾性率(G’)を
図6に示す。53kDaのPG・HCl
nコポリマーを使って製造された固化したICは、19kDaのPG・HCl
nコポリマーを使って製造されたものよりも2~4倍大きいG’値を有した。本データは、より高いPG・HCl
nコポリマーM
wが固化したICの剛性(G’)を高めることを実証している。19kDaのPG・HCl
nコポリマーの濃度又は液体形態へのNaClの添加は、固体形態の最終剛性にほとんど影響を及ぼさなかった。
【0240】
ICのレオロジー特性への非イオン性造影剤の影響を同様に特性化した。液体形態及び固化形態の両方について、イオヘキソール及びイオジキサノール濃度の範囲に関する1Hz及び1%歪みでの複素弾性率(G
*)を
図7に示す。両造影剤の濃度を上げると、G
*が0.5Paから27Paまで増加した。固体形態のG
*は、両造影剤に関して及び全ての濃度で約20,000であった。これは、液体形態と比較して3~4桁の増加である。一方向ANOVAは、様々な固体形態間で統計的に有意な差を全く示さなかった(p>0.05)。
【0241】
本結果は、注入可能な多価電解質溶液の固化形態のレオロジー特性が、血管の効果的な閉塞を生み出すのに十分過ぎることを実証している。比較のために、天然線維素塊は、血管の安定した閉塞を創り出すのに十分である、約600Paの弾性率を有する。同様に、固化したICの弾性率は、動物実験において効能を実証している幾つかの他のシステムよりも少なくとも1桁高い[47、60、61]。
【0242】
固体状態での非イオン性造影剤の継続時間
固化したICから拡散する非イオン性造影剤の経時変化を、ゼラチン組織ファントムにおけるマイクロ-CTによって評価した。ゼラチン粉末(豚の皮膚タイプA、300gの白い粉、5wt/v%)を水中で45℃に加熱した。シリンダー形の組織ファントムを、2.5cm外径管及び中心の内径2mm管を含む金型に温かいゼラチン溶液を添加することによって創り出した。ファントムの取り外しを容易にするために管をオリーブ油でうっすらとコートした。一端をパラフィンで密封し、温かいゼラチン溶液を外側の管に添加した。室温に冷却した後、中心の管を除去し、固体ゼラチンシリンダー中に空の2mm中心トンネルを残した。
【0243】
造影剤含有ICを、乾燥PG-HCl
n(40kDa、400mg/ml)及び1:1のNa
nMPを0~270mgI/mLの範囲の濃度に水で希釈されたイオヘキソール又はイオジキサノール溶液に溶解させることによって調製した。IC(50μL)を、成形されたゼラチンシリンダーの2mm直径トンネル中へ注入した。IC固化後に、ゼラチンファントムを金型から取り出し、ポリエチレンフィルムに包んだ。ファントムを、調製の1時間以内にマイクロ-CTによって撮像した。1時間及び24時間におけるイオジキサノール濃度の関数としてのファントム内の固化したICの放射線不透過度(HU)を
図8Aに示す。初期の放射線不透過度は、0のイオジキサノールでのICゼラチンファントムにおける376HUから270MgI/mlのイオジキサノールでの1734HUまで増加した。比較のために、皮質骨の中程度放射線不透過度は、およそ1100HUである。
【0244】
ファントムを24時間後に再撮像した。イオジキサノールの全ての3つの濃度に関して、放射線不透過度は、ほぼ、イオジキサノールなしのサンプルのレベル(423~433HU)まで低下した。1及び24時間における、0及び68mgI/mlを含有するファントムの垂直画像及び軸位像を
図8Bに示す。1時間において、固化したIC-イオジキサノールプラグは、放射線不透過性であり、ゼラチンファントムから容易に見分けられる。0イオジキサノールの固化したICプラグは、取り囲むゼラチンファントムよりも辛うじて高い、放射線不透過性を有する。24時間後に、固化したICイオジキサノールプラグの放射線不透過性は、取り囲むゼラチンファントムよりもわずかに多いにすぎない放射線不透過性まで著しく低下した。同様な結果が、イオヘキソール及びエチオダイズド油の両方で得られた。本結果は、非イオン性造影剤が1時間後に依然として非常に目立つが、24時間以内に、固化したICから周囲の組織ファントム中へ大部分が拡散したことを実証している。同様な経時変化は、血管及び生体組織においても予期される。
【0245】
動物実験
豚インビボ塞栓モデル
幾つかのICの蛍光透視可視性及び塞栓効能を、新規塞栓剤を試験するために広く用いられている、豚モデルにおいて調べた。動脈部位は、Seldinger技法を用いる大腿動脈を通してのアクセスを伴った。そこから、カテーテルを、腎臓の及び肝臓の動脈に由来する部位に標準技法を用いて導いた。注入可能な組成物を、カテーテルを通して送達した。血管造影図を、同じカテーテルか又はベースカテーテルかのどちらかを使用して塞栓前及び塞栓後に記録した。次いで、部位を、完全に閉塞した、部分的に閉塞した、又は閉塞していないとして評価した。送達部位の追跡撮像を、塞栓の1日後及び7日後に行った。血管造影をまた、血管にアクセスできる場合、塞栓後直ちに及び塞栓の7日後に行った。
【0246】
ICは、イオヘキソールの300mgI/mLの溶液に1:1のポリマー電荷比でPG-HCl
n(300mg/mL)及びNa
nMPを溶解させることによって調製した。腎動脈のサブブランチへのアクセスは、4Fカテーテルを使って得られた。ICは、腎臓血管系中へ末端に浸透することがフルオロスコピー下で容易に目に見える(
図9)。0.3mLのICの送達後に、閉塞が血管造影によって確認された。標的部位は、完全に閉塞したままであった。塞栓の24時間後に、追跡蛍光透視撮像は、放射線不透過性が、卓上ゼラチンファントム実験からの研究結果を裏付ける、塞栓部位から消散してしまったことを明らかにした。塞栓の7日後に行われた血管造影は、標的部位が閉塞したままであることを示した。同様な結果は、様々な濃度のイオヘキソール(180、240、300mgI/mL)及びイオジキサノール(270mgI/mL)において調製されたサンプルで得られた。
【0247】
ヨウ素化油系造影剤
PG-HCl
n(400mg/mL)及びNa
nMPを1:1の電荷比で溶解させることによって調製されたICを、送達の前にリピオドールとちょうど1:1比で混合した。2.8Fマイクロカテーテルを使って腎臓の尾極にアクセスした。混合物は、カテーテルを通して腎臓の標的ポールへ送達される、安定した、不透明なエマルジョンを生み出した(
図10)。およそ0.3mLの塞栓性ICが送達され、それは、フルオロスコピー下で容易に目に見えた。配置直後の血管造影図は、完全閉塞を示し、それは、7日後の終了前に閉塞したままであった。追加の追跡蛍光透視撮像は、24時間及び7日において識別できる放射線不透過性を全く示さなかった。これらの結果は、PE塞栓剤が油状造影剤と共にエマルジョン中へ配合でき、血管を閉塞する能力を維持していることを示した。本結果はまた、油系造影剤での一過性の放射線不透過性を確認した。
【0248】
要約
非イオン性造影剤又はヨウ素化油と組み合わせて形成された注入可能な組成物は、急速消散剤と永久剤との間の中間継続時間の、一時的な放射線不透過性を提供した。造影剤は、卓上及び動物モデルの両方で数時間持続した。この中間継続時間放射線不透過性は、それがすぐ近くの標的のCT又は将来治療などの、任意のその後の撮像において邪魔をしないという点において、実用性を提供する。それはまた、金属造影剤を使った塞栓剤とは対照的に、電気メスが塞栓組織に関して行われることを可能にする。数秒~2、3分で減少する一過性の放射線不透過性の他の塞栓剤とは対照的に、注入可能な組成物中のヨウ素化有機造影剤は、数時間の期間持続する。送達された塞栓物質が治療の継続時間の全体にわたって目に見えるままであることを可能にすることによって、この特性は、直ちに消散する造影剤の不利点の多くを排除し、塞栓配置のより良好な確認をもたらし、必要ならばその後の注入のための手引きを提供する。更に、暗色の金属粒子の排除は、表面応用において目に見える皮膚入れ墨を防ぐ。
【0249】
ICは、様々な造影剤を使って製造することができる。ICは、非イオン性造影剤の水溶液へのポリカチオン塩及びポリアニオン塩の直接溶解によって形成することができる。ICへの非イオン性造影剤の添加は、造影剤濃度を上げると共に粘度を高め、粘度を調整するための追加のパラメーターを提供する。ポリカチオン塩及びポリアニオン塩の水溶液とヨウ素化油との混合は、低い粘度を有し、ほぼ生理的なイオン強度の溶液中へ送達されたときに固化する水中油エマルジョンとしてのICを製造した。これらの溶液及びエマルジョンは、経カテーテルによる塞栓に適切な粘度を有し、動物モデルにおいて許容される性能を実証した。
【0250】
ICの粘度は、多価電解質のMw及び濃度を変更することによって調整することができる。注入可能な組成物の粘度は、3桁超にわたることができる(101~104cP)。低粘度溶液は、狭い(0.013インチID)及び長い(150cm)マイクロカテーテルによって送達可能である。より高粘度配合物(15,000cPまでの)は、より大きいマイクロカテーテル、カニューレ、又は針によってより大きいフィードバック、制御、及び効果的な塞栓を提供し得る。
【0251】
この出願の全体にわたって、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物のそれらの全体の開示は、本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法をより完全に記載するためにこの出願に参照により本明細書によって援用される。
【0252】
様々な変更及び変形を、本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法に加えることができる。本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法の他の態様は、本明細書に開示される化合物、組成物、及び方法の仕様及び実施の考慮から明らかであろう。仕様及び実施例は例示的として考慮されることが意図される。
【0253】
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